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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】潜在性触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/58 20060101AFI20220802BHJP
   C07F 7/22 20060101ALN20220802BHJP
   C07C 57/145 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C08F4/58
C07F7/22 K
C07C57/145
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562034
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2019083167
(87)【国際公開番号】W WO2020211031
(87)【国際公開日】2020-10-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】パイ、チェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユウ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、インフォン
(72)【発明者】
【氏名】トン、ハイチュン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
4J015
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB84
4H006BS10
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ25
4H049VR22
4H049VR42
4H049VW01
4H049VW11
4J015DA24
4J015DA34
(57)【要約】
【解決手段】 (a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー、(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物、(c)少なくとも1つの開始剤、(d)少なくとも1つの連鎖移動剤、および(e)任意選択的に、重合潜在性触媒組成物を提供するための少なくとも1つの溶媒、の反応生成物を含む、共重合結晶性潜在性触媒、ならびに上記潜在性触媒を作製するためのプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー、
(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物、
(c)少なくとも1つの開始剤、および
(d)少なくとも1つの連鎖移動剤、の反応生成物を含む、共重合結晶性潜在性触媒。
【請求項2】
(e)少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記結晶性アクリレートモノマーが、14個の炭素~22個の炭素のアルキル鎖を有するアクリレートモノマーである、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記結晶性アクリレートモノマーが、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドコシルアクリレート、ドコシルメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記結晶性アクリルモノマーの濃度が、42重量パーセント~92重量パーセントである、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記共重合性触媒化合物が、スズ含有触媒化合物である、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記スズ含有触媒化合物が、ジブチルスズマレエートである、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記共重合性触媒化合物の濃度が、1重量パーセント~50重量パーセントである、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒の融点が、45℃~60℃である、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒の結晶性温度が、40℃~55℃である、請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
共重合結晶性潜在性触媒を作製するためのプロセスであって、
(I)(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー、(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物、(c)少なくとも1つの開始剤、および(d)少なくとも1つの連鎖移動剤を混和する工程と、
(II)工程(I)の混合物を、前記混合物の成分が反応して共重合結晶性潜在性触媒を形成するのに十分な温度で加熱する工程と、を含む、プロセス。
【請求項12】
工程(I)が、(e)少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー、
(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物、
(c)少なくとも1つの開始剤、および
(d)少なくとも1つの連鎖移動剤、の混合物を含む、結晶性潜在性触媒組成物。
【請求項14】
(e)少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項13に記載の触媒組成物。
【請求項15】
結晶性潜在性触媒組成物を作製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー、
(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物、
(c)少なくとも1つの開始剤、および
(d)少なくとも1つの連鎖移動剤、を混和することを含む、プロセス。
【請求項16】
(e)少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項15に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在性触媒に関し、より具体的には、本発明は、様々な硬化性配合物に有用な共重合結晶性ポリマー潜在性触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂および他の硬化性組成物または配合物は、その取り扱いを単純化する目的で、通常の動作温度で保存安定性を有することが必要とされおり、このような目的のために様々な潜在性触媒が以前から開発されてきた。一般に、潜在性触媒は、通常の動作温度(例えば、周囲温度、すなわち、25℃)で優れた保存安定性を有する触媒を意味する。優れた保存安定性を有する潜在性触媒は、動作温度より高い温度に加熱されるまで、低い通常の動作温度でその触媒活性を示さない(硬化を促進しないか、または活性しない)。したがって、触媒は、高温で加熱すると触媒活性を示す。潜在性触媒は、配合物の保存安定性(保存寿命またはポットライフとも呼ばれる)を改善するために配合物中に使用される。しかしながら、潜在性触媒を活性化させて硬化するときに配合物が速い硬化速度で硬化するように、優れた硬化性を有する配合物を提供することも望ましい。
【0003】
配合物中の成分の反応を促進するための様々な配合物に有用な潜在性触媒を生成するためのプロセスが知られている。例えば、潜在性触媒を生成するための既知の従来技術のプロセスには、とりわけ、例えば、触媒カプセル化方法、光開始触媒方法、ブロック化触媒方法、リガンドと結合したスズ化合物を含む触媒方法、および亜鉛、有機鉛、鉛塩、アミン、または酸と反応するスズ化合物などの反応成分を使用する様々な方法が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、上記の既知の従来技術の潜在性触媒生成プロセスは、このような既知のプロセスが、長いポットライフおよび速い硬化速度の両方を有する配合物を提供する潜在性触媒を生成することを妨げる1つ以上の問題を抱える。例えば、カプセル化触媒は、十分な圧力を触媒に印加してカプセル化から触媒を放出するまで、反応成分との接触から実質的に隔離される。一部の熱活性化触媒方法では、活性化温度が高過ぎて(例えば、摂氏80度[℃]~140℃)、硬化を加速することができないか、または反応が複雑過ぎる。
【0005】
したがって、従来技術が直面する問題のない、長いポットライフおよび速い硬化速度の両方を有する配合物を提供する潜在性触媒を提供することが望ましい。
【0006】
本発明は、共重合プロセスを使用して調製された潜在性触媒を対象とし、このプロセスは、触媒を結晶性ポリマー骨格にグラフト化して、触媒グラフト化結晶性ポリマー潜在性触媒組成物を形成することを含む。次いで、グラフト化された潜在性触媒を、硬化性配合物または組成物に添加し得る。グラフト化されたポリマー潜在性触媒は、結晶性ポリマーの融点より低い硬化性配合物の第1の動作温度の間、不活性(不活性化)のままである。その後、硬化性配合物が、結晶性ポリマーの融点より高い第2の硬化温度(すなわち、動作温度よりも高い温度)に供されると、触媒は、活性化され(すなわち、触媒は、温度が硬化条件に上昇するときに熱によって活性化される)、次いで、硬化性配合物中の成分間の反応が加速されて硬化する。潜在性触媒が第1の動作温度で不活性のままである間、有益なことに、硬化性配合物のポットライフに対する有意な妥協は観察されない。
【0007】
好ましい一実施形態では、本発明は、(a)結晶性アクリレートモノマー、例えば、結晶性ポリマーを形成する結晶性オクタデシルアクリレート(例えば、Scientific Polymerから入手可能な18AA)などの、少なくとも1つの結晶性モノマー化合物、(b)スズ含有潜在性触媒化合物、例えば、結晶性ポリマー骨格にグラフト化されて触媒グラフト化結晶性ポリマー潜在性触媒を形成し得るジブチルスズマレエート(DBTM)などの、少なくとも1つの共重合性触媒、(c)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの、少なくとも1つの開始剤、および(d)ドデシルメルカプタン(DDM)などの、少なくとも1つの連鎖移動剤、の反応生成物を含む、共重合結晶性潜在性触媒に関する。別の実施形態では、上記触媒は、成分(e)として、トルエンなどの少なくとも1つの溶媒を含み得る。
【0008】
さらに別の実施形態では、本発明は、上記共重合結晶性潜在性触媒を生成するためのプロセスを含む。例えば、好ましい実施形態では、共重合結晶性潜在性触媒を作製するためのプロセスまたは方法は、スズ含有潜在性触媒化合物(例えば、DBTM)などの共重合性触媒を、結晶性オクタデシルアクリレート(例えば、18AA)などの結晶性ポリマーと重合して、触媒を結晶性ポリマーに固定して、触媒構造を形成するために使用される共重合方法に関する。一実施形態では、例えば、本発明の共重合方法は、以下のように、スキーム(I)に示される構造などの触媒構造を形成する。
【化1】
【0009】
本発明の潜在性触媒の利点のいくつかは、
(1)優れたポットライフを示す本発明の潜在性触媒を含有する硬化性配合物、(2)低い活性化温度(例えば、80℃未満)で活性化され得、かつ、このような潜在性触媒を含有する配合物のポットライフを妥協しない潜在性触媒、および(3)複雑な反応成分を含まない本発明の潜在性触媒を含有する硬化性配合物、を提供することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
触媒に関する「潜在性」は、本明細書において、触媒が、動作の温度などのある特定の条件で反応に触媒作用を及ぼさない一方で、触媒が、異なる条件下(反応の温度の上昇によるなど)で同じ反応に触媒作用を及ぼし始めることを意味する。
【0011】
「熱的潜在性触媒」は、触媒が第2の高温(例えば、40℃)に加熱されるまで、第1の低温(例えば、25℃の室温)でその活性状態にない触媒である。
【0012】
硬化性配合物に関する「ポットライフ」は、本明細書において、硬化性配合物の粘度が、硬化性配合物がある用途における取り扱いにもはや適切ではないという点まで増大するまでの期間を意味する。
【0013】
広範の実施形態では、本発明の潜在性触媒組成物は、共重合結晶性潜在性触媒を含み、触媒は、(a)結晶性アクリレートモノマーから作製されたポリマーなどの少なくとも1つの結晶性ポリマー、(b)DBTMなどの少なくとも1つの共重合性触媒化合物、(c)AIBNなどの少なくとも1つの開始剤、(d)DDMなどの少なくとも1つの連鎖移動剤、および(e)任意選択的に、トルエンなどの少なくとも1つの溶媒、の反応生成物である。共重合方法を使用することによって、得られた共重合DBTM触媒は、動作温度で所望の潜在性を提供し、高温で触媒作用を及ぼす効果を開始する。
【0014】
本発明において有用な結晶性アクリレートモノマー化合物は、長アルキル鎖(例えば、14個の炭素~22個の炭素の範囲の炭素を有するアルキル鎖)を有するアクリレートモノマーから選択され得る。例えば、結晶性アクリレートモノマー化合物には、テトラデシルアクリレート、テトラデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドコシルアクリレート、ドコシルメタクリレート、およびそれらの混合物のうちの化合物のうちの1つ以上が含まれ得る。好ましい一実施形態では、結晶性アクリレートモノマー化合物は、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドコシルアクリレート、ドコシルメタクリレート、およびそれらの混合物であり得る。好ましい別の実施形態では、本発明で使用される結晶性アクリレートモノマー化合物は、オクタデシルアクリレートである。
【0015】
本発明の触媒組成物を調製するために使用される結晶性アクリレートモノマー化合物の量は、例えば、一実施形態では42重量パーセント(重量%)~92重量%、別の実施形態では47重量%~90重量%、さらに別の実施形態では52重量%~88重量%であり得る。
【0016】
本発明において有用な共重合性触媒化合物は、例えば、スズ含有触媒化合物、およびラジカル重合性二重結合を有する任意の他の触媒、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。例えば、好ましい一実施形態では、スズ含有触媒を本発明で使用することができ、スズ含有触媒は、重合性C=C結合を含有する任意の触媒化合物を含み得る。好ましい別の実施形態では、本発明で使用される共重合性触媒化合物は、ジブチルスズマレエート(DBTM)である。
【0017】
本発明の触媒組成物を調製するために使用される共重合性触媒化合物の量は、例えば、一実施形態では1重量%~50重量%、別の実施形態では3重量%~45重量%、さらに別の実施形態では5重量%~40重量%であり得る。
【0018】
開始剤は、アクリレートモノマーの重合の開始を補助するために、本発明の潜在性触媒組成物中に用いられる。従来の開始剤を使用することができ、例えば、アゾ化合物開始剤、有機過酸化物、有機ヒドロペルオキシド、およびそれらの混合物が含まれる。本発明において有用な典型的な開始剤には、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチル-プロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、1,1’-アゾ(シクロヘキサンカルボニトリル)、4,4’-アゾ-ビス(4-シアノペンタン)酸、およびそれらの混合物などのアゾ開始剤が含まれる。好ましい一実施形態では、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルが、本発明において開始剤として使用される。
【0019】
本発明の潜在性触媒組成物を調製するために使用される開始剤の量は、最終組成物の総重量に基づいて、一実施形態では0.01重量%~5重量%、別の実施形態では0.1重量%~4重量%、さらに別の実施形態では0.2重量%~3重量%であり得る。
【0020】
連鎖移動剤は、最終ポリマーの分子量を制御するために、本発明の潜在性触媒組成物中に用いられる。従来の連鎖移動剤を使用することができ、例えば、ドデシルメルカプタン(DDM)およびドデカンチオール(DDA)などのチオール、四塩化炭素などのハロカーボン、およびそれらの混合物が含まれ得る。好ましい一実施形態では、DDMが本発明において使用される。
【0021】
本発明で使用される連鎖移動剤の量は、最終組成物の総重量に基づいて、一実施形態では0.01重量%~10重量%、別の実施形態では0.5重量%~9重量%、さらに別の実施形態では1重量%~8重量%であり得る。
【0022】
本発明の共重合結晶性潜在性触媒を形成するための重合は、溶媒の存在下で行われ得る。一般的な一実施形態では、アクリレートモノマーおよびDBTMを可溶化し得る従来の溶媒が、本発明の潜在性触媒組成物中に使用される。例えば、溶媒は、ベンゼン、トルエン、およびそれらの混合物であり得る。好ましい一実施形態では、トルエンが本発明において使用される。
【0023】
本発明で使用されるトルエンなどの溶媒の量は、最終組成物の総重量に基づいて、一実施形態では60重量%~200重量%、別の実施形態では80重量%~180重量%、さらに別の実施形態では100重量%~160重量%であり得る。
【0024】
一般的な実施形態では、本発明の共重合結晶性潜在性触媒組成物を作製するためのプロセスは、
(I)(a)上述の結晶性アクリレートモノマーなどの少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマー化合物、(b)上述の触媒化合物などの少なくとも1つの共重合性触媒化合物、(c)上述のAIBNなどの少なくとも1つの開始剤、(d)上述のDDMなどの少なくとも1つの連鎖移動剤、および(e)任意選択的に、上述のトルエンなどの少なくとも1つの第1の溶媒、を混和する工程と、
(II)工程(I)の成分をさらに混合して、均一な混合物を形成する工程と、
(III)混合物を撹拌しながら、工程(II)の混合物の温度を60℃~80℃の温度まで上昇させて、溶媒溶液中に共重合体が形成されるまで、混合物をこの温度で24時間(hr)維持する工程と、
(IV)共重合体を溶媒溶液からメタノールなどの第2の溶媒に沈殿させる工程と、
(V)工程(IV)からの沈殿物を真空オーブン内で40℃の温度に加熱して、いずれの残留溶媒も24時間ストリッピングして、溶媒がストリッピングされた後に最終的な共重合結晶性潜在性触媒を形成する工程と、を含む。
【0025】
本発明の共重合結晶性潜在性触媒が作製されると、潜在性触媒を硬化性配合物に添加して、第1の低温で硬化せず、かつ第1の低温で優れた保存安定性(ポットライフ)を有する硬化性組成物を提供することができる。第1の低温は、共重合結晶性潜在性触媒の融解温度より低い温度を含む。本発明の共重合結晶性潜在性触媒は、結晶性挙動を示し得、すなわち、触媒は、触媒が溶媒の融点より高い第2の高温に供されると、融解して流動し始め得る。そして、触媒は、触媒が第1の低温、すなわち、触媒の融点より低い温度に供されると、結晶化し始め、再び固形になり得る。例えば、共重合結晶性潜在性触媒は、45℃~60℃の融点を有し、40℃~55℃の結晶性温度を有する。
【0026】
加えて、共重合結晶性潜在性触媒を硬化性配合物に添加して、速い硬化または速い結合強度成長を示す硬化性組成物を提供することができる。例えば、硬化性配合物は、硬化性配合物が高い硬化温度、例えば、50℃~60℃に加熱されるときに、同じ硬化時間でより高い結合強度を示す。触媒の融点および結晶性温度は、任意の従来の方法によって試験され得る。例えば、好ましい一実施形態では、触媒の融点および結晶性温度は、示差走査熱量測定(DSC)方法を使用して測定される。
【0027】
広範の一実施形態では、本発明の共重合結晶性潜在性触媒は、潜在性を必要とする硬化性ポリウレタン組成物または配合物のための触媒として使用することができる。共重合結晶性潜在性触媒が使用され得るある用途の一例として、共重合結晶性潜在性触媒をポリウレタン硬化性配合物に添加して、接着性配合物を生成することができるが、これに限定されない。
【実施例
【0028】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量である。
【0029】
以下の発明の実施例(Inv.Ex.)および比較実施例(Comp.Ex.)で使用される様々な用語および名称ならびに原料(または成分)を、以下の表Iにおいて説明する。
【表1】
【0030】
共重合結晶性潜在性触媒の合成
本発明の共重合性結晶性触媒を、以下のプロセスに従ってトルエン溶液中で調製した。結晶性アクリレートモノマー、DBTM、開始剤AIBN、鎖延長剤、およびトルエンをゆっくりと撹拌しながら一緒に混合した。次いで、得られた混合物の温度を、継続的に撹拌しながら60℃~80℃の温度に上昇させて、混合物の温度を60℃~80℃に24時間維持した。その後、混合物の撹拌を停止して、冷却した。得られた共重合体を、メタノールに沈殿させて、沈殿物を40℃の真空オーブン内に24時間入れて、いずれの残留溶媒もストリッピングした。最終的な共重合触媒は、上記のストリッピング工程の後に達成された。
【0031】
実施例1~4
本発明の4つの潜在性触媒試料(Inv. Ex.1~4)を、共重合性結晶性触媒を合成するための上述の手順を使用して調製した。調製された触媒試料の各々において、DBTMの濃度およびアクリレートモノマーの種類を変更し、得られた共重合体の各々は、結晶温度および融解温度を示した。上記試料の詳細情報を表IIに列挙する。
【表2】
【0032】
上述のように生成された潜在性触媒の有用性は、当業者に明らかであり、例えば、一実施形態では、潜在性触媒は、従来のポリウレタン配合物中で添加剤として使用することができ、ポリウレタン配合物は、MF706A(The Dow Chemical Companyより入手可能)などのイソシアネート(NCO)プレポリマー成分およびC79(The Dow Chemical Companyより入手可能)などのヒドロキシル(OH)成分を含む。

【国際調査報告】