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特表2022-535246ポリアミド/ポリオレフィンブレンド及び対応する携帯電子機器の構成部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ポリアミド/ポリオレフィンブレンド及び対応する携帯電子機器の構成部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20220729BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20220729BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L77/00
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571621
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2020063492
(87)【国際公開番号】W WO2020244899
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/857,470
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19198882.3
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヌウォス, チノムソ
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナン, ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス, ローリー エル.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB211
4J002CL032
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GQ00
(57)【要約】
本明細書では、官能化ポリオレフィンと、脂肪族ポリアミドと、ガラス繊維とを含むポリマー組成物であって、ポリマー組成物中の脂肪族ポリアミドと官能化ポリオレフィンとの総重量に対する官能化ポリオレフィンの重量比(「ポリオレフィン重量比」)は、55%~95%である、ポリマー組成物が記載される。驚くべきことに、ポリマー組成物は、対応するポリマー組成物に対して優れた誘電性能及び改善された機械的性能を有することが発見された。優れた誘電性能及び向上した機械的性能のため、ポリマー組成物は、望ましくは、携帯電子機器用途に組み込まれ得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 官能化ポリオレフィンと、
- 脂肪族ポリアミドと、
- ガラス繊維と、
- 55%~95%の官能化ポリオレフィン重量比と
を含むポリマー組成物であって、
- 官能化ポリオレフィン重量比は、式:
によって与えられ、及び
- WPA及びWPOは、それぞれポリマー組成物中の脂肪族ポリアミド及び官能化ポリオレフィンの重量であり、
- 官能化ポリオレフィンはそれぞれ以下の式:
(式中、R~Rは、独立して、水素及び式-(CH-CH(ここで、mは、0~5の整数である)によって表されるアルキル基からなる群から選択され;R~R12は、独立して、水素、式-(CHm’-CH(ここで、mは、0~5の整数である)によって表されるアルキル基及びポリアミドポリマーのアミン基又はカルボン酸基と反応する反応性基からなる群から選択され;R~R12の少なくとも1つは、反応性基である)
によって表される繰り返し単位RPO1及びRPO2を含み、及び
- 官能化ポリオレフィンは、0.05モル%~1.5モル%の繰り返し単位RPO2を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
官能化ポリオレフィンポリマーは、官能化ポリエチレン、官能化ポリプロピレン、官能化ポリメチルペンテン、官能化ポリブテン-1、官能化ポリイソブチレン、官能化エチレンプロピレンゴム及び官能化エチレンプロピレンジエンモノマーゴムからなる群から選択され、好ましくは、官能化ポリオレフィンポリマーは、官能化ポリプロピレンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
官能化ポリオレフィンポリマーは、無水マレイン酸、エポキシド、イソシアネート及びアクリル酸からなる群から選択される反応性基で官能化されており、好ましくは、反応性基は、無水マレイン酸である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
脂肪族ポリアミドは、以下の式:
(式中、
- R13~R16は、各位置において、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- pは、4~10の整数であり;及び
- p’は、7~12の整数である)
によって表される繰り返し単位RPAを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリアミドは、PA4,6;PA5,6;PA5,10;PA6,10;PA10,10;及びPA10,12からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物、又はポリアミドは、PA5,10;PA6,10;PA10,10;及びPA10,12からなる群から選択される、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ガラス繊維は、1MHzの周波数で4.0~5.5の誘電定数を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ガラス繊維濃度は、20重量%~60重量%、好ましくは25重量%~50重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
官能化ポリオレフィン濃度は、25重量%~55重量%、好ましくは30重量%~50重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
脂肪族ポリアミド濃度は、3重量%~30重量%、好ましくは5重量%~30重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
少なくとも83MPaの引張強度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
少なくとも2.8%の引張ひずみを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
少なくとも7.8GPaの引張弾性率を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
3.2以下、好ましくは3.0以下の、1MHzにおけるD及び0.007以下の、1MHzにおけるDを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ポリオレフィン重量比は、70重量%~92重量%である、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む、携帯電子機器の構成部品であって、好ましくは携帯電子機器のハウジングである、携帯電子機器の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月5日に出願された米国仮特許出願第62/857470号及び2019年9月23日に出願された欧州特許出願公開第19198882.3号に対する優先権を主張し、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、官能化ポリオレフィンと、脂肪族ポリアミドと、ガラス繊維とを含むポリマー組成物であって、優れた誘電性能及び機械的性能を有するポリマー組成物に関する。本発明は、ポリマー組成物を含む、携帯電子機器の構成部品にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド組成物は、その減少した重量及び高い機械的性能のため、携帯電子機器の構成部品において広く使用されている。特に、ガラス繊維を含むポリアミドポリマー組成物は、携帯電子機器用途に特に適している。このような組成物は、適切な機械的強度、減少した重量及び設計オプションの増加を有し得るため、携帯電子機器の構成部品における金属代替品として魅力的である。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、官能化ポリオレフィンと、脂肪族ポリアミドと、ガラス繊維と、55%~95%の官能化ポリオレフィン重量比とを含むポリマー組成物であって、官能化ポリオレフィン重量比は、式:
によって与えられ、及びWPA及びWPOは、それぞれポリマー組成物中の脂肪族ポリアミド及び官能化ポリオレフィンの重量である、ポリマー組成物に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも83MPaの引張強度を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも2.8%の引張ひずみを有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも7.8GPaの引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、3.1以下の、1MHzにおけるD及び0.007以下の、1MHzにおけるDを有する。
【0006】
別の態様では、本発明は、ポリマー組成物を含む、携帯電子機器の構成部品に関する。いくつかの実施形態では、携帯電子機器は、携帯電子機器のハウジングである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、官能化ポリオレフィンと、脂肪族ポリアミドと、ガラス繊維とを含むポリマー組成物であって、ポリマー組成物中の脂肪族ポリアミドと官能化ポリオレフィンとの総重量に対する官能化ポリオレフィンの重量比(「ポリオレフィン重量比」)は、55%~95%である、ポリマー組成物が記載される。驚くべきことに、ポリマー組成物は、対応するポリマー組成物に対して優れた誘電性能及び改善された機械的性能を有することが発見された。本明細書で使用される場合、ポリマー組成物及び対応するポリマー組成物は、対応するポリマー組成物中のポリオレフィンの重量比が55%~95%の範囲外であるという事実を除いて同一である。より具体的には、対応するポリマー組成物のポリオレフィン重量比は、55%未満、好ましくは50%以下又は95%超、好ましくは99%以上である。優れた誘電性能及び向上した機械的性能のため、ポリマー組成物は、望ましくは、携帯電子機器用途に組み込まれ得る。
【0008】
本出願において、いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つ他の実施形態と交換可能である。更に、要素又は成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態では、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきである。
【0009】
具体的に別途限定しない限り、用語「アルキル」並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で使用される場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル及びシクロプロピルである。具体的に別途記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、無置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得る。但し、置換基が立体的に適合性を有し、且つ化学結合及びひずみエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0010】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を意味する。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり;例えば芳香族基及び2つのC~C基(例えば、メチル又はエチル)から構成され得る。アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O又はSも含み得、この場合、これは、「ヘテロアリール」基と呼ばれることもあり;これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族系と縮合し得る。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、無置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、スルホ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得る。但し、置換基が立体的に適合性を有し、且つ化学結合及びひずみエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0011】
上記の通り、ポリマー組成物は、驚くべきことに、対応するポリマー組成物に対して優れた誘電性能及び改善された機械的性能を有していた。ポリオレフィンの重量比は、以下の式に:
(式中、WPA及びWPOは、それぞれポリマー組成物中の脂肪族ポリアミド及び官能化ポリオレフィンの重量である)
従って決定される。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン重量比は、60%~95%、65%~95%、70%~95%、55%~92%、60%~92%、65%~92%又は70%~92%である。当然のことながら、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、両方とも以下の説明による複数の別個のポリオレフィン又は別個の脂肪族ポリアミドを含み得る。いくつかのそのような実施形態では、WPO及びWPAは、それぞれポリマー組成物中の複数のポリオレフィンの総重量及び複数の脂肪族ポリアミドの総重量である。
【0012】
誘電性能に関して、ポリマー組成物の誘電定数(「D」)及び誘電正接(「D」)は、無線通信が存在する用途設定における材料の適合性を決定するうえで重要である。例えば、携帯電子機器において、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料の誘電特性は、1つ以上のアンテナを通して携帯電子機器により送信及び受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、1GHz、2.4GHz及び5.0GHzの周波数)を著しく損なう可能性がある。材料の誘電定数は、一部には材料の電磁放射線との相互作用能力を表し、それに対応して、その材料を通して移動する電磁信号(例えば、無線信号)を破壊する。したがって、所与の周波数における材料の誘電定数が低いほど、その周波数で材料が電磁信号を破壊することがより少なくなる。同様に、誘電正接は、材料の誘電損失に比例し、誘電正接が低いほど、材料の誘電損失が低くなる。
【0013】
本明細書に記載のポリマー組成物は、優れた誘電性能を有する(比較的低いD及びD)。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.8以下又は2.7以下の、1MHzにおけるDを有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、2.6以上の、1MHzにおけるDを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、2.6~3.1、2.6~3.0、2.6~2.9、2.6~2.8、2.6~2.7の、1MHzにおけるDを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、0.009以下、0.008以下、0.007以下、0.006以下又は0.005以下の、1MHzにおけるDを有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも0.0025又は少なくとも0.003の、1MHzにおけるDを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、0.0025~0.009、0.0025~0.008、0.0025~0.007、0.0025~0.006、0.0025~0.005、0.003~0.009、0.003~0.008、0.003~0.007、0.003~0.006、0.003~0.005の、1MHzにおけるDを有する。1MHzにおけるD及びDは、1.0MHzでASTM D150に従って測定することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、2.4GHzの周波数で上記の範囲のD及びDを有することができる。2.4GHzにおけるD及びDは、ASTM D2520に従って測定することができる。
【0014】
加えて、上述したように、本明細書に記載のポリマー組成物は、驚くほど改善された機械的性能(例えば、引張強度、引張ひずみ、引張弾性率及び衝撃強度(ノッチ付き及びノッチなし))を有する。より具体的には、驚くべきことに、55%~95%のポリオレフィン重量比を有するポリマー組成物は、55%~95%のポリオレフィン重量比を上回る又は下回るポリオレフィン重量比を有する対応するポリマー組成物に対して改善された機械的性能を有することが見出された。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも80メガパスカル(「MPa」)、少なくとも85MPa又は少なくとも90MPaの引張強度を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、100MPa以下、95MPa以下又は92MPa以下の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、80MPa~100MPa、85MPa~100MPa、90MPa~100MPa又は90MPa~95MPaの引張強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも2.8%の引張ひずみを有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、3.0%以下の引張ひずみを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、2.8%~3.0%の引張ひずみを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも7.8ギガパスカル(「GPa」)、少なくとも7.9GPa、少なくとも8.0GPa又は少なくとも8.1GPaの引張弾性率を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、9GPa以下の引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、7.8GPa~9GPa、7.9GPa~9GPa、8.0GPa~9GPa又は8.1GPa~9GPaの引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも11.6キロジュール/平方メートル(「kJ/m」)又は少なくとも11.7kJ/mのノッチ付き衝撃強度を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、13kJ/m以下のノッチ付き衝撃強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、11.6kJ/m~13kJ/m又は11.7kJ/m~13kJ/mのノッチ付き衝撃強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも49kJ/mのノッチなし衝撃強度を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、55kJ/m以下のノッチなし衝撃強度を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、49kJ/m~55kJ/mのノッチなし衝撃強度を有する。引張強度、引張ひずみ、引張弾性率、ノッチ付き衝撃強度及びノッチなし衝撃強度は、実施例に記載の通りに測定することができる。
【0015】
官能化ポリオレフィンポリマー
ポリマー組成物は、官能化ポリオレフィンポリマーを含む。本明細書で使用される場合、ポリオレフィンポリマーとは、少なくとも50モル%の繰り返し単位RPOを有する任意のポリマーを指す。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPOの濃度は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%である。本明細書で使用される場合、モル%は、別途明記しない限り、ポリマーの繰り返し単位の総数に対するものである。繰り返し単位RPOは、以下:
(式中、R~Rは、独立して、水素及び式-(CH-CHによって表されるアルキル基からなる群から選択され、ここで、nは、0~5の整数である)
によって表される。明確さのために、nがゼロである場合、アルキル基は、メチル基である。
【0016】
官能化ポリオレフィンポリマーは、ポリアミドポリマー上のアミン基又はカルボン酸基と反応する反応性基を含むポリオレフィンポリマーであり、ポリマー組成物中のポリオレフィンポリマーとポリアミドポリマーとの間に共有結合(例えば、アミド結合)をもたらす。換言すると、官能化ポリオレフィンは、式(1)による少なくともいくつかの繰り返し単位R*POを含み、これは、R~Rの少なくとも1つが反応性基で置き換えられている繰り返し単位RPOと異なる。当然のことながら、ポリオレフィンが完全に官能化されている実施形態では、官能化ポリオレフィンは、繰り返し単位R*POを含み、繰り返し単位RPOを含まない。望ましいポリオレフィンポリマーとしては、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム及びエチレンプロピレンジエンモノマーゴムが挙げられ;好ましくは、ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。望ましい反応基としては、限定するものではないが、無水マレイン酸、エポキシド、イソシアネート及びアクリル酸が挙げられる。当然のことながら、ポリマー組成物において、ポリオレフィンは、ポリオレフィン上の反応性基の少なくとも一部と、ポリアミド上のアミン又はカルボン酸基との反応から形成される残基を介してポリアミドに共有結合している。参照し易くするために、ポリアミドポリマー組成物中の官能化ポリオレフィンポリマー上の反応性基への言及は、官能化ポリオレフィンポリマー上の任意の未反応の反応性基並びに反応性基とポリアミド上のアミン又はカルボン酸との反応から形成される残基を指すことが理解されるであろう。例えば、当業者は、ポリアミドポリマー組成物中の無水マレイン酸官能化ポリオレフィンへの言及が、ポリオレフィンポリマー上の任意の未反応の無水マレイン酸基並びに無水マレイン酸とポリアミドポリマーのアミン基との反応から形成される残基を指すことを理解するであろう。
【0017】
いくつかの実施形態では、反応性基は、以下の式の基:
(式中、R17及びR20は、水素及びアルキル基から選択され、及びR18、R19、R21及びR22は、結合及びアルキル基から選択される)
から選択される式によって表される。好ましくは、R17及びR20は、両方とも水素である。好ましくは、R18、R19、R21及びR22は、全て結合である。明確さのために、式(2)~(5)中の「*」は、繰り返し単位R*POの炭素への結合を示す。
【0018】
ポリオレフィンは、その鎖末端又は骨格に沿って(又は両方で)官能化することができる。ポリオレフィンが骨格に沿って官能化されているいくつかの実施形態では、官能化ポリオレフィンは、合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位RPO1及び繰り返し単位RPO2(以下で定義)を含む。いくつかの実施形態において、官能化ポリオレフィンポリマー中の繰り返し単位RPO1及びRPO2の総濃度は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%である。上記のRPO1及びRPO2の総濃度の範囲内において、いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPO2の濃度は、少なくとも0.05モル%~10モル%、0.05モル%~8モル%、0.05モル%~6モル%、0.05モル%~4モル%、0.05モル%~2モル%、0.05モル%~1.5モル%又は0.1モル%~1.5モル%である。
【0019】
繰り返し単位RPO1及びRPO2は、それぞれ以下の式:
(式中、R~Rは、独立して、水素及び式-(CH-CH(ここで、mは、0~5の整数である)によって表されるアルキル基からなる群から選択され;R~R12は、独立して、水素、式-(CHm’-CH(ここで、mは、0~5の整数である)によって表されるアルキル基及びポリアミドポリマーのアミン基又はカルボン酸基と反応する反応性基からなる群から選択され;R~R12の少なくとも1つは、反応性基である)
によって表される。いくつかの実施形態では、反応性基は、式(2)~(5)からなる群から選択される式によって表される。いくつかの実施形態では、R~Rは、全て水素であり、及びRは、-CHである。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、R及びR11は、両方とも水素であり、R10は、-CHであり、及びR12は、上述した反応性基、好ましくは無水マレイン酸である。無水マレイン酸で官能化されたポリプロピレンで優れた結果が得られた。
【0020】
官能化ポリオレフィンが繰り返し単位RPO1及びRPO2を含む上述の実施形態のいくつかでは、(RPO1+RPO1)に対するRPO2のモル比(繰り返し単位RPO1のモル数/繰り返し単位RPO1+RPO2のモル数)は、0.01モル%~6モル%、0.01モル%~5.6モル%又は0.01モル%~5モル%である。
【0021】
いくつかの実施形態では、官能化ポリオレフィンポリマーは、少なくとも1g/10分、少なくとも5g/10分、少なくとも10g/10分、少なくとも15g/10分又は少なくとも20g/10分のメルトマスフローレート(「MFR」)を有する。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、官能化ポリオレフィンポリマーは、120g/10分以下、100g/10分以下、80g/10分以下、70g/10分以下のMFRを有する。いくつかの実施形態では、官能化ポリオレフィンポリマーは、1g/10分~120g/10分、5g/10分~100g/10分、10g/10分~80g/10分又は15g/10分~70g/10分のMFRを有する。MFRは、ASTM D1238に従って190℃及び1.2kgで測定することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の官能化ポリオレフィン濃度は、少なくとも25重量パーセント(「重量%」)、少なくとも30重量%又は少なくとも35重量%である。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の官能化ポリオレフィン濃度は、55重量%以下、52重量%以下又は50重量%以下である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の官能化ポリオレフィン濃度は、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、25重量%~52重量%、30重量%~52重量%、35重量%~52重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%又は35重量%~50重量%である。本明細書で使用される場合、重量パーセントは、別途明記しない限り、ポリマー組成物の総重量に対しての割合である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、上の説明による複数の別個の官能化ポリオレフィンを含む。いくつかのそのような実施形態では、別個の官能化ポリオレフィンの総濃度は、上記の範囲内にある。当業者は、官能化ポリオレフィン濃度及び脂肪族ポリアミド濃度(以下に記載)の選択がポリオレフィンの重量比に関連することを認識するであろう。官能化ポリオレフィン濃度及び脂肪族ポリアミド濃度の選択は、ポリオレフィンの重量比が選択された範囲内にあり、且つポリマー組成物内の官能化ポリオレフィン、脂肪族ポリアミド及び任意選択的な添加剤の総濃度が100重量%以下になるように行われる。
【0024】
脂肪族ポリアミドポリマー
本明細書で使用される場合、脂肪族ポリアミドポリマーは、少なくとも50モル%の、アミド結合(-NH-CO-)を有し、且つ芳香族基を含まない繰り返し単位RPAを含む。換言すると、重縮合によるジアミン及び二酸の形成の両方で繰り返しのRPAに芳香族基が含まれない。いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミドポリマーは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位RPAを有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPAは、以下の式:
(式中、R13~R16は、各位置において、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;pは、4~10の整数であり;及びp’は、7~12の整数である)
によって表される。いくつかの実施形態では、R13~R16は、各位置において水素である。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、pは、5又は6であり、及びp’は、8~12である。いくつかの実施形態では、脂肪族ポリアミドポリマーは、PA4,6;PA5,6;PA5,10;PA6,10;PA10,10;及びPA10,12からなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、脂肪族ポリアミドポリマーは、ASTM D5336に従って測定される0.7~1.4デシリットル/g(「dL/g」)のインヘレント粘度を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の脂肪族ポリアミドの濃度は、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%又は少なくとも5重量%である。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の脂肪族ポリアミドの濃度は、45重量%以下、30重量%以下又は25重量%以下である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の脂肪族ポリアミドの濃度は、3重量%~45重量%、4重量%~45重量%、5重量%~45重量%、3重量%~30重量%、4重量%~30重量%、5重量%~30重量%、3重量%~25重量%、4重量%~25重量%、5重量%~25重量%又は5重量%~20重量%である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、上記のよる複数の別個の脂肪族ポリアミドを含む。いくつかのそのような実施形態では、別個の脂肪族ポリアミドの総濃度は、上記の範囲内にある。
【0028】
ガラス繊維
ポリアミドポリマー組成物は、ガラス繊維を含む。ガラス繊維は、異なるタイプのガラスをもたらように調整することができる数種の金属酸化物を含むシリカ系ガラス化合物である。主な酸化物は、ケイ砂の形態のシリカであり;カルシウム、ナトリウム及びアルミニウムなどの他の酸化物は、溶融温度を低下させ、且つ結晶化を妨げるために組み込まれる。ガラス繊維は、エンドレス繊維又はチョップドガラス繊維として添加され得る。ガラス繊維は、一般に、5~20、好ましくは5~15μm、より好ましくは5~10μmの相当直径を有する。ガラス繊維タイプの全て、例えばA、C、D、E、M、S、R、Tガラス繊維(Additives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyのchapter 5.2.3,pages 43-48に記載される通り)又はそれらの任意の混合物若しくはそれらの混合物が使用され得る。
【0029】
E、R、S及びTガラス繊維は、当技術分野で周知である。それらは、特に、Fiberglass and Glass Technology,Wallenberger,Frederick T.;Bingham,Paul A.(Eds.),2010,XIV,chapter 5,pages 197-225に記載されている。R、S及びTガラス繊維は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物から本質的に構成される。特に、それらのガラス繊維は、典型的には、62~75重量%のSiO2、16~28重量%のAl2O3及び5~14重量%のMgOを含む。一方、R、S及びTガラス繊維は、10重量%未満のCaOを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、高弾性ガラス繊維である。高弾性ガラス繊維の弾性率は、ASTM D2343に従って測定して少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaである。高弾性ガラス繊維の例としては、限定されないが、S、R及びTガラス繊維が挙げられる。高弾性ガラス繊維の市販の供給源は、それぞれTaishan及びAGYから提供されるS-1及びS-2ガラス繊維である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、低Dガラス繊維である。低Dガラス繊維の誘電定数は、1MHz、600MHz、1GHz及び2.4GHzの周波数で4.0~5.5、4.0~5.4、4.0~5.3、4.0~5.2、4.0~5.1又は4.0~5.0である。低Dガラス繊維は、低D(「低D/Dガラス繊維」)を有することもできる。そのようなガラス繊維は、1MHz、1GHz、600MHz及び2.4GHzの周波数で0.0005~0.001のDを有する。ガラス繊維のD及びDは、ASTM D150(1.0MHz)及びASTM D2520(600MHz、1.0Ghz及び2.4GHz)に従って測定することができる。いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、高弾性且つ低Dのガラス繊維である。
【0032】
ガラス繊維のモルフォロジーは、特に限定されない。上述したように、ガラス繊維は、円形断面(「ラウンドガラス繊維」)又は非円形断面(「扁平ガラス繊維」)を有し得る。限定されないが、好適な扁平ガラス繊維の例には、長円形、楕円形及び長方形の断面を有するガラス繊維が含まれる。ポリマー組成物が扁平ガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面最長径は、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも22μm、更により好ましくは少なくとも25μmである。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面最長径は、最大で40μm、好ましくは最大で35μm、より好ましくは最大で32μm、更により好ましくは最大で30μmである。いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面直径は、15~35μmの、好ましくは20~30μmの、より好ましくは25~29μmの範囲である。いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面最短径は、少なくとも4μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、更により好ましくは少なくとも7μmである。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面最短径は、最大で25μm、好ましくは最大で20μm、より好ましくは最大で17μm、更により好ましくは最大で15μmである。いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維の断面最短径は、5~20μmの、好ましくは5~15μmの、より好ましくは7~11μmの範囲である。
【0033】
いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維のアスペクト比は、少なくとも2、好ましくは少なくとも2.2、より好ましくは少なくとも2.4、更により好ましくは少なくとも3である。アスペクト比は、ガラス繊維の断面における最長径の、同じ断面における最短径に対する比として定義される。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維のアスペクト比は、最大で8、好ましくは最大で6、より好ましくは最大で4である。いくつかの実施形態では、扁平ガラス繊維のアスペクト比は、2~6、好ましくは2.2~4である。ガラス繊維がラウンドガラス繊維であるいくつかの実施形態では、ガラス繊維のアスペクト比は、2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.2未満、更により好ましくは1.1未満、最も好ましくは1.05未満である。当然のことながら、当業者であれば、ガラス繊維のモルフォロジー(例えば、ラウンド又は扁平)に関わらず、定義により、アスペクト比が1未満になり得ないことを理解するであろう。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中のガラス繊維の濃度は、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%である。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中のガラス繊維の濃度は、60重量%以下、55重量%以下又は50重量%以下である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中のガラス繊維の濃度は、20重量%~60重量%、25重量%~60重量%、30重量%~60重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%又は30重量%~50重量%である。
【0035】
任意選択的な添加剤
いくつかの実施形態では、ポリアミドポリマー組成物は、任意選択的に、紫外線(「UV」)安定剤、熱安定剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤及びこれらの1種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む。ポリマー組成物が任意選択的な添加剤を含むいくつかの実施形態では、添加剤の総濃度は、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下又は0.1重量%以下である。
【0036】
形成方法
ポリマー組成物は、当技術分野において周知の方法を用いて製造することができる。例えば、一実施形態では、ポリマー組成物は、ブレンド中のポリマー、ガラス繊維及び任意の任意選択的な添加剤を溶融ブレンドすることによって製造することができる。任意の適切な溶融ブレンド方法を、ポリマー組成物の成分を混合するために使用することができる。例えば、一実施形態では、全てのポリマー組成物成分(例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ガラス繊維及び任意の任意選択的な添加剤)は、単軸押出機若しくは二軸押出機、撹拌機、単軸若しくは二軸混錬機又はバンバリーミキサーなどのメルトミキサーに供給される。成分は、全て一度にメルトミキサーに添加され得るか、又は数回に分けて徐々に添加され得る。成分が数回に分けて徐々に添加される場合、その成分の一部をまず添加し、次に残りの成分を引き続き添加しながら溶融混合し、十分に混合された組成物が得られるまで溶融混合を行う。ガラス繊維が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、補強された組成物を製造するために延伸押出成形が用いられ得る。
【0037】
物品
少なくとも一部には、その驚くほど改善された誘電性能及び機械的性能のため、本明細書に記載のポリマー組成物は、望ましくは、携帯電子機器の構成部品に組み込まれ得る。
【0038】
用語「携帯電子機器」は、便利に持ち運ばれ、様々な場所で使用されるように設計された電子機器を示すことを意図している。携帯電子機器の代表的な例は、携帯電子電話、個人用携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラ及びカメラ付属品、時計、計算器、音楽プレーヤー、グローバルポジショニングシステム受信機、携帯ゲーム機、ハードドライブ並びに他の電子記憶装置からなる群から選択され得る。好ましい携帯電子機器には、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電子電話及び時計が含まれる。
【0039】
限定されないが、本明細書において対象とする携帯電子機器の構成部品には、取付け部品、スナップ嵌め部品、相互可動式部品、機能素子、作動要素、トラッキング素子、調整素子、キャリア素子、フレーム素子、スイッチ、コネクタ、ケーブル、ハウジング及び例えばスピーカー部品など、携帯電子機器で使用されるようなハウジング以外の任意の他の構造部品が含まれる。前記携帯電子機器の構成部品は、とりわけ、射出成形、押出成形又は他の成形技術によって製造することができる。
【0040】
「携帯電子機器のハウジング」は、携帯電子機器の裏面カバー、前面カバー、アンテナハウジング、フレーム及び/又は骨格の1つ以上を指す。ハウジングは、単一の物品であり得るか、又は2つ以上の構成部品を含み得る。「骨格」は、機器の他の構成部品、例えば電子機器、マイクロプロセッサ、スクリーン、キーボード及びキーパッド、アンテナ、バッテリーソケットなどが取り付けられる構造部品を指す。骨格は、携帯電子機器の外部から見えないか又は部分的に見えるに過ぎない内部構成部品であり得る。ハウジングは、衝撃並びに環境作用剤(液体、ちりなど)による汚染及び/又は損傷からの機器の内部構成部品の保護を提供し得る。カバーなどのハウジング構成部品は、スクリーン及び/又はアンテナなど、機器の外部に露出している特定の構成部品に対する実質的又は主要な構造支持と、衝撃に対する保護とを提供することもできる。
【0041】
好ましい実施形態では、携帯電子機器のハウジングは、携帯電話ハウジング、アンテナハウジング、タブレットハウジング、ラップトップコンピュータハウジング、タブレットコンピュータハウジング又は時計ハウジングからなる群から選択される。
【0042】
携帯電子機器の構成部品などの物品は、任意の好適な溶融加工方法を用いてポリマー組成物から製造することができる。例えば、携帯電子機器の構成部品の形成には、ポリマー組成物の射出成形又は押出成形が含まれる。射出成形は、好ましい方法である。
【実施例
【0043】
実施例は、ポリマー組成物の誘電性能及び機械的性能を示す。実施例では、以下の成分を使用した:
- ポリアミド(「PA」):RadiciからRadipol DC40の商品名で市販されているPA6,10(脂肪族ポリアミドポリマー)
- 官能化ポリオレフィン(「PO」):ExxonMobilからExxelorTM PO 1015の商品名で市販されている無水マレイン酸官能化ポリプロピレンコポリマー
- ガラス繊維(「GF」):Chongqing Polycomp International CorpからCS(HL)301HPの商品名で市販されている低D/Dガラス繊維。
- 添加剤パッケージ:ステアリン酸カルシウム(潤滑剤)及び熱安定剤、BASF社のIrganox(登録商標)1098。
【0044】
サンプルパラメータを下の表1に示す。表1において、「PO重量比」とは、比の量:
(式中、WPO及びWPAは、それぞれサンプル中のPO及びPAの重量である)
を指す。
【0045】
【0046】
以下の実施例では、D及びDは、1MHzにおいてASTM D150に従って測定した。D及びDの測定は、直径50.8mm×厚さ4.0mmの寸法を有する射出成形されたディスクで行った。引張弾性率、強度及びひずみは、弾性率を測定するために1mm/分の試験速度を使用し、その後、引張強度及びひずみを測定するために5mm/分を使用するISO 527-2に従い、5つの射出成形したISO引張棒で測定した。衝撃強度は、長さ80mm、厚さ4mm、幅10mmの寸法の10個の射出成形されたISO棒を用いて、ISO 180に従ってノッチ付きアイゾット衝撃試験を使用して測定した。ノッチなしアイゾット及びノッチ付きアイゾット衝撃試験も、ISO 180に従ってノッチ付きと同様の寸法のISO棒で行った。
【0047】
実施例1:ポリアミド/ポリプロピレンブレンドの性能
本実施例は、ポリアミド/ポリオレフィンブレンドの誘電性能及び機械的性能を示す。
【0048】
誘電性能試験の結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
表2を参照すると、PO重量比が50%超且つ100%未満のサンプルは、PO重量比が50%及び100%のサンプルに対して、優れた誘電性能を維持しながら、改善された機械的性能を有していた。CE1、E1、E2及びCE2は、POの重量比が順に増加する。D及びDは、POの重量比の増加と共に直線的に低下する一方、機械的特性は、予想外にも非線形の挙動を示し、PO重量比が75%及び91%のサンプルで全体的に改善された機械的性能が観察された。例えば、引張強度、引張ひずみ及び引張弾性率は、全てPOの重量比が50%~75%になると増加する。その後、POの重量比が更に100%まで増加すると、引張強度、ひずみ及び弾性率が低下し、引張強度及びひずみの場合、POの重量比が50%のサンプル(CE1)で観察された値よりも低い値まで低下した。ノッチ付き及びノッチなしの衝撃強度でも同様の挙動が見られるものの、そのような特性について、極大値は、91%のPOの重量比(E2)で見られ、100%では、値は、50%のPOの重量比で得られた値を下回る。
【0051】
上記の実施形態は、例示的であり、限定的でないことが意図される。更なる実施形態は、本発明の概念内である。加えて、本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形式及び詳細における変更形態がなされ得ることを認める。上記の文献の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反する主題が援用されないように限定される。
【国際調査報告】