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特表2022-535414エンボス加工ツールの前処理を伴うエンボス構造をコーティング組成物に転写する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】エンボス加工ツールの前処理を伴うエンボス構造をコーティング組成物に転写する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571929
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2020065316
(87)【国際公開番号】W WO2020245172
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019003847.9
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クェス,ヤン-ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ピオンテク,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】エクスナー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クライネ-ブライ,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア マルティン,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ノアチェク,イェンス-ヘンニンク
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フォン デア アー,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】シッパー,ヴィルフリート
【テーマコード(参考)】
4F209
【Fターム(参考)】
4F209AA43
4F209AC05
4F209AF01
4F209AG05
4F209PA03
4F209PB02
4F209PC06
4F209PJ01
4F209PJ06
4F209PN09
4F209PN20
(57)【要約】
本発明は、エンボス構造を転写するための方法であって、少なくともステップ(1-i)と(2-i)、又は(1-ii)と(2-ii)を含み、ステップ(1-i)と(2-i)、又は(1-ii)と(2-ii)は、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)を使用して実行され、エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)は、ステップ(2-i)の実施前又はステップ(1-ii)の実施前に、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤によって前処理される方法に関し、及び、そのような方法でエンボス構造を転写する目的のために対応して前処理された少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス加工ツール(P1)を用いてエンボス構造を転写する方法であって、少なくともステップ(1-i)及び(2-i)、又は(1-ii)及び(2-ii)を含み、具体的には、
(1-i) コーティング組成物(B1a)を基板(F1)の表面の少なくとも一部に塗布し、複合物(B1aF1)を得るステップと、
(2-i) 少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含む少なくとも1つのエンボス加工ツール(P1)を用いて、前記基板(F1)の表面に少なくとも部分的に塗布された前記コーティング組成物(B1a)を、少なくとも部分的にエンボス加工するステップと、
又は
(1-ii) エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)の少なくとも部分的にエンボス加工された表面の少なくとも一部にコーティング組成物(B1a)を塗布するステップと、
(2-ii) 前記エンボス加工ダイ(p1)に塗布された前記コーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に基板(F1)を適用し、(p1)上に複合物(B1aF1)を得るステップと、
を含み、ステップ(2-i)の実施前及びステップ(1-ii)の実施前に、前記エンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理すること、及び、ステップ(2-i)及びステップ(1-ii)を通して、30μm超の構造深さを有するマイクロ構造をエンボス構造として前記コーティング組成物(B1a)に転写することを含む、方法。
【請求項2】
ステップ(2-i)とステップ(1-ii)の実施前に実行される前記前処理は、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤によって前記少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を湿潤させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2-i)とステップ(1-ii)の実施前に実行される前記前処理は、少なくとも1つの超音波ノズルを使用して行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記前処理に使用される前記少なくとも1つの有機溶媒は、C~Cアルコールの群から選択され、前記前処理に使用される前記少なくとも1つの反応性希釈剤は、単官能、二官能、三官能及び多官能(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2-i)及びステップ(1-ii)を通して、マイクロ構造及び/又はナノ構造がエンボス構造として前記コーティング組成物(B1a)に転写される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2-i)及びステップ(1-ii)を通して、40μm超の構造深さを有するマイクロ構造がエンボス構造として前記コーティング組成物(B1a)に転写される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(2-i)及びステップ(1-ii)によって、前記コーティング組成物(B1a)に転写される前記エンボス構造のアスペクト比は1より大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング組成物(B1a)から得られ得るコーティング(B1)と前記エンボス加工ツール(P1)の前記少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、互いの鏡像であるエンボス構造を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2-i)とステップ(1-ii)の実施後に、少なくとも1つのさらなるステップ(3)、具体的には、
(3)ステップ(2-i)とステップ(2-ii)の後に得られる前記複合物(B1aF1)内の少なくとも部分的にエンボス加工されたコーティング組成物(B1a)を少なくとも部分的に硬化させ、基板(F1)と少なくとも部分的にエンボス加工され少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B1)から構成される複合物(B1F1)を得るステップであって、前記少なくとも部分的に硬化させる期間を通して、前記コーティング組成物(B1a)は前記少なくとも1つのエンボス加工ツール(P1)の前記少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)と接触している、ステップと、
任意のステップ(4)、具体的には、
(4)ステップ(3)の後に得られた複合物(B1F1)を、前記エンボス加工ツール(P1)の前記エンボス加工ダイ(p1)から取り除くステップと、
を有している、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物(B1a)は、放射線硬化性コーティング組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング組成物(B1a)の固体含有量は、前記コーティング組成物(B1a)の総質量に基づいて≧90質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物(B1a)は、少なくとも1つの炭素二重結合を有し、40~95質量%の範囲の量で存在する少なくとも1つの構成成分(b)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング組成物(B1a)は、構成成分(b)として少なくとも1つの単官能、二官能、三官能及び/又は多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板(F1)は好ましくは移動フィルムウェブである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
エンボス構造をコーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に転写するための、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)の使用であって、前記エンボス加工ツール(P1)の前記少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)が、転写前に、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理され、前記コーティング組成物(B1a)上に転写された前記エンボス構造が、30μm超の構造深さを有するマイクロ構造を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともステップ(1-i)と(2-i)、又は(1-ii)と(2-ii)を含むエンボス構造を転写する方法に関するものであって、ステップ(1-i)と(2-i)、又は(1-ii)と(2-ii)は、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)を使用して実行され、エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)は、ステップ(2-i)を実施する前又はステップ(1-ii)を実行する前に、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤を用いて前処理される方法に関し、及び、そのような方法でエンボス構造を転写する目的のための、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含む対応する前処理されたエンボス加工ツール(P1)の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
産業界における多数の用途において、近年、構造的特徴がマイクロメートルの範囲又はさらにはナノメートルの範囲である構造をワークピースの表面に提供することが慣例となっている。このような構造はまた、マイクロ構造(マイクロメートルの範囲の特徴を有する構造)又はナノ構造(ナノメートルの範囲の特徴を有する構造)とも呼ばれる。このような構造は、例えば、材料の表面の光学的質、生体工学的質及び/又は触覚的質に影響を及ぼすために使用される。この種の構造は、エンボス(embossment)又はエンボス構造とも呼ばれる。
【0003】
ここで、1つの一般的な方法は、これらの構造をコーティング材料に転写することである。コーティング材料への構造の転写は、ここで、エンボス加工操作を用いて実現されることが多く、そこでは、エンボス表面又は転写表面に形成しようとするマイクロ構造及び/又はナノ構造をネガ形態で有するダイが、コーティング材料に接触及び圧入される。次に、この構造が恒久的に形成されて、ワークピースの表面に維持されるようにするために、コーティング材料は、通常、その場で硬化される。
【0004】
特に、触覚的及び生体工学的分野では、特にアスペクト比が1を超え、40μmを超える範囲のマイクロ構造が生成される。アスペクト比は、構造の直径に対するその高さの比率を表す。蓮の花の微細構造の構造要素は、例えば、高さが約10~20μm、幅が約10~15μmであり、ヤモリの足の微細構造の構造要素は、高さが約100μm、幅が約1μmである(参考:E.Arztら、PNAS2003,100,10603~10606頁)。
【0005】
DE102004012067A1は、エラストマーなどのプラスチック材料を用いて、担体材料上にマイクロメーター範囲の構造を有する接着要素を生成する方法を記載している。
【0006】
WO2005/047549A1は、長さ110μm及び直径3~60μmの隆起の形態の微細構造を有するベロア型の微細繊維表面を記載している。このような微細に構造化されたベロア状の表面を生成するためには、ポリマー分散液が対応するネガ構造とともに担体表面に適用され、硬化され、したがって、コーティング材料が微細構造を帯びる。この方法の欠点の1つは、不連続な操作を伴うことである。
【0007】
DE102007061980A1は、マイクロ構造を生成する方法であって、ウェブ状のポリマーフィルムの形態をした成形ツールを提供し、前記フィルムの表面は、所望のマイクロ構造の形態で凸部及び凹部の配列を有し、凹部を硬化可能な第1のコーティング材料で充填し、ポリマーフィルムの表面に硬化可能な第2のコーティング材料の層を接触させ、第2のコーティング材料と接触している第1のコーティング材料をポリマーフィルムの凹部の中で第2のコーティング材料の層とともに硬化させ、同時に第2のコーティング材料の層に接合させ、次に第2のコーティング材料に接合された硬化した第1のコーティング材料がポリマーフィルムの凹部から引き抜かれるように、ポリマーフィルムの表面を第2の硬化したコーティング材料から再び除去することによってマイクロ構造を生成する方法を開示している。この方法は、微小光学モアレ拡大構造などの微小光学構造を有するセキュリティ要素の製造に採用されている。DE102007061980A1によるマイクロ構造の構造深さは、1から最大20μmまでの範囲である。
【0008】
エンボス構造をコーティング材料に転写する連続的な方法は、例えばロールツーロール印刷機がその表面にネガ構造を担持するエンボス加工装置を備え、この構造をコーティング材料に転写するものが従来技術において、特に光学フィルムの製造分野において、及びセキュリティ印刷(ホログラム)の分野において知られている。非常に高い圧印精度を有しつつ経済的な操作(大きな損失を伴わないでネガ構造を非常に正確に複製)を行うためには、コーティング材料、特に放射線硬化性材料の使用が特に有利であることが分かっている。このようなコーティング材料を用いることにより、採用した液体コーティング材料を、エンボスロールなどのエンボス加工ツールと接触させたまま少なくとも部分的に硬化させることが可能となり、高いベルト速度で高い構造精度を実現することができる。この種の方法は、例えば、WO88/09252A1及びWO94/18609A1に記載されている。また、WO2009/121357A1では、光学フィルムを生成するためのこの種の方法が開示されており、そこでは、コーティング材料が、最初に、既知の塗布方法を介して担持フィルムに塗布され、その後エンボス加工される。同様の方法が、例えば、DE4132476A1にも記載されている。
【0009】
しかし、これら既知の前述の方法の欠点は、第一に、少なくともこれらの方法のいくつかにおいては、コーティング材料は最初にエンボス加工ツールに塗布され、次にそこから基板に転写されることである。このことは、コーティング材料の所望の層の厚さに関してこれらの方法に制限を課しており、つまり、構造深さが40μmを超えるエンボス構造は十分に圧印されないのである。これらの既知の前述の方法の別の欠点は、それらが、圧印精度を全体的に許容できない程度まで低下させることなく、エンボスを、特にマイクロメーター範囲において適切に転写することができないことであり、このことは、特に構造深さが40μmを超えるエンボス構造を圧印することを意図している場合に生じる。使用するエンボス加工ツールをコーティング材料に押圧する圧力を増加させることは、エンボス加工されたコーティングの中でのエンボス加工ツールのエンボス加工ダイのジャミング/ラッチングを伴うことが多いため、圧印精度を向上させることはできない、つまり、より大きな力がが、そのようなマイクロ構造を有するコーティングされた基板をエンボス加工ツールから分離するために、必要とされることを意味する。このことは、この微細構造の少なくとも分離された構造要素が、特にエンボス加工ダイ内のネガ構造が完全に埋め尽くされている場合には、分離過程中に引き裂き及び/又は凝集破壊によって破壊されることを生じ得る。結果として、エンボス構造が正しくエンボスされないだけでなく、エンボス加工ツールが汚染され、コストのかかる不便な洗浄又は更新が必要となる。さらに、エンボス加工操作中の圧力が高くなると、すなわち押圧圧力が高くなると、コーティング材料がコーティングされた基板の側面又はマージン部にずれるため、使用されるコーティング材料がエンボス加工ダイの凹部に十分に圧入されなくなる危険性がある。さらに、エンボス加工ダイの穴に残った空気が如何なる程度にも圧縮されないため、しばしば、圧印がダイによって示された形態に対応せず、その結果、不要なクレーターが生じる可能性がある。特に、大きな封入気泡の結果として、エンボス構造の安定性が、典型的には非常に悪くなり、その結果、表面の機械的負荷が小さくても面における低い耐摩耗性を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、前述の欠点を有さないエンボス構造を転写する方法が必要とされている。
【0011】
したがって、本発明によって対処される問題は、エンボス構造、特に高アスペクト比のエンボス構造を、エンボス加工ツールからコーティング組成物、及びそのようなコーティング組成物を担持する基板に転写する方法、より具体的には、マイクロ構造及び/又はナノ構造、特にマイクロ構造の転写を可能にする、及び、エンボス加工が変化のいかなる深さ損失も伴わないように、エンボス構造の転写において十分な圧印精度を可能にする、及び、特に、エンボス構造を転写するための非常に高く再利用可能なエンボス加工ダイの生成を可能する、及び/又は、この種のエンボス加工ダイを使用して実施することができる、この種の方法を提供することである。同時に、特に、如何なる不利な点、特に使用されるコーティング及びコーティング組成物の一部に例えば不十分な接着などの不要な又は不適な特性をもたらす特徴の方法を要することなく、転写されるエンボス構造が、可能な限り欠陥なく、非常に高度に複製されることを可能にし、特にクレーターの発生なく転写されることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この問題は、特許請求の範囲において権利請求されている主題事項によって、及び、以下の明細書に記載されているこの主題事項の好ましい実施形態によって解決される。
【0013】
したがって、本発明の第1の主題は、エンボス加工ツール(P1)を用いてエンボス構造を転写する方法であって、前記方法は、少なくともステップ(1-i)及び(2-i)、又は(1-ii)及び(2-ii)を有し、具体的には、
(1-i) コーティング組成物(B1a)を基板(F1)の表面の少なくとも一部に塗布して複合物(B1aF1)を得るステップと、
(2-i) 少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含む少なくとも1つのエンボス加工ツール(P1)を用いて、前記基板(F1)の表面に少なくとも部分的に塗布された前記コーティング組成物(B1a)を、少なくとも部分的にエンボス加工するステップと、
又は
(1-ii) エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)の少なくとも部分的にエンボス加工された表面の少なくとも一部にコーティング組成物(B1a)を塗布するステップと、
(2-ii) 前記エンボス加工ダイ(p1)に塗布された前記コーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に基板(F1)を適用して(p1)上に複合物(B1aF1)を得るステップと、
を含み、ステップ(2-i)の実施前及びステップ(1-ii)の実施前に、前記エンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理すること、及び、好ましくはステップ(2-i)及びステップ(1-ii)を通して、30μm超の構造深さを有するマイクロ構造をエンボス構造として前記コーティング組成物(B1a)に転写することを含む。
【0014】
本発明のさらなる主題は、エンボス構造をコーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に転写するための少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)の使用であり、前記エンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、転写前に、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理され、コーティング組成物(B1a)上に転写されたエンボス構造は、好ましくは、30μm超の構造深さを有するマイクロ構造を含む。
【0015】
驚くべきことに、本発明の方法-特にステップ(2-i)の実施前及びステップ(1-ii)の実施前に行われる前処理-は、エンボス構造特にマイクロ構造を、高速であっても非常に高い圧印精度でエンボスされるコーティング組成物に転写することを可能にし、エンボス加工中に変化の深さの損失がないことが見いだされた。ここで特に驚くべきことに、本発明の方法は、マイクロ構造を、構造深さ30μm超、より詳細には40μm超、アスペクト比が1超を有するエンボス構造として、正確な形態でかつ高速に、表面に転写されるエンボス構造のネガ構造を担持するエンボス加工ツールからコーティング材料へ転写することを可能にすることが見いだされた。
【0016】
より具体的には、驚くべきことに、エンボス構造特に触覚的エンボス構造の転写の従来技術から知られている従来の方法の使用は、不完全な圧印をもたらすだけであり、つまり、転写されるエンボス構造のネガの個々の構造要素の配置と寸法が、エンボス加工操作の間に空気が側方に逃げることを不可能にし、空気が、したがって、コーティング材料とそれぞれの構造要素の最低点の間にスペーサーとして凹部に残留することが多く、特に突起(ピーク)がモデル化されず、転写された個々の構造要素がクレーターを有することを確実にするため、コーティング材料の表面構造は、エンボス加工装置のネガのポジに適切に対応しないことに至ることが明らかになった。これらの欠点は、驚くべきことに、本発明の方法、特にステップ(2-i)の実施前及びステップ(1-ii)の実施前に行われる前処理によって回避される。驚くべきことに、特にこの文脈で、転写されるエンボス構造の一部の比較的高い構造深さと比較的高いアスペクト比によっても、互いに接合されておらず、代わりに少なくとも部分的にエンボス加工ツールのエンボス加工ダイの表面に個々の「孔」の形態で存在している個々の構造要素を有するそれらの構造を、正確に、高い圧印精度で転写することが可能であることが明らかになった。エンボス加工ダイ内の構造要素がこのような配置になっている場合、空気はエンボス加工操作中に側面に逃げることができず、しかし代わりに個々の構造要素(「孔」)からはずれなければならないが、本発明の方法は驚くべきことに、特にクレーターを生じることなく、エンボス構造の欠陥のない転写を可能にする。
【0017】
詳細な説明
本発明の文脈において、「含む(comprising)」という用語は、例えばコーティング組成物(B1a)などの本発明で使用されるコーティング組成物、ならびに例えば本発明の方法及びその方法ステップに関連して、「からなる(consisting of)」という意味を好ましくは有する。ここで、例えば、本発明で使用されるコーティング組成物(B1a)に関連して、前記組成物が、構成成分(a)及び/又は(b)及び/又は(c)のようなそれに含まれる構成成分だけでなく、以下に特定される1つ以上のさらなる構成成分を含み、及び該さらなる構成成分が本発明において使用されるコーティング組成物(B1a)中に任意に存在することも可能である。各構成成分は、以下に規定されるそれらの好ましい実施形態に存在してよい。本発明の方法に関連して、この方法は、ステップ(1-i)及び(2-i)、又は(1-ii)及び(2-ii)ならびに前処理ステップだけでなく、例えばステップ(3)及び(4)などの、さらなる任意の方法ステップを含んでよい。
【0018】
エンボス構造を転写するための本発明の方法であって、少なくともステップ(1-i)及び(2-i)、又は(1-ii)及び(2-ii)、さらに任意に(3)及び任意に(4)を含む方法
本発明の第1の主題は、上述したように、エンボス構造を、コーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に転写する本発明の方法である。図1及び図2は、以下のこれらの図の説明からも明らかなように、本発明の方法のステップ(1-i)及び(2-i)、ならびに任意に(3)及び任意に(4)の例示的な説明を提供する。本発明の方法は、必然的に前記の前処理を含む。
【0019】
本発明の方法は、好ましくは連続的な方法である。
【0020】
エンボス構造は、方法ステップ(2-i)において、基板(F1)の表面に少なくとも部分的に塗布されたコーティング組成物(B1a)の少なくとも部分的なエンボス加工によって転写され/得られる。別の可能性として、方法ステップ(1-ii)及び(2-ii)を用いた転写がある。「エンボス加工」という用語は、コーティング組成物(B1a)を、任意に複合物(B1aF1)の一部として、その表面の少なくとも一部に、エンボス構造を少なくとも部分的に施すことを指す。この場合、コーティング組成物(B1a)の少なくとも特定の領域はエンボス構造を施される。好ましくは、コーティング組成物(B1a)の表面全体が、任意に複合物(F1B1a)の一部として、エンボス構造を施される。
【0021】
複合物(F1B1a)及び(F1B1)のエンボス構造は、好ましくは、及び各場合において互いに独立して、繰り返し及び/又は規則的に配置されたパターンに基づく。それぞれの場合の構造は、連続した溝構造などの連続したエンボス構造であってよく、又は複数の好ましくは繰り返される個々のエンボス構造であってよい。この場合、それぞれの個々のエンボス構造は、好ましくは、エンボス構造のエンボス高さを規定する多かれ少なかれ顕著なリッジ(エンボス高さ)を有する溝構造に基づいてよい。好ましくは繰り返される個々のエンボス構造のリッジの個々の形状によれば、平面図は、様々な、例えば、好ましくは、屈曲状、のこぎり歯状、六角形、ダイヤモンド形状、ひし形状、平方四辺形、ハニカム形状、円形、点状、星形形状、ロープ形状、網状、多角形、好ましくは三角形、正方形、より好ましくは長方形及び正方形、五角形、六角形、七角形及び八角形、ワイヤー形状、楕円形、長円形及び格子形状のパターンなどの、複数の好ましくは繰り返されるそれぞれ異なる個々のエンボス構造を示してもよく、少なくとも2つのパターンが、互いに重ね合わせることも可能である。個々のエンボス構造のリッジはまた、湾曲状、すなわち凸構造及び/又は凹構造を有してよい。
【0022】
それぞれのエンボス構造は、リッジの幅などのその幅によって、言い換えるとその構造幅によって、及びエンボスの高さによって、言い換えるとその構造高さ(又は、構造深さ)によって説明されることができる。リッジの幅などの構造幅は、最大で1センチメートルの長さを有してよいが、好ましくは、10nm~1mmの範囲に位置する。構造高さは、好ましくは、0.1nm~1mmの範囲に位置する。しかし、好ましくは、それぞれのエンボス構造は、マイクロ構造及び/又はナノ構造を表す。ここで、マイクロ構造とは、構造幅及びと構造高さの両方に関して、マイクロメートルの範囲内の特徴を有する構造である。ここで、ナノ構造とは、構造幅及びと構造高さの両方に関して、ナノメートルの範囲内の特徴を有する構造である。マイクロ構造及びナノ構造は、この場合、ナノメートルの範囲の構造幅、及びマイクロメートル範囲の構造高さを有する構造、又はその逆である構造である。用語「構造高さ」及び「構造深さ」は、この場合、相互交換可能である。
【0023】
それぞれのエンボス構造の構造幅は、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~250μmの範囲、より詳細には100nm~100μmの範囲に位置する。それぞれのエンボス構造の構造高さは、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~300μmの範囲、より特に好ましくは100nm~200μmの範囲内に位置する。これは、複合物(F1B1)及び複合物(F1B1a)の両方のエンボス構造についても同様である。
【0024】
本発明の方法によって転写されるエンボス構造は、非常に好ましくはマイクロ構造である。構造幅は、好ましくは1μm~500μmの範囲、より好ましくは2μm~400μmの範囲、非常に好ましくは5μm~250μmの範囲、より特に好ましくは10μm~100μmの範囲に位置する。それぞれのエンボス構造高さは、好ましくは1μm~500μmの範囲、より好ましくは2μm~400μmの範囲、非常に好ましくは5μm~300μmの範囲、より特に好ましくは10μm~200μmの範囲に位置する。特に好ましくは、少なくとも部分的に転写されるエンボス構造は、構造深さ(構造高さ)が10μm超又は20μm超、非常に好ましくは30μm超又は40μm超、より特に好ましくは45μm超又は50μm超である。ここでの最大構造深さは、それぞれの場合において、好ましくは500μm又は450μm又は400μm又は300μm又は250μmである。
【0025】
コーティング組成物(B1a)に転写されたエンボス構造のアスペクト比は、好ましくは1超である。「アスペクト比」という用語は、当業者に知られている。アスペクト比は、構造要素の高さ(深さ)のその横方向の広がり(幅)に対する比を表す。例えば、周期的に配置された高さ10μm、幅5μmの長方形のアスペクト比は2(10:5)である。アスペクト比の値が大きければ大きいほど、対応して構造表面を生成することが一般的に困難になる。コーティング組成物(B1a)に転写されるエンボス構造のアスペクト比は、好ましくは2超又は3超又は5超又は10超であり、より好ましくは15超又は20超又は50超である。階層構造の場合、アスペクト比は、最大の階層段階のアスペクト比を示す。
【0026】
それぞれのエンボス構造の構造幅及びと構造高さは、ここでは表面の機械的走査によって決定される。この場合、エンボス高さは、試料のウェブ幅にわたって均質に分布した線上の10個以上の点で測定され、走査機器がエンボス構造を圧縮しないことを確実にするように気を付ける。構造高さの決定は、圧印精度の決定を表し、以下に説明する技術による原子間力顕微鏡により行われる。
【0027】
本発明の方法は、本発明の実施を、高い操作速度、好ましくは1~150m/分、より好ましくは1.5~100m/分、非常に好ましくは2~75m/分、より好ましくは3~50m/分、より特に5~40m/分、最も好ましくは10~25m/分の範囲の速度で可能にする。本明細書において、操作速度とは、好ましくは、コーティング組成物(B1a)で少なくとも部分的にコーティングされた基板(F1)が、本発明の方法の実施中に移動されるベルト速度、又は基板(F1)がそのように移動されるベルト速度を示す。
【0028】
複合物(F1B1)のコーティング(B1)、及び複合物(F1Ba1a)のコーティング組成物(B1a)、及びエンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、好ましくは、互いに鏡像であるエンボス構造を有する。
【0029】
ステップ(1-i)及びステップ(2-i)を含む代替法(i)
代替法(i)による本発明の方法は、少なくともステップ(1-i)、(2-i)、及び任意に(3)、及び任意に(4)を含む。
【0030】
ステップ(1-i)
本発明の方法のステップ(1-i)は、基板(F1)の表面の少なくとも一部にコーティング組成物(B1a)を塗布することを提供する。基板(F1)は、その上に塗布されるコーティング組成物(B1a)又はその上に塗布されるコーティング(B1)のための担体材料を表す。
【0031】
基板(F1)、又はコーティングされた基板が使用される場合の基板(F1)の表面に位置する層は、好ましくは、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリカーボネート及びポリ酢酸ビニル、好ましくはPBT及びPETなどのポリエステルを含む)、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリブタジエンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン(TPUを含む)、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール及びそれらの組成物からなる群からより特に選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマーから好ましくはなる。特に、好ましい基板、又はその表面の層は、例えば、PP(ポリプロピレン)などのポリオレフィンであり、これは、代替として、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックであってよく、代替として、単軸延伸又は二軸延伸により方向性がある又は方向性がない、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、及びそれらの物理的組成物(ブレンド)であってよい。特に好ましくは、PP、SAN、ABS、ASA、及びABS又はASAとPA又はPBT又はPCとのブレンドである。非常に特に好ましくは、PET、PBT、PP、PE及びポリメチルメタクリレート(PMMA)、又は耐衝撃性改質PMMAである。基板(F1)の材料として、特に好ましくは、ポリエステル、最も好ましくは、PETを用いる。代替として、基板(F1)自体(任意に、そこに塗布される少なくとも1種の上述のポリマーの層が存在する場合にもかかわらず)が、ガラス、セラミック、金属、紙及び/又は布地などの異なる材料から作製されてよい。その場合、基板(F1)は、好ましくはプレートであり、例えば、ロールツープレートエンボス加工装置に使用されてよい。
【0032】
基板(F1)の厚さは、好ましくは、2μm~5mmである。特に好ましくは、25~1000μm、より特には50~300μmの層の厚さである。
【0033】
基板(F1)は、好ましくはフィルム、より好ましくはフィルムウェブ、非常に好ましくは連続フィルムウェブである。この場合、基板(F1)は、好ましくはロールツーロールエンボス加工装置に使用されてよい。
【0034】
本発明の意味では、「連続フィルム」又は「連続フィルムウェブ」という用語は、好ましくは100m~10kmの長さを有するフィルムを指す。
【0035】
ステップ(1-i)が行われる場合(及び好ましくは、方法のステップ(2-i)、任意に(3)及び任意に(4)が実施されているとき、また、代替法(ii)の方法のステップ(1-ii)、(2-ii)、任意に(3)及び任意に(4)が実施されているとき)、基板(F1)は好ましくは動かされ、したがって、基板(F1)は移動性基板である。ステップ(1-i)及び(2-ii)の実施中、基板(F1)は、好ましくは、コンベヤベルトなどの輸送装置によって移動される。したがって、ステップ(1-i)及びステップ(2-ii)を実施するために使用される対応する装置は、好ましくはそのような輸送装置を備える。ステップ(1-i)を実行するために使用される対応する装置は、好ましくは放射線硬化性コーティング組成物(B1a)を基板(F1)の表面の少なくとも一部に塗布するための手段をさらに備える。同様のコメントが、ステップ(2-ii)を実施するために使用される対応する装置に関しても適用される。
【0036】
ステップ(2-i)
本発明の方法のステップ(2-i)は、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含む少なくとも1つのエンボス加工ツール(P1)を用いて、基板(F1)の表面に少なくとも部分的に塗布されるコーティング組成物(B1a)の少なくとも部分的なエンボス加工を提供する。
【0037】
使用されるエンボス加工ツール(P1)は、複合物(F1B1a)の表面にエンボス加工されるエンボス構造のネガ形態を担持する従来の印刷シリンダーであってよい。このシリンダーは、少なくとも部分的なエンボス加工のために、複合物(F1B1a)に押圧されてよい。既に述べたように、少なくとも部分的エンボス加工のために使用されるエンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、「ネガ構造」、言い換えれば、基板(F1)と少なくとも部分的にエンボス加工されたコーティング組成物(B1a)との複合物(F1B1a)が有するエンボス構造の鏡像を有しており、この複合物は、本発明の方法のステップ(2-i)の実施後に得られる。エンボス加工ツール(P1)は、好ましくは金属製のエンボス加工ツールであり、より好ましくはニッケル、鋼又は銅製であり、この場合、銅はクロムを少量含んでいてよいが、そうである必要はない。したがって、エンボス加工ダイ(p1)は、好ましくは金属製であり、より好ましくはニッケル製であり、任意でさらにリンを少量含む。しかし、代替的に、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などの軟質材料を使用して(p1)を製造することも可能である。
【0038】
ステップ(2-i)において、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、好ましくは、エンボス加工ツール(P1)として機能する第1のロールの一部であり、少なくとも部分的なエンボス加工に使用される複合物(F1B1a)は、第1のロールとは対向し、かつ第1のロールと逆回転する第2のロールを介して案内される。ステップ(2)による少なくとも部分的なエンボス加工は、好ましくは、相互に対向し逆回転する2つのロールによって形成されるロールニップのレベルで行われる。好ましくは、この場合、エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)は、複合物(F1B1a)のコーティング組成物(B1a)に面している。ここでの少なくとも部分的なエンボス加工は、好ましくは、エンボス加工ダイ(p1)を複合物(F1B1a)に押圧することによって達成される。
【0039】
使用されるエンボス加工ダイ(p1)は、代替的に、基板(F2)と、少なくとも部分的にエンボス加工され、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B2)とから構成される複合物(B2F2)であってよく、これについては以下でさらに詳しく説明する。この場合、複合物(F1B1aB2F2)は、少なくとも部分的なエンボス加工の後に得られる。エンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)は、好ましくは、ステップ(2-i)の実施中に、塗布されたコーティング組成物(B1a)に少なくとも部分的に押圧される。
【0040】
ステップ(2-i)で使用されるエンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)は、好ましくは再利用可能であり、好ましくは本発明の方法内で、少なくとも1つのエンボス構造を転写するために繰り返し採用されることができる。ステップ(2-i)は、好ましくは、マイクロ構造及び/又はナノ構造をエンボス構造としてコーティング組成物(B1a)上に転写する。
【0041】
エンボス加工ダイ(p1)は、すなわち、好ましくは複合物(F2B2)の場合、少なくとも部分的にエンボス加工され、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B2)を担持するフィルムウェブ(F2)を好ましくは含む。特に好ましくは、基板(F2)は、少なくとも部分的にエンボス加工され、少なくとも部分的にコーティング(B2)を担持する連続フィルムウェブであり、したがって、エンボス加工ダイ(p1)として使用される複合物(F2B2)を連続エンボス加工ダイにし、これは、基板(F1)が同様に連続フィルムウェブである場合に特にそうである。
【0042】
ステップ(2-i)による少なくとも部分的なエンボス加工に使用されるエンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)は、本発明の方法の任意のステップ(4)の実施後に得られ、基板(F1)と、少なくとも部分的にエンボス加工され、少なくとも部分的に硬化したコーティング(B1)とで構成される複合物(F1B1)が有するエンボス構造の鏡像に対して、「ネガ構造」(「ネガ形状」)を有する。
【0043】
ステップ(2-i)を実施するために使用される対応する装置は、少なくとも1つのエンボス加工ツール(P1)によって、基板(F1)の表面に少なくとも部分的に塗布されたコーティング組成物(B1a)を少なくとも部分的にエンボス加工する手段を備える。さらに、使用される装置は、好ましくは放射線硬化性コーティング組成物(B1a)を(F1)に塗布した後に、好ましくは連続フィルムウェブとして使用される基板(F1)に(P1)を押圧するための手段を有することが好ましく、この手段は、基板(F1)の運搬方向から見て、放射線硬化性コーティング組成物(B1a)を塗布する手段の好ましくは下流に配置される。
【0044】
本発明の方法の方法のステップ(2-i)による少なくとも部分的なエンボス加工は、エンボス加工ツール(P1)によって実行される。(P1)は、好ましくは、グリッド塗布機構、より好ましくはグリッドロール機構を好ましくは備えるエンボス用カレンダーであってよい。このカレンダーは、逆回転又は共回転し、高さ方向に好ましくは互いに所定の間隔を開けて互いの上に配置されたロールを有し、エンボス構造を与えられる複合物(F1B1a)はロールに供給され、ロールが形成するロールニップを通過し、該ニップ幅は可変に調整可能になっている。ここでグリッドロール機構は、金属ロール、例えばスチールロール又はニッケルロール、又は石英系ロール又は少なくとも1つのプラスチックでコーティングされたロールなどの、第1ロールを好ましくは含む。第1ロールは、エンボスロール(プレスロール)として機能する。ここでのグリッドロール機構は、第2ロール(加圧ロール又はプレスロール)を好ましくは含む。第1ロールは、エンボス加工ツール(P1)として機能し、複合物(F1B1a)の表面にエンボスされるエンボス構造のネガ形態を含んでいる。この目的のために、エンボス加工ツール(P1)は、好ましくは、このネガ形状を呈するエンボス加工ダイ(p1)として、複合物(F2B2)を提供される。エンボス加工される構造のネガ形状は、当業者に知られている慣例的な方法に従ってエンボス加工ツール(P1)上に生成されるが、構造及び材料に依存して、特定の方法が特に有利であり得る。好ましくは、本発明によって、これは、エンボス加工ツール(P1)として機能するエンボスロールによって、及び、好ましくはコーティングされ少なくとも部分的にエンボス加工されたフィルム、好ましくはフィルムウェブ、より好ましくは動いているのが好ましい連続フィルムウェブの形態であるエンボス加工ダイ(p1)として使用される複合物(F2B2)によって、達成される。エンボスされる複合物(F1B1a)は、加圧ロールによって反対方向に移動される。互いに所定の距離で配置された逆回転ロールによって形成されるロールニップの点で、ステップ(2-i)に従いエンボス加工が行われる。エンボス加工ダイ(p1)を案内する第1ロールは、ここで、複合物(F1B1a)をエンボスする役割を果たし、該複合物(F1B1a)はこのエンボスロールに対向する第2ロールによって案内され、該第2ロールはエンボス構造を与えられる複合物(F1B1a)を第1エンボスロールに押圧する。すでに上で観察したように、エンボスロールの構造、すなわちエンボス加工ダイ(p1)の構造は、連続構造であっても、断続構造(個々のエンボス構造のシーケンス)として設計されてよく、この場合、両方の構造の組み合わせも可能である。エンボスロール上のそれぞれの構造は、複合物の意図された構造に応じて、非常に広範な幾何学的形状のいずれかを有することができる。必要に応じて、ステップ(2-i)は、高温で、例えば、30~100℃、又は少なくとも80℃で実行されてよい。この場合、エンボス加工される複合物(F1B1a)は、まず加熱ロール機構を通過し、その後、上述の実際のエンボス加工操作が行われる前に、赤外線による照射があってよい。エンボス加工の後、エンボス加工された複合物(F1B1a)は、任意で、冷却のためのチルロール機構を通過する。代替的に、ステップ(2-i)が冷却を伴って行われてもよい:この場合、エンボス加工される複合物(F1B1a)は、上述の実際のエンボス加工操作が行われる前に、まずチルロール機構を通過する。
【0045】
ステップ(2-i)でエンボス加工ダイ(p1)として使用される複合物(F2B2)は、好ましくは、フィルムウェブ(F2)と、その上に塗布され、少なくとも部分的にエンボスされ、少なくとも部分的に硬化されるコーティング(B2)の複合物である。
【0046】
ステップ(2-i)の実施中、ステップ(2-i)でエンボス加工ダイ(p1)として使用された複合物(F2B2)は、好ましくは、エンボス加工ツール(P1)として機能する第1のロールを介して案内され、複合物(F1B1a)は、第1のロールと対向し、それに対して逆回転又はそれと共に回転する、好ましくは逆回転する第2のロールを介して案内される。
【0047】
ステップ(2-i)による少なくとも部分的なエンボス加工は、好ましくは、2つの相互に対向し、反対方向又は同一方向に回転する2つのロールよって形成されるロールニップのレベルで行われ、複合物(B2F2)の少なくとも部分的にエンボス加工されたコーティング(B2)は、複合物(F1B1a)のコーティング組成物(B1a)と向き合っている。ここでの少なくとも部分的なエンボス加工は、好ましくは、複合物(F1B1a)に複合物(F2B2)を押圧することによって達成される。
【0048】
ステップ(2-i)においてエンボス加工ダイ(p1)として好ましく使用され、基板(F2)と、少なくとも部分的にエンボスされ、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B2)とで構成される複合物(F2B2)は、以下では「マスター基板」又は「マスターフィルム要素」とも呼ばれる。基板(F2)がフィルムの場合、対応するマスターフィルム要素は「マスターフィルム」と呼ばれる。基板(F2)がフィルムウェブである場合、対応するマスターフィルム要素は、「マスターフィルムウェブ」と呼ばれる。マスターフィルム要素のコーティング(B2)は、以下で、「少なくとも部分的に硬化されたマスターコーティング」又は「マスターコーティング層」とも呼ばれ、また、硬化されたマスターコーティングを製造するために使用されるコーティング組成物(B2a)は、「マスターコーティング」と呼ばれる。好ましくは、複合物(F1B1)の(F2)と(B2)の間には、さらなる(コーティング)層は存在しない。しかしながら、複合物(F2B2)の(F2)と(B3)との間に少なくとも1つの接着促進剤層が存在することは可能であり、前記層は、この場合、UV照射に対して好ましくは透過性である。
【0049】
任意のステップ(3)
本発明の方法のステップ(3)は、ステップ(2-i)又はステップ(2-ii)の後に得られる複合物(F1B1a)内のコーティング組成物(B1a)の少なくとも部分的な硬化を提供し、少なくとも部分的な硬化の期間中、コーティング組成物(B1a)は、エンボス加工ダイ(p1)と接触している。ステップ(3)の実施後、基板(F1)と、少なくとも部分的にエンボス加工され、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B1)から構成される複合物(B1F1)が得られる。
【0050】
ステップ(2-i)及び(3)は、好ましくは同時に実施される。その場合、ステップ(3)による少なくとも部分的な硬化は、好ましくはステップ(2-i)の実施中にその場で行われる。
【0051】
したがって、ステップ(3)を実施するのに使用される対応する装置は、コーティング組成物(B1a)に硬化性放射線を照射するための少なくとも1つの放射線源を備えることが好ましい。コーティング組成物(B1a)が好ましくはUV放射線硬化性のコーティング組成物であるため、使用される硬化性放射線は好ましくはUV放射線である。コーティング組成物(B1a)が放射線硬化性でない場合は、それは好ましくは化学的硬化性である。その場合、ステップ(3)による硬化は、例えば、適切な熱放射源を使用して熱的に行われる。同様に、当然ながら、組合せ硬化、すなわち、熱硬化とUV照射による硬化も可能である。
【0052】
放射線硬化に好適な照射線源の例には、低圧、中圧及び高圧の水銀ランプ、及び蛍光灯、パルスランプ、ハロゲン化金属ランプ(ハロゲンランプ)、レーザー、LED、及びさらには電子フラッシュユニットがあり、結果として光開始剤を使用しないで放射線硬化が可能であり、又はエキシマユニットがある。放射線硬化は、高エネルギー照射、すなわちUV照射又は日光への曝露により、又は高エネルギー電子による照射によって生じる。UV硬化の場合、架橋に通常十分な放射線量は、80~3000mJ/cmの範囲にある。多数の放射線源、例えば2~4個の放射線源を硬化のために使用することもできることが理解されよう。これらの放射線源は、それぞれ異なる波長範囲で放射することができる。
【0053】
ステップ(3)における少なくとも部分的な硬化は、好ましくは基板(F1)を通した照射によって行われる。その場合、使用される放射線に対する基板(F1)の透過性は、好ましくはコーティング組成物(B1a)中に存在する、使用される少なくとも1つの光開始剤に合わせて調整されることが有利である。したがって、例えば、基板(F1)としての材料PET、したがって、例えばPETフィルムは、400nm未満の波長を有する放射線に対して透過性を有する。このような放射線の場合、ラジカルを発生させる光開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。したがって、この場合、コーティング組成物(B1a)中に、少なくとも1つのこのような光開始剤が存在することが好ましい。
【0054】
任意のステップ(4)
本発明の方法のステップ(4)は、エンボス加工ダイ(p1)からの複合物(F1B1)の任意の除去を提供する。したがって、基板(F1)と、少なくとも部分的にエンボスされ、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B1)から構成される複合物(F1B1)を得ることが可能である。ステップ(4)を実施することが好ましい。
【0055】
ステップ(1-ii)及びステップ(2-ii)を含む代替法(ii)
代替法(ii)による本発明の方法は、少なくともステップ(1-ii)、(2-ii)、及び任意に(3)、及び任意に(4)を含む。ステップ(3)及び(4)は、代替法(i)に関連して既に上述しており、代替法(ii)内でも同様に実施されることができる。
【0056】
代替法(i)に関連して説明した好ましい実施形態のすべては、代替法(ii)に同様に適用することができる。
【0057】
ステップ(1-ii)
本発明の方法のステップ(1-ii)は、コーティング組成物(B1a)を、エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)の、少なくとも部分的にエンボス加工された少なくとも一部の表面に塗布することを提供する。上述したように、この場合に使用されるエンボス加工ダイは、基板(F2)と、少なくとも部分的にエンボスされ、少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B2)とで構成される複合物(B2F2)であってよい。
【0058】
ステップ(2-ii)
本発明の方法のステップ(2-ii)は、基板(F1)を、エンボス加工ダイ(p1)に塗布されたコーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に適用し、(p1)上に位置する複合物(B1aF1)を得ることを提供する。
【0059】
ステップ(1-ii)においてエンボス加工ダイ(p1)として複合物(B2F2)が使用される場合、この複合物は、複合物(B1aB2F2)を得るためにステップ(2-ii)の実施中にコーティング組成物(B1a)を好ましくはその少なくとも部分的にエンボス加工された表面の少なくとも一部に塗布した後に、エンボス加工ツール(P1)として機能する第1のロールを通して案内され、そして、ステップ(2-ii)で使用される基板(F1)は、第1のロールと対向して同一方向又は反対方向、好ましくは反対方向に回転する第2のロールを通して案内される。ステップ(2-ii)による少なくとも部分的なエンボス加工は、好ましくは、2つの相互に対向し、反対方向又は同一方向に、基板(F1)に面する複合物(B1aB2F2)のコーティング組成物(B1a)を伴って回転する2つのロールよって形成されるロールニップのレベルで行われる。この場合、少なくとも部分的なエンボス加工は、圧力を加えることによって、又は基板(F1)を複合物(B1aB2F2)にプレスすることによって好ましくは達成される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本発明の方法のステップ(1-i)及び(2-i)、ならびに任意に(3)及び任意に(4)を実施するために使用でき、及び、本発明の方法を例示的に説明するために使用される、装置の側面図を概略的に示している。この装置は、基本的に類似した方法で、本発明の方法のステップ(1-ii)及び(2-ii)、ならびに(3)及び任意に(4)を実施するためにも同様に採用されることができる。この装置を用いて、マイクロ構造及び/又はナノ構造などの構造体を、好ましくはマスターフィルム要素として存在するエンボス加工ダイ(F2B2、p1)から、(B1a)でコーティングされた基板(F1)に転写することが可能である。したがって、この装置は、一般に転写装置としても参照され、図1では参照記号(10)が与えられる。
【0061】
転写装置(10)のコアは、エンボス領域(1)であり、そこには、溶融シリカから作製されたロールジャケットとして構成されたプレスロール(2)が存在している。プレスロール(2)は、回転するよう駆動される。プレスロール(2)に沿って照明ユニット(3)の形で照射線源が配置されており、該照明ユニット(3)はUV光を発生し、特に、プレスロール(2)の長さ方向に配置されたUV-LEDの列を備えている。図1に示されているように、照明ユニット(3)は、プレスロール(2)の内部に配置されてもよい。エンボス加工領域(1)には、加圧ロール(4)が、プレスロール(2)を押圧するよう配置されている。転写装置(10)のダイフレーム(5)には、モータ駆動で回転することができる、2つのフィルムウェブローラー(6)及び(7)が配置されている。当然ながら、フィルムウェブローラー(6)及び(7)は、ダイレーム(5)以外にも装着配置され得、例えば、キャビネット要素内に、又は実際の転写装置(10)の外側に配置されてもよい。ここではダイフレームに配置されているよう示されているフィルムウェブローラー(6)及び(7)上には、連続エンボス加工ダイを表すマスターフィルムウェブ(8)が巻かれている。マスターフィルムウェブ(8)は、転写表面上でマスターコーティング層を提供され、マスターコーティング層には表面レリーフとして、転写されるマイクロ構造及び/又はナノ構造のネガ形態が存在している。マスターコーティング層は、少なくとも一部が硬化しているため、そのレリーフ様の構造が安定している。マスターフィルムウェブ(8)は複合物(F2B2)を構成している。マスターフィルムウェブ(8)は、第1のフィルムウェブローラー(6)から走り出て、様々な偏向ローラーシステムを通って、エンボス領域(1)に供給され、図1で明らかなように、プレスロール(2)と加圧ロール(4)との間の領域内に上から垂直方向に走り入る。その領域では、それはプレスロール(2)の外周部にピンと張った状態で案内され、次に、再度、プレスロール(2)を離れて、もう一度、ウェブテンショナーを備える偏向ローラーシステムを通って、第2のフィルムウェブローラー(7)に提供され、それに巻き取られる。基板(F1)を形成してマイクロ構造及び/又はナノ構造などの構造を設けられるフィルムウェブ(9)が供給され、該フィルムウェブは、フィルムウェブローラー(11)からスタートし、ここでもウェブテンショナーを備えた様々な偏向ローラーシステムを通ってエンボス領域(1)に至り、この領域では、加圧ロール(4)の外周部にピンと張った状態で移動し、そこから、プレスロール(2)上の加圧ロール(4)の接触領域又はこれらの要素間に形成されたロールニップの領域に入る。フィルムウェブ(9)は、図1の表示によれば、この領域を下方向に垂直に離れ、再度、偏向ローラーシステム及びウェブタイトナにより案内され、フィルムウェブローラー(12)に案内され、完全な処理された製品として巻き取られる。エンボス領域(1)へのその経路で、又はプレスロール(2)と加圧ロール(4)との間のロールニップで、フィルムウェブ(9)は、プレス領域(1)でプレスロール(2)に面する表面に、この場合プレス領域(1)の外側に配置されているコーティング塗布ユニット(27)により、コーティング層を提供される。したがって、コーティング塗布ユニット(27)は、本発明の方法のステップ(1-i)により、(F1)として使用されるフィルムウェブ(9)にコーティング組成物(B1a)を塗布する。プレス領域(1)では、フィルムウェブ(9)は、次に、本発明の方法ステップ(2-i)を実施するため、まだ硬化していないコーティング層を備えたその表面によって、マスターフィルムウェブ(8)の(マスターコーティング層が設けられた)表面と一緒にされる。構造を転写する前に、超音波ノズルによって、マスターコーティング層は少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤によって湿潤される。この場合、フィルムウェブ(9)は、加圧ロール(4)を介して移動し、マスターフィルムウェブ(8)は、プレスロール(2)を介して移動する。フィルムウェブ(9)とマスターフィルムウェブ(8)の両方のウェブは、それぞれのコーティング層(マスターフィルムウェブ(8)の場合は、コーティング(B2)に対応する少なくとも一部が硬化したマスターコーティング層;フィルムウェブ(9)の場合は、コーティング組成物(B1a)に対応する未硬化コーティング層)で互いに向き合っている。加圧ロール(4)がプレスロール(2)に押圧される領域では、マイクロ構造及び/又はナノ構造などの転写される構造のネガ画像(このネガ画像はマスターコーティング層(B2)に形成されている)が、コーティング組成物(B1a)に対応する未硬化コーティング層に押圧され、このようにして構造が転写される。同時に、照明ユニット(2)により、UV照射、及び、したがって、フィルムウェブ(9)上のコーティング層のコーティング組成物(B1a)に対応する未硬化コーティング層の少なくとも部分的な硬化が、このコーティング層がマスターコーティング層(8)とまだ接触している限り、行われる。したがって、コーティング層の少なくとも部分的な硬化は、構造の転写中に、直接、その場で行われる。フィルムウェブ(9)又はその上に塗布されたまだ硬化していないコーティング層への照射は、ここではフィルム材料(9)を通して、外部からプレスシリンダー(2)に照射されることで達成される。あるいは、照射は、プレスシリンダー(2)の外表面の溶融シリカ材料を通して、及びマスターフィルムウェブ(8)の材料及びその上に塗布されたマスターコーティング層を通して行われる。したがって、マスターフィルムウェブ(8)とマスターコーティング層は、使用される放射線(この場合はUV光)を透過するように設計される。プレスロール(2)の外表面は、ここでは溶融シリカからなると説明されている。しかし、プレスロール(2)の内部から放射される硬化性の放射線(UV光以外でもよい)に対して透過性があれば、他の如何なる材料でもここでは原則的には適している。あるいは、UV照射を供給する照明ユニット(3)の代わりに、コーティング組成物(B1a)が非放射線硬化性コーティング組成物である場合には、例えば、熱エミッタを使用することも可能である。UV照射による少なくとも部分的な硬化に続く可能性は、例えば、IR放射による任意の後露光である。本発明の方法の任意のステップ(4)によるこの硬化操作の終わりに、フィルムウェブ(9)及びマスターフィルムウェブ(8)は、それぞれ今や構造化された層複合物(F1B1)及びマスターフィルム要素(F2B2)の分離により、互いに分離する。このようにして所望の構造(すなわち複合物(F1B1))を与えられたコーティングされたフィルムウェブ(9)は、完全な製品としてフィルムウェブローラー(12)に供給され、その上に巻かれる。照明ユニット(3)によってプレスロール(2)に外部からの照射がある場合、所望の構造(すなわち、複合物(F1B1))を与えられたコーティングされたフィルムウェブ(9)は、マスターフィルムウェブ(8)(すなわち、複合物(F2B2))とフィルムウェブ(9)(すなわち、複合物(F1B1))が切り替わるように構成が選択されている場合には、不透明であり得る。本発明の方法のステップ(1-i)によるコーティング塗布ユニット(27)のコーティングは、次に、マスターフィルムウェブ(8)への操作の制限なしに行うことができる。
【0062】
図2図2は、本発明の方法のステップ(1-i)及び(2-i)、ならびに任意に(3)及び任意に(4)を実施するために使用されることができ、本発明の方法の例示に説明に使用される装置の側面図を概略的に示している。この装置により、特に、従来のエンボス加工ツール(P1)を用いて、マイクロ構造及び/又はナノ構造などの構造を、(B1a)でコーティングされた基板(F1)に転写すること、及び、少なくとも部分的に硬化させた後に、複合物(F1B1)を得ることが可能である。
【0063】
図2に示されているマスター転写装置(30)は、転写原理に従って作動し、そこでは、所望のネガ構造は、この場合マスタープレスシリンダー(17)である構造化プレスシリンダー又はプレスロールから、複合物(F1B1a)に対応するマスターフィルムウェブ(8b)に塗布されたまだ硬化していないコーティング層に、直接エンボス化され、そして、このコーティング層は、次に、その上に適用された構造と共に少なくとも部分的に硬化され、硬化は、照明ユニット(3)によりその場で行われて、複合物(F1B1)に対応するマスターフィルムウェブ(8)を得る。この方法では、基板(F1)として使用されるフィルムウェブ(8a)は、担体材料のみ、言い換えると、マスターコーティングが塗布されていない純粋なフィルムを含むフィルムウェブローラー(18)から引き出され、様々な偏向ローラーシステム及びウェブテンションシステムを介して案内されて、装置のエンボス領域(1)に導入される。そこで、フィルムウェブ(8a)は、加圧ロール(4)とマスタープレスシリンダー(17)との間の領域に入り、プレス領域の外側で、コーティング塗布装置(27)内部でまだ硬化していないマスターコーティング層(コーティング組成物B1aに対応する)を供給される。まだ硬化していないマスターコーティング層を有するマスターフィルムウェブ(8b)がマスタープレスシリンダー(17)の外面の一部に沿って走行するエンボス領域(1)では、マスタープレスシリンダー(17)の外表面にエンボス加工されたマイクロ構造及び/又はナノ構造が、ネガ画像としてマスターフィルムウェブ(8b)のマスターコーティング層に導入され、転写される。構造を転写する前に、プレスシリンダー(17)の外表面にエンボス加工されたマイクロ構造及び/又はナノ構造は、超音波ノズルを用いて、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤によって湿潤される。未硬化コーティング組成物(B1a)を担持するマスターフィルムウェブ(8b)は、次に、本発明の方法の任意のステップ(3)に従って、少なくとも部分的に硬化される。ここで硬化は、例えばUV-LEDで形成されたユニットによるように、UV放射により、照明ユニット(3)による照射により、その場で行われる。結果として生じるマスターフィルム(8)、言い換えると、複合物(F1B1)は、その後、マスタープレスシリンダー(17)の外表面から取り出され、このようにして完成したマスターフィルムウェブ(8)は、フィルムウェブローラー(19)に巻き取られる。したがって、フィルムウェブローラー(19)は、塗布されたマスターコーティング層、ならびにその中にエンボス加工されたマイクロ構造及び/又はナノ構造のネガ画像を有する完成されたマスターフィルムウェブ(8)を含む。このフィルムウェブローラー(19)は、取り外され、図1による転写装置(10)又は同じ原理で作動する別の転写装置の第1フィルムウェブローラー(6)として使用されることができる。
【0064】
コーティング組成物(B1a)
任意の種類のコーティング組成物が、本発明の方法内のコーティング組成物(B1a)として使用され得る。コーティング組成物(B1a)は、物理的乾燥性の、熱硬化性の、化学的硬化性の、及び/又は放射線硬化性のコーティング組成物(B1a)であってよい。好ましくは、コーティング組成物(B1a)は、化学的硬化性の、熱的硬化性の及び/又は放射線硬化性のコーティング組成物であり、より好ましくは放射線硬化性のコーティング組成物である。したがって、任意のステップ(3)による少なくとも部分的な硬化は、好ましくは放射線硬化によって行われる。
【0065】
ここでの物理的乾燥とは、好ましくは、コーティング(B1)を形成するために溶媒を単純に蒸発させることである。ここでの熱硬化は、好ましくは、室温を超える温度(23℃超)に起因する硬化メカニズムを伴う。これは、例えば、高温で分解し、ラジカル又はイオン重合を開始する開始剤からのラジカル又はイオン、好ましくは、ラジカルの形成であり得る。このような熱活性化可能な開始剤の例としては、80℃での半減期が100時間未満であるものが挙げられる。化学的硬化とは、好ましくは、例えば、OH基とCOOH基の反応などの重縮合、又は重付加(NCO基とOH基又はアミノ基との反応)のような、少なくとも2つの異なる相互に補完的な反応性官能基の反応を指す。
【0066】
コーティング組成物(B1a)が、物理的乾燥性の、熱硬化性の及び/又は化学的硬化性のコーティング組成物である場合、それは当業者に知られている少なくとも1つの慣用的なポリマーを結合剤として使用して調製される。この結合剤は、好ましくは、架橋可能な官能基を有する。当業者に知られている任意の慣用的な架橋可能な官能基が、この文脈では適切である。より詳細には、架橋可能な官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、イソシアネート、ポリイソシアネート及びエポキシドからなる群から選択される。ポリマーは、好ましくは発熱的又は吸熱的に硬化又は架橋可能であり、好ましくは-20℃~250℃、又は18℃~200℃の温度範囲で硬化又は架橋可能である。ポリマーとして特に適しているのは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーである。ここでのポリマーは、特にOH官能性であってよい。その場合、それらは「ポリオール」という一般用語に包含され得る。このようなポリオールは、例えば、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリウレアポリオール、ポリエステル-ポリアクリレートポリオール、ポリエステル-ポリウレタンポリオール、ポリウレタン-ポリアクリレートポリオール、ポリウレタン変性アルキド樹脂、脂肪酸変性ポリエステル-ポリウレタンポリオール、及び記載されているポリオールの混合物であってもよい。ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが好ましい。
【0067】
この文脈では、イソシアネート及び/又はオリゴマー化イソシアネート基の関与により硬化する少なくとも1つのポリマー、非常に好ましくは少なくとも1つの対応するポリウレタン及び/又は少なくとも1つの対応するポリウレア(例えば、「ポリアスパラギン酸結合剤」と呼ばれるもの)を使用することが可能である。ポリアスパラギン酸結合剤は、アミノ官能化合物、特に第二級アミンとイソシアネートとの反応から変換される構成成分である。少なくとも1つのポリウレタンを使用する場合、特に好適なものは、ポリオールなどのヒドロキシル含有構成成分と少なくとも1つのポリイソシアネート(芳香族及び脂肪族イソシアネート、ジ-、トリ-及び/又はポリイソシアネート)との間の重付加反応によって調製可能なポリウレタンをベースとする樹脂である。通常、これは、ポリオール中のOH基とポリイソシアネート中のNCO基との化学量論変換が必要である。しかし、ポリイソシアネートは「過剰架橋」又は「架橋不足」となり得る量でポリオール構成成分に添加することができるため、使用される化学量論比はまた変化し得る。エポキシ樹脂、すなわちエポキシドをベースとする樹脂が使用される場合、好適なものは、好ましくはエポキシドをベースとする樹脂であり、これは、官能基として、分子内に末端エポキシド基とヒドロキシル基を有するグリシジルエーテルから調製される。これらは、好ましくは、ビスフェノールA及びにエピクロロヒドリン又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応生成物、ならびにそれらの混合物であり、これらはまた、反応性希釈剤の存在下で使用される。このようなエポキシドをベースとする樹脂の硬化又は架橋は、慣用的に、エポキシ環のエポキシド基の重合によって、硬化剤として他の反応性化合物のエポキシド基との化学量論量での付加反応の形態での重付加反応によって、(したがって、この場合、エポキシド基あたり活性水素が1当量存在する必要であり(すなわち、エポキシド当量あたり1個のH活性当量が硬化に必要である))、又は、エポキシド基とヒドロキシル基を介した重縮合によって達成される。適切な硬化剤の例は、ポリアミン、特に(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)芳香族及び(ヘテロ)脂環式ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミノアミド、及びポリカルボン酸及びその無水物である。
【0068】
コーティング組成物(B1a)は、放射線源を使用することによって、好ましくはUV放射線を使用することによって硬化させることができる。その結果、(B1a)は、好ましくはUV放射線硬化性のコーティング組成物である。
【0069】
したがって、(B1a)は、不飽和炭素二重結合、より好ましくは(メタ)アクリル基を好ましくは含む。このコーティング組成物(B1a)は、好ましくは少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリレートを含む。(N)IR及び/又はUV光を用いて硬化させる場合、コーティング組成物(B1a)は、好ましくは、照射された波長の光によってラジカルに分解されることができる少なくとも1つの光開始剤を含み、これらのラジカルが、ラジカル重合を開始することができる。一方、電子放射線で硬化させる場合には、このような光開始剤の存在は必要ではない。
【0070】
コーティング組成物(B1a)は、好ましくは、放射線硬化性コーティング組成物である。「放射線硬化性(radiation-curable)」及び「放射線硬化(radiation curing)」という用語は、ここでは相互交換可能である。「放射線硬化性」という用語は、電磁波放射及び/又は粒子放射による重合性化合物のラジカル重合を好ましくは指し、例は、λ=400超~1200nm、好ましくは700~900nmの波長範囲の(N)IR光、ならびに/又はλ=100~400nm、好ましくはλ=200~400nm、より好ましくはλ=250~400nmの波長範囲のUV光、ならびに/又は150~300keVの範囲、及びより好ましくは、少なくとも80、好ましくは80~3000mJ/cmの放射線量の電子放射線である。硬化は、特に好ましくは、放射線硬化として、UV放射線を用いて行われる。コーティング組成物(B1a)は、適切な放射線源を用いて硬化させることができる。その結果、(B1a)は、好ましくはUV放射線硬化性のコーティング組成物である。
【0071】
(N)IR及び/又はUV光を使用して硬化させる場合、コーティング組成物(B1a)は、構成成分(a)として少なくとも1つの光開始剤を含む。この光開始剤は、照射波長の光によってラジカルに分解されることができ、このラジカルが次にラジカル重合を開始することができる。対照的に、電子放射線による硬化の場合、このような光開始剤の存在は必要ない。コーティング組成物(B1a)は、好ましくは、構成成分(a)として少なくとも1つの光開始剤を含み、この光開始剤は、照射された波長の光によってラジカルに分解され、このラジカルによってラジカル重合を開始することができる。
【0072】
UV光開始剤などの光開始剤は、当業者に知られている。企図されているものの例としては、ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルアリールケトン、チオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、ケタール、イミダゾール又はフェニルグリオキシル酸、及びそれらの混合物が含まれる。
【0073】
ホスフィンオキシドは、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート又はビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドとしての、例えばモノアシルホスフィンオキシド又はビスアシルホスフィンオキシドである。ベンゾフェノン系は、例えば、ベンゾフェノン、4-アミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、Michler’sケトン、o-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4-ジメチルベンゾフェノン、4-イソプロピルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジクロロベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4-プロポキシベンゾフェノン又は4-ブトキシベンゾフェノンであり、α-ヒドロキシアルキルアリールケトン系は、例えば、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン、(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)、1-ヒドロキシアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、又は共重合形態の、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペン-2-イルフェニル)プロパン-1-オンを含有するポリマーである。キサントン系及びチオキサントン系は、例えば、10-チオキサントン、チオキサンテン-9-オン、キサンテン-9-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン又はクロロキサンテノンであり、アントラキノン系は、例えば、β-メチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズ[de]アントラセン-7-オン、ベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン又は2-アミルアントラキノンである。アセトフェノン系は、例えば、アセトフェノン、アセトナフトキノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α-フェニルブチロフェノン、p-モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4-モルホリノベンゾフェノン、p-ジアセチルベンゼン、4’-メトキシアセトフェノン、α-テトラロン、9-アセチルフェナントレン、2-アセチルフェナントレン、3-アセチルフェナントレン、3-アセチルインドール、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,4-トリアセチルベンゼン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-2-オン又は2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンである。ベンゾイン系及びベンゾインエーテル系は、例えば、4-モルホリノデオキシベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル又は7H-ベンゾインメチルエーテルである。ケタール系は、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、又はベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール系である。使用することができる光開始剤は、例えば、ベンズアルデヒド、メチルエチルケトン、1-ナフトアルデヒド、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン又は2,3-ブタンジオンである。典型的な混合物は、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノン又は2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ならびに4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを含む。
【0074】
これらの光開始剤の中で好ましいものは、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンである。したがって、好ましくは、少なくとも1つのこのような光開始剤が、構成成分(a)として使用される。市販の光開始剤は、例えば、BASFSE製のIrgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)TPO-L及びLucirin(登録商標)TPO、及びDarocure(登録商標)1173という製品である。
【0075】
コーティング組成物(B1a)は、好ましくは、少なくとも1つの、好ましくは末端の、炭素二重結合を含む少なくとも1つの構成成分(b)を含む。好ましくは、これは、(メタ)アクリル基である。構成成分(b)は、例えば、1つ、又は2つ、又は3つ、又は他にはそれより多い(メタ)アクリル基などの、1つ又は2つのエチレン性不飽和基を好ましくは含む。2つ以上の異なる構成成分(b)を使用することも可能である。
【0076】
構成成分(b)の例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,1-、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ又はトリ(メタ)アクリレート、及び例えば
ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、マルチトール又はイソマルトなどの糖アルコールのジ及びポリ(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート及びラウリル、ステアリル、イソデシル、オクチル及びデシル(メタ)アクリレート、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸と1~20個の炭素原子を含むアルコールと、好ましくは任意に、1~20個の炭素原子を含むヒドロキシ置換アルカノールとのエステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又は4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの単官能、二官能及び/又は三官能(メタ)アクリル酸エステルである。
【0077】
特に好ましい構成成分(b)は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである。
【0078】
構成成分(b)として、さらに又は代替的に、少なくとも1つのポリエステル、ポリエーテル、カーボネート、エポキシド、ポリ(メタ)アクリレート、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は不飽和ポリエステル樹脂を使用することも可能である。
【0079】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートを、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び任意にジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン又はジチオール又はポリチオールなどの鎖延長剤と反応させることによって得ることができる。乳化剤を添加せずに水中で分散できるウレタン(メタ)アクリレートは、イオン性及び/又は非イオン性親水性基をさらに含み、これらの親水性基は、例えば、ヒドロキシカルボン酸などの構成成分によりウレタンに導入される。この種のウレタン(メタ)アクリレートは、構成成分として:
(a) 例えば、2つの構成成分のコーティング材料について、上で記載されている、ポリイソシアネートのうちの少なくとも1つとしての、少なくとも1つの有機脂肪族、芳香族又は脂環式ジ又はポリイソシアネートと、
(b) 好ましくは、ポリアクリレートポリオールについて、上で記載されている、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基を有するヒドロキシル含有モノマーの1つである、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物と、
(c) 任意に、ポリエステルについて、上で記載されている、例えば多価アルコールのうちの1つとして、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物と、
を実質的に含む。
【0080】
ウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは200~20000、特に500~10000、より好ましくは600~3000g/mol(テトラヒドロフランとポリスチレンを標準品として使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定)の数平均モル質量Mnを有する。ウレタン(メタ)アクリレートは、1000gのウレタン(メタ)アクリレートあたり、好ましくは1~5、より好ましくは2~4molの(メタ)アクリル基を有する。構成成分(b)として使用できる市販のウレタン(メタ)アクリレートの例としては、Laromer(登録商標)UA9033、Laromer(登録商標)UA9065、又はDesmolux(登録商標)XP2738などのLaromer(登録商標)又はDasmolux(登録商標)シリーズの製品である。
【0081】
エポキシド(メタ)アクリレートは、エポキシドを(メタ)アクリル酸との反応させることによって得ることができる。適切なエポキシドの例は、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル又は脂肪族グリシジルエーテル、好ましくは芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルのものが含まれる。可能なエポキシド化オレフィンの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが含まれ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はエピクロロヒドリンが特に好ましく、エチレンオキシド及びエピクロロヒドリンがさらに特に好ましい。芳香族グリシジルエーテルは、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば、2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体、フェノールをベースとするエポキシノボラック及びクレゾールをベースとするエポキシノボラックである。脂肪族グリシジルエーテルは、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン))及び水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン))である。エポキシド(メタ)アクリレートは、200~20000、より好ましくは200~10000g/mol、非常に好ましくは250~3000g/molの数平均モル質量Mnを好ましくは有し、(メタ)アクリル基の量は、1000gのエポキシド(メタ)アクリレートあたり、好ましくは1~5個、より好ましくは2~4個である(ポリスチレンを標準品として、テトラヒドロフランを溶離液として使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)。
【0082】
(メタ)アクリレート化したポリ(メタ)アクリレートは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の対応するエステルであり、好ましくは(メタ)アクリル酸、より好ましくはポリアクリレートポリオールを含むアクリル酸であり、ポリ(メタ)アクリレートポリオールをアクリル酸でエステル化することによって得ることができる。ポリアクリレートポリオールは、例えば、2構成成分のコーティング材料について上に記載したものであってよい。
【0083】
様々な官能基を有するカーボネート(メタ)アクリレートが入手可能である。カーボネート(メタ)アクリレートの数平均分子量Mnは、好ましくは、3000g/mol未満、より好ましくは1500g/mol未満、より好ましくは800g/mol未満である(ポリスチレンを標準品としてゲル浸透クロマトグラフィーによって決定;溶媒はテトラヒドロフラン)。カーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、EP0092269A1に記載されているように、炭酸エステルを多価アルコール、好ましくは二価アルコール(ジオール、例えばヘキサンジオール)とのエステル交換、及びその後に遊離OH基を(メタ)アクリル酸でエステル化、又は他には(メタ)アクリルエステルとのエステル交換による単純な方法で得ることができる。それらは、例えば、ホスゲン、ウレア誘導体を多価アルコール、例えば二価アルコールとの反応によって得ることもできる。また、明記したジオール又はポリオールの1つと炭酸エステル及びヒドロキシル含有(メタ)アクリレートとの反応生成物などの、ポリカーボネートポリオールの(メタ)アクリレートが考えられる。好適な炭酸エステルの例は、エチレンカーボネート、1,2-又は1,3-プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はジブチルカーボネートである。好適なヒドロキシル含有(メタ)アクリレートの例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ及びジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ及びジ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールモノ、ジ及びトリ(メタ)アクリレートである。カーボネート(メタ)アクリレートは、好ましくは、脂肪族カーボネート(メタ)アクリレートである。
【0084】
不飽和ポリエステル樹脂は、以下の構成成分:
(a1) マレイン酸又はその誘導体と、
(a2) 少なくとも1つの環式ジカルボン酸又はその誘導体と、
(a3) 少なくとも1つの脂肪族又は脂環式ジオールと、
から好ましくは合成される。
【0085】
誘導体は、ここでは、好ましくは、
- モノマー形態又は他にはポリマー形態の対応する無水物、
- モノアルキル又はジアルキルエステル、好ましくはモノもしくはジ-C~Cアルキルエステル、より好ましくはモノメチルもしくはジメチルエステル、又は対応するモノエチルもしくはジエチルエステル、
- 又は、モノビニル及びジビニルエステル、ならびに、
- 混合エステル、好ましくは異なるC~Cアルキル構成成分を有する混合エステル、より好ましくは混合メチルエチルエステル、
を指す。
【0086】
(B1a)が、構成成分(b)を含む場合、その構成成分は、好ましくは少なくとも1
種のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0087】
コーティング構成成分(B1a)は、構成成分(c)として、添加剤をさらに含んでよい。「添加剤」という用語は、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、13頁から、当業者に知られている。構成成分(c)として使用するのに好ましいのは、少なくとも1つのレオロジー添加剤である。この用語も、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、497頁から、当業者に知られている。「レオロジー添加剤」及び「レオロジー補助剤」という用語は、相互交換可能である。構成成分(c)として採用される添加剤は、好ましくは、流動制御剤、表面活性剤、例えば、表面活性物質、湿潤剤及び分散剤、ならびに増粘剤、チキソトロピー剤、可塑剤、及び潤滑及びブロッキング防止添加剤、さらにそれらの混合物からなる群から選択される。これらの用語は同様に、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年から、当業者に知られている。流動制御剤は、粘度及び/又は表面張力を低下させることにより、コーティング組成物が、均一に流れ出すフィルムを形成する一助となる構成成分である。湿潤剤及び分散剤は、表面張力、又は一般に界面張力を低下させる構成成分である。潤滑及びブロッキング防止添加剤は、粘着(ブロッキング)を低減する構成成分である。市販の添加剤の例は、Efka(登録商標)SL3259、Byk(登録商標)377、Tego(登録商標)Rad2500、Tego(登録商標)Rad2800、Byk(登録商標)394、Byk-SILCLEAN3710、Silixan(登録商標)A250、NovecFC4430及びNovecFC4432という製品である。添加剤(b)として使用するのに好ましいは、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレート、ならびに/又は少なくとも1つのオリゴシロキサン及び/もしくはポリシロキサンなどの少なくとも1つのシロキサン、ならびに/又はフッ素含有のポリエステル、好ましくは脂肪族ポリエステルなどの少なくとも1つのフッ素含有ポリマーである。特に、構成成分(c)として好ましいのは、シロキサンである。使用に特に好ましいのは、シリコーン(メタ)アクリレートである。
【0088】
コーティング組成物(B1a)は、例えば、充填剤、顔料、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピルパーカーボネート、tert-ブチルペルオクトエート又はベンゾピナコール、ジ-tert-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、シリル化ピナコール、などの熱活性開始剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル及び4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなどのヒドロキシル含有アミンN-オキシド、及び有機溶媒、及び安定剤などの、構成成分(a)と(b)と(c)とは異なる、少なくとも1つのさらなる構成成分(d)を含んでよい。しかし、好ましくは、(B1a)中に、有機溶媒は含まれない。構成成分(c)は、それぞれの場合において、コーティング組成物(B1a)の総質量に基づいて、(B1a)中に0~15質量%の範囲、好ましくは0~12質量%の範囲、より好ましくは0~10質量%の範囲の量で存在してよい。
【0089】
コーティング組成物(B1a)は、好ましくは、
0.01~15質量%の範囲、好ましくは0.1~12質量%の範囲、より好ましくは0.5~10質量%の範囲の量の構成成分(a)としての少なくとも1つの光開始剤と、
40~99質量%の範囲、好ましくは45又は45超~90質量%の範囲、より好ましくは55~85質量%など、50又は55超~85質量%の範囲、非常に好ましくは55又は60~80質量%の範囲の量の少なくとも1つの成分(b)、
0.01~5質量%の範囲、好ましくは0.05~4.5質量%の範囲、より好ましくは0.1~4質量%の範囲、非常に好ましくは0.2又は0.5~3質量%の範囲の量の構成成分(c)としての少なくとも1つの添加剤と、
を含み、それぞれの場合において、コーティング組成物(B1a)の総質量に基づく。
【0090】
コーティング組成物(B1a)の固体含有量は、コーティング組成物(B1a)の総質量に基づいて、それぞれの場合において、好ましくは≧80質量%、より好ましくは≧90質量%、非常に好ましくは≧95質量%、より特に≧98又は≧99質量%、最も好ましくは100質量%である。ここでの固体含有量は、以下に記載する方法によって確認される。
【0091】
(B1a)から得られる少なくとも部分的に硬化されたコーティング(B1)の二重結合変換率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくはなお少なくとも80%、非常に好ましくは少なくとも85%、より特に少なくとも90%である。
【0092】
前処理
本発明の方法は、(ステップ(2-i)の実施前及びステップ(1-ii)の実施前に)エンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理することを含む。この前処理は、好ましくは、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で湿潤させる(噴霧する)ことを含む。この湿潤は、好ましくは少なくとも1つのノズルを用いて、より好ましくは少なくとも1つの超音波ノズルを用いて行われる。湿潤は、好ましくはミストの形態を介して、より好ましくは液滴の形態を介して行われ、液滴は、エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)上で凝縮し、それによって液体のフィルムで覆う。エンボス加工ツール(P1)のエンボス加工ダイ(p1)は、完全に湿潤していることが好ましく、すなわち、すべての構造的高さを含むエンボス加工ダイ全体、特に構造幅及び構造深さの完全な範囲で湿潤している。
【0093】
「有機溶媒」の概念は、例えば、1999年3月11日のCouncil Directive 1999/13/EC1999/13/ECから当業者に知られている(そこでは溶媒と呼ばれている)。原則として、本発明で実施される前処理ステップにおいて、当業者に知られている任意の慣用的な有機溶媒を使用することが可能である。「反応性希釈剤」の概念は、例えば、Roempp,Lacke und Druckfarben,Thieme Verlag,1998,491頁から、当業者に同様に知られている。したがって、「反応性希釈剤」という用語は、フィルム形成の過程で使用される結合剤の一部となる希釈剤を指す。「結合剤」という用語は、本発明の意味において、DIN EN ISO 4618(ドイツ語版、日付:2007年3月)と一致しており、好ましくは、フィルム形成に関与するコーティング組成物の不揮発性画分を指す。そこに含まれる顔料及び/又は充填剤は、結合剤の概念に包含されない。原則として、当業者に知られている任意の慣用的な反応性希釈剤を、本発明で実施される前処理ステップで使用されることができる。
【0094】
少なくとも1つの有機溶媒は、好ましくは、対応するC~C12アルコールなどの一価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、1,2-プロパンジオール及び/又は1,3-プロパンジオール、エーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、例えばトルエン及び/又はキシレン、ケトン、例えばアセトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン及び/又はメチルエチルケトン、エステル、例えばメトキシプロピルアセテート、エチルアセテート及び/又はブチルアセテート、アミド、例えばジメチルホルムアミド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
特に好ましいのは、対応するC~Cアルコールなどの一価及び多価アルコールであり、特に好ましいのはエタノールなど対応するC~Cアルコールである。
【0096】
少なくとも1つの反応性希釈剤は、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、及び例えば四官能及び五官能(メタ)アクリレートのような多官能(メタ)アクリレート、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。
【0097】
好適な単官能(メタ)アクリレートは、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート又はより高度にエトキシル化されたフェノキシ(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ならびに、ブチル、ヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソデシル、オクチル及びデシル(メタ)アクリレート、ならびに2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0098】
好適な二官能(メタ)アクリレートは、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,1-、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、及び糖アルコールのジ(メタ)アクリレート、例えば、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、マルチトール又はイソマルトである。
【0099】
好適な三官能(メタ)アクリレートは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリアクリレート、及び糖アルコールのトリ(メタ)アクリレート、例えば、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、マルチトール又はイソマルトである。
【0100】
好適な多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジトリメチロールプロパンペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及び糖アルコールのポリ(メタ)アクリレート、例えば、ソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、マルチトール又はイソマルトである。
【0101】
使用
本発明のさらなる主題は、エンボス構造をコーティング組成物(B1a)の表面の少なくとも一部に転写するための、少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)を含むエンボス加工ツール(P1)の使用であって、エンボス加工ツール(P1)の少なくとも1つのエンボス加工ダイ(p1)が、転写前に、少なくとも1つの有機溶媒及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤で前処理され、コーティング組成物(B1a)上に転写されたエンボス構造が、好ましくは、30μm超の構造深さを有するマイクロ構造を含む、使用である。
【0102】
本発明の方法に関連して上記で説明されたすべての好ましい実施形態は、本発明の使用に関しても好ましい実施形態である。
【0103】
決定方法
1.不揮発性画分の決定
(固体含有量の)不揮発性画分は、DIN EN ISO 3251(2008年6月)に準拠して決定される。本決定は、事前に乾燥させたアルミニウム皿に試料1gを秤量して125℃で60分間、乾燥オーブン中で試料を乾燥させた後、デシケーターで冷却し、再度秤量することで行われる。使用した試料の総量に対する残留物が、不揮発性画分に相当する。
【0104】
2.圧印精度の決定
圧印精度は、市販の原子間力顕微鏡(AFM)により、及び市販のカンチレバーを使用して決定される。AFMにより、例えば、140nmの深さ、及び例えば430nmの周期を有するエンボス加工ツールP1のような定義された格子構造の表面トポグラフィーと、エンボス加工後のマスターフィルム(B1F1)の表面トポグラフィーとを比較することが可能となる。この場合、エンボス加工ツールは、参照点を定義するため、特定の部位において、故意に損傷を与えられている。この参照点によって、参照と複製の同じ領域を互いに比較検討することが可能となる。圧印精度は、例えばエンボス加工ツールP1からマスターフィルム(B1F1)へ、特定の参照構造がどれほど正確に転写され得るかを定義する。例えば、エンボス加工ツールP1の検討領域が、140nmの深さを有する格子構造を特徴とする場合、この参照深さは、マスターフィルム(B1F1)上で決定された対応する構造高さと比較される。パーセント変化率は、ここでは、圧印精度に相当し、以下の通り定義される:
【数1】
Δhは、ここではパーセント変化率に相当し、hは、マスターフィルムの検討領域における構造高さに相当し、hはエンボス加工ツールの検討領域の対応する構造深さに相当する。このパーセント変化率、言い換えると圧印精度は、「収縮」とも呼ばれる。Δhの値が小さいほど、圧印精度は良好となる。
【0105】
本発明の実施例及び比較例
以下の本発明の実施例及び比較例は、本発明を説明するのに役立つが、いかなる制限も課すものとして解釈されるべきではない。
【0106】
特に示さない限り、各場合において、部での量は質量部であり、百分率での量は、質量百分率である。
【0107】
1.使用されたベース化合物と材料
Laromer(登録商標)UA 9033-BASF AGからの脂肪族ウレタンアクリレート
Irgacure(登録商標)500-BASF AGから市販されている光開始剤
Byk-057 - BYK Chemie GmbHから市販されている消泡剤
【0108】
2.実施例
本発明実施例1:構造化フィルム(マイクロ構造を有する)の製造:
所望のポジ構造を有する連続ダイが、所望のネガ構造を担持するニッケルエンボス加工装置を備えたロールツーロールエンボス加工機を使用して製造される。この目的のために、基板として、透明なPETフィルムウェブが使用される。このフィルムウェブは、まずロールから巻き出され、偏向ロール及びウェブクリーナーのシステムを経て、コーティング材料がスロットダイコーティングによって塗布されるコーティング塗布ユニットに送られる。これにより、塗布されるコーティング材料の量を正確に制御することができる。スロットコーターの温度制御により、塗布されるコーティングの画像に影響を与えるように、単位時間当たりの流量を変化させることができる。使用されるコーティング材料は、93.7質量部のLaromer(登録商標)UA 9033、0.7質量部のByk-057、及び5.6質量部のIrgacure(登録商標)500の混合物である。所望のエンボス構造が提供されるフィルムウェブの表面は、ピンと張られ、加えられた圧力で、プレスロールの外表面のサブセクションに案内され、該プレスロールは別のサブセクションで前述のコーティング材料を提供される。プレスロールが回転し、フィルムウェブがその上に案内されると、コーティング材料がフィルムウェブの表面に塗布され、付着する。同じステップで、プレスロールのネガ構造の画像も続いてポジ構造としてコーティング層にエンボス加工される。エンボス加工ツールとして使用されるプレスロールは、使用前にエタノールで湿潤された。湿潤は超音波ノズルを介して行われる。ミストにすることで、非常に細かい液滴が形成される。エンボスロールの方向に導かれた溶媒のミストは、構造化されたエンボスロールの表面で凝縮する。液滴が構造に比べて非常に小さいため、それらは構造の「孔」に進入し、エンボス加工ツールの材料に液体の膜による完全な被覆を提供することができる。エンボス加工装置がコーティング材料とまだ接触している間に、フィルムのコーティングされていない側の方向からのUV-LEDランプ(波長365nm、強度80%)によってコーティング材料が硬化される。使用されるUVユニットの典型的な出力は約1300mW/cmである。エンボス加工操作の最後に、表面にコーティングが施され、マイクロ構造を呈し、硬化したフィルムは、プレスロールの表面から除去され、構造がネガ形態から離れる。このようにして、構造化された表面を与えられたフィルムから連続ウェブが得られ、このフィルムは次に巻き取られる。
【0109】
3.構造化フィルムの検討
行われた前処理の結果として、マイクロ構造、特に40μm超の構造深さと、1超のアスペクト比を有するマイクロ構造が、高速であっても非常に高い圧印精度で、エンボス加工中に深さ変化の如何なる損失なしに、エンボス加工されるコーティング組成物上に転写されることができることが見い出された。このことは、特に、個々の構造要素が互いに接合されておらず、代わりに、エンボス加工ツールのエンボス加工ダイの表面に個々の「孔」の形で少なくとも部分的に存在している構造の場合にも当てはまる。エンボス加工ダイ内の構造要素のそのような構成の場合であっても、エンボス加工操作中に、空気は側面に逃げることができないが、代わりに個々の構造要素(「孔」)からはずれなければならず、本発明の方法は、エンボス構造の欠陥のない転写、特にクレーターのない転写を可能にする。本発明の前処理を行わない場合に発生する可能性のある、気泡の形態のこの種の望ましくないクレーターは、図3及び図4のSEM顕微鏡写真から明らかである。対照的に、本発明の前処理により、図5及び図6の顕微鏡写真から明らかなように、このようなクレーター形成が回避される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】