(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】エストロゲン受容体アルファ阻害剤の経口剤形を用いて癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20220728BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220728BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20220728BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220728BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K9/20
A61K9/36
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/04
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569410
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020033292
(87)【国際公開番号】W WO2020242795
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 2019年5月15日 ウェブページのURL https://meetinglibrary.asco.org/record/175669/abstract
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ジャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウー, ナタリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】リムクナス, ヴィクトリア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076AA54
4C076AA58
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF04
4C076FF23
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086GA13
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、ヒトERαの阻害剤を含む医薬組成物、及びERα阻害剤を使用した癌治療の方法に関する。特に、本明細書に記載されているのは、阻害剤が、それを必要としているヒト対象に有効及び安全に投与されることを可能にする規定された薬物動態(PK)プロファイルを有するH3B-6545の用量である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形であって、
前記式Iが、構造
【化1】
によって表される(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、ヒト対象に1日1回経口投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて測定すると、約1ng/mL~約4ng/mLの平均C
maxを達成するように製剤化されている、経口剤形。
【請求項2】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて約2ng/mL~約4ng/mLである、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項3】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて約3ng/mL~約4ng/mLである、請求項2に記載の経口剤形。
【請求項4】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
3ng/mLの80%~125%から、
3.5ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項5】
約2時間~約7時間で、前記平均C
maxの平均t
maxを達成するように製剤化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項6】
約3時間~約7時間で、前記平均C
maxの平均t
maxを達成するように製剤化されている、請求項5に記載の経口剤形。
【請求項7】
約3.5時間~約4.5時間で、前記平均C
maxの平均t
maxを達成するように製剤化されている、請求項6に記載の経口剤形。
【請求項8】
約5.5時間~約6.5時間で、前記C
maxの平均t
maxを達成するように製剤化されている、請求項6に記載の経口剤形。
【請求項9】
式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項10】
式Iの約450mgの総当量を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項11】
i)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形であって、
前記式Iが、構造
【化2】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、ヒト対象に1日1回経口投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約44h*ng/mLの平均AUC
0-24を達成するように製剤化されている、経口剤形。
【請求項12】
前記平均AUC
0-24が、前記剤形中の式Iの各mgについて約27h*ng/mL~約44h*ng/mLである、請求項11に記載の経口剤形。
【請求項13】
前記平均AUC
0-24が、前記剤形中の式Iの各mgについて、
30h*ng/mLの80%~125%から、
44h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項11に記載の経口剤形。
【請求項14】
式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項11に記載の経口剤形。
【請求項15】
式Iの約450mgの総当量を含む、請求項11に記載の経口剤形。
【請求項16】
i)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形であって、
前記式Iが、構造
【化3】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、ヒト対象に1日1回投与される場合、約8時間~約22時間の、前記剤形中の式Iの平均t
1/2を達成するように製剤化されている、経口剤形。
【請求項17】
前記平均t
1/2が、約8時間~約12時間である、請求項16に記載の経口剤形。
【請求項18】
前記平均t
1/2が、約9時間~約11時間である、請求項17に記載の経口剤形。
【請求項19】
式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項16に記載の経口剤形。
【請求項20】
式Iの約450mgの総当量を含む、請求項16に記載の経口剤形。
【請求項21】
i)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形であって、
前記式Iが、構造
【化4】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、ヒト対象に1日1回投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約21h*ng/mL~約67h*ng/mLの平均AUC
0-infを達成するように製剤化されている、経口剤形。
【請求項22】
平均AUC
0-infが、前記剤形中の式Iの各mgについて約29h*ng/mL~約67h*ng/mLである、請求項21に記載の経口剤形。
【請求項23】
前記平均AUC
0-infが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
36h*ng/mLの80%~125%から、
57h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項21に記載の経口剤形。
【請求項24】
式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項21に記載の経口剤形。
【請求項25】
式Iの約450mgの総当量を含む、請求項21に記載の経口剤形。
【請求項26】
i)式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形であって、
前記式Iが、構造
【化5】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、ヒト対象に1日1回投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約41h*ng/mLの平均AUC
0-tを達成するように製剤化されている、経口剤形。
【請求項27】
前記平均AUC
0-tが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
27h*ng/mLの80%~125%から、
36h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項26に記載の経口剤形。
【請求項28】
式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項26に記載の経口剤形。
【請求項29】
式Iの約450mgの総当量を含む、請求項26に記載の経口剤形。
【請求項30】
i)式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、及びステアリン酸マグネシウムを含む内部相、並びに
ii)ステアリン酸マグネシウムを含む外部相
を含むカプセル剤である、請求項1、11、16、21、及び26のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項31】
前記カプセル剤が、ヒプロメロースカプセル剤である、請求項30に記載の経口剤形。
【請求項32】
式Iの一HCl塩形態を含む、請求項31に記載の経口剤形。
【請求項33】
i)式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、コロイド状二酸化ケイ素、及び精製水を含む内部相、
ii)微結晶セルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含む外部相、並びに
iii)ヒプロメロース、タルク、二酸化チタン、プロピレングリコール、酸化鉄(III)、及び精製水を含むフィルムコーティング
を含む錠剤である、請求項1、11、16、21、及び26のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項34】
式Iの一HCl塩形態を含む、請求項33に記載の経口剤形。
【請求項35】
ヒト対象において癌を治療する方法であって、
i)治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含み、
前記式Iが、構造
【化6】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記治療的有効量が、約100mg~600mgの範囲の単回1日用量であり、
前記経口剤形が、前記剤形中の式Iの各mgについて、前記対象の血液血漿中で約1ng/mL~約4ng/mLの平均C
maxを有する、方法。
【請求項36】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて約2ng/mL~約4ng/mLである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて約3ng/mL~約4ng/mLである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記平均C
maxが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
3ng/mLの80%~125%から、
3.5ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記剤形が、約2時間~約7時間の、式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記剤形が、約3時間~約7時間の、式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記剤形が、約3.5時間~約4.5時間の、式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記剤形が、約5.5時間~約6.5時間の、式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ヒト対象において癌を治療する方法であって、
i)治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含み、
前記式Iが、構造
【化7】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約44h*ng/mLの平均AUC
0-24を有する、方法。
【請求項44】
前記平均AUC
0-24が、前記剤形中の式Iの各mgについて約27h*ng/mL~約44h*ng/mLである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記平均AUC
0-24が、前記剤形中の式Iの各mgについて、
30h*ng/mLの80%~125%から、
44h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
ヒト対象において癌を治療する方法であって、
i)治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含み、
式Iで示される前記化合物が、構造
【化8】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、約8時間~約22時間の平均t
1/2を有する、方法。
【請求項47】
前記平均t
1/2が、約8時間~約12時間である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記平均t
1/2が、約9時間~約11時間である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ヒト対象において癌を治療する方法であって、
i)治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含み、
前記式Iが、構造
【化9】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、前記剤形中の式Iの各mgについて約21h*ng/mL~約67h*ng/mLの平均AUC
0-infを有する、方法。
【請求項50】
平均AUC
0-infが、前記剤形中の式Iの各mgについて約29h*ng/mL~約67h*ng/mLである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記平均AUC
0-infが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
36h*ng/mLの80%~125%から、
57h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
ヒト対象において癌を治療する方法であって、
i)治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と
を含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含み、
前記式Iが、構造
【化10】
によって表される、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、
前記経口剤形が、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約41h*ng/mLの平均AUC
0-tを有する、方法。
【請求項53】
前記平均AUC
0-tが、前記剤形中の式Iの各mgについて、
27h*ng/mLの80%~125%から、
36h*ng/mLの80%~125%の範囲にある、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記剤形が、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む、請求項35、43、46、49及び52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記剤形が、式Iの約200mg~約600mgの総当量を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記剤形が、式Iの約300mg~約600mgの総当量を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記剤形が、式Iの約450mgの総当量を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記経口剤形が、
i)式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、及びステアリン酸マグネシウムを含む内部相、並びに
ii)ステアリン酸マグネシウムを含む外部相
を含むカプセル剤である、請求項24、32、35、38及び41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記カプセル剤が、ヒプロメロースカプセル剤である、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
式Iの一HCl塩形態を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記経口剤形が、
i)式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及び精製水を含む内部相、
ii)微結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを含む外部相、並びに
iii)ヒプロメルロース、タルク、二酸化チタン、プロピレングリコール、酸化鉄(III)、及び精製水を含むフィルムコーティング
を含む錠剤である、請求項24、32、35、38及び41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
式Iの一HCl塩形態を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記癌が乳癌である、請求項35、43、46、49及び52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記乳癌がERα-陽性乳癌である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記乳癌が野生型ERαを発現する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記乳癌が変異体ERαを発現する、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記経口剤形が1日1回投与される、請求項35、43、46、49及び52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記経口剤形が1日1回投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
前記経口剤形が、絶食状態のヒトに投与される、請求項35、43、46、49及び52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記経口剤形が、摂食状態のヒトに投与される、請求項35、43、46、49及び52のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2019年5月24日に出願された、米国仮特許出願第62/852,751号及び2019年5月28日に出願された米国仮特許出願第62/853,498号の利益を主張する。これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
[0002]エストロゲン受容体(本明細書では、以後ER)シグナル伝達の変更は、種々の種類の乳癌の発症において重要な役割を果たすことが知られている。ERシグナル伝達の活性化は、典型的には、内在性ステロイドホルモン、例えばエストラジオールの発現、及び細胞内に貫通し、細胞内ERと相互作用する能力に依存している。一度活性化すると、ERシグナル伝達は、種々の細胞プロセス、例えば増殖、血管新生、代謝及び細胞生存を促進する(Toss A.et al.2017,Int.J.Mol.Sci.,18(1):85)。腫瘍形成の間、異なるER内で発症するための変異が生じることは一般的であり、ここで、前記変異は、リガンド非依存的に、ERシグナル伝達経路を活性化する能力を癌細胞に付与する。乳癌の腫瘍形成に関連することが知られている特定のERである、ERαは、全乳癌の50%に存在するホルモン調節転写因子である(Lumachi F.,Curr.Med Chem.2013;20:596-604)。
【0003】
[0003]ホルモン調節転写因子である、エストロゲン受容体アルファ(ERα、ESR1)の発現は、乳癌の約70%において生じる。Lumachi F.,Curr.Med.Chem.2013;20:596-604。多数の対ERα治療が開発されている。ERαアンタゴニストに対する耐性は、いくつかの機構を伴い、臨床においては一般的である。1つの機構である、ERα変異は、内分泌治療耐性転移の20~40%において生じる。Li S,Cell Rep.2013;4:1116-1130、Robinson DR,Nat Genet.2013;45:1446-1451、Toy W,Nat Genet.2013;45:1439-1445、Chandarlapaty S,JAMA Oncol.2016;2:1310-1315、Spoerke JM,Nat Commun.2016;7:11579。ERαの変異は、ERα経路のリガンド非依存的な活性化をもたらす。
【0004】
[0004]内分泌治療は、乳癌を治療又は治療するのに使用される治療方法の最先端である。内分泌治療は、特定の疾患を治療するために体内のホルモンの発現又は機能を促進又は阻害することを伴う治療である。ERαを標的とする内分泌治療は、乳癌の長期治療方法としては効果的でないことが示されており、これは、ERαを発現する全乳癌の20%~40%は、長期間の内分泌治療の後に変異を獲得し、前記変異により受容体が慣用的な内分泌治療に対して非応答性になるためである(Robinson,D.R.,Nat.Genet.2013;45:1446-1451)。このため、癌を内分泌治療に対して耐性にするERαの変異アイソフォームを効果的に標的化することができる新規の治療方法を開発することが、化学治療の分野では必要とされている。
内分泌治療耐性乳癌のための新規の治療方法の開発を追求する間に、選択的エストロゲン受容体共有結合アンタゴニスト(Selective Estrogen Receptor Covalent Antagonists)(本明細書では、以後SERCA)と呼ばれる、新規のクラスのERα阻害剤が発見された。SERCAは、他の核ホルモン受容体には存在しないER上のシステイン残基を標的化することにより、ERシグナル伝達を不活化する(Puyang,X.,Cancer Discov.2018,8(9):1176-1193)。この期間で明らかになったSERCAの1つは、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、これは下記式I:
【化1】
により示される。
【0005】
[0005](E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドの遊離塩基形態は、H3B-6545と称する場合がある。H3B-6545は、受容体を分解することなく、野生型ERα(ERα-WT)及び変異体ERα(ERα-mut)の両方を不活化する共有結合低分子阻害剤である。H3B-6545は、ERαのCys530残基と相互作用することができ、これにより、受容体が、受容体のリガンド非依存的なERαシグナル伝達形質導入を促進する受容体の能力を阻害する特有の構造を引き起こす(Puyang,X.,Cancer Discov.2018,8(9):1176-1193)。H3B-6545は、種々の乳癌細胞株及びヌードマウスにおける患者由来の異種移植モデルにおいて強力な化学治療性質を発揮することが示されている(Smith,P.G.,et al.,Cancer Res.2017)。
【0006】
[0006]H3B-6545は、インビトロ及びインビボモデルにおいて有効であることが示されているが、治療を必要としているヒト乳癌患者にH3B-6545がどのように投与されるべきかについては、未だに決定されていない。したがって、H3B-6545が、それを必要としているヒト対象により有効及び安全に投与されることを可能にする前記阻害剤の製剤及び投与レジメンを提供することが必要とされている。薬物動態的(以下PK)な結果及びその後のPKプロファイルを特徴づけることにより、ヒト乳癌治療方法におけるその一般的な使用が可能になる。
【簡単な概要】
【0007】
[0007]実施形態は、例えば、式Iにより示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を提供してもよく、ここで、前記式Iは、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、ヒト対象に1日1回投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて測定すると、約1ng/mL~約4ng/mLの平均Cmaxを達成するように製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて約2ng/mL~約4ng/mLである。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて約3ng/mL~約4ng/mLである。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて、3ng/mLの80%~125%から、3.5ng/mLの80%~125%の範囲にある。
【0008】
[0008]さらなる実施形態において、剤形は、約2時間~約7時間で前記平均Cmaxの平均tmaxを達成するように製剤化されている。さらなる実施形態において、剤形は、約3時間~約7時間で、前記平均Cmaxの平均tmaxを達成するように製剤化されている。さらなる実施形態において、剤形は、約3.5時間~約4.5時間で、前記平均Cmaxの平均tmaxを達成するように製剤化されている。さらなる実施形態において、剤形は、約5.5時間~約6.5時間で、前記平均Cmaxの平均tmaxを達成するように製剤化されている。
【0009】
[0009]上述のいくつかの実施形態において、剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。いくつかの実施形態において、剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0010】
[0010]さらなる実施形態は、式Iにより示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を提供し、ここで、前記式Iは、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、ヒト対象に1日1回経口投与される場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約44h*ng/mLの平均AUC0-24を達成するように製剤化されている。いくつかの実施形態において、前記平均AUC0-24は、前記剤形中の式Iの各mgについて約27h*ng/mL~約44h*ng/mLである。いくつかの実施形態において、前記平均AUC0-24は、前記剤形中の式Iの各mgについて、30h*ng/mLの80%~125%から、44h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。いくつかの実施形態において、前記剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。いくつかの実施形態において、前記剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0011】
[0011]さらなる実施形態は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を提供し、ここで、式Iで示される前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、ヒト対象に1日1回経口投与した場合、約8時間~約22時間の、前記剤形中の式Iの平均t1/2を達成するように製剤化されている。さらなる実施形態において、平均t1/2は、約8時間~約12時間である。さらなる実施形態において、平均t1/2は、約9時間~約11時間である。いくつかの実施形態において、前記剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。いくつかの実施形態において、前記剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0012】
[0012]さらなる実施形態は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を提供し、ここで、式Iで示される前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、ヒト対象に1日1回経口投与した場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約21h*ng/mL~約67h*ng/mLの平均AUC0-infを達成するように製剤化されている。いくつかの実施形態において、平均AUC0-infは、前記剤形中の式Iの各mgについて約29h*ng/mL~約67h*ng/mLである。いくつかの実施形態において、平均AUC0-infは、前記剤形中の式Iの各mgについて、36h*ng/mLの80%~125%から、57h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。いくつかの実施形態において、前記剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。さらなる実施形態において、剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0013】
[0013]なおさらなる実施形態は、本明細書に記載する薬物動態的値を達成するための手段を有する本明細書に記載する剤形を含み得る。
【0014】
[0014]さらなる実施形態は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を提供し、ここで、式Iの前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、ヒト対象に1日1回経口投与する場合、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約41h*ng/mLの平均AUC0-tを達成するように製剤化されている。さらなる実施形態において、前記平均AUC0-tは、前記剤形中の式Iの各mgについて、27h*ng/mLの80%~125%から、36h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。さらなる実施形態において、前記剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。さらなる実施形態において、前記剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0015】
[0015]さらなる実施形態において、以前に報告されている剤形は、式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、及びステアリン酸マグネシウムを含む内部相、並びにステアリン酸マグネシウムを含む外部相を含むカプセル剤であってもよい。いくつかの実施形態において、カプセル剤は、ヒプロメロースカプセル剤である。いくつかの実施形態において、カプセル剤は、式Iの一HCl塩形態を含む。
【0016】
[0016]以前に報告されているいくつかの実施形態において、前記経口剤形は、式I又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、コロイド状二酸化ケイ素及び精製水を含む内部相、微結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを含む外部相、並びにヒプロメロース、タルク、二酸化チタン、プロピレングリコール、酸化鉄及び精製水を含むフィルムコーティングを含む錠剤である。さらなる実施形態において、錠剤は、式Iの一HCl塩形態を含む。
【0017】
[0017]さらなる実施形態は、治療学的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含む、ヒト対象において癌を治療する方法を提供し、ここで、前記式Iは、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記治療学的有効量は、約100mg~600mgの範囲の単回1日用量であり、前記経口剤形は、前記剤形中の式Iの各mgについて、前記対象の血液血漿中で約1ng/mL~約4ng/mLの平均Cmaxを有する。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて約2ng/mL~約4ng/mLである。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて約3ng/mL~約4ng/mLである。いくつかの実施形態において、前記平均Cmaxは、前記剤形中の式Iの各mgについて、3ng/mLの80%~125%から、3.5ng/mLの80%~125%の範囲にある。いくつかの実施形態において、前記剤形は、約2時間~約7時間の、式Iの前記平均Cmaxの平均tmaxを有する。いくつかの実施形態において、前記剤形は、約3時間~約7時間の式Iの前記平均Cmaxの平均tmaxを有する。いくつかの実施形態において、前記剤形は、約3.5時間~約4.5時間の式Iの前記平均Cmaxの平均tmaxを有する。いくつかの実施形態において、前記剤形は、約5.5時間~約6.5時間の式Iの前記平均Cmaxの平均tmaxを有する。
【0018】
[0018]さらなる実施形態は、治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含む、ヒト対象において癌を治療する方法を提供してもよく、ここで、式Iで示される前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約44h*ng/mLの平均AUC0-24を有する。さらなる実施形態において、前記平均AUC0-24は、前記剤形中の式Iの各mgについて約27h*ng/mL~約44h*ng/mLである。さらなる実施形態において、前記平均AUC0-24は、前記剤形中の式Iの各mgについて、30h*ng/mLの80%~125%から、44h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。
【0019】
[0019]さらなる実施形態は、治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含む、ヒト対象において癌を治療する方法を提供し、ここで、式Iの前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、約8時間~約22時間の平均t1/2を有する。いくつかの実施形態において、前記平均t1/2は、約8時間~約12時間である。いくつかの実施形態において、前記平均t1/2は、約9時間~約11時間である。
【0020】
[0020]さらなる実施形態は、治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形をヒト対象に投与するステップを含む、ヒト対象において癌を治療する方法を提供し、ここで、式Iの前記化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、前記剤形中の式Iの各mgについて約21h*ng/mL~約67h*ng/mLの平均AUC0-infを有する。いくつかの実施形態において、前記平均AUC0-infは、前記剤形中の式Iの各mgについて約29h*ng/mL~約67h*ng/mLである。いくつかの実施形態において、平均AUC0-infは、前記剤形中の式Iの各mgについて、36h*ng/mLの80%~125%から、57h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。
【0021】
[0021]さらなる実施形態は、治療的有効量の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形を前記対象に投与するステップを含む、ヒト対象において癌を治療する方法を提供し、ここで、式Iの化合物は、(E)-N,N-ジメチル-4-[2-[5-[(Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-2H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エニル]ピリジン-2-イル]オキシエチルアミノ]ブタ-2-エナミドであり、前記経口剤形は、前記剤形中の式Iの各mgについて約16h*ng/mL~約41h*ng/mLの平均AUC0-tを有する。さらなる実施形態において、平均AUC0-tは、前記剤形中の式Iの各mgについて、27h*ng/mLの80%~125%から、36h*ng/mLの80%~125%の範囲にある。
【0022】
[0022]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、剤形は、式Iの約100mg~約600mgの総当量を含む。他の実施形態において、剤形は、式Iの約200mg~約600mgの総当量を含む。他の実施形態において、前記剤形は、式Iの約300mg~約600mgの総当量を含む。他の実施形態において、前記剤形は、式Iの約450mgの総当量を含む。
【0023】
[0023]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、経口剤形は、式Iの化合物又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状無水シリカ、及びステアリン酸マグネシウムを含む内部相、並びにステアリン酸マグネシウムを含む外部相を含むカプセル剤である。いくつかの実施形態において、カプセル剤は、ヒプロメロースカプセル剤である。いくつかの実施形態において、カプセル剤は、式Iの一HCl塩形態を含む。
【0024】
[0024]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、経口剤形は、式Iの化合物又は薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、コロイド状二酸化ケイ素、及び精製水を含む内部相、微結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを含む外部相、並びにヒプロメロース、タルク、二酸化チタン、プロピレングリコール、酸化鉄、及び精製水を含むフィルムコーティングを含む錠剤である。いくつかの実施形態において、錠剤は、式Iの一HCL塩形態を含む。
【0025】
[0025]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、癌は乳癌である。いくつかの実施形態において、乳癌はERα-陽性乳癌である。いくつかの実施形態において、乳癌は野生型ERαを発現している。いくつかの実施形態において、乳癌は変異体ERαを発現している。
【0026】
[0026]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、前記経口剤形は、1日1回投与される。いくつかの実施形態において、前記経口剤形は、絶食状態のヒトに投与される。いくつかの実施形態において、前記経口剤形は、摂食状態のヒトに投与される。
【0027】
[0027]実施形態は、化合物H3B-6545:
【0028】
【0029】
[0029]又はその薬学的に許容される塩を用いて患者を治療する方法であって、患者の血液において変異体アレル頻度の1つ又は複数の低下が観察されるかどうかを特定するステップ、及び前記低下が観察される場合にその患者を選択するステップ、及び選択した患者に治療的有効量のH3B-6545又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、方法を提供する。変異体アレル頻度は、分数又はパーセント比率として表される、集団で特定の位置における変異体アレル(遺伝子のバリアント)の相対頻度である。
【0030】
[0030]H3B-6545は、米国特許第9,796,683号に報告されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
[0031]本明細書で報告されているいくつかの実施形態において、H3B-6545の薬学的に許容される塩は、H3B-6545のHCl塩である。
【0032】
[0032]いくつかの実施形態において、変異体アレル頻度の低下は、PIK3CA、ESR1、TSC1、TP53、FGFR1、CCND1、ARID1A、POLE、FGF19、MET、NOTCH3、FGF3、AKT1、KRAS、MYC、ERBB2、ERBB3、FGFR3、PMS2、PTEN、RB1、BRAF、MDM2、ATR、ATRX、BRCA2、SETD2、ATM、FANCA、JAK2、NF1、SLX4、及びSMAD4からなる群から選択される1つ又は複数のアレルにおいて観察される。
【0033】
[0033]さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の低下は、AKT1において観察される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすAKT1変異位置は、E17である。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすAKT1変異は、E17Kである。
【0034】
[0034]さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の低下は、ESR1において観察される。なおさらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすESR1変異位置は、E380、D538、L536、S463、及びY537からなる群のうちの1つ又は複数のメンバーから選択される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすESR1変異は、E380Q、D538G、L536H、L536P、L536R、S463P、Y537C、Y537N、及びY537Sからなる群のうちの1つ又は複数のメンバーから選択される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすESR1変異はS463Pである。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすESR1変異は、Y537Nである。
【0035】
[0035]さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の低下は、PIK3CAにおいて観察される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすPIK3CA変異位置は、E542、E545、及びH1047からなる群のうちの1つ又は複数のメンバーから選択される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の低下をもたらすPIK3CA変異は、E542K、E545K、H1047L、及びH1047Rからなる群のうちの1つ又は複数のメンバーから選択される。
【0036】
[0036]さらなる実施形態は、化合物H3B-6545
【0037】
【0038】
[0038]又はその薬学的に許容される塩による治療を受けている患者から化合物H3B-6545又はその薬学的に許容される塩による治療を停止する方法であって、患者の血液において変異体アレル頻度の1つ又は複数の上昇が観察されるかどうかを特定するステップ、及び前記上昇が観察される場合は、患者の治療を停止するステップを含む、方法を提供し得る。
【0039】
[0039]いくつかの実施形態において、変異体アレル頻度の上昇は、PIK3CA、ESR1、TSC1、TP53、FGFR1、CCND1、ARID1A、POLE、FGF19、MET、NOTCH3、FGF3、AKT1、KRAS、MYC、ERBB2、ERBB3、FGFR3、PMS2、PTEN、RB1、BRAF、MDM2、ATR、ATRX、BRCA2、SETD2、ATM、FANCA、JAK2、NF1、SLX4、及びSMAD4から選択される1つ又は複数のアレルにおいて観察される。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態において、変異体アレル頻度の上昇は、ESR1において観察される。なおさらなる実施形態において、観察される前記変異体アレル頻度の上昇をもたらすESR1変異位置は、E380、D538、L536、S463、及びY537からなる群から選択される1つ又は複数のメンバーから選択される。さらなる実施形態において、観察される前記変異体アレル頻度の上昇をもたらすESR1変異は、E380Q、D538G、L536H、L536P、L536R、S463P、Y537C、Y537N、及びY537Sからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーから選択される。
【0041】
[0041]さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の上昇はPIK3CAにおいて観察される。なおさらなる実施形態において、観察される前記変異体アレル頻度の上昇をもたらすPIK3CA変異位置は、E542、E545、及びH1047からなる群から選択される。よりさらなる実施形態において、前記変異体アレル頻度の観察の上昇をもたらすPIK3CA変異は、E542K、E545K、H1047L、及びH1047Rからなる群から選択される。さらなる実施形態において、PIK3CA変異はE545Kである。
【0042】
[0042]さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の上昇はAKT1において観察される。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の上昇をもたらすAKT1変異位置はE17である。さらなる実施形態において、観察される変異体アレル頻度の上昇をもたらすAKT1変異はE17Kである。
【0043】
[0043]よりさらなる実施形態において、特定するステップは、患者が化合物H3B-6545:
【化4】
(H3B-6545)
【0044】
[0044]又はその薬学的に許容される塩による治療を少なくとも1回受けた後に行う。
【0045】
[0045]さらなる実施形態において、前記患者は乳癌を有する。なおさらなる実施形態において、前記乳癌はエストロゲン受容体アルファ(ERα)陽性乳癌である。なお、よりさらなる実施形態において、前記ERαは変異を有する。
【0046】
[0046]なおさらなる実施形態において、変異体アレル頻度の上昇は、循環腫瘍DNAにおいて観察される。さらなる実施形態において、変異体アレル頻度の低下は、循環腫瘍DNAにおいて観察される。
【0047】
[0047]本明細書で報告されている文献は参照により組み込まれる。これらの文書が、本文書と対立する場合、本文書が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】実施例3におけるH3B-6545についての平均血漿濃度の経時的なプロファイル(サイクル1、1日目)を示す。予備的なPK分析は、H3B-6545が、100mg~600mgへの血漿曝露の概ね用量に比例した上昇を示すことを示している。t
max及び半減期は、用量及び時間には非依存的であると考えられた。
【
図2】実施例3において報告されているH3B-6545治療の腫瘍応答及び期間を示す。部分奏功、安定奏功、進行性疾患、及び評価不可能が、各腫瘍評価において示されている。矢印は、データカット時に進行している治療を表す。
【
図3】実施例3において報告されている標的病変の直径の合計のパーセント比率変化を示す。
【
図4】液体生検及び組織生検のサンプルセットの概要図を示す。
【
図5】実施例7における患者のベースラインゲノミクスプロファイルを示す。
図5A~
図5Eは、ビーミング(BEAMing)アッセイを示す。
図5A.患者におけるベースラインのESR1及びPIK3CA変異状態、
図5B及び
図5C.ESR1、及びPIK3CA変異のクローン性、
図5D及び
図5E.PIK3CA、及びESR1変異のアミノ酸分布。
【
図5F】オンコマイン(Oncomine)網羅的パネルによって決定される、ベースライン組織生検において見られる変異のオンコプリント(oncoprint)を示す。
【
図6A-6B】実施例7における、組織生検及び液体生検において見られる変異の一致を示す。
図6Aは、組織生検及び液体生検変異のアレル頻度分布及び一致を示す。
図6Bは、組織生検及び液体生検の変異の一致の概要表である。
【
図7A-7C】H3B-6545に対する総合最良効果と相関するctDNA動態を示す。AF=アレル頻度、C=サイクル、D=日、PD=進行性疾患、PR=部分奏功、SD=安定疾患。点線は、ddPCRアッセイLODを表す。
図7Aは、個別に色付けした各患者についてのAFベースライン/C2D1の比率を示す。1人の患者が、複数の変異を有していてもよい。
図7B及び
図7Cは、進行性疾患(B) vs 部分奏功(C)を有する患者における例示的なctDNA動態を示す。
【詳細な説明】
【0049】
[0055]定義
【0050】
[0056]本明細書における、「a」、「an」、及び「the」という冠詞の使用は、本明細書で特に示されない、又は文脈に明確に矛盾することがない限り、単数及び複数の両方をカバーすると考えられる。例えば、「崩壊剤(a disintegrant)」という用語は、本明細書に記載する製剤に含まれる、又は製剤における使用に適切な1つ又は複数の崩壊剤を指す。同様に、「治療的量(a therapeutic amount)」という用語は、前記剤形に含まれる、又は剤形における使用に適切な1つ又は複数の治療的量を指す。
【0051】
[0057]「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に述べられていない限り、開放用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」ことを意味する)。さらに、「含む(comprising)」、又は他の開放端用語を一実施形態において使用する場合はいかなる場合であっても、同実施形態は、中間的な用語「から本質的になる」、又は閉鎖用語「からなる」を使用してより狭い範囲で特許請求し得ることは理解されるべきである。
【0052】
[0058]「生物学的に同等な」、又は「生物学的同等性」という表現は、専門用語であり、一般的に「オレンジブック」として知られる、合衆国保健福祉省により出版されている、治療的同等性評価のある承認医薬品(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations)、第34版、にしたがって定義されることが意図されている。同一の薬剤物質の異なる製剤の生物学的同等性は、薬剤吸収の速度及び程度に関する同等性を伴う。試験製剤の吸収の程度及び速度を、2つの製剤が生物学的に同等であるかどうかを決定するために、参照製剤と比較する。標準的な生物学的同等性試験は、試験薬剤及び参照薬剤の単回用量を多数のボランティア、通常12~24人の健常な正常成人に投与すること、及び次いで経時的に薬剤の血液又は血漿レベルを測定することを含む、広範な試験によってクロスオーバー方法で行う。製剤の、参照製剤との生物学的同等性を確立するための詳細なガイドラインは、FDAジェネリック医薬品部(Office of Generic Drugs)、生物学的同等性課(Division of Bioequivalence)によって公表されている。
【0053】
[0059]本明細書で使用される場合、「平均」という用語は、独立した測定値の集合から決定した幾何学平均を意味する。例えば、独立した測定値は、統計学的に有意な集団から収集してもよい。さらなる例として、薬物動態的なパラメーターを記載するのに使用する場合(例えば「平均Cmax」、「平均AUC0-x」、「平均AUC0-t」、「平均AUC0-inf」、「平均tmax」、又は「平均t1/2」(又は「平均半減期」))、「平均」は、個々の測定値がそれぞれ収集された集団から得た幾何学的な平均薬物動態的な値を指す。したがって、本明細書で使用される場合、剤形は、ヒト対象に投与されてもよく、ここで、前記剤形は、独立して測定した値の集合から得られた平均の薬物動態的な値を有する。
【0054】
[0060]本出願で使用される用語の略語及び定義のリストは以下の通りである。AUC:血漿濃度-時間曲線下面積、AUC0-x:投与後のゼロ時間からx時間まで(例えば、xは12時間又は24時間を表し得る)の血漿濃度-時間曲線下面積、AUC0-t:ゼロ時間から最後の定量化可能な濃度までの時間の血漿濃度-時間曲線下面積、AUC0-inf:ゼロ時間から無限大までの血漿濃度-時間曲線下面積、ANCOVA:分散分析、CI:信頼区間、Cmax:最大薬物濃度、Cx:投与後x時間における血漿濃度、CV:分散係数、LC-MS/MS:液体クロマトグラフィー質量分析/質量分析、MAD:反復投与漸増試験、MTD:最大耐用量、PD:薬力学、PK:薬物動態、RT:反応時間、SAD:単回投与漸増試験、SD:標準偏差、t1/2:終末相消失半減期、tmax:薬剤投与後の最大(ピーク)濃度到達時間。本明細書で使用される場合、t1/2は、薬剤濃度の終末相消失半減期を含み、これは、Cmaxの終末相消失半減期であり得る。本明細書で使用される場合、Cmaxは、ヒト血漿において測定される物質の最大薬剤濃度を含む。
【0055】
[0061]吸収の速度及び程度が、-20%/+25%以下で異なる2つの剤形は一般的に「生物学的に同等」であると考えられる。平均生物学的同等性についての他のアプローチは、試験産物及び参照産物についての測定の平均(集団幾何学平均)の比率についての90%信頼区間の算出を伴う。BEを確立するために、算出される信頼区間は、産物平均の比率について、通常80-125%の範囲内にあるべきである。この一般的なアプローチに加えて、他のアプローチ、例えば(1)薬物動態的なデータの対数変換、(2)シーケンス効果を評価するための方法、及び(3)外れ値を評価するための方法は、生物学的同等性の確立のために有用であり得る。例えば、上記(1)において、信頼区間は、対数変換したPKパラメーターの平均値の差異について、通常80~125%の範囲内にあるべきである。
【0056】
[0062]本明細書で使用される「約」、「ほぼ(approximately)」又は「およそ(approximate)」という用語は、測定可能な値、例えば量、及び時間的な期間等を指す場合、特定の値からの±20%又は10%の変動、より好ましくは5%、よりさらに好ましくは1%、及びなおさらに好ましくは0.1%の変動を含むことを意味し、これはかかる変動が所与の文脈において適切なためである。
【0057】
[0063]用量又は用量範囲が、「式Iの化合物」又は「H3B-6545」、又は「H3B-6545の遊離塩基」のフォーマットで質量又は重量によって言及される場合、当業者は、薬学的に許容される塩として、活性化合物の等価モル量を提供することは、典型的には、化合物単体を投与するよりも大きい質量の塩の投与が必要になることを理解するであろう(すなわち、遊離塩基の量と塩の量は1:1のモル比率を有する)。例えば、「式Iによって示される25mg~50mgの化合物又はその薬学的に許容される塩」という句は、25mg~50mg(エンドポイントを含む)の量の式Iの化合物の遊離塩基、並びに26mg~53mg(エンドポイントを含む)の量の式Iの化合物の一塩酸塩を考慮している。この変換は、例えば、「塩変換係数」、「塩補正係数」又は「効力調整係数」と称し得る。
【0058】
[0064]効力調整係数変換は、i)水和物又は溶媒和物及びii)塩対イオンの両方を有する、式Iの水和物、溶媒和物又は結晶形態として存在する式Iの結晶形態にも適用可能である。さらに、かかる効力調整係数変換は、共結晶溶媒分子及び/又は塩対イオンが、積分又は非積分の化学両論比で結晶形態で存在するかにも適用可能である。したがって、当業者は、異なる効力調整が、H3B-6545の一塩酸塩、H3B-6545の半塩酸塩、又は珍しい比率、例えば1:1.3、1:1.25等についてなされ得ることを理解している。
【0059】
[0065]上述の段落と一致するが、本明細書で使用される場合、式I(又はH3B-6545、H3B-6545の遊離塩基又は本明細書で使用される任意の他のその同義語)「相当」量(例えば、質量、重量、用量等)は、効力調整係数後の任意の塩及び/又は水和物の量を指す。
【0060】
[0066]「H3B-6545薬剤物質」は、米国特許第10,640,483号に報告されているような、H3B-6545の一塩酸塩を指し、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
[0067]本明細書で使用される場合、「ヒト対象」は、「治療を必要としているヒト対象」又は「それを必要としているヒト対象」と互換可能であり、これらは全て乳癌を有するヒト対象又は一般の集団に対して乳癌を発症する危険性が高いヒト対象を指す。それを必要としているヒト対象は、乳癌又は前癌状態を有すると以前に診断又は特定されたことがあるヒト対象であり得る。或いは、それを必要としているヒト対象は、一般の集団に対してかかる障害を発症する危険性が高いヒト対象であり得る(すなわち、一般の集団に対してかかる障害を発症しやすい対象)。それを必要としているヒト対象は、前癌状態を有し得る。
【0062】
[0068]それを必要としているヒト対象は、難治性又は抵抗性の癌(すなわち、治療に対して応答しない、又は未だに応答したことがない癌)を有し得る。対象は、治療の開始時に抵抗性であり得る、又は治療の間に抵抗性になり得る。いくつかの実施形態において、それを必要としている対象は、直近の治療時の寛解後、癌の再発を有する。いくつかの実施形態において、それを必要としている対象は、癌治療のための全ての公知の有効な治療を受け、失敗している。いくつかの実施形態において、それを必要としている対象は、少なくとも1つの事前の治療を受けている。好ましい実施形態において、対象は癌又は癌性状態を有する。
【0063】
[0069]本明細書で使用される場合、「絶食状態」は、投与の前に少なくとも10時間の一晩の絶食を経験している、それを必要としているヒト対象を表す。投与後少なくとも4時間は、食物は許可されるべきではない。薬剤投与の前後1時間以外は、水は許可され得る。
【0064】
[0070]本明細書で使用される場合、「摂食状態」は、少なくとも10時間の一晩の絶食後、30分以内に高脂肪の朝食を取った後、食事の開始の30分以内にH3B-6545の単回投与を受けたヒト対象を表す。水は、薬剤投与の前後1時間以外は所望に応じて許可された。
【0065】
[0071]本明細書で使用される場合、「治療すること(treating)」又は「治療する(treat)」は、疾患、状態又は障害と闘うことを目的とした、ヒト対象の管理及び世話を表し、疾患、状態又は障害の症候若しくは合併症を緩和するため、又はかかる疾患、状態又は障害を除去するための、H3B-6545又はその薬学的に許容される塩、多型、水和物又は溶媒和物の剤形の投与を含む。
【0066】
[0072]H3B-6545又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物は、関連する疾患、状態又は障害を予防するために使用することができる、又は使用してもよい、又はかかる目的のための適切な候補を特定するために使用することができる、又は使用してもよい。本明細書で使用される場合、「予防すること(preventing)」、「予防する(prevent)」、又は「に対して保護すること」は、かかる疾患、状態又は障害の症候又は合併症の発症を軽減又は除去することを表す。
【0067】
[0073]本明細書で使用される場合、「サンプル」は、細胞、組織サンプル、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液及び精液を含むが、これに限定されない)、腫瘍細胞及び腫瘍組織を含むが、これに限定されないヒト対象由来の任意の生体サンプルを意味する。好ましくは、サンプルは、骨髄、末梢血細胞、血液、血漿及び血清から選択される。サンプルは、治療又は試験下において対象により供給され得る。或いは、サンプルは当技術分野の通常の診療によって、医師によって得ることができる。
【0068】
[0074]本明細書で使用される場合、「剤形」という用語は、治療されるヒト対象に対する単位用量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体と連携して、所望の治療的効果を産生すると算出された、活性化合物の所定の量を含む。剤形は、例えば、経口、局所、直腸、膣、静脈内、皮下、筋肉内、眼、経鼻、視覚及び吸入投与を含む投与経路及び適用部位の観点から分類される。或いは、剤形は、例えば、固体、半固体又は液体のような物理学的な形態の観点から分類される。剤形は、例えば、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ又はバイアルを含む種々の形態のうちの任意のものである。「経口剤形」は、口を通してヒト対象に容易に投与される剤形を指す。経口剤形の非限定的な例としては、カプセル剤及び錠剤が挙げられる。単位用量における有効成分の量(例えば、開示されている化合物又はその塩、水和物又は溶媒和物の製剤化)は、有効量であり、関連する特定の治療によって変動する。
【0069】
[0075]本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という句は、確実な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適切な、適正な有益/危険性比率が相応する化合物、材料、組成物、担体及び/又は剤形を指す。
【0070】
[0076]本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に安全、非毒性、及び生物学的若しくは他の点で望ましくないものではない医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的な使用並びにヒトの医薬品使用に許容される賦形剤を含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、1つ及び2つ以上のかかる賦形剤の両方を含む。例えば、本発明の製剤化に使用される薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤又は不活性担体、潤滑剤、結合剤、又はその組合せであり得る。本発明の製剤化に使用される薬学的に許容される賦形剤は、充填剤、抗菌剤、抗酸化剤、固化防止剤、コーティング剤又はその混合物をさらに含み得る。
【0071】
[0077]本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分と、特定の量の特定の成分の組合せによって直接的又は間接的にもたらされる任意の産物とを含む産物を含む。医薬組成物に関するような用語は、有効成分(ここでは、式I又はその薬学的に許容される塩、水和物、及び/又は溶媒和物のうちの任意のもの)と、担体を構成する不活性成分とを含む産物を含むこと、及び任意の2つ以上の成分の組合せ、錯体形成若しくは凝集、又は1つ又は複数の成分の解離、他の種類の反応若しくは相互作用により直接的又は間接的にもたらされる任意の産物を含むことを意図している。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iによって示される化合物(又は薬学的に許容される塩、水和物、及び/又は溶媒和物)を、薬学的に許容される賦形剤と混合することによって調製される任意の組成物を含む。
【0072】
[0078]本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、ヒト対象において治療的効果をもたらし得るH3B-6545の量を指す。治療的有効量は、特定された疾患又は状態を治療、寛解、又は予防し得る、又は、検出可能な治療的効果若しくは阻害効果を示すための量である。効果は、当技術分野で公知の任意のアッセイ方法によって検出し得る。対象についての正確な有効量は、対象の体重、サイズ及び健康、状態の性質及び程度、及び投与のために選択された治療に依存する。所与の状況についての治療的有効量は、臨床医の技術及び判断の範囲内にある日常の実験方法により決定し得る。
【0073】
[0079]好ましい態様において、治療される疾患又は状態は癌である。他の態様において、治療される疾患又は状態は、細胞増殖性障害である。治療的有効量のH3B-6545を剤形で投与し得る。治療的有効量のH3B-6545は、薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び/又は水和物の形態であり得る。
【0074】
[0080]本明細書で使用される場合、「治療的効果」は、任意の種類の医学的な治療の結果であり、その結果は、望ましい、及び有益であると判断される。これは、結果が、治療の予期される、予期されない、又は意図すらされない結果であっても当てはまる。望ましい、又は有益な結果は、細胞シグナル伝達経路の変化の阻害、細胞増殖、好ましくは癌細胞増殖の阻害、細胞死、好ましくは癌細胞死の促進、又は腫瘍の縮小であってもよく、これらは全て重度の有害作用がないことが観察される。腫瘍成長の遅延化、及び好ましくは退縮、及びまた好ましくは癌の完全な退縮を引き起こすことは、治療的効果の他の例である。治療的効果はまた、臨床医又は他の資格のある観察者によって認められる、客観的に特定可能な改善であり得る。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径を参照して測定し得る。腫瘍の直径の減少は、退縮を示す。退縮はまた、治療を停止した後の腫瘍の再発不能によっても示される。
【0075】
[0081]重度の有害作用としては、生命を脅かすもの(例えば肝不全、心調律動の異常、及び特定の種類のアレルギー反応)、持続性又は重大な身体障害又は入院をもたらすもの、又は先天性欠損を引き起こすものが挙げられる。
【0076】
[0082]本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、その酸又は塩基塩を作製することにより親化合物が改変されている、H3B-6545の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、塩基性残基、例えばアミンの鉱物又は有機酸塩、酸性残基、例えばカルボン酸等のアルカリ又は有機塩等が挙げられるが、これに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機又は有機酸から形成される、親化合物の慣用的な非毒性塩又は三級アンモニウム塩が挙げられる。
【0077】
[0083]本明細書で使用される場合、「定量化可能」は、量又は数字的な値として測定、算出又は表すことができることを意味する。定量化可能な血漿濃度は、投与後にヒト対象の血漿内で検出及び測定することができる、H3B-6545の濃度である。定量化可能なAUC生物利用可能性は、セット期間にわたってヒト対象から採取した血漿サンプル中のH3B-6545の血漿濃度を分析することにより算出することができる、ヒト対象の全身循環にアクセスすることができるH3B-6545の画分である。定量化可能な半減期は、H3B-6545の血漿濃度が、H3B-6545の最大の定量化可能な血漿濃度の50%である、検出可能な、又は算出された時間である。上述のPKパラメーターを定量化するのに必要な方法及び材料は、当技術分野の当業者には一般的に知られている。特定の定量化方法は、本出願内で示されている。
【0078】
[0084]本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、化学量論的又は非化学量論的のいずれかの量の溶媒を含む、溶媒付加形態を意味する。
【0079】
[0085]本明細書で使用される場合、「互変異性体」という用語は、平衡状態で存在し、1つの異性体形態から他の形態へ容易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを意味する。
【0080】
[0086]特に記載がなく、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、包含的であると理解される。
【0081】
[0087]本発明の一態様は、それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む剤形を提供し、ここで、前記治療的有効量は、投与後に定量化可能な血漿濃度を達成する。本発明の一実施形態において、剤形は経口剤形である。本発明の他の実施形態において、剤形は固体剤形である。本発明の他の実施形態において、剤形は、固体経口剤形である。さらに他の実施形態において、固体経口剤形は、即時放出経口固体剤形であり得る。経口固体剤形は、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。これらの形態は、例えば内部相及び外部相を含む、複数の相を有し得る。
【0082】
[0088]一実施形態において、剤形は、実質的には水を含まない。この文脈において、「実質的に」水を含まないことは、包装時の製剤の含水量が製剤の総重量の7%未満、5%未満、1%未満、又は0.5%未満であることを意味する。一実施形態において、水の量は、製剤の総重量の0.1~5%(例えば、0.1~1%、又は0.1~0.5%)である。一実施形態において、スプレーコーティングプロセスを介して製造される本発明の製剤中の水の量は、0.5%未満である。
【0083】
[0089]少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤又は不活性担体、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、又はその組合せであり得る。薬学的に許容される賦形剤としてはまた、充填剤、抗菌剤、抗酸化剤、固化防止剤、コーティング剤又はその混合物が挙げられる。
【0084】
[0090]例示的な結合剤としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成ガム、例えばアカシア、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、トラガカント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン、クロスポビドン、コポビドン等)、メチルセルロース、メトセル、アルファ化デンプン(例えば、Colorcon, Ltd.によって販売されている、スターチ(STARCH)1500(登録商標)及びスターチ(STARCH)1500 LM(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース(FMC Corporation、Marcus Hook、PA、USA)、エムデックス(Emdex)、プラスドン(Plasdone)又はその混合物;充填剤、例えば、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、デキストロース、フルクトース、ハチミツ、無水ラクトース、ラクトース一水和物、ラクトース及びアスパルテーム、ラクトース及びセルロース、ラクトース及び微結晶セルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶セルロース;及びグアーガム、糖蜜、スクロース、又はその混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
[0091]例示的な崩壊剤としては、寒天(agar-agar)、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、エキスプロタブ(Explotab))、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム(例えばゲランガム)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプラスドン(ployplasdone)、又はその混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0086】
[0092]例示的な潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル、軽ミネラルオイル、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、コンプリトール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Pruv)、植物系脂肪酸潤滑剤、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油(com oil)及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、W.R.Grace Co.,Baltimore、MD USA)、合成シリカの凝固エアロゾル(Deaussa Co.、Piano、TX USA)、発熱性二酸化ケイ素(CAB-O-SIL、Cabot Co.、Boston、MA USA)又はその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
[0093]例示的なコーティング剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、薬学的な光沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、フタル酸酢酸ポリビニル、シェラック、スクロール、二酸化チタン、カマウバワックス(camauba wax)、微結晶ワックス、ゲランガム、マルトデキストリン、メタクリレート、微結晶セルロース及びカラゲナン又はその混合物を含んでいてもよいが、これに限定されない。
【0088】
[0094]一実施形態において、剤形は、例えば、オパドライ(Opadry)(登録商標)ブルー(OY-LS-20921)、オパドライ(登録商標)ホワイト(YS-2-7063)、オパドライ(登録商標)ホワイト(YS-1-7040)、及びブラックインク(S-1-8106)でコーティングされるコーティングシステム(例えば、オパドライ(登録商標)fxフィルムコーティングシステム)により任意選択で処理され得る固体経口剤形である。
【0089】
[0095]一実施形態において、経口剤形は、治療的有効量のH3B-6545又はその薬学的に許容される塩、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びコロイド状無水シリカを含む内部相を保有するカプセル剤中に構成されている。カプセル剤はまた、ステアリン酸マグネシウムを含む外部相も保有する。
【0090】
[0097]他の実施形態において、カプセル剤はヒプロメロースであり、赤色酸化鉄及び二酸化チタンでさらに構成されている。
【0091】
[0098]他の実施形態において、経口剤形は、カプセル剤の総重量当たり、25%~30%の治療的有効量のH3B-6545又は薬学的に許容される塩、10%~15%のラクトース一水和物、5%~10%の低置換ヒドロキシプロピルセルロース、1%~5%の微結晶セルロース、0.5%~5%のヒドロキシプロピルセルロース、0.05%~0.5%のコロイド状無水シリカ、0.1%~1%のステアリン酸マグネシウム、40%~45%のヒプロメロース、0.5%~2%の赤色酸化鉄、及び0.5%~2%の二酸化チタンを含むカプセル剤である。
【0092】
[0099]薬学的に許容される塩は、例えば非毒性の無機又は有機酸から形成された、親化合物の慣用的な非毒性塩、又は四級アンモニウム塩を含み得る。例えば、かかる慣用的な非毒性塩としては、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコニルアルサニル(glycollyarsanilic)酸、ヘキシルレゾルシン酸(hexylresorcinic)、ヒドラバミン(hydrabamic)酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸(napsylic)、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸(salicyclic)、ステアリン酸、塩基性酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び通常得られるアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン等から選択される無機酸及び有機酸から得られる塩が挙げられるが、これに限定されない。
【0093】
[0100]薬学的に許容される塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、及びムコン酸等が挙げられる。本発明はまた、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアンモニウムイオンにより置換されている、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、及びN-メチルグルカミン等のような有機塩基と配位した際に形成される塩も包含する。塩形態において、塩の陽イオン又は陰イオンに対する化合物の比率は1:1又は1:1以外の任意の比率、例えば、3:1、2:1、1:2、又は1:3であり得る。
【0094】
[0101]他の実施形態において、剤形はまた、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体と組み合わせた、1つ又は複数の活性化合物(例えば、H3B-6545又はその塩)を含み得る。
【0095】
[0102]溶媒和物の例としては、溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートであることを含み得る。水和物は、1つ又は複数の分子の水と、水がH2Oとしての分子状態を維持する、1分子の物質との組合せにより形成される。半水和物は、1分子の水と、水がH2Oとしての分子状態を維持する、1分子超の物質との組合せにより形成される。
【0096】
[0103]それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む経口剤形は、投与後、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約5時間、約0.5時間~約3時間、約1時間~約5時間、又は約1時間~約3時間の定量化可能な血漿濃度を達成し得る。
【0097】
[0104]経口剤形内に存在し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩は、約50mg~約1000mg、約100mg~約800mg、約100mg~約600mg、約200mg~約600mg、又は約400mg~約600mgの範囲にある。
【0098】
[0105]好ましい実施形態において、経口用量内に存在し得る治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩は450mgである。本発明の一実施形態において、上述の用量は1日用量である。
【0099】
[0106]それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む経口剤形は、投与後に、約170ng/mL~約2000ng/mL、約200ng/mL~約1500ng/mL、約500ng/mL~約2000ng/mL、約500ng/mL~約1500ngmL、約1000ng/mL~約2000ng/mL、又は約1000ng/mL~約1500ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度を達成し得る。
【0100】
[0107]それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む経口剤形は、投与後に、約5時間~約24時間、約8時間~約24時間、約8時間~約15時間、約10時間~約15時間、又は約15時間~約24時間の半減期を達成し得る。
【0101】
[0108]それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む経口剤形は、投与後に、約2,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、約5,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、約10,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、約15,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、約5,000ng*hr/mL~約15,000ng*hr/mL、又は約10,000ng*hr/mL~約15,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性を達成し得る。
【0102】
[0109]それを必要としているヒト対象に投与し得る、治療的有効量のH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む経口剤形は、20日サイクル、21日サイクル、22日サイクル、23日サイクル、24日サイクル、25日サイクル、26日サイクル、27日サイクル、28日サイクルの間で、又はそれを必要としている対象において治療的な効果が生じるまで、1日1回単回用量として経口投与し得る。剤形は、20日未満のサイクルでも投与し得る。
【0103】
[0110]A.約100mg~約600mgのH3B-6545、又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形
【0104】
[0111]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約100mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、約150ng/mL~約2100ng/mLの治療を必要としている対象への投与後に、最大の定量化可能な血漿濃度Cmax(ng/mL)を達成する。他の実施形態において、用量は、約250ng/mL~約1700ng/mLの治療を必要としている対象への投与後に、最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。さらなる実施形態において、用量は、約1200ng/mL~約1500ng/mLの治療を必要としている対象への投与後に、最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。これらの実施形態において、言及するCmaxは、約1時間~約25時間、約2時間~約12時間、約2時間~約5時間、又は約4時間の時間で達成し得る。
【0105】
[0112]一実施形態において、経口剤形は、約100~600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約1.8ng/mL~約4.0ng/mLのCmax範囲を達成することができる。さらなる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約1.8ng/mL~約3.4ng/mLのCmax範囲を達成することができる。なおさらなる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約3.0ng/mL~約4.0ng/mLのCmax範囲を達成することができる。
【0106】
[0113]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約100mg~600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、剤形は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約8.0時間~約22.0時間の半減期、又は約10.0時間~約13.0時間の半減期を達成する。
【0107】
[0114]一実施形態において、経口剤形は、約100mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約1,600ng*hr/mL~約23,000ng*hr/mL、約2,500ng*hr/mL~約18,500ng*hr/mL、約4,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、又は約9,000ng*hr/mL~約17,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~24時間)を達成し得る。
【0108】
[0115]一実施形態において、経口剤形は、約100mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約17ng*hr/mL/mg~約40ng*hr/mL/mg、約17ng*hr/mL/mg~約37ng*hr/mL/mg、又は約26ng*hr/mL/mg~約40ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~24時間)を達成し得る。
【0109】
[0116]一実施形態において、経口剤形は、約100mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約2,000ng*hr/mL~約40,000ng*hr/mL、約5,000ng*hr/mL~約25,000ng*hr/mL、又は約20,000ng*hr/mL~約23,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限時間)を達成し得る。
【0110】
[0117]一実施形態において、経口剤形は、約100mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約21ng*hr/mL/mg~約66ng*hr/mL/mg、約21ng*hr/mL/mg~約55ng*hr/mL/mg、又は約30ng*hr/mL/mg~約66ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限)を達成し得る。
【0111】
[0118]B.約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形
【0112】
[0119]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約900ng/mL~約2100ng/mL最大の定量化可能な血漿濃度Cmax(ng/mL)を達成する。他の実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約1100ng/mL~約1900ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。さらなる実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約1200ng/mL~約1700ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。これらの実施形態において、言及するCmaxは、約1時間~約25時間、約2時間~約10時間、約2時間~約5時間、又は約4時間の時間で達成し得る。
【0113】
[0120]一実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約3.0ng/mL~約4.0ng/mLのCmax範囲を達成することができる。さらなる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約3.0ng/mL~約3.4ng/mLのCmax範囲を達成することができる。
【0114】
[0121]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約9.5時間~約14.5時間の半減期、又は約10.0時間~約11.0時間の半減期を達成する。
【0115】
[0122]一実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約9,000ng*hr/mL~約23,000ng*hr/mL、又は約12,000ng*hr/mL~約19,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性を達成し得る。
【0116】
[0123]一実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約30ng*hr/mL/mg~約40ng*hr/mL/mg、又は約30ng*hr/mL/mg~約37ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~24時間)を達成し得る。
【0117】
[0124]一実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約11,000ng*hr/mL~約40,000ng*hr/mL、約11,000ng*hr/mL~約33,000ng*hr/mL、又は約12,000ng*hr/mL~約40,000ng*hr/mL.の定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限時間)を達成し得る。
【0118】
[0125]一実施形態において、経口剤形は、約300mg~約600mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約37ng*hr/mL/mg~約66ng*hr/mL/mg、約37ng*hr/mL/mg~約54ng*hr/mL/mg、又は約38ng*hr/mL/mg~約66ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限)を達成し得る。
【0119】
[0126]C.約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む経口剤形
【0120】
[0127]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約1,000ng/mL~約1,600ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度Cmax(ng/mL)を達成する。他の実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約1,100ng/mL~約1,500ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。さらなる実施形態において、用量は、治療を必要としている対象への投与後に、約1,200ng/mL~約1,400ng/mLの最大の定量化可能な血漿濃度を達成する。これらの実施形態において、言及するCmaxは、約3時間~約6時間、又は約4時間~約6時間の時間で達成し得る。
【0121】
[0128]一実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約2.4ng/mL~約3.5ng/mLのCmax範囲を達成することができる。さらなる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約3.0ng/mL~約3.5ng/mLのCmax範囲を達成することができる。なおさらなる実施形態において、経口剤形は、H3B-6545 1mg当たり約3.3ng/mL~約3.5ng/mLのCmax範囲を達成することができる。
【0122】
[0129]いくつかの実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、剤形は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約8.0時間~約11.0時間の半減期、又は約9.0時間~約10.0時間の半減期を達成する。
【0123】
[0130]一実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約12,000ng*hr/mL~約20,000ng*hr/mL、約14,000ng*hr/mL~約16,000ng*hr/mL、又は約12,000ng*hr/mL~約17,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~24時間)を達成し得る。
【0124】
[0131]一実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約27ng*hr/mL/mg~約43ng*hr/mL/mg、約30ng*hr/mL/mg~約40ng*hr/mL/mg、又は約30ng*hr/mL/mg~約35ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~24時間)を達成し得る。
【0125】
[0132]一実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、前記剤形は、それを必要としているヒト対象への投与後に、約16,000ng*hr/mL~約26,000ng*hr/mL、約16,000ng*hr/mL~約23,000ng*hr/mL、又は約16,000ng*hr/mL~約18,000ng*hr/mLの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限時間)を達成し得る。
【0126】
[0133]一実施形態において、経口剤形は、約450mgのH3B-6545又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。かかる実施形態において、用量は、それを必要としているヒト対象への投与後に、「H3B-6545 1mg当たり」に基づいて測定される、約36ng*hr/mL/mg~約57ng*hr/mL/mg、約38ng*hr/mL/mg~約52ng*hr/mL/mg、又は約35ng*hr/mL/mg~約40ng*hr/mL/mgの定量化可能なAUC生物利用可能性(0~無限)を達成し得る。
【0127】
[0134]実施形態はまた、乳癌(すなわち、ERα-陽性、及び/又はHER2陰性であるもの)を治療する方法に関していてもよく、方法は、記載されているPK結果を得るために、本明細書に記載されている任意の経口剤形を、それを必要としているヒト対象に投与するステップを含む。
【0128】
[0135]治療方法に関する全ての実施形態において、それを必要としているヒト対象は、摂食又は絶食状態であり得る。
【0129】
[0136]非臨床的な治験は、ERαWT及びERαmut-依存的な転写の用量依存的な阻害及びそれに続く細胞増殖の低下を支持している。ER+、HER2-陰性乳癌(BC)を有する女性におけるH3B-6545の安全性、薬物動態(PK)、及び薬力学(PD)は、第二相の推奨用量(RP2D)を特定すると考えられる。
【0130】
[0137]MBC腫瘍のうちの約30%において見られる、ESR1遺伝子構成的活性化変異は、リガンド結合ドメイン内に位置し、エストロゲン枯渇治療(例えば、アロマターゼ阻害)に対する耐性を付与、及び抗ER治療に対する耐性を促進し得る。Li S.,et al.Cell Reports,2013;4:1116-1130、Robinson DR,Wu YM,Vats P,et al.Nature genetics,2013;45:1446-1451、Toy W,Shen Y, Won H,et al.Nature genetics.2013;45:1439-1445.
【0131】
[0138]H3B-6545は、他の核ホルモン受容体において保存されていない特有のシステインを非可逆的に係合することにより、エストロゲン受容体α(ERα)変異体(MUT)、及び野生型(WT)活性の両方を阻害する経口利用可能な選択的ER共有結合アンタゴニストである。H3B-6545は、受容体を分解することなく、ERα機能を強力に抑制する。
【0132】
[0139]実施形態は、H3B-6545又はその薬学的に許容される塩を用いて患者を治療する方法であって、患者の血液において変異体アレル頻度の1つ又は複数の低下が観察されるかどうかを特定するステップ、及び前記低下が観察される場合に患者を選択するステップ、及び選択した患者に治療的有効量のH3B-6545又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、方法を提供する。変異体アレル頻度は、画分又はパーセント比率として表される、集団の中の特定の位置における変異アレル(遺伝子のバリアント)の相対的頻度である。
【0133】
[0140]本発明者らは、ER-陽性、HER2-陰性乳癌(HR+BC)を有する女性における、ファースト・イン・クラスの高度に選択的ERα共有結合アンタゴニスト(SERCA)である、H3B-6545の第1相の用量漸増を報告する。
[0141]
【実施例】
【0134】
[0142]
実施例1:カプセル製剤
【0135】
[0143]実施例1は、種々の量のH3B-6545薬剤物質を含むカプセル剤の製剤化を報告している。後続の実施例において使用されるカプセル剤は、本方法を使用して作製した。25mg、50mg、及び150mg強度のカプセル剤は、以下の表にしたがって製剤化した。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
[0144]端的には、カプセル剤は、H3B-6545薬剤物質、ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びコロイド状無水シリカの初期混合物を高剪断混合機内で形成することにより作製した。次いで、ステアリン酸マグネシウムを、高剪断混合機を用いて初期混合物と混合した。次いで、得られた混合物を、ローラーコンパクターを用いてリボンに圧縮し、スクリーンを通過させ(サイジング)、タンブラー混合機を用いてステアリン酸マグネシウムと混合した。エンカプスレーターを使用して最終混合物をヒプロメロースカプセル剤に充填した。
【0140】
[0145]
実施例2:錠剤形成
【0141】
[0146]実施例2は、H3B-6545薬剤物質を含む錠剤の形成を報告している。以降の実施例で議論する錠剤は、この方法を使用して作製した。150mgのH3B-6545薬剤物質を遊離塩基として含む、H3B-6545フィルコーティングした錠剤を、以下の製剤化にしたがって作製した:
【0142】
【0143】
【0144】
[0147]錠剤は以下の方法で形成した:
【0145】
[0148]ラクトース一水和物、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、及びコロイド状二酸化ケイ素を、湿潤高剪断造粒機に加え、混合して第1の混合物を形成した。H3B-6545薬剤物質及び第1の混合物を次いで対流混合機に加え、第2の混合物を形成した。
【0146】
[0149]第2の混合物を連続的に湿潤高剪断造粒機に供給し、ポンプを用いて注がれる精製水を用いて造粒し、湿潤顆粒を形成した。湿潤顆粒を、乾燥顆粒の乾燥時の損失が1.5%以下に達するまで、高温で流体床乾燥機を用いて連続的に乾燥させた。
【0147】
[0150]乾燥顆粒を次いで、スクリーンミルを使用して製粉した。製粉した顆粒、微結晶セルロース、及びステアリン酸マグネシウムを次いで対流混合機に入れ、混合してコア錠剤に圧縮した混合顆粒を形成した。コーティング懸濁物(コーティング剤を精製水に懸濁することによって調製した)を次いで、パンコーティング機を用いてコア錠剤に噴霧した。
【0148】
[0151]血液サンプルを、各患者から計画した時点で収集し、遠心分離した。各サンプルの血漿部分を次いでK2EDTA管に移し、これを次いでLC-MS/MSを用いた濃度測定のために生化学分析研究室に輸送した。濃度データを次いで、フェニックス(Phoenix)(登録商標)ウィンノリン(WinNonlin)ソフトウェアを用いて分析し、PKパラメーターを得た。得られたPKパラメーターを、分析ソフトウェアを用いてさらに概要した。
【0149】
[0152]血液サンプル(各約5mL)を、投与前及び投与後の種々の時間的な時点においてヒト患者から収集した。H3B-6545の血漿濃度は、確証された高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC-MS/MS)法を用いて決定した。定量の下限は、0.100ng/mLであった。
【0150】
[0153]PK分析セットは、カプセル剤又は錠剤中のH3B-6545薬剤産物の投与を受け、各治療において少なくとも1つの主要なPKパラメーターを得るのに十分な評価可能な血漿濃度データを有している対象を含んでいた。H3B-6545の血漿濃度(遊離塩基として)を、錠剤化し、記述統計(対象の数、標準偏差[SD]と共に示す算術平均、変動係数[CV%]、幾何学平均、中央値、最小値、及び最大値)を適宜用いて、各名目上の時点で概要した。個々の、及び平均の(±SD)血漿濃度-時間プロファイルを、各治療について得た。
【0151】
[0154]H3B-6545の薬物動態的パラメーターは、血漿データ及び血管外投与についての適切なモデルを使用して、ノンコンパートメント方法を使用して算出した。PKパラメーターは、最後の定量化可能な濃度の時点までの曲線下面積(AUC0-t)、最大濃度(Cmax)、及び最大濃度が生じた時点(tmax)を含んでいたが、これらに限定されない。データが許可されれば、下血漿濃度-時間曲線下面積は、無限まで推定され(AUC0-inf)、終末相消失半減期(t1/2)、見かけ上の全身クリアランス(CL/F)、定常状態での経口投与後の総全身クリアランス(CLss/F)、終末相の間の見かけ上の分布容積(Vz/F)、見かけ上の定常状態の分布容積(Vss)、Cmax(RCmax)の集積比率、及びAUC0-24(RAUC)の集積比率もまた得た。
【0152】
[0155]
実施例3:絶食状態の患者におけるカプセル薬物動態(PK)の第1の中間分析
【0153】
[0156]実施例3は、単回の試験の臨床的及びゲノミクス分析を報告している。実施例3の試験集団は以下の通りであった:
局所進行性又は転移性ER+HER2-BCを有する18歳以上の女性
少なくとも1つのホルモン治療及び少なくとも1つの付加的な治療/レジメンの際の進行、治療前歴の最大値なし
0、又は1のECOGパフォーマンスステータス
十分な骨髄及び臓器機能
骨のみの疾患又は炎症性BCを有する場合は除去する。
【0154】
[0157]方法は、H3B-6545が、システイン530を標的とし、特有のアンタゴニスト立体構造を取らせることによって野生型ERα及び変異体ERαの両方を不活化するかどうかを分析するために方法を用いた。方法:局所進行性又は転移性のHR+BCを有する女性を、少なくとも1つのホルモン治療及び少なくとも1つのさらなる治療/レジメン時の進行の後に、28日のサイクルにわたって、1日1回カプセル剤で経口投与するH3B-6545薬剤産物によって治療する(tx)。用量漸増は、以前に排除した用量を埋め戻すという選択肢を有する、3+3設計を使用し、患者間の用量漸増が可能である。本実施例は、試験のための推奨されるその後の用量を特定するために、HR+BCを有する女性において、H3B-6545の安全性、薬物動態及び薬力学を調査した。
【0155】
[0158]結果:2018年12月10日時点で、32人の患者は、100~450mg/日の用量の、H3B-6545薬剤産物で治療を受けており、97%は、CDK4/6阻害剤による事前の治療を受けており、56%は、事前に3ライン以上の抗癌治療を受けていた。用量規定毒性は観察されず、1つのみのグレード3の治療関連有害事象(TRAE)が観察された(リンパ球数減少)。
【0156】
[0159]最も一般的な(10%以上)TRAEは、無症候性洞徐脈、下痢、悪心、倦怠感、貧血、食欲低下及びホットフラッシュを含んでいた。H3B-6545は、2~4時間のtmaxで急速に吸収された。血漿濃度は、100~450mgの用量で上昇し、C1D1及びC1D15において同等であった。H3B-6545の作用機序及び前臨床データと一致して、H3B-6545は、ER標的遺伝子発現を阻害し、治療後、全ての用量レベルにおいてKi67の50%減少を示す。ESR1(60%)及びPIK3CA(34%)変異は、ベースラインにおいて血漿で検出され、変異体アレル頻度の変化は、治療に応答して相関を示す。安定疾患は、15人の患者(47%)において観察され、患者のうちの34%は、少なくとも6ヶ月の治療を完了した。部分奏功(PR)は3人の患者において観察され、1人の患者(変異体)は、2ラインの治療を事前に受けており、2人の患者(1人は変異体、及び1人は野生型)は、フルベストラント及びカペシタビンを含む、5ライン超の治療を事前に受けており、3人の患者は全員が、CDK4/6阻害剤の投与を事前に受けていた。
【0157】
[0160]H3B-6545薬剤産物は、過去のCDK4/6状況において単剤抗腫瘍活性の初期徴候が見られる450mg用量レベルまでは、よく耐性が示された。用量漸増は、進行性HER2-陰性乳癌を有する患者において続けた。
【0158】
[0161]薬剤投与及び用量:
H3B-6545は、28日サイクルにわたって1日1回経口投与した。
用量漸増は、100、200、300、450、及び600mg QDの用量コホートを使用して、標準的な3+3試験を用いた。
患者は以前に排除した用量を埋め戻すことができた。
患者間の用量漸増は、サイクル3の完了後に可能であった。
【0159】
[0162]結果(2019年4月20日時点)
【0160】
[0163]患者集団:
46人の患者を、100~600mg QDの用量のH3B-6545で治療した。
42人(91.3%)の患者はCDK4/6阻害剤の投与を事前に受けており、32人(69.6%)はフルベストラントの投与を事前に受けていた。
30人(65.2%)の患者は、進行性/転移性の状況において、3ライン以上の抗癌治療を事前に受けていた。
【0161】
[0164]人口統計学及びベースラインの特徴を表6に示す。
【0162】
【0163】
[0165]安全性:
2つの用量規定毒性(DLT)、グレード3の倦怠感、及びグレード3の 発心麻疹が、600mg QDコホートにおいて生じた。
最も一般的な(10%以上)治療関連有害事象(TRAE)は、洞徐脈、悪心、倦怠感、貧血、下痢、及びアスパラギン酸アミノ基転移酵素を含んでいた(表2)。
6つのグレード3のTRAEが観察された:失神及び心電
図QTが450mgにおいて延長し、貧血、アスパラギン酸アミノ基転移酵素が増加し、倦怠感及び発疹麻疹が600mgにおいて生じた。
グレード4以上のTRAEはなかった。
最も一般的なTRAEである、洞徐脈は、用量又は濃度依存的であるとは考えられず、用量低下、中断、又は中止を必要としていなかった。
【0164】
[0166]TRAEを表7に要約する。
【0165】
【0166】
[0167]薬物動態:
t
maxは2~4時間であった。
血漿濃度は用量(100~600mg)と共に上昇した(
図1)。
血漿濃度は、C1D1とC1D15との間で同等であった。
【0167】
[0168]薬力学:
ESR1(55%)及びPIK3CA(39%)変異は、ベースライン血漿において検出された。
変異体アレル頻度の変化は、臨床応答との相関を示す。
【0168】
[0169]患者症例試験:
【0169】
[0170]1人の、2006年にER+HER2乳癌を有すると最初に診断された50歳の女性は、転移性の状況において、レトロゾール/パルボシクリブ、エンチノスタット/エキセメスタン、カペシタビン、エリブリン、及びカルボプラチン/ゲムシタビンを含む治療を事前に受けていた。ESR1 Y537S及びPI3KCA E545K変異は、ベースライン腫瘍及び血漿において検出された。登録時点において、ECOGパフォーマンス状態は1であり、疾患部位は、肝臓、骨、胸水、骨盤腹水、及び皮下結節を含んでいた。H3B-6545は、2018年6月に450mg QDの用量で開始した。
【0170】
[0171]ベースラインからC3D1及びC7D1までの全標的病変の直径の合計の低下はそれぞれ、約-27.8%及び約-35.6%であった。4サイクル後、患者は部分奏功を達成し、C11における治療において維持されていた。
【0171】
[0172]予備的活性:
安定疾患は、17人(37.0%)の患者において観察された。
少なくとも6ヶ月の治療が、14人(30.4%)の患者によって完了された。
確認された部分奏功が3人(6.5%)の患者において観察された。
【0172】
[0173]予備的活性についてのさらなる情報を
図2に示す。
図3は、標的病変の直径の合計のパーセント変化を示す。
【0173】
[0174]表8は、腫瘍応答及び無増悪生存を示す。
【0174】
【0175】
[0175]結論
安全性/忍容性:ほとんどのTRAEは、グレード1又は2であり、管理可能であり、450mg QDまで耐性が示され、450mgも含まれていた。
薬力学:変異体アレル頻度の変化は、臨床応答に対する相関を示す。
予備的活性:抗腫瘍活性の望みを与えるシグナルが重度に事前の治療を受けている、CDK4/6i後の状況において観察され、3つの確認された部分奏功及びmPFS=7.2ヶ月が含まれた。
第2相:RP2Dの決定後に開始しなければならない。
【0176】
[0176]
実施例4:第2の中間分析
【0177】
[0177]実施例3の臨床試験を継続し、(本実施例4の)PK評価を、より大きい患者集団に基づいて後日行った。絶食患者におけるカプセル剤の薬物動態(PK)の分析の表1の概要及び表2は、実施例1のように調製したH3B-6545薬剤産物のカプセル剤の投与を受けたヒト患者のPKパラメーター及びプロファイルを示す。患者は、表において特定されるように、式Iの100mg、200mg、300mg、450mg、又は600mgの総当量の用量の投与を受けた。表1は、第1のサイクルの1日目に測定した患者についてのPK値を反映している。表2は、第1のサイクルの15日目に測定した、患者についてのPK値を反映している。
【0178】
[0178]PKパラメーターは、それを必要としているヒト対象への投与後に算出し、ここで、ヒト対象は絶食状態であった。QDは、用量が「1日1回(quaque die)」又は1日1回のみ投与されたことを意味する。パラメーターnは、各用量を投与された、それを必要としているヒト対象の数である。
【0179】
[0179]表9及び表11は、各用量に関連して、Tmax及びTlagを除く、全ての血漿PKパラメーターについての幾何学平均及び変動の幾何学平均計数を含み、前記PKパラメーターは、それを必要としているヒト対象(n)から算出される。Tmax、及びTlag値は、最小値及び最大値に加えて、それを必要としているヒト対象間で算出される中央値を含む。表10及び12は、表9及び表11に例示されるAUC0-t、AU0C0-24、AUC00-inf、及びCmaxPKパラメーターを医薬品有効成分(API)1mg当たりの血漿PKパラメーターに対して標準化している。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
[0180]
実施例5:絶食及び摂食患者における450mgのカプセル剤の薬物動態(PK)
【0185】
[0181]表3は、実施例1のように調製したカプセル剤を投与したヒト患者のPKパラメーター及びプロファイルを詳述している。患者は、表13において特定されるように、式Iの450mgの総当量の用量の投与を受けた。表14は、表13に例示するAUC0-t、AUC0-24、AUC0-inf、及びCmaxPKパラメーターを、医薬品有効成分(API)1mg当たりの血漿PKパラメーターに対して標準化している。
【0186】
【0187】
【0188】
[0182]
実施例6:ヒトにおける錠剤の薬物動態(PK)
【0189】
[0183]実施例1に記載するカプセル剤及び実施例2に記載する錠剤を健常なヒト対象において試験した。全ての用量はよく耐性が示された。H3B-6545の同様の曝露(Cmax及びAUCの両方)並びにTmaxを表15に示すように、カプセル剤と錠剤との間で記述した。
【0190】
【0191】
[0184]H3B-654のカプセル剤 vs 錠剤の製剤の相対的な生物学的利用可能性を表16に示す。
【0192】
【0193】
[0185]
実施例7-ゲノミクス試験
【0194】
[0186]内分泌耐性転移性乳癌(MBC)の有効な治療が存在しないために、本発明者は、野生型Era及び変異体Eraの両方を非可逆的に不活化することができる、新規の選択的Era共有結合アンタゴニストであるH3B-6545を開発した。
【0195】
[0187]本試験の目的は、1)重度に事前治療されたMBCにおけるホットスポット変異プロファイルを特徴づける、及び血漿 vs 腫瘍組織において、ESR1、PIK3CA、及びAKT1変異を相関させる、2)ESR1又はPIK3CAにおける変異がH3B-6545に対する応答を予測するかどうか決定する、及び3)ctDNAの長期のトラッキングがH3B-6545に対する応答と相関するかどうかを評価する、ことである。
【0196】
[0188]方法
【0197】
[0189]新鮮な血漿サンプルは、ベースライン(投与前)、サイクル1、15日目(C1D15)、C2D1、C3D1及びその後8週間ごとに収集し、疾患進行時に最終のサンプル収集を行った。ベースラインにおいて、ビーミングデジタルPCRを使用して、ESR1、PIK3CA、及びAKT1におけるホットスポット変異を評価した。患者特異的なctDNA変異を次いでddPCRによってモニタリングした。ベースライン腫瘍生検を、標的とする次世代シーケンシング(NGS)パネルに供し、ホットスポット変異を特定した。
【0198】
[0190]結果
【0199】
[0191]患者の77%(30/39)において、ビーミングアッセイによってベースラインで変異が検出され、これらのうち、21/39、16/39及び3/39が、それぞれ、ESR1、PIK3CA及びAKT1に変異を有していた。患者の20%(9/39)は、ESR1及びPIK3CAに共変異を示した。患者の60%(9/15)において、血漿ビーミングアッセイによって特定されたDNA変異はまた、腫瘍生検によって検出され、ここで、組織に見られるDNA変異もまた。症例の86%(12/14)において血漿で検出された。連続的なctDNAモニタリングにより、部分奏功(3/3)が確認されている患者において、ctDNAレベルはC2D1までに検出できなくなっていることが明らかになった。対照的に、ctDNAレベルは、進行性疾患を有する患者の3/4においてベースラインから上昇した。ctDNA比率の検査(15日目/ベースライン、及び30日目/ベースライン)及びPIK3CA及びESR1変異のH3B-6545に対する応答との相関を示す。
【0200】
[0192]実施例7についての結論
【0201】
[0193]ctDNAは、転移性の状況において生検を得ることの課題を克服する、MBCにおいてESR1、PIK3CA、及びAKT1変異を評価するための信頼性の高いサンプル種類である。さらに、ctDNA動態は、H3B-6545の有効性をモニターするための有用なツールを提供すると考えられている。
【0202】
[0194]薬剤投与及び用量:
28日サイクルで1日1回(PO QD)投与されたH3B-6545
100、200、300、450、及び600mg/日の用量コホートを使用した、標準的な3+3試験設計を使用した用量漸増
【0203】
[0195]液体生検アッセイ:10mlのストレック(Strek)血漿をその部位で収集した後、Sysmex Inosticsにおいて血漿に処理した。cfDNAをビーミングのために血漿2ml及びバイオラッド(Biorad)ddPCRのために3mlから単離した。
【0204】
[0196]腫瘍次世代シーケンシング(NGS)分析:10x5μmのスライドからのDNAをリカバーオールキット(Recoverall Kit)を使用して単離した後、DNA 10ngを、オンコマイン網羅的アッセイのためのインプットとして使用した。
【0205】
[0197]試験ベースライン特徴は、表17に示す。
【0206】
【0207】
[0198]
図4は、液体生検及び組織生検のサンプルセットの全体図を示す。
【0208】
[0199]
図5A~
図5Eは、本実施例における患者のベースラインゲノミクスプロファイルを示す。AA=アミノ酸。*3/49の患者において見られるAKT1変異(データは示さない)。
【0209】
[0200]
図5A~5Eは、ビーミング(BEAMing)アッセイを示す。A.患者のベースラインESR1及びPIK3CA変異状態、B及びC.ESR1及びPIK3CA変異のクローン性、D及びE.PIK3CA及びESR1変異のアミノ酸分布。
【0210】
[0201]
図5Fは、オンコマイン網羅的パネルにより決定される、ベースライン組織生検に見られる変異のオンコプリントを示す。
【0211】
[0202]
図6A、及び6Bは、実施例2における組織及び液体生検において見られる変異の一致を示す。
図6Aは、組織及び液体生検変異のアレル頻度分布及び一致を示す。
図6Bは、組織及び液体生検変異の一致の概要の表である。
【0212】
[0203]
図7A~7Cは、H3B-6545に対する総合最良効果と相関するctDNA動態を示す。AF=アレル頻度、C=サイクル、D=日、PD=進行性疾患、PR=部分奏功、SD=安定疾患。点線は、ddPCRアッセイLODを表す。
図7A。別個に色付けした各患者のAFベースライン/C2D1の比率。1人の患者は、複数の変異を有し得る。
図7B、及び
図7C。進行性疾患(B) 対 部分奏功(C)を有する患者における例示的なctDNAの動態。
【0213】
[0204]患者症例研究-これは実施例3で報告しているものと同一の患者事例研究である。
2006年にER+HER2-BCと最初に診断された50歳の女性。
転移性状況における事前の治療は、レトロゾール/パルボシクリブ、エンチノスタット/エキセメスタン、カペシタビン、エリブリン、及びカルボプラチン/ゲムシタビンを含んでいた。
登録時点において、ECOGパフォーマンス状態は1であり、疾患部位は、肝臓、骨、胸水、骨盤腹水、及び皮下結節を含んでいた。
ESR1 Y537S及びPI3KCA E545K変異はベースライン腫瘍及び血漿において検出された。
2018年6月に450mg PO QDの用量でH3B-6545を開始した。
ベースラインからC3D1及びC7D1までの全標的病変の直径の合計の減少はそれぞれ-27.8%及び-35.6%であった。
4サイクル後に、患者は部分奏功を達成し、C11の治療時に維持されていた。
【0214】
[0205]結論
後期ラインER+MBCにおいて、PIK3CA及びESR1変異は、それぞれベースライン血漿の39%及び55%において検出された。
組織の血漿変異レベルに対する一致は80%であった。
液体生検の組織変異レベルに対する一致は51%であった。
ctDNAレベルは、部分奏功が確認された患者においてはC2D1まで検出不可能であった。
ctDNA動態は、H3B-6545の有効性のモニタリング及びベースラインゲノミクスプロファイルの有用なツールであると考えられる。
【0215】
[0206]本明細書に引用する全ての出版物及び特許文書は、かかる出版物又は文書が具体的及び個々に参照により本明細書に組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。出版物及び特許文書の引用は、いずれかが関連する専攻技術であることを承認することを意図するものでも、この内容又は日時についての承認を構成するものでもない。本発明は、ここで明細書によって記載されており、当技術分野の当業者は、本発明が種々の実施形態で実施し得ること、並びに前述の記載及び実施例は、例示を目的とするものであって、以下の特許請求の範囲を限定するものではないことを認識するであろう。
【0216】
[0207]本発明は、その精神又は本質的な特徴から離れることなく、他の特定の形態で具現化し得る。前述の実施形態はしたがって、全ての点において、本明細書に記載する本発明を限定するよりも、むしろ例示的なものである。本発明の範囲は、したがって、前述の記載よりも、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の同等性の意味及び範囲内にある全ての変化は、そこに包含されることを意図している。
【国際調査報告】