(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】複合構造物を付加的に製造するためのシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20220728BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220728BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220728BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20220728BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220728BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/106
B29C64/264
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567985
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020031150
(87)【国際公開番号】W WO2020242721
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519444409
【氏名又は名称】コンティニュアス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブロディ,マーカス レイ ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】カミングス,カイル フランク
(72)【発明者】
【氏名】スタルク,アンドルー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ストランバーグ,ネイサン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャーナー,ブロック アダム
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,スティーブン タイラー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL74
4F213WL76
(57)【要約】
構造物(12)の製造に使用するための付加製造システム(10)が開示される。付加製造システムは、支持体(14)と、材料(R+M)を吐出するように構成され、支持体に動作可能に接続され、かつ材料吐出中に垂直移動方向(34)に支持体によって移動可能であるプリントヘッド(16)とを含み得る。プリントヘッドは、垂直移動方向に対して吐出材料の追跡側に配置され、かつ材料を圧縮し、ツールセンターポイント(TCP)で材料を硬化エネルギーにさらすように構成されているモジュール(22)を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システム(10)であって、
支持体(14)と、
材料(R+M)を吐出するように構成され、前記支持体に動作可能に接続され、かつ材料吐出中に垂直進行方向(34)に前記支持体によって可動なプリントヘッド(16)と、を備え、
前記プリントヘッドは、前記垂直移動方向に対して吐出材料の追跡側に配置され、前記材料を圧縮し、ツール中心点(TCP)において前記材料を硬化エネルギーにさらすように構成されているモジュール(22)を含む、付加製造システム(10)。
【請求項2】
圧縮中に前記材料上を転がるように構成された外側カバー(174)と、
前記硬化エネルギーを前記外側カバーを通して半径方向外向きに向けるように構成されたソース(168)とを含む、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項3】
前記モジュールは、前記外側カバーが取り付けられているシャフト(164)を含み、
前記ソースは、前記硬化エネルギーを軸方向に前記シャフトに向け、次に前記シャフトにおける通路(177)を介して前記外側カバーを通して半径方向外向きに向けるように構成されている、請求項2に記載の付加製造システム。
【請求項4】
前記シャフトの内側に取り付けられ、軸方向に向けられた前記硬化エネルギーを半径方向外向きに前記シャフトに向け直すように構成された光学素子(176)をさらに含む、請求項3に記載の付加製造システム。
【請求項5】
前記シャフトと前記外側カバーとの間に配置されたスロット付き分配器(170)をさらに含む、請求項3に記載の付加製造システム。
【請求項6】
前記スロット付き分配器は、複数の軸方向に向けられたスロット(178)を含み、
前記モジュールは、前記複数の軸方向に配向されたスロットの各々内に配置された前記硬化エネルギーに対して少なくとも部分的に透明であるスペーサー(180)をさらに含む、請求項5記載の付加製造システム。
【請求項7】
前記スロット付き分配器と前記外側カバーとの間に配置された内側カバー(172)をさらに含み、前記内側カバーは、前記外側カバーよりも柔軟である、請求項5に記載の付加製造システム。
【請求項8】
前記内側カバーおよび前記外側カバーの各々が少なくとも部分的に透明である、請求項7に記載の付加製造システム。
【請求項9】
前記モジュールが、少なくとも1つのベアリングを介して前記プリントヘッドの残りの部分に回転接続されている、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項10】
前記モジュールの軸と整列し、前記硬化エネルギーを前記モジュールの弧状セグメントに集束させるように構成された少なくとも1つの仕切り(184)をさらに含む、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項11】
前記モジュールを通って半径方向外向きに延在し、前記硬化エネルギーを前記モジュールの軸方向に集束させるように構成された少なくとも1つの仕切り(186)をさらに含む、請求項10に記載の付加製造システム。
【請求項12】
前記モジュールが、
圧縮中に前記材料上を転がるように構成された外側カバー(174)と、
前記外側カバーを越えて半径方向外向きに延在するアーム(190)と、
前記アームの遠位端に接続され、前記モジュールの軸方向に延びるバー(194)と、
前記アームに接続され、前記バーを前記外側カバーに対して半径方向内向きに選択的に引っ張るように構成されたアクチュエータ(196)とを含む、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項13】
前記バーに動作可能に接続された切断デバイス(192)をさらに含む、請求項12に記載の付加製造システム。
【請求項14】
構造物(12)を付加的に製造する方法であって、
プリントヘッド(16)の出口(30)を通じて母材で湿った連続補強材(R+M)を吐出することと、
吐出後、モジュール(22)を前記母材で湿った連続補強材に押し付けて、前記母材で湿った連続補強材を圧縮することと、
硬化エネルギーを前記モジュールを通して半径方向外向きに、圧縮されている前記母材で湿った連続補強材に向けることと、を含む、構造物(12)を付加的に製造する方法。
【請求項15】
前記硬化エネルギーを前記プリントヘッドのツールセンターポイント(TCP)に軸方向および半径方向に集束させることのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年5月28日および2020年2月25日にそれぞれ出願された62/853,610および62/981,515に基づき、かつそれらの優先権の利益を主張し、これらすべての内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本願はまた、2019年7月18日に出願された米国非仮特許出願第16/516,113号の一部継続出願であり、その内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、製造システム、より具体的には、複合構造物を付加的に製造するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
連続繊維3Dプリンティング(別名CF3D(登録商標))は、可動のプリントヘッドから吐出する母材内に埋め込まれた連続繊維の使用を含む。母材は、従来の熱可塑性プラスチック、粉末金属、液体樹脂(例えば、UV硬化性および/または二液型樹脂)、またはこれらおよび他の既知の母材のいずれかの組み合わせであり得る。プリントヘッドから放出される際に、ヘッドに取り付けられた硬化エンハンサ(例えば、UV光、超音波エミッタ、熱源、触媒供給など)が活性化され、母材の硬化が開始および/または完了する。この硬化は、ほぼ即座に起きるため、支持されていない構造物が自由空間で製造されることを可能にする。繊維、特に連続繊維が構造物内に埋め込まれている場合、構造物の強度は、母材に依存する強度を超えて倍増し得る。この技術の例は、2016年12月6日にTylerに発行された米国特許第9,511,543号(「’543特許」)に開示されている。
【0004】
CF3D(登録商標)は、連続繊維補強材を利用しない製造プロセスと比較して、増加された強度を提供するが、既存のシステムの構造および/または動作に改善をもたらすことができる。例えば、出願人は、補強材の圧縮および硬化をより細かく制御することにより、補強材の配置、強度、および精度を改善することができることを発見した。開示された付加製造システムは、これらの改善を提供するため、および/または従来技術の他の問題に対処するために独自に構成されている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、付加製造システムに関する。付加製造システムは、支持体と、材料を吐出するように構成され、支持体に動作可能に接続され、かつ材料吐出中に垂直移動方向に支持体によって移動可能であるプリントヘッドとを含み得る。プリントヘッドは、垂直移動方向に対して吐出材料の追跡側に配置され、かつ材料を圧縮し、ツールの中心点で材料を硬化エネルギーにさらすように構成されたモジュールを含み得る。
【0006】
別の態様では、本開示は、別の付加製造システムに関する。この付加製造システムは、支持体と、材料を吐出するように構成され、支持体に動作可能に接続され、かつ材料吐出中に垂直移動方向に支持体によって移動可能であるプリントヘッドとを含み得る。プリントヘッドは、垂直移動方向に対して吐出材料の追跡側に配置され、かつ材料上を転がるように構成された外側カバーと、硬化エネルギーを外側カバーを通して半径方向外向きに向けるように構成されたソースとを含み得る。
【0007】
さらに別の態様では、本開示は、構造物を付加的に製造する方法に関する。この方法は、プリントヘッドの出口を通して母材で湿った連続補強材を吐出すること、および吐出後に母材で湿った連続補強材にモジュールを押し付けて母材で湿った連続補強材を圧縮することを含み得る。この方法はまた、硬化エネルギーをモジュールを通して半径方向外向きに、圧縮されている母材で湿った連続補強材に向けることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】開示された例示的な付加製造システムの概略図である。
【
図2】
図2、
図3、
図4はそれぞれ、
図1のシステムの例示的な開示部分の等角図、図解図、および断面図である。
【
図3】
図2、
図3、
図4はそれぞれ、
図1のシステムの例示的な開示部分の等角図、図解図、および断面図である。
【
図4】
図2、
図3、
図4はそれぞれ、
図1のシステムの例示的な開示部分の等角図、図解図、および断面図である。
【
図5】
図1のシステムの他の例示的な開示部分の断面図である。
【
図6】
図1のシステムの他の例示的な開示部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、任意の所望の形状を有する複合構造物12を製造するために使用され得る例示的なシステム10を示している。システム10は、支持体14および積層ヘッド(「ヘッド」)16を含み得る。ヘッド16は、支持体14に結合され、支持体14によって移動され得る。
図1の開示された実施形態では、支持体14は、構造物12の製造中にヘッド16を複数の方向に移動することができるロボットアームである。代替的に、支持体14は、構造物12の製造中にヘッド16を複数の方向に移動することもできるガントリー(例えば、オーバーヘッドブリッジまたはシングルポストガントリー)またはハイブリッドガントリー/アームを具体化することができる。支持体14は、構造物12に対して6軸移動が可能であるとして示されているが、支持体14は、異なる方式で(例えば、より多いまたはより少ない数の軸に沿ってまたはその周りで)ヘッド16を移動させることが可能であり得ると考えられる。構造物12は、もう1つの移動軸と関連付けられ、支持体14とは独立して、および/またはそれと協調して移動するように構成することができることも考えられる。いくつかの実施形態では、ドライブは、ヘッド16を支持体14に機械的に結合し得、かつヘッド16の一部を移動する、および/または電力もしくは材料をヘッド16に供給するために協調する構成要素を含み得る。
【0010】
ヘッド16は、母材(Mとして示される)を受け取るか、さもなければ収容するように構成され得る。母材は、硬化可能な任意のタイプまたは組み合わせの材料(例えば、ゼロ揮発性有機化合物樹脂などの液体樹脂、粉末金属など)を含み得る。例示的な樹脂には、熱硬化性樹脂、一液型または多液型エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、カチオン性エポキシ、アクリル化エポキシ、ウレタン、エステル、熱可塑性樹脂、フォトポリマー、ポリエポキシド、チオール、アルケン、チオール-エンなどが含まれる。一実施形態では、ヘッド16内側の母材は、例えば、対応する導管(図示せず)を介してヘッド16に流体的に接続された外部デバイス(例えば、押出機、ポンプなど-図示せず)によって(例えば、正および/または負に)加圧され得る。しかしながら、別の実施形態では、圧力は、同様のタイプのデバイスによってヘッド16の完全に内側に生成され得る。さらに他の実施形態では、母材は、ヘッド16内に、および/またはヘッド16を通して重力供給され得る。例えば、母材は、ヘッド16に供給され、1つ以上の連続補強材(Rとして示される)と一緒に、ヘッド16から押し出されるかまたは引き出され得る。場合によって、ヘッド16内側の母材は、未熟な硬化を防止するために、またはそうでなければ吐出後に所望の硬化速度を得るために、冷たくおよび/または暗くして保つ必要があり得る。他の例では、同様の理由で、母材を保温および/または照明する必要があり得る。どちらの状況でも、ヘッド16は、これらの必要性を提供するように特別に構成され得る(例えば、断熱、温度制御、シールドなど)。
【0011】
母材は、任意の数の連続補強材(例えば、別個の繊維、トウ、ロービング、ソックス、および/または連続材料のシート)を少なくとも部分的に被覆するために使用し得、補強材と一緒に、複合構造物12の一部(例えば、壁)を構成し得る。補強材は、ヘッド16内に保管され得るか、そうでなければヘッド16を通過し得る。複数の補強材が同時に使用される場合、補強材は同じ材料組成であり、同じサイジングおよび断面形状(例えば、円形、正方形、長方形など)、または異なるサイジングおよび/または断面形状を持つ材料組成を有し得る。補強材には、例えば、炭素繊維、植物繊維、木質繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、プラスチック繊維、金属繊維、光繊維(例えば、チューブ)などが含まれ得る。「補強材」という用語は、ヘッド16から吐出される母材に少なくとも部分的に包まれている構造的および非構造的(例えば、機能的)タイプの連続材料の両方を包含することを意味することに留意されたい。
【0012】
補強材がヘッド16の内側にある間、および補強材がヘッド16に渡されている間、および/または補強材がヘッド16から吐出されている間、補強材は、少なくとも部分的に母材で被覆され得る。母材、乾燥した(例えば、含浸されていない)補強材、および/またはすでに母材に露出されている補強材(例えば、事前に含浸された補強材)は、当業者に明らかな任意の方式でヘッド16に伝送され得る。いくつかの実施形態では、充填材料(例えば、切断された繊維、ナノ粒子またはチューブなど)および/または添加剤(例えば、熱開始剤、UV開始剤など)を、連続補強材を母材が被覆する前および/または後に、母材と混合することができる。
【0013】
1つ以上の硬化エンハンサ(例えば、UV光、超音波エミッタ、レーザー、ヒーター、触媒ディスペンサなど)18は、ヘッド16に近接して(例えば、内部、上、および/または隣接して)取り付けられ、ヘッド16から吐出される場合に母材の硬化速度および/または品質を高めるように構成され得る。硬化エンハンサ18は、構造物12の材料の吐出および形成中に、構造物12を部分的にエネルギー(例えば、UV光、電磁放射、振動、熱、化学触媒など)に選択的に曝露するように制御され得る。エネルギーは、母材内で化学反応を引き起こし、化学反応の速度を上げ、母材を焼結し、母材を硬化し、母材を固化し、母材を重合し、またはそうでなければ、ヘッド16から吐出される場合に母材を硬化させ得る。硬化エンハンサ18によって生成されるエネルギーの量は、構造物12がヘッド16から所定の長さを超えて軸方向に成長する前に、母材を硬化させるのに十分であり得る。一実施形態では、構造物12は、軸方向成長の長さが母材被覆された補強材の外径に等しくなる前に、少なくとも部分的に(例えば、完全に)硬化される。
【0014】
母材および/または補強材は、任意の数の異なる動作モードを介してヘッド16から一緒に吐出され得る。第1の例示的な動作モードでは、ヘッド16が支持体14によって移動されて構造物12の特徴部を作り出す場合に、母材および/または補強材がヘッド16から押し出される(例えば、圧力および/または機械的力の下で押し出される)。第2の例示的な動作モードでは、少なくとも補強材がヘッド16から引っ張られ、それによって、吐出中に補強材に引張応力が生じる。この第2の動作モードでは、母材は補強材に付着し、それによって補強材とともにヘッド16から引っ張られ、および/または母材は引っ張られた補強材とともに圧力下でヘッド16から吐出され得る。第2の動作モードでは、補強材がヘッド16から引っ張られており、その結果、補強材に生じる張力は、構造物12の強度を増加させ得(例えば、補強材を整列させる、座屈を抑制する、補強材に均等に荷重をかけるなど)、母材の硬化後、支持されていない構造物12のより長い長さをより直線的な軌道にすることも可能にする。すなわち、母材の硬化後に残っている補強材の張力は、重力に逆らって作用し(例えば、重力に対抗するモーメントを生成することによって直接的および/または間接的に)、構造物12の支持を提供し得る。
【0015】
補強材は、ヘッド16が支持体14によってアンカーポイント(例えば、プリントベッド、構造物12の既存の表面、固定具など)から離れるように動かされた結果として、ヘッド16から引っ張られてもよい。例えば、構造物形成の開始時に、ある長さの母材含浸補強材が、ヘッド16から引っ張られ、および/または押し出され、アンカーポイント上に積層され、少なくとも部分的に硬化されて、吐出された材料がアンカーポイントに付着する(あるいは、結合する)。その後、ヘッド16をアンカーポイントから遠ざけることができ、相対的な動きにより、補強材がヘッド16から引っ張られることができる。以下でより詳細に説明されるように、ヘッド16を通る補強材の動きは、必要に応じて、1つ以上の内部供給機構を介して選択的に支援され得る。しかしながら、ヘッド16からの補強材の吐出速度は、主に、ヘッド16とアンカーポイントとの間の相対的な動きの結果である可能性があり、そのため、補強材内に張力が生じる。上で考察されたように、アンカーポイントは、ヘッド16がアンカーポイントから離れて移動される代わりに、またはそれに加えて、ヘッド16から離れて移動され得る。
【0016】
ヘッド16は、とりわけ、出口22および出口22の上流に位置する母材リザーバ24を含み得る。一例では、出口22は、ほぼ円形、管状、または長方形の断面を有する複合材料を吐出するように構成された単一チャネルの出口である。しかしながら、ヘッド16の構成は、出口22が、同じまたは異なる形状(例えば、平坦またはシート状の断面、マルチトラック断面など)を有する複合材料の複数チャネルを吐出する別の出口に交換されることを可能にし得る。繊維、チューブ、および/または他の補強材は、母材リザーバ24を通過し得(例えば、リザーバ24の内側に位置する1つ以上の内部湿潤機構26を通って)、吐出前に、母材によって湿潤(例えば、少なくとも部分的に被覆、包囲および/または完全に飽和)され得る。
【0017】
出口22は、異なる形態をとることができる。一例では、ガイドまたはノズル30が湿潤機構26の下流に位置し、コンパクタ32はノズル30を追跡する(例えば、矢印34によって表される、材料吐出中のヘッド16の垂直進行方向に対して)。ノズル30またはコンパクタ32のいずれかが、ヘッド16のツールセンターポイント(TCP)として機能し得、これにより、硬化エンハンサ18によるエネルギーにさらされた場合、硬化前および/または硬化中、母材によって湿潤された補強材を所望の位置に取り付けると考えられる。いくつかの実施形態では、ノズル30を省略し得ることも考えられる。最後に、ヘッド16のTCPは、必ずしもノズル30またはコンパクタ32と関連付けられていなくてもよく、代わりに、これらの場所とは別の硬化エネルギー曝露の場所であり得ると考えられる。TCPは、一部の用途において場所を切り替え得る。
【0018】
1つ以上のコントローラ28が提供され、支持体14およびヘッド16と通信可能に結合され得る。各コントローラ28は、システム10の動作を制御するようにプログラムされ、および/またはそうでなければ構成された単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを具体化することができる。コントローラ28は、1つ以上の汎用または特殊目的のプロセッサまたはマイクロプロセッサを含み得る。コントローラ28は、例えば、設計限界、性能特性、動作命令、ツールパス、およびシステム10の各構成要素の対応するパラメータのようなデータを格納するためのメモリをさらに含み得るか、または関連付けられ得る。電源回路、信号調整回路、ソレノイドドライバ回路、通信回路、および他の適切な回路を含む、他の様々な既知の回路をコントローラ28と関連付けることができる。さらに、コントローラ28は、有線および/または無線伝送を介してシステム10の他の構成要素と通信することができ得る。
【0019】
1つ以上のマップは、コントローラ28のメモリ内に格納され、構造物12の製造中に使用され得る。これらのマップの各々には、ルックアップテーブル、グラフ、および/または方程式の形式でデータの集合が含まれ得る。開示された実施形態では、マップがコントローラ28によって使用され得、構造部12の所望の形状(例えば、サイズ、形状、材料組成、性能パラメータ、および/または輪郭)を生成するために必要なヘッド16の動きを決定し、かつ硬化エンハンサ18および/または動きと協調して他の関連する構成要素の動作を調整する。
【0020】
図2、3、および4に示されるように、硬化エンハンサ18およびコンパクタ32は、硬化および圧縮機能の両方を実行することができるモジュール54に統合され得る。これらの図に示されるように、モジュール54は、とりわけ、離間されたベアリング166を介してヘッド16の残りの部分に回転的に取り付けられるシャフト164、硬化エネルギー(例えば、光)をシャフト164内へ向けるように構成されたソース168、シャフト164の周りに配置された分配器170、および吐出材料に圧縮力を提供する、分配器170の上に取り付けられた1つ以上のカバー(例えば、内側コンプライアントカバー172および/または外側保護カバー174)を含む、複数の構成要素の自己完結型アセンブリであり得る。シャフト164に軸方向に向けられたエネルギーは、シャフト164の内端に位置する176光学素子(例えば、バッフル、レンズ、ミラー、研磨されたボアまたは端壁など)、およびシャフト164内に形成された1つ以上の半径方向通路177(
図4にのみ示されている)によって、分配され、集束され、および/または半径方向外向きに方向転換され得る。エネルギーは、分配器170の1つ以上の軸方向に延びる円周方向スロット178を通過し得、次に、エネルギー(例えば、約405nmの波長など、約350~450nmの波長の光エネルギー)に対して少なくとも部分的に透明(例えば、約70~100%透明)であり得る関連するカバーを通過し得る。いくつかの実施形態では、スロット178のうちの1つ以上には、カバーを支持するのを助ける透明なスペーサー180を取り付け得る。いくつかの実施形態では、スペーサー180は、それ自体がソース168からのエネルギーを集束、増幅、分配、および/または向けるために機能する光学素子であり得る。
【0021】
いくつかの用途では、モジュール54(例えば、カバー174の外面)は、ヘッド16のTCPを形成し得る。これらの用途では、ヘッド16はノズルレスであり得る。したがって、ヘッド16のTCPは、カバー174の外面と構造物12の活性表面(例えば、モジュール54が接液補強材を表面に押し付ける)との間の、軸方向に配向された接触線に対応し得る。接触線は、例えば、プリント面に対しておよび/または進行方向に対して(例えば、空きスペースにプリントする場合)ヘッド16が支持体14(
図1を参照)によって傾けられると、シフトし得ることに留意されたい。
【0022】
一実施形態では、外側カバー174は、低摩擦材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン-PTFE、フッ素化エチレンプロピレン-FEPなど)から製造され得る。一例では、FEPは、PTFEと比較した場合にその透明性が高いため、外側カバー174に利用し得る。
【0023】
内部カバー172の伸展性は、モジュール54の位置決めにおいて高い精度を必要とせずに、補強材に対する適切な係合および圧縮力を可能にし得る。内側カバー172の伸展性はまた、構造物12との係合領域に平坦なスポットをもたらし得る(
図6を参照)。この平坦なスポットは、母材で湿った補強材がモジュール54から外れ、構造物12のみに接着するのを助け、また、補強材が構造物12の下にある層に対してより平らになるのを助け得る。さらに、内側カバー172の伸展性は、切断デバイス(
図5および6を参照して以下でより詳細に説明される)がモジュール54内にある距離だけ押し込まれることを可能にし、それによって切断性能を改善し得る。外側カバー174は、切断デバイスとの係合により定期的に交換する必要があり得る。一実施形態では、内側カバー172は、約20~50Aショア(例えば、約40Aショア)の硬度を有し得、外側カバー174は、切断中の寿命を延ばすためにより高い硬度(例えば、内側172カバーの硬度より少なくとも5~10%大きい)を有し得る。外側カバー174の厚さは、内側カバー172の厚さよりも薄くてもよく、その結果、内側カバー172の伸展性は、より硬い外側カバー174を通して依然として有効であり得る。例えば、外側カバー174は、内側カバー172の厚さの約1/5~1/25であり得る。いくつかの実施形態では、外側カバー174は、内側カバー172よりも低い摩擦を有し得、モジュール54への母材で湿った補強材の望ましくない付着を防止するのを助ける。
【0024】
エネルギーはモジュール54を介して母材で湿った補強材に向けられ得るため、TCPにおける硬化(例えば、直前、真上、および/または直後)が可能であり得る。TCP位置から離れる補強材の、あったとしても僅かな動きが起こる前に、補強材を留めるのに十分な硬化が起こり得ることが考えられる。これにより、補強材の配置精度が向上し得る。母材は、外面でのみ硬化され得る(例えば、所望の形状を留めるおよび/または維持するのに十分である)、または母材は、(あらゆる外部環境暴露に加えてまたはそれなしに)ソース168からのエネルギーのみへの曝露によって完全硬化され得ることが考えられる。前者の場合、構造物12の完成後に追加のエネルギー曝露(例えば、オーブンベーキング、オートクレーブ加熱など)が必要となり得る。
【0025】
一実施形態では、分配器170の形状は、ソース168からのエネルギーをTCPのみに集中させるように(すなわち、半径方向通路177の位置および向きに関連して)選択し得る。例えば、形状は、ソース168からのエネルギーが、TCPに最も近く(例えば、TCPに)位置する1つのスロット178のみを通過することを可能にし、一方、エネルギーが、所与の時間にTCPからさらに離れた他のスロット178を通過することを禁止し得る。より狭いスロット178を有するより厚い壁の分配器は、より焦点を合わせた曝露領域を生成し得る。開示された例では、スロット178は、分配器170上を通過する補強材の幅の約0~2倍の軸方向長さを有し得る。
【0026】
図5および
図6は、とりわけ、硬化および圧縮機能を統合した別のモジュール200を示している。
図2-4のモジュール54と同様に、
図5および6のモジュール200は、ベアリング166を介してヘッド16の残りの部分に回転接続されたシャフト164、および硬化エネルギー(例えば、UV光、レーザー、または他の硬化エネルギー源202からのエネルギー)を軸方向にシャフト164に向けるソース168を含む。エネルギーは、内側および外側カバー172、174を通って半径方向外向きに、シャフト164および通路177の内端に配置された光学素子176を介してヘッド16のTCPに向け直され得る。一実施形態では、TCPは、分配器170の軸方向中心に配置されている(
図5に示されている)。しかしながら、必要に応じて、TCPを分配器170の端部の近くに配置することができると考えられる。
【0027】
モジュール54と同様に、モジュール200は、内側および外側カバー172、174を半径方向外向きに通過するときにエネルギー散逸および損失を抑制するように構成され得る。しかしながら、モジュール200は、分配器170、スロット178、およびスペーサー180を使用せずにそうし得る。代わりに、モジュール200の内側および/または外側カバー172、174は、1つ以上の仕切り184を介してセグメント化され得る。仕切り184は、ほぼ平坦であり、互いに規則的な間隔で刻まれ、圧縮デバイス150の軸を通して配向され得る。仕切り184は、外側および内側カバー174、172を通って半径方向内向きに延在し得るが、シャフト164の手前またはシャフト164において終端する。仕切り184は、ソース168からTCPに向かうエネルギーを遮断または反射するように構成された材料から製造されるか、そうでなければコーティング、着色、または注入され得る。任意の数の仕切り184を利用して、必要な数の分離されたエネルギー伝達チャネル(例えば、隣接する仕切り184間の弧状セグメント)を作成し得る。例えば、いくつかの実施形態では、仕切り184に加えて、シャフト164の軸に概ね直交するか、または斜めの角度に向けられた平面にある1つ以上の仕切り186を使用して、ソース168からのエネルギーをさらに集束させ得る(例えば、エネルギーを軸方向にTCPに向け得る)。いくつかの用途では、仕切り184および/または186間の間隔は、硬化経路パラメータを選択的に変化させ、焦点を合わせるために、材料吐出中に調整可能であり得る。
【0028】
図6はまた、モジュール200が追加的に切断機能を有することを示している。例えば、いくつかの実施形態では、切断機構188をモジュール200に組み込み得る。切断機構188は、プリンティング操作の間および/または後に、補強材をクランプ、切断、および/または供給するために協調する構成要素を含み得る。これらの構成要素は、とりわけ、シャフト164に対して対向する軸方向端部で枢動可能に取り付けられるバー190、バー190の外側レール194に取り付けられたブレード192、および外側レール194を半径方向に選択的に伸長および収縮させるように構成された1つ以上のアクチュエータ196(例えば、シャフト164の各々の端部におけるリニアアクチュエータ)を含み得る。
【0029】
操作中、補強材は、ノズル30を通って吐出され、モジュール200の外側カバー174の周りに少なくとも部分的に巻き付けられて、TCPのニップポイントに到達し得る。硬化エネルギーは、軸方向に圧縮モジュール200に流れ、次に半径方向外側に向け直されて、TCPにおいて補強材をコーティングする母材を硬化させ得る。補強材を切断することが望まれる場合(例えば、プリンティングパスの終わりに)、アクチュエータ196は、コントローラ28(
図1を参照)によって通電され、バー190を半径方向内側に引っ込めさせ得る。この動作により、補強材が外側レール194と外側カバー174との間に挟まれ、それにより、補強材が
図6に示される位置にクランプされ得る。バー190の収縮およびクランプ中に、ブレード192は、補強材を通して、外側カバー174に対して押し付けられ、それによって、補強材を切断し得る。
【0030】
バー190は、次のプリンティングパスの開始中にクランプ位置に留まり得、モジュール200の外側カバー174との係合により、それとともに回転され得る。この回転は、補強材をヘッド16から引き出し(例えば、プリンティングの準備のためにノズル30を通して)、外側レール194がTCPに到達するまで継続するように機能し得、その時点で、バー190が押されおよび/または解放されて半径方向外向きに戻ることができ、レール194を回転させてノズル30の出口に戻し得る。レール194の戻りは、必要に応じて、別のアクチュエータ(図示せず)および/またはばね198によって促進され得ると考えられる。この構成では、補強材のクランプおよび切断が提供されるだけでなく、切断された補強材のTCPへの誘導も容易になり得る。
【0031】
産業上の利用可能性
開示されたシステムは、任意の所望の断面形状および長さを有する複合構造物を製造するために使用され得る。複合構造物は、同じまたは異なるタイプで、同じまたは異なる直径の任意の数の異なる繊維、および同じまたは異なる構成の任意の数の異なる母材を含み得る。次に、システム10の動作について詳細に説明する。
【0032】
製造イベントの開始時に、所望の構造物12に関する情報をシステム10にロードすることができる(例えば、支持体14および/またはヘッド16の動作の調整を担当するコントローラ28に)。この情報は、とりわけ、サイズ(例えば、直径、壁の厚さ、長さなど)、輪郭(例えば、軌道、表面法線など)、表面の特徴(例えば、隆起のサイズ、位置、厚さ、長さ、フランジのサイズ、位置、厚さ、長さなど)、接続形状(例えば、カップリング、ティー、スプライスなどの位置とサイズ)、補強材の選択、母材の選択、吐出位置、切断位置、硬化仕様、圧縮仕様などを含む。この情報は、必要に応じて、代替的または追加的に、異なる時間に、および/または製造イベント中に継続的にシステム10にロードされ得ることに留意されたい。構成要素情報に基づいて、1つ以上の異なる補強材および/または母材材料が、システム10に装備および/または継続的に供給され得る。
【0033】
補強材を装備するために、個々の繊維、トウ、および/またはリボンは、母材リザーバ24および出口22を通過することができる(例えば、ノズル30の特徴物を介して、およびコンパクタ32の下で)。いくつかの実施形態では、補強材はまた、引っ張り機(図示せず)および/または取り付け固定具(例えば、アンカーポイント)に接続する必要があり得る。母材材料の設置は、充填ヘッド16(例えば、リザーバ24の湿潤機構26)および/または押出機(図示せず)のヘッド16への結合を含み得る。
【0034】
次に、構成要素情報が、システム10の動作を制御するために、使用され得る。例えば、その場で湿潤された補強材は、支持体14が選択的に移動する場合に(例えば、支持体14の既知の運動学および/または構造物12の既知の形状に基づいて)、ヘッド16の出口22から引っ張られ、および/または押し出され得るので、構造物12が、所望に応じて製造される。
【0035】
支持体14、硬化エンハンサ18、コンパクタ32、モジュール54および/または200、および/またはシステム10の他の構成要素の動作パラメータは、構造物12の所望の結合、強度、張力、形状、および他の特性を提供するために、材料吐出中にリアルタイムで調整され得る。構造物12が所望の長さに成長すると、構造物12はシステム10から切り離され得る。
【0036】
開示されたシステムに様々な修正および変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。他の実施形態は、開示されたシステムの明細および実施を考慮することから当業者には明らかであろう。例えば、システム10の構成要素(例えば、分配器170、カバー172および174、スペーサー180、仕切り184および186など)は、別個の構成要素として説明および示されているが、システム10の2つ以上の構成要素を、あるいは、必要に応じて統合することもできると考えられる。本明細書および実施例は単なる例示と見なされ、真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって示されることが意図されている。
【国際調査報告】