(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】TGF-ベータワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220728BHJP
C07K 14/495 20060101ALI20220728BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220728BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220728BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220728BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220728BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220728BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220728BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20220728BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/495 ZNA
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K38/02
A61K45/00
A61K35/76
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K38/22
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571915
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2020065472
(87)【国際公開番号】W WO2020245264
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ ハルド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD21
4B065CA44
4C084AA02
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4C084BA19
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4C087ZB27
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4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、TGFb1に由来する新規なポリペプチドに関する。本発明はまた、ポリペプチドの使用、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびそれらの使用、ならびに前記ポリペプチドを含む組成物およびそれらの使用に関する。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトトランスフォーミング成長因子1(TGFb1)の免疫原性断片であり、かつ配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1の最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含むまたはそれからなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号66、28~31、67、5~9、42~45、12~15、55~58、23~26、49~52、63、64、65または2のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号66、28、67、5、6、42、12、55、23、49または63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45もしくは50アミノ酸の最大長を有する、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
HLA-A2拘束性エピトープを含み、場合によりここで、HLA-A2拘束性エピトープが、配列番号66または67のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
場合により、ベクター内に含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドおよび/または請求項7に記載のポリヌクレオチド;および場合によりアジュバントを含む、組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの異なるポリペプチド;請求項7に記載の少なくとも1つの異なるポリヌクレオチド;および/または少なくとも1つの薬学上許容可能な希釈剤、担体または保存剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、イミダゾキニリン、モンタニドISAアジュバントからなる群から選択されるアジュバントを含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
対象における疾患または病態を治療または予防する方法であって、前記方法が、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記疾患または病態が、
(i)場合により、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、黒色腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、もしくは前立腺癌からなる群から選択される癌である;および/または
(ii)TGFb1発現細胞の不適切なもしくは過剰な免疫抑制機能ならびに/またはIL-4および/もしくはIL-13の不適切なもしくは過剰な発現を少なくとも部分的に特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患または病態が癌であり、前記方法が、追加の癌療法、好ましくは抗体の、同時投与または逐次投与をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
TGFb1特異的T細胞を刺激する方法であって、前記方法が、T細胞を、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドおよび/または請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含み、前記組成物は、請求項1~6のいずれか一項で定義される少なくとも1つのポリペプチドを含む、方法。
【請求項15】
前記T細胞が、健常対象または癌患者から採取されたサンプル、場合により腫瘍サンプル中に存在する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGFβ1;TGFb1)に由来する新規なポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびこのようなペプチドを含む組成物に関する。本発明はまた、前記ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および組成物の使用および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
TGFbは、免疫系の調節に重要な役割を果たす多機能性サイトカインである。4種のアイソフォームが存在し、そのうち、アイソフォーム1(TGFb1)が、T細胞免疫において特に重要である。癌の文脈において、TGFb1は、細胞傷害性T細胞(CTL)、腫瘍関連好中球およびナチュラルキラー(NK)細胞などの種々の免疫細胞を無効化(disarm)する。これはまた、腫瘍の血管新生および転移にも寄与する。結果的に、TGFb1は、免疫系の抗腫瘍機構のダウンレギュレーションに寄与し、癌細胞による免疫回避を可能にする、腫瘍微小環境(TME)における重要な阻害分子である。
【0003】
転移性肝臓癌のマウスモデルの最近の試験において、TGFb1は、PD-L1遮断などの免疫チェックポイント遮断薬(ICB)の癌療法としての効率の減少に寄与することも認められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明のポリペプチドは、TGFb1発現細胞に対する有益な免疫応答を刺激するのに特に有効であると期待される。癌に対する新規な免疫療法の開発は、病因に関与する分子および免疫系によって認識される特異的タンパク質の徹底的な理解を必要とする。臨床状況において、TGFb1特異的な免疫応答の誘導は、TGFb1発現癌細胞を直接死滅させ得るが、より重大なことに、これは、TGFb1の免疫抑制機能を抑制することにより、一般に抗癌免疫応答を支持する。例えば、本発明のポリペプチドのワクチン接種により、TGFb1およびTGFb1発現細胞を標的とすることは、結果的に、免疫チェックポイント遮断薬(ICB)などの追加の抗癌免疫療法と高度に相乗的となる。
【0005】
TGFb1は、分子内ジスルフィド結合によって一緒に接続されたシステインノット構造を共有する二量体サイトカインである。TGFb1は、単量体390アミノ酸前駆体タンパク質として合成され、これは、TGFb1プレタンパク質;TGFb1前駆体;全長TGFb1;プレプロTGFb1と互換的に呼ばれる。TGFb1プレタンパク質の全長配列は、配列番号1として提供される。
【0006】
TGFb1プレタンパク質単量体は、約25kDaの分子量を有する。TGFb1タンパク質単量体は、
図1Eに示されるように、3つの異なるドメイン:シグナルペプチド(SP:アミノ酸1~29;配列番号2)、潜在関連ペプチド(LAP:アミノ酸30~278;配列番号3)および成熟ペプチド(成熟TGFb1:アミノ酸279~390;配列番号4)を有する。
【0007】
TGFb1 SPは、該タンパク質を分泌経路に指向させる;SPは、粗面小胞体において切断される。LAPおよび成熟TGFb1を含むTGFb1単量体は、LAP(例えば、Cys223およびCys225)ならびに成熟TGFb1ペプチド(例えば、Cys356)におけるシステイン残基間のジスルフィド架橋を介して小胞体において二量体化し、TGFb1ホモ二量体を形成し得る。このTGFb1ホモ二量体は、小潜在型複合体(SLC)という。SLCは、いわゆる潜在型TGF-β結合タンパク質(LTBP)に結合され、大潜在型複合体(LLC)と呼ばれるより大きな複合体を形成し得る。LLCは、細胞外培地(ECM)に分泌され得る。しかしながら、LAPおよびLTBPの存在が、TGFb1がその細胞外受容体に結合し、それを活性化することを妨げる。活性型TGFb1は、成熟TGFb1ペプチドのホモ二量体からなる。成熟TGFb1ホモ二量体がLAPおよびLTBPから放出される種々の機序が存在し、プロテアーゼによるLAPの分解、トロンボスポンジンとの相互作用によるLAPのコンフォメーション変化の誘導、ならびにLAPおよびTGFβ-1間の非共有結合の破壊が挙げられる。
【0008】
本発明の目的は、TMEからTGFb1を奪うためのT細胞媒介機序の開発である。本発明者らは、健常ドナーおよび癌患者由来のPBMCをスクリーニングすることにより、in vivoにおける自発的なTGFb1特異的なT細胞応答の存在を検討した。次いで、TGFb1特異的なT細胞集団を単離し、増幅し、HLA拘束性、サイトカイン産生および細胞傷害性に関する種々のアッセイにより特徴付けた。
【0009】
本発明者らは、ヒトTGFb1の最大の免疫原性を有する領域を同定した。意外にも、これらの免疫原性「ホットスポット」領域は、SPおよびLAPドメイン内、ならびに成熟TGFb1ペプチド内を含む、ヒトTGFb1プレタンパク質の至る所に分布している。本発明者らはまた、より大きな頻度の免疫原性ペプチド配列を有するヒトTGFb1 LAP内のサブ領域(sub-region)、すなわち、配列番号1の121~160位(配列番号65の配列に対応)を同定した。
【0010】
よって、本発明は、ヒトTGFb1(配列番号1)の免疫原性断片であり、かつ配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなるポリペプチドを提供する。配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列は、配列番号2または65の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列に対応し得る。ポリペプチドは、配列番号1の最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含んでもよいまたはそれからなってもよい。ポリペプチドは、配列番号6、42、12、23、28、49、55、63、7~9、43~45、13~15、24~26、29~31、50~52、56~58、64、65、2、66、67、または5のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなってもよく、好ましくは、ポリペプチドは、配列番号6、42、12、23、28、49、55、63、66、67または5のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。ポリペプチドは、配列番号66、28~31、67、5~9、42~45、12~15、55~58、23~26、49~52、63、64、65または2のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなってもよく、好ましくは、ポリペプチドは、配列番号66、28、67、5、6、42、12、55、23、49、または63のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0011】
ポリペプチドは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50アミノ酸の最大長を有してもよい。ポリペプチドのC末端アミノ酸は、対応するアミドに置換されてもよい。ポリペプチドは、HLA-A2拘束性エピトープを含んでもよい。HLA-A2拘束性エピトープは、配列番号66または67のアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなってもよい。
【0012】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。ポリヌクレオチドは、単離されていてもよい。ポリヌクレオチドを含むベクターも、本発明により提供される。
【0013】
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよび/または本発明のポリヌクレオチドおよび場合によりアジュバントを含む組成物を提供する。組成物は、本発明の少なくとも1つの異なるポリペプチド;本発明の少なくとも1つの異なるポリヌクレオチド;および/または少なくとも1つの薬学上許容可能な希釈剤、担体もしくは保存剤をさらに含んでもよい。アジュバントは、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、イミダゾキニリン(imidazochiniline)、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択され得る。
【0014】
本発明はまた、対象における疾患または病態を治療または予防する方法であって、前記方法が、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、および/または本発明の組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。方法は、追加の癌療法、好ましくは、抗体の同時投与または逐次投与をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明はまた、疾患または病態の治療または予防における使用のための、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組成物、またはそれらの組合せを提供する。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、組成物、またはそれらの組合せは、追加の癌療法、好ましくは、抗体と組み合わせて使用するためのものであってもよい。
【0016】
本発明は、疾患または病態の治療または予防のための薬剤の製造のための、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組成物、またはそれらの組合せの使用をさらに提供する。
【0017】
疾患もしくは病態は、TGFb1発現細胞の不適切なもしくは過剰な免疫抑制機能を少なくとも部分的に特徴とし得る、および/または疾患もしくは病態は癌である。疾患または病態は、インターロイキン-4(IL-4)および/またはインターロイキン13(IL-13)の不適切なまたは過剰な発現を少なくとも部分的に特徴とし得る。疾患または病態は、癌であり得る。前記癌は、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、黒色腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、または前立腺癌であり得る。
【0018】
本発明は、TGFb1特異的T細胞を刺激する方法であって、前記方法が、T細胞を、本発明のポリペプチドおよび/または本発明の少なくとも1つのポリペプチドを含む本発明の組成物と接触させることを含む方法をさらに提供する。T細胞は、健常対象または癌患者から採取されたサンプル、場合により腫瘍サンプル中に存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1-1】
図1A~C.6例の健常ドナー由来のPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を、三重反復ウェルで実施したin vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより、TGFb1プレタンパク質由来の38個の重複20merペプチドのアレイに対して評価した。各スポットは、各バックグラウンドシグナルを差し引いた後のIFNγ分泌細胞の平均数を表し、灰色の水平バーは、試験ドナー間の平均値を示す。星は、最も強く、かつ最もDFRx2ベースの統計学的に有意な応答を誘発し、かつさらなるスクリーニング実験のために選択されたペプチドを示す(
図1Dに要約する)。
【
図1-2】
図1A~C.6例の健常ドナー由来のPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を、三重反復ウェルで実施したin vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより、TGFb1プレタンパク質由来の38個の重複20merペプチドのアレイに対して評価した。各スポットは、各バックグラウンドシグナルを差し引いた後のIFNγ分泌細胞の平均数を表し、灰色の水平バーは、試験ドナー間の平均値を示す。星は、最も強く、かつ最もDFRx2ベースの統計学的に有意な応答を誘発し、かつさらなるスクリーニング実験のために選択されたペプチドを示す(
図1Dに要約する)。
【
図1-3】
図1A~C.6例の健常ドナー由来のPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を、三重反復ウェルで実施したin vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより、TGFb1プレタンパク質由来の38個の重複20merペプチドのアレイに対して評価した。各スポットは、各バックグラウンドシグナルを差し引いた後のIFNγ分泌細胞の平均数を表し、灰色の水平バーは、試験ドナー間の平均値を示す。星は、最も強く、かつ最もDFRx2ベースの統計学的に有意な応答を誘発し、かつさらなるスクリーニング実験のために選択されたペプチドを示す(
図1Dに要約する)。
【
図1-4】
図1D.
図1A~1Cのスクリーニングに基づいた、最も免疫原性であるTGFβペプチドおよびそれらの各平均IFNγ ELISPOT数を要約した表。上位8個の最もパフォーマンスの良いペプチドを、さらなる検討のために選択した。
【
図1-5】
図1E.上:TGFb1プレタンパク質の一次配列。強調表示したものは、さらなるスクリーニングのために選択した8個の免疫原性TGFb1ペプチドのアミノ酸配列である。下線を付したアミノ酸の1~29位は、タンパク質(SP)のシグナル配列の位置を示し、一方、下線を付したアミノ酸の279~390位は、成熟TGFb1単量体タンパク質を示す。下:TGFb1プレタンパク質ドメインおよび8個の選択されたTGFb1由来ペプチドの位置の模式図。数字(1、29、279および390)は、TGFb1プレタンパク質の3つの主要ドメインの目印となる重要なアミノ酸の位置を示す。
【
図2-1】
図2.A.
図1A~Cにおいて同定された8個の免疫原性TGFb1由来ペプチドに対するPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を、in vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより、追加の健常ドナーにおける応答を評価することによって検証した。各スポットは、各バックグラウンドシグナルを差し引いた後の個々のドナーにおけるIFNγ分泌細胞の平均数を表し、黒色の水平バーは、試験ドナー間の平均値を示す。B.リードエピトープに対する健常対象由来のPBMCにおける応答の振幅を示すヒートマップ(上);代表的なELISPOT応答(下)。
【
図3-1】
図3.A.
図1A~Cにおいて同定された8個の免疫原性TGFb1ペプチドに対するPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を検証したが、今回は、in vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより応答を評価することによって、癌患者を調べた。各スポットは、各バックグラウンドシグナルを差し引いた後の個々の癌患者におけるIFNγ分泌細胞の平均数を表し、黒色の水平バーは、試験患者間の平均値を示す。B.リードエピトープに対する癌患者由来のPBMCにおける応答の振幅を示すヒートマップ。
【
図4-1】
図4.細胞内サイトカイン染色(ICS)分析を実施し、TGFb1エピトープに応答するT細胞の機能性をさらに特徴付けた。この例では、健常ドナー(BC-M-41)由来のPBMCを、アッセイの13日前に解凍し、TGFb-02(配列番号6)で刺激した。培養を実施した1日後(120U/mL)およびICSを実施する3日前(60U/mL)に、IL-2を加えた。各フローサイトメトリープロットにおいて、各細胞はドットとして表し、細胞の機能表現型を、各軸に各々が示される2つのマーカーの同時の発現に基づき分析している。生細胞集団をCD3
+CD4
+T細胞画分またはCD3
+CD8
+T細胞画分に基づきゲーティングし、サイトカイン発現(IFNγおよびTNFα)の発現量ならびに細胞傷害性(CD107a)に関するマーカーを定量化した。各集団のパーセンテージを、右の階層表に要約する。
【
図5】
図5.A.ICSを用いて決定したTGFβエピトープに対するCD4
+T細胞応答を示すFACSプロット。B.ICSを用いて決定したTGFb1エピトープに対するCD8
+T細胞応答を示すFACSプロット。
【
図6】
図6.いくつかのTGFb1由来エピトープに対して特異的なバルク培養物を、特異的T細胞のMACS CD137富化により生成した。富化後に富化細胞を増幅し、富化細胞は、それらのエピトープに対して可変的な反応性を示した。A~Dの各々に関して、上のFACSプロットは、特異的CD4
+ゲート細胞の量を示し、下のFACSプロットは、以下のエピトープ:TGFb-02(A)、TGFb-05(B)、TGFb-26(C)、およびTGFb-38(D)に対する特異的CD8
+ゲート細胞の量を示す。
【
図7】
図7.A.左:ex vivo ELISPOTにより測定した、癌患者および健常対象の両方に由来するPBMCにおける応答の振幅。PBMCを一晩静置し、次いで、ELISPOTウェルに直接蒔き、ELISPOTウェル中にてエピトープで48時間刺激した。右:TGFb1リードエピトープのいくつかに対するex vivo ELISPOT応答の例。B.ICSを用いた刺激のわずか5時間後におけるエピトープTGFb-15に対して同定されたCD8
+T細胞応答。
【
図8】
図8.A.ペプチドによる事前の14日間のin vitro刺激とともに、エピトープによる18時間の刺激後の、TGFb-15エピトープに対するCD8
+T細胞応答を示す前立腺癌を有する患者由来のPBMC。B.ドナーUR1121.14由来のTGFb15特異的T細胞を、TGFb-15による刺激後に2回富化し、in vitro培養の14日後に再刺激し、次いで、MACS CD137富化法を用いて翌日に富化した。CD4
+T細胞(AおよびBの各々に関して上のFACSプロット)およびCD8
+T細胞(AおよびBの各々に関して下のFACSプロット)の両方とも、TGFb-15による刺激に応答した。
【
図9】
図9.TGFb-15で刺激したTGFb-15特異的CD8
+T細胞クローンのICS分析の結果を示すFACSプロット。
【
図10-1】
図10.TGFb-15特異的CD8
+T細胞クローンは、HLA拘束性に標的細胞を死滅させ、TGFb1を発現する癌細胞株を死滅させる。A.TGFb-15特異的CD8
+T細胞は、TGFb-15ペプチドでパルスしたT2細胞を効率的に溶解した。B.TGFb-15応答がHLA-A2拘束性であったことを確認するために、ペプチドでパルスしたHLA-A2
+標的細胞は溶解されたが、ペプチドでパルスしたHLA-A3
+標的細胞は溶解されなかったことを示した。C.HLA-A2
+癌細胞株UKE-1およびTHP-1によるクローンの刺激は、TGFb-15特異的CD8
+T細胞クローンを活性化した。他のHLA-A2
+癌細胞は、T細胞を活性化しなかった。D.THP-1およびUKE-1癌細胞株の両方とも、TGFb-15特異的T細胞により容易に死滅された。E.TGFb-15特異的T細胞の活性化は、サイトカイン処理THP-1細胞による刺激時に増強した。F.Th2サイトカインIL-4またはTGFb1によるTHP-1細胞の刺激は、TGFb-15特異的細胞により死滅されたTHP-1細胞の量を増強した。
【
図11-1】
図11.TGF九量体ライブラリースパニングに対する応答を分析するために使用したIFN-γ(A)およびTNF-α(B)ELISPOTアッセイの結果。
【
図12-1】
図12.TGFb1シグナルペプチド配列におけるHLA-A2結合十量体エピトープに対して特異的なCD8
+T細胞は、HLA-A2拘束性にTGFb1発現癌細胞株を容易に死滅させる。A.健常ドナーPBMCは、in vitro培養の14日後に、HLA-A2結合十量体エピトープTGFb-A2-01ペプチドによる刺激時に分泌IFN-γを示した。B.健常ドナーPBMCの細胞内サイトカイン染色は、刺激CD8
+細胞が、TGFb-A2-01による刺激時にCD107a発現亢進(右)に加えて、IFN-γおよびTFN-αの両方の発現亢進(左)を示したように、TGFb-A2-01に対するCD8
+T細胞応答を示した。C.健常ドナー由来のTGFb-A2-01特異的CD8
+T細胞は、TGFb-A2-01パルスHLA-A2
+標的細胞を死滅させたが、非パルス細胞およびペプチドパルスHLA-A3
+標的細胞は死滅されなかった。D.CD8
+T細胞は、HLA-A2
+TGFb1発現UKE-1標的細胞を死滅させたが、MARIMOおよびWM852細胞は死滅されなかった。E.HLA-A2
+THP-1細胞は、TGFb-A2-01特異的T細胞により容易に死滅されたが、アッセイの48時間前における異なるサイトカインでの刺激によるTHP-1細胞のTGFb1発現の調節は、死滅標的細胞の画分を増加させた。
【
図13】
図13.TGFb-A2-01で刺激したTGFb-A2-01特異的T細胞クローンのICS分析の結果を示すFACSプロット。
【
図14】
図14.TGFβライブラリーにおける20merペプチドのアミノ酸配列。重複するアミノ酸配列には下線を付している。
【0020】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトTGFb1全長前駆体(TGFb1プレタンパク質ともいう)のアミノ酸配列である。
配列番号2は、ヒトTGFb1のシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトTGFb1のLAPペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号4は、成熟ヒトTGFb1のアミノ酸配列である。
配列番号5~64はそれぞれ、ヒトTGFb1由来のポリペプチド断片のアミノ酸配列である。
配列番号65は、高頻度の免疫原性配列を含むLAPサブ領域のアミノ酸配列である。
配列番号66は、TGFb-15ペプチド配列(配列番号28)内の最小エピトープ配列のアミノ酸配列である。配列番号66は、本明細書において「TGFb-15short」ともいう。
配列番号67は、TGFb-A2-01のアミノ酸配列である。
【0021】
発明の詳細な説明
開示される製品および方法の異なる適用が、当技術分野における特定のニーズに合わせられ得ると理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定を意図するものではないと理解されるべきである。
【0022】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容によって別途明確に規定されない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」に対する言及は、「複数のポリペプチド(polypeptides)」などを含む。
【0023】
本明細書において、「ポリペプチド」は、その最も広い意味で、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、または他のペプチド疑似の化合物を指すように使用される。よって、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列と、より長いポリペプチドおよびタンパク質も包含する。本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、D光学異性体またはL光学異性体の両方を含む、天然および/もしくは非天然アミノ酸または合成アミノ酸のいずれか、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド疑似を指す。
【0024】
用語「患者」および「対象」は、互換的に使用され、通常はヒトを指す。
【0025】
上記または下記を問わず、本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる。
【0026】
本明細書における「免疫原性」とは、好ましくは、TGFb1タンパク質が、TGFb1タンパク質を発現する細胞内または細胞上に存在する場合に、ポリペプチドがTGFb1タンパク質に対する免疫応答を誘発できることを意味する。言い換えれば、ポリペプチドは、TGFb1に対して免疫原性であると説明され得る。あるいは、ポリペプチドは、TGFb1の免疫原性断片として説明され得る。免疫応答は、好ましくは、T細胞応答であり、ポリペプチドはT細胞エピトープを含むTGFb1の免疫原性断片として説明され得る。免疫応答は、個体(または個体から採取したサンプル)に対するポリペプチドの投与後、少なくとも1つの個体(または前記サンプル)において検出され得る。
【0027】
ポリペプチドは、in vitroの方法を含む任意の適切な方法を用いて、免疫原性であると同定することができる。例えば、ペプチドは、以下の(i)~(iii)の特徴のうち少なくとも1つを有する場合、免疫原性であると同定することができる:
i.ELISPOTアッセイによって決定された場合、健常対象および/または癌患者のPBL集団においてIFN-γ産生細胞を誘発することができる;および/または
ii.TGFb1と反応性であるCTLの腫瘍組織のサンプルにおいてin situで検出することができる;および/または
iii.特異的T細胞のin vitroでの成長を誘導することができる。
ポリペプチドが免疫原性であるかどうかを決定するのに適切な方法も、以下の実施例の項で説明される。
【0028】
本発明のポリペプチドは、配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなるヒトTGFb1(配列番号1)の免疫原性断片である。
【0029】
配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列は、TGFb1のSPドメインの少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列、例えば、配列番号2の少なくとも95個の連続したアミノ酸の配列に対応し得る。
【0030】
配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列は、TGFb1のLAPドメインの少なくとも9個のアミノ酸の配列、例えば、配列番号3の少なくとも9個の連続したアミノ酸に対応し得る。
【0031】
配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列は、配列番号1のアミノ酸の121および160位に結合したLAPサブ領域内に位置する少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列、例えば、配列番号65の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列に対応し得る。
【0032】
配列番号1の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列は、成熟TGFb1ポリペプチドの少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列、例えば、配列番号4の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列に対応し得る。
【0033】
ポリペプチドは、配列番号1の最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含んでもよいまたはそれからなってもよい。
【0034】
ポリペプチドは、配列番号2および5~67のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなってもよい。
【0035】
ポリペプチドは、配列番号6、42、12、23、28、49、55、63、5、7~9、43~45、13~15、24~26、29~31、50~52、56~58、64、65、2、66、6または5のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなってもよい。配列番号6、42、12、23、28、49、55、63、66、67または5のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなるポリペプチドが好ましい。
【0036】
ポリペプチドは、配列番号66、28~31、67、5~9、42~45、12~15、55~58、23~26、49~52、63、64、65または2のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでもよいまたはそれからなる。配列番号66、28、67、5、6、42、12、55、23、49または63のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるポリペプチドが、特に好ましい。
【0037】
ポリペプチドは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50アミノ酸の最大長を有してもよい。ポリペプチドのC末端アミノ酸は、対応するアミドに置換されてもよい。ポリペプチドは、単離されてもよい。
【0038】
特に好ましいポリペプチドは、配列番号6、42、12、23、28、49、55、または63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。特に好ましいポリペプチドは、配列番号66、28、67、5、6、42、12、55、23、49または63のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。これらの配列を組み込む配列番号1のより長いポリペプチド断片も好ましい。
【0039】
ポリペプチドは、HLA-A2拘束性エピトープを含んでもよい。好ましくは、HLA-A2拘束性エピトープは、配列番号66のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。配列番号66のアミノ酸配列からなるHLA-A2拘束性エピトープを含む好ましいペプチドは、配列番号28~31または65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドである。あるいは、HLA-A2拘束性エピトープは、好ましくは、配列番号67のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。配列番号67のアミノ酸配列からなるHLA-A2拘束性エピトープを含む好ましいペプチドは、配列番号5、8、9または2のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドである。
【0040】
本明細書に記載の任意のポリペプチドにおいて、修飾配列を有するポリペプチドが、非修飾配列を有するポリペプチドと比較して、TGFb1に対して同等または増大した免疫原性を示す限りにおいて、アミノ酸配列は、1個、2個、3個、4個、または5個(すなわち、最大5個)の付加、欠失または置換によって修飾されてもよい。「同等」とは、修飾配列のポリペプチドが、非修飾配列のポリペプチドと比較して、TGFb1に対する有意に低減した免疫原性を示さないことであると理解されるべきである。配列間の免疫原性のいずれの比較も、同じアッセイを使用して実施すべきである。特に断りのない限り、ポリペプチド配列に対する修飾は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。保存的置換では、アミノ酸が、類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖体積の他のアミノ酸と置き換えられる。導入されたアミノ酸は、置き換わるアミノ酸と、類似の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有し得る。あるいは、保存的置換では、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的アミノ酸変化は、当技術分野で周知であり、下記の表A1に定義される20個の主要アミノ酸の特性に従って選択してもよい。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これは、表A2におけるアミノ酸側鎖に関する疎水性親水性指標を参照することによって、決定することができる。
【0041】
【0042】
【0043】
本明細書に開示される任意のポリペプチドにおいて、ポリペプチドが、非修飾配列を有するポリペプチドと比較して、TGFb1に対する同等または増大した免疫原性を示すならば、生理化学的特性(例えば、安定性)を改善するために、以下の修飾のうちいずれか1つ以上を行ってもよい:
C末端アミノ酸の対応するアミドとの置換(カルボキシペプチダーゼに対する抵抗性を増大させることができる);
N末端アミノ酸の対応するアシル化アミノ酸との置換(アミノペプチダーゼに対する抵抗性を増大させることができる);
1つ以上のアミノ酸の対応するメチル化アミノ酸との置換(タンパク質分解抵抗性を改善することができる);および/または
1つ以上のアミノ酸のD-立体配置の対応するアミノ酸との置換(タンパク質分解抵抗性を改善することができる)。
【0044】
本明細書に開示される任意のポリペプチドは、前記ポリペプチドが、さらなる部分を欠くポリペプチドと比較して、TGFb1に対して同等または増大した免疫原性を示す限りにおいて、溶解性、安定性を改善するため、および/または製造/単離の一助となるために、少なくとも1つの付加的な部分をNおよび/またはC末端に付着させてもよい。適切な部分としては、親水性アミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸配列KK、KRまたはRRを、N末端および/またはC末端に付加させてもよい。他の適切な部分としては、アルブミンまたはPEG(ポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0045】
本明細書に開示されるポリペプチドは、任意の適切な手段によって製造することができる。例えば、ポリペプチドは、当技術分野で公知の標準的な技法、例えば、Fmoc固相化学、Boc固相化学または液相ペプチド合成を使用して、直接合成してもよい。あるいは、ポリペプチドは、細胞、通常は細菌細胞を、前記ポリペプチドをコードする核酸分子またはベクターで形質転換することによって、製造してもよい。本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子およびベクターを提供する。本発明はまた、このような核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー型、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドの限定されない例としては、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離された形態または実質的に単離された形態で提供され得る。実質的に単離されたとは、任意の周囲の培地からのポリペプチドの実質的な、しかし完全ではない単離があり得ることを意味する。ポリヌクレオチドは、それらの使用目的を妨げない担体または希釈剤と混合してもよく、その場合でも、実質的に単離されたとみなされ得る。選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、例えば、発現ベクターにおける適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、in vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的で、このような核酸配列としては、限定されるものではないが、ウイルス由来のcDNA、原核生物または真核生物のmRNA、ウイルスまたは原核生物のDNAまたはRNA由来のゲノム配列、およびさらには合成DNA配列を挙げることができる。転写終結配列は、コード配列に対して3’に位置し得る。
【0047】
ポリヌクレオチドは、Sambrookら(1989, Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)における例により説明されるように、当技術分野で周知の方法に従って合成することができる。本発明の核酸分子は、挿入配列に動作可能に連結された調節配列を含み、それにより、in vivoにおける本発明のポリペプチドの発現を可能とする発現カセットの形態で提供され得る。次に、これらの発現カセットは、通常は、ベクター(例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクター)内で提供される。このような発現カセットは、宿主対象に直接投与してもよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを、宿主対象に投与してもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを用いて調製および/または投与される。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を運び、本発明のポリペプチドの発現を可能とすることができる任意のベクターであり得る。
【0048】
したがって、本発明は、このようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。このような発現ベクターは、分子生物学の技術分野で慣例的に構築され、例えば、プラスミドDNAおよび適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサーおよび他の要素、例えば、本発明のペプチドの発現を可能とするために、必要であり得る、および正確な方向で位置するポリアデニル化シグナルの使用が関与し得る。他の適切なベクターは、当業者に明らかであろう。この点に関するさらなる例については、Sambrookら(1989, Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)を参照する。
【0049】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを発現するように改変されている細胞を包含する。このような細胞は、通常は、細菌細胞、例えば大腸菌などの原核細胞を含む。このような細胞は、本発明のポリペプチドを製造するために、慣用的な方法を用いて培養してもよい。
【0050】
本発明のポリペプチドは、実質的に単離された形態であり得る。本発明のポリペプチドは、使用目的を妨げない担体、保存剤、もしくは希釈剤、および/またはアジュバントと混合してもよく、その場合でも、実質的に単離されたとみなされ得る。本発明のポリペプチドはまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、本発明のポリペプチドは、一般に、製剤中に少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、98%または99%のタンパク質を含む。
【0051】
ポリペプチドを含む組成物
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/または本発明のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。例えば、本発明は、本発明の1つ以上のポリペプチドおよび/または本発明の1つ以上のポリヌクレオチドと、任意で少なくとも1つのアジュバント、薬学上許容可能な担体、保存剤および/または賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0052】
組成物は、本発明の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つの異なるポリペプチド、および任意で少なくとも1つのアジュバント、薬学上許容可能な担体、保存剤および/または賦形剤を含み得る。
【0053】
組成物は、本発明の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つの異なるポリヌクレオチド、および任意で少なくとも1つのアジュバント、薬学上許容可能な担体、保存剤および/または賦形剤を含み得る。
【0054】
担体、保存剤および賦形剤は、組成物の他の成分と適合する、および組成物が投与される対象にとって有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。通常は、すべての成分および最終組成物は、無菌かつパイロジェンフリーである。組成物は、医薬組成物であり得る。組成物は、好ましくは、アジュバントを含み得る。アジュバントは、組成物へのその混合が、組成物により誘発される免疫応答を増大またはそうでなければ修飾する、任意の物質である。広く定義されるアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントはまた、投与部位からの有効薬剤の緩徐かつ持続した放出ももたらすという点で、好ましくは、デポ効果を有し得る。アジュバントに関する一般的な考察は、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版, 1986) 61-63頁において提供されている。
【0055】
アジュバントは、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11687、ノル-MDPともいう)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEともいう)、2%スクアレン/ツイーン-80.RTM.エマルション中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リピドAを含むリポ多糖およびその種々の誘導体、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント、メルクアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびブルセラ属のメンバーに認められる物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(US58767および5,554,372を参照のこと)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA-51およびQS-21からなる群から選択され得る。種々のサポニン抽出物も、免疫原性組成物におけるアジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も、アジュバントとして使用してもよい。
【0056】
本発明とともに使用される好ましいアジュバントとしては、油/界面活性剤ベースのアジュバント、例えば、モンタニドアジュバント(Seppic社、ベルギーから入手可能)、好ましくは、モンタニドISA-51が挙げられる。他の好ましいアジュバントは、細菌DNAベースのアジュバント、例えば、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、例えば、ポリI:Cである。GM-CSFおよびイミダゾキニリン(Imidazochiniline)も、好ましいアジュバントの例である。
【0057】
アジュバントは、最も好ましくは、モンタニドISAアジュバントである。モンタニドISAアジュバントは、好ましくは、モンタニドISA51またはモンタニドISA720である。
【0058】
Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版, 1986)61-63頁において、目的の抗原が低分子量であるか、または免疫原性が不十分な場合、免疫原性担体へのカップリングが推奨されることも記載されている。したがって、本発明のポリペプチドを、担体にカップリングしてもよい。担体は、アジュバントと独立して存在し得る。担体の機能は、例えば、活性もしくは免疫原性を増大させるため、安定性を付与するため、生物活性を増大させるため、または血清中半減期を増大させるために、ポリペプチド断片の分子量を増加させることであり得る。さらに、担体は、ポリペプチドまたはその断片をT細胞に提示する助けとなり得る。したがって、組成物において、ポリペプチドは、以下に記載するような担体と会合し得る。担体は、当業者に公知の任意の適切な担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞、例えば樹状細胞(DC)であり得る。担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミン、免疫グロブリン等)、またはホルモン(インスリン等)またはパルミチン酸が挙げられる。あるいは、担体タンパク質は、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドであり得る。あるいは、担体は、デキストラン、例えばセファロースであり得る。担体は、ヒトに対して生理学的上許容可能であり、安全でなければならない。
【0059】
組成物が賦形剤を含む場合、賦形剤は、組成物の他の成分と適合する、およびそのレシピエントにとって有害ではないという意味で、「薬学上許容可能」でなければならない。補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが、賦形剤中に存在してもよい。これらの賦形剤および補助物質は、一般に、組成物を投与される個体において免疫応答を誘導せず、過度の毒性を伴わずに投与することができる医薬品である。薬学上許容可能な賦形剤としては、限定されるものではないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノール等の液体が挙げられる。薬学上許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩も含まれ得る。薬学上許容可能な賦形剤、ビヒクルおよび補助物質の完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において入手可能である。
【0060】
適切な組成物の処方は、標準的な医薬処方化学および方法(これらはすべて、当業者にとって容易に入手可能である)を用いて、実施することができる。このような組成物は、ボーラス投与または連続投与にとって適切な形態で、調製、包装、または販売され得る。注射用組成物は、単位投与形、例えば、アンプルまたは場合により保存剤を含有する多回投与容器で、調製、包装、または販売され得る。組成物としては、限定されるものではないが、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、および埋込み型徐放性製剤または生分解性製剤が挙げられる。組成物の一つの実施形態において、有効成分は、再構成された組成物の投与前に、適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で再構成するために、乾燥(例えば、粉末または顆粒)形態で提供される。組成物は、無菌注射用の水性または油性の懸濁液または溶液の形態で、調製、包装、または販売され得る。この懸濁液または溶液は、公知の技術に従って処方され得、有効成分に加えて、本明細書に記載のアジュバント、賦形剤および補助物質等の追加の成分を含み得る。このような無菌注射用製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒を用いて調製され得る。他の許容可能な希釈剤および溶媒としては、限定されるものではないが、リンゲル液、等張食塩水、および、合成モノまたはジグリセリド等の固定油が挙げられる。有用な他の組成物としては、微結晶形で、リポソーム調製物中に、または生分解性ポリマー系の成分として、有効成分を含む組成物が挙げられる。徐放または埋込みのための組成物は、薬学上許容可能なポリマー性または疎水性材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩を含み得る。あるいは、組成物の有効成分は、カプセル化され得る、粒子状担体に吸着され得る、または粒子状担体と会合し得る。適切な粒子状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する担体、ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)に由来するPLG微粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照されたい。他の微粒子系およびポリマー、例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジンなどのポリマー、およびこれらの分子のコンジュゲートも使用することができる。
【0061】
使用方法
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは組成物、またはそれらの組合せは、対象における疾患または病態を治療または予防する方法において使用してもよい。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドもしくは組成物、またはそれらの組合せは、対象における疾患または病態を治療または予防する方法における使用のための薬剤の製造において使用してもよい。方法は、前記ポリペプチド、前記ポリヌクレオチド、前記組成物、または前記組合せを前記対象に投与することを含む。投与は、それを必要とする対象に対する治療上または予防上有効な量の前記ポリペプチド、前記ポリヌクレオチド、前記組成物、または前記組合せの投与であってもよい。
【0062】
疾患または病態は、TGFb1の不適切なまたは過剰な免疫抑制機能を少なくとも部分的に特徴とし得る。疾患または病態は、IL-4および/またはIL-13の不適切なまたは過剰な発現を少なくとも部分的に特徴とし得る。疾患または病態は、癌、好ましくは、TGFb1を発現する、ならびに/あるいはTGFb1の不適切なもしくは過剰な免疫抑制機能および/またはIL-4および/もしくはIL-13の不適切なもしくは過剰な発現と関連する癌であり得る。癌は、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、卵巣癌もしくは膵臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、黒色腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、または前立腺癌であり得る。癌は、TGFb1の不適切なもしくは過剰な免疫抑制機能ならびに/またはIL-4および/もしくはIL-13の不適切なもしくは過剰な発現を特徴とするAMLであり得る。癌は、TGFb1の不適切なまたは過剰な免疫抑制機能ならびにIL-4および/またはIL-13の不適切なまたは過剰な発現を特徴とするAMLであり得る。
【0063】
方法は、追加の癌療法との同時投与または逐次投与を含んでもよい。追加の癌療法は、TGFb(例えば、TGFb1)およびPD-L1の二重特異性阻害剤であり得る。前記二重特異性阻害剤は、TGFbおよびPD-L1に同時に結合する、および/またはそれらの活性を阻害することが可能であり得る。前記二重特異性阻害剤は、抗TGFb部分および抗PD-L1部分を含む融合タンパク質であってもよく、場合によりここで、抗PD-L1部分は、抗PD-L1抗体を含むもしくはそれからなり、かつ/または抗TGFb部分は、TGFbに対する受容体もしくはその部分、例えば、TGFb受容体IIもしくはその部分を含むもしくはそれからなる。
【0064】
追加の癌療法は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、または抗体から選択され得る。
【0065】
抗体は、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴール、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテテート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ(=トシリズマブ)、アトロリムマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、CC49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、Ch.14.18、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、CR6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、デュピルマブ、ドゥシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴール、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、GS6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレズマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルピリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ(=トレメリムマブ)、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ(=アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブまたはゾリモマブアリトクスであり得る。
【0066】
好ましい抗体としては、ナタリズマブ、ベドリズマブ、ベリムマブ、アタシセプト、アレファセプト、オテリキシズマブ、テプリズマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、エプラツズマブ、アレムツズマブ、アバタセプト、エクリズマブ、オマリズマブ、カナキヌマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、チウキセタン、トシツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブおよびベドチンが挙げられる。
【0067】
本発明の方法において使用され得る特に好ましい抗体としては、ダラツムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トシツモマブおよびオファツムマブが挙げられる。
【0068】
併用する癌療法は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択され得る。
【0069】
本発明のポリペプチドおよび/または少なくとも1つの本発明のポリペプチドを含む本発明の組成物は、細胞を前記ポリペプチドおよび/または前記組成物に接触させることを含む、TGFb1特異的T細胞、例えば、CD4+およびCD8+T細胞を刺激する方法においても使用され得る。方法は、ex vivoで行ってもよい。細胞は、健常対象または癌患者から採取されたサンプル、例えば、腫瘍サンプル中に存在し得る。
【0070】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は、保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。前述の説明および以下の実施例に開示される特徴は、両方とも別々に、またその任意の組合せにおいて、その多様な形態で本発明を実現するための材料であり得る。
【実施例】
【0071】
実施例1 - 材料と方法
患者およびドナー
匿名の血液ドナー由来のバフィーコートを、Rigshospitalet、コペンハーゲン、デンマークにおける血液バンクから得た。癌患者由来のバフィーコートを、Department of Oncology,Herlev Hospital、ヘアレウ、デンマークから得た。全参加者が、ヘルシンキ宣言に従って、試験登録前にインフォームドコンセントを提供した。PBMCをLymphoprep(Axis Shield社、オスロ、ノルウェー)を用いて単離し、10%ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma-Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州、米国)を含有するウシ胎仔血清中で凍結させた。
【0072】
ペプチド
ペプチドは、Pepscan社(レリスタット、オランダ)により提供され、10mMの濃度のDMSOに溶解した。TGFβ1リードエピトープの同定後、これらのペプチドは、KJ Ross-Petersen社(クランペンボー、デンマーク)によって、より高い純度(>90%)で提供された。これらの実験に使用したペプチドの配列は、「配列」という表題の項に示す。ペプチドは、配列番号、名称、またはヒトTGFb1の全長前駆体のアミノ酸配列内の各ペプチド配列の開始位置および終了位置の参照により記載している。各表示は、以下の「配列」の項に記載の表に示されるように、互換的に使用され得る。例えば、配列番号6のペプチドは、これに代えて名称TGFb-02(またはTGFB02)と表示されてもよいし、またはこれに代えてTGFb111-30(11の開始位置および30の終了位置より)と表示されてもよい。各場合における意図する参照は、文脈から明らかとなるであろう。
【0073】
in vitro ELISPOTアッセイ
in vitro ELISPOTに関して、癌患者および健常ドナー由来のPBMCを、24ウェルプレート中で、20μMのTGFβ由来ペプチド(または対照としてペプチドなし)および120U/mlのIL-2で7~10日間パルスした後、ELISPOTアッセイに使用した。細胞を、IFNγ捕捉抗体(Mabtech社)でプレコートした96ウェルニトロセルロースELISPOTプレート(MultiScreen IP Filter Plate、MSIPN4W50;Millipore社)に播種した。TGFβペプチドを加え、終濃度5μMとし、対照刺激(DMSO、HIVまたはスクランブルペプチド)を対照ウェルに加え、プレートを37℃で16~20時間インキュベートする。インキュベーションの後、細胞を洗い流し、二次ビオチン化Ab(Mabtech社、カタログ番号3420-6-1000)を室温で2時間加えた。非結合二次抗体を洗い流し、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ(AP)(Mabtech社、カタログ番号3310-10)を室温で1時間加えた。非結合複合酵素を洗い流し、BCIP/NBT基質(Mabtech社、カタログ番号3650-10)を加えることにより、アッセイを展開した。展開したELISPOTプレートを、Immunospot Software v5.1を用いて、CTL ImmunoSpot S6 Ultimate-Vアナライザーで分析した。応答は、TGFβペプチドで刺激したウェルおよびペプチド添加なしのウェルにおけるスポットの平均数間の差として報告した。特に断りのない限り、総ての実験は、in vitro IFN-γ ELISPOTアッセイで実施し、総ての実験は、三重反復で実施した。統計解析は、分布によらないリサンプリング(DFR)法を用いて、かつMoodieら(Cancer Immunol Immunother 2010; 59: 1489-1501)により記載されたより古典的なDFR2x法を用いて行った。
【0074】
ex vivo ELISPOTアッセイ
癌患者または健常ドナー由来のPBMCを解凍し、X-VIVO培地(任意で:1μg/ml DNase Iを添加)中で24ウェルプレートにおいて一晩静置する。翌日、細胞を計数し、IFNγ捕捉抗体(Mabtech社)でプレコートした96ウェルニトロセルロースELISPOTプレート(MultiScreen IP Filter Plate、MSIPN4W50;Millipore社)に移す。TGFβペプチドを加え、終濃度5μMとし、対照刺激(DMSO、HIVまたはスクランブルペプチド)を対照ウェルに加え、プレートを37℃で24~72時間インキュベートする。プレートを二次抗体で染色し、上記のin vitro ELISPOTプロトコールに従って展開プロトコールを実施する。
【0075】
細胞内サイトカイン染色(ICS)および蛍光活性化セルソーティング(FACS)
PBMCを、BD GolgiPlug(商標)(ペプチド刺激の最初の1時間の後に加えた)の存在下でTGFβ由来ペプチドで5時間刺激した(または対照としてペプチドなしでインキュベートした)後、細胞培養物の細胞内染色を行った。CD107a-PE(カタログ番号555801、BD Biosciences社)抗体を、インキュベーションの最初に加える。刺激した細胞を、表面マーカー(CD3、CD4、CD8)に関して蛍光標識抗体で染色し、その後、製造業者の説明書に従って、固定/透過処理富化物および希釈剤(eBioscience社、カタログ番号00-5123-43および00-5223-56)の混合物を使用して、透過処理した。次いで、透過処理した細胞を、IFNγおよびTNFαに関して蛍光色素標識抗体で染色した。フローサイトメトリー分析をFACSCanto(商標)II(BD Biosciences社)で行った。使用した抗体:IFNγ-APC(カタログ番号341117)、TNFα-455 BV421(カタログ番号562783)、CD4-FITC(カタログ番号347413)またはCD4-PerCP(カタログ番号345770)、CD8-PerCP(カタログ番号345774)またはCD8-FITC(カタログ番号345772)、CD3-APC-H7(カタログ番号560275)(総てBD Biosciences社)。死細胞をFixable Viability Stain 510(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)で染色した。活性型T細胞を同定する別の方法として、T細胞を抗原または標的細胞のいずれかで一晩刺激した。刺激の18~24時間後、細胞を、抗CD107a-PEおよび抗CD137-BV421(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)での染色とともに、上記の表面抗原特異的抗体およびFixable Viability Stainで染色した。適切なアイソタイプ対照を用いた抗HLA-A2-FITC(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)での染色により、ドナーPBMCをHLA-A2に関して分析した。
【0076】
急速増幅プロトコール
いくつかの実験において、少なくとも3例の異なる健常ドナー由来の同種異系照射末梢血単核細胞(PBMC)、30ng/mLの抗CD3抗体(OKT3、Janssen-Cilag社またはMiltenyi Biotec社)および高用量のIL-2(6,000IU/mLのIL2;Novartis社のProleukin)を用いた急速増幅プロトコール(REP)を使用して、T細胞を増幅した。
【0077】
生細胞のFACS
初代PBMC培養物からの特異的T細胞の富化のために、ELISPOTにおける分析用の細胞培養物に対するin vitro培養法を採用した(上記参照)。次に、細胞を抗原で一晩刺激し、翌日、FACS緩衝液中で2回洗浄し、次いで、LIVE/DEAD Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit(ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)、抗CD4-FITC、抗CD8-PerCP、抗CD107a-PEおよび抗CD137-BV421(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)で30分間染色した。次いで、細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。次に、適切なアプリケーション設定およびコンペンセーションコントロールを用いたFACS ARIAフローサイトメーターで、細胞をソーティングした。セルソーティングは、純度設定を用いて行った。ソーティングの後、細胞を2つの画分に分け、富化細胞の半分は、急速増幅プロトコールを用いて増幅し、細胞のもう半分は、3個/ウェルの播種による、限界希釈を用いてクローン化した。クローン化した細胞は、急速増幅プロトコールを用いて増幅した。
【0078】
磁気活性化セルソーティング(MACS)
MACSを用いて、初代培養物およびすでに富化された培養物の両方に由来する抗原特異的T細胞を富化した。初代PBMC培養物に由来する特異的T細胞の富化には、ELISPOTにおける分析用の細胞培養物に対するin vitro培養法を採用した(上記参照)。次に、細胞を抗原で一晩刺激し、翌日、製造業者のプロトコールに従って、MACS CD137富化キット(Miltenyi Biotech社、ベルギッシュ・グラートバッハ、ドイツ)を用いて富化した。富化細胞は、急速増幅プロトコールを用いて増幅した。記載されている場合、富化細胞のいくつかを限界希釈によりクローン化した。クローン化した細胞は、急速増幅プロトコールを用いて増幅した。
【0079】
クロム51細胞傷害性アッセイおよび標的細胞のサイトカイン刺激
クロム51細胞傷害性アッセイを用いて、Andersen MHら(J Immunol 1999; 163: 3812-3818)に記載の通りに、特異的T細胞の殺傷能を評価した。いくつかの癌細胞株におけるTGFβの発現を操作するために、癌細胞株を、IL-4(100U/mL)、IL-13(20U/mL)、およびTGFβ1(2.e5ng/mL)(総てPeprotech社、ロッキー・ヒル、ニュージャージー州、米国)を単独でまたは組み合わせてのいずれかで、アッセイ前に48時間刺激した。
【0080】
実施例2 - 20merペプチドのin vitro ELISPOTスクリーニング
全長TGFb1前駆体に由来する38個の重複する20merペプチドのアレイを設計し、上記のように作製した。20merペプチドの各々は、10個のアミノ酸が重複している(
図14参照)。
【0081】
6例の健常ドナー由来のPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答を、in vitro IFNγ ELISPOTアッセイを用いて、三重反復ウェルで、20merペプチドのアレイに対する自発的免疫応答に関して評価した。これらのアッセイの結果を
図1A~Cに示す。最も強く、かつ最も統計学的に有意な応答を誘発したペプチドを、さらなるスクリーニング実験のために選択した。最もパフォーマンスの良いペプチドの識別番号を
図1Dにまとめて記載し、全長配列内の前記ペプチドの位置を
図1Eに示す。
【0082】
意外にも、免疫原性ペプチドは、単一の免疫原性「ホットスポット」内にクラスター化されている、または成熟TGFb1ペプチドのアミノ酸配列内に位置しているのではなく、TGFb1前駆体タンパク質の全長配列の至る所に位置していたことが認められた。注目すべきことに、免疫原性エピトープペプチドは、TGFb1の成熟活性型においては存在しないTGFb1前駆体のシグナルペプチド領域およびLAPペプチドと同定された。さらに、高頻度の免疫原性ペプチドを有するLAPサブ領域、すなわち、配列番号1のアミノ酸121~160(配列番号65に対応)が同定された。この領域は、免疫原性ペプチド:TGFb-13およびTGFb-15を含む。
【0083】
8個の最も免疫原性のペプチド、すなわち、TGFb-02、TGFb-26、TGFb-05、TGFb-13、TGFb-15、TGFb-30、TGFb-33、およびTGFb-38(それぞれ配列番号6、42、12、23、28、49、55、および63に対応)を、さらなる検討のために選択した。
【0084】
実施例3 - ペプチド特異的免疫応答の検証
追加のin vitro IFNγ ELISPOTアッセイを実施し、最初の選別において同定された8個の選択されたエピトープペプチド(実施例2参照)に対する、追加の健常対象における応答を検証した。これらのアッセイの結果を
図2に示す。試験したエピトープペプチドの総てに対する強力かつ高頻度の応答が認められ、TGFb-02、TGFb-26、TGFb-33、および特にTGFb-15が、強力かつ高頻度の応答を示している(
図2B)。
【0085】
健常対象および癌患者は、エピトープに対する免疫応答の異なるパターンを示し得るため、癌患者における選択されたエピトープの免疫原性能も検討した。8個の免疫原性TGFb1由来ペプチドに対するPBMCにおけるペプチド特異的免疫応答も、再度in vitro IFNγ ELISPOTアッセイにより応答を評価することによって、癌患者を調べることにより検証した。これらのアッセイの結果を
図3に示す。TGFb-02、TGFb-15、TGFb-26、およびTGFb-33が、患者において高度に免疫原性であることが認められた(
図3B)。
【0086】
実施例4 - サイトカイン分析
細胞内サイトカイン染色(ICS)分析を実施し、TGFb1エピトープに応答するT細胞の機能性をさらに特徴付けた。この例では、健常ドナー(BC-M-41)由来のPBMCを、アッセイの13日前に解凍し、TGFb-02(配列番号6)で刺激した。培養を実施した1日後(120U/mL)およびICSを実施する3日前(60U/mL)に、IL-2を加えた。FACS分析を実施し、生細胞集団をCD3
+CD4
+T細胞画分またはCD3
+CD8
+T細胞画分に基づきゲーティングした。サイトカイン発現(IFNγおよびTNFα)の発現量ならびに細胞傷害性(CD107a)に関するマーカーを定量化した。サイトカイン分析に関するFACSプロットを
図4の左側に示し、一方、各集団のパーセンテージを、
図4の右の階層表にまとめる。
【0087】
CD3+CD4+T細胞画分(CD3+CD8+T細胞画分ではない)は、CD107aの無/低発現を伴うTNFα(単独でまたはIFNγと組み合わせてのいずれか)の分泌により示されるように、TGFb-02(配列番号6)に対して反応性であることが認められた。
【0088】
ICSも用いて、エピトープTGFb-05(配列番号12)およびTGFb-26(配列番号42)が、CD4
+T細胞応答(
図5A)およびCD8
+T細胞応答(
図5B)の両方を惹起したことを示した。磁気活性化セルソーティング(MACS)による特異的細胞の富化後に、リードエピトープのいくつかに対して強力なCD4
+およびCD8
+T細胞応答も検出され(
図6)、TGFβにおけるいくつかのエピトープの高い免疫原性能が示された。
【0089】
実施例5 - TGFβエピトープに対するex vivo応答の同定
健常対象および癌患者の両方に由来するPBMCによるいくつかのエピトープに対するex vivo応答。細胞を解凍し、播種の前に一晩静置し、次いで、48時間刺激した。健常対象細胞および患者細胞の両方とも、有意な量のIFN-γを放出し(
図7A)、健常対象および癌患者に由来する細胞の両方には、大量の自由に循環するTGFβ特異的T細胞が有ることが示された。最も意外なことに、CD8
+T細胞応答は、エピトープTGFb-15による刺激のわずか5時間後に、前立腺癌を有する患者由来のex vivo播種PBMCにおいて検出された(
図7B)。この所見は、この患者が、循環するTGFβ特異的細胞傷害性T細胞の高い画分を有することを示唆するものであった。TGFb-15に対するこの強力な応答を考慮し、TGFb-15に対する特異的T細胞培養物を、この患者由来のPBMCを用いて構築した。まず、CD137は、このドナー由来の特異的T細胞をソーティングするための活性化マーカーとして使用できることが確立された。次いで、患者PBMCをTGFb-15で刺激し、細胞を培養下で14日間維持した後、PBMCをTGFb-15で18時間再刺激し、次いで、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いてCD137およびCD107aの発現に関して分析した。この実験から、CD8
+T細胞の16.6%がペプチドによる刺激後にCD137
+であったことを考慮すると、CD137は特異的T細胞を富化するための好適なマーカーであることが示された(
図8A)。
【0090】
TGFb-15特異的T細胞を、MACS CD137富化キットを用いて富化し、これを用いて、TGFb-15に特異的なCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の両方を含有する培養物を構築した(
図8B)。TGFβ特異的T細胞応答を、この培養物を用いて評価した。
【0091】
実施例6 - TGFb-15特異的T細胞は癌細胞を認識し、殺傷し得る
限界希釈を用いて、CD8
+TGFb-15特異的T細胞クローンを、実施例5に記載のTGFβから構築した。CD8
+TGFb-15特異的クローンは、TGFb-15に対して高い反応性を示した(
図9)。HLA-A2
+特異的抗体でこの患者由来のPBMCを染色した結果、ドナーはHLA-A2
+であることが明らかとなった(データ示さず)。次に、標準的なクロム51細胞傷害性アッセイを実施し、特異的T細胞がペプチドパルスHLA-A2
+標的細胞を溶解することができたかどうかを調べた。ペプチドパルスHLA-A2
+T2細胞は、特異的T細胞により容易に溶解されたが、非パルスT2細胞は死滅されなかった(
図10A)。
【0092】
T2細胞は、HLA-A2
+だけではないため、これらの細胞の死滅は、別のHLAアレルの一致により媒介された可能性があった。このため、K562細胞を標的として用いて、さらなる実験を行った。元のK562株はHLA欠損であるが、これらの実験は、HLA-A2またはHLA-A3を安定発現するように遺伝子改変された2つの株を用いて行った。これにより、各細胞が発現したHLAアレルはこれらのアレルのみであったことが保証された。ペプチドパルスHLA-A2
+K562細胞のみが、TGFb-15特異的クローンにより死滅したが、非パルスHLA-A2
+K562細胞およびペプチドパルスHLA-A3
+K562細胞は認識されなかった(
図10B)。
【0093】
ほぼ総ての細胞が、腫瘍抑制環境の創出に大きく関与するTGFβを分泌し得る。このため、TGFb-15特異的T細胞がHLA-A2
+癌細胞株を認識し得るかどうかを検討した。2つのHLA-A2
+メラノーマ細胞株(WM852およびFM88)ならびにK562細胞およびHLA-A2
+K562細胞とともに、総てが急性骨髄性白血病(AML)を有する患者由来の細胞株UKE-1、SET-2、およびTHP-1を標的細胞として使用した。TGFb-15特異的T細胞を、エフェクター:標的比3:1で、各標的細胞で一晩刺激した。特異的T細胞は、2つの癌細胞株THP-1およびUKE-1を認識したが、他の細胞株は、T細胞を活性化しなかった(
図10C)。さらに、クロム51細胞傷害性実験から、TGFb-15特異的T細胞は、UKE-1細胞およびTHP-1細胞の両方を死滅させたことが明らかとなった(
図10D)。
【0094】
THP-1細胞株は、比較的未分化な株であり、異なるサイトカインでの処理は、これらの細胞における遺伝子発現に影響を及ぼし得る。インターロイキン(IL)-4は、Th2応答の発生において礎となるサイトカインである。したがって、IL-4によるTHP-1細胞の処理は、これらの細胞によるTGFβ発現を増大させ得ると推測された。さらに、TGFβは、その細胞内産生に関して正のフィードバックループを生成することから、TGFβによるTHP-1細胞の処理も、TGFβ発現を誘導すると推測された。注目すべきことに、標的エピトープTGFb-15は、TGFβ前駆体タンパク質のLAPペプチド部分において発現するが、TGFβの成熟活性型においては発現しない(
図1E参照)。よって、活性型TGFβによるTHP-1細胞の前処理は、認識されたエピトープをTHP-1細胞に付加せず、TGFβの細胞内産生を増大させるのみであろう。
【0095】
IL-4またはTGFβのいずれかで48時間処理したTHP-1細胞を用いて、TGFb-15特異的CD8
+T細胞を18時間刺激した。サイトカイン処理THP-1細胞は、非刺激THP-1細胞と比較して、TGFb-15特異的T細胞のより大きな活性化を誘導することが示された(
図10E)。最終的に、IL-4またはTGFβによるTHP-1細胞のサイトカイン刺激は、溶解細胞の数を増加させることが示された(
図10F)。
【0096】
実施例7 - 最小TGFβエピトープ配列の同定
TGFb-15エピトープは20-merであるため、HLA-I分子上ではその全長で存在することができない。したがって、さらなる実験を行い、TGFb-15特異的T細胞により認識される最小エピトープ配列を決定した。具体的には、TGFb-15エピトープ配列を、8個の重複するアミノ酸を有する9merペプチドライブラリーに分け、12個の9merペプチドを生成した。TGFb-15特異的CD8
+T細胞クローンを生成するために使用したTGFb-15特異的バルク培養物由来のT細胞を、ELISPOTに播種し、9merペプチドの各々で刺激した。結果は、TGFb-15配列内の最小エピトープは、配列VLLSRAELRL(TGFb-15short;配列番号66)であったことが示された(
図11参照)。
【0097】
実施例8 - TGFβのシグナルペプチドにおける十量体エピトープは特異的T細胞の標的である
TGFβ配列内のいくつかの20-merエピトープに対する高頻度のCD8
+T細胞応答を考慮し、本発明者らは、他のHLA-A2拘束性十量体エピトープの同定を試みた。RammenseeらのMHCリガンドおよびペプチドモチーフのSYFPEITHIデータベース(SYFPEITHI:MHCリガンドおよびペプチドモチーフのデータベース;www.syfpeithi.de.;2014年10月30日アクセス)を用いて、HLA-A2に対する高結合親和性を有する十量体エピトープのために、全TGFβ配列を検索した。ペプチド配列LLLLLPLLWL(TGFb-A2-01;配列番号67)が、最上位の結合十量体エピトープとして現れ、結合親和性スコアは30であった。次いで、健常対象由来のHLA-A2
+PBMCによるTGFb-A2-01エピトープに対する自発的T細胞応答を検討した。意外にも、大部分のPBMCが、TGFb-A2-01エピトープに対する応答を示した(
図12A)。ICSを用いて、これらの応答はCD8
+T細胞由来であることを確認した(
図12B)。
【0098】
次に、TGFb-A2-01特異的T細胞を健常対象(BC363)から単離し、前記対象由来のPBMCの1回のin vitro刺激を行い、次いで、14日間培養したところ、TGFb-A2-01に対する堅固な応答が示された。次に、PBMCをTGFb-A2-01で一晩刺激した。次いで、CD3
+、CD8
+、CD137
+細胞に対するゲーティングを伴うFACSを用いて、特異的T細胞を富化した。富化細胞を、実施例1に記載の通りに増幅した。培養の14日後、いくつかの細胞株が、TGFb-A2-01ペプチドに対して高い特異性を示した(
図13)。
【0099】
TGFb-A2-01特異的T細胞のペプチドパルスHLA-A2
+K562標的細胞を溶解する能力を、標準的なCr51細胞傷害性アッセイにおいて試験した。ペプチドパルスHLA-A2
+K562細胞は溶解されたが、非パルスHLA-A2
+およびペプチドパルスHLA-A3
+標的細胞は溶解されなかった(
図12C)。
【0100】
上記のTGFb-15特異的T細胞は、AML細胞株UKE-1およびTHP-1を死滅させたため、TGFb-A2-01特異的クローンもこれらの標的癌細胞を死滅させ得るかどうかを試験した。UKE-1およびTHP-1癌細胞は、TGFb-A2-01特異的T細胞により容易に死滅した(
図12DおよびE参照)。さらに、IL-13、TGFβまたはIL-13およびTGFβの両方の組合せでのTHP-1細胞の刺激は、死滅標的細胞の画分を増加させた(
図12E)。
【0101】
結論
TGFb1は、免疫ホメオスタシスおよび寛容の決定的な要因(enforcer)であり、免疫系の多くの成分の増幅および機能を阻害する。TGFb1シグナル伝達における混乱は、炎症性疾患の根底にあり、腫瘍の発生を促進する。TGFb1は、腫瘍微小環境内の免疫抑制にとっても中心的であり、最近の試験は、腫瘍免疫回避および癌免疫療法に対する応答不良における役割を明らかにしている。TGFb1の発現は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)および骨髄由来免疫抑制細胞の両方の主な特徴である。TGFb1発現細胞は、腫瘍部位におけるエフェクターリンパ球の増殖を防止することから、免疫阻害微小環境の発生においても主要な役割を果たす。したがって、例えば、ワクチン接種によるTGFb1特異的T細胞の活性化は、腫瘍部位におけるT細胞浸潤を引き起こすはずである。
【0102】
初めて、TGFb1特異的エフェクターT細胞は、TGFb1発現細胞を特異的に標的とするために利用できることが見出された。特に、本発明者らは、TGFb1の全アミノ酸配列を網羅するペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、癌患者および健常ドナーの両方において天然に存在する末梢TGFb1特異的T細胞を同定した。興味深いことに、TGFb1は、TGFb1配列の異なる領域において分散する、末梢T細胞により高頻度に認識される複数のエピトープを含むことが発見された。
【0103】
TGFb1に対する高頻度のT細胞応答が認められ、このことは、TGFb1が高度に免疫原性であるという意外な所見を強調するものである。TGFb1が免疫抑制にとって非常に中心的であることを考慮すると、TGFb1が本発明者らにより観察された程度まで高度に免疫原性であろうことは、特に予想外である。このことに加え、特に強力な免疫応答を生成することができるTGFb1の領域が同定され、これらは、ペプチドベースのワクチン接種アプローチでの使用に理想的であろう。
【0104】
本発明者らの所見は、免疫系の抑制、例えば、TMEにおけるTGFb1の役割を考慮すると意外なものであるが、固形腫瘍ならびに血液学的悪性腫瘍を有するほとんどの患者においてTGFb1特異的な免疫応答をブーストすることが可能であることを示唆する。
【0105】
多くの異なる治療戦略は、免疫抑制細胞を枯渇させるもしくは初期化(reprogram)すること、またはこれらの細胞により分泌される機能的メディエーターを標的とすることを目的として、免疫抑制腫瘍微小環境(TME)を標的とすることに焦点を当てている。上記で考察した意外な結果は、TGFb1を標的とした免疫調節ワクチン接種は、TMEにおける免疫抑制細胞を標的とする有効な方法であろうことを示している。他の臨床戦略とは対照的に、この独特なアプローチは、癌細胞を含む免疫抑制細胞の枯渇(細胞傷害性T細胞による直接的な殺傷を通じて)および免疫抑制細胞集団の初期化(炎症性サイトカイン(pro-inflammatory)を免疫抑制微小環境に導入することによる)の両方を組み合わせている。TGFb1発現は、免疫抑制細胞の表現型に対する主要な寄与因子であるため、TGFb1特異的T細胞は、免疫抑制細胞に対して特異的に反応し得る。微小環境を再度均衡させるTGFb1ワクチンは、T細胞増強薬、例えば、抗PD1抗体のようなチェックポイント遮断薬の効果を増大させるはずである。したがって、TGFb1ワクチンとチェックポイント遮断抗体との併用療法は、療法に反応可能な患者の数を増加させるはずである。
【0106】
結論として、上記で考察した実験結果は、癌を有するほとんどの患者における免疫応答の欠如に関する主要な寄与因子:TGFb1を直接標的とするための有用なアプローチを提供するものである。
【0107】
配列表
全長ヒトTGFb1プレタンパク質(NP_000651.3)(配列番号1)
【0108】
特に指示のない限り、下の表1において、「開始位置」および「終了位置」は、全長ヒトTGFb1プレタンパク質(配列番号1)における位置を指す。
表1
【配列表】
【国際調査報告】