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特表2022-534970隙間を有するひだ付きポリマーシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】隙間を有するひだ付きポリマーシート
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/08 20060101AFI20220728BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220728BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20220728BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220728BHJP
【FI】
B01D39/08 Z
C08L101/00 ZBP
B32B3/24 Z
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570789
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020034946
(87)【国際公開番号】W WO2020243321
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/853,354
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518057
【氏名又は名称】エスヴェーエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】キドウェル ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4D019
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB02
4D019BD01
4D019CA02
4D019CB06
4F100AH02A
4F100AK01A
4F100AK21A
4F100AK41A
4F100BA02
4F100CA04A
4F100DC11A
4F100DC16A
4F100DC16B
4F100DG11A
4F100DG11B
4F100DG12A
4F100DG12B
4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100GB56
4F100JC00A
4F100YY00A
4J002AA001
4J002AA002
4J002CF032
4J002CF191
4J002FD022
4J002GD05
4J200AA06
4J200BA14
4J200BA19
4J200CA01
4J200DA00
4J200EA11
(57)【要約】
本開示は、必要な材料の所望の量あたりの必要な材料の量および総質量を削減するために、1つまたは複数の隙間を有するポリマー可塑化フィルムまたはシートを提供する。本ポリマー可塑化フィルムまたはシートは、折り畳むこと、および所望量の時間、折り目を維持することも可能となり得る。ポリマー可塑化フィルムまたはシートは、生分解性であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー、および可塑剤として作用することが可能な物質を含み、ポリマーと可塑剤物質との比が約95:5~約55:45の範囲にあるシート、を備えるガスフィルターであって、
前記シートは、該シートを通してガスが流れるための1つまたは複数の隙間を有し、該シート内にひだを形成するための少なくとも1つの折り目をさらに有し、
前記シートは、引張弾性率を決定するためのASTM E111-97法に準拠して測定される約1.75~1.35GPaの範囲の引張弾性率を有する、ガスフィルター。
【請求項2】
前記シートが、メッシュ、網、生地、ニットまたは織布を含む、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項3】
前記1つまたは複数の隙間が、細孔または穿孔を含む、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項4】
前記1つまたは複数の隙間が、ダイヤモンド形状である、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項5】
その表面全体に延在する複数のひだをさらに含む、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項6】
前記ひだが、シートの表面全体に一様な間隔で設けられている、請求項5に記載のガスフィルター。
【請求項7】
前記ひだが、シートの表面全体に非一様な間隔で設けられている、請求項5に記載のガスフィルター。
【請求項8】
前記少なくとも1種のポリマーが、バイオポリマーである、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリマーが、生分解性ポリマーである、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項10】
前記少なくとも1種のポリマーが、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ならびにポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択される、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項11】
前記可塑剤物質がバイオポリマーである、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項12】
前記可塑剤物質が、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ならびにトリアセチンからなる群から選択される、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項13】
ポリマーと可塑剤物質との比が、約90:10~60:40の範囲にある、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項14】
約25μm~約1,016μmの範囲の厚さをさらに有する、請求項1に記載のガスフィルター。
【請求項15】
請求項1に記載のガスフィルターを製造する方法であって、
生分解性である、少なくとも1種のポリマーを準備することと、
生分解性である、可塑剤として作用することが可能な物質を準備することと、
前記少なくとも1種のポリマーおよび可塑剤からポリマー可塑化材料のシートを形成することであって、ポリマーと可塑剤との比が約95:5~約55:45の範囲にある、形成することと、
前記シートに1つまたは複数の隙間を設けることと、
熱を加えることなく、前記シートに折り目を付けることによって前記シートに少なくとも1つのひだを形成することと
を含む、方法。
【請求項16】
前記ポリマー可塑化材料のシートが、メッシュ、網、生地、ニットまたは織布として形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー可塑化材料のシートが、メッシュとして形成され、前記隙間が、ダイヤモンド形状の開口部を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリマーが、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ならびにポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記可塑剤物質が、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ならびにトリアセチンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーと可塑剤物質との比が、約90:10~60:40の範囲にある、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
複数のひだが、前記シートの表面全体に一様な間隔で離れて形成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
複数のひだが、前記シートの表面全体に非一様な間隔で離れて形成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のポリマー、および可塑剤として作用することが可能な物質を含むポリマーシートであって、該シートを通してガスまたは液体が流れるための1つまたは複数の隙間を有し、かつ、熱を加えることなく、該シートに折り目を付けることによって該シートに少なくとも1つのひだを形成することがさらに可能である、ポリマーシート。
【請求項24】
引張弾性率を決定するためのASTM E111-97法に準拠して測定される約1.75~1.35GPaの範囲の引張弾性率をさらに有する、請求項23に記載のシート。
【請求項25】
ポリマーと可塑剤物質との比が、約95:5~約55:45の範囲にある、請求項23に記載のシート。
【請求項26】
ポリマーと可塑剤物質との比が、約90:10~60:40の範囲にある、請求項23に記載のシート。
【請求項27】
メッシュ、網、生地、ニットまたは織布をさらに含む、請求項23に記載のシート。
【請求項28】
前記1つまたは複数の隙間が、細孔または穿孔を含む、請求項23に記載のシート。
【請求項29】
前記1つまたは複数の隙間が、ダイヤモンド形状である、請求項23に記載のシート。
【請求項30】
その表面全体に延在する複数のひだをさらに含む、請求項23に記載のシート。
【請求項31】
前記ひだが、該シートの表面全体に一様な間隔で設けられている、請求項30に記載のシート。
【請求項32】
前記ひだが、該シートの表面全体に非一様な間隔で設けられている、請求項30に記載のシート。
【請求項33】
前記少なくとも1種のポリマーが、バイオポリマーである、請求項23に記載のシート。
【請求項34】
前記少なくとも1種のポリマーが、生分解性ポリマーである、請求項23に記載のシート。
【請求項35】
前記少なくとも1種のポリマーが、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ならびにポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択される、請求項23に記載のシート。
【請求項36】
前記可塑剤物質がバイオポリマーである、請求項23に記載のシート。
【請求項37】
前記可塑剤物質が、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、モノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ならびにトリアセチンからなる群から選択される、請求項23に記載のシート。
【請求項38】
約25μm~約1,016μmの範囲の厚さをさらに有する、請求項23に記載のシート。
【請求項39】
厚さが、約25μm~508μmの範囲にある、請求項38に記載のシート。
【請求項40】
厚さが、約38μm~127μmの範囲にある、請求項38に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーをベースとするフィルムまたはシートに関する。より詳細には、本開示は、隙間(aperture)を含む折り畳み可能な(fоldable)またはひだ付け可能な(pleatable)ポリマーまたはプラスチックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーまたはプラスチックフィルムまたはシートの存在は、日々の現代生活のほぼすべての局面で見出すことができる。庭での雑草に対するバリアまたは根覆いとしての使用から、建築物の屋根および断熱材、暖房、換気もしくは空調(HVAC)または半導体組み立て用の空気あるいは液体フィルターに至るまで、これらのポリマーシートは、単純で低度な技術と複雑で高度な技術の両方において応用されている。費用が比較的低くかつ供給が豊富なため、使用されるポリマー材料の量は年々、増加し続けている。その結果、使用済または廃棄されたプラスチックの量も、我々の自然生態系への有害な廃棄物として増え続けている。
増加する過度なプラスチックの廃棄物によって環境に引き起こされる被害を最小限にするため、多数の製造業者は現在では、同じ有益性をもたらすことができるが、通常の環境条件下で、ある特定の期間にわたり自然に分解することが可能な、生分解性ポリマーまたはプラスチックに目を向けている。従来の非生分解性プラスチックまたはポリマーを生分解性プラスチックまたはポリマーに置き換えることにより提起される懸念のいくつかは、所期の使用に十分な硬度または引張強度があるかどうか、ならびに製造の容易さおよび費用である。
これらの懸念に対処するため、生分解性ポリマーまたはプラスチック材料の改善が絶えず望まれている。さらに、総合的により少量の材料しかやはり必要とせず、それにより効率が向上し、かつ廃棄物を低減すると同時に、工業的ニーズに応えることが可能なポリマーまたはプラスチックフィルムまたはシートを提供することができることが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、必要とされる材料の所望の量あたりの必要な材料の量および総質量を削減するために、1つまたは複数の隙間を有するポリマー可塑化フィルムまたはシートを提供することによって、前述の懸念に対処する。本ポリマー可塑化フィルムまたはシートは、折り畳むこと、および所望量の時間、折り目を維持することも可能となり得る。ポリマー可塑化フィルムまたはシートは、生分解性であってもよい。
例示的な実施形態によれば、基材としてポリマーシートを有するガスフィルターが提供されてもよい。本ポリマーシートは、少なくとも1種のポリマー、および可塑剤として作用することができる物質を含むことができる。本シートは、1つまたは複数の隙間を有してもよく、シート内にひだを形成するための少なくとも1つの折り目をさらに有してもよい。さらに、この材料は、引張弾性率を決定するためのASTM E111-97法に準拠して測定される約1.75~1.35GPaの範囲の引張弾性率を有することができる。
【0004】
一部の実施形態では、本シートは、メッシュ、網、生地、ニットまたは織布の構成を有する。1つまたは複数の隙間は、細孔または穿孔として設けられてもよい。これらの細孔または穿孔は、さらにダイヤモンド形状(diamond shaped)をしていてもよい。
さらに、本シートは、その表面全体に延在する複数のひだを含むことができる。このひだは、シートの表面全体に一様な間隔で設けられていてもよく、またはひだは、シートの表面全体に非一様な間隔で設けられていてもよい。
少なくとも1種のポリマーは、バイオポリマーおよび/または生分解性ポリマーであってもよい。一部の実施形態では、少なくとも1種のポリマーは、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、そのモノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)ならびにポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択されてもよい。
【0005】
可塑剤物質はまた、バイオポリマーであってもよい。一部の実施形態では、可塑剤物質は、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、そのモノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)ならびにトリアセチンからなる群から選択されてもよい。
一部の実施形態では、ポリマーと可塑剤物質との比は、約95:5~55:45の範囲にある。他の実施形態では、ポリマーと可塑剤物質との比は、約90:10~60:40の範囲にある。シートは、約1ミル(25.4μm)~約40ミル(1,016μm)の範囲の厚さを有することができ、一部の実施形態では、約1ミル~約20ミル(または25μm~508μm)の範囲にあってもよい。一部の実施形態では、該材料の理想的厚さは、約1.5ミル~約5ミル(または38.1μm~127μm)の範囲であり得る。
【0006】
ガスフィルターのポリマーシートを製造する方法も提供される。本方法は、生分解性である、少なくとも1種のポリマーを準備するステップと、生分解性である、可塑剤として作用することが可能な物質を準備するステップと、少なくとも1種のポリマーおよび可塑剤からポリマー可塑化材料のシートを形成するステップであって、シートが1つまたは複数の隙間を含む、ステップと、熱を加えることなく、シートに折り目を付けることによってシートに少なくとも1つのひだを形成するステップとを含むことができる。
一部の実施形態では、ポリマー可塑化材料のシートは、メッシュ、網、生地、ニットまたは織布として形成されてもよい。例えば、ポリマー可塑化材料のシートは、メッシュとして形成されてもよく、隙間は、ダイヤモンド形状の開口部(opening)を含んでもよい。
一部の実施形態では、複数のひだは、シートの表面全体に一様な間隔で離れて形成されてもよい。他の実施形態では、複数のひだは、シートの表面全体に非一様な間隔で離れて形成されてもよい。
【0007】
別の例示的な実施形態によれば、ポリマーシートが提供される。ポリマーシートは、少なくとも1種のポリマー、および可塑剤として作用することが可能な物質を含み、このシートは、そこを通るガスまたは液体が流れるための1つまたは複数の隙間を有し、かつ、熱を加えることなく、シートに折り目を付けることによってシートに少なくとも1つのひだを形成することがさらに可能である。該材料は、引張弾性率を決定するためのASTM E111-97法に準拠して測定される約1.75~1.35GPaの範囲の引張弾性率を有することができる。シートのポリマーと可塑剤物質との比は、約95:5~約55:45の範囲であってもよく、一部の実施形態では、約90:10~60:40の範囲であってもよい。
【0008】
上述の一般的な記載と以下の詳細な説明はどちらも、例示的で説明的なものに過ぎず、本開示を制限するものではないことを理解されたい。本開示の追加的な特徴は、以下に続く説明に一部、記載されており、本開示の実施によって教示され得る。
本明細書の一部に組み込まれてこれを構成する添付の図面は、本開示のいくつかの実施形態を例示し、説明と合わせて本開示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】様々なポリマー可塑化材料(ポリマーと可塑剤の比が様々)および引張弾性率の値の棒グラフを表す図である。
図2図2Aおよび2Bは、図1中のポリマー可塑化材料の様々な試料の折り畳み開き度またはクリープ度(degree оf unfоld оr creep)の、棒グラフ形式および表形式でのグラフ表示である。
図3図3A-3Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(MD)での、1日目および14日目の、90%PLAおよび10%環境対応型可塑剤(Ecо plasticizer)を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験(fоld test)からの写真の結果を表す図である。
図4図4A-4Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、70%PLAおよび30%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を表す図である。
図5図5A-5Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、60%PLAおよび40%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を表す図である。
図6図6A-6Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、50%PLAおよび50%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を表す図である。
図7図7A-7Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、30%PLAおよび70%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を表す図である。
図8】異なるサイズの隙間を有する、本開示の例示的なポリマー可塑化シートの写真画像を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付の図面は、例示的な実施形態を例示しており、限定として捉えられるべきではなく、特許請求の範囲が、均等物を含めて、本開示の範囲を規定する。様々な機械的、組成上の、構造的なおよび操作上の変更が、本明細書、および均等物を含む特許請求の範囲から逸脱することなく行われてもよい。一部の例では、周知の構造および技法は、本開示を曖昧にしないよう、詳細に示されていないか、または記載されていない。2つ以上の図中の同様の数字は、同じまたは類似の要素を表す。さらに、一実施形態を参照して詳細に説明される要素およびそれらの関連する態様は、実用的である場合は必ず、それらが具体的に示されていないまたは説明されていない他の実施形態に含まれ得る。例えば、ある要素が、一実施形態を参照して詳細に説明され、第2の実施形態を参照して説明されていない場合、それでもやはり、この要素は、第2の実施形態に含まれると主張することができる。さらに、本明細書における図示は、例示目的に過ぎず、システムまたは図示されている構成要素の実際の形状、サイズまたは寸法を必ずしも反映するものではない。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」、ならびに任意の語のいかなる単数の使用も、1つの指示対象に明示的かつ明確に限定しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用する場合、用語「含む(include)」およびその文法上の変化形は、非限定的であることが意図されており、こうして、リスト中の項目の列挙は、列挙した項目に置き換えることができる、または追加することができる他の同様の項目を除外するものではない。
本開示は、必要な材料の所望の量あたりの必要な材料の量および総質量を削減するために、1つまたは複数の隙間を有するポリマー可塑化フィルムまたはシートを提供する。さらに、本ポリマー可塑化フィルムまたはシートは、折り畳むこと、および所望量の時間、折り目を維持することも可能となり得る。本開示のフィルムまたはシートを形成するポリマー可塑化材料は、少なくとも1種のポリマー、および少なくとも1種のポリマーと共に可塑剤として作用することが可能な物質を含むことができる。本ポリマー可塑化フィルムは、生分解性であってもよい。
【0012】
一実施形態では、ポリマーの少なくとも1種は、バイオポリマーまたはバイオをベースとするポリマーであってもよい。バイオポリマーまたはバイオをベースとするポリマーとは、標準条件下で、ある特定の時間枠内にポリマーが分解することを意味する。バイオポリマーまたはバイオをベースとするポリマーに好適な物質は、例えば、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、そのモノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリカプロラクトン(PCL)などを含むことができる。
可塑剤として作用することが可能な物質はまた、バイオポリマーまたはバイオをベースとするポリマーであってもよく、バイオ可塑剤であってもよい。可塑剤に好適な物質は、例えば、バイオマスに由来するポリマー、微生物生産によって得られるポリマー、農産資源から得られるモノマーを使用して化学的に合成されるポリマー、そのモノマーおよびポリマーがどちらも化石資源から化学合成によって得られるものであるバイオポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(Bio-PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、トリアセチンなどを含むことができる。
【0013】
既に議論した通り、所望の量の材料に必要な分量および質量を削減するため、多孔質であり得るか、または穿孔されていてもよいポリマー可塑化フィルムまたはシートを提供することが望ましい。例えば、一実施形態では、ポリマー可塑化材料のフィルムまたはシートは、網、メッシュ、織布、ニット、生地、あるいは細孔もしくは穿孔のような1つまたは複数の隙間または開口部を有する他の構築物の形態で提供されてもよい。これらの細孔または穿孔は、例えば、ダイヤモンド、正方形、菱形、丸形、長円形、または他の類似した形状などの、くっきりとした幾何学形状を有することができる。当然ながら、細孔または穿孔はまた、同様に不規則な幾何形状を有してもよいことが理解される。一部の実施形態では、細孔または穿孔は、ポリマー可塑化材料のフィルムまたはシートから型抜きされてもよく、または裁断されてもよい。例えば、細長い、X、VまたはC形状のスリットがフィルムまたはシートに切り込まれ、こうして、フィルムまたはシートが伸ばされるか、または広げられる、またはそれ自体に巻かれると、このスリットは拡大して、開口部、細孔または穿孔を形成することができる。
【0014】
さらに、先に言及した通り、1つまたは複数の隙間を有する、このようなポリマー可塑化フィルムまたはシートに畳み目を設けることができることがやはり望ましい。畳み目とは、フィルムまたはシートが、ひだ付き(pleated)、波形付き、畝付き、溝ひだ付き、チャネル付き、くぼみ付き、溝付き、しわ付き、ひだ付き(puckered)、折り目付きであってもよく、折り重なっていてもよく、または他には、畳み目の列を有するような方法で波目が付けられてもよい。畳み目のこのような列は、一連の波として形成されてもよい。畳み目またはひだは、ポリマー可塑化材料のフィルムまたはシート全体に一様な間隔で設けられていてもよく、あるいはポリマー可塑化材料のフィルムまたはシート全体に非一様な間隔で設けられていてもよい。
適切なことに、追加の熱の要件なしに、周囲温度条件下で、フィルムまたはシートに畳み目を付けるまたはひだを付けることができることが望ましい。このタイプの非加熱式ひだ付け(cold pleating)は、フィルムまたはシートのひだ付けまたは折り畳みプロセスが、畳み目またはひだの望ましい量およびレベルを実現するために、ある特定の時間量、加熱下でフィルムまたはシートを保持する必要なくスループット速度で実施することができるので、製造の観点から特に有益である。さらに、熱の適用による分解の懸念がないので、該材料の完全性を確実にすることができる。
【実施例
【0015】
本開示の所望の結果を達成することができる好適な生分解性ポリマー可塑化材料を決定するために、ポリマーと可塑剤との比が異なる様々な材料を、ある特定の期間、強度(GPaでの引張弾性率)ならびに畳み目またはひだを保持するその能力について試験した。これらの結果が以下に提示されている。
図1は、様々なポリマー可塑化材料(ポリマーと可塑剤の比が様々)および引張弾性率の値の棒グラフを表している。ポリマー可塑化材料は、様々な比のポリマー(PLA)対可塑剤(この場合、ポリブチレンアジペートテレフタレートすなわちPBAT)を有しており、ひだを付けた。好適な材料は、約95:5~55:45または約90:10~約60:40の比を有することが分かった。引張弾性率試験は、ASTM E111-97法に基づいた。示される通り、引張弾性率(GPa)は、ポリマー対可塑剤の適切な比を有する好適な材料の場合、約1.75~約1.35の範囲にあり得る。
【0016】
折り畳み開き試験(unfоld testing)
図2A~2Bは、図1中のポリマー可塑化材料の様々な試料の折り畳み開き度またはクリープ度の棒グラフ形式および表形式でのグラフ表示である。これらの値は、0時間から1~14日目まで得た。さらに図3A~7Dは、畳み目または折り目がどの程度良好に残っているかを決定するため、折り畳んで経時的に試験した、様々なひだ付きのポリマー可塑化シートの写真である。この試験は、通常(すなわち、周囲温度または室温)の条件下で、1日目~14日目の間に各試料に発生した折り畳み開き度を、分度器によって測定した角度の差によって測定するものである。以下の表は、これらの結果を要約している。
【0017】
【表1】
【0018】
図3A~3Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(MD)での、1日目および14日目の、90%PLAおよび10%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を例示している。図4A~4Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、70%PLAおよび30%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を例示している。図5A~5Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、60%PLAおよび40%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を例示している。図6A~6Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、50%PLAおよび50%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を例示している。図7A~7Dは、表示されている、縦方向(MD)および横方向(TD)での、1日目および14日目の、30%PLAおよび70%環境対応型可塑剤を含むポリマー可塑化シートの折り畳み試験からの写真の結果を例示している。
【0019】
好適な比は、95:5および55:45または90:10および60:40の間のいずれかのようであることが決定された。これらのポリマー可塑化材料は、適切な引張強度(すなわち、引張強度を決定するためのASTM D882法に従って測定した場合、約1.75~1.35GPaの範囲にある)、およびひだまたは畳み目を保持する能力をもたらし、こうしてこのシートは、折り重ねられ、折り畳まれ、巻かれ、丸められ、またはその他の方法で圧縮されて、ある特定の用途に所望の体積にすることができる。
【0020】
【表2】
【0021】
上記の表2は、本開示のポリマー可塑化フィルムまたはシートの様々な試料の材料厚さを表す。該材料の厚さは、約1ミル(25.4μm)~約40ミル(1,016μm)と様々となり得、上の表に示されている通り、約1ミル~約20ミル(または25μm~508μm)の範囲にあってもよい。一部の実施形態では、該材料の理想的厚さは、約1.5ミル~約5ミル(または38.1μm~127μm)の範囲であり得る。
【0022】
ひだ付きの多孔質のもしくは穿孔されたポリマー可塑化フィルムまたはシートは、様々な異なる用途に使用することができる。本フィルムまたはシートは、他の材料または基材に積層されてもよく、構造的支持能の役割を果たすことができる。本フィルムまたはシートは、例えば、金属製網またはメッシュなどの金属支持体の代わりにされてもよい。
ポリマー可塑化材料のフィルムまたはシートは、示されている通り、細孔を含んでもよい。該材料の多孔度は、約40%~約95%の範囲にあってもよい。一部の実施形態では、フィルムまたはシートはメッシュを含んでもよく、細孔は、ダイヤモンド、正方形または菱形のような形状をしていてもよい。例えば、メッシュは、実質的に平行な第1の組のフィラメントであって、実質的に平行な第2の組のフィラメントと交差して、90度の角度、または40~115度の角度の範囲を有する複数の平行四辺形を形成してダイヤモンド形状の細孔を形成する、第1の組のフィラメントを含むネットであり得る。図8に示されている通り、ポリマー可塑化材料のフィルムまたはシートは、メッシュまたは網の糸または個々のフィラメント間の開放空間を画定する、ダイヤモンド形状の隙間または開口部を有することができる。メッシュのフィルムまたはシートは、約1ミル(25.4μm)~約40ミル(1,016μm)の範囲の厚さを有することができ、一部の実施形態では、約1ミル~約20ミル(または25μm~508μm)の範囲にあってもよい。一部の実施形態では、材料の理想的厚さは、約1.5ミル~約5ミル(または38.1μm~127μm)の範囲であり得る。様々な厚さおよび対応する隙間サイズのフィルムまたはシートの2つの実施形態が、図8の写真に図示されている。
【0023】
他の実施形態は、本明細書、および本明細書において開示されている実施形態の実施を考慮することから当業者には明白であろう。本明細書および実施例は例示と見なされるに過ぎないことが意図されており、実施形態の真の範囲および主旨は、以下の特許請求の範囲によって示されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】