(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】医薬品剤形およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20220801BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/02
A61K9/06
A61K9/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571555
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020065097
(87)【国際公開番号】W WO2020240029
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521524335
【氏名又は名称】ディヘシス デジタル ヘルス システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダハトラー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、ゲラルト
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA71
4C076FF01
4C076FF70
4C076GG01
(57)【要約】
本発明は、医薬活性成分の固体または半固体の剤形を製造する方法に関する。本方法によれば、活性成分を含まない担体構造体が2Dまたは3D印刷装置内に配置され、少なくとも1つの医薬活性成分が、印刷装置によって行われる2Dまたは3D印刷方法によって前記担体構造体の少なくとも1つの部分に塗布される。本発明はまた、本発明による方法で製造可能な半固形または固形の剤形に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤を含まない担体構造体および前記担体構造体の少なくとも1つの区画に提供される少なくとも1つの医薬活性薬剤を含む固体または半固体の医薬品剤形を製造するための方法を提供するものであり、以下の工程:
(i)少なくとも1つの医薬活性薬剤の2Dおよび/または3D印刷用に設計された印刷装置内に、少なくとも1つの活性薬剤を含まない担体構造体を供給する工程;および
(ii)前記印刷装置において、前記担体構造体の表面の少なくとも1つの区画に、2Dおよび/または3D印刷によって少なくとも1つの医薬活性薬剤を塗布する工程;
を含む方法。
【請求項2】
工程(ii)において、複数の活性薬剤が塗布され、前記活性薬剤が1つの工程または複数の別々の部分的な工程で一緒に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性薬剤が、前記担体構造体の同じまたは異なる区画に塗布される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性薬剤が、互いに分離された区画内に、または空間的にもう一方の上に塗布される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記塗布された物質が前記担体構造体上で視認可能な少なくとも1つの情報構造を形成するように、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に、2Dおよび/または3D印刷によって少なくとも1つの着色物質を塗布することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの着色物質が、前記少なくとも1つの医薬活性薬剤と共に塗布される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの情報構造が、前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤の種類もしくは性質、および/または前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または前記剤形の服用予定時点もしくは服用予定期間、および/または前記剤形の服用予定日、および/または患者関連データ、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または前記剤形を提供する製薬会社、および/または前記剤形を調剤する医療ユニットに関する情報をコード化する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者関連データが、患者の名前、年齢、性別、投薬、および疾患からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記情報構造が、QRコード(登録商標)、文字、および数字からなる群から選択される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体構造体が、錠剤、カプセル、座薬、プラスターまたは薄膜として存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記錠剤が、長方形の錠剤、トローチ剤、移植可能な錠剤、多用途錠剤、分散錠、遅延錠、膣錠、眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、改良放出錠、ラッカー錠、および腸溶性コーティング錠からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、溶融フィラメント製造(FFF)法または溶融層モデリング(FLM)法である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が、前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が埋め込まれているフィラメント担体物質を含む1つのフィラメントまたは異なるフィラメント中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、結合剤噴射法である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が、1つまたは複数の粉末担体物質中に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(ii)において、液の単一体積増分が塗布され、前記液が塗布された体積増分の少なくとも一部が前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)を含有し、前記体積増分が塗布後に凝固する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記体積増分が、それらが少なくとも部分的に互いに接触するように層ごとに塗布される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記液が溶融材料または液体である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
工程(ii)が、以下の部分的な工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法:
1つまたは複数の前記活性薬剤を含有する溶液、懸濁液またはエマルジョンを前記担体物質の少なくとも1つの区画に塗布する工程;および
前記活性薬剤(複数可)が、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に残るように、前記溶液、前記懸濁液または前記エマルジョンを蒸発させる工程。
【請求項20】
前記担体構造体が、前記蒸発工程中に、前記溶液、前記懸濁液または前記エマルジョンの一部を吸収する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの医薬活性薬剤を含有し、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法によって調製される固体または半固体の医薬品剤形。
【請求項22】
少なくとも1つの医薬活性薬剤を含む少なくとも2次元および/または3次元配置が少なくとも区画ごとに塗布される、活性薬剤を含まない担体構造体を含む固体または半固体の剤形。
【請求項23】
複数の活性薬剤が前記担体構造体上に塗布される、請求項22に記載の剤形。
【請求項24】
前記活性薬剤が前記担体構造体上の同じまたは異なる区画に塗布される、請求項23に記載の剤形。
【請求項25】
前記活性薬剤が、互いに分離した区画で、または空間的に一方が他方の上にある状態で塗布される、請求項24に記載の剤形。
【請求項26】
前記塗布された物質が前記担体構造体上で視認可能な少なくとも1つの情報構造を形成するように、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に、少なくとも1つの着色物質をさらに塗布する、請求項23~25のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項27】
前記少なくとも1つの情報構造が、前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤の種類もしくは性質、および/または前記担体構造体上に塗布される前記活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または前記剤形の服用予定時点もしくは服用予定期間、および/または前記剤形の服用予定日、および/または患者関連データ、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または前記剤形を提供する製薬会社、および/または前記剤形を調剤する医療ユニットに関する情報をコード化する、請求項26に記載の剤形。
【請求項28】
前記患者関連データが、患者の名前、年齢、性別、投薬、および疾患からなる群から選択される、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
前記情報構造が、QRコード(登録商標)、文字、および数字からなる群から選択される、請求項26~28のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項30】
錠剤、カプセル、座薬、プラスターまたは薄膜として存在する、請求項23~29のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項31】
前記錠剤が、長方形の錠剤、トローチ剤、移植可能な錠剤、多用途錠剤、分散錠、遅延錠、膣錠、眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、改良放出錠、ラッカー錠、および腸溶性コーティング錠からなる群から選択される請求項30に記載の剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性薬剤を含まない担体構造体がそれぞれ2Dまたは3Dの印刷装置に供給され、少なくとも1つの医薬活性薬剤(医薬活性成分、pharmazeutischer Wirkstoffe)が前記印刷装置によりそれぞれ2Dまたは3Dの印刷プロセスを通じて前記担体構造体の少なくとも1つの区画に塗布される医薬活性薬剤の固体または半固体の剤形を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって製造可能な半固形または固形の剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融フィラメント製造(FFF)により医薬品剤形を製造するための付加的な3D印刷プロセスが、WO2016/038356A1により知られている。同様のプロセスで、顆粒、ペレット、粉末またはフレークなどの他の形態が、出発材料としてフィラメントの代わりに使用され、その結果、フィラメントの形態で印刷される(溶融層モデリング、Fused Layer Modeling、FLM)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題は、固体または半固体のそれぞれの剤形の古典的な製造の利点と付加的なプロセスによる剤形の製造の利点との組み合わせを可能にする医薬品剤形の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術的課題は、特許請求の範囲、本明細書および添付図面に開示された本発明の実施の形態によって解決される。
【0005】
特に、本発明は、活性薬剤を含まない担体構造体および前記担体構造体の少なくとも1つの区画に提供される少なくとも1つの医薬活性薬剤を含む固体または半固体の医薬品剤形を製造するための方法を提供するものであり、以下の工程:
(i)少なくとも1つの医薬活性薬剤の2Dおよび/または3D印刷用に設計された印刷装置内に、少なくとも1つの活性薬剤を含まない担体構造体を供給する工程;および
(ii)前記印刷装置において、前記担体構造体の表面の少なくとも1つの区画に、2Dおよび/または3D印刷によって少なくとも1つの医薬活性薬剤を塗布する工程;
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図1B】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図1C】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図1D】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図2】本発明の代表例の剤形の上面の写真による表示を示している。
【
図3A】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図3B】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図4A】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図4B】本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【
図5】本発明の代表例の剤形の上面視概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によれば、活性薬剤を含まない担体への1つ以上の医薬活性薬剤の塗布は、本発明において、2次元(2D)および3次元(3D)印刷プロセスを組み合わせることもできる2Dまたは3D印刷プロセスとして提供される付加的な製造プロセスによって実施される。
【0008】
この方法の一実施形態では、活性薬剤は、溶融可能なフィラメント担体物質またはフィラメント基体物質中のフィラメント中に存在し、それによって、それぞれ、複数の活性薬剤が使用され得るか、または使用されることも意図され、これらの活性薬剤は1つのフィラメント内に共存することも、異なるフィラメント内に共存することもできる。このような溶融可能な活性薬剤含有フィラメントは、本実施形態では、例えば、WO2016/038356A1に記載されているようなそれ自体公知のFFF(溶融フィラメント製造、Filament-Fusionsfabrikation)プロセスに従って、活性薬剤を含まない担体構造体上の少なくとも1つの区画に印刷される。別の実施形態では、1つまたは複数の活性薬剤を含有するそれぞれの溶融可能な担体物質または基体は、好ましくは顆粒、ペレット、粉末またはフレークとして異なる形態で存在し、さらにまた、それ自体公知のFLM(溶融層モデリング、Fused Layer Modeling)によって、典型的には、FLMプロセス用に設計された印刷装置を用いたホットメルト押出(Hot Melt Extrusion)によって、担体構造体上の少なくとも1つの区画にフィラメントの形態で印刷される。
【0009】
別の実施形態では、例えば、EP2968994A1に記載されているようなそれ自体公知の結合剤印刷法(Binder-Printing-Verfahren)を、1つまたは複数の医薬活性薬剤の印刷、好ましくは3D印刷に使用することができる。この実施形態では、活性薬剤(複数可)は、活性薬剤(複数可)の他に、結合剤、抗酸化剤、香料、甘味料、または結合剤噴射法(Binder-Jetting)に適合した同様の物質などの薬学的に許容される添加剤を含有する粉末中に存在する。粉末の層を担体構造体につけた後、印刷装置によって粉末層に結合剤液が塗布されるが、結合剤液を用いて活性薬剤を含まない担体物質上に活性薬剤の配置を形成するために粉末が指定されているそれらの場所に点ごとまたは区画ごとという様式で好適に結合剤液を塗布することも可能である。任意に、余分な粉末を除去することもできる。粉末層をつける工程と、少なくとも点ごとまたは区画ごとに結合剤液を塗布する工程、および、任意に、余分な粉末を除去する工程とが繰り返し行われ、活性薬剤を含まない担体構造体上に1つまたは複数の活性薬剤がそれぞれ所定の三次元配置が得られるまで、任意に1つまたは複数の他の医薬活性薬剤を含む粉末を使用する。最終工程では、任意に存在する未結合粉末を除去することができる。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、1つまたは複数の活性薬剤を塗布するための付加的な方法は、担体上の活性薬剤含有構造体の三次元形成が、好ましくは、液の単一体積増分(以下、「ボクセル」とも称する)の層ごとの塗布によって行われ、前記液が塗布された体積増分の少なくとも一部が活性薬剤(複数可)を含有する。そして、前記体積増分は、好ましくは、活性薬剤を含まない担体構造体上に少なくとも半固体、好ましくは固体の活性薬剤含有構造体を少なくとも区画ごとに形成するように、層ごとに塗布される。前記液は、例えば、溶融材料または少なくとも流動性材料または液体であり得る。ここで、前記1つ以上の活性薬剤含有体積増分は、溶融材料または少なくとも流動性材料中に活性薬剤(複数可)を含有するか、または液体中に溶解、分散または乳化したものである。
【0011】
塗布される体積増分は、本質的に自由な様式で定義することができ、例えば、小滴、球、点、円柱、立方体、直方体または他の形態の形態をとることができる。好ましいボクセルの形態は、例えば、小滴および球状ボクセルである。体積増分の体積の形状(上記の例など)とサイズは、本質的に自由に、かつ互いに独立して組み合わせることができる。
【0012】
一層の塗布される体積増分間の結合は、さまざまな方法で実現できる。一実施形態では、そのようなボクセル間の結合は、例えば溶融可能な材料を使用する場合、担体構造体上に塗布した後の固化によって生じることがあり、その固化は単純な冷却および/または既知の物質による化学的なものなどの異なる機構によって行うことができる。別の実施形態では、適切な結合剤をボクセル材料、例えば、分散液または溶液に加えることができ、この結合剤は塗布後にボクセルを硬化させ、結合剤による硬化は、例えば、光源、好ましくはレーザ装置などの印刷装置内の適切な熱源によって加えることができる熱によって生じさせることができる。結合剤による硬化はまた、対応するスターター分子および/または適切な波長の光によって化学的に生じ得、後者は好ましくはレーザ装置により重ねて放射できる。さらなる実施形態では、体積増加の前記液は、1つ以上の出発化合物、典型的には1つ以上のポリマーのモノマーを含むことができ、ボクセルの塗布後、光、熱または他の重合開始剤などの適切な手段によって重合が開始され、ボクセルが硬化して隣接するボクセルに結合される。
【0013】
さらに好ましい実施形態では、活性薬剤(複数可)を含む物質または組成物の二次元配置が、担体構造体上に適用される、すなわち印刷される。2D印刷プロセスは、上述のように、例えば、最初に、好ましくは上記のプロセスの1つを通じて、活性薬剤(複数可)を含むかまたは含まない最終的な2次元配置が次に塗布される3次元活性薬剤含有配置の少なくとも区画ごとに塗布することによって、上述した3D印刷プロセスと組み合わせることもできる。好ましい実施形態によれば、特に2D印刷プロセスにおいて、活性薬剤(複数可)を含む液、好ましくは活性薬剤(複数可)を含む溶液、エマルジョンまたは懸濁液が、区画ごとに塗布される、すなわち印刷される。活性薬剤含有溶液、エマルジョンまたは懸濁液のような液の塗布後、液の一部、例えば、それぞれ溶液または懸濁液またはエマルジョンは、典型的には、担体構造体によって吸収され、別の部分は、担体の表面上に残る。その後、(残りの)液(溶液、懸濁液、またはエマルジョンなど)が蒸発し、固体、少なくとも半固体の成分が担体構造体上に残り、この成分に活性薬剤(複数可)が充填される。
【0014】
適切な担体または基体は、それぞれ、ボクセル印刷法だけでなく、FLM/FFFプロセスにも特に好ましい材料で、医薬活性薬剤(複数可)が存在し、例えば、低融点ワックスおよびポリマーのようなホットメルト押出(HME)に適する担体である。低融点担体とは別に、HME混合物は、結合剤、軟化剤、抗酸化剤、香料、甘味料などのさらなる処理剤および助剤を含むことができる。適切なHME担体および軟化剤は、例えば、Crowleyら(2007)Drug Development and Industrial Pharmacy,33,pages 909-926(担体:917~919頁、特に表1;軟化剤:917頁および920頁、特に表2)に開示されており、本明細書では、上記の箇所を明示的に参照するものとする。
【0015】
上述の付加的なプロセス、特にボクセル印刷プロセス(または「ボクセルジェッティング(Voxel-Jetting)」)は、一般的におよび好ましくは、コンピュータ支援によって実行される。したがって、印刷される対象物の計算された2次元または3次元の画像、少なくとも、活性薬剤(複数可)を含む材料の配置の画像が、例えば、典型的なCADプログラムによって作成される。剤形または少なくとも活性薬剤含有配置のコンピュータ生成表現は、既存の剤形をスキャンすることによっても達成することができる。好ましいボクセル印刷の場合、コンピュータで生成されたモデル画像は、次に、所望の、原則的に自由に選択可能な体積増分(ボクセル)に細分化され、実際の剤形の分解能は、体積増分が小さいほど高くなる。活性薬剤および/または着色物質、ならびにさらに任意選択で必要とされる材料およびそれらの量(体積増分中の濃度)は、最終的に印刷される個々の体積増分に割り当てることができる。ボクセル印刷に適した印刷装置は、例えば、US2017/03,68755A1およびUS6,070,107に記載されている。FFFまたはFLMプロセスの場合、印刷される配置または剤形はそれぞれ、コンピュータ支援により対応するフィラメントに細分化される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、複数の活性薬剤、すなわち2つ以上の活性薬剤が工程(ii)で塗布され、活性薬剤は、1つの工程または複数の別々の工程で一緒に印刷することができる。この実施形態では、活性薬剤は、担体構造体の同じまたは異なる区画に塗布することができる。この実施形態では、活性薬剤は、互いに分離された区画内に、または空間的にもう一方の上に塗布することができる。
【0017】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、2Dおよび/または3D印刷を使用して、少なくとも1つの着色物質を、塗布された物質が担体構造体上で視認可能な少なくとも1つの情報構造を形成するような方法で担体構造体の少なくとも1つの区画上に塗布することをさらに含む。これにより、着色物質(複数可)は活性薬剤(複数可)とは別に塗布することができる。医薬活性薬剤(複数可)と共に着色物質(複数可)を塗布することが好ましい。一実施形態では、それぞれの物質は、このように、それぞれの活性薬剤が塗布された1つまたは複数の区画をそれぞれ標識することができる。したがって、この実施形態では、活性薬剤を含まない担体に印刷された活性薬剤および完全な剤形におけるそれらの分類に関する情報を提供することができる。本発明のこの実施形態のさらなる発展として、活性薬剤含有区画は、それぞれの着色物質の濃度によって反映される活性薬剤の異なる量または濃度(複数可)を含むことができる。混合物(複数可)のそれぞれの選択によって、完全な可視スペクトルを使用することができるように、異なる着色物質を混合(例えば、FLM/FFFプロセスの場合はフィラメントに、結合剤噴射法の場合は粉末に、または好ましい実施形態のボクセルに)することができることを理解されたい。
【0018】
本発明によれば、用語「着色物質」は、発光性の、特に蛍光性の物質も含む。
【0019】
それぞれ、着色物質(複数可)によって形成されたまたは生成された情報構造は、いくつかの異なる情報構造が、異なる着色物質によって、および/または本質的に自由に選択して組み合わせることができる同じ着色物質の異なる量によって使用され得ることにより、様々な情報を表示することができる。本発明によれば、少なくとも1つの情報構造が、担体構造体上に塗布された活性薬剤の種類または性質、および/または担体構造体上に塗布される活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または剤形の服用予定時点または服用予定期間、および/または剤形の服用予定日、および/または患者関連データ(患者の名前、年齢、性別、投薬、疾患など)、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または剤形を提供する製薬会社、および/または剤形を調剤する医療ユニットに関する情報をコード化することが特に意図されている。
【0020】
情報構造は、幅広い用途から選択することができる。したがって、前記物質(複数可)は、QRコード(登録商標)、文字および/または数字の形態で印刷することができる。線、格子、点、2次元パターンなどのような異なるパターンも印刷することができ、それにより、ボクセル印刷の好ましい実施形態は、一般に最も多様な可能性を提供することが理解される。したがって、コードの印刷画像は、活性薬剤を含むことができ、同時に、上述のように、患者、医師、薬剤師および/または資格のある医療または医薬の専門家に関する所望のデータをコード化することができる。
【0021】
当業者は、選択された特定の付加的な製造プロセスに応じて、任意に存在する着色物質(複数可)が、医薬活性薬剤(複数可)と共にそれぞれの基体組成物中に存在し得ることを理解している。したがって、FLM/FFFプロセスの場合、着色物質(複数可)は、例えば、印刷されたフィラメントのフィラメント担体または基体物質中に活性薬剤(複数可)と共に存在する。同じことが、結合剤噴射プロセスの場合の粉末にも当てはまる。また、本発明によれば、好ましいボクセル印刷の場合、着色物質(またはそれ以上)は、溶融した基体物質または選択された体積増分を意図する溶液または分散液中に活性薬剤(複数可)と共に存在する。
【0022】
本発明の方法を使用することにより、錠剤、例えば、長方形の錠剤、トローチ剤、移植可能な錠剤、多用途錠剤、分散錠、遅延錠、膣錠、眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、改良放出錠、ラッカー錠、および腸溶性コーティング錠、カプセル、プラスター、座薬、またはODF(経口溶解性フィルムまたは経口分解性フィルム)製品のような薄膜などの様々な固体または半固体の剤形が製造され得る。
【0023】
本発明によれば、担体構造体はまた、上記で概説したようなFLM/FFF印刷、結合剤噴射および/またはボクセル印刷の方法を使用することができる付加的な製造プロセスによって製造することができる。したがって、本発明によれば、担体構造体は、対応する印刷装置におけるそのようなプロセスによって最初に製造することができ、その後に、活性薬剤含有配置が適用され得るような方法で提供され得る。あるいは、担体構造体は、医薬品剤形のための従来の製造プロセスによって生成することができ、次に、適切な2Dまたは3D印刷装置(ボクセル印刷用に設計された印刷装置に特に好ましい)に提供し、そして最終的に、活性薬剤含有配置が担体構造体上に生成される。
【0024】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって製造可能な、半固体または固体の剤形、好ましくは上記の剤形である。
【0025】
したがって、本発明は、少なくとも1つの医薬活性薬剤が2次元および/または3次元配置で少なくともその区画に塗布された、活性薬剤を含まない担体構造体を含む固体または半固体の剤形に関する。上記のように、複数の医薬活性薬剤(すなわち、2つ以上の活性薬剤)を、担体構造体の同じまたは異なる区画に塗布することもできる。この方法について既に上で概説したように、活性薬剤は、互いに分離された区画内に、または空間的にもう一方の上に塗布することができる。
【0026】
好ましくは、剤形はまた、塗布された物質が担体構造体上に少なくとも1つの視認可能な情報構造を形成できるように、担体物質の少なくとも1つの区画上に塗布された着色物質を有する。この態様の好ましい実施形態は、本発明による方法との関連で既に概説されている。特に、少なくとも1つの情報構造は、担体構造体上に塗布される活性薬剤の種類または性質、および/または担体構造体上に塗布された活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または剤形の服用予定時点または服用予定期間、および/または剤形の服用予定日、および/または患者関連データ(患者の名前、年齢、性別、投薬、疾患など)、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または剤形を提供する製薬会社、および/または剤形を調剤する医療ユニットに関してその中に含む情報をコード化することができる。患者関連データは、好ましくは、患者の名前、年齢、性別、投薬、および疾患から選択される。
【0027】
既に上記で概説したように、剤形は、様々な情報構造、好ましくは前記方法について上述したものを含むことができる。
【0028】
図1A~1Dは、本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。ここでは、服用時点または同様の時点における患者関連のデータまたは情報をそれぞれ含む活性薬剤含有配置が、平坦で活性薬剤を含まない担体構造体上に印刷されている。1 患者の名前または住所;2 動的投与のためのより高い解像度の印刷スペースの拡張;3 バッチ番号または患者ID;4 服用時点の個人的なメモ。
【0029】
図2は、本発明の代表例の剤形の上面の写真による表示を示している。ここでは、QRコード(登録商標)を含む活性薬剤含有配置が、活性薬剤を含まない担体上に印刷されている。QRコード(登録商標)の形態で本発明に従って印刷された情報構造は、患者の安全性を高めることができ、電子患者ファイルへの接続をさらに有利に確保することができる。
【0030】
図3Aおよび3Bは、本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。ここでは、図形印刷パターンが適用されており、特に子供および老人の患者にとって、薬剤の簡単な識別を確実にし、コンプライアンスの向上に役立つ。
【0031】
図4Aおよび4Bは、本発明の異なる代表例の剤形の上面視概略図を示している。ここでは、活性薬剤含有配置がサブエリアに適用されている。
図4Aは、その後の調整のために、異なる投与量の印刷エリアを有する剤形を示している。
図4Bは、2つの異なる活性薬剤濃度または活性薬剤を有する印刷エリアを有する剤形を示している。
【0032】
図5は、本発明の代表例の剤形の上面視概略図を示しており、会社のロゴを示す情報構造が適用されている。同様の方法で、診療所、製薬会社、製造業者または病院のロゴのサインを適用することもできる。そのような剤形は、それぞれのサインを使用するユニットとともに患者の識別を高めるのに役立つ。
【0033】
本発明は、特に、以下の態様および好ましい実施形態に関する。
【0034】
1.活性薬剤を含まない担体構造体および前記担体構造体の少なくとも1つの区画に提供される少なくとも1つの医薬活性薬剤を含む固体または半固体の医薬品剤形を製造するための方法を提供するものであり、以下の工程:
(i)少なくとも1つの医薬活性薬剤の2Dおよび/または3D印刷用に設計された印刷装置内に、少なくとも1つの活性薬剤を含まない担体構造体を供給する工程;および
(ii)前記印刷装置において、前記担体構造体の表面の少なくとも1つの区画に、2Dおよび/または3D印刷によって少なくとも1つの医薬活性薬剤を塗布する工程;
を含む方法。
【0035】
2.工程(ii)において、複数の活性薬剤が塗布され、前記活性薬剤が1つの工程または複数の別々の部分的な工程で一緒に塗布される、項目1に記載の方法。
【0036】
3.前記活性薬剤が、前記担体構造体の同じまたは異なる区画に塗布される、項目2に記載の方法。
【0037】
4.前記活性薬剤が、互いに分離された区画内に、または空間的にもう一方の上に塗布される、項目3に記載の方法。
【0038】
5.前記方法は、前記塗布された物質が前記担体構造体上で視認可能な少なくとも1つの情報構造を形成するように、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に、2Dおよび/または3D印刷によって少なくとも1つの着色物質を塗布することをさらに含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
6.前記少なくとも1つの着色物質が、前記少なくとも1つの医薬活性薬剤と共に塗布される、項目5に記載の方法。
【0040】
7.前記少なくとも1つの情報構造が、前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤の種類もしくは性質、および/または前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または前記剤形の服用予定時点もしくは服用予定期間、および/または前記剤形の服用予定日、および/または患者関連データ、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または前記剤形を提供する製薬会社、および/または前記剤形を調剤する医療ユニットに関する情報をコード化する、項目5または6に記載の方法。
【0041】
8.前記患者関連データが、患者の名前、年齢、性別、投薬、および疾患からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
【0042】
9.前記情報構造が、QRコード(登録商標)、文字、および数字からなる群から選択される、項目5~8のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
10.前記担体構造体が、錠剤、カプセル、座薬、プラスターまたは薄膜として存在する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
11.前記錠剤が、長方形の錠剤、トローチ剤、移植可能な錠剤、多用途錠剤、分散錠、遅延錠、膣錠、眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、改良放出錠、ラッカー錠、および腸溶性コーティング錠からなる群から選択される項目10に記載の方法。
【0045】
12.前記方法が、溶融フィラメント製造(FFF)法または溶融層モデリング(FLM)法である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
13.前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が、前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が埋め込まれているフィラメント担体物質を含む1つのフィラメントまたは異なるフィラメント中に存在する、項目12に記載の方法。
【0047】
14.前記方法が、結合剤噴射法である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
15.前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)が、1つまたは複数の粉末担体物質中に存在する、項目14に記載の方法。
【0049】
16.工程(ii)において、液の単一体積増分が塗布され、前記液が塗布された体積増分の少なくとも一部が前記活性薬剤(複数可)および前記任意の着色物質(複数可)を含有し、前記体積増分が塗布後に凝固する、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0050】
17.前記体積増分が、それらが少なくとも部分的に互いに接触するように層ごとに塗布される、項目16に記載の方法。
【0051】
18.前記液が溶融材料または液体である、項目16または17に記載の方法。
【0052】
19.工程(ii)が、以下の部分的な工程を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法:
1つまたは複数の前記活性薬剤を含有する溶液、懸濁液またはエマルジョンを前記担体物質の少なくとも1つの区画に塗布する工程;および
前記活性薬剤(複数可)が、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に残るように、前記溶液、前記懸濁液または前記エマルジョンを蒸発させる工程。
【0053】
20.前記担体構造体が、前記蒸発工程中に、前記溶液、前記懸濁液または前記エマルジョンの一部を吸収する、項目19に記載の方法。
【0054】
21.少なくとも1つの医薬活性薬剤を含有し、項目1~20のいずれか一項に記載の方法によって調製される固体または半固体の医薬品剤形。
【0055】
22.少なくとも1つの医薬活性薬剤を含む少なくとも2次元および/または3次元配置が少なくとも区画ごとに塗布される、活性薬剤を含まない担体構造体を含む固体または半固体の剤形。
【0056】
23.複数の活性薬剤が前記担体構造体上に塗布される、項目22に記載の剤形。
【0057】
24.前記活性薬剤が前記担体構造体上の同じまたは異なる区画に塗布される、項目23に記載の剤形。
【0058】
25.前記活性薬剤が、互いに分離した区画で、または空間的に一方が他方の上にある状態で塗布される、項目24に記載の剤形。
【0059】
26.前記塗布された物質が前記担体構造体上で視認可能な少なくとも1つの情報構造を形成するように、前記担体構造体の少なくとも1つの区画に、少なくとも1つの着色物質をさらに塗布する、項目23~25のいずれか一項に記載の剤形。
【0060】
27.前記少なくとも1つの情報構造が、前記担体構造体上に塗布された前記活性薬剤の種類もしくは性質、および/または前記担体構造体上に塗布される前記活性薬剤(複数可)の量(複数可)、および/または前記剤形の服用予定時点もしくは服用予定期間、および/または前記剤形の服用予定日、および/または患者関連データ、および/または費用負担の主体、および/または主治医、および/または前記剤形を提供する製薬会社、および/または前記剤形を調剤する医療ユニットに関する情報をコード化する、項目26に記載の剤形。
【0061】
28.前記患者関連データが、患者の名前、年齢、性別、投薬、および疾患からなる群から選択される、項目27に記載の剤形。
【0062】
29.前記情報構造が、QRコード(登録商標)、文字、および数字からなる群から選択される、項目26~28のいずれか一項に記載の剤形。
【0063】
30.錠剤、カプセル、座薬、プラスターまたは薄膜として存在する、項目23~29のいずれか一項に記載の剤形。
【0064】
31.前記錠剤が、長方形の錠剤、トローチ剤、移植可能な錠剤、多用途錠剤、分散錠、遅延錠、膣錠、眼錠、コーティング錠、マトリックス錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、改良放出錠、ラッカー錠、および腸溶性コーティング錠からなる群から選択される項目30に記載の剤形。
【国際調査報告】