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特表2022-534860バイオセルロース繊維、それを含む止血用被覆材及び関連応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】バイオセルロース繊維、それを含む止血用被覆材及び関連応用
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/28 20060101AFI20220728BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20220728BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61L15/28 100
A61L15/42 310
A61L15/18 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564853
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 CN2019085277
(87)【国際公開番号】W WO2020220300
(87)【国際公開日】2020-11-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476399
【氏名又は名称】ヂョン チュンイェン
(71)【出願人】
【識別番号】521476403
【氏名又は名称】ヂョン ユーグゥァン
(71)【出願人】
【識別番号】521476414
【氏名又は名称】ハイナン グゥァンユー バイオテクノロジー シーオー., エルティーディー
(71)【出願人】
【識別番号】521476425
【氏名又は名称】ハイナン イェーゴー フーズ シーオー., エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン チュンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン ユーグゥァン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA12
4C081BA11
4C081CD02
4C081CF13
4C081CF15
4C081CF16
4C081CF21
(57)【要約】
本発明は、バイオセルロース繊維、上記繊維を含む止血用被覆材及び関連応用を提供する。本発明のバイオセルロース繊維は、細菌発酵で得られたセルロースを純化処理、機械的均質化して得られたものであり、直径が20~50nmであり、長さが30~100μmである。上記バイオセルロース繊維をテンプレートとし、水熱法でゼオライトモレキュラーシーブを合成し、必要に応じてキトサンと複合することで、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を製造できる。該止血用被覆材は、その生体相容性が良く、良好な製菌性能を有し、傷口の癒合を促進できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌発酵で得られたセルロースを10wt%~20wt%の水酸化ナトリウム溶液で蒸煮処理することにより得られたものであって、直径が20nm~50nmであり、長さが30μm~100μmであるバイオセルロース繊維。
【請求項2】
細菌発酵で得られたセルロースを10wt%~20wt%の水酸化ナトリウム溶液で10分間~30分間蒸煮することと、
直径20nm~50nm、長さ30μm~100μmの繊維を製造するように機械的に均質化すると、を含む、請求項1に記載のバイオセルロース繊維の製造方法。
【請求項3】
止血用被覆材の製造における、請求項1に記載のバイオセルロース繊維の用途。
【請求項4】
前記バイオセルロース繊維をテンプレートとし、水熱法でゼオライトモレキュラーシーブを合成する、請求項3に記載の用途。
【請求項5】
水1リットルごとに添加されるバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物の対応するモル比が(0.001~0.2):(0.01~1):1となるように、請求項1に記載のバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合して、混合液を得ることと、
アルミニウム系化合物とケイ素系化合物とのモル比が(0.05~0.1):1となるように、前記混合液にアルミニウム系化合物を添加し、5時間~8時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得ることと、
前記混合ゲルを5℃/分~10℃/分の昇温速度で170℃~175℃までゆっくり加熱し、6時間~24時間定温させることと、
前記得られたサンプルを脱イオン水で洗浄して、乾燥後、550℃~600℃まで加熱して炭化処理を行い、5時間~8時間定温させた後、冷却することでゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得ることと、
前記複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させて、冷凍乾燥、滅菌を経て、止血用被覆材を得ることと、
を含む、止血用被覆材の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ素系化合物はシリカゲル、ホワイトカーボン、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸プロピル、オルトケイ酸イソプロピル及びオルトケイ酸ブチルのいずれか一種または数種を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム系化合物は、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミゾル、アルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムセカンダリーブトキシドのいずれか一種または数種を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥は、冷凍乾燥であることが好ましく、前記冷凍乾燥は、サンプルを-20℃~-80℃で12時間~24時間冷凍させた後、24時間~48時間真空乾燥することが好ましい、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化処理とは、真空、アルゴンガス或は窒素ガスの保護の下、材料を室温から550℃~600℃まで昇温することであり、そのうち、100℃~300℃区間の昇温速度は5℃/分~10℃/分であり、300℃~500℃区間の昇温速度は1℃/分~5℃/分であり、500℃~600℃区間の昇温速度は30℃/分であることが好ましい、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却とは、昇温終了後のサンプルを雰囲気炉或は活性化炉の中で室温までゆっくり冷却させることである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させる際、キトサン、ゼオライトモレキュラーシーブ、バイオセルロース系炭素繊維とバイオセルロース繊維の混合質量比が1:(0.01~0.1):(0.01:0.1):(0.01~0.1)であり、より好ましい比率が1:(0.04~0.06):(0.04~0.06):(0.3~0.6)である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記キトサン水溶液には、キトサンの質量濃度は3wt%~10wt%であり、前記キトサンの分子量は10万~35万である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
バイオセルロース繊維、ナノ炭素繊維及びゼオライト粒子が均一に分布されてなるキトサンを、多孔質材料の基材として、
該止血用被覆材の材料の孔隙率が80%~95%であり、孔径が50μm~500μmであり、吸水率が材料自重の200倍~1000倍であり、引張力学的強度が0.5GPa~4GPaである、バイオセルロース繊維製の止血用被覆材。
【請求項14】
請求項5~11のいずれか一項に記載の方法で製造される、請求項13に記載の止血用被覆材。
【請求項15】
止血及び/又は傷口の癒合を促進する効果を有する薬物の製造における、請求項13または14に記載の止血用被覆材の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセルロース繊維、上記繊維を含む止血用被覆材及び関連応用に関する。具体的に、特に、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材の製造に用いられるバイオセルロース繊維、製造された止血用被覆材、上記バイオセルロース繊維及び止血用被覆材の製造方法及び関連応用であり、医療機器の止血用材料分野に関する。
【背景技術】
【0002】
止めにくい創傷出血は、突発性救急治療、医療手術または戦場死亡の主な原因である。アメリカ軍の資料によると、戦場における戦死者の80%以上は、創傷後1時間以内に過度な出血によるものである。そのため、即効止血は創傷救急に最も解決すべき課題である。臨床上一般的に使われている止血用材料、例えば、止血用ガーゼ、止血用繊維、止血用包帯等は、使用において一定の限界がある。例えば、止血時間が長いこと、傷口に癒着しやすいため薬替えの際に二次傷害を引き起こしてしまうこと、抗菌成分が欠けているため傷口の感染・化膿がよく起きてしまうことが挙げられる。
【0003】
以上の課題に対して、当分野においては、現在、多孔質ゼオライト材料、多糖系止血用材料、ポリペプチド系止血用材料などの新型の急速止血用材料が提案されている。そのうち、
(1)多孔質ゼオライト材料は多孔質ゼオライトからなり、いかなる生体成分も添加されていないため、種間疾患伝播やアレルギーを回避できる。このような粉末を出血点に直接に施した後、一層の止血痂が傷口の表面に迅速に形成され、内部血液の溢出が阻止される。しかし、多孔質ゼオライトは、血液中の水分を吸収して大量に熱を放出するため、傷口の炎症につながる。そのため、止血過程における傷口へのダメージを低減するように、多孔質ゼオライト材料の発熱を制御する必要がある。そして、ゼオライト止血用パックの使用時、ゼオライト粒子が創傷面に残存し、分解もしないので、異物反応を起こしやすい。
(2)アメリカMedafor社製のTrauma DEXは、じゃがいもの澱粉を基材としたスポンジ状多糖系止血用材料である。このようなスポンジ状材料は出血点において血液中の水分を大量に吸収し、血小板と血液タンパク質の迅速な凝集を促進することにより、止血の目的を実現することができる。ただし、この材料は小さな創傷にしか適用できず、止血過程において温度上昇の現象を伴う。
(3)キトサンは、主にエビやカニの殻から抽出された、正帯電した多糖系止血用材料であり、負帯電した血球を吸引して血液凝固を促進することができる。また、血液と接した後、粘性があり、傷口にしっかりと粘着できる。キトサン特有の止血、製菌、生体相容性、傷口癒合の促進及びゲルを形成しやすい性質から、止血用材料としての良好性能が与えられている。ただし、キトサン材料の自身は溶解性が劣り、力学的性能を増強する余地がある。
(4)フィブリン被覆材の有効成分は、フィブリノーゲン粉末、トロンビンとカルシウムイオン等である。このような被覆材は人体に吸收される。その止血メカニズムは、血漿中の凝血タンパク質が溶解して、フィブリノーゲンとトロンビンの酵素反応で形成されたフィブリン層を損傷組織にしっかりと粘着させることを含む。一方、該材料は脆くて柔軟性に劣り、折れやすいため、その応用が大きく制限されている。
【0004】
以上のような急速止血用材料に存在する種々の課題に鑑みて、新型の急速止血用材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材の製造に用いられるバイオセルロース繊維を提供する。
【0006】
本発明の別の目的は、バイオセルロース繊維の製造方法を提供する。
【0007】
本発明の別の目的は、上記バイオセルロース繊維製の止血用被覆材を提供する。
【0008】
本発明の別の目的は、上記止血用被覆材の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の別の目的は、上記止血用被覆材の応用を提供する。
【0010】
一方で、本発明は、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材の製造に用いられるバイオセルロース繊維を提供する。本発明で提供されるバイオセルロース繊維は、その直径が20~50nmであり、長さが30~100μmである。本発明のバイオセルロース繊維は、細菌発酵によって得られたセルロースを水酸化ナトリウム溶液で蒸煮処理することで得られたものである。
【0011】
本発明の実施態様によれば、本発明において、上記の細菌発酵で得られたセルロースは市販品より入手してもよく、従来技術の記載通りで自ら製造してもよい。本発明に適用できる細菌発酵で得られたセルロースは、例えばアセトバクターキシリナム、リゾビウム、サルシナ、シュードモナス、アクロモバクター、アルカリゲネス、アエロバクター或はアゾトバクターのうちの一種または数種の菌種の発酵で得られたセルロースであってもよい。これらの菌種の発酵でセルロースを得る過程は、当分野の公知技術であり、本発明では説明を省略する。
【0012】
本発明の実施態様によれば、本発明のバイオセルロース繊維は、上記細菌発酵で得られたセルロースを水酸化ナトリウム溶液で蒸煮処理されたものである。上記の水酸化ナトリウム溶液での蒸煮処理の工程は、バイオセルロースを10~20wt%の水酸化ナトリウム溶液で10~30分間高温蒸煮することを含む。本発明で提供されるバイオセルロース繊維は、主に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材の製造に用いられる。細菌発酵したバイオセルロース原料には、大量の細菌残留体があり、これらの残留物は製造される止血用被覆材の構造や性能に影響を与える。本発明において、特定濃度の水酸化ナトリウム溶液を用いて蒸煮することで、菌体タンパク質及びセルロース膜に粘着した残存培地を徹底的に除去でき、純度が99.9%以上、ひいては100%となるように細菌セルロース材料におけるセルロースを高純度に確保できる。同時に、水酸化ナトリウムは、後続の止血用被覆材の製造における活性化処理において一定の活性化作用を奏することができる。
【0013】
一方で、本発明は、
細菌発酵で得られたセルロースを、10~20wt%の水酸化ナトリウム溶液で10~30分間高温蒸煮すること、
直径20~50nm、長さ30~100μmの繊維を製造するように機械的に均質化すること、
を含む、上記バイオセルロース繊維の製造方法も提供する。
【0014】
一方、本発明は、止血用被覆材の製造における上記バイオセルロース繊維の用途も提供する。
【0015】
本発明の実施態様によれば、本発明においては、上記バイオセルロース繊維をテンプレートとし、水熱法でゼオライトモレキュラーシーブを合成し、必要に応じてキトサンと複合することで、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を製造する。
【0016】
このように、一方、本発明は、
水1リットルごとに添加されるバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物の対応するモル比が(0.001~0.2):(0.01~1):1となるように、本発明のバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合して、混合液を得ることと、
アルミニウム系化合物とケイ素系化合物とのモル比が(0.05~0.1):1となるように、上記混合液にアルミニウム系化合物を添加し、5時間~8時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得ることと、
上記混合ゲルを5℃/分~10℃/分の昇温速度で170℃~175℃までゆっくり加熱し、6時間~24時間定温させることと、
上記得られたサンプルを脱イオン水で洗浄して、乾燥後、550℃~600℃まで加熱して炭化処理を行い、5時間~8時間定温させた後、冷却することでゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得ることと、
上記複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させて、冷凍乾燥、滅菌(通常の滅菌でもよく、例えば、高圧蒸気滅菌または放射線照射滅菌でもよい)を経て、止血用被覆材を得ることと、
を含む、止血用被覆材の製造方法も提供する。本発明の止血用被覆材は、必要に応じて、カット(通常は滅菌前に行う)や包装されても良い。
【0017】
本発明の止血用被覆材の製造方法は、バイオセルロースをテンプレートとし、水熱法でin-situ合成を行い、ゼオライトを得た。この過程において、バイオセルロース表面における多量なヒドロキシ基はゼオライト前駆体(ケイ素系やアルミニウム系化合物)を吸着でき、in-situテンプレートとしての作用を奏している。同時に、バイオセルロース表面は、ゼオライトの合成に影響を及ぼす原料中の一部の金属イオンを吸着でき、金属キレート剤の作用を奏している。次に、高温焙焼と同時に、ナノセルロース繊維はバイオセルロース系ナノ炭素繊維に炭化される。ナノ炭素繊維とゼオライトとの結合力が強く、また、ナノ炭素繊維とバイオセルロース繊維とは増強効果を持つ。本発明の方法では、工程が簡単で、扱いやすくてコストが低く、得られた止血用被覆材が迅速止血性能を持って、且つ力学的性能も良好である。ゼオライトモレキュラーシーブと基材との結合力が強く、使用中は脱落しにくい。
【0018】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、上記のケイ素系化合物はシリカゲル、ホワイトカーボン、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸プロピル、オルトケイ酸イソプロピル及びオルトケイ酸ブチルのいずれか一種または数種、を含む。
【0019】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、上記アルミニウム系化合物は、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミゾル、アルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムセカンダリーブトキシドのいずれか一種または数種、を含む。
【0020】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、上記乾燥は、冷凍乾燥が好ましい。上記冷凍乾燥は、サンプルを-20℃~-80℃で12~24時間冷凍させた後、真空で24~48時間乾燥することが好ましい。
【0021】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、炭化処理とは、真空、アルゴンガス或は窒素ガスの保護の下、材料を室温から550℃~600℃まで昇温することであり、そのうち、100℃~300℃区間の昇温速度は5℃/分~10℃/分であり、300℃~500℃区間の昇温速度は1℃/分~5℃/分であり、500℃~600℃区間の昇温速度は25℃/分~30℃/分であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、上記冷却とは、昇温終了後のサンプルを雰囲気炉或は活性化炉の中で室温までゆっくり冷却することである。
【0023】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料とを、バイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合する際、キトサン、ゼオライトモレキュラーシーブ、バイオセルロース系炭素繊維とバイオセルロース繊維の混合質量比が1:(0.01~0.1):(0.01:0.1):(0.01~0.1)であり、より好ましい比率が1:(0.04~0.06):(0.04~0.06):(0.3~0.6)である。
【0024】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、複合材料、キトサン水溶液と混合するバイオセルロース繊維と、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物の混合液におけるバイオセルロース繊維とは、寸法が同一でも異なっていてもよく、本発明で望ましい直径20~50nm、長さ30~100μmの範囲内であればよい。該一部のバイオセルロース繊維の添加は、ゼオライト粒子を更に強化させ、脱落しにくくさせている。同時に、キトサン多孔質材料の表面のナノセルロース繊維は、材料の血液に対する吸着效率を向上でき、外部と内部ゼオライト粒子を導通させる目的を果たせ、止血速度を著しく増加させる。
【0025】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、上記キトサン水溶液は、キトサンを2wt%の酢酸水溶液に溶解させて得られたものである。上記のキトサン水溶液には、キトサンの質量濃度が3~10wt%であり、上記キトサンの分子量が10~35万であることが好ましい。
【0026】
本発明の実施態様によれば、本発明の止血用被覆材の製造方法において、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料とを、バイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させた後、-20℃~-80℃で12~24時間冷凍させ、24~48時間真空乾燥後、滅菌し、本発明の止血用被覆材を得た。
【0027】
一方、本発明は、上記バイオセルロース繊維製の止血用被覆材も提供する。本発明の止血用被覆材は、最終製品として、キトサン、バイオセルロース繊維、ナノ炭素繊維(バイオセルロースを炭化することで得られたもの)、ゼオライトからなる多孔質フォーム状止血用材料である。構造上、キトサンは多孔質材料の基材であり、その中にバイオセルロース繊維、ナノ炭素繊維及びゼオライト粒子が均一に分布されている。該止血用被覆材の材料の孔隙率は80~95%であり、孔径は50~500μmであり、吸水率は材料自重の200~1000倍であり、引張力学的強度は0.5~4GPaである。
【0028】
一方、本発明は、上記止血用被覆材の応用も提供する。本発明の止血用被覆材について、炭素繊維とバイオセルロース繊維によって材料の力学的強度を向上させ、ゼオライトと炭素繊維との緊密的な結合により、止血用材料の使用時にゼオライト粒子が創面に入って傷口癒合に影響を及ぼす問題を避けて、また、バイオセルロース繊維の添加によって、ゼオライトと炭素繊維の結合体に対して一定の絡み合い作用があり、ゼオライト粒子が脱落しにくいようにさらに補強することができる。同時に、キトサン多孔質材料の表面のナノセルロース繊維によって、材料の血液に対する吸着效率を向上させ、外部と内部ゼオライト粒子を導通させる目的を果たせ、止血速度を著しく増加することができる。本発明の止血用被覆材は、生体相容性が良く、良好な製菌性能を有するとともに、傷口の癒合を促進できる。よって、本発明は、止血用、傷口の癒合を促進する薬物の製造における上記止血用被覆材の応用を提供した。
【0029】
本発明の上述態様において詳細に説明されていない方法や条件は、当分野における通常の作業に従って行われてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、バイオナノセルロースをテンプレートとし、水熱法でゼオライトモレキュラーシーブをin-situ合成した。高温焙焼と同時に、ナノセルロース繊維はバイオセルロース系ナノ炭素繊維に炭化される。ナノ炭素繊維とゼオライトとの結合力が強く、同時にナノ炭素繊維とバイオセルロース繊維とは増強効果を持つため、最終的に、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材が得られる。本発明の方法は、工程が簡単で、扱いやすくてコストが低く、得られた止血用被覆材は良好な止血性能と力学的性能を持っている。ゼオライトモレキュラーシーブの構造が安定で均一であり、基材との結合力が強く、使用中は脱落しにくい。さらに、生体相容性が良く、良好な製菌性能を有するとともに、傷口の癒合を促進できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施手順及びその有利な効果について、具体的な実施例により詳しく説明するが、あくまでも本発明の実質及び特徴を読者に分かりやすくするためのものであり、本発明の実施可能な範囲を限定するものではない。
【0032】
実施例1
本実施例の止血用被覆材の製造方法は、以下の通りである。
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.001:0.01:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、アセトバクターキシリナムとリゾビウムとを発酵させて得られたバイオセルロースを10wt%の水酸化ナトリウム溶液で10分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径20nm、長さ30μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、シリカゲルであった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.05:1となるように上述混合液にアルミン酸ナトリウムを添加し、5時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、5℃/分の昇温速度で170℃までゆっくり加熱し、6時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-20℃で24時間冷凍させた後、24時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて550℃まで加熱して炭化処理をした。5時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、窒素ガスの保護の下、材料を室温から550℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は5℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は1℃/分であり、500~550℃区間の昇温速度は30℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量35万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が3wt%であった。
【0033】
本発明の研究過程において、ゼオライト、炭素繊維、バイオセルロース繊維の異なる含有量による止血用被覆材の性能への影響に関する実験データの一部を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
上述実施例1から、迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。その主な性能の測定結果は以下の通りである。
止血:ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを利用して止血用被覆材の効果を評価した。対照サンプルはガーゼとした。その結果、本発明の止血用被覆材は、1分内の止血率が100%であったが、ガーゼの8分内の止血率が37%であった。
製菌性:本実施例の止血用被覆材にはキトサンが含まれ、非溶出性製菌材料である。GB15979-2002《使い捨て衛生用品の衛生基準》の付録C5非溶出性抗(製)菌製品製菌性能の試験方法を参照し、基準に準ずると、テストサンプル組の製菌率と対照サンプル組の製菌率の差は26%を超え、製品が製菌性能を有することを表している。その結果、大腸菌(Escherichia coli ATCC8739)及び黄色ブドウ球菌(Staphylicoccus aureus ATCC6538)に対して、本発明の止血用被覆材の上記製菌率の差は、それぞれ90.09%と89.02%となっており、本発明の止血用被覆材が良好な製菌性能を有することが明らかになった。
生体相容性実験:GB/T 16886医療機器のバイオ学評価を参照して、止血用被覆材に対して、それぞれ細胞毒性、モルモット遅延型接触過敏、皮膚刺激等を評価した。生体相容性評価について、細胞内毒性試験は、GB/T 16886-5《医療機器バイオ学評価第5部:体外細胞毒性試験》に準じてテストを行った。モルモット遅延型接触過敏試験について、GB/T 16886-10《医療機器バイオ学評価第10部:刺激と遅延型過敏反応試験》に準じてテストを行い、最大限度試験Magnusson及びKligman法を用いた。皮膚刺激試験について、GB/T 16886-10《医療機器バイオ学評価第10部分:刺激と遅延型過敏反応試験》に準じてテストを行った。その結果、止血用被覆材の細胞毒性は2級未満であり、皮膚アレルギー反応や皮内刺激反応がなく、良好な生体安全性を有することが明らかになった。
【0036】
体外細胞毒性試験を表2「細胞活力%」に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
サンプル浸漬液と成長旺盛のL-929細胞に対して、培養を24時間(37℃,5%CO)続けた後、MTT法でサンプルの潜在細胞毒性を測定した。当該浸漬液が100%である場合、テストサンプルの毒性はII級であった。浸漬液の希釈に伴い、細胞の活力が徐々に高められる。浸漬液が50%に希釈された後、細胞毒性はいずれもI級であった。したがって、サンプル浸出液のL929細胞に対する毒性反応は2級であり、潜在的な細胞毒性がなかった。
皮膚刺激:サンプルを3匹ニュージーランド白兎の背部にそれぞれ貼り敷いて、1時間、24時間、48時間及び72時間経過後、皮膚紅斑及び浮腫等の反応状況を観察し、皮膚刺激反応の程度によってクラスに分けて採点した。サンプルの皮膚反応の結果観察を表3「サンプルの皮膚反応の結果観察」に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
試験過程において、動物の異常症状或は死亡のケースがなかった。観察により、試験組の方の皮膚反応はブランク対照組の方の皮膚反応を超えておらず、原発性刺激指数が0(浮腫・紅斑なし)であり、陽性対照組の動物の点数が2(明らかな浮腫・紅斑)であった。ウサギの皮膚反応タイプでは、試験サンプルは、刺激作用がないものであった。
【0041】
皮膚過敏試験を表4「サンプルのモルモット過敏誘発皮膚反応の臨床観察」に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
サンプル浸出液を10匹のモルモットに皮内注射し、包帯を巻いて過敏を誘発させようとした。回復期間中、10匹のテストモルモット及び5匹の対照モルモットに対し、それぞれサンプル浸出液及びブランク液を用いて励起パッチ試験を行った。パッチを外した後の24時間及び48時間に、各部の得点を記録した。試験中、陰性対照組の動物及び試験組の動物の点数はいずれも0(明らかな変化なし)であり、陽性対照組の動物の点数は2(中度融合性紅斑)であった。サンプルに遅延型接触過敏は見られなかったことが分かった。
【0044】
実施例2
本実施例の止血用被覆材の製造方法は、以下の通りである。
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.001:0.05:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、サルシナとシュードモナスとを発酵させて得られたバイオセルロースを12wt%の水酸化ナトリウム溶液で20分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径30nm、長さ40μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、ホワイトカーボンとシリカゲルであり、それらの質量比が1:1であった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.06:1となるように上述混合液に水酸化アルミニウムを添加し、6時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、10℃/分の昇温速度で175℃までゆっくり加熱し、8時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-30℃で12時間冷凍させた後、48時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて600℃まで加熱して炭化処理をした。6時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、真空保護の下、材料を室温から600℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は10℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は5℃/分であり、500~600℃区間の昇温速度は25℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、高エネルギー射線による滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量30万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が4wt%であった。
【0045】
本実施例の止血用被覆材の引張力学的強度は1050MPaであった;孔隙率は80~95%、孔径は50~500μm、吸水率は材料自重の200~1000倍であった。ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを用いて、止血用被覆材の効果を評価した結果、本実施例の止血用被覆材の1分内の止血率は100%であった。
【0046】
実施例3
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.2:1:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、アセトバクターキシリナムとアクロモバクターとアルカリゲネスとを発酵させて得られたバイオセルロースを14wt%の水酸化ナトリウム溶液で30分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径40nm、長さ50μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、珪酸ナトリウムとオルトケイ酸ブチルであり、それらの質量比が1:1であった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.07:1となるように上述混合液に硫酸アルミニウムを添加し、7時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、6℃/分の昇温速度で170℃までゆっくり加熱し、10時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-40℃で8時間冷凍させた後、48時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて570℃まで加熱して炭化処理をした。7時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、アルゴンガスの保護の下、材料を室温から570℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は6℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は4℃/分であり、500~570℃区間の昇温速度は28℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、高エネルギー射線による滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量25万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が5wt%であった。
【0047】
本実施例の止血用被覆材の引張力学的強度は900MPaであった;孔隙率は80~95%、孔径は50~500μm、吸水率は材料自重の200~1000倍であった。ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを用いて、止血用被覆材の効果を評価した結果、本実施例の止血用被覆材の1分内の止血率は100%であった。
【0048】
実施例4
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.005:0.03:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、アエロバクターとアゾトバクターとを発酵させて得られたバイオセルロースを16wt%の水酸化ナトリウム溶液で15分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径50nm、長さ60μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、オルトケイ酸ブチルとオルトケイ酸イソプロピルであり、それらの質量比が1:1であった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.08:1となるように上述混合液にアルミゾルとアルミニウムセカンダリーブトキシド(質量比で1:1)を添加し、8時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、8℃/分の昇温速度で170℃までゆっくり加熱し、12時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-50℃で24時間冷凍させた後、48時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて550℃まで加熱して炭化処理をした。8時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、窒素ガスの保護の下、材料を室温から550℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は10℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は3℃/分であり、500~550℃区間の昇温速度は26℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、高エネルギー射線による滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量20万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が6wt%であった。
【0049】
本実施例の止血用被覆材の引張力学的強度は800MPaであった;孔隙率は80~95%、孔径は50~500μm、吸水率は材料自重の200~1000倍であった。ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを用いて、止血用被覆材の効果を評価した結果、本実施例の止血用被覆材の1分内の止血率は100%であった。
【0050】
実施例5
本実施例の止血用被覆材の製造方法は、以下の通りである。
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.01:0.02:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、アルカリゲネスを発酵させて得られたバイオセルロースを18wt%の水酸化ナトリウム溶液で28分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径50nm、長さ70μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、オルトケイ酸エチルとオルトケイ酸プロピルであり、それらの質量比が1:1であった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.09:1となるように上述混合液にアルミニウムイソプロポキシドを添加し、5時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、7℃/分の昇温速度で175℃までゆっくり加熱し、24時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-60℃で24時間冷凍させた後、24時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて600℃まで加熱して炭化処理をした。8時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、アルゴンガスの保護の下、材料を室温から600℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は9℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は4℃/分であり、500~600℃区間の昇温速度は27℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、高エネルギー射線による滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量15万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が7wt%であった。
【0051】
本実施例の止血用被覆材の引張力学的強度は850MPaであった;孔隙率は80~95%、孔径は50~500μm、吸水率は材料自重の200~1000倍であった。ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを用いて、止血用被覆材の効果を評価した結果、本実施例の止血用被覆材の1分内の止血率は100%であった。
【0052】
実施例6
(1)バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合し、混合液を得た。但し、水1リットルに添加された、バイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物がそれらの対応モル比で0.16:0.5:1であった。その中、バイオセルロース繊維は、アセトバクターキシリナム、アエロバクターとアゾトバクターを発酵させて得られたバイオセルロースを20wt%の水酸化ナトリウム溶液で10分間高温蒸煮処理した後、機械的に均質化させて得られたナノ繊維の直径50nm、長さ100μmのセルロース繊維であった。ケイ素系化合物とは、シリカゲル、ホワイトカーボン、オルトケイ酸メチルとオルトケイ酸ブチルであり、それらの質量比が1:1:1:1であった。
(2)アルミニウム系化合物とケイ素系化合物がモル比で0.1:1となるように上述混合液にアルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム(質量比で1:1:1)を添加し、6時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得た。
(3)上述混合ゲルをオートクレーブの中で、5℃/分の昇温速度で170℃までゆっくり加熱し、24時間定温させた;
(4)上述得られたサンプルを脱イオン水で洗浄し、-80℃で24時間冷凍させた後、48時間真空乾燥を行い、乾燥後のサンプルを雰囲気炉に入れて600℃まで加熱して炭化処理をした。8時間定温させた後、サンプルを雰囲気炉に室温までゆっくり冷却し、ゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得た。なお、炭化処理とは、窒素ガスの保護の下、材料を室温から600℃まで昇温することであった。そのうち、100~300℃区間の昇温速度は7℃/分であり、300~500℃区間の昇温速度は3℃/分であり、600℃区間の昇温速度は27℃/分であった。
(5)上述複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させ、冷凍乾燥、カット、高エネルギー射線による滅菌、包装を経て、最終的に迅速に止血でき且つ力学的性能も良好な止血用被覆材を得た。なお、キトサン水溶液は、分子量10万のキトサンから調製されたものであり、質量濃度が10wt%であった。
【0053】
本実施例の止血用被覆材の引張力学的強度は750MPaであった;孔隙率は80~95%、孔径は50~500μm、吸水率は材料自重の200~1000倍であった。ウサギ致命性大腿動脈出血傷口モデルを用いて、止血用被覆材の効果を評価した結果、本実施例の止血用被覆材の1分内の止血率は100%であった。
【手続補正書】
【提出日】2020-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水1リットルごとに添加されるバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物の対応するモル比が(0.001~0.2):(0.01~1):1となるように、細菌発酵で得られたセルロースを10wt%~20wt%の水酸化ナトリウム溶液で蒸煮処理することにより得られたものであって直径が20nm~50nmであり、長さが30μm~100μmであるバイオセルロース繊維、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ケイ素系化合物を水と混合して、混合液を得ることと、
アルミニウム系化合物とケイ素系化合物とのモル比が(0.05~0.1):1となるように、前記混合液にアルミニウム系化合物を添加し、5時間~8時間ゆっくり撹拌して、混合ゲルを得ることと、
前記混合ゲルを5℃/分~10℃/分の昇温速度で170℃~175℃までゆっくり加熱し、6時間~24時間定温させることと、
前記得られたサンプルを脱イオン水で洗浄して、乾燥後、550℃~600℃まで加熱して炭化処理を行い、5時間~8時間定温させた後、冷却することでゼオライトモレキュラーシーブとバイオセルロース系ナノ炭素繊維複合材料を得ることと、
前記複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させて、冷凍乾燥、滅菌を経て、止血用被覆材を得ることと、
を含む、止血用被覆材の製造方法。
【請求項2】
前記ケイ素系化合物はシリカゲル、ホワイトカーボン、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸プロピル、オルトケイ酸イソプロピル及びオルトケイ酸ブチルのいずれか一種または数種を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウム系化合物は、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミゾル、アルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムセカンダリーブトキシドのいずれか一種または数種を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥は、冷凍乾燥であることが好ましく、前記冷凍乾燥は、サンプルを-20℃~-80℃で12時間~24時間冷凍させた後、24時間~48時間真空乾燥することが好ましい、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化処理とは、真空、アルゴンガス或は窒素ガスの保護の下、材料を室温から550℃~600℃まで昇温することであり、そのうち、100℃~300℃区間の昇温速度は5℃/分~10℃/分であり、300℃~500℃区間の昇温速度は1℃/分~5℃/分であり、500℃~600℃区間の昇温速度は30℃/分であることが好ましい、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却とは、昇温終了後のサンプルを雰囲気炉或は活性化炉の中で室温までゆっくり冷却させることである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
複合材料をバイオセルロース繊維、キトサン水溶液と混合させる際、キトサン、ゼオライトモレキュラーシーブ、バイオセルロース系炭素繊維とバイオセルロース繊維の混合質量比が1:(0.01~0.1):(0.01:0.1):(0.01~0.1)であり、より好ましい比率が1:(0.04~0.06):(0.04~0.06):(0.3~0.6)である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記キトサン水溶液には、キトサンの質量濃度は3wt%~10wt%であり、前記キトサンの分子量は10万~35万である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
バイオセルロース繊維、ナノ炭素繊維及びゼオライト粒子が均一に分布されてなるキトサンを、多孔質材料の基材として、
該止血用被覆材の材料の孔隙率が80%~95%であり、孔径が50μm~500μmであり、吸水率が材料自重の200倍~1000倍であり、引張力学的強度が0.5GPa~4GPaである、バイオセルロース繊維製の止血用被覆材。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法で製造される、請求項に記載の止血用被覆材。
【請求項11】
止血及び/又は傷口の癒合を促進する効果を有する薬物の製造における、請求項9または10に記載の止血用被覆材の応用。
【国際調査報告】