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特表2022-535417骨髄細胞炎症性表現型を調節するための抗SIGLEC-9組成物及び方法、ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】骨髄細胞炎症性表現型を調節するための抗SIGLEC-9組成物及び方法、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220801BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220801BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220801BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20220801BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20220801BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20220801BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20220801BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220801BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220801BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220801BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/0784
C12N5/078
A61K47/68
A61K39/39
A61K39/395 N
A61K35/15 Z
A61P35/02
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571944
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2020035703
(87)【国際公開番号】W WO2020247372
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】63/032,292
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/867,577
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/857,194
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520505386
【氏名又は名称】ヴェルソー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノボブラントセバ, タティアナ アイ.
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン, イゴール
(72)【発明者】
【氏名】サジンスキー, スティーブン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウォール, ジョゼフ エー.
(72)【発明者】
【氏名】フェニシー, ライアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA03
4B064DA05
4B064DA13
4B064DA14
4B065AA90X
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085EE05
4C085EE06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB63
4C087CA04
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045EA51
4H045EA54
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、部分的に、分極、活性化、及び/または機能を含む、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞などの骨髄細胞炎症性表現型を調節する抗SIGLEC-9組成物(例えば、モノクローナル抗体及びその抗原結合断片)の発見、ならびに療法、診断、予後、及びスクリーニングの目的のためにかかる抗SIGLEC-9組成物を使用する方法に基づく。例えば、一態様では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、SIGLEC-9ポリペプチドを発現する骨髄細胞と結合し、骨髄細胞の炎症性表現型を増加させ、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、SIGLEC-9ポリペプチドを発現する骨髄細胞と結合し、前記骨髄細胞の炎症性表現型を増加させ、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、
a)前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片との接触後に、
i)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、
ii)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、TGFb、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、
iii)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、GM-CSF、CCL3、CCL4、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインの増加した分泌、
iv)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、
v)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、
vi)CD8+細胞傷害性T細胞活性化の増加した動員、
vii)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、
viii)CD4+ヘルパーT細胞活性の増加した動員、
ix)増加したNK細胞活性、
x)NK細胞の増加した動員、
xi)増加した好中球活性、
xii)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/または
xiii)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上をもたらすことにより、前記骨髄細胞の前記炎症性表現型を増加させること、
b)他のSIGLEC-9ファミリーメンバーと比較してSIGLEC-9と特異的に結合すること、
c)1つ以上のSIGLEC-9ファミリーメンバーと交差反応することであって、任意に、前記SIGLEC-9ファミリーメンバーが、SIGLEC-1、SIGLEC-2、SIGLEC-3、SIGLEC-4、SIGLEC-5、SIGLEC-6、SIGLEC-7、SIGLEC-8、SIGLEC-10、SIGLEC-11、及びSIGLEC-12からなる群から選択される、前記交差反応すること、
d)1つ以上の他のSIGLEC-9ファミリーメンバーよりも少なくとも1.1倍の大きさでヒトSIGLEC-9ポリペプチドと選択的に結合することであって、前記1つ以上のSIGLEC-9ファミリーメンバーが、細胞上またはインビトロで発現される、前記結合すること、
e)任意に、ELISAまたはバイオレイヤー干渉法アッセイで測定した際に、約0.00001ナノモル(nM)~1000nMのkDで前記ヒトSIGLEC-9ポリペプチドと結合すること、
f)ヒトSIGLEC-9ポリペプチドのN末端IgVドメインと結合すること、
g)SIGLEC-9のSIGLEC-9リガンドとの結合に競合する、阻害する、または遮断すること、
h)カニクイザルSIGLEC-9ポリペプチドと交差反応すること、
i)表2に列挙される、SIGLEC-9ポリペプチドまたはその抗原結合断片と結合する抗体と競合または交差競合すること、
j)本明細書に記載のATCCに寄託されたモノクローナル抗体として入手可能であること、
k)非刺激単球を活性化しないこと、
l)SIGLEC-9発現細胞に対するADCC活性を有しないこと、
m)SIGLEC-9発現細胞に対するCDC活性を有しないこと、
n)SIGLEC-9発現細胞との結合及び/またはSIGLEC-9発現細胞による内在化の際に、SIGLEC-9発現細胞を殺傷しないこと、
o)別の治療的部分と複合されていないことであって、任意に、前記別の治療的部分が、細胞傷害剤である、前記複合されていないこと、及び/または
p)インビボで抗腫瘍活性を有すること、の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、
a)表2に列挙される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約90%の同一性を有する重鎖CDR配列、及び/または
b)表2に列挙される配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約90%の同一性を有する軽鎖CDR配列を含む、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、
a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約90%の同一性を有する重鎖配列、及び/または
b)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約90%の同一性を有する軽鎖配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、
a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖CDR配列、及び/または
b)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、
a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖配列、及び/または
b)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、ネズミ、またはヒトである、請求項1~6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、検出可能に標識され、エフェクタードメインを含み、及び/またはFcドメインを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項9】
Fv、Fav、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、Fde、sdFv、単一ドメイン抗体(dAb)、及び二重特異性抗体断片からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、及びIgMからなる群から選択される免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、ヒト免疫グロブリンに由来する定常ドメインを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、薬剤と複合され、任意に、前記薬剤が、結合タンパク質、酵素、薬物、化学療法剤、生物学的剤、毒素、放射性核種、免疫調節剤、検出可能部分、及びタグからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項13】
治療有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される担体または賦形剤が、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及びアジュバントからなる群から選択される、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物が、約20EUエンドトキシン/mg未満のタンパク質を有する、請求項13または14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記薬学的組成物が、約1EUエンドトキシン/mg未満のタンパク質を有する、請求項13~15のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
単離核酸分子であって、i)請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする核酸の補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか、ii)請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする核酸と、その全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有する配列を有するか、またはiii)表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする、前記単離核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸によってコードされる、単離免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチド。
【請求項19】
請求項17に記載の単離核酸を含むベクターであって、任意に、前記ベクターが、発現ベクターである、前記ベクター。
【請求項20】
請求項17に記載の単離核酸を含む宿主細胞であって、
a)請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を発現し、
b)請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドを含み、
c)請求項19に記載のベクターを含み、及び/または
d)ATCC寄託受託番号の下で寄託されたモノクローナル抗体としてアクセス可能である、前記宿主細胞。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を含むデバイスまたはキットであって、前記デバイスまたはキットが、前記少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を検出するための標識、または前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を含む複合体を含む、前記デバイスまたはキット。
【請求項22】
請求項13~20のいずれか1項に記載の薬学的組成物、単離核酸分子、単離免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチド、ベクター、及び/または宿主細胞を含む、デバイスまたはキット。
【請求項23】
請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を産生する方法であって、(i)前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の発現を可能にするのに好適な条件下で、少なくとも1つの請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片をコードする配列を含む核酸によって形質転換されている形質転換宿主細胞を培養するステップと、(ii)発現されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、前記方法。
【請求項24】
SIGLEC-9ポリペプチドの存在またはレベルを検出する方法であって、試料を取得することと、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の使用によって前記試料中の前記ポリペプチドを検出することと、を含む、前記方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、前記SIGLEC-9ポリペプチドと複合体を形成し、前記複合体が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫化学アッセイ、ウエスタンブロット、質量分析アッセイ、核磁気共鳴アッセイ、または細胞内フローアッセイを使用する形態で検出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか1項に記載の薬剤との接触後に、増加した炎症性表現型を有する骨髄細胞を生成する方法であって、骨髄細胞を有効量の前記薬剤と接触させることを含み、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項27】
増加した炎症性表現型を有する前記骨髄細胞が、前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片との接触後に、
a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、
b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、TGFb、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、
c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、GM-CSF、CCL3、CCL4、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインの増加した分泌、
d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、
e)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、
f)CD8+細胞傷害性T細胞活性化の増加した動員、
g)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、
h)CD4+ヘルパーT細胞活性の増加した動員、
i)増加したNK細胞活性、
j)NK細胞の増加した動員、
k)増加した好中球活性、
l)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/または
m)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と接触した前記骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、前記細胞の集団内の1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させ、及び/または2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と接触した前記骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、前記モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、i)対ii)の比率を増加させ、前記細胞の集団内のi)が、1型及び/またはM1マクロファージであり、ii)が、2型及び/またはM2マクロファージである、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む、請求項26~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記骨髄細胞が、インビトロまたはエクスビボで接触する、請求項26~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記骨髄細胞が、初代骨髄細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記骨髄細胞が、前記薬剤と接触する前に精製及び/または培養される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記骨髄細胞が、インビボで接触する、請求項26~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記骨髄細胞が、前記薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によってインビボで接触する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記骨髄細胞が、組織微小環境内で接触する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記骨髄細胞が、前記炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、前記免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項26~37のいずれか1項に記載の方法に従って生成された骨髄細胞を含む、組成物であって、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記組成物。
【請求項39】
請求項1~20のいずれか1項に記載の薬剤との接触後に、対象における骨髄細胞の炎症性表現型を増加させる方法であって、有効量の前記薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記増加した炎症性表現型を有する前記骨髄細胞が、前記薬剤との接触後に、
a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、
b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、
c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの増加した分泌、
d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、
e)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、
f)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、
g)増加したNK細胞活性、
h)増加した好中球活性、
i)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/または
j)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記薬剤または複数の薬剤が、1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させ、2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させ、及び/またはi)対ii)の比率を増加させ、前記対象におけるi)が、1型及び/またはM1マクロファージであり、ii)が、2型及び/またはM2マクロファージである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象における細胞傷害性CD8+T細胞の数及び/または活性が、前記薬剤の投与後に増加する、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記薬剤が、前記薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によってインビボで投与される、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記薬剤が、組織微小環境内の前記骨髄細胞と接触する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記骨髄細胞が、前記炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、前記免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む、請求項39~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
対象において炎症を増加する方法であって、有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の薬剤と接触した骨髄細胞を前記対象に投与することを含み、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項48】
前記骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記骨髄細胞が、前記対象の骨髄細胞と比較して、遺伝子操作された、自家、同系、または同種異系である、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤が、全身、腫瘍周囲、または腫瘍内に投与される、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
細胞傷害性CD8+T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対する対象におけるがん細胞を感作する方法であって、治療有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
細胞傷害性CD8+T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対するがんに罹患する対象におけるがん細胞を感作する方法であって、治療有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の薬剤と接触した骨髄細胞を前記対象に投与することを含み、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項53】
前記骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記骨髄細胞が、前記対象の骨髄細胞と比較して、遺伝子操作された、自家、同系、または同種異系である、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記薬剤が、全身、腫瘍周囲、または腫瘍内に投与される、請求項51~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象に少なくとも1つの免疫療法を施すことによって前記対象における前記がんを治療することをさらに含み、任意に、前記免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む、請求項51~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫チェックポイントが、PD-1、PD-L1、PD-L2、及びCTLA-4からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫チェックポイントが、PD-1である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
がんを治療するための追加の治療剤またはレジメンを前記対象に投与することによって前記対象における前記がんを治療することをさらに含み、任意に、前記追加の治療剤またはレジメンが、キメラ抗原受容体、化学療法、放射線、標的療法、及び手術からなる群から選択される、請求項51~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記薬剤が、前記がんにおける増殖細胞の数を低減させ、及び/または前記がん細胞を含む腫瘍の体積もしくはサイズを低減させる、請求項51~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記薬剤が、前記がん細胞を含む腫瘍に浸潤するCD8+T細胞の量及び/または活性を増加させる、請求項51~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記薬剤が、a)前記がん細胞を含む腫瘍に浸潤するM1マクロファージの量及び/または活性を増加させる、及び/またはb)前記がん細胞を含む腫瘍に浸潤するM2マクロファージの量及び/または活性を低減させる、請求項51~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記がんを治療するための少なくとも1つの追加療法またはレジメンを前記対象に施すことをさらに含む、請求項51~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記療法が、前記薬剤を投与する前、同時、または後である、請求項51~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1つの標的を調節することにより、その炎症性表現型を増加させることができる骨髄細胞を同定する方法であって、
a)薬剤を使用して前記骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することであって、前記薬剤が、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記決定することと、
b)前記薬剤を使用して対照中の前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することと、
c)ステップa)及びb)で検出された前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性を比較することと、を含み、
前記少なくとも1つの標的の対照量及び/または活性と比較した、前記骨髄細胞における表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加は、前記骨髄細胞が、前記少なくとも1つの標的を調節することにより、その炎症性表現型を増加させることができることを示し、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項66】
表1に列挙される前記少なくとも1つの標的を調節する薬剤と前記細胞を接触させること、推奨すること、処方すること、または投与することをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が、前記少なくとも1つの標的を調節することによって炎症性表現型を増加させることから利益を得ないと決定された場合、表1に列挙される前記少なくとも1つの標的を調節する薬剤以外のがん療法と前記細胞を接触させること、推奨すること、処方すること、または投与することをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記がん療法が、免疫療法である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
免疫応答を増加させる少なくとも1つの追加の薬剤と前記細胞を接触させること、及び/または投与することをさらに含む、請求項65~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記追加の薬剤が、標的療法、化学療法、放射線療法、及び/またはホルモン療法からなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記対照が、前記対象が属する同じ種のメンバーからのものである、請求項65~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記対照が、細胞を含む試料である、請求項65~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、がんに罹患している、請求項65~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記対照が、前記対象からのがん試料である、請求項65~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記対照が、前記対象からの非がん試料である、請求項65~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
がんに罹患した対象の臨床転帰を予測するための方法であって、
a)薬剤を使用して前記対象からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することであって、前記薬剤が、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記決定することと、
b)前記薬剤を使用して不良な臨床転帰を有する対照からの前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することと、
c)前記対象試料及び前記対照の対象からの前記試料における少なくとも1つの標的の量及び/または活性を比較することと、を含み、
前記対照における量及び/または活性と比較した、前記対象からの前記骨髄細胞からの表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加は、前記対象が、不良な臨床転帰を有しないことを示し、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項77】
対象における骨髄細胞の炎症性表現型をモニタリングするための方法であって、
a)薬剤を使用して前記対象からの前記骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を第1の時点に第1の対象試料で検出することであって、前記薬剤が、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記検出することと、
b)後続の時点で得られる骨髄細胞を含む後続の試料を使用して、ステップa)を繰り返すことと、
c)ステップa)及びb)で検出された表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量または活性を比較することと、を含み、
前記第1の試料からの前記骨髄細胞からの量及び/または活性と比較した、前記後続の試料からの前記骨髄細胞からの表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減が、前記対象の骨髄細胞が、上方制御された炎症性表現型を有することを示すか、あるいは
前記第1の試料からの前記骨髄細胞からの量及び/または活性と比較した、前記後続の試料からの前記骨髄細胞からの表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加は、前記対象の骨髄細胞が、下方制御された炎症性表現型を有することを示し、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記方法。
【請求項78】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、インビトロで培養される骨髄細胞を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、インビトロで培養されていない骨髄細胞を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、前記対象から得られた単一試料またはプールされた試料の一部である、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記試料が、前記対象から得られた血液、血清、腫瘍周囲組織、及び/または腫瘍内組織を含む、請求項77~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
対象における骨髄細胞の炎症性表現型を増加させるための試験剤の有効性を評価する方法であって、
a)第1の時点に骨髄細胞を含む対象試料において検出することであって、i)薬剤を使用して前記骨髄細胞内または前記骨髄細胞上にある表1に列挙される少なくとも1つの標的の量または活性を検出することであって、前記薬剤が、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記検出すること、及び/またはii)前記骨髄細胞の炎症性表現型を検出する、前記検出することと、
b)前記骨髄細胞が、前記試験剤と接触した後の少なくとも1つの後続の時点の間にステップa)を繰り返すことと、
c)ステップa)及びb)で検出されたi)及び/またはii)の値を比較することであって、前記第1の時点での前記試料における量及び/または活性と比較した、表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減、及び/または前記後続の試料におけるii)の増加は、前記試験剤が、前記対象における骨髄細胞の前記炎症性表現型を増加させることを示し、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記比較することと、を含む、前記方法。
【請求項83】
前記薬剤と接触した前記骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、前記薬剤が、前記細胞の集団内の1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させる、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記薬剤と接触した前記骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、前記薬剤が、前記細胞の集団内の2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させる、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記骨髄細胞が、インビトロまたはエクスビボで接触する、請求項82~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記骨髄細胞が、初代骨髄細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記骨髄細胞が、前記薬剤と接触する前に精製及び/または培養される、請求項85または86に記載の方法。
【請求項88】
前記骨髄細胞が、インビボで接触する、請求項82~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記骨髄細胞が、前記薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によってインビボで接触する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記骨髄細胞が、組織微小環境内で接触する、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記骨髄細胞が、前記炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、前記免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む、請求項82~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記対象が、哺乳動物である、請求項82~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記哺乳動物が、非ヒト動物モデルまたはヒトである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
対象においてがんを治療するための試験剤の有効性を評価する方法であって、
a)第1の時点に骨髄細胞を含む対象試料において検出することであって、i)薬剤を使用して骨髄細胞内または骨髄細胞上にある表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を検出することであって、前記薬剤が、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記検出すること、及び/またはii)前記骨髄細胞の炎症性表現型を検出する、前記検出することと、
b)前記薬剤の投与後の少なくとも1つの後続の時点の間にステップa)を繰り返すことと、
c)ステップa)及びb)で検出されたi)及び/またはii)の値を比較することであって、前記第1の時点での前記対象試料の前記骨髄細胞内または前記骨髄細胞上の量及び/または活性と比較した、表1に列挙される前記少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減、及び/または前記後続時点での前記対象試料の前記骨髄細胞内または前記骨髄細胞上でのii)の増加は、前記試験剤が、前記対象における前記がんを治療することを示し、任意に、前記骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記比較することと、を含む、前記方法。
【請求項95】
前記第1の時点と前記後続の時点との間に、前記対象が、前記がんに対する治療を受けており、治療を完了しており、及び/または寛解している、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、エクスビボ及びインビボ試料からなる群から選択される、請求項94または95に記載の方法。
【請求項97】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、前記がんの非ヒト動物モデルから得られる、請求項94~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、前記対象から得られた単一試料またはプールされた試料の一部である、請求項94~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記試料が、前記対象から得られた細胞、血清、腫瘍周囲組織、及び/または腫瘍内組織を含む、請求項94~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する試験剤をスクリーニングするための方法であって、
a)前記試験剤と接触した骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することであって、前記試験剤が、薬剤を使用して決定される際に、骨髄細胞内または骨髄細胞上で表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を調節し、前記薬剤が、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、前記接触することと、
b)前記試験剤と接触していない対照骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、
c)b)と比較してa)において細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法の有効性を増加させる薬剤を同定することにより、細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する試験剤を同定することであって、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、前記同定することと、を含む、前記方法。
【請求項101】
前記接触するステップが、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで生じる、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
i)前記がんにおける増殖する細胞の数の減少、及び/またはii)前記がん細胞を含む腫瘍の体積またはサイズの減少を決定することをさらに含む、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
i)CD8+T細胞の数の増加、及び/またはii)前記がん細胞を含む腫瘍に浸潤する1型及び/またはM1マクロファージの数の増加を決定することをさらに含む、請求項100~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
臨床的利益率、死亡までの生存期間、病理学的完全奏効、病理学的奏効の半定量的測定、臨床的完全寛解、臨床的部分寛解、臨床的安定疾患、無再発生存期間、無転移生存期間、無疾患生存期間、循環腫瘍細胞減少、循環マーカー応答、及びRECIST基準からなる群から選択される少なくとも1つの基準によって測定された、表1に列挙される前記少なくとも1つの標的を調節する前記試験剤に対する応答性を決定することをさらに含む、請求項100~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記がん細胞と少なくとも1つの追加のがん療法剤またはレジメンとが接触することをさらに含む、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
調節された炎症性表現型を有する前記骨髄細胞が、
a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の調節された発現、
b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、及び/またはIL-10の調節された発現、
c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの調節された分泌、
d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の調節された比率、
e)調節されたCD8+細胞傷害性T細胞活性化、
f)調節されたCD4+ヘルパーT細胞活性、
g)調節されたNK細胞活性、
h)調節された好中球活性、
i)調節されたマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/または
j)顕微鏡法で評価した際の、調節された紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す、請求項1~105のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項107】
前記細胞及び/または骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含み、任意に、前記細胞及び/または骨髄細胞が、SIGLEC-9を発現するか、または発現すると決定される、請求項1~106のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項108】
前記ヒトSIGLEC-9ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、及び/または前記カニクイザルSIGLEC-9ポリペプチドが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1~107のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項109】
前記がんは、マクロファージが浸潤した固形腫瘍であり、前記浸潤性マクロファージが、前記腫瘍または前記腫瘍微小環境における細胞の質量、体積、及び/または数の少なくとも約5%を表し、及び/または前記がんが、中皮腫、腎臓腎明細胞癌、膠芽腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、膵臓腺癌、乳房浸潤癌、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、脳低悪性度神経膠腫、乳房浸潤癌、子宮頸部扁平上皮癌及び子宮頸部腺癌、胆管癌、結腸腺癌、食道癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、嫌色素性腎臓、腎臓腎明細胞癌、腎臓腎乳頭細胞癌、肝臓肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、中皮腫、卵巣漿液性、嚢胞腺癌、膵臓腺癌、褐色細胞腫、傍神経節腫、前立腺腺癌、直腸腺癌、肉腫、皮膚皮膚黒色腫、胃腺癌、精巣胚細胞腫瘍、胸腺腫、甲状腺癌、子宮癌肉腫、子宮体子宮内膜癌、及びブドウ膜黒色腫からなる群から選択される、請求項1~108のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項110】
前記骨髄細胞が、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含み、任意に、前記骨髄細胞が、TAM及び/またはM2マクロファージである、請求項109に記載の組成物または方法。
【請求項111】
前記骨髄系細胞が、SIGLEC-9を発現するか、または発現すると決定される、請求項109または110に記載の組成物または方法。
【請求項112】
前記骨髄細胞が、初代骨髄細胞である、請求項1~111のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項113】
前記骨髄細胞が、組織微小環境内に含まれる、請求項1~112のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項114】
前記骨髄細胞が、ヒト腫瘍モデルまたはがんの動物モデル内に含まれる、請求項1~113のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項115】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1~114のいずれか1項に記載の組成物または方法。
【請求項116】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項115に記載の組成物または方法。
【請求項117】
前記ヒトが、がんに罹患している、請求項116に記載の組成物または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月4日に出願された米国仮出願第62/857,194号、2019年6月27日に出願された米国仮出願第62/867,577号、及び2020年5月29日に出願された米国仮出願第63/032,292号の利益を主張し、該出願の各々の全容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
単球及びマクロファージは、貪食細胞の一種であり、有害な異物粒子、バクテリア、及び死んだまたは死にかけている細胞を取り込むことにより体を保護する細胞である。単球及びマクロファージに加えて、貪食細胞には、好中球、樹状細胞、及び肥満細胞が含まれる。
【0003】
マクロファージは、貪食作用として知られるプロセスを通じて、体をパトロールし、細胞の残骸、及び病原体、微生物、がん細胞などの異物を貪食して消化する大きな白血球として古典的に知られている。さらに、組織マクロファージ及び循環単球由来マクロファージを含むマクロファージは、自然及び適応免疫系の両方の重要な媒介物である。
【0004】
マクロファージの表現型は、古典的または代替的な経路を介した活性化に依存する(例えば、Classen et al.(2009)Methods Mol.Biol.531:29-43を参照されたい)。古典的に活性化されたマクロファージは、インターフェロンガンマ(IFNγ)またはリポ多糖(LPS)によって活性化され、M1表現型を示す。この炎症誘発性表現型は、炎症の増加及び免疫系の刺激に関連する。代替的に、活性化されたマクロファージは、IL-4、IL-10、及びIL-13などのサイトカインによって活性化され、M2表現型を示す。この抗炎症表現型は、免疫応答の低減、創傷治癒の増加、組織修復の増加、及び胚発生に関連する。
【0005】
非病理学的条件下では、免疫刺激性及び免疫調節性マクロファージのバランスの取れた集団が免疫系に存在する。バランスの乱れは、様々な疾患状態を引き起こす可能性がある。いくつかのがんでは、例えば、腫瘍は、抗炎症性、腫瘍形成誘発性M2表現型を支持してマクロファージ集団を極性化する免疫因子(例えば、サイトカイン及びインターロイキン)を分泌し、これは、創傷治癒経路を活性化し、新しい血管の成長(すなわち、血管新生)を促進し、腫瘍に栄養素及び成長シグナルを提供する。これらのM2マクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)または腫瘍浸潤マクロファージと称される。腫瘍微小環境におけるTAMは、がんの進行及び転移の重要な調節因子である(Pollard(2004)Nat.Rev.Cancer4:71-78)。マクロファージ遺伝子標的(例えば、CSF1R及びCCR2)を阻害するように設計された低分子及びモノクローナル抗体は、腫瘍形成を阻害することができる腫瘍形成誘発性マクロファージ(例えば、TAM)及び炎症誘発性マクロファージのバランスを調節することなどによって、マクロファージ表現型の調節因子として研究されている。
マクロファージ集団のバランスを調節するための単球及びマクロファージの動員、分極化、活性化、及び/または機能を調節する療法は、マクロファージ免疫療法と称される。マクロファージ生物学の分野における進歩にもかかわらず、マクロファージの炎症性表現型及びマクロファージ免疫療法で使用するための薬剤を調節するための新しい標的(例えば、遺伝子及び/または遺伝子産物)のニーズが残存する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Classen et al.(2009)Methods Mol.Biol.531:29-43
【非特許文献2】Pollard(2004)Nat.Rev.Cancer4:71-78
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも部分的に、骨髄細胞炎症性表現型、例えば、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞などを調節するための抗SIGLEC-9組成物の発見、及び方法、ならびに治療、診断、予後、及びスクリーニングの目的などのためのその使用に基づく。例えば、本明細書において、SIGLEC-9発現は、骨髄細胞型における活性化時に増加し、その抗原結合断片を含む抗SIGLEC-9抗体を使用して、骨髄細胞炎症性表現型を増加させることができることが決定された。
【0008】
例えば、一態様では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、SIGLEC-9ポリペプチドを発現する骨髄細胞と結合し、骨髄細胞の炎症性表現型を増加させ、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0009】
本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、a)モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片との接触後に、i)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、ii)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、TGFb、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、iii)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、GM-CSF、CCL3、CCL4、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインの増加した分泌、iv)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、v)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、vi)CD8+細胞傷害性T細胞活性化の増加した動員、vii)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、viii)CD4+ヘルパーT細胞活性の増加した動員、ix)増加したNK細胞活性、x)NK細胞の増加した動員、xi)増加した好中球活性、xii)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/またはxiii)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上をもたらすことにより、骨髄細胞の炎症性表現型を増加させること、b)他のSIGLEC-9ファミリーメンバーと比較してSIGLEC-9と特異的に結合すること、c)1つ以上のSIGLEC-9ファミリーメンバーと交差反応することであって、任意に、SIGLEC-9ファミリーメンバーが、SIGLEC-1、SIGLEC-2、SIGLEC-3、SIGLEC-4、SIGLEC-5、SIGLEC-6、SIGLEC-7、SIGLEC-8、SIGLEC-10、SIGLEC-11、及びSIGLEC-12からなる群から選択される、交差反応すること、d)1つ以上の他のSIGLEC-9ファミリーメンバーよりも少なくとも1.1倍の大きさでヒトSIGLEC-9ポリペプチドと選択的に結合することであって、1つ以上のSIGLEC-9ファミリーメンバーが、細胞上またはインビトロで発現される、結合すること、e)任意に、ELISAまたはバイオレイヤー干渉法アッセイで測定した際に、約0.00001ナノモル(nM)~1000nMのkDでヒトSIGLEC-9ポリペプチドと結合すること、f)ヒトSIGLEC-9ポリペプチドのN末端IgVドメインと結合すること、g)SIGLEC-9のSIGLEC-9リガンドとの結合に競合する、阻害する、または遮断すること、h)カニクイザルSIGLEC-9ポリペプチドと交差反応すること、i)表2に列挙される、SIGLEC-9ポリペプチドまたはその抗原結合断片と結合する抗体と競合または交差競合すること、j)本明細書に記載のATCCに寄託されたモノクローナル抗体として入手可能であること、k)非刺激単球を活性化しないこと、l)SIGLEC-9発現細胞に対するADCC活性を有しないこと、m)SIGLEC-9発現細胞に対するCDC活性を有しないこと、n)SIGLEC-9発現細胞との結合及び/またはSIGLEC-9発現細胞による内在化の際に、SIGLEC-9発現細胞を殺傷しないこと、o)別の治療的部分と複合されていないことであって、任意に、別の治療的部分が、細胞傷害剤である、複合されていないこと、及び/またはp)インビボで抗腫瘍活性を有すること、の特徴のうちの1つ以上を有する。別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、a)表2に列挙される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約90%の同一性を有する重鎖CDR配列、及び/またはb)表2に列挙される配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約90%の同一性を有する軽鎖CDR配列を含む。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約90%の同一性を有する重鎖配列、及び/またはb)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約90%の同一性を有する軽鎖配列を含む。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖CDR配列、及び/またはb)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列を含む。別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、a)表2に列挙される重鎖配列からなる群から選択される重鎖配列、及び/またはb)表2に列挙される軽鎖配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、ネズミ、またはヒトである。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、検出可能に標識され、エフェクタードメインを含み、及び/またはFcドメインを含む。別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、Fv、Fav、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、Fde、sdFv、単一ドメイン抗体(dAb)、及び二重特異性抗体断片からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、及びIgMからなる群から選択される免疫グロブリン定常ドメインを含む。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、ヒト免疫グロブリンに由来する定常ドメインを含む。別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、薬剤と複合され、任意に、薬剤が、結合タンパク質、酵素、薬物、化学療法剤、生物学的剤、毒素、放射性核種、免疫調節剤、検出可能部分、及びタグからなる群から選択される。
【0010】
別の態様では、治療有効量の本発明に包括される少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0011】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、薬学的に許容される担体または賦形剤が、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及びアジュバントからなる群から選択される。別の実施形態では、薬学的組成物が、約20EUエンドトキシン/mg未満のタンパク質を有する。さらに別の実施形態では、薬学的組成物が、約1EUエンドトキシン/mg未満のタンパク質を有する。
【0012】
さらに別の態様では、単離核酸分子であって、i)本発明に包含されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする核酸の補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか、ii)本発明に包含されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする核酸と、その全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有する配列を有するか、またはiii)表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドをコードする、単離核酸分子が提供される。
【0013】
さらに別の態様では、本発明に包括される核酸によってコードされる、単離免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドが提供される。
【0014】
別の態様では、任意に、ベクターが、発現ベクターである、本発明に包括される単離核酸を含むベクターが提供される。
【0015】
さらに別の態様では、本発明に包括される単離核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞であって、a)本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を発現し、b)本発明に包括される免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドを含み、c)本発明に包括されるベクターを含み、及び/またはd)本明細書に記載のATCC寄託受託番号の下で寄託されたモノクローナル抗体としてアクセス可能である、宿主細胞が提供される。
【0016】
さらに別の態様では、本発明に包括される少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を含むデバイスまたはキットであって、デバイスまたはキットが、少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を検出するための標識、またはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を含む複合体を任意に含む、デバイスまたはキットが提供される。
【0017】
別の態様では、本発明に包括される薬学的組成物、単離核酸分子、単離免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖ポリペプチド、ベクター、及び/または宿主細胞を含む、デバイスまたはキットが提供される。
【0018】
さらに別の態様では、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を産生する方法であって、(i)モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の発現を可能にするのに好適な条件下で、少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片をコードする配列を含む核酸によって形質転換されている形質転換宿主細胞を培養するステップと、(ii)発現されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、方法が提供される。
【0019】
さらに別の態様では、SIGLEC-9ポリペプチドの存在またはレベルを検出する方法であって、試料を取得することと、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片の使用によって試料中のポリペプチドを検出することと、を含む、方法が提供される。一実施形態では、少なくとも1つのモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、SIGLEC-9ポリペプチドと複合体を形成し、複合体が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫化学アッセイ、ウエスタンブロット、質量分析アッセイ、核磁気共鳴アッセイ、または細胞内フローアッセイを使用する形態で検出されることが提供される。
【0020】
別の態様では、本発明に包含される薬剤との接触後に、増加した炎症性表現型を有する骨髄細胞を生成する方法であって、骨髄細胞を有効量の薬剤と接触させることを含み、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0021】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、増加した炎症性表現型を有する骨髄細胞が、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片との接触後に、a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、TGFb、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、GM-CSF、CCL3、CCL4、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインの増加した分泌、d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、e)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、f)CD8+細胞傷害性T細胞活性化の増加した動員、g)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、h)CD4+ヘルパーT細胞活性の増加した動員、i)増加したNK細胞活性、j)NK細胞の増加した動員、k)増加した好中球活性、l)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/またはm)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す。別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と接触した骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、細胞の集団内の1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させ、及び/または2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させる。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片と接触した骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片が、i)対ii)の比率を増加させ、細胞の集団内のi)が、1型及び/またはM1マクロファージであり、ii)が、2型及び/またはM2マクロファージである。さらに別の実施形態では、マクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む。別の実施形態では、骨髄細胞が、インビトロまたはエクスビボで接触する。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、初代骨髄細胞である。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、薬剤と接触する前に精製及び/または培養される。別の実施形態では、骨髄細胞が、インビボで接触する(例えば、薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によって)。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、組織微小環境内で接触する。さらに別の実施形態では、方法は、骨髄細胞が、炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む。
【0022】
さらに別の態様では、本発明に包括される方法に従って生成された骨髄細胞を含む、組成物であって、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、組成物が提供される。
【0023】
さらに別の態様では、本発明に包括される薬剤との接触後に、対象における骨髄細胞の炎症性表現型を増加させる方法であって、有効量の薬剤を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0024】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、増加した炎症性表現型を有する骨髄細胞が、薬剤との接触後に、a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの増加した分泌、d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、e)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、f)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、g)増加したNK細胞活性、h)増加した好中球活性、i)増加したマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/またはj)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す。別の実施形態では、1つまたは複数の薬剤が、1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させ、2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させ、及び/またはi)対ii)の比率を増加させ、対象におけるi)が、1型及び/またはM1マクロファージであり、ii)が、2型及び/またはM2マクロファージである。さらに別の実施形態では、対象における細胞傷害性CD8+T細胞の数及び/または活性が、薬剤の投与後に増加する。さらに別の実施形態では、マクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む。さらに別の実施形態では、薬剤が、薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によってインビボで投与される。さらに別の実施形態では、薬剤が、組織微小環境内の骨髄細胞と接触する。さらに別の実施形態では、方法は、骨髄細胞が、炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む。
【0025】
別の態様では、対象において炎症を増加する方法であって、有効量の本発明に包括される薬剤と接触した骨髄細胞を対象に投与することを含み、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0026】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、マクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む。別の実施形態では、骨髄細胞が、対象の骨髄細胞と比較して、遺伝子操作された、自家、同系、または同種異系である。さらに別の実施形態では、薬剤が、全身、腫瘍周囲、または腫瘍内に投与される。
【0027】
さらに別の態様では、細胞傷害性CD8+T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対する対象におけるがん細胞を感作する方法であって、治療有効量の本発明に包括される薬剤を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0028】
さらに別の態様では、細胞傷害性CD8+T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対するがんに罹患する対象におけるがん細胞を感作する方法であって、治療有効量の本発明に包括される薬剤と接触した単球細胞及び/またはマクロファージ細胞を対象に投与することを含み、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0029】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、マクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含む。別の実施形態では、骨髄細胞が、対象の骨髄細胞と比較して、遺伝子操作された、自家、同系、または同種異系である。さらに別の実施形態では、薬剤が、全身、腫瘍周囲、または腫瘍内に投与される。さらに別の実施形態では、本方法は、対象に少なくとも1つの免疫療法を施すことによって対象におけるがんを治療することをさらに含み、任意に、免疫療法が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む。別の実施形態では、免疫チェックポイントは、PD-1、PD-L1、PD-L2、及びCTLA-4からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、免疫チェックポイントは、PD-1である。さらに別の実施形態では、方法は、がんを治療するための追加の治療剤またはレジメンを対象に投与することによって対象におけるがんを治療することをさらに含み、任意に、追加の治療剤またはレジメンが、キメラ抗原受容体、化学療法、放射線、標的療法、及び手術からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、薬剤が、がんにおける増殖細胞の数を低減させ、及び/またはがん細胞を含む腫瘍の体積もしくはサイズを低減させる。さらに別の実施形態では、薬剤が、がん細胞を含む腫瘍に浸潤するCD8+T細胞の量及び/または活性を増加させる。さらに別の実施形態では、薬剤が、a)がん細胞を含む腫瘍に浸潤するM1マクロファージの量及び/または活性を増加させる、及び/またはb)がん細胞を含む腫瘍に浸潤するM2マクロファージの量及び/または活性を低減させる。別の実施形態では、方法は、がんを治療するための少なくとも1つの追加療法またはレジメンを対象に施すことをさらに含む。さらに別の実施形態では、療法が、薬剤を投与する前、同時、または後である。
【0030】
別の態様では、少なくとも1つの標的を調節することにより、その炎症性表現型を増加させることができる骨髄細胞を同定する方法であって、a)薬剤を使用して骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することであって、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、決定することと、b)薬剤を使用して対照中の少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することと、c)ステップa)及びb)で検出された少なくとも1つの標的の量及び/または活性を比較することと、を含み、少なくとも1つの標的の対照量及び/または活性と比較した、骨髄細胞における表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加は、骨髄細胞が、少なくとも1つの標的を調節することにより、その炎症性表現型を増加させることができることを示し、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0031】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、方法は、表1に列挙される少なくとも1つの標的を調節する薬剤と細胞を接触させること、推奨すること、処方すること、または投与することをさらに含む。別の実施形態では、方法は、対象が、少なくとも1つの標的を調節することによって炎症性表現型を増加させることから利益を得ないと決定された場合(例えば、免疫療法)、表1に列挙される少なくとも1つの標的を調節する薬剤以外のがん療法と細胞を接触させること、推奨すること、処方すること、または投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、本方法は、免疫応答を増加させる少なくとも1つの追加の薬剤と細胞を接触させること、及び/または投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、追加の薬剤が、標的療法、化学療法、放射線療法、及び/またはホルモン療法からなる群から選択される。別の実施形態では、対照は、対象が属する同じ種のメンバーからのものである。さらに別の実施形態では、対照は、細胞を含む試料である。さらに別の実施形態では、対象は、がんに罹患している。別の実施形態では、対照は、対象からのがん試料である。さらに別の実施形態では、対照は、対象からの非がん試料である。
【0032】
さらに別の態様では、がんに罹患した対象の臨床転帰を予測するための方法であって、a)薬剤を使用して対象からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することであって、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、決定することと、b)薬剤を使用して不良な臨床転帰を有する対照からの少なくとも1つの標的の量及び/または活性を決定することと、c)対象試料及び対照の対象からの試料における少なくとも1つの標的の量及び/または活性を比較することと、を含み、対照における量及び/または活性と比較した、対象からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加が、対象が、不良な臨床転帰を有しないことを示し、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0033】
さらに別の態様では、対象における骨髄細胞の炎症性表現型をモニタリングするための方法であって、a)薬剤を使用して対象からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を第1の時点に第1の対象試料で検出することであって、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、検出することと、b)後続の時点で得られる骨髄細胞を含む後続の試料を使用して、ステップa)を繰り返すことと、c)ステップa)及びb)で検出された表1に列挙される少なくとも1つの標的の量または活性を比較することと、を含み、第1の試料からの骨髄細胞からの量及び/または活性と比較した、後続の試料からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減が、対象の骨髄細胞が、上方制御された炎症性表現型を有することを示すか、あるいは第1の試料からの骨髄細胞からの量及び/または活性と比較した、後続の試料からの骨髄細胞からの表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の存在、または増加が、対象の骨髄細胞が、下方制御された炎症性表現型を有することを示し、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、方法が提供される。
【0034】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、インビトロで培養される骨髄細胞を含む。別の実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、インビトロで培養されていない骨髄細胞を含む。さらに別の実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、対象から得られた単一試料またはプールされた試料の一部である。別の実施形態では、試料が、対象から得られた血液、血清、腫瘍周囲組織、及び/または腫瘍内組織を含む。
【0035】
別の態様では、対象における骨髄細胞の炎症性表現型を増加させるための試験剤の有効性を評価する方法であって、a)第1の時点に骨髄細胞を含む対象試料において検出することであって、i)薬剤を使用して骨髄細胞内または骨髄細胞上にある表1に列挙される少なくとも1つの標的の量または活性を検出することであって、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、検出すること、及び/またはii)骨髄細胞の炎症性表現型を検出する、検出することと、b)骨髄細胞が、試験剤と接触した後の少なくとも1つの後続の時点の間にステップa)を繰り返すことと、c)ステップa)及びb)で検出されたi)及び/またはii)の値を比較することであって、第1の時点での前記試料における量及び/または活性と比較した、表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減、及び/または後続の試料におけるii)の増加は、試験剤が、対象における骨髄細胞の炎症性表現型を増加させることを示し、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、比較することと、を含む、方法が提供される。
【0036】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、薬剤と接触した骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、薬剤が、細胞の集団内の1型及び/またはM1マクロファージの数を増加させる。別の実施形態では、薬剤と接触した骨髄細胞が、細胞の集団内に含まれ、薬剤が、細胞の集団内の2型及び/またはM2マクロファージの数を低減させる。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、インビトロまたはエクスビボで接触する。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、初代骨髄細胞である。別の実施形態では、骨髄細胞が、薬剤と接触する前に精製及び/または培養される。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、インビボで接触する。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、薬剤の全身、腫瘍周囲、または腫瘍内投与によってインビボで接触する。別の実施形態では、骨髄細胞が、組織微小環境内で接触する。さらに別の実施形態では、方法は、骨髄細胞が、炎症性表現型を調節する少なくとも1つの免疫療法剤と接触することをさらに含み、任意に、免疫療法剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激アゴニスト、炎症剤、細胞、がんワクチン、及び/またはウイルスを含む。さらに別の実施形態では、対象は哺乳動物(例えば、非ヒト動物モデルまたはヒト)である。
【0037】
さらに別の態様では、対象においてがんを治療するための試験剤の有効性を評価する方法であって、a)第1の時点に骨髄細胞を含む対象試料において検出することであって、i)薬剤を使用して骨髄細胞内または骨髄細胞上にある表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を検出することであって、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、検出すること、及び/またはii)骨髄細胞の炎症性表現型を検出する、検出することと、b)薬剤の投与後の少なくとも1つの後続の時点の間にステップa)を繰り返すことと、c)ステップa)及びb)で検出されたi)及び/またはii)の値を比較することであって、第1の時点での対象試料の骨髄細胞内または骨髄細胞上の量及び/または活性と比較した、表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性の欠如、または低減、及び/または後続時点での対象試料の骨髄細胞内または骨髄細胞上でのii)の増加が、試験剤が、対象におけるがんを治療することを示し、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、比較することと、を含む、方法が提供される。
【0038】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、対象が、第1の時点と後続の時点との間に、がんに対する治療を受けており、治療を完了しており、及び/または寛解している。別の実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、エクスビボ及びインビボ試料からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、がんの非ヒト動物モデルから得られる。さらに別の実施形態では、第1及び/または少なくとも1つの後続の試料が、対象から得られた単一試料またはプールされた試料の一部である。別の実施形態では、試料が、対象から得られた細胞、血清、腫瘍周囲組織、及び/または腫瘍内組織を含む。
【0039】
別の態様では、細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する試験剤をスクリーニングするための方法であって、a)試験剤と接触した骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することであって、試験剤が、薬剤を使用して決定される際に、骨髄細胞内または骨髄細胞上で表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を調節し、薬剤が、少なくとも1つの本発明に包括されるモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、接触することと、b)試験剤と接触していない対照骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、c)b)と比較してa)において細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法の有効性を増加させる薬剤を同定することにより、細胞傷害性T細胞媒介性殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する試験剤を同定することであって、任意に、骨髄細胞が、抑制性骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、及び/または樹状細胞を含む、同定することと、を含む、方法が提供される。
【0040】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、接触のステップは、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで起こる。例えば、一実施形態では、方法は、i)がんにおける増殖細胞の数の減少、及び/またはii)がん細胞を含む腫瘍の体積またはサイズの減少を決定することをさらに含む。さらに別の実施形態では、本方法は、i)CD8+T細胞の数の増加、及び/またはii)がん細胞を含む腫瘍に浸潤する1型及び/またはM1マクロファージの数の増加を決定することをさらに含む。さらに別の実施形態では、方法は、臨床的利益率、死亡までの生存期間、病理学的完全奏効、病理学的奏効の半定量的測定、臨床的完全寛解、臨床的部分寛解、臨床的安定疾患、無再発生存期間、無転移生存期間、無疾患生存期間、循環腫瘍細胞減少、循環マーカー応答、及びRECIST基準からなる群から選択される少なくとも1つの基準によって測定された、表1に列挙される少なくとも1つの標的を調節する試験剤に対する応答性を決定することをさらに含む。別の実施形態では、本方法は、がん細胞と少なくとも1つの追加のがん療法剤またはレジメンとが接触することをさらに含む。
【0041】
上述のように、本発明の任意の態様に適用することができ、及び/または本明細書に記載される他の任意の実施形態と組み合わせることができる多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、調節された炎症性表現型を有する骨髄細胞が、a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β)、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の調節された発現、b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、及び/またはIL-10の調節された発現、c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインの調節された分泌、d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の調節された比率、e)調節されたCD8+細胞傷害性T細胞活性化、f)調節されたCD4+ヘルパーT細胞活性、g)調節されたNK細胞活性、h)調節された好中球活性、i)調節されたマクロファージ及び/または樹状細胞活性、及び/またはj)顕微鏡法で評価した際の、調節された紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を示す。別の実施形態では、細胞及び/またはマクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含み、任意に、細胞及び/またはマクロファージが、SIGLEC-9を発現するか、または発現すると決定される。さらに別の実施形態では、ヒトSIGLEC-9ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、及び/またはカニクイザルSIGLEC-9ポリペプチドが、配列番号7のアミノ酸配列を有する。さらに別の実施形態では、がんが、マクロファージが浸潤した固形腫瘍であり、浸潤性マクロファージが、腫瘍または腫瘍微小環境における細胞の質量、体積、及び/または数の少なくとも約5%を表し、及び/またはがんが、中皮腫、腎臓腎明細胞癌、膠芽腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、膵臓腺癌、乳房浸潤癌、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、脳低悪性度神経膠腫、乳房浸潤癌、子宮頸部扁平上皮癌及び子宮頸部腺癌、胆管癌、結腸腺癌、食道癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、嫌色素性腎臓、腎臓腎明細胞癌、腎臓腎乳頭細胞癌、肝臓肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、中皮腫、卵巣漿液性、嚢胞腺癌、膵臓腺癌、褐色細胞腫、傍神経節腫、前立腺腺癌、直腸腺癌、肉腫、皮膚皮膚黒色腫、胃腺癌、精巣胚細胞腫瘍、胸腺腫、甲状腺癌、子宮癌肉腫、子宮体子宮内膜癌、及びブドウ膜黒色腫からなる群から選択される。別の実施形態では、マクロファージが、1型マクロファージ、M1マクロファージ、2型マクロファージ、M2マクロファージ、M2cマクロファージ、M2dマクロファージ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD11b+細胞、CD14+細胞、及び/またはCD11b+/CD14+細胞を含み、任意に、マクロファージが、TAM及び/またはM2マクロファージである。さらに別の実施形態では、マクロファージは、SIGLEC-9を発現するか、または発現すると決定される。さらなる実施形態では、骨髄細胞が、初代骨髄細胞である。別の実施形態では、骨髄細胞が、組織微小環境内に含まれる。さらに別の実施形態では、骨髄細胞が、ヒト腫瘍モデルまたはがんの動物モデル内に含まれる。さらに別の実施形態では、対象は、哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は、ヒト(例えば、がんに罹患しているヒト)である。
【0042】
特許または出願ファイルには、少なくとも1つのカラーで実行された図面が含まれる。カラー図面(複数可)を伴う本特許または特許出願公開のコピーは、要求し、必要な料金を支払うことにより、オフィスによって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】SIGLEC-9発現が、SIGLEC-9を発現するT細胞の限定されたサブセットを伴うヒト骨髄系細胞で優勢であることを示す。
図2】婦人科癌から得られた腹水液試料中の細胞の大部分を占めるTAM(例えば、CD16及びCD163を発現するM2 TAM)も、その細胞表面上でSIGLEC-9タンパク質を高度に発現することを示す。
図3】単一細胞懸濁液に解離され、フローサイトメトリーを介して免疫表現型が決定された乳房、結腸、及び腎臓腫瘍から得られたTAM(例えば、CD11b+/CD14+マクロファージ)が、それらの細胞表面上でSIGLEC-9タンパク質を高度に発現することを示す。
図4】上部の最も高いSIGLEC-9発現を伴うSIGLEC-9のその発現に基づくヒトがんの大規模な公開データセット(TCGA、The Cancer Genome Atlas、2017年版、OmicSoft/Qiagenによって処理及び配布)のがん種全体にわたってマクロファージ浸潤腫瘍の順位分布を示す。
図5-1】マクロファージ機能アッセイで抗SIGLEC-9抗体を検証した結果を示す。抗SIGLEC-9抗体は、M2マーカーの減少及びM1炎症性サイトカインの増加を含む、初代ヒトマクロファージにおけるSIGLEC-9の阻害後、M2傾斜条件でマクロファージ炎症性表現型を調節することを示した。
図5-2】(続き)
図6】StaphylococcalエンテロトキシンB(SEB)アッセイ実験の結果を示す。
図7】抗SIGLEC-9抗体の結合特性の結果を示す。 凡例に関連付けられたバーヒストグラム、曲線、または他のデータを示すあらゆる図について、各表示について左から右に表示されるバー、曲線、または他のデータは、凡例の上から下のボックスに直接対応する。
図8】分析したすべての腫瘍にわたって平均化した、マクロファージ炎症性活性化(例えば、TNFαの増加した分泌)に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
図9】分析したすべての腫瘍にわたって平均化した、ケモカインシグネチャ(例えば、CCL3、CCL4、CCL5、CXCL9、及びCXCL10の増加した分泌)に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
図10】分析したすべての腫瘍にわたって平均化した、T細胞活性化シグネチャ(例えば、IFNγの増加した分泌)に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
図11】個々の腫瘍におけるTNFαの分泌の増加に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
図12】個々の腫瘍におけるCCL3、CCL4、CCL5、CXCL9、及び/またはCXCL10の分泌の増加に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
図13】個々の腫瘍におけるIFNγの分泌の増加に対する抗SIGLEC-9抗体の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、少なくとも部分的に、分極、活性化、及び/または機能を含む、骨髄細胞炎症性表現型を調節する抗SIGLEC-9組成物(例えば、モノクローナル抗体)の発見に基づく。したがって、本発明は、抗SIGLEC-9組成物、ならびに治療、診断、予後、及びスクリーニングのための骨髄細胞炎症性表現型の調節を含むがこれらに限定されない方法及び使用を提供する。
【0045】
I.定義
いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定された値の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%の範囲内、またはその間の任意の範囲の値を含む(例えば、プラスまたはマイナス2%~6%)。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、実験間に存在する変動など、方法、アッセイ、または測定した値における誤差の固有の変動を指す。
【0046】
「活性化受容体」という用語は、抗原、複合体化抗原(例えば、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ポリペプチドの文脈において)と結合する、または抗体と結合する免疫細胞受容体を含む。かかる活性化受容体には、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、サイトカイン受容体、LPS受容体、補体受容体、Fc受容体、及び他のITAM含有受容体が含まれる。例えば、T細胞受容体は、T細胞上に存在し、CD3ポリペプチドと関連する。T細胞受容体は、MHCポリペプチドとの関連で抗原によって(及びポリクローナルT細胞活性化試薬によって)刺激される。TCRを介したT細胞活性化は、例えば、タンパク質リン酸化、膜脂質変化、イオンフラックス、環状ヌクレオチド改変、RNA転写変化、タンパク質合成変化、及び細胞体積変化など、多くの変化をもたらす。サイトカイン受容体または病原体関連分子パターン(PAMP)受容体などの活性化受容体を介したマクロファージのT細胞活性化と同様に、タンパク質リン酸化、表面受容体表現型に対する改変、タンパク質合成及び放出、ならびに形態学的変化などの変化をもたらす。
【0047】
「活性」という用語は、ポリペプチドに関して使用される場合、タンパク質の構造に固有の活性を含む。例えば、骨髄細胞タンパク質に関して、「活性」という用語は、細胞の天然結合タンパク質結合または細胞シグナル伝達を調節することによって(例えば、免疫細胞上の天然受容体またはリガンドと結合することによって)骨髄細胞タンパク質の炎症性表現型を調節する能力を含む。
【0048】
「投与する」という用語は、宿主及び/または対象などの目的の生物学的標的内への、または(必要に応じて)その上への薬剤の実際の物理的導入に関する。組成物は、インビトロまたはインビボで細胞に投与することができる(例えば、「接触する」)。組成物は、適切な投与経路を介してインビボで対象に投与することができる。組成物を宿主に導入する任意のすべての方法が、本発明に従って企図される。本方法は、任意の特定の導入手段に依存するものではなく、そのように解釈されるべきではない。導入手段は当業者に周知であり、本明細書でも例示されている。この用語には、代理人が意図した機能を実行できるようにする投与経路が含まれる。使用できる身体の治療のための投与経路の例には、注入(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内など)、経口、吸入、及び経皮経路が含まれ得る。注入は、ボーラス注入であり得るか、または持続注入であり得る。投与経路に応じて、薬剤は、その意図された機能を実行する能力に有害な影響を及ぼし得る自然条件から薬剤を保護するために、選択された材料でコーティングする、またはその中に配置することができる。薬剤は、単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することができる。薬剤はまた、インビボでその活性形態に変換されるプロドラッグとして投与することができる。
【0049】
「薬剤」という用語は、化合物、超分子複合体、材料、及び/またはそれらの組み合わせもしくは混合物を指す。化合物(例えば、分子)は、化学式、化学構造、または配列で表すことができる。薬剤の代表的な非限定的な例には、例えば、抗体、低分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(例えば、RNAi剤、siRNA剤、miRNA、piRNA、mRNA、アンチセンスポリヌクレオチド、アプタマーなど)、脂質、及び多糖が含まれる。一般に、薬剤は、当該技術分野で即知の任意の好適な方法を使用して得ることができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、対象(例えば、ヒト)における疾患または障害(例えば、がん)を治療する際に使用するための「治療剤」であり得る。
【0050】
「アゴニスト」という用語は、標的(複数可)(例えば、受容体)と結合し、標的(複数可)の生物学的活性を活性化または増加させる薬剤を指す。例えば、「アゴニスト」抗体は、それが結合する抗原(複数可)の生物学的活性を活性化または増加させる抗体である。
【0051】
「改変された量」または「改変されたレベル」という用語は、対照試料におけるコピー数または発現レベルと比較した、バイオマーカー核酸のコピー数(例えば、生殖細胞系及び/または体細胞)の増加もしくは低減、または目的の試料における発現レベルの増加もしくは低減を包含する。バイオマーカーの「改変された量」という用語はまた、正常及び/または対照試料における対応するタンパク質レベルと比較した、試料、例えば、がん試料におけるバイオマーカータンパク質の増加または低減したタンパク質レベルを含む。さらに、バイオマーカータンパク質の改変された量は、マーカーのメチル化状態などの翻訳後修飾を検出することによって決定でき、バイオマーカータンパク質の発現または活性に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、「改変された量」は、参照基準がそれぞれバイオマーカーの欠如または存在であり得るため、バイオマーカーの存在または欠如を指す。バイオマーカーの欠如または存在は、バイオマーカーを測定するために使用される所与のアッセイの感度の閾値に従って決定することができる。
【0052】
バイオマーカーの量が、量を評価するために利用されるアッセイの標準誤差よりも量が多いことによる、正常なレベルよりもそれぞれ多いかまたは少ない場合に、対象におけるバイオマーカーの量は、バイオマーカーの正常な量よりも「有意に」高いかまたは低く、好ましくは少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、350%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはその量より多い。代替的に、対象におけるバイオマーカーの量は、その量がバイオマーカーの正常な量よりも少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約3倍、4倍、または5倍、それぞれ高いかまたは低い場合に、正常な量よりも「有意に」高いかまたは低いと見なすことができる。かかる「有意性」はまた、発現、阻害、細胞傷害性、細胞増殖などのために、本明細書に記載される任意の他の測定されたパラメータに適用され得る。
【0053】
バイオマーカーの「改変された発現レベル」という用語は、試験試料、例えば、がんに罹患している患者に由来する試料におけるバイオマーカーの発現レベルまたはコピー数を指し、これは、発現またはコピー数を評価するために利用されるアッセイの標準誤差よりも大きいかまたは小さく、対照試料(例えば、関連する疾患を有しない健康な対象からの試料)におけるバイオマーカーの発現レベルまたはコピー数、好ましくは、いくつかの対照試料におけるバイオマーカーの平均発現レベルまたはコピー数の少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、または10倍以上であることが好ましい。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのレベルは、バイオマーカー自体のレベル、修正されたバイオマーカー(例えば、リン酸化バイオマーカー)のレベル、または対照(例えば、非リン酸化バイオマーカーと比較したリン酸化バイオマーカー)などの別の測定変数と比較したバイオマーカーのレベルを指す。「発現」という用語は、核酸(例えば、DNA)が転写されてRNAを生成するプロセスを包含し、さらに、RNA転写物がプロセシングされ、ポリペプチドに翻訳されるプロセスを指し得る。核酸及びそのポリペプチド対応物の発現の合計は、存在する場合、表1に列挙される1つ以上の標的などのバイオマーカーの量に寄与する。
【0054】
バイオマーカーの「改変された活性」という用語は、バイオマーカーの活性を指し、これは、正常な対照試料におけるバイオマーカーの活性と比較して、疾患状態、例えば、がん試料、または治療状態で増加または減少する。バイオマーカーの改変された活性は、例えば、バイオマーカーの改変された発現、バイオマーカーの改変されたタンパク質レベル、バイオマーカーの改変された構造、あるいは、例えば、バイオマーカーと同じもしくは異なる経路に関与する他のタンパク質との改変された相互作用、または転写活性化因子もしくは阻害剤との改変された相互作用の結果から生じ得る。
【0055】
バイオマーカーの「改変された構造」という用語は、バイオマーカー核酸またはタンパク質内の変異または対立遺伝子バリアントの存在を指し、例えば、変異は、正常もしくは野生型遺伝子またはタンパク質と比較して、バイオマーカー核酸もしくはタンパク質の発現または活性に影響を与える。例えば、変異には、これらに限定されないが、置換、欠失、または追加変異が含まれる。変異は、バイオマーカー核酸のコードまたは非コード領域内に存在し得る。
【0056】
バイオマーカーの「改変された細胞内局在化」という用語は、細胞内、例えば健康な及び/または野生型細胞内の正常な局在と比較した、細胞内のバイオマーカーの誤った局在化を指す。マーカーの正常な局在化の指標は、バイオマーカーポリペプチドによって包括される分野で知られている細胞内局在化モチーフの分析を通して決定することができる。
【0057】
「アンタゴニスト」または「遮断」という用語は、標的(複数可)(例えば、受容体)と結合し、標的(複数可)の生物学的活性を阻害または減少させる薬剤を指す。例えば、「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原(複数可)の生物学的活性を有意に阻害または減少させる抗体である。
【0058】
本明細書内で別段の指定がない限り、「抗体」及び「複数の抗体」という用語は、天然に発生する形態の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)及び一本鎖抗体、キメラ及びヒト化抗体、及び多重特異性抗体などの組換え抗体、ならびに前述のすべての断片、融合タンパク質、及び誘導体を広く包含し、断片及び誘導体は、少なくとも抗原性結合部位を有する。抗体誘導体は、抗体と複合されるタンパク質または化学部分を含むことができる。
【0059】
「バイオマーカー」という用語は、骨髄細胞における目的の表現型など、目的の1つ以上の表現型を調節するための標的である遺伝子または遺伝子産物を指す。本文脈において、「バイオマーカー」という用語は、「標的」と同義である。しかしながら、いくつかの実施形態では、用語はさらに、1つ以上の診断、予後、及び/または治療のアウトプットなど、目的のアウトプットを示すと決定されている標的の測定可能な実体を包含する(例えば、炎症性表現型、がん状態などを調節するため)。さらに他の実施形態では、用語は、抗遺伝子産物抗体及びその抗原結合断片を含む、遺伝子または遺伝子産物を調節する組成物をさらに包含する。したがって、バイオマーカーには、核酸(例えば、ゲノム核酸及び/または転写核酸)、タンパク質、及び抗体(ならびにその抗原結合断片)、特に表1に記載されているものが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0060】
「がん」または「腫瘍」または「過剰増殖性」という用語は、制御されていない増殖、不死、浸潤性または転移性の能力、急速な成長、及び特定の特徴的な形態学的特性など、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在を指す。いくつかの実施形態では、かかる細胞は、PD-1、PD-L1、PD-L2、及び/またはCTLA-4などの免疫チェックポイントタンパク質の発現及び活性のために、かかる特徴を部分的または完全に示す。
【0061】
がん細胞は、腫瘍の形態であることが多いが、かかる細胞は、動物内に単独で存在し得るか、または非腫瘍化がん細胞、例えば、白血病細胞などであり得る。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、前悪性、ならびに悪性のがんを含む。がんには、これらに限定されないが、様々ながん、膀胱(進行性及び転移性膀胱癌を含む)、乳房、結腸(結腸直腸癌を含む)、腎臓、肝臓、肺(小細胞及び非小細胞肺癌ならびに肺腺癌を含む)、卵巣、前立腺、精巣、泌尿生殖器、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(外分泌性膵臓癌を含む)、食道、胃、胆嚢、頸部、甲状腺、及び皮膚(扁平上皮癌を含む)を含むがん腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含むリンパ球系の造血腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄系の造血腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢神経系ならびに末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間葉系腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角膜棘細胞腫、セミノーマ、甲状腺濾胞癌、及び奇形腫を含む他の腫瘍;黒色腫、切除不能なステージIIIまたはIVの悪性黒色腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、胃腸癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、頸部癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、骨癌、骨腫瘍、成人の骨の悪性線維性組織球腫;小児の骨の悪性線維性組織球腫、肉腫、小児肉腫、鼻副鼻腔ナチュラルキラー、新生物、形質細胞新生物;骨髄異形成症候群;神経芽細胞腫;精巣胚細胞腫瘍、眼内黒色腫、骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、滑膜肉腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞症及び肥満細胞症に関連する症状、ならびにあらゆるその転移が含まれる。さらに、障害には、他のがんに加えて、ヒトにおける色素性蕁麻疹、びまん性皮膚肥満細胞症、孤立性肥満細胞腫などの肥満細胞症、ならびにイヌの肥満細胞腫、及び水疱性紅皮症及び遠隔血管拡張性肥満細胞腫、関連する血液学的障害を伴う肥満細胞腫などのいくつかの希少なサブタイプ、例えば骨髄増殖性もしくは骨髄異形成症候群、または急性白血病、肥満細胞症に関連する骨髄増殖性障害、肥満細胞白血病などが含まれる。他のがんもまた、膀胱、尿路上皮癌、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、精巣、特に精巣セミノーマ、及び扁平上皮癌を含む皮膚を含む癌腫;消化管間質腫瘍(「GIST」);白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含むリンパ球系の造血腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄系の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、セミノーマ、テトラトカルシノーマ、神経芽細胞腫、及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢ならびに末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角膜棘細胞腫、セミノーマ、甲状腺濾胞癌、奇形腫、化学療法抵抗性の非セミノーマ性胚細胞腫瘍、カポジ肉腫を含む他の腫瘍、ならびにあらゆるその転移を含むがこれらに限定されない障害の範囲に含まれる。本発明に包括される方法に適用可能ながんの種類の他の非限定的な例には、ヒト肉腫及びがん腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、骨癌、脳腫瘍、肺癌(肺腺癌を含む)、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球)白血病及び慢性リンパ性白血病);真性多血症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及び重鎖疾患が含まれる。いくつかの実施形態では、がんは、本質的に上皮性であり、これらに限定されないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、婦人科癌、腎癌、喉頭癌、肺癌、口腔癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、または皮膚癌が含まれる。いくつかの実施形態では、上皮癌は、非小細胞肺癌、非乳頭状腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、または乳癌である。上皮癌は、漿膜、類内膜、粘液性、明細胞、ブレンナー、または未分化を含むがこれらに限定されない他の様々な方法で特徴付けすることができる。いくつかの実施形態では、がんは、(進行性)非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部扁平上皮癌、(進行性)尿路上皮膀胱癌、(進行性)腎臓癌(RCC)、マイクロサテライト不安定性高癌、古典的ホジキンリンパ腫、(進行性)胃癌、(進行性)子宮頸癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫、(進行性)肝細胞癌、及び(進行性)メルケル細胞癌からなる群から選択される。
【0062】
「分類する」という用語は、疾患状態と試料を「関連付けること」または「カテゴリ化すること」を含む。特定の事例では、「分類」は、統計的証拠、経験的証拠、またはその両方に基づく。特定の実施形態では、試料のいわゆるトレーニングセットの使用を分類する方法及びシステムは、既知の疾患状態を有する。確立されると、トレーニングデータセットは、試料の未知の疾患状態を分類するために、未知の試料の特徴が比較される基礎、モデル、または鋳型として機能する。特定の事例では、試料を分類することは、試料の疾患状態を診断することに類似する。特定の他の事例では、試料を分類することは、試料の疾患状態を別の疾患状態から区別することに類似する。
【0063】
「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指し、一方、「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域を指す(例えば、5’及び3’非翻訳領域)。
【0064】
抗体またはその抗原結合断片に関して「競合する」という用語は、第1の抗体またはその抗原結合断片が、第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に類似した様式でエピトープと結合し、その結果、第1の抗体とその同族エピトープとの結合が、第2の抗体の非在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に減少することをもたらす状況を指す。代替的に、第2の抗体のそのエピトープとの結合も、第1の抗体の存在下で検出可能に減少するが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体がそのそれぞれのエピトープとの結合を阻害することなく、そのエピトープとの第2の抗体との結合を阻害し得る。しかしながら、各抗体が、その同族エピトープまたはリガンドとの他の抗体の結合を、同じ程度、より大きい程度、またはより小さい程度で検出可能に阻害する場合、抗体は、各々のエピトープ(複数可)の結合に関して互いに「交差競合する」と言われる。競合及び交差競合抗体の両方、ならびにその抗原結合断片が、本発明に包括される(例えば、本明細書に記載される及び/または当技術分野で既知の他の抗体及び抗原結合断片と競合または交差競合する、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片)。かかる競合または交差競合が生じる機構(例えば、立体障害、立体構造変化、または共通エピトープもしくはその一部との結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供される開示及び当業者の技術に基づいて、かかる競合及び/または交差競合抗体が包含され、本明細書に開示される方法に有用であり得ることを理解する。
【0065】
「相補的」という用語は、2つの核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広い概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、残基がチミンまたはウラシルである場合、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基と特異的な水素結合を形成(「塩基対形成」)できることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、残基がグアニンである場合、第1の鎖に対して逆平行である第2の核酸鎖の残基と塩基対形成できることが知られている。核酸の第1の領域は、2つの領域が逆平行な様式で配置されるときに第1の領域の少なくとも1個のヌクレオチド残基が、第2の領域の残基と塩基対形成できる場合、同じかまたは異なる核酸の第2の領域と相補的である。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それにより、第1及び第2の部分が逆平行の様式で配置される場合、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%、またはそれ以上が、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。いくつかの実施形態では、相補的ポリヌクレオチドは、「十分に相補的」であり得るか、または「十分な相補性」、すなわち、二本鎖を維持するのに十分な相補性及び/または所望の活性を有することができる。例えば、RNAi剤の場合、かかる相補性は、mRNAの翻訳を部分的または完全に防ぐのに十分な、薬剤と標的mRNAとの間の相補性である。例えば、「標的特異的RNA干渉(RNAi)を指示するために標的mRNA配列に十分に相補的な配列」を有するsiRNAは、siRNAが、RNAi機構またはプロセスによる標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な配列を有することを意味する。
【0066】
「実質的に相補的」という用語は、2つの核酸間の塩基対二本鎖領域における相補性を指し、末端オーバーハングまたは2つの二本鎖領域間のギャップ領域などの任意の一本鎖領域ではない。相補性は完全である必要はなく、塩基対の不一致はいくつあってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書において2つの配列が「実質的に相補的」と称される場合、その配列は、選択された反応条件下でハイブリダイズするために互いに十分に相補的であることを意味する。したがって、実質的に相補的な配列は、二本鎖領域において、少なくとも100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70、65、60パーセント以上、またはその間の任意の数の塩基対相補性を有する配列を指すことができる。
【0067】
本明細書で使用される「共同療法」及び「併用療法」という用語は、2つ以上の治療剤、例えば、表1に列挙される1つより多い標的の調節因子の組み合わせ、表1に列挙される少なくとも1つの標的の少なくとも1つの調節因子、及び免疫チェックポイント療法などの追加の療法剤、表1に列挙される1つ以上の標的の1つより多い調節因子の組み合わせなど、ならびにそれらの組み合わせを投与することを指す。併用療法を構成する異なる薬剤は、1つの他のものまたは複数の他のものの投与と同時、前、または後に投与することができる。併用療法は、これらの治療薬の併用から有益な(相加的または相乗的)効果を提供することを目的とする。これらの治療薬の組み合わせの投与は、定義された期間(通常、選択される組み合わせに応じて、数分間、数時間、数日間、または数週間)にわたって実施することができる。併用療法では、併用治療剤は、連続的に、または実質的に同時に適用することによって適用することができる。
【0068】
「対照」という用語は、試験試料中の発現産物との比較を提供するのに適した任意の参照標準を指す。一実施形態では、対照は、発現産物レベルが検出され、試験試料からの発現産物レベルと比較される「対照試料」を取得することを含む。かかる対照試料は、骨髄細胞を有する対象及び/または既知の結果を有する対照がん患者(保存された試料または以前の試料の測定であり得る)、正常な患者もしくはがん患者などの対象から単離された正常な組織または細胞、正常な対象もしくはがん患者などの対象から単離された培養された初代細胞/組織、がん患者の同じ器官または体の位置から得られた隣接する正常細胞/組織、正常な対象から単離された組織または細胞試料、あるいは保管場所から得られた初代細胞/組織などの対象からの試料を含むがこれらに限定されない任意の好適な試料を含むことができる。別の好ましい実施形態では、対照は、任意の好適な源からの参照標準発現産物レベルを含むことができ、これらに限定されないが、ハウスキーピング遺伝子、正常組織(または他の以前に分析された対照試料)からの発現産物レベル範囲、患者の群からの試験試料内、または特定の転帰(例えば、1年、2年、3年、4年などの生存)、または特定の治療(例えば、がん療法の標準治療)を受けている患者のセットで以前に決定された発現産物レベルの範囲を含む。かかる対照試料及び参照標準発現産物レベルは、本発明に包括される方法における対照として組み合わせて使用され得ることが当業者によって理解されるであろう。一実施形態では、対照は、正常または非がん性細胞/組織試料を含むことができる。別の好ましい実施形態では、対照は、がん患者のセットなどの患者のセット、または特定の治療を受けているがん患者のセット、またはある結果対別の結果を有する患者のセットについての発現レベルを含むことができる。以前の事例においては、各患者の特定の発現産物レベルを、発現のパーセンタイルレベルに割り当てか、あるいは参照標準発現レベルの平均もしくは平均よりも高いまたは低いとして表すことができる。別の好ましい実施形態では、対照は、正常細胞、併用化学療法で治療された患者からの細胞、及び良性がんを有する患者からの細胞を含み得る。別の実施形態では、対照はまた、測定値、例えば、同じ集団におけるハウスキーピング遺伝子の発現レベルと比較した、集団における特定の遺伝子の発現の平均レベルを含み得る。かかる集団は、正常な対象、いかなる治療も受けていない(すなわち、未治療)がん患者、標準治療を受けているがん患者、または良性のがんを有する患者を含み得る。別の好ましい実施形態では、対照は、発現産物レベルの比率変換を含み、これに限定されないが、試験試料中の2つの遺伝子の発現産物レベルの比率を決定し、それを参照標準中の同じ2つの遺伝子の任意の好適な比率と比較することと、試験試料中の2つ以上の遺伝子の発現産物レベルを決定し、任意の好適な対照中の発現産物レベルの差を決定することと、試験試料中の2つ以上の遺伝子の発現産物レベルを決定し、それらの発現を試験試料中のハウスキーピング遺伝子の発現に正規化し、任意の好適な対照と比較することと、を含む。特に好ましい実施形態では、対照は、試験試料と同じ系統及び/または型の対照試料を含む。別の実施形態では、対照は、がんを有するすべての患者など、患者試料のセット内またはそれに基づいてパーセンタイルとして群化された発現産物レベルを含むことができる。一実施形態では、対照発現産物レベルが確立され、例えば、特定のパーセンタイルと比較して、より高いかまたはより低いレベルの発現産物が、転帰を予測するための基礎として使用される。別の好ましい実施形態では、対照発現産物レベルは、既知の転帰を有するがん対照患者からの発現産物レベルを使用して確立され、試験試料からの発現産物レベルは、転帰を予測するための基礎として対照発現産物レベルと比較される。本発明に包括される方法は、試験試料中の発現産物のレベルを対照と比較する際の特定のカットオフポイントの使用に限定されない。
【0069】
バイオマーカー核酸の「コピー数」は、特定の遺伝子産物をコードする細胞(例えば、生殖細胞系列及び/または体細胞)中のDNA配列の数を指す。概して、所与の遺伝子に関して、哺乳動物は各遺伝子の2つのコピーを有する。しかしながら、コピー数は、遺伝子増幅もしくは複製によって増加され得るか、または欠失によって低減され得る。例えば、生殖細胞系列コピー数の変化には、1つ以上のゲノム遺伝子座での変化が含まれ、該1つ以上のゲノム遺伝子座は、対照における生殖細胞系列コピーの正常な補体のコピー数によって考慮されない(例えば、特定の生殖細胞系列DNA及び対応するコピー数が決定されたものと同じ種の生殖細胞系列DNAの通常のコピー数)。体細胞コピー数の変化には、1つ以上のゲノム遺伝子座での変化が含まれ、該1つ以上のゲノム遺伝子座は、対照の生殖系列DNAにおけるコピー数によって考慮されない(例えば、体細胞DNA及び対応するコピー数が決定されたものと同じ対象の生殖細胞系列DNAのコピー数)。
【0070】
活性化免疫細胞に関して使用される「共刺激」という用語には、増殖またはエフェクター機能を誘導する第2の非活性化受容体媒介性シグナル(「共刺激シグナル」)を提供する共刺激ポリペプチドの能力が含まれる。例えば、共刺激シグナルは、例えば、T細胞受容体媒介シグナルを受信したT細胞においてサイトカイン分泌をもたらすことができる。例えば、活性化受容体を介して、細胞受容体媒介シグナルを受信した免疫細胞は、本明細書では、「活性化免疫細胞」と称される。
【0071】
「共刺激受容体」という用語は、共刺激シグナルを免疫細胞、例えば、CD28に伝達する受容体を含む。本明細書で使用される場合、「阻害性受容体」という用語は、負のシグナルを免疫細胞に伝達する受容体(例えば、PD-1、CTLA-4など)を含む。阻害性受容体によって伝達される阻害性シグナルは、共刺激性受容体(CD28など)が免疫細胞上に存在せず、したがって、単に共刺激性ポリペプチドの結合のための阻害性受容体と共刺激性受容体との間の競合の機能ではない場合でも生じ得る(Fallarino et al.(1998)J.Exp.Med.188:205)。免疫細胞への阻害性シグナルの伝達は、免疫細胞における無応答性またはアネルギーまたはプログラム細胞死をもたらし得る。好ましくは、阻害性シグナルの伝達は、アポトーシスを伴わない機構を介して動作する。本明細書で使用される場合、「アポトーシス」という用語には、当技術分野で既知である技術を使用して特徴付けすることができるプログラム細胞死が含まれる。アポトーシス細胞死は、例えば、細胞の収縮、膜の小疱形成、及び細胞断片化に至るクロマチン凝縮によって特徴付けすることができる。アポトーシスを受ける細胞は、ヌクレオソーム間DNA切断の特徴的なパターンも示す。受容体と結合するポリペプチドの形態に応じて、シグナルが伝達され得るか(例えば、阻害性受容体リガンドの多価形態によって)、または例えば、1つ以上の天然結合パートナーとの結合のためにリガンドの活性化形態と競合することによって、シグナルを阻害し得る(例えば、阻害性受容体リガンドの可溶性一価形態によって)。しかしながら、可溶性ポリペプチドが刺激的であり得る例が存在する。調節剤の効果は、本明細書に記載されるようなルーチンスクリーニングアッセイを使用して容易に実証され得る。
【0072】
「サイトカイン」という用語は、免疫系の特定の細胞によって分泌される物質を指し、他の細胞に生物学的影響を有する。サイトカインは、インターフェロン、インターロイキン、及び成長因子など、様々な物質であり得る。
【0073】
「対象に好適な治療レジメンを決定する」という用語は、本発明に包括されるバイオマーカーを媒介した分析の結果に基づいて、または本質的に基づいて、または少なくとも部分的に基づいて、開始、修正、及び/または終了される対象の治療レジメン(すなわち、対象におけるがんの予防及び/または治療に使用される単一の療法または異なる療法の組み合わせ)の決定を意味すると解釈される。一例は、1つ以上のバイオマーカーを調節する本発明に包括される薬剤を使用して療法を提供するために、がんに対して標的療法を提供するかを決定することである。別の例は、再発のリスクを低減することを目的とした手術後に補助療法を開始することである。さらに別の例は、特定の化学療法の投与量を修正することである。本発明による分析の結果に加えて、決定は、治療される対象の個人的特徴に基づくことができる。ほとんどの場合、対象に好適な治療レジメンの実際の決定は、主治医または医師によって実施されるであろう。
【0074】
「エンドトキシンを含まない」または「実質的にエンドトキシンを含まない」という用語は、最大で微量(例えば、対象に対して臨床的に有害な生理学的影響を有しない量)のエンドトキシン、及び好ましくは検出不可能な量のエンドトキシンを含む組成物、溶媒、及び/または容器を指す。エンドトキシンは、特定の細菌、通常はグラム陰性菌に関連する毒素であるが、Listeria monocytogenesなどのグラム陽性菌に見られる場合がある。最も一般的なエンドトキシンは、様々なグラム陰性菌の外膜に見られるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、これらの細菌が疾患を引き起こす能力の中心的な病原性の特徴を表す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、発熱、血圧の低下、炎症及び凝固の活性化、他の有害な生理学的影響などが生じ得る。
【0075】
したがって、医薬品の製造では、少量でもヒトにおいて悪影響を与え得るため、製剤及び/または薬剤容器から微量のエンドトキシンのほとんどまたはすべてを除去することが望ましい場合が多い。ほとんどのエンドトキシンを分解するには通常300°Cを超える温度が必要になるため、この目的にはパイロジェン除去オーブンを使用できる。例えば、シリンジまたはバイアルなどの一次包装材料に基づくと、250°Cのガラス温度及び30分の保持時間の組み合わせで、エンドトキシンレベルを3log低減するのに十分な場合が多い。本明細書に記載され、当技術分野で即知であるような、例えば、クロマトグラフィ及び濾過法を含む、エンドトキシンを除去する他の方法が企図される。エンドトキシンは、当技術分野で即知である通例の技術を使用して検出され得る。例えば、カブトガニからの血液を利用するリムルスアメーバ溶解物アッセイは、エンドトキシンの存在を検出するための非常に感度の高いアッセイである。この試験では、非常に低レベルのLPSは、この反応を増幅する強力な酵素カスケードにより、リムルス溶解物の検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンは、酵素免疫測定法(ELISA)によっても定量化され得る。実質的にエンドトキシンを含まないために、エンドトキシンレベルは、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.08、0.09、0.1、0.5、1.0、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、または10EU/ml未満、または0.05~10EU/mlなどを含むその間の任意の範囲であり得る。通常、1ngのリポ多糖(LPS)は、約1~10EUに相当する。
【0076】
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、免疫グロブリン、抗体、または抗原結合断片)が結合する抗原上の決定基または部位を指す。タンパク質抗原のエピトープは、線状エピトープまたは立体構造エピトープのいずれかであり得る。線状エピトープとは、連結したアミノ酸の連続した線状配列から形成されるエピトープを指す。タンパク質抗原の線状エピトープは、典型的には、化学変性剤(例えば、酸、塩基、溶媒、架橋試薬、カオトロピック剤、ジスルフィド結合還元剤)または物理変性剤(例えば、熱、放射能、または機械的せん断または応力)への曝露時に保持される。対照的に、立体構造エピトープは、ポリペプチドの三次フォールディングによって並置された非連続アミノ酸から形成されるエピトープを指す。立体配座エピトープは、典型的には、変性剤での処理時に失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間立体配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ超のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、固有の空間立体配座で25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5未満のアミノ酸を含む。一般に、特定の標的分子に特異的な抗体、またはその抗原結合断片は、優先的に、タンパク質及び/または巨大分子の複合混合物内の標的分子上の特定のエピトープを認識して結合する。いくつかの実施形態では、エピトープは、バイオマーカータンパク質の細胞外ドメインのすべてのアミノ酸を含まない。
【0077】
「発現シグネチャ」または「シグネチャ」という用語は、目的の状態を示す1つ以上の発現されたバイオマーカーの群を指す。例えば、このシグネチャを構成する遺伝子、タンパク質などは、特定の細胞系統、分化の段階、または特定の生物学的応答の間に発現され得る。バイオマーカーは、細胞の炎症状態、がんの起源の細胞、生検における非悪性細胞の性質、及びがんの原因となる発がんメカニズムなど、それらが発現している腫瘍の生物学的側面を反映することができる。発現データ及び遺伝子発現レベルは、コンピュータ可読媒体、例えば、マイクロアレイまたはチップ読み取りデバイスと組み合わせて使用されるコンピュータ可読媒体に保存することができる。このような発現データを操作して、発現シグネチャを生成できる。
【0078】
「固定」または「付着」という用語は、基質と共有結合的または非共有結合的に会合し、かかる基質は、分子の実質的な部分が基質から解離することなく流体(例えば、標準的なクエン酸生理食塩水、pH7.4)ですすぐことができる。
【0079】
「遺伝子」という用語は、機能を有する分子(例えば、RNA、タンパク質など)をコードするヌクレオチド(例えば、DNA)配列を包含する。遺伝子は一般に、2つの相補的なヌクレオチド鎖(すなわち、dsDNA)、コード鎖及び非コード鎖を含む。DNA転写について言及する場合、コード鎖は、その塩基配列が生成されたRNA転写物の塩基配列に対応するDNA鎖である(ただし、チミンはウラシルに置き換えられる)。コード鎖にはコドンが含まれ、一方で非コード鎖にはアンチコドンが含まれる。転写中、RNA Pol IIは非コード鎖と結合し、アンチコドンを読み取り、その配列を転写して、相補的な塩基を有数RNA転写物を合成する。いくつかの実施形態では、列挙される遺伝子配列(すなわち、DNA配列)は、コード鎖の配列である。
【0080】
「機能保存的バリアント」は、タンパク質または酵素における所与のアミノ酸残基が、アミノ酸を類似の特性(例えば、極性、水素結合電位、酸性、塩基性、疎水性、芳香族など)を有するものに置き換えることを含むがこれに限定されない、ポリペプチドの全体的な立体構造及び機能を改変することなく変化したものである。保存されたとして示されるもの以外のアミノ酸は、タンパク質が異なる場合があり、その結果、類似の機能を有する任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似性パーセントが変化し得、例えば、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づく、クラスター法などの整列スキームに従って決定される場合、70%~99%であり得る。いくつかの実施形態では、「機能保存的バリアント」はまた、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定される場合、少なくとも80%、81%、82%、83%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含み、その比較対象の天然もしくは親タンパク質と同じまたは実質的に類似する特性または機能を有する。
【0081】
「遺伝子産物」(本明細書では「遺伝子発現産物」または「発現産物」とも称される)という用語は、遺伝子から転写された核酸(例えば、mRNA)などの遺伝子の発現から生じる産物、及びかかるmRNAの翻訳から生じるポリペプチドまたはタンパク質を包含する。特定の遺伝子産物は、例えば細胞中でプロセシングまたは修飾を受けることができることが理解されよう。例えば、mRNA転写物は、翻訳前にスプライシング、ポリアデニル化などをすることができ、及び/またはポリペプチドは、分泌シグナル配列の除去、オルガネラ標的配列の除去、もしくはリン酸化、グリコシル化、メチル化、脂肪アシル化などの修飾などの同時翻訳または翻訳後プロセシングを受けることができる。「遺伝子産物」という用語は、かかるプロセシングまたは修飾された形態を包含する。ヒトを含む様々な種のゲノムmRNA及びポリペプチド配列は当該技術分野で即知であり、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nih.gov)またはUniversal Protein Resource(uniprot.org)で利用可能なデータベースなど、公的にアクセス可能なデータベースで利用可能である。他のデータベースには、例えば、GenBank、RefSeq、Gene、UniProtKB/SwissProt、UniProtKB/Tremblなどが含まれる。一般に、NCBI参照配列データベースの配列は、目的の遺伝子についての遺伝子産物配列として使用することができる。遺伝子の複数の対立遺伝子が同じ種の個体間に存在し得ることが理解されよう。特定のタンパク質の複数のアイソフォームは、選択的RNAスプライシングまたは編集の結果として、存在し得る。一般に、本開示の態様が遺伝子または遺伝子産物に関連する場合、特に明記しない限り、該当する場合、対立遺伝子バリアントまたはアイソフォームに関連する実施形態が包含される。特定の実施形態は、特定の配列(複数可)、例えば、特定の対立遺伝子(複数可)またはアイソフォーム(複数可)に向けることができる。
【0082】
「生成する」という用語は、直接的または間接的な作用などによって、所望の結果が達成される任意の様式を包含する。例えば、本明細書に記載される調節された表現型を有する細胞は、本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーを調節する少なくとも1つの薬剤との接触などによる直接的な作用によって、及び/または所望の物理的、遺伝的、及び/または表現型属性を有する細胞を増殖させることなどによる間接的な作用によって生成することができる。
【0083】
「グリコシル化パターン」という用語は、タンパク質、より詳細には免疫グロブリンタンパク質と共有結合している炭水化物単位のパターンである。異種抗体のグリコシル化パターンは、非ヒトトランスジェニック動物の種によって産生される抗体で天然に生じるグリコシル化パターンに実質的に類似していると特徴付けすることができ、その場合当業者は、異種抗体のグリコシル化パターンが、導入遺伝子のCH遺伝子が由来した種よりも非ヒトトランスジェニック動物の種における該グリコシル化パターンに類似していると認識するであろう。
【0084】
細胞性バイオマーカー発現に関連する「高」、「低」、「中間」、及び「陰性」という用語は、1つ以上の参照細胞によるバイオマーカーの細胞発現と比較して発現されるバイオマーカーの量を指す。バイオマーカー発現は、1つ以上のバイオマーカーゲノム核酸、リボ核酸、及び/またはポリペプチドの細胞レベル、活性、構造などの分析を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載される任意の方法に従って決定することができる。一実施形態では、用語は、それぞれ最高、中間、または最低レベルでバイオマーカーを発現する細胞の集団の定義された割合を指す。かかる割合は、バイオマーカーを高度に発現するかまたは弱く発現する細胞の集団の上位0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%以上、またはその間の任意の範囲として定義することができる。「低」という用語は、バイオマーカー発現が「陰性」であるため、バイオマーカーを検出可能に発現しない細胞は除外する。「中間」という用語は、バイオマーカーを発現するが、「高」レベルでそれを発現する集団よりも低いレベルの細胞を含む。別の実施形態では、用語は、定性的または統計的プロット領域によって同定されるバイオマーカー発現の細胞集団を指すこともあり、または代替的に指すこともある。例えば、フローサイトメトリーを使用して分類された細胞集団は、当該技術分野で周知の方法に従って、平均蛍光強度などに基づいてなど、検出可能な部分的分析に基づいて別個のプロットを同定することにより、バイオマーカー発現レベルに基づいて決定することができる。かかるプロット領域は、目的のバイオマーカーのための当該技術分野で周知の方法に基づいて、数、形状、重複などに従って洗練することができる。さらに別の実施形態では、用語はまた、追加のバイオマーカーの発現の存在または不在に従って決定することができる。
【0085】
「実質的に同一」という用語は、例えば以下に記載される方法を使用して最適に整列された場合に、第2の核酸またはアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%配列同一性を共有する核酸またはアミノ酸配列を指す。「実質的同一性」は、全長配列、機能ドメイン、コード及び/または制御配列、エクソン、イントロン、プロモーター、ならびにゲノム配列などの、様々な種類及び長さの配列を指すために使用することができる。2つのポリペプチドまたは核酸配列間のパーセント配列同一性は、例えば、BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool;(Altschul et al.(1995)J.Mol.Biol.215:403-410)、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の範囲内である様々な方法で決定される。さらに、当該技術分野の当業者は、比較される配列の長さにわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。DNA配列をRNA配列と比較する場合に配列同一性を決定する目的で、チミンヌクレオチドはウラシルヌクレオチドと同等であることが理解される。保存的置換は、通常、以下の群、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、リジン、アルギニン、及びフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。
【0086】
「免疫細胞」という用語は、免疫応答に直接的または間接的に関与することが可能な細胞を指す。免疫細胞には、これらに限定されないが、T細胞、B細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、好中球、顆粒球、肥満細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、末梢血単核細胞、細胞傷害性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などが含まれる。「抗原提示細胞」(APC)は、T細胞を活性化することができる細胞であり、これらに限定されないが、単球/マクロファージ、B細胞、及び樹状細胞(DC)を含む。「樹状細胞」または「DC」という用語は、リンパ組織または非リンパ組織に見られる形態学的に類似した細胞型の多様な集団の任意のメンバーを指す。これらの細胞は、その特有の形態及び高レベルの表面MHCクラスII発現を特徴とする。DCは、多くの組織源から単離できる。DCは、MHC制限T細胞を感作する高い能力を有し、原位置でT細胞に抗原を提示するのに非常に有効である。抗原は、T細胞の発達及び寛容の間に発現される自己抗原、ならびに正常な免疫過程の間に存在する外来抗原であり得る。「好中球」という用語は、一般に、自然免疫系の一部を構成する白血球指す。好中球は通常、約2~5個の葉を含む分割型の核を有する。好中球は、外傷後数分以内に傷害部位に頻繁に遊走される。好中球は、傷害または感染部位で、酸化剤、プロテアーゼ、及びサイトカインを含む細胞傷害性化合物を放出することによって機能する。「活性化DC」という用語は、抗原でパルスされており、免疫細胞を活性化することが可能なDCである。「NK細胞」という用語は、当該技術分野でその一般的な意味を有し、ナチュラルキラー(NK)細胞を指す。当業者は、例えば特定の表現型マーカー(例えば、CD56)の発現を決定することによってNK細胞を容易に同定し、例えば、異なる種類のサイトカインを発現する能力または細胞傷害性を誘導する能力に基づいてその機能を同定することができる。「B細胞」という用語は、骨髄及び/または脾臓に由来する免疫細胞を指す。B細胞は、抗体を生成する形質細胞に発達することができる。「T細胞」という用語は、CD8+T細胞及びCD4+T細胞を含む、様々な細胞性免疫応答に関与する胸腺由来の免疫細胞を指す。TconvまたはTeffとしても知られる従来のT細胞は、エフェクター機能(例えば、サイトカイン分泌、細胞毒性活性、抗自己認識など)を有し、1つ以上のT細胞受容体のその発現のおかげで免疫応答を増加させる。TconvまたはTeffは一般に、Tregではない任意のT細胞集団として定義され、例えば、ナイーブT細胞、活性化T細胞、メモリーT細胞、休止Tconv、またはTh1もしくはTh2系統に分化したTconvが含まれる。いくつかの実施形態では、Teffは、非制御性T細胞(Treg)のサブセットである。いくつかの実施形態では、Teffは、CD4+ヘルパーTリンパ球(例えば、Th0、Th1、Tfh、またはTh17など)及びCD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球)などのCD4+TeffまたはCD8+Teffである。本明細書でさらに記載するように、細胞傷害性T細胞は、CD8+Tリンパ球である。「ナイーブTconv」は、CD4T細胞であり、骨髄中で分化されたおり、胸腺中で中枢選択の正及び負のプロセスを首尾よく受けるが、抗原への曝露によってまだ活性化されていない。ナイーブTconvは一般に、L-セレクチン(CD62L)の表面発現、CD25、CD44、CD69などの活性化マーカーの欠如、及びCD45ROなどのメモリーマーカーの欠如を特徴とする。したがって、ナイーブTconvは静止状態で非分裂性であると考えられており、恒常性生存のためにインターロイキン-7(IL-7)及びインターロイキン-15(IL-15)を必要とする(少なくともWO2010/101870を参照されたい)。かかる細胞の存在及び活性は、免疫応答を抑制するという文脈において望ましくない。Tregとは異なり、Tconvはアネルギー性ではなく、抗原系T細胞受容体の活性化に応答して増殖することができる(Lechler et al.(2001)Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.356:625-637)。腫瘍では、疲労した細胞がアネルギーの特徴を表し得る。
【0087】
「免疫障害」という用語は、がん、慢性炎症性疾患及び障害(例えば、クローン病、炎症性腸疾患、反応性関節炎、及びライム病を含む)、インスリン依存性糖尿病、臓器特異的自己免疫(例えば、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、自己免疫性ブドウ膜炎、及びバセドウ病を含む)、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性疾患(例えば、喘息ならびにアレルギー性鼻炎及び食物アレルギーなどの胃腸アレルギーを含むがこれらに限定されないアレルギーを含む)、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、蠕虫症(例えば、リーシュマニア症などを含む)及び特定のウイルス感染症(例えば、HIVならびに結核及びハンセン病などの細菌感染症を含む)及びマラリアなどの特定の病原体感受性を含むがこれに限定されない、免疫疾患、状態、状態、及び素因を含む。
【0088】
「免疫応答」という用語は、細菌、ウイルス、及び病原体などの「外来物」に指向して、また必ずしも体外で発生するわけではない標的に指向して、身体が発達する防御応答を意味し、これらに限定されないが、体内に自然に存在する物質(例えば、自己抗原に指向する自己免疫)に指向する、または形質転換された(例えば、がん)細胞に指向する防御応答を含む。特に免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞または肝臓のいずれかによって生成される可溶性高分子(抗体(体液性応答)、サイトカイン、及び補体を含む)の活性化及び/または作用であり、脊椎動物の身体に侵入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん性もしくは他の異常な細胞、または自己免疫もしくは病理学的炎症の場合は正常なヒト細胞もしくは組織から選択的な標的化、結合、損傷、破壊、及び/または排除が生じる。抗がん免疫応答は、身体が異常な腫瘍細胞を認識し、免疫系の自然免疫及び適応の両方を開始して危険ながん細胞を排除する免疫監視メカニズムを指す。
【0089】
「免疫調節因子」という用語は、免疫応答を調節する物質、薬剤、シグナル伝達経路、またはそれらの構成成分を指す。免疫応答に関する「制御する」、「修飾する」、または「調節する」という用語は、免疫系の細胞またはかかる細胞の活性における任意の改変を指す。かかる制御には、免疫系(またはその別個の部分)の刺激または抑制が含まれ、これは、様々な細胞型の数の増加もしくは減少、これらの細胞の活性の増加もしくは減少、または免疫系内で発生し得る任意の他の変化によって現れ得る。阻害性及び刺激性の両方の免疫調節因子が同定されており、そのうちのいくつかはがんの微小環境で機能を強化することができる。
【0090】
「免疫療法剤」という用語は、宿主免疫系を刺激して対象の腫瘍またはがんに対する免疫応答を生成することができる任意の分子、ペプチド、抗体または他の薬剤を含むことができる。様々な免疫療法剤が、本明細書に記載される組成物及び方法において有用である。
【0091】
「阻害」または「下方制御」という用語は、例えば、特定の作用、機能、または相互作用の低減、制限、または遮断を含む。いくつかの実施形態では、がんの少なくとも1つの症状が軽減、終結、減速、または予防される場合、がんは「阻害」される。本明細書で使用される場合、さらに、がんの再発または転移が減少、減速、遅延、または予防される場合、がんは「阻害」される。同様に、タンパク質の機能などの生物学的機能は、野生型状態のような対照などの参照状態と比較して低減すると阻害される。かかる阻害または欠乏は、特定の時間及び/または位置での薬剤の適用などによって誘発され得るか、または遺伝性変異などによって構成的であり得る。かかる阻害または欠乏はまた、部分的または完全であり得る(例えば、野生型状態のような対照などの参照状態と比較して本質的に測定可能な活性がない)。いくつかの実施形態では、本質的に完全な阻害または欠乏は、「遮断される」として称される。一実施形態では、用語は、所与の出力またはパラメータのレベルを、対応する対照の量より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ未満の量で減少させることを指す。所与の出力またはパラメータの減少したレベルは、出力またはパラメータの絶対的な不在を意味し得るが、必ずしもそうである必要はない。本発明は、出力またはパラメータを完全に排除する方法を必要せず、これらに限定されない。所与の出力またはパラメータは、本明細書及び実施例で論じられるように、免疫組織化学、分子生物学、細胞生物学、臨床、及び生化学アッセイを含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の方法を使用して決定され得る。「促進」または「上方制御」という用語は、反対の意味を有する。
【0092】
「阻害性シグナル」という用語は、免疫細胞上のポリペプチドの阻害受容体(例えば、CTLA4、PD-1など)を介して伝達されるシグナルを指す。このようなシグナルは、活性化受容体を介して(例えば、TCR、CD3、BCR、TMIGD2、またはFcポリペプチドを介して)シグナルを拮抗し、例えば、セカンドメッセンジャー生成の阻害、増殖の阻害、免疫細胞におけるエフェクター機能の阻害、例えば、減少した食作用の、減少した抗体産生、減少した細胞傷害性、免疫細胞のメディエーター(例えば、サイトカイン(例えば、IL-2)及び/またはアレルギー応答のメディエーター)を産生することの失敗、またはアネルギーの発生をもたらし得る。
【0093】
自然免疫系は、他の生物による感染から宿主を守る細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、ならびにマクロファージ、好中球、及び樹状細胞を含む食細胞)及びメカニズムを含む非特異的免疫系である。自然免疫応答は、サイトカインの生成、及び活性補体カスケード及び適応免疫応答を開始することができる。適応免疫システムは、抗原提示細胞による抗原提示、抗原特異的T細胞の活性化及び細胞毒性効果など、高度に特殊化された全身細胞の活性化及びプロセスに必要であり、関与する特定の免疫系である。
【0094】
「相互作用」という用語は、2つの分子間の相互作用を指す場合、互いの分子同士の物理的接触(例えば、結合)を指す。一般に、かかる相互作用は、該分子の一方または両方の活性(生物学的効果を生成する)をもたらす。活性は、分子の一方または両方の直接的な活性であり得る(例えば、シグナル伝達)。代替的に、相互作用の一方または両方の分子は、そのリガンドと結合するのを防ぐことができ、したがって、リガンド結合活性に関して不活性に保つことができる(例えば、そのリガンドと結合し、共刺激を誘発または阻害する)。かかる相互作用を阻害すると、相互作用に関与する1つ以上の分子の活性の崩壊をもたらす。かかる相互作用を強化することは、該物理的接触の可能性を延長または増加させ、該活性の可能性を延長または増加させる。
【0095】
「単離されたタンパク質」は、細胞から単離された、または組換えDNA技術によって生成された場合、他のタンパク質、細胞性物質、分離培地、及び培地を実質的に含まないタンパク質、または化学的に合成された場合、化学前駆体もしくは他の化学物質を指す。「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質が由来する細胞または組織源からの細胞性物質または他の混入タンパク質を実質的に含まないか、あるいは化学的に合成された場合、化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という用語は、バイオマーカーポリペプチドまたはその断片の調製物を含み、タンパク質は、それが単離されるかまたは組換えにより産生される細胞の細胞成分から分離される。一実施形態では、「細胞性物質を実質的に含まない」という用語には、バイオマーカータンパク質またはその断片の調製物が含まれ、約30%未満(乾燥重量で)の非バイオマーカータンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の非バイオマーカータンパク質、さらにより好ましくは約10%未満の非バイオマーカータンパク質、最も好ましくは約5%未満の非バイオマーカータンパク質を有する。抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質またはその断片、例えば、その生物学的に活性な断片が組換え的に産生される場合、それはまた、好ましくは実質的に培養培地を含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満を表す。
【0096】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM、IgG1、IgG2Cなど)を指す。
【0097】
「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指すことを意図している。開示される本発明の抗体の結合親和性は、標準的な抗体-抗原アッセイ、例えば、競合アッセイ、飽和アッセイ、またはELISAもしくはRIAなどの標準的な免疫測定法によって測定または決定することができる。いくつかの実施形態では、表1に列挙される1つ以上のバイオマーカーなどの目的のバイオマーカーに対する本明細書に記載される抗体またはその抗原結合断片のKは、約0.002~約200nMであり得る。いくつかの実施形態において、結合親和性は、約250nM、200nM、約100nM、約50nM、約45nM、約40nM、約35nM、約30nM、約25nM、約20nM、約15nM、約10nM、約8nM、約7.5nM、約7nM、約6.5nM、約6nM、約5.5nM、約5nM、約4nM、約3nM、約2nM、約1nM、約500pM、約100pM、約60pM、約50pM、約20pM、約15pM、約10pM、約5pM、約2pM以下のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、結合親和性は、約250nM、約200nM、約100nM、約50nM、約30nM、約20nM、約10nM、約7.5nM、約7nM、約6.5nM、約6nM、約5nM、約4.5nM、約4nM、約3.5nM、約3nM、約2.5nM、約2nM、約1.5nM、約1nM、約500pM、約100pM、約50pM、約20pM、約10pM、約5pM、もしくは約2pM以下のうちのいずれかよりも低いか、または約5nM~約35nMなどのその間の任意の範囲である。
【0098】
「kd」または「kオフ」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離のためのオフレート定数を指す。Kdの値は、秒当たりに減衰または解離する複合体の分画の数値であり、単位は秒-1で表される。
【0099】
「ka」または「kオン」という用語は、抗体と抗原との会合のためのオンレート定数を指す。Kaの値は、抗体及び抗原の1モル(1M)溶液中で秒当たりに形成される抗体/抗原複合体の数値であり、単位はM-1-1で表される。
【0100】
「微小環境」という用語は、一般に、目的の組織領域内の局所領域を指し、例えば、「腫瘍微小環境」を指すことができる。「腫瘍微小環境」または「TME」という用語は、腫瘍細胞とその環境との間のクロストークを可能にするのに役立つ腫瘍細胞と絶えず相互作用する周囲の微小環境を指す。腫瘍微小環境には、腫瘍の細胞環境、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、骨髄由来の炎症細胞、リンパ球、シグナル伝達分子、及び細胞外マトリックスが含まれ得る。腫瘍環境は、成長及び生存を確実にするために腫瘍微小環境によって支援及び影響を受ける腫瘍細胞または悪性細胞を含み得る。腫瘍微小環境には、リンパ球及び骨髄細胞などの腫瘍浸潤免疫細胞も含まれ、これは、抗腫瘍免疫応答、ならびに腫瘍の構造的完全性に寄与する腫瘍関連線維芽細胞及び内皮細胞などの間質細胞を刺激または阻害することができる。間質細胞には、内皮細胞及び周皮細胞など、腫瘍に関連する血管を構成する細胞が含まれ、これらは、構造的完全性(線維芽細胞)に寄与する細胞、ならびに腫瘍関連マクロファージ(TAM)、及び単球、好中球(PMN)、樹状細胞(DC)、T及びB細胞、肥満細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む浸潤する免疫細胞である。間質細胞は、腫瘍細胞性の大部分を構成するが、固形腫瘍の主要な細胞型はマクロファージである。
【0101】
「調節する」という用語及びその文法上の同等物は、増加または低減(例えば、サイレンシング)、言い換えれば、上方制御または下方制御のいずれかを指す。
【0102】
バイオマーカーの「正常な」発現レベルは、がんに罹患していない対象、例えば、ヒト患者の細胞におけるバイオマーカーの発現レベルである。
【0103】
バイオマーカーの「過剰発現」または「有意に高いレベルの発現」は、発現を評価するために使用されるアッセイの標準誤差よりも大きい試験試料中の発現レベルを指し、対照試料中(例えば、バイオマーカー関連疾患を有しない健康な対象からの試料)のバイオマーカーの発現活性またはレベル、好ましくは、いくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルよりも少なくとも10%、及びより好ましくは1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍以上高いことが好ましい。バイオマーカーの「有意に低いレベルの発現」は、対照試料中(例えば、バイオマーカー関連疾患を有しない健康な対象からの試料)のバイオマーカーの発現レベル、好ましくはいくつかの対照試料中のバイオマーカーの平均発現レベルよりも少なくとも10%、及びより好ましくは1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍以上低い試験試料中の発現レベルを指す。
【0104】
かかる「有意性」レベルはまた、発現、阻害、細胞傷害性、細胞増殖などのために、本明細書に記載される任意の他の測定されたパラメータに適用され得る。
【0105】
「末梢血細胞サブタイプ」という用語は、好酸球、好中球、T細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、顆粒球、及びB細胞を含むがこれらに限定されない末梢血に通常見られる細胞型を指す。
【0106】
「ポリペプチド断片」または「断片」という用語は、参照ポリペプチドに関して使用される場合、参照ポリペプチド自体と比較してアミノ酸残基が欠失しているが、残りのアミノ酸配列が通常、参照ポリペプチド内の対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。かかる欠失は、アミノ末端、内部、または参照ポリペプチドのカルボキシル末端、または代替的にその両方で生じ得る。断片は、典型的には、少なくとも5、6、8、もしくは10アミノ酸長、少なくとも14アミノ酸長、少なくとも20、30、40、もしくは50アミノ酸長、少なくとも75アミノ酸長、または少なくとも100、150、200、300、500以上のアミノ酸長である。それらは、例えば、それらが完全長ポリペプチドの長さよりも短い限り、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340以上の長さであり得る、及び/または含む。代替的に、それらは、完全長ポリペプチドの長さよりも短い限り、かかる範囲より長くない、及び/またはかかる範囲を除外することができる。
【0107】
「予め決定された」バイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)という用語は、ほんの一例として、特定の治療のために選択することができる対象を評価するために使用されるバイオマーカー量及び/または活性測定値であり得、本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーのうちの1つ以上の調節因子などの治療に対する応答を評価し、及び/または疾患状態を評価する。予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、がんの有無にかかわらず、患者の集団において決定することができる。予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、すべての患者に等しく適用可能な単一の数値であり得るか、あるいは予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、患者の特定の亜集団に従って変化し得る。対象の年齢、体重、身長、及び他の要因は、個人の予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)に影響し得る。さらに、予め決定されたバイオマーカーの量及び/または活性は、各対象について個別に決定することができる。一実施形態では、本明細書に記載される方法で決定及び/または比較された量は、絶対測定に基づく。別の実施形態では、本明細書に記載される方法で決定及び/または比較された量は、比率(例えば、ハウスキーピングもしくは他の一般的に一定のバイオマーカーの発現に対して正規化された細胞比または血清バイオマーカー)などの相対測定値に基づく。予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、任意の好適な標準であり得る。例えば、予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、患者の選定が評価されている同じまたは異なるヒトから得ることができる。一実施形態では、予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、同じ患者の以前の評価から得ることができる。そのような様式で、患者の選定の進行を経時的にモニタリングすることができる。さらに、対照は、対象がヒトである場合、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、選択されたヒトの群の評価から得ることができる。そのような様式で、選定が評価されているヒトの選定の程度は、好適な他のヒト、例えば、目的のヒトと同様の状況にある他のヒト、例えば、類似もしくは同じ状態(複数可)に罹患する者、及び/または同じ民族群のヒトと比較することができる。
【0108】
「予測的」という用語は、バイオマーカー核酸及び/またはタンパク質状態、例えば、所望される可能性を決定するための、治療前、治療中、または治療後の腫瘍の過剰もしくは過少活性、発生、発現、成長、寛解、再発、または抵抗の使用を含む。バイオマーカーのそのような予測的使用は、例えば、(1)コピー数の増加もしくは低減(例えば、FISH、FISHプラスSKY、単一分子配列決定、例えば、当技術分野の少なくともJ.Biotechnol.,86:289-301に記載されているもの、またはqPCRにより)、バイオマーカー核酸の過剰発現もしくは過少発現(例えば、ISH、ノーザンブロット、またはqPCRにより)、バイオマーカータンパク質の増加もしくは低減(例えば、IHCにより)、または例えば、アッセイされたヒトのがん種またはがん試料の約5%を超える、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、またはそれ超の活性の増加もしくは低減、(2)生物学的試料、例えば、がんに罹患するヒトの対象からの組織、全血、血清、血漿、頬側を擦ったもの、唾液、脳脊髄液、尿、便、もしくは骨髄を含む試料中のその絶対的または比較的に調節された存在または欠如、(3)がんを有する患者の臨床サブセットにおけるその絶対的または比較的に調節された存在または欠如(例えば、T細胞媒介性細胞傷害性の特定の修飾因子に単独でもしくは免疫療法と組み合わせて応答するもの、またはそれに対して耐性を発現するもの)により確認することができる。
【0109】
「予防(prevent)」、「予防する(preventing)」、「予防(prevention)」、「予防的治療」などの用語は、対象ではないが、疾患、障害、もしくは状態を発症するリスクがある、または発症しやすい対象において、疾患、障害、もしくは状態を発症する可能性を低減することを指す。
【0110】
「プローブ」という用語は、特に意図された標的分子、例えば、バイオマーカー核酸によってコードされるかまたはそれに対応するヌクレオチド転写物もしくはタンパク質と選択的に結合することができる任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成されるか、または適切な生物学的調製物から誘導され得る。標的分子を検出する目的で、本明細書に記載されているように、プローブを標識するように特異的に設計することができる。プローブとして利用できる分子の例には、これらに限定されないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、及び有機分子が含まれる。
【0111】
「予後」という用語は、がんの予想される経過及び転帰、または疾患からの回復の可能性の予測を含む。いくつかの実施形態では、統計的アルゴリズムの使用は、個体におけるがんの予後を提供する。例えば、予後は、手術、がんの臨床サブタイプ(例えば、肺癌、黒色腫、及び腎細胞癌などの固形腫瘍)の発生、1つ以上の臨床因子の発生、腸癌の発生、または疾患からの回復であり得る。
【0112】
「比率」という用語は、2つの数値(例えば、スコア、合計など)間の関係を指す。しかし、比率は特定の順序(例えば、a対bまたはa:b)で表すことができ、当該技術分野の通常の知識を有する者は、比率に基づく傾向の観察及び相関を逆転させることができるが、数の間の基礎となる関係は、基礎となる関係の重要性を失うことなく任意の順序で表現できることを認識するであろう。
【0113】
「再編成」という用語は、Vセグメントが、本質的に完全なV及びVドメインをそれぞれコードする立体構造において、D-JまたはJセグメントに直接隣接して配置される重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の構成を指す。再編成免疫グロブリン遺伝子座は、生殖細胞系DNAとの比較によって同定され得、再編成遺伝子座は、少なくとも1つの組換え七量体/九量体相同性要素を有するであろう。対照的に、Vセグメントに関して「非再編成」または「生殖系構成」という用語は、VセグメントがDまたはJセグメントに直接隣接するように組み換えられない構成を指す。
【0114】
「受容体」という用語は、標的器官、組織、または細胞型の細胞の表面に一般的に存在する、天然に発生する分子または分子の複合体を指す。
【0115】
「がん応答」、「免疫療法への応答」、または「T細胞媒介性細胞傷害性/免疫療法の併用療法の調節因子への応答」という用語は、T細胞媒介性細胞傷害性の調節因子などのがん媒介物に対する過剰増殖性障害(例えば、がん)の任意の応答、ならびに免疫療法など、好ましくはネオアジュバントもしくはアジュバント療法の開始後の腫瘍の質量及び/または体積の変化に関連する。「ネオアジュバント療法」という用語は、一次治療の前に与えられる治療を指す。ネオアジュバント療法の例には、化学療法、放射線療法、及びホルモン療法が含まれ得る。過剰増殖性障害応答は、例えば、有効性について、またはネオアジュバントもしくはアジュバントの状況で評価することができ、全身介入後の腫瘍のサイズは、CT、PET、マンモグラム、超音波、または触診によって測定された初期のサイズ及び寸法と比較できる。応答は、生検もしくは外科的切除後の腫瘍のノギス測定または病理学的検査によって評価することもできる。応答は、腫瘍体積の変化率のような定量的な方法で、または「病理学的完全奏効」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、もしくは他の定性的基準のような定性的な方法で記録できる。過剰増殖性障害応答の評価は、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間、数日間、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に行うことができる。応答評価に関する典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時、または残存腫瘍細胞及び/または腫瘍床の外科的除去時である。これは通常、ネオアジュバント療法の開始後3ヶ月である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療的処置の臨床的有効性は、臨床的利益率(CBR)を測定することによって決定することができる。臨床的有益率は、完全寛解(CR)にある患者の割合、治療終了後少なくとも6ヶ月の時点で部分寛解(PR)にある患者の数及び安定した疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この式の簡略表記は、6ヶ月にわたるCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定のがん治療レジメンについてのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ超である。がん治療への応答を評価するための追加の基準は、「生存期間」に関連しており、全生存期間としても知られる死亡までの生存期間(該死亡は、原因または腫瘍に関連するもののいずれかに関係し得ない)、「無再発生存期間」(再発という用語には、局在性及び遠隔再発の両方が含まれる)、転移のない生存期間、無疾患生存期間(疾患という用語には、がん及びそれに関連する疾患が含まれる)のすべてが含まれる。該生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断または処置開始時点)及び終了点(例えば、死亡、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。さらに、治療の有効性の基準は、化学療法への応答、生存期間の蓋然性、所与の期間内の転移の蓋然性、及び腫瘍再発の蓋然性を含むように拡張することができる。例えば、適切な閾値を決定するために、特定のがん治療レジメンを対象の集団に施すことができ、転帰は、任意のがん治療を施す前に決定されたバイオマーカー測定値と相関させることができる。転帰の測定は、ネオアジュバント設定で与えられた治療に対する病理学的応答であり得る。代替的に、全生存期間及び無疾患生存期間などの転帰指標は、バイオマーカーの測定値が即知であるがん治療後の対象について、一定期間にわたってモニタリングすることができる。ある特定の実施形態では、投与される用量は、がん治療剤に関して当該技術分野で公知の標準的な用量である。対象がモニタリングされる期間は様々であり得る。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヶ月間モニタリングされ得る。がん治療の転帰に相関するバイオマーカー測定閾値は、実施例のセクションに記載されているものなど、当該技術分野で周知の方法を使用して決定することができる。
【0116】
示されるように、用語は、例えば、再発までの期間の増加によって反映されるように、予後の改善を指すこともあり、これは、再発の証拠がない、または全生存期間の延長がない、第1の事象または死亡としての第2の原発性がんについての第1の再発を検閲するまでの期間であり、これは、治療から何らかの原因による死亡までの期間である。応答する、または応答を有するとは、刺激に曝露された場合に達成される有益なエンドポイントがあることを意味する。あるいは、負のまたは有害な症状が、刺激に曝露されると最小限に抑えられる、軽減される、または減弱される。腫瘍または対象が好ましい応答を示す可能性を評価することは、腫瘍または対象が好ましい応答を示さない(すなわち、応答の欠如を示すか、または応答しない)可能性を評価することと同等であることが理解されよう。
【0117】
「耐性」という用語は(すなわち、治療的処置に応答しないか、または応答が減少または制限されている)、がん治療に対する応答が5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、もしくはそれ超、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍以上、またはその間(境界値を含む)の任意の範囲で減少するなど、がん試料もしくは哺乳動物のがん治療に対する後天的または天然の耐性を指す。応答の減少は、耐性が獲得される前に同じがん試料もしくは哺乳動物と比較することによって、または治療的処置に耐性を有しないとして即知である異なるがん試料もしくは哺乳動物と比較することによって測定することができる。化学療法に対する典型的な後天性耐性は、「多剤耐性」と称される。多剤耐性は、P糖タンパク質によって媒介され得るもしくは他の機序によって媒介され得る、または哺乳類が多剤耐性微生物もしくは微生物の組み合わせに感染した場合に発生し得る。治療的処置に対する耐性の決定は、当該技術分野で慣習的であり、当業者の技術の範囲内であり、例えば、本明細書で「感作すること」として記載される細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイによって測定することができる。一部の実施形態では、「耐性を逆転させる」という用語は、一次がん治療(例えば、化学療法または放射線療法)単独では、未処置腫瘍の腫瘍体積と比較して統計学的に有意な腫瘍体積の低減を生成することができない状況における未処置腫瘍の腫瘍体積と比較した場合に、一次がん治療(例えば、化学療法または放射線療法)と組み合わせた第2の作用物質の使用が、統計学的有意性の水準(例えば、p<0.05)で腫瘍体積の有意な低減を生成することができることを意味する。これは概して、未治療の腫瘍が対数的に律動的に成長しているときに行われる腫瘍体積測定に適用される。
【0118】
少なくとも1つのバイオマーカーの存在もしくはレベルを検出または決定するために使用される「試料」という用語は、通常、脳組織、脳脊髄液、全血、血漿、血清、唾液、尿、便(例えば、糞便)、涙、及び任意の他の体液(例えば、上述の「体液」の定義で記載したもの)、または小腸、結腸試料、もしくは外科的切除組織などの組織試料(例えば、生検)である。特定の事例では、本発明により包含される方法は、試料中の少なくとも1つのマーカーの存在もしくはレベルを検出または決定する前に、個体から試料を取得することをさらに含む。
【0119】
「感作」という用語は、がん治療(例えば、抗免疫チェックポイント、化学療法、及び/または放射線療法)による関連するがんのより効果的な治療を可能にする方法でがん細胞または腫瘍細胞を改変することを意味する。いくつかの実施形態では、正常細胞は、正常細胞が治療によって過度に損傷を受けるほどの影響を受けない。治療的処置に対する感受性の増加または感受性の減少は、細胞増殖アッセイ(Tanigawa et al.(1982)Cancer Res.42:2159-2164)及び細胞死アッセイ(Weisenthal et al.(1984)Cancer Res.94:161-173、Weisenthal et al.(1985)Cancer Treat Rep.69:615-632、Weisenthal et al.,In:Kaspers G J L,Pieters R,Twentyman P R,Weisenthal L M,Veerman A J P,eds.Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.Langhorne,P A:Harwood Academic Publishers,1993:415-432、Weisenthal(1994)Contrib.Gynecol.Obstet.19:82-90)を含むがこれらに限定されない、特定の治療及び以下に記載される方法についての当技術分野での既知の方法に従って測定される。感受性または耐性は、一定期間、例えば、ヒトの場合は6ヶ月間、マウスの場合は4~6週間にわたって腫瘍サイズ減少を測定することにより、動物においても測定できる。組成物または方法は、かかる組成物または方法が不在である場合の治療感受性または耐性と比較して、治療感受性の増加または耐性の減少が5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、もしくはそれ超、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍以上、またはその間(境界値を含む)の任意の範囲である場合、治療的処置に対する応答を感作する。治療的処置に対する感受性または耐性の決定は、当該技術分野において通例であり、通常の熟練した臨床医の技能の範囲内である。がん治療の有効性を増強するための本明細書に記載される任意の方法は、がん治療に対して過剰増殖性またはそうでなければがん性細胞(例えば、耐性細胞)を感作するための方法と同等に適用できることを理解されたい。
【0120】
生物学的に活性な薬剤に適用される「選択的調節因子」または「選択的調節」という用語は、標的との直接または相互作用を介して、非特異的細胞集団、シグナル伝達活性などと比較して、細胞集団、シグナル伝達活性などの標的を調節する薬剤の能力を指す。例えば、タンパク質と別の結合パートナーとの間の別の相互作用、及び/または目的の細胞集団に対するかかる相互作用(複数可)にわたって、タンパク質と1つの天然結合パートナーとの間の相互作用を選択的に阻害する薬剤は、少なくとも1つの他の結合パートナーに指向して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、2×(倍)、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×、25×、30×、35×、40×、45×、50×、55×、60×、65×、70×、75×、80×、85×、90×、95×、100×、105×、110×、120×、125×、150×、200×、250×、300×、350×、400×、450×、500×、600×、700×、800×、900×、1000×、1500×、2000×、2500×、3000×、3500×、4000×、4500×、5000×、5500×、6000×、6500×、7000×、7500×、8000×、8500×、9000×、9500×、10000×、もしくはそれ超、またはその間(境界値を含む)の任意の範囲で相互作用を阻害する。かかる測定基準は、通常、相互作用/活性を半分に減少させるために必要な薬剤の相対量で表される。かかる測定基準は、核酸分子の1つ以上の標的配列との結合などの他の選択性配置に適用される。
【0121】
より一般的には、「選択的」という用語は、優先的な作用または機能を指す。「選択的」という用語は、他の標的と比較した目的の特定の対象における優先的な効果の観点から定量化することができる。例えば、測定された変数(例えば、所望の細胞対他の細胞におけるバイオマーカー発現の調節、所望の細胞対他の細胞の濃縮及び/または欠失など)は、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ超、またはその間(境界値を含む)の任意の範囲(例えば、50%~16倍)であり得、目的の標的対意図しないまたは所望でない標的において異なる。同じ倍数分析を使用して、所定の組織、細胞集団、測定された変数、及び/または測定された効果など、例えば、細胞比率、過剰増殖性細胞増殖速度または体積、細胞増殖速度、細胞数などにおける効果の程度を確認できる。
【0122】
対照的に、「特異的」という用語は、排他的な作用または機能を指す。例えば、タンパク質と1つの結合パートナーとの間の相互作用の特異的調節は、その相互作用の排他的調節を指し、タンパク質と別の結合パートナーとの間の相互作用の有意な調節を指すものではない。別の例では、予め決定された抗原との抗体の特異的結合は、他の抗原と結合することなく、目的の抗原と結合する抗体の能力を指す。通常、抗体は、およそ1×10-7M未満、例えば、およそ10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または分析物として目的の抗原を使用し、リガンドとして抗体を使用するBIACORE(登録商標)アッセイ機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用するなど、適切なアッセイを使用して決定した場合、さらに低い親和性(K)で結合する。「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という句は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0123】
交差反応性を決定するための方法には、表面プラズモン共鳴(SPR)分析、フローサイトメトリー分析などを使用するなど、本明細書に記載されるような標準的な結合アッセイが含まれる。
【0124】
「低分子」という用語は当該技術分野の用語であり、約1000分子量未満または約500分子量未満の分子を含む。一実施形態では、低分子は、ペプチド結合を排他的に含まない。別の実施形態では、低分子は、オリゴマーではない。活性についてスクリーニングすることができる例示的な低分子化合物には、これらに限定されないが、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸、炭水化物、低有機分子(例えば、ポリケチド)(Cane et al.(1998)Science 282:63)、及び天然物抽出物ライブラリが含まれる。別の実施形態では、化合物は、小さな有機非ペプチド化合物である。用語は、特に明記しない限り、目的の化学構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を包含することを意図する。
【0125】
「対象」という用語は、動物、脊椎動物、哺乳動物、またはヒト、特に、例えば、実験、診断、及び/または治療の目的で薬剤が投与されるか、または試料が得られるか、または手順が実行されるものを指す。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、またはラマ及びラクダなどの他の動物である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、がんを有するヒト対象である。「対象」という用語は、「患者」と互換的である。
【0126】
「生存期間」という用語には、全生存期間としても知られる死亡までの生存期間(該死亡は、原因または腫瘍に関連するもののいずれかに関係し得ない)、「無再発生存期間」(再発という用語には、局在性及び遠隔再発の両方が含まれる)、転移のない生存期間、無疾患生存期間(疾患という用語には、がん及びそれに関連する疾患が含まれる)のすべてが含まれる。該生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断または処置開始時点)及び終了点(例えば、死亡、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。さらに、治療の有効性の基準は、化学療法への応答、生存期間の蓋然性、所与の期間内の転移の蓋然性、及び腫瘍再発の蓋然性を含むように拡張することができる。
【0127】
「相乗効果」という用語は、がん剤/療法単独の個別の効果の合計よりも大きい、2つ以上の薬剤(例えば、表1に記載されるバイオマーカーの調節因子ならびに免疫療法の併用療法)の組み合わせた効果を指す。
【0128】
「標的」という用語は、本明細書に記載される薬剤、組成物、及び/または製剤によって調節、阻害、もしくはサイレンシングされる遺伝子または遺伝子産物を指す。標的遺伝子または遺伝子産物には、野生型及び変異型が含まれる。本発明により包含される標的の非限定的で代表的なリストを表1に提供する。同様に、動詞として使用される「標的」、「標的(複数可)」、または「標的化」という用語は、標的遺伝子または遺伝子産物の活性を調節することを指す。標的化とは、標的遺伝子もしくは遺伝子産物の活性を上方制御または下方制御することを指す。
【0129】
「治療効果」という用語は、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトにおける局所的または全身的な効果を包含する。したがって、この用語は、動物またはヒトにおける疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防、あるいは所望の身体的または精神的発達及び状態の増強に使用することを目的とした任意の物質を意味する。用語に包括される予防効果は、疾患もしくは状態の出現を遅延または排除すること、疾患もしくは状態の症状の発症を遅延または排除すること、疾患もしくは状態の進行を減速、停止、または逆転させること、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0130】
薬剤(かかる薬剤を含む組成物及び/または製剤を含む)の「有効量」または「有効用量」という用語は、例えば、選択される投与形態、経路、及び/またはスケジュールに従って細胞または生物に送達される場合に、所望の生物学的及び/または薬理学的効果を達成するのに十分な量を指す。当業者によって理解されるように、有効である特定の薬剤または組成物の絶対量は、所望の生物学的または薬理学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織などのような要因に応じて変化し得る。当業者は、様々な実施形態において、「有効量」が細胞と接触されるか、または単回用量で、もしくは複数回用量の使用を通じて対象に投与され得ることをさらに理解するであろう。「有効量」という用語は、「治療有効量」であり得る。
【0131】
「治療有効量」という用語は、任意の医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比率で、動物における細胞の少なくとも亜集団において何らかの所望の治療効果を生成するのに有効な薬剤の量を指す。対象化合物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50及びED50を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。大きな治療指数を示す組成物が好ましい。いくつかの実施形態では、LD50(致死量)を測定することができ、例えば、薬剤を投与しない場合と比較して、薬剤について少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%以上で減少させることができる。同様に、ED50(すなわち、症状の最大の半分の阻害を達成する濃度)を測定することができ、例えば、薬剤を投与しない場合と比較して、薬剤について少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%以上で増加させることができる。さらに同様に、IC50(すなわち、がん細胞に対して最大の半分の細胞傷害性または細胞増殖抑制効果を達成する濃度)を測定することができ、例えば、薬剤を投与しない場合と比較して、薬剤について少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%以上で増加させることができる。いくつかの実施形態では、アッセイにおけるがん細胞増殖は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%で阻害することができる。別の実施形態では、固形悪性腫瘍において少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%の低減を達成することができる。
【0132】
より一般的には、「EC50」という用語は、インビトロ及び/またはインビボアッセイにおける最大応答とベースライン応答との間などの、最大応答の50%である応答を誘導する、抗体またはその抗原結合断片のような薬剤の濃度を指す。
【0133】
「寛容」または「無応答性」という用語は、刺激、例えば、活性化受容体またはサイトカインを介した刺激に対する、免疫細胞などの細胞の屈折性を含む。無応答性は、例えば、免疫抑制剤への曝露または高用量の抗原への曝露を原因として生じ得る。いくつかの独立した方法が寛容を誘導し得る。1つのメカニズムは「アネルギー」と称され、エフェクター機能を有する細胞に分化するのではなく、細胞が無応答の細胞としてインビボで存続する状態として定義される。かかる不応性は一般に抗原特異的であり、寛容化抗原への曝露が終わった後も持続する。例えば、T細胞におけるアネルギーは、例えば、IL-2などのサイトカイン生成の欠如を特徴とする。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に曝露され、第1のシグナル(T細胞受容体またはCD-3媒介性シグナル)を第2のシグナル(共刺激シグナル)の不在下で受け取るときに生じる。これらの条件下で、同じ抗原への細胞の再曝露は(たとえ再曝露が共刺激ポリペプチドの存在下で生じたとしても)、サイトカインの産生に失敗し、ゆえに増殖に失敗する。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2など)と共に培養すると増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、ELISAによってまたは増殖アッセイによって指標細胞株を使用して測定されたTリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観察することができる。あるいは、レポーター遺伝子構築物を使用することができる。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下にある異種プロモーターまたはエンハンサー内に見ることができるAP1配列の多量体によって誘導されるIL-2遺伝子転写の開始に失敗する(Kang et al.(1992)Science 257:1134)。別のメカニズムは「疲弊」と称される。T細胞の疲弊は、多くの慢性感染症及びがんの間に発生するT細胞機能障害の状態である。これは、機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なるエフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、及び転写状態によって定義される。
【0134】
「転写されたポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド転写物」は、バイオマーカー核酸の転写及び正常な転写後プロセシング(例えば、スプライシング)、存在する場合、RNA転写物、RNA転写物の逆転写によって作製された成熟mRNAのすべてもしくは一部に相補的または相同であるポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、またはかかるRNAもしくはcDNAの類似体)である。
【0135】
「治療」という用語は、目的の状態(例えば、疾患または障害)の治療的管理または改善を指す。治療には、対象への薬剤または組成物(例えば、薬学的組成物)の投与が含まれ得るが、これらに限定されない。治療は、通常、対象に有益な様式で、疾患の経過を改変するための試みとして行われる(この用語は、治療を正当化する、もしくは潜在的に正当化する疾患、障害、症候群、または望ましくない状態を示すために使用される)。治療の効果には、疾患または疾患の1つ以上の症状または徴候の逆転、緩和、重症度の軽減、発症の遅延、治癒、進行の阻害、及び/または発生または再発の可能性の低減が含まれ得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患進行速度の低減、病状の回復または一次緩和、及び寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。治療剤は、一般集団のメンバーと比較して、疾患を有するか、または疾患を発症するリスクが高い対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患を患ったが、もはや疾患の証拠を示さない対象に投与することができる。薬剤は、例えば、明らかな疾患の再発の可能性を低減するために投与することができる。治療剤は、予防的に、すなわち、任意の症状の発症または疾患の発現の前に投与することができる。「予防的治療」は、例えば、疾患が発生する可能性を低減するため、または疾患が発生した場合の重症度を低減するためなど、疾患を発症していない、または疾患の証拠を順番に示さない対象に医学的及び/または外科的管理を提供することを指す。対象は、疾患を発症するリスクがある(例えば、一般集団と比較した増加したリスク、または疾患を発症する可能性を高める危険因子を有する)として同定することができる。
【0136】
「無応答」という用語は、治療に対するがん細胞の屈折性、または刺激、例えば、活性化受容体もしくはサイトカインを介した刺激に対する免疫細胞などの治療細胞の屈折性を含む。無応答性は、例えば、免疫抑制剤への曝露または高用量の抗原への曝露を原因として生じ得る。本明細書で使用する場合、「アネルギー」または「寛容性」という用語は、受容体媒介性刺激の活性化に対する不応性を含む。かかる不応性は一般に抗原特異的であり、寛容化抗原への曝露が終わった後も持続する。例えば、(無応答性とは反対に)T細胞におけるアネルギーは、サイトカイン産生、例えば、IL-2の欠如を特徴とする。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に曝露され、第1のシグナル(T細胞受容体またはCD-3媒介性シグナル)を第2のシグナル(共刺激シグナル)の不在下で受け取るときに生じる。これらの条件下で、同じ抗原への細胞の再曝露は(たとえ再曝露が共刺激ポリペプチドの存在下で生じたとしても)、サイトカインの産生に失敗し、ゆえに増殖に失敗する。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2など)と共に培養すると増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、ELISAによってまたは増殖アッセイによって指標細胞株を使用して測定されたTリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観察することができる。あるいは、レポーター遺伝子構築物を使用することができる。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下にある異種プロモーターまたはエンハンサー内に見ることができるAP1配列の多量体によって誘導されるIL-2遺伝子転写の開始に失敗する(Kang et al.(1992)Science 257:1134)。
【0137】
「ワクチン」という用語は、疾患の予防及び/または治療のための免疫を生成するための組成物を指す。
【0138】
さらに、遺伝コード(以下に示す)で定義されているように、特定のタンパク質のアミノ酸配列と、タンパク質をコードできるヌクレオチド配列との間には、既知の明確な対応関係が存在する。同様に、遺伝暗号によって定義されるように、特定の核酸のヌクレオチド配列と、その核酸によってコードされるアミノ酸配列との間には、既知の明確な対応関係が存在する。
【表A】
【0139】
遺伝子コードの重要及び周知の特徴は、その冗長性であり、これにより、タンパク質の作製に使用されるほとんどのアミノ酸に対して、1つを超えるコード化ヌクレオチドトリプレットを使用できる(上に示す)。したがって、いくつかの異なるヌクレオチド配列は、所与のアミノ酸配列をコードすることができる。かかるヌクレオチド配列は、すべての生物で同じアミノ酸配列の生成が生じるため、機能的に同等であると見なされる(ただし、特定の生物は他の生物よりも効率的に一部の配列を翻訳できる)。さらに、時折、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントが所与のヌクレオチド配列内に見出され得る。かかるメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸との間のコード化関係に影響を与えない。
【0140】
上記を考慮して、バイオマーカー核酸(またはその任意の部分)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列を使用して、遺伝コードを使用してDNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳することにより、ポリペプチドアミノ酸配列を誘導することができる。同様に、ポリペプチドアミノ酸配列について、ポリペプチドをコードすることができる対応するヌクレオチド配列は、遺伝コードから推定することができる(その冗長性のために、任意の所与のアミノ酸配列に対して複数の核酸配列を生成する)。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の本明細書における記載及び/または開示は、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の記載及び/または開示も含むと見なされるべきである。同様に、本明細書におけるポリペプチドアミノ酸配列の記載及び/または開示は、アミノ酸配列をコードすることができるすべての可能なヌクレオチド配列の記載及び/または開示も含むと見なされるべきである。
【0141】
II.単球及びマクロファージ
単球は、骨髄由来の免疫エフェクター細胞であり、血液、骨髄、脾臓を循環し、定常状態では増殖が制限されている。「骨髄細胞」という用語は、骨髄もしくは脊髄中の顆粒球または単球の前駆細胞、あるいは骨髄または脊髄中に見られるものとの類似性を指すことできる。骨髄性細胞系統には、末梢血中の循環単球細胞、ならびにそれらが成熟、分化、及び/または活性化の後になる細胞集団が含まれる。これらの集団には、非最終分化骨髄細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、及び分化マクロファージが含まれる。分化マクロファージには、非分極及び分極マクロファージ、休止及び活性化マクロファージが含まれる。限定することなく、骨髄系には、顆粒球前駆体、多形核由来サプレッサー細胞、分化多形核白血球、好中球、顆粒球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、ミクログリア、骨髄由来サプレッサー細胞、樹状細胞、及び赤血球も含まれる。単球は、末梢血単核細胞(PBMC)内に見られ、B細胞、T細胞、NK細胞などの他の造血細胞及び免疫細胞も含まれる。単球は、単芽球と称される造血幹細胞前駆細胞から骨髄によって産生される。単球は、免疫系に2つの主要な機能を有する:(1)血流を出て、正常な状態下で常在するマクロファージ及び樹状細胞(DC)を補充することができ、(2)それらが組織内の感染部位に迅速に移動し、マクロファージ及び炎症性樹状細胞に分裂/分化して、炎症シグナルに応答して免疫応答を誘発することができる。単球は通常、染色された塗抹標本で大きな二葉核によって同定される。単球はまた、感染中に血液から組織への遊走を媒介するケモカイン受容体及び病原体認識受容体を発現する。それらは炎症性サイトカイン及び貪食細胞を産生する。いくつかの実施形態では、目的の骨髄細胞は、CD11b+発現及び/またはCD14+発現に従って同定される。
【0142】
以下で詳細に記載するように、単球はマクロファージに分化することができる。単球はまた、サイトカイン顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びインターロイキン4(IL-4)の作用を通してなどにより、樹状細胞に分化することができる。一般に、「単球」という用語は、未分化の単球、ならびにマクロファージ及び樹状細胞を含む、そこから分化する細胞型を包含する。いくつかの実施形態では、「単球」という用語は、未分化の単球を指すことができる。
【0143】
マクロファージは、炎症及び自然免疫応答の重要な免疫エフェクターならびに制御因子である。マクロファージは、不均一で、組織に存在し、最終分化した、先天性骨髄細胞であり、顕著な可塑性を有し、微小環境からの局所的な合図に応答して生理機能を変化させることができ、宿主防御から組織恒常性までの機能的要求のスペクトルを想定することができる(Ginhoux et al.(2016)Nat.Immunol.17:34-40)。マクロファージは、体内のほぼすべての組織内に存在する。それらは、組織常駐マクロファージ、例えば、肝臓に常駐するクッパー細胞、または循環する単球前駆体(すなわち、単球)に由来するかのいずれかであり、主に骨髄及び脾臓の貯蔵所に由来し、定常状態で、または炎症もしくは他の刺激性の合図に応答して組織に移動する。例えば、単球を血液から組織に動員して、骨、肺胞(肺)、中枢神経系、結合組織、胃腸管、肝臓、脾臓、及び腹膜の組織特異的マクロファージを補充することができる。
【0144】
「組織に常在するマクロファージ」という用語は、組織免疫監視、感染への応答及び炎症の解消、及び固有の恒常性機能などの組織特異的及び/または微小解剖学的ニッチ特異的機能を果たす免疫細胞の不均一な集団を指す。組織に常在するマクロファージは、胚の卵黄嚢で発生し、発育中の胎児の特定の組織で成熟し、そこで組織特異的な役割を獲得し、遺伝子発現プロファイルを変化させる。コロニー形成能力を維持する組織に常在するマクロファージの局所増殖は、組織内に成熟マクロファージの集団を直接生じさせることができる。コロニー形成能を維持する組織に存在するマクロファージの局所増殖は、組織内に成熟マクロファージの集団を直接生じさせる可能性がある。組織に常在するマクロファージは、それらが占有する組織に応じて同定及び命名することもできる。例えば、脂肪組織マクロファージは脂肪組織を占有し、クッパー細胞は肝臓組織を占有し、洞組織球はリンパ節を占有し、肺胞マクロファージ(ダスト細胞)は肺胞を占有し、ランゲルハンス細胞は皮膚及び粘膜組織を占有し、巨細胞につながる組織球は結合組織を占有し、ミクログリアは中枢神経系(CNS)組織を占有し、ホフバウアー細胞は胎盤組織を占有し、糸球体内メサンギウム細胞は腎臓組織を占有し、破骨細胞は骨組織を占有し、類上皮細胞は肉芽腫を占有し、赤脾髄マクロファージ(類洞内層細胞)は脾臓組織の赤脾髄を占有し、腹腔マクロファージは腹腔組織を占有し、リソマック細胞はパイエル板組織を占有し、膵臓マクロファージは膵臓組織を占有する。
【0145】
マクロファージは、感染性病原体及び他の炎症応答に対する宿主の防御に加えて、発達、創傷治癒、及び組織修復、ならびに免疫応答の調節を含むがこれらに限定されない、異なる恒常性機能を実行することができる。マクロファージは、貪食作用を介して感染を防御する体内の貪食作用細胞として最初に認識され、自然免疫の必須の構成要素である。病原体及び他の炎症刺激に応答して、活性化されたマクロファージは感染した細菌及び他の微生物を貪食することができ、炎症を刺激し、炎症誘発性分子のカクテルをこれらの細胞内微生物に放出する。病原体を貪食した後、マクロファージは病原性抗原をT細胞に提示し、防御のための適応免疫応答をさらに活性化する。例示的な炎症誘発性分子には、サイトカインIL-1β、IL-6、及びTNF-α、ケモカインMCP-1、CXC-5、及びCXC-6、ならびにCD40Lが含まれる。
【0146】
マクロファージは、感染に対する宿主の防御への貢献に加えて、免疫応答への関与とは関係なく、重要な恒常性の役割を果たす。マクロファージは、赤血球を排除する巨大な貪食細胞であり、鉄及びヘモグロビンなどの放出された物質は、宿主が再利用するためにリサイクルすることができる。この排除するプロセスは、それなしでは宿主が生き残れない重要な代謝の寄与である。
【0147】
マクロファージは、組織再構築中に生成される細胞破片の排除にも関与し、アポトーシスを起こした細胞を迅速かつ効率的に排除する。マクロファージは、アポトーシス細胞の排除を介して定常状態の組織恒常性に関与していると考えられる。これらの恒常性排除プロセスは、一般に、スカベンジャー受容体、ホスファチジルセリン受容体、トロンボスポンジン受容体、インテグリン及び補体受容体を含むマクロファージ上の表面受容体によって媒介される。貪食作用を媒介するこれらの受容体は、サイトカイン遺伝子の転写を誘導するシグナル伝達に失敗するか、または抑制性シグナル及び/またはサイトカインを積極的に生成するかのいずれかである。マクロファージの恒常性機能は、他の免疫細胞から独立している。
【0148】
マクロファージはまた、外傷または細胞への他の損傷から生じる細胞破片/壊死細胞を排除することができる。マクロファージは、トル様受容体(TLR)、細胞内パターン認識受容体、及びインターロイキン-1受容体(IL-1R)を介して、壊死細胞の破片内に存在する内因性の危険シグナルを検出し、そのほとんどは、アダプタ分子骨髄分化一次応答遺伝子88(MyD88)を介してシグナルを伝達する。細胞破片の排除は、マクロファージの生理機能を著しく改変することができる。壊死を排除するマクロファージは、表面タンパク質の発現の改変、ならびにサイトカイン及び炎症誘発性媒介物の生成を含む、生理機能に劇的な変化を起こすことができる。これらの刺激に応答したマクロファージ表面タンパク質発現の改変は、これらの変化した細胞に固有の生化学的マーカーを同定するために使用できる可能性がある。
【0149】
マクロファージは、白色脂肪組織、褐色脂肪組織、肝臓、膵臓などの多くの組織の恒常性を維持する上で重要な機能を有する。組織マクロファージは、変化のカスケードを引き起こして組織細胞を適応させる細胞シグナル伝達分子を放出することにより、組織の状態の変化に迅速に応答することができる。例えば、脂肪組織内のマクロファージは、食事の変化(例えば、白色脂肪組織内のマクロファージ)または低温への曝露(例えば、褐色脂肪組織内のマクロファージ)に応答して、新しい脂肪細胞の生成を調節する。クッパー細胞として知られる肝臓内のマクロファージは、食事の変化に応じてブドウ糖及び脂質の分解を調節する。膵臓内のマクロファージは、高脂肪食に応答してインスリン生成を調節することができる。
【0150】
マクロファージはまた、創傷治癒及び組織修復に寄与することができる。例えば、マクロファージは、損傷した組織及び細胞に由来するシグナルに応答して、活性化され、損傷した組織を修復するための組織修復応答を誘発することができる(Minutti et al.(2017)Science 356:1076-1080)。
【0151】
胚発生の間、マクロファージは、組織再構築及び器官発達においても重要な役割を果たす。例えば、常在性マクロファージは、新生児マウスの心臓の血管の発達を積極的に形成する(Leid et al.(2016)Circ.Res.118:1498-1511)。脳内のミクログリアは、胚発生の間に脳の発達においてニューロン及び血管を導く成長因子を生成することができる。同様に、マクロファージが産生するタンパク質であるCD95Lは、ニューロンの表面上にあるCD95受容体と結合し、マウス胚の脳内で血管を発達させ、ニューロン及び血管の発達を促進する(Chen et al.(2017)Cell Rep.19:1378-1393)。リガンドがないと、ニューロンの分岐頻度が低くなり、結果として生じる成人の脳は、より少ない電気的活性を示し、破骨細胞として知られる単球由来細胞は骨の発達に関与し、これらの細胞を欠くマウスは、大理石骨病として知られるまれな状態である、緻密で硬化した骨を発達させる。マクロファージはまた、乳腺の発達を調整し、出生後初期の網膜の発達を助ける(Wynn et al.(2013)Nature 496:445-455)。
【0152】
上述のように、マクロファージは免疫系を制御する。T細胞への抗原提示に加えて、マクロファージは、いくつかの条件下で免疫細胞に免疫抑制/抑制シグナルを提供することできる。例えば、精巣では、マクロファージは精子が免疫系によって攻撃されるのを防ぐ環境を作るのを助ける。精巣内の組織に常在するマクロファージは、精子に対する免疫細胞の応答を防ぐ免疫抑制分子を産生する(Mossadegh-Keller et al.(2017)J.Med.214:10.1084/jem.20170829)。
【0153】
異なる環境シグナルに応答し、それらの機能的要求と一致するマクロファージの可塑性は、連続体の2つの極端な、すなわち「古典的に活性化された」M1及び「代替的に活性化された」M2マクロファージを含む、一連のマクロファージ活性化状態をもたらした。
【0154】
「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激された、及び/または誘導されたサイトカインの発現及び分泌、貪食作用、細胞シグナル伝達、抗原のプロセシング及び提示、標的細胞の死滅、炎症誘発性機能などのエフェクター機能を発揮するように刺激されている骨髄細胞の状態を指す。
【0155】
「M1マクロファージ」または「古典的に活性化されたマクロファージ」という用語は、炎症誘発性表現型を有するマクロファージを指す。「マクロファージ活性化」という用語(「古典的活性化」とも称される)は、病原体への二次曝露時のBCG(bacillus Calmette-Guerin)及びListeriaに対するマクロファージの抗原依存性であるが非特異的な増強された殺菌活性を説明するために、1960年代に感染の状況下でMackanessによって導入された(Mackaness(1962)J.Exp.Med.116:381-406)。増強は後に、抗原活性化免疫細胞によるTh1応答及びIFN-γ産生と関連し(Nathan et al.(1983)J.Exp.Med.158:670-689)、細胞傷害性及び抗腫瘍特性に拡張された(Pace et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:3782-3786、Celada et al.(1984)J.Exp.Med.160:55-74)。したがって、サイトカイン分泌、抗原提示、貪食作用、細胞間相互作用、遊走などによって炎症を増強するマクロファージ機能は、炎症誘発性と見なされる。インビトロ及びインビボアッセイは異なるエンドポイントを測定できる:一般的なインビトロ測定には、増殖、遊走、炎症誘発性Th1サイトカイン/ケモカイン分泌及び/または遊走によって測定される炎症誘発性細胞刺激が含まれ、一方で一般的なインビボ測定には、病原体との戦い、組織損傷の即時応答者、他の細胞活性化因子、移動誘導物質などの分析がさらに含まれる。インビトロ及びインビボの両方で、炎症誘発性抗原提示を評価することができる。リポ多糖(LPS)、特定のトル様受容体(TLR)アゴニスト、Th1サイトカインインターフェロンガンマ(IFNγ)(例えば、ストレス及び感染に応答してNK細胞によって産生されるIFNγ、ならびに持続的な産生を伴うTヘルパー細胞)、及びTNFは、M1経路に沿ってマクロファージを分極する。活性化されたM1マクロファージは、微生物を貪食して破壊し、損傷した細胞(腫瘍細胞及びアポトーシス細胞など)を排除し、適応免疫応答を増加させるためにT細胞に抗原を提示し、高レベルの炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、及びIL-23)、活性酸素種(ROS)、及び一酸化窒素(NO)を生成し、ならびに他の免疫細胞及び非免疫細胞を活性化する。誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、活性酸素種(ROS)の発現、及びTh1関連サイトカインであるIL-12の生成を特徴とするM1マクロファージは、強力な免疫応答を促進するように良好に適応される。M1マクロファージの代謝は、好気性糖分解の増強、グルコースの乳酸への変換、ペントースリン酸経路(PPP)を介したフラックスの増加、脂肪酸合成、ならびにコハク酸及びクエン酸の蓄積につながる短縮型トリカルボン酸(TCA)回路によって特徴付けられる。
【0156】
「1型」または「M1様」骨髄細胞は、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインを分泌することによって炎症性刺激を生成すること、少なくとも1つの細胞表面活性化分子/その表面上の活性化分子のリガンドを発現すること、炎症誘発性応答を刺激するために、少なくとも1つの他の細胞(他のマクロファージ及び/またはT細胞を含む)を動員/指示/相互作用すること、炎症誘発性の状況で抗原を提示すること、炎症誘発性応答の開始を可能にする部位への移動、または炎症誘発性機能につながると予想される少なくとも1つの遺伝子の発現を開始することのうちの少なくとも1つを特徴とする炎症誘発性応答に寄与することができる骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、用語には、細胞傷害性CD8+T細胞の活性化、免疫チェックポイント療法などの免疫療法に対するがん細胞の感受性の増加の媒介、及び/または耐性に対するがん細胞の逆転の媒介が含まれる。特定の実施形態では、炎症誘発性状態へのかかる調節は、これらに限定されないが、a)表面抗原分類80(CD80)、CD86、MHCII、MHCI、インターロイキン1-ベータ(IL-1β、IL-6、CCL3、CCL4、CXCL10、CXCL9、GM-CSF、及び/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の増加した発現及び/または分泌、b)CD206、CD163、CD16、CD53、VSIG4、PSGL-1、TGFb、及び/またはIL-10の低減した発現及び/または分泌、c)IL-1β、TNF-α、IL-12、IL-18、GM-CSF、CCL3、CCL4、及びIL-23からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインの増加した分泌、d)IL-10の発現に対するIL-1β、IL-6、及び/またはTNF-αの発現の増加した比率、e)増加したCD8+細胞傷害性T細胞活性化、f)CD8+細胞傷害性T細胞活性化の増加した動員、g)増加したCD4+ヘルパーT細胞活性、h)CD4+ヘルパーT細胞活性の増加した動員、i)増加したNK細胞活性、j)NK細胞の増加した動員、k)増加した好中球活性、l)増加したマクロファージ活性、及び/またはm)顕微鏡法で評価した際の、増加した紡錘形の形態、外観の平坦性、及び/または樹状突起の数のうちの1つ以上を含む、いくつかの周知の様式で測定することができる。
【0157】
すでに炎症誘発性である細胞では、炎症性表現型の増加は、さらなる炎症誘発性状態を指す。
【0158】
対照的に、「M2マクロファージ」という用語は、抗炎症性の表現型を有するマクロファージを指す。Th2及び腫瘍由来のサイトカイン、例えば、IL-4、IL-10、IL-13、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、プロスタグランジンE2(PGE2)などは、M2分極化を促進することができる。M2マクロファージの代謝プロファイルは、OXPHOS、FAO、解糖系の低減、及びPPPによって定義される。マンノース受容体がマウスマクロファージのTh2 IL-4及びIL-13によって選択的に増強され、マンノシル化リガンドの高いエンドサイトーシス排除を誘導し、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII抗原の発現を増加させ、炎症誘発性サイトカイン分泌を減少するという発見は、Stein、Doyle、及び同僚らのIL-4及びIL-13が、IFN-γの活性化とはまったく異なるが非活性化にはほど遠い状態である、代替的な活性化表現型を誘導するという提唱から導かれた(Martinez and Gordon(2014)F1000 Prime Reports 6:13)。インビトロ及びインビボの定義/アッセイでは、異なるエンドポイントを測定できる:一般的なインビトロエンドポイントには、増殖、遊走、抗炎症性Th2サイトカイン/ケモカイン分泌及び/または遊走によって測定される抗炎症性細胞刺激が含まれ、一方で一般的なインビボM2エンドポイントには、病原体との戦い、組織損傷の遅延/線維化促進応答、他の細胞のTh2分極、遊走誘導物質などを分析することがさらに含まれる。インビトロ及びインビボの両方で、寛容原性抗原提示を評価することができる。
【0159】
「2型」または「M2様」骨髄細胞は、少なくとも1つの抗炎症性サイトカインを分泌することによって抗炎症性刺激を生成すること、その表面上の阻害分子に対して少なくとも1つの細胞表面阻害分子/リガンドを発現すること、抗炎症反応を刺激するために少なくとも1つの他の細胞を動員/指示/相互作用すること、寛容原性の状況下で抗原を提示すること、寛容原性応答の開始を可能にする部位への移動、または寛容原性/抗炎症機能につながると予想される少なくとも1つの遺伝子の発現を開始することのうちの少なくとも1つを特徴とする抗炎症応答に寄与することができる骨髄細胞である。特定の実施形態では、炎症誘発性状態へのかかる調節は、上述の1型炎症誘発性状態測定の反対を含むがこれに限定されない、いくつかの周知の方法で測定することができる。
【0160】
「増加した炎症性表現型」を有する細胞は、例えば、本発明によって包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)を調節する薬剤による接触など、本発明によって包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)の調節後、a)1つ以上の1型の列挙される基準における増加、及び/またはb)1つ以上の2型の列挙される基準における低減に関連するより高い炎症誘発性応答能力を有する細胞である。
【0161】
「低減した炎症性表現型」を有する細胞は、例えば、本発明によって包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)を調節する薬剤による接触など、本発明によって包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)の調節後、a)1つ以上の1型の列挙される基準における低減、及び/またはb)1つ以上の2型の列挙される基準における増加に関連するより高い抗炎症応答能力を有する細胞である。
【0162】
したがって、マクロファージは、1型及び2型状態の間の表現型を有する代替的に活性化された状態の連続体を採用することができ(例えば、Biswas et al.(2010)Nat.Immunol.11:889-896、Mosser and Edwards(2008)Nat.Rev.Immunol.8:958-969、Mantovani et al.(2009)Hum.Immunol.70:325-330を参照されたい)、かかる増加または低減した炎症性表現型は上述のように決定することができる。
【0163】
本明細書で使用される場合、「代替的に活性化されたマクロファージ」または「代替的に活性化された状態」という用語は、古典的に活性化されたM1炎症誘発性マクロファージ以外の本質的にすべての型のマクロファージ集団を指す。本来、代替的に活性化された状態は、M2型抗炎症性マクロファージにのみ指定される。用語は、生化学、生理学、機能に劇的な違いがあるマクロファージの他のすべての代替的に活性化された状態を含むように拡張されている。
【0164】
例えば、代替的に活性化されたマクロファージの1つの型は、創傷治癒に関与するものである。好塩基球及び肥満細胞によって産生されるIL-4などの組織損傷(例えば、外科的創傷)中に放出される先天的及び適応的シグナルに応答して、組織に常在するマクロファージを活性化して創傷治癒を促進することができる。創傷治癒マクロファージは、高レベルの炎症誘発性サイトカインを産生する代わりに、大量の細胞外マトリックス成分、例えば、キチナーゼ及びキチナーゼ様タンパク質YM1/CHI3L3、YM2、AMCaseならびにスタビリンを分泌し、これらはすべて炭水化物及びマトリックス結合活性を示し、組織の修復に関与する。
【0165】
代替的に活性化されたマクロファージの別の例は、自然免疫応答及び適応免疫応答によって誘導され得る制御性マクロファージを含む。制御性マクロファージは、免疫制御性機能に寄与することができる。例えば、マクロファージは、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸からのホルモン(例えば、糖質コルチコイド)に応答して、宿主の防御及び炎症誘発性サイトカインの転写の阻害などの炎症機能が阻害された状態をとることができる。制御性マクロファージは、制御性サイトカインTGF-βを生成して、特定の条件下、例えば適応免疫応答の後期段階で免疫応答を弱めることができる。多くの制御性マクロファージは、共刺激分子(例えば、CD80及びCD86)を高レベルで発現し、したがって、T細胞に対して抗原提示を増強することができる。
【0166】
多くの刺激/合図は、制御性マクロファージの分極化を誘導することができる。合図には、これらに限定されないが、TLRアゴニスト及び免疫複合体、アポトーシス細胞、IL-10、プロスタグランジン、GPcRリガンド、アデノシン、ドーパミン、ヒスタミン、スフィンゴシン1-リン酸、メラノコルチン、血管作動性腸管ペプチド、ならびにSIGLEC-9の組み合わせが含まれる。寄生虫、ウイルス、細菌などのいくつかの病原体は、制御性マクロファージの分化を特異的に誘導し、病原体の死滅に不完全性をもたらし、感染した微生物の生存及び拡散を促進する。
【0167】
制御性マクロファージは、いくつかの共通の特徴を共有する。例えば、制御性マクロファージは、抗炎症作用を誘導するために2つの刺激を必要とする。異なる合図/刺激によって誘導される制御性マクロファージ亜集団間の違いも観察され、それらの不均一性を反映している。
【0168】
制御性マクロファージはまた、代謝、発達中、恒常性の維持に見られる様々な亜集団を含む、マクロファージの不均一な集団である。一例では、代替的に活性化されたマクロファージの亜集団は、M-CSF/GM-CSF、CD16リガンド(免疫グロブリンなど)、及びIFN-γ(PCT出願公開第WO2017/153607号)の存在下で誘導され得る固有の免疫制御性特性を有する免疫制御性マクロファージである。
【0169】
組織内のマクロファージは、時間の経過と共にインビボでそれらの活性化状態を変化させることができる。この動的性は、組織へ遊走するマクロファージの一定の流入、活性化されたマクロファージの動的変化、及び休止状態に戻るマクロファージを反映する。いくつかの条件では、環境内の異なるシグナルがマクロファージを異なる活性化状態の混合に誘導することができる。例えば、慢性創傷を有する状態では、時間の経過に伴うマクロファージは、炎症誘発性活性化亜集団、創傷治癒促進性であるマクロファージ、及びいくつかの分解促進活性を示すマクロファージを含み得る。非病理学的条件下では、免疫刺激性及び免疫制御性マクロファージのバランスの取れた集団が免疫系に存在する。いくつかの疾患状態では、バランスが崩れ、不均衡が多くの臨床状態を引き起こす。
【0170】
マクロファージの明らかな可塑性はまた、それらが疾患状態で受ける環境の合図に対して不安定な応答をもたらす。マクロファージは、様々な疾患状態に応答して再分極することができ、明確な特徴を示す。一例は、末梢血単球から腫瘍組織に誘引され、濾過されるマクロファージであり、これはしばしば「腫瘍関連マクロファージ」(「TAM」)または「腫瘍浸潤マクロファージ」(「TIM」)と称される。腫瘍関連マクロファージは、腫瘍内の最も豊富な炎症性細胞であり、高いTAM密度及びほとんどのがんの予後不良の間に有意な相関が見られた(Zhang et al.(2012)PloS One 7:e50946.10.1371/journal.pone.0050946)。
【0171】
TAMは、M1様炎症誘発性及びM2様抗炎症性亜集団の両方の混合集団である。新形成の初期段階では、炎症誘発性の表現型を有する古典的に活性化されたマクロファージが正常酸素状態の腫瘍領域に存在し、形質転換された腫瘍細胞の早期根絶に寄与すると考えられている。しかしながら、腫瘍が成長して進行するにつれて、後期腫瘍のTAMの大部分は、腫瘍の低酸素領域に存在するM2様制御性マクロファージである。マクロファージのこの表現型の変化は、腫瘍細胞外マトリックス、無酸素環境、腫瘍細胞から分泌されるサイトカインなどの腫瘍微小環境刺激によって著しく影響を受ける。M2様TAMは、創傷治癒マクロファージ及び制御性マクロファージのハイブリッド活性化状態を示し、高レベルのIL-10を生成するが、IL-12をほとんどまたはまったく生成しないこと、不完全なTNF生成、抗原提示細胞の抑制、及び腫瘍血管新生への寄与を含む様々な固有の特徴を示す。
【0172】
一般に、TAMはM2表現型を特徴とし、IL-10及びIL-1βの生成を介してM1マクロファージを媒介した炎症を抑制する。したがって、TAMは、増殖及び浸潤のための栄養素ならびに成長シグナルを提供し、新しい血管の作製(すなわち、血管新生)を促進する創傷治癒(すなわち、抗炎症)経路の活性化を通じて腫瘍の成長及び転移を促進する。さらに、TAMは、免疫系の他の要素が腫瘍を認識して攻撃するのを防ぐ抗炎症シグナルを分泌することにより、免疫抑制腫瘍の微小環境に貢献する。TAMは、多くの種類のがん(例えば、乳癌、星状細胞腫、頭頸部扁平上皮癌、乳頭状腎細胞癌II型、肺癌、膵臓癌、胆嚢癌、直腸癌、神経膠腫、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣癌、及び結腸直腸癌)におけるがんの成長、増殖、及び転移を促進する上で重要な役割を果たしていることが報告されている。一般に、TAMの大きな集団により特徴付けされるがんは、疾患の予後不良と関連している。
【0173】
多様な機能及び活性化状態は、適切に制御されていない場合に危険な結果をもたらし得る。例えば、古典的に活性化されたマクロファージは、宿主組織に損傷を生じさせ、周囲の組織を素因とし、過剰に活性化されるとグルコース代謝に影響を与え得る。
【0174】
多くの疾患状態では、マクロファージ活性化状態のバランスの取れた動態が妨害され、不均衡が疾患を引き起こす。例えば、腫瘍にはマクロファージが豊富に存在する。マクロファージは、がんの75パーセントに見られる。攻撃型のがんは、マクロファージ及び他の免疫細胞のより高い浸潤に関連する場合が多い。ほとんどの悪性腫瘍では、TAMは、がん細胞の生存、増殖、浸潤、血管外遊出及び転移の促進、血管新生の刺激、細胞外マトリックスの再構築、ならびに抗腫瘍免疫の抑制を含む、いくつかの腫瘍促進機能を発揮する(Qian and Pollard,2010,Cell,141(1):39-51)。それらはまた、オルニチン、VEGF、EGF、TGF-βなどの成長促進分子を生成する可能性もある。
【0175】
TAMは、腫瘍微小環境で遭遇したCSF1及びIL4/IL13に応答して、腫瘍の成長及び生存を刺激する。TAMはまた、MMP類、カテプシン及びuPA及びマトリックス再構築酵素(例えば、リシルオキシダーゼ及びSPARC)などのプロテアーゼの発現を介して腫瘍微小環境をリモデリングすることもできる。
【0176】
TAMは、腫瘍の悪性状態の移行に必要な腫瘍組織の血管の劇的な増加を調節する腫瘍血管新生において重要な役割を果たす。これらの血管新生TAMは、アンジオポエチン受容体TIE2を発現し、VEGFファミリーのメンバー、TNFα、IL1β、IL8、PDGF、及びFGFなどの多くの血管新生分子を分泌する。
【0177】
マクロファージの亜集団の多様性は、これらの個々の腫瘍促進機能を実行する。これらのTAMは、マクロファージ浸潤の程度、及び腫瘍の種類によって表現型が異なる。例えば、ヒト肝細胞癌の詳細なプロファイリングは、解剖学的位置、及び腫瘍促進特性、及び抗腫瘍特性の観点から定義される様々なマクロファージサブタイプを示す。M2様マクロファージは、TAMの腫瘍促進機能の主要なリソースであることが示されている。M2様TAMは、抗がん治療の有効性に影響を与え、治療抵抗性に寄与し、従来のがん治療後の腫瘍再発を仲介することが示されている。
【0178】
III.骨髄細胞炎症性表現型を調節するために有用な標的及びバイオマーカー
本発明は、骨髄細胞の炎症性表現型を調節するために有用なSIGLEC-9のようなバイオマーカー、ならびに対応する免疫応答(例えば、抗がんマクロファージ免疫療法を増加させるため)を包含する。
【0179】
SIGLEC-9の下方制御は、増加した炎症性表現型(例えば、1型表現型)に関連し、上方制御は、低減した炎症性表現型(例えば、2型表現型)に関連し、その結果として生じる。
【0180】
本発明に包括される遺伝子座及びバイオマーカー(例えば、表1に記載されるバイオマーカー)の核酸ならびにアミノ酸配列情報は、当技術分野で周知であり、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)などの公的に利用可能なデータベースで容易に入手可能である。例えば、公的に利用可能な配列データベースに由来する例示的な核酸及びアミノ酸配列を以下に提供する。
【0181】
以下でさらに論じるように、骨髄細胞において本発明に包括されるバイオマーカーの発現、翻訳、分解、量、細胞内局在、及び他の活性を調節する薬剤は、これらの細胞の炎症性表現型を調節するだけでなく、これらの細胞によって媒介される免疫応答を調節するのに有用である。
【0182】
ヒト配列に対する多数の代表的なオルソログが以下に提供されるが、いくつかの実施形態では、ヒトバイオマーカー(その調節剤及び調節剤を含む)が好ましい。いくつかのバイオマーカーについて、ヒトにおけるそのようなバイオマーカーによって媒介される免疫応答は、ヒトの免疫系と他の脊椎動物の免疫系との間の違いを考慮すると、特に有用であると考えられている。
【0183】
「SIGLEC9」という用語は、細胞とのシアル酸依存性結合を媒介する推定接着分子であるシアル酸結合Ig様レクチン9を指す。SIGLEC9は、アルファ-2,3-またはアルファ-2,6-結合シアル酸と優先的に結合する。シアル酸認識部位は、同じ細胞表面上のシアル酸とのシス相互作用によって遮蔽され得る。その関連する経路の中には、自然免疫系及びクラスI MHC媒介性抗原のプロセシングならびに提示がある。いくつかの実施形態では、ヒトの染色体19q上に位置するSIGLEC9遺伝子は、12個のエクソンからなる。チンパンジー、アカゲザル、及びマウスからのオルソログが即知である。Siglectm1Crocと称されるノックアウトマウス株が生成された(McMillan et al.(2013)Blood 121(11):2084-2094)。いくつかの実施形態では、ヒトSIGLEC9タンパク質は、463個のアミノ酸を有し、及び/または50082Daの分子量を有する。いくつかの実施形態では、SIGLEC9タンパク質は、免疫受容体チロシン系阻害剤モチーフ(ITIM)と称される細胞質モチーフの1つのコピーを含む。このモチーフは、細胞応答の調節に関与する。リン酸化されたITIMモチーフは、いくつかのSH2含有ホスファターゼのSH2ドメインと結合し得る。
【0184】
「SIGLEC9」という用語は、断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、及びその誘導体を含むことを意図している。代表的なヒトSIGLEC9 cDNA及びヒトSIGLEC9タンパク質配列は当技術分野で周知であり、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から公に入手可能である(例えば、ncbi.nlm.nih.gov/gene/27180を参照されたい)。例えば、少なくとも2つの異なるヒトSIGLEC9アイソフォームが即知である。ヒトSIGLEC9アイソフォーム1(NP_001185487.1)は、転写物バリアント1(NM_001198558.1)によってコード可能であり、それはより長い転写物である。ヒトSIGLEC9アイソフォーム2(NP_055256.1)は、転写物バリアント2(NM_014441.2)によってコード可能であり、アイソフォーム1と比較して3’UTR及び3’コード領域が異なる。コードされたアイソフォーム2は、アイソフォーム1と比較してより短く、異なるN末端を有する。ヒト以外の生物におけるSIGLEC9オルソログの核酸及びポリペプチド配列は周知であり、例えば、チンパンジーSIGLEC9(XM_024351618.1及びXP_024207386.1、ならびにXM_003316566.5及びXP_003316614.2)、アカゲザルSIGLEC9(XM_015124691.1及びXP_014980177.1、XM_001114560v.3及びXP_001114560.2、XM_015124692.1及びXP_014980178.1)、及びマウスSIGLEC9(NM_031181.2及びNP_112458.2)が含まれる。SIGLEC9オルソログの代表的な配列を以下の表1に示す。
【0185】
SIGLEC9タンパク質を検出するために好適な抗SIGLEC9抗体は当技術分野で周知であり、例えば、抗体、MAB1139及びAF1139(R&D systems、Minneapolis、MN)、抗体、MAB1139、NBP1-47969、AF1139、NBP2-27070、及びNBP1-85755(Novus Biologicals、Littleton、CO)、抗体、ab89484、ab96545、及びab197981(AbCam、Cambridge、MA)、抗体、カタログ番号:CF500382及びTA500382(Origene、Rockville、MD)などが含まれる。さらに、SIGLEC9発現を検出するための試薬が周知である。SIGLEC9の複数の臨床検査は、NIH Genetic Testing Registry(GTR(登録商標))で利用可能である(例えば、GTR検査ID:GTR000547533.2、Fulgent Clinical Diagnostics Lab(Temple City、CA)から提供)。さらに、SIGLEC9発現を減少するための複数のsiRNA、shRNA、CRISPR構築物は、Origene Technologies(Rockville、MD)からのsiRNA製品#SR309022、shRNA製品#TG309443、TL309443、及びCRISPR製品#KN206674、Santa CruzからのCRISPR gRNA製品(sc-406675及びsc-406675-KO-2)、ならびにSanta CruzからのRNAi製品(カタログ番号sc-106550及びsc-153462)など、上記に参照した企業の商用製品リストに記載されている。この用語は、SIGLEC9分子に関して本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを指すためにさらに使用できることに留意されたい。例えば、配列構成、パーセンテージ同定、配列長、ドメイン構造、機能的活性などの任意の組み合わせを使用して、本発明に包括されるSIGLEC9分子を説明することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0186】
IV.抗体及びその抗原結合断片
骨髄細胞の炎症性表現型は、特定のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)の量及び/または活性を調節することによって調節することができ、かかる炎症性表現型調節も免疫応答を調節する。
【0187】
本発明は、表1に列挙される標的を調節する抗体、及びその抗原結合断片を提供する。そのような組成物は、単球及び/またはマクロファージ炎症性表現型を上方制御または下方制御するのに有用であり、それにより、免疫応答をそれぞれ上方制御または下方制御する。かかる組成物は、表1に列挙される標的の量及び/または活性を検出するのにも有用であり、その結果、薬剤が、かかる標的によって媒介される効果を診断、予知、及びスクリーニングするのに有用である。
【0188】
代表的な例示的な非限定的抗体を以下の表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0189】
a.抗体及びその抗原結合断片の組成物
一般に、本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片は、それらがSIGLEC-9ポリペプチドを発現する骨髄細胞と結合する能力を示し、骨髄細胞の炎症性表現型を増加させることを特徴とする。
【0190】
SIGLEC-9に対して指向される抗体(例えば、単離されたモノクローナル抗体)、ならびにその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、mAbは、以下にさらに記載されるように、ブダペスト条約の条件に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託されている。
【0191】
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たすことが当技術分野で周知であるため、本発明に包括される抗体、例えば、表2に記載される抗体は、好ましくは、本発明に包括される可変領域(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)の重鎖及び軽鎖CDR3を含む。抗体は、本発明に包括される可変領域のCDR2をさらに含み得る(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)。抗体は、本発明に包括される可変領域のCDR1をさらに含み得る(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)。他の実施形態では、抗体は、CDRの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、CDR1、CDR2、及び/またはCDR3は、本発明に包括される同じ重鎖または軽鎖配列(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)内から選択され得る。他の実施形態では、CDR1、CDR2、及び/またはCDR3は、本発明に包括される同じ重鎖及び軽鎖配列対(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)内から選択され得る。
【0192】
上述の抗体及びその抗原結合断片のCDR1、CDR2、及び/またはCDR3領域は、本明細書に開示される本発明に包括される可変領域(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)のものとして正確なアミノ酸配列(複数可)を含み得る。しかしながら、当業者は、抗体がSIGLEC-9と効果的に結合する能力(例えば、保存的配列修飾)を依然として保持しながら、正確なCDR配列からいくらかの逸脱が可能であり得ることを理解するであろう。したがって、別の実施形態では、操作された抗体は、例えば、本発明に包括される1つ以上のCDR(例えば、表2の配列、またはその一部を含む)と50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一である、1つ以上のCDRから構成され得る。
【0193】
既知の非ヒトまたはヒト抗体(例えば、マウスまたは非げっ歯類抗ヒトSIGLEC-9抗体)の構造的特徴を使用して、SIGLEC-9の結合など、本発明に包括される抗体の少なくとも1つの機能的特性を保持する、構造的に関連するヒト抗ヒトSIGLEC-9抗体を作製することができる。別の機能的特性は、競合ELISAアッセイにおける元の既知の非ヒトまたはヒト抗体の結合を阻害することを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、可変ドメインが、少なくとも、表2に提示される重鎖可変ドメインCDRの群から少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有するCDRを含む重鎖を含む、ヒトSIGLEC-9と結合することができる抗体、及びその抗原結合断片が提供される。
【0195】
同様に、可変ドメインが、少なくとも、表2に提示される軽鎖可変ドメインCDRの群から少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有するCDRを含む軽鎖を含む、ヒトSIGLEC-9と結合することができる抗体、及びその抗原結合断片も提供される。
【0196】
可変ドメインが、少なくとも、表2に提示される重鎖可変ドメインCDRの群から少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有するCDRを含む重鎖を含む、及び少なくとも、表2に提示される軽鎖可変ドメインCDRの群から少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を有するCDRを含む軽鎖を含む、ヒトSIGLEC-9と結合することができる抗体、及びその抗原結合断片も提供される。
【0197】
当業者は、かかるパーセンテージ相同性が、本発明に包括される相同性に等しいか、またはその代わりに、目的の所与のCDR内に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ超のアミノ酸置換、例えば、保存的置換を導入することによって達成され得ることに留意するであろう。
【0198】
本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片は、可変ドメインが、少なくとも、表2に提示される重鎖可変ドメインCDRからなる群から選択される配列を有するCDRを含む、重鎖と、可変ドメインが、少なくとも、表2に示される軽鎖可変ドメインCDRからなる群から選択される配列を有するCDRを含む、軽鎖と、を含む。
【0199】
かかる抗体、及びその抗原結合断片は、可変ドメインが、少なくとも、本明細書に記載されるCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3からなる群から選択される配列を有するCDRを含む、軽鎖、及び/または可変ドメインが、少なくとも、本明細書に記載されるCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3からなる群から選択される配列を有するCDRを含む、重鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトSIGLEC-9と結合することができる抗体、及びその抗原結合断片は、本明細書に記載されるCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含むか、またはそれらからなる。
【0200】
本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片の重鎖可変ドメインは、表2に示されるvHアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり得、及び/または本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片の軽鎖可変ドメインは、表2に示されるvκアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり得る。
【0201】
本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片は、当技術分野で周知の任意の技術によって産生及び修飾され得る。例えば、かかる抗体、及びその抗原結合断片は、マウス抗体または非げっ歯類抗体であり得る。同様に、かかる抗体、及びその抗原結合断片は、キメラ、好ましくはキメラマウス/ヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体及びその抗原結合断片は、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域、及び任意で存在する場合、ヒト定常ドメイン、ならびに上述のマウスまたは非げっ歯類CDRなどの非ヒトドナーCDRを含むようなヒト化抗体である。
【0202】
他の実施形態において、本発明による免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖は、それぞれ、表2に提供されるvHまたはvκ可変ドメイン配列を含むか、またはそれからなる。
【0203】
本発明はさらに、本明細書に記載のvH可変ドメイン、vκ可変ドメイン、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3配列からなる群から選択される配列を有するポリペプチドを提供する。本発明の抗体、免疫グロブリン、及びポリペプチドは、単離された(例えば、精製された)形態で使用され得るか、または膜もしくは脂質小胞(例えば、リポソーム)などのベクターに含まれ得る。
【0204】
いくつかの修飾、断片などがさらに企図される。
【0205】
「抗体」または「Ab」という用語は、広範な意味で使用され、詳細には、これらに限定されないが、全抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、少なくとも2つの無傷抗体、三重特異的、またはより高い多重特異的な抗体から形成された二重特異的抗体)、天然に発生する形態の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)及び組換え抗体、抗体断片、二重特異性抗体、抗体バリアント、及び他のペプチドの一部であるか、または他のペプチドに関連する抗体由来結合ドメインを含む。抗体は主に、アミノ酸系分子であるが、1つ以上の修飾(これらに限定されないが、糖部分、蛍光部分、化学タグなどの付加を含む)を含むこともできる。いくつかの事例では、抗体は、非アミノ酸系分子を含むことができる。本発明に包括される抗体は、天然に発生するか、または生物工学によって生成され得る。
【0206】
抗体、及びその抗原結合断片は、単離され得る。本明細書で使用される場合、「単離された抗体」という用語は、他の抗体(異なる抗原特異性を有するものなど)を実質的に含まない抗体組成物(所望の抗原特異性を有するなど)を指すことを意図している(例えば、SIGLEC-91と結合し、SIGLEC-9と結合しない抗体を実質的に含まない単離された抗体)。しかしながら、いくつかの実施形態では、SIGLEC-9と特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら、異なるファミリーメンバー、種などからのものなど、目的の他のタンパク質との交差反応性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト及び他の動物、例えば、非げっ歯類動物、または他の哺乳動物もしくは非哺乳動物種などの少なくとも2つの種に対して特異的結合親和性を維持する。しかしながら、いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトSIGLEC-9に対するより高いまたは実際に特異的な親和性及び/または選択性を維持する。加えて、単離された抗体は、典型的には、他の細胞性物質及び/または化学物質を実質的に含まない。一実施形態では、ヒトSIGLEC-9に対して異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせが、明確に定義された組成物で組み合わされる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗SIGLEC-9抗体は、ヒトSIGLEC-9、及び1つ以上のヒトSIGLECファミリーメンバーと結合する。かかるヒトSIGLECファミリーメンバーには、SIGLEC-1(例えば、NP_075556.1)、SIGLEC-2(例えば、NP_001762.2)、SIGLEC-3(例えば、NP_001763.3)、SIGLEC-4(例えば、NP_002352.1)、SIGLEC-5(例えば、NP_003821.1)、SIGLEC-6(例えば、NP_001236.4)、SIGLEC-7(例えば、NP_055200.1)、SIGLEC-8(例えば、NP_055257.2)、SIGLEC-10(例えば、NP_149121.2)、SIGLEC-11(例えば、NP_443116.2)、SIGLEC-12(例えば、NP_443729.1)、SIGLEC-14(例えば、NP_001092082.1)、SIGLEC-15(例えば、NP_998767.1)、及びSIGLEC-16(例えば、NP_001335293.2)が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗SIGLEC-9抗体は、ヒトSIGLEC-9、ならびにSIGLEC-1、SIGLEC-2、SIGLEC-3、SIGLEC-4、SIGLEC-5、SIGLEC-6、SIGLEC-7、SIGLEC-8、SIGLEC-9、SIGLEC-10、SIGLEC-11、及びSIGLEC-12、ならびにこれらの任意の組み合わせ、例えば、ヒトSIGLEC-9、ヒトSIGLEC-7、及び/またはヒトSIGLEC-3を含む1つ以上のヒト阻害型SIGLECファミリーメンバーと結合する。いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗SIGLEC-9抗体は、ヒトSIGLEC-9、SIGLEC-及びヒトSIGLEC-7と結合する。かかる結合は、細胞によって発現される場合などに、細胞外ドメイン上で生じ得る。上述のように、かかる差次的または交差結合は、例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100-倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、もしくはそれ超、または対照と比較して約1.5倍~約100倍異なるなどその間の任意の範囲として、対照と比較した倍数差として測定することができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、重及び軽可変ドメインならびにFc領域を含み得る。一般に、「Fc領域」という用語は、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸長するように定義される。本発明に包括される抗体で使用するのに好適な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2Bなど)、IgG3、及びIgG4が含まれる。
【0209】
「天然抗体」という用語は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される、通常約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質を指す。各軽鎖が1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgM)の重鎖間で異なる。各重及び軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、その後にいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。抗体の2つの重鎖の重鎖の残りの定常ドメインは、抗体の断片結晶化可能(Fc)領域で構成される。
【0210】
抗体のテイル領域におけるFc領域は、Fc受容体と称される細胞表面受容体及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する。一般的に、「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域と結合する受容体を記載する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的スプライシング形態を含むものであり、FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照されたい。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説される。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包括される。
【0211】
「軽鎖」という用語は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと称される2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられた任意の脊椎動物種からの抗体の構成成分を指す。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、異なるクラスに割り当てることができる。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分割され得る。ヒトまたはヒトキメラ抗体などの抗体のCLは、カッパクラスまたはラムダクラスなどのIgに属する任意の領域であり得る。
【0212】
「可変ドメイン」という用語は、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性において使用される、抗体の重及び軽鎖上の両方の特定の抗体ドメインを指す。例えば、「VH」という用語は「重鎖可変ドメイン」を指し、「VL」という用語は「軽鎖可変鎖」を指す。可変ドメインは、超可変領域で構成される。「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与するアミノ酸残基を含む可変ドメイン内の領域を指す。これらの領域は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する。超可変性領域内に存在するアミノ酸は、抗体の抗原結合部位の一部となる相補性決定領域(CDR)の構造を決定する。概して、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体において、H3及びL3は、これらの6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている(例えば、Xu et al.(2000)Immunity 13,37-45、Johnson and Wu(2003)Meth.Mol.Biol.248:1-25を参照されたい)。「CDR」という用語は、その標的抗原またはエピトープと相補的な構造を含む抗体の領域を指す。
【0213】
抗原と相互作用しない可変ドメインの他の部分は、フレームワーク(FW)領域と称される。抗原結合部位(抗原結合部位またはパラトープとしても即知である)は、特定の抗原と相互作用するために必要なアミノ酸残基を含む。抗原結合部位を構成する正確な残基は通常、結合した抗原との共結晶学によって解明されるが、他の抗体との比較に基づく計算的な評価も使用できる(Strohl,W.R.Therapeutic Antibody Engineering.Woodhead Publishing,Philadelphia PA.2012.Ch.3,p47-54)。CDRを構成する残基の決定には、これらに限定されないが、Kabat(Wu et al.(1970)JEM 132:211-250;Kabat et al.(1992)、“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Edition,U.S.Department of Health and Human Services;Johnson et al.(2000)Nucl.Acids Res.28:214-218)、Chothia(Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901;Chothia et al.(1989)Nature 342:877;Al-Lazikani et al.(1997)J.Mol.Biol.273:927-948)、Lefranc(Lefranc et al.(1995)Immunome Res.1:3)、Honegger(Honegger and Pluckthun(2001)J.Mol.Biol.309:657-670)、及びMacCallum(MacCallum et al.(1996)J.Mol.Biol.262:732)によって教示されるものを含む、番号付けスキームの使用を含めることができる。したがって、これらのシステムによるCDR定義は、隣接するフレームワーク領域に関して長さ及び境界領域が異なり得る。例えば、Kabat、Chothia、及び/またはMacCallumらを参照されたい(Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Edition,U.S.Department of Health and Human Services,1992、Chothia et al.(1987)J.Mol.Biol.196,901、及びMacCallum et al.,J.Mol.Biol.(1996)262,732、その各々が参照によりその全体が組み込まれる)。
【0214】
VHドメイン及びVLドメインの各々は、3つのCDRを有する。VL CDRは、可変ドメインポリペプチドに沿ってN-末端からC-末端に移動する場合に生じる順序で、本明細書ではCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と称される。VH CDRは、可変ドメインポリペプチドに沿ってN-末端からC-末端に移動する場合に生じる順序で、本明細書ではCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と称される。CDR-H3を除いて、各CDRは標準的な構造を支持しており、これは、抗体間で配列及び長さが大きく変化し得るアミノ酸配列を含み、抗原結合ドメインに様々な三次元構造をもたらす(Nikoloudis et al.(2014)Peer J.2:e456)。いくつかの事例では、CDR-H3は、関連する抗体のパネル間で分析して、抗体の多様性を評価することができる。CDR配列を決定する様々な方法が当技術分野で即知であり、既知の抗体配列に適用することができる(Strohl,W.R.Therapeutic Antibody Engineering.Woodhead Publishing,Philadelphia PA.2012.Ch.3,p47-54)。
【0215】
本明細書に記載の抗体及びその抗原結合断片には、これらに限定されないが、Chothia CDR、Kabat CDR、AbM、CDR接触領域、及び/または立体構造の定義に従って定義されるCDRを含むものが含まれる。CDR領域の決定は、当該技術分野の範囲内である。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat及びChothia CDRの組み合わせ(「組み合わせCR」または「拡張CDR」とも称される)であり得ることが理解される。いくつかの実施形態では、CDR、はKabat CDRである。他の実施形態では、CDRは、Chothia CDRである。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat及びChothia命名法に従って同定されるすべてのアミノ酸残基を指す、拡張CDRである。したがって、1つを超えるCDRを有するいくつかの実施形態では、1つ以上のCDRは、Kabat、Chothia、拡張CDR、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、抗体断片及びバリアントは、無傷抗体の任意の部分を含むことができる。「抗体断片」及び「抗体バリアント」という用語はまた、特定の抗原と結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質/ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体断片及びバリアントは、無傷抗体からの抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;Fd、二重特異性抗体;胞内抗体、線状抗体;一本鎖抗体分子、例えば、一本鎖可変断片(scFv);及び抗体断片から形成された多特異的抗体などが含まれる。構造に関係なく、抗体断片またはバリアントは、親全長抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。
【0217】
野生型抗体の限定的なタンパク質分解によって生成される抗体断片は、タンパク質分解性抗体断片と称される。これらには、限定されないが、Fab断片、Fab’断片、及びF(ab’)断片が含まれる。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合断片を生成する。残留する「Fc」断片がさらに生成され、その名前は、容易に結晶化する能力を反映する。ペプシンまたはフィシン処理により、2つの抗原結合部位を有しながら抗原に架橋することができるF(ab’)断片が得られる。概して、F(ab’)2断片は、2つの「アーム」を含み、その各々が共通の抗原に指向し、特異的に結合する可変領域を含む。2つのFab’分子は、重鎖のヒンジ領域で鎖間ジスルフィド結合によって結合されており、Fab’分子は、同じ(二価)または異なる(二重特異性)エピトープに指向することができる。本明細書で使用される場合、「Fab」断片は、Fab及びヒンジ領域を介する重鎖の追加部分を含む単一の抗結合ドメインを含む。本発明に包括される化合物及び/または組成物は、これらの断片のうちの1つ以上を含むことができる。
【0218】
「Fv」という用語は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む抗体断片を指す。これらの領域は、緊密な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。Fv断片は、タンパク質分解性切断によって生成することができるが、大部分が不安定である。安定したFv断片を生成するための当技術分野で即知である組換え方法は、典型的には、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの間に柔軟なリンカーを挿入するか(一本鎖Fv(scFvを形成するために)、または重及び軽鎖可変ドメインの間にジスルフィド架橋を導入することを介する(Strohl,W.R.Therapeutic Antibody Engineering.Woodhead Publishing,Philadelphia PA.2012.Ch.3,p46-47)。
【0219】
「一本鎖Fv」または「scFv」という用語は、VH及びVL抗体ドメインの融合タンパク質を指し、これらのドメインは、柔軟なペプチドリンカーによって単一のポリペプチド鎖に一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドリンカーは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、10~30アミノ酸残基のペプチドによって連結され得る。いくつかの実施形態では、scFvは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、または他のディスプレイ方法と組み合わせて利用され、それらは、表面メンバー(例えば、ファージコートタンパク質)と関連して発現し、特定の抗原に対する高親和性ペプチドの同定に使用できる。いくつかの実施形態では、「一本鎖抗体」という用語は、2つの一本鎖抗体(その各々が異なるエピトープに指向され得る)がジスルフィド結合によって一緒に連結されているジスルフィド連結Fv(dsFv)をさらに含むことができるが、これらに限定されない。分子遺伝学を使用して、2つのscFvは、リンカードメインによって分離された単一のポリペプチドをタンデムに操作することができ、「タンデムscFv」(tascFv)と称される。2つの異なるscFvの遺伝子を用いてtascFvを構築すると、「二重特異的一本鎖可変断片」(bis-scFv)が得られる(Nelson(2010)Mabs 2:77-83)。マキシボディ(IgGのFc(CH2-CH3ドメインのアミノ末端に融合した二価scFv)も含むことができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗体は、修飾されたFc領域を含むことができる。非限定的な例として、修飾されたFc領域は、米国特許公開第US 2015-0065690号に記載される方法によって作製され得るか、またはいずれかの範囲であり得る。
【0221】
本発明に包括される抗体及び抗原結合断片は、「組換え」であり得、この用語は、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそこから調製されるハイブリドーマのトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体及びその抗原結合断片を含む。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系及び/または非生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域ならびに定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受けてもよく、したがって、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V及びV配列に由来し、関連しているが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に自然に存在しなくてもよい配列である。
【0222】
「組換えヒト抗体」という用語は、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそこから調製されるハイブリドーマのトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたすべてのヒト抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系及び/または非生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域ならびに定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受けてもよく、したがって、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V及びV配列に由来し、関連しているが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に自然に存在しなくてもよい配列である。
【0223】
「ポリクローナル抗体」という用語は、多くのエピトープを有するタンパク質に対する免疫原性応答で生成される抗体を含む。したがって、ポリクローナル抗体の組成物(例えば、血清)は、タンパク質内の同じ及び異なるエピトープに指向する様々な異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を生成するための方法は当技術分野で即知である(例えば、Cooper et al.,Section III of Chapter 11:Short Protocols in Molecular Biology,2nd Ed.、Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New York,1992,11-37~11-41頁を参照されたい)。
【0224】
対照的に、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の細胞(またはクローン)の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の生成中に生じ得る想定されるバリアントを除いて、同一であり、及び/または抗原の同じ特定のエピトープと結合し、かかるバリアントは一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。モノクローナル抗体には、詳細には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにかかる抗体の断片が含まれる。
【0225】
「抗体バリアント」という用語は、修飾された抗体(天然または開始抗体に関連して)または構造及び/または機能において天然または開始抗体に類似する生体分子を指し、天然または開始抗体(例えば、抗体模倣物)と比較した場合のアミノ酸配列、組成、または構造のいくつかの差異が含まれる。抗体バリアントは、天然抗体と比較して、そのアミノ酸配列、組成、または構造を改変することができる。抗体バリアントには、限定されないが、改変されたアイソタイプを伴う抗体(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の、またはIgM)、ヒト化バリアント、最適化されたバリアント、多特異的抗体バリアント(例えば、二重特異性的バリアント)、及び抗体断片が含まれる。例えば、S228PのようにSer 228での置換を有する変異型IgG4などの変異型定常鎖領域が企図される。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、抗体融合タンパク質を含むことができる。本明細書で使用される場合、「抗体融合タンパク質」という用語は、同じもしくは異なる特異性を有する、同じまたは異なる天然抗体、一本鎖抗体、あるいは抗体断片セグメントのうちの2つ以上が連結される、組換えにより生成された抗原結合分子である。融合タンパク質の原子価は、融合タンパク質が抗原またはエピトープに対して有する結合アームまたは部位の総数すなわち、一価、二価、三価、または多価を示す。抗体融合タンパク質の多価性は、抗原との結合において複数の相互作用を利用できることを意味し、したがって、抗原との結合の結合力を増強する。特異性は、抗体融合タンパク質が結合可能な異なる抗原またはエピトープの数、すなわち、単一特異的、二重特異的、三重特異的、多重特異的などを示す。これらの定義を使用すると、例えば、IgGなどの天然抗体は、2つの結合アームを有するため二価であるが、1つの抗原と結合するため単一特異的である。単一特異的な多価融合タンパク質は、エピトープに対して1つを超える結合部位を有するが、同じ抗原上の同じエピトープ、例えば、同じ抗原と反応する2つの結合部位を有する二重特異性抗体とのみ結合する。融合タンパク質は、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異的な組み合わせ、または同じ抗体成分の複数コピーを含むことができる。融合タンパク質は、治療剤をさらに含むことができる。かかる融合タンパク質に好適な治療剤の例には、免疫調節剤(「抗体-免疫調節剤融合タンパク質」)及び毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)が含まれる。1つの好ましい毒素は、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組換えRNaseを含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、多重特異性抗体を含むことができる。本明細書で使用される場合、「多重特異性抗体」という用語は、複数のエピトープと結合する抗体を指す。本明細書で使用される場合、「マルチボディ」または「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の可変領域が異なるエピトープと結合する抗体を指す。エピトープは、同じまたは異なる標的上にあり得る。一実施形態では、多重特異性抗体は、PCT公開第WO2011/109726号及び米国特許公開第2015-0252119号に記載される方法によって生成及び最適化することができる。これらの抗体は、高い特異性及び高い親和性を伴って複数の抗原と結合することができる。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、同じまたは異なる抗原上の2つの異なるエピトープと結合することが可能な抗体を指す。一態様では、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原と結合することが可能である。かかる抗体は典型的には、少なくとも2つの異なる抗体からの抗原結合領域を含む。例えば、二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、2つの異なるモノクローナル抗体の断片からなる人工タンパク質であるため、BsAbは2つの異なるタイプの抗原と結合できる。二重特異性抗体は、Riethmuller(2012)Cancer Immun.12:12-18、Marvin et al.(2005)Acta Pharmacol.Sinica 26:649-658,及びSchaefer et al.(2011)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.108:11187-11192に記載されるもののうちのいずれかを含むことができる。「三機能二重特異性」抗体と称される新世代のBsMAbが開発されている。これらは、2つの異なる抗体からそれぞれ1つずつ、2つの重鎖及び2つの軽鎖で構成されており、2つのFab領域(アーム)は2つの抗原に対して指向しており、Fc領域(フット)は2つの重鎖を含み、第3の結合部位を形成する。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される組成物は、抗ペプチド抗体を含むことができる。本明細書で使用される場合、「抗ペプチド抗体」という用語は、それが由来するタンパク質(例えば、本発明に包括される標的タンパク質)のいくつか(好ましくは1つ)の単離されたエピトープに対応する短い(通常は5~20アミノ酸)免疫原性ポリペプチドに対する体液性応答において生成される「単一特異性抗体」を指す。複数の抗ペプチド抗体は、タンパク質の特定の部分、すなわち、少なくとも1つ、好ましくは1つのみのエピトープを含むアミノ酸配列に指向する様々な異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を生成するための方法は当技術分野で即知である(例えば、Cooper et al.,Section III of Chapter 11:Short Protocols in Molecular Biology,2nd Ed.、Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New York,1992,11-42~11-46頁を参照されたい)。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、二重特異性抗体を含むことができる。本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指す。二重特異性抗体は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメインVLに接続された重鎖可変ドメインVHを含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を生成することができる。二重特異性抗体は、例えば、EP 404,097、WO 93/11161、及びHollinger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448にさらに詳述されている。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、細胞内抗体を含むことができる。「細胞内抗体」という用語は、それが生成される細胞から分泌されないが、代わりに1つ以上の細胞内タンパク質を標的とする抗体の形態を指す。細胞内抗体は、抗体の特徴を有するが、目的の細胞内標的と結合及び/または阻害するために細胞内で発現することが可能な、周知の抗原結合分子の一種である(Chen et al.(1994)Human Gene Ther.5:595-601)。抗体を標的(例えば、阻害)細胞内部分に適応するための方法は、一本鎖抗体(scFv)の使用、超安定性のための免疫グロブリンVLドメインの修飾、細胞内環境の減少に抵抗する抗体の修飾、細胞内安定性を高める及び/または細胞内局在を調節する融合タンパク質の生成など当技術分野で周知である。細胞内抗体はまた、例えば予防的及び/または治療的目的のために(例えば、遺伝子療法として)、多細胞生物の1つ以上の細胞、組織、または器官に導入及び発現され得る(例えば、少なくともPCT公開第WO08/020079、同第WO94/02610号、同第WO95/22618号、及び同第WO03/014960号;米国特許第7,004,940号;Cattaneo and Biocca(1997)Intracellular Antibodies:Development and Applications(Landes and Springer-Verlag publs.);Kontermann(2004)Methods 34:163-170;Cohen et al.(1998)Oncogene 17:2445-2456;Auf der Maur et al.(2001)FEBS Lett.508:407-412;Shaki-Loewenstein et al.(2005)J.Immunol.Meth.303:19-39を参照されたい)。
【0231】
細胞内抗体は、細胞内輸送、転写、翻訳、代謝プロセス、増殖シグナル伝達、及び細胞分裂を含むがこれらに限定されない多数の細胞プロセスに影響を与えるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明に包括される方法は、細胞内抗体系療法を含むことができる。いくつかのかかる実施形態では、本明細書に開示される可変ドメイン配列及び/またはCDR配列は、細胞内抗体系療法のための1つ以上の構築物に組み込むことができる。例えば、細胞内抗体は、1つ以上の糖化細胞内タンパク質を標的にすることができるか、または1つ以上の糖化細胞内タンパク質と代替的なタンパク質との間の相互作用を調節することができる。哺乳動物細胞の異なる区画における細胞内抗体の細胞内発現は、内因性分子の機能の遮断または調節を可能にする(Biocca et al.(1990)EMBO J.9:101-108、Colby et al.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:17616-17621)。細胞内抗体は、タンパク質の折り畳み、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-RNA相互作用、及びタンパク質修飾を改変することができる。それらは、表現型ノックアウトを誘導し、標的抗原と直接的に結合することにより、その細胞内輸送を転換させることにより、または結合パートナーとのその会合を阻害することにより、中和剤として働くことができる。細胞内抗体は、標的抗原に対する高い特異性及び親和性を備えているため、特定の標的分子の特定の結合相互作用を遮断し、一方で他のものを温存するという利点を有する。ドナー抗体からの配列を使用して、細胞内抗体を開発できる。細胞内抗体は、多くの場合、単離されたVH及びVLドメインなどの単一ドメイン断片として、または細胞内の一本鎖可変断片(scFv)抗体として組換え発現される。例えば、細胞内抗体は、多くの場合、単一ポリペプチドとして発現され、柔軟なリンカーポリペプチドによって結合された重及び軽鎖の可変ドメインを含む一本鎖抗体を形成する。細胞内抗体は通常、ジスルフィド結合を欠いており、それらの特異的結合活性を介して標的遺伝子の発現または活性を調節することが可能である。一本鎖細胞内抗体は、多くの場合、組換え核酸分子から発現され、細胞内に保持されるように操作される(例えば、細胞質、小胞体、または周辺質内に保持される)。細胞内抗体は、例えば、Marasco et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:7889-7893、Chen et al.(1994)Hum.Gene Ther.5:595-601、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:5932-5936、Maciejewski et al.(1995)Nat.Med.1:667-673、Marasco(1995)Immunotech.1:1-19、Mhashilkar et al.(1995)EMBO J.14:542-1451、Chen et al.(1996)Hum.Gene Therap.7:1515-1525、Marasco(1997)Gene Ther.4:11-15、Rondon and Marasco(1997)Annu.Rev.Microbiol.51:257-283、Cohen et al.(1998)Oncogene 17:2445-2456、Proba et al.(1998)J.Mol.Biol.275:245-253、Cohen et al.(1998)Oncogene 17:2445-2456、Hassanzadeh et al.(1998)FEBS Lett.437:81-86、Richardson et al.(1998)Gene Ther.5:635-644、Ohage and Steipe(1999)J.Mol.Biol.291:1119-1128、Ohage et al.(1999)J.Mol.Biol.291:1129-1134、Wirtz and Steipe(1999)Protein Sci.8:2245-2250、Zhu et al.(1999)J.Immunol.Methods 231:207-222、Arafat et al.(2000)Cancer Gene Ther.7:1250-1256、der Maur et al.(2002)J.Biol.Chem.277:45075-45085、Mhashilkar et al.(2002)Gene Ther.9:307-319、及びWheeler et al.(2003)FASEB J.17:1733-1735)に開示ならびに概説されるものなど、当技術分野で即知である方法を使用して生成することができる。
【0232】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、キメラ抗体を含むことができる。本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である組換え抗体、ならびにかかる抗体の断片を指し、これは、それらが所望される生物活性を呈する限りにおいてである(例えば、米国特許第4,816,567号、Morrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851-6855を参照されたい)。例えば、本明細書において対象となるキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、またはカニクイザル等の旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体を含むことができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、複合抗体である。本明細書で使用される場合、「複合抗体」という用語は、2つ以上の無関係な可変領域からの生殖系列または非生殖系列免疫グロブリン配列を含む可変領域を有する抗体を指す。加えて、「複合、ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列または非生殖系列免疫グロブリン配列に由来する定常領域と、2つ以上の無関係なヒト可変領域からのヒト生殖系列または非生殖系列配列を含む可変領域とを有する抗体を指す。複合、ヒト抗体は、ヒト身体における複合、ヒト抗体の抗原性が低下するため、本発明による治療剤における有効な成分として有用である。
【0234】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、異種抗体を含み得る。「異種抗体」という用語は、そのような抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物ではない生物において見出されるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指し、一般に、トランスジェニック非ヒト動物のもの以外の種からのものである。
【0235】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、ヒト化抗体であり得る。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、1つ以上の非ヒト(例えば、ネズミ)抗体源からの最小部分と、1つ以上のヒト免疫グロブリン源に由来する残りを含むキメラ抗体を指す。ほとんどの部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの抗体からの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の抗体からの超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一実施形態では、抗体は、ヒト化全長抗体であり得る。ヒト化抗体は、タンパク質工学技術を使用して生成することができる(例えば、Gussow and Seemann(1991)Meth.Enzymol.203:99-121)。非限定的な例として、抗体は、米国特許公開第2013/0303399号に教示される方法を使用してヒト化することができる。本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語には、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体も含まれる。
【0236】
本明細書で使用されるヒト化マウスは、機能的なヒト遺伝子、細胞、組織、及び/または器官を担持するマウスである。ヒト化マウスは、ヒト治療薬のための生物学的及び医学的研究において、小動物モデルとして一般的に使用される。この目的には、ヌードマウス及び重症複合免疫不全(SCID)マウスを使用してもよい。NCGマウス、NOGマウス、及びNSGマウスは、他のモデルよりも効率的にヒト細胞及び組織を生着するために使用され得る。かかるヒト化マウスモデルは、健康及び病理のシナリオにおけるヒト免疫系をモデル化するために使用され得、ヒト生理学に関連するインビボ設定における治療候補の評価を可能にし得る。
【0237】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、システイン修飾抗体を含むことができる。「システイン修飾抗体」では、システインアミノ酸が遺伝子操作によって抗体の表面に挿入または置換され、例えば、ジスルフィド架橋を介して抗体を別の分子に結合させるために使用される。抗体のシステイン置換または挿入が記載されている(例えば、米国特許第5,219,996号を参照されたい)。抗体の部位特異的複合で使用するためにIgG抗体の定常領域にシステイン残基を導入する方法は、Stimmel et al.(2000)J.Biol.Chem.275:330445-30450)に記載される。
【0238】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体バリアントは、抗体模倣物であり得る。本明細書で使用される場合、「抗体模倣物」という用語は、抗体の機能または効果を模倣し、それらの分子標的と特異的かつ高い親和性で結合する任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、抗体模倣物は、タンパク質足場としてフィブロネクチンIII型ドメイン(Fn3)を組み込むように設計されたモノボディであり得る(米国特許第6,673,901号及び第6,348,584号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、抗体模倣物は、アフィボディ分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アビマー、Centyrins、DARPINS(商標)、ファイノマー、及びクニッツ、及びドメインペプチドを含むがこれらに限定されない、当技術分野で即知であるもののうちのいずれかを含み得る。他の実施形態では、抗体模倣物は、1つ以上の非ペプチド領域を含むことができる。
【0239】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、単一抗原結合ドメインを含むことができる。これらの分子は非常に小さく、分子量は完全なサイズのmAbで観察される分子量の約10分の1である。さらなる抗体には、軽鎖を欠く、ラクダ及びラマに見られる重鎖抗体の抗原結合可変重鎖領域(VHH)に由来する「ナノボディ」が含まれ得る(例えば、Nelson(2010)Mabs 2:77-83を参照されたい)。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、「小型化」することができる。mAbの小型化の一例としては、小さなモジュラー免疫医薬品(SMIP)がある。一価または二価のこれらの分子は、1つのVL、1つのVH抗原結合ドメイン、及び1つまたは2つの一定の「エフェクター」ドメインを含む組換え一本鎖分子であり、すべてがリンカードメインによって接続されている(例えば、Nelson(2010)Mabs 2:77-83を参照されたい)。かかる分子は、定常ドメインによって与えられる免疫エフェクター機能を保持しながら、断片によって要求される組織または腫瘍浸透の増加という利点を提供すると考えられている。小型化された抗体の別の例は「ユニボディ」と称され、ヒンジ領域がIgG4分子から除去されている。IgG4分子は不安定であり、軽重鎖ヘテロダイマーを相互に交換できるが、ヒンジ領域を欠失すると、重鎖-重鎖対形成が完全に防止され、Fc領域を保持して生体内での安定性及び半減期を確保しながら、非常に特異的な一価の軽鎖/重鎖ヘテロダイマーが残る。IgG4は、FcRとの相互作用が不十分であり、一価のユニボディが細胞内シグナル伝達複合体の形成を促進できないため、この構成は免疫活性化または発癌性増加のリスクを最小限に抑えることができる(例えば、Nelson(2010)Mabs 2:77-83を参照されたい)。
【0241】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体バリアントは、単一ドメイン抗体(sdAb、またはナノボディ)であり得る。本明細書で使用される場合、「sdAb」または「ナノボディ」という用語は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。全抗体と同様に、それは特定の抗原と選択的に結合することが可能である。一態様では、sdAbは、「ラクダIg」または「ラクダ科VHH」であり得る。本明細書で使用される場合、「ラクダIg」という用語は、重鎖抗体の最小の既知の抗原結合単位を指す(Koch-No lte et al(2007)FASEB J.21:3490-3498)。「重鎖抗体」または「ラクダ科抗体」は、2つのVHドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を指す(Hamers-Casterman et al.(1993)Nature363:446-448(1993)、Sheriff et al.(1996)Nat.Struct.Biol.3:733-736、Riechmann et al(1999)J.Immunol.Meth.231:25-38、PCT公開第WO1 994/04678号、及び同第WO1994/025591号、ならびに米国特許第6,005,079号)。別の態様では、sdAbは、「免疫グロブリン新規抗原受容体」(IgNAR)であり得る。「免疫グロブリン新規抗原受容体」という用語は、1つの可変新規抗原受容体(VNAR)ドメイン、及び5つの定常新規抗原受容体(CNAR)ドメインのホモ二量体からなるサメ免疫レパートリーからの抗体のクラスを指す。IgNARは、既知の最小の免疫グロブリン系タンパク質足場のいくつかを表し、非常に安定性であり、効率的な結合特性を保有する。固有の安定性は、(i)ネズミ科抗体に見られる従来の抗体VH及びVLドメインと比較して、かなりの数の荷電及び親水性表面露出残基を提示する、基礎となるIg足場、ならびに(ii)ループ間ジスルフィド架橋、及びループ間水素結合のパターンを含む相補性決定領域(CDR)ループにおける構造的特徴の安定化の両方に起因し得る。他の小型化された抗体断片には、「相補性決定領域ペプチド」または「CDRペプチド」が含まれ得る。CDRペプチド(「最小認識単位」としても即知である)は、単一の相補性決定領域(CDR)に対応するペプチドであり、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって調製され得る。かかる遺伝子は、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するために、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって、調製される(例えば、Larrick et al(1991)Methods Enzymol.2:106を参照されたい)。
【0242】
抗体の抗原結合断片を含む他のバリアントには、これらに限定されないが、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、V、V、ラクダIg、V-NAR、VHH、三重特異的(Fab)、二重特異的(Fab)、トリアボディ(三価)、テトラボディ(四価)、ミニボディ((scFv-CH3))、二重特異的一本鎖Fv(Bis-scFv)、IgGデルタCH2、scFv-Fc、(scFv)-Fc、アフィボディ、ペプチドアプタマー、アビマー、またはナノボディ、または無傷免疫グロブリンの他の抗原結合サブシーケンスが含まれ得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、米国特許第5,091,513号に記載される抗体であり得る。かかる抗体は、生合成抗体結合部位(BABS)として挙動する領域を構成するアミノ酸の1つ以上の配列を含むことができる。これらの部位は、1)非共有結合もしくはジスルフィド結合した合成VH及びVL二量体、2)VH及びVLがポリペプチドリンカーによって結合されるVH-VLもしくはVL-VH単鎖、または3)個々のVHもしくはVLドメインを含む。結合ドメインは、連結されたCDR及びFR領域を含み、これらは別々の免疫グロブリンに由来し得る。生合成抗体はまた、例えば、酵素、毒素、結合部位、または固定化媒体もしくは放射性原子との付着部位として機能する他のポリペプチド配列を含み得る。生合成抗体を産生するための方法、抗体のインビボ生成によって誘発され得る任意の特異性を有するBABSを設計するための方法、及びその類似体を産生するための方法が開示される。
【0244】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、米国特許第8,399,625号に教示される抗体アクセプターフレームワークを有する抗体であり得る。このような抗体アクセプターフレームワークは、目的の抗体からのCDRを受容するのに特に好適であり得る。
【0245】
一実施形態では、抗体は、条件付き活性生物学的タンパク質であり得る。抗体を使用して、野生型の通常の生理学的条件で可逆的または不可逆的に不活性化される条件付き活性生物学的タンパク質、ならびにかかる条件付き活性生物学的タンパク質を生成することができ、かかる条件付き活性生物学的タンパク質の使用が提供される。かかる方法及び条件付き活性タンパク質は、例えば、PCT公開第WO2015/175375号、及び同第WO2016/036916号、ならびに米国特許公開第2014/0378660号に教示される。
【0246】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、治療用抗体である。本明細書で使用される場合、「治療用抗体」という用語は、疾患もしくは障害を有するまたはその素因を有する哺乳動物における、疾患または障害を治療するのに有効な抗体を意味する。抗体は、細胞透過性抗体、中和抗体、アゴニスト抗体、部分アゴニスト、逆アゴニスト、部分アンタゴニスト、またはアンタゴニスト抗体であり得る。
【0247】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、ネイキッド抗体であり得る。本明細書で使用される場合、「ネイキッド抗体」という用語は、毒素または放射性核種と結合するためのキレートとの複合など、さらなる修飾を含まない無傷抗体分子である。ネイキッド抗体のFc部分は、補体結合及びADCC(抗体依存性細胞傷害)などのエフェクター機能を提供し、細胞溶解をもたらすことができるメカニズムを作用させる(例えば、Markrides(1998)Pharmacol.Rev.50:59-87を参照されたい)。
【0248】
抗体は、抗体によって特異的に認識される抗原を細胞外に保有する細胞の枯渇をもたらし得ることは周知である。この枯渇は、抗体媒介性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性溶解、及び抗体が標的とする抗原を介して与えられるシグナルを介した腫瘍成長の直接的な抗腫瘍阻害の少なくとも3つのメカニズムを介して媒介され得る。
【0249】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、補体系の第1の成分が、それらの同族抗原と結合する抗体に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.(1997)に記載されるようなCDCアッセイが実行され得る。
【0250】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)と結合する分泌抗体が、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を有する標的細胞と特異的に結合し、続いて標的細胞を殺傷させることを可能にする、細胞傷害性の形態を指す。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイが実行され得る。当技術分野で周知であるように、Fc部分は、Fc受容体との所望の相互作用またはその欠如をもたらすように操作され得る。
【0251】
Fc受容体は、免疫応答に関与する多くの細胞に見出される。Fc受容体(FcR)は、免疫グロブリンポリペプチド(Ig)のFc部分の細胞表面受容体である。これまでに特定されているヒトFcRの中には、IgG(Fcγ Rと称される)、IgE(FcεR1)、IgA(Fcα)、及び重合IgM/A(FcμαR)を認識するものがある。FcRは、以下の細胞型に見出される:Fcε R I(肥満細胞)、Fcε R.II(多くの白血球)、FcαR(好中球)、及びFcμαR(腺上皮、肝細胞)(Hogg,N.(1988)Immunol.Today 9:185-86)。広く研究されているFcγRは、細胞免疫防御の中心であり、自己免疫疾患の病因に関与する炎症及び加水分解酵素の媒介物の放出を刺激する役割を担っている(Unkeless,J.C.et al.(1988)Annu.Rev.Immunol.6:251-81)。FcγRは、マクロファージ/単球、多形核白血球、及びナチュラルキラー(NK)細胞FcγRが、IgGによって媒介される特異的認識の要素を付与するため、エフェクター細胞と、Igを分泌するリンパ球との間に重要な連結を提供する。ヒト白血球は、IgGに対する少なくとも3つの異なる受容体:hFcγ RI(単球/マクロファージで見出される)、hFcγ RII(単球、好中球、好酸球、血小板、場合によってはB細胞、及びK562細胞株)、及びFcγ III(NK細胞、好中球、好酸球、及びマクロファージ)を有する。
【0252】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される抗体は、当技術分野で周知である方法による検出の目的で、1つ以上の検出可能な標識と複合することができる。標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、または酵素補因子、または当技術分野で即知である他の任意の標識であり得る。いくつかの実施形態では、所望の標的と結合する抗体(本明細書では「一次抗体」とも称される)は、標識されていないが、一次抗体と特異的に結合する二次抗体(本明細書では「二次抗体」と称される)の結合によって検出することができる。かかる方法によれば、二次抗体は、検出可能な標識を含むことができる。
【0253】
いくつかの実施形態では、抗体と付着することができる酵素には、これらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、及びグルコースオキシダーゼ(GOx)が含まれ得る。蛍光化合物は、これらに限定されないが、臭化エチジウム。フルオレセイン及びその誘導体(例えば、FITC)、シアニン及びその誘導体(例えば、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、及びメロシアニン)、ローダミン、オレゴングリーン、エオシン、テキサスレッド、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン、アロフィコシアニン(APC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びそのバリアント(例えば、黄色蛍光タンパク質YFP、青色蛍光タンパク質BFP、及びシアン蛍光タンパク質CFP)、ALEXIFLOUR(登録商標)化合物(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)、ならびに量子ドットを含むことができる。抗体を標識するために使用できる他の複合体には、ビオチン、アビジン、及びストレプトアビジンが含まれる。
【0254】
例えば、本発明に包括される抗体または他のタンパク質と異種剤との複合は、N-スクシンイミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6ジイソシアネートなど)、及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)を含むが、これらに限定されない、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製することができる。例えば、炭素標識された1-イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体に結合させるための例示的なキレート剤である(WO94/11026)。
【0255】
別の態様では、本発明は、細胞毒素、薬物、及び/または放射性同位体などの治療部分と複合された、目的のバイオマーカーと特異的に結合する抗体を特徴とする。細胞毒素と複合される場合、これらの抗体複合体は、「免疫毒素」と称される。細胞傷害性または細胞傷害性剤は、細胞に有害である(例えば、殺傷する)任意の薬剤を含む。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、及びそれらの類似体または同族体が含まれる。治療剤には、抗代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン))、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれるが、これらに限定されない。本発明により包含される抗体は、放射性同位体、例えば、放射性ヨウ素と複合化されて、がんなどの関連する障害を治療するための細胞傷害性放射性医薬品を生成し得る。
【0256】
複合抗バイオマーカー抗体は、臨床試験手順の一部として、例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するため、または免疫療法に応答する可能性が最も高い患者を選択するために、組織内のポリペプチドレベルをモニタリングするために診断的または予後的に使用され得る。例えば、細胞をフローサイトメトリーアッセイで透過処理して、目的のバイオマーカーと結合する抗体がその認識された細胞内エピトープを標的とし、結合分子から発するシグナルを分析することによって結合を検出できるようにすることができる。検出は、抗体を検出可能な物質と共役させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって促進され得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が含まれる。好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む好適な補欠分子族の複合体の例;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリン(PE)を含む好適な蛍光物質の例;ルミノールを含む発光物質の例;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを含む生物発光物質の例、ならびに125I、131I、35S、またはHを含む放射性物質の例が含まれる。本明細書で使用される場合、抗体に関して「標識される」という用語は、放射性剤またはフルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))などの検出可能な物質を抗体と共役(すなわち、物理的に連結)することによる抗体の直接標識、ならびに検出可能な物質との反応性による抗体の間接的標識を包含することが意図される。
【0257】
本発明に包括される抗体複合体は、所与の生物学的応答を修飾するために使用され得る。治療部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものと解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、Pseudomonas外毒素、もしくはジフテリア毒素などの酵素活性毒素、またはその活性断片;あるいは例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、または他のサイトカインもしくは成長因子などの生物学的応答修飾因子が含まれる。
【0258】
かかる治療用部分を抗体に複合するための技術は、周知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld et al.(eds.),pp.243 56(Alan R.Liss,Inc.1985)、Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,Controlled Drug Delivery(2nd Ed.)、Robinson et al.(eds.),pp.623 53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pinchera et al.(eds.),pp.475 506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin et al.(eds.),pp.303 16(Academic Press 1985)、及びThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119 58(1982)を参照されたい。
【0259】
いくつかの実施形態では、複合体は、細胞における細胞傷害性剤または成長阻害剤の放出を促進する「切断可能なリンカー」を使用して作製することができる。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(例えば、米国特許第5,208,020号を参照されたい)が使用され得る。代替的に、抗体及び細胞傷害性剤または成長阻害剤を含む融合タンパク質は、組換え技術またはペプチド合成によって作製され得る。DNAの長さは、複合体の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって、互いに隣接するか、または分離された複合体の2つの部分をコードするそれぞれの領域を含み得る。
【0260】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗体薬物複合体(ADC)剤を包含する。ADCは、抗体と別の成分との複合体であり、その結果、薬剤は、抗体によって付与される標的化能力及び成分によって付与される追加の効果を有する。例えば、細胞傷害性剤は、疾患の進行(例えば、腫瘍の進行)に寄与する目的の細胞に薬物を標的化し、内在化すると、その毒性ペイロードを細胞に放出する抗体またはその抗原結合断片に係留することができる。上記のように、複合部分に基づいて異なる効果が達成される。
【0261】
いくつかの実施形態では、さらなる修飾及び変化は、抗体(及びその抗原結合断片)の構造、ならびにそれらをコードするDNA配列において行われ、依然として所望の特徴を有する抗体及びポリペプチドをコードする機能分子を得ることができる。例えば、特定のアミノ酸は、かなりの活性の損失なしに、タンパク質構造中の他のアミノ酸によって置換され得る。タンパク質の相互作用能及び性質は、タンパク質の生物学的機能活性を決定するため、特定のアミノ酸置換は、タンパク質配列、及びもちろん、そのDNAコード配列において行われ、それにもかかわらず、同様の性質を有するタンパク質を得ることができる。したがって、様々な変化が、本発明の抗体配列、または該ポリペプチドをコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的活性のかなりの損失なしに行われ得ることが企図される。
【0262】
一実施形態では、アミノ酸の変化は、遺伝コードの保存に基づいて保存的置換をコードするようにDNA配列中のコドンを変化させることによって達成され得る。詳細には、遺伝コード(以下に示す)で定義されているように、特定のタンパク質のアミノ酸配列と、タンパク質をコードできるヌクレオチド配列との間には、既知の明確な対応関係が存在する。同様に、遺伝暗号によって定義されるように、特定の核酸のヌクレオチド配列と、その核酸によってコードされるアミノ酸配列との間には、既知の明確な対応関係が存在する(上記の遺伝コードチャートを参照されたい)。
【0263】
上述のように、遺伝コードの重要及び周知の特徴は、その冗長性であり、これにより、タンパク質の作製に使用されるほとんどのアミノ酸に対して、1つを超えるコード化ヌクレオチドトリプレットを使用できる(上に示す)。したがって、いくつかの異なるヌクレオチド配列は、所与のアミノ酸配列をコードすることができる。かかるヌクレオチド配列は、すべての生物で同じアミノ酸配列の生成が生じるため、機能的に同等であると見なされる(ただし、特定の生物は他の生物よりも効率的に一部の配列を翻訳できる)。さらに、時折、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントが所与のヌクレオチド配列内に見出され得る。かかるメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸との間のコード化関係に影響を与えない。
【0264】
ポリペプチドのアミノ配列の変化を行う際には、アミノ酸の疎水性親水性指標指数を考慮してもよい。タンパク質に相互作用性生物学的機能を付与する際の疎水性親水性指標アミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般的に理解されている。アミノ酸の相対的な疎水性親水性指標特性は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することが許容される。各アミノ酸は、それらの疎水性及び電荷特性に基づいて、疎水性親水性指標指数を割り当てられており、これらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタメート(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラート(<RTI 3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、及びアルギニン(-4.5)である。
【0265】
特定のアミノ酸が、類似の疎水性親水性指標指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換されてもよく、依然として類似の生物学的活性を有するタンパク質をもたらす、すなわち、依然として生物学的機能的に等価なタンパク質を得ることが当技術分野で即知である。
【0266】
したがって、上で概説したように、アミノ酸置換は、概して、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、アルギニン及びリジン;グルタメート及びアスパラート;セリン及びスレオニン;グルタミン及びアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン及びイソロイシンを含む。
【0267】
本発明の抗体の別の種類のアミノ酸修飾は、例えば、安定性を増加させるために、抗体の元のグリコシル化パターンを改変するのに有用であり得る。「改変する」とは、抗体内に見出される1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、及び/または抗体内に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を添加することを意味する。抗体のグリコシル化は、通常、N結合である。「N結合」とは、炭水化物部分がアスパラギン残基の側鎖に結合することを指す。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるトリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンは、炭水化物部分のアスパラギン側鎖との酵素結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作製する。抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含むように(N結合グリコシル化部位のために)変化させることによって好都合に達成される。別の種類の共有結合修飾は、グリコシドを抗体に化学的または酵素的に結合することを伴う。これらの手順は、NまたはO結合グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としないという点で有利である。使用される共役様式に応じて、糖(複数可)は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、オルヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基と結合され得る。例えば、かかる方法は、WO87/05330に記載される。
【0268】
同様に、抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、抗体を化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または同等の化合物に曝露することを必要とする。この処理は、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたはすべての糖の切断をもたらし、一方で抗体をそのままにする。化学的脱グリコシル化は、Sojahr H.et al.(1987)及びEdge,A S.et al.(1981)に記載される。抗体上の炭水化物部分の酵素切断は、Thotakura,N R.et al.(1987)に記載される様々なエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0269】
他の修飾は、免疫複合体の形成を伴い得る。例えば、あるタイプの共有結合修飾において、抗体またはタンパク質は、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、または同第4,179,337号に記載されている様式で、様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンの1つに共有結合することができる。
【0270】
b.抗体工学
上記のように、Fab及びscFvなどの抗体ならびに抗体断片を産生するために使用することができる技術は、当技術分野で周知であり、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号、Miersch et al.(2012)Methods 57:486-498、Chao et al.(2006)Nat.Protoc.1:755-768)、Huston et al.(1991)Methods Enzymol.203:46-88、Shu et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:7995-7999、及びSkerra et al.(1988)Science240:1038-1041)に記載されるものを含む。
【0271】
標的抗原特異的抗体の単離または選択後、抗体配列は、かかる抗体の組換え産生及び/または最適化に使用することができる。ディスプレイライブラリから抗体断片を単離する場合、例えば、以下で詳細に記載されるように、単離された断片からのコーディング領域を使用して、ヒト抗体または他の任意の所望の標的結合断片を含む抗体全体を生成し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。必要に応じて、IgG抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)を合成して、本明細書に記載される方法に従って生成または選択された可変ドメイン断片からさらなる試験及び/または生成物開発を行うことができる。かかる抗体は、IgG産生に好適な発現ベクターに所望のアミノ酸配列をコードするcDNAのうちの1つ以上のセグメントを挿入することによって産生することができる。発現ベクターは、哺乳動物細胞におけるIgG発現に好適な哺乳動物発現ベクターを含むことができる。IgGの哺乳動物発現は、産生された抗体が、哺乳動物タンパク質に特徴的な修飾(例えば、グリコシル化)を含むことを確実にするため、及び/または抗体調製物が、細菌発現系からのタンパク質調製物に存在し得るエンドトキシン及び/または他の汚染物質を欠くことを確実にするために実施され得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、親和性成熟が実行される。「親和性成熟」という用語は、変異の連続的なラウンド及び抗体または抗体断片をコードするcDNA配列の選択を通じて、所定の標的に対する親和性を増強させて抗体を産生する方法を指す。いくつかの事例では、このプロセスは、インビトロで実行される。これを達成するために、可変ドメイン配列(いくつかの事例ではCDRコード配列に限定される)の増幅は、エラープローンPCRを使用して実行すると、点変異、局所変異、挿入変異、及び欠失変異を含むがこれらに限定されない変異を含む数百万のコピーを生成することができる。本明細書で使用される場合、「点変異」という用語は、ヌクレオチド配列内の1つのヌクレオチドが異なるヌクレオチドに変更される核酸変異を指す。本明細書で使用される場合、「局所変異」という用語は、2つ以上の連続するヌクレオチドが異なるヌクレオチドに変更される核酸変異を指す。本明細書で使用される場合、「挿入変異」という用語は、1つ以上のヌクレオチドがヌクレオチド配列に挿入される核酸変異を指す。本明細書で使用される場合、「欠失突然変異」という用語は、1つ以上のヌクレオチドがヌクレオチド配列から除去される核酸変異を指す。挿入または欠失変異には、開始コドンの1つまたは2つのヌクレオチドを改変することによる、コドン全体の完全な置換、または1つのコドンから別のコドンへの変更が含まれる。
【0273】
変異誘発は、CDRをコードするcDNA配列に対して実行され、重鎖及び軽鎖のCDR領域に特異な変異を有する数百万の変異体を作製することができる。別のアプローチでは、ランダムな変異は、親和性を向上する可能性が最も高いCDR残基にのみ導入される。これらの新しく生成された変異原性ライブラリは、標的ペプチドに対してさらに高い親和性を有する抗体断片をコードするクローンをスクリーニングするプロセスを繰り返して使用することができる。変異及び選択の継続的なラウンドは、徐々に高い親和性を有するクローンの合成を促進する(例えば、Chao et al.(2006)Nat.Protoc.1:755-768を参照されたい)。
【0274】
親和性成熟クローンは、結合アッセイ(例えば、FACS、ELISA、表面プラズモン共鳴など)によって決定される親和性に基づいて選択することができる。次に、選択したクローンをIgGに変換し、親和性及び機能的活性についてさらに試験され得る。いくつかの事例では、親和性最適化の目標は、元の抗体の親和性と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、もしくは少なくとも1,000倍、またはそれ以上で親和性を増強させることである。最適化された親和性が所望するよりも低い場合は、このプロセスを繰り返すことができる。
【0275】
いくつかの実施形態では、キメラ及び/またはヒト化抗体を生成することが有用である。例えば、ヒトにおける抗体のインビボ使用及びインビトロ検出アッセイを含むいくつかの用途について、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体は、マウスモノクローナル免疫グロブリン及びヒト免疫グロブリン定常領域に由来する可変領域を有する抗体など、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を生成する方法は、当技術分野で既知である(例えば、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Gillies et al.(1989)J.Immunol.Meth.125:191-202、ならびに米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、及び同第4,816,397号を参照されたい)。
【0276】
ヒト化抗体は、所望の標的と結合し、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種からの抗体分子である。多くの場合、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、ドナー抗体のCDR及びフレームワーク領域からの対応する残基で置換され、標的結合を改変、好ましくは向上させる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法、例えば、CDR及びフレームワーク残基の相互作用をモデル化して標的結合に重要なフレームワーク残基を同定すること、ならびに配列比較によって特定の位置にある異常なフレームワーク残基を同定することによって同定される(例えば、米国特許第5,693,762号、及び同第5,585,089号、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327を参照されたい)。
【0277】
抗体は、例えば、CDRのグラフト化(例えば、EP特許公開第239,400号、PCT公開第WO91/09967号、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号)、ベニアリングまたは再表面化(例えば、EP特許公開第592,106号、EP特許公開第519,596号、Padlan(1991)Mol.Immunol.28:489-498、Studnicka et al.(1994)Protein Eng.7:805-814、Roguska et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:969-973)、及び鎖組換え(例えば、米国特許第5,565,332号を参照されたい)を含む、当技術分野で即知である様々な技術を使用してヒト化することができる。
【0278】
完全なヒト抗体は、外来タンパク質に対する免疫反応を回避または軽減するために、ヒト患者の治療的療法に特に所望される。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリを使用して、上記の抗体ディスプレイ法を含む当技術分野で即知である様々な方法によって作製することができる(例えば、米国特許第4,444,887、及び同第4,716,111号、ならびにPCT公開第WO98/46645号、同第WO98/50433号、同第WO98/24893号、同第WO98/16654号、同第WO96/34096号、同第WO96/33735号、同第WO91/10741号を参照されたい)。ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリンポリヌクレオチドを発現することができるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる。例えば、ヒト重及び軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチド複合体は、ランダムに、または相同組換えによって、マウス胚性幹細胞に導入することができる。代替的に、ヒト重及び軽鎖ポリヌクレオチドに加えて、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域は、マウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重及び軽鎖免疫グロブリンポリヌクレオチドは、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別にまたは同時に非機能性となり得る。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生を防ぐ。修飾された胚性幹細胞は、増殖され、胚盤胞にマイクロインジェクションされて、キメラマウスを産生する。次に、キメラマウスは、育種して、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産生する。トランスジェニックマウスは、選択された免疫原(例えば、標的抗原)で通常の方法で免疫化される。かかる技術を使用して、有用なヒトIgG、IgA、IgM、IgD、及びIgE抗体を産生することが可能である。上記に示したように、ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するための方法、ならびにかかる抗体を産生するためのプロトコルは、当技術分野で周知である(例えば、PCT公開第WO98/24893号、同第WO92/01047号、同第WO96/34096号、及び同第WO96/33735号、ならびに米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、同第5,885,793号、同第5,916,771号、同第5,939,598号、同第6,075,181号、及び同第6,114,598号も参照されたい)。
【0279】
本発明に包括される抗体分子が動物、細胞株によって産生され、化学的に合成されるか、または組換え発現されると、それは、免疫グロブリンまたはポリペプチド分子の精製のための当技術分野で即知である任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、特に特定の標的に対する親和性、プロテインA、及びサイズ排除クロマトグラフィによる)、遠心分離、溶解度差によって、またはタンパク質の精製のための他の標準的な技術によって精製する(すなわち、単離される)ことができる。さらに、本発明に包括される抗体またはその断片は、精製を容易にするために、本明細書に記載の、または当技術分野で即知である異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0280】
本発明によれば、抗原と特異的に結合する抗体は、溶液中に存在するか、または基質に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、セルロースナノビーズと結合され、検出デバイスの基板の1つ以上の検出領域に拘束される。
【0281】
c.抗体生成
本発明に包括される抗体、及びその抗原結合断片は、天然に存在するか、あるいは従来のハイブリドーマ技術、組換え技術、既知の抗体の変異または最適化、抗体ライブラリまたは抗体断片ライブラリからの選択、及び免疫化によって産生されるモノクローナル抗体(mAb)などの当技術分野で即知である任意の方法を介して人工的に作製することもできる。モノクローナルまたはポリクローナルであるかに関係なく、抗体の生成は当技術分野において周知である。抗体を産生するための技術は当技術分野で周知であり、例えば、Harlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988、Harlow and Lane“Using Antibodies:A Laboratory Manual”Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999、及び“Therapeutic Antibody Engineering:Current and Future Advances Driving the Strongest Growth Area in the Pharmaceutical Industry”Woodhead Publishing,2012に記載される。
【0282】
本明細書に記載される抗体、ならびにそのバリアント及び/または断片は、組換えポリヌクレオチドを使用して生成することができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗体、断片、またはそのバリアントのうちの少なくとも1つをコードするためのモジュラー設計を有する。非限定的な例として、ポリヌクレオチド構築物は、(1)抗体の重鎖、(2)抗体の軽鎖、(3)抗体の重及び軽鎖、(4)リンカーによって分離された重鎖及び軽鎖、(5)VH1、CH1、CH2、CH3ドメイン、リンカー、及び軽鎖、または(6)VH1、CH1、CH2、CH3ドメイン、VL領域、及び軽鎖の設計のうちのいずれかをコードすることができる。これらの設計のいずれも、任意のドメイン及び/または領域間の任意なリンカーを含むことができる。本発明に包括されるポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗体またはその構成要素のいずれかを開始分子として使用して、任意の標準的なクラスの免疫グロブリンを産生するように操作することができる。
【0283】
抗体開発の方法は、典型的には、抗体の親和性及び/または特異性の選択、免疫化、及び/または確認のための標的分子の使用に依存する。いくつかの実施形態では、抗体は、当業者に周知である十分に確立された方法を使用して、免疫学的応答を誘発するための免疫原として作用する1つ以上の標的抗原による宿主の免疫化を通じて調製され得る。
【0284】
d.抗体の特徴付け及び有効性
本発明に包括される抗体、及びその抗体結合断片は、構造、アイソタイプ、結合(例えば、親和性及び特異性)、複合、グリコシル化、及び他の識別する特徴からなる群から選択される1つ以上の特徴によって特徴付けすることができる。
【0285】
本発明に包括されるかかる抗体は、トリ及び哺乳動物を含む任意の動物起源のものであり得る。好ましくは、かかる抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウス及びラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ起源のものである。本発明に包括される抗体は、単一特異性または多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、本発明に包括されるペプチドの異なるエピトープと特異的であり得るか、または本発明に包括されるペプチド、及び異種ペプチドまたは固体支持体物質などの異種エピトープの両方と特異的であり得る(例えば、PCT公開第WO93/17715号、同第WO92/08802号、同第WO91/00360号、及び同第WO92/05793号、Tutt et al.(1991)J.Immunol.147:60-69、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、及び同第5,601,819号、ならびにKostelny et al.(1992)J.Immunol.148:1547-1553を参照されたい)。例えば、抗体は、本発明に包括されるペプチド配列の反復単位を含むペプチドに対して産生され得るか、または本発明に包括される2つ以上のペプチド配列を含むペプチド、またはそれらの組み合わせに対して産生され得る。非限定的な例として、肥満細胞と結合したIgE抗体との抗原の結合を競合的に阻害し、それによって肥満細胞の脱顆粒を阻害するヘテロ二価リガンド(HBL)システムが設計されている(Handlogten et al.(2011)Chem.Biol.18:1179-1188)。
【0286】
抗体の特徴は、インビトロまたはインビボのいずれかで、正常な生理学的条件下で標準に対して決定することができる。測定は、抗体の存在または欠如に関連して実行され得る。かかる測定する方法には、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、活性アッセイ、レポーターアッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アレイ、遺伝子アレイ、リアルタイム逆転写酵素(RT)PCRなど、血清もしくは血液などの組織または体液における標準的な測定が含まれる。
【0287】
抗体は、標的タンパク質上またはそれに沿った任意の数の位置と結合または相互作用することができる。企図される抗体標的部位は、標的タンパク質上の任意及びすべての可能な部位を含む。抗体は、特定の標的上の1つ以上のエピトープ(可逆的または不可逆的に)と結合するその能力について選択することができる。標的上のエピトープには、これらに限定されないが、1つ以上の特徴、領域、ドメイン、化学基、官能基、または部分が含まれる。かかるエピトープは、1つ以上の原子、原子のグループ、原子構造、分子構造、環状構造、疎水性構造、親水性構造、糖、脂質、アミノ酸、ペプチド、糖ペプチド、核酸分子、または任意の他の抗原構造から構成することができる。
【0288】
エピトープマッピングの方法は当技術分野で周知であり、構造的、機能的、及び計算的方法を含むが、これらに限定されない。X線結晶学は、既知の構造的アプローチであり、結合抗体-抗原対の結晶構造は、抗原のエピトープ及び抗体のパラトープの両方における、側鎖及び主鎖原子の両方からの個々のアミノ酸間の重要な相互作用の非常に正確な決定を可能にする。互いに4オングストローム以内にあるアミノ酸は、一般に、接触残基であると考えられる。方法論は、典型的には、抗体及び抗原の精製、複合体の形成及び精製、次いで連続したラウンドの結晶化スクリーニング及び最適化を伴い、回折品質の結晶を得る。構造解は、シンクロトロン源での頻繁なX線結晶学の後に得られる。エピトープマッピングのための他の構造的方法には、これらに限定されないが、質量分析に共役した水素-重水素交換、架橋結合質量分析、及び核磁気共鳴(NMR)が含まれる(Epitope Mapping Protocols Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)、Abbott et al.(2014)Immunol.142:526-535)。
【0289】
エピトープマッピングのための機能的方法はまた、当技術分野で周知であり、典型的には、全タンパク質、タンパク質断片、またはペプチドへの抗体結合の評価または定量化を伴う。エピトープマッピングのための機能的方法は、例えば、線形または立体構造のエピトープを同定するために使用されてもよく、及び/または2つ以上の異なる抗体が同じまたは類似のエピトープに結合するときに推論するために使用されてもよい。エピトープマッピングのための機能的方法には、例えば、免疫ブロッティング及び免疫沈降アッセイが含まれ、目的のバイオマーカーからの重複または連続ペプチドは、本明細書に記載されるものなどの抗バイオマーカー抗体との反応性について試験される。エピトープマッピングのための他の機能的方法には、アレイ系オリゴペプチド走査(代替的に「重複ペプチド走査」または「ペプスカン分析」として知られる)、部位特異的変異誘発(例えば、アラニンスキャニング変異誘発)、及びハイスループット変異誘発マッピング(例えば、ショットガン変異誘発マッピング)が含まれる。
【0290】
複数の種類の競合結合アッセイが知られており、以下の非限定的な例:固相直接または間接ラジオ免疫測定法(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al.(1983)Meth.Enzymol.9:242)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.(1986)J.Immunol.137:3614)、固相直接標識アッセイまたは固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988))、I125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al.(1988)Mol.Immunol.25:7)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.(1990)Virol.176:546)、及び直接標識RIA(Moldenhauer et al.(1990)Scand.J.Immunol.32:77)が含まれる。典型的には、かかるアッセイは、固体表面または細胞に結合した精製抗原、ならびに1)非標識試験抗原結合タンパク質及び標識基準抗原結合タンパク質、または2)標識試験抗原結合タンパク質及び非標識基準抗原結合タンパク質のいずれかの使用を伴う。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定された抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)は、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープと結合する抗原結合タンパク質と、立体障害が生じるために参照抗原結合タンパク質によって結合されるエピトープに十分に近接する隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質とを含む。競合的結合を決定するための方法に関するさらなる詳細が、本明細書の実施例に提供される。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰(例えば、約1倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、または約100倍過剰)に存在する場合、それは、参照抗原結合タンパク質の共通抗原との特異的結合を少なくとも約40~45%、約45~50%、約50~55%、約55~60%、約60~65%、約65~70%、約70~75%、もしくは約75%以上阻害または遮断する。いくつかの事例では、結合は少なくとも約80~85%、約85~90%、約90~95%、約95~97%、または約97%以上阻害される。
【0291】
抗体、その抗原結合断片、細胞など、本明細書に記載される薬剤の効果は、特に実施例を考慮して、当業者に周知の試薬、方法、及びアッセイを使用して評価され得る。いくつかの実施形態では、対照は、上記定義に記載されているものなどの比較のために使用される。例えば、アッセイは、細胞または基質上などのバイオマーカー標的を目的の薬剤と接触させること、所望の測定値(例えば、量、活性、サイトカイン産生、細胞増殖、細胞死など)を決定すること、及び測定値を参照または対照からの測定値、例えば、目的の抗原と特異的に結合しない対照抗体またはその抗原結合断片などの対照薬剤との接触から生じる測定値と比較することを含み得る。任意の既知の測定値またはアッセイ、特に、従来のサイトカイン産生決定アッセイ、細胞活性化アッセイ、細胞増殖アッセイ、細胞死アッセイ、細胞遊走アッセイ、細胞シグナル伝達アッセイなどのような、実施例に提示される測定値またはアッセイが使用され得る。
【0292】
また、上記の定義で記載したように、所望の測定値の「有意な」変調は、特定の数値(例えば、パーセンテージ)を上回る、特定の数値(例えば、パーセンテージ)を下回る、または特定の数値範囲(例えば、パーセンテージ範囲)内であるなど、数値的に定量化され得る。定量的測定の代表的な非限定的な例には、親和性(K)、k、k、バイオマーカー発現のパーセンテージの増加または減少、細胞のパーセンテージの増加または減少(例えば、所望の細胞、非所望の細胞、所望の細胞対非所望の細胞の比率、所望の細胞対総細胞の比率、非所望の細胞対総細胞の比率など、ある時点で、または異なる時点で比較など)が含まれる。
【0293】
V.宿主細胞を含む、核酸、ベクター、及び細胞
本発明のさらなる目的は、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片(及びその断片)、ならびに宿主細胞を含むポリペプチド、ベクター、及び細胞をコードする核酸配列に関する。
【0294】
a.核酸薬剤
本発明に包括される一態様は、核酸分子の使用を伴う。核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)分子(例えば、cDNA、ゲノムDNAなど)、リボ核酸(RNA)分子(例えば、mRNA、長鎖ノンコーディングRNA、低分子RNA種など)、DNA/RNAハイブリッド、及びヌクレオチド類似体を使用して生成されるDNAまたはRNAの類似体であり得る。RNA剤には、RNAi(RNA干渉)剤(例えば、低分子干渉RNA(siRNA))、一本鎖RNA(ssRNA)分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)、または二本鎖RNA(dsRNA)分子が含まれ得る。dsRNA分子は、第1の鎖及び第2の鎖を含み、第2の鎖は、第1の鎖と実質的に相補的であり、第1の鎖及び第2の鎖は、少なくとも1つの二本鎖二重領域を形成する。dsRNA分子は、平滑末端であるか、または少なくとも1つの末端オーバーハングを有することができる。標的核酸配列と結合する薬剤として使用される場合、本発明により包含される核酸薬剤は、ゲノム配列及び/またはmRNA配列などの標的配列の任意の領域とハイブリダイズでき、例えば、これらに限定されないが、エンハンサー領域、プロモーター領域、転写開始及び/または停止領域、スプライス部位、コード領域、3’非翻訳領域(3’-UTR)、5’非翻訳領域(5’-UTR)、5’キャップ、3’ポリアデニリルテイル、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0295】
「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。好ましくは、「単離された」核酸分子は、核酸が由来する生物のゲノムDNA中の核酸(すなわち、核酸の5’及び3’末端に位置する配列)に天然に隣接する配列(好ましくは、タンパク質コード配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、単離された核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA中の核酸分子に天然に隣接する、約5kB、4kB、3kB、2kB、1kB、0.5kB、または0.1kBのヌクレオチド配列を含有し得る。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技術によって生産される場合、他の細胞性物質もしくは培地を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合、化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含み得ない。
【0296】
本発明により包含される核酸分子は、標準的な分子生物学技術及び本明細書に記載されるデータベース記録内の配列情報を使用して単離することができる。かかる核酸配列のすべてまたは一部を使用して、本発明に包括される核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーション及びクローニング技術を使用して単離することができる(例えば、Sambrook et al.,ed.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2012に記載される)。
【0297】
本発明により包含される核酸分子は、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAを鋳型として使用し、標準的なPCR増幅技術に従って適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。そのように増幅された核酸分子は、適切なベクターにクローン化され、DNA配列分析によって特徴付けられ得る。さらに、本発明により包含される核酸分子のすべてまたは一部に対応する核酸分子は、例えば、自動化された核酸シンセサイザーを使用する、標準的な合成技術によって調製することができる。代替的に、核酸分子は、核酸がサブクローン化されている発現ベクターを使用して生物学的に生成され得る。例えば、アンチセンス核酸分子は、アンチセンス配向でクローン化することができる(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、以下でさらに記載されるように、目的の標的核酸に対してアンチセンス配向である)。
【0298】
また、本発明により包含される核酸分子は、核酸配列の一部のみを含むことができ、全長核酸配列は、本発明により包含されるマーカー、または本発明により包含されるマーカーに対応するポリペプチドをコードするマーカーを含む。かかる核酸分子は、例えば、プライマーまたはプローブとして使用され得る。プローブ/プライマーは通常、1つ以上の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。オリゴヌクレオチドは、典型的には、ストリンジェントな条件下で、バイオマーカー核酸配列の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、もしくは400、またはそれ以上の連続したヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。バイオマーカー核酸分子の配列に基づくプローブを使用して、本発明により包含される1つ以上のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。プローブは、それに付着した標識基、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含む。
【0299】
遺伝コードの縮重のために、バイオマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸分子のヌクレオチド配列とは異なり、したがって同じタンパク質をコードするバイオマーカー核酸分子もまた企図される。
【0300】
さらに、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることは、当業者によって理解されるであろう。かかる遺伝的多型は、自然の対立遺伝子変動により、集団内の個体間に存在し得る。対立遺伝子は、所定の遺伝子座で交互に発生する遺伝子の群の1つである。さらに、その遺伝子の全体的な発現レベルに影響を与え得る、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在し得ることが理解されよう(例えば、制御または分解に影響を与えることによって)。
【0301】
本明細書で「対立遺伝子バリアント」と互換的に使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子またはその一部の代替形態を指す。対立遺伝子は、相同染色体上の同じ遺伝子座または位置を占める。対象が遺伝子の2つの同一対立遺伝子を有する場合、対象は、その遺伝子または対立遺伝子についてホモ接合性であると言われる。対象が遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を有する場合、対象は、その遺伝子または対立遺伝子についてヘテロ接合であると言われる。例えば、バイオマーカー対立遺伝子は、単一のヌクレオチドまたはいくつかのヌクレオチドにおいて互いに異なり得、ヌクレオチドの置換、欠失、及び挿入を含み得る。遺伝子の対立遺伝子はまた、1つ以上の変異を含む遺伝子の形態であり得る。
【0302】
本明細書で互換的に使用される「遺伝子の多型領域の対立遺伝子バリアント」または「対立遺伝子バリアント」という用語は、集団内の遺伝子のその領域に見られるいくつかの可能なヌクレオチド配列のうちの1つを有する遺伝子の代替形態を指す。本明細書で使用される場合、対立遺伝子バリアントは、機能的対立遺伝子バリアント、非機能的対立遺伝子バリアント、SNP、変異、及び多型を包含することを意味する。
【0303】
「一塩基多型」(SNP)という用語は、対立遺伝子配列間の変動部位である一塩基が占める多型部位を指す。この部分は、通常、その対立遺伝子の高度に保存された配列(例えば、集団の1/100または1/1000メンバー未満で異なる配列)により先行及び後続される。SNPは通常、多型部位で1つのヌクレオチドが別のものに置換されるために発生する。SNPは、参照対立遺伝子に対するヌクレオチドの欠失またはヌクレオチドの挿入からも発生し得る。通常、多型部位は、参照塩基以外の塩基によって占められる。例えば、参照対立遺伝子が多型部位に塩基「T」(チミジン)を含む場合、改変された対立遺伝子は、多型部位に「C」(シチジン)、「G」(グアニン)、または「A」(アデニン)を含むことができる。SNPは、タンパク質をコードする核酸配列で発生することができ、その場合、それらは欠損、あるいはバリアントタンパク質、または遺伝的疾患を生じさせ得る。かかるSNPは遺伝子のコード配列を改変させ得、別のアミノ酸を指定するか(「ミスセンス」SNP)、またはSNPが終止コドンを導入し得る(「ナンセンス」SNP)。SNPがタンパク質のアミノ酸配列を改変しない場合、SNPは「サイレント」と称される。SNPは、ヌクレオチド配列の非コード領域でも生じ得る。これは、例えば、代替的なスプライシングの結果として、欠陥のあるタンパク質発現をもたらし得るか、またはそれはタンパク質の機能に影響を及ぼし得ない。
【0304】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」及び「組換え遺伝子」という用語は、本発明により包含されるマーカーに対応するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。かかる自然対立遺伝子バリエーションは、通常、所定の遺伝子のヌクレオチド配列内に1~5%の変動をもたらし得る。代替的な対立遺伝子は、いくつかの異なる個体で目的の遺伝子を配列決定することによって特定できる。これは、ハイブリダイゼーションプローブを使用して、様々な個体において同じ遺伝子座を特定することにより、容易に実行できる。自然対立遺伝子バリエーションの結果であり、機能的活性を改変させない、かかるヌクレオチドバリエーション及び結果として生じるアミノ酸多型またはバリエーションのいずれか及びすべては、本発明により包含される範囲内にあることが意図される。
【0305】
別の実施形態では、バイオマーカー核酸分子は、少なくとも7、15、20、25、30、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、またはそれ以上のヌクレオチドの長さであり得、ストリンジェントな条件下で、本発明により包含されるマーカーに対応する核酸分子、または本発明により包含されるマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸分子にハイブリダイズする。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を記載することを意図しており、その下で、互いに少なくとも60%(65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれより高い)同一のヌクレオチド配列は、通常、互いにハイブリダイズしたままである。かかるストリンジェントな条件は当業者に即知であり、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)のセクション6.3.1-6.3.6に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、約45℃での6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて50~65℃での0.2XSSC、0.1%SDSでの0.1回以上の洗浄におけるハイブリダイゼーションである。
【0306】
集団内に存在することができる、本発明により包含される核酸分子の天然に存在する対立遺伝子バリアントに加えて、当業者は、配列の変化が変異によって導入され、それによってコードされるタンパク質の生物学的活性を改変することなく、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらすことができることをさらに理解するであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換につながるヌクレオチド置換を行うことができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を改変することなく野生型配列から改変することができる残基であるが、「必須」アミノ酸残基は、生物活性に必要である。例えば、様々な種の相同体間で保存されていないか、または半分だけ保存されているアミノ酸残基は、活性にとって必須ではない可能性があり、したがって、改変の標的となる可能性が高い。代替的に、様々な種(例えば、ネズミ及びヒト)の相同体間で保存されているアミノ酸残基は、活性に必須であり得、したがって、改変の標的ではない可能性が高い。
【0307】
したがって、本発明により包含される別の態様は、活性に必須ではないアミノ酸残基における変化を含む、本発明により包含されるポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。かかるポリペプチドは、本発明により包含されるマーカーに対応し、依然として生物学的活性を保持する天然に存在するタンパク質とはアミノ酸配列が異なる。一実施形態では、バイオマーカータンパク質は、本明細書に記載のバイオマーカータンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、またはその間の任意の範囲、例えば90%~95%同一であるアミノ酸配列を有する。同様に、かかるバイオマーカータンパク質をコードする配列を有する核酸分子が企図される。
【0308】
バリアントタンパク質をコードする単離された核酸分子は、1つ以上のアミノ酸残基の置換、追加、または欠失がコードされたタンパク質に導入されるように、本発明により包含される核酸のヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチド置換、追加、または欠失を導入することによって作製することができる。変異は、部位特異的変異誘発及びPCRを媒介した変異誘発などの標準的な技術によって導入することができる。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基で行われる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。代替的に、変異は、飽和変異誘発などによって、コード配列のすべてまたは一部に沿ってランダムに導入することができ、結果として得られる変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する変異体を同定することができる。変異誘発に続いて、コードされたタンパク質を組換え的に発現させることができ、タンパク質の活性を決定することができる。
【0309】
いくつかの実施形態では、ゲノム中の核酸は有用であり、標的及び/または薬剤として使用することができる。例えば、ゲノム中の標的DNAは、当該技術分野で周知の方法を使用して操作することができる。ゲノム内の標的DNAは、欠失、挿入、及び/または変異、レトロウイルス挿入、人工染色体技術、遺伝子挿入、組織特異的プロモーターによるランダム挿入、遺伝子標的化、転移因子、及び/または外来DNAを導入するための他の方法、または修飾されたDNA/修飾された核DNAを生成することによって操作することができる。他の修飾技術には、ゲノムからのDNA配列の欠失、及び/または核DNA配列の改変が含まれる。核DNA配列は、例えば、部位特異的変異誘発によって改変され得る。
【0310】
b.ベクター及び他の核酸ビヒクル
本発明によれば、核酸分子及びそのバリアントは、直接的な合成及び遺伝子組換え技術などの当技術分野で即知である任意の方法によって生成することができる。核酸分子は、純な核酸分子、プラスミド、DNAベクター、RNAベクター、ウイルスベクター、及び粒子などの任意の形態で存在することができる。「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。本発明に包括されるベクターを使用して、封入されたポリヌクレオチドを細胞、局所組織部位、または対象に送達することもできる。
【0311】
ベクターの1つの種類は、「プラスミド」であり、追加の核酸セグメントをライゲーションできる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、「ウイルスベクター」であり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。ウイルス核酸送達ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス及びそれらのバリアントを含む、任意の種類のものであり得る。ウイルスベクター技術は周知であり、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(4th Ed.),New York)に記載されている。
【0312】
特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律的に複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクター、すなわち発現ベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。一般に、組換えDNA技術において利用される発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態である場合が多い。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などのかかる他の形態の発現ベクターを含むことを意図している。
【0313】
本発明に包括される組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明に包括される核酸を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の制御性配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内で、「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で制御性配列(複数可)に連結されていることを意味することを意図している(例えば、インビトロ転写/翻訳システムにおいて、またはベクターが宿主細胞に導入される場合の宿主細胞において)。「制御性配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。かかる制御性配列は、例えば、Goeddel,Methods in Enzymology:Gene Expression Technology vol.185,Academic Press,San Diego,CA(1991)に記載されている。制御性配列には、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及び特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的制御性配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者によって理解されるであろう。本発明に包括される発現ベクターを宿主細胞に導入して、それにより、本明細書に記載される核酸によってコードされる、融合タンパク質もしくはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを生成することができる。例えば、一般に、ベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、及び簡便性な制限エンドヌクレアーゼ部位、ならびに1つ以上の選択可能なマーカー、例えば、薬剤耐性遺伝子を含む。ベクターは、本発明に包括されるポリヌクレオチドに作動可能に連結された天然または非天然のプロモーターを含むことができる。選択されるプロモーターは、強い、弱い、構成的、誘導性、組織特異的、発達段階特異的、及び/または生物特異的であり得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、ベクターが導入される宿主細胞の種類に特異的な、エンハンサー、転写及び翻訳の開始ならびに終止コドンなどの制御性配列を含むことができる。
【0314】
本発明に従って使用するための組換え発現ベクターは、原核生物(例えば、E.coli)または真核生物細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクター、酵母細胞または哺乳動物細胞を使用するような昆虫細胞)における本発明に包括されるバイオマーカーに対応するポリペプチドの発現のために設計することができる。好適な宿主細胞は、上記のGoeddelでさらに論じられている。代替的に、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御性配列及びT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写及び翻訳することができる。
【0315】
原核生物におけるタンパク質の発現は、多くの場合、融合タンパク質もしくは非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターを用いてE.coliで実施される。融合ベクターは、そこにコードされるタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端にいくつかのアミノ酸を付加する。かかる融合ベクターは通常、1)組換えタンパク質の発現を増加させること、2)組換えタンパク質の溶解性を増加させること、3)親和性精製においてリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製を助けることの3つの目的を果たす。多くの場合、融合発現ベクターでは、タンパク質分解性切断部位が融合部分及び組換えタンパク質の接合部に導入され、融合タンパク質の精製に続いて融合部分から組換えタンパク質を分離できるようにする。かかる酵素、及びそれらの同族の認識配列には、第Xa因子、トロンビン、及びエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith and Johnson(1988)Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)、及びpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が含まれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAがそれぞれ、標的組換えタンパク質に融合される。
【0316】
好適な誘導性非融合E.coli発現ベクターの代表的な非限定的な例には、pTrc(Amann et al.(1988)Gene 69:301-315)、及びpET 11d(Studier et al.(1991)Meth.Enzymol.185:60-89)が含まれる。pTrcベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、共発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下にあるT7gn1遺伝子を含む常在性プロファージから宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって供給される。
【0317】
E.coliで組換えタンパク質の発現を最大化するための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれた宿主細菌でタンパク質を発現させることである(Gottesman(1990)Meth.Enzymol.185:119-128)。別の戦略は、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を改変して、各アミノ酸の個々のコドンがE.coliで優先的に利用されるものになるようにすることである(Wada et al.,(1992)Nucleic Acids Res.20:2111-2118)。本発明に包括される核酸配列のかかる改変は、標準的なDNA合成技術によって実施することができる。
【0318】
いくつかの実施形態では、ベクターは、酵母発現ベクターである。S.cerevisiaeの酵母において発現させるためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari et al.(1987)EMBO J.6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz(1982)Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz et al.(1987)Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)、及びpPicZ(Invitrogen Corp,San Diego,CA)が含まれる。
【0319】
代替的に、発現ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞(例えば、Sf 9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系(Smith et al.(1983)Mol.Cell Biol.3:2156-2165)、及びpVL系(Lucklow and Summers(1989)Virology 170:31-39)が含まれる。
【0320】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)、及びpMT2PC(Kaufman et al.(1987)EMBO J.6:187-195)が含まれる。哺乳動物細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルス制御性要素によって提供されることが多い。例えば、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガウイルス、及びサルウイルス40に由来する。原核生物及び真核生物細胞の両方で好適な他の発現システムについては、上記のSambrookらの第16章及び第17章を参照されたい。
【0321】
いくつかの実施形態では、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指令することができる(例えば、組織特異的制御性要素が核酸を発現するために使用されている)。組織特異的制御性要素は当技術分野で周知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al.(1987)Genes Dev.1:268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto and Baltimore(1989)EMBO J.8:729-733)、及び免疫グロブリン(Banerji et al.(1983)Cell 33:729-740;Queen and Baltimore(1983)Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.(1985)Science 230:912-916)、及び乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州出願公開第264,166号)が含まれる。発生的な制御性プロモーターは、例えば、ネズミhoxプロモーター(Kessel and Gruss(1990)Science 249:374-379)、及びα-フェトプロテインプロモーター(Camper and Tilghman(1989)Genes Dev.3:537-546)も包括される。
【0322】
本発明はまた、以下にさらに記載されるように、アンチセンス核酸を発現するための組換え発現ベクターを提供する。例えば、DNA分子は、本発明に包括されるポリペプチドをコードするmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で、制御性配列と作動可能に連結され得る。アンチセンス配向でクローン化された核酸と作動可能に連結された制御性配列を選択することができ、これは、様々な細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続的発現を指示し、例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的、または細胞型特異的発現を指示するウイルスプロモーター及び/またはエンハンサー、または制御性配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率制御性領域の制御下で産生される、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒化ウイルスの形態であり得、その活性は、ベクターが導入される細胞型によって決定することができる。遺伝子発現の制御の議論については、アンチセンス遺伝子を使用する(Weintraub et al.(1986)Trends Genet.1(1)を参照されたい)。
【0323】
いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターは、本発明に従って有用である。レトロウイルスは、ウイルスRNAゲノムのDNAへの逆転写が、宿主細胞ゲノムに組み込まれる前に必要とされるために命名された。このように、レトロウイルスベクターの最も重要な特徴は、それらの遺伝物質が標的/宿主細胞のゲノムに恒久的に組み込まれていることである。核酸送達に最も一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、レンチウイルスビヒクル/粒子である。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1及びHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、ビスナウイルス、及びヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が含まれる。
【0324】
通常、遺伝子送達ビヒクルを構成するレンチウイルス粒子は、それ自体で複製に欠陥があるため、宿主細胞で複製することができず、1つの細胞にしか感染できない(「自己不活化」とも称される)。レンチウイルスは、無傷の宿主核膜を介した侵入メカニズムにより、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染することができる(Naldini et al.(1998)Curr.Opin.Biotechnol.9:457-463)。組換えレンチウイルスビヒクル/粒子は、HIV病原性遺伝子を多重に弱毒化することによって生成されており、例えば、Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef、及びTat遺伝子を欠失した、生物学的に安全なベクターを作製する。それに対応して、例えば、HIV-1/HIV-2に由来するレンチウイルスビヒクルは、非分裂細胞への導入遺伝子の効率的な送達、組み込み、及び長期発現を媒介することができる。「組換え」という用語は、レンチウイルス配列及び非レンチウイルスレトロウイルス配列の両方を含むベクターまたは他の核酸を指す。レンチウイルス粒子は、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞、及び他のウイルス発現細胞株などのプロデューサー細胞においてウイルス封入要素及びベクターゲノム自体を共発現させることによって生成され得る。これらの要素は通常、3つ(第2世代レンチウイルスシステム)または4つの別々のプラスミド(第3世代レンチウイルスシステム)で提供される。プロデューサー細胞は、ウイルスのコア(すなわち、構造タンパク質)及び酵素成分を含むレンチウイルス成分、エンベロープタンパク質(複数可)(封入システムと称される)をコードするプラスミド、ならびに外来導入遺伝子を含むゲノムをコードするプラスミドで共トランスフェクトされ、標的細胞、ビヒクル自体に導入される(導入ベクトルとも称される)。
【0325】
組換えレンチウイルスベクターのエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(VSV G)のGタンパク質またはバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質などの他のウイルスからの異種エンベロープタンパク質であり得る。VSV-G糖タンパク質は、ベシクロウイルス属:Carajasウイルス(CJSV)、Chandipuraウイルス(CHPV)、Cocalウイルス(COCV)、Isfahanウイルス(ISFV)、Marabaウイルス(MARAV)、Piryウイルス(PIRYV)、小胞性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、及び水胞性口内炎ニュージャージウイルス(VSNJV)、及び/またはソウギョラブドウイルスとしてベシキュロウイルス属に暫定的に分類された株、BeAn 157575ウイルス(BeAn 157575)、Botekeウイルス(BTKV)、Calchaquiウイルス(CQIV)、ウナギラブドウイルス(EVA)、Gray Lodgeウイルス(GLOV)、Juronaウイルス(JURY)、Klamathウイルス(KLAV)、Kwattaウイルス(KWAV)、La Joyaウイルス(LJV)、Malpais Springウイルス(MSPV)、Mount Elgon batウイルス(MEBV)、Perinetウイルス(PERV)、Pike fryラブドウイルス(PFRV)、Portonウイルス(PORV)、Radiウイルス(RADIV)、コイ春季ウイルス血症ウイルス(SVCV)、Tupaiaウイルス(TUPV)、潰瘍性大腸炎ラブドウイルス(UDRV)、及びYug Bogdanovacウイルス(YBV)に分類される種の中から特に選択され得る。gp64または他のバキュロウイルスenvタンパク質は、Autographa californica核多角体ウイルス(AcMNPV)、Anagrapha falcifera核多角体病ウイルス、Bombyx mori核多角体病ウイルス、Choristoneura fumiferana核多角体病ウイルス、Orgyia pseudotsugata単一カプシド核多角体病ウイルス、Epiphyas postvittana核多角体病ウイルス、Hyphantria cunea核多角体病ウイルス、Galleria mellonella核多角体病ウイルス、Dhoriウイルス、Thogotoウイルス、Antheraea pemyi核多角体病ウイルス、またはBatkenウイルスに由来し得る。
【0326】
組換えレンチウイルス粒子を生成するための方法は、当技術分野、例えば、米国特許第8,846,385号、同第7,745,179号、同第7,629,153号、同第7,575,924号、同第7,179,903号、及び同第6,808,905号で論じられている。
【0327】
使用するレンチウイルスベクターは、これらに限定されないが、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJM1、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJM1-EGFP、pULTRA、pInducer20、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRL、及びpLionIIから選択され得る。当技術分野で即知であるレンチウイルスビヒクルも使用することができる(米国特許第9,260,725号、同第9,068,199号、同第9,023,646号、同第8,900,858号、同第8,748,169号、同第8,709,799号、同第8,420,104号、同第8,329,462号、同第8,076,106号、同第6,013,516号、及び同第5,994,136号、PCT公開第WO2012/079000号を参照されたい)。
【0328】
追加の要素は、5’または3’末端のいずれかでのレトロウイルスLTR(ロングターミナルリピート)、レトロウイルス排出要素、任意に、レンチウイルス逆応答要素(RRE)、そのプロモーターまたは活性部分、及び遺伝子座制御領域(LCR)またはその活性部分を含む組換えレンチウイルス粒子に含めることができる。他の要素には、非分裂細胞における形質導入効率を改善するための中央ポリプリントラクト(cPPT)配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後制御性要素(WPRE)が含まれ、それらは導入遺伝子の発現を増強し、力価を高める。エフェクターモジュールは、ベクターに連結されている。複雑なHIV-1/2に基づくレンチウイルスベクターに加えて、単純なガンマレトロウイルスに基づくレトロウイルスベクターは、治療用核酸を送達するために広く使用されており、広範囲の細胞型を形質導入できる最も効率的で強力な核酸送達システムの1つとして臨床的に示されている。ガンマレトロウイルスの例示的な種には、ネズミ白血病ウイルス(MLV)及びネコ白血病ウイルス(FeLV)が含まれる。ネズミ白血病ウイルス(MLV)などの哺乳動物ガンマレトロウイルスに由来するガンマレトロウイルスベクターは、組換え体であり得る。ガンマレトロウイルスのMLVファミリーには、エコトロピック、アンホトロピック、ゼノトロピック、及びポリトロピックサブファミリーが含まれる。エコトロピックウイルスは、mCAT-1受容体を使用してネズミ細胞にのみ感染することが可能である。エコトロピックウイルスの例は、モロニーMLV及びAKVである。アンホトロピックウイルスは、Pit-2受容体を介してネズミ、ヒト、及び他の種に感染する。アンホトロピックウイルスの一例は、4070Aウイルスである。ゼノトロピック及びポリトロピックウイルスは、同じ(Xpr1)受容体を利用するが、種のトロピズムが異なる。NZB-9-1などのゼノトロピックウイルスは、ヒト及び他の種に感染するが、ネズミ種には感染せず、一方、フォーカス形成ウイルス(MCF)などのポリトロピックウイルスは、ネズミ、ヒト、及び他の種に感染する。
【0329】
ガンマレトロウイルスベクターは、新たに形成されたウイルス粒子に封入化される、本発明に包括される組成物をコードするポリヌクレオチドを含む、レトロウイルスの構造的及び酵素的(gag-pol)ポリタンパク質をコードするもの、エンベロープ(env)タンパク質をコードするもの、ベクターmRNAをコードするものを含むいくつかのプラスミドを用いて細胞を共トランスフェクトすることにより、封入細胞で生成され得る。組換えガンマレトロウイルスベクターは、他のウイルスからのエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化され得る。エンベロープ糖タンパク質は、ウイルス粒子の外側の脂質層に組み込まれており、細胞トロピズムを増加/改変させることができる。例示的なエンベロープタンパク質には、テナガザル白血病ウイルスエンベロープタンパク質(GALV)、または水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)、またはシミアン内在性レトロウイルスエンベロープタンパク質、または麻疹ウイルスH及びFタンパク質、またはヒト免疫不全ウイルスgp120エンベロープタンパク質、またはcocalベシキュロウイルスエンベロープタンパク質が含まれる(例えば、米国公開第2012/164118号を参照されたい)。他の実施形態では、エンベロープ糖タンパク質は、標的/結合リガンドをガンマレトロウイルスベクターに組み込むように遺伝子改変することができ、結合リガンドには、これらに限定されないが、ペプチドリガンド、一本鎖抗体、及び成長因子が含まれる(Waehler et al.(2007)Nat.Rev.Genet.8:573-587)。これらの操作された糖タンパク質は、対応する標的部分を発現する細胞にベクターを再標的化することができる。他の態様では、「分子架橋」を導入して、ベクターを特定の細胞に指向することができる。分子架橋は、一方の終端はウイルス糖タンパク質を認識でき、他方の終端は標的細胞上の分子決定基と結合できる、二重特異性を有する。リガンド受容体、アビジン-ビオチン、化学結合、モノクローナル抗体、及び操作された融合性タンパク質などのかかる分子架橋は、形質導入のために標的細胞へのウイルスベクターの付着を指示することができる(Yang et al.(2008)Biotechnol.Bioeng.101:357-368、Maetzig et al.(2011)Viruses 3:677-713)。組換えガンマレトロウイルスベクターは、自己不活化(SIN)ガンマレトロウイルスベクターであり得る。ベクターは、複製能力がない。SINベクターは、最初にエンハンサー/プロモーター活性を含む3’U3領域内に欠失を保有し得る。さらに、5’U3領域は、サイトメガロウイルスもしくはRSVに由来する強力なプロモーター(封入細胞株内で必要)、または選択した内部プロモーター、及び/またはエンハンサー要素で置き換えることができる。内部プロモーターの選択は、本発明に包括される特定の目的に必要な遺伝子発現の特定の要件に従って行うことができる。
【0330】
同様に、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを使用して、本発明に包括される核酸分子を封入及び送達することができる。かかるベクターまたはウイルス粒子は、既知の血清型カプシドまたは血清型カプシドの組み合わせのいずれかを利用するように設計することができる。血清型カプシドは、任意の同定されたAAV血清型及びそのバリアント、例えば、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びAAVrh10からのカプシド(例えば、米国特許公開第20030138772号)、またはそのバリアントを含み得る。AAVベクターには、一本鎖ベクターだけでなく、自己相補的AAVベクター(scAAV)も含まれる。scAAVベクターには、二本鎖ベクターゲノムを形成するために一緒にアニーリングするDNAが含まれる。第2の鎖の合成をスキップすることにより、scAAVは細胞内での迅速な発現を可能にする。rAAVベクターは、三重トランスフェクション、sf9昆虫細胞、またはHEK293細胞などのヒト細胞の浮遊細胞培養などの当技術分野における標準的な方法によって製造することができる。本発明に包括される核酸分子は、AAVカプシドに封入される1つ以上のウイルスゲノムにコードされ得る。かかるベクターまたはウイルスゲノムはまた、少なくとも1つまたは2つのITR(逆方向末端反復)に加えて、ベクターまたはウイルスゲノムからの発現に必要な特定の制御性要素を含み得る。かかる制御性要素は、当技術分野で周知であり、例えば、プロモーター、イントロン、スペーサー、スタッファー配列などが含まれる。
【0331】
さらに、核酸分子の非ウイルス送達システムは、当技術分野で周知である。「非ウイルスベクター」という用語は、総称して、ウイルス粒子を使用せずに、本発明に包括される核酸分子を目的の細胞に移入する任意のビヒクルを指す。かかる非ウイルス送達ベクターの代表的な例は、ベクター上のカチオン部位と遺伝子を構成する負に電荷した核酸上のアニオン部位との間の電気的相互作用に基づいて核酸をコードするベクターである。送達のためのいくつかの例示的な非ウイルスベクターは、ネイキッド核酸送達システム、ポリマー送達システム、及びリポソーム送達システムを含み得る。カチオン性ポリマー及びカチオン性脂質は、アニオン性ヌクレオチドと容易に複合体を形成できるため、核酸の送達に使用される。一般的に使用されるポリマーには、これらに限定されないが、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リシン、キトサン、及びデンドリマーが含まれる。カチオン性脂質には、これらに限定されないが、一価カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、グアニジン含有脂質、コレステロール誘導体化合物、カチオン性ポリマー:ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ-l-リジン)(PLL)、プロタミン、他のカチオン性ポリマー、及び脂質-ポリマーハイブリッドが含まれる。
【0332】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法を介して、原核生物または真核生物細胞中に導入することができる。本明細書で使用される場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムの共沈殿、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む、外来核酸を宿主細胞に導入するための様々な当技術分野で認識された技術を指すことを意図している。宿主細胞を形質転換するまたはトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrookら(上記)、及び他の実験マニュアルに見出すことができる。
【0333】
哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションのために、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術に応じて、細胞のごく一部のみが外来DNAをそれらのゲノムに組み込むことができることが知られている。これらの組み込み体を同定及び選択するために、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、neo、DHFR、Glnシンテターゼ、ADAなどの抗生物質に対する抵抗性)が、一般に目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン、及びメトトレキサートなどの薬剤に対する抵抗性を付与するものが含まれる。導入した核酸を用いて安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞が生き残り、一方で他の細胞が死亡する)。
【0334】
したがって、本発明は、本発明に包括される核酸及び/または組換え発現ベクターが導入されている、以下にさらに記載される宿主細胞を包含する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書では互換的に使用される。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫または潜在的な子孫を指すことが理解される。変異または環境的影響のいずれかに起因して、後続の世代においてある特定の修飾が起こる場合があるため、かかる子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。宿主細胞は、任意の原核生物(例えば、E.coli)または真核生物細胞(例えば、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞)であり得る。
【0335】
c.タンパク質薬剤
本発明に包括される別の態様は、アミノ酸系薬剤の使用を伴う。薬剤には、これらに限定されないが、融合タンパク質、合成ポリペプチド、及びペプチド、ならびにそれらの断片(例えば、生物学的に活性な断片)が含まれ得る。かかるアミノ酸系化合物をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0336】
本発明に包括されるアミノ酸系薬剤(例えば、抗体及び組換えタンパク質)は、ポリペプチド全体、複数のポリペプチド、またはポリペプチドの断片として存在することができ、これらは、1つ以上の核酸、複数の核酸、核酸の断片、または前述のいずれかのバリアントによって独立してコードされ得る。
【0337】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって最も多く一緒に連結されたアミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを指す。本明細書で使用される用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。したがって、ポリペプチドという用語は、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語を相互に含む。「融合タンパク質」という用語は、異なる源からの少なくとも2つのアミノ酸配列を含む融合ポリペプチド分子を指し、構成アミノ酸配列は、直接的にまたは1つ以上のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合によって互いに連結されている。いくつかの事例では、コードされるポリペプチドは、約50アミノ酸よりも小さく、ポリペプチドは「ペプチド」と称される。ポリペプチドがペプチドである場合、それは少なくとも約2、3、4、または少なくとも5アミノ酸残基の長さとなる。したがって、ポリペプチドには、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、及び他の同等物、バリアント、ならびに前述の類似体が含まれる。ポリペプチドは、単一分子であり得るか、または二量体、三量体または四量体などの多分子複合体であり得る。それらはまた、一本鎖または多鎖ポリペプチドを含み得、関連または連結し得る。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用され得る。
【0338】
いくつかの実施形態では、マーカーに対応する天然ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームによって、細胞または組織源から単離され得る。別の実施形態では、本発明に包括されるマーカーに対応するポリペプチドは、組換えDNA技術によって生成される。組換え発現の代わりに、本発明に包括されるマーカーに対応するポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成することができる。
【0339】
ポリペプチド断片には、目的のアミノ酸配列と十分に同一であるか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むが、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むポリペプチドが含まれる。それらはまた、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示すことができる。典型的には、生物学的に活性な部分は、対応するタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本発明に包括されるタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、長さが10、25、50、100、またはそれ以上のアミノ酸であるポリペプチドであり得る。さらに、タンパク質の他の領域が欠失されている他の生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製され、本発明に包括されるポリペプチドの天然型の機能的活性の1つ以上について評価され得る。
【0340】
好ましいポリペプチドは、本明細書に記載される核酸分子によってコードされるポリペプチドなどの、目的のポリペプチドのアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、これらの配列のうちの1つと実質的に同一(例えば、少なくとも約40%、好ましくは50%、60%、70%、75%、80%、83%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)であり、対応する天然に存在するタンパク質のタンパク質の機能的活性を保持するが、天然の対立遺伝子変異または変異誘発性のためにアミノ酸配列が異なる。
【0341】
「同一性」という用語は、アミノ酸配列に適用され、最大パーセント同一性を達成するために、必要に応じて、配列を整列及びギャップを導入した後、第2の配列のアミノ酸配列の残基と同一である候補アミノ酸配列の残基の割合として定義される。整列のための方法及びコンピュータプログラムは、当技術分野において周知である。相同性は、パーセント同一性の計算に依存するが、計算で導入されたギャップ及びペナルティのために値が異なり得ることが理解される。
【0342】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較の目的で整列される(例えば、ギャップは、第2のアミノ酸または核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸または核酸配列の配列に導入され得る)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合には、分子は、その位置にて同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。一実施形態では、2つの配列は、同じ長さである。
【0343】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2264-2268、修正されたKarlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873-5877のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行され、本発明に包括される核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得することができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行され、本発明に包括されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を取得することができる。比較目的のためのギャップ整列を取得するために、Altschul et al.(1997)Nucl.Acids Res.25:3389-3402に記載されるようにGapped BLASTが利用され得る。代替的に、PSI-Blastを使用して、分子間の離れた関係を検出する反復検索が実行され得る。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る(例えば、ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller(1988)Comput.Appl.Biosci.4:11-17のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4が使用できる。局所配列類似性及び整列の領域を同定するためのさらに別の有用なアルゴリズムは、Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444-2448に記載されるようなFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を比較するためにFASTAアルゴリズムを使用する場合、PAM120重量残基表は、例えば、k-タプル値2を用いて使用され得る。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容する場合と許容しない場合で、上記と同様の手法を使用して決定され得る。パーセント同一性の計算では、完全一致のみがカウントされる。
【0344】
「ポリペプチドバリアント」または「アミノ酸配列バリアント」という用語は、それらのアミノ酸配列が天然または参照配列とは異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、天然または参照配列と比較して、アミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、及び/または挿入を有し得る。配列を指す場合の「天然」または「参照」という用語は、比較を行うことができる元の分子を指す相対的な用語である。天然または参照配列は、野生型配列と混同するべきでない。天然配列または分子は、野生型(自然界に見られる配列)を表すことができるが、野生型配列と同一である必要はない。バリアントは、天然または参照配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、もしくは少なくとも約99.9%のアミノ酸配列同一性(相同性)を保有する。
【0345】
ポリペプチドバリアントは、改変されたアミノ酸配列を有し、いくつかの実施形態では、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして機能することができる。バリアントは、変異誘発、例えば、分散点変異またはトランケーションによって生成され得る。アゴニストは、天然に発生する形態のタンパク質の生物学的活性と実質的に同じまたはサブセットを保持することができる。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、目的のタンパク質を含む細胞シグナル伝達カスケードの下流またはその上流のメンバーに競合的に結合することによって、タンパク質の天然に発生する形態の1つ以上の活性を阻害することができる。したがって、特定の生物学的効果は、限られた機能のバリアントを用いた治療によって誘発することがでる。天然に存在する形態のタンパク質の生物学的活性のサブセットを有するバリアントを用いた対象の治療は、天然に存在する形態のタンパク質を用いた治療と比較して、対象においてより少ない副作用を有し得る。
【0346】
いくつかの実施形態では、「バリアント模倣物」が提供される。本明細書で使用される場合、「バリアント模倣物」という用語は、活性化された配列を模倣するであろう1つ以上のアミノ酸を含むバリアントを指す。例えば、グルタメートは、ホスホスレオニン及び/またはホスホセリンの模倣物として機能することができる。代替的に、バリアント模倣物は、不活性化をもたらすか、または模倣物を含む不活化生成物をもたらすことができ、例えば、フェニルアラニンは、チロシンの不活化置換として作用することができるか、またはアラニンは、セリンの不活性化置換として機能することができる。アミノ酸配列は、天然に存在するアミノ酸を含むことができ、それ自体は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、またはそれらの断片であると見なすことができる。代替的に、本発明に包括される薬剤は、天然及び非天然の両方に存在するアミノ酸を含むことができる。非天然に存在するアミノ酸には、これらに限定されないが、カルボニル基、またはアミノオキシ基、またはヒドラジド基、またはセミカルバジド基、またはアジド基を含むアミノ酸が含まれる。
【0347】
アミノ酸配列に適用される「相同体」という用語は、第2の種の第2の配列と実質的な同一性を有する他の種の対応する配列を意味する。
【0348】
「類似体」という用語は、1つ以上のアミノ酸の改変、例えば、親ポリペプチドの特性を依然として維持しているアミノ酸残基の置換、追加、または欠失によって異なるポリペプチドバリアントを含むことを意味する。
【0349】
「誘導体」という用語は、「バリアント」という用語と同義語として使用され、参照分子または開始分子に対して何らかの方法で修飾または変更された分子を指す。本発明は、バリアント及び誘導体を含むアミノ酸系であるいくつかの種類の化合物及び/または組成物を企図する。これらには、置換、挿入、欠失、及び共有結合のバリアントならびに誘導体が含まれる。したがって、本発明に包括される範囲内に含まれるのは、置換、挿入、追加、欠失、及び/または共有結合修飾を含む薬剤である。ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基は、任意に欠失させて、短縮配列を提供することができる。特定のアミノ酸(例えば、C末端またはN末端残基)は、配列の使用に応じて、例えば、可溶性であるか、または固体支持体に連結されたより大きな配列の一部としての配列の発現など、代替的に欠失させることができる。
【0350】
タンパク質を指す場合の「置換バリアント」は、天然または参照配列における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同じ位置でのその場所に異なるアミノ酸が挿入されているものである。置換は、分子内の1つのアミノ酸のみが置換されている場合のような単一であり得るか、同じ分子内で2つ以上のアミノ酸が置換されている場合のような複数であり得る。一例では、本発明に包括されるポリペプチドにおけるアミノ酸は、同様の構造的及び/または化学的特性を有する別のアミノ酸、例えば、保存的アミノ酸置換で置換される。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」という用語は、配列内に通常存在するアミノ酸を、関与する残基の同様のサイズ、電荷、極性、溶解性、疎水性、親水性、及び/または両親媒性の異なるアミノ酸で置換することを指す。保存的置換の例には、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、イソロイシン、バリン、ロイシン、及びメチオニンなどの非極性(疎水性)残基の別の非極性残基への置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、及びグリシンとセリンとの間など、ある極性(親水性)残基の別の残基への置換が含まれる。さらに、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの塩基性残基を別の残基に置換すること、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのある酸性残基を別の酸性残基に置換することは、保存的置換の追加の例である。「非保存的置換」では、これらのクラスのあるメンバーを別のクラスに交換する必要がある。非保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンなどの非極性(疎水性)アミノ酸残基の、システイン、グルタミン、グルタミン酸またはリジンなどの極性(親水性)残基、及び/または非極性残基の場合は極性残基への置換が含まれる。アミノ酸置換は、当技術分野で周知の遺伝的または化学的方法を使用して生成することができる。遺伝的方法には、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。化学修飾などの遺伝子工学以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を改変する方法もまた有用であり得ることが企図される。
【0351】
タンパク質を指す場合の「挿入バリアント」という用語は、天然または開始配列における特定の位置でアミノ酸に直接的に隣接して挿入された1つ以上のアミノ酸を有するものである。本明細書で使用される場合、「隣接」という用語は、開始もしくは参照アミノ酸のアルファ-カルボキシまたはアルファ-アミノ官能基のいずれかに接続されている隣接アミノ酸を指す。対照的に、タンパク質を指す場合の「欠失バリアント」という用語は、天然または開始アミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸を欠失したものである。通常、欠失バリアントは、分子の特定の領域内で1つ以上のアミノ酸が欠失している。
【0352】
「誘導体」という用語には、有機タンパク性または非タンパク性誘導体化剤による1つ以上の修飾、及び翻訳後修飾を含む、天然または参照タンパク質のバリアントが含まれる。共有結合修飾は、タンパク質の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖もしくは末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、または選択された組換え宿主細胞で機能する翻訳後修飾のメカニズムを利用することによって従来的に導入される。得られた共有結合誘導体は、生物学的活性、免疫測定法、または組換え糖タンパク質の免疫親和性精製のための抗タンパク質抗体の調製に重要な残基を同定することを目的としたプログラムにおいて有用である。かかる修正は当該技術分野の範囲内であり、過度の実験を伴わずに実行される。
【0353】
特定の翻訳後修飾は、発現したポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、しばしば翻訳後脱アミド化されて、対応するグルタミル及びアスパルチル残基となる。代替的に、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も、本発明に従って使用されるタンパク質に存在することができる。他の翻訳後修飾には、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のアルファ-アミノ基のメチル化が含まれる(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79-86(1983))。
【0354】
いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドで修飾されたポリペプチド及び/または非ポリペプチド修飾などの共有結合で修飾されたポリペプチド(例えば、融合タンパク質)が提供される。例えば、共有誘導体は詳細には、本発明に包括されるタンパク質が非タンパク質性ポリマーに共有結合している融合分子を含む。非タンパク性ポリマーは、通常、親水性合成ポリマー(すなわち、実際には自然界に見られないポリマー)である。しかしながら、自然界に存在し、組換えまたはインビトロ法によって生成されるポリマーは、自然界から単離されたポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは、本発明の範囲内に含まれる。特に有用なのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PEG)などのポリビニルアルキレンエーテルである。タンパク質は、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、または同第4,179,337号に記載されている様式で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンなどの様々な非タンパク質性ポリマーに連結することができる。融合分子は、他の生物学的に活性な分子またはリンカーに共有結合している本発明に包括されるタンパク質をさらに含むことができる。
【0355】
「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」という用語は、異種ポリペプチド(例えば、バイオマーカーポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結された本発明に包括されるポリペプチドに対応するポリペプチドのすべてまたは一部(好ましくは生物学的に活性な部分)を含むポリペプチドを指す。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明に包括されるポリペプチド及び異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合されることを示すことを意図している。異種ポリペプチドは、本発明に包括されるポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合させることができる。
【0356】
1つの有用な融合タンパク質は、本発明に包括されるマーカーに対応するポリペプチドがGST配列のカルボキシル末端に融合しているGST融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、本発明に包括される組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。別の実施形態では、融合タンパク質は、異種シグナル配列、免疫グロブリン融合タンパク質、毒素、または他の有用なタンパク質配列を含む。本発明に包括されるキメラ及び融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成することができる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化されたDNAシンセサイザーを含む従来の技術によって合成することができる。代替的に、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを使用して実行でき、これは、2つの連続する遺伝子断片間に相補的なオーバーハングを生じさせ、その後、アニーリング及び再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubelら、上記を参照されたい)。さらに、すでに融合部分をコードする多くの発現ベクター(例えば、GSTポリペプチド)が市販されている。本発明に包括されるポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が本発明に包括されるポリペプチドにインフレームで連結されるように、かかる発現ベクターにクローン化することができる。
【0357】
シグナル配列を使用して、分泌されたタンパク質または他の目的のタンパク質の分泌及び単離を容易にすることができる。シグナル配列は通常、1つ以上の切断事象において、分泌中に成熟タンパク質から一般的に切断される疎水性アミノ酸のコアによって特徴付けされる。かかるシグナルペプチドは、それらが分泌経路を通過する際に成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を可能にするプロセシング部位を含む。したがって、本発明は、シグナル配列を有する記載のポリペプチド、ならびにシグナル配列がタンパク質分解的に切断されたポリペプチド(すなわち、切断産物)を包含する。一実施形態では、シグナル配列をコードする核酸配列は、発現ベクターにおいて、通常は分泌されないか、または単離が困難なタンパク質などの目的のタンパク質に作動可能に連結され得る。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換される真核生物宿主からのようなタンパク質の分泌を指示し、シグナル配列は、その後または同時に切断される。次に、タンパク質は、当技術分野で認識される方法によって細胞外培地から容易に精製することができる。代替的に、シグナル配列は、GSTドメインなどで精製を容易にする配列を使用して目的のタンパク質に連結することができる。
【0358】
タンパク質を指す場合の「特徴」という用語は、分子の別個のアミノ酸配列系成分として定義される。本発明に包括されるタンパク質の特徴には、表面発現、局所的立体構造形状、折り畳み、ループ、半ループ、ドメイン、半ドメイン、部位、末端、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、タンパク質を指すときの「表面発現」という用語は、最も外側の表面に現れるタンパク質のポリペプチド系成分を指す。タンパク質に言及する場合の「局所的立体構造形状」という用語は、タンパク質の定義可能な空間内に位置するタンパク質のポリペプチド系構造的発現を指す。タンパク質を指す場合の「折り畳み」という用語は、エネルギー最小化の際に結果として生じるアミノ酸配列の立体構造を指す。折り畳みは、折り畳みプロセスの二次または三次レベルで生じ得る。二次レベルの折り畳みの例には、ベータシート及びアルファヘリックスが含まれる。三次折り畳みの例には、エネルギー力の凝集または分離によって形成されたドメイン及び領域が含まれる。この方法で形成された領域には、疎水性及び親水性ポケットなどが含まれる。タンパク質立体構造に関連する「ターン」という用語は、ペプチドまたはポリペプチドの骨格の方向を改変する屈曲を指し、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアミノ酸残基を含み得る。タンパク質に関連する「ループ」という用語は、ペプチドまたはポリペプチドの骨格の方向を逆転させ、4つ以上のアミノ酸残基を含むペプチドまたはポリペプチドの構造的特徴を指す(Oliva et al.(1997)J.Mol.Biol.266:814-830)。タンパク質を指す場合の「半ループ」という用語は、それが由来するループとして存在するアミノ酸の数の少なくとも半分を有する同定されたループの一部を指す。ループが常に偶数のアミノ酸残基を含むとは限らないことが理解される。したがって、ループに奇数のアミノ酸が含まれているか、または含まれていると同定された場合、奇数ループの半ループは、ループの整数部分または次の整数部分を含む(ループのアミノ酸数/2+/-0.5アミノ酸)。例えば、7アミノ酸ループとして同定されたループは、3アミノ酸または4アミノ酸の半ループを生成し得る(7/2=3.5+/-0.5は3または4である)。タンパク質を指す場合の「ドメイン」という用語は、1つ以上の同定可能な構造的または機能的特徴または特性(例えば、結合能力及び/またはタンパク質間相互作用の部位として機能する)を有するポリペプチドのモチーフを指す。タンパク質を指す場合の「半ドメイン」という用語は、それが由来するドメインとして存在する少なくとも半分の数のアミノ酸を有する同定されたドメインの一部を指す。それはドメインが必ずしも偶数のアミノ酸残基を含むとは限らないことが理解される。したがって、ドメインに奇数のアミノ酸が含まれているか、または含まれていると同定された場合、奇数のドメインの半ドメインは、ドメインの整数部分または次の整数部分を含む(ドメインのアミノ酸数/2+/-0.5アミノ酸)。例えば、7アミノ酸ドメインとして同定されたドメインは、3アミノ酸または4アミノ酸の半ドメインを生成し得る(7/2=3.5+/-0.5は3または4である)。サブドメインは、ドメインまたは半ドメイン内で同定され得ることも理解され、これらのサブドメインは、それらが由来するドメインまたは半ドメインにおいて同定されるすべての構造的または機能的特性よりも少数を保有する。本明細書のドメインタイプのいずれかを含むアミノ酸は、ポリペプチドの骨格に沿って隣接する必要がないことも理解される(すなわち、非隣接アミノ酸は、構造的に折り畳まれ、ドメイン、半ドメイン、またはサブドメインを生成することができる)。アミノ酸系の実施形態に関連する「部位」という用語は、「アミノ酸残基」及び「アミノ酸側鎖」と同義的に使用される。部位は、本発明に包括されるアミノ酸系分子内で修飾、操作、改変、誘導体化、もしくは変化させることができるペプチドまたはポリペプチド内の位置を表す。タンパク質を指す場合の「末端(termini)」または「末端(terminus)」という用語は、ペプチドまたはポリペプチドの端を指す。かかる端は、ペプチドもしくはポリペプチドの最初または最後の部位に限定されるのではなく、末端領域に追加のアミノ酸を含むことができる。本発明に包括されるポリペプチド系分子は、N末端(すなわち、遊離アミノ基(NH2)を有するアミノ酸で終結する)、及びC末端(すなわち、遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸で終結する)の両方を有するものとして特徴付けることができる。本発明に包括されるタンパク質は、いくつかの事例において、ジスルフィド結合、または非共有結合的な力、例えば、多量体もしくはオリゴマーなどによって一緒にもたらされた複数のポリペプチド鎖から構成される。これらのタンパク質は、複数のN-及びC-末端を有する。代替的に、ポリペプチドの末端は、事例によっては、有機複合などの非ポリペプチド系部分で開始または終了するように修飾することができる。
【0359】
特徴のいずれかが本発明に包括される分子の成分として同定または定義されていると、これらの特徴のいくつかの操作及び/または修飾のいずれかは、移動、交換、反転、欠失、ランダム化、または複製によって実行することができる。さらに、それは、特徴の操作が、本発明に包括される分子への修飾と同じ結果をもたらすことができることが理解される。例えば、ドメインの欠失を伴う操作は、全長よりも短い分子をコードするように核酸を修飾するのと同じように、分子の長さの改変をもたらすであろう。改変及び操作は、部位特異的変異誘発などの当技術分野で即知である方法によって達成することができる。
【0360】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬剤は、同位体である1つ以上の原子を含むことができる。本明細書で使用される場合、「同位体」という用語は、重水素同位体などの1つ以上の追加の中性子を有する化学元素を指す。
【0361】
d.宿主細胞を含む細胞系薬剤
別の態様では、細胞系薬剤が企図される。
【0362】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明による核酸及び/またはベクターによってトランスフェクトされ、感染され、または形質転換された細胞を包含する。「形質転換」という用語は、宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現して所望の物質、典型的には、導入された遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素を産生するように、宿主細胞に「外来の」(すなわち、外因性または細胞外の)遺伝子、DNAまたはRNA配列を導入することを意味する。導入されたDNAまたはRNAを受け取り、発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
【0363】
本発明に包括される核酸は、好適な発現系において本発明の組換えポリペプチドを生成するために使用され得る。「発現系」という用語は、例えば、ベクターによって担持され、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための適切な条件下での宿主細胞及び適合性ベクターを意味する。
【0364】
一般的な発現系には、E.coli宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳類宿主細胞及びベクターが含まれる。宿主細胞の他の例には、原核細胞(細菌など)及び真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が含まれるが、これらに限定されない。詳細な例には、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomyces酵母、哺乳類細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、ならびに初代または確立された哺乳類細胞培養物(例えば、リンパ芽細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生される)が含まれる。例には、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以下「DHFR遺伝子」と称する)が欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al;1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL 1662、以下「YB2/0細胞」と称する)なども含まれる。YB2/0細胞は、キメラまたはヒト化抗体のADCC活性が、この細胞内で発現される場合に増強されるので、好ましい。
【0365】
別の態様では、本発明に包括される薬剤と接触する細胞が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、本発明に包括される1つ以上のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)を調節するために1つ以上の薬剤と接触するように操作される。例えば、培養細胞及び/または初代細胞は、薬剤と接触させ、処理し、アッセイで、対象などに導入することができる。かかる細胞の後代は、本明細書に記載される細胞系薬剤に包括される。
【0366】
いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、本発明に包括される1つ以上のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)を調節するように組換え操作される。例えば、上記のように、ゲノム編集を使用して、目的のバイオマーカーの構成的または誘導されたノックアウトまたは変異など、目的のバイオマーカーのコピー数または遺伝子配列を調節することができる。例えば、CRISPR-Casシステムは、ゲノム核酸の正確な編集に使用できる(例えば、非機能的またはヌル変異を作製するために)。かかる実施形態では、CRISPRガイドRNA及び/またはCas酵素を発現させることができる。例えば、ガイドRNAのみを含むベクターは、Cas9酵素についてトランスジェニックな動物または細胞に投与することができる。同様の戦略を使用することができる(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはホーミングメガヌクレアーゼ(HE)、例えば、MegaTAL、MegaTev、Tev-mTALEN、CPF1など)。かかるシステムは当技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,697,359号、Sander and Joung(2014)Nat.Biotech.32:347-355、Hale et al.(2009)Cell 139:945-956、Karginov and Hannon(2010)Mol.Cell 37:7、米国特許公開第2014/0087426号及び同第2012/0178169号、Boch et al.(2011)Nat.Biotech.29:135-136、Boch et al.(2009)Science 326:1509-1512、Moscou and Bogdanove(2009)Science 326:1501、Weber et al.(2011)PLoS One 6:e19722、Li et al.(2011)Nucl.Acids Res.39:6315-6325、Zhang et al.(2011)Nat.Biotech.29:149-153、Miller et al.(2011)Nat.Biotech.29:143-148、Lin et al.(2014)Nucl.Acids Res.42:e47を参照されたい)。かかる遺伝的戦略は、当技術分野で周知の方法に従って、構成的発現システムまたは誘導性発現システムを使用することができる。
【0367】
細胞系薬剤は、対象宿主に対して免疫適合性の関係を有し、かかる関係は、本発明による使用が企図される。例えば、養子骨髄細胞、T細胞などのような細胞は、同系であり得る。「同系」という用語は、特に抗原または免疫反応に関して、遺伝的に同一である同じ種に由来する、起源である、またはそのメンバーである状態を指し得る。これらには、一致するMHC型を有する同一の対が含まれる。したがって、「同系移植」は、ドナーから、ドナーと遺伝的に同一であるか、または望ましくない有害な免疫原性応答(例えば、本明細書に記載される免疫学的スクリーニング結果の解釈に反するものなど)を伴わずに移植を可能にするのに十分な免疫学的に適合性のあるレシピエントへの細胞の移入を指す。
【0368】
移植された細胞が同じ対象から得られ、同じ対象に移植された場合、同系移植は「自家」であり得る。「自家移植」とは、対象自身の細胞または臓器の採取及び再注入または移植を指す。自家細胞の排他的または補足的使用は、宿主への細胞の投与、特定の移植片対宿主反応の多くの悪影響を排除または低減することができる。
【0369】
移植された細胞が同じ種の異なるメンバーから得られ、移植されたが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原と十分に一致しており、有害な免疫原性応答を回避する場合、同系移植は「同種異系」として考慮される。MHCミスマッチの程度を決定することは、当該技術分野で即知であり、使用されている標準的な試験に従って達成することができる。例えば、ヒトにおけるMHC遺伝子には少なくとも6つの主要なカテゴリがあり、移植生物学において重要であると同定されている。HLA-A、HLA-B、HLA-Cは、HLAクラスIタンパク質をコードし、一方でHLA-DR、HLA-DQ、及びHLA-DPは、HLAクラスIIタンパク質をコードする。各々のこれらのグループ内の遺伝子は、ヒト集団に見られる多数のHLA対立遺伝子またはバリアントに反映されているように、高度に多型であり、個人間のこれらのグループの差異は、移植細胞に対する免疫応答の強さに関連している。MHC一致の程度を決定するための標準的な方法は、HLA-B及びHLA-DR、またはHLA-A、HLA-B、及びHLA-DRグループ内の対立遺伝子を調査する。したがって、試験はそれぞれ、2つまたは3つのHLAグループ内の少なくとも4つ、さらには5つ、または6つのMHC抗原で行うことができる。血清学的MHC試験において、各HLA抗原型に対する抗体は、抗体と反応する特定のMHC抗原の存在または不在を決定するために、1人の対象(例えば、ドナー)からの細胞と反応させる。これは、他の対象(例えば、レシピエント)の反応性プロファイルと比較される。抗体とMHC抗原との反応は、典型的に、抗体を細胞とインキュベートし、次に補体を追加して細胞溶解を誘導することによって決定される(すなわち、リンパ球毒性試験)。反応は、反応において溶解された細胞の量に従って調査され、類別される(例えば、Mickelson and Petersdorf(1999)Hematopoietic Cell Transplantation、Thomas,E.D.et al.eds.,28~37項,Blackwell Scientific,Malden,Massを参考されたい)。他の細胞系アッセイには、標識抗体を使用したフローサイトメトリーまたは酵素結合免疫測定法(ELISA)が含まれる。MHC型を決定するための分子的方法が周知であり、一般に、HLAタンパク質をコードする特定の遺伝子配列を検出するために合成プローブ及び/またはプライマーを使用する。合成オリゴヌクレオチドは、特定のHLA型に関連する制限酵素断片長多型を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用できる(Vaughn(2002)Method.Mol.Biol.MHC Protocol.210:45-60)。代替的に、プライマーは、HLA配列を増幅するために使用することができ(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ連鎖反応によって)、その産物は、直接的なDNA配列決定、制限酵素断片多型分析(RFLP)、または一連の配列特異的オリゴヌクレオチドプライマー(SSOP)とのハイブリダイゼーションによってさらに調査することができる(Petersdorf et al.(1998)Blood 92:3515-3520、Morishima et al.(2002)Blood 99:4200-4206、及びMiddleton and Williams(2002)Method.Mol.Biol.MHC Protocol.210:67-112)。
【0370】
移植された細胞及び対象の細胞が、典型的には同系交配によって、単一の遺伝子座などの定義された遺伝子座において異なる場合、同系移植は「コンジェニック」であり得る。「コンジェニック」という用語は、同じ種に由来する、起源である、またはそのメンバーであることを指し、メンバーは、小さな遺伝子領域、典型的には単一の遺伝子座(すなわち、単一の遺伝子)を除いて遺伝的に同一である。「コンジェニック移植」とは、ドナーからレシピエントへの細胞または臓器の移植を指し、レシピエントは、単一の遺伝子座を除いてドナーと遺伝的に同一である。例えば、CD45は、いくつかの対立遺伝子型で存在し、CD45.1またはCD45.2対立遺伝子バージョンが発現されるかに関してマウス系統が異なるコンジェニックマウス系統が存在する。
【0371】
対照的に、「ミスマッチな同種異系」とは、有害な免疫原性応答を誘発するのに十分な、定義された数のMHC抗原の血清学的または分子分析など、当該技術分野で使用される標準的なアッセイによって通常決定される、同一ではない主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原(すなわち、タンパク質)を有する同じ種に由来する、由起源である、またはそのメンバーであることを指す。「部分的なミスマッチ」は、メンバー間、典型的にはドナーとレシピエントとの間で試験されたMHC抗原の部分的な一致を指す。例えば、「半分のミスマッチ」は、2つのメンバー間で異なるMHC抗原型を示すものとして試験されたMHC抗原の50%を指す。「全部の」または「完全な」ミスマッチは、すべてが2つのメンバー間で異なるものとして試験されたMHC抗原を指す。
【0372】
同様に、対照的に、「異種」とは、異なる種、例えば、ヒト及び齧歯類、ヒト及びブタ、ヒト及びチンパンジーなどに由来する、起源である、またはそれらのメンバーであることを指す。「異種移植」は、レシピエントがドナーの種とは異なる種である場合に、ドナーからレシピエントへの細胞または臓器の移植を指す。
【0373】
さらに、細胞は、単一の源または複数の源(例えば、単一の対象または複数の対象)から得ることができる。複数は、少なくとも2つ(例えば、1つより多い)を指す。さらに別の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。目的の細胞型が得られる動物は、成体、新生児(例えば、生後48時間未満)、未成熟、または子宮内であり得る。目標の細胞型は、原発性がん細胞、がん幹細胞、確立されたがん細胞株、不死化原発性がん細胞などであり得る。特定の実施形態では、宿主対象の免疫系は、移植されたがん細胞と免疫学的に適合性があるように操作されるか、または選出され得る。例えば、一実施形態では、対象は、ヒトがん細胞と適合性であるために「ヒト化」され得る。「免疫系ヒト化」という用語は、ヒトHSC系統細胞ならびにヒト後天性及び先天性免疫細胞を含み、宿主動物から拒絶されることなく生存することにより、ヒトの造血ならびに獲得免疫及び自然免疫の両方を宿主動物で再構成することができるマウスなどの動物を指す。後天性免疫細胞には、T細胞及びB細胞が含まれる。自然免疫細胞には、マクロファージ、顆粒球(好塩基球、好酸球、好中球)、DC、NK細胞、及び肥満細胞が含まれる。代表的な非限定的な例には、SCID-hu、Hu-PBL-SCID、Hu-SRC-SCID、NSG(NOD-SCID IL2r-ガンマ(null)は、自然免疫系、B細胞、T細胞、及びサイトカインシグナル伝達を欠く)、NOG(NOD-SCID IL2r-ガンマ(切断型))、BRG(BALB/c-Rag2(null)IL2r-ガンマ(null))、及びH2dRG(Stock-H2d-Rag2(null)IL2r-ガンマ(null))マウス(例えば、Shultz et al.(2007)Nat.Rev.Immunol.7:118、Pearson et al.(2008)Curr.Protocol.Immunol.15:21;Brehm et al.(2010)Clin.Immunol.135:84-98、McCune et al.(1988)Science241:1632-1639、米国特許第7,960,175号、及び米国特許公開第2006/0161996号を参照されたい)、ならびにRag1(B及びT細胞を欠く)、Rag2(B及びT細胞を欠く)、TCRアルファ(T細胞を欠く)、パーフォリン(cD8+T細胞が細胞傷害性機能を欠く)、FoxP3(機能性CD4+T制御性細胞を欠く)、IL2rg、またはPrflなどの免疫関連遺伝子の関連null変異体、ならびにPD-1、PD-L1、Tim3、及び/または2B4の変異体もしくはノックアウト体が含まれ、マウスのような免疫不全動物のモデルにおけるヒト免疫細胞の効率的な生着を可能にし、及び/または区画特異性を提供する(例えば、PCT公開第WO2013/062134号を参照されたい)。さらに、NSG-CD34+(NOD-SCID IL2r-ガンマ(null)CD34+)ヒト化マウスは、マウスなどの動物モデルにおいてヒト遺伝子及び腫瘍活性を研究するために有用である。
【0374】
本明細書で使用される場合、生物学的物質源から「得られる」とは、ドナーから生物学的物質の源を収集または分配する任意の従来の方法を意味する。例えば、生物学的物質は、固形腫瘍、末梢血もしくは臍帯血試料などの血液試料から得られるか、または骨髄もしくは羊水などの別の体液から得ることができる。かかる試料を得るための方法は、技術者に周知である。本発明では、試料は、新鮮であり得る(すなわち、凍結することなくドナーから得られる)。さらに、試料をさらに操作して、増殖前に無関係または望ましくない成分を除去することができる。試料は、保存されたストックからも入手することができる。例えば、細胞株または末梢血もしくは臍帯血などの体液の場合、試料は、かかる細胞株もしくは体液の極低温または他の方法で保存されたバンクから取り除くことができる。かかる試料は、任意の好適なドナーから入手することができる。
【0375】
得られた細胞集団は、直接使用するか、または後日使用するために凍結することができる。凍結保存のための様々な媒体及びプロトコルが当該技術分野で即知である。一般に、凍結培地は、約5~10%、10~90%の血清アルブミン、及び50~90%の培養培地からのDMSOを含む。細胞を保存するのに有用な他の添加剤には、例としてこれらに限定されないが、トレハロースなどの二糖類(Scheinkoniget al.(2004)Bone Marrow Transplant.34:531-536)、またはヘタスターチ(すなわち、ヒドロキシエチルスターチ)などの血漿増量剤が含まれる。いくつかの実施形態では、リン酸緩衝生理食塩水などの等張緩衝液を使用することができる。例示的な凍結保存組成物は、4%HSA、7.5%ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び2%ヘタスターチを含む細胞培養培地を有する。凍結保存のための他の組成物及び方法は、当該技術分野で周知であり、記載されている(例えば、Broxmeyer et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:645-650を参照されたい)。細胞は、約-135°C未満の最終温度で保存される。
【0376】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、CAR(キメラ抗原受容体)-T療法であり得、T細胞は、目的の腫瘍細胞上の抗原と特異的な抗原結合ドメインを含むCARを発現するように操作される。「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、所望の抗原特異性及び抗原結合時に細胞内シグナルを伝達するためのシグナル伝達ドメインを有する受容体を指す。例えば、Tリンパ球は、T細胞受容体(TCR)と、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIまたはII分子によって提示される短いペプチドとの相互作用を通じて特定の抗原を認識する。初期活性化及びクローン増殖については、ナイーブT細胞は、追加の共刺激シグナルを提供するプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に依存する。共刺激を伴わないTCRの活性化は、無応答性及びクローン性アネルギーをもたらし得る。免疫化を回避するために、移植された認識特異性を有する細胞傷害性エフェクター細胞を誘導するための異なるアプローチが開発されている。TCRに関連するCD3複合体の細胞表面成分に特異的な天然リガンドまたは抗体に由来する結合ドメインからなるCARが構築されている。抗原が結合すると、かかるキメラ抗原受容体は、エフェクター細胞における内因性シグナル伝達経路と連携し、TCR複合体によって開始されるものと同様の活性化シグナルを生成する。キメラ抗原受容体に関する最初の報告以来、この概念は着実に洗練されており、キメラ受容体の分子設計は最適化されており、scFV、Fav、及び本明細書に記載される別のタンパク質結合断片などの任意の数の周知である結合ドメインを慣例的に使用している。
【0377】
いくつかの実施形態では、単球及びマクロファージは、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され得る。修飾された細胞は、腫瘍微小環境に動員することができ、それが腫瘍に浸潤し、標的のがん細胞を殺傷することにより、強力な免疫エフェクターとして機能する。CARには、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインが含まれる。抗原結合ドメインは、標的細胞上の抗原と結合する。CARの抗原結合ドメインと結合する抗原として作用することができる細胞表面マーカーの例には、ウイルス、細菌、寄生虫感染、自己免疫疾患、及びがん細胞(例えば、腫瘍抗原)に関連するものが含まれる。
【0378】
一実施形態では、抗原結合ドメインは、目的の腫瘍またはがんと特異的な抗原などの腫瘍抗原と結合する。腫瘍関連抗原の非限定的な例には、BCMA、CD19、CD24、CD33、CD38、CD44v6、CD123、CD22、CD30、CD117、CD171、CEA、CS-1、CLL-1、EGFR、ERBB2、EGFRvIII、FLT3、GD2、NY-BR-1、NY-ESO-1、p53、PRSS21、PSMA、ROR1、TAG72、Tn Ag、VEGFR2が含まれる。
【0379】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR内の1つ以上のドメインと自然に関連している。膜貫通ドメインは、天然または合成源からのいずれかに由来し得る。本発明で特に使用される膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD 16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、及びTLR9に由来(すなわち、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)し得る。いくつかの事例では、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジを含む様々なヒトヒンジを利用することもできる。
【0380】
一実施形態では、CARの細胞内ドメインは、シグナル活性化及び/または形質導入に関与するドメインを含む。細胞内ドメインの例には、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、一般的なFcRガンマ、FcRベータ(Fcイプシロンリブ)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD l id、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、PSGL-1(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、バリアント、または断片、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、及びそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上の分子もしくは受容体からの断片またはドメインが含まれる。
【0381】
いくつかの実施形態では、本発明により包含される薬剤、組成物、及び方法を使用して、単球及びマクロファージを再操作して、他の免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞に抗原を提示するそれらの能力を増強することができる。抗原提示細胞(APC)として操作された単球及びマクロファージは、腫瘍抗原を処理し、抗原エピトープをT細胞に提示して、腫瘍細胞を攻撃する適応免疫応答を刺激する。
【0382】
VI.使用及び方法
本明細書に記載される組成物及び薬剤は、本明細書に記載されるバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)に関する様々な調節、治療、スクリーニング、診断、予後、及び治療用途で使用することができる。調節法、治療法、スクリーニング法、診断法、予後法、またはそれらの組み合わせなど、本明細書に記載される任意の方法において、方法のすべてのステップは、単一のアクターによって、または代替的に、複数のアクターによって実行され得る。例えば、診断は、治療的処置を提供するアクターによって直接的に実施することができる。代替的に、治療剤を提供する人は、診断アッセイの実施を要求することができる。診断医及び/または治療介入者は、診断アッセイの結果を解釈して、治療戦略を決定することができる。同様に、かかる代替的なプロセスは、予後アッセイなどの他のアッセイに適用することができる。
【0383】
さらに、本明細書に記載の本発明に包括される任意の態様は、単独で、またはその1つ、1つより多い、もしくはすべての実施形態を含む本発明に包括される他の任意の態様と組み合わせて実施することができる。例えば、診断及び/またはスクリーニング法は、単独で、または適切な診断及び/またはスクリーニング結果を決定する際に適切な治療を提供するように治療ステップと組み合わせて実施することができる。
【0384】
抗体及びその抗原結合断片を含む、特定の好ましい組成物が本明細書に記載されているが、かかる薬剤が、炎症性表現型を上方制御または下方制御し、それによって、免疫応答をそれぞれ方制御または下方制御するように、単独でまたは少なくとも1つのバイオマーカーの量及び/または活性を調節するものなどの他の有用な薬剤と組み合わせて使用され得ることが企図される。これらの薬剤は、少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)によって媒介される有効性を診断、予後診断、及びスクリーニングするために有用であるように、少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)の量及び/または活性を検出するために有用である。
【0385】
表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を下方制御する薬剤は、骨髄細胞の炎症性表現型を増加させる。
【0386】
同様に、表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を上方制御する薬剤は、骨髄細胞の炎症性表現型を減少させる。
【0387】
抗体及びその抗原結合断片、カスメ(casme)と接触する細胞などを含む、少なくとも1つのバイオマーカーを調節する薬剤は、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。かかる薬剤は、遺伝子配列、コピー数、遺伝子発現、翻訳、翻訳後修飾、細胞内局在、分解、高次構造、安定性、分泌、酵素活性、転写因子、受容体活性化、シグナル伝達、及び少なくとも1つのバイオマーカーによって媒介される他の生化学的機能を調節することができる。かかる薬剤は、受容体、細胞膜、抗原決定基、または標的分子もしくは標的細胞上に存在する他の結合部位などの任意の細胞部分に結合することができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞内に拡散または輸送され得、それは細胞内で作用することができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞ベースである。代表的な薬剤には、これらに限定されないが、単独または他の薬剤との組み合わせのいずれかで核酸(DNA及びRNA様cDNA及びmRNA)、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体、融合タンパク質、抗生物質、低分子、脂質/脂肪、糖、ベクター、複合体、ワクチン、遺伝子治療剤、細胞治療剤など、例えば、低分子、ポリペプチドをコードするmRNA、CRISPRガイドRNA(gRNA)、RNA干渉剤、低分子干渉RNA(siRNA)、CRISPR RNA(crRNA及びtracrRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチドもしくはペプチド模倣阻害剤、アプタマー、天然リガンド、及びタンパク質バイオマーカー、抗体、細胞内抗体、または細胞と結合して活性化もしくは阻害するそれらの誘導体が含まれる。
【0388】
本発明に包括されるかかる薬剤は、任意の数、種類、及び様式を含むことができる。例えば、薬剤は、1つまたは複数のバイオマーカーを調節する1、2、3、4、5、もしくはそれ以上、またはそれらの間の任意の範囲の薬剤を含むことができる(例えば、表1に列挙される同じ標的を調整する2つの薬剤、表1に列挙される標的を調整する薬剤、及び表1に列挙される同じ標的を調整する別の薬剤、表1に列挙される標的を調整する薬剤、及び表1に列挙される別の標的を調整する別の薬剤など)。
【0389】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される調節剤は、貪食細胞、例えば、骨髄細胞を標的とする1つ以上の追加の薬剤をさらに含む。かかる単球/マクロファージ標的剤には、これらに限定されないが、CD11bを標的とするロベリズマブ、低分子を含み、MNRP1685A(ニューロフィリン-1を標的とする)、ANG2を標的とするネシツムマブ、IL-4と特異的なパスコリズマブ、IL4Rαと特異的なデュピルマブ、トシリズマブ、及びIL-6Rと特異的なサリルマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、タネルセプト、ゴリムマブ、及びTNF-αと特異的なインフリキシマブ、ならびにCD40を標的とするCP-870及びCP-893が含まれる。
【0390】
本発明に包括される、抗体及びその抗原結合断片と共に使用するための例示的な薬剤が、本明細書及び当技術分野でさらに記載される(例えば、2018年6月29日に出願されたU.S.S.N.62/692,463、2019年2月26日に出願されたU.S.S.N.62/810,683、2019年6月4日に出願されたU.S.S.N.62/857,199、及び「Compositions and Methods for Modulating Monocyte and Macrophage Inflammatory Phenotypes and Immunotherapy Uses Thereof」というタイトルを有する2019年6月27日にNovobrantseva et al.(Verseau Therapeutics,Inc.)によって出願された共同係属中の出願を参照されたく、該各出願の全内容は、本参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0391】
1.調節及び治療法
本発明に包括される1つの態様は、治療目的などのために、本明細書に記載される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1、実施例などに列挙される1つ以上の標的)の量(例えば、発現)、及び/または活性(例えば、シグナル伝達の調節、結合パートナーとの結合の阻害など)を調節する方法に関する。かかる薬剤は、骨髄細胞の特定の亜集団を操作し、生理学的状態におけるそれらの数及び/または活性を制御し、マクロファージ関連疾患及び他の臨床状態を治療するためのその使用に利用することができる。例えば、本発明に包括される組成物及び薬学的製剤を含む薬剤は、バイオマーカー(例えば、表1、実施例などに列挙される少なくとも1つの標的)の量及び/または活性を調節して、それによって骨髄細胞の炎症性表現型を調節し、さらに免疫応答を調節することができる。いくつかの実施形態では、細胞活性(例えば、サイトカイン分泌、細胞集団比率など)は、免疫応答自体を調節するのではなく、調節される。本明細書に開示される薬剤、組成物、及び製剤を使用して単球ならびにマクロファージの炎症性表現型を調節するための方法が提供される。したがって、薬剤、組成物、及び方法は、バイオマーカー(例えば、表1、実施例などに列挙される少なくとも1つの標的)の量及び/または活性を調節することによって免疫応答を調節するための方法を使用して、特定の細胞型を枯渇もしくは濃縮し、及び/または細胞型の比率を調節することができる。例えば、表1に列挙される特定の標的は、標的を阻害することが細胞死につながるなど、細胞の生存に必要である。かかる調節は、免疫応答を媒介する細胞型(例えば、炎症誘発性対抗炎症性細胞)の比率が調節されるため、免疫応答を調節するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、がんに罹患する対象におけるがんを治療するために使用される。
【0392】
本開示は、マクロファージにおけるこれらの遺伝子の量及び/または活性の下方制御が、マクロファージを再分極させる(例えば、表現型を変更する)ことができることを示している。いくつかの実施形態では、M2マクロファージの表現型は、1型(M2様)またはM1表現型を有するマクロファージ、またはM1マクロファージに関してはその逆、2型(M2様)またはM2表現型をもたらすように変更される。いくつかの実施形態では、本発明に包括される薬剤は、M2表現型を有する単球及びマクロファージの輸送、分極、及び/または活性化を調節する(例えば、阻害する)ために、またはその逆として1型及びM1マクロファージに関して使用される。本発明はさらに、M1マクロファージ、M2マクロファージ(例えば、腫瘍内のTAM)などの、目的の骨髄細胞の集団を減少させるための方法を提供する。
【0393】
いくつかの実施形態では、本発明は、骨髄細胞の分布を変更するための方法を提供し、これには、前腫瘍マクロファージ及び抗腫瘍マクロファージなどのそのサブタイプが含まれる。一例では、本発明は、マクロファージを抗炎症性免疫応答から炎症誘発性免疫応答に向けて、及びその逆に駆動するための方法を提供する。細胞型は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上、または45~55%などその間の任意の範囲で枯渇及び/または濃縮され得る。
【0394】
いくつかの実施形態では、調節は、単球、マクロファージ、または樹状細胞のような他の貪食細胞などの細胞で生じる。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載されるマクロファージサブタイプなどのマクロファージサブタイプである。例えば、マクロファージは、組織常駐マクロファージ(TAM)または血流中の循環単球に由来するマクロファージであり得る。
【0395】
いくつかの実施形態では、骨髄細胞炎症性表現型を調節することは、異常な単球の遊走及び増殖、組織に常在するマクロファージの非制御性の増殖、非制御性の炎症誘発性マクロファージ、非制御性の抗炎症性マクロファージ、組織における炎症誘発性及び抗炎症性マクロファージ亜集団の不均衡な分布、疾患状態における単球及びマクロファージの異常に取り入れられた活性化状態、調節された細胞傷害性T細胞活性化及び機能、治療に対するがん細胞の抵抗性の克服、ならびに免疫チェックポイント療法などの免疫療法に対するがん細胞の感受性の調節など、所望の調節された免疫応答がもたらされる。いくつかの実施形態では、かかる表現型を逆転させる。
【0396】
単球及びマクロファージに関連する疾患を治療及び/または予防するための方法は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ(例えば、対象への投与)のいずれかで、本発明に包括される薬剤及び組成物と細胞を接触させることを含み、薬剤及び組成物は、単球及びマクロファージの遊走、動員、分化及び分極、活性化、機能、及び/または生存を操作する。いくつかの実施形態では、本発明に包括される1つ以上のバイオマーカーを調節することは、腫瘍組織などの組織微小環境における単球及びマクロファージの増殖、動員、分極、及び/または活性化を調節(例えば、阻害または枯渇)するために使用される。
【0397】
本発明に包括される一態様では、骨髄細胞の抗炎症活性を減少させるための方法が提供される。
【0398】
本発明に包括される別の態様では、骨髄細胞の炎症誘発性活性を増加させるための方法が提供される。
【0399】
本発明に包括される別の態様では、組織内の炎症誘発性単球及びマクロファージと抗炎症性単球及びマクロファージとのバランスをとるための方法が提供される。
【0400】
本発明に包括される調節方法は、本発明に包括されるバイオマーカーの1つ以上の修飾因子と細胞を接触させることを伴い、本発明に包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)を含み、実施例に列挙される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)、もしくはその断片、または細胞に関連するバイオマーカー活性の1つ以上の活性を調節する薬剤を含む。バイオマーカー活性を調節する薬剤は、抗体またはその抗原結合断片など、本明細書に記載される薬剤であり得る。さらに、他の薬剤は、上述されるように、かかる抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて使用され得る(例えば、核酸もしくはポリペプチド、バイオマーカーの天然に存在する結合パートナー、バイオマーカーに対する抗体及び他の免疫関連標的に対する抗体の組み合わせ、少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)アゴニストもしくはアンタゴニスト、少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)アゴニストまたはアンタゴニストのペプチド模倣物、少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)ペプチド模倣物、他の低分子、または少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)核酸遺伝子発現産物に対して指向するか、もしくは模倣物など)。
【0401】
a.対象
本発明は、例えば、バイオマーカーまたはその断片の望ましくない、不十分な、もしくは異常な発現または活性を特徴とする障害など、本発明及び実施例に包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)もしくはその断片の上方または下方調節から利益を得るであろう状態または障害に罹患する個体を治療する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、薬剤(例えば、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイによって同定された薬剤)、またはバイオマーカー発現もしくは活性を調節する(例えば、上方制御または下方制御する)薬剤の組み合わせを投与することを含む。治療を必要とする対象は、本明細書にも記載されるものなど、本明細書に記載される方法に従って治療することができ、例えば、診断、予知、モニタリングなどの方法と、かかる治療方法とを組み合わせることができる(例えば、目的のバイオマーカーの発現を有することが確認された、ならびにかかる骨髄細胞を含む対象の骨髄細胞の集団の調節)。
【0402】
バイオマーカー活性の刺激は、バイオマーカーが異常に下方制御されている、及び/または増強されたバイオマーカー活性が有益な効果を有する可能性が高い状況において望ましい。同様に、バイオマーカー活性の阻害は、バイオマーカーが異常に上方制御されている、及び/または低減されたバイオマーカー活性が有益な効果を有する可能性が高い状況において望ましい。
【0403】
いくつかの実施形態では、対象は、動物である。動物はどちらの性別でもよく、発育のいずれの段階でも可能である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物などの脊椎動物である。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの家畜化動物である。いくつかの実施形態では、対象は、イヌまたはネコなどのコンパニオンアニマルである。いくつかの実施形態では、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの家畜動物である。いくつかの実施形態では、対象は動物園の動物である。いくつかの実施形態では、対象は、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、イヌ、ブタ、または非ヒト霊長類などの研究動物である。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子操作された動物である。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス及びトランスジェニックブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、サカナまたは爬虫類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、がんの動物モデルである。例えば、動物モデルは、ヒト由来であるがんの同所性異種移植動物モデルであり得る。
【0404】
本発明により包含される方法のいくつかの実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/または免疫療法などの治療を受けていない。いくつかの実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/または免疫療法などの治療を受けている。
【0405】
いくつかの実施形態では、対象は、がん性または前がん性組織を除去するための手術を受けている。いくつかの実施形態では、がん性組織は、除去されておらず、例えば、がん性組織は、生命に必須の組織など、身体の手術不能な領域、または外科的処置が患者に害を及ぼすかなりのリスクを引き起こす領域に位置し得る。
【0406】
いくつかの実施形態では、対象またはその細胞は、免疫チェックポイント阻害剤療法に抵抗性であるなど、関連性のある療法に抵抗性である。例えば、本発明に包括される1つ以上のバイオマーカーを調節することにより、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する抵抗性を克服することができる。
【0407】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーの望ましくない欠如、存在、または異常な発現及び/または活性を有するとして同定されているなど、本明細書に記載される組成物及び方法による調節を必要とする。
【0408】
いくつかの実施形態では、対象は、腫瘍または腫瘍微小環境における細胞の質量、体積、及び/または数の少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、もしくはそれ以上、または少なくとも約5%~少なくとも約20%など、その間の任意の範囲を表現するマクロファージが浸潤している固形腫瘍を有する。かかる細胞は、1型マクロファージ、M1マクロファージ、TAM、CD11bもしくはCD14、またはCD11及びCD14の両方を発現する骨髄細胞など、本明細書の他の実施形態において有用であると記載され得る。
【0409】
本発明に包括される方法を使用して、本明細書に記載されるものなどの対象における多くの異なるがんのがん療法(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)に対する応答性を決定することができる。
【0410】
さらに、これらの調節剤はまた、所望の活性をさらに調節するために、併用療法で投与することができる。例えば、IL-4、IL-4Rα、IL-13、及びCD40を標的とする薬剤ならびに組成物を使用して、骨髄細胞分化及び/または分極を調節することができる。CD11b、CSF-1R、CCL2、ニューロフィリン-1、及びANG-2を標的とする薬剤ならびに組成物を使用して、組織へのマクロファージ動員を調節することができる。IL-6、IL-6R、及びTNF-αを標的とする薬剤ならびに組成物を使用して、マクロファージ機能を調節することができる。追加の薬剤には、化学療法剤、ホルモン、抗血管新生剤、放射性標識化合物、または外科手術、凍結療法、及び/または放射線療法を伴うものが含まれるが、これらに限定されない。前述の治療法は、従来の治療の前または後のいずれかで、他の形態の従来の治療(例えば、当業者に周知であるがんの標準治療)と組み合わせて投与することができる。例えば、これらの調節剤は、治療的に有効な用量の化学療法剤と共に投与することができる。別の実施形態では、これらの調節剤は、化学療法剤と組み合わせて投与されて、化学療法剤の活性及び有効性を増強する。米国医師用卓上参考書(PDR)は、様々ながんの治療に使用されてきた化学療法剤の投与量を開示している。治療的に有効なこれらの前述の化学療法薬の投薬レジメン及び投与量は、処置される特定の黒色腫、疾患の程度、及び当業者に周知である他の因子に依存することになり、医師により決定され得る。
【0411】
b.がん治療
いくつかの実施形態では、本発明に包括される薬剤は、がんを治療するために使用される。例えば、本発明は、骨髄細胞の前腫瘍機能(すなわち、腫瘍形成能)を低減するための方法、及び/または骨髄細胞の抗腫瘍機能を増加させるための方法を提供する。いくつかの特定の実施形態では、本発明に包括される方法は、1)腫瘍関連マクロファージ(TAM)の動員及び分極、2)腫瘍血管新生、3)腫瘍増殖、4)腫瘍細胞分化、5)腫瘍細胞生存、6)腫瘍浸潤及び転移、7)免疫阻害、ならびに8)免疫抑制性の腫瘍微小環境を含む、マクロファージの腫瘍促進機能のうちの少なくとも1つを低減することができる。
【0412】
がん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)または治療の組み合わせ(例えば、少なくとも1つの免疫療法と組み合わせた、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)を使用して、がん細胞と接触させ、及び/またはがん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)に応答する可能性が高いと示される対象などの所望の対象に投与することができる。別の実施形態では、かかるがん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)は、対象ががん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)に応答する可能性が低いと示されると回避することができ、標的化及び/または非標的化がん治療などの代替的な治療レジメンを施すことができる。併用療法も企図されており、例えば、1つ以上の化学療法剤及び放射線、1つ以上の化学療法剤及び免疫療法、または1つ以上の化学療法剤、放射線、及び化学療法を含むことができ、それらの各組み合わせは、がん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)を伴うか、もしくは伴わない場合がある。
【0413】
本発明に包括されるバイオマーカーを調節するのに有用な代表的な例示的な薬剤(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)が上述される。以下でさらに記載するように、抗がん剤は、生物療法的抗がん剤(例えば、インターフェロン、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンγなど)、ワクチン、造血成長因子、モノクローナル血清療法、免疫刺激剤及び/または免疫調節剤(例えば、IL-1、2、4、6、及び/または12)、免疫細胞増殖因子(例えば、GM-CSF)、及び抗体(例えば、トラスツズマブ、T-DM1、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブなど)、ならびに化学療法剤が包括される。
【0414】
「標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用してそれによってがんを治療する薬剤の投与を指す。例えば、免疫チェックポイント阻害剤の阻害に関する標的療法は、本発明により包含される方法と組み合わせて有用である。
【0415】
「免疫療法」または「免疫療法(複数可)」という用語は、典型的に、有益な方法で免疫応答を調節するための任意の戦略を指し、免疫応答を誘導、増強、抑制、またはさもなければ修飾すること、ならびにがんなどの疾患と戦うために対象の免疫系の特定の部分を使用する任意の治療を含む方法により、疾患に罹患する、または罹患もしくは再発のリスクがある対象を治療することを包含する。対象自身の免疫系は、その目的のための1つ以上の薬剤の投与の有無にかかわらず、刺激(または抑制)される。免疫応答を惹起または増幅するように設計された免疫療法は、「活性化免疫療法」と称される。免疫反応を低減または抑制するように設計された免疫療法は、「抑制免疫療法」と称される。いくつかの実施形態では、免疫療法は、がん細胞などの目的の細胞と特異的である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、免疫系細胞と選択的に相互作用しないが、免疫系機能を調節する薬剤の投与を指す「非標的」であり得る。非標的療法の代表的な例には、化学療法、遺伝子治療、及び放射線療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0416】
免疫療法のいくつかの形態は、例えば、がんワクチン及び/または感作された抗原提示細胞の使用を含むことができる標的療法である。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞を無傷のまま残し、がん細胞に感染して溶解することができるウイルスであり、がん治療において潜在的に有用であり得る。腫瘍溶解性ウイルスの複製は、腫瘍細胞の破壊を促進し、腫瘍部位での用量増幅も引き起こす。それらはまた、抗がん遺伝子のベクターとして作用することができ、それらを腫瘍部位に特異的に送達することを可能にする。免疫療法は、がん抗原または疾患抗原に対して指向する予め形成された抗体の投与によって達成される、宿主の短期保護のための受動免疫を含み得る(例えば、任意に化学療法剤または毒素に連結されたモノクローナル抗体の腫瘍抗原への投与)。例えば、抗VEGF及びmTOR阻害剤は、腎細胞癌の処置に有効であることが公知である。免疫療法はまた、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープを使用することに焦点を当てることができる。代替的に、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍もしくはがんの開始、進行、及び/または病状に関連する生体分子を選択的に調節することができる。同様に、免疫療法は、細胞系療法の形態をとることができる。例えば、養子細胞免疫療法は、T細胞などの免疫細胞を使用する免疫療法の一種であり、患者のがんに対して自然または遺伝子操作された反応性を有するものが生成され、次にがん患者に戻される。多数の活性化された腫瘍特異的T細胞の注入は、がんの完全で永続的な退行を誘導し得る。
【0417】
免疫療法は、がん抗原または疾患抗原に対して指向する予め形成された抗体の投与によって達成される、宿主の短期保護のための受動免疫を含み得る(例えば、任意に化学療法剤または毒素に連結されたモノクローナル抗体の腫瘍抗原への投与)。免疫療法はまた、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープを使用することに焦点を当てることができる。代替的に、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍もしくはがんの開始、進行、及び/または病状に関連する生体分子を選択的に調節することができる。
【0418】
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫刺激分子のアゴニスト、免疫阻害分子のアンタゴニスト、ケモカインのアンタゴニスト、T細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニスト、T細胞活性化を阻害するサイトカインに拮抗または阻害する薬剤、及び/またはB7ファミリーの膜結合タンパク質と結合する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫阻害分子のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、サイトカイン、ケモカイン、及び成長因子、例えば、腫瘍関連サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ならびにIL-10、TGF-β、及びVEGFを含む他の可溶性因子の阻害効果を中和する中和抗体の薬剤であり得る。
【0419】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、1つ以上の免疫チェックポイントの阻害剤を含む。「免疫チェックポイント」という用語は、CD4+及び/またはCD8+T細胞の細胞表面上にある分子のグループを指し、抗腫瘍免疫の下方調節または阻害など、抗がん免疫応答を調節することによって免疫応答を微調整する。免疫チェックポイントタンパク質は、当該技術分野で周知であり、これらに限定されないが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD200R、CD160、gp49B、PIR-B、KRLG-1、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3(CD223)、IDO、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン、及びA2aR(例えば、WO2012/177624を参照されたい)が含まれる。この用語はさらに、生物学的に活性なタンパク質断片、ならびに全長免疫チェックポイントタンパク質及びその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を包含する。いくつかの実施形態では、用語は、本明細書で提供される相同性の記載に従う任意の断片をさらに包含する。
【0420】
いくつかの免疫チェックポイントは、免疫系の機能(免疫応答など)を阻害、下方制御、または抑制する分子(例えば、タンパク質)を包括する「免疫阻害免疫チェックポイント」である。例えば、CD274またはB7-H1としても知られるPD-L1(プログラムされたデスリガンド1)は、T細胞の増殖を減少させ、免疫系を抑制する阻害シグナルを伝達するタンパク質である。CD152としても知られるCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、抗原提示細胞の表面上にあるタンパク質受容体であり、免疫応答を下方制御する免疫チェックポイント(「オフ」スイッチ)として機能する。HAVCR2としても知られるTIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3)は、マクロファージ活性化を制御する免疫チェックポイントとして機能する細胞表面タンパク質である。VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)は、T細胞エフェクター機能を阻害し、末梢性免疫寛容を維持する免疫チェックポイントとして機能するI型膜貫通タンパク質である。LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)は、T細胞の増殖、活性化、及び恒常性を負に制御する免疫チェックポイント受容体である。BTLA(B及びTリンパ球アテニュエータ)は、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)との相互作用を介してT細胞阻害を示すタンパク質である。KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)は、NK細胞で発現するタンパク質のファミリーであり、少数のT細胞であり、NK細胞の細胞傷害性活性を抑制する。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、アルギナーゼ(ARG)及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、T細胞及びNK細胞を抑制する免疫チェックポイントタンパク質の活性を遮断できる阻害剤などの免疫抑制酵素と特異的な薬剤であり得、免疫抑制性腫瘍微小環境におけるアミノ酸アルギニン及びトリプトファンの異化作用を変更する。阻害剤には、これらに限定されないが、ARG及び一酸化窒素シンターゼ(NOS)を同時に遮断する、ARGを発現するM2マクロファージを標的とするN-ヒドロキシ-L-Arg(NOHA)、ニトロアスピリン、またはシルデナフィル(Viagra(登録商標))、及び1-メチル-トリプトファンなどのIDO阻害剤が含まれる。この用語はさらに、生物学的に活性なタンパク質断片、ならびに全長免疫チェックポイントタンパク質及びその生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸を包含する。いくつかの実施形態では、用語は、本明細書で提供される相同性の記載に従う任意の断片をさらに包含する。
【0421】
対照的に、他の免疫チェックポイントは、免疫系の機能(例えば、免疫応答)を活性化、刺激、または促進する分子(例えば、タンパク質)を含む「免疫刺激性」である。いくつかの実施形態では、免疫刺激性分子は、CD28、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、CD27、CD70、CD40、CD40L、CD122、CD226、CD30、CD30L、OX40、OX40L、HVEM、BTLA、GITR及びそのリガンドGITRL、LIGHT、LTβR、LTαβ、ICOS(CD278)、ICOSL(B7-H2)、ならびにNKG2Dである。CD40(表面抗原分類40)は、抗原提示細胞上に見られる共刺激タンパク質であり、それらの活性化に必要である。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4)またはCD134としても知られるOX40は、T細胞死を防ぎ、その後サイトカイン産生を増加させることにより、活性化後の免疫応答の維持に関与する。CD137は、腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞を共刺激して増殖及びT細胞の生存を促進する。CD122は、インターロイキン2受容体(IL-2)タンパク質のサブユニットであり、未成熟T細胞の制御性、エフェクター、またはメモリーT細胞への分化を促進する。CD27は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、共刺激免疫チェックポイント分子として機能する。CD28(表面抗原分類28)は、T細胞上に発現するタンパク質であり、T細胞活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを提供する。TNFRSF18及びAITRとしても知られるGITR(糖質コルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質)は、制御性T細胞によって維持される優性免疫自己寛容において重要な役割を果たすタンパク質である。CD278としても知られるICOS(誘導性T細胞共刺激因子)は、活性化T細胞上で発現し、T細胞シグナル伝達及び免疫応答で役割を果たすCD28スーパーファミリー共刺激分子である。
【0422】
免疫チェックポイント及びそれらの配列は、当該技術分野で周知であり、代表的な実施形態を以下でさらに記載する。免疫チェックポイントは、典型的に、阻害性受容体及び天然結合パートナー(例えば、リガンド)の対に関連する。例えば、PD-1ポリペプチドは、免疫細胞に阻害性シグナルを伝達することにより免疫細胞エフェクター機能を阻害することが可能な阻害性受容体であるか、または例えば、可溶性の単量体形態で存在する場合、免疫細胞の共刺激(例えば、競合阻害による)を促進することが可能である。好ましいPD-1ファミリーメンバーは、PD-1と配列同一性を共有し、1つ以上のB7ファミリーメンバー、例えば、B7-1、B7-2、PD-1リガンド、及び/または抗原提示細胞上の他のポリペプチドと結合する。「PD-1活性」という用語は、例えば、抗原提示細胞上の天然のPD-1リガンドと結合することによって、活性化された免疫細胞における阻害シグナルを調節するPD-1ポリペプチドの能力を含む。免疫細胞における阻害性シグナルの調節は、免疫細胞の増殖及び/または免疫細胞によるサイトカイン分泌の調節をもたらす。したがって、「PD-1活性」という用語には、PD-1ポリペプチドとその天然のリガンド(複数可)とが結合する能力、免疫細胞阻害シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力が含まれる。「PD-1リガンド」という用語は、PD-1受容体の結合パートナーを指し、PD-L1(Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027-1034)、及びPD-L2(Latchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261)の両方が含まれる。「PD-1リガンド活性」という用語には、PD-1リガンドポリペプチドとその天然の受容体(複数可)(例えば、PD-1またはB7-1)とが結合する能力、免疫細胞阻害シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力が含まれる。
【0423】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント療法」という用語は、それらの核酸及び/またはタンパク質を阻害するなど、免疫阻害性免疫チェックポイントを阻害する薬剤の使用を指す。1つ以上のかかる免疫チェックポイントの阻害は、阻害シグナル伝達を遮断または中和して、それにより、がんをより効果的に治療するために免疫応答を上方制御することができる。免疫チェックポイントを阻害するのに有用な例示的な薬剤には、免疫チェックポイントタンパク質もしくはその断片と結合及び/または不活性化または阻害することのいずれかができる抗体、低分子、ペプチド、ペプチド模倣体、天然リガンド、及び天然リガンドの誘導体、ならびに免疫チェックポイント核酸もしくはその断片の発現及び/または活性を下方制御することができるRNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマーなどが含まれる。免疫応答を上方制御するための例示的な薬剤には、タンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質に指向する抗体、1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質の非活性化形態(例えば、ドミナントネガティブポリペプチド)、1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する低分子またはペプチド、その天然の受容体(複数可)と結合する融合タンパク質(例えば、抗体または免疫グロブリンのFc部分と融合した免疫チェックポイント阻害タンパク質の細胞外部分)、免疫チェックポイント核酸の転写または翻訳を遮断する核酸分子などが含まれる。かかる薬剤は、1つ以上の免疫チェックポイントとその天然の受容体(複数可)(例えば、抗体)との間の相互作用を直接的に遮断して、阻害性シグナル伝達を防ぎ、免疫応答を上方制御することができる。代替的に、薬剤は、1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を間接的に遮断して、阻害性シグナル伝達を防ぎ、免疫応答を上方制御することができる。例えば、安定化された細胞外ドメインなどの免疫チェックポイントタンパク質リガンドの可溶性バージョンは、その受容体と結合して、受容体の有効濃度を間接的に低減させて適切なリガンドと結合することができる。一実施形態では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び/または抗PD-L2抗体は、単独または組み合わせのいずれかで、免疫チェックポイントを阻害するために使用される。PD-1経路を遮断するために使用される治療薬には、アンタゴニスト性抗体及び可溶性PD-L1リガンドが含まれる。PD-1及びPD-L1/2阻害経路に指向するアンタゴニスト剤は、これらに限定されないが、PD-1またはPD-L1/2に指向するアンタゴニスト性抗体(例えば、米国特許第8,008,449号に開示される17D8、2D3、4H1、5C4(ニボルマブまたはBMS-936558としても即知である)、4A11、7D3及び5F4と、AMP-224、ピジリズマブ(CT-011)、ペンブロリズマブならびに米国特許第8,779,105号、第8,552,154号、第8,217,149号、第8,168,757号、第8,008,449号、第7,488,802号、第7,943,743号、第7,635,757号、及び第6,808,710号に開示される抗体を含むことができる。同様に、追加の代表的なチェックポイント阻害剤は、これらに限定されないが、阻害性調節因子CTLA-4(抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4)に指向する抗体、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ(完全ヒト化)、抗CD28抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA-4抗体断片、重鎖抗CTLA-4断片、軽鎖抗-CTLA-4断片、ならびに米国特許第8,748,815号、第8,529,902号、第8,318,916号、第8,017,114号、第7,744,875号、第7,605,238号、第7,465,446号、第7,109,003号、第7,132,281号、第6,984,720号、第6,682,736号、第6,207,156号、及び第5,977,318号、ならびにEP特許第1212422号、米国特許公開第2002/0039581号、及び同第2002/086014号、ならびにHurwitz et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:10067-10071に開示されるものなどの他の抗体を含むことができる。
【0424】
PD-1、PD-L1、PD-L2、及びCTLA-4について例示された免疫チェックポイント活性、リガンド、遮断などの代表的な定義は、一般に他の免疫チェックポイントに適用される。
【0425】
「非標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用しないが、がんを治療する薬剤の投与を指す。非標的療法の代表的な例には、化学療法、遺伝子治療、及び放射線療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0426】
一実施形態では、化学療法が使用される。化学療法には、化学療法剤の投与が含まれる。かかる化学療法剤は、これらに限定されないが、白金化合物、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド、及び毒素、ならびにその合成誘導体の化合物群の中から選択されるものであり得る。例示的な薬剤には、これらに限定されないが、アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、及びメルファラン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU))、アルキルスルホン酸(例えば、ブスルファン及びトレオスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、シスプラチン、トレオスルファン、及びトロホスファミド;植物アルカロイド:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキソール;DNAトポイソメラーゼ阻害剤:テニポシド、クリスナトール、及びマイトマイシン;葉酸拮抗薬:メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びヒドロキシ尿素;ピリミジン類似体:5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン、及びシトシンアラビノシド;プリン類似体:メルカプトプリン及びチオグアニン;DNA代謝拮抗剤:2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、グリシン酸アフィジコリン、及びピラゾロイミダゾール;ならびに有糸分裂阻害剤:ハリコンドリン、コルヒチン、及びリゾキシンが含まれる。同様に、追加の例示的な薬剤には、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、タキソイド(例えば、パクリタキセルまたは同等のパクリタキセル、例えば、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン)、ポリグルタミン酸結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT-2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(Angiopep-2が3分子のパクリタキセルと結合)、パクリタキセル-EC-1(パクリタキセルがerbB2認識ペプチドEC-1と結合)、及びグルコース結合パクリタキセル、例えば、2’-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルコハク酸;ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィリン(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、マイトマイシンC)、代謝拮抗剤、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、トリメトレキサート、エダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、及びEICAR)、リボヌクロチドレダクターゼ阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素及びデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド、テガフル-ウラシル、カペシタビン)、シタラビン類似体(例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド、及びフルダラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB 1089、CB 1093、及びKH 1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ATPase阻害剤(例えば、タプシガルジン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セディラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR-258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、及び/またはXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(ベルケイド))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD-001)、リダフォロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF-4691502(Pfizer)、GDC0980(Genentech)、SF1126(Semafoe)、OSI-027(OSI))、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモライド、カルミノマイシン、アミノプテリン、ならびにヘキサメチルメラミンが含まれる。1つ以上の化学療法剤(例えば、FLAG、CHOP)を含む組成物も使用することができる。FLAGには、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)、及びG-CSFが含まれる。CHOPには、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、及びプレドニゾンが含まれる。別の実施形態では、PARP(例えば、PARP-1及び/またはPARP-2)阻害剤が使用され、かかる阻害剤は当技術分野で周知である(例えば、オラパリブ、ABT-888、BSI-201、BGP-15(N-Gene Research Laboratories,Inc.);INO-1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.);PJ34(Soriano et al.,2001;Pacher et al.,2002b);3-アミノベンザミド(Trevigen);4-アミノ-1,8-フタルイミド;(Trevigen);6(5H)-フェナントリジノン(Trevigen);ベンズアミド(米国特許再第36,397号);及びNU1025(Bowman et al.)。作用機序は一般に、PARP阻害剤がPARPと結合してその活性を減少させる能力に関連する。PARPは、ベータニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からニコチンアミド及びポリADPリボース(PAR)への変換を触媒する。ポリ(ADP-リボース)及びPARPの両方が、転写、細胞増殖、ゲノム安定性、及び発がんの制御に関連している(Bouchard et.al.(2003)Exp.Hematol.31:446-454)、Herceg(2001)Mut.Res.477:97-110)。ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ1(PARP1)は、DNA一本鎖切断(SSB)の修復における重要な分子である(de Murcia J.et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:7303-7307、Schreiber et al.(2006)Nat.Rev.Mol.Cell Biol.7:517-528、Wang et al.(1997)Genes Dev.11:2347-2358)。PARP1機能の阻害によるSSB修復のノックアウトは、DNA二本鎖切断(DSB)を誘導し、相同性指向のDSB修復に欠陥があるがん細胞で合成致死性を引き起こし得る(Bryant et al.(2005)Nature 434:913-917、Farmer et al.(2005)Nature 434:917-921)。化学療法剤の前述の例は例示的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0427】
別の実施形態では、放射線療法が使用される。放射線療法で使用される放射線は、電離放射線であり得る。放射線療法は、ガンマ線、X線、または陽子線でもあることができる。放射線療法の例には、体外ビーム放射線療法、放射性同位元素(I-125、パラジウム、イリジウム)の間質移植、ストロンチウム89などの放射性同位元素、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、及び/または全腹部及び骨盤放射線療法が含まれるが、これに限定されない。放射線療法の一般的な概要については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、体外ビーム放射線または遠隔療法として施すことができ、この場合放射線は遠隔源から向けられる。放射線処置は、内部療法または近接照射療法として施すこともでき、この場合放射線源はがん細胞または腫瘍塊に近接する体内に配置される。ヘマトポルフィリン及びその誘導体、ベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシヒポクレリンA、ならびに2BA-2-DMHAなどの光増感剤の投与を含む光線力学療法の使用も含まれる。
【0428】
別の実施形態では、ホルモン療法が使用される。ホルモン治療的処置は、例えば、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、酢酸リュープロリド(LUPRON)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成及びプロセシングの阻害剤、ならびにステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オールトランスレチノイン酸(ATRA))、ビタミンD3類似体、抗ゲスタゲン剤(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、または抗アンドロゲン剤(例えば、酢酸シプロテロン)を含むことができる。
【0429】
別の実施形態では、身体組織が高温(最大106°F)に曝露される手順である温熱療法が使用される。熱は、細胞に損傷を与えるか、またはそれらの生存のために必要な物質をそれらから欠乏させることで、腫瘍を縮小させるのを助ける。温熱療法は、外部及び内部の加熱デバイスを使用する、局所、領域、及び全身の温熱療法であり得る。温熱療法は、ほとんどの場合、その有効性を増強しようと試みるために療法の他の形態(例えば、放射線療法、化学療法、及び生物学的療法)と一緒に使用される。局所温熱療法は、腫瘍などの非常に小さな領域に加えられる熱を指す。領域は、身体の外側のデバイスから腫瘍に向けられた高周波で外部から加熱することができる。内部加熱を達成するために、細い加熱されたワイヤーまたは温水で満たされた中空のチューブ、埋め込まれたマイクロ波アンテナ、及び高周波電極など、いくつかの種類の滅菌プローブの1つを使用できる。局所温熱療法では、器官または四肢が加熱される。高エネルギーを生成する磁石及びデバイスを、加熱される領域を覆うように配置する。灌流と称される別のアプローチでは、患者の血液の一部を取り出し、加熱し、次に内部加熱するべき領域に送り込む(灌流する)。全身加熱は、身体の至る所に拡散している転移性がんを処置するために使用される。これは、温水ブランケット、ホットワックス、誘導コイル(電気ブランケットにおけるもののような)、またはサーマルチャンバ(大型インキュベータに類似)を使用して実現され得る。温熱療法は、放射線の副作用または合併症の顕著な増加を引き起こさない。しかし、皮膚に直接的に熱を加えると、処置を受けた患者の約半数において不快感またはさらには重大な局所的な痛みを引き起こし得る。また、一般的に急速に治癒する水疱を引き起こし得る。
【0430】
さらに別の実施形態では、光線力学療法(PDT、光放射線療法、光線療法、または光化学療法とも称される)が、いくつかの種類のがんの治療に使用される。これは、光増感剤として知られる特定の化学物質が、特定の種類の光に曝露された場合に単細胞生物を殺傷することができるという発見に基づく。PDTは、固定周波数のレーザー光を光増感剤と組み合わせて使用することにより、がん細胞を破壊する。PDTでは、光増感剤は血流中に注入され、全身の細胞によって吸収される。この作用物質は、正常細胞よりも長い期間にわたってがん細胞に留まる。処置されたがん細胞がレーザー光に曝露されると、光増感剤が光を吸収し、処置されたがん細胞を破壊する活性型の酸素を生成する。光増感剤の大部分が健康な細胞を離れているが、がん細胞に依然として存在している場合に生じるように、露光のタイミングを慎重に設定する必要がある。PDTで使用されるレーザー光は、光ファイバー(非常に細いガラスストランド)を通して向けることができる。光ファイバーは、適切な量の光を照射するために、がんの近くに配置される。光ファイバーは、肺癌の治療のために気管支鏡を通して肺に向けることができ、または食道癌の治療のために内視鏡を通して食道に向けることができる。PDTの利点は、健康な組織への損傷を最小限に抑えることである。しかしながら、現在使用されているレーザー光は、約3センチメートル(1/8インチ強)を超える組織を通過できないため、PDTは主に、皮膚上またはそのすぐ下、または内臓の内層の腫瘍を治療するために使用される。光線力学療法は、治療後6週間以上、皮膚及び目を光に敏感にする。患者は、直射日光及び明るい室内光を少なくとも6週間は避けるように助言される。患者が屋外に出なければならない場合は、サングラスを含む保護衣類を着用する必要がある。PDTの他の一時的な副作用は、特定の領域の治療に関連しており、咳、嚥下障害、腹痛、呼吸困難、または息切れなどがある。1995年12月、米国食品医薬品局(FDA)は、閉塞を引き起こしている食道癌の症状を緩和し、レーザーだけでは十分に治療できない食道癌に対して、ポルフィマーナトリウムまたはPhotofrin(登録商標)と称される光増感剤を承認した。1998年1月、FDAは、肺癌の通常の治療が適切でない患者の初期の非小細胞肺がんの治療にポルフィマーナトリウムを承認した。国立がん研究所及び他の機関は、膀胱、脳、喉頭、及び口腔のがんを含むいくつかの種類のがんに対する光線力学療法の使用を評価するための臨床治験(調査研究)を支援している。
【0431】
さらに別の実施形態では、レーザー治療を使用して、高強度の光を利用して癌細胞を破壊する。この技術は、特に他の治療法ではがんを治癒できない場合に、出血または閉塞などのがんの症状を緩和するためによく使用される。また、腫瘍を縮小または破壊することによってがんを治療するために使用することもできる。「レーザー」という用語は、放射線の誘導放出による光増幅を表す。電球からの光などの通常の光は、多くの波長を有し、全方向に広がる。一方、レーザー光は特定の波長を有し、狭いビームに集束する。このタイプの高輝度光には多くのエネルギーが含まれる。レーザーは非常に強力で、鋼を切断したり、ダイヤモンドを成形したりするために使用できる。レーザーは、目の損傷した網膜の修復または組織の切断(メスの代わりに)など、非常に正確な外科手術にも使用できる。レーザーにはいくつかの種類があるが、医学で広く使用されているのは3種類のみである:二酸化炭素(CO)レーザー-この種類のレーザーは、深い層に浸透することなく、皮膚の表面から薄い層を取り除くことができる。この技術は、皮膚の深層まで広がっていない腫瘍及び特定の前がん状態の治療に特に有用である。従来のメス手術に代わるものとして、COレーザーはまた、皮膚をカットすることもできる。レーザーは、皮膚癌を除去するための方法で使用される。ネオジム:イットリウム-アルミニウム-ガーネット(Nd:YAG)レーザー-このレーザーからの光は、他の種類のレーザーからの光よりも組織の深層まで透過することができ、血液の急速な凝固をもたらし得る。それは光ファイバーを通して身体のアクセスしにくい部分に運ぶことができる。この種類のレーザーは、咽頭癌の治療に使用されることがある。アルゴンレーザー-このレーザーは組織の表層のみを通過できるため、皮膚科及び眼科手術に有用である。また、光線力学療法(PDT)として知られる手順で腫瘍を治療するために、感光性染料と共に使用される。レーザーには、レーザーがメスよりも正確であるような標準的な手術器具に比べていくつかの利点を有する。周囲の皮膚及び他の組織の接触がほとんどないため、切開部付近の組織が保護される。レーザーによって生成された熱は、手術部位を滅菌し、感染のリスクを低減する。レーザーの精度により切開が小さくなるため、必要な操作時間が短縮される。多くの場合、治癒時間が短縮され、レーザー熱が血管を密閉するため、出血、腫れ、瘢痕が少なくなる。レーザー手術はそれほど複雑ではない。例えば、光ファイバーを使用すると、大きな切開を行うことなく、レーザー光を身体の一部に向けることができる。より多くの手順を外来で行うことができる。レーザーは、熱で腫瘍を縮小もしくは破壊することによるか、またはがん細胞を破壊する化学物質(光増感剤と称される)を活性化することによる、がんを治療するための2つの方法で使用できる。PDTでは、光増感剤はがん細胞に保持され、光によって刺激されてがん細胞を殺傷する反応を引き起こすことができる。CO及びNd:YAGレーザーは、腫瘍を縮小または破壊するために使用される。それらは、内視鏡、膀胱などの身体の特定の領域を医師が見ることができるチューブと共に使用できる。一部のレーザーからの光は、光ファイバーを備えた柔軟な内視鏡を透過することができる。これにより、医師は、手術以外では到達できない身体の部分を確認して作業できるため、レーザービームを非常に正確に照準することができる。レーザーは低倍率の顕微鏡でも使用できるため、医師は治療部位をはっきりと見ることができる。他の機器と一緒に使用すると、レーザーシステムは直径200ミクロンという非常に細いねじの幅よりも小さい切断領域を生成できる。レーザーは、多くの種類のがんを治療するために使用される。レーザー手術は、声門(声帯)、子宮頸部、皮膚、肺、膣、外陰部、及び陰茎のがんの特定の段階の標準的な治療法である。レーザー手術は、がんを破壊するための使用に加えて、がんによって引き起こされる症状を緩和するためにも使用される(緩和ケア)。例えば、レーザーを使用して、患者の気管(気道)を塞いでいる腫瘍を縮小または破壊して、呼吸を容易にすることができる。また、結腸直腸癌及び肛門癌の緩和にも使用されることがある。レーザー誘発間質温熱療法(LITT)は、レーザー療法の最新の開発の1つである。LITTは、温熱療法と称されるがん治療と同じアイデアを使用しており、その熱は、細胞に損傷を与えるか、またはそれらが生存するために必要な物質を欠乏させることで、腫瘍を縮小させるのを助ける。この治療では、レーザーは体内の間質領域(臓器間の領域)に向けられる。次に、レーザー光が腫瘍の温度を上昇させ、がん細胞を損傷または破壊する。
【0432】
がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)による処置の期間及び/または用量は、表1に列挙されているバイオマーカーの特定の修飾因子またはそれらの組み合わせに応じて変化し得る。特定のがん治療剤の適切な処置時間は、当業者によって理解されるであろう。本発明は、各がん治療剤の最適な治療スケジュールの継続的な評価を企図しており、本発明に包括される方法によって決定される対象のがんの表現型は、最適な治療用量及びスケジュールを決定する要因である。
【0433】
2.スクリーニング方法
本発明に包括される別の態様は、スクリーニングアッセイを包括する。
【0434】
いくつかの実施形態では、骨髄細胞において本発明に包括される1つ以上のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)の量及び/または活性を調節する薬剤を選択するための方法(例えば、抗体、融合タンパク質、ペプチド、または低分子)が提供される。いくつかの実施形態では、選択された薬剤はまた、かかる骨髄細胞によって媒介される免疫応答を調節する(例えば、CD8+細胞傷害性T細胞の殺傷の調節を調節する、免疫チェックポイント療法に対するがん細胞の感受性を調節する、免疫チェックポイント療法のような抗がん療法に対する抵抗性を調節する、調節性がん治療を調節する、NK、好中球、マクロファージ細胞などの免疫細胞の遊走、動員、分化、及び/または生存を調節する)。したがって、本明細書に記載される任意の診断、予後、またはスクリーニング方法は、1つ以上のバイオマーカーの調節を確認するため、及び/または調節された免疫応答、免疫チェックポイント阻害に対する感受性などの、所望の表現型の読み出しに対する薬剤の効果を確認するために、本明細書に記載されるバイオマーカーを調節された免疫表現型などの所望の表現型の読み出しとして、ならびに本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーの量及び/または活性を調節する薬剤として使用することができる。かかる方法は、細胞系及び非細胞系アッセイを含むスクリーニングアッセイを利用することができる。
【0435】
例えば、細胞傷害性T細胞を媒介した殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する薬剤をスクリーニングするための方法であって、a)表に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を低減させる少なくとも1つの薬剤と接触した骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、b)少なくとも1つまたは複数の薬剤と接触していない対照骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、c)b)と比較してa)において細胞傷害性T細胞を媒介した殺傷及び/または免疫チェックポイント療法の有効性(細胞殺傷など)を増加させる薬剤を同定することにより、細胞傷害性T細胞を媒介した殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する薬剤を同定することと、を含む、方法が提供される。
【0436】
いくつかの実施形態では、アッセイは、免疫細胞増殖及び/またはエフェクター機能を阻害する薬剤を同定すること、または1つ以上のバイオマーカーの反対の調節効果をアッセイすることによってアネルギー、クローン欠失、及び/または消耗を誘導することを対象とする。本発明はさらに、免疫細胞増殖及び/またはエフェクター機能を阻害する方法、あるいはかかる調節を介してアネルギー、クローン欠失、及び/または消耗を誘導する方法を包含する。
【0437】
別の例では、細胞傷害性T細胞を媒介した殺傷及び/または免疫チェックポイント療法に対してがん細胞を感作する薬剤をスクリーニングするための方法であって、a)表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を低減させるように操作された骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、b)対照骨髄細胞の存在下で、がん細胞と細胞傷害性T細胞及び/または免疫チェックポイント療法とが接触することと、c)b)と比較してa)において細胞傷害性T細胞を媒介した殺傷及び/または免疫チェックポイント療法の有効性(細胞殺傷など)に対してがん細胞を感作する薬剤を同定することと、を含む、方法が提供される。
【0438】
一般に、本発明は、本発明に包括される1つ以上のバイオマーカー(例えば、表1、実施例などに列挙される標的)と結合するか、またはその活性を調節する、試験化合物などのスクリーニング剤のアッセイを包含する。一実施形態では、免疫応答を調節する薬剤を同定するための方法は、表1に列挙される1つ以上の標的を阻害する薬剤の能力を決定することを伴う。かかる薬剤には、これらに限定されないが、抗体、タンパク質、融合タンパク質、低分子、及び核酸が含まれる。
【0439】
いくつかの実施形態では、免疫応答を増強する薬剤を同定するための方法は、調節された炎症性表現型、細胞傷害性T細胞活性化及び/または活性、免疫チェックポイント療法に対するがん細胞の感受性など、候補薬剤が1つ以上のバイオマーカーを調節し、目的の免疫応答をさらに調節する能力を決定することを伴う。
【0440】
いくつかの実施形態では、アッセイは、1つ以上のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)を試験剤と接触させ、例えば、以下に記載するように、直接的または間接的なパラメータを測定することにより、バイオマーカーの量及び/または活性を調節する(例えば、上方制御または下方制御)試験剤の能力を決定することを含む、無細胞または細胞系アッセイである。
【0441】
いくつかの実施形態では、アッセイは、(a)目的の細胞(例えば、骨髄細胞)を試験剤と接触させ、1つ以上のバイオマーカーと1つ以上の天然結合パートナーとの間の結合など、1つ以上のバイオマーカーの量及び/または活性を調節する(例えば、上方制御または下方制御)試験剤の能力を決定することを含むものなどの細胞系アッセイである。ポリペプチドが互いに結合する、または相互作用する能力を決定することは、例えば、直接的な結合を測定することによって、または免疫細胞活性化のパラメータを測定することによって達成することができる。
【0442】
別の実施形態では、アッセイは、がん細胞を細胞傷害性T細胞、単球及び/またはマクロファージ、及び試験薬と接触させ、例えば、以下に記載するように、直接的にまたは間接的にパラメータを測定することにより表1に列挙される少なくとも1つの標的の量及び/または活性を調節する、及び/または調節された免疫応答を調節する試験薬剤の能力を決定することを含む、細胞系アッセイである。
【0443】
上記及び本明細書に記載される方法はまた、1つ以上のバイオマーカーの調節を確認するため、及び/または調節された免疫応答、免疫チェックポイント阻害に対する感受性などの、所望の表現型の読み出しに対する薬剤の効果を確認するために、本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーの量及び/または活性を調節することが即知である1つ以上の薬剤を試験するために適合され得る。
【0444】
直接的な結合アッセイでは、バイオマーカータンパク質(またはそれらのそれぞれの標的ポリペプチドまたは分子)を放射性同位元素または酵素標識と結合させて、複合体中の標識タンパク質または分子を検出することで結合を決定できる。例えば、標的は、125I、35S、14C、またはHで直接的または間接的のいずれかで標識することができ、放射性同位元素は、放射性放射の直接的カウントまたはシンチレーションカウントによって検出される。代替的に、標的は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識され得、酵素標識は、適切な基質の生成物への変換の決定によって検出され得る。バイオマーカーと基質との間の相互作用の決定は、標準的な結合または酵素分析アッセイを使用して行うこともできる。上記のアッセイ方法の1つ以上の実施形態では、ポリペプチドまたは分子を固定化して、タンパク質もしくは分子の一方または両方の複合体形態から非複合体形態への分離を容易にし、アッセイの自動化に適応することが望ましい。
【0445】
標的との試験薬剤の結合は、反応物を収容するのに適した任意の容器で達成することができる。かかる容器の非限定的な例には、マイクロタイタープレート、試験管、及びマイクロ遠心分離管が含まれる。本発明に包括される固定化形態の抗体はまた、多孔質、マイクロ多孔質(約1ミクロン未満の平均細孔径を有する)またはマクロ多孔質(約10ミクロンを超える平均細孔径を有する)材料、例えば、膜、セルロース、ニトロセルロース、またはガラス繊維、ビーズ、例えば、アガロースもしくはポリアクリルアミドもしくはラテックスで作製されたものなど、ディッシュ、プレート、またはウェルの表面、例えば、ポリスチレン製のものなどのような固相に結合した抗体を含めることもできる。
【0446】
例えば、直接的な結合アッセイにおいて、ポリペプチドは、放射性同位元素または酵素標識と結合することができ、その結果、ポリペプチドの相互作用及び/または結合事象などの活性は、複合体中の標識タンパク質を検出することによって決定することができる。例えば、ポリペプチドは、125I、35S、14C、またはHで直接的または間接的のいずれかで標識することができ、放射性同位元素は、放射性放射の直接的カウントまたはシンチレーションカウントによって検出される。代替的に、ポリペプチドは、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識され得、酵素標識は、適切な基質の生成物への変換の決定によって検出され得る。
【0447】
相互作用物質のいずれも標識せずに、目的のパラメータを調節する薬剤の能力を決定することもまた、本発明の範囲内である。例えば、マイクロフィジオメータは、モニターされるポリペプチドを標識することなく、ポリペプチド間の相互作用を検出するために使用できる(McConnell et al.(1992)Science257:1906-1912)。本明細書で使用される場合、「マイクロフィジオメータ」(例えば、細胞センサなど)は、光アドレス指定可能な電位差センサー(LAPS)を使用して、細胞が環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化率の変化は、化合物と受容体との間の相互作用の指標として使用できる。
【0448】
いくつかの実施形態では、特定のポリペプチドのセット間の相互作用に拮抗する遮断剤(例えば、抗体、融合タンパク質、ペプチド、または小分子)の能力を決定することは、ポリペプチドのセットの1つ以上のメンバーの活性を決定することによって達成することができる。例えば、タンパク質及び/または1つ以上の天然結合パートナーの活性は、細胞性セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内シグナル伝達)の誘導を検出すること、適切な基質の触媒/酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(検出可能なマーカー、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸と作動可能に連結される標的応答制御性要素を含む)の誘導を検出すること、あるいはタンパク質及び/または1つ以上の天然結合パートナーによって調節される細胞応答を検出することによって決定することができる。該ポリペプチドと結合または相互作用する遮断剤の能力を決定することは、例えば、増殖アッセイにおいて免疫細胞の共刺激もしくは阻害を調節する化合物の能力を測定することによって、またはその一部を認識する抗体と結合する該ポリペプチドの能力を妨害することによって達成することができる。
【0449】
1つ以上の天然結合パートナーとの相互作用などのバイオマーカーの量及び/または活性を調節する薬剤は、免疫細胞の増殖及び/またはエフェクター機能を阻害する能力、またはインビトロアッセイに追加した場合にアネルギー、クローンの欠失、及び/または消耗を誘導する能力によって同定することができる。例えば、細胞は、活性化受容体を介してシグナル伝達を刺激する薬剤の存在下で培養することができる。細胞活性化の多くの認識された読み出しを利用して、活性化剤の存在下で、細胞増殖またはエフェクター機能(例えば、抗体産生、サイトカイン産生、貪食作用)を測定することができる。この活性化を遮断する試験薬剤の能力は、当技術分野で即知である技術を使用して、測定される増殖またはエフェクター機能の減少をもたらす薬剤の能力を測定することによって容易に決定することができる。
【0450】
例えば、本発明に包括される薬剤は、T細胞アッセイにおいて共刺激を阻害または増強する能力について試験することができ、Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027、及びLatchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261に記載される。CD4+T細胞は、ヒトPBMCから単離し、活性化抗CD3抗体で刺激され得る。T細胞の増殖は、Hチミジン取り込みによって測定することができる。アッセイは、アッセイにおけるCD28共刺激の有無にかかわらず実行できる。同様のアッセイは、Jurkat T細胞及びPBMCからのPHA芽球を使用して実行できる。
【0451】
代替的に、本発明に包括される薬剤は、1つ以上のバイオマーカーの調節に応答して、免疫細胞によって産生されるか、またはその産生が免疫細胞において増強または阻害されるサイトカインの細胞産生を調節する能力について試験することができる。目的の免疫細胞によって放出される指標となるサイトカインは、ELISAによって、またはサイトカインを遮断する抗体が免疫細胞の増殖またはサイトカインによって誘導される他の細胞型の増殖を阻害する能力によって同定できる。例えば、IL-4 ELISAキットは、Genzyme(Cambridge MA)から入手可能であり、IL-7遮断抗体も同様である。IL-9及びIL-12に指向する遮断抗体は、Genetics Institute(Cambridge、MA)から入手可能である。インビトロ免疫細胞共刺激アッセイはまた、1つ以上のバイオマーカーの調節によって調節することができるサイトカインを同定するための方法で使用することができる。例えば、共刺激時に誘導される特定の活性、例えば免疫細胞増殖が、既知のサイトカインに指向する遮断抗体の追加によって阻害できない場合、その活性は、未知のサイトカインの作用に起因し得る。共刺激に続いて、このサイトカインは従来の方法によって培地から精製することができ、その活性は免疫細胞増殖を誘導するその能力によって測定される。寛容性の誘導の役割を果たすことができるサイトカインを同定するために、上述のようなインビトロT細胞共刺激アッセイを使用することができる。いくつかの事例では、T細胞は一次活性化シグナルが付与され、選択されたサイトカインと接触するが、共刺激シグナルは付与されない。免疫細胞を洗浄して静止させた後、細胞は一次活性化シグナル及び共刺激シグナルの両方で再負荷される。免疫細胞が応答しない場合(例えば、サイトカインの増殖または産生)、それらは寛容化されており、サイトカインは寛容の誘導を妨げていない。しかし、免疫細胞が応答する場合、寛容の誘導はサイトカインによって妨げられている。寛容の誘導を防ぐことができるこれらのサイトカインは、移植レシピエントまたは自己免疫疾患を有する対象において寛容を誘導するためのより効率的な手段として、Bリンパ球抗原を遮断する試薬と組み合わせてインビボでの遮断の標的とすることができる。
【0452】
いくつかの実施形態では、本発明に包含されるアッセイは、ポリペプチド及び1つ以上の天然結合パートナーまたはその生物学的活性部分を試験薬剤と接触させ、ポリペプチドと1つ以上の天然結合パートナーまたはその生物学的活性部分との間の相互作用を調節する試験化合物の能力を決定することを含む、バイオマーカー及び/または1つ以上の天然結合パートナー間の相互作用を調節する薬剤をスクリーニングするための無細胞アッセイである。試験化合物の結合は、上述のように直接的または間接的に決定することができる。一実施形態では、アッセイは、ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分をその結合パートナーと接触させ、アッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、試験化合物がアッセイ混合物中のポリペプチドと相互作用する能力を決定することを含み、ポリペプチドと相互作用する試験化合物の能力を決定することは、結合パートナーと比較して、ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分と優先的に結合する試験化合物の能力を決定することを含む。
【0453】
いくつかの実施形態では、細胞系または無細胞アッセイのいずれの場合でも、試験剤をさらにアッセイして、それが、ポリペプチドと他の結合パートナーを伴う1つ以上の天然結合パートナーとの間の結合及び/または相互作用の活性に影響を与えるかを決定する。他の有用な結合分析方法には、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)の使用が含まれる(Sjolander and Urbaniczky(1991)Anal.Chem.63:2338-2345、及びSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699-705)。本明細書で使用される場合、「BIA」は、いかなる相互作用物質(例えば、BIAcore)を標識することなく、生体特異的相互作用をリアルタイムで研究するための技術である。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象の変化は、生物学的ポリペプチド間のリアルタイム反応の指標として使用できる。目的のポリペプチドはBIAcoreチップに固定化でき、複数の薬剤(遮断抗体、融合タンパク質、ペプチド、または低分子)を目的のポリペプチドとの結合について試験できる。BIA技術の使用例は、Fitz et al.(1997)Oncogene15:613に記載される。
【0454】
本発明に包括される無細胞アッセイは、可溶性及び/または膜結合型のタンパク質の両方の使用に適している。膜結合型タンパク質が使用される無細胞アッセイの場合、膜結合型のタンパク質が溶液中で維持されるように可溶化剤を利用することが望ましい場合がある。かかる可溶化剤の例には、非イオン性界面活性剤、例えば、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Thesit(登録商標)、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)、またはN-ドデシル=N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネートが含まれる。
【0455】
上記のアッセイ方法の1つ以上の実施形態では、いずれかのポリペプチドを固定化して、タンパク質の一方または両方の複合体形態から非複合体形態への分離を容易にし、アッセイの自動化に適応することが望ましい。試験化合物のポリペプチドとの結合は、反応物を収容するのに適した任意の容器で達成することができる。かかる容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、及びマイクロ遠心分離管が含まれる。一実施形態では、タンパク質の一方または両方がマトリックスと結合することを可能にするドメインを追加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ系ポリペプチド融合タンパク質、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させ、次に、これらを試験化合物と組み合わせ、混合物を複合体形成を助長する条件下(例えば、塩及びpHの生理学的条件で)でインキュベートされ得る。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、結合していない成分、ビーズの場合は固定化されたマトリックス、例えば上記のように直接的または間接的に決定された複合体を除去する。代替的に、複合体をマトリックスから解離させ、ポリペプチド結合または活性のレベルを標準的な技術を使用して決定することができる。
【0456】
代替的な実施形態では、目的のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)の活性を調節する試験化合物の能力を決定することは、ポリペプチドの下流で機能するポリペプチドの活性を調節する試験化合物の能力を決定することなどによって、細胞系アッセイについて上述のように達成することができる。例えば、セカンドメッセンジャーのレベルを決定することができ、適切な標的に対する相互作用物質ポリペプチドの活性を決定することができ、または適切な標的との相互作用物質の結合を前述のように決定することができる。
【0457】
本発明はさらに、上述のスクリーニングアッセイによって同定された新規薬剤に関する。したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載されるように同定された薬剤をさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載されるように同定された薬剤は、かかる薬剤による治療の有効性、毒性、または副作用を決定するために動物モデルで使用することができる。代替的に、本明細書に記載されるように同定された薬剤を動物モデルで使用して、かかる薬剤の作用機序を決定することができる。さらに、本発明は、本明細書に記載される治療のための上述のスクリーニングアッセイによって同定された新規薬剤の使用に関する。
【0458】
3.診断の使用及び分析
本発明は、目的のバイオマーカー(例えば、表1に列挙される標的)の発現、本明細書に記載される1つ以上のバイオマーカーの調節に従って調節された表現型を有することができる骨髄細胞であるか、がん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的の少なくとも1つの修飾因子)に応答する可能性が高いがんであるかなど、生物学的試料が目的の結果に関連しているかを正確に分類するための方法、システム、及びコードを部分的に提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、統計的アルゴリズム及び/または経験的データ(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的の量または活性)を使用して、がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)に関連するか、または応答しないリスクがあるとして試料(例えば、対象から)を分類するのに有用である。いくつかの実施形態では、本発明は、表1、実施例などに列挙されているものなど、本明細書に記載されるバイオマーカーの存在、欠如、及び/または調節された発現の検出に基づいて、骨髄細胞(例えば、単球、マクロファージ、M1、1型、M2、2型など)の免疫表現型状態を検出する方法を包含する。
【0459】
バイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)の量または活性を検出するための例示的な方法、したがって、試料が炎症性表現型の調節に応答する可能性が高いかまたは低いかを分類するのに有用であるがん治療などは、生物学的試料を、抗体またはその抗原結合断片のようなタンパク質結合剤、及び/またはオリゴヌクレオチドのような核酸結合剤などの、生物学的試料中のバイオマーカーの量または活性を検出することが可能な薬剤と接触させることを伴う。いくつかの実施形態では、方法は、試験対象などから生物学的試料を取得することをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬剤が使用され、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のかかる薬剤を組み合わせて(例えば、サンドイッチELISAで)または連続して使用することができる。特定の事例では、統計アルゴリズムは、単一の学習統計分類システムである。例えば、単一の学習統計分類システムを使用して、予測値または確率値、及びバイオマーカーの存在またはレベルに基づいて試料を分類することができる。単一の学習統計分類システムの使用は、典型的に、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の感受性、特異性、正の予測値、負の予測値、及び/または全体的な正確性で試料を分類する。
【0460】
他の好適な統計アルゴリズムが、当業者に周知である。例えば、学習統計分類システムは、複雑なデータセット(例えば、目的のマーカーのパネル)に適応し、かかるデータセットに基づいて決定を下すことができる機械学習アルゴリズム技術を含む。いくつかの実施形態では、分類ツリー(例えば、ランダムフォレスト)などの単一の学習統計分類システムが使用される。他の実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の学習統計分類システムの組み合わせが、好ましくはタンデムで使用される。統計的分類システムの学習の例には、これらに限定されないが、帰納的学習(ランダムフォレスト、分類及び回帰ツリー(C&RT)、ブースティングツリーなどの決定/分類ツリーなど)を使用しているもの、確率的で近似的に正しい(PAC)学習、コネクショニスト学習(例えば、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、パーセプトロン、例えば、多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワーク、ニューラルネットワークのアプリケーション、ビリーフネットワークのベイズ学習など)、強化学習(例えば、既知の環境での受動的学習、例えば、ナイーブ学習、適応動的学習、時間差学習、未知環境での受動学習、未知環境での能動学習、行動価値関数の学習、強化学習の応用など)、ならびに遺伝的アルゴリズム及び進化的プログラミングが含まれる。他の学習統計的分類子システムは、サポートベクターマシン(例えば、カーネル法)、多変量適応回帰スプライン(MARS)、レベンバーグ・マーカートアルゴリズム、ガウス-ニュートンアルゴリズム、混合ガウス、勾配降下アルゴリズム、ならびに学習ベクトル量子化(LVQ)が含まれる。特定の実施形態では、本発明に包括される方法は、試料分類結果を臨床医、例えば、腫瘍学者に送ることをさらに含む。
【0461】
いくつかの実施形態では、対象の診断に続いて、診断に基づいて治療有効量の定義された治療を個体に投与する。
【0462】
いくつかの実施形態では、方法は、対照の生物学的試料(例えば、がんを有しないか、またはがんが、がん治療に感受性である対象からの生物学的試料、寛解中の対象からの生物学的試料、またはがん治療にもかかわらず進行する、発達するがんの治療中の対象からの生物学的試料を取得することを含む。
【0463】
4.予測的医学
本発明はまた、診断アッセイ、予後アッセイ、及びモニタリング臨床試験が、それによって個体を予防的に治療するための予後(予測)目的のために使用される予測的医学の分野に関する。したがって、本発明に包括される一態様は、表1に列挙されるものなど、本明細書に記載されるバイオマーカーの存在、欠如、量、及び/または活性レベルを決定(例えば、検出)するための診断アッセイを包含し、生物学的試料(例えば、血液、血清、細胞、または組織)との関連で、それにより、がんに罹患する個体が、最初のまたは再発性のがんであろうと、がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)に応答する可能性が高いかを決定する。かかるアッセイは、予後または予測の目的で使用することができ、それにより、バイオマーカーポリペプチド、核酸の発現または活性によって特徴付けられる、または関連する障害の発症前または再発後に、個体を予防的に治療する。当業者は、任意の方法が、表1に列挙されるものなど、本明細書に記載されるバイオマーカーの1つ以上の(例えば、組み合わせ)を使用できることを理解するであろう。
【0464】
本明細書に記載の診断方法をさらに利用して、目的のバイオマーカーの発現またはその欠如に関連する障害を有するか、またはその発現に関連する障害を発症する危険性がある対象を特定することができる。本明細書で使用される場合、「異常」という用語は、正常レベルから逸脱する目的のバイオマーカーの上方調節または下方調節を含む。異常な発現または活性には、発現または活性の増加または減少、ならびに発現の正常な発達パターンまたは発現の細胞内パターンに従わない発現または活性が含まれる。例えば、異常なレベルは、バイオマーカー遺伝子もしくはその調節配列の変異、または染色体遺伝子の増幅が、目的のバイオマーカーの上方調節または下方調節を引き起こす場合を含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「望ましくない」という用語は、免疫細胞活性化などの生物学的応答に関与する望ましくない現象を含む。
【0465】
目的のバイオマーカーに関連する多くの障害は、本明細書及び少なくとも実施例でさらに記載されるように、当業者に既知である。
【0466】
先行する診断アッセイまたは以下のアッセイなど、本明細書に記載されるアッセイを利用して、目的のバイオマーカーの誤った調節に関連する障害を有するか、または発症するリスクがある対象を特定することができる。したがって、本発明は、試験試料が対象から得られ、バイオマーカーが検出される、異常または望ましくないバイオマーカー調節に関連する障害を特定するための方法を提供し、バイオマーカーポリペプチドの存在は、異常または望ましくないバイオマーカー発現及び/または活性に関連する障害を有するか、または発症するリスクがある対象のための診断である。本明細書で使用される場合、「試験試料」は、目的の対象から得られた生体試料を指す。例えば、試験試料は、腫瘍微小環境、腫瘍周囲領域、及び/または腫瘍内領域の組織病理学的スライドなどの生物学的流体(例えば、脳脊髄液もしくは血清)、細胞試料、または組織であり得る。
【0467】
さらに、本明細書に記載される予後アッセイを使用して、異常または望ましくないバイオマーカー発現及び/または活性に関連する疾患または障害を治療するための薬剤(例えば、抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、低分子、または他の薬物候補)を対象に投与できるかを決定することができる。例えば、かかる方法を使用して、対象が薬剤の1つまたは組み合わせで効果的に治療され得るかを決定し得る。したがって、本発明は、対象が、異常または望ましくないバイオマーカー発現及び/またはバイオマーカーが得られ、バイオマーカーが検出される活性に関連する障害を治療するための1つ以上の薬剤で効果的に治療され得るかを決定するための方法を提供する(例えば、バイオマーカーポリペプチドの存在量は、障害を治療するために抗体または抗原結合断片を投与され得る対象のための診断である)。
【0468】
本明細書に記載の方法は、例えば、目的のバイオマーカーを伴う疾患または病気の症状または家族歴を示す患者を診断するために、例えば、臨床現場で好都合に使用され得る、本明細書に記載の少なくとも1つの抗体試薬を含む事前にパッケージ化された診断キットを利用することによって実行され得る。
【0469】
さらに、目的のバイオマーカーが発現される任意の細胞型または組織は、本明細書に記載される予後アッセイにおいて利用され得る。
【0470】
本発明の別の態様は、異常または望ましくないバイオマーカー発現及び/または活性に関連する障害を有する個体からの生体試料における目的のバイオマーカー(例えば、バイオマーカー単独、CD11b+状態、CD14+状態などの他の目的の層別化指標のみ、またはそれらの組み合わせ)が分析され、情報が、好ましくは同様の年齢及び人種である対照(例えば、障害を有しない個体;対照は、「健康な」もしくは「正常な」個体、または所与のタイムラプス研究の初期の時点で称される場合がある)のものと比較され、会合及び/または層別分析のための本明細書に記載の組成物及び方法の使用を含む。患者及び対照の適切な選択は、関連性及び/または層別化研究の成功にとって重要である。したがって、十分に特徴付けられた表現型を有する個体のプールが極めて望ましい。疾患診断、疾患素因スクリーニング、疾患予後、薬物応答性(薬物遺伝学)決定、薬物毒性スクリーニングなどの基準が本明細書に記載される。
【0471】
異なる研究デザインは、遺伝的関連性及び/または層別化研究に使用することができる(Modern Epidemiology,Lippincott Williams & Wilkins(1998),609-622)。観察研究は、患者の応答が妨げられないように最も頻繁に実施される。第1のタイプの観察研究は、疾患の疑わしい原因が存在する人の試料と、疑わしい原因が存在しない人の別の試料を特定し、2つの試料における疾患の発症頻度を比較する。これらの試料採取された集団はコホートと呼ばれ、本研究は前向き研究である。他のタイプの観察研究は、症例対照または後ろ向き研究である。典型的な症例対照研究では、試料は、疾患の特定の症状などの目的の表現型(症例)を有する個体、及び結論が導き出される集団(標的集団)における表現型(対照)を有しない個体から収集される。次に、疾患の原因の可能性が遡及的に調査される。症例対照研究で試料を収集する時間とコストは、前向き研究のそれよりもかなり少ないため、症例対照研究は、少なくとも探索及び発見段階では、遺伝的関連研究でより一般的に使用される研究デザインである。
【0472】
すべての関連する表現型及び/または遺伝子型情報が得られた後、統計分析を実行して、対立遺伝子の存在と個体の表現型特徴との間に有意な相関があるかを決定する。好ましくは、データ検査及びクリーニングは、まず、遺伝的関連性のための統計的試験を実施する前に実施される。試料の疫学的データ及び臨床データは、当技術分野で周知である表及びグラフを伴う記述的統計によって要約され得る。データ検証は、データの完全性、一貫性のない移行、及び外れ値を確認するために実行されることが好ましい。次いで、カイ二乗検定とt検定(分布が正規でない場合のウィルコクソン順位和検定)を使用して、離散変数及び連続変数について症例と対照との間の有意差をそれぞれ確認することができる。
【0473】
遺伝的関連性試験のパフォーマンスにおける1つの可能な決定は、試験のp値がそのレベルに達したときに有意な関連性が宣言され得る有意水準の決定である。陽性のヒットがその後の確認試験で追跡される探索的分析では、例えば、未調整のp値<0.2(寛大な側の有意水準)を使用して、障害の特定の表現型特徴を有する目的のバイオマーカーのレベルの有意な会合のための仮説を生成することができる。<P値0.05(当技術分野で従来使用されている有意性レベル)が、レベルが疾患との関連性を有すると見なされるために達成されることが好ましい。同じ源のより多くの試料または異なる源の異なる試料でヒットが確認分析で追跡される場合、実験ごとのエラー率を0.05に維持しながら、過剰なヒット数を回避するために多重検定の調整が実行される。様々な種類のエラー率を制御するために、多重検定を調整するための様々な方法が存在する一方で、一般的に使用されているがかなり保守的な方法は、実験的またはファミリーワイズエラー率を制御するためのボンフェローニ補正である(Multiple comparisons and multiple tests,Westfall et al,SAS Institute(1999))。偽発見率FDRを制御するための並べ替え検定は、より強力であり得る(Benjamini and Hochberg,Journal of the Royal Statistical Society,Series B 57,1289-1300,1995,Resampling-based Multiple Testing,Westfall and Young,Wiley(1993))。多重性を制御するかかる方法は、試験が依存的であり、実験ごとのエラー率を制御するのとは対照的な偽発見率を制御するだけで十分な場合に好ましい。
【0474】
疾患の素因について遺伝的または非遺伝的な個々の危険因子が発見されると、個体が表現型及び/または遺伝子型及び他の非遺伝的危険因子に応じて存在するカテゴリー(例えば、疾患または無疾患)を予測するための分類/予測スキームが設定され得る。離散特性のためのロジスティック回帰及び連続形質のための線形回帰は、かかるタスクのための標準的な技法である(Applied Regression Analysis,Draper and Smith,Wiley(1998))。さらに、分類を設定するために他の技術も使用され得る。これらのような技法には、これらに限定されないが、異なる方法の性能を比較するために使用するのに好適な、MART、CART、ニューラルネットワーク、及び判別分析が含まれる(The Elements of Statistical Learning,Hastie,Tibshirani & Friedman,Springer(2002))。
【0475】
本発明に包括される別の態様は、表1に列挙される標的の発現または活性、及び/または目的の細胞の炎症性表現型に対する薬剤(例えば、薬物、化合物、及び低核酸系分子)の影響をモニタリングすることを包含する。これら及び他の薬剤については、以下のセクションでさらに詳細に記載する。
【0476】
5.臨床試験中の効果のモニタリング
目的のバイオマーカーポリペプチドに対する薬剤(例えば、抗体、化合物、薬物、低分子など)の影響(例えば、単球及び/またはマクロファージ炎症性表現型の調節)をモニタリングすることは、基本的な薬物スクリーニングだけでなく、臨床試験にも適用され得る。例えば、バイオマーカーポリペプチドのレベルまたは活性を調節するための、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって決定される薬剤の有効性は、本明細書に記載の抗体または断片を使用するなど、調節されたバイオマーカーポリペプチドレベルまたは活性を示す対象の臨床試験においてモニタリングすることができる。かかる臨床試験では、目的のバイオマーカーの発現または活性、及び/または目的の障害の症状またはマーカーは、特定の細胞、組織、またはシステムの表現型の「読み出し」またはマーカーとして使用され得る。
【0477】
好ましい実施形態では、本発明は、薬剤(例えば、抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、低分子、または本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって特定される他の薬物候補)を用いた対象の治療の有効性をモニタリングするための方法であって、(i)薬剤の投与前に対象から投与前の試料を得るステップと、(ii)投与前の試料中のバイオマーカーポリペプチドのレベル及び/または活性を検出するステップと、(iii)対象から1つ以上の投与後の試料を取得するステップと、(iv)投与後の試料中のバイオマーカーポリペプチドのレベル及び/または活性を検出するステップと、(v)投与前の試料中のバイオマーカーポリペプチドのレベル及び/または活性を、投与後の試料中のバイオマーカーポリペプチドのレベル及び/または活性と比較するステップと、(vi)それに応じて対象への薬剤の投与を変更するステップと、を含む、方法を提供する。免疫組織化学(IHC)などによるバイオマーカーポリペプチド分析を使用して、免疫療法などの治療を受ける患者を選択することもできる。
【0478】
当業者はまた、特定の実施形態では、本発明に包括される方法がコンピュータプログラム及びコンピュータシステムを実装することを理解するであろう。例えば、コンピュータプログラムを使用して、本明細書に記載されるアルゴリズムを実行することができる。コンピュータシステムはまた、本発明の方法を実施する際にコンピュータシステムによって使用され得る複数のバイオマーカーシグナル変化/プロファイルを含む、本発明に包括される方法によって生成されたデータを格納及び操作することができる。特定の実施形態では、コンピュータシステムは、バイオマーカー発現データを受け取り、(ii)データを保存し、(iii)本明細書に記載される任意の数の方法(例えば、適切な対照と比較した分析)でデータを比較して、がん性または前がん性組織からの有益なバイオマーカーの状態を決定する。他の実施形態では、コンピュータシステムは、(i)決定された発現バイオマーカーレベルを閾値と比較し、(ii)該バイオマーカーレベルが閾値を有意に(例えば、上または下に)調節しているかの指標、または該指標に基づく表現型を出力する。
【0479】
特定の実施形態では、かかるコンピュータシステムもまた、本発明に包括される部分として考慮される。バイオインフォマティクス及び/またはコンピュータ技術において熟練した技術分野が所有する知識に従って、本発明の分析方法を実施するために、多数の種類のコンピュータシステムを使用することができる。かかるコンピュータシステムの動作中に、いくつかのソフトウェア構成要素がメモリーにロードされ得る。ソフトウェア構成要素は、当技術分野で標準的なソフトウェア構成要素、及び本発明に特有の構成要素の両方を含むことができる(例えば、Lin et al.(2004)Bioinformatics20,1233-1240に記載のdCHIPソフトウェア、当技術分野で即知である動径基底機械学習アルゴリズム(RBM))。
【0480】
本発明に包括される方法はまた、方程式の記号入力及び使用される特定のアルゴリズムを含む処理の高レベルの仕様を可能にする数学的ソフトウェアパッケージでプログラムまたはモデル化することができ、これにより、ユーザは個々の方程式及びアルゴリズムを手続き的にプログラムする必要がない。かかるパッケージには、例えば、MathWorks(Natick,Mass.)からのMatlab(登録商標)、Wolfram Research(Champaign,Ill.)からのMathematica、MathSoft(Seattle,Wash.)からのS-Plusが含まれる。
【0481】
特定の実施形態では、コンピュータは、バイオマーカーデータを保存するためのデータベースを含む。かかる保存されたプロファイルは、後に目的の比較を実行するためにアクセス及び使用できる。例えば、対象の非がん性組織に由来する試料のバイオマーカー発現プロファイル、及び/または同じ種の関連する集団における目的の有益な遺伝子座の集団系分布から生成されたプロファイルは、保存して、後に対象のがん性組織または対象のがん性が疑われる組織に由来する試料と比較することができる。
【0482】
本明細書に記載される例示的なプログラム構造及びコンピュータシステムに加えて、他の代替的なプログラム構造及びコンピュータシステムは、当業者には容易に明らかであろう。したがって、精神または目的の範囲のいずれかで上述のコンピュータシステム及びプログラム構造から逸脱しないかかる代替的なシステムは、添付の特許請求の範囲内で理解されることを意図する。
【0483】
さらに、本明細書に記載される予後アッセイを使用して、異常なバイオマーカー発現もしくは活性に関連する疾患または障害を治療するための薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、低分子、または他の薬物候補)を対象に投与できるかを決定することができる。
【0484】
6.臨床的有効性
臨床的有効性は、当技術分野で即知である任意の方法によって測定することができる。例えば、がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)への応答は、例えば、腫瘍、治療、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法の開始後などの、がん細胞の数、腫瘍の質量、及び/または腫瘍の体積の変化などがんの任意の応答と関連する。腫瘍応答は、全身治療介入後の腫瘍のサイズが、CT、PET、マンモグラム、超音波、または触診によって測定された初期サイズ及び寸法と比較でき、腫瘍の細胞型が、組織学的に推定でき、治療の開始前に採取した腫瘍生検の細胞型と比較できる、ネオアジュバントまたはアジュバントの状況で評価することができる。応答は、生検もしくは外科的切除後の腫瘍のノギス測定または病理学的検査によって評価することもできる。応答は、腫瘍の体積または細胞型の変化率などの定量的な方法で、または半定量的なスコアリングシステム、例えば、残存するがん量(Symmans et al.,J.Clin.Oncol.(2007)25:4414-4422)、または「病理学的完全奏効」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、もしくは他の定性的基準のような定性的な方法におけるMiller-Payneスコア(Ogston et al.,(2003)Breast(Edinburgh,Scotland)12:320-327)を使用して記録され得る。腫瘍応答の評価は、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間、数日、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に実施され得る。応答評価に関する典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時、または残存腫瘍細胞及び/または腫瘍床の外科的除去時である。
【0485】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療的処置の臨床的有効性は、臨床的利益率(CBR)を測定することによって決定することができる。臨床的有益率は、完全寛解(CR)にある患者の割合、治療終了後少なくとも6ヶ月の時点で部分寛解(PR)にある患者の数及び安定した疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この式の簡略表記は、6ヶ月にわたるCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、表1に列挙されるバイオマーカーの特定の修飾因子についての治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ以上である。
【0486】
がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)への応答を評価するための追加の基準は、「生存期間」に関連しており、全生存期間としても知られる死亡までの生存期間(該死亡は、原因または腫瘍に関連するもののいずれかに関係し得ない)、「無再発生存期間」(再発という用語には、局在性及び遠隔再発の両方が含まれる)、転移のない生存期間、無疾患生存期間(疾患という用語には、がん及びそれに関連する疾患が含まれる)のすべてが含まれる。該生存の長さは、定義された開始点(例えば、診断または処置開始時点)及び終了点(例えば、死亡、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。さらに、治療の有効性の基準は、化学療法への応答、生存期間の蓋然性、所与の期間内の転移の蓋然性、及び腫瘍再発の蓋然性を含むように拡張することができる。
【0487】
例えば、適切な閾値を決定するために、1つ以上のバイオマーカーの特定の修飾因子(例えば、表1に列挙される標的)を対象の集団に施すことができ、転帰は、任意のがん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)を施す前に決定されたバイオマーカー測定値と相関させることができる。転帰の測定は、ネオアジュバント設定で与えられた治療に対する病理学的応答であり得る。代替的に、全生存期間及び無疾患生存期間などの転帰指標は、バイオマーカーの測定値が即知であるがん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)後の対象について、一定期間にわたってモニタリングすることができる。特定の実施形態では、表1に列挙される少なくとも1つのバイオマーカーを調節する薬剤の同じ用量が、各対象に投与される。関連する実施形態では、投与される用量は、本発明に包括される少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、表1に列挙される1つ以上の標的)を調節する薬剤について当技術分野で即知である標準的な用量である。対象がモニタリングされる期間は様々であり得る。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヶ月間モニタリングされ得る。がん治療(例えば、表1に列挙されるバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)の転帰に相関するバイオマーカー測定閾値は、実施例のセクションに記載されているような方法を使用して決定することができる。
【0488】
7.バイオマーカーの分析
a.試料収集及び調整
いくつかの実施形態では、対象からの試料におけるバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、所定の対照(標準)試料と比較される。対象からの試料は、通常、がん細胞または組織などの疾患組織からのものである。対照試料は、同じ対象からのものであるか、または異なる対象からのものであり得る。対照試料は、通常、正常な非疾患試料である。しかしながら、疾患のステージ分類または治療の有効性を評価するためなどのいくつかの実施形態では、対照試料は、疾患組織からのものであり得る。対照試料は、いくつかの異なる対象からの試料の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、対象からのバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、所定のレベルと比較される。この事前に決定されたレベルは、通常、定常な試料から取得される。本明細書に記載されるように、「予め決定された」バイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、例としてのみ、治療のために選択され得る対象を評価し、がん治療(例えば、表1に列挙される1つ以上のバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)への応答を評価し、及び/または併用がん治療(例えば、少なくとも1つの免疫療法の組み合わせにおける表1に列挙される1つ以上のバイオマーカーの少なくとも1つの修飾因子)への応答を評価するために使用されるバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)であり得る。予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、がんの有無にかかわらず、患者の集団において決定することができる。予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、すべての患者に等しく適用可能な単一の数値であり得るか、あるいは予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、患者の特定の亜集団に従って変化し得る。対象の年齢、体重、身長、及び他の要因は、個人の予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)に影響し得る。さらに、予め決定されたバイオマーカーの量及び/または活性は、各対象について個別に決定することができる。一実施形態では、本明細書に記載される方法で決定及び/または比較された量は、絶対測定に基づく。
【0489】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法で決定及び/または比較される量は、比率などの相対的な測定値に基づく(例えば、治療前対治療後のバイオマーカーのコピー数、レベル、及び/または活性、スパイクまたは人工の対照と比較したかかるバイオマーカー測定値、ハウスキーピング遺伝子の発現と比較したかかるバイオマーカー測定値など)。例えば、相対分析は、治療後のバイオマーカー測定と比較した治療前のバイオマーカー測定の比率に基づくことができる。治療前のバイオマーカーの測定は、がん治療の開始前にいつでも行うことができる。治療後のバイオマーカーの測定は、がん治療の開始後にいつでも行うことができる。いくつかの実施形態では、治療後のバイオマーカー測定は、がん治療の開始から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後、継続的なモニタリングのために無期限にさらに長く行われる。治療は、単独で、または免疫チェックポイント阻害剤などの他のがん薬剤と組み合わせて、表1に列挙される少なくとも1つの標的の1つ以上の修飾因子を含む治療レジメンなどのがん治療を含み得る。
【0490】
予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、任意の好適な標準であり得る。例えば、予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、患者の選定が評価されている同じまたは異なるヒトから得ることができる。一実施形態では、予め決定されたバイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)は、同じ患者の以前の評価から得ることができる。そのような様式で、患者の選定の進行を経時的にモニタリングすることができる。さらに、対照は、対象がヒトである場合、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、選択されたヒトの群の評価から得ることができる。そのような様式で、選定が評価されているヒトの選定の程度は、好適な他のヒト、例えば、目的のヒトと同様の状況にある他のヒト、例えば、類似もしくは同じ状態(複数可)に罹患する者、及び/または同じ民族群のヒトと比較することができる。
【0491】
本発明に包括されるいくつかの実施形態では、バイオマーカー量及び/または活性測定値(複数可)の予め決定されたレベルからの変化は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0倍、もしくはそれ以上、またはその間の任意の範囲(境界値を含む)である。かかるカットオフ値は、測定が治療後のバイオマーカー測定と比較した治療前のバイオマーカー測定の比率に基づくなど、相対的な変化に基づく場合にも等しく適用される。
【0492】
生物学的試料は、核酸及び/またはタンパク質を含む、体液試料、細胞試料、または組織試料を含む、患者からの様々な源から収集することができる。「体液」は、体から排泄または分泌される体液、及び通常は存在しない体液を指す(例えば、羊水、房水、胆汁、血液及び血漿、脳脊髄液、耳垢(cerumen)及び耳垢(earwax)、カウパー液または尿道球腺液、乳糜、粥状液、便、女性の精液、間質液、細胞内液、リンパ液、月経、母乳、粘液、胸水、膿、唾液、精液、血清、汗、滑液、涙、尿、膣分泌液、硝子体液、嘔吐など)。好ましい実施形態では、対象及び/または対照試料は、細胞、細胞株、組織学的スライド、パラフィン包埋組織、生検、全血、乳頭吸引物、血清、血漿、頬側擦過傷、唾液、脳脊髄液、尿、便、及び骨髄からなる群から選択される。一実施形態では、試料は、血清、血漿、または尿である。別の実施形態では、試料は、血清である。
【0493】
試料は、長期にわたって繰り返し個体から収集することができる(例えば、日、週、月、年次、半年ごとなどの順序で1回以上)。特定の期間にわたって個体から多数の試料を取得することは、以前の検出からの結果を検証するため、及び/または、例えば、疾患の進行、薬物治療などの結果としての生物学的パターンの変化を同定するために使用することができる。例えば、対象試料は、本発明によれば、毎月、2ヶ月ごと、または1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間隔の組み合わせで収集及びモニタリングされ得る。さらに、経時的に得られた対象のバイオマーカー量及び/または活性測定値は、モニタリング期間中、相互に、及び正常な対照の値と簡単に比較できるため、長期的なモニタリングのための内部または個人的な対照として、対象自身の値を提供できる。
【0494】
試料は、生細胞/組織、新鮮な凍結細胞、新鮮な組織、生検、固定細胞/組織、パラフィン、組織学的スライドなどの媒体に埋め込まれた細胞/組織、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0495】
試料調整及び分離は、収集された試料の種類及び/またはバイオマーカー測定値(複数可)の分析に応じて、任意の手順が含まれる。かかる手順には、ほんの一例として、濃縮、希釈、pHの調整、豊富なポリペプチド(例えば、アルブミン、ガンマグロブリン、及びトランスフェリンなど)の除去、防腐剤及び校正物の添加、プロテアーゼ阻害剤の添加、変性剤の添加、試料の脱塩、試料タンパク質の濃縮、脂質の抽出及び精製が含まれる。
【0496】
試料調製は、非共有結合複合体において他のタンパク質(例えば、担体タンパク質)と結合している分子を単離することもできる。このプロセスは、特定の担体タンパク質(例えば、アルブミン)と結合した分子を単離するか、または例えば、酸を使用するタンパク質変性を介したすべての担体タンパク質からの結合分子の放出、それに続く担体タンパク質の除去など、より一般的なプロセスを使用することができる。
【0497】
試料からの所望されないタンパク質(例えば、高い存在量、情報価値のない、または検出できないタンパク質)の除去は、高親和性試薬、高分子量フィルタ、超遠心分離、及び/または電気透析を使用して達成することができる。高親和性試薬には、高い存在量のタンパク質と選択的に結合する抗体または他の試薬(例えば、アプタマー)が含まれる。試料前処理には、イオン交換クロマトグラフィ、金属イオン親和性クロマトグラフィ、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、吸着クロマトグラフィ、等電点電気泳動、及び関連技術も含まれる。分子量フィルタには、サイズ及び分子量に基づいて分子を分離する膜が含まれる。かかるフィルタは、逆浸透、ナノ濾過、限外ろ過、及び精密ろ過をさらに使用することができる。
【0498】
超遠心分離は、試料から不要なポリペプチドを除去する方法である。超遠心分離は、光学システムで粒子の沈降(またはその欠如)をモニタリングしながら、約15,000~60,000rpmで試料を遠心分離する。電気透析は、電位勾配の影響下でイオンが半透膜を通って一方の溶液から別の溶液に輸送されるプロセスにおいて、電気膜または半透膜を使用する手順である。電気透析で使用される膜は、サイズ及び電荷に基づいて正または負の電荷を有するイオンを選択的に輸送する、反対の電荷のイオンを拒絶する、または種が半透過性膜を通って移動できる能力を有することができ、電気透析は、電解質の濃縮、除去、または分離に有用である。
【0499】
本発明における分離及び精製は、キャピラリ電気泳動(例えば、キャピラリまたはチップ上)またはクロマトグラフィ(例えば、キャピラリ、カラム、またはチップ上)などの当技術分野で即知である任意の手順を含み得る。電気泳動は、電場の影響下でイオン分子を分離するために使用できる方法である。電気泳動は、ゲル、キャピラリ、またはチップ上のマイクロチャネルで行うことができる。電気泳動に使用されるゲルの例には、澱粉、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、またはそれらの組み合わせが含まれる。ゲルは、その架橋、界面活性剤または変性剤の添加、酵素または抗体の固定化(アフィニティ電気泳動)または基質(ザイモグラフィ)、及びpH勾配の組み込みによって修飾することができる。電気泳動に使用されるキャピラリの例には、エレクトロスプレーと境界するキャピラリが含まれる。
【0500】
複雑な親水性分子及び高電荷の溶質を分離するために、キャピラリ電気泳動(CE)が好ましい。CE技術は、マイクロ流体チップにも実装できる。使用するキャピラリ及び緩衝液の種類に応じて、CEは、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリ等電点電気泳動(cITP)、キャピラリ電気クロマトグラフィ(CEC)などの分離技術にさらに分割できる。CE技術をエレクトロスプレーイオン化と関連させる一実施形態は、揮発性溶液、例えば、揮発性の酸及び/または塩基と、アルコールまたはアセトニトリルなどの有機物とを含む水性混合物の使用を含む。
【0501】
キャピラリ等電点電気泳動(cITP)は、分析対象物がキャピラリ内を一定の速度で移動するが、それでもそれぞれの移動度によって分離される手法である。キャピラリゾーン電気泳動(CZE)は、遊離溶液CE(FSCE)とも称され、分子上の電荷によって決定される種の電気泳動移動度の差異、ならびに分子のサイズに直接的に比例することが多い移動中に分子が遭遇する摩擦抵抗に基づいている。キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)は、弱イオン化可能な両性分子をpH勾配での電気泳動によって分離できる。CECは、従来の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)及びCEのハイブリッド技術である。
【0502】
本発明で使用される分離及び精製技術には、当技術分野で即知である任意のクロマトグラフィ手順が含まれる。クロマトグラフィは、特定の分析対象物の吸着及び溶出の差異、または移動相と固定相との間の分析対象物の分配に基づくことができる。クロマトグラフィの様々な例には、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィ(LC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などが含まれる。
【0503】
b.バイオマーカーポリペプチドの分析
バイオマーカータンパク質の活性またはレベルは、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を使用することなどによって、発現されたポリペプチドを検出または定量化することによって検出及び/または定量化することができる。ポリペプチドは、当業者に周知のいくつかの手段のうちのいずれかによって検出及び定量化され得る。バイオマーカー核酸及びその断片または遺伝的改変を含むその機能的に類似した相同体によってコードされるポリペプチドの異常なレベルのポリペプチド発現(例えば、その制御性またはプロモーター領域における)は、単独で、または免疫療法治療と組み合わせて、T細胞を媒介する細胞傷害性の修飾因子に対するがんの応答の可能性と関連する。ポリペプチドを検出するための当技術分野で即知である任意の方法を使用することができる。かかる方法には、これらに限定されないが、免疫拡散法、免疫電気泳動法、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウエスタンブロッティング、バインダー-リガンドアッセイ、免疫組織化学的手法、凝集、補体アッセイ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)、超拡散クロマトグラフィなどが含まれる(例えば、Basic and Clinical Immunology,Sites and Terr,eds.,Appleton and Lange,Norwalk,Conn.pp217-262,1991)。好ましくは、抗体を1つまたは複数のエピトープと反応させ、標識されたポリペプチドまたはその誘導体を競合的に置換することを含むバインダーリガンド免疫測定法である。
【0504】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片は、放射免疫測定法、ウェスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫測定法、免疫沈降アッセイ、化学発光アッセイ、免疫組織化学アッセイ、ドットブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイを含むがこれらに限定されない、周知のイムノアッセイ形態のいずれか1つで使用され得る。上記の様々な免疫測定法、ならびにインサイチュ接近ライゲーションアッセイ(PLA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素免疫測定法(EIA)、比濁抑制免疫測定法(NIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、及び放射免疫測定法(RIA)、ELISAなど単独で、またはNMR、MALDI-TOF、LC-MS/MSと組み合わせてもしくは代替的に、これらの技術の他の変形を行うために使用される一般的な技術は、当業者に既知である。
【0505】
かかる試薬はまた、臨床試験手順の一部として、例えば、阻害剤の最適な投薬量をモニタリングするために、細胞または組織、例えば、白血球またはリンパ球におけるタンパク質レベルをモニタリングするために使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質と共役させる(例えば、物理的に連結させる)ことによって促進され得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が含まれる。好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む好適な補欠分子族の複合体の例;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含む好適な蛍光物質の例;ルミノールを含む発光物質の例;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを含む生物発光物質の例、ならびに125I、131I、35S、またはHを含む放射性物質の例が含まれる。
【0506】
例えば、ELISA及びRIAの手順は、所望のバイオマーカータンパク質標準を標識し(125Iまたは35Sなどの放射性同位元素、または西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの分析可能な酵素を用いて)、非標識試料と一緒に、対応する抗体と接触するように行うことができ、二次抗体を使用して一次抗体を結合し、放射能または固定化酵素をアッセイする(競合アッセイ)。代替的に、試料中のバイオマーカータンパク質を対応する固定化抗体と反応させ、放射性同位元素または酵素標識抗バイオマーカータンパク質抗体を系と反応させ、放射能または酵素をアッセイする(ELISAサンドイッチアッセイ)。他の従来の方法も適切に利用することができる。
【0507】
上記の技術は、本質的に「1段階」または「2段階」アッセイとして実施することができる。「1段階」アッセイでは、抗原を固定化抗体と接触させ、洗浄せずに混合物を標識抗体と接触させることを伴う。「2段階」アッセイは、混合物を標識抗体と接触させる前に洗浄することを伴う。他の従来の方法も適切に利用することができる。
【0508】
一実施形態では、バイオマーカータンパク質レベルを測定するための方法は、生物学的標本を、バイオマーカータンパク質と選択的に結合する抗体またはそのバリアント(例えば、断片)と接触させるステップと、該抗体またはそのバリアントが、該試料と結合しているかを検出し、それによってバイオマーカータンパク質のレベルを測定するステップと、を含む。
【0509】
バイオマーカータンパク質及び/または抗体の酵素的ならびに放射性標識は、従来の手段によって行うことができる。かかる手段は、一般に、特に酵素の活性に悪影響を及ぼさないように、グルタルアルデヒドなどによる、問題の抗原または抗体への酵素の共有結合を含み、酵素がその基質と相互作用する必要があることを意味するが、それがアッセイを実行するのに十分な活性が維持されている限り、すべての酵素が活性である必要はない。実際に、酵素を結合するためのいくつかの技術は非特異的であり(ホルムアルデヒドを使用するなど)、ある割合の活性酵素しか生成しない。
【0510】
通常、アッセイ系の1つの成分を支持体上に固定し、それによって系の他の成分を成分と接触させ、面倒で時間のかかる労力を伴わずに簡単に除去できるようにすることが望ましい。第2の相を第1の相から離して固定化することは可能であるが、通常は1つの相で十分である。
【0511】
酵素自体を支持体上に固定化することは可能であるが、固相酵素が必要な場合、これは一般に、抗体と結合し、抗体を、当技術分野で周知である支持体、モデル、及び系に固定することによって最も良く達成される。単純なポリエチレンは好適な支持を提供し得る。
【0512】
標識化に使用できる酵素は特に限定されないが、例えば、オキシダーゼグループのメンバーから選択することができる。これらは、それらの基質との反応によって過酸化水素の生成を触媒し、グルコースオキシダーゼは、その優れた安定性、入手の容易さ、及び安価さ、ならびにその基質(グルコース)の容易な入手可能性のために多くの場合で使用される。オキシダーゼの活性は、当技術分野で周知の制御された条件下で酵素標識抗体と基質との反応後に形成される過酸化水素の濃度を測定することによってアッセイすることができる。
【0513】
他の技術を使用して、本開示に基づいて、実行者の選好に従ってバイオマーカータンパク質を検出することができる。かかる技術の1つがウエスタンブロッティングであり(Towbin et al.(1979)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.76:4350)、適切に処理された試料が、ニトロセルロースフィルタなどの固体支持体に移される前にSDS-PAGEゲル上で実行される。次に、抗バイオマーカータンパク質抗体(非標識)を支持体と接触させ、標識されたプロテインAまたは抗免疫グロブリン(125I、西洋ワサビペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼを含む好適な標識)などの二次免疫試薬によってアッセイする。クロマトグラフィ検出も使用できる。
【0514】
免疫組織化学は、例えば、生検試料におけるバイオマーカータンパク質の発現を検出するために使用することができる。好適な抗体は、例えば、細胞の薄層と接触させ、洗浄し、次いで、第2の標識された抗体と接触させる。標識は、蛍光マーカー、ペルオキシダーゼ、アビジンなどの酵素、または放射性標識によって行うことができる。顕微鏡を使用して、アッセイを視覚的に記録する。
【0515】
細胞内抗体などの抗バイオマーカータンパク質抗体は、例えば、対象の細胞及び組織におけるバイオマーカータンパク質の存在を検出するためのイメージングの目的にも使用することができる。好適な標識には、放射性同位元素、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、ならびにテクニチウム(99mTc)、蛍光標識、例えば、フルオレセイン及びローダミン、及びビオチンが含まれる。
【0516】
インビボイメージングの目的のために、抗体は、体外からは検出できないため、検出を可能にするために、標識するか、または修飾する必要がある。この目的のためのマーカーは、抗体結合を実質的に妨害しないが、外部検出を可能にするものであり得る。適切なマーカーには、X線撮影、NMR、またはMRIで検出できるマーカーが含まれる。X線撮影技術の場合、好適なマーカーには、検出可能な放射線を放出するが、例えば、バリウムまたはセシウムなど、対象に明白に有害ではない放射性同位元素が含まれる。NMR及びMRIについての好適なマーカーには、一般に、重水素などの検出可能な特徴的なスピンを有するマーカーが含まれ、例えば、関連するハイブリドーマの栄養物を好適に標識することによって抗体に組み込むことができる。
【0517】
対象のサイズ、及び使用されるイメージング系は、必要なイメージング部分の程度を決定し、診断画像を生成する。放射性同位元素部分の場合、ヒト対象について、注入される放射能の程度は通常、約5~20ミリキュリーのテクネチウム99の範囲である。標識された抗体または抗体断片は、バイオマーカータンパク質を含む細胞の位置に優先的に蓄積する。次に、標識された抗体または抗体断片は、既知の技術を使用して検出することができる。
【0518】
バイオマーカータンパク質を検出するために使用できる抗体には、天然または合成、全長またはその断片、モノクローナルまたはポリクローナルを問わず、検出されるバイオマーカータンパク質と十分に強く特異的に結合する任意の抗体が含まれる。抗体は、最大で約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12MのKdを有することができる。「特異的に結合する」という句は、例えば、結合が置換されるか、または同一もしくは類似のエピトープ、抗原もしくは抗原決定基の第2の調製物と競合し得るような様式での、エピトープまたは抗原または抗原決定基との抗体の結合を指す。抗体は、関連タンパク質などの他のタンパク質と比較して、バイオマーカータンパク質と優先的に結合することができる。
【0519】
抗体は市販されているか、または当技術分野で即知である方法に従って調製することができる。
【0520】
いくつかの実施形態では、ペプチドなど、抗体以外のバイオマーカータンパク質と特異的に結合する薬剤が使用される。バイオマーカータンパク質と特異的に結合するペプチドは、当技術分野で即知である任意の手段によって同定することができる。例えば、バイオマーカータンパク質の特定のペプチドバインダーは、ペプチドファージディスプレイライブラリを使用するためにスクリーニングすることができる。
【0521】
VII.製剤及び薬学的組成物を含む組成物
抗体、その抗原結合断片、細胞などの本発明に包括される薬剤を含む組成物は、限定されることなく企図される。例えば、単独で、または核酸系組成物(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、siRNA、アンチセンス核酸、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAzyme、アプタマー、核酸デコイ、核酸キメラ、三重らせん構造など)、タンパク質系組成物、細胞系組成物、ならびにそのバリアント、修飾体、及び操作されたバージョンなどの他の薬剤と組み合わせて使用することができる薬剤は、本明細書に記載される方法、ならびに組成物自体での使用が企図されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配列から各々選択されるセンス鎖核酸配列及びアンチセンス鎖核酸配列、ならびにその配列バリアント及び/または化学修飾バージョンを有するsiRNA分子は、本発明に包含され、上記で詳細に記載される。いくつかの実施形態では、骨髄細胞など、本明細書に記載されるように修飾された細胞は、調節された炎症性表現型を有する。
【0522】
かかる組成物は、薬学的組成物及び/または製剤内に含まれ得る。かかる組成物は、薬理学の分野において即知である、または今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、かかる調整方法には、活性成分などの薬剤を、賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と関連付け、次に、必要及び/または望ましい場合、製品を所望の単回もしくは複数回投与単位に分割、成形、及び/または包装するステップを含む。本明細書で使用される場合、「活性成分」という用語は、それに曝露された際に、ヒトまたは動物において生理学的効果を有する任意の化学的及び生物学的物質を指す。本発明に包括される状況において、製剤中の活性成分は、本発明に包括されるバイオマーカー(例えば、表1に列挙される少なくとも1つの標的)を調節する任意の薬剤であり得る。
【0523】
1.組成物調整
本発明による組成物は、単一単位用量として、及び/または複数の単一単位用量として、大量に調製、包装、及び/または販売することができる。本明細書で使用される、「単位用量」は、予め決定された量の活性成分を含む薬学的組成物の個別量である。活性成分の量は一般的に、対象に投与されるであろう活性成分の用量及び/またはかかる用量の便利な分画、例えば、かかる用量の半分もしくは3分の1に等しい。
【0524】
「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のないヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、安全な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、薬剤、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0525】
本発明により包含される薬学的組成物は、無水性薬学的製剤及び剤形、液体性薬学的製剤、固体性薬学的製剤、ワクチンなどとして提示することができる。好適な液体調製物には、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、または選択されたpHに緩衝化された粘性組成物が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0526】
以下に詳細に記載するように、本発明により包含される薬剤及び他の組成物は、様々な投与経路に適合したものを含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化され得る:例えば、(1)経口投与、例えば、水薬(水性もしくは非水性溶液または懸濁液)、錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、ペースト、(2)例えば、減菌溶液または懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内、または静脈内注射による非経口投与、(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、またはスプレーとしての、局所的な適用、(4)例えば、ペッサリー、クリーム、もしくはフォームとしての膣内または直腸内投与、または(5)例えば、化合物を含む水性エアゾール、リポソーム製剤、または固体粒子としてのエアゾール。錠剤、カプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、及び浣腸などであるがこれらに限定されない、本明細書に記載される薬剤または組成物の任意の適切なフォーム因子が企図される。
【0527】
本発明により包含される薬学的組成物は、カプセル、サシェ、もしくは錠剤、または液体もしくはエアロゾルスプレーなどの個別の剤形として提示され得、各々が粉末もしくは顆粒、溶液、または水性もしくは非水性液体中の懸濁液、水中油型エマルジョン、油中水型液体エマルジョン、再構成用粉末、経口摂取用粉末、ボトル(ボトル内の粉末または液体を含む)、経口溶解フィルム、トローチ、ペースト、チューブ、ガム、及びパックとして予め決定された量の活性成分を含有する。かかる剤形は、薬局の任意の方法によって調製することができる。
【0528】
錠剤は、任意に1つ以上の補助的な成分と共に、圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、粉末ペプチドまたは不活性液体希釈剤で湿らせたペプチド模倣物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。
【0529】
錠剤、及び他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒は、任意に、割線を入れてもよいし、コーティング及びシェル、例えば、腸溶性コーティング及び医薬製剤分野で周知の他のコーティングと共に製剤化してもよい。それらはまた、その中の該活性成分の持続もしくは制御放出をもたらすために、例えば、所望の放出プロファイルを与えるようにヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で用いて、他のポリマーマトリックスを用いて、リポソームを用いて、及び/またはミクロスフェアを用いて製剤化してもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルタを通して濾過することにより、または滅菌水、もしくは何らかの他の滅菌注射用媒体に使用直前に溶解することができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意に乳白剤を含んでもよく、また、それらが活性成分(複数可)を腸管の特定の部分のみにまたは当該部分に優先的に、任意に遅延して放出する組成物でもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが含まれる。活性成分はまた、適切な場合、賦形剤のうちの1つ以上と共にマイクロカプセル化された形態でもよい。
【0530】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)では、活性成分は、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、及び/または以下のいずれかと混合される:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/またはケイ酸、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/またはアカシア等、(3)保湿剤、例えば、グリセロール、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、及び炭酸ナトリウム、(5)溶解遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン、(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(7)湿潤剤、例えば、アセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等、(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレー、(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物、ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合、本薬学的組成物はまた、緩衝剤も含み得る。同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用され得る。
【0531】
経口投与のための液体投薬形態は、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含むことができる。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤ならびに防腐剤を含むこともできる。懸濁液は、活性剤に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、ならびにそれらの混合物を含むことができる。
【0532】
直腸または膣内投与用の製剤は、坐剤として存在してもよく、これは、1つ以上の薬剤を、室温では固体であるが、体温では液体であり、それ故、直腸または膣腔内で溶融して活性剤を放出する、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリシレートを含む1つ以上の好適な非刺激性賦形剤または担体と混合して調製され得る。
【0533】
膣内投与に適した製剤としては同様に、当技術分野で適切であることが知られている担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤が含まれる。
【0534】
バイオマーカー発現及び/または活性を調節する(例えば、阻害する)薬剤の局所または経皮投与のための剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤が含まれる。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と混合することができる。
【0535】
軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、薬剤に加えて、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0536】
粉末及びスプレーは、バイオマーカー発現及び/または活性を調節する(例えば、阻害する)薬剤に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、またはそれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーはさらに、通常の噴射剤、例えば、クロロフルオロハイドロカーボン及び揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタン及びプロパンを含むことができる。
【0537】
薬剤は、エアロゾルで投与され得る。これは、水性エアロゾル、リポソーム調製物、または化合物を含む固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴霧剤)懸濁液を使用することができる。ソニックネブライザーは、薬剤がせん断にさらされるのを最小限に抑え、化合物の分解をもたらし得るため、好ましい。
【0538】
通常、水性エアロゾルは、従来の薬学的に許容される担体及び安定剤と一緒に薬剤の水溶液または懸濁液を製剤化することによって作製される。担体及び安定剤は特定の化合物の必要条件によって異なるが、通常、非イオン性界面活性剤(Tweens、Pluronics、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミン、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖、糖アルコールなどの無害なタンパク質が含まれる。エアロゾルは一般的に、等張液から調製される。
【0539】
経皮パッチは、身体への薬剤の制御された送達を提供するという追加の利点を有する。かかる剤形は、薬剤を適切な培地に溶解または分散させることによって作製することができる。吸収促進剤もまた、模倣物の皮膚を横切る流れを増加させるために使用され得る。かかる流れの速度は、速度制御膜を提供することまたは模倣物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることのいずれかによって制御することができる。
【0540】
眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末、溶液等もまた、本発明の範囲内であることが企図される。
【0541】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される薬学的組成物は、非経口剤形に製剤化される。非経口製剤は、塩、炭水化物、及び緩衝剤などの担体または賦形剤を含む水溶液(例えば、3~9のpHで)、または無菌の非水溶液、または無菌のパイロジェンフリー水などの好適なビヒクルと組み合わせて使用できる乾燥形態であり得る。例えば、本発明に包括される治療剤の水溶液は、等張食塩水、5%グルコース、または例えば、米国特許第7,910,594号に開示されているような液体アルコール、グリコール、エステル、及びアミドなどの他の薬学的に許容される液体担体を含む。別の例では、本発明に包括される治療剤の水溶液は、PCT公開第WO2011/014821号に開示されているような静脈内投与用のリン酸緩衝製剤(pH7.4)を含む。非経口剤形は、本発明に包括される治療剤の用量を含む再構成可能な凍結乾燥物の形態であり得る。当技術分野で即知である任意の持効性放出剤形は、例えば、米国特許第4,713,249号、同第5,266,333号、同第5,417,982号に記載されている生分解性炭水化物マトリックスなどを利用することができ、代替的に、遅効性ポンプ(例えば、浸透圧ポンプ)を使用することができる。例えば、無菌条件下での凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術を使用して容易に達成することができる。非経口製剤の調製に使用される本発明に包括される治療剤の溶解度は、溶解度増強剤の組み込みなどの適切な製剤技術の使用によって増加させることができる。非経口投与用の製剤は、1つ以上の薬剤を、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または滅菌注射用溶液もしく分散液に使用直前に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含むことができ、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、当該製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含んでもよい。
【0542】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含んでもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって確保され得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を該組成物中に含むこともまた望ましい場合がある。さらに、注入可能な薬学的形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の含有によってもたらすことができる。
【0543】
いくつかの事例では、薬物の効果を長くするために、皮下または筋肉注射によって該薬物の吸収を減速することが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性または非晶性材料の懸濁液の使用により達成され得る。薬物の吸収速度は、その結果その溶解速度に依存し、これは次に、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。代替的に、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、該薬物を油媒体に溶解または懸濁することによって達成される。
【0544】
注入可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにおいて、バイオマーカー発現及び/または活性を調節する(例えば、阻害する)薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルソエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。デポー注射製剤もまた、体内組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルションに薬物を封入することによって調製される。
【0545】
本発明に包括される薬剤が医薬品としてヒト及び動物に投与される場合、それらは、それ自体で、または例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせて0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の活性成分を含む薬学的組成物として与えることができる。
【0546】
本発明の薬学的組成物中の有効成分の実際の投薬量レベルは、対象に毒性を与えることなく、特定の対象、組成物、及び投与様式に対して所望の治療的応答を達成するのに効果的である有効成分の量を得るために、本発明に包括される方法によって決定することができる。
【0547】
いくつかの実施形態において、本発明に包括される薬学的組成物は、制御性放出及び/または標的化送達のために製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「制御性放出」は、治療転帰をもたらすための特定の放出パターンに一致する薬学的組成物または化合物放出プロファイルを指す。一実施形態では、本発明に包括される組成物は、本明細書に記載される、及び/または制御性放出及び/または標的化送達について当技術分野で即知である送達剤にカプセル化することができる。本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、封入する、包囲する、または包むことを意味する。それは本発明に包括される製剤に関連し、カプセル化は、実質的、完全、または部分的であり得る。「実質的にカプセル化される」という用語は、本発明に包括される治療剤の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.9超、または99.999%超が、粒子内に封入、包囲、または包まれ得ることを意味する。「部分的にカプセル化する」という用語は、本発明に包括される複合体の10、10、20、30、40、50未満が、粒子内に封入、包囲、または包まれ得ることを意味する。例えば、本発明に包括される薬学的組成物または化合物の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99、または99.99%超が、製剤内に封入される。
【0548】
いくつかの実施形態では、かかる製剤はまた、単球、マクロファージ、及び他の免疫細胞(例えば、樹状細胞、抗原提示細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、及びナチュラルキラー細胞)、がん細胞などを含むがこれらに限定されない、インビボで異なる細胞型に受動的または能動的に指向するように構築または組成改変することができる。製剤はまた、葉酸、トランスフェリン、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、及び抗体標的化アプローチによって例示されるが、これらに限定されない、それらの表面上の異なるリガンドの発現を通じて選択的に標的化され得る。
【0549】
2.追加成分
本発明に包括される薬学的組成物は、1つ以上の賦形剤を使用して以下のように製剤化することができる:(1)安定性を高める、(2)持続放出または遅延放出を許可する(例えば、デポ製剤から)、(3)生体内分布を改変する(例えば、特定の組織または細胞型に薬剤を標的化する)、(4)インビボでの薬剤の放出プロファイルを改変する。賦形剤の非限定的な例には、あらゆるすべての溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、及び防腐剤が含まれる。本発明により包含される賦形剤には、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びそれらの組み合わせも含まれるが、これらに限定されない。
【0550】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、所望の特定の剤形に適したものとして、あらゆるすべての溶媒、分散媒体、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散剤または懸濁剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、崩壊剤、防腐剤、緩衝剤、固体結合剤、潤滑剤、油、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤、吸収遅延剤などを含むことを意図する。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、薬学的組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤及びそれを調製するための既知の技術を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が、任意の望ましくない生物学的作用をもたらす、ないしは別の方法で薬学的組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用することなどにより、物質またはその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であると想定される。補助的な有効成分もまた、記載される組成物中に組み込むことができる。
【0551】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒトでの使用及び獣医学的な使用が承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/または国際薬局方の基準を満たす。
【0552】
例示的な希釈剤には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、及び/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0553】
例示的な造粒剤及び/または分散剤には、これらに限定されないが、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類果肉、寒天、ベントナイト、セルロース及び木製物質、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶澱粉、水不溶性澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物など、及び/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0554】
例示的な界面活性剤及び/または乳化剤には、これらに限定されないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカンス、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂肪、コレステロール、ワックス、レシチン)、コロイド状粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びVEEGUM(登録商標)[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセトイン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[TWEEN(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEENn(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[TWEEN(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[SPAN(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[SPAN(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[SPAN(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[SPAN(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、SOLUTOL(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニルピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLUORINC(登録商標)F68、POLOXAMER(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど、及び/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0555】
例示的な結合剤には、これらに限定されないが、澱粉(例えば、コーンスターチ及び澱粉ペースト)、ゼラチン、糖(例えば、ショ糖、ブドウ糖、ブドウ糖、デキストリン、糖蜜、乳糖、ラクチトール、マンニトール)、天然及び合成ガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワーガム、ガッティガム、イサポール殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))、及びカラマツアラボガラクタン)、アルギン酸、ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコールなど、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0556】
例示的な防腐剤には、これらに限定されないが、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性防腐剤、抗真菌性防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び/または他の防腐剤が含まれ得る。例示的な抗酸化剤には、これらに限定されないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/または亜硫酸ナトリウムが含まれる。例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸ジナトリウム、エデト酸ジカリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/またはエデト酸トリナトリウムが含まれる。例示的な抗菌防腐剤には、これらに限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/またはチメロサールが含まれる。例示的な抗真菌性防腐剤には、これらに限定されないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/またはソルビン酸が含まれる。例示的なアルコール防腐剤には、これらに限定されないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、安息香酸ヒドロキシ、及び/またはフェニルエチルアルコールが含まれる。例示的な酸性防腐剤には、これらに限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/フィチン酸が含まれる。他の防腐剤には、これらに限定されないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、及び/またはEUXYL(登録商標)が含まれる。
【0557】
例示的な緩衝剤には、これらに限定されないが、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化カルシウムリン酸、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸塩ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、及び/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0558】
例示的な潤滑剤には、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベハニン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0559】
例示的な油には、これらに限定されないが、アーモンド油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、黒潮種油、ルリジサ油、カデ油、カミツレ油、キャノーラ油、キャラウェイ油、カルナウバ油、海狸香、シナモン油、カカオバター、ココナツ油、タラ肝油、コーヒーの油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、アマニ油、ゲラニオール油、ゴード油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンディン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカデミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォームシード油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラッフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシの実油、パンプキンシード油、菜種油、米ぬか油、ローズマリー油、ベニバナ油、サンダルウッド油、サスクアナ油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油、及び小麦胚種油が含まれる。例示的な油には、これらに限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコーン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱物油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0560】
製剤者の判断に従って、カカオバター及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/または芳香剤などの賦形剤が組成物中に存在し得る。
【0561】
薬学的製剤はまた、薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野で即知である様々な有機及び無機対イオンに由来する塩を指す(例えば、Berge et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。これらの塩は、薬剤の最終的な単離及び精製中にインサイチュで、または遊離塩基形態の精製された薬剤を適切な有機または無機酸と別々に反応させ、そのように形成された塩を単離することによって調製することができる。製薬的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸で形成することができる。塩を誘導することができる無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸が含まれる。塩を誘導することができる有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸が含まれる。製薬的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基で形成することができる。塩を誘導することができる無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、及びアルミニウムが含まれる。塩を誘導することができる有機塩基には、例えば、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂が含まれる。詳細な例としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンなどが含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩から選択される。
【0562】
いくつかの実施形態では、本発明に包括される薬剤は、1つ以上の酸性官能基を含むことができ、したがって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの場合の「薬学的に許容される塩」という用語は、バイオマーカーの発現を調節する(例えば、阻害する)薬剤の相対的に非毒性の無機及び有機塩基付加塩を指す。これらの塩は、同様に、薬剤の最終的な単離及び精製中にインサイチュで、または遊離酸形態の精製された薬剤を好適な塩基、例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩、アンモニア、または薬学的に許容される有機第一級、第二級、または第三級アミンなどとは別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、上記のBergeらを参照されたい)。
【0563】
「共結晶」という用語は、当技術分野で即知であるいくつかの共結晶形成剤に由来する分子複合体を指す。塩とは異なり、共結晶は通常、共結晶と薬物との間の水素移動を伴わず、代わりに、共結晶形成剤と結晶構造内の薬物との間の水素結合、芳香環スタッキング、または分散力などの分子間相互作用を伴う。
【0564】
本発明に包括される薬学的組成物及び剤形を形成するために使用することができる例示的な界面活性剤には、これらに限定されないが、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、及びそれらの混合物が含まれる。つまり、親水性界面活性剤の混合物が利用され得るか、親油性界面活性剤の混合物が利用され得るか、または少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤との混合物が利用され得る。親水性界面活性剤は、イオン性または非イオン性であり得る。好適なイオン性界面活性剤には、これらに限定されないが、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リン脂質及びこれらの誘導体;リゾリン脂質及びこれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキルスルフェートの塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;アシルアクチレート(acylactylate);モノ及びジグリセリドのモノ及びジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ及びジグリセリド;モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物が含まれる。イオン性界面活性剤は、例として、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質、及びこれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキルスルフェートの塩;脂肪酸塩;ドクサートナトリウム;アシルアクチレート(acylactylate);モノ及びジグリセリドのモノ及びジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ及びジグリセリド;モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0565】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチルエステル(lactylic esters)、ステアロイル-2-ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン(cholylsarcosine)、カプロアート、カプリレート、カプラート、ラウラート、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノレート、リノレート、リノレネート、ステアレート、ラウリルスルフェート、テラセシルスルフェート、ドクサート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、ならびにこれらの塩及び混合物のイオン化形態であり得る。
【0566】
親水性非イオン性界面活性剤は、これらに限定されないが、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノールなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル及びポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーを有するポリオールの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、誘導体、及びこれらのアナログ;ポリオキシエチル化ビタミン及びこれらの誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;及びこれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルならびにトリグリセリド、植物油、及び水素化植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーを含むポリオールの親水性エステル交換生成物を含むことができる。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、またはサッカライドであり得る。
【0567】
他の親水性-非イオン性界面活性剤には、限定されないが、PEG-10ラウレート、PEG-12ラウレート、PEG-20ラウレート、PEG-32ラウレート、PEG-32ジラウレート、PEG-12オレエート、PEG-15オレエート、PEG-20オレエート、PEG-20ジオレエート、PEG-32オレエート、PEG-200オレエート、PEG-400オレエート、PEG-15ステアレート、PEG-32ジステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート、PEG-20ジラウラート、PEG-25グリセリルトリオレエート、PEG-32ジオレエート、PEG-20グリセリルラウラート、PEG-30グリセリルラウラート、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-20グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルラウラート、PEG-40グリセリルラウラート、PEG-40パーム核油、PEG-50水素化ひまし油、PEG-40ひまし油、PEG-35ひまし油、PEG-60ひまし油、PEG-40水素化ひまし油、PEG-60水素化ひまし油、PEG-60トウモロコシ油、PEG-6カプラート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプラート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル-10ラウラート、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30ダイズステロール、PEG-20トリオレエート、PEG-40ソルビタンオレエート、PEG-80ソルビタンラウラート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100スクシネート、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル-10オレエート、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60、ショ糖モノステアレート、ショ糖モノラウラート、ショ糖モノパルミテート、PEG10~100ノニルフェノールシリーズ、PEG15~100オクチルフェノールシリーズ、及びポロキサマーが含まれる。
【0568】
好適な親油性界面活性剤は、これらに限定されないが、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロール及びステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロール及びステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノ及びジグリセリドの乳酸誘導体;グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーを有するポリオールの疎水性エステル交換生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにこれらの混合物を含むことができる。この群内で、好ましい親油性界面活性剤には、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びこれらの混合物が含まれるか、または植物油、水素化植物油、及びトリグリセリドからなる群の少なくとも1つのメンバーを含むポリオールの疎水性エステル交換生成物である。
【0569】
本発明に包括される薬剤(例えば、化合物)の良好な可溶化及び/または溶解を確実にし、本発明に包括される薬物様式の沈殿を最小限にするために、可溶化剤を本製剤に含めることができる。これは、注入用組成物などの非経口使用のための組成物にとって特に重要であり得る。可溶化剤は、親水性薬物及び/または界面活性剤などの他の構成成分の溶解度を増加するか、または組成物を、安定しているかもしくは均一な溶液もしくは分散液として維持するために添加することもできる。好適な可溶化剤の例には、以下の、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びこれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体などのアルコール及びポリオール;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEGなどの、約200~約6000個の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル;2-ピロリドン、2-ピペリドン、
【化1】
-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、及びポリビニルピロリドンなどのアミド及び他の窒素含有化合物;エチルプロピオネート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、エチルオレエート、エチルカプリレート、エチルブチレート、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、イプシロン-カプロラクトン及びこれらの異性体、i-バレロラクトン及びこれらの異性体、u-ブチロラクトン及びこれらの異性体などのエステル;ならびにジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び水などの当技術分野で既知の他の可溶化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0570】
可溶化剤の混合物も使用され得る。例には、これらに限定されないが、トリアセチン、トリエチルシトレート、エチルオレエート、エチルカプリレート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200~100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、及びジメチルイソソルビドが含まれる。特に好ましい可溶化剤には、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG-400、グリコフロール、及びプロピレングリコールが含まれる。
【0571】
薬学的に許容される添加物が、必要に応じて製剤に含まれ得る。かかる添加剤及び賦形剤には、限定されないが、脱粘着剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、粘度調節剤、等張化剤、香料、着色料、付臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、及びこれらの混合物が含まれる。
【0572】
加えて、酸または塩基は、プロセスを促進するため、安定性を高めるため、または他の理由で組成物中に組み込まれ得る。薬学的に許容される塩基の例には、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などが含まれる。さらに、好適なものは、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸(hydroquinosulfonic acid)、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などの薬学的に許容される酸の塩である塩基である。リン酸ナトリウム、リン酸水素ジナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムなどの多塩基酸の塩も使用され得る。塩基が塩であるとき、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、及びアルカリ性土類金属などの、任意の便宜的で薬学的に許容されるカチオンであり得る。例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、及びアンモニウムが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0573】
好適な酸は、薬学的に許容される有機または無機酸である。好適な無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などが含まれる。好適な有機酸の例には、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸(hydroquinosulfonic acid)、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸が含まれる。
【0574】
IX.投与及び投薬量
本明細書に記載される薬剤(例えば、組成物、製剤、細胞など)は、所望の対象(例えば、細胞、無細胞結合パートナーなど)と接触し、及び/または当技術分野で周知である方法を使用して生物に投与することができる。例えば、薬剤は、カチオン性リポソーム及びポリマーなどの化学的方法、または遺伝子銃、エレクトロポレーション、粒子照射、超音波利用、及びマグネトフェクションなどの物理的方法を介して細胞に送達することができる。
【0575】
マクロファージと接触させるための投与の方法は、特にマクロファージが一般的に組織種全体にわたって存在するため、当技術分野で即知である(Ries et al.(2014)Cancer Cell 25:846-859、Perry et al.(2018)J.Exp.Med.215:877-893、Novobrantseva et al.(2012)Mol.Ther.Nucl.Acids 1:e4、Majmudar et al.(2013)Circulation127:2038-2046、Leuschner et al.(2011)Nat.Biotechnol.29:11を参照されたい)。さらに、薬剤の局所的な投与を使用して、空間的に制限されたマクロファージの集団を標的とすることなどによって(例えば、TAMを標的とする腫瘍内投与)、目的のマクロファージ集団を標的とするように調整することができる(Shirota et al.(2012)J.Immunol.188:1592-1599、Wang et al.(Oct.2016)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.113:11525-11530を参照されたい)。かかる示差的な投与方法は、他のマクロファージ集団との接触を低減または排除しながら、目的のマクロファージ集団を選択的に標的化することができる(例えば、循環マクロファージから選択的にTAMを標的化する腫瘍内投与)。
【0576】
薬剤はまた、治療上有効な結果をもたらす任意の経路によって有効量で投与することができる。投与経路は、これらに限定されないが、経腸(腸内へ)、胃腸、硬膜外(硬膜内へ)、経口(口を経由して)、経皮、硬膜外、脳内(大脳内へ)、脳室内(大脳室内へ)、表皮(皮膚への適用)、皮内(皮膚自体へ)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻を通して)、静脈内(静脈内へ)、静脈内ボーラス、静脈内点滴、動脈内(動脈内へ)、筋肉内(筋肉内へ)、心臓内(心臓内へ)、骨内注入(骨髄内へ)、くも膜下腔内(脊柱管内へ)、腹腔内(腹膜内への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通して)、海綿体内注射(病的空洞内へ)、腔内(陰茎の基部内へ)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のための無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、経膣、吹送(鼻息)、舌下、陰唇下、浣腸、点眼薬(結膜上)、点耳薬、耳介(耳の中または耳を経由して)、頬側(頬に指向して)、結膜、皮膚、歯科(1つまたは複数の歯に)、電気浸透、子宮頸管内、洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質性、腹腔内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、軟骨内(軟骨内へ)、尾側(馬尾内へ)、大槽内(大槽小脳延髄内)、角膜内(角膜内)、歯の角膜内、冠状動脈内(冠状動脈内へ)、海綿体内(陰茎の海綿体の拡張可能な空間内へ)、椎間板内(椎間板内へ)、管内(腺管内へ)、十二指腸内(十二指腸内へ)、硬膜内(硬膜内へまたは硬膜下へ)、表皮内(表皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃内へ)、歯肉内(歯肉内へ)、回腸内(小腸の遠位部分内へ)、病変内(限局性病変内または直接的な導入)、管腔内(管の管腔内へ)、リンパ管内(リンパ管内へ)、髄内(骨の骨髄腔内へ)、髄膜内(髄膜内へ)、心筋内(心筋内へ)、眼内(眼内へ)、卵巣内(卵巣内へ)、心膜内(心膜内へ)、胸膜内(胸膜内へ)、前立腺内(前立腺内へ)、肺内(肺またはその気管支内へ)、鼻腔内(鼻または眼窩周囲洞内へ)、脊髄内(脊柱内へ)、滑膜内(関節の滑膜腔内へ)、腱内(腱内へ)、精巣内(睾丸内へ)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルの脳脊髄液内へ)、胸腔内(胸部内へ)、尿細管内(臓器の尿細管内へ)、腫瘍内(腫瘍内へ)、鼓室内(耳中膜内へ)、血管内(1つまたは複数の血管内へ)、脳室内(心室内へ)、イオン泳動(可溶性塩のイオンが体の組織に移動する電流による)、洗浄(開いた傷もしくは体腔を浸すまたは洗い流すため)、喉頭(喉頭に直接的に)、経鼻胃(鼻から胃へ)、密封包帯法(局所経路投与は、その後その領域を閉塞する包帯で覆われる)、眼科(外眼へ)、中咽頭(口及び咽頭へ直接的に)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所もしくは全身効果のために経口または経鼻的に吸入することによる気道内へ)、球後(脳橋の後ろまたは眼球の後ろ)、心筋内(心筋に侵入する)、軟組織、くも膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通してまたは胎盤の全体へ)、経気管(気管の壁を通して)、経鼓膜(鼓室の全体へまたは通して)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、尾側ブロック、診断上、神経ブロック、胆管灌流、心臓灌流、フォトフェレーシス、または脊髄を含むことができる。
【0577】
薬剤は、典型的に、投与を容易にし、投与量を均一にするために、投与量単位の形態で製剤化される。しかしながら、本発明に包括される薬剤の1日当たりの総使用量は、合理的な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定され得ることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための特定の治療上の有効性、予防的有効性、または適切なイメージング用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度;利用される特定の薬剤の活性;利用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;利用される特定の薬剤の投与時間、投与経路、及び排泄率;治療期間;利用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;ならびに医療技術分野で周知である同様の要因を含む様々な要因に依存するであろう。
【0578】
いくつかの実施形態では、本発明による薬剤は、所望の治療的、診断的、予防的、またはイメージング的な有効性を得るために、1日当たり対象体重の約0.0001mg/kg~約1000mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg、または約10mg/kg~約100mg/kg、または約100mg/kg~約500mg/kgを送達するのに十分な用量レベルで、1日に0.0001回以上投与され得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごと、または2ヶ月ごとに送達され得る。いくつかの実施形態では、所望の投与量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれ以上の投与)を使用して送達され得る。複数回の投与が利用される場合、本明細書に記載されるような分割投薬レジメンを使用することができる。
【0579】
いくつかの実施形態では、本発明により包含される薬剤は、抗体である。本明細書で定義されるように、治療上有効な抗体の量(すなわち、有効な投与量)は、体重の約0.001~30mg/kg、好ましくは体重の約0.01~25mg/kg、より好ましくは体重の約0.1~20mg/kg、及びさらに好ましくは体重の1~10mg/kg、2~9mg/kg、3~8mg/kg、4~7mg/kg、または5~6mg/kgの範囲である。当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康及び/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、特定の要因が対象を効果的に治療するために必要な投薬量に影響を及ぼし得ることを理解するであろう。さらに、治療上有効量の抗体による対象の治療は、単一の治療を含むことができ、または好ましくは、一連の治療を含むことができる。好ましい例では、対象は、体重の約0.1~20mg/kgの範囲の抗体で、週に1回、約1~10週間、好ましくは2~8週間、より好ましくは3~7週間、さらに好ましくは4、5、または6週間治療される。治療に使用される抗体の有効投与量は、特定の治療の過程で増加または減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、診断アッセイの結果からもたらされ得る。
【0580】
本明細書で使用される場合、「分割用量」は、単一の単位用量または総日用量を2つ以上の用量、例えば、単一の単位用量を2回以上の投与に分割することである。本明細書で使用される場合、「単一単位用量」は、1回の用量/一度に/単一の経路/単一の接触点、すなわち、単一の投与事象で投与される任意の治療上投与の用量である。本明細書で使用される場合、「総日用量」は、24時間の期間に与えられるかまたは処方される量である。それは単回用量として投与することができる。
【0581】
いくつかの実施形態では、剤形は液体剤形であり得る。非経口投与のための液体投薬形態は、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、及び/またはエリキシル剤を含むが、これに限定されない。活性成分に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物などを含むがこれに限定されない当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含むことができる。非経口投与の特定の実施形態では、組成物は、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及び/またはそれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合することができる。
【0582】
特定の実施形態では、投薬形態は注入可能であり得る。注入可能な調製物、例えば、無菌の注入可能な水性または油性懸濁液は、既知の技術に従って製剤化することができ、好適な分散剤、湿潤剤、及び/または懸濁剤を含むことができる。無菌の注入可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤及び/または溶媒中の無菌の注入可能な溶液、懸濁液、及び/または乳濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。利用され得る許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液が含まれるが、これらに限定されない。無菌の固定油が、溶媒または懸濁培地として従来用いられる。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む、任意のブランドの固定油が用いられ得る。オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において使用され得る。注入可能な製剤は、例えば、細菌を保持するフィルタに通して濾過することにより、及び/または使用前に無菌水または他の無菌注射可能培地に溶解または分散され得る無菌の固形組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0583】
いくつかの実施形態では、錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、及び顆粒の固形剤形は、腸溶コーティング及び薬学的製剤の分野で周知である他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。それらは、任意選択で乳白剤を含むことができ、それらが活性成分(複数可)のみを放出するか、または優先的に、腸管の特定の部分で、任意選択で遅延して放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが含まれる。同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用され得る。
【0584】
細胞は、対象体重0.1キログラム当たり、0.1×10、0.2×10、0.3×10、0.4×10、0.5×10、0.6×10、0.7×10、0.8×10、0.9×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10、またはそれ超、またはその間の任意の範囲、またはその間の任意の値で投与することができる。移植される細胞の数は、所与の時間内の生着の所望のレベルに基づいて調整することができる。一般的に、体重の1×10~約1×10細胞/kg、体重の約1×10~約1×10細胞/kg、もしくは体重の約1×10細胞/kg、または必要に応じてそれ以上の細胞を移植することができる。いくつかの実施形態では、平均サイズのマウスと比較して、少なくとも約0.1x10、0.5x10、1.0×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、または5.0×10の総細胞の移植が効果的である。
【0585】
細胞は、注入などによって、本明細書に記載される任意の好適な経路で投与することができる。細胞はまた、他の抗がん剤の前、同時、または後に投与することができる。
【0586】
投与は、当技術分野で一般に即知である方法を使用して達成することができる。細胞を含む薬剤は、直接的な注入によって、または血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、髄腔内、動脈内、心臓内、もしくは筋肉内投与を含むがこれらに限定されない当技術分野で使用される任意の他の手段によって所望の部位に導入することができる。例えば、目的の対象は、様々な経路によって移植された細胞を生着させることができる。かかる経路には、これらに限定されないが、静脈内投与、皮下投与、特定の組織への投与(例えば、限局性移植)、大腿骨髄腔への注入、脾臓への注入、胎児肝臓の腎被膜下への注入などが含まれる。特定の実施形態では、本発明に包括されるがんワクチンは、腫瘍内または皮下に対象に注入される。細胞は、1回の注入で、または所望の効果を生み出すのに十分な定義された期間にわたる連続的な注入を通して投与することができる。移植、生着評価、及び移植された細胞のマーカー表現型分析のための例示的な方法は、当技術分野で周知である(例えば、Pearson et al.(2008)Curr.Protoc.Immunol.81:15.21.1-15.21.21、Ito et al.(2002)Blood 100:3175-3182、Traggiai et al.(2004)Science 304:104-107、Ishikawa et al.Blood(2005)106:1565-1573、Shultz et al.(2005)J.Immunol.174:6477-6489、及びHolyoake et al.(1999)Exp.Hematol.27:1418-1427を参照されたい)。
【0587】
幹細胞の細胞系治療及び養子細胞移植、がんワクチン及び細胞系治療などのように、2つ以上の細胞型を組み合わせて投与することができる。例えば、養子細胞系免疫療法は、本発明に包括される細胞系療法と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、細胞系薬剤は、単独で、または養子T細胞療法(ACT)のような免疫療法などの追加の細胞系薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、T細胞は、濾胞性B細胞リンパ腫の治療に使用されるCD19を認識するように遺伝子操作される。ACTの免疫細胞は、樹状細胞、T細胞、例えば、CD8T細胞及びCD4T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。周知である養子細胞系免疫療法モダリティは、限定されないが、照射された自己または同種異系腫瘍細胞、腫瘍溶解物またはアポトーシス腫瘍細胞、抗原提示細胞系免疫療法、樹状細胞系免疫療法、養子T細胞移植、養子CAR T細胞療法、自家免疫強化療法(AIET)、がんワクチン、及び/または抗原提示細胞が含まれる。かかる細胞系免疫療法は、GM-CSFなどのサイトカインを発現するような免疫応答をさらに調節するため、及び/またはMage-1、gp-100などの腫瘍関連抗原(TAA)抗原を発現するように、1つ以上の遺伝子産物を発現するようにさらに改変することができる。本発明により包含される薬剤と、例えば、がん細胞、本発明により包含される別の薬剤または他の組成物の比は、互いに1:1であり得る(例えば、等量の2つの薬剤、3つの薬剤、4つの薬剤など)が、所望の任意の量(例えば、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1、またはそれ以上)で調節され得る。
【0588】
移植された細胞の生着は、腫瘍体積、サイトカインレベル、投与時間、移植後の1つ以上の時点で対象から得られた目的の細胞のフローサイトメトリー分析などの様々な方法のいずれかによって評価することができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28日間待機する時間系分析、または、腫瘍採取の時期を合図することができる。任意のかかる測定基準は、抗がん免疫療法への応答に対する変数の影響を判断するために、周知であるパラメータに従って調整できる変数である。さらに、移植された細胞は、サイトカイン、細胞外マトリックス、細胞培養支持体などの他の薬剤と同時移植することができる。
【0589】
X.キット及びデバイス
本発明はまた、本明細書に記載されるバイオマーカーを検出及び/または調節するためのキットを包含する。「キット」は、本発明に包括されるマーカーの発現を特異的に検出及び/または影響を与えるための、少なくとも1つの試薬、例えば、抗体またはその抗原結合断片を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、本発明に包括される方法を実行するためのユニットとして、奨励、流通、または販売され得る。キットは、本発明に包括される方法において有用な1つ以上の薬剤を検出、発現、スクリーニングなどするために必要な1つ以上の試薬を含むことができる。例えば、本発明に包括されるバイオマーカーを検出するのに有用な薬剤の組み合わせ(例えば、表1に列挙される標的)は、骨髄細胞の炎症性表現型、免疫応答、抗がん機能、免疫チェックポイント療法に対する感受性などを同定するのに有用な、バイオマーカー及びその調節を検出するためのキットで提供することができる。かかる組み合わせは、本発明に包括されるバイオマーカーを最大ですべて含むなど、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上(境界値を含む)のバイオマーカーを検出するための1つ以上の薬剤を含むことができる。
【0590】
いくつかの実施形態では、キットは、参照標準、例えば、細胞の成長、分裂、移動、生存、またはアポトーシスを制御するシグナル伝達経路に影響を与えたり調節したりしないタンパク質をコードする核酸をさらに含むことができる。当業者は、一般的な分子タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質及びベータガラクトシダーゼ)、GeneOntology参照による細胞増殖、分裂、移動、生存、またはアポトーシスを包括する経路のいずれにも分類されないタンパク質、または遍在するハウスキーピングタンパク質を含むがこれらに限定されない多くのかかる制御タンパク質を想定することができる。キット内の試薬は、個別の容器で、または単一の容器内の2つ以上の試薬の混合物として提供できる。さらに、キット内の組成物の使用を説明する指導書を含めることができる。本発明に包括されるキットはまた、本明細書で提供される開示された発明の方法における開示された発明のキットまたは抗体の使用を開示または説明する指導書を含むことができる。キットには、キットが設計される特定のアプリケーションを容易にするための追加の成分を含めることもできる。例えば、キットは、ラベルを検出する手段(例えば、酵素ラベルの酵素基質、蛍光ラベルを検出するフィルタセット、ヒツジ抗マウスHRPなどの適切な二次ラベル)及び対照に必要な試薬(例えば、対照生物学的試料または標準)を追加で含めることができる。キットは、開示された本発明の方法において使用が認識される緩衝液及び他の試薬をさらに含むことができる。非限定的な例には、担体タンパク質または界面活性剤などの非特異的結合を低減するための薬剤が含まれる。
【0591】
さらに他の実施形態では、抗体及びその抗原結合断片などの本発明に包含される組成物は、診断用途での使用などのために、成分またはデバイスと関連付けられ得る。非限定的な例には、これらのアッセイで使用するために固体表面上に固定化された抗体(例えば、上述のように光または放射線放出に基づいて検出可能な標識に連結され、及び/または複合された抗体)が含まれる。他の実施形態では、抗体は、「サンドイッチ」または競合アッセイ、免疫組織化学、免疫蛍光顕微鏡などでの、免疫クロマトグラフィまたは免疫化学アッセイの使用による目的のバイオマーカーの検出のためのデバイスまたはストリップと関連付けられる。かかるデバイスまたはストリップの追加の例は、在宅検査または迅速なポイントオブケア検査用に設計されたものである。さらなる例には、単一の試料中の複数の分析物の同時分析のために設計されたものが含まれる。例えば、本発明の非標識抗体は、生物学的試料中のバイオマーカーポリペプチドを「捕捉」するために適用され得、捕捉された(または固定化された)バイオマーカーポリペプチドは、検出のために本発明の抗バイオマーカー抗体の標識形態に結合され得る。免疫測定法の他の標準的な実施形態は、例えば、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫組織病理学、免疫組織化学、及び組織病理学に基づくアッセイを含む、当業者に周知のものである。
【0592】
本発明に包括される他の実施形態は、以下の実施例に記載される。本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これはさらなる限定と解釈されるべきではない。
【実施例
【0593】
実施例1:SIGLEC-9は、T細胞の限定されたサブセットと共を伴うヒト骨髄系細胞で優勢に発現する。
末梢免疫細胞の集団におけるSIGLEC-9(いくつかの図において参照名Ike-9とも称される)の発現を特徴付けるために、PBMC集団から得られた生きた単一細胞を、フローサイトメトリーを使用して細胞表面でのSIGLEC-9タンパク質発現について分析した。フローサイトメトリーでは、細胞を収集して、50ulのFACS緩衝液(2.5%FBS及び0.5%アジ化ナトリウムを含むPBS)に再懸濁し、氷上でTruStain FcX(商標)(Biolegendカタログ番号422302)で15分間ブロッキングした。抗体を製造元の指示に従ってFACS緩衝液で希釈して、添加し、15分間氷上に置いた。標識細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、Attune(商標)フローサイトメーター(ThermoFisher)でのフローサイトメトリー分析のためにPBSと2%パラホルムアルデヒドで固定した。FlowJoソフトウェアを介してデータを分析した。対照及び/またはフローサイトメトリーで使用される試薬抗体を以下の表3に示す。
【表3】
【0594】
図1は、SIGLEC-9発現が、SIGLEC-9を発現するT細胞の限定されたサブセットを伴うヒト骨髄系細胞で優勢であることを示す。
【0595】
健常なPBMCを分析することに留まらず、疾患部位におけるSIGLEC-9の発現を決定することが重要である。この目的のために、婦人科腫瘍及び固形腫瘍からの腹水という2つの細胞源を利用した。両方の状況において、TAMはSIGLEC-9を発現することが見出されたが、T細胞はSIGLEC-9を発現しなかった。図2は、婦人科癌から得られた腹水液試料中の細胞の大部分を占めるTAM(例えば、CD16及びCD163を発現するM2 TAM)も、その細胞表面上でSIGLEC-9タンパク質を高度に発現することを示す。同様に、図3は、単一細胞懸濁液に解離され、フローサイトメトリーを介して免疫表現型が決定された乳房、結腸、及び腎臓腫瘍から得られたTAM(例えば、CD11b+/CD14+マクロファージ)が、それらの細胞表面上でSIGLEC-9タンパク質を高度に発現することを示す。腫瘍の分析を行うために、各腫瘍を最初に単一の細胞懸濁液に調製した。腫瘍を2~4mmの小片に切断した。腫瘍解離キット酵素混合物(MACS Miltenyi Biotec)を、製造元のプロトコルに従って調製した。腫瘍片及び解離酵素を5mlのSnaplockマイクロ遠心チューブに移し、直剪刀を使用して組織を細かく切り刻んだ。チューブを37℃のシェーカーに200~250rpmで45分~1時間置いた。培養時間の終わりに、消化された腫瘍を、40uMセルストレーナーを通して50mLFalcon(商標)コニカル遠心チューブに濾過した。消化を止めるために、各チューブを冷たい2%~5%FBS/PBS混合物で充填した。残りのすべてのステップは氷上で実行した。特に、各チューブを300xgで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞を冷2%~5%FBS/PBS混合物で2回洗浄した。最後の洗浄に続いて、細胞を1~5mlの冷2%~5%FBS/PBS混合物に再懸濁し、細胞数を数えた。フローサイトメトリーを上述のように実施した。図2図3は、両方とも、SIGLEC-9が、T細胞と比較して、疾患部位のTAMで主に発現されることを示している。
【0596】
図4は、上部の最も高いSIGLEC-9発現を伴うSIGLEC-9のその発現に基づくヒトがんの大規模な公開データセット(TCGA、The Cancer Genome Atlas、2017年版、OmicSoft/Qiagenによって処理及び配布)のがん種全体にわたってマクロファージ浸潤腫瘍の順位分布を示す。腫瘍浸潤は、カットオフより上の標準的な骨髄性マーカーCD11bの存在によって測定した。カットオフは、データセット内のすべての原発腫瘍にわたるCD11b mRNA発現分布の最初の四分位数として定義した。これらのSIGLEC-9陽性マクロファージ浸潤腫瘍は、本明細書に記載される組成物及び方法による調節に特に有用であると考えられる。
【0597】
実施例2:ヒトSIGLEC-9に対するマウス抗体の生成
マウス抗ヒトSIGLEC-9抗体を、マウスの免疫化によって生成した。それぞれCD-1、B6;129、B6;SJL、及びNZB/w系統からなるマウスの2つのコホートを、異なる形態のSiglec-9抗原で免疫した(LakePharma;Belmont,CAで実施される免疫化及び融合)。1つのコホートにおいて、マウスを、ヒトIgG1 FcとのN末端融合体として、ヒトSiglec-9のアミノ酸Q18-G348からなる組換えヒトSiglec-9細胞外ドメイン(ヒトSiglec-9-Fc)(配列番号8)で免疫化した。第2のコホートにおいて、マウスを、ヒトSiglec-9-Fc、及びヒトIgG1 FcとのN末端融合体として、カニクイザルSiglec-9のアミノ酸Q20-T348からなる組換えカニクイザル(カニクイザル)Siglec-9細胞外ドメイン(カニクイザルSiglec-9-Fc)(配列番号9)で共免疫化した。
【0598】
十分な血清価を有するマウス由来のB細胞濃縮リンパ球を融合してハイブリドーマを生成し、融合細胞を384ウェルプレートに播種した。一次リスクリーニングにおいて、Siglec-9結合ハイブリドーマは、完全長ヒトSiglec-9(配列番号10)を発現するSiglec-9過剰発現CHO細胞(Siglec-9-CHO)及び親CHO-K1細胞と結合するハイブリドーマ上清の多重フローサイトメトリーによって特定した。Siglec-9細胞結合ハイブリドーマを拡大し、二次スクリーニングでは、Siglec-9結合は、ハイブリドーマ上清のSiglec-9-CHOとの結合をフローサイトメトリーによって確認した。Siglec-9との結合特異性を、プレートコーティングしたヒトSiglec-9-Fc、ヒトSiglec-7-Fc(配列番号13)、ヒトSiglec-6-Fc(R&D Systems、2859-S)、及びヒトSiglec-8-Fc(R&D Systems、9045-SL)についてELISAによって評価した。ヒトSiglec-9特異的ハイブリドーマ、またはヒトSiglec-9及びヒトSiglec-7交差反応性ハイブリドーマを拡大し、飽和上清を収集して凍結保存した。飽和上清を、フローサイトメトリーにより、ヒトSiglec-9過剰発現293T細胞(Siglec-9-293)(配列番号10)及び親293T細胞との結合について、ならびにELISAにより、プレートコーティングしたヒトSiglec-9-Fc(配列番号8)、ヒトSiglec-7-Fc(配列番号13)、及びカニクイザルSiglec-9-Fc(配列番号9)との結合についてスクリーニングした。
【0599】
目的のハイブリドーマをサブクローニングし、ELISAまたはフローサイトメトリーによってSiglec-9結合を確認した。抗体を、抗体アイソタイプに応じて、プロテインGまたはプロテインA樹脂によってサブクローニングしたハイブリドーマからの上清から精製した。精製抗体を、200mM HEPES、100mM NaCl、50mM酢酸ナトリウム、pH7.0中で製剤化した。すべての抗体は、1EU/mg未満のエンドトキシンレベルを有した。ハイブリドーマのサブセットを配列決定して、可変重(VH)及び可変軽(VL)ドメイン配列を決定した。
【0600】
抗体生成プロセスで使用したペプチド及びポリペピドの配列を、以下の表4に記載する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0601】
いくつかの抗体は、マウス可変領域及びカッパ軽鎖と対になったS228P重鎖変異を含むヒトIgG4骨格を有するマウス/ヒトキメラとして発現した。可変重鎖(HC)及び軽鎖(LC)配列は、表5に示す抗体定常領域配列を含むベクターにクローン化した。表5はまた、ラムダ軽鎖との対形成が有用である場合に使用され得る代表的なヒトラムダ軽鎖領域も列挙する。
【表5】
【0602】
タンパク質発現及び精製は、LakePharma(Belmont,CA)及びATUM(Newark,CA)によって、重鎖及び軽鎖を含む独自のベクターを懸濁液に適応したHEK293細胞に一過性にトランスフェクトすることによって実施した。細胞培養上清をプロテインA親和性クロマトグラフィで精製した。溶出した中和タンパク質を、PBS、pH7.4または200mM HEPES、100mM NaCl、50mM酢酸ナトリウム、pH 7.0に緩衝液交換し、フィルタ滅菌した。精製した抗体を、一次アミノ酸配列から計算した吸光係数を使用して、OD280によって定量化した。精製した抗体を、キャピラリゲル電気泳動、HPLC-SEC、及びエンドトキシンレベルによって特徴付けした。
【0603】
実施例3:単球及びマクロファージアッセイを使用した、単球及び/またはマクロファージ炎症性表現型を増加させるための抗SIGLEC-9抗体の検証
ヒトマクロファージは、炎症誘発性(M1様、本明細書では1型とも称される)から腫瘍形成促進性/抗炎症性(M2様、本明細書では2型とも称される)への分化スペクトルに沿って存在する(例えば、Biswas et al.(2010)Nat.Immunol.11:889-896、Mosser and Edwards(2008)Nat.Rev.Immunol.8:958-969、Mantovani et al.(2009)Hum.Immunol.70:325-330を参照されたい)。この機能のスペクトルに沿って、マクロファージは、他の複数の特性を改変することに加えて、それらの表面マーカーの発現及び形態を改変する。初代ヒトマクロファージにおいてこれらのマーカーがこのスペクトルに沿ってどのように変化するかを理解することは、腫瘍(腫瘍関連マクロファージ)及び/または炎症組織などの特定の免疫環境にどの細胞が存在するかを理解し、これらのマクロファージがこれらの組織内の免疫応答にどのように影響するかを理解するために重要である。CD163、CD16、及びCD206を含む特定の細胞表面マーカーは、従来、マクロファージのサブタイプを分類するために使用されてきた。
【0604】
これらの分化した状態に沿って、マクロファージは、免疫応答を誘導または抑制するかのいずれかで生物学的に最適化される。したがって、抗体を介してマクロファージの表面でSIGLEC-9を標的とすることにより、免疫応答の開始、抑制、及び/または永続化の改変を可能とするであろう。
【0605】
本明細書に記載される各単球/マクロファージ細胞系実験について、細胞株を使用するのではなく、初代ヒト単球、マクロファージ、及び/またはPBMCを使用して、単離された細胞型を有する任意のインビトロ実験系が可能にする可能な限り最も近い方法で、インビボ既存細胞を模倣する生物学的特性を再現した。特に、系は、初代細胞の自然の生物学的特性を研究するためのアクセスを提供し、様々な遺伝的及び環境的曝露を有するさまざまなドナーから生じる自然の多様性へのアクセスを提供する。したがって、アッセイの結果を解釈する際には、ヒト集団間の自然の遺伝的及び免疫学的変動を考慮することが重要である。
【0606】
実施例2に記載の抗体を、機能的アッセイで利用した。マクロファージ分化状態に対するこれらの抗体の効果は、サイトカイン分泌、及び複雑な多細胞アッセイで協調免疫応答を永続させる能力などの他の機能的特徴を含む読み出しによって測定した。
【0607】
例えば、図5は、マクロファージ機能的アッセイで利用した、表2に列挙した抗体の結果を示す。単球を、インビトロでM1様(1型)及び/またはM2様(2型)の表現型に分化した(Ries et al.(2014)Cancer Cell 25:846-859、Vogel et al.(2014)Immunobiol.219:695-703)。単球をM2マクロファージに分化するために、RosetteSep(商標)ヒト単球濃縮カクテル(Stemcell Technologies,Vancouver,Canada)を使用したフィコール分離により、健康なドナーの全血から製造元の指示に従って単球を単離した。単離した単球を、24または96ウェルプレートに整列し10%ウシ胎児血清を含むIMDM培地で一晩おき、非接着細胞を96時間後に洗い流した。単球は、M2マクロファージの場合は50ng/mlのヒトM-CSFと共に、IMDM 10%FBS中で6日間培養することによりマクロファージに分化した。6日後、M2マクロファージを20ng/mlのIL-10で分極化し、7日目に100ng/mlのLPSで活性化した。
【0608】
表3及び4に列挙したモノクローナル抗体を、培養の7日目に10ug/mlの最終濃度で投与した。いくつかの特定の入手可能な抗体、ならびに上記実施例2で生成した抗体について記載したようにクローニングし、発現された表3及び5に列挙されるものから選択されるモノクローナル抗体を、同様に対照として投与した。
【0609】
8日目に、細胞サイトカイン及びケモカインを測定して、特定のmAbがマクロファージの炎症誘発性または抗炎症性を変化させる能力を評価した。上清からのサイトカインを、製造元のプロトコルに従って、Luminexパネル(Thermo Fisher,Waltham,MA)を使用して測定した。Cytation(商標)5 Imaging Reader(Biotek,Winooski,VT)を使用して発光を検出した。データは、代表的な少なくとも3~4人の健康なドナーである。
【0610】
マクロファージは、異なるサイトカイン及びケモカインを産生する。例えば、M1マクロファージは、GM-CSF、IL-12、及びTNFアルファを含むがこれらに限定されない、より多くの炎症誘発性サイトカインを産生し、一方でM2マクロファージは、VEGF、IL-10、及びTGFbなどの腫瘍形成促進性ならびに免疫抑制性のサイトカインを産生する。これらのアッセイを通して、マクロファージは、強力なサイトカインIL-10及びM-CSFの存在を介して、M2表現型に強く駆動される。2F15及び13H10などの複数のmAbは、減少したCD163発現、及び増加したHLA-DR発現を含む表現型の変化、ならびに増加したIL-12及びTNFaを含む機能的変化、ならびに他のものによって示されるように、これらのM2マクロファージをよりM1様状態に駆動することができた。図はまた、分析した他のサイトカイン間の変化における一致も示す。これらの図はさらに、抗SIGLEC-9抗体がM2マクロファージの機能的特徴をよりM1様状態に改変させる能力を示す。重要なことに、分化中のこれらのアッセイ内の細胞は、アッセイ全体を通して強力な傾斜状態の存在下にとどまる。さらに、抗体は、培養物中に24時間しか存在しなかった。これは、上記のように、細胞がM2スペクトルに沿ってある程度分化していることが知られている、腫瘍などの疾患環境をより表示している。この限られた時間枠の間でさえ、mAbは、炎症誘発性サイトカインの増加によって示されるように、M2マクロファージの分極をよりM1様状態に劇的に影響を与えることができた。このアッセイの厳しい分極条件を考慮しても、このアッセイにおけるmAbは、GM-CSF、IL-12、TNFa、IL-10、CXCL9、CCL-4、及びIL-1bを含む1つ以上のサイトカインにおける50%以上の変化、及び/またはIL-10における50%の減少を誘導することができた場合、M2様マクロファージをM1様マクロファージに機能的に切り替えることができると考えられた。図5に見ることができるように、ほとんどのmAbは、サイトカインまたはケモカインのうちの1つの変化に影響を与えるだけでなく、複数の変化にも影響を与える。さらに、これらの図は、抗SIGLEC-9抗体がM2マクロファージの機能的特徴を逆転させてそれらをよりM1様にする能力を示す。
【0611】
実施例4:複雑な免疫細胞アッセイを使用した、単球及び/またはマクロファージ炎症性表現型を増加させるための抗SIGLEC-9抗体の検証
マクロファージが腫瘍免疫原性を誘導するか、または自己免疫及び炎症性疾患の経過を逆転させたりするためには、一般に、協奏的な免疫応答を誘導または遮断することで可能であり得る。これには、骨髄細胞及びリンパ系細胞の両方に直接的及び下流の影響を与えることが含まれる。かかる効果を分析するには、リンパ系及び骨髄系の両方の初代細胞からなる複雑な多細胞アッセイが必要である。
【0612】
StaphylococcalエンテロトキシンB(SEB)アッセイシステムは、本明細書に記載される確認した標的が協奏的な免疫応答をもたらす能力を実証するために利用した。これらのアッセイは、初代ヒト細胞を利用し、これらは研究のために最も自然な細胞であり、ヒト疾患などのインビボ疾患に対して最適な予測的な力を有する。このアッセイは、当然のことながら、バックグラウンド活性及び応答の振幅の両方において、ドナーごとに大きなばらつきを有する。
【0613】
SEBアッセイでは、末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll(登録商標)分離によって新鮮なドナーの血液から単離し、90%ウシ胎児血清(FBS)、10%DMSOで、-150°Cで長期保存した。PBMCは、10%FBS、50nMの2-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、1 mMのピルビン酸ナトリウム、及び10mのMHEPESを含む完全RPMI培地中に解凍した。次に、200,000個の細胞を、完全RPMI中に96ウェルプレートの各ウェルに播種した。抗ヒトPD-1ペムブロリズマブ(Merck,KEYTRUDA(登録商標),MK-3475)を5μg/mlで追加し、実施例1に記載した他の抗体を示した濃度で追加した。細胞及びmAbを37℃で30分間インキュベートし、StaphylococcalエンテロトキシンB(SEB)(EMD Millipore,Billerica,MA)を0.1μg/mlの最終濃度で追加した。活性化の4日後、上清を収集し、-20℃で凍結した。サイトカイン濃度は、マルチパラメータProcartaPlex(商標)アッセイ(ThermoFisher Scientific)を使用して測定した。データは、代表的な少なくとも4~6人の健康なドナーである。重要なことに、SEBアッセイは単球を含有し、SEBアッセイにおける細胞の抗体処理は、単球に影響を与え、特に、アッセイの初期段階では、アッセイの開始時にマグロファージがほとんど存在しないか、または存在しないため、それによってアッセイ結果に影響を及ぼすであろう。
【0614】
このアッセイでは、SIGLEC-9に対する特異的抗体が、協奏的な多細胞免疫応答に影響を与えることができることを示した。この協奏的な多細胞応答には、以前に示したように骨髄細胞の機能を改変するだけでなく、リンパ系細胞、特にT細胞の機能的出力も含まれた。このアッセイでは、GM-CSF、IL-12、TNFa、IL-10、CXCL9、CCL-4、IL-1b、及び/またはIFNgを含む1つ以上のサイトカインの50%以上の変化を誘導することができた場合、mAbは機能的であると見なした。図6は、SEBアッセイからの分泌されたサイトカインレベルを示す。mAbによる処理は、骨髄由来のサイトカイン及びケモカイン(例えば、IL-1B、GM-CSF、及びCCL4)、ならびにT細胞由来のサイトカイン(例えば、IL-2、IFNγ、及びIL-10)の産生に変化をもたらした。重要なことに、これらの抗SIGLEC-9 mAbの能力を、免疫腫瘍学における承認された療法であり、SEBアッセイ内の強力な活性化因子であるKEYTRUDA(登録商標)と比較した。図6は、抗SIGLEC-9 mAbがKEYTRUDA(登録商標)処理試料の効果と同等またはそれを超えることができたことを示す。
【0615】
上記の実施例3に記載したマクロファージのみのアッセイと同様に、結果は、13H10及び2E23などのmAbが、マクロファージをより炎症誘発性のM1様状態に駆動し、複雑な多細胞免疫細胞アッセイで一貫した効果を発揮し、炎症誘発性サイトカインを増加させることを明確に示す。
【0616】
実施例6:SIGLEC特異性に関する抗SIGLEC-9抗体の生物物理学的特徴付け
SEBアッセイで機能していると同定された抗体など、特定の抗体の結合特性及び特異性は、プレート結合ヒトSiglec-9-Fc、カニクイザルSiglec-9-Fc、ヒトSiglec-7-Fc、ヒトSiglec6-Fc、及びヒトSiglec-8-Fcと結合する能力についてELISAによって決定した(図7)。ELISAプレート(384ウェル)を、室温でインキュベートして1ug/mLのSIGLECタンパク質でコーティングした。プレートを0.1%Tween(登録商標)20を含むPBS、pH7.4で洗浄し、3%BSAを含むTBSで遮断した。プレートを洗浄し、100nMに希釈した抗SIGLEC9抗体とインキュベートした。プレートを洗浄し、HRP共役抗マウスFc二次抗体とインキュベートした。プレートを最終洗浄し、HRP基質とインキュベートした。読み出しは、POLARstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG LAPTECH)を使用して実行した。
【0617】
機能性抗体は、概して、i)ヒトSIGLEC-9特異性、ii)カニクイザルSIGLEC-9との弱い交差反応性、ならびにiii)カニクイザルSIGLEC-9及びヒトSIGLEC-7との交差反応性の3つの広範なカテゴリに分類された。
【0618】
キメラ抗体の結合親和性は、ForteBio Octet Red384システムを使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって決定した。すべての試料を、動態緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%アジ化ナトリウム、0.02%Tween(登録商標)20を含む1xDPBS(Gibco、カタログ番号LS14190250))で希釈して、黒色96ウェル平底プレート(Greiner、カタログ番号655209)で調製した。抗SIGLEC-9抗体(リガンド)を最終濃度10ug/mLに希釈し、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー(ForteBio,カタログ番号18-5060)で捕捉した。組換えヒトSiglec-9-His、カニクイザルSiglec-9-His、及びヒトSiglec-7-Hisを、100nM~1.56nMまで2倍滴定した。バイオセンサーを、動態緩衝液中でアッセイの前に10分間再水和し、次いで動態緩衝液中で60秒間平衡化した。次いで、抗体を300秒間固定化し、続いて、新鮮な動態緩衝液中での120秒間のベースライン洗浄、300秒間の分析物会合、及びベースライン洗浄ステップと同じ緩衝液ウェル中での300秒間の解離を行った。すべてのアッセイステップは、5.0Hzの取得速度で30℃にて行った。
【0619】
ForteBio Data Analysis HTソフトウェアを使用してフィッティングを計算し、結果を以下の表6に示す。処理パラメータは、参照センサ減算のためのアイソタイプ対照として使用したヒトIgG4と、参照試料減算のために使用した分析対象物を含まない動態緩衝液中の固定化リガンドとの二重参照減算を含んでいた。Y軸データを、最後の5秒間の平均ベースラインステップに整列させ、すべてのステップを、ステップ間を解離ステップの開始まで補正した。Savitzky-Golayフィルタリングを使用して高周波ノイズを除去し、最終的な適合は、会合及び解離の両方に対する1:1グローバル結合モデルであった。
【表6】
【0620】
実施例7:抗SIGLEC-9抗体のエピトープ結合
機能的抗体のエピトープ多様性を、ForteBio Octet Red 384システムで実施した抗体交差遮断実験によってより詳細に評価した。すべての試料を、120uLの作業容量で黒色384ウェル平底プレート(Greiner、カタログ番号781209)で調製し、動態緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%アジ化ナトリウム、及び0.02%Tween(登録商標)20を含む1xDPBS)で希釈した。抗SIGLEC-9抗体及びヒトSiglec-9-Fcタンパク質を、動態緩衝液で10ug/mlの最終濃度に希釈した。抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー(ForteBio,カタログ番号18-5060)を、動態緩衝液中でアッセイの前に10分間再水和し、次いで動態緩衝液中で60秒間平衡化した。次いで、組換えヒトSiglec-9-Fcを120秒間固定化し、続いて、新鮮な動態緩衝液中の30秒間のベースライン洗浄、一次抗体(抗体「a」)の120秒間の会合、30秒間の洗浄、次いで競合抗体(抗体「b」)の120秒間の会合を行った。すべてのアッセイステップは、5.0Hzの取得速度で30℃にて行った。
【0621】
ForteBio Data Analysis HTソフトウェアを使用して結合結果を計算した。抗体「a」及び抗体「b」ステップを定義し、最大結合計算をステップ期間の最後の10%で平均化した。マトリックスが生成されると、自己相互作用を減算し、階層的クラスタリングを平均値によるピアソン及びリンガング基準の類似性メトリックで設定し、最大結合nmシフトを以下の表7に報告した。抗体「a」(列)の存在下での抗体「b」(カラム)とSIGLEC9との様々なレベルの結合は、異なる抗体によってカバーされる様々なエピトープを示す。
【0622】
表7は、カニクイザルSIGLEC-9及びヒトSIGLEC-7に対する異なる結合特異性を有する抗体と一致する、抗体交差遮断特性の異なるパターンを示す。
【表7】
【0623】
実施例8:抗SIGLEC-9抗体は、腫瘍において増加した炎症をもたらす
上記のインビトロ系は、これらの確認したマクロファージ関連標的がマクロファージ機能を改変させる能力、及びT細胞を含む複雑な多細胞アッセイを明確に示す。これらのデータを、エクスビボ培養系で患者腫瘍材料を使用してさらに確認した。この種類の系は、ヒトインビボ研究に近く、一般的に容認される代替であり、したがって、治療的有効性の強力な証拠を提供する。
【0624】
マクロファージ関連標的を、解離した培養物を使用して、組織環境におけるマクロファージの生物学のそれらの制御についてさらに試験した。解離した腫瘍は、例えば、腫瘍、免疫、及び支持細胞など、腫瘍微小環境に存在するすべての様々な細胞集団を含む。これらの実行可能な単一細胞懸濁液は、多くのアプリケーションに有用であり、実験の各複製内の細胞数及び組成の正規化を可能とする。新鮮な腫瘍組織の取得時に、解離した腫瘍実験を行うために(24時間未満)、はさみ及びメスを使用して、腫瘍試料から周囲の脂肪、線維性、及び壊死領域を除去した。腫瘍を2~4mmの小片に切断した。腫瘍解離キット酵素混合物(MACS Miltenyi Biotec)を、製造元のプロトコルに従って調製した。腫瘍片及び解離酵素を5mlのSnaplock Microcentrifugeに移し、直剪刀を使用して組織を細かく切り刻んだ。チューブを37℃のシェーカーに200~250rpmで45分~1時間置いた。培養時間の終わりに、消化された腫瘍を、40uMセルストレーナーで50mLFalcon(商標)コニカル遠心チューブに濾過した。特に、各チューブを消化を停止するために冷2%~5%FBS/PBS混合物で満たし(残りのすべてのステップを氷上で実行した)、300xgで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞を冷2%~5%FBS/PBS混合物で2回洗浄した。最後の洗浄に続いて、細胞を1~5mLの冷培地に再懸濁し、細胞数を数えた。300k~400k個の細胞を、1mLの培地を含有する2つの6ウェル培養プレートの各ウェルに播種した。プレートを、細胞培養インキュベータ内で37℃、5%COで24時間及び48時間培養した。研究の最後に、培養上清中のサイトカイン/ケモカインを、製造元の指示に従って、Invitrogen(商標)Luminex(商標)Cytokine Human Magnetic 25-Plex Panelを使用して測定した。この同じ範囲の複数のサイトカイン及びケモカインの上方制御は、驚くほど強力な応答を示した。
【0625】
研究は、複数の腫瘍種及びドナーにわたる選択した抗体の機能を示す。合計で、腫瘍セットは、3つの腫瘍型(例えば、6つの腎腫瘍試料、1つの肺腫瘍試料、及び1つの脳腫瘍試料)にわたる8つの原発性ヒト腫瘍から構成された。
【0626】
これらのエクスビボ培養物は、浸潤、リガンド、腫瘍抗原、天然の抑制性及び炎症性刺激、成長因子、天然の変異状態などを含む、天然の腫瘍及び腫瘍微小環境(TME)条件を維持する。したがって、エクスビボ腫瘍培養物は、患者内の実際の腫瘍の複数の側面を忠実に捕捉する。特に、腫瘍微小環境が保存され、主要な免疫成分間の関係が保存され、PD-1阻害剤に対する臨床応答の複数の側面が捕捉される。マクロファージを標的とし、本明細書に記載される抗SIGLEC-9抗体は、汎癌プロファイルを有すると考えられている。実際に、図8に示したデータは、特定のmAbで処理したすべての個々の腫瘍及び腫瘍型にわたる相対値(アイソタイプ対照の%)の平均として提示され、3つの個々のケモカイン/サイトカイングループに分類されている。これらの3つの群は、骨髄に焦点を当てたサイトカイン(TNFa、GM-CSF、及びIL-1bなど)、ケモカイン(CCL3、CCL4、CCL5、CXCL9、及びCXCL10など)、及びT細胞活性化(IFNg)からなる。これらの3つの群は、マクロファージ系抗腫瘍免疫応答の3つの重要な側面を表す。第1に、骨髄系に焦点を当てたサイトカインは、抗体が、炎症誘発性サイトカインが産生され、免疫応答の開始をもたらすマクロファージの再分極を誘導したことを示す。第2に、重要なT細胞サイトカイン、インターフェロンガンマ(IFNg)の産生は、TAMのこの再分極及び免疫応答の開始が、腫瘍微小環境内のT細胞に変換されて、より強力な抗腫瘍免疫応答を生成することを示す。第3に、ケモカインの広範なパネルの産生は、天然免疫細胞が腫瘍に動員され始め、抗腫瘍免疫応答の持続につながることを示す。
【0627】
エクスビボ腫瘍モデルでは、単一の重要なサイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ)の少なくとも30%の上方調節の応答が、臨床応答を示すように分野において確立される(Jacquelot et al.(2017)Nat.Commun.8:592,Jenkins et al.(2018)Cancer Disc.8:196)。このシステムにおいて、複数のサイトカイン及びケモカインにわたる平均誘導は、抗腫瘍免疫応答の複数の側面における効果を必要とするため、高い基準である。データは、上記のインビトロデータと一致して、抗SIGLEC-9 mAbが骨髄由来及びT細胞由来のサイトカインを増加させることを一貫して示す。上述のように、単一のサイトカインの30%の変化は、臨床応答を示す。したがって、この同じ範囲内の複数のサイトカイン及びケモカインの一貫した上方制御は、驚くほど強力な抗SIGLEC-9媒介性抗腫瘍応答を示す。図8~13は、両方のSIGLEC-9抗体が複数の腫瘍においてこれらの基準を満たすことを示し、また、サイトカイン及びケモカインの100%を超える増加をもたらす多数の代表的な事例を提供する。
【0628】
かかるサイトカインの1つが、IFNgである。上述のように、SIGLEC-9は抑制性骨髄細胞(マクロファージ及びDC)上に発現するが、これらの抑制性骨髄細胞のSIGLEC-9媒介性再分極は、T細胞の活性化の増加をもたらし得る。そのために、IFNg産生を測定し、多くのmAbがT細胞によるIFNgの増加レベルを誘導することを示す。この効果は、T細胞によるより大きなIFNg産生に直接つながる異なる作用機序を有するKeytruda(登録商標)と直接比較することができる。複数の抗SIGLEC-9 mAbから見られる効果は、Keytruda(登録商標)治療と非常に類似している。
【0629】
一貫した変化は、TNFa、IL1b、及びGM-CSFなどのより骨髄由来のサイトカインでも示された。多くの抗SIGLEC-9 mAbは、これらのサイトカインの30%を超える増加を誘導した。この効果は、抗LILRb2 mAbと比較することができる。LILRB 2は、骨髄細胞において、独自であるが関連するメカニズムを有することが提案されている(Chen et al.(2018)J.Clin.Invest.128:5647-45662)。両方の抗SIGLEC-9 mAbは、抗LILRB2 mAbと同等またはそれ以上の性能を示す。
【0630】
上述のように、SIGLEC-9標的阻害に対する抗SIGLEC-9抗体媒介性応答は、各実験の終わりまでに、各治療群の培地中のサイトカイン及びケモカインのセットを十分に測定する多重システムを使用して部分的に測定し、効果は、マクロファージの炎症性活性化、ケモカインが新鮮な免疫細胞を腫瘍部位に誘引し、腫瘍に対する炎症性反応を促進すること、及びT細胞活性化の3つの相互に関連するが異なる機構のうちの1つ以上によって表すことができる。以下に記載したデータ(例えば、図8~13)では、各個々の抗体の平均は、この特定の抗体が試験した代表的な個々の腫瘍の数に対応する。
【0631】
より詳細には、マクロファージ炎症性活性化シグネチャを、最もよく認識されている炎症性サイトカインの1つ:TNFαを測定することによってさらにモデル化した。図8は、各抗SIGLEC-9抗体が、これらの2つのサイトカインの分泌を、すべての腫瘍にわたって平均してどのように誘導したかを示す。以下に記載した類似の図と同様に、Y軸は、所与の腫瘍についての非治療バックグラウンド値を表す、アイソタイプ対照アームの割合として、アイソタイプ対照アームに対して誘導される変化を示す。また、その後、変化率をすべての腫瘍にわたって平均化し、複数の腫瘍及び腫瘍の種類にわたる全体的な効果を示した。
【0632】
また、「ホット」T細胞浸潤腫瘍で内因的に発現されることが観察され、当技術分野ではT細胞チェックポイント阻害因子:CCL3、CCL4、CCL5、CXCL9、及びCXCL10に対する応答を示すと考えられているいくつかのケモカインにわたる効果を組み合わせることによって、化学結合シグネチャをモデル化した(Dangaj et al.(2019)Cancer Cell 885-900、House et al.(2020)Transl.Cancer Mech.Ther.26:487-504、Lapteva et al.(2010)Exp Opin Biol Ther.10:725-733)。図9は、各抗SIGLEC-9抗体が、ケモカインシグネチャ内のケモカインの分泌を、すべての腫瘍にわたって平均してどのように誘導したかを示す。
【0633】
さらに、T細胞活性化シグネチャを、1つの最も良好に受容するT細胞サイトカイン:IFNγを測定することによってさらにモデル化した。図10は、各抗SIGLEC-9抗体が、これらの2つのサイトカインの分泌を、すべての腫瘍にわたって平均してどのように誘導したかを示す。
【0634】
平均は、大量のデータを要約するのに便利であるが、図11~13は、個々の腫瘍に対する特定の代表的な抗SIGLEC-9抗体の効果を示す。所与の腫瘍では、少なくとも30%の誘導の効果が有意であると考えられる。これらの図は、多数の腫瘍型を表す有意な数の腫瘍が、3つの機械的応答群すべてにわたって試験したすべての代表的な抗SIGLEC-9抗体に対して有意な応答を示すことを明確に示す(例えば、マクロファージ炎症性活性化、化学誘引、及びT細胞活性化)。
【0635】
特に、異なる抗体は、生理学的に重要な結果をもたらす異なる動力学的動態を有する異なる機構を誘導することができるため、3つの測定された機構のいずれも、互いに比較して、必ずしも高い程度の生理学的重要性を有しないことに留意されたい。各メカニズムは、患者の生きた腫瘍に対する完全な免疫反応を調整するために経時的に他のメカニズムに供給されることは当技術分野で周知である。かかる効果は、測定が所定の時点で行われるこのアッセイの特定の形式で捕捉されるとは限らない。それにもかかわらず、提供される平均及び個々の結果は、臨床的に翻訳可能な原発腫瘍における様々な代表的な抗SIGLEC-9抗体のインビトロ機能の検証の強力な確認を明確に示す。例えば、図11~13は、2F15がTNFαの誘導において平均して比較的効力が低い一方で、化学誘引を誘導するのに最も強力なものの1つであったことを示す。
【0636】
表8は、図11~13に示した個別化した結果に基づいて試験したすべての代表的な抗SIGLEC-9抗体にわたるデータの包括的な要約を提供する。所与のメカニズムに対する個々の腫瘍における応答は、30%を上回る誘導と見なされる。例えば、所与のサイトカインについての所与の腫瘍では、アイソタイプ対照アームが「I」の読み取り値を与え、抗SIGLEC-9抗体治療アームが「S」の読み取り値を与えたと仮定する。次いで、所与のSIGLEC-9治療アームは、((S-I)/I)*100>=30の場合、応答因子と見なされる。表Xは、すべての抗SIGLEC-9抗体の有効性が、一般的に、免疫腫瘍学、及び特にPD-1阻害剤の現在のゴールドスタンダードであるKeytruda(登録商標)と概して同等であることを明確に示す。マクロファージの炎症性活性化については、すべての抗SIGLEC-9抗体が、Keytruda(登録商標)と同等またはそれ以上の良好な結果を示した。同様に、ケモカインシグネチャの誘導については、ほぼすべての抗SIGLEC-9抗体が、Keytruda(登録商標)と同等またはそれ以上で、腫瘍画分で応答を示し、抗SIGLEC-9抗体は、異なる腫瘍型にわたってより広範な応答を示した。T細胞活性化は、Keytruda(登録商標)によって直接誘導され、抗SIGLEC-9抗体によって間接的に誘導されるのみであり、アッセイの範囲において後者に対して動態的不利をもたらすが、依然として抗SIGLEC-9抗体の非常に強力な性能を示し、3H10は、その機構においてもKeytruda(登録商標)と同程度強力である。
【表8】
【0637】
したがって、本明細書に提示した結果は、代表的な抗SIGLEC-9抗体のセットが、このアッセイにおいてKeytruda(登録商標)と同等またはそれよりも優れていることを示す。この結論は、抗SIGLEC-9抗体の臨床的有用性が、それらの効果の全体的な強度にあるだけでなく、効果がKeytruda(登録商標)及び他のチェックポイント阻害剤(例えば、PD-1、PD-L1、及びPD-L2などのPD -1経路遮断剤)と異なるという事実にあるため、有意である。実際に、Keytruda(登録商標)後には効果を生じず、試験した抗SIGLEC-9抗体のいくつかに応答を示した腫瘍及び腫瘍型が存在する。これらの腫瘍及び腫瘍型は、現在利用可能な治療によって十分に提供されておらず、新たな機械的治療が必要な診療所内の患者集団を表す。例えば、Keytruda(登録商標)は、脳腫瘍試料でいかなる応答も産生しなかった。
【0638】
生物学的寄託
本発明の代表的な材料は、2019年6月4日にVerseau Therapeutics,Inc.によってアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託された。特に、モノクローナル抗体は、「13H10」(PTA-125944)、及び「13J19」(PTA-125945)の名称を有する個別の寄託物として寄託され、表2及び実施例に示される識別特性を有し、2019年6月4日にVerseau Therapeutics,Inc.により、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約及びその下の規制(ブダペスト条約)の規定に基づいてATCCに寄託された。これにより、寄託日から30年間、実行可能な寄託の維持が保証される。寄託は、ブダペスト条約の条件に基づいてATCCによって利用可能となり、Verseau Therapeutics,Inc.及びATCCの間の合意に従い、関連する米国特許の公開時、または米国もしくは外国の特許出願を一般に公開した際に、寄託の永続的かつ無制限の利用可能性を保証し、どちらか早い方に、米国特許商標庁が米国特許法セクション122及びそれに基づく長官の規則に従って(特に886 OG638を参照した37C.F.R.セクション1.14を含む)権利を有すると決定したものに寄託物の利用可能性を保証する。
【0639】
本出願の譲受人は、寄託が紛失または破壊された場合、通知に応じて資料を別のものと迅速に交換することに同意した。これらの寄託物は、認可された寄託機関で保管され、変異、非存続性、または破壊が発生した場合には、寄託機関が最新の試料放出要求を受領した後少なくとも5年間、寄託日から少なくとも30年間、または関連する特許の執行可能な存続期間のうち最も長い期間のいずれか長い期間置き換えられる。これらの細胞株の一般公開に関するすべての制限は、特許が出願から発行されると、取消不能に除去される。寄託された材料の入手可能性は、その特許法に従って政府の権限の下で付与された権利に違反して発明を実施するための権利として解釈されるべきではない。
【0640】
参照による援用
本明細書で述べられるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本出願が、本明細書における任意の定義を含めて優先する。
【0641】
ワールドワイドウェブ上でThe Institute for Genomic Research(TIGR)及び/またはワールドワイドウェブ上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって維持されているものなどの公開データベースにおけるエントリーと相関する受託番号を参照する任意のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列も参照によってそれらの全体が組み込まれる。
【0642】
等価物及び範囲
本発明により包含される1つ以上の実施形態の詳細は、上記の記載に示される。好ましい材料及び方法は上記に記載されているが、本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の材料及び方法を、本発明により包含される実施形態の実施または試験に使用することができる。本発明に関連する他の特徴、目的、及び利点が、記載から明らかである。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。競合が発生した場合は、上記の現在の記載が優先される。
【0643】
当業者は、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明に包括される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができるであろう。本発明に包括される範囲は、本明細書で提供される記載に限定されることを意図するものではなく、かかる同等物は、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0644】
冠詞「a」及び「an」は、反対に示されない限り、または文脈から明らかでない限り、冠詞の文法上の目的語のうちの1つを超えるもの(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「(an)要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。群の1つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記載は、その反対が示されるか、または別途文脈から明白でない限り、1つ、2つ以上、またはすべての群要素が、所与の製品または過程において存在するか、用いられるか、または別途関連している場合に、満たされると考えられる。本発明は、群の正確に1つの要素が、所与の製品または過程において存在するか、用いられるか、または別途関連している実施形態を含む。本発明はまた、2つ以上、またはすべての群要素が、所与の製品または過程を提示するか、それらにおいて用いられるか、または別途それらに関連している実施形態を含む。
【0645】
「含む」という用語は、制約がないことが意図され、追加の要素またはステップの包含する必要がないことに留意されたい。したがって、本明細書で「含む」という用語が使用される場合、「からなる」という用語も包含され、開示される。
【0646】
範囲が与えられている場合、終点を含む。さらに、別途示されるか、または別途文脈及び当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が別途明確に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明により包含される異なる実施形態の状態範囲内の任意の特定の値または部分範囲をとることができることが理解されるべきである。
【0647】
加えて、先行技術範囲内の本発明によって包括される任意の特定の実施形態が、請求項のうちのいずれか1つ以上から明らかに除外され得ることが理解されるべきである。かかる実施形態は、当業者に既知であると見なされるので、除外が明らかに本明細書に記載されていない場合でも除外され得る。本発明により包含される組成物(例えば、任意の抗生物質、治療または有効成分、任意の製造方法、任意の使用方法など)のいずれの特定の実施形態も、先行技術の存在に関連するかどうかにかかわらず、あらゆる理由により、任意の1つ以上の請求項から除外することができる。
【0648】
使用されている単語は、限定ではなく説明の単語であり、その変更は、本発明のより広い態様に含まれる真の範囲及び精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で行うことができることが理解される。
【0649】
本発明は、いくつかの記載された実施形態に関して、ある程度の長さで、ある程度の特殊性をもって記載されてきたが、それが任意のかかる詳細または実施形態または特定の実施形態に限定されるべきであることは意図されず、しかし先行技術を考慮してかかる特許請求の範囲の可能な限り広い解釈を提供し、したがって、本発明によって包括される意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022535417000001.app
【国際調査報告】