(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】HIVカプシドの阻害のためのペプチド阻害剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220728BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220728BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220728BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220728BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220728BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220728BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20220728BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220728BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220728BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K7/00
C07K14/00
A61P31/18
A61K38/12
A61K38/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572558
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020036658
(87)【国際公開番号】W WO2020247933
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504238378
【氏名又は名称】ザ キュレイターズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミズーリ
(71)【出願人】
【識別番号】521532949
【氏名又は名称】ウジワル ネオギ
【氏名又は名称原語表記】Ujjwal Neogi
【住所又は居所原語表記】Division of Clinical Microbiology, Dept. of Laboratory Medicine, Karolinska Institute 17177 Stockholm, Sweden
(71)【出願人】
【識別番号】521532950
【氏名又は名称】アンデシュ スーネルボリ
【氏名又は名称原語表記】Anders Sonnerborg
【住所又は居所原語表記】Division of Clinical Microbiology, Dept. of Laboratory Medicine, Karolinska Institute 17177 Stockholm, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウジワル ネオギ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ スーネルボリ
(72)【発明者】
【氏名】カムレンドラ シン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ピー. クイン
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ ガッラッツィ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA24
4C084CA53
4C084CA59
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC551
4C084ZC552
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA30
4H045BA70
4H045BA71
4H045EA20
4H045EA29
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
HIV-1カプシドタンパク質に結合し、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する環状または直鎖ペプチドが本明細書で提供される。上記ペプチドを作製する方法、および医薬組成物、およびHIV感染を治療する方法がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
F-X
1-F-X
2-P-V-X
3-F(配列番号2)のアミノ酸配列を含む環状または直鎖ペプチドであって、X
1、X
2およびX
3がそれぞれ独立してグリシン(G)、リジン(K)または極性非荷電アミノ酸である、環状または直鎖ペプチド。
【請求項2】
X
2がグリシンであり、X
1およびX
3がそれぞれ極性非荷電アミノ酸である、請求項1記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項3】
X
1がトレオニン(T)であり、かつ/またはX
3がアスパラギン(R)であり、
任意にX
2がグリシンである、請求項1記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドがX
4-X
5-X
6-F-X
1-F-X
2-P-V-X
3-F-X
7-X
8(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、X
4、X
5、X
6、X
7およびX
8がそれぞれ独立してグリシン(G)、プロリン(P)、リジン(K)、極性非荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸からなる群から選択され、
任意にX
2がグリシンであり、X
1およびX
3がそれぞれ極性非荷電アミノ酸であり、かつ/または
任意にX
1がトレオニン(T)であり、かつ/もしくはX
3がアスパラギン(R)である、請求項1記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項5】
X
4が極性非荷電アミノ酸である、請求項4記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項6】
X
4がセリン(S)である、請求項5記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項7】
X
6が疎水性アミノ酸である、請求項4記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項8】
X
6がバリン(V)である、請求項7記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項9】
X
7がプロリン(P)である、請求項4記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項10】
X
5および/またはX
8がグリシン(G)であり、
任意にX
4が極性非荷電アミノ酸、任意にセリン(S)であり、
任意にX
6が疎水性アミノ酸、任意にバリン(V)であり、かつ/または
任意にX
7がプロリン(P)である、請求項4記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)を含むかまたはそれからなり、
任意に前記ペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)を含むかまたはそれからなり、
任意に前記ペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)を含むかまたはそれからなる、請求項1記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項12】
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7またはX
8の少なくとも1つがリジン(K)である、請求項1から10までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドが1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含み、前記付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である、請求項1から12までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項14】
S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるが、ただし、前記配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、環状または直鎖ペプチド。
【請求項15】
前記配列が1つまたは2つのアミノ酸置換を有するが、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を有しない、請求項14記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項16】
前記配列が1つのアミノ酸置換のみを有する、請求項15記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項17】
前記アミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、請求項14から16までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが色素、キレート剤、放射性核種、または色素、キレート剤および放射性核種の任意の組み合わせをさらに含む、請求項1から17までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドがHIV-1カプシドタンパク質に結合する、請求項1から11までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項20】
前記ペプチドが、前記カプシドタンパク質のC末端ドメイン(CTD)とN末端ドメイン(NTD)との間に位置するHIV-1カプシドタンパク質の結合ポケットに結合する、請求項19記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項21】
前記HIV-1カプシドタンパク質が、
【化1】
を含むアミノ酸配列を有し、前記ペプチドが配列番号1のL56、配列番号1のN57、配列番号1のM66、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む前記カプシドタンパク質の残基と相互作用する、請求項19記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項22】
前記ペプチドが50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下、11アミノ酸以下、10アミノ酸以下、9アミノ酸以下の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する、請求項1から21までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項23】
前記ペプチドが、カプシド阻害剤PF74よりも少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約7倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約9倍高い、または少なくとも約10倍高い、前記HIV-1カプシドタンパク質に対する結合親和性を有する、請求項19記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項24】
前記ペプチドがHIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する、請求項1から11までのいずれか1項記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドが約2μM~約4μMのIC
50を有する、請求項24記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項26】
前記ペプチドが約3.2μMのIC
50を有する、請求項25記載の環状または直鎖ペプチド。
【請求項27】
前記ペプチドが直鎖ペプチドである、請求項1から11までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドが環状ペプチドである、請求項1から11までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項29】
環状ペプチドに所望される配列の直鎖ペプチドを作製することと、前記直鎖ペプチドを環化して環状ペプチドを作製することとを含む、請求項28記載の環状ペプチドを作製する方法であって、
任意に前記直鎖ペプチドが化学的に合成されるか、または
任意に前記直鎖ペプチドが宿主細胞内で翻訳される、方法。
【請求項30】
請求項1から11までのいずれか1項記載のペプチドをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項31】
異種核酸をさらに含む、請求項30記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記異種核酸が、前記ペプチドをコードする核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む、請求項31記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項30記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項34】
前記ベクターがプラスミドである、請求項33記載のベクター。
【請求項35】
請求項33または34記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項36】
細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞または植物細胞である、請求項35記載の宿主細胞。
【請求項37】
請求項1から11までのいずれか1項記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項38】
治療有効量の請求項37記載の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体においてHIV感染を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年6月7日に出願された米国仮出願第62/858,666号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0002】
電子提出された配列表の参照
本願とともに提出された、ASCIIテキストファイル(名前UMC_196127_Seq_List_ST25.txt;サイズ:5026バイト;および作成日:2020年6月8日)で電子提出された配列表の内容は、その全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0003】
背景
抗レトロウイルス併用療法(cART)における格段の発展により、HIV/AIDSは、致死的な流行病から対処可能な慢性疾患へと変容した(Antiviral Therapy Cohort, 2017)。cARTは、効率的に実施されると、資源保有国および低中所得国の両方においてHIV感染者の罹患率および死亡率を大幅に低下させる(Quinn, 2008、Sabin, 2013、May et al. 2014、Harries et al. 2016およびTeeraanachai et al., 2017)。しかしながら、新たに出現した薬剤耐性突然変異(DRM)がcARTの望ましい結果を脅かし続けている。
【0004】
HIVカプシド(CA)は、ウイルスのライフサイクルへのその関与の理解が高まったために、過去15年間で重要な潜在的抗ウイルス標的として現れた。CAタンパク質は、N末端ドメイン(CA-NTD)およびC末端ドメイン(CA-CTD)の2つの異なるドメインを有し、これらは約5アミノ酸残基の可動性リンカーによって連結している(
図1A)。CA-NTDおよびCA-CTDドメインの両方が、主にα-ヘリックス二次構造を含有する。CA-NTDは7つのα-ヘリックス(α1~α7)から構成され、CA-CTDは4つのα-ヘリックス(α8~α11)および短い3
10-ヘリックスからなる。CAの構造から、六量体および五量体ビルディングブロックの形態のCAプロモーター間の相互作用が明らかとなった(Pornillos et al., 2009およびPornillos et al., 2011)。これらの構造から、カプシドコアのフラーレン様構造が、カプシドコアの閉鎖を促進する約250個の六量体および12個の五量体の格子に編成される約1500コピーのCAから構成されることも明らかとなった。
【0005】
カプシドコアはHIV複製の複数の段階に関与する。感染およびウイルス膜と細胞膜との融合に続いて、カプシドコアがサイトゾルに侵入し、核孔でドッキングするためにサイトゾル中を移動しながら、脱殻として知られるプロセスである制御された脱集合を経る。サイトゾルにおけるカプシドコアの脱殻のタイミング、プロセスおよび程度は完全には知られていないが、脱殻が逆転写の開始と関連することが示唆されている(Campbell and Hope, 2015)。カプシドコアが核孔に到達すると、CAが核侵入を促進し、組込み前複合体とともに核内に侵入する。CAは宿主染色体へのウイルスDNAの組込みにも関与する可能性があるが、このプロセスにおけるCAの特別な役割は、十分に定義されていない(Schaller et al., 2011、Chen et al., 2016およびFrancis and Melikyan, 2018)。ウイルス集合(ウイルス複製の後期)において、カプシドタンパク質の前駆体であるGagポリタンパク質が細胞膜で集合し、球形の未熟な非感染性ウイルスとして出芽する。成熟時のウイルスプロテアーゼの活性化後に、Gagは多機能CAを含む幾つかの構造タンパク質および小ペプチドにプロセシングされ(
図1A)、円錐形のカプシドコア(カプシドまたはコアとも称される)を形成する。このため、CAはHIV生物学において重要な役割を果たす。
【0006】
多くの報告から、カプシドコアの安定性および宿主因子とのその相互作用が逆転写に影響を与えることが示されている。格子安定性またはCAビルディングブロック間の相互作用を変化させる突然変異は、複製事象を変化させ、ウイルス感染性に重大な影響を及ぼす可能性がある。例えば、それぞれ緩徐または急速な脱殻につながる安定化突然変異E45AおよびE128A/R132A、または不安定化突然変異R18A/N21A、P38A、Q63A、L136D、K170AおよびQ129Aは、最終的にウイルス感染性を低下させる(Forshey et al, 2002)。複製の成功のためには不安定化が生じる必要がある一方、安定化と解離とのバランスを維持する必要があり、カプシドとウイルス感染性との間の複雑な関連性が示される。同様に、CPSF6(切断ポリアデニル化特異因子6)、TNPO3(トランスポーチン3)、NUP153(ヌクレオポリン153)、NUP358(ヌクレオポリン358)およびシクロフィリンAを含む様々な宿主因子とのCA相互作用の破壊は、複製時の感染性に影響を与えることが示されている(Krishnan et al. 2010、Lee et al. 2010、Schaller et al., 2011、Ambrose et al., 2012、Bichel et al., 2013およびMatreyek et al., 2013)。
【0007】
ウイルス複製の複数の段階におけるCAの役割を考慮すると、これは魅力的な抗ウイルス標的であり、治療的介入のための新規の戦略を与える(Prevelige, 2011、Bocanegra et al. 2012およびLi et al., 2013)。CA-NTDまたはCA-CTDで結合する幾つかの薬物様化合物が特定されている(Tang et al., 2003、Sticth et al., 2005、Ternois et al., 2005、Kelly et al., 2007、Blair et al., 2010、Curreli et al., 2011およびBocanegra et al., 2012)。これらには、ベンゾジアゼピン(BD)およびベンズイミダゾール(BM)化合物(Fader et al., 2011、Lemke et al., 2012、Tremblay et al., 2012)、ピロロピラゾロン(BI-1およびBI-2)(Lamorte et al., 2013)、ならびにCAP-1(Kelly et al., 2007およびCurreli et al., 2011)が含まれる。最もよく研究されているCA阻害剤の1つがPF-3450074(PF74)である(
図1A)。CAに結合したPF74の結晶構造(Blair et al., 2010、Bhattacharya et al., 2014およびPrice et al., 2014)から、PF74がCA-NTDとCA-CTDとの間に位置するポケットを占有することが示されている。この結合ポケットは、小分子BI-2、ならびに宿主因子CPSF6およびNUP153によっても共有される(Price et al., 2014)。したがって、PF74およびBI-2の両方が、CAとCPSF6またはNUP153との間の相互作用を防ぐことが期待される(Price et al., 2012およびPrice et al., 2014)。PF74は、サブユニット間相互作用を調整し、カプシド集合を障害し、in vitroでのCA多量体化の速度を高めるようである。PF74は、HIV複製サイクルの初期および後期事象の両方を妨げる(Blair et al., 2010およびThenin-Houssier and Valente, 2016)。後期逆転写産物である2LTRおよび組み込みプロウイルスの蓄積により、ウイルス複製の初期段階でのPF74の抗ウイルス活性が示唆され(Blair et al., 2010、Shi et al., 2011およびFricke et al., 2014)、一方、天然様粒子の形成の破壊により、HIV複製のより後の段階でのPF74の付加的な役割が示される(Blair et al., 2010、Thenin-Houssier and Valente, 2016)。上述の化学阻害剤に加えて、ペプチド阻害剤(NYAD-1等)も報告されている。NYAD-1は、細胞ベースの集合アッセイにおける未熟および成熟様ウイルス粒子の両方の形成を破壊する(Zhang et al., 2013)。有力な手掛かりにも関わらず、これらの化合物またはそれらの誘導体はいずれも臨床試験には進んでいない。
【0008】
近年報告されたCA阻害剤であるGS-CA1およびGS6207(GS-CA2とも呼ばれるGS-CA1のアナログ)(
図1B)は、現在承認されている抗HIV薬よりも大きな効力を有する(Blair et al., 2010、Tse et al., 2017およびZheng et al., 2018)。GS-CA1は、T細胞および末梢血単核細胞(PBMC)において非常に低い濃度でHIV-1複製を阻害する(EC
50=それぞれ240pMおよび140pM)。GS-6270は、MT-4細胞では100pMのEC
50で抗HIV活性を示すが、PBMCでは、異なるサブタイプの23種のHIV-1臨床分離株に対して50pM(20~160pM)の平均EC
50を示す(Zheng et al., 2018)。比較すると、最も研究されているカプシド阻害剤であるPF74は、PBMCにおいて80nM~640nMのサブタイプ依存的なEC50の範囲を示す。MT-2細胞では、PF74のEC50は570nMである(Blair et al., 2010)。加えて、ラットおよびイヌにおける研究から、単回皮下注射により、12週間超にわたって95%のHIV-1複製阻害に必要とされる血漿結合調整有効濃度を上回るGS-CA1およびGS-6207の血漿濃度が維持されることが示され、長時間作用薬としてのそれらの可能性が示される(Jarvis, 2017、Tse et al, 2017、Carnes et al., 2018およびSager et al., 2019)。PF74と同様に、GS-CA1はウイルス複製の初期および後期段階の両方を阻害する。
【0009】
それでもなお、新規の機構によって作用し、かつ/または新たな標的を対象とする新たな抗ウイルス剤を発見することが依然として必要とされている。
【0010】
概要
本開示は、F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)のアミノ酸配列を含む環状または直鎖ペプチドであって、X1、X2およびX3がそれぞれ独立してグリシン(G)、リジン(K)または極性非荷電アミノ酸である、環状または直鎖ペプチドに関する。或る特定の態様では、X2はグリシンであり、X1およびX3はそれぞれ極性非荷電アミノ酸である。或る特定の態様では、X1はトレオニン(T)であり、かつ/またはX3はアスパラギン(R)である。このため、或る特定の態様では、X1はトレオニン(T)であり、かつ/またはX3はアスパラギン(R)であり、かつX2はグリシンである。
【0011】
本開示は、ペプチドがX4-X5-X6-F-X1-F-X2-P-V-X3-F-X7-X8(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、X4、X5、X6、X7およびX8がそれぞれ独立してグリシン(G)、プロリン(P)、リジン(K)、極性非荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸からなる群から選択される、上記の環状または直鎖ペプチドにも関する。或る特定の態様では、X4はセリン(S)等の極性非荷電アミノ酸であり、X6はバリン(V)等の疎水性アミノ酸であり、X7はプロリン(P)であり、かつ/またはX5および/もしくはX8はグリシン(G)である。
【0012】
上記のペプチドの或る特定の態様では、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7またはX8の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0013】
本開示は、ペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)を含むかまたはそれからなる、環状または直鎖ペプチドにも関する。
【0014】
上記のペプチドのいずれかの或る特定の態様では、ペプチドは1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含み、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0015】
本開示は、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、環状または直鎖ペプチドにも関する。或る特定の態様では、配列は1つまたは2つのアミノ酸置換を有するが、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を有しない。或る特定の態様では、配列は1つのアミノ酸置換のみを有する。また、或る特定の態様では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0016】
上記のペプチドのいずれかの或る特定の態様では、ペプチドは色素、キレート剤、放射性核種、または色素、キレート剤および放射性核種の任意の組み合わせをさらに含む。
【0017】
上記のペプチドのいずれかの或る特定の態様では、ペプチドはHIV-1カプシドタンパク質に結合する。或る特定の態様では、ペプチドは、カプシドタンパク質のC末端ドメイン(CTD)とN末端ドメイン(NTD)との間に位置するHIV-1カプシドタンパク質の結合ポケットに結合する。或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、
【化1】
を含むアミノ酸配列を有し、ペプチドは配列番号1のL56、配列番号1のN57、配列番号1のM66、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むカプシドタンパク質の残基と相互作用する。或る特定の態様では、ペプチドは、カプシド阻害剤PF74よりも少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約7倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約9倍高い、または少なくとも約10倍高い、HIV-1カプシドタンパク質に対する結合親和性を有する。或る特定の態様では、ペプチドは、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する。或る特定の態様では、ペプチドは約2μM~約4μMのIC
50を有する。或る特定の態様では、ペプチドは約3.2μMのIC
50を有する。
【0018】
上記のペプチドのいずれかの或る特定の態様では、ペプチドは50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下、11アミノ酸以下、10アミノ酸以下、9アミノ酸以下の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する。
【0019】
或る特定の態様では、ペプチドは直鎖ペプチドである。
【0020】
或る特定の態様では、ペプチドは環状ペプチドである。環状ペプチドに所望される配列の直鎖ペプチドを作製することと、直鎖ペプチドを環化して環状ペプチドを作製することとを含む、本開示の環状ペプチドを作製する方法がさらに提供される。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは化学的に合成される。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは宿主細胞内で翻訳される。このため、本開示の任意のペプチドをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチドも提供される。或る特定の態様では、単離ポリヌクレオチドは、異種核酸をさらに含む。或る特定の態様では、異種核酸は、ペプチドをコードする核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む。或る特定の態様は、上記のポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターを提供する。或る特定の態様では、ベクターはプラスミドである。或る特定の態様は、細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞または植物宿主細胞等のかかるベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0021】
本開示の任意のペプチドを含む医薬組成物、および治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体においてHIV感染を治療する方法も本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】HIV-1 CAタンパク質の構造を示す図である。本図は、PF74に結合した天然HIV-1カプシドタンパク質のX線結晶構造(PDBエントリ4XZF)(Gres et al. 2015)から作成した。NTD:N末端ドメイン、CA-CTD:C末端ドメイン。
【
図1B】代表的なCA阻害剤の構造を示す図である。選択的CA阻害剤の化学構造。ここで示されるCA阻害剤の構造は、CAとの複合体において解明されたものであるか、またはドッキングプロトコルにおいて使用したものである。
【
図2A】CA/GS-CA1複合体の分子モデルを示す図である。CA六量体におけるGS-CA1のドッキングポーズ(二量体のみを示す)。
【
図2B】CA/GS-CA1複合体の分子モデルを示す図である。CA六量体における予測GS-CA1結合部位のクローズアップ。CAおよびGS-CA1の側鎖は、球棒として表現する。CAの骨格はリボンとして表現する。橙色の炭素を有する残基は、GS-CA1耐性突然変異位置を示す(Perrier et al., 2017)。
【
図2C】CA/GS-CA1複合体の分子モデルを示す図である。これらの残基およびGS-CA1へのそれらの近接性の詳細図。
【
図2D】CA/GS-CA1複合体の分子モデルを示す図である。GS-CA1と相互作用するCAの他の残基。本図および後続の図におけるGS-CA1炭素は緑色で示す。窒素、酸素、硫黄およびフッ素原子は、それぞれ青色、赤色、黄色およびアクアマリン色にしている。
【
図3A】GS-CA1とGS-6207との重合せを示す図である。シクロペンタピラゾール環の切り替わり位置を点線の円によって示す。
【
図3B】CA/GS-CA1複合体とCA/GS-6207複合体との間のK70およびR173の側鎖立体構造の相違を示す図である。実線の矢印は2つの複合体におけるK73のNζ原子の変位を示し、点線はGS-6207とK70とによって形成されたH結合を示す。この相互作用は、CA/GS-CA1複合体では失われている。
【
図3C】CA/GS-CA1の分子モデルへのCA/PF74結晶構造(PDBエントリ4XZF)の重合せを示す図である。結合ポケットに近接したPF74と関連する耐性突然変異は、青緑色の炭素で示す。GS-CA1耐性に関連した残基は、
図2と同様に示す。
【
図3D】パネルAをおよそ45°回転させた図である。点線の円は、GS-CA1およびPF74の3つの構造成分の重合せを示す。
【
図3E】GS-CA1、PF74およびBI-2の重合せを示す図である。
【
図4A】CA/GS-CA1の分子モデルへのCA/CPSF6結晶構造の重合せを示す図である。明確にするために、CPSF6の残基P313~P316および骨格原子は省略した。本図は、CPSF6のF321へのGS-CA1のジフルオロベンジル環の重合せを示す。
【
図4B】CA/GS-CA1の分子モデルへのCA/NUP153結晶構造複合体の重合せを示す図である。明確にするために、残基F1415~G1418のみを示す。本図は、NUP153のF1417へのGS-CA1のジフルオロベンジル環の重合せを示す。加えて、NUP153のF1415およびGS-CA1のメチルスルホニル基は、CA六量体のP38と共通の相互作用を有する。明確にするためにP38の原子は示さない。
【
図5】CA/GS-CA1の分子モデルへのCA/CAP-1結晶構造複合体の重合せを示す図である。明確にするために、2つの構造中のM66のみを示す(橙色-CA/GS-CA1;ティール色-CA/CAP-1)。
【
図6A】Pep-2-cyclicが、よく研究されている阻害剤PF74よりも良好にHIV-1カプシドに結合することを示す図である。マイクロスケール熱泳動によって決定されたCAのPep-2-cyclic結合親和性。本図は、200nM CA六量体の存在下、漸増濃度のPep-2-cyclic(1nM~2000nM)での熱泳動による蛍光の変化を示す。
【
図6B】Pep-2-cyclicが、よく研究されている阻害剤PF74よりも良好にHIV-1カプシドに結合することを示す図である。マイクロスケール熱泳動によって決定されたCAのPF74結合親和性。本図は、200nM CA六量体の存在下、漸増濃度のPF74(1nM~2000nM)での熱泳動による蛍光の変化を示す。
【
図7】細胞培養におけるPep-2-cyclicの阻害活性を示す図である。
【
図8】承認薬リルピビリン(NNRTI)およびカプシド阻害剤PF74と比較した、ヒト化マウスモデルにおけるPep-2-cyclicの阻害活性を示す図である。Pep-2-cyclicは、HIV-1をリルピビリンと同等のEC
50で阻害するが、最も研究されているカプシド阻害剤PF74よりもはるかに良好である(線は中央値EC
50を表す)(15匹のマウスからの結果)。リルピビリンおよびPF74アームの各2匹を安楽死させ、Pep-2-cyclicアームの1匹が死亡した。
【
図9】有効性研究における経時的な血漿Pep-2-cyclicおよびPF74濃度を示す図である。記号は、各化合物についてのマウス血清タンパク質結合調整EC95(paEC95)値に対する平均±SD倍率である(3匹のマウスからの結果)。
【
図10】本開示の代表的なペプチド配列のリストを示す図である。
【0023】
詳細な説明
定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語がその実体の1つ以上を指すことに留意すべきである。例えば、「1つの環状ペプチド(a cyclic peptide)」は、1つ以上の環状ペプチドを表すことが理解される。このように、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つ以上の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書で区別なく使用され得る。
【0024】
さらに、本明細書で使用される「および/または」は、他方を含むかまたは含まない、指定の特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示とみなすべきである。このため、本明細書において「Aおよび/またはB」等の表現で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)ならびに「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、Bおよび/またはC」等の表現で使用される「および/または」という用語は、以下の実施形態:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0025】
本明細書において態様が「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という言葉を用いて記載されている場合はいずれも、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および/または「から本質的になる(consists essentially of)」等の用語で記載される、他の点では類似の態様も提供されることが理解される。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が関連する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0027】
数値範囲は、その範囲を定義する数値を含む。「およびその間の任意の範囲」等によって明示的に特定されていなくても、値のリスト、例えば1、2、3または4が列挙される場合、別段の記載がない限り、本開示は値の間の任意の範囲、例えば1~3、1~4、2~4等を具体的に含む。
【0028】
本明細書に提示される見出しは、参照を容易にするためだけのものであり、本明細書を全体として参照することによって得ることができる様々な態様または本開示の態様を限定するものではない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」だけでなく、複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に結合されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指し、生成物の特定の長さを指すものではない。このため、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれらとは区別なく使用され得る。「ポリペプチド」という用語は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、または非標準アミノ酸による修飾を含むが、これらに限定されない、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図している。ポリペプチドは、天然生物源に由来するものであっても、または組み換え技術によって作製されたものであってもよく、必ずしも指定の核酸配列から翻訳されたものではない。ポリペプチドは、化学合成によるものを含む任意の方法で生成することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「環状ペプチド」は、直鎖状のアミノ酸配列からなるのではなく、環化しているペプチドを指す。例えば、或る特定の態様では、環状ペプチドは、カルボキシルC末端とアミンN末端との間のラクタム結合によって形成され得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「極性非荷電アミノ酸」は、荷電アミノ酸とは異なる極性化学官能基を有する側鎖を有するアミノ酸を指す。このため、極性非荷電アミノ酸には、セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)およびチロシン(Y)が含まれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「疎水性アミノ酸」は、疎水性側鎖を有するアミノ酸を指す。このため、疎水性アミノ酸には、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)およびトリプトファン(W)が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される「タンパク質」は、単一のポリペプチド、すなわち、上で定義された単一のアミノ酸鎖を指す場合があるが、例えばジスルフィド結合、水素結合または疎水性相互作用によって結合して、多量体タンパク質を生じる2つ以上のポリペプチドを指す場合もある。
【0034】
「単離」ポリペプチド、またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体とは、その自然環境にはないポリペプチドを意図している。特定のレベルの精製は必要とされない。例えば、単離ポリペプチドは、その天然または自然環境から取り出すことができる。宿主細胞内で発現された、組換えによって作製されたポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書に開示される場合、任意の好適な手法によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製された組み換えポリペプチドと同様、単離されているとみなされる。
【0035】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数の核酸だけでなく、複数の核酸を包含することを意図し、単離核酸分子または構築物、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または非従来的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含み得る。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つ以上の核酸セグメント、例えばDNAまたはRNAフラグメントを指す。「単離」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図している。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドサブユニットをコードする組み換えポリヌクレオチドは、本明細書に開示される場合、単離されているとみなされる。単離ポリヌクレオチドの更なる例としては、異種宿主細胞内に維持される組み換えポリヌクレオチド、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離RNA分子には、ポリヌクレオチドのin vivoまたはin vitro RNA転写産物が含まれる。単離ポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に作製されたかかる分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸はプロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーター等の調節要素であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。
【0036】
或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。他の実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAであり得る。
【0037】
参照配列との「配列同一性」は、または参照配列と或る%「同一」の配列等の用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上のポリヌクレオチド配列間または2つ以上のポリペプチド配列間の関係を指す。或る配列中の位置が比較配列の対応する位置で同じ核酸塩基またはアミノ酸によって占有される場合、配列はその位置で「同一」であるとされる。「配列同一性」のパーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸が両方の配列に見られる位置の数を決定し、「同一」の位置の数を得ることによって算出される。次いで、「同一」の位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、100を乗算して、「配列同一性」のパーセンテージを得る。「配列同一性」のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列と、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとを比較することによって決定される。比較用の配列を最適にアラインメントするために、参照配列が一定に保たれる一方で、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分が、ギャップと称される付加または欠失を含んでいてもよい。最適なアラインメントは、ギャップを有していても、参照配列と比較配列との間に可能な限り多くの数の「同一の」位置が生じるアラインメントである。2つの配列間の「配列同一性」のパーセンテージは、Karlin and Altschul (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(12):5873-5877, 1993)のアルゴリズムに基づくプログラムBLASTN(ヌクレオチド配列比較用)およびBLASTP(ポリペプチド配列比較用)が組み込まれた、2004年9月1日時点で米国国立生物工学情報センターから入手可能なプログラム「BLAST 2 Sequences」のバージョンを用いて決定することができる。「BLAST 2 Sequences」を利用する場合、2004年9月1日時点でデフォルトのパラメーターであったパラメーターをワードサイズ(3)、オープンギャップペナルティ(11)、延長ギャップペナルティ(1)、ギャップドロップオフ(50)、期待値(10)、およびマトリックスオプションを含むが、これに限定されない任意の他の必要とされるパラメーターに使用することができる。
【0038】
「ベクター」は、宿主細胞に導入されることで形質転換宿主細胞を生成する核酸分子である。ベクターは、複製起点等の宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子および当該技術分野で既知の他の遺伝要素を含んでいてもよい。
【0039】
「形質転換」細胞または「宿主」細胞は、分子生物学的手法によって核酸分子が導入された細胞である。本明細書で使用される場合、形質転換という用語は、ウイルスベクターを用いたトランスフェクション、プラスミドベクターを用いた形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクションおよびパーティクルガン加速による裸のDNAの導入を含む、核酸分子をかかる細胞に導入することができる手法を包含する。形質転換細胞または宿主細胞は、細菌細胞または真核細胞であり得る。
【0040】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子が生化学物質、例えばポリペプチドを産生するプロセスを指す。このプロセスは、限定されるものではないが、遺伝子ノックダウン、ならびに一過性発現および安定発現の両方を含む、細胞内での遺伝子の機能的存在の任意の顕在化を含む。限定されるものではないが、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、およびかかるmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。最終的な所望の生成物が生化学物質である場合、発現にはその生化学物質および任意の前駆体の生成が含まれる。遺伝子の発現により「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用される場合、遺伝子産物は核酸、例えば遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載される遺伝子産物は、転写後修飾、例えばポリアデニル化を有する核酸、または翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解的切断等を有するポリペプチドをさらに含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、(例えば、「被験体を治療する」という表現における)「治療する」、「治療」または「の治療」という用語は、例えば被験体の生存率が延長するか、または不快感が軽減される程度まで疾患病状の可能性を低下させること、疾患症状の発現を減少させることを指す。例えば、治療は、被験体に投与した場合に疾患の症状、兆候または原因を低減する療法剤の能力を指す場合がある。治療はまた、少なくとも1つの臨床症状の緩和もしくは軽減、および/または病態の進行の阻止もしくは遅延、および/または疾患もしくは病気の発症の予防もしくは遅延を指す。
【0042】
「被験体」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後診断または療法が所望される任意の被験体、特に哺乳動物被験体を意味する。哺乳動物被験体としては、例えばヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、クマ等を含む、ヒト、家畜、農用動物、スポーツ動物および動物園の動物が挙げられる。
【0043】
「医薬組成物」という用語は、活性成分の生物活性が効果的であることを可能にする形態であり、組成物が投与される被験体に対して許容不能なほど有毒である付加的な構成要素を含有しない調製物を指す。かかる組成物は滅菌され得る。
【0044】
本明細書に開示される抗体の「有効量」は、具体的に記載された目的を果たすのに十分な量(例えば、「治療有効量」)である。「有効量」は、記載の目的に関して経験的にかつ日常的な方法で決定することができる。
【0045】
本明細書で言及される場合、「本開示の環状または直鎖ペプチド」等は、他に指定のない限り、本明細書に記載される環状または直鎖ペプチドのあらゆる態様または実施形態を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、HIV-1カプシドの「集合」は、複数のサブユニットからのカプシドコアの形成を意味し、「脱集合」は、HIVゲノムを細胞質に放出するカプシドコアの分解を意味する。
【0047】
概要
GS-CA1に結合したCA六量体の結晶構造は、報告されているが、公開されていない。報告によると、GS-CA1はPF74、CPSF6およびNUP153と同じ一般的な部位でCAに結合する(Tse et al., 2017)。GS-6207と複合したCAの結晶構造は、未だ報告されていない。よく解明されていないが、GS-CA1およびGS-6207は、PF74よりも広範にCAと相互作用し、PF74よりも高い結合親和性、ひいては高い有効性をもたらす可能性がある。ここでは、計算論的アプローチおよび報告されている阻害剤に結合したCAの構造を用いて、GS-CA化合物とCAとの間の相互作用の詳細を示す。GS-CA化合物がPF74、BI-2、NUP153およびCPSF6にも存在する同様の特徴を有することが見出される。計算論的モデル化において同じ構造的特徴を用いることで、同等のドッキングスコアでGS-CA結合部位にドッキングする環状ペプチド(Pep-2-cyclic)を設計した。マイクロスケール熱泳動(MST)実験を用いてPep-2-cyclicのCA結合親和性を決定することによってCAへのPep-2-cyclicの結合を検証したところ、CAが既知のCA阻害剤であるPF74よりも約7倍良好な親和性でPep-2-cyclicに結合することが明らかとなった。
【0048】
モデル化されたCA/GS-CA複合体におけるGS-CA1およびGS-6207とCAとの相互作用
CA六量体とGS-CA1との間の相互作用についての洞察を得るために、Schrodinger SuiteのMaestro(Schrodinger LLC,NY)と適合させた誘導適合ドッキング(IFD)を用いた(実施例)。天然型のCA六量体の結晶構造(PDBエントリ4XFZ)におけるGS-CA1のドッキングポーズ(最高のGlideスコアを有する)(Gres et al., 2015)を
図2に示す。本図から、GS-CA1が残基L56、M66、Q67、N74およびA105にごく接近して結合することが示される(
図2Bおよび
図2C)。in vitro選択研究により、GS-CA1耐性突然変異L56I、M66I、Q67H、N74DおよびA105Eが特定され(Perrier et al., 2017)、これらの突然変異がCA六量体へのGS-CA1の結合に影響を及ぼし得ることが示唆された。注目すべきことに、L56、M66、Q67、L74またはA105に偏ることなくIFDドッキングが行われた。加えて、本発明者らのCA/GS-CA1複合体のモデルでは、CA-NTD残基I37、P38、S41、N53、T54、N57、Q63、L69、K70、I73、T106、T107、Y130、Y169、L172、R173およびQ179もGS-CA1と直接相互作用する(
図2D)。これらの残基の多くは、宿主因子CPSF6およびNUP153に由来する小分子またはペプチドの結合に不可欠である(Price et al., 2014)。
【0049】
限られたサイズのコホート(n=15)において、GS-CA1の抗ウイルス活性が異なるサブタイプの臨床分離株間で同等であることが報告され(Tse et al., 2017)、GS-CA1結合ポケットにおけるアミノ酸残基の強い保存が示唆された。GS-CA1結合ポケットがサブタイプ間で保存されているかを評価するために、Los Alamos HIV配列データベース(https://www.hiv.lanl.govでのワールドワイドウェブ)を用いて、全HIV-1感染の50%超を占めるHIV-1サブタイプC(HIV-1C)に由来するCAのコンセンサス配列を生成した。結果から、HIV-1C中のGS-CA1結合部位が高度に保存されていることが示された。HIV-1C(F169)では、HIV-1B(Y169)と比較して1つの置換のみが認められた。Y169(またはHIV-1C中のF169)の最近接(Cδ)原子は、GS-CA1の相互作用距離(3.8Å未満)内であり、GS-CA1との弱い相互作用が示唆される。
【0050】
GS-6207は、3つの修飾によってGS-CA1と異なる:(i)スルホンアミド基上のシクロプロパン部分がメチル基に置き換えられ、(ii)インダゾール環上のジフルオロエチル基がトリフルオロエチル基に置き換えられ、(iii)シクロペンタピラゾール環上のジフルオロメチル基がトリフルオロメチル部分に置き換えられている。現在、これらの置換えの具体的な根拠は知られていない。GS-6207は、天然型のCAの結晶構造にドッキングした(Gres et al., 2015)。結果から、GS-6207がGS-CA1と同じ結合ポケットに僅かに良好なGlideスコアで(GS-6207の-14.362に対してGS-CA1の-11.271)結合することが示され、より良好な結合親和性が示唆された。ドッキングしたGS-6207におけるシクロペンタピラゾール環の配向は、GS-CA1における配向と比較して約180°切り替わり、トリフルオロメチル部分が溶媒に曝露されることも認められた(
図3A)。CA/GS-CA1およびCA/GS-6207のドッキングした複合体間の別の顕著な相違は、K70およびR173側鎖の立体構造である。CA/GS-6207複合体では、K70側鎖がCA/GS-CA1複合体内の位置から結合ポケットに向かって約5Å移動し(
図3B、実線の矢印)、GS-6207中のアミド基のC=Oと水素結合を形成する(
図3B、点線)。付加的なH結合が、GS-6207がGS-CA1よりも良好なGlideスコアを有する理由の1つであり得る。R173の側鎖立体構造も変化しているが(
図3B)、重要ではないようである。
【0051】
PF74/CAおよびBI-2/CA結晶構造との比較
5つの突然変異(Q67H、K70R、T107N、L111IおよびH87P)は、PF74に対する耐性を与える(Blair et al., 2010、Shi et al., 2011、Shi et al. 2015およびZhou et al., 2015)。残基Q67、K70、T107およびL111はヘリックス4および5上に存在するが、H87はCypA結合ループ(残基85~93)の一部である(Gamble et al., 1996およびAmbrose and Aiken, 2014)。GS-CA1とPF74との間の唯一の共通の耐性突然変異はQ67Hであるが(Perrier et al., 2017)、他のGS-CA1耐性残基(L56、M66、L74およびA105)もPF74の相互作用距離内である。CA/PF74結晶構造(Gres et al., 2015)とCA/GS-CA1モデルとの重合せを
図3Cに示す。PF74の3つの環(2つのフェニル環および1つのインドール環)が全て、GS-CA1の3つの異なる環(
図3Dの点線の円1、2および3)上に極めてよく重なり合うことが図から明らかである。PF74のインドール環は、GS-CA1のシクロペンタピラゾール環上に重なり合う(円1)。PF74の2つのフェニル環の一方は、GS-CA1のジフルオロベンゼン環上に重なり合うが(円2)、もう一方のPF74フェニル環は、GS-CA1のインダゾール環と位相的に同様の位置にある(円3)。さらに、PF74の極性部分は、GS-CA1の極性部分と位相的に一致する。このため、GS-CA1のアセトアミド部分は、PF74の対応する部分によく重なり合う。これらのデータから、或る特定の構造的特徴および相互作用がGS-CA1とPF74との間で共通していることが示唆される。
【0052】
CA六量体へのGS-CA1のIFDにおいて、GS-CA1/PF74結合ポケット内の殆どの側鎖の立体構造は、K70の側鎖を除き、CA/PF74の結晶構造と比較して顕著に変化しなかった(
図3C)。K70 Nζ原子の位置は、CA/PF74複合体内のその位置から約4.7Åシフトし(
図3C)、PF74とのK70の相互作用とは対照的に、K70とGS-CA1との間に相互作用がないことが示唆された。この相互作用の欠如は、GS-CA1のin vitro耐性選択研究においてK70での突然変異が出現しなかったことの考え得る理由である(Perrier et al., 2017)。上述のように、CA/GS-6207複合体では、K70の相互作用が回復する。現段階では、GS-6207の耐性突然変異プロファイルは知られていない。
【0053】
BI-2は、CA六量体に結合することが示された2つの4,5-ジヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピラゾール-6-オン系化合物の1つである。BI-2は、CA六量体を安定化させ、感染の初期段階でHIV-1を阻害することが示された(Lamorte et al., 2013)。BI-2に耐性を示すウイルスの選択により、CA-NTDの残基A105およびT107に突然変異が特定された(Lamorte et al., 2013)。BI-2と複合したCAの高分解能構造から、これがPF74結合部位に結合することが示された。CA-NTDのCα原子の重合せから得られた3つの化合物(GS-CA1、PF74およびBI-2)の重合せにより、3つの化合物がCA六量体と共通の結合様式を有することが示された(
図3E)。GS-CA1のドッキング結果から、CA残基A105がGS-CA1の相互作用距離内にあることが示され、GS-CA1とBI-2との間の共通の耐性突然変異A105Tにより、2つの化合物が結合部位の一部を共有していることがさらに確認された。
【0054】
CPSF6/CAおよびNUP153/CA結晶構造との比較
CPSF6およびNUP153に由来する短ペプチドと複合したCAの結晶構造から、両方のペプチドがPF74およびBI-2によって占有される結合ポケットを共有するが(Price et al., 2014)、結合したペプチドが付加的な相互作用を有することが示された。CAに結合する際にGS-CA1、CPSF6およびNUP153の間で共通の構造的特徴が存在するかを決定するために、CA/CPSF6およびCA/NUP153の結晶構造を、モデル化したCA/GS-CA1複合体と重ね合わせた。重合せを
図4に示すが、CA六量体にドッキングしたGS-CA1の立体構造がCPSF6ペプチドのフォールディングに従うことが実証される(
図4A)。CPSF6のF321の側鎖は、GS-CA1のジフルオロベンジル部分に完全に重なり合った。
【0055】
CPSF6と同様に、NUP153骨格はGS-CA1の立体構造に従い、NUP153のF1417は、GS-CA1のジフルオロベンジル部分に完全に重なり合う(
図4B)。加えて、GS-CA1のメチルスルホニル部分とCAのP38との間に疎水性相互作用が存在する(P38の原子は示さない)。同様の相互作用がNUP153のF1415とP38との間に認められる(
図4B)。
【0056】
CA/CAP-1、CA/BDおよびCA/BM複合体との比較
CAP-1 1-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-3-(2-(((5-((ジメチルアミノ)メチル)フラン-2-イル)メチル)チオ)エチル)尿素は、耐性突然変異プロファイルが報告されていない集合阻害剤である(Kelly et al., 2007)。CA-NTDに結合したCAP-1の構造は、NMRおよびX線結晶構造解析によって解明されている(Kelly et al., 2007)。結晶構造とNMR構造との比較から、CAがCAP-1結合の際に顕著な立体構造変化を起こすことが実証された。CA/CAP-1複合体の結晶構造とCA/GS-CA1複合体のモデル構造との重合せから、2つの阻害剤が共通の部位で結合しないことが示された(
図5)。しかしながら、2つの残基(M66およびL69)がGS-CA1およびCAP-1の両方と相互作用した。CA/GS-CA1およびCA/CAP-1複合体におけるM66の位置を
図5に示す。ベンゾジアゼピン(BD1~BD4)およびベンズイミダゾール(BM1~BM5)系の化合物は、CAP-1結合部位に近接した部位でCAに結合する(Lemke et al., 2012)。両系列の化合物は、同じポケットに結合することが示されているが、異なる耐性突然変異プロファイルを有する。突然変異V36TおよびG61EがBD阻害剤によって選択されたのに対し、K30RおよびS33GはBM阻害剤によって選択された。V36およびG61はどちらもBM3結合ポケットの一部である(PDBエントリ4E91)(Sticht et al., 2005)。K30はBM4の相互作用距離内になく、S33の骨格カルボニル基は、BM4と専らファンデルワールス相互作用を形成する(PDBエントリ4E92)(Lemke et al., 2012)。したがって、BM4の耐性機構は、直接的な相互作用によって働くのではないようである。CA-NTDに結合したBD-3およびBM4の結晶構造から、両方の化合物がCAP-1と同様、M66の相互作用距離内にあることが示された。したがって、BDおよびBM系化合物は、GS-CA1と結合部位を共有しないが、いずれもM66と共通の相互作用を有している。
【0057】
CA六量体に結合するクーママイシンA1
クーママイシンA1(C-A1)は、HSP90も阻害するジャイレースB阻害剤である(Vozzolo et al., 2010;Carnes et al., 2018に概説される)。CA/C-A1の結晶構造は解明されていない。しかしながら、ドッキング研究により、2つの隣接カプシドモノマーによって形成されるポケット内のC-A1の結合が予測される(Chen et al., 2016)。突然変異N74DおよびA105SがC-A1に対する耐性を与え、両方の残基(N74およびA105)が2つのカプシドモノマーの界面にあることから、この予測される結合部位が関連する可能性がある。
【0058】
IFDを用いて、C-A1とCAとの間の相互作用の詳細を評価した。Chen et al., 2016によって使用されたものと同じPDBファイル(4XZF)における32個の予測されたC-A1のドッキングポーズのうち、いずれのポーズもN74またはA105の相互作用距離内になかった。ドッキングデータから、C-A1に対するN74DおよびA105Sのその耐性が、これらの残基での突然変異によってもたらされた結合欠陥に起因しない可能性があることが予測される。
【0059】
CAの他の小分子阻害剤およびそれらとGS-CA1の結合との比較
CK026、I-XW-053、化合物34(Kortagere et al., 2012)、C1(Lemke et al., 2013)およびエブセレン(Lemke et al., 2013)等の幾つかの付加的なCA阻害剤が報告されている。CK026は巨大分子であり、PBMCにおいてHIV-1の阻害を示さなかった。しかしながら、CK026の誘導体であるI-XW-053および化合物34は、PBMCにおいて阻害活性を示した(Kortagere et al., 2014)。これらの化合物と複合したCAの結晶構造は解明されていない。しかしながら、表面プラズモン共鳴による結合親和性の決定と組み合わせたドッキングの結果から、化合物34がP38、S41、R173、K170およびQ179の近傍に結合することが明らかとなった(Kortagere et al., 2014)。これらの残基は全て、モデル化されたCA/GS-CA1複合体においてGS-CA1の相互作用距離内にある(
図2)。
【0060】
化合物C1は、CypA結合ループ近くの特異部位に結合し、成熟カプシドの適当な集合を破壊することによって後期段階に影響を及ぼすことが示されている(Lemke et al., 2013)。しかしながら、化合物C1およびBD系化合物の存在下でのCAの結晶構造から、C1がCA二量体形成を誘導し、二量体の界面で結合することが示される。突然変異R132TはC1に対する耐性を与える。C1およびBD/BM化合物の結晶構造において、R132は化合物C1と極性相互作用を形成する。また、これらの構造から、C1がヘリックス2のN末端と接触し、P34、G35、I37およびP38と疎水性相互作用を形成することが示される。安息香酸部分はA139に対する直接水素結合を形成し、S41に対して水が媒介する水素結合が存在する(Lemke et al., 2013)。I37およびP38はどちらもGS-CA1と疎水性相互作用を形成する(
図2)。
【0061】
エブセレンは、CA二量体化の阻害剤の探索の際に発見された小分子である。エレクトロスプレーイオン化質量分析実験から、エブセレンが、最も有力にはC198およびC218が関わるセレニルスルフィド結合を介してCA-CTDに共有結合することが明らかとなった(Thenin-Houssier et al, 21016)。これらの残基はどちらもCA-CTDの一部であり、本発明者らのモデル化されたCA/GS-CA1複合体においてGS-CA1の相互作用距離内にない。したがって、エブセレンおよびGS-CA1の結合部位が重ならないことが予測される。
【0062】
設計された環状ペプチド阻害剤(Pep-2-cyclic)のドッキング
PF74、NUP153、CPSF6およびBI-2に結合したCAの結晶構造、ならびにCA/GS-CA1(CA/GS-6207)複合体のモデル化された構造を用いて、CPSF6およびNUP153に由来するCAに結合した小分子またはペプチドの間で共通の構造成分/基を含有する環状ペプチド(Pep-2-cyclic:Cyc(SGVFTFGPVNFPG);配列番号4)を設計した。Pep-2-cyclicのドッキングから、これがPF74、NUP153、CPSF6、GS-CA1およびGS-6207によって共有されるポケット内に結合することが示された。異なる複合体において重なり合った構造成分を表1に挙げる。
【0063】
【0064】
設計されたペプチドは、CA機能を阻害し得る結合部位および化学部分を共有するようである。
【0065】
CAとPep-2-cyclicおよびPF74との結合親和性
Pep-2-cyclicを化学的に合成した。中間体の直鎖足場を、Fmoc/tbu戦略を用いる固相合成によって、非常に酸に不安定な2-ClTrt樹脂から開始して作製した。直鎖配列の集合後に、1%TFAと5%TISとの混合物で処理することによって、完全に保護されたペプチドを樹脂から取り出した。続いて、C末端カルボン酸とN末端アミノ基とのカップリングによってペプチドを環化した。この反応は、DIPEA(6倍過剰)の存在下にてDMF溶液中、室温で6時間、PyBOP(2.5倍過剰)を用いて達成された。lc-msによって環化を検査した後、保護された環化中間体をTFAとスカベンジャーとの混合物で処理することによって他の保護基を除去し、最終的な粗標的分子を得た。分取HPLC精製および凍結乾燥によって最終的な精製ペプチドを得て、これをlc-msによって特性評価した。
【0066】
マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイを用いて、Pep-2-cyclicおよびPF74に対するCAの結合親和性を決定した。MSTはサイズ、電荷、水和殻または立体構造を含む様々な分子特性に依存する、温度勾配における分子の指向運動である熱泳動に基づく。このため、MSTは分子特性の実質的にあらゆる変化に対して高感度であり、調査されるサンプルのサイズまたは性質とは独立した分子事象の正確な定量化を可能にする(Jerabek-Willemsen, 2014)。MST実験においては、赤外線レーザーによって温度勾配が誘導される。温度勾配による分子の指向運動を、共有結合したフルオロフォアを用いて検出し、定量化する。Pep-2-cyclicおよびPF74の漸増濃度に対して正規化蛍光の差をプロットすることによって得られる結合等温線を、それぞれ
図6Aおよび
図6Bに示す。CAとのPep-2-cyclic(K
d.Pep-2-cyclic)およびPF74(K
d.PF74)の結合親和性を、データ点を二次方程式(式1)に当てはめることによって外挿した。これらのデータからのK
d.Pep-2-cyclicは32±3nMであり、K
d.PF74は212±7nMである。PF74とのCA六量体の結合親和性は、等温熱量測定(ITC)によって262nMであることが以前に決定されており(Bhattacharya et al., 2014)、ここでMSTを用いて決定されたK
d.PF74と良好に一致している。これらのデータから、Pep-2-cyclicが約7倍高い親和性でCAに結合することが示唆される。
【0067】
環状ペプチド
このため、本開示の或る特定の態様は、F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)のアミノ酸配列を含む環状ペプチドであって、X1、X2およびX3がそれぞれ独立してグリシン(G)、リジン(K)または極性非荷電アミノ酸である、環状ペプチドに関する。配列番号2の或る特定の態様では、
X2はグリシンであり、X1およびX3はそれぞれ極性非荷電アミノ酸であり、かつ/または
X1はトレオニン(T)であり、かつ/もしくはX3はアスパラギン(R)である。
【0068】
本開示の環状ペプチドの或る特定の態様では、環状ペプチドは、X4-X5-X6-F-X1-F-X2-P-V-X3-F-X7-X8(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、ここで、配列F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)は上で定義された通りであり、X4、X5、X6、X7およびX8は、それぞれ独立してグリシン(G)、プロリン(P)、リジン(K)、極性非荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸からなる群から選択される。配列番号3の或る特定の態様では、
X4は極性非荷電アミノ酸であり、
X4はセリン(S)であり、
X6は疎水性アミノ酸であり、
X6はバリン(V)であり、
X7はプロリン(P)であり、かつ/または
X5および/もしくはX8はグリシン(G)である。
【0069】
配列番号2および/または配列番号3の或る特定の態様では、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7またはX8の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0070】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)のアミノ酸配列からなる。或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含む。或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列からなる。
【0071】
或る特定の態様では、配列番号2、配列番号3、配列番号4および/または配列番号5を含む環状ペプチドは、1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含む。或る特定の態様では、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0072】
或る特定の態様は、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含むが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、環状ペプチドに関する。或る特定の態様は、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列からなるが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、環状ペプチドに関する。すなわち、変化の数が2つを超えない限り、最大で2つの単一アミノ酸付加、2つの単一アミノ酸付加または2つの単一アミノ酸欠失が存在し得る。すなわち、変化の数が2つを超えない限り、単一アミノ置換、単一アミノ酸付加および単一アミノ酸欠失の1つまたは任意の組み合わせが存在し得る。或る特定の態様では、配列は1つまたは2つのアミノ酸置換を有するが、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を有しない。或る特定の態様では、配列は1つのアミノ酸置換のみを有する。また、或る特定の態様では、アミノ酸置換は、当該技術分野で認められている保存的アミノ酸置換である。或る特定の態様では、かかる環状ペプチドは、1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含む。或る特定の態様では、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0073】
本明細書に開示される環状ペプチドのいずれかの或る特定の態様では、環状ペプチドは50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下、11アミノ酸以下、10アミノ酸以下、9アミノ酸以下の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する。本明細書に開示される環状ペプチドのいずれかの或る特定の態様では、環状ペプチドは、50アミノ酸以下であるが8以上、40アミノ酸以下であるが8以上、30アミノ酸以下であるが8以上、25アミノ酸以下であるが8以上、20アミノ酸以下であるが8以上、19アミノ酸以下であるが8以上、18アミノ酸以下であるが8以上、17アミノ酸以下であるが8以上、16アミノ酸以下であるが8以上、15アミノ酸以下であるが8以上、14アミノ酸以下であるが8以上、13アミノ酸以下であるが8以上、12アミノ酸以下であるが8以上、11アミノ酸以下であるが8以上、10アミノ酸以下であるが8以上、9アミノ酸以下であるが8以上の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する。
【0074】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、例えばin vitroもしくはin vivoイメージングおよび/または治療目的で色素、キレート剤、放射性核種、または色素、キレート剤および放射性核種の任意の組み合わせをさらに含む。色素の実例としては、フルオレセイン、テトラメチルローダミンおよび近赤外色素(例えば、AlexafluorおよびCyシリーズ、例えばCy5、Cy5.5およびCy7)が挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤の実例としては、DOTA、NOTA、DFOおよびTCMCが挙げられるが、これらに限定されない。放射性核種の実例としては、18F、111In、99mTc、64Cu、89Zr、177Lu、225Ac、212Pbおよび203Pbが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、HIV-1カプシドタンパク質に結合する。或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、
【化2】
を含むアミノ酸配列を有する。
【0076】
或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、配列番号1と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%同一の配列を含むアミノ酸を有する。或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、配列番号1と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%同一の配列を含むアミノ酸を有し、結合ポケットは配列番号1で保存されている。
【0077】
或る特定の態様では、環状ペプチドは、カプシドタンパク質のC末端ドメイン(CTD)とN末端ドメイン(NTD)との間に位置するHIV-1カプシドタンパク質の結合ポケットに結合する。或る特定の態様では、環状ペプチドは、配列番号1のL56、配列番号1のN57、配列番号1のM66、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むHIV-1カプシドタンパク質の残基と相互作用する。
【0078】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、HIV-1カプシドタンパク質に対し、十分に特性評価されたカプシド阻害剤PF74と比較して高い結合親和性(実施例を参照されたい)を有する。例えば、或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドのHIV-1カプシドタンパク質に対する結合親和性は、カプシド阻害剤PF74より少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約7倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約9倍高い、または少なくとも約10倍高い。
【0079】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは、本明細書の他の部分に記載されるようにHIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する。或る特定の実施形態では、環状ペプチドは、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合の阻害について約2μM~約4μMのIC50を有する。或る特定の実施形態では、環状ペプチドは、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合の阻害について約3.2μMのIC50を有する。
【0080】
或る特定の態様では、本開示の環状ペプチドは阻害活性を示す。
【0081】
或る特定の態様は、本開示の環状ペプチドを作製する方法を提供する。或る特定の態様では、方法は、環状ペプチドに所望される配列の直鎖ペプチドを作製することと、直鎖ペプチドを環化して環状ペプチドを作製することとを含む。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、限定されるものではないが、本明細書の他の部分に記載される合成のように化学的に合成される。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、例えば本明細書の他の部分に記載される単離ポリヌクレオチド、ベクターおよび/または宿主細胞を用いて宿主細胞内で翻訳される。
【0082】
直鎖ペプチド
本開示の或る特定の態様は、例えば本開示の環状ペプチドの前駆体としてまたは阻害剤自体として使用される直鎖ペプチドに関する。このため、本開示の或る特定の態様は、F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)のアミノ酸配列を含む直鎖ペプチドであって、X1、X2およびX3がそれぞれ独立してグリシン(G)、リジン(K)または極性非荷電アミノ酸である、直鎖ペプチドに関する。配列番号2の或る特定の態様では、
X2はグリシンであり、X1およびX3はそれぞれ極性非荷電アミノ酸であり、かつ/または
X1はトレオニン(T)であり、かつ/もしくはX3はアスパラギン(R)である。
【0083】
本開示の直鎖ペプチドの或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、X4-X5-X6-F-X1-F-X2-P-V-X3-F-X7-X8(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、ここで、配列F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)は上で定義された通りであり、X4、X5、X6、X7およびX8はそれぞれ独立してグリシン(G)、プロリン(P)、リジン(K)、極性非荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸からなる群から選択される。配列番号3の或る特定の態様では、
X4は極性非荷電アミノ酸であり、
X4はセリン(S)であり、
X6は疎水性アミノ酸であり、
X6はバリン(V)であり、
X7はプロリン(P)であり、かつ/または
X5および/もしくはX8はグリシン(G)である。
【0084】
配列番号2および/または配列番号3の或る特定の態様では、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7またはX8の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0085】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)のアミノ酸配列からなる。或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含む。或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列からなる。
【0086】
或る特定の態様では、配列番号2、配列番号3および/または配列番号4を含む直鎖ペプチドは、1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含む。或る特定の態様では、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0087】
或る特定の態様は、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含むが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、直鎖ペプチドに関する。或る特定の態様は、S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列からなるが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、直鎖ペプチドに関する。すなわち、変化の数が2つを超えない限り、最大で2つの単一アミノ酸付加、2つの単一アミノ酸付加または2つの単一アミノ酸欠失が存在し得る。すなわち、変化の数が2つを超えない限り、単一アミノ置換、単一アミノ酸付加および単一アミノ酸欠失の1つまたは任意の組み合わせが存在し得る。或る特定の態様では、配列は1つまたは2つのアミノ酸置換を有するが、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を有しない。或る特定の態様では、配列は1つのアミノ酸置換のみを有する。また、或る特定の態様では、アミノ酸置換は、当該技術分野で認められている保存的アミノ酸置換である。或る特定の態様では、かかる直鎖ペプチドは、1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含む。或る特定の態様では、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である。
【0088】
本明細書に開示される直鎖ペプチドのいずれかの或る特定の態様では、直鎖ペプチドは50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下、11アミノ酸以下、10アミノ酸以下、9アミノ酸以下の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する。本明細書に開示される直鎖ペプチドのいずれかの或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、50アミノ酸以下であるが8以上、40アミノ酸以下であるが8以上、30アミノ酸以下であるが8以上、25アミノ酸以下であるが8以上、20アミノ酸以下であるが8以上、19アミノ酸以下であるが8以上、18アミノ酸以下であるが8以上、17アミノ酸以下であるが8以上、16アミノ酸以下であるが8以上、15アミノ酸以下であるが8以上、14アミノ酸以下であるが8以上、13アミノ酸以下であるが8以上、12アミノ酸以下であるが8以上、11アミノ酸以下であるが8以上、10アミノ酸以下であるが8以上、9アミノ酸以下であるが8以上の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する。
【0089】
或る特定の態様では、直鎖ペプチドはC末端酸を含む。或る特定の態様では、直鎖ペプチドはC末端アミドを含む。
【0090】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、例えばin vitroもしくはin vivoイメージングおよび/または治療目的で色素、キレート剤、放射性核種、または色素、キレート剤および放射性核種の任意の組み合わせをさらに含む。色素の実例としては、フルオレセイン、テトラメチルローダミンおよび近赤外色素(例えば、AlexafluorおよびCyシリーズ、例えばCy5、Cy5.5およびCy7)が挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤の実例としては、DOTA、NOTA、DFOおよびTCMCが挙げられるが、これらに限定されない。放射性核種の実例としては、18F、111In、99mTc、64Cu、89Zr、177Lu、225Ac、212Pbおよび203Pbが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、HIV-1カプシドタンパク質に結合する。或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、
【化3】
を含むアミノ酸配列を有する。
【0092】
或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、配列番号1と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%同一の配列を含むアミノ酸を有する。或る特定の態様では、HIV-1カプシドタンパク質は、配列番号1と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%同一の配列を含むアミノ酸を有し、結合ポケットは配列番号1で保存されている。
【0093】
或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、カプシドタンパク質のC末端ドメイン(CTD)とN末端ドメイン(NTD)との間に位置するHIV-1カプシドタンパク質の結合ポケットに結合する。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、配列番号1のL56、配列番号1のN57、配列番号1のM66、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むHIV-1カプシドタンパク質の残基と相互作用する。
【0094】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、HIV-1カプシドタンパク質に対し、十分に特性評価されたカプシド阻害剤PF74と比較して高い結合親和性(実施例を参照されたい)を有する。例えば、或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドのHIV-1カプシドタンパク質に対する結合親和性は、カプシド阻害剤PF74より少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約7倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約9倍高い、または少なくとも約10倍高い。
【0095】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは、本明細書の他の部分に記載されるようにHIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する。或る特定の実施形態では、直鎖ペプチドは、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合の阻害について約2μM~約4μMのIC50を有する。或る特定の実施形態では、直鎖ペプチドは、HIV-1カプシドの集合および/または脱集合の阻害について約3.2μMのIC50を有する。
【0096】
或る特定の態様では、本開示の直鎖ペプチドは阻害活性を示す。
【0097】
或る特定の態様は、本開示の直鎖ペプチドを作製する方法を提供する。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、限定されるものではないが、本明細書の他の部分に記載される合成のように化学的に合成される。或る特定の態様では、直鎖ペプチドは、例えば本明細書の他の部分に記載される単離ポリヌクレオチド、ベクターおよび/または宿主細胞を用いて宿主細胞内で翻訳される。
【0098】
本開示の或る特定の態様は、本明細書のどこかに記載された環状または直鎖ペプチドを含む医薬組成物に関する。或る特定の態様では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。本開示の或る特定の態様は、それを必要とする被験体においてHIV感染を治療する方法に関する。或る特定の態様では、被験体は哺乳動物である。或る特定の態様では、被験体は霊長類である。或る特定の態様では、被験体はヒトである。或る特定の態様では、かかる方法は、治療有効量の本明細書に開示される医薬組成物を被験体に投与することを含む。投与方法の例としては、静脈内、腹腔内、吸入、経口または局所が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本開示の或る特定の態様は、本明細書に記載されるペプチド配列のいずれかをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチドに関する。或る特定の態様では、ポリヌクレオチドは異種核酸をさらに含む。或る特定の態様では、かかる異種核酸は、治療用ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む。或る特定の態様は、本開示のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。或る特定の態様では、ベクターは、pET24プラスミド等のプラスミドである。或る特定の態様は、ベクターを含む宿主細胞も提供する。或る特定の態様では、宿主細胞は細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞または植物細胞である。例えば、或る特定の態様では、宿主細胞は、細菌である大腸菌(Escherichia coli)である。
【0100】
実施例
実施例1
HIV-1 CA構造の作製
PF74に結合した天然HIV-1カプシドタンパク質のX線結晶構造(PDBエントリ4XZF)(Gres et al.,. 2015)を用いて、GS-CA1およびクーママイシンA1(C-A1)をドッキングした。GS-CA1およびC-A1の初期構造を、CHEMSKETCH(Advanced Chemistry Development, Inc.,Toronto,Ontario,Canada)を用いて生成した。その後、これらの構造を、MACROMODELに続いてLIGPREP(Schroedinger Inc.,NY)を用いて最小化した。水素を付加し、結合次数を割り当て、ヘテロ原子状態を作成し、水分子の立体構造をサンプリングするPREPWIZARD(Schroedinger Inc.,NY)を用いて、GS-CA1およびC-A1のドッキングのためのCA六量体を作製した。
【0101】
実施例2
GS-CA1、GS-6207およびCA-1のドッキング
全てのドッキングシミュレーションを、Schroedinger Suite(Schroedinger Inc.,NY)の誘導適合ドッキング(IFD)モジュールによって行った。IFDでは、リガンド結合様式および付随する受容体の構造変化を正確に予測するためにGlide(Schroedinger Inc.,NY)およびPrimeのRefinementモジュール(Schroedinger Inc.,NY)を用いた。GS-CA1、GS6207およびC-A1のドッキングのための天然型のCA六量体の結晶構造(PDBファイル4XZF)におけるPF74を中心とした36×36×36Åのグリッドを、GlideのReceptor Grid Generationユーティリティによって生成した。IFDによって側鎖立体構造を最適化し、ドッキングポーズを最適に決定した。最良のIFDスコアのポーズを比較目的で選択した。
【0102】
実施例3
設計されたペプチドPep-2-cyclicのドッキング
ペプチドPep-2-cyclicの構造をPrimeによって生成し、MM/GBSA(分子力学-一般化ボルン表面積)法(Genheden and Ryde, 2010)を用いたエネルギー最小化に供した。CA六量体の結晶構造へのペプチドのドッキングをIFD(Schroedinger Inc.,NY)によって行った。CA/Pep-2-cyclicペプチドの最良のスコアの複合体を分析に選択した。また、PATCHDOCK(Schneidman-Duhovny et al., 2005)をhttps://bioinfo3d.cs.tau.ac.il/PatchDock/でのワールドワイドウェブ上のPatchDockウェブサーバーによって使用し、2つのソフトウェアによってPep-2-cyclicの異なるドッキング確認が予測されるかを評価した。
【0103】
実施例4
マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイ
次いで、Pep-2-cyclicまたはPF74の漸増濃度の存在下で蛍光標識CA六量体の熱泳動を測定することによって、Pep-2-cyclicおよびPF74とのCAの結合親和性を決定した。ペプチドPep-2-cyclicをMoleculare Interaction Core(ミズーリ大学)において合成し、PF74をSigma-Aldrich(St. Louis,MO,USA)から購入した。Alexa Fluor 647アナログNT647によるCAの蛍光標識を製造業者の説明書に従って行った(MO-L004 Monolith Protein Labeling Kit;NanoTemper Technologies GmbH,Munich,Germany)。20μMタンパク質を標識キットに付属のコンジュゲーションバッファー中、3モル過剰の色素とともに室温で一晩インキュベートした。未反応の色素を、キットに付属の自然流下カラムを通した濾過によって除去した。溶出画分を2×MSTバッファー(100mM MOPS、pH7.0、200mM NaClおよび0.2%pluronic F-127)中に回収した。各画分の蛍光強度をMST(Monolith NT.115、NanoTemper Technologies GmbH,Munich,Germany)によって評価し、標識タンパク質を含有する画分をプールした。タンパク質濃度をNANODROP(Thermo Scientific,Waltham,MA)分光光度計によって決定した。アリコートを使用するまで-80℃で保管した。200nMの標識CAと漸増濃度のPep-2-cyclic(1nM~2000nM)とを含有する反応混合物を毛細管にロードし、20%LED出力、高MST出力にて20秒間のMSTオン時間で熱泳動をモニタリングした。MO.Affinityソフトウェア(バージョン2.3)(NanoTempet Technologies,CA)を用い、データ点を二次方程式(式1)に当てはめ、PRISM(バージョン6.0)(GraphPad Inc. La Jolla,CA)によってプロットすることによってデータを分析した。
【0104】
【0105】
ここで、Aは任意パラメーターKd=[P][CA]/[P-CA]であり、[P]は遊離Pep-2-cyclicまたはPF74の濃度であり、[CA]は遊離CAの濃度であり、[CA0]は添加したCAの濃度であり、P0は添加したPep-2-cyclicまたはPF74の濃度である。
【0106】
本開示の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の項目、特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ定義されるべきである。
【0107】
項目
1. F-X1-F-X2-P-V-X3-F(配列番号2)のアミノ酸配列を含む環状または直鎖ペプチドであって、X1、X2およびX3がそれぞれ独立してグリシン(G)、リジン(K)または極性非荷電アミノ酸である、環状または直鎖ペプチド。
【0108】
2. X2がグリシンであり、X1およびX3がそれぞれ極性非荷電アミノ酸である、項目1の環状または直鎖ペプチド。
【0109】
3. X1がトレオニン(T)であり、かつ/またはX3がアスパラギン(R)である、項目1または2の環状または直鎖ペプチド。
【0110】
4. ペプチドがX4-X5-X6-F-X1-F-X2-P-V-X3-F-X7-X8(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、X4、X5、X6、X7およびX8がそれぞれ独立してグリシン(G)、プロリン(P)、リジン(K)、極性非荷電アミノ酸および疎水性アミノ酸からなる群から選択される、項目1から3までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0111】
5. X4が極性非荷電アミノ酸である、項目4の環状または直鎖ペプチド。
【0112】
6. X4がセリン(S)である、項目4または5の環状または直鎖ペプチド。
【0113】
7. X6が疎水性アミノ酸である、項目4から6までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0114】
8. X6がバリン(V)である、項目4から7までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0115】
9. X7がプロリン(P)である、項目4から8までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0116】
10. X5および/またはX8がグリシン(G)である、項目4から9までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0117】
11. ペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)を含むかまたはそれからなり、
任意にペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)を含むかまたはそれからなり、
任意にペプチドがアミノ酸配列S-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)を含むかまたはそれからなる、項目1の環状または直鎖ペプチド。
【0118】
12. X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7またはX8の少なくとも1つがリジン(K)である、項目1から10までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0119】
13. ペプチドが1つ以上の付加的なアミノ酸をさらに含み、付加的なアミノ酸の少なくとも1つがリジン(K)である、項目1から12までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0120】
14. S-G-V-F-T-F-G-P-V-N-F-P-G(配列番号4)またはS-G-V-F-Y-F-W-P-V-N-F-P-G(配列番号5)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるが、ただし、配列がアミノ酸置換、単一アミノ酸付加、単一アミノ酸欠失、またはそれらの2つの組み合わせから選択される1つまたは2つの変化を有する、環状または直鎖ペプチド。
【0121】
15. 配列が1つまたは2つのアミノ酸置換を有するが、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を有しない、項目14の環状または直鎖ペプチド。
【0122】
16. 配列が1つのアミノ酸置換のみを有する、項目15の環状または直鎖ペプチド。
【0123】
17. アミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、項目14から16までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0124】
18. ペプチドが色素、キレート剤、放射性核種、または色素、キレート剤および放射性核種の任意の組み合わせをさらに含む、項目1から17までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0125】
19. ペプチドがHIV-1カプシドタンパク質に結合する、項目1から18までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0126】
20. ペプチドが、カプシドタンパク質のC末端ドメイン(CTD)とN末端ドメイン(NTD)との間に位置するHIV-1カプシドタンパク質の結合ポケットに結合する、項目19の環状または直鎖ペプチド。
【0127】
21. HIV-1カプシドタンパク質が、
【化4】
を含むアミノ酸配列を有し、ペプチドが配列番号1のL56、配列番号1のN57、配列番号1のM66、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むカプシドタンパク質の残基と相互作用する、項目19または20の環状または直鎖ペプチド。
【0128】
22. ペプチドが50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、25アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下、11アミノ酸以下、10アミノ酸以下、9アミノ酸以下の長さを有するか、または8アミノ酸の長さを有する、項目1から21までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0129】
23. ペプチドが、カプシド阻害剤PF74より少なくとも約2倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約5倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約7倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約9倍高い、または少なくとも約10倍高い、HIV-1カプシドタンパク質に対する結合親和性を有する、項目19から22までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0130】
24. ペプチドがHIV-1カプシドの集合および/または脱集合を阻害する、項目1から23までのいずれか1つの環状または直鎖ペプチド。
【0131】
25. ペプチドが約2μM~約4μMのIC50を有する、項目24の環状または直鎖ペプチド。
【0132】
26. ペプチドが約3.2μMのIC50を有する、項目25の環状または直鎖ペプチド。
【0133】
27. ペプチドが直鎖ペプチドである、項目1から26までのいずれか1つのペプチド。
【0134】
28. ペプチドが環状ペプチドである、項目1から26までのいずれか1つのペプチド。
【0135】
29. 環状ペプチドに所望される配列の直鎖ペプチドを作製することと、直鎖ペプチドを環化して環状ペプチドを作製することとを含む、項目28の環状ペプチドを作製する方法であって、任意に直鎖ペプチドが化学的に合成されるか、または任意に直鎖ペプチドが宿主細胞内で翻訳される、方法。
【0136】
30. 項目1から28までのいずれか1つのペプチドをコードする核酸を含む単離ポリヌクレオチド。
【0137】
31. 異種核酸をさらに含む、項目30の単離ポリヌクレオチド。
【0138】
32. 上記異種核酸が、ペプチドをコードする核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む、項目31の単離ポリヌクレオチド。
【0139】
33. 項目30から32までのいずれか1つのポリヌクレオチドを含むベクター。
【0140】
34. ベクターがプラスミドである、項目33のベクター。
【0141】
35. 項目33または34のベクターを含む宿主細胞。
【0142】
36. 細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞または植物細胞である、項目35の宿主細胞。
【0143】
37. 項目1から28までのいずれか1つのペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【0144】
38. 治療有効量の項目37の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体においてHIV感染を治療する方法。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【配列表】
【国際調査報告】