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特表2022-535458B型肝炎ウイルス特異的なT細胞応答
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルス特異的なT細胞応答
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/29 20060101AFI20220801BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220801BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220801BHJP
   C12N 15/51 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220801BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220801BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220801BHJP
   C07K 14/02 20060101ALN20220801BHJP
【FI】
A61K39/29
C12N15/86 Z ZNA
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/51
A61K35/17 Z
A61P31/20
A61P37/04
C07K14/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572596
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 US2020036480
(87)【国際公開番号】W WO2020247858
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/858,764
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512208051
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】フルー、クラウス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ピッカー、ルイス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブルビッツ、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、スコット ジー.
(72)【発明者】
【氏名】サチャ、ジョナー ビー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA96Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA03
4C085BA89
4C085CC08
4C085CC32
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG06
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA02
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【解決手段】本開示は、B型肝炎ウイルス感染の治療または予防のための免疫応答を生じる方法に関する。本開示はまた、B型肝炎ウイルス感染の治療または予防のためのMHC-Eおよび/またはMHC-II拘束CD8+T細胞を生成する方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてB型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫応答を生じる方法であって、HBV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する有効な量で、HBV抗原を発現するCMVベクターを対象に投与することを含み、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である方法。
【請求項2】
対象における慢性のHBV感染を治療する方法であって、HBV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する有効な量で、HBV抗原を発現するCMVベクターを対象に投与することを含み、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である方法。
【請求項3】
対象におけるHBVに対する免疫応答を生じるのに使用するための、HBV抗原を発現するCMVベクターであって、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)であるCMVベクター。
【請求項4】
対象における慢性のHBV感染の治療に使用するための、HBV抗原を発現するCMVベクターであって、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)であるCMVベクター。
【請求項5】
対象におけるHBVに対する免疫応答を生じるのに使用するための薬剤の製造における、HBV抗原を発現するCMVベクターの使用であって、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である使用。
【請求項6】
慢性のHBV感染の治療のための薬剤の製造におけるHBV抗原を発現するCMVベクターの使用であって、前記CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現せず、前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である使用。
【請求項7】
前記B型肝炎ウイルス抗原はB型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、X、またはポリメラーゼ抗原である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項8】
前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項7に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項9】
B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である請求項8に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項10】
前記B型肝炎抗原はTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項8に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項11】
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の少なくとも10%がMHC-Eまたはそのオーソログ、またはMHC-IIまたはそのオーソログによって拘束される請求項1~6のいずれか1項に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項12】
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも75%がMHC-Eまたはそのオーソログ、またはMHC-IIまたはそのオーソログによって拘束される請求項11に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項13】
MHC-Eによって拘束されたCD8+T細胞がMHC-Eスーパートープを認識する請求項11に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項14】
前記MHC-EスーパートープはPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項13に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項15】
前記MHC-EスーパートープはPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である請求項13に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項16】
前記MHC-EスーパートープはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項13に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項17】
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の10%未満が、MHC-クラスlaまたはそれらのオーソログによって拘束される請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項18】
MHC-Eによって拘束されたCD8+T細胞の一部が、ベクターによって免疫された他の対象の少なくとも90%によって共有されるエピトープを認識する請求項1~16のいずれか1項に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項19】
MHC-E-HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、
(a)MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、HBV抗原を発現する核酸を含み、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない組み換えCMVベクターを第1の対象に投与するステップと、
(b)MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する第1のCD8+TCRをCD8+T細胞のセットから同定するステップと、
(c)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離するステップと、
(d)第1のCD8+TCRのCDR3αおよびCDR3βを含む第2のCD8+TCRをコードする核酸配列と、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターとを含む発現ベクターによって1つ以上のCD8+T細胞をトランスフェクトして、MHC-E/HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞生成するステップと、を含む方法。
【請求項20】
MHC-E-HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法であって、
(a)MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、HBV抗原を発現する核酸を含み、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない組み換えCMVベクターを投与されている第1の対象からCD8+T細胞の第1のセットを単離するステップと、
(b)MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する第1のCD8+TCRをCD8+T細胞の第1のセットから同定するステップと、
(c)第2の対象からCD8+T細胞の第2のセットを単離するステップと、
(d)第1のCD8+TCRのCDR3αおよびCDR3βを含む第2のCD8+TCRをコードする核酸配列および第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターを含む発現ベクターによってCD8+T細胞の第2のセットをトランスフェクトして、MHC-E/HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞生成するステップと、を含む方法。
【請求項21】
組み換えCMVベクターが組み換えヒトCMVベクターまたは組み換えアカゲザルCMVベクターである請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記B型肝炎ウイルス抗原はB型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、またはポリメラーゼ抗原である請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項22に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項24】
B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である請求項23に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項25】
前記B型肝炎抗原はTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項23に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項26】
前記CD8+T細胞の第1のセットは、B型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、X、またはベクターによって免疫された他の対象の少なくとも90%によって共有されるポリメラーゼ抗原ペプチドのスーパートープである特異的なB型肝炎ウイルス抗原を認識する請求項19~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である請求項26に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項29】
前記B型肝炎抗原はTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項26に記載の方法、使用のためのCMVベクター、または製造におけるCMVベクターの使用。
【請求項30】
前記CD8+T細胞の第2のセットは、ベクターによって免疫された他の対象の少なくとも90%によって共有されるB型肝炎ウイルス抗原スーパートープを認識する請求項19~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
B型肝炎抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記B型肝炎抗原はTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第1のCD8+TCRはDNAまたはRNA配列決定によって同定される請求項19~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2のCD8+TCRをコードする核酸配列は、前記第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である請求項19~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の対象および/または前記第2の対象はヒトまたは非ヒト霊長類である請求項19~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の対象は非ヒト霊長類であり、前記第2の対象はヒトであり、前記第2のCD8+TCRは、非ヒト霊長類CDR3αと前記第1のCD8+TCRのCDR3βとを含むキメラ非ヒト霊長類-ヒトCD8+TCRである請求項19~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2のCD8+TCRは、非ヒト霊長類CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む請求項19~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2のCD8+TCRは、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む請求項19~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第2のCD8+TCRをコードする核酸配列は、第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である請求項19~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2のCD8+TCRはキメラCD8+TCRである請求項19~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2のCD8+TCRは、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む請求項19~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記CMVベクターを第1の対象に投与するステップは、第1の対象へのCMVベクターの静脈内、筋肉内、腹腔内、または経口投与を含む請求項19~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
HBV感染を治療するか、または防ぐために、トランスフェクトしたCD8+T細胞を前記第2の対象に投与するステップをさらに含む請求項19~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
請求項19~44のいずれか1項に記載の方法によって生成したCD8+T細胞。
【請求項46】
対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法であって、B型肝炎感染の治療または予防を必要とする対象に請求項45に記載のCD8+T細胞を投与することを含む方法。
【請求項47】
B型肝炎感染の治療または予防を必要とする対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法に使用するための請求項45に記載のCD8+T細胞。
【請求項48】
B型肝炎感染の治療または予防を必要とする対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法での使用のための薬剤の製造における請求項45に記載のCD8+T細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月7日に出願された米国仮特許出願第62/858,756号の利益を主張するものであるが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する声明
本発明は、国立がん研究所によって授与された助成金番号R01 AI129703、R01 AI140888、およびP51OD011092の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイル(名称4153_011PC01_Seqlisting_ST25;サイズ:4,288バイト;作成日2020年6月5日)における電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
慢性のB型肝炎ウイルス感染(CHB)は主要な世界的健康懸念であり、世界中で2億4700万人に影響を及ぼし、887,000人が毎年死亡している。有効な予防ワクチン利用可能である一方で、10~15%の人が適切にワクチン接種に反応せず、B型肝炎ウイルス(HBV)感染から保護されない(Joint Committee on Vaccination and Immunisation.Hepatitis B.In Immunisation Against Infectious Disease,3rd ed.p.468.)。CHBは、進行性肝臓機能不全、硬変、および一部のケースでは肝細胞がんをもたらし得る。ペグIFNaおよび逆転写酵素阻害剤を含めたCHBに対する多数の治療選択肢(Bhattacharya,D.,and C.L.Thio.2010.Review of hepatitis B therapeutics.Clin.Infect.Dis.51:1201-1208.)があるが、これらの治療はめったに治癒するものではない(Zhangら,2016.HBsAg seroclearanceまたはseroconversion induced by peg-interferon alpha and lamivudineまたはadefovir combination therapy in chronic hepatitis B treatment:a meta-analysis and systematic review.Rev Esp Enferm Dig 108:263-270.)。
【0005】
急性HBV感染成人の90~95%が、広く高度に機能的なHBV特異的T細胞応答およびその後の明確な感染を示すことによって、CHBに対する細胞免疫治療戦略の開発が支持されている(Mainiら,1999.Direct ex vivo analysis of hepatitis B virus-specific CD8(+) T cells associated with the control of infection.Gastroenterology 117:1386-1396; Phillipsら,2010.CD8(+) T cell control of hepatitis B virus replication:direct comparison between cytolytic and noncytolytic functions.J.Immunol.184:287-295; Fisicaroら,2009.Early kinetics of innate and adaptive immune responses during hepatitis B virus infection.Gut 58:974-982.)。これに対して、CHBへの患者の進行は、狭く注目され、低い頻度の機能的に消耗したHBV特異的T細胞応答を示す(Bertoletti,A.,and C.Ferrari.2016.Adaptive immunity in HBV infection.J.Hepatology 64:S71-S83;Rehermann,B.,and A.Bertoletti.2015.Immunological aspects of antivirus therapy of chronic hepatitis B virus and hepatitis C virus infections.Hepatology 61:712-721;Kurktschievら,2014.Dysfunctional CD8+ T cells in hepatitis BおよびC are characterized by a lack of antigen-specific T-bet induction.J.Exp.Med.211:2047-2059.)。したがって、現在開発中の多くの免疫治療戦略が、HBV特異的T細胞免疫の増強に注目している。
【0006】
現在研究中の免疫療法は、より良好な標的HBV感染した肝細胞に対する免疫系を利用するように設計され、パターン認識受容体アゴニスト、チェックポイント阻害剤遮断、治療ワクチン、および養子T細胞治療による免疫刺激を含む(Gill,U.S.,and P.T.F.Kennedy.2017.Current therapeutic approaches for HBV infected patients.J.Hepatology 67:412-414.)。HBV免疫療法に直面する共通のハードルはT細胞免疫寛容である( Zongら,2019.Breakdown of adaptive immunotolerance induces hepatocellular carcinoma in HBsAg-tg mice.Nature Communications 10:221; Kongら,2014.γδT cells drive myeloid-derived suppressor cell-mediated CD8+ T cell exhaustion in hepatitis B virus-induced immunotolerance.J.Immunol.193:1645-1653;Milich,D.R.2016.The Concept of Immune Tolerance in Chronic Hepatitis B Virus Infection Is Alive and Well.Gastroenterology 151:801-804.)。急性HBVウイルス血をうまく除去する患者とそうでない患者とを区別する免疫寛容の最初のトリガーは完全に理解されていない。しかしながら、一部では、肝臓の免疫寛容な環境の結果である可能性が高い。したがって、CHBを免疫療法によってうまく除去するためには、T細胞免疫寛容を克服しなければならない。不運にも、今までどの免疫療法も一貫してこの目標を達成しておらず、CHBの生理学的に関連した動物モデルがないことによって、この現実を悪化させていた。
【0007】
CHBに対するT細胞ベースの免疫療法は、T細胞消耗の持続的な反転または持続したウイルス抑制をもたらさなければならない。CHB患者における確立したHBV特異的T細胞の機能不全の反転の困難性を考えると、HBV特異的T細胞免疫を増大する最も有効な方法は、治療ワクチン接種または養子T細胞治療によってT細胞応答の完全に独特のセットを生じさせるか、または与えることであり得る。不運にも、生成するそのようなデノボ応答は、患者特異的なHLA発現および肝細胞表面にあるHBVペプチドによって制限される。これに対して、普遍的に発現した場合、天然の急性HBV特異的免疫応答に寄与しない非従来型のMHC-IbT細胞制限エレメントが肝細胞表面条にHBV抗原を提示でき、HBV感染において典型的に見られないT細胞応答の全く異なるセットを誘発するようにターゲットされ得る。したがって、HBVに対する治療法を至急および網羅的に開発する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、対象においてB型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫応答を生じる方法であって、HBV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する有効な量で、HBV抗原を発現するCMVベクターを対象に投与することを含み、CMVベクターは、活性なUL128、UL130、UL146およびUL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない方法に関する。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0009】
本開示はまた、対象における慢性のHBV感染を治療する方法であって、HBV抗原に対するCD8+T細胞応答を誘発する有効な量で、HBV抗原を発現するCMVベクターを対象に投与することを含み、CMVベクターは、活性なUL128、UL130、UL146およびUL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない方法にも関する。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0010】
本開示はまた、対象におけるHBVに対する免疫応答を生じるのに使用するための、HBV抗原を発現するCMVベクターにも関し、CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0011】
本開示はまた、HBV抗原を発現する対象における慢性のHBV感染の治療に使用するためのCMVベクターにも関し、CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0012】
本開示はまた、対象におけるHBVに対する免疫応答を生じるのに使用するための薬剤の製造における、HBV抗原を発現するCMVベクターの使用にも関し、CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0013】
本開示はまた、慢性のHBV感染の治療のための薬剤の製造におけるHBV抗原を発現するCMVベクターの使用にも関し、CMVベクターは、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。一実施形態では、HBV抗原はPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0014】
一実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原は、B型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、X、またはポリメラーゼ抗原である。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原は、PSVRDLLDTASALYR(配列番号17)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原は、TALRQAILCWGELMT(配列番号18)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。
【0015】
別の実施形態では、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の少なくとも10%がMHC-Eまたはそのオーソログ、またはMHC-IIまたはそのオーソログによって拘束される。別の実施形態では、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも75%がMHC-Eまたはそのオーソログ、またはMHC-IIまたはそのオーソログによって拘束される。別の実施形態では、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞の10%未満がMHC-クラスlaまたはそのオーソログによって拘束される。別の実施形態では、いくつかのMHC-Eによって拘束されたCD8+T細胞が、ベクターで免疫された他の対象の少なくとも90%が共有するペプチドを認識する。一部の実施形態では、MHC-Eによって拘束されたCD8+T細胞がMHC-Eスーパートープを認識する。一部の実施形態では、MHC-Eスーパートープは、PSVRDLLDTASALYR(配列番号17)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。一部の実施形態では、MHC-Eスーパートープは、TALRQAILCWGELMT(配列番号18)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。
【0016】
本開示はまた、MHC-E-HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法にも関し、該方法は、(a)MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、HBV抗原を発現する核酸を含み、活性なUL128、UL130、UL146およびUL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない組み換えCMVベクターを第1の対象に投与するステップと、(b)MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する第1のCD8+TCRをCD8+T細胞のセットから同定するステップと、(c)第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離するステップと、(d)第1のCD8+TCRのCDR3αおよびCDR3βを含む第2のCD8+TCRをコードする核酸配列および第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターを含む発現ベクターによって1つ以上のCD8+T細胞をトランスフェクトして、MHC-E/HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞生成するステップと、を含む。
【0017】
本開示はまた、MHC-E-HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法にも関し、該方法は、を含む:(a)MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、HBV抗原を発現する核酸を含み、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない組み換えCMVベクターを投与されている第1の対象からCD8+T細胞の第1のセットを単離するステップと、(b)MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する第1のCD8+TCRをCD8+T細胞の第1のセットから同定するステップと、(c)第2の対象からCD8+T細胞の第2のセットを単離するステップと、(d)第1のCD8+TCRのCDR3αおよびCDR3βを含む第2のCD8+TCRをコードする核酸配列および第2のCD8+TCRをコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターを含む発現ベクターによってCD8+T細胞の第2のセットをトランスフェクトして、MHC-E/HBV抗原ペプチド複合体を認識するCD8+T細胞生成するステップと、を含む。
【0018】
一実施形態では、組み換えCMVベクターが組み換えヒトCMVベクターまたは組み換えアカゲザルCMVベクターである。別の実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原がB型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、またはポリメラーゼ抗原である。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原は、PSVRDLLDTASALYR(配列番号17)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルス抗原は、TALRQAILCWGELMT(配列番号18)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一性を有する。
【0019】
一実施形態では、第1のCD8+T細胞は特異的なMHC-Eスーパートープを認識する。別の実施形態では、第2のCD8+T細胞は特異的なMHC-Eスーパートープを認識する。一部の実施形態では、MHC-EスーパートープはPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)またはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。一部の実施形態では、MHC-EスーパートープはPSVRDLLDTASALYR(配列番号17)である。一部の実施形態では、MHC-EスーパートープはTALRQAILCWGELMT(配列番号18)である。
【0020】
別の実施形態では、第1のCD8+TCRはDNAまたはRNA配列決定によって同定される。別の実施形態では、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列は、第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である。
【0021】
一実施形態では、第1の対象はヒトまたは非ヒト霊長類である。別の実施形態では、対象は非ヒト霊長類であり、第2の対象はヒトであり、第2のCD8+TCRは、非ヒト霊長類CDR3αと第1のCD8+TCRのCDR3βとを含むキメラ非ヒト霊長類-ヒトCD8+TCRである。別の実施形態では、第2のCD8+TCRは、非ヒト霊長類CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む。別の実施形態では、第2のCD8+TCRは、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む。別の実施形態では、第2のCD8+TCRをコードする核酸配列は、第1のCD8+TCRをコードする核酸配列と同一である。別の実施形態では、第2のCD8+TCRはキメラCD8+TCRである。別の実施形態では、第2のCD8+TCRは、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、および第1のCD8+TCRのCDR3βを含む。
【0022】
一実施形態では、CMVベクターを第1の対象に投与することは、第1の対象へのCMVベクターの静脈内、筋肉内、腹腔内、または経口投与を含む。別の実施形態では、HBV感染を治療するか、または防ぐために、トランスフェクトしたCD8+T細胞を第2の対象にさらに投与する。
【0023】
本開示はまた、本明細書に記載の方法によって生成したCD8+T細胞にも関する。
【0024】
本開示はまた、対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法にも関し、該方法は、その治療または予防を必要とする対象に本明細書に記載のCD8+T細胞を投与することを含む。本開示はまた、B型肝炎感染の治療または予防を必要とする対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法に使用するためのCD8+T細胞にも関する。本開示はまた、B型肝炎感染の治療または予防を必要とする対象におけるB型肝炎感染を治療または予防する方法での薬剤の製造におけるCD8+T細胞の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】HBVコア、表面、およびポリメラーゼ抗原(RhCMV/HBV68-1)を発現する株68-1RhCMVを接種した4匹のアカゲザル(RM)のHBV抗原特異的CD8+T細胞応答の頻度を示す図である。
図1B】HBVコア抗原(HBcAg)の個々のペプチドに対するCD8+T細胞応答を示す図である。各HBcAg 15量体は、MHC拘束を示すように色分けされ、ボックスによって示されている。
図1C】HBcAgペプチドを添加したときの、HLA-EまたはMamu-EのいずれかでトランスフェクトしたK562細胞への接種したRMから単離したCD8+T細胞の応答を示す図である。
図2A】MHCを導入した細胞株のMHC-E特異的抗体4D12による染色を示す図である。4D12染色は、IgG-アイソタイプ対照に一致するものと比較した。さらに、細胞は汎MHC-I特異的抗体W6/32で染色された。
図2B】肝臓灌流およびプレーティングの1日後に、ヒトおよびRM初代肝細胞の4D12染色を示す図である。マウスIgG1アイソタイプは、初代肝細胞による非特異的な抗体結合をコントロールするために使用された。
図2C図2BからのMHC-E+初代肝細胞のパーセントの定量化を示す図である。
図2D】HBV感染後4日目のヒトドナー初代肝細胞の表面MHC-I、MHC-E、またはMHC-IIと細胞内HBcAgの共染色を示す図である。
図2E図2DからのHBV+初代肝細胞のパーセントの定量化を示す図である。
図3A】2人の無関係なRMドナー(RM8及びRM9)からのHBVナイーブ又はHBV感染PHとインキュベートしたときのRM1及びRM2からの脾臓細胞及びCD8β分類エフェクターにおけるMHC-I、MHC-II及びMHC-Eにより拘束されたHBV特異的CD8+T細胞のパーセントを示す図である。応答したT細胞は、CD3、CD8、およびIFN-γの染色によって同定された。応答したCD8+T細胞のMHC拘束は、以下のMHCブロッキング剤を用いて同定した。W6/32抗体(pan MHC-I)、VL9ペプチド(MHC-E)、CLIP(MHC-II)、またはHLA-DR抗体(MHC-II)。
図3B】ヒトドナー(HD1及びHD2)からのHBVナイーブ又はHBV感染初代肝細胞とインキュベートしたRM1及びRM2からの脾臓細胞またはCD8β分類エフェクターからのMHC-I、MHC-II及びMHC-Eにより拘束されたHBV特異的CD8+T細胞のパーセンテージを示す図である。応答したCD8+ T細胞は、CD3、Cd8、IFN-γによって同定された。また、応答したCD8+ T細胞のMHC拘束は、以下のMHCブロッキング剤で同定した。W6/32抗体(pan MHC-I)、VL9ペプチド(MHC-E)、CLIP(MHC-II)、またはHLA-DR抗体(MHC-II)。
図4】全世界のHBV株におけるHBVコア抗原のMHC-E結合型スーパートープの保存性を示す棒グラフである。すべての既知のHBV遺伝子型にまたがる6,203個の全ゲノムHBV配列を翻訳し、Core7(図4A)およびCore14(図4B)に対してアミノ酸をアラインメントした。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.用語
特に明記しない限り、技術用語は慣用的な用法に従って使用される。
【0027】
本明細書で引用されるか、または2019年7月7日出願の米国仮特許出願番号62/858,764を含む出願データシートに記載されているすべての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、および受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の両方を含む)は、個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、または受託番号/データベース配列が参照によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
文脈上他の意味に解釈すべき場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などのその変形は、オープンで包括的な意味で、すなわち「限定されないが、~を含む」と解釈されるべきである。「~からなる(consisting of~)」は、本明細書に開示される他の成分および実質的な方法工程の微量元素を上回る元素を除外することを意味するものとする。「~から本質的になる(consisting essentially of~)」という語は、特定の材料もしくは工程、または特許請求の範囲の発明の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに特許請求の範囲を限定する。例えば、本明細書で規定された元素から本質的になる組成物から、単離および精製方法からの微量汚染物質、ならびにリン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などの医薬的に許容され得る担体は排除されない。同様に、タンパク質がタンパク質の長さの最大20%に寄与し、タンパク質の活性に実質的に影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の活性を変化させる割合は50%以下である)追加のアミノ酸を含む場合、タンパク質は特定のアミノ酸配列から本質的になる。各移行句によって規定される実施形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。さらに、材料、方法、および実施例は例を示したものにすぎず、限定することを意図するものではない。本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定の用語について以下の説明を提供する。
【0030】
抗原:本明細書で使用される場合、「抗原」または「免疫原」という用語は、対象において免疫応答を誘導することができる物質、典型的にはタンパク質を指すために互換的に使用される。この用語はまた、(直接的に、またはタンパク質をコードするヌクレオチド配列もしくはベクターを対象に投与することによって)対象に投与されると、タンパク質が、そのタンパク質に対する体液型および/または細胞型の免疫応答を誘発することができるという意味で免疫学的に活性のあるタンパク質を指す。
【0031】
抗原特異的T細胞:特定の抗原を認識するCD8リンパ球またはCD4リンパ球。概して、抗原特異的T細胞は、MHC分子によって提示される特定の抗原に特異的に結合するが、同じMHCによって提示される他の抗原には結合しない。
【0032】
投与:本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、何らかの有効な経路によって、有効量の外因性抗原を含むCMVベクターを含む組成物などの薬剤を対象に提供または与えることを意味する。具体例としての投与経路には、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
有効量:本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体、MHC-II/異種抗原由来ペプチド複合体、またはMHC-I/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する異種抗原またはトランスフェクトCD8+T細胞を含むCMVベクターなどの、状態もしくは疾患の徴候もしくは症状を軽減もしくは排除する、または抗原に対する免疫応答を誘導するなどの所望の応答を生じさせるのに十分である薬剤の量を指す。いくつかの例において、「有効量」は、障害または疾患のいずれかの1つ以上の症状および/または根本原因を(予防を含め)治療する量である。有効量は、特定の疾患または状態の1つ以上の徴候または症状、例えば感染性疾患に関連する1つ以上の徴候または症状の発症を防止する量を含む治療有効量であり得る。
【0034】
異種抗原:本明細書で使用される場合、「異種抗原」という用語は、CMVに由来しない任意のタンパク質またはその断片を指す。異種抗原は、HBVに由来するいずれの抗原であり得る。
【0035】
免疫原性ペプチド:対立遺伝子特異的なモチーフまたは他の配列、例えばN末端の繰り返しを含むものであって、ペプチドはMHC分子に結合し、細胞毒性Tリンパ球(「CTL」)応答、または免疫原性ペプチドが由来する抗原に対するB細胞応答(例えば抗体産生)を誘導することになる。
【0036】
一実施形態では、免疫原性ペプチドは、当技術分野で既知のニューラルネットまたは多項式決定など、配列モチーフまたは他の方法を使用して特定される。典型的には、アルゴリズムを使用してペプチドの「結合閾値」を決定し、ある特定の親和性で結合する高い確率をもたらし、免疫原性となるスコアを有するペプチドを選択する。アルゴリズムは、特定の位置における特定のアミノ酸のMHC結合に対する効果、特定の位置における特定のアミノ酸の抗体結合に対する効果、またはモチーフ含有ペプチドにおける特定の置換基の結合に対する効果のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの関連の中で、「保存された残基」は、ペプチドにおける特定の位置でのランダムな分布によって予想されるよりも有意に高い頻度で現れる残基である。一実施形態では、保存された残基は、MHC構造が免疫原性ペプチドとの接触点を提供し得る残基である。
【0037】
突然変異:本明細書で使用される場合、「突然変異」という用語は、正常配列、共通配列または「野生型」配列との核酸またはポリペプチド配列の何らかの差異を指す。突然変異体は、突然変異を含む何らかのタンパク質または核酸配列である。さらに、突然変異を有する細胞または生物を突然変異体と称することもあり得る。いくつかのタイプのコード配列突然変異には、点突然変異(個々のヌクレオチドまたはアミノ酸の差異)、サイレント突然変異(アミノ酸変化をもたらさないヌクレオチドの差異)、欠失(遺伝子のコード配列全体およびそれ以下の欠失を含め、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸が欠損している場合の差異)、フレームシフト突然変異(3で割り切れない数のヌクレオチドの欠失がアミノ酸配列の変化をもたらす場合の差異)が含まれる。アミノ酸の差異をもたらす突然変異はまた、アミノ酸置換突然変異と呼ばれることもある。アミノ酸置換突然変異は、アミノ酸配列の特定の位置での野生型との比較におけるアミノ酸変化によって説明され得る。
【0038】
ヌクレオチド配列または核酸配列:「ヌクレオチド配列」および「核酸配列」という用語は、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA/RNAハイブリッド、または合成核酸を含む、デオキシリボ核酸(DNA)配列またはリボ核酸(RNA)配列を指す。核酸は、一本鎖、または部分的もしくは完全な二本鎖(デュプレックス)であり得る。デュプレックス核酸は、ホモデュプレックスまたはヘテロデュプレックスであり得る。
【0039】
機能し得るように連結された:「機能し得るように連結された」という用語が本明細書で使用される場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列に影響を及ぼすように第1の核酸配列が配置されているとき、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能し得るように連結されている。機能し得るように連結されたDNA配列は、連続していてもよく、またはそれらはある距離をおいて機能し得る。
【0040】
プロモーター:本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、核酸の転写を指示するいくつかの核酸制御配列のいずれかを指し得る。典型的には、真核生物プロモーターは、転写の開始部位の近くに必要な核酸配列を含み、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントまたは1つ以上の転写因子によって認識される何らかの他の特定のDNA配列を含む。プロモーターによる発現は、エンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメントによってさらに調節され得る。プロモーターの数多くの例が利用可能であり、当業者に周知である。特定のポリペプチドをコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターを含む核酸は、発現ベクターと呼ばれ得る。
【0041】
組換え(の):本明細書で使用される場合、核酸またはポリペプチドに関する場合の「組換え」という用語は、天然に存在しない配列を有するか、または配列の2つ以上の他の方法で分離されたセグメントの人工的な組合せによって作製される配列を有するものを指し、例えば異種抗原を含むCMVベクターがある。この人工的な組合せは、多くの場合、化学合成によって、またはより一般的には、例えば遺伝子工学技術による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成される。組換えポリペプチドはまた、ポリペプチドの天然供給源ではない宿主生物に移入された組換え核酸(例えば、異種抗原を含むCMVベクターを形成するポリペプチドをコードする核酸)を含む、組換え核酸を使用して作製されたポリペプチドを指し得る。
【0042】
医薬的に許容され得る担体:本明細書で使用される場合、使用される「医薬的に許容され得る担体」は慣用的なものである。E.W.Martinによる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,イーストン、ペンシルベニア、1995年、第19版には、本明細書に開示される組成物の医薬送達に適した組成物および製剤が記載されている。一般に、担体の性質は、採用されている特定の投与様式次第で異なることになる。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの医薬的および生理学的に許容され得る流体を賦形剤として含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態)の場合、慣用的非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0043】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のポリマーを指す。ポリヌクレオチドは4つの塩基、すなわちアデニン、シトシン、グアニンおよびチミン/ウラシル(ウラシルはRNAで使用される)から構成される。核酸からのコード配列は、核酸によってコードされるタンパク質の配列を示す。
【0044】
ポリペプチド:「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「アミノ酸配列」という用語は、本明細書では互換的に使用され、あらゆる長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖または分枝状であり得、修飾アミノ酸またはアミノ酸類似体を含み得、アミノ酸以外の化学部分によって中断されていてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、または介入、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識もしくは生物活性成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0045】
タンパク質のオーソログは、典型的には、デフォルトパラメータに設定されたALIGNを使用して、特定のタンパク質のアミノ酸配列との完全長アラインメントにわたってカウントされた75%を超える配列同一性を有することを特徴とする。参照配列に対してさらに高い類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示すことになる。さらに、配列同一性を、開示されたペプチドの特定のドメインの全長にわたって比較することができる。
【0046】
配列同一性/類似性:本明細書で使用される場合、2つもしくはそれ以上の核酸配列または2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列の間の同一性/類似性は、配列間の同一性または類似性に関して表される。配列同一性は、同一性パーセントという観点で測定され得、パーセンテージが高いほど、配列の同一性はより高くなる。配列類似性は、(保存的アミノ酸置換を考慮に入れた)同一性または類似性のパーセンテージという観点で測定され、パーセンテージが高いほど、配列はより類似している。かなりの量の配列同一性を有し、互いに同一または同様に機能するポリペプチドまたはそのタンパク質ドメイン(例えば、異なる種またはタンパク質の機能またはその規模を変化させないタンパク質の変異形態において同じ機能を果たすタンパク質)は、「ホモログ」と呼ばれ得る。
【0047】
比較のための配列のアラインメント方法は当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムは、SmithおよびWaterman,Adv Appl Math 2,482(1981);NeedlemanおよびWunsch,J Mol Biol 48,443(1970);PearsonおよびLipman,Proc Natl Acad Sci USA 85,2444(1988);HigginsおよびSharp,Gene 73,237-244(1988);HigginsおよびSharp,CABIOS 5,151-153(1989);Corpetら,Nuc Acids Res 16,10881-10890(1988);Huangら,Computer App Biosci,8,155-165(1992);ならびにPearsonら,Meth Mol Bio 24,307-331(1994)に記載されている。さらに、Altschulら、J Mol Biol 215、403-410(1990)は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
【0048】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、(1990)前出)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連させて使用するために、National Center for Biological Information(NCBI、National Library of Medicine、Building 38A、Room 8N805、ベセスダ、メリーランド20894)およびインターネット上を含むいくつかの情報源から入手可能である。さらなる情報は、NCBIのウェブサイトで見つけることができる。
【0049】
BLASTNは核酸配列を比較するために使用され、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。2つの比較された配列が相同性を共有する場合、指定された出力ファイルは、それらの相同性領域を整列させた配列として提示することになる。2つの比較された配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルは、整列させた配列を提示しないことになる。
【0050】
整列が完了すると、マッチの数は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の数を数えることによって決定される。配列同一性パーセントは、マッチの数を、同定された配列に示された配列の長さまたは連結された長さ(例えば、同定された配列に示された配列からの100個の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸残基)で割った後、得られた値に100を掛けることによって決定される。例えば、1154個のヌクレオチドを有する試験配列と整列させた場合に1166のマッチを有する核酸配列は、試験配列と75.0%同一である(1166÷1554×100=75.0)。配列同一性パーセント値は、小数点第一位を四捨五入する。例えば、75.11、75.12、75.13、および75.14は75.1に切り捨てられ、75.15、75.16、75.17、75.18、および75.19は75.2に切り上げられる。長さの値は常に整数となる。別の例では、以下のように同定された配列からの20個の連続するヌクレオチドと合致する20ヌクレオチド領域を含む標的配列は、その同定された配列と75%の配列同一性を共有する領域を含む(すなわち、15÷20×100=75)。
【0051】
約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のために、デフォルトパラメータに設定されたデフォルトBLOSUM62マトリックスを使用して、Blast 2配列関数が使用される、(ギャップ存在コストは11、残基あたりのギャップコストは1)。ホモログは、典型的には、NCBI Basic Blast 2.0、gapped blastpをnrデータベース、swissprotデータベース、および特許配列データベースなどのデータベースと共に使用して、アミノ酸配列との完全長アラインメントにわたってカウントされた少なくとも70%の配列同一性を有することを特徴とする。blastnプログラムで検索されたクエリは、DUST(HancockおよびArmstrong、Comput Appl Biosci 10、67-70(1994)でフィルターにかけられた。他のプログラムはSEGを使用する。さらに、手動アライメントを行ってもよい。さらに高い類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合、タンパク質に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示すことになる。
【0052】
短いペプチド(約30未満のアミノ酸)をアラインメントする場合、アラインメントは、デフォルトパラメータ(オープンギャップ9、伸長ギャップ1のペナルティ)に設定されたPAM30マトリックスを採用して、Blast2配列関数を使用して行われる。参照配列に対してさらに高い類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合、タンパク質に対して少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示すことになる。配列同一性について配列全体よりも短いものが比較されている場合、ホモログは、典型的には、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも75%の配列同一性を有することになり、参照配列に対するそれらの同一性に応じて、少なくとも85%、90%、95%または98%の配列同一性を有し得る。そのような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定するための方法は、NCBIウェブサイトに記載されている。
【0053】
2つの核酸分子が密接に関連していることの1つの指標は、上記のように、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。それにもかかわらず、高度の同一性を示さない核酸配列は、遺伝暗号の縮重のために、同一または類似した(保存された)アミノ酸配列をコードし得る。核酸配列の変化は、この縮重を使用して行われ、すべてが実質的に同じタンパク質をコードする複数の核酸分子を生成し得る。そのような相同性核酸配列は、例えば、タンパク質をコードする核酸と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有することができる。
【0054】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物である生物を指す。
【0055】
スーパートープ:本明細書で使用される場合、「スーパートープ」または「スーパートープペプチド」という用語は、MHCハプロタイプとは関係なく、すなわち所与のMHC-I、MHC-II、またはMHC-E対立遺伝子の存在下または非存在下で、ヒト集団の約90%超においてT細胞によって認識されるエピトープまたはペプチドを指す。
【0056】
治療:本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患または病理学的状態の徴候または症状を改善する介入を指す。本明細書で使用される場合、疾患、病理学的状態または症状に関連する「治療」、「治療する」および「治療している」という用語はまた、治療の何らかの観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、感受性対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部または全部の臨床症状の重症度の低下、疾患の進行の遅延、疾患の再発数の減少、対象の全体的な健康もしくは健全性の改善、または特定の疾患に特異的な当技術分野で周知の他のパラメータによって証明され得る。予防的治療は、病変を発症するリスクを低下させる目的で、疾患の徴候を示さないかまたは初期の徴候のみを示す対象に施される治療である。治療的治療は、疾患の徴候および症状が発生した後に対象に施される治療である。
【0057】
ワクチン:疾患または他の病理学的状態に対する能動免疫などの免疫を付与するために、ヒトなどの哺乳動物に投与することができる免疫原性組成物。ワクチンは予防的または治療的に使用することができる。したがって、ワクチンを使用して、疾患(腫瘍または病理学的感染など)を発症する可能性を低下させるか、または疾患もしくは状態の症状の重症度を低下させるか、疾患もしくは状態(腫瘍または病理学的感染など)の進行を制限するか、または疾患もしくは状態(腫瘍など)の再発を制限することができる。特定の実施形態において、ワクチンは、HBV抗原を発現する複製欠損CMVである。
【0058】
ベクター:特定の配列の核酸分子をベクターに組み込み、次いで前記ベクターを宿主細胞に導入し、それによって形質転換宿主細胞を作製することができる。ベクターは、複製起点などの、宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターはまた、1つ以上の選択マーカー遺伝子および核酸発現を指示するプロモーターエレメントを含む、当技術分野で既知の他の遺伝子エレメントを含み得る。ベクターは、CMVベクターなどのウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスを含む野生型または弱毒化ウイルスから構築され得る。
【0059】
II.型肝炎感染の治療および予防方法
B型肝炎ウイルス感染の治療または予防方法が本明細書では開示されている。該方法は、少なくとも1つの異種抗原を含む有効量の少なくとも1つの組み換えCMVベクターを対象に投与することを含み、少なくとも1つの異種抗原は、B型肝炎ウイルスに由来する抗原を含む。
【0060】
B型肝炎ウイルスに由来する抗原は、ウイルス病原体のいずれの部分にも由来し得る。B型肝炎抗原として、コアタンパク質、エンベロープタンパク質、表面タンパク質、Xタンパク質、およびポリメラーゼタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
一部の実施形態では、CMVベクターは、UL128、UL130、UL146、およびUL147またはそれらのホモログ、またはそれらのオーソログ(他の種に感染するCMVの相同遺伝子)をコードする核酸配列に突然変異が存在するため、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質を発現しない。突然変異は、活性タンパク質の発現の欠如をもたらすものであればいかなる突然変異でもあり得る。前述の突然変異には、点突然変異、フレームシフト突然変異、タンパク質をコードする配列の全体よりも短い配列の欠失(切断突然変異)、またはタンパク質をコードする核酸配列のすべての欠失、または任意の他の突然変異が含まれ得る。
【0062】
さらなる例において、CMVベクターは、UL128、UL130、UL146、およびUL147タンパク質の発現を阻害するアンチセンスまたはRNAi配列(siRNAまたはmiRNA)を含むベクター中の核酸配列の存在により、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質を発現しない。突然変異および/またはアンチセンスおよび/またはRNAiを任意の組み合わせで使用して、活性UL128活性、活性UL130、活性UL146、および活性UL147を欠くCMVベクターを生成することができる。
【0063】
一部の実施形態では、このベクターによって誘発されるCD8+T細胞応答は、CD8+T細胞の少なくとも10%がMHC-Eによって提示されるHBVエピトープを指向したものであることを特徴とする。CD8+T細胞のさらなる例では、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%がMHC-Eによって拘束される。一部の実施形態では、HBV特異的MHC-Eによって拘束されたCD8+T細胞が、ベクターで免疫された他の対象の少なくとも90%が共有するペプチドを認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞はMHC-Eによって提示されるHBVスーパートープに対するものである。一部の実施形態では、このベクターによって誘発されるCD8+T細胞応答は、CD8+T細胞の少なくとも10%がMHC-IIによって提示されるエピトープを指向したものであることを特徴とする。さらなる例では、CD8+T細胞の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%がMHC-IIによって拘束される。一部の実施形態では、MHC-IIによって拘束されたHBV特異的CD8+T細胞は、HBVベクターで免疫された他の対象の少なくとも90%が共有するペプチドを認識する。一部の実施形態では、HBV特異的CD8+T細胞は、MHC-IIによって提示されるHBVスーパートープに対するものである。
【0064】
一部の実施形態では、本方法は、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞CD8+T細胞受容体を特定することをさらに含み、CD8+T細胞受容体はMHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞受容体はRNAまたはDNA配列決定によって同定される。一部の実施形態では、本方法は、HBVのMHC-Eスーパートープを認識するCD8+T細胞受容体をさらに含む。
【0065】
一部の実施形態では、本方法は、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞CD8+T細胞受容体を特定することをさらに含み、CD8+T細胞受容体はMHC-II/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞受容体はRNAまたはDNA配列決定によって同定される。一部の実施形態では、本方法は、HBVのMHC-IIスーパートープを認識するCD8+T細胞受容体をさらに含む。
【0066】
MHC-E-HBVペプチド複合体を認識するCD8+T細胞を生成する方法も本明細書に開示される。この方法は、CMVベクターを生成するのに有効な量でMHC-E/HBVペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを第1の対象(または動物)に投与することを含む。一部の実施形態では、CMVベクターは、少なくとも1つのHBV抗原をコードする第1の核酸配列を含み、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。一部の実施形態では、HBV抗原はB型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、またはポリメラーゼ抗原であり得る。
【0067】
この方法は、第1のCD8+T細胞受容体をCD8+T細胞のセットから特定することをさらに含み、第1のCD8+T細胞受容体はMHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態では、第1のCD8+T細胞受容体はDNAまたはRNA配列決定によって同定される。一部の実施形態では、この方法は、第1のCD8+T細胞受容体のCDR3αおよびCDR3βを含む第2のCD8+T細胞受容体をコードする核酸配列と、T細胞受容体をコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターとを含む発現ベクターによって、1つ以上のCD8+T細胞をトランスフェクトし、それによって、MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する1つ以上のトランスフェクトしたCD8+T細胞を生成することをさらに含み得る。発現ベクターによるトランスフェクションのための1つ以上のCD8+T細胞は、第1の対象または第2の対象から単離され得る。
【0068】
一部の実施形態では、本方法は、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞CD8+T細胞受容体を特定することをさらに含み、CD8+T細胞受容体はMHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞受容体はRNAまたはDNA配列決定によって同定される。一部の実施形態では、本方法は、MHC-Eスーパートープを認識するHBV特異的CD8+T細胞受容体をさらに含む。
【0069】
(1)MHC-E/HBVペプチド複合体を認識するCD8+T細胞のセットを生成するのに有効な量で、少なくとも1つのHBV抗原を含む組み換えCMVベクターを第1の対象に投与するステップと、(2)MHC-E/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する第1のCD8+T細胞受容体をCD8+T細胞のセットから特定するステップと、(3)第1の対象または第2の対象から1つ以上のCD8+T細胞を単離するステップと、(4)発現ベクターによって第1の対象または第2の対象単離した1つ以上のCD8+T細胞をトランスフェクトし、それによって、MHC-E-HBVペプチド複合体を認識するトランスフェクトしたT細胞を生成するステップと、を含む方法によって調製された、MHC-E-HBVペプチド複合体を認識するトランスフェクトしたCD8+T細胞も開示される。CMVベクターは、少なくとも1つのHBV抗原をコードする第1の核酸配列を含み、活性UL128タンパク質、活性UL130タンパク質、活性UL146タンパク質、および活性UL147タンパク質またはそれらのオーソログを発現しない。発現ベクターは、第2のCD8+T細胞受容体をコードする核酸配列と、第2のCD8+T細胞受容体をコードする核酸配列に機能し得るように連結されたプロモーターとを含み、第2のCD8+T細胞受容体は第1のCD8+T細胞受容体のCDR3αおよびCDR3βを含む。B型肝炎抗原はB型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、またはポリメラーゼ抗原であり得る。
【0070】
一部の実施形態では、CMVベクターによって誘発されるCD8+T細胞応答は、CD8+T細胞の少なくとも10%がMHC-IIによって提示されるHBVエピトープを指向したものであることを特徴とする。さらなる例では、CD8+T細胞の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%がMHC-IIによって拘束される。一部の実施形態では、MHC-IIによって拘束されたCD8+T細胞は、HBVベクターで免疫された他の対象の少なくとも90%が共有するペプチドを認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞は、MHC-IIによって提示されるHBVスーパートープに対するものである.
【0071】
一部の実施形態では、本方法は、CMV/HBVベクターによって誘発されるCD8+T細胞からCD8+T細胞受容体を特定することをさらに含み、CD8+T細胞受容体はMHC-II/HBV抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態では、CD8+T細胞受容体はRNAまたはDNA配列決定によって同定される。一部の実施形態では、本方法は、MHC-II制限HBVスーパートープを認識するCD8+T細胞受容体をさらに含む。
【0072】
ヒトまたは動物CMVベクターは、ベクターとして使用する場合、ヒトなどの選択した対象において先天的に非病原性である。一部の実施形態では、CMVベクターは、選択した対象において非病原性(宿主内または宿主から宿主への蔓延ができない)となるように改変されている。
【0073】
HBV抗原は、本明細書に記載の通り、いずれのHBVタンパク質またはこれらの断片でもあり得る。
【0074】
本明細書に開示されている組み換えCMVベクターは、ヒトサイトメガロウイルスベクター、アカゲザルサイトメガロウイルスベクター、またはカニクイザルベクターに由来し得る。
【0075】
本明細書に開示されている組み換えCMVベクターは、組み換えCMVウイルスまたはベクターと、医薬的に許容され得る担体または希釈剤とを含む免疫原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物として使用され得る。組換えCMVウイルスまたはベクター(またはその発現産物)を含有する免疫学的組成物は、局所的または全身的な免疫学的応答を誘発する。応答は防御的であり得るが、防御的である必要はない。組換えCMVウイルスまたはベクター(またはその発現産物)を含有する免疫原性組成物も同様に、防御的であり得るが防御的である必要はない局所的または全身的免疫学的応答を誘発する。ワクチン組成物は、局所的または全身的な防御応答を誘発する。したがって、「免疫学的組成物」および「免疫原性組成物」という用語は、(2つの用語が防御的組成物であり得るので)「ワクチン組成物」を含む。
【0076】
本明細書に開示されている組換えCMVベクターは、組換えCMVウイルスまたはベクターおよび医薬的に許容され得る担体または希釈剤を含む免疫原性組成物、免疫学的組成物、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫学的応答を誘導する方法において使用され得る。
【0077】
本明細書に開示されている組換えCMVベクターは、組換えCMVウイルスまたはベクター、および医薬的に許容され得る担体または希釈剤を含有する治療用組成物において使用され得る。本明細書に開示されているCMVベクターは、HBV抗原をコードする配列を含むDNAをCMVゲノムの必須または非必須領域に挿入することによって調製され得る。この方法は、CMVゲノムから1つ以上の領域を欠失させることをさらに含み得る。この方法は、インビボ組換えを含み得る。したがって、この方法は、CMVゲノムの一部と相同なDNA配列に隣接する異種DNAを含むドナーDNAの存在下において細胞適合性培地中でCMV DNAを細胞にトランスフェクトすることを含み得、それによって異種DNAがCMVのゲノムに導入され、次いで、場合によりインビボ組換えによって改変されたCMVを回収することも含み得る。この方法はまた、CMV DNAを切断して切断されたCMV DNAを得ること、異種DNAを切断されたCMV DNAに連結してハイブリッドCMV-異種DNAを得ること、ハイブリッドCMV-異種DNAで細胞をトランスフェクトすること、次いで場合によりHBVDNAの存在によって改変されたCMVを回収してもよいことを含み得る。インビボ組換えが含まれるため、結果的にこの方法はまた、CMVにとって外来のポリペプチドをコードするCMVに天然には存在しないドナーDNAを含むプラスミドも提供し、ドナーDNAは、CMVの必須または非必須領域からのDNAがドナーDNAに隣接するように、CMVゲノムの必須または非必須領域とそれ以外は共線状であるCMV DNAのセグメント内にある。HBVDNAをCMVに挿入することで、そのDNAの安定した組込みおよびその発現をもたらす任意の配向で組換えCMVを生成することができる。
【0078】
組換えCMVベクター中のHBV抗原をコードするDNAはまた、プロモーターを含み得る。プロモーターは、ヒトCMV(HCMV)、アカゲザルCMV(RhCMV)、マウス、または他のCMVプロモーターなどの内因性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むヘルペスウイルスなどのいずれの供給源に由来し得る。プロモーターはまた、EF1αプロモーターなどの非ウイルスプロモーターであり得る。プロモーターは切断型転写活性プロモーターであり得、これは、ウイルスによって提供されるトランス活性化タンパク質でトランス活性化された領域と、切断型転写活性プロモーターが由来する完全長プロモーターの最小プロモーター領域とを含む。プロモーターは、最小プロモーターおよび上流調節配列に対応するDNA配列の会合体から構成され得る。最小プロモーターは、CAP部位+ATAボックス(転写の基本レベルの最小配列;転写の非調節レベル)から構成され、「上流制御配列」は、複数の場合もある上流エレメントおよび複数の場合もあるエンハンサー配列から構成される。さらに、用語「切断型(の)」は、完全長プロモーターが完全な状態では存在していないこと、すなわち、完全長プロモーターの一部が除去されていることを示す。また、切断型プロモーターは、MCMVまたはHCMVなどのヘルペスウイルス、例えばHCMV-IEまたはMCMV-IEに由来し得る。塩基対に基づくと、完全長プロモーターから最大40%、さらには最大90%のサイズ縮小があり得る。プロモーターはまた、改変された非ウイルスプロモーターであり得る。HCMVプロモーターに関しては、米国特許第5,168,062号明細書および第5,385,839号明細書を参照されたい。細胞から発現させるためにプラスミドDNAで細胞をトランスフェクトすることに関しては、Feignerら(1994),J Biol.Chem.269,2550-2561に記載されている。また、様々な感染症に対するワクチン接種の簡単で効果的な方法としてのプラスミドDNAの直接注射に関しては、Science,259:1745-49,1993を参照されたい。したがって、ベクターがベクターDNAの直接注入によって使用され得ることは、本開示の範囲内に含まれる。
【0079】
また、切断型転写活性プロモーターを含む組換えウイルスまたはプラスミドに挿入され得る発現カセットも開示されている。発現カセットは、機能的切断型ポリアデニル化シグナル、例えば、切断されているが機能的であるSV40ポリアデニル化シグナルをさらに含み得る。天然ではより大きなシグナルが提供されることを考慮すると、切断型ポリアデニル化シグナルが機能的であることは実に驚くべきことである。切断型ポリアデニル化シグナルは、CMVなどの組換えウイルスの挿入サイズ制限問題に対処している。発現カセットはまた、それが挿入されるウイルスまたは系に関連するHBVDNAを含み得、DNAは、本明細書に記載のHBVDNAであり得る。
【0080】
ワクチンまたは免疫学的組成物に使用するためのHBV抗原については、Stedman’s Medical Dictionary(第24版、1982年)、例えばワクチンの定義(ワクチン製剤に使用される抗原のリストについて)も参照されたい。そのような抗原またはそれらの抗原からの目的のエピトープが使用され得る。HBV抗原に関して、当業者であれば、過度の実験を行うことなく、ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸および対応するDNA配列の知識から、ならびに特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)およびコドン辞書から、抗原およびそのコードDNAを選択し得るはずである。典型的な抗原として、B型肝炎ウイルスコア、エンベロープ、表面、X、またはポリメラーゼ抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
HBV抗原のTエピトープを決定する1つの方法は、エピトープマッピングを含む。異種抗原の重複ペプチドは、オリゴペプチド合成によって生成される。次いで、個々のペプチドを、天然タンパク質によって誘発される抗体に結合するか、またはT細胞もしくはB細胞の活性化を誘導するそれらの能力について試験する。このアプローチは、T細胞がMHC分子と複合体形成した短い線状ペプチドを認識するので、T細胞エピトープのマッピングに特に有用であった。
【0082】
HBV抗原に対する免疫応答は、一般に以下のように生じる:T細胞は、タンパク質がより小さなペプチドに切断され、別の細胞の表面に位置する「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)」と呼ばれる複合体中に提示されたときのみ、タンパク質を認識する。MHC複合体にはクラスIおよびクラスIIの2つのクラスがあり、各クラスは多くの異なる対立遺伝子から構成される。異なる種、および個々の対象は、異なるタイプのMHC複合体対立遺伝子を有し、それらは異なるMHCタイプを有すると言われる。MHCクラスI分子の1つのタイプは、MHC-E(ヒトにおけるHLA-E、RMにおけるMamu-E、マウスにおけるQa-lb)と呼ばれる。
【0083】
HBV抗原をコードする配列を含むDNAは、それ自体がCMVベクターにおける発現を駆動するためのプロモーターを含み得るか、またはDNAは異種抗原のコードDNAに限定され得ることが知られている。この構築物は、内因性CMVプロモーターに対して、プロモーターに機能し得るように連結され、それによって発現されるような配向で配置され得る。さらに、異種抗原をコードするDNAの複数のコピー、または強いもしくは初期プロモーターもしくは初期および後期のプロモーターの使用、またはそれらの任意の組合せは、発現を増幅または増加させるために行われ得る。したがって、異種抗原をコードするDNAは、CMV内因性プロモーターに対して適切に配置され得るか、またはそれらのプロモーターは、異種抗原をコードするDNAと共に別の位置に挿入されるように転座され得る。2つ以上の異種抗原をコードする核酸をCMVベクターにパッケージングすることができる。
【0084】
開示されたCMVベクターを含有する医薬組成物および他の組成物がさらに開示されている。前述の医薬組成物および他の組成物は、当技術分野で知られている任意の投与手順で使用されるように製剤化され得る。前述の医薬組成物は、非経口経路(皮内、筋肉内、皮下、静脈内など)を介して投与され得る。投与はまた、粘膜経路、例えば、経口、経鼻、生殖器などを介してもよい。
【0085】
開示されている医薬組成物は、当業者に周知の標準的な技術に従って調製され得る。前述の組成物は、特定の患者の種族または種、年齢、性別、体重および状態、ならびに投与経路などの要因を考慮して、当業者に周知の投与量および技術によって投与され得る。組成物は、単独で投与されてもよく、または他のCMVベクターと、または他の免疫学的組成物、抗原性組成物もしくはワクチン組成物もしくは治療用組成物と同時投与または逐次投与されてもよい。前述の他の組成物は、精製された天然の抗原もしくはエピトープまたは組換えCMVベクターもしくは別のベクター系による発現からの抗原もしくはエピトープを含み得、上記要因を考慮して投与される。
【0086】
組成物の例としては、懸濁液、シロップまたはエリキシルなど、開口部、例えば経口、経鼻、肛門、生殖器、例えば膣などを経た投与のための液体調製物、および滅菌懸濁液またはエマルジョンなど、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈内投与(例、注射可能液投与)のための調製物が挙げられる。前述の組成物において、組換え体は、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合した状態であり得る。
【0087】
抗原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物は、典型的には、アジュバントと、所望の応答を誘発するためのある一定量のCMVベクターまたは発現産物とを含み得る。ヒトへの適用では、ミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)が典型的なアジュバントである。研究および獣医学用途で使用されるサポニンおよびその精製成分Quil A、フロイント完全アジュバントおよび他のアジュバントは、ヒトワクチンにおいてそれらを使用する可能性を制限する毒性を有する。化学的に規定された調製物、例えばムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA、リン脂質コンジュゲート、例えばGoodman-Snitkoffら,J Immunol.147:410-415(1991)に記載されたもの、Millerら,J Exp.Med.176:1739-1744(1992)に記載されたプロテオリポソーム内でのタンパク質の封入、およびNovasome脂質小胞(Micro Vescular Systems,Inc.,Nashua、N.H.)などの脂質小胞へのタンパク質の封入も使用することができる。
【0088】
組成物は、非経口(例えば、筋肉内、皮内または皮下)投与または開口部投与、例えば、舌周囲(例えば、経口)投与、胃内投与、口腔内、肛門内、膣内などを含む粘膜投与による免疫化のための単一剤形に包装されてもよい。また同様に、有効な投薬量および投与経路は、組成物の性質、発現産物の性質、組換えCMVが直接使用される場合は発現レベル、および宿主の種族または種、年齢、性別、体重、状態および性質などの既知の要因、ならびにLD50および既知であり過度の実験を必要としない他のスクリーニング手順によって決定される。発現産物の投与量は、数マイクログラム~数百マイクログラム、例えば5μg~500μgの範囲であり得る。CMVベクターは、これらの投与量レベルでの発現を達成するために任意の適切な量で投与され得る。非限定的な例では、CMVベクターは少なくとも10pfuの量で投与され得、すなわち、CMVベクターは、少なくともこの量で投与され得るか、または約10pfu~約10pfuの範囲の量で投与され得る。他の適切な担体または希釈剤は、保存剤の有無にかかわらず、水または緩衝生理食塩水であり得る。CMVベクターは、投与時に再懸濁するために凍結乾燥されてもよく、または溶解状態であってもよい。「約」は、定義した値の1%、5%、10%または20%内を意味し得る。
【0089】
本開示のタンパク質およびそれらをコードする核酸が、本明細書で具体例として示され、記載された正確な配列とは異なり得ることは言うまでもない。したがって、本開示は、配列が本開示の方法に従って機能する限り、示された配列に対する欠失、付加、切断および置換を考慮に入れている。これに関して、置換は、一般に、本質的に保存的であり、すなわち、アミノ酸の一ファミリー内で起こる置換である。例えば、アミノ酸は一般に4つのファミリー:(1)酸性-アスパルタートおよびグルタマート、(2)塩基性-リジン、アルギニンおよびヒスチジン、(3)非極性-アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファン、(4)非荷電極性-グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニンおよびチロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることがある。イソロイシンもしくはバリンによるロイシンの単独置換、またはその逆、グルタマートによるアスパルタートの単独置換またはその逆、セリンによるトレオニンの単独置換またはその逆、または構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の同様の保存的置換は、生物学的活性に大きな影響を及ぼさないことが合理的に予測可能である。したがって、記載されたタンパク質と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、タンパク質の免疫原性に実質的な影響を及ぼすことがない軽微なアミノ酸置換を有するタンパク質は、本開示の範囲内に含まれる。
【0090】
本開示のヌクレオチド配列は、コドン最適化されていてもよく、例えば、コドンは、ヒト細胞における使用のために最適化されていてもよい。例えば、いかなるウイルスまたは細菌配列でもそのように改変され得る。HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスでは、多数の稀少コドンが用いられており、これらのコドンを所望の対象で一般的に使用されるコドンに対応するように改変することによって、Andreら,J Virol.72:1497-1503、1998に記載されているようにHBV抗原の発現増強が達成され得る。
【0091】
CMVベクターおよびその中に含まれる糖タンパク質の機能的および/または抗原的に等価なバリアントおよび誘導体をコードするヌクレオチド配列が検討される。これらの機能的に等価なバリアント、誘導体およびフラグメントは、抗原活性を保持する能力を示す。例えば、コードされたアミノ酸配列を変化させないDNA配列の変化、ならびにアミノ酸残基の保存的置換、1つまたは少数のアミノ酸の欠失または付加、およびアミノ酸類似体によるアミノ酸残基の置換をもたらす変化は、コードされたポリペプチドの特性に大幅な影響を与えることはないものである。保存的アミノ酸置換は、グリシン/アラニン、バリン/イソロイシン/ロイシン、アスパラギン/グルタミン、アスパラギン酸/グルタミン酸、セリン/トレオニン/メチオニン、リジン/アルギニン、およびフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。一実施形態において、バリアントは、目的の抗原、エピトープ、免疫原、ペプチドまたはポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0092】
配列同一性または相同性は、配列ギャップを最小化しながら重複および同一性を最大化するように整列させたときに配列を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、いくつかの数学的アルゴリズムのいずれかを使用して決定され得る。2つの配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、KarlinおよびAltschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993;90:5873-5877の場合と同様に修正された、KarlinおよびAltschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1990;87:2264-2268のアルゴリズムである。
【0093】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの他の例として、MyersおよびMiller,CABIOS 1988;4:11-17のアルゴリズムがある。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4が使用され得る。局所的な配列類似性の領域を特定し、アライメントするためのさらに別の有用なアルゴリズムは、PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988;85:2444-2448に記載のFASTAアルゴリズムである。
【0094】
本開示による使用に好都合なのは、WU-BLAST(ワシントン大学BLAST)バージョン2.0ソフトウェアである。いくつかのUNIX(登録商標)プラットフォーム用のWU-BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executablesからダウンロードすることができる。このプログラムは、WU-BLASTバージョン1.4に基づいており、このバージョン1.4は、腫瘍において、パブリックドメインのNCBI-BLASTバージョン1.4に基づいている。(AltschulおよびGish,1996,Local alignment statistics,Doolittle ed.,Methods in Enzymology 266:460- 480;Altschulら,Journal of Molecular Biology 1990;215:403-410;GishおよびStates,1993;Nature Genetics 3:266-272;KarlinおよびAltschul,1993;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877、それらのすべてが参照によって本開示に含まれるものとする)。
【0095】
本開示の様々な組換えヌクレオチド配列ならびに抗体および/または抗原は、標準的な組換えDNAおよびクローニング技術を使用して作製される。そのような技術は当業者に周知である。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版(Sambrookら、1989)を参照されたい。
【0096】
本開示のヌクレオチド配列は「ベクター」に挿入され得る。「ベクター」は、当業者によって幅広く使用され、理解されており、本明細書で「ベクター」は、当業者にとってそれが意味するものに沿って使用される。例えば、「ベクター」は、1つの環境から別の環境への核酸分子の移動を可能もしくは促進するか、または核酸分子の操作を可能もしくは促進する媒体を指すものとして当業者によって慣用されている。
【0097】
本開示のウイルスの発現を可能にするいずれのベクターも、本開示に従って使用され得る。特定の実施形態において、開示されたウイルスは、コードされた異種抗原(例えば、病原特異的抗原、HIV抗原、B型肝炎抗原、および抗体)を製造するためにインビトロで(例えば、無細胞発現系を使用して)および/またはインビトロで増殖させた培養細胞で使用され得、次いで、タンパク質性ワクチンの製造などの様々な用途に使用され得る。前述の用途の場合、インビトロおよび/または培養細胞におけるウイルスの発現を可能にするものであればいかなるベクターでも使用することができる。
【0098】
開示された異種抗原を発現させるために、異種抗原のタンパク質コード配列は、タンパク質の転写および翻訳を指示する調節配列または核酸制御配列に「機能し得るように連結された」状態であるべきである。本明細書で使用される場合、コード配列と核酸制御配列またはプロモーターが、コード配列の発現または転写および/または翻訳を核酸制御配列の影響下または制御下に置くような形で共有結合されている場合にそれらは「機能し得るように連結された」と言われる。「核酸制御配列」は、限定されないが、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン、およびそれに機能し得るように連結された核酸配列またはコード配列の発現を指示する本明細書に記載される他のエレメントなど、いずれかの核酸エレメントであり得る。本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼIIの開始部位の周りに集中しており、本開示のタンパク質コード配列に機能し得るように連結されたときに、コードされたタンパク質の発現を誘導する一群の転写制御モジュールを指す。本開示の導入遺伝子の発現は、限定されないが、テトラサイクリンなどの抗生物質、エクジソンなどのホルモン、または重金属などの何らかの特定の外部刺激因子にさらされた場合にのみ転写を開始する、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下にあり得る。プロモーターはまた、特定の細胞型、組織または臓器に特異的であり得る。多くの適切なプロモーターおよびエンハンサーが当技術分野では既知であり、いずれかのかかる適切なプロモーターまたはエンハンサーが、本開示の導入遺伝子の発現のために使用され得る。例えば、適切なプロモーターおよび/またはエンハンサーは、真核生物プロモーターデータベース(EPDB)から選択され得る。
【0099】
本開示に従って使用されるベクターは、本開示の抗原が発現され得るように、プロモーターまたはエンハンサーなどの適切な遺伝子調節領域を含み得る。
【0100】
本明細書に記載されたCMVベクターは、宿主から宿主への伝播を妨げることができ、それにより、ウイルスが、免疫無防備状態の対象またはCMV感染の結果として合併症に直面し得る他の対象に感染することができないようにする突然変異を含み得る。本明細書に記載のCMVベクターはまた、免疫優性エピトープおよび非免疫優性エピトープの提示ならびに非カノニカルMHC拘束をもたらす突然変異を含み得る。しかしながら、本明細書に記載のCMVベクターにおける突然変異は、CMVに以前に感染したことがある対象を再感染させるベクターの能力に影響を及ぼさない。前述のCMV突然変異は、例えば、米国特許出願公開第2013-013676S号明細書、第2010-0142S23号明細書、2014-014103S号明細書、およびPCT出願公開第WO2014/13S209号に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
開示されたCMVベクターは、例えば、高いパーセンテージのCD8+T細胞応答がMHC-EまたはMHC-II(またはそのホモログもしくはオーソログ)によって拘束されていることを特徴とする免疫応答を含む、CD8+免疫応答を含む免疫原性応答を生じさせることを目的とする場合、インビボで投与され得る。例えば、いくつかの例では、RhCMVを使用した免疫原性組成物およびワクチンの前臨床試験を行うために、アカゲザルなどの実験動物において、開示されたCMVベクターを使用することが望ましい場合がある。他の例では、臨床試験における場合およびHCMVを使用する免疫原性組成物の実際の臨床使用のためなど、開示されたCMVベクターをヒト対象で使用することが望ましいことになる。
【0102】
そのようなインビボ適用のために、開示されたCMVベクターは、医薬的に許容され得る担体をさらに含む免疫原性組成物の一成分として投与される。一部の実施形態において、本開示の免疫原性組成物は、病原特異的抗原を含む異種抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用であり、病原性感染の予防、改善または治療のための病原特異的抗原に対する予防用または治療用ワクチンの1つ以上の成分として使用され得る。本開示の核酸およびベクターは、遺伝子ワクチン、すなわち本開示の抗原をコードする核酸をヒトなどの対象に送達するためのワクチンを提供するために特に有用であり、その結果、抗原が対象において発現されることで免疫応答が誘発される。
【0103】
免疫化スケジュール(またはレジメン)は、動物(ヒトを含む)について周知であり、特定の対象および免疫原性組成物について容易に決定され得る。したがって、免疫原を対象に1回または複数回投与することもあり得る。好ましくは、免疫原性組成物の個別の投与の間に設定された時間間隔がおかれる。この間隔は、対象ごとに異なるが、典型的には、10日間~数週間の範囲であり、多くの場合、2週間、4週間、6週間または8週間である。ヒトの場合、間隔は典型的には2~6週間である。本開示の特に有利な実施形態では、間隔はより長く、有利には約10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間、26週間、28週間、30週間、32週間、34週間、36週間、38週間、40週間、42週間、44週間、46週間、48週間、50週間、52週間、54週間、56週間、58週間、60週間、62週間、64週間、66週間、68週間、または70週間である。免疫化レジメンには、典型的には免疫原性組成物の1~6回の投与が含まれるが、わずか1回または2回または4回の投与が含まれることもある。免疫応答を誘導する方法はまた、免疫原と共にアジュバントを投与することを含み得る。場合によっては、年1回、年2回または他の長い間隔(5~10年)のブースター免疫化により初期免疫化プロトコルが補完され得る。本方法はまた、様々なプライム-ブーストレジメンを含む。これらの方法では、1回以上のプライミング免疫化の後に1回以上のブースティング免疫化が続く。実際の免疫原性組成物は、各免疫化について同じであっても異なっていてもよく、免疫原性組成物のタイプ(例、タンパク質または発現ベクターを含む)、経路、および免疫原の製剤も変化し得る。例えば、発現ベクターがプライミングステップおよびブースティングステップに使用される場合、それは同じ型または異なる型(例えば、DNAまたは細菌もしくはウイルス発現ベクター)のいずれであってもよい。一つの有用なプライムブーストレジメンでは、4週間間隔で2回のプライミング免疫化が行われ、続いて最後のプライミング免疫化の4週間後および8週間後に2回のブースティング免疫化が行われる。プライミングレジメンおよびブースティングレジメンを実現させるために本開示のDNA発現ベクター、細菌発現ベクターおよびウイルス発現ベクターを使用して包含されるいくつかの順列および組合せが存在することも、当業者には自明の理であるはずである。CMVベクターは、異なる病原体に由来する異なる抗原を発現しながら繰り返し使用され得る。
【実施例
【0104】
実施例1:RHCMV/HBV接種アカゲザルはHBV抗原に対するMHC-E拘束CD8+T細胞応答を行う
抗原標的を発現するように操作されたRhCMV68-1株ベクターは、非古典分子MHC-E、通常NK細胞シグナル伝達に関与する単形MHCクラスIb分子、またはMHC-IIのいずれかによって拘束された、広範なエフェクター記憶CD8+T細胞応答を誘発する。サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原を発現するRhCMVワクチンベクターは、高病原性株SIVmac239の低用量直腸内および膣内反復チャレンジによりRMの50%を保護した。
【0105】
RhCMV/HBVによって誘導された非従来型拘束CD8+T細胞応答が、HBV感染肝細胞を認識するかどうかを明らかにした。これらのユニークなCD8+T細胞拘束分子を標的とすることは、HBV感染治療の新しいパラダイムを構成すると考えられ、ヒトとサルの間でMHC-Eが極めて保存されていることから、理論的にはすべての患者に普遍的に適用することが可能である。(Wuら,2018.The Role of MHC-E in T Cell Immunity Is Conserved among ヒトs,Rhesus Macaques,and Cynomolgus Macaques.J.Immunol.200:49-60)。
【0106】
4匹のアカゲザル(RM)に、HBV遺伝子型D血清型aywコア、表面、及び/又はポリメラーゼ抗原を発現するRhCMV68-1株を接種した。遺伝子型D、血清型aywHBVコア、ポリメラーゼ、およびS Ag遺伝子断片は、以前に記載されたプラスミドからPCRによって単離された(Frank Chisari,Scripps Research Institute)。プラスミドpCDNA3-POL/ENVから得られたポリメラーゼのN末端の333アミノ酸(Kakimi,K.ら,2002.Immunogenicity and tolerogenicity of hepatitis B virus structural and nonstructural タンパク質:implications for immunotherapy of persistent ウイルス infections.J.Virol.76:8609-8620)をC末端HA-エピトープでタグ付けし、PCR媒介変異誘発によってプラスミドpCMV-S2/Sから得られたS AgのC末端の228アミノ酸に融合して(Michel,M.L.ら,1995.DNA-mediated immunization to the hepatitis B surface antigen in mice:aspects of the humoral response mimic hepatitis B ウイルス infection in ヒトs.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:5307-5311.)融合S/PolNを生成した(左フォワードプライマー:
59-CATCGAGCTAGCACCATGGAGAACATCACATCAGG-39(配列番号1)、左リバースプライマー:59-GTGTTGATAGGATAGGGGAATGTATACCCAAAGAC-39(配列番号2)、右フォワードプライマー:59-GTCTTTGGGTATACATTCCCCTATCCTATCAACAC-39(配列番号3)、右リバースプライマー:59-GGAATCGTCGACTCAAGCGTAATCTGGAACATCGTATGGGTAAAGATTGACGATAAGGGAGAGGCAG-39(配列番号4))。最終PCR産物を、細菌人工染色体(BAC)リコンビニアリング用テンプレートであるようにpJetベクター(Thermo Fisher Scientific)またはpORIにblunt末端クローンニングして発現を評価した。プラスミドpCDNA3-POL/ENVから得られたポリメラーゼのC末端の416アミノ酸を(Kakimi,K.ら,2002.Immunogenicity and tolerogenicity of hepatitis B virus structural and nonstructural proteins:implications for immunotherapy of persistent viral infections.J.Virol.76:8609-8620)PCR媒介変異誘発によってHA-エピトープでタグ付けし、pORIに挿入した(フォワードプライマー:59-GTGGTACCCTCGAGGATTGGGGACCCTGCGCTGAACATGGAG-39(配列番号5)、リバースプライマー:59-TCAGTCGACCTAAGCGTAATCTGGAACATCGTATGGGTAC-39(配列番号6))。Coreをコードする遺伝子をプラスミドpCDNA-CORE(22)からPCR増幅し、pORIに挿入した(フォワードプライマー:59-CTGCTAGCATGGACATTGACCCTTATAAAGAATTTGG-39(配列番号7)、リバースプライマー:59-CTAGGTACCACATTGAGATTCCCGAGATTGAG-39(配列番号8))。その後、C末端のポリメラーゼ断片をKpnIおよびSalIを用いてCoreの下流に挿入して、HBVコアおよびポリメラーゼのC末端の融合タンパク質(Core/PolC)を生成した。KpnI部位は、2-アミノ酸(GT)リンカーを2つのタンパク質の間に追加する。68-1RhCMV/Core/PolCおよび68-1RhCMV/S/PolNを生成するために、68-1RhCMVBACにおけるpp71をコードするRh110遺伝子(Chang,W.L.W.ら,2003.Cloning of the full-length rhesus cytomegalovirus genome as an infectious and self-excisable bacterial artificial chromo一部の for analysis of ウイルス pathogenesis.J.Virol.77:5073-5083)を、修飾ガラクトキナーゼ(galK)選択システム、望ましくない異種配列を導入せずにDNA修飾を可能にする2段階の方法を用いて置き換えた(Warming,S.ら,2005.Simple and highly efficient BAC recombineering using galK selection.Nucleic Acids Res.33:e36)。Rh110の置換を使用して、健常者のAg応答を誘発する一方で68-1RhCMVベクターを弱毒化できることが最近実証された(Marshall,E.E.ら,2019.Enhancing safety of cytomegalovirus-based vaccine vectors by engaging host intrinsic immunity.Sci.Transl.Med.11:eaaw2603 10.1126/scitranslmed.aaw2603)。
【0107】
Rh110を除くために、68-1RhCMV BACを含むコンピテントSW105細菌を、Rh110に対し50-bpの隣接相同性を有するgalK/カナマイシンカセットを含むPCR生成物でエレクトロポレーションした。陽性選択のためにカナマイシン/クロラムフェニコールLuria Bertaniアガーに30℃で細菌を蒔いた。galK/カナマイシンカセットをHBV融合遺伝子に置き換えるために、Rh110に対し同じ隣接相同性を有するHBVS-PolN融合またはHBVCore-PolC融合を含むPCR生成物をエレクトロポレーションし、陰性選択のために、グリセロールを炭素源として有する2-デオキシ-ガラクト(イヌ)クロラムフェニコール最小培地プレートに細菌を蒔いた。相同組み換え用PCRプライマーは以下の通りである:Rh110 S/PolNフォワード:59-GATCACGTCATTGACACCGGCCTCCCACCAGCTCTCACATTCTCCGCATCACCATGGAGAACATCACATCAGGAT-39(配列番号9)、Rh110 S/PolNリバース:59-CAAAATATTATTACATGGTACGCAATTTATTGTCTATTTTCGTTATTTGTTTATTCAAGCGTAATCTGGAACATCGTAT-39(配列番号10)およびRh110 Core/PolCフォワード:59-GATCACGTCATTGACACCGGCCTCCCACCAGCTCTCACATTCTCCGCATCACCATGGACATTGACCCTTATAAAGAAT-39(配列番号11)、Rh110 Core/PolCリバース:59-CAAAATATTATTACATGGTACGCAATTTATTGTCTATTTTCGTTATTTGTTTATCTAAGCGTAATCTGGAACATCGTAT-39(配列番号12)。68-1RhCMV/Coreを生成するために、pCDNA-COREからHBVコア遺伝子を増幅し、PCRによってN末端のFLAG-タグを導入した(フォワードプライマー:59-CTGCTAGCATGGATTACAAGGATGACAAGGACATCGACCCTTATAAAGAATTTGG-39(配列番号13)、リバースプライマー:59-CTAGTCGACACATTGAGATTCCCGAGATTGAG-39)(配列番号14)。増幅産物を、EF1aプロモーターの下流のpORIにクローニングした。この発現カセットを、68-1RhCMVのRh211領域に、フリッパーゼ認識標的部位に隣接したKan耐性カセットと共に、相同組み換えによって、Rh211の領域と50-bp相同性を有するプライマーを使用して挿入した(フォワードプライマー:59-GGGAAATCACGTCATCAGGCTGGGTAGTCAACATGGGCATACGAAACTTGCCCGAATAGATGCTCTCACTTAACGGCTGACATG-39(配列番号15)、リバースプライマー:59-CCAGAATGTGCTCTACTTTTTGGCCAGCGGGTTGGATGATTTCGCGCGTCATGGACTGCTTCACTGTAGCTTAGTACGTTAAAC-39(配列番号16))。生体内組み換えおよびKan耐性選択した組換体のために、RhCMV 68-1 BACを含むEL250細菌にPCR断片をエレクトロポレーションした。Kan耐性カセットを、温度によって誘発されたフリッパーゼ組み換えによって除去した。生じたBACを、制限消化、組み換え部位のPCR分析、およびIllumina MiSeq sequencerでの次世代配列決定によって分析した。この配列分析によって、S/PolNthatの2つの点変異がPCR増幅中に導入され、S Agのアミノ酸交換A118TおよびT125Mを生じたことが明らかとなった。BAC DNAを、alka株溶解、フェノール/クロロホルム抽出、およびイソプロパノール沈殿を用いて精製し、BAC DNAの形質移入によって、テロメル化pp71発現アカゲザル線維芽細胞または初代アカゲザル線維芽細胞のリポフェクタミン2000(製造業者Thermo Fisher Scientificのプロトコルに従って)を用いて、ウイルスを再構成した(Warming,S.ら,2005.Simple and highly efficient BAC recombineering using galK selection.Nucleic Acids Res.33:e36)。テロメル化RM線維芽細胞を68-1RhCMV/Surface/PolNまたはRhCMV/Core/PolCに感染させることによって、HBV Agsの発現を確認した。十分な細胞変性効果で細胞を回収し、SD試料緩衝液に溶解した。HAでタグ付けされたHBVタンパク質を含むpORI発現プラスミドでトランスフェクトした(リポフェクタミン2000)293T細胞は陽性対照として機能した。電気泳動分離後、イムノブロットを抗HAABMMS-101P(Covance MMS)を用いて実施した。
【0108】
2匹のRM(RM1、RM2)に両方68-1RhCMV/表面/PolNおよび68-1RhCMV/Core/PolCベクターの両方を接種し、2匹の追加のRM(RM3、RM4)に、EF1aプロモーターの下でHBV Coreを発現した68-1RhCMVベースのベクターを接種した。Agsのそれぞれに対するCD8+T細胞応答を、使用それぞれAgに対応する重複する15量体ペプチドのプールを使用して、ICSによって長期的にモニターした。ワクチン接種したRMの血液におけるこれらの抗原に対する長期的なCD8+T細胞応答を観察した(図1A)。
【0109】
これらの動物でのHBVコア(HBcAg)に特異的なCD8+T細胞応答のMHC拘束は、以前に説明されている通りMHC-I、MHC-IIおよびMHC-Eによって特異的に提示を阻害する試薬による細胞内サイトカイン染色によって特徴付けられた(Hansenら,2016.Broadly targeted CD8 T cell responses restricted by major histocompatibility complex E.Science 351:714-720;Hansenら,2013.Cytomegalovirus ベクター violate CD8+ T cell epitope recognition paradigms.Science 340:1237874-1237874.)。SIVまたはMycobacterium tuberculosis抗原を発現するRhCMV株68-1と同様に、RhCMV株68-1/HBVベクターが、HBcAgペプチドの広い配列を標的とするHBV特異的な、MHC-E-およびMHC-II拘束CD8+T細胞応答を誘発したことが見られた(図1B)。
【0110】
RhCMV/HBVのMHC-E拘束が、観察されたCD8+T細胞応答を生じたことをさらに確認するために、RhCMV/HBVワクチン接種RMからの脾細胞を、単一のヒト(HLA)またはアカゲザル(Mamu)MHC-E対立遺伝子を発現するように形質導入したK562細胞(MHC-Null)で刺激し、図1Bでのブロッキングによって拘束されたMHC-Eとして同定された3つの個別のHBcAg15量体ペプチドのうちの1つで瞬間適用した。MHC-Eを発現する細胞のみこれらのCD8+T細胞にHBcAg15量体を提示できる。HBcAgに特異的なCD8+T細胞は、HLA-EおよびMamu-Eの両方に関連して提示されたそれらの同種抗原を認識した(図1C)。これらの結果は、RhCMV/HBVワクチン接種RMにおけるMHC-E拘束HBV特異的CD8+T細胞の存在を実証し、さらに、高機能な保存霊長類MHC-E分子を支持する。
【0111】
実施例2:HBV感染初代肝細胞はインビトロでMHC-Eを発現する
次に、初代肝細胞がMHC-Eを発現するかどうか決定した。初代肝細胞(PH)を、3匹の無関係のRMおよび3人の無関係のヒトドナー(HD)から単離した。RM初代肝細胞を単離するために、RM肝臓の単葉を、200mLの予灌流培地(0.5mM EGTA(Bio-World,cat#:40120128-1)、10IU/mlヘパリン(Fresenius Kabi,cat#:C504730)、カルシウムおよびマグネシウムを有するHBSS(Fisher Scientific,cat#:24-020-117))で灌流し、続いてカルシウムおよびマグネシウムがない200mLのHBSS(Fisher Scientific,cat#:SH3003103)で灌流して、残存するEGTAを除去した。次に、42℃に温めた100mlのコラゲナーゼ培地(DMEM/F12(Gibco,cat#:11320-082)、1mM塩化カルシウム(Sigma-Aldrich,cat#:C5670-100G)、20mMのHEPES(HyClone,cat#:SH30237.01)、1mg/mlコラゲナーゼIV(Sigma-Aldrich,cat#:C9722-50MG))を単葉に灌流し、廃棄した。この後、42℃で、30分間~1時間、肝葉のサイズに応じて75~150mL/minの速度で、肝葉へ150mlコラゲナーゼ培地を再循環させた。コラゲナーゼ灌流後、肝臓を外科用メスで切り刻み、残存するコラゲナーゼ培地で洗浄し、培地を茶こし器でろ過した。PHを洗浄培地(DMEM/F12、2%ウシ増殖血清(HyClone,cat#:SH3054103)、23mM HEPES緩衝液、0.6mg/mlグルコース、2mM L-グルタミン(HyClone,cat#:SH3003401)、1x抗生物質/抗真菌薬(HyClone,cat#:SV3007901)、および0.1mg/mlゲンタマイシン(生命技術,cat#:15750-060))中室温で3回洗浄し、それぞれの洗浄の間に50x gで3分間遠心分離した。3回目の洗浄回転の前に、PHを70μMフィルターに通して単細胞懸濁液を確実にした。その後、PHを50mlの三角フラスコ中20mlの36%等張パーコール(GE Healthcare,cat#:17-0891-01)に、PH培地を希釈剤(DMEM/F12、10%ウシ増殖血清、23mM HEPES緩衝液、0.6mg/mlグルコース、2mM L-グルタミン、1x抗生物質/抗真菌薬、および0.1mg/mlゲンタマイシン)として使用して懸濁し、200x gで、7分間遠心した。その後、精製したPHペレットを室温のPH培地に再懸濁し、計数した。肝細胞用コラーゲン添加プレートを、0.01%酢酸中0.2mg/mLコラーゲンR(Serva,cat#:47254)を用いて調製し、1mlのHBSSで洗浄する前に少なくとも20分間プレート上に置き、その後すぐに2x10PH/ウェルで12ウェルプレートに蒔いた。プレートを37℃、5%CO2で置いた。次の日、ウェルをHBSSで2回洗浄し、残りの実験のために、1.8%DMSOを添加した1mlのPH培地(DMSOを含む初代肝細胞培地、PH-DMSO)で培養した。
【0112】
ヒトドナー初代肝細胞(HD PH)をマウスヒト化肝臓から単離し、Yecuris,Incから購入した。ヒト化マウスを、患者から回収した凍結保存初代肝細胞を用いて生成し、人口統計は以下の通りであった:HD1(13歳、女性、ヒスパニック、HBV未感作)、HD2(13歳、女性、白人、HBV未感作)、HD3(27歳、男性、白人、HBV未感作)。
【0113】
RMおよびHDのPH MHC提示を、W6/32クローンによるバルクMHC-Iの表面発現、HLA-DR染色によるMHC-IIの表面発現、および4D12クローンによるMHC-Eの表面発現によって決定した。以前に、4D12は、Mamu-Eおよび非古典的Mamu-Ia分子を特異的に染色することが実証されていたものである。すべての3人のヒトドナーは、1つのHLA-Aおよび1つのHLA-C対立遺伝子を共有した(表1)。したがって、手順の前に、MHC-E特異的な4D12クローンがHLA-Eのみ染色し、3つのHDの間で共有されるHLA-AまたはHLA--C分子を染色しないことを確認した(図2A)。MHC-Eの発現を染色によって調べ、両方の種からの初代肝細胞の大部分はMHC-Eを発現した(図2Bおよび2C)。
表 1.HD PHのMHC遺伝子型
【表1】
【0114】
HBV感染が初代肝細胞表面のMHC-Eの発現に影響を与えるかどうかを調べるために、同じHBV感染ヒトドナーから初代肝細胞を採取した。単離したアカゲザル初代肝細胞を蒔いてから1日後に、肝臓特異的なTTRプロモーター下でヒトNTCP(MOI 10)を発現する複製不全アデノウイルスセロタイプ5を添加して、2日間培養した。2日目に、細胞に1mlのPH-DMSO培地を再供給した。アデノウイルス形質導入後4日目に、初代肝細胞を1mlのHBSSで2回洗浄し、100のMOIのHBV含有培地(4%PEG6000を含有するPH-DMSO,Sigma-Aldrich,cat#:81253-250G)に重ね、一晩インキュベートした。翌朝、ウェルを1mlのHBSSで3回洗浄した後、1mlの初代肝細胞-DMSOで残りの実験のために培養した。
【0115】
蒔いてから1日後、ヒトドナー初代肝細胞を、100のMOIのHBV含有培地(4%PEG6000を含有するPH-DMSO,Sigma-Aldrich,cat#:81253-250G)に重ね、一晩インキュベートした。翌朝、ウェルを1mlのHBSSで3回洗浄した後、1ml初代肝細胞-DMSOで残りの実験のために培養した。
【0116】
ヒトドナー初代肝細胞のHBV感染を、細胞の染色前に上清のHBVエンベロープ抗原(HBeAg)のレベルを測定することによって確認した。初代肝細胞を、HBV感染後4日目に細胞HBcAgと共に4MHCマーカー(MHC-I、MHC-E、およびMHC-II)で共染色した。これは、細胞内HBcAgが初めて検出された時点であったためである。4D12抗体による強い染色がHBV感染PHおよびHBV未感作の両方で観察され、MHC-Eの高い発現を示した(図2Dおよび2E)。これに対して、HLA-DR発現は、すべての3つのヒトドナー初代肝細胞試料で最小限か、またはなかった。これは、以前に発表された結果と一致している(Senaldiら,1991. Class I and class II major histocompatibility complex antigens on hepatocytes: importance of the method of detection and expression in histologically normal and diseased livers. J. Clin. Pathol. 44: 107-114.)。表面MHCレベルを評価する前に、初代肝細胞の生体外操作が、これらの細胞の一部にMHC-E発現を失わせることを誘発した可能性がある。それにもかかわらず、これらの結果は、HBV感染初代肝細胞がMHC-Eを発現し、MHC-Eが潜在的なHBV特異的CD8+T細胞の拘束エレメントとなる可能性があることを示した。
【0117】
実施例3:MHC-E拘束CD8+T細胞FROMRHCMV/HBV接種アカゲザルは、HBV感染同種および異種初代肝細胞を認識する
MHC研究により、HBV感染にかかわらず、ヒトドナーおよびアカゲザルの初代肝細胞に高レベルのMHC-E発現があることが明らかとなった。したがって、霊長類におけるMHC-Eの高い機能保存性を考えると、RhCMV/HBVを接種したアカゲザルのCD8+T細胞は、同種異系のHBV感染したアカゲザル初代肝細胞を認識するであろうという仮説が立てられた。この仮説を裏付けるように、RM1とRM2のCD8+T細胞(バルク脾臓細胞および精製CD8β+T細胞)は、血縁関係のない2匹のアカゲザルドナーからのHBV感染初代肝細胞を認識したが、HBV未感染初代肝細胞には反応しなかった(図3A)。
【0118】
HBV感染初代肝細胞標的を認識するCD8+T細胞のMHC拘束をより包括的に決定するために、図1に示すMHC特異的ブロッキング試薬を用いて、一連の認識実験を行った。
【0119】
HBV感染前に、ベースラインとして1ウェルの初代肝細胞を採取し、染色を行った。感染後2日目から、HBV感染およびHBVナイーブの初代肝細胞の各1ウェルを0.5%トリプシン-EDTA(Fisher Scientific,cat#:SH30236.01)で回収し、氷冷FACS緩衝液(PBS,Fisher Scientific,cat#:SH30256FS,10%ウシ胎児血清を含む)で2回洗浄した。細胞を抗HLA-E抗体(クローン:4D12、Origene,cat#:LS-C179742)と共に30分間4℃でインキュベートし、氷冷FACS緩衝液で2回洗浄後、F(ab)2-ヤギ抗マウスIgG(HL)-APC(Invitrogen,cat#:A10539)と共に30分間4℃でインキュベートした。次に、細胞を氷冷PBSで2回洗浄、pan-MHC-I-PerCP-Cy5.5(クローン:W6/32,Biolegend Inc.,cat#:311419)、抗HLA-DR Alexa700(クローン:L243(BD Biosciences,cat#:560743)、およびLive/Dead fixable yellow(Invitrogen,cat#:L-34959)と共に30分間4℃でインキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(eBioscience,cat#:00-5523-00)を用いて室温で1時間固定した。固定前に、すべての洗浄スピンを350x g、3分間で実施した。固定後、細胞を透過化緩衝液(eBioscience,cat#:00-8333-56)に懸濁した。固定後のすべての洗浄スピンを830x g、3分間で実施した。Lightning-Link R-PEキット(Innova Biosciences,cat#:703-0005)を用いて、R-フィコエリトリン(PE)に結合したB型肝炎ウイルスコア抗原抗体(クローン:13A9,Fisher Scientific,cat#:MA1-7606)と共に初代肝細胞を4℃で1時間インキュベートした。透過化緩衝液で細胞を3回洗浄した後、Becton-Dickenson LSR-IIで回収した。解析をFlowJo X(TreeStar Inc.)で実施した。すべての解析で、大きく複雑なPHの光散乱シグネチャーにゲーティングし、その後、特異的なMHCおよびHBVマーカーを評価した。
【0120】
RhCMV/HBVワクチン接種RMの脾臓からの単核細胞調製物において、フローサイトメトリーICSによって測定した。簡単に言えば、脾臓細胞又は単離CD8+T細胞を、HBV感染又はHBVナイーブ初代肝細胞標的及び共刺激分子CD28及びCD49d(BD Biosciences)と共に1時間インキュベートし、その後、ブレフェルジン(Sigma-Aldrich)をさらに8時間添加した。初代肝細胞標的共培養を行わない共刺激は、バックグラウンドコントロールとした。応答のMHC拘束を、標的初代肝細胞との共培養前に、pan抗MHC-I抗体(25mg/ml、クローン:W6-32)、VL9ペプチド(20uM)、CLIPペプチド(MHC-II関連不変鎖、アミノ酸89~100、10mg/ml)、または抗HLA-DR抗体(10mg/ml、クローン:L243)の存在下で、室温で1時間PH標的を予めインキュベートすることによって決定した。刺激した細胞を固定、透過、染色し、LSR-II装置(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリー分析を行った。解析はFlowJo Xソフトウェア(Tree Star,Inc.)を用いて行った。小型リンパ球の光散乱シグネチャーのゲーティングに続いて、CD3+集団、次にCD4-/CD8+T細胞サブセットの順でゲーティングを行った。CD8+T細胞集団の抗原特異的反応頻度は、IFN-γの細胞内発現によってルーチンに決定された。
【0121】
HBV感染標的またはHBVナイーブ標的をHBV感染後6日目(MOI=100)に回収し、ブロッキング剤W6/32抗体(pan MHC-I)、VL9ペプチド(MHC-E)、CLIP(MHC-II)またはHLA-DR抗体(MHC-II)とインキュベートし、脾細胞または単離したCD8β+T細胞と一晩共培養をした。共培養後、CD8+T細胞をIFN-γとTNF-αで細胞内染色し、標的の認識を評価した。HBV感染RM PHのCD8+T細胞認識は、W6/32抗体とVL9ペプチドでブロックされたが、CLIPやHLA-DRではブロックされず、HBV感染標的に対する応答の全体がMHC-E拘束されていることが示された(図3A)。
【0122】
MHC-Eは霊長類間で機能的に保存されているので、RhCMV/HBVを接種したRMからのCD8+T細胞もHBV感染HD初代肝細胞を認識するであろうという仮説が立てられた。この仮説を検証するために、同じRhCMV/HBVを接種したサル(RM1およびRM2)の脾臓細胞および精製CD8+T細胞とHBV感染ヒトドナー初代肝細胞とをインキュベートして、同様の認識実験を行った。仮説通り、これらのCD8+T細胞は、HBVに感染した異種ヒトドナー初代肝細胞を認識した(図3B)。アカゲザル初代肝細胞標的共培養実験について上述したように、HBV感染ヒトドナー初代肝細胞のCD8+T細胞認識は、MHC-E結合VL9ペプチドによって完全に阻害された。これらの結果は、HBV感染初代肝細胞がMHC-Eと関連してHBV抗原を提示することを決定的に示し、この経路を利用してCD8+T細胞をHBV感染細胞へ誘導できることを示している。
【0123】
次に、HBVコア抗原における2つの15量体ペプチド、コア7(PSVRDLLDTASALYR;SEQIDNO:17)およびコア14(TALRQAILCWGELMT;SEQIDNO:18)のMHC-E結合スーパートープの保存性を検討した。既知のすべてのHBV遺伝子型にまたがるHBVの全ゲノム配列6,203個をThe Hepatitis B Virus Databaseから検索し、翻訳し、コア7(図4A)およびコア14(図4B)とアミノ酸配列のアライメントを行った。すべての動物でMHC-E制限CD8+T細胞応答を起こした2つの15量体ペプチドには高い保存性があった(スーパートープ)。重要なことは、高度に保存されていない2つの位置(コア7の位置3とコア14の位置15)において、この位置にはHBV株間でグローバルに支配的なアミノ酸が1つだけ追加されていることである。したがって、既知のグローバル配列の98%以上が、これらの位置に2つのアミノ酸のうちの1つを発現していることになる。
【0124】
これらの結果は、HBVに対する全く新しいCD8+T細胞応答のセットを同定し、革新的なHBV治療薬の開発への道を開くものである。MHC-E制限のCD8+T細胞応答は、CMV、EBV、及びHCVの自然ウイルス感染で同定されているが(Joostenら,2016. Characteristics of HLA-E Restricted T-Cell Responses and Their Role in Infectious Diseases. Journal of Immunology Research 2016: 1-11)、HBVに対するMHC-E拘束CD8+T細胞応答の報告はない。そのため、HBVに感染した肝細胞がMHC-Eの文脈でHBV抗原を提示するかどうかは不明であった。これらの結果は、MHC-EがHBV感染細胞の表面にHBV抗原を提示すること、そして全く異なる霊長類のCD8+T細胞がこれらのMHC-E:ペプチド複合体を認識することを示している。
【0125】
HBVに対する完全にユニークなタイプのCD8+T細胞応答を表す以外に、HBcAg内で標的とされるエピトープの広さは、CMV/HBVベクターによる治療ワクチン接種が、広く標的とされたCD8+T細胞応答を誘発することを示す。このような広範な標的化は、これまでにもSIV、結核菌、マラリアに対して示されているが、HBVゲノムの大部分は、ほとんど非可塑性の重複リーディングフレームのみで構成されていることから、特にHBVに対して有効であると考えられる。これらの結果から、MHC-E拘束性CD8+T細胞は、ワクチン療法や養子免疫療法を通じて、慢性HBV感染症の治療に利用できることが初めて明らかになった。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
【配列表】
2022535458000001.app
【国際調査報告】