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特表2022-534955分解能精緻化のためのビームステアリングレーダーにおけるガードバンドアンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】分解能精緻化のためのビームステアリングレーダーにおけるガードバンドアンテナ
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/42 20060101AFI20220728BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20220728BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220728BHJP
   H01Q 3/34 20060101ALI20220728BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G01S13/42
G01S13/34
G01S13/931
H01Q3/34
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570528
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020035758
(87)【国際公開番号】W WO2020247393
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/856,688
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520145207
【氏名又は名称】メタウェーブ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キャロル,ケネス,レイ
(72)【発明者】
【氏名】アシュール,マハ
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA26
5J021HA01
5J021HA04
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD10
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK36
5J070BA01
(57)【要約】
本明細書に開示される例は、物体識別のためのビームステアリング車両レーダーに関する。ビームステアリング車両レーダーは、メインローブと、複数のサイドローブと、を含む、放射ビームを生成するための複数のアンテナ要素を有する、ビームステアリング受信アンテナと、ガードバンド放射ビームを生成するための少なくとも1つのガードバンドアンテナと、ビームステアリング受信アンテナに結合され、放射ビーム内の第1の物体反射を検出および識別するための知覚モジュールと、を含む。知覚モジュールは、ガードバンド放射ビームにおける第2の物体反射の不在を判定すると、第1の物体反射の到来範囲および到来角度を判定するためのモノパルスモジュールを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体識別のためのビームステアリング車両レーダーであって、
メインローブおよび複数のサイドローブを含む放射ビームを生成するための複数のアンテナ要素を有する、ビームステアリング受信アンテナと、
ガードバンド放射ビームを生成するための少なくとも1つのガードバンドアンテナと、
前記放射ビーム内の第1の物体反射を検出および識別するように、前記ビームステアリング受信アンテナに結合された知覚モジュールと、を含み、
前記知覚モジュールは、前記ガードバンド放射ビームにおける第2の物体反射の不在を判定すると、前記第1の物体反射の到来範囲および到来角度を判定するためのモノパルスモジュールを含む、ビームステアリング車両レーダー。
【請求項2】
前記ビームステアリング受信アンテナは、メタ構造アンテナを含む、請求項1に記載のビームステアリング車両レーダー。
【請求項3】
前記ビームステアリング受信アンテナは、フェーズドアレイアンテナを含む、請求項1に記載のビームステアリング車両レーダー。
【請求項4】
前記ビームステアリング受信アンテナは、前記知覚モジュールによって制御される、請求項1に記載のビームステアリング車両レーダー。
【請求項5】
前記知覚モジュールは、前記複数の物体を識別するための少なくとも1つのニューラルネットワークを含む、請求項1に記載のビームステアリング車両レーダー。
【請求項6】
前記モノパルスモジュールは、前記複数の物体を検出するように、メインローブの走査ステップサイズを低減するものである、請求項1に記載のビームステアリング車両レーダー。
【請求項7】
前記モノパルスモジュールは、前記複数の物体を検出するように、前記ガードバンド放射ビームの走査ステップサイズを低減するものである、請求項1に記載のビームステアリングビークルレーダー。
【請求項8】
ビームステアリングレーダーを用いて物体を識別するための方法であって、
前記ビームステアリングレーダーにおける受信アンテナから、メインローブにおける第1の物体反射を受信することと、
少なくとも1つのガードバンドアンテナから、ガードバンド放射ビームを生成することと、
前記第1の物体反射の到来範囲および到来角度を判定することと、
前記到来角度における前記ガードバンド放射ビームにおいて、第2の物体反射を判定すると、前記第1の物体反射に対する物体データをキャプチャすることと、
前記ガードバンド放射ビームにおいて、他の物体反射の不在を判定すると、複数の物体を識別するように、精緻化された走査を開始することと、を含む、方法。
【請求項9】
第1の物体反射を受信することは、前記受信アンテナにおいて、ミリ波RF信号を受信することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の物体反射の到来範囲および到来角度を判定することは、範囲ドップラーマップを生成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の物体反射に対する物体データをキャプチャすることは、少なくとも1つのニューラルネットワークを使用して、前記範囲ドップラーマップにおいて、前記第1の物体反射を識別することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
精緻化された走査を開始することは、前記複数の物体を検出するように、前記メインローブの走査ステップサイズを低減することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
精緻化された走査を開始することは、前記複数の物体を検出するように、前記ガードバンド放射ビームの走査ステップサイズを低減することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ビームステアリングレーダーにおける処理エンジンに結合された受信アンテナシステムであって、
ミリ波RF信号を受信し、メインローブおよび複数のサイドローブを含む放射ビームを生成するための複数のアンテナ要素を有する、ビームステアリング受信アンテナと、
前記ミリ波RF信号からガードバンド放射ビームを生成するための少なくとも1つのガードバンドアンテナと、を含み、
前記処理エンジンは、前記メインローブにおける第1の物体反射と、前記ガードバンド放射ビームにおける第2の物体反射の不在と、を判定すると、複数の物体を検出するように構成されている、受信アンテナシステム。
【請求項15】
前記ビームステアリング受信アンテナは、メタ構造アンテナを含む、請求項14に記載の受信アンテナシステム。
【請求項16】
前記処理エンジンは、前記ビームステアリング受信アンテナの走査パラメータを制御するための知覚モジュールを含む、請求項14に記載の受信アンテナシステム。
【請求項17】
前記知覚モジュールは、前記複数の物体を識別するための少なくとも1つのニューラルネットワークを含む、請求項16に記載の受信アンテナシステム。
【請求項18】
前記処理エンジンは、前記複数の物体を検出するように、メインローブの走査ステップサイズを低減するものである、請求項14に記載の受信アンテナシステム。
【請求項19】
前記処理エンジンは、複数の物体を検出するように、ガードバンド放射ビームの走査ステップサイズを低減するものである、請求項14に記載の受信アンテナシステム。
【請求項20】
前記ビームステアリング受信アンテナは、前記ビームステアリング受信アンテナにおける前記複数のアンテナ要素の各々に異なる時間に到来する受信したミリ波RF信号を整列させるための複数の位相シフタに結合されている、請求項14に記載の受信アンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月3日に出願され、「Guard Monopole for Resolution Refinement」と題する、米国仮特許出願第62/856,688号からの優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
自動運転は、サイエンスフィクションの領域から実現可能な現実へと急速に移行している。すでに市場に出回っているのは、安全性およびより良好な運転のために車両を自動化、適合、強化する高度運転支援システム(「ADAS」)である。次のステップは、ステアリング、加速、ブレーキ、周囲環境の監視などの運転機能、および交通、横断している歩行者、動物などを回避するために必要なときに車線または速度を変更するなどの事象に対応するための運転条件の制御をますます想定する車両であろう。物体および画像検出のための要件は重要であり、データをキャプチャし、それを処理し、それを行動に移すために必要な時間を特定する。精度、一貫性、およびコストの最適化を確保しながら、これらすべてが行われる。
【0003】
この作業を行う態様は、周囲の環境内の物体を人間と同じレベルで、または場合によってはさらに良好なレベルで検出および分類する能力である。人間は、目および脳という2つの主要な機能部分を本質的に有する非常に複雑な人間の視覚システムを用いて、周りの世界を認識および知覚することに長けている。自動運転技術では、目は、カメラ、レーダー、ライダーなどの複数のセンサの組み合わせを含むことがあり、脳は、複数の人工知能、機械学習、深層学習システムを伴うことがある。目標は、動的で動きの速い環境をリアルタイムで完全に理解し、環境の変化に応答して行動する人間のような知能を有することである。
【0004】
いくつかのレーダーシステムでの物体検出では、信号は、アナログ信号から直接情報を取得することを可能にする変調を使用して送信される。そのようなシステムの1つは、周波数変調連続波形(「FMCW」)技術を用いて、受信信号から直接範囲および速度をキャプチャする。各到来角で、生成されたビームは、一般には、パワーゲインの半分、または-3dBで測定される帯域幅またはビーム幅を有する。したがって、レーダーシステムの角度分解能は、レーダーシステム内の複数の物体を簡単に区別できないため、このビーム幅によって制限される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本出願は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明に関連して、より完全に理解され得、添付の図面は、縮尺通りに描写されておらず、また図面全体を通して、同様の参照符号は、同様の部分を指す。
図1】対象技術の様々な実装態様による、自立型車両のビームステアリングレーダーが、物体を検出および識別するために使用される例示的な環境を示す。
図2】対象技術の1つ以上の実装形態に従って、レーダーシステムを実装され得る例示的なネットワーク環境を示す。
図3】対象技術の1つ以上の実装形態に従って、図2のようなビームステアリングレーダーシステムの概略図を示す。
図4】対象技術の1つ以上の実装形態に従って、受信アンテナに沿ったガードバンドアンテナの概略図をより詳細に示す。
図5】対象技術の様々な実装形態に従って、ビームステアリングレーダーによる物体の識別を支援するフローチャートである。
図6-7】様々な例による、メインローブとガードローブのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、物体検出システム、特にガードバンドアンテナを使用して複数の物体を効果的に識別および解決するレーダーシステムの角度分解能を精緻化する方法および装置を提供する。本明細書に開示されるレーダーは、視野(「FoV」)を横切って任意の角度(すなわち、0°~360°)にステアリングされて物体を検出することができる狭い指向性ビームを生成することができるビームステアリングレーダーである。ビームはアナログ領域で生成およびステアリングされるが、物体識別のために受信されたレーダー信号の処理は、高度な信号処理および機械学習技術を用いて実行される。様々な実装態様では、物体は、1つ以上のガードバンドアンテナの助けを用いて受信されたレーダー信号において検出されて、メインビーム内の複数の物体を高い精度と角度分解能で効果的に解決する。レーダーの角度分解能は、本明細書で一般に説明されているように、レーダーが互いに区別および分離できる、同じ範囲にある2つの同じ大きさの物体間の最小距離である。
【0007】
ガードバンドアンテナは、本明細書で一般に説明されているように、メインビームで検出された物体を解決するためのアレイアンテナ(受信アレイアンテナなど)に付随するアンテナである。本開示の例は、一連のガードビームを生成するために少なくとも1つのガードバンドアンテナを適用する。これらは、メインビームよりも狭い3dBビーム幅を有する。物体がメインビームにおいて検出されるが、ガードビームにおいては検出されなかったときに、複数の物体が示される。応答して、システムは、ガードバンドアンテナ、メインビーム、またはその両方に、異なるステアリング角度またはより小さな走査ステップを適用することを選択し得る。そうすることで、レーダーシステムがメインビーム内の複数の物体を解決することができるため、レーダーシステムの角度分解能が効果的に改善されるだろう。
【0008】
信号の伝送の場合、伝搬は、信号源から、アンテナアレイ内の1つ以上の放射要素の位相を調整して放射ビームを向ける位相シフタを通って流れると理解されたい。送信信号の波形は以下のように説明され得る。
s(t)=A・sin[2πf(t)・t+φ(t)]
ここで、Aは振幅変調、時間tの関数fとしての振幅の変動は、信号の周波数、φは信号の位相である。様々なアプリケーションおよび構成が可能である。レーダーシステムでは、具体的には、受信アンテナは環境内の物体からの信号の反射またはエコーに応答する。受信信号は、物体の範囲および速度を識別するために、送信信号と比較される。同じ範囲および速度の物体について、受信信号は誤った印象を作成し、中間の場所にある単一の物体を示すことがある。
【0009】
動作中、受信アンテナ要素は、メインローブおよびサイドローブを有する放射ビームを用いてエリアを走査する。物体に関する情報はメインローブから取得され、サイドローブは削除または無視される。放射ビームのサイドローブを除去または識別するための1つの手法は、ガードバンドアンテナを使用することである。ガードバンドアンテナは、メインビームとは別の放射パターンを生成し、物体からのサイドローブの戻りを排除するのに効果的である。目標は、ガードバンドアンテナがサイドローブよりも高いゲインを提供し、サイドローブを排除できるようにすることである。ガードバンドアンテナは効果的にフィルタとして機能する。
【0010】
以下に述べる詳細な説明は、対象技術の様々な構成の説明として意図されており、対象技術を実施することができる唯一の構成を表すことを意図するものではないことが理解される。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明は、対象技術の完全な理解を提供することを目的とした特定の詳細を含む。しかしながら、対象技術は、本明細書に記載された特定の詳細に限定されず、1つ以上の実装を使用して実施され得る。1つ以上の例では、対象技術の概念を曖昧にすることを回避するために、構造および構成要素が、ブロック図で示される。他の例では、例の説明を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の方法および構造は、詳細に説明されないことがある。また、例は、互いに組み合わせて使用され得る。
【0011】
図1は、対象技術の様々な実装形態による、自律型車両のビームステアリングレーダーが、物体を検出および識別するために使用される例示的な環境を示す。自我車両100は、FoVまたは特定の領域を走査するためにレーダー信号を送信するためのビームステアリングレーダーシステム106を備えた自律型車両である。以下でより詳細に説明するように、レーダー信号は、複数の送信ビーム118をもたらすように調整することができる走査パラメータのセットに従って送信される。走査パラメータには、とりわけ、FoVを定義する走査領域の全角度、各増分送信ビームのビーム幅または走査角度、レーダー信号のチャープ数、チャープ時間、チャープセグメント時間、チャープスロープなどを含み得る。FoV全体またはその一部は、そのような透過ビーム118の編集によって走査することができ、これらは、連続する隣接する走査位置にあるか、または特定のまたはランダムな順序にあってもよい。FoVという用語は、本明細書においてレーダー送信に関連して使用されており、視界が遮られていない光学FoVを意味するものではないことに留意する。走査パラメータは、これらの増分透過ビーム間の時間間隔、および完全または部分走査の開始角度と停止角度の位置も示すことがある。
【0012】
様々な例において、自我車両100はまた、カメラ102およびライダー104などの他の知覚センサを有し得る。これらの知覚センサは、自我車両100には必要ではないが、ビームステアリングレーダー106の物体検出能力を増強するのに有用であり得る。カメラ102は、目に見える物体および状態を検出し、様々な機能の実行を支援するために使用され得る。ライダー104はまた、物体を検出し、この情報を提供して、自我車両100の制御を調整するために使用され得る。この情報には、高速道路の渋滞、道路状況、および車両のセンサ、アクション、または動作に影響を与える他の状況などの情報を含み得る。既存のADASモジュールは、(例えば、リアビューカメラにおいて)カメラセンサを利用して、駐車などの運転機能においてドライバを支援する。カメラは、人間の目と同様に詳細な高レベルでテクスチャ、色、およびコントラストの情報をキャプチャすることができるが、悪天候および照明の変化の影響を受けやすくなっている。カメラ102は、高解像度を有することができるが、50メートルを超える物体を解決しないことがある。
【0013】
ライダーセンサは典型的には、光のパルスが物体に移動してセンサに戻るまでにかかる時間を計算することにより、物体までの距離を測定する。車両の上部に配置されたとき、ライダーセンサは、周囲環境の3603Dビューを提供することができる。他のアプローチは、完全な360ビューを提供するために、車両の周囲の異なる位置に複数のライダーを使用し得る。ただし、ライダー104などのライダーセンサは、依然として非常に高価で、サイズが大きく、気象条件に敏感であり、短距離(例えば、150~300メートル未満)に制限される。一方、レーダーは長年にわたって車両に使用されており、全天候の条件で動作している。レーダーセンサは、他のタイプのセンサよりもはるかに少ない処理を使用し、障害物の背後にある物体を検出し、移動する物体の速度を判定するという利点を有する。解像度に関しては、ライダー104によって放出されるレーザービームは、小さな領域に集束され、RF信号よりも短い波長を有し、約0.25度の解像度を達成することができる。
【0014】
様々な例において、かつ以下により詳細に説明するように、ビームステアリングレーダー106は、自我車両100の経路および周囲環境の360の真の3Dビジョンおよび人間のような解釈を提供することができる。ビームステアリングレーダー106は、少なくとも1つのビームステアリングアンテナを用いて360のFoVで全方向にRFビームを成形およびステアリングすることができ、約300メートル以上の長距離にわたって物体を迅速かつ高精度で認識する。カメラ102およびライダー104の短距離機能は、レーダー106の長距離機能とともに、自我車両100内のセンサ融合モジュール108がその物体の検出および識別を強化することを可能にする。
【0015】
図示のように、ビームステアリングレーダー106は、遠距離(例えば、350mを超える)にある車両120、ならびに短距離(例えば、100m未満)にある車両110および114の両方を検出することができる。自我車両の運転機能を完全に自律させるためには、両方の車両を短時間で十分な距離と速度の分解能で検出することが不可欠である。レーダー106は、調整可能な長距離レーダー(LRR)モードを有しており、これにより、非常に短時間で長距離物体を検出することが、検出された車両のより細かい速度分解能を取得することに集中することを可能にする。本明細書では説明されていないが、レーダー106は、LRRモードと短距離レーダー(SRR)モードとの間で時間的に交互に再構成することができる。SRRモードでは、よりゲインを有するワイドビームが可能になり、事故を回避し、駐車および街中の移動を支援し、環境の広い領域に関する情報をキャプチャするための迅速な決定を下すことができる。LRRモードでは、高いゲインを有する狭い指向性のビームと長距離が可能になり、これは高速アプリケーションにとって強力であり、処理時間が長いほど信頼性を高くすることができる。各ビーム位置の滞留時間が長すぎるとブラインドゾーンが発生する可能性があり、調整可能なLRRモードにより、レーダー動作のためのアンテナゲイン、送信電力、および所望の信号対雑音比(SNR)を維持しながら、長距離で発生する可能性がある高速物体検出を確実にする。
【0016】
ここで、図2に注意を向けると、これは、対象技術の1つ以上の実装形態に従ってレーダーシステムが実装され得る例示的なネットワーク環境200を示す。例示的なネットワーク環境200は、伝送線路250を介して電子デバイス210に結合されたある数の電子デバイス220、230、240、242、244、246、および248を含む。電子デバイス210は、電子デバイス242、244、246、248を互いに通信可能に結合し得る。1つ以上の実装形態では、1つ以上の電子デバイス242、244、246、248は、電子デバイス210のサポートなしなどで、互いに直接通信可能に結合されている。ただし、描写されている構成要素のすべてが必要とされるわけではなく、1つ以上の実装形態が、図に示されていない追加の構成要素を含み得る。構成要素の配置およびタイプの変形は、本明細書に記載の特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供され得る。
【0017】
いくつかの実装形態では、1つ以上の伝送ライン250はEthernet伝送ラインである。この点で、電子デバイス220、230、240、242、244、246、248、および210は、米国電気電子学会(IEEE)802.3企画(例:802.3ch)に記載されているものなど、1つ以上の物理層規格の1つ以上の態様と相互運用可能な物理層(PHY)を実装し得る。電子デバイス210は、スイッチデバイス、ルーティングデバイス、ハブデバイス、または一般に、電子デバイス220、230、240、242、244、246、および248を通信可能に結合し得る、任意のデバイスを含み得る。
【0018】
1つ以上の実装形態では、例示的なネットワーク環境200の少なくとも一部分は、乗用車などの車両内に実装される。例えば、電子デバイス242、244、246、248は、パワートレインシステム、シャーシシステム、テレマティックシステム、エンターテインメントシステム、カメラシステム、車線逸脱システムなどのセンサシステム、診断システム、または一般に車両で使用され得る任意のシステムなど、車両内の様々なシステムを含み得るか、またはそれらに結合され得る。図2では、電子デバイス210は中央処理ユニットとして描かれ、電子デバイス220はレーダーシステムとして描かれ、電子デバイス230は1つ以上のセンサを有するライダーシステムとして描かれ、電子デバイス240はエンターテインメントインターフェースユニットとして描かれ、電子デバイス242、244、246、248は、フォワードビュー、リアビュー、およびサイドビューカメラなどのカメラデバイスとして描かれる。1つ以上の実装形態では、電子デバイス210および/または電子デバイス242、244、246、248のうちの1つ以上は、インターネットなどの公共通信ネットワークに通信可能に結合され得る。
【0019】
電子デバイス210は、電子デバイス220、230、240、242、244、246、および248によって取得されたデータを処理するためのマルチセンサ融合プラットフォームを含み、これは、取得されたデータにおいて検出および識別された物体にラベルを付けすることを含む。このような物体は、道路、壁、建物、中央分離帯、他の物体など、および他の車両、歩行者、傍観者、サイクリスト、植物、樹木、動物など、車両の近くの環境にある構造要素を含み得る。
【0020】
図3は、様々な例に従って、図2のように実装されたビームステアリングレーダーシステムの概略図を示す。ビームステアリングレーダー300は、真の3Dビジョンを備え、人間のように世界を解釈できる「デジタルアイ」である。「デジタルアイ」と人間のような解釈能力は、レーダーモジュール302と知覚エンジン304の2つの主要モジュールによって提供される。レーダーモジュール302は、FoV内でRF信号を送信することと、FoV内の物体で反射すると送信信号の反射を受信することの両方が可能である。レーダーモジュール302においてアナログビームステアリングを使用することにより、単一の送信および受信チェーンを効果的に使用して、指向性があり、かつステアリング可能なビームを形成することができる。
【0021】
受信チェーンは、受信アンテナ312~313、受信ガードバンドまたは単にガードアンテナ311および314、任意選択的なカプラ370~373、低雑音増幅器(LNA)340~343、移相シフタ(PS)回路320~322、増幅器(パワー増幅器(PA)など)323~324および364~366、および組み合わせネットワーク344~345を含む。送信チェーンは、ドライバ390~396、供給ネットワーク334~336、PS回路316~318、PA328~331、任意選択的なカプラ376~382、送信アンテナ308~309、および任意選択的な送信ガードアンテナ307および310を含む。レーダーモジュール302はまた、トランシーバ306、デジタル-アナログ(DAC)コントローラ393、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)326、マイクロコントローラ328、処理エンジン350、グラフィックユーザインターフェース(GUI)358、温度センサ360、およびデータベース362を含む。処理エンジン350は、知覚エンジン304、データベース352、およびモノパルスモジュール357を有するデジタル信号処理(DSP)モジュール356を含む。ただし、描写されている構成要素のすべてが必要とされるわけではなく、1つ以上の実装形態が、図に示されていない追加の構成要素を含み得る。構成要素の配置およびタイプの変形は、本明細書に記載の特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。追加の構成要素、異なる構成要素、またはより少ない構成要素が提供され得る。
【0022】
動作中、レーダーモジュール302内のトランシーバ306は、一連の送信アンテナ308~309を介して送信するための信号を生成し、一連の受信アンテナ312~313を介して受信された信号を管理する。FoV内のビームステアリングは、送信チェーン上の送信アンテナ308~309にそれぞれ結合されたPS回路316~318、および受信チェーン上の受信アンテナ312~313にそれぞれ結合されたPS回路320~322で実装される。以下でより詳細に説明するように、レーダーモジュール302に統合されたカプラを使用して、送信アンテナ308~309および受信アンテナ312~313の注意深い位相および振幅較正をリアルタイムで実行することができる。他の実装形態では、較正は、レーダーが自我車両に配備される前に実行され、カプラは、取り外され得る。
【0023】
PS回路316~318および320~322の使用は、送信アンテナ308~309および受信アンテナ312~313における各要素の位相の別々の制御を可能にする。初期のパッシブアーキテクチャとは異なり、ビームは、アクティブビームフォーミングアンテナを使用して、離散角度だけでなく、FoV内の任意の角度(つまり、0~360)にステアリング可能である。マルチ要素アンテナは、アナログビームフォーミングアーキテクチャで使用でき、アンテナ要素ごとに追加のハードウェア構成要素または個々のデジタル処理なしで、単一の送信チェーンまたは受信チェーンのポートで、個々のアンテナ要素は、組み合わされ得るか、または分割され得る。さらに、複数要素アンテナの柔軟性により、送信と受信のビーム幅を狭くすることができる。アンテナビーム幅は、アンテナ要素の数が増加すると減少する。狭いビームは、アンテナの指向性を改善し、レーダーシステム300に著しく長い検出範囲を提供する。
【0024】
アナログビームステアリングを実装することに伴う主な課題は、77GHzで動作するようにPSを設計することである。PS回路316~318および320~322は、とりわけガリウム砒素(GaAs)材料などの適切な半導体材料を使用して製造された分散バラクタネットワークで実装された反射PS設計でこの問題を解決する。各PS回路316~318および320~322は、一連のPSを有し、各PSはアンテナ要素に結合されて、アンテナ要素によって送信または受信される信号に対して0~360のどこかの位相シフト値を生成する。PSの設計は、将来の実装形態でシリコンゲルマニウム(SiGe)、CMOSなどの他の半導体材料に拡張可能であり、顧客のアプリケーションの特定の要求を満たすようにPSのコストを削減する。各PS回路316~318および320~322は、FPGA326によって制御され、FPGA326は、各PS回路のPSに一連の電圧を供給し、一連の位相シフトをもたらす。以下でより詳細に説明するように、FPGA326は、時間領域での振幅重み付けを、PS回路316~318および/または320~322の各々のPSに適用する。振幅重み付けにより、送信アンテナおよび/または受信アンテナのサイドローブが低くする。
【0025】
DACコントローラ393は、LNA340~343、増幅器323~324および364~366、PS回路316~318および320~322、ドライバ390~396、ならびにPA328~331の各々に結合されている。いくつかの態様では、DACコントローラ393はFPGA326に結合され、FPGA326は、DACコントローラ393へのデジタルシグナリングを駆動して、LNA340~343、増幅器323~324および364~366、PS回路316~318および320~322、ドライバ390~396、ならびにPA328~331にアナログシグナリングを提供することができる。いくつかの実装形態では、DACコントローラ393は、組み合わせネットワーク344~345および供給ネットワーク334~336に結合されている。
【0026】
様々な例において、アナログ制御信号は、DACコントローラ393によって、PS回路316~318および320~322における各PSに印加されて、所与の位相シフトを生成し、ビームステアリングを提供する。PS回路316~318および320~322におけるPSに印加されるアナログ制御信号は、FPGA 326内のルックアップテーブル(LUT)に格納されている電圧値に基づく。これらのLUTは、各動作条件下で所与の位相シフトを生成するために各PSにどの電圧を印加するかを判定するアンテナ較正プロセスによって生成される。PS回路316~318および320~322におけるPSは、1度未満の非常に高い分解能で位相シフトを生成できることに留意する。位相に対するこの強化された制御は、レーダーモジュール302内の送信および受信アンテナが、非常に小さなステップサイズでビームをステアリングすることを可能し、レーダーシステム300の能力を改善して、非常に小さい角度分解能、例えば、1.3未満で近接したターゲットを解決する。FPGA326はまた、LNA 340~343のためのバイアス電圧値を格納するためのLUTを有する。以下でより詳細に説明するように、これらのバイアス電圧値は、受信ビームのサイドローブレベルを下げるために受信アンテナ312~313のエッジアンテナ要素に接続されたLNAのゲインを変動させることを含め、LNAのゲインを制御するために較正中に判定することができる。
【0027】
様々な例では、送信アンテナ308~309および受信アンテナ312~313の各々は、メタ構造アンテナ、位相アレイアンテナ、またはミリ波周波数でRF信号を放射することができる任意の他のアンテナであってもよい。本明細書で一般的に定義されるメタ構造は、その形状に基づいて所望の方向で入射放射線の制御および操作が可能な工学設計された構造である。送信アンテナ308~309および受信アンテナ312~313の様々な構成、形状、設計、および寸法を使用して、特定の設計を実装し、特定の制約を満たし得る。
【0028】
レーダーモジュール302における送信チェーンは、トランシーバ306がRF信号を生成して、送信アンテナ308~309による無線伝送の準備をすることから開始する。RF信号は、例えば、周波数変調連続波(FMCW)信号またはチャープであってもよい。FMCW信号は、レーダーシステム300が、送信信号と受信/反射信号またはエコーとの間の位相または周波数の差を測定することによって、物体までの距離と物体の速度の両方を判定することを可能にする。FMCW形式には、正弦波、三角形、のこぎり波、長方形などを含め様々な波形パターンが使用され得、各々が利点と目的を有する。
【0029】
FMCW信号がトランシーバ306によって生成されると、FMCW信号はドライバ390~392に供給される。ドライバ390~392から、信号は、それぞれ、供給ネットワーク334~336を介して分割および分配され、これらは、それぞれ、送信アンテナ308~309の各要素に対して、入力信号を複数の信号に分割する電力分配システムを形成する。供給ネットワーク334~336は、電力がそれらの間で均等に分配されるか、あるいは電力が別のスキームに従って分配されるように信号を分割し得、分割された信号は、すべて同じ電力を受信しない。次いで、供給ネットワーク334~336からの各信号は、それぞれPS回路316~318に入力され、FMCW信号は、(マイクロコントローラ328の指示下のFPGA326によって生成される電圧に対応する)DACコントローラ393からの制御信号に基づいて位相シフトされ、次いでPA329~330に送信される。信号は、送信アンテナ308~309によって放射される際に信号が減衰するため、FMCW信号が物体検出に所望される長距離に到達するために、信号増幅が必要とされる。PA329~330から、FMCW信号は、任意選択的に、それぞれカプラ378~380に供給されて、トランシーバ306にフィードバックされる較正信号を生成する。カプラ378~380から、FMCW信号は、送信アンテナ308~309を介して送信される。カプラ378~380は、リアルタイムの較正目的でのみ使用されるため、任意選択的であることに留意されたい。いくつかの態様では、トランシーバ306は、FMCW信号をドライバ394~396に供給し、これらは、次いでドライバ328および331に供給され、カプラ376および382に供給されることにも留意する。これらのカプラから、FMCW信号は、送信信号のサイドローブキャンセルのために任意選択的な送信ガードアンテナ307および310に供給される。
【0030】
マイクロコントローラ328は、道路および環境のシナリオに基づいて、所望の走査モードに従って、PS回路316~318および320~322におけるPSにどの位相シフトを適用するかを判定する。マイクロコントローラ328はまた、次の走査で適用するトランシーバの走査パラメータを判定する。走査パラメータは、知覚エンジン304の指示など、処理エンジン350のうちの1つの指示で判定され得る。検出された物体に応じて、知覚エンジン304は、マイクロコントローラ328に、次の走査で走査パラメータを調整して、FoVの所与の領域に集束するか、またはビームを異なる方向にステアリングするように命令し得る。
【0031】
様々な例において、かつ以下により詳細に説明するように、レーダーシステム300は、とりわけ、全走査モードおよび選択的走査モードを含む様々なモードのうちの1つで動作する。全走査モードでは、送信アンテナ308~309と受信アンテナ312~313は、小さな増分ステップで完全なFoVを走査することができる。ステアリング角度の関数としてサイドローブが増加するためにFoVがシステムパラメータによって制限される場合でも、レーダーシステム300は、長距離レーダーのかなりの領域にわたって物体を検出することができる。ボアサイトの両側で走査される角度の範囲、およびステアリング角度/位相シフト間のステップサイズは、運転環境に基づいて動的に変動させることができる。都市環境を走行する自律型車両(自我車両など)の性能を改善するために、走査範囲を拡大して交差点および縁石を監視し続け、車両、歩行者、自転車を検出することができる。この広い走査範囲はフレームレート(再訪問率)を低下させることがあるが、都市環境は一般に低速の走行シナリオを伴うため、許容可能であると考えられる。フレームレートが重要な高速フリーウェイのシナリオでは、走査範囲を低減することによって、より高いフレームレートを維持することができる。この場合、長距離ターゲットの検出と追跡には、ボアサイトの両側で数度のビーム走査で十分である。
【0032】
選択的走査モードでは、レーダーシステム300は、所望の角度にステアリングし、次にその角度の周りを走査することによって、関心のある領域の周りを走査する。これにより、レーダーシステム300は、有効な物体がない領域を照らす処理または走査サイクルを無駄にすることなく、関心のあるエリア内の物体を検出することを確実にする。レーダーシステム300は、遠方、例えば、ボアサイトで300m以上の長距離にある物体を検出することができるため、道路にカーブがある場合、直接的な測定は有用な情報を提供しない。むしろ、レーダーシステム300は、道路の曲率に沿ってステアリングし、そのビームを関心領域に向けて整列させる。様々な例において、選択的走査モードは、トランシーバ306によって生成されたFMCW信号のチャープスロープを変更し、送信信号の位相を道路の曲率をカバーするのに必要なステアリング角にシフトすることによって実装され得る。
【0033】
物体は、受信アンテナ312~313で受信される反射またはエコーによってレーダーシステム300を用いて検出される。次いで、受信信号は、トランシーバ306からのフィードバック較正信号を使用して、任意選択的にカプラ371~372に供給される。カプラ371~372は、リアルタイム較正中に受信チェーン信号経路へのプロービングを可能にすることができる。カプラ371~372から、受信信号はLNA341~342に供給される。LNA341~342は、PS回路316~318のPSと同様のPSを含むPS回路320~322と、受信アンテナ312~313との間に配置される。受信動作では、PS回路320~322は、空間構成に起因する放射要素間の受信信号の時間遅延を補償するために、受信アンテナ312~313内の放射要素間に位相差を作り出す。
【0034】
アナログビームフォーミングとも呼ばれる受信位相シフトは、エコーを整列させるために受信信号を組み合わせて、検出された物体の位置または位置を識別する。すなわち、位相シフトは、受信アンテナ312~313の放射要素の各々において異なる時間に到来する受信信号を整列する。送信チェーン上のPS回路316~318と同様に、PS回路320~322は、DACコントローラ390によって制御され、これは、各PSに制御シグナリングを提供して、所望の位相シフトを生成する。様々な実装形態では、FPGA326は、DACコントローラ390にバイアス電圧を提供して、PS回路320~322への制御シグナリングを生成する。
【0035】
受信チェーンは、それぞれ、組み合わせネットワーク344~345でPS回路320~322によって供給される信号を組み合わせ、そこから、組み合わされた信号は、信号増幅のために増幅器364~366に伝播する。次いで、増幅された信号は、受信機処理のためにトランシーバ306に供給される。示したように、組み合わせネットワーク344~345は、複数の組み合わせ信号346~348を生成することができ、その各信号は、それぞれ、受信アンテナ312~313内のある数の要素からの信号を組み合わせることに留意する。一例では、受信アンテナ312~313は、2つの64要素および32要素クラスタにそれぞれパーティション化された128および64の放射要素を含む。例えば、各クラスタから供給される信号は、対応する組み合わせネットワーク(例えば、344、345)において組み合わされ、別個のRF伝送ラインでトランシーバ306に送達される。この点で、組み合わされた信号346~348の各々は、2つのRF信号をトランシーバ306に搬送することができ、ここで、各RF信号は、受信アンテナ312~313の64要素および32要素クラスタからの信号を組み合わせる。他の例は、所望の構成に応じて、8、26、34、または62の要素などを含み得る。アンテナ要素の数が多いほど、ビーム幅は狭くなる。いくつかの態様では、受信ガードアンテナ311および314は、受信シグナリングをそれぞれカプラ370および373に供給し、次いで、これらは、LNA340および343に供給される。LNA340および343からのフィルタリングされた信号は、それぞれ増幅器323および324に供給され、次いで、受信機処理による受信信号のサイドローブキャンセルのためにトランシーバ306に供給される。
【0036】
様々な実装形態では、レーダーモジュール302は、64の要素の受信アンテナ312~313によって受信されるメインビームとは別個の放射パターンを生成する受信ガードバンドアンテナ311および314を含む。受信ガードバンドアンテナ311および314は、以下でより詳細に説明するように、物体からのサイドローブ戻りを効果的に排除し、検出された物体の角度分解能を改善するために実装される。同様に、レーダーモジュール302は、サイドローブ形成を排除するため、または送信アンテナ308~309による送信機メインビーム形成時に送信機サイドローブによって生成されるゲインを低減するために、任意選択的に送信ガードアンテナ307および310を含み得る。
【0037】
受信信号がトランシーバ306によって受信されると、受信信号は処理エンジン350によって処理される。処理エンジン350は、機械学習またはコンピュータビジョン技術を使用する1つ以上のニューラルネットワークで受信信号内の物体を検出および識別する知覚エンジン304と、レーダーシステム300の履歴および他の情報を格納するデータベース352と、トランシーバ306からのアナログ信号をモノパルスモジュール357によって処理することができるデジタル信号に変換するADCモジュールを有して、知覚エンジン304による物体の検出および識別のための到来角および他の貴重な情報を判定するDSPモジュール354と、を含む。1つ以上の実装形態では、DSPエンジン356は、マイクロコントローラ328またはトランシーバ306と統合され得る。
【0038】
レーダーシステム300はまた、所望される際、FoVを定義する走査領域の全角度、各増分送信ビームのビーム幅または走査角度、レーダー信号のチャープ数、チャープ時間、チャープスロープ、チャープセグメント時間などの走査パラメータの構成を可能にするGUI358を含む。さらに、レーダーシステム300は、車両の周りの温度を感知するための温度センサ360を有し、FPGA326からの適切な電圧を使用して、所望の位相シフトを生成することができるようにする。FPGA326に格納されている電圧は、温度条件を含む様々な動作条件でのアンテナの較正中に判定される。データベース362はまた、レーダーおよび他の有用なデータを格納するためにレーダーシステム300において使用され得る。
【0039】
レーダーデータは、方位角、仰角、範囲、速度など、ターゲットから反射された各RFビームによって判定される4次元(4D)情報に対応する、範囲ドップラー(RD)マップ情報のセットに編成され得る。RDマップは、FMCWレーダー信号から抽出され得、かつレーダー信号のフーリエ解析からのノイズと系統的なアーティファクトの両方を含み得る。知覚エンジン304は、例えば、送信アンテナ308~309から放射される次のRFビームのためのビームパラメータを含むアンテナ制御信号を提供することによって、送信アンテナ308~309のさらなる動作を制御する。
【0040】
動作中、マイクロコントローラ328は、例えば、知覚エンジン304の指示でパラメータを判定し得、知覚エンジン304は、自我車両の経路または周囲の関心のあるターゲットを識別すると、所与の時間において、FoVの特定のエリアに集束することを判定し得る。マイクロコントローラ328は、RFビームの方向、電力、および他のパラメータを判定し、送信アンテナ308~309を制御して、様々な方向でのビームステアリングを達成する。次に、送信アンテナ308~309は、判定されたパラメータを有するRFビームを放射する。RFビームは、自我車両の経路内およびその周りのターゲットから反射され(例えば、360視野において)、トランシーバ306によって受信される。受信アンテナ312~313は、受信された4Dレーダーデータを、ターゲット識別のために知覚エンジン304に送信する。
【0041】
様々な例において、知覚エンジン304は、FoVを説明する情報を記憶することができる。この情報は、傾向を追跡し、行動および交通状況を予測するために使用される履歴データであってもよく、またはある瞬間もしくはある時間ウィンドウにわたるFoVを説明する瞬間データもしくはリアルタイムデータであってもよい。このデータを格納する機能により、知覚エンジン304は、FoV内の特定のポイントまたはエリアを戦略的にターゲットにする決定を行うことができる。例えば、FoVが一定期間(例えば、5分間)クリア(例えば、エコーが受信されない)であってもよく、次いで、FoVの特定の領域から1つのエコーが到来するが、これは、車のフロントを検出するのと同様である。それに応答して、知覚エンジン304は、FoV内のそのセクターまたはエリアのより集束された視野のためにビーム幅を狭めることを判定し得る。次の走査は、ターゲットの長さまたは他の寸法を示し得、ターゲットが車両である場合、知覚エンジン304は、ターゲットがどの方向に動いているかを考慮し、そのエリアにビームを集束させ得る。同様に、小さく、車両の経路からすばやく外れるように動く鳥などの偽のターゲットにエコーが由来することがある。知覚エンジン304に結合されたデータベース352は、例えば、送信アンテナ308~309のどのサブアレイが異なる条件下でより良好に実行するかに関する情報など、レーダーシステム300のための有用なデータを格納することができる。
【0042】
本明細書に記載の様々な例において、自律型走行車両におけるレーダーシステム300の使用は、困難な気象条件においてターゲットを検出するための信頼できる方法を提供する。例えば、歴史的に、ドライバは、視界の低下に伴って走行速度が低下するため、濃い霧の中では劇的に減速する。例えば、制限速度が515km/hであるヨーロッパの高速道路では、視界が悪い場合、ドライバは50km/hまで減速する必要があり得る。レーダーシステム300を使用して、ドライバ(または無人車両)は、気象条件に関係なく、最大安全速度を維持することができる。他のドライバが減速したとしても、レーダーシステム300が有効にされた車両は、それらの低速で移動する車両およびその経路内の障害物を検出し、それらの周りを回避/ナビゲートすることができる。
【0043】
追加的に、混雑の激しいエリアでは、自律型車両が反応して行動を起こすのに十分な時間内にターゲットを検出する必要がある。レーダーシステムについて本明細書で提供される例は、レーダー信号の掃引時間を増加させて、反応するのに間に合うように任意のエコーを検出する。移動中の障害物が少ない地方および他のエリアでは、知覚エンジン304は、RFビームの集束をより大きなビーム幅に調整し、それにより、エコーが少ないエリアのより高速な走査を可能にする。知覚エンジン304は、所与の期間内に受信されたエコーの数を評価し、それに応じてビームサイズを調整することによって、この状況を検出し得る。ターゲットが検出されると、知覚エンジン304は、ビーム集束を調整する方法を判定する。
【0044】
ここで、図4に注意を向けると、これは、図3のような受信ガードバンドアンテナをより詳細に示す。受信アンテナ400は、わずかに異なる時間に物体からの信号または反射のための受信経路を作成するいくつかの放射要素402を有する。放射要素402は、48の要素アンテナなどのアレイ構成において、いくつかの実装形態ではメタ構造、または他の実装形態ではパッチであり得る。位相および増幅モジュール404は、受信したRF信号を整列させるための位相シフトを提供する。放射要素402は、組み合わせ構造406と、位相および増幅モジュール404に結合され、これらは、図3のPS回路320および322ならびにLNA341および342として実装される位相シフタおよびLNAを含む。この図では、2つの物体、物体A408と物体B410が同じ範囲に位置し、受信アンテナ400に対して同じ速度で動いている。物体(例えば、408および410)間の角距離が放射ビームの帯域幅より小さいときに、物体は、受信アンテナ400によって区別できないことがある。これは、角度分解能または空間分解能と呼ばれる。レーダーおよび物体検出の分野では、角度分解能は、互いに近接して配置された物体を区別するレーダーの能力を説明し、近接位置は、一般に、レーダーアンテナなどの物体検出メカニズムから物体までの距離および物体の速度によって測定され得る。
【0045】
レーダーの角度分解能は、レーダーが空間的に区別および分離することができる、同じ距離にある2つの同じ大きさのターゲット間の最小距離である。角度分解能は、アンテナのハーフパワービーム幅の関数であり、3dBビーム幅と呼ばれ、物体の差別化を制限する要因として機能する。物体の識別は、物体からの反射の到来角度を正確に識別することに基づく。ビーム幅の角度を小さくすると、指向性が高くなり、角度分解能がより精緻化されるが、より小さいステップサイズを達成するために、より高速な走査が必要である。例えば、自律型車両のアプリケーションでは、レーダーは、車両が必要なときに是正措置を講じるのに十分な時間内に車両の環境を走査する役割を果たす。これにより、システムの能力が特定のステップに制限される。これは、3dBの角度ビーム幅未満の距離を有する物体は、追加の処理なしでは区別できないことを意味する。言い換えると、同じ距離にある2つの同一のターゲットは、それらがアンテナの3dBビーム幅を超えて離れている場合、角度において解決することができる。本例は、モノパルスモジュールがそのような角距離にある物体を解決することができない場合に、物体を区別するために、複数のガードバンドアンテナ311および314を使用する。
【0046】
図4に示されるように、アンテナ400が物体408~410を区別するために、物体の角度分解能は、受信経路220によって生成されるビームのメインローブの3dBビーム幅未満でなくてはならない。物体の識別を支援するために、図5のようなプロセス500は、ガードバンド412~414を用いて、メインビームに対してガードバンド放射ビームを生成する。物体の反射がメインビームで受信され(502)、これは、検出された物体があることを示す。次いで、プロセスは、ガードバンド放射ビームもこの物体を検出したかどうかを判定し(504)、検出した場合、それは、物体をキャプチャする。ガードバンド放射ビームが反射を検出しない(504)場合、モノパルスモジュール357での処理は、メインビーム内の複数の物体の探索を開始する(506)。このプロセスは、走査タイプを判定し(508)、物体が検出されたかどうかを判定するために、メインローブまたはガードバンド放射ビームの走査ステップを低減し得る(510)。物体が検出された場合、プロセスは次に物体データをキャプチャし(512)、そうでない場合、処理は物体からの反射を受信する(502)ために戻る。
【0047】
図6~7は、これらの信号の関係を示しており、メインローブ600は、図4の要素402などのアンテナ構造の主な放射要素から生じる。メインローブ600は、図6の利得対到来角度のプロットによって示されるように、サイドローブを有する。メインローブ600に加えて、かつそれとは別に、一連のガードローブ602がある。これらは、単一のガードチャネル604の利得レベルを超える信号をフィルタリングするために使用される。2つのガードバンドアンテナ(例えば、図4のガードバンドアンテナ412~414)を使用すると、ガードバンド放射ビーム602をもたらす。2つのガードバンドアンテナが示されているが、ビームステアリングレーダー300の様々な構成は、任意の数のガードバンドアンテナを含むことができることに留意する。例えば、単一のガードバンドアンテナをビームステアリングレーダーに組み込むことも、3つ以上のガードバンドアンテナを使用することもできる。より多くのガードバンドアンテナが実装されるほど、ガードバンドアンテナの放射ビーム内のローブがより離れ、角度分解能がより良好になる。
【0048】
図7は、メインローブ700および同時ガードローブ702を示している。この状況では、2つの物体の角度分解能は単一のメインローブの3dB帯域幅未満を有するため、本例なしでは効果的に区別可能ではなく、レーダーが物体をAoAに対応する位置X704に位置する単一の物体として読み取る。物体は、実際には位置706および704に位置している。レーダーが位置704を識別するとき、この例では、ガードローブを評価してこのAoAにおける物体を識別する。物体がAoAにおけるガードバンドによって検出されない場合、レーダーは複数の物体を探すように命令される。これは、メインローブの走査を精緻化することを伴うことがあってもよく、またはメインローブ内のガードローブのデジタルステアリングを伴ってもよい。
【0049】
ビームステアリングレーダーのこれらの様々な例は、センサパフォーマンスの改善、全天候型/全条件型の検出、高度な意思決定アルゴリズム、センサフュージョンによる他のセンサとの相互作用により、自動運転をサポートする。レーダーは、自動運転車のためのものなど、多くのアプリケーションにおいて気象条件によって阻害されないため、これらの構成は、レーダーセンサの使用を最適化する。本明細書で説明されるレーダーは、事実上「デジタルアイ」であり、真の3Dビジョンを持ち、人間のように世界を解釈することができる。
【0050】
開示された例の前述の説明は、当業者が本開示を作成または使用することを可能にするために提供されることが理解される。これらの例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかになり、本明細書で定義された一般的な原理は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、他の例に適用することができる。したがって、本開示は、本明細書に示される例に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理および新規の特徴に一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0051】
本明細書で使用されるように、一連の項目に先行する「少なくとも1つの」という句は、項目のいずれかを区切る「および」または「または」という用語とともに、リストの各メンバ(すなわち、各項目)ではなく、リスト全体を修飾するものである。「少なくとも1つの」という句は、少なくとも1つの項目を選択する必要はなく、むしろ、この句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、および/または項目のいずれかの組み合わせのうちの少なくとも1つ、および/または項目の各々のうちの少なくとも1つを含む意味を許容している。例として、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、またはCのみ、A、B、およびCのいずれかの組み合わせ、および/またはA、B、およびCの各々の少なくとも1つを指す。
【0052】
さらに、本明細書または特許請求の範囲で「含む」、「有する」などの用語が使用されている限り、このような用語は、特許請求の範囲で「備える」が移行語として用いられた場合に解釈されるように、「備える」という用語と同様の方法で包括的であることが意図される。
【0053】
単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、「ただ1つの」を意味するものではなく、「1つ以上」を意味する。「いくつか」という用語は、1つ以上を指す。下線および/またはイタリック体の見出しおよび小見出しは、便宜上使用されているものであり、対象技術を限定するものではなく、対象技術の説明の解釈に関連して参照されるものではない。本開示全体を通して記載された様々な構成の要素に対する、当業者に知られている、または後に知られるようになる構造的および機能的なすべての同等物は、参照することによって本明細書に明示的に組み込まれ、対象技術に包含されることを意図する。さらに、本明細書に開示されるものは、そのような開示が上記の説明に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図するものではない。
【0054】
本明細書には多くの具体的な内容が含まれているが、これらは請求され得る範囲を限定するものではなく、主題の特定の実装態様を説明するものとして解釈されるべきである。別個の実装態様の文脈において本明細書で説明される特定の特徴もまた、単一の実装形態で組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実装形態の文脈で説明されている様々な特徴も、複数の実装態様で、別個に、または任意の好適な部分的組み合わせで実装することができる。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上述され、当初はそのように請求され得るが、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから除外することができ、請求された組み合わせは部分的組み合わせまたは部分的組み合わせの変形例を対象とし得る。
【0055】
本明細書の主題は、特定の態様に関して説明してきたが、他の態様も実装可能であり、以下の特許請求の範囲内にある。例えば、動作が特定の順序で図面に描かれているが、望ましい結果を得るためには、そのような動作を図示された特定の順序もしくは一連の順序で行うこと、または図示された動作をすべて行うことが必要であると理解されるべきではない。特許請求の範囲に記載されている動作は、異なる順序で実行することができ、望ましい結果を依然として達成することができる。一例として、添付の図に図示されたプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示された特定の順序、または一連の順序を必要としない。さらに、上述した態様での様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての態様でそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、上述したプログラムコンポーネントおよびシステムは、概して、単一のハードウェア製品にまとめて統合するか、または複数のハードウェア製品にパッケージ化することができると理解されるべきである。他の変形例は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】