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特表2022-534964競合アッセイ対照を伴う側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】競合アッセイ対照を伴う側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570733
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 AU2020050530
(87)【国際公開番号】W WO2020237308
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】2019901798
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512197412
【氏名又は名称】エリューム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フライ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ドウズ,ハーモニー
(57)【要約】
本開示は、試料にて1以上の標的分析物の存在または非存在についての決定を行うための、実薬対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片及びそれを含む診断装置に関する。例えば、本開示は、例えば、血液中のヒト血清アルブミン(HSA)のような調べられる生体試料に豊富に存在する対照分析物を認識する実薬対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片、及びそれを含む診断装置に関する。いくつかの例では、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は実薬対照及び1以上の内部対照を含んでもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片であって、
a)第1の対照分析物に結合することができる第1の可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分とを含み;
前記第1の不動化された捕捉試薬は、前記第1の不動化された捕捉試薬が前記可動性標識種に結合することができるように前記第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する、前記側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項2】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片であって、
a)第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する第1の可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分とを含み;
前記第1の不動化された捕捉試薬は、前記可動性標識種または前記第1の対照分析物に結合することができる、前記側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項3】
さらに
c)第2の可動性標識種と;
d)第2の不動化された捕捉試薬を含む第2の対照部分とを含み、
前記第2の不動化された捕捉試薬が前記第2の可動性標識種に結合することができる、請求項1または請求項2に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項4】
使用するとき、検査試料における前記第1の対照分析物の非存在下で、前記第1の可動性標識種が前記第1の不動化された捕捉試薬に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項5】
使用するとき、検査試料における前記第1の対照分析物の存在下で、前記第1の可動性標識種が前記第1の対照分析物の非存在下での結合のレベルと比べて低下したレベルで前記第1の不動化された捕捉試薬に結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項6】
前記第1の対照分析物が通常、検査試料に存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項7】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片であって、
a)第1の対照分析物と第2の対照分析物とに結合する可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬が前記第1の対照分析物に特異的に結合するように構成される、前記第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分と;
c)第2の不動化された捕捉試薬が前記第2の対照分析物に特異的に結合するように構成される、前記第2の不動化された捕捉試薬を含む第2の対照部分とを含み;
前記第1の対照分析物は通常、検査試料に存在する分析物であり、前記第2の対照分析物は通常、検査試料に存在しない分析物である、前記側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項8】
使用するとき、検査試料における前記第1の対照分析物の非存在下で、前記第1の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量が前記第2の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量にほぼ等しい、請求項7に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項9】
前記第1の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量及び前記第2の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量が約1:1~約2:1の比率で存在する、請求項8に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項10】
使用するとき、検査試料における前記第1の対照分析物の存在下で、前記第1の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量が前記第2の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量よりの少ない、請求項7に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項11】
前記第1の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量及び前記第2の対照部分で不動化された前記可動性標識種の量が約1:1未満の比率で存在する、請求項10に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項12】
前記標識種がラテックス粒子、コロイド金、磁性粒子、またはナノ粒子凝集体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項13】
前記標識種がグルタルアルデヒドで活性化されたラテックス粒子である、請求項1~12のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項14】
前記第1の対照分析物がヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項1~13のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項15】
前記第1の不動化された捕捉試薬が抗ヒト血清アルブミン抗体である、請求項1~14のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項16】
前記第2の対照分析物がニワトリIgYである、請求項3~15のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項17】
前記第2の不動化された捕捉試薬が抗ニワトリIgY抗体である、請求項3~16のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項18】
前記検査試料が生体試料である、請求項1~17のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項19】
前記検査試料がヒト試料である、請求項1~18のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項20】
前記検査試料が粘液試料である、請求項18または請求項19に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項21】
前記検査試料が血液試料である、請求項18または請求項19に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2019年5月27日に出願されたオーストラリア仮特許出願番号2019901798の優先権を主張するものであり、その内容は全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、試料にて1以上の標的分析物の存在または非存在についての決定を行うための実薬対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片及びそれを含む診断装置に関する。例えば、本開示は、例えば、血液中のヒト血清アルブミン(HSA)のような調べられる生体試料に豊富に存在する対照分析物を認識する実薬対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片、及びそれを含む診断装置に関する。いくつかの例では、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は実薬対照及び1以上の内部対照を含んでもよい。
【背景技術】
【0003】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ(LFA)は、25年を超えて臨床検査市場で使用されており、診療現場または現場ベースの設定で使用することができる、安価で使いやすく、迅速で定性的な検査として広く扱われている。
【0004】
LFAはニトロセルロースのような多孔質膜材料に沿った液体試料の移動を利用する。1以上の標的分析物の捕捉と検出は、試料が捕捉試薬で不動化された個別のゾーンまたはラインを横切って流れるときに行われる。抗体が一般的な選択肢であるが、種々の捕捉試薬を使用することができる。抗体が使用されるLFAは通常、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ(LFIA)と呼ばれる。
【0005】
LFAは、サンドイッチアッセイ形式を使用する大規模で複雑な分析物の検出、または競合形式を使用する小分子もしくはハプテンの検出に使用することができる。サンドイッチアッセイでは、通常、細片は、標的分析物にタグが付けられ(すなわち、標識され)、その後捕捉されて検出される間に、一連の個別のゾーンを横切る試料とアッセイ試薬の流れを方向付ける一連の吸収性パッド材料で構築される。検体は最初に細片の吸収性試料パッドに適用され、それは試料のフィルター及びリザーバーとして機能する。流体は、細片の結合遊離パッドを介して試料パッドから引き出され、そこで、試料における1以上の標的分析物が比色、蛍光、磁気、または放射性のレポーター分子と相互作用することによって標識される。標識を達成するために、レポーター分子は分析物特異的リガンド(ふつう抗体)に結合され、各標的分析物と急速に複合体を形成して標識された複合体を形成する。試料は、そこに含有される標識複合体を含めて結合遊離パッドから細片の検査ゾーンに引き出され、そこで1以上の相補性リガンドが1以上の検査ラインで細片に不動化され、標識複合体に結合する。残りの試料は、検査ゾーンから高吸収性シンクパッドまで細片を通過し続ける。1以上の検査ゾーンにおける任意の標識複合体の存在は、試料における1以上の標的分析物の存在の測定可能な指示を提供する。標識の選択に応じて、検査は肉眼で解釈されてもよく、例えば、1以上の「可視」検査ラインの存在によって、1以上の標的分析物の存在の定性的な指示、または例えば、蛍光を検出するスキャナーを使用した存在を提供する。
【0006】
LFAの検査細片には通常、試料で分析物が検出されなかった場合に検査が正常に実行されたことを確認するための内部対照も含まれている。従来の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイでは、検査ラインの下流を流れる未結合標識は、対照ラインに不動化された抗種(抗マウスなど)抗体によって捕捉される。対照ラインの出現は、検査結果が陰性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する検査が適切に実行されたという証拠を提供し、そうでない場合、バンドは出現しない。また、検査細片の生物学的構成成分が輸送中及び保管中に活性状態を維持したといういくつかの指標も提供する。特定の例では、例えば、検査が家庭での使用を目的としている場合、LFAに基づく診断検査は検査結果の検証を改善するためのさらに有益な対照の恩恵を受けてもよい。したがって、改善された対照を伴うLFA検査細片に対するニーズがある。
【0007】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、論文、またはこれらに類するものに関するいかなる議論も、これらの事項のいずれかもしくは全てが先行技術基盤の一部を形成していること、またはこれらが、本願の各請求項の優先日前に存在していたとして、本開示に関連する分野で周知の一般知識であったことを認めるものとはみなされない。
【発明の概要】
【0008】
従来の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイでは、検査ラインの下流を流れる未結合標識は対照ラインにて抗種(例えば、抗マウス)抗体によって捕捉される。対照ラインでの検出可能なシグナルの出現は、検査結果が陰性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが適切に実行されたという証拠を提供し、そうでない場合、バンドは出現しない。対照はまた、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の生物学的構成成分が輸送中及び保管中に活性状態を維持したといういくつかの指標も提供する。特定の例では、例えば、検査が家庭での使用を目的としている場合、検査はさらなる実薬対照から恩恵を受けてもよい。例えば、単に未結合標識を捕捉する代わりに、実薬対照は生体試料に存在するバイオマーカーを特異的に認識してもよい。
【0009】
本発明者らは、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく機能しているかどうかをユーザーがさらに自信を持って判定するのを可能にする、競合アッセイに基づく実薬対照設計を伴う側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を開発した。この点に関して、本開示は、市販の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが、検査分析物が中濃度から高濃度で存在する場合に「フック効果」または「プロゾーン効果」の影響を受けやすい内部対照または実薬対照を含むという認識にある程度基づく。従来の内部対照は、対照ラインにて抗種(例えば、抗マウス)抗体によって捕捉される検査ラインの下流を流れる未結合標識に依存する。同様に、従来の内部対照は、対照ラインにて適切な抗体によって捕捉される検査ラインの下流を流れる対照分析物に依存する。いずれの場合にも、対照ラインでの検出可能なシグナルの出現は、検査結果が陰性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが適切に実行されたという証拠を提供し、そうでない場合、バンドは出現しない。しかしながら、そのような対照は、検査分析物が中濃度から高濃度で存在する場合、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイの実績の正確な証拠を(「フックアウト」のため)提供できなくてもよく、それによって、実際そうでなかった場合にユーザーが側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイは不合格だったと考えるように導く。
【0010】
本開示は、「フック効果」の影響を受けやすくない対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片及び装置を提供する。これは、試料(またはそれを含むランニング緩衝液)における対照分析物の存在または非存在を検出するために競合アッセイに依存する「実薬対照」を含めることによって達成される。実薬対照を含み、競合アッセイに依存する対照設計は、対照のダイナミックレンジを増やし、それによって、特に検査分析物が豊富に存在する場合に検査結果のさらに正確な検証を可能にする。
【0011】
さらに、本発明者らは、上記に記載されているような「実薬対照」に加えて、「内部対照」を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を開発した。内部対照を含めることによって、調べられる液体試料(例えば、検査試料のみ、またはランニング緩衝液と検査試料の混合物)が側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの間に検査細片を通過したこと及び検査細片の構成成分すべてが意図したとおりに機能していることをユーザーが確認するのを可能にする。まとめると、この二重対照設計は、ユーザーが(i)使用中に(実薬対照によって)十分な対照分析物(したがって十分な検査試料)が存在するかどうかを判定する、(ii)検査試料(またはそれを含むランニング緩衝液)が側方流動免疫クロマトグラフィープロセス中に検査細片を通過し、対照分析物が存在するかどうかにかかわらず(内部対照によって)、検査細片の構成成分すべてが意図したとおりに機能していることを判定する、及び(iii)(湿度、光、及び/または酸素への暴露によって損傷されてもよく、または傷つけられてもよい)アッセイ試薬の完全性を確認する(例えば、パッケージのシールが壊れている場合など)、または、抗種対照の機能性の喪失をもたらしてもよい時間の経過とともに劣化してもよい(例えば、有効期限後)アッセイ試薬の完全性を確認するのを可能にする。それによって、内部対照は検査結果が陽性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する。
【0012】
したがって、一態様では、本開示は、
a)第1の対照分析物に結合することができる第1の可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分とを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を提供し;
その際、第1の不動化された捕捉試薬は、第1の不動化された捕捉試薬が可動性標識種に結合することができるように第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する。
【0013】
別の態様では、本開示は、
a)第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する第1の可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分とを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を提供し;
その際、第1の不動化された捕捉試薬は可動性標識種または第1の対照分析物に結合することができる。
【0014】
一例では、第1の対照分析物はヒト血清アルブミン(HSA)である。しかしながら、当業者は、第1の対照分析物が検査試料に好ましくは豊富に存在する任意の分析物であってもよいことを理解するであろう。第1の対照分析物がHSAであり、第1の可動性標識種がそれに結合する例によれば、第1の可動性標識種は検出可能な標識に連結したまたは結合した抗HSA抗体であってもよく、第1の不動化された捕捉試薬はHSAであってもよい。第1の対照分析物がHSAであり、第1の可動性標識種がその結合特性を模倣する別の例によれば、第1の可動性標識種は、検出可能な標識に連結したまたは結合したHSAであってもよく、第1の不動化された捕捉試薬はHSAを結合するように構成された抗体であってもよい。
【0015】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が単一の対照部分、すなわち第1の対照部分を含む本開示の態様によれば、使用中の第1の対照部分での検出可能なシグナルの非存在または低下は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく実行されていることを示してもよい。これは、検査試料が検査細片を通って第1の検査部分に流れるとき、そこに含まれる第1の対照分析物が、必要に応じて、第1の可動性標識種または第1の不動化された捕捉試薬のいずれかに競合して結合し、それによって、第1の不動化された捕捉試薬への第1の可動性標識種の結合を妨げるまたは減らすからである。逆に、第1の対照分析物が存在しない、または第1の不動化された捕捉試薬に結合できない場合、例えば、ランニング緩衝液のみが側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を通過した場合、または対照分析物が分解された場合、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの間、第1の可動性標識種は第1の不動化された捕捉試薬に自由に結合することができるであろう。これによって、第1の対照部分で検出可能なシグナルが得られるであろう。
【0016】
いくつかの例では、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片はさらに:
c)第2の可動性標識種と;
d)第2の不動化された捕捉試薬を含む第2の対照部分とを含んでもよく、
その際、第2の不動化された捕捉試薬は第2の可動性標識種に結合することができる。
【0017】
第2の可動性標識種は、検出可能な標識に連結されるまたは結合される第2の対照分析物であってもよい。一例では、第2の可動性標識種は検出可能な標識に連結したまたは結合したニワトリIgYであり、第2の不動化された捕捉試薬はそれを結合するように構成される、例えば、ニワトリIgYに対して産生された抗種捕捉抗体である。しかしながら、当業者は他の免疫グロブリンが第2の対照分析物として使用されてもよいことを理解するであろう。好ましくは、第2の対照分析物は、哺乳動物IgG抗体とは構造的に異なり、例えば補体、リウマチ因子またはFc受容体のような、例えば、ヒトにおける既知の干渉物質との交差反応性を有さない免疫グロブリンである。第2の対照分析物はまた、第2の対照分析物に対して産生された抗種捕捉抗体が市販されていることに基づいて選択されてもよい。例えば、ニワトリIgYの場合、ニワトリIgYに対して産生されたいくつかの抗種捕捉抗体、例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)抗ニワトリIgY及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgYが市販されている。
【0018】
第2の可動性標識種が、検出可能な標識に連結したまたは結合したニワトリIgYである例によれば、第2の不動化された捕捉試薬は抗ニワトリIgY抗体であってもよい。例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)抗ニワトリIgY、及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgY。しかしながら、異なる第2の対照分析物が選択される場合、第2の不動化された捕捉試薬はその特定の分析物に結合するように構成されるであろう。
【0019】
本明細書に記載されているような第2の可動性標識種及び第2の対照部分を含む本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく実行されたかどうかに関してさらなるレベルの確実性を提供する。使用するとき、第2の対照部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物が存在するかどうかにかかわらず、試料(任意でランニング緩衝液に含まれるか、またはランニング緩衝液を含む)が側方流動免疫クロマトグラフィープロセス中に検査細片を通過したことを示してもよい。例えば、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は使用するとき、
(i)第2の対照部分でのシグナルの検出及び第1の対照部分での無シグナルまたは減少したシグナルの検出(その際、減少したシグナルは第2の対照部分でのシグナルのレベルに関連する)は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行し、第1の対照分析物が試料に存在した(「合格」)ことを示すように;
(ii)第1の対照部分及び第2の対照部分でのシグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行したが、第1の対照分析物が試料中に存在しなかった(「不合格」)ことを示すように;
(iii)第2の対照部分ではなく第1の対照部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物が試料に存在したが、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかったこと、例えば、試料が第2の対照部分に到達しなかったこと、及び/または、第2の可動性標識種または第2の不動化された捕捉試薬が意図したとおりに機能しなかった(「不合格」)ことを示すように;
(iv)第1の対照部分または第2の対照部分での無シグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかったこと、例えば、第1の対照分析物が試料中に存在しなかった、及び/または試料が第2の対照部分に到達しなかったこと、及び/または、第2の可動性標識種または第2の不動化された捕捉試薬が意図したとおりに機能しなかった(「不合格」)ことを示すように構成されてもよい。
【0020】
検出可能な標識または各検出可能な標識は、ラテックス粒子、ナノ粒子凝集体、コロイド状金、磁性粒子、蛍光色素または量子ドットであってもよい。一例では、検出可能な標識または各検出可能な標識は、ラテックス粒子、例えば、グルタルアルデヒドで活性化したラテックス粒子である。別の例では、検出可能な標識または各検出可能な標識はナノ粒子凝集体である。別の例では、検出可能な標識または各検出可能な標識はコロイド状金である。別の例では、検出可能な標識または各検出可能な標識は磁性粒子である。別の例では、検出可能な標識または各検出可能な標識は蛍光色素である。さらに別の例では、検出可能な標識または各検出可能な標識は量子ドットである。
【0021】
一例では、第1及び第2の可動性標識種は同じ検出可能な標識を含む。別の例では、第1及び第2の可動性標識種は異なる検出可能な標識を含む。
【0022】
使用するとき、及び検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の可動性標識種は第1の不動化された捕捉試薬に結合する。第1の可動性標識種の第1の不動化された捕捉試薬への結合は、第1の対照部分で検出可能なシグナルをもたらすであろう。これは、例えば(i)第1の対照分析物が分解した、または(ii)検査細片に適用された側方流動ランニング緩衝液にて検査試料が不十分、またはない(例えば、ユーザーが十分な検査試料を適用していない)ので、側方流動アッセイが正しく進行しなかったことを示す。しかしながら、第1の対照分析物が検査試料に存在する場合、第1の可動性標識種は、第1の対照分析物の非存在下での結合(そうでなければ発生したであろう)のレベルと比較して低下したレベルで第1の不動化された捕捉試薬に結合する。これは、第1の対照分析物が第1の可動性標識種に競合して結合するので、第1の不動化された捕捉試薬への結合に利用できる第1の可動性標識種がほとんど、またはまったくないためである。これは、側方流動アッセイが適切に進行し、検査試料が側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を通って対照部分に流れたことを示している。
【0023】
別の態様では、本開示は:
a)第1の対照分析物と第2の対照分析物とに結合する可動性標識種と;
b)第1の不動化された捕捉試薬が第1の対照分析物に特異的に結合するように構成される、第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分と;
c)第2の不動化された捕捉試薬が第2の対照分析物に特異的に結合するように構成される、第2の不動化された捕捉試薬を含む第2の対照部分とを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を提供し;
その際、第1の対照分析物は通常、検査試料に存在する分析物であり、第2の対照分析物は通常、検査試料に存在しない分析物である。
【0024】
使用するとき、及び検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量は、第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量にほぼ等しい。例えば、検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量及び第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量は約1:1の比~約2:1の比率で存在する。例えば、検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量及び第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量は約1:1の比率で存在する。例えば、検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量及び第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量は約1.5:1の比率で存在する。例えば、検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量及び第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量は約2:1の比率で存在する。
【0025】
使用するとき、及び検査試料における第1の対照分析物の非存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量は第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量より少ない。例えば、検査試料における第1の対照分析物の存在下で、第1の対照部分に不動化された可動性標識種の量及び第2の対照部分に不動化された可動性標識種の量は約1:1未満の比率で存在する。
【0026】
第1及び第2の対照分析物に結合した可動性標識種は、任意の標識種、例えば、検出可能な標識種であってもよい。例えば、標識種はラテックス粒子、ナノ粒子凝集体、蛍光色素、または量子ドットであってもよい。一例では、標識種は、ラテックス粒子、例えば、グルタルアルデヒドで活性化したラテックス粒子である。別の例では、標識種はナノ粒子の凝集体である。別の例では、標識種は蛍光色素である。さらに別の例では、標識種は量子ドットである。
【0027】
一例では、第1の対照分析物はヒト血清アルブミン(HSA)である。しかしながら、当業者は、第1の対照分析物が検査試料に好ましくは豊富に存在する任意の分析物であってもよいことを理解するであろう。
【0028】
一例では、第2の対照分析物はニワトリIgYである。しかしながら、当業者は、他の免疫グロブリンが使用されてもよいことを理解するであろう。好ましくは、第2の対照分析物は、哺乳動物IgG抗体とは構造的に異なり、例えば補体、リウマチ因子またはFc受容体のような、例えば、ヒトにおける既知の干渉物質との交差反応性を有さない免疫グロブリンである。第2の対照分析物はまた、第2の対照分析物に対して産生された抗種捕捉抗体が市販されていることに基づいて選択されてもよい。例えば、ニワトリIgYの場合、ニワトリIgYに対して産生されたいくつかの抗種捕捉抗体、例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)抗ニワトリIgY及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgYが市販されている。
【0029】
第1の対照分析物がHSAである例によれば、第1の不動化された捕捉試薬は抗ヒト血清アルブミン抗体である。しかしながら、異なる第1の対照分析物が選択される場合、第1の不動化された捕捉試薬はその特定の分析物を結合するように構成されるであろう。
【0030】
第2の対照分析物がニワトリIgYである例によれば、第2の不動化された捕捉試薬は抗ニワトリIgY抗体である。例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)抗ニワトリIgY、及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgY。しかしながら、異なる第2の対照分析物が選択される場合、第2の不動化された捕捉試薬はその特定の分析物を結合するように構成されるであろう。
【0031】
2つの対照部分を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を説明する本開示の任意の態様によれば、第1及び第2の対照部分は、第2の対照部分が第1の対照部分の下流に配置されるように、またはその逆に構成されてもよい。
【0032】
本開示の前述の態様のそれぞれにおいて、可動性標識種は対照部分(複数可)の上流に配置された1以上の標識保持部分に配置されてもよい。あるいは、可動性標識種は、使用前に、例えば、試料スポイトを使用して1以上の標識保持部分に配置されてもよい。さらに別の例では、可動性標識種は検査試料が検査細片に適用される前に、例えば、その試料受容部分で検査試料に添加され、それと混合されてもよい。
【0033】
本明細書に記載されている任意の態様の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片はさらに1以上の検査部分を含んでもよく、各検査部分は検査分析物に特異的に結合し、それによって検査分析物を検査部分に不動化するように構成される不動化された捕捉試薬を含む。各検査部分の捕捉試薬または各検査部分は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片のそれぞれの検査部分に不動化される抗体であってもよい。不動化される検査分析物に基づいて適切な抗体が選択されてもよい。
【0034】
検査部分または各検査部分は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片上の対照部分または各対照部分の上流に配置されてもよい。
【0035】
いくつかの例では、検査分析物(複数可)の標識は側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの一部として発生してもよい。例えば、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は試料にて検査分析物(複数可)に結合するように構成された1以上の可動性捕捉試薬を含んでもよく、その際、前記可動性捕捉試薬は検出可能な標識を含む。検査分析物(複数可)に結合するように構成された可動性捕捉試薬は、それぞれの検査部分の上流の検査細片の標識保持部分に配置されてもよい。いくつかの例では、検査分析物(複数可)に結合するように構成された検出可能に標識された可動性捕捉試薬は、可動性標識種と同じ標識保持部分に配置されてもよい。使用するとき、側方流動免疫クロマトグラフィープロセス中に検査分析物と可動性捕捉試薬との間に形成される標識された複合体はそれぞれの検査部分に不動化され、検出可能な標識によって検出され得る。
【0036】
他の例では、検査分析物(複数可)の標識は側方流動免疫クロマトグラフィープロセスとは別に発生してもよい。例えば、検査分析物(複数可)の標識は、例えば、検査試料(検査分析物を含む可能性がある)と本明細書に記載されているような検査分析物(複数可)に結合するように構成される標識される可動性捕捉試薬との間でインキュベート工程の一部として側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの上流で発生してもよい。検査試料は溶質の形態で調製されてもよい。検査分析物と標識された可動性捕捉試薬との間に形成される標識された複合体は検査試料全体を通して比較的均一に分布してもよい。次に、標識された複合体を含む検査試料は側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの間に、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の試料受容部分で受け取られ、毛細管作用のもとでそれを通って移動し、検査部分または各検査部分に到達してもよい。この例によれば、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は検査分析物(複数可)に結合するように構成される標識された可動性捕捉試薬を含む必要はない。標識された可動性捕捉試薬は別個に提供されてもよい。
【0037】
本明細書に記載されているように、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、対象からの検査試料、例えば、尿または血液、または試料の構成部分と接触するように構成される試料受容部分を含んでもよい。試料受容部分は、検査細片の標識保持部分、検査部分、及び対照部分または各対照部分の上流にあってもよい。
【0038】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が使用されてもよい検査試料は任意の生体試料であってもよい。一例では、検査試料はヒト試料である。一例では、検査試料は粘液試料である。一例では、検査試料は、血液試料またはその構成部分である。一例では、検査試料は尿試料である。
【0039】
他の例では、検査試料は、植物、動物、または環境の供給源から得られてもよい。検査試料が動物から得られる例によれば、検査試料は、粘液試料、血液試料もしくはその構成部分、または尿試料であってもよい。検査試料が植物に基づく例によれば、検査試料は、植物組織、例えば、葉、種子、果実または根、または植物組織から得られる1以上の成分、例えば、油、タンパク質、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。検査試料が環境試料である例によれば、試料は水試料または土壌試料から得られる溶出液であってもよい。
【0040】
本開示はまた、本明細書に記載されている側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を受け取るように構成され、且つ使用中に、それぞれの対照部分(複数可)での対照分析物(複数可)の特定及び検査試料における検査分析物の特定に関連する情報をディスプレイを介してユーザーに提示するように構成される装置も提供する。装置は、使用後に使用済みの側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片をその筐体から取り外し、その後新しい検査細片と交換できるように構成されてもよい。
【0041】
一例では、装置は手持ち式の装置の形態で提供される。
【0042】
一例では、装置は、それぞれの対照部分(複数可)で対照分析物(複数可)を特定し、検査部分で検査分析物を特定するためのリーダーを含んでもよい。例えば、リーダーは、対照部分(複数可)及び検査部分での光反射または光出力をモニターすることができる1以上の光検出器を含んでもよい。
【0043】
一般に、モニターまたは検出されてもよい対照部分(複数可)及び検査部分におけるシグナルは、光反射シグナル及び/または蛍光シグナルのような光シグナルまたはその他を含んでもよい。光シグナルは、光を反射する及び/または蛍光を発する第1及び/または第2の対照部分、及び検査部分に不動化された検出可能な標識の結果として生成されてもよい。装置は、光の反射を起こす及び/または蛍光を発するために検査部分(複数可)及び検査部分に光を当てる光源を含んでもよい。そのような光シグナルの存在及び/またはレベルをモニターまたは検出することは、例えば、シグナルの絶対的なまたは相対的な強度を決定することを含んでもよい。シグナルの絶対強度または相対強度は、検査部分(複数可)及び検査部分に不動化された検出可能な標識の数及び種類に依存するであろう。
【0044】
本開示はまた、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイによって検査試料にて検査分析物を検出する方法も提供し、前記方法は:
(a)本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片またはそれを含む装置を生体試料と接触させることと;
(b)検査部分での検査分析物の存在及び/またはレベルを検出することと;
(c)検査部分(複数可)での対照分析物(複数可)の存在または非存在に基づいて側方流動免疫クロマトグラフィーが正しく進行したかどうかを判定することと;
(d)(c)に基づいて、(b)の結果が正確であるかどうかを判定することとを含む。
【0045】
本明細書に示されるように、対照部分(複数可)での対照分析物(複数可)の存在または非存在は、対照部分(複数可)での検出可能なシグナルの存在及び/またはレベルを決定することによって決定することができる。同様に、試料における検査分析物の存在または非存在は、検査部分での検出可能なシグナルの存在及び/またはレベルを決定することによって決定することができる。したがって、対照分析物(複数可)及び/または検査分析物のレベル及び/または量の検出に関する本明細書の議論は、関連するシグナル(複数可)の存在及び/またはレベルの決定を包含するものとして解釈されるべきである。
【0046】
使用される側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が単一の対照部分、すなわち本明細書に記載されている第1の対照部分を含む本開示の方法によれば、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイの完了後の第1の検査部分での無シグナルの検出は、第1の対照分析物、したがって検査試料が存在したことを示してもよい。他方では、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイの完了後の第1の検査部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物、したがって検査試料が存在しなかったことを示す。
【0047】
液体試料についてのようないくつかの例では、検査試料を検査細片に直接適用してもよい。しかしながら、他の例では、検査試料はランニング緩衝液に含まれ、それと混合され、混合物が検査細片に適用されてもよい。
【0048】
本明細書に記載されているように、使用される側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が第1の対照部分及び第2の対照部分を含む本開示の方法によれば、以下が適用されてもよい。
(v)第2の検査部分でのシグナルの検出及び第1の検査部分での無シグナルまたは減少したシグナルの検出(第2の検査部分でのシグナルに対して第1の検査部分でシグナルが減少している)は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行し、且つ第1の対照分析物が検査細片に適用された試料に存在したことを示す(「合格」);
(vi)第1の検査部分及び第2の検査部分でのシグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスは正しく進行したが、第1の対照分析物が検査細片に適用された試料に存在しなかったこと、すなわち検査試料が存在しなかった(ランニング緩衝液のみが検査細片に適用された)、または検査試料における第1の対照分析物が分解されたことを示す(「不合格」);
(vii)第2の検査部分ではなく第1の検査部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物が検査細片に適用された試料に存在したが、側方流動免クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかったことを示す。第2の対照部分でのシグナルの欠如は、試料が第2の対照部分に到達しなかったこと、及び/または第2の可動性標識種または第2の不動化された捕捉試薬が意図したように機能しなかったことを示す(「不合格」);
(viii)第1または第2の検査部分での無シグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが意図したとおりに進行しなかったことを示す。第1及び第2の対照部分におけるシグナルの欠如は、第1の対照分析物が検査細片に適用された試料に存在しなかったこと、及び/または検査細片に適用された試料が第2の対照部分に到達しなかったこと、及び/または第2の可動性標識種または第2の不動化された捕捉試薬が意図したとおりに機能しなかったことを示す(「不合格」)。
【0049】
本明細書に記載されている装置及び方法は、任意の検査分析物の検出に対応するように改変されてもよいことが想定される。
【0050】
本明細書に開示されている任意の態様に係る装置は必要に応じて、単一の検査細片または複数の検査細片を含んでもよい。複数の検査細片が存在する場合、本明細書に開示されている装置の特徴は、各検査細片に存在してもよく、または複数の検査細片に割り振られてもよい。複数の検査細片が存在する場合、それらの検査細片は直列または並列に構成されてもよい。並列の場合、各検査細片は同じであってもよく、または異なっていてもよい。例えば、本明細書に開示されている装置の特徴は複数の検査細片に並行して割り振られてもよい。本明細書に開示されている装置は、並列に2以上の検査細片を含んでもよく、その際、検査細片の1つは本明細書に開示されている装置の検査細片であってもよく、他の1以上の検査細片は、例えば、WO2005/059547に記載されているような競合アッセイを使用して標的分析物を検出するように構成されてもよい。
【0051】
本開示の1以上の態様に係る装置はキットの形態で提供されてもよい。一例では、キットは、本開示の1以上の態様に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用の細片または装置及び使用説明書を含んでもよい。検査キットはさらに、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイのランニング緩衝液を含んでもよい。
【0052】
以下の図面は本明細書の一部をなし、且つ本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本開示は、これらの図面の1以上を本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、さらに良好に理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】単一の「実薬」対照部分を含む、本開示の一実施形態に係る検査細片の平面図構成を示す図である。
図2図1の検査細片の平面図構成と、使用するときの合格及び不合格の結果の概略図とを示す図である。
図3】第1の対照部分(「実薬対照」)及び第2の対照部分(「内部対照」)を含む、本開示の一実施形態に係る検査細片の平面図構成を示す図である。
図4図3の検査細片の平面図構成と、使用するときの合格及び不合格の結果の概略図とを示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る検査装置の斜視図を示す。
図6図5の線A-Aに沿った図5の検査装置の断面図を示す。
図7図6の検査装置で使用される読み取り装置の概略図を示す。
図8】検出可能な標識として金ナノ粒子を使用したHSAサンドイッチアッセイの図解である。
図9】側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイにおける金標識によるHSAタンパク質の検出を示す代表的なデータを提供する図である。示されているように、5ng/mLの検出限界は緩衝液で実証されてもよい(青いヒストグラム)。陽性対照ライン(赤いヒストグラム)は金標識の機能化が成功したことを示す。
図10】HSAを実薬対照として検出するための、対照ラインで捕捉試薬として抗HSAポリクローナル抗体を使用した側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイの結果を提供する図である。HSAが100μg/mLを超える濃度で存在する場合にフック効果は明らかだった。
図11】ヒトIgGを実薬対照として検出するための、対照ラインで捕捉試薬として抗ヒトIgG抗体を使用した側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイの結果を提供する図である。これは、差吸光度測定が検査試料の存在/非存在のデジタルシグナルをどのように提供するかを示している。
図12】検査ラインでのSupernova粒子(上のパネル)と金ナノ粒子(下のパネル)の非特異的な蓄積を示す図である。検査細片にわたる蛍光強度と吸光度をCAMAGスキャナーで測定した。
図13】(A)HSAを含有する検査試料の非存在下、及び(B)HSAを含有する検査試料の存在下にて、C1及びC2対照ラインでの強度蛍光シグナルによって決定されるHSAコーティング金ナノ粒子の結合レベルを示す図である。C1は参照として提供されており、不動化された捕捉試薬を有さず、C2は不動化された抗HSA抗体を有する。
図14】粘液試料の負荷の増加を伴うC2対照ラインでのシグナルの相対的変化の用量依存性プロファイルを示す図である。
図15】本開示の実薬競合対照アッセイのアプローチが、200nmの青色ラテックス粒子のような側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイと互換性のある他の粒子タイプでうまく機能することを示す図である。示されているのは、競合アッセイ形式でHSAまたはヒトIgGのいずれかに結合した200nmの青色ラテックス粒子の基準化された応答である。スポイト中の分析物の最終濃度は、1μLの試料のみが400μLの溶解緩衝液で希釈されたと仮定して、ヒト血清中の通常の範囲の分析物を使用して算出した。シグナルは、励起波長660nmのCAMAG TLCスキャナー4を使用して測定した。
図16】グルタルアルデヒド活性化を介したアミン官能化青色ラテックス粒子へのタンパク質の共有結合を示す概略図である。
図17】HSAに結合した2つのロット(ロットAとロットB)のグルタルアルデヒド活性化200nm青色ラテックス粒子からのHFTシグナル応答を示す図である。「HSA」試料は溶解緩衝液で希釈した0.5%v/vのヒト血清を含有した。「HSAなし」の試料は溶解緩衝液のみを含有した。
図18】インフルエンザ核タンパク質用の2つの検査ライン(T1及びT2)及び2つの対照ライン(C1及びC2)を伴うHFT検査細片設計の一実施形態の概略図であり、C1の捕捉試薬はマウス抗HSA抗体であり、C2の捕捉試薬はヤギ抗ニワトリIgY抗体である。
図19】ブランク試料(ヒト粘液なし)とヒト鼻腔スワブ試料と共に図19のHFT検査細片を使用して得られた代表的なプロファイルを示す図である。注:シグナルは時点S1(共役波検出後約2分)にてC1とC2の双方で100%に基準化されている。
図20】対照ライン(C1及びC2)での結果の解釈を示す概略図である。図示するように、スワブ試料が成功したことを示す蛍光プロファイルはC2のみで検出されるシグナルである。他の蛍光プロファイルは検査エラーを示す。
図21】2つの異なるロットの共結合HSA+IgYラテックス粒子からの志願者ヒト鼻腔スワブ試料(n=36)及び緩衝液のみの試料(n=37)の例示的なデータセットを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイは通常、内部対照ラインによる検証が必要である。従来の側方流動免疫クロマトグラフィー(増大に基づくアッセイではない)では、検査ラインの下流を流れる未結合標識は対照ラインにて抗種(例えば、抗マウス)抗体によって捕捉される。対照ラインでの検出可能なシグナルの出現は、検査結果が陰性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが適切に実行しているという証拠を提供し、そうでない場合、バンドは出現しない。対照はまた、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の生物学的構成成分が輸送中及び保管中に活性状態を維持したといういくつかの指標も提供する。特定の例では、例えば、検査が家庭での使用を目的としている場合、検査はさらなる実薬対照から恩恵を受けてもよい。例えば、単に未結合標識を捕捉する代わりに、実薬対照は生体試料に存在するバイオマーカーを特異的に認識してもよい。しかしながら、上記で議論したように、本発明者らは、検査分析物が中濃度から高濃度で存在する場合、従来の内部対照または実薬対照が「フック効果」または「プロゾーン効果」の影響を受けやすく、それによって、実際そうでなかった場合に側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイは不合格だったと考えるようにユーザーを導くことを認識している。
【0055】
本開示は、「フック効果」の影響を受けやすくない対照を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用の細片及び装置を提供する。これは、試料(またはそれを含むランニング緩衝液)における対照分析物の存在または非存在を検出するために競合アッセイに依存する「実薬対照」を含めることによってある程度達成される。この実薬対照設計は、特に検査試料及び/またはそこに含まれる検査分析物が豊富な量で存在する場合に、検査結果のさらに正確な検証を可能にしてもよい。本発明者らは、ヒト粘液において最も豊富なタンパク質であるので、実薬対照分析物としてヒト血清アルブミン(HSA)を使用するこのアプローチの有効性を実証した。本発明者らは、試料におけるHSAの濃度が非常に高いので、サンドイッチアッセイ形式に依存する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイで使用するのにそれは好適ではない対照分析物となることを見いだした。これは、(本明細書に記載されているように)対照検査ライン及び金/ラテックス粒子表面が非常に大量のHSAにさらされているので、双方の表面がタンパク質によって急速にコーティングされ、それによって抗体がサンドイッチを形成することができないためである(すなわち、「フック効果」)。サンドイッチアッセイ形式の代替として、本発明者らは、標識された粒子(例えば、金またはラテックスのナノ粒子)が標的分析物の非存在下で対照ラインにてセンサー表面に直接結合する、いわゆる競合アッセイを採用した。一方、標的分析物の存在は、シグナルの漸進的な減少または対照ラインでのシグナルの非存在につながる競合を引き起こす。このアプローチは、高レベルのHSAの存在下でうまく機能し、それによって「フック効果」を軽減することが見いだされた。
【0056】
競合アッセイに依存する実薬対照アプローチの潜在的な問題の1つは、陰性の検査結果が真に発生したときのユーザーに提供される正のフィードバックの欠如(すなわち、対照ラインでの検出可能なシグナルの欠如)である。したがって、本発明者らは、検査試料、例えば、HSAに存在する対照分析物に基づく実薬対照を、(i)検査が正しく製造されていること、(ii)検出器の粒子が機能していること、及び(iii)検査が完了に達することをユーザーに通知するのを助けるためのさらなる下流内部対照と組み合わせる側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイを設計した。この種の下流の内部対照は一般に、対応する宿主種からの抗体と結合した検出器粒子を直接結合する抗種捕捉抗体に依存する。例えば、抗マウス捕捉抗体は、それらの検出器粒子に結合したマウス抗体を使用する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイにおける好適なアッセイ対照であってもよい。しかしながら、本発明者らは、2つの理由:(i)蛍光検出器粒子は一般に内部対照粒子と競合するマウス抗体を含有する、及び(ii)マウス血清はブロッキング剤として側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイに添加されることが多く、これは抗マウス捕捉ラインを急速に飽和させる;によって、抗マウス捕捉抗体がすべての状況において好適なアッセイ対照であってもよいわけではないことを見いだした。この理由から、本発明者らはニワトリIgY抗体に基づく内部対照を対照分析物として組み込んだ。本発明者らは、ニワトリIgYが内部対照の開発についていくつかの利点:(i)それはニワトリ卵から高収率で容易に生産及び抽出され、(ii)それは哺乳動物IgG抗体と構造的に異なるので補体、リウマチ因子またはFc受容体のような既知のヒト干渉物質との交差反応性を有さず、且つ(iii)ニワトリIgYに対して産生されたいくつかの抗種捕捉抗体が市販されている;を有することを発見した。さらに、本発明者らは、双方の対照分析物(例えば、HSA及びニワトリIgY)が金粒子またはラテックス粒子の同じバッチに共結合される実施形態において、すべての粒子が対照ラインのいずれかに結合することができることも見いだした。
【0057】
一般的な技術及び定義
別途具体的に規定されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、当該技術分野(例えば、免疫学、分子生物学、免疫組織化学、生化学及び薬理学における)の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するように解釈されるものとする。
【0058】
当業者は、本開示が具体的に記載されているもの以外の変形及び変更が生じやすいことを理解するであろう。本開示が全てのそのような変形及び変更を含むことを理解すべきである。本開示はまた、本明細書で言及または示された工程、特徴、組成物、及び化合物の全てを個別にまたは集合的に含み、且つ前記工程または特徴の2以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0059】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されないものとし、このような特定の実施形態は例示目的のみのためである。機能的に同等の製品、組成物、及び方法は明らかに本明細書に記載されているように本開示の範囲内に入る。
【0060】
本開示の任意の特定の態様または実施形態または実施形態の各特徴は、変更すべきところは変更して、本開示の他の任意の態様または実施形態または実施形態に適用されてもよい。
【0061】
本明細書全体を通して、別途具体的定めのない限り、または文脈上そうでないとする要求がない限り、単一の工程、組成物(compositions of matter)、工程の群または組成物の群への言及は、1つ及び複数の(すなわち、1以上の)それらの工程、組成物、工程の群または組成物の群を包含するように解釈されるものとする。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「a」、「and」、及び「the」の単数形は文脈に別途明示のない限り、これらの単語の複数形を含む。例えば、「細菌」への言及は複数のそのような細菌を含み、「アレルゲン」への言及は1以上のアレルゲンへの言及である。
【0063】
「及び/または」という用語、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、双方の意味またはいずれかの意味の明白な支持を提供すると解釈されるべきである。
【0064】
本明細書の全体を通して、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む、(comprising)」のような変形は、記述されている要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を包含するが、いかなる他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群をも排除しないことを意味することが理解されるであろう。
【0065】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用の細片及び装置
本開示の任意の1以上の実施形態に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、毛細管現象によってそれを通る液体試料の流れを可能にし、側方流動免疫クロマトグラフィー装置での使用に好適であることが知られている任意の材料で形成されてもよい。そのような材料は、例えば、インフルエンザ検査や妊娠/受胎検査のような市販の診断検査で広く使用されており、当業者に知られているであろう。そのような例示的な材料の1つはニトロセルロース膜であってもよい。
【0066】
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は標識保持部分及び第1の対照部分を含んでもよい。1以上の検査細片はまた、試料受容部分、検査部分、及び/または第2の対照部分も含んでもよい。標識保持部分、第1の対照部分、検査部分、試料受容部分、及び第2の対照部分のそれぞれのサイズは必要に応じて適合させてもよい。例えば、それぞれの正確な寸法は、使用される側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の特定の寸法及び/または検査細片が使用されてもよい装置の寸法に従って適合させてもよい。
【0067】
標識保持部分及び第1の対照部分は、使用するときに、対象から採取された生体試料、またはそれを含むLFAランニング緩衝液(総称して「試料」)が第1の対照部分の前の標識保持部分に接触するように側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片で構成されてもよい。試料は標識保持部分の前の試料受容部分に接触してもよい。試料は検査部分に接触した後、第1の対照部分に接触してもよい。側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が第2の対照部分を含む例によれば、試料は第1の対照部分に接触した後、第2の対照部分に接触してもよい。あるいは、試料は第1の対照部分に接触する前に、しかし検査部分に接触した後に第2の対照部分に接触してもよい。複数の細片が存在する構成を含む代替構成が可能である。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「下流」及び「上流」という用語は、検査細片の種々の部分の位置を指す場合、検査細片を通るまたは検査細片に沿った試料の流れの方向に対して意味すると理解されるであろう。
【0069】
本開示の1以上の実施形態に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片はまた、流体シンクを含んでもよく、それは1以上の検査細片を通って、またはそれに沿って試料を引き込むように作用してもよい。
【0070】
本明細書に記載されているように、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、1以上の可動性標識種と、例えば、連結したまたは結合した結合相手を介して直接または間接的に可動性標識種の1つに特異的に結合するように構成される1以上の不動化可能な捕捉試薬とを含んでもよい。「可動性」という用語は、標識種が、生体試料、またはそれを含むLFAランニング緩衝液とともに必要に応じて、標識保持部分から第1及び/または第2の対照部分に移動することができることを示すのに使用される。可動性標識種は、当該技術分野で知られている任意の好適な手段によって検査細片を使用する前に、標識保持部分に堆積させてもよい。逆に、本開示の検査細片の捕捉試薬に関して使用されるような「不動化された」という用語は、アッセイプロセス中に検査細片を通るまたは検査細片に沿う流体の側方流動が試薬を取り除かないように試薬が(例えば、対照部分または検査部分にて)側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片に連結されることを意味する。捕捉試薬は、当該技術分野で知られている任意の好適な手段によって不動化されてもよい。
【0071】
本明細書に記載されているように、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、第1の対照分析物に結合することができる、または第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する第1の可動性標識種を含んでもよい。第1の可動性標識種はまた、第1の不動化された捕捉試薬に直接的または間接的に結合することができるであろう。本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片はさらに、第2の不動化された捕捉試薬に結合することができる第2の可動性標識種を含んでもよい。あるいは、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、第1の対照分析物及び第2の対照分析物の双方に結合される単一の可動性標識種を含んでもよい。前述のそれぞれにおいて、可動性標識種または各可動性標識種は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の標識保持部分に、またはその上に配置されてもよい。
【0072】
好適な可動性標識種の例には、標識抗体、標識タンパク質、ラテックスビーズまたはナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。第1の対照分析物がHSAであり、第1の可動性標識種が第1の対照分析物に結合することができる一例によれば、好適な第1の可動性標識種は抗HSA抗体であってもよい。第1の検査部分における同族の第1の不動化された捕捉試薬はHSAであってもよい。第1の対照分析物がHSAであり、第1の可動性標識種が第1の対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する別の例によれば、好適な第1の可動性標識種はHSAであってもよい。第1の検査部分における同族の第1の不動化された捕捉試薬は抗HSA抗体であってもよい。特定の実施形態は第1の対照分析物としてHSAを参照して本明細書に記載されているが、当業者は第1の対照分析物が検査試料に存在し、好ましくは豊富である任意の分析物であってもよいことを理解するであろう。好適な種類の分析物の例には、好適な捕捉試薬を使用して検査細片に結合及び不動化することができる分子、分子の群、または天然起源もしくは合成起源の化合物(例えば、薬物、ホルモン、酵素、成長因子、抗原、抗体、ハプテン、レクチン、アポタンパク質、補因子など)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の可動性標識種が本開示の検査細片上に存在する場合、第2の可動性標識種は検査試料には通常存在しない分析物(第2の対照分析物)であってもよい。第2の可動性標識種は、例えば、ニワトリIgYであってもよい。この例によれば、第2の不動化された捕捉試薬は、ニワトリIgYに対して産生された抗種捕捉抗体であってもよい。しかしながら、当業者はニワトリIgYの代わりに他の免疫グロブリンが使用されてもよいことを理解するであろう。好ましくは、第2の対照分析物は、哺乳動物IgG抗体とは構造的に異なり、例えば補体、リウマチ因子またはFc受容体のような、例えば、ヒトにおける既知の干渉物質との交差反応性を有さない免疫グロブリンである。第2の対照分析物はまた、第2の対照分析物に対して産生された抗種捕捉抗体が市販されていることに基づいて選択されてもよい。例えば、ニワトリIgYの場合、ニワトリIgYに対して産生されたいくつかの抗種捕捉抗体、例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)抗ニワトリIgY及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgYが市販されている。
【0073】
本開示はまた、第1の対照分析物及び第2の対照分析物の双方に結合される可動性の標識種を含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片も提供する。この実施形態によれば、可動性標識種は、例えば、第1の対照分析物、例えば、HSA及び第2の対照分析物、例えば、ニワトリIgYに結合されたラテックスビーズまたはナノ粒子であってもよい。例示的な第1及び第2の対照分析物は、他の実施形態を参照して本明細書に記載され、特に明記しない限り、本開示のこの実施形態及び他の任意の実施形態または例に準用するように解釈されるものとする。第1の対照分析物がHSAであり、第2の対照分析物がニワトリIgYである一例によれば、第1の可動性捕捉試薬は抗HSA抗体であってもよく、第2の不動化された捕捉試薬はニワトリIgYに対して産生された抗種捕捉抗体であってもよい。しかしながら、同族の対照分析物及び同族の捕捉試薬の選択は、必要に応じて変化してもよい。
【0074】
前述の例のそれぞれでは、対照部分(複数可)に不動化された捕捉試薬(複数可)は、それに結合した対照分析物を介して直接または間接的に検査細片上の可動性標識種に結合し、それによって結合対または複合体を形成する能力を有するさらに多い薬剤のいずれか1つであってもよい。そのような結合対、結合相手または複合体のいくつかの例には、抗体と抗原(その際、抗原は、例えば、ペプチド配列またはタンパク質配列であってもよい);相補性のヌクレオチドまたはペプチドの配列;高分子の酸と塩基;染料とタンパク質結合剤;ペプチドとタンパク質結合剤;酵素と補因子、及びリガンドと受容体分子が挙げられるが、これらに限定されず、その際、受容体という用語は、エピトープ部位または決定基部位のような特定の分子構成を認識することができる任意の化合物または組成物を指す。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「結合相手」という用語は、別の分子または組成物の特定の構造的態様を認識して結合することができる任意の分子または組成物を指す。そのような結合相手及び対応する分子または組成物の例には、抗原/抗体、ハプテン/抗体、レクチン/炭水化物、アポタンパク質/補因子及びビオチン/(ストレプト)アビジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
いくつかの例では、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片はまた、試料にて目的の検査分析物に結合するように構成される1以上の不動化された捕捉試薬も含む。目的の検査分析物に結合するように構成される1以上の捕捉試薬は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の検査部分に不動化されてもよい。検査分析物は試料における任意の目的の分析物であってもよい。本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を使用して検出される好適な検査分析物には、感染性物質(例えば、インフルエンザ、HIV、HTLV、Helicobacter pylori、肝炎、はしか、おたふく風邪、または風疹など)に対する抗体、感染性物質由来の抗原、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、ベンゾジザズピン、テトラヒドロカンナビノール、ニコチン、エタノールテオフィリン、フェニトイン、アセトアミノフェン、リチウム、ジアゼパム、ノルトリプチリン、セコバルビタール、フェノバルビタール、メタンフェタミン、テオフィリン、テストステロン、エストラジオール、エストリオール、17-ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモン、形質転換成長因子アルファ、表皮成長因子、インスリン様成長因子I及びII、成長ホルモン放出阻害因子、IGA及び性ホルモン結合グロブリン;及び抗生物質(例えば、ペニシリン)、グルコース、コレステロール、カフェイン、コチニン、コルチコステロイド結合グロブリン、PSA、またはDHEA結合糖タンパク質を含む他の分析物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本開示の1以上の実施形態の検査細片は、種々な異なる種類の検査試料と共に使用するように構成されてもよいことが当業者によって理解されるであろう。試料の選択は検出される検査分析物によってある程度規定されるであろう。熟練者は、検査分析物が存在してもよいと疑われるものであるように試料が選択されるべきであることを理解するであろう。加えて、試料の選択は実薬対照として機能する第1の対照分析物によって規定されるであろうし、その逆も同様である。試料は流体試料であってもよい。検査試料は生体試料であってもよい。本開示の1以上の実施形態の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片に従って使用されてもよい生体試料には、例えば、血液、血清、血漿、尿、膣分泌物、及び/または羊水及び粘液が挙げられる。医学的に関連する物質(例:分析物)は、血液(抗体、抗原、薬物、ホルモン、酵素、代謝物、ペプチドなどを含む)、涙液、汗、及び粘液のような他の分泌物や滲出液に見いだすことができる。一例では、検査試料は粘液試料である。検査試料はまた、検査細片を通るまたは検査細片に沿った試料の流れを助けるために、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ(LFA)のランニング緩衝液を構成してもよく、またはそれに含まれてもよい。
【0078】
当然、診断技術の当業者は、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が、例えば、獣医、農業、農学及び環境の用途を含む、人間医学以外の用途で使用するように構成されてもよいことを理解するであろう。これらの他の適用分野によれば、当業者は、信頼される検査試料、ならびに適切な捕捉試薬に基づいて適切な対照分析物(複数可)を選択することができるであろう。例えば、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、植物、動物、または環境の供給源から得られる検査試料にて検査分析物を検出するように構成されてもよい。検査試料が動物から得られる例によれば、検査試料は、例えば、粘液試料、血液試料またはその構成部分、または尿試料のような、ヒトに関して上述された生体試料のいずれかであってもよい。検査試料が植物に基づく例によれば、検査試料は、植物組織、例えば、葉、種子、果実または根、または植物組織から得られる1以上の成分、例えば、油、タンパク質、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。検査試料が環境試料である例によれば、試料は水試料または土壌試料から得られる溶出液であってもよい。
【0079】
当業者は、可動性種が当該技術分野で知られている任意の好適な手段によって標識されてもよいことを理解するであろう。例えば、標識は可動性種に直接結合されてもよく、または標識はリンカーを介して可動性種に結合されてもよい。標識の連結は、キレートなどのような場合、共有結合、吸着プロセス、疎水性結合及び/または静電結合を介することができ、またはこれらの結合及び相互作用の組み合わせを介することができ、及び/または連結基を含んでもよい。いくつかの例では、可動性種は対照分析物(複数可)が連結する検出可能な標識である。
【0080】
当該技術分野で知られている任意の好適な検出可能な標識を使用してもよい。好適な標識の例には、粒子状標識、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、及び造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、標識はラテックスまたは金を含んでもよい。標識は、ラテックスビーズ(2以上の識別可能な色を含む任意の色)であってもよく、またはナノ粒子であってもよい。任意の好適なナノ粒子が使用されてもよい。例えば、ナノ粒子は、磁性粒子、セレンナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、または炭素ナノ粒子であってもよい。標識種は、ラテックス粒子、グルタルアルデヒド活性化ラテックス粒子、またはナノ粒子凝集体であってもよい。蛍光標識は1以上の量子ドットを含んでもよい。側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が複数の蛍光分子を組み込んでいる場合、それぞれの分子は、例えば、光による励起の際に、異なる波長で蛍光を発するように選択されて、試料における2以上の分析物の差次的検出を可能にしてもよい。標識は反射性であってもよい。側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が複数の反射性分子を組み込んでいる場合、それぞれの分子は異なる波長で光を反射するように選択されて、試料における2以上の分析物の差次的検出を可能にしてもよい。
【0081】
任意の好適な不動化された捕捉試薬は検査細片の対照部分(複数可)及び検査部分で使用されてもよい。本開示の1以上の実施形態に従って使用される捕捉試薬は、目的の分析物、すなわち、対照分析物または検査分析物を結合し、それによって結合複合体を形成する能力を有するさらに多くの薬剤のいずれか1つであってもよい。そのような結合対または複合体のいくつかの例には、抗体と抗原(その際、抗原は、例えば、ペプチド配列またはタンパク質配列であってもよい);相補性のヌクレオチドまたはペプチドの配列;高分子の酸と塩基;染料とタンパク質結合剤;ペプチドとタンパク質結合剤;酵素と補因子、及びリガンドと受容体分子が挙げられるが、これらに限定されず、その際、受容体という用語は、エピトープ部位または決定基部位のような特定の分子構成を認識することができる任意の化合物または組成物を指す。
【0082】
可動性標識種が対照分析物に結合することができる例によれば、例えば、可動性標識種は対照分析物に対する抗体である、またはそれに連結し、検査細片に不動化されている同族の捕捉試薬(すなわち、不動化された捕捉試薬)は、それぞれの対照分析物、または対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣するその類似体または誘導体であってもよい。他方、可動性標識種が対照分析物、または対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣する(またはそれに連結する)その類似体または誘導体であるならば、検査細片に不動化されている同族の捕捉試薬(すなわち、不動化された捕捉試薬)は、可動性標識種に結合することができる種、または対照分析物に結合することができる種、例えば、対照分析物に対する抗体であってもよい。したがって、好適な不動化された捕捉試薬には、対照分析物、または測定される対照分析物の少なくとも1つの結合特性を模倣するその類似体、または対照分析物に対する抗体が挙げられてもよいが、これらに限定されない。側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の検査部分との関連で、不動化された捕捉試薬は検査分析物に特異的に結合するように、例えば、検査分析物に対する抗体であるように構成されるであろう。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「特異的に結合する」、「特異的に結合する」という用語または同様の用語は、所望の成分または分析物以外のどんな試料成分にも有意に(例えば、バックグラウンド結合レベルを超えて)結合しない捕捉試薬を指してもよい。したがって、例えば、「HSAに特異的に結合する」捕捉試薬は、HSAが実際に存在するならば、HSA以外の試料における他の分析物または成分に有意にまたは全く結合しなくてもよい。
【0084】
当業者は、「抗体」が一般に、複数の免疫グロブリン鎖で構成される可変領域、例えば、Vを含むポリペプチド及びVを含むポリペプチドを含むタンパク質であると見なされることを承知しているであろう。抗体はまた一般に、定常ドメインを含み、そのいくつかは、定常領域または定常断片または結晶化可能断片(Fc)に配置され得る。V及びVは相互作用して、1つまたはいくつかの密接に関連する抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳動物由来の軽鎖はκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物由来の重鎖はα、δ、ε、γ、またはμである。抗体は、任意の種類のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のものとすることができる。「抗体」という用語はまた、ヒト化抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体も包含する。本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語はまた、完全長抗体分子、インタクト抗体分子、または抗体分子全体以外の形式、例えば、エピトープ決定基を結合することができるFab、F(ab’)2、及びFvを含むことも意図される。これらの形式は抗体「断片」と呼ばれてもよい。本開示によれば、これらの抗体形式は必要に応じて、分析物に選択的に結合するある程度の能力を保持することが予想され、その例には、以下:
(1)Fab、抗体分子の一価の結合断片を含有し、抗体全体を酵素パパインで消化してインタクトの軽鎖と1本の重鎖の一部を得ることによって作り出すことができる断片;
(2)Fab’、抗体全体をペプシンで処理した後、還元してインタクトの軽鎖と重鎖の一部を得ることによって得ることができる抗体分子の断片;抗体分子ごとに2つのFab’断片が得られる;
(3)(Fab’)2、その後の還元を行わずに抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体の断片;F(ab)2は2つのジスルフィド結合によって結合された2つのFab’断片の二量体である;
(4)Fv、2本の鎖として発現される軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作された断片として定義される;
(5)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝子融合された単鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結される、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子として定義される;そのような単鎖抗体は、多重特異性であってもよく、またはそうでなくてもよいダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなどのような多量体の形態であってもよい(例えば、WO94/07921及びWO98/44001を参照のこと);ならびに
(6)単一ドメイン抗体、通常は軽鎖を欠く可変重鎖ドメイン;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
したがって、本開示に従って捕捉試薬として使用される抗体には、別個の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、重鎖を欠く可変軽ドメイン、軽鎖を欠く可変重鎖ドメイン、及びFvが挙げられてもよい。そのような断片は、組換えDNA技術によって、またはインタクトの免疫グロブリンの酵素による分離または化学的分離によって作り出すことができる。
【0086】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」または「抗体全体」という用語は相互交換可能に使用されて、抗体の抗原結合断片とは対照的に実質的にそのインタクトの形態での抗体を指す。具体的には、抗体全体はFc領域を含む重鎖及び軽鎖を伴うものを含む。定常ドメインは、野生型配列の定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であってもよい。いくつかの場合では、インタクトな抗体は1以上のエフェクター機能を有してもよい。
【0087】
本開示に従って捕捉試薬として使用される抗体はヒト化抗体であってもよい。本明細書で使用されるとき「ヒト化抗体」という用語は、親抗体の抗原結合特性を保持する、または実質的に保持するが、ヒトでは免疫原性が低い非ヒト抗体、通常マウス抗体に由来する抗体を指す。
【0088】
したがって、第1及び第2の対照部分の不動化された捕捉試薬は抗体であってもよい。例えば、第1の対照分析物がHSAである場合、第1の対照部分の不動化された捕捉試薬は、ヒト血清アルブミンHSAに特異的なエピトープを結合するように構成される抗体であってもよい。例えば、第2の対照分析物または第2の可動性種がニワトリIgYである場合、第2の対照部分の不動化された捕捉試薬は、ニワトリIgY上のエピトープまたは領域を結合する抗体であってもよい。第2の対照部分の不動化された捕捉試薬は、例えば、ニワトリIgYを結合することができる抗ニワトリIgY抗体であってもよい。
【0089】
本開示に従って使用するのに好適な抗体は市販されている、またはそうでなければ当該技術分野で知られている。さらに、抗体の結合の特異性及び親和性を決定する方法は当該技術分野で知られているので、当業者は本開示に従って使用するのに好適である結合試薬を容易に特定してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は装置または器具(総称して「装置」と呼ばれる)に存在してもよく、またはそれと共に使用するように構成されてもよい。本開示に係る装置は単一のユニットとして動作する装置であってもよい。例えば、装置は手持ち式の装置の形態で提供されてもよい。装置は単回使用の使い捨て装置であってもよい。あるいは、装置は部分的または完全に再利用可能であってもよい。いくつかの実施形態では、装置は実験室で実施されてもよい一方で、装置は、家庭での使用または診療所での使用のようなための「診療現場」装置として設計されてもよい。他の実施形態では、装置は、例えば、品質管理を行うためにまたは検疫の目的にて職場で実施されてもよい。装置は、例えば10分未満、5分または1分未満で相対的迅速にユーザーに提供される標的条件の特定を伴う迅速検査装置を提供してもよい。
【0091】
装置は単一の検査細片、または複数の検査細片を含んでもよい。例えば、本開示の複数の検査細片を含む装置は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20またはそれ以上の検査細片を含んでもよい。検査細片は並列または直列に配置されてもよい。装置は使用後に検査細片を交換できるようにも構成されてもよい。
【0092】
本開示に係る装置はまた、アッセイの結果に関する情報をユーザーに提示するように構成されるディスプレイも含んでもよい。
【0093】
本開示に係る装置は、例えば、第1の対照部分でHSA及び/または第2の対照部分でニワトリIgYを特定するためのリーダーを含んでもよい。リーダーはまた、検査部分で検査分析物を特定するように構成されてもよい。リーダーは、第1及び/または第2の対照部分にて光シグナルをモニターすることができる1以上の光検出器を含んでもよい。リーダーはまた、検査部分にて光シグナルをモニターすることができる1以上の光検出器も含んでもよい。
【0094】
本明細書に記載されているように、モニターされまたは検出されてもよい第1及び/または第2の対照部分におけるシグナル、及び検査部分におけるシグナル(複数可)は、光反射シグナル及び/または蛍光シグナルまたはそうでないもののような光シグナルを含んでもよい。光シグナルは、第1及び/または第2の対照部分、または光を反射する及び/または蛍光を発する検査部分に不動化された検出可能な標識の結果として生成されてもよい。装置は、光の反射を起こす及び/または蛍光を発するために第1及び/または第2の対照部分に光を当てる光源を含んでもよい。そのような光シグナルの存在及び/またはレベルをモニターまたは検出することは、例えば、シグナルの絶対的なまたは相対的な強度を決定することを含んでもよい。シグナルの絶対強度または相対強度は、第1及び/または第2の対照部分及び検査部分にて不動化された検出可能な標識の数及び種類に依存するであろう。例えば、本開示の検査細片が第1の対照分析物及び第2の対照分析物に結合された可動性標識種を含む、本明細書に記載されている実施形態によれば、第2の対照部分での中程度シグナルまたは高シグナルと組み合わせた第1の対照部分での低シグナルの検出は、試料における高レベルの第1の対照分析物、例えば、HSAを示してもよい。他方では、第1の対照部分のシグナルが第2の対照部分のシグナルとほぼ等しいのであれば、これは検査試料が存在しないことを示してもよい。第1及び第2の対照部分でのシグナルの正確な比較は、第1及び第2の対照部分での不動化された捕捉試薬の特定の親和性、量、及び他の特性に依存してもよいことが理解されるであろう。
【0095】
使用方法
本開示の任意の1以上の実施形態に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片またはそれを含む装置は、検査試料にて分析物を検出する方法で使用されてもよい。さらに具体的には、検査試料にて分析物を検出する方法における側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片または装置の使用は、本明細書に開示されている検査細片が側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイにおいて正しく機能したかどうか、及び方法を実行したとき有効な検査結果が得られるかどうかに関して行われる決定を可能にする。該方法は、家庭環境、実験室環境、臨床環境または他の環境で実施されてもよい。該方法は、本明細書に開示されているような実施形態の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片または装置を使用することを含んでもよい。
【0096】
本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片が単一の対照部分(すなわち、第1の対照部分)を含む態様によれば、使用中の第1の対照部分での検出可能なシグナルの非存在または減少は、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく実行されていることを示してもよい。これは、検査試料が検査細片を通って第1の検査部分に流れるとき、そこに含まれる第1の対照分析物が、必要に応じて(どれが第1の対照分析物に結合するように構成されるかに応じて)、第1の可動性標識種または第1の不動化された捕捉試薬のいずれかに競合して結合し、それによって、第1の不動化された捕捉試薬への第1の可動性標識種の結合を阻止するまたは減らすからである。第1の対照部分での検出可能なシグナルの減少は、試料にて存在している第1の対照分析物の非存在下でそうでなければ第1の対照部分に存在するはずの検出可能なシグナルのレベルまたは予想されるレベルと比較して決定されてもよい。逆に、第1の対照分析物が試料に存在しない、または第1の不動化された捕捉試薬に結合できない場合(例えば、ランニング緩衝液のみが側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を通過した場合、または対照分析物が分解された場合)、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスの間、第1の可動性標識種は第1の不動化された捕捉試薬に自由に結合することができるであろう。これによって、第1の対照部分で検出可能なシグナルが得られるであろう。
【0097】
第2の可動性標識種及び第2の対照部分(すなわち、二重対照)をさらに含む本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の態様によれば、使用するとき、第2の対照部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物が存在するかどうかにかかわらず、試料(任意でランニング緩衝液に含まれる、またはランニング緩衝液を構成する)が側方流動免疫クロマトグラフィープロセス中に検査細片を通過したことを示してもよい。このようにして、第2の対照部分(内部対照)は、第1の対照部分(実薬対照)でシグナルが検出されないという場合にユーザーに正のフィードバックを提供する。したがって、第1及び第2の可動性種を有する二重対照を伴う本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は、使用するときに:
(i)第2の対照部分でのシグナルの検出及び第1の対照部分での無シグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行し、且つ第1の対照分析物が試料中に存在した(「対照合格」)ことを示すように;
(ii)第1の対照部分及び第2の対照部分でのシグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行したが、第1の対照分析物が試料に存在しなかった(「対照不合格」)ことを示すように;
(iii)第2の対照部分ではなく第1の対照部分でのシグナルの検出は、第1の対照分析物が試料に存在したが、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかった、例えば、試料が第2の対照部分に到達しなかった、及び/または検査細片構成成分の1以上が正しく機能しなかった(「対照不合格」)ことを示すように;
(iv)第1または第2の対照部分での無シグナルの検出は、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかったこと、例えば、第1の対照分析物が試料に存在しなかった及び/または試料が第2の対照部分に到達しなかった及び/または検査細片構成成分の1以上が正しく機能しなかった(「対照不合格」)ことを示すように構成されてもよい。
【0098】
本明細書に記載されているように、本開示の別の態様は、a)第1の対照分析物及び第2の対照分析物に結合される可動性標識種と;b)第1の不動化された捕捉試薬が標識種上の第1の対照分析物に特異的に結合するように構成される、第1の不動化された捕捉試薬を含む第1の対照部分と;c)第2の不動化された捕捉試薬を含む第2の対照部分とを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を提供し、その際、第2の不動化された捕捉試薬は標識種上の第2の対照分析物に特異的に結合するように構成され;第1の対照分析物は通常検査試料に存在する分析物、例えばHSAであり;第2の対照分析物は通常検査試料に存在しない分析物、例えばIgYである。
【0099】
使用するとき、及び第1の対照分析物が検査試料に存在する状況では、可動性標識種は、試料における第1の対照分析物との競合結合のために、第1の対照部分にて第1の不動化された捕捉試薬にあまり結合できない、または結合できない。したがって、可動性標識種は検査細片を介して第2の対照部分に向かって移動し続け、そこでそれは第2の対照部分にて第2の不動化された捕捉試薬に結合することができる。これは、第2の対照部分にてシグナルが検出可能であるということは側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行したことを示し、第1の対照部分にて(第2の対照部分でのシグナルと比べて)減少したシグナルまたは無シグナルが検出可能であるということは第1の対照分析物が試料に存在したことを示すプロファイルをもたらす(「対照合格」)。
【0100】
使用するとき、及び第1の対照分析物が検査試料に存在しない(または分解される)状況では、可動性標識種は第1の対照部分にて第1の不動化された捕捉試薬に、且つ第2の対照部分にて第2の不動化された捕捉試薬に相対的に等しい比率で結合することができる。すなわち、第1の対照部分では競合結合はない。これは、シグナルが相対的に等しい量、例えば1:1の比率で第1及び第2の対照部分の双方にて検出可能であるということは、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行したが、第1の対照分析物が検査試料に存在しなかった、または分解されたことを示すプロファイルをもたらす(「対照不合格」)。
【0101】
上記のいずれかの状況において、検査試料が側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片を通って正しく移動して第2の対照部分に到達しなかったならば、及び/または検査細片構成要素の1以上が正しく機能しなかったならば、例えば、可動性標識種と第2の対照部分での捕捉試薬とが結合できなかったならば、第2の対照部分ではシグナルが検出可能ではないことになり、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく進行しなかったことを示す(「対照不合格」)。
【0102】
本明細書に記載されているような側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の使用するときに得られた結果に基づいて、検査細片が側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイで正しく機能したかどうか、及び検査分析物を検出するための検査試料にて診断方法を実行するときに有効な検査結果が得られるかどうかに関して判定を下してもよい。
【0103】
キット
本開示に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用の細片または装置はキットの形態で提供されてもよい。そのようなキットには、1以上の検査細片または装置(同じまたは異なる分析物用であってもよい)、及び使用説明書が含まれてもよい。使用説明書は、試料を検査細片または装置に適用する方法、結果が現れるのを待つのに必要なまたは推奨される時間の量、及び検査の結果を読み取って解釈する方法の詳細を提供してもよい。そのような説明書には、検査結果を比較するための基準の表、グラフ、写真のような基準も含まれてもよい。これらの基準は任意で、シグナルの強度またはシグナル路の数を試料に結果的に存在する分析物の量に関連付ける標準曲線のような、検査装置を使用して分析物を定量化するのに必要な情報を含んでもよい。代わりに、またはさらに、キットは本開示の1以上の実施形態の装置と、装置での使用に適合性のある1以上の検査細片とを含んでもよい。この点で、装置は使用後に使用済みの検査細片を筐体から取り外し、その後、新しい検査細片を筐体に配置できるように構成されてもよい。
【0104】
例示的な実施形態の説明
例示的な実施形態1
本開示の一実施形態に係る側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片は図1(検査細片10)で説明されている。検査細片10は、化学的に処理されたニトロセルロースで構築され、(i)競合結合アッセイを使用して実薬対照として検査試料におけるHSAの存在を検出する、且つ(ii)検査試料における目的の検査分析物の存在及び/または量を検出するように構成される、防水基板上に配置される側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片である。検査試料は通常、HSA、例えば、ヒト粘液または血液またはそれらの成分を含有する任意のヒト生体試料であってもよい。検査細片10を通ってまたはそれに沿って移動するのを助けるために生体試料をLFAランニング緩衝液に加えてもよい(生体試料及び/またはLFAランニング緩衝液を総称して「試料」と呼ぶ)。
【0105】
図1及び2を参照して、検査細片10は、試料採取端部100での試料受容ゾーン101と、標識保持ゾーン102と、対照ゾーン103と、検査ゾーン104と、シンク105とを含む、細片の全長に沿って順次配置されるさまざまなゾーンを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片である。ゾーン101~105は、防水基板106上に配置された化学的に処理されたニトロセルロースを含む。ゾーン101~105及び基板106の配置は、試料受容ゾーン101と接触すると、液体試料が試料採取受容ゾーン101に吸収され、試料の少なくとも一部が試料受容ゾーン101、標識保持ゾーン102、検査ゾーン104、対照ゾーン103を通って毛細管現象のもとで順次移動し、最終的にシンク105で蓄積するようになっている。
【0106】
この実施形態では、標識保持ゾーン102は標識結合対照抗体(すなわち、可動性標識種)を含む。標識結合対照抗体は、試料中に存在するならばHSAに、または抗体が試料由来のHSAにまだ結合していないような場合には対照ゾーン103にて不動化されたHSAに特異的に結合するように設計された抗HSA抗体である。したがって、試料が標識保持ゾーン102を通過するとき、HSA(試料中に存在するならば)は、標識結合抗HSA抗体に結合して標識された対照結合複合体を形成する。他方、HSAが試料に存在しないならば、標識結合抗HSA抗体は結合せずに検査細片10を通って移動する。試料は検査細片10に沿って検査ゾーン104、対照ゾーン103を通って移動し続け、最終的にシンク105に移動する。HSAが試料に存在するならば、標識された対照結合複合体の形成は、標識結合抗HSA抗体が対照ゾーン103にて不動化されたHSAに結合するのを阻止するであろう。他方、試料がHSAを含有しないならば、またはHSAが試料にて分解されるならば、動員された標識結合抗HSA抗体を含有する試料は検査細片10を通って移動し、試料にてHSAに結合されることなく、対照ゾーン103で不動化された捕捉試薬(すなわち、HSA)に結合するであろう。
【0107】
この実施形態は、標識保持ゾーン102にて可動性標識種として標識結合抗HSA抗体を含み、対照ゾーン103にて不動化された捕捉試薬としてHSAを含むが、標識結合HSAが標識保持ゾーン102にて可動性標識種として使用され、且つ抗HSA抗体が対照ゾーン103にて不動化された捕捉試薬として使用されたならば、競合する実薬対照も機能することになる。
【0108】
目的の検査分析物を検出するために、標識保持ゾーン102はまた、試料に存在して複合体(以下、「標識インフルエンザNP複合体」)を形成するならば、目的の検査分析物、例えば、インフルエンザ核タンパク質(インフルエンザNP)に特異的に結合するように設計された可動性標識結合抗体も含んでもよい。したがって、試料が標識保持ゾーン102を通過するとき、そこに存在するインフルエンザNPは抗インフルエンザNP抗体に結合して、標識されたインフルエンザNP複合体を形成する。標識されたインフルエンザNP複合体を含有する試料は、検査細片を通って、高い特異性及び親和性でインフルエンザNPを結合することができる不動化化合物、例えば抗体を含有する検査ゾーン104まで移動し続ける。接触すると、検査ゾーン104にて不動化された化合物は、標識されたインフルエンザNP複合体におけるインフルエンザNPに結合して標識されたインフルエンザNPサンドイッチを形成する。試料は上述のように、検査細片10を通って対照ゾーン103に接触し続ける。
【0109】
この実施形態では、標識結合抗体は、UV光励起後、異なる特定の発光ピーク波長(例えば、それぞれ525及び800nmの第1及び第2の波長)で蛍光を発するように構成された異なる種類の蛍光量子ドット(QD)で標識される。当然、代替の実施形態では、ラテックスビーズまたは金粒子のような量子ドットの代わりに他の種類の標識が使用されてもよく、及び/または他の特定の発光ピーク波長が使用されてもよい。
【0110】
図2Aに概略的に示されるように、対照部分103での検出可能なシグナルは、対照部分103でHSAに結合した標識結合抗HSA抗体の存在を示し、検査される試料がHSAを含有しないことを示す。対照的に、対照部分103での検出可能なシグナルの欠如は、対照部分103でHSAに結合した標識結合抗HSA抗体が存在しないことを示し、すなわち、試料にて標識結合抗HSA抗体にHSAが競合して結合したので、検査される試料がHSAを含有することを示す(図2B)。
【0111】
競合結合アッセイを使用して検査試料にてHSAを検出するように構成された対照部分103での「実薬対照」に加えて、本開示の側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片の特定の実施形態はさらに、(i)検査細片が正しく製造されていること、(ii)検出器粒子が機能的であること、及び(iii)FLA検査が完了したことをユーザーに通知するのを助けるために検査ゾーンでの下流の「内部対照」を含んでもよい。図3及び4を参照して、検査細片10は、対照ゾーン103が第1の対照部分103a(「実薬対照」)と第2の対照部分103b(「内部対照」)とを含むことを除いて、図1及び2を参照して記載されている実施形態と一致する細片の全長に沿って順次配置されたさまざまなゾーンを含む側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片である。
【0112】
この実施形態では、標識保持ゾーン102は、第1の標識結合対照抗体(すなわち、第1の可動性標識種)及び第2の標識結合対照抗体(すなわち、第2の可動性標識種)を含む。第1の標識結合抗体は、試料に存在するならばHSAに、または抗体が試料由来のHSAにまだ結合していないような場合には第1の対照部分103aで不動化されたHSAに特異的に結合するように設計された抗HSA抗体である。第2の標識結合抗体は、第2の対照部分103bで不動化された抗ニワトリIgY抗体に特異的に結合するように設計されたニワトリIgY抗体である。したがって、試料が標識保持ゾーン102を通過するとき、HSA(試料中に存在するならば)は、標識結合抗HSA抗体に結合して、標識結合ニワトリIgY抗体と共に検査細片10を通って運ばれる標識対照結合複合体を形成する。他方、HSAが試料に存在しなければ、標識結合抗HSA抗体は結合せずに、標識結合ニワトリIgY抗体と共に検査細片10を通って移動する。試料は検査細片10に沿って検査ゾーン104、対照ゾーン103を通って移動し続け、最終的にシンク105に移動する。HSAが試料に存在するならば、標識対照結合複合体の形成は、標識結合抗HSA抗体が第1の対照部分103aで不動化されたHSAに結合するのを妨げるであろう。他方で、試料がHSAを含有しないならば、またはHSAが試料にて分解されるならば、動員された標識結合抗HSA抗体を含有する試料は検査細片10を通って移動し、試料にてHSAに結合されることなく、第1の対照部分103aで不動化された捕捉試薬(すなわち、HSA)に結合するであろう。さらに、試料がシンク105まで完全に移動することができる(すなわち、流れが完了するまで)という条件で、且つ検査細片10のすべての構成成分が機能的であるという条件で、標識結合ニワトリIgY抗体は、第2の対照部分103bにて不動化された捕捉試薬(すなわち、抗ニワトリIgY抗体)に結合するであろう。しかしながら、試料が第2の対照部分103bまでは移動しなかったのであれば、または内部対照成分、例えば、可動性標識種もしくは不動化された捕捉試薬のいずれかが機能的でないならば、そのときは標識結合ニワトリIgY抗体は第2の対照部分103bにて不動化された捕捉試薬(すなわち、抗ニワトリIgY抗体)に結合しないであろう。
【0113】
前の実施形態のとおり、標識保持ゾーン102はまた、試料に存在して複合体(以下、「標識インフルエンザNP複合体」)を形成するならば、目的の検査分析物、例えば、インフルエンザ核タンパク質(インフルエンザNP)に特異的に結合するように設計された可動性標識結合抗体も含んでもよい。したがって、試料が標識保持ゾーン102を通過するとき、そこに存在するインフルエンザNPは抗インフルエンザNP抗体に結合して、標識されたインフルエンザNP複合体を形成する。標識されたインフルエンザNP複合体を含有する試料は、検査細片を通って、高い特異性及び親和性でインフルエンザNPに結合することができる不動化化合物、例えば抗体を含有する検査ゾーン104まで移動し続ける。接触すると、検査ゾーン104にて不動化された化合物は、標識されたインフルエンザNP複合体におけるインフルエンザNPに結合して標識されたインフルエンザNPサンドイッチを形成する。試料は上述のように、検査細片10を通って対照ゾーン103に接触し続ける。
【0114】
この実施形態では、標識結合抗体は、UV光励起後、異なる特定の発光ピーク波長(例えば、それぞれ525、625及び800nmの第1及び第2の波長)で蛍光を発するように構成された異なる種類の蛍光量子ドット(QD)で標識される。当然、代替の実施形態では、ラテックスビーズ、磁性粒子または金粒子などのような量子ドットの代わりに他の種類の標識が使用されてもよく、及び/または他の特定の発光ピーク波長が使用されてもよい。
【0115】
図4Aに概略的に示されるように、第1の対照部分103aでの検出可能なシグナルが第1の対照部分103aで不動化されたHSAに結合した標識結合抗HSA抗体の存在を示すということは、検査される試料がHSAを含有しないことを示す(例えば、試料がLFAランニング緩衝液に存在しない、または分解されるので)。さらに、第2の対照部分103bでの検出可能なシグナルは、第2の対照部分103bで不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合した標識結合ニワトリIgY抗体の存在を示し、それは、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく進行したことを示す。まとめると、この対照プロファイルは、試料における対照分析物HSAの欠如のせいで「不合格」であることを示す。
【0116】
図4Bに概略的に示されるように、第1の対照部分103aでの検出可能なシグナルの欠如は第1の対照部分103aで不動化HSAに結合した標識結合抗HSA抗体が存在しないことを示すということは、すなわち、標識結合抗HSA抗体は試料に存在する遊離HSAと競合して結合したからである。これは、検査される試料がHSAを含有することを示している。さらに、第2の対照部分103bでの検出可能なシグナルは、第2の対照部分103bで不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合した標識結合ニワトリIgY抗体の存在を示し、それは、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく進行したことを示す。まとめると、この対照プロファイルは、対照分析物HSAが試料で検出され、LFAが正しく完了したので、対照の「合格」を示す。
【0117】
図4Cに概略的に示されるように、第1の対照部分103aでの検出可能なシグナルが第1の対照部分103aで不動化されたHSAに結合した標識結合抗HSA抗体の存在を示すということは、検査される試料がHSAを含有しないことを示す(例えば、試料がLFAランニング緩衝液に存在しない、または分解されるので)。第2の対照部分103bでの検出可能なシグナルの欠如は、標識結合ニワトリIgY抗体が第2の対照部分103bで不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合しなかったことを示し、それは、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく及び/または完了しなかったことを示す。まとめると、この対照プロファイルはLFAが正しく完了しなかったので、対照の「不合格」を示す。
【0118】
図4Dに概略的に示されるように、第1の対照部分103aでの検出可能なシグナルの欠如は第1の対照部分103aで不動化HSAに結合した標識結合抗HSA抗体が存在しないことを示すということは、すなわち、標識結合抗HSA抗体は試料に存在する遊離HSAと競合して結合したからである。これは、検査される試料がHSAを含有することを示している。第2の対照部分103bでの検出可能なシグナルの欠如は、標識結合ニワトリIgY抗体が第2の対照部分103bで不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合しなかったことを示し、それは、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく及び/または完了しなかったことを示す。まとめると、この対照プロファイルはLFAが正しく完了しなかったので、対照の「不合格」を示す。
【0119】
図3及び4を参照して説明する代替の実施形態では、第1の対照分析物(すなわち、HSA)及び第1の対照分析物(すなわち、ニワトリIgY)は、検査細片10の標識保持部分102に配置される同じ可動性標識種(すなわち、ナノ粒子)に同時結合する。この実施形態によれば、すべてのナノ粒子は、第1及び第2の対照部分103a、103bのいずれかに結合することができる。検査細片10の残りの構成成分の構成は図3及び4について前述したものと同じである。
【0120】
この実施形態では、標識保持ゾーン102は、第1の対照分析物(すなわち、HSA)及び第1の対照分析物(すなわち、ニワトリIgY)に結合された単一の可動性標識種を含む。第1の対照部分103aはそれに不動化された抗HSA抗体を有し、第2の対照部分103bはそれに不動化された抗ニワトリIgY抗体を有する。このようにして、可動性標識種は第1及び第2の対照部分103a、103bの双方に結合することができる。試料が検査細片を通って移動するとき、HSA(試料中に存在すれば)は第1の対照部分103aに不動化された抗HSA抗体に結合し、それによって、可動性標識種のそれへの結合を阻止するまたは低減する。残りの可動性標識種は、ニワトリIgY抗体が第2の対照部分103bにて不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合する検査ゾーン103を通って運ばれる。これは、検出可能なシグナルが第2の対照部分103bから放出され、検出可能なシグナルがとにかく第1の対照部分103aから放出されるならば、それは第2の対照部分103bから放出されるレベルよりも低いレベルで放出される対照プロファイルをもたらす。図4に示すように、この対照プロファイルは対照分析物を含有する生体試料が存在し、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく完了したことを示す(対照の「合格」)。他方、HSAが試料に存在しなければ、可動性標識種は結合しないで、それぞれ第1及び第2の対照部分103a、103bにて不動化された捕捉試薬に結合するのに利用可能なそれに結合したHSA及びニワトリIgY抗体の双方と共に検査細片10を通って移動する。試料が対照ゾーン103に到達すると、可動性標識種は第1及び第2の対照部分103a、103bにてほぼ等しい割合で不動化された捕捉試薬に結合する。図4に示すように、この対照プロファイルは対照分析物を含有する生体試料が(例えば、FLAランニング緩衝液に)存在せず、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが正しく完了したことを示す(対照の「不合格」)。上記のシナリオのいずれかで、第2の対照部分103bに検出可能なシグナルがないのであれば(図4C及び4Dに示すように)、これは、標識結合ニワトリIgY抗体が第2の対照部分103bにて不動化された抗ニワトリIgY抗体に結合しなかったことを示し、それは側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイが正しく及び/または完了まで進行しなかったことを示す(対照の「不合格」)。
【0121】
代替の実施形態では、本開示の検査細片10は、試料中の検査分析物の検出を支援するために装置、例えば、手持ち式装置と組み合わせて使用されてもよい。本開示の一実施形態に係る装置は図5及び6(検査装置1)に示されている。検査装置1は、(i)LFAサンドイッチアッセイの実施に続いて試料にて検査分析物の存在または非存在を検出し、(ii)本明細書に記載されている検査細片の対照を使用して検査結果を検証するための、図1~4に示されるような検査細片10と共に使用するように構成された手持ち式装置である。
【0122】
検査装置1は、細長い側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片10と筐体11とを含む。検査細片10は、筐体11の端面112の開口部111から突出する検査細片10の試料採取端部100を伴う筐体11に部分的に収容されており、試料をその上に直接受け取ることができる。検査細片10の試料採取端部100はキャップ12によって覆うことができる。検査装置1はまた、検査結果を表示するために、筐体11の上面113の開口部13を通して見える液晶ディスプレイ36も含む。
【0123】
図7を参照して、本実施形態の検査装置1の読み取り装置をさらに詳細に説明する。読み取り装置は、プロセッサー31、電源(電池)32、スイッチ33、UV LED34、多波長光検出器35、及びディスプレイ36を有するプリント回路基板を含む。LED34は、対照部分103a及び103b、ならびに検査部分104に入射するUVスペクトル(約300~400nm)での光を放出して、その上に配置された量子ドット標識の励起を引き起こすように構成される。プロセッサー31と組み合わせた多波長光検出器35は、(必要に応じて)異なる波長で量子ドットから放出される異なる強度の光を検出するように構成される。
【0124】
使用するとき、キャップ12は検査細片の試料採取端部100から取り外され、液体試料は試料受容ゾーン101に向けられる。キャップ12を交換することができ、約1分または2分後、側方流動免疫クロマトグラフィープロセスが行われるのに十分な時間を与えて、スイッチ33を押し下げて、電源32からLED34に電気を流すことができ、その結果、検査細片10の対照部分103a、103b及び検査部分104に入射するLED34からのUV光の放出を生じる。UV光は、対照部分103a、103b及び検査部分104で標識された複合体の一部として不動化されてもよい量子ドットのいずれかまたはすべての励起をもたらし、それぞれの波長ピークで発光を引き起こす。多波長光検出器35と組み合わせて、プロセッサー31は、放出ピークのサイズを決定し、これから(a)試料混合物が対照部分103a、103bに到達し、標識が有効であったかどうかを特定するように構成され、且つイエスであれば、(b)部分104で検出された発光の強度に基づいて試料に存在する標識された検査分析物の存在及び任意で量を確認するように構成される。
【0125】
手動スイッチ33が上で説明されている一方で、代替の実施形態では、切り替えは自動化されてもよい。例えば、試料は装置に提供されてもよい流体活性化スイッチを介して移動するので、切り替えは筐体11でのキャップ12の交換の際、または流体の活性化のせいで発生するように構成されてもよい。
【0126】
LEDは、LEDからの発光が装置間で一貫していることを確認し、量子ドットの励起の程度が一貫していることを確認するために慎重に較正されてもよい。さらに、または代わりに、較正メカニズムは装置に統合されてもよい。さらに別の波長で蛍光を発するように構成された既知の量の量子ドットは検査細片に、例えば、さらなる検査ストライプに不動化されてもよい。既知の量の量子ドットから検出される蛍光の強度に応じて、プロセッサーは標識された複合体上の量子ドットからの発光のその解釈を調整してもよい。さらに、または代わりに、複数のLEDを使用して、任意の不正なLEDの全体的な影響を抑制する目的で量子ドットを励起してもよい。
【0127】
使用するとき、対照ゾーンに到達するのに十分な量の試料がないと特定されたのであれば、または図2及び4に示され、上記で説明されたような「不合格」の対照プロファイルが特定されたのであれば、プロセッサー31はディスプレイ36に無効検査という単語を提示させるように構成される。これに関して、プロセッサー31は多波長光検出器35と組み合わせて、対照ゾーン103での放出ピークのサイズを決定し、これから(i)試料が対照ゾーン103に到達しているかどうかを、及び/または(ii)標識が有効であったかどうかを、及び/または(iii)生体試料が存在し、分解されていないかどうかを確認するように構成される。
【0128】
使用するとき、十分な量の試料があり、標識が有効であることが確認されるのであれば、プロセッサー31は、試料が検査分析物を含有するかどうかの決定を提供するように構成される。
【0129】
本実施形態の装置は手持ち式装置であるので、装置は実験室、診療所、自宅、または職場で使用されてもよい。
【0130】
装置は、開口部111を介して筐体10から使用済み検査細片を取り出すことを可能にし、同じ開口部111を介して筐体10に新しい検査細片を配置することを可能にするように構成される。代替の実施形態では、装置は完全に使い捨て装置であってもよい。
【実施例
【0131】
実施例1―側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ用細片のための改良された実薬対照の開発
HSAに基づく実薬対照
側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイは通常、内部対照ラインによる検証が必要である。従来の側方流動免疫クロマトグラフィー(すなわち、集積ではない)では、検査ラインの下流を流れる未結合標識は抗種(例えば、抗マウス)抗体によって捕捉される。対照ラインの出現は、検査結果が陰性の場合にユーザーの肯定的な補強として機能する検査が適切に実行されたという証拠を提供し、そうでない場合、バンドは出現しない。また、検査細片の生物学的構成成分が輸送中及び保管中に活性状態を維持したといういくつかの指標も提供する。特定の例では、例えば、検査が家庭で使用する予定になっている場合、検査はさらに有益な実薬対照を使用してもよい。単に未結合標識を捕捉する代わりに、実薬対照は生体試料に存在するバイオマーカーを特異的に認識する。
【0132】
同じく家庭用及びOTC販売を予定している家庭用インフルエンザ検査(HFT)は実薬対照を実行する。HFT対照ラインについての最も豊富なタンパク質と候補標的マーカーは、ヒト血清アルブミン(HSA)及び免疫グロブリン(IgG、IgA)である。人口の無視できない部分がIgA欠損であるので、IgAは初期評価後に放棄された。
【0133】
HSAはヒト粘液にて最も豊富なタンパク質であるので、HFTで評価された。複数の抗体をサンドイッチアッセイ形式でスクリーニングした。抗HSA抗体をニトロセルロース細片及び金ナノ粒子に不動化した。粘液試料の存在下で、双方の抗体はHSAタンパク質を認識し、機能的なサンドイッチを形成した(図8)。アッセイ形式は、核タンパク質が2つの抗体の間に捕捉されるインフルエンザアッセイと同じである。この形式では、緩衝液に添加されたHSAが5ng/mLの検出限界で検出されてもよい(図9)。金ナノ粒子への抗HSA抗体の結合の成功は、検査に抗種対照ラインを含めることによって検証された。
【0134】
この最初の実験の結果は、ダイナミックレンジが検査対照アッセイに好適ではないことを示した:鼻粘液におけるHSAタンパク質の報告値は数mg/mLの範囲であり、アッセイの飽和をはるかに上回る(図10を参照)。実際、シグナルは1μg/mLで最大値に達し、さらに高濃度で次第に減少する(「フック効果」のため)。検査ラインと粒子表面は大量のHSAにさらされるため、双方の表面がタンパク質で急速にコーティングされるので、抗体がサンドイッチを形成できなくなる(図10)。
【0135】
この知見に基づいて、HFTでの評価と可能な実施のために異なる標的が選択された:α-ヒトIgG抗体が検査細片のC2対照ラインに不動化された。Supernova粒子(すなわち、ナノ粒子凝集体)と抗ヒトIgG金ナノ粒子の組み合わせが結合遊離パッドに同時に堆積された。試料の非存在下で、金は結合せずに対照ラインを流れ過ぎるはずである。粘液試料が上手く適用されているのであれば、金粒子は試料から免疫グロブリンを隔離し、対照ラインで蓄積するであろう。差吸光度測定(すなわち、参照としての生体不活性ニトロセルロースのセクションと比較した金粒子によって吸収される光の測定)は、試料の存在または非存在のデジタルシグナルを提供した(図11)。
【0136】
このアッセイ形式は、ヒト粘液に見られるIgGの範囲内に十分収まることが示された一方で、粘液試料におけるSupernovaへの時折の、しかし有意な干渉が観察された(図12)。
【0137】
検査細片にわたる蛍光強度と吸光度をCAMAG TLCスキャナーで測定した。Supernova粒子の非特異的結合による明確なピークが、双方のインフルエンザ検査ラインで観察されてもよい(図12)。同じ細片の吸光度スキャンによって、インフルエンザ検査ラインで非特異的に吸収された金ナノ粒子が明らかになった。金ナノ粒子上の抗ヒト抗体は、インフルエンザ検査ラインで不動化された抗核タンパク質IgGに対する親和性によって免疫グロブリンの亜集団と相互作用したと考えられている。これらの非特異的相互作用に由来するバックグラウンド応答の変動性はHFTアッセイの感度に深刻な影響を及ぼす。
【0138】
したがって、HSAの使用を再考されたアッセイ形式で再検討することが決定された。図8に記載されているようなサンドイッチ形式が非常に良好な感度を実現することができることはアッセイ開発にて周知である。この理由で、サンドイッチアッセイは多くの側方流動免疫クロマトグラフィーに基づく診断に選択されるアッセイ形式である。しかしながら、別のアプローチは、標識された粒子が標的分析物の非存在下でセンサー表面に直接結合する、いわゆる競合アッセイを開発することである。したがって、標的分析物の存在はシグナルの漸進的な減少またはシグナルの非存在につながる競合を引き起こす。
【0139】
競合対照アッセイ形式の開発では、我々は抗HSA抗体をニトロセルロースに不動化し、HSAでコーティングされた金ナノ粒子をアッセイシステムに導入した。次に、試料が検査細片に到達したとき乾燥/湿潤転移を介した吸光度の相対的な変化が観察され、且つ粒子が細片を通って流れている間に次のシグナル生成が観察された。捕捉試薬が不動化されていないC1対照ライン(図13Aの青い線)でのシグナルは、湿潤/乾燥転移及び共役波の通過に対応してシグナル増加を示した。陰性シグナルがバックグラウンド値に達するまで単調に減衰することは注目に値する。逆に、試料の非存在下では、C2対照ラインに蓄積した金粒子は試料添加から5分(30回の読み取り)以内に安定した応答を提供する(図13A)。したがって、αh-IgG対照ラインと共に試料の存在下で観察されたシグナルプロファイルと同様に、シグナルプロファイルは湿潤/乾燥転移から最終平衡レベルまで増加した(図12)。
【0140】
逆に、試料の存在下では、C1及びC2の双方はバックグラウンドレベルに向かって絶えず減少する単調な波形によって記載することができる類似のシグナルプロファイルを示した。ヒト粘液中のHSAのレベルが非常に上昇したので、C2検査ラインは完全に不動態化され、金粒子の結合は観察されなかった。
【0141】
粘液試料の添加の増加を伴うC2対照ラインでのシグナルの相対的変化の用量依存性プロファイルは図14に提供されている。
【0142】
驚くべきことに、シグナルプロファイルの形態は試料が適用されなかった場合に有意に異なり、C1での参照シグナルの非存在下でさえ識別することができた。この観察に基づいて、この検知メカニズムを差動測定から絶対測定に移行させてC1検査ラインで1つのLEDを排除するので、装置設計を簡素化できると仮定した。
【0143】
アッセイの堅牢性は少量の試料で検証された。5μLを超える粘液量はC2で検出できない金のシグナルをもたらした。さらに少ない容量では、シグナルは急速に「バックグラウンド」シグナルに収束した。該アッセイは4人の異なるドナーからの粘液試料でも検証されており、検知メカニズムが堅牢で且つ再現性があることを確認している。
【0144】
青色ラテックス粒子
この競合アッセイのアプローチは、特に家庭での使用環境にて対照アッセイの有用性をさらに改善するように拡張されてもよい。これらのいくつかを以下に説明する。
【0145】
1)この活性がある競合アッセイ対照のアプローチはコロイド金に限定されず、側方流動免疫クロマトグラフィーと適合性のある他の粒子型、例えば、200nmの青色ラテックス粒子と共に非常にうまく機能できることが示されている(図15を参照のこと)。コロイド金による吸光度は緑色LED(λabs:530nm)を使用して測定することができる一方で、青色ラテックス粒子による吸光度は赤色LED(λabs:630nm)を使用して測定することができるどちらの選択肢もEllume Home FluTestに組み込むことができる。
【0146】
2)典型的な側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイでは、これらの検出器粒子は共役放出パッド上で乾燥され、検査細片内に集められる。本発明者らは、集積法と呼ばれる代替の形式を開発し、それによって、検出器粒子は試料スポイトの放出パッド上に配置される。この形式では、粒子は:(i)処理溶液(溶解緩衝液)がスポイトに添加されるとき、及び(ii)ヒトのスワブ試料を含有するノズルがスポイトにねじ込まれるとき溶出される。これは、アッセイの一貫性と感度を改善する、試料と混合された検出器粒子の均質な溶液を作り出す。これはまた、結合遊離パッドを取り外すので検査細片全体の流体工学を簡素化するという追加の利点も有する。
【0147】
3)本発明者らは、種々の表面官能基、例えば、カルボキシル、アミンまたは裸のポリスチレンを伴う200nmの青色ラテックス粒子へのHSAの物理吸着または共有結合のためのいくつかの不動化アプローチを実証した。好ましいアプローチは、Wood and Gadow(1983),J.Clin.Chem.Clin.Biochem,21:789-797の方法に基づいており、2工程プロセス:(i)5%v/vグルタルアルデヒド水溶液によるラテックス粒子の表面上のアミン基(1級または2級のいずれか)の活性化、とそれに続く(ii)低イオン強度のリン酸緩衝液における一晩インキュベートを介したHSAの共有結合を含む(図16を参照のこと)。
【0148】
グルタルアルデヒド活性化のアプローチは以下の利点を提供する。
・競合アッセイ形式でのHSA含有試料とHSA非含有試料の間の優れた識別(図10を参照のこと)
・スプレーされた集積パッドからの溶解緩衝液への良好な放出
・摂氏2~8度の保存緩衝液にて粒子の安定性を維持する
・他の多くの選択肢と比較して最低費用のアプローチ(例えば、安価なリンカー、必要なタンパク質過剰が少ない、元のラテックスストックの>90%の収率)
・目的の試料マトリックス、すなわちヒトの鼻腔スワブとの相互作用が少ない
【0149】
共結合したHSA+IgYラテックス粒子
競合アッセイアプローチの潜在的な問題の1つは、陰性の検査結果が発生したときにユーザーに提供される正のフィードバックがないことである。側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイでは、主な標的分析物の捕捉ラインから下流に内部対照を含めるのが一般的なやり方である。これは、検査が正しく製造されたこと、検出器粒子が機能していること、及び検査が最後まで実行されたことをユーザーに通知するのに役立つ。これは通例、対応する宿主種からの抗体と結合した検出器粒子を直接結合する抗種捕捉抗体を含む。例えば、抗マウス捕捉抗体は、それらの検出器粒子に結合したマウス抗体を使用する側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイにおける好適な内部対照である。
【0150】
家庭でのインフルエンザ検査では、抗マウス捕捉抗体は、2つの理由:(i)蛍光検出器粒子は内部対照粒子と競合するマウス抗体を含有する、及び(ii)マウス血清はブロッキング剤としての検査に添加され、これは抗マウス捕捉ラインを急速に飽和させる;から好適な内部対照ではない。
【0151】
代わりに、ニワトリIgY抗体に基づく内部対照が開発されている(図18を参照のこと)。ニワトリIgYはいくつかの利点を有する:(i)鶏卵から高収率で容易に生産され且つ抽出される、(ii)哺乳類のIgG抗体とは構造的に異なるので、補体、リウマチ因子またはFc受容体のような既知のヒト干渉物質との交差反応性を有さない、及び(iii)ニワトリIgYに対して産生されたいくつかの抗種捕捉抗体、例えば、ヤギ抗ニワトリIgY、ロバF(ab’)2抗ニワトリIgY、ウサギF(ab’)2抗ニワトリIgY及びモノクローナルマウス抗ニワトリIgYが市販されている。
【0152】
第2の対照アッセイを有することの別の利点はあまり明白ではない。双方のタンパク質(すなわち、HSAとニワトリIgY)が同じバッチのラテックス粒子に共結合しているならば、すべての粒子がいずれかの対照ラインに結合できる。これは、グルタルアルデヒドで活性化されたラテックス粒子とのインキュベートの前に双方のタンパク質を混合することによって達成されてもよい。これで2つのシナリオが発生し得る(図19を参照のこと)。
【0153】
1)検査試料での遊離HSAの非存在下では、タンパク質結合検出器粒子は抗HSA(C1)または抗ニワトリIgY(C2)の捕捉ラインのいずれかに一定の比率で結合する。この比率は、集積パッドからどれほど多数の粒子が放出されたか、または検査に適用された総量とは無関係である。
【0154】
2)検査試料での遊離HSAの存在下では、抗HSA捕捉ラインでの結合がはるかに少なく、抗ニワトリIgY捕捉ラインでの結合がわずかに高いことに起因して、この比率に大きな変化がある(C1にて結合するのでC2での結合に利用できる粒子が少ないことに起因して)。
【0155】
したがって、有効な検査結果が得られるのは、C1/C2の比率が閾値を下回り、C2値が閾値を上回る場合、すなわちC2で十分な数の機能性粒子が検出される場合のみである(図20及び図21を参照のこと)。
【0156】
実施例2
低陽性FluAまたは低陽性FluBの各試料は、50μLのインフルエンザ核タンパク質溶液(PBSで希釈)と450μLの溶解緩衝液をマイクロバイアルで混合することによって調製した。マイクロバイアルはまた、次の粒子:(i)抗インフルエンザA及びB核タンパク質に共結合した蛍光Supernova粒子、及び(ii)HSA及びニワトリIgYに共結合した青色ラテックス粒子を乾燥させた吸収パッドも含有した。次に、この混合物125μLをHFT検査装置の試料ポートに加えた。
【0157】
緩衝液のみの試料はマイクロバイアルに50μLのPBSと450μLの溶解緩衝液を加えることによって同様に調製した。
【0158】
志願者の鼻腔スワブ試料は、健康な志願者を鼻腔スワブで拭き取り、スワブの先端を450μLの溶解緩衝液に浸すことによって同様に調製した。
【0159】
蛍光免疫アッセイ(S5値)、内部対照(対照値)、及び最終検査結果の計算値を表1に要約する。
【0160】
表1から明らかなように、36の試料すべてで蛍光免疫アッセイ及び内部対照アッセイの双方について予想される結果が得られた。同じ試料における蛍光Supernova粒子とラテックス粒子双方の存在は、どちらのアッセイにも影響を与えるようには思えなかった。
【表1】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】