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特表2022-535054免疫グロブリン発現を調節するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】免疫グロブリン発現を調節するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220728BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61P37/02
A61P37/06
A61P29/00
A61P35/00
A61K48/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571652
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020065327
(87)【国際公開番号】W WO2020245182
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】19305716.3
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】514284051
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・レジオナル・ユニヴェルシテール・ドゥ・リモージュ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER REGIONAL UNIVERSITAIRE DE LIMOGES
(71)【出願人】
【識別番号】506336795
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ リモージュ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デルピー,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】コーニュ,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ラフルーア,ブライス
(72)【発明者】
【氏名】マルシャロ,アン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
免疫グロブリン(Ig)は、B細胞の表面上で、又はB細胞分化の最終段階を表す形質細胞により分泌抗体として発現される。本発明は、分泌形態の産生を低下させる、又は膜形態の産生を低下させるためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用を含む。特に、本発明者らは、分泌型ポリアデニル化シグナルをマスクするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって、分泌型免疫グロブリンの産生における減少が誘導されることを示す。逆に、膜ポリアデニル化シグナルをマスクするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって、膜アンカー型免疫グロブリンの産生における減少が誘導される。概念実証が、分泌形態のIgEをコードする転写物のポリアデニル化シグナル(PAS)配列にハイブリダイズするASOを使用して得られている。実際に、このPAS配列の標的化によって、IgE産生における劇的な減少が誘導される。このように、正しいアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択は、B細胞発生に関連付けられる疾患(例、自己免疫疾患、炎症、又はB細胞の悪性腫瘍)の処置のために適しているであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において免疫グロブリンの発現を調節する方法であって、前記対象に以下の有効量を投与することを含む方法:
‐分泌型免疫グロブリンの産生を低下させるための、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の分泌型ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、又は
‐膜アンカー型免疫グロブリンの産生を低下させるための、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の膜アンカー型特異的ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記免疫グロブリンが、IgG、IgA、IgM、又はIgEである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号2において示す配列又は配列番号3において示す配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドの長さを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11において示す配列に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又は配列番号23において示す配列に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが安定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象がB細胞発生に関連付けられる疾患を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が自己免疫又は炎症を患っている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がIgE媒介性疾患を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象がB細胞悪性腫瘍を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26からなる群より選択される核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
【0002】
本発明は、医学、特に免疫学の分野にある。
【0003】
発明の背景:
【0004】
免疫グロブリンは、抗原への曝露への応答において活性化されたB細胞及び形質細胞により産生される分子である。血清中に見出される抗体分子の5つの免疫グロブリンクラス(アイソタイプ)がある:IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgD。それらは、それらが含む重鎖の型により区別される。IgG分子はγ鎖として公知の重鎖を持つ;IgMはμ鎖を有する;IgAはα鎖を有する;IgEはε鎖を有する;及びIgDはδ鎖を有する。重鎖ポリペプチド中のバリエーションによって、各々の免疫グロブリンクラスは、異なる型の免疫応答において、又は身体の防御の異なる段階で機能することが可能になる。抗原曝露時に、これらの分子が分泌され、免疫系が無数の病原体を認識し、効果的に応答することが可能になる。免疫グロブリン又は抗体分泌細胞は成熟形態のBリンパ球であり、それらは、それらの発生の間に骨髄中での遺伝子の再配列及び選択を受けて、最終的にB細胞の生成に導き、各々が、単一の抗原特異的受容体/免疫グロブリン分子を発現する。各々の個々の免疫グロブリン分子は、所与の抗原上で見出される固有のモチーフ、又はエピトープについて親和性を有する。抗原を用いて提示された場合、活性化されたB細胞は、形質細胞(誘導抗原について特異的である抗体を大量に分泌する)、又はメモリーB細胞(長寿命であり、宿主が同じ抗原に再曝露された場合、より強く速い応答を誘発する)のいずれかに分化する。分泌形態の免疫グロブリンは、抗原に結合された場合、免疫系の他の細胞が、可溶性抗原の中和又は抗原発現病原体の根絶を促進するように指示するエフェクター分子としての役割を果たす。免疫グロブリン遺伝子は、代替のRNAプロセシング反応を通じて膜会合タンパク質及び分泌型タンパク質の両方をコードする。この遺伝子は実際に、競合する切断-ポリアデニル化反応及びRNAスプライシング反応を含み、2つの経路の相対的な使用は、B細胞と形質細胞の間で異なって調節される。より具体的には、1つのmRNAが、上流のポリ(A)シグナルで切断及びポリアデニル化される一方、他のmRNAは、RNAスプライシングによりこのポリ(A)シグナルが除去され、下流のポリ(A)部位で切断及びポリアデニル化される。一般的な切断-ポリアデニル化反応及びRNAスプライシング反応は、B細胞成熟の間に厳密に調節され、免疫グロブリン発現に影響を及ぼす。分泌型免疫グロブリンの産生の調節は、効果的な免疫応答のために非常に重要であり、免疫グロブリン産生の調節不全は、いくつかの抗体媒介性疾患の特徴である。逆に、膜アンカー型免疫グロブリンの産生の調節は、悪性B細胞においてBCRにより誘導される生存シグナル伝達を低下させることにより、B細胞リンパ腫の処置のために適しているであろう。
【0005】
発明の要約:
【0006】
請求項により定義されるように、本発明は、それを必要とする対象における免疫グロブリン発現を調節するための方法に関する。
【0007】
発明の詳細な説明:
【0008】
免疫グロブリン(Ig)は、B細胞の表面上で、又はB細胞分化の最終段階を表す形質細胞により分泌抗体として発現される。本発明は、分泌形態の産生を低下させる、又は膜形態の産生を低下させるためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用を含む。特に、本発明者らは、分泌型ポリアデニル化シグナルをマスクするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって、分泌型免疫グロブリンの産生における減少が誘導されることを示す。逆に、膜ポリアデニル化シグナルをマスクするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって、膜アンカー型免疫グロブリンの産生における減少が誘導される。概念実証が、分泌形態のIgEをコードする転写物のポリアデニル化シグナル(PAS)配列にハイブリダイズするASOを使用して得られている。実際に、このPAS配列の標的化によって、IgE産生における劇的な減少が誘導される。したがって、正しいアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択は、B細胞発生に関連付けられる疾患(例、自己免疫疾患、炎症、又はB細胞の悪性腫瘍)の処置のために適しているであろう。
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、それを必要とする対象において免疫グロブリンの発現を調節する方法であって、対象に以下の有効量を投与することを含む方法に関する:
‐分泌型免疫グロブリンの産生を低下させるための、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の分泌型ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド又は
‐膜アンカー型免疫グロブリンの産生を低下させるための、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の膜アンカー型の特異的ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【0010】
本明細書中で使用するように、用語「免疫グロブリン」又は「抗体」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、1つ以上のユニットで構成される糖タンパク質を指し、各々が4つのポリペプチド鎖を含む:2つの同一の重鎖(H)及び2つの同一の軽鎖(L)。ポリペプチド鎖のアミノ末端は、アミノ酸組成においてかなりの変動を示し、可変(V)領域として言及され、それらを比較的一定の(C)領域から区別する。各々のL鎖は1つの可変ドメインVL、及び1つの定常ドメインCLからなる。H鎖は、可変ドメインVH、ならびにIgサブクラスに依存して3~4個の定常ドメインCH1、CH2、CH3、及び場合によりCH4からなる。各々の重鎖は、各々の軽鎖(~25,000)の約2倍のアミノ酸の数及び分子量(~50,000)を有し、約150,000の免疫グロブリン単量体の全分子量をもたらす。用語「免疫グロブリン」は、「膜アンカー型免疫グロブリン」ならびに「分泌型免疫グロブリン」を包含する。膜アンカー型免疫グロブリン又は膜結合型免疫グロブリンはまた、表面免疫グロブリンと呼ばれ、それらは一般的にBCRの一部である。血清中に見出される抗体分子の5つの免疫グロブリンクラス(アイソタイプ)がある:IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgD。
【0011】
一部の実施形態では、本発明の方法は、IgG免疫グロブリンの発現を調節するために特に適している。
【0012】
本明細書中で使用するように、用語「IgG」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、γ重鎖を持つ免疫グロブリンを指す。抗原への二次免疫応答の一部として産生され、このクラスの免疫グロブリンは、全血清Igの約75%を構成する。IgGは、ヒトにおいて胎盤を通過することができるIgの唯一のクラスであり、生後1ヶ月の間での新生児の保護のために大きく関与している。IgGは、血液、リンパ液、脳脊髄液、及び腹水中の主要な免疫グロブリンであり、体液性免疫応答における主要なプレーヤーである。健常なヒトにおける血清IgGは、アルブミン、酵素、他のグロブリン及び多くのさらなるものの他、全タンパク質の約15%を提示する。ヒト、マウス、及びラットにおいて記載されている4つのIgGサブクラスがある(例、ヒトにおけるIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)。サブクラスは、ジスルフィド結合の数ならびにヒンジ領域の長さ及び柔軟性において異なる。それらの可変領域を除いて、1つのクラス内の全ての免疫グロブリンが約90%の相同性を共有するが、クラス間ではわずか60%を共有する。
【0013】
IgG1は、主なサブクラスIgG全体の60~65%を含み、タンパク質及びポリペプチド抗原に対する胸腺媒介性の免疫応答について主に関与している。IgG1は食細胞のFc受容体に結合し、C1複合体への結合を介して補体カスケードを活性化することができる。IgG1免疫応答は、新生児において既に測定することができ、乳児期中にその典型的な濃度に達する。
【0014】
IgG2はIgGアイソタイプのうちで2番目に大きく、主なサブクラスの20~25%を含み、糖/多糖抗原に対する普遍的な免疫応答である。「成人」の濃度には、通常、6歳又は7歳までに達する。
【0015】
IgG3は全IgGの約5~10%を含み、タンパク質又はポリペプチド抗原に対する免疫応答において主要な役割を果たす。IgG3の親和性は、IgG1の親和性よりも高くなりうる。
【0016】
通常、全IgGの4%未満を含み、IgG4は多糖類に結合しない。過去には、IgG4についての検査は、食物アレルギーと関連付けられてきたが、最近の試験によって、上昇したIgG4の血清レベルが、浸潤するIgG4陽性形質細胞により起こされる硬化性膵炎、胆管炎、及び間質性肺炎に苦しむ患者において見出されることが示されている。
【0017】
IgGの特性は以下である:
‐分子量:150,000
‐H鎖型(MW):ガンマ(53,000)
‐血清濃度:10~16mg/mL
‐全免疫グロブリンのパーセント:75%
‐グリコシル化(重量比):3%
‐分布:血管内及び外
‐機能:二次応答
【0018】
一部の実施形態では、本発明の方法は、IgA免疫グロブリンの発現を調節するために特に適している。
【0019】
本明細書中で使用するように、用語「IgA」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、α重鎖を持つ免疫グロブリンを指す。IgAは、健常な血清中の全ての免疫グロブリンの約15%を含む。血清中のIgAは主に単量体であるが、分泌物、例えば唾液、涙、初乳、粘液、汗、及び胃液などの中では、IgAは結合ペプチドにより連結された二量体として見出される。大半のIgAが分泌形態で存在している。これは、上皮表面に付着して浸透することにより、侵入する病原体を防止する際でのその特性に起因していると考えられる。IgAは非常に弱い補体活性化抗体である;それ故に、それは、補体系を介して細菌細胞の溶解を誘導することはない。しかし、分泌型IgAはリゾチーム(また、多くの分泌液中に存在する)と一緒に働いて、それによって、細菌の細胞壁中の糖を加水分解することができ、それにより、免疫系が感染を排除することを可能にする。IgAは主に上皮細胞表面上で見出され、そこでは、それは中和抗体として作用する。2つのIgAサブタイプがヒトにおいて存在するが(IgA1及びIgA2)、マウスは1つのサブクラスだけを有する。それらは、重鎖の分子量において及び血清中でのそれらの濃度において異なる。IgA1は、血清中の全IgA濃度の約85%を含む。IgA1はいくつかのプロテアーゼに対して幅広い耐性を示すが、ヒンジ領域に影響を及ぼしうる/そこでスプライスしうるプロテアーゼもある。IgA1は、タンパク質抗原(及び、より低い程度で、多糖及びリポ多糖)への良好な免疫応答を示す。IgA2は、血清中の全IgAのわずか15%までを占めるが、気道、眼、及び胃腸管の粘膜中で、多糖抗原及びリポ多糖抗原に対して戦うために重大な役割を果たす。それはまた、タンパク質分解及び多くの細菌プロテアーゼへの良好な耐性を示し、細菌感染と戦う際でのIgA2の重要性を裏付けている。
【0020】
IgAの特性は以下である:
‐分子量:320,000(分泌型)
‐H鎖型(MW):アルファ(55,000)
‐血清濃度:1~4mg/mL
‐全免疫グロブリンのパーセント:15%
‐グリコシル化(重量比):10%
‐分布:血管内及び分泌物
‐機能:粘膜を保護する。
【0021】
一部の実施形態では、本発明の方法は、IgM免疫グロブリンの発現を調節するために特に適している。
【0022】
本明細書中で使用するように、用語「IgM」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、μ重鎖を持つ免疫グロブリンを指す。血清IgMは哺乳動物において五量体として存在し、正常なヒト血清Ig含量の約10%を含む。それは、大半の抗原への一次免疫応答において優勢であり、最も効率的な補体結合免疫グロブリンである。IgMはまた、Bリンパ球の原形質膜上で単量体として発現される。この形態では、それはB細胞抗原受容体であり、H鎖は各々が、膜中での固定のための追加の疎水性ドメインを含む。血清IgMの単量体は、ジスルフィド結合及び連結(J)鎖により一緒に結合される。五量体構造内の5つの単量体の各々が、2つの軽鎖(カッパ又はラムダ)及び2つの重鎖で構成されている。IgG(及び上に示す一般化された構造)とは異なり、IgM単量体中の重鎖は、1つの可変領域及び4つの定常領域で構成され、ヒンジ領域を置換する追加の定常ドメインを伴う。IgMは、侵入する微生物上のエピトープを認識し、細胞凝集に導くことができる。この抗体-抗原免疫複合体は次に、補体結合又はマクロファージによる受容体媒介性エンドサイトーシスにより破壊される。IgMは、新生児により合成される第1の免疫グロブリンクラスであり、一部の自己免疫疾患の病因において役割を果たす。免疫グロブリンMは第3の最も一般的な血清Igであり、次の2つの形態の1つを取る。
‐全ての重鎖が同一であり、及び全ての軽鎖が同一である五量体
‐単量体(例、B細胞受容体としてBリンパ球上に見出される)
【0023】
IgMは、免疫応答の間に構築される第1の抗体である。それは、凝集反応及び細胞溶解反応について関与している。なぜなら、理論的には、その五量体構造によって、それに10の遊離抗原結合部位が与えられ、ならびにそれは高い結合力を持つためである。10のFab部分間での立体構造的な制約に起因して、IgMは5の原子価だけを有する。加えて、IgMはIgGほどの汎用性はない。しかし、それは、補体の活性化及び凝集において極めて重要である。IgMは主にリンパ液及び血液中で見出され、疾患の早期段階において非常に効果的な中和剤である。上昇したレベルは、最近の感染又は抗原への曝露の徴候でありうる。
【0024】
IgMの特性は以下である:
‐分子量:900,000
‐H鎖型(MW):mu(65,000)
‐血清濃度:0.5~2mg/mL
‐全免疫グロブリンのパーセント:10%
‐グリコシル化(重量比):12%
‐分布:大半が血管内
‐機能:一次応答
【0025】
一部の実施形態では、本発明の方法は、IgE免疫グロブリンの発現を調節するために特に適している。
【0026】
本明細書中で使用するように、用語「IgE」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ε重鎖を持つ免疫グロブリンを指す。IgEの重鎖は余分なドメインを含み、それにより、それは、主に好酸球、肥満細胞、及び好塩基球上で見出されるFcイプシロン受容体I(FcεRI)に高い親和性を伴って結合する。抗原、例えば花粉、毒液、真菌、胞子、ヒョウヒダニ、又はペットの鱗屑などが、細胞に付着したIgEのFab部分と結合する場合、細胞は脱顆粒し、ヘパリン、ヒスタミン、タンパク質分解酵素、ロイコトリエン、サイトカインのような因子を放出する。結果として、血管拡張及び増加した小血管透過性によって、体液が毛細血管から組織中に漏れ出て、アレルギー反応の特徴的な症状に導かれる。粘液分泌、くしゃみ、咳、又は涙液分泌のような、これらの典型的なアレルギー反応の大半が、残りのアレルゲンを身体から排出するのに有益であると考えられている。試験によって、状態、例えば喘息、鼻炎、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎、及び一部の寄生虫感染症(例、蠕虫及び条虫など)などによって、増加したIgEレベルに導かれることが示されている。IgEでコーティングされた寄生蠕虫への、Fc受容体を伴う好酸球の結合によって、寄生虫の死がもたらされる。
【0027】
IgEの特性は以下である:
‐分子量:200,000
‐H鎖型(MW):イプシロン(73,000)
‐血清濃度:10~400ng/mL
‐全免疫グロブリンのパーセント:0.002%
‐グリコシル化(重量比):12%
‐分布:唾液及び鼻分泌物中の好塩基球及び肥満細胞
‐機能:寄生虫に対して保護する。
【0028】
本明細書中で使用するように、表現「[分泌型又は膜]免疫グロブリンの産生を低下させる」は、血清中又は膜中のいずれかでの前記免疫グロブリンの数における測定可能な減少を意味する。この低下は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上でありうる。一部の実施形態では、この用語は、検出可能な限度を下回る量への前記免疫グロブリンの数における減少を指す。免疫グロブリンの発現を定量化するための方法は、当技術分野において周知である(例、Normansell, David E., and L. M. Killingsworth. “Quantitation of serum immunoglobulins.” CRC Critical Reviews in Clinical Laboratory Sciences 17.2 (1982): 103-170を参照のこと)。
【0029】
本明細書中で使用するように、用語「ポリアデニル化シグナル」又は「PAS」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、免疫グロブリン重鎖をコードする遺伝子の特定の領域を指す。前記遺伝子は、2つのポリアデニル化シグナルを含む:分泌型の特異的ポリアデニル化シグナル(「pAS」)及び膜アンカー型の特異的ポリアデニル化シグナル(「pAM」)。実際に、免疫グロブリン重鎖をコードする全ての遺伝子について、内部の5’スプライス部位でスプライシングされる、又は分泌型の特異的ポリ(A)シグナル(pAS)で切断及びポリアデニル化されるエクソンが定常領域中にある。プレmRNAがpASで切断される場合、mRNAは分泌型免疫グロブリンをコードする。プレmRNAが1つ又は2つの下流エクソンにスプライシングされ、下流のポリ(A)シグナル(pAM又は膜アンカー特異的ポリ(A))が使用される場合、mRNAは膜アンカー型免疫グロブリンをコードする。より具体的には、pASシグナルは、好ましくは、分泌型の特異的mRNAの3’末端をコードする最後の定常領域エクソンの約100~150ヌクレオチド下流である。膜アンカー型の特異的mRNAの3’末端は、最後の定常領域の大部分により、ならびに2つの下流のエクソンM1及びM2によりコードされる。膜アンカー型の特異的mRNAは、最後の定常領域エクソンのM1へのスプライシングが、最後の定常領域エクソン内の内部5’スプライス部位を使用して起こる場合に産生され、ポリアデニル化がM2末端でpAM部位で生じ、好ましくはM1エクソンとM2エクソンの間のイントロン配列もスプライシングされる。
【0030】
当業者から周知であるように、高度に保存されたポリアデニル化シグナル配列5’-ANUAAA-3’(配列番号1)は、典型的には、AUリッチ領域中に埋め込まれており(ANUAAAを囲む29ヌクレオチドのうち28ヌクレオチドはA又はUである)、それにおいてNはAであるが、NがGであるIgEについてのpAMシグナルを除く。ポリアデニル化シグナルは、好ましくは、切断部位から1及び38ヌクレオチドに位置付けられる2つの下流GUリッチ配列を含む。
【0031】
図4及び5は、IgG、IgA、IgM、及びIgEクラスについての異なる分泌型及び膜ポリアデニル化シグナル(それぞれpAS及びpAM)を示す。
【0032】
本明細書中で使用するように、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又はASOは、選ばれた配列に相補的である一本鎖のDNA、RNA、又は修飾核酸を指す。アンチセンスRNAを使用し、特定のmRNA鎖に結合することにより、それらのタンパク質翻訳を防止することができる。アンチセンスDNAを使用し、特定の相補的(コード又は非コード)RNAを標的化することができる。一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンスRNAである。一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンスDNAである。
【0033】
本明細書中で使用するように、本明細書中で使用する用語「相補的」は、「完全に相補的」及び「実質的に相補的」を含み、通常、オリゴヌクレオチドとその対応する標的配列との間に80%を上回る、好ましくは85%を上回る、さらにより好ましくは90%を上回る、最も好ましくは95%を上回る相補性の程度があることを意味する。例えば、その配列とその標的配列との間に1つのミスマッチを伴う長さ20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドについて、相補性の程度は95%である。
【0034】
一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’-TTTANT-3’配列(配列番号2)(それにおいてNはTであり、例外的にCでありうる(即ち、IgEについてpAMを標的化するため))又は5’-UUUANU-3’配列(配列番号3)(それにおいてNはUであり、例外的にCでありうる(即ち、IgEについてpAMを標的化するため))を含む。
【0035】
一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する。標的化された相補的配列についてのASOの最適な長さは、一般的に、使用される化学的骨格及び標的配列に依存して、約15~約30ヌクレオチドの長さの範囲中にある。したがって、一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドの長さを有する。典型的には、モルフォリノ-ASOは約25ヌクレオチドの長さであり、2’修飾-ASOは約20ヌクレオチドの長さであり、及びトリシクロ-ASOは約15ヌクレオチドの長さである。
【0036】
分泌形態の産生を低下させるために、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の分泌型ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的であるように設計されている(図1A)。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、スプライシング反応の間に分泌型ポリアデニル化シグナルを立体的に妨害し、対応する免疫グロブリンの膜形態をコードする代替の膜アンカー型の特異的ポリアデニル化シグナルの使用を促進する(図1A)。したがって、一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、図4中に描写する配列内の分泌型ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的である。
【0037】
一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、又は配列番号11において示す配列に相補的である。
【化1】
【0038】
一部の実施形態では、分泌型免疫グロブリンの産生を低下させるために、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群より選択される核酸配列を含む。
【0039】
一部の実施形態では、配列番号12において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、分泌型IgM免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【0040】
一部の実施形態では、配列番号13において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、分泌型IgG免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【0041】
一部の実施形態では、配列番号14において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、分泌型IgE免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【0042】
一部の実施形態では、配列番号15において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、分泌型IgA免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【化2】
【0043】
膜形態の産生を低下させるために、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、免疫グロブリン重鎖をコードするプレmRNA分子内の膜アンカー型特異的ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的であるように設計する。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、スプライシング反応の間に膜アンカー型の特定のポリアデニル化シグナルを立体的に妨害し、対応する免疫グロブリンの分泌形態をコードする代替の分泌型の特異的ポリアデニル化シグナルの使用を促進する。したがって、一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは図5中に描写する配列内の膜アンカー型特異的ポリアデニル化シグナルを含む配列に相補的である。
【0044】
一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又は配列番号23において示す配列に相補的である。
【化3】
【0045】
一部の実施形態では、膜アンカー型免疫グロブリンの産生を低下させるために、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26からなる群より選択される核酸配列を含む。
【0046】
一部の実施形態では、配列番号24において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、膜アンカー型IgM免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【0047】
一部の実施形態では、配列番号25において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、膜アンカー型IgG免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【0048】
一部の実施形態では、配列番号26において示す核酸配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、膜アンカー型IgA免疫グロブリンの産生を低下させるために使用する。
【化4】
【0049】
ASOの配列は、特異的であるように選択され、即ち、ASOは、プレmRNAの配列にだけ相補的であり、他の核酸配列には相補的ではない。
【0050】
一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは安定化されている。「安定化」ASOは、インビボ分解(例、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼを介する)に対して比較的耐性があるASOを指す。安定化は、長さ又は二次構造の機能でありうる。あるいは、ASOの安定化は、リン酸骨格の修飾を介して達成することができる。本発明の好ましい安定化ASOは、修飾された骨格を有し、例えば、最大の活性を提供し、細胞内のエキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼによる分解からASOを保護するためのホスホロチオエート結合を有する。他の可能な安定化修飾は、ホスホジエステル修飾、ホスホジエステル修飾及びホスホロチオエート修飾の組み合わせ、メチルホスホネート、メチルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、p-エトキシ、及びそれらの組み合わせを含む。ASOの化学的に安定化された修飾バージョンはまた、「モルフォリノ」(ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマー、PMO)、2’-O-Metオリゴマー、2’メトキシ-エチルオリゴマー、2’-フルオロ(2’-F)オリゴマー、トリシクロ(tc)-DNA、U7短核(sn)RNA、トリシクロ-DNA-オリゴアンチセンス分子(米国仮特許出願シリアル番号61/212,384:Tricyclo-DNA Antisense Oligonucleotides, Compositions and Methods for the Treatment of Disease、2009年4月10日出願、その完全な内容は、参照により本明細書により組み入れられる)を含む。アンロックド核酸(UNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、セリノール核酸(SNA)、ツイスト挿入核酸(TINA)、アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、D-アルトリトール核酸(ANA)、及びモルフォリノ核酸(MNA)がまた、スプライス調節において研究されてきた。最近、2-チオリボチミジンを含む核酸塩基修飾AO、及び5-(フェニルトリアゾール)-2-デオキシウリジンヌクレオチドがエクソンスキッピングを誘導することが報告されている(Chen S, Le BT, Chakravarthy M, Kosbar TR, Veedu RN. Systematic evaluation of 2’-Fluoro modified chimeric antisense oligonucleotide-mediated exon skipping in vitro. Sci Rep. 2019 Apr 15;9(1):6078)。一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-Me RNA/ENAキメラオリゴヌクレオチドでありうる(Takagi M, Yagi M, Ishibashi K, Takeshima Y, Surono A, Matsuo M, Koizumi M.Design of 2’-O-Me RNA/ENA chimera oligonucleotides to induce exon skipping in dystrophin pre-mRNA. Nucleic Acids Symp Ser (Oxf). 2004;(48):297-8)。この効果に使用されうる他の形態のASOは、限定されないが、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスに基づくウイルス転移方法との組み合わせにおける、核内低分子RNA分子、例えばU1又はU7などに結合するASO配列である(Denti, MA, et al, 2008;Goyenvalle, A, et al, 2004)。一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチル-ホスホロチオエートヌクレオチドである。
【0051】
本発明のASOは、当技術分野において周知の多数の手順のいずれかを使用してデノボ合成することができる。例えば、b-シアノエチルホスホラミダイト方法(Beaucage et al., 1981);ヌクレオシドH-ホスホネート方法(Garegg et al., 1986;Froehler et al., 1986、Garegg et al., 1986、Gaffney et al., 1988)。これらの化学は、市場において入手可能な多様な自動核酸シンセサイザーにより実施することができる。これらの核酸は、合成核酸として言及されうる。あるいは、ASOはプラスミド中で大規模に産生することができる(Sambrook, et al., 1989を参照のこと)。ASOは、公知の技術、例えば制限酵素、エキソヌクレアーゼ、又はエンドヌクレアーゼを用いたものなどを使用して、既存の核酸配列から調製することができる。この様式において調製されたASOは、単離核酸として言及されうる。
【0052】
一部の実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビボで単独で、又はベクターとの会合において送達されうる。その最も広い意味において、「ベクター」は、細胞への本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの転移を促すことが可能である任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下における分解の程度と比べて低下した分解を伴って、核酸を細胞へ輸送する。一般的に、本発明において有用なベクターは、ネイキッドプラスミド、非ウイルス送達システム(エレクトロポレーション、ソノポレーション、カチオン性トランスフェクション薬剤、リポソーム、ナノ粒子、ペプチド結合ASOなど)、ファージミド、ウイルス、アンチセンスオリゴヌクレオチド核酸配列の挿入又は組み入れにより操作されたウイルス又は細菌の供給源から由来する他の媒体を含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは好ましい型のベクターであり、以下のウイルスからの核酸配列を含むが、これらに限定されない:RNAウイルス、例えばレトロウイルスなど(例として、モロニーマウス白血病ウイルス及びレンチウイルス由来ベクター)、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス。名付けられていないが、しかし、当技術分野で公知の他のベクターを容易に用いることができる。典型的には、本発明に従ったウイルスベクターは、アデノウイルス及びアデノ随伴(AAV)ウイルスを含み、それらは、遺伝子治療におけるヒトのための使用について既に承認されているDNAウイルスである。実際に、12の異なるAAV血清型(AAV1~12)が公知であり、各々が異なる組織親和性を伴う(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。組換えAAVは、依存性パルボウイルスAAVから由来する(Choi, VW J Virol 2005; 79:6801-07)。アデノ随伴ウイルス1~12型は、複製欠損であるように操作することができ、広範囲の細胞型及び種に感染することが可能である(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。それは、さらに、利点、例えば熱及び脂質溶媒安定性;多様な系統の細胞(造血細胞を含む)における高い形質導入頻度;及び重感染阻害の欠如(したがって、複数の一連の形質導入を可能にする)などを有する。また、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧の非存在において100継代以上にわたり組織培養中で追跡されており、アデノ随伴ウイルスのゲノム組込みが比較的安定した現象であることを意味する。アデノ随伴ウイルスはまた、染色体外の様式において機能することができる。他のベクターはプラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは当技術分野において広範に記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。過去数年間で、プラスミドベクターは、抗原をコードする遺伝子をインビボで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されてきた。それらは、これのために特に有利である。なぜなら、それらは、ウイルスベクターの多くと同じ安全性の懸念がないためである。しかし、これらのプラスミドは、宿主細胞と適合性のあるプロモーターを有し、プラスミド内に操作的にコードされている遺伝子からペプチドを発現することができる。一部の一般に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドが当業者に周知である。加えて、プラスミドは、制限酵素及びライゲーション反応を使用してDNAの特定のフラグメントを除去及び追加してカスタム設計されてもよい。プラスミドは、多様な非経口経路、粘膜経路、及び局所経路により送達されうる。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内経路、皮内経路、皮下経路、又は他の経路により注射することができる。それはまた、鼻腔内スプレー又はドロップ、直腸坐剤により及び経口的に投与されうる。それはまた、遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面中に投与されうる。プラスミドは、金粒子上に水溶液を乾燥させたものとして、又は別のDNA送達システム(リポソーム、デンドリマー、蝸牛状物(cochleate)、及びマイクロカプセル化を含むが、これらに限定されない)と関連して与えられうる。一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド核酸配列は、異種調節領域(例、異種プロモーター)の制御下にある。プロモーターはまた、例えば、ウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーター又は任意の合成プロモーターなどでありうる。
【0053】
本明細書中で使用するように、用語「対象」は、任意の哺乳動物、例えば齧歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類などを指す。
【0054】
分泌型免疫グロブリンの量を低下させることにより、本発明の方法は、自己免疫又は炎症に関連付けられる疾患の処置のために特に適している。前記疾患の例は、関節炎(関節リウマチ、例えば急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風又は痛風関節炎、急性痛風関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、II型コラーゲン誘発性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、及び若年性関節リウマチ、骨関節炎、慢性進行性関節炎、変形関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、及びアンキロス性脊椎炎など)、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、及び爪の乾癬など、アトピー(アトピー性疾患、例えば干し草熱及びジョブ症候群などを含む)、皮膚炎(接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、剥離性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、ヘルペス性皮膚炎、貨幣状湿疹、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎を含む)、x連鎖高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹(慢性自己免疫性蕁麻疹を含む)など、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊髄光学的MS、原発性進行性MS(PPMS)、及び再発寛解型MS(RRMS)など、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、運動失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)など、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫介在性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、膠原性大腸炎、多発性大腸炎、壊死性腸炎、経壁性大腸炎など、及び自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎症、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群(成人又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む)、髄膜炎、ぶどう膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管性浮腫、髄膜炎におけるような脳神経損傷、妊娠性疱疹、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫疾患に起因する特発性難聴、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシーならびにアレルギー性及びアトピー性鼻炎など、脳炎、例えばラスムッセン脳炎ならびに大脳辺縁系及び/又は脳幹脳炎など、ぶどう膜炎、例えば前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体起因性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、又は自己免疫性ぶどう膜炎など、ネフローゼ症候群を伴う又は伴わない糸球体腎炎(GN)、例えば慢性又は急性糸球体腎炎など、例えば原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GN、又は特発性膜性腎症など、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(I型及びII型、ならびに急速進行性GNを含む)、増殖性腎炎、自己免疫性多腺内分泌不全、亀頭炎(形質細胞性限局性亀頭包皮炎、亀頭包皮炎を含む)、遠心性環状紅斑、色素異常性固定紅斑、多形紅斑(eythema multiform)、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮融解性過角化、前癌性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態及び応答、アレルギー反応、湿疹(アレルギー性又はアトピー性湿疹を含む)、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、及び小胞性掌蹠湿疹、喘息、例えば気管支喘息、気管支喘息、及び自己免疫性喘息など、T細胞の浸潤及び慢性炎症反応を含む状態、外来抗原、例えば妊娠中の胎児のA-B-O血液型などに対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス(ループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎ループス、腎外ループス、円板状ループス及び円板状エリテマトーデス、脱毛症ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば皮膚SLE又は亜急性皮膚SLE、新生児エリテマトーデス症候群(NLE)、及び全身性エリテマトーデスなどを含む)、若年発症(I型)糖尿病(小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性大動脈障害、サイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅延型過敏症に関連付けられる免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症(リンパ腫様肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症を含む)、無顆粒球症、脈管炎(血管炎、大血管炎(リウマチ性多発筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫性血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、壊死性血管炎、例えば全身性壊死性血管炎など、及びANCA関連血管炎、例えばChurg-Strauss血管炎又は症候群(CSS)及びANCA関連小血管炎などを含む)、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、溶血性貧血又は免疫性溶血性貧血(自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(悪性貧血)を含む)、アジソン病、赤芽球性貧血又は赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球の血管外遊走を含む疾患、CNS炎症性疾患、多臓器損傷症候群、例えば敗血症、外傷、又は出血に続発するものなど、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡及び皮膚類天疱瘡など、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜性天疱瘡、及び紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、熱傷、子癇前症、免疫複合体障害、例えば免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、多発神経障害など、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経障害又はIgM媒介性神経障害など、血小板減少症(例えば、心筋梗塞患者により発生したもの)(血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン起因性血小板減少症、及び自己免疫性又は免疫性血小板減少症、例えば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)(慢性又は急性ITPを含む)を含む)、強膜炎、例えば特発性角強膜炎、上強膜炎など、精巣及び卵巣の自己免疫疾患(自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む)、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌疾患(甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、又は亜急性甲状腺炎などを含む)、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)など、腫瘍随伴症候群(神経学的腫瘍随伴症候群、例えばランバート-イートン筋無力症候群又はイートン-ランバート症候群、スティッフマン症候群又はスティッフパーソン症候群などを含む)、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎(allergic encephalomyelitis)又はアレルギー性脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)など、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連重症筋無力症など、小脳変性、神経性筋強直症、オプソクローヌス又はオプソクローヌス(opsoclonus)・ミオクローヌス症候群(OMS)、及び感覚神経障害、多巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP、ギランバレー症候群、バーガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角膜下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、肝硬変、例えば原発性胆汁性肝硬変及び肺硬変症など、自己免疫性腸症症候群、セリアック(Celiac)病又はセリアック(Coeliac)病、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病)、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴など、多発性軟骨炎、例えば難治性多発性軟骨炎又は再発した又は再発している多発性軟骨炎など、肺胞蛋白症、コーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増加症、原発性リンパ球増加症(単クローン性B細胞リンパ球増加症(例、良性の単クローン性免疫グロブリン血症及び意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、MGUS)を含む)、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネロパチー、例えばてんかん、片頭痛、不整脈、筋肉障害、難聴、失明、周期性四肢麻痺、中枢神経系のチャネロパチーなど、自閉症、炎症性ミオパチー、巣状又は分節性又は巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、ぶどう膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多発性内分泌不全症、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、脱髄性疾患、例えば自己免疫性脱髄性疾患及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害など、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全頭脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、及び毛細血管拡張症)、男性及び女性の自己免疫性不妊症(例、抗精子抗体に起因する)、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、不育症、農夫肺、多形紅斑、心膜切開後症候群、クッシング症候群、鳥飼病(bird fancier's lung)、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び線維性肺胞炎など、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、寄生虫病、例えばリーシュマニア症、キパノソーマ症、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症など、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異色性虹彩毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性又は慢性)、又はフック毛様体炎など、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染症、敗血症、内毒素血症、膵炎、甲状腺中毒症、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタインバーウイルス感染症、おたふく風邪、エヴァンス症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞性多発筋痛症、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型ネフローゼ、良性家族性及び虚血再灌流傷害、移植臓器の再灌流、自己免疫網膜症、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、ハーマン・リッチ病、感覚神経性難聴、発作性夜間ヘモグロビン尿症、性腺機能低下症、限局性回腸炎、白血球減少症、伝染性単核球症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎、肉芽腫性精巣炎、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルバン甲状腺炎、後天性脾萎縮、非悪性胸腺腫、白斑、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を含む状態、白血球接着不全症、サイトカイン
及びTリンパ球により媒介される急性及び遅延性過敏症に関連付けられる免疫応答、白血球の血管外漏出を含む疾患、多臓器傷害症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、多腺性自己免疫症候群、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌腺不全、自己免疫性多腺性自己免疫症候群I型、成人発症特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば拡張型心筋症など、表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎、又は蝶形骨洞炎、好酸球関連障害、例えば好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、好酸球増加症-筋痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、気管支肺炎性アスペルギルス症、アスペルギルス症、又は好酸球を含む肉芽腫など、アナフィラキシー、血清反応陰性脊椎関節炎、多内分泌性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病に関連付けられる自己免疫疾患、リウマチ、神経疾患、リンパ節炎、血圧反応における低下、血管機能障害、組織傷害、心血管虚血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、及び血管新生に伴う疾患、アレルギー性過敏性障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血性再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流傷害、リンパ腫性気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を伴う皮膚病、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性障害、眼及び眼窩炎障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、ナルコレプシー、急性の重篤炎症、慢性の難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症。
【0055】
一部の実施形態では、分泌型IgE免疫グロブリンの産生を低下させるための方法は、IgE媒介性疾患の処置のために特に適している。用語「IgE媒介性疾患」はアトピー性障害を含み、それは、多くの一般的な天然の吸入及び摂取された抗原に免疫学的に応答する一般的な遺伝性傾向ならびにIgE抗体の継続的な産生により特徴付けられる。特定のアトピー性障害は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎(結膜炎)、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、接触性皮膚炎、アレルギー性胃腸症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及びアレルギー性紫斑病(Henoch-Schonlein)を含む。アトピー患者はしばしば複数のアレルギーを有し、彼らが、多くの環境アレルゲン(季節性、多年生性、及び職業性のアレルゲンを含む)に対するIgE抗体及びそれらからの症状を有することを意味する。季節性アレルゲンの例は、花粉(例、草、木、ライ麦、チモシー、ラグウィード)を含み、多年生アレルゲンの例は真菌(例、カビ、カビ胞子)、羽毛、動物(例、ペット又は他の動物の皮屑)、及び昆虫(例、ヒョウヒダニ)残骸を含む。職業的アレルゲンの例はまた、動物(例、マウス)及び植物の抗原、ならびに薬物、界面活性剤、金属、及び免疫増強剤、例えばイソシアネートなどを含む。IgE媒介性反応をもたらしうる非抗原特異的刺激は、感染、刺激物、例えば煙、燃焼ガス、ディーゼル排気粒子、及び二酸化硫黄など、運動、寒さ、及び感情的なストレスを含む。特定の遺伝的背景を伴うアトピー性及び非アトピー性の個人における特定の過敏反応は、食品(例、マメ科植物、ピーナッツ)中のタンパク質、毒液(例、昆虫、ヘビ)、ワクチン、ホルモン、抗血清、酵素、ラテックス、抗生物質、筋肉弛緩剤、ビタミン、細胞毒素、オピエート、ならびに多糖類、例えばデキストリン、鉄デキストラン、及びポリゲリンなどへの曝露に起因しうる。IgE媒介性であるように見え、本発明の方法を用いて処置可能である、上昇したIgEレベルに関連付けられる他の障害は以下を含む:毛細血管拡張性運動失調症、チャーグ-ストラウス症候群、湿疹、腸炎、胃腸症、移植片対宿主反応、高IgE(Job)症候群、過敏症(例、アナフィラキシー過敏症、カンジダ症、血管炎)、IgE骨髄腫、炎症性腸疾患(例、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定性大腸炎、及び感染性大腸炎)、粘膜炎(例、口腔粘膜炎、胃腸粘膜炎、鼻粘膜炎、及び直腸炎)、壊死性腸炎及び食道炎、寄生虫症(例、トリパノソーマ症)、過敏性血管炎、蕁麻疹、及びウィスコット-アルドリッチ症候群。加えて、障害自体が上昇したIgEに関連付けられるか否かに関係なく、IgEレベルを下げることにより処置可能であり得、したがって、「IgE媒介性障害」の範囲内で考えるべき障害は以下を含む:アジソン病(慢性副腎皮質機能不全)、脱毛症、遺伝性血管浮腫、血管浮腫(バニスター病、血管神経性浮腫)、アンキロス脊椎炎、再生不良性貧血、動脈炎、アミロイドーシス、免疫障害、例えば自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性内分泌不全症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性細胞減少症、自己免疫性糸球体腎炎、ベーチェット病、気管支炎、バージャー病、水疱性類天疱瘡、カプラン症候群(リウマチ様塵肺症)、心炎、セリアックスプルー、チェディアック東症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、コーガンリース症候群(虹彩角膜内皮症候群)、CREST症候群、疱疹状皮膚炎(デューリング病)、真性糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性腎炎、上強膜炎、外因性アレルギー性肺胞炎、家族性発作性多漿膜炎、フェルティ症候群、線維化肺胞炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、肉芽細胞減少症、肉芽腫、肉芽腫症、肉芽腫性筋炎、グレーブス病、ギランバレー症候群(多発性神経炎)、橋本甲状腺炎(リンパ節甲状腺腫)、ヘモクロマトーシス、組織球症、好酸球増加症候群、過敏性腸症候群、若年性関節炎、角膜炎、ハンセン病、エリテマトーデス、ライエル病、ライム病、混合性結合組織病、単神経炎、多発単神経炎、マックル・ウェルズ症候群、皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)、多中心性細網組織球症、多発性硬化症、重症筋無力症、菌状息肉腫、脂肪織炎、類天疱瘡、天疱瘡、心膜炎、多発性神経炎、結節性多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、肺関節炎、肺腺腫症、肺線維症、再発性多発性軟骨炎、リウマチ熱、関節リウマチ、鼻副鼻腔炎(副鼻腔炎)、サルコイドーシス、強膜炎、硬化性胆管炎、血清病、セザリー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、全身性肥満細胞症、移植拒絶反応、血小板減少性紫斑病、胸腺無形成症、ぶどう膜炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症。
【0056】
一部の実施形態では、膜アンカー型免疫グロブリン(即ち、BCR)の産生を低下させることにより、本発明の方法は、悪性B細胞のアポトーシスを誘導するために適している。したがって、本発明の方法は、B細胞悪性腫瘍の処置のために特に適している。本明細書中で使用するように、用語「B細胞悪性腫瘍」は、B細胞の任意の型の白血病又はリンパ腫を含む。用語「B細胞リンパ腫」は、B細胞からリンパ系の細胞中で生じる癌を指す。B細胞は骨髄から発生して抗体を産生する白血球細胞である。それらはまた、Bリンパ球として公知である。B細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ性白血病、B細胞リンパ腫(例、種々の形態のホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、及び関連リンパ腫(例、ワルデンストローム・マクログロブリン血症(また、リンパ形質細胞性リンパ腫又は免疫細胞腫と呼ばれる)又は中枢神経系リンパ腫)、白血病(例、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL;また、B細胞慢性リンパ性白血病BCLLと呼ばれる)、有毛細胞白血病及び慢性筋芽細胞性白血病)及び骨髄腫(例、多発性骨髄腫)を含むが、これらに限定されない。追加のB細胞悪性腫瘍は、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連(MALT)リンパ組織の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、グレイゾーンリンパ腫、悪性度不明なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、及び移植後リンパ増殖性疾患を含む。
【0057】
本明細書中で使用するように、用語「処置する」又は「処置」は、予防的又は防止的処置、ならびに治癒的処置又は疾患修飾的処置の両方(疾患に罹るリスクのある又は疾患に罹った疑いのある対象、ならびに病気である又は疾患もしくは医学的状態を患っていると診断された対象の処置を含む)を指し、臨床的再発の抑制を含む。この処置は、障害又は再発性障害の1つ以上の症状を防止する、治癒させる、その発症を遅らせる、その重症度を低下させる、又は寛解させるために、あるいは、そのような処置の非存在において予想される生存を上回って対象の生存を延長するために、医学的障害を有する、又は最終的に障害を獲得しうる対象に施してもよい。「治療レジメン」により、病気の処置のパターン、例えば、治療の間に使用される投薬のパターンを意味する。治療レジメンは、導入レジメン及び維持レジメンを含みうる。句「導入レジメン」又は「導入期間」は、疾患の初期処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。導入レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの初期期間の間に対象に高レベルの薬物を提供することである。導入レジメンでは、(部分的に又は全体的に)「負荷レジメン」を用いてもよく、それは、医師が維持レジメンの間に薬物を用いうるよりも大きな用量の薬物を投与すること、医師が維持レジメンの間に薬物を投与しうるよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含みうる。句「維持レジメン」又は「維持期間」は、病気の処置の間の対象の維持のために、例えば、対象を長い期間(月又は年)にわたり寛解に保つために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンでは、継続的治療(例、定期的な間隔で、例えば、毎週、毎月、毎年、薬物を投与する)又は断続的治療(例、中断された処置、断続的な処置、再発時の処置、又は特定の所定の基準[例、疼痛、疾患徴候など]の達成時での処置)を用いうる。
【0058】
「治療有効量」は、対象に治療的な利益を与えるために必要である活性剤(即ち、本発明のASO)の最小量について意図される。例えば、対象への「治療有効量」は、障害に関連付けられる病理学的症状、疾患進行、もしくは生理学的状態、又は障害に屈することへの抵抗性における改善を誘導する、寛解させる、又はさもなければ起こすような量である。本発明の化合物の毎日の全使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることが理解されるであろう。任意の特定の対象についての特定の治療的に有効な用量レベルは、多様な要因(処置されている障害及び障害の重症度;用いられている特定の化合物の活性;用いられている特定の組成、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;投与の時間、投与の経路、及び用いられた特定の化合物の排泄の速度;処置の持続期間;用いられる特定の化合物との組み合わせにおいて又はそれと同時に使用される薬物;ならびに医療分野において周知の同様の要因を含む)に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために要求されるレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当技術分野の技能の十分に範囲内である。しかし、製品の1日投与量は、成人1名当たり1日当たり0.01~1,000mgの広い範囲にわたり変動しうる。典型的には、組成物は、処置される対象への投与量の対症的調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250、及び500mgの有効成分を含む。医薬は、典型的には、約0.01mg~約500mgの有効成分、好ましくは1mg~約100mgの有効成分を含む。有効量の薬物は、通常、1日当たり0.0002mg/kg~約20mg/kg体重、特に1日当たり約0.001mg/kg~7mg/kg体重の投与量レベルで供給される。
【0059】
典型的には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬組成物の形態で投与される。本発明の医薬組成物はまた、医薬的又は生理学的に許容可能な担体、例えば生理食塩水、リン酸ナトリウムなどを含みうる。組成物は一般的に液体の形態であるが、これは常にそうである必要はない。適した担体、賦形剤、及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカンス、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルオース、水シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、ミネラルオイルなどを含む。製剤はまた、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、保存剤、緩衝剤などを含みうる。当業者はまた、核酸が、脂質(例、カチオン性脂質もしくは中性脂質、又はこれらの混合物)と一緒にしばしば送達され、このとき頻繁にリポソーム又は他の適したマイクロ又はナノ構造材料(例、ミセル、リポ複合体、デンドリマー、エマルジョン、立方相、ナノ粒子など)の形態であることを認識するであろう。
【0060】
本発明を、以下の図面及び実施例によりさらに例証する。しかし、これらの実施例及び図面によって、本発明の範囲を限定するものとしていかなる方法においても解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】分泌型免疫グロブリンポリアデニル化シグナル(PAS)配列を標的化するASOの受動投与時での減少したIgE産生。A.U266細胞を6μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理した。B.未処理細胞で標準化された特異的分泌型IgE RT-qPCRを、48時間の全RNAで実施した(n=7)。C.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ、n=7。D.IGHE遺伝子上に整列されたリードエクソンカバレッジ。群当たりn=4の代表的なアラインメント。スチューデントのT検定、**p<0.01、****p<0.0001。
図2-1】ヒトIgEを分泌する初代細胞の処理時でのIgE産生の劇的な減少。InEpsマウスは以前に記載されている(Laffleur B et al, Cell Reports 2015)。脾臓細胞を1×10個細胞/mLで、1μg/mL LPSを用いて3日間にわたり培養し、1日目に1μMのヒドロキシタモキシフェン及び2μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理した。A.InEpsマウスIgh遺伝子座の表示、これらのマウスをCreERT2マウスと交配した。Cre組換えは、ヒドロキシタモキシフェンのインビトロ処理により可能になる。B.ヒドロキシタモキシフェンだけを用いて処理された細胞で標準化された特異的分泌型IgE及び膜IgE RT-qPCRを、3日目の全RNAで実施した(n=5)。C.B220+細胞を、細胞内IgE発現について3日目にフローサイトメトリーにより分析した。D.フローサイトメトリーにより分析されたB220+ IgE+細胞は、ASO処理時に有意に減少する(n=3)。E.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ(n=5)。スチューデントのT検定、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
図2-2】ヒトIgEを分泌する初代細胞の処理時でのIgE産生の劇的な減少。InEpsマウスは以前に記載されている(Laffleur B et al, Cell Reports 2015)。脾臓細胞を1×10個細胞/mLで、1μg/mL LPSを用いて3日間にわたり培養し、1日目に1μMのヒドロキシタモキシフェン及び2μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理した。A.InEpsマウスIgh遺伝子座の表示、これらのマウスをCreERT2マウスと交配した。Cre組換えは、ヒドロキシタモキシフェンのインビトロ処理により可能になる。B.ヒドロキシタモキシフェンだけを用いて処理された細胞で標準化された特異的分泌型IgE及び膜IgE RT-qPCRを、3日目の全RNAで実施した(n=5)。C.B220+細胞を、細胞内IgE発現について3日目にフローサイトメトリーにより分析した。D.フローサイトメトリーにより分析されたB220+ IgE+細胞は、ASO処理時に有意に減少する(n=3)。E.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ(n=5)。スチューデントのT検定、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
図2-3】ヒトIgEを分泌する初代細胞の処理時でのIgE産生の劇的な減少。InEpsマウスは以前に記載されている(Laffleur B et al, Cell Reports 2015)。脾臓細胞を1×10個細胞/mLで、1μg/mL LPSを用いて3日間にわたり培養し、1日目に1μMのヒドロキシタモキシフェン及び2μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理した。A.InEpsマウスIgh遺伝子座の表示、これらのマウスをCreERT2マウスと交配した。Cre組換えは、ヒドロキシタモキシフェンのインビトロ処理により可能になる。B.ヒドロキシタモキシフェンだけを用いて処理された細胞で標準化された特異的分泌型IgE及び膜IgE RT-qPCRを、3日目の全RNAで実施した(n=5)。C.B220+細胞を、細胞内IgE発現について3日目にフローサイトメトリーにより分析した。D.フローサイトメトリーにより分析されたB220+ IgE+細胞は、ASO処理時に有意に減少する(n=3)。E.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ(n=5)。スチューデントのT検定、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
図3-1】InEpsハイブリドーマ細胞の処理時での減少したアレルゲン特異的IgE発現。ハイブリドーマ(SP2/0細胞株と融合されたアレルゲン特異的InEpsB細胞)が、A.Cuvillier博士(B-Cell Design社)よりご厚意で提供され、3μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり培養した。A.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ(n=4)。B.コントロール処理細胞で標準化された特異的分泌型IgE RT-qPCRを、48時間の全RNAで実施した(n=4)。C.コントロール処理細胞で標準化された特異的膜アンカー型IgE RT-qPCRを、48時間の全RNAで実施した(n=4)。スチューデントのT検定、ns.非有意、*p <0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
図3-2】InEpsハイブリドーマ細胞の処理時での減少したアレルゲン特異的IgE発現。ハイブリドーマ(SP2/0細胞株と融合されたアレルゲン特異的InEpsB細胞)が、A.Cuvillier博士(B-Cell Design社)よりご厚意で提供され、3μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgE-PASを標的化するASOを用いて48時間にわたり培養した。A.培養上清中のIgE産生を示す全IgE ImmunoCAPアッセイ(n=4)。B.コントロール処理細胞で標準化された特異的分泌型IgE RT-qPCRを、48時間の全RNAで実施した(n=4)。C.コントロール処理細胞で標準化された特異的膜アンカー型IgE RT-qPCRを、48時間の全RNAで実施した(n=4)。スチューデントのT検定、ns.非有意、*p <0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
図4】特異的ヒトIg-PAS ASOの設計。特異的ヒトIg-PAS ASO配列及びIg PAS配列アラインメント。アラインメントは、IgA1とIgA2の間で100%相同性を示す。IgG-PAS ASOは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4配列を100%の相同性を伴ってカバーし、これら4つの配列間でのミスマッチを回避する。IgE、IgM、IgA、及びIgG-PAS配列は、互いの間で有意な類似性を示さない。Ig PAS配列を、NCBIデータベース、GRCh38.p12アセンブリ、IGH遺伝子座上の分泌型Ig PASから上流20塩基対から下流20塩基対より収集した。複数の配列アラインメントを、MViewバイオインフォマティクスツールを使用して作製した。
図5】特異的ヒトIg-PAMASOの設計。特異的ヒトIg-PAM ASO配列及びIg PAM配列アラインメント。Ig PAM配列を、NCBIデータベース、GRCh38.p12アセンブリ、IGH遺伝子座上の分泌型IgPAMの上流20塩基対から下流20塩基対より収集した。複数の配列アラインメントを、MViewバイオインフォマティクスツールを使用して作製した。
図6】膜免疫グロブリンポリアデニル化シグナル(PAM)配列を標的化するASOの受動投与時での減少した膜IgA発現。A.AMO-1細胞を、3μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgA-PAMを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理し、膜IgA発現を全RNAでのRT-qPCRにより測定した。B.ヒト化IgA1を発現するトランスジェニックマウスから由来するIgA#6ハイブリドーマ細胞を、6μMのVivo-Morpholino Standard-Control ASO(CTRL)又はIgA-PAMを標的化するASOを用いて48時間にわたり処理し、膜IgA発現を全RNAでのRT-qPCRにより測定した。
【0062】
実施例:
【0063】
方法
【0064】
ASO設計
【0065】
分泌型免疫グロブリンポリアデニル化シグナル配列(PAS)を、NCBI、GRCh38.p12アセンブリ、IGH遺伝子座上の分泌型Ig PASの上流20塩基対から下流20塩基対より収集した。複数の配列アラインメントを、MViewバイオインフォマティクスツールを使用して作製した。Vivo-Morpholino IgE-PAS ASO(5’-GCTCTGAGCAGGCACAGTTTATTG-3’)(配列番号14)、Vivo-Morpholino IgA-PAM ASO(5’-GGGCCACTTTATTGCACCTGGAAGG-3’)(配列番号26)、及び無関係なVivoStandard Control ASO(5’-CCTCTTACCTCAGTTACAATTTATA-3’)(配列番号27)をGene Tools、LLCで設計及び購入した。ASOストック溶液を、ヌクレアーゼ不含滅菌水を用いて5mMで作製した。
【0066】
マウス
【0067】
InEpsマウスモデルは、フロックスされた(floxed)ヒトCμ遺伝子、それに続くIgH遺伝子座にヒトCε遺伝子の挿入を持ち、以前に記載されている(Laffleur et al, Cell Reports 2015)。これらのマウスを、ヒトIgEのタモキシフェン依存性発現を誘導するために、CreERT2マウスと交配した。9~10ヶ月齢のマウスを全ての実験において使用し、動物施設において21~23℃で、12時間の明/暗サイクルを伴って維持した。実験を、動物実験についての本発明者らの施設の審査委員会のガイドライン(No.CREEAL 6-07-2012)に従って実施した。
【0068】
細胞培養及びASO処理
【0069】
U266細胞株を、Ultraglutamine及び20%FBSを伴うRPMI1640培地中で、37℃で、5%COを伴って培養し、6μMのASOを用いて48時間にわたり処理した。AMO-1細胞株を、Ultraglutamine及び10%FBSを伴うRPMI1640培地中で、37℃で、5%COを伴って培養し、3μMのASOを用いて48時間にわたり処理した。アレルゲン特異的InEpsハイブリドーマ細胞株(抗ペニシリン、抗ハチ毒、及び抗オボアルブミン)及びIgA#6ハイブリドーマ細胞株は、A.Cuvillier博士(B-Cell Design社)によりご厚意で提供され、DMEM Glutamax、高グルコース培地10%FBS中で、37℃で、5%COを伴って、3μM ASO(InEps)又は6μM(IgA#6)ASOを用いて48時間にわたり培養した。InEps/CreERT2+マウスから単離された脾臓B細胞を、10%FBSを伴うRPMI1640培地中の1μg/mlリポ多糖(LPS)(LPS-EB Ultrapure;InvivoGen)を用いて刺激した(1×10個細胞/ml)。1日目に、細胞を、1μMヒドロキシタモキシフェン(Sigma H7904)及び2μM ASOを用いて48時間にわたり処理した。
【0070】
フローサイトメトリー
【0071】
InEps脾臓細胞を、トリプシン-EDTA0.05%(Gibco)を用いて簡単に洗浄し、染色前に受動的に結合したIgEを除去した。細胞内IgE染色を、FITC抗ヒトIgE(A80-108F Bethyl Laboratories)及びBV421抗マウスB220(RA3-6B2 BioLegend)を使用し、IntraPrep Permeabilizaton Reagent(Beckman Coulter)を用いて実施した。データを、Beckton Dickinson LSRII Fortessaサイトメーターで取得し、FlowLogicソフトウェアを用いて分析した。
【0072】
免疫‐アッセイ
【0073】
IgE濃度を、Phadia250機器でのTotal IgE ImmunoCap(ThermoFisher Diagnostic)アッセイにより培養上清中で測定した。
【0074】
RT-qPCR
【0075】
全RNAを、Tri-reagent(Invitrogen)手順を使用して調製した。RT-PCRを、High-Capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystem)を使用し、1μgのDNase I(Invitrogen)処理後RNAに行った。逆転写のためのプライミングを、Oligo(dT)20(Invitrogen)を用いて行った。定量PCRを、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)でSYBR(登録商標)PremixEx Taq(商標)(Tli RNaseH Plus)、ROX plus又はPremix Ex Taq(商標)(Probe qPCR)、ROX plus(Takara)を使用し、反応当たり5~10ngのRNAに相当するcDNAサンプルで実施した。転写物を、GAPDH(Hs02758991_g1 ThermoFisher Scientific Probe)又はGapdh(Mm99999915_g1 ThermoFisher Scientific Probe)への標準化後、標準的な2-ΔΔCt法に従って定量化した。分泌型IgE mRNA量の定量化のために、SYBR定量的PCRを、フォワード5’-CGAGCGGTGTCTGTAAATCC(配列番号28)プライマー及びリバース5’-CACTGCACAGCTGGATGG(配列番号29)プライマーを用いて実施した。膜-IgE転写物mRNAを、ThermoFisher Scientificで設計及び購入されたM1-M2エクソンスパニングプローブを用いたTaqman定量的PCRを使用して定量化した。膜-IgAmRNA量の定量化のために、SYBR定量的PCRをフォワード5’-CCTTCGCTGTGACCAGCATA(配列番号30)プライマー及びリバース5’-GTCCAGCACCACATAGGGAG(配列番号31)プライマーを用いて実施した。
【0076】
エクソンカバレッジ分析
【0077】
ポリアデニル化mRNAシーケンシングを、NiceのFunctional Genomics Platform(Valbonne-Sophia-Antipolis、フランス)で、Illumina NextSeq500で実施した。リードを、一次分析の間に、hg38ゲノムバージョンでのSTARを用いて整列させた。IGHEのリードの可視化をIGVソフトウェアで実施した。
【0078】
統計分析
【0079】
結果を、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表現し、変数間の全体的な差を、Prism GraphPadソフトウェア(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用したスチューデントのt検定により評価した。
【0080】
結果
【0081】
免疫グロブリン(Ig)は、B細胞の表面上で発現される、又はB細胞分化の最終段階を表す形質細胞による分泌型抗体として発現される。概念実証が、分泌形態のIgEをコードする転写物のポリアデニル化シグナル(PAS)配列にハイブリダイズするASOを使用して得られている。実際に、このPAS配列の標的化は、IgE産生における劇的な減少を誘導する(図1A-1D、図2A-2E、及び図3A-3C)。Ig重(IGH)鎖遺伝子座の特定の構成は、Igの特定のサブクラスの分泌型ポリA部位(PAS)をマスクすることを可能にする一方で、対応するIgの膜形態をコードする代替のポリアデニル化シグナルの使用を促進する(図4)。IgEの場合では、チームによる以前の試験によって、膜アンカー型IgE発現がB細胞においてアポトーシス促進効果を有することが実証された(Laffleur et al, Cell Reports 2015)。アレルゲン特異的な分泌型IgEの過剰産生は、多くの形態のアレルギー(慢性アレルギー性喘息又は一部の食物もしくは皮膚アレルギーを含む)の確立された特色の1つである(Platts-Mills et al J Allergy Clin Immunol 2016)。本発明は、他のIgサブクラス(即ち、IgM、IgG、又はIgA)に、及び膜アンカー型ポリアデニル化シグナル(PAM)に拡大することができ、それ故に、B細胞悪性腫瘍及び抗体媒介性病理において広い臨床的適用を有するはずである(図5)。
【0082】
図6A及び6Bは、膜免疫グロブリンポリアデニル化シグナル(PAM)配列を標的化するASOの受動投与時での減少した膜IgA発現を示す。
【0083】
参考文献:
【0084】
本願を通して、種々の参考文献は、本発明が関係する最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本明細書により、参照により本開示中に組み入れられる。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
【配列表】
2022535054000001.app
【国際調査報告】