(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(54)【発明の名称】リーダー配列
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20220729BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220729BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220729BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220729BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220729BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220729BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220729BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220729BHJP
C12N 15/74 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C12N15/31
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/70 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/74 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572387
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 GB2020051380
(87)【国際公開番号】W WO2020245611
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508320561
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ウォリック
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターフィールド,ニコラス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハペシー,アレクシア
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA47
4B065CA48
(57)【要約】
本発明は、フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット(PVC)エフェクターリーダー配列の、ペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージするための使用、及びパッケージされたPVCニードル複合体を製造する関連方法を提供する。ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり、リーダー配列及びペイロードは、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別されるエフェクター融合物を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット(PVC)エフェクターリーダー配列の、ペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージするための使用であって;
前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
前記リーダー配列及び前記ペイロードは、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別されるエフェクター融合物を形成する
使用。
【請求項2】
前記リーダー配列は、PVCエフェクターのアミノ酸残基1~50を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記リーダー配列は、配列番号47~配列番号92から選択される配列の1つ以上の配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記PVCエフェクターは、配列番号1~配列番号46から選択される1つ以上の配列のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記PVCエフェクターは、配列番号4、配列番号22、配列番号25、配列番号30、配列番号32及び配列番号46から選択される配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記リーダー配列は、前記ペイロードに共有結合的に、好ましくは、前記ペイロードのN末端において融合している、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ペイロードを含むPVCニードル複合体を製造する方法であって:
a.PVCニードル複合体を、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含むエフェクター融合物と接触させることを含み;
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
c.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法。
【請求項8】
前記接触を、細胞内で、細胞溶解物中で、又は精製細胞溶解物中で行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ペイロードを細胞中に送達するインビトロ及び/又はエクスビボ方法であって:
a.細胞を、エフェクター融合物を含むPVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.前記エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み;
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
d.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法。
【請求項10】
有害生物を抑制する方法であって:
a.有害生物、又は有害生物を含む標的区域を、エフェクター融合物を含むPVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.前記エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み;
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
d.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法。
【請求項11】
治療方法における使用のためのPVCニードル複合体であって;
a.前記PVCニードル複合体は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含むエフェクター融合物を含み;
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
c.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
PVCニードル複合体。
【請求項12】
エフェクター融合物を含むPVCニードル複合体であって;
a.前記エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み;
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
c.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
PVCニードル複合体。
【請求項13】
ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含むエフェクター融合物であって;
a.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
b.前記エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
エフェクター融合物。
【請求項14】
単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項15】
前記リーダー配列は、PVCエフェクターのアミノ酸残基1~50を含む、請求項7~14のいずれか一項に記載の方法、使用のためのPVCニードル複合体、PVCニードル複合体、エフェクター融合物、又は単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項16】
前記リーダー配列は、配列番号47~配列番号92から選択される1つ以上の配列と約60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7~15のいずれか一項に記載の方法、使用のためのPVCニードル複合体、PVCニードル複合体、エフェクター融合物又は単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項17】
前記PVCエフェクターは、配列番号1~配列番号46から選択される1つ以上の配列のアミノ酸配列を含む、請求項7~16のいずれか一項に記載の方法、使用のためのPVCニードル複合体、PVCニードル複合体、エフェクター融合物又は単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項18】
前記PVCエフェクターは、配列番号4、配列番号22、配列番号25、配列番号30、配列番号32及び配列番号46から選択される配列を含む、請求項7~17のいずれか一項に記載の方法、使用のためのPVCニードル複合体、PVCニードル複合体、エフェクター融合物又は単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項19】
前記リーダー配列は、ペイロードに共有結合的に融合している、請求項7~18のいずれか一項に記載の方法、使用のためのPVCニードル複合体、PVCニードル複合体、エフェクター融合物又は単離PVCエフェクターリーダー配列。
【請求項20】
請求項14~19のいずれか一項に記載の単離PVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の単離核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項20に記載の単離核酸分子、又は請求項21に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項23】
哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、及び/又は植物細胞から選択される1つ以上であり;
好ましくは、前記細菌細胞は、大腸菌(E.coli)細胞である、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞である、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞は、誘導性プロモーターに作動可能に結合しているフォトラブダス属(Photorhabdus)PVCオペロンを含む、請求項24に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダー配列、及び分子をタンパク質複合体中にパッケージするためのリーダー配列の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的分子(例えば、ペプチド、タンパク質及び核酸)は、広く適用可能な治療薬としての大きな潜在性を有する。実際、近年、製薬産業について、「小分子」薬物から、より複雑な巨大分子治療薬(別称「生物剤」)に移行する傾向が存在する。このような生物剤としては、タンパク質ベース治療薬(特に抗体、ホルモン、成長因子及びサイトカイン)及び核酸ベース治療薬(例えば、短鎖干渉RNA、DNA/RNAワクチン及び遺伝子療法)が挙げられる。
【0003】
生物剤市場は、近年顕著に発展している一方、有効な送達系(及びそのような送達系を製造する実施可能な方法)の低い利用可能性は、特に標的が細胞質である場合、そのような生物治療薬の分子標的の多様性を限定している。実際、市販の承認ペプチド治療薬の大多数は、細胞外構成成分、例えば、膜受容体又は分泌分子(例えば、間質腔中に存在する)を標的化することにより作用する。例えば、humira(最も成功した治療モノクローナル抗体)は、細胞外で分泌されるサイトカインTNFαを標的化する。インスリンは、細胞膜上に存在するそのコグネイト受容体に結合することにより作用する(同じことが他のホルモンペプチド治療薬に当てはまる)。
【0004】
同様の課題は農薬産業にも存在し、タンパク質ベース殺有害生物剤は典型的には、有害生物の細胞の細胞外構成成分を標的化するはずの毒素である。例として、バシラス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素は、膜受容体に結合して毒性効果を発揮するはずの、一般に使用される天然殺有害生物剤である。
【0005】
生物学的分子の細胞質送達の方法は実験室での研究で開発されており、それは一般に、細胞の細胞膜と融合する脂質ビヒクル内の分子を送達してからそのペイロードを細胞質中に出すことを含む。しかしながら、そのような方法は、例えば、それらが分子を細胞に送達する非特異的性質に起因して医薬及び獣医薬における使用が限定される。
【0006】
細菌分泌系は、分子を標的細胞中に分泌する(又はより特定すると「インジェクトする」)その天然能力を考慮して、潜在的な送達系として探索されている。最も研究されたこのような分泌系は、いくつかのグラム陰性細菌に見出される「タンパク質アペンデージ」のIII型分泌系(T3SS)である。しかしながら、これらの系の顕著な欠点は、それらが常に細菌膜と会合したままであり、送達系としての実際の細菌細胞(分泌系を含む)の使用を要求することである。したがって、(目的生物剤が過剰発現される場合であっても)細菌から標的細胞にどの分子が移されるかを完全に制御することが困難である。それというのも、それらの分泌系は細菌の細胞質と標的細胞の細胞質との間の連結(又はチャネル)を提供することにより機能し、(宿主に潜在的に有害な)他の構成成分がそれを流動し得るためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改善された送達系だけでなく、広範なサイズ及び分子特性を有する分子(ペイロード)と適合性であるそのような系を産生する手段も必要とされる。
【0008】
本発明は、上記課題の1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フォトラブダス属(Photorhabdus)細菌の毒素原性フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット(Virulence Cassette)(PVC)エフェクタータンパク質が、これまで未知の「リーダー配列」(又は「リーダーペプチド」)を含み、それが、PVCエフェクターをいわゆるPVCニードル複合体(例えば、「ナノシリンジ」)中にパッケージ(又は「ロード」)するように機能し、続いてそれがPVCエフェクターを標的細胞に送達し、そこでそれがその毒素原性効果を発揮する(PVCエフェクターはそのようなナノシリンジのペイロードを表す)という驚くべき知見を前提とする。さらに、本発明者らは、そのようなリーダー配列を実際に利用してそれに結合しているペイロードを、フォトラブダス属(Photorhabdus)の十分に特徴付けされた分子送達系のPVCニードル複合体(及び関連/相同複合体)中にパッケージさせることを指向することができることを見出した。したがって、新たに発見されたリーダー配列は、驚くべきことに、PVCニードル複合体に分子ペイロード(又は「反応部位」をロードするように機能する。
【0010】
この知見に加え、本発明者らは、「異種」ペイロード(例として、非フォトラブダス属(Photorhabdus)分子)をPVCニードル複合体中に、異種ペイロードのサイズにも分子特性にも起源にも関係なくパッケージ/ロードするためのそのようなリーダー配列についての有利な実際的な有用性を発展させた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様において、本発明は、フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット(PVC)エフェクターリーダー配列の、ペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージするための使用であって;
ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
リーダー配列及びペイロードは、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別されるエフェクター融合物を形成する
使用を提供する。
【0012】
一態様において、本発明の態様は、ペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージするためのPVCエフェクターリーダー配列の使用であって;
ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
リーダー配列及びペイロードは、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される融合物を形成する
使用を提供する。
【0013】
換言すると、本発明は、一態様において、ペイロードを、PVCニードル複合体中にPVCエフェクターリーダー配列を用いてパッケージする方法であって、(エフェクター)融合物をPVCニードル複合体と接触させることを含み、ペイロードは、ポリペプチド、核酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;リーダー配列及びペイロードは、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される(エフェクター)融合物を形成する方法を提供する。
【0014】
用語「融合物」及び「エフェクター融合物」は、リーダー配列及びペイロードにより形成される(及び野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される)(エフェクター)融合物の文脈において、本明細書において互換的に使用される。
【0015】
(リーダー配列の)この使用は、実施例において概説されるとおり、(検出標識でタグ付けされた)エフェクター融合物及びPVCニードル複合体を細胞(例えば、宿主細菌細胞)中で発現させ、そこでエフェクター融合物をPVCニードル複合体中に(リーダー配列を介して)パッケージし、PVCニードル複合体を単離し、次いでPVCニードル複合体(例えば、その破砕型)内のペイロードの存在又は不存在を検出標識のウェスタンブロット検出を介して検出することにより実証された。ペイロードの存在は、リーダー配列に融合している場合のみ検出されるが、ペイロードがリーダー配列を欠く場合は検出されない。
【0016】
用語「PVCエフェクターリーダー配列」は、ペイロード(例えば、エフェクター)をPVCニードル複合体中にパッケージし得、好ましくは、PVCエフェクターのアミノ酸1~50、又は開始メチオニンを排除した場合、アミノ酸2~50であるPVCエフェクターポリペプチドからのリーダー領域(ポリペプチド領域)を意味する。本発明者らは、リーダー配列が多数の同定されたPVCエフェクターポリペプチド配列のアミノ酸1~50内に包含される(又は本質的にそれからなり得る)ことを実証した。しかしながら、代替長さを有し、PVCエフェクター内に位置するリーダー配列が包含されることが意図される(例えば、前記リーダー配列がペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージし得ることを条件とする)。
【0017】
PVCエフェクターの残りの(非リーダー配列)部分は、本明細書において「エフェクター部分」(例えば、ペイロード)と称される。エフェクター部分は、好ましくは、PVCエフェクタータンパク質のアミノ酸51~C末端を含み、又は本質的にそれからなる。
【0018】
したがって、一実施形態において、PVCエフェクターリーダー配列は、PVCエフェクターポリペプチドのアミノ酸1~50又は2~50(好ましくは、1~50)内に包含される。
【0019】
実施形態において、PVCエフェクターリーダー配列は、PVCエフェクターポリペプチドのアミノ酸1~50又は2~50(好ましくは、1~50)を含む(又は本質的にそれからなる)。
【0020】
用語「野生型PVCエフェクタータンパク質」は、用語「内因性PVCエフェクタータンパク質」、又は単に「PVCエフェクタータンパク質」と同義的に使用され、エフェクター部分(例えば、ペイロード、好ましくは、PVCエフェクタータンパク質のアミノ酸51~C末端)と会合している内因性リーダー配列(即ち、所与のPVCエフェクターに対して内因性、好ましくは、PVCエフェクターのアミノ酸1~50)を有する(例えば、インタクト)PVCエフェクター配列を指す。野生型PVCエフェクターの例は、配列番号1~配列番号46から選択される1つ以上の配列のアミノ酸配列を含み得る(又は本質的にそれからなり得る)。したがって、本明細書に記載の本発明の融合物/エフェクター融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される。それというのも、リーダー配列は、野生型PVCエフェクタータンパク質の場合にはそれが融合され得るエフェクター部分に融合していないためである。例として、融合物/エフェクター融合物は、hvnA(遺伝子Plu1649)PVCエフェクタータンパク質のエフェクター部分(例えば、配列番号46のアミノ酸51~295)に融合している「Pnf」PVCエフェクタータンパク質のリーダー配列(例えば、配列番号78のリーダー)を含み得るが、Pnf PVCエフェクタータンパク質のエフェクター部分(例えば、配列番号32のアミノ酸51~340)に融合している「Pnf」PVCエフェクタータンパク質のリーダー配列(例えば、配列番号78のリーダー)を指すことを意図しない。
【0021】
他方、融合物/エフェクター融合物は、例えば、非エフェクター部分、例えば、非フォトラブダス属(Photorhabdus)タンパク質、例えば、Creリコンビナーゼに融合している「Pnf」PVCエフェクタータンパク質のリーダー配列(例えば、配列番号78のリーダー)を含み得る。したがって、リーダー配列は、広範な、例えば、異種(非野生型)薬剤のPVCニードル複合体中へのパッケージにおいて有用であり、天然エフェクターだけでなく、「非天然」ペイロードも細胞に送達するためのモジュール式の多様な送達系として初めてPVCニードル複合体を使用する可能性を開く。したがって、選択されるペイロードを有するPVCニードル複合体を製造することが可能である。
【0022】
本発明の別の態様は、ペイロードを含むPVCニードル複合体を製造する方法(例えば、換言すると、パッケージされたPVCニードル複合体を製造する方法)であって:
a.(例えば、宿主細胞内で)PVCニードル複合体を、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含むエフェクター融合物と接触させることを含み;
b.ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法を提供する。
【0023】
本発明の一態様は、ペイロードを含むPVCニードル複合体を製造する方法(例えば、換言すると、パッケージされたPVCニードル複合体を製造する方法)であって:
a.(例えば、宿主細胞内で)PVCニードル複合体を融合物と接触させ、融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み、リーダー配列及びペイロードは、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される融合物を形成することを含み;
b.ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)である
方法を提供する。
【0024】
一実施形態において、前記接触は、細胞(例えば、細菌宿主細胞)内で、細胞溶解物中で、又は精製細胞溶解物中で(好ましくは、細胞内で)行うことができる。一実施形態において、前記接触は、無細胞発現系内で行うことができる。同様に、本明細書に記載の使用は、細胞(例えば、細菌宿主細胞)内で、細胞溶解物、無細胞発現系中で、又は精製細胞溶解物中で(好ましくは、細胞、より好ましくは、細菌宿主細胞内で)行う(融合物/エフェクター融合物とPVCニードル複合体との間の)接触ステップを含み得る。
【0025】
PVCニードル複合体をコードするカセット(オペロン)を第1のプロモーターに作動可能に結合させることができ、融合物/エフェクター融合物(ペイロード)をコードする遺伝子を第2の(好ましくは、異なる)プロモーターに作動可能に結合させることができる。一実施形態において、前記第1及び/又は第2のプロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、アラビノース誘導性プロモーター、例えば、pBAD、及び/又はIPTG誘導性プロモーター)である。したがって、本発明は、PVCをコードするオペロンが第1のベクター/プラスミド内に存在し(任意選択で第1のプロモーターに作動可能に結合している)、エフェクター融合物(ペイロードに融合しているリーダー配列)をコードする配列が第2の(好ましくは、異なる)プラスミド内に存在する(任意選択で第2のプロモーターに結合している)発現系を包含する。
【0026】
一実施形態において、PVCニードル複合体及び/又は(好ましくは、及び)エフェクター融合物は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び/又は哺乳類細胞から選択される1つ以上の宿主中で発現させることができる。好ましい実施形態において、PVCニードル複合体及びエフェクター融合物は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞から選択される宿主細胞(好ましくは、細菌細胞)中で一緒に発現させることができる。好適な哺乳類細胞としては、HEK293細胞及び/又はCHO細胞が挙げられる。
【0027】
PVCニードル複合体及び/又は(好ましくは、及び)エフェクター融合物(ペイロード)は、異種細菌発現系(好ましくは、大腸菌(E.coli))中で発現させることができる。一実施形態において、PVCニードル複合体及び/又は(好ましくは、及び)PVCエフェクターは、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞中で発現させることができ、任意選択で、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞のPVCオペロンは、細胞に対して内因性である(及び任意選択で、PVCオペロンは、遺伝子操作を介してゲノム中に取り込んでPVCオペロンに作動可能に結合させることができる誘導性プロモーターに作動可能に結合している)。例えば、誘導性プロモーターは、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞のゲノム中に5’からPVC(オペロン)で、好ましくは、実施例(例えば、実施例3)に記載のとおり組み換えることにより導入することができる。
【0028】
ペイロードは、例えば、PVCニードル複合体が医学的治療において有用になるように治療ペイロードであり得る。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、治療の方法における使用のための(パッケージされた)PVCニードル複合体であって;
a.ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)エフェクター融合物を含み(例えば、それでパッケージされており);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
PVCニードル複合体を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、治療の方法における使用のための(パッケージされた)PVCニードル複合体であって;
a.ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)融合物を保持し(例えば、それでパッケージされており);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
PVCニードル複合体を提供する。
【0031】
一態様において、本発明は、対象を治療する方法であって、(パッケージされた)PVCニードル複合体を対象(例えば、患者)に投与することを含み;
a.PVCニードル複合体は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)エフェクター融合物を含み(例えば、それでパッケージされており);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法を提供する。
【0032】
換言すると、本発明の一態様は、対象を治療する方法であって、(パッケージされた)PVCニードル複合体を対象(例えば、患者)に投与することを含み;
a.PVCニードル複合体は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)融合物を保持し(例えば、それでパッケージされており);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
方法を提供する。
【0033】
好ましい実施形態において、ペイロードは、ポリペプチドである。
【0034】
対象は、哺乳類対象、好ましくは、ヒト対象であり得る。
【0035】
用語「PVCニードル複合体はエフェクター融合物を保持する」及び「エフェクター融合物を含むPVCニードル複合体」は、パッケージされたエフェクター融合物を有するPVCニードル複合体、又は換言すると、エフェクター融合物でパッケージされたPVCニードル複合体を意味する。
【0036】
用語「パッケージされたエフェクター融合物」、「融合物」及び「エフェクター融合物」(例えば、融合物/エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される)は、PVCニードル複合体中へのパッケージ後に接触したままである(例えば、融合している)PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードの組み合わせ(例えば、リーダー配列はペイロードから開裂されていない)、並びにもはや直接接触していないPVCエフェクターリーダー配列及びペイロードの組み合わせ(例えば、ペイロードからのリーダー配列の開裂後に例えば、もはや融合していない)を包含する。
【0037】
本明細書において使用される用語「治療する」又は「治療すること」は、予防的治療(例えば、疾患の発症を予防するため)並びに中和治療(既に疾患を罹患している対象の治療)を包含する。好ましくは、本明細書において使用される用語「治療する」又は「治療すること」は、中和治療を意味する。用語「治療する」又は「治療すること」は、疾患及びその症状の両方を治療することを包含する。一部の実施形態において、「治療する」又は「治療すること」は、疾患の症状を指す。
【0038】
したがって、PVCニードル複合体は、治療有効量又は予防有効量で対象に投与することができる。
【0039】
「治療有効量」は、単独で又は組み合わせ(例えば、別の治療薬と、並行して又は順次投与され、相加的又は相乗的に作用する)で対象に疾患(又はその症状)を治療するために投与された場合に疾患、又はその症状のそのような治療を生じさせるために十分な(パッケージされた/負荷された)PVCニードル複合体の任意の量である。
【0040】
「予防有効量」は、単独で又は組み合わせ(例えば、別の治療薬と、並行して又は順次投与され、相加的又は相乗的に作用する)で対象に投与された場合に疾患(又はその症状)の発症又は再発を阻害し、又は遅延させる(パッケージされた/負荷された)PVCニードル複合体の任意の量である。一部の実施形態において、予防有効量は、疾患の発症又は再発を完全に予防する。発症を「阻害すること」は、疾患発症(又はその症状)の見込みを低下させ、又は発症を完全に予防することを意味する。
【0041】
関連態様において、エフェクター融合物を含む(例えば、それを保持する/それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体であって;
a.前記エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記エフェクター融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
c.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
(パッケージされた)PVCニードル複合体が提供される。
【0042】
換言すると、本発明の一態様は、融合物を保持する(例えば、それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体であって;
a.前記融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
b.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
c.融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
(パッケージされた)PVCニードル複合体を提供する。
【0043】
好ましい実施形態において、(パッケージされた)PVCニードル複合体は、単離(例えば、非天然)PVCニードル複合体である。
【0044】
以下に説明されるとおり、PVCニードル複合体は、典型的には、本来、毒素原性PVCエフェクターを昆虫標的に送達するように機能する。PVCニードル複合体中にパッケージすることができるペイロードの数及び種類を大幅に拡大することにより、本発明は、標的化し、殺傷することができる無脊椎動物(例えば、有害生物)、例えば、アメーバ、線虫、蠕虫及び昆虫の数及び種類を同時に拡大する。
【0045】
本発明のさらなる態様において、有害生物を抑制する方法であって:
a.有害生物、又は有害生物を含む標的区域を、エフェクター融合物を含む(例えば、それを保持する/それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記エフェクター融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
d.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法が提供される。
【0046】
本発明の一態様は、有害生物を抑制する方法であって:
a.有害生物、又は有害生物を含む標的区域を、融合物を保持する(例えば、それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
d.融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
方法を提供する。
【0047】
用語「PVCニードル複合体はエフェクター融合物を保持する」及び「エフェクター融合物を含むPVCニードル複合体」は、パッケージされたエフェクター融合物を有するPVCニードル複合体を意味する。
【0048】
用語「標的区域」は、有害生物が存在する及び/又は有害生物が存在し得る(例えば、存在すると予測され、又は存在すると疑われる)区域を指す。
【0049】
したがって、一実施形態において、標的区域は、有害生物が存在する前、及び/又は存在する時に接触させることができる。標的区域は、有害生物付近に(例えば、それにごく接近して)あり得る。或いは、標的区域は、使用者が有害生物から保護することを望む区域であり得る。例えば、標的区域は、植物及び/又は植物生産物を含み得る。
【0050】
用語「有害生物を抑制すること」は、「有害生物防除」、「有害生物の成長を阻害すること」、「有害生物の増殖を阻害すること」、及び/又は「有害生物の死滅」を包含する。
【0051】
このような有害生物の例としては、1つ以上の昆虫、ダニ、ワラジムシ、ダンゴムシ、ムカデ、軟体動物、ヤスデ、原生生物、真菌(真菌)、蠕虫及び/又は血液感染性寄生虫が挙げられる。有害生物は、発生の任意の段階のものであり得、例えば、幼体及び/又は成体有害生物(例えば、成虫)であり得る。
【0052】
本発明は、種々の農業、工業、家庭及び園芸有害生物を標的化するために使用することができる。
【0053】
一実施形態において、有害生物は、昆虫、ダニ、ワラジムシ、ダンゴムシ、ムカデ、軟体動物及び/又はヤスデである。好適には、有害生物は、昆虫及び/又はダニ(好ましくは、昆虫)であり得る。
【0054】
好適な昆虫の例としては、チョウ目、コウチュウ目、ハエ目、ゴキブリ目、ハチ目、シロアリ目、バッタ目、シミ目、及び/又はハサミムシ目の昆虫が挙げられる。一実施形態において、チョウ目の昆虫は、ガ及び/又はチョウの1つ以上であり得る。好適なガとしては、タバコスズメガ(Manduca Sexta)及び/又はハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)が挙げられる。
【0055】
一実施形態において、コウチュウ目の昆虫は、ヨーロピアンシェーファー(European chafer)幼虫、ノザンマスクドシェーファー(northern masked chafer)幼虫、サザンマスクドシェーファー(southern masked chafer)幼虫、マメコガネ幼虫、コガネムシ幼虫、キンケクチブトゾウムシ、イチゴクチブトゾウムシ、クレイカラードウィービル(clay-colored weevil)、コロラドハムシ、及び/又はコメツキムシの1つ以上であり得る。別の実施形態において、ハエ目の昆虫は、レザージャケット(例えば、ガガンボの幼体)、タマネギバエ、ギャベツバエ、ニンジンサビバエ、キノコバエ、及び/又はカの1つ以上であり得る。別の実施形態において、ゴキブリ目の昆虫は、ゴキブリ、好適には、ワモンゴキブリ、及び/又はチャバネゴキブリから選択される1つ以上のゴキブリであり得る。
【0056】
一実施形態において、ハチ目の昆虫は、アリであり得る。好適に、アリは、オオアリ、悪臭性のイエアリ、舗装アリ、アルゼンチンアリ、イエヒメアリ、黄褐色クレージーアント、収穫アリ、ヒアリ、サザンファイアーアント(Southern fire ant)、キイロクシケアリ及び/又はコカミアリの1つ以上であり得る。別の実施形態において、ハチ目の昆虫は、イエロージャケットであり得る。
【0057】
一実施形態において、シロアリ目の昆虫は、シロアリであり得る。好適には、シロアリは、湿材シロアリ、乾材シロアリ、及び/又は地下シロアリの1つ以上であり得る。別の実施形態において、バッタ目の昆虫は、コオロギ、バッタ、及び/又はイナゴの1つ以上であり得る。一実施形態において、シミ目の昆虫は、セイヨウシミであり得る。別の実施形態において、ハサミムシ目の昆虫は、ハサミムシであり得る。
【0058】
好適な軟体動物の例としては、ナメクジ及び/又はカタツムリが挙げられる。
【0059】
一実施形態において、有害生物は、原生生物である。一実施形態において、前記原生生物は、カオス・カロリネンス(Chaos carolinense)、アメーバ・プロテウス(Amoeba proteus)、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis)、リーシュマニア属種(Leishmania Spp.)、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)から選択される1つ以上である。一実施形態において、前記原生生物は、フォンティキュラ・アルバ(Fonticula alba)、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、クリトモナス・パラメジウム(Crytomonas paramedium)、ポーリネラ・クロマトフォラ(Paulinella chromatophora)、ナンノクロロプシス・ガジタナ(Nannochloropsis gaditana)、及び/又はテトラヒメナ属種(Tetrahymena Spp.)から選択される1つ以上である。
【0060】
一実施形態において、有害生物は、真菌である。一実施形態において、前記真菌は、エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoan cuniculi)、ナセマ・アピス(Nasema apis)、ナメマ・セラナエ(Namema ceranae)、ビタフォルマ・カルネアエ(Vittaforma carneae)、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ(Enterocytosoan bieneusi)、スプラグエア・ロフィイ(Spraguea lophii)、バブラ・クルクリス(Vavra culiculis)、エドハーザージア・アエデス(Edharzardia aedes)、ネマトシダ・パリシイ(Nematocida parisii)、ラゼラ属種(Razella Spp.)、パラシテラ・パラシティカ(Parasitella parasitica)、リクテイミア・ラモセ(Lichteimia ramose)、黒穂病菌(Sporisorium scitamineum)、カワラタケ(Trametes versicolor)、及び/又はケシワウロコタケ(Punctularia strigosozonata)から選択される1つ以上の真菌である。
【0061】
一実施形態において、前記真菌は、カンジダ属種(Candida spp.)である。前記カンジダ属種(Candida spp.)は、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アスカラフィダルム(C.ascalaphidarum)、C.アンフィキシアエ(C.amphixiae)、C.アンタークティカ(C.Antarctica)、C.アルゲンテア(C.argentea)、C.アトランティカ(C.atlantica)、C.アトモスフェリカ(C.atmosphaerica)、C.アウリス(C.auris)、C.ブラッタエ(C.blattae)、C.ブロメリアセアルム(C.bromeliacearum)、C.カルポフィラ(C.carpophila)、C.カルバジャリス(C.carvajalis)、C.セラムビシダルム(C.cerambycidarum)、C.シャウリオデス(C.chauliodes)、C.コリダリス(C.corydalis)、C.ドッセイイ(C.dosseyi)、C.デュブリネンシス(C.dubliniensis)、C.エルガテンシス(C.ergatensis)、C.フルクタス(C.fructus)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.フェルメンタティ(C.fermentati)、C.ギリエルモンディイ(C.guilliermondii)、C.ハエムロニイ(C.haemulonii)、C.フミリス(C.humilis)、C.インセクタメンス(C.insectamens)、C.インセクトルム(C.insectorum)、C.インテルメディア(C.intermedia)、C.ジェフレシイ(C.jeffresii)、C.ケフィル(C.kefyr)、C.ケロセネアエ(C.keroseneae)、C.クルセイ(C.krusei)、C.ルシタニアエ(C.lusitaniae)、C.リクソソフィラ(C.lyxosophila)、C.マルトセ(C.maltose)、C.マリナ(C.marina)、C.メンブラニファシエンス(C.membranifaciens)、C.モギイ(C.mogii)、C.オレオフィラ(C.oleophila)、C.オレゴネンシス(C.oregonensis)、C.パラプシロシス(C.parapsilosis)、C.クエルシトルサ(C.quercitrusa)、C.ルゴセ(C.rugose)、C.サケ(C.sake)、C.シェハテア(C.shehatea)、C.テムノキラエ(C.temnochilae)、C.テヌイス(C.tenuis)、C.テアエ(C.theae)、C.トレランス(C.tolerans)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ツチヤエ(C.tsuchiyae)、C.シノラボランティウム(C.sinolaborantium)、C.ソジャエ(C.sojae)、C.スブハシイ(C.subhashii)、C.ビスワナチイ(C.viswanathii)、C.ウティリス(C.utilis)、C.ウバツベンシス(C.ubatubensis)、及び/又はC.ゼンプリニナ(C.zemplinina)から選択される1つ以上であり得る。好適には、前記カンジダ属種(Candida spp.)は、C.アルビカンス(C.albicans)であり得る。
【0062】
別の実施形態において、有害生物は、蠕虫である。前記蠕虫は、環形動物門(Annelida)、扁形動物門(Platyhelminthes)、線形動物門(Nematoda)及び/又は鉤頭動物門(Acanthocephala)から選択される1つ以上であり得る。一実施形態において、前記蠕虫は、寄生性扁形動物である。前記寄生性扁形動物は、条虫綱(Cestoda)、吸虫綱(Trematoda)及び/又は単生綱(Monogenea)から選択される1つ以上であり得る。一実施形態において、前記蠕虫は、寄生性線虫である。前記寄生性線虫は、回虫(カイチュウ属(Ascaris))、フィラリア、鉤虫、蟯虫(ギョウチュウ属(Enterobius))、及び/又は鞭虫(Trichuris trichiura)から選択される1つ以上であり得る。
【0063】
一実施形態において、有害生物は、血液感染性寄生虫である。前記血液感染性寄生虫は、トリパノソーマ属種(Trypanosoma Spp)(例えば、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)及び/又はクルーズトリパノソーマ(T.cruzi))、バベシア属種(Babesia Spp)(例えば、バベシア・ミクロティ(Babesia microti))、リーシュマニア属種(Leishmania Spp)、プラスモジウム属種(Plasmodium Spp)(例えば、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum))、及び/又はトキソプラズマ属種(Toxoplasma Spp.)(例えば、トキソプラズマ・コンジイ(Toxoplasma gondii))から選択される1つ以上であり得る。
【0064】
有害生物防除のためのPVCニードル複合体は、好適には、環境的に安全(例えば、環境的に安全な殺有害生物組成物)である。
【0065】
他の有利な有用性としては、例えば、実験室での研究の間、ペイロードを細胞に送達することが挙げられる。このような細胞はインビトロ細胞系の一部であり得、又は動物(例えば、研究動物モデル)の細胞であり得る。さらに又は或いは、細胞は、エクスビボ系、例えば、オルガノイド内に含まれ得る。
【0066】
本発明の別の態様は、ペイロードを細胞中に送達するインビトロ(及び/又はエクスビボ)方法であって:
a.細胞を、エフェクター融合物を含む(例えば、それを保持する/それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.エフェクター融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記エフェクター融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
d.エフェクター融合物は、野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
方法を提供する。
【0067】
本発明の一態様は、ペイロードを細胞中に送達するインビトロ(及び/又はエクスビボ)方法であって:
a.細胞を、融合物を保持する(例えば、それでパッケージされた)(パッケージされた)PVCニードル複合体と接触させることを含み;
b.融合物は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含み(又は本質的にそれからなり)(又は換言すると、前記融合物は、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される);
c.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
d.融合物は、PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
方法を提供する。
【0068】
一態様において、本発明は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)エフェクター融合物(又は換言すると、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成されるエフェクター融合物)であって;
a.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり;
b.野生型PVCエフェクタータンパク質と区別される
エフェクター融合物を提供する。
【0069】
本発明の一態様は、ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)融合物(又は換言すると、PVCエフェクターリーダー配列及びペイロードにより形成される融合物)であって;
a.前記ペイロードは、ポリペプチド、核酸又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上(好ましくは、ポリペプチド)であり;
b.PVCエフェクタータンパク質(例えば、野生型PVCエフェクタータンパク質)と区別される
融合物を提供する。
【0070】
一実施形態において、融合物/エフェクター融合物は、単離融合物/エフェクター融合物(例えば、単離された天然に存在しない融合物/エフェクター融合物)である。
【0071】
本発明は、融合物/エフェクター融合物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、及び/又は前記核酸を含む発現ベクターを包含する。前記核酸及び/又は発現ベクターを含む宿主細胞も包含される。
【0072】
上記のとおり、本発明者らは、本明細書に記載のリーダー配列を初めて発見し、実際に利用した。
【0073】
したがって、本発明の別の態様は、単離PVCエフェクターリーダー配列(例えば、この単離PVCエフェクターリーダー配列は、ペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージし得る)を提供する。
【0074】
関連態様において、PVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸が提供される。
【0075】
単離PVCエフェクターリーダー配列は、組換え体、合成物、及び/又は精製物であり得る。PVCエフェクターリーダー配列をコードする単離核は、組換え体、合成物、及び/又は精製物であり得る。
【0076】
本発明の背景に関するさらなる詳細、及び本明細書において使用される用語は、以下に提供される。
【0077】
フォトラブダス属(Photorhabdus)は、腸内細菌科(Enterobacteriacae)の属の細菌であり、3つの以前に(これまで)認識された種、即ちP.ルミネスセンス(P.luminescens)、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)、及びP.テンペラタ(P.temperata)により代表される。重要な株としては、P.アシンビオティカ亜種アウストラリス(P.asymbiotica subsp.australis)、及びP.ルミネスセンス亜種ラウモンジイ(P.luminescens subsp laumondii)が挙げられる。現在利用可能なゲノム配列は、GenBank上で利用可能である(フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)ATCC43949完全ゲノム-GenBankアクセッション番号FM162591.1;フォトラブダス・ラウモンジイ亜種ラウモンジイ(Photorhabdus laumondii subsp.laumondii)株TT01染色体、完全ゲノム-GenBankアクセッション番号:CP024901.1)。
【0078】
「フォトラブダス・ルミネスセンス亜種ラウモンジイ(Photorhabdus luminescens subsp.laumondii)」への言及は、本明細書において「フォトラブダス・ルミネスセンス亜種ラウモンジイ(Photorhabdus luminescens subsp.laumondii)TT01」、「フォトラブダス・ルミネスセンス亜種ラウモンジイ(Photorhabdus laumondii subsp.laumondii)株TT01」、及び「P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01」と互換的に使用することができる。
【0079】
P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)、即ち、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)Kingscliffのさらなる株についてのゲノム配列は、参照により本明細書に組み込まれるWilkinson et.al.(FEMS Microbiology Letters,Volume 309,Issue 2,August 2010,Pages 136-143)に記載されている。さらなるゲノム配列は、参照により本明細書に組み込まれるThanwisai et.al.(PLoS ONE 7(9):e43835)に記載されている。
【0080】
これらの種のそれぞれは、本明細書において「ナノシリンジ」と称することができるPVCニードル複合体をコードするフォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット(PVC)オペロンとして公知の少なくとも1つのオペロンを含む。フォトラブダス属(Photorhabdus)が典型的には、(共生)昆虫病原性ヘテロラブディティス種(Heterorhabditis sp.)線虫からの逆流後に殺昆虫細菌として本来見出される(例えば、食料及び昆虫からの資源についての競合を回避するため)ことを考慮すると、PVCニードル複合体は本来、昆虫を抑制するように機能することが理解される。実際、(天然エフェクター毒素、例えば、Pnfを保持する/それでパッケージされた)単離PVCニードル複合体を使用して昆虫幼体を殺傷することができることが示された、実施例2参照。フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセットは、フォトラブダス属(Photorhabdus)の少なくとも4つの十分に特徴付けされた毒素送達系の1つを表す。フォトラブダス属(Photorhabdus)タンパク質殺昆虫毒素の他の主要なクラスとしては、「毒素複合体(Tc)」、「バイナリーPirAB毒素」、及び「メイクスキャタピラーズフロッピー(makes caterpillars floppy)」(Mcf)毒素が挙げられる。
【0081】
用語「フォトラブダス属(Photorhabdus)ビルレンスカセット」(PVC)(本明細書において用語「PVCオペロン」と同義的に使用される)は、発現された場合、アセンブルして巨大分子PVCニードル複合体を提供するポリペプチドサブユニットをコードする遺伝子を含むフォトラブダス属(Photorhabdus)ゲノムの区別されるオペロンを意味する。これらのカセットの分子アーキテクチャは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるThe Molecular Biology of Photorhabdus Bacteria(Springer International Publishing AG 2017,ISBN:978-3-319-52714-7,Chapter 10,pages 159-177)に十分に特徴付けされ、記載されている。PVC(オペロン)は、典型的には、アセンブルして「PVCニードル複合体」を提供する構造タンパク質をコードするおよそ16個の遺伝子(pvc1~pvc16)と、典型的にはそれに続く毒性活性を有する(及び典型的には、典型的なT3SS様エフェクターの相同体である)PVCエフェクター遺伝子をコードする3’末端における1つ以上の遺伝子とを含む。フォトラブダス属(Photorhabdus)ゲノムは、典型的には、異なるエフェクターペイロード、又はさらには複数のエフェクターペイロードと会合していることが多い複数のそのようなカセット(例えば、少なくとも4つ)を含む。
【0082】
PVC構造オペロン(クラスI、II及びIII)の3つのクラスは、フォトラブダス属(Photorhabdus)、及び他の属のメンバーのゲノムで観察されている。それぞれのクラス内のPVCは、それらが含有する構造タンパク質をコードする遺伝子の数及びタイプに関して類似する(
図1(B)参照)。より詳細には、クラスI PVC(本明細書において「原型PVC」と称することができる)は、16個の保存遺伝子(pvc1~16)を含む。クラスIIはpvc13宿主細胞結合線維を欠き、(理論により拘束されないが)本発明者らが考えるpvc3は、pvc13線維タンパク質をPVCニードル複合体(ナノシリンジ)上に付着させるマイナー特殊化鞘サブユニットであり得る。したがって、このクラスは「非特異的」であり得、ペイロードを複数の(潜在的なあらゆる)細胞タイプ中にインジェクトすると考えられる。クラスIIIはクラスIと類似するが、(未知機能の)オペロンの開始における追加のPvc0遺伝子及び「侵入」タイプタンパク質遺伝子と類似するpvc13とpvc14との間でコードされる2つの追加の遺伝子を有する。このクラスは、典型的には、フォトラブダス属(Photorhabdus)のヒト臨床単離株に見られ、本発明者らは、その株(PVCクラスIIIオペロンをコードするPVCオペロンを保有する)を37℃において成長させ、ヒト血清に曝露させた場合にPVCクラスIIIの最適な転写が生じ得ることを示し、このクラスがPVCニードル複合体の哺乳類適合型であり得ることを示唆する。
【0083】
一例のカセット(PVC)を
図1(D)に示し、それは、フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)ATCC43949(ATCCから入手可能、アクセッション番号:ATCC43949)のモデル「クラスI」PVCオペロンのマップを示し、前記オペロンは、下流エフェクター遺伝子「PAU_03332」(Pnfタンパク質エフェクター、例えば、配列番号32をコードする)と会合している。このモデルオペロンは、PaATCC43949PVCpnfと称される。このオペロンは、16個の構造遺伝子(pvc1~16)と、エフェクターをコードする2つの遺伝子(3’末端)(この場合、Rhs様エフェクターをコードするpvc17/Rhs様、及びPnfエフェクターをコードするpvc21)とを含む。前記遺伝子pvc1~16は、GenBankアクセッション番号FM162591.1の配列の遺伝子PAU_03353からPAU_03338に対応し、配列番号93の配列により表される。
【0084】
一例のPVCオペロン(例えば、構造遺伝子をコードするが、PVCエフェクターをコードしない)は配列番号93(
図1(D)に模式的に示されるオペロンをコードする)に提供され、他の例は配列番号94及び配列番号95である。これらの配列は、PVCカセット/オペロンの最初の構造遺伝子(pvc1)のATG開始コドンにおいて始まり、及び最後の構造遺伝子(pvc16)のTAA終止コドンにおいて終わる。
【0085】
クラスI~IIIのいずれか1つからのPVCニードル複合体は、種々の用途に使用することができる。しかしながら、あるクラスのPVCニードル複合体は、規定の細胞タイプへの送達に特に好適である。例えば、哺乳類細胞へのペイロードの送達のためのPVCニードル複合体は、好適には、クラスIIIのメンバーであり得る。昆虫細胞(例えば、昆虫)へのペイロードの送達のためのPVCニードル複合体は、好適には、クラスIのメンバー(例えば、コスミドクローンから大腸菌(E.coli)中で発現される、例えば、配列番号93によりコードされるP.アシンビオティカ(P.asymbiotica)PVCpnf)であり得る。
【0086】
したがって、当業者により理解されるとおり、用語「PVCニードル複合体」(本明細書において用語「PVCニードル複合体送達系」及び「ナノシリンジ」と同義的に使用される)は、フォトラブダス属(Photorhabdus)細菌のPVC(オペロン)によりコードされるポリペプチドサブユニットを含む巨大分子タンパク質複合体を意味する。PVCニードル複合体は、抗菌R型ピオシンと(表面的に)類似する物理的構造を有するナノシリンジ構造にアセンブルされる(実施例3参照)。機能及び分子試験は、PVCニードル複合体がPVCエフェクタータンパク質でパッケージ(ロード)され(即ち、PVCエフェクタータンパク質はその中又はその上にパッケージされ)、パッケージされたPVCニードル複合体が細菌から放出され、次いでPVCエフェクターを標的細胞中にインジェクトし、その結果、PVCエフェクタータンパク質が毒性を発揮し得ることを示した。
【0087】
用語「PVCニードル複合体」は、好ましくは、フォトラブダス属(Photorhabdus)PVCオペロンの遺伝子と相同の遺伝子を含むオペロンによりコードされるPVCニードル複合体様構造/複合体を包含する。PVC様エレメントはフォトラブダス属(Photorhabdus)に制限されず、十分に特徴付けされた(PVCオペロンに対して)相同のオペロンが、昆虫病原性細菌セラティア・エントモフィラ(Serratia entomophila)のpADAPプラスミド上に存在する。さらに、類似、及び(少なくとも部分的に)相同のPVC様「インジェクトソーム」ニードル複合体系は、細菌シュードアルテロモナス・ルテオビオラセア(Pseudoalteromonas luteoviolacea)により用いられる(例えば、海産虫カサネカンザシ(Hydroides elegans)の変態を制御するために使用される)。PVCオペロンと相同性を有するオペロンによりコードされる構造は他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(例えば、エルシニア属種(Yersinia Spp.))に存在し、本明細書に記載のリーダー配列と共に使用することができる。これらの(PVC様)構造のそれぞれは、本明細書において使用される用語「PVCニードル複合体」により包含される。
【0088】
したがって、PVCニードル複合体は、PVCニードル複合体内で、又はその末端(チップ)においてパッケージ(ロード)されているエフェクター遺伝子によりコードされる、したがってPVCニードル複合体の「ペイロード」又は「反応部位」を表すポリペプチドとの「ナノシリンジ」複合体である。本発明者らは、(依然としてペイロードが負荷された)PVCニードル複合体自体がフォトラブダス属(Photorhabdus)細胞から自由に放出(例えば、分泌)されてから標的細胞の膜と相互作用し、ペイロードをその細胞の細胞質中にインジェクトすることを実証した。実際、本発明者らは、異種発現系中でPVCニードル複合体を良好に発現させ、ロードしてからPVCニードル複合体を単離/精製し、それらを使用して昆虫幼体を抑制(例えば、殺傷)した(実施例2参照)。したがって、PVCニードル複合体はロングレンジタンパク質送達系として作用する。
【0089】
一実施形態において、PVCニードル複合体は、配列番号93、配列番号94、及び配列番号95から選択される配列(例えば、配列番号93)と少なくとも75%の配列同一性(好ましくは、少なくとも85%の配列同一性;より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性)を有する配列によりコードされる。
【0090】
一実施形態において、PVCニードル複合体は、配列番号93、配列番号94、及び配列番号95から選択される配列(例えば、配列番号93)によりコードされる。
【0091】
リーダー/シグナル配列は、典型的にはペプチドであり、分泌経路に向かうことになる大多数の(新たに)発現されるタンパク質のN末端に存在する(例えば、前記タンパク質を細胞膜上のタンパク質伝導チャネルに指向するための)10~30アミノ酸長のものが多い。多くのタンパク質は、ゴルジ又は小胞体侵入のためのシグナル配列を要求する。
【0092】
本明細書において「PVCエフェクターリーダー配列」の文脈で使用される用語「リーダー配列」(本明細書において用語「リーダーペプチド」、「シグナル配列」、「標的化シグナル」、「局在化シグナル」、「局在化配列」、及び「輸送ペプチド」と互換的に使用される)は、PVCエフェクターをPVCニードル複合体の内部、又は末端(チップ)中に指向するように機能するポリペプチド配列を意味し、したがって、リーダー配列は、PVCエフェクターをPVCニードル複合体中にパッケージするように機能する。続いて、PVCニードル複合体は、PVCエフェクターを標的細胞中に送達(例えば、インジェクト)し得る。PVCニードル複合体は、アセンブルしたPVCニードル複合体であり得る。用語「PVCニードル複合体」は、PVCニードル複合体の断片を指し得る(例えば、リーダー配列は前記断片に接触し、任意選択で、PVCニードル複合体はリーダー配列-ペイロード「エフェクター融合物」周囲でアセンブルする)。
【0093】
PVCリーダー配列は、典型的には、PVCエフェクター又はその相同体の(最初の50アミノ酸により特徴付けされ、又はそれに包含される)N末端に存在する。しかしながら、本発明は、そのようなPVCエフェクター/相同体のN末端領域以外の領域中(例えば、C末端領域中)に見出すことができるPVCエフェクター及びPVCエフェクター相同体のリーダー配列を包含する。
【0094】
一実施形態において、リーダー配列は、PVCエフェクター(例えば、PVCエフェクタータンパク質)のアミノ酸残基1~50を含む(又は本質的にそれからなる)。「アミノ酸残基1~50」への言及は、N末端メチオニンが排除される、例えば、開裂された「アミノ酸残基2~50」を包含する。リーダー配列は、PVCエフェクターのN末端50個のアミノ酸の断片(例えば、≦45、≦35、≦25、又は≦15個のアミノ酸を含み又は本質的にそれからなる断片)であり得、但し、断片がペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージし得ることを条件とする。
【0095】
一実施形態において、本発明のリーダー配列(例えば、単離リーダー配列)は、配列番号47~配列番号92から選択される1つ以上の配列(好ましくは、配列番号50、配列番号68、配列番号71、配列番号76、配列番号78、又は配列番号92)と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み(又は本質的にそれからなり)、例えば、リーダー配列がペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージし得ることを条件とする。好ましい実施形態において、リーダー配列は、配列番号47~配列番号92から選択される1つ以上の配列(好ましくは、配列番号50、配列番号68、配列番号71、配列番号76、配列番号78、又は配列番号92)と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み(又は本質的にそれからなり)、例えば、リーダー配列がペイロードをPVCニードル複合体中にパッケージし得ることを条件とする。より好ましい実施形態において、リーダー配列は、配列番号47~配列番号92から選択される1つ以上のアミノ酸配列(好ましくは、配列番号50、配列番号68、配列番号71、配列番号76、配列番号78、又は配列番号92)を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号47~配列番号92から選択されるアミノ酸配列(好ましくは、配列番号50、配列番号68、配列番号71、配列番号76、配列番号78、又は配列番号92)を含む(又は本質的にそれからなる)。
【0096】
一実施形態において、リーダー配列は、配列番号50、配列番号68、配列番号71、配列番号76、配列番号78、及び配列番号92から選択されるアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。
【0097】
一実施形態において、リーダー配列は、配列番号50のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号68のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号71のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号76のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号78のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号92のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。
【0098】
理論により拘束されないが、リーダー配列は、アミノ酸特性に基づく「化学組成コンセンサス(chemical composition consensus)」を共有すると考えられる。より特定すると、リーダー配列は類似の電荷パターンを含み、そのパターンは、2つの負電荷領域と、そのそれぞれに続く正電荷領域(例えば、[-ve][+ve][-ve][+ve])を含む、
図9参照。これは、[+ve][疎水性][+ve][C]の電荷/特性パターンを含む2型分泌系の毒素のリーダー配列と一致する。さらなる理論は、リーダー配列が典型的な「ヘリックス-ターン-ヘリックス」構造を共有することを仮定する。別の理論は、リーダー配列が、PVCニードル複合体の内部中、又は末端(例えば、チップ)に存在するATPアーゼ酵素により認識される構造(例えば、
図1(D)のモデルオペロン中の遺伝子PAU_03339(pvc15))によりコードされる)を形成することである。
【0099】
用語「PVCエフェクター」(用語「PVCオペロンコードエフェクター」、及び「PVCエフェクタータンパク質」と同義的に使用される)は、フォトラブダス属(Photorhabdus)PVCオペロン、より特定すると(及び典型的には)、前記オペロンの構造遺伝子のすぐ下流(3’)(好ましくは、pvc16のすぐ又は直近の下流、及び典型的には5kb内)に見出されるものによりコードされるエフェクターポリペプチドを意味する。用語「PVCエフェクター」は、好ましくは、その相同体を包含する。したがって、リーダー配列は、PVCエフェクターをコードする遺伝子の相同体である遺伝子によりコードされるポリペプチドからのものでもあり得、そのような相同体については表1参照。実際、PVCエフェクターの同定は、既知の毒素ポリペプチド(例えば、前記毒素ポリペプチドをコードする遺伝子)とのpvc16の下流遺伝子の相同性を検出することにより補助される。当業者により理解されるとおり、用語「相同体」は、好ましくは、同じ祖先の遺伝子に由来し、類似の機能を共有する遺伝子を意味し、そのような遺伝子(又はそれによりコードされるポリペプチド)は、PVCエフェクターをコードする遺伝子と相同である。相同体は、フォトラブダス属(Photorhabdus)種のゲノムから、又はフォトラブダス属(Photorhabdus)種以外の種からのものであり得る。好適な相同体の例は、表1に概説される。
【0100】
本発明者らは、フォトラブダス属(Photorhabdus)の3つの最も一般的な(最良に特徴付けされた)株、並びにP.アシンビオティカ(P.asymbiotica)Thai株PB68.1中のこれらのPVCニードル複合体のPVCエフェクターをコードする遺伝子を解明し、詳細に特徴付けした。これは、オペロンのPVC構造遺伝子の3’末端への遺伝子連鎖の近接性、及びエフェクター(例えば、既知エフェクター/毒素タンパク質の相同体)のタンパク質配列の予測される機能を分析することに基づき実施した。より詳細には、PVCエフェクター(例えば、PVCエフェクターをコードする遺伝子)を、典型的には、既知の毒素ポリペプチド(例えば、表1に概説される相同体)をコードする遺伝子との相同性を有し、典型的には、PVCオペロンの最後の構造遺伝子(例えば、pvc16)の下流1キロベースから5キロベース(kb)の距離内(例えば、1kb内)に存在する(典型的には数個の介在遺伝子があり、又は介在遺伝子なし)オープンリーディングフレーム(ORF)と同定した。典型的には、オペロンの末端(PVCニードル複合体をコードする)と、PVCエフェクター遺伝子との間に「非毒素様」ORFは存在しない。(例えば、1つ、又は2つの)他の小さい予測遺伝子がそれらの領域中に存在し得るが、それらの他の遺伝子はPVCエフェクターと割り当てない(上記の既知のエフェクター/毒素遺伝子との相同性の欠落に起因)。
【0101】
推定PVCエフェクター遺伝子(例えば、PVCオペロンの最後の構造遺伝子の下流5kbの距離内、例えば、1kb内のORF)をPVCエフェクター遺伝子として割り当てるため、本発明者らは、BlastP及びHHPRED(https://toolkit.tuebingen.mpg.de/#/tools/hhpred)の組み合わせを使用した。推定PVCエフェクター遺伝子を、既知の毒素コード遺伝子との直接相同性、毒素タンパク質ファミリーとの類似性、PVCオペロンとの近接性(例えば、PVCオペロンの最後の構造遺伝子、pvc16の下流1~5kb内)に基づき、及び/又は既知毒素との予測二次構造のドメイン類似性に基づきPVCエフェクター遺伝子として割り当てた。
【0102】
したがって、PVCエフェクター(遺伝子)は、(i)pvc16を同定すること(例えば、既知pvc16との配列相同性を介して)、(ii)pvc16に対するORF3’を同定すること、好ましくは、pvc16の下流≦5kb)、及び(iii)毒素ポリペプチド(例えば、「相同体」と標識された表1の欄に記載の毒素タンパク質)をコードする既知遺伝子との配列相同性の同定を介して前記ORFがPVCエフェクターをコードすることを確認することにより同定することができる(フォトラブダス属(Photorhabdus)ゲノム内で)。
【0103】
例として、PVCエフェクター遺伝子PAU_03337(本明細書においてビルレントsep遺伝子との相同性に起因して「sepC」と称される)は、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949に見出される本明細書においてPVCpnf(例えば、配列番号93のもの)と称されるPVCオペロンのpvc16(PAU_03338)の下流325塩基対(bp)に位置する。即ち、PAU_03337の開始コドンは、PAU_03338の停止コドンの終わりの下流325bpで始まる。
【0104】
これは、GenBankアクセッション番号FM162591.1を介してアクセス可能なP.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949完全ゲノムへの言及により説明することができ(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWilkinson et al,BMC Genomics volume 10,article number:302(2009)も参照)、エフェクター遺伝子PAU_03337は以下のとおりゲノム中に位置するとアノテートされる:相補鎖側(3913237..3914247)-即ち、ヌクレオチド位置3913237..3914247において;及びPAU_03338は以下のとおりゲノム中に位置するとアノテートされる:相補鎖側(3914573..3915454)。他のORF(エフェクター又はそうでないものをコードする)は、それら2つの遺伝子間に見出されない。
【0105】
本明細書において(例えば、配列番号93の)PVCpnfと称されるPVCオペロンと会合するさらなるPVCエフェクター遺伝子、即ち、PAU_03332(本明細書において「pnf」と称される)は、pvc16(PAU_03338)の下流3535bpに位置する。
【0106】
PVCエフェクター遺伝子PAU_02095(本明細書において、ビルレントRhs毒素遺伝子との相同性に起因して「Rhs様毒素エフェクター」と称される)は、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949に見出される本明細書においてPVClopT(例えば、配列番号94のもの)と称されるPVCオペロンのpvc16(PAU_02099)の下流3961bpに位置する。即ち、PAU_02095の開始コドンは、PAU_02099の終止コドンの終わりの下流3961bpで始まる。
【0107】
さらなる例において、遺伝子PAU_02009(本明細書において細胞周期阻害因子/ATP/GTP結合タンパク質としての予測機能に起因して「cif」と称される)のPVCエフェクターは、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949に見出される本明細書においてPVCcifと称される会合PVCオペロンのpvc16(PAU_02008)の下流157bpに位置する。
【0108】
いっそうさらなる例において、本明細書においてPVCunit4オペロンと称されるP.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01のPVCオペロンに関して、PVCエフェクター遺伝子「pvc17」(例えば、「plu1651」)はpvc16(遺伝子「plu1655」)の下流104bpに位置し;本明細書においてPVCcifオペロンと称されるフォトラブダス・テンペラタ亜種テンペラタ(Photorhabdus temperata subsp.temperata)Meg1のPVCオペロンに関して、PVCエフェクター遺伝子「CIF毒素エフェクター」(例えば、MEG1DRAFT_03529)は、関連pvc16遺伝子の下流4216bpに位置する。
【0109】
これらの例は、PVCエフェクターをコードする遺伝子が、典型的には、PVCオペロンの(例えば、pvc16の)最後の遺伝子の下流≦5kbの距離内、より典型的には、PVCオペロンの最後の遺伝子の下流≦1kbの距離内に位置することを説明する。
【0110】
まとめると、これら4つの株において同定された46個のPVCエフェクターが存在する(現在利用可能な配列データに基づく)(表1参照)。これらのPVCエフェクターのそれぞれの最初の50個のアミノ酸はそれらの内因性リーダー配列を表し(又は包含する)、本発明者らは、リーダー配列をクローニングし、PVCニードル複合体中にパッケージすべき種々のペイロードに融合することができることを実証した、実施例3及び4参照。したがって、(翻訳されたままの)PVCエフェクターは、少なくとも2つの主要ドメイン:リーダー配列(アミノ酸1から50)及び実際のエフェクターポリペプチド(アミノ酸51からC末端アミノ酸)を含み、本明細書においてその後者を「エフェクター」(例えば、「エフェクター部分」)又は「ペイロード」と称することができる。
【0111】
フォトラブダス属(Photorhabdus)ゲノム配列は修正され続けているが、PVCエフェクター遺伝子のこの統合リストはそのようなエフェクターの包括的な説明を表し、最も一般的な(最良に特徴付けされた)フォトラブダス属(Photorhabdus)株の現在利用可能な配列データに基づき、当業者に用語「PVCエフェクター」及びそれらのPVCエフェクターの配列の理解(及び例えば、代替(ゲノム)配列中のさらなるPVCエフェクターをどのように検索/マイニングするか)を提供する。上記のとおり、本発明者らは、PVCエフェクタータンパク質が、PVCニードル複合体中へのPVCエフェクタータンパク質(例えば、ペイロード)のパッケージ/ロードを指向するために必要な(及び十分な)リーダー配列を含むことを見出した。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表1に提供されるアクセッション番号は例示目的のために提供され、本明細書に記載のPVCエフェクターの(又はそれと高い類似性を有する)例示のアミノ酸配列を提供する。前記アクセッション番号の配列は、GenBank(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)を介してアクセスすることができる。
【0116】
ローカスタグ(「PAU」又は「Plu」で始まる)は、上記GenBankを介して利用可能なゲノム配列中のエフェクターに割り当てられたローカスタグに対応する。「PAT」(株P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)Thai株PB68.1を指す)及び「PAK」(株P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)Kingscliffを指す)で始まるローカスタグは、前記株のゲノム内のPVCエフェクター遺伝子の同定時に(公的に利用可能な配列のローカスタグと一致する様式で)本発明者らにより割り当てられた。
【0117】
このローカスタグは、本明細書において対応するPVCエフェクターポリペプチドを指すために使用することができる。
【0118】
一実施形態において、PVCエフェクターは、PAK_1985(配列番号1)、PAK_1987(配列番号2)、PAK_1988(配列番号3)、PAK_2075(配列番号4)、PAK_2077(配列番号5)、PAK_2892(配列番号6)、PAK_2893(配列番号7)、PAK_2894(配列番号8)、PAK_3525(配列番号9)、PAT_00148(配列番号10)、PAT_00149(配列番号11)、PAT_00150(配列番号12)、PAT_00152(配列番号13)、PAT_02308(配列番号14)、PAT_02309(配列番号15)、PAT_02310(配列番号16)、PAT_02956(配列番号17)、PAT_02957(配列番号18)、PAT_03171(配列番号19)、PAT_03172(配列番号20)、PAT_03177(配列番号21)、PAU_02009(配列番号22)、PAU_02010(配列番号23)、PAU_02095(配列番号24)、PAU_02096(配列番号25)、PAU_02097(配列番号26)、PAU_02098(配列番号27)、PAU_02230(配列番号28)、PAU_02805(配列番号29)、PAU_02806(配列番号30)、PAU_02807(配列番号31)、PAU_03332(配列番号32)、PAU_03337(配列番号33)、Plu1651(配列番号34)、Plu1671(配列番号35)、Plu1672(配列番号36)、Plu1690(配列番号37)、Plu1691(配列番号38)、Plu1712(配列番号39)、Plu1713(配列番号40)、Plu1714(配列番号41)、Plu2400(配列番号42)、Plu2401(配列番号43)、Plu2514(配列番号44)、Plu2515(配列番号45)、Plu1649(配列番号46)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子(括弧中のコードされるPVCエフェクタータンパク質の配列番号を有する)によりコードされる。
【0119】
一実施形態において、PVCエフェクターは、PAU_02009(配列番号22)、PAU_02010(配列番号23)、PAU_02095(配列番号24)、PAU_02096(配列番号25)、PAU_02097(配列番号26)、PAU_02098(配列番号27)、PAU_02230(配列番号28)、PAU_02805(配列番号29)、PAU_02806(配列番号30)、PAU_02807(配列番号31)、PAU_03332(配列番号32)、PAU_03337(配列番号33)、Plu1651(配列番号34)、Plu1671(配列番号35)、Plu1672(配列番号36)、Plu1690(配列番号37)、Plu1691(配列番号38)、Plu1712(配列番号39)、Plu1713(配列番号40)、Plu1714(配列番号41)、Plu2400(配列番号42)、Plu2401(配列番号43)、Plu2514(配列番号44)、Plu2515(配列番号45)、Plu1649(配列番号46)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子(括弧中のコードされるPVCエフェクタータンパク質の配列番号を有する)によりコードされる。これらの遺伝子名は、上記のとおりGenBankを介してアクセス可能なフォトラブダス属(Photorhabdus)ゲノム配列中のPVCエフェクター遺伝子の「ローカスタグ」に対応する。PAT及びPAKローカスタグは、用語が公的に利用可能なゲノム配列のPAU及びPluローカスタグと一致するように本発明者らにより生成された。
【0120】
したがって、PVCエフェクターは上記に列挙される1つ以上の遺伝子によりコードされ得る。
【0121】
一実施形態において、PVCエフェクターは、PAK_02075(配列番号4)、PAU_02009(配列番号22)、PAU_02096(配列番号25)、PAU_02806(配列番号30)、PAU_03332(配列番号32)、Plu1651(配列番号34)、Plu1649(配列番号46)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子(括弧中のコードされるPVCエフェクターの配列番号を有する)によりコードされる。
【0122】
好ましい実施形態において、PVCエフェクターは、PAU_02806(配列番号30)、PAU_03332(配列番号32)、Plu1651(配列番号34)、Plu1649(配列番号46)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子(括弧中のコードされるPVCエフェクターの配列番号を有する)によりコードされる。
【0123】
PVCエフェクターは、配列番号1~配列番号46から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性(好ましくは、少なくとも90%の配列同一性;より好ましくは、100%の配列同一性)を有する配列を有し得る。例えば、PVCエフェクターは、配列番号22~46から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性(好ましくは、少なくとも90%の配列同一性;より好ましくは、100%の配列同一性)を有する配列を有し得る。
【0124】
本発明者らは、gogB1(PAU_02806)及びPnf(PAU_03332)PVCエフェクターのリーダー配列がPVCニードル複合体中への(融合)ペイロードのパッケージにおいて特に効率的であると同定した。一実施形態において、PVCエフェクターは、PAU_02806(例えば、配列番号30のアミノ酸配列を有する)によりコードされる。一実施形態において、PVCエフェクターは、PAU_03332(例えば、配列番号32のアミノ酸配列を有する)によりコードされる。
【0125】
一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号1~配列番号46(例えば、配列番号22~配列番号46)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。例えば、PVCエフェクターは、配列番号4、配列番号22、配列番号25、配列番号30、配列番号32及び配列番号46から選択される配列を含み得る(又は本質的にそれからなり得る)。
【0126】
一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号4のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号22のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号25のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号30のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号32のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。一実施形態において、PVCエフェクターは、配列番号46のアミノ酸配列を含む(又は本質的にそれからなる)。
【0127】
用語「パッケージ」(用語「トランスパッケージ」及び「ロード」と同義的に使用される)は、PVCニードル複合体が続いて標的細胞中へのペイロードの送達(例えば、インジェクト)のために構成されるようなアセンブルPVCニードル複合体の内部、又は末端(チップ)中への、本発明のリーダー配列(ペイロードが結合/融合している)によるペイロードの指向を意味する。したがって、ペイロードは、PVCニードル複合体内でパッケージすることができ、又はPVCニードル複合体の末端(又はチップ)においてパッケージすることができる(例えば、ペイロードの少なくとも一部は、PVCニードル複合体の外側であり得る)。
【0128】
用語「ペイロード」(本明細書において用語「反応部位」と同義的に使用される)は、アセンブルPVCニードル複合体の内部、又は末端(チップ)中にパッケージされ、続いて(標的)細胞中に送達(例えば、インジェクト)される分子を意味する。野生型フォトラブダス属(Photorhabdus)において、ペイロードは、PVCオペロンの構造遺伝子の下流(3’)の遺伝子により(上記のとおり)コードされるPVCエフェクター(より特定すると、前記PVCエフェクターのエフェクター部分)である。例えば、アデニレートシクラーゼエフェクターをコードするエフェクター遺伝子PAU_03337(PVCpnf17として列挙)(例えば、配列番号33);及びPnfエフェクターをコードするPAU_03332(PVCpnf21として列挙)(例えば、配列番号32)を有する
図1(D)のモデルPVCオペロン参照。
【0129】
本発明のリーダー配列及びペイロードは、「(例えば、野生型)PVCエフェクター(例えば、表1に概説される遺伝子の1つによりコードされるポリペプチド)と区別」される「エフェクター融合物」(又は単に「融合物」)を形成する。例えば、エフェクター融合物は、第2の(異なる)PVCエフェクター(のエフェクター部分)(好ましくは、前記第2のPVCエフェクターのアミノ酸51からC末端アミノ酸)に融合している第1のPVCエフェクターからのリーダー配列から形成されるキメラであり得、前記第1のPVCエフェクター及び前記第2のPVCエフェクターは異なる。エフェクター融合物は、非PVCエフェクターポリペプチドに融合している本明細書に記載のリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)キメラであり得る。エフェクター融合物は、非フォトラブダス属(Photorhabdus)ポリペプチドに融合している本明細書に記載のリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)キメラであり得る。エフェクター融合物は、核酸に融合している本明細書に記載のリーダー配列を含むリーダー配列-核酸融合物(好ましくは、コンジュゲート)であり得る。
【0130】
エフェクター融合物は、毒性ペイロードに融合しているリーダー配列を含む融合物複合体に限定されない(例えば、リーダーは治療ペイロードに融合させることができた)。したがって、「エフェクター融合物」の文脈で使用される用語「エフェクター」は、PVCニードル複合体(種々の効果、例として、毒素原性及び/又は治療効果を提供し得た)中にパッケージされるペイロードを意味する。したがって、用語「エフェクター融合物」は、本明細書において用語「融合物」と互換的に使用することができる。
【0131】
用語「エフェクター融合物」は、用語「リーダー配列-ペイロード融合物」、及び/又は「リーダー配列-ペイロード複合体」と同義的に使用することができる。
【0132】
或いは又はさらに、ペイロードは、PVCエフェクタータンパク質と区別することができる(例えば、PVCエフェクターのアミノ酸51からC末端アミノ酸と区別することができる)。例えば、ペイロードは、野生型フォトラブダス属(Photorhabdus)細菌に見出されないポリペプチド又は核酸であり得る。
【0133】
フォトラブダス属(Photorhabdus)によりコードされる種々の天然PVCエフェクターペイロードのサイズ(例えば、ポリペプチド長さ)及び構造の分析は広範な異なるPVCエフェクターの長さ及び構造が存在することを示し、本発明のPVCニードル複合体送達系の適用可能性が目的ペイロードのサイズによっても特性によっても限定されないことを実証する。まとめると、特定の二次構造も、生物物理学的特性も、積み荷の長さも要求されず、PVCニードル複合体を多用途多機能送達ビヒクルとして利用することができることを裏付ける。
【0134】
ペイロードは、ポリペプチド(例えば、ポリペプチドペイロード)、核酸(例えば、核酸ペイロード)、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上であり得る。好ましい実施形態において、ペイロードは、ポリペプチドである。
【0135】
ポリペプチドペイロードの例としては、抗体(例えば、抗MDM抗体)、ナノボディ、ペプチドワクチン(例えば、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2)ペプチドワクチン)、核内因子-κB阻害剤、T3SSペイロード(例えば、NF-kB及び/又はMAPK経路を阻害するT3SSペイロード)、抗アポトーシスペプチド(例えば、BH4)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドキノン内部オキシドレダクターゼ(Ndi1)、PHOX複合体サブユニット、ミオチュブラリン、核酸(好ましくは、DNA)改変酵素、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好適な核酸改変酵素の例としては、リコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼ)、トランスポザーゼ、Cas酵素(例えば、Cas9)、及び/又はMad7(好ましくは、Mad7、より好ましくは、Creリコンビナーゼ)が挙げられる。ペイロードは、例えば、tBid(配列番号109)及び/又はBaxBH3ペプチド(aa59~73)(配列番号111)であり得る。
【0136】
酵素活性を有する任意のポリペプチドは、ペイロードであり得る。
【0137】
核酸ペイロードは、本発明のリーダー配列にコンジュゲート/架橋させることができる。例えば、銅フリーのクリックケミストリー(例えば、歪み促進型アルキンアジド付加環化(SPAAC))を使用して核酸をリーダー配列に架橋させることができる。核酸ペイロードの例としては、プライマー、mRNA、核酸類似体、アプタマー、小分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA治療阻害剤(抗miR)、マイクロRNA治療模倣体(プロmiR)、長鎖非コーディングRNAモジュレーター、シングルガイドRNA(sgRNA)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0138】
リーダー配列は、ペイロードに直接的又は間接的に(例えば、スペーサーにより)融合させることができる。リーダー配列は、ペイロードに共有結合的又は非共有結合的に融合させることができる。好ましい実施形態において、リーダー配列は、ペイロードに共有結合的に融合している。例えば、融合物/エフェクター融合物は、(ポリペプチド)ペイロードに融合しているPVCエフェクターリーダー配列を含む(又は本質的にそれからなる)(組換え)融合物タンパク質であり得る。
【0139】
本発明の別の態様は、本発明のPVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。本発明の別の態様は、本発明のエフェクター融合物(例えば、融合物)をコードするヌクレオチド配列、及び任意選択で、PVCニードル複合体をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。
【0140】
本発明の別の態様は、本発明のPVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(好ましくは、単離核酸)を含む発現ベクターを提供する。本発明の別の態様は、本発明のエフェクター融合物(例えば、融合物)をコードするヌクレオチド配列、及び任意選択で、PVCニードル複合体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(好ましくは、単離核酸)を含む発現ベクターを提供する。
【0141】
本発明の別の態様は、単離核酸を含む宿主細胞であって、単離核酸は、本発明のPVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する。本発明の別の態様は、単離核酸を含む宿主細胞であって、単離核酸は、本発明のエフェクター融合物(例えば、融合物)をコードするヌクレオチド配列、及び任意選択で、PVCニードル複合体をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する。
【0142】
用語「核酸」は、用語「ポリヌクレオチド」と同義的に使用することができる。
【0143】
本発明の別の態様は、発現ベクターを含む宿主細胞であって、発現ベクターは、本発明のPVCエフェクターリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する。本発明の別の態様は、発現ベクターを含む宿主細胞であって、発現ベクターは、本発明のエフェクター融合物(例えば、融合物)をコードするヌクレオチド配列、及び任意選択で、PVCニードル複合体をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する。
【0144】
前記宿主細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli))、又は植物細胞であり得る。好ましい実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞(好ましくは、大腸菌(E.coli))である。
【0145】
一実施形態において、宿主細胞は、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞であり、任意選択で、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞は、誘導性プロモーターに作動可能に結合しているPVCオペロンを含む(例えば、実施例3参照)。PVCオペロンは、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞に対して内因性であり得る(例えば、PVCオペロンは、PVCu4であり得る)。好適には、フォトラブダス属(Photorhabdus)細胞は、ATCCからアクセッション番号ATCC29999のもと入手可能であり得る。
【0146】
本発明の配列(例えば、リーダー配列及び/又は核酸配列)は、天然に存在する環境から取り出された配列、組換え体又はクローニング(例えば、DNA)単離物、及び化学合成された類似体又は異種系により生物学的に合成された類似体を含む。
【0147】
本発明のリーダー配列及び/又はポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知の任意の手段により調製することができる。例えば、大量のリーダー配列及び/又はポリヌクレオチドを、好適な宿主細胞中での複製及び/又は発現により産生することができる。所望の断片をコードする天然又は合成DNA断片は、典型的には、原核又は真核細胞中への導入及びその中で複製が可能な組換え核酸構築物、典型的には、DNA構築物中に取り込まれる。通常、DNA構築物は、単細胞宿主、例えば、酵母又は細菌中での自己複製に好適であるが、培養された細菌、昆虫、哺乳類、植物又は他の真核細胞系のゲノムへの導入及び組込みも意図され得る。
【0148】
本発明のリーダー配列及び/又はポリヌクレオチドは化学合成により産生することもでき、例えば、ホスホラミダイト法又はトリエステル法によるポリヌクレオチドであり、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置上で実施することができる。二本鎖(例えば、DNA)断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖を一緒にアニールすることにより、又は適切なプライマー配列を用いてDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を添加することにより化学合成の一本鎖産物から得ることができる。
【0149】
リーダー配列又は核酸配列に適用される場合、本発明の文脈における用語「単離」は、リーダー配列及び/又はポリヌクレオチド配列がその天然遺伝子環境から除去され、したがって他の余分な又は不所望なコード配列を有さず(しかし、天然に存在する5’及び3’非翻訳領域、例えば、プロモーター及び終結因子を含み得る)、遺伝子操作タンパク質産生系内の使用に好適な形態であることを示す。このような単離分子は、その天然環境から分離されたものである。
【0150】
配列相同性
種々の配列アラインメント法のいずれか、例として、限定されるものではないが、グローバル法、ローカル法及びハイブリッド法、例えば、セグメントアプローチ法などを使用して同一性パーセントを決定することができる。同一性パーセントを決定するためのプロトコルは、当業者の技能の範囲内の定型的な手順である。グローバル法は、配列を分子の初めから終わりまで配列をアラインし、個々の残留ペアのスコアを加算することにより、及びギャップペナルティを課すことにより最良のアラインメントを決定する。非限定的な方法としては、例えば、以下が挙げられる、CLUSTAL W、例えば、Julie D.Thompson et al.,CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting,Position-Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice,22(22)Nucleic Acids Research 4673-4680(1994)参照;及び反復リファインメント、例えば、Osamu Gotoh,Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein.Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments,264(4)J.MoI.Biol.823-838(1996)参照。ローカル法は、入力配列の全てにより共有される1つ以上の保存モチーフを同定することにより配列をアラインする。非限定的な方法としては、例えば、以下が挙げられる、Match-box、例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans,Match-Box:A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences,8(5)CABIOS 501-509(1992)参照;ギブスサンプリング、例えば、C.E.Lawrence et al.,Detecting Subtle Sequence Signals:A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment,262(5131)Science 208-214(1993)参照;Align-M、例えば、Ivo Van WaIIe et al.,Align-M-A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences,20(9)Bioinformatics:1428-1435(2004)参照。
【0151】
したがって、配列同一性パーセントは慣用の方法により決定される。例えば、Altschul et al.,Bull.Math.Bio.48:603-16,1986及びHenikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-19,1992参照。簡潔に述べると、2つのアミノ酸配列をアラインして以下に示されるとおり(アミノ酸は標準的な1文字コードにより示される)ギャップオープニングペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1、及びHenikoff and Henikoff(前記箇所)の「blosum 62」スコア行列を使用してアラインメントスコアを最適化する。
【0152】
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列により共有される同一位置の数の関数である。したがって、%同一性は、同一のヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数により割り、100を掛けた数として計算することができる。%配列同一性の計算は、2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入を必要とするギャップの数、及びそれぞれのギャップの長さも考慮し得る。2つ以上の配列間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、既定の数学的アルゴリズム、例えば、当業者が精通しているBLASTを使用して実施することができる。
【化1】
【0153】
次いで、同一性パーセントは、
【数1】
として計算される。
【0154】
実質的に相同のポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を有すると特徴付けされる。これらの変化は、好ましくはマイナーな性質のものであり、それは、保存的アミノ酸置換(以下参照)及びポリペプチドのフォールディングにも活性にも有意に影響を与えない他の置換;小さい欠失、典型的には1から約30個のアミノ酸のもの;並びに小さいアミノ又はカルボキシル末端伸長、例えば、アミノ末端メチオニン残基、約20~25残基までの小さいリンカーペプチド、又は親和性タグである。
【0155】
保存的アミノ酸置換
塩基性:アルギニン、リジン、ヒスチジン
酸性:グルタミン酸、アスパラギン酸
極性:グルタミン、アスパラギン
疎水性:ロイシン、イソロイシン、バリン
芳香族:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
小分子:グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン
【0156】
20個の標準的アミノ酸に加え、非標準的アミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン及びα-メチルセリン)を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基について置換することができる。限定数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、ポリペプチドアミノ酸残基について置換することができる。本発明のポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸残基も含み得る。
【0157】
天然に存在しないアミノ酸としては、限定されるものではないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチル-トレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン、及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質中に取り込むいくつかの方法が当該技術分野において公知である。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用してナンセンス突然変異を抑制するインビトロ系を用いることができる。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化する方法は、当該技術分野において公知である。ナンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌(E.coli)S30抽出物並びに市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系中で実施する。タンパク質は、クロマトグラフィーにより精製される。例えば、Robertson et al.,J.Am.Chem.Soc.113:2722,1991;Ellman et al.,Methods Enzymol.202:301,1991;Chung et al.,Science 259:806-9,1993;及びChung et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10145-9,1993)参照。第2の方法において、翻訳は、ツメガエル属(Xenopus)卵母細胞中で突然変異mRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションにより実施する(Turcatti et al.,J.Biol.Chem.271:19991-8,1996)。第3の方法では、大腸菌(E.coli)細胞を、置き換えるべき天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の不存在下及び所望の天然に存在しないアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養する。天然に存在しないアミノ酸は、その天然相当物に代わってポリペプチド中に取り込まれる。Koide et al.,Biochem.33:7470-6,1994参照。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロ化学修飾により天然に存在しない種に変換することができる。化学修飾は、部位特異的突然変異誘発と組み合わせて置換の範囲をさらに拡大することができる(Wynn and Richards,Protein Sci.2:395-403,1993)。
【0158】
限定数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基について置換することができる。
【0159】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、当該技術分野において公知の手順、例えば、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発(Cunningham and Wells,Science 244:1081-5,1989)に従って同定することができる。生物学的相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学的分析、電子線回折又は光親和性標識などの技術により、推定接触部位アミノ酸の突然変異と共に決定されるとおり構造の物理的分析により決定することもできる。例えば、de Vos et al.,Science 255:306-12,1992;Smith et al.,J.Mol.Biol.224:899-904,1992;Wlodaver et al.,FEBS Lett.309:59-64,1992参照。必須アミノ酸の同一性は、本発明のポリペプチドの関連構成成分(例えば、トランスロケーション又はプロテアーゼ構成成分)との相同性の分析から推定することもできる。
【0160】
複数のアミノ酸置換は、突然変異誘発及びスクリーニングの公知の方法、例えば、Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-7,1988)又はBowie and Sauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)により開示されているものを使用して作製し、検査することができる。簡潔に述べると、これらの著者らは、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能ポリペプチドを選択し、次いで突然変異誘発されたポリペプチドをシーケンシングしてそれぞれの位置における許容可能な置換のスペクトルを決定する方法を開示している。使用することができる他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem.30:10832-7,1991;Ladner et al.、米国特許第5,223,409号;Huse、国際公開第92/06204号)及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145,1986;Ner et al.,DNA7:127,1988)が挙げられる。
【0161】
複数のアミノ酸置換は、突然変異誘発及びスクリーニングの公知の方法、例えば、Reidhaar-Olson and Sauer(Science 241:53-7,1988)又はBowie and Sauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)により開示されているものを使用して作製し、検査することができる。簡潔に述べると、これらの著者らは、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能ポリペプチドを選択し、次いで突然変異誘発されたポリペプチドをシーケンシングしてそれぞれの位置における許容可能な置換のスペクトルを決定する方法を開示している。使用することができる他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem.30:10832-7,1991;Ladner et al.、米国特許第5,223,409号;Huse、国際公開第92/06204号)及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145, 1986;Ner et al.,DNA 7:127,1988)が挙げられる。
【0162】
特に規定のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,20 ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本開示において使用される用語の多くの一般知識を当業者に提供する。
【0163】
本開示は、本明細書において開示される例示的方法及び材料により限定されず、本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本開示の実施形態の実施及び検査において使用することができる。数値範囲は、その範囲を規定する数字を包含する。特に示されない限り、任意の核酸配列は左から右に5’から3’の向きで記述され;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシの向きでそれぞれ記述される。
【0164】
本明細書に提供される見出しは、本開示の種々の態様又は実施形態の限定ではない。
【0165】
アミノ酸は、本明細書においてアミノ酸の名称、3文字略記又は1文字略記を使用して言及される。本明細書において使用される用語「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書において使用される用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義である。一部の例において、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。一部の例において、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義である。用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書において互換的に使用される。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基についての慣用の1文字及び3文字コードを使用することができる。IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に準拠して定義されるとおりのアミノ酸についての3文字コード。ポリペプチドは、遺伝子コードの縮重に起因して2つ以上のヌクレオチド配列によりコードさせることができることも理解される。
【0166】
用語の他の定義は、本明細書全体にわたり現れ得る。例示的な実施形態をより詳細に記載する前に、本開示は、記載される特定の実施形態に限定されず、したがって変動し得ることを理解すべきである。本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるため、本明細書において使用される用語は特定の実施形態を記載する目的のためのものにすぎず、限定するものと意図されないことも理解すべきである。
【0167】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限の間のそれぞれの介在値も、特に文脈が明確に示さない限り下限の単位の10分の1まで具体的に開示されることが理解される。任意の記述値又は記述範囲中の介在値と、任意の他の記述値又はその記述範囲中の介在値との間のそれぞれのより小さい範囲は、本開示に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、その範囲に独立に含め、又は除くことができ、より小さい範囲に限界のいずれかが含まれ、いずれも含まれず、又は両方とも含まれる場合、記述範囲の具体的に除かれる限界に従ってそれぞれの範囲も本開示に包含される。記述範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除く範囲も本開示に含まれる。
【0168】
本明細書において使用されるとおり、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に文脈が明確に示さない限り複数の参照対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「エフェクター」への言及は複数のそのようなエフェクターを含み、「エフェクター」への言及は1つ以上のエフェクター及び当業者に公知のその等価物への言及などを含む。
【0169】
本明細書において考察される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示について提供されるにすぎない。本明細書において、そのような刊行物が添付される特許請求の範囲に対して先行技術を構成するという許可として解釈すべきではない。
【0170】
本発明の実施形態を、例としてのみ、以下の図面及び実施例を参照して目下記載する。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図面の簡単な説明
【
図1A】PVCニードル複合体をコードする1つのPVCオペロンレイアウト(起源ゲノムの変動領域中に存在する遺伝子クラスタ)の模式的表示を示す。
【
図1B】クラスI、II及びIII PVCオペロンレイアウトの模式的表示。これらのクラス間の相同サブユニットタイプは、類似の陰影(グレースケール)を有すると示される。
【
図1C】アセンブルPVCニードル複合体の説明。示されるナンバリングを使用して(A)の遺伝子クラスタを(C)の構造のコードされるタンパク質の位置と相関させる(例えば、Aのキャップ「16」クラスタは、(B)の最も左側のキャップ領域の「16」と示される)。
【
図1D】ペイロード領域中の2つのエフェクター遺伝子(Rhs様アデニレートシクラーゼ、及びPAU_03332)を示すモデルクラスI PaATCC43949PVCpnfオペロン(例えば、配列番号93によりコードされる)のマップ。
【
図2】オーバーラッピングPCRに基づくPVCニードル複合体発現プラスミドの調製のためのクローニング手順の概要を示す。PCR断片(オーバーラッピング領域を有する)は、PVCオペロンを標的化する関連プライマーと共にP.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949(ATCCからアクセッション番号ATCC43949のもと利用可能)のテンプレートgDNAから提供される。
【
図3A】PVCニードル複合体(例えば、上記発現ベクターを有する細胞から調製)の(インビトロ)試料の透過型電子顕微鏡写真を示す。PVCニードル複合体は、区別される「ナノシリンジ」構造にアセンブルし、収縮構造としてのその役割と一致する。
【
図3B】高分解単一粒子クライオEM断層撮影構造に由来するPVCニードル複合体の3Dレンダリングモデルを示す。
【
図4A】抗Pnf(イムノゴールド)抗体でのイムノゴールド染色後のPnfペイロードを含むPVCニードル複合体の透過型電子顕微鏡写真を示し、Pnf-ペイロード毒素がPVCニードル複合体と会合していることを裏付ける(PVCpnfと称される)。PVCpnfニードル複合体は、PVCpnfオペロンをコードする大腸菌(E.coli)コスミドクローンの上清から調製した。Pnf(TGQKPGNNEWKTGR、配列番号96)エピトープに対する抗ペプチド抗体を使用してペイロード毒素タンパク質を局在化させた。Pnf毒素は、破壊又は収縮したニードル複合体の末端においてのみ検出することができ、毒素が複合体内に含有されるという証拠を提供した(矢印)。
【
図4B】ウェスタンブロット分析は、PVCニードル複合体が化学的又は物理的に破砕される場合、Pnfタンパク質(毒素)は抗ペプチド抗体を使用してのみ検出することができることを裏付ける。これらの調製物はPaATCC43949上清から採取した。清澄化上清中でPnfを検出する不能性は、全てのタンパク質がPVCニードル複合体濃縮調製物と会合していることを裏付ける。レーン1+5;超音波処理試料、2+6;1MのNaCl処理、3+7;1%のSDS処理4+8;1Mの尿素処理。PVCニードル複合体は1MのNaCl中で安定であると考えられることに留意されたい。
【
図5A】大腸菌(E.coli)コスミドクローンにより異種的に産生されたPaATCC43949PVCpnfニードル複合体(ナノシリンジ)の天然濃縮調製物が注射された5齢タバコスズメガ(Manduca sexta)からのエクスビボ血球(昆虫マクロファージ/好中球同等物)のクライオSEM画像を示す。対照処理から不存在のPnfペイロード毒素の作用方式と一致するPVCニードル複合体(ナノシリンジ)(小さい矢印)及び膜ラッフリング効果(大きい矢印)に対応する豊富な線構造に留意されたい。スケールバー=50μm。25kV;倍率40K。
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図5B】大腸菌(E.coli)コスミドクローンにより異種的に産生されたPaATCC43949PVCpnfニードル複合体(ナノシリンジ)の熱不活化濃縮調製物が注射された5齢タバコスズメガ(Manduca sexta)からのエクスビボ血球(昆虫マクロファージ/好中球同等物)のクライオSEM画像を示す。スケールバー=50μm。25kV;倍率50K。
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図6A】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。PnfロードPVCニードル複合体を昆虫(ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)昆虫幼体)中に注射し、所与の用量(実施例に説明)について15分以内に強力な活性を示した、致死率/罹病率は、典型的には、それらの死滅/瀕死昆虫における「メラニン化」免疫応答と関連することに留意されたい。
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図6B】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。動物中に注射された対照、変性(沸騰を介する)PnfロードPVCニードル複合体は、活性を示さなかった。
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図6C】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。PVCニードル複合体を欠く精製Pnf(ペイロード)(即ち、複合体中にパッケージされていないPnf)は、動物(左側)に対してもHeLa細胞系(右側)に対しても活性を示さなかった。
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図6D】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。タンパク質を含有する「BioPorter」リポソーム調製物を介してHeLa細胞の細胞質中への送達されたPnf(ペイロード)は、細胞中の多核化により証明されるとおり強力な活性/毒性を示した。
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図6E】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。適切なプラスミドでの形質移入後の細胞内発現によりHeLa細胞の細胞質中への送達されたPnf(ペイロード)は、細胞中の多核化により証明されるとおり強力な活性/毒性を示した。
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図6F】PVCニードル複合体との接触後の(毒性)細胞表現型が細胞内毒素送達に起因することを実証する実験結果を示す。レサズリンプレートリーダーアッセイにより測定されたTHP1由来ヒトマクロファージの呼吸率に対するPVCpnf+Pnfの効果。熱変性及び空のPVCpnfナノシリンジが強力な有害効果を示さなかったことに留意されたい。これらの同じ試料を、ガレリア属(Galleria)幼体中への注射により検査した。PVCpnf+Pnf試料は、数分以内におよそ50%超の致死率を示した一方(下段の2つのパネルにおける暗色化した幼体)、熱変性及び空のPVCpnf注射昆虫は全て健常のままであった(上段の2つのパネルにおける暗色化していない幼体)。
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図7A】種々のPVCオペロンと会合する一連の内因性ペイロード(毒素)の(インシリコ)予測二次構造を示し、多種多様な構造タイプを実証する。
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図7B】予測等電点に対してプロットされた種々のペイロード(毒素)のアミノ酸長さ。
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図8A】本発明のリーダー配列(例えば、50個のアミノ酸)がフォトラブダス属(Photorhabdus)中で発現されるPVCニードル複合体(ナノシリンジ)中へのペイロードタンパク質/ペプチドの(トランス)パッケージに必要であり、十分であるという裏付けを示す。1~6:Pnf及び非天然creリコンビナーゼ及びMycタグを発現するものを含むキメラエフェクタータンパク質発現構築物(アラビノース誘導性pBAD30ベクター中でトランス発現される)の模式的マップ。C末端Mycタグエピトープを黒色矢印として示す。
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図8B】本発明のリーダー配列(例えば、50個のアミノ酸)がフォトラブダス属(Photorhabdus)中で発現されるPVCニードル複合体(ナノシリンジ)中へのペイロードタンパク質/ペプチドの(トランス)パッケージに必要であり、十分であるという裏付けを示す。抗Mycマウス抗体を使用するウェスタンブロット。試料は、(A)に示されるトランスパッケージ発現構築物1~6を保有する染色体操作P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01から過剰発現された精製PVC(u4)ニードル複合体(ナノシリンジ)からのものである。ブランクpBAD30プラスミドを陰性対照として使用し、シグナルを示さなかった。矢印は、予測産物についての正確なバンドサイズを示す。
【
図9】リーダー配列のアラインメントを示し、アミノ酸特性に基づくリーダー配列間の化学組成コンセンサスの存在を実証する。より特定すると、リーダー配列は、2つの負電荷領域と、そのそれぞれに続く正電荷領域[-ve][+ve][-ve][+ve]の類似の電荷パターンを含む。
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図10A】粒子状調製物からのPVCニードル複合体及びペイロードのウェスタンブロット分析を示す(材料及び方法に記載される塩化セシウム勾配及びモノリスFPLC調製物)。[1](pBADPVCpnf、ナノシリンジのPVC16はFLAGタグ付きであり、抗FLAG Abで検出可能なPVC16::FLAGを提供する)において、「PVCPnf」(Pnfペイロードを有するPVCニードル複合体)のタグ付きキャップタンパク質からのシグナルを見ることができ、精製分画中のPVCニードル複合体の存在を裏付ける。[2](pBADPVCpnf+Cre::Myc、抗Myc Abで検出可能、CreはPnfリーダー、例えば、配列番号78のN末端融合物を有する)において、(1)と同じ試料中の大量にパッケージされたMycタグ付きペイロードタンパク質からのシグナル、精製PVCニードル複合体(ナノシリンジ)中のCreペイロードの存在を裏付ける。[3](PVCU4+Cre::Myc、抗Myc Abで検出可能、CreはPnfリーダー、例えば、配列番号78のN末端融合物を有する)において、異なるPVCニードル複合体シャーシ(「PVCU4」)精製物をMycタグ付きCreについてプロービングし、パッケージされた(パッケージされたMycタグ付きCre)対応バンドを明らかにする。明確性のためにこれをブロットにおいて強調する。
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図10B】PVCニードル複合体の透過型電子顕微鏡写真は、野生型(Pnfペイロードを有する)PVCニードル複合体及び非定型(非天然)リコンビナーゼ(Cre)ペイロードを有するPVCニードル複合体の両方が、検査されたいずれのシャーシにおいてもPVCニードル複合体の形態に影響を与えず、それらが異常にアセンブルされないことを確保することを示す。
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図10C】(A)のものに対する追加/補足データを提供する。より詳細には、(C)は、大腸菌(E.coli)中で発現された精製PVCpnf中へのCreリコンビナーゼの(トランス)パッケージのウェスタンブロット分析を介するさらなる証拠を提供する。ウェスタンブロットは、所与の量の抗FLAG抗体ウェスタンシグナル(PVC16::FLAGの取り込みに起因するナノシリンジについての特異的プローブ)について、かなり多量のCreペイロードが検出される(抗Mycタグ抗体を使用)ことを実証する。数字は2倍希釈物を示す。希釈時、ナノシリンジからの抗FLAGシグナルが損失する一方、ペイロードはほとんどのレーンにおいて強いままであることに留意されたい。CsClは、塩化セシウム密度勾配遠心による精製を示す。「Mon」は、試料を「モノリス型」カラムを介してさらにアニオン交換したことを示す。「溶出後」、「インターフェーズ(interphase)」、「サブインターフェーズ(Sub-Interph.)」は、精製プロセスからシグナルが検出される液体分画を示す。
【
図10D】大腸菌(E.coli)中でPVCpnf中にトランスパッケージされたCreのウェスタンブロット分析。ペイロードを、ナノシリンジ-ペイロード複合体の精製後にそれらの取り込まれた「Myc」タグ(C末端融合物)についてプロービングする。粒子調製物のウェスタンブロット分析は、4つ全てのリーダーが外因性Cre酵素を効率的にトランスパッケージすることができたことを裏付ける。
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図10E】例示されるリーダー配列が全体にわたり十分に分布され、したがって多様性が最大に連続的であり、又はそれに近いことを実証する系統樹(実施例4.2参照)。
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図11】抗FLAG及び抗Myc抗体で同時にプロービングされた別個のプラスミドからの(Mycタグ付き)Pnfの同時発現なし(1)及びあり(2)で発現されたPVCニードル複合体のウェスタンブロット分析を示す。標識1のレーンにおいて、PVCニードル複合体(ナノシリンジ)は、大腸菌(E.coli)内で「ペイロードプラスミド」(リーダー配列に結合しているペイロードタンパク質をコードする発現プラスミド)の存在なしで発現させ、精製した。これは、シリンジ(PVCニードル複合体)自体上に存在するFLAGタグにのみ対応するバンドをもたらす。レーン2について、同じアプローチを着手したが、タグ付きペイロード(Myc-Pnf)を担持する(別個の)プラスミドも含む培養物を使用した。FLAG及びMycタグに対応するバンドを見ることができ、Pnfペイロードの存在を裏付ける(1及び2内の4つのレーンは塩化セシウム勾配からの単に異なる精製分画である)。
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図12】P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01 PVCu4過剰発現株におけるトランスパック実験のウェスタンブロット分析を示す。結果は、mycタグ付きPvc17(Plu1651whole::Myc)のトランスパッケージを実証する。
【
図13A】P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01 PVCunit4過剰発現株におけるトランスパッケージ実験(実施例に説明される)のさらなるウェスタンブロット分析を示す。結果は、Pnfのリーダー(PAU_03332リーダー)を使用するMycタグ付きPvc17(Plu1651::Myc)及びMycタグ単独のトランスパック、並びにそのリーダーが必要であることを実証する。(A)レーン1は、Mycタグに融合しているリーダー(PAU_03332::Myc)のパッケージを示し;レーン3は、リーダー配列が不存在の(Myc単独がパッケージされない)場合にパッケージの欠落を示し;レーン4は、リーダー配列が不存在の場合にHvnA(天然エフェクター)のパッケージの欠落を示し;レーン6は、Mycタグ付きPAU_03332::Plu1649、即ち、PAU_03332からのリーダー(即ち、PAU_03332のアミノ酸1~50)及びPlu1649からのエフェクター(即ち、アミノ酸51~C末端)のキメラのパッケージを示す。レーン1及び6の高い強度のバンドは、Pnf(PAU_03332)リーダーがペイロードのパッケージに特に有効であることを実証する)。
【
図13B】P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01 PVCunit4過剰発現株におけるトランスパッケージ実験(実施例に説明される)のさらなるウェスタンブロット分析を示す。結果は、Pnfのリーダー(PAU_03332リーダー)を使用するMycタグ付きPvc17(Plu1651::Myc)及びMycタグ単独のトランスパック、並びにそのリーダーが必要であることを実証する。(B)レーン1は、抗Myc抗体ウェスタンブロットを使用したC末端Mycタグを有するPlu1651のパッケージを示す。
【
図14】PAU_02806(GogB)リーダーを使用したMycタグ付きPnf(PAU_03332::Myc)の極めて高レベルのトランスパッケージを実証するさらなるウェスタンブロット分析を示す(2番目のレーン、ラダーレーンを含まない)。第1のレーンは、PAU_03332エフェクターをパッケージするためのPlu1649リーダー(Mycタグ付きPlu1649::PAU_03332)の使用を実証する。バンドは、第2のレーンにおけるバンドの相対強度に起因して弱いと考えられる。実験は、50mLの培養物のフィルター滅菌、PVCを分解するために添加された8M最終濃度の尿素を含んだ。試料を10mL上清から回収した。
【
図15】フォトラブダス属(Photorhabdus)から発現されたPVCunit4中への、
図13に記載されるC末端Mycタグを有するPlu1651(pvc17)のトランスパッケージを実証するさらなるウェスタンブロット分析を示す。未加工は上清からの粒子状調製物を表し、Be、B2及びIPは塩化セシウム勾配精製からの異なる「カット」を表す。
【
図16A】(実施例6の)マウスオルガノイド実験におけるCreの図式的な作用機序の説明、及びどのように陽性対照(TAM)がCre活性化を促進するかを提供する。白色矢印は、tdTom蛍光レポーター遺伝子を発現する細胞の局在を示す。
【
図16B】大腸菌(E.coli)から発現され、精製されたPVCpnfによるネズミ胆管オルガノイド中への活性トランスパッケージされたCreリコンビナーゼの送達の実証。白色丸は、蛍光レポーター遺伝子を発現する細胞の群の局在を示す。上段画像は、光学顕微鏡観察を介して得られた画像の直接のグレースケール変換を示す。下段画像は、偽色を増強した陽性細胞の対応画像を示し、それは前者のグレースケール変換内で影響を受けた細胞と周囲の影響を受けなかった細胞との間の差の同定を補助するために単に提供される。
【
図17】ペイロード(Cas9様タンパク質MAD7)あり及びなしの両方でのナノシリンジ発現のドットブロット分析を示す。IPTG誘導性MAD7のいくらかのリーキーな発現は、この発現系に一般的であるように誘導前(T1)に見られる。予測されたとおりいかなる時点でもPVC単独試料からのMycシグナルは存在せず、MAD7シグナルは約24時間周期にわたる発現全体にわたり成長する。強力なMycシグナルは他箇所に記載されるとおり超遠心分離を介する精製後に維持され、タンパク質がナノシリンジシャーシ系中に取り込まれることを示す。FLAGシグナルはMAD7試料においてロバストであり、予測されるとおり誘導後に生じ、精製後に持続する。それというのも、このプロモーター系がリーキーな発現を低減させたためである。ナノシリンジ及びMAD7は発現に関して互いに適合性であること、並びにこれまで検査された最大タンパク質MAD7をナノシリンジ系中にパッケージすることができることが結論付けられる。
【
図18】大腸菌(E.coli)から発現された精製PVCpnf中へのアポトーシス促進性tBidタンパク質ドメイン及びBaxBH3(両方、N末端に融合している配列番号78のリーダー配列を有する)ペプチドのトランスパッケージを裏付けるウェスタンドットブロット分析を示す(7及び8)。そのコグネイト毒素「Pnf」を有するナノシリンジを、陽性対照として2つの異なる方法(5及び6)により精製されたとおり示す。パネルの下段のブロットは、上記パネルの7及び8と同じ実施例を表す。これらのブロットは同じ構築物の別の精製から作製し、精製の再現性を実証した。この実験は、例えば、実施例9のアポトーシス送達系において使用される「tBidタンパク質ドメイン及びBaxBH3ペプチド」パック試料(ナノシリンジ)を良好に調製することができることを実証した。
【
図19A】パッケージされたナノシリンジに20分間のみ曝露させた細胞からのTUNEL染色顕微鏡分析を示す。1番目の(左側)バー=DNアーゼI処理細胞(+対照);2番目のバー=DNアーゼI処理もナノシリンジ処理もなし(-対照);3番目のバー=細胞を、(N末端に融合している配列番号78のリーダー配列を介して)tBidでパッケージされたナノシリンジに曝露させた;4番目の(右側)バー=細胞を、(N末端に融合している配列番号78のリーダー配列を介して)Bax_BH3ドメインでパッケージされたナノシリンジに曝露させた。
【
図19B】ナノシリンジ及び対照での処理後のPBMCのTUNEL染色を示す、実施例9に記載の代表的な顕微鏡写真。PBMCをtBID、Baxロードナノシリンジ、並びに陽性(DNアーゼI処理細胞)及び陰性(DNアーゼI処理なし)対照で室温において20分間処理してから、TUNEL染色を実施してアポトーシス応答を決定した。元の(非グレースケール)顕微鏡写真において:アポトーシス応答について陰性の細胞は、青色又は淡褐色染色を示す。青色染色(メチルグリーン)又は淡褐色染色は、アポトーシスシグナルが不存在である健常細胞を示す。暗褐色染色は、アポトーシスを受けている細胞を示す。
【実施例】
【0172】
実施例
材料及び方法
クローニング
当該技術分野において公知の標準的な分子技術を使用してPVCニードル複合体をコードするプラスミドを調製した。簡潔に述べると、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949からのゲノムDNA(ATCCからアクセッション番号ATCC43949のもと入手可能)をPCR(適切なプライマーを用いる)において使用してPVCオペロンの複数(例えば、4つ)のオーバーラッピング領域を増幅させた。オーバーラップ/伸長PCRを用いてオペロン全体を調製し、
図1に詳述されるとおり適切な発現ベクター中に融合させた(ここでも、オーバーラッピングPCRを使用)(配列番号101~配列番号106のプライマーを使用)。
【0173】
簡潔に述べると、PVCオペロン(例えば、配列番号93のもの)をカバーする4つのオーバーラッピングPVC断片(配列番号101(F1)及び配列番号105(R1);配列番号102(F2)及び配列番号106(R2);配列番号103(F3)及び配列番号107(R3);並びに配列番号104(F4)及び配列番号108(R4)のプライマーをそれぞれ用いて生成)を作製した。標的クローニングベクターを要求される挿入部位において切断した。次いで、これら5つのDNA断片をオーバーラッピングPCR(配列番号101及び配列番号108のプライマーを使用)によりアセンブルし、得られた断片をクローニングベクター中にライゲートした。産物を実験室大腸菌(E.coli)中に形質転換し、ベクターマーカー選択(例えば、アンピシリン耐性に起因)で回収した。
【0174】
オペロンは、典型的には、当該技術分野において公知のとおり誘導性プロモーター(例えば、アラビノース誘導性、及び/又はIPTG誘導性)に作動可能に結合させる。これは一般に、pBADファミリープラスミド(アラビノースを介して誘導性)(Invitrogen、カタログ番号:V43001)及びpVTRa(IPTGを介して誘導性)(Biomedal,S.L.)ベクター(しかし、適合性発現ベクター系の任意の組み合わせが十分であるはず)中へのクローニングにより達成する。
【0175】
PVCニードル複合体は、ペイロード(毒素)とは独立に発現させることができ、その逆も同様である。別個の発現ベクター(例えば、異なる誘導性プロモーターを有する)は、PVCニードル複合体及びペイロードをそれぞれ保有し得る。
【0176】
大腸菌(E.coli)中でのPVCニードル複合体の発現(例えば、実験室スケール発現)/精製
(適切な発現ベクター/コスミドで形質転換された)大腸菌(E.coli)発現株の1L培養物からPVCニードル複合体を精製する典型的なプロセスは、以下のとおりである:
1-プレートからコロニーをピックし、100mlのLB培地に植菌することにより、(PVCニードル複合体発現ベクターで形質転換された)細菌の一晩培養物を調製する。培養物を振盪させながら37℃において成長させる。
a.典型的には、培地に定型的に0.2%のd-グルコースを補給して最適な細胞ヘルスのために遺伝子構築物の抑制を補助することができる。
b.培地に、発現(PVCニードル複合体)ベクターの維持のための関連抗生物質も補給する。ペイロードベクターも使用している場合、そのベクターのための関連抗生物質も補給する。
2-翌日、1Lフラスコに一晩培養物からの1:100比の希釈を介して植菌する。1Lフラスコについての培地は一晩培地と同一であるが、典型的にはグルコースを含有しない。
3-培養物をおよそ中期又は後期指数期(約0.8のOD600nm)に成長させ、その時点においてプラスミドを誘導する。
a.PVCニードル複合体(ナノシリンジ)プラスミドについては、典型的には、0.2%のアラビノースを添加して発現を誘導する。ペイロードプラスミド(ペイロード、例えば、Pnfをコードするプラスミド)については、IPTG濃度を、典型的にはタンパク質基準で最適化することができ、0.1mMの典型的な開始数が好ましい。
4-誘導後に培養物をインキュベーターに戻し、翌日まで18℃において培養する。
5-培養物を遠心分離により適切な遠心分離機/ボトル/ロータ中で5000×gにおいて30分間ハーベストする。
6-次いで、細胞ペレットを溶解させてPVCニードル複合体(ナノシリンジ)を放出させる。
a.以下の溶解方法を使用することができる:
(i)一晩のリゾチームインキュベーション。(ii)ニードル超音波処理装置での超音波処理(リゾチームでの最初の処理あり又はなし。(iii)細胞破砕装置/ホモジナイザー。
7-任意選択で、DNアーゼ、及びプロテアーゼ阻害剤を溶解物に添加することができる。
8-細胞残屑を、高速遠心分離機中で20分間の4℃、50,000×gにおける遠心分離により除去する。
9-100,000kDa MWCO遠心分離カラムに通して溶解物を濃縮して容量を低減させ、小さいタンパク質を除去する。容量を管理可能な容量に下げたら、数回遠心分離し、保持溶液を適切な試料緩衝液、例えば、TM(20mMのトリス-HCl、8mMのMgCl2、pH7.4)で置き換えて透析する。
【0177】
塩化セシウム密度勾配を介する後続の精製プロセスは、以下のとおりである:
1.以下のとおりCsCl密度溶液を調製する:
(a)H2O中1.7g/mLのCsCl;(B)H2O中1.5g/mLのCsCl;(C)H2O中1.45g/mLのCsCl
2.次いで、勾配(チューブの底部から頂部)を超遠心チューブ中で設定する、例えば、(1)(チューブの底部)-2mLの密度、1.7CsCl;(2)-3mlの密度、1.5CsCl;(3)-3mLの密度、1.45CsCl;(4)(チューブの頂部)-TM緩衝液中の試料。好適には、境界を事前の密度層とブレンドしないようにそれぞれの密度をチューブの側部に慎重にアプライする。
3.次いで、平衡化チューブを155,000×gと同等のSW40Tiスイングバケットロータ中での35,000RPMにおける4℃の2時間の超遠心分離に供する。
4.正確な勾配分画は、出現する「青白色」ハローの真上の領域である。シリンジ及び針でのチューブの穿刺を介して分画を抽出する。
5.良好な純度のPVCニードル複合体をこのように得、4℃において緩衝液中で貯蔵することができる。好適には、TM緩衝液中に再度透析してCsClを除去する。
【0178】
CsCl勾配精製に続き、又はそれに代えて、以下のとおりモノリスアニオン交換クロマトグラフィーを介してPVCを抽出することができる(全てのステップを蠕動ポンプ若しくはシリンジ器具を用いて手作業で、又はF/HPLCを介して実施することができることに留意されたい):
1.既に行っていない限り、試料抽出物を、低濃度の塩(20mMのNaCl)を有する結合移動相(典型的には、TM緩衝液)中に透析する。
2.製造業者のガイドラインに従ってカラムを平衡化する、簡潔には:
a.少なくとも5カラム容量(CV)のdH2O;
b.少なくとも5CVの結合緩衝液(TM、低濃度塩を有する);
c.少なくとも5CVの溶出緩衝液(高濃度塩、>=1MのNaClを有するTM);
d.もう1回、少なくとも10CVの結合緩衝液。
3.試料をカラムに低い流量(1~2mL/分)においてアプライする
4.カラムを最大200mMのNaCl含有TM緩衝液で洗浄する。
5.1MのNaCl含有TM緩衝液で溶出させる(或いは、FPLC装置を使用する場合、勾配溶出を使用する)。
6.PVCニードル複合体は溶出分画中に存在する。フラクションコレクターを使用する場合、正確な分画を同定するために後続のSDS-PAGE又はその類似物が必要とされ得る。
【0179】
カラム(例えば、ステップ2のもの)は、CIMmultus(商標)第4級アミンアニオン交換カラム(BIA Separations d.o.o.)のものであった。例えば、1.3μmのチャネルサイズ及び1mLのカラム容量を有するモノリス型カラムであるCIMmultus(商標)QA-1。
【0180】
或いは、DEAE(弱アニオン交換体)カラムを使用することができる。
【0181】
或いは、フォトラブダス属(Photorhabdus)発現系との使用のため、PVCニードル複合体は細胞ペレットと/それに代えて上清から精製することができ、以下の追加/改変を伴う:
1.上記の標準的プロトコルからの細胞ハーベスト後、上清をpyrexボトルに移し、任意選択で、必要により100,000MWCOカラムを介して濃縮することができる。
a.DNアーゼ(0.25U/mL)及びプロテアーゼ阻害剤を任意選択で添加することができる。
2.NaClを0.5Mの最終濃度まで添加し、80g/LのPEG6000も添加する。溶液を4℃において一晩混合する。
3.溶液を8000×g、4℃において30分間遠心分離してPEG6000をペレット化する。
4.ペレットを小容量(約5mL)のTM緩衝液(又はその類似物)中で再懸濁させ、振盪させながら室温において2時間インキュベートする。
5.13,000×gにおける10分間の遠心分離によりペレット化し、上清を新たなチューブに回収する。選択される精製方法を続ける。
【0182】
PVCニードル複合体を精製する他の方法は、他箇所、例えば、参照により本明細書に組み込まれるYang et al(J Bacteriol.2006 Mar;188(6):2254-2261)に記載されている。
【0183】
P.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01 PVCunit4(遺伝子plu1667~plu1652によりコードされるシャーシ)のためのアラビノース誘導性過剰発現株の構築
染色体組換えを使用してアラビノース誘導性転写プロモーターの制御下で選択PVC(オペロン)(一例として、PVCunit4ニードル複合体をコードするオペロンをここで使用した)を置き、PVCニードル複合体を過剰発現するフォトラブダス属(Photorhabdus)株を調製した。次いで、組換え株を、エフェクター発現プラスミド(例えば、アラビノース誘導性発現ベクターpBAD30をベースとする)で遺伝子形質転換してアラビノース糖の添加を介するだけのPVCニードル複合体過剰発現、PVCエフェクター発現、PVCエフェクタートランスパッケージ、及び完全複合体の分泌を促進した。
【0184】
組換えフォトラブダス属(Photorhabdus)PVC過剰発現株構築
テンプレートとしてのP.ルミネスセンス(P.luminescens)株DJC(別称、株TT01)からのゲノムDNAを使用してプライマーPVCpromF(5’-TATCATATGTCTACAACTCCAGAACAAATTGCTG-3’、配列番号97)及びPVCpromR(5’-ATCTCTAGAACAGATATTCCAGCCAGC-3’、配列番号98)を使用してPVCunit4のプロモーター領域を増幅させた。好適なP.ルミネスセンス(P.luminescens)株は、ATCCからアクセッション番号ATCC29999のもと入手可能である。PCR産物をNdeI及びXbaIで消化し、キャリア株としての大腸菌(E.coli)DH5α λ-pir(Biomedal S.L.)を使用して自殺ベクターpCEP(ThermoFisher、カタログ番号:V04450)中へのライゲーションにより導入した。得られたプラスミドを、フォトラブダス属(Photorhabdus)中へのコンジュゲーションのために大腸菌(E.coli)ドナー株S17.1λ-pir(Biomedal S.L.)に移した。簡潔に述べると、P.ルミネスセンス(P.luminescens)DJCのドナー株及びリファンピシン耐性(RifR)単離株の一晩培養物を10mMのMgSO4が補給されたLB中で希釈し、中期指数期(OD600約0.5)まで成長させた。次いで、3mlのそれぞれの培養物をハーベストし、2回洗浄し、10mMのMgSO4が補給された100μlのLB中で再懸濁させた。80μlのP.ルミネスセンス(P.luminescens)DJC RifRを20μlのドナー細菌と混合し(4:1のレシピエントとドナーとの比をもたらす)、0.1%のピルビン酸塩及び10mMのMgSO4が補給されたLB寒天プレートの中央に置いた。プレートを30℃において一晩インキュベートし、得られた成長物を1.5mlのLB中でハーベストした。リファンピシン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(25μg/ml)を含有するプレート上にアリコートを置いてトランスコンジュガントを選択し、プレートを30℃において3日間インキュベートした。考えられるトランスコンジュガントを再ストリークし、プライマーParaINF(5’-GGCGTCACACTTTGCTATG-3’、配列番号99)及びtPVCpR(5’-TCGGTGGCAGTAAATTGTCC-3’、配列番号100)を使用するPCRにより確認した。
【0185】
フォトラブダス属(Photorhabdus)からのPVCニードル複合体過剰発現及び精製
P.ルミネスセンス(P.luminescens)DJC PVCunit4::pCEPの一晩培養物を、クロラムフェニコール(25μg/ml)が補給された2×250mlのLB中で希釈し、180rpm、28℃においてインキュベートした。2~3時間後、アラビノース(0.2%)を添加し、培養物をインキュベーターにさらに26時間戻した。細胞を遠心分離(7000g、30分間)によりペレット化し、上清を回収した。DNアーゼIを0.25U/mlの濃度において上清に添加していかなる細胞外DNAも分解した。室温での30分間のインキュベーション後、ポリエチレングリコール8000(8%)及びNaCl(0.5M)を添加してタンパク質を沈殿させた。上清を撹拌しながら4℃において一晩インキュベートした。次いで、沈殿させたタンパク質を8000gにおける4℃の30分間の遠心分離により回収した。ペレットを8mlのTM緩衝液(20mMのトリスHCl、20mMのMgCl2、pH7.4)中で再懸濁させ、穏やかに振盪させながら室温において2時間インキュベートした。任意の残屑を13000gでの10分間の遠心分離により除去し、PVCニードル複合体を含有する上清をCsCl密度勾配にアプライし、Beckman coulter Optima L-90K又はXPN-80K超遠心分離機中で35000rpmにおいて2時間遠心分離した。CsClを含有するTM緩衝液を、チューブの底部からそれぞれρ=1.7(2ml)、1.5(3ml)、及び1.45(3ml)において積層することによりCsCl密度勾配を作製した。PVCニードル複合体を含有する分画を回収し、Ultracel-100K装置(Amicon)を使用してCsClを除去し、緩衝液をTMS(20mMのトリスHCl、8mMのMgSO4、pH7.4)で交換した。CIMmultus(商標)第4級アミン2μm細孔アニオン交換カラム(BIAseparations)を使用してPVCニードル複合体をさらに精製した。200mMのNaClを含有するTMS緩衝液によりカラムを洗浄し、1MのNaClを含有するTMS中でPVCニードル複合体を溶出させた。Ultracel-100K装置を使用する緩衝液交換によりNaClを除去し、最終精製のために試料をCIMmultus(商標)DEAE2μm細孔カラム(BIA separations)にアプライした。200mMのNaClを含有するTMS中でカラムを洗浄し、500mMのNaClを含有するTMS中で試料を溶出させた。
【0186】
これを細胞の溶解(PVCニードル複合体を放出させるため)あり及びなしで実施することが可能である(例えば、PVCニードル複合体は生存細胞から分泌されると考えられるため、上清中で回収することができる)。
【0187】
透過型電子顕微鏡観察
透過型電子顕微鏡観察(TEM)のため、微細炭素層でコートされたpioloform被覆300メッシュ銅グリッドをタンパク質分画のための基材として使用した。好ましい水性陰性染色剤は、3%のタングステン酸メチルアミンである。コートグリッドを使用直前にUV光に16時間曝露させて基材の適切な湿潤を確保した。10μlの液滴をTEMグリッドにアプライし、タンパク質を5分間沈降させた。液体をグリッド端部から濾紙で吸収させ、10μlの濾過陰性染色剤で直ちに置き換えた。液滴を濾紙で部分的に除去し、グリッドを完全に空気乾燥させてからそれらをJEOL1200EX透過型電子顕微鏡(JEOL、東京、日本)で80kVで操作して観察した。
【0188】
BioPORTERアッセイ及びアクチンストレスファイバー分析
BioPORTERアッセイ(Genlantis)のため、80μlの精製野生型及び突然変異Pnfタンパク質(500μg ml-1)、又は陰性対照としてのPBSを1つのBioPORTERチューブ(Genlantis)に添加し、920μlのDMEM中で再懸濁させた。試料を6ウェルプレート中で成長させたHeLa細胞に添加し、4時間インキュベートした。BioPORTER/タンパク質又はPBSミックスを新鮮完全培地により置き換え、細胞を20~48時間インキュベートした。細胞形態及びアクチン細胞骨格を可視化するため、細胞を4%のPBS-ホルムアルデヒド中で15分間固定し、0.1%のTriton X-100で透過処理し、テトラメチルローダミンBイソチオシアネート(TRITC)ファロイジン(Sigma)及びDAPI二塩酸塩(Sigma)で染色した。画像をLSM510共焦点顕微鏡(Leica)で取得した。
【0189】
実施例1
PVCニードル複合体のクローニング及び発現
本発明者らは、宿主細菌、フォトラブダス属(Photorhabdus)から要求される発現遺伝子(例えば、配列番号93、配列番号94及び/又は配列番号95内に含まれる)を良好に切り出し(クローニングし)、上記説明のとおり実験室大腸菌(E.coli)中の信頼性の高いスケーラブルな発現系を考案した。別個のプラスミド上のトランス発現がシリンジ中へのペイロード(例えば、Pnf)の取り込みを可能とし、マルチプラスミド(モジュール式)プラットフォームを作出することが実証された。
【0190】
大腸菌(E.coli)からの精製後、電子顕微鏡観察分析は、精製PVCニードル複合体が正確な「ナノシリンジ」構造を保持することを実証した(
図3参照)。さらに、PVCニードル複合体は、精製後にペイロード(例えば、Pnf)と正確に会合したままであり(
図4参照)、本発明者らが、細胞へのペイロード送達のための正確な構造を有するPVCニードル複合体(ナノシリンジ)を良好に調製したことを実証した。
【0191】
さらに、電子顕微鏡観察分析は、精製複合体が細胞の細胞表面に適切に局在化し、Pnfペイロードを有するPVCニードル複合体(PVCpnf)がエフェクター(PVC)の仮定機序と一致する表現型(ラッフリング)を誘導することを実証した、
図5参照。
【0192】
実施例2
2.1 PVCニードル複合体がエフェクターの細胞内送達を介して効果を発揮することの実証
ポリペプチドPnfを以下のとおりPVCエフェクターとして同定した。これは、フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)ATCC43949完全ゲノム-GenBankアクセッション番号:FM162591.1内で同定した。
【0193】
PVCオペロン(P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949PVCpnfオペロン、配列番号93の配列を有する)の最後の遺伝子、即ち、pvc16(例えば、PAU_03338)を同定した。PVCローカスのpvc16遺伝子の位置を
図1(A)、(B)及び(D)に説明する。pvc16のすぐ3’のORF(例えば、pvc16の下流約5kb内)を同定し、1つのそのようなORF(PAU_03332)はpvc16の下流3535bpである。この推定エフェクターORFによりコードされるポリペプチド(配列番号32の配列を有する)の予測機能は、BlastP及びHHPRED(https://toolkit.tuebingen.mpg.de/#/tools/hhpred)の組み合わせにより得た。次いで、このORFを既知の細菌毒素(例えば、大腸菌(E.coli)からのCNF1ファミリーのもの)との直接相同性に基づきPVCエフェクターとして割り当てることができた。
【0194】
次いで、PnfロードPVCニードル複合体を実施例1に従って調製した。
【0195】
本発明者らは、これらのパッケージ(例えば、負荷)されたPVCニードル複合体が、それらが担持する積み荷の起源と一致する細胞効果を発揮することを実証した。例として、細胞骨格毒素PnfでロードされたPVCニードル複合体に曝露させた細胞及び完全昆虫動物は、細胞骨格毒性と一致する様式で細胞死を受ける。
【0196】
注射実験(昆虫幼体中への注射)を10μlの上清の注射により実施し、但し、Pnfを有するPVCニードル複合体(PVCPnf)、例えば、配列番号32のPVCエフェクターでパッケージされた配列番号93によりコードされるPVCをコードするコスミドクローンを保有する大腸菌(E.coli)の培養物の一晩培養物(典型的には1L)の遠心分離(ペレット化)後とした。
【0197】
PVCニードル複合体がPnfペイロードの細胞内送達(例えば、インジェクション)に起因して表現型を担うことを実証したため、同じタンパク質(Pnf)を別の経路で提供して細胞の細胞質にアクセスさせる(発現プラスミドの形質移入及び発現、又はタンパク質を含有するリポソーム調製物を介する伝導)場合にのみ毒性効果を再構成することができた、
図6参照。逆に、変性(沸騰を介する)PVCニードル複合体調製物、組織培養細胞上で重ねた毒素タンパク質又は完全動物中に注射された毒素タンパク質は、活性を示さなかった。
【0198】
2.2.培養ヒトマクロファージ中への毒性エフェクター酵素Pnfの送達の証拠
上記概説のデータを補うため、本発明者らは、培養ヒトマクロファージ中への毒性エフェクター酵素Pnfの送達のさらなる証拠を提供する追加の実験を実施した。
【0199】
概念:本発明者らは、天然Pnf毒素で(トランス)パッケージされた大腸菌(E.coli)から発現させ、精製したPVCpnfを、培養ヒトTHP1由来マクロファージに対して検査した。昆虫モデルにおけるPnfの致死効果とは異なり、事前のリポソーム媒介Pnfタンパク質形質移入実験は、ヒトHela細胞においてより捉えにくい表現型を示した。それらの実験において、細胞は、24時間においてアクチンストレスファイバー形成、及び48時間において多核化を示した。したがって、本発明者らは、レサズリン比色アッセイを使用してマクロファージ呼吸率に対する、Pnf PVCエフェクターを保持する/それでパッケージされた精製PVCpnf(ナノシリンジ)の効果を検査した。
【0200】
方法:
レサズリンアッセイの背景。青色化合物レサズリンをアッセイにおける使用のために調査してマクロファージ(M0)に対するPVCの活性を決定した。レサズリンは細胞ミトコンドリア中で代謝的に低減され、桃色及び高度に蛍光の化合物レソルフィンを産生する。マクロファージ代謝に対するPVCの効果は、レサズリンを培養培地中に導入することにより決定することができる。PVCにより影響を受けるマクロファージの数は、測定された蛍光を細胞密度最適化曲線のものと比較することにより推定することができる(参照により本明細書に組み込まれるCzekanska,Methods in Molecular Biology,2011,740,27-32参照)。
【0201】
THP1由来マクロファージのためのレサズリンの使用の最適化。18時間にわたるマクロファージの代謝を異なる播種密度で評価してPVCを用いるこのアッセイの使用のための最適細胞密度を決定した。THP-1細胞の30mL培養物を1000rpmにおいて4分間ペレット化してから、2mLのRPMI培地(10%のFBS(v/v)及び2mMのL-グルタミンも含有)中で再懸濁させた。細胞血球計算盤を使用して細胞を計数し、次いで培地中で2×106個の細胞mL-1の密度に希釈した。次いで、THP-1細胞をプレーティング直前にホルボール12-ミリステート-13-アセテート(PMA)で活性化させた。200μLの細胞を96ウェルプレート中で4つ組でプレーティングし、2倍段階希釈を1.5625×103個の細胞mL-1の最終細胞密度に達するまで実施した。125μLの出発細胞希釈物も、5倍段階希釈のため、0.32×103個の細胞mL-1の細胞密度に達するまで同じプレート上で4つ組でプレーティングした。RPMI及びPMAを含有する4つのブランクウェルも調製した。プレートを37℃において5%のCO2で48時間インキュベートした。ウェルから培地を吸引し、新鮮RPMIで置き換え、マクロファージをさらに24時間インキュベートした。レサズリンタブレット(VWR)をRPMI中で溶解させ(12.5mg/mL)、10μLをそれぞれのウェルに次々に添加した(1.25mg/mLのウェル濃度)。産生された蛍光をプレートリーダー上で30分ごとに18時間測定した(励起:530~570nm、蛍光:580~620nm、37℃及び5%のCO2において維持)。次いで、PVCを用いる使用のために経時的な最適な細胞密度を決定した。
【0202】
PVC検査のためのアッセイの使用。1.25×105個mL-1に希釈されたTHP-1細胞を活性化させ、96ウェルプレート中で播種し、ウェルは100μLの細胞を1.25×104個の細胞mL-1の最終ウェル密度において含有した。PVC試料を有さない細胞を含有するブランクウェル、並びに培地及びPMAのみを含有するウェルも4つ組で調製した。プレートを37℃において5%のCO2で48時間インキュベートした。次いで、培地を新鮮RPMIで置き換えてから、10μLのそれぞれのPVC試料を添加した。プレートをさらに24時間インキュベートしてから、10μLのレサズリン(12.5mg/mL)をそれぞれのウェルに添加し、蛍光を30分ごとに18時間測定した(励起:530~570nm、蛍光:580~620nm、37℃及び5%のCO2において維持)。
【0203】
結果:
図6Fは、PVCpnf+Pnfでのチャレンジは、マクロファージの呼吸率を実際に低下させた一方、熱変性又は空のPVCpnfナノシリンジは強力な有害効果を有さなかったことを示す。これにかかわらず、試料を添加しない対照細胞は、最良の呼吸率を依然として示した。マクロファージに対する効果を昆虫注射毒性アッセイと相関させた。この場合、2つのPVCpnf+Pnf調製物は、昆虫コホートの半数を超える致死率を示した一方、熱変性及び空のPVCpnf注射昆虫は全て健常のままであった。
【0204】
実施例3
リーダー配列はPVCニードル複合体中へのペイロードパッケージを担うことの実証
驚くべきことに、本発明者らは、好ましくは、ペイロード(毒素)タンパク質のN末端上の「リーダー」ペプチド配列の想定が、ペイロードをPVC複合体に指向し、PVCニードル複合体中へのペイロードのパッケージを可能とし(例えば、トリガーし)得ることを見出した。本発明者らは、PVCエフェクタータンパク質のアミノ酸残基1~50がリーダー配列である/を含むことを実証した。
【0205】
これを実証するため、発現構築物(染色体操作されたP.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01中での過剰発現)を調製し、それにおいてPlu1649(図中「hvnA」と称され、配列番号46の配列を有する)(検出目的のためにMycタグ付き)により発現されるペイロードがリーダー配列を欠くようにリーダー配列(N末端アミノ酸残基1~50)を除いた(
図8A-構築物1参照)。PVCニードル複合体の発現(ペイロード及びPVCニードル複合体の両方の)及び単離(及びゲル上の任意のパッケージされたペイロードを含むその構成成分のランニング)後、(Mycタグ付き)Plu1649(「hvnA」)はPVCニードル複合体内でウェスタンブロット分析を介して検出可能でなく、ペイロード(リーダー配列を欠く)が複合体中にパッケージされず(
図8B、レーン1参照)、したがって単離複合体と会合しないことを実証した。しかしながら、リーダー配列を保持するhvnAについては良好なパッケージが見られた、レーン2参照(レーン3のバンドの相対強度に起因してバンドは弱いと考えられることに留意されたい)。
【0206】
驚くべきことに、Mycタグ付きhvnAのウェスタンブロット検出により実証されたとおり、異なる(非hvnA)PVCエフェクターからのリーダー配列(即ち、PAU_03332エフェクターからのN末端アミノ酸残基1~50に対応)を有するhvnA(
図8A、構築物3参照)は複合体中に正確にパッケージされ、単離/精製時にPVCニードル複合体と会合したままであった(
図8B、レーン3参照)。したがって、本発明者らは、hvnAペイロード(即ち、PAU_03332のものと異なるペイロード)をパッケージする「PAU_03332」リーダー配列(異なるペイロードPnfと会合している)の驚くべき能力を実証した。これは、PVCエフェクターのリーダー配列をスワップする能力を実証し、パッケージのための最適リーダー配列(最適パッケージ活性を有する)の使用を許容する。
【0207】
実施例4
4.1 リーダー配列が非定型/外因性ペイロードの(PVCニードル複合体中への)パッケージを指向することの実証
本発明の予測されない技術的効果において、本発明者らは、外因性(非フォトラブダス属(Photorhabdus))ポリペプチド(好ましくは、N末端における)への本明細書に記載のリーダー配列の融合が、PVCニードル複合体中への前記外因性ポリペプチドのパッケージを可能とし、単離/精製時に外因性ポリペプチドがPVCニードル複合体と会合したままであることを見出した。例として、非フォトラブダス属(Photorhabdus)「Myc」ポリペプチド(<10kDa)が、リーダー配列に融合させた場合、PVCニードル複合体中にパッケージされることを実証する
図8B(レーン4)、及びかなりより大きい非フォトラブダス属(Photorhabdus)「Creリコンビナーゼ」ポリペプチド(>32kDa)も、本発明のリーダーポリペプチドに融合させた場合、PVCニードル複合体中に同様に適切にパッケージすることができることを実証するレーン6参照。
【0208】
本発明者らは、フォトラブダス属(Photorhabdus)によりコードされる種々の天然PVCエフェクターペイロードのサイズ(例えば、ポリペプチド長さ)及び構造の詳細な分析を実施し(
図7参照)、それは広範な異なる長さ及び構造を示し、本発明のPVCニードル複合体(ナノシリンジ)送達系の適用可能性が目的ペイロードタンパク質のサイズ又は特性により限定されないことを実証する。まとめると、特定の二次構造も、生物物理学的特性も、積み荷の長さも要求されず、PVCニードル複合体(ナノシリンジ)シャーシを多用途多機能送達ビヒクルとして利用することができることを裏付ける。
【0209】
さらに、外因性ポリペプチドのこのパッケージは、選択されるPVCニードル複合体シャーシに無関係であり、例えば、「PVCpnf」シャーシ(配列番号93)及び「PVCU4」(例えば、PVCunit4)シャーシ(フォトラブダス属(Photorhabdus)過剰発現株に対して内因性)の両方を使用して達成された(
図10A参照)。重要なことに、本発明者らは、いずれのシャーシにおける外因性ペイロードのパッケージもPVCニードル複合体の形態に影響を与えず、それらが異常にアセンブルされないことを確保した(
図10B参照)。
【0210】
本明細書に示されるデータにおいて、ペイロードタンパク質は別個の遺伝子構築物に対して「トランス」で供給される。驚くべきことに、リーダー配列は、PVCニードル複合体ビヒクル中へのパッケージのためにそれらの別個に合成されたタンパク質を標的化するために十分である(
図11参照)。これは、シャーシ(PVC)遺伝子自体もプラスミド上に存在する場合、大腸菌(E.coli)において当てはまり、宿主生物フォトラブダス属(Photorhabdus)の場合のようにシャーシ遺伝子は染色体中に組み込まれる。
【0211】
大腸菌(E.coli)中で発現されたPVCpnfナノシリンジ中への高レベルのCre部位特異的リコンビナーゼのトランスパッケージのさらなる例示を
図10(C)に提供する。より詳細には、本発明者らは、(i)例えば、配列番号93のP.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949PVCpnfオペロン(Pvc16上のC末端FLAGタグを例えば、配列番号93の直近の3’で有する)のアラビノース誘導性発現プラスミドと、(ii)天然Pnfエフェクター50アミノ酸リーダー配列(例えば、配列番号78のリーダー)のN末端融合物及びC末端Myc-タグエピトープを有するCreリコンビナーゼを含有する第2のIPTG誘導性発現プラスミドとを保有する実験室大腸菌(E.coli)発現株を構築した。PVCオペロン及びエフェクター(Cre+リーダー配列)を24時間同時誘導し、キメラナノシリンジを精製した。ウェスタンブロット分析を使用して精製後のFLAGタグ付きPvc16キャップタンパク質(及びしたがってナノシリンジシャーシ)及びトランスパッケージされたMycタグ付きCreリコンビナーゼの存在を確認した。
【0212】
4.2 より大きい多様な配列スペースの機能性を実証する追加のリーダーを使用するトランスパッケージ
実施例3に概説されたデータを補うため、
図10Dは、以下の4つの追加のリーダー配列を使用するPVCpnf(大腸菌(E.coli)中)中へのCreの(トランス)パッケージを実証する(したがってより大きい配列スペースの機能性を実証する):
- レーン1:PAU_02096のリーダー(リーダー配列=配列番号71)、
図10Dの「ナノシリンジ+lopt50::cre::Myc」と称される実験;
- レーン2:PAK_02075のリーダー(リーダー配列=配列番号50)、
図10Dの「ナノシリンジ+cnf50::cre::Myc」と称される実験;
- レーン3:PAU_02009のリーダー(リーダー配列=配列番号68)、
図10Dの「ナノシリンジ+cif50::cre::Myc」と称される実験;及び
- レーン4:PAU_02806のリーダー(リーダー配列=配列番号76)、
図10Dの「ナノシリンジ+gog50::cre::Myc」と称される実験。
【0213】
これらの結果は、ペイロードの(トランス)パッケージについてのより大きい配列多様性を示すリーダー配列の有用性も実証する。実際、さらなる検証を提供するため、本発明者らは、リーダー配列のパネルのCLUSTALW配列比較を実施して多様性を決定した。PVCエフェクターは、pvc16構造遺伝子の直近の下流でコードされる認識可能毒素様ドメインをコードするタンパク質として同定される。それぞれのPVCオペロンは、単一エフェクターのみ、又はタンデムアレイのいくつかの異なるエフェクター遺伝子をコードし得る。系統樹を
図10Eに示し、ペイロードタンパク質をナノシリンジ複合体中にパッケージするための本明細書に例示されるリーダー配列の同一性は、P.アシンビオティカ(P.asymbiotica)ATCC43949PVCpnfオペロン(実線矢印)又はP.ルミネスセンス(P.luminescens)TT01 PVCunit4オペロン(点線矢印)のいずれか又はその両方により作出される。
【0214】
図10Eのツリーから確認することができるとおり、例示されるリーダー配列は全体にわたり十分に分布され、したがって多様性が最大に連続的であり、又はそれに近い。
【0215】
実施例5
尾部ファイバー/結合ドメイン改変
PVCニードル複合体は、PVC複合体の細胞タイプ特異的標的化を可能とすることが考えられる尾部ファイバー(3DレンダリングPVC構造、右端画像の左端のアスタリスク参照)を含むことが公知である。本発明者らは、非天然アミノ酸を取り込むための尾部ファイバー領域の改変(例えば、20個の標準アミノ酸の代替アミノ酸での野生型配列中のアミノ酸の置換)が尾部ファイバーの発現に影響を与えないことを良好に実証した。
【0216】
実施例6
リーダー配列がパッケージされたPVCニードル複合体を用いるエクスビボネズミオルガノイド中への活性(外因性)酵素/ペイロードの送達の実証
概念:哺乳類組織への外因性機能的酵素の送達についてのデータを得ること。本発明者らは、エクスビボマウス胆管オルガノイド中への「Cre」として公知のトランスパッケージされたバクテリオファージ由来リコンビナーゼタンパク質の送達を実証した。オルガノイドは、染色体コードされる赤色蛍光タンパク質(RFP)レポーターの発現が通常、Cre-リコンビナーゼのついてのloxP認識部位によりフランキングされた終止シグナルにより妨害されるマウス系に由来する。リコンビナーゼが存在する場合、終止シグナルは組換えられ、次いで細胞は続けてレポータータンパク質を発現する。この実験的実証の一般的原理を
図16Aにまとめる。
【0217】
方法:胆管オルガノイド調製:ネズミ初代胆管を単離し、Huch et al(Regen Med.2013 Jul;8(4):385-7.PMID:23826690;DOI:10.2217/rme.13.39)プロトコルに従って「BD拡大培地」を使用してmatrigel中でオルガノイドとして12継代で拡大した。次いで、細胞を2D中でプレーティングし、BD拡大培地中で培養した。マウスゲノタイプ:Rosa26ローカス中のLSL-Tomレポーター+アキシン2CreRT(4OHT処理時に誘導性)。細胞を非コーディングポリスチレンプレート中で10,000個の細胞/ウェルの播種密度で培養した。ナノシリンジをPBS中30%容量のシリンジ調製物+70%の培養培地として調製した。総容量はウェル当たり100μl。陽性対照は、組換えのための陽性対照としての1:1000(v/v)の500nMの4OHT(エタノール中)を表した。陰性対照は、1:1000(v/v)エタノール希釈物のみを表す。細胞を播種し、48時間成長させ、ナノシリンジを添加し、次いでさらに24時間培養してから固定(4%PFA固定15分間、室温)し、顕微鏡試験のために染色した。染色:Rocklandからの一次抗体の抗-RFP(1:1000)。二次抗ウサギ568(1:500v/vにおいて使用)。試料をレーザー共焦点顕微鏡上で可視化した。
【0218】
結果:
図16Bはこれらの実験からの代表的な顕微鏡写真を含み、それらは、RFPタンパク質についてのシグナルを、CreがロードされたPVCpnfナノシリンジで処理した場合、多数の細胞において検出することができたことを実証する。これらは単純な細胞単層ではなくエクスビボオルガノイドであるため、投与される細胞の数におけるいくらかの偶然性が予測され、これは、小分子誘導剤(大きいタンパク質複合体でない)である陽性対照でも観察される。これらがオルガノイドであるため、ナノシリンジの結合特徴を変更し得る、存在するいくらかのレベルの細胞分化があることが予測される。この予備のランからのさらなる興味深い観察は、系に適用されるナノシリンジの総量に関する情報が依然として利用可能でない一方、本発明者らは、TAM小分子誘導剤が認識可能にナノシリンジよりもかなり大きい組織浸透を有さないと考えられることを実証することであり、それらの分布能がそれらのサイズによってはそれほど妨げられないことを示唆する。
【0219】
追加の解釈:まとめると、本発明者らは、外因性酵素を細胞標的に送達(例えば、投与)する能力を実証した。さらに、この「ナノシリンジ+Cre」実験は、形質転換細胞をもたらすDNA変化を提供する能力を実証することによる生物工学ツール/エイドについての概念の有望な証拠である。したがって、この実験は特に外因性ペイロード(細菌以外のウイルスのタンパク質)、及び核酸改変酵素の使用を実証する。Cre酵素は機能的に送達され、細胞内部を横断して核まで移動し、そのDNA改変変化に影響を与え得ることが明らかである。
【0220】
実施例7
大腸菌(E.coli)中で発現されたPVCpnfナノシリンジ中へのMAD7部位特異的リコンビナーゼ(外因性ペイロード)のトランスパッケージ
概念:(実施例6の)Creデータ、及び本明細書に提供されるパッケージされたペイロードの他の例に関して、本発明者らは、リーダー配列を介するナノシリンジ中へのCas様酵素MAD7のパッケージを実証した。これは、本明細書に記載のペイロードの最大外因物の例(MAD7=147.9kDa)である。
【0221】
方法:簡潔に述べると、シャーシ遺伝子及びMAD7遺伝子(後者は、本明細書に記載の検出のためのC末端Mycタグ、及びナノシリンジ取り込みのためのリーダー配列でタグ付けされている)を、大腸菌(E.coli)中で同時に発現させた(誘導時)。ナノシリンジ複合体のハーベスト及び精製時、ドットブロット分析(例えば、Mycタグの検出のため)を介してペイロードパッケージをプロービングした。本明細書に記載の精製法(超遠心分離を使用)を用いて(例えば、非常に)高い分子量のタンパク質複合体/生物学的物質を選択することができ、ナノシリンジ及びそれらが担持する任意の積み荷(ペイロード)の回収を可能とする。「ルーズ」/非パッケージペイロードは溶液のままであり、十分な遠心力に供さず、したがってかなりより大きいナノシリンジ「シェル」内に含有(即ち、良好にパッケージされる場合)されない限り精製の間に損失する。MAD7の良好なパッケージを
図17により実証する。
【0222】
実施例8
大腸菌(E.coli)中で発現されたPVCpnf中へのアポトーシス誘導ペイロードのトランスパッケージ
図10Cに記載の大腸菌(E.coli)PVCpnfリーダー::ペイロード::Mycトランスパッケージ系(PVCpnfリーダー=配列番号78)を使用して、本発明者らは、少なくとも2つのアポトーシス促進性ヒト由来タンパク質配列又はペプチド(例えば、配列番号109及び配列番号111の配列)をトランスパッケージする能力を実証した。Pnfエフェクタータンパク質リーダー配列(例えば、配列番号78)をN末端に融合させ、MycエピトープタグをC末端に融合させた。ウェスタンドットブロット分析(実施例7のものと類似)は、精製ナノシリンジ中のそれらのヒト由来タンパク質の存在を裏付けた(
図18)。
【0223】
実施例9
(トランス)パッケージされたアポトーシス促進性ヒトポリペプチドのナノシリンジ送達による、培養されたエクスビボヒト細胞中のアポトーシスの誘導の実証
予備検査は、大腸菌(E.coli)中で産生されたPVCpnfナノシリンジを使用してトランスパッケージされたヒトタンパク質配列(例えば、実施例8に従ってパッケージされた)を送達し、ヒトドナーからのエクスビボ循環PBMC細胞中でアポトーシスを誘導する能力を裏付けた。アッセイは、パッケージされたナノシリンジに20分間のみ曝露させた細胞からのTUNEL染色顕微鏡分析である。結果を
図19Aに示し、tBid p15断片及びBaxBH3ドメインの送達を実証する(アポトーシスの良好な誘導を介する)。
・tBid p15断片(配列番号109)は、正常ヒトアポトーシス調節経路の一部である。細胞効果:Bcl-2ファミリーのアポトーシス促進メンバー。BidのC末端部分(tBid)はミトコンドリアにトランスロケートし、そこでそれはシトクロムcの放出を誘導する。Bidは通常、その潜在性細胞質全長プロBid形態からカスパーゼ8により開裂される。
・BaxBH3(aa59~73)(配列番号111)は、規定のBax BH3ドメインの重要な15個の残基を含む最小BH3ドメイン合成ペプチドである。細胞効果:これら15個の残基は、Bcl-xLに結合し、それを機能的にアンタゴナイズするために、及びBax/Bakを特異的に誘導するために十分な情報を含有する。Bak/Bcl-2相互作用を停止させ、アポトーシス促進因子を開放すると考えられる。
【0224】
エクスビボ末梢血単核細胞(PBMC)中へのアポトーシス促進性ヒトペプチドの送達のより詳細な検査を目下記載する。本試験の目的は、アポトーシス促進性ペプチドがロードされたPVCナノシリンジがエクスビボヒト末梢血単核細胞中でアポトーシスを誘導し得るか否かを調査することであった。トリパンブルー色素排除アッセイを使用して最初に任意の即時細胞毒性について、次いでTUNELアッセイを使用することによりアポトーシス応答についてナノシリンジを評価した。
【0225】
細胞生存率についてのトリパンブルー排除検査:トリパンブルーは、死滅組織又は細胞を選択的に着色するために一般に使用されるジアゾ色素であり、したがって顕微鏡下で死滅細胞は区別可能な青色として示される一方、インタクト細胞膜を有する生存細胞又は組織は非着色のままである。生存細胞は染色から排除されるため、この染色法は色素排除法としても記載される。トリパンブルーは、組織又は細胞生存率の評価に一般に使用される。好適な数の細胞(2×105個)をナノシリンジ及び空のナノシリンジに20分間曝露させた。好適な容量の細胞(30μL)を等容量の0.4%のトリパンブルーに添加し、血球計算盤を使用して生存(非染色)及び死滅(染色)細胞の数を計数した。それぞれの化合物を3つの濃度において検査した。2人の独立したヒトドナーからの血球をそれぞれの化合物についてそれぞれの濃度において検査し、それぞれの試料を2つ組で検査した。
【0226】
顕微鏡観察のための細胞の処理及び調製:2人の独立した健常ヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)の生存率を、2つの独立検査での3つの検査濃度での2つのキメラナノシリンジ(例えば、外因性アポトーシス促進性ペプチドでロードされた)での20分間の処理後に決定した。PBMCを遠心分離によりハーベストし、培地中で1×106個の細胞/mlにおいて再懸濁させた。細胞を2.5%のホルマリン中で固定し、室温で20分間インキュベートした。70%のエタノールを噴霧し、放置して空気乾燥させることによりポリ-L-リジンコートスライドを調製した。細胞を30秒間遠心分離した。上清を除去し、細胞を200μlのdH2O中で再懸濁させた。5μlの細胞懸濁液をそれぞれのスライド/固定物に添加した。スライドごとに2回の固定を実施して2つ組の染色の実施を可能とした。細胞懸濁液を放置して空気乾燥させた。
【0227】
PBMC細胞生存率アッセイの結果:トリパンブルー生存率アッセイは、PVC調製物が、健常ヒトドナーから採取されたPBMCに対してそれ自体で直ちに毒性でないことを裏付けた(表2)。ナノシリンジ処理は>60%の生存率を示し、最大用量濃度において低い毒性を示した(表2)。次いで、本発明者らは続いてアポトーシスを誘導するキメラナノシリンジの能力を検査した。
【0228】
【0229】
TUNELアッセイを使用するキメラナノシリンジ誘導アポトーシスについての検査:次いで、TUNELアッセイを使用してスライド上で固定された単一細胞懸濁液中でアポトーシス核を同定した。このアッセイにおいて、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)がアポトーシスシグナル因子に応答して生成されるDNA断片の露出された3’-OH末端に結合する。これは順次、ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシド(HRP)コンジュゲートを使用して検出することができるビオチン標識デオキシヌクレオチドの付加を触媒する。ジアミノベンジジン(DAB)はHRP標識試料と反応してDNA断片化の部位において不溶性褐色基質を生成する。メチルグリーン対比染色は、正常及びアポトーシス細胞の可視化を可能とする。
【0230】
ナノシリンジへのヒトPBMCの曝露後のアポトーシスの誘導を決定した。TUNELアッセイキット(Abcam)をアポトーシス細胞の検出に使用した。アッセイは製造業者の説明書に従って実施した。簡潔に述べると、スライドを100μLのプロテイナーゼK溶液で又は5分間被覆し、スライドを1×TRIS緩衝生理食塩水(TBS)でリンスした。ナノシリンジ又はDNアーゼI陽性キット対照の処理を室温において20分間実施した。スライドをTBSでリンスした。次いで、スライドをTdT平衡緩衝液と30分間インキュベートしてからTdT標識反応ミックスを添加した。スライドを37℃において19分間インキュベートした。次いで、スライドをTBSで洗浄してから停止緩衝液を適用し、室温において5分間インキュベートした。スライドをTBSで再度洗浄してから遮断緩衝液を室温において10分間添加した。検出は、30分間の試料へのコンジュゲートの適用により実施した。スライドをTBSでリンスしてからDAB溶液を15分間適用した。スライドをdH2Oでリンスし、次いでメチルグリーンで対比染色した。スライドを100%のエタノール、次いでキシレン中で脱水し、ガラスカバースリップでマウントした。全ての染色を2つ組で実施した。アポトーシス検出アッセイにおける陽性染色を示すアポトーシスエンドポイントは、暗褐色(DAB)シグナルにより表される。より明るい褐色の陰影及び/又は青色/緑色から緑色/褐色の陰影は、アポトーシスについての非反応性陰性細胞を示す。
【0231】
スライド上で細胞の5回のランダム部分を選択することにより分析を実施し、陽性染色細胞(暗褐色)及び陰性染色細胞(青色又は淡褐色)を計数し、アポトーシス体を示す細胞の割合を決定した。
【0232】
陽性対照を生成するため、以下に詳述するプロテイナーゼK処理ステップ後にスライドを1μg/μlのDNアーゼI(キット陽性対照)で室温において20分間処理した。DNアーゼI処理は、正常細胞中のDNAを断片化してアポトーシスの間に生成されるものと同一のフリー3’OH基を生成する。処理ステージの間に反応ミックス中のDNアーゼIをdH2Oで置換することにより陰性対照を生成した。
【0233】
PBMCアポトーシスアッセイの結果:インタクトtBID及びBaxがロードされたナノシリンジでの処理後にPBMCを使用するTUNEL染色を適切な陽性及び陰性キット対照を用いて実施した。処理を20分間実施してナノシリンジがアポトーシスシグナルを誘発するか否かを決定した。陽性対照(DNアーゼI処理)及び陰性対照(DNアーゼI処理なし)を含めた。結果は、tBID又はBaxのいずれかを含有するナノシリンジの両方が、PBMCに対して強力なアポトーシスシグナル(それぞれ89%及び78%陽性)を示すことを示した。陽性対照は、強力なアポトーシスシグナル(79%)を示した一方、陰性対照はアポトーシスシグナルを示さなかった(100%陰性)。ナノシリンジ処理試料中の付着細胞の数の有意な損失も観察され、これは急速で包括的なアポトーシス応答、及び洗浄後の保持の不成功を示すと考えられた。この効果はキット陽性対照よりもかなり傑出しており、より急速な応答を示唆することに留意されたい。代表的な顕微鏡写真を
図19Bに示す。
【0234】
結論:tBID及びBaxがロードされたナノシリンジは、ヒト末梢血単核細胞中で広範なアポトーシスを急速に誘導し得ることが結論付けられる。さらに、トリパンブルー色素排除アッセイは、それらのキメラナノシリンジが急速な致死溶解も細胞の広範な膜損傷も引き起こさないことを裏付けた。
【0235】
実施例10
リーダー配列及びPVCニードル複合体の実際的な有用性の例証-非定型(非フォトラブダス属(Photorhabdus))ペイロードの細胞内送達
(1)抗-MDM(p53阻害剤)抗体を本明細書に記載のリーダー配列に結合させ、パッケージのためにPVCニードル複合体と一緒に発現させる。単離PVCニードル複合体(抗体ペイロードを含む)を、抗体の細胞内送達のために腫瘍と接触させる(前記腫瘍細胞は、MDM阻害のためにp53活性の高いMDM抑制を有することにより特徴付けされている)。腫瘍は抗MDM抗体の活性により抑制される。
(2)PVCニードル複合体を使用して抗腫瘍ペプチドワクチンを(細胞内)送達してMHC-1依存性細胞毒性T細胞リンパ球(CTL)応答を活性化させる。チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2)ペプチドワクチンをCTLに交差提示の向上のために送達し、TRP2発現腫瘍に対する抗腫瘍効果が生じる。腫瘍はペプチドワクチンの活性により抑制される。
(3)PVCニードル複合体を使用して核因子-kB阻害剤(炎症性障害、例えば、関節リウマチの制御に使用される)を細胞に(細胞内)送達する。続いて、細胞は炎症促進性サイトカインの発現の低減を実証する。
(4)PVCニードル複合体を使用してT3SSペイロード(NF-kB及びMAPK経路を阻害する)を(細胞内)送達する。これは、単離(精製)PVCニードル複合体で完了させ、PVCニードル複合体はそれが由来する細菌細胞と会合したままであることを全く必要としない。
(5)PVCニードル複合体を使用して細胞に、抗アポトーシスペプチド、例として、BH4、Bcl-xL-タンパク質、及び/又はc-Jun N末端キナーゼのペプチド阻害剤(虚血性損傷(細胞代謝に必要とされる酸素及びグルコースの不足を引き起こす組織への血液供給の制限)から心臓及び脳を保護し得る)を(細胞内)送達する。例えば、JUNキナーゼの20個のアミノ酸結合モチーフを介するJun-キナーゼ阻害が十分である。例えば、細胞中のシトクロムcの放出が阻害される。
(6)PVCニードル複合体を使用してニコチンアミドアデニンジヌクレオチドキノン内部オキシドレダクターゼ(Ndi1)、複合体Iの単一サブユニット酵母類似体(有意な心臓保護効果を提供する)を複合体I欠損突然変異細胞に(細胞内)送達する。Ndi1タンパク質は、ミトコンドリア内膜のマトリックス側に正確に標的化され、複合体I欠損細胞に対するNADHオキシダーゼ活性を回復させる。
(7)PVCニードル複合体を使用してPHOX複合体の必須サブユニット(慢性肉芽腫性疾患におけるROSの産生を回復させるために酵素置換療法で使用される)の2つの一方を慢性肉芽腫性疾患細胞に送達する。ROSの産生の回復が観察される。
(8)PVCニードル複合体を使用してミオチュブラリン(X連鎖ミオチュブラーミオパチー患者における局所及び遠位筋性能を改善するために使用される)を(細胞内)(例えば、筋肉内)送達する。ホスファチジルイノシトール3リン酸及びホスファチジルイノシトール(3,5)二リン酸のミオチュブラリン脱リン酸化が観察される。
(9)PVCニードル複合体を使用してリコンビナーゼ「Cre」(規定の遺伝子カセットを切り出し得る)を、ゲノムがmCherry遺伝子上流の終止シグナルをフランキングするloxP組換え部位を有するマウス細胞系中に(細胞内)送達する。Creペイロードは組換え部位を切り出し、終止シグナルを除去し、細胞中のmCherry遺伝子の発現を可能とする。
(10)PVCニードル複合体を使用して細胞内構成成分についての親和性を有する約15kDaナノボディ(抗体断片)を(細胞内)送達する。ナノボディ-細胞内複合体が検出される。
(11)PVCニードル複合体を使用して昆虫作物有害生物及び動物寄生虫のための非定型(非フォトラブダス属(Photorhabdus))ポリペプチド毒素を細胞内送達する(例えば、昆虫細胞中に)。有害生物の抑制が観察される。
(12)PVCニードル複合体を使用してヌクレアーゼ(例えば、Cas9及び/又はMad7)を、ガイドRNAを含む標的細胞中に(細胞内)送達する。ヌクレアーゼは部位特異的遺伝子不活性化を実行する。
【0236】
上記明細書に挙げられる全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載される方法及び系の種々の改変及び変動は、本発明の範囲及び主旨から逸脱せずに当業者に明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と共に記載してきたが、特許請求される本発明は、そのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、生化学及び生物工学又は関連分野における当業者に明らかな本発明を実施するために記載される方式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0237】
配列
最初のMetアミノ酸残基又は対応する最初のコドンが以下の配列番号のいずれかで示される場合、前記残基/コドンは任意選択であり得る。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
配列番号11(PAT_00149)
MIFKMLNLAVFYLLGNIFHYLICQKFICYFCSVLKSVTMFLTKVAVQIALYLNILPTMAGIAGLHAEVQALNNLFISGDRGTEKRENWKYIRNMLESTIFTQRLTAGQAGKDFAACHNCSGILSSPVNVITGKVESAGGNFFINIISI
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
配列番号41(Plu1714)
MKKTDEKYGQYEYKDEDITSYPIAWTNPDNGKIYIGINSPEYSHLNNKGESELNLAKIISTIIHESLHASSHQHKGLQSQTDTGADNLNYDEYVTDYFAREVYKQILPDKDYVANCFTKGLGGENKIWGGNIVEFMIQ
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
配列番号93(フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)株ATCC43949PVCPnfオペロン、pvc1~pvc16;例えば、GenBankアクセッション番号FM162591.1の配列の遺伝子PAU_03353からPAU_03338に対応)
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【0286】
配列番号94(フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)株ATCC43949PVClopTオペロン、pvc1~pvc16;例えば、GenBankアクセッション番号FM162591.1の配列の遺伝子PAU_02112からPAU_02099に対応)
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【0287】
配列番号95(フォトラブダス・アシンビオティカ(Photorhabdus asymbiotica)株ATCC43949PVCPaToxオペロン、pvc1~pvc16)
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【0288】
配列番号96(Pnfエピトープ)
TGQKPGNNEWKTGR
【0289】
配列番号97(PVCpromF)
TATCATATGTCTACAACTCCAGAACAAATTGCTG
【0290】
配列番号98(PVCpromR)
ATCTCTAGAACAGATATTCCAGCCAGC
【0291】
配列番号99(ParaINF)
GGCGTCACACTTTGCTATG
【0292】
配列番号100(ParaINF)
TCGGTGGCAGTAAATTGTCC
【0293】
配列番号101(F1プライマー)
ATGTCTACAAGTACATCTCAAATTGCG
【0294】
配列番号102(F2プライマー)
GACTCCCTTGAGGGTACGG
【0295】
配列番号103(F3プライマー)
TTCTGATGAGAGTGATGGTAC
【0296】
配列番号104(F4プライマー)
TGAATAAAGAATTCAGTCAATATC
【0297】
配列番号105(R1プライマー)
TAGTGGCTGATGAAAGTCTG
【0298】
配列番号106(R2プライマー)
GGAAGCCAAAGATAATGAAGTG
【0299】
配列番号107(R3プライマー)
CATTTCTTCCCTATGGTTG
【0300】
配列番号108(R4プライマー)
TTAAATTCCTACAAGATTATCTTT
【0301】
配列番号109(tBidアミノ酸配列)
RSSHSRLGRIEADSESQEDIIRNIARHLAQVGDSMDRSIPPGLVNGLALQLRNTSRSEEDRNRDLATALEQLLQAYPRDMEKEKTMLVLALLLAKKVASHTPSLLRDVFHTTVNFINQNLRTYVRSLARNGMD
【0302】
配列番号110(大腸菌(E.coli)配列最適化tBid塩基)
【化60】
【0303】
配列番号111(BaxBH3ペプチド(aa59~73))
LSESLKRIGDELDSN
【0304】
配列番号112(大腸菌(E.coli)配列最適化BaxBH3塩基)
CTGTCGGAGAGTTTGAAGCGTATAGGTGACGAGCTGGACAGCAAT
【配列表】
【国際調査報告】