(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20220802BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20220802BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J5/00
C09J11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562036
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2019083180
(87)【国際公開番号】W WO2020211035
(87)【国際公開日】2020-10-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】パイ、チェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユウ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、インフォン
(72)【発明者】
【氏名】トン、ハイチュン
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF002
4J040EF001
4J040JB02
4J040KA14
(57)【要約】
【解決手段】 (A)少なくとも1つのイソシアネート含有化合物と、(B)少なくとも1つのポリオール化合物と、(C)共重合結晶性潜伏性触媒と、の反応混合物を含む接着剤組成物、上記の接着剤組成物を作製するためのプロセス、上記の接着剤組成物を使用して作製された積層構造。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのイソシアネート含有化合物と、
(B)少なくとも1つのポリオール化合物と、
(C)少なくとも1つの共重合結晶性潜伏性触媒と、の反応混合物を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
成分(C)の前記少なくとも1つの共重合結晶性潜伏性触媒が、(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマーと、(b)少なくとも1つの共重合性触媒化合物と、(c)少なくとも1つの開始剤と、(d)少なくとも1つの連鎖移動剤と、(e)任意選択で、少なくとも1つの溶剤と、の反応生成物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記接着剤組成物が、30℃から40℃の温度での前記接着剤組成物の粘度変化を追跡し、前記接着剤組成物が3,000ミリパスカル秒の粘度に到達するまでにかかる時間を記録することにより測定して、成分(C)の前記共重合結晶性潜伏性触媒を含まない接着剤組成物と比較して、少なくとも類似した可使時間を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、T剥離試験により測定して、成分(C)の前記共重合結晶性潜伏性触媒を含まない接着剤組成物と比較して、より速い接着強度の増進を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記共重合結晶性潜伏性触媒の前記結晶性アクリレートモノマーが、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記共重合結晶性潜伏性触媒の前記共重合性触媒化合物が、スズ含有触媒化合物である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
成分(A)の前記少なくとも1つのイソシアネート含有化合物の濃度が10重量パーセント~78重量パーセントである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
成分(B)の前記少なくとも1つのポリオール化合物の濃度が20重量パーセント~88重量パーセントである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
成分(C)の前記少なくとも1つの共重合結晶性潜伏性触媒化合物の濃度が0.01重量パーセント~10重量パーセントである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記共重合結晶性潜伏性触媒の融点が45℃~60℃であり、前記共重合結晶性潜伏性触媒の結晶温度が40℃~55℃である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
接着剤組成物を作製するプロセスであって、
(A)少なくとも1つのイソシアネート含有化合物と、
(B)少なくとも1つのポリオール化合物と、
(C)共重合結晶性潜伏性触媒と、を混合することを含む、プロセス。
【請求項11】
積層構造を作製するためのプロセスであって、
(I)少なくとも第1の基材および少なくとも第2の基材を提供するステップと、
(II)請求項1に記載の接着剤組成物を、前記少なくとも第1の基材または前記少なくとも第2の基材の片面の少なくとも一部分に塗布して、前記第1または第2の基材上に配置された接着剤のフィルム層を形成するステップと、
(III)前記第1および第2の基材を、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置される前記接着剤と接触させて、層状積層構造を形成するステップと、
(IV)前記層状積層構造を加熱して、前記接着剤を硬化させ、その結果、接着積層構造が形成されるようにするステップと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスによって作製された、積層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、より具体的には、本発明は、潜伏性触媒として機能する共重合結晶性ポリマーを含有するポリウレタン結着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
無溶剤ポリウレタン(PU)接着剤は、通常2成分で配合され、2成分(2K)系と称される。2K系の第1の成分はイソシアネートプレポリマーであり、2K系の第2の成分はポリオールである。得られた混合物を塗布する直前に、これら2つの成分を合わせて混合する。2つの成分を混合すると、イソシアネートプレポリマーのイソシアネート(NCO)基とポリオールのヒドロキシル(OH)基との間で化学反応が起こる。この反応により、接着剤の粘度が上昇し、最終的には接着剤が硬化する。
【0003】
接着剤配合物または組成物の粘度が高くなり、粘度上昇により接着剤がそれ以上基材にコーティングされなくなるまでの期間を、典型的には、接着剤の「可使時間」と称する。操作および加工柔軟性を向上させるには、可使時間の長い接着剤が望ましく、また、接着剤を使用して積層体を製造し、積層体が製造プロセスの切断または製袋段階に素早く移れるように、求められる最終性能をできるだけ早く達成するために硬化速度の速い接着剤が望ましい。典型的には、組成物の硬化を加速するために、接着剤組成物に触媒を加える。しかしながら、既知の触媒を含むこれまでに知られている接着剤組成物は、(1)硬化速度が遅く、可使時間が良好であるか、(2)可使時間が短く、硬化速度が速いかのいずれかであるが、既知の触媒は、良好な可使時間も速い硬化速度も呈しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、速い硬化速度と長い可使時間との両方を有する接着剤組成物を提供することが望ましい。
【0005】
本発明は、積層構造を調製するための積層接着剤を対象とする。好ましい一実施形態では、本接着剤組成物は、(A)少なくとも1つのイソシアネート含有化合物と、(B)少なくとも1つのポリオール化合物と、(C)共重合結晶性潜伏性触媒との反応混合物を含む。好ましい一実施形態では、共重合結晶性潜伏性触媒は、(a)少なくとも1つの結晶性アクリレートモノマーと、(b)少なくとも1つのスズ含有触媒化合物と、(c)少なくとも1つの開始剤と、(d)少なくとも1つの連鎖移動剤と、(e)任意選択で、少なくとも1つの溶剤との反応生成物を含む。
【0006】
本発明の接着剤組成物の利点のうちのいくつかには、(1)優れた可使時間を呈する接着剤組成物、(2)触媒を含む接着剤組成物であって、触媒が低い活性化温度(例えば、80℃未満)で活性化されて、接着剤組成物の硬化を開始することができ、触媒が接着剤組成物の可使時間を損なわない、接着剤組成物、および(3)接着剤組成物の取り扱いを向上させるように、複雑でない反応成分を含有する接着剤組成物が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
触媒に関する「潜伏性」は、本明細書では、触媒が操作の温度などのある特定の条件で反応を触媒しないが、触媒が他の異なる条件下(反応の温度を上昇させることなどにより)で同じ反応を触媒し始めることを意味する。
【0008】
「熱潜伏性触媒」は、触媒が第2の高温(例えば、40℃)に加熱されるまで、第1の低温(例えば、25℃の室温)でその活性状態にない触媒である。
【0009】
2成分ポリウレタン接着剤組成物に関する「可使時間」は、本明細書では、接着剤組成物の粘度が高くなり、接着剤組成物がそれ以上基材へのコーティングに好適でなくなるまでの期間を意味する。
【0010】
広範な一実施形態では、本発明の接着剤配合物または組成物は、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、(B)少なくとも1つのポリオール成分(またはヒドロキシル基含有成分)と、(C)共重合結晶性潜伏性触媒との反応混合物を含み得る。好ましい一実施形態では、本接着剤組成物は、無溶剤2K PU系であり得るが、本発明は、そのような2K系に限定されない。他の添加剤および化合物を使用して、本発明の接着剤組成物を形成することができる。
【0011】
本発明の接着剤組成物に有用な成分(A)のイソシアネート基含有化合物は、例えば、1分子あたり2つ以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つの化合物を含み得る。一実施形態では、成分(A)は、1つ以上のイソシアネート官能化ポリウレタンプレポリマーを含み得る。ポリウレタンプレポリマーは、例えば、ポリオール化合物(または他の活性水素官能化化合物)を、少なくとも2つの官能性を有する少なくとも1つのイソシネートと反応させることで得られる化合物などの化合物であり得る。上記の反応は、溶剤なしで行うことも、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、およびそれらの混合物などの溶剤の存在下で行うこともできる。ポリウレタンプレポリマーは、例えば、ポリオールを過剰のポリイソシアネートと反応させることから形成されるような、分子量が比較的低い化合物だけでなく、オリゴマーまたはポリマー化合物も含み得る。
【0012】
本発明で使用する成分Aは、概して、分子量が、一実施形態では1モル当たり500グラム(g/モル)~30,000g/モル、別の実施形態では600g/モル~15,000g/モル、さらに別の実施形態では700g/モル~10,000g/モルである。ポリマー化合物を基準とした上記の分子量は、別途指示のない限り、数平均分子量(Mn)を指す。
【0013】
概して、上述した好適なポリイソシアネートには、例えば、脂肪族または芳香族ポリイソシアネートが含まれてもよく、好ましい一実施形態では、芳香族ポリイソシアネートを本発明に使用する。例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)もしくはその異性体、トリレンジイソシアネート(TDI)もしくはその異性体、または高分子ジフェニルメタンジイソシアネートを、本発明ではポリイソシアネートとして使用することができる。好ましい一実施形態では、MDIモノマーを本発明に使用する。
【0014】
概して、上述した好適なポリオール成分には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、バイオベースポリオール、およびそれらの混合物が含まれてもよい。ポリエーテルポリオールには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシドの重付加生成物、およびそれらの共付加およびグラフト化生成物、ならびに多価アルコールの縮合によって得られるポリエーテルポリオール、またはそれらの混合物で含まれる。本発明における使用に好適なポリエーテルポリオールの例としては、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、およびそれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。ポリエーテルポリオールは、分子量が、一実施形態では300g/モル~3,000g/モル、別の実施形態では350g/モル~2,500g/モル、さらに別の実施形態では400g/モル~2,200g/モルであってもよい。
【0015】
本発明において有用なポリエステルポリオール成分は、二官能性または三官能性アルコールとジカルボン酸および/またはトリカルボン酸との重縮合生成物である。アルコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびそれらの混合物を挙げることができる。特定の好適なアルコールには、例えば、ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびそれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。酸の例には、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの混合物を挙げることができる。特定の好適な酸は、イソフタル酸、アジピン酸、およびそれらの混合物であり得る。ポリエステルポリオールは、分子量が、一実施形態では600g/モル~10,000g/モル、別の実施形態では700g/モル~8,000g/モル、さらに別の実施形態では800g/モル~3,000g/モルであってもよい。
【0016】
本発明において有用なバイオベースポリオールには、例えば、ヒマシ油または他の類似のバイオベースポリオールなどの1つ以上のバイオベースのポリオールを挙げることができる。一実施形態では、バイオベースポリオールは、ヒドロキシル基官能性が、少なくとも1.5~最大4であり、すなわち、バイオベースポリオールのヒドロキシル基官能性は、1.5≦f≦4であり得る。
【0017】
成分(B)のポリオール成分は、例えば、少なくとも1つのポリエーテルポリオール化合物、および/もしくはポリエステルポリオール化合物、バイオベースポリオール、またはそれらの混合物を含む、1つ以上の化合物の溶液、混合物、またはブレンドであり得る。本発明の接着剤組成物において有用なポリオール化合物には、例えば、上記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびバイオベースポリオールのいずれか1つ、または任意の組み合わせ、または2つ以上が含まれ得る。本開示に従う使用に好適なポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシドの重付加生成物、およびそれらの共付加およびグラフト化生成物、ならびに多価アルコールの縮合によって得られるポリエーテルポリオール、またはそれらの混合物であり得る。本発明における使用に好適なポリエーテルポリオールの例には、PPG、PEG、ポリブチレングリコール、およびPTMEGを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0018】
ポリエステルポリオール成分は、二官能性または三官能性アルコールとジカルボン酸および/またはトリカルボン酸との重縮合生成物であり得る。アルコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、またはトリメチロールプロパンを挙げることができる。好ましい一実施形態では、好適なアルコールは、例えば、ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびそれらの2つ以上の混合物であり得る。酸の例は、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの混合物であり得る。本発明に使用する特定の好適な酸は、イソフタル酸、アジピン酸、およびそれらの混合物である。ポリエステルポリオールは、分子量が、一実施形態では600g/モル~10,000g/モル、別の実施形態では700g/モル~8,000g/モル、さらに別の実施形態では800g/モル~6,000g/モルであってもよい。
【0019】
前述のように、バイオベースポリオールを使用する場合、本発明において有用なバイオベースポリオールには、例えば、ヒマシ油または他の類似のバイオベースポリオールなどの1つ以上のバイオベースのポリオールを挙げることができる。そして一実施形態では、バイオベースポリオールは、ヒドロキシル基官能性が、少なくとも1.5~最大4であり、すなわち、バイオベースポリオールのヒドロキシル基官能性は、1.5≦f≦4であり得る。
【0020】
本発明の接着剤組成物について、イソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との重量比は、一実施形態では1:2~3:1、別の実施形態では1:1~2:1、さらに別の実施形態では2:1~1:3であり得る。
【0021】
本発明の接着剤組成物の調製に使用する成分(C)の共重合結晶性潜伏性触媒は、2019年4月18日出願のLucy Baiらによる同時係属中国特許出願第PCT/CN2019/083167号に記載されている共重合結晶性潜伏性触媒のうちのいずれか1つ以上であり得る。例えば、一実施形態では、共重合結晶性潜伏性触媒は、(a)結晶性アクリレートモノマー、例えば、結晶性ポリマーを形成する結晶性アクリル酸オクタデシル(例えば、Scientific Polymerから入手可能な18AA)などの少なくとも1つの結晶性モノマー化合物と、(b)結晶性ポリマー主鎖にグラフトされて触媒グラフト化結晶性ポリマー潜伏性触媒を形成することができるスズ含有触媒化合物(例えば、マレイン酸ジブチルスズ[DBTM])などの少なくとも1つの共重合性潜伏性触媒化合物と、(c)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの少なくとも1つの開始剤と、(d)ドデシルメルカプタン(DDM)などの少なくとも1つの連鎖移動剤と、(e)任意選択で、トルエンなどの少なくとも1つの溶剤と、の反応生成物を含む。
【0022】
概して、成分(C)の共重合結晶性潜伏性触媒は、例えば、共重合プロセスを使用して調製することができ、このプロセスでは、DBTMなどの触媒化合物を結晶性ポリマー主鎖にグラフトして、触媒グラフト化結晶性ポリマー潜伏性触媒組成物を形成する。次に、成分(C)のグラフト化潜伏性触媒を、成分(A)のイソシアネートおよびポリオール成分(B)と組み合わせて、本発明の接着剤組成物を調製することができる。
【0023】
成分(C)の共重合結晶性潜伏性触媒を製造する一実施形態は、スズ含有潜伏性触媒化合物(例えば、DBTM)などの共重合性潜伏性触媒化合物を結晶性アクリル酸オクタデシル(例えば、18AA)などの結晶性モノマー化合物と重合して、潜伏性触媒を結晶性ポリマー主鎖に固定し、これにより共重合結晶性潜伏性触媒構造を形成する共重合方法を含む。例えば、好ましい一実施形態では、そのような触媒構造を形成するために使用する共重合方法は、以下のスキーム(I)に示す触媒構造である。
【化1】
【0024】
有利なことに、グラフト化ポリマー中の潜伏性触媒は、結晶性ポリマーの融点よりも低い接着剤組成物の第1の操作温度にある間、不活性(失活状態)のままである。その後、接着剤組成物が結晶性ポリマーの融点よりも高い第2の硬化温度(すなわち、操作温度よりも高い温度)に供されると、触媒が活性化され(すなわち、触媒は、温度が硬化条件まで上昇すると、熱によって活性化され得る)、続いてこれにより、接着剤組成物中の成分間の反応が加速されて硬化する。潜伏性触媒が第1の操作温度で不活性のままである間、接着剤組成物の可使時間への重大な支障は観察されない。
【0025】
本発明の接着剤組成物を調製するために使用する成分(C)の共重合結晶性潜伏性触媒の量は、例えば、一実施形態では0.001重量%~10重量%、別の実施形態では0.005重量%~8重量%、さらに別の実施形態では0.01重量%~6重量%であり得る。
【0026】
本発明の接着剤組成物は2成分系を対象とするものの、本発明の接着剤配合物は、多種多様な任意選択の添加剤とともに配合することで、得られる接着剤製品の優れた利益/特性を維持しながら、特定の機能の性能を有効にし得る。共重合結晶性潜伏性触媒、イソシアネート化合物、およびポリオール化合物に加えて、本発明の接着剤組成物はまた、使用または機能について当該技術分野で知られている1つ以上の任意選択の化合物を含んでもよい。例えば、本組成物において有用な任意選択の化合物または添加剤のうちの一部としては、酢酸エチル、アセトン、およびケトン、ならびにそれらの混合物などの溶媒、シラン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびそれらの混合物などの接着促進剤、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、およびそれらの混合物などの鎖延長剤を挙げることができる。
【0027】
好ましい一実施形態では、ポリウレタン接着剤の成分(D)の任意選択の成分を第2のポリオール成分(B)に加えることができる。成分(D)の任意選択の添加剤の量は、2K接着剤組成物に使用する場合、概して、組成物中の成分の総重量を基準として、一実施形態では0wt%~20wt%、別の実施形態では0.01wt%~10wt%、さらに別の実施形態では1wt%~5wt%の範囲であり得る。
【0028】
一般的な実施形態では、本発明の接着剤組成物を作製するためのプロセスは、(A)イソシアネート基含有成分と、(B)上記のポリマー化合物と、(C)上記の共重合結晶性潜伏性触媒と、(D)いずれかの他の所望される任意選択の成分と、をブレンド、混合(mixing)、または混合(admixing)するステップを含む。
【0029】
例えば、成分(A)~(D)は、上で考察した所望の濃度で、一実施形態では25℃~45℃、別の実施形態では30℃~40℃の温度で、ともに混合することができる。成分の混合順は重要ではなく、2つ以上の成分を一緒に混合した後、残存成分を加えることができる。接着組成物の成分は、任意の既知の混合プロセスおよび装置によって一緒に混合することができる。
【0030】
概して、成分(A)と成分(B)とを互いに別々に調製し、別個の容器で各々保存する。成分(C)の潜伏性触媒、および接着剤組成物の他の成分または任意選択の添加剤は、第2の成分(B)の一部として存在してもよい。各成分の保存に好適な容器は、例えば、ドラム、ホボック、袋、バケツ、缶、カートリッジ、または試験管であり得る。本接着剤組成物を塗布する前は、2つの成分を別々に保存し、塗布中または塗布直前にのみ互いに混合する。
【0031】
本発明の接着剤組成物を調製すると、共重合結晶性触媒は、接着剤組成物が2つの基材に使用または塗布されて2つの基材を一緒に接着するまで、および本接着剤組成物が昇温での硬化の準備ができるまで、操作温度で不活性のままである。本発明の接着剤組成物は、共重合結晶性触媒を加えない接着剤と比べて可使時間にほとんど支障がないこと、また従来のT剥離試験により測定して、共重合結晶性触媒を加えない接着剤と比べて接着強度の増進が早いことなど、いくつかの有利な特性を呈し得る。
【0032】
例えば、本接着剤組成物の可使時間は、共重合結晶性触媒を加えない接着剤と比べて、同じであるか、または最大5分(min)短くあり得る。本接着剤組成物の可使時間は、ある特定の温度(例えば、30℃)での本接着剤組成物の粘度変化を追跡し、本接着剤組成物が3,000ミリパスカル秒(mPa.s)の粘度に到達するまでにかかる時間を記録することにより測定する。
【0033】
上記のプロセスにより作製した本発明の接着剤組成物が呈する他の有利な特性のうちのいくつかには、迅速な結合強度の発達を含み得、結合強度は、接着強度増進が早いことが含まれ得、接着強度は、5940 Series Single Column Table Top System(Instron Corporationから入手可能)を使用する1分当たり250ミリメートル(mm/min)のクロスヘッド速度でのT剥離試験を使用して、15ミリメートル(mm)幅のストリップにより試験する。T剥離試験の結果は、15ミリメートル当たりのニュートン(N/15mm)単位である。T剥離試験の結果からの比較的高い値は、より良好な接着強度を示す。
【0034】
広範な一実施形態では、本発明の接着剤組成物は、少なくとも2つの基材(例えば、少なくとも第1の基材および少なくとも第2の基材)を一緒に接着して、層状積層構造を形成するために使用することができ、ここで、本接着剤組成物は2つの基材の間に塗布され配置される。
【0035】
第1および第2の基材は、同じ材料で作製されても異なる材料で作製されてもよい。好適な材料としては、紙、織布および不織布、金属箔、ポリマー、および金属被覆ポリマーが挙げられる。材料は、任意選択で、画像がインクで印刷される表面を有してもよく、インクは本接着剤組成物と接触してもよい。いくつかの実施形態では、材料には、ポリマーフィルムおよび金属被覆ポリマーフィルムが含まれ得る。好ましい実施形態では、材料には、ポリマーフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0036】
積層体は、積層分野の当業者による周知の積層プロセスを用いて調製することができ、例えば、典型的なNordmeccanica無溶剤機または典型的な乾式積層機を本発明で使用することができる。
【0037】
本発明に従って作製した積層物品は、例えば、乾燥食品パッケージ、高耐久性パッケージ、および液体小袋パッケージの製造、ならびに自立型パウチパッケージおよび任意の他のパッケージの製造を含む、様々な用途において有用であり得る。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量である。
【0039】
以降の発明実施例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用する様々な用語および呼称および原料を、以下の表Iで説明する。
【表1】
【0040】
共重合結晶性触媒の合成
共重合結晶性触媒を、以下のプロセスに従ってトルエン溶液中で調製した。結晶性アクリレートモノマー、DBTM、開始剤AIBN、鎖延長剤、およびトルエンを、緩徐に撹拌しながら合わせて混合した。次に、得られた混合物の温度を、撹拌を継続しながら60℃~80℃の温度に上昇させ、混合物の温度を60℃~80℃に24時間維持した。その後、混合物の撹拌を停止し、冷却した。得られたコポリマーをメタノールに沈殿させ、沈殿物を40℃の真空オーブンに24時間入れて、あらゆる残留溶媒を除去した。最終共重合触媒は、上記の除去ステップの後に得られた。
【0041】
4つの触媒試料Cat.1~Cat.4を、上記の共重合結晶性触媒の合成手順を使用して調製した。調製した触媒試料の各々で、DBTM濃度およびアクリレートモノマーの種類を変え、得られたコポリマーの各々は、結晶温度および融解温度を示した。触媒1~触媒4の4つの触媒試料を表IIに記載する。
【表2】
【0042】
実施例1~4ならびに比較例AおよびB
塗布性能評価 共重合結晶性触媒を用いた2K無溶剤(SL)PU接着剤
表IIに記載する4つの共重合結晶性触媒の各々を、2成分(2k)無溶剤(SL)ポリウレタン(PU)接着剤組成物に加えて、本発明の接着剤組成物を形成し、本接着剤組成物の性能を評価した。本接着剤組成物の可使時間および接着強度増進の性能を評価した。それぞれ、表IIに記載の共重合結晶性触媒Cat.1~4を含有する本発明の接着剤組成物、発明実施例1~4の性能結果(可使時間および接着強度増進)を、(1)共重合結晶性触媒の非存在下の2k SL PU接着剤組成物(比較例A)、および(2)共重合されていない結晶性触媒である純DBTMを含有する2k SL PU接着剤組成物(比較例B)と比較し、性能結果を表IIIに記載する。
【0043】
表IIIの結果から、本発明の2k SL PU接着剤(発明実施例1~4)は、共重合結晶性触媒を含まない接着剤(比較例A)と比較した場合、30℃の操作温度で同等の可使時間を示すことが分かる。しかしながら、共重合結晶性触媒を含む2k SL PU接着剤は、共重合結晶性触媒を含まない接着剤(比較例A)と比較した場合、50℃で90分間硬化させた後で、より高い接着強度を示す。表IIIの結果から、共重合結晶性触媒を含む本発明の接着剤組成物は接着強度増進が速く、本接着剤組成物が共重合結晶性触媒を含有する場合は、本接着剤組成物の可使時間が損なわれないと結論付けることができる。
【0044】
一方、共重合されていない触媒(純DBTM)を含む2k SL PU接着剤(比較例B)は、本発明の2k SL PU接着剤(発明実施例1~4)と比較した場合、可使時間がはるかに短い。また、DBTMを含有する2k SL PU接着剤は、触媒を含まない接着剤(比較例A)と比較した場合、可使時間がはるかに短く、これは、純DBTMを含む接着剤組成物(比較例B)が潜伏を一切呈しないことを意味する。しかしながら、純DBTMを含む2k SL PU接着剤(比較例B)の接着強度は、それぞれ共重合結晶性触媒(Cat.1~4)を含む本発明の2k SL PU接着剤(発明実施例1~4)の接着強度と類似する。また、純DBTMを含む2k SL PU(比較例B)は、接着強度が、触媒を含まない接着剤(比較例A)よりも高い。
【表3】
【国際調査報告】