(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】水処理の方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20220728BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220728BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220728BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20220728BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220728BHJP
A01N 33/20 20060101ALI20220728BHJP
A01N 37/34 20060101ALI20220728BHJP
A01N 43/50 20060101ALI20220728BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20220728BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01P1/00
A01P3/00
A01N37/06
A01N25/02
A01N33/20 101
A01N37/34 101
A01N43/50 R
C02F1/50 510A
C02F1/50 510C
C02F1/50 520A
C02F1/50 520B
C02F1/50 520K
C02F1/50 520L
C02F1/50 532C
C02F1/50 532H
C02F1/50 540B
C02F1/50 540D
C02F1/50 540E
C02F1/50 550C
C02F1/50 550L
C02F1/50 560F
C02F1/50 560Z
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570300
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 IL2020050591
(87)【国際公開番号】W WO2020240559
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500165175
【氏名又は名称】ブローミン コンパウンズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520456169
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロデンスキー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゾルコフ, チェン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス, デビット ジー.
【テーマコード(参考)】
4D050
4H011
【Fターム(参考)】
4D050AA01
4D050AA08
4D050AA10
4D050AB06
4D050BB03
4D050BD03
4D050BD04
4D050BD08
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC18
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を水中に添加することを含む、水中の微生物制御の方法を提供する。臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を含む液体濃縮物の形態の組成物も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を水中に添加することを含む、水中の微生物制御の方法。
【請求項2】
前記微生物制御は、水と接触する表面上の浮遊性の細菌及び/又はバイオフィルム細菌を除去しようとすること、及び/又はバイオフィルム増殖しやすい表面上でのバイオフィルム形成を阻害することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記臭素系殺生物剤は、非酸化性臭素系殺生物剤である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記非酸化性臭素系殺生物剤は、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール(ブロノポール)、及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記臭素系殺生物剤は、酸化性臭素系殺生物剤である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化性臭素系殺生物剤は、1,3-ジハロ-5,5-ジアルキルヒダントインであり、ハロゲン原子の少なくとも1つは、臭素であり、アルキル基は、同じであっても異なってもよい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1,3-ジハロ-5,5-ジアルキルヒダントインは、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-クロロ-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン及び1-ブロモ-3-クロロ-メチルエチルヒダントイン、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化性臭素系殺生物剤は、水中に活性臭素種を放出する、現場で酸化された臭化物源である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記現場で酸化された臭化物源は、
次亜塩素酸塩、塩素により、又は電気化学的に、現場で酸化されて活性型となり、被処理水系に添加される臭化ナトリウムと、
次亜塩素酸塩、塩素により、又は電気化学的に、現場で酸化されて活性型となり、被処理水系に添加されるHBrと、
次亜塩素酸塩、塩素により、又は電気化学的に、現場で酸化されて活性型となり、被処理水系に添加される臭化アンモニウムと、
次亜塩素酸塩、塩素により、又は電気化学的に、現場で反応してブロモ尿素活性型となり、被処理水系に添加されるHBrおよび尿素の溶液とからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記臭素系殺生物剤の有効な殺菌剤投与量は、1~100ppmであり、シス-2-デセン酸の増強誘導量は、0.005~5ppmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ガスクロマトグラフィーで測定した純度が95%未満の低純度CDAグレードを水中に添加する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数種の供給溶液を使用して、微生物が寄生した表面と接触する工業用水流に前記臭素系殺生物剤及びCDAを供給することにより、前記臭素系殺生物剤及び前記CDAを連続的又は同時に水中に添加する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単一の供給溶液を使用して、微生物が寄生した表面と接触する工業用水流に前記臭素系殺生物剤及びCDAを供給することにより、前記臭素系殺生物剤及び前記CDAを同時に水中に添加する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記臭素系殺生物剤は、非酸化性臭素系殺生物剤であり、前記臭素系殺生物剤及び前記CDAは、単一の供給溶液を使用して前記工業用水流に供給する液体濃縮物に配合される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有効な殺菌剤投与量の前記臭素系殺生物剤と増強誘導量の前記シス-2-デセン酸を水中に添加することによってバイオフィルム細菌を除去しようとすること、同じ投与量の前記臭素系殺生物剤を単独で作用させた場合に達成される減少よりも少なくとも2log単位低いバイオフィルムの減少を達成することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を含む、組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物であって、前記組成物は、担体中に1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を含む液体濃縮物であり、前記担体は、水、水混和性溶媒又はそれらの混合物、ならびに任意選択で共溶媒、不凍液及び安定剤のうち1つ以上を含む、組成物。
【請求項18】
前記液体濃縮物が、10~50重量%の非酸化性臭素系殺生物剤、0.05~1重量%のシス-2-デセン酸又はその塩、ならびに水、グリコール共溶媒及び抗酸化剤を含む担体を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記液体濃縮物が、
10~35重量%の2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールと、
0.05~0.5%のシス-2-デセン酸と、
5.0~80.0%の水と、
10~70.0%の、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択されるグリコールと、
0.05~0.5%の抗酸化剤と、を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記液体濃縮物が、
15~25重量%の2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドと、
0.05~0.5%のシス-2-デセン酸と、
10~60.0%の水と、
40~60.0%のポリエチレングリコールと、
0.05~0.5%の抗酸化剤と、を含む、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水の微生物制御に関し、例えば、臭素系殺生物剤と、殺生物剤の作用を増強することが見出された補助剤とを組み合わせて用いる、浮遊性及びバイオフィルム細菌の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水処理における臭素の使用は、十分に確立されており、現在、さまざまな臭素系殺生物剤が市販品として入手可能である。殺生物剤の使用濃度と供給頻度は、水の種類、微生物負荷、有機負荷、検討中の特定の殺生物剤、投与方法などによって決定される。
【0003】
本発明者の一人は、緑膿菌によって産生されるシス-2-デセン酸により、緑膿菌、他のグラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌が生理学的に媒介される分散反応を受けるように誘導することができ、その結果、バイオフィルムとして知られる表面に形成される微生物の集合体および共同体が分解されることを報告している(国際公開第2008/143889号及びJournal of Bacteriology191:1393-1403(2009))。
【0004】
バイオフィルムの制御は、水処理プログラムの重要な一面を構成する。米国特許出願公開第2009/0178587号は、緑膿菌のバイオフィルムの制御における臭素系殺生物剤の特性について研究している。米国特許出願公開第2009/0178587号は、バイオ分散剤として作用する界面活性剤を使用して処理の効率を高めることも提案しているが、このアプローチを説明するための実験データを提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/143889号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0178587号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水系及び水と接触する表面上のバイオフィルム及び浮遊性の細菌の処理における臭素含有殺生物剤の補助剤としてのシス-2-デセン酸の使用について記載している。実験モデルにおいて本発明を支持して実施された実験研究によって、シス-2-デセン酸と許容可能な使用濃度の臭素含有殺生物剤とを組み合わせると、殺生物剤のみで処理した場合と比較して、工業用水及び天然水に通常見られる純粋培養及び混合培養の両方で、細菌の死滅が顕著に増強されることが示されている。さらに、殺生物剤化合物によるシス-2-デセン酸の活性は、臭素化殺生物剤の効力を高め、使用される殺生物剤の有効量を減少させることができる。
【0007】
臭素ベースの水処理にシス-2-デセン酸(CDA)を組み込むと、臭素化殺生物剤の単独作用と比較して、バイオフィルム制御の効果が大幅に向上するが、塩素ベースの水処理では効果が小さいことも注目に値する。例えば、臭素/CDAの組み合わせ処理により、同等の条件下で、塩素/CDA処理と比較して、バイオフィルム細菌数の約2.5log単位の減少を達成することが以下に示されている。
【0008】
したがって、本発明は、主に、例えば、水と接触する表面上の浮遊性及び/又はバイオフィルム細菌、藻類、及び真菌の減少を達成するために1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸(又はその塩)を水中に添加することを含む、水中の微生物制御の方法に関する。
【0009】
CDAは、工業用水の処理に現在使用されている臭素供給システムに簡単に組み込むことができる。例えば、臭素系殺生物剤及びCDAは、連続的に又はバッチモードで水流に連続的に又は同時に注入される各種供給溶液を使用して、微生物が寄生した表面と接触する工業用水流に送達することができ、同時注入は、単一の添加剤溶液を生成するための個々の溶液の予備混合を含んでよい(すなわち、CDA及び殺生物剤溶液は、水流への添加の前又は直前に混合することができる)。また、以下に説明するように、殺生物剤が単一成分として供給されるかどうかによっても、選択される供給方法が異なる。
【0010】
複数の添加剤供給の代わりに単一の添加剤供給を使用した水処理を可能にするために、室温での保存安定性に優れた臭素系殺生物剤とCDAの適切な比率の組み合わせを含む液体濃縮物を調製した。
【0011】
したがって、本発明の別の態様は、水を含む液体担体中の1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸、水混和性溶媒又はそれらの混合物、ならびに任意選択で、共溶媒、不凍液及び安定剤、例えば、抗酸化剤などの1つ以上の添加剤を含む組成物(例えば、液体濃縮物)である。顆粒、フレーク及び錠剤などの、殺生物剤及びCDAを含む固体組成物もまた、本発明によって意図される。
【0012】
本発明での使用に適した臭素系殺生物剤は、異なる形態、すなわち、固体(粉末及び圧縮形態、例えば、顆粒及び錠剤など)及び液体(例えば、処理すべき水系に容易に供給できる水性濃縮物又は他の流動性配合物)で、市販品を入手することができる。臭素系殺生物剤は、一般に、
A)非酸化性殺生物剤と、
B)酸化性殺生物剤の2つのクラスに分類される。
【0013】
非酸化性殺生物剤は、A1~A3の群から選択され得る。
【0014】
A1:2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール(ブロノポール)、ここで、ブロノポールの合成は、例えば、国際公開第2009/107133号に記載されている。生成物は、粉末形態又は水溶液で(例えば、ICL-IPから)入手可能であり、有効成分としてのその通常の投与量レベルが、1~1000ppmの範囲(単独で使用される場合、例えば、1~300ppm)にある。
【0015】
A2:2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、ここで、DBNPAの合成は、例えば、米国特許第4328171号に記載されている。DBNPAの水性濃縮物及び圧縮形態は、それぞれ米国特許第5627135号及び米国特許第7524884号に記載されている。DBNPAは、(ICL-IPなどから)市販されている。単独で使用される場合、有効成分としての投与率は、1~1000ppmの範囲(例えば、1~200ppm)にある。
【0016】
A3:非酸化性臭素系殺生物剤の他の例には、2-ブロモ-4-ヒドロキシアセトフェノン(BHAP)、ビス-ブロモアセチルブテン(BBAB)及びβ-ブロモ-β-ニトロ-スチレン(BNS)が含まれる。
【0017】
酸化性臭素系殺生物剤は、溶解/解離によって、又はBr-を元素臭素/Br+に変換する臭化物酸化(酸化は、一般に、化学酸化剤を使用して達成されるが、電解的に生成された臭素の被処理水系への供給も、CDAと併せて本明細書に含まれる)によって、水中に活性臭素種(例えば、次亜臭素酸/次亜臭素酸塩)を放出する化合物である。本明細書に記載の酸化的殺生物剤の投与量は、一般に、滴定プロセッサー(Titrino 848 plus)を使用したヨウ素滴定又はSQ-300分光光度計(Merck SQ-300)を使用したDPD(Diethyl-p-Phenylene Diamine)試薬法によって決定できる総CI2として表される。酸化性臭素系殺生物剤は、B1~B3の群から選択され得る。
【0018】
B1:1,3-ジハロ-5,5-ジアルキルヒダントインなどのN-臭素化アミド及びイミド、ここで、ハロゲン原子の少なくとも1つは、臭素であり(アルキル基は、同じであっても異なってもよい)、このクラスに属する商業的に重要な殺生物剤は、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(BCDMHと略称する)と、1-クロロ-3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントインと、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)と、1-ブロモ-3-クロロ-メチルエチルヒダントイン(BCMEH)および1-クロロ-3-ブロモ-メチルエチルヒダントイン又はそれらの混合物など環の5位に2つの異なるアルキル基を含む「混合」アルキル化合物とである。1,3-ジハロ-5,5-ジメチルヒダントインを合成する方法は、例えば、米国特許第4745189号に見出すことができる。1,3-ジハロ-5,5-ジアルキルヒダントインの許容投与率は、総CI2として1~50ppmである。
【0019】
B2:無機臭化物源、すなわち臭化物塩及び臭化水素酸は、酸化(例えば、次亜塩素酸塩又は塩素ガスを用いた化学的酸化、及び電気化学的酸化、すなわち陽極に生成された臭素)によって水中に臭素種を放出する。商業的に重要な生成物は、活性化臭化ナトリウム(現場で調製される臭化ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムの水溶液からなり、直ちに被処理水系に送達される)と、活性化臭化アンモニウム(殺生物剤は、臭化アンモニウムを酸化剤と反応させることにより現場で調製される)と、次亜塩素酸ナトリウムと現場で反応するHBr及び尿素(本明細書ではブロモ尿素と呼ばれることもある)の溶液(例えば、ICL-IPからのHBr及び尿素で構成されるBactebrom(登録商標)溶液)と、例えば、錠剤の形で直接水系に供給され、現場で反応して活性臭素種を生成するように処理される臭化物/塩素化合物の乾燥混合物と、を含む。なお、臭化ナトリウム、臭化水素酸、臭化アンモニウム、HBr(又はNaBr)などの上記臭化物源と尿素溶液は、現場で化学的に(例えば、次亜塩素酸塩又は塩素ガスで)又は電気化学的に酸化され得る。
【0020】
B3:酸化性臭素系殺生物剤の他の例には、例えば、国際公開第99/06320号(安定化されたアルカリ/アルカリ土類金属次亜臭素酸塩水溶液(例えば、臭化物源としてNaBrを使用する))又は国際公開第03/093171号に記載されているように、ICL-IPからBromosol(登録商標)として入手可能な、スルファミン酸安定化臭素系殺生物剤が含まれる。塩化臭素及びその安定化形態(米国特許第6068861号を参照)は、水性濃縮物として市販品を入手可能である。
【0021】
シス-2-デセン酸に目を向けると、該シス-2-デセン酸は、エタノールなどの適切な溶媒に溶解した純油として使用できる。高純度CDA、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)による純度≧95%は、CarboSynth社(英国バークシャー州コンプトン)及びChemodex社(スイス、ザンクトガレン)などのさまざまな供給元から市販されている。しかしながら、以下に報告する実験研究は、より低い純度、例えば、GCによる50%~95%の純油、例えば、80~93%、例えば、89~91%(すなわち、~90%)のCDAを使用して、臭素ベースの水処理の十分な増強を達成できることを示している。<95%(ガスクロマトグラフィー、GCによる)の純粋なCDAは、本明細書では「低純度CDAグレード」と呼ばれる。低純度CDAグレードを利用すれば経済的に有利であることが理解され得る。「純粋なCDA」という用語は、95%を超える、例えば、GCによって検出された97%以上の純度レベルを有することを特徴とするCDAを指す。
【0022】
任意の所望の純度レベルのCDAは、米国特許第8748486号に記載されている合成経路を介して、2-デカノンCH3-(CH2)7-C(0)-CH3をハロゲン化して1,3-ジハライドケトンを生成し(例えば、元素臭素と反応して1,3-ジブロモ-2-デカノンを生成し)、続いて水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムによって生成されたアルカリ性環境での脱ハロゲン化により、ファヴォルスキー転位と同時に隣接する炭素-炭素二重結合を介して末端カルボン酸基を生成することによって得ることができる。そして、反応混合物を、従来の技術によって後処理して、本発明での使用に適した純度レベル、例えば、(GCによる)85~97%のCDAを回収することができる。
【0023】
臭素/CDAの組み合わせは、さまざまな臭素系殺生物剤の幅広い濃度範囲にわたる実験モデルにおけるバイオフィルムに対して、驚くほど効果的であることが証明されている。組み合わせ処理に対して測定されたバイオフィルム関連の細菌数は、単独で作用する殺生物剤に対して測定された比較値よりも約1~5log単位低くなる。「増強」という用語は、殺生物剤が単独で作用する処理と、CDA(以下に報告されている研究で示されているように、CDA自体は細菌数を減少させず、特に、CDAのみでは、広い濃度範囲で、3000nMを超える濃度でも、殺生物作用を示すことはできない)と組み合わせて作用する処理との細菌数の差を示すために用いられる。
【0024】
いくつかの選択された臭素系殺生物剤を、単独で使用する場合、及び異なる純度グレードのCDAと組み合わせて使用する場合の特性を表1に示す。結果として、3日齢の緑膿菌バイオフィルム又は混合細菌によって形成されたバイオフィルムに対して、短い接触時間で臭素/CDAの効果が現れた。CDAとの接触時間を1時間、続いて臭素系殺生物剤との接触時間を1時間とし、投与量レベルはそれぞれ310nMと5~20ppmとした。
【0025】
【表1】
*混合細菌によって形成されたバイオフィルム(3つの異なる細菌:黄色ブドウ球菌6538、バチルスマイコイデス6462及び緑膿菌700888)
【0026】
以下に報告する別のテストでは、1つの主要な非酸化性臭素殺生物剤(ブロノポール)とCDAの同時適用は、10ppmブロノポール/310nMのCDAの処理レベルで24時間の接触時間後に、緑膿菌バイオフィルムを根絶するのに効果的であることが証明された。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
*24時間の接触時間
**2時間の接触時間
【0028】
以下に報告する別の主な一連の結果として、少量のCDAの添加が、臭素系殺生物剤の投与量レベルのかなりの減少を相殺し、それによって臭素系殺生物剤の作業可能な濃度範囲を拡大できることが示される。例えば、CDAを使用して、1つの主要な酸化性殺生物剤(ブロモ尿素)は、2.5ppmという低い投与量レベルで合理的なバイオフィルム制御を実現する(この投与量レベルで単独で作用した場合、殺生物剤は有用な効果を発揮することができない)。添加されたCDAによって誘導される増強は、約4log単位である。同じ殺生物剤は、310nMのCDAで5ppmの投与量レベルでバイオフィルムを根絶した。結果を表3にまとめる。
【0029】
【0030】
上記を考慮して、臭素ベースの水処理は、CDAの添加により、多くの点で利益を得ることができる。
【0031】
1)シス-2-デセン酸は、水系の生物付着を処理するために通常使用される濃度の範囲内で、臭素含有殺生物剤の存在下で生物活性があることが示されているため、このプログラムによる通常の殺生物剤投与量レベル及び投与頻度で、つまり殺生物剤の適用率を変えることなく、CDAを臭素ベースの水処理プログラムに直接組み込み、定期的又は継続的に(殺生物剤の水への供給前、供給時、又は供給後に)バイオフィルムと接触する水流にCDAを注入することにより、バイオフィルム制御の改善を達成し、又は場合によっては特に非常に望ましくないバイオフィルム形成の徴候に対して、迅速な制御を達成する。
【0032】
したがって、本発明の別の態様に係る水中の微生物制御の方法は、有効な殺菌剤量の臭素系殺生物剤と増強誘導量のシス-2-デセン酸を水中に添加して、単独で作用する殺生物剤の同じ投与量で達成される減少よりも少なくとも2log単位(例えば、少なくとも3log単位)低い、例えば<105CFU/cm2、例えば、<103CFU/cm2、好ましくは<102CFU/cm2までのバイオフィルムの減少、又は実質的なバイオフィルムの根絶、つまり<101CFU/cm2のバイオフィルムの減少を達成することによって、水と接触している表面上のバイオフィルム細菌を除去しようとすること、及び/又はそのような形成を起こしやすい表面上のバイオフィルム形成を阻害することを含む。
【0033】
臭素系殺生物剤の有効な殺菌剤量は、0.1~1000、例えば、活性殺生物剤として0.1~300ppm、例えば、0.5~100ppmであり、CDAの増強誘導量は、1nM~30mMである。投与量レベルは、殺生物剤の特性及び使用目的などの要因によって大きく異なる可能性があることに留意されたい。しかし、一般に、水流中のw/wとしての殺生物剤:CDAの有効な投与比は、20:1~5000:1、好ましくは100:1~3000:1の範囲で変化し得る。CDAの増強誘導量は、対象となるバイオフィルムの減少を達成するために、使用場所での試行錯誤によって決定できる。
【0034】
例えば、増強誘導量のCDAは、0.001~5ppm、例えば、0.005~5ppm、例えば、0.01~1ppmであってよい。以下に示すように、0.005~0.5ppmの範囲(約30~3000nMのCDAに対応)で良好な結果が観察された。
【0035】
2)シス-2-デセン酸が、臭素系殺生物剤の投与量の減少を相殺し、少量の殺生物剤を効果的に使用し、高用量処理に匹敵するバイオフィルム制御を達成することを可能にするため、シス-2-デセン酸は、殺生物剤の投与量レベル及び/又は殺生物剤の投与頻度を減らすことにより、プログラム処理を変更することができる。例えば、水系の残留臭素を追跡し、残留臭素値が所定の閾値を下回ったら、CDAを注入して、残留臭素の少ない水系の維持をサポートし、バイオフィルム形成を阻害することができる。すなわち、活性殺生物剤が水系に存在する期間中、常に水サンプル中の残留殺生物剤の活性を高める。
【0036】
したがって、本発明の別の態様は、水と接触する表面上のバイオフィルム細菌を除去しようとするために、及び/又はそのような形成を起こしやすい表面上のバイオフィルム形成を阻害するために、水中に臭素を供給することを含む工業用水処理の方法であり、臭素の低投与レベルへの切り替えを水流へのCDAの添加と共に行うように、処理中に臭素の適用率を変化させる。
【0037】
本発明は、特に、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、バチルスマイコイデス、カンジダアルビカンス、アスペルギルスニガー、及び工業用水又は環境水源に由来する混合種共同体で増殖する微生物の組み合わせに対する微生物制御を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、臭素系殺生物剤及びCDAを工業用水系に供給する1つの簡便な方法を概略的に示したものである。
【
図2A】
図2Aは、10ppmのブロノポールでPA14細菌を処理した結果である。
【
図2B】
図2Bは、10ppmのブロノポールでPA14細菌を処理した結果である。
【
図3】
図3は、15ppmのDBNPAでPA14細菌を処理した結果を、棒グラフ形式で示したものである。
【
図4】
図4は、10ppmのBCDMHでPA14細菌を処理した結果を、棒グラフ形式で示したものである。
【
図5A】
図5Aは、15ppmのDBNPAを使用した、環境水源に由来する未定義の混合微生物バイオフィルム培養物に対する処理の結果である。
【
図5B】
図5Bは、15ppmのDBNPAを使用した、冷却塔水から得られた淡水混合微生物共同体に由来するバイオフィルム培養物に対する処理の結果である。
【
図6】
図6は、10ppmのDBNPAのみで処理した場合、及び310nMの市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図7】
図7は、5ppmのスルファミン酸安定化臭素(Bromosol)のみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図8】
図8は、10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図9A】
図9Aは、5ppmのブロモ尿素のみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図9B】
図9Bは、10ppmのブロモ尿素のみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図10】
図10は、5ppmの活性化臭化アンモニウム(AmBr)のみで処理した場合、及び310nMの市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図11】
図11は、20ppmの活性化NaBrのみで処理した場合、及び310nMの市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図12A】
図12Aは、混合細菌によって形成されたバイオフィルムに対して5ppmのBCDMHで処理した場合、及び310nMの市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図12B】
図12Bは、混合細菌によって形成されたバイオフィルムに対して10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び310nMの市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図13】
図13は、10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び異なる濃度(31nM、310nM、及び3100nM)の市販CDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【
図14】
図14は、310nMのCDAの存在下での5.0ppmのBCDMHの効果を、棒グラフで示したものである。
【
図15A】
図15Aは、殺生物剤の単独処理、および殺生物剤/CDAの組み合わせ処理の有効性を示している
【
図15B】
図15Bは、殺生物剤の単独処理(ひし形でマーク)、および殺生物剤/CDAの組み合わせ処理に対応する生存プロットを示したものである。
【
図16】
図16は、CDA(CV-CHEM)とBCDMH(2.5ppm)を順に導入した場合の効果を示したものある。
【
図17】
図17は、次亜塩素酸ナトリウムおよびBCDMHを5ppmの投与量で適用した場合の効果を示したものである。
【
図18】
図18は、310nMのCDAとの組み合わせ処理における30.0ppmのDBNPAの効果を示したものである。
【
図19】
図19は、10ppmのスルファミン酸安定化臭素(Bromosol)のみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、棒グラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、臭素系殺生物剤及びCDAを工業用水系に供給する1つの簡便な方法を概略的に示したものである。バイオフィルムの表面又はバイオフィルムが形成されやすい表面と接触する水流は、数字(1)で示される。「工業用水」という用語は、例えば再循環及び貫流式冷却システム、冷却塔、パルプ及び製紙工場システム、膜、バイオディーゼル及びディーゼルを含む石油及びガス用途、浮体式生産貯蔵及び積出し(FPSO)システム、硫酸塩還元ユニット(SRU)、製鉄所、砂糖及びエタノール生産、乳製品の生産、プールとスパ、配水システム、灌漑システム、エアウォッシャー、蒸発凝縮器、洗浄システム、醸造所の低温殺菌装置、装飾的噴水システム、及び油回収用水注入などの、臭素系殺生物剤で処理可能な水利産業用の水を示すために用いられる。
【0040】
図1に示す特定の設計では、殺生物剤とCDAはそれぞれタンク(2)と(3)に別々に保持され、工業用水流への供給は2つの投与ポンプ(2pと3p)を使用して行われることが見られる。この設計により、2つの活性成分を連続的又は同時に適用できる。
【0041】
図1に示す方法によく適合する殺生物剤は、単一のポンプ輸送可能な製剤として適用される殺生物剤、例えば、濃縮ブロノポール及びDBNPA溶液(例えば、5~50重量%の濃縮物)、ならびに臭素又は次亜臭素酸塩の安定化溶液(例えば、スルファミン酸安定化臭素系殺生物剤)のような保存安定性のある液体製剤として市販品を入手可能な非酸化性殺生物剤である。
【0042】
図1に示す設計は、プロセスに第3の供給システムを設置することにより(つまり、1つの投与ポンプはCDAの供給専用であり、2つの投与ポンプは殺生物剤の個々の成分(例えば、臭化物源と酸化剤)に使用される)、使用直前に臭化物源を酸化することにより、現場で調製された次亜臭素酸塩系の殺生物性溶液(これらの溶液は、次亜臭素酸塩が不安定であるため、すぐに適用しなければならない)の使用を可能にするように変更できる。
【0043】
臭素系殺生物剤が顆粒又は錠剤などの固体形態で適用される水処理へのCDAの組み込み(侵食フィーダーを介して流入水ラインに供給)は、投与ポンプを使用してCDA溶液を水ライン又は主流からフィーダーに迂回させる補助水流に注入し、添加された固形物を溶解することによって達成できる。
【0044】
殺生物剤とCDA溶液は、処理プログラムに従って設定されたタイマーによって制御される計量ポンプ(それぞれ2pと3p)を使用して投入される。殺生物剤及びCDA供給溶液を水流(1)に直接注入してよいが、混合チャンバー(図示せず)内で2つの個別の溶液を予備混合し、該混合溶液を水流に供給して、処理中の2つの成分の同時適用に基づく処理プログラムを可能にする。処理をより適切に制御するために、監視及び上流混合(4)装置、すなわち、ハロゲン監視装置、酸化還元電位(ORP)、pHセンサ、及びオンライン静的ミキサーが含まれる。
【0045】
正確な設計に関係なく、別途に供給されるCDAは、必要に応じて界面活性剤及び安定剤の存在下で、単独で適用するか、又は4個までの炭素を含有する脂肪族アルコール、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリコール及びポリエチレングリコール、アセトニトリルなどの水混和性溶媒又は溶媒の混合物に溶解して適用することができる。
【0046】
操作中、殺生物剤を適用する前に、シス-2-デセン酸を20分から24時間以上注入することにより、シス-2-デセン酸による連続処理を行うことができる。活性殺生物剤が水系に存在する期間中いつでも、水サンプル中の残留殺生物剤の活性を高めるために、殺生物剤の適用後にシス-2-デセン酸を添加することもできる。
【0047】
本発明の方法は、
図1に示すように、必ずしも複数回の供給を必要としない。CDAは、酸化性殺生物剤(無機臭化物源)の前駆体、スルファミン酸で安定化された臭素系殺生物剤、又は液体濃縮物に配合された非酸化性殺生物剤のいずれかと互換性があること、及び適切な安定剤、特に抗酸化剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエンBHT)の存在下で、そのような液体濃縮物は、殺生物剤又はCDAのいずれかの分解に対して、長期間の保存期間にわたって室温で安定したままであることがわかる。加速テストでも許容できる安定性が示される。このような液体濃縮物は、適切な供給システムを使用して工業用水系に投与することができ、殺生物剤/CDAの同時処理プログラムを好適に行うことができる。したがって、本発明はまた、単一の供給溶液を使用して、微生物が寄生した表面と接触する工業用水流に臭素系殺生物剤及びCDAを供給することにより、殺生物剤及びCDAを同時に水中に添加する方法を提供する。したがって、本発明は、1つ以上の臭素系殺生物剤及びシス-2-デセン酸又はその塩を含む組成物(例えば、上記方法で使用される)に関する。
【0048】
例えば、非酸化性臭素系殺生物剤とCDAは、単一の供給溶液を使用して工業用水流に供給される液体濃縮物に配合される。
【0049】
本発明の液体濃縮物は、
非酸化性臭素系殺生物剤とシス-2-デセン酸(又はその塩)の適切な比率の混合物であって、工業用水流で希釈すると、2つの活性成分が有効な比率、例えば、1000:1~50:1、好ましくは500:1~50:1、例えば、250:1~50:1の重量比で適用されるように、例えば、液体濃縮物において、(液体濃縮物の総重量に基づく重量で)殺生物剤の濃度が、2~50%、好ましくは10~50%であり、シス-2-デセン酸の濃度が、0.05~1%、好ましくは0.1~0.5%である、混合物と、
水、水混和性溶媒又はそれらの混合物(すなわち、水のみ、有機溶媒のみ、又は水性/有機溶媒系)、ならびに任意選択で、1つ以上の共溶媒(例えば、非酸化性臭素系殺生物剤が高い安定性及び溶解性を示すグリコール)、不凍液及び安定剤(例えば、抗酸化剤)を含む担体と、を含む。
【0050】
本発明によって提供される1つの好ましい室温保存安定性液体濃縮物は、
2.0~40.0%(例えば、10~35%)の2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールと、0.05~0.5%(例えば、0.1~0.3%)のシス-2-デセン酸と、
5.0~80.0%(例えば、10~30%)の水と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの10~70.0%のグリコールと、
0.05~0.5%の抗酸化剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン)と、を含む。
【0051】
本発明によって提供される別の好ましい室温保存安定性液体濃縮物は、
5.0~50.0%(例えば、15~25%)の2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドと、
0.05~0.5%(例えば、0.1~0.3%)のシス-2-デセン酸と、
10~60.0%(例えば、10~20%)の水と、
40~60.0%のグリコール(平均分子量200のポリエチレングリコールなど)と、
0.05~0.5%の抗酸化剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン)と、を含む。
【0052】
濃縮物は、シス-2-デセン酸(又はその塩)、固体形態の非酸化性臭素系殺生物剤、グリコール、水、及び安定剤を室温で撹拌しながら組み合わせて透明な溶液を得ることによって容易に調製される。
【実施例】
【0053】
材料
実験研究で使用した材料と試薬を表4に示す。
【0054】
【0055】
方法
GC測定は、AGILENT HP-5 19091J-413 30m*0.32mm*0.25ミクロンで行った。
方法、50℃//2'//10℃/min//280℃//5℃/min//300℃/2'。
【0056】
調製1
HBr/尿素溶液の活性化による殺生物剤の調製
原液1-241.06gの蒸留水で希釈したICL-IPからの8.94gのBactebrom(登録商標)(HBr:尿素溶液)。
原液2-226.42gの蒸留水で希釈した10.6%w/wの23.58gのNaOClによって調製された約1%のNaOCl。
【0057】
上記希釈されたBactebrom(登録商標)溶液(原液1)に、原液2(250.00gの1.0%NaOCl)を撹拌しながら徐々に添加し、総重量500.00gの活性殺生物剤(オレンジ色溶液)を得た。滴定プロセッサー(Titrino 848 plus)を使用したヨウ素滴定によって測定される予想殺生物剤濃度:Cl2として約0.5%(Cl2として約5000 ppm)とする。各実験における所望の殺生物剤濃度は、蒸留水で希釈して得た。
【0058】
調製2
臭化アンモニウムの活性化による殺生物剤の調製
975μlの10.25重量%aq.NaOClを、メスフラスコで、蒸留水で100mLに希釈した。Cl2濃度は、滴定プロセッサー(Titrino 848 plus)を使用したヨウ素滴定によって決定されたCl2として約1000ppmとした。
【0059】
213mgのNH4Brをメスフラスコで、蒸留水で100mLに希釈した。
【0060】
等量の5mLを次のように混合する。周囲温度でNH4Br溶液の混合溶液(マグネチックスターラーを使用)にNaOCl溶液を一気に添加した。
【0061】
生成物(活性化されたAmBr)の濃度は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度(Cl2として約1000ppm)に基づいていた。等量の反応物を混合して、混合物中の活性塩素の濃度を、Cl2として約500ppmの反応物NaOClの50%の濃度として得た。各実験における所望の殺生物剤濃度は、蒸留水で希釈して得た。
【0062】
調製3
シス-2-デセン酸の合成と精製
以下に示すように、米国特許第8748486号に記載されている2ステップの合成経路に従ってシス-2-デセン酸を調製し、第2ステップで水酸化ナトリウムを水酸化リチウムに置き換えた(1,3-ジブロモ-2-デカノンの脱ハロゲン化/転位)。
【化1】
【0063】
反応混合物を従来の技術(シリカゲル及び溶媒抽出など)によって後処理し、純度が60~97%(GC)の範囲で変化するシス-2-デセン酸を回収した。以下に報告する研究では、90%の純粋なシス-2-デセン酸をテストした。
【実施例1】
【0064】
CDAを用いた3日間のバイオフィルムに対する臭素系殺生物剤の効果の増強
(同時適用)
事前に増殖したバイオフィルムに対するCDAと臭素含有殺生物剤との組み合わせの効果について研究した。(A)緑膿菌PA14株、及び(B)環境水と工業用水に由来する混合細菌種を利用して実験を実行した。
【0065】
この研究では、3つの臭素系殺生物剤(ブロノポール、DBNPA、及びBCDMH)をテストした。
【0066】
実験手順について
ハトナーズミネラル溶液及びグルコース(0.2%)を添加したEPRI培地で細菌を培養した。微生物を、振とうしながら好気性条件下で、室温(22℃)でインキュベートした。使用したバイオフィルム培養システムは、Davies DG、Marques CN、2009、J Bacteriol 191:1393-1403に記載されている方法に従ってバイオフィルム細菌の付着と増殖を促進するためにタンパク質で処理したポリスチレン24ウェルプレートを含む。
【0067】
1mLの細菌培養物を接種した後、使用済み培地を除去し、24時間ごとに3日間滅菌培地と交換し、処理の3時間前に最終培地交換を行った。さらに、浮遊性の細菌を除去するために、処理前に培地を交換した。処理剤は、310nMのCDA100μLと臭素含有殺生物剤で構成されるか、又は商業用水処理で使用される濃度の臭素含有殺生物剤のみで構成され、テストした殺生物剤のそれぞれについて以下に詳述するように、各殺生物剤の活性によって決定された、1時間~24時間の範囲の接触時間の間、水を担体として使用した。
【0068】
処理後、各ウェルの培地をピペットで除去し、1mLのDE中和培養液を添加して処理を停止した。次に、ウェルに形成されたバイオフィルムを滅菌セルスクレーパーで掻き取ることによって各ウェルから細菌を除去し、1.0mLの培養物を冷却した(4℃)9.0mLのDE中和培養液に移し、氷上で、40000rpmで15秒間ホモジナイズした。計数前にさらに希釈した(殺生物剤活性をさらに中和した)。水中、チオグリコール酸を含むLB培地、及びDE中和培養液中で、殺生物剤の異なる希釈度で細菌の回収をテストして、活性剤が適切に中和されていることを確認した。ドロッププレート法により生菌を数えた。緑膿菌を接種したが処理していない対照培養物(Ctl)、臭素含有殺生物剤のみで処理されたCDAマイナステスト(-CDA)、及び臭素含有殺生物剤とCDAで処理されたCDAプラステスト(+CDA)により、それぞれ8ウェルがある24ウェルプレートを使用して、各殺生物剤を評価した。
【0069】
結果について
A)10ppmのブロノポールでPA14細菌を処理した結果を
図2A及び2Bに示す。
図2Aは、ブロノポールによる処理にCDAを添加したところ、わずか2時間の処理後に細菌の数が1桁以上減少したことを示している。
図2Bは、24時間の処理後に達成された効果を示している。ブロノポールのみでもバイオフィルムの減少に非常に効果的であることがわかる。しかし、CDAの添加により、処理の効果が大幅に高くなり、バイオフィルムの根絶につながった。
【0070】
B.15ppmのDBNPAでPA14細菌を処理した結果を、棒グラフ形式で
図3に示す。DBNPAとCDAの両方を含む2時間の短時間処理は、DBNPAのみを使用して同じ条件で実行した処理と比較して、効果が改善されていることがわかる。
【0071】
C.10ppmのBCDMHでPA14細菌を処理した結果を、棒グラフ形式で
図4に示す。BCDMHとCDAの両方の適用を含むわずか1時間の短時間処理は、BCDMHのみを使用した処理(log減少=2)と比較して、結果が改善されていることがわかる。
【0072】
D.15ppmのDBNPAを使用した、環境水源に由来する未定義の混合微生物バイオフィルム培養物と、冷却塔水から得られた淡水混合微生物共同体に由来するバイオフィルム培養物とに対する処理の結果を、それぞれ
図5Aと
図5Bに示す。DBNPAとCDAの両方を含む2時間の短時間処理は、DBNPAのみを使用して同じ条件で実行した処理と比較して、結果が改善されていることがわかる。
【実施例2】
【0073】
CDAを用いた3日間のバイオフィルムに対する臭素系殺生物剤の効果の増強(連続適用)
ホウケイ酸ガラス試験片上で、CDCバイオフィルム反応器で増殖した緑膿菌バイオフィルムを使用して、CDAと臭素含有殺生物剤の連続添加の効果を調べた(テスト方法E2562)。310nMのCDAの添加の60分後に臭素含有殺生物剤を添加した。テストした6つの臭素系殺生物剤に対応するセクションA~Fを参照されたい。以下のセクションGでは、さらに2つの細菌株(黄色ブドウ球菌6538、バチルスマイコイデス6462)を反応器に加え、混合バイオフィルムの形成に寄与した。以下のセクションHでは、他の2つのCDA濃度(31nM及び3100nM)を緑膿菌バイオフィルムに対してテストした。
【0074】
使用したCDAの純度レベルの効果を評価するために、6つの臭素系殺生物剤(DBNPA、スルファミン酸安定化臭素、BCDMH、ブロモ尿素、活性化臭化アンモニウム、活性化NaBr)を純度の異なる2つのCDA生成物(調製3の市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と粗製CDA(GCによる純度90%))と組み合わせてテストした。
【0075】
実験手順について
単一チューブ法(E2871-13)に従って試験片の有効性テストを実施した。このテスト方法は、CDCバイオフィルム反応器で再現性のある緑膿菌バイオフィルムを増殖させるために用いる。
【0076】
バイオフィルム形成について
反応器をバッチモード(栄養素のフローなし)で4時間操作することによってバイオフィルムを確立した。反応器で栄養素の連続的なフローを伴ってさらに3日間操作した後、定常状態の集合体に達した。3日間の全期間中、バイオフィルムを、バッフル付き撹拌棒の回転による連続的な流体せん断力に暴露した。3日間の終わりに、試験片からのバイオフィルムを以下のa.~b.のようにサンプリングした。
【0077】
a.試験片をすすいで浮遊細胞を除去した。ロッドを、30mLの滅菌緩衝水を含む50mLのコニカル遠心分離管の真上に垂直に配向した。ロッドを、飛散を最小限に抑えて、又は飛散がまったくない状態で、緩衝水に連続的に動かして浸漬し、その後すぐに取り外した。各ロッドには、30mLの滅菌緩衝水を含む新しい50mLコニカルチューブを使用した。
【0078】
b.ランダムに選択した試験片の1つで、ロッドを空の滅菌の50mLコニカルチューブの中央に保持した。止めねじを緩めると、試験片をチューブの底に直接落とすことができた。
【0079】
CDAおよび臭素含有殺生物剤の連続添加について
a.リン酸緩衝液(未処理の対照例)、310nMのCDAを含む緩衝液、又は異なる濃度の殺生物剤を含む緩衝液のいずれかを含む4mLの溶液を、試験片を含むチューブにピペットでゆっくりと入れた。
b.各チューブを軽く叩いて、試験片の下に閉じ込められた気泡を放出した。
c.チューブ(対照例、CDA、又は殺生物剤を含む)を200rpmで振とうしながら、20℃で1時間の接触時間インキュベートした。
d.1時間の接触時間の後、36mLの中和剤を各チューブに添加した。
e.組み合わせ処理は、まずCDAを導入し、CDAとの1時間の接触時間の後、殺生物剤を含む別のチューブに試験片を移し、200rpmで振とうしながら、さらに20℃で1時間の接触時間インキュベートする連続処理として実行した。1時間の接触時間の後、36mLの中和剤を各チューブに添加した。
【0080】
バイオフィルムの除去と分解について
a.Vortex Genie-2 Model no.G560Eを使用して、各チューブを最高の設定で30秒間ボルテックスした。
b.チューブを45kHzで30秒間超音波処理した。
c.チューブを上記のようにボルテックスし、次に超音波処理して再度ボルテックスした。
d.サンプルを緩衝水で連続的に希釈した。
e.注入プレーティング法を使用して、コロニーを増殖させるために各希釈液を(R2A寒天上で)2回培養した。
f.プレートを35℃で72時間インキュベートした。
g.適切なコロニー数を数えた。
【0081】
結果について
A.上記のように生成されたバイオフィルムに対する10ppmのDBNPA(2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド)のみで処理した場合、及び310nMの市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図6の棒グラフに示す。CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。DPNPAのみを適用すると、バイオフィルムが減少する。特に、DBNPAのみでの処理と比較して、組み合わせ処理によって2log単位の増強を達成した(組み合わせ処理は、殺生物剤の添加前にCDAと1時間接触していたサンプルへのDBNPAの添加で構成される)。
【0082】
B.上記のように生成されたバイオフィルムに対する5ppmのスルファミン酸安定化臭素(Bromosol)のみで処理した場合、及び310nMのCDA(GCによる純度97%のCV-CHEMからの商業的供給源又はGCによる純度90%の調製3のいずれか)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図7の棒グラフに示す。その供給源に関係なく、CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。Bromosolを単独で適用すると、バイオフィルムが減少する(4log単位)。組み合わせ処理(つまり、CDAとそれに続く殺生物剤)は、殺生物剤のみでの処理と比較して、さらなるバイオフィルムの減少を達成している。市販CDAと粗製CDAを使用すると、殺生物剤のみでの処理と比較して、それぞれ1log単位と2log単位の減少をもたらすことは、注目に値する。
【0083】
C.上記のように生成されたバイオフィルムに対する10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び310nMのCDA(GCによる純度97%のCV-CHEMからの商業的供給源又はGCによる純度90%の調製3のいずれか)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図8の棒グラフに示す。その供給源に関係なく、CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。BCDMHを単独で適用すると、バイオフィルムが減少する(約3log単位)。組み合わせ処理(つまり、CDAとそれに続く殺生物剤)は、殺生物剤のみでの処理と比較して、さらなるバイオフィルムの減少を達成した。市販CDAと粗製CDAの両方で、同等の増強、つまりBCDMHのみでの処理と比較して約2log単位の減少が生じた。
【0084】
D.上記のように生成されたバイオフィルムに対する5ppmのブロモ尿素又は10ppmのブロモ尿素のみで処理した場合、及び310nMのCDA(GCによる純度97%のCV-CHEMからの商業的供給源又はGCによる純度90%の調製3のいずれか)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図9A(5ppmのブロモ尿素)と
図9B(10ppmのブロモ尿素)の棒グラフに示す。供給源に関係なく、CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。なお、5ppmのブロモ尿素及び10ppmのブロモ尿素を単独で適用した場合、同等のバイオフィルムの減少が測定されたことも特筆に値する。つまり、殺生物剤の濃度を2倍に増加(5ppm→10ppm)しても、バイオフィルム制御の増強は見られなかった。しかしながら、組み合わせ処理(CDAの適用とそれに続く5ppmの殺生物剤又は10ppmの殺生物剤の適用)は、殺生物剤のみでの処理と比較して大幅な改善を達成しており、市販CDAと粗製CDAの両方で、非常に良好な結果が得られた。つまり、5ppmのブロモ尿素のみで処理した場合と比較して約2~3log単位増強され、10ppmのブロモ尿素のみで処理した場合と比較して4~5log単位増強されている。
【0085】
E.上記のように生成されたバイオフィルムに対する5ppmの活性化臭化アンモニウム(AmBr)のみで処理した場合、及び310nMの市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図10の棒グラフに示す。CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。殺生物剤のみを適用すると、バイオフィルムが減少する。特に、殺生物剤のみでの処理と比較して、組み合わせ処理によって約4.5log単位の増強を達成した(組み合わせ処理は、殺生物剤の添加前にCDAと1時間接触していたサンプルへの殺生物剤の添加で構成される)。
【0086】
F.バイオフィルムに対する20ppmの活性化NaBrのみで処理した場合、及び310nMの市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図11の棒グラフに示す。CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。活性化NaBrのみを適用すると、バイオフィルムが減少する。特に、活性化NaBrのみでの処理と比較して、組み合わせ処理によって2log単位の増強を達成した(組み合わせ処理は、殺生物剤の添加前にCDAと1時間接触していたサンプルへの活性化NaBrの添加で構成される)。
【0087】
G.上記のように生成された混合細菌(3つの異なる細菌:黄色ブドウ球菌6538、バチルスマイコイデス6462、及び緑膿菌700888)によって形成されたバイオフィルムに対する5ppmのBCDMH又は10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び310nMの市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図12Aと
図12B(それぞれ5ppmBCDMH又は10ppmのBCDMH)の棒グラフに示す。CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。殺生物剤のみを適用すると、バイオフィルムが減少するが、10ppmのBCDMHによる処理は、5ppmのBCDMHによる処理よりもそれほど優れていない。しかしながら、5ppmと10ppmのBCDMHによる処理では、いずれも処理にCDAを組み込むことで利益が得られる。組み合わせ処理は、5ppmと10ppmの殺生物剤を単独で作用させた処理と比較して、それぞれ約2.5log単位と約5.5log単位の増強を達成していることがわかる(組み合わせ処理は、殺生物剤の添加前にCDAと1時間接触していたサンプルへの殺生物剤の添加で構成される)。
【0088】
H.上記のように生成されたバイオフィルムに対する10ppmのBCDMHのみで処理した場合、及び異なる濃度(31nM、310nM、及び3100nM)の市販CDA(GCによる純度97%のCV-CHEM)と組み合わせて処理した場合の効果を、
図13の棒グラフに示す。テストしたすべての濃度のCDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。BCDMHを単独で適用すると、バイオフィルムが減少する。特に、BCDMHのみでの処理と比較して、CDA(31nMと310nM)との組み合わせ処理では4.5log単位の増強を達成し、CDA(3100nM)との組み合わせでは5.5log単位の増強を達成している(組み合わせ処理は、殺生物剤の添加前にCDAと1時間接触していたサンプルへのBCDMHの添加で構成される)。
【実施例3】
【0089】
CDAを用いた臭素系殺生物剤の投与量レベルの低減
この研究の目的は、CDAの添加が臭素系殺生物剤の投与量レベルの低減をどの程度相殺できるかを推定することである。つまり、現在許容されている高投与量レベルの単独作用型臭素と同等に効果的な、臭素とCDAとの組み合わせ処理プログラムを提供する。
【0090】
テストした殺生物剤は、BCDMHであった。純度97%グレードの市販CDAを使用した。実施例2の実験プロトコルを繰り返した(すなわち、まずCDAを、次にBCDMHを、殺生物剤との1時間の接触時間で、3日間増殖させたバイオフィルムに適用する連続処理)。
【0091】
結果は、
図14の棒グラフ形式で示し、310nMのCDAの存在下での5.0ppmのBCDMHの効果が、CDAの非存在下での10ppmのBCDMHの効果に匹敵することを示している。したがって、水に非常に少量のCDAを添加すると、殺生物剤の投与量レベルの50%の低減を相殺することができる。
【実施例4】
【0092】
CDAを用いた臭素系殺生物剤の投与量レベルの低減
CDA(市販の97%純度グレード)をさまざまな量の臭素系殺生物剤(殺生物剤の投与量レベルを0~10ppmの範囲で変化させた)と組み合わせて適用し、広い殺生物剤濃度範囲にわたって殺生物剤の作用をサポートするCDAの能力を調べた。CDAを一定濃度310nMで使用した。組み合わせ処理の臭素/CDAを、単独で適用した臭素系殺生物剤と比較した。
【0093】
テストした殺生物剤は、ブロモ尿素であった。実施例2の実験プロトコルを繰り返した(すなわち、殺生物剤との接触時間を1時間とし、3日間増殖させたバイオフィルムに、まずCDAを、次にブロモ尿素を適用する連続処理を行った)。
【0094】
単独で適用された殺生物剤(ひし形でマーク)と組み合わせた殺生物剤/CDA処理に対応する生存プロットの形式で、結果を
図15Aと
図15Bに示す。テストした殺生物剤の濃度は、0.0、0.625、1.25、2.5、5、及び10ppmであった。結果は、2.5ppmブロモ尿素/310nMのCDAの処理レベル及び5ppmブロモ尿素/310nMのCDAという低いバイオフィルム根絶濃度でのLC
50(培養物の50%が死滅するバイオフィルム濃度)バイオフィルム制御を明示することで、殺生物剤の濃度範囲全体(すなわち、>0.5ppm)にわたる3日間バイオフィルムに対する組み合わせ処理の有効性を示している。
【実施例5】
【0095】
CDAを用いた浮遊性の細菌に対する臭素系殺生物剤の効果の増強(連続適用)
310nMのCDAと臭素含有殺生物剤を、異なるレベルの有機物の負荷(TOC 10-3000ppm)を含む培地中の浮遊性の細菌の混合物に導入した。有機物の負荷が高いと、工業用途における抗菌剤の効果が低下する傾向があるため、このテストは、これらの条件を模倣することを目的とした。修正欧州規格EN1040:2005:「化学消毒剤及び防腐剤-化学消毒剤及び防腐剤の基本的な殺菌活性を評価するための定量的懸濁試験-テスト方法及び要件(フェーズ1)」に従ってテストを実行した。TOC=30ppmの溶液を得るためのトリプトンを含む19mLのリン酸緩衝液(pH=7)、及び1.5×108-5×108CFU/mLの濃度の1mLのテストした細菌懸濁液(大腸菌(ATCC 11229)、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、エンテロバクター・アエロゲネス(ATCC 130489)、及び緑膿菌(ATCC 13388)で構成される)を適切な容量の容器に入れた。すぐにストップウォッチを開始し、30℃に制御された水浴に容器を入れた。
【0096】
2.5ppmのBCDMHのみで、3時間の接触時間で活性を測定した。CDA(CV-CHEM)と2.5ppmのBCDMHの組み合わせを、順(CDAについて1時間、次にBCDMHについてさらに3時間)に添加してテストした。所望の接触時間で、1mLのテスト混合物を9.0mLの中和剤を含むチューブにピペットで入れた。5秒の中和時間後、すぐに1mLのサンプルを2回採取し、ペトリ皿に移した。45±1℃に冷却したTSAを添加した。プレートを37±2℃で48時間インキュベートした。カウント可能なプレートを数え、各プレートについてコロニー形成単位の数を決定した。
【0097】
結果を
図16に示す。CDA(CV-CHEM)とBCDMH(2.5ppm)を順に導入した場合、CDAの非存在下でBCDMHによって達成された効果と比較して、2log単位の増強が得られたことがわかる。
【実施例6】
【0098】
DBNPA及びCDAの室温保存安定性組成物
22mgのシス-2-デセン酸(CiVentiChem、純度96.72%)を、スターラーを備えた50mLのフラスコに入れた。3.99グラムのC-103(ICL、バッチ640160147)を添加し、続いて9.97グラムのPEG200(Merck 8.07483.5000 ロットS6904983 451)、5.95グラムのDI水及び22mgのBHT(Aldrich B1378-100G、BCBH9491V)を添加した。得られた溶液を完全に澄み切るまで撹拌し、粒子が観察される場合、+30℃での超音波処理が推奨される。合計30グラムであり20:50:30:0.1:0.1の重量比のCl03-PEG200-H20-CDA-BHTの無色透明の溶液を得た。
【0099】
この溶液を25℃で2か月間保存し、殺生物剤及びCDAの安定性を判定するためにテストした。DBNPAもCDAも、25℃/2か月のテストで分解しなかった(HPLCによる分析)。
【実施例7】
【0100】
ブロノポール及びCDAの室温保存安定性組成物
47.6gのシス-2-デセン酸(CiVentiChem、純度96.72%)を、スターラーを備えた50mLのフラスコに入れた。9.01グラムのブロノポール(ICL、バッチ17101607)を添加し、続いて18.03グラムのプロピレングリコール(Biolab 16200201 ロット1007861)、3.0グラムのDI水及び31.2mgのBHT(Aldrich B1378-100G、BCBH9491V)を添加した。数分間撹拌した後、BHT粒子を除去するために、溶解していない微量のBHTを濾紙で濾過した。合計30グラムであり30:60:10:0.158:0.1の重量比のブロノポール-PG-H20-CDA-BHTの無色透明の溶液を得た。
【0101】
この溶液を25℃で2か月間保存し、殺生物剤及びCDAの安定性を判定するためにテストした。ブロノポールもCDAも、25℃/2か月のテストで分解しなかった(HPLCによる分析)。
【実施例8】
【0102】
バイオフィルムに対する臭素/CDA対塩素/CDAの効果
この実施例で報告されている一連の実験の目的は、臭素系及び塩素系の処理にCDAを添加することにより、対象となるバイオフィルムに同等の効果が生じるかどうかを確認することであった。つまり、CDAが、バイオフィルムに対する臭素及び塩素の作用を同等に効果的に増強するかどうかということである。塩素系殺生物剤と臭素系殺生物剤の例示として、次亜塩素酸ナトリウムとBCDMHをそれぞれ選択した。
【0103】
純度97%グレードの市販CDAを使用した。実施例2の実験プロトコルを繰り返した(すなわち、まずCDAを、次にハロゲン化殺生物剤を、殺生物剤との1時間の接触時間で、3日間増殖させたバイオフィルムに適用する連続処理)。
【0104】
図17の棒グラフは、次亜塩素酸ナトリウムとBCDMHを5ppmの投与量レベルで単独で適用すると、バイオフィルムに同等の効果があることを示している。しかしながら、本発明の臭素/CDAの組み合わせは、塩素/CDAと比較して、バイオフィルムに対して驚くべき優れた効果を生み出した。5ppmのBCDMH/310nMのCDAの処理レベルで適用されたBCDMH/CDAの組み合わせは、単独で適用されたBCDMH処理と比較して4.5log単位の減少を達成したが、対応する次亜塩素酸塩/CDA処理は、より少ない程度で改善できた(2log単位の減少)。
【実施例9】
【0105】
CDAを用いた大量のバイオフィルムに対する臭素系殺生物剤の効果の増強(連続適用)
ドリップフローチューブで増殖した緑膿菌バイオフィルムを使用して、CDA及び臭素含有殺生物剤の連続添加の効果を調べた(標準ASTM2647-13の修正による、低せん断及び連続フローを備えたドリップフローバイオフィルム反応器を使用して増殖した緑膿菌バイオフィルムの定量化のための標準試験方法)。この方法は、処理が非常に困難な過酷な条件をもたらす大量のバイオフィルムを生成する。310nMのCDAの添加の120分後に臭素含有殺生物剤を添加した(この研究でテストした殺生物剤は、DBNPAであった)。
【0106】
実験手順について
a)連続貫通チューブシステムは、追加のシリコンチューブを介して蠕動ポンプに接続されたシリコーンでコーティングされたラテックスチューブを使用して構成された。
b)緑膿菌(ATCC 700888)、10%TSB(トリプシン大豆ブロス)中の5*107CFU/MLの一晩培養物をシリンジ注射によってシリコーンでコーティングされたラテックスチューブに接種した。細菌細胞をチューブに2時間付着させた(静的インキュベーション)(バッチ段階)。
c)2時間後、システムを25℃のインキュベーターに移し、増殖培地(10%TSB)を10mL/hrの流速で約42時間ポンプ輸送した。
【0107】
d)CDA及び臭素含有殺生物剤の連続添加について
バイオフィルム処理は、培地を緩衝水(対照例)又は緩衝CDA溶液と交換し、次に殺生物剤溶液と交換することによって行った。
以下の処理を行った。
1.リン酸緩衝液について5時間(対照例)。
2.リン酸緩衝液について2時間、続いて殺生物剤溶液(異なる濃度)について3時間。
3.CDA緩衝液について2時間、続いて殺生物剤溶液(異なる濃度)又は緩衝液について3時間(対照例)。
【0108】
e)実験終了後、シリコーンでコーティングされたラテックスチューブをチューブから外し、特別に作られたクリーニングロッドを挿入してバイオフィルムをチューブ内から取り外した。
f)バイオフィルムをバイアルに取り出し、ボルテックスで分解した。
g)サンプルを連続的に希釈した。注入プレーティング法を使用して、コロニーを増殖させるために各希釈液を(R2A寒天上で)2回培養した。
h)プレートを36℃で17~20時間インキュベートした。
i)適切なコロニー数を数えた。
【0109】
結果
図18に示した結果は、310nMのCDAとの組み合わせ処理における30.0ppmのDBNPAの効果が、殺生物剤単独の殺生物効果を約2logオーダー増強したことを示している。
【実施例10】
【0110】
塩形態のCDAを用いた3日間のバイオフィルムに対する臭素系殺生物剤の効果の増強(同時適用)
CDAナトリウム/リチウム塩の実験的な段階的酸性化は、シス-DA pKa値が6.5~7.5の範囲にあることを示す。いくつかの工業用途では、処理水のpH値はアルカリ度が高いため、塩形態のシス-DAの形成を促進する。ホウケイ酸ガラス試験片上で、CDCバイオフィルム反応器で増殖した緑膿菌バイオフィルムを使用して、塩形態のCDAと臭素含有殺生物剤との同時添加の効果を調べた(テスト方法E2562)。テストした臭素含有殺生物剤は、スルファミン酸安定化臭素(Bromosol)であり、310nMのCDAと同時に60分間添加された。処理された溶液のpHは、pH8~9の範囲(塩形態のシス-DAの形成を促進する条件)であった。
【0111】
実験手順について
単一チューブ法(E2871-13)に従って試験片の有効性テストを実施した。このテスト方法は、CDCバイオフィルム反応器で再現性のある緑膿菌バイオフィルムを増殖させるために用いる。
【0112】
バイオフィルム形成について
反応器をバッチモード(栄養素のフローなし)で4時間操作することによってバイオフィルムを確立した。反応器で栄養素の連続的なフローを伴ってさらに3日間操作した後、バイオフィルムは定常状態の集合体に達した。3日間の全期間中、バイオフィルムを、バッフル付き撹拌棒の回転による連続的な流体せん断力に暴露した。3日間の終わりに、試験片からのバイオフィルムを以下のa.~b.のようにサンプリングした。
【0113】
a.試験片をすすいで浮遊細胞を除去した。ロッドを、30mLの滅菌緩衝水を含む50mLのコニカル遠心分離管の真上に垂直に配向した。ロッドを、飛散を最小限に抑えて、又は飛散がまったくない状態で、緩衝水に連続的に動かして浸漬し、その後すぐに取り外した。各ロッドには、30mLの滅菌緩衝水を含む新しい50mLコニカルチューブを使用した。
【0114】
b.ランダムに選択された試験片の1つで、ロッドを空の滅菌の50mLのコニカルチューブの中央に保持した。止めねじを緩めると、試験片をチューブの底に直接落とすことができた。
【0115】
CDAおよび臭素含有殺生物剤の同時添加について
a.リン酸緩衝液(未処理の対照例)、310nMのCDAを含む緩衝液、又は異なる濃度の殺生物剤を含む緩衝液のいずれかを含む4mLの溶液を、試験片を含むチューブにピペットでゆっくりと入れた。
b.各チューブを軽く叩いて、試験片の下に閉じ込められた気泡を放出した。
c.チューブ(対照例、CDA、又は殺生物剤を含む)を200rpmで振とうしながら、20℃で1時間の接触時間インキュベートした。
d.1時間の接触時間の後、36mLの中和剤を各チューブに添加した。
e.組み合わせ処理を、CDA(310nMのCDA)と殺生物剤を一緒にチューブに添加する同時処理として実行した。チューブを200rpmで振とうしながら、20℃で1時間の接触時間インキュベートした。システムで測定されたpHは、8~9の間にあった。
1時間の接触時間の後、36mLの中和剤を各チューブに添加した。
【0116】
バイオフィルムの除去と分解について
a.Vortex Genie-2 Model no.G560Eを使用して、各チューブを最高の設定で30秒間ボルテックスした。
b.チューブを45kHzで30秒間超音波処理した。
c.チューブを上記のようにボルテックスし、次に超音波処理して再度ボルテックスした。
d.サンプルを緩衝水で連続的に希釈した。
e.注入プレーティング法を使用して、コロニーを増殖させるために各希釈液を(R2A寒天上で)2回培養した。
f.プレートを35℃で72時間インキュベートした。
g.適切なコロニー数を数えた。
【0117】
結果について
上記のように生成されたバイオフィルムに対する10ppmのスルファミン酸安定化臭素(Bromosol)のみで処理した場合、及び310nMのCDAと組み合わせて処理した場合の効果を、
図19の棒グラフに示す。CDAのみでは、対照例と比較して有用な効果を示していないことがわかる。Bromosolを単独で適用すると、バイオフィルムが減少する(2.5log単位)。組み合わせ処理(つまり、CDAと殺生物剤)は、殺生物剤のみでの処理と比較して、さらなるバイオフィルムの減少、1.4log単位の増強を達成している。
【国際調査報告】