(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】シャルコー・マリー・トゥース病のようなシュワン細胞関連疾患を治療するためのミエリンタンパク質ゼロのプロモーターを含むAAVベクター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20220801BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220801BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220801BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220801BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220801BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220801BHJP
C12N 5/079 20100101ALN20220801BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N5/10 ZNA
C12N7/01
C12N15/09 110
C12N15/12
C12N15/867 Z
A61P25/00
A61P3/10
A61K35/76
A61P21/00
C12N5/079
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571874
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020065312
(87)【国際公開番号】W WO2020245169
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527897
【氏名又は名称】ザ キプロス ファウンデイション フォー マスキュラ ジストロフィー リサーチ
【氏名又は名称原語表記】THE CYPRUS FOUNDATION FOR MUSCULAR DYSTROPHY RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】クレオパ クレオパス
(72)【発明者】
【氏名】カギアヴァ アレクシア
(72)【発明者】
【氏名】スヒザ ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】サルジャニドゥ イレーネ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA94
4C087ZC35
4C087ZC54
(57)【要約】
本発明は、ポリヌクレオチドをシュワン細胞に特異的に送達し、シュワン細胞特異的発現を達成することにより、シュワン細胞に関連する疾患の治療及び予防に使用するためのウイルスベクターを提供する。本発明は、シャルコー・マリー・トゥース病及び他の脱髄性ニューロパチーの治療及び予防において特定の用途を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防における、これを必要とする対象の中での使用のためのウイルスベクターであって、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含み、かつAAVベクターである、ウイルスベクター。
【請求項2】
前記第1のポリヌクレオチドの発現が、シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的にミエリン特異的プロモーターの制御下にあり、任意選択的に、前記ミエリン特異的プロモーターが、
a)全長ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターであって、任意選択的に、前記全長Mpzプロモーターが、全長ラット又は全長ヒトMpzプロモーターであり、
任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を有する、全長Mpzプロモーター、又は
b)最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)プロモーターであって、任意選択的に、前記最小Mpzプロモーターが、ラット若しくはヒト最小Mpzプロモーターであり、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を有する、miniMpzプロモーターである、請求項1に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項3】
前記第1のポリヌクレオチドの発現が、プロモーターの制御下にあり、前記プロモーターが、
a)長さ100bp~1100bpであり、任意選択的に、前記プロモーターが、長さ200bp~900bp、長さ300bp~800bp、長さ400bp~700bpの範囲であり、任意選択的に、前記プロモーターが、長さ500bp~600bpの範囲であり、任意選択的に、前記プロモーターが、長さ410bpであり、かつ/又は
b)長さ1100bp、1000bp、900bp、800bp、700bp、600bp、500bp、450bp、400bp、350bp、300bp、250bp、200bp、150bp、100bp未満である、請求項1又は2に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項4】
前記AAVベクターが、AAV9及びAAVrh10を含む群から選択され、好ましくは、前記AAVベクターが、AAV9である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項5】
前記第1の核酸が、第1のポリペプチド又はタンパク質をコードし、かつそれらに翻訳される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項6】
前記第1の核酸が、
a)以下の遺伝子:ギャップジャンクションベータ1(GJB1)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)、若しくは脱髄性ニューロパチー及びシュワン細胞機能不全に関連する他の遺伝子のうちのいずれか1つを含むか又はそれからなる群から任意選択的に選択される、ニューロパチー関連遺伝子の野生型又は治療上有益な配列、あるいは
b)ニューロパチー関連遺伝子、例えば、以下の遺伝子:ギャップジャンクションベータ1(GJB1)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)又は脱髄性ニューロパチー及びシュワン細胞機能不全に関連する他の遺伝子のうちの1つの野生型配列と、少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含み、
任意選択的に、前記第1の核酸が、配列番号6~12と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号6~12と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含む、請求項5に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項7】
前記第1の核酸が、任意選択的に、コネキシン32(Cx32)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)を含むか、又はそれらからなる群から選択される、1つ以上のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドに転写される野生型形態のオープンリーディングフレーム(ORF)又はcDNAを含む、請求項5又は6に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項8】
前記ベクターが、前記第1の核酸からの発現を駆動することができ、任意選択的に、前記第1のポリペプチドの発現を駆動することができ、任意選択的に、前記第1のポリペプチドが、コネキシン32(Cx32)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)を含むか、又はそれらからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項9】
前記第1の核酸が、以下:栄養因子(例えば、BDNF、GDNF、NT-3、VEGF)、再生因子(例えば、アンジオゲニン、Oct-6、Egr2、Sox-10)、成長因子(例えば、IGF)のうちの1つ以上をコードする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項10】
前記第1の核酸が、ポリペプチドをコードせず、任意選択的に、前記第1のポリヌクレオチドが、非コードRNAであり、任意選択的に、
前記非コードRNAが、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項11】
前記ウイルスベクターが標的生物中にある場合、前記非コードRNAの発現が、標的ポリヌクレオチドの発現の低下を引き起こし、任意選択的に、前記標的ポリヌクレオチドが、標的生物中に位置する遺伝子であり、任意選択的に、標的生物の細胞に位置する、請求項10に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項12】
標的生物における前記標的ポリヌクレオチドの発現又は過剰発現が、シュワン細胞に関連する疾患に関連すると考えられ、任意選択的に、前記疾患が、優性脱髄性ニューロパチー(CMT1)であり、任意選択的に、前記標的ポリヌクレオチドが、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz/P0)の変異対立遺伝子であり、前記シュワン細胞に関連する疾患が、CMT1Bであるか、又は前記標的ポリヌクレオチドが、CMT1に関連する別の優勢な遺伝子である、請求項11に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項13】
前記シュワン細胞に関連する疾患が、シュワン細胞によるミエリン鞘の破壊及び/又は形成の低下を引き起こし、任意選択的に、
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)、糖尿病及び他の毒性末梢性ニューロパチー、運動ニューロン疾患(MND)からなる群から選択され、
好ましくは、前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)であり、任意選択的に
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)、シャルコー・マリー・トゥース1A~1F型(すなわち、CMT1A、CMT1B、CMT1C、CMT1D、CMT1E、及びCMT1F)、シャルコー・マリー・トゥース4A~4H型(すなわち、CMT4A、CMT4B、CMT4C、CMT4D、CMT4E、CMT4F、CMT4G及びCMT4H)から選択され、任意選択的に、
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)であるか、又は
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース4C型(CMT4C)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項14】
前記ウイルスベクターの投与が、治療前の前記対象におけるシュワン細胞によるミエリン鞘の形成と比較した場合、シュワン細胞の機能の改善及び/又はシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加をもたらし、任意選択的に、
前記シュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加が、末梢神経のミエリン形成の改善につながる、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項15】
前記シュワン細胞の機能の改善及び/又はシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加が、以下のパラメータ:
a)筋力、
b)坐骨神経伝導速度、及び/又は
c)血液バイオマーカーの反応、のうちのいずれか1つ以上の評価によって検出され、
前記シュワン細胞の機能の改善及び/又はシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加が、前記治療前の対象又は未治療の対象と比較した場合、上記のパラメータのうちのいずれか1つ以上の改善をもたらす、請求項14に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項16】
前記AAVが、髄腔内注射又は静脈内注射によって前記対象に投与され、好ましくは、前記AAVが、髄腔内注射によって投与され、任意選択的に、
前記AAVが、以下の経路:腰部髄腔内注射、胸部髄腔内注射、頸部髄腔内注射のうちの1つによって投与され、好ましくは、前記ウイルスベクターが、腰部髄腔内注射によって投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項17】
前記AAVが、単回髄腔内注射によって投与される、請求項16に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項18】
前記シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防を必要とする対象が、ヒト対象である、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のウイルスベクターによって形質導入されている細胞であって、任意選択的に、シュワン細胞である、細胞。
【請求項21】
最小ミエリン特異的プロモーターであって、最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)であり、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を有するか、又は配列番号5若しくは配列番号22の配列を含むか若しくはそれからなる、最小ミエリン特異的プロモーター。
【請求項22】
ヒト最小ミエリン特異的プロモーターであって、配列番号22と少なくとも75%、80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列相同性又は配列同一性を有する配列相同性を有する、ヒト最小ミエリン特異的プロモーター。
【請求項23】
ポリヌクレオチド構築物であって、
シュワン細胞特異的プロモーターである第1の核酸の配列を含み、任意選択的に、前記シュワン細胞特異的プロモーターが、
a)全長Mpzプロモーターであって、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、全長Mpzプロモーター、又は
b)最小シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的に、請求項21若しくは22に記載の最小Mpzプロモーターであり、
第2の核酸の配列に作動可能に連結されており、前記第2の核酸が、第1のポリヌクレオチドに転写され、前記第2の核酸が、a)オープンリーディングフレーム若しくはcDNA若しくは遺伝子の他のエレメントであるか、又はb)非コードRNAに転写されている、ポリヌクレオチド構築物。
【請求項24】
ウイルスベクターであって、
a)請求項21若しくは22に記載の最小ミエリン特異的プロモーター、
b)全長Mpzプロモーターであって、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、全長Mpzプロモーター、又は
c)又は請求項23に記載のポリヌクレオチド構築物、を含む、ウイルスベクター。
【請求項25】
前記ベクターが、シュワン細胞を形質導入する能力を有し、かつ/又は
前記ベクターが、宿主細胞のゲノムに組み込まれない、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のためのウイルスベクター又は請求項24に記載のウイルスベクター。
【請求項26】
a)任意選択的にAAV9である、AAV、
b)AAV9ベクター、前記ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及び前記EGFPレポーター遺伝子を含む、AAV-Mpz.Egfpベクターであって、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、AAV-Mpz.Egfpベクター、
c)AAV9ベクター、前記ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及び前記ギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子の前記オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-Mpz-GJB1ベクターであって、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、AAV9-Mpz-GJB1ベクター、
d)AAV9ベクター、前記最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)プロモーター、及び前記EGFPレポーター遺伝子を含む、AAV9-miniMpz.Egfpベクターであって、任意選択的に、前記miniMPZプロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列相同性を有する、AAV9-miniMpz.Egfpベクター、
e)AAV9ベクター、前記ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及び前記ギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子(配列番号17)の前記オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-ヒトMpz-GJB1ベクター、
f)AAV9ベクター、前記ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及び前記EGFPレポーター遺伝子(配列番号19)を含む、AAV9-ヒトMpz-Egfpベクター、
g)AAV9ベクター、最小ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及び前記SH3TC2遺伝子(配列番号20)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-miniMpz-SH3TC2.myc.ITRベクター、
h)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及び前記SH3TC2遺伝子(配列番号21)の前記オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-ヒト-miniMpz-SH3TC2ベクター、
i)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及び前記EGFPレポーター遺伝子(配列番号23)を含む、AAV9-ヒト-miniMpz-Egfpベクター、又は
j)AAV9ベクター、前記最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)プロモーター、及び前記ギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子の前記オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-Mpz-GJB1ベクターであって、任意選択的に、前記miniMPZプロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列相同性を有する、AAV9-Mpz-GJB1ベクターを含む、請求項25に記載のウイルスベクター。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のウイルスベクターを含む、医薬組成物であって、任意選択的に、前記組成物が、治療上適切な量の前記ウイルスベクターを含み、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項28】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防のための薬物の製造方法における請求項1~27のいずれか一項に記載のウイルスベクターの使用であって、任意選択的に、前記疾患が、ミエリン鞘シュワン細胞の破壊及び/又は形成の低下を引き起こし、任意選択的に、前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース病であり、任意選択的に、前記シャルコー・マリー・トゥース病が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)、シャルコー・マリー・トゥース1A~1F型(すなわち、CMT1A、CMT1B、CMT1C、CMT1D、CMT1E、及びCMT1F)、シャルコー・マリー・トゥース4A~4H型(すなわち、CMT4A、CMT4B、CMT4C、CMT4D、CMT4E、CMT4F、CMT4G、及びCMT4H)からなる群から選択され、任意選択的に、
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)であるか、又は
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース4C型(CMT4C)である、ウイルスベクターの使用。
【請求項29】
CRISPR/Cas9システムにおいて使用するための請求項1~28のいずれか一項に記載のウイルスベクター又はポリヌクレオチド構築物であって、前記ウイルスベクター又はポリヌクレオチドが、
a)目的の遺伝子を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)をコードするポリヌクレオチド、
b)Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
c)目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、のうちのいずれか1つ以上を含む、ウイルスベクター又はポリヌクレオチド構築物。
【請求項30】
a)シュワン細胞を標識する方法、例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)若しくは強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、若しくは別の非蛍光レポーターで標識する方法であって、任意選択的に、前記シュワン細胞の標識が、シュワン細胞に関連する疾患を診断する方法において使用することができる、標識する方法、
b)シュワン細胞が、代替の細胞型(例えば、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、若しくはニューロン)に分化するように誘導される方法、又は
c)任意選択的に、傷害もしく外傷後に、シュワン細胞を刺激して、その再生を必要とする対象においてそれを支持する方法、において使用するための、請求項1~29のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項31】
シュワン細胞に関連する疾患の予防若しくは治療、シュワン細胞の標識、又はシュワン細胞の再生に使用するためのキットであって、
a)請求項1~30のいずれか一項に記載のウイルスベクター、
b)請求項23に記載のポリヌクレオチド構築物、
c)ウイルスベクター、
d)請求項23に記載のポリヌクレオチド構築物を含むウイルスベクター、
e)薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤、
f)使い捨て注射器、例えば、腰部髄腔内注射に適した使い捨て注射器、
g)使用説明書、のうちの1つ以上を含み、
任意選択的に、請求項1~30のいずれか一項に記載の2つ以上のウイルスベクターを含み、任意選択的に、請求項1~30のいずれか一項に記載の2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なるウイルスベクターを含む、キット。
【請求項32】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防における、これを必要とする対象の中での使用のためのウイルスベクターであって、前記ウイルスベクターが、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含み、前記第1のポリヌクレオチドの発現が、
a)ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターであって、任意選択的に、前記プロモーターが、配列番号4若しくは配列番号1と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、Mpzプロモーター、又は
b)最小ミエリン特異的プロモーター(miniMpz)であって、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22に定義される配列を含むか、若しくはそれからなり、任意選択的に、前記miniMPZプロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列相同性を有する、最小ミエリン特異的プロモーター(miniMpz)の制御下にある、ウイルスベクター。
【請求項33】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター又はAAVである、請求項32に記載の使用のためのウイルスベクター。
【請求項34】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防を必要とする対象における前記シュワン細胞に関連する疾患が、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)であり、任意選択的に、前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)、シャルコー・マリー・トゥース1A~1F型(すなわち、CMT1A、CMT1B、CMT1C、CMT1D、CMT1E、及びCMT1F)、シャルコー・マリー・トゥース4A~4H型(すなわち、CMT4A、CMT4B、CMT4C、CMT4D、CMT4E、CMT4F、CMT4G、及びCMT4H)から選択され、任意選択的に、
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)であるか、又は
前記疾患が、シャルコー・マリー・トゥース4C型(CMT4C)である、請求項32又は33に記載の使用のためのウイルスベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュワン細胞に関連する疾患を標的とするウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病は、多くの種類の非症候性遺伝性ニューロパチーを包含し、これらを合わせると最も一般的な神経遺伝疾患の1つと見なされ、罹患者の頻度は一般人口の1:2500に達する(1、2)。CMTニューロパチーは、数が増加し続ける原因遺伝子、及び異なる遺伝子によって引き起こされる表現型の重複の関与を特徴とする。さらに、いくつかの異なる遺伝子が同一の表現型を引き起こす場合がある。CMTニューロパチーの基礎となる複雑な遺伝的基盤及び多様な疾患発症機序の理解が深まっているにもかかわらず、現在、いずれのCMT形態に対しても効果的な治療法はなく、対症療法及び支持療法のみが患者に提供され得る。したがって、CMTの新しい治療戦略が大いに必要とされている。過去20年間に、CMTの治療のための遺伝子治療を開発する努力がなされてきた。異なる遺伝子治療アプローチが、中枢神経系及び末梢神経系(PNS)疾患の治療に将来的に有望であるが、克服されるべき複数の課題が残っている(3)。
【0003】
例えば、(49)は、レンチウイルスベクターを使用したCMT4Cの治療において治療効果を達成することがどのように可能であるかを示している。しかしながら、この効果は部分的であり、レンチウイルスベクターにはインビボでのヒト治療に対する安全性の限界がある。以前は、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)等の他のベクターは、長さが約4.4kbのインサートの最大パッケージング容量のために、より安定であり、宿主ゲノムに組み込まれていないにもかかわらず、有用であるとは見なされておらず、遺伝子治療戦略におけるAAVの有用性は、特に置換される遺伝子が比較的長い場合には限られていた。
【0004】
シュワン細胞を標的とする遺伝子治療技術は、CMT以外のシュワン細胞に関連する他の多くの疾患、例えば運動ニューロン疾患(MND)に適用することができ、遺伝的要因によって引き起こされるもの以外も含む。これらの疾患の多くには複数の原因があり、十分に理解されていないため、ウイルスベクターを使用してこれらの疾患を標的とすることは特に有利であり得る。
【0005】
全体として、より良い治療効果を達成するために、CMT等の脱髄性ニューロパチーを含む、シュワン細胞に関連する疾患を標的とする改善された方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、ポリヌクレオチド、例えば、治療用ポリヌクレオチドを末梢神経系(PNS)のシュワン細胞に送達し、特にシュワン細胞において該ポリヌクレオチドの発現を駆動する有用な手段を初めて開発した。本発明は、シュワン細胞に関連する疾患の治療に適用することができ、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)等の脱髄性ニューロパチーの治療に適用される場合に特に有益であると考えられる。しかしながら、本発明の基礎をなす機構は、シュワン細胞に影響を与える他の多くの疾患に適用可能であると考えられ、また、シュワン細胞へのポリヌクレオチドの送達が有利であると考えられるあらゆる状況において、例えば、シュワン細胞のイメージングにおいて一般的な有用性を有すると考えられる。
【0007】
本発明の一態様の特徴は、特にPNSのシュワン細胞において目的の第1のポリヌクレオチドの産生をもたらす、第1の核酸の転写を達成するためのAAVベクターの使用である。いくつかの実施形態において、この細胞型特異的発現は、ミエリン特異的プロモーターを使用して達成され、いくつかの実施形態において、これは、最小型のミエリン特異的プロモーターを使用して達成される。
【0008】
本発明の別の特徴は、最小ミエリン特異的プロモーターの提供であり、これは、いくつかの実施形態において、全長ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターの配列に基づく。いくつかの実施形態において、より短い最小プロモーターを含むウイルスベクターは、より大きな核酸の配列、例えば、治療用の核酸の配列が、ベクターに含まれ、シュワン細胞に送達されることを可能にする。現在のアプローチは、例えば、それらのサイズのためにウイルスベクターから発現され得る遺伝子に限られているため、これは、シュワン細胞に核酸を送達するための普遍的なベクターを提供するという有利な特性を有し、広範囲な疾患を治療するために使用することができると考えられる。
【0009】
[発明の詳細な説明]
【0010】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される通りである。
【0011】
本発明は、一般に、医学で使用するための本明細書に記載のウイルスベクターを提供し、また、本発明によるベクターの投与、例えば、本明細書に記載の手段のいずれかによる投与を含む治療方法を提供する。
【0012】
本発明の第1の態様は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのウイルスベクターを提供する。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含む。
【0013】
ウイルスベクターは、任意のウイルスベクターであり得る。
【0014】
ウイルスベクターは当該技術分野で周知であり、例として、限定されないが、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)、レンチウイルスベクター(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来するもの)、レトロウイルスベクター(例えば、MMLV)が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)である。好ましい実施形態において、本発明は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのAAVベクターを提供し、AAVベクターは、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含む。
【0016】
第1の核酸の配列が転写される場合、例えば、標的細胞又は標的生物において転写されることが好ましい。したがって、さらなる実施形態は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのウイルスベクターを提供し、ウイルスベクターは、第1のポリヌクレオチドに転写される第1の核酸の配列を含む。
【0017】
さらなる実施形態は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのAAVを提供し、ウイルスベクターは、第1のポリヌクレオチドに転写される第1の核酸の配列を含む。
【0018】
第1の核酸の配列は、標的細胞又は標的生物において第1のポリヌクレオチドに転写され得、例えば、シュワン細胞において転写される。シュワン細胞は、インビボであり得、例えば、哺乳類生物にあり得、例えば、ヒト、ネコ、イヌ、マウス、ウサギ、ウマであり得る。
【0019】
シュワン細胞は、末梢神経系(PNS)のグリア細胞であり、感覚ニューロン及び運動ニューロンの軸索を取り囲み、周囲のミエリン鞘を生成する。ミエリン鞘はいくつかのタンパク質成分(例えば、ミエリンタンパク質ゼロ)で構成されており、神経に沿った神経インパルス(活動電位)の高速伝導を可能にするニューロンの必須の絶縁成分である。
【0020】
いくつかの現在のウイルスベクターベースの治療戦略は、望ましくない特性を有するベクターを利用している。例えば、一部のウイルスベクターは宿主ゲノムに組み込まれ、明らかに有害な結果をもたらす可能性がある。したがって、一実施形態において、ウイルスベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれるウイルスベクターではなく、例えば、シュワン細胞の核酸に組み込まれない。いくつかの実施形態において、宿主ゲノムに組み込まれるとは考えられていないウイルスベクターが特に好ましく、AAV及びアデノウイルスベクターを含む。AAVベクターは標的細胞に感染し、送達された遺伝物質は宿主細胞のゲノムに組み込まれない。代わりに、送達された遺伝物質はエピソームのままである。
【0021】
宿主ゲノムに組み込まれると考えられるウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターを含む。したがって、一実施形態において、ウイルスベクターは、宿主ゲノムに組み込まれるベクターではなく、例えば、レトロウイルスベクターではなく、例えば、レンチウイルスベクターではない。
【0022】
一部のベクターは、シュワン細胞を形質導入することもできない、当業者は、シュワン細胞を形質導入できるベクターとできないベクターの種類を理解するであろう。したがって、一実施形態において、本発明のウイルスベクターは、シュワン細胞を形質導入することができないウイルスベクターではない。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、シュワン細胞を形質導入する能力を有する。「形質導入する」とは、ウイルスベクターが標的細胞に感染し、その中に見られるポリヌクレオチド構築物を標的細胞に送達することができることを意味する。そのようなベクターの例として、AAV及びレンチウイルスベクターが挙げられる。
【0023】
一実施形態において、ベクターは、不安定になる前に限られたサイズのインサートのみを組み込むことができるベクターである。例えば、そのようなベクターはAAVベクターを含む。
【0024】
好ましくは、ウイルスベクターはAAVベクターであり、いくつかの実施形態において、AAVベクターは、AAV9及びAAVrh10を含むか、又はそれらからなる群から選択される。特に好ましい実施形態において、AAVはAAV9である。
【0025】
第1の核酸の転写は、シュワン細胞でのみ起こるか又は実質的に起こることが好ましい。したがって、いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはまた、第1の核酸に作動可能に連結されたシュワン細胞特異的プロモーターを含む。
【0026】
「シュワン細胞特異的プロモーター」とは、シュワン細胞で有意な発現をもたらし、非シュワン細胞では発現をもたらさないか又は低い発現をもたらすプロモーターの意味を含む。例えば、シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞の最初の核酸から高レベルの転写を駆動し得る(例えば、95%以上の総発現がシュワン細胞で起こる)が、第1のポリヌクレオチドの発現は、他の細胞型、例えば中枢神経系の細胞型では低い(例えば、総発現の5%未満がシュワン細胞以外の細胞で起こる)。例えば、一実施形態において、シュワン細胞と非シュワン細胞との転写の比は、少なくとも100:0、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、又は55:45である。
【0027】
一実施形態において、シュワン細胞における転写のレベルは、いずれか他の非シュワン細胞よりも少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、2500、5000、7500、10000倍高い。
【0028】
一実施形態において、シュワン細胞特異的プロモーターは、非シュワン細胞ではなくシュワン細胞で起こる発現の大部分をもたらす。
【0029】
当業者は、非常に特異的なプロモーターであっても、他の細胞又は組織においていくらかの発現をもたらす可能性があることを理解するであろう。当業者は、プロモーターを細胞又は組織特異的、例えばシュワン細胞特異的として分類するために必要とされる、標的細胞又は組織と非標的細胞又は組織との間の差次的発現レベルを十分に認識している。例えば、(66)及び(67)は、中枢神経系(CNS)における細胞特異的プロモーターの同定を示している。当業者は、プロモーターが細胞特異的であるためには、特定の細胞型でのみプロモーターを活性化する調節エレメント(例えば、転写因子の結合部位)を含まなければならず、プロモーターは、インビトロ及びインビボでレポーター遺伝子又は他の遺伝子の実証可能な発現を駆動できなければならないことを認識するであろう。
【0030】
好ましくは、シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞においてのみ検出可能なレベルで第1の核酸の転写をもたらす。当業者は、転写を検出するための日常的な方法、例えば、ノーザンブロット、PCRベースの技術、及び免疫蛍光標識法を十分に認識している。一実施形態において、ノーザンブロット分析を使用して検出が行われる場合、シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞において第1の核酸の検出可能な転写をもたらすが、非シュワン細胞、例えば、末梢神経系の他の細胞又は脳では第1の核酸の検出可能なレベルの転写をもたらさない。別の実施形態において、細胞マーカーを用いた免疫蛍光標識分析を使用して検出が行われる場合、シュワン細胞特異的プロモーターは、シュワン細胞において第1の核酸の検出可能な転写をもたらすが、非シュワン細胞、例えば、末梢神経系の他の細胞又は脳では第1の核酸の検出可能なレベルの転写をもたらさない。
【0031】
例えば、(32)及び(33)は、レンチウイルスベクターを用いた全長Mpzプロモーターによって駆動される構築物を使用して、シュワン細胞特異的発現をインビトロ及びインビボの両方で達成できることを示している。
【0032】
シュワン細胞特異的プロモーターは、いくつかの実施形態において、ミエリン特異的プロモーターを含む。「ミエリン特異的プロモーター」とは、通常、ミエリン鞘を構成するタンパク質をコードする遺伝子の発現を駆動するプロモーターを意味する。ミエリン特異的プロモーターの例として、限定されないが、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)プロモーター、ミエリン関連糖タンパク質(Mag)プロモーターが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドの発現は、全長ラットミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター等の全長ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターの制御下にあり、その配列は配列番号4に定義されている。いくつかの実施形態において、Mpzプロモーターの配列は、配列番号4と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号4と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、プロモーター配列がヒト又はヒト化プロモーター配列に由来することが好ましいことは当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドの発現は、全長ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーターの制御下にあり、その配列は配列番号18に定義されている。いくつかの実施形態において、hP0プロモーターの配列は、配列番号18と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号18と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を有する。
【0035】
上記のように、プロモーターが可能な限り短い場合、特にベクターが不安定になる前に限られたインサートサイズにしか対応できないベクターである場合に有利であると考えられる。したがって、いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドの発現は、長さ100bp~1100bpのプロモーターの制御下にあり、任意選択的に、プロモーターは、長さ200bp~900bp、長さ300bp~800bp、長さ400bp~700bpの範囲であり、任意選択的に、プロモーターは長さ500bp~600bpであり、例えば長さ410bpである。同じ又は他の実施形態において、プロモーターは、長さ1100bp未満であり、例えば、長さ1000bp未満、900bp未満、800bp未満、700bp未満、600bp未満、500bp未満、400bp未満、300bp未満、200bp未満、又は100bp未満である。
【0036】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、本明細書で定義される長さの天然に存在するMpzプロモーターである。代替の実施形態において、プロモーターは、本明細書で定義される長さの操作されたMpzプロモーターである。「天然に存在するプロモーター」とは、野生型シュワン細胞に見られる対応するプロモーター配列と比較して、修飾、短縮、又は延長されていないプロモーターを意味する。「操作されたプロモーター」とは、何らかの方法で改変された野生型プロモーターを意味する。例えば、配列は、例えば、天然に存在するプロモーター配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、天然に存在するプロモーター配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有するように修飾され得る。別の又は同じ実施形態において、プロモーターはまた、長さが修飾されてもよく、例えば、野生型プロモーターの長さは、より長い配列から、例えば、長さ100bp~1100bp、任意選択的に、長さ200bp~900bp、長さ300bp~800bp、長さ400bp~700bp、任意選択的に、長さ500bp~600bp、例えば、長さ410bp、又は長さ1100bp未満、例えば、長さ1000bp未満、900bp未満、800bp未満、700bp未満、600bp未満、500bp未満、400bp未満、300bp未満、200bp未満、又は100bp未満に短縮されていてもよい。
【0037】
別の実施形態において、プロモーターの長さは、野生型プロモーターと比較して増加されていてもよい。
【0038】
当業者は、プロモーターであると考えられる特定の核酸領域の部分のみが実際にプロモーター活性に必要とされる可能性があることを理解するであろう。別の例では、操作されたプロモーターは、野生型プロモーターの配列の一部を含むか、又はより長いプロモーター配列の一部として野生型プロモーターの配列全体を含む。述べたように、好ましくは、プロモーターはシュワン細胞において特異的に活性である。当業者は、例えば、シュワン細胞におけるレポーター遺伝子の発現についてスクリーニングすることにより、全長プロモーターの特定の断片が、該プロモーター断片の制御下にあるタンパク質のシュワン細胞特異的発現をもたらすかどうかを調べることができるであろう。いくつかの例において、レポーター遺伝子はEGFPである。
【0039】
別の実施形態において、操作されたプロモーターは、野生型プロモーターの切断型であり、例えば、天然に存在するプロモーター配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、天然に存在するプロモーター配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有し得る。
【0040】
天然プロモーターの切断型であることに加えて、操作されたプロモーターは、天然プロモーター配列と比較して、突然変異、置換、欠失、及び挿入を追加的又は代替的に含み得る。例えば、操作されたプロモーターは、1つの連続した配列において天然プロモーターの様々な異なる領域を含み得る。
【0041】
対応する天然又は野生型プロモーターよりも長さが短い操作されたプロモーターは、最小プロモーターと称され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、操作されたプロモーターは、それが由来する対応する天然に存在するプロモーターと同じ機能を保持する、すなわち、プロモーターが作動可能に連結されている核酸の配列からのポリヌクレオチド配列の転写を依然として効果的に駆動することができ、好ましい場合には、細胞特異的な方法、すなわちシュワン細胞特異的な方法で、転写を効果的に駆動することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドの発現は、例えば、本明細書において最小ミエリン特異的プロモーターと称される短縮された天然に存在するミエリン特異的プロモーターの制御下にあり得、任意選択的に、これは最小ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターである。いくつかの実施形態において、最小ミエリン特異的プロモーターの配列は、全長ラットMpzプロモーター配列に由来する、配列番号5に定義される410bp配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態において、最小ミエリン特異的プロモーターは、配列番号5と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号5と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含むか、又はそれからなる。
【0044】
いくつかの実施形態において、最小プロモーターがヒト又はヒト化プロモーター配列に由来することが好ましい。いくつかの実施形態において、最小ミエリン特異的プロモーターの配列は、全長ヒトhP0プロモーター配列に由来する、配列番号22に定義される429bp配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態において、最小ミエリン特異的プロモーターは、配列番号22と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号22と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含むか、又はそれからなる。ラットMpz又はヒトhP0に由来する最小ミエリン特異的プロモーターは、本明細書ではminiMpzと称される。
【0045】
「配列同一性」又は「配列相同性」とは、特定のDNA領域における同一の塩基対の配列を意味する。例えば、参照配列に対して75%の配列相同性又は配列同一性を有する配列では、塩基対の75%が同一である。
【0046】
2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、好適なコンピュータプログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定されてもよく、パーセント同一性は、配列が最適に整列されたポリペプチドに関連して算出されることを理解されたい。
【0047】
アライメントは、代替として、Clustal Wプログラム(Thompson et al.,(1994)Nucleic Acids Res 22,4673-80)を使用して実行されてもよい。使用されるパラメータは、以下の通りであってもよい。
【0048】
高速ペアワイズアライメントパラメータ:Kタプル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップペナルティ;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング方法:xパーセント。
マルチプル・アライメント・パラメータ:ギャップ開始ペナルティ;10、ギャップ伸長ペナルティ;0.05。
スコアリング・マトリックス:BLOSUM
一実施形態において、本明細書に記載の最小Mpzプロモーターは、例えば、全長プロモーター、例えば、全長ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターの開始コドンの上流の410塩基対領域を用いることによって、実施例9に記載されるように生成され得る。別の実施形態において、本明細書に記載の最小Mpzプロモーターは、実施例13に記載されるように生成され得る。AAVベクターは、約4.4kbのポリヌクレオチドを担持する最大能力を有し、したがって、長さ約1.1kbの全長Mpzプロモーターではなく、本明細書に記載のより短いMpzプロモーターの使用は、AAVにパッケージングするために、より長い第1の核酸の配列がプロモーター領域に作動可能に連結されることを可能にするという利点を有する。プロモーターが、例えば、長さ100bp~1100bp、200bp~900bp、300bp~800bp、400bp~700bp、500bp~600bp、若しくは長さ410bpであるか、又は長さ1100bp未満の長さ、例えば、1000bp未満、900bp未満、800bp未満、700bp未満、600bp未満、500bp未満、400bp、300bp未満、200bp未満、若しくは100bp未満のより短いプロモーター、例えば、操作されたプロモーター又は最小プロモーターであるいくつかの実施形態において、これにより、本発明が全長プロモーターを利用したAAVベクターよりも広い範囲のより長い遺伝子に適用されることが可能となる。例えば、現在、特定の長さの核酸の配列、例えば遺伝子をAAVに挿入することができないいくつかの状況があるが、これは、より長いプロモーターの場合、例えば、全長Mpzプロモーターが使用される場合に、核酸の長さがAAVの最大容量を超える可能性があるためである。例えば、第1の核酸、例えば治療遺伝子が、長さが3.0~3.3kbより長い場合(4.4kb~1.1kb=3.3kb)である。この場合、本明細書に記載の有利なより短いプロモーター、例えば最小ミエリン特異的プロモーターの使用により、本発明が、例えば、長さ約3.9kbのCMT 4C型(CMT4C)を引き起こすSH3TC2遺伝子等のより大きな遺伝子の置換に適用されることが可能となる。AAVの安定限界に近い可能性があり、したがって最小Mpzプロモーターの下で最適に送達される他のシュワン細胞関連遺伝子は、CMT4Eに関連するEGR2(2.98kb)、及びCMT4Hに関連するFGD4(2.3kb)を含む。
【0049】
さらなる追加の実施形態において、本明細書に記載のベクターは、そのサイズをさらに縮小するために、逆方向末端反復セグメントにおいて修飾することができる。例えば、実施例1に記載されるように、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を除去することができ、かつ/又はポリA配列を最小合成ポリAで置き換えることができる(68、69)。このような修飾により、ベクターのサイズをさらに縮小することができ、AAVの最大容量内に留まることが可能となり、より大きな遺伝子を送達する場合に効率的なパッケージングが可能となる。さらなる追加の実施形態において、ベクターのサイズは、例えば、同様に、送達されるタンパク質コード遺伝子の最小型を使用することによってさらに縮小することができ、タンパク質コード遺伝子の最小型は、依然として機能的タンパク質を産生することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、実施例12に記載されるように生成され得る。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、配列番号20に示される配列を有するが、これはWPREが除去されており、合成ポリA配列を有する。いくつかの実施形態において、合成ポリA配列は、mRNA構築物の効率的なポイアデニル化に必要な最小配列を含むか、又はそれからなる(68、69)。いくつかの実施形態において、合成ポリA配列は、配列番号20及び21の配列に含まれる配列番号24の配列を含むか、又はそれからなる。他の実施形態において、合成ポリA配列は、配列番号24と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはまた、Egr2及びSox10転写因子のための結合部位を含む。例えば、ウイルスベクターはまた、Egr2及びSox10等の転写因子が結合することができるエンハンサーエレメントを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの第1の核酸は、いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド又はタンパク質をコードし、かつそれらに翻訳される第1のポリヌクレオチドに転写される。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、遺伝子配列又は遺伝子配列に対応するcDNAのオープンリーディングフレーム(ORF)である。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、野生型又は他の治療上有益な遺伝子配列のORF又はcDNAである。好ましい実施形態において、第1の核酸は、ニューロパチー関連遺伝子の野生型又は治療上有益な配列のORF又はcDNAであり、任意選択的に、ニューロパチーは脱髄性ニューロパチーである。
【0053】
「野生型又は治療上有益な形態」とは、シュワン細胞に関連する疾患を効果的に治療するために使用できるポリペプチド又はタンパク質をコードする任意の形態の遺伝子配列を含む。当業者は、シュワン細胞による野生型形態のポリペプチドの過少産生によって疾患が生じる状況において、これが典型的には野生型形態のタンパク質(すなわち、シュワン細胞で自然に発生するもの)であるが、治療上の利点、例えば、発現レベルの増加、分解に対する耐性、安定性の増加、活性の増加、若しくは機能の有利な獲得を提供するように、又は毒性の機能獲得を抑制するように、野生型配列と比較して突然変異若しくは挿入を有する又は切断されたタンパク質の形態も含み得ることも理解するであろう。例えば、後者の場合、ポリペプチドは、毒性の機能獲得変異体に結合してその毒性を抑制することができる抗体であり得る。
【0054】
当業者は、関連する遺伝子のORF又はcDNAをウイルスベクターに導入することによってタンパク質発現が日常的に行われることを認識するであろう。一実施形態において、第1の核酸は、転写されると、第1のポリペプチド又はタンパク質に翻訳される第1のポリヌクレオチドを生成するcDNA配列である。例えば、cDNAは、GJB1 mRNAに転写され、その後Cx32タンパク質に翻訳されるcDNA配列であり得る。
【0055】
当業者は、ORF配列がcDNAに見られる追加の非コードエレメントを欠いており、サイズが小さいため、いくつかの場合においてcDNA配列ではなくORF配列の使用が好ましい場合があることを理解するであろうが、これは、ウイルスベクターが、サイズが特定の閾値を超えると不安定になるベクターである場合に、本発明において特に有利である。
【0056】
いくつかの追加の実施形態において、本明細書に記載の第1の核酸の配列はまた、遺伝子のcDNA又はORFに加えて、任意選択的に他の調節エレメントを含む。これらの追加のエレメントは、ORFの下流に存在し得る。
【0057】
上記のように、本発明は、シュワン細胞に関連する疾患の予防又は治療において有用性を有する。「シュワン細胞に関連する疾患」とは、シュワン細胞の異常な機能に関連するすべての疾患の意味を含む。これには、シュワン細胞によって形成されるミエリン鞘の破壊に関連する疾患、及び/又はシュワン細胞によって形成されるミエリン鞘の発現低下に関連する疾患が含まれる。いくつかの実施形態において、シュワン細胞に関連する疾患は、脱髄性ニューロパチーである。脱髄性ニューロパチーの例として、限定されないが、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)が挙げられる。
【0058】
「シュワン細胞に関連する疾患」はまた、その意味において、シュワン細胞に関連するが、例えば他の細胞型又は組織にも関連する疾患を含む。たとえ本発明が疾患に関連する任意の他の細胞型を標的としない場合であっても、シュワン細胞の機能の改善がいくつかの症状を軽減することができるため、本発明はそのような状況において有用であると考えられる。
【0059】
したがって、一実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)、糖尿病及び他の毒性末梢性ニューロパチー、運動ニューロン疾患(MND)からなる群から選択される疾患の治療又は予防に使用することができる。
【0060】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)、シャルコー・マリー・トゥース1A~1F型(すなわち、CMT1A、CMT1B、CMT1C、CMT1D、CMT1E、及びCMT1F)、シャルコー・マリー・トゥース4A~4H型(すなわち、CMT4A、CMT4B、CMT4C、CMT4D、CMT4E、CMT4F、CMT4G及びCMT4H)の治療又は予防に使用することができる。より具体的な実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターを使用して、シャルコー・マリー・トゥース型1Xを治療又は予防することができる。代替のより具体的な実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターを使用して、シャルコー・マリー・トゥース病4C型を治療又は予防することができる。
【0061】
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は、表現型の重複をもたらす多数の異なる遺伝子の突然変異によって引き起こされる一群の脱髄性ニューロパチーである。シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)ニューロパチーは2番目に一般的なCMTの形態であり(4、5)、遠位脚の筋肉から始まる進行性の脱力感及び萎縮、走ることの困難、並びに頻繁な足首捻挫を含む特徴的なCMT1症状を示し、ほとんどの罹患男児において10歳又はそれ以前までに発症する(6-8)。この疾患は徐々に進行し、前脚の筋力低下、下垂足、足の変形、手の筋力低下、及び遠位感覚の喪失を引き起こし、時には思春期後期又は成人期初期まで有痛性感覚異常を伴い、生涯にわたって徐々に進行する。CMT1Xを有するヘテロ接合性の女性は、無症候性であるか、高齢になると軽度の臨床症状を発症する可能性があるが、極めて重度のニューロパチーが報告されている(9、10)。一過性CNSの徴候は、一部の、主により若年のCMT1X患者に発生する場合がある(11)。運動神経伝導速度(MNCV)の中間的な減速(30~40m/秒)、及び長さに依存する軸索変性による運動単位の進行性の喪失は、典型的な電気生理学的特徴である(6、7)。神経生検は、軸索異常と脱髄異常の混合を示し(12、13)、薄いミエリン鞘と、再生軸索群によって置き換えられた大きな有髄線維の喪失が見られる(6、14)。
【0062】
Cx32は、末梢神経系(PNS)の有髄シュワン細胞、及びCNSのオリゴデンドロサイトのサブセットによって特異的に発現される非コンパクトミエリン層を通る膜貫通タンパク質を形成するギャップ結合(GJ)チャネルである。Cx32によって形成されるGJチャネルは、ミエリン及び軸索の機能及び生存に不可欠な重要な恒常性機能及びシグナル伝達機能を果たす(4、5)。Cx32をコードする対応する遺伝子はGJB1である。
【0063】
これまでに、400を超えるGJB1変異がオープンリーディングフレーム(ORF)全体で発生し、498個のミスセンス(71%)、3個のストップロスト、49個のインフレームインデル(7%)、25個のストップゲイン(4%)、及び122個のフレームシフトインデル(17%)を含む、2つ以上のファミリーに多く発生していることが報告されている:(http://hihg.med.miami.edu/code/http/CMT/public_html/index.html#/)。非コードGJB1領域でもいくつかの変異が報告されている。フレームシフト、早期停止、及び非コード変異は、タンパク質合成の完全な喪失又は急速な分解を引き起こす可能性が高く、ドミナントネガティブな効果をもたらすことは予想されない。インビトロで発現したいくつかのミスセンス及びインフレーム変異は、ER及び/又はゴルジ(17-21)における細胞内保持(15-17)を示し、機能的チャネルを形成することはできなかった。共発現したWT Cx32に対してドミナントネガティブな効果を発揮するものもあった(15)。他の変異体は、生物物理学的特性が変化した機能的チャネルを形成した(19)。Gjb1/Cx32遺伝子が完全に欠失したCx32ノックアウト(KO)マウスは、坐骨神経のMNCV及び運動振幅の低下を伴う、約3ヶ月齢から始まる進行性の主に運動性の脱髄性末梢性ニューロパチーを発症する(24、25)。ラットMpz/P0プロモーターによって駆動されるWTヒトCx32タンパク質の発現は、Cx32 KOマウスの脱髄を防ぎ(26)、Cx32のシュワン細胞自律的発現の喪失がCMT1X病理を引き起こすのに十分であることを裏付けた。
【0064】
したがって、CMT1X変異体のいくつかのインビトロ及びインビボ研究は、Cx32機能の喪失が主にCMT1Xにおけるニューロパチーにつながるという全体的な結論を支持している(8、17~19、21~23)。そのため、一実施形態において、例えば、ウイルスベクターが野生型又は治療上有益なCx32タンパク質をコードする第1の核酸の配列を含む場合、本明細書に記載のウイルスベクター及び治療法を用いる遺伝子置換療法は、CMT1Xを治療又は予防するために使用される。
【0065】
KOバックグラウンドでCMT1Xを引き起こす変異を有するトランスジェニックマウスは、175fs変異株で検出可能なCx32タンパク質を示さなかったが(27)、R142W、T55I、R75W、及びN175Dトランスジェニックマウスは、インビトロパターン(上記)と同様に、核周辺領域で変異体タンパク質の保持を示し、Cx32 KOマウスと同様の脱髄性ニューロパチーを発症した(22、28、29)。ゴルジ体に保持されたR142W、R75W、及びN175D変異体(ERに保持されたT55I変異体ではない)の存在下では、内因性マウスWT Cx32の発現が低下し、ゴルジ体に保持された変異体がWT Cx32に対してドミナントネガティブな効果を有し得ることが示唆される。これは、各細胞で1つのGJB1対立遺伝子のみを発現するCMT1X患者には臨床的に関連しないが、遺伝子追加療法を計画する際には考慮されなければならない。インビボで発現された変異体のいずれも、他の共発現されたコネキシンに対していずれか他の毒性又は優性効果を示さなかった(22、28)。C末端変異体C280G及びS281Xは、Cx32 KOマウスにおいて適切に局在化され、脱髄を防いだが、ヒトにおいてどのようにニューロパチーを引き起こすのかは不明なままである(30)。
【0066】
したがって、CMT1Xは、Cx32タンパク質のドミナントネガティブ変異によっても引き起こされる可能性がある。この場合、当業者は、本発明のウイルスベクターが、それ自体が変異体タンパク質の翻訳を防止するように変異体Cx32 mRNAに向けられた非コードRNAに転写される第1の核酸を含む場合に有益であることを理解するであろう。当業者は、例えば、変異体Cx32 mRNAを標的とするが、野生型又は治療上有利なCx32 mRNAを標的としない好適な核酸の配列に到達する方法を理解するであろう。このように、一実施形態において、対象は、変異体Cx32を標的とする非コードRNAに転写される第1の核酸を含むウイルスベクターで処理され得、対象はまた、本発明による第2のウイルスベクターで処理され得、第2のウイルスベクターは、野生型又は治療上有利なCx32タンパク質をコードする第2の核酸を含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2の核酸は、本発明による同じウイルスベクター上にあり得る。本明細書に記載される任意のシュワン細胞関連疾患の治療又は予防において、同様のアプローチをとることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、第1の核酸は、ニューロパチー関連遺伝子の野生型遺伝子配列のORF又はcDNAであり得る。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、ギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子の野生型配列のcDNAであり得、これは、配列番号6に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号6と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号6と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、GJB1のORF配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、GJB1のORF配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0068】
CMT1Xは、GJB1遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的Cx32タンパク質の過少発現を引き起こす。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、GJB1遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるCMT1Xの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0069】
シャルコー・マリー・トゥース病4C型(CMT4C)は、まれな劣性脱髄性CMT4型ニューロパチー全体の中で最も蔓延している常染色体劣性の遺伝性ニューロパチーであると考えられ、すべてのCMT4症例のほぼ半分を占める(35)。CMT4Cを有する患者は通常、人生の最初の10年間に足の奇形及び脊柱側弯症、脱力感、反射低下、並びに感覚喪失を呈する(36~38)。聴覚障害、遅い瞳孔対光反射、及び舌の線維束性収縮を伴う脳神経の合併症が一般的であり、同一の突然変異を有する患者における表現型のばらつきが記載されている(39~41)。CMT4C患者の電気生理学的研究により、22.6m/秒の平均運動神経伝導速度(NCV)の中央値による脱髄プロセスが確認されている。神経生検所見は、有髄、脱髄、及び無髄の軸索周辺の基底膜の増加、比較的少数のタマネギ様構造、及び最も典型的にはシュワン細胞の大きな細胞質伸長を特徴とする(36、37、42)。
【0070】
CMT4Cの分子遺伝学:連鎖解析研究及びホモ接合性マッピング(43)により、染色体5q32上の疾患遺伝子座が発見され、その後、ほとんどが切断されているが、ミスセンスでもある11の異なる変異が、SH3TC2遺伝子において最初に発見された(42)。これまでに少なくとも28の異なるSH3TC2変異が記載されており、それらは特定の民族群間でより多く見られ(44)、創始者効果(39)を有する可能性がある。完全な転写産物のcDNAの長さは3864bpである。SH3TC2は、2個のSrc相同性3(SH3)ドメイン及び10個のテトラトリコペプチドリピート(TPR)ドメインを含む1,288 aaのタンパク質をコードし、既知の機能を有するいずれか他のヒトタンパク質と全体的に有意な類似性を共有していない。SH3及びTPRドメインの存在は、SH3TC2が足場タンパク質として機能する可能性があることを示唆している(42)。SH3TC2は脊椎動物種間で十分に保存されているが、非脊椎動物のオルソログは同性されていない。SH3TC2は、初期及び後期エンドソームを含むエンドサイトーシス経路のいくつかの区画、並びにトランスゴルジネットワークに近いクラスリン被覆小胞及び原形質膜に存在する。この局在化はCMT4Cにおいて変化する(45)。
【0071】
CMT4CのSh3tc2-/-KOマウスモデルは、運動神経及び感覚神経の伝導速度の低下並びに早期発症のミエリン形成不全を伴って、早期発症であるが進行性の末梢性ニューロパチーを発症する(46、47)。この表現型は進行性であり、2ヶ月齢及び12ヶ月齢でミエリン病理が増加する。マウスSh3tc2はシュワン細胞で特異的に発現し、原形質膜及び核周囲エンドサイトーシスリサイクルコンパートメントに局在しており、ミエリン形成及び/又は軸索相互作用の領域における機能の可能性を示唆している(48)。変異体マウスの末梢神経におけるミエリンの超微細構造分析は、CMT4C患者からの神経生検で確認された表現型であるランヴィエ絞輪の異常な組織化を示した。これらの所見により、ミエリン形成及びランヴィエ絞輪の完全性におけるSH3TC2遺伝子産物の役割が示唆された(46)。したがって、Sh3tc2-/-マウスは、CMT4C疾患のすべての主要な機能を再現し、治療法を試験するための適切なモデルを提供する。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、遺伝子SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。SH3TC2のORFは、配列番号7に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号7と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号7と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、SH3TC2のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、SH3TC2のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0073】
上記のように、CMT4Cは、SH3TC2遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的SH3TC2タンパク質の過少発現を引き起こす。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、例えば、野生型SH3TC2の発現を増加させるために、SH3TC2のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーを送達することによるCMT4Cの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0074】
別の実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、他の種類の常染色体優性脱髄性CMTの治療又は予防の方法において使用することができる。
【0075】
CMT1Bは、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的Mpzタンパク質の過少発現を引き起こす。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。MPZのORFは、配列番号9に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号9と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号9と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、MPZのcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、MPZのcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0077】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、MPZ遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達に加えて、MPZ遺伝子の毒性突然変異対立遺伝子を標的としノックダウンする本明細書に記載の非コードRNAの送達によるCMT1Bの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0078】
CMT1Dは、EGR2遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的EGR2タンパク質の過少発現を引き起こす。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。EGR2のORFは、配列番号10に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号10と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号10と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、EGR2のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、EGR2のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、EGR2遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるCMT1Dの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0081】
別の実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、他の種類の常染色体劣性の脱髄性CMTの治療又は予防の方法において使用することができる。CMT4Aは、GDAP1遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的GDAP1タンパク質の過少発現を引き起こす。
【0082】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)遺伝子の野生型配列のORFであり得る。GDAP1のORFは、配列番号11に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号11と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号11と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、GDAP1のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、GDAP1のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、GDAP1遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるCMT4Aの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0084】
CMT4Dは、NDRG1遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的NDRG1タンパク質の過少発現を引き起こす。
【0085】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、N-Myc下流調節1(NDRG1)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。NDRG1のORFは、配列番号12に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号12と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号12と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、NDRG1のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、NDRG1のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、NDRG1遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるCMT4Dの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0087】
CMT4Eは、EGR2遺伝子の変異によって引き起こされ、野生型の機能的EGR2タンパク質の過少発現を引き起こす。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、初期増殖応答2(EGR2)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。EGR2のORFは、配列番号10に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号10と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号10と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、EGR2のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、EGR2のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0089】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、EGR2遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるCMT4Eの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0090】
遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)は、PMP22遺伝子の変異と関連しており、野生型の機能的PMP22タンパク質の発現不足を引き起こす。
【0091】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の核酸は、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)遺伝子の野生型配列のORF又はcDNAであり得る。PMP22のORFは、配列番号8に定義される配列を有すると考えられる。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、配列番号8と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号8と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。他の実施形態において、第1の核酸は、PMP22のcDNA配列と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、PMP22のcDNA配列と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する。
【0092】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、PMP22遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なコピーの送達によるHNPPの治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0093】
別の実施形態において、第1の核酸は、脱髄性ニューロパチー及び/又はシュワン細胞機能不全に関連する別の遺伝子のORF又はcDNAであり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、そのような疾患に関連する遺伝子のオープンリーディングフレーム又はcDNAの野生型コピー又は他の治療上有益なオープンコピーの送達による脱髄性ニューロパチー及び/又はシュワン細胞機能不全に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのものであり得る。
【0094】
運動ニューロン疾患(MND)(筋萎縮性側索硬化症とも称される)は、完全には解明されていない複雑な原因を伴う神経変性疾患である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、栄養因子(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、血管内皮増殖因子(VEGF))をコードするポリヌクレオチドを送達するために使用され得る。標的細胞におけるそのような栄養因子の発現は、ストレスを受けた運動ニューロンの再生及び保存に有用であると考えられる。
【0095】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、MNDを治療又は予防する方法に使用するためのものである。
【0096】
本明細書に開示されるタンパク質の野生型又は治療上有益な形態が、完全な遺伝子のヌクレオチド配列から、単にオープンリーディングフレーム配列(ORF)から、又は単にcDNA配列から発現させることができることは、当業者には明らかであろう。これらの種類の配列はすべて、当業者によって、配列データベース、例えば、GenBank(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/からアクセス可能)から容易にアクセスされる。
【0097】
いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、第1のポリペプチド又はタンパク質をコードし、かつそれらに翻訳される。いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、野生型形態のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、野生型形態のタンパク質は、それを必要とする対象によって発現される同じタンパク質の突然変異型の発現を置換又は補足するために使用される。
【0098】
いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、以下のタンパク質のうちの1つ以上の野生型又は治療上有益な形態をコードし得る:コネキシン32,SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ);初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)。当業者は、本明細書に開示されるタンパク質のアミノ酸配列が、配列データベース、例えば、NCBIタンパク質データベース(ここからアクセス可能:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein)から容易にアクセスできることを理解するであろう。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、置換される遺伝子の野生型形態又は他の治療上有益な形態を含むAAVベクターを提供することによる遺伝子置換の方法に適用され得る。いくつかの非限定的な例において、置換される遺伝子は、それがタンパク質をコードしないように、それが野生型タンパク質の切断型をコードするように(例えば、時期尚早の終止コドンが存在する)、それが少量の機能的タンパク質をコードするように、又はそれがタンパク質の非機能的突然変異型をコードするように、変異させることができる。
【0100】
追加の又は代替の実施形態において、第1の核酸は、栄養因子(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、血管内皮増殖因子(VEGF))をコードしかつそれらに翻訳される。栄養因子には、発達中の及び成熟したニューロンの成長、分化、及び/又は発達を支持する生体分子(例えば、タンパク質又はペプチド)が含まれる。別の追加の又は代替の実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、再生因子(例えば、アンジオゲニン、Oct-6、Egr2、Sox-10)をコードする。別の追加の又は代替の実施形態において、第1のポリヌクレオチドは、成長因子(例えば、IGF)をコードする。
【0101】
上記の栄養因子、再生因子及び/又は成長因子をコードする核酸を送達するための本明細書に記載のベクターの使用は、後天性末梢性ニューロパチーを治療又は予防するためにいくつかの実施形態で用いられ得る。一例では、糖尿病性及び他の毒性末梢性ニューロパチーは、栄養因子及び/又は成長因子をコードする本明細書に記載のベクターをシュワン細胞及び軸索に送達することによって治療することができる。別の例では、運動ニューロン疾患(MND)(筋萎縮性側索硬化症としても知られる)は、ストレスを受けた運動ニューロンの軸索に送達されて該運動ニューロンを遡及的に保存することができる栄養因子をコードする本明細書に記載のベクターを送達することによって治療され得る。
【0102】
別の実施形態において、第1のタンパク質又はポリペプチドをコードする第1の核酸を含むウイルスベクターの投与は、シュワン細胞の機能の改善及び/又はミエリン鞘の形成の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、この機能の改善は、治療前の対象におけるシュワン細胞によるミエリン鞘の形成と比較した場合のシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加によって達成され、機能の改善は、ミエリン鞘の生成の増加の検出によって検出することができる。いくつかの実施形態において、機能の改善は、治療前の対象における筋力及び/又は坐骨神経伝導速度及び/又は血液バイオマーカーの潜在的応答の測定と比較した場合の、筋力の改善及び/又は坐骨神経伝導速度の改善及び/又は血液バイオマーカーの潜在的応答の変化によって測定することができる。当業者は、シュワン細胞の機能の改善及び/又はミエリン鞘の形成の増加を判定するための技術を認識している。いくつかのそのような技術が実施例に提供されている。
【0103】
いくつかの特定の実施形態において、シュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加は、末梢神経のミエリン形成の改善をもたらす。末梢神経のミエリン形成の改善とは、治療前の対象と比較して末梢神経のミエリン形成が増加していることを意味する。これには、脱髄線維及び再有髄化線維の減少、並びに/又は異常有髄線維の減少が含まれる。改善されたミエリン形成はまた、いくつかの実施形態において、炎症のマーカーである泡沫状マクロファージの数の減少と関連し得る。ミエリン形成の改善はまた、ミエリンの厚さの増加及びg比の減少(軸索の直径を有髄線維の直径で割ったもの)と関連し得る。
【0104】
上記のように、第1の核酸は、例えば、天然タンパク質が、正常な機能をもたらすには低すぎるレベルで変異又は発現される場合に、治療上の利益を有するポリペプチド又はタンパク質をコードし得る。
【0105】
代替の実施形態において、第1の核酸は、mRNAではない、すなわち、タンパク質に翻訳されるRNAではないRNAに転写され得ることを理解されたい。したがって、第1の核酸は、非コードRNAに転写され得る。
【0106】
「非コードRNA」とは、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳されないRNA分子を意味する。当業者は、そのようなRNAポリマー、及びそれらがポリペプチドの発現に影響を与えるためにどのように使用され得るかを認識するであろう。一実施形態において、第1の核酸は、非コードマイクロRNA(miR)に転写される。さらに追加の代替実施形態において、第1の核酸は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)に転写される。さらなる実施形態において、第1の核酸は、例えば、CRISPRベースのシステムの一部として、ガイドRNA(gRNA)に転写される。
【0107】
ウイルスベクターが標的生物中にある場合の上記の非コードRNAの発現は、標的ポリヌクレオチドの発現の低下をもたらし得、任意選択的に、標的ポリヌクレオチドは標的生物中に位置する遺伝子であり、任意選択的に、それは標的生物の細胞に位置する。いくつかの実施形態において、標的ポリヌクレオチドは遺伝子配列である。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の本発明を使用して、標的遺伝子の発現をノックダウンすることができる。「ノックダウン」とは、ウイルスベクターで処理する前の発現レベルと比較して、標的遺伝子の発現が低下していることを意味する。
【0108】
例えば、本発明は、標的核酸、例えば標的遺伝子が過剰発現される状況に適用することができる。ウイルスベクターを使用して非コードRNAに転写される第1の核酸を送達して、例えば、この分解のために過剰発現した遺伝子によって産生されるmRNAを標的にすることができる(例えば、当該技術分野で羞恥のRISC複合体によって)か、又は該mRNAのタンパク質への翻訳を直接ブロックすることができる。本発明のこの実施形態はまた、標的核酸自体が非コードRNAに転写される状況にも適用され、細胞内の宿主非コードRNAのレベルを低下させることが有益である。
【0109】
本発明のこの実施形態はまた、有害な機能獲得変異体を標的とし、それらのタンパク質又はmRNAの発現レベルを低下させるためにも使用することができる。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態において、非コードRNAの発現は、標的核酸、ポリヌクレオチド又は遺伝子の発現の減少をもたらす。一実施形態において、標的生物における標的ポリヌクレオチドの発現又は過剰発現は、シュワン細胞に関連する疾患に関連すると考えられ、任意選択的に、疾患は優勢な脱髄性ニューロパチー(CMT1)であり、任意選択的に、標的ポリヌクレオチドがミエリンタンパク質ゼロ(Mpz/P0)の変異対立遺伝子であり、シュワン細胞に関連する疾患はCMT1Bであるか、又は標的ポリヌクレオチドがCMT1に関連する別の優勢遺伝子である。
【0111】
いくつかの実施形態において、第1の核酸をコードするウイルスベクターの投与は、シュワン細胞の機能の改善につながる非コードRNAの発現をもたらす。上記のように、いくつかの実施形態において、この機能の改善は、治療前の対象におけるシュワン細胞によるミエリン鞘の形成と比較した場合のシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加によって達成される。いくつかの実施形態において、この機能の改善は、治療前の対象における筋力及び/又は坐骨神経伝導速度及び/又は血液バイオマーカーの潜在的応答の測定と比較した場合の、筋力の改善及び/又は坐骨神経伝導速度の改善及び/又は血液バイオマーカーの潜在的応答の変化によって測定することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、第1のポリペプチド又はタンパク質をコードする第1の核酸の配列を含み、該ベクターはまた、非コードRNAに転写される第2の核酸を含み得る。したがって、非コードRNAを使用して突然変異遺伝子の発現をノックダウンするため、及び突然変異遺伝子を該遺伝子の野生型コピーで置換して完全な遺伝子置換をもたらすために、いくつかの実施形態において本発明を使用することができる。このアプローチは、治療を必要としている対象が特定のタンパク質に機能獲得変異を有する場合に特に有用であると考えられている。
【0113】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはまた、シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的にミエリン特異的プロモーター又は本明細書で定義される最小ミエリン特異的プロモーターからの発現又は発現増加を駆動することができる転写因子をコードする第2又は第3の核酸の配列を含む。シュワン細胞特異的プロモーターの制御下でポリヌクレオチドの発現を駆動することができるそのような転写因子の例には、Egr2及びSox10が含まれる。
【0114】
ウイルスベクターはまた、CRISPR技術及びその変形例において日常的に使用されるCas9ポリペプチド又は類似物(dead-Cas9等)をコードする核酸の配列を含み得る。
【0115】
本明細書に記載のウイルスベクターは、様々な方法で対象に投与することができることが理解されよう。好ましい実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、髄腔内注射によって投与される。「髄腔内注射」とは、脊柱管への注射を含み、その結果、注射された物質が脳脊髄液(CSF)に到達する。特に好ましい実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、腰部髄腔内注射によって投与される。本明細書に記載のウイルスベクターはまた、胸部髄腔内注射又は頸部髄腔内注射による投与にも適している。代替として、本明細書に記載のウイルスベクターは、末梢神経への直接注射によって投与することができる。代替として、本明細書に記載のウイルスベクターは、直接静脈内注射によって投与することができる。
【0116】
髄腔内注射は、神経内注射及び静脈内注射等の他の投与方法に勝る利点を提供する。神経内注射と比較して、髄腔内注射は、複数の脊髄神経根及び神経へのより広範な分布を提供する。一方、神経内注射は、注射された神経内においてのみ分布を提供する。さらに、髄腔内注射は、診療所で日常的に行うことができ、外科的処置を必要とせず、安全であると考えられているのに対し、神経内注射は、外科的処置を必要とし、複数の神経が露出され、リスクがより高く、診療所で実行するのがはるかに困難である。
【0117】
静脈内注射は、診療所で投与することがより容易であるが、髄腔内送達と比較して、神経系に到達するにはるかに高い用量のベクターを必要とするという欠点がある。静脈内送達はまた、より高用量のウイルス及び肝臓毒性リスクのために、より高い毒性につながる可能性がある。さらに、静脈内注射は、より多くの免疫反応を引き起こす可能性があるのに対し、髄腔内送達は、より少ない免疫応答を伴って免疫系を回避する可能性を提供する。
【0118】
本明細書に記載のAAVベクターが標的細胞に形質導入すると、成熟シュワン細胞の場合のように、標的細胞が分化しているが分裂していないことを条件として、送達される遺伝物質は安定でありエピソームのままである。したがって、AAVベクターの単回投与は、治療効果を達成するのに十分であるべきであり、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のウイルスベクターは、単回髄腔内注射によって投与される。しかしながら、場合によっては、異なる時点で異なるAAVベクターの複数回用量を対象に投与する必要があるかもしれない。これらの異なるベクターは、異なる第1のポリヌクレオチドを発現し得るか、又は同じ第1のポリヌクレオチドを発現し、使用されるAAVの種類が異なってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるウイルスベクターは、複数の異なる遺伝子に関連するシュワン細胞に関連する疾患を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0119】
本明細書に開示されるウイルスベクターは、ヒト対象における使用に適していることを理解されたい。ウイルスベクターはまた、ネコ、イヌ、マウス、ウサギ、ウマ等の一般的な哺乳動物における使用にも適している。対象は、シュワン細胞に関連する疾患の症状の発症前又は該疾患の症状の発症後のいずれかに、本明細書に開示されるウイルスベクターで処理され得る。処理される対象は、治療開始時にいずれの年齢であってもよい。例えば、対象がシュワン細胞の性能を損なう突然変異又は他の欠陥を有することが確認されるとすぐに、本発明のベクター(複数可)で対象を処理することができる。これは、いずれかの症状が現れる前であってもよい。
【0120】
使用されるウイルスベクターの用量は、それを必要とする対象の要件に従って調整され、例えば、対象の年齢、体重又は身長に応じて調整され得ることを理解されたい。一般的な例として、3.5×1013のベクターゲノム(vg)、1.2×1014vgの3.3倍高い用量、及び1.8×1014vgの5倍高い用量で用量漸増する(髄腔内送達のため)用量を使用することができる。これら等の用量は、AAVを使用した臨床試験で以前に使用されており(例えば、https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02362438[2})、当業者は、それらが本発明に適用され得ることを認識するであろう。
【0121】
シュワン細胞に関連する疾患を予防又は治療する治療方法に加えて、本発明がウイルスベクター自体も提供することは当業者には明らかであろう。したがって、別の態様において、本発明は、本明細書で定義される核酸の配列を含む本明細書に記載のウイルスベクターを提供する。好ましい実施形態において、ウイルスベクターはAAVである。特に好ましい実施形態において、AAVはAAV9である。この態様の特徴の選好は、本明細書の他の箇所に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0122】
さらなる態様において、本発明は、配列番号5に定義される配列、あるいは配列番号5と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号5と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を含むか、又はそれからなる最小ミエリン特異的プロモーターを提供する。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0123】
さらなる態様において、本発明は、配列番号22に定義される配列、あるいは配列番号22と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号22と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を含むか、又はそれからなる最小ミエリン特異的プロモーターを提供する。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。いくつかの実施形態において、本発明は、ヒト最小ミエリン特異的プロモーターを提供し、ヒト最小ミエリン特異的プロモーターは、配列番号22と少なくとも75%、80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列相同性又は配列同一性を有する配列相同性を有する。
【0124】
さらなる態様において、本発明は、任意選択的に、第1のポリヌクレオチドに転写される第2の核酸の配列に作動可能に連結された、本明細書で定義されるミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター又は最小ミエリン特異的プロモーターを含む、シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的にミエリン特異的プロモーターである第1の核酸の配列を含むポリヌクレオチド構築物を提供し、第2の核酸は、a)オープンリーディングフレーム若しくはcDNA若しくは遺伝子の他のエレメントであるか、又はb)非コードRNAに転写される。
【0125】
本発明はまた、そのようなポリヌクレオチド構築物を含むウイルスベクターを提供し、例えば、構築物を含むAAVベクターを提供する。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。例えば、一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド構築物は、シュワン細胞特異的プロモーターを含み、プロモーターは、a)最小シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的に、本明細書に記載の最小Mpzプロモーターであり、例えば、プロモーターは、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有するか、又はb)全長Mpzプロモーターであり、任意選択的にプロモーターは、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する。
【0126】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチド構築物は、本明細書に記載のヒト最小Mpz又はヒト全長Mpzプロモーターを含む。
【0127】
さらなる態様において、本発明は、以下のウイルスベクターを提供する:
【0128】
a)AAV9ベクター、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター及びEGFPレポーター遺伝子(配列番号1)を含むAAV-Mpz.Egfpベクターであって、任意選択的に、プロモーターは、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、AAV-Mpz.Egfpベクター、
【0129】
b)AAV9ベクター、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及びギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子(配列番号2)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含むAAV9-Mpz-GJB1ベクターであって、任意選択的に、プロモーターは、配列番号4若しくは配列番号18と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、AAV9-Mpz-GJB1ベクター、
【0130】
c)AAV9ベクター、最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)プロモーター及びEGFPレポーター遺伝子(配列番号3)を含むAAV9-miniMpz.Egfpベクターであって、任意選択的に、miniMPZプロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列相同性を有する、AAV9-miniMpz.Egfpベクター、
【0131】
d)AAV9ベクター、ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子(配列番号17)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含むAAV9-ヒトMpz-GJB1ベクター、
【0132】
e)AAV9ベクター、ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター及びEGFPレポーター遺伝子(配列番号19)を含むAAV9-ヒトMpz-Egfpベクター、
【0133】
f)AAV9ベクター、最小ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及びSH3TC2遺伝子(配列番号20)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含むAAV9-miniMpz-SH3TC2.myc.ITRベクター、
【0134】
g)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びSH3TC2遺伝子(配列番号21)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含むAAV9-ヒト-miniMpz-SH3TC2ベクター、
【0135】
h)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター及びEGFPレポーター遺伝子(配列番号23)を含むAAV9-ヒト-miniMpz-Egfpベクター、又はi)任意選択的にAAVベクターがAAV9であるAAV。
【0136】
この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0137】
ある特定の実施形態において、本発明はまた、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防を必要とする対象においてそれに使用するためのウイルスベクターを提供し、ウイルスベクターは、第1のポリヌクレオチドに転写される第1の核酸の配列を含み、該第1の核酸の転写は、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22に定義される配列、又は配列番号5若しくは22と少なくとも75%の配列相同性若しくは配列同一性、任意選択的に、配列番号5若しくは22と少なくとも80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列同一性若しくは配列相同性を有する配列を含むか、又はそれからなる、最小ミエリン特異的プロモーターの制御下にある。一実施形態において、ウイルスベクターは、AAVベクターであり得る。別の代替の実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであり得る。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0138】
別の態様において、本発明はまた、本明細書に記載のウイルスベクターのいずれかを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、適切な量のウイルスベクターを含み、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、緩衝液又は補助剤をさらに含む。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0139】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するための治療上有効な製剤を意味する。
【0140】
医薬組成物は、十分に貯蔵安定性であり、ヒトへの投与に適した、当該技術分野において既知の方法で調製することができる。
【0141】
「薬学的に許容される」とは、活性成分、すなわちウイルスベクターの生物学的活性の有効性を低下させない非毒性材料を意味する。そのような薬学的に許容される緩衝液又は賦形剤は、当該技術分野で周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990)及びhandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)を参照されたい(それらは参照により本明細書に組み込まれる))。
【0142】
「緩衝液」という用語は、pHを安定化する目的で酸-塩基混合物を含有する水溶液を意味することを意図している。緩衝液の例として、トリズマ、ビシン、トリシン、MOPS、MOPSO、MOBS、トリス、ヘペス、HEPBS、MES、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ホウ酸塩、ACES、ADA、酒石酸塩、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸塩、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、及びTESが挙げられる。
【0143】
「希釈剤」という用語は、医薬調製物にウイルスベクターを希釈することを目的とした水溶液又は非水溶液を意味することを意図している。希釈剤は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、又は油(ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、若しくはゴマ油など)のうちの1つ以上であり得る。
【0144】
「補助剤」という用語は、ウイルスベクターの生物学的効果を増大させるために製剤に添加される任意の化合物を意味することを意図している。補助剤は、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、及び異なるアシル組成の酢酸塩を含むがこれらに限定されない、異なるアニオンを有するコロイド銀、亜鉛、銅、又は銀塩のうちの1つ以上であり得る。補助剤はまた、カチオン性ポリマー、例えば、PHMB、カチオン性セルロースエーテル、カチオン性セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー、カチオン性合成ポリマー、例えば、ポリ(ビニルイミダゾール)、並びにカチオン性ポリペプチド、例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、及びこれらのアミノ酸を含有するペプチドであり得る。
【0145】
賦形剤は、炭水化物、ポリマー、脂質、及びミネラルのうちの1つ以上であり得る。炭水化物の例として、例えば、凍結乾燥を容易にするために、組成物に添加されるラクトース、スクロース、マンニトール、及びシクロデキストリンが挙げられる。ポリマーの例は、デンプン、セルロースエーテル、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、プロピルセルロース、アルギン酸塩、カラギーナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸塩、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、異なる程度の加水分解のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)又は様々な組成のそのコポリマー、並びにポリビニルピロリドンであり、すべて分子量が異なり、これらは例えば、粘度制御のため、生体接着を達成するため、又は化学分解及びタンパク質分解から活性成分を保護するために、組成物に添加される。脂質の例は、脂肪酸、リン脂質、モノ-、ジ-、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質、及び糖脂質(すべてアシル鎖長及び飽和が異なる)、卵レシチン、大豆レシチン、水素添加卵及び大豆レシチンであり、これらは、ポリマーと同様の理由で組成物に添加される。ミネラルの例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化チタンであり、これらは、液体蓄積の低減又は有利な顔料特性などの利点を得るために組成物に添加される。
【0146】
別の態様において、本発明は、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防のための薬物の製造方法において、本明細書に記載のウイルスベクターの使用を提供する。いくつかの実施形態において、疾患は、シュワン細胞によるミエリン鞘の破壊及び/又は形成の低下を引き起こす。好ましい実施形態において、疾患はシャルコー・マリー・トゥース病である。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0147】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載のウイルスベクターのいずれかを使用して、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防の方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、シャルコー・マリー・トゥース病の治療又は予防の方法を提供する。好ましい実施形態において、疾患は、シャルコー・マリー・トゥース病1X型又は4C型である。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0148】
当業者は、例えばdead-Cas9ポリペプチドを使用することによって、遺伝子編集又は遺伝子サイレンシングにおいて使用するために、本明細書に記載のウイルスベクターをCRISPR/Casシステムで使用できることを理解するであろう。したがって、別の態様において、本発明は、以下のいずれか1つ以上を含むCRISPR/Cas9システムで使用するための、本明細書に記載のウイルスベクター又はポリヌクレオチド構築物を含む:
【0149】
a)目的の遺伝子を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)をコードするポリヌクレオチド、
b)Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
c)目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0150】
この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0151】
本明細書に開示されるウイルスベクターが、シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防以外の様々な用途を有し得ることは当業者には明らかであろう。例えば、本明細書に開示されるウイルスベクターは、シュワン細胞を、例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)若しくは強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)で、又は他の非蛍光レポーターで標識する方法において使用され得る。いくつかの例において、シュワン細胞の標識は、シュワン細胞に関連する疾患を診断する方法において使用することができる。
【0152】
この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0153】
別の例において、本明細書に開示されるウイルスベクターは、シュワン細胞を誘導して代替の細胞型、例えばニューロン、オリゴデンドロサイト、又は星状細胞に分化させる方法において使用することができる。
【0154】
さらに別の例では、本明細書に開示されるウイルスベクターは、シュワン細胞を刺激して、例えば、損傷又は外傷後に、再生を必要とする対象における再生を支持する方法において使用することができる。この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0155】
さらに別の例では、本明細書に開示されるウイルスベクターは、シュワン細胞に関連する疾患を治療するエクスビボの方法における使用に適している可能性がある。例えば、標的細胞は、治療を必要とする対象から取り出され、対象に戻される前に、本明細書に記載のウイルスベクターで形質導入され得る。
【0156】
この態様の特徴の選好は、本明細書に記載されている通りであり、例えば、ベクター、核酸、プロモーター、シュワン細胞関連疾患の選好は、本明細書で定義される通りである。
【0157】
本発明はまた、本発明のウイルスベクターによって形質導入された細胞、例えばシュワン細胞を提供する。
【0158】
本発明はまた、関連するプロモーター及び第1の核酸を含む本発明の核酸構築物を含む細胞を提供する。当業者は、本発明のウイルスベクターが、例えば(58)に記載されるように、培養細胞、好ましくはHEK293細胞において産生され得ることを認識するであろう。
【0159】
本明細書に記載のベクター及び方法は、インビボで行うことができるが、エクスビボ又はインビトロで使用することもでき、例えば、シュワン細胞等の細胞は、その後の治療又は研究目的のためにインビトロ又はエクスビボで形質導入することができる。
【0160】
本発明はまた、本明細書に記載のウイルスベクターのいずれかを実施するために使用することができるキットを提供する。例えば、本発明は、先行請求項のいずれかに記載のウイルスベクター又はポリヌクレオチドとともに使用するためのキットを提供し、該キットは、
【0161】
a)本明細書で定義されるウイルスベクター、
b)本明細書で定義されるポリヌクレオチド構築物、
c)ウイルスベクター、
d)本明細書で定義されるポリヌクレオチド構築物を含むウイルスベクター、
e)薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤、
f)使い捨て注射器、例えば腰部髄腔内注射に適した使い捨て注射器、
g)使用説明書、のうちの1つ以上を含む。
【0162】
一実施形態において、キットは、2つ以上の本発明によるウイルスベクターを含み、例えば、キットは、本明細書で定義される2つの異なるウイルスベクターを含み得る。
【0163】
本発明の治療的使用のいずれかにおいて、2つ以上の本発明によるウイルスベクターが対象に投与され得ることは当業者には明らかであろう。いくつかの状況においてこれが有利であることは当業者には明らかであり、例えば、2つ以上の遺伝子がシュワン細胞関連疾患に関連することが分かっている場合、複数のウイルスベクターを投与することができ、各ベクターは異なる治療用タンパク質の発現に向けられる。代替として、単一のベクターが2つ以上の治療用タンパク質又は非コードRNAを発現し得る。上記のような他の状況では、1つのウイルスベクターを使用して、例えばシュワン細胞でCas9タンパク質を発現させることができ、異なるウイルスベクターを使用して、Cas9を必要な核酸に標的化するための関連するgRNAを発現させることができる。
【0164】
本明細書における明らかに先に公表された文献のリスト又は議論は、文献が最新技術の一部であるか、又は共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0165】
本発明の所与の態様、特徴、又はパラメータのための選好及び選択肢は、特に文脈に示されない限り、本発明のすべての他の態様、特徴、及びパラメータにおける任意の及びすべての選好及び選択肢と組み合わせて開示されているよう見なされるべきである。
【0166】
したがって、本発明の一態様の開示が本発明の他の態様にどのように関連するかを例示し、これらの態様をどのように組み合わせることができるかを例示するために、本発明は、いくつかの実施形態において、以下を提供する。
【0167】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのウイルスベクターであって、ウイルスベクターがAAVであり、ウイルスベクターが第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸を含み、第1のポリヌクレオチドの発現が最小ミエリン特異的(Mpz)プロモーターの制御下にある、ウイルスベクター。
【0168】
シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防に使用するためのウイルスベクターであって、ウイルスベクターがAAVであり、ウイルスベクターが第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸を含み、第1のポリヌクレオチドの発現が、a)ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターであって、任意選択的に、プロモーターは、配列番号4若しくは配列番号1と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列を有する、Mpzプロモーター、又は
【0169】
b)最小ミエリン特異的プロモーター(miniMpz)であって、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22に定義される配列を含むか、若しくはそれからなり、任意選択的に、miniMPZプロモーターが、配列番号5若しくは配列番号22と少なくとも75%、80%、若しくは82%、若しくは84%、若しくは86%、若しくは88%、若しくは90%、若しくは92%、若しくは94%、若しくは96%、若しくは97%、若しくは98%、若しくは99%、若しくは100%の配列相同性若しくは配列同一性を有する配列相同性を有する、最小ミエリン特異的プロモーター(miniMpz)の制御下にある、ウイルスベクター。
【0170】
第2の核酸の配列に作動可能に連結された最小ミエリン特異的(Mpz)プロモーターである第1の核酸の配列を含むポリヌクレオチド構築物であって、第2の核酸の配列が、遺伝子配列のオープンリーディングフレーム又は非コードRNAのいずれかである、ポリヌクレオチド構築物。
【0171】
シュワン細胞で高レベルの発現を駆動し、本明細書に記載のウイルスベクターにおける使用に適した最小ミエリン特異的(Mpz)プロモーター。
【0172】
本発明はまた以下を提供する:
【0173】
CMT1Xの治療又は予防に使用するためのウイルスベクターであって、GJB1遺伝子に作動可能に連結されたヒトMpzプロモーター(配列番号18による)を含み、ウイルスベクターがAAV9である、ウイルスベクター、
【0174】
CMT1Xの治療又は予防のための薬物の製造方法におけるウイルスベクターの使用であって、ベクターが、GJB1遺伝子に作動可能に連結されたヒトMpzプロモーター(配列番号18による)を含み、ウイルスベクターがAAV9である、使用、及び
【0175】
CMT1Xを治療又は予防する方法であって、ウイルスベクターを必要とする患者にそれを投与することを含み、ウイルスベクターが、GJB1遺伝子に作動可能に連結されたヒトMpzプロモーター(配列番号18による)を含み、ウイルスベクターがAAV9である、方法。
【0176】
本発明はまた以下を提供する:
【0177】
CMT4Cの治療又は予防に使用するためのウイルスベクターであって、SH3TC2遺伝子に作動可能に連結されたヒト最小Mpzプロモーター(配列番号22による)を含み、AAV9である、ウイルスベクター、
【0178】
CMT4Cの予防の治療のための薬物の製造方法におけるウイルスベクターの使用であって、ベクターが、SH3TC2遺伝子に作動可能に連結されたヒトMpzプロモーター(配列番号22による)を含み、ウイルスベクターがAAV9である、使用、及び
【0179】
CMT4Cを治療又は予防する方法であって、ウイルスベクターを必要とする患者にそれを投与することを含み、ウイルスベクターが、SH3TC2遺伝子に作動可能に連結されたヒトMpzプロモーター(配列番号22による)を含み、ウイルスベクターがAAV9である、方法。
【0180】
必要とする患者は、本明細書に開示される疾患の1つの症状を示した、又はそうでなければその診断を受けた患者を含み、また、本明細書に開示される疾患の1つを有する、又は発症することが疑われる患者を含む。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【
図1】シュワン細胞を標的とする遺伝子発現のために生成されたAAVベクタートランスファープラスミド:Cx32(全長)を発現するヒトGJB1オープンリーディングフレームを含むpAAV-Mbz.GJB1ベクター及びレポーター遺伝子EGFP(モック)を発現するpAAV-Mpz.Egfp。
【0182】
【
図2-1】AAV9を介したシュワン細胞を標的とする遺伝子発現。A-D:2ヶ月齢の野生型(WT)マウスにAAV9-Mpz-Egfpベクターを腰部髄腔内(i.th.)注射してから4週間後、EGFP抗体による腰神経根切片(A-B)の免疫染色(A2、B)が、低倍率(左)及び高倍率(右)でのシュワン細胞のサブセットにおける核周囲発現(アスタリスク)を示している。EGFPの発現は、抗体染色なしの低倍率の坐骨神経切片(C2)及びEGFP抗体で免疫染色されたときほぐした坐骨神経線維の高倍率(D2)の坐骨神経切片にも見られる。A1、C1、及びD1は、A2、C2、D2に示されるのと同じ領域のDAPIによる核染色のみを示す。E:腰神経根及び坐骨神経におけるEGFP陽性シュワン細胞比の定量化。F:腰神経根、坐骨神経の近位及び遠位セクションのベクターコピー数(VCN)は、髄腔内注射後の末梢神経へのベクターの生体内分布の勾配を示す。G:異なるマウス(1-4)からの腰神経根(LR)、大腿神経(FN)及び坐骨神経(SN)溶解物の免疫ブロット分析は、トランスジェニックサンプルからの陽性対照(+)に対応する注射マウスの組織のほとんどで特定のEGFP特異的バンドを示したが、陰性(-)対照にはそれは見られなかった(Kagiava et al.,未公開)。
【0183】
【
図3-1】2ヶ月のCx32 KO及びR75W KOマウスにおける髄腔内送達されたAAV9-Mpz.GJB1ベクターの発現。A.関連する組織のベクターコピー数(VCN)。WT(B)及びCx32 KO(C)の坐骨神経のときほぐし線維の免疫染色は、WT線維(矢印)の傍絞輪部ミエリン領域で特異的なCx32局在を示すが、これはCx32 KOには見られない。AAV9-Mpz.GJB1のi.th.注射は、核周囲領域(アスタリスク及び白抜きの矢印)にR75W変異体が存在するにもかかわらず、Cx32 KO坐骨神経線維(D)だけでなくR75W KO線維(E)でも傍絞輪部Cx32発現をもたらす。F:腰神経根及び坐骨神経サンプルにおけるCx32の発現のウエスタンブロット分析(TG+:トランスジェニック陽性;KO:未処理のCx32 KO陰性対照)(Kagiava et al.,未公開)。
【0184】
【
図4】AAV9-Mpz.Egfp(モック)処理した同腹仔と比較した、AAV9-Mpz.GJB1(完全)を発症後に注射した6ヶ月齢のCx32 KOマウスの行動分析。示されるように、モック処理したCx32 KOマウスと比較したAAV9-Mpz.GJB1処理(GJB1)における運動能力のロータロッド(左)及び足握力(右)試験の結果。各群の経時的回析により、注射後2ヶ月(8ヶ月齢)のロータロッド及び足握力分析において完全に処理したCx32 KOマウスの運動能力の改善が示され、その後、運動能力は10ヶ月齢まで安定したままであった。一方、モック処理したマウスは、両方の行動試験によって示されるように、経時的に改善しなかった。
【0185】
【
図5】坐骨神経運動伝導試験の結果。運動神経伝導速度(MNCV)は、WTの値に近いモックベクターを注射した同腹仔と比較して、10ヶ月齢の完全に処理したCx32 KOマウスにおいて改善された。
【0186】
【
図6-1】モック処理したマウスベクターと比較した、AAV9-Mpz.GJB1の発症後髄腔内送達後のCx32 KOマウスの前脊髄神経根の形態学的解析。低倍率(A-B)及び高倍率(C-D)の脊髄に付着した前腰髄神経根の半薄切片の代表的な画像、並びに10ヶ月齢(処理後4ヶ月)での、示されるモック又は完全(GJB1)ベクターで処理したマウスからの形態計測分析結果(E-F)。AAV9-Mpz.GJB1を注射したマウスの神経根(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理した同腹仔の神経根(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。複数の神経根における異常な有髄線維の比の定量化により、完全処理において、モックベクターで処理した同腹仔と比較して異常な有髄線維(E)の数の有意な改善とともに、泡沫状マクロファージ(F)の数の有意な減少が確認される。
【0187】
【
図7-1】AAV9-Mpz.GJB1ベクターの発症後髄腔内送達後のCx32 KOマウスの坐骨神経の形態学的解析。低倍率(A-B)及び高倍率(C-D)での坐骨神経の半薄切片の代表的な画像、並びに10ヶ月齢(処理後4ヶ月)での、示されるモック又は完全(GJB1)ベクターで処理したマウスからの形態計測分析結果(E-F)。AAV9-Mpz.GJB1を注射したマウス神経(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理した同腹仔の神経(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。複数の神経における異常な有髄線維の比の定量化により、完全処理において、モックベクターで処理した同腹仔と比較して異常な有髄線維(E)の数の有意な改善とともに、泡沫状マクロファージ(F)の数の有意な減少が確認される。
【0188】
【
図8-1】AAV9-Mpz.GJB1ベクターの発症後髄腔内送達後のCx32 KOマウスの大腿神経の形態学的解析。低倍率(A-B)及び高倍率(C-D)での大腿神経の半薄切片の代表的な画像、並びに10ヶ月齢(処理後4ヶ月)での、示されるモック又は完全(GJB1)ベクターで処理したマウスからの形態計測分析結果(E-F)。AAV9-Mpz.GJB1を注射したマウス神経(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理した同腹仔の神経(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。複数の神経における異常な有髄線維の比の定量化により、完全処理において、モックベクターで処理した同腹仔と比較して異常な有髄線維(E)の数の有意な改善とともに、泡沫状マクロファージ(F)の数の有意な減少が確認される。
【0189】
【
図9】1127bpの全長ラットMpzプロモーターから410bpの配列をPCR増幅した後、AAVトランスファープラスミドにクローニングされたminiMpz-Egfp構築物。
【0190】
【
図10】2ヶ月齢のWTマウスにおけるAAV9-miniMpz-Egfpベクターの腰部髄腔内注射から4週間後のEGFP抗体を用いた腰神経根及び坐骨神経縦断面の免疫染色は、シュワン細胞のサブセットで核周囲発現を示す(A、C)。B及びCは、DAPIによる核染色のみを示す陰性対照である。E:EGFP陽性シュワン細胞のパーセンテージ(n=5~6匹のマウス)。F:腰神経根及び坐骨神経のベクターコピー数は、髄腔内注射後のベクターの適切な生体内分布を示している(n=6匹のマウス)。
【0191】
【
図11-1】AAV9-miniMpz-Egfpベクターの最小CNS発現。細胞マーカーNeuN(A、ニューロンを標識)、GFAP(B、星状細胞を標識)、CC-1(C-D、オリゴデンドロサイトの標識)と組み合わせてEGFP抗体を用いた2ヶ月齢のWTマウスにおけるAAV9-miniMpz-Egfpベクターの腰部髄腔内注射の4週間後の腰髄縦断面の免疫染色は、各細胞型の少数の細胞のみがEGFPを発現し(例は矢印で示される)、ほとんどがEGFP陰性であること(例は白抜きの矢印で示される)を示している。E.細胞マーカー染色当たりn=3~5匹のマウスでの定量化は、3つすべてのCNS細胞型で約2~3%の低い発現率を示す。
【0192】
【
図12】治療用完全(AAV9-Mpz-GJB1)ベクター又はモックベクター(AAV9-Mpz-Egfp)のいずれかにより2ヶ月齢で発症前に処理したCx32 KOマウス(CMT1Xモデル)の群における運動行動試験。足握力試験は、処理前(2ヶ月齢)、並びに4ヶ月齢(
図12A)及び6ヶ月齢(
図12B)に実施された。4ヶ月と6ヶ月で処理群に有意な機能改善が見られる。
図12Cは、処理後の経時的な有意な改善を示しているが、モック処理したマウスはいずれの改善も示さなかった。
【0193】
【
図13】発症前に処理(完全)及びモック処理した6ヶ月齢のCx32 KOマウスの電気生理学的研究。坐骨運動神経伝導試験を6ヶ月齢で実施したところ、モック処理と比較して、2ヶ月齢での遺伝子治療処置後の坐骨神経伝導速度の有意な改善が示された。
【0194】
【
図14-1】治療用完全(AAV9-Mpz-GJB1)ベクター又はモックベクター(AAV9-Mpz-Egfp)のいずれかによる2ヶ月齢での発症前処理後の6ヶ月齢Cx32 KOマウスの前(運動)腰神経根の形態学的解析。前(運動)腰神経根の半薄切片の代表的な画像。AAV9-Mpz-GJB1で処理したマウス(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理マウス(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。定量分析(E、F)によって確認されたように、モック処理マウスと比較して、処理したマウスでは、脱髄(*)又は再有髄化(r)線維(E)及び泡沫状マクロファージ(F)が少なかった。
【0195】
【
図15-1】治療用完全(AAV9-Mpz-GJB1)ベクター又はモックベクター(AAV9-Mpz-Egfp)のいずれかによる2ヶ月齢での発症前処理後の6ヶ月齢のCx32 KOマウスの坐骨神経中央の形態学的解析。坐骨神経中央の半薄切片の代表的な画像。AAV9-Mpz-GJB1で処理したマウス(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理マウス(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。定量分析(E、F)によって確認されたように、モック処理マウスと比較して、処理したマウスでは、脱髄(*)又は再有髄化(r)線維(E)及び泡沫状マクロファージ(F)が少なかった。
【0196】
【
図16-1】治療用完全(AAV9-Mpz-GJB1)ベクター又はモックベクター(AAV9-Mpz-Egfp)のいずれかによる2ヶ月齢での発症前処理後の6ヶ月齢のCx32 KOマウスの大腿運動神経の形態学的解析。大腿運動神経の半薄切片の代表的な画像。AAV9-Mpz-GJB1で処理したマウス(B、D)は、脱髄(*)及び再有髄化(r)線維が少なく、モック処理マウス(A、C)と比較してミエリン形成の改善を示す。定量分析(E、F)によって確認されたように、モック処理マウスと比較して、処理したマウスでは、脱髄(*)又は再ミエリム化(r)線維(E)及び泡沫状マクロファージ(F)が少なかった。
【0197】
【
図17】新規治療用ベクターAAV9-mini-Mpz-SH3TC2.mycの髄腔内送達後のSh3tc2-/-マウスの末梢神経系におけるSH3TC2の発現解析。AAV9-miniMpz-SH3TC2mycベクターのSh3tc2-/-マウスへの髄腔内注射の4週間後の、主に腰神経根(A)及び坐骨神経(Dのセクション及びFのときほぐし線維)の有髄シュワン細胞の核周囲細胞質におけるヒト正常SH3TC2タンパク質(赤)の発現。注射されていないマウスの組織を、陰性対照としてA、C、Eに示す。細胞核は青色に染色されている。n=5匹のマウスの腰神経根及び坐骨神経における発現率(SH3TC2陽性細胞%)の定量化を
図17Gに示す。
【0198】
[配列]
【0199】
【0200】
太字=ITR配列
斜体=Mpzプロモーター
下線部=EGFP
斜体下線部=WPRE配列
【0201】
【0202】
太字=ITR配列
斜体=Mpzプロモーター
下線部=Cx32
斜体下線部=WPRE配列
【0203】
配列番号3:AAV-miniMpz.Egfp構築物
【0204】
太字=ITR配列
斜体=mini-Mpzプロモーター
下線部=EGFP
斜体下線部=WPRE配列
【0205】
【0206】
【0207】
配列番号6:コネキシン-32(Cx32):GenBank:AY408135.1
【0208】
配列番号7:SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2):GenBank:BC114486.1
【0209】
配列番号8:末梢ミエリンタンパク質22(PMP22):NCBI参照配列:NM_000304.4
【0210】
配列番号9:ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ):GenBank:AK313555.1
【0211】
配列番号10:初期増殖応答2(EGR2):NCBI参照配列:NM_000399.5
【0212】
配列番号11:ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1):NCBI参照配列:NM_018972.3
【0213】
配列番号12:N-Myc下流調節1(NDRG1):NCBI参照配列:NM_001135242.1
【0214】
配列番号17:AAV-ヒト-Mpz-GJB1構築物
【0215】
太字=ITR配列
斜体=ヒトMpzプロモーター
下線部=Cx32
斜体下線部=WPRE配列
【0216】
【0217】
配列番号19:AAV-ヒト-Mpz-Egfpモック構築物
【0218】
太字=ITR配列
斜体=ヒトMpzプロモーター
下線部=EGFP
斜体下線部=WPRE配列
【0219】
配列番号20:治療用SH3TC2遺伝子置換のためのAAV-minMpz-SH3TC2.myc.ITR
【0220】
太字=ITR配列
斜体=小型Mpzプロモーター
下線部=SH3TC2
斜体下線部=合成最小ポリA
【0221】
配列番号21:AAV-ヒト-miniMpz-SH3TC2
【0222】
太字=ITR配列
斜体=小型ヒトhP0プロモーター
下線部=SH3TC2
斜体下線部=合成最小ポリA
【0223】
【0224】
配列番号23:AAV-ヒト-miniMpz-Egfp
【0225】
太字=ITR配列
斜体=小型ヒトhP0プロモーター
下線部=EGFP
斜体下線部=WPRE配列
【0226】
【実施例】
【0227】
次に、以下の非限定的な例を参照して本発明を説明する。
【0228】
実施例1:AAVトランスファープラスミドクローニング
【0229】
AAVベクターは、Cx32(pAAV-Mpz.GJB1、完全ベクター)又はレポーター遺伝子EGFP(pAAV-Mpz.Egfp、モックベクター)のシュワン細胞特異的発現を提供するように設計され、どちらも1.127kBのMpzプロモーター下で、シュワン細胞において特異的に発現を駆動することを示した(26、32)。これらのベクターを、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、AAV2逆方向末端反復に隣接するウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(bGHpA)とを含むAAV構築物pAM/Mbp-EGFP-WPRE-bGH(57)を開始プラスミドとして使用してクローニングした(
図1及び
図9)。
【0230】
3つの構築物AAV-Mpz.Egfp、AAV-Mpz.GJB1、及びAAV-miniMpz.Egfpをどのようにクローニングしたかの具体的な詳細は以下の通りである:
【0231】
264-P0-EGFP-WPRE(=AAV-Mpz.Egfp-配列番号1)
【0232】
XhoI及びEcoRV制限酵素を使用してプロモーター配列を消化するために、Mpzプロモーター配列を含むpBluescript SK+プラスミドを用いた。AAVベクターも同じ酵素を使用して消化した。ライゲーション及び形質転換の後、制限消化マッピング、及びコード配列全体をカバーするプライマーを使用した直接配列決定により、発現カセットの正確なアセンブリを確認した。
【0233】
264-Mpz(P0)-Cx32-WPRE(=AAV-Mpz.GJB1-配列番号2)
【0234】
Mpz/Cx32 ORFは、以前に作成されたレンチウイルス構築物からPCR増幅した。増幅に使用したプライマーは、P0-Cx32-F 5’-AGGGGTACCCTTCCTGTTCAGACT-3’(配列番号13)及びP0-Cx32-R 5’-CCGCTCGAGGGATCCTC AGCAG-3’(配列番号14)であった。PCR産物(2030bp)は、Qiagenゲル抽出キットを使用してゲル精製し、KpnI及びXhoIで消化した。AAVベクターも同じ制限酵素で消化した。発現カセット全体を、ORFの直接配列決定によって確認した。
【0235】
264-Mpz(P0)min-EGFP-WPRE(=AAV-miniMpz.Egfp-配列番号3)
【0236】
AAVベクター264をHindIIIで消化し、セルフライゲーションさせた。次いで、リンカーをベクターに挿入した。Mpzminは、以下のプライマーを使用してラットMpzプロモーター配列からPCR増幅した:KpnI-P0-F:5’-GGGGTACCGCTCTCAGGCAAG-3’(配列番号15)及びAgeI-P0-R:5’-AAACCGGTTGGCAGAGCGTCTGT-3’(配列番号16)。次いで、インサート(420bp)をAAVベクター264に方向性を持たせてクローニングした。EGFPは、AgeI及びHindIIIを使用して別の構築物から消化して直接ライゲーションした。
【0237】
実施例2:AAVベクターの生成、精製、及び滴定
【0238】
AAV9ベクターの生成は、公開されているプロトコルに従って行った(58)。pAAV-Mpz.Egfp及びpAAV-Mpz.GJB1プラスミドをAAV9キャプシド(University of Barcelona,SpainのA.Bosch博士によって提供され、University of Pennsylvania Vector Core,PA,USAのJames Wilson博士によって最初に開発されたキャプシドプラスミド)にクロスパッケージングした。
【0239】
シュードタイプ9のAAVウイルスストックを以前に記載されたように生成した(59)。組換えAAV(rAAV)ベクターは、250μgのpAAV、250μgのpRepCap、及びポリエチレンイミンと混合した500μgのpXX6プラスミド(PEI;分岐、MW 25,000;Sigma)による2×108 HEK293細胞のトリプルトランスフェクションによって生成した。簡単に述べると、トランスフェクションの48時間後、遠心分離(200g、10分)により細胞を回収し、30mlの20mM NaCl、2mM MgCl2、及び50mM Tris-HCl(pH8.5)に再懸濁し、3回の凍結融解サイクルで溶解した。細胞溶解物を遠心分離(2000g、10分)により清澄化し、rAAV粒子を以下のようにイオジキサノール勾配により上清から精製した:清澄化した溶解物を50U/mlのBenzonase(Novagen;1時間37℃)で処理し、遠心分離した(3000g、20分)。ベクターを含む上清を収集し、5Mストック溶液を使用して200mM NaClに調整した。清澄化した細胞溶解物からウイルスを沈殿させるために、ポリエチレングリコール(PEG 8000;Sigma)を最終濃度8%になるように添加し、混合物をインキュベート(3時間、4℃)して遠心分離した(8000g、15分)。rAAVを含むペレットを20mM NaCl、2mM MgCl2、及び50mM Tris-HCl(pH8.5)に再懸濁し、4℃で48時間インキュベートした。rAAV粒子は、記載されるようにイオジキサノール法を使用して精製される(59)。必要に応じて、rAAVを濃縮し、Amicon Ultra-15遠心フィルターデバイス(Millipore)を使用してPBSMKで脱塩した。ピコグリーン定量化(60)により滴定を評価し、ミリリットル当たりのウイルスゲノム(vg/ml)として計算した。
【0240】
実施例3:髄腔内ベクター送達
【0241】
脊椎を視覚化するために腰椎下部レベルに沿って小さく皮膚を切開した後、麻酔したマウスのL5-L6椎間腔に5μl/分の緩徐な速度でAAVベクターを送達した。26ゲージ針に接続された50μLのハミルトンシリンジ(Hamilton、Giarmata、Romania)を使用して、0.5~1×1011ベクターゲノム(vg)のAAVベクターを含む総量20μLを注入した。尾のフリックは、髄腔内投与の成功を示していると見なした。
【0242】
実施例4:AAV9を介したシュワン細胞を標的とする遺伝子発現
【0243】
2ヶ月齢の野生型マウスを、上記の実施例1及び3に記載のAAV9-Mpz-Egfpベクターで処理した。サンプルを、PNS組織からのDNA抽出、並びに以前に記載されたように(33)、注射後4週間及び6週間のベクターコピー数(VCN)(表1)として測定されたウイルスDNAの存在の確認によって分析した。腰神経根切片の免疫蛍光染色、並びに腰神経根、大腿神経及び坐骨神経の免疫ブロットもまた、注射後4週間及び8週間に、以下に記載されるように実施した(表2)。
【0244】
免疫蛍光染色:免疫染色のために、施設で承認されたプロトコルに従ってマウスをアベルチンで麻酔し、次いで生理食塩水、続いて0.1M PB緩衝液中の新鮮な4%パラホルムアルデヒドで経心的に灌流した。脊髄神経根が付着した腰仙髄、並びに両側の坐骨神経及び大腿神経を切断した。すべての組織を凍結切片のために凍結する一方で、坐骨神経及び大腿神経を分離し、ステレオスコープ下で線維状にときほぐした。ときほぐし線維又は切片を冷アセトンで透過処理し、0.5%Triton-X(Sigma-Aldrich、ミュンヘン、ドイツ)を含む5% BSA(Sigma-Aldrich、ミュンヘン、ドイツ)のブロッキング溶液と室温(RT)で1時間インキュベートした。使用した一次抗体は以下の通りである:コンタクチン関連タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体(Caspr、1:50;Weizmann Institute of ScienceのElior Peles博士から寄贈)、EGFPに対するウサギ抗血清(1:1,000;Invitrogen、アメリカ合衆国)、Capr2(1:200、Alomone Labs、イスラエル)及びCx32(1:50;Sigma、ミュンヘン、ドイツ)、すべてブロッキング溶液で希釈し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、スライドをPBSで洗浄し、フルオレセイン及びローダミン結合マウス及びウサギ交差親和性精製二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、アメリカ合衆国)と室温(RT)で1時間インキュベートした。細胞核はDAPI(1μg/ml;Sigma、ミュンヘン、ドイツ)で視覚化した。スライドを蛍光封入剤で封入し、Axiovisionソフトウェア(Carl Zeiss MicroImaging;オーバーコッヘン、ドイツ)を使用してデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡下で画像を撮影した。
【0245】
Egfpレポーター遺伝子の発現率は、EGFP陽性シュワン細胞の数を腰神経根及び坐骨神経の総シュワン細胞のパーセンテージとしてカウントすることにより定量化した。Cx32の発現は、Cx32による二重染色で傍絞輪近接Kv1.2及び傍絞輪部Casprを含む軸索ドメインマーカーで有髄線維の節領域を視覚化することにより定量化した。Cx32免疫反応性に陽性の節領域の数を、腰神経根及び坐骨神経の総節領域のパーセンテージとしてカウントした。
【0246】
免疫ブロット分析:神経根及び末梢神経の溶解物の免疫ブロット分析を用いて、注射されたマウスの組織におけるレポーター遺伝子Egfp又はCx32のいずれかの発現を検出した。注射後4週間で収集された腰神経根、大腿神経及び坐骨神経の溶解物の免疫ブロットを、ウサギ抗Egfp(1:1000;Abcam)及び抗Cx32(クローン918、1:3,000)一次抗体、続いてHRP結合抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch、1:3,000希釈)とインキュベートした。結合抗体は、強化された化学発光システム(GE Healthcare Life Sciences)によって視覚化した。
【0247】
結果を以下の
図2、並びに表1及び2に示す。レポーター遺伝子EGFP(強化緑色蛍光タンパク質)の高発現レベルを、特にシュワン細胞、腰髄神経根及び遠位坐骨神経を含むPNSの有髄細胞で検出することが可能であり、これは腰神経根及び坐骨神経サンプルにおけるEGFPレポーター遺伝子の特異的発現を示しており、シュワン細胞での組織特異的発現がこのベクター送達系を使用して達成されることが示唆される。
【0248】
【0249】
【0250】
実施例5:2ヶ月のCx32 KO及びR75W KOマウスにおける髄腔内送達されたAAV9-Mpz.GJB1ベクターの発現
【0251】
AAV9-Mpz.GJB1ベクターを、上記の実施例1に記載されるように生成し(5×10
12vg/ml)、腰部髄腔内(i.th.)注射(20μl中5×10
10vg)により2ヶ月齢及び6ヶ月齢Cx32 KOマウスに送達した。異なる組織の細胞ごとに前述のように(33)PNS組織から抽出されたDNAからVCNを分析すると、肝臓で最高レベルの脊髄神経根及び坐骨神経を含む広範な生体内分布(
図3A)が明らかになった(55)。免疫染色分析及び免疫ブロット分析を上記のように実施した。Cx32は、腰髄神経根及び坐骨神経線維の有髄シュワン細胞の60~70%超の傍絞輪部ミエリン領域で発現した(
図3B~
図3D)。高レベルのAAV9送達Cx32発現は、非注射Cx32 KOマウスとは対照的に、注射マウスのPNS組織溶解物のウエスタンブロットによっても検出することができた(
図3F)。
【0252】
より高い発現レベルを可能にするAAV9-Mpz.GJB1ウイルスベクターが、以前の試験(29、34)においてレンチウイルスベクターで観察されたゴルジ保持変異体の干渉効果を克服できるかどうかを明らかにするために、本発明者らは2ヶ月齢R75Wノックアウト(R75W KO)マウスにも注射した。重要なことに、典型的な核周囲局在を示す干渉ゴルジ保持R75W変異体の共発現にもかかわらず、AAV9送達Cx32の傍絞輪部局在もR75W/KO組織で検出された(
図3E)。したがって、AAV9は、代表的なゴルジ保持CMT1X変異体の干渉効果を克服する可能性のある、広範囲にわたる高レベルのシュワン細胞標的遺伝子発現を提供する可能性を示す。
【0253】
これらの結果を以下の
図3、並びに表3及び4に示すが、これは、ベクターを使用して野生型GJB1遺伝子のコピーを送達すると、Cx32ノックアウトマウス及びR75Wノックアウトマウスの両方においてCx32の発現が成功することを示している。R75Wゴルジ保持変異体(
図3E)も、核周辺領域にR75W Cx32変異体タンパク質が存在するにもかかわらず、Cx32の発現を達成するが、これはAAVベクターを使用しない以前の研究では不可能であった。
【0254】
【0255】
【0256】
実施例6:AAV9-Mpz.Egfp(モック)で処理した同腹仔と比較した、AAV9-Mpz.GJB1(完全)を注射された6ヶ月齢Cx32 KOマウスの行動分析
【0257】
マウスの処理:遺伝子治療試験は、6ヶ月齢Cx32ノックアウト(KO)マウスの2つの群を使用して実施した。同様のモデルを使用した以前の試験に基づいて、統計的に有意な差を評価するには、測定された各結果について、処理群当たり最低8~12匹のマウスが適切であると見なされた(32、33)。動物は、病状の発症後(3ヶ月齢後に始まることが知られている)、6ヶ月齢で処理した。
【0258】
同腹仔マウスを、AAV9-Mpz.GJB1(完全)処理又はAAV9-Mpz.Egfp(対照群としてのモック処理)のいずれかを受けるように無作為化し、さらなる識別のためにコーディング番号を割り当てた。
【0259】
行動試験:次いで、処理条件を知らされていない試験官が、処理前に、並びに8ヶ月齢及び10ヶ月齢に再度、以下に記載される行動試験によってマウスを評価した(
図4及び表5)。
【0260】
ロータロッドテスト:運動バランス及び協調は、加速ロータロッド装置(Ugo Basile、ヴァレーゼ、イタリア)を使用して以前に記載されたように(61)決定した。動物の訓練は、3日間連続して、試行の間に15分の休憩時間を設けた1日3回の試行で構成されていた。マウスをロッド上に置き、速度を毎分4回転から40回転(rpm)まで徐々に上げた。試験は、20rpm及び32rpmの2つの異なる速度を用いて、4日目に行った。落下潜時を速度ごとに計算した。試験は、マウスがロッドから落下するまで、又はマウスがロッド上に600秒間留まるまで継続し、その後移動させた。各マウスを、用いられた各速度で3回ロータロッド上に置き、各速度について3つの異なる値を得た。2つの異なる速度での各マウスの平均値を用いた。
【0261】
握力試験:握力を測定するために、マウスを尾で保持し、後足でグリッドをつかむまで装置(Ugo Basile、ヴァレーゼ、イタリア)に向かって降ろした。グリッドを解放するまで、マウスをそっと引き戻した。力の測定値gが機器に示された。各セッションは3回の連続した試行で構成され、測定値を平均化した。AAV9.Mpz-GJB1で処理したマウスとAAV9.Mpz-Egfpで処理したマウスの間で後肢の力を比較した。
【0262】
AAV9-Mpz.GJB1治療用完全ベクターで処理した月齢が上のCx32 KOマウスは、AAV9-Mpz.Egfpモック(非治療用)ベクターを注射した同腹仔と比較して、これらの試験で有意に良好な成績を残した(群当たりn=20匹のマウス)。
【0263】
結果を下の
図4及び表5に示す。これは、GJB1処理群の運動能力(ロータロッド試験及び足握力試験の両方で測定)が注射後2ヶ月(8ヶ月齢)で改善され、この改善が10ヶ月齢まで安定したままであったことを示している。モック処理マウスは、運動能力の改善を示さなかった。
【0264】
【0265】
実施例7:坐骨神経運動伝導試験
【0266】
Cx32 KOマウスは、ニューロパチーの発症後、6ヶ月齢で上記の実施例6に記載されるように処理し、次いで10ヶ月齢で以下に記載されるように運動神経伝導試験を実施した。
【0267】
運動神経伝導速度(MNCV):MNCVは、麻酔した動物の坐骨ノッチ及び足首の遠位で、0.05ミリ秒の超最大方形波パルス(5V)を用いた双極電極を介して刺激した後、両側坐骨神経から公開された方法(62)を使用してインビボで測定した。複合筋活動電位(CMAP)の潜時は、後足の第2指と第3指の間に挿入された双極電極によって記録し、刺激アーチファクトから負のM波たわみの開始まで測定した。MNCVは、刺激電極と記録電極の間の距離を、近位潜時から遠位潜時を差し引いた結果で割ることによって計算した。
【0268】
10ヶ月齢で実施されたMNCV試験の結果を下の
図5と表6に示す。これは、GJB1で処理したCx32 KOマウスにおいて10ヶ月で測定した場合、モック処理した対照群(n=10匹のマウス)と比較して運動神経伝導速度が改善され、野生型レベルに近づくことを示している。
【表6】
【0269】
実施例8:モック処理したマウスベクターと比較した、AAV9-Mpz.GJB1の髄腔内送達後のCx32 KOマウスの前脊髄神経根、坐骨神経及び大腿神経の形態学的分析。
【0270】
Cx32 KOマウスは、6ヶ月齢で上記の実施例6に記載されるように処理し、4ヶ月後に10ヶ月齢で検査した。
【0271】
マウスを、0.1M PB緩衝液中の2.5%グルタルアルデヒドで経心的に灌流した。複数の脊髄神経根が付着した腰髄、並びに大腿神経と坐骨神経を切断し、4℃で一晩固定した後、オスミウム酸染色し、脱水し、アラルダイト樹脂に包埋した(すべてAgar Scientific、エセックス、イギリスから購入)。根を含む腰髄の横断半薄切片(1μm)及び大腿運動神経及び坐骨神経の中央部分を取得し、アルカリ性トルイジンブルー(Sigma-Aldrich、ミュンヘン、ドイツ)で染色した。切片は、10倍、20倍、及び40倍の対物レンズで視覚化し、Nikon DS-L3カメラ(Nikon Eclipse-Ni;東京、日本)でキャプチャした。根全体又は横神経切片の画像を100~200倍の最終倍率で取得し、根又は神経の断面積を網羅する一連の部分的に重複する領域を400倍の最終倍率でキャプチャした。これらの画像は、以前に記載されたように、両方の群の異常なミエリン形成の程度を調べるために使用した(22、32、63)。簡単に述べるとの脱髄、再有髄化、及び正常な有髄の軸索を、以下の基準を使用してカウントした:ミエリン鞘のない1μmより大きい軸索は脱髄と見なされ、ミエリン鞘が軸索直径の10%未満の軸索及び/又は「タマネギ様構造」(すなわち、円周方向に配置されたシュワン細胞プロセス及び細胞外マトリックス)は再有髄化と見なされ、他の有髄軸索は正常な有髄と見なされた。
【0272】
さらに、炎症の指標として、各根又は神経の断面全体に存在する泡沫状マクロファージの数をカウントした。マクロファージは、以前に記載されたように、ミエリン破片を含み、基底膜を欠き、小さな微絨毛様プロセスを拡張する細胞として、400倍の倍率で半薄切片において同定された(64、65)。マクロファージカウントは、異なる脊髄神経根と神経の間のサイズの違いを説明するために、1,000本の有髄線維当たりの比として計算した。すべての病理学的分析は、各マウスの処理条件を知らされていない状態で実施された。
【0273】
結果を
図6及び表7(前脊髄神経根)、
図7及び表8(坐骨神経)、並びに
図8及び表9(大腿運動神経)に示す。これらの結果は、異常に有髄化された線維の比率が改善されたと同時に、脱髄及び再有髄化線維が少ないモック処理対照群と比較して、脊髄神経根、坐骨神経及び大腿神経のミエリン形成が改善されたことを示している。すべてのサンプルは、GJB1処理群で泡沫状マクロファージの数の減少を示したことから、処理群における炎症の減少が示唆される。
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
実施例9:最小プロモーター(miniMpz)エレメントによって駆動されるシュワン細胞を標的とする発現のためのAAVベクターの開発
【0278】
上記の例で説明したAAV9ベースのアプローチは、CMT4Cを含む他の脱髄CMT型を治療するための臨床翻訳の高い可能性を有する。しかしながら、AAVベクターの導入遺伝子容量が小さいという制限を克服する必要がある。
【0279】
AAVを介したシュワン細胞を標的とする遺伝子発現を促進するために、本発明者らは、最小型のMpzプロモーターをクローニングした。1.127kbの全長Mpzプロモーター(配列番号4)から開始して、全長Mpzプロモーターの機能的調節エレメント(Egr2及びSox10結合部位)が開始コドンの400bp上流に位置することを示すエンハンサー/ChIP-seqデータに基づいて(56)、本発明者らは、AAVベクターの運搬能力内に留まるために、最小サイズのプロモーターを用いてシュワン細胞において標的発現を達成するためにこの戦略を選択した。本発明者らは、開始コドンの上流のMpzプロモーターから410bpをPCR増幅し、次いでこのminiMpzプロモーターをレポーター遺伝子として下流のEgfpとともにAAVトランスファープラスミドにさらにクローニングし、AAV9-miniMpz.Egfpベクター(配列番号3及び
図9)を生成した。
【0280】
このAAV9-miniMpz.Egfpベクターを、単回腰部髄腔内注射による実施例3に記載されているのと同じ送達方法を使用して、2ヶ月齢の野生型(WT)マウスにおいてインビボでも検証したところ、PNS全体の至る所で高いパーセンテージの有髄シュワン細胞においてレポーター遺伝子EGFPの発現を駆動することが示された。これは、主にPNS組織の有髄シュワン細胞に限定されたベクターの広範な発現を示し、腰髄神経根及び末梢神経で50%を超える発現率及び高いベクターコピー数(VCN)を示した(
図10)。
【0281】
EGFPと組み合わせて、ニューロンNeuN、星状細胞GFAP、及び白質及び灰白質中の乏突起膠細胞CC-1を含む細胞マーカーを用いて実施例4に記載したのと同様に実施したAAV9-miniMpz-Egfp注射マウスからの脊髄組織の免疫染色は、miniMpz駆動型構築物は、n=3~5匹のマウスから定量化されたCNSのニューロン及びグリア細胞の両方の約2~3%の非常に小さなサブセットにのみ存在することを示した(
図11)。
【0282】
結果を
図10(腰神経根及び坐骨神経)と
図11(腰髄)に示すが、これらは、EGFPの発現が腰神経根及び坐骨神経に適切に分布し、腰髄での発現が最小限であることを示すものであり、注射後、末梢神経系のシュワン細胞にベクターの生体内分布及びEGFPレポータータンパク質の発現が見られることを示している。
【0283】
実施例10:ニューロパチーの初期段階で発症前に処理した場合のCMT1Xのモデルにおける遺伝子治療処置の有効性
【0284】
CMT1Xのモデルである2ヶ月齢のCx32ノックアウト(KO)マウスの群(群当たりn=10匹のマウス)に、2ヶ月齢で治療用(完全)AAV9-Mpz-GJB1ベクター又は陰性対照(モック)ベクターAAV9-Mpz-Egfpのいずれかを注射した。行動分析は、処理前、並びに4ヶ月齢及び6ヶ月齢で行った。電気生理学的分析を6ヶ月齢で行い、続いて末梢神経組織の半薄切片の形態学的分析を行った。マウスを2ヶ月齢で処理したことを除いて、上記の実施例6~8に記載したのと同じプロトコルを使用した。
【0285】
このデータは、6ヶ月の後期段階での発症後の処理に加えて、ニューロパチーの初期段階(2ヶ月齢)でのマウスの発症前処理のモデルを提供する(例6-8)。
【0286】
処理済対モック処理した6ヶ月齢Cx32 KOマウスの行動結果
【0287】
治療用(完全)ベクター又は陰性対照(モック)ベクターのいずれかを用いて、CMT1Xのモデルである2ヶ月齢のCx32ノックアウト(KO)マウスの群の処理を行い、4ヶ月齢及び6ヶ月齢でのマウスの運動力を調べた。完全に処理した群は、モック処理した群と比較して、両方の時点で有意に改善された筋力を示した(
図12A及び
図12B)。完全に処理した群はまた、処理後に経時的に有意な改善を示したが(
図12C)、モック処理したマウスは何の改善も示さなかった。
【0288】
発症前処理済対モック処理した6ヶ月齢Cx32 KOマウスにおける電気生理学的研究
【0289】
遺伝子治療処置後に坐骨神経伝導速度の有意な改善を示した、処理した(完全)及びモック処理した6ヶ月齢のCx32 KOマウスの電気生理学的研究を
図13に示す。
【0290】
図13は、モックベクターで処理したCx32 KOマウスと比較して、発症前に処理したAAV9-Mpz-GJB1(全長ベクター)の坐骨神経伝導速度が大幅に改善されたことを示す。
【0291】
処理済対モック処理した6ヶ月齢Cx32 KOマウスにおける末梢神経組織の形態学的研究
【0292】
処理済対モック処理した6ヶ月齢Cx32 KOマウスにおける末梢神経組織の形態学的研究前腰神経根(
図14)、中間坐骨神経(
図15)、及び大腿運動神経(
図16)の半薄切片を調べ、異常に有髄化された線維の比率、及びマクロファージの数を、6ヶ月齢のモック処理Cx32 KOマウスと比較して、完全に処理した群において定量化した。
【0293】
図14、
図15、及び
図16のそれぞれに示されるように、モック処理したマウスと比較して、処理したものでは、脱髄(*)又は再有髄化(r)線維がより少なく、泡沫状マクロファージがより少なかった。これは、処理群におけるミエリン形成の改善及び炎症の減少を示唆するものである。
【0294】
実施例11:CMT1Xを治療するためのヒト化治療用ベクターの開発
【0295】
実施例1に記載のベクターは、ラットMpzプロモーターによって制御される。この構築物をヒト化して臨床用途により適したものにするために、本発明者らは、前臨床用量反応試験並びに非ヒト霊長類(NHP)毒性試験及び生体内分布試験に使用することができるヒトhP0プロモーター(配列番号18)を使用して、ヒト-Mpz-GJB1構築物(配列番号17)もクローニングした。ヒトP0配列は、KpnI及びAgeI制限酵素を導入するためのプライマーを使用してゲノムDNAからPCR増幅した。プライマーは、KpnhP0-F-5’-AGGGGTACCGCCTGGCATAAAC-3’(配列番号25)及びAgehP0-R-5’-AATTTACCGGTGCTGGGGCAG-3’(配列番号26)であった。hP0のライゲーション後、BamHI及びXhoIを使用して既存の構築物からCx32 ORFを切り出した。Cx32をAAVトランスファー構築物にライゲーションし、制限消化マッピング及び直接配列決定により発現カセットの正しいアセンブリを確認した。
【0296】
ヒト化モックベクタープラスミド(ヒト-Mpz-Egfp)もまた、対照として使用するために生成された(配列番号19)。
【0297】
実施例12:CMT4Cを治療するための治療用ベクターの開発及び発現分析
【0298】
上記の配列番号5の小型Mpzラット由来プロモーターを利用する、実施例9に記載されたものと同様の小型Mpz-SH3TC2.myc構築物は、SH3TC2遺伝子インサートを使用し、約4700bpの範囲内に留まるようにITR-ITRセグメントをさらに修飾して(WPREの除去及び最小合成ポリAによるポリAの置換を含む)(68、69)、AAV9への効率的なパッケージングを可能にすることによって開発した。この治療用ベクターの配列は、配列番号20に示される。
【0299】
この新規治療ベクター(mini-Mpz-SH3TC2.myc)の発現解析は、CMT4Cモデルマウスの群で実施された。これらの結果は、上記の実施例9に記載されているレポーター遺伝子発現を駆動する最小Mpzプロモーターベクターの開発を補完するものである。
【0300】
新規のAAV-miniMpz-SH3TC2.myc構築物を生成し、5×1012vg/mlの力価を達成するAAV9血清型にパッケージングした。ベクター(20μlの体積中に合計1×1011vg)は、5ヶ月齢のSh3tc2-/-マウス(n=5)に腰部髄腔内注射によって送達され、固定腰髄神経根及び両側坐骨神経切片への注射の5週間後に発現を調べた。
【0301】
SH3TC2の発現は、神経根及び坐骨神経を含むPNS全体の至る所で、特徴的な核周囲の顆粒状の外観で、また時にはシュワン細胞の全長に沿って、高いパーセンテージの有髄シュワン細胞で検出された(
図17A~
図17F)。SH3TC2免疫反応性シュワン細胞のパーセンテージの定量化は、腰神経根で平均54.67%、坐骨神経で45.39%の発現率を示した(
図17G)。
【0302】
これらの結果は、構築物が、PNS全体の至所で有髄シュワン細胞において良好なレベルの発現を達成したことを示している。
【0303】
実施例13:CMT4Cを治療するためのヒト化治療ベクターの開発
【0304】
前臨床試験に非常に適した(最小型のラットMpzプロモーター及びmycタグがSH3TC2に含まれているため)小型Mpz-SH3TC2.myc(配列番号20)構築物(上記の実施例12に記載)前臨床発現分析)が、臨床用途により適したものになるように修飾された(配列番号21)。
【0305】
mycタグが除去され、最小型のラットプロモーターが最小ヒトMpzプロモーターの対応する配列(配列番号22)に置き換えられた。このベクターは、臨床応用に進む前に、最終的な前臨床用量反応試験、並びにNHP毒性及び生体内分布試験に使用することができる。ヒト化モックベクタープラスミド(ヒト-miniMpz-Egfp)も生成された(配列番号23)。
【0306】
[参考文献]
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【0308】
次に、本発明の実施形態を以下の番号を付した段落において説明する。
【0309】
1.シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防を必要とする対象においてそれに使用するためのウイルスベクターであって、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含み、AAVベクターである、ウイルスベクター。
2.第1のポリヌクレオチドの発現が、シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的にミエリン特異的プロモーターの制御下にある、段落1の使用のためのウイルスベクター。
3.第1のポリヌクレオチドの発現が、全長ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターの制御下にあり、全長プロモーターは、全長ラット又はヒトミエリンタンパク質プロモーターである、段落1又は2の使用のためのウイルスベクター。
4.第1のポリヌクレオチドの発現が、100bp~1100bpの長さであるプロモーターの制御下にあり、任意選択的に、プロモーターは、長さ200bp~900bp、長さ300bp~800bp、長さ400bp~700bpの範囲であり、任意選択的に、プロモーターは長さ500bp~600bpの範囲であり、任意選択的に、プロモーターは長さ410bpである、段落1~3の使用のためのウイルスベクター。
5.プロモーターが、全長又は最小ミエリン特異的プロモーター、任意選択的に最小ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーターであり、任意選択的に、プロモーターは、配列番号5又は配列番号22と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号5又は配列番号22と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を有する、段落4の使用のためのウイルスベクター。
6.ベクターがシュワン細胞を形質導入する能力を有する、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
7.ベクターが宿主細胞のゲノムに組み込まれない、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
8.AAVベクターがAAV9及びAAVrh10からなる群から選択される、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
9.AAVベクターがAAV9である、段落8の使用のためのウイルスベクター。
10.第1のポリヌクレオチドが、第1のポリペプチド又はタンパク質をコードし、かつそれらに翻訳される、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
11.第1の核酸が、
a)以下の遺伝子、ギャップジャンクションベータ1(GJB1)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)若しくは脱髄性ニューロパチー及びシュワン細胞機能不全に関連する他の遺伝子のうちのいずれか1つを含むか又はそれらからなる群から任意選択的に選択される、ニューロパチー関連遺伝子の野生型又は治療上有益な配列、あるいは
b)ニューロパチー関連遺伝子、例えば以下の遺伝子、ギャップジャンクションベータ1(GJB1)、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)又は脱髄性ニューロパチー及びシュワン細胞機能不全に関連する他の遺伝子のうちの1つの野生型配列と、少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含み、
任意選択的に、第1の核酸が、配列番号6~12と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号6~12と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列を含む、段落10の使用のためのウイルスベクター。
12.第1の核酸が、任意選択的に、コネキシン32、SH3ドメイン及びテトラトリコペプチドリピート2(SH3TC2)、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、初期増殖応答2(EGR2)、ガングリオシド誘導分化関連タンパク質1(GDAP1)、N-Myc下流調節1(NDRG1)を含むか、又はそれらからなる群から選択される、1つ以上のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドに転写される野生型形態のオープンリーディングフレーム(ORF)又はcDNAを含む、段落10又は11の使用のためのウイルスベクター。
13.第1の核酸がギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子の野生型オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、段落10又は11の使用のためのウイルスベクター。
14.ベクターが第1のポリヌクレオチドからの発現を駆動することができ、任意選択的に、第1のポリヌクレオチドの発現を駆動することができ、任意選択的に、第1のポリペプチドが、コネキシン32(Cx32)タンパク質であり、任意選択的に野生型Cx32である、段落1~13のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
15.第1のポリヌクレオチドが、栄養因子(例えば、BDNF、GDNF、NT-3、VEGF)、再生因子(例えば、アンジオゲニン、Oct-6、Egr2、Sox-10)、成長因子(例えば、IGF)のうちの1つ以上をコードする、段落1~10のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
16.ウイルスベクターの投与が、シュワン細胞の機能の改善及び/又はミエリン鞘の形成の増加をもたらす、第1のポリヌクレオチドからの第1のタンパク質の発現をもたらす、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
17.第1のポリヌクレオチドがポリペプチドをコードせず、任意選択的に、第1のポリヌクレオチドが非コードRNAである、段落1~9の使用のためのウイルスベクター。
18.非コードRNAが低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)である、段落17の使用のためのウイルスベクター。
19.ウイルスベクターが標的生物中にある場合、非コードRNAの発現が標的ポリヌクレオチドの発現の低下を引き起こし、任意選択的に、標的ポリヌクレオチドが標的生物中に位置する遺伝子であり、任意選択的に標的生物の細胞に位置する、段落17又は18のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
20.標的生物における標的ポリヌクレオチドの発現又は過剰発現が、シュワン細胞に関連する疾患に関連すると考えられ、任意選択的に、疾患が優性脱髄性ニューロパチー(CMT1)であり、任意選択的に、標的ポリヌクレオチドがミエリンタンパク質ゼロ(Mpz/P0)の変異対立遺伝子であり、シュワン細胞に関連する疾患がCMT1Bであるか、又は標的ポリヌクレオチドがCMT1に関連する別の優勢な遺伝子である、段落19の使用のためのウイルスベクター。
21.ウイルスベクターの投与がシュワン細胞の機能の改善及び/又はミエリン鞘の形成の増加をもたらす、段落17~20のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
22.シュワン細胞に関連する疾患がシュワン細胞によるミエリン鞘の破壊及び/又は形成の低下を引き起こす、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
23.疾患が、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)、糖尿病及び他の毒性末梢性ニューロパチー、運動ニューロン疾患(MND)からなる群から選択される、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
24.疾患がシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)である、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
25.疾患が、シャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)。シャルコー・マリー・トゥース1A~1F型(CMT1A~1F)、シャルコー・マリー・トゥース4A~4H型(CMT4A~4H)から選択される、段落24の使用のためのウイルスベクター。
26.疾患がシャルコー・マリー・トゥース1X型(CMT1X)である、段落25の使用のためのウイルスベクター。
27.疾患がシャルコー・マリー・トゥース4C型(CMT4C)である、段落25の使用のためのウイルスベクター。
28.改善された機能が、治療前の対象におけるシュワン細胞によるミエリン鞘の形成と比較した場合のシュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加に起因する、段落16又は21の使用のためのウイルスベクター。
29.シュワン細胞によるミエリン鞘の形成の増加が、治療前の対象と比較した場合、以下のパラメータ:
a)筋力、
b)坐骨神経伝導速度、及び/又は
c)血液バイオマーカーの反応
のうちのいずれか1つ以上の改善をもたらす、段落28の使用のためのウイルスベクター。
30.シュワン細胞によるミエリン鞘の形成の改善が末梢神経のミエリン形成の改善をもたらす、段落28又は29の使用のためのウイルスベクター。
31.AAVが髄腔内注射又は静脈内注射によって対象に投与され、好ましくはAAVが髄腔内注射によって投与される、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
32.AAVが、腰部髄腔内注射、胸部髄腔内注射、頸部髄腔内注射の経路のうちの1つによって投与される、段落31の使用のためのウイルスベクター。
33.ウイルスベクターが腰部髄腔内注射によって投与される、段落32の使用のためのウイルスベクター。
34.AAVが単回髄腔内注射によって投与される、段落31~33の使用のためのウイルスベクター。
35.必要とする対象がヒト対象である、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
36.先行段落のいずれかによって定義されるウイルスベクター。
37.任意選択的にシュワン細胞である、先行段落のいずれかによって定義されるウイルスベクターで形質導入された細胞。
38.配列番号5又は配列番号22と少なくとも75%の配列相同性又は配列同一性、任意選択的に、配列番号5又は配列番号22と少なくとも80%、又は82%、又は84%、又は86%、又は88%、又は90%、又は92%、又は94%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%の配列同一性又は配列相同性を有する配列相同性を有する、最小ミエリン特異的プロモーター。
39.配列番号5又は配列番号22の配列を含むか、又はそれらからなる、最小ミエリン特異的プロモーター。
40.任意選択的に、第2の核酸の配列に作動可能に連結されたミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター又は段落38若しくは39に定義される最小ミエリン特異的プロモーターを含む、シュワン細胞特異的プロモーター、任意選択的にミエリン特異的プロモーターである第1の核酸の配列を含むポリヌクレオチド構築物であって、第2の核酸が、第1のポリヌクレオチドに転写され、第2の核酸の配列が、a)オープンリーディングフレーム若しくはcDNA若しくは遺伝子の他のエレメントであるか、又はb)非コードRNAに転写される、ポリヌクレオチド構築物。
41.段落38若しくは39のいずれかによる最小ミエリン特異的プロモーター、又は段落40のポリヌクレオチド構築物を含む、ウイルスベクター。
42.ベクターがシュワン細胞を形質導入する能力を有する、段落1~35のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター、又は段落36若しくは41のウイルスベクター。
43.ベクターが宿主細胞のゲノムに組み込まれない、先行段落のいずれか1つの使用のためのウイルスベクター。
44.
a)任意選択的にAAV9である、AAV、
b)AAV9ベクター、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及びEGFPレポーター遺伝子を含む、AAV-Mpz.Egfpベクター、
c)AAV9ベクター、ミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及びギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-Mpz-GJB1ベクター、
d)AAV9ベクター、最小ミエリンタンパク質ゼロ(miniMpz)プロモーター、及びEGFPレポーター遺伝子を含む、AAV9-miniMpz.Egfpベクター、
e)AAV9ベクター、全長ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びギャップジャンクションベータ1(GJB1)遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-ヒトMpz-GJB1ベクター(配列番号17)、
f)AAV9ベクター、全長ヒトミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びEGFPレポーター遺伝子を含むAAV9-ヒトMpz-Egfpベクター(配列番号19)、
g)AAV9ベクター、最小ラットミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)プロモーター、及びSH3TC2遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-miniMpz-SH3TC2.myc.ITRベクター(配列番号20)、
h)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びSH3TC2遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、AAV9-ヒト-miniMpz-SH3TC2ベクター(配列番号21)、又は
i)AAV9ベクター、ヒト最小ミエリンタンパク質ゼロ(hP0)プロモーター、及びEGFPレポーター遺伝子を含む、AAV9-ヒト-miniMpz-Egfpベクター(配列番号23)、を含む、段落42又は43のいずれか1つによるウイルスベクター。
45.先行段落のいずれかのウイルスベクターを含む、医薬組成物。
46.組成物が適切な量のウイルスベクターを含み、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む、段落45の医薬組成物。
45.シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防のための薬物の製造方法における先行段落のいずれかによるウイルスベクターの使用であって、任意選択的に、疾患がシュワン細胞によるミエリン鞘の破壊及び/又は形成の低下を引き起こし、任意選択的に、疾患がシャルコー・マリー・トゥース病である、使用。
46.CRISPR/Cas9システムで使用するための、先行段落のいずれかによるウイルスベクター又はポリヌクレオチド構築物であって、ウイルスベクター又はポリヌクレオチドが、
a)目的の遺伝子を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)をコードするポリヌクレオチド、
b)Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
c)目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、のうちのいずれか1つ以上を含む、ウイルスベクター又はポリヌクレオチド構築物。
47.シュワン細胞を標識する方法、例えば、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)若しくは強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、又は別の非蛍光レポーターで標識する方法において使用するための、先行段落のいずれかによるウイルスベクターであって、任意選択的に、シュワン細胞の標識は、シュワン細胞に関連する疾患を診断する方法において使用することができる、ウイルスベクター。
48.シュワン細胞が代替の細胞型(例えば、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、又はニューロン)に分化するように誘導される方法において使用するための、段落1~43のいずれか1つによるウイルスベクター。
49.任意選択的に傷害又は外傷後に、シュワン細胞を刺激してそれを必要とする対象の再生を支持する方法において使用するための、段落1~43のいずれか1つによるウイルスベクター。
50.シュワン細胞に関連する疾患の予防若しくは治療、シュワン細胞の標識、又はシュワン細胞の再生に使用するためのキットであって、
a)先行段落のいずれかに定義されるウイルスベクター、
b)段落40によって定義されるポリヌクレオチド構築物、
c)ウイルスベクター、
d)段落40によって定義されるポリヌクレオチド構築物を含むウイルスベクター、
e)薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤、
f)使い捨て注射器、例えば腰部髄腔内注射に適した使い捨て注射器、
g)使用説明書、のうちの1つ以上を含む、キット。
51.キットが先行段落のいずれか1つによって定義される2つ以上のウイルスベクターを含み、任意選択的に、キットが、先行段落のいずれか1つによって定義される2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なるウイルスを含む、段落50によるキット。
52.シュワン細胞に関連する疾患の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うのに使用するためのウイルスベクターであって、ウイルスベクターが、第1のポリヌクレオチドに転写され得る第1の核酸の配列を含み、該第1のポリヌクレオチドの発現が、任意選択的に、配列番号5若しくは配列番号22で定義される配列を含むか、又はそれからなる最小ミエリン特異的プロモーターの制御下にあり、任意選択的に、ウイルスベクターが、AAVベクターである、ウイルスベクター。
【0310】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者には明らかであることを理解されたい。そのような変更及び修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、またその意図された利点を損なうことなく行うことができる。したがって、そのような変更及び修正は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】