(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(54)【発明の名称】磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/16 20060101AFI20220729BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20220729BHJP
H05H 1/08 20060101ALI20220729BHJP
G21B 1/11 20060101ALI20220729BHJP
G21B 1/05 20060101ALN20220729BHJP
【FI】
H05H1/16
H05H1/24
H05H1/08
G21B1/11 E
G21B1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560268
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 CA2020050727
(87)【国際公開番号】W WO2020237380
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511190568
【氏名又は名称】ジェネラル フュージョン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、スティーブン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、ダグラス ハービー
(72)【発明者】
【氏名】ラバージ、マイケル ジョージズ
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ、メリット ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】フローゼ、アーロン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】エップ、ケリー バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ワイト、マーティン クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】ゴフマン、ヤコフ
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA11
2G084AA13
2G084AA17
2G084AA21
2G084AA24
2G084CC11
2G084DD01
2G084DD17
2G084DD39
2G084EE05
2G084EE23
2G084FF14
2G084FF25
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
2G084FF39
2G084FF40
(57)【要約】
磁化されたプラズマを安定的に発生させ、加速するための方法及びシステムは、プラズマ発生器において、注入されたガスをイオン化し、閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマを形成するために、形成磁場を発生させることと、磁化されたプラズマの後ろの、閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向を有し、形成磁場の反対のフィールド方向を有する逆ポロイダル・フィールドを発生させることと、閉じられたポロイダル・フィールドに対して逆ポロイダル・フィールドを押す、押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、プラズマ発生器から下流にプラズマ加速器を通して、磁化されたプラズマを加速することとを含む。逆ポロイダル・フィールドは、押しトロイダル・フィールドが、閉じられたポロイダル・フィールドと混合するのを許し、不安定性及び低減されたプラズマ閉じ込めを引き起こすことになる、磁化されたプラズマが形成された後の形成磁場と閉じられたポロイダル・フィールドとの再結合を防ぐように働く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムであって、前記システムは、
ガスをイオン化するように動作可能なイオン化電極と、形成磁場発生器とを備えるプラズマ発生器と、
前記プラズマ発生器に流体的に結合され、押しトロイダル・フィールドを発生させるように動作可能な加速器電極を備えるプラズマ加速器であって、前記プラズマ発生器の下流端部及び前記プラズマ加速器の上流端部が、加速ギャップ及び緩和領域をともに画定する、プラズマ加速器と、
前記加速ギャップにわたる逆ポロイダル・フィールドを発生させるように動作可能な逆ポロイダル・フィールド発生器と、
前記イオン化電極及び前記加速器電極に電気的に結合され、前記プラズマ発生器から前記緩和領域に移動する閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることであって、ここにおいて、前記逆ポロイダル・フィールドが、前記磁化されたプラズマ・トロイドの後ろにあり、前記閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向を有し、形成磁場の反対のフィールド方向を有する、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることと、前記閉じられたポロイダル・フィールドに対して前記逆ポロイダル・フィールドを押すように、前記押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、前記プラズマ加速器を通して、前記磁化されたプラズマ・トロイドを加速することとを行うように動作可能である少なくとも1つの電源と
を備える、システム。
【請求項2】
前記形成磁場発生器が、少なくとも1つの磁気コイル又は少なくとも1つの永久磁石を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記逆ポロイダル・フィールド発生器が、少なくとも1つの磁気コイル又は少なくとも1つの永久磁石を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記加速ギャップにわたる前記逆ポロイダル・フィールドを増加させために、前記加速ギャップの各側に配置された強磁性材料をさらに備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記強磁性材料が、リング、環状ディスク及び一連の離間したセグメントのうちの少なくとも1つを備え、前記加速器電極の内側電極の上流端部及び前記イオン化電極の内側電極の下流端部のうちの一方又は両方に外接する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記逆ポロイダル磁気発生器の数及びロケーションが、0.1~0.25
*ψ
CTの逆ポロイダル・フラックスを発生させるように選択され、ここにおいて、ψ
CTが、前記磁化されたプラズマ・トロイドの総ポロイダル・フラックスである、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記形成磁場発生器が、3つの形成磁気コイルを備え、前記逆ポロイダル・フィールド発生器が、1つの逆ポロイダル磁気コイルを備える、請求項2及び3に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオン化電極が、環状であり、環状プラズマ形成チャネルを画定する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プラズマ・トロイドが、コンパクト・トロイド又は球状トカマクである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記緩和領域は、前記プラズマ・トロイドが、拡張し、その中で安定するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記加速器電極が、環状であり、入口から出口に向かって内側にテーパ状になる環状伝搬チャネルを画定する、請求項1から10までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電源が、少なくとも1つのキャパシタ・バンクを備え、前記プラズマ発生器に第1の電流パルスを供給し、前記プラズマ加速器に第2の電流パルスを供給するように動作可能である、請求項1から11までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
プラズマ発生器においてガスをイオン化し、形成磁場を発生させ、前記プラズマ発生器から緩和領域に移動する閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることと、
前記磁化されたプラズマ・トロイドの後ろに逆ポロイダル・フィールドを発生させることであって、前記逆ポロイダル・フィールドが、前記閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向を有し、前記形成磁場の反対のフィールド方向を有する、逆ポロイダル・フィールドを発生させることと、
前記閉じられたポロイダル・フィールドに対して前記逆ポロイダル・フィールドを押す、押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、前記プラズマ発生器から下流にプラズマ加速器を通して、前記磁化されたプラズマ・トロイドを加速することと
を含む、磁化されたプラズマを発生させ、加速する方法。
【請求項14】
前記プラズマ発生器が、環状プラズマ形成チャネルを備え、前記磁化されたプラズマを形成することが、前記磁化されたプラズマ・トロイドを形成するために、前記環状プラズマ形成チャネル中に前記ガスを注入することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記磁化されたプラズマ・トロイドが、コンパクト・トロイド又は球状トカマクである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ガスが、水素、水素の同位体、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びヘリウムのうちのいずれか1つ又は混合物を含む、請求項13から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記プラズマ発生器における発生の後に、及び前記プラズマ加速器における加速より前に、前記磁化されたプラズマ・トロイドが、拡張し、前記緩和領域において安定する、請求項13から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ガスをイオン化し、前記閉じられたポロイダル・フィールドを形成するために、前記プラズマ発生器に第1の電流パルスを送ることと、前記押しトロイダル・フィールドを発生させるために、前記プラズマ加速器に第2の電流パルスを送ることとをさらに含む、請求項13から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記逆ポロイダル・フィールドが、前記プラズマ発生器の下流端部と前記プラズマ加速器の上流端部との間で加速ギャップにわたって発生される、請求項13から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記逆ポロイダル・フィールドを発生させることが、0.1~0.25
*ψ
CTの範囲内で逆ポロイダル・フラックスを発生させることを含む、ここで、ψ
CTが、前記磁化されたプラズマ・トロイドの総ポロイダル・フラックスである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記プラズマ加速器が、テーパ状環状チャネルを備え、前記方法が、前記プラズマ・トロイドを、前記テーパ状環状チャネルを通して加速しながら、圧縮及び加熱することをさらに含む、請求項13から20までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く言えば、磁化されたプラズマを発生させるためのシステム及び方法に関し、より詳細には、プラズマ形成及びプラズマ加速中に、プラズマ閉じ込めを容易にするために、プラズマ・デバイスにおいて磁場構成をもたらすためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で別段に指し示されていない限り、このセクションにおいて説明される材料は、本出願における特許請求の範囲に対する従来技術ではなく、このセクションへの包含によって従来技術であるとは認められない。
【0003】
プラズマは、粒子の少なくとも一部分がイオン化された、ガスに類似した物質の状態である。自由に移動する帯電粒子(たとえば、陽イオン及び陰電子)の存在は、プラズマを導電性にする。帯電粒子の動きに影響を及ぼすのに十分に強い磁場をもつプラズマは、磁化されたプラズマと呼ばれる。プラズマ内の磁場は、磁場線が、(場合によっては長さが無限の)閉じられた軌道においてそれら自体の上にループ・バックするように構成された場合、長期間の間、プラズマ粒子を閉じ込め、それらが容器の壁に当たるのを防ぐことができる。プラズマが占める体積は、トーラスのように整形され得、そのため、閉じられた磁場線は、プラズマの体積内の特定のトロイダル層の表面上で円形又はらせん経路で周回する。閉じられた磁場は、ホット・プラズマ・コアと容器の壁温度との間でcm当たり数百万ケルビン度の温度勾配を維持する、極めて良好な熱絶縁体として作用する。プラズマ粒子を閉じ込めるために使用される磁場は、コイル及び導電性壁中を流れる外部電流、並びにプラズマ自体の内部を流れる電流の何らかの組合せによって形成及び維持され得る。可能な磁気閉じ込めデバイスの範囲は、磁場をソーシングするための、外部電流の使用対内部電流の使用の間のトレードオフの程度によってパラメータ化される。ステラレーターは、ほとんどプラズマ電流をもたない磁場を形成するために、完全に外部のコイルを使用するデバイスである。トカマクは、支配的に外部ソーシングされたフィールドを有するが、プラズマ加熱及びらせん磁力線のねじれを制御するためにプラズマ電流に依拠する。逆転磁場ピンチ(RFP:Reversed Field Pinch)デバイスは、トロイダル容器のセンター穴を通る時間依存フラックス・コア(time dependent flux-core)の変成器作用によって形成された有意な内部プラズマ流に依拠する。コンパクト・トロイド(CT:Compact Toroid)デバイスでは、閉じられた磁場は、内部プラズマ電流から完全にもたらされ、これにより、CTプラズマは、自己閉じ込めプラズマ(self-confined plasma)であると言える。CTプラズマは、導電性シェル又は外部で発生された磁場中に含まれていることによって、さらに、安定され、拡張するのを防がれ得るが、これらの外部ソースは、プラズマを直接閉じ込める、磁場の閉じられた部分を発生させることを担当しない。自己閉じ込めによって、CTプラズマは、1つのロケーションにおいて形成され、次いで、それの閉じ込め能力を損なうことなしに別のロケーションに変換され得る。
【0004】
プラズマ・トーラスの表面上に磁場の2つの別個の方向、すなわち、トーラスの周りの短い道のりを進み、そうすると同時に、中心穴を通って螺刻するポロイダル方向と、周りの長い道のりを進み、トーラスの回転対称の軸を回るトロイダル方向とがある。トーラスの体積全体にわたって存在する(平衡磁場など)軸対称ベクトル場は、トロイダル構成要素(toroidal component)とポロイダル構成要素(poloidal component)の和として説明される、各ロケーションにおけるベクトルを有することができる。
【0005】
プラズマ・トーラスの磁場について、磁場のポロイダル構成要素は、トロイダル方向におけるプラズマの円形コアを通る電流によって形成される。磁場はまた、空間における所与のポイントにおいてトロイダル構成要素を、当該のポイントを封入する、トーラスの表面上でポロイダル方向に流れる電流がある場合に有することができる。このようにして、プラズマのエッジの近くのポロイダル電流は、プラズマのコアの内部にトロイダル磁場を生じ、プラズマのコアの近くのトロイダル電流は、プラズマのエッジの近くにポロイダル磁場を生じる。軸対称平衡内の所与の磁場線は、特定のサブ・トーラスの表面をラップ・アラウンドし、それから移動することがなくなり、これは、その表面上の各トロイダル円によって囲まれたポロイダル・フラックスの量が一定になることを意味し、ゆえに、これをフラックス表面と呼ぶ(フラックス[ウェーバー]=磁場強度[テスラ]×領域[平方メートル])。磁束の2つの構成要素のトポロジー・リンキングの程度は、磁気ヘリシティと呼ばれ、総ポロイダル磁束と、それの内部に含まれているトロイダル磁束の量との積に比例する。最後に、表面をトーラス様であると呼ぶとき、それは、必ずしも厳密に円形であるとは限らない、ポロイダル平面における断面を有し得ることを意味する。(自己交差をもたない)滑らかな閉曲線が、ポロイダル断面として使用され、トーラス様の表面又はトロイドを形成するために、z軸の周りを回転され得る。
【0006】
コンパクト・トロイド(CT)は、2つの主要なサブカテゴリー、すなわち、スフェロマック及び磁場反転配位(FRC:Field Reversed Configuration)に分割され得る。スフェロマック・プラズマの磁場は、有意なヘリシティを与えるためにリンクされた、ポロイダル磁束とトロイダル磁束の両方を有する。それは、一般的に、電流が、磁場線に対してほぼ平行に流れるのみであり、破壊的不安定性に対して磁気流体力学的に(MHD:magnetohydrodynamic)安定していることがある、緩和最小エネルギー状態(relaxed minimum energy state)に近い。FRCのフィールドは、ほとんど完全にポロイダルであり、ほとんどゼロのヘリシティを有する。
【0007】
軸対称MHD平衡の磁場の断熱能力は、理論的にはとても高いが、プラズマ変動がこの平衡からの偏差を引き起こす場合、著しく低減され得る。磁場における帯電粒子の経路は、磁力線と整合されたらせん経路に閉じ込められるので、磁場線が、トロイダル方向及びポロイダル方向において走るが、半径方向に沿って走らず、コアからプラズマのエッジへの直接ルートを避けることを保証するために、細心の注意が払われるべきである。フラックス表面上のトロイダル・フィールドのポロイダル・フィールドに対する比は、磁力線をトレース・アウトし、それが1つのポロイダル巻きを完成する前に完成するトロイダル巻きの数を計数することによって最も良く説明され得、この数は、変数qによって表記される、「安全係数」と呼ばれる。これが、プラズマ内の半径方向においてどのように変動するかは、qプロファイルと呼ばれる関数によって説明され、qプロファイルの厳密な形状は、プラズマのMHD安定性を決定する際の主要な要因である。たとえば、安全係数が厳密に有理数の値
【数1】
をとり、ここで、m及びnが整数であるとき(一般的に、3よりも小さいか又はそれに等しい{m,n}の小さい値の場合に最も悪い)、フラックス表面上の各磁力線は、比較的短い有限経路長の後、それ自体の上に厳密にクローズ・バックする。それゆえ、近隣する磁力線の変位摂動は、互いに位相を強め合うように追加され、他の条件が満たされた場合、これは、有理数qの表面の近くの領域に局所化された軸対称性からの増大する偏差(不安定性)につながる。これらの不安定な領域のうちのいくつかが重複する場合、元のフラックス表面から離れた磁場線変位は、すべての表面にわたってそれら自体を混ぜ合わせ、それゆえ、単一の磁力線は、半径方向において前後にホット・プラズマ・コアから動き回り、最終的にコールド・エッジにまで曲折し、プラズマの熱エネルギー閉じ込めを大幅に低減し、熱がコアからプラズマのエッジに流れるようなほとんど直接的な経路として作用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムが提供される。システムは、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させるためのプラズマ発生器と、いくらかの距離の間そのような磁化されたプラズマ・トロイドを加速するために、プラズマ発生器に流体的に結合されたプラズマ加速器とを備える。加速器は、プラズマ発生器の下流端部及び加速器の上流端部が、加速ギャップ及び緩和領域をともに画定するように、プラズマ発生器から下流に配置される。電源が、プラズマ発生器と電気通信しており、プラズマ加速器は、その中にわたって電力パルスを供給するように構成される。コイル又は永久磁石のセットなど、形成磁場発生器が、プラズマ発生器において形成磁場を提供するために使用される。1つ又は複数の追加のコイル又は永久磁石など、逆ポロイダル・フィールド発生器が、加速ギャップにわたる逆ポロイダル磁場を提供するために、加速ギャップに近接して配置される。逆ポロイダル・フィールドの半径方向構成要素(radial component)は、形成ポロイダル・フィールドの方向の反対であり、そのため、電源が、加速器にわたって電流パルスを供給するとき、逆ポロイダル磁場は、磁化されたプラズマの後ろの緩和領域中に押し出され、それゆえ、プラズマの閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジに対して同じ半径方向にあるが、プラズマ発生器における形成ポロイダル・フィールドの方向の反対にある。
【0009】
別の態様によれば、プラズマ発生器においてガスをイオン化し、形成磁場を発生させ、プラズマ発生器から緩和領域に移動する閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることと、磁化されたプラズマ・トロイドの後ろに逆ポロイダル・フィールドを発生させることであって、逆ポロイダル・フィールドは、閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向(field direction)を有し、形成磁場の反対のフィールド方向を有する、逆ポロイダル・フィールドを発生させることと、閉じられたポロイダル・フィールドに対して逆ポロイダル・フィールドを押す、押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、プラズマ発生器から下流にプラズマ加速器を通して、磁化されたプラズマ・トロイドを加速することとを含む、磁化されたプラズマを発生させ、加速するための方法が提供される。
【0010】
より詳細には、方法は、ガスをイオン化し、閉じられたポロイダル・フィールドを形成するために、プラズマ発生器に第1の電流パルスを送ることと、押しトロイダル・フィールドを発生させるために、プラズマ加速器に第2の電流パルスを送ることとを含むことができる。プラズマ発生器における発生の後に、及びプラズマ加速器における加速より前に、磁化されたプラズマ・トロイドは、拡張し、緩和領域において安定することができる。
【0011】
逆ポロイダル・フィールドは、プラズマ発生器の下流端部とプラズマ加速器の上流端部との間で加速ギャップにわたって発生され得る。逆ポロイダル・フィールドを発生させることは、0.1~0.25*ψCTの範囲内で逆ポロイダル・フラックスを発生させることを備え、ここにおいて、ψCTは、磁化されたプラズマ・トロイドの総ポロイダル・フラックスである。
【0012】
プラズマ発生器は、環状プラズマ形成チャネルを備えることができ、方法は、プラズマ形成チャネル中にガスを注入することと、コンパクト・トロイド又は球状トカマクなど、磁化されたプラズマ・トロイドを形成することとをさらに含むことができる。ガスは、水素、水素の同位体、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びヘリウムのうちのいずれか1つ又は混合物を備えることができる。プラズマ加速器は、テーパ状環状チャネルをも備えることができ、方法は、プラズマ・トロイドを、テーパ状環状チャネルを通して加速しながら、圧縮及び加熱することをさらに含むことができる。
【0013】
別の態様によれば、プラズマ発生器、プラズマ加速器、少なくとも1つの逆ポロイダル磁場発生器、及び少なくとも1つの電源を備える、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させ、加速するためのシステムが提供される。プラズマ発生器は、ガスをイオン化するように動作可能なイオン化電極と、形成磁場を発生させるように動作可能な少なくとも1つの形成磁場発生器とを備える。プラズマ加速器は、プラズマ発生器に流体的に結合され、押しトロイダル・フィールドを発生させるように動作可能な加速器電極を備える。プラズマ発生器の下流端部及びプラズマ加速器の上流端部が、加速ギャップ及び緩和領域をともに画定し、逆ポロイダル磁場発生器は、加速ギャップにわたる逆ポロイダル・フィールドを発生させるように動作可能である。緩和領域は、磁化されたプラズマ・トロイドが、拡張し、その中で安定するように構成され得る。少なくとも1つの電源は、イオン化電極及び加速器電極に電気的に結合される。少なくとも1つの電源は、プラズマ発生器から緩和領域に移動する閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることであって、ここにおいて、逆ポロイダル・フィールドは、磁化されたプラズマ・トロイドの後ろにあり、閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向を有し、形成磁場の反対のフィールド方向を有する、磁化されたプラズマ・トロイドを発生させることと、閉じられたポロイダル・フィールドに対して逆ポロイダル・フィールドを押すように、押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、プラズマ加速器を通して、磁化されたプラズマ・トロイドを加速することとを行うように動作可能である。形成磁場発生器及び逆ポロイダル磁場発生器は、各々、1つ又は複数の磁気コイル又は永久磁石を備えることができる。
【0014】
強磁性材料が、加速ギャップにわたる逆ポロイダル・フィールドを増加させために、加速ギャップの各側に配置され得る。強磁性材料は、加速器電極又はイオン化電極の内側電極(inner electrode)に外接するリング、環状ディスク、又は一連の離間したセグメントのうちの少なくとも1つを備えることができる。たとえば、加速器電極の内側電極の上流端部に配置された環状ディスクと、イオン化電極の内側電極の下流端部に配置された環状リングとがあり得る。少なくとも1つの逆ポロイダル磁場発生器の数及びロケーションは、0.1~0.25*ψCTの逆ポロイダル・フラックスを発生させるように選択され得、ここにおいて、ψCTは、磁化されたプラズマ・トロイドの総ポロイダル・フラックスである。たとえば、形成磁場発生器は、3つの形成磁気コイルを備えることができ、逆ポロイダル・フィールド発生器は、1つの逆ポロイダル磁気コイルを備えることができる。
【0015】
イオン化電極は、環状であり、コンパクト・トロイド又は球状トカマクなど、磁化されたプラズマ・トロイドをもたらす環状プラズマ形成チャネルを画定することができる。加速器電極は、環状であり、入口から出口に向かって内側にテーパ状になる環状伝搬チャネルを画定することができる。
【0016】
少なくとも1つの電源は、少なくとも1つのキャパシタ・バンクを備え、プラズマ発生器に第1の電流パルスを供給し、プラズマ加速器に第2の電流パルスを供給するように動作可能であり得る。
【0017】
図面全体にわたって、参照番号は、参照される要素の間の対応を指し示すために再利用され得る。図面は、本明細書で説明される実例の実施例を図示するために提供され、本開示の範囲を限定するものではない。図面における要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らない。たとえば、様々な要素の形状及び角度は、一定の縮尺で描かれておらず、これらの要素のうちのいくつかは、図面の見やすさを改善するために、恣意的に拡大及び配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の実施例による、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図であり、逆ポロイダル・フィールド発生器を備え、図示されている部分は、軸Aについて環状である、図である。
【
図1B】本発明の実施例による、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図であり、逆ポロイダル・フィールド発生器を備え、図示されている部分は、軸Aについて環状である、図である。
【
図1C】本発明の実施例による、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図であり、逆ポロイダル・フィールド発生器を備え、図示されている部分は、軸Aについて環状である、図である。
【
図2A】実験的試験で使用された、逆ポロイダル・フィールド発生器をもたない、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図である。
【
図2B】実験的試験で使用された、逆ポロイダル・フィールド発生器をもたない、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図である。
【
図2C】実験的試験で使用された、逆ポロイダル・フィールド発生器をもたない、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図である。
【
図2D】実験的試験で使用された、逆ポロイダル・フィールド発生器をもたない、磁化されたプラズマを発生させ、加速するためのシステムの一部分の概略断面側面図である。
【
図3A】
図2A~
図2D中に示されているシステムを使用した、逆ポロイダル磁場をもたない、形成ポロイダル磁場構成のコンピュータ・シミュレーションの実例を図示する図である。
【
図3B】
図1A~
図1C中に示されているシステムを使用した、加速ギャップにわたる形成ポロイダル磁場構成及び逆ポロイダル磁場構成のコンピュータ・シミュレーションの実例を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
前に本明細書で説明されたように、磁化されたプラズマにおける磁場の大半は、プラズマ自体中を、及び/又はフラックス温存チャンバ(flux conserving chamber)の壁中を流れる電流によって形成される。閉じられた磁場構造は、プラズマのコアからそれのエッジへの熱及び粒子の移行を抑制することによって、プラズマ熱エネルギーを閉じ込める。プラズマの寿命及び安定性に影響を及ぼす主な要因のいくつかは、プラズマ形成磁束構成、ガス・バルブ・タイミング、プラズマ破壊タイミング、プラズマ温度、不要な不純物の密度及びレベル、電流パルス・プロファイル、並びにプラズマ・デバイスのサイズ及びジオメトリである。熱輸送を制限するための1つの主要な手段は、qプロファイルの制御を介してMHD安定性を制御することによるものである。qプロファイルは、内部プラズマ電流の制御、プラズマ・ジオメトリの設計、並びに容器の壁及び電極中を流れる電流の制御の組合せを通して間接的に制御される。
【0020】
本明細書で説明される実施例は、磁化されたプラズマを安定的に発生させ、加速するためのシステム及び方法に関する。方法の実施例は、プラズマ発生器において、注入されたガスをイオン化し、閉じられたポロイダル・フィールドをもつ、磁化されたプラズマを形成するために、形成磁場を発生させることと、磁化されたプラズマの後ろの、閉じられたポロイダル・フィールドのバック・エッジと同じフィールド方向を有し、形成磁場の反対のフィールド方向を有する逆ポロイダル・フィールドを発生させることと、閉じられたポロイダル・フィールドに対して逆ポロイダル・フィールドを押す、押しトロイダル・フィールドを発生させ、それにより、プラズマ発生器から下流にプラズマ加速器を通して、磁化されたプラズマを加速することとを含む。逆ポロイダル・フィールドは、押しトロイダル・フィールドが、閉じられたポロイダル・フィールドと混合するのを許し、不安定性及び低減されたプラズマ閉じ込めを引き起こすことになる、磁化されたプラズマが形成された後の形成磁場と閉じられたポロイダル・フィールドとの再結合を防ぐように働く。
【0021】
システムの実施例が、
図1A~
図1C及び
図3B中に示されている。より詳細には、
図1A及び
図1Bは、コンパクト・トロイド(CT:compact toroid)又は球状トカマク又はそれらの組合せなど、磁化されたプラズマ・トロイド11を発生させ、加速するためのシステム10の一部分を概略的に図示し、ここにおいて、図示されている部分は、軸Aについて環状である。システム10は、環状プラズマ発生器12と、プラズマ発生器12の下流端部及び加速器14の上流端部が、加速ギャップ13及び緩和領域22をともに画定するように、プラズマ発生器12から下流に配置された環状加速器14とを備える。たとえば、システム10は、プラズマ発生器12(第1段)においてプラズマ・トロイド11を形成し、加速器14(第2段)においてそのようなプラズマ・トロイド11を加速するための2段マーシャル銃(two stage Marshall gun)に基づき得る。プラズマ発生器12は、内側の概して管状の形成電極15と、内側形成電極15に同軸で、内側形成電極15を囲む外側の概して管状の電極16とを備える(まとめて、「イオン化電極」)。イオン化電極15、16は、その間に環状プラズマ形成チャネル17を画定する。一連の形成磁気コイル18を備える形成磁場発生器が、外側電極(outer electrode)16の周りに及び/又は形成電極15内に配列され、電源(図示せず)に結合される(
図1Cは、提示の明瞭性を改善するために、コイル18を省略している)。代替的に、形成磁場発生器は、1つ又は複数の永久磁石(図示せず)を備えることができる。一連の形成磁気コイル18は、イオン化電極15、16の間で放射状に交差する初期ポロイダル形成磁場19を形成するために設けられる。たとえば、磁気コイル18は、DCソレノイドであり得る。形成磁場19の磁場線は、内側形成電極15から外側電極16に向けられ得る。一実装形態では、形成磁場19は、磁場線が、本発明の範囲から逸脱することなく、内側電極15中に外側電極16を通して内側に放射状に向けられるようにセット・アップされ得る。
【0022】
プラズマ・トロイド11を形成するために、外側電極16の周りに配列された等間隔に離間した高速作動型ガス・バルブのリング(図示せず)が、プラズマ形成チャネル17中に所定の量のガスを対称的に注入するために設けられる。バルブは、電磁バルブ、圧電バルブ又は任意の他の好適なバルブ或いはそれらの組合せであり得る。バルブを通して注入されるガスの分量は、バルブの開時間によって、又は知られている圧力のガスで満たされた公知の体積のプレナムによって決定され得る。ガスは、水素及び/又はそれの同位体(ジュウテリウム、トリチウム)、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン又は任意の他の好適なガス或いはそのようなガスのうちのいずれかの混合物であり得る。たとえば、ガスは、50/50のジュウテリウム・ガス-トリチウム・ガスの混合物であり得る。
【0023】
システム10は、たとえば、少なくとも1つのキャパシタ・バンク、及び好ましくは2つ又はそれ以上のキャパシタ・バンクを含み得、プラズマ発生器12に電流パルスを供給するように動作可能である、(
図1A中にのみ示されている)第1の電源28aを備える電源をさらに備える。加えて、システム10は、加速器14の加速電極に電流パルスを供給するために、少なくとも1つのキャパシタ・バンク、及び好ましくは2つ又はそれ以上のキャパシタ・バンクを備える(
図1A中にのみ示されている)第2の電源28bを備える。たとえば、第1及び第2の電源28a、28bは、一構成では、各々、プラズマ発生器12及び/又は加速器14において0.5~5MJのエネルギーを供給するように構成され得る。ガスが形成チャネル17を満たすと、第1の電源28aは、トリガされ得、電流が、イオン化電極15、16の間で放電され得る。たとえば、第1の電源28aは、一構成では、イオン化電極15、16の間に10~40kVのパルスを供給することができる。別のスケール・アップされた構成では、電源28a、28bは、プラズマ発生器12及び/又は加速器14において0.5~50MJのエネルギーを供給するように構成され得、第1の電源28aは、イオン化電極15、16の間に10~100kVのパルスを供給することができる。イオン化電極15、16の間に印加された電圧は、ガスをイオン化し、初期プラズマを形成するように作用する。形成磁場線19に沿って主に半径の方向に初期プラズマを通って流れる電流は、プラズマ温度及び密度をさらに増加させる。そのような電流は、電流層の後ろでプラズマ中にトロイダル磁場を形成し、磁気圧力の勾配は、加速器14に向かって軸方向において前方にプラズマを押す、ローレンツ力=J×Bを加えることになる。プラズマが前方に移動するにつれて、それは、形成磁場19と相互作用し、進みプラズマ(advancing plasma)が磁気再接続プロセス(magnetic reconnection process)を通して自由になるまで、磁力線をひずませ、伸張し、それにより、電流によるトロイダル磁場から継承されたトロイダル磁場をもつプラズマ・トロイド11と、元の形成磁場19とのプラズマの相互作用による、及びプラズマ動的効果(plasma dynamic effect)によって引き起こされた可能なポロイダル・フラックス増幅(poloidal flux amplification)による閉じられたポロイダル・フィールド25とを形成する。
【0024】
プラズマ発生器12の下流端部は、加速器14に流体的に結合される。加速器14は、外側電極16と同軸の内側加速電極20を備える(まとめて、「加速電極」)。外側電極16及び内側加速電極20は、環状伝搬チャネル21を画定する。この実施例では、内側形成電極15の下流端部及び内側加速電極20の上流端部は、加速ギャップ13をともに画定する。他の実施例では、加速ギャップ13は、本発明の範囲から逸脱することなく外側電極16に形成され得る。プラズマ発生器12において形成されたプラズマ・トロイド11が、緩和領域22に入るとき(
図1Bを参照)、それはわずかに拡張し、磁場線は再接続し、そのため、プラズマ・トロイド11は、それが、それの出口に向かって加速器14に沿って加速される前に安定することができる。第2の電源28bが、加速電極20と外側電極16との間に第2の電流パルスを放電するとき、プラズマ・トロイド11は、加速電極20と外側電極16との間を流れる電流により発生されたトロイダル・フィールド24により、加速器14の下流で軸方向に加速される。トロイダル・フィールド24は、それが、プラズマ・トロイド11の後ろに位置決めされ、それの出口に向かって加速器14に沿ってプラズマ・トロイド11を押すので、「押しトロイダル・フィールド」と呼ばれる。加速器14は、プラズマ・トロイド11が加速器14に沿って加速されたとき、それが同時に圧縮及び加熱されるように出口に向かって狭まるテーパ状構成を有することができる。たとえば、第2の電源28B は、加速するために、加速器14にわたって20~100kVを供給し、いくつかの場合には、加速器14に沿ってプラズマ・トロイド11を圧縮することができる。
【0025】
1つ又は複数のコイル32を備える逆ポロイダル・フィールド発生器は、ポロイダル形成磁場19と閉じられたポロイダル・フィールド25との再接続を防ぐように働く、加速ギャップ13にわたる逆ポロイダル・フィールド30を発生させるように動作可能である。この逆ポロイダル・フィールド30の方向は、プラズマ・トロイド11の閉じられたポロイダル・フィールド25のバック・エッジと同じ方向にあるが、ポロイダル形成磁場19の方向の反対にあるようにセット・アップされる(「バック・エッジ」という用語は、
図1B中に示されている閉じられたポロイダル・フィールドの左側である、閉じられたポロイダル・フィールドの上流端部を意味する)。加速ギャップ13にわたる逆ポロイダル・フィールド30が、形成領域におけるポロイダル形成磁場19と比べて逆の(形成電極15から、ギャップ13にわたって、加速電極20に向けられた)極性を有するという事実は、そのような磁場30が、「逆」ポロイダル磁場と呼ばれる理由である。形成電極16中に加速ギャップ13を通して押され、加速パルスによって発生されたトロイダル・フィールド24により緩和領域22中にバブル・アウトするプラズマは、プラズマ・トロイド11の閉じられたポロイダル・フィールド25のバック・エッジと同じ方向にあるが、形成磁場19の方向の反対である逆ポロイダル・フィールド30aを有することになる(
図1Bを参照)。したがって、逆ポロイダル・フィールド30aをもつ、加速ギャップ13からバブル・アウトするプラズマは、トロイド11の閉じられたポロイダル・フィールド25と再接続することがなくなり、これにより、プラズマ・トロイド11中への押しトロイダル・フィールド24の拡散を防ぐ。押しトロイダル・フィールド24は、それが、プラズマ・トロイド11の外側層中に入る前に、最初に逆ポロイダル・フィールド30aを通って拡散する必要があることになり、これにより、エッジの近くのqの立ち上りを遅延させ、より長い間プラズマ・トロイド11を安定に保つ。
【0026】
逆ポロイダル・フィールド発生器の磁気コイル32は、電源(図示せず)に結合され、逆ポロイダル・フィールド30のパラメータは、磁気コイル32を通る電流を調整することによって調整され得、そのため、発生された逆ポロイダル・フィールド30は、形成磁気コイル18によって発生された形成磁場19に対して反対方向にある。代替的に、逆ポロイダル・フィールド発生器は、電磁コイルの代わりに、1つ又は複数の永久磁石(図示せず)を備えることができる。
【0027】
図1C中に図示されている一実装形態では、430等級のステンレス鋼など、強磁性材料34a、34bが、ギャップ13にわたってブリッジする逆ポロイダル・フィールド30の量を増加させるために、加速ギャップ13の両側に置かれ得る。たとえば、強磁性材料は、加速電極20の上流端部に外接するリング34a、及び/又は内側(形成)電極15の下流端部に外接する環状ディスク34bであり得る。代替的に、強磁性材料は、加速電極20の上流端部及び内側形成電極15の下流端部のうちの一方又は両方に外接する一連の離間した強磁性セグメント(図示せず)を備えることができる。逆ポロイダル・フィールド30の量は、プラズマの総ポロイダル・フラックスに依存し、それは、0.1~0.25*ψ
CTの範囲内にあり得、ここで、ψ
CTは、プラズマの総ポロイダル・フラックスである。たとえば、ψ
CT=300mWbをもつCTの場合、逆ポロイダル・フラックスは、約ψ
RP=30~75mWbであり得る。これは、例示のためのものにすぎず、300mWbよりも小さい又は大きいポロイダル・フラックスをもつプラズマ・トーラスの場合、加速ギャップ13にわたる逆ポロイダル・フィールド30の逆フラックスは、相応に、より小さい又はより大きい値であるようにセット・アップされ得る。CTのポロイダル・フラックスψ
CTパラメータ及び逆フラックスψ
RPパラメータは、形成磁気コイル18及び逆ポロイダル磁気コイル32の数及び位置、並びにそのようなコイル18、32を通って流れる電流によって制御され得る。
【0028】
逆ポロイダル・フィールド発生器をもつ、及びそれをもたないプラズマ発生及び加速システムの、ジェネラルフュージョン社(バーナビー、カナダ)において行われた実験は、形成磁場19の構成が、形成及び加速中のプラズマ安定性及び閉じ込めに対する有意な影響を有し、逆ポロイダル・フィールド発生器の不在が、押しトロイダル・フィールドが、閉じられたポロイダル・フィールドと混合するのを許し、不安定性及び低減されたプラズマ閉じ込めを引き起こし得ることを指し示した。
【0029】
図2A~
図2Cを参照すると、逆ポロイダル・フィールド発生器をもたないプラズマ発生及び加速システムを用いて実験が行われ、形成磁場19の構成が、(緩和領域22において、加速ギャップ13を越えて)プラズマの前により多くの開いた磁力線を提供するとき、もたらされたプラズマ・トロイド11は、プラズマ発生器12においてよりコンパクトな構成及びより長い温度寿命を有することがわかった。しかしながら、形成フィールド19のそのような構成は、プラズマ・トロイド11の良好な加速を妨げていた。相対的に不十分な加速性能の理由は、押しトロイダル・フィールド24が、プラズマ・トロイド11と開いた磁力線との間で、プラズマ・トロイド11の前の開いた磁力線に沿って逃げることができ(
図2Aを参照)、したがって、下方にプラズマ・トロイド11を押す代わりに、それは、プラズマ・トロイド11の大部分が、緩和領域22中にとどまる間、そのような開いた磁力線を吹き飛ばすことであり得る。
【0030】
プラズマ・トロイド11の形成中に、プラズマ(イオン化されたガス)の一部が、内側(形成)電極15中に加速ギャップ13を通って逃げることもわかった。したがって、第2の(加速)電流パルスが放電されたとき、トロイダル・フィールド24の押しトロイダル・フラックスは、前方にそのようなプラズマを押し、加速ギャップ13における、及びギャップ13を通るポロイダル形成磁場19aの磁場線をひずませ、プラズマ・トロイド11の後ろの緩和領域22中にそれをバブル・アウトした(
図2Cを参照)。加速ギャップ13にわたるポロイダル形成磁場l9aの磁場線は、加速電極20から形成電極15に向けられる。ポロイダル形成磁場19aは、プラズマ・トロイド11の閉じられたポロイダル・フィールド25のバック・エッジとは反対の方向にあるので、2つのポロイダル・フィールド19a、25は、再接続し、トロイダル・フィールド24が、プラズマのエッジ中に、又は場合によってはプラズマ・トロイド11のコアにさえ入り込むようなクリア経路(clear path)26を開き、加速器14に沿ってプラズマ・トロイド11を押す代わりに余剰トロイダル・フラックスをもってそれを膨張させた(
図2Dを参照)。この場合、押しトロイダル・フィールド24は、プラズマの閉じられたポロイダル・フィールド25と混合し、プラズマ・トロイド11中を流れる押しトロイダル・フィールド24が、外側にプラズマのポロイダル・フィールド25を押すことになるので、中空構成をもつプラズマ・トロイド11をもたらした。プラズマ・トロイド11の中空構成では、コアにおいてよりも多くのプラズマ電流が、プラズマのエッジの近くを流れ、これにより、プラズマ閉じ込めを破壊し得る、プラズマ内の不安定性をもたらした。プラズマ・トロイド11の閉じられたポロイダル・フィールド25との、押しトロイダル・フィールド24の混合は、エッジの近くのqを引き上げ、プラズマのqプロファイルを変え、プラズマの閉じ込めを破壊することがあるプラズマ不安定性をもたらす。閉じられたポロイダル・フィールド25との押しトロイダル・フィールド24の混合は、プラズマ発生器12及び加速器14の長さに沿って配置された表面磁場センサー(図示せず)によって測定された。センサーは、トロイダル・フィールド24が、ポロイダル・フィールド25が上昇すると同時に上昇したことを指し示し、トロイダル・フィールド24とポロイダル・フィールド25とが混合されたことを指し示した。次いで、プラズマ・トロイド11がそのようなセンサーを通過すると、プラズマ・トロイド11の後ろの押しトロイダル・フィールド24により、ポロイダル・フィールド25は低下し、トロイダル・フィールド24は上昇した。
【0031】
たとえば、加速器への電力を増加させることによって、(多すぎるトロイダル・フラックスを含んでいる)そのような中空プラズマ・トロイド11を加速することを試みることは、ブローバイ効果(blow-by effect)の可能性を引き上げると理論づけられる。押し電流の磁気圧力が、加速電極20からのプラズマ・トロイド11を持ち上げるとき、ブローバイ(blow-by)が起こることがあり、トロイダル・フィールド24のトロイダル押しフラックスが、プラズマ・トロイド11の前方に拡張するのを許す。これにより、加速器14にわたる電流パルスが、発生されたトロイダル・フィールド24があまりに速く引き上げられるように整形された場合、それは、外側電極16に向かって「上に」プラズマ・トロイド11を持ち上げ、加速電極20の表面の真上のプラズマを「下に」通過させることがある。
【0032】
次に
図3A及び
図3Bを参照すると、(David Meeker、dmeeker@ieee.orgから入手可能な)オープン・ソース有限要素解析コードFEMMを使用して、逆ポロイダル・フィールド発生器をもつ、及びそれをもたないプラズマ発生及び加速システムのシミュレーションが行われた。
図3Aは、ポロイダル形成磁場19のみを提供し、逆ポロイダル・フィールド30を提供しない磁場構成を図示する。形成磁場19は、3つの形成磁気コイル18a、18b、18cを使用して発生される。3つよりも少ないか又は多い形成磁気コイル18が、ポロイダル形成磁場19を提供するために使用され得る。形成磁気コイル18の各々を通って流れる電流は、プラズマのパラメータに応じて、慎重に調整及び事前決定される。
図3Bは、形成磁場19が、3つの形成磁気コイル18を用いて発生され、逆ポロイダル・フィールド30が、1つの逆ポロイダル磁気コイル32を使用して発生される磁場確認を示す。強磁性プレート34a及び環状リング34bも、加速ギャップ13にわたってブリッジする逆ポロイダル・フィールド30の量を増加させるために設けられる。矢印によって指し示されているように、逆ポロイダル・フィールド30の方向は、形成磁場19の方向の反対である。当業者は、2つ以上の逆ポロイダル磁気コイル32が、加速ギャップ13にわたる逆ポロイダル・フィールド30の構成及びパラメータを調整するために追加され得ることを理解するであろう。1つ又は複数の逆ポロイダル磁気コイル32は、(
図3B中に示されているように)加速ギャップ13のすぐ左に、及び対称軸の近くに配置され得、そのため、それらは、磁場線が加速器ギャップの左側に向かって移動されるように、磁場構成を変えることができる。形成磁気コイル18及び逆ポロイダル磁気コイル32を通る電流フローのパラメータは、プラズマ・トロイド11の事前決定されたパラメータ及び電源28a、28bのパラメータに応じて、事前設定され得る。
【0033】
プラズマ発生及び加速システムのためのシステムの実施例は、中性子発生器、核融合、核廃棄物浄化(nuclear waste remediation)、医療用ヌクレオチド(medical nucleotide)の発生における適用例に適した、材料研究に適した、中性子ラジオグラフィー及びトモグラフィ、X線発生器などを介した物体の内部構造のリモート撮像に適した高エネルギー密度プラズマの発生のために使用され得る。
【0034】
本開示の特定の要素、実施例及び適用例が示され、説明されたが、変更形態が、特に上記の教示に照らして本開示の範囲から逸脱することなくなされ得るので、本開示の範囲は、それに限定されないことが理解されよう。これにより、たとえば、本明細書で開示される方法又はプロセスでは、方法/プロセスを作り上げる行為又は動作は、任意の好適なシーケンスにおいて実行され得、任意の特定の開示されたシーケンスに必ずしも限定されるとは限らない。要素及び構成要素は、様々な実施例において、別様に構成又は配列され、組み合わせられ、及び/又は削除され得る。上記で説明された様々な特徴及びプロセスは、互いとは無関係に使用され得るか、又は様々な形で組み合わせられ得る。すべての可能な組合せ及び部分組合せは、本開示の範囲内に入るものとする。「いくつかの実施例」、「実施例」、又は同様のものへの本開示全体にわたる言及は、実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、ステップ、プロセス、又は特性が、少なくとも一実施例に含まれることを意味する。これにより、本開示全体にわたる「いくつかの実施例では」、「実施例では」という句又は同様のものの出現は、すべてが同じ実施例を必ずしも指しているとは限らず、同じ又は異なる実施例のうちの1つ又は複数を指すことがある。実際、本明細書で説明される新規の方法及びシステムは、様々な他の形態で実施され得、その上、本明細書で説明された実施例の形態の様々な省略、追加、置換、等価物、再配列、及び変化が、本明細書で説明される本発明の趣旨から逸脱することなくなされ得る。
【0035】
実施例の様々な態様及び利点が、必要に応じて説明された。すべてのそのような態様又は利点が、任意の特定の実施例に従って必ずしも達成され得るとは限らないことを理解されたい。これにより、たとえば、様々な実施例が、本明細書で教示される1つの利点又は利点のグループを、本明細書で教示又は示唆され得る他の態様又は利点を達成する必要なしに、達成又は最適化する様式で行われ得ることが認識されるべきである。
【0036】
とりわけ、「することができる(can)」、「することができる(could)」、「し得る(might)」、「し得る(may)」、「たとえば(e.g.)」、及び同様のものなど、本明細書で使用される条件付き言語(conditional language)は、別段に明記されていない限り、又は使用されるコンテキスト内で別段に理解されない限り、概して、いくらかの実施例が、いくらかの特徴、要素及び/又はステップを含み、他の実施例が、いくらかの特徴、要素及び/又はステップを含まないことを伝達するものとする。これにより、そのような条件付き言語は、概して、特徴、要素及び/又はステップが、1つ又は複数の実施例のために何らかの形で必要とされること、或いは1つ又は複数の実施例が、これらの特徴、要素及び/又はステップが任意の特定の実施例に含まれるか又は任意の特定の実施例において実行されるべきであるかどうかを、オペレータ入力又はプロンプテイングを用いて又は用いずに決めるための論理を必ず含むことを暗示するものではない。どの単一の特徴又は特徴のグループも、任意の特定の実施例のために必要とされないか、又は任意の特定の実施例に不可欠ではない。「備えること」、「含むこと」、「有すること」という用語、及び同様のものは、同義語であり、オープンエンド的に包括的に使用され、追加の要素、特徴、行為、動作などを除外しない。また、「又は」という用語は、たとえば、要素のリストを接続するために使用されるとき、「又は」という用語が、リスト中の要素のうちの1つ、いくつか、又はすべてを意味するように(それの排他的意味においてではなく)それの包括的意味において使用される。
【0037】
「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」という句など、接続言語(conjunctive language)は、別段に明記されていない限り、それ以外は、全般に、項目、用語などがX、Y又はZのいずれかであり得ることを伝達するために使用されると、コンテキストをもって理解される。これにより、そのような接続言語は、概して、いくらかの実施例が、Xの少なくとも1つ(at least one of X)、Yの少なくとも1つ(at least one of Y)及びZの少なくとも1つ(at least one of Z)が各々存在することを必要とすることを暗示するものではない。
【0038】
本明細書で説明された実施例の実例の計算、シミュレーション、結果、グラフ、値、及びパラメータは、開示された実施例を例示するものであり、開示された実施例を限定するものではない。他の実施例が、本明細書で説明された例示的な実例とは別様に構成及び/又は動作され得る。実際、本明細書で説明される新規の方法及び装置は、様々な他の形態で実施され得、その上、本明細書で説明される方法及びシステムの形態の様々な省略、置換、及び変化が、本明細書で開示される本発明の趣旨から逸脱することなくなされ得る。
【国際調査報告】