(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】宿主細胞によって産生される非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役させるための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/52 20060101AFI20220801BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20220801BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220801BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20220801BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20220801BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20220801BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220801BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220801BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C12N15/52 Z ZNA
C12N15/53
C12N15/54
C12N15/55
C12N9/00
C12N9/02
C12N9/12
C12N9/16 B
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571961
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020036417
(87)【国際公開番号】W WO2020247816
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511289736
【氏名又は名称】アミリス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュア ペネロペ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン ジョシュア アダム
(72)【発明者】
【氏名】シェルバート トーマス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タッカー チャンドレッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ツォン アニー エニン
(72)【発明者】
【氏名】チアン ハンシアオ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD04
4B050EE10
4B050LL05
4B050LL10
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA27
4B065CA60
(57)【要約】
宿主細胞によって産生されるイソプレノイド化合物の収率と生産性とを脱共役するための組成物および方法が提供される。いくつかの実施形態において、クエン酸回路(TCA)におけるフラックスが減少するように宿主細胞を遺伝子改変することで、収率と生産性とを脱共役する。他の態様において、宿主細胞内のATPのレベルを低下させることで、収率と生産性とを脱共役する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非分解生化合物を産生可能な宿主細胞によって産生される非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役する方法であって、発酵時のATPの利用を減少させることを含む、方法。
【請求項2】
前記ATPの利用が、1種以上のATP除去剤の添加によって減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上のATP除去剤が、弱有機酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記弱有機酸が、ソルビン酸、酢酸、安息香酸、およびプロピオン酸から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記弱有機酸が安息香酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ATPの利用が、1種以上のATP消費酵素の過剰発現によって減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上のATP消費酵素がSaccharomyces cerevisiaeのSSB1およびATPジホスホヒドロラーゼから選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ATPの利用が、1種以上のATP脱共役酵素の過剰発現によって減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上のATP脱共役酵素が、NADH酸化酵素(NOX)および代替酸化酵素(AOX)から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ATPのレベルが、宿主細胞内の無益回路の発現によって減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記無益回路が、ホスホフルクトキナーゼとフルクトース-1、6-ビスホスファターゼとの同時過剰発現、およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼとピルビン酸カルボキシキナーゼとの同時過剰発現から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非分解生化合物が、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイドおよびポリケチドからなる群より選ばれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非分解生化合物がイソプレノイドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イソプレノイドが、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、セスキテルペン、およびポリテルペンからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記イソプレノイドが、アビタジエン、アモルファジエン、カレン、α-ファルネセン、β-ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチュロール、β-ピネン、サビネン、γ-テルピネン、テルピノレン、およびバレンセンからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記イソプレノイドがβ-ファルネセンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主細胞が、細菌細胞、植物細胞、および酵母細胞から選ばれる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記宿主細胞が酵母細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酵母細胞がSaccharomyces cerevisiaeである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
イソプレノイド化合物を産生可能な宿主細胞によって産生される非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役させるための方法であって、宿主細胞のクエン酸回路(TCA回路)における炭素フラックスを減少させることを含む、方法。
【請求項21】
前記TCA回路内の炭素フラックスが、1種以上のTCA酵素の阻害によって減少される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1種以上のTCA酵素の発現が下方制御される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記TCA酵素が、クエン酸シンターゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、2-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、サクシニルCoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマル酸ヒドラターゼ、ペルオキシソームリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびピルビン酸カルボキシキナーゼから選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記TCA酵素が、ピルビン酸カルボキシキナーゼおよびクエン酸シンターゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記非分解生化合物が、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイド、およびポリケチドからなる群より選ばれる、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記非分解生化合物がイソプレノイドである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イソプレノイドが、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、セスキテルペン、およびポリテルペンからなる群より選ばれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記イソプレノイドが、アビタジエン、アモルファジエン、カレン、α-ファルネセン、β-ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチュロール、β-ピネン、サビネン、γ-テルピネン、テルピノレン、およびバレンセンから選ばれる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記イソプレノイドがβ-ファルネセンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記宿主細胞が、細菌細胞、植物細胞、および酵母細胞から選ばれる、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記宿主細胞が酵母細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記酵母細胞がSaccharomyces cerevisiaeである、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、非分解生化合物を産生する宿主細胞による発酵時の、非分解生化合物の産生における収率と生産性とを脱共役させる(uncoupling)ための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いかなるバイオマニュファクチャリング・プロセスにおいても、収率と生産性は、2つの主たる原価差要因である。イソプレノイド等の非分解生化合物のバイオマニュファクチャリングにおいて、生産性と収率は、糖および/または酸素の消費といった他の細胞速度の作用によることが多い。最小の製造費で生産性と収率の最適な組み合わせを達成する発酵プロセスの設計には、この関係性の詳細な特徴付けが必要である。標準的な発酵条件下におけるイソプレノイドの産生において、収率は、酸素および糖の取り込みの細胞比速度、転じて生産性、と常に逆相関する、即ち、イソプレノイド産生細胞による酸素および糖の取り込むが速いほど、イソプレノイド収率は低下する。このような関係性は「速度-収率共役(rate-yield coupling)」と呼ばれている。イソプレノイド製造において収率と生産性は2つの重要な原価差要因であることから、この収率と生産性の逆向きの共役(coupling)は問題である。速度-収率共役故に、酸素および/または糖の転移速度を増加させて生産性を向上させるいかなる試みも、付随する収率の減少となり、向上した生産性による費用効果が打ち消される。収率と生産性との逆相関を取り除くことは、高収率と高生産性とを同時に達成することを可能せしめるため有益であり、その結果、イソプレノイド製造効率が最大化される(発酵の費用当たりの産生されるイソプレノイド製品が最大化される)。
【発明の概要】
【0003】
一態様において、本発明は、非分解生化合物を産生可能な宿主細胞内で産生される非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役させる(decoupling)ための方法であって、発酵時のATPの利用を減少させることを含む、方法を提供する。
【0004】
一実施形態において、ATPの利用は1種以上のATP除去剤の添加によって減少される。別の実施形態においては、1種以上のATP除去剤は弱有機酸である。一定の実施形態においては、弱有機酸はソルビン酸、酢酸、安息香酸、およびプロピオン酸から選ばれる。好ましい実施形態においては、弱有機酸は安息香酸である。
【0005】
本発明の他の態様において、ATPの利用は1種以上のATP消費酵素の過剰発現によって減少される。一実施形態において、1種以上のATP消費酵素はSaccharomyces cerevisiaeのSSB1およびATPジホスホヒドロラーゼから選ばれる。別の実施形態において、ATPの利用は1種以上のATP脱共役酵素の過剰発現によって減少される。特定の実施形態においては、1種以上のATP脱共役酵素はNADH酸化酵素(NOX)および代替酸化酵素(AOX)から選ばれる。
【0006】
本発明のさらなる態様において、ATPのレベルは宿主細胞内の無益回路の発現によって減少される。一定の実施形態においては、無益回路は、ホスホフルクトキナーゼとフルクトース-1,6-ビスホスファターゼとの同時過剰発現、およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼとピルビン酸カルボキシキナーゼとの同時過剰発現から選ばれる。
【0007】
本発明の方法の一実施形態において、非分解生化合物は、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイドおよびポリケチドからなる群より選ばれる。一定の実施形態においては、非分解生化合物はイソプレノイドである。特定の実施形態においては、イソプレノイドは、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、セスキテルペン、およびポリテルペンからなる群より選ばれる。他の態様においては、イソプレノイドは、アビタジエン、アモルファジエン、カレン、α-ファルネセン、β-ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチュロール、β-ピネン、サビネン、γ-テルピネン、テルピノレン、およびバレンセンからなる群より選ばれる。好ましい実施形態においては、イソプレノイドはβ-ファルネセンである。
【0008】
本発明の方法の一実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞、植物細胞、および酵母細胞から選ばれる。一定の実施形態においては、宿主細胞は酵母細胞である。好ましい実施形態においては、酵母細胞はSaccharomyces cerevisiaeである。
【0009】
本発明の他の態様において、本発明は、イソプレノイド化合物を産生可能な宿主細胞によって産生される非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役させるための方法であって、宿主細胞のクエン酸回路(TCA)における炭素フラックスを減少させることを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の方法の一実施形態において、TCA回路内の炭素フラックスは、1種以上のTCA酵素の阻害によって減少される。別の実施形態においては、1種以上のTCA酵素の発現が下方制御される。さらなる実施形態においては、TCA酵素は、クエン酸シンターゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、2-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、サクシニルCoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマル酸ヒドラターゼ、ペルオキシソームリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、およびピルビン酸カルボキシキナーゼから選ばれる。好ましい実施形態において、TCA酵素は、ピルビン酸カルボキシキナーゼおよびクエン酸シンターゼである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、異なる細胞比酸素取り込み値(qO
2)におけるファルネセンの収率を示すグラフである。
【
図2】
図2は、異なる細胞比糖取り込み値(qS)におけるファルネセンの収率を示すグラフである。
【
図3】
図3は、異なる生産性値におけるファルネセンの収率を示すグラフである。
【
図4】
図4は、異なる酸素取り込み値(qO
2)における細胞比糖取り込み値(qS)を示すグラフである。
【
図5】
図4は、異なる酸素取り込み速度における、アルファ-ケトグルタレートのイソクエン酸に対する比をプロットしたグラフである。
【
図6】
図6は、ATPの潜在的な吸収源(sink)としての加水分解または無益回路を除去することによって、産物の収率に対するATP産生の影響をモデル化することを可能にするゲノムスケールのモデルに対する改変を示す図である。(NGAMは「非成長関連改変」である。)
【
図7】
図7は、qSに対する関数としてのファルネセン収率のシミュレーションで得たデータを、TCA回路の異なる推定フラックスに対してプロットしたグラフである。実際の実験データは、シミュレーション値に重ねて黒い丸でプロットした。
【
図8】
図8は、比糖取り込み(qS)(上パネルのY軸)、成長速度(上から2番目のパネルのY軸)、比ファルネセン生産性(qP)(上から3番目のパネルのY軸)、および産物収率の計算値(qP/qS)(下パネルのY軸)に対する、異なる安息香酸濃度(X軸=mMの安息香酸)の影響を示す、一組のグラフである。
【
図9】
図9は、以下の3株における、異なる比酸素取り込み速度(qO
2)に対するファルネセン収率を示すグラフである:Y21901(対照)、Y22021(対照)、およびY31655(NOXを過剰発現するY22021)。
【
図10】
図10は、以下の4株における、異なる比酸素取り込み速度(qO
2)に対するファルネセン収率を示すグラフである:Y21601(対照)、Y27662(PYC1を下方制御)、Y29438(PYC1およびCIT1を下方制御)、およびY39666(CIT1を下方制御)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用するように、イソプレノイド製品のバイオマニュファクチャリングに関連して使用する「生産性」または「qP」という用語は、乾燥細胞重量のグラム当たり、1時間に産生される、イソプレノイド製品のモル数を意味する。
【0013】
本明細書で使用するように、イソプレノイド製品のバイオマニュファクチャリングに関連して使用する「収率」または「YP/S」という用語は、糖消費の速度に対するイソプレノイド製品の形成速度を意味する。
【0014】
本明細書で使用するように、「qS」または「糖消費」という用語は、乾燥細胞重量のグラム当たり、1時間に消費される糖のモル数で表した、発酵の際の糖消費速度を意味する。
【0015】
本明細書で使用するように、「qO2」または「酸素消費」という用語は、乾燥細胞重量のグラム当たり、1時間に消費されるO2のモル数で表した、発酵の際の酸素消費速度を意味する。
【0016】
本明細書で使用するように、「速度-収率共役」という用語は、イソプレノイドの発酵による産生の際の、収率と生産性との逆相関を意味する。
【0017】
本明細書で使用するように、「弱有機酸」または「(WOA)」という用語は、pKaが4.0以上の有機酸を意味する。WOAの非限定的な具体例には、ソルビン酸、酢酸、安息香酸およびプロピオン酸が含まれる。
【0018】
本明細書で使用するように、「無益回路」という用語は、少なくとも2つの代謝回路または経路であって、逆向きに同時に走らせたときに、ATPの加水分解によるエネルギーの消失以外の効果を示さないものを意味する。
【0019】
本明細書で使用するように、「ATP消失反応」という用語は、いかなる生理学的プロセスにもエネルギーを使用することなく、ATPを加水分解する生化学反応を意味する。
【0020】
本明細書で使用するように、「ATP脱共役反応」という用語は、NADH酸化反応またはプロトン輸送を、ATP産生から脱共役させる生化学反応を意味する。
【0021】
本明細書で使用するように、「異種」という用語は、通常は天然に見られないものを意味する。「異種ヌクレオチド配列」という用語は、ある細胞から天然では通常は見つからないヌクレオチド配列を意味する。よって、異種ヌクレオチド配列は、(a)宿主細胞にとって外来である(即ち、細胞にとって「外因性」である)、(b)宿主細胞に天然で見られる(即ち、「内因性」である)が、細胞内に不自然な量で存在する(即ち、宿主細胞に天然で見られる量よりも多いまたは少ない)、あるいは(c)宿主細胞に天然で見られるが、天然とは異なる遺伝子座に位置するもののいずれでもよい。
【0022】
本明細書で使用するように、標的遺伝子、例えば、TCA経路の1種以上の遺伝子の「機能的に破壊されている」または「機能的破壊」は、宿主細胞において、標的遺伝子のコードするタンパク質の活性が低下するように標的遺伝子が改変されていることを意味する。いくつかの実施形態においては、宿主細胞内の標的遺伝子のコードするタンパク質の活性が除去されている。他の態様においては、宿主細胞内の標的遺伝子のコードするタンパク質の活性が減少している。標的遺伝子の機能的破壊は、遺伝子発現が排除または減少されるように、あるいは遺伝子産物の活性が排除または減少されるように、遺伝子の全てまたは一部を欠失させることで達成され得る。標的遺伝子の機能的破壊は、発現が排除または減少されるように、遺伝子の制御エレメント、例えば、遺伝子のプロモーター、を変異させること、あるいは遺伝子産物の活性が排除または減少されるように、遺伝子のコード配列を変異させることでも達成され得る。いくつかの実施形態において、標的遺伝子の機能的破壊は、標的遺伝子の完全なオープンリーディングフレームの除去をもたらす。
【0023】
本明細書で使用するように、「親細胞」という用語は、本明細書で開示する宿主細胞と同一の遺伝的背景を有するが、特定の異種ヌクレオチド配列を含まず、当該異種ヌクレオチド配列を導入するための出発点として機能し、本明細書で開示する宿主細胞の産生に繋がる細胞を意味する。
【0024】
本明細書で使用するように、「生合成酵素」という用語は、生合成経路において機能し、天然起源の分子の産生をもたらす酵素を意味する。
【0025】
イソプレノイドを産生する遺伝子改変微生物
宿主細胞
本発明の実施において有用な宿主細胞には、古細菌、原核細胞、または真核細胞が含まれる。
【0026】
適切な原核性宿主には、種々のグラム陽性細菌、グラム陰性細菌、またはグラム不定細菌が含まれるが、これらに限定されるものではない。例示には以下の属に属する細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない:Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Bacillus属、Brevibacterium属、Chromatium属、Clostridium属、Corynebacterium属、Enterobacter属、Erwinia属、Escherichia属、Lactobacillus属、Lactococcus属、Mesorhizobium属、Methylobacterium属、Microbacterium属、Phormidium属、Pseudomonas属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospirillum属、Rhodococcus属、Salmonella属、Scenedesmun属、Serratia属、Shigella属、Staphlococcus属、Strepromyces属、Synnecoccus属、およびZymomonas属。原核細胞株の例示には以下の株が含まれるが、これらに限定されるものではない:Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefacines、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium immariophilum、Clostridium beigerinckii、Enterobacter sakazakii、Escherichia coli、Lactococcus lactis、Mesorhizobium loti、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas mevalonii、Pseudomonas pudica、Rhodobacter capsulatus、Rhodobacter sphaeroides、Rhodospirillum rubrum、Salmonella enterica、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Shigella sonnei、およびStaphylococcus aureus。特定の実施形態において、宿主細胞はEscherichia coli細胞である。
【0027】
適切な古細菌宿主には以下の属に属する細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない:Aeropyrum属、Archaeglobus属、Halobacterium属、Methanococcus属、Methanobacterium属、Pyrococcus属、Sulfolobus属、およびThermoplasma属。古細菌株の例示には以下の株が含まれるが、これらに限定されるものではない:Archaeoglobus fulgidus、Halobacterium sp.、Methanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Thermoplasma acidophilum、Thermoplasma volcanium、Pyrococcus horikoshii、Pyrococcus abyssi、およびAeropyrum pernix。
【0028】
適切な真核細胞の宿主には、真菌細胞、藻類細胞、昆虫細胞および植物細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、本発明の方法に有用な酵母には、微生物寄託機関(例:IFO、ATCC等)に寄託され、以下の属に属するものが、他の酵母と共に含まれる:Aciculoconidium属、Ambrosiozyma属、Arthroascus属、Arxiozyma属、Ashbya属、Babjevia属、Bensingtonia属、Botryoascus属、Botryozyma属、Brettanomyces属、Bullera属、Bulleromyces属、Candida属、Citeromyces属、Clavispora属、Cryptococcus属、Cystofilobasidium属、Debaryomyces属、Dekkara属、Dipodascopsis属、Dipodascus属、Eeniella属、Endomycopsella属、Eremascus属、Eremothecium属、Erythrobasidium属、Fellomyces属、Filobasidium属、Galactomyces属、Geotrichum属、Guilliermondella属、Hanseniaspora属、Hansenula属、Hasegawaea属、Holtermannia属、Hormoascus属、Hyphopichia属、Issatchenkia属、Kloeckera属、Kloeckeraspora属、Kluyveromyces属、Kondoa属、Kuraishia属、Kurtzmanomyces属、Leucosporidium属、Lipomyces属、Lodderomyces属、Malassezia属、Metschnikowia属、Mrakia属、Myxozyma属、Nadsonia属、Nakazawaea属、Nematospora属、Ogataea属、Oosporidium属、Pachysolen属、Phachytichospora属、Phaffia属、Pichia属、Rhodosporidium属、Rhodotorula属、Saccharomyces属、Saccharomycodes属、Saccharomycopsis属、Saitoella属、Sakaguchia属、Saturnospora属、Schizoblastosporion属、Schizosaccharomyces属、Schwanniomyces属、Sporidiobolus属、Sporobolomyces属、Sporopachydermia属、Stephanoascus属、Sterigmatomyces属、Sterigmatosporidium属、Symbiotaphrina属、Sympodiomyces属、Sympodiomycopsis属、Torulaspora属、Trichosporiella属、Trichosporon属、Trigonopsis属、Tsuchiyaea属、Udeniomyces属、Waltomyces属、Wickerhamia属、Wickerhamiella属、Williopsis属、Yamadazyma属、Yarrowia属、Zygoascus属、Zygosaccharomyces属、Zygowilliopsis属、およびZygozyma属。
【0029】
いくつかの実施形態において、宿主微生物はSaccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombe、Dekkera bruxellensis、Kluyveromyces lactis(以前はSaccharomyces lactisと呼ばれていた)、Kluveromyces marxianus、Arxula adeninivorans、またはHansenula polymorpha(今ではPichia angustaとして知られる)である。いくつかの実施形態において、宿主微生物はCandida属の株、例えば、Candida lipolytica、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida pseudotropicalis、またはCandida utilisである。
【0030】
特定の実施形態において、宿主微生物はSaccharomyces cerevisiaeである。いくつかの実施形態において、宿主は、パン酵母、CBS7959、CBS7960、CBS7961、CBS7962、CBS7963、CBS7964、IZ-1904、TA、BG-1、CR-1、SA-1、M-26、Y-904、PE-2、PE-5、VR-1、BR-1、BR-2、ME-2、VR-2、MA-3、MA-4、CAT-1、CB-1、NR-1、BT-1、およびAL-1からなる群より選ばれるSaccharomyces cerevisiaeの株である。いくつかの実施形態において、宿主微生物は、PE-2、CAT-1、VR-1、BG-1、CR-1、およびSA-1からなる群より選ばれるSaccharomyces cerevisiaeの株である。特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiaeの株はPE-2である。特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiaeの株はCAT-1である。特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiaeの株はBG-1である。
【0031】
いくつかの実施形態において、宿主微生物は、工業的発酵、例えば、バイオエタノールの発酵、に適した微生物である。特定の実施形態において、微生物は、工業発酵環境のストレス条件として認識されている、高溶媒濃度、高温、拡張された基質利用、栄養素の限定、糖および塩による浸透圧ストレス、酸性度、亜硫酸塩や細菌の混入、またはこれらの組み合わせにおいて生存するよう馴化されている。
【0032】
NADH使用HMGR
他の態様において、本願は、イソプレノイドを生産可能な遺伝子改変宿主細胞であって、アセチル化するアセチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ADA、EC 1.2.1.10)をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列と、イソプレノイドの生合成経路の1種以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列とを含み、当該生合成経路の1種以上の酵素が、NADH使用酵素を含む細胞を提供する。論理に縛られるものではないが、アセチル-CoAのアセトアルデヒドへの変換によってADAの産生したNADHの増加した細胞内プールは、NADH使用生合成酵素によって使用され、そうすることで、アセチル-CoA誘導産物の収率を増加させながら、細胞内酸化還元バランスを戻すと考えられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、NADH使用酵素は、生合成経路に本来含まれない酵素である。例えば、NADH使用酵素は、生合成経路に本来含まれるNADPH使用酵素を置き換えることができる。他の態様において、NADH使用酵素は、生合成経路に本来含まれるNADPH使用酵素と共発現される。いくつかの実施形態において遺伝子改変宿主細胞は、NADHのみを補因子として使用可能なHMGRを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞はイソプレノイドを産生可能であり、細胞は、イソペンテニルピロリン酸を製造するためのメバロン酸(MEV)経路の1種以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含み、当該1種以上の酵素は、NADH使用HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)を含む。HMG-CoAレダクターゼは、(S)-HMG-CoAの(R)-メバロン酸への還元的脱アシル化を触媒し、クラスI HMGrおよびクラスII HMGrの2つのクラスによって構成される。クラスIは真核細胞および大部分の古細菌の酵素を含み、クラスIIは一部の原核細胞および古細菌のHMG-CoAレダクターゼを含む。配列の多様性に加え、2つのクラスの酵素は、それらの補因子特異性も異なる。NADPHのみを使用するクラスIの酵素とは異なり、クラスIIのHMG-CoAレダクターゼは、NADPHとNADHとを区別する能力に差がある。例えば、Hedl et al., Journal of Bacteriology 186 (7): 1927-1932 (2004)を参照。選択されたクラスIIのHMGRの補因子特異性を次に提供する。
【0035】
【0036】
本願で提供する組成物および方法において有用なHMGRは、NADHを補因子として使用可能なHMGR、例えば、P. mevalonii、A. fulgidusまたはS. aureusのHMGRである。特定の実施形態において、HMGRは、NADHのみを補因子として使用可能な、例えば、P. mevalonii、S. pomeroyiまたはD. acidovoransのHMGRである。
【0037】
いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRはPseudomonas mevalonii由来である。HMGR(EC 1.1.1.88)をコードするPseudomonas mevaloniiの野性型mvaA遺伝子の配列は既に報告されている。Beach and Rodwell, J. Bacteriol. 171:2994-3001 (1989)を参照。Pseudomonas mevaloniiの代表的なmvaAヌクレオチド配列にはGenbank識別番号M24015および本願で提供するの配列番号3が含まれる。Pseudomonas mevaloniiの代表的なHMGRタンパク質配列にはGenbank識別番号AAA2583および本願で提供する配列番号4が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRはSilicibacter pomeroyi由来である。Silicibacter pomeroyiの代表的なHMGRヌクレオチド配列には、本願で提供する配列番号5が含まれる。Silicibacter pomeroyiの代表的なHMGRタンパク質配列には、Genbank識別番号YP_164994および本願で提供する配列番号6が含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRはDelftia acidovorans由来である。Delftia acidovoransの代表的なHMGRヌクレオチド配列には、本願で提供する配列番号7が含まれる。Delftia acidovoransの代表的なHMGRタンパク質配列には、Genbank識別番号YP_001561318および本願で提供する配列番号8が含まれる。
【0040】
本願で提供する組成物および方法において有用なNADH使用HMGRには、本明細書に記載のいずれかのNADH使用HMGR、例えば、P. mevalonii、S. pomeroyiおよびD. acidovoransの「誘導体」と言われる分子が含まれる。このような「誘導体」は以下の特徴を有する:(1)本明細書に記載のいずれかのNADH使用HMGRに対して、実質的な相同性を有する、そして(2)NADHを補因子として使用して、(S)-HMG-CoAから(R)-メバロン酸への還元的脱アシル化を触媒することができる。NADH使用HMGRの誘導体は、誘導体のアミノ酸配列がNADH使用HMGRと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%と同一であることをもって、NADH使用HMGRに対して実質的な相同性を有すると言える。
【0041】
いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRは、補因子としてNADPHよりもNADHに対して選択的である。いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRは、補因子としてNADPHよりもNADHに対して、Km
NADH:Km
NADPH比が少なくとも1:2、1:3、1:4、1:5または1:5超となるほど選択的である。いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRは、NAPDHよりもNADHに対して選択的になるように、例えば、補因子結合ポケットの部位特異的変異によって、組み換えられている。NADH選択性を変更する方法は、Watanabe et al., Microbiology 153:3044-3054 (2007)に記載されており、HMGRの補因子特異性を決定するための方法は、Kim et al., Protein Sci. 9:1226-1234 (2000)に記載されており、これらの内容は本参照をもってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0042】
いくつかの実施形態において、NADH使用HMGRは、メバロン酸分解路を元々有する宿主種、例えば、メバロン酸を唯一の炭素源として異化する宿主種、に由来する。これらの実施形態において、本来の宿主細胞において内在化(R)-メバロン酸の(S)-HMG-CoAへの酸化的アシル化を通常は触媒するNADH使用HMGRは、メバロン酸生合成経路を含む遺伝子改変宿主細胞において、逆反応、即ち、(S)-HMG-CoAの(R)-メバロン酸への還元的脱アシル化の触媒に使用される。メバロン酸を唯一の炭素源として生育可能な原核細胞が、Anderson et al., J. Bacteriol, 171(12):6468-6472 (1989)、Beach et al., J. Bacteriol. 171:2994-3001 (1989)、Bensch et al., J. Biol. Chem. 245:3755-3762、Fimongnari et al., Biochemistry 4:2086-2090 (1965)、Siddiqi et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 8:110-113 (1962)、Siddiqi et al., J. Bacteriol. 93:207-214 (1967)、およびTakatsuji et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.110:187-193 (1983)によって報告されており、これらの内容は本参照をもってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0043】
遺伝子改変細胞の作製方法
本願で提供する方法には、ADAおよび/またはNADH使用生合成酵素を含むように遺伝子組み換えされた宿主細胞の製造方法が含まれる。ADAおよび/またはNADH使用生合成酵素の宿主細胞による発現は、宿主細胞における発現を可能せしめる調節エレメントの制御下にADAおよび/またはNADH使用生合成酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を宿主細胞に導入することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、核酸は染色体外プラスミドである。他の態様において核酸は、ヌクレオチド配列を宿主細胞染色体に組み込むことのできる、染色体組み込み用ベクターである。
【0044】
これらタンパク質をコードする核酸は、特に限定無しに、当業者に公知の方法によって宿主細胞導入することができる(例えば、Hinnen et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1292-3、Cregg et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3376-3385、Goeddel et al. eds, 1990, Methods in Enzymology, vol. 185, Academic Press, Inc., CA、Krieger, 1990, Gene Transfer and Expression -- A Laboratory Manual, Stockton Press, NY、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning -- A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY、およびAusubel et al., eds., Current Edition, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, NYを参照)。例示的な技術にはスフェロプラスト化、エレクトロポレーション、PEG 1000仲介形質転換、および酢酸リチウムまたは塩化リチウム仲介形質転換が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
宿主細胞内の酵素のコピー数は、酵素をコードする遺伝子の転写を改変することで変更してもよい。これは、例えば、酵素をコードするヌクレオチド配列のコピー数の改変(例えば、ヌクレオチド配列を含むより高いまたはより低いコピー数の発現ベクターの使用、または宿主細胞のゲノムへの追加のコピー数のヌクレオチド配列の導入、または宿主細胞のゲノム内のヌクレオチド配列の欠失または破壊による改変)、オペロンのポリシストロン性mRNA上のコード配列の順番の変更、またはオペロンのそれぞれが独自の制御エレメントを有する個別の遺伝子への分解、あるいはヌクレオチド配列が作動可能に連結されたプロモーターまたはオペレーターの強度の増加によって達成することができる。代わりに、あるいは加えて、宿主細胞内の酵素のコピー数は、酵素をコードするmRNAの翻訳レベルを改変することで変更され得る。これは、例えば、mRNAの安定性の改変、リボゾーム結合部位の配列の改変、リボゾーム結合部位と酵素コード配列の開始コドンとの間の距離または配列の改変、酵素コード領域の開始コドンの5’側の「上流」または隣接する全シストロン間領域の改変、ヘアピンおよび特別な配列を使用したmRNA転写産物の3’末端の安定化、酵素によるコドン利用の改変、酵素の生合成に用いられる珍しいコドンtRNAの発現の変更、および/または、コード配列の変異等による、酵素の安定性の増加によって達成することができる。
【0046】
宿主細胞内の酵素の活性は種々の方法で変更可能であり、そのような方法には、宿主細胞内での溶解度が増加または低下した酵素改変体の発現、酵素活性の阻害された、ドメインを欠いた酵素改変体の発現、高いかまたは低いKcatあるいは基質に対するKmがより低いかより高い酵素改変体の発現、あるいは経路内の他の分子によるフィードバック制御またはフィードフォワード制御による影響をより多くまたはより少なく受ける酵素の改変体の発現が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態において、宿主細胞を遺伝的に改変するために用いられる核酸は、形質転換された宿主細胞の選択および宿主細胞が外来DNAを保持するように選択圧をかけるために有用な1種以上の選択マーカーを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、選択マーカーは抗生物質耐性マーカーである。抗生物質耐性マーカーの具体例には、BLA、NAT1、PAT、AUR1-C、PDR4、SMR1、CAT、マウスdhfr、HPH、DSDA、KANR、およびSH BLEの遺伝子産物が含まれるが、これらに限定されるものではない。E. coliのBLA遺伝子産物は、ベータ-ラクタム系抗生物質(例えば、狭域性セファロスポリン類、セファマイシン類、カルバペネム類(エルタペネム)、セファマンドール、およびセフォペラゾン)およびテモシリンを除く全抗グラム陰性細菌性ペニシリン類に対する耐性を付与し、S. nourseiのNAT1遺伝子産物はノーセオトリシンに対する耐性を付与し、S. viridochromogenes Tu94のPAT遺伝子産物はビアラホスに対する耐性を付与し、Saccharomyces cerevisiaeのAUR1-C遺伝子産物はオーレオバシジンA(AbA)に対する耐性を付与し、PDR4遺伝子産物はセルレニンに対する耐性を付与し、SMR1遺伝子産物はスルホメツロンメチルに対する耐性を付与し、Tn9トランスポゾンのCAT遺伝子産物はクロランフェニコールに対する耐性を付与し、マウスdhfr遺伝子産物はメトトレキサートに対する耐性を付与し、Klebsiella pneumoniaのHPH遺伝子産物はハイグロマイシンBに対する耐性を付与し、E. coliのDSDA遺伝子産物はD-セリンを唯一の窒素源としてプレート上で細胞が増殖することを可能にし、Tn903トランスポゾンのKANR遺伝子はG418に対する耐性を付与し、そしてStreptoalloteichus hindustanusのSH BLE遺伝子産物はゼオシン(ブレオマイシン)に対する耐性を付与する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示する遺伝子改変宿主細胞が単離された後に、抗生物質耐性マーカーを欠失させる。
【0049】
いくつかの実施形態において、選択マーカーは遺伝子改変微生物の要求性(例えば、栄養素要求性)を解消する。このような実施形態においては、親微生物は、アミノ酸またはヌクレオチドの生合成経路において機能し、その機能不全が1種以上の栄養素の添加なしに親細胞が培地中で増殖することをできなくする、1種以上の遺伝子産物の機能的破壊を有する。このような遺伝子産物には、酵母のHIS3、LEU2、LYS1、LYS2、MET15、TRP1、ADE2、およびURA3遺伝子産物が含まれるが、これらに限定されるものではない。その後、要求性の表現型は、破壊された遺伝子産物の機能的なコピーをコードする発現ベクターまたは染色体組み込み構築物で親細胞を形質転換することによって解消することができ、親細胞の要求性の表現型の喪失に基づいて、作製された遺伝子改変宿主細胞を選択することができる。URA3、TRP1、およびLYS2遺伝子の選択マーカーとしての使用は、陽性および陰性の両方の選択が可能であるため、著しい利点がある。陽性の選択は、URA3、TRP1、およびLYS2変異の要求性の補完によって行われ、一方、陰性の選択は、原栄養性株の成長を防止するが、URA3、TRP1、およびLYS2変異体のそれぞれの成長を可能せしめる特定の阻害剤、即ち、5-フルオロオロチン酸(FOA)、5-フルオロアントラニリン酸、およびアミノアジピン酸(aAA)のそれぞれに基づいて行われる。他の態様において、選択マーカーは、公知の選択方法によって同定することのできる、他の非致死的な欠陥または表現型を解消する。
【0050】
TCA回路の酵素
クエン酸回路(CAC)またはクレブス回路としても知られるトリカルボン酸回路(TCA)は、炭水化物、脂肪およびタンパク質から誘導されたアセチル-CoAの酸化を介してATPとしてのエネルギーを産生するために使用される一連の生化学的反応である。TCAは、特定のアミノ酸のみならず、還元剤であるNADHの産生のための前駆体も提供する。本発明の一実施形態においては、TCA回路に直接または間接的に(例えば、TCA回路に炭素を提供することで)参加する1種以上の酵素の活性を下方制御することで、イソプレノイド産生の速度と収率を脱共役させる。
【0051】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、クエン酸濃縮酵素、CoA-アセチル化クエン酸オキサロ酢酸リアーゼ、クエン酸濃縮化酵素、シトロゲナーゼ、オキサロ酢酸トランスアセターゼ、CIT1、CIT3、(アミノ酸配列NP 015325.1またはNP 014398.1を含む)、EC 2.3.3.1、EC 2.3.3.8およびEC 2.3.3.3としても知られるクエン酸シンターゼである。クエン酸シンターゼは、オキサロ酢酸、アセチル-CoAと水の、クエン酸塩と補酵素Aへの変換を触媒する。
【0052】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、シスアコニターゼ、アコニターゼ、ACO1、(アミノ酸配列NP 013407.1を含む)、およびEC 4.2.1.3としても知られるアコニット酸ヒドラターゼである。アコニット酸ヒドラターゼは、シス-アコニチン酸塩中間体を介した、クエン酸塩のイソクエン酸への変換を触媒する。
【0053】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、IDH2、IDH1、EC 1.1.1.42、EC 1.1.1.41、EC 1.1.1.286、および(NP 014779.1またはNP 014361.1のアミノ酸配列を含む)としても知られるNAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、イソクエン酸の、2-オキソグルタレート、二酸化炭素とNADHへのNAD依存性変換を触媒する。
【0054】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ、KGD2、KGD1、LPD1、EC 1.2.4.2、EC 2.3.1.61および(NP 010432.3、NP 012141.1、またはNP 116635.1のアミノ酸配列を含む)としても知られる2-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体である。2-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体は、2-オキソグルタル酸と補酵素Aの、サクシニルCoA、二酸化炭素とNADHへのNAD依存性変換を触媒する。
【0055】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、LSC2、LSC1、EC 6.2.1.4、EC 6.2.1.5、EC 2.8.3.18、および(NP011670.3またはNP 014785.3のアミノ酸配列を含む)としても知られるサクシニルCoAリガーゼである。サクシニルCoAリガーゼは、サクシニルCoA、ADPとリン酸の、コハク酸、ATPと補酵素Aへの変換を触媒する。
【0056】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、SDH1、SDH2、SDH3、SDH4、コハク酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.3.5.4、EC 1.3.5.1、および(NP 012774.1、NP013059.1、またはNP012781.1のアミノ酸配列を含む)としても知られる、マイナーなコハク酸デヒドロゲナーゼである。コハク酸デヒドロゲナーゼは、コハク酸とユビキノンの、フマル酸とユビキノールへの変換を触媒する。
【0057】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、FUM1、EC 4.2.1.2、および(NP015061.1のアミノ酸配列を含む)としても知られる)フマル酸ヒドラターゼである。フマル酸ヒドラターゼは、フマル酸と水の、リンゴ酸への変換を触媒する。
【0058】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、MDH3、ミトコンドリア・リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、MDH1、細胞基質リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、MDH2、EC 1.1.1.37、EC 1.1.5.4(、およびNP010205.1、NP014515.2、またはNP012838.1のアミノ酸配列を含む)としても知られるペルオキシソームリンゴ酸デヒドロゲナーゼである。ペルオキシソームリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、リンゴ酸とNADの、オキサロ酢酸とNADHへの変換を触媒する。
【0059】
いくつかの実施形態において、TCA酵素は、PYC1、PYC2、EC 4.1.1.32、EC 4.1.1.49(、およびNP011453.1またはNP09777.1のアミノ酸配列を含む)としても知られるピルビン酸カルボキシキナーゼである。ピルビン酸カルボキシキナーゼは、ピルビン酸、重炭酸塩とATPの、リン酸、オキサロ酢酸とADPへの変換を触媒する。
【0060】
無益回路
本発明の一態様においては、イソプレノイドを産生する宿主細胞内のイソプレノイドの収率と生産性は、1種以上の無益回路を宿主細胞に導入することで、脱共役させることができる。無益回路は、少なくとも2つの代謝回路または経路であって、逆向きに同時に走らせたときに、ATPの加水分解によるエネルギーの消失以外の効果を示さないものである。よって、宿主細胞への1種以上の無益回路の導入は、細胞のATPレベルを低下させ、それによってイソプレノイド産生の収率と生産性とを脱共役させる。
【0061】
一実施形態において、無益回路は、ホスホフルクトキナーゼとフルクトース-1,6-ビスホスファターゼの過剰発現を含む。ホスホフルクトキナーゼは、D-フルクトース-6-リン酸のD-フルクトース-1,6-二リン酸への変換を触媒する。一方、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(EC 3.1.3.11)は、D-フルクトース-1,6-二リン酸のD-フルクトース-6-リン酸への加水分解を1分子のATPを消費する反応によって触媒する。したがって、両方の酵素の同時発現はATPの消失をもたらす。例えば、本参照をもってその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20150322461号明細書および第20120088290号明細書を参照。
【0062】
他の実施形態においては、無益回路はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼとピルビン酸カルボキシキナーゼの同時過剰発現を含む。ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼは、オキサロ酢酸のホスホエノールピルビン酸への変換を触媒し、一方、ピルビン酸カルボキシキナーゼは、逆反応を触媒する。それぞれの酵素は1つの反応に付き1つのATP分子を加水分解する。しかし、回路全体も1つのATP分子を産生する。よって、各回路の反応が全体で1つのATP分子を消失させる。例えば、米国特許出願公開第20150322461号明細書および第20120088290号明細書を参照。
【0063】
ATP消費酵素
本発明の一態様においては、イソプレノイドを産生する宿主細胞内のイソプレノイドの収率と生産性は、ATPを消失させるが、他のいかなる生理学的効果も産生しない酵素の発現によって、脱共役させることができる。
【0064】
一実施形態において、イソプレノイドを産生する宿主細胞におけるSaccharomyces cerevisaeのSSB1遺伝子またはその断片の過剰発現は、イソプレノイドの収率と生産性の脱共役をもたらす。SSB1遺伝子は、初期の折りたたまれる前のタンパク質に結合してATP分子を加水分解する、シャペロンタンパク質をコードする。よって、SSB1またはその酵素的に活性な断片の過剰発現は、他のいかなる生理学的効果の発生も伴わないATPの消失をもたらす。例えば、米国特許出願公開第20150322461号明細書および第20120088290号明細書を参照。
【0065】
他の実施形態において、イソプレノイドを産生する宿主細胞におけるATP-ジホスホヒドロラーゼまたはその断片の過剰発現は、イソプレノイドの収率と生産性の脱共役をもたらす。ATP-ジホスホヒドロラーゼは、ADPおよびのATPのβ-およびγ-リン酸の両方の加水分解を触媒する酵素である。よって、ATP-ジホスホヒドロラーゼまたはその酵素的に活性な断片の過剰発現は、他のいかなる生理学的効果の発生も伴わないATPの消失をもたらす。例えば、米国特許出願公開第20150322461号明細書および第20120088290号明細書を参照。
【0066】
他の実施形態において、イソプレノイドを産生する宿主細胞におけるNADH酸化酵素、EC 1.6.3.4(NOX)またはその機能的断片の過剰発現は、イソプレノイドの収率と生産性の脱共役をもたらす。NOXは、ATPを産生することなく、水素をO2に直接移動することで、NADHをNAD+に還元する。NOXは、NADHのNAD+への酸化の際にATPを産生する本来の電子輸送鎖をバイパスすることによって、細胞内ATP濃度を低下させる。よって、NOXまたはその機能的断片の過剰発現は、他のいかなる生理学的効果の発生も伴わないATPの消失をもたらす。
【0067】
他の実施形態において、イソプレノイドを産生する宿主細胞における代替酸化酵素(AOX)またはその機能的断片の過剰発現は、イソプレノイドの収率と生産性の脱共役をもたらす。O2のH2Oへの還元をもたらす、ユビキノールからAOXへの電子の流れは、プロトン輸送とは共役されておらず、したがって、ATP産生のためにATPシンターゼが使用する輸送力を減少させる。よって、AOXまたはその機能的断片の過剰発現は、他のいかなる生理学的効果の発生も伴わないATPの消失をもたらす。
【0068】
ATP除去剤
いくつかの実施形態において、宿主細胞内のATPのレベルは、1種以上のATP除去剤の添加によって低下される。ATP除去剤とは、ATP除去剤を含む培地で宿主細胞を培養した際に、宿主細胞内のATPのレベルを低下させることのできる化合物または分子である。いくつかの実施形態において、ATP除去剤は、電子輸送をATP産生から脱共役させるものである。好ましい実施形態において、ATP除去剤は弱有機酸である。弱有機酸の非限定的な具体例は、酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、および安息香酸である。宿主細胞は、ATPレベルを低下させるのに十分な量(濃度)の弱有機酸を含む培地で培養して、非分解生化合物の収率と生産性とを脱共役することができる。いくつかの実施形態において、弱有機酸の量は0.25mM以上である。特定の実施形態において、宿主細胞培養培地は少なくとも0.25mM、0.3mM、0.35mM、0.40mM、0.45mM、0.5mM、0.55mM、0.6mM、0.65mM、0.70mM、0.75mM、0.80mM、0.85mM、0.90mM、0.95mM、1.0mM、2.0mM、3.0mM、4.0mM、5.0mM、6.0mM、7.0mM、8.0mM、9.0mM、または10.0mMを含む。
【0069】
MEV経路
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、細胞基質イソプレノイドの産生のための生合成経路で機能する1種以上の異種酵素をさらに含む。上昇したレベルの細胞基質イソプレノイドの産生は、宿主細胞の標的化遺伝子組み換えによって実施することができる。細胞基質イソプレノイドの産生または細胞基質アセチル-CoAおよびその前駆体の使用において機能する数々の酵素が知られており、宿主細胞内の細胞基質イソプレノイドレベルを変化させるために、これら酵素のいずれか1つを操作することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の1種以上の異種酵素を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種メバロン酸キナーゼを含む。他の態様において、宿主細胞は異種HMG-CoAレダクターゼを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種IPPイソメラーゼを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種ポリプレニルシンターゼを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種FPPシンターゼを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種テルペンシンターゼを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は異種ファルネセンシンターゼを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、2分子のアセチル-補酵素Aを縮合してアセトアセチル-CoAを形成することのできる酵素、例えば、アセチル-CoAチオラーゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(NC_000913 REGION: 2324131.2325315; Escherichia coli)、(D49362; Paracoccus denitrificans)および(L20428; Saccharomyces cerevisiae)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、アセトアセチル-CoAをアセチル-CoAの別の分子と縮合して3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)とすることのできる酵素、例えば、HMG-CoAシンターゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(NC_001145. complement 19061.20536; Saccharomyces cerevisiae)、(X96617; Saccharomyces cerevisiae)、(X83882; Arabidopsis thaliana)、(AB037907; Kitasatospora griseola)、(BT007302; Homo sapiens)、および(NC_002758, Locus tag SAV2546, GeneID 1122571; Staphylococcus aureus)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、HMG-CoAをメバロン酸に変換することのできる酵素、例えば、HMG-CoAレダクターゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(NM_206548; Drosophila melanogaster)、(NC_002758, Locus tag SAV2545, GeneID 1122570; Staphylococcus aureus)、(NM_204485; Gallus gallus)、(AB015627; Streptomyces sp. KO 3988)、(AF542543; Nicotiana attenuata)、(AB037907; Kitasatospora griseola)、(AX128213, providing the sequence encoding a truncated HMGR; Saccharomyces cerevisiae)、および(NC_001145: complement (115734.118898; Saccharomyces cerevisiae))が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、メバロン酸をメバロン酸5-リン酸に変換することのできる酵素、例えば、メバロン酸キナーゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(L77688; Arabidopsis thaliana)、および(X55875; Saccharomyces cerevisiae)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、メバロン酸5-リン酸をメバロン酸5-ピロリン酸に変換することのできる酵素、例えば、ホスホメバロン酸キナーゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(AF429385; Hevea brasiliensis)、(NM_006556; Homo sapiens)、および(NC_001145. complement 712315.713670; Saccharomyces cerevisiae)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、メバロン酸5-ピロリン酸をIPPに変換することのできる酵素、例えば、メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列を含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(X97557; Saccharomyces cerevisiae)、(AF290095; Enterococcus faecium)、および(U49260; Homo sapiens)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の1以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の2以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、HMG-CoAをメバロン酸に変換することのできる酵素およびメバロン酸をメバロン酸5-リン酸に変換することのできる酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の3以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の4以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の5以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路の6以上の酵素をコードする1種以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、C5イソプレノイドを産生する。これら化合物は1つのイソプレン単位から誘導され、ヘミテルペンとも呼ばれる。ヘミテルペンの具体例はイソプレンである。他の態様において、イソプレノイドはC10イソプレノイドである。これら化合物は2つのイソプレン単位から誘導され、モノテルペンとも呼ばれる。モノテルペンの具体例はリモネン、シトラネロール、ゲラニオール、メントール、ペリリルアルコール、リナロール、ツジョン、およびミルセンである。他の態様において、イソプレノイドはC15イソプレノイドである。これら化合物は3つのイソプレン単位から誘導され、セスキテルペンとも呼ばれる。セスキテルペンの具体例は、ペリプラノンB、ギンコライドB、アモルファジエン、アルテミシニン、アルテミシ酸、バレンセン、ノーカトン、エピセドロール、エピアリストロケン、ファルネソール、ゴシポール、サノニン(sanonin)、ペリプラノン(periplanone)、フォースコリン、およびパチュロール(パチュリアルコールとしても知られている)である。他の態様において、イソプレノイドはC20イソプレノイドである。これら化合物は4つのイソプレン単位から誘導され、ジテルペンとも呼ばれる。ジテルペンの具体例は、カスベン、エリュテロビン、パクリタキセル、プロストラチン、シュードプテロシン、およびタキサジエンである。さらに別の実施形態において、イソプレノイドはC20+イソプレノイドである。これら化合物は4超のイソプレン単位から誘導され、アルブルシド、ブルセアチン、テストステロン、プロゲステロン、コルチゾン、ジギトキシン、およびスクアラン等のトリテルペン(6つのイソプレン単位から誘導されたC30イソプレノイド化合物)、β-カロテン等のテトラテルペン(8つのイソプレン単位から誘導されたC40イソプレノイド化合物)、およびポリイソプレン等のポリテルペン(8つ超のイソプレン単位から誘導されたC40+イソプレノイド化合物)が含まれる。いくつかの実施形態において、イソプレノイドは、アビタジエン、アモルファジエン、カレン、α-ファルネセン、β-ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチュロール、β-ピネン、サビネン、γ-テルピネン、テルピノレンおよびバレンセンからなる群より選ばれる。イソプレノイド化合物には、カロテノイド類(リコペン、α-およびβ-カロテン、α-およびβ-クリプトキサンチン、ビキシン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、ならびにルテイン等)、ステロイド化合物、および混合テルペン-アルカロイドやコエンザイムQ10等の他の化学基で修飾されたイソプレノイドで構成された化合物も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路を介して産生されたIPPをDMAPPに変換することのできる酵素、例えば、IPPイソメラーゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(NC_000913, 3031087.3031635; Escherichia coli)、および(AF082326; Haematococcus pluvialis)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、IPPおよび/またはDMAPP分子を縮合して、5超の炭素を含むポリプレニル化合物を形成することのできるポリプレニルシンターゼをコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、1分子のIPPを1分子のDMAPPと縮合して1分子のゲラニルピロリン酸(「GPP」)を形成することのできる酵素、例えば、GPPシンターゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(AF513111; Abies grandis)、(AF513112; Abies grandis)、(AF513113; Abies grandis)、(AY534686; Antirrhinum majus)、(AY534687; Antirrhinum majus)、(Y17376; Arabidopsis thaliana)、(AE016877, Locus AP11092; Bacillus cereus; ATCC 14579)、(AJ243739; Citrus sinensis)、(AY534745; Clarkia breweri)、(AY953508; Ips pini)、(DQ286930; Lycopersicon esculentum)、(AF182828; Mentha x piperita)、(AF182827; Mentha x piperita)、(MPI249453; Mentha x piperita)、(PZE431697, Locus CAD24425; Paracoccus zeaxanthinifaciens)、(AY866498; Picrorhiza kurrooa)、(AY351862; Vitis vinifera)、および(AF203881, Locus AAF12843; Zymomonas mobilis)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、2分子のIPPを1分子のDMAPPと縮合するか、1分子のIPPを1分子のGPPに付加して、1分子のファルネシルピロリン酸(「FPP」)を形成することのできる酵素、例えば、FPPシンターゼ、をコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(ATU80605; Arabidopsis thaliana)、(ATHFPS2R; Arabidopsis thaliana)、(AAU36376; Artemisia annua)、(AF461050; Bos taurus)、(D00694; Escherichia coli K-12)、(AE009951, Locus AAL95523; Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum ATCC 25586)、(GFFPPSGEN; Gibberella fujikuroi)、(CP000009, Locus AAW60034; Gluconobacter oxydans 621H)、(AF019892; Helianthus annuus)、(HUMFAPS; Homo sapiens)、(KLPFPSQCR; Kluyveromyces lactis)、(LAU15777; Lupinus albus)、(LAU20771; Lupinus albus)、(AF309508; Mus musculus)、(NCFPPSGEN; Neurospora crassa)、(PAFPS1; Parthenium argentatum)、(PAFPS2; Parthenium argentatum)、(RATFAPS; Rattus norvegicus)、(YSCFPP; Saccharomyces cerevisiae)、(D89104; Schizosaccharomyces pombe)、(CP000003, Locus AAT87386; Streptococcus pyogenes)、(CP000017, Locus AAZ51849; Streptococcus pyogenes)、(NC_008022, Locus YP_598856; Streptococcus pyogenes MGAS10270)、(NC_008023, Locus YP_600845; Streptococcus pyogenes MGAS2096)、(NC_008024, Locus YP_602832; Streptococcus pyogenes MGAS10750)、(MZEFPS; Zea mays)、(AE000657, Locus AAC06913; Aquifex aeolicus VF5)、(NM_202836; Arabidopsis thaliana)、(D84432, Locus BAA12575; Bacillus subtilis)、(U12678, Locus AAC28894; Bradyrhizobium japonicum USDA 110)、(BACFDPS; Geobacillus stearothermophilus)、(NC_002940, Locus NP_873754; Haemophilus ducreyi 35000HP)、(L42023, Locus AAC23087; Haemophilus influenzae Rd KW20)、(J05262; Homo sapiens)、(YP_395294; Lactobacillus sakei subsp. sakei 23K)、(NC_005823, Locus YP_000273; Leptospira interrogans serovar Copenhageni str. Fiocruz L1-130)、(AB003187; Micrococcus luteus)、(NC_002946, Locus YP_208768; Neisseria gonorrhoeae FA 1090)、(U00090, Locus AAB91752; Rhizobium sp. NGR234)、(J05091; Saccharomyces cerevisae)、(CP000031, Locus AAV93568; Silicibacter pomeroyi DSS-3)、(AE008481, Locus AAK99890; Streptococcus pneumoniae R6)、および(NC_004556, Locus NP 779706; Xylella fastidiosa Temecula1)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、IPPとDMAPPまたはIPPとFPPとを結合してゲラニルゲラニルピロリン酸(「GGPP」)を形成することのできる酵素をコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。このような酵素をコードするヌクレオチド配列の具体例には、(ATHGERPYRS; Arabidopsis thaliana)、(BT005328; Arabidopsis thaliana)、(NM_119845; Arabidopsis thaliana)、(NZ_AAJM01000380, Locus ZP_00743052; Bacillus thuringiensis serovar israelensis, ATCC 35646 sq1563)、(CRGGPPS; Catharanthus roseus)、(NZ_AABF02000074, Locus ZP_00144509; Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii, ATCC 49256)、(GFGGPPSGN; Gibberella fujikuroi)、(AY371321; Ginkgo biloba)、(AB055496; Hevea brasiliensis)、(AB017971; Homo sapiens)、(MCI276129; Mucor circinelloides f. lusitanicus)、(AB016044; Mus musculus)、(AABX01000298, Locus NCU01427; Neurospora crassa)、(NCU20940; Neurospora crassa)、(NZ_AAKL01000008, Locus ZP_00943566; Ralstonia solanacearum UW551)、(AB118238; Rattus norvegicus)、(SCU31632; Saccharomyces cerevisiae)、(AB016095; Synechococcus elongates)、(SAGGPS; Sinapis alba)、(SSOGDS; Sulfolobus acidocaldarius)、(NC_007759, Locus YP_461832; Syntrophus aciditrophicus SB)、(NC_006840, Locus YP_204095; Vibrio fischeri ES114)、(NM_112315; Arabidopsis thaliana)、(ERWCRTE; Pantoea agglomerans)、(D90087, Locus BAA14124; Pantoea ananatis)、(X52291, Locus CAA36538; Rhodobacter capsulatus)、(AF195122, Locus AAF24294; Rhodobacter sphaeroides)、および(NC_004350, Locus NP_721015; Streptococcus mutans UA159)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ポリプレニルを修飾してヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン、ステロイド化合物、カロテノイド、または修飾イソプレノイド化合物を形成することができる酵素をコードする異種ヌクレオチド配列さらに含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはカレンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AF461460, REGION 43.1926; Picea abies)および(AF527416, REGION: 78.1871; Salvia stenophylla)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはゲラニオールシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AJ457070; Cinnamomum tenuipilum)、(AY362553; Ocimum basilicum)、(DQ234300; Perilla frutescens strain 1864)、(DQ234299; Perilla citriodora strain 1861)、(DQ234298; Perilla citriodora strain 4935)、および(DQ088667; Perilla citriodora)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはリナロールシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AF497485; Arabidopsis thaliana)、(AC002294, Locus AAB71482; Arabidopsis thaliana)、(AY059757; Arabidopsis thaliana)、(NM_104793; Arabidopsis thaliana)、(AF154124; Artemisia annua)、(AF067603; Clarkia breweri)、(AF067602; Clarkia concinna)、(AF067601; Clarkia breweri)、(U58314; Clarkia breweri)、(AY840091; Lycopersicon esculentum)、(DQ263741; Lavandula angustifolia)、(AY083653; Mentha citrate)、(AY693647; Ocimum basilicum)、(XM_463918; Oryza sativa)、(AP004078, Locus BAD07605; Oryza sativa)、(XM_463918, Locus XP_463918; Oryza sativa)、(AY917193; Perilla citriodora)、(AF271259; Perilla frutescens)、(AY473623; Picea abies)、(DQ195274; Picea sitchensis)、および(AF444798; Perilla frutescens var. crispa cultivar No. 79)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはリモネンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(+)-リモネンシンターゼ(AF514287, REGION: 47.1867; Citrus limon)および(AY055214, REGION: 48.1889; Agastache rugosa)および(-)-リモネンシンターゼ(DQ195275, REGION: 1.1905; Picea sitchensis)、(AF006193, REGION: 73.1986; Abies grandis)、および(MHC4SLSP, REGION: 29.1828; Mentha spicata)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはミルセンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(U87908; Abies grandis)、(AY195609; Antirrhinum majus)、(AY195608; Antirrhinum majus)、(NM_127982; Arabidopsis thaliana TPS10)、(NM_113485; Arabidopsis thaliana ATTPS-CIN)、(NM_113483; Arabidopsis thaliana ATTPS-CIN)、(AF271259; Perilla frutescens)、(AY473626; Picea abies)、(AF369919; Picea abies)、および(AJ304839; Quercus ilex)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはオシメンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AY195607; Antirrhinum majus)、(AY195609; Antirrhinum majus)、(AY195608; Antirrhinum majus)、(AK221024; Arabidopsis thaliana)、(NM_113485; Arabidopsis thaliana ATTPS-CIN)、(NM_113483; Arabidopsis thaliana ATTPS-CIN)、(NM_117775; Arabidopsis thaliana ATTPS03)、(NM_001036574; Arabidopsis thaliana ATTPS03)、(NM_127982; Arabidopsis thaliana TPS10)、(AB110642; Citrus unshiu CitMTSL4)、および(AY575970; Lotus corniculatus var. japonicus)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはα-ピネンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(+)α-ピネンシンターゼ(AF543530, REGION: 1.1887; Pinus taeda)、(-)α-ピネンシンターゼ(AF543527, REGION: 32.1921; Pinus taeda)、および(+)/(-)α-ピネンシンターゼ(AGU87909, REGION: 6111892; Abies grandis)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはβ-ピネンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(-)β-ピネンシンターゼ(AF276072, REGION: 1.1749; Artemisia annua)および(AF514288, REGION: 26.1834; Citrus limon)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはサビネンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AF051901, REGION: 26.1798 from Salvia officinalis)が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0094】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはγ-テルピネンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AF514286, REGION: 30.1832 from Citrus limon)および(AB110640, REGION 1.1803 from Citrus unshiu)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはテルピノレンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(AY693650 from Oscimum basilicum)および(AY906866, REGION: 10.1887 from Pseudotsuga menziesii)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはアモルファジエンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、米国特許出願公開第2004/0005678号明細書の配列番号37のヌクレオチド配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはα-ファルネセンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Pyrus communis cultivar d’AnjouのDQ309034(洋ナシ、遺伝子名AFS1)およびMalus domesticaのAY182241(リンゴ、遺伝子AFS1)、Pechouus et al., Planta 219(1):84-94 (2004)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはβ-ファルネセンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Mentha x piperita(ペパーミント、遺伝子Tspa11)のGenBank識別番号AF024615、およびPicaud et al., Phytochemistry 66(9): 961-967 (2005)のArtemisia annuaのAY835398が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドは、ファルネソールシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Zea maysのGenBank識別番号AF529266、およびSong, L., Applied Biochemistry and Biotechnology 128:149-158 (2006)のSaccharomyces cerevisiae(遺伝子Pho8)のYDR481Cが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはネロリドールシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Zea mays(トウモロコシ、遺伝子tps1)のヌクレオチド配列AF529266が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはパチュリロールシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Pogostemon cablinのAY508730 REGION: 1.1659が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはノートカトンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には、Citrus sinensisのAF441124 REGION: 1.1647およびPerilla frutescensのAY917195 REGION: 1.1653が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
いくつかの実施形態において、異種ヌクレオチドはアビタジエンシンターゼをコードする。適切なヌクレオチド配列の具体例には(U50768、Abies grandis)および(AY473621、Picea abies)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
イソプレノイドの製造方法
遺伝子改変宿主細胞がNADH使用HMGRをコードする異種ヌクレオチド配列を含むいくつかの実施形態において、当該遺伝子改変宿主細胞は、NADH使用HMGRをコードする異種ヌクレオチド配列を含まないが、それ以外は遺伝的に同一な宿主細胞と比べて、より多量のイソプレノイド化合物を産生する。いくつかの実施形態において、より多量とは、測定値を、例えば、1リットルの細胞培養物当たりのグラム、1グラムの乾燥細胞重量当たりのミリグラム、細胞培養物1単位容量当たり、乾燥細胞重量1単位当たり、単位時間当たりの細胞培養物1単位容量当たり、または単位時間当たりの乾燥細胞重量1単位当たりで表したときに、少なくとも10%である。
【0105】
いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞がADAをコードする異種ヌクレオチド配列と、ADAおよびNADH使用HMGRをコードする異種ヌクレオチド配列の両方を含むとき、遺伝子改変宿主細胞は、下記と比べて、より多量のイソプレノイド化合物を産生する:(i)ADAをコードする異種ヌクレオチド配列を含まないが、それ以外は遺伝的に同一な宿主細胞、(ii)NADH使用HMGRをコードする異種ヌクレオチド配列を含まないが、それ以外は遺伝的に同一な宿主細胞、または(iii)ADAをコードする異種ヌクレオチド配列またはNADH使用HMGRをコードする異種配列を含まないが、それ以外は遺伝的に同一な宿主細胞。いくつかの実施形態において、より多量とは、測定値を、例えば、1リットルの細胞培養物当たりのグラム、1グラムの乾燥細胞重量当たりのミリグラム、細胞培養物1単位容量当たり、乾燥細胞重量1単位当たり、単位時間当たりの細胞培養物1単位容量当たり、または単位時間当たりの乾燥細胞重量1単位当たりで表したときに、少なくとも10%である。
【0106】
当該方法は、通常、宿主細胞を、炭素源を含む適切な培地中、適切な条件下で成長させることを含む。微生物を成長させるための適切な条件および適切な培地は当業界で知られている。いくつかの実施形態において、炭素源は単糖(単純な糖)、二糖、多糖、非発酵性炭素源、またはこれらの1種以上の組み合わせである。適切な単糖の非限定的な例には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、およびそれらの組み合わせが含まれる。適切な二糖の非限定的な例には、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース、セロビオース、およびそれらの組み合わせが含まれる。適切な多糖の非限定的な例には、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、およびそれらの組み合わせが含まれる。適切な非発酵性炭素源の非限定的な例には、酢酸およびグリセロールが含まれる。いくつかの実施形態において、適切な培地には1種以上の追加の薬剤、例えば、誘導性化合物(例:遺伝子産物をコードする1種以上のヌクレオチド配列が誘導性プロモーターの制御下にあるとき)、抑制化合物(例:遺伝子産物をコードする1種以上のヌクレオチド配列が抑制性プロモーターの制御下にあるとき)、または選択剤(例:遺伝子改変を含む微生物を選択するための抗生物質)が添加されている。
【実施例】
【0107】
実施例1: 収率は細胞比速度の関数である
125mlのフラスコ中の、2%のショ糖、1%のマルトース、2g/LのリシンLGMを含む15mlの50mMのコハク酸、pH5.0、に単一コロニーを接種し、28℃、200r.p.m.の振盪下、OD600が4~9で、残存グルコースが3~6g/lになるまで培養した。濃度が20%になるように50%のグリセロールを培養物に添加し、次に、細胞懸濁液の1mlのバイアルを-80℃で保存した。1~2バイアルの細胞を融解し、3g/lの酵母エキス、7g/lのNH4H2PO4、1g/lのKH2PO4、0.5g/lのMgSO4・7H2O、50mMのコハク酸(pH5.0)、4%のショ糖、2%のマルトース、2g/Lのリシン、およびトレース量の金属とビタミン溶液を含む培地で24時間培養し、同じ培地でOD600が0.1になるまで24時間継代培養した。15g/lのNH4H2PO4、20g/lの糖蜜由来の完全還元糖(TRS)(ウエストパームビーチ、Florida Crystals社)、およびトレース量の金属とビタミン溶液を含む225mlの発酵培地の入った0.5リットルの発酵器(ドイツ国、Sartorius社)に接種するために、25mlの培養物を使用した。発酵器は温度30~34℃で循環し、pHはNH4OHの添加で5.0に維持した。初期のバッチ相においては、発酵器を0.5容量/容量/分(VVM)で通気し、30%の溶存酸素量を維持するために撹拌に勾配を付けた。初期の糖が消費されたら、溶存酸素の上昇を引き金として、フロリダ社製糖蜜(Florida cane syrup)(リットル当たり約800gのグルコース等量、(完全還元糖(TRS)とも知られる))を、リットル当たり10gのTRSの用量によるパルスで、10gのTRS/リットル/hrを供給した。パルスの間には、供給速度を1~5gのTRS/リットル/hrに低下させた。残存炭素の枯渇を示す溶存酸素のスパイクが生じたときに高供給速度を再開し、決められた量の糖が添加された後に高供給速度を終了した。細胞密度が上昇するにつれ、溶存酸素は0%に達するようにし、パルス用量を50gのTRS/リットルに増やした。容量が増えるにつれて攪拌を調節することで、酸素移動速度を特定の速度に維持した。これ以降、高供給速度と低供給速度の間で変化させるアルゴリズム(供給速度アルゴリズム)を用いて、要求を満たすように供給速度を動的に調節した。低供給速度の際は、細胞は糖と高供給速度の際に蓄積した任意の余剰代謝産物とを消費した。そして溶存酸素の上昇は、高供給速度の再開の引き金となる。低供給速度に費やした時間の長さは、以前の高供給速度パルスによって細胞が栄養不良または栄養過剰であった程度を反映し、この情報をモニタリングして、高供給速度の上昇または低下の調節に使用し、低供給速度を既定範囲内に維持する。この期間にわたり、供給速度は細胞の糖要求と合致した。供給速度アルゴリズムは、ファルネセン、バイオマス、およびCO2以外の発酵産物の最小総蓄積を確実にする。プロセスは8~13日間継続した。発酵槽は充填と抜き取りを経る。蓄積した培地を毎日抜き取り、バイオマスおよびファルネセンの濃度を分析した。濃度を一定に維持するために、NH4H2PO4の濃縮溶液、トレース量の金属とビタミン類を定期的に添加した。
【0108】
酸素送達は典型的には100~120mMol/L/hrであり、これは酸素移動速度またはOTRとも呼ばれる。発酵中の異なる酸素移動速度(20、110、180、225)は、変化する撹拌速度、気流および供給速度の組み合わせにより達成された。一旦、製造相でピーク・バイオマス・レベルが達成されたら(グラムの乾燥細胞重量またはgDCW)、細胞は微好気条件を経験し、溶存酸素(dO2)はゼロに近い、言い換えれば、そこでは酸素取り込み速度(OUR)は酸素移動速度(OTR)に等しい。
【0109】
発酵収率: ファルネセン収率(Ysp)は、産生されたファルネセンの重量/重量の量を発酵器に添加した総還元糖の量(TRS、またはグルコース等量)で除した値として計算される。産生されたファルネセンのグラム数を添加した総還元糖量で除した値をパーセンテージで表したものを、単純に「収率」とも呼ぶ。gDWまたはgDCWは、は発酵器内の細胞性バイオマスまた細胞量の測定値である、乾燥重量のグラム数として参照される。
【0110】
比酸素取り込み速度(qO2)は、発酵器内のバイオマスによる酸素消費の比速度を、mMol/O2/gDCW/hで表したものである。比酸素使用速度(sOUR)としても知られる。
【0111】
比糖取り込み速度(qS)は、発酵器内のバイオマスによる糖消費の比速度を、mMol/TRS/gDCW/hで表したものである。
【0112】
ファルネセンは過去に報告された方法(Sandoval, C. M. et al. (2014) Metab Eng vol. 25, pp. 215-226)で定量した。
【0113】
いかなるバイオマニュファクチャリング工程においても、収率と生産性は、2つの主たる原価差要因である。非分解生化合物のバイオマニュファクチャリングにおいて、生産の細胞比速度(qP、モル産物/グラム乾燥細胞重量/hrを単位とする)および収率(YP/S、産物形成の速度/糖消費の速度)は、比成長速度(1/時間)または(時間-1)、qS(モル糖消費/グラム乾燥細胞重量/hr)またはqO2(モルO2消費/グラム乾燥重量/hr)といった他の細胞速度の作用によることが多い。最小の製造費で生産性と収率の最適な組み合わせを達成する発酵プロセスの設計には、この関係性の詳細な特徴付けが必要である。
【0114】
イソプレノイドの産生において収率(Y
P/S)は、酸素および糖の取り込みの細胞比速度、転じて容積生産性、と常に逆相関する。言い換えれば、本細胞による酸素および糖の取り込みが速いほど、イソプレノイド収率は低下する。このような関係性を「速度-収率共役」と称する。
図1から
図3は、異なる酸素移動速度(バイオリアクターに酸素が送達され、細胞により取り込まれる速度)下で増殖された単一ファルネセン産生株のこの現象を示す。細胞の比糖取り込み、酸素取り込み、および生産性が増加するほど、収率は減少する。
図4は、供給速度アルゴリズムを使用すると、糖取り込み速度は酸素取り込み速度に直接比例することを示す。
【0115】
図3の示す収率と生産性との逆相関は、生産性と収率が非分解生化合物の産生における2つのカギとなる原価差要因であるため、非分解生化合物、例えば、イソプレノイドであるファルネセン、の工業的生産にとって問題である。速度-収率共役が存在すると、細胞への酸素移動速度および/または糖の移動速度を増加させて容積生産性を増加させるいかなる試みも、同時に収率低下を伴い、生産性向上の費用効果が相殺される。速度-収率共役を除くことができれば、高収率と高生産性を同時に達成することも可能になる。
【0116】
実施例2: 計算論的モデリングおよびメタボロミクス測定は、ATPが速度と収率の共役を駆動し得ることを示唆する
速度-収率共役の可能性のある機械論的原因を評価するために、単一株の低OTR(30ミリモルのO
2/L/hr)または高OTR(180ミリモルのO
2/L/hr)のいずれかにおける発酵サンプルについて、解糖系、TCA回路、ペントースリン酸経路、およびイソプレノイド経路の中心代謝産物の絶対濃度を解析した。バイオリアクターからのサンプリングは、代謝状態を捕捉するために、タンクから取り出したサンプルを直ちに冷却するラピッド・サンプリングプロトコルを用いて実施した。中心代謝産物の大部分について低および高OTR条件で同様の絶対濃度が測定されたが、2種の代謝産物(イソクエン酸およびアルファ-ケトグルタレート)は非常に異なる濃度である点が突出していた(
図5参照)。興味深いことに、これら2種の代謝産物はTCA回路の連続した工程を表している、即ち、酵素であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼの活性によって、イソクエン酸はアルファ-ケトグルタレートに変換することができる。低OTR条件と比べて高OTR条件においては、イソクエン酸濃度は低下し、アルファ-ケトグルタレート濃度は上昇することを観察し、他の工程と比べて、この工程を通じてフラックス速度は高OTR条件で上昇することをこれは示唆していた。
【0117】
分解経路で産生された過剰なATPは、バイオプロセスの速度および収率にとって有害であると、以前は確立されていた。これは、速度については上昇したATP濃度が解糖系阻害的であるためである。しかし、過剰なATPはバイオマス形成を駆動することもでき、次にバイオマスは産物収率を低下させる炭素の吸収源として機能するため、過剰なATPはバイオプロセスの収率を低下させることもできる。この反応の概ねの化学量論では、形成される1モルのバイオマスについて、1.5モルの過剰ATPが排除または除去される。
【0118】
高OTRでのTCA回路内のより高いフラックスがより低いファルネセン収率の原因となり得るかを決定するために、総括的ゲノムスケール代謝モデルに基づく、ATP形成の影響を評価するための新規な計算論的モデリング・フレームワーク(
図6参照)を開発した。典型的なゲノムスケールモデルは、in vivoで発生し得る無益反応を通じて過剰なATPを加水分解または「浪費」することを可能にするが、我々の新規モデルは、一般に経験的に観察されるように、少量のATPが非成長関連維持(またはNGAM、0.4ミリモルのgDW
-1h
-1と推定)に配分され、残りはバイオマス形成と厳密に共役されるように組み立てられた。無益回路は許可されず、1.5モルのATPが1モルのバイオマス形成に必要であると推定した。
【0119】
このモデルを使用して、イソプレノイドに対するトリカルボン酸回路(TCA)フラックスの推定される影響をin silicoで検討した。我々のモデリングは、TCA回路のフラックスの20から180 OTRへの増加が、観察された速度-収率共役効果を実際に担うことができることを示した。言い換えれば、TCA回路によってより速い速度で産生されるATPは、1モルのバイオマス当たり1.5モルのATPがバイオマス中に「吸収された(sunk)」(約5.667モルのATP/TCA回路に入る1モルのPYRという控えめな見積もりを想定)と推定すると、速度-収率共役効果を説明することができる。
【0120】
この結論に至るための上記でプロットした関連シミュレーションの特性は以下のとおりである。
・ 180 OTRのときのPTAを通る比率qSの13C解析によって計算した95%信頼区間(またはCI)を外れたシミュレーションは排除した(*OTRによって大きくは変化しないと推定した)。
・ TCA回路の活性は入ってくる(incoming)qSに対して25%以下である。180 OTRのときの入ってくるqSに対する比率としてのTCA回路フラックスの我々の最適概算値は約12%(qSが約1.4の近傍)である。
【0121】
実施例2の材料と方法
代謝産物濃度のラピッド・サンプリングおよび絶対値の定量
定義:13C IDMSは炭素13アイソトープ質量分析を意味し、MSTFAはN-トリメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセタミドを意味し、MRMモードは複数反応モニタリングモードを意味する。
【0122】
イソクエン酸およびα-ケトグルタレートの細胞内絶対濃度は、Canelas and Wahlが初めに記載した方法に従って得た。簡単に説明すると、特注のラピッド・サンプリング用のデバイスを用いてタンク中の培養液を-80℃のメタノールにサンプリングし、ボルテックスに付し、重さを計測した。バイオマスを高速濾過装置に注ぎ100%の-80℃のメタノールで洗浄した。濾液を、30mLの75%(v/v)のエタノールおよび200μLの「13C IDMS」内部標準抽出物の入った50mLの遠心管に加えた。混合物を95℃で3分間煮沸し、ドライアイス上に戻した。抽出物の入ったチューブはCentriVap内で乾燥するまで蒸発させ、600μLの水に再懸濁した。「MSTFA」の誘導および解析の前に、水をろ過し、凍結乾燥によって再び乾燥させた。
【0123】
イソクエン酸およびα-ケトグルタレートの細胞内絶対定量は、Agilent 7000三段四重極GC/MSの「MRMモード」で、サンプル抽出物のシグナル比を真正の標準(Sigma)と比較することで達成した。絶対濃度は、(抽出時に計量した)乾燥細胞重量に対して正規化した。
【0124】
モデリング:
酵母の代謝を示すゲノムスケールモデルは標準的手法に従って作製した。公知の再構成iTO977の全ての反応を開始モデルに取り込んだ。さらに、下記の6反応を含む「第二世代」のファルネセン経路も加えた。
* 代替HMG-CoAレダクターゼ(またはNADH HMGR)
・ ‘s_3_hydroxy_3_methylglutaryl_coa_c + 2.0 nadh_c <=> 2.0 nad_c + r_mevalonate_c + coenzyme_a_c’
* アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アセチル化(またはADA)
‘nad_c + coenzyme_a_c + acetaldehyde_c --> acetyl_coa_c + nadh_c’
* F6Pに対して作用するホスホケトラーゼ(またはPK-f6p)
・ ‘phosphate_c + beta_d_fructofuranose_6_phosphate_c --> h2o_c + acetyl_phosphate_c + d_erythrose_4_phosphate_c’
* X5Pに対して作用するホスホケトラーゼ(またはPK-x5p)
・ ‘phosphate_c + d_xylulose_5_phosphate_c --> h2o_c + acetyl_phosphate_c + d_glyceraldehyde_3_phosphate_c’
* ホスホトランスアセチラーゼ(またはPTA)
・ ‘coenzyme_a_c + acetyl_phosphate_c <=> phosphate_c + acetyl_coa_c’
* ファルネセンシンターゼ(またはFS)
・ ‘_2_trans6_trans_farnesyl_diphosphate_c --> diphosphate_c + beta_farnesene_c’
【0125】
モデルは、最大理論収率が約29.5%(gのファルネセン/gの糖)のファルネセンを産生することを立証した。プロセス中に、NAD/NADH/NADP/NADPHの未制御の自由なサイクル化を防止するために、以下の反応を不活化した。
* nadp_specific_glutamate_dehydrogenase_1
* methylenetetrahydrofolate_dehydrogenase_nad_
【0126】
ATPからADPへの加水分解を単純に表す「atp_drain_flux_for_constant_maintanence_requirements」と命名された反応を加え、0.4ミリモル gDW-1h-1の一定値に限定した。
【0127】
cobrapyモジュール・バージョン0.3.2.のモデル・オブジェクトと共に働くようにPythonによって書かれたカスタム関数を適応することで、デフォルトの環境条件をセットした。成長培地は「glucose_aerobic_minimal」にセットし、これは機能的には、1ミリモルのgDW-1h-1の速度のグルコース取り込みおよび無制限のo2、nh3、リン酸、硫酸およびh2oの取り込みを可能にした。
【0128】
次に、COREファルネセン生合成経路として参照される一組の反応を定義した。これら反応は以下を含む。
‘acetyl_coa_acetyltransferase’、‘glucokinase_glk1’、‘inorganic_pyrophosphatase’、‘dimethylallyltranstransferase’、‘atp_drain_flux_for_constant_maintanence_requirements、geranyltranstransferase’、‘phosphomevalonate_kinase’、‘hydroxymethylglutaryl_coa_synthase’、‘isopentenyl_diphosphate_delta_isomerase’、‘diphosphomevalonate_decarboxylase’、‘galactose_transporter’、‘farnesene_synthase’、‘exchange_of_betafarnesene_c’、‘exchange_of_phosphate_e’、‘exchange_of_alphadglucose_e’、‘exchange_of_h2o_e’; ‘glucose_6_phosphate_isomerase、phosphofructokinase_1’、‘fructose_bisphosphate_aldolase’、‘triosephosphate_isomerase’、‘enolase_1’、‘transport_of_h2o_extracellular’、‘phosphoglycerate_kinase’、‘phosphoglycerate_mutase_1_1’、‘pyruvate_kinase_1’、‘pyruvate_decarboxylase_isozyme_1’、‘acetaldehyde_dehydrogenase_acetylating_’、‘_3_hydroxy_3_methylglutaryl_coenzyme_a_reductase_1’、‘_3_hydroxy_3_methylglutaryl_coenzyme_a_reductase_1_NADH’、‘mevalonate_kinase’、‘exchange_of_co2_e’、‘phosphoketolase_f6p’、‘phosphoketolase_x5p’、‘phosphotransacetylase’、‘transaldolase’、‘transketolase_1’、‘glucose_6_phosphate_1_dehydrogenase’、‘probable_6_phosphogluconolactonase_1’、‘_6_phosphogluconate_dehydrogenase_decarboxylating_1’、‘transketolase_1_1’、‘ribose_5_phosphate_isomerase’、‘ribulose_phosphate_3_epimerase’、‘transport_of_carbon_dioxide_extracellular’、および‘glyceraldehyde_3_phosphate_dehydrogenase_1’。
【0129】
代替HMG-CoAレダクターゼ(またはNADH HMGR)を表す次の反応は、0フラックスに限定された。これは、フラックスの大部分が、NADPH対NADHを使用するネイティブなSc.HMGRによって実施されると証拠が示しているためである。
‘_3_hydroxy_3_methylglutaryl_coenzyme_a_reductase_1_NADH’
【0130】
これらコア反応以外でフラックスが発生することは許可しなかった。
【0131】
コア反応以外でフラックスが発生することは許可されないため、過剰なNADHはシミュレーションを実行不能にする。そこで、産生された余分なNADHがATPに変換される以下の反応(推定化学量論は1:1)を加えた。
NADH + PI + ADP → NAD+ ATP + H2O
【0132】
さらに、上位ファルネセン産生反応内に存在する異種酵素であるため、udhA反応であるNADPH + NAD <=> NADP + NADHによって、NAD/NADH/NADP/NADPHの制御された自由なサイクリングを許可した。これは、過剰なNADPHをNADHに変換し、次にすでに説明した反応を用いてATPに変換できることを意味する。
【0133】
TCA回路へのピルビン酸の損失をシミュレーションする次の反応も導入した。
‘PYR_leak_to_TCA’:
PYR + 5.6667 ADP + 5.6667 Pi = 3 CO2 + 5.6667 ATP + 5.6667 H2O
【0134】
最後に、「CUSTOM_NGAM」反応と呼ばれる、ATPを加水分解するさらに別の下記反応も加えた。
ATP + H2O → Pi + ADP
【0135】
一度この制限されたモデルが完全に構成されたら、同じ酵母ゲノムスケール代謝モデルの別の(ANOTHER)コピーに隣接させたが、このコピーでは、1つの臨界的な例外を除き全ての反応に制限がない。重要な点は、CUSTOM_NGAM反応を通じたフラックスが、第1のモデルの(ATP、およびその物質のためにATPに変換されたNADHの唯一可能な排出が)第2の(全体的に制限なしの)モデルにおけるバイオマス形成反応と厳密に共役されていたことである。(第2のモデルの)デフォルトのバイオマス反応は、「バイオマス_1060_バイオマス」に設定された。この反応中のフラックスはmuまたは成長速度として報告された、その単位は1/hであった。モデルがどのように組み立てられ相互作用するかを可視化した画像については、
図6を参照。両方のモデルが1ミリモル gDW
-1h
-1の割り当てた最大グルコース取り込みを分けあう(SHARE)ため、第1のモデルによって産生された過剰なエネルギーが存在した場合、それを成長(バイオマス形成)に「吸収させる(sunk)」ためには、いくつかの糖を第2のモデルに送るという代償が発生する。
【0136】
共役の制限は以下のとおりである。
(未制限)モデルにおける成長 ≧ CUSTOM_NGAM* (1./1000.)*(1./mol_atp_per_c_mol_biomass)*12.0107*2
式中、
* (未制限)モデルにおける成長の単位: h-1
* CUSTOM_NGAMの単位: ミリモルのATP gDW-1h-1
* 用語「(1./1000.)」は、ミリモルをモルに変換するため、この用語を適応した後の単位は、モルのATP gDW-1h-1となる。
* mol_atp_per_c_mol_biomas =1.4647(単位無し)であり、この用語を適応した後の単位は、cmolのバイオマス gDW-1h-1となる。
* 12.0107は炭素の原子質量(12.0107g/1cmol)であり、この用語を適応した後の単位は、gの炭素 gDW-1h-1となる。
* 細胞の炭素含有量がその乾燥重量の約50%であると推定すると(PMID 10482783)、約2gのDCWが1gの炭素から形成されるため、数値「2」を最後の用語として含める。この用語を適応した後には、gDW gDW-1h-1が得られ、gDWは打ち消されて、h-1が残る(muまたは成長速度の式の左側の単位と一致する)。
【0137】
最終結果を生成するためには、第1の(制限された)モデルにおけるファルネセン収率をqSの以下のパラメーター値に対して最適化した。
qS(20から180 OTR内で等間隔):[0.5、0.92、1.34、1.76、2.18、2.6]
【0138】
各qSにおいて、TCA回路への可能なすべてのフラックス・スプリット(TCA回路への0フラックスから最大値まで)のシミュレーションを実施した(
図7参照)。追加の変数(variation)を生成するために、各固定されたqSにおける0から最大値までの未知のホスホトランスアセチラーゼ(第2世代ファルネセン経路)フラックスおよびTCA回路フラックスもシミュレーションした。
図7に示したように、実験データは、TCA回路内のフラックス(qSの関数として)が増加しなければならないことを示した。
【0139】
実施例3. 無益なATP燃焼がバイオマスに対する産物収率を増加させる
過剰なATPにとってバイオマスが好ましい吸収源である場合、過剰なATPは速度-収率共役に影響し得ると仮定した。細胞維持のためのATP消費は、ATP産生の比速度に関わらず、一定である。よって、低い細胞比速度においては、より少ない割合のATPがバイオマスまたは非分解生化合物の産生のために利用可能であり、一方、高い細胞比速度においては、より多い割合のATPがバイオマスまたは非分解生化合物に使用可能である。細胞にとって最も効率的な過剰ATPの消費方法がバイオマスに吸収させることであれば、より少ない炭素が非分解生化合物の産生のために利用可能であり、高い細胞比速度では収率は低下する。反対に、低い細胞比速度では、バイオマス形成を行うための過剰なATPが少なく、割合としてより多くの炭素を非分解生化合物の産生に回すことができる。この仮定は、そうしなければバイオマスに吸収される過剰なATPを除くためのATPレベルの減少は、ファルネセン等の非分解生化合物へのより好ましい炭素の分配を可能にすることを予測する。
【0140】
安息香酸は、ベンゾイルカチオンによって細胞質に移動した過剰なプロトンをくみ出すためにATPを使用するように細胞を強制することで、細胞内のATPを除去するために使用することができる。ファルネセン産生株を異なる濃度の安息香酸で処理し、比糖取り込み速度(qS)、比ファルネセン産生速度(qP)、および比成長速度(mu)に対するその影響を測定した。収率(qP/qS)は、測定した比糖取り込み速度および比ファルネセン産生速度から計算した。
【0141】
安息香酸の効果を
図8に示した。興味深いことに、安息香酸濃度の増加に伴い比成長速度が直線的に低下するのに対し、比生産性は変化せず、中間濃度では増加さえした。増加した安息香酸濃度(および関連する増加したATPの消耗)は、計算収率(qP/qS)の増加に反映されるように、より好ましい炭素のファルネセンへの分配と関連していた。このデータは興味深く、我々にATP産生を減少させるように遺伝子改変された株の速度-収率共役を直接測定させた。
【0142】
実施例3の方法
単一コロニーをCSMアガープレート上で培養し、50mMのコハク酸(pH5.0)および2%のショ糖+1%のマルトース+2g/Lのリシンを添加した360μlの限定液体培養培地(LGM、実施例1で参照、Westfall et al, 2012)を含む滅菌済みの96ウェルのマイクロタイタープレート(作業容量は1.1mL、Axygen)にコロニーを加え、28℃で72時間培養した。14μLを、50mMのコハク酸(pH5.0)と表示した量の安息香酸を含む360μLの新鮮限定LGMで継代培養し、次に33.5℃で72時間培養した。3日目に終濃度8%のショ糖でスパイクし、6時間のインキュベーション後、8%のショ糖と異なる濃度の安息香酸を含む生産プレートで(早期対数増殖期の)培養物を26倍に希釈し、これによって遅滞期を避けた。対数増殖期(2点、即ち、T1およびT2)のファルネセン、バイオマス、および総残存糖を測定することは、比生産性、成長速度、および比糖取り込み速度の決定を可能にする。ファルネセンは、イソプロパノールによる全ウェルの抽出(full-well extraction)と、標準曲線に参照する220nmのUV吸光度による定量によって測定した。バイオマスは、励起波長290nm、検出波長350nm(UVOD)における、細胞内トリプトファンの蛍光シグナルの解析によって測定した。このトリプトファンシグナルと実際のバイオマスとの関係は株依存性であり、分析した株ごとに実験的に決定した。我々はUVODとバイオマスの吸光度(OD)の両方を産生プレートの開始直前に測定することでこれを実施し、ウェル当たりのOD/UVOD変換因子を次に産生工程の終了時のUVODシグナルをバイオマスに戻すために使用した。バイオマスの決定のために実施しなければならない別の変換は、光学密度(OD)の乾燥細胞重量への変換であり、これも実験的に決定された。ファルネセンエマルションのODシグナルへの関与を排除するために、培養物を20%(v/v)のPEG20、20%(v/v)のエタノール、2%(v/v)のTriton X-114の溶液で希釈した。LN(OD)対時間に対して直線回帰を適応することで成長速度を決定した。Sigma Aldrichの販売するような種々の市販のキットを用いて、340nMにおけるNADHの吸光度を出力する、ショ糖、フルクトース、およびグルコースの酵素決定を用いて、総還元糖を測定した。
【0143】
安息香酸、酢酸、ソルビン酸、乳酸、およびプロピオン酸は、全てが(異なるレベルで添加されたときに)バイオマス収率の減少/ATP浪費の実行に使用することができる。多くの他のカルボン酸もバイオマス収率の減少(またはATP浪費の実行)が可能なはずである。ATP浪費の程度は、通常、どちらも分子の膜透過性に影響を与える酸のpKaおよびオクタノール-水分配係数(logP)と関連する。低い細胞外pHにおいて弱酸は、その大部分が、比較的高い膜透過性を有する未解離の形態で存在するはずである。静的な拡散によって細胞内に侵入したら、細胞基質の高pHが酸の解離を誘導し、細胞を酸化させてプロトンのATP依存性フラックスを開始させる。続いて、弱酸は、最低でも細胞内ATPレベルの一時的な減少を起こすことができる。高濃度では、ATPの枯渇、細胞質の酸性化、およびプロトン輸送力の消失が起こり得る。この「弱酸脱共役」機構は、弱有機酸毒性を裏打ちする主たる機構として慣例的には引用されている。細胞ATPレベルの除去に使用することのできる弱酸の例を下記表1に示した。
【0144】
【0145】
実施例4. ATPレベルを低下させる遺伝子改変は、発酵槽中の速度-収率共役を減少させる
ファルネセン産生株を、TDH3プロモーターの制御下でNOX(NADH酸化酵素)を過剰発現するように改変した。NOXによるNADHの酸化は、ミトコンドリア内のATPシンターゼによるATP合成の電子供与体としてNADHが使用されるのを防止する。よって、NOXの過剰発現は、細胞内ATPレベルを低下させる。このY31655株と、NOXが組み換えられていない対照株(Y21901、Y22021)を、個別に異なるOTRにセットした発酵槽で培養した。比OUR(qO
2)は、OTRを層内の総バイオマスで除した値の関数である。各層の条件における比酸素取り込み速度に対して産物収率をプロットすることで速度-収率共役の効果を測定した。
図9においては、収率と比速度との関係を、対照株は2種の異なるグレーの濃淡で、NOX過剰発現株は黒で示した。速度-収率共役の勾配は、対照に対してNOX過剰発現株において有意に(半分に)減少した。この実験は、ATPレベルが速度-収率共役に影響すること、減少した細胞内ATPレベルが収率と比速度との共役の減少と関連することを示す。これは、バイオマスに吸収された過剰なATPが、ファルネセン産生から炭素を引き抜きながら、速度-収率共役を駆動するという仮説と一致していた。
【0146】
材料および方法
バイオリアクターの条件の詳細については実施例1を参照。
【0147】
Lactococcus lactisのNADH酸化酵素のコード配列(NADH酸化酵素遺伝子の開始コドンから停止コドンに至るヌクレオチド配列と定義)に対して、その5’末端に本来のS. cerevisiaeのTDH3プロモーター、その3’末端に本来のS. cerevisiaeのTDH3遺伝子のターミネーターを融合した。TDH3プロモーターはTDH3遺伝子の開始コドンのすぐ上流の約830bpのヌクレオチド配列と定義される。TDH3ターミネーターは、TDH3遺伝子の停止コドンのすぐ下流の約300bpのヌクレオチド配列と定義される。TDH3プロモーター-NOX-TDH3ターミネーター構築物は、標準酵母分子遺伝学技術を用いて、GAS4遺伝子の約500bp上流、および500bp下流の隣接相補性配列を使用し、本来のGAS4遺伝子座に統合された。
【0148】
実施例5. TCA回路へのフラックスの減少は、速度-収率共役を減少させる
ミトコンドリアにおけるATP合成のための主たる電子源であるTCA回路へのフラックスの減少が速度-収率共役に与える影響を決定するために、PYC1またはCIT1が単体でまたは組み合わせで下方制御されている株を作製した。Pyc1は細胞質ピルビン酸をオキサロ酢酸に変換し、その後ミトコンドリアに輸送されてTCA回路に入ることができる。Cit1は、TCA回路の律速酵素である。これ酵素の両方の下方制御はTCA回路への炭素フラックスを有意に減少し、ミトコンドリアのATPシンターゼによるATP産生を減少させるはずである。本来のプロモーターを、マルトースの存在下(例えば、種子構成条件下)では活性であるが、マルトースの非存在下(例えば、産生条件下)では不活性のプロモーターで置換することによって、CIT1またはPYC1の下方制御を設計した。以下のファルネセン産生株における速度-収率共役を測定した:Y27662(PYC1を下方制御するように改変)、Y39666(CIT1を下方制御するように改変)、Y29438(CIT1およびPYC1の両方を下方制御するように改変)、および非改変対照であるY21601。驚くべきことに、PYC1およびCIT1の両方が下方制御された株(Y29438)においては、速度はほぼ完全に収率から脱共役されたように見えた。この観察結果は、速度が収率から脱共役可能であることを立証し、大規模産生に適応可能な、高収率と高速度の両方を維持可能な株を構築するための解決策を同定する。この解決策は、生合成反応に転換される炭素の運命を決定する主な因子が過剰なATPであることを示したモデリングによる観察と実験的立証(全ての詳細を上述した)の集大成である。
【0149】
材料および方法。NOX実験と同じ。
【0150】
宿主の本来の相同組み換え機構を用いて酵母ゲノム中にDNA配列を置換または挿入するための標準的な酵母分子遺伝学技術を使用し、各遺伝子の本来のプロモーターを、マルトースの不在時にはオフになる合成プロモーターと置き換えることで、PYC1および/またはCIT1による下方制御が達成された。
【0151】
本明細書において引用した全ての出版物、特許、および特許出願は、出版物または特許出願を詳細且つ個別には参照によって組み込まれると特定したかのように、本参照をもって本願に組み込まれたものとする。上記発明は、理解を明確にする目的で、実例および例示によっていくらか詳細に説明したが、当業界の通常の技術を持つものにとって、本発明の開示に鑑みれば、添付の請求項の精神に逸脱することなく、ある程度の変更および改変は可能であることを理解されよう。
【配列表】
【国際調査報告】