(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20220728BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220728BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20220728BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20220728BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20220728BHJP
C07D 491/044 20060101ALN20220728BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20220728BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220728BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20220728BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20220728BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/02 ZNA
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K38/06
C07D519/00 311
A61K9/08
A61K31/69
A61K31/5377
A61K31/122
A61K31/427
A61K31/5517
A61K38/05
A61K38/07
C07D491/044
C07D487/04 152
C07K16/28
C12N5/0781
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570788
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 IB2020055128
(87)【国際公開番号】W WO2020240502
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】キニア,クリスタ
(72)【発明者】
【氏名】タイス,デイビッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】タイ, ユー-ツ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ケネス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C050
4C072
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
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4B065AC20
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4C050AA01
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4H045AA10
4H045AA11
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4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、B細胞悪性腫瘍の処置のための方法及び組成物に関する。具体的には、本開示は、(a)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、B細胞成熟抗原(BCMA)に結合する抗体又はその抗原結合断片、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と、(b)プロテアソーム阻害剤とを含むB細胞悪性腫瘍用薬剤又は組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞悪性腫瘍用薬剤であって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、B細胞成熟抗原(BCMA)に結合する抗体又はその抗原結合断片、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
前記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
前記ADCを欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍用薬剤。
【請求項2】
B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせであって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
前記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
前記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせ。
【請求項3】
B細胞悪性腫瘍を処置するための方法であって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含む治療的組み合わせを対象に投与することを含み、
前記治療的組み合わせが、前記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
前記治療的組み合わせが、前記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍を処置するための方法。
【請求項4】
(a)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCを、(b)プロテアソーム阻害剤と組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む、悪性B細胞のADCによる抑制を増強させるためのインビトロ法。
【請求項5】
(a)プロテアソーム阻害剤を、(b)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む、悪性B細胞のプロテアソーム阻害剤による抑制を増強させるためのインビトロ法。
【請求項6】
a.前記プロテアソーム阻害剤が、前記ADCより前に、それと同時に、若しくはそれに続いて投与されるか、又は
b.前記ADCが、前記プロテアソーム阻害剤より前に、それと同時に、若しくはそれに続いて投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又はインビトロ法。
【請求項7】
前記B細胞悪性腫瘍が、参照非悪性B細胞と比較してBCMA抗原の発現レベルが増加した悪性B細胞を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又はインビトロ法。
【請求項8】
前記B細胞悪性腫瘍が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、骨髄腫、多発性骨髄腫、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項9】
前記B細胞悪性腫瘍が、多発性骨髄腫である、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片が、以下の6つのCDR:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、又はその機能的変異体;
b.配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、又はその機能的変異体;
c.配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、又はその機能的変異体;
d.配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、又はその機能的変異体;
e.配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、又はその機能的変異体;及び
f.配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、又はその機能的変異体を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、若しくはその機能的等価物;及び/又は
b.配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、若しくはその機能的等価物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項12】
前記抗体又はその抗原結合断片が、239位のセリン(S)と240位のバリン(V)との間にシステイン(C)の挿入を含む重鎖定常領域を含み、付番がKabatのEUインデックスに対応する、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項14】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号12のアミノ酸配列を含むヒトカッパ定常領域を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項15】
前記プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ、デランゾミブ、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項16】
前記プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブである、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項17】
前記核酸架橋剤が、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である、請求項1~16のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項18】
前記核酸架橋剤が、式:
【化1】
をそれぞれ含む(a)SG3249、(b)SG3315、若しくは(c)SG3400
又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上のPBDである、請求項1~17のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項19】
前記核酸架橋剤が、下記式を含む前記PBD SG3249である、請求項1~18のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【化2】
【請求項20】
前記抗体又はその抗原結合断片が、モノクローナル抗体である、請求項1~19のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項21】
前記薬剤又は前記治療的組み合わせが、薬学的に許容可能な担体を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項22】
前記B細胞悪性腫瘍が、デキサメタゾン、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上に対して耐性である、請求項1~21のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項23】
前記B細胞悪性腫瘍が、ボルテゾミブに対して耐性である、請求項1~22のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項24】
前記B細胞悪性腫瘍の抑制の増強が、B細胞悪性腫瘍を含む対象における、腫瘍増殖の遅延の増大、腫瘍サイズの低減の増強、腫瘍転移の低減の増強、生存率の増大、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【請求項25】
前記薬剤又は前記治療的組み合わせが、静脈内注入によって投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の薬剤、使用のための治療的組み合わせ、方法、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表に対する参照
本出願とともに提出される、ASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表の内容(名称:BCMA-150-US-PSP-SequenceListing.txt、サイズ:11,279バイト、作成日:2019年5月28日)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血液癌とは、血球、骨髄、又はリンパ系に影響を及ぼす多くの異なる種類の癌を説明するために使用される用語である。血液癌は、米国では毎年新たな癌症例のほぼ10%を占めており、米国のみで、120万人超が血液癌であるか又は血液癌の寛解状態にあると報告されている。血液癌は、英国では5番目に多い癌であり、英国では毎年240,000人超が血液癌であり、40,000人が血液癌と診断されている。主な3つの群は、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫であり、それぞれがB細胞悪性腫瘍を代表する。
【0003】
例えば、B細胞悪性骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫(MM))は、前悪性の意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)から活動性MMへの進行に関連した進行中のDNA損傷を伴う、クローン性形質細胞(例えば、B細胞)の悪性腫瘍である。現在の骨髄腫の処置レジメンには、従来のコルチコステロイド、アルキル化剤、プロテアソーム阻害剤(PI)、及び免疫調節薬(IMiD)などがあり、これらは骨髄腫患者の全生存率を上昇させるのに役立っている。近年探求されている特に興味深い治療手段は、免疫療法(例えば、モノクローナル抗体を用いるもの)である。例えば、特許文献1及び特許文献2は、B細胞悪性腫瘍(特に骨髄腫細胞)に対して良好な選択性を有することが示されている、B細胞成熟抗原(BCMA)として知られる抗原に結合する抗体を記載しており、記載されている抗体は抗B細胞悪性腫瘍活性を示す。
【0004】
様々な処置の利用可能性が増加しているにもかかわらず、薬物耐性の発生が疾患(特に骨髄腫)の再発の根底にあり、あらゆる処置の有効性は、耐容用量によって実現可能な最大の有効性により制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/104949号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/025983号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、抗B細胞悪性腫瘍活性を有する改善された薬剤が必要とされている。本発明は、上述の問題の1つ以上に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、B細胞悪性腫瘍の併用療法に関する。
【0008】
本発明は、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)を、抗BCMA抗体-薬物コンジュゲートと相乗的に作用させるために使用して(またその逆も同様)、これらの薬剤の組み合わせとの接触後にB細胞悪性腫瘍の細胞の細胞毒性を増加させることができるという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明の将来性のある知見は、プロテアソーム阻害剤を、抗体-薬物コンジュゲートの抗B細胞悪性腫瘍活性を増強させるために(またその逆も同様)、より詳細には薬物(又は上記抗体-薬物コンジュゲート)が核酸架橋剤である場合に、用いることができるということである。
【0009】
一態様では、本明細書で提供されるのは、B細胞悪性腫瘍用薬剤であって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、B細胞成熟抗原(BCMA)に結合する抗体又はその抗原結合断片、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
上記ADCを欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍用薬剤である。
【0010】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせであって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
上記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせである。
【0011】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、B細胞悪性腫瘍を処置するための方法であって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含む治療的組み合わせを対象に投与することを含み、
この治療的組み合わせが、上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
この治療的組み合わせが、上記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍を処置するための方法である。
【0012】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、悪性B細胞のADCによる抑制を増強させるためのインビトロ法であり、上記方法は、(a)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCを、(b)プロテアソーム阻害剤と組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む。
【0013】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、悪性B細胞のプロテアソーム阻害剤による抑制を増強させるためのインビトロ法であり、上記方法は、(a)プロテアソーム阻害剤を、(b)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、M2がそのMMAF ADCホモログ(M3)よりもMM細胞に対してより細胞毒性が高いことを示す。A M2又はM3の段階希釈液をMM細胞培養物に3日間添加し、続いてCCK8細胞生存率アッセイを行った。用量毎に三連で行った3回の反復からの1つの代表的な実験から決定されたM2(黒丸)及びM3(白丸)のED
50値を示す。それぞれMM1S及びH929に由来するMM1S(R)及びH929(R)細胞は、レナリドミド及びポマリドミドに耐性である。RPMI-BCMAはBCMAを過剰発現するRPMI8226細胞であり、RPMIはRPMI8226細胞である。B M2(黒丸)又はM3(白丸)を3日間添加し、続いて[H
3]チミジン取り込みを用いた細胞増殖アッセイ(左)、並びにRPMI8226に関するCCK8ベースの生存率アッセイ、並びに対にしたANBL6及びANBL6-BR(ボルテゾミブ(btz)耐性)細胞に関する発光ベースのCell-Titer Growth(CTG)を行った。C デキサメタゾン(Dex)耐性MM細胞及びbtz耐性MM細胞の対をM2又はM3で2日間処置し、続いてフローサイトメトリー(FCM)分析を行い、アポトーシス細胞(Annexin V+/Aqua-及びAnnexin V+/Aqua+)のパーセンテージを求めた。***、p<0.0005;**、p<0.005。
【
図2】
図2は、M2がBMSCにより誘導されるMM細胞の生存能をM3よりも強力に遮断し、患者由来の初代MM細胞に対して細胞毒性であることを示す。A MM1Sluc細胞を単独で又はBMSCと共にM2又はM3で4日間処置し、細胞生存率をBLIによって求めた。B CFSEを標識したIMiD耐性MM1S(R)又はH929(R)細胞を、BMSCの存在下又は非存在下で、示された薬物と共に2日間インキュベートし、続いてAnnexin V及びLive/dead Aqua染色を用いたFCM分析を行った。用量毎に三連で行った3回の実験のうちの1回のAnnexin V-/Aqua-(生存)CFSE+MM細胞のパーセンテージを示す。C H929細胞を、単独で又はIL-6(5ng/ml)と共にM2で2日間処置し、Annexin V-/Aqua-(生存)細胞のパーセンテージを測定した。D 代表的なRRMM患者由来のCD138+細胞をM2又はM3と共に3日間インキュベートし、生/死細胞画分を測定した。E RRMM患者(n=3)由来のCD138+細胞をM2と共に3日間インキュベートし、続いてCTGアッセイを行った。F MM患者(NDMM=4、RRMM=2)のBMMCをM2(10μg/ml)で5日間処置した。生存CD38highCD138+細胞のパーセンテージをFCM分析によって求めた。
【
図3】
図3は、薬物感受性に関係なく、MM細胞株においてM2がM3よりも強力に細胞増殖を遮断し、アポトーシスを誘導することを示す。A M1(アイソタイプ-PBD)、M2(抗BCMA-PBD)、M3(抗BCMA-MMAFホモログ)、及びM4(アイソタイプ-MMAF)をMM細胞に3日間三連で添加し、続いてCCK8生存率アッセイを行った。B M2又はM3を3日間添加し、続いて[H
3]チミジン取り込みを用いた増殖アッセイを行った。C ANCBL6(btz感受性)細胞及びANBL6-BR(btz耐性)細胞を、CTGベースの生存アッセイ(左)並びにAnnexin V及びLive/dead Aqua染色を用いたFCMベースのアポトーシスアッセイ(右)を使用したbtzによる2日間の処置後に確認した。D MM1S細胞(上部パネル)及びMM1R細胞(下部パネル)を、示された薬物で処置した。Annexin V+MM細胞のパーセンテージを示す。
【
図4】
図4は、M2がBMSC及びIL-6によって保護されたMM細胞に対して特異的な細胞毒性を誘導し、更にCD38highCD138+患者MM細胞を枯渇させることを示す。A 種々の薬物感受性及び薬物耐性MM細胞株(n=6)を、単独で又はBMSCと共に、M2で3日間処置し、続いてCTGアッセイを行った。B BCMA陰性BMSC、PBMC、及びNK細胞をM2で5日間処置した。C H929細胞を、単独で又はIL-6(5ng/ml)と共にM2で3日間処置した。D 代表的なNDMM患者のBMMCをM2と共に5日間インキュベートした。M2は、CD38highCD138+MM細胞を用量依存的に減少させた。
【
図5】
図5は、M2がボルテゾミブと共に相乗的にMM細胞死を誘導することを示す。A~B MM細胞を示された薬物で2日間処置し、続いてPI及びAnnexin V染色を使用してFCM分析した。各細胞株の1つの代表的な試料の結果(A)、及び3回の反復からのAnnexin V+細胞のパーセンテージの概要(B)を示す。*、p<0.01;**、p<0.005、***、p<0.002、C CTGベースの細胞生存率アッセイからのデータを使用して、併用指数(CI)を求める。「効果」は、M2及びbtzによる細胞生存率の低減の程度を意味する。1未満のCIは両剤の相乗作用を示す。同様の結果が、更なる3回の反復から得られた。
【
図6】
図6は、低用量のM2とbtzとの併用が、相乗的なMM細胞死を誘発することを示す。示されたMM細胞株を、M2及びbtzと3日間、単独で又は一緒にインキュベートし、続いてCTGベースの生存率アッセイを行った。「効果」は、M2+btz処置の併用処置によって生存率の減少を示す細胞の画分を表す。1未満の併用指数(CI)は相乗作用を示す。全ての実験を三連で行い、平均値を示す。
【
図7】
図7は、ボルテゾミブと組み合わせたM2が、個々の薬物単独と比較した場合、マウスにおいてより強力なインビボ抗MM活性及び生存期間の延長を誘導することを示す。A 触知可能なMM1S腫瘍移植片を有するCB17 SCIDマウス(各群につきn=7)をランダム化し、対照溶媒、M2の単回用量(0.4mg/kg)、btzの6用量(0.4mg/kg)、又はM2とbtzの併用(M2+btz)で2週間処置した。腫瘍増殖は、併用処置群で対照(cnt)と比較して有意に阻害された(M2対M2+btz、p=0.035;btz対M2+btz、p<0.005;cnt対M2+btz;p=0.0012;btz対cnt、p<0.005;M2対cnt、p<0.005)。*、p<0.04;**、p<0.005、B 動物の体重を追跡した。C カプラン・マイヤー及びログランク分析を使用したところ、併用療法で処置された動物の全生存期間中央値は有意に延長された(cnt、22日;M2、40.5日;btz、35日;M2+btz、57日)(M2対M2+btz、p<0.045;btz対M2+btz、p<0.023;cnt対M2+btz、p<0.002)。D 各群からの腫瘍組織切片を、Ki-67について免疫組織化学的に分析した(原倍率、×400)。
【
図8】
図8は、M2とbtzとの併用処置がMM1S異種移植片のインビボ増殖を著しく減少させ、骨髄腫の処置におけるM2及びbtzのインビボ相乗作用を実証することを示す。代表的なマウスから同じ処置日に腫瘍を除去した。
【
図9】
図9は、M2がp53の状態及び薬物耐性に関係なく、MM細胞のDNA損傷応答(DDR)シグナル伝達経路のリン酸化を著しく誘導することを示す。野生型(MM1S、MM1R、H929)MM細胞及び変異したp53を有するMM細胞(*)を、示された時間(a)、一晩(b、d)、又は2日間(c)、示された用量のM2(a~d)で処置した。細胞溶解物を調製し、示された分子に対する特異的抗体を使用した免疫ブロッティングにより分析した。cPARPは切断されたPARPであり、cCas3は切断されたカスパーゼ3である。実験を3回繰り返した。
【
図10】
図10は、M2がDDRシグナル伝達カスケードを著しく誘導し、続いてBCMA依存的にアポトーシスを誘導することを示す。示されたMM細胞を、示された用量のM2(A~B、D~F)又はM3(A、F、G)で一晩(A、D、G)又は2日間(B、E~F)処置した。細胞溶解物を調製し、示された分子に対する特異的抗体を使用した免疫ブロッティングにより分析した。M2はDDRシグナル伝達経路を誘導するが、M3は誘導しない。cPARPは切断されたPARPであり、cCas3は切断されたカスパーゼ3である。(C)BCMAレベルをqRT-PCRを使用して測定した。BCMA
medium、BCMA
low、及びBCMA
highは、親RPMI8226に由来するものであった。
【
図11】M2処置は、RAD51を含むDDR関連遺伝子の発現を誘導する。致死量以下の条件下でM2で処置した生存H929 MM細胞由来のRNAを、TagMan(登録商標)ヒトDNA修復経路アレイ(a)を使用して分析した。転写物を内部対照の幾何平均により正規化し、対照(cnt)群に対するM2処置群の倍率変化を示す。RAD51のタンパク質レベルを求めるための免疫ブロッティング用に、M2で処置した種々のMM細胞株から細胞溶解物を作製した(b~c)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様では、本明細書で提供されるのは、B細胞悪性腫瘍用薬剤であって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、B細胞成熟抗原(BCMA)に結合する抗体又はその抗原結合断片、を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
上記ADCを欠いている以外は同一である薬剤と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍用薬剤である。
【0016】
別の態様は、B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせであって、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含み、
上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
上記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための治療的組み合わせを提供する。
【0017】
関連する態様では、B細胞悪性腫瘍を処置するための方法が提供され、この方法は、
a.核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと、
b.プロテアソーム阻害剤とを含む治療的組み合わせを対象に投与することを含み、
この治療的組み合わせが、上記プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらすか、又は
この治療的組み合わせが、上記ADCを欠いている以外は同一である組成物と比較した場合に、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす、方法である。
【0018】
上記B細胞悪性腫瘍の抑制の増強は、B細胞悪性腫瘍を含む対象における、腫瘍増殖の遅延の増大、腫瘍サイズの低減の増強、腫瘍転移の低減の増強、生存率の増大、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上を含み得る。
【0019】
「B細胞悪性腫瘍」という用語は、B細胞が癌化し、(例えば、骨髄及び血液において)制御なしに分裂し、他の部位(例えば、組織及びリンパ系)に浸潤する可能性のある任意の疾患を包含する。一実施形態では、上記B細胞悪性腫瘍は、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫及び骨髄腫前駆細胞)、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である。「B細胞」という用語は、成熟(分化)B細胞及びその前駆体(例えば、幹細胞)の両方を包含する。例えば、骨髄腫幹細胞及び骨髄腫前駆細胞が包含される。
【0020】
一実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、BCMAを発現する悪性B細胞を含むことを特徴とする。一実施形態では、上記悪性B細胞は、(参照非悪性B細胞と比較して)高レベルのBCMA抗原を発現する。非悪性(例えば、健常)B細胞におけるBCMA発現レベルと比較したときに、悪性B細胞におけるBCMA抗原の発現レベルが統計学的に有意なレベルまで増加した場合、悪性B細胞は「高レベルのBCMA」を発現すると見なされる。
【0021】
B細胞リンパ腫の例としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、中枢神経系(CNS)原発リンパ腫、及び原発性眼内リンパ腫が挙げられる。B細胞白血病の例としては、B細胞慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、前駆Bリンパ芽球性白血病、及び有毛細胞白血病が挙げられる。
【0022】
一実施形態では、上記B細胞悪性腫瘍は、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)である。
【0023】
形質細胞骨髄腫又はカーラー病としても知られる多発性骨髄腫(MM)は、通常は抗体の産生を担う、白血球の一種であるB細胞(形質細胞)の癌である。MMに対する現在の療法としては、化学療法、放射線、手術、ビオホスホネート(biophosphonates)、及び自家幹細胞移植(ASCT)が挙げられる。これらの療法はしばしば寛解をもたらすが、ほぼ全ての患者が最終的に再発し、死亡する。多発性骨髄腫には、年間100,000人当たり1~4人が罹患する。疾患は、男性でより一般的であり、原因は未だ不明であるが、アフリカ系アメリカ人では、コーカサス系アメリカ人の2倍多く見られる。
【0024】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)としても知られるB細胞成熟抗原(BCMA)は、B細胞系列の細胞上に発現する腫瘍壊死ファミリー受容体(TNFR)のメンバーである。BCMAの発現は、最終分化したB細胞で最も多い。BCMAは、長期にわたり体液性免疫を維持するための形質細胞の生存の媒介に関与する。BCMAの発現は、多数の癌、自己免疫障害、及び感染症に関連している。BCMA RNAは多発性骨髄腫細胞において普遍的に検出されており、BCMAタンパク質は複数の研究者により多発性骨髄腫患者の形質細胞の表面で検出されている。したがって、BCMAは、B細胞悪性腫瘍、特に多発性骨髄腫の治療標的を代表する。
【0025】
ヒトBCMA(TNFRSF17)のヌクレオチド配列は、Ensembl(アクセッション番号ENSG00000048462を参照されたい)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。BCMA(TNFRSF17)のアミノ酸配列は、UniProt(アクセッション番号Q02223を参照されたい。これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ヒトBCMAのアミノ酸配列は、配列番号13に示されている。
【0026】
BCMAは、多発性骨髄腫幹細胞にも発現している。したがって、「骨髄腫」という用語は、多発性骨髄腫「幹」細胞、及び骨髄腫「前駆」細胞を包含する。更に、本発明の方法及び使用は、多発性骨髄腫幹細胞(例えば、BCMAを発現するもの)を含む悪性腫瘍の処置を包含する。多発性骨髄腫幹細胞(及び/又は骨髄腫前駆細胞)は、多発性骨髄腫患者の骨髄において、CD19のそれらの表面発現及びCD138表面発現の欠如により、同定可能である。これらの細胞は、独特にクローン原性であり、免疫不全マウスに生着する一方で、CD138+CD19-と規定される骨髄腫形質細胞は生着しない。
【0027】
「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、化学的リンカーを介して細胞毒性剤(一般に高い全身毒性を有する小分子薬物)に結合された抗体(又はその抗原結合断片)を意味する。この用語は、本明細書において、核酸架橋剤にコンジュゲートされた抗体又はその抗原結合断片を記載するために使用される。一実施形態では、ADCは、リンカーを含有するように化学的に修飾された核酸架橋剤(例えば、小分子細胞毒素)を含み得る。次に、リンカーを使用して、核酸架橋剤(細胞毒素)を抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートすることができる。細胞の表面上の標的抗原(例えば、BCMA)への結合時、ADCは内部移行され、リソソームに輸送されて、そこで核酸架橋剤(細胞毒素)は、(例えば、リソソーム内で見出されるカテプシンBによる)切断可能リンカーのタンパク質加水分解、又は例えば、切断不能リンカーを介して細胞毒素に結合される場合での抗体のタンパク質分解のいずれかにより放出される。次に、細胞毒素は、リソソームから外部へ、またサイトゾル又は核内部へと移行し、そこで次に、その作用機構に応じてその標的に結合し得る。
【0028】
一実施形態では、上記核酸架橋剤は、細胞毒性の核酸架橋剤である。
【0029】
プロテアソーム阻害剤は、多くの癌療法において有用性が見出されている。驚くべきことに、本発明者らは、プロテアソーム阻害剤を用いて、本発明のADCの抗B細胞悪性腫瘍活性を増強(例えば、相乗的に増強)することができ、また逆に、本発明のADCを用いて、プロテアソーム阻害剤の抗B細胞悪性腫瘍活性を増強(例えば、相乗的に増強)することができることを見出した。理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、プロテアソーム阻害剤の活性が、下流(分子)効果(例えば、ADCの核酸架橋剤(例えば、PBD細胞毒素)の活性を通常は阻害することができ、且つ核酸架橋剤に対する耐性をもたらすことさえ可能である分子の抑制をもたらす)を引き起こすことによって、本発明のADCの活性を増強することができると考える。この活性は、直接的なプロテアソーム阻害剤としてのその「通常の」活性に関連付けられる場合もあれば、又はそれとは別個である場合もある。この理論は、本発明の治療的組み合わせが、単剤療法としてのプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)に対して耐性である悪性B細胞に対してさえも、活性の増強を示すという観察結果によって裏付けられる。
【0030】
逆に、理論に束縛されることを望まないが、本発明のADCの活性が、下流(分子)効果(例えば、プロテアソーム阻害剤の活性を通常は阻害することができ、且つプロテアソーム阻害剤に対する耐性をもたらすことさえ可能である分子の抑制をもたらす)を引き起こすことによって、プロテアソーム阻害剤の活性を増強させることができる。
【0031】
プロテアソーム阻害剤は、様々な結果を生じさせる。例えば、プロテアソーム阻害剤は、核内因子カッパB(細胞の生存に関与するタンパク質)の阻害因子であるIκBなどの生物学的に活性なタンパク質のレベルの上昇を引き起こし得る。更に、ミスフォールディングされたタンパク質及び他の古くなったタンパク質も同様に蓄積され、これらは小胞体(ER)ストレスを伴う小胞体ストレス応答(UPR)を誘発する。
【0032】
一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボロン酸ベースのプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)である。
【0033】
一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ、デランゾミブ、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である。一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブである。
【0034】
以前はPS-341として知られていたボルテゾミブ(例えば、Velcade)(Millennium Pharmaceuticals,Cambridge,MA,USA)は、ユビキチン化タンパク質の分解を担うマルチサブユニットタンパク質複合体である26Sプロテアソームの阻害剤として機能する。ボルテゾミブは、分子式がC
19H
25BN
4Oであるペプチドボロネートである:
【化1】
【0035】
カルフィルゾミブ(Kyprolis(登録商標))は、β5サブユニット(PSMB5)に不可逆的に結合するエポキシケトンプロテアソーム阻害剤である。その式は以下の通りである:
【化2】
【0036】
イキサゾミブ(Ninlaro(登録商標))は、タンパク質プロテアソームサブユニットβ5型(PSMB5)を選択的且つ可逆的に阻害する。その式は以下の通りである:
【化3】
【0037】
マリゾミブ(Salinosporamide A)は20Sプロテアソームの活性部位であるスレオニン残基を共有結合的に修飾することにより、プロテアソーム活性を阻害する。マリゾミブは、タンパク質プロテアソームサブユニットβ5、β1及びβ2上の3つの主要な触媒部位に不可逆的に結合する。その式は以下の通りである:
【化4】
【0038】
オプロゾミブ(ONX 0912として知られる)は、以下の式を有する:
【化5】
【0039】
デランゾミブ(CEP-18 770として知られる)は、以下の式を有する:
【化6】
【0040】
一実施形態では、薬剤及び/又は治療用組成物は、医薬組成物内に含まれる。「医薬組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効であることが可能な形態であり、且つその組成物が投与される対象にとって許容できないほど高毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。このような組成物は無菌であり得る。薬剤及び/又は治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み得る。担体の例は、生理食塩水である。好適な医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸若しくはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール)、及びバイオアベイラビリティを高める吸収促進剤の1つ以上、並びに/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を含み得る。
【0041】
一実施形態では、本発明の薬剤、治療的組み合わせ、又は医薬組成物は、薬学的に許容可能な非毒性の滅菌担体、例えば生理食塩水、非毒性緩衝液、防腐剤などを含み得る。本明細書に開示される治療方法における使用に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd ed.,Ed.Lloyd V.Allen,Jr.(2012)に記載されている。一実施形態では、本発明の薬剤、治療的組み合わせ、又は医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、溶液、鼻エアロゾル、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の製剤内に含まれ得る。一実施形態では、医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意選択で安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含み得る。
【0042】
「細胞毒性」薬剤(本明細書では「細胞毒素」又は「細胞毒性剤」と称される)は、細胞の機能を阻害若しくは防止し、及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こし、及び/又は抗増殖効果を発揮する薬剤である。ADCの細胞毒素又は細胞毒性剤が、当該技術分野でADCの「ペイロード」とも称されることは理解されるであろう。
【0043】
「核酸架橋剤」という用語は、核酸の2つのヌクレオチドと反応し、それらの間に共有結合を形成する分子を意味する。この架橋は、二本鎖DNAの同じ鎖内(鎖内)又は向かい合った鎖間(鎖間)で生じ得る。これらの結合(付加物)は、DNA複製及び転写などの細胞代謝を妨害し、典型的には細胞死を引き起こす。一実施形態では、核酸はDNAである。
【0044】
一実施形態では、核酸架橋剤は、DNA鎖切断(一本鎖切断及び/又は二本鎖切断)を誘導することによりDNAに損傷を与え、典型的には続いてアポトーシスをもたらす薬剤である。一実施形態では、核酸架橋剤は、細胞毒性の核酸架橋剤である。
【0045】
一実施形態では、核酸架橋剤は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、ナイトロジェンマスタード、シスプラチン、クロロエチルニトロソウレア(CENU)、ソラレン、マイトマイシンC(MMC)抗生物質、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である。上記ナイトロジェンマスタードは、シクロホスファミド、クロルメチン(例えば、メクロレタミン又はムスチン)、ウラムスチン、ウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ベンダムスチン、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上であり得る。一実施形態では、上記CENUは、カルムスチンである。
【0046】
一実施形態では、核酸架橋剤は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。
【0047】
「ピロロベンゾジアゼピン」という用語は、ピロロベンゾジアゼピン及びその機能的誘導体の両方を包含する。
【0048】
PBDは、DNAを架橋する前に核に移行し、有糸分裂中の複製を防止し、DNA鎖切断(一本鎖切断及び/又は二本鎖切断)を誘導することによりDNAに損傷を与え、続いてアポトーシスをもたらす、細胞毒性剤のクラスである。一部のPBDはまた、DNAの特定の配列を認識し、それに結合する能力を有する。一実施形態では、PBDは、以下の一般的構造を含む:
【化7】
【0049】
PBDは、芳香族A環及びピロロC環の両方において、その置換基の数、種類、及び位置が異なり、またC環の飽和度が異なる。B環では、DNAのアルキル化を担う求電子性中心であるN10~C11位に、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、又はカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。公知の天然産物の全てが、キラルなC11a位に(S)配置を有しており、これによりC環からA環に向かって見た場合に右回りのねじれが天然産物に付与される。この特徴はまた、B型DNAの副溝に対してイソらせん性(isohelicity)となるための適切な三次元形状をPBDに与え、結合部位でぴったりと適合させる。PBDは、副溝内に付加物を形成し、DNAプロセシングを妨害することができる。
【0050】
最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシンは、1965年に発見された。それ以降、多数の天然に存在するPBDが報告されており、種々の類似体に至る10を超える合成経路が開発されている。ファミリーメンバーには、アベイマイシン、チカマイシン、DC-81、マゼトラマイシン、ネオトラマイシンA及びB、ポロトラマイシン、プロトラカルシン、シバノマイシン(DC-102)、シビロマイシン、並びにトママイシンが含まれる。PBD及びそれを含むADCはまた、国際公開第2015/155345号パンフレット及び同第2015/157592号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)にも記載されている。
【0051】
一実施形態では、PBDは、本明細書で「SG3249」とも称されるPBD3249(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/057074号パンフレットに更に詳細に記載されているもの)である。PBD3249(SG3249)は、以下の構造を含む:
【化8】
【0052】
一実施形態では、PBDは、本明細書で「SG3315」とも称されるPBD3315(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/052322号パンフレットに更に詳細に記載されているもの)である。PBD3315(SG3315)は、以下の構造を含む:
【化9】
【0053】
一実施形態では、PBD(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/137553号パンフレットに詳細に記載されているもの)は、以下の式を含む:
【化10】
;
式中、
(a)R
10及びR
11は、それらが結合される窒素原子及び炭素原子の間に窒素-炭素二重結合を形成するか、又は
(b)R
10はOHであり、R
11は以下であるか、のいずれかである:
【化11】
【0054】
別の実施形態では、PBDは、化合物23とも称されるSG3400(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/137553号パンフレットに詳細に記載されているもの)であり、以下の構造を有する:
【化12】
【0055】
一実施形態では、PBDは、少なくとも2つのPBDモノマーを含むPBD二量体である。例えば、少なくとも2つのPBDモノマーは、可撓性プロピルジオキシテザーを介して、それらの芳香族A環フェノールのC8位を通じて連結される。
【0056】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、部位特異的又は非部位特異的コンジュゲーション方法を使用して、PBDなどの細胞毒素(異種薬剤)にコンジュゲートされ得る。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のPBD部分を含む。一実施形態では、PBD部分(抗体又はその抗原断片にコンジュゲートされる)は全て、同じ構造を含む。
【0057】
本発明の核酸架橋剤(細胞毒素)は、スペーサー(例えば、少なくとも1つのスペーサー)によって、抗体又はその抗原結合断片に連結(例えば、コンジュゲート)され得る。一実施形態では、スペーサーは、ペプチドスペーサーである。一実施形態では、スペーサーは、非ペプチド(例えば、化学的)スペーサーである。
【0058】
抗体又はその抗原結合断片の従来のコンジュゲーション戦略は、リジン又はシステインを介してペイロード(細胞毒素)を抗体又は抗原結合断片にランダムにコンジュゲートすることに依存する。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、例えば抗体又は断片の部分的還元と、その後のリンカー部分が付加された又は付加されていない所望の薬剤との反応によって、薬剤(例えば、細胞毒素)にランダムにコンジュゲートされる。抗体又は抗原結合断片は、DTT又は同様の還元剤を使用して還元され得る。次に、リンカー部分が付加された又は付加されていない薬剤を、DMSOの存在下で還元された抗体又は断片にモル過剰で加えることができる。コンジュゲーション後、未反応の薬剤をクエンチするため、過剰な遊離システインを添加してもよい。次に、反応混合物を精製し、PBSに緩衝液交換することができる。
【0059】
一実施形態では、核酸架橋剤(例えば、細胞毒素)は、部位特異的コンジュゲーションによって抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされる。一実施形態では、特定の位置の反応性アミノ酸残基を使用した核酸架橋剤(例えば、細胞毒素)の抗体又はその抗原結合断片への部位特異的コンジュゲーションにより、一定の化学量論比の均質なADC調製物が得られる。
【0060】
部位特異的コンジュゲーションは、システイン残基又は非天然アミノ酸を介することができる。一実施形態では、核酸架橋剤(例えば、細胞毒素)は、少なくとも1つのシステイン残基を介して抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされる。
【0061】
一実施形態では、核酸架橋剤(例えば、細胞毒素)は、(例えば、抗体又は抗原結合断片のFc領域内の特定のKabat位置で)アミノ酸側鎖に化学的にコンジュゲートされる。一実施形態では、核酸架橋剤(例えば、細胞毒素)は、239位、248位、254位、273位、279位、282位、284位、286位、287位、289位、297位、298位、312位、324位、326位、330位、335位、337位、339位、350位、355位、356位、359位、360位、361位、375位、383位、384位、389位、398位、400位、413位、415位、418位、422位、440位、441位、442位、443位、及び446位(付番はKabatのEUインデックスに対応する)のうちの少なくとも1つのシステインを介した、Fc領域の任意の好適な位置におけるシステイン置換を介して抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされる。一実施形態では、特定の位置は、239、442、又はその両方である(付番はKabatのEUインデックスに対応する)。一実施形態では、特定の位置は、442位、239位と240位の間のアミノ酸(システイン)の挿入、又はその両方である(付番はKabatのEUインデックスに対応する)。一実施形態では、核酸架橋剤(細胞毒素)は、チオール-マレイミド結合を介して抗体又はその抗原結合断片にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、アミノ酸側鎖は、スルフヒドリル側鎖、例えば、抗体又はその抗原結合断片のヒンジ及び重鎖-軽鎖に位置するスルフヒドリル反応性基である。
【0062】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0063】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列を含むヒトカッパ定常領域を含む。
【0064】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
i.配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1、又はその機能的変異体;
ii.配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2、又はその機能的変異体;
iii.配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3、又はその機能的変異体;
iv.配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1、又はその機能的変異体;
v.配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2、又はその機能的変異体;及び
vi.配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3、又はその機能的変異体を含む。
【0065】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
i.配列番号7の参照アミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、90%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)、若しくはその機能的変異体;及び/又は
ii.配列番号8の参照アミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、90%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)、若しくはその機能的変異体を含む。
【0066】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又はその機能的変異体を含む。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、又はその機能的変異体を含む。
【0067】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖、又はその機能的変異体;及び
ii.配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖、又はその機能的変異体を含む。
【0068】
配列番号7及び配列番号8は、VH及びVLの生殖系列化バージョンである。或いは、抗体又はその抗原結合断片は、非生殖系列化VH及び/又はVL(例えば、配列番号9のVH及び配列番号10のVL)を含み得る。
【0069】
本発明は、列挙されたCDR配列又は可変重鎖配列及び可変軽鎖配列(参照抗体)を有する、本明細書中に定義される抗体(例えば、抗体又は抗原結合断片)、並びにその機能的変異体を包含する。機能的変異体は、参照抗体と同じ標的抗原(例えば、BCMA)に結合し、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示し得る。機能的変異体は、参照抗体と比較した場合、標的抗原に対して異なる親和性を有し得る。一実施形態では、機能的変異体は、実質的に同じ親和性を有する。
【0070】
一実施形態では、参照抗体の機能的変異体は、対応する参照CDR配列と比較した場合、1つ以上のCDRで配列変動を示す。したがって、機能的な抗体変異体は、CDRの機能的変異体を含み得る。用語「機能的変異体」がCDR配列に関して使用される場合、この用語は、CDRが、対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つ、又は最大で1つのアミノ酸差異を有しており、残りの5つのCDR(又はその変異体)と組み合わされた場合、参照抗体と同じ標的抗原(例えば、BCMA)への変異体抗体の結合を可能にすることを意味する。一実施形態では、機能的変異体は、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示す。
【0071】
一実施形態では、機能的変異体抗体又はその抗原結合断片は、
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR1;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR2;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR3;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR1;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR2;及び
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR3を含み;
機能的変異体は、参照抗体と同じ標的抗原に結合する。一実施形態では、機能的変異体は、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示す。
【0072】
一実施形態では、機能的変異体抗体又はその抗原結合断片は、
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR1;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR2;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR3;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR1;
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR2;及び
対応する参照CDR配列と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR3を含み;
機能的変異体は、参照抗体と同じ標的抗原に結合する。一実施形態では、機能的変異体は、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示す。
【0073】
例えば、抗体又は抗原結合断片の機能的変異体は、
配列番号1と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR1;
配列番号2と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR2;及び
配列番号3と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR3;
配列番号4と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR1;
配列番号5と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR2;
配列番号6と比較した場合、最大で2つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR3を含み得;
変異体抗体は、BCMA(例えば、BCMAポリペプチドエピトープ)に結合し、及び/又は変異体抗体は、参照抗体又は抗原結合断片と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示し得る。
【0074】
一実施形態では、抗体又は抗原結合断片の機能的変異体は、
配列番号1と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR1;
配列番号2と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR2;及び
配列番号3と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する重鎖CDR3;
配列番号4と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR1;
配列番号5と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR2;
配列番号6と比較した場合、最大で1つのアミノ酸差異を有する軽鎖CDR3を含み得;
変異体抗体は、BCMA(例えば、BCMAポリペプチドエピトープ)に結合し、及び/又は変異体抗体は、参照抗体又は抗原結合断片と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示し得る。
【0075】
上記は本明細書に記載される他の抗体の変異体に同様に適用することができ、ここで、アミノ酸差異はそのCDR配列に対して定義され、変異体抗体は上記抗体と同じ標的抗原に結合し、及び/又は変異体抗体は同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示し得る。
【0076】
一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、CDR1つ当たり最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異が存在することを条件として、そのCDR全体で最大で5つ、4つ、又は3つのアミノ酸差異を有し得る。一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、CDR1つ当たり最大で2つのアミノ酸差異が存在することを条件として、そのCDR全体で最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異を有する。一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、CDR1つ当たり最大で1つのアミノ酸差異が存在することを条件として、そのCDR全体で最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異を有する。
【0077】
アミノ酸差異は、アミノ酸置換、挿入、又は欠失であり得る。一実施形態では、アミノ酸差異は、本明細書に記載の保存的アミノ酸置換である。
【0078】
一実施形態では、機能的変異体抗体は、本明細書に記載の例示的抗体と同じフレームワーク配列を有する。別の実施形態では、機能的変異体抗体は、(対応するフレームワーク配列と比較した場合)最大で2つ、又は最大で1つのアミノ酸差異を有するフレームワーク領域を含み得る。したがって、各フレームワーク領域は、(対応する参照フレームワーク配列と比較した場合)最大で2つ、又は最大で1つのアミノ酸差異を有し得る。
【0079】
一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、フレームワーク領域1つ当たり最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異が存在することを条件として、そのフレームワーク領域全体で最大で5つ、4つ、又は3つのアミノ酸差異を有し得る。一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、フレームワーク領域1つ当たり最大で2つのアミノ酸差異が存在することを条件として、そのフレームワーク領域全体で最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異を有する。一実施形態では、機能的変異体抗体は、対応する参照抗体と比較した場合、フレームワーク領域1つ当たり最大で1つのアミノ酸差異が存在することを条件として、そのフレームワーク領域全体で最大で2つ(例えば、最大で1つ)のアミノ酸差異を有する。
【0080】
したがって、機能的変異体抗体は、本明細書に記載の可変重鎖及び可変軽鎖を含み得、
重鎖は、本明細書に記載の重鎖配列(例えば、配列番号7)と比較した場合、最大で14個のアミノ酸差異(各CDR中に最大で2つのアミノ酸差異、及び各フレームワーク領域中に最大で2つのアミノ酸差異)を有し;
軽鎖は、本明細書に記載の軽鎖配列(例えば、配列番号8)と比較した場合、最大で14個のアミノ酸差異(各CDR中に最大で2つのアミノ酸差異、及び各フレームワーク領域中に最大で2つのアミノ酸差異)を有し;
機能的変異体抗体は、参照抗体と同じ標的抗原に結合し、及び/又は機能的変異体抗体は、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示す。
【0081】
上記変異体重鎖又は軽鎖は、参照重鎖又は軽鎖の「機能的等価物」と称される場合がある。
【0082】
一実施形態では、機能的変異体抗体は、本明細書に記載の可変重鎖及び可変軽鎖を含み得、
重鎖は、本明細書中の重鎖配列(例えば、配列番号7)と比較した場合、最大で7つのアミノ酸差異(各CDR中に最大で1つのアミノ酸差異、及び各フレームワーク領域中に最大で1つのアミノ酸差異)を有し;
軽鎖は、本明細書中の軽鎖配列(例えば、配列番号8)と比較した場合、最大で7つのアミノ酸差異(各CDR中に最大で1つのアミノ酸差異、及び各フレームワーク領域中に最大で1つのアミノ酸差異)を有し;
機能的変異体抗体は、参照抗体と同じ標的抗原に結合し、及び/又は機能的変異体抗体は、参照抗体と同じ抗原交差反応性(又はその欠如)を示す。
【0083】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、BCMA(例えば、ヒトBCMA)に、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM、又は≦0.1pMの解離定数(KD)で結合する。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、約0.1nM~約40nM、約0.5nM~約30nM、約1nM~約20nM、又は約1.5nM~約20nMのKDでBCMA(例えば、ヒトBCMA)に結合する。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、約23nM~約27nMのKDでBCMA(例えば、ヒトBMCA)に結合する。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、約1nM~約1.5nMの間のKDでBCMA(例えば、ヒトBCMA)に結合する。KD測定(結合親和性)は、当該技術分野で公知の任意の適切なアッセイによって実施され得る。このような方法としては、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore、ProteOn)、バイオレイヤー干渉法(BLI、例えばOctet)、結合平衡除外法(例えば、KinExA)、分離可能ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、抗原パニング、ELISA、及び/又はForteBio Octetシステムが挙げられる。好適な結合平衡除外法としては、KinExAシステム(例えば、KinExA3100、KinExA3200、又はKinExA4000)(Sapidyne Instruments,Idaho)が挙げられる。
【0084】
有利には、この治療的組み合わせは、通常はこのようなプロテアソーム阻害剤に対して非反応性(例えば、耐性)である細胞を標的とするためのこのようなプロテアソーム阻害剤の有意義な使用を提供する。例えば、本発明者らは、B細胞悪性腫瘍がプロテアソーム阻害剤に耐性である場合でも、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)が、ADCの抗B細胞悪性腫瘍活性を増強することを実証した(実施例3を参照されたい)。
【0085】
したがって、本発明は、通常であればB細胞悪性腫瘍の低い/不十分な抑制のみをもたらすプロテアソーム阻害剤の用量でADCをプロテアソーム阻害剤と組み合わせて投与することを包含し、その結果、上記添加後に、現在ではこの組み合わせによりB細胞悪性腫瘍の抑制の改善を実証することができる。したがって、本発明は、(スタンドアロン)単剤療法(通常であれば耐性悪性腫瘍に対して有効ではない)の使用とは対照的に、ADCの増強剤として使用するためのプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)の「別目的での使用」を提供する。
【0086】
同様に、本発明は、通常であればB細胞悪性腫瘍の低い/不十分な抑制のみをもたらすADCの用量でプロテアソーム阻害剤をADCと組み合わせて投与することを包含し、その結果、上記添加後に、現在ではこの組み合わせによりB細胞悪性腫瘍の抑制の改善を実証することができる。したがって、本発明は、(スタンドアロン)単剤療法(低レベルのBCMA抗原を発現しているB細胞悪性腫瘍に対して通常であれば有効ではない)の使用とは対照的に、プロテアソーム阻害剤の増強剤として使用するためのADCの「別目的での使用」を提供する。
【0087】
したがって、一実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、プロテアソーム阻害剤(例えば、本発明のADCの非存在下でプロテアソーム阻害剤を含む薬剤)に対して耐性である。一実施形態では、上記プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブである。
【0088】
一実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、本発明のADC(例えば、本発明のプロテアソーム阻害剤の非存在下でADCを含む薬剤)に対して耐性である。一実施形態では、本発明のADCに耐性であるB細胞悪性腫瘍は、参照非悪性B細胞と比較してBCMA抗原の発現レベルの増加又は減少のない悪性B細胞を含むことを特徴とする。
【0089】
この治療的組み合わせはまた、他の多くの一般的な抗癌剤に耐性であるB細胞悪性腫瘍に対して活性が増強していることが示されている(実施例3を参照されたい)。したがって、一実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、デキサメタゾン、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の薬物に対して耐性である。
【0090】
更に、組み合わせの相乗的性質によって、より低い用量の成分の一部分を用いることができ、これにより、過剰使用による成分の一部分のいずれかに対する耐性(主要な公衆衛生上の脅威)の発生のリスクを低減させる。実際、本発明は、慢性処置レジメンの処方の必要性を低減させる。例えば、本発明者らは、至適用量以下のADCのインビボ有効性が、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)と組み合わせて投与された場合に尚も増強されることを示した。
【0091】
したがって、一実施形態では、ADC及び/又はプロテアソーム阻害剤は、至適用量以下で投与される。
【0092】
治療的組み合わせの成分の一部分の適用/投与の順序は、変更することができる。ADC及びプロテアソーム阻害剤は、単一の組成物の一部として、又は別個の組成物内のいずれかで、同時に(例えば、いずれも相乗作用を達成するためのそれら自体の特定の至適用量で)投与され得る。例えば、ADCは、第1の組成物(例えば、対象への静脈内投与に適合されたもの)中に存在してもよく、プロテアソーム阻害剤は、第2の組成物(例えば、対象への静脈内投与、皮下投与又は経口投与に適合されたもの)中に存在してもよい。例えば、プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブである場合、上記第2の組成物は、静脈内注射又は皮下注射に適合され得る。プロテアソーム阻害剤がイキサゾミブである実施形態では、上記第2の組成物は、追加的に又は代替的に、経口投与に適合され得る。
【0093】
更に、ADC及びプロテアソーム阻害剤は、異なる時点で投与され得る(例えば、プロテアソーム阻害剤は、悪性B細胞をADCに対して感作させるために予め投与され得る)。したがって、更なる実施形態では、ADC及びプロテアソーム阻害剤は、別個の組成物内で、異なる時点で対象に投与される。
【0094】
一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ADCの前に投与される。一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ADCと同時に投与される。一実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ADCに続いて投与される。
【0095】
「処置する」又は「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、予防的処置(例えば、B細胞悪性腫瘍の発症を防止するため)及び補正処置(B細胞悪性腫瘍に既に罹患している対象の処置)を包含する。一実施形態では、「処置する」又は「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、補正処置を指す。「処置する」又は「処置」という用語は、B細胞悪性腫瘍及びその症状の両方を処置することを包含する。いくつかの実施形態では、「処置する」又は「処置」は、B細胞悪性腫瘍の症状を指す。
【0096】
したがって、薬剤及び/又は治療的組み合わせは、治療的有効量又は予防的有効量で対象に投与され得る。
【0097】
「治療的有効量」は、B細胞悪性腫瘍(又はその症状)を処置するために単独で又は組み合わせて対象に投与される場合、B細胞悪性腫瘍又はその症状のそのような処置を行うのに十分である薬剤及び/又は治療的組み合わせの任意の量である。
【0098】
「予防的有効量」は、単独で又は組み合わせて対象に投与される場合、B細胞悪性腫瘍(又はその症状)の発症又は再発を阻害又は遅延させる、薬剤及び/又は治療的組み合わせの任意の量である。いくつかの実施形態では、予防的有効量はB細胞悪性腫瘍の発症又は再発を完全に防止する。発症の「阻害」とは、B細胞悪性腫瘍の発症(若しくはその症状)の可能性を減少させること、又は発症を完全に防止することのいずれかを意味する。
【0099】
本発明の更なる態様は、悪性B細胞のADCによる抑制を増強させるためのインビトロ法を提供し、上記方法は、(a)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCを、(b)プロテアソーム阻害剤と組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む。
【0100】
別の態様では、悪性B細胞のプロテアソーム阻害剤による抑制を増強させるためのインビトロ法が提供され、上記方法は、(a)プロテアソーム阻害剤を、(b)核酸架橋剤にコンジュゲートされた、BCMAに結合する抗体又はその抗原結合断片、を含むADCと組み合わせて、悪性B細胞に接触させることを含む。
【0101】
「抑制する」又は「抑制」という用語は、本明細書に記載の文脈又は任意の薬剤、方法、若しくは使用において、悪性B細胞「の増殖(growth)の阻害」、悪性B細胞「の増殖(proliferation)の阻害」、又は悪性B細胞「の死滅」を包含する。「悪性B細胞」への言及は、「悪性B細胞を含む腫瘍」を包含する。
【0102】
「阻害する」又は「阻害」という用語は、悪性B細胞の「増殖(growth)を遅らせる」若しくは「増殖(proliferation)を停止させる」、又は悪性B細胞を含む腫瘍の「増殖を遅らせる」という用語と同義である。一実施形態では、本発明の治療的組み合わせは、悪性B細胞を「殺傷」し得るか、若しくは悪性B細胞を含む腫瘍、又は悪性B細胞を含む腫瘍を「殺傷するために使用」され得る。「抑制」という用語はまた、悪性B細胞、又は悪性B細胞を含む腫瘍の増殖(growth)(例えば、増殖(proliferation))を防止することを包含する。
【0103】
一実施形態では、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強は、B細胞悪性腫瘍を含む対象における、腫瘍増殖の遅延の増大、腫瘍サイズの低減の増強、腫瘍転移の低減の増強、生存率の増大、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上を含み得る。一実施形態では、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強は、腫瘍増殖の遅延の増大、腫瘍サイズの低減の増強、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む。
【0104】
一実施形態では、本発明の薬剤及び/又は治療的組み合わせは、プロテアソーム阻害剤を欠いている以外は同一である薬剤及び/又は組成物よりも少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は約100%大きくB細胞悪性腫瘍を抑制する。一実施形態では、本発明の薬剤及び/又は治療的組み合わせは、本発明のADCを欠いている以外は同一である薬剤及び/又は組成物よりも少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は約100%大きくB細胞悪性腫瘍を抑制する。
【0105】
抑制は、細胞増殖を測定することにより測定することができ、細胞増殖は、細胞分裂速度、及び/又は細胞集団内の細胞分裂が生じている細胞の割合、及び/又は終末分化若しくは細胞死に起因する細胞集団からの細胞減少率を測定する当該技術分野で認められている技法(例えば、チミジン取り込み)を用いてアッセイすることができる。
【0106】
上記の「B細胞悪性腫瘍の抑制の増強」の評価は、添付の実施例を参照することにより実証され、実施例(例えば、実施例3)に記載の手法を使用して評価され得る。例えば、実施例3は、試験試料との接触後の悪性B細胞のインビトロ培養物において「観察されたアポトーシス細胞の%」値を測定する、Annexin V/PIベースのFMC分析を含む方法を記載する。これにより、本発明の薬剤と、プロテアソーム阻害剤又はADCを欠いている以外は同一である薬剤との間のB細胞悪性腫瘍の抑制を直接比較することができる。
【0107】
一実施形態では、B細胞悪性腫瘍の抑制は、2つの主要な活性化合物(例えば、本発明のADC及びプロテアソーム阻害剤)の組み合わせについて得られた「観察されたアポトーシス細胞の%」値が、本発明のADC又はプロテアソーム阻害剤(好適にはプロテアソーム阻害剤)のいずれかが存在しない場合に(但し、他の点では同一の条件下において)得られた「観察されたアポトーシス細胞の%」値よりも大きい場合に増強されると見なされる。
【0108】
したがって、一実施形態では、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強は、本発明のADCとプロテアソーム阻害剤との組み合わせについて得られた「観察されたアポトーシス細胞の%」値と、同一条件における本発明のADC又はプロテアソーム阻害剤を欠く(好適にはプロテアソーム阻害剤を欠く)同じ製剤(例えば、薬剤)について得られた「観察されたアポトーシス細胞の%」値とを比較することによって決定され得る。
【0109】
一実施形態では、本発明は、同一条件における本発明のADC又はプロテアソーム阻害剤を欠く(好適にはプロテアソーム阻害剤を欠く)同じ製剤(例えば、薬剤)により提供される観察されたアポトーシス細胞の%よりも、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%大きな(観察されたアポトーシス細胞の%で)、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす。一実施形態では、本発明は、同一条件における本発明のADC又はプロテアソーム阻害剤を欠く(好適にはプロテアソーム阻害剤を欠く)同じ製剤(例えば、薬剤)により提供される観察されたアポトーシス細胞の%よりも、少なくとも約65%大きな(観察されたアポトーシス細胞の%で)、B細胞悪性腫瘍の抑制の増強をもたらす。
【0110】
一実施形態では、本発明のADCとプロテアソーム阻害剤との組み合わせは、B細胞悪性腫瘍の相乗的抑制を示し得る。
【0111】
本明細書で使用される「相乗的」という用語は、示されるB細胞悪性腫瘍の抑制がその一部を合計したものよりも大きいことを意味する。換言すれば、B細胞悪性腫瘍の抑制は、相加的な抑制を超える。
【0112】
相乗作用は、CompuSyn(ComboSyn,Inc.)などの分析ツールを使用して「併用指数」(CI)を決定することにより測定することができ、1未満のCIは本発明の主要な活性成分の組み合わせの間の相乗作用を示し、1を超えるCIは拮抗作用を示し、1のCIは効果が相加的であることを示す。上記CIは、当該技術分野で公知の任意の細胞生存率アッセイにおいて(例えば、実施例3に記載の「CellTiter-Gloベースの細胞生存率」アッセイなどの実施例1~3の手法の代わりに又はそれに加えて)、本発明の薬剤/治療的組み合わせを含む組成物の性能を、本発明のADC又はプロテアソーム阻害剤を欠いている(好適にはプロテアソーム阻害剤を欠いている)以外は同一である組成物の性能と比較することにより測定することができる。
【0113】
実施例(例えば、実施例3)を参照すると、CIが約0.95未満、0.9未満、0.85未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.65未満、0.6未満、0.55未満、0.5未満、0.45未満、0.4未満、0.35未満、0.3未満、0.25未満、0.2未満、0.15未満、0.1未満、又は0.05未満である場合、B細胞悪性腫瘍の相乗的抑制が存在すると考えることができる。一実施形態では、上記CIは、約0.7未満であり得る。一実施形態では、上記CIは、約0.6未満であり得る。
【0114】
一実施形態では、「細胞生存率アッセイ」は、悪性B細胞を含む試験試料を治療的組み合わせ(本発明のADC及びプロテアソーム阻害剤)を含む組成物の量の存在下でインキュベートすること;並びにインキュベーションに続いて(例えば、少なくとも0.5日、1.5日又は2日のインキュベーション後)、試験試料中の非生存細胞(例えば、アポトーシス細胞)の数を、(a)上記プロテアソーム阻害剤、又は(b)上記ADCを欠いている(好適には上記プロテアソーム阻害剤を欠いている)以外は同一である組成物の存在下でインキュベートされた対照試料中の非生存細胞の数と比較することを含む。
【0115】
一実施形態では、治療的組み合わせは、対象に投与される。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では哺乳動物対象を指すために互換的に使用される。一実施形態では、「対象」は、ヒト、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、及び/若しくはウサギなどのペット)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ、及び/若しくはヤギ)、並びに/又はウマである。一実施形態では、対象はヒトである。
【0116】
本発明の方法において、対象は、B細胞悪性腫瘍を有すると事前に診断されていない場合がある。或いは、対象は、B細胞悪性腫瘍を有すると事前に診断されている場合がある。対象はまた、疾患リスク因子を示す者、又はB細胞悪性腫瘍に対して無症候性である者であり得る。対象はまた、B細胞悪性腫瘍に罹患している者、又はそれを発症するリスクのある者であり得る。一実施形態では、対象は、B細胞悪性腫瘍の治療を以前に施されている。
【0117】
一実施形態では、本発明の方法及び使用は、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、若しくは膣、吸入、局所、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の投与ステップを含む。一実施形態では、投与は、静脈内、動脈内(例えば、注射若しくは点滴による)、皮下、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上である。
【0118】
抗体調製物
本発明の抗体は、当業者に公知の従来技法を使用して得ることができ、それらの有用性は、従来の結合試験(例示的な方法が実施例2に記載される)により確認することができる。例として、簡便な結合アッセイは、抗原を発現する細胞を抗体と共にインキュベートするものである。抗体がフルオロフォアでタグ付けされる場合、抗原への抗体の結合は、FACS分析により検出され得る。
【0119】
本発明のBCMA抗体及びその抗体断片を作製するための方法は、国際公開第2010/104949号パンフレット及び同第2019/025983号パンフレット(特に、同第2019/025983号パンフレット)に記載されており、これらはいずれも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明の抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、サル、又はウマを含む種々の動物において産生され得る。抗体は、個々の莢膜多糖、又は複数の莢膜多糖による免疫後に産生され得る。これらの動物から単離された血液は、ポリクローナル抗体(同じ抗原に結合する複数の抗体)を含有する。抗原はまた、卵黄中でポリクローナル抗体を産生させるためにニワトリに注射され得る。抗原の単一エピトープに特異的なモノクローナル抗体を得るために、抗体分泌リンパ球を動物から単離し、それらを癌細胞株と融合させることによって不死化させる。融合細胞はハイブリドーマと呼ばれ、培養物中で連続的に増殖し、抗体を分泌する。単一のハイブリドーマ細胞は、希釈クローニングによって単離され、全てが同じ抗体を産生する細胞クローンを生成する。これらの抗体はモノクローナル抗体と呼ばれる。モノクローナル抗体を生成するための方法は、当業者に公知の従来技法である(例えば、Making and Using Antibodies:A Practical Handbook.GC Howard.CRC Books.2006.ISBN 0849335280を参照されたい)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、プロテインA/G又は抗原アフィニティークロマトグラフィーを使用して精製されることが多い。
【0121】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体として調製することができ、これは、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)によって記載される方法)を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法を使用すると、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物が上記の通り免疫され、免疫抗原に特異的に結合し得る抗体のリンパ球による産生が誘発される。リンパ球はまた、インビトロで免疫され得る。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して好適な骨髄腫細胞株と融合することによりハイブリドーマ細胞を形成させ、次にそこから未融合のリンパ球及び骨髄腫細胞を選択除去することができる。免疫沈降、免疫ブロッティング、又はインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))により決定された、選択抗原を特異的に対象とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次に、標準的方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)を用いたインビトロ培養で、又は動物の腹水腫瘍としてのインビボでのいずれかで増殖させることができる。モノクローナル抗体はその後、公知の方法を使用して培地又は腹水から精製され得る。
【0122】
或いは、抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体として)はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載される通りの組換えDNA法を使用して作製することもできる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRなどにより成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から単離し、従来の手順を使用してそれらの配列を決定する。次に、重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを好適な発現ベクター中にクローニングし、これを、通常であれば免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトすると、モノクローナル抗体が宿主細胞により産生される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載されているように、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから単離することもできる。
【0123】
本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを組換えDNA技術を用いた多くの異なる方法で更に修飾して、代替的な抗体を作製することができる。いくつかの実施形態では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインが、(1)例えばヒト抗体のそれらの領域に置換されてキメラ抗体が作製され得るか、又は(2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換されて融合抗体が作製され得る。いくつかの実施形態では、定常領域がトランケートされるか、又は除去されて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作製される。可変領域の部位特異的突然変異誘発又は高密度突然変異誘発を用いてモノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0124】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の種々の技法を使用して、直接調製され得る。インビトロで免疫されたか、又は標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された、不死化ヒトBリンパ球を作製することができる。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boemer et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991)、米国特許第5,750,373号明細書を参照されたい。
【0125】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ファージライブラリから選択することができ、そのファージライブラリは例えば、Vaughan et al.,Nat.Biotech.14:309-314(1996)、Sheets et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:6157-6162(1998)、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)に記載されるように、ヒト抗体を発現する。抗体ファージライブラリの作製及び使用のための技法は、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;及び同第7,264,963号明細書;並びにRothe et al.,J.Molec.Biol.376:1182-1200(2008)(これらの各々は参照によりその全体が組み込まれる)にも記載されている。
【0126】
親和性成熟戦略及び鎖シャッフリング戦略が、当該技術において公知であり、高親和性ヒト抗体又はその抗原結合断片を作製するのに用いられ得る。Marks et al.,BioTechnology 10:779-783(1992)(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0127】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体)は、ヒト化抗体であり得る。非ヒト又はヒト抗体を操作する、ヒト化する、又はリサーフェシングする方法も使用することができ、これらは当該技術分野において周知である。ヒト化抗体、リサーフェシング抗体、又は同様に操作された抗体は、非ヒト、例えば、限定はされないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物である供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合「インポート」残基と呼ばれる残基によって置換されており、これらの残基は通常、公知のヒト配列の「インポート」可変ドメイン、定常ドメイン、又は他のドメインから取得される。このようなインポートされた配列を用いて、免疫原性を低減させるか、又は結合性、親和性、on速度、off速度、結合活性、特異性、半減期、若しくは当該技術分野において公知の他の任意の好適な特性を低減させ、増強させ、若しくは変更することができる。好適には、CDR残基は、抗原(例えば、BCMA)結合への影響に直接且つ最も実質的に関与し得る。したがって、非ヒトCDR配列又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持することができ、同時に可変領域及び定常領域の非ヒト配列を、ヒトアミノ酸又は他のアミノ酸で置換することができる。
【0128】
抗体はまた、任意選択で、抗原(例えば、BCMA)に対する高親和性及び他の有利な生物学的特性を保持しながら操作されたヒト化抗体、リサーフェシング抗体、操作抗体、又はヒト抗体であり得る。この目標を達成するために、親の配列、操作された配列、及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、ヒト化(若しくはヒト)抗体又は操作抗体及びリサーフェシング抗体が、任意選択で、親の配列並びに種々の概念上のヒト化された生成物及び操作された生成物を分析するプロセスによって調製され得る。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図示して表示するコンピュータプログラムが利用可能である。それらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基の見込まれる役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原(例えば、BCMA)に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、FW残基をコンセンサス配列及びインポート配列から選択して組み合わせることができ、これにより所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性の増加が実現される。
【0129】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のヒト化、リサーフェシング、又は操作は、任意の公知の方法、例えば、限定されるものではないが、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988);Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993);米国特許第5,639,641号明細書、同第5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;同第4,816,567号明細書、同第7,557,189号明細書;同第7,538,195号明細書;及び同第7,342,110号明細書;国際出願第PCT/US98/16280号明細書;同第PCT/US96/18978号明細書;同第PCT/US91/09630号明細書;同第PCT/US91/05939号明細書;同第PCT/US94/01234号明細書;同第PCT/GB89/01334号明細書;同第PCT/GB91/01134号明細書;同第PCT/GB92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット;同第90/14424号パンフレット;同第90/14430号パンフレット、並びに欧州特許第229246号明細書(これらの各々は、その中に引用されている参照文献も含めて、参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を使用して実施され得る。
【0130】
抗体又はその抗原結合断片はまた、免疫時に内在性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいても作製することができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;及び同第5,661,016号明細書に記載されている。
【0131】
一実施形態では、本発明の抗体の断片(例えば、抗体断片)が提供される。抗体断片の生成のための種々の技法が公知である。「抗体断片」、「抗原結合断片」、「抗体の機能的断片」、及び「抗原結合部分」という用語は、本明細書において互換的に使用され、抗体(例えば、「全」抗体又は「親」抗体)が結合する抗原(例えば、BCMA)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片又は部分を指す。したがって、「その抗原結合断片」への言及は、BCMAに結合する抗原結合断片(例えば、抗体のBCMA抗原結合断片)を意味する。
【0132】
従来、これらの断片は、例えばMorimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Meth.24:107-117(1993)及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)によって記載されているように、インタクト抗体のタンパク質分解消化を介して得られる。一実施形態では、抗BCMA抗体断片は組換えにより生成される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)又はその他の宿主細胞中で発現させてそこから分泌させることができ、これにより、これらの断片を大量に生成することができる。このような抗BCMA抗体断片はまた、上述の抗体ファージライブラリから単離することもできる。抗BCMA抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号明細書に記載されているような線状抗体であってもよい。抗体断片を生成するための他の技法は、当業者にとって明らかであろう。
【0133】
本明細書で提供される修飾抗体又はその抗原結合断片は、抗体又はポリペプチドとBCMAとの会合をもたらす任意のタイプの可変領域を含み得る。これに関して、可変領域は、所望の抗原に対する体液性応答を開始して免疫グロブリンを産生するように誘導することができる任意のタイプの哺乳動物のものを含み得るか、又はそれに由来し得る。したがって、抗BCMA抗体又はその抗原結合断片の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクなど)又はオオカミ(lupine)起源のものであり得る。一実施形態では、修飾抗体又はその抗原結合断片の可変領域及び定常領域の両方は、ヒトである。一実施形態では、適合抗体(通常、非ヒト供給源に由来する)の可変領域は、分子の結合特性が向上するように又は免疫原性が低減するように操作され得るか、又は特異的に調整され得る。これに関して、本発明において有用な可変領域は、インポートされたアミノ酸配列を含めることによってヒト化され得るか、又は他の形で改変され得る。
【0134】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、及び/又は部分的なフレームワーク領域の置換及び配列変更によって改変される。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラス又は更には同じサブクラスの抗体に由来し得るが、異なるクラスの抗体に、また特定の実施形態では異なる種の抗体に、CDRが由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すために、全てのCDRをドナー可変領域の完全なCDRに置換する必要はない。むしろ、抗原結合部位の活性の維持に必要な残基を移しさえすれば十分である。米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書、及び同第5,693,762号明細書に記載される説明を考慮すれば、免疫原性が低減した機能的抗体を得るためにルーチンの実験を実施することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0135】
可変領域の改変にもかかわらず、当業者は、本発明の修飾抗体又はその抗原結合断片が、天然の又は改変されていない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合に、腫瘍局在の増加又は血清半減期の低減などの所望の生化学的特性がもたらされるように定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部分が欠失されているか、又は別途改変されている抗体(例えば、完全長抗体又はその抗原結合断片)を含むであろうことを理解するであろう。一実施形態では、修飾抗体の定常領域はヒト定常領域を含み得る。本発明と適合する定常領域に対する修飾は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含む。即ち、本明細書に開示される修飾抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、若しくはCH3)のうちの1つ以上及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)に対する改変又は修飾を含み得る。一実施形態では、1つ以上のドメインが部分的に又は完全に欠失している修飾定常領域が企図される。一実施形態では、修飾抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれたドメイン欠失コンストラクト又は変異体(ΔCH2コンストラクト)を含み得る。一実施形態では、除かれた定常領域ドメインを、通常はその欠けた定常領域によって付与されるある程度の分子柔軟性をもたらす、短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)に置き換えることができる。
【0136】
全定常領域ドメインの欠失に加えて、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、定常領域における数個又は更には単一のアミノ酸の部分欠失又は置換によって修飾することができる。例えば、CH2ドメインの選択された領域にある単一のアミノ酸の突然変異は、Fc結合を実質的に低減させ、それにより腫瘍局在を増加させるのに十分であり得る。同様に、エフェクター機能(例えば、補体C1Q結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインを、完全に又は部分的に欠失させることができる。定常領域のそのような部分欠失は、対象となる定常領域ドメインに付随する他の望ましい機能はそのままにしておきながら、抗体又はその抗原結合断片の選択された特性(例えば、血清半減期)を改善することができる。更に、抗体及びその抗原結合断片の定常領域は、得られるコンストラクトのプロファイルを増強させる1つ以上のアミノ酸の突然変異又は置換によって修飾することができる。これに関して、修飾抗体又はその抗原結合断片の配置及び免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によりもたらされる活性を妨害することが可能である。一実施形態では、エフェクター機能の低下若しくは増加などの望ましい特性を増強するために、又はより多くの細胞毒素若しくは炭水化物の結合を提供するために、定常領域への1つ以上のアミノ酸の付加が存在し得る。一実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入又は複製することが望ましい場合もある。
【0137】
本発明は更に、本発明の抗体又は抗原結合断片(例えば、マウス、キメラ、ヒト化若しくはヒト抗体、又はその抗原結合断片)に実質的に相同である変異体及び等価物を包含する。これらは、例えば、保存的置換突然変異、即ち1つ以上のアミノ酸の、同様のアミノ酸による置換を含み得る。例えば、保存的置換は、アミノ酸を同じ一般クラス内の別のアミノ酸で置換すること、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、又はある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸によって置換することなどを指す。保存的アミノ酸置換によって意図されるものは、当該技術分野において周知である。
【0138】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、通常はそのタンパク質の一部ではない追加的な化学的部分を含むように更に修飾することができる。それらの誘導体化された部分は、タンパク質の溶解度、生物学的半減期、又は吸収を向上させることができる。これらの部分はまた、タンパク質の任意の望ましい副作用などを低減又は消失させることもできる。それらの部分についての概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd ed.Lloyd V.Allen,Jr.(2012)に見ることができる。
【0139】
配列相同性
様々な配列アラインメント方法のいずれも、同一性パーセントを決定するために使用することができ、これらとしては、限定されないが、包括的方法、局所的方法、及び例えば、セグメントアプローチ方法などのハイブリッド方法が挙げられる。同一性パーセントを決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内のルーチン的な手順である。包括的方法は、分子の始まりから終わりまで配列を整列させ、個々の残基対のスコアを合計し、ギャップペナルティを付与することにより、最良のアラインメントを決定する。非限定的な方法としては、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D.Thompson et al.,CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting,Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice,22(22)Nucleic Acids Research 4673-4680(1994)を参照されたい)、及び反復改良法(例えば、Osamu Gotoh,Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein.Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments,264(4)J.Mol.Biol.823-838(1996)を参照されたい)が挙げられる。局所的方法は、全ての入力配列によって共有される1つ以上の保存されたモチーフを同定することにより配列を整列させる。非限定的な方法としては、例えば、Match-box(例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans,Match-Box:A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences,8(5)CABIOS 501-509(1992)を参照されたい)、ギブスサンプリング(例えば、C.E.Lawrence et al.,Detecting Subtle Sequence Signals:A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment,262(5131)Science 208-214(1993)を参照されたい)、Align-M(例えば、Ivo Van WaIIe et al.,Align-M-A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences,20(9)Bioinformatics:1428-1435(2004)を参照されたい)が挙げられる。
【0140】
このように、配列同一性パーセントは従来の方法によって決定される。例えば、Altschul et al.,Bull.Math.Bio.48:603-16,1986及びHenikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-19,1992を参照されたい。簡潔に述べると、ギャップオープニングペナルティ:10、ギャップ伸長ペナルティ:1、及び以下に示すようなHenikoff and Henikoff(同上)の「blosum62」スコアリングマトリックスを使用して、アラインメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列を整列させる(アミノ酸は標準的な1文字コードによって示される)。
【0141】
2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列によって共有される同一位置の数の関数である。したがって、同一性パーセントは、同一ヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数で割り、100を掛けたものとして算出することができる。配列同一性パーセントの算出はまた、2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入する必要があるギャップ数、及び各ギャップの長さを考慮に入れる場合がある。2つ以上の配列間での配列比較及び同一性パーセントの決定は、当業者によく知られているBLASTなどの特定の数学的アルゴリズムを使用して実施することができる。
【0142】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は好ましくは重要ではない性質のもの、即ち、保存的アミノ酸置換(以下を参照されたい)及びポリペプチドのフォールディング又は活性に著しく影響しない他の置換;小さな欠失、典型的には、1~約30アミノ酸のもの;並びにアミノ末端又はカルボキシル末端のわずかな伸長、例えば、アミノ末端メチオニン残基、最大約20~25残基の小さなリンカーペプチド、又はアフィニティータグである。
【0143】
保存的アミノ酸置換
塩基性:アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性:グルタミン酸
アスパラギン酸
極性:グルタミン
アスパラギン
疎水性:ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族性:フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小型:グリシン
アラニン
セリン
スレオニン
メチオニン
【0144】
20個の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン及びα-メチルセリン)を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換することができる。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、ポリペプチドアミノ酸残基と置換することができる。本発明のポリペプチドはまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。
【0145】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換することができる。
【0146】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、当該技術分野で公知の手順、例えば、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発(Cunningham and Wells,Science 244:1081-5,1989)に従って同定され得る。生物学的相互作用の部位はまた、推定接触部位のアミノ酸の突然変異と併せた、核磁気共鳴、結晶学、電子回折、又は光親和性標識などの技法によって決定されるような構造の物理的分析によっても決定され得る。例えば、de Vos et al.,Science 255:306-12,1992、Smith et al.,J.Mol.Biol.224:899-904,1992、Wlodaver et al.,FEBS Lett.309:59-64,1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性はまた、本発明のポリペプチドの関連成分(例えば、トランスロケーション成分又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推測され得る。
【0147】
複数のアミノ酸置換を、Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-7,1988)又はBowie and Sauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)により開示されているものなどの公知の突然変異誘発方法及びスクリーニング方法を用いて行い、また試験することができる。簡潔に述べると、これらの著者らは、ポリペプチド中の2箇所以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで突然変異誘発されたポリペプチドの配列を決定して、各位置における許容可能な置換の範囲を決定する方法について開示している。使用可能な他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem.30:10832-7,1991、Ladner et al.,米国特許第5,223,409号明細書、Huse,国際公開第92/06204号パンフレット)及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145,1986、Ner et al.,DNA 7:127,1988)が挙げられる。
【0148】
別段に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同様の意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,20 ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0149】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験において使用することができる。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。別段に示されない限り、それぞれ、任意の核酸配列は5’から3’方向に左から右に書かれ、アミノ酸配列はアミノからカルボキシ方向に左から右に書かれる。
【0150】
本明細書で提供される見出しは、本開示の種々の態様又は実施形態を限定するものではない。
【0151】
本明細書では、アミノ酸は、アミノ酸の名前、3文字の略称、又は1文字の略称を用いて言及される。「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語は、「酵素」という用語と同義である。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基に関する従来の1文字及び3文字のコードが使用され得る。IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に準拠して定義されるアミノ酸の3文字コード。遺伝暗号の縮重に起因して、ポリペプチドは複数のヌクレオチド配列によりコードされる場合があることも理解されたい。
【0152】
用語の他の定義は、本明細書全体を通じて現れる場合がある。例示的な実施形態をより詳細に説明する前に、本開示は、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることから、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないこともまた理解されたい。
【0153】
値の範囲が与えられる場合、文脈上別途明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間の、下限値の10分の1の単位までの各介在値もまた、具体的に開示されると理解される。記載された範囲内の記載された任意の値又は介在値と、その記載された範囲内の記載された他の任意の値又は介在値との間の、より小さな範囲の各々は、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲に含まれても又は除外されてもよく、また、記載された範囲における任意の具体的に除外された限界値に従って、より小さな範囲にいずれかの限界値が含まれるか、どちらも含まれないか、又は両方とも含まれる各々の範囲もまた、本開示内に包含される。記載された範囲が一方又は両方の限界値を含む場合、含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0154】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上別途明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「細胞毒素(a cytotoxin)」への言及は、複数のそのような細胞毒素を含み、「細胞毒素(the cytotoxin)」への言及は、1つ以上の細胞毒素及び当業者に公知のその等価物などへの言及を含む。
【0155】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためのみに提供される。本明細書のいかなる記述も、そのような刊行物が本明細書に添付される特許請求の範囲に対して先行技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0156】
本発明を、これより以下の実施例を参照して単なる例示として説明する。
【0157】
材料及び方法
抗BCMA抗体の作製
国際公開第2010/104949号パンフレット及び同第2019/025983号パンフレット(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)に記載の通りに抗体を作製した。Kinneer et al(2018),Leukemia 33,766-771及び国際公開第2019/025983号パンフレットに記載の通りに好適な抗体を作製した。
【0158】
抗BCMA ADCの作製
抗BCMA ADC(PBDにコンジュゲートした抗BCMA抗体を本明細書では「M2」と称する)を、前述の通りにプロテアーゼ切断可能リンカーを用いて、Kinneer et al(2018),Leukemia 33,766-771(「Kinneer et al(2018)」)に記載のBCMA-Ab1抗体へのPBD二量体テシリン(SG3249)の部位特異的コンジュゲーションを介して調製した(例えば、参照により本明細書に組み込まれるKinneer et al(2018)を参照されたい)。BCMA抗体の例はBCMA-Ab2であり、Kinneer et al(2018)にも記載されている。上記抗体は、国際公開第2019/025983号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)にそれぞれ15B2GL、及びJ6M0-mcとして更に記載されている。モノメチルアウリスタチンF(MMAF)ペイロードを抗体BCMA-Ab1に結合させることにより、ADC「M3」を同様に作製した。両方のペイロードを、前述の通り、BCMA抗体のCH2ドメイン中の239位の後に挿入した操作したシステイン(C239i)に部位特異的にコンジュゲートさせた。簡潔に述べると、BCMA-Ab1を40モル過剰のTCEPで37℃で3時間還元させ、続いて3回連続して透析しTCEPを除去した。次いで、抗体を20モル過剰のDHAAで室温で4時間酸化させ、8モル当量のペイロードを用いてコンジュゲートさせた。コンジュゲーション後、遊離ペイロード及びタンパク質凝集体を、セラミックハイドロキシアパタイト精製によって除去した。
【0159】
ヒトMMのマウス異種移植モデル
全ての動物実験は、Dana-Farber Cancer Instituteの動物実験委員会の関連規制基準によって承認され、それに準拠した。無血清RPMI 1640培地100μl中の5.0×106のMM.1S細胞を、CB-17 SCIDマウスに皮下接種した。MM細胞の注射の約3週間後に腫瘍が測定可能であったとき、マウス(8匹/群)をランダム化し、溶媒のみ、M2、btz、又はM2とbtzで処置した。腫瘍サイズを、ノギスを使用して二次元で3日毎に測定し、以下の式を使用して腫瘍体積を算出した:V=0.5a×b2(式中、「a」及び「b」はそれぞれ、腫瘍の長径及び短径である)。腫瘍が2cm3に達した時点で動物を屠殺した。
【0160】
免疫ブロッティング及び免疫染色を使用したマウスから採取した腫瘍の分析
3日間の処置後、各群からの腫瘍を採取し、免疫ブロッティング用の細胞溶解物を作製した。マウスから回収した腫瘍切片を、Ki67(BCR CRM325)による増殖に関する免疫組織化学染色に供した。免疫組織化学的画像を、Ki67についてZeiss Inverted Fluorescence Microscopeで撮影した。Plan-Apochromat 63X/1.40 Oil DIC M27対物レンズを使用した。
【0161】
細胞及び細胞培養
10%ウシ胎児血清(GIBCO、10437028)、2mM/L L-グルタミン、100U/mLペニシリン、及び100mg/mLストレプトマイシン(GIBCO、15140122)を含有するRPMI中でMM細胞株を培養した。MM細胞株の真正性及びマイコプラズマ汚染について、ヒトSTRプロファイリング細胞認証によってMM細胞株をルーチン的に確認した。ヘルシンキ宣言に従い、Dana-Farber Cancer Instituteの倫理審査委員会が承認したプロトコルの支援下で、インフォームドコンセントを行った後に患者MM及び正常ドナー試料を得た。抗CD138マイクロビーズ(Miltenyi Biotech,Auburn,CA)を使用して、MM患者のBM吸引液由来の骨髄単核細胞(BMMC)から初代CD138+形質細胞(純度>95%)を精製した。残存するCD138陰性BMMCを更に培養して、BMSCを誘導した。フィコール・ハイパック密度勾配を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)をPB試料から単離した。ボルテゾミブをSelleckchem(Selleck Chemicals)から購入した。
【0162】
細胞生存率アッセイ及びアポトーシスアッセイ
CCK8(Abcam,Cambridge,MA)、CellTiter-Glo(CTG)(Promega)及びBLI測定によって細胞生存率を分析した。製造業者の指示に従って、FITC Annexin-V(BD Biosciences)、PE-Annexin-V(BioLegend)、及び/又はLIVE/DEAD(商標)Fixable Aqua(Invitrogen、L34957)による染色後のフローサイトメトリー分析によってアポトーシスを評価した。MM細胞をCFSE(Invitrogen)で標識し、次いで、単独で又はBMSCと共に2日間培養し、続いてAnnexin V/Aqua染色及びフローサイトメトリー分析を行った。
【0163】
ルシフェラーゼ増殖アッセイ
BMSCを96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートして細胞を接着させた。MM1Sluc細胞を、RPMI培地中のBMSCのコンフルエントな層上で100:1の比率で4日間培養した。製造業者(Promega,Madison,WI)のプロトコルに従ってルシフェラーゼアッセイを使用して、増殖を測定した。
【0164】
統計分析
各実験を少なくとも3回実施し、データを平均±SDとして表す。Graphpadソフトウェア(GraphPadSoftware,LaJolla,CA,USA)を使用した、二群比較のためのスチューデントt検定、又は多重比較のための一元配置分散分析(ANOVA)を用いてデータを分析した。0.05未満のP値が統計学的に有意であった。薬物相互作用をCompuSynソフトウェアにより評価して、併用指数(CI)を求めた。1未満のCIは相乗作用を示す一方で、1を超えるCIは拮抗作用を示し、CI=1は相加作用を示す。
【0165】
実施例1
本実施例に反映される実験結果は、抗BCMA抗体-PBDコンジュゲート(M2)がそのMMAF ADCホモログ(M3)よりも薬物耐性MM細胞に対してより強力な細胞毒性を誘導することを実証する。
【0166】
PBDにコンジュゲートした抗BCMA抗体(M2)で構成されたADCの細胞毒性を、様々なレベルのBCMA発現及び現行の抗MM薬に対する応答を有するMM細胞株のパネルに対する、そのMMAF ADCホモログ(M3)の細胞毒性と比較した。両方のADCは同じ抗BCMA mAb(上記の通りのBCMA-Ab1/15B2GL)から構成されるが、異なるペイロードに(即ちM2はDNAに架橋するPBD(例えば、テシリン)に、M3は微小管に結合するMMAFに)コンジュゲートしている。CCK8ベースの生存率アッセイを3日間使用すると、デキサメタゾン及びIMiDを含む抗MM療法に対する感度に関係なく、M2のED
50値は、試験した全てのMM細胞株(n=10)においてM3の値よりも低い(
図1A、
図3A)。8つのMM細胞株(RPMI8226(RPMI)及びそれに由来するBCMAを過剰発現するRPMI-BCMAを含まない)において、ED
50値は、M2及びM3について、それぞれ、11.85~3499ng/ml及び21.28~271431ng/mlの範囲である。IMiDに耐性であるMM1S(R)細胞及びH929(R)細胞の2つがそれぞれ由来するMM1S細胞及びH929細胞を除き、全てのMM細胞は種々のp53突然変異を保有している。M2は、最も低いBCMAレベルを発現しIMiDに耐性であるRPMI8226細胞に対して細胞毒性であるが、M3はそうではない(
図1A~B)。DNA合成アッセイを使用すると、M2は全てのMM細胞の増殖の遮断に対し、M3より大きい(>1~2log)効力を示す(
図1B、
図3B)。例えば、M2対M3のED
50は、RPMI8226細胞において189.7対21427ng/mlである。更に、M2は、IL-6と共に培養したANBL6及びそれに由来するボルテゾミブ(btz)耐性ANBL6-BR細胞の両方の生存率を低下させたが、M3はそうではなかった(
図3C)。これらの対にしたIL-6依存性ANBL6細胞は、M3に対して非感受性であり、RPMI8226細胞と同程度の細胞膜BCMAタンパク質を発現する(データは示さず)。したがって、比較的低いBCMA発現を有するMM細胞もまた、M3と比べてM2に対して著しく感受性が高い。
【0167】
Annexin V及びlive/dead Aquaで染色後にフローサイトメトリー(FCM)分析を使用したところ、M2は、デキサメタゾン(dex)又はボルテゾミブ(btz)に感受性であるか又は耐性である対にしたMM細胞株において、M3と比較した場合、より早期の且つ増加したアポトーシスを用量依存的及び時間依存的な形で誘導することが示された(
図1C、
図3D)。これらのインビトロでの結果は、BCMAレベル及びp53の状態に関係なく、M2が、MM細胞において現行の抗MM薬(デキサメタゾン、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ)に対する耐性をM3よりも大幅に克服することを示す。
【0168】
実施例2
本実施例に反映される実験結果は、骨髄微小環境及び患者MM細胞中のMM細胞に対する細胞毒性の誘導において、M2がM3よりも有効であることを実証する。
【0169】
次に、MM細胞の増殖、生存、及び薬物耐性を促進する骨髄間質細胞(BMSC)及びIL-6と共培養したMM細胞に対するM2及びM3の効果を評価した。BLI測定を使用したところ、BMSCは、MM1Sluc細胞の増殖及び生存を著しく増加させることが示された(
図4A)。BLIベース及びCTGベースのアッセイにおいて、M2は、BMSC、PBMC、及びNK細胞などのBCMA陰性非MM細胞サブセットに対する影響を最小限に抑えながら(
図4B)、BMSCと共培養したMM1Sluc及び他の全ての試験したMM細胞株(n=6)の生存能をM3よりも強力に阻害する(
図2A、
図4A)。生存MM細胞を同定するためにFCM分析を使用すると、M2は、BMSCの存在下であっても、IMiD耐性MM1S(R)細胞及びH929(R)細胞の生存をM3よりも効果的に低下させる(
図2B)。定量的FCMベースの分析(
図2C)及び定量的CTGベースの分析(
図4C)では、M2は、IL-6の存在下又は非存在下で、H929 MM細胞の増殖及び生存を低減させた。
【0170】
3日間の処置後、RRMMを有する患者由来のBM CD138+の生細胞画分及び死細胞画分を、FCM分析によって定量した。重要なことに、M2は、M3と比較して用量依存的にアポトーシス性CD138+患者MM細胞を増加(2倍超)させた(
図4D)。CTGベースのアッセイでは、M2はまた、RRMMを有する更なる患者3名に由来するCD138-精製BM細胞において用量依存的毒性を示し(
図2E)、加えて、新たに診断されたMM(NDMM)を有する患者4名(
図2F、左、
図4D)及びRRMMを有する患者2名(
図2F、右)に由来する生存CD38highCD138+BM細胞を著しく枯渇させた。これらのデータは、M2が、疾患状態に関係なく患者MM細胞を枯渇させ、BM微小環境中のMM細胞に対してM3よりも著しく細胞毒性が高いことを示している。
【0171】
実施例3
本実施例に反映される実験結果は、ボルテゾミブと組み合わせたM2が、インビトロ及びインビボでMM細胞に対して相乗的な細胞毒性を誘導することを実証する。
【0172】
ボルテゾミブ(btz)は、btzが既存の骨髄腫療法であるため、M2の候補共療法として選択した。低用量で2日間M2とbtzとを併用したAnnexin V/PIベースのFMC分析は、いずれの薬剤の単独と比較した場合でも、JJN3細胞及びRPMI8226細胞におけるアポトーシスを更に増強させる(
図5A~B、p<0.01)。併用処置後に著しく増加した細胞死はまた、IL-6中で培養したbtz耐性ANBL6-BR細胞においても見られる(btzの添加は相加的な効果を超える効果をもたらすという観察結果を裏付ける)。次に、CTGベースの生存率アッセイからの結果を分析して、併用指数(CI)を算出した。6つを超える代表的なMM細胞において1未満のCIが得られ、これは、M2+btzの相乗効果を示している(
図5C、
図6)。
【0173】
次に、MM1S異種移植マウスモデルにおいて、至適用量以下のM2とbtzのインビボ有効性を評価した。触知可能なMM1S腫瘍を有するマウスを、溶媒対照、M2の単独処置、又はbtz(0.4mg/kg)の6回の単独処置若しくはM2との併用処置のいずれかを施す4群にランダム化した。処置の24日後に、M2の単回用量又は合計6用量のbtzは、溶媒対照と比較して、マウスにおけるMM1S腫瘍増殖を有意に遅延させる(
図7A、p<0.005)。併用処置は、いずれの単剤単独と比べても腫瘍体積を有意に減少させた(p<0.04)。全ての動物の体重が影響を受けなかったことから、M2+btzによる処置は忍容性が良好である(
図7B)。177日間の追跡により、いずれかの薬剤単独で処置されたコホートに対する、併用処置群における全生存期間中央値の有意な延長が示される(cnt、22日間;M2、40.5日間;btz、35日間;M2+btz、57日間)(p<0.045)(
図7C)。併用処置群では、177日目に15%のマウスが何らの腫瘍増殖もなく依然として生存している。
【0174】
Ki67(増殖の細胞マーカー)に関する免疫組織化学(IHC)により、単剤処置後と比べて併用処置後に増殖がより強力に阻害されることが更に立証される(
図7D)(M2+btz処置における染色された細胞(暗色)の数の減少に注目されたい)。
【0175】
M2とbtzとの併用処置は、MM1S異種移植片のインビボ増殖を著しく減少させ(
図8)、骨髄腫の処置におけるM2及びbtzのインビボ相乗作用が実証された。
【0176】
結論として、細胞レベルでインビトロで認められたM2のbtzとの相乗的活性は、MMの形質細胞腫モデルにおける優れたインビボ有効性に転換される。
【0177】
実施例1~3の考察
薬物耐性による疾患の再発は、依然としてMMにおける更なる長期生存に対する主要な障害である。したがって、薬物耐性を克服し、RRMMにおけるアンメットメディカルニーズに対処するために、新規療法が必要とされている。このことに関して、本発明者らはまず、ADC(M2;PBDにコンジュゲートした抗BCMA抗体)が、試験した全てのMM細胞株及び患者MM細胞に対して、そのMMAF ADCホモログよりも優れた細胞毒性を有することを示す。チューブリンへの結合を介して増殖性腫瘍細胞を主に標的とするMMAFとは異なり、PBD二量体は、急速に分裂している細胞とより静止状態にある細胞の両方において細胞死を引き起こす。M2は、BMSC及びIL-6の存在下であっても、BCMA発現レベルが低く現行の療法に対して耐性である細胞を含むそのMMAF ADCホモログよりも、MM細胞の増殖に対してより強力な効果を誘発する。これらのデータは、高悪性度MMの処置において、M2がそのMMAF ADCホモログよりも有効であり得ることを示唆する。
【0178】
重要なことに、インビトロでのM2とbtzとの併用処置は、試験した全てのMM細胞において、CI<1で証明される相乗的な死を誘導する。特に、M2はbtz耐性ANBL6-BR細胞においてさえbtzと相乗作用し、このことは、他の不明確な分子もまた細胞毒性の増強に関与していることを示している。
【0179】
MM1S腫瘍担持マウスにおいて、M2は単剤療法としてbtzよりも極めて有効である。重要なことに、インビボ腫瘍増殖の阻害は、M2をbtzと併用した場合に更に増強される。両剤を投与されたマウスにおいて、著しい腫瘍壊死がいずれの薬物の単独よりも早期に認められ、177日目に、併用処置群の15%のマウスは依然として腫瘍なしで生存する。重要なことに、体重減少は全ての群で認められず、このことは、インビボでのM2の好ましい安全性プロファイルを示し、M2とbtzとの併用処置をインビボで安全に施すことが可能であることを示唆する。
【0180】
要約すると、現行のMM療法に耐性であり、BM微小環境により保護されているMM細胞においてさえ、M2は、強力な増殖阻害及び死を特異的に誘発する。インビボでは、M2はbtzよりも有効であり、M2をbtzと併用することにより有効性が更に増強され、宿主生存が延長される。
【0181】
実施例4
本実施例に反映される実験結果は、M2が、薬物感受性MM細胞及び薬物耐性MM細胞において、DNA損傷応答及び修復シグナル伝達カスケードを著しく活性化させ、続いてアポトーシスを活性化させることを実証する。
【0182】
免疫ブロット分析を用いて、MM細胞株中で時間依存的及び用量依存的にM2により誘発されるDNA損傷応答(DDR)シグナル伝達カスケードの誘導を明らかにした。M2は、DNA二本鎖切断(DSB)応答の初期事象である、ATM、細胞周期チェックポイントキナーゼ1(CHK1)、及びCHK2(CHK1/2)、並びにヒストン2AX(H2AX)のリン酸化を誘導するが、M3はそうではない(
図9A及び
図10A)。ATM及びCHK1/2のM2の刺激によるリン酸化は4時間で検出され、処置後1日を超えて持続する。MM1S細胞よりも著しく高いBCMAレベルを発現するH929細胞において、M2によって誘発されるATM及びCHK1/2のより早期且つより顕著な活性化が見られた(
図10A、C)。ATM及びCHK1/2のM2誘導性リン酸化の強度はまた、親RPMI8226 MM細胞に由来するBCMAレベルと相関した(
図10D)。試験したMM細胞において、ATM及びCHK1/2のM2誘導性リン酸化は、ATRのリン酸化よりもはるかに大規模に生じる。2日間のM2による処置後、リン酸化H2AX(γH2AX)の増加を伴って(
図10B)、PARP(cPARP)及びカスパーゼ3(cCas3)の切断がBCMA依存的に誘導され(
図10B、E~F)、このことは、M2がMM細胞においてDNA損傷を誘導し、続いてアポトーシスを誘導することを示している。重要なことに、M2は、p53突然変異を有する6つの細胞株を含む全てのMM細胞において、ATM及びCHK1/2のリン酸化を用量依存的に誘導する(
図9b~c)。M3は、M2と同じ処置条件下において、ATM/ATRもCHK1/2も誘導しない(
図10A)。M2はM3よりもcPARP及びcCas3の誘導に有効であり(
図10F)、これは、MM細胞のアポトーシスを誘発する効力がM3よりも高いことと一致する。重大なことに、M2は、ANBL6細胞及び対にしたbtz耐性ANBL6-BR細胞におけるATM/ATR及び下流のCHK1/2シグナル伝達経路、γH2AX及びPARPの切断を誘発した(
図9c)。M2によるATM及びCHK1/2の顕著な活性化は、親H929 MM細胞と同程度でIMiD耐性H929(R)細胞においても見られる(
図9d)。したがって、btz及びlen耐性MM細胞では、M2は依然として、ATR/ATM-CHK1/2シグナル伝達カスケードの活性化を介したBCMA依存的DDRシグナル伝達経路を誘導し、続いてアポトーシスを誘導する。
【0183】
DNA修復機構TagMan(登録商標)アレイの解析により、M2は、H929 MM細胞のDNA損傷修復関連遺伝子の発現を変化させる(72個中51個)ことが示される(
図11a)。種々の薬物感受性MM細胞及び薬物耐性MM細胞(n>6)において、M2は、RAD51(DSBの発生前にDNA ICLに結合する)を用量依存的に誘導するが(
図11b~c)、M3は誘導しない(
図10G)。このように、MM細胞において、M2は、ATM/ATR-CHK1/2を介したDDRシグナル伝達カスケードを特異的に活性化し、γH2AX及びRAD51の増加を伴って下流のDDR関連分子を誘導し、続いてアポトーシスを誘導する。
【0184】
上記明細書で言及された全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法及びシステムの種々の改変及び変形が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者には明らかである、本発明を実施するために記載された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0185】
【配列表】
【国際調査報告】