IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オールボー・ウニヴェルシテートの特許一覧

特表2022-534879振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定
<>
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図1
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図2
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図3a
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図3b
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図4a
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図4b
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図5
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図6
  • 特表-振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】振動性心電図における心肺持久力のマルチパラメータ推定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20220728BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20220728BHJP
   A61B 5/083 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/0245 100Z
A61B5/083
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569208
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2020065601
(87)【国際公開番号】W WO2020245340
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】19178424.8
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512277976
【氏名又は名称】オールボー・ウニヴェルシテート
【氏名又は名称原語表記】AALBORG UNIVERSITET
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、サミュエル エミール
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AC20
4C017BC21
4C038SS08
4C038SV01
4C038SX09
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
(57)【要約】
提案される手法は、心肺持久力の定量化に関する。当該手法は、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定するように構成される加速度計によって記録される振動性心電図(SCG)を取得するステップを含む。振動性心電図(SCG)における第1の信号特徴(AC)の特性が判定され、第1の信号特徴(AC)は、心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に対応する。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値が、第1の信号特徴(AC)の特性に基づいて判定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肺持久力を定量化する方法(100)であって、
心筋の運動によって引き起こされる、人(18)の胸壁の加速度および振動を測定するように構成される加速度計(14)によって記録される振動性心電図(SCG)を取得するステップ(102)と、
前記振動性心電図(SCG)において、第1の信号特徴(AC)であって、前記第1の信号特徴(AC)が心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に対応する、第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)と
を含み、
前記第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記第1の信号特徴(AC)の周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップ(114)と、
前記第1の信号特徴(AC)の形態計測値(ACMorphology)を判定するステップ(114)と
を含み、
前記周波数計測値(ACFrequency)および前記形態計測値(ACMorphology)は、前記第1の信号特徴(AC)の特性の一部を形成し、
前記方法は、
前記第1の信号特徴(AC)の特性に基づいて、前記第1の信号特徴(AC)の特性を訓練済みの第1の機械学習モデルに適用することで、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記振動性心電図(SCG)の複数の拡張期セグメントを判定するステップ(108)と、
ノイズの多い拡張期セグメントを廃棄するステップ(110)と
を含み、
廃棄されない拡張期セグメントは、前記第1の信号特徴(AC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記第1の信号特徴(AC)の1つまたは複数の基準点を識別するステップ(112)
を含み、
前記心肺持久力を示す計測値はさらに、前記1つまたは複数の基準点に基づいて判定され、
前記基準点は、前記第1の信号特徴(AC)の極大値(ACmax)、および/または、前記極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記第1の信号特徴(AC)の、極大値(ACmax)と、前記極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)との間の振幅差(ACPeakToPeak)を判定するステップ(114)
を含み、
前記心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)はさらに、前記振幅差(ACPeakToPeak)に基づく、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記第1の信号特徴(AC)の、極大値(ACmax)と、前記極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)との間の第1の時間間隔(ACTimePeakToPeak)を判定するステップ(114)と、
前記第1の時間間隔(ACTimePeakToPeak)に基づいて、前記心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)と
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記形態計測値(ACMorphology)を判定するステップ(114)は、
前記振動性心電図(SCG)の第1のウィンドウ(34)であって、前記第1のウィンドウ(34)が前記第1の信号特徴(AC)を含むか、または包含する、前記振動性心電図(SCG)の第1のウィンドウ(34)を判定するステップ(202,202’)と、
前記第1のウィンドウ(34)の時間領域に基づいて、前記形態計測値(ACMorphology)を判定するステップ(210,210’)と
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のウィンドウ(34)は、200ms~500ms、250ms~450ms、または300ms~400msの範囲の幅を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップ(104)は、
前記振動性心電図(SCG)の第2のウィンドウ(34)であって、前記第2のウィンドウ(34)が前記第1の信号特徴(AC)を含むか、または包含する、前記振動性心電図(SCG)の第2のウィンドウ(34)を判定するステップ(302,302’)と、
前記第2のウィンドウ(34)の周波数領域に基づいて、前記周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップ(314,314’)と
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
心拍変動(HRV)を判定するステップ(114)をさらに含み、
前記心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)はさらに、前記心拍変動(HRV)に基づく、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記振動性心電図(SCG)において、第2の信号特徴(MC+AC)の特性であって、前記第2の信号特徴(MC+AC)が前記第1の信号特徴(AC)と異なるか、または互いに素である、第2の信号特徴(MC+AC)の特性を判定するステップ(104)をさらに含み、
前記心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)はさらに、前記第2の信号特徴(MC+AC)の特性に基づき、
前記第2の信号特徴(MC+AC)は、心周期の僧帽弁閉鎖(MC)および/または大動脈弁開口(AO)に対応する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の信号特徴(MC+AC)の特性を判定するステップ(104)は、
前記僧帽弁閉鎖(MC)のゼロ交差と、前記僧帽弁閉鎖(MC)の後の前記大動脈弁開口(AO)の第1の極大値(A0max)との間の第2の時間間隔(SysTimeMCToAO)を判定するステップ(114)
を含み、
前記心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップ(106)はさらに、前記第2の時間間隔(SysTimeMCToAO)を判定するステップ(114)に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の機械学習モデルは、前記第1の信号特徴(AC)の特性と動作的に同様な、信号特徴の特性に対して訓練される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
心肺持久力を定量化し、または前記心肺持久力の指標を判定するシステム(12)であって、
(A)人(18)の胸部に配置されるように構成される加速度計(14)であって、心筋の運動によって引き起こされる、前記人(18)の胸壁の加速度および振動を測定するための、加速度計(14)と、
(B)前記加速度計(14)に動作可能に接続されるプロセッサ(20)であって、前記プロセッサ(20)が、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法のステップのいずれかを行うように構成される、プロセッサ(20)と
を備える、システム。
【請求項14】
心肺持久力を定量化し、または前記心肺持久力の指標を判定するシステム(12)において使用されるコンピュータプログラム製品であって、
前記システムは、
(A)人(18)の胸部に配置されるように構成される加速度計(14)であって、心筋の運動によって引き起こされる、前記人(18)の胸壁の加速度および振動を測定するための、加速度計(14)と、
(B)前記加速度計に動作可能に接続されるプロセッサ(20)と
を備え、
前記コンピュータプログラム製品は、前記システム(12)の前記プロセッサ(20)によって実行されると、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法のステップのいずれかを行うように構成されるプログラムコード命令を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラム製品が記憶される、非一時メモリ(24)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案される手法は一般に、健康管理アプリケーション(fitness applications)に関し、特に、心肺持久力(cardiorespiratory fitness)の指標を判定する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心肺持久力は、循環器および呼吸器系が筋肉へ酸素を供給する能力を表す。当該用語は、一般に、具体的には、持続的な身体活動中に骨格筋へ酸素を供給する能力であって、したがって、心血管機能適合性の部分集合とみなされ得る能力に使用される。
【0003】
心肺持久力は、心拍数、一回心拍出量、心拍出量、および最大酸素消費量を含む生理学的パラメータによって影響を受ける。定期的な運動は、心筋を肥大化させ、より多くの血液が、各心拍によって拍出されることを可能にし、および、訓練後の骨格筋における小動脈の数を増加させることで、上述の系をより効率的にする。
【0004】
心肺持久力の一般的な計測値(common measure)は、負荷が増加する運動中に測定される最大酸素消費速度に対応するVO2maxである。場合によっては、上記計測値は、体重によって正規化される。
【0005】
心肺持久力の指標、またはVO2maxを示すことが可能な低コストの、およびポータブルな手法に対する臨床需要および消費者需要のいずれもが存在している。
【0006】
振動性心電図は、鼓動する心臓によって引き起こされる、胸壁における可聴以下の低周波振動を示す振動性心電図(seismocardiogram:SCG)の分析である。より一般的には、振動性心電図は、通常、心筋の運動によって生じる、胸壁における加速度の非侵襲的測定に関する。心音は、通常、40~60Hzを超える、胸壁の可聴成分である一方、SCGの振動は、通常、25Hz未満である。
【0007】
振動性心電図(SCG)は、通常、加速度計を使用して測定される。しかし、加速度計が使用される場合、低周波振動性心電図成分も可聴成分も同時にサンプリングされる。そして、加速度計からの信号は、通常、それがいずれの可聴成分も含まないようにフィルタリングされる。
【0008】
SCGは、それらによって、心肺持久力を判定することが可能な、それらの異なる心血管機能を明らかにする。たとえば、振動性心電図は、通常、心周期における特徴間の時間間隔の推定に適している。
【0009】
加速度計信号は、鼓動する心臓によって引き起こされる高負荷の低周波振動によって特徴付けられる。加速度計信号が、たとえば高域遮断周波数40Hzでローパスフィルタ処理される場合、心音の影響が除去される。フィルタリングされた信号またはSCG信号において、心周期の主要な特徴は、僧帽弁閉鎖(Mitral valve Closure:MC)、等容性運動(Isovolumic Movement:IM)、大動脈弁開口(Aortic valve Opening:AO)、等容性収縮(Isovolumic Contraction:IC)、急速駆出(Rapid Ejection:RE)、大動脈弁閉鎖(Aortic valve Closure:AC)、僧帽弁開放(Mitral valve Opening:MO)、および急速充満(Rapid Filling:RF)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、心肺持久力の指標を示し得る手法、特に、この能力を有し、安価であり、ポータブルである手法に対して、上述の必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
提案される手法の第1の態様によれば、前述の目的は、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定するように構成される加速度計(14)によって記録される振動性心電図(SCG)を取得するステップを含む方法によって実現される。上記方法は、振動性心電図(SCG)において、第1の信号特徴(AC)の特性を判定するか、または、振動性心電図(SCG)から、第1の信号特徴(AC)の特性を判定するステップを含み、第1の信号特徴(AC)は、心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に対応するか、または、心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に関連する。上記方法は、心肺持久力を定量化し、または上記心肺持久力の指標を判定するためのものであり得る。上記方法は、第1の信号特徴の特性に基づいて心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するか、または上記心肺持久力(VO2max)の指標を判定するステップをさらに含み得る。
【0012】
ここで、振動性心電図を取得するステップは、振動性心電図が取得される入手元、または、振動性心電図が取得される方法を特定するものでない。たとえば、データストレージからの、または直接、加速度計からのダウンロード、および加速度計の活用のいずれをも包含すると理解される。振動性心電図を取得する具体的なステップの代わりに、提案される手法の第1の態様は、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定するように構成される加速度計によって記録される振動性心電図(SCG)から、心肺持久力を定量化し、または上記心肺持久力の指標を判定する方法に関し得る。
【0013】
提案される手法は、大動脈弁閉鎖(AC)に対応する、振動性心電図(SCG)における信号特徴が、心肺持久力を判定するために使用することが可能であるという認識を中心に置いている。振動性心電図は、複数の心拍動、単一の心拍動、または心拍動の拡張期セグメントなどの、心拍動の一部分を含み得る。第1の信号特徴が、単一の心拍動の、または複数の心拍動の平均の大動脈弁閉鎖(AC)に対応し得ると理解される。ここで、心拍動は、完全な心周期を包含すると理解される。信号特徴はさらに、結合特徴の集合体、たとえば、周囲の極小値につながった単一のピークであり得ると理解される。
【0014】
ここでは、そして、本明細書全体を通して、心肺持久力を示す計測値を判定するか、または定量化するステップは、異常な心血管または心肺機能、状態、または構造、心血管または心肺機能の障害もしくは疾患を明確かつ一義的に示す訳でないと理解される。しかし、心肺持久力を示す計測値を判定するステップは、最大酸素消費量または摂取量(VO2max)などの、有酸素性能力の指標を判定するステップを含むと理解される。当然に、この計測値は、障害または疾患などの、心臓の一部の異常機能によって間接的に影響を受け得る。しかし、心肺持久力(VO2max)を示す計測値は、特定の異常機能を指し示すものでなく、そういうものとして、診断計測値を構成するものでない。
【0015】
加速度計は、圧電素子を備え得る。信号は、圧電素子によって生成される電圧を表し得る。したがって、時間的特徴の信号強度または振幅は、時間的特徴の電圧値を表し得る。加速度計からの出力は、いずれの可聴成分も含まないと理解される。たとえば、記録される信号は、100Hz、60Hz、40Hz、20Hz、10Hz、または5Hz未満である高域遮断周波数を有するローパスフィルタでフィルタリングされることがある。
【0016】
提案される手法の第2の態様では、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定するために、人の胸部に配置されるように構成される加速度計を備えるシステムが提供される。上記システムはさらに、加速度計に動作可能に接続されるプロセッサであって、プロセッサが、提案される手法の第1の態様による方法のステップのいずれかを行うように構成されるプロセッサを備える。上記システムは、心肺持久力を定量化し、または上記心肺持久力の指標を判定するためのものであり得る。
【0017】
提案される手法の第3の態様では、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定し、振動性心電図(SCG)を取得するために、人の胸部に配置されるように構成される加速度計を備えるシステムが提供される。上記システムは、振動性心電図(SCG)における第1の信号特徴の特性を判定するか、または振動性心電図(SCG)からの第1の信号特徴の特性を判定する第1の判定モジュールさらに備え、第1の信号特徴は、心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に対応するか、または、心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に関連する。上記システムは、心肺持久力を定量化するか、または上記心肺持久力の指標を判定するためのものであり得る。上記システムは、第1の信号特徴の特性に基づいて、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するか、または上記心肺持久力(VO2max)の指標を判定する第2の判定モジュールをさらに備え得る。
【0018】
提案される手法の第4の態様では、システムにおいて使用されるために、コンピュータプログラム製品が提供される。上記システムは、心肺持久力を定量化するか、または上記心肺持久力の指標を判定するためのものであり得る。上記システムは、心筋の運動によって引き起こされる、人の胸壁の加速度および振動を測定するために、人の胸部に配置されるように構成される加速度計と、加速度計に動作可能に接続されるプロセッサとを備える。上記コンピュータプログラム製品は、システムのプロセッサによって実行されると、提案される手法の第1の態様による方法のステップのいずれかを行うように構成されるプログラムコード命令を備える。
【0019】
第5の態様では、提案される第4の態様によるコンピュータプログラム製品が記憶される、非一時メモリが提供される。
【0020】
提案される手法のさらなる任意の詳細は、以下に説明される。
【0021】
心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、第1の訓練済みの機械学習モデルに基づき得る。心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、第1の機械学習モデルを供給するか、または第1の機械学習モデルを読み込むステップを含み得る。第1の機械学習モデルは、第1の信号特徴(AC)の特性と動作的に同様な、信号特徴の特性に対して訓練され得る。ステップは、第1の信号特徴(AC)の特性を第1の機械学習モデルに適用するか、または入力することで、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップをさらに含み得る。「動作的に同様」との語により、訓練において使用される信号特徴の特性が同様に定義され、もしくは生成され、または、第1の信号特徴(AC)の特性と同じ一般的特性を有すると理解される。
【0022】
より一般的に言えば、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、第1の信号特徴(AC)の特性に基づいて心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するように訓練される第1の機械学習モデルを供給するステップ、および、第1の機械学習モデルに第1の信号特徴(AC)の特性を適用するか、または入力するステップを含むか、または、第1の信号特徴(AC)の特性に基づいて心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するように訓練される第1の機械学習モデルを供給するステップ、および、第1の機械学習モデルに第1の信号特徴(AC)の特性を適用するか、または入力するステップで構成され得る。さらに一般的に言えば、肺機能適合性(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を、訓練済みの第1の機械学習モデルに第1の信号特徴(AC)の特性を適用することで、判定するステップを含み得る。
【0023】
第1の信号特徴の特性を判定するステップは、振動性心電図(SCG)の複数のセグメントを判定するステップと、複数のセグメントのうちの、ノイズの多い1つまたは複数のセグメントを判定するステップと、ノイズの多いセグメントを廃棄するステップとを含み得る。廃棄されないセグメントは、第1の信号特徴を含み、第1の信号特徴は、廃棄されないセグメントにおいて判定される。セグメントは、拡張期および/または収縮期セグメントを含み得る。拡張期セグメントは、心周期の拡張期の部分に対応する、振動性心電図(SCG)のセグメントと理解される。同様に、収縮期セグメントは、心周期の収縮期の部分に対応する、振動性心電図(SCG)のセグメントと理解される。
【0024】
第1の信号特徴の特性を判定するステップは、第1の信号特徴の1つまたは複数の(第1の)基準点もしくは参照点を識別するステップを含み得る。心肺持久力を示す計測値はさらに、1つまたは複数の(第1の)基準点に基づいて判定され得る。基準点は、第1の信号特徴の極大値(ACmax)、および/または、極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)を含み得る。第1の極小値および第2の極小値が、心周期における具体的な状態に対応し得ると理解される。たとえば、第2の極小値は、僧帽弁開放(MO)に対応し得る。
【0025】
第1の信号特徴のいくつかの特性、またはサブ特徴が、以下に説明される。当該特性は、心肺持久力を示す計測値を判定する際に使用される。特性のそれぞれが定量化に寄与することが見出されており、当該特性は、個別に、または互いに組み合わせて使用することが可能であると理解される。好ましくは、後述するサブ特徴のすべてが、同じ方法において使用される。
【0026】
たとえば、第1の信号特徴の特性を判定するステップは、第1の信号特徴の、極大値(ACmax)と、極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)との間の振幅差(ACPeakToPeak)を判定するステップをさらに含み得る。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、振幅差(ACPeakToPeak)に基づくことがあり、または振幅差(ACPeakToPeak)は、第1の信号特徴(AC)の特性を構成することがあり、もしくは第1の信号特徴(AC)の特性の部分を形成し得る。
【0027】
代替的または付加的に、第1の信号特徴の特性を判定するステップは、第1の信号特徴の極大値(ACmax)と、第1の信号特徴の極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)との間の第1の時間間隔(ACTimePeakToPeak)を判定するステップをさらに含み得る。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、第1の時間間隔(ACTimePeakToPeak)に基づき得るか、または、第1の時間間隔(ACTimePeakToPeak)は、第1の信号特徴(AC)の特性を構成するか、または、第1の信号特徴(AC)の特性の部分を形成し得る。
【0028】
代替的または付加的に、第1の信号特徴の特性を判定するステップは、第1の信号特徴の形態計測値(morphology measure:ACMorphology)を判定するステップをさらに含み得る。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、形態計測値(ACMorphology)に基づき得るか、または、形態計測値(ACMorphology)は、第1の信号特徴(AC)の特性を構成し、もしくは、第1の信号特徴(AC)の特性の一部を形成し得る。形態計測値(ACMorphology)は、振動性心電図(SCG)の時間領域において判定されると理解される。形態計測値は、第1の信号特徴の形状、輪郭、および/もしくは概形を表し、または示すと理解される。
【0029】
形態計測値(ACMorphology)を判定するステップは、振動性心電図(SCG)の第1のウィンドウを判定するステップを含むことがあり、ここで、第1のウィンドウは、第1の信号特徴を含む。そして、形態計測値(ACMorphology)を判定するステップは、第1のウィンドウの時間領域に基づき得る。
【0030】
第1のウィンドウは、平均拡張期セグメントから判定され得ると理解される。あるいは、第1のウィンドウは、振動性心電図(SCG)の拡張期セグメント毎に判定され得る。そして、平均の第1のウィンドウは、形態計測値(ACMorphology)を判定する前に判定され得る。
【0031】
好ましい実施形態では、個々の形態計測値は、第1のウィンドウ毎か、または拡張期セグメント毎に判定され、形態計測値(ACMorphology)は、個々の形態計測値の平均として判定される。
【0032】
第1のウィンドウの幅は、予め定められ得る。第1のウィンドウの時間領域に基づくことは、形態計測値(ACMorphology)が第1のウィンドウにおける、信号値または振幅の経時的な変化に基づくことを包含すると理解される。第1のウィンドウは、200ms~500ms、250ms~450ms、または300ms~400msの範囲の幅を有し得る。これは、当該手法が、最大毎分約100回の心拍数において適用され得ることを意味する。第1のウィンドウを判定するステップは、第1の信号特徴の基準点形成部分を識別するステップ、および、基準点に対して第1のウィンドウを位置決めするステップを含み得る。基準点は、第1の信号特徴の極大値(ACmax)であり得る。第1の信号特徴の極大値(ACmax)が、第1の信号特徴を含む拡張期セグメントの極大値(ACmax)であり得ると理解される。第1のウィンドウは、基準点前の、40ms~60msの範囲内で、または50msにおいて開始し、基準点後の、200ms~500ms、300ms~400msの範囲内で、または350msにおいて終了し得る。
【0033】
形態計測値(ACMorphology)を判定するステップは、第2の機械学習モデルを供給するか、または第2の機械学習モデルを読み込むステップを含み得る。第2の機械学習モデルは、(形態計測値を判定するために)振動性心電図(SCG)の第1のウィンドウと動作的に同様なウィンドウに対して訓練され得る。それはさらに、第2の機械学習モデルにおいて第1のウィンドウを適用し、または入力することで、形態計測値(ACMorphology)を判定するステップを含み得る。「動作的に同様な」との語は、第2のモデルがそれらに対して訓練されるそれらのウィンドウそれぞれが、振動性心電図(SCG)の第1のウィンドウと、同様に定義され、もしくは生成され、または、同様な特徴を含むことを包含すると理解される。
【0034】
より一般的に言えば、形態計測値(ACMorphology)を判定するステップは、第1のウィンドウに基づいて形態計測値(ACMorphology)を判定するように訓練される第2の機械学習モデルを供給するステップ、および、第1のウィンドウを第2の機械学習モデルに適用するステップを含み得る。より一般的には、形態計測値(ACMorphology)を判定するステップは、第1のウィンドウを、訓練済みの第2の機械学習モデルに適用することで、形態計測値(ACMorphology)を判定するステップを含み得る。ここでは、第1のウィンドウは、時間領域において表されると理解される。
【0035】
第2の機械学習モデルは、第1のウィンドウの次元削減、またはその時間領域を表す第1の次元計測値を判定するステップを含むことがあり、第2の機械学習モデルは、第1の次元計測値に基づいて形態計測値(ACMorphology)を判定するように訓練され得る。そして、第2の機械学習モデルは、動作的に同様な次元計測値に対して訓練される。第1の次元計測値は、主成分分析の主成分、または、第1のウィンドウを圧縮するように構成される自己符号化器から獲得されるノードであり得る。
【0036】
第1の信号特徴の特性を判定するステップは、第1の信号特徴の周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップをさらに含み得る。心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、周波数計測値(ACFrequency)に基づくことがあり、または、形態計測値(ACMorphology)は、第1の信号特徴(AC)の特性を構成するか、もしくは、第1の信号特徴(AC)の特性の一部を形成し得る。周波数計測値(frequency measure:ACFrequency)は、振動性心電図(SCG)の周波数領域において判定され得る。
【0037】
周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、振動性心電図(SCG)の第2のウィンドウを判定するステップを含むことがあり、ここで、第2のウィンドウは、第1の信号特徴を含む。そして、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、第2のウィンドウの周波数領域に基づき得る。
【0038】
周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップはさらに、第2のウィンドウのパワースペクトル密度またはスペクトル密度を判定するステップを含み得る。そして、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、パワースペクトル密度に基づき得る。
【0039】
第1のウィンドウと同様に、第2のウィンドウまたはパワースペクトル密度は、平均拡張期セグメントについて判定され得ると理解される。あるいは、第2のウィンドウまたはパワースペクトル密度は、振動性心電図(SCG)の各拡張期セグメントまたは第2のウィンドウについて判定され得る。好ましい実施形態では、個々のパワースペクトル密度は、第1のウィンドウ毎に、または拡張期セグメント毎に判定され、個々の周波数計測値が個々のパワースペクトル密度それぞれから判定され、周波数計測値(ACFrequency)が個々の周波数計測値の平均として判定される。
【0040】
第2のウィンドウは、上記第1のウィンドウの特徴のいずれかを有し得る。第1のウィンドウおよび第2のウィンドウは、同じであるか、または同じ特徴もしくは特性を有し得る。上記では、第2のウィンドウの周波数領域に基づくことは、周波数計測値(ACFrequency)が、第1のウィンドウにおける、周波数にわたる、信号値または振幅の変化に基づくことを包含すると理解される。
【0041】
周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、第3の機械学習モデルを供給するか、または第3の機械学習モデルを読み込むステップを含み得る。第3の機械学習モデルは、周波数計測値(ACFrequency)を判定するために、振動性心電図(SCG)の第2のウィンドウの周波数領域またはパワースペクトル密度と動作的に同様なウィンドウの周波数領域またはパワースペクトル密度に対して訓練され得る。それはさらに、第2のウィンドウ、またはその周波数領域もしくはパワースペクトル密度を第2の機械学習モデルに適用するか、または入力することで、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップを含み得る。「動作的に同様」との語により、訓練において使用される各振動性心電図(SCG)ウィンドウの周波数領域またはパワースペクトル密度が、第2のウィンドウの周波数領域またはパワースペクトル密度と、同様に定義され、もしくは生成され、または、同じ一般的特性を有する。
【0042】
より一般的に言えば、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、第2のウィンドウ、またはその周波数領域もしくはパワースペクトル密度に基づいて、周波数計測値(ACFrequency)を判定するように訓練される第3の機械学習モデルを供給するステップ、および、第2のウィンドウ、またはその周波数領域もしくはパワースペクトル密度を第3の機械学習モデルに適用するステップを含み得る。より一般的には、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップは、第2のウィンドウ、またはその周波数領域もしくはパワースペクトル密度を、訓練済みの第3の機械学習モデルに適用することで、周波数計測値(ACFrequency)を判定するステップを含み得る。
【0043】
第3の機械学習モデルは、第2のウィンドウの次元削減、またはその周波数領域もしくはパワースペクトル密度を表す第2の次元計測値を判定するステップを含むことがあり、および、第3の機械学習モデルは、第2の次元計測値に基づいて周波数計測値(ACFrequency)を判定するように訓練され得る。そして、第3の機械学習モデルは、動作的に同様な次元計測値に対して訓練される。測定される第2の次元は、主成分分析の主成分、または、第1のウィンドウ、もしくはパワースペクトル密度を圧縮するように構成される自己符号化器から獲得されるノードであり得る。
【0044】
心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、性別、年齢、身長、体重、およびボディマス指数(BMI)などの人口統計データに基づき得る。第1の機械学習モデルは、人口統計データに基づいて、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するように訓練されることがあり、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、人口統計モデルを第1の機械学習モデルに適用するステップをさらに含み得る。より一般的に言えば、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、人口統計データを、訓練済みの第1の機械学習モデルに適用するステップを含み得る。
【0045】
提案される手法の第1の態様による方法は、心拍変動(heart rate variability:HRV)を判定するステップをさらに含み得る。その上に、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、心拍変動(HRV)に基づき得る。心拍変動(HRV)は、振動性心電図(SCG)からか、または、振動性心電図(SCG)と同時に、もしくは上記振動性心電図(SCG)に関連して取得される心電図(ECG)から判定され得る。
【0046】
心拍変動(HRV)を判定するステップはさらに、後続する心拍動における、同じ種類の基準点間の複数の時間間隔を判定するステップと、複数の時間間隔の標準偏差として、または上記標準偏差に基づいて心拍変動(HRV)を判定するステップとを含み得る。
【0047】
心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、心拍変動(HRV)と動作的に同様な心拍変動計測値に対して訓練される第1の機械学習モデルを供給するか、または第1の機械学習モデルを読み込むステップを含み得る。それは、心拍変動(HRV)を第1の機械学習モデルに適用するか、または入力することで、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップをさらに含み得る。「動作的に同様」との語により、訓練において使用される心拍変動計測値が、心拍変動(HRV)と、同様に定義され、もしくは生成され、または、同じ一般的特性を有すると理解される。
【0048】
より一般的に言えば、第1の機械学習モデルはさらに、心拍変動(HRV)に基づいて、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するように訓練されることがあり、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、心拍変動(HRV)を第1の機械学習モデルに適用するステップをさらに含み得る。より一般的には、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップは、心拍変動(HRV)を、訓練された第1の機械学習モデルに適用するステップを含み得る。
【0049】
提案される手法の第1の態様による方法は、振動性心電図(SCG)における第2の信号特徴の特性を判定するステップをさらに含むことがあり、ここで、第2の信号特徴は、第1の信号特徴と異なる。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、第2の信号特徴の特性に基づき得る。第2の信号特徴は、第1の信号特徴について上述したように、単一の心拍動からのものであるか、または、いくつかの心拍動の平均を構成することがあると理解される。
【0050】
第2の信号特徴の特性を判定するステップは、振動性心電図(SCG)の複数の収縮期セグメントを判定するステップと、ノイズの多い収縮期セグメントを廃棄するステップとを含み、廃棄されない拡張期セグメントは、第2の信号特徴を含み得る。収縮期セグメントは、心周期の収縮期部分に対応する振動性心電図(SCG)のセグメントと理解される。
【0051】
第2の信号特徴は、心周期の僧帽弁閉鎖(MC)および/または大動脈弁開口(AO)に対応し得る。第2の信号特徴の特性を判定するステップは、第2の信号特徴の1つまたは複数の(第2の)基準点もしくは参照点を識別するステップを含み得る。心肺持久力を示す計測値はさらに、1つまたは複数の(第2の)基準点に基づいて判定され得る。基準点は、僧帽弁閉鎖(MC)のゼロ交差、および、僧帽弁閉鎖(MC)後の大動脈弁開口(AO)の第1の極大値(A0max)を含み得る。
【0052】
そして、第2の信号特徴の特性を判定するステップは、僧帽弁閉鎖(MC)のゼロ交差と、僧帽弁閉鎖(MC)後の大動脈弁開口(AO)の第1の極大値(A0max)との間の第2の時間間隔(SysTimeMCToAO)を判定するステップを含み得る。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、第2の時間間隔(SysTimeMCToAO)に基づき得る。
【0053】
提案される方法では、心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するステップはさらに、第1の訓練済みの機械学習モデルに基づき得る。好ましくは、当該方法は、少なくとも3つの機械学習モデル、すなわち、そういうものとして心肺持久力(VO2max)を示す計測値を判定するための第1のモデル、形態計測値(ACMorphology)を判定するための第2のモデル、および周波数計測値(ACFrequency)を判定するための第3のモデルに基づく。これは、第1のモデルが、第2のモデルおよび第3のモデルの結果を含み得ることを意味している。たとえば、機械学習モデルは、線形回帰、ニューラルネットワーク回帰、畳み込みニューラルネットワーク回帰、またはサポートベクターマシン回帰に基づき得る。
【0054】
本発明の上述の、ならびに他の特徴および利点のより完全な理解は、図面の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】心肺持久力の指標を判定するシステムの一実施形態の概略図である。
図2図1に関して説明されるシステムにおいて使用される方法の基本ステップを示すフローチャートである。
図3a】形態計測値を判定するための別の実施形態を示すフローチャートである。
図3b】形態計測値を判定するための別の実施形態を示すフローチャートである。
図4a】周波数計測値を判定するための別の実施形態を示すフローチャートである。
図4b】周波数計測値を判定するための別の実施形態を示すフローチャートである。
図5】心周期の心電図を示すグラフである。
図6図5の心電図と同時に記録される、心周期の振動性心電図を示すグラフである。
図7図6の振動性心電図上に重ね合わせられたウィンドウを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、心肺持久力を定量化するシステム12の一実施形態を概略的に示している。当該システム12は、人18の胸部に配置することができ、心臓の運動によって引き起こされる、胸壁の振動を測定するための、圧電素子の形態における加速度計14を有する。プロセッサ20は、加速度計14に接続される。プロセッサ20は、加速度14から受信する信号を記憶することが可能であり、それによって、プログラムコード命令を実行することが可能なその一時メモリ22を有する。システム12は、加速度計14を支持する支持体26と、プロセッサ20を収容するハウジング28とを備える。システム12はまた、プロセッサ20用のプログラムコード命令を記憶する非一時メモリ24を有する。たとえば、全体としてのシステム12は、スマートフォンの一体的な部分であることがあるか、または、加速度計20および支持体26を除く部分すべてが、スマートフォンの一部を形成することがある。一実施形態では、加速度計14は、スマートフォンの一体化された加速度計である。
【0057】
システム12の一実施形態では、システム12は、付加的に、プロセッサ20と動作可能に接続されるインジケータ30を有する。インジケータ30は、たとえば、心肺持久力の計測値を示す数字などの、プロセッサ20からの出力情報を表示することが可能なLCDディスプレイ等を有し得る。
【0058】
システムはまた、支持体26によって支持される心電図電極32(2本のリード、および接地)を備える。電極32は、プロセッサ20に接続される。
【0059】
加速度計14の主要機能は、さらなる分析のために振動性心電図(SCG)をサンプリングすることである。電極32の主要機能は、振動性心電図(SCG)のセグメント化に使用される心電図(ECG)をサンプリングすることである。
【0060】
非一時メモリ24内のプログラムコード命令は、図2に示される方法をプロセッサ20に実行させる。振動性心電図(SCG)は、人18の胸部に配置される加速度計14によって取得される(102)。代替的な実施形態では、前もってアップロードされているサーバからSCGがダウンロードされる。2つの信号特徴の特性は、振動性心電図(SCG)において判定される(104)。どのようにしてこれを実現する方法を以下に詳細に説明する。そして、心肺持久力(VO2max)を示す計測値は、第1の信号特徴の特性に基づいて判定される(106)。
【0061】
複数の収縮期および拡張期セグメントは、SCGにおいて判定される(108)。これは、参照として電極32によって同時に獲得される心電図(ECG)を使用する自動セグメント化方法によって実現される。代替的な実施形態では、セグメント化は、そういうものとして(たとえば、米国特許第8235912号明細書に開示される手法と同様)、SCGに基づく。そして、ノイズの多いセグメントは、たとえば、国際公開第2017/216375号に開示されるように、廃棄される(110)。
【0062】
図5は、単位がボルト(mV)の電極32からの信号を時間(ms)の関数として心電図(ECG)を示している。時間は、R波のピークに対してリセットされている。図6は、単位が同等の重力(g)の加速度計信号を、心電図(ECG)と同様にリセットされた時間(ms)の関数として、同時に記録される振動性心電図(SCG)を示している。
【0063】
結果として生じる拡張期セグメントのそれぞれは、単一の心拍動の大動脈弁閉鎖(AC)に対応する第1の信号特徴を含むか、または備える。同様に、結果として生じる収縮期セグメントのそれぞれは、心周期の僧帽弁閉鎖(MC)および大動脈弁開口(AO)の組み合わせに対応する第2の信号特徴を含む。
【0064】
そして、国際公開第2017/216375号に記載される識別と同様に、収縮期および拡張期セグメントにおけるそれぞれの信号特徴について、基準点が、識別される(112)。以下の基準点は、各拡張期セグメントか、または第1の信号特徴毎に判定される。
・大動脈弁閉鎖(AC)の極大値(ACmax
・極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin
以下の基準点は、各収縮期セグメントにおいて、または第2の信号特徴毎に判定される。
・僧帽弁閉鎖(MC)のゼロ交差
・僧帽弁閉鎖(MC)後の大動脈弁開口(AO)の第1の極大値(AOmax)
上述の基準点は、図6に示されている。そして、信号特徴の特性は、少なくとも部分的に、基準点少なくとも部分的に基づいて判定される(114)。
【0065】
大動脈弁閉鎖(AC)に対応する第1の信号特徴の第1の特性は、極大値(ACmax)と、第1の極小値(ACmin)との間の振幅差(ACPeakToPeak)である。この特性を表す計測値(ACPeakToPeak)は、拡張期セグメントの平均から判定される。同じ信号特徴の第2の特性は、極大値(ACmax)と、極大値(ACmax)の直前の第1の極小値(ACmin)との間の(第1の)時間間隔(ACTimePeakToPeak)である。この特性を表す計測値(ACTimePeakToPeak)は、標準偏差1に正規化される、拡張期セグメントの平均から判定される。第3の特性は、形態計測値(ACMorphology)によって表される第1の信号特徴の形態学である。第4の特性は、第1の信号特徴の周波数計測値(ACFrequency)である。後者の2つの特性の判定が、以下にさらに説明される。
【0066】
形態計測値(ACMorphology)を判定する場合、(第1の)ウィンドウ34は、振動性心電図(SCG)において識別される。ウィンドウ34は、極大値(ACmax)の50ms前に開始し、および、極大値(ACmax)の250ms後に終了する。対応するウィンドウ34は、図6の振動性心電図(SCG)を示す図7に示されている。
【0067】
形態計測値(ACMorphology)は、初期平均化(early averaging)を使用して判定される。初期平均化に関するステップは、図3aに示されている。平均拡張期セグメントが判定され、そして、ウィンドウ34が平均拡張期セグメントにおいて識別される(202)。ウィンドウ34内の振幅は、振幅変動の影響を低減するために、標準偏差1に正規化される。そして、次元削減204は、主成分を識別するために、平均拡張期セグメントのウィンドウ34に対して行われる主成分分析(PCA)を使用して行われる。代替的な実施形態では、次元削減204は、拡張期セグメントのウィンドウ34を入力として、自己符号化器(AE)を使用して行われ、自己符号化器(AE)は、ウィンドウをニューラルネットワークにおける数ノード、たとえば10ノードに圧縮するように構成される。そして、回帰206が、主成分またはノードを入力として線形回帰を使用して行われる。代替的な実施形態では、回帰関数は、ニューラルネットワーク回帰、畳み込みニューラルネットワーク回帰、またはサポートベクターマシン回帰に基づく。回帰206は、第1の信号特徴または大動脈弁閉鎖(AC)に関する振動性心電図(SCG)の集合体の形状を表し、または定量化する形態計測値(ACMorphology)210をもたらす。
【0068】
代替的な実施形態では、形態計測値(ACMorphology)は、末期平均化(late averaging)を使用して判定される。末期平均化に関するステップは、図3bに示されている。ウィンドウ34が、各拡張期セグメントにおいて識別される(202’)。各ウィンドウ34における振幅は、振幅変動の影響を低減するために標準偏差1に正規化される。そして、次元削減204’は、主成分を識別するために、ウィンドウ34のマトリクスに対して行われる主成分分析(PCA)を使用して行われる。代替的な実施形態では、次元削減204’は、ニューラルネットワークにおいて、ウィンドウ34のマトリクスを、10などの、ノード数にそれらを圧縮する入力として自己符号化器(AE)を使用して行われる。そして、回帰206は、主成分またはノードを入力として線形回帰関数を使用して行われる。代替的な実施形態では、回帰関数は、ニューラルネットワーク回帰、畳み込みニューラルネットワーク回帰、またはサポートベクターマシン回帰に基づく。回帰206’は、拡張期セグメントのウィンドウ毎の個々の計測値をもたらす。個々の計測値にわたる平均が算出され(208’)、形態計測値(ACMorphology)210’がもたらされる。
【0069】
周波数計測値(ACFrequency)を判定する場合、拡張期セグメントにおける、形態計測値(ACMorphology)を判定する場合と同じウィンドウ34が使用される。
【0070】
周波数計測値(ACFrequency)は、初期平均化を使用して判定される。初期平均化に関するステップは、図4aに示されている。ウィンドウ34は、各平均拡張期セグメントにおいて識別される(302’)。ウィンドウ34における振幅は、振幅変動の影響を低減するために標準偏差1に正規化される。そして、パワースペクトル密度(PSD)は、各ウィンドウ34において判定される(304)。パワースペクトル密度(PSD)が判定され(306)、これは、形態計測値(ACMorphology)を判定するための初期平均化アプローチに関して、上述の次元削減204と同様な次元削減308において使用される。そして、回帰310が、上述の初期平均化アプローチに関して上述の回帰206と同様に、入力として、結果として生じる主成分またはノードを使用して行われる。回帰310は、平均ウィンドウの周波数領域における特性を表すか、または定量化する、第1の信号特徴の拡張における周波数計測値(ACFrequency)314をもたらす。
【0071】
代替的な実施形態では、周波数計測値(ACFrequency)は、末期平均化を使用して判定される。末期平均化に関するステップは、図4bに示されている。ウィンドウ34は、各拡張期セグメントにおいて識別される(302’)。各ウィンドウ34における振幅は、振幅変動の影響を低減するために標準偏差1に正規化される。パワースペクトル密度(PSD)は、各ウィンドウ34において判定される。平均パワースペクトル密度(PSD)を算出する代わりに、形態計測値(ACMorphology)を判定するための末期平均化アプローチに関して上述の次元削減204’と同様な次元削減308’が、判定されたパワースペクトル密度のマトリクスに対して行われる。そして、回帰310’が、上述の末期平均化アプローチに関して説明される回帰206’と同様に、ウィンドウ毎の主成分またはノードを入力として使用して行われる。回帰310’は、拡張期セグメントのウィンドウにそれぞれが対応する、いくつかの個々の計測値をもたらす。そして、周波数計測値(ACFrequency)314’は、個々の計測値の、平均312、または、代替的な実施形態においては、メジアンとして判定される。
【0072】
上述の第1の信号特徴の4つの特性は、心肺持久力(V02max)を示す計測値を判定する(106)ための入力において使用される。付加的に、心拍変動(HRV)、ならびに、心周期の僧帽弁閉鎖(MC)および大動脈弁開口(AO)に対応する第2の信号特徴の特性は、入力として使用される。
【0073】
心拍変動(HRV)は、まず、振動性心電図(SCG)における、後続する心拍動を識別し、そして、後続する心拍動における、大動脈弁閉鎖(AC)の極大値(ACmax)などの同じ基準点間の時間間隔の長さとして算出することによって判定される。
【0074】
第2の信号特徴の特性は、僧帽弁閉鎖(MC)のゼロ交差と、僧帽弁閉鎖(MC)後の大動脈弁開口(AO)の第1の極大値(A0max)との間の時間間隔(SysTimeMCToAO)である。特性を表す計測値は、標準偏差1に正規化される、拡張期セグメントの平均から判定される。
【0075】
人の年齢、性別、およびボディマス指数を表す人口統計的計測値116もまた、提供される。
【0076】
上述のすべての計測値は、心肺持久力(V02max)120を示す計測値を判定する(106)ために、マルチパラメータ回帰118において、入力として使用される。実際には、好ましい実施形態では、当該回帰は、以下のように表される。
V02maxPrKG = ω1 ACPeakToPeak + ω2 ACTimePeakToPeak + ω3 ACFrequency + ω4 ACMorphology + ω5 HRV + ω6 SysTimeMCToAO + ω7 Age + ω8 Gender + ω9 BMI
代替的な実施形態では、より少ない計測値が回帰118において使用される。ここで、心肺持久力(V02maxPrKG)を示す計測値は、体重に対して正規化される。
【0077】
[概念実証]
提案される手法は、133の被験者からの145の測定において検証されている。各測定では、振動性心電図が記録され、直後に、被験者が通常のV02max試験を受けている。後者は、至適基準(golden standard)とみなされており、性能計測値は、提案される手法によって予測されるV02maxと、至適基準V02maxとの間の相関として判定されている。最終的な検証では、標準推定誤差(standard error of estimate:SEE)が、予測および至適基準V02max間の誤差を評価するために使用されている。
【0078】
個々の特徴の検証は、5倍交差検証を使用して行われ、3倍が訓練に使用され、1倍が検証に使用され、および1倍が試験に使用されている。最終的なスコアの検証は、10倍交差検証の5回繰り返しを使用して行われている。
【0079】
周波数計測値(ACFrequency)の場合、最高性能の特徴抽出方法は、初期平均化を使用したPCA後の線形回帰であった(表1参照)。形態計測値(ACMorphology)の場合、最高性能の特徴抽出方法は、末期平均化を使用したPCA後の線形回帰であった(表2参照)。
【0080】
表3に、参照または至適基準V02maxと、予測V02max、または心肺持久力(V02max)を示す、判定された計測値との間の相関を示す。周波数計測値(ACFrequency)および形態計測値(ACMorphology)を含む結果と、周波数計測値(ACFrequency)および形態計測値(ACMorphology)を除く結果が示されている。表3から、これらの計測値がいずれも、参照V02maxと予測V02maxとの相関を増加させることを表3から結論付けることができる。周波数計測値(ACFrequency)および形態計測値(ACMorphology)のいずれの追加も、心肺持久力またはV02maxを示す計測値(V02max)を判定するための、提案される方法の性能を向上させることを結論付けることができる。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
【国際調査報告】