(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】画像処理及び人工知能によって改良された、生体物質の高速染色法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20220728BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220728BHJP
G06V 10/77 20220101ALI20220728BHJP
G06V 20/69 20220101ALI20220728BHJP
【FI】
G01N33/48 P
G01N33/48 M
G06T7/00 350B
G06T7/00 630
G06V10/77
G06V20/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571653
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2020035783
(87)【国際公開番号】W WO2020247409
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518048123
【氏名又は名称】エッセンリックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ウー
(72)【発明者】
【氏名】リ ホンビン
(72)【発明者】
【氏名】サン スーザン ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】リ シン
(72)【発明者】
【氏名】ディン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ スティーブン ワイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
5L096
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045AA19
2G045AA24
2G045BB24
2G045BB25
2G045CA01
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB02
2G045CB03
2G045CB04
2G045CB07
2G045CB08
2G045CB10
2G045CB11
2G045CB12
2G045CB14
2G045CB22
2G045CB23
2G045CB24
2G045FA16
2G045FB11
2G045GC10
2G045JA01
5L096BA18
5L096CA02
5L096FA69
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
とりわけ、本発明は、試料を簡便(例えば、1段階)且つ迅速(例えば、60秒未満)に染色し、洗浄なしで撮像し、機械学習アルゴリズムによって、洗浄ありの標準的な染色と同様の最終画像を生成する、デバイス及び方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄なしで試料を染色及び撮像する方法であって、以下:
(a)第1のプレート及び第2のプレートを提供する工程と、
(b)前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で前記試料及び染色試薬を挟む工程であって、前記染色試薬が前記試料を染色する、前記工程と、
(c)洗浄なしの前記染色された試料の第1の画像を捕捉する工程であって、前記洗浄が、前記染色試薬の少なくとも一部を除去する、前記工程と、
(d)機械学習アルゴリズムを使用して、前記第1の画像から、前記染色された試料のターゲット画像を生成する工程と
を含み、
前記機械学習アルゴリズムが、洗浄なしの前記染色された試料の少なくとも1つの画像と、洗浄ありの前記染色された試料の少なくとも1つの画像とを含む訓練データセットを使用して、訓練される、
前記方法。
【請求項2】
洗浄なしで試料を染色するためのキットであって、
(a)相互に対向し、間隔が空けられた、第1のプレート及び第2のプレートと、
(b)分析のために前記試料を染色する濃度の染色試薬と
を備え、
前記試料及び前記染色試薬が前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしで撮像されたとき、前記試料の染色が視認可能であるように、前記間隔及び前記濃度が選択される、
前記キット。
【請求項3】
試料を染色及び撮像するためのシステムであって、
(a)請求項2に記載のキットと、
(b)前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で前記染色された試料の画像を捕捉するための撮像装置と、
(c)前記染色された試料の前記画像からターゲット画像を生成する機械学習アルゴリズムを記憶する非一時的記憶媒体と
を備え、
前記機械学習アルゴリズムが、洗浄なしの前記染色された試料の少なくとも1つの画像と、洗浄ありの前記染色された試料の少なくとも1つの画像とを含む訓練データセットを使用して、訓練される、
前記システム。
【請求項4】
試料を染色及び撮像する方法であって、以下:
(a)第1のプレート及び第2のプレートを提供する工程であって、2つの前記プレートの一方または両方が、少なくとも3つの位置マーカを含み、前記少なくとも3つの位置マーカの各々のペアが、それらの間に予め定められた距離を有する、前記工程と、
(b)前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で前記試料及び染色試薬を挟む工程であって、前記染色試薬が、前記試料を染色する、前記工程と、
(c)前記染色された試料及び前記少なくとも3つの位置マーカの第1の画像を捕捉する工程と、
(d)機械学習アルゴリズムを使用して、前記第1の画像から、前記染色された試料のターゲット画像を生成する工程と
を含み、
前記機械学習アルゴリズムが、
前記少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される、
前記方法。
【請求項5】
試料を染色するためのキットであって、以下:
(a)相互に対向し、間隔が空けられた、第1のプレート及び第2のプレートであって、前記プレートの一方または両方が、少なくとも3つの位置マーカを含み、前記少なくとも3つの位置マーカの各々のペアが、それらの間に予め定められた距離を有する、前記第1のプレート及び第2のプレートと、
(b)分析のために前記試料を染色する濃度の染色試薬と
を備え、
前記試料及び前記染色試薬が前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしで撮像されたとき、前記試料の染色が視認可能であるように、前記間隔及び前記濃度が選択される、
前記キット。
【請求項6】
試料を染色及び撮像するためのシステムであって、
(a)請求項2に記載のキットと、
(b)前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間で前記染色された試料の画像を捕捉するための撮像装置と、
(c)前記染色された試料の前記画像からターゲット画像を生成する機械学習アルゴリズムを記憶した非一時的記憶媒体と
を備え、
(d)前記機械学習アルゴリズムが、
前記少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される、
前記システム。
【請求項7】
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の前記距離を規制するスペーサ
を更に備えた、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項8】
2つの前記プレートの間の前記間隔、または前記スペーサの高さが、0.5マイクロメートル~30マイクロメートルで選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項9】
2つの前記プレートの間の前記間隔、または前記スペーサの高さが、10マイクロメートルである、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項10】
2つの前記プレートが、相互に移動可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項11】
2つの前記プレートの間の前記間隔、または前記スペーサの高さが、5秒、10秒、20秒、30秒、60秒、またはその値のいずれか2つの間の範囲の染色飽和時間を有するように選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項12】
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の前記距離を規制するスペーサ
を更に備えた、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項13】
前記試料が、組織である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、キット、及びシステム。
【請求項14】
前記機械学習アルゴリズムが、CycleGANを採用する、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項15】
前記機械学習アルゴリズムが、GANに基づく画素ごとの変換を採用する、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項16】
前記機械学習アルゴリズムが、
前記少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、前記染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項17】
前記機械学習アルゴリズムが、少なくとも、少なくとも4個の位置マーカを採用する、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項18】
前記機械学習アルゴリズムが、x方向に直交するy方向における方向とは異なる前記x方向における、前記位置マーカの間のジオメトリ及び/または内部距離を有する前記位置マーカを採用する、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項19】
前記試料が、羊水、房水、硝子体液、血液、母乳、脳脊髄液(CSF)、耳脂(耳垢)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、糞便、呼気、胃酸、胃液、リンパ液、粘液、心膜液、腹膜液、胸水、膿、粘膜の分泌物、唾液、呼気凝縮液、皮脂、精液、たん、汗、滑液、涙、嘔吐物、尿、及びいずれかのそれらの組み合わせからなる群より選択される体液を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項20】
前記染色が、H&E染色、免疫組織化学染色、免疫蛍光染色、及びin situハイブリダイゼーション染色、またはそれらのいずれかの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項21】
前記染色試薬が、前記プレートのうちの少なくとも一方の表面を被覆する乾燥染色試薬である、先行請求項のいずれか1項に記載のデバイス、キット、及び方法。
【請求項22】
前記染色試薬が、前記プレートのうちの少なくとも一方の表面を被覆する乾燥染色試薬であり、
前記染色溶液が、前記乾燥染色剤を前記試料に転写する転写液である、
先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、及び方法。
【請求項23】
前記スペーサが、位置マーカである、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項24】
隣接するスペーサの間の内部距離または隣接する位置マーカの間の内部距離が、50マイクロメートル~120マイクロメートルの範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項25】
可撓性プレートの厚み(h)及び前記可撓性プレートのヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(ISD)の4乗、ISD
4/(hE)が、10
6立方マイクロメートル/ギガパスカル以下である、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【請求項26】
前記スペーサ高さが、1.8~50マイクロメートルの範囲において選択され、前記IDSが、100マイクロメートル以下であり、前記可撓性プレートの前記厚み(h)及び前記ヤング率(E)によって除算された前記スペーサ間距離(IDS)の前記4乗(ISD
4/(hE))が、5×10
5立方マイクロメートル/ギガパスカル以下であり、
前記可撓性プレートの前記厚み×前記可撓性プレートの前記ヤング率が、60~750ギガパスカル-マイクロメートルの範囲にある、
先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる、2019年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/856,140号の利益を主張する。
【0002】
分野
とりわけ、本開示は、細胞及び/または組織染色及び撮像を実行するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学及び化学的検定(例えば、診断検査)では、生体試料を迅速、簡便、且つ低コストで染色視覚化及び分析する必要があることが多い。本発明は、それらの目標を達成するためのデバイス及び方法を提供する。特に、とりわけ、本発明は、試料を簡便(例えば、1段階)且つ迅速(例えば、60秒未満)に染色し、洗浄なしで撮像し、機械学習アルゴリズムによって、洗浄ありの標準的な染色と同様の最終画像を生成するデバイス及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの態様は、洗浄なしで迅速な病理学及び細胞学を実行することである。特に、本発明は、洗浄なしで且つ短いインキュベーション時間(数分未満または60秒以下)で、簡便且つ迅速に撮像する準備ができた試料を染色するデバイス及び方法に関する。
【0005】
本発明の別の態様は、機械学習アルゴリズムを使用して、洗浄なしの染色された試料から取得された画像からターゲット画像を生成することであり、ターゲット画像は、染色された試料で洗浄されるときと同様の品質を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、機械学習アルゴリズムが、洗浄なしの染色された試料の少なくとも1つの画像及び洗浄ありの染色された試料の少なくとも1つの画像を含む訓練データセットを使用して、訓練されることである。
【0007】
本発明の別の態様は、洗浄なしで試料を染色するためのキットであり、キットは、(a)相互に対向し、間隔が空けられた、第1のプレート及び第2のプレートと、(b)分析のために試料を染色する濃度の染色試薬と、を含み、試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしで撮像されたときに、試料の染色が視認可能であるように、間隔及び濃度が選択される。
【0008】
本発明の別の態様は、2つのプレートの間の間隔が、染色試薬を試料上で迅速に拡散することができ、染色が高速に(例えば、30秒以下または60秒以下)飽和に到達するように選択されることである。
【0009】
本発明は、仮想染色ではないが、むしろ、機械学習を通じて、画像が非常に低いコントラスト及び高い雑音レベル、またはその両方を有する、低濃度の試薬において染色された画像または大幅に短い染色時間で染色された画像から、高品質の染色された画像を生成する画像改良である。
【0010】
いくつかの実施形態では、洗浄なしで試料を染色及び撮像する方法であって、以下:
(a)第1のプレート及び第2のプレートを提供することと、
(b)第1のプレートと第2のプレートとの間で試料及び染色試薬を挟むことであって、染色試薬が試料を染色する、挟むことと、
(c)洗浄なしの染色された試料の第1の画像を捕捉することであって、洗浄が、染色試薬の少なくとも一部を除去する、捕捉することと、
(d)機械学習アルゴリズムを使用して、第1の画像から染色された試料のターゲット画像を生成することと、を含み、
機械学習アルゴリズムが、洗浄なしの染色された試料の少なくとも1つの画像及び洗浄ありの染色された試料の少なくとも1つの画像を含む訓練データセットを使用して、訓練される、方法。
【0011】
いくつかの実施形態では、洗浄なしで試料を染色するためのキットであって、
(a)相互に対向し、間隔が空けられた、第1のプレート及び第2のプレートと、
(b)分析のために試料を染色する濃度の染色試薬と、を含み、
試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしで撮像されたとき、試料の染色が視認可能であるように、間隔及び濃度が選択される、キット。
【0012】
いくつかの実施形態では、試料を染色及び撮像するためのシステムであって、
(a)先行実施形態に記載のキットと、
(b)第1のプレートと第2のプレートとの間で染色された試料の画像を捕捉するための撮像装置と、
(c)染色された試料の画像からターゲット画像を生成する機械学習アルゴリズムを記憶する非一時的記憶媒体と、を含み、
機械学習アルゴリズムが、洗浄なしの染色された試料の少なくとも1つの画像及び洗浄ありの染色された試料の少なくとも1つの画像を含む訓練データセットを使用して、訓練される、システム。
【0013】
いくつかの実施形態では、試料を染色及び撮像する方法であって、以下:
(a)第1のプレート及び第2のプレートを提供することであって、2つのプレートの一方または両方が、少なくとも3つの位置マーカを含み、少なくとも3つの位置マーカの各々のペアが、それらの間に予め定められた距離を有する、提供することと、
(b)第1のプレートと第2のプレートとの間で試料及び染色試薬を挟むことであって、染色試薬が、試料を染色する、挟むことと、
(c)染色された試料及び少なくとも3つの位置マーカの第1の画像を捕捉することと、
(d)機械学習アルゴリズムを使用して、第1の画像から染色された試料のターゲット画像を生成することと、を含み、
機械学習アルゴリズムが、
少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される、方法。
【0014】
いくつかの実施形態では、試料を染色するためのキットであって、以下:
(a)相互に対向し、間隔が空けられた、第1のプレート及び第2のプレートであって、プレートの一方または両方が、少なくとも3つの位置マーカを含み、少なくとも3つの位置マーカの各々のペアが、それらの間に予め定められた距離を有する、第1のプレート及び第2のプレートと、
(b)分析のために試料を染色する濃度の染色試薬と、を含み、
試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしで撮像されたとき、試料の染色が視認可能であるように、間隔及び濃度が選択される、キット。
【0015】
いくつかの実施形態では、試料を染色及び撮像するためのシステムであって、
(a)先行実施形態に記載のキットと、
(b)第1のプレートと第2のプレートとの間で染色された試料の画像を捕捉するための撮像装置と、
(c)染色された試料の画像からターゲット画像を生成する機械学習アルゴリズムを記憶した非一時的記憶媒体と、を含み、
(d)機械学習アルゴリズムが、
少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される、システム。
【0016】
第1のプレートと第2のプレートとの間の距離を規制するスペーサ
を更に含む、いずれかの先行実施形態に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【0017】
いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔、またはスペーサの高さは、0.5マイクロメートル~30マイクロメートルで選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔、またはスペーサの高さは、10マイクロメートルである。
【0019】
いくつかの実施形態では、2つのプレートは、相互に移動可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔、またはスペーサの高さは、5秒、10秒、20秒、30秒、60秒、またはその値のいずれか2つの間の範囲の染色飽和時間を有するように選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のプレートと第2のプレートとの間の距離を規制するスペーサを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、試料は、生体の組織である。
【0023】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、CycleGANを採用する。
【0024】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、GANに基づく画素ごとの変換を採用する。
【0025】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、
少なくとも3つの位置マーカ、及び条件の第1のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像、並びに
条件の第2のセットにおいて染色された、染色された試料の少なくとも1つの画像
を含む訓練データセットを使用して、訓練される。
【0026】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、少なくとも4個の位置マーカを採用する。
【0027】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、x方向に直交するy方向における方向とは異なるx方向における、位置マーカの間のジオメトリ及び/または内部距離を有する位置マーカを採用する。
【0028】
いくつかの実施形態では、試料は、羊水、房水、硝子体液、血液、母乳、脳脊髄液(CSF)、耳脂(耳垢)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、糞便、呼気、胃酸、胃液、リンパ液、粘液、心膜液、腹膜液、胸水、膿、粘膜の分泌物、唾液、呼気凝縮液、皮脂、精液、たん、汗、滑液、涙、嘔吐物、尿、及びいずれかのそれらの組み合わせからなる群より選択される体液を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、染色は、H&E染色、免疫組織化学染色、免疫蛍光染色、及びin situハイブリダイゼーション染色、またはそれらのいずれかの組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施形態では、染色試薬は、プレートのうちの少なくとも一方の表面を被覆する乾燥染色試薬である。
【0031】
染色試薬は、プレートのうちの少なくとも一方の表面を被覆する乾燥染色試薬であり、染色溶液は、乾燥染色剤を試料に転写する転写液体である、いずれかの先行実施形態に記載のデバイス、キット、システム、及び方法。
【0032】
いくつかの実施形態では、スペーサは、位置マーカである。
【0033】
いくつかの実施形態では、隣接するスペーサの間の内部距離または隣接する位置マーカの間の内部距離は、50マイクロメートル~120マイクロメートルの範囲にある。
【0034】
いくつかの実施形態では、可撓性プレートの厚み(h)及び可撓性プレートのヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(ISD)の4乗、ISD4/(hE)は、106立方マイクロメートル/ギガパスカル以下である。
【0035】
いくつかの実施形態では、スペーサ高さは、1.8~50マイクロメートルの範囲において選択され、IDSは、100マイクロメートル以下であり、可撓性プレートの厚み(h)及びヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(IDS)の4乗(ISD4/(hE))は、5×105立方マイクロメートル/ギガパスカル以下であり、可撓性プレート厚み×可撓性プレートのヤング率は、60~750ギガパスカル-マイクロメートルの範囲にある。
【0036】
いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、スペーサによって規制される。いくつかの実施形態では、2つのプレートは、開構成及び閉構成を含む、異なる構成に相互に移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
当業者は、以下で説明される図面は例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を何ら限定することを意図していない。図面は全体的に同一縮尺ではない。実験的データ点を提示する図面では、データ点を接続する線は、データを参照することを案内することのみのためである、他の意味を有さない。
【0038】
【
図1】機械学習を使用して、洗浄なしの低染色試薬濃度において高速染色によって調整された試料の画像からの高品質画像を達成する1つの実施形態である。
【
図2】洗浄なしの高速染色のための、1つの実施形態である(スペーサは任意選択である)。
【
図3】洗浄なしの1分のH&E染色のための、機械学習アルゴリズムについての訓練データセットを生成するための図である。短時間(例えば、60秒)の短い間隔により2つのプレートの間で低染色濃度において染色された組織の画像の第1のセット。次いで、第2のプレートが除去され、同一の組織が再度染色されるが、洗浄ありの標準的な染色手順を使用する。標準的な染色の後に画像の第2のセットが取得される。
【
図4】高分解能機械学習に基づく断定的染色(predicative staining)のための機械学習アルゴリズムを訓練する例示である。
【
図5】高分解能機械学習に基づく断定的染色のための機械学習アルゴリズムを使用する例示である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
例示的な態様の詳細な説明
以下の説明は、例として且つ限定なしに本発明のいくつかの実施形態を示す。本明細書で使用されるセクションの冒頭及びサブタイトルは、構成することのみを目的としており、説明される主題を限定すると解釈されることはない。セクションの冒頭及びサブタイトルの下の内容は、セクションの冒頭及びサブタイトルに限定されないが、本開示の全体的な説明に適用される。
【0040】
任意の刊行物の引用は、出願日の前のその開示のためであり、提示される特許請求の範囲が先行発明の理由でそのような刊行物に先行する権利を有しないことを自認すると解釈されるべきではない。更に、提供される公開日は、独立して確認する必要があることがある実際の公開日とは異なることがある。
【0041】
用語「本開示」及び「本発明」は、相互に交換可能である。
【0042】
用語「高速(FAST)」(大文字にある全て)は、それらに限定されないが、本発明によって説明される全ての高速染色デバイス及び/または方法を含む、本発明の「高速染色」を意味する。
【0043】
用語「Qカードを使用して、洗浄を使用することなく検定(病理学における染色を含む)を実行する」及び「Qカードを使用して、脱洗浄の検定(病理学における染色を含む)を実行する」は、相互に交換可能である。
【0044】
用語「洗浄」は、試料を染色するために使用される染色試薬の少なくとも一部を除去する溶液を使用することを指す。
【0045】
Qカードのプレートについての用語「閉構成にある」及び「閉構成における」は、相互に交換可能である。
【0046】
用語「分析物」及び「バイオマーカ」は、相互に交換可能である。
【0047】
用語「試料」は、それらに限定されないが、生体物質を含む。
【0048】
2つのプレート及び機械学習を使用した、洗浄なしの高速染色
今日の病理学及び細胞学では、試料を染色することは、試料が分析のために撮像される前に、複数のステップ及び少なくとも洗浄ステップを必要とすることが多い。
【0049】
本発明の1つの態様に従って、
図1及び2に示されるように、(i)試料及び染色試薬(または、染色試薬を包含した染色溶液)は、2つのプレートの間に配置され、次いで、染色試薬を洗い流すことなく分析のために試料が撮像され、(ii)画像の第1のセットを処理してターゲット画像を生成するために機械学習を使用し、機械学習アルゴリズムは、洗浄なしの染色された試料の少なくとも1つの画像及び洗浄ありの染色された試料の少なくとも1つの画像を含む訓練データセットを使用して、訓練される。
【0050】
洗浄なしの染色の第1のステップでは、試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしに撮像されるとき、試料が視認可能であるように、2つのプレートの間の間隔(よって、薄い試料及び染色試薬層)並びに染色試薬の濃度が選択される。
【0051】
いくつかの実施形態では、洗浄なしの高速染色及び撮像のために染色試薬濃度及びより短い染色時間が構成され、画像は、洗浄ありの通常の多段階染色にあるように高コントラストを有さないが、低染色濃度、より短い染色時間、及び洗浄されていない試料の低コントラスト画像から最終画像を構築するために、機械学習アルゴリズムが適用される。
【0052】
本発明は、仮想染色ではないが、むしろ、画像が非常に低いコントラスト及び高い雑音レベル、またはその両方を有する、低濃度の試薬において染色された画像または大幅に短い染色時間により染色された画像から、機械学習を通じて、高品質の染色された画像を生成する画像改良である。
【0053】
インキュベーション時間及び背景雑音を減少させるための2つのプレートの間の短い間隔
本発明に従って、2つのプレートの間の短い間隔は、いくつかの理由のために使用される。
(1)2つのプレートの間の短い間隔は、染色溶液の厚みを薄くさせ、それは、試料に到達する厚みにわたって染色溶液内の染色剤についての拡散距離を減少させ、よって、拡散時間及び飽和染色時間を減少させる。これは、短いインキュベーション時間につながる。これは、染色剤使用量を削減しコストを節約することもできる。
(2)2つのプレートの間の短い間隔は、染色溶液内の未消費の染色剤によって生成された画像内の背景雑音をも減少させる。所与の試料及び染色溶液の濃度について、2つのプレートの間の間隔が短いと(すなわち、薄層の厚みが短い)、撮像における背景雑音が少なくなり、染色された試料の画像がより鮮明になることを実験的に発見した。
【0054】
染色溶液の染色剤の濃度及び間隔
本発明に従って、2つのプレートの間の所与の短い間隔(薄い試料及び染色溶液層の厚みを成す)について、並びにインキュベーションの終わりに、染色溶液内にほとんど残ることなく、ターゲット組織または細胞を染色するために染色溶液内の染色剤のほとんどが消費されるように、染色内の染色剤の濃度が選択される。これは、画像における背景雑音を大幅に減少させることができ、染色剤に対するコストを節約することができる。これは、試料を過度に染色することを回避することもできる。
【0055】
試料によって受けられた総染色試薬は、2つのプレートの間の間隔及び染色試薬濃度の両方に依存する。いくつかの実施形態では、試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれ、洗浄なしに撮像されるとき、試料の染色が視認可能であるように、間隔及び濃度が選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、選択された間隔及び濃度を使用するときに洗浄なしの試料の染色を視認可能にさせるために、試料は明るく染色され、低コントラストである。本発明に従って、薄く染色され且つ洗浄なしの低コントラスト画像から、良好に染色及び洗浄された試料と同様の高コントラスト画像を生成するために、機械学習アルゴリズムが使用される。
【0057】
本発明に従って、Qカードを使用して検定する(染色することを含む)いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、染色飽和時間を有する検定が、5秒、10秒、20秒、30秒、60秒、90秒、120秒、180秒、300秒、600秒、またはその値のいずれか2つの間の範囲であるように構成される。いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、2つのプレートの間のスペーサの高さによって規制される。スペーサは、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲を有する。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、染色飽和時間は、5秒、10秒、20秒、30秒、60秒、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。いくつかの好ましい実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、20マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。いくつかの実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、10マイクロメートルである。いくつかの好ましい実施形態では、スペーサは、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、20マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲の高さを有する。いくつかの実施形態では、スペーサは、10マイクロメートルの高さである。
【0059】
洗浄なしの高速染色による試料を撮像するための機械学習アルゴリズムを訓練する例
図3は、洗浄なしの1分のH&E染色を撮像するための機械学習アルゴリズムについての訓練データセットを生成する実施形態を示す。訓練は、1.第1のプレート上に組織切片を配置すること、2.第1のプレートと第2のプレートとの間で組織及び染色溶液(H&E染色試薬)を挟み、洗浄なしの低染色試薬濃度を使用して、1分間染色すること、3.顕微鏡の下で染色された組織の画像の第1のセットを取得すること、4.第2のプレートを除去すること、5.洗浄ありの標準的な染色を使用して、明るく染色された組織を再度染色すること、6.顕微鏡の下で再染色された試料の画像の第2のセットを取得すること、7.機械学習アルゴリズムを訓練するために画像の第1のセット及び画像の第2のセットを使用すること、を含む。
【0060】
生体物質の高速染色のための機械学習アルゴリズムを訓練する別の例
図4は、本発明における高分解能機械学習に基づく断定的染色モデルを訓練する工程300のブロック図を示す。工程300の様々な実施形態では、いくつかのアクションが除去されてもよく、組み合わされてもよく、または下位のアクションに分割されてもよい。訓練工程は、変換モデル構築のために高速染色され且つ洗浄されていない画像を生成するアクションモジュール303において開始する。いくつかの実施形態では、アクションモジュール303は、以下を含む(ドメインAについての訓練データ生成-高速染色され且つ洗浄されていない試料の画像、及びドメインB-良好に染色及び洗浄された試料の画像)。
a.試料保持Qカード上に生体物質を配置し、染色試薬は、以下の方式のうちの1つまたは組み合わせにおいて生体物質に加えられる、配置すること。
i.
図2に表されるように、Qカードの第2のプレートに染色試薬を印刷し、
図2に示されるように、生体物質を染色試薬と接触させるよう、第2のプレートを閉鎖しすること、
ii.カードが開放されるとき、
図2における第1のプレート上で直接試料保持Qカード上の生体物質に染色試薬を加え、次いで、
図2に表されるようにカードを閉鎖し、染色試薬を生体物質に接触させること、及び/または
iii.第2のプレート上で染色試薬を印刷し、第2のプレートと試料との間で転写媒体を提供し、第1のプレートと第2のプレートとの間で転写媒体を挟むことであって、染色試薬が、転写媒体内で溶解して、試料内で拡散することができる、挟むこと。
b.いくつかの実施形態では、60秒などの高速染色時間間隔において、
図2に表されるように、閉鎖された(すなわち、試料及び染色試薬が第1のプレートと第2のプレートとの間で挟まれる)試料保持Qカード内の生体物質の画像を取得し、訓練データベースDB1についての画像を取得すること。
c.
図2に示されるように、第2のプレートを開放すると共に、第1のプレート上で生体物質を維持し、Qカード上で生体物質により多くの染色試薬を加えてインキュベートし、生体物質を染色する際に使用されない染色試薬を除去するよう洗浄を実行し、閉構成にあるQカード内の染色された生体物質の画像を取得し、訓練データベースDB2にそれらを保存すること。
【0061】
よって、構築された画像データベースDB1は、ドメインA-高速染色されたが洗浄されていない生体物質画像からの画像から構成され、DB2は、ドメインB-良好に染色及び洗浄された生体物質の画像からの画像を含む。次いで、DB1及びDB2は、機械学習アルゴリズムを訓練するために使用される。
【0062】
いくつかの実施形態では、DB1及びDB2内の画像は、同一の生体試料から得られる。いくつかの実施形態では、DB1及びDB2内の画像は、同一の生体試料及び試料の同一の領域から得られる。いくつかの実施形態では、DB1及びDB2内の画像は、異なる生体試料から得られ、一致するペアを形成しない。本発明では、DB1及びDB2内の画像は更に、
図2におけるプレート上の柱に従って、画像パッチに区画化される。また、機械学習モデル(すなわち、アルゴリズム)の訓練は、高速染色されたが洗浄されていない生体物質画像を、ガイダンスとしてDB2から画像を取得する、その良好に洗浄及び染色された対応する画像に変換する変換モデルを構築することである。いくつかの実施形態では、画像区画化を通じた訓練は、以下のアクションを含む。
a.DB1から画像を取得し、画像内のQカードの柱に従って各々の画像をパッチに分割することであって、各々の画像パッチが、第2のプレート(「xプレート」とも称される)上の4個の柱によって定められた4隅を有し、柱の各々のペアの間の距離が、カード(すなわち、プレート)の製造の間に予め定められ(すなわち、既知である)、各々の画像から切り取られたパッチをDB-Aに保存する(いくつかの実施形態では、柱の各々のペアの間の予め定められた距離を有する少なくとも3個の柱(「位置マーク」と称される)が使用される)、分割すること。
b.DB2から画像を取得し、画像内のQカードの柱に従って各々の画像をパッチに分割することであって、各々の画像パッチが、カードの製造からの既知の輪郭を有するQカードの4個の柱に対応する4隅を有し、各々の画像から切り取られたパッチをDB-Bに保存する、分割すること。
c.
図4ではコンポーネント303として表される、DB-Aから画像パッチを入力Aとして取得し、
図4ではコンポーネント312として表される、DB-Bからのパッチを入力Bとして取得すること。
d.高速染色されたが洗浄されていない試料の画像パッチのDB-A内の画像を、DB-B内の良好に洗浄された試料の画像パッチによって例証された良好に洗浄された染色試料画像の対応する画像のドメインに変換し、DB-B内の画像を、サイクル一貫性と、画像パッチの既知のエッジの輪郭が調整される追加の制約とを有するDB-Aの画像によって例証された高速染色されたが洗浄されていない試料画像のドメインに変換する、循環機械学習訓練を実行すること。
【0063】
いくつかの実施形態では、CycleGANなどの循環機械学習の使用は、得るのに困難であることがある2つの異なる画像ドメインから完全に調整された一致する画像のペアの要件を回避することである。CycleGANなどの循環機械学習は、G(F(x))~x及びF(G(y))~yであり、x∈ドメインA及びy∈ドメインBであるように、サイクル一貫性制約を伴う循環変換F:ドメインAからドメインB、及び循環変換G:ドメインBからドメインAのフレームワークに基づいている。
【0064】
CycleGAN機械学習において使用されるものなどのサイクル一貫性は、多くの用途を可能にするが、高変換忠実度のために改良される必要がある。本発明における画像をパッチに分割するためのQカードの柱構造の使用は、画像変換に追加の構造的制約を加える。したがって、画像パッチが対にされないときでさえ、カード(すなわち、プレート)の製造の間に柱の各々のペアの間の距離が予め定められた(すなわち、既知である)、第2のプレート上の4個の柱によって定められたそれらの4隅を使用して、画像を一致させることができる(多くのケースでは、例えば、ナノインプリントの高精度の製造工程を使用した高い精度の柱製造に起因して、一致は高精度を有する)。本発明におけるこの一意な構造的制約は、画像変換におけるサイクル一貫性を改良し、変換された画像における忠実度を改善する。
【0065】
いくつかの実施形態では、2つのドメインからの完全に調整された一致するペアが利用可能であり、訓練は、高速に染色されたが洗浄されていない試料画像を、検定用の最終的な染色及び洗浄された試料画像に変換するために、一致するペアの画像ごとの変換を使用する。
【0066】
生体物質の高速染色のために機械学習を使用する別の例
図5は、
図4において議論されたものなど、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、洗浄試料なしの高速染色のための機械学習に基づく断定的染色を実行する工程200のブロック図を示す。機械学習に基づく断定的染色は、以下を含む。
a.
図2に表されたように、試料保持Qカード内の生体物質の第1の画像を取得し、短い染色時間間隔、例えば、60秒の間に試料をインキュベーションすること。
b.
図5のアクションモジュール201及び203に示されるように、Qカード内の4個の柱に対応するその4隅を有する試料保持Qカード(例えば、第2のプレート上の)の柱の構造に従って第1の画像をパッチに分割すること。
c.
図5の工程300のモデル-高速染色機械学習モデル(すなわち、アルゴリズム)に基づいて、高速染色されたが洗浄されていない試料画像から、
図5のアクションモジュール203によって示されるような良好に染色及び洗浄された高分解能の対応する画像パッチと同様の新たな画像に変換するための機械学習に基づく断定的染色を実行すること。
d.
図5のアクションモジュール204及び205において表される検定のために、変換された画像パッチを最終的な高速洗浄された画像にステッチングすること。
【0067】
いくつかの実施形態では、訓練において収集された高速染色された画像は、例えば、30秒、60秒、90秒、120秒などの瞬間に取得された高速染色画像に対応する複数の時刻から取得される。いくつかの実施形態では、1つの機械学習モデルは、複数の時刻において取得された高速染色画像を、1つの良好に染色及び洗浄された高分解能画像に変換する。いくつかの実施形態では、その瞬間に高速且つ明るく染色された画像を1つの良好に染色及び洗浄された高分解能の対応する画像に変換するよう、選択された時刻ごとに別個の機械学習モデルが構築される。
【0068】
いくつかの実施形態では、高速染色のための画像変換に方向という追加の構造的制約が加えられ、柱は、y軸に並列なそれらのより長いエッジ及びx軸に並列なそれらのより短いエッジを有する矩形の形状において製造される。したがって、柱及び柱に囲まれた画像パッチの両方は、高忠実度のための画像変換における構造的制約を更に改良することができる向きを有する。いくつかの実施形態では、x方向における柱の周期は、y方向における周期とは異なる。
【0069】
いくつかの実施形態では、高速染色からの訓練画像パッチデータベースDB-Aは、画像の元の向きに沿って方向付けられる。その4隅の柱方向から柱に囲まれた画像パッチの向きを検出し、画像パッチを垂直にする必要がある場合、すなわち、4隅の柱の長いエッジがy軸に並列である場合に、画像パッチを回転させることによって、これが達成される。良好に洗浄及び染色された画像から得られたデータベースDB-B内の訓練画像パッチに対して、同じことが実行される。DB-A及びDB-B内の方位指定された画像データは、
図4に表された機械学習モデル訓練工程300において使用される。高速染色では、画像は柱に囲まれたパッチに分割され、それらの隅の柱の長いエッジがy軸に並列である元の向きを維持し、
図5の工程200は、検定のために、高速染色されたが洗浄されていない生体物質を、その良好に洗浄及び染色された対応する生体物質に変換するために実行される。
【0070】
洗浄なしの高速染色(H&E染色)による試料を撮像するための機械学習アルゴリズムを訓練する別の例
パラフィン包埋組織切片(Zyagen、CA)、10マイクロメートルの柱高のPMMAフィルム、ヘマトキシリン・エオジン染色キット(Vectorlab、CA)。
【0071】
実験的手順は、以下の通りである。
1.2倍のヒストクリアを使用して組織切片を脱パラフィンし、100%のエタノールから蒸留水に切片を水和させる。
2.画像の第1のセットに対し、薄く染色し、撮像する。
a.エッペンドルフチューブ内のヘマトキシリン・エオジン染色キット(Vecotr lab)からの5マイクロリットルのヘマトキシリン溶液及び5マイクロリットルを混合する。
b.10マイクロリットルのH&E染色溶液を組織切片に滴下し、10マイクロメートルの柱高のPMMAフィルムで覆い、1分間室温においてインキュベーションする。
c.顕微鏡の下で組織切片を撮像する。
3.撮像の後、10マイクロメートルの柱高のPMMAフィルムを徐々に除去し、蒸留水でスライドを洗浄し、標準的なH&E染色及び撮像のために同一の組織切片を続けて使用する。
4.画像の第2のセットに対する標準的なH&E染色及び撮像は以下の通りである。
a.組織切片を完全に覆うために、適切なヘマトキシリンを塗布し、5分間インキュベーションする。
b.過度な染色を除去するよう、2回交換した蒸留水(15秒ごとに)でスライドをすすぐ。
c.組織切片を完全に覆うために、適切なブルーイング試薬を塗布し、10~15秒間インキュベーションする。
d.2回交換(15秒ごとに)した蒸留水でスライドをすすぐ。
e.スライドを100%のエタノールに浸漬させ(10秒)、過度な部分を拭い去る。
f.組織切片を完全に覆うために、適切なエオジンY溶液を塗布し、2~3分間インキュベーションする。
g.100%のエタノールを使用してスライドをすすぐ(10秒)。
h.3回交換した100%のエタノール(1~2分ごと)でスライドを脱水する。
i.ヒストクリア及びカバーガラス
j.顕微鏡の下で標準的な染色された組織切片の画像の第2のセットを取得する。
5.画像の2つのセットを使用して機械学習アルゴリズムを訓練する。
【0072】
いくつかの実施形態では、撮像は、複数の画像を順次に取得する工程である。分析では、複数の画像が分析及び処理され、次いで、特定のアルゴリズム(信号処理及び機械学習を含む)にしたがって染色の最終画像を構築するために使用される。
【0073】
いくつかの実施形態では、2つの連続した画像の間の時間間隔は、1秒以下、10秒以下、30秒以下、60秒以下、90秒以下、120秒以下、150秒以下、240秒以下、300秒以下、またはその2つのいずれかの間の間隔である。
【0074】
いくつかの実施形態では、再構築アルゴリズムは、既知の最終結果に従って再構築を訓練する、機械学習アルゴリズムを使用する。
【0075】
いくつかの実施形態では、再構築アルゴリズムは、再構築のために各々の画像の特徴を選択する信号処理を使用し、信号処理アルゴリズムは、既知の最終結果の実例から決定される。
【0076】
いくつかの実施形態では、染色試薬の濃度は、通常の複数回の染色と比較して大幅に減少する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、それは、被験者の病気及び/または疾患を判定する更なるステップを含む。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態では、それは、単独またはいずれかの組み合わせで使用することができる、以下の特徴を含む。
1.2つのプレートは、QMAXカード内の2つのプレートであり、QMAXカードは、本発明の明細書の残りにおいて開示される。
2.容積A及びBの各々の容積は、撮像ステップの間、2つのプレートの1つと接触する容積の1つの面及び他のプレートと接触する容積の別の面を有する。
3.プローブは、分析物に特に結合するプローブを含む。
4.撮像ステップの前に、方法は、細胞を透過処理するステップを更に含む。
5.いくつかの実施形態では、細胞の透過処理は、プレートのうちの一方を乾燥透過処理剤で被覆することによって実行される。
6.上記ステップ(試料及びプローブを挟む)では、プローブは、プローブを形成する染色液を含み、染色溶液及び試料は、2つのプレートの間で挟まれる。
7.撮像される試料領域では、2つのプレートの間の間隔(すなわち、2つのプレートの内面の間の距離であり、内面は、試料に対向する面である面)は、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
いくつかの好ましい実施形態では、2つのプレートの間の間隔(すなわち、2つのプレートの内面の間の距離であり、内面は、試料に対向する面である面)は、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
8.Qカード上のスペーサは、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲の高さを有する。いくつかの好ましい実施形態では、Qカード上のスペーサは、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲の高さを有する。
9.撮像される試料領域では、2つのプレートの間の間隔は、分析物とプローブとの間で結合するための飽和時間が10秒以下、20秒以下、30秒以下、60秒以下、90秒以下、120秒以下、240秒以下、300秒以下、500秒以下、またはその値のいずれか2つの間の範囲になるように構成される。
【0079】
好ましい実施形態では、2つのプレートの間の間隔は、分析物とプローブとの間で結合するための飽和時間が10秒以下、20秒以下、30秒以下、60秒以下、90秒以下、または120秒以下になるように構成される。
【0080】
検定されることになる分析物、高速染色のための標識及び試料、染色における試料の画像を取得するために使用されるアダプタ、撮像デバイス(例えば、顕微鏡またはスマートフォン)、高速染色を実行するシステム、検定における真核生物または原核生物などの細胞タイプ、並びに本発明の高速検定に関連する病気及び疾患など、本開示の残りにおいて説明されるアプローチを示すために、追加の説明及び実施形態が提供される。高速染色の間、細胞は、形成の前または後のいずれかにおいて浸透することができる。細胞は、プローブにより検定信号を撮像するための基準として、デバイス、例えば、試料保持Qカード内で柱を有する単分子層を形成することができる。
【0081】
高速染色が多重化されてもよく、いくつかの実施形態では、複数のプローブ(すなわち、異なる種類のプローブ)が使用される。
【0082】
用語細胞を「透過処理する(permeabilizing)」は、抗体及び/または核酸などの大きな分子が細胞の内部に到達することを細胞が可能にすることを指す。
【0083】
また、いくつかの実施形態では、試料は、いずれの液体希釈なしの全血液である。
【0084】
更なる実施例
A1.いくつかの実施形態では、洗浄なしの生体物質を高速染色する方法であって、以下:
a)試料ホルダの平坦なスライドガラスに生体物質を堆積させることであって、試料ホルダが、開放及び閉鎖することができる2つの接触プレートを有し、それらの隙間の間で生体物質試料を維持し、複数の監視構造柱が接触面に配置され、複数の柱が、パターンに従って配置され、接触プレートが、生体物質内に複数の分析物を包含した試料と接触する、堆積させることと、
b)試料ホルダが開いているときに、接触面に染色試薬を印刷すること、もしくは試料に直接染色試薬を堆積させること、またはその2つの組み合わせによって、生体物質を染色することと、
c)試料ホルダの接触プレートを閉鎖し、試料を染色試薬と接触させ、洗浄なしに短い時間間隔において閉鎖した試料ホルダ内の試料の画像を取得することと、
d)(c)からの試料の高速染色され且つ洗浄されていない画像を非交和パッチに分割することであって、各々の画像パッチが、その4隅において柱によって囲まれる、分割することと、
e)高速染色され且つ洗浄されていない画像パッチを良好に染色及び洗浄された試料の画像に変換する画像変換モジュールに、(d)からの画像パッチを供給することであって、画像変換が、画像パッチの頂点においてカードの製造から、柱の既知のエッジ輪郭(すなわち、位置マーカ)または柱の間の距離が、変換において調整される制約により訓練された機械学習モデルに基づいている、供給することと、
f)変換された画像パッチを収集し、(e)からの変換された画像パッチを、検定用に高分解能染色された画像にステッチングすることと、
を含む、方法。
【0085】
A2.いくつかの実施形態では、
a)DB1において、試料保持プレートを閉鎖した状態で、複数の高速染色され且つ洗浄されていない生体物質画像を収集し、60秒などの予め設定された時刻で取得することと、
b)DB1内の各々の画像をその4隅において柱を有する柱に囲まれた画像パッチにセグメント化し、DB-Aにそれらを保存することと、
c)DB2において、試料保持プレートを閉鎖した状態で、良好に洗浄及び染色された画像の複数の画像を収集することと、
d)DB2内の各々の画像をその4隅において柱を有する柱に囲まれた画像パッチにセグメント化し、DB-Bにそれらを保存することと、
e)DB-A内の画像パッチをドメイン1からの入力として、及びDB-B内の画像パッチをドメイン2からの入力として取得し、画像パッチの頂点における柱の既知のエッジ輪郭が調整される追加の制約により、CycleGANなどの循環機械学習モデル訓練を実行することと、
f)生体物質の高速染色のために、高速染色され且つ洗浄されていない画像パッチをその高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された画像に変換する、前方変換モデルを保存することと、
を含む、生体物質の高速染色され且つ洗浄されていない画像を、検定におけるその高分解能染色され且つ良好に洗浄された対応する画像に変換する、画像変換を訓練することを更に含む、A1に記載の方法。
【0086】
A3:いくつかの実施形態では、DB1及びDB2内の画像パッチは対にされ、調整され、
a)対にされた画像ペアを形成するよう、DB-A内の画像パッチをDB-B内のその一致する画像パッチと対にすることであって、画像パッチが、それらの4隅において柱によりセグメント化される、対にすることと、
b)(a)からの対にされた画像ペアを入力として取得する、GANに基づく画像ごとの変換など、画像ごとの変換、及び画像パッチの頂点における既知のエッジ輪郭が調整される追加の制約に基づいて、機械学習モデルを訓練することと、
c)高速染色され且つ洗浄されていない画像を、その高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された対応する画像に変換する変換モデルを保存することと、
を更に含む、A2に記載の方法。
【0087】
A4:いくつかの実施形態では、
a.y軸に並列な4隅の柱の長いエッジを有する矩形の柱を使用することによって、A1、A2及びA3における画像パッチを画像の元の方向に方向付けすることと、
b.その4隅の柱の向きからA2及びA3のDB-A及びDB-B内の柱に囲まれた画像パッチの向きを検出し、画像パッチをその元の方向と調整させる必要がある場合、画像パッチを回転させることと、
c.画像変換を訓練する際に、指向性の方向付けられた画像パッチを適用し、高速染色され且つ洗浄されていない画像パッチの変換において画像パッチをその元の方向に方向付けることと、
d.検定のために、高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された画像を形成するよう、変換された画像パッチをステッチングすることと、
を更に含む、A1、A2、及びA3に記載の方法。
【0088】
A5:いくつかの実施形態では、高速染色され且つ洗浄されていない画像は、複数の時刻において撮像され、
a)複数の時刻における高速染色され且つ洗浄されていない全ての画像パッチを1つのデータベースに収集し、A2及びA3に続いて1つの機械学習変換モデルを訓練すること、または
b)サンプリング時刻、例えば、30秒、60秒、及び90秒ごとに、その瞬間に取得された高速染色され且つ洗浄されていない画像を、その高品質で、染色され且つ良好に洗浄された対応する画像に変換するよう、A2及びA3に続いてその時刻の間に別個の機械学習変換モデルを訓練すること、
を更に含む、A1、A2、及びA3に記載の方法。
【0089】
A6:いくつかの実施形態では、洗浄なしに、またはプロトコル/手順の全体が完了するのを待つことなく、初期の染色ステップから、生体物質についての高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された画像を生成する、高速染色し且つ洗浄しない方法であって、
a)複数の柱が既知のパターン及び形状に従って配置された試料ホルダ内に生体物質を堆積させることと、
b)試料ホルダ内の生体物質に染色試薬を堆積させることと、
c)60秒などの予め指定された時刻において試料ホルダ内の高速染色され且つ洗浄されていない生体物質の画像を取得することと、
d)高速染色され且つ洗浄されていない画像の画像を、4隅において柱により柱に囲まれたパッチにセグメント化することと、
e)画像パッチの頂点における柱の既知の輪郭が変換において調整される追加された制約を有する機械学習モデルを使用して、その高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された対応する画像への各々の画像パッチに対する変換を実行することと、
f)検定のために、生体物質の高分解能で、染色され且つ良好に洗浄された画像についての変換された画像パッチをステッチングすることと、
を含む、方法。
【0090】
プレス後の生検試料の上のスペーサの高さ
いくつかの実施形態では、プレス後の生検試料の上のスペーサの平均高さは、0.1マイクロメートル、0.2マイクロメートル、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、30マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
【0091】
いくつかの実施形態では、プレス後の生検試料の上のスペーサの好ましい平均高さは、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
【0092】
プレス後の生検試料の内部のスペーサの高さ
いくつかの実施形態では、プレス後の生検試料の内部のスペーサの平均高さは、0.1マイクロメートル、0.2マイクロメートル、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、30マイクロメートル、50マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
【0093】
いくつかの実施形態では、プレス後の生検試料の内部のスペーサの好ましい平均高さは、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、10マイクロメートル、またはその値のいずれか2つの間の範囲である。
【0094】
プレス前の試薬溶液の容積
いくつかの実施形態では、液体試薬がデバイスに加えられない。
【0095】
いくつかの実施形態では、染色試薬がデバイスのプレートの1つの上に印刷される。
【0096】
いくつかの実施形態では、プレス前に、液体試薬が第1のプレート、生検試料、または第2のプレートの上に加えられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、デバイスに加えられた液体試薬の容積は、0マイクロリットル、1マイクロリットル、2マイクロリットル、3マイクロリットル、5マイクロリットル、10マイクロリットル、20マイクロリットル、30マイクロリットル、50マイクロリットルまたはその値のいずれか2つの間の範囲である。
【0098】
可撓性プレートの厚み×ヤング率(hE)
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの厚み×可撓性プレートのヤング率は、1ギガパスカル・マイクロメートル~1000ギガパスカル・マイクロメートルの範囲にある。
【0099】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの厚み×可撓性プレートのヤング率は、10ギガパスカル・マイクロメートル~500ギガパスカル・マイクロメートルの範囲にある。
【0100】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの厚み×可撓性プレートのヤング率は、20ギガパスカル・マイクロメートル~150ギガパスカル・マイクロメートルの範囲にあることが好ましい。
【0101】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの厚み×可撓性プレートのヤング率は、1ギガパスカル・マイクロメートル~20ギガパスカル・マイクロメートルの範囲にあることが好ましい。
【0102】
可撓性プレートの厚み(h)及びヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(ISD)の4乗
いくつかの実施形態では、可撓性プレートの厚み(h)及びヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(IDS)の4乗(ISD4/(hE))は、5×106立方マイクロメートル/ギガパスカル以下である。
【0103】
いくつかの実施形態では、可撓性プレートの厚み(h)及びヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(IDS)の4乗(ISD4/(hE))は、1×106立方マイクロメートル/ギガパスカル以下である。
【0104】
いくつかの実施形態では、可撓性プレートの厚み(h)及びヤング率(E)によって除算されたスペーサ間距離(IDS)の4乗(ISD4/(hE))は、5×105立方マイクロメートル/ギガパスカル以下である。
【0105】
可撓性プレートの厚み(h)
いくつかの実施形態では、プレートは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの厚みは、1マイクロメートル~500マイクロメートルである。
【0106】
いくつかの実施形態では、プレートは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの好ましい厚みは、3マイクロメートル~175マイクロメートルである。
【0107】
いくつかの実施形態では、プレートは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの好ましい厚みは、5マイクロメートル~50マイクロメートルである。
【0108】
ヤング率(E)
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートのヤング率は、0.01ギガパスカル~100ギガパスカルである。
【0109】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートのヤング率は、0.1ギガパスカル~50ギガパスカルである。
【0110】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの好ましいヤング率は、1ギガパスカル~5ギガパスカルである。
【0111】
いくつかの実施形態では、プレートのうちの少なくとも1つは、可撓性プレートであり、可撓性プレートの好ましいヤング率は、0.01ギガパスカル~1ギガパスカルである。
【0112】
染色時間
いくつかの実施形態では、カードを閉鎖した後の染色時間は、10秒、20秒、30秒、60秒、90秒、120秒、またはその値のいずれか2つの間の範囲にあることが好ましい。
【0113】
撮像システム
いくつかの実施形態では、試料からの信号を検出する撮像システムは、それらに限定されないが、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、エレクトロケミルミネッセンス、光吸収、反射、透過、回折、散乱、または拡散、表面ラマン散乱、レジスタンス、キャパシタンス、及びインダクタンスから選択された電気インピーダンス、磁気相対性、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、撮像システムは、顕微鏡、明視野顕微鏡、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、倒立顕微鏡、複合光顕微鏡、ステレオ顕微鏡、デジタル顕微鏡、音響顕微鏡、電話方式顕微鏡である。
【0115】
分析システム
いくつかの実施形態では、分析システムは、それらに限定されないが、機械学習、教師あり機械学習、教師なし機械学習、及び強化学習を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、分析システムは、ソフトウェア分析及びヒューマン分析の両方を組み合わせる。
【0117】
本発明の1つの態様は、組織試料及び/または小さい容積の染色液を操作するために相互に移動可能なプレートのペアを利用すること、試料/染色液厚みを減少させること、試料と染色試薬との間で接触を成すことなど(それらの全てが組織染色に対して有利な効果を有する(染色を簡便化及び高速化し、脱洗浄化し、試薬を節約する))によって、容易且つ迅速な組織染色のためのデバイス及び方法を提供することである。
【0118】
本発明の別の態様は、液体試料及び/または染色液に接触すると、試料及び/または染色液内で溶解及び拡散される染色試薬で、プレート(複数可)の一方または両方の表面を被覆することによって、容易且つ迅速な組織染色をもたらすことであり、専門的な訓練の必要性なしに染色試薬を操作することを容易にする。
【0119】
本発明の別の態様は、試料にわたる大きな横方向面積にまたがる染色試薬についての同一の拡散距離につながる、試料及び/または染色液に均一な厚みの薄膜を形成させるために、プレート及び均一な高さの複数のスペーサを利用することによって、染色試薬への試料の均一なアクセスを保証することである。
【0120】
本発明の別の態様は、染色のためのプレートのペアを、プレートによって染色された組織試料の画像を獲得及び分析するように適合されたモバイル通信デバイスと組み合わせることによって、容易且つ迅速な組織染色及び撮像のためのシステムを提供することである。任意選択で、モバイル通信は、専門スタッフまたはソフトウェアによる記憶及び/または更なる分析並びに解釈のために撮像データ及び/または分析結果をリモート位置に送信するように構成される。
【0121】
本発明の別の態様は、免疫組織化学のためのデバイス、システム、及び方法を提供することである。
【0122】
本発明の別の態様は、H&E染色、特殊染色、及び/または細胞生存率染色のためのデバイス、システム、及び方法を提供することである。
【0123】
本発明の別の態様は、in situハイブリダイゼーションのためのデバイス、システム、及び方法を提供することである。
【0124】
本発明の別の態様は、洗浄なしに、及びいくつかの実施形態では単一のステップにおいて、生体物質を染色するための(例えば、細胞もしくは組織の染色、核酸染色、H&E染色、特殊染色、及び/または細胞生存率染色などのための)デバイス、システム、及び方法を提供することである。
【0125】
細胞学/細胞病理学検査及び診断におけるCROFカードの使用
本発明のいくつかの実施形態は、細胞学を迅速且つ簡便に使用して試料を収集及び分析することに関する。
【0126】
本発明に従って、細胞学を使用して試料を収集及び分析する方法は、
a.2つのプレートを含み、第2のプレートが相対的に移動可能である試料保持CROF(圧縮規制開放流)カードと、
b.被験者(例えば、人間または動物)から生体試料(すなわち、生検)を収集し、カードの第1のプレートの内面上に試料の一部または全てを堆積させることと、
c.(i)第1のプレートの面及び/もしくは試料の最上部、(ii)第2のプレートの内面、または(iii)その両方のいずれかの上に染色溶液を堆積させることと、
d.2つのプレートを共に閉構成に至らせることであって、第1のプレート及び第2のプレートの2つの内面が、相互に対向し、プレートの間の間隔が、プレートの間のスペーサによって規制され、染色溶液の少なくとも一部が、試料と第2のプレートの内面との間にある、至らせることと、
e.撮像装置を有し、分析のために試料保持カード内の試料を撮像することと、
f.試料の画像を分析する分析モジュールを有し、検定結果を生成することと、
を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、撮像による分析は、サイト分析である。
【0128】
いくつかの実施形態では、スペーサは、1つのプレートまたは両方のプレート上で固定され、いくつかの実施形態では、スペーサは、染色溶液の内部にある。
【0129】
いくつかの実施形態では、試料は、プレート上で滴下される前に、染色溶液と混合される。
【0130】
いくつかの実施形態では、染色溶液は、溶液内に染色剤(細胞/組織を染色するもの)を含む。いくつかの実施形態では、染色は、プレートのうちの一方を被覆している染色剤を、細胞/組織に運ぶように構成される。いくつかの実施形態では、染色溶液は、溶液内に染色剤(細胞/組織を染色するもの)を含み、プレートのうちの一方を被覆している染色剤を、細胞/組織に運ぶように構成される。
【0131】
いくつかの実施形態では、スペーサ高さは、第2のプレートと試料との間で染色溶液を洗い流すことなく、染色された細胞及び/または組織を撮像デバイスによって視認可能にさせるように構成される。
【0132】
いくつかの実施形態では、スペーサ高さは、プレートが閉構成に到達した後にプレートを開放することなく、染色された細胞及び/または組織を撮像デバイスによって視認可能にさせるように構成される。
【0133】
いくつかの実施形態では、試料は、第2のプレートと試料との間で染色溶液を洗い流すことなく染色され、プレートを閉構成に閉鎖した後、30秒以下、60秒以下、120秒以下、300秒以下、600秒以下、またはその2つのいずれかの間の範囲内に、撮像装置によって撮像される。
【0134】
いくつかの実施形態では、試料は、第2のプレートと試料との間で染色溶液を洗い流すことなく染色され、プレートを閉構成に閉鎖した後、30秒以下、60秒以下、120秒以下、またはその2つのいずれかの間の範囲内に、撮像装置によって撮像されている。
【0135】
いくつかの好ましい実施形態では、試料は、第2のプレートと試料との間で染色溶液を洗い流すことなく染色され、プレートを閉構成に閉鎖した後、30秒以下、60秒以下、またはその2つのいずれかの間の範囲内に、撮像装置によって撮像されている。
【0136】
いくつかの実施形態では、スペーサ高さは、0.2マイクロメートル(ミクロン)以下、0.5マイクロメートル以下、1マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、またはその2つのいずれかの間の範囲である。
【0137】
いくつかの実施形態では、スペーサ高さは、3マイクロメートル以下である。いくつかの好ましい実施形態では、10マイクロメートル以下である。いくつかの好ましい実施形態では、20マイクロメートル以下である。いくつかの好ましい実施形態では、30マイクロメートル以下である。
【0138】
いくつかの好ましい実施形態では、染色溶液は、プレートが閉構成になった後、サブノイズ厚み以下の厚みを有する。
【0139】
用語「サブノイズ厚み」(SNT)は、試料内または染色溶液内の雑音から光学標識が撮像装置に対して視認可能である厚みをよりも薄い、試料または染色溶液の厚みを指す。染色溶液をSNT未満にすることは、結合していない光学標識を洗い流す必要性を除去する。
【0140】
口腔癌診断の例
本発明に従って、試料は、被験者の口から綿棒によって剥離された上皮細胞である。口腔癌診断は、上皮細胞とその核のサイズ及び/または面積を測定することによって、及び/またはそれらのサイズ及び/または面積の比率を測定することによって行われてもよい。例えば、癌上皮細胞は、通常、上皮細胞を有し、その核面積比率は、通常の上皮細胞の比率よりも大きい。
【0141】
非喫煙者から喫煙者をスクリーニングする例
本発明に従って、試料は、被験者の口から綿棒によって剥離された上皮細胞である。喫煙者は、非喫煙者と比較して、異なる上皮細胞及びその核面積比率を有する。
【0142】
本発明の1つの用途は、細胞病理学にある。細胞病理学は一般的に、広範囲の身体部位から除去された遊離細胞または組織断片を使用して、細胞レベルにおいて病気を調査するために使用される。それは、がん及びいくつかの感染症または他の炎症状態をスクリーニング及び診断するために利用される主要なツールであった。例えば、細胞病理学の一般的な用途は、子宮頸癌につながることがある前癌性子宮頸部病変を検出するために使用される検査ツールであるパップスメアである。
【0143】
いくつかの実施形態について、生検材料を単分子層に処理(プレス)するためにQMAXデバイスが使用される。いくつかの実施形態では、生検試料は、以下の方法、針吸引、内視鏡検査及び切除、または切開手術のうちの1つまたは組み合わせを使用することによって身体から除去される。
a.皮膚病変、リンパ節、甲状腺、乳腺、肺、及び体腔からの針生検
b.組織口腔ブラシ材料からの塗抹標本、頸部(パップスメア)、体液、尿、痰(痰)、脊髄液、胸水、心膜液、腹膜液
c.以下からの内視鏡生検
i.消化管:食道、胃、十二指腸(食道胃十二指腸内視鏡検査)、小腸(腸内視鏡検査)、大腸/結腸(結腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査)、胆管、直腸(直腸鏡検査)、肛門(肛門鏡検査)、
ii.気道:鼻(鼻鏡検査)、下気道(光ファイバ気管支鏡検査)、
iii.耳:耳鏡検査
iv.尿路:膀胱鏡検査
v.女性の生殖管(婦人科):子宮頸部(コルポスコピー)、子宮(子宮鏡検査)、卵管(卵管鏡検査)
vi.小さな切開を通じた:腹部または骨盤腔(腹腔鏡検査)、関節の内部(関節鏡検査)、胸部の臓器(胸腔鏡検査及び縦隔鏡検査)
d.切除または切開により切除された組織または腫瘤からの手術生検
e.特定の実施形態では、例えば、いずれかの分子、細胞小器官、細胞、外側の細胞、またはオルガノイド構造を染色するためにQMAXデバイスが使用され、
f.生体分子は、それらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸(セレノシステイン、ピロリシン、カルニチン、オルニチン、GABA、タウリン)脂質(糖脂質、リン脂質、ステロール、アラキドン酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン)、脂肪酸、炭水化物(単糖類、二糖類、多糖類)、核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド)、いずれかの異化代謝産物、いずれかの代謝産物、二次代謝産物、ビタミン、反応性酸素/窒素種、ミネラル、ポリフェノール高分子、及び他の小分子を含み、
g.生体分子の修飾/反応は、それらに限定されないが、リン酸化、メチル化、アセチル化、脂質化、チオール反応、アミン反応、カルボン酸塩反応、ヒドロキシル反応、アルデヒド及びケトン反応を含み、
h.細胞小器官/細胞内構造は、それらに限定されないが、核、リボソーム、ペルオキシソーム、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、リソソーム、細胞膜、エンドソーム、エクソソーム、細胞骨格を含み、
i.いずれかの生理学的/病理学的状態を有する細胞のタイプは、それらに限定されないが、腫瘍内(いずれかの器官からのいずれかの上皮、及び血管内皮細胞、線維芽細胞、リンパ球に由来することがある)、神経細胞、脂肪細胞、間質細胞、軟骨細胞、網膜細胞、グリア細胞、平滑筋細胞、いずれかのタイプの幹細胞、いずれかのタイプの胚細胞、いずれかのタイプの内分泌細胞、いずれかのタイプの外分泌細胞、いずれかのタイプの免疫細胞、樹状細胞、骨髄細胞、造血細胞、リンパ球….:正常細胞、良性細胞、前悪性細胞、悪性細胞、形質転換細胞、静止細胞、増殖細胞、アポトーシス細胞、老化細胞、有糸分裂細胞、炎症細胞、過形成細胞、肥大細胞、萎縮細胞、過形成細胞、異形成細胞、化生細胞、…を含み、
j.結合組織/細胞外構造は、それらに限定されないが、緩い通常の結合組織、脂肪組織、血液及び造血組織、密な通常の結合組織、軟骨、骨、あらゆる種類の細胞外小胞、細胞外マトリックス、血小板…を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、QMAXデバイスは、以下の染色方法に対して使用される。
a.色素染色
i.パパニコロウ染色:ハリスヘマトキシリン、オレンジG6、EA50(エオシンY、ライトグリーンSF)
ii.メイ-グリュンワルド・ギムザ染色性(エオシンG、メチレンブルー)
iii.Ziehl-Neelsen染色
iv.改変Ziehl Neelsen(抗酸菌用)、グラム染色(バクテリア)、ムシカルミン(ムチン)、PAS(グリコーゲン、真菌壁、リポフスチンなど)、オイルレッドO(脂質)、パールズプルシアンブルー(鉄)、改変フーシェテスト(ビリルビン)
v.生体分子、オルガネラ、細胞、及び生体構造についてのあらゆる蛍光/非蛍光色素、例えば、核酸色素:シアニン色素(PicoGreen、OliGreen及びRiboGreen、SYBR Gold、SYBR GreenI及びSYBR GreenII、CyQUANTGR色素)、シアニンダイマー色素(SYTOX、POPO-1、TOTO-1、YOYO-1、BOBO-1、JOJO-1、POPO-3、LOLO-1、TOTO-3、PO-PRO-1、JO-PRO-1、YO-PRO-1、PO-PRO-3、YO-PRO-3、TO-PRO-3、TO-PRO-5)、アミン反応性シアニン色素(SYBR 101色素)、フェナントリジン及びアクリジン(臭化エチジウム(EB)及びエチジウムホモダイマー-1、ヨウ化プロピジウム(PI)、アクリジンオレンジ(AO)、ヨウ化ヘキシジウム、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモダイマー-1、エチジウムホモダイマー-2、エチジウムモノアジド、アクリジンホモダイマービス-(6-クロロ-2-メトキシ)-9-アクリジニル)スペルミン、ACMA)、インドール及びイミダゾール(Hoechst33258、Hoechst33342、Hoechst34580、DAPI)、7-アミノアクチノマイシンD及びアクチノマイシンD、ヒドロキシスチルバミジン、LDS751、ニッスル染色
b.IHC/IF染色
i.直接法、間接法、PAP法(ペルオキシダーゼ抗ペルオキシダーゼ法)、アビジン-ビオチン複合体(ABC)法、標識ストレプトアビジンビオチン(LSAB)法、高分子法(デキストランポリマー技術に基づくEnVisionシステム、ImmPRESS重合レポータ酵素染色システム)、CASシステム(DAKOより)、CSA II-ビオチンフリーチラミドシグナル増幅システム
c.ISH/FISH
i.方法:直接法及び間接法
ii.プローブ:二本鎖DNA(dsDNA)プローブ、一本鎖DNA(ssDNA)プローブ、RNAプローブ(リボプローブ)、合成オリゴヌクレオチド、標識プローブ:例えば、DIG(ジゴキシゲニン)、ビオチン、フルオロフォア(FITC、アレクサ、チラミドなど)
d.他の物質
いくつかの実施形態では、アクリジンオレンジ(50マイクログラム/マイクロリットル…から)及びヘマトキシリン染色液(Vector Laboratoriesより)が使用された。
【0145】
試料ホルダ
試料ホルダQカードは、スペーサ/柱を有する2つの並列プレートを含み、スペーサ/柱は、一貫した予め定義された距離だけ相互に分離した実質的に均一な高さ及びほぼ均一な断面を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、Qカードの可動プレートは、30×40マイクロメートルの柱サイズ、10マイクロメートルの柱高、及び80マイクロメートルの内部空間距離の柱アレイを有する、175マイクロメートルの厚みのPMMAである。いくつかの実施形態では、Qカードの可動プレートは、40マイクロメートルの直径の柱サイズ、10マイクロメートルの柱高、及び120マイクロメートルの内部空間距離の柱アレイを有する、175マイクロメートルの厚みのPMMAである。
【0147】
試料
本明細書で使用される用語「試料」は、他に指定されない限り、液体生体/化学試料または非液体試料を指すことに留意されるべきである。
【0148】
いくつかの実施形態では、液体試料は、血液及び唾液などの液体形態において本来得られる。いくつかの実施形態では、本来得られた試料標本は、液体状態になく、例えば、固体状態または気体状態にある。そのようなケースでは、非液体試料は、本開示によって提供されるデバイス及び方法を使用して収集及び保存されるときに液体形態に変換される。そのような変換のための方法は、それらに限定されないが、溶解なしの液体媒体との混合(最終生成物は懸濁液である)、液体媒体内での溶解、固体形態から液体形態への溶融、気体形態から液体形態への凝縮(例えば、呼気凝縮物)を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、試料は、開構成においてその上で乾燥されてもよく、試料は、羊水、房水、硝子体液、血液(例、全血、分画血液、血漿または血清)、母乳、脳脊髄液(CSF)、耳脂(耳垢)、乳び、糜粥、内リンパ、外リンパ、糞便、呼気、胃酸、胃液、リンパ液、粘液(鼻腔ドレナージ及び痰を含む)、心膜液、腹膜液、胸水、膿、粘膜の分泌物、唾液、呼気凝縮液、血清、精液、痰、汗、滑液、涙、嘔吐物、尿、並びにいずれかのそれらの組み合わせからなる群より選択される体液を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、開構成においてその上で試料を乾燥することができ、試料が血液塗抹標本を含み、一方または両方のプレート上で乾燥されるように構成される。
【0151】
いくつかの実施形態では、試料は、固体試料、例えば、組織切片である。いくつかの実施形態では、試料は、1~200マイクロメートルの範囲にある厚みを有する固体組織切片である。いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、試料に粘着する。いくつかの実施形態では、試料は、パラフィン包埋である。いくつかの実施形態では、試料は固定される(例えば、ホルマリン及びパラホルムアルデヒドなど)。
【0152】
染色液
いくつかの実施形態では、染色液の1つの主要な機能は、転写媒体としての役割を果たすことである。プレート(複数可)に貯蔵された(乾燥/被覆された)試薬は、染色液に接触すると、染色液内で溶解及び拡散する。したがって、染色液は、試料に対するプレート(複数可)に貯蔵された試薬についてのアクセスをもたらす転写媒体としての役割を果たす。
【0153】
いくつかの実施形態では、染色液の1つの主要な機能は、保持溶液としての役割を果たすことである。プレートが閉構成に入るようにプレスされるとき、いくつかの実施形態では、プレートは、液体試料によってもたらされる毛細管力のような力に起因して、外部圧縮力の除去の後、閉構成において「自己保持」するように構成される。試料標本が液体形態にないケースでは、液体媒体はよって、プレートの「自己保持」のために必要な毛細管力のようなそのような力をもたらす。
【0154】
いくつかの実施形態では、染色液は、最終溶液のpH値の平衡を保つためのバッファペアを含む。いくつかの実施形態では、染色液は、試料の特性を変化させることが可能な特定の成分を含まない。
【0155】
いくつかの実施形態では、染色液は、以下のセクションにおいて更に詳細に議論されるように、試料の処理、固定、または染色のために必要な試薬を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、染色液は、試料を固定することが可能な定着薬を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、染色液は、遮断剤を含み、遮断剤は、試料内の非特異的な内因性種が、ターゲット分析物を特に標識するために使用される検出剤により反応することを無効にするように構成される。
【0158】
いくつかの実施形態では、染色液は、試料内のパラフィンを除去することが可能な脱パラフィン剤を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、染色液は、ターゲット分析物を包含した組織試料内の細胞を透過処理することが可能な透過処理剤を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、染色液は、抗原の回復を促進することが可能な抗原回収剤(antigen retrieval agent)を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、染色液は、試料内のターゲット分析物を特に標識する検出剤を含む。
【0162】
プレート貯蔵サイト
いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、試料の処理、固定、または染色のために必要な試薬を包含した貯蔵サイトを含む。それらの試薬は、液体試料または染色液に接触すると、液体試料/染色液内で溶解及び拡散する。
【0163】
いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、遮断剤を包含した貯蔵サイトを含み、遮断剤は、試料内の非特異的な内因性種が、ターゲット分析物を特に標識するために使用される検出剤により反応することを無効にするように構成される。
【0164】
いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、試料内のパラフィンを除去することが可能な脱パラフィン剤を包含した貯蔵サイトを含む。いくつかの実施形態では.プレートの一方または両方の試料接触面積は、ターゲット分析物を包含した組織試料内の細胞を透過処理することが可能な透過処理剤を包含した貯蔵サイトを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では.プレートの一方または両方の試料接触面積は、抗原の回復を促進することが可能な抗原回復剤を包含した貯蔵サイトを含む。いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、試料内のターゲット分析物を特に標識する検出剤を包含した貯蔵サイトを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、プレートの一方または両方の試料接触面積は、捕捉剤を包含した結合サイトを含み、捕捉剤は、試料内の細胞の面上のターゲット分析物に結合し、細胞を不動化するように構成される。
【0167】
検出剤
いくつかの実施形態では、検出剤は、アシッドフクシン、アルシアンブルー8GX、アリザリンレッドS、アニリンブルーWS、オーラミンO、アゾカルミンB、アゾカルミンG、アズールA、アズールB、アズールC、ベーシックフクシン、ビスマルクブラウンY、ブリリアントクレシルブルー、ブリリアントグリーン、カーマイン、クロラゾールブラックE、コンゴーレッド、CIクレシルバイオレット、クリスタルバイオレット、ダローレッド、エオシンB、エオシンY、エリスロシン、エチルエオシン、エチルグリーン、ファストグリーンFCF、フルオレセインイソチオシアネート、ギムザ染料、ヘマトキシリン、ヘマトキシリン&エオシン、インディゴカーマイン、ヤヌスグリーンB、ジェンナー染料1899、ライトグリーンSF、マラカイトグリーン、マルティウスイエロー、メチルオレンジ、メチルバイオレット2B、メチレンブルー、メチレンブルー、メチレンバイオレット、(ベルントゼン)、ニュートラルレッド、ニグロシン、ナイルブルーA、ニュークリアファストレッド、オイルレッド、オレンジG、オレンジII、オルセイン、パラロサニリン、フロキシンB、プロタルゴールS、ピロニンB、ピロニン、レサズリン、ローズベンガル、サフラニンO、スーダンブラックB、スーダンIII、スーダンIV、テトラクロム染料(MacNeal)、チオニン、トルイジンブルー、ワイガート、ライト染料、及びいずれかのそれらの組み合わせからなる群より選択される染色のための色素を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、検出剤は、試料内のタンパク質分析物に特に結合するように構成された抗体を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、検出剤は、試料内のDNA及び/またはRNAに特に結合するように構成されたオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、検出剤は、レポータ分子により標識され、レポータ分子は、読み取られ、分析されることになる検出可能信号を提供するように構成される。
【0171】
いくつかの実施形態では、レポータ分子は、それらに限定されないが、IRDye800CW、Alexa790、Dylight800、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインジクロロトリアジンの5異性体、ケージドカルボキシフルオレセイン-アラニン-カルボキサミド、オレゴングリーン488、オレゴングリーン488、ルシファーイエロー、アクリジンオレンジ、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、ヨウ化プロピジウム、JC-1(5、5'、6、6'-テトラクロロ-1、1'、3、3'-テトラエチルベンズイミダゾイルカルボシアニンヨージド)、テトラブロモローダミン123、ローダミン6G、TMRM(テトラメチルローダミンメチルエステル)、TMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)、テトラメチルロサミン、ローダミンB及び4-ジメチルアミノテトラメチルロサミン、緑色蛍光タンパク質、青色シフト緑色蛍光タンパク質、シアンシフト緑色蛍光タンパク質、赤色シフト緑色蛍光タンパク質、黄色シフト緑色蛍光タンパク質、4-アセトアミド-4'-イソチオシアナトスチルベン-2、2'ジスルホン酸、アクリジン及びアクリジン、アクリジンイソチオシアネートなどの誘導体、5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフト-アリイミド-3、5ジスルホン酸、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、4、4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a、4aジアザ-5-インダセン-3-プロピオニ-c酸BODIPY、カスケードブルー、ブリリアントイエロー、クマリン及び誘導体:クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)、シアニン色素、シアノシン、4’、6-ジミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、5’、5”-ジブロモピロガロールスルホナフタレイン(ブロモピロガロールレッド)、7-ジエチルアミノ-3-(4'-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、4、4'-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2-、2'-ジスルホン酸、4、4'-ジイソチオシアナトスチルベン-2、2'-ジスルホン酸、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド)、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-イソチオシアネート(DABITC)、エオシン及び誘導体:エオシン、エオシンイソチオシアネート、エリスロシン及び誘導体:エリスロシンB、エリスロシン、イソチオシアネート、エチジウム、フルオレセイン及び誘導体:5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4、6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノ-フルオレセイン(DTAF)、2'、7'ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、QFITC、(XRITC)、フルオレスカミン、IR144、IR1446、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4-メチルウンベリフェロンオルトクレソルフタレイン、ニトロチロシン、パラロサニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、オフタルジアルデヒド、ピレン及び誘導体、ピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレン、ブチレート量子ドット、リアクティブレッド4(Cibacron(商標)ブリリアントレッド3B-A)ローダミン及び誘導体:6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリドローダミン(ローダミン)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXアイソスイオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、5スルホローダミンの塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N、N、N'、N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルホダミンイソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、ロソル酸、CALフルオロオレンジ560、テルビウムキレート誘導体、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRD700、IRD800、ラホヤブルー、フタロシアニン、ナフタロシアニン、クマリン及び関連色素、ロドール、レゾルフィン、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素などのキサンテン色素、ルミノールなどのアミノフタル酸ヒドラジド、イソルミノール誘導体、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノ複合体、蛍光性ユーロピウム及びテルビウム錯体、それらの組み合わせ、などを含む、蛍光分子(フルオロフォア)を含む。適切な蛍光タンパク質及び発色性タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)があるが、それらに限定されず、エクオレアビクトリアに由来するGFPまたはその誘導体、例えば、Enhanced GFP、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)、レニラ・ムレリ(Renilla mulleri)、またはプチロ サルカス・グエルニ(Ptilosarcus guernyi)などの別の種からのGFP、「ヒト化」組換えGFP(hrGFP)、花虫類由来の様々な蛍光タンパク質及び着色タンパク質のいずれか、並びにいずれかのそれらの組み合わせなどを含むがそれらに限定されない、GFPを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、信号は、以下からなる群より選択される。
i.フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、及びエレクトロケミルミネッセンスから選択されたルミネセンス、
ii.光吸収、反射、透過、回折、散乱、または拡散、
iii.表面ラマン散乱、
iv.レジスタンス、キャパシタンス、及びインダクタンスから選択された電気インピーダンス、
v.磁気緩和率
vi.i~vのいずれかの組み合わせ。
【0173】
免疫組織化学
いくつかの実施形態では、本開示のデバイス及び方法は、試料に対して免疫組織化学を行うために有用である。
【0174】
免疫組織化学的(IHC)染色法では、組織試料が固定され(例えば、パラホルムアルデヒドにおいて)、任意選択でワックスで包埋され、100マイクロメートル未満の厚み(例えば、2マイクロメートル~6マイクロメートルの厚み)である薄い切片にスライスされ、次いで、スライドガラスなどの支持部に取り付けられる。取り付けられると、組織切片は、濃度を高めたアルコール洗浄を使用して脱水されてもよく、キシレンなどの洗剤を使用して取り除かれてもよい。特定のケースでは、固定は例えば、血液塗抹標本染色のための任意選択のステップでもある。
【0175】
ほとんどのIHC法では、一次抗体及び二次抗体が使用されてもよい。そのような方法では、一次抗体は、対象の抗原(例えば、バイオマーカ)に結合し、標識されない。二次抗体は、一次抗体に結合し、レポータ分子または溶液内にあるレポータ分子を補充することができるリンカー分子(例えば、ビオチン)のいずれかに直接接合される。代わりに、一次抗体自体がレポータ分子または溶液内にあるレポータ分子を補充することができるリンカー分子(例えば、ビオチン)のいずれかに直接接合されてもよい。レポータ分子は、フルオロフォア(例えば、FITC、TRITC、AMCA、フルオレセイン、及びローダミン)並びにアルカリホスファターゼ(AP)及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素を含み、それらに対してDABまたはBCIP/NBTなどの様々な蛍光発生基質、発色基質、及び化学発光基質が存在する。
【0176】
直接法では、結合バッファ内の標識された一次抗体(例えば、FITC共役抗体)により組織切片がインキュベーションされる。一次抗体は、組織切片内で抗原と直接結合し、いずれかの結合されていない一次抗体を除去するよう組織切片が洗浄された後、切片が顕微鏡によって分析されることになる。
【0177】
間接法では、組織内のターゲット抗原に結合する標識されていない一次抗体により組織切片がインキュベーションされる。結合されていない一次抗体を除去するよう組織切片が洗浄された後、一次抗体に結合する標識された二次抗体により組織切片がインキュベーションされる。
【0178】
抗原の免疫組織化学染色の後、コントラストをもたらし、及び/または他の特徴を識別するために、別の色素、例えば、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、及びDAPIにより組織試料が染色されてもよい。
【0179】
本デバイスは、組織試料を免疫組織化学染色するために使用されてもよい。それらの実施形態では、デバイスは、第1のプレート及び第2のプレートを含んでもよく、プレートは、異なる構成に相互に移動可能であり、一方または両方のプレートは可撓性であり、プレートの各々は、そのそれぞれの面上に、組織試料またはIHC染色液に接触するための試料接触領域を有し、第1のプレート内の試料接触領域は、平坦且つ平面であり、第2のプレート内の試料接触領域は、面上に固定され、予め定められた実質的に均一な高さ及び7マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲にある予め定められた一定のスペーサ間距離を有するスペーサを含み、
構成の1つは、2つのプレートが完全にまたは部分的に間隔を空けられた開構成であり、プレートの間の間隔は、スペーサによって規制されず、構成のもう一方は、開構成内の試料及び染色液の堆積の後に構成された閉構成であり、閉構成では、試料の少なくとも一部は、2つのプレートの間にあり、染色液の少なくとも一部の層は、試料の少なくとも一部と第2のプレートとの間にあり、染色液層の少なくとも一部の厚みは、プレート、試料、及びスペーサによって規制され、わずかな変動を有する250マイクロメートル以下の試料面と第2のプレート面との間の平均距離を有する。
【0180】
上記議論されたように、いくつかの実施形態では、デバイスは、プレートの一方または両方の試料接触領域を被覆する乾燥IHC染色剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、デバイスは、第2のプレートの試料接触領域を被覆する乾燥IHC染色剤を含んでもよく、IHC染色液は、乾燥IHC染色剤を溶解する液体を含む。いくつかの実施形態では、試料の厚みは、2マイクロメートル~6マイクロメートルである。
【0181】
H&E、特殊染色、及び細胞生存率染色
いくつかの実施形態では、本開示のデバイス及び方法は、H&E染色、特殊染色、及び細胞生存率染色を行うために有用である。
【0182】
ヘマトキシリン及びエオシン染色またはヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色またはHE染色)は、組織学における主要な染色の1つである。これは、医療診断において最も広く使用されている染色であり、代表的な染色であることが多く、例えば、病理学者が疑わしい癌の生検を見るとき、組織切片はH&Eにより染色される可能性が高く、「H&E切片」、「H+E切片」、または「HE切片」と称される。ヘマトキシリンとエオシンの組み合わせで、青、紫、及び赤を生成する。
【0183】
診断病理学では、「特殊染色」という用語は、臨床環境内で最も一般的に使用され、標本に色を付けるために使用されるH&E法以外のいずれかの技術を単純に意味する。これは、免疫組織化学的染色及びin situハイブリダイゼーション染色も含む。一方、H&E染色は、組織学及び医療診断研究所において最も一般的な染色方法である。
【0184】
いずれかの実施形態では、乾燥結合サイトは、抗体または核酸などの捕捉剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、遊離可能乾燥試薬は、蛍光標識試薬、例えば、蛍光標識抗体または細胞染料、例えば、ロマノフスキー染料、レーシュマン染料、メイ・グリュンヴァルト染料、ギムザ染料、ジェンナー染料、ライト染料、またはそれらのいずれかの組み合わせ(例えば、ライト-ギムザ染料)などの標識試薬であってもよい。そのような染料は、メチレンブルーを有するエオジンYまたはエオジンBを含んでもよい。特定の実施形態では、染料は、ヘマトキシリンなどのアルカリ性染料であってもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、特殊染料は、それらに限定されないが、アシッドフクシン、アルシアンブルー8GX、アリザリンレッドS、アニリンブルーWS、オーラミンO、アゾカルミンB、アゾカルミンG、アズールA、アズールB、アズールC、ベーシックフクシン、ビスマルクブラウンY、ブリリアントクレシルブルー、ブリリアントグリーン、カーマイン、クロラゾールブラックE、コンゴーレッド、C.I.クレシルバイオレット、クリスタルバイオレット、ダローレッド、エオシンB、エオシンY、エリスロシン、エチルエオシン、エチルグリーン、ファストグリーンFCF、フルオレセインイソチオシアネート、ギムザ染料、ヘマトキシリン、ヘマトキシリン&エオシン、インディゴカーマイン、ヤヌスグリーンB、ジェンナー染料1899、ライトグリーンSF、マラカイトグリーン、マルティウスイエロー、メチルオレンジ、メチルバイオレット2B、メチレンブルー、メチレンブルー、メチレンバイオレット、(ベルントゼン)、ニュートラルレッド、ニグロシン、ナイルブルーA、ニュークリアファストレッド、オイルレッド、オレンジG、オレンジII、オルセイン、パラロサニリン、フロキシンB、プロタルゴールS、ピロニンB、ピロニン、レサズリン、ローズベンガル、サフラニンO、スーダンブラックB、スーダンIII、スーダンIV、テトラクロム染料(MacNeal)、チオニン、トルイジンブルー、ワイガート、ライト染料、及びいずれかのそれらの組み合わせを含む。
【0186】
用語「細胞生存率染色」は、組織試料の内部の生きた細胞及び死滅した細胞を差別的に染色するために使用される染色技術を指す。通常、生きた細胞と死滅した細胞との間の細胞膜及び/または核膜透過性における差異は、差別的染色のために有利と見なされる。他のケースでは、アポトーシスまたはネクローシス(乾燥細胞または細胞死を示す)についてのマーカは、そのような染色のために使用される。
【0187】
いくつかの実施形態では、デバイスは、プレートの一方または両方の上で、細胞生存のために試料を染色するための色素を含む。いくつかの実施形態では、色素は、それらに限定されないが、ヨウ化プロピジウム(PI)、7-AAD(7-アミノアクチノマイシンD)、トリパンブルー、カルセインバイオレットAM、カルセインAM、様々なフルオロフォアと結合された固定可能生存色素(FVD)、SYTO9及びその他の核酸色素、レサズリン及びホルマザン(MTT/XTT)及びその他のミトコンドリア色素、並びにいずれかのそれらの組み合わせなどを含む。いくつかの実施形態では、試料は、バクテリアを含み、試料内のバクテリア生存を判定することが望ましく、デバイスは更に、プレートの一方または両方の上で、生きた細胞対死滅した細胞を差別的に染色するためのバクテリア生存色素、例えば、PI及びSYTO9などを含む。任意選択で、デバイスは更に、プレートの一方または両方の上で、全バクテリア染色のための色素、例えば、グラム染色試薬などを含む。
【0188】
in situハイブリダイゼーション
いくつかの実施形態では、本開示のデバイス及び方法は、組織学的試料に対してin situハイブリダイゼーション(ISH)を行うために有用である。
【0189】
in situハイブリダイゼーション(ISH)は、組織の一部もしくは切片内(in situ)、または組織が十分に小さい場合(例えば、植物の種子、ショウジョウバエの胚)、組織全体内(ホールマウントISH)、細胞内、及び循環腫瘍細胞(CTC)内で特定のDNAまたはRNA配列を特定するために、標識相補DNA、RNA、または修飾核酸鎖(すなわち、プローブ)を使用するタイプのハイブリダイゼーションである。
【0190】
in situハイブリダイゼーションは、染色体上または組織内の特定の核酸配列の位置を明らかにするために使用され、遺伝子の構成、規制、及び機能を理解するための重要なステップである。現在使用されている核となる技術は、オリゴヌクレオチド及びRNAプローブ(放射線標識及びハプテン標識の両方)によるmRNAに対するin situハイブリダイゼーション、光及び電子顕微鏡による分析、ホールマウントin situハイブリダイゼーション、RNA及びRNAプラスタンパク質の二重検出、及び染色体配列を検出するための蛍光in situハイブリダイゼーションを含む。染色体の構造を判定するために、DNA ISHが使用されてもよい。例えば、染色体整合性を評価するために医療診断において蛍光DNA ISH(FISH)が使用されてもよい。組織切片、細胞、ホールマウント、及び循環腫瘍細胞(CTC)内でRNA(mRNA、lncRNA、及びmiRNA)を測定及び特定するためにRNA ISH(RNA in situハイブリダイゼーション)が使用される。
【0191】
いくつかの実施形態では、検出剤は、in situハイブリダイゼーション染色のための核酸プローブを含む。核酸プローブは、それらに限定されないが、試料内のDNA及び/またはRNAに特に結合するように構成されたオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【国際調査報告】