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特表2022-535247電磁散乱膜、及び電磁散乱膜を含む電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(54)【発明の名称】電磁散乱膜、及び電磁散乱膜を含む電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/02 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
H01Q15/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571624
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2019125928
(87)【国際公開番号】W WO2020244190
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】201910892056.5
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201920847012.6
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910489146.X
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521204482
【氏名又は名称】広州方邦電子股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU FANGBANG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】6/F,Building A5,11 Kaiyuan Avenue,New and Hi-tech Industrial Development Zone,Guangzhou,Guangdong 510660(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チアン
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA01
5J020BD04
(57)【要約】
本開示は、電磁散乱膜、及び電磁散乱膜を含む電子装置を提供し、電磁散乱膜は、金属層を含み、金属層にその上下面を貫通するビアホールが設けられ、ビアホールの断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値がビアホール内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことで、マイクロ波がビアホールに入射した後に回折するようにする。金属層にマイクロ波の波長よりも小さいビアホールを設けることにより、元々直線伝送したマイクロ波がビアホールに入射した後に回折され、マイクロ波の送信及び/又は受信の空間範囲を拡大する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を含む電磁散乱膜であって、
前記金属層にその上下面を貫通するビアホールが設けられ、前記ビアホールの断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値が前記ビアホール内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことで、マイクロ波が前記ビアホールに入射した後に回折するようにする、電磁散乱膜。
【請求項2】
前記ビアホールの断面の輪郭における任意の2点の距離sは、1μm~500μmであり、且つ前記マイクロ波の波長λよりも小さい、請求項1に記載の電磁散乱膜。
【請求項3】
前記ビアホールの断面の輪郭における任意の2点の距離sと前記マイクロ波の波長λとの比は、1:200~1:100である、請求項2に記載の電磁散乱膜。
【請求項4】
1cm2あたりの前記金属層に設けられる前記ビアホールの数は、1000個以上である、請求項1に記載の電磁散乱膜。
【請求項5】
前記金属層における開孔率は、1%~99%である、請求項4に記載の電磁散乱膜。
【請求項6】
前記金属層の厚さtは、0.1μm~10μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁散乱膜。
【請求項7】
前記金属層の一方の面に絶縁層が設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁散乱膜。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記金属層の表面に設けられる絶縁層膜層又は前記金属層の表面にコーティングされる絶縁被膜である、請求項7に記載の電磁散乱膜。
【請求項9】
前記金属層の前記絶縁層に近い側には、前記絶縁層に入り込む複数のボス部が設けられる、請求項7に記載の電磁散乱膜。
【請求項10】
前記金属層の表面に導電ボスが設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁散乱膜。
【請求項11】
前記導電ボスの高さhは、0.1μm~30μmである、請求項10に記載の電磁散乱膜。
【請求項12】
前記金属層における前記導電ボスと同側の表面に接着剤膜層が設けられ、前記導電ボスが前記接着剤膜層に入り込む、請求項11に記載の電磁散乱膜。
【請求項13】
前記導電ボスの形状は、尖角状、逆円錐状、粒子状、樹枝状、柱状、ブロック状のうちの1種又は複数種の組み合わせである、請求項10に記載の電磁散乱膜。
【請求項14】
前記金属層の表面は、非平坦面である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁散乱膜。
【請求項15】
前記電磁散乱膜は、屈曲可能な構造である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁散乱膜。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電磁散乱膜を含み、回路装置をさらに含む電子装置であって、
前記回路装置は、信号回路を含み、前記電磁散乱膜は、前記回路装置に接続される、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1、出願日が2019年6月5日であり、出願番号が201920847012.6である中国特許出願、2、出願日が2019年6月5日であり、出願番号が201910489146.Xである中国特許出願、3、出願日が2019年9月20日であり、出願番号が201910892056.5である中国特許出願の3つの中国特許出願の優先権を主張し、以上の出願の内容の全てが本願の一部として援用される。
【0002】
本開示は、通信の技術分野に関し、例えば、電磁散乱膜、及び電磁散乱膜を含む電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ波通信とは、波長が0.1ミリメートル~1メートルの電磁波を利用した通信である。該波長の電磁波に対応する周波数範囲は、300MHz(0.3GHz)-3THzである。マイクロ波通信は、マイクロ波の直線伝送の特性により、指向性を有する。ユーザーが該規定された方向領域内にいない場合、信号を受信できないため、通信の不感地帯になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の1つの目的は、電磁散乱膜を提供することであり、マイクロ波が該電磁散乱膜におけるビアホールを通過した後に回折され、マイクロ波の送信及び/又は受信の空間範囲を拡大し、通信の不感地帯が生成されることをできるだけ回避する。
【0005】
本開示の他の目的は、電子装置を提供することであり、該装置のマイクロ波信号の送信及び/又は受信範囲が広く、ユーザーの使用エクスペリエンスが良好である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、以下の技術的解決手段が提供される。
【0007】
一側面では、金属層を含む電磁散乱膜が提供され、前記金属層にその上下面を貫通するビアホールが設けられ、前記ビアホールの断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値が前記ビアホール内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことで、マイクロ波が前記ビアホールに入射した後に回折するようにする。金属層にマイクロ波の波長よりも小さいビアホールを設けることにより、元々直線伝送したマイクロ波がビアホールに入射した後に回折され、マイクロ波の送信及び/又は受信の空間範囲を拡大する。
【0008】
他の側面では、前記電磁散乱膜及び回路装置を含む電子装置が提供され、前記回路装置は、信号回路を含み、前記電磁散乱膜は、前記回路装置に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施例に係る電子装置では、電磁散乱膜が回路装置に接続され、信号回路を介して送信及び/又は受信されるマイクロ波信号が電磁散乱膜のビアホールにより回折されことで、電子装置のマイクロ波信号の送信及び/又は受信の空間範囲を拡大し、電子装置の信号の不感地帯が生成される問題を回避し、ユーザーの使用エクスペリエンスを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施例に係る電磁散乱膜の構造模式図である。
図2】本開示の実施例の電磁散乱膜のビアホールの構造模式図である。
図3】本開示の実施例の円形孔付きの電磁散乱膜の断面模式図(図1におけるA-A方向)である。
図4】本開示の実施例の長方形孔付きの電磁散乱膜の断面模式図である。
図5】本開示の実施例の組み合わせ孔付きの電磁散乱膜の断面模式図である。
図6】本開示の実施例の電磁散乱膜の金属層構造模式図である。
図7】本開示の他の実施例の電磁散乱膜の金属層構造模式図である。
図8】本開示の実施例に係る電磁散乱膜の構造模式図である。
図9】本開示の他の実施例に係る電磁散乱膜の構造模式図である。
図10】本開示の実施例の電磁散乱膜の構造模式図である(金属層の絶縁層から離れる面が非平坦面である)。
図11】本開示の実施例の電磁散乱膜の構造模式図である(金属層の上下表面がいずれも非平坦面である)。
図12】本開示の実施例に係る電子装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示が解決しようとする技術課題、採用される技術的解決手段、及び達成される技術的効果をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本開示の実施形態の技術的解決手段を詳細に説明する。明らかに、説明された実施形態は、本開示の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造的な作業をせずに取得できる他の全ての実施例は、本開示の保護範囲に属する
図1は、本開示の実施例の電磁散乱膜の構造模式図である。図1に示すように、本開示の実施例の電磁散乱膜は、金属層1を含み、金属層1には、その上下面を貫通するビアホール11が設けられ、ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値がビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことで、マイクロ波が前記ビアホール11に入射した後に回折するようにする。通信技術分野では、データ交換を実現する重要な手段は、信号の伝送であり、マイクロ波信号伝送は、その手段の1つである。
【0012】
マイクロ波信号が所定の方向に沿って直線的に伝送されるため、所定の方向以外の領域ではマイクロ波信号を受信できないか、又は、所定の方向以外の領域へマイクロ波信号を送信できないことが引き起こされ、通信が失敗してしまう。
【0013】
図1に示す矢印方向は、例示的なマイクロ波の伝送方向である。本開示の実施例に係る散乱膜は、回折原理を適用し、金属層1にマイクロ波波長より遥かに小さいビアホール11を設けることにより、マイクロ波が送信されて該ビアホール11を通過すると回折され、元々指向性伝送しかできなかったマイクロ波の移動経路が変更されて、回折されることにより、複数の方向の伝送経路が生成され、マイクロ波の送信及び/又は受信の空間範囲が拡大される。本開示に記載の断面とは、図1に示すA-A方向に沿って散乱膜を切り取って得られたビアホール11の断面である。
【0014】
図3~5は、本開示の実施例の電磁散乱膜の断面模式図である。本開示の実施例のビアホール11は、マイクロ波が前記ビアホール11に入射した後に回折されることができる限り、円形孔又は非円形孔のうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、例えば、ビアホール11は、三角形、四角形などの多角形孔又はその他の不規則的な孔であってもよい。
【0015】
本開示の実施例では、ビアホール11の断面の輪郭に複数の点が存在し、任意の2点の間に直線距離を有する。一実施の形態では、図2に示すように、円形ビアホールを例とすると、ビアホール11の中心軸線方向に沿って、ビアホール11は、相互に平行する複数の断面111を有し、各断面の輪郭には、互いに間隔をおいた複数の点1111があり、2点の点1111の間に直線距離を有する。
【0016】
本開示では、ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値をビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さく限定することにより、ビアホール11のサイズをビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さく限定し、ビアホール11内に入射したマイクロ波が回折できることを確保する。
【0017】
図3に示すように、すなわち、図におけるA-A方向の図に示すように、ビアホール11が円形孔である場合、前記ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値がビアホール11の直径である。図3の例では、ビアホール11の直径がビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さく、このように設計することにより、円形のビアホール11のサイズがビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことが確保できる。
【0018】
図4に示すように、ビアホール11が非円形孔である場合、例えば、図に示すビアホール11が長方形である場合、前記ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値が長方形の対角線の長さである。図4の例では、ビアホール11の対角線の長さがビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さく、このように設計することにより、長方形のビアホール11のサイズがビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことが確保できる。
【0019】
図5に示すように、ビアホール11が円形孔及び非円形孔の組み合わせである場合、前記ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sのうちの最大値が円形ビアホール11の直径s1又は長方形ビアホール11の対角線の長さs2のうちの大きい方である。図5の例では、円形ビアホール11の直径s1又は長方形ビアホール11の対角線の長さs2のうちの大きい方がビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さく、このように設計することにより、ビアホール11のサイズがビアホール11内に入射したマイクロ波の波長λよりも小さいことが確保できる。
【0020】
一実施例では、ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sが1μm~500μmであり、且つ前記距離sが前記マイクロ波の波長λよりも小さい。なお、本実施例の前記マイクロ波は、実際の使用要求に応じて、マイクロ波通信のための信号が搬送される。本実施例の前記マイクロ波の波長λが0.1mm~1mである。上記距離s及び波長λの数値範囲から見ると、ビアホール11のサイズがマイクロ波の波長よりも遥かに小さく、マイクロ波がビアホール11に入った後に回折するようにすることができる。
【0021】
一実施の形態では、ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点の距離sと前記マイクロ波の波長λとの比は、1:200~1:100である。ビアホール11の断面の輪郭における2点間の距離sと前記マイクロ波の波長λとのサイズ関係を明確にすることにより、ビアホール11の断面の輪郭における任意の2点間の距離sが前記マイクロ波の波長λよりも遥かに小さいことが確保され、前記マイクロ波がどの方向から入射しても回折できることが確保され、それにより、マイクロ波が指向性伝送から多方位の発散伝送に変わることが確保され、ユーザーが異なる方向の領域内で信号を受信できることがさらに確保される。
【0022】
また、本開示の実施例では、1cm2あたりの前記金属層1に設けられるビアホール11の数が1000個以上である。できるだけ多くのビアホール11を設けることにより、マイクロ波と電磁散乱膜との有効な接触面積を向上でき、できるだけ多くのマイクロ波を散乱するようにする。一実施の形態では、前記金属層1における開孔率は、1%~99%である。金属層1における開孔率は、金属層1における開孔の総面積(全ての開孔の面積の和)と、前記金属層1の主体面積との比であり、1%~99%である。
【0023】
一実施の形態では、金属層1のいずれかの表面を例とすると、開孔率とは、該表面に開けられる全ての孔の面積の和と、金属層1の表面面積との比である。前記設計により、金属層1における開孔面積を制御でき、開孔面積が大きすぎるため、金属層1が破裂しやすい問題を回避し、或いは、開孔面積が小さいため、大量のマイクロ波がビアホール11を介して回折せずに直接に金属層1によって反射される問題を回避する。
【0024】
本開示の実施例では、複数の前記ビアホール11は、前記金属層1に規則的又は不規則的に分布しており、及び/又は、複数の前記ビアホール11の形状は、同じ又は異なり、及び/又は、複数の前記ビアホール11のサイズは、同じ又は異なる。前記ビアホール11が前記金属層1に規則的に分布していることは、各々のビアホール11が前記金属層1に均一に分布していることを意味する一方、前記ビアホール11が前記金属層1に不規則的に分布することは、各々のビアホール11が前記金属層1に無秩序に分布することを意味する。
【0025】
本開示の実施例では、金属層1の厚さtが0.1~10μmであり、前記設計により、前記金属層1が破裂しにくく、且つ良好な撓みを有することを確保する。一実施の形態では、前記金属層1は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銀及び金のいずれか一つ又は複数の材料で製造される。
【0026】
本実施例では、金属層1の2つの表面は、平坦面であってもよいし、非平坦面であってもよい。非平坦面は、規則的な非平坦面及び不規則的な非平坦面を含む。金属層1の表面が規則的な非平坦面である場合、規則的な非平坦面が周期的にうねる構造であり、うねりの幅とうねりの間隔が同じである。金属層1の表面が不規則的な非平坦面である場合、不規則的な非平坦面が非周期的にうねる構造であり、うねりの幅及び/又はうねりの間隔が異なる。図1の例では、金属層1の2つの表面は、平坦面である。図6の例では、金属層1の一方の面は、平坦面であるが、他方の面は、不規則的な非平坦面である。図7の例では、金属層1の2つの表面は、いずれも不規則的な非平坦面である。
【0027】
図8は、本開示の実施例の電磁散乱膜の構造模式図である。図8に示すように、金属層1の一方の面に絶縁層2が設けられる。絶縁層2は、金属層1を絶縁させ、周囲の回路との短絡を防止するために設けられている。絶縁層2は、金属層1の表面に設けられる絶縁層膜層又は金属層1の表面にコーティングされる絶縁被膜であってもよい。
【0028】
本開示の実施例では、前記絶縁層2は、絶縁及び保護作用を有し、前記金属層1が使用中に傷がつけられないことを確保する。例えば、前記絶縁層2の厚さが1μm~25μmであり、前記絶縁層2は、PPSフィルム層、PENフィルム層、ポリエステルフィルム層、ポリイミドフィルム層、エポキシ樹脂インクが硬化後に形成された膜層、ポリウレタンインクが硬化後に形成された膜層、変性アクリル酸樹脂が硬化後に形成された膜層又はポリイミド樹脂が硬化後に形成された膜層のいずれかを含む。
【0029】
図9を参照すると、絶縁層2と金属層1との間の接続安定性を改善し、絶縁層2と金属層1との剥離や脱落を防止するために、本実施例の金属層1の絶縁層2に近い側に複数のボス部5が設けられ、ボス部5が絶縁層2に入り込む。また、ボス部5は、絶縁層2と金属層1との間の接続安定性を改善するのに役立つことを満たす限り、金属層1から絶縁層2に向かう方向に突起してもよいし、絶縁層2から金属層1に向かう方向に突起してもよい。
【0030】
なお、図9におけるボス部5の形状は、単なる例示的なものに過ぎず、プロセス手段及びパラメータの違いにより、各ボス部5の形状は、規則的又は不規則的な幾何学的立体形状であり、例えば、ボス部5の形状は、尖角状、逆円錐状、粒子状、樹枝状、柱状、ブロック状のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0031】
本開示の実施例のボス部5は、図示及び上記形状に限定されず、絶縁層2と金属層1との間の接続安定性を改善するのに役に立つボス部5であれば、いずれも本開示の保護範囲内に属する。
【0032】
複数のボス部5の形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、ボス部5のサイズは、同じであってもよいし、異なっていてもよく、つまり、複数のボス部5の形状は、尖角状、逆円錐状、粒子状、樹枝状、柱状、ブロック状のうちの1つ又は複数であってもよく、同じ形状の複数のボス部5のサイズは、全く同じでなくてもよい。
【0033】
また、複数のボス部5は、金属層1の絶縁層2に近い側に連続的又は不連続的に分布しており、例えば、複数のボス部5の形状が尖角状であり且つ連続的に分布している場合、規則的且つ周期的な凹凸状立体パターン、又は、不規則的で無秩序な凹凸状立体パターンを形成することができる。もちろん、ここでは1つの場合のみを例として挙げ、上記の他の形状の組み合わせも本願の保護範囲に属し、ここでは1つ一つ挙げない。本開示の他の実施例では、金属層1の表面が非平坦面であっても、金属層1と絶縁層2との接続安定性及び信頼性に役立つ。
【0034】
本開示の実施例では、ボス部5は、導電性又は非導電性であってもよい。一実施形態では、前記ボス部5は、金属粒子、カーボンナノチューブ粒子、フェライ粒子、絶縁体粒子及びコーティングされた複合粒子(導体層をコーティング層として形成された導体粒子、又は絶縁体でコーティングされた他の絶縁体粒子など)のうちの1種又は複数種を含む。ボス部5は、導電性である場合、金属粒子、カーボンナノチューブ粒子、フェライ粒子及びコーティングされた複合粒子(導体層をコーティング層として形成された導体粒子)のうちの1種又は複数種を含む。
【0035】
前記ボス部5は、非導電性である場合、絶縁体粒子及びコーティングされた複合粒子(絶縁体でコーティングされた他の絶縁体粒子など)のうちの1種又は複数種を含む。また、前記ボス部5は、金属粒子である場合、単一種の金属粒子及び/又は合金粒子を含み、前記単一種の金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銀及び金のうちのいずれかの材料で製造され、前記合金粒子は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銀及び金のうちの任意の2種以上の材料で製造される。なお、複数のボス部5は、前記金属層1の材料と同じでも異なっていてもよい。
【0036】
また、実施する際、前記ボス部5が導電性である場合、まず金属層1を形成し、次にその他のプロセスにより、該金属層1上にボス部5を形成し、最後に該金属層1のボス部5が形成された側に絶縁層2を形成することができる。もちろん、該金属層1と前記ボス部5とは、一体成形されてもよい。例えば、ボス部5の高さが0.1μm~15μmであり、前記ボス部5が導電性を有する場合、前記ボス部5の高さが前記絶縁層2の厚さよりも小さいことにより、前記絶縁層2の不良を防止する。
【0037】
図8の例では、金属層1の表面に導電ボス3を設けることにより、電磁散乱膜を使用する際、金属層1に蓄積された干渉電荷を導出させやすくし、さらに干渉電荷の蓄積による干渉ソースを回避する。複数の導電ボス3は、金属層1の絶縁層2から離れる側面に設けられる。図8の例では、まず金属層を形成し、次にその他のプロセスにより、該金属層1上に導電ボス3を形成する。
【0038】
図9の例では、金属層1と導電ボス3とは、一体成形される。なお、図における前記導電ボス3の形状は、単なる例示的なものに過ぎず、プロセス手段及びパラメータの違いにより、各前記導電ボス3の形状は、規則的又は不規則的な幾何学的立体形状であり、例えば、複数の前記導電ボス3の形状は、尖角状、逆円錐状、粒子状、樹枝状、柱状、ブロック状のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0039】
また、金属層1の絶縁層2から離れる側に設けられる複数の導電ボス3のそれぞれの形状は、同じであっても異なっていてもよく、各々の導電ボス3のサイズは、同じであっても異なっていてもよく、つまり、複数の導電ボス3の形状は、尖角状、逆円錐状、粒子状、樹枝状、柱状、ブロック状のうちの1種又は複数種であってもよく、また、同一形状の複数の導電ボス3のサイズは、全く同じでなくてもよい。
【0040】
また、複数の導電ボス3は、金属層1の絶縁層2から離れる側に連続的又は不連続的に分布しており、例えば、複数の導電ボス3の形状が尖角状であり且つ連続的に分布している場合、規則的且つ周期的な凹凸状立体パターン、又は、不規則的で無秩序な凹凸状立体パターンを形成することができる。もちろん、ここでは1つの場合のみを例として挙げ、上記の他の形状の組み合わせも、本願の保護範囲に属し、ここでは1つ一つ挙げない。
【0041】
本開示の実施例では、前記導電ボス3は、金属粒子、カーボンナノチューブ粒子及びフェライ粒子のうちの1種又は複数種を含み、前記導電ボス3は、単一種の金属粒子及び/又は合金粒子を含み、前記単一種の金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銀及び金のうちのいずれかの材料で製造され、前記合金粒子は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、銀及び金のうちの任意の2種以上の材料で製造される。なお、前記導電ボス3は、前記金属層1の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
本開示の実施例では、接地効果を満足することを前提として、製品をできる限り軽薄化するように、前記導電ボス3の高さhは0.1~30μmである。
【0043】
図9に示すように、前記電磁散乱膜の使用を容易にするために、本実施例の前記金属層1の前記絶縁層2から離れる側に接着剤膜層4が設けられ、複数の前記導電ボス3は前記接着剤膜層4に入り込む。前記導電ボス3は、前記接着剤膜層4の外表面と所定の距離離れてもよいし、前記接着剤膜層4の外表面と接触したり、又は、前記接着剤膜層4の外表面から延出したりしてもよい。
【0044】
前記接着剤膜層4の外表面は、うねりのない平坦面であってもよいし、穏やかなうねりのある非平坦な表面であってもよい。使用時には、複数の前記導電ボス3は、前記接着剤膜層4を刺し通して接地することにより、前記金属層1内に蓄積された干渉電荷を導出させる。本開示の他の実施例では、金属層1の表面が非平坦面であり、従って、金属層1の表面に非平坦な凹凸面が形成でき、この設計により、より多くの接着剤量を金属層1に接続でき、それにより、金属層1と接着剤膜層4との接続安定性及び信頼性を向上させる。
【0045】
一実施の形態では、前記接着剤膜層4に使用される材料は、変性エポキシ樹脂類、アクリル酸類、変性ゴム類、変性熱可塑性ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリアクリル酸エステル類、シリコーン類から選択されたいずれか一つである。
【0046】
本開示の実施例では、前記導電ボス3の高さは、0.1μm~30μmであってもよく、前記接着剤膜層4の厚さは、0.1μm~45μmであってもよい。前記導電ボス3の高さを0.1μm~30μm、前記接着剤膜層4の厚さを0.1μm~45μmとすることにより、前記電磁散乱膜を使用する際、前記導電ボス3が前記接着剤膜層4を刺し通すことができることを確保し、それにより、前記電磁散乱膜が接地できることを確保する。
【0047】
図10~11に示すように、図10に示す電磁散乱膜における金属層1の一方の表面は、平坦面であり、他方の表面は、不規則的な非平坦面である。金属層1に接続される接着剤膜層4の一方の表面も不規則的な非平坦面である。図11に示す電磁散乱膜の金属層1の2つの表面は、いずれも不規則的な非平坦面である。
【0048】
金属層1に接続される絶縁層2、接着剤膜層4の表面も不規則的な非平坦面である。前記設計により、金属層1の表面が不規則的な非平坦面であり、絶縁層2と接着剤膜層4の接続安定性及び信頼性を向上できる。
【0049】
より多くの適用シナリオに適応するために、本開示に記載の電磁散乱膜は、折畳み可能で屈曲可能な柔軟性構造である。一実施の形態では、金属層1は、柔軟性構造、例えば、金属回路基板、FPC回路基板を用いることができ、金属層1の一方の表面に設けられる接続用の接着剤膜層4は、折畳み性を有し、金属層1の他方の表面に設けられる保護用の絶縁層2は、屈曲性を有し、それにより、本開示の電磁散乱膜は、折畳み性及び屈曲性を有するようになる。実際の使用において、必要に応じて、散乱膜を環状構造又は半密閉構造などの任意形状、例えば、弧形構造、楕円形構造、積層構造に屈曲又は折畳むことができる。
【0050】
図12は、本開示の実施例に係る電子装置の構造模式図である。図12に示すように、電子装置は、電磁散乱膜100及び回路装置200を含み、回路装置200は、信号回路201を含み、電磁散乱膜100は、回路装置200に接続される。本実施例では、回路装置200は、電磁散乱膜100の接着剤膜層4に接続される。その他の例では、回路装置200自体が接着層を有し、電磁散乱膜に接着剤膜層4が設けられなくてもよく、同様に、本開示の目的を達成することもできる。
【0051】
以上のように、本開示の実施例に係る電子装置では、電磁散乱膜が回路装置に接続され、信号回路を介して送信及び/又は受信されたマイクロ波信号は、電磁散乱膜のビアホール11により回折され、電子装置のマイクロ波信号の送信及び/又は受信の空間範囲を広げ、電子装置の信号不感地帯が生成される問題を回避し、ユーザーの使用エクスペリエンスを向上させる。
【0052】
上記は、本開示の実施形態及び適用される技術原理の一部にすぎないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0053】
1 金属層
11 ビアホール
111 断面
1111 点
2 絶縁層
3 導電ボス
4 接着剤膜層
5 ボス部
100 電磁散乱膜
200 回路装置
201 信号回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】