(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】熱ゲル化カンナビノイド組成物、並びにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20220801BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220801BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220801BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220801BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220801BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220801BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220801BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220801BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220801BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P25/04
A61P25/00
A61P25/22
A61P29/00
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/36
A61K31/05
A61K47/14
A61K47/44
A61K9/107
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572040
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CA2020050780
(87)【国際公開番号】W WO2020243844
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521072685
【氏名又は名称】ヘクソ・オペレーションズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・サヴァール
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・シュイナール
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エルバイラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA24
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC04
4C076CC07
4C076DD09
4C076DD37
4C076DD41
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4C076EE08
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4C206AA01
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4C206MA02
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4C206MA79
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4C206NA11
4C206ZA01
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZB09
4C206ZB11
(57)【要約】
本開示は、体循環中への投与カンナビノイドの吸収速度が増強した、又は濃度がより高いカンナビノイド組成物であって、当該組成物を、約室温での液体から、約体温に上昇すると直ぐにゲルに変えるのに有効な量で存在する少なくとも1つのカンナビノイド及び粘性モディファイアを含む組成物に関する。また、本開示は、当該組成物、及びそのような組成物を含むカンナビノイド生成物の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンと、(ii)粘性モディファイアとを含む組成物であって、前記カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含み、前記組成物は、約室温にて液体状態にあり、前記粘性モディファイアは、前記組成物が約体温にて半固体又は固体の状態にあるように、前記組成物の粘性を増大させるように機能する、組成物。
【請求項2】
(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンと、(ii)粘性モディファイアとを含む組成物であって、前記カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含み、前記組成物は、約室温にて易流動状態にあり、前記粘性モディファイアは、前記組成物がヒドロゲルを形成するように、前記組成物の粘性を約体温にて増大させるように機能する、組成物。
【請求項3】
(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンと、(ii)粘膜付着剤とを含む組成物であって、前記カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含み、前記粘膜付着剤は、粘膜の表面と接触すると直ぐに、前記組成物が粘膜付着特性を有するヒドロゲルを形成するように、前記組成物の粘性を増大させるように機能する、組成物。
【請求項4】
カンナビノイド組成物であって:
a.少なくとも1つのカンナビノイドを含むカンナビノイド構成要素と;
b.前記組成物を、約室温での液体から、約体温に上昇すると直ぐにゲルに変えるのに有効な量で存在する粘性モディファイアと;
c.水を含む薬学的に許容される賦形剤と
を含むカンナビノイド組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのカンナビノイドは、約0.001mg/mlから約100mg/mlの量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのカンナビノイドは、>75%の純度を有する単離されたカンナビノイドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記カンナビノイド構成要素は、前記少なくとも1つのカンナビノイドを、少なくとも1つのキャリアオイルと組み合わせて含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのキャリアオイルは、MCT油を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのカンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、又はそれらの混合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカンナビノイドは、THC及びCBDの、約1:1000から約1000:1の(w/w)比率の混合物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記カンナビノイド構成要素は、前記組成物の約0.1から約10重量%を占める、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記カンナビノイド構成要素は、前記組成物の約5重量%を占める、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘性モディファイアは、ポリ(プロピレンオキシド)/ポリ(エチレンオキシド)コポリマーである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記コポリマーは、分子量が約7,000g/molから約18,000g/mol、そしてエチレンオキシド含有量が前記コポリマーの約30重量%から約90重量%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記粘性モディファイアは:ポロキソマー108、ポロキソマー124、ポロキソマー182、ポロキソマー183、ポロキソマー184、ポロキソマー185、ポロキソマー188、ポロキソマー212、ポロキソマー217、ポロキソマー237、ポロキソマー217、ポロキソマー288、ポロキソマー331、ポロキソマー335、ポロキソマー338、ポロキソマー407、及びそれらの混合物からなる群から選択されるコポリマーを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粘性モディファイアは、ポロキソマー407、又はポロキソマー407及びポロキソマー188の混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記粘性モディファイアは、ポロキソマー407及びポロキソマー188の混合物であり、前記混合物は、少なくとも85%のポロキソマー407を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記粘性モディファイアは、前記組成物の約0.1重量%から約15重量%の量で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記カンナビノイド構成要素及び前記粘性モディファイアは、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)が0.9~1.1:1~9.5の範囲内で存在する、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
約1重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの前記比率(w/w)は、0.9~1.1:7.9~9.5の範囲内である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
約3重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの前記比率(w/w)は、0.9~1.1:3.2~3.5の範囲内である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
約5重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1~1.2の範囲内である、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、PEG-40水添ヒマシ油である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、前記組成物中に、約0.01重量%から約15重量%の量で存在する、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記カンナビノイド構成要素及び前記少なくとも1つの界面活性剤は、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)が0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内で存在する、請求項23~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
約1重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.4~1.9の範囲内である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
約3重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.8~2.2の範囲内である、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
約5重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの透過エンハンサをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1つの透過エンハンサは、前記組成物中に、約0.5重量%から約15重量%の量で存在する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも1つの粘膜付着剤をさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記少なくとも1つの粘膜付着剤は、キサンタンゴム、ジェランゴム、アラビアゴム、グアーゴム、ローカストビーンゴム、トラガカントゴムゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、カラギーナン、アガー、ペクチン、ポリカルボフィル、Noveon AA-1、Carbopol化合物、カルボマー化合物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
香味料をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記香味料は、少なくとも1つのテルペンを含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記香味料は、シナモン、キュウリ、ミント、オレンジ、ライム、柑橘類、クッキー生地、チョコレート、バニラ、ジャスミン、ライチ、アーモンド、バナナ、ブドウ、西洋ナシ、パイナップル、パイン、オーク、リンゴ、カボチャ、グレープフルーツ、スイカ、コットンシュガー、ドリアン、リュウガン、タロイモ、サポテ、タフィーナット、カラメル、ハス、マンゴー、マンゴスチン、ココナッツ、コーヒー、ストロベリー、パッションフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、キーウィ、クルミ、ココア、チェリモヤ、ギュウシンリ、パパイア、イチジク、プラム、ネクタリン、モモ、グァバ、蜜、パラミツ、キンカン、ビワ、パーム、ザボン、柿、マルメロ、桂皮、セージ、マヨラナ、レモン、オレンジ、タマリンド、及びそれらのあらゆる組合せの抽出物からなる群から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、前記カンナビノイド構成要素を含む水中油エマルジョンを含み、前記エマルジョンは、平均粒度が<200nmである油滴を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記油滴は、平均粒度が<75nmである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は、初期粘性が約室温にて約750mPas未満、そして塗布粘性が約体温にて少なくとも約5000mPasである、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
組成物であって:
a.カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのカンナビノイドを含むカンナビノイド構成要素と;
b.ポロキソマー407、並びにポロキソマー407及びポロキソマー188の混合物から選択される粘性モディファイアであって、前記混合物は、少なくとも85%のポロキソマー407を含み、前記組成物を、約室温での液体から、約体温に上昇すると直ぐにゲルに変えるのに有効な量で存在する粘性モディファイアと;
c.PEG-40水添ヒマシ油を含む界面活性剤と;
d.水を含む薬学的に許容される賦形剤と
を含み、
粘膜表面上への塗布の直後に、液体からゲルに変換される、組成物。
【請求項42】
前記少なくとも1つのカンナビノイドは、>75%純粋である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイド及びMCT油の混合物である、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記カンナビノイド構成要素は、前記組成物の約0.1重量%から約10重量%の量で存在する、請求項41~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記粘性モディファイアは、前記組成物の約0.1重量%から約15重量%の量で存在する、請求項41~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記カンナビノイド構成要素及び前記粘性モディファイアは、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)が0.9~1.1:1~9.5重量%の範囲内で存在する、請求項41~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記少なくとも1つの界面活性剤は、前記組成物中に、約0.01重量%から約15重量%の量で存在する、請求項41~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記カンナビノイド構成要素及び前記少なくとも1つの界面活性剤は、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)が0.9~1.1:1.9~2.2重量%の範囲内で存在する、請求項41~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
約1重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.4~1.9の範囲内である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
約3重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.8~2.2の範囲内である、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
約5重量%の前記カンナビノイド構成要素を含み、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の前記比率(w/w)は、0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内である、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
少なくとも1つの透過エンハンサをさらに含む、請求項41~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
前記少なくとも1つの透過エンハンサは、前記組成物中に、約0.5重量%から約15重量%の量で存在する、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物は、前記カンナビノイド構成要素を含む水中油エマルジョンを含み、前記エマルジョンは、平均粒度が<200nmである油滴を含む、請求項41~53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記油滴は、平均粒度が<75nmである、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
対象への経粘膜投与のためのカンナビノイド生成物であって、請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物を含む生成物。
【請求項57】
前記生成物は、前記対象の口腔粘膜表面又は鼻粘膜表面への前記組成物の投与に適応している、請求項56に記載の生成物。
【請求項58】
口腔スプレー形態、好ましくは舌下液体スプレー形態及び/又は頬側液体スプレー形態である、請求項56に記載の生成物。
【請求項59】
鼻スプレー形態、好ましくは鼻液体スプレー形態である、請求項56に記載の生成物。
【請求項60】
前記生成物は、少なくとも1つのカンナビノイドを<50mg/mLの濃度にて含む、請求項56~59のいずれか一項に記載の生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月6日出願の米国仮特許出願第62/858112号の利益を主張する。上記参考文書の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、カンナビノイドの経粘膜投与に適した熱ゲル化カンナビノイド組成物に関する。また、そのような組成物の製造方法及び使用方法が、本開示によって包含される。
【背景技術】
【0003】
カンナビスは、身体的且つ/若しくは感情的な満足感を伴う所望の生理学的作用をもたらし、且つ/又は種々の疾患及び症状(例えば、疼痛、不安、炎症性疾患、免疫不全、及び代謝異常)の処置に有用であり得る。レクリエーションに、且つ/又は健康/ウェルネス分野において一般的に用いられる2つのカンナビノイドが、カンナビジオール(CBD)及びテトラヒドロカンナビノール(THC)である。
【0004】
カンナビスの投与は、可燃性の副産物の吸入(すなわち喫煙)から、他の好ましい投与経路、例えばスプレー投与まで、経時的に進化してきた。スプレー投与装置での使用が意図されるカンナビス製剤は典型的に、水性製剤とは対照的に、キャリアオイル(例えば、トリグリセリド油、例えば「中鎖トリグリセリド」(MCT)))により製剤化される。これは、カンナビノイドが非常に親油性であること、そして水溶解性が不十分であることに起因する。キャリアオイルの目的は、疎水性カンナビノイドを製剤内で可溶化するのを補助することである。しかしながら、そのような油性製剤には、少なくとも2つの主な不利点が存在する。
【0005】
第1に、とりわけ水性製剤と比較した場合に、経粘膜送達を介した油性製剤の吸収は、最適状態に及ばずに、投与の有効性を引き下げる。例えば、経口投与では、吸収は実質的に引き下げられる虞がある。なぜなら、油は、水性の唾液中に可溶性でないからである。これ以外にも、鼻腔内投与では、吸収は、同様に引き下げられる虞がある。これは、スプレーされた製剤が、鼻腔を通過して嚥下されることに起因する。
【0006】
第2に、油性製剤は、多くの場合、スプレー投与装置において漏出問題を生じさせる虞がある。これは、液体の比較的高い粘性に起因する。油性製剤は、スプレーが停止すると、「糸を引く(string)」傾向があることが観察された。「糸引き」は、液体組成物がスプレー装置の開口部に付着されたままであり、そして開口部と外部環境との間に「キャピラリ」を形成する現象である。糸引きの結果、油性製剤は、重力の影響を受けて貯蔵表面上に漏れる虞がある。これ以外にも、スプレー装置の開口部の周りに、そしてその中に残った油性製剤は、乾燥してクラストを形成する傾向がある。クラストが蓄積されれば、最終的に開口部をブロックする。
【0007】
上述の吸収問題に対処する以前の試みは、その粘性を増大させることによって油製剤の滞留時間を増やすことを含んだ。しかしながら、この溶液は、漏出問題に寄与する組成物の流動学プロファイルに及ぼす作用が悪化して、知られているカンナビス製剤における固有のトレードオフをもたらして、双方の問題に不十分に対処する。
【0008】
ゆえに、先で考察した漏出問題をそれでも最小限にする、カンナビノイドの経粘膜投与が向上したカンナビノイド組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本概要は、以下の詳細な説明にさらに記載される概念の選択を、簡略化された形式で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な態様又は本質的な態様を特定することは意図されない。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、先に記載される短所を克服することができるカンナビノイド組成物を開発した。特に、本開示は、約室温にて液体であり、且つ約体温に上昇した場合にゲルに変わるカンナビノイド組成物に関する。本開示の組成物は、塗布後の粘膜表面との密接な接触の滞留時間の増強を可能にし、且つ水溶解性の増大を実現する。また、より低い粘性に起因して、本開示の組成物は、その塗布前にコンテナ内にありながら、漏出問題を最小にする。
【0011】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示は、(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンであって、カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含む、エマルジョンと、(ii)粘性モディファイアとを含む組成物に関し、組成物は、約室温にて液体状態にあり、粘性モディファイアは、組成物が約体温にて半固体又は固体の状態にあるように、組成物の粘性を増大させるように機能する。
【0012】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示はまた、(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンであって、カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含む、エマルジョンと、(ii)粘性モディファイアとを含む組成物に関し、組成物は、約室温にて易流動状態にあり、粘性モディファイアは、組成物がヒドロゲルを形成するように、組成物の粘性を約体温にて増大させるように機能する。
【0013】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示はまた、(i)カンナビノイド構成要素を含むエマルジョンであって、カンナビノイド構成要素は、少なくとも1つのカンナビノイドを含む、エマルジョンと、(ii)粘膜付着剤とを含む組成物に関し、粘膜付着剤は、粘膜の表面と接触すると直ぐに、組成物が粘膜付着特性を有するヒドロゲルを形成するように、組成物の粘性を増大させるように機能する。
【0014】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示はまた:a)少なくとも1つのカンナビノイドと;b)組成物を、約室温での液体から、約体温に上昇すると直ぐにゲルに変えるのに有効な量で存在する粘性モディファイアと;c)水を含む薬学的に許容される賦形剤とを含む熱ゲル化カンナビノイド組成物に関する。
【0015】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示はまた、対象の、好ましくは口腔粘膜又は鼻粘膜への、経粘膜投与のためのカンナビノイド生成物に関し、生成物は、本明細書中で記載される組成物を含む。生成物は、舌下液体スプレー、頬側液体スプレー、又は鼻液体スプレーとして提供されてもよい。
【0016】
本明細書中で例示され、且つ広く説明されるように、本開示はまた、対象において疾患又は症状を処置する方法であって、対象の粘膜、好ましくは口腔粘膜及び/又は鼻粘膜に、本明細書中に記載される組成物を塗布することを含む方法に関する。
【0017】
一部の実施形態において、少なくとも1つのカンナビノイドは、約0.001mg/mlから約100mg/mlの量で存在してもよい。少なくとも1つのカンナビノイドは、>75%、好ましくは>80%、好ましくは>90%、好ましくは>95%、好ましくは>98%、好ましくは>99%、又は好ましくは>99.5%の純度を有する単離されたカンナビノイドとして提供されてもよい;単離されたカンナビノイドは、少なくとも1つのキャリアオイル中に存在してもよい。少なくとも1つのカンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、又はそれらの混合物であってもよい;少なくとも1つのカンナビノイドが、THC及びCBDの混合物である場合、THC:CBDの(w/w)比率は、約1:1000から約1000:1であってよい。少なくとも1つのカンナビノイドは、カンナビノイド構成要素として提供され、これは、少なくとも1つのカンナビノイド、又は少なくとも1つのカンナビノイド及びキャリアオイルの混合物を含んでもよい。カンナビノイド構成要素は、組成物の約0.1重量%から約10重量%の量で存在してもよい。
【0018】
一部の実施形態において、組成物は、カンナビノイド構成要素及び粘性モディファイアを、0.9~1.1:1~9.5の範囲内のカンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)で含んでよい。例えば、組成物が約1重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)は、0.9~1.1:7.9~9.5の範囲内であってよい。これ以外にも、組成物が約3重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)は、0.9~1.1:3.2~3.5の範囲内であってよい。これ以外にも、組成物が約5重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)は、0.9~1.1:1~1.2の範囲内である。
【0019】
一部の実施形態において、粘性モディファイアは、ポリ(プロピレンオキシド)/ポリ(エチレンオキシド)コポリマーであってもよい。コポリマーは、分子量が約7,000g/molから約18,000g/mol、そしてエチレンオキシド含有量がコポリマーの約30重量%から約90重量%であってもよい。粘性モディファイアは:ポロキソマー108、ポロキソマー124、ポロキソマー182、ポロキソマー183、ポロキソマー184、ポロキソマー185、ポロキソマー188、ポロキソマー212、ポロキソマー217、ポロキソマー237、ポロキソマー217、ポロキソマー288、ポロキソマー331、ポロキソマー335、ポロキソマー338、ポロキソマー407、及びそれらの混合物からなる群から選択されるブロックコポリマーを含んでもよい。特定の実施形態において、粘性モディファイアは、ポロキソマー407、又はポロキソマー407及びポロキソマー188の混合物である;ポロキソマー407及びポロキソマー188のそのような混合物は、少なくとも85%のポロキソマー407を含んでもよい。粘性モディファイアは、組成物の約0.1重量%から約15重量%の量で存在してもよい。
【0020】
一部の実施形態において、先に記載される組成物はさらに、少なくとも1つの界面活性剤を含んでもよい。一部の実施形態において、組成物は、カンナビノイド構成要素及び少なくとも1つの界面活性剤を、0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内のカンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)で含んでよい。例えば、組成物が、約1重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)は、0.9~1.1:1.4~1.9の範囲内である。これ以外にも、組成物が約3重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)は、0.9~1.1:1.8~2.2の範囲内であってよい。これ以外にも、組成物が約5重量%のカンナビノイド構成要素を含む場合、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)は、0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内であってよい。
【0021】
一部の実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体であってもよい;特定の実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、PEG-40水添ヒマシ油であってもよい。組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を、約0.01重量%から約15重量%の量で含んでもよい。
【0022】
一部の実施形態において、先に記載される組成物はさらに、少なくとも1つの透過エンハンサを含んでもよい。組成物は、約少なくとも1つの透過エンハンサを、約0.5重量%から約15重量%の量で含んでもよい。
【0023】
一部の実施形態において、先に記載される組成物はさらに、少なくとも1つの粘膜付着剤を含んでもよい。少なくとも1つの粘膜付着剤は、キサンタンゴム、ジェランゴム、アラビアゴム、グアーゴム、トラガカントゴムゴム、ローカストビーンゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、カラギーナン、アガー、ペクチン、ポリカルボフィル、Noveon AA-1、Carbopol化合物、カルボマー化合物、及びそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0024】
一部の実施形態において、先に記載される組成物はさらに、少なくとも1つの香味料を含んでもよい。少なくとも1つの香味料は、シナモン、キュウリ、ミント、オレンジ、ライム、柑橘類、クッキー生地、チョコレート、バニラ、ジャスミン、ライチ、アーモンド、バナナ、ブドウ、西洋ナシ、パイナップル、パイン、オーク、リンゴ、カボチャ、グレープフルーツ、スイカ、コットンシュガー、ドリアン、リュウガン、タロイモ、サポテ、タフィーナット、カラメル、ハス、マンゴー、マンゴスチン、ココナッツ、コーヒー、ストロベリー、パッションフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、キーウィ、クルミ、ココア、チェリモヤ、ギュウシンリ、パパイア、イチジク、プラム、ネクタリン、モモ、グァバ、蜜、パラミツ、キンカン、ビワ、パーム、ザボン、柿、マルメロ、タマリンド、及びそれらのあらゆる組合せの抽出物からなる群から選択されてもよい。別の実施形態において、香味料は、テルペンを含んでもよい。
【0025】
一部の実施形態において、先に記載される組成物は、カンナビノイドを含む水中油エマルジョンであってもよい;一実施形態において、組成物は、自己乳化水中油エマルジョンであってもよい。組成物によって形成されるエマルジョンは、平均粒度が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、好ましくは<75nm、好ましくは<70nm、好ましくは<60nm、又は好ましくは<50nmである油滴を含んでもよい。一例において、エマルジョンは、D90が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、好ましくは<75nm、好ましくは<70nm、好ましくは<60nm、又は好ましくは<50nmである油滴を含む;これ以外にも、エマルジョンは、D50が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、好ましくは<75nm、好ましくは<70nm、好ましくは<60nm、又は好ましくは<50nmである油滴を含む。
【0026】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、初期粘性が約室温にて約750mPas未満、そして塗布粘性が約体温にて約5,000mPas超であってもよい。別の例において、本明細書中に記載される組成物は、初期粘性が約室温にて約200mPas未満、そして塗布粘性が約体温にて約10,000mPas超であってもよい。
【0027】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、粘膜表面上への塗布後、約10秒超、好ましくは約20秒超、好ましくは約30秒超、好ましくは約40秒超、好ましくは約50秒超、好ましくは約1分超、好ましくは約2分超、好ましくは約5分超、好ましくは約10分超、好ましくは約20分超の粘膜表面上での滞留時間を示してもよい。
【0028】
本開示に記載されており、そして相互に排他的ではない例示的な実施形態の全ての特徴は、互いに組み合わせることができる。一実施形態の要素は、更なる言及なしに、他の実施形態で利用することができる。本発明の他の態様及び特徴は、具体的な実施形態の以下の説明を添付の図と併せて検討することで、当業者に明らかとなろう。
【0029】
具体的な例示的実施形態の詳細な説明を、本明細書中で以下に、添付の図面を参照して示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、1s
-1の剪断速度にて得られる、本開示の実施形態に従う組成物のゲル化曲線を示すグラフである。貯蔵率(□)と損失率(△)との交差点は、(34℃での)液体からゲル形態への相変化を示す。
【
図2】
図2は、25℃(□)での、そして40℃(○)での、本開示の実施形態に従う組成物の粘性を示すグラフである。溶液の粘性は、25℃にて剪断と独立しているが、40℃にてゲル化直後に剪断に依存的である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面において、例示的な実施形態は、例示の目的としてのみ説明される。説明及び図面は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、理解を補助するためのものであることが明確に理解されるべきである。それらは、本発明の限定の定義であることは意図されない。
【0032】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細な説明を、本発明の原理を説明する添付の図と共に以下に示す。本発明は、そのような実施形態に関連して説明されるが、本発明は、いずれの実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。本発明の詳細な理解を実現するために、以下の説明には多くの具体的な詳細が記載されている。これらの詳細は、非限定的な例の目的で提供されており、本発明は、これらの具体的な詳細の一部又は全てがなくとも、特許請求の範囲にしたがって実施することができる。明確にするために、本発明に関連する技術分野において知られている技術材料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように、詳細に説明されていない。
【0033】
組成物
広い一態様において、本開示は、粘膜への塗布直後に、投与カンナビノイドの生物学的利用能が増強するカンナビノイド組成物に関する。本明細書中で用いられる用語「組成物」は、水性組成物を含む。組成物は、液体の形態であってもよい。用語「粘膜」は、体内の種々の腔の内側を覆う粘膜細胞を指し、組成物が投与されて体循環中に吸収される。適切な例として、口腔粘膜、鼻粘膜、膣粘膜、眼球粘膜、及び直腸粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物は、口腔粘膜、鼻粘膜、又は双方に塗布される。「口腔粘膜」は、口腔の内側を覆う粘膜細胞を意味し、舌の下(すなわち舌下)の粘膜、並びに/又は頬及び歯茎の内側の頬粘膜が挙げられる。「鼻粘膜」は、鼻腔の内側を覆う粘膜細胞を意味する。「膣粘膜」は、膣の粘膜を意味する。「眼球粘膜」は、眼球腔の内側を覆う粘膜細胞を意味する。「直腸粘膜」は、直腸の内側を覆う内側粘膜細胞を意味する。
【0034】
先で述べられるように、本開示の組成物は、粘膜に塗布された場合、カンナビノイドの生物学的利用能の増強をもたらす。これは、組成物を、約室温での液体から、約体温に上昇すると直ぐにゲルに変わるのに有効な量で存在する粘性モディファイアと共にカンナビノイドを製剤化することによって達成される。本質的には、液体からゲル形態への組成物の移行は、粘膜との接触直後に、温度変化に起因して起こる。したがって、液体形態の組成物は、その塗布の前、そしてその塗布の間、粘性が比較的低いことによって、先行技術組成物の分配(dispensing)と関連する漏出問題を軽減する。本開示の組成物の、結果として生じるゲル形態は、その液体形態よりも粘性が比較的高い。その粘性の増大の結果、ゲル形態は、粘膜の表面上での組成物の滞留時間を増やす。経口吸収は、腸管吸収よりも速い。そして、粘膜の表面上での滞留時間が増えると、より大量のカンナビノイドが、この経路を介して吸収されることによって、投与カンナビノイドの生物学的利用能が増大し得る。最終結果は、粘膜表面上のゲル組成物のより長い滞留時間に起因する、体循環(すなわち血流)中へのカンナビノイドの経粘膜送達の増強である。
【0035】
したがって、本開示の一目的は、塗布後に粘膜上での滞留時間が増強する組成物を提供することである。本開示の別の目的は、全身系中への投与カンナビノイドの吸収速度が増強した組成物を提供することである。本開示の更なる目的は、全身系中に吸収される投与カンナビノイドの濃度がより高い組成物を提供することである。本開示の他の更なる目的は、対象において疾患又は症状を処置するための、投与カンナビノイドの治療的に有効な量の投与に適した組成物を提供することである。本開示の他の更なる目的は、対象において身体的且つ/又は感情的な満足感をもたらすための、投与カンナビノイドの有効な量の投与に適した組成物を提供することである。組成物は、投与装置における漏出を実質的に引き下げるか、又は予防するのを補助する流動学プロファイルを有することが望ましい。また、組成物は、最終生成物の質(例えば、生物学的利用能、有効期間、及び/又は相安定性)が安定していることが望ましい。
【0036】
本開示の文脈において、組成物は、「熱ゲル化」すると特徴付けられ、これは大まかには、組成物が、組成物が曝される温度に基づいて形態を、例えば液体から半固体ヒドロゲル又は固体ゲルに変えることができるという意味がある。例えば、本開示の組成物は、通常、約室温(約20℃から25℃であり得る)にて粘性がより低い液体であるが、体温(約37℃から40℃であり得る)に曝されると、粘性がより高いゲルに変わる。液体とゲル間の移行は、必ずしも体温にて起こる必要があるわけではないが、好ましくは、組成物は約30℃から約37℃の間隔において移行を受けるべきである点に留意すべきである。好ましい実施形態において、移行は、限界をはっきりさせた温度にて、又はかなり狭い温度間隔にて、十分に明瞭である。
【0037】
本開示の組成物は、凝集性の粘性ゲルを約体温にて形成し得るので、組成物は、塗布後のより長い期間、粘膜表面上に留まる。また、好ましい凝集性の粘性ゲルは、投与カンナビノイドの送達/生物学的利用能を増強させるように、より適切にその形状を保持し、且つ変形を阻止することができる。
【0038】
一態様において、粘膜の表面上での塗布直後の本開示の組成物は、液体からゲルに変換されることによって、吸収部位との密接な接触を、滞留時間を増やして実現するので、組成物中の塗布カンナビノイドの生物学的利用能が増強する。好ましくは、ゲル形態の組成物中の塗布カンナビノイドの生物学的利用能は、液体形態の組成物の塗布カンナビノイドの生物学的利用能よりも少なくとも約0.5、少なくとも約1.5、又は少なくとも約2倍大きい。本明細書中で用いられる用語「生物学的利用能」は、体循環(すなわち血流)中に吸収される投与量と比例する、その化学効力とは異なるカンナビノイドの所与の量の生理学的可用性を意味する。
【0039】
カンナビノイド
本開示の組成物は、少なくとも1つのカンナビノイドを含む。本明細書中で用いられる用語「カンナビノイド」は、一般に、カンナビノイド受容体に作用するあらゆる化合物を含むものと理解される。カンナビノイドは一般的に、レクリエーションの目的のために用いられて、身体的且つ/又は感情的な満足感を伴う生理学的作用をもたらす。また、カンナビノイドは、多種多様な疾患又は症状、例えば、疼痛、不安、炎症、自己免疫疾患、神経障害、精神障害、悪性腫瘍、代謝障害、栄養不足、感染症、消化管障害、又は心血管障害の処置及び/又は予防処置に有用であり得る。また、カンナビノイドは、例えば、虚血傷害後の神経学的損傷、例えば脳卒中及び創傷の制限における、又は神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びHIV認知症の処置における、神経保護物質としての用途を有してもよい。本開示の組成物に含まれるカンナビノイドとして、植物性カンナビノイド(すなわち、カンナビス及び一部の他の植物において見出される)及び合成カンナビノイド(すなわち、人工的に製造される)が挙げられる。
【0040】
適切な植物性カンナビノイドの例として、カンナビクロマノン(CBCN)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビシトラン(CBT)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロバリン(CBLV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオールモノメチルエーテル(CBDM)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオルコール(CBD-C1)、カンナビジホロール(CBDP)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビフラン(CBF)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノジバリン(CBVD)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールメチルエーテル(CBNM)、カンナビノールプロピルバリアント(CBNV)、カンナビノール-C2(CBN-C2)、カンナビノール-C4(CBN-C4)、カンナビオルコール(CBN-C1)、カンナビリプソール(CBR)、カンナビトリオール(CBO)、カンナビトリオールバリン(CBTV)、カンナビバリン(CBV)、デヒドロカンナビフラン(DCBF)、Δ7-シス-イソテトラヒドロカンナビバリン、テトラヒドロカンナビノール(THC)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール-C4、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸-C4(THCA-C4)、Δ9-テトラヒドロカンナビオノール酸(tetrahydrocannabionolic acid)B(THCA-B)、Δ9テトラヒドロカンナビオルコール(THC-C1)、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、エトキシ-カンナビトリオールバリン(CBTVE)、トリヒドロキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(triOH-THC)、10-エトキシ-9-ヒドロキシ-Δ6a-テトラヒドロカンナビノール、8,9-ジヒドロキシ-Δ6a-テトラヒドロカンナビノール、10-オキソ-Δ6a-テトラヒドロカンナビオノール(OTHC)、3,4,5,6-テトラヒドロ-7-ヒドロキシ-α-α-2-トリメチル-9-n-プロピル-2、6-メタノ-2H-1-ベンゾオキソシン-5-メタノール(OH-イソ-HHCV)、Δ6a,10a-テトラヒドロカンナビノール(Δ6a,10a-THC)、Δ8テトラヒドロカンナビバリン(Δ8-THCV)、Δ9-テトラヒドロカンナビホロール(Δ9-THCP)、Δ9-テトラヒドロカンナブトール(Δ9-THCB)、それらのあらゆる誘導体、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。適切なカンナビノイドの更なる例が、少なくとも国際公開第2017/190249号パンフレット及び米国特許出願公開第2014/0271940号明細書(それらの全体が参照によって組み込まれる)において考察されている。
【0041】
適切な合成カンナビノイドの例として、ナフトイルインドール、ナフチルメチルインドール、ナフトイルピロール、ナフチルメチリンデン、フェニルアセチルインドール、シクロヘキシルフェノール、テトラメチルシクロプロピルインドール、アダマントイルインドール、インダゾールカルボキサミド、キノリニルエステル、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本開示の組成物中のカンナビノイドは、酸形態又は非酸形態であり得、非酸形態は、酸形態を脱炭酸することによって生成され得るため、脱炭酸形態とも呼ばれる。好ましくは、具体的なカンナビノイドに言及する場合、当該カンナビノイドは脱炭酸形態であることが理解されよう。
【0043】
本開示の組成物中のカンナビノイドは、単一のカンナビノイドであっても、2つ以上のカンナビノイドの組合せであってもよい。非限定的な例において、本開示の組成物中のカンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、又はそれらの混合物である。
【0044】
カンナビジオール(CBD)は、以下の化合物の1つ以上を意味する:Δ2-カンナビジオール、Δ5-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-5-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);Δ4-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-4-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);Δ3-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);Δ3,7-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチレンシクロヘキシ-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);Δ2-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);Δ1-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);及び(7)Δ6-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル-6-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)。好ましい実施形態において、そして特に明記しない限り、CBDはΔ2-カンナビジオールを意味する。
【0045】
テトラヒドロカンナビノール(THC)は、以下の化合物の1つ以上を意味する:Δ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)、Δ9-cis-テトラヒドロカンナビノール(cis-THC)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(9-THC)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸A(THCA-A)。好ましい実施形態において、そして特に明記しない限り、THCは、以下の化合物の1つ以上を意味する:Δ9-テトラヒドロカンナビノール及びΔ8-テトラヒドロカンナビノール。
【0046】
当該技術において知られているように、種々のカンナビノイドを併用して、ユーザにおいて所望の効果を達成することができる。本開示に用いることができるカンナビノイドの適切な混合物として、テトラヒドロカンナビノール(THC)及びカンナビジオール(CBD)の混合物が挙げられるが、これに限定されない。カンナビノイドのある特定の比率が、身体的且つ/若しくは感情的な満足感をもたらすのに有用であり得、且つ/又は特定の疾患若しくは症状の処置若しくは管理に有用であり得る。
【0047】
一部の実施形態において、THCの、CBDに対する(w/w)比率は、約1:1000から約1000:1である。好ましくは、組成物中のTHCの、CBDに対する(w/w)比率は、約1:1000、約1:900、約1:800、約1:700、約1:600、約1:500、約1:400、約1:300、約1:250、約1:200、約1:150、約1:100、約1:90、約1:80、約1:70、約1:60、約1:50、約1:45、約1:40、約1:35、約1:30、約1:29、約1:28、約1:27、約1:26、約1:25、約1:24、約1:23、約1:22、約1:21、約1:20、約1:19、約1:18、約1:17、約1:16、約1:15、約1:14、約1:13、約1:12、約1:11、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.9、約1:2.8、約1:2.7、約1:2.6、約1:2.5、約1:2.4、約1:2.3、約1:2.2、約1:2.1、約1:2、約1:1.9、約1:1.8、約1:1.7、約1:1.6、約1:1.5、約1:1.4、約1:1.3、約1:1.2、約1:1.1、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1、約1.9:1、約2:1、約2.1:1、約2.2:1、約2.3:1、約2.4:1、約2.5:1、約2.6:1、約2.7:1、約2.8:1、約2.9:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、約20:1、約21:1、約22:1、約23:1、約24:1、約25:1、約26:1、約27:1、約28:1、約29:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約400:1、約500:1、約600:1、約700:1、約800:1、約900:1であり得る。
【0048】
上記したように、種々のカンナビノイド及びそれらの組合せが、本開示の組成物中に、ユーザにおける所望の作用、例えば、精神活性作用、生理学的作用、又は症状の処置を達成するのに十分な様々な量で組み込まれてよい。本開示の組成物は、ユーザにおいて、精神活性作用、生理学的作用、又はそれらの組合せを達成し得る。「精神活性作用」は、神経系の正常な機能の変化に由来する対象の気分、知覚、意識、認識、又は挙動に及ぼす実質的な影響を意味する。「生理学的作用」は、身体的且つ/又は感情的な満足感を伴う作用を意味する。「症状の処置」は、治療効果を媒介するのに十分な量にて粘膜を横断するカンナビノイドの吸収による、疾患又は症状の処置又は緩和を意味する。
【0049】
本開示の組成物は、少なくとも1つのカンナビノイドを、約0.001mg/mLから約100mg/mL(その間のあらゆる量又はその中のあらゆる範囲を含む)の濃度で含んでもよい;非限定的な例において、組成物は、少なくとも1つのカンナビノイドを、約0.002mg/mLから約100mg/mL、約0.1mg/mLから約75mg/mL、又は約0.1mg/mLから約50mg/mL(その間のあらゆる量又はその中のあらゆる範囲を含む)含んでもよい。本開示の組成物中にそのような量にて提供されるカンナビノイドは、好ましくは有害な副作用なく、粘膜を貫通して体循環中に入るのに特に有効であり得る。
【0050】
本組成物に用いられるカンナビノイドは、適切なあらゆる源材料から得られてよく、カンナビス又はアサ植物材料(例えば、花、種子、トリコーム、及びキーフ)が挙げられるが、これらに限定されない。カンナビス又はアサ植物材料は、粉砕された形態で提供されてもよいし、カンナビス又はアサ植物材料から得られるカンナビス抽出物(例えば、樹脂、ワックス、及び濃縮物)の形態であってもよい。本明細書中で用いられる「カンナビス抽出物」は、当該技術において知られているあらゆる手順にしたがってカンナビス植物材料から得られる抽出物を指す;そのような抽出物は、カンナビノイドを、実質的に純粋であるか、又は単離された形態で与える。例えば、カンナビス抽出物は、粗抽出物を提供するCO2抽出(亜臨界条件下又は超臨界条件下)の前に、又は後に、酸形態のカンナビノイドを中性形態に変換する、例えば熱脱カルボキシル反応を用いる、植物材料からの抽出工程を含むプロセスによって得られてもよい。続いて、粗抽出物は、「脱ろう」、すなわち、脂質及びワックスを除去するためにエタノールで抽出されてもよく、例えば、米国特許第7,700,368号明細書、米国特許出願公開第2004/0049059号明細書、及び米国特許出願公開第2008/0167483号明細書(これらは参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。場合によっては、カンナビス抽出物を得る方法はさらに、精製工程、例えば、1つ以上のカンナビノイドをさらに精製するか、単離するか、又は結晶化させる(本明細書中で「蒸留液」と称する)蒸留工程を含んでもよい;米国特許出願公開第2016/0346339号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)は、カンナビノイドをカンナビス植物材料から、蒸留液を得るための、溶媒抽出に続く濾過、及び蒸留器での溶媒のエバポレーションを用いて抽出するプロセスを記載している。蒸留液は、1つ以上のテルペンでさらにカットされてもよい。蒸留液はさらに、「単離物」を得るために、例えば、クロマトグラフィ、及び当該技術において知られている他の分離方法を用いて精製されてもよい。
【0051】
一部の実施形態において、純粋の、又は単離されたカンナビノイド、例えば、カンナビス抽出物中に提供されるカンナビノイドは、水、脂質、炭化水素(例えばブタン)、エタノール、アセトン、イソプロパノール、又はそれらの混合物と組み合わされてもよい。
【0052】
本発明の組成物に用いられるカンナビノイドは、純度が>75%(粗抽出物の場合)、又は純度が>80%(蒸留液の場合)、又は純度が>95%(単離物の場合)である、単離されたカンナビノイド、例えばカンナビス抽出物であってもよい。例えば、そして限定を望むものではないが、カンナビノイドは、純度が>75%、好ましくは>80%、好ましくは>90%、好ましくは>95%、好ましくは>98%、好ましくは>98%、好ましくは>99%、又は好ましくは>99.5%である。とりわけ、カンナビノイドは、組成物中での十分な溶解性を可能にするほど純度が高い(すなわち、天然の源から、又は合成手段を介して得ることができる、Pharmacopoeia Grade物質)ことが好ましい。カンナビノイドが溶液中に留まって、経時的に析出しないような溶解性が重要である。
【0053】
本開示の組成物中の少なくとも1つのカンナビノイドは、カンナビノイド構成要素として提供され、これは、少なくとも1つのカンナビノイド、又は少なくとも1つのカンナビノイド及びキャリアオイルの混合物を含んでもよい。キャリアオイルは、トリグリセリド油、例えば「中鎖トリグリセリド」(MCT)油、又は他の適切なあらゆるキャリアオイル若しくは溶媒であってよい。カンナビノイドに適したキャリアオイル又は溶媒の非限定的な例として、以下が挙げられる:ルリジサ油、ココナッツ油、綿実油、大豆油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、コーン油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、アーモンド油、ゴマ油、菜種油、ペパーミント油、けし油、キャノーラ油、パーム核油、水添大豆油、水添植物油、飽和脂肪酸のグリセリルエステル、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、グリセリル、モノリノレアート、パルミチン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、リシノレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸ポリグリセリル-4、テトラリノール酸ポリグリセリル-10、ベヘン酸、中鎖トリグリセリド(例えば、カプリル酸グリセリド/カプリン酸グリセリド)、エタノール、アセトン、イソプロパノール、炭化水素、及びこれらのあらゆる組合せ。少なくとも1つのカンナビノイドは、組成物中でのカンナビノイドの所望の最終濃度を達成するのに十分な量で、カンナビノイド構成要素中に提供される。
【0054】
カンナビノイドエマルジョン
本開示の実施形態において、カンナビノイドを含む組成物は、エマルジョンとして製剤化されてもよい。当該技術において知られているように、エマルジョンは、2つの液体の混合物であり、一方が、他方(連続相)に分配された微細な液滴(分散相)として存在する;懸濁される液滴は、一層によって囲まれても多層によって囲まれてもよい。液滴は、非晶質、液晶、又はそれらのあらゆる混合物であってよい。マイクロカプセル化系として、エマルジョン、ナノエマルジョン、ミセル、固体脂質ナノ粒子、ナノ構造脂質キャリア、リポソーム、ナノリポソーム、ニオソーム、ポリマー粒子、又はヒドロゲル粒子が挙げられ得る。
【0055】
マイクロカプセル化技術として、本明細書中に記載される乳化及びナノ乳化技術、混合、均質化、注入、噴霧乾燥、噴霧冷却、噴霧チリング、凍結乾燥、気中懸濁被覆、流動床押出、遠心押出、コアセルベーション、回転懸濁分離、共結晶化、リポソーム封入、界面重合、分子包接、マイクロ流動化、超音波処理、物理吸着、複合体形成、ナノサイズ自己アセンブリ、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられ得る。マイクロカプセル化プロセスは、機械力の作用によって補助又は促進されてもよい;そのような機械力として、熱(例えば、マイクロ波照射による)、高い剪断力/圧力(例えば、超音波キャビテーション、ホモジェナイゼーション)、又は混合(例えば、バッチリアクタ、連続撹拌タンクリアクタ、及びプラグフローリアクタが挙げられ得るがこれらに限定されない、理想的な化学リアクタを用いる)の作用が挙げられ得るが、これに限定されない。
【0056】
一例において、カンナビノイドは、乳化剤の存在下で、水不溶性油(すなわち、キャリアオイル、例えばMCT)中に溶解され得るので、混合物は、油/カンナビノイド液滴を含む分散相を有する水中油エマルジョンとして製剤化され得、これは、ミクロンサイズ又はナノメートルサイズの粒度分布を有し得る。カンナビノイドの生物学的利用能は、表面積を増大させる液滴粒度への引下げによって向上し得ることが理解される。生物学的利用能の向上は、カンナビノイドの吸収を増強させると予想される。したがって、本開示のカンナビノイドは、エマルジョン(すなわち、流体力学的直径>200nm)又はナノエマルジョン(すなわち、流体力学的直径<200nm)でマイクロカプセル化されてもよい。
【0057】
好ましくは、本開示の組成物は、水中油エマルジョンを含み、平均粒度が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、好ましくは<75nm、好ましくは<70nm、好ましくは<60nm、又は好ましくは<50nmである油滴(少なくとも1つのカンナビノイドを含む)を含む分散相を有する。水中油(O/W)エマルジョンは、有機材料を含む分散相、及び水又は水溶液である連続相を有する。これは、経粘膜送達のための標的粘膜との接触を最大にする。
【0058】
表現「平均粒度」は、分散相の全ての粒子(すなわち液滴)の平均粒度を意味する。一部の実施形態において、平均粒度は、D50、すなわち、全容積が100%である場合に粒度分布曲線上の50%の点での粒径を指す。エマルジョンは、油滴が、先に規定された平均粒度範囲を、生成後の少なくとも最初の1週間、好ましくは少なくとも最初の2週間、好ましくは少なくとも最初の3週間、又は好ましくは少なくとも最初の4週間、最大24ヵ月まで有するように安定することが好ましい。
【0059】
カンナビノイドを含有するO/Wエマルジョンから形成される小さな油滴粒度を維持することが特に難しいことに留意することが重要である。理論に拘束されることを望むものではないが、これは主に、オストワルド熟成と呼ばれる作用に起因する。オストワルド熟成は、多くの場合、溶液中のより小さな油粒子が自発的に溶解して、より大きな油粒子上に堆積して、より熱力学的に安定した状態に達し、ここでは表面積対容積比が最小にされる、水中油エマルジョンにおいて見出される現象である。揮発性油の場合のオストワルド熟成に加えて、油滴衝突及び凝集による不安定化の組合せは、油相を最終的に1つの大きな液滴にして、表面エネルギーを引き下げ、且つ総表面積を最小にする虞がある。液滴が経時的に合体するにつれて、エマルジョンは不安定になり、そして最終的に2つの別個の相になる。一実施形態において、出願人は、油相液滴の平均粒度の範囲を、粘性モディファイア(以下で考察する)の組込みによって、本明細書中で先に開示される範囲に制御することによって、この製剤課題を解決した。
【0060】
別の態様において、組成物の粒度分布を制御して、使用中の組成物の放出されるスプレーパターンを最小にすることが所望される。液滴の粒度分布における変動が大きいほど、スプレー作用によってカバーされる領域がかなり大きくなることが見出されている。これは望ましくない。なぜなら、経粘膜投与、好ましくは鼻腔内投与及び/又は口腔粘膜投与が、スプレーされる組成物の標的送達に依存するからである。
【0061】
したがって、本開示の組成物は、カンナビノイドを含む水中油エマルジョンを含み、エマルジョンは、D90が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、又は好ましくは<50nmである油滴を含むことが好ましい。本明細書中で用いられる用語「D90」は、分散相の粒子の流体力学的直径と定義される粒度値を意味し、90%での累積サイズ分布に相当し、これは、サンプルの90%がそれ未満である粒子のサイズを表す。例えば、<200nmのD90は、粒子の総量の90%が<200nmの粒度を有することを意味する。
【0062】
別の実施形態において、本開示の組成物は、カンナビノイドを含む水中油エマルジョンを含み、エマルジョンは、D50が<200nm、好ましくは<150nm、好ましくは<100nm、又は好ましくは<50nmである油滴を含む。本明細書中で用いられる用語、<200nmの「D50」は、粒子の総量の50%が、<200nmの、分散相の粒子の流体力学的直径として定義される粒度を有することを意味する。
【0063】
粒度測定は、動的光散乱法(DLS)、例えば、以下に制限されないが、Zetasizer Nano(Malvern Panalytical)を用いる系を用いて実行することができる。動的光散乱(「PCS-光子相関分光法」としても知られている)は、Brownianモーションを測定して、これを粒子のサイズに関連付ける。これは、粒子をレーザーで照射して、散乱光の強度変動を分析することによって行われる。方法の詳細は、米国特許出願公開第2013/0344120号明細書に開示されており、この出願はその全体が本明細書に組み込まれる。Zetasizer Nano Systemは、変動の強度の速度を測定してから、これを用いて、粒子のサイズを、数学的アルゴリズムを用いて算出する。
【0064】
「粒度分布」又は「PSD」は、粒子のどのサイズ(粒度)が、測定されることとなるサンプル粒子群において何割(粒子の総量が100%である、パーセンテージとしての相対粒子量)存在するかを示す指数(表現の手段)である。容積、面積、長さ、及び量が、粒子量についての基準(寸法)として用いられる。しかしながら、一般に、容積基準が多くの場合用いられる。PSDは、通常、試験されるサンプル中に存在するほぼ全てのサイズを包含するサイズ範囲のリストにわたって判定される。
【0065】
ピーク統計は、以下に与えられる表現を用いて算出される:Yiは、ithY軸クラス/ビンのY値であり、Xiは、X軸クラス/ビンの中央のX軸値である。Y軸はここで強度(%)である一方、X軸は直径(nm)である。面積は、分布の総面積に対する、各ピーク下面積と定義される。平均粒度は、Y軸パラメータによって重み付けされた、ピークの平均値として定義される。
面積%=ΣiYi
平均=pS(i)I(i)/面積
ピークの多分散又は幅=平方根((ΣXi2Yi/面積%)-平均2)
【0066】
多分散指数(「PDI」)は、相関データに適合した単純な2パラメータから算出される数字である(キュムラント分析)。PDIは無次元であり、0.05未満の値が、高度に単分散な標準で見られるようにスケール化される。0.7を超える値は、サンプルが非常に広いサイズ分布を有することを示しており、DLS技術におそらく適していない。種々のサイズ分布アルゴリズムが、これらの2つの極値間に入るデータについて機能する。これらのパラメータについての計算は、ISO規格文書13321:1996 E及びISO 22412:2008に定義されている。
【0067】
水中油エマルジョン中の油相の量は、(v/v)ベースで約1から約50%、好ましくは約5%から約50%(v/v)、好ましくは約10%から約20%(v/v)であり得る。
【0068】
生成された組成物は、少なくとも1ヵ月、好ましくは少なくとも4ヵ月、好ましくは少なくとも6ヵ月、好ましくは少なくとも12ヵ月、好ましくは少なくとも1ヵ月から24ヵ月以上、又は好ましくは少なくとも24ヵ月の有効期間及び/又は相安定性を有することが所望される。「相安定性」は、カンナビノイド含有組成物から形成されるエマルジョンが、指定された時間量の間、最大40~50℃の貯蔵条件下で相分離に対して安定していることを意味する。
【0069】
粘性モディファイア
本開示の組成物は、例えば、組成物の所望の熱ゲル化、所望の流動学プロファイル、使用直後の所望の標的スプレーパターン、許容可能な有効期間安定性、許容可能な相安定性といったいくつかの利益を実現し、且つ/又は組成物における油滴衝突及び凝集の加速を防止するための粘性モディファイアを含む。特に、本開示は、約体温での比較的高い粘性、及び約室温での比較的低い粘性によって特徴付けられる流動学プロファイルを有するカンナビノイド組成物に関する。
【0070】
用語「粘性モディファイア」は、液体組成物中での溶解又は懸濁により、組成物に、哺乳動物の粘膜への投与後に物性の変化を受けさせる剤(単一の剤又は剤の組合せ)を指す。塗布のそのような部位として、種々の投与経路、例えば、経口、膣、直腸、眼、及び経鼻経路が挙げられ得る。組成物の物性の変化として:半固体若しくは固体のゲル形態の形成及び/又は組成物の粘性の増大をもたらすような液体組成物のゲル化が挙げられ得る。物性のこれらの変化は、組成物、好ましくはカンナビノイドの、哺乳動物の粘膜への接触/送達を増強又は増大させる所望の効果を有する。
【0071】
しかしながら、組成物の粘性の変化は、組成物の物性の変化が適切な時点にて出現するように注意深く制御されることが有利である。例えば、組成物が、粘膜への塗布の前にこの物理的変化を受けることは所望されない。これは、製剤の粘性があり過ぎれば、スプレー液滴形成が妨げられる虞があり、そしてスプレー弁が詰まる虞があるからである。これ以外にも、製剤の粘性が十分でないならば、過剰な噴霧化が起こる虞があり、そして断面積のプルーム(plume)が形成される虞がある。結果として生じるスプレーはもはや、製剤プーリングに起因して粘膜に標的化されなくて、嚥下され得ず(経鼻投与及び/又は経口投与について)、又は鼻腔に入り得ない(経鼻投与について)。
【0072】
一部の実施形態において、あらゆる粘性モディファイア及び/又はあらゆるレベルの粘性モディファイアを組成物に単純に加えるだけでは、組成物の経粘膜送達を増強させるのと同時に、先で考察された問題及び/又は漏出問題をなお回避するのに必要とされる許容可能な粘性範囲は、確実にされ得ない。好ましくは、粘性モディファイアは、熱ゲル化特性、より好ましくは可逆的な熱ゲル化特性を有する。
【0073】
一部の実施形態において、粘性モディファイアは、組成物を、約室温にて液体(粘性がより低い)から、約体温に曝されると半固体又は固体のゲル(粘性がより高い)に変えるのに有効な量で存在する。「約室温」は、約20℃から25℃を意味する;「約体温」は、約37℃から40℃を意味する。一部の実施形態において、粘性モディファイアは、約体温に曝されると、水性溶媒中に分散した本明細書中に記載される構成要素を含有する組成物がヒドロゲルを形成するように、組成物の粘性を増大させるように機能する。液体とゲル間の移行は、組成物が曝される温度にてなされる必要は必ずしもないが、好ましくは、組成物は、約30℃から約37℃の間隔において移行を経験するものとする。好ましい実施形態において、移行は、定義された温度にて、又はかなり狭い温度間隔にて、十分に明瞭である。
【0074】
一部の実施形態において、粘性モディファイアは、組成物を、6未満の約酸性pHにて液体(粘性がより低い)から、約生理学的pH(およそpH7)に曝されると半固体又は固体のゲル(粘性がより高い)に変えるのに有効な量で存在する。言い換えると、粘性モディファイアは、ユーザの粘膜の表面と接触すると直ぐに、組成物の粘性を増大させるように機能する。例えば、Carbopol(商標)971Pは、メーカーの技術データシート(TD-730,Ed.、2010年8月13日、Lubrizol)に記載されるように、4から7へのpHの変化直後に、水性組成物の粘性を増大させる。
【0075】
一部の実施形態において、組成物は、約室温にて、液体のように挙動して、易流動状態にあるような粘性を有する。例えば、組成物は、初期粘性(例えば、約室温での、又は非生理学的pH、例えば貯蔵pHでの)が約2000mPas未満、好ましくは1000mPas未満、好ましくは約750mPas未満、好ましくは500mPas未満、又は好ましくは200mPas未満であってよい。一部の実施形態において、組成物は、粘膜の表面に接触すると直ぐに(例えば、約体温への曝露の直後に)、組成物が半固体又は固体のゲルのように挙動するような塗布粘性を有する。例えば、組成物は、少なくとも約5000mPas、例えば、少なくとも約7,500mPas、少なくとも約10,000mPas、少なくとも約15,000mPas、少なくとも約20,000mPas、少なくとも約25,000mPas、少なくとも約30,000mPas、少なくとも約40,000mPas、少なくとも約50,000mPas、又はこれを超える塗布粘性を有してもよい。本明細書中で用いられる表現「初期粘性」は、室温にて、又は非生理学的pH(例えば貯蔵pH)にて測定される組成物の粘性を指す。本明細書中で用いられる表現「塗布粘性」は、粘膜表面上に塗布された(例えばスプレーされた)後の組成物の粘性を指す。典型的には、「塗布粘性」は、体温及び/又はpHの変化への曝露に起因して組成物がゲル形態に移行した後に測定される。本開示の組成物の粘性は、制御型剪断速度レオメータを用いて測定することができ、例えば、1s-1の剪断速度でのプレート-プレートジオメトリによるレオメータでの測定がある。
【0076】
一態様において、粘性モディファイアは、ポリ(プロピレンオキシド)/ポリ(エチレンオキシド)コポリマーであってもよい。好ましくは、コポリマーは、分子量が約7,000g/molから約18,000g/molであり、そしてエチレンオキシド含有量が、当該コポリマーの約30%から約90重量%である。好ましい一粘性モディファイアとして、ポリオキシエチレンブロック、すなわち、繰返しエチレンオキシド部分、例えば、ポリ(プロピレンオキシド)/ポリ(エチレンオキシド)コポリマーで構成されるブロックを含有するブロックコポリマーがある。このタイプの適切な粘性モディファイアとして、ポロキソマー、又は複数のポロキソマーの混合物がある。Handbook of Pharmaceutical Excipients,2nd Edition Pharmaceutical Press,London,1994,Eds,Wade and Weller参照。
【0077】
本開示の実施形態において、ブロックコポリマーは:ポロキソマー108、ポロキソマー124、ポロキソマー182、ポロキソマー183、ポロキソマー184、ポロキソマー185、ポロキソマー188、ポロキソマー212、ポロキソマー217、ポロキソマー237、ポロキソマー217、ポロキソマー288、ポロキソマー331、ポロキソマー335、ポロキソマー338、ポロキソマー407、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポロキソマーであってもよい。一実施形態において、ポロキソマーは、ポロキソマーの混合物、例えば、ポロキソマー407及びポロキソマー188を含む。非限定的な例において、ポロキソマーの混合物は、ポロキソマー188及びポロキソマー407を含む。各ポロキソマーが、等しい量で存在してもよい。これ以外にも、各ポロキソマーが、異なる量で存在してもよい。例えば、異なるポロキソマーの重量比は、約1:1から約1:10の範囲内に、又はその間のあらゆる重量比であってもよい;別の例において、異なるポロキソマーの重量比は、少なくとも約1:6であってもよい。特定の、非限定的な例において、粘性モディファイアは、ポロキソマー188及びポロキソマー407の、重量比が0.1:5.3又はそれよりも高い混合物であってもよい;これ以外にも、ポロキソマー188及びポロキソマー407の混合物は、ポロキソマー407を少なくとも85%含む。
【0078】
一態様において、粘性モディファイアは、組成物を、約室温での液体から、約体温への曝露直後に半固体又は固体のゲルに変えるのに有効な量で存在してもよい。この文脈において、用語「有効な」は、組成物の熱ゲル化に十分な粘性モディファイアの量を意味する。粘性モディファイアの有効な量は、大まかに、特定の組成、用いられるモディファイアのタイプ等の要因により変動することとなる。好ましくは、粘性モディファイアは、組成物の重量で約0.1重量%から約10重量%、約0.3重量%から約8重量%、約0.5重量%から約7重量%、又は約1重量%から約7重量%の量で存在する。
【0079】
本開示の実施形態において、カンナビノイド構成要素及び粘性モディファイアは、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの比率(w/w)が0.9~1.1:1~9.5の範囲内で、又はこの範囲内のあらゆる比率で存在する。必要とされる粘性モディファイアの量(重量%)は、組成物中のカンナビノイド構成要素の量(重量%)に基づいて変動してもよい。より詳細には、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイアの(w/w)比率は、カンナビノイド構成要素が約1重量%である場合、0.9~1.1:7.9~9.5、又はカンナビノイド構成要素が約3重量%である場合、0.9~1.1:3.2~3.5、又はカンナビノイド構成要素が約5重量%である場合、0.9~1.1:1~1.2まで変動してよい。
【0080】
別の態様において、本開示の組成物は、哺乳動物の粘膜との接触直後に、粘性が増大する。好ましくは、粘性は、(投与前の粘性と比較して)少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、又は好ましくは100%増大する。
【0081】
粘膜との接触直後の組成物の粘性の変化は、シミュレートした生理学的条件下で組成物の粘性を測定することによって判定されてもよい。例えば、所与の組成物の粘性は、口腔内のシミュレートされた条件で、例えば、歯茎又は内頬の温度で測定されてもよい。
【0082】
先に記載される物理的変化に起因して、本開示の組成物は、粘膜表面上での滞留時間がより長いことによって、粘膜表面上での組成物、好ましくはカンナビノイドの局所接触が増大する。一態様において、本開示の組成物は、鼻粘膜及び/又は口腔粘膜上での滞留時間を増やした。好ましくは、組成物は、粘膜の表面上への塗布後、約20秒超、好ましくは約30秒超、好ましくは約40秒超、好ましくは約50秒超、好ましくは約1分超、好ましくは約2分超、好ましくは約5分超、好ましくは約10分超、好ましくは約20分超の粘膜表面滞留時間を示す。舌下送達又は頬側送達の場合、これは、投与されたカンナビノイドが、対象によって嚥下されることとなり、且つより多くのカンナビノイドが、経粘膜的に吸収されることとなる見込みが引き下げられることを意味する。
【0083】
補助構成要素
本開示の組成物は、場合によっては、いくつかの他の補助構成要素、例えば、香味料、透過エンハンサ、防腐剤、抗酸化剤、界面活性剤、増量剤、着色剤、pHモディファイア、甘味料、粘膜付着剤、又は味マスキング剤を含んでもよい。所与の組成物中の各構成要素の量は、所望の有効期間を有する安定した生成物(剤型)を得るように製剤毎に最適化されることとなる。
【0084】
補助構成要素は、複数の機能を実行する場合があるので、特定の塗布に応じて様々な用途があると特徴付けられることが認識される。特定の製剤の文脈における構成要素の使用が、構成要素の機能を決定し得る一方、特定のいずれかの構成要素の、以下に示されるいずれか1つ又はそれ以上のカテゴリーへの包含は、当該構成要素の機能を制限することにはならない。
【0085】
香味料
本開示の組成物は、特に経口投与が意図されるならば、不愉快な味がないことが所望される。本明細書中で用いられる用語「味」は、口腔内の味覚受容体との組成物の相互作用から生じる知覚を意味する。本開示の文脈において、不愉快な味は、知覚される味、例えば、以下に限定されないが、不快な、刺激が強い、苦い、又は合成の味であり得る。例えば、組成物は、カンナビノイドの形態を含有する水性製剤に共通する量の乳化剤を含有してよく、これは、知覚される合成の、又は苦い味をもたらす。
【0086】
したがって、組成物は、不愉快な味をマスクするのに有効な量の香味料を含有してもよい。本明細書中の組成物は、香味料を、組成物の重量で約0.01重量%から約5重量%、好ましくは約0.01重量%から約4重量%、好ましくは約0.1重量%から約3重量%、好ましくは約0.5重量%から約2重量%(又はそれらの組合せ)含んでもよい。当該技術において知られている適切なあらゆる香味料が、本組成物に用いられてもよい。
【0087】
通常、適切な香味料(本明細書中で「香料成分」とも称される)は、酸化還元反応の傾向があまりない構造的特徴及び官能基を有する化学物質である。香味料は、飽和した香料成分の誘導体を含むか、又は安定した芳香環若しくはエステル基を含有する。一部の実施形態において、香味料は、天然成分又は食品の抽出物であってもよいし、テルペンであってもよい。
【0088】
非限定的な例において、組成物は、シナモン、キュウリ、ミント、オレンジ、ライム、柑橘類、クッキー生地、チョコレート、バニラ、ジャスミン、ライチ、アーモンド、バナナ、ブドウ、西洋ナシ、パイナップル、マツ、オーク、リンゴ、カボチャ、グレープフルーツ、スイカ、コットンシュガー、ドリアン、リュウガン、タロイモ、サポテ、タフィーナット、カラメル、ハス、マンゴー、マンゴスチン、ココナッツ、コーヒー、ストロベリー、パッションフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、キーウィ、クルミ、ココア、チェリモヤ、ギュウシンリ、パパイア、イチジク、プラム、ネクタリン、モモ、グァバ、蜜、パラミツ、キンカン、ビワ、パーム、ザボン、柿、マルメロ、桂皮、セージ、マヨラナ、レモン、オレンジ、タマリンド、及びそれらの組合せの抽出物からなる群から選択される香味料を含んでもよい。
【0089】
適切な香味料の他の例として、ミント油、冬緑油、チョウジ蕾油、パセリ油、プロペニルグアエトール、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、p-tert-ブチルフェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、酢酸1-メンチル、オキサノン、a-イリソン、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、オイカリプトール、チモール、ケイ皮アルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、a-テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオールネロール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、ベータ-ダマセノン、イオノン、ガンマ-デカラクトン、ガンマ-ノナラクトン、y-ウンデカラクトン、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
透過エンハンサ
膜透過性は、粘膜送達のための極限特徴である。粘膜の内側を覆う上皮は、カンナビノイドの透過、及びそれ故に吸収に対する非常に有力な障害である。透過エンハンサ(「貫通エンハンサ」、「吸収エンハンサ」、又は「透過性エンハンサ」と称されてもよい)は、粘膜の透過を促進するのに用いられてよい。組成物は、1つ以上の透過エンハンサを、約0.5重量%から約15重量%、好ましくは約1.0重量%から約10重量%、好ましくは約1重量%から約5重量%の量で含んでもよい。
【0091】
透過エンハンサの適切な例が:キレータ(例えば、EDTA、EGTA、クエン酸、サリチラート、コラーゲンのN-アシル誘導体、及びエナミン(3-ジケトンのN-アミノアシル誘導体))、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、及びポリオキシエチレン-20-セチルエーテル;並びに天然の界面活性剤、例えば胆汁酸塩(デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、及びタウロコール酸ナトリウム))、脂肪酸、並びにそれらの誘導体(例えば、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸、オレイン酸、レシチン、リン脂質>60%(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸)モノオレイン及びアシルカルニチン))、テルペン(例えば、I-メントール、β-カリオフィレン、リモネン、ミルセン、又はα-ピネン)、シクロデキストリン、アゾン、キトサン、及びリザルビン酸からなる群から選択される。透過エンハンサの他の適切な例が、少なくとも米国特許第6,328,992号明細書;及び国際公開第2003/101357号パンフレットに見出され得、これらは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。透過エンハンサの他の適切な例として、ヒアルロン酸(HA)(ヒアルロナン又はヒアルロナートとしても知られている)又は塩基が挙げられ得る。HAは、分子量が約5から20,000kDaの範囲内にあってよい。好ましくは、HAは、分子量が50kDaから2,000kDa(例えば、70kDaから1,500kDa、200kDaから1,500kDa、500kDaから1,500kDa、又は700kDaから1,500kDa)である。
【0092】
防腐剤
本開示の組成物は、1つ以上の防腐剤を含んでもよい。防腐剤として、微生物の増殖を予防するのに用いられる化合物が挙げられる。適切な防腐剤として、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、及びチメロサール、並びに当業者に知られている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、防腐剤を含有するならば、好ましくは約0.05重量%から約2重量%含む。
【0093】
抗酸化剤
本開示の組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含んでもよい。本明細書中で用いられる用語「抗酸化剤」は、酸化を阻害するので、酸化による調製物の悪化を防止するのに用いられる剤を意味することが意図される。抗酸化剤の適切な例として、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、次亜リン酸、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及びメタ重硫酸ナトリウム(sodium metabisulfate)、並びに当業者に知られている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な抗酸化剤の例として、ビタミンC、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE及びその誘導体、没食子酸プロピル、スルフィット誘導体、及び当業者に知られている他のものが挙げられる。組成物は、抗酸化剤を含有するならば、好ましくは約0.01重量%から約5重量%含む。
【0094】
界面活性剤
本開示の組成物は、カンナビノイドを乳化させるのを補助するために、少なくとも1つの界面活性剤を含んでもよい。
【0095】
界面活性剤の適切な例として、Tween(ポリソルベート)、例えば、Tween(商標)20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、Tween40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)、Tween60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート)、及びTween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、糖エステル、例えば、モノパルミチン酸スクロース、モノステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、ポリステアリン酸スクロース、キラヤサポニン(例えば、以下に限定されないが、Q-Naturale(登録商標))及びその構成要素、ソルビタンエステル(Spans)、例えば、Span(商標)20(ソルビタンモノラウラート)、Span40(ソルビタンモノパルミタート)、Span60(ソルビタンモノステアラート)、Span80(ソルビタンモノオレアート)、又はそれらのあらゆる混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
適切な界面活性剤の更なる例として、Capryol 90、Cremophor(商標)RH40、Gelucir(商標)44/14、Gelucire 50/13、Imwitor(商標)91、Imwitor 308、Imwitor 380、Imwitor 742、Imwitor 780K、Imwitor 928、Imwitor 988、Labrafil(商標)M 1944 CS、Labrafil M 2125 CS、Lauroglycol(商標)90、Tagat(商標)TO、又はそれらのあらゆる混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
適切な界面活性剤の更なる例として、PEG-2水添ヒマシ油、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンエステル、ステアリン酸グリセロール、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、PEG-2オレイルエーテル、PEG-2ステアリルエーテル、PEG-7水添ヒマシ油、PEG-2セチルエーテル、ステアリン酸PEG-4ソルビタン、イソステアリン酸PEG-2ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ホスファチジルコリン、モノラウリン酸ソルビタン、パーオレイン酸PEG-40ソルビタン、PEG-4ラウリルエーテル、ポリソルベート81、ヘキサオレイン酸PEG-40ソルビタン、パーイソステアリン酸PEG-40ソルビタン、PEG-10オリーブグリセリド、ヘキサオレイン酸PEGソルビトール、ポリソルベート65、メチルセルロース、アラビアゴム、Captex 300、PEG-7グリセリルココアート、ステアリン酸PEG-8、モノオレイン酸PEG-400、モノステアリン酸PEG-400、ステアリン酸糖エステル(S-1170、S-1570、S-1670)、イソステアリン酸PEG-15グリセリル、PEG-35アーモンド脂肪酸グリセリド、PEG-10オレイルエーテル、PEG-8イソオクチルフェニルエーテル、PEG-10ステアリルエーテル、PEG-35ヒマシ油、ノノキシノール9、PEG-10セチルエーテル、モノラウリン酸PEG-400、Q-Naturale 200(Quilaja抽出物)、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-12トリデシルエーテル、PEG-18トリデシルエーテル、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリン酸PEG-20グリセロール、オレイン酸糖エステル(OWA-1570)、PEG-20ステアリルエーテル、ポリソルベート40、パルミチン酸糖エステル(P-1570、P-1670)、ラウリン酸糖エステル(LWA-1570、L-1695)、ポリソルベート20、PEG-60水添ヒマシ油、コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール(TPGS)、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-50、Purity Gum(商標)Ultra、Purity Gum BE、又はそれらのあらゆる混合物が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な一例において、界面活性剤は、ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体、例えばPEG40水添ヒマシ油であってもよい。
【0098】
特定の実施形態において、界面活性剤が製剤中に含まれる場合、界面活性剤は、組成物の重量で、約0.01%から約15%、好ましくは1%から15%、好ましくは5%から15%、又は好ましくは10%から15%の量で含まれる。
【0099】
本開示の実施形態において、カンナビノイド構成要素及び少なくとも1つの界面活性剤は、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の比率(w/w)が0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内で、又はこの範囲内のあらゆる比率で存在する。必要とされる界面活性剤の量(重量%)は、組成物中の少なくともカンナビノイド構成要素(重量%)及び/又は粘性モディファイア(重量%)の量に基づいて変動してもよい。非限定的な例において、カンナビノイド構成要素:界面活性剤の(w/w)比率は、カンナビノイド構成要素が約1重量%である場合、0.9~1.1:1.4~1.9の範囲内であってよく、カンナビノイド構成要素が約3重量%である場合、0.9~1.1:1.8~2.2の範囲内であってよく、カンナビノイド構成要素が約5重量%である場合、0.9~1.1:1.9~2.2の範囲内であってよい。
【0100】
増量剤
本開示の組成物は、1つ以上の増量剤を含んでもよい。また、増量剤は、本開示の特定の実施形態にしたがって用いられてもよく、例として、微結晶セルロース、マンニトール、キシリトール、及びデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、増量剤はマンニトールである。増量剤が製剤中に含まれる特定の好ましい実施形態において、増量剤は、組成物の重量で、約0.001%から約10%、好ましくは約0.01%から約5%の量で含まれる。
【0101】
着色剤
本開示の組成物は、1つ以上の着色剤を含んでもよい。本明細書中で用いられる用語「着色剤」は、液体組成物を着色するのに用いられる化合物を意味することが意図される。着色剤は、顔料、染料、又は乳白剤の形態であってもよい。着色剤は、水溶液、好ましくは水溶液中1%着色剤の形態であってもよい。
【0102】
着色剤の適切な例として、FD&C Red No.3、FD&C Red No.20、FD&C Yellow No.6、FD&C Blue No.2、D&C Green No.5、D&C Orange No.5、D&C Red No.8、カラメル、及び鉄丹が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な着色剤として、二酸化チタン及び天然の着色剤、例えばブドウ抽出物、ビートレッド粉末、カルミン、ターメリック、パプリカ、及び当業者に知られている他のものが挙げられる。勿論、組成物について選択される構成要素が、化学的且つ物理的に互いに相溶性でなければならない。
【0103】
pHモディファイア
本開示の組成物は、安定性及び/又は溶解性を向上させるために、1つ以上のpH調整剤を含んでもよい。また、pHモディファイアは、カンナビノイド放出を制御し、且つ粘膜への組成物の生体接着を増強させることができると考えられる。好ましくは、組成物のpHは、約5から約9、好ましくは約5.5から約7.5、好ましくは約6.0から約7.0である。これ以外にも、pHは、6よりも大きくてよく、これ以外にも7よりも大きくてよく、代わりに8から10、又はそれらの組合せであってよい。
【0104】
組成物のpHは、薬学的に許容されるあらゆる手段を用いて変更されてもよい。pHモディファイアの適切な例として、有機酸又は有機塩基、好ましくは酒石酸、リン酸、塩酸、マレイン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、及び当業者に知られているようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
甘味料
本開示の組成物は、1つ以上の甘味剤(香味料とは異なる)を含んでもよい。組成物は、甘味料を含有するならば、好ましくは、約0.005%から約5%、これ以外にも、組成物の重量で約0.01%から約1%、これ以外にも、組成物の重量で約0.1%から約0.5%(又はこれ以外にもそれらの組合せ)含む。甘味料の適切な例として、スクラロース、スクロース、アスパルテーム、サッカリン、デキストロース、マンニトール、キシリトール、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
粘膜付着剤
本開示の組成物は、1つ以上の粘膜付着剤、例えば、天然ポリマー、半合成ポリマー、合成ポリマー、又はそれらの組合せを含んでもよい。適切な天然ポリマー及び半合成ポリマーとして、アミロペクチン、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、アガー、血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、オリゴ糖及び多糖、例えば、ピロリドン、デキストリン、セルロース及びセルロース化合物(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース)、デキストラン、タマリンドシードポリサッカライド、ジェラン、カラギーナンゴム、キサンタンゴム、アラビアゴム、グアーゴム、トラガカントゴム、ヒアルロン酸、ポリヒアルロン酸、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、ローカストビーンゴム、並びにプルランが挙げられ得るが、これらに限定されない。また、本明細書中に記載されるいずれの化合物も、その対応する塩、例えば、ヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、並びにカラギーナン及びその塩を含んでよいことに留意するべきである。適切な合成ポリマーとして、ポリカルボフィル、Noveon AA-1、Carbopol化合物、及びCarbomer化合物が挙げられる。
【0107】
上記の補助構成要素に加えて、本組成物は、当業者に知られている通常の、そして従来の補助構成要素を含んでもよい。勿論、組成物について選択される構成要素が、化学的且つ物理的に互いに相溶性でなければならない。
【0108】
カンナビノイド生成物
また、本開示は、対象の粘膜への投与用のカンナビノイド生成物に関し、当該生成物は、本開示に従うカンナビノイド組成物を含み、そして場合によっては、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0109】
本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本組成物を粘膜表面に、確立された政府基準にしたがって安全且つ有効に形成且つ/又は塗布するのに用いることができる適切なビヒクル又は成分を意味する。適切な薬学的に許容される賦形剤及びその配合は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(E.W.Martin,1975,Mack Publishing Co.)に記載されている。
【0110】
特に、適切な例として、液体キャリア、例えば、水、エタノール、生理食塩水、水性デキストロース、グリコール、及び油(石油、動物、植物、又は合成起源のものが挙げられる)、又はそれらの混合物が挙げられ得る。好ましくは、賦形剤は、その多くの利点のため、水、好ましくはUSP水である。例えば、水は、プロセシング助剤として有用であり、且つ鼻腔及び/又は口腔に無害である。水は、それ自体が成分として加えられてもよいし、他の一般的な原材料中のキャリアとして存在してもよい。本明細書中で用いられる水含有量は、別個に加えられるか、他の原材料用の溶媒又はキャリアとして加えられるかに拘わらず、熱ゲル化カンナビノイド組成物中に存在する水の総量を意味する。
【0111】
好ましくは、薬学的に許容される賦形剤は、約40重量%から約80重量%、好ましくは約50重量%から約80重量%のレベル、又はそれらの間のあらゆる量にて存在してもよい;例えば、薬学的に許容される賦形剤は、約50重量%、60重量%、70重量%、又は80重量%のレベルにて存在してもよい。一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、組成物の重量で、少なくとも50重量%のレベルにて存在してもよい;例えば、そして限定されることを望むものではないが、薬学的に許容される賦形剤は、約70重量%のレベルにて存在してもよい。
【0112】
本開示に用いられる組成物は、粘膜投与に適したあらゆる形態をとり得る。これらとして、蒸気スプレー、エーロゾル、エマルジョン、及び液体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本開示の組成物は、スプレーディスペンサを含む製品に含まれ得ることが特に好ましい。結果として、本開示の組成物は、例えば、例えばポンプ作用を介した、当該技術において知られているスプレー装置、又は加圧投与容器、例えばエーロゾルスプレー(例えば、Pfeiffer及びValoisから入手可能な圧縮空気ネブライザ、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、及び圧電ネブライザ)を用いて、鼻腔及び/又は口腔への送達用に製剤化され得ることが所望される。そのような装置は、当業者によく知られており、そして所望される場合には、組成物の測定用量、例えば、単回投与又は多重投与を提供することができる。
【0114】
好ましくは、組成物の製剤形態は、粘膜全体にわたる有効な経皮吸収のための粘膜送達に適したカンナビノイドを含む微細ミセル化ミストスプレーを提供するようなものである。理論によって拘束されることを望むものではないが、微細ミストは、最大表面カバー率、したがって経粘膜送達を介した、例えば鼻粘膜及び/又は口腔粘膜を介した最適の送達を確実にする。
【0115】
一実施形態において、生成物は、口腔スプレー形態、好ましくは舌下液体スプレー形態及び/又は頬側液体スプレー形態である。経口投与経路が魅力的である。なぜならこれは、初回通過代謝を回避し、作用及び使い易さを持続させる利点がある非侵襲性の投与経路であるからである。舌下粘膜及び頬側粘膜は、透過性がそこでより大きく、そしてカンナビノイド投与の経粘膜作用(すなわち全身作用)を実現させることが可能であるという事実により、好ましい。
【0116】
別の実施形態において、生成物は、鼻腔内スプレー形態、好ましくは鼻腔内液体スプレー形態である。また、鼻腔内投与経路が所望される。なぜなら、鼻粘膜はかなり多孔性であり、且つ薄い内皮基底膜であるからである。また、鼻粘膜は、血流が急速であり、高度に血管が新生される上皮層を有し、投与カンナビノイドの経細胞吸収が比較的速い。経口投与経路に類似して、鼻腔内投与経路は、初回通過作用を迂回して、プレシステミック代謝を回避し、且つ迅速に全身血中レベルを達成する利点を有する。
【0117】
典型的には、鼻腔内投与が意図される組成物は、水溶液中にあり、例えば鼻液体スプレー形態である。そのような製剤は、本開示に従う組成物を水中に、又は水中油エマルジョンとして溶解させて、水溶液を生成して、溶液を滅菌することによって、首尾良く調製することができる。鼻スプレーとして液体を分配するのに適した系の例が、少なくとも米国特許第4,511,069号明細書;米国特許第4,778,810号明細書;米国特許第6,080,762号明細書;米国特許第7,052,678号明細書;及び米国特許第8,277,781号明細書に開示されており、これらの特許はそれぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0118】
別の態様において、本開示はまた、動物、好ましくはコンパニオンアニマル(例えばペット)の生理学的状態及び/又は健康を向上させることに関する。ヒトと同様に、動物を、身体的且つ/又は感情的な満足感を持たせることできることが所望される。これ以外にも、動物はまた、深刻な影響をもたらす虞がある疾患又は症状、特に不安、疼痛、及び炎症を患っていてもよい。ほとんどのペットオーナーにとって、ペットがこれらの病徴を必要以上に患うのを見るのは困難な場合がある。したがって、生成物が動物の生理学的状態及び/又は健康を向上させる必要がある。一部の実施形態において、生成物は、動物において疾患又は症状を処置するのに有用であり得る。より詳細には、本開示は、動物の生理学的状態及び/又は健康を向上させるのに有用である、スプレーの形態の生成物に関する。
【0119】
本開示に従う生成物は、例えばHealth Canada Proposed Regulations for Additional Cannabis Products(2018年12月20日出版)(www.canada.ca/en/health-canada/services/drugs-medication/cannabis/resources/proposed-regulations-edible-cannabis-extracts-topicals.html)といった、種々の国々におけるカンナビス生成物への規則に準拠するレベルにてカンナビノイドを含むことが理解されよう。例えば、生成物がTHCを含む場合、生成物は、THC及びTHCAが挙げられる、約20mg以下、好ましくは約15mg以下、好ましくは約10mg以下、好ましくは約5mg以下の最大量のカンナビノイドを、パッケージ単位で含むことが好ましい。
【0120】
方法、使用、及びキット
本開示は、対象において所望の生理学的効果をもたらす方法に関する。好ましくは、所望の効果は、対象における身体的且つ/又は感情的な満足感と関連する。これ以外にも、本開示はまた、対象において疾患又は症状を処置する方法に関する。本開示に従う方法は、対象の粘膜、好ましくは鼻粘膜及び/又は口腔粘膜に、本開示に従う組成物の有効な量を投与することを含む。本方法の一実施形態において、投与工程の後に、カンナビノイド組成物は粘膜上でゲルを形成することによって、粘膜上でのゲルの滞留時間を増やす。先で考察されるように、この転換は、全身吸収のために粘膜上での投与カンナビノイドの生物学的利用能を増強させるのに明らかに有利である。
【0121】
用語「処置している」及び「処置」等は、所望の薬理学的且つ/又は生理学的効果を得ることを意味するのに本明細書中で用いられる。当該効果は、疾患、症状、又はその病徴を完全に、又は部分的に予防する観点から、予防的であってもよく、且つ/或いは疾患若しくは症状、及び/又は疾患若しくは障害に起因する悪影響、例えば病徴についての部分的な、又は完全な治療の観点から、治療的であってもよい。本明細書中で用いられる「処置」は、対象の疾患又は症状のあらゆる処置を包含する。本明細書中で用いられる用語、組成物が投与され得る「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒト、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ及びイヌ)、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、及びニワトリ)、パフォーマンスアニマル(例えば競走馬)、及びラボ試験動物(例えばラット)を含む。典型的には、対象はヒトである。
【0122】
特定の実施形態において、疾患又は症状は:疼痛、不安、炎症性疾患、神経障害、精神障害、悪性腫瘍、免疫不全、代謝障害、栄養不足、感染症、消化管障害、及び心血管障害からなる群から選択される。好ましくは、疾患又は症状は、疼痛である。他の実施形態において、疾患又は症状は、身体的且つ/又は感情的な満足感と関連する。本方法の文脈において、カンナビノイド組成物は、精神活性作用を実質的にもたらさないか、又は精神活性作用をもたらさないことが好ましい。
【0123】
レクリエーションの使用の文脈において、投与される「有効な量」、並びに投与の速度及び時間経過は、対象における身体的且つ/又は感情的な満足感と関連する所望の効果によって決まることとなる。
【0124】
健康及びウェルネスの文脈において、投与される「有効な量」、並びに投与の速度及び時間経過は、処置されることとなる疾患又は症状の性質及び重症度によって決まることとなり、そしてまた典型的には、個々の対象の症状、及び投与方法等を考慮する。
【0125】
好ましくは、典型的には約0.05mLから約2mLの、組成物の有効な量が、粘膜表面に投与される。組成物は、スプレー装置、例えば、噴霧器又はアトマイザを利用して投与、塗布されてもよい。本開示の範囲は、噴霧器又は他のタイプのアトマイザによる、組成物の1つ以上の異なる投与、又は組成物の継続的な放出を包含することが考慮されるべきである。組成物は、経鼻又は経口(例えば、頬側投与又は舌下投与)、膣、眼、又は直腸投与経路を介して投与されてもよい。好ましくは、組成物は、経鼻投与、経口投与、又は双方により投与される。
【0126】
本開示はさらに、本開示の組成物及び使用説明書を含むキットに関する。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本明細書中に記載される特定の組成物の製造及び実施のいくつかの例示的態様を記載する。これらの実施例は、単に例示目的であり、本明細書中に記載される組成物及び方法の範囲を限定することを意味するものではないことが理解されるべきである。
【0128】
実施例1-熱ゲル化組成物の調製
この実施例では、熱ゲル化組成物を調製した。組成物を、ナノエマルジョンとして製剤化した。
【0129】
以下に示す配合(F1~F16)毎に、以下の工程を実行した。
(1)水相成分(水、ポロキソマー)を、撹拌により可溶化した。
(2)別に、油相成分(エタノール、THC蒸留液、PEG-40ヒマシ油、及びMCT油)を、撹拌により可溶化した。
(3)調製されると、水相及び油相をそれぞれ、水相への油相のゆっくりとした添加によって、約500rpmでの磁気撹拌による一定の撹拌により組み合わせた。
【0130】
様々な量のTHC蒸留液(1重量%、3重量%、5重量%)を含む組成物を、先に記載したように調製した;代表的な配合を、表1~表3に示す(他のデータは示さず)。それぞれの場合において、用いた蒸留液は、おおよそ90%のTHCを含有した。
【0131】
表1.組成物配合-1重量%蒸留液。各配合中の各構成要素の量を(重量%で)示す。Polo407=ポロキソマー407;Polo188=ポロキソマー188;EtOH=94%エタノール;PEG-40=PEG40水添ヒマシ油;THC=THC蒸留液;MCT=MCT油。ダッシュは、構成要素を加えなかったことを示す。
【0132】
【0133】
表2.組成物配合-3重量%蒸留液。各配合中の各構成要素の量を(重量%で)示す。Polo407=ポロキソマー407;Polo188=ポロキソマー188;EtOH=94%エタノール;PEG-40=PEG40水添ヒマシ油;THC=THC蒸留液;MCT=MCT油。ダッシュは、構成要素を加えなかったことを示す。
【0134】
【0135】
表3.組成物配合-5重量%蒸留液。各配合中の各構成要素の量を(重量%で)示す。Polo407=ポロキソマー407;Polo188=ポロキソマー188;EtOH=94%エタノール;PEG-40=PEG40水添ヒマシ油;THC=THC蒸留液;MCT=MCT油。ダッシュは、構成要素を加えなかったことを示す。
【0136】
【0137】
組成物及び結果の考察について、実施例2参照。
【0138】
実施例2-熱ゲル化組成物の特性評価
この実施例において、実施例1において調製した熱ゲル化組成物の粒度を測定した。
【0139】
粒度測定-実施例1の組成物についての粒度を、動的光散乱法(DLS)を用いて、25℃の水溶液中で測定した。本開示におけるサンプルは全て、LiteSizer(商標)(Anton Paar GmbH,Germany)を用いて、精製水中で1/20に希釈して分析した。組成物F16について、25℃での貯蔵の2ヵ月後に、粒度測定をここでも、同じ方法を用いて実行した。粒度測定の結果を表4に示す。
【0140】
ゲル化点測定-実施例1の組成物のゲル化点を、Anton Paar由来のMCR 92レオメータを用いて測定した。貯蔵率及び損失率を、1s
-1の一定の剪断速度、及び毎分1℃の温度上昇にて、PP50ジオメトリを用いて測定した。結果として生じるゲル化曲線上の貯蔵弾性率と損失率との交差点が、組成物のゲル化温度を与える。代表的なゲル化曲線を
図2(組成物F6について)に示し、そしてゲル化温度を表4に示す。
【0141】
表4.組成物の粒度及びゲル化点。表1~表3の配合についての分散相粒度(nm)及びゲル化温度(℃)を示す。ダッシュ(-)は、特性を測定しなかったことを示す。
【0142】
【0143】
粘性測定-組成物の調製後、実施例1で調製した組成物F14の粘性を、プレート-プレートジオメトリによるMCR92レオメータ(Anton Paar)を用いて測定した。試験を、25℃、40℃、及び20℃~40℃のランプ温度にて実行した。剪断ストレス及び見掛けの粘性データを、0.01から10%剪断速度に及ぶ速度制御法で、又は1%剪断速度の固定速度にて得た。分析は全て、二反復で実行した。粘性測定の結果を表5に示す。
【0144】
表5.組成物の粘性。組成物F14についての粘性(mPas)を示す。粘性の値を、25℃にて、そして40℃にて示す。
【0145】
【0146】
実施例1で調製した組成物は、自己乳化ナノエマルジョン組成物である。組成物は、反復して出現した。1重量% THC蒸留液を含む組成物から始めてから、3重量%及び5重量% THC蒸留液に移った。粒度及びゲル化温度をガイドとして用いた。組成物についての所望のゲル化温度は30℃超であり、そして所望の粒度は55nm未満であった。
【0147】
実験(データは示さず)により、粘性モディファイアは、ナノエマルジョン形成の前に水中に溶解させなければならないと判定した。そうしないと、ナノエマルジョンの粒度は増大した。最初の配合(F1~F3)は、体温近くでゲル化温度を達成するために必要とされる構成要素(粘性モディファイア(例えばポロキソマー))の量を決定するのに役立った。加えて、実験的に、THC蒸留液は、全部又は一部を、粒度に大きな影響を及ぼさずに、MCT油と置き換えることができると判定した(組成物F15及びF16について、結果を参照)。したがって、キャリアとしてのMCT油は、組成物中で必要とされる構成要素でないように思われる。この互換性からみれば、蒸留液及びMCT油は、一緒に「カンナビノイド構成要素」と称される。
【0148】
この実施例の組成物中のカンナビノイド構成要素:粘性モディファイア:界面活性剤の最適な全体比率は、全ての実験結果にわたって観察されるように、約0.9~1.1:1~9.5:1.9~2.2である。通常、組成物中のポロキソマーの量が減少するにつれ、PEG40水添ヒマシ油の量は、所望のゲル化温度及び粒度を維持するために、増大した(例えばF4~F6参照)。また、カンナビノイド構成要素:粘性モディファイア:界面活性剤の最適な比率は、カンナビノイド構成要素の様々なローディングに基づいて変動するように思われる。
【0149】
例えば、約1重量%THC蒸留液をロードした、比率が0.9~1.1:7.9~9.5:1.4~1.9(カンナビノイド構成要素:ポロキソマー:界面活性剤)である組成物は、粒度<55nm及びゲル化温度>30℃を与えた。また、約3重量%THC蒸留液をロードした組成物において、0.9~1.1:3.2~3.5:1.8~2.2のカンナビノイド構成要素:粘性モディファイア:界面活性剤比率は、粒度<55nm及びゲル化温度>30℃を与えた。また、約5重量%THC蒸留液をロードした組成物において、0.9~1.1:1~1.2:1.9~2.2のカンナビノイド構成要素:粘性モディファイア:界面活性剤比率は、粒度<55nm及びゲル化温度>30℃を与えた。
【0150】
また、ポロキソマー407(0から0.75重量%)の一部を、粒度に影響を及ばさないが、ゲル化が起こる温度の上昇が対応するポロキソマー188で置き換えることができることが観察された(データは示さず)。最後に、F16組成物は、2ヵ月間、組成物中での粒度の安定性を示した。
【0151】
1:1:2の比率のTHC蒸留液:ポロキソマー407:PEG40水添ヒマシ油(F12、F14)を用いる、5%カンナビノイド構成要素を含む組成物について、組成物の粘性の上昇(すなわちゲル化)は、31から33℃にて起こる。代表的なゲル化曲線(組成は示さず)を
図1に示しており、ゲル化温度は34℃であった。F11~F16において示されるように、組成物中のポロキソマー407の量を、最適な0.9~1.1:1~1.2:1.9~2.2のカンナビノイド構成要素:粘性モディファイア:界面活性剤比率内で変えることで、様々な温度にてゲル化が起こるが、粒度に及ぶ大きな影響は気付かれない。
【0152】
図2は、組成物F14の粘性が、25℃にて剪断と独立していることが見出され、そして80~85mPasであると測定されたことを示している;しかしながら、粘性は、40℃にてシアーシニング性(shear thinning)であることが見出され、値は、低剪断(1%剪断速度)にて10,000~20,000mPasであった。
【0153】
実施例3-他の成分を含有する熱ゲル化組成物
この実施例において、粘膜付着剤又は香味料を含む組成物を調製した。組成物を、実施例1に記載される方法を用いて、且つ表6に記載される配合(F17~F20)にしたがって調製した。該当する場合には、粒度及びゲル化温度を、実施例2に記載される方法を用いて測定した。
【0154】
表6.他の成分を含有する組成物。各配合中の各構成要素の量を(重量%で)示す。Polo407=ポロキソマー407;Polo188=ポロキソマー188;EtOH=94%エタノール;PEG-40=PEG40水添ヒマシ油;THC=THC蒸留液;MCT=MCT油;GT=ゲル化温度(℃);PS=粒度(nm)。ダッシュは、構成要素を加えなかったこと、又は特性を測定しなかったことを示す。
【0155】
【0156】
他の実施例が、本発明に記載の教示を考慮して読者に明らかとなるであろうし、そしてそれ自体、本明細書ではさらに説明しない。
【0157】
別段定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語及び科学用語は全て、本発明が関連する技術における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で用いられる場合、そして特に指示しないか、又は文脈上異なる解釈を要しない限り、以下の各用語は、以下に示す定義を有するものとする。
【0158】
本明細書中で用いられる程度の用語、例えば、「約」、「おおよそ」、及び「実質的には」は、最終的な結果が大きく変わらないような修飾用語の逸脱の合理的な量を意味する。これらの用語は、測定可能な値、例えば量及び時間的期間を指してもよく、そして所与の値の+/-0.1%、好ましくは+/-0.5%、好ましくは+/-1%、好ましくは+/-2%、好ましくは+/-5%、又は好ましくは+/-10%の変動を包含することを意味する。
【0159】
本明細書中で用いられる冠詞、例えば、特許請求の範囲において用いられる場合の「a」及び「an」は、特許請求されるか、又は記載されるものの1つ以上を意味すると理解される。
【0160】
本明細書中で用いられる用語、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、及び「含有している(containing)」は、非限定的である、すなわち、最終結果に影響を与えない他の工程及び他の項を加えることができることを意味する。先の用語は、用語「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。
【0161】
本明細書中で用いられる文言「好ましい」、「好ましくは」、及び変形は、ある特定の状況下で、ある特定の利益を与える本開示の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態が、同じ状況又は他の状況の下で好まれてもよい。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味せず、そして、他の実施形態を本開示の範囲から除外することは意図されない。
【0162】
本出願の実施例に開示される試験方法が、本明細書中に記載され、且つ特許請求される、出願人の開示のパラメータの各値を求めるのに用いられなければならないことが理解される。
【0163】
本開示の全ての実施形態において、全てのパーセンテージ、部、及び比率は、特に明記しない限り、本開示の組成物の総重量に基づく。記載される成分に関する重量は全て、活性レベルに基づくので、特に明記しない限り、商業的に入手可能な材料中に含まれ得る溶媒又は副産物を含んでいない。
【0164】
特に述べられていない限り、全ての比率は重量比である。特に述べられていない限り、全ての温度は摂氏度(℃)である。本明細書中で開示される全ての寸法及び値(例えば、量、パーセンテージ、部、及び割合)が、示される正確な数値に厳密に限られると理解されるべきではない。その代わりに、特に明記しない限り、そのような各寸法又は各値は、示される値、及び当該値を囲む機能的に等価な範囲の双方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0165】
表題又は副題は、読者の便宜のために本開示の全体を通して用いられ得るが、決してこれらが本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。さらに、特定の理論が本明細書中で提唱且つ開示される場合がある。しかしながら、それらは決して、それらが正しいか間違っているかに拘わらず、特定のいかなる理論にも行動計画にも関係なく、本開示にしたがって本発明が実施される限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0166】
例に関連して記載される本開示の組成物の要素は、本開示の他の態様との関係で準用する。したがって、本開示の組成物は、あらゆる実施形態において、本明細書中で引用されるあらゆる成分を含むあらゆる組成物を包含し、そのような成分は各々、本明細書中で定義される適切なあらゆる量で独立して存在することは言うまでもない。本明細書中で具体的に述べられるもの以外のそのような多くの組成物が包含され得る。
【0167】
本明細書中で開示される寸法及び値は、示される正確な数値に厳密に限られると理解されるべきではない。その代わりに、特に明記しない限り、そのような各寸法は、示される値、及び当該値を囲む機能的に等価な範囲の双方を意味することが意図される。例えば、「40重量%」と開示される寸法は、「約40重量%」を意味することが意図される。
【0168】
相互参照した、又は関連するあらゆる特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張するあらゆる特許出願又は特許が挙げられる、本明細書中で引用される全ての文献は、明示的に除外されない限り、又は別途制限されない限り、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるあらゆる開示に関する先行技術であることの承認ではないし、単独で、又は他のいずれかの参照と組み合わせて、そのようなあらゆる開示を参照、教示、示唆、又は開示していることの承認ではない。さらに、本文献における用語のあらゆる意味又は定義が、参照によって組み込まれる文献における同じ用語のあらゆる意味又は定義と矛盾する限り、当該用語に本文献において割り当てられる意味又は定義が支配するものとする。
【0169】
本開示の特定の実施形態を具体的に説明且つ記載してきたが、当業者であれば、他の種々の変更及び修正が、本開示の要旨を逸脱しない範囲でなされてよいことは明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本開示の範囲内であるそのような全ての変更及び修正を包含することが意図される。
【国際調査報告】