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特表2022-534881がんの予防および/または処置のためのピロロ-ピリジン誘導体化合物の新規な使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】がんの予防および/または処置のためのピロロ-ピリジン誘導体化合物の新規な使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20220728BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/02
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P15/02
A61P1/18
A61P17/00
A61P21/00
A61P19/08
A61P25/00
A61P27/16
A61P35/02
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569283
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020006730
(87)【国際公開番号】W WO2020235973
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060297
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521316497
【氏名又は名称】ボロノイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VORONOI CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アン, ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ドン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム, デ クォン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA021
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC201
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、活性成分として、抗がん薬およびピロロ-ピリジン誘導体を含むがんの予防または処置のための薬学的組成物に関する。本発明に従う化学式Iによって表される化合物、その異性体、またはこれらの薬学的に受容可能な塩は、プロテインキナーゼに対して優れた阻害活性を有し、従って、他の抗がん薬と組み合わせて使用される場合、がんの予防、処置または改善において効果的に使用され得る。本発明の目的は、がんの予防および/または処置のための薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、活性成分として、EGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビター;ならびにピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を提供することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの予防または処置のための薬学的組成物であって、前記組成物は、活性成分として、化学式1によって表される化合物、前記化合物の異性体または前記化合物の薬学的に受容可能な塩;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(programmed cell death protein 1)、PD-L1(programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物:
[化学式1]
【化5】
(ここで化学式1において、
R1は、C1-C3アルコキシであり;
R2およびR3は、各々独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C10アルキル、またはC3-C6シクロアルキルであり;そして
R4は、ハロアルキルである)、
を含む組成物。
【請求項2】
前記R1は、メトキシであり;前記R2は、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C5アルキル、またはC3-C4シクロアルキルであり;前記R3は、水素であり;そしてR4は、トリフルオロメチルである、請求項1に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記化学式1によって表される化合物は、(4-((4-(エチルアミノ)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)アミノ)-3-メトキシフェニル)(4-モルホリノピペリジン-1-イル)メタノンである、請求項1に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項4】
がんの予防または処置のための薬学的組成物であって、前記組成物は、活性成分として、化学式1によって表される化合物、前記化合物の異性体または前記化合物の薬学的に受容可能な塩を含み、前記組成物は、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(programmed cell death protein 1)、PD-L1(programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物に付随して投与されることを特徴とする:
[化学式1]
【化6】
(ここで化学式1において、
R1は、C1-C3アルコキシであり;
R2およびR3は、各々独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC1-C10アルキル、またはC3-C6シクロアルキルであり;そして
R4は、ハロアルキルである)、
組成物。
【請求項5】
前記がんは、白血病、リンパ腫、肉腫、脳がん、脳腫瘍、良性星細胞腫、悪性星細胞腫、下垂体細胞腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、脳幹腫瘍、頭頚部がん、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔/PNS腫瘍、鼻咽頭腫瘍、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔腫瘍、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、甲状腺がん、縦隔腫瘍、食道腫瘍、乳がん、男性乳がん、腹部-骨盤腫瘍、胃がん、肝細胞癌、胆嚢がん、胆道腫瘍、膵臓がん、小腸腫瘍、大腸腫瘍、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎細胞癌、男性生殖器がん、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器がん、子宮がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、腟がん、外陰がん、尿道がんおよび皮膚がんを含む群から選択される少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか1項に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記がんは、脳がん、乳がん、子宮頚がん、大腸がん、膀胱がん、胃がん、腎細胞癌、頭頚部がん、白血病、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、胆嚢がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、肉腫、皮膚がん、精巣がん、甲状腺がんおよび子宮がんを含む群から選択される少なくとも1つである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記化合物、前記化合物の異性体、または前記化合物の薬学的に受容可能な塩は、ALK、ALK(C1156Y)、ALK(L1196M)、CLK1、CLK2、CLK3、CLK4、CSNK1D、DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、GAK、JNK1、LRRK2(G2019S)、LTK、MYLK、PAK2、PHKG1、PHKG2、STK33、非リン酸化ABL1、CAMK2D、CAMKK2、CHEK2、CSNK1A1、CSNK1E、ERK5、HUNK、INSR、JAK1(JH2ドメイン-偽キナーゼ)、JNK2、JNK3、LRRK2、MAPKAPK2、PLK4、およびSTK39を含む群から選択される少なくとも1つのプロテインキナーゼの活性を阻害することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記EGFR標的化薬物は、ブリガチニブ、CUDC-101、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、サフィチニブ、バンデタニブ、バラチニブ、テセバチニブ、チルホスチンAG 1478、AZD3759、MTKi-327(JNJ-26483327)、アファチニブ、オルムチニブ(HM61713)、カネルチニブ、CL-387785(EKI-785)、CNX-2006)、ダコミチニブ、ナコチニブ(ASP8273)、ネラチニブ、オシメルチニブ、PD168393、ペリチニブ、ポジオチニブ、ロシレチニブ、TAK285、WZ4002、アリチニブ(ALS-1306;AST-1306)、AV-412(MP-412)、ナザルチニブ(EGF816)、ピロチニブ、セツキシマブおよびパニツムマブを含む群から選択される少なくとも1つであり;前記PD-1標的化薬物は、ペンブロリズマブおよびニボルマブの少なくとも一方であり;前記PD-L1標的化薬物は、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブの少なくとも1つであり;前記CTLA-4標的化薬物は、イピリムマブであることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のがんの予防または処置のための薬学的組成物。
【請求項9】
がんの予防または処置のためのキットであって、前記キットは、活性成分として、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(programmed cell death protein 1)、PD-L1(programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1つに対する標的化薬物、ならびに請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の化学式1によって表される化合物、前記化合物の異性体、または前記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む組成物を含む、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防および/または処置のためのピロロ-ピリジン誘導体化合物の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮増殖因子レセプター(EGFR)は、上皮細胞の表面に発現される膜貫通タンパク質であり、細胞周期調節因子であるチロシンキナーゼのグループに属する。それは、EGFまたはTGF-αが細胞外ドメインに結合する場合に活性化され、自己リン酸化反応を誘導して、細胞増殖および成長を促進する。このような増殖因子レセプターの機能に影響を与えるかまたはレセプターおよびリガンドの過剰発現を引きおこす遺伝的改変が起こる場合、がんが誘導され得る。
【0003】
さらに、EGFRは、発癌遺伝子ErbBまたはErbB1のタンパク質生成物である。ErbBまたはErbB1は、癌原遺伝子のERBBグループのうちの1つであり、それは、がんの発生における重要な因子として公知である。EGFR発現が、肺がん、頭頚部がん、乳がん、膀胱がん、胃がんなどにおいて増大されるという結果が、報告されている。上記ERBB発癌遺伝子グループは、4種の構造的に関連した膜貫通レセプター、すなわち、EGFR、HER-2/neu(ErbB2)、HER-3(ErbB3)、およびHER-4(ErbB4)をコードする。
【0004】
肺がん、頭頚部がん、乳がん、膀胱がん、胃がんなどを処置するために、種々のEGFR標的化薬物が開発されており、代表的な薬物としては、ゲフィチニブ(AstraZeneca UK Ltd., 商標「IRESSA」)およびエルロチニブ(Genentech, Inc. & OSI Pharmaceuticals, Inc., 商標「TARCEVA」)が挙げられる。ゲフィチニブおよびエルロチニブは、キナゾリン化合物であり、EGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害して、リン酸化を抑制することによって細胞の成長を阻害する。
【0005】
これらの標的化薬物が非常に効果的な薬物であるにもかかわらず、患者間の個々の差異に起因して測定可能な反応を示さない、または長期の使用で治療効果に対して耐性を示す、のような問題が報告されている。実際に、非小細胞肺がん患者のうちのおよそ10%が、これらの薬物に対して反応を示すと報告されているに過ぎない。よって、EGFR標的化薬物の問題を補充する付随療法に関する研究が行われている最中であり、EGFRと付随して使用され得る種々の化合物が公知であるが、それらは、付随して使用される場合に細胞傷害性のような問題を有することも報告されている。
【0006】
標的化抗がん薬のこのような制限を解決するために、有害反応および耐性問題が少なく、たとえ投与が中止されたとしても、免疫細胞ががん細胞を記憶し、継続してがん細胞を攻撃し続けるがん免疫療法薬の開発が活発に進行中である。がん免疫療法薬は、免疫チェックポイントインヒビター、免疫細胞療法薬剤、治療用抗体、および抗がんワクチンとして広く分類され得る。これらのうち、免疫チェックポイントインヒビターは、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質の活性を遮断し、それによって、T細胞を活性化して、がん細胞を攻撃する薬物である。代表的には、これらは、CTLA-4、PD-1、およびPD-L1を認識する抗体を使用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々のプロテインキナーゼに関するインヒビターとして活性を示すと報告された種々のピロロ-ピリジン誘導体(韓国公開特許第10-2018,0015142号、同第10-2017-0106452号、および同第10-2017-0058465号)に注意を向けることによって、EGFR標的薬物および/または免疫チェックポイントインヒビターと付随して使用する場合に、細胞傷害性を有さず、単一の薬物の抗がん効果を大きく改善し得るピロロ-ピリジン誘導体を同定し、EGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビターと、ピロロ-ピリジン誘導体化合物とを組み合わせてがんを予防または処置するための薬学的組成物を完成させた。
【0008】
本発明の目的は、がんの予防および/または処置のための薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、活性成分として、EGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビター;ならびにピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、がんの予防および/または処置のための薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、EGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビターと付随した投与のために、活性成分として、ピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、有効用量のEGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビター;ならびにピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を被験体に投与することによる、がんの予防および/または処置のための方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、がんの予防および/または処置のためのキットであって、上記キットは、EGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビター;ならびにピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含むキットを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、がんの予防および/または処置のためにEGFR標的化薬物および/または免疫チェックポイントインヒビターに付随した使用のための化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩の使用を提供することである。
【0013】
本発明は、活性成分として、化学式1によって表される化合物、前記化合物の異性体または前記化合物の薬学的に受容可能な塩;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(programmed cell death protein 1)、PD-L1(programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を含む組成物を提供する。
【0014】
[化学式1]
【0015】
【化1】
【0016】
(ここで化学式1において、
【0017】
は、C-Cアルコキシであり;
【0018】
およびRは、各々独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC-C10アルキル、またはC-Cシクロアルキルであり;そして
【0019】
は、ハロアルキルである)。
【0020】
本発明は、がんの予防および/または処置のための薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物に付随した投与のために、活性成分として、ピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
本発明は、活性成分として、化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を含む有効用量の薬学的組成物を被験体に投与することによる、がんの予防および/または処置のための方法を提供する。
【0022】
本発明は、がんの予防および/または処置のためのキットであって、上記キットは、活性成分として、化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を含むキットを提供する。
【0023】
本発明は、がんの予防および/または処置のための、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物に付随した使用のためのピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
本発明の利点
【0024】
DYRK1AおよびCLKを含む種々のプロテインキナーゼに対する優れた阻害活性、ならびに優れたインビボ安定性を有する、本発明に従う化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩は、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的薬物と付随して使用された場合に、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物の治療効果を実質的に増大させ、がん細胞におけるこのような標的薬物に対する耐性を低減することができ、がんを効果的に処置または予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、各物質で単独で処置した場合に対して、肺がん細胞株(PC-9およびH1975)を化合物1およびEGFR標的薬物(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)で付随して処置した肺細胞コロニー形成抑制効果を比較する結果を示す。
【0026】
図2図2は、非小細胞肺がん細胞株およびゲフィチニブに対して耐性を有する非小細胞肺がん細胞株におけるDYRK1Aの発現を比較した結果を示す。
【0027】
図3図3は、PC-9肺がん細胞を有するマウスモデル(Balb/cヌードマウス)に、化合物Iおよびオシメルチニブをそれぞれ単独で、ならびに付随して投与した場合の抗がん効果を調べた結果を示す。
【0028】
図4図4は、PC-9肺がん細胞を有するマウスモデル(Balb/cヌードマウス)に、化合物Iおよびゲフィチニブをそれぞれ単独で、ならびに付随して投与した場合の抗がん効果を調べた結果を示す。
【0029】
図5図5は、NCI-H1975肺がん細胞を有するマウスモデル(Balb/cヌードマウス)に、化合物Iおよびオシメルチニブをそれぞれ単独で、ならびに付随して投与した場合の抗がん効果を調べた結果を示す。
【0030】
図6-1】図6は、化合物Iを、肺がん、結腸がんおよび乳がんを異種間移植したマウスモデルに単独に投与した場合の抗がん効果(図6a)、ならびに化合物1を、PD-1、PD-L1およびCTLA-4を認識する抗体と付随して投与した場合の肺がん(図6b)および結腸がん(図6c)に対する抗がん効果を調べた結果を示す。
図6-2】図6は、化合物Iを、肺がん、結腸がんおよび乳がんを異種間移植したマウスモデルに単独に投与した場合の抗がん効果(図6a)、ならびに化合物1を、PD-1、PD-L1およびCTLA-4を認識する抗体と付随して投与した場合の肺がん(図6b)および結腸がん(図6c)に対する抗がん効果を調べた結果を示す。
図6-3】図6は、化合物Iを、肺がん、結腸がんおよび乳がんを異種間移植したマウスモデルに単独に投与した場合の抗がん効果(図6a)、ならびに化合物1を、PD-1、PD-L1およびCTLA-4を認識する抗体と付随して投与した場合の肺がん(図6b)および結腸がん(図6c)に対する抗がん効果を調べた結果を示す。
【0031】
図7図7は、化合物1でのBa/F3 EGFR L858R/T790M/C797S細胞株、NCI-H2228細胞株およびCAL-27細胞株の処理後にEGFR発現を測定した結果を示す。
【0032】
図8図8は、Ba/F3 EGFR L858R/T790M/C797S細胞を化合物1およびオシメルチニブを付随して投与した場合の上記[がん]細胞阻害効果を調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明を実施するための最良の形態
一方で、本発明の実施形態は、種々の異なる形態へと改変されてもよく、本発明の範囲は、以下に記載される実施形態に限定されない。さらに、本発明の実施形態は、本発明を当業者により十分に説明するために提供される。さらに、本明細書全体を通じて、ある特定の構成要素を「含む」とは、具体的に逆に述べられなければ他の構成要素が排除されることを意味せず、他の構成要素がさらに含まれ得ることを意味する。
【0034】
本明細書において、「ハロゲン」とは、F、Cl、BrまたはIであり得る。
【0035】
本明細書において、「ハロアルキル」とは、本明細書で定義されるとおりの少なくとも1個のハロゲン原子で置換された炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル(炭化水素)であり得る。ハロアルキルの非限定的な例としては、F、Cl、BrまたはIによって独立して置換された、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチルおよびN-ブチルが挙げられる。
【0036】
本明細書において、「アルキル」とは、炭素原子から構成される直鎖もしくは分枝鎖の非環式の飽和炭化水素を指し得る。-(C1-8アルキル)の代表的な例としては、-メチル、-エチル、-N-プロピル、-N-ブチル、-N-ペンチル、-N-ヘキシル、-N-ヘプチル、およびN-オクチルが挙げられ得る;そして分枝鎖の飽和アルキルとしては、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、-2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどが挙げられ得る。-(C1-8アルキル)は、置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、C1-8アルキル基は、ベンジル基を形成するように、フェニルで置換され得る。
【0037】
本明細書において、「シクロアルキル」とは、非芳香族の飽和または不飽和の炭素環を指し得る。シクロアルキルの非限定的な代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニル、シクロオクチルおよびシクロオクタジエニルが挙げられる。上記シクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよく、1つの実施形態において、上記シクロアルキル基は、C3-8シクロアルキル基であり得る。Cまたはより高次のシクロアルキル基は、2個またはこれより多くの環構造を有してもよく、その具体例は、ビシクロアルキル基であり得る。より具体的には、ビシクロヘプタンが本発明において使用され得る。
【0038】
上記で言及した同種または異種の置換基のうちの少なくとも1つは、同様のまたは異なる位置において置換されてもよく、これらはまた、逐次的に置換されてもよい。ここで「逐次的に」とは、化学式において、1つの置換基が置換され、続いて、別の置換基が逐次的に置換されることを指し、例えば、アルキル基が置換される場合、シクロアルキル基がそのアルキル基において置換され、次いで、そのシクロアルキル基がカルボニル基によって逐次的に置換され、上記化合物は、上記化合物をカルボニルシクロアルキルアルキルと名付けることによって、逐次的に置換されているとして示され得る。
【0039】
本発明は、活性成分として、化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を含む薬学的組成物を提供する。
【0040】
[化学式1]
【0041】
【化2】
【0042】
化学式1において、
【0043】
は、C-Cアルコキシであり得る;
【0044】
およびRは、各々独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC-C10アルキル、またはC-Cシクロアルキルであり得る;そして
【0045】
は、ハロアルキルであり得る。
【0046】
1つの具体的実施形態において、上記Rは、メトキシであり得る;上記Rは、直鎖もしくは分枝鎖のC-Cアルキル、またはC-Cシクロアルキルであり得る;上記Rは、水素であり得る;そしてRは、トリフルオロメチルであり得る。
【0047】
別の具体的実施形態において、上記化学式1によって表される化合物は、(4-((4-(エチルアミノ)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル)アミノ)-3-メトキシフェニル)(4-モルホリノピペリジン-1-イル)メタノンであり得る。
【0048】
本明細書において、化学式1によって表される化合物の薬学的に受容可能な塩は、任意の結晶形態および非晶質形態、またはその水和物、溶媒和物および共結晶を含む群から選択される任意の形態で存在し得ると解釈され得る。
【0049】
本明細書において、「水和物」とは、非共有結合的な分子間力によって結合される化学量論的なまたは非化学量論的な量の水を含む本発明の化合物またはその塩を指し得る。化学式1によって表される本発明の化合物の水和物は、非共有結合的な分子間力によって結合される化学量論的なまたは非化学量論的な量の水を含み得る。上記水和物は、少なくとも1当量の水、好ましくは1~5当量の水を含み得る。このような水和物は、水または水を含む溶媒から、化学式1によって表される本発明の化合物、上記化合物の異性体、またはその薬学的に受容可能な塩を結晶化することによって調製され得る。用語「溶媒和物」とは、非共有結合的な分子間力によって結合される化学量論的なまたは非化学量論的な量の溶媒を含む本発明の化合物またはその塩を指し得る。好ましい溶媒としては、揮発性の溶媒、不揮発性の溶媒、および/またはヒトへの投与に適した溶媒が挙げられる。用語「異性体」とは、同一の化学式または分子式を有するが、構造的にまたは三次元的に異なる本発明の化合物またはその塩を指す。構造異性体、例えば、互変異性体、不斉炭素中心を有するRまたはS異性体を含む立体異性体、幾何異性体(trans、cis)、およびエナンチオマーが、このような異性体の中に含まれる。全てのこのような異性体およびその化合物は、本発明の範囲の中に含まれる。別段説明されなければ、不斉炭素原子に対する実線の結合(-)は、絶対三次元配置を表す、実線のくさび
【化3】
の結合を含んでもよいし、破線のくさび
【化4】
の結合を含んでもよい。
【0050】
本明細書において、用語「EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)に対する標的薬物」とは、EGFR、PD-1、PD-L1およびCTLA-4に対するインヒビターを指し得る。特に、PD-1、PD-L1およびCTLA-4は、免疫チェックポイントに関与するタンパク質であり、このようなタンパク質に対するインヒビターは、免疫チェックポイントインヒビターといわれる。上記標的薬物は、がんを予防および/または処置するにあたって有効なインヒビターであり得、がん処置に関して承認された全ての化合物、がん治療のために臨床試験にある化合物、哺乳動物被験体(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ヒト)においてがんを処置するにあたって有効性を示す化合物、およびがん細胞に対してインビトロで有効性を示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。このような効果を示す多くの化合物は公知である(Lee CCら,(2014) Small-molecule EGFR tyrosine kinase inhibitors for the treatment of cancer, Expert Opinion on Investigational Drugs 23, 1333-1348)。
【0051】
具体的には、上記EGFR標的薬物は、EGFRチロシンキナーゼインヒビター(EGFR TKI)であり得る。例えば、それは、ブリガチニブ、CUDC-101、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、サフィチニブ、バンデタニブ、バラチニブ、テセバチニブ、チルホスチンAG 1478、AZD3759、MTKi-327(JNJ-26483327)、アファチニブ、オルムチニブ(HM61713)、カネルチニブ、CL-387785(EKI-785)、CNX-2006)、ダコミチニブ、ナコチニブ(ASP8273)、ネラチニブ、オシメルチニブ、PD168393、ペリチニブ、ポジオチニブ、ロシレチニブ、TAK285、WZ4002、アリチニブ(ALS-1306; AST-1306)、AV-412(MP-412)、ナザルチニブ(EGF816)およびピロチニブのうちの少なくとも1種であり得る。他のEGFR標的化薬物は、EGFR抗体、具体的には、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))およびパニツムマブ(Vectibix(登録商標))であり得る。
【0052】
PD-1標的化薬物の例としては、抗PD-1抗体であるペンブロリズマブおよびニボルマブが挙げられ、PD-L1標的化薬物の非限定的例としては、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブが挙げられる。CTLA-4標的化薬物の例は、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブであり得る。
【0053】
本発明に従う化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩は、プロテインキナーゼに対するインヒビターとして作用し得る。
【0054】
プロテインキナーゼは、ALK、ALK(C1156Y)、ALK(L1196M)、CLK1、CLK2、CLK3、CLK4、CSNK1D、DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、GAK、JNK1、LRRK2(G2019S)、LTK、MYLK、PAK2、PHKG1、PHKG2、STK33、非リン酸化ABL1、CAMK2D、CAMKK2、CHEK2、CSNK1A1、CSNK1E、ERK5、HUNK、INSR、JAK1(JH2ドメイン-偽キナーゼ)、JNK2、JNK3、LRRK2、MAPKAPK2、PLK4、およびSTK39の少なくとも1つであり得る。
【0055】
さらに、本発明は、がんの予防および/または処置のための薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、活性成分として、ピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含み、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物と付随して投与されることで特徴づけられる薬学的組成物を提供する。
【0056】
がんの処置において、種々の以前の治療法に従って、付随するまたは併用される薬物療法は、生存率の改善、重篤度の低減、再発の遅延もしくは排除、または一次療法(すなわち、EGFR標的化薬物)に対する有害反応の低減のような結果の改善を生じ得る。さらに、このような付随療法において、薬物は、単一薬物療法におけるより少ない用量において、および/またはより短期間にわたって投与され得る。すなわち、治療効果は、低用量および/または短い投与期間ですら最大化され得る。
【0057】
本発明の1つの具体的実施形態において、本発明に従う化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩が、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物と付随して種々のがんに適用された場合に、がん細胞株の成長が、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を単独で投与した場合より短い期間で効果的に阻害され、上記薬物に対する細胞耐性も低減されることが見出された。
【0058】
本明細書において、「がん」は、例えば、白血病、リンパ腫、肉腫、脳がん、脳腫瘍、良性星細胞腫、悪性星細胞腫、下垂体細胞腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、脳幹腫瘍、頭頚部がん、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔/PNS腫瘍、鼻咽頭腫瘍、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔腫瘍、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、甲状腺がん、縦隔腫瘍、食道腫瘍、乳がん、男性乳がん、腹部-骨盤腫瘍、胃がん、肝細胞癌、胆嚢がん、胆道腫瘍、膵臓がん、小腸腫瘍、大腸腫瘍、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎細胞癌、男性生殖器がん、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器がん、子宮がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、腟がん、外陰がん、尿道がんおよび皮膚がんであり得る。本発明の一具体的実施形態において、上記がんは、肺がん、非小細胞肺がん、膵臓がんおよび頭頚部がんであり得る。
【0059】
本発明において、用語「処置」または「治療的」は、病気、状態、不能、損傷もしくは健康上の問題、あるいはそのような状態の発生もしくは進行およびまたは/そのような状態の症状の抑制、遅延、同定、軽減、減弱、制限、低減、阻害、回避もしくは治癒を含む。
【0060】
用語「予防」とは、病気、状態、不能、損傷もしくは健康上の問題、あるいはそのような状態の発生もしくは進行およびまたは/そのような状態の症状にかかる、経験する、罹患するもしくは有するリスクの回避または低減を指す。
【0061】
上記疾患、状態、不能、損傷または健康上の問題の処置または予防は、完全であってもよいし、部分的であってもよい。
【0062】
賦形剤、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤および矯味矯臭剤などをさらに含むことによって、本発明の薬学的組成物は、通常の方法を使用して、錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ剤または他の液体製剤へと製剤化され得る。
【0063】
例えば、本発明の薬学的組成物は、全身におよび/または局所的に作用してもよいし、経口的にまたは非経口的に、すなわち、肺投与経路、鼻内投与、舌下投与、舌投与、頬舌投与、直腸投与、真皮投与、経皮投与、または結膜投与のような種々の経路を通じて、被験体に投与されてもよいことから、[上記薬学的組成物]は、投与経路に適した形態へと製剤化され得る。
例えば、経口投与に適した投与形態は、結晶形態および/または非晶質形態および/または溶解した形態において本発明の化合物を含む製剤であり、例えば、錠剤(例えば、胃液耐性、溶解遅延または不溶性コーティングを使用する、コーティングされたまたはコーティングされていない錠剤)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤もしくはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥調製物、カプセル剤(例えば、硬質または軟質ゼラチンカプセル剤)、糖でコーティングされた錠剤、チュアブル錠(例えば、ソフトチュアブル錠)、粒剤、ペレット、散剤、エマルジョン、懸濁剤、エアロゾルまたは液剤であり得る。
非経口投与は、吸収ステージを(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内または腰椎内投与を通じて)回避することで達成してもよいし、吸収を(例えば、筋肉内、真皮、皮内、皮下、経皮または腹腔内経路を通じて)含めることによって、達成してもよい。
非経口投与に適した投与形態としては、液剤、懸濁剤、エマルジョン、凍結乾燥調製物または注射用の滅菌散剤の形態の調製物が挙げられ得る。
【0064】
さらに、本発明は、がんの予防および/または処置のためのキットであって、上記キットは、活性成分として、化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物;ならびにEGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物を含むキットを提供する。
【0065】
さらに、本発明は、がんの処置および/または予防のための方法であって、上記方法は、薬学的に有効な用量の上記の化合物を、がんの処置および/または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法を提供する。
【0066】
本明細書において、用語「投与」とは、本発明の薬学的組成物を、炎症性疾患を有すると疑われる被験体に導入するために適した方法の使用を指し、投与は、標的組織に達し得る限りにおいて、種々の経路を通じて行われ得る。本明細書において、「薬学的に有効な用量」とは、医療的処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を処置するために十分な用量をいい、上記有効な用量のレベルは、被験体のタイプ、疾患の重篤度、年齢、性別、疾患のタイプ、薬物の活性、薬物感受性、投与の継続時間、投与経路および排出速度、治療の継続時間および付随して使用される薬物、ならびに医療分野に周知の他の要因を含む要因に応じて決定され得る。本発明の組成物は、単一薬物として、または他の薬物に付随して投与されてもよく、市場で販売されている治療剤とともに、逐次的にまたは同時に投与されてもよい。さらに、[上記組成物]は、単一用量または複数用量として投与されてもよい。上記の要因の全てを考慮して有害効果なしに最小量で最大の効果を達成し得る用量を投与することは重要であり、上記用量は、当業者によって容易に決定され得る。本発明の薬学的組成物の投与用量は、患者の状態、年齢、性別および合併症のような種々の要因に応じて、専門家によって決定され得る。本発明の薬学的組成物の活性成分は、優れた安全性を有することから、その決定された投与用量を上回って使用されてもよい。
【0067】
さらに、本発明は、がんの予防および/または処置のための、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物に付随した使用のためのピロロ-ピリジン誘導体化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。具体的には、本発明は、がんの予防および/または処置のための、EGFR(上皮増殖因子レセプター)、PD-1(Programmed cell death protein 1)、PD-L1(Programmed death-ligand 1)およびCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)のうちの少なくとも1種に対する標的化薬物に付随した使用のための化学式1によって表される化合物、上記化合物の異性体、または上記化合物の薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
【0068】
以下において、本発明は、実施形態および実験例を参照しながらさらに詳細に記載される。
【0069】
ただし、以下の実施形態および実験例は、本発明を例示することが意味されるに過ぎず、本発明の範囲は、以下の実施形態および実験例に限定されない。
【実施例
【0070】
<実施形態1>本発明に従う化合物の調製
【0071】
本発明の化合物を、韓国特許登録番号10-1896568に述べられる化合物の調製法に従って調製した。本発明の化合物(1~5)の化学構造、名称およびH1 NMRデータを、以下の表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
<実験例1> 種々のキナーゼに対する本発明に従う化合物の阻害活性の評価
【0074】
本発明の例示化合物の中から選択される化合物1の酵素(キナーゼ)選択性および阻害活性の測定を、DiscoverXに委託し、scanMAXTM Kinase分析パネルを使用して、実験を行った。ここで、酵素を処理するために使用した薬物の濃度は、DMSO中で1μMであった。パーセンテージコントロール(% コントロール)を、以下の方法を使用して決定し、結果を表2に示す。
【0075】
[(例示化合物 - 陽性コントロール)/(陰性コントロール - 陽性コントロール) × 100]
【0076】
ここで、陽性コントロールは、0%のパーセンテージコントロールを示す化合物を指し、陰性コントロールは、DMSOによる100% パーセンテージコントロールを表す。さらに、本発明の酵素選択性に関して、各酵素のパーセンテージコントロールが<41%(すなわち、41%未満)であった場合、[上記化合物]を、このような酵素に関して活性を有すると判断した。
【0077】
【表2】
【0078】
上記の表2に示されるように、化合物1は、種々のプロテインキナーゼに対して阻害活性を示す。
【0079】
<実験例2> 本発明の化合物およびEGFR標的化薬物を使用する付随した処置による肺がん細胞コロニー形成阻害の評価
本発明に従う化合物1およびEGFR標的化薬物を使用する付随した処置下での肺がん細胞コロニー形成阻害を評価するために、2種の肺がん細胞株を使用して、以下の実験を行った。
【0080】
具体的には、PC-9細胞株を、ECACC(European Collection of Authenticated Cell Cultures)から購入し、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するRPMI-1640を使用した。ゲフィチニブ(Selleckchemによって製造される)へのゆっくりとかつ持続した曝露で培養したPC-9GR細胞を、1μmol/L ゲフィチニブで連続して培養した。
【0081】
具体的には、H1975細胞株を、ATCC(American Type Culture Collection)から購入し、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するRPMI-1640を使用した。
【0082】
本発明の化合物1、ハルミン、ゲフィチニブ、オシメルチニブまたはこれらの組み合わせで処理する6~24時間前に、5000個の細胞を、12ウェルプレートの各ウェルの中に配置した。培養培地を、ウェル間で化合物のあるなしを区別して3日ごとに交換し、上記化合物での処置の10日後から開始して上記ウェルをコロニー形成細胞について観察した。残りのコロニー形成細胞を、メタノール(1%)およびホルムアルデヒド(1%)で固定し、次いで、各ウェルの写真を撮る前に、0.5% クリスタルバイオレットで染色した。
【0083】
図1は、撮影した写真を示し、実験化合物で付随してEGFR二重変異肺がん細胞を処置することのコロニー形成阻害効果を評価した結果を表す。図1に示されるように、EGFR TKIであるゲフィチニブまたはオシメルチニブに付随した処置における本発明の化合物1は、それぞれの化合物または参照化合物であるハルミンでの単一処置に対して比較した場合でも、肺がん細胞コロニーの形成を実質的に阻害することが見出された。
【0084】
<実験例3> 非小細胞肺がん細胞株およびEGFR標的化薬物に対して耐性を有する非小細胞肺がん細胞株におけるプロテインキナーゼ発現の比較
【0085】
非小細胞肺がん細胞株およびゲフィチニブ耐性を有する非小細胞肺がん細胞株におけるDYRK1Aの発現を比較するために、ウェスタンブロット試験を行った。上記細胞を、プロテアーゼインヒビターおよびホスファターゼインヒビターを添加した1×RIPA緩衝液で処理し、次いで、回収し、続いて、氷の中で30分間溶解し、14000rpm、4℃で15分間の遠心分離を行った。その上清を単離し、次いで、タンパク質を、Bradfordアッセイを使用して定量した。ウェスタンブロット試験を、同じ量のタンパク質を使用して行った。それぞれの一次抗体と4℃で16時間反応させ、続いて、二次抗体と反応させた。その結果を、LAS500を使用して検出した。
【0086】
その結果において、DYRK1A/B(Y321, 273)およびAkt(S473)は、PC9ヒト由来非小細胞肺がん細胞株と比較して、ゲフィチニブ耐性を有する細胞株においてより活性化されることが見出された(図2)。その結果を通じて、増大した活性を有するプロテインキナーゼが、EGFR標的化薬物(ゲフィチニブ)に対する非小細胞肺がん細胞株の耐性と関連すると予測できる。
【0087】
<実験例4> 本発明に従う化合物およびEGFR標的化薬物で付随して処置したマウスモデルにおける抗がん効果の評価
【0088】
抗がん効果を、PC-9肺がん細胞を有するマウスモデル(Balb/c Nude Mice)に、化合物1、ゲフィチニブおよびオシメルチニブをそれぞれ単独で投与した場合について調べた。
【0089】
上記PC-9細胞株を、NanJing Cobioer Biological Technology Co., Ltd.から購入した。細胞を、10% FBSを含むRPMI-1640中で維持し、37℃の加湿細胞培養インキュベーター中、5% COで培養した。全ての動物実験を、Shanghai Medicilon Inc.の動物実験ガイドライン(Animal Use and Management Guidelines)に従って行った。無菌条件下で、2×10個のPC-9腫瘍細胞(0.1mL, 細胞:Matrigel(登録商標)=1:1)を、皮下投与によって各動物の右腰部に投与した。上記腫瘍が適切なサイズ250mmに達したときに、上記マウスを無作為に群に分け、以下の表3に示されるように処置した。腫瘍サイズおよび動物の体重を1週間に2回測定し、臨床症状を毎日記録した。上記マウスには、直近の体重に従って個々に投与する。腫瘍を、カリパスを使用して、2つの測定値、長さ(a)および幅(b)を使用して測定した。腫瘍容積を、以下のように、腫瘍の2つの測定した直径から個々に計算した: 腫瘍容積(mm)=(a×b)/2。
【0090】
【表3】
【0091】
その結果において、図3および図4に示されるように、EGFR標的化薬物(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)の単独投与の場合と比較した場合、本発明の化合物1の[これらの化合物と]付随した使用は、肺がん(PC-9)細胞を実質的に低減することが見出され、がん細胞再成長速度は減少することが確認され、処置は持続した。すなわち、EGFR標的化薬物での単独処置の場合において、がん細胞の早期の再成長が処置の間に観察されたが、本発明の化合物を伴う処置の場合には、がん細胞の増大が、濃度依存性様式において継続して阻害されることが見出された。これは、本発明の化合物の付随した投与が、EGFR標的化薬物に対するがん細胞耐性(寛容性)に対しても効果を有することを示す。さらに、肺がん細胞に対する抗がん効果は、本発明の化合物1での単独処置に関しては観察されなかったのに対して、EGFR標的化薬物との付随した使用は、EGFR標的化薬物の効果を実質的に改善することが観察された。
【0092】
<実験例5> 本発明に従う化合物およびEGFR標的化薬物での肺がんマウスモデルの付随した処置の抗がん効果の評価
抗がん効果を、NCI-H1975肺がん細胞を有するマウスモデル(Balb/cヌードマウス)に、化合物1およびオシメルチニブをそれぞれ単独で投与した場合に関して調べた。
【0093】
上記NCI-H1975細胞株を、Institute of Biochemistry and Cell Biology(Shanghai Institutes for Biological Sciences, CAS)から購入した。細胞を、10% FBSを含むRPMI-1640中で維持し、37℃の加湿細胞培養インキュベーター中、5% COで培養した。全ての動物実験を、Shanghai Medicilon Inc.の動物実験ガイドラインに従って行った。無菌条件下で、2×10個のPC-9腫瘍細胞(0.1mL, 細胞:Matrigel(登録商標)=1:1)を、皮下投与によって各動物の右腰部に投与した。上記腫瘍が適切なサイズ250mmに達したときに、上記マウスを無作為に群に分け、以下の表3に示されるように処置した。腫瘍サイズおよび動物の体重を1週間に2回測定し、臨床症状を毎日記録した。上記マウスには、直近の体重に従って個々に投与する。腫瘍を、カリパスを使用して、2つの測定値、長さ(a)および幅(b)を使用して測定した。腫瘍容積を、以下のように、腫瘍の2つの測定した直径から個々に計算した: 腫瘍容積(mm)=(a×b)/2。
【0094】
【表4】
【0095】
その結果において、図5に示されるように、EGFR標的化薬物(オシメルチニブ)の単独投与の場合と比較した場合、本発明の化合物1と[上記薬物との]付随した使用は、肺がん(NCI-H1975)細胞を実質的に低減することが見出され、がん細胞再成長速度は減少することが確認され、処置は持続した。すなわち、EGFR標的化薬物での単独処置の場合において、がん細胞の早期の再成長が処置の間に観察されたが、本発明の化合物を伴う処置の場合には、がん細胞の増大が、濃度依存性様式において継続して阻害されることが見出された。これは、本発明の化合物の付随した投与が、EGFR標的化薬物に対するがん細胞耐性(寛容性)に対しても効果を有することを示す。さらに、肺がん細胞に対する抗がん効果は、本発明の化合物1での単独処置に関しては観察されなかったのに対して、EGFR標的化薬物との付随した使用は、EGFR標的化薬物の効果を実質的に改善することが観察された。
【0096】
<実験例6> 肺がん、結腸がんおよび乳がんの異種間移植マウスモデルにおける、本発明に従う化合物での単独処置、ならびにPD-1、PD-L1およびCTLA-4抗体との付随した処置の抗がん効果の評価
化合物1の単独使用、ならびに上記化合物のPD-1、PD-L1およびCTLA-4抗体との付随した使用の有効性を、3LL肺がん、MC38結腸がんおよびEMT6乳がんの異種間移植雌性C57BL/6マウスモデルにおいて評価した。
【0097】
37℃の5% CO 加湿細胞培養インキュベーター中で、上記3LL細胞は、Hams F10:L15=3:7培養培地中で培養し、上記EMT-6細胞は、Waymouth’s MB 752/1培養培地中で培養し、上記MC38細胞は、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するDMEM培養培地中で培養した。マウスPD-1抗体(BE-0146)、PD-L1抗体(BE-0101)、およびCTLA-4抗体(BE-0131)を、BioXcellから購入した。
【0098】
全ての動物試験は、WuXi AppTec.を介して行った。全ての動物試験において、化合物1を、以下の表5に示されるように、QDおよびBIDによって、45mg/kg、60mg/kg、75mg/kgで処置し、付随効果のためのPD-1、PD-L1およびCTLA-4抗体は、IPおよびBIWによって10mg/kgで処置した。
【0099】
その結果において、化合物1での単独処置は顕著でない腫瘍抑制効果を有したが、PD-1、PD-L1およびCTLA-4抗体による改善された付随の効果が観察された(図6a~6c)。
【0100】
【表5】
【0101】
<実験例7> EGFR変異細胞株および種々のがん細胞株において本発明に従う化合物によるEGFR発現阻害の確認
【0102】
化合物1での処置後にEGFR発現を調べる実験として、Ba/F3 EGFR L858R/T790M/C797S、NCI-H2228およびCAL-27細胞株、ならびにウェスタンブロットまたはホスホアレイを使用して試験を行った。
【0103】
上記Ba/F3 EGFR L858R/T790M/C797S細胞株に関して、DSMZから購入したBa/F3未処理細胞を、リポフェクタミンを使用して、EGFR L858R/T790M/C797S血漿DNAでトランスフェクトし、2週間にわたる1μg/ml ピューロマイシンを使用して選択した細胞株を使用した。ここで、使用した培養培地は、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するRPMI-1640であった。NCI-H2228およびCAL-27細胞株は、ATCCから購入し、培養のために、NCI-H2228については、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するRPMI-1640を使用した一方で、CAL-27については、10% FBSおよび1% ペニシリン ストレプトマイシンを有するDMEMを使用した。
【0104】
化合物1を、0.5μM、1.2μMおよび5μMの最終濃度まで添加し、続いて、4時間または24時間にわたって培養した。必要な場合、培養を、30μg/mL濃度のシクロヘキサミンとともに1時間行い、続いて、100ng/mL濃度の15分間のEGF処理を行った。ホスホアレイ実験のために、DYRK1a siRNAを、30nM濃度でHEK293T細胞と48時間反応させ、上記細胞におけるDYRK1a発現の阻害を確認した。これらを、主要実験のためのコントロールとして使用した。Cal-27細胞を、30nM DYRK1a siRNAおよび2μMの化合物1で48時間処理し、次いで、タンパク質を上記細胞から抽出して、実験を行った。
【0105】
その結果において、図7に示されるように、化合物1での処理に伴うEGFR発現の低減が、Ba/F3 EGFR L858R/T790M/C797S細胞、NCI-H2228細胞およびCAL-27細胞において確認され、p-AKT(S473)およびp-Erk 1/2(T202/Y204)の低減が、NCI-H2228細胞において確認された。siDYRK1Aおよびp-EGFR(Y-1086)の発現の低減も、CAL-27細胞において確認された。
【0106】
<実験例8> EGFR変異細胞株における本発明に従う化合物およびEGFR標的化薬物の付随した使用の効果
【0107】
Ba/F3 EGFR L858R/T790M/C797S細胞における化合物1およびオシメルチニブの付随した使用の効果を確認するために、細胞を、サンプルの処理の前に、96ウェルプレートの中でおよそ2000細胞まで16~24時間培養した。ここで、化合物1のコントロールとして、ハルミン(DYRK1Aインヒビターとして公知)を使用した。上記細胞を、段階希釈した化合物を使用して72時間にわたって処理した。上記化合物に関する細胞活性阻害結果を、celltitergloを使用して測定した。
【0108】
その結果において、図8に示されるように、化合物1での処理は、同じ量のハルミンでの処理と比較して、改善された細胞増殖阻害効果を示した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
【国際調査報告】