(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼ製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20220801BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220801BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220801BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220801BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220801BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220801BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220801BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20220801BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P1/04 ZNA
A61P9/14
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/32
A61K9/48
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/18
A61K47/02
A61P1/12
A61P39/00
C12N9/16 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571800
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020035814
(87)【国際公開番号】W WO2020247421
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516293727
【氏名又は名称】シンセティック・バイオロジクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレコ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ステイプルトン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリストル、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバート、スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】フレイレ、クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD11
4B050JJ06
4B050LL01
4C076AA45
4C076AA53
4C076AA95
4C076CC03
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4C076DD67
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4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA44
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4C084MA02
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4C084NA03
4C084NA05
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA361
4C084ZA441
4C084ZA661
4C084ZA731
4C084ZC751
(57)【要約】
本発明は、一つには、アルカリホスファターゼを含む製剤を提供する。特に、アルカリホスファターゼを含む調節放出製剤が提供され、これは、相当な量のアルカリホスファターゼを腸に放出する。アルカリホスファターゼ製剤の治療的使用もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相当な量のホスファターゼ(AP)ベースの薬剤をGI管に放出する、前記APベースの薬剤を含む少なくとも1つの調節放出ペレットを含む調節放出製剤であって、各調節放出ペレットが、
約1~10重量%のAPベースの薬剤と、
約75~95重量%のスクロース球と、
約5~15重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約0.5~2重量%の緩衝塩と、
を含む、前記調節放出製剤。
【請求項2】
各調節放出ペレットが、
約5重量%のAPベースの薬剤と、
約85重量%のスクロース球と、
約9重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約1重量%の緩衝塩と、
を含む、請求項1に記載の調節放出製剤。
【請求項3】
各調節放出ペレットが、
約4.7重量%のAPベースの薬剤と、
約84.9重量%のスクロース球と、
約9.3重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約1.2重量%の緩衝塩と、
を含む、請求項1に記載の調節放出製剤。
【請求項4】
約20~40%の腸溶性ポリマーの重量増加を有し、任意選択で約30%の腸溶性ポリマーの重量増加を有する、単層腸溶性コーティングをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項5】
約20~40%の腸溶性ポリマーの重量増加を有する腸溶性コーティングの層と、
約5~15%のヒドロキシプロピルセルロースの重量増加を有する(任意選択で約30%の腸溶性ポリマーの重量増加を有し、約7%のヒドロキシプロピルセルロースの重量増加を有する)腸溶性コーティングの層と、
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項6】
相当な量のAPベースの薬剤をGI管に放出する、カプセルに含有される少なくとも1つの調節放出ペレットを含む調節放出製剤であって、
約5~15重量%のAPベースの薬剤と、
約30~40重量%のスクロース球と、
約15~25重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約2~4重量%の緩衝塩と、
約25~35重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、前記調節放出製剤。
【請求項7】
前記調節放出製剤が、
約10重量%のAPベースの薬剤と、
約38重量%のスクロース球と、
約19重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約2重量%の緩衝塩と、
約26重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、請求項6に記載の調節放出製剤。
【請求項8】
前記調節放出製剤が、
約9.7重量%のAPベースの薬剤と、
約37.7重量%のスクロース球と、
約19.4重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約2.4重量%の緩衝塩と、
約26.3重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、請求項6に記載の調節放出製剤。
【請求項9】
前記カプセルが、約25mgまたは5mgのAPベースの薬剤を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項10】
相当な量のAPベースの薬剤をGI管に放出する、カプセルに含有される少なくとも1つの調節放出ペレットを含む調節放出製剤であって、
約5~15重量%のAPベースの薬剤と、
約35~45重量%のスクロース球と、
約15~25重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約0.1~1重量%の緩衝塩と、
約20~30重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、前記調節放出製剤。
【請求項11】
前記調節放出製剤が、
約10重量%のAPベースの薬剤と、
約39重量%のスクロース球と、
約20重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約0.5重量%の緩衝塩と、
約26重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、請求項10に記載の調節放出製剤。
【請求項12】
前記調節放出製剤が、
約10.0重量%のAPベースの薬剤と、
約38.9重量%のスクロース球と、
約20.0重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約0.3重量%の緩衝塩と、
約26.3重量%の腸溶性ポリマーと、
を含む、請求項10に記載の調節放出製剤。
【請求項13】
前記カプセルが、約15mgまたは5mgのAPベースの薬剤を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項14】
約1~10%のHTP-20をさらに含む、請求項6~13のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項15】
前記カプセルが、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項6~12のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項16】
前記製剤が、2~8℃で少なくとも1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または12ヶ月保管された場合、少なくとも約80%のIAP活性を維持する、請求項1~12のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項17】
前記APベースの薬剤が、配列番号1~17及び39のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項18】
前記APベースの薬剤が、配列番号39と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の調節放出製剤。
【請求項19】
前記APベースの薬剤が、小腸で実質的に放出される、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項20】
前記APベースの薬剤が、大腸で実質的に放出される、請求項1~18のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項21】
前記製剤が、コア粒子及び前記コア粒子上のベースコートを含み、前記ベースコートが前記APベースの薬剤を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項22】
前記コア粒子が、スクロースを含む、請求項21に記載の調節放出製剤。
【請求項23】
前記製剤が、複数のコア粒子を含む、請求項21~22のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項24】
前記コア粒子のサイズが、直径約1mm~約1.3mmである、請求項23に記載の調節放出製剤。
【請求項25】
前記製剤が、胃液中で実質的に安定している調節放出コーティングをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項26】
前記製剤が、腸内細菌叢に存在する微生物酵素によって分解される調節放出コーティングをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項27】
前記製剤が、pH依存的である溶解性を有する調節放出コーティングを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項28】
前記製剤が、時間依存的な浸食プロファイルを有する調節放出コーティングを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項29】
前記製剤が、追加の治療剤をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項30】
前記緩衝塩が、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、及び硫酸亜鉛から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項31】
前記腸溶性ポリマーが、EUDRAGIT L30 D-55、FS 30D、L 100-55、L 100、L 12,5、L 12,5 P、RL 30 D、RL PO、RL 100、RL 12,5、RS 30 D、RS PO、RS 100、RS 12,5、NE 30 D、NE 40 D、NM 30 D、S 100、S 12,5、及びS 12,5 Pから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の調節放出製剤。
【請求項32】
前記腸溶性ポリマーが、EUDRAGIT L 30 D-55(ポリ(メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー)1:1)である、請求項31に記載の調節放出製剤。
【請求項33】
放射線誘発性障害の治療または予防が必要な患者においてそれを治療または予防する方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載の製剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記放射線誘発性障害が、がんの放射線療法に起因する腸炎、放射線誘発性腸疾患、大腸炎、及び直腸炎から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記放射線誘発性障害が、腸毒性を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線誘発性障害が、粘膜萎縮、血管硬化、及び進行性腸壁線維症のうちの1つ以上を含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
放射線が電離放射線を含み、任意選択で、前記放射線がX線、ガンマ線、及び荷電粒子のうちの1種以上を含む、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記放射線誘発性障害が放射線療法の副作用である、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記放射線療法が、約20Gy、または約30Gy、または約40Gy、または約50Gy、または約60Gy、または約70Gy、または約80Gy、または約90Gy、または約100Gyの線量(任意選択で分割される)を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
相当な量のAPベースの薬剤をGI管に放出する、前記APベースの薬剤を含む少なくとも1つの調節放出ペレットを含む調節放出製剤であって、
各調節放出ペレットが、
配列番号39と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、約5重量%のAPベースの薬剤と、
約85重量%のスクロース球と、
約9重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、
約1重量%の緩衝塩と、
約30%の腸溶性ポリマーの重量増加を有する単層腸溶性コーティングであって、前記腸溶性ポリマーが、EUDRAGIT L 30 D-55(ポリ(メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー)1:1)である前記単層腸溶性コーティングと、
を含む、前記調節放出製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つには、アルカリホスファターゼを含む製剤及びその使用を提供する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月3日に出願された米国仮特許出願第62/856,309号の利益を主張するものであり、その全ての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの記載
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:SYN-044PC_ST25.txt、作成日:2020年6月2日、ファイルサイズ:78,381バイト)。
【背景技術】
【0004】
アルカリホスファターゼは、生理的pH及びより高いpHで、リン酸エステルの加水分解を触媒し様々な標的基質を脱リン酸化する二量体金属酵素である。アルカリホスファターゼ(AP)は、原核生物及び真核生物(例えば、E.coli及び哺乳動物)中で見出される。哺乳動物のAPは、腸恒常性、粘膜バリア機能、共生細菌の増進、及び病原体からの防御に重要な役割を果たすことが示されている。哺乳動物のAPは、主にリポ多糖(LPS、Toll様受容体4(TLR4)アゴニスト)、フラジェリン(TLR5アゴニスト)、及びCpG DNA(TLR9アゴニスト)を標的とすることによりその特性を発揮する。APはまた、腸管腔ヌクレオチド三リン酸(NTP、例えば、ATP、GTPなど)を分解し、これにより、善玉菌の増殖が促進され、ディスバイオシスが元に戻る。
【0005】
胃腸(GI)障害の治療は、GI管の健常機能を維持するメディエーターとしてのマイクロバイオームの役割にますます頼るようになっている。このように、善玉菌の増殖を促進しディスバイオシスを元に戻すアルカリホスファターゼ(AP)の役割は、GI障害の治療選択肢の進歩における重要かつ成長中の研究分野である。したがって、APは、例えば、様々な胃腸(GI)障害を治療するためのマイクロバイオーム保護物質として臨床的に使用され得る。
【0006】
しかしながら、APを含むタンパク質生物学的製剤の製剤化は、薬物の投与経路に関して考慮しなければならない様々な考慮事項を考えると、特に困難な課題である。さらに、安定であり、かつGI管への標的放出を可能にするのに十分な溶解/放出プロファイルを示す層状薬物の調節放出製剤を提供することは、タンパク質生物学的製剤の複雑な性質に起因して困難である可能性がある。
【0007】
したがって、治療的介入に使用するための新規アルカリホスファターゼ製剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、アルカリホスファターゼ(AP)ベースの薬剤及び/または追加の治療剤を含む調節放出製剤を提供する。様々な実施形態では、製剤は、相当な量のAPベースの薬剤をGI管に放出する。一実施形態では、製剤は、少なくとも1つのコア粒子及びコア粒子上のベースコートを含み、ベースコートは、APベースの薬剤を含む。別の実施形態では、製剤は、少なくとも1つのコア粒子を含み、APベースの薬剤は、コア粒子内に封入されている。様々な実施形態では、製剤は、コア粒子上に配置された遅延放出コーティングなどの調節放出コーティングを含む。いくつかの実施形態では、遅延放出コーティングは、胃液中で実質的に安定である。いくつかの実施形態では、遅延放出コーティングは、腸液中で実質的に安定である。一実施形態では、遅延放出コーティングは、EUDRAGIT化合物を含む。様々な実施形態では、製剤は、スクロースペレットの形態であり得る。いくつかの実施形態では、ペレットは、複数のコア粒子を含む。
【0009】
これらのAPベースの薬剤は、CDI及び/またはC.difficile関連疾患またはGI管における他の抗生物質誘発性有害作用の予防または治療を含む、多くの療法において使用される。本発明のAPベースの薬剤はまた、代謝障害、神経障害、セリアック病、嚢胞性線維症、放射線腸疾患、敗血症、及びHIV介在性腸ディスバイオシスを含むがこれらに限定されない、マイクロバイオーム関連障害に対する療法において使用される。
【0010】
例えば、APベースの薬剤は、患者がマイクロバイオームに悪影響を与える過剰な抗生物質に起因し得る疾患から保護されながら、抗生物質療法を受けることを可能にするのに使用され得る。そのような使用は、抗生物質の全身的な有用性を妨げない。理論に束縛されることを望まないが、むしろ、APベースの薬剤は、腸内微生物叢を維持し、これにより本明細書に記載の様々な病態に関連する微生物叢の破壊を予防する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-2】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-3】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-4】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-5】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-6】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-7】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図1-8】本明細書に記載の製剤中に存在するアルカリホスファターゼベースの薬剤に関する配列を示す。
【
図2】IAP-結合剤評価における96時間にわたるIAP活性を示す。ヒストグラムの各セットには様々な時点が表示されており、左端のバーは0時間を表し、中央のバーは24時間を表し、右端のバーは96時間を表す。
【
図3】IAP-賦形剤評価における16日間にわたるIAP活性を示す。ヒストグラムの各セットには様々な時点が表示されており、各バーは、左端から右端のバーへ0時間、24時間、48時間、6日目、及び16日目を表す。
【
図4】1つのコーティングペレット(30%のEUDRAGIT L30 D-55がペレット上にコーティングされている)のSEM写真を示す。
【
図5】1つのコーティングペレット(30%のEUDRAGIT L30 D-55がペレット上にコーティングされている)の断面のSEM写真を示す。
【
図6】UV分析による、絶食状態の人工胃液(FaSSGF)/絶食状態の人工腸液(FaSSIF)またはFaSSIFのみを含む溶解装置におけるコーティングされたIAPペレットの2つの製剤からの放出パーセントを示す。
【
図7】酵素アッセイによる、FaSSGF/FaSSIFまたはFaSSIFのみでのコーティングペレットの活性パーセントを示す。
【
図8】線形トレンドラインの式に基づいて様々な時点での試料濃度を算出するために作成した検量線を示す。「SYN-020」は、IAPと同義(すなわち、配列番号39)である。
【
図9】1ヶ月経過後のコーティングされたペレットカプセルの溶解試験を用いた安定性の結果を示す。
【
図10】コーティングペレットを約1年間保管した溶解試験の結果を示す。
【
図11A】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11B】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11C】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11D】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11E】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11F】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11G】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【
図11H】非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセルの投与量の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な態様では、本発明は、アルカリホスファターゼ(AP)ベースの薬剤及び/または追加の治療剤を含む調節放出製剤を提供する。様々な実施形態では、製剤は、相当な量のAPベースの薬剤をGI管に放出する。一実施形態では、製剤は、少なくとも1つのコア粒子及びコア粒子上のベースコートを含み、ベースコートは、APベースの薬剤を含む。様々な実施形態では、製剤は、コア粒子上に配置された遅延放出コーティングなどの調節放出コーティングを含む。いくつかの実施形態では、遅延放出コーティングは、胃液中で実質的に安定である。一実施形態では、遅延放出コーティングは、EUDRAGIT化合物を含む。
【0013】
アルカリホスファターゼベースの薬剤
本発明は、一つには、1つ以上のアルカリホスファターゼベースの薬剤(APベースの薬剤)の医薬組成物、製剤、及び使用に関する。本発明で利用することができる例示的なAPベースの薬剤としては、腸アルカリホスファターゼ(IAP;例えば、ヒトIAP、仔ウシIAP、もしくはウシIAP、ニワトリIAP、ヤギIAP)、ウシ腸アルカリホスファターゼ(bIAP)、組換えウシ腸アルカリホスファターゼ(rbIAP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、胎盤様アルカリホスファターゼ、生殖細胞アルカリホスファターゼ(GCAP)、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNAP;肝臓、腎臓、及び骨に主に見られる)、骨アルカリホスファターゼ、肝臓アルカリホスファターゼ、腎臓アルカリホスファターゼ、細菌アルカリホスファターゼ、真菌アルカリホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ、修飾IAP、組換えIAP、またはアルカリホスファターゼ活性を含む任意のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
様々な実施形態では、本発明は、腸アルカリホスファターゼ(IAP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、生殖細胞アルカリホスファターゼ(GCAP)、及び組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNAP)を含むがこれらに限定されない哺乳動物アルカリホスファターゼの使用を企図する。
【0015】
IAP
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤はIAPである。IAPは、小腸近位で産生され、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して腸細胞に結合される。一部のIAPは、細胞からシェディングされた小胞とともに、ホスホリパーゼを介して細胞から除去された可溶性タンパク質として腸管腔に放出される。次に、この酵素は小腸及び大腸を通過し、これにより糞便からいくつかの活性酵素が検出され得る。一実施形態では、IAPはヒトIAP(hIAP)である。一実施形態では、IAPは、ウシIAP(bIAP)としても知られる仔ウシIAP(cIAP)である。bIAPには複数のアイソザイムがあり、例えば、bIAP Iよりも高い比活性を有するbIAP II及びbIAP IVがある。一実施形態では、IAPは、cIAPまたはbIAPアイソザイム(例えば、bIAP I、II、及びIV)のいずれか1つである。一実施形態では、IAPはbIAP IIである。別の実施形態では、IAPはbIAP IVである。
【0016】
IAPバリアント
IAPの定義には、IAPバリアントも含まれる。IAPバリアントは、親の野生型配列と比較して、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾、一般的にはアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、本発明のIAPは、本明細書に開示される配列のいずれかと少なくとも約60%(例えば、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、または約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、または約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%)の配列同一性を有するアミノ配列を含む。さらに、IAPバリアントは、本明細書に記載されているように測定されたそれらの生化学的活性のほとんどまたは全てを保持している。
【0017】
哺乳動物アルカリホスファターゼは、GPIアンカー型タンパク質である。それらはシグナルペプチドを有しており、分泌経路に翻訳される。小胞体(ER)に入ると、タンパク質はグリコシル化されフォールディングされる。2つのジスルフィド結合と、表面では近づくことができないように見える単一の遊離システインとが存在する。後期ERでは、カルボキシ末端が除去され、GPIアンカーが付加される。したがって、GPIアンカリングは、アルカリホスファターゼのカルボキシ末端で生じるプロセスである。アンカー部位に終止コドンを含めることにより、生物学的に活性なタンパク質(ホモ二量体と推察される)の分泌が可能になる。コンセンサス配列は存在しないが、カルボキシ末端には、オメガ、オメガ+1、及びオメガ+2と呼ばれる3つのアミノ酸が含まれ、その後に親水性アミノ酸の短い区間、次に疎水性アミノ酸の区間が続く。理論に束縛されることを望まないが、疎水性は、カルボキシ末端をER膜に埋め込むために極めて重要であると考えられている。そこでは、酵素反応によってカルボキシ末端がGPIアンカーに置き換えられる。
【0018】
ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(hPLAP)内では、GPIアンカーは配列DAAHのアスパラギン酸に結合している。同様に、hIAP、bIAP II、及びbIAP IVにもこのDAAH配列が保存されており、GPIアンカー部位として機能する可能性がある。hPLAPを用いた変異試験では、GPIアンカリングを防止することにより細胞内で保持されることが示される。さらに、アンカー部位周囲または疎水性ドメインにおける変異は、1)アンカーの結合を防止し細胞内保持をもたらすか、または2)アンカーの結合を遮断しないかのいずれかである。理論に束縛されることを望まないが、疎水性ドメインは、GPIアンカー結合のシグナルとして機能すると考えられている。疎水性ドメインのトランケーションまたは除去により、分泌がもたらされる。最後に、疎水性ドメインには単一の変異があり、hPLAPでは、この変異により疎水性ドメインに手を加えずにタンパク質を分泌させることが可能になる。
【0019】
他の実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は分泌タンパク質である。すなわち、いくつかの実施形態では、APベースの薬剤はGPIアンカー型ではなく、細胞内保持ではなく分泌をもたらす。これは、いくつかの方法で実現することができる。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、GPIアンカー部位を欠いている場合があり、例えば、DAAH部位が除去され分泌がもたらされる場合がある。あるいは、いくつかの実施形態ではこれを実現することができ、APベースの薬剤は、GPIアンカー部位の直前に挿入された終止コドンを含む。一実施形態では、APベースの薬剤は、DAAHコンセンサス部位のアスパラギン酸の後(例えば、hIAP及びbIAP IVのアミノ酸503またはbIAP IIのアミノ酸506)に終止コドンを含む。
図1は、終止コドンを有するHIAP(配列番号4)、終止コドンを有するbIAP II(配列番号5)、及び終止コドンを有するbIAP IV(配列番号6)を示す。一実施形態では、APベースの薬剤はbIAP IVであり、
図1(配列番号7)に示されるように、分泌されたPLAP構築物を模倣するためにアミノ酸508の後に終止コドンを含む。
【0020】
ヒトIAP
様々な実施形態では、APベースの薬剤はhIAPである。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、
図1に示される配列番号1のアミノ酸配列または本明細書に記載のバリアントを含むhIAPである(但し、本明細書で概説されるアッセイを使用して野生型酵素と比較した際に、hIAPバリアントが少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%のホスファターゼ活性を保持する場合に限る)。
【0021】
アミノ酸修飾がhIAPの定義に含まれ、アミノ酸置換は本発明において特定の用途を見出す。例えば、理論に束縛されることを望まないが、APベースの薬剤のカルボキシ末端のシステイン(例えば、配列番号1の500位)は、タンパク質フォールディングを妨害し得ると考えられている。したがって、いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、システインの変異を(例えば、配列番号1の500位に)含む。いくつかの実施形態では、システインが任意のアミノ酸で置き換えられているが、いくつかの実施形態においてはグリシンが特定の用途を見出す。さらに、C末端システインも欠失させることができる。
【0022】
当業者によって理解されるように、本明細書で論じられる通り、hIAPにさらなるアミノ酸修飾を行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、終止コドンをDAAHコンセンサス部位のアスパラギン酸の後(例えば、hIAPのアミノ酸503)に挿入することができる。
図1は、終止コドンが挿入されたhIAP(配列番号4)を示す。
【0023】
ウシIAP
いくつかの実施形態では、IAPはウシIAP(bIAP)である。
【0024】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、ウシIAP II(bIAP II)または本明細書に記載のバリアントである(但し、本明細書で概説されるアッセイを使用して、bIAPバリアントが少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%のホスファターゼ活性を保持する場合に限る)。一実施形態では、bIAP IIは、bIAP Iのシグナルペプチド及びカルボキシ末端を含む。一実施形態では、bIAP IIは、248位にアスパラギン酸を含む(bIAP IVと同様)。一実施形態では、bIAP IIは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
図1は、248Dを有するBIAP II-配列番号2を示す。シグナルペプチド及び480以降の配列は、bIAP Iに由来する。
【0025】
本明細書に記載のアミノ酸バリアントもbIAP IIの定義に含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、終止コドンをDAAHコンセンサス部位のアスパラギン酸の後(例えば、bIAP IIのアミノ酸506)に挿入することができる。
図1は、終止コドンが挿入されたbIAP II(配列番号5)を示す。
【0026】
様々な実施形態では、bIAP IIは、配列番号39のアミノ酸配列を含む。
終止コドンを有し、リーダー配列を有さないBIAP II(SYN-020)(配列番号39):
LIPAEEENPAFWNRQAAQALDVAKKLQPIQTAAKNVILFLGDGMGVPTVTATRILKGQMNGKLGPETPLAMDQFPYVALSKTYNVDRQVPDSAGTATAYLCGVKGNYRTIGVSAAARYNQCNTTRGNEVTSVINRAKKAGKAVGVVTTTRVQHASPAGAYAHTVNRNWYSDADLPADAQKNGCQDIAAQLVYNMDIDVILGGGRMYMFPEGTPDPEYPDDASVNGVRKDKQNLVQEWQAKHQGAQYVWNRTALLQAADDSSVTHLMGLFEPADMKYNVQQDHTKDPTLAEMTEAALQVLSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHDGKAYMALTEAIMFDNAIAKANELTSELDTLILVTADHSHVFSFGGYTLRGTSIFGLAPGKALDSKSYTSILYGNGPGYALGGGSRPDVNGSTSEEPSYRQQAAVPLASETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEETFVAHIMAFAGCVEPYTDCNLPAPATATSIPD
【0027】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、bIAP IVまたは本明細書に記載のそのバリアントである(但し、本明細書で概説されるアッセイを使用して、bIAP IVバリアントが少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%のホスファターゼ活性を保持する場合に限る)。一実施形態では、bIAP IVは、
図1に示される配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0028】
本明細書に記載のアミノ酸バリアントもbIAP IVの定義に含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、終止コドンをDAAHコンセンサス部位のアスパラギン酸の後(例えば、bIAP IVのアミノ酸503)に挿入することができる。
図1は、終止コドンが挿入されたbIAP IV(配列番号6)を示す。一実施形態では、APベースの薬剤はbIAP IVであり、
図1(配列番号7)に示されるように、分泌されたPLAP構築物を模倣するためにアミノ酸508の後に終止コドンを含む。
【0029】
細菌AP
様々な実施形態では、本発明は、細菌アルカリホスファターゼの使用を企図する。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Bacillus subtilisに由来する。Bacillus subtilisは、土壌及びヒトのGI管に見られるグラム陽性菌である。Bacillus subtilisは、適切にフォールディングされた高レベルのタンパク質を環境中及びヒトGI管中に分泌する。理論に束縛されることを望まないが、GI管でBacillus subtilisが分泌するタンパク質は、一般的なGIプロテアーゼによる分解に耐性である可能性があると考えられている。Bacillus subtilisは、アルカリホスファターゼ多重遺伝子ファミリーを高レベルで発現する。それらのアイソザイムのうち、アルカリホスファターゼIVは、B.subtilisにおけるアルカリホスファターゼ全体の発現及び活性の大部分に関与している。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Bacillus licheniformisに由来する。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Escherichia coliに由来する。
【0030】
したがって、例示的実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Bacillus subtilisのアルカリホスファターゼIVに由来する。一実施形態では、細菌アルカリホスファターゼは、Bacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIV、成熟タンパク質ヌクレオチド配列-配列番号16;及びBacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIV、成熟タンパク質アミノ酸配列-配列番号17、または本明細書に記載のバリアントを含む
図1に示されるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を有し得る(但し、本明細書で概説されるアッセイを使用して、hIAPバリアントが少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%のホスファターゼ活性を保持する場合に限る)。
【0031】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、触媒活性を変化させる1つ以上の変異を有する細菌アルカリホスファターゼを含む。いくつかの実施形態では、細菌アルカリホスファターゼは、それらの触媒活性が哺乳動物アルカリホスファターゼと同様であるかまたはそれより高くなるように、1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、細菌アルカリホスファターゼは、それらの脱リン酸化プロファイルを変化させる1つ以上の変異を含む。一実施形態では、本発明の細菌アルカリホスファターゼは、哺乳動物アルカリホスファターゼと同様の脱リン酸化プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、細菌アルカリホスファターゼは、比較的高pHでそれらの活性を変化させる1つ以上の変異を含む。一実施形態では、本発明の細菌アルカリホスファターゼは、比較的高pHで哺乳動物アルカリホスファターゼと同様の活性を示す。いくつかの実施形態では、細菌アルカリホスファターゼは、それらの金属の必要条件を変化させる1つ以上の変異を含む。一実施形態では、本発明の細菌アルカリホスファターゼは、哺乳動物アルカリホスファターゼと同様の金属の必要条件(例えば、Mg)を示す。
【0032】
例えば、特定の実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Bacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIVに由来し、101位、328位、A330位、及び374位に1つ以上の変異を有する。例えば、APベースの薬剤は、以下の変異:D101A、W328H、A330N、及びG374C、のうちの1つ以上を含み得る。
【0033】
融合タンパク質
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、「融合パートナー」に融合されたアルカリホスファターゼを含み、融合パートナーは、IAPドメインのN末端またはC末端のいずれかに付加されるタンパク質ドメインであり、任意選択でリンカーを含む。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼは、タンパク質フォールディング及び/またはタンパク質精製及び/またはタンパク質二量体化及び/またはタンパク質安定性を促進するタンパク質ドメインに融合される。様々な実施形態では、APベースの薬剤の融合タンパク質は、血清半減期が延長されている。様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、Fc融合タンパク質である。
【0034】
一実施形態では、アルカリホスファターゼは、免疫グロブリンFcドメイン及び/またはヒンジ領域に融合されている。一実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、IgGのヒンジ領域及び/またはFcドメインに融合されたアルカリホスファターゼを含む。
【0035】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、1つ以上の変異を含むIgGのFcドメインに融合される。いくつかの実施形態では、IgGのFcドメインにおける1つ以上の変異は、血清半減期及び寿命を増加させるように機能する。いくつかの実施形態では、IgGのFcドメインは、Kabat(Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Public Health Service,National Institutes of Health,Washington,DCを参照されたい)におけるようにEUインデックスに従って付番した、アミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、及び428~436に1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、IgGのFcドメインにおけるアミノ酸置換の少なくとも1つは、アミノ酸残基252、254、256、309、311、433または434にある。一実施形態では、アミノ酸残基252でのアミノ酸置換は、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはスレオニンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基254でのアミノ酸置換は、スレオニンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基256でのアミノ酸置換は、セリン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはスレオニンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基309でのアミノ酸置換は、プロリンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基311でのアミノ酸置換は、セリンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基385でのアミノ酸置換は、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、スレオニン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはグリシンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基386でのアミノ酸置換は、スレオニン、プロリン、アスパラギン酸、セリン、リジン、アルギニン、イソロイシン、またはメチオニンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基387でのアミノ酸置換は、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、またはアラニンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基389でのアミノ酸置換は、プロリン、セリン、またはアスパラギンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基433でのアミノ酸置換は、アルギニン、セリン、イソロイシン、プロリン、またはグルタミンによる置換である。一実施形態では、アミノ酸残基434でのアミノ酸置換は、ヒスチジン、フェニルアラニン、またはチロシンによる置換である。
【0036】
いくつかの実施形態では、IgGのFcドメインは、アミノ酸残基252、254、256、433、434または436に1つ以上の変異を含む。一実施形態では、IgGのFcドメインは、M252Y/S254T/T256Eの三重変異またはYTE変異を含む。別の実施形態では、IgGのFcドメインは、H433K/N434F/Y436Hの三重変異またはKFH変異を含む。さらなる実施形態では、IgGのFcドメインは、YTE変異及びKFH変異を組み合わせて含む。IgGのFcドメインにおける追加の例示的な変異は、例えば、Robbie,et al.,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2013),57(12):6147-6153、Dall’Acqua et al.,JBC(2006),281(33):23514-24、Dall’Acqua et al.,Journal of Immunology(2002),169:5171-80、及び米国特許第7,083,784号(これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。様々な実施形態では、IgGのFcドメインにおける1つ以上の変異は、胎児性Fc受容体(FcRn)に対する親和性を増加させる。いくつかの実施形態では、IgGのFcドメインにおける1つ以上の変異は、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、または約6.5のpHでFcRnに対する親和性を増加させる。
【0037】
様々な実施形態では、アルカリホスファターゼは、PEG、XTEN化(XTENylation)(例えば、rPEGとして)、ポリシアル酸(POLYXEN)、アルブミン、エラスチン様タンパク質(elastin-like protein)、エラスチン様タンパク質(elastin like protein)(ELP)、PAS、HAP、GLK、CTP、及びトランスフェリンのうちの1つ以上に融合される。様々な実施形態では、アルカリホスファターゼは、BioDrugs(2015)29:215-239(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される薬剤のうちの1つ以上と融合される。
【0038】
リンカー
一実施形態では、アルカリホスファターゼは、GPIアンカー部位へのリンカーを介してタンパク質ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)に融合される。例えば、アルカリホスファターゼは、GPIアンカー配列においてアスパラギン酸を介してタンパク質ドメインに融合され得る。本発明は、様々なリンカー配列の使用を企図する。様々な実施形態では、リンカーは、天然に存在するマルチドメインタンパク質に由来し得るか、または、例えば、Chichili et al.,(2013),Protein Sci.22(2):153-167、Chen et al.,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369(これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている経験的なリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、Chen et al.,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369及びCrasto et al.,(2000),Protein Eng.13(5):309-312(これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどのリンカー設計データベース及びコンピュータプログラムを使用して設計され得る。様々な実施形態では、リンカーは、機能性であり得る。例えば、限定されないが、リンカーは、本発明のAPベースの薬剤のフォールディング及び/または安定性を向上させ、発現を向上させ、薬物動態を向上させ、及び/または生物活性を向上させるように機能し得る。別の例では、リンカーは、APベースの薬剤を特定の細胞タイプまたは位置に標的化するように機能し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、リンカーは、約100アミノ酸長未満である。例えば、リンカーは、約100、約95、約90、約85、約80、約75、約70、約65、約60、約55、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、または約2アミノ酸長未満であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、可撓性である。別の実施形態では、リンカーは、剛性である。
【0040】
様々な実施形態では、リンカーは、グリシン及びセリン残基から実質的に構成される(例えば、約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約97%のグリシン及びセリン)。一実施形態では、リンカー配列は、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)である。追加の例示的なリンカーとしては、配列LE、GGGGS(配列番号19)、(GGGGS)n(n=2~4)(配列番号20~22)、(Gly)8(配列番号23)、(Gly)6(配列番号24)、(EAAAK)n(n=1~3)(配列番号25~27)、A(EAAAK)nA(n=2~5)(配列番号28~31)、AEAAAKEAAAKA(配列番号32)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号33)、PAPAP(配列番号34)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号35)、EGKSSGSGSESKST(配列番号36)、GSAGSAAGSGEF(配列番号37)、及び(XP)n(Xは任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys、またはGluを表す)を有するリンカーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リンカーは、抗体(例えば、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、ならびにIgA1、及びIgA2)を含むIgG、IgA、IgD、及びIgE)のヒンジ領域である。いくつかの実施形態では、リンカーは、PEGなどの合成リンカーである。
【0041】
本発明の例示的なFc融合構築物としては、Fc融合体を有するBIAP II(配列番号8)-下線部がFcドメイン、及びFc融合体を有するBIAP IV(配列番号9)-下線部がFcドメイン、を含む
図1に示されるものが挙げられる。
【0042】
プロ酵素融合体
本発明はさらに、プロ酵素機能のためのC末端融合体を提供する。理論に束縛されることを望まないが、哺乳動物アルカリホスファターゼはまた、不活性なプロ酵素として生成され得ると考えられている。これは、アルカリホスファターゼがATPを脱リン酸化することができ、それによりERにおける活性がERの主要なエネルギー源を排出することができるためである。理論に束縛されることを望まないが、阻害機能は、GPIアンカーの付加時に解放されるカルボキシ末端に位置すると考えられている。あるいは、フォールディングまたは金属(ZnもしくはMg)の包含などの他の活性が、活性を制御する場合がある。
【0043】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、プロ酵素である。一実施形態では、プロ酵素の活性は、カルボキシ末端によって抑制される。一実施形態では、カルボキシ末端のプロテアーゼの除去は、アルカリホスファターゼの酵素活性を再活性化させる。一実施形態では、プロ酵素は、カルボキシ末端を含まない酵素よりも効率的に分泌される。
【0044】
SaccharomycesアルカリホスファターゼであるPho8は、不活性なプロ酵素として産生される。これはGPIアンカー型ではないが、アミノ末端がリソソームから細胞質に伸びている膜貫通タンパク質である。リソソーム内で、酵素PEP4がカルボキシ末端を切断し酵素を活性化させる。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロ酵素の生成のために、アルカリホスファターゼの天然カルボキシ末端は、hPLAP由来の類似配列で置き換えられる。いくつかの実施形態では、カルボキシ末端を切断することなくタンパク質分泌を促進するために、疎水性のカルボキシテールにおいて変異が施される。例示的実施形態では、例えば、アルギニンによるロイシンの置換などの単一点変異が疎水性カルボキシ末端で生じ(例えば、ALLPLLAGTLが、例えばALLPLRAGTLに変更され)、カルボキシ末端を除去することなく酵素が分泌されることになる。
【0046】
一実施形態では、APベースの薬剤は、カルボキシ末端をその後除去することができる特定の酵素切断部位を含むように変更される。一実施形態では、APベースの薬剤は、プロテアーゼ切断部位を含む。例示的なプロテアーゼ切断部位としては、フーリン、ライノウイルス16 3Cプロテアーゼ、第Xa因子プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、ペプシン、パパインサブチリシン、サーモライシン、V-8プロテアーゼ、顎下腺プロテアーゼ、クロストリパイン、トロンビン、コラゲナーゼ、及びその他のエンドプロテアーゼにより認識される切断部位が挙げられるが、これらに限定されない。代替的実施形態では、APベースの薬剤は、GI管に存在する消化酵素により認識される切断部位を含む。そのような実施形態では、APベースの薬剤は、後にGI管において活性化されるプロドラッグとして投与され得る。
【0047】
例示的実施形態では、プロ酵素は、
図1に示される配列を有するbIAP IVのプロ酵素であり、これには、hPLAPカルボキシ末端ならびに非プロセシング分泌及び(…LEVLFQGP…での)RV3C切断のための変異を有するBIAP IV(配列番号10)、ならびにhPLAPカルボキシ末端ならびに非プロセシング分泌及び(…IEGR…での)FXa切断のための変異を有するBIAP IV(配列番号11)が含まれる。
【0048】
発現バリアント
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、宿主細胞から効率的に発現及び分泌される。一実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、宿主細胞中で効率的に転写される。別の実施形態では、APベースの薬剤は、宿主細胞中で増強されたRNA安定性及び/または輸送を示す。別の実施形態では、APベースの薬剤は、宿主細胞中で効率的に翻訳される。別の実施形態では、APベースの薬剤は、増強されたタンパク質安定性を示す。
【0049】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、宿主細胞中で効率的に発現される。一実施形態では、APベースの薬剤をコードするDNA構築物のコザック配列が最適化される。コザック配列は、リボソームに翻訳の開始を指示するATG開始コドンに隣接するヌクレオチド配列である。コザック配列の設計には柔軟性があるが、1つのカノニカル配列はGCCGCCACCATGG(配列番号38)である。-3位のプリン及び+4位のGは、翻訳開始に最も重要な塩基である。hIAP、bIAP II、及びbIAP IVの場合、2番目のアミノ酸、すなわち開始メチオニンの次のアミノ酸はグルタミンである。グルタミンのコドンは全て最初の位置にCがある。これにより、それらのコザック配列は全てATGC配列を有する。したがって、様々な実施形態では、ATGC配列はATGGに変更される。これは、2番目のアミノ酸をグリシン、アラニン、バリン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸に変更することで実現することができ、これらの全てのコドンは、最初の位置にGを有する。これらのアミノ酸は、シグナルペプチド機能と互換性があり得る。代替実施形態では、シグナルペプチド全体がカノニカルなコザック配列を有するペプチドの代わりに使用され、シグナルペプチド全体は、免疫グロブリンなどの高度に発現されるタンパク質に由来する。
【0050】
様々な実施形態では、APベースの薬剤のシグナルペプチドは、欠失及び/または置換され得る。例えば、シグナルペプチドは、タンパク質の発現を確実にするために、欠失、変異導入、及び/または置換(例えば、別のシグナルペプチドで)され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤をコードするDNA構築物は、非翻訳DNA配列を含む。そのような配列は、IAPタンパク質に対して異種であり得るか、またはIAPタンパク質に固有であり得るイントロン(天然の第1及び/または第2のイントロン及び/または天然の3’UTRを含む)を含む。理論に束縛されることを望まないが、これらの配列を含めることは、mRNAを安定化させることによりタンパク質発現を増強させると考えられている。したがって、様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤をコードするDNA構築物は、5’UTR及び/または3’UTRを含む。
図1に示されているのは、第1イントロン及び3’UTRを有する例示的なIAP DNA配列であり、これらには、天然の第1イントロン(下線付きの太字で示される)を有するhIAP-配列番号12、天然の3’UTR(下線付きの太字で示される)を有するhIAP-配列番号13、bIAP I由来の第1イントロン(下線付きの太字で示される)を有するbIAP IV-配列番号14、ならびにbIAP I由来の3’UTR(下線付きの太字で示される)を有するbIAP IV-配列番号15が含まれる。
【0052】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、本明細書に開示される配列のいずれかと少なくとも約60%(例えば、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、または約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、または約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0053】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、本明細書に記載のタンパク質配列のいずれかと比較して1つ以上のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸変異は、置換、挿入、欠失、及びトランケーションから独立して選択され得る。
【0054】
様々な実施形態では、置換はまた、非古典的アミノ酸も含み得る(例えば、セレノシステイン、ピロリジン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ(sarcosme)、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、C α-メチルアミノ酸、N α-メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体)。
【0055】
所望の特性を有する薬剤を選択するために、本発明のAPベースの薬剤に変異を施すことができる。例えば、増強された触媒活性またはタンパク質安定性を有するAPベースの薬剤を生成するために、変異を施すことができる。様々な実施形態では、指向性進化法を利用して本発明のAPベースの薬剤を生成することができる。例えば、エラープローンPCR及びDNAシャッフリングを使用して、活性の増強をもたらす細菌アルカリホスファターゼの変異を同定することができる。
【0056】
調節放出製剤及び剤形
APベースの薬剤の調節放出製剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含み得る。当業者が認識するように、製剤は、所望の使用及び投与経路に適切な任意の好適な形態であり得る。
【0057】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、コア粒子、コア粒子上のベースコートを含み、ベースコートはAPベースの薬剤を含む。さらなる実施形態では、コア粒子は、スクロースを含む。いくつかの実施形態では、ベースコートのAPベースの薬剤は、コア粒子内に封入されており、複数のコア粒子を含み得る。
【0058】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットを含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。そのような実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、APベースの薬剤(例えば、IAPまたはバリアント)が噴霧されているスクロース球、結合賦形剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)、コーティング効率を改善し処理時間を短縮する添加剤であるHTP-20(例えば、PLASACRYL HTP 20)、ならびに緩衝塩(例えば、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、または硫酸亜鉛)を含む。
【0059】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、胃液及び/または腸液中で安定であり、腸内細菌叢に存在する微生物酵素によって分解される調節放出コーティングを含む。さらなる実施形態では、調節放出コーティングの溶解性は、pH依存的である。さらなる実施形態では、調節放出コーティングは、時間依存的な浸食プロファイルを有する。
【0060】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約1~10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含む。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、または約10重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約75~95重量%のスクロース球を含む。例えば、スクロース球は、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、または約95重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約5~15重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~2重量%の緩衝塩を含む。緩衝塩は、トリス塩基、塩化マグネシウム、及び硫酸亜鉛から選択され得る。例えば、緩衝塩は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、または約2.0重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約20~40%、約25~40%、約25~35%、約30~40%、または約35~40%の腸溶性ポリマーの重量増加を含む単層腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約20~40%、約25~40%、約25~35%、約30~40%、または約35~40%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)の重量増加及び約5~15%、約5~10%、約7~15%、約7~10%、約10~15%、約6~9%、または約7~8%のヒドロキシプロピルセルロースの重量増加を含む二層腸溶性コーティングを含む。本明細書に記載されている重量は、全ての構成成分の総重量を指す。
【0061】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約5重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約85重量%のスクロース球、約9重量%のヒドロキシプロピルセルロース、ならびに約1重量%の緩衝塩を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約20~40%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)の重量増加を含む単層腸溶性コーティング、または約30%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)の重量増加及び約7%のヒドロキシプロピルセルロースの重量増加を含む二層腸溶性コーティングを含む。本明細書に記載されている重量は、全ての構成成分の総重量を指す。
【0062】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約4.7重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約84.9重量%のスクロース球、約9.3重量%のヒドロキシプロピルセルロース、ならびに約1.2重量%の緩衝塩を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約20~40%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)の重量増加を含む単層腸溶性コーティング、または約30%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)の重量増加及び約7%のヒドロキシプロピルセルロースの重量増加を含む二層腸溶性コーティングを含む。本明細書に記載されている重量は、全ての構成成分の総重量を指す。
【0063】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約25mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約1~15重量%のAPベースの薬剤(例えばIAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含む。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約30~55重量%のスクロース球を含む。例えば、スクロース球は、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約5~25重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約20~35重量%のEUDRAGIT L30 D-55を含む。例えば、EUDRAGIT L30 D-55は、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~11重量%のHTP-20を含む。例えば、HTP-20は、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、または約11.0重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~2.5重量%の緩衝塩を含む。緩衝塩は、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、及び硫酸亜鉛から選択され得る。例えば、緩衝塩は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、または約2.5重量%で存在し得る。
【0064】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約25mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約38重量%のスクロース球、約19重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約2重量%の緩衝塩、ならびに約26重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)を含む。
【0065】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約25mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約9.7重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約37.7重量%のスクロース球、約19.4重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約2.4重量%の緩衝塩、ならびに約26.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。
【0066】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約1~15重量%のAPベースの薬剤(例えばIAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含む。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約30~55重量%のスクロース球を含む。例えば、スクロース球は、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約5~25重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約20~35重量%のEUDRAGIT L30 D-55を含む。例えば、EUDRAGIT L30 D-55は、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~11重量%のHTP-20を含む。例えば、HTP-20は、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、または約11.0重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~2.5重量%の緩衝塩を含む。緩衝塩は、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、及び硫酸亜鉛から選択され得る。例えば、緩衝塩は、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、または約2.5重量%で存在し得る。
【0067】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約9.7重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約37.7重量%のスクロース球、約19.4重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約2.4重量%の緩衝塩、ならびに約26.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。
【0068】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約9.7重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約37.7重量%のスクロース球、約19.4重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約2.4重量%の緩衝塩、ならびに約26.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。
【0069】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約15mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約1~15重量%のAPベースの薬剤(例えばIAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含む。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約30~55重量%のスクロース球を含む。例えば、スクロース球は、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約5~25重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約20~35重量%のEUDRAGIT L30 D-55を含む。例えば、EUDRAGIT L30 D-55は、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~11重量%のHTP-20を含む。例えば、HTP-20は、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、または約11.0重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.1~2.5重量%の緩衝塩を含む。緩衝塩は、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、及び硫酸亜鉛から選択され得る。例えば、緩衝塩は、約0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、または約2.5重量%で存在し得る。
【0070】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約15mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約39重量%のスクロース球、約20重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約0.5重量%の緩衝塩、ならびに約26重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)を含む。
【0071】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約15mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約10.0重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約38.9重量%のスクロース球、約20.0重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約0.3重量%の緩衝塩、ならびに約26.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。
【0072】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。様々な実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの調節放出ペレットを含み、各調節放出ペレットは、約1~15重量%のAPベースの薬剤(例えばIAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含む。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約30~55重量%のスクロース球を含む。例えば、スクロース球は、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約5~25重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約20~35重量%のEUDRAGIT L30 D-55を含む。例えば、EUDRAGIT L30 D-55は、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.5~11重量%のHTP-20を含む。例えば、HTP-20は、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、または約11.0重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数のペレット(またはそれぞれ個々のペレット)は、約0.1~2.5重量%の緩衝塩を含む。緩衝塩は、トリス塩基、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、及び硫酸亜鉛から選択され得る。例えば、緩衝塩は、約0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、または約2.5重量%で存在し得る。
【0073】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約39重量%のスクロース球、約20重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約0.5重量%の緩衝塩、ならびに約26重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)を含む。
【0074】
様々な実施形態では、本発明の製剤は、約5mgのAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むカプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル)の形態である。カプセルには、腸溶性コーティングされたAPベースの薬剤を含有する複数のペレットが含まれる。そのような実施形態では、製剤は、約10.0重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)、約38.9重量%のスクロース球、約20.0重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、約0.3重量%の緩衝塩、ならびに約26.3重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L 30 D-55)を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む調節放出製剤の投与は、経口、静脈内、及び非経口のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤(及び/または追加の薬剤)を含む調節放出製剤の投与は、例えば、全身投与される抗生物質との干渉を防止するために静脈内投与ではない。他の実施形態では、投与経路には、例えば、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入、または局所(特に耳、鼻、眼、もしくは皮膚に対するもの)が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の任意の製剤は、直径約0.8mm~約2.0mm、約0.9mm~約1.9mm、約1mm~約1.8mm、約1.1mm~約1.7mm、約1.2mm~約1.6mm、約1.3mm~約1.5mm、約1mm~約1.3mm、約1mm~約1.4mm、約1mm~約1.5mm、約1mm~約1.6mm、約1mm~約1.7mm、約1mm~約1.9mm、約1mm~約2.0mmのサイズを有するコア粒子を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、直径約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、約1.8mm、約1.9mm、または約2.0mmのサイズを有するコア粒子を含む。
【0077】
本明細書に記載のAPベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む任意の調節放出製剤は、補因子(例えば、CaCl2またはCoCl2)を含まなくてもよい。
【0078】
本明細書に記載のAPベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む任意の調節放出製剤は、経口投与され得る。かかる発明の製剤はまた、他の任意の簡便な経路、例えば、静脈内注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与されてもよく、追加の治療剤と一緒に投与されてもよい。投与は、全身性であっても局所性であってもよい。
【0079】
経口使用に適した剤形としては、例えば、錠剤、分散性散剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体剤形が挙げられる。一実施形態では、調節放出製剤は、カプセル剤の形態である。別の実施形態では、調節放出製剤は、錠剤の形態である。さらに別の実施形態では、調節放出製剤は、軟質ゲルカプセル剤の形態である。さらなる実施形態では、調節放出製剤は、ゼラチンカプセル剤またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル剤の形態である。
【0080】
いくつかの剤形では、本明細書に記載の薬剤は、少なくとも1つの不活性かつ薬学的に許容可能な賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムなど、及び/またはa)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、微結晶セルロース、及びBakers Special Sugarなど、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒドロキシメチルセルロースなど、c)保水剤、例えば、グリセロールなど、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリマー、例えば、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスカルメロースナトリウム(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウムなど、e)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物など、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土など、i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリルベヘネートなど、j)抗酸化剤、ならびにこのような賦形剤の混合物と混合される。当業者は、特定の賦形剤が経口剤形において2つ以上の機能を有し得ることを認識するであろう。経口剤形、例えば、カプセル剤または錠剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0081】
調節放出製剤は、界面活性剤をさらに含み得る。本発明での使用に適した界面活性剤としては、任意の薬学的に許容可能な非毒性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物での使用に適した界面活性剤のクラスとしては、ポリエトキシル化脂肪酸、PEG-脂肪酸ジエステル、PEG-脂肪酸モノエステルとPEG-脂肪酸ジエステルの混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、アルコール-油エステル交換生成物、ポリグリセリル化脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル-グリセロールエステルの混合物、モノグリセリド及びジグリセリド、ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びクエン酸トリエチルを含むがこれらに限定されない1つ以上の界面活性剤を含み得る。
【0082】
調節放出製剤はまた、可撓性及び硬度などの所望の機械的特性を得るために、特定の薬学的に許容可能な可塑剤を含み得る。そのような可塑剤としては、トリアセチン、クエン酸エステル、クエン酸トリエチル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、または他の可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
調節放出製剤はまた、1つ以上の適用溶媒を含み得る。例えば、遅延放出コーティング組成物に適用するために使用することができる比較的一般的な溶媒の一部としては、イソプロピルアルコール、アセトン、塩化メチレンなどが挙げられる。
【0084】
調節放出製剤はまた、1つ以上のアルカリ性物質を含み得る。本発明の組成物での使用に適したアルカリ性物質としては、リン酸、炭酸、クエン酸などの酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及びアルミニウム塩ならびに他のアルミニウム/マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アルカリ性物質は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムなどの制酸物質から選択され得る。
【0085】
固体経口剤形は、例えば、1つ以上の適切な賦形剤を用いた本発明の薬剤の造粒(例えば、湿式または乾式造粒)によって調製され得る。あるいは、本発明の薬剤を、流動床もしくはパンコーティングなどの従来の方法を使用して不活性コア(例えば、スクロース球もしくはシリカ球などのノンパレイユ/糖球)上に層状にするか、または当該技術分野で公知の方法を使用して押出及び球形化して活性化合物含有ペレットとすることができる。実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、スクロース球上に噴霧コーティングされる。次いで、そのようなペレットを、従来の方法を使用して錠剤またはカプセル剤に組み込むことができる。
【0086】
懸濁液は、活性物質に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、トラガカントなど、ならびにこれらの混合物を含有し得る。
【0087】
不活性希釈剤以外に、経口組成物はまた、甘味剤、香味剤、及び芳香剤などの補助剤を含み得る。
【0088】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び関節内注射及び注入)に適した剤形としては、例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルションなどが挙げられる。それらはまた、使用直前に滅菌注射用溶媒に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造され得る。それらは、例えば、当該技術分野で公知の懸濁剤または分散剤を含有し得る。
【0089】
APベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む製剤は、好都合に単位剤形で提供されてもよく、薬学の分野において周知の任意の方法によって調製されてもよい。このような方法は一般に、治療剤を1つ以上の補助成分を構成する担体と合わせるステップを含む。典型的には、製剤は、治療剤を液体担体、微粉固体担体、またはその両方と均一かつ均質に合わせることによって調製され、次に必要に応じて、生成物を所望の製剤の剤形に成形する(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなどを行い、その後、当該技術分野で公知の従来の方法を使用して錠剤化する)。
【0090】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、遅延放出コーティングなどの1種以上の調節放出コーティングを利用して、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)をGI管へ、任意選択で他の追加の治療剤とともに効果的に、遅延性であるが実質的に送達することができる。
【0091】
一実施形態では、遅延放出コーティングは、酸性環境中で実質的に安定であり、中性付近~アルカリ性環境中で実質的に不安定である腸溶性薬剤を含む。一実施形態では、遅延放出コーティングは、胃液及び/または腸液中で実質的に安定である腸溶性薬剤を含有する。腸溶性薬剤は、例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルエチルセルロース、及びEUDRAGIT型ポリマー(ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、シェラックまたは他の好適な腸溶性コーティングポリマーの溶液または分散液から選択され得る。EUDRAGIT型ポリマーとしては、例えば、EUDRAGIT FS 30D、L 30 D-55、L 100-55、L 100、L 12,5、L 12,5 P、RL 30 D、RL PO、RL 100、RL 12,5、RS 30 D、RS PO、RS 100、RS 12,5、NE 30 D、NE 40 D、NM 30 D、S 100、S 12,5、及びS 12,5 Pが挙げられる。類似のポリマーとしては、KOLLICOAT MAE 30 DP及びKOLLICOAT MAE 100 Pが挙げられる。いくつかの実施形態では、EUDRAGIT FS 30D、L 30 D-55、L 100-55、L 100、L 12,5、L 12,5 P、RL 30 D、RL PO、RL 100、RL 12,5、RS 30 D、RS PO、RS 100、RS 12,5、NE 30 D、NE 40 D、NM 30 D、S 100、S 12,5、S 12,5 P、KOLLICOAT MAE 30 DP及びKOLLICOAT MAE 100 Pのうちの1つ以上が使用される。様々な実施形態では、腸溶性薬剤は、前述の溶液または分散液の組み合わせであり得る。一実施形態では、遅延放出コーティングは、腸溶性薬剤EUDRAGIT L 30 D-55(ポリ(メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー)1:1)を含む。
【0092】
特定の実施形態では、1つ以上のコーティング系添加剤が腸溶性薬剤とともに使用される。例えば、1つ以上のPLASACRYL添加剤を、粘着防止物質コーティング添加剤として使用することができる。例示的なPLASACRYL添加剤としては、PLASACRYL HTP20及びPLASACRYL T20が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、PLASACRYLHTP20が、EUDRAGIT L 30 D-55コーティング剤とともに配合される。別の実施形態では、PlasACRYLT20が、EUDRAGIT FS 30 Dコーティング剤とともに配合される。
【0093】
別の実施形態では、遅延放出コーティングは、水溶液中の場合、pH及び/または溶液中の酵素の存在に関係なく時間に応じて分解し得る。そのようなコーティングは、非水溶性ポリマーを含み得る。したがって、水溶液中のその溶解性はpHと無関係である。本明細書で使用される「pH非依存性」という用語は、ポリマーの透水性及び医薬成分を放出するその能力がpHによらないこと、及び/またはpHに極めてわずかにしか依存しないことを意味する。そのようなコーティングは、例えば、持続放出製剤を調製するために使用され得る。好適な非水溶性ポリマーとしては、溶液のpHとは無関係に、水性媒体、例えば、水に実質的に不溶性である薬学的に許容可能な非毒性ポリマーが挙げられる。好適なポリマーとしては、セルロースエーテル、セルロースエステル、またはセルロースエーテルエステル、すなわち、セルロース骨格上のヒドロキシ基のいくつかがアルキル基で置換され、いくつかがアルカノイル基で修飾されているセルロース誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例としては、エチルセルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。不溶性ポリマーの他の例としては、ラッカー、ならびにアクリルエステルポリマー及び/またはメタクリルエステルポリマー、第四級アンモニウム含有量の低いアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。不溶性ポリマーの他の例としては、EUDRAGIT RS、EUDRAGIT RL、及びEUDRAGIT NEが挙げられる。本発明において有用な不溶性ポリマーとしては、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル、ブタジエンスチレンコポリマーなどが挙げられる。一実施形態では、結腸送達は、緩徐に浸食されるワックスプラグ(例えば、様々なPEG(例えばPEG6000を含む))を使用することによって実現される。
【0094】
さらなる実施形態では、遅延放出コーティングは、腸内細菌叢に存在する微生物酵素によって分解され得る。一実施形態では、遅延放出コーティングは、小腸に存在する微生物によって分解され得る。別の実施形態では、遅延放出コーティングは、大腸に存在する微生物によって分解され得る。
【0095】
様々な実施形態では、本発明は、1つ以上のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含むベースコートを有するコア粒子と、コーティングされたコア粒子上に配置された遅延放出コーティングとを含む製剤を提供する。遅延放出コーティングは、酸性環境及び/または胃液中で実質的に安定であり得、及び/または中性付近~アルカリ性環境中及び/または腸液中で実質的に不安定であり得、それによりコーティングされたコア粒子を腸液に曝露させる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のコーティングペレットは、FaSSGF中にAPベースの薬剤を実質的に放出しないが、FaSSIF中にAPベースの薬剤を実質的に放出する。いくつかの実施形態では、本発明のコーティングペレットは、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%のAPベースの薬剤を、人工胃液及び/または腸液中に約20分、約40分、約1時間、約80分、約100分、約2時間、約140分、約160分、約3時間、約200分、約220分、または約4時間で放出する。
【0096】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤を含む本発明のコーティングペレットは、少なくとも約3日間、少なくとも約9日間、少なくとも約12日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約23日間、少なくとも約27日間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約7ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約11ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約1.5年間、少なくとも約2年間の保管中に安定である。いくつかの実施形態では、ペレットは、乾燥下で2~8℃で保管される。さらなる実施形態では、APベースの薬剤を含む本発明のコーティングペレットは、保管期間にわたり、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の活性を保持する。
【0097】
1つ以上のAPベースの薬剤を含むベースコートは、1つ以上の追加の治療剤をさらに含み得る。任意選択で、複数のベースコートをコアに適用することができ、その各々がAPベースの薬剤及び/または追加の治療剤を含有し得る。一実施形態では、コア粒子は、スクロースを含む。製剤は、当該技術分野において公知の方法によって調製され得る。例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)は、不活性コア(例えば、スクロースコアまたはスクロース球)上に噴霧され、腸溶性層(例えば、EUDRAGIT L30 D-55)とともに噴霧乾燥されてAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含有するペレットを形成し得る。
【0098】
任意選択で、コア粒子は、1つ以上のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または1つ以上の追加の治療剤を含み得る。一実施形態では、1用量以上のAPベースの薬剤は、例えば、マイクロスフェアの形態でコア粒子に封入され得る。例えば、APベースの薬剤は、ポリマー(例えば、ラテックス)と組み合わされ、次いで、スクロースコアを使用せずに、粒子状のマイクロカプセル化された酵素調製物に形成され得る。このように形成されたマイクロスフェアは、任意選択で遅延放出コーティングで被覆され得る。
【0099】
粒子(マイクロスフェア、凝集体、その他のものなど)を生成するための様々なアプローチが公知であり、これらは酵素の含有に適用可能である。それらは通常、少なくとも2つの相を含有し、一方は酵素を含み、もう一方は粒子の骨格を形成するポリマーを含有する。最も一般的なものは、第3の構成成分を添加することによってポリマーを溶媒相から分離させるコアセルベーション、または水中油中水型(w/o/w)エマルションなどの多相エマルション(内部水相がタンパク質を含有し、中間有機相がポリマーと、溶媒が除去されマイクロスフェアが形成され得るまでw/o/wダブルエマルションを支持する外部水相安定剤とを含有する)である。あるいは、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)ならびに安定化賦形剤(例えば、トレハロース、マンニトール、Tween80、ポリビニルアルコール)を組み合わせて、水溶液から噴霧し、回収する。次に、粒子をポリマーと放出調節化合物とを含有する乾燥した水非混和性有機溶媒に懸濁させ、懸濁液を超音波処理して粒子を分散させる。さらなるアプローチでは、水相を使用するが、有機溶媒は使用しない。具体的には、酵素、緩衝液構成成分、ポリマーラテックス、ならびに安定化賦形剤及び放出調節賦形剤を水中に溶解/分散させる。水性分散液を噴霧乾燥させ、ラテックスの合一、及び合一したラテックスの粒子へのタンパク質及び賦形剤の取り込みをもたらす。放出調節剤が酸性条件では不溶性であるがより高いpH(カルボン酸など)では可溶性である場合、マトリクスからの放出は胃環境において阻害される。
【0100】
いくつかの実施形態では、コーティングされたコア粒子に遅延放出コーティングを適用する前に、任意選択で、例えばpH緩衝化合物などのアルカリ性化合物を含む医薬賦形剤を含む1つ以上の分離層で粒子を被覆することができる。分離層は、コーティングされたコア粒子を遅延放出コーティングから実質的に分離させる。
【0101】
コーティングパン、コーティング造粒機などのコーティング装置を用いて、またはコーティングプロセス用の水及び/または有機溶媒を使用した流動床装置で、通常使用されるコーティングまたは層状化手順によって、コーティングされたコア粒子に分離層を適用することができる。代わりに、粉末コーティング技術を使用することにより、分離層をコア材料に適用することができる。分離層用の材料は、例えば、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその他のものなどの薬学的に許容可能な化合物であり、単独でまたは混合物で使用される。可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、粘着防止剤、帯電防止剤などの添加剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク及び他の添加剤もまた、分離層に含めることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、遅延放出コーティングでコーティングされた粒子は、オーバーコート層によってさらに被覆され得る。オーバーコート層は、他のコーティング組成物について記載されている通りに適用することができる。オーバーコート材料は、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその他のものなどの薬学的に許容可能な化合物であり、単独でまたは混合物で使用される。オーバーコート材料は、遅延放出コーティングでコーティングされた粒子の集塊の可能性を防ぐか、圧縮プロセス中に遅延放出コーティングを割れから保護するか、または錠剤化プロセスを強化することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、APベースの薬剤を含有する複数のペレット(例えば、IAP(または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含有するペレット)が充填されたカプセルであり、そこからAPベースの薬剤が放出される。一実施形態では、カプセルは、硬ゼラチンカプセルなどのゼラチンカプセルである。別の実施形態では、カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。例えば、製剤は、複数のペレットを含むカプセルの形態であり得る。例えば、製剤は、例えば、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を含有する複数の腸溶性コーティングペレットを含むゼラチンカプセルまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのカプセルの形態であり得る。そのような実施形態では、ペレットの組み合わせを利用することができ、各ペレットは特定の時点または位置で放出するように設計されている。様々な実施形態では、ペレット(例えば、腸溶性コーティングペレット)は、変化せずに胃を通過し、次いで、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を腸の1箇所以上の領域に放出するように設計されている。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤を含有するペレットは、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を様々な腸のpH値で放出するために腸溶性コーティングされ得る。
【0104】
本発明はまた、複数用量のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を胃腸管に沿って放出する調節放出製剤を提供する。そのような実施形態では、そのような製剤の全体的な放出プロファイルは、例えば、複数の粒子タイプまたは複数の層を利用することによって調整され得る。一実施形態では、APベースの薬剤の第1の用量は、例えば、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1箇所以上)または大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、もしくはS状部、及び直腸のうちの1箇所以上)における放出のために製剤化され得るが、一方、第2の用量は、例えば、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1箇所以上)または大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、もしくはS状部、及び直腸のうちの1箇所以上)の異なる領域における遅延放出のために製剤化される。あるいは、腸に沿った異なる位置で複数用量が放出される。例えば、一実施形態では、APベースの薬剤の第1の用量は、例えば、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1箇所以上)における放出のために製剤化され得るが、一方、第2の用量は、例えば、小腸の別の部位(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1箇所以上)における遅延放出のために製剤化される。別の実施形態では、APベースの薬剤の第1の用量は、例えば、大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、もしくはS状部、及び直腸のうちの1箇所以上)における放出のために製剤化され得るが、一方、第2の用量は、例えば、大腸の別の部位(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、もしくはS状部、及び直腸のうちの1箇所以上)における遅延放出のために製剤化される。
【0105】
様々な実施形態では、本明細書に記載の薬剤は、薬学的に許容可能な塩、すなわち、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答などを起こすことなくヒト及び他の動物の組織と接触させて使用するのに適するとともに、合理的な利益/リスク比と釣り合う塩の形態であり得る。薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野において周知である。塩は、治療剤の最終的な単離及び精製中にin situで調製することができ、または遊離塩基官能基を適切な酸と反応させることによって、もしくは遊離酸官能基を適切なアルカリ部分と反応させることによって個々に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ性土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含む非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0106】
様々な実施形態では、本製剤は多くの利点を提供する。例えば、本発明者らは、タンパク質(すなわち、APベースの薬剤)を成功裏に製剤化したが、これ自体が困難なことである。このことは、本製剤が様々な実施形態において薬物を放出するGI管環境によって、さらに複雑化する。さらに、様々な実施形態では、本製剤は、例えば小腸での様々な抗生物質の有害作用からの、GI管における保護適用範囲を良好にするのに十分に遅いGI管での放出(より遅い放出に釣り合うAPベースの薬剤の半減期増加により顕著となる利益)をもたらす。さらに、本発明のペレットの原薬層を、EUDRAGITではなくHPCでコーティングすることにより、例えば、本製剤は、製剤中のEUGRAGITの量を最小化し、それにより起こり得る用量制限毒性及び製造上の複雑さを軽減させる。
【0107】
調節放出プロファイル
一態様では、本発明は、少なくとも1つのアルカリホスファターゼ(AP)ベースの薬剤を含む調節放出製剤を提供し、製剤は、相当な量のAPベースの薬剤をGI管の1箇所以上の領域に放出する。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント(例えば、上述のもの)である。例えば、製剤は、APベースの薬剤、例えばIAPの少なくとも約60%を、胃を過ぎてからGI管の1箇所以上の領域に放出し得る。
【0108】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、即時放出(例えば、摂取直後)用に設計されている。様々な実施形態では、調節放出製剤は、徐放性プロファイル、すなわち、長時間にわたる体内(例えば、GI管)における活性成分(複数可)の遅放性を有し得る。様々な実施形態では、調節放出製剤は、遅延放出プロファイル(すなわち、摂取直後に活性成分(複数可)を直ちに放出しない)を有し得、むしろ、例えば、小腸(例えば、十二指腸、空腸、回腸のうちの1箇所以上)または大腸(例えば、盲腸、結腸の上行部、横行部、下行部、もしくはS状部、及び直腸のうちの1箇所以上)における放出のために、組成物が胃腸管を下るまで活性成分(複数可)の放出を延期する。例えば、組成物を腸溶性コーティングし、組成物が小腸または大腸に到達するまで活性成分(複数可)の放出を遅らせることができる。いくつかの実施形態では、本製剤の活性成分(複数可)は糞便中に実質的な量で存在しない。
【0109】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を、胃を過ぎてから腸の1箇所以上の領域に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を腸に放出する。
【0110】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を小腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を小腸に放出する。
【0111】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を十二指腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を十二指腸に放出する。
【0112】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を空腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を空腸に放出する。
【0113】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を回腸及び/または回盲接合部に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を回腸及び/または回盲接合部に放出する。
【0114】
様々な実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を大腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を大腸に放出する。
【0115】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を盲腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を盲腸に放出する。
【0116】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を上行結腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を上行結腸に放出する。
【0117】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を横行結腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を横行結腸に放出する。
【0118】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を下行結腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を下行結腸に放出する。
【0119】
一実施形態では、本発明の調節放出製剤は、少なくとも60%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)をS状結腸に放出する。例えば、調節放出製剤は、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)をS状結腸に放出する。
【0120】
様々な実施形態では、調節放出製剤は、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を胃で実質的に放出しない。
【0121】
特定の実施形態では、調節放出製剤は、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を特定のpHで放出する。例えば、いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、酸性環境中で実質的に安定であり、中性付近~アルカリ性環境中で実質的に不安定(例えば、急速に溶解するか、または物理的に不安定)である。いくつかの実施形態では、安定性は実質的に放出しないことを示し、他方、不安定性は実質的に放出することを示す。例えば、いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、約7.0以下、または約6.5以下、または約6.0以下、または約5.5以下、または約5.0以下、または約4.5以下、または約4.0以下、または約3.5以下、または約3.0以下、または約2.5以下、または約2.0以下、または約1.5以下、または約1.0以下のpHで実質的に安定である。いくつかの実施形態では、本製剤は、比較的低いpH領域において安定であり、したがって、例えば胃で実質的に放出されない。いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、約1~約4以下のpHで実質的に安定であり、より高いpH値で実質的に不安定である。これらの実施形態では、調節放出製剤は、胃で実質的に放出されない。これらの実施形態では、調節放出製剤は、小腸(例えば、十二指腸、空腸、及び回腸のうちの1箇所以上)及び/または大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1箇所以上)で実質的に放出される。いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、約4~約5以下のpHで実質的に安定であり、その結果、より高いpH値で実質的に不安定であり、そのため、胃及び/または小腸(例えば、十二指腸、空腸、及び回腸のうちの1箇所以上)で実質的に放出されない。これらの実施形態では、調節放出製剤は、大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1箇所以上)で実質的に放出される。様々な実施形態では、本明細書に記載されるpH値は、対象の状態、例えば、絶食状態にあるかまたは食後状態にあるかを考慮して、当該技術分野で公知の通り調整され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、胃液中で実質的に安定であり、腸液中で実質的に不安定であるため、小腸(例えば、十二指腸、空腸、及び回腸のうちの1箇所以上)及び/または大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1箇所以上)で実質的に放出される。
【0123】
いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、胃液中で安定であるか、または酸性環境中で安定である。これらの調節放出製剤は、調節放出製剤中の約30重量%以下のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を、約4~約5以下のpHの胃液中または約4~約5以下のpHの人工胃液中に、約15分、または約30分、または約45分、または約60分、または約90分で放出する。本発明の調節放出製剤は、調節放出製剤中の約0重量%~約30重量%、約0重量%~約25重量%、約0重量%~約20重量%、約0重量%~約15重量%、約0重量%~約10重量%、約5重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を、4~5以下のpHの胃液中または4~5以下のpHの人工胃液中に、約15分、または約30分、または約45分、または約60分、または約90分で放出し得る。本発明の調節放出製剤は、調節放出製剤中の約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、または約10重量%のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の総量及び/または追加の治療剤を、5以下のpHの胃液中または5以下のpHの人工胃液中に、約15分、または約30分、または約45分、または約60分、または約90分で放出し得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、腸液中で不安定である。これらの調節放出製剤は、調節放出製剤中の約70重量%以上のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を、腸液中または人工腸液中に、約15分、または約30分、または約45分、または約60分、または約90分で放出する。いくつかの実施形態では、調節放出製剤は、中性付近~アルカリ性環境中で不安定である。これらの調節放出製剤は、調節放出製剤中の約70重量%以上のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を、約4~5以上のpHの腸液中または約4~5以上のpHの人工腸液中に、約15分、または約30分、または約45分、または約60分、または約90分で放出する。中性付近またはアルカリ性環境で不安定な調節放出製剤は、調節放出製剤中の70重量%以上のAPベースの薬剤(例えば、IAP、もしくは本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び/または追加の治療剤を、約5超のpHを有する液体(例えば、約5~約14、約6~約14、約7~約14、約8~約14、約9~約14、約10~約14、または約11~約14のpHを有する液体)中に約5分~約90分、または約10分~約90分、または約15分~約90分、または約20分~約90分、または約25分~約90分、または約30分~約90分、または約5分~約60分、または約10分~約60分、または約15分~約60分、または約20分~約60分、または約25分~約90分、または約30分~約60分で放出し得る。
【0125】
人工胃液及び人工腸液の例としては、2005年薬局方23NF/28USPの2858頁、Test Solutionsに開示されているもの、及び/または当業者に公知の他の人工胃液及び人工腸液、例えば、酵素なしで調製される人工胃液及び/または人工腸液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
一実施形態では、調節放出製剤は、胃液中でほぼ完全な状態のままであり得るか、またはほぼ不溶であり得る。調節放出製剤は、pH依存的である1種以上の遅延放出コーティングを含み得る。pH依存的である遅延放出コーティングは、酸性環境(約5以下のpH)中で実質的に安定であり、中性付近~アルカリ性環境(約5超のpH)中で実質的に不安定である。例えば、遅延放出コーティングは、小腸(例えば、十二指腸、空腸、及び回腸のうちの1箇所以上)及び/または大腸(例えば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、及びS状結腸のうちの1箇所以上)で見られるような中性付近~アルカリ性環境中で実質的に崩壊または溶解し得る。
【0127】
あるいは、調節放出製剤の安定性は酵素依存的であり得る。そのような実施形態では、調節放出製剤は、酵素依存的である1種以上の遅延放出コーティングを含み得る。酵素依存的である遅延放出コーティングは、特定の酵素を含有しない液体中で実質的に安定であり、その酵素を含有する液体中で実質的に不安定である。遅延放出コーティングは、適切な酵素を含有する液体中で実質的に崩壊または溶解する。酵素依存的な制御は、例えば、ガラクトマンナンなどの腸内の酵素への曝露時にのみ活性成分を放出する材料を使用することによってもたらされ得る。また、調節放出製剤の安定性は、腸内細菌叢に存在する微生物酵素の存在下における酵素安定性に依存し得る。
【0128】
様々な実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAPまたはそのバリアント)を含む調節放出製剤は、粥状液中で実質的に安定である。例えば、いくつかの実施形態では、投与の約10時間後、または9時間後、または8時間後、または7時間後、または6時間後、または5時間後、または4時間後、または3時間後、または2時間後、または1時間後に、約50%未満、または約40%未満、または約30%未満、または約20%未満、または約10%未満のAPベースの薬剤の活性が減少する。
【0129】
いくつかの実施形態では、デュアルパルス製剤(dual pulse formulation)が提供される。様々な実施形態では、本発明は、複数用量のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を、腸に沿った異なる位置で、異なる時点で、及び/または異なるpHで放出する調節放出製剤を提供する。例示的実施形態では、調節放出製剤は、APベースの薬剤の第1の用量及びAPベースの薬剤の第2の用量を含み、第1の用量及び第2の用量は、腸に沿った異なる位置で、異なる時点で、及び/または異なるpHで放出される。例えば、第1の用量は十二指腸で放出され、第2の用量は回腸で放出される。別の例では、第1の用量は空腸で放出され、第2の用量は回腸で放出される。他の実施形態では、第1の用量は小腸(例えば、十二指腸)に沿った位置で放出され、第2の用量は大腸(例えば、上行結腸)に沿って放出される。様々な実施形態では、調節放出製剤は、少なくとも1用量、少なくとも2用量、少なくとも3用量、少なくとも4用量、少なくとも5用量、少なくとも6用量、少なくとも7用量、または少なくとも8用量のAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)を、腸に沿った異なる位置で、異なる時点で、及び/または異なるpHで放出し得る。さらに、本明細書中のデュアルパルスの説明は、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)及び追加の治療剤を放出する調節放出製剤に適用される。
【0130】
投与及び投与量
本発明に従って投与されるAPベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の実際の用量は、例えば、特定の剤形及び投与様式に従って変動することが理解されよう。APベースの薬剤の作用を変化させ得る多くの因子(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、対象の状態、薬物の組み合わせ、遺伝的素因、及び応答感受性)は、当業者によって考慮され得る。投与は、最大耐用量内で連続的にまたは1つ以上の個別の用量で実施され得る。所与の一連の条件に対する最適な投与速度は、従来の用量投与試験を使用して当業者によって確認され得る。
【0131】
APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の個々の用量は、例えば、約0.01mg~約1,000mg、約0.01mg~約950mg、約0.01mg~約900mg、約0.01mg~約850mg、約0.01mg~約800mg、約0.01mg~約750mg、約0.01mg~約700mg、約0.01mg~約650mg、約0.01mg~約600mg、約0.01mg~約550mg、約0.01mg~約500mg、約0.01mg~約450mg、約0.01mg~約400mg、約0.01mg~約350mg、約0.01mg~約300mg、約0.01mg~約250mg、約0.01mg~約200mg、約0.01mg~約150mg、約0.01mg~約100mg、約0.1mg~約90mg、約0.1mg~約80mg、約0.1mg~約70mg、約0.1mg~約60mg、約0.1mg~約50mg、約0.1mg~約40mgの活性成分、単位剤形当たり約0.1mg~約30mg、約0.1mg~約20mg、約0.1mg~約10mg、約0.1mg~約5mg、約0.1mg~約3mg、約0.1mg~約1mg、または単位剤形当たり約5mg~約80mgを含有する単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)で投与され得る。例えば、単位剤形は、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、または約1,000mg(これらの間の全ての値及び範囲を含む)であり得る。一実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の個々の用量は、25mgのAPベースの薬剤を含有する単位剤形で投与される。別の実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の個々の用量は、50mgのAPベースの薬剤を含有する単位剤形で投与される。さらなる実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の個々の用量は、75mgのAPベースの薬剤を含有する単位剤形で投与される。
【0132】
一実施形態では、APベースの薬剤は、1日約0.01mg~約100mgの量、1日約0.01mg~約1,000mg、1日約0.01mg~約950mg、1日約0.01mg~約900mg、1日約0.01mg~約850mg、1日約0.01mg~約800mg、1日約0.01mg~約750mg、1日約0.01mg~約700mg、1日約0.01mg~約650mg、1日約0.01mg~約600mg、1日約0.01mg~約550mg、1日約0.01mg~約500mg、1日約0.01mg~約450mg、1日約0.01mg~約400mg、1日約0.01mg~約350mg、1日約0.01mg~約300mg、1日約0.01mg~約250mg、1日約0.01mg~約200mg、1日約0.01mg~約150mg、1日約0.1mg~約100mg、1日約0.1mg~約95mg、1日約0.1mg~約90mg、1日約0.1mg~約85mg、1日約0.1mg~約80mg、1日約0.1mg~約75mg、1日約0.1mg~約70mg、1日約0.1mg~約65mg、1日約0.1mg~約60mg、1日約0.1mg~約55mg、1日約0.1mg~約50mg、1日約0.1mg~約45mg、1日約0.1mg~約40mg、1日約0.1mg~約35mg、1日約0.1mg~約30mg、1日約0.1mg~約25mg、1日約0.1mg~約20mg、1日約0.1mg~約15mg、1日約0.1mg~約10mg、1日約0.1mg~約5mg、1日約0.1mg~約3mg、1日約0.1mg~約1mg、または1日約5mg~約80mgの量で投与される。
【0133】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、または約1,000mg(これらの間の全ての値及び範囲を含む)の1日用量で投与される。
【0134】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤(例えば、IAP、または本明細書に記載の他のAPベースの薬剤、及びそのバリアント)の好適な投与量は、対象の約0.01mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲内、例えば、約0.01mg/kg体重、約0.02mg/kg体重、約0.03mg/kg体重、約0.04mg/kg体重、約0.05mg/kg体重、約0.06mg/kg体重、約0.07mg/kg体重、約0.08mg/kg体重、約0.09mg/kg体重、約0.1mg/kg体重、約0.2mg/kg体重、約0.3mg/kg体重、約0.4mg/kg体重、約0.5mg/kg体重、約0.6mg/kg体重、約0.7mg/kg体重、約0.8mg/kg体重、約0.9mg/kg体重、約1mg/kg体重、約1.1mg/kg体重、約1.2mg/kg体重、約1.3mg/kg体重、約1.4mg/kg体重、約1.5mg/kg体重、約1.6mg/kg体重、約1.7mg/kg体重、約1.8mg/kg体重、1.9mg/kg体重、約2mg/kg体重、約3mg/kg体重、約4mg/kg体重、約5mg/kg体重、約6mg/kg体重、約7mg/kg体重、約8mg/kg体重、約9mg/kg体重、約10mg/kg体重、約15mg/kg体重、約20mg/kg体重、約25mg/kg体重、約30mg/kg体重、約35mg/kg体重、約40mg/kg体重、約45mg/kg体重、約50mg/kg体重、約55mg/kg体重、約60mg/kg体重、約65mg/kg体重、約70mg/kg体重、約75mg/kg体重、約80mg/kg体重、約85mg/kg体重、約90mg/kg体重、約95mg/kg体重、または約100mg/kg体重(これらの間の全ての値及び範囲を含む)である。他の実施形態では、APベースの薬剤の好適な投与量は、約0.01mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲内、約0.01mg/kg体重~約9mg/kg体重の範囲内、約0.01mg/kg体重~約8mg/kg体重の範囲内、約0.01mg/kg体重~約7mg/kg体重の範囲内、0.01mg/kg体重~約6mg/kg体重の範囲内、約0.05mg/kg体重~約5mg/kg体重の範囲内、約0.05mg/kg体重~約4mg/kg体重の範囲内、約0.05mg/kg体重~約3mg/kg体重の範囲内、約0.05mg/kg体重~約2mg/kg体重の範囲内、約0.05mg/kg体重~約1.5mg/kg体重の範囲内、または約0.05mg/kg体重~約1mg/kg体重の範囲内である。
【0135】
本発明の特定の実施形態によれば、APベースの薬剤は、例えば、約1日1回、約1日おき、約3日おき、約1週間に1回、約2週間に1回、約1ヶ月に1回、約2ヶ月に1回、約3ヶ月に1回、約6ヶ月に1回、または約1年に1回投与され得る。特定の実施形態では、APベースの薬剤は、1日1回よりも多く、例えば、1日に約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、または約10回投与され得る。
【0136】
追加の治療剤及び併用療法または共製剤化
APベースの薬剤を含む本発明の組成物及び製剤の投与は、追加の治療剤と組み合わされ得る。追加の治療剤と本発明の組成物/製剤との同時投与は、同時または逐次的であり得る。さらに、本発明の組成物/製剤は、追加の治療剤を(例えば、共製剤化を介して)含み得る。例えば、追加の治療剤及びAPベースの薬剤は、単一の製剤に組み合わされ得る。あるいは、追加の治療剤及びAPベースの薬剤は、別々に製剤化され得る。
【0137】
一実施形態では、追加の治療剤及びAPベースの薬剤は、対象に同時に投与される。本明細書で使用される「同時に」という用語は、追加の治療剤及びAPベースの薬剤が、約60分以下、例えば、約30分以下、約20分以下、約10分以下、約5分以下、または約1分以下の時間間隔で投与されることを意味する。追加の治療剤及びAPベースの薬剤の投与は、単一の製剤(例えば、追加の治療剤とAPベースの薬剤とを含む製剤)または別個の製剤(例えば、追加の治療剤を含む第1の製剤及びAPベースの薬剤を含む第2の製剤)の同時投与であり得る。
【0138】
さらなる実施形態では、追加の治療剤及びAPベースの薬剤は対象に同時に投与されるが、追加の治療剤及びAPベースの薬剤のそれぞれの剤形(または共製剤化された場合は単一の単位剤形)からの放出は逐次的に生じ得る。
【0139】
同時投与は、追加の治療剤及びAPベースの薬剤の薬理学的活性が時間的に重なるような投与のタイミングである場合、追加の治療剤及びAPベースの薬剤を同時に投与する必要はない。例えば、追加の治療剤及びAPベースの薬剤を逐次的に投与することができる。本明細書で使用される「逐次的に」という用語は、追加の治療剤及びAPベースの薬剤が、約60分を超える時間間隔で投与されることを意味する。例えば、追加の治療剤とAPベースの薬剤との逐次投与の間の時間は、約60分超、約2時間超、約5時間超、約10時間超、約1日超、約2日超、約3日超、または約1週間超の間隔であり得る。最適な投与時間は、投与される追加の治療剤及びAPベースの薬剤の代謝速度、排出速度、及び/または薬力学的活性の速度に依存する。追加の治療剤またはAPベースの薬剤のいずれかが最初に投与され得る。
【0140】
同時投与はまた、追加の治療剤及びAPベースの薬剤を同じ投与経路によって対象に投与することを必要としない。むしろ、各治療剤は、例えば、非経口的または非経口的以外の、任意の好適な経路によって投与され得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、セファロスポリン系抗生物質(セファレキシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、及びセフトビプロール)、フルオロキノロン系抗生物質(シプロ、レバキン、フロキシン(floxin)、テキン、アベロックス、及びノルフロックス)、テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリン)、ペニシリン系抗生物質(アモキシシリン、アンピシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、カルベニシリン、バンコマイシン、及びメチシリン)、モノバクタム系抗生物質(アズトレオナム)、ならびにカルバペネム系抗生物質(エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、及びメロペネム)を含むがこれらに限定されない抗菌剤である。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、ペニシリン系、セファロスポリン系、モノバクタム系、及びカルバペネム系抗生物質のいずれかであり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、例えば、CDIの治療に使用される補助療法剤である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、メトロニダゾール(例えば、FLAGYL)、フィダキソマイシン(例えば、DIFICID)、またはバンコマイシン(例えば、VANCOCIN)、リファキシミン、木炭系結合剤/吸着剤(例えば、DAV132)、糞便細菌療法剤、プロバイオティクス療法剤(例えば、Intnat’l J Inf Dis,16(11):e786(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。例示的なプロバイオティクス剤としては、Saccharomyces boulardii;Lactobacillus rhamnosus GG;Lactobacillus plantarum 299v;Clostridium butyricum M588;Clostridioides difficile VP20621(非毒素産生性C.difficile株(旧称Clostridium difficile));Lactobacillus caseiとLactobacillus acidophilusとの組み合わせ(Bio-K+CL1285);Lactobacillus caseiとLactobacillus bulgaricusとStreptococcus thermophilusとの組み合わせ(Actimel);Lactobacillus acidophilusとBifidobacterium bifidumとの組み合わせ(Florajen3);Lactobacillus acidophilusとLactobacillus bulgaricus delbrueckii subsp.bulgaricusとLactobacillus bulgaricus caseiとLactobacillus bulgaricus plantarumとBifidobacterium longumとBifidobacterium infantisとBifidobacterium breveとStreptococcus salivarius subsp.thermophilusとの組み合わせ(VSL#3)が挙げられる)、ならびに抗体もしくはその他の生物学的療法剤(例えば、N Engl J Med.2010;362(3):197(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているC.difficile毒素A及びBに対するモノクローナル抗体;例えば、米国特許出願公開第2013/0058962号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載の配列番号のうちの1つ以上(例えば、配列番号59、60、95、67、68及び87のうちの1つ以上)に対する多量体として配置された中和結合タンパク質);または任意のC.difficile二元毒素に対する中和結合タンパク質である。
【0143】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、止痢剤である。本発明での使用に適した止痢剤としては、DPP-IV阻害剤、天然オピオイド、例えば、アヘンのチンキ剤、パレゴリック、及びコデイン、合成オピオイド、例えば、ジフェノキシラート、ジフェノキシン、及びロペラミド、次サリチル酸ビスマス、ランレオチド、バプレオチド、ならびにオクトレオチド、モチリンアンタゴニスト(motiln antagonist)、COX2阻害剤(セレコキシブなど)、グルタミン、サリドマイド、ならびに従来の止痢治療薬、例えば、カオリン、ペクチン、ベルベリン、及びムスカリン剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗炎症剤、例えば、ステロイド性抗炎症剤または非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)である。ステロイド、特に副腎コルチコステロイド及びそれらの合成類似体は、当該技術分野で周知である。本発明において有用なコルチコステロイドの例としては、限定するものではないが、ヒドロキシルトリアムシノロン、アルファ-メチルデキサメタゾン、ベータ-メチルベタメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリソン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンが挙げられる。本発明で使用され得る(NSAIDS)としては、限定するものではないが、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、サリチルイミド、ベンジル2,5-ジアセトキシ安息香酸、イブプロフェン、フリンダク(fulindac)、ナプロキセン、ケトプロフェン、エトフェナメート、フェニルブタゾン、及びインドメタシンが挙げられる。追加の抗炎症剤は、例えば、米国特許第4,537,776号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0145】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、鎮痛剤であり得る。本発明の組成物及び方法に有用な鎮痛剤としては、限定するものではないが、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、メサドン及び関連化合物、テバイン、オルピアビン(orpiavine)及びこれらの誘導体、ブプレノルフィン、ピペリジン、モルフィナン、ベンゾモルファン、テトラヒドロイソキノリン、チアンブタン(thiambutane)、ベンジルアミン、チリジン、ビミノール、ネホパム、カプサイシン(8-メチル-N-バニリル-6E-ノネンアミド)、「合成」カプサイシン(N-バニリルノナミド)、ならびに関連化合物が挙げられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アンプレナビル、アタザナビル、シドフォビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エトラビリン、ファムシクロビル、及びホスカルネットを含むがこれらに限定されない抗ウイルス剤であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、炎症性腸疾患の治療に有用な薬剤であり得る。例えば、薬剤は、大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎)及びクローン病の治療に使用することができ、薬剤としては、ベドリズマブ(ENTYVIO)、トファシチニブ(XELJANZ)、DIMS 0150(KAPPAPROCT)、ゴリムマブ(SIMPONI)、アダリムマブ(HUMIRA)、及び他の抗TNF治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、セリアック病の治療に有用な薬剤であり得る。例示的な薬剤としては、AVX-176(Avaxia Biologics)、アクトバイオティクス(Actobiotics)(ActoGeniX)、CALY-002(Calypso biotech)、HLA-DQ2アンタゴニスト、HLA-DQ2/DQ8アンタゴニスト、tTG阻害剤(ERW1041E(GlaxoSmithKline)及びZED-101/ZED-1227(Zedira)を含む)、酢酸ララゾチド(Alba Therapeutics)、ラチグルテナーゼ(Latiglutenase)(Alvine Pharmaceuticals)、BL-7010(BioLineRx)、ならびにNexVax-2(ImmmunsanT)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、嚢胞性線維症の治療に有用な薬剤であり得る。例示的な薬剤としては、アイバカフトール(KALYDECO;Vertex)、ルマカフトール/アイバカフトール(オルカンビ;Vertex)、VX-152(Vertex)、VX-440(Vertex)、VX-371(Vertex)、一酸化窒素、グリセロールフェニルブチレート、リオシグアト(Bayer)、組換えA1PI(Grifols,SA)、システアミンIR、JBT-101(Corbus Pharmaceuticals)、N-91115(Nivalis Therapeutics)、及びバンコマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、肥満症の治療に有用な薬剤であり得る。例示的な薬剤としては、オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン-トピラマート、ナルトレキソン-ブプロピオン、シブトラミン、リモナバン、エキセナチド、プラムリンチド、フェンテルミン、ベンズフェタミン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジン、ブプロピオン、及びメトホルミンが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、追加の薬剤は、食品中の特定の栄養素を吸収する身体の能力を妨げる薬剤、例えば、オルリスタット、グルコマンナン、及びグアーガムである。食欲を抑制する薬剤はまた、追加の薬剤、例えば、カテコールアミン及びその誘導体(フェンテルミン及び他のアンフェタミン系薬物など)、様々な抗うつ薬及び気分安定薬(例えば、ブプロピオン及びトピラマート)、食欲抑制薬(例えば、デキセドリン、ジゴキシン)のうちの1つである。身体の代謝を増加させる薬剤も追加の薬剤のうちの1つである。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、食欲抑制剤、神経伝達物質再取り込み阻害剤、ドーパミン作動性アゴニスト、セロトニン作動性アゴニスト、GABA作動性シグナル伝達のモジュレーター、抗痙攣薬、抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、サブスタンスP(NK1)受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、エネルギー摂取または代謝の調節因子、カンナビノイド受容体モジュレーター、依存症治療用薬剤、代謝症候群治療用薬剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)モジュレーター、ならびにジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)アンタゴニストの中から選択され得る。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、アンフェタミン、ベンゾジアゼピン、スルホニル尿素、メグリチニド、チアゾリジンジオン、ビグアニド、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、フェンレルミン(phenlermine)、シブトラミン、ロルカセリン、セチリスタット、リモナバン、タラナバン、トピラマート、ガバペンチン、バルプロ酸、ビガバトリン、ブプロピオン、チアガビン、セルトラリン、フルオキセチン、トラゾドン、ゾニサミド、メチルフェニデート、バレニクリン、ナルトレキソン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジン、レパグリニド、ナテグリニド、グリメピリド、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リラグルチド、及びシタグリプチンの中から選択され得る。
【0151】
一実施形態では、追加の治療剤は、糖尿病前症、糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能障害、または高血糖症を治療するための薬剤である。薬物の例としては、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、アミリン類似体、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、GLP1アゴニスト、メグリチニド、スルホニル尿素、ビグアニド、チアゾリジンジオン(TZD)、及びインスリンが挙げられるが、これらに限定されない。そのような薬剤の追加の例としては、ブロモクリプチン及びウェルコールが挙げられる。アルファ-グルコシダーゼ阻害剤の例としては、アカルボース及びミグリトールが挙げられるが、これらに限定されない。アミリン類似体の一例は、プラムリンチドである。ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤の例としては、サキサグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、及びアログリプチンが挙げられるが、これらに限定されない。GLP1アゴニストの例としては、リラグルチド、エキセナチド、エキセナチド徐放剤が挙げられるが、これらに限定されない。メグリチニドの例としては、ナテグリニド及びレパグリニドが挙げられるが、これらに限定されない。スルホニル尿素の例としては、クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、トラザミド、及びトルブタミドが挙げられるが、これらに限定されない。ビグアニドの例としては、メトホルミン、リオメット、グルコファージ、グルコファージXR、グルメツァ(Glumetza)が挙げられるが、これらに限定されない。チアゾリジンジオンの例としては、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。インスリンの例としては、アスパルト、デテミル、グラルギン、グルリジン、及びリスプロが挙げられるが、これらに限定されない。併用薬の例としては、グリピジド/メトホルミン、グリブリド/メトホルミン、ピオグリタゾン/グリメピリド、ピオグリタゾン/メトホルミン、レパグリニド/メトホルミン、ロシグリタゾン/グリメピリド、ロシグリタゾン/メトホルミン、サキサグリプチン/メトホルミン、シタグリプチン/シンバスタチン、シタグリプチン/メトホルミン、リナグリプチン/メトホルミン、アログリプチン/メトホルミン、及びアログリプチン/ピオグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
治療方法
様々な実施形態では、本発明は、がんの放射線療法に起因する腸炎、放射線誘発性腸疾患、大腸炎、及び/または直腸炎を含むがこれらに限定されない、放射線誘発性障害を治療または予防する方法を提供する。放射線誘発性腸疾患は、粘膜萎縮、血管硬化、及び進行性腸壁線維症を特徴とする。この障害の症状としては、栄養素の吸収不良、腸管通過の変化、運動障害、及び腸内容物の異常な前進を挙げることができる。いくつかの実施形態では、急性放射線誘発性腸疾患は、放射線曝露後の最初の月、最初の2ヶ月、または最初の3ヶ月以内に発生する。いくつかの実施形態では、晩発性放射線腸疾患の症状は慢性であり、放射線曝露の少なくとも3ヶ月後、少なくとも4ヶ月後、少なくとも5ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、少なくとも7ヶ月後、少なくとも8ヶ月後、少なくとも9ヶ月後、少なくとも10ヶ月後、少なくとも11ヶ月後、または少なくとも12ヶ月後まで現れない場合がある。いくつかの実施形態では、晩発性放射線腸疾患の症状は、放射線曝露の約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、または約12ヶ月後まで現れない場合がある。いくつかの実施形態では、晩発性放射線腸疾患の症状は、放射線曝露の約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、または約5年後まで現れない場合がある。
【0153】
いくつかの実施形態では、本発明は、放射線療法を含むがこれに限定されない放射線に曝露された対象へのAPベースの薬剤の治療及び/または投与を提供する。様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、例えば、がん治療の一部としての放射線療法の前など、放射線への曝露の前に行われる。特定の実施形態では、APベースの薬剤の投与は、放射線曝露時に行われる。様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、放射線への曝露時、及び放射線への曝露直後に行われる。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤の投与は、放射線への曝露直後に行われる。様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、放射線への曝露時、及び放射線への曝露後長期間継続して行われる。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤の投与は、放射線への曝露後に長期間継続される。様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、晩発性放射線腸疾患の発症時に行われる。いくつかの実施形態では、本発明は、放射線に曝露された、または曝露される予定の対象へのAPベースの薬剤の治療及び/または投与を提供し、APベースの薬剤の投与は、放射線への曝露後、少なくとも1年間、少なくとも1.5年間、少なくとも2年間、少なくとも2.5年間、少なくとも3年間、少なくとも3.5年間、4年間、少なくとも4.5年間、少なくとも5年間、少なくとも5.5年間、少なくとも6年間、少なくとも6.5年間、または少なくとも7年間行われる。
【0154】
様々な実施形態では、本発明は、例えば、放射線療法の副作用またはARSに限定されない放射線関連疾患または障害に罹患している対象への治療及び/または投与を提供する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明は、放射線腸炎に罹患している対象の予防、治療、及び/または対象への投与を提供する。例えば、対象は、急性または慢性のいずれかの放射線腸炎に罹患している可能性がある。放射線腸炎の症状としては、悪心、嘔吐、胃痙攣、トイレの頻繁な緊急使用、水様性下痢、直腸からの粘液排出、直腸痛、直腸出血、体重減少、及び波状の胃痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明は、放射線関連疾患または障害の治療または予防が必要な患者においてそれを治療または予防する方法に関し、この方法は、APベースの薬剤を含む本明細書に記載の調節放出製剤を対象に投与することを含む。例えば、限定されないが、この製剤のAPベースの薬剤は、経口投与可能なIAPである。
【0157】
様々な実施形態では、本発明は、晩発性放射線腸疾患及び/または腸毒性に罹患している対象の治療及び/または対象への投与を提供する。いくつかの実施形態では、晩発性放射線腸疾患は、放射線療法の終了後少なくとも3ヶ月で発生する。様々な実施形態では、放射線療法は、がんを治療する放射線療法である。様々な実施形態では、対象はがん患者である。一実施形態では、放射線療法は、骨盤、腹部、または胴体下部の腫瘍を対象とする。いくつかの実施形態では、本発明の本治療は、放射線療法を含むがこれに限定されないがん治療に干渉しない。
【0158】
様々な実施形態では、放射線は、電離放射線を含む。様々な実施形態では、放射線は、X線、ガンマ線、及び荷電粒子のうちの1種以上を含む。
【0159】
様々な実施形態では、放射線曝露は、約2Gy、または約2.5Gy、または約3Gy、または約3.5Gy、または約4Gy、または約4.5Gy、または約5Gy、または約10Gy、約20Gy、または約30Gy、または約40Gy、または約50Gy、または約60Gy、または約70Gy、または約80Gy、または約90Gy、または約100Gyの線量である。
【0160】
様々な実施形態では、放射線曝露は、局所または全身である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明は、放射線関連疾患または障害の治療または予防が必要な患者においてそれを治療または予防する方法に関し、この方法は、APベースの薬剤(任意選択で、経口投与可能なIAP)を含む本明細書に記載の調節放出製剤を対象に投与することを含み、放射線関連疾患または障害は、放射線療法の結果または放射線療法の副作用である。
【0162】
いくつかの実施形態では、本方法は、腸内マイクロバイオームの多様性の低減(例えば、これは放射線曝露(放射線療法を含む)及び/または化学療法の副作用または結果である)の予防または低減に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、放射線曝露(放射線療法を含む)及び/または化学療法後の対象の腸内マイクロバイオームを修復及び/または再増殖させることに関する。
【0163】
いくつかの実施形態では、放射線療法は、一次療法または補助療法(例えば、化学療法とともに)として、がん治療の一部であり得る。いくつかの実施形態では、放射線療法は、手術後の腫瘍再発を予防するため、及び/または原発性悪性腫瘍を除去するために使用され得る。様々な実施形態では、対象はがん患者である。
【0164】
いくつかの実施形態では、放射線療法は、デュピュイトラン病、レダーホース病の治療の一部、または術後治療の一部であり得る。様々な実施形態では、対象は、デュピュイトラン病、レダーホース病に罹患しているか、または最近手術を受けたことがある。
【0165】
様々な実施形態では、本方法は、急性副作用、長期副作用、または累積副作用を含む放射線療法の副作用を低減させるか、またはなくす。様々な実施形態では、本方法は、放射線療法の局所または全身性副作用を低減させるか、またはなくす。様々な実施形態では、放射線療法の副作用は、疲労、悪心及び嘔吐、上皮表面への損傷(限定されないが、例えば湿性落屑)、口腔、咽頭及び胃の痛み、腸の不快感(限定されないが、例えば痛み、下痢、及び悪心)、腫脹、不妊症、線維症、脱毛、乾燥(限定されないが、例えば口渇(口腔乾燥症)及びドライアイ(眼球乾燥症)、ならびに腋窩及び膣粘膜の乾燥)、リンパ浮腫、心疾患、認知機能低下、放射線腸疾患(限定されないが、例えば吸収不良、下痢、脂肪便及び胆汁酸下痢を伴う出血を引き起こす可能性のある萎縮、線維症及び血管変化)、ならびに回腸病変に起因して一般的に見られるビタミンB12吸収不良のうちの1つ以上である。骨盤放射線疾患としては、放射線直腸炎、出血、下痢及び切迫感(urgency)の発生、ならびに放射線膀胱炎が挙げられる。
【0166】
様々な実施形態では、放射線療法は、骨盤放射線療法である。そのような実施形態では、APベースの薬剤(任意選択で、経口投与可能なIAP)を含む本明細書に記載の調節放出製剤は、本明細書に記載されるGI関連副作用を低減させるか、またはなくす。そのような実施形態では、APベースの薬剤(任意選択で、経口投与可能なIAP)は、本明細書に記載される下半身関連副作用を低減させるか、またはなくす。
【0167】
様々な実施形態では、放射線療法は骨盤放射線療法であり、本明細書に記載の調節放出製剤は、放射線腸疾患、萎縮、線維症及び血管変化、吸収不良、下痢、脂肪便、胆汁酸下痢を伴う出血、吸収不良(例えばビタミン吸収不良、例えばビタミンB12吸収不良)のうちの1つ以上を低減させるか、またはなくす。様々な実施形態では、放射線療法は骨盤放射線療法であり、本明細書に記載の調節放出製剤は、放射線直腸炎、出血、下痢及び切迫感の発生、ならびに放射線膀胱炎を低減させるか、またはなくす。
【0168】
様々な実施形態では、放射線療法は、外部照射放射線療法、小線源療法、及び全身放射線療法のうちの1つ以上として提供される。
【0169】
様々な実施形態では、放射線療法は、三次元原体照射療法(3D-CRT)、強度変調放射線療法(IMRT、例えば、RAPIDARC)、画像誘導放射線療法(IGRT)、電磁誘導放射線療法(例えば、CALYPSO)トモセラピー、定位放射線手術(SRS)、体幹部定位放射線治療(SBRT、例えば、CYBERKNIFE、GAMMAKNIFE、X-KNIFE、CLINAC)、術中放射線療法(IORT)、及びプロトン療法から選択される外部照射放射線療法である。
【0170】
様々な実施形態では、放射線療法は、組織内小線源療法、腔内小線源療法、強膜上小線源療法から選択される小線源療法である。
【0171】
様々な実施形態では、放射線療法は、放射性ヨウ素及び放射性生物学的製剤から選択される全身放射線療法である。例えば、放射線療法は、放射性ヨウ素(131I)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN)、トシツモマブ及びヨウ素I131トシツモマブ(BEXXAR)、サマリウム-153-レキシドロナム(QUADRAMET)、及び塩化ストロンチウム-89(METASTRON)であり得る。
【0172】
様々な実施形態では、放射線療法は、約20Gy、または約30Gy、または約40Gy、または約50Gy、または約60Gy、または約70Gy、または約80Gy、または約90Gy、または約100Gyの線量(任意選択で分割される)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明は、放射線関連疾患または障害の治療または予防が必要な患者においてそれを治療または予防する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の調節放出製剤を対象に投与することを含み、放射線関連疾患または障害は、急性放射線症候群である。
【0174】
いくつかの実施形態では、ARSは、胃腸症候群、造血症候群、神経血管症候群、アポトーシス介在性組織損傷(アポトーシスは細胞ストレスに起因する場合がある)、及び電離放射線誘発性アポトーシス組織損傷のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、高線量の放射線(例えば、電離放射線)は、約5~約30Gy、または約10~約25Gy、または約15~約20Gyであり、任意選択で、単位放射線曝露状態(Unit Radiation Exposure Status)のRES3に分類するのに十分である。様々な実施形態では、高線量の放射線は放射線災害の結果であり、及び/または治療されているヒト患者は、汚染地域での軍事行動または緊急救援隊員の行動、核爆発、臨界事故、放射線療法の事故、テロ攻撃、宇宙旅行からの曝露、放射性廃棄物の漏出、開放源放射線(open source radiation)への曝露、及び原子炉の動作不良のうちの1つ以上の結果として高線量の放射線に曝露したか、またはそれに曝露するリスクがある。
【0175】
様々な実施形態では、本発明の方法及び組成物は、ARSなどの放射線関連障害の治療または予防を提供する。様々な実施形態では、本明細書に記載の治療は、曝露されたヒト患者集団の罹患率または死亡率を低減させ、及び/またはARSの症状からの回復を促進する。ARSは、一連の段階的な症状として現れることが多く、これは、個々の放射線感受性、放射線のタイプ、及び吸収される放射線量によって異なり得る。理論に束縛されることを望まないが、一般に、放射線量の増加に伴って症状の程度が高まり、各段階の期間が短くなる。ARSは、前駆段階(別名N-V-D期)、潜伏期、及び顕在疾病の3つの段階に分けることができる。様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤の調節放出製剤は、これらの3つの段階のいずれか1つのヒト患者に投与され得る(すなわち、APベースの薬剤は前駆段階のヒト患者に投与され得るか、APベースの薬剤は潜伏期のヒト患者に投与され得るか、またはAPベースの薬剤は顕在疾病期のヒト患者に投与され得る)。
【0176】
前駆段階では、悪心、嘔吐、及び倦怠感が比較的急速に発症することが多い。グラニセトロン(KYTRIL)、オンダンセトロン(ZOFRAN)、及びデキサメタゾンの併用を問わない5-HT3遮断薬などの制吐薬(例えば、予防的経口制吐薬)の使用が、高線量の放射線曝露が生じた可能性があるか、またはそれが不可避である状況において必要とされる場合がある。したがって、様々な実施形態では、APベースの薬剤は、制吐剤を投与されているヒト患者に投与され得るか、またはAPベースの薬剤は、制吐剤と組み合わせてヒト患者に投与され得る。例えば、APベースの薬剤を次の制吐薬レジメンに追加することもできる:オンダンセトロン:初回は0.15mg/kg IV;連続IV投与の選択肢は、8mgとそれに続く次の24時間の1mg/時からなる。経口用量は、必要に応じて8時間ごとに8mgまたはグラニセトロン(経口剤形)であり、通常、用量は初回は1mgであり、初回用量から12時間後に繰り返される。あるいは、2mgを1用量として摂取させることもできる。IV用量は体重に基づいており、通常、10μg/kg(4.5μg/lb)体重である。
【0177】
潜伏期では、ヒト患者は比較的無症状である場合がある。この段階の長さは用量によって異なる。造血症候群の骨髄抑制に先行する潜伏段階は最長であり、約2週間~6週間の間で変動し得る。胃腸症候群に先立つ潜伏期はやや短く、数日から1週間持続する。神経血管症候群に先行するものが全ての中で最も短く、わずか数時間しか持続しない。これらの時間は可変的であり、他の疾患または損傷の存在によって変化する場合がある。顕在疾病は、損傷した主要器官系(骨髄、腸、神経血管)に関連する臨床症状を示す。
【0178】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の放射線曝露の影響の軽減またはその影響からの保護に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のAPベースの薬剤を投与することを含む、放射線からヒト患者を軽減及び/または保護する方法に関する。いくつかの実施形態では、放射線は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、電離放射線は、胃腸症候群または造血症候群を引き起こすのに十分である。
【0179】
いくつかの実施形態では、ARSは、胃腸症候群、造血症候群、神経血管症候群、アポトーシス介在性組織損傷(アポトーシスは細胞ストレスに起因する場合がある)、及び電離放射線誘発性アポトーシス組織損傷のうちの1つ以上を含む。
【0180】
造血症候群(別名骨髄症候群)は、造血細胞及びその前駆細胞の喪失を特徴とし、血液及びリンパ系の再生を不可能にする。この症候群は、血球数の減少、すなわち再生不良性貧血によって特徴付けられることが多い。これは、白血球の量が少量であることによる感染症(例えば、日和見感染症)、血小板欠乏による出血、及び循環中の赤血球が少量であることによる貧血を引き起こす可能性がある。これらの変化は、全身の急性線量を受けた後の血液検査によって検出され得る。爆風に起因する従来の外傷及び火傷は、造血症候群により生じる創傷治癒不良により悪化し、死亡率が上昇する。感染(例えば、免疫抑制の結果として)、出血及び/または貧血の結果として死亡が生じる可能性がある。造血症候群は通常、低線量の放射線で広がり、GI症候群よりも晩発性の死亡に至る。
【0181】
胃腸症候群は、腸上皮、主に小腸での大規模な細胞死により引き起こされ、続いて腸壁が崩壊し、菌血症及び敗血症により死に至る。この形態の放射線傷害の症状としては、悪心、嘔吐、食欲低下、吸収能力の低下、露出領域の出血、及び腹痛が挙げられる。胃腸症候群の例示的な全身性影響としては、栄養失調、脱水症、腎不全、貧血、敗血症などが挙げられる。治療(例えば、骨髄移植を含む)なしでは一般的に死亡する(例えば、腸内細菌からの感染を介して)。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、骨髄移植と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、GI症候群の1つ以上の阻害剤及び/または本明細書に記載の追加の薬剤のいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0182】
神経血管症候群は、めまい、頭痛、または意識レベルの低下などの神経症状を示し、数分から数時間以内に発生し、嘔吐は伴わない。追加の症状としては、極度の神経過敏及び錯乱;重度の悪心、嘔吐、及び水様性下痢;意識喪失;ならびに皮膚の灼熱感が挙げられる。神経血管症候群は、一般的に死に至る。
【0183】
様々な実施形態では、本発明の方法及び組成物は、放射線誘発性腸線維症の治療及び/または予防を提供する。いくつかの実施形態では、放射線誘発性腸線維症は、腸炎症、腸線維症、血管硬化症、慢性潰瘍、粘膜下組織の腫大、線維芽細胞及び平滑筋細胞の増殖の増大、ならびにコラーゲン及び他の細胞外マトリクス成分の過剰沈着のうちの1つ以上を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量のAPベースの薬剤を投与することを含む、照射への曝露後の死亡リスクを低減させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、放射線は致死的である可能性があり、場合によっては、放射線災害の結果として生じる。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、放射線曝露後24時間以内に投与される。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、放射線曝露後48時間以内に投与される。
【0185】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤の調節放出製剤は、放射線防護剤(例えば、抗酸化剤(例えば、アミホスチン及びビタミンE)、サイトカイン(例えば、幹細胞因子))などを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の任意の追加の薬剤と組み合わせて投与される。電離放射線による正常細胞の損傷及び死は、曝露細胞への直接的な放射線誘発性損傷と、放射線誘発性ストレスに対する活性かつ遺伝的にプログラムされた細胞反応との組み合わせであり、自滅的な死またはアポトーシスがもたらされる。アポトーシスは、いくつかの放射線感受性器官(例えば、造血系及び免疫系、消化管の上皮など)に生じる大規模な細胞の減少において重要な役割を担っており、その不全が、生物の一般的な放射線感受性を決定づける。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤を必要とするヒト患者へのその投与は、細胞のアポトーシスを抑制する。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、放射線治療の有害な影響から健常細胞を保護するために、ヒト患者に投与される。
【0186】
様々な実施形態では、本発明は、照射への曝露後のアポトーシスを低減させるための方法を提供する。一実施形態では、本発明は、照射後の造血細胞のアポトーシスを低減させるための方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、照射後の胃腸細胞のアポトーシスを低減させるための方法を提供する。
【0187】
様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、幹細胞を刺激及び保護する。例えば、本発明及び本組成物は、様々な造血前駆細胞を含む造血幹細胞を刺激及び保護し得る。別の例では、本発明及び本組成物は、腸陰窩幹細胞などの胃腸幹細胞を刺激及び保護し得る。いくつかの実施形態では、幹細胞は、増殖及び再生するように刺激され得る。したがって、本発明は、患者の造血幹細胞または胃腸幹細胞などの幹細胞の数を増大させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、造血前駆細胞または胃腸前駆細胞が増大される。様々な実施形態では、本発明は、幹細胞または前駆細胞を細胞死(例えば、アポトーシスまたは壊死)から保護する方法及び組成物を提供する。
【0188】
様々な実施形態では、本発明の方法及び組成物は、照射後の造血系及びGI系の回復を著しく強化する。例えば、本発明の方法及び組成物は、照射後の骨髄の回復を強化する。別の例では、本発明の方法及び組成物は、GI陰窩の再生を強化する。
【0189】
電離放射線(IR)への曝露は、短期的または長期的である場合があり、及び/または単回または複数回の線量として経験される場合があり、及び/または全身または局所に適用される場合がある。本発明は、いくつかの実施形態では、本明細書にさらに記載されるように、単回の高線量の全身照射への曝露(時折、放射性同位元素による長期中毒が続く)を伴い得る原子力事故または軍事攻撃に関する。例えば、宿主の血液前駆体から造血器官を「浄化」することによってドナーの骨髄のための造血器官を準備する必要がある場合の骨髄移植患者の前処置についても、同じことが(適用線量を厳密に制御して)当てはまる。がん治療は、仮に全身照射として適用すると(例えば、放射線療法の事故)致死量を大幅に超える、局所照射の複数回線量を含み得る。放射性同位元素による中毒または治療により、標的器官(例えば、125Iの吸入の場合の甲状腺)における長期間の放射線への局所曝露がもたらされる。さらに、生物学的影響の重症度が著しく異なる、電離放射線の多くの物理的形態が存在する。
【0190】
放射線粒子は、分子レベル及び細胞レベルで、DNA、タンパク質、細胞膜、及び他の高分子構造中の切断及び架橋を生じさせることができる。電離放射線はまた、フリーラジカル及び活性酸素種(ROS)を発生させることにより、細胞成分に対する二次的損傷を誘導する。複数の修復系、例えば、DNAの完全性及び忠実性を回復させるいくつかのDNA修復経路ならびにフリーラジカル及びROSを除去して酸化タンパク質及び脂質を還元させる抗酸化化学物質及び酵素によってこの損傷は無効にされる。細胞チェックポイント系は、DNAの欠損を検出し、損傷が修復されるか、または細胞に増殖停止もしくはプログラム細胞死(アポトーシス)を行わせる決定に達するまで細胞周期の進行を遅延させる。
【0191】
放射線は、低線量での軽度の変異誘発及び発がん作用から高線量によるほとんど即時の死滅までの範囲の損傷を哺乳動物生物に与え得る。生物の全体的な放射線感受性は、造血系、生殖器系、及び細胞代謝回転率の高い様々な上皮を含むいくつかの高感受性組織で発生した病理学的変化によって決定される。
【0192】
死に至るガンマ線照射の急性の病理学的転帰は、線量によって異なり、特定の各線量に対する生物の感受性の閾値を規定する特定の器官の不全によって決定され得る。したがって、低線量での致死は骨髄形成不全から生じるが、一方、中程度の線量では胃腸(GI)症候群の誘導によってより早く死亡する。極めて高線量の放射線により、神経細胞変性を誘発するほぼ即時の死が引き起こされ得る。放射線の一定の急性毒性期間を生き延びた生物は、照射から数ヶ月後及び数年後の曝露器官(例えば、腎臓、肝臓、または肺)に発生する放射線誘発性発がん及び線維症を含む、長期にわたる間接的な結果を被る場合がある。細胞DNAは、直接及び間接的(例えば、フリーラジカルに基づく)機構により様々なタイプのDNA損傷(遺伝毒性ストレス)を引き起こすIRの主要な標的である。全ての生物は、放射線で損傷したDNAの効果的な回復が可能なDNA修復系を維持しているが、DNA修復プロセス中のエラーは変異を招き得る。
【0193】
APベースの薬剤は、細胞レベル及び生物全体で強力な生存促進活性を有する。致死量を超える放射線量に対して、APベースの薬剤は急性放射線曝露による主要な死因である胃腸症候群及び造血症候群の両方を阻害し得る。これらの特性の結果として、APベースの薬剤は、自然放射線事象及び原子力事故の影響を治療するために使用され得る。さらに、APベースの薬剤は他の放射線防護剤と組み合わせて使用することができるため、電離放射線からの保護の規模が劇的に増大する。
【0194】
APベースの薬剤を放射線防護剤として使用して、例えば現在利用可能な手段(遮蔽及び既存の生物防護剤(bioprotective agent)の適用)によって達成可能なレベルを超えて人体の放射線抵抗性を増加させることにより耐線量の範囲を拡張させることができ、また例えば原子力事故や大規模な太陽粒子現象が発生した場合の乗組員の生存確率を劇的に上昇させることができる。
【0195】
APベースの薬剤は、DNA及び他の細胞構造物の損傷に応答して、放射線誘発性のプログラム細胞死またはアポトーシスを阻害し得る。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、細胞レベルでの損傷に対処しない可能性があり、変異を防止しない可能性がある。フリーラジカル及び活性酸素種(ROS)は、変異及び他の細胞内損傷の主因である。抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーは、フリーラジカルによる損傷を防止するのに効果的である。
【0196】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、皮膚放射線症候群(CRS)、すなわち、放射線曝露の皮膚症状(例えば、発赤(場合により掻痒感を伴う)、水疱形成、潰瘍形成、脱毛、脂腺及び汗腺の損傷、萎縮、線維症、皮膚の色素沈着の減少または増加、曝露皮膚の全層の喪失をもたらす曝露組織の湿性剥離の潰瘍形成または壊死及び2ヶ月後の皮膚血管系の崩壊)の予防または治療に関する。
【0197】
様々な実施形態では、APベースの薬剤の投与は、照射後の患者の創傷、敗血症合併症、及び微生物感染症の発生率を低減させる。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明のヒト患者は、白血球減少症及び/または好中球減少症(例えば、絶対好中球数(ANC)<100細胞/μL)を経験する。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物は、約24~約48時間以内に約50%のリンパ球数の低減を示すヒト患者に関する。いくつかの実施形態では、ヒト患者のリンパ球数は、(例えば、約24~約48時間以内に)約1000細胞/μL未満、または約900細胞/μL未満、または約800細胞/μL未満、または約700細胞/μL未満、または約600細胞/μL未満、または約500細胞/μL未満、または約400細胞/μL未満、または約300細胞/μL未満、または約200細胞/μL未満、または約100/細胞μL未満である。いくつかの実施形態では、患者のリンパ球プロファイルは、Andrewsリンパ球ノモグラムによって評価される(Andrews GA,Auxier JA,Lushbaugh CC.The Importance of Dosimetry to the Medical Management of Persons Exposed to High Levels of Radiation.In Personal Dosimetry for Radiation Accidents.Vienna:International Atomic Energy Agency;1965(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物は、約24~約48時間以内に約50%の血小板数の低減を示すヒト患者に関する。いくつかの実施形態では、本発明のヒト患者は、血小板減少症、貧血、及び/または好中球減少症を経験する。血小板減少症は、血小板数が50,000/μL未満であると定義される。例えば、血小板減少症は、グレード1の血小板減少症(すなわち、血小板数が75,000~150,000/μL)、グレード2(すなわち、血小板数が50,000~<75,000μL)、グレード3(血小板数が25,000~<50,000/μL)、またはグレード4(すなわち、血小板数が25,000/μL未満)として特徴付けられ得る。男性ではヘモグロビン含有量が13~14g/dL未満、女性ではヘモグロビン含有量が12~13g/dLであると、貧血と診断され得る。例えば、貧血はヘモグロビンレベルに基づいて様々なグレード、すなわち、グレード0(正常範囲内、≧12g/dL)、グレード1(軽度、11.9~10g/dL)、グレード2(中等度、9.9~8g/dL)、グレード3(重篤/重度、7.9~6.5g/dL)、及びグレード4(生命を脅かす、<6.5g/dL)に分類される。好中球減少症は、絶対好中球数(ANC)が1,500細胞/mm3未満であると定義され得る。例えば、好中球減少症は、グレード1(すなわち、ANCが1,500/mm3以下~2,000/mm3超)、グレード2(ANCが1,000/mm3以下~1,500/mm3超)、グレード3(ANCが500/mm3以下~1,000/mm3超)、またはグレード4(ANCが500/mm3未満)として等級付けされる。様々な実施形態では、本発明の方法及び組成物は、照射後の患者の血小板減少症、貧血、及び/または好中球減少症の持続期間及び重症度を低減させる。例えば、本発明の方法及び組成物は、照射後の患者のグレード4の血小板減少症、貧血、及び/または好中球減少症の持続期間及び重症度を低減させ得る。
【0199】
様々な実施形態では、高線量の放射線は、全身線量を指す。様々な実施形態では、高線量の放射線は、均一ではない場合がある。様々な実施形態では、ARSは、高線量の放射線の結果である。様々な実施形態では、高線量の放射線は、約2Gy、または約2.5Gy、または約3Gy、または約3.5Gy、または約4Gy、または約4.5Gy、または約5Gy、または約10Gy、または約15Gy、または約20Gy、または約25Gy、または約30Gyである。様々な実施形態では、高線量の放射線は、約5~約30Gy、または約10~25Gy、または約15~20Gyである。いくつかの実施形態では、高線量の放射線は、物理的線量測定及び/または生物学的線量測定(例えば、マルチパラメータ線量評価)、細胞発生学(例えば、血液試料などの染色体分析(非限定的な例として二動原体分析を含む))のうちの1つ以上によって評価される。
【0200】
様々な実施形態では、全身放射線量は、致死量以下(<2Gy)、潜在的致死量(2~10Gy)、及び超致死量(>10Gy)に分けることができる。
【0201】
所与の単位の放射線曝露状態(RES)は、通常のバックグラウンド放射線を超える稼働中の曝露に基づく。RESは、単位レベルの線量計に基づいて平均となるように設計されている。様々な実施形態では、高線量の放射線は、単位放射線曝露状態のRES3に分類するのに十分である。
【0202】
様々な実施形態では、放射線は電離放射線(例えば、アルファ粒子、ベータ粒子、ガンマ線、及び中性子のうちの1つ以上)である。様々な実施形態では、放射線が原子と相互作用するとき、エネルギーが蓄積され、電離(電子励起)に至る。この電離は、直接的及び間接的な作用により、細胞内の特定の重要な分子または構造物に損傷を与え得る。放射線は、細胞内の特に高感受性である原子または分子に直接到達し得る。このことによる損傷は修復不可能であり、細胞死または細胞機能不全のいずれかを引き起こす。放射線はまた、体内の水分子と相互作用することにより間接的に細胞に損傷を与え得る。水中に蓄積されたエネルギーは、不安定で毒性のあるスーパーオキシド分子の生成を招き、次にこれらは高感受性分子に損傷を与え、細胞内構造物を罹患させる。
【0203】
いくつかの実施形態では、放射線は、以下の放射性物質:アメリシウム(例えば、241Am)、セシウム(例えば、137Cs)、コバルト(例えば、60Co)、ウラン(例えば、枯渇ウラン)、ヨウ素(例えば、131、132、134、135I)、リン(例えば、32P)、プルトニウム(例えば、238、239Pu)、ラジウム(例えば、226Ra)、ストロンチウム(例えば、90Sr)、トリチウム(例えば、3H)、及びウラン(例えば、235U、238U、239U)のうちの1つ以上によって生じ得る。
【0204】
様々な実施形態では、高線量の放射線は、放射線災害の結果である。様々な実施形態では、ヒト患者は、高線量の放射線に曝露したか、またはそれに曝露するリスクがあり、それは、汚染地域での軍事行動または緊急救援隊員の行動、核爆発、臨界事故、放射線療法の事故、テロ攻撃、宇宙旅行からの曝露、放射性廃棄物の漏出、開放源放射線への曝露、及び原子炉の動作不良のうちの1つ以上の結果であり得る。
【0205】
化学療法治療の副作用の治療または予防が必要な患者においてそれを治療または予防する方法であって、本明細書に記載の調節放出製剤を対象に投与することを含む方法。
【0206】
様々な実施形態では、本発明は、例えば、化学療法治療の副作用に罹患している対象への治療及び/または投与を提供する。
【0207】
いくつかの実施形態では、化学療法治療の副作用は、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、体重減少、疼痛、悪心、嘔吐、下痢、便秘、貧血、栄養失調、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲低下、毛髪の菲薄化または脆化、口腔の痛み、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性、及び化学療法後の認知障害から選択される。
【0208】
化学療法治療の有効性を改善することによるがんの治療が必要な患者においてそれを治療する方法であって、本明細書に記載の調節放出製剤を対象に投与することを含む方法。様々な実施形態では、本明細書に記載のAPベースの薬剤の調節放出製剤は、本明細書に記載の化学療法治療に対する補助剤として作用する。様々な実施形態では、本明細書に記載のAPベースの薬剤の調節放出製剤は、抗がん作用を向上させ、及び/または本明細書に記載の化学療法治療のいずれかの治療域を増大させる。様々な実施形態では、APベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することは、がんの治療に干渉しない。
【0209】
本発明はさらに、特定の態様において、対象のフレイルを改善もしくは低減させる及び/または治療もしくは予防する方法を提供し、本方法は、フレイルの治療または予防を望むかまたは必要とする対象を同定すること、ならびに本明細書に記載のAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することを含む。
【0210】
老化は、時間とともに進行する哺乳動物生物の漸進的な全身の病理学的変化である。老化は、複数の器官及び組織の機能における複数の欠損の蓄積ならびに再生能力の低減に関連しており、これらは、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、肺線維症、失明、認知症、腎機能障害、変形性関節症、及び低グレードの慢性無菌性炎症、ならびに本明細書で企図される他の加齢性疾患及び障害を含む、加齢性慢性疾患または障害の発生につながる。これらの状態はしばしば、フレイル、認知障害、及び不動を含む老年症候群の漸進的な発生と併発する。老化は自然なことであり不可避のプロセスである。老化の根本原因は依然として不確かであるが、老化の2つの特徴、すなわち、DNA損傷の増加及び全身性の無菌性慢性炎症の発生は、一般的に普遍的なものとして受け入れられており、いずれも加齢性病態の主因であると考えられている。
【0211】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象のPFIスコアの低減により測定された対象のフレイルを改善もしくは低減させる及び/または治療もしくは予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象のフレイルを改善もしくは低減させる及び/または治療もしくは予防するための本発明の方法及び組成物は、本発明のAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与されていない場合よりも遅い速度でスコアが増加するように、PFIスコアを経時的に維持することを含む。本発明のいくつかの実施形態では、患者のPFIスコアは、時間が経過してもほぼ同じままである。さらなる実施形態では、本発明の方法は、自然老化及び/または老化の加速(例えば、がんまたはがん治療などによって誘導される老化の加速)に伴う細胞の老化及び免疫老化の低減を提供する。
【0212】
別の態様では、本発明は、対象の加齢性疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、本方法は、加齢性疾患または障害の治療または予防を望むかまたは必要とする対象を同定すること、ならびにAPベースの薬剤の調節放出製剤を上記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、加齢性疾患または障害は、細胞の老化または免疫老化の増大を特徴とする。
【0213】
いくつかの実施形態では、加齢性疾患または障害は、老化の加速、心血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、心臓拡張機能障害、良性前立腺肥大、大動脈瘤、気腫、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、肺線維症、失明、認知症、アルツハイマー病、腎機能障害、変形性関節症、低グレードの慢性無菌性炎症、椎間板ヘルニア、フレイル、脱毛、難聴、視力喪失、筋疲労、皮膚病態、皮膚母斑、しわの多い皮膚、過色素沈着症、瘢痕、ケロイド、酒さ、白斑、尋常性魚鱗癬、皮膚筋炎、日光角化症、及びサルコペニアから選択される。
【0214】
特定の実施形態では、本発明の方法は、老化の加速を治療または予防することを含む。いくつかの実施形態では、老化の加速は、早老症候群またはその症状であり、限定されないが、ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPS)、ウェルナー症候群(WS)、ブルーム症候群(BS)、ロスムンド・トムソン症候群(RTS)、コケイン症候群(CS)、色素性乾皮症(XP)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、色素性乾皮症とコケイン症候群の合併型(XP-CS)、または拘束性皮膚障害(RD)が含まれる。これらの疾患または障害のいずれかを有する対象は、通常、寿命(すなわち、命の長さ)が短縮されている。
【0215】
さらなる実施形態では、老化の加速は、がんまたはがん治療によって誘導される。例えば、自然老化プロセスの加速を誘導するがん治療が、放射線療法、ホルモン療法、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗薬/細胞毒性薬、BRAF阻害剤、抗腫瘍抗生物質、イソキノリンアルカロイド、Bcl-2阻害剤、造血細胞移植(HCT)、テロメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤、DNA架橋剤、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、微小管阻害剤、及びmiRNAからなる1つ以上の療法から選択されることが本発明により企図される。
【0216】
いくつかの実施形態では、対象が、老化の加速を誘導する可能性のある治療を受ける任意のがんが企図される。一実施形態では、対象が治療を受けるがんは血液癌である。さらに、いくつかの実施形態では、対象は、小児期にがん治療を受けている。
【0217】
いくつかの実施形態では、フレイルには、主要な生理学的機能の欠損の蓄積、再生能力の低減、創傷治癒障害、及び加齢性疾患のリスクの増大が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、フレイルは、自然老化または老化の加速に関連している。フレイルは、当業者に公知の任意数の指標または試験に従って測定され得る。例えば、そのような指標の1つである生理的フレイル指数(PFI)には、握力、収縮期血圧、拡張期血圧、血流量、血中好中球数、血中好中球の割合、血中単球数、血中単球の割合、リンパ球数、赤血球数、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリットレベル、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビンレベル、平均赤血球ヘモグロビン濃度、及びケラチノサイト由来サイトカインレベルから選択される1つ以上のパラメータの測定値が含まれる。いずれかの個体における参照標準からの偏差は欠損と呼ばれ、個体の全体的な平均PFIスコアは、測定されたパラメータの総数に対する欠損の比である。
【0218】
フレイルは、ストレッサーに対する脆弱性及びストレスに抵抗する能力の低減として現れ得る。例えば、Buchner and Wagner 1992 Clin Geriatr Med.1992 Feb;8(1):1-17の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。フレイルは、恒常性機構(例えば、相互関連性及び/またはフィードバックもしくはフィードフォワード)の複雑性の喪失として現れ得る。例えば、Lipsitz 2002 J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2002 Mar;57(3):B115-25の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Bortz 2002,J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2002 May;57(5):M283-8(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、フレイルは、生物を通るエネルギーの流れの不使用及び/または低下としても現れ得る。Ferrucci 2005 J.Gerontol.A Biol.Sci.Med.Sci.60,56(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、フレイルは、恒常性調節障害としても現れ得る。
【0219】
ヒト及び動物における欠損及びフレイルの加齢性の蓄積を定量評価するためのいくつかの包括的アプローチが存在する。個々の生物は、健康状態及び老化速度が不均一である。このような不均一性を説明するために、試験で考慮された欠損の総数に対するある人物に存在する欠損の比である数値スコアとしてフレイル指数(FI)が導入されている。FIの変化は、個体の老化速度を特徴付ける。同様のアプローチが実験動物に適用されている。フレイル指数は、信頼性が高く広く受け入れられている「生物学的年齢」の指標であり、全体的な健康状態の減退の程度は、生活の質の低減を示していると考えられている。
【0220】
特定の態様及び実施形態では、本明細書で提供されるものには、対象のフレイルを改善及び/または治療もしくは予防するため、及び/またはフレイル指数を低減させるための方法が含まれる。フレイルは、当該技術分野で公知の多くの方法のいずれかで評価することができる。例えば、フレイル及びフレイルを評価/指数付けする方法は、Hubbard,et al.,Ageing,published electronically November,2008 page 115-118、Cesari,et al.,Age and Ageing,43:10-12,2014、及びMohler et al.,Experimental Gerontology,54:6-13,2014に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
様々な実施形態では、フレイル指数は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0285823号に記載の通りに算出される。例えば、フレイル指数の決定に関する説明が提供される。フレイル指数は、暦年齢が必ずしも生物学的年齢を反映するとは限らないという考えに対処するために、同じ暦年齢の生物の健康~フレイル範囲を評価するために開発された。16項目のパラメータ(体重、握力、血圧、総血球数、サイトカインレベル分析の測定値が含まれる)に基づいて、測定された欠損の総数の比としてFIが算出され、0(欠損なし=健康)~1(全ての欠損が存在=フレイル)の間のFIのスコアが割り当てられる。したがって、FIが高いほど、生物の健康状態が悪いことを示す。この点において、FIは、同じ暦年齢の「健康」~「フレイル」範囲の生物を評価するための有用なツールとして提供される。
【0222】
特定の実施形態では、本発明の方法は、Antoch et al.Aging.2017;9:1-12(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている、生理的フレイル指数(PFI)に従って測定された対象のフレイルを低減または予防する。例えば、PFIは、若年参照対象を参照して個々の対象について決定され得る。各対象について様々なパラメータが測定される。これらのパラメータとしては、年齢、体重、握力、及び拡張期血圧などの非侵襲的測定値が挙げられる。追加の血液化学測定値(白血球数、好中球数、好中球の割合、リンパ球の割合、単球の割合、好酸球の割合、赤血球数、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリットレベル、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビンレベル、平均赤血球ヘモグロビン濃度、血小板数、及び平均血小板容積を含む)も決定され得る。各パラメータについて、平均値及び標準偏差が算出される。いずれかの単一のパラメータの平均値から1を超える標準偏差(STDEV)で異なる対象は、参照群から除外される。高齢対象について測定された各パラメータの値は、参照群の対応する値と比較され、スコアが割り当てられる。差が1STDEV未満の値には、スコア0が割り当てられる(欠損なし、参照群の範囲内)。1STDEVで異なる値は、0.25(ごくわずかな欠損)としてスコア化される。参照群の対応する値と2STDEV異なる値は0.5としてスコア化され、3STDEV異なる値は、0.75としてスコア化される。値が3STDEVを超える場合、1(極度の欠損)としてスコア化される。個々の対象が示した欠損の数は測定されたパラメータの総数の比として算出され、生理的フレイル指数(PFI)と称される。
【0223】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PFIにより測定された対象のフレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防する。例えば、フレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防するためにAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することにより、PFIスコアが低減し得る。いくつかの実施形態では、対象のPFIスコアは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%低減する。いくつかの実施形態では、対象のPFIスコアは、約25%~75%、約25%~50%、または約50%~75%低減する。さらなる実施形態では、対象のPFIスコアは、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下、0.2以下、0.15以下、0.1以下、または0.5以下低減する。
【0224】
さらに、欠損の蓄積としてのフレイルは、Rockwood et al.,J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2007 Jul;62(7):722-727(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているRockwoodフレイル指数によって測定され得る。実施形態では、本方法は、Rockwoodフレイル指数によって評価されたフレイルを低減させるかまたは予防する。
【0225】
複数の生理学的系にわたる累積的減退に起因する予備能力の低下の生物学的症候群としてのフレイルは、Fried et al.,J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2001 Mar;56(3):M146-56(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているFriedフレイルスコアによって測定され得る。Friedフレイルスコアは、10ポンドを超える体重減少、握力に関連する脱力感、自己申告による疲弊、15フィートの歩行速度、及び週当たりのKcal単位の身体活動量などの様々なパラメータを測定する身体的フレイル表現型(PFP)で構成される。Friedフレイルスコアは、0(フレイルではない)、1~2(中等度のフレイル)、及び3以上(フレイル)のスコアリングを導入している。様々な実施形態では、本発明の方法は、Friedフレイルスコアにより測定された対象のフレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防する。例えば、フレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防するためにAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することにより、Friedフレイルスコアが3から2に、3から1に、3から0に、2から1に、2から0に、または1から0に低減し得る。さらに、いくつかの実施形態では、フレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防するためにAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することにより、対象のFriedフレイルスコアの増加がなくなる。
【0226】
フレイルはまた、Abellean Van Kan et al.,J Am Med Dir Assoc.2008 Feb;9(2):71-2.doi:10.1016/j.jamda.2007.11.005(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているFRAILスケールにより測定され得る。FRAILスケールで測定されるパラメータには、持続的な疲労感、抵抗力(ひと続きの階段を上る能力)、歩行(1ブロックを歩く能力)、5つを超える疾病、及び5%超の体重減少が含まれる。FRAILスケールは、0(フレイルではない)、1~2(中等度のフレイル)、及び3以上(フレイル)のスコアリングを導入している。様々な実施形態では、本発明の方法は、FRAILスケールスコアにより測定された対象のフレイルを低減もしくは改善させる。例えば、フレイルを低減もしくは改善させるためにAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することにより、FRAILスケールスコアが3から2に、3から1に、3から0に、2から1に、2から0に、または1から0に低減し得る。さらに、いくつかの実施形態では、フレイルを低減もしくは改善させる及び/または治療もしくは予防するためにAPベースの薬剤の調節放出製剤を対象に投与することにより、対象のFRAILスケールスコアの増加がなくなる。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、フレイルの少なくとも1つの許容可能な指標を使用して、フレイル指数を改善(もしくは低減)させるか、またはフレイルにおける衰弱を遅延させるかもしくは緩慢にする。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、フレイル指数(FI)、生理的フレイル指数(PFI)、Friedフレイルスコア、Rockwoodフレイル指数、FRAILスケール、及び修正フレイル指数から選択されるフレイルの少なくとも1つの許容可能な指標を使用して、フレイル指数を改善(もしくは低減)させるか、またはフレイルにおける衰弱を遅延させるかもしくは緩慢にする。
【0228】
いくつかの実施形態では、フレイルは、低除脂肪量、脱力感、疲弊、低エネルギー消費、及び/または遅い歩行速度を含む。実施形態では、本発明の方法は、低除脂肪量、脱力感、疲弊、低エネルギー消費、及び/または遅い歩行速度のうちの1つ以上の発症または発生を低減させるかまたは予防する。
【0229】
理論に束縛されることを望まないが、APベースの薬剤(例えば、IAP)を含むAPベースの薬剤は、例えば、腸管防御への参加、抗炎症機能の媒介、正常な腸内微生物叢プロファイルの維持、粘膜バリアの完全性の維持、ならびに消化及び栄養素(脂肪)吸収の調節を含む多くの胃腸及び全身プロセスにおいて重要な役割を担うと考えられている。したがって、本発明は、免疫機能、代謝機能、及び神経学的機能を調節するための広範囲の治療用途におけるAPベースの薬剤の使用を提供する。様々な実施形態では、本発明は、マイクロバイオーム関連障害、GIディスバイオシス、GI炎症、大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎)、代謝性疾患(例えば、代謝症候群、肥満症、及び糖尿病)、神経疾患(例えば、多発性硬化症及び脊髄損傷)、嚢胞性線維症、敗血症、ならびに腎不全の治療を提供する。
【0230】
様々な態様では、本発明は、APベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の胃腸マイクロバイオームを調節及び保護するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、共生細菌の数及び胃腸マイクロバイオームの組成を増加または保存するように本発明のAPベースの薬剤を投与することにより、胃腸管細菌叢のレベル及び/または機能が低減した対象を治療するために使用され得る。他の実施形態では、本発明の方法は、胃腸管における病原性細菌による感染症の治療及び/または病原性細菌の増殖の阻害もしくは病原性細菌数の低下に関する。
【0231】
様々な実施形態では、本発明の方法は、マイクロバイオーム介在性障害を治療または予防することを含む。例示的なマイクロバイオーム介在性障害としては、例えば、WO2014/121298の表3(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見られるものが挙げられるが、これに限定されない。例えば、記載された方法は、共生細菌のレベルの低減及び/または胃腸管細菌叢の機能に関連する症状、例えば、抗生物質関連下痢(AAD)、Clostridioides difficile関連疾患(CDAD)、炎症性障害、後天性免疫不全症候群(AIDS)(HIV介在性の腸ディスバイオシス及びGIバリア機能障害を含む)、甲状腺機能低下症、ならびに肥満症を治療するために使用され得る。
【0232】
様々な態様では、本発明は、必要とする対象において、GI管における抗生物質誘発性有害作用の治療、及び/またはC.difficile感染症(CDI)及び/またはC.difficile関連疾患の予防もしくは治療に使用するための本発明のAPベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む医薬組成物を提供する。理論に束縛されることを望まないが、本発明のAPベースの薬剤は、病的細菌に優先して共生細菌の増殖を促進し抗生物質誘発性ディスバイオシスからの回復を早める、ヌクレオシド三リン酸の脱リン酸化を媒介すると考えられている。したがって、本発明のAPベースの薬剤による治療は、Clostridioides difficile感染症及び腸内のグラム陰性病原体から保護する可能性がある。様々な実施形態では、抗生物質誘発性有害作用及び/またはCDIもしくはC.difficile関連疾患は、抗生物質関連下痢、C.difficile下痢(CDD)、C.difficile腸炎症性疾患、大腸炎、偽膜性大腸炎、発熱、腹痛、脱水症及び電解質障害、巨大結腸症、腹膜炎、ならびに結腸の穿孔及び/または破裂のうちの1つ以上である。
【0233】
様々な実施形態では、対象には、非限定的な例として、抗生物質による治療を受けているかまたは最近抗生物質による治療を受けた者などのマイクロバイオーム介在性障害の特定のリスクにある対象が含まれるが、これに限定されない。例えば、対象は、過去約30日程度の間に抗生物質を服用した可能性がある、及び/または免疫系が弱い(例えば、慢性疾病に由来する)、及び/または女性である、及び/または高齢者である(例えば、約65歳超)、及び/または胸焼けもしくは胃酸障害の治療(例えば、PREVACID、TAGAMET、PRILOSEC、もしくはNEXIUMなどの薬剤及び関連薬物によるもの)を受けている(もしくは受けたことがある)、及び/または最近入院したことがある(集中治療室、もしくは介護施設での居住を含む)。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用は、院内感染(nosocomial infection)及び/または緊急を要する二次感染及び/または院内感染(hospital acquired infection)(HAI)を治療または予防する。
【0234】
様々な実施形態では、本発明は、必要とする対象への有効量の本発明のAPベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む、GI管における抗生物質誘発性有害作用を治療するための方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、必要とする対象への有効量の本発明のAPベースの薬剤(及び/または追加の治療剤)を含む、GI管における抗生物質誘発性有害作用を予防するための方法を提供する。
【0235】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、抗生物質誘発性の損傷から腸マイクロバイオームを保護する。一実施形態では、APベースの薬剤は、セファロスポリン誘発性の損傷から腸マイクロバイオームを保護する。いくつかの実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、セフトリアキソン(CRO)誘発性の損傷から腸マイクロバイオームを保護する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、下痢、悪心、嘔吐、味覚異常、大腸炎、及び偽膜性大腸炎の疾患及び/または症状を含むがこれらに限定されない抗生物質関連有害作用を治療または予防する。一実施形態では、本発明の方法を使用して、抗生物質関連下痢(AAD)を治療または予防することができる。
【0236】
様々な実施形態では、本発明の方法は、胃腸管における病原性細菌による感染症を治療するため、及び/または病原性細菌の増殖を阻害するため、もしくは病原性細菌数を低下させるための組成物及び方法を提供する。様々な実施形態では、本発明は、患者の腸内の様々な大腸菌群(毒性及び/または抗生物質耐性である大腸菌群を含む)の異常増殖を軽減または予防する組成物及び方法を提供する。例示的な大腸菌群としては、Citrobacter、Enterobacer、Hafnia、Kelbsiella、及びEscherichiaが挙げられる。様々な態様では、本明細書に記載の方法及び組成物は、耐性生物による二次感染を予防するかまたは減少させる。一実施形態では、病原性細菌は、Salmonellaなどの腸内細菌である。
【0237】
いくつかの実施形態では、本発明は、腸レジストームの拡大を予防する。腸レジストームとは、ヒト腸内微生物叢が保有している可能性のある抗生物質耐性遺伝子の蓄積場所を指す。そのような抗生物質耐性遺伝子は、公衆衛生への主要な脅威となる病原性微生物の間に抗生物質耐性を付与する。細菌は、ドナー株からの耐性遺伝子の動員及び伝達によって抗生物質耐性遺伝子を獲得することができる。様々な実施形態では、予防方法は、胃腸管内の抗生物質耐性細菌の数を低減させ、それにより腸レジストームの拡大を低減させる。様々な実施形態では、本発明は、抗生物質耐性細菌の増殖を軽減または予防し、それにより腸レジストームの拡大を予防するかまたは減少させる。
【0238】
様々な実施形態では、本発明は、有効量の本発明のAPベースの薬剤をそれを必要とする対象に投与することを含む、C.difficile感染症(CDI)及び/またはC.difficile関連疾患を治療または予防するための方法を提供する。一実施形態では、本発明は、有効量の本発明のAPベースの薬剤をそれを必要とする対象(非限定的な例として、抗生物質が投与されているか、または投与される予定の患者)に投与することを含む、C.difficile感染症(CDI)及び/またはC.difficile関連疾患を予防するための方法を提供する。
【0239】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明のAPベースの薬剤をそれを必要とする対象に投与することを含む、C.difficile感染症(CDI)及び/またはC.difficile関連疾患を予防する方法に関し、この対象は、一次抗生物質による治療を受けている。「一次抗生物質」は、患者に投与され、CDI及び/またはC.difficile関連疾患を引き起こす可能性のある抗生物質を指す。これらには、最も頻繁にCDI及び/またはC.difficile関連疾患を招く抗生物質、例えば、フルオロキノロン、セファロスポリン、クリンダマイシン、及びペニシリンが含まれる。
【0240】
様々な実施形態では、CDI及び/またはC.difficile関連疾患は、初回発症または再燃/再発(例えば、抗生物質療法の継続または再開による)の状況において治療または予防される。例えば、以前CDIに罹患したことがある患者においては、本発明のAPベースの薬剤は、再発の最初の症状の際に投与され得る。非限定的な例として、再発の症状としては、軽症の場合、1日当たり約5~約10回の水様排便があり、著しい発熱はなく軽度の腹部痙攣のみであるが、血液検査では白血球数の最大約15,000の軽度の上昇(通常のレベルは最大約10,000)が示される場合があり、重症の場合、1日当たり約10回を超える水様便、悪心、嘔吐、高熱(例えば、約102~104°F)、直腸出血、重度の腹痛(例えば、圧痛を伴う)、腹部膨満、及び高白血球数(例えば、約15,000~約40,000)がある。
【0241】
初回発症であるかまたは再燃/再発であるかにかかわらず、CDI及び/またはC.difficile関連疾患は、本明細書に記載の症状のいずれかにより診断され得る(例えば、約2日以上にわたる1日に約3回以上の水様性下痢、軽度から重度の腹部の痙攣及び疼痛、発熱、便中の血または膿、悪心、脱水症、食欲低下、体重減少など)。初回発症であるかまたは再燃/再発であるかにかかわらず、CDI及び/またはC.difficile関連疾患はまた、酵素免疫測定法(例えば、C.difficile生物によって生成されるC.difficile毒素AもしくはB抗原及び/またはグルタミンデヒドロゲナーゼ(GDH)を検出するためのもの)、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、ILLUMIGENE LAMPアッセイを含む、C.difficile毒素AもしくはB遺伝子またはその一部(例えば、tcdAもしくはtcdB)を検出するためのもの)、細胞毒性アッセイにより診断され得る。例えば、次の試験のいずれかを使用することができる:Meridian ImmunoCard Toxins A/B、Wampole Toxin A/B Quik Chek、Wampole C.diff Quik Chek Complete、Remel Xpect Clostridioides difficile(旧称Clostridium difficile)Toxin A/B、Meridian Premier Toxins A/B、Wampole C.difficile Tox A/B II、Remel Prospect Toxin A/B EIA、Biomerieux Vidas C.difficile Toxin A&B、BD Geneohm C.difficile、Prodesse Progastro CD、及びCepheld Xpert C.difficile。様々な実施形態では、臨床試料は、患者の糞便試料である。また、軟性S状結腸鏡検査の「スコープ」試験及び/または腹部X線及び/または結腸の画像を提供するコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、患者の評価に使用することができる(例えば、結腸壁に付着した特徴的なクリーム状の白色または黄色のプラークを探す)。さらに、生検(例えば、GI管のいずれかの領域の生検)を使用して、CDI及び/またはC.difficile関連疾患の可能性のある患者を評価することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用は、初期療法及び/または補助療法が対象に施されるものを含む。初期療法及び/または補助療法は、例えば、マイクロバイオーム介在性の障害または疾患をそのような障害または疾患の検出時に治療するために使用される療法を示す。一実施形態では、初期療法及び/または補助療法は、CDI及び/またはC.difficile関連疾患をそのような疾患の検出時に治療するために使用される療法を示す。いくつかの実施形態では、初期療法及び/または補助療法は、メトロニダゾール、バンコマイシン、フィダキソマイシン、リファキシミン、木炭系結合剤/吸着剤、糞便細菌療法、プロバイオティクス療法、及び抗体療法のうちの1つ以上である。様々な実施形態では、本発明の方法及び使用は、これらの初期療法及び/または補助療法(同時投与または逐次投与を含む)のいずれかに対する補助剤としてのアルカリホスファターゼの使用を含む。様々な実施形態では、本発明の方法及び使用は、初期療法及び/または補助療法を受けている対象への本明細書に記載のAPベースの薬剤の投与を含む。
【0243】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤は、胃腸管の粘膜透過性の亢進に罹患している対象に投与される。いくつかの実施形態では、胃腸管の粘膜透過性の亢進は、腸の灌流の低下または虚血の結果である。虚血、すなわち血流による酸素供給の欠如は、例えば、心不全、先天性心疾患、うっ血性心不全、冠状心疾患、虚血性心疾患、損傷、外傷、または手術に起因し得る。
【0244】
いくつかの実施形態では、胃腸管の粘膜透過性の亢進は、自己免疫性腸疾患及び炎症性腸疾患(IBD)、例えば、セリアック病、クローン病、及び大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎)に関連するか、またはそれらに起因する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明のAPベースの薬剤をそれを必要とする対象へ投与することを含む、自己免疫性腸疾患及び炎症性腸疾患(IBD)、例えば、セリアック病、クローン病、及び大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎)を治療または予防するための方法を提供する。炎症性腸疾患(IBD)は、大腸、場合によっては小腸の炎症状態の群である。IBDの主な形態は、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)である。IBDには、膠原線維性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、及び不確定性大腸炎も含まれる。
【0245】
いくつかの実施形態では、本発明は、セリアック病を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、セリアック病に関連する胃腸障害を治療する方法を提供する。セリアック病は、グルテンの摂取が小腸の損傷を招く遺伝的素因のある人々に発生し得る自己免疫疾患である。セリアック病の個体は腸透過性が亢進しており、これによりグルテン分解産物(セリアック病を引き起こす抗原)が腸管関連リンパ組織に到達するため、炎症性サイトカインの放出及びT細胞の動員を含む炎症反応が開始される。セリアック病は、小腸絨毛の萎縮ならびに吸収不良、下痢、腹痛、腹部膨満、疲労、及び悪心などの多種多様な症状を引き起こし得る小腸粘膜の慢性炎症を特徴とする。様々な実施形態では、本発明の方法は、GI症状、腹部症状、及び非GI症状を含むセリアック病の1つ以上の症状を効果的に治療する。
【0246】
セリアック病の1つ以上の症状の改善を測定するための方法としては、腸透過性の実験的バイオマーカーであるラクツロース対マンニトール(LAMA)比の評価(開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kelly et al.,(2012)Aliment Pharmacol Ther 2013;37:252-262);抗トランスグルタミナーゼ抗体レベルの測定;ならびに例えば、WO/2015/154010(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている、セリアック病患者報告アウトカム(CeD PRO)、胃腸症状評価尺度(GSRS)、セリアック病胃腸症状評価尺度(CeD GSRS)、ブリストル便形状スケール(BSFS)、一般的な健康に関する質問票、12項目の簡易式健康調査第2版(General Well-Being Questionnaire,Short Form 12 Health Survey Version 2)(SF12V2)、セリアック病の生活の質に関する質問票(CeD-QoL)、及び臨床医による疾患活動性の全般的評価(Clinician Global Assessment of Disease Activity)(CGA)を使用した臨床症状の評価を挙げることができる。様々な実施形態では、セリアック病を治療する本発明の方法は、これらの測定法の1つ以上によって評価される治療効果を提供する。
【0247】
いくつかの実施形態では、本方法は、セリアック病を治療し、対象が実質的な症状なしに食事にグルテンを導入することを可能にする。
【0248】
様々な実施形態では、胃腸管の粘膜透過性の亢進は、がん、AIDS、心不全、及び/または慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの1つ以上に伴う悪液質などの悪液質に関連するか、またはそれらに起因する。いくつかの実施形態では、本発明は、悪液質に関連する腸透過性の亢進及び/または腸ディスバイオシスを治療または予防する。
【0249】
いくつかの実施形態では、本方法は、悪液質または消耗症候群を治療または予防する。いくつかの実施形態では、本方法は、体重減少、筋萎縮、疲労、脱力感、及び食欲低下のうちの1つ以上を軽減させるか、なくすか、または予防する。いくつかの実施形態では、本方法は、栄養的に元に戻すことができない体重減少及び脂肪組織蓄積の低下のうちの1つ以上を軽減させるか、なくすか、または予防する。いくつかの実施形態では、本方法は、サルコペニアを治療または予防する。
【0250】
いくつかの実施形態では、本発明によって治療される悪液質は、がん、HIVまたはAIDS、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発ニューロパチー、水銀中毒(肢端疼痛症)、及びホルモン欠損症のうちの1つ以上に罹患している患者に見られる。
【0251】
様々な実施形態では、本発明のAPベースの薬剤による悪液質の本発明の治療または予防は、β-ヒドロキシβ-メチルブチレート(HMB)、様々なプロゲスチン(例えば、酢酸メゲストロール)、タンパク同化アンドロゲンステロイド(例えば、オキサンドロロン)、サリドマイド及びサイトカインアンタゴニスト、カンナビノイド、オメガ-3脂肪酸(例えば、エイコサペンタエン酸(EPA))、非ステロイド性抗炎症薬、運動促進薬、グレリン及びグレリン受容体アゴニスト、MT-102などのタンパク同化異化転換剤(anabolic catabolic transforming agent)、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、シプロヘプタジン、ならびにヒドラジンのうちの1つ以上と組み合わせて、またはそれらによる治療を受けている患者において使用される。
【0252】
いくつかの実施形態では、胃腸管の粘膜透過性の亢進は、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連するか、またはそれに起因する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する胃腸障害を治療する方法を提供する。胃腸障害は、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)またはヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)関連AIDSの患者における最も高頻度の愁訴である。HIV疾患の胃腸徴候としては、下痢、嚥下障害、嚥下痛、悪心、嘔吐、体重減少、腹痛、肛門直腸疾患、黄疸、肝腫大、胃腸管出血、ならびに胃腸腫瘍(例えば、カポジ肉腫及び非ホジキンリンパ腫)が挙げられる。
【0253】
進行性のHIV感染症は、しばしば、AIDSへの疾患進行を促進するGI管の損傷、微生物の移行、炎症、及び免疫活性化をもたらす。「HIV腸疾患」という用語は、腸介在性の免疫機能障害に関連する粘膜の構造及び機能の変化を記述するため、ならびに感染源が特定されていない慢性下痢の臨床症候群を示すために使用されている。慢性下痢に加えて、HIV腸疾患は、GI炎症の亢進、腸透過性の亢進、及び胆汁酸及びビタミンB12の吸収不良を特徴とすることが多く、これらは腸粘膜に対するHIVの直接的または間接的な影響に起因すると考えられている異常である(Brenchley JM,Douek DC.Mucosal Immunol 2008;1:23-30)。臨床的な結果としては、脂肪及び炭水化物の吸収減少、小腸通過時間の減少傾向、及び空腸の萎縮が挙げられる。様々な実施形態では、本発明の方法は、HIV腸疾患の症候性の影響を効果的に治療する。様々な実施形態では、本発明の方法は、HIV感染症のAIDSへの進行を予防するか、緩慢にするか、または元に戻す。様々な実施形態では、本発明の方法は、AIDSの死への進行を予防するかまたは緩慢にする。
【0254】
さらにまた、対象が感染するHIV-1サブタイプは、AIDSへの進行速度の因子であり得る。様々な実施形態では、本方法は、HIV-1サブタイプC、D、及びGに感染した患者を効果的に治療する。別の実施形態では、本方法は、HIV-1サブタイプAに感染した患者を効果的に治療する。
【0255】
いくつかの実施形態では、本発明は、HIV感染症及び/またはAIDSに関連する様々なGI障害を治療する方法を提供する。例えば、本発明は、HIV介在性腸ディスバイオシス及びGIバリア機能障害(様々な実施形態では、HIV、HIVに感染した対象に投与される抗生物質、及び/またはHIVに感染した対象に投与されている薬物に起因し得る)を治療する方法を提供する。例えば、HIVに感染した対象は、デオキシアデノシン類似体(例えば、ジダノシン、ビダラビン)、アデノシン類似体(例えば、BCX4430)、デオキシシチジン類似体(例えば、シタラビン、エムトリシタビン、ラミブジン、ザルシタビン)、グアノシン類似体及びデオキシグアノシン類似体(例えば、アバカビル、アシクロビル、エンテカビル)、チミジン類似体及びデオキシチミジン類似体(例えば、スタブジン、テルビブジン、ジドブジン)、ならびにデオキシウリジン類似体(例えば、イドクスウリジン、トリフルリジン)などの1つ以上のヌクレオシド類似体を服用している場合がある。いくつかの実施形態では、HIVに感染した対象は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)レジメンの1つ以上の薬物を服用している場合がある。例示的なHAART薬としては、侵入阻害剤または融合阻害剤(例えば、マラビロク、エンフビルチド)、本明細書に記載のヌクレオシド類似体及びヌクレオチド類似体などのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及びヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン)、インテグラーゼ阻害剤(例えば、ラルテグラビル)、ならびにプロテアーゼ阻害剤(例えば、ロピナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、リトナビル、ダルナビル、アタザナビル)が挙げられる。
【0256】
様々な実施形態では、本方法は、局所炎症を低減させ、GI微生物叢の組成を変化させ、微生物移行の産物の循環からのクリアランスを強化させ、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象の腸細胞バリアを修復する。一実施形態では、本発明の方法は、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象におけるGI管の損傷及び腸ディスバイオシスを低減させる。例えば、本発明の方法は、HIVに感染した対象またはAIDSを有する対象において認められたGI微生物叢の変化を元に戻し得る。例として、本発明の方法によって元に戻すことのできるGI微生物叢のこれらの変化としては、炎症促進能を有するStaphylococcus属、Psedomonas属、Enterobacteriaceae科メンバー、ならびにトリプトファンをキヌレニン誘導体に異化する腸内病原性細菌(Psudemonas、Xanthomonas、Bacillus、及びBurkholderia属を含む)などの病原性共生生物の増加を特徴とする微生物叢の変化が挙げられる。一実施形態では、本方法は、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象におけるGIバリア機能障害を低減させる。例えば、本発明の方法は、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象における腸透過性の亢進(例えば、リーキーガット症候群)を元に戻し得る。一実施形態では、本発明の方法は、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象における、微生物移行または微生物産物及び炎症性メディエーター(例えば、LPS)の体循環への移行を低減させる。そのような方法では、対象の血漿中のLPS、EndoCAb、sCD14、及びI-FABPのレベルが低減し得る。一実施形態では、本発明の方法は、HIVに感染した対象及び/またはAIDSを有する対象における免疫活性化及び炎症(例えば、局所及び全身の免疫活性化及び炎症)を低減させる。例えば、本発明の方法は、腸管関連リンパ組織(GALT)の炎症を減少させ、CD4+細胞及びTh17細胞の数を増加させ得る。本発明の方法は、細胞傷害性T細胞の放出、ならびに炎症性粘膜サイトカイン及びマーカー、例えば、インターフェロン-α、腫瘍壊死因子-α、CRP、IL-1β、IL-2、IL4、IL-6及びIL-13の産生をさらに阻害し得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、本発明は、嚢胞性線維症(CF)を有する患者におけるディスバイオシス及び胃腸機能障害を治療または予防するための方法を提供する。遺伝性疾患である嚢胞性線維症(CF)は、上皮細胞のイオン及び水の透過性を調節するCF膜貫通コンダクタンスレギュレーター(CFTR)の変異に関連している。いくつかの実施形態では、本方法は、CFTR遺伝子の1つ以上の変異についてホモ接合性である対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、対象は、CFTR遺伝子の1つ以上の変異についてヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、1つ以上のCFTR変異は、ナンセンス変異である。いくつかの実施形態では、1つ以上のCFTR変異は、ゲーティング変異である。いくつかの実施形態では、1つ以上のCFTR変異は、タンパク質プロセシング変異である。いくつかの実施形態では、1つ以上のCFTR変異は、コンダクタンスの変異である。いくつかの実施形態では、1つ以上のCFTR変異は、翻訳の変異である。CFTR変異の例としては、F508del、G542X、G85E、R334W、Y122X、G551D、R117H、A455E、S549R、R553X、V520F、R1162X、R347H、N1203K、S549N、R347P、R560T、G1244E、G1349D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S549R、S1255X、Add9T、Y1092X、M1191K、W1282X、3659delC、394delTT、3905insT、1078delT、デルタ1507、3876delA、2184delA、2307insA、711+1G>T、1717-1G>A、2789+5G>A、1898+5G>T、3120+1G>A、621+1G>T、3849+l0kbC>T、1898+1G>A、2183AA>G、及び/または5/7/9Tが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、本発明の方法は、本明細書に開示されるCFTR変異のうちの1つ以上を有するCF患者を治療するために使用される。一実施形態では、患者は、以下のCFTR変異:G551D、G1244E、G1349D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S549N、S549R及び/またはR117Hのうちの1つ以上を有する。一実施形態では、患者は、F508del変異を有する。CFTR変異に関して患者の遺伝子型をスクリーニングするための方法は公知であり、例えば、双方向シーケンシングなどのDNAシーケンシングによって実施することができる。
【0258】
CF患者は、慢性呼吸器感染症及び胃腸(GI)粘膜表面の機能障害などの症状を示すことが多く、相当な罹患率及び死亡率となる。CFの最も初期の徴候の1つは、重度の再発性腸閉塞及び栄養吸収不良を含むGI機能障害であり、これらは成長不全をもたらす。CF患者はまた、糞便微生物叢中のE.coliの過剰及びBifidobacterium種の相対存在量の低下などのGIディスバイオシスを示す。様々な実施形態では、本発明の方法は、CF患者の1つ以上のGI関連症状を効果的に治療する。
【0259】
Gl管機能の変化及び/または改善を測定するための方法としては、上皮及び粘膜を直接検査するための内視鏡検査;構造変化及び/または免疫バイオマーカーを直接評価するための組織学的評価及び/または組織の入手;非吸収性糖の透過性及びLPSレベルを評価するための尿検査;炎症及び/または微生物叢の変化を評価するための糞便検査(例えばPCRによる);及び/またはCD4+細胞数、Th17細胞数、及び/またはLPSレベルを含む特定のマーカーを評価するための血液検査を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0260】
いくつかの実施形態では、本発明は、甲状腺機能低下症に関連する胃腸障害を治療する方法を提供する。甲状腺機能低下症は、甲状腺が十分な甲状腺ホルモン(チロキシンまたはT4)を産生しない状態である。多くの場合、甲状腺機能低下症は、消化管の作用を緩慢にして便秘を引き起こすか、または消化管の運動を完全に停止させ得る。本発明の方法は、甲状腺機能低下症に関連する1つ以上の胃腸症状を軽減し得る。
【0261】
いくつかの実施形態では、本発明は、壊死性腸炎(NEC)を予防または治療するための方法を提供する。
【0262】
様々な実施形態では、本発明の方法は、NECの予防または治療のための小児対象に関する。様々な実施形態では、小児対象は、約1日~約1週齢、約1週~約1ヶ月齢、約1ヶ月~約12ヶ月齢、約12ヶ月~約18ヶ月齢、約18~約36ヶ月齢、約1~約5歳、約5~約10歳、約10~約15歳、または約15~約18歳であり得る。いくつかの実施形態では、小児対象は、約1日齢、約2日齢、約3日齢、約4日齢、約5日齢、約6日齢、約1週齢、約2週齢、約3週齢、約4週齢、約1ヶ月齢、約2ヶ月齢、約3ヶ月齢、約4ヶ月齢、約5ヶ月齢、約6ヶ月齢、約7ヶ月齢、約8ヶ月齢、約9ヶ月齢、約10ヶ月齢、約11ヶ月齢、または約12ヶ月齢の乳児である。様々な実施形態では、小児対象は、調合乳及び/または乳を摂取している。様々な実施形態では、小児対象は、抗生物質による治療を受けているか、または最近抗生物質による治療を受けたことがある。
【0263】
様々な実施形態では、小児対象は、未熟児である。いくつかの実施形態では、未熟児は、37週未満の在胎期間で出生する。いくつかの実施形態では、未熟児は、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約25週間、約26週間、約27週間、約28週間、約29週間、約30週間、約31週間、約32週間、約33週間、約34週間、約35週間、約36週間、または約37週間の在胎期間で出生する。他の実施形態では、小児対象は、満期児、例えば、約37週の在胎期間より後に出生した乳児である。いくつかの実施形態では、小児対象は、胎児期仮死、ショック、敗血症、または先天性心疾患のうちの1つ以上を示し得る。様々な実施形態では、小児対象は、低出生体重である。様々な実施形態では、小児対象の体重は、約5ポンド未満、約4ポンド未満、約3ポンド未満、または約2ポンド未満である。
【0264】
様々な実施形態では、本発明の方法は、NECの予防または治療の対象の妊婦に関する。いくつかの実施形態では、妊婦は、抗生物質による治療を受けているか、または最近抗生物質による治療を受けたことがある。
【0265】
NECの存在及び重症度は、以下の通りBell et al.,J.Ped.Surg.,15:569(1980)のステージ分類システムを使用して等級付けされる。様々な実施形態では、本方法はこれらのステージのいずれかにおいて疾患を治療する。
【0266】
【0267】
様々な実施形態では、本発明の方法は、上述の症状のいずれか、ならびにGI症状、腹部症状、及び非GI症状を含む当該技術分野で公知の症状を含むNECの1つ以上の症状を効果的に治療する。様々な実施形態では、本発明の方法は、小児対象などの対象におけるNECの発生を効果的に予防する。様々な実施形態では、本発明の方法は、小児対象などの対象における、例えば、ステージIからステージIIへ、またはステージIIからステージIIIへのNECの進行を効果的に予防する。様々な実施形態では、本発明の方法は、小児対象などの対象における、例えば、ステージIIIからステージIIへ、またはステージIから完全治癒へ、またはステージIIからステージIもしくは完全治癒へのNECの後退を効果的にもたらす。
【0268】
腸ディスバイオシスはNECの発生に関連しており、疾患の何らかの臨床的エビデンスの前に対象において検出され得る。様々な実施形態では、本発明の方法は、治療された対象の腸管の正常微生物叢を効果的に回復させる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、腸管の正常微生物叢を維持する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象の腸内微生物叢の健常なバランス(例えば、健常な比率及び/または健常な分布)を維持する。別の実施形態では、本発明の方法は、GI管における1つ以上の病原性微生物の異常増殖を治療または予防する。特定の実施形態では、本発明の方法は、腸管のClostridium butyricum及び/またはClostridium perfringensのレベルを効果的に低減させる。
【0269】
NECの1つ以上の症状の改善を測定するための方法としては、X線及び超音波検査などの画像診断モダリティが挙げられる。Gl管機能の変化及び/または改善を測定するための方法としては、上皮及び粘膜を直接検査するための内視鏡検査または結腸内視鏡検査;構造変化及び/または免疫バイオマーカーを直接評価するための組織学的評価及び/または組織の入手;炎症及び/または微生物叢の変化を評価するための糞便検査(例えばPCRによる);及び/または特定のマーカー及び細胞を評価するための血液検査を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0270】
いくつかの実施形態では、本発明は、代謝症候群、糖尿病、高血圧症、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝、及び他の代謝性疾患を治療または予防する方法を提供する。様々な実施形態では、代謝症候群は、トリグリセリドの上昇、低密度リポタンパク質の上昇、高密度リポタンパク質の低減、リポタンパク質指数の低減、空腹時血糖値の上昇、空腹時インスリンの上昇、摂食後のグルコースクリアランスの低減、インスリン抵抗性、耐糖能異常、肥満、及びこれらの組み合わせに関連している。例えば、本発明の方法は、代謝症候群を有し、腹部肥満(例えば、男性では腹囲40インチ以上、もしくは女性では腹囲35インチ以上)、150mg/dL以上の血中トリグリセリドレベル、男性で40mg/dL未満、もしくは女性で50mg/dL未満のHDL、130mmHg以上の収縮期血圧、もしくは85mmHg以上の拡張期血圧、及び/または100mg/dL以上の空腹時血糖を有する対象を治療するために使用され得る。本発明の方法を使用して治療することができるさらなる代謝性疾患には、US2013/0251701、US2011/0206654、及びUS2004/0115185に記載されているものが含まれ、これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0271】
一実施形態では、代謝性疾患は肥満症である。抗生物質への早期の曝露(例えば、生後約2年以内)は、マイクロバイオームを破壊し、起こり得る疾患を招き得る。Bailey,et al.JAMA Pediatr.168(11),Nov 2014(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)には、抗生物質への早期曝露がどのように肥満症に関連するかについて記載されている。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、小児のマイクロバイオームを保護し、肥満症などの疾患を予防する。さらに、Firmicutes細菌門とBacteroidetes細菌門の比の変化が、肥満個体にしばしば認められる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のAP剤を投与することにより肥満症を治療または予防するための方法を提供する。本発明の方法は、例えば、Bacteroidetes、プロテオバクテリア、及びFirmicutesなどの腸管内の細菌の正常な多様性を保持し、それにより肥満症を治療または予防する。さらに、APベースの薬剤は、胃腸管での脂肪吸収に影響を与え得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、GIの脂肪吸収を制限することにより肥満症を治療または予防するための方法を提供する。様々な実施形態では、本発明の方法は、体重減少を誘導するか、または体重増加を予防するのに効果的である。いくつかの実施形態では、対象は、消化器系の手術を受けた可能性があるか、もしくは受ける可能性があるか;約80~100ポンドの体重過多であり得るか;BMIが約35kg/m2を超えている可能性があるか;または肥満に関連する健康問題を有している可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、高脂血症及び高リポタンパク血症を含む脂質異常症を有し得る。
【0272】
別の実施形態では、代謝性疾患は、糖尿病である。様々な実施形態では、本発明は、糖尿病(1型または2型)及び/または耐糖能障害の治療に関する。様々な実施形態では、本発明は、糖尿病(1型または2型)及び/または耐糖能障害の予防に関する。様々な実施形態では、本発明は、糖尿病(1型または2型)及び/または耐糖能障害による合併症の低減に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、糖尿病と、インスリン抵抗性、糖尿病前症、空腹時血糖障害(IFG)、及び耐糖能異常(IGT)のうちの1つ以上のリスクのある対象を治療するための方法に関する。
【0273】
様々な実施形態では、本発明は、APベースの薬剤による1型糖尿病の治療に関する。以前は若年性糖尿病またはインスリン依存性糖尿病として知られていた1型糖尿病は、膵臓がインスリンをほとんどまたは全く産生しない慢性状態である。治療は、多くの場合、身体の正常なインスリン分泌パターンの模倣を企図する集中的なインスリンレジメンによるものであり、多くの場合、基礎インスリン及びボーラスインスリンの適用範囲を含む。例えば、一般的なレジメンの1つは、長時間作用型インスリン(例えば、グラルギン/デテミルを含む)を1日1回または2回、速効型インスリン(例えば、アスパルト、グルリジン、リスプロを含む)とともに食前または食後に投与し、必要に応じて、(例えば、血糖値計でモニタリングすることにより)高血糖を補正するものである。高血糖を補正するために食前もしくは食後に、または必要に応じて投与される用量は、ボーラス投与と称されることがある。別の一般的なレジメンは、例えば、速効型インスリン(本明細書に記載されるものであり、例えば、アスパルト、グルリジン、リスプロを含む)のインスリンポンプ(または持続皮下インスリン注入デバイス(CSII))を介した連続投与を含む投与を含む。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、インスリンが患者に効果的な治療をもたらしていない場合を含む、様々なレジメンで使用されるインスリンのいずれかを代替することができ、APベースの薬剤は、プログラミングが必要なインスリンポンプの状態であっても1日中様々な用量で投与する必要がある様々な形態のインスリンと比較して、より簡単な自己投与を可能とし得ることから、患者コンプライアンスを向上させ得る。さらに、APベースの薬剤は、例えば、暁現象などの糖尿病患者の投与に関する一般的なフラストレーションを打ち消し得る。あるいは、APベースの薬剤は、例えば、患者のレジメンを正常化させ、多くの患者が悩まされている血糖の「急降下」(例えば、低血糖症、例えば、約70mg/dL未満の血糖)、及び「急上昇」(例えば、高血糖症、例えば、約200mg/dLを超える血糖)を回避するために、本明細書に記載の1型糖尿病治療のいずれかに対する補助剤として使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、例えば、震え、不安、神経過敏、動悸、頻脈、蒼白、寒気、冷湿感、瞳孔散大(散瞳)、空腹感、腹鳴、悪心、嘔吐、腹部不快感、頭痛、精神状態異常、判断力障害、非特異的不快感、感覚異常、拒絶症、易怒性、好戦性、好争性、激高、人格変化、情緒不安定、疲労、脱力感、感情鈍麻、嗜眠、白日夢、睡眠、錯乱、健忘症、意識朦朧またはめまい、せん妄、凝視、「生気のない」目つき、霧視、複視、視野内の閃光、自動症、発話困難、不明瞭な発話、運動失調、協調運動障害、限局的または全体的な運動障害、麻痺、片麻痺、感覚異常、頭痛、昏迷、昏睡、呼吸異常、全身性または限局性発作、記憶喪失、CNS損傷(例えば、認知障害)、健忘症、及び死亡を含む、低血糖症に関連する症状を治療または予防し得る。したがって、いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、例えば、過食症、多飲症、多尿症、霧視、疲労、体重減少、創傷治癒不良、口渇、乾燥皮膚または痒みのある皮膚、足または踵の刺痛、勃起不全、再発性感染症、外耳感染症(例えば、スイマーの耳)、心不整脈、昏迷、昏睡、及び発作を含む、高血糖症に関連する症状を治療または予防し得る。様々なレジメンにおいて、1型糖尿病患者はインスリン療法を補うために追加の薬剤を投与され得る。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤はこのように使用される。APベースの薬剤は、インスリン療法単独で1型糖尿病を管理しようと苦心している患者に追加の治療的利益をもたらし得る。いくつかの実施形態では、インスリン療法単独で1型糖尿病を管理しようと苦心している患者は、本明細書に記載されるように、血糖コントロールが不十分である。
【0274】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、患者の血糖値を約10mM未満、例えば、約4mM~約7mMの範囲内に低減させるのに使用される。
【0275】
いくつかの態様では、本発明は、有効量のAPベースの薬剤を投与することを含む、1型または2型糖尿病を治療するための方法を提供する。
【0276】
APベースの薬剤が糖尿病を予防する、及び/または前糖尿病状態を治療するものを含む多くの実施形態では、患者は、以下のうちの1つ以上を特徴とする場合、糖尿病のリスクがある:運動不足である;糖尿病の親または兄弟がいる;アフリカ系アメリカ人、アラスカ先住民、アメリカインディアン、アジア系アメリカ人、ヒスパニック/ラテンアメリカ人、または太平洋諸島系アメリカ人から選択される糖尿病の高発生率に関連する家族歴を有する;体重が9ポンドを超える乳児を出産している;妊娠糖尿病と診断されている;約140/90mmHg以上の高血圧を有する;高血圧の治療を受けている;HDLコレステロールレベルが約35mg/dL未満、及び/またはトリグリセリドレベルが約250mg/dLを超える;多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を有する;ならびに心血管疾患を有する。
【0277】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、入院の状態で糖尿病を治療するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、糖尿病性昏睡にある患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、患者は、重度の糖尿病性低血糖症、進行性糖尿病性ケトアシドーシス(例えば、意識消失に至るほど十分に進行したもの。要因には、高血糖症、脱水症、ショック、及び疲弊のうちの1つ以上が含まれ得る)、高浸透圧性非ケトン性昏睡(例えば、高血糖症及び脱水症のうちの1つ以上が要因であるもの)のうちの1つ以上を有する患者に投与され得る。これらの実施形態では、APベースの薬剤は、グルコース、グルカゴン、インスリン、流体(例えば、カリウム及び/または他の電解質を含む生理食塩水)のうちの1つ以上を投与することを含む糖尿病性昏睡の標準的な治療レジメンと併せて使用することができ、いずれも任意選択で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、これらの治療レジメンにおいてインスリンを代替することができ、任意選択で経口投与される。
【0278】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、妊娠糖尿病のリスクが高い妊婦を治療するために使用され得る。一部の妊婦は妊娠24週頃から妊娠糖尿病を発症し、治療せずに放置すると、妊娠糖尿病により早産及び死産が生じ得る。いくつかの実施形態では、本発明は、妊婦の妊娠糖尿病を予防及び/または治療する方法を提供する。様々な実施形態では、本発明の方法はまた、GI炎症などの炎症のリスクが高い妊婦を治療するために利用され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、妊婦の炎症を低減させる。
【0279】
さらに、糖尿病に関連する様々な実施形態では、患者は、1つ以上の追加の薬剤を投与され得るか、または同時投与され得る。例示的な追加の薬剤としては、インスリンまたは任意の抗糖尿病剤(例えば、ビグアニド、スルホニル尿素またはメグリチニドなどのインスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼの阻害剤、チアゾリジンジオンなど)が挙げられる。本明細書に記載の治療方法は、様々な実施形態では、1つ以上の追加の薬剤及び/または非インスリン糖尿病剤を投与されている患者にAPベースの薬剤を投与することを含み得る。追加の薬剤としては、スルホニル尿素(例えば、DYMELOR(アセトヘキサミド)、DIABINESE(クロルプロパミド)、ORINASE(トルブタミド)、及びTOLINASE(トラザミド)、GLUCOTROL(グリピジド)、GLUCOTROL XL(徐放性)、DIABETA(グリブリド)、MICRONASE(グリブリド)、GLYNASE PRESTAB(グリブリド)、及びAMARYL(グリメピリド));ビグアニド(例えば、メトホルミン(GLUCOPHAGE、GLUCOPHAGE XR、RIOMET、FORTAMET、及びGLUMETZA));チアゾリジンジオン(例えば、ACTOS(ピオグリタゾン)及びAVANDIA(ロシグリタゾン));アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、PRECOSE(アカルボース)及びGLYSET(ミグリトール));メグリチニド(例えば、PRANDIN(レパグリニド)及びSTARLIX(ナテグリニド));ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害剤(例えば、JANUVIA(シタグリプチン)、NESINA(アログリプチン)、ONGLYZA(サキサグリプチン)、及びTRADJENTA(リナグリプチン));ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、INVOKANA(カナグリフロジン(canaglifozin)));ならびに合剤(例えば、グリブリド(スルホニル尿素)とメトホルミンとを合わせたGLUCOVANCE、グリピジド(スルホニル尿素)とメトホルミンとを合わせたMETAGLIP、及びメトホルミンとロシグリタゾン(AVANDIA)の両方を1つの剤中に用いるAVANDAMET、KAZANO(アログリプチンとメトホルミン)、及びOSENI(アログリプチン+ピオグリタゾン))のうちの1つ以上が挙げられる。
【0280】
他の追加の薬剤としては、経口METFORMIN、経口ACTOS、BYETTA皮下注、経口JANUVIA、経口WELCHOL、経口JANUMET、経口グリピジド、経口グリメピリド、経口GLUCOPHAGE、LANTUS皮下注、経口グリブリド、経口ONGLYZA、経口AMARYl、LANTUS SOLOSTAR皮下注、BYDUREON皮下注、LEVEMIR FLEXPEN皮下注、経口ACTOPLUS MET、経口GLUMETZA、経口TRADJENTA、経口ブロモクリプチン、経口KOMBIGLYZE XR、経口INVOKANA、経口PRANDIN、LEVEMIR皮下注、経口PARLODEL、経口ピオグリタゾン、NOVOLOG皮下注、NOVOLOG FLEXPEN皮下注、VICTOZA 2-PAK皮下注、HUMALOG皮下注、経口STARLIX、経口FORTAMET、経口GLUCOVANCE、経口GLUCOPHAGE XR、NOVOLOG Mix 70-30 FLEXPEN皮下注、経口GLYBURIDE-METFORMIN、経口アカルボース、SYMLINPEN 60皮下注、経口GLUCOTROl XL、NOVOLIN R注、経口GLUCOTROL、経口DUETACT、経口シタグリプチン、SYMLINPEN 120皮下注、HUMALOG KWIKPEN皮下注、経口JANUMET XR、経口GLIPIZIDE-METFORMIN、経口CYCLOSET、HUMALOG MIX75-25皮下注、経口ナテグリニド、HUMALOG Mix 75-25 KWIKPEN皮下注、HUMULIN70/30皮下注、経口PRECOSE、APIDRA皮下注、ヒューマリンR注、経口ジェンタデュエト、ビクトーザ3-Pak皮下注、ノボリン70/30皮下注、NOVOLIN N皮下注、インスリンデテミル皮下注、経口微粉化グリブリド、経口GLYNASE、HUMULIN N皮下注、インスリングラルギン皮下注、経口RIOMET、経口ピオグリタゾン-メトホルミン、APIDRA SOLOSTAR皮下注、インスリンリスプロ皮下注、経口GLYSET、HUMULIN70/30 Pen皮下注、経口コレセベラム、経口シタグリプチン-メトホルミン、経口DIABETA、ヒトレギュラーインスリン注、HUMULIN N Pen皮下注、エキセナチド皮下注、HUMALOG Mix 50-50 KWIKPEN皮下注、リラグルチド皮下注、経口KAZANO、経口レパグリニド、経口クロルプロパミド、インスリンアスパルト皮下注、NOVOLOG Mix 70-30皮下注、HUMALOG Mix 50-50皮下注、経口サキサグリプチン、経口ACTOPLUS Met XR、経口ミグリトール、組換えヒトNPHインスリン皮下注、NPHインスリン及びヒトレギュラーインスリン皮下注、経口トラザミド、経口ミフェプリストン、インスリンアスパルトプロタム-インスリンアスパルト皮下注、経口レパグリニド-メトホルミン、経口サキサグリプチン-メトホルミン、経口リナグリプチン-メトホルミン、経口NESINA、経口OSENI、経口トルブタミド、インスリンリスプロプロタミン及びリスプロ皮下注、プラムリンチド皮下注、インスリングルリジン皮下注、経口ピオグリタゾン-グリメピリド、経口PRANDIMET、NOVOLOG PenFill皮下注、経口リナグリプチン、エキセナチドマイクロスフェア皮下注、経口KORLYM、経口アログリプチン、経口アログリプチン-ピオグリタゾン、経口アログリプチン-メトホルミン、ならびに経口カナグリフロジンが挙げられる。
【0281】
他の追加の薬剤としては、リスプロ(HUMALOG)、アスパルト(NOVOLOG)、グルリジン(APIDRA)、レギュラー(NOVOLIN RまたはHUMULIN R)、NPH(NOVOLIN NまたはHUMULIN N)、グラルギン(LANTUS)、デテミル(LEVEMIR)、HUMULINまたはNOVOLIN70/30、及びNOVOLOG Mix70/30 HUMALOG Mix75/25または50/50が挙げられる。
【0282】
様々な実施形態では、本発明は、様々な神経変性疾患を治療または予防するために使用される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、多発性硬化症(MS;限定されないが、良性多発性硬化症、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)、進行型再発性多発性硬化症(PRMS)、及び一次性進行型多発性硬化症(PPMS)を含む)、アルツハイマー病(限定されないが、早期発症型アルツハイマー病、遅発性アルツハイマー病、及び家族性アルツハイマー病(FAD)を含む)、パーキンソン病及びパーキンソニズム(限定されないが、特発性パーキンソン病、血管パーキンソニズム、薬剤性パーキンソニズム、レビー小体を伴う認知症、遺伝性パーキンソン病、若年性パーキンソン病を含む)、ハンチントン病、ならびに筋萎縮性側索硬化症(ALS、限定されないが、散発性ALS、家族性ALS、西太平洋ALS、若年性ALS、平山病(Hiramaya Disease)を含む)から選択される。
【0283】
様々な実施形態では、本発明は、脊髄損傷及び/または脊髄損傷に関連するディスバイオシスを治療するために使用される。脊髄損傷は、腸透過性及び腸からの細菌移行を亢進させることが示されている。これらの変化は、腸管関連リンパ組織(GALT)の免疫細胞の活性化及び腸マイクロバイオームの変化に関連している。脊髄損傷に関連する腸ディスバイオシスは、運動回復障害、ならびに神経病変の病態及び脊髄内炎症の悪化に関係している。いくつかの実施形態では、本発明は、脊髄損傷に関連する細菌移行及び腸ディスバイオシスを予防及び/または治療する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、神経を保護し、及び/または脊髄損傷後の運動回復を向上させる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、GALTにおける抗炎症性の免疫表現型を誘導する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、脊髄損傷に関連する神経学的病変及び脊髄内炎症を低減させる。
【0284】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、外傷性脳損傷(TBI)及びその症状を治療するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、脳もしくは脊髄への外傷(例えば、頭蓋骨もしくは脊柱に作用する物理的力によって引き起こされるもの)、虚血、脳卒中、呼吸停止、心停止、脳血栓症もしくは脳塞栓症、神経学的問題(AIDS、脳出血、脳脊髄炎、水頭症、術後事象、脳感染症、及び脳震盪によって引き起こされるもの)、または頭蓋内圧の上昇に関連する様々な状態を治療するために使用され得る。
【0285】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、外力によって引き起こされる脳機能の変化、または脳病態の他のエビデンスを治療するために使用され得る。
【0286】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、様々な方法によって分類されたTBIを治療するために使用され得る。例えば、臨床的重症度(例えば、蘇生後の患者の運動、言葉、及び開眼の応答を観察する15段階の尺度である、Glasgow昏睡尺度(GSC)(Teasdale & Jennett(1974)Lancet,2,81-84を参照されたい))が使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、GSCによって定義された軽度、中等度、または重度の頭部損傷を治療するために使用され得る。さらに、TBIは、TBIの病態に基づく分類を使用して、例えば、解剖学的及び生理学的観点から治療を必要とする異常に関する評価に基づいて分類され得る。TBIを記述するために使用される最も一般的な病態生理学的モデルは、損傷が一次損傷と二次損傷のいずれかであるかを評価することである。一次損傷は、最初の即時の損傷によるものであり、不可避のものであると一般に認められている。二次損傷とは、低酸素症、高血圧症、または高炭酸ガス血症などの回避可能な後続の損傷を指す。さらに、TBIはコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)、ならびに脳電図(EEG)及び頭蓋内圧(ICP)などで評価され得る。
【0287】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、脳卒中を治療または予防するために使用され得る。例えば、治療されている脳卒中は、虚血性または出血性であり得る。様々な実施形態では、出血性脳卒中は、24時間を超えて持続するか、または24時間以内に死亡により中断される脳血管原因の神経障害である。出血性脳卒中は、実質内出血または脳室内出血のいずれかによる脳出血(脳内出血)であり得る。出血性脳卒中は、くも膜下出血であり得る。様々な実施形態では、脳卒中は虚血性であり、例えば、オックスフォードコミュニティ脳卒中プロジェクト分類(Oxford Community Stroke Project classification)(OCSP、すなわち、全前循環梗塞(TACI)、部分的前循環梗塞(PACI)、ラクナ梗塞(LACI)、もしくは後部循環梗塞(POCI)に分類される)、またはTOAST(急性脳卒中治療におけるOrg 10172の試験(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment))分類(すなわち、脳卒中は、(1)大動脈のアテローム性動脈硬化症による血栓症もしくは塞栓症、(2)心臓由来の塞栓症、(3)小血管の完全閉塞、(4)他の確定された原因、(5)原因不明(2つの考えられる原因、原因が特定されていない、もしくは調査が不完全)によるものとして分類される)によって分類される。
【0288】
様々な実施形態では、本発明は、敗血症を治療または予防するための方法を提供する。敗血症は、感染によって引き起こされる全身の炎症状態を特徴とする。敗血症には、血液または組織中の様々な膿形成性病原性生物及び他の病原性生物、またはそれらの毒素の存在が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明は、敗血症(血液中毒)、菌血症、ウイルス血症、及び/または真菌血症を治療または予防する方法を提供する。様々な実施形態では、本発明は、低血圧症、急性尿細管壊死(ATN)、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの敗血症に関連する様々な末端器官の病態を治療する。
【0289】
様々な実施形態では、本発明は、急性腎不全(ARF)などの腎不全を治療または予防するための方法を提供する。急性腎不全は、血清クレアチニンレベルの上昇をもたらす腎機能の急性喪失を伴う。急性腎不全では、糸球体濾過率は数日から数週間にわたり低下する。その結果、窒素廃棄物の排出が低減し、体液及び電解質のバランスが維持されなくなる。急性腎不全患者はしばしば無症候性であり、状態は血液尿素窒素(BUN)及び血清クレアチニンレベルの観察された上昇により診断される。血清クレアチニンレベルが1日1dL当たり少なくとも0.5mg上昇し、尿排出量が1日当たり400mL未満(乏尿症)の場合、完全な腎機能停止を呈する。本明細書に記載のAPベースの薬剤は、腎不全の治療のみならず、腎機能が少なくとも部分的に損なわれているか、または低減している腎症例を改善させるためにも使用され得る。
【0290】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、うっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、息切れ、疲労感、及び脚の腫脹などのうっ血性心不全の1つ以上の症状を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、心筋梗塞(心臓発作)の既往、高血圧、心房細動、心臓弁膜症、アルコールの過剰使用、感染症、及び原因不明の心筋症を含む冠状動脈疾患に起因するうっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、クラスIのうっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、クラスIIのうっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、クラスIIIのうっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、クラスIVのうっ血性心不全を治療または予防するために使用され得る。
【0291】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、筋肉痛性脳脊髄炎(ME)及びより近年では全身性労作不耐症(SEID)を含む慢性疲労症候群を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、疲労、記憶または集中力の喪失、咽喉痛、首または腋窩のリンパ節腫大、原因不明の筋肉痛、関節痛、頭痛、回復のなされない睡眠、及び身体的または精神的な運動後24時間を超えて持続する極度の疲弊を含む慢性疲労症候群の1つ以上の症状を治療または予防するために使用され得る。
【0292】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、膵炎を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、膵炎は、軽度の急性膵炎である。様々な実施形態では、膵炎は、例えば、臓器不全、壊死、感染性壊死、偽嚢胞、及び膿瘍を伴う重度の膵炎である。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、背部に放散し得る上腹部腹痛または漠然とした腹痛、基準値上限の約3倍を超える血清アミラーゼまたはリパーゼレベル、及び特徴的な変化を伴う画像検査(例えば、CT、MRI、腹部超音波、または超音波内視鏡)などの膵炎の1つ以上の症状を治療または予防するために使用され得る。
【0293】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、胆石、エタノール消費、外傷、ステロイド消費、ムンプス感染症、自己免疫疾患、サソリ刺傷、高脂血症、低体温症、副甲状腺機能亢進症、内視鏡的逆行性胆道膵管造影、及び特定の薬物(例えば、アザチオプリン、バルプロ酸)の使用などの1つ以上のリスク因子を有する対象において膵炎を治療または予防するために使用され得る。
【0294】
いくつかのスコアリングシステムが、膵炎発作の重症度を予測するために使用される。例としては、APACHE II、Ranson、BISAP、及びGlasgowが挙げられる。様々な実施形態では、膵炎は、修正Glasgow基準の下で、以下のうちの少なくとも3つによって定義される:pO2<60mmHgまたは7.9kPa、55歳超、好中球が増加した白血球が15超、カルシウム<2mmol/L、腎尿素>16mmol/L、酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)>600iu/L、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)>200iu/L、アルブミン<32g/L、及び糖グルコース>10mmol/L。
【0295】
いくつかの実施形態では、APベースの薬剤は、aGVHD及び/またはVREの定着及び/または感染を含むがこれらに限定されない、同種HCTレシピエントへのベータラクタム抗生物質のIV投与に伴う合併症の発生率及び/または重症度を低減させるために使用される。
【0296】
特定の実施形態では、本発明は、VREの定着及び/または感染を予防するための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、VREの定着及び/または感染に関連する腸ディスバイオシスを予防する。
【0297】
いくつかの態様では、本発明のベータラクタマーゼ剤を投与することを含む、移植レシピエントにおけるVREの定着及び/または感染を予防する方法が提供される。
【0298】
特定の実施形態では、本発明は、aGVHDの発生率及び/または重症度を低減させるための組成物及び方法を提供する。様々な実施形態では、aGVHDを発症するリスクのある対象は、移植レシピエントである。さらなる実施形態では、対象は、同種HCTのレシピエントである。いくつかの実施形態では、対象は、骨髄細胞、末梢血細胞、及び臍帯細胞のうちの1つ以上のレシピエントである。様々な実施形態では、aGVHDを発症するリスクのある対象は、ベータラクタム抗生物質がIV投与されているか、または投与されたことがある。
【0299】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、aGVHDに関連する腸ディスバイオシスを予防する。様々な実施形態では、本発明の方法は、aGVHDに関連する腸内微生物叢の多様性の喪失及び/または腸ディスバイオシスを予防する。例えば、本発明の方法は、aGVHDに関連する任意の所与の細菌株(例えば、Enterococcus)の単独優勢を調節及び/または低減させるための組成物の投与を企図する。本発明のさらなる実施形態は、移植を受けた対象におけるマイクロバイオームの多様性の低下を予防するための組成物及び方法を提供する。
【0300】
いくつかの態様では、本発明のベータラクタマーゼ剤を投与することを含む、移植レシピエントにおけるaGVHDの発生率及び/または重症度を低減させる方法が提供される。例えば、aGVHDの重症度を低減させることには、aGVHDの最重度の形態に分類されるグレードIV未満の患者を含めることができる。
【0301】
実施形態では、本方法は、移植レシピエントにおけるaGVHDの発生率及び/または重症度を低減させることに関する。実施形態では、移植レシピエントは、がん患者、例えば、放射線または化学療法を受けたかまたは受けており、その後同種HCTを受けた患者である。実施形態では、移植レシピエントは、血液癌または骨髄癌を有する。実施形態では、移植レシピエントは、造血幹細胞移植のレシピエントである。特定の実施形態では、がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、及び脊髄形成異常症から選択される。特定の実施形態では、がんは、骨肉腫、ユーイング腫瘍、脊索腫、及び軟骨肉腫から選択される。
【0302】
aGVHDは、細胞または組織が異質であるというレシピエントの免疫系による認識に起因した、ドナーからレシピエントに移植される細胞または組織の変質である。したがって、クラスI MHCは身体の比較的多くの細胞に存在することから、最も一致するクラスI MHCプロファイルを有する人々から細胞及び組織を移植することが最も望ましく、続いて最も一致するクラスII MHCプロファイルを有する人々から移植する。したがって、ほとんどの移植レシピエントでは、aGVHDは、不一致のクラスII MHC分子及び他の多型タンパク質(マイナー組織適合性抗原)に対する免疫系の活性化によるものである。
【0303】
血液及び骨髄のがんを治療するための1つの選択肢は、例えば、放射線または化学療法によって現存する血液細胞及び骨髄細胞を死滅させ、健常ドナーから同様の細胞を移植すること(同種造血幹細胞移植(同種HCT)と称される)である。
【0304】
実施形態では、本方法は、GVHDの急性及び慢性型に関する。古典的な急性または劇症型の疾患(aGVHD)は、通常、移植後の最初の100日以内に認められ、付随する罹患率及び死亡率のために、移植の有効性に対する主要な課題である。慢性型の移植片対宿主病(cGVHD)は、従来、100日後に発生する。cGVHDの中等度から重度の症例の出現は、長期生存に悪影響を及ぼす。骨髄移植後、混入物として、または意図的に宿主に導入された移植片に存在するT細胞は、宿主組織を抗原的に異質であると認知した後に、移植レシピエントの組織を攻撃する。このT細胞は、TNFアルファ及びインターフェロンガンマ(IFNγ)を含むサイトカインを過剰に産生する。cGVHDの組織損傷は、主に線維症によるものである。広範囲の宿主抗原が移植片対宿主病を引き起こすおそれがあり、その中にはヒト白血球抗原(HLA)がある。しかしながら、GVHDは、HLAが同一の兄弟がドナーである場合であっても生じるおそれがある。aGVHDは、肝臓、皮膚、粘膜、及びGI管への選択的損傷を特徴とする。aGVHDの組織損傷は、主にアポトーシスによるものである。aGVHDの重症度は、病変/発疹(皮膚)の程度及びタイプ、下痢の量(GI)、及び血清ビリルビンレベル(肝臓)に基づいて、I(軽度)~IV(極めて重度)の尺度で等級付けされる。cGVHDは、aGVHDよりもはるかに広い組織分布を特徴とする。皮膚及び肺は、GI管、肝臓、眼、筋骨格系、及び造血系とともに、cGVHDの主要な標的器官と考えられる。超急性かつ急速に死に至る形態のaGVHDが同種HCTの最初の2週間以内に発生するおそれがあり、これは通常、著しいHLA不一致または不十分なGVHDの予防によるものである。cGVHDに関連するリスク因子は通常、先行するaGVHDに対する調整後も変化しないため、cGVHDが単に先行するaGVHDの進展ではないことが示唆される。
【0305】
実施形態では、本方法は、aGVHDの発生率及び/または重症度を低減させることに関する。実施形態では、本方法は、ベータラクタム抗生物質の静脈内投与により治療され、かつHLA「不一致」または血縁関係のないドナー、患者が高齢、女性ドナーから男性レシピエント、前処置レジメンまたは前処置レジメン中の全身照射の強度、及びドナーリンパ球輸注などの1つ以上のaGVHDのリスク因子を有する患者へのベータラクタマーゼの投与を予期する。実施形態では、本方法は、皮膚発疹、胃腸(GI)管障害、及び肝臓症状などのaGVHD症状の発生率及び/または重症度を低減させる。
【0306】
実施形態では、本方法は、Billingham基準:1)生存可能で機能的な免疫細胞を有する免疫適格移植片の投与、2)レシピエントは免疫学的に組織不適合である、及び3)レシピエントは免疫不全状態であるため、移植された細胞を破壊または不活化させることができない、のうちの1つ以上によって定義されるGVHDに関する。
【0307】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、アレルギーを治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、アトピー性アレルギーまたはIgE介在性アレルギーを治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、枯草熱、毛皮アレルギー、チリダニアレルギー、昆虫毒アレルギー、外因性喘息、及び多くのタイプの食物アレルギーのうちの1つ以上を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、アナフィラキシー、薬物過敏症、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患、アレルギー性接触アレルギー、食物過敏症、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、職業性喘息、アトピー性喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの1つ以上を治療または予防するために使用され得る。
【0308】
様々な実施形態では、APベースの薬剤は、アレルギー性喘息を含むがこれに限定されない喘息を治療または予防するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、免疫グロブリンE刺激、気道過敏性、マスト細胞浸潤、肺好酸球増多症、及び肺内で代替的に活性化されたマクロファージの蓄積を低減するために使用され得る。様々な実施形態では、APベースの薬剤は、反復性喘鳴及び間歇性気流制限のうちの1つ以上を治療または予防するために使用され得る。
【0309】
いくつかの実施形態では、「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。いくつかの実施形態では、対象及び/または動物は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、または非ヒト霊長類、例えば、サル、チンパンジー、もしくはヒヒである。他の実施形態では、対象及び/または動物は、例えば、ゼブラフィッシュなどの非哺乳動物である。
【0310】
様々な実施形態では、本発明の方法は、ヒト対象を治療するのに有用である。いくつかの実施形態では、ヒトは、小児ヒトである。他の実施形態では、ヒトは、成人ヒトである。他の実施形態では、ヒトは、老齢ヒトである。他の実施形態では、ヒトは、患者と称され得る。いくつかの実施形態では、ヒトは、女性である。いくつかの実施形態では、ヒトは、男性である。
【0311】
特定の実施形態では、ヒトは、約1~約18ヶ月齢、約18~約36ヶ月齢、約1~約5歳、約5~約10歳、約10~約15歳、約15~20歳、約20~約25歳、約25~約30歳、約30~約35歳、約35~約40歳、約40~約45歳、約45~約50歳、約50~約55歳、約55~約60歳、約60~約65歳、約65~約70歳、約70~約75歳、約75~約80歳、約80~約85歳、約85~約90歳、約90~約95歳、または約95~約100歳の範囲の年齢である。
【0312】
キット
本発明は、本明細書に記載の調節放出製剤の投与を簡素化し得るキットを提供する。キットは、本明細書に記載の調節放出製剤の少なくとも1つを含む、材料または構成要素の集合物である。キット中に構成されている構成要素の正確な性質は、その意図された目的によって異なる。一実施形態では、キットは、ヒト対象を治療する目的で構成されている。
【0313】
使用説明書がキットに含まれている場合がある。使用説明書は、通常、本明細書に記載の関連する障害を治療するためなど、所望の結果に影響を与えるためにキットの構成要素を使用する際に用いられる技術を説明する具体的な表現を含む。任意選択で、キットはまた、他の有用な構成要素、例えば、希釈剤、緩衝液、薬学的に許容可能な担体、シリンジ、カテーテル、アプリケータ、ピペット器具もしくは測定器具、包帯材料、または当業者によって容易に認識される他の有用な道具類を含む。
【0314】
キットにまとめられた材料及び構成要素を、それらの操作性及び有用性を維持する任意の好都合で適切な方法で開業医の店舗に提供することができる。例えば、構成要素は、室温、冷蔵温度、または冷凍温度で提供され得る。構成要素は通常、適切な包装材料の中に収容されている。様々な実施形態では、包装材料は、周知の方法によって、好ましくは、無菌で混入物のない環境を提供するように構成されている。包装材料は、キット及び/またはその構成要素の内容及び/または目的を示す外部ラベルを有し得る。
【0315】
定義
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、1つまたは複数を意味し得る。
【0316】
さらに、言及された数値表示に関連して使用される場合の「約」という用語は、その言及された数値表示に、その言及された数値表示の最大10%を加算または減算することを意味する。例えば、「約50%」という言葉は、45%から55%の範囲を包含する。
【0317】
医療用途に関連して使用される場合の「有効量」は、対象とする障害の測定可能な治療、予防、または病理発生の割合の低減を提供するのに有効な量である。
【0318】
本明細書で使用される場合、薬剤または刺激の存在下で、そのような調節のない場合と比較して、活性及び/または効果の読取値が相当な量、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれを超えて(少なくとも約100%まで)低減した場合、あるものは「低下」する。当業者によって理解されるように、いくつかの実施形態では、活性が低下すると、下流の読取値は、低下するものもあれば増加し得るものもある。
【0319】
逆に、薬剤または刺激の存在下で、そのような薬剤または刺激のない場合と比較して、活性及び/または効果の読取値が相当な量、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれを超えて(少なくとも約100%以上まで)、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍増加した場合、活性は「増加」する。
【0320】
本明細書で言及される場合、全ての組成割合は、別途明記されない限り、全組成の重量によるものである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という単語及びその変形は、リスト内の項目の記載が、本技術の組成物及び方法においても有用であり得る他の類似の項目を除外しないように、非限定的であることが意図される。同様に、「~ことができる」及び「~し得る」という用語及びそれらの変形は、実施形態が特定の要素または特徴を含むことができるまたは含み得るという記載が、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外しないように非限定的であることが意図される。
【0321】
含む(including)、含有する、または有するなどの用語の同義語としての非制限用語「含む(comprising)」は、本明細書では本発明を説明及び特許請求するために使用されるが、本発明またはその実施形態は、代わりに、「からなる」または「から本質的になる」などの代替用語を用いて説明され得る。
【0322】
本明細書で使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、特定の状況下で特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかしながら、類似のまたは他の環境下では、他の実施形態もまた好ましい場合もある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本技術の範囲内から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0323】
治療効果を達成するために必要な本明細書に記載の組成物の量は、特定の目的のための従来の手順に従って経験的に決定され得る。一般に、治療目的で治療剤(例えば、ベータラクタマーゼ及び/または本明細書に記載の追加の治療剤)を投与するために、治療剤は、薬理学的有効用量で与えられる。「薬理学的有効量」、「薬理学的有効用量」、「治療有効量」、または「有効量」は、特に障害または疾患の治療のために、所望の生理学的作用を生じさせるのに十分な量または所望の結果を達成することができる量を指す。本明細書で使用される場合、有効量は、例えば、障害または疾患の症状の発生を遅延させるため、障害または疾患の症状の経過を変更するため(例えば、疾患の症状の進行を遅らせるため)、障害または疾患の1つ以上の症状または徴候を低減させるまたはなくすため、及び障害または疾患の症状を元に戻すために十分な量を含む。治療的利益には、改善が実現されているか否かにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を停止させるかまたは遅らせることも含まれる。
【0324】
有効量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の約50%に対する致死用量)、及びED50(集団の約50%における治療上有効な用量)を求めるための細胞培養物、組織試料、組織ホモジネート、または実験動物における標準的な薬学的手順により決定され得る。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動し得る。毒性作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。いくつかの実施形態では、大きな治療指数を示す組成物及び方法が好ましい。治療有効用量は、例えば、細胞培養アッセイを含むin vitroアッセイから最初に推定され得る。また、細胞培養物または適切な動物モデルにおいて決定されたIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて用量を処方することもできる。血漿中の記載された組成物のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投与量の影響は、適切なバイオアッセイによってモニタリングされ得る。投与量は医師が決定し、必要に応じて、観察された治療効果に合わせて調整され得る。
【0325】
特定の実施形態では、効果は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、または少なくとも約90%の定量可能な変化をもたらす。いくつかの実施形態では、効果は、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、またはさらには約90%以上の定量可能な変化をもたらす。治療的利益には、改善が実現されているか否かにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を停止させるかまたは遅らせることも含まれる。
【0326】
本明細書で使用される場合、「治療方法」は、本明細書に記載の疾患もしくは障害を治療するための組成物の使用、及び/または本明細書に記載の疾患もしくは障害を治療するための薬剤の製造に使用する(複数可)ための組成物の使用に等しく適用可能である。
【実施例】
【0327】
実施例1:IAP遅延放出腸溶性コーティングペレットの開発
IAPを層状にしたスクロースコアの2つのバッチを、3.45w/w%(第1バッチ)及び4.65w/w%(第2バッチ)の酵素量で調製した。層状化に使用したIAP溶液の活性と比較した場合、層状化後のIAP活性は維持されていた。IAP溶液はSigma標準液に対して約70%の活性を示し、一方、層状薬物コアはSigma標準液に対して60%の活性を示した。
【0328】
IAPの安定性を評価するために、層状薬物コアのバッチ1を活性アッセイにより試験した。コアを、シリカ乾燥剤の存在下及び非存在下で冷蔵条件下で保管したところ、IAP活性は両方の条件下で8週間にわたり安定したままであることが判明した。次いで、層状薬物コアのバッチ2に、30%のEUDRAGIT L30D-55の重量増加(単層)、または内部分離層として7%のHPCの重量増加とそれに続く30%のEUDRAGIT L30D-55をコーティングした。コーティングされた製剤は両方とも、絶食状態の人工胃液(FaSSGF)で2時間耐酸性を示し、溶解試験の終了時に酵素活性を失うことなく、絶食状態の人工腸液(FaSSIF)で極めて類似した溶解プロファイルを示した。
【0329】
コーティングしたペレットをシリカの存在下で冷蔵条件下で保管したところ、6ヶ月後、酵素活性は低減しなかった。このことから、HPC(結合剤)及びコーティング層(酸性ポリマーEUDRAGIT L30D-55)がこの6ヶ月間に酵素活性に影響を与えなかったことが示唆された。
【0330】
全体として、層状薬物ペレット製剤は、得られた溶解プロファイル及びペレットの良好な流動性によって、IAPを製剤化するための有望な選択肢である。この製剤のもう1つの利点は、1種の製剤をベースとして異なる酵素強度を得るという柔軟性である。これはまた、同じ流動床コータで層状化及び腸溶性コーティングを実施することができるため、簡易化した方法を提供する。
【0331】
実施例2:賦形剤-IAPの適合性の評価
IAP活性に対する結合剤の影響を判定するために、候補となる結合剤の選択物とIAPを組み合わせた。表1及び
図2に示すように、スクロースまたはラクトースの存在下でIAPとの適合性について試験した結合剤は、96時間のインキュベーション後にIAP活性を有意に変化させず、最初のIAP溶液単独(IAP-結合剤の組み合わせ#11)と同様の活性%を示した。
【0332】
【0333】
表1及び
図2に示すように、t=0時間での初期値と比較した場合、組み合わせの大部分は酵素活性に有意な変化をもたらさなかった。結果は、現行の試験条件下では、試験した賦形剤のいずれの存在下においてもIAP活性の喪失が認められなかったため、不適合性の問題は確認されなかったことを示した。結果は、結合剤としてHPCを使用する層状薬物コアがIAP活性を損なうことがないことを示唆しており、このコアが、さらなる試験のために選択した提案された組み合わせであった。
【0334】
IAPとの適合性について試験した補因子を表2及び
図3に示す。現行の試験条件下では、補因子はIAP活性を有意に増加させなかったことが判明した。
【0335】
【0336】
表2及び
図3に示すように、補因子が存在しない最初の4つの組み合わせ(#1~#4)は、補因子を含む4つの組み合わせ(#5~#8)と比較した場合、IAP活性の低下傾向を示さなかった。IAP-結合剤適合性試験(
図2に結果を示す)と同様に、IAP-補因子適合性試験の結果により、HPC、スクロース、または両方の組み合わせの存在下でIAP活性が損なわれないことが確認された。製剤への補因子の追加は、異なる時点にわたりIAP活性を有意に増加させなかった。このため、補因子を含有する製剤をさらに調査することはなかった。IAP緩衝溶液は、1.0mMのMgCl2及び0.1mMのZnCl2を含有する。これらの実験で試験した追加の金属イオン(CoCl2及びCaCl2)は、IAP-結合剤混合物の酵素活性を変化させなかった。
【0337】
賦形剤/IAP混合溶液を37℃でインキュベートしたため、インキュベーションの温度によって水性媒体は経時的に蒸発し、溶液量の明らかな損失が認められた。このことが、最終時点における組み合わせ#2の酵素活性の増加を招いた。最終時点での組み合わせ#4、#5、#7、及び#8における酵素活性の低下は、アッセイの変動性に関連している可能性がある。
【0338】
実施例3:第1バッチのコアの安定性試験
IAP溶液を、20mMのトリス、0.1mMのZnSO4及び1mMのMgCl2緩衝液中の10.1mg/mLのIAP(腸アルカリホスファターゼ)としてpH7.5で凍結させて供給し、薬物層状化に利用した。最終的な薬物層状化溶液を調製するために、1.12gのHPC(Klucel EF)をゆっくりとした磁気攪拌(200RPM未満)下で49.5mLのIAP溶液に添加した。その後の溶液を、Calevaミニコータ/ドライヤー内で、600/710μmの6.00gのSuglets上に噴霧により層状化した。
【0339】
IAP-HPC溶液を、微粒化空気圧0.8bar、入口空気速度11.5m/秒、及びチャンバー攪拌速度10.5Hzで噴霧した。噴霧プロセスの温度は、最初の30~45分間は45℃であり、その後40℃に低下させた。これは、コーティングプロセスの初期段階の間に温度がコアの表面の水溶液を急速乾燥させるのに十分でない場合、Sugletsが容易に凝集するためである。コーティングプロセスが進行するにつれてコアはコーティングの薄層を有し、これがコアを保護して凝集の可能性を低減させ、その結果プロセス温度を低下させた。
【0340】
層状薬物コアを噴霧後1時間ごとに35℃で30分間乾燥させ、コーティングの完了後、層状薬物コアをさらに40℃で1時間乾燥させてから実際の重量増加を確認した。
【0341】
層状薬物コア(AP0361/24/1)を、それぞれ87.92/3.45/7.77/0.87w/w%のSuglets/IAP/HPC/塩(IAP溶液から)で構成させた。このバッチのコアは、調製の誤りにより、IAP/HPCの比が目的の1:2(w/w)の比ではなく、わずかに異なる1:2.25(w/w)であった。薬物層状化プロセスの完了後、シリカ乾燥剤バッグ入りの密閉ガラスバイアルに2~8℃でコアを保管した。
【0342】
得られたコアを、薬物層状化後の最初の12日間、2~8℃で密閉バイアルに乾燥下で保存した。非乾燥状態の影響を試験するために、最初の12日間の乾燥後に内容物の半分をガラスバイアルから取り出し、シリカ袋なしで2~8℃で保管した。表3に示すように、これらの層状薬物コアの短期安定性試験において酵素活性の結果を経時的に測定した。
【0343】
【0344】
経時的なIAP活性%のいくらかの変動が認められたが、これらはアッセイ法の変動性に関連していた可能性がある。表3の結果に基づいて、非乾燥状態は、乾燥状態と比較した場合、IAP活性を著しく低減させなかったと結論付けた。
【0345】
酵素活性試験用に、コアをジエタノールアミン緩衝液に溶解させた。具体的には、IAP活性アッセイ法を実施した。ジエタノールアミン(Sigma D8885)を使用した精製水中の140mg/mL溶液を調製し、5M HClを用いて37℃でジエタノールアミンのpHを9.8に調整した。pH調整溶液を精製水で105mg/mLの最終ジエタノールアミン濃度に希釈した。最後に、500μL/Lの1M塩化マグネシウム溶液(Sigma M1028)を溶液に添加した。このジエタノールアミンは新たに調製したものであり、直射日光から保護した。
【0346】
19.4mg/mLの原液(濃度はSigmaのロットによって異なり得る)をジエタノールアミン緩衝液で1.00mg/mLに希釈することにより(92μLのジエタノールアミン緩衝液中に5μL)、IAP酵素標準溶液を調製した。さらに希釈する前に、酵素溶液を氷上保存した。この精製した腸アルカリホスファターゼ(Sigma#PO114)を、アッセイした試料の活性を試験するための対照として使用した。
【0347】
Sigma標準液及びIAP溶液を含む全ての試料を96ウェルプレートに充填し、ジエタノールアミン緩衝液で理論上の5ng/mL溶液に希釈した。
【0348】
pNPPを5mM溶液用の1.86mg/mLアッセイ緩衝液で再構成し(Abcam ab146203)、pNPP溶液は氷上で12時間安定であった。
【0349】
次に、カイネティックアッセイを実施した。プレートリーダー(DYNEX #MRX TCII)上で、80μLの標準液及び試料を96ウェルプレートのウェルに添加した。全ての酵素反応を二連のウェルで行った。後に試料へ添加するのに十分な5mM pNPP溶液を空の各ウェルに添加し、プレートを37℃で5分間インキュベートした。マルチチャネルピペットを使用して、標準液または試料のいずれかを含有する各ウェルに予備加熱した5mM pNPP溶液50μLを素早く添加した。この添加の間、気泡の形成を回避した。反応シーケンスを開始し、37℃で実施した。追加の10分の初期遅延及び2秒の初期振盪ステップの後、405nmでの光学濃度(OD)の増加の関数として、5分間にわたり20秒ごとに比色の結果(酵素ホスファターゼ活性によるpNPP NPPの脱リン酸化)を測定した。酵素を含有しないブランクウェルを同じプレート上で並行して行った。
【0350】
カイネティックアッセイは、この期間にわたる酵素カイネティクスの読取値を提供し、勾配を、IAP Sigma標準液から生成された勾配と比較するために使用した(試料の活性%=試料の勾配/Sigma標準液の勾配×100%。ブランクの勾配は、試料及びSigma標準液の勾配から減算した)。
【0351】
実施例4:第2バッチのコアの腸溶性コーティング及び溶解試験
第2バッチの層状薬物コアをコーティング試験用に調製し、第1バッチのコアと同じ機器パラメータ(実施例3)に従って製造した。第2バッチのコアを、84.9/4.7/9.3/1.2w/w%のSuglets/IAP/HPC/塩(IAP溶液から)で構成させた。ゆっくりとした磁気攪拌(200RPM未満)下で47.0mLのIAP溶液に1:2(w/w)のIAP:HPC比で添加した0.948gのHPC(Klucel EF)を使用して、薬物層状化溶液を調製した。
【0352】
2種類のコーティング(EUDRAGIT L30D-55(単一腸溶層)の30%の重量増加、またはHPCの7%の重量増加層とそれに続くEUDRAGIT L30D-55の30%のポリマー重量増加の外層(サブコーティングを有する腸溶性層)のいずれか)を、第2バッチの層状薬物コアに適用した。配合を表4に示す。
【0353】
【0354】
層状薬物コア(バッチ2)を、1:2(w/w)のIAP/HPC固形分比及びIAPの4.65%の重量増加の最終組成物で層状化し、続いて単層コーティング(EUDRAGIT L30D-55の30%重量増加)または二層コーティング(HPCの7%の重量増加+EUDRAGIT L30D-55の30%の重量増加)を行った。
図4のSEM画像に示すように、単層コーティングペレットの直径は約800μmであった。
図4は、1つのコーティングペレット(30%のEUDRAGIT L30D-55が第2バッチのペレット上にコーティングされている)のSEM写真を示す。
【0355】
第2バッチのペレットの断面も
図5に示しており、ここでは、スクロースコア、IAP/HPC層、及びL30D-55コーティング層を明確に区別することができる。IAP/HPC層の厚さは約20μmであり、EUDRAGIT L30D-55コーティング層の厚さは約40μm(ポリマー製造業者のEvonikが推奨する厚さ)であった。
図5は、1つのコーティングペレット(30%のL30D-55が第2バッチのペレット上にコーティングされている)の断面のSEM写真を示す。
【0356】
これらのコーティングペレットの溶解挙動を試験した。各溶解容器内のペレットの量は、単層コーティングペレットが1.14g及び二層コーティングペレットが1.22gであり、これは両方の製剤について40mgのIAP量に対応する。各溶解試験において、60mLバイアル内のpH1.6のFaSSIF 20mL中で、錠剤一錠をヒーター/シェーカー上で2時間、37℃、200RPMで旋回振盪させてインキュベートした。最初の2時間後、20mLの2倍濃度のFaSSIFを添加し、1M NaOHを使用してpHを5.5または5.8に調整した。さらに45分経過後、pHをさらに6.5または6.8に調整して溶解試験をさらに2~3時間進行させた。
【0357】
コーティングペレットをpH1.6のFaSSGFで2時間試験した後、FaSSIFを添加して45分間でpH5.8に到達させ、その後次の3時間でpH6.8に増加させた。FaSSIFのみ(45分間でpH5.8、続いて3時間でpH6.8)でのコーティングペレットの溶解試験も比較目的で実施した。
【0358】
UVタンパク質放出プロファイルを
図6に示す。FaSSIFのみに溶解中のIAPの放出%を、単層コーティング及び二層コーティングについてそれぞれ「×」及び「三角形」のグラフとして表す。FaSSGF及びFaSSIFに溶解中のIAPの放出%を、単層コーティング及び二層コーティングについてそれぞれ赤色及び青色のグラフとして表す。
【0359】
プロファイルは、UV分析によってFaSSGF中でIAP放出が検出されなかったことから、コーティングペレットが低pHで腸溶的に保護されたことを示した。さらに、一段階アプローチと二段階アプローチの溶解プロファイルは極めて類似しており、ペレットがpH5.8のFaSSIFに曝露された直後に放出が生じ始め、pH5.8で45分経過後、pHをpH6.8に調整したときに溶解速度が上昇した。pH6.8でさらに3時間経過後に完全な放出に達した。
【0360】
酵素活性プロファイルを
図7に示す。FaSSIFのみに溶解中のIAPの活性%を、単層コーティング及び二層コーティングについてそれぞれ「×」及び「三角形」のグラフとして表す。FaSSGF及びFaSSIFに溶解中のIAPの活性%を、単層コーティング及び二層コーティングについてそれぞれ赤色及び青色のグラフとして表す。
【0361】
酵素活性プロファイルは、
図6のUVによるIAPの放出%と同じ傾向に従った。両方の溶解試験の終点で検出された最大酵素活性は約45%~55%であり、これは出発物質と同じレベルであった(層状薬物コアの約50%)。結果は、適用したコーティングが低pHで腸溶的に保護され、コーティングポリマーの存在下で酵素活性が低減しなかったことを示した。単層及び二重コーティング層状コアにより生成される溶解プロファイルが類似していることから、酸性コーティングポリマーから酵素を分離及び保護するためのサブコーティングHPCは必要ではないと結論付けた。
【0362】
ペレットをFaSSIFのみに曝露させることにより達成された活性%は、FaSSGF/FaSSIFに曝露させたものと同様であり、このことは、コーティングペレット中のIAPがpH1.6のFaSSGFによって影響を受けなかったかまたは変性しなかったことを示した。同レベルの酵素活性が得られたことから、十分な腸溶性コーティングの厚さが適用されたことがこれにより確認された。
【0363】
この試験により、30%のポリマー重量増加のEUDRAGIT L30D-55水性分散液を含む層状コアの腸溶性コーティングが、FaSSGF中での最大2時間の耐酸性、及びFaSSIF中での4時間にわたるIAPの徐放性を提供することが示された。7%HPC分離層の存在は、溶解プロファイルを変化させず、酵素活性にも影響を与えなかった。したがって、分離用の副層は必要ではないと判断した。
【0364】
実施例5:ペレット中のIAP活性の安定性評価
未コーティング/コーティングした層状薬物コアを、安定性評価のために、シリカ乾燥剤バッグ入りの密閉ガラスバイアル中に2~8℃で最大12ヶ月間入れた。コアをジエタノールアミン緩衝液に溶解してIAP活性を分析することにより、これらのコアについて0ヶ月、1ヶ月、3ヶ月、及び6ヶ月時点で酵素活性をモニタリングした。
【0365】
未コーティングペレット及びコーティングペレットは両方とも、乾燥下で冷蔵温度で保管した。酵素活性を最大6ヶ月間測定し、その結果を表5に示す。
【0366】
【0367】
結果は、未コーティングコア及びコーティングペレットの酵素活性が、乾燥下の冷蔵温度での6ヶ月間の保管にわたり同レベルを維持していたことを示す。
【0368】
実施例6:25mg及び5mgのIAPペレットカプセルの安定性評価
サイズ2のHPMC透明カプセルに、コーティングされたIAPペレットを充填した。このペレットは、9.7w/w%の薬物量(UV分光計により分析)、及びSigma標準液と比較して78.1%の酵素活性(DYNEXマイクロプレートリーダーにより分析)を示す。90個のカプセルに25mgのIAPを含め、90個のカプセルに5mgのIAPを含めた。ペレットを、IAP/HPC(1/2(w/w))を600/710μmのSuglets(Colorcon)上に層状にし、続いてEUDRAGIT L30D-55(Evonik)をコーティングすることにより製造した。
【0369】
【0370】
冷蔵庫での1年間の保管期間中におけるペレットカプセルの安定性及び活性パーセントを以下の表7に示す。
【0371】
【0372】
本発明者らは、意外にも、IAPペレットカプセルが、2~8℃で1年間にわたり保管した場合に、少なくとも約80%のIAP活性を維持することを発見した。
【0373】
次に、in vitro溶解試験を実施した。コーティングペレット約450mgを60mLガラスバイアル内の25mL FaSSGF(pH1.6、37℃)中でインキュベートし、バイアルをヒーター/シェーカー上で200RPMの旋回振盪速度で穏やかに振盪させた。60分及び120分時点で、1mLの培地を10μmカニューレフィルタにより抜き取り、UV分析用に0.2μmで濾過した。濾過した溶液50μLを、さらなる活性分析用に凍結した。その後、溶液をバイアルに戻した。
【0374】
FaSSGF中での最初の2時間のインキュベーション後、25mLのFaSSIFをバイアルに添加してpH5.8を得た。試料を15分ごとに採取した。45分後、pHを6.8に調整して試料を15分ごとに採取した。試料採取手法は、上記段落に記載したものと同じであった。
【0375】
濾過した試料を、280nm及び320nmでUV分光計で分析した。吸収値はA280-A320に等しくなる。ブランク培地からの吸収を試料吸収値からさらに減算し、その後の値を放出%の算出に使用した。まず、
図8に示すように検量線を作成した。各時点での試料濃度を、線形トレンドラインの式に基づいて算出した。
【0376】
溶解試験の結果を
図9に示す。コーティングペレットは放出が検出されなかったため、FaSSGFに2時間耐性であった。60分及び120分時点(T=0、赤線)での放出%は約1%であった。さらに、ペレットは溶解試験の終了時に活性が完全に回復した。これは、最初のインキュベーション中に酸がコーティングフィルムを通じて透過しなかったことを示している。最初の45分間、pH5.8のFaSSIF中ではIAPの放出は遅かったが、これはpHがEUDRAGIT L30D-55の溶解閾値である5.5に近かったためである。pHを6.8に調整するとコーティングフィルムは急速に溶解し始め、IAPの放出が劇的に増加した。
【0377】
図10は、コーティングペレットを約1年間保管した溶解試験の結果を示す。コーティングペレットは放出が検出されなかったため、FaSSGFに2時間耐性であった。60分及び120分時点(T=0、赤線)での放出パーセントは約1%であった。さらに、ペレットは溶解試験の終了時に活性が完全に回復した。これは、最初のインキュベーション中に酸がコーティングフィルムを通じて透過しなかったことを示している。最初の45分間、pH5.8のFaSSIF中ではIAPの放出は遅かったが、これはpHがEUDRAGIT L30D-55の溶解閾値である5.5に近かったためである。pHを6.8に調整するとコーティングフィルムは急速に溶解し始め、IAPの放出が劇的に増加した。
【0378】
以下を含む様々な試験を、別個のIAPペレットのバッチで実施した:非GMP SYN-020ペレット、非GMP SYN-020ペレット(HPD514-A-001)、非GMP SYN-020カプセル(5mg)、非GMP SYN-020カプセル(15mg)、及びGMP SYN-020ペレット。SYN-020遅延放出カプセル(15mg及び5mgカプセル)、及びSYN-020プラセボペレットの組成ならびに様々な試験の結果を以下の表8及び表9に示す。
【0379】
【表8】
HTP-20は、粘着防止剤、可塑剤、及び安定剤の機能を提供する、モノステアリン酸グリセリル、ポリソルベート-80、及びクエン酸トリエチルの予備混合製剤である。
【0380】
【0381】
【0382】
図11A~Hは、非GMP SYN-020 5mg及び15mgカプセル投与量のさらなる分析を示す。比活性、純度、含水量、及び溶解などのパラメータを含む、有効性成分含量(dosage strength)及び安定性に関する結果を6ヶ月間にわたり分析した。
【0383】
等価物
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されてきたが、さらなる修正ができ、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、本発明の任意の変形、使用、または適応を網羅することを意図するものであり、本発明が属する技術分野において公知であるか、または慣行に含まれるような本開示からの逸脱、及び前述される本質的な特徴に適用され得るもの、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるような本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
【0384】
当業者であれば、単なる日常的な実験を使用して、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【0385】
参照による組み込み
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、これによって、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0386】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためのみに提供される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0387】
本明細書で使用される場合、全ての表題は単純に組織化するためのものであり、いかなる様式においても本開示を制限することを意図するものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
【配列表】
【国際調査報告】