(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】MRNA送達のための合成脂質
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220802BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220802BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220802BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220802BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220802BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220802BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220802BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220802BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220802BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20220802BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220802BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220802BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P3/00
A61P3/06
A61P9/00
A61P43/00 105
A61K9/14
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/28
A61K47/20
A61K47/24
A61K31/7105
A61K38/46
C12N15/09 110
C12N15/12 ZNA
C12N15/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571709
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020036085
(87)【国際公開番号】W WO2020247604
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】シュィ,チアォビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC11
4C076CC21
4C076DD55
4C076DD63
4C076DD70
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA41
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZB21
4C086ZC33
(57)【要約】
ヒトのリポタンパク質代謝障害または心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、脂質、CRISPR/Cas9 mRNAおよびシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリピドイドナノ粒子を投与することを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのリポタンパク質代謝障害または心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、脂質と、CRISPR/Cas9 mRNAと、シングルガイドRNA(sgRNA)とを含むリピドイドナノ粒子を投与することを含み、前記sgRNAは、シングルガイドアンジオポエチン様タンパク質3(sgANGPTL3)またはシングルガイドプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(sgPCSK9)であり、前記脂質は、式Iで表される、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【化1】
[式中、R
頭部は、
【化2】
であり;
R
a、R
a’、R
a”、およびR
a”’は、それぞれ独立して、R
脂質、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、R
aとR
a’またはR
a’’とR
a’’は、両方がR
脂質であることはなく;
Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり;
R
脂質は、それぞれ独立して、
【化3】
であり;
R
1およびR
2は、H、OH、NHR
30、またはSHであり;
R
3およびR
4は両方がHであるか、またはR
3とR
4が一緒になってオキソ(=O)基を形成し;
Xは、CH
2、O、NR
30、またはSであり;
R
30は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルケニル、またはC
1-6アルキニルであり;
mは1~3から選択される整数であり;
nは1~14から選択される整数であり;
pは0または1であり;
qは1~10から選択される整数であり;
tは0、1、または2である。]
【請求項2】
R
頭部が、
【化4】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
aおよびR
a’が、R
脂質、H、またはC
1-C
20アルキルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
頭部が、
【化5】
からなる群より選択される化合物に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
R
1およびR
2がHである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R
1がHであり;かつR
2がOHである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R
3およびR
4がHである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
3とR
4が一緒になってオキソ(=O)基を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Zが、CH
2、O、またはNR
30である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ZがCH
2である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ZがOである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請ZがNR
30である、求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
mが1または2である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
nが4~12から選択される整数である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
nが6~10から選択される整数である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
pが0である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
pが1である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
qが2~8から選択される整数である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
qが4~8から選択される整数である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
tが0である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
tが1である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
R
脂質が、それぞれ独立して、
【化6】
からなる群より選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記脂質が、
【化7】
からなる群より選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記脂質とCRISPR/Cas9 mRNAの比が約3:1~約15:1である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記脂質とCRISPR/Cas9 mRNAの比が約7.5:1である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記リピドイドナノ粒子がコレステロールをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記脂質とコレステロールの比が約1:1~約2:1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リピドイドナノ粒子が、DOPE、DSPC、またはDOPCと、DMG-PEG2Kとをさらに含み、
DSPCは以下の構造:
【化8】
を有し、
DOPEは以下の構造:
【化9】
を有し、
DOPCは以下の構造:
【化10】
を有し、
DMG-PEG2Kは以下の構造:
【化11】
を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記リピドイドナノ粒子が、DOPCとDMG-PEG2Kを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記脂質とDOPCの比が約4:1~約6:1であり;かつ前記脂質とDMG-PEG2Kの比が約4:1~約100:1または約4:1~約20:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記リピドイドナノ粒子が、約25nm~約1000nmの粒径を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記リピドイドナノ粒子が、約50nm~約500nmの粒径を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ヒトのリポタンパク質代謝障害が、ANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異と関連する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
心血管疾患が、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型遺伝子(PCSK9)と関連する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ヒトのリポタンパク質代謝障害が、低レベルの血漿高密度リポタンパク質コレステロール、高レベルの血清低密度リポタンパク質コレステロール、または高レベルのトリグリセリドと関連する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
心血管疾患が、ホモ接合型家族性高コレステロール血症、および高コレステロール血症からなる群より選択される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
【化12】
からなる群より選択される脂質。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/857,111号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金番号EB024041およびTR002636による政府の支援を受けて行われた。政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
アンジオポエチン様タンパク質3(Angiopoietin-like 3)(ANGPTL3)は、血漿リポタンパク質濃度を調節する酵素である。ANGPTL3遺伝子における自然に発生する機能喪失型変異により生じるANGPTL3欠損を有するヒトが存在する。これらの患者は、血中トリグリセリド(TG)および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の低下を示すが、この欠損に起因する明らかな臨床的リスクや合併症はない。最近の遺伝学的および薬理学的研究により、この知見が検証され、ANGPTL3のノックダウンが何らかの保護効果をもたらす可能性が示されたことから、ANGPTL3はヒトのリポタンパク質代謝障害を治療するための魅力的な治療標的となっている。ANGPTL3に対する2つの異なる治療的阻害戦略が最近検証された。1つの臨床試験では、ANGPTL3を標的とするモノクローナル抗体エビナクマブ(evinacumab)が、健康なヒトボランティアにおいて、LDL-CおよびTGレベルを効果的に低下させることが証明された。これらの結果は、ANGPTL3のメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の投与がマウスにおいて脂質レベルの低下ならびにアテローム性動脈硬化の進行の抑制を達成したことを見出した研究と合致する。さらに、ヒトにおいても、アテローム形成性リポタンパク質レベルの低下が認められ、第I相無作為化臨床試験において重篤な有害事象は記録されなかった。これらの結果は、ANGPTL3の治療的拮抗作用が、脂質レベルを低下させ、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の発症を低減させるのに有効かつ安全であることを強く実証した。
【0004】
CRISPR/Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats [CRISPR]/CRISPR-associated protein 9)システムは、最も革新的なゲノム編集ツールの1つである。CRISPR/Cas9は、DNAの二本鎖切断(DSB)を標的化(配列特異的)様式で導入し、その後、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(homology directed repair)(HDR)によってDSBを修復する。一過性である従来のASOまたは抗体療法と比較して、CRISPR/Cas9システムは、編集された細胞に長期的な治療効果をもたらす永続的な機能喪失標的遺伝子変異を誘導することができ、CRISPR/Cas9はヒト疾患の治療のための有望な候補とされている。しかしながら、CRISPR/Cas9機構の安全で効率的かつ特異的な送達は、非常に大きな技術的課題として残っており、この技術の治療的適用を制限している。ウイルスベクター(アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスなど)の使用は、しばしば非常に高い編集効率をもたらすが、望ましくない挿入変異誘発および潜在的なバイオセーフティーの懸念に関する重大な安全性リスクを有するため、それらの適用が制限されている。比較して、より良好な安全性プロファイルを有する非ウイルスナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、金ナノ粒子、およびポリマーナノ粒子など)は、典型的には送達効率の低下を犠牲にして、CRISPRプラスミドDNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、およびリボ核タンパク質(RNP)の送達のために開発されている。DNA、mRNA、およびRNPの各様式でのCRISPR送達は潜在的な強みを有するが、mRNA送達はin vivoでのゲノム編集用途に特に有望であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本開示は、ヒトのリポタンパク質代謝障害または心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、脂質、CRISPR/Cas9 mRNAおよびシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリピドイドナノ粒子を投与することを含み、
sgRNAは、シングルガイドアンジオポエチン様タンパク質3(sgANGPTL3)またはシングルガイドプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(sgPCSK9)であり;
脂質は、式I:
【化1】
で表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
頭部は、
【化2】
であり;
R
a、R
a’、R
a”、およびR
a”’は、それぞれ独立して、R
脂質、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、R
aとR
a’またはR
a’’とR
a’’は、両方がR
脂質であることはなく;
Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり;
R
脂質は、それぞれ独立して、
【化3】
であり、
R
1およびR
2は、H、OH、NHR
30、またはSHであり;
R
3およびR
4は両方がHであるか、またはR
3とR
4が一緒になってオキソ(=O)基を形成し;
Xは、CH
2、O、NR
30、またはSであり;
R
30は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルケニル、またはC
1-6アルキニルであり;
mは1~3から選択される整数であり;
nは1~14から選択される整数であり;
pは0または1であり;
qは1~10から選択される整数であり;
tは0、1、または2である。
【0006】
別の態様では、本開示は、以下からなる群より選択される脂質を提供する。
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】in vitroおよびin vivoでのCas9 mRNA送達の概略図であり、in vitroおよびin vivoでのCRISPR/Cas9ゲノム編集送達のための生体還元性脂質/Cas9 mRNA/sgRNAナノ粒子の形成を示す。
【
図1B】脂質合成に使用されるアミンの合成経路、脂質命名法および化学構造を示す概略図である。
【
図2A】ルシフェラーゼmRNA単独(160ng/mL)または異なる脂質ナノ粒子のナノ複合体の形態で処理したA375細胞のルシフェラーゼ発現を示す棒グラフである。
【
図2B】RFP mRNA単独(320ng/mL)またはBAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子の形態でトランスフェクトしたHeLa細胞を示すCLSM画像である。スケールバー:20μm。
【
図2C】濃度を高めたBAMEA-O16B/RFP mRNAで処理したHeLa細胞のmRNA用量依存的なRFP発現を示す棒グラフである。mRNA送達の24時間後にRFPの発現プロファイルを定量した。
【
図3A】BAMEA-O16BおよびBAMEA-O16の化学構造を示す。
【
図3B】BAMEA-O16B/RNAナノ粒子の細胞取り込み効率を示す棒グラフである。
【
図3C】BAMEA-O16B/Cy3-RNAまたはBAMEA-O16/Cy3-RNAナノ粒子で処理したHeLa細胞のCLSM画像である。送達のために指示された比で10nMのCy3-RNAを脂質と複合体化させてHeLa細胞に送達させ、LysoTracker@Greenを用いてエンドソームを共染色した(スケールバー:20μm)。
【
図3D】BAMEA-O16B/mRNA送達が、BAMEA-O16ナノ粒子の送達よりも高められたHeLa細胞でのRFP発現を示したことを表すプロットである。
【
図4A】Cas9 mRNA/sgGFP単独またはBAMEA/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子で処理したHEK-GFP細胞のCLSM画像である。スケールバー:20μm。
【
図4B】迅速かつ効率的なゲノム編集のためのBAMEA/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子の送達を示す棒グラフである。HEK-GFP細胞を、異なる用量のCas9 mRNAおよびsgGFP(13nM)で処理し、送達後の様々な時点でGFP発現を定量した。
【
図4C】BAMEA/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子を用いたsgRNA配列特異的ゲノム編集およびGFPノックアウトを示すプロットである。GFP-HEK細胞をBAMEA/Cas9 mRNA/sgGFPまたはBAMEA/Cas9 mRNA/スクランブルsgRNAナノ粒子で処理し、mRNA送達の48時間後にGFPノックアウト効率を測定した。
【
図4D】BAMEA/Cas9 mRNA/sgHPV18ナノ粒子の送達が、HeLa細胞の成長を効率的かつ選択的に阻害したことを示すプロットである。
【
図5A】BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/Cy3-RNAナノ粒子(右)またはCas9 mRNA/Cy3-RNA(遊離)を注射したマウスの組織の生物発光画像である。
【
図5B】BAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子を注射したマウスの肝臓の蛍光画像であり、肝細胞へのmRNAの効率的な送達を示した。スケールバー:20μm。
【
図5C】BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgPCSK9ナノ粒子処理が、マウスの血清PCSK9を効果的に低減させたことを示す棒グラフである。DPBS対照を注射したものに対して、Cas9 mRNAナノ粒子処理の血清PCSK9レベルを正規化した。
【
図6A】送達の24時間後のAlarmar Blueアッセイを用いたBAMEA-016B、PPPDA-N16B、LPF2KまたはそれらのmRNAナノ複合体の細胞毒性アッセイを示す棒グラフである。
【
図6B】送達の24時間後のスルホローダミンB(SRB)アッセイを用いたBAMEA-016B、PPPDA-N16B、LPF2KまたはそれらのmRNAナノ複合体の細胞毒性アッセイを示す棒グラフである。
【
図7】BAMEA-016B/mRNA複合体からのGSH誘発mRNA放出を示すアガロースゲル電気泳動画像である。
【
図8】HEK-GFP細胞をCas9 mRNA(160ng/mL)およびsgGFP(13nM)の様々な脂質ナノ粒子のナノ複合体で処理した後のGFPサイレンシングを示す棒グラフであり、GFP発現をmRNA送達の48時間後に定量した。
【
図9】BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgRNAナノ粒子の走査電子顕微鏡画像である。スケールバー:200nm。
【
図10】HEK細胞に対するBAMEA-016B/Cas9 mRNA/sgRNAナノ粒子の細胞毒性アッセイを示す棒グラフである。HEK細胞を、5μg/mLの脂質および増加する濃度のCas9 mRNA/sgRNAから構成されるナノ複合体で10時間処理した後、Alamar Blueアッセイを使用して細胞生存率を測定した。
【
図11】BAMEA-O16B/Luci mRNAナノ粒子(右)または遊離mRNA(左)を注射したマウスの組織の生物発光画像である。
【
図12】注射後2日目の肝臓のヘマトキシリン・エオジン染色による組織学的分析結果である。スケールバー:20μm。
【
図13】BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgPCSK9を注射したマウスの肝機能検査の結果を示す棒グラフである。
【
図14】ANGPTL3の機能喪失型変異を誘導して血中脂質レベルを低下させるための非ウイルス性脂質ナノ粒子(LNP)媒介in vivo CRISPR/Cas9ベースゲノム編集を示す概略図である。Cas9 mRNAおよびANGPTL3特異的シングルガイドRNA(sgAngptl3)をLNPに封入し、肝臓の肝細胞に送達させて、ANGPTL3の標的遺伝子座でのゲノム編集を行い、その後、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)およびトリグリセリド(TG)のレベルを低下させる。
【
図15A】尾部分岐生体還元性(tail-branched bioreducible)リピドイドの化学構造である。
【
図15B】0.5mg/kgのホタルルシフェラーゼ(fLuc)mRNA用量で投与の6時間後にBalb/cマウス(n=3)において測定した、生体還元性LNP対MC3 LNPの全身ルシフェラーゼ生物発光強度(flux)を示す棒グラフである。処方:脂質/コレステロール/DSPC/DMG-PEG=50/38.5/10/1.5(モル比)、脂質/mRNA=12.5/1(重量比)。
【
図15C】fLuc mRNAを配合した306-O12B LNPのサイズおよび分布を示す動的光散乱グラフである。
【
図16A】3つの異なるリン脂質の化学構造である。
【
図16B】コレステロール、DMG-PEG、および異なるリン脂質であるDSPCまたはDOPEまたはDOPCを用いて形成したfLuc mRNA LNPの有効性を示す棒グラフである。
【
図16C】コレステロール、DMG-PEG、および異なるリン脂質であるDSPCまたはDOPEまたはDOPCを用いて形成したfLuc mRNA LNPの生体内分布を示す画像である。
【
図16D】コレステロール、DOPC、DMG-PEGを7つの異なるモル比で配合したLNPの処方パラメータを示すグラフである。
【
図16E】Balb/cマウスにfLuc mRNAを0.5mg/kgの用量で注射した6時間後の異なる製剤の全身ルシフェラーゼ生物発光強度(flux)を示す棒グラフである。
【
図16F】306-O12B/mRNAの重量比を変えて、コレステロール、DOPC、DMG-PEGをモル比50/38.5/10/1.5で配合したLNPについて、0.5mg/kgのfLuc mRNAの注射の6時間後の全身ルシフェラーゼ生物発光強度(flux)を示す棒グラフである(n=3)。
【
図17A】306-O12B LNPを用いた、遺伝子操作されたtdTomatoレポーターAi14マウスへのCas9 mRNAおよびLoxP標的化シングルガイドRNA(sgLoxP)の共送達の概略図である。
【
図17B】Cas9 mRNA/sgLoxP(1/1.2、重量)を封入したLNPを総RNA用量1.65mg/kgで投与したAi14マウスから採取した臓器のEx vivo画像である。tdTomato蛍光をIVISイメージングシステムで検出した。
【
図17C】tdTomatoシグナルが主に肝臓の肝細胞において発現されたことを示す肝臓切片の共焦点蛍光顕微鏡画像である(スケールバー:20μm)。
【
図18A】Cas9 mRNAとsgAngptl3を2:1、1:1.2、および1:2の質量比で配合した306-O12B LNPの注射後のインデル(挿入欠失)の割合を示すグラフである(n=5)。
【
図18B】Cas9 mRNAとsgAngptl3を2:1、1:1.2および1:2の質量比で配合した306-O12B LNPの注射後の血清ANGPTL3レベルを示すグラフである(n=5)。
【
図19A】Cas9 mRNAとsgAngptl2を共ロードした306-O12B LNPを3.0mg/kgの総RNA用量で投与した7日後のマウスの肝臓におけるインデルの次世代シーケンシング解析結果と、ANGPTL3タンパク質、トリグリセリド、およびLDL-Cレベルの血清分析結果を示すグラフである。MC-3 LNPを陽性対照として使用した(n=5または6)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図19B】各処置群で最も編集されたマウスにおける特定の編集された対立遺伝子の編集頻度を示す。
【
図19C】上位9つの予測オフターゲット部位における編集頻度を示す。
【
図20A】fLuc mRNAと配合する前の306-O12B LNPの代表的なTEM画像である(スケールバー:500nm)。
【
図20B】fLuc mRNAと配合した後の306-O12B LNPの代表的なTEM画像である(スケールバー:500nm)。
【
図21】fLuc mRNAをロードした306-O12B LNPおよびMC-3 LNPを注射したマウスのin vivo画像である。注射の6時間後にIVISイメージングシステムにより画像を撮影した。
【
図22】fLuc mRNAに対する306-O12B LNPの封入効率を示す棒グラフである。
【
図23A】sgLoxPを封入した306-O12B LNPを0.75mg/kgの用量で投与したAi14/Cas9マウスから採取した臓器のex vivo画像であり、tdTomato蛍光をIVISイメージングシステムで検出した。
【
図23B】肝臓切片の共焦点蛍光顕微鏡検査であり、tdTomatoシグナルが主に肝臓の肝細胞で発現していることを示す(スケールバー:20μm)。
【
図24】Cas9 mRNA/sgAngptl3を共ロードした306-O12B LNPのサイズ分布を示す動的光散乱グラフである。
【
図25】Cas9 mRNA/sgAngptl3を共ロードした306-O12B LNPおよびMC-3 LNPを投与された7日後に採取したマウスの肝臓サンプルからのゲノムDNAを用いて行ったT7E1アッセイのゲル電気泳動画像である。矢印は、T7E1アッセイに起因する切断産物を示す。
【
図26】注射の2日後に測定したAST、ALTおよびTNF-αの血清レベルを示すグラフである(n=5)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
in vitroおよびin vivoでの効率的かつ非常に迅速なゲノム編集のために、Cas9 mRNAとsgRNAを同時に生体還元性脂質ナノ粒子に封入することによりCRISPR/Cas9を系統的に送達するための新しいアプローチが開示される。mRNA送達およびCRISPR/Cas9ゲノム編集のためのジスルフィド結合含有疎水性尾部から構成される生体還元性脂質ナノ粒子も開示される(
図1Aおよび
図1B)。
【0009】
本開示において、生体還元性脂質は、スクリーニングおよび最適化アプローチにより、in vitroおよびin vivoの両方でレポーターmRNAおよびCas9 mRNA/sgRNA複合体を送達することが特定される。生体還元性脂質は、ジスルフィド結合交換機構を介して還元的化学シグナルに応答して細胞内にmRNAを放出する一方で、静電相互作用を介してmRNAを封入してナノ粒子を組み立てることができる(
図1A)。
【0010】
Cas9 mRNA/sgRNAの同時送達は、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞のGFP発現を高効率でノックアウトし、有効な遺伝子ノックアウトはCas9 mRNA送達後さらに急速に観察され、これは、in vitroゲノム編集効率の点でCas9/sgRNA RNP送達と比較して有意な増強である。生体還元性脂質ナノ粒子の静脈内注射は、非処置マウスと比較して非常に低いレベルまでマウス血清プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を効果的にノックダウンした。生体還元性脂質は、これまでに報告された最も効率的な非ウイルス性CRISPR/Cas9ゲノム編集送達の1つに相当する。
【0011】
一態様では、本開示は、ヒトのリポタンパク質代謝障害または心血管疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、脂質、CRISPR/Cas9 mRNAおよびシングルガイドRNA(sgRNA)を含むリピドイドナノ粒子を投与することを含み、
sgRNAは、シングルガイドアンジオポエチン様タンパク質3(sgANGPTL3)またはシングルガイドプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(sgPCSK9)であり;
脂質は、式I:
【化5】
で表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
R
頭部は、
【化6】
であり;
R
a、R
a’、R
a”、およびR
a”’は、それぞれ独立して、R
脂質、H、C
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、C
3-C
20シクロアルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、C
1-C
20ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、R
aとR
a’またはR
a’’とR
a’’は、両方がR
脂質であることはなく;
Zは、C
1-C
20二価脂肪族ラジカル、C
1-C
20二価ヘテロ脂肪族ラジカル、二価アリールラジカル、または二価ヘテロアリールラジカルであり;
R
脂質は、それぞれ独立して、
【化7】
であり;
R
1およびR
2は、H、OH、NHR
30、またはSHであり;
R
3とR
4は両方がHであるか、またはR
3とR
4が一緒になってオキソ(=O)基を形成し;
Xは、CH
2、O、NR
30、またはSであり;
R
30は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルケニル、またはC
1-6アルキニルであり;
mは1~3から選択される整数であり;
nは1~14から選択される整数であり;
pは0または1であり;
qは1~10から選択される整数であり;
tは0、1、または2である。
【0012】
【0013】
ある実施形態では、RaおよびRa’は、R脂質、H、またはC1-C20アルキルである。
【0014】
ある実施形態では、R
頭部は、
【化9】
からなる群より選択される化合物に由来する。
【0015】
ある実施形態では、R1およびR2はHである。ある実施形態では、R1はHであり;R2はOHである。
【0016】
ある実施形態では、R3およびR4はHである。ある実施形態では、R3とR4は一緒になってオキソ(=O)基を形成する。
【0017】
ある実施形態では、Zは、CH2、O、またはNR30である。ある実施形態では、ZはCH2である。ある実施形態では、ZはOである。ある実施形態では、ZはNR30である。
【0018】
ある実施形態では、mは1または2である。
【0019】
ある実施形態では、nは、4~12から選択される整数である。ある実施形態では、nは、6~10から選択される整数である。
【0020】
ある実施形態では、pは0である。ある実施形態では、pは1である。
【0021】
ある実施形態では、qは、2~8から選択される整数である。ある実施形態では、qは、4~8から選択される整数である。
【0022】
ある実施形態では、tは0である。ある実施形態では、tは1である。
【0023】
ある実施形態では、R
脂質は、それぞれ独立して、
【化10】
からなる群より選択される。
【0024】
ある実施形態では、脂質は、
【化11】
からなる群より選択される。
【0025】
ある実施形態では、脂質とCRISPR/Cas9 mRNAの比は、約3:1~約15:1である。ある実施形態では、脂質とCRISPR/Cas9 mRNAの比は、約7.5:1である。
【0026】
ある実施形態では、リピドイドナノ粒子は、コレステロールをさらに含む。
【0027】
ある実施形態では、脂質とコレステロールの比は、約1:1~約2:1である。
【0028】
ある実施形態では、リピドイドナノ粒子は、DOPE、DSPC、またはDOPC、およびDMG-PEG2Kをさらに含み、
DSPCは、以下の構造;
【化12】
を有し、
DOPEは、以下の構造:
【化13】
を有し、
DOPCは、以下の構造:
【化14】
を有し、
DMG-PEG2Kは、以下の構造:
【化15】
を有する。
【0029】
ある実施形態では、リピドイドナノ粒子は、DOPCおよびDMG-PEG2Kをさらに含む。
【0030】
ある実施形態では、脂質とDOPCの比は約4:1~約6:1であり、脂質とDMG-PEG2Kの比は、約4:1~約100:1、または約4:1~約20:1である。
【0031】
ある実施形態では、リピドイドナノ粒子は、約25nm~約1000nmの粒径を有する。ある実施形態では、リピドイドナノ粒子は、約50nm~約500nmの粒径を有する。
【0032】
ある実施形態では、ヒトのリポタンパク質代謝障害は、ANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異と関連する。
【0033】
ある実施形態では、心血管疾患は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型遺伝子(PCSK9)と関連する。
【0034】
ある実施形態では、ヒトのリポタンパク質代謝障害は、血漿高密度リポタンパク質コレステロールの低下、血清低密度リポタンパク質コレステロール、またはトリグリセリドレベルと関連する。
【0035】
ある実施形態では、ヒトのリポタンパク質代謝障害は、低レベルの血漿高密度リポタンパク質コレステロール、高レベルの血清低密度リポタンパク質コレステロール、または高レベルのトリグリセリドと関連する。
【0036】
ある実施形態では、心血管疾患は、ホモ接合体家族性高コレステロール血症、および高コレステロール血症からなる群より選択される。
【0037】
別の態様では、本開示は、以下からなる群より選択される脂質を提供する。
【化16】
【0038】
定義
本明細書で特に定義されていない限り、本出願で使用される科学技術用語は、当業者が一般的に理解している意味を有するものとする。一般に、本明細書に記載されている、化学、細胞および組織培養、分子生物学、細胞および癌生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、薬理学、遺伝学、およびタンパク質および核酸化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの技術は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。
【0039】
本開示の方法および技術は、特に示されない限り、一般的に、当技術分野でよく知られておりかつ本明細書を通して引用および考察される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実施される。例えば、“Principles of Neural Science”, McGraw-Hill Medical, New York, N.Y. (2000); Motulsky, “Intuitive Biostatistics”, Oxford University Press, Inc. (1995); Lodish et al., “Molecular Cell Biology, 4th ed.”, W. H. Freeman & Co., New York (2000); Griffiths et al., “Introduction to Genetic Analysis, 7th ed.”, W. H. Freeman & Co., N.Y. (1999); およびGilbert et al., “Developmental Biology, 6th ed.”, Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA (2000)を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用される化学用語は、本明細書で別途定義されていない限り、“The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms”, Parker S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco, C.A. (1985)に例示されているように、当該技術分野における従来の使用方法に従って使用される。
【0041】
本明細書で使用される「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、および説明が、事象または状況が生じる場合だけでなく生じない場合も含むことを意味する。例えば、「任意選択で置換されたアルキル」とは、アルキルが置換されていてもよく、またアルキルが置換されていない場合も含むことを意味する。
【0042】
本発明の化合物の置換基および置換パターンは、当業者によって容易に入手可能な出発物質から当技術分野において公知の技術ならびに以下に記載される方法によって容易に合成され得る化学的に安定な化合物をもたらすために当業者が選択できることが理解される。置換基自体が複数の基で置換されている場合、安定した構造が得られる限り、これら複数の基は同じ炭素上にあっても異なる炭素上にあってもよいことが理解される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「任意選択で置換された」という用語は、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アルキル、ニトロ、シリル、アシル、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、アミノアルキル、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-OCO-CH2-O-アルキル、-OP(O)(O-アルキル)2または-CH2-OP(O)(O-アルキル)2を含むがそれらに限定されない指定された置換基のラジカルでの所与の構造中の1~6個の水素ラジカルの置換を指す。好ましくは、「任意選択で置換された」とは、上記の置換基での所与の構造中の1~4個の水素ラジカルの置換を指す。より好ましくは、1~3個の水素ラジカルが上記の置換基で置換される。置換基はさらに置換されていてもよいことが理解される。
【0044】
「a」、「an」、「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味し得る。群の1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、群のメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在するか、採用されるか、または関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在するか、採用されるか、または関連する実施形態を包含する。本発明は、群のメンバーの2つ以上、またはすべてが、所与の製品またはプロセスに存在するか、採用されるか、または関連する実施形態を包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、C1-C10直鎖アルキル基またはC1-C10分岐鎖アルキル基を含むがこれらに限定されない飽和脂肪族基を指す。好ましくは、「アルキル」基は、C1-C6直鎖アルキル基またはC1-C6分枝鎖アルキル基を指す。最も好ましくは、「アルキル」基は、C1-C4直鎖アルキル基またはC1-C4分枝鎖アルキル基を指す。「アルキル」の例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、1-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、1-オクチル、2-オクチル、3-オクチルまたは4-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なお、「アルキル」基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0046】
「アシル」という用語は、技術的に認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-で表される基を指す。
【0047】
「アシルアミノ」という用語は、技術的に認識されており、アシル基で置換されたアミノ基を意味し、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-によって表すことができる。
る。
【0048】
用語「アシルオキシ」は、当該技術分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-によって表される基を指す。
【0049】
用語「アルコキシ」は、それに結合した酸素を有するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0050】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指し、一般式アルキル-O-アルキルで表すことができる。
【0051】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を指す。好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC1-30、分枝鎖の場合はC3-30)を有し、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。
【0052】
さらに、本明細書、実施例、および特許請求の範囲全体で使用されている用語「アルキル」は、非置換および置換アルキル基の両方を含むことが意図されており、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指し、トリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルなどのハロアルキル基を含む。
【0053】
「Cx-y」または「Cx-Cy」という用語は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学的部分と組み合わせて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含む基を含むことを意味する。C0アルキルは、基が末端部分にある場合は水素を、内部にある場合は結合を指す。例えば、C1-6アルキル基は、鎖中に1~6個の炭素原子を含む。
【0054】
本明細書で使用される用語「アルキルアミノ」は、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「アルキルチオ」は、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式アルキルS-で表すことができる。
【0056】
本明細書で使用される用語「アミド」は、以下の基を指す:
【化17】
式中、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビル基を表すか、あるいはR
9およびR
10はそれらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる。
【0057】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、非置換および置換アミンの両方、ならびにそれらの塩を指し、例えば、次式により表すことができる部分を指す:
【化18】
式中、R
9、R
10、およびR
10’は、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビル基を表すか、あるいは、R
9およびR
10はそれらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる。
【0058】
本明細書で使用される用語「アミノアルキル」は、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「アラルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0060】
本明細書で使用される用語「アリール」には、環の各原子が炭素である、置換または非置換の単環芳香族基が含まれる。好ましくは、環は5~7員環であり、より好ましくは6員環である。用語「アリール」には、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の環式環を有する多環式環系であって、それら環の少なくとも1つが芳香族であるものも含まれ、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0061】
用語「カルバメート」は、当技術分野で認識されており、次の基を指す:
【化19】
式中、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビル基を表す。
【0062】
本明細書で使用される用語「カルボシクリルアルキル」は、カルボシクリル(炭素環)基で置換されたアルキル基を指す。
【0063】
用語「炭素環」には、5~7員の単環式環および8~12員の二環式環が含まれる。二環式炭素環の各環は、飽和、不飽和および芳香族環から選択され得る。炭素環には、2つの環の間で1つ、2つまたは3つ以上の原子が共有されている二環式分子も含まれる。「縮合炭素環」は、各環が他の環と2つの隣接する原子を共有する二環式炭素環を指す。縮合炭素環の各環は、飽和、不飽和および芳香族環から選択され得る。例示的な実施形態では、芳香族環、例えばフェニルが、飽和または不飽和環、例えばシクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクロヘキセンに融合し得る。価数が許す限り、飽和、不飽和および芳香族二環式環の任意の組み合わせが、炭素環の定義に含まれる。例示的な「炭素環」には、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタ-3-エン、ナフタレンおよびアダマンタンが含まれる。例示的な縮合炭素環には、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エンが含まれる。「炭素環」は、水素原子を有することができる任意の1つまたは複数の位置で置換されていてもよい。
【0064】
本明細書で使用される用語「カルボシクリルアルキル」は、カルボシクリル(炭素環)基で置換されたアルキル基を意味する。
【0065】
「炭酸塩(カルボナート)」という用語は、当技術分野で認識されており、基-OCO2-を指す。
【0066】
本明細書では、「カルボキシ」という用語は、式-CO2Hで表される基を指す。
【0067】
本明細書で使用される用語「エステル」は、基-C(O)OR9を指し、式中R9はヒドロカルビル基を表す。
【0068】
本明細書で使用される用語「エーテル」は、酸素を介して別のヒドロカルビル基に結合したヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは、対称であっても非対称であってもよい。エーテルの例としては、複素環-O-複素環およびアリール-O-複素環が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルには、一般式アルキル-O-アルキルで表すことができる「アルコキシアルキル」基が含まれる。
【0069】
本明細書で使用される用語「ハロ」および「ハロゲン」は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0070】
本明細書で使用される用語「ヘタラルキル(hetaralkyl)」および「ヘテロアラルキル」は、ヘタリール(hetaryl)基で置換されたアルキル基を指す。
【0071】
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」には、置換または非置換の芳香族単環構造、好ましくは5~7員環、より好ましくは5~6員環が含まれ、その環構造は、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロアリール」および「ヘタリール」という用語には、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通している2つ以上の環式環を有する多環式環系であって、それら環の少なくとも1つがヘテロ芳香族環であるものも含まれ、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/または複素環であり得る。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール基、フラン基、チオフェン基、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピラゾール基、ピリジン基、ピラジン基、ピリダジン基、ピリミジン基などが挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄である。
【0073】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリルアルキル」は、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0074】
「ヘテロシクリル」、「複素環」、および「複素環式」という用語は、置換または非置換の非芳香族環構造、好ましくは3~10員環、より好ましくは3~7員環を指し、その環構造は少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含む。また、「ヘテロシクリル」および「複素環式」という用語には、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の環を有する多環式環系であって、それら環の少なくとも1つが複素環であるものも含まれ、例えば、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される用語「ヒドロカルビル」は、=Oまたは=Sの置換基を有さない炭素原子を介して結合している基を指し、典型的には、少なくとも1つの炭素-水素結合および主に炭素骨格を有するが、任意選択でヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、メチル、エトキシエチル、2-ピリジル、さらにはトリフルオロメチルのような基は、本願の目的上、ヒドロカルビルであると考えられるが、アセチル(連結炭素に=Oの置換基を有する)やエトキシ(炭素ではなく酸素を介して連結されている)のような置換基はそうではない。ヒドロカルビル基には、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0077】
「低級」という用語は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学的部位と組み合わせて使用される場合、置換基中の原子数が10個以下、好ましくは6個以下の基を含むことを意味する。例えば、「低級アルキル」とは、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含むアルキル基を指す。ある実施形態では、本明細書で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシ置換基は、それらが単独で現れるか、またはヒドロキシアルキルおよびアラルキル(この場合、例えば、アルキル置換基中の炭素原子を数える際にアリール基内の原子は数えられない)のように他の置換基と組み合わせて現れるかにかかわらず、それぞれ低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、または低級アルコキシである。
【0078】
「ポリシクリル」、「多環」、および「多環式」という用語は、2つ以上の原子が2つの隣接する環に共通している2つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリル)を指し、例えば、環は「縮合環」である。多環の各環は、置換されていても置換されていなくてもよい。ある実施形態では、多環の各環は、環内に3~10個の原子を含み、好ましくは5~7個の原子を含む。
【0079】
用語「硫酸塩(スルフェート)」は、当該技術分野で認識されており、基-OSO3H、またはその薬学的に許容される塩を指す。
【0080】
用語「スルホンアミド」は、当該技術分野で認識されており、次の一般式で表される基を指す:
【化20】
式中、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビルを表す。
【0081】
用語「スルホキシド」は当技術分野で認識されており、基-S(O)-を指す。
【0082】
用語「スルホネート」は、当該技術分野で認識されており、基SO3H、またはその薬学的に許容される塩を指す。
【0083】
用語「スルホン」は当技術分野で認識されており、基-S(O)2-を指す。
【0084】
用語「置換された」は、骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置換する置換基を有する部分を指す。「置換」または「で置換された」は、そのような置換が、置換された原子および置換基の許容される原子価に従い、さらに置換が、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない安定な化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されるであろう。本明細書中で使用される場合、用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様において、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つまたは複数であり、同じでも異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。置換基には、本明細書に記載の任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が含まれ得る。炭化水素鎖上で置換された部分は、適切な場合、それら自体が置換されていてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0085】
本明細書で使用される用語「チオアルキル」は、チオール基で置換されたアルキル基を指す。
【0086】
「チオエステル」という用語は、本明細書では、基-C(O)SR9または-SC(O)R9を指し、ここで、R9はヒドロカルビルを表す。
【0087】
本明細書で使用される用語「チオエーテル」は、酸素が硫黄に置き換えられたエーテルと同等のものである。
【0088】
用語「尿素」は、当該技術分野で認識されており、次の一般式で表すことができる:
【化21】
式中、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビルを表す。
【0089】
本明細書で使用される「調節する」という用語には、機能または活性(細胞増殖など)の阻害または抑制、ならびに機能または活性の増強が含まれる。
【0090】
「薬学的に許容される」という語句は、当技術分野で認識されている。ある実施形態において、この用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合って、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適している、組成物、賦形剤、アジュバント、ポリマー、ならびに他の材料および/または剤形を含む。
【0091】
「塩」は、本明細書において、酸付加塩または塩基付加塩を指すために使用される。
【0092】
本開示の方法および組成物において有用な化合物の多くは、その構造中に少なくとも1つの立体中心を有する。この立体中心は、RまたはSの配置で存在することができ、前記RおよびSの表記は、Pure Appl.Chem.(1976),45,11-30に記載される規則に対応して使用される。本開示は、化合物、塩、プロドラッグまたはそれらの混合物のエナンチオマーおよびジアステレオアイソマーのようなすべての立体異性体(立体異性体のすべての可能な混合物を含む)を企図する。例えば、国際公開第01/062726号を参照されたい。
【0093】
さらに、アルケニル基を含む特定の化合物は、Z(ツザメン)またはE(エントゲーゲン)異性体として存在し得る。それぞれの場合において、本開示は、混合異性体と個々の異性体の両方を含む。
【0094】
化合物のいくつかは、互変異性体の形態で存在し得る。このような形態は、本明細書に記載されている式で明示はされていないが、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0095】
「薬学的に許容される」とは、連邦政府や州政府の規制機関、または米国以外の国の対応機関によって承認されているまたは承認可能であるか、あるいは動物、特にヒトへの使用に関して米国薬局方やその他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0096】
「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を有する本発明の化合物の塩を指す。特に、そのような塩は非毒性であり、無機または有機の酸付加塩および塩基付加塩であり得る。具体的には、以下のような塩が挙げられる:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を用いて形成される;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸を用いて形成される、酸付加塩;あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンなどで置換されたとき;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位したときに形成される塩。塩にはさらに、単なる例示として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;ならびに、化合物が塩基性官能基を有する場合には、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの非毒性の有機酸または無機酸の塩が含まれる。
【0097】
「薬学的に許容されるカチオン」は、酸性官能基の許容されるカチオン性対イオンを指す。このようなカチオンとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどが例示される(例えば、Berge, et al., J. Pharm. Sci. 66 (1):1-79 (January 77)を参照されたい。
【0098】
「薬学的に許容されるビヒクル」は、それを用いて本発明の化合物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。
【0099】
「薬学的に許容される代謝的に切断可能な基」は、in vivoで切断され、本明細書で示される構造式の親分子を得ることができる基を指す。代謝的に切断可能な基の例としては、-COR、-COOR、-CONRRおよび-CH2ORラジカルが挙げられ、ここで、Rは、各出現で独立して、アルキル、トリアルキルシリル、炭素環式アリール、あるいはアルキル、ハロゲン、ヒドロキシもしくはアルコキシのうちの1つまたは複数で置換された炭素環式アリールから選択される。代表的な代謝的に切断可能な基の具体例としては、アセチル基、メトキシカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシメチル基、およびトリメチルシリル基などが挙げられる。
【0100】
「プロドラッグ」は、本発明の化合物の誘導体を含めて、切断可能な基を有し、かつ加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で、生体内で薬学的に活性な本発明の化合物になる化合物を指す。このような例には、コリンエステル誘導体など、N-アルキルモルホリンエステルなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物の他の誘導体は、それらの酸形態および酸誘導体形態の両方において活性を有するが、酸感受性形態において、しばしば、哺乳動物生物における溶解性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供する(Bundgard, H., Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam 1985を参照されたい)。プロドラッグには、当業者によく知られた酸誘導体が含まれ、例えば、親酸と適切なアルコールとの反応により調製されたエステル、親酸化合物と置換または非置換のアミンとの反応により調製されたアミド、酸無水物、または混合無水物などが挙げられる。本発明の化合物にペンダントされた酸性基に由来する単純な脂肪族または芳香族エステル、アミドおよび無水物は、特定のプロドラッグである。場合によっては、(アシルオキシ)アルキルエステルまたは(アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどのダブルエステル型のプロドラッグを調製することが望ましい。特に、本発明の化合物のC1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリール、C7-C12置換アリール、およびC7-C12アリールアルキルエステルである。
【0101】
「溶媒和物」は、通常、加溶媒分解反応によって、溶媒または水と会合した化合物の形態を指す(「水和物」とも呼ばれる)。この物理的会合には水素結合も含まれる。従来の溶媒として、水、エタノール、酢酸などが挙げられる。本発明の化合物は、例えば、結晶形態で調製され、溶媒和または水和され得る。適切な溶媒和物には、水和物などの薬学的に許容される溶媒和物が含まれ、さらに化学量論的溶媒和物と非化学量論的溶媒和物の両方が含まれる。特定の例では、「溶媒和物」は、例えば、1つまたは複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合に、分離することが可能となる。「溶媒和物」は、溶液相および分離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物として、水和物、エタノール和物、メタノール和物などが挙げられる。
【0102】
投与が想定される「対象」には、ヒト(任意の年齢層の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、高齢成人))、および/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコ、および/またはイヌなどの哺乳類が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、対象はヒトである。ある実施形態では、対象は非ヒト動物である。「ヒト」、「患者」、および「対象」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0103】
「有効量」は、疾患を治療または予防するために対象に投与されたときに、そのような治療または予防をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。「有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに治療対象の年齢、体重などに応じて変動し得る。「治療有効量」は、治療的処置のための有効量を指す。また、「予防有効量」は、予防的処置のための有効量を指す。
【0104】
「予防する」または「予防」または「予防的処置」は、疾患または障害を獲得または発症するリスクの低減(すなわち、疾患の発症に先立ち、疾患を引き起こす物質にまだ曝露されていないかまたは疾患にかかりやすい対象において、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないこと)を指す。
【0105】
「防御(Prophylaxis)」という用語は、「予防(prevention)」に関連し、病気の治療や治癒ではなく、予防を目的とした手段や処置を指す。予防手段の非限定的な例には、ワクチンの投与;体を動かさないために血栓症のリスクがある入院中の患者への低分子ヘパリンの投与;およびマラリアが風土病であるかマラリアに罹患するリスクが高い地域への訪問に先立って行われるクロロキン等の抗マラリア剤の投与が含まれ得る。
【0106】
任意の疾患または障害の「治療する(treating)」または「治療(treatment)」または「治療的処置(therapeutic treatment)」は、一実施形態では、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患を停止すること、またはその臨床症状の少なくとも1つの徴候、程度もしくは重症度を軽減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指し、それは対象により認識されなくてよい。さらに別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、身体的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)、またはその両方で、疾患または障害を調節することを指す。さらなる実施形態では、「治療する」または「治療」は、疾患の進行を遅らせることに関する。
【0107】
本明細書では、「同位体バリアント」という用語は、そのような化合物を構成する1つまたは複数の原子において、不自然な比の同位体を含む化合物を指す。例えば、化合物の「同位体バリアント」は、例えば重水素(2HまたはD)、炭素13(13C)、窒素15(15N)などの1つまたは複数の非放射性同位体を含むことができる。このような同位体置換が行われた化合物では、存在する場合、以下の原子が異なっていてよく、例えば、任意の水素が2H/Dであってよく、任意の炭素が13Cであってよく、または任意の窒素が15Nであってよく、そのような原子の存在および配置は、当業者の技能の範囲内で決定され得ることが理解されるであろう。同様に、本発明は、例えば、得られた化合物が薬物および/または基質の組織分布研究に使用され得る場合には、放射性同位体を用いた同位体バリアントの調製を含むことができる。放射性同位元素であるトリチウム(3H)および炭素14(14C)は、組み込みが容易であり、検出が容易であるという観点から、この目的に特に有用である。さらに、11C、18F、15O、13Nなどの陽電子放出同位体で置換された化合物を調製することもでき、それは基質受容体の占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。本明細書に提供される化合物のすべての同位体バリアントは、放射性物質であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0108】
また、同じ分子式を有するが、原子の結合の性質や順序、空間におけるそれら原子の配置が異なる化合物は「異性体」と称されることも理解されたい。空間における原子の配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。
【0109】
互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像であるものは「エナンチオマー(鏡像異性体)」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば4つの異なる基に結合する場合、一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴づけられ、CahnおよびPrelogのR-とS-の配列決定規則によって、または分子が偏光面を回転させる様式によって記載され、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)-または(-)-異性体である)として指定される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとしてまたはその混合物として存在することができる。同じ比率のエナンチオマーを含む混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0110】
「互変異性体」は、特定の化合物構造の交換可能な形態であり、水素原子および電子の変位が異なる化合物を指す。したがって、2つの構造は、電子および原子(通常はH)の移動によって平衡状態になり得る。例えば、エノールとケトンは、酸または塩基のいずれかで処理することによって迅速に相互変換されるため、互変異性体である。互変異性の別の例は、フェニルニトロメタンのアシ-およびニトロ-形態であり、これらは同様に酸または塩基での処理によって形成される。互変異性体は、目的の化合物の最適な化学反応性および生物学的活性の達成に関連し得る。
【0111】
本明細書では、純粋なエナンチオマー化合物は、その化合物の他のエナンチオマーまたは立体異性体を実質的に含まない(すなわち、エナンチオマー過剰である)。言い換えれば、化合物の「S」形態は、化合物の「R」形態を実質的に含まず、したがって、「R」形態のエナンチオマー過剰である。「エナンチオマー的に純粋」または「純粋なエナンチオマー」という用語は、化合物が95重量%超、96重量%超、97重量%超、98重量%超、98.5重量%超、99重量%超、99.2重量%超、99.5重量%超、99.6重量%超、99.7重量%超、99.8重量%超、または99.9重量%超のエナンチオマーを含むことを意味する。ある実施形態では、重量は、化合物のすべてのエナンチオマーまたは立体異性体の総重量に基づく。
【0112】
本明細書で使用される場合、他に示されない限り、「エナンチオマー的に純粋なR化合物」という用語は、少なくとも約95重量%のR-化合物および最大で約5重量%のS-化合物、少なくとも約99重量%のR-化合物および最大で約1重量%のS-化合物、または少なくとも約99.9重量%のR-化合物および最大で約0.1重量%のS-化合物を指す。ある実施形態では、重量は化合物の総重量に基づく。
【0113】
本明細書で使用される場合、他に示されない限り、「エナンチオマー的に純粋なS化合物または「S化合物」という用語は、少なくとも約95重量%のS-化合物および最大で約5重量%のR-化合物、少なくとも約99重量%のS-化合物および最大で約1重量%のR-化合物、または少なくとも約99.9重量%のS-化合物および最大で約0.1重量%のR-化合物を指す。ある実施形態では、重量は化合物の総重量に基づく。
【0114】
本明細書では、エナンチオマー的に純粋な化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグは、他の活性成分または不活性成分とともに存在することができる。例えば、エナンチオマー的に純粋なR化合物を含む医薬組成物は、例えば、約90%の賦形剤および約10%のエナンチオマー的に純粋なR化合物を含むことができる。ある実施形態では、このような組成物中のエナンチオマー的に純粋なR化合物は、例えば、化合物の総重量に対して、少なくとも約95重量%のR化合物、および最大約5重量%のS化合物を含み得る。例えば、エナンチオマー的に純粋なS-化合物を含む医薬組成物は、例えば、約90%の賦形剤と約10%のエナンチオマー的に純粋なS化合物を含むことができる。ある実施形態では、このような組成物中のエナンチオマー的に純粋なS化合物は、例えば、化合物の総重量に対して、少なくとも約95重量%のS化合物、および最大約5重量%のR化合物を含み得る。ある実施形態では、活性成分は、賦形剤または担体をほとんどまたは全く含まずに製剤化することができる。
【0115】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有し得る;したがって、そのような化合物は、個々の(R)-または(S)-立体異性体として、あるいはそれらの混合物として製造することができる。
【0116】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびその混合物(ラセミ体またはその他)の両方を含むことが意図されている。立体化学の決定および立体異性体の分離のための方法は、当技術分野でよく知られている。
【0117】
有機合成の当業者であれば、化学的に実現可能な安定した複素環式環に含まれるヘテロ原子の最大数は、それが芳香族であるか非芳香族であるかにかかわらず、環のサイズ、不飽和度、およびヘテロ原子の価数によって決まることを認識するであろう。一般に、複素環式環は、複素芳香族環が化学的に実現可能でかつ安定である限り、1~4個のヘテロ原子を有し得る。
【実施例】
【0118】
本明細書に記載された発明をより完全に理解するために、以下の実施例を示す。本願に記載された実施例は、本明細書で提供される化合物、組成物、材料、デバイス、および方法を説明するために提供されており、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0119】
I.生体還元性脂質およびメッセンジャーRNAナノ粒子によって可能とされるIn VivoでのCRISPR/Cas9ゲノム編集
材料および方法
脂質合成に使用したすべての化学物質は、Aladdin社、TCI社、Sigma-Aldrich社から購入し、受け取ったままで使用した。ホタルルシフェラーゼ(L-7602)およびCas9メッセンジャーRNA(mRNA)(L-7606)は、Tri-Link Biotechnologies社から購入した。マウス血清PCSK9は、PCSK9 ELISAキット(Sino Biological,China)を用いて決定した。細胞生存率は、Alamar BlueアッセイまたはSRB細胞増殖および細胞毒性アッセイキット(Yeasen Biotech Co.,Ltd.,China)を用いて決定した。Cy3-RNA(43nt)は、Biosyntech社(Suzhou,Chian)から購入した。GFPを標的としたgRNAは、我々の以前の報告に従って調製し、マウスPCSK9およびヒトHPV18標的sgRNAは、報告されている方法に従ってin vitro転写を用いて調製した。RFPをコードするmRNAは、RiboMAX(商標)Large Scale RNA Production Systems(Promega,USA)を用いて、pcDNA3.1-RFP(Yingrun,Changsha,China)を鋳型とするin vitro転写法を用いて調製した。フローサイトメトリーはBeckman Coulter CytoFLEXで実施した。HeLa、A375、HEK-GFP細胞は、10%FBS(Sigma-Aldrich)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を添加したDMEM(Sigma-Aldrich)で維持した。すべての動物の世話および実験手順は、中国国立ナノ科学技術センター(NCNTC)のInstitutional Animal Care and Use Committees(IUCAC)によって承認された。
【0120】
【0121】
脂質ナノ粒子製剤
脂質は、我々のこれまでの報告(9)に従って記載された方法を用いて、アミンとアクリレートまたはアクリルアミドを加熱することによって合成し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製した。mRNA送達のための脂質ナノ粒子を作製するために、精製した脂質を、2mLバイアルにおいてクロロホルム中16:8:4:1の重量/重量比でコレステロール、DOPEおよびDSPE-PEG2000と混合し、有機溶媒を真空下で蒸発させ、得られた混合物をさらに一晩乾燥させて薄層フィルム(薄膜)を形成した。この脂質膜をエタノール/酢酸ナトリウム緩衝液(200mM、pH=5.2)を用いて水和させ、DSPE-PEG2000の水溶液に滴下した。得られたナノ粒子をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で透析し、過剰なエタノールを除去した。
【0122】
ルシフェラーゼおよびRFP mRNAの細胞内送達
ルシフェラーゼmRNAの送達に有効な脂質ナノ粒子をスクリーニングするために、実験の前日にA375細胞を24ウェルプレートに1ウェルあたり50Kの密度で播種した。実験当日、160ng/mLのルシフェラーゼmRNAを、酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH=5.2)中において3μg/mLの異なる脂質ナノ粒子と混合し(全ての濃度は、細胞に添加された最終RNAおよび脂質濃度を指す)、その後、室温で15分間インキュベートした。次に、得られたmRNAリポプレックスを細胞に添加し、さらに6時間細胞とインキュベートした後、細胞培養液をリフレッシュした。ルシフェラーゼ活性は、ホタルルシフェラーゼ活性アッセイキットを用いて、メーカー(Promega,USA)の指示に従って測定した。
【0123】
BAMEA-O16B/ルシフェラーゼmRNAナノ粒子の細胞毒性アッセイでは、ゲノム編集効率研究と同様に、160ng/mLのルシフェラーゼmRNAナノ粒子または異なる脂質ナノ粒子でHEK細胞を処理した。送達の24時間後に、Alamar BlueまたはSRB細胞増殖および細胞毒性アッセイを用いて細胞生存率を決定した。
【0124】
RFP mRNA送達のために、48ウェルプレートに播種したHeLa細胞(25K細胞/ウェル)を、最適化条件でBAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子で8時間処理した後、新しい細胞培養液を交換した。RFPの発現プロファイルは、mRNA送達の24時間後に、オリンパスFV-IX81共焦点システムのCLSMを用いて画像化するか、またはベックマン・コールターCytoFLEXでのフローサイトメトリーにより定量した。
【0125】
BAMEA-O16B/RNAナノ粒子の細胞取り込みおよびエンドソーム脱出研究
還元的細胞内環境に応答するRNAの放出を促進するように生体還元性脂質ナノ粒子を設計することの有効性を確認するために、BAMEA-O16BまたはBAMEA-O16を酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH=5.2)中においてRFP mRNAと15:1の重量比で複合体化し、その後、室温で15分間インキュベートした。得られたナノ複合体を5mMのGSHで37℃で4時間処理した後、アガロースゲル電気泳動を行い、GSH処理を行わなかったmRNAナノ複合体と比較した。
【0126】
RNAナノ粒子の細胞取り込み研究では、Cy3で標識した43ヌクレオチドRNAをBAMEA-O16BまたはBAMEA-O16ナノ粒子と30:1の重量比で混合した後、HeLa細胞に添加した。CLSMイメージング研究では、HeLa細胞をCy3-RNAナノ粒子で8時間処理し、エンドソームをLysoTracker Green(Thermo Fisher Scientific,USA)を用いて共染色した。BAMEA-O16BまたはBAMEA-O16/RNAナノ粒子の細胞取り込み効率の比較のために、異なる濃度の上記RNAナノ粒子で処理した細胞をフローサイトメトリーを用いて分析し、Cy3陽性細胞を定量した。
【0127】
Cas9 mRNA/sgRNAの送達およびin vitroでのゲノム編集
GFPを安定的に発現させたHEK細胞を、実験の前日に48ウェルプレートに1ウェルあたり25Kの密度で播種した。実験当日、13nMのGFP標的化sgRNAを、酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH=5.2)中において、異なる用量のCas9 mRNAおよび5μg/mLのBAMEA-O16B(すべての濃度は、細胞に添加した最終的なRNAおよび脂質の濃度を示す)と混合し、その後、室温で15分間インキュベートした。次に、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子を細胞に添加し、10時間インキュベートした後、新鮮な細胞培養液を交換した。Cas9 mRNA送達後の異なる時点で、CLSMを用いてGFPの発現プロファイルを画像化するか、またはフローサイトメトリー分析を用いて定量し、Cas9 mRNA/sgGFP送達なしの細胞に対して正規化し、ゲノム編集効率を決定した。さらに、Cas9 mRNA/sgGFPの送達による配列特異的なゲノム編集を確認するために、sgGFPをスクランブルsgRNAに置き換え、Cas9 mRNA/sgGFP送達と同様にHEK-GFP細胞に送達させた。
【0128】
BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子の細胞毒性アッセイでは、ゲノム編集効率の研究と同様に、異なる濃度のCas9 mRNAナノ粒子でHEK細胞を処理した。Cas9 mRNA送達の48時間後に、Alamar Blueを用いて細胞の生存率を決定した。
【0129】
潜在的な遺伝子治療のために内在性遺伝子を編集するためのBAMEA-O16B/Cas9 mRNA送達の有効性を確認するために、48ウェルプレートに播種したHeLa細胞を、sgHPV18またはGFPノックアウト試験と同様のスクランブルRNA配列を含むBAMEA-O16B/Cas9 mRNA単独で処理し、Cas9 mRNA送達の48時間後にAlamar Blueアッセイを用いて細胞生存率を決定した。
【0130】
Cas9 mRNA/sgRNAの送達およびin vivoでのゲノム編集
in vivoでのルシフェラーゼmRNA送達のために、雌の胸腺欠損ヌードマウスにBAMEA-O16B/Luci-mRNAナノ粒子を0.6mg/kgのmRNA用量で、または同用量の遊離mRNAを尾静脈から注射した。ナノ粒子または遊離mRNAの注射の24時間後、IVISスペクトルIn Vivoイメージングシステム(Perkin Elmer,USA)での生物発光イメージングのためにマウスを屠殺して様々な組織を採取した。肝細胞へのmRNAの送達を調べるために、ルシフェラーゼmRNAの送達と同様に、BAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子をC57BL/6マウスに注射した。ナノ粒子送達の24時間後、蛍光イメージング研究のためにマウスを屠殺して肝臓を採取した。
【0131】
In vivoでのCas9 mRNA/Cy3-RNA送達のために、雌の胸腺欠損ヌードマウスに、9mg/kgのBAMEA-O16B、0.6mg/kgのCas9 mRNA、0.8mg/kgのCy3-RNAの用量で、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/Cy3-RNAナノ粒子を、または同じ用量の遊離mRNAを尾静脈から注射した。ナノ粒子または遊離mRNAの注射の6時間後、IVISスペクトルIn Vivoイメージングシステム(Perkin Elmer,USA)での生物発光イメージングのためにマウスを屠殺してさまざまな組織を採取した。
【0132】
in vivoでのCas9 mRNA送達およびPCSK9遺伝子編集のために、C57BL/6マウスに、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgPCSK9、またはスクランブルsgRNA配列を有するBAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgRNAを、9mg/kgのBAMEA-016B、0.6mg/kgのCas9 mRNAおよび0.8mg/kgのsgRNAの用量で尾静脈から注射した。ナノ粒子の注射の2日後にマウスを屠殺して、PCSK9および肝毒性アッセイのためにマウス血清を取り出した。一方、H&E染色のために肝組織を採取し、ナノ粒子注射による肝障害の可能性を調べた。
【0133】
実施例1.mRNA送達に有効な脂質の合成およびスクリーニング
図2A~2Cは、ルシフェラーゼおよびRFPmRNAの細胞内送達を示すグラフおよび画像である。
【0134】
我々の以前の報告に従って、アミンと、ジスルフィド結合を有するアクリルレートまたはアクリルアミドとを加熱することにより、生体還元性脂質を合成した(
図1A)。アミン番号または名称の後にO16BまたはN16Bを付けて脂質を命名し、それぞれアクリルレートまたはアクリルアミドの使用を区別した(
図1B)。精製したままの脂質を、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、およびDSPE-PEG
2000と共に配合し、本研究のすべての細胞送達実験に用いた(詳細は「材料および方法」を参照されたい)。mRNAの送達に有効な脂質のスクリーニングを容易にするために、ルシフェラーゼをコードするmRNAを様々な脂質と1:15の重量比で組み合わせ、A375ヒトメラノーマ細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトされたA375細胞のルシフェラーゼ発現を測定し、ルシフェラーゼmRNAのみ、あるいは市販のトランスフェクション脂質であるLipofectamine 2000(LPF2K)と複合体形成したルシフェラーゼmRNAで処理した細胞と比較した。
図2Aに示すように、mRNA単独で処理した細胞は検出可能なルシフェラーゼ発現を示さず、mRNA単独では細胞内に侵入できないことが示されたが、一方、mRNAと脂質の複合体で処理した細胞は、脂質のアミンおよび尾部構造に依存して変化するルシフェラーゼ発現を示した。2つの生体還元性脂質であるBAMEA-O16B(アミン11)およびPPPDA-N16B(アミン13)は、LPF2Kと同等の効率でルシフェラーゼmRNAを送達した。2つの脂質の生体適合性のさらなる研究は、BAMEA-O16BおよびPPPDA-N16BのmRNAリポプレックスが、LPF2Kよりも低い細胞毒性であったことを示し(
図6Aおよび
図6B)、このことは、mRNA送達のための効率的でしかも生体適合性のナノキャリアを発見するためのコンビナトリアル脂質ナノ粒子を設計する利点および必要性を強調した。代表的な脂質であるBAMEA-O16Bを、詳細なmRNA送達およびCRISPR/Cas9ゲノム編集研究のために選択する。
【0135】
代表的な脂質であるBAMEA-O16Bは、赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードするmRNAをHeLa細胞に送達するその能力および高い効率によって証明されるように、mRNA送達のための一般的なナノキャリアである。BAMEA-016B/RFP mRNAナノ粒子でのヒト子宮頸がん細胞(HeLa)の処理は、効率的なRFP発現をもたらした(
図2B)。フローサイトメトリー分析(
図2C)は、RFP陽性細胞がmRNA用量に依存し、160ng/mLのRFP mRNAをHeLa細胞に送達した場合、トランスフェクション効率は90%にも達し得ることを示した。まとめると、ルシフェラーゼmRNAおよびRFP mRNAの送達の両方が、効率的で安全なmRNA送達に関してBAMEA-016Bナノ粒子の有効性を実証した。
【0136】
実施例2.BAMEA-O16BまたはBAMEA-O16を用いたmRNA送達
図3A~3Dは、BAMEA-O16B/RNAナノ粒子の細胞取り込みおよびエンドソーム脱出研究を示すグラフおよび画像である。
【0137】
図4A~4Dは、培養細胞におけるCRISPR/Cas9 mRNAの送達およびゲノム編集である。
【0138】
BAMEA-O16Bへのジスルフィド結合の導入が、細胞内mRNA放出を促進して、mRNAトランスフェクション効率を高めることをさらに詳しく説明するために、BAMEA-O16Bに類似する化学構造を有するが、ジスルフィド結合を欠く対照脂質を合成し、BAMEA-O16と名付けた(
図3A)。アガロースゲル電気泳動研究は、BAMEA-O16BとBAMEA-O16が同等のmRNA封入効率を示したことを表す(
図7)。興味深いことに、グルタチオン(GSH)処理(5mM)は、BAMEA-O16B/mRNA複合体からのmRNAの効率的な放出をもたらしたが、BAMEA-O16/mRNA複合体からの放出はもたらさなかった。動的光散乱(DLS)分析によって明らかにされるように、2つのmRNA複合体の同等のサイズおよびゼータ電位によって、同様のmRNA封入能力を有することがさらに確認された(表2)。
【0139】
【0140】
また、BAMEA-O16BまたはBAMEA-O16が同等のRNA送達効率を示したことも注目に値する。BAMEA-O16BまたはBAMEA-O16の蛍光標識RNA複合体(10nM)でのHeLa細胞の処理は、全ての脂質とRNAの異なる比で90%より高いRNA取り込み効率をもたらした(
図3B)。しかしながら、HeLa細胞の共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)イメージングは、BAMEA-O16B/RNA処理細胞が、BAMEA-016/RNA処理よりも高いエンドソーム脱出効率を示すことを表し(
図3C)、これは主に、還元的な細胞内環境に応答して、RNAの放出をより効率的に促進するBAMEA-O16Bの生体還元性の性質によるものである。さらに、BAMEA-O16Bナノ粒子を使用したRFP mRNA送達は、BAMEA-O16促進mRNA送達よりも高い、HeLa細胞におけるRFP発現をもたらした。例えば、BAMEA-O16Bを使用した160ng/mLのRFP mRNAの送達は、BAMEA-O16ナノ粒子を使用した場合よりも4倍増強されたRFP発現をもたらした(
図3D)。
【0141】
BAMEA-O16BをレポーターmRNA送達に使用することの有効性を実証し、次に、ゲノム編集のためにCas9 mRNAおよびsgRNAを同時に送達するBAMEA-O16Bの能力を調べた。Cas9 mRNAは約4,500ヌクレオチドのサイズであり、ルシフェラーゼまたはRFP mRNA(約1,000nt)よりもはるかに長いため、細胞内送達が非常に困難である。そこで、Cas9 mRNA送達およびゲノム編集のための生体還元性のライブラリーの有効性をさらに詳述するために、GFPを安定的に発現するHEK細胞を、Cas9 mRNAおよびGFP標的化sgRNAを封入した脂質ナノ粒子で処理し、mRNA送達前後のGFP発現量の変化を監視した。オンターゲットGFPゲノム編集は、GFP遺伝子のリーディングフレームのシフトを誘発し、それによってGFPの発現を妨げることができることがわかった。
図8に示すように、32種類の脂質のうち7種類の脂質が、Cas9 mRNAおよびsgRNAを効率的に送達して、HEK細胞のGFP発現をノックダウンすることができ、中でも脂質BAMEA-O16Bが最も高いゲノム編集およびGFPノックアウト効率を示した。BAMEA-O16BとCas9 mRNA/sgRNAの静電相互作用により、230nm程度のサイズのよく分散したナノ粒子が組み立てられることがわかった(表2、
図9)。一方、BAMEA-O16B/Cas9 mRNAナノ複合体は、ゲノム編集の送達に適した高い生体適合性を有している。異なる濃度のBAMEA-O16B/Cas9 mRNAナノ複合体で処理したHEK細胞は、いずれも90%以上の生存率を維持しており、これはLPF2K/Cas9 mRNA/sgRNAナノ複合体で処理したHEK細胞よりも高い(
図10)。
【0142】
CLSMイメージングは、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgGFPナノ粒子での処理が、HEK-GFP細胞のGFP蛍光の完全な消失をもたらしたが、遊離Cas9 mRNAおよびsgRNAでの処理は、同様のGFPノックアウト効果を示さなかったことを表す(
図4A)。HEK-GFP細胞のGFP発現の定量分析は、細胞に送達されるCas9 mRNAの濃度が20ng/mLから160ng/mLに増加するにつれて、GFPノックアウト効率は35%から90%超に上昇したことを示した(
図4B)。一方、sgGFPをスクランブルsgRNAで置き換えた場合、効果的なゲノム編集および細胞のGFP損失は観察されなかった(
図4C)。BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgRNA処理が、タンパク質レベルで非常に速くGFP発現をノックアウトしたことは注目に値する(
図4B)。Cas9 mRNA送達の24時間後に早くも40%のGFPノックアウトが観察され、この割合はCas9 mRNA送達の36時間後には90%まで増加したが、送達時間をさらに延長してもゲノム編集効率は上昇しなかった。
【0143】
実施例3.BAMEA-O16B媒介Cas9 mRNA送達は内在性遺伝子発現を調節することができる
図5A~5Cは、in vivoでのCas9 mRNA/sgRNA送達およびゲノム編集を示すグラフおよび画像である。
【0144】
さらに、BAMEA-O16B媒介Cas9 mRNA送達は、内在性遺伝子発現を調節することができるため、新規な遺伝子治療を開発する大きな可能性を有することが示された。ヒト子宮頸がんの進行を促進する必須遺伝子であるヒトパピローマウイルス18型(HPV18)を研究対象として選択した。HPV18を標的とするSgRNAを、BAMEA-O16Bを用いてCas9 mRNAと共にHeLa細胞に送達し、処理後のHeLa細胞の生存率を測定し、スクランブルsgRNAおよびCas9 mRNAでの処理の生存率と比較した。
図4Dに示すように、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgHPV18処理は、スクランブルsgRNAおよびCas9 mRNAの送達と比較して、HeLaの成長を有意に抑制した(
図4D)。例えば、320ng/mLのCas9 mRNAおよび26nMのsgHPV18の送達は、HeLa細胞の生存率を30%まで低下させたが、sgHPV18をスクランブルsgRNAに置き換えると、HeLa細胞の成長を妨げることに対する同様の効果を示さなかった。
【0145】
in vivoでのmRNA送達およびCRISPR/Cas9ゲノム編集のためのBAMEA-O16Bナノ粒子の可能性をさらに実証するために、肝細胞から分泌され、コレステロールのホメオスタシスに関与する酵素であるプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を研究対象として選択した。PCSK9は、肝臓の低密度リポタンパク質コレステロール受容体(LDL-R)の密度を調節することにより、脂質代謝において重要な役割を果たしており、遺伝子研究は、PCSK9の喪失が心血管疾患のリスク低下に関連することを明らかにする。
【0146】
in vivo mRNA送達のためのBAMEA-O16Bナノ粒子の生体内分布をまず検討した。この目的のために、BAMEA-O16B/ルシフェラーゼmRNAナノ粒子または蛍光標識BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/Cy3-RNAナノ粒子を処方し、0.6mg/kgまたは0.8mg/kgのsgRNAのmRNA投与量でマウスに尾静脈から静脈内注射し、その後、組織器官の生物発光または蛍光イメージングを行ってナノ粒子の生体内分布を調べた。
図11および
図5Aに示すように、BAMEA-O16B/ルシフェラーゼmRNAナノ粒子を注射すると、マウスの肝臓でルシフェラーゼの効果的な発現がもたらされ、一方、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/Cy3-RNAナノ粒子を投与すると、マウスの肝臓で蛍光シグナルの効果的な蓄積が示された。BAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子を送達させることによる詳細な細胞局在化研究は、BAMEA-O16B/RFP mRNAナノ粒子が主に肝細胞に蓄積されることを明らかにし(
図5B)、これは、後述するように、肝細胞でのPCSK9ゲノム編集に利用できる。
【0147】
BAMEA-O16Bナノ粒子をC57BL/6マウスに注射した後、血清PCSK9レベルを定量して、in vivoでのゲノム編集効果を評価することにより、in vivoでのゲノム編集のためのBAMEA-016Bナノ粒子の可能性および有効性を調べた。
図5Cに示すように、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgPCSK9ナノ粒子を静脈内注射すると、マウスの血清PCSK9は、DPBSを注射した場合またはBAMEA-O16B/Cas9 mRNA/スクランブルsgRNAナノ粒子を注射した場合の20%まで低下した(
図5C)。一方、BAMEA-O16B/Cas9 mRNA/sgRNAナノ粒子処置後のマウスの肝臓のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を用いた組織学的検査は、炎症の兆候を示さなかった(
図12)。さらに、ナノ粒子の注射は、すべての注射を受けたマウスの血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニンアミノトランスアミナーゼ(ALT)、および総ビリルビンの変化が最小限であることから明らかであるように、明らかな肝細胞障害を誘発しなかった(
図13)。上記の結果は、BAMEA-O16Bナノ粒子がin vivoでのゲノム編集に高い有効性および生体適合性を有することを明らかに実証した。
【0148】
II.ANGPTL3のin vivoでのゲノム編集のためのCRISPR/Cas9 mRNAの脂質ナノ粒子媒介送達
材料および方法
LNP製剤
我々の以前の報告に従ってリピドイドを合成した。LNPは、NanoAssemblrマイクロ流体システム(Precision Nanosystems社)を用いて調製した。簡単に説明すると、リピドイド、コレステロール(Sigma社)、リン脂質(DSPC、DOPE、およびDOPC、Avanti Polar Lipids社)、ならびにDMG-PEG(Avanti Polar Lipids社)を、最終リピドイド濃度10mg/mLで、50/38.5/10/1.5のモル比で100%エタノールに溶解させた。Cas9 mRNAとgRNA(sgANGPTL3またはsgLoxPのいずれか)を、酢酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH5.2)中において適切な重量比で混合した。mRNA溶液と脂質溶液をそれぞれ3:1の比でNanoAssemblrマイクロ流体デバイスに注入すると、デバイスは2つの成分の迅速な混合、したがってLNPの自己集合をもたらした。さらに、製剤を透析カセットでPBS(10mM、pH7.4)に対して4℃で一晩透析した。製剤の粒径は、ZetaPALS DLS装置(Brookhaven Instruments社)を用いた動的光散乱法(DLS)によって測定した。RNA封入効率は、Ribogreenアッセイによって評価した。
【0149】
In vivo LNP送達
動物実験のすべての手順は、Tufts University Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の承認を得て、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の実験動物のケアおよび使用のためのガイドラインに従って実施した。動物はすべてCharles River社から取り寄せた。雌のBalb/cマウス(6~8週)を、in vivoでのホタルルシフェラーゼmRNA(fLuc mRNA、TriLink Biotechnologies)封入LNPのスクリーニングおよび製剤の最適化に用いた。簡単に説明すると、fLuc mRNA LNPを0.5mg/kg mRNAの用量でマウスに静脈内注射した。所与の時点で、マウスに100μLのD-ルシフェリンカリウム塩(Goldbio)溶液(PBS中15mg/mL)を注射し、イソフルラン麻酔で麻酔をかけ、IVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)により測定した。
【0150】
In vivo Cas9 mRNA/sgLoxP送達
Cas9 mRNA(TriLink Biotechnologies)およびLoxP標的化シングルガイドRNA(sgLoxP、配列:5’-AAGTAAAACCTCTACAAATG、Synthego)を306-O12B LNPに共ロードし、1.65mg/kgの総RNAの用量で雌のAi14マウスに静脈内注射した。注射後7日目にマウスの臓器を採取し、IVISで画像を撮影してtdTomatoの発現を検出した。肝臓組織をさらに切片化した。
【0151】
免疫染色
組織サンプルをOCTで包埋した後、液体窒素で完全に凍結させ、切片作成の準備が整うまで-80℃で保存した。凍結組織ブロックを、クライオトームを用いて所望の厚さ(10μm)に切片化し、免疫蛍光染色に適したスライドガラスに載せた。組織切片を予め冷却したアセトン(-20℃)で10分間固定した後、PBSで5分間ずつ2回洗浄した。固定した組織切片を室温(r.t.)で10%BSAブロッキングバッファー中において1時間インキュベートした後、PBSで洗浄した。肝細胞特異的一次抗体(1%BSA緩衝液で1:100に希釈したもの、抗肝細胞特異的抗原(HepPar1)、Novus社製)をスライド上の切片に添加し、加湿チャンバーにおいて4℃で一晩インキュベートした。スライドをPBSで5分ずつ2回交換してすすぎ、eFlour660結合F(ab’)2-ヤギ抗マウス二次抗体(1:50、Invitrogen社)で染色し、遮光した加湿チャンバーにおいて室温で1時間インキュベートした後、PBSで3回洗浄した。DAPI(Sigma)を含有する蛍光マウンティングメディウムを使用して、スライドをカバースリップした。Leica SP8共焦点顕微鏡を用いて切片を分析した。
【0152】
ANGPTL3のin vivoゲノム編集
ANGPTL3遺伝子を標的とするガイドRNA配列は、Benchlingソフトウェアを用いて設計した。Cas9 mRNAおよびANGPTL3標的化シングルガイドRNA(sgAngptl3、配列:5’-AGCCCTTCAACACAAGGTCA、Synthego社)を共ロードした306-O12B LNPを、1.0、2.0、および3.0mg/kgの全RNAの用量で雌の野生型C57BL/6マウスに静脈内投与した。PBSを投与したマウスを陰性対照とした。注射後7日目にマウスを屠殺し、ELISAによる循環ANGPTL3タンパク質および血中脂質の定量のために血液を採取し、またDNA抽出および次世代シーケンシング(NGS)解析のために肝臓組織を内側および外側左葉(median and left lateral lobe)から採取した。また、in vivo毒性および免疫反応を評価するために、注射の2日後にマウスの血液を採取し、血清に処理した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ならびに腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を、AST(G-Biosciences)、ALT(G-Biosciences)、およびTNF-α(R&D Systems)のアッセイキットを用いてメーカーのプロトコールに従って測定した。
【0153】
NGSシーケンシング解析
市販の抽出キット(Qiagen DNEasy Blood&Tissue)を用いて、肝臓の内側および外側左葉からDNAを抽出した。PCRプライマーは、Angptl3遺伝子の標的部位の周辺領域、または予測されるオフターゲット部位の周辺領域を増幅するように設計した(表S1)。オフターゲット部位は、Cas Off Finderソフトウェア(rgenome.net/cas-offinder/)を用いて予測した。Illumina MiSeq(Tufts Genomics Core Facility)でのシーケンシングのためにPCRアンプリコンを調製した。シーケンシングデータはOutKnocker2ソフトウェア(outknocker.org/outknocker2.htm)を用いて解析した。
【0154】
血清中のANGPTL3タンパク質、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)、およびトリグリセリド(TG)の分析
抗凝固剤を使用せずにマウスの血液を採取し、室温(r.t.)で2時間凝固させた後、室温で15~20分間2000×gで遠心分離してマウス血清を採取した。ANGPTL3タンパク質、LDL-C、およびTGの血清レベルを、マウスアンジオポエチン様タンパク質3 Quantikine ELISAキット(R&D systems)、マウスLDL-コレステロールキット(Crystal Chem)、トリグリセリド比色アッセイキット(Cayman Chemical)を用いて、それぞれメーカーのプロトコールに従って測定した。
【0155】
T7E1切断アッセイ
抽出されたゲノムDNA鋳型、Platinum SuperFi Green DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)、および特異的プライマー(表3)を用いて、オンターゲット部位に隣接するゲノム領域を増幅した。
【0156】
【0157】
以下のサイクルを実行した:98℃で30秒、続いて98℃で10秒、65℃で15秒、および72℃で30秒を33サイクル、続いて72℃で10分。PCR産物はGeneJET PCR Purification Kit(Thermo Scientific)を用いて精製した。精製したPCR産物400ngをNEBuffer 2(New England Biolabs)中において、Applied Biosystems PCR system(Thermo Fisher Scientific)で95℃に5分間加熱し、続いて2℃/秒で85℃まで、さらに0.1℃/秒で25℃まで温度を下げることにより、ハイブリダイズさせた。アニーリングしたサンプルをT7エンドヌクレアーゼI(New England Biolabs)により37℃で15分間消化した後、65℃で5分間インキュベートして反応を停止させた。生成物をさらに精製し、4~20%のNovex TBEゲル(Invitrogen)で泳動した。
【0158】
統計解析
データは平均値±SDとして表した。すべてのデータはGraphpad Prismソフトウェアを用いて解析した。*p<0.05を有意とみなし、**p<0.01、***p<0.001を高度に有意とみなした。
【0159】
実施例4.mRNA送達のための脂質ナノ粒子のIn vivoスクリーニング
図15A~
図15Cは、リピドイドナノ粒子の合成を表す。
【0160】
ジスルフィド結合が組み込まれたアクリレート脂質尾部とアミン含有頭部との間のコンビナトリアル無溶媒マイケル付加反応を介して尾部分岐生体還元性リピドイドを調製した(
図15A)。これら脂質のin vivo mRNA送達効果は、まず、ホタルルシフェラーゼmRNA(fLuc mRNA)をLNPに封入し、このLNPを雌の野生型Balb/cマウスに静脈内送達することによって評価した。これらLNPは、我々のイオン化可能な合成脂質に加えて、コレステロール、DSPC、およびDMG-PEGといった賦形剤化合物と共に製剤化した。ブランク(非ロード(unloaded))およびfLuc mRNAロードLNPの代表的な透過型電子顕微鏡像を
図20Aおよび
図20Bに示した。ゴールドスタンダードであるMC-3 LNPを陽性対照として含めた。mRNA送達の6時間後、マウスにルシフェリン基質を腹腔内注射し、IVIS in vivoイメージングシステム(PerkinElmer社)を用いて全身のfLuc活性を測定した。
図15Bに示すように、306-O12B、113-O12B、および306-O10B LNPを用いたmRNA送達は、MC-3 LNP送達と比較して、同等またはより高いルシフェラーゼ生物発光強度をもたらした。マウスのin vivo画像は、ルシフェラーゼタンパク質が主に肝臓で発現されたことを明確に示した(
図21)。306-O12Bをさらなる実験のための代表的な脂質として使用した。fLuc mRNAは、約98%の封入効率で306-O12B LNPに効率的に封入された(
図22)。fLuc mRNAの封入後、306-O12B LNPは、112nmの平均直径を有していた(
図15C)。
【0161】
実施例5.306-O12B LNP製剤の最適化
図16A~16Fは、fLuc mRNA 306-O12B LNP製剤の最適化を示す。
【0162】
in vivoでのルシフェラーゼ発現をさらに高めるために、賦形剤リン脂質の同一性、LNP製剤の4成分のモル組成比、およびfLuc mRNA封入306-O12B LNPの脂質/mRNA重量比などの、これらLNPの組み立てに使用される様々な処方パラメータを最適化した。
【0163】
まず、リン脂質賦形剤のin vivoルシフェラーゼ発現効果に及ぼす影響を評価するために、元のDSPCリン脂質と比較して、同様の構造を有するが、頭部基および尾部飽和度が異なる2つのリン脂質DOPEおよびDOPC(
図16A)を選択した。DOPCおよびDOPEはそれぞれ、炭素尾部に不飽和度1を含むが、DSPCは完全に飽和している。さらに、DSPCおよびDOPCはそれぞれ第4級アミン頭部基を含むのに対し、DOPEは第1級アミン頭部基を含む。これらの特徴はそれぞれ、LNP送達効率に影響を与えることが文献で報告されている。四級化アミン頭部基は、第一級アミン頭部よりも強いプロトンスポンジ効果を示すことが報告されており、これは、カーゴmRNAのエンドソームから細胞質への脱出を促進し、したがってmRNAからタンパク質への翻訳を増加させることができる。さらに、脂質尾部の飽和度は、膜の流動性に影響を与えることが示されており、これもエンドソーム脱出に影響を与える可能性がある。不飽和脂質尾部は、より高い膜流動性をもたらし、それはLNPの膜との融合時にエンドソーム膜の不安定化を介してエンドソーム脱出を向上させるのを助ける可能性もある。これらを総合すると、第4級アミンと不飽和尾部とを含むDOPCを用いて形成されたLNPが、最も効率的なfLucの送達を示すと仮定する。
図16Bおよび
図16Cに示すように、DOPCを用いて製剤化したfLuc mRNA LNPは、DOPEや元のDSPCリン脂質を用いて形成されたLNPと比較して、肝臓での有意に高いルシフェラーゼ発現をもたらした。DOPC含有LNPで送達されたfLuc mRNAは、元のDSPC含有LNPと比較して約4倍高い発光シグナルをもたらした。
【0164】
初期のスクリーニングでは、活性脂質と賦形剤成分を[脂質:コレステロール:DSPC:DMG-PEG]のモル比が[50:38.5:10:1.5]となるように処方した。最適なリン脂質をDOPCと特定し、それに合わせて処方を調整した後、最適パラメータを特定するために、さまざまなモル比で配合したLNPを試験した(
図16D)。
図16Eに示すように、元の製剤O(306-O12B:コレステロール:DOPC:DMG-PEGのモル比が50:38.5:10:1.5)が最も高いルシフェラーゼ生物発光強度を示した;新規処方パラメータはいずれも元の処方を超えることはできなかった。
【0165】
in vivo有効性をさらに高める努力の中で、4つの成分のこの最適比を有するLNPを、5:1~25:1の範囲の異なる重量比の活性脂質306-O12B:mRNAを用いて製剤化した。興味深いことに、重量比が7.5:1のときに最も高い有効性が達成されたことが見出された。この点を超えて脂質の量を増加させても、in vivo送達の有効性に利益をもたらさないと思われる(
図16F)。まとめると、これらの結果は、306-O12B LNPの最適化製剤が、306-O12B/mRNAの重量比7.5/1で、50%の306-O12B、38.5%のコレステロール、10%のDOPC、および1.5%のDMG-PEGのモル組成を有していたことを表す。
【0166】
実施例6.mRNA最適化LNPを用いたCas9 mRNAおよびsgRNAのin vivo肝細胞特異的送達
図17A~17Cは、306-O12B LNPがAi14マウスでCas9/sgLoxP媒介ゲノム編集を可能にしたことを示す。
【0167】
図23A~23Bは、306-O12B LNPがAi14/Cas9交配マウスでsgLoxP媒介ゲノム編集を可能にしたことを示す画像である。
【0168】
Cas9 mRNA/sgRNA LNPによって編集される特定の細胞タイプを同定することは、CRISPR送達システムの潜在的な適用を予測する上で極めて重要である。tdTomato発現を制御するLoxP-Flanked STOPカセットで遺伝子操作されたAi14レポーターマウス系統を用いた。このマウス系統は、Creリコンビナーゼと共によく使用されるが、LoxP隣接終止コドンのCRISPR媒介切除の成功はtdTomatoの発現も誘導する。tdTomato発現を有する細胞を調べることにより、我々のLNP送達システムがうまく標的化し得る細胞タイプを特定することができる。
【0169】
このアプローチを検証するために、まず306-O12B LNPを用いて、Ai14構築物と構成的に発現されたCas9構築物の両方を発現するように操作されたマウス(Ai14+/Cas9+マウスモデル)にLoxP標的化sgRNA(sgLoxP)を送達した。
図23Aおよび
図23Bに示すように、我々のLNPシステムを用いたsgLoxPの送達は、肝臓で特異的に検出される赤色蛍光をもたらした。興味深いことに、さらなる組織学的分析は、tdTomatoシグナルが主に肝臓の肝細胞で観察されたことを明らかにし、306-O12B LNPがこの治療に関連する細胞タイプにもsgRNAを特異的に送達できることを示した。
【0170】
次に、Cas9 mRNAおよびsgLoxPを1つの単一LNPに共製剤化し、1.65mg/kgの総RNA用量でAi14マウスに尾静脈から注射した(
図17A)。送達の7日後に臓器を採取し、IVISシステムを用いてex vivoで画像を撮影した。IVISシステムにより解析したマウスの臓器のex vivo画像は、このシステムが実際に赤色蛍光を誘導でき、それはmRNAおよびsgRNA成分の両方の機能的共送達が成功したことを示し、さらにtdTomatoシグナルが主に肝臓で検出された(
図17B)ことを示した。さらに、肝細胞特異的バイオマーカーを用いた免疫蛍光染色を行い、共焦点画像は、tdTomatoタンパク質の大部分が肝細胞で発現されることを実証した(
図17C)。これらの知見は、306-O12B LNPがCRISPR機構を肝臓の肝細胞に特異的に運ぶことができることを強く示した。
【0171】
実施例7.ANGPTL3のin vivoゲノム編集
図18A~18Bは、野生型C57BL/6マウスにおけるANGPTL3の306-O12B LNP媒介の有意レベルのin vivoゲノム編集を示す。
【0172】
図19A~19Cは、CRISPR/Cas9ベースのゲノム編集によるANGPTL3の機能喪失型変異の誘発において306-O12B LNPがMC-3 LNPよりも効率的であることを示す。
【0173】
次に、306-O12B LNPがCRISPR/Cas9 mRNAを送達して機能的内在性遺伝子の発現を操作する能力を検証した。リポタンパク質リパーゼ活性および内皮リパーゼ活性の両方を阻害するリポタンパク質代謝の中心的な制御因子であるアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)をコードするANGPTL3遺伝子を研究対象として選択した。野生型C57BL/6マウスを用いて、ANGPTL3の非ウイルス性Cas9 mRNA/sgAngptl3 LNP媒介in vivoゲノム編集について検討した。Cas9 mRNAおよびsgAngptl3を306-O12B LNPに同時に封入した。CRISPR/Cas9システムはCas9 mRNAとsgRNAという2つの要素を含むことから、これら2つの要素の比がin vivoゲノム編集の効果に影響を与える可能性がある。そこで、Cas9 mRNAとsgAngptl3を異なる質量比2:1、1:1.2、および1:2で一緒に配合した306-O12B LNPを総RNA量3.0mg/kgでマウスに注射した。注射後7日目に、血清を採取して血清ANGPTL3タンパク質レベルのELISA分析を行い、また肝臓組織サンプルを採取してDNA抽出およびNGSシーケンシングを行って標的化Cas9媒介ゲノム編集を特定した。すべてのCas9 mRNA/sgAngptl3比において、マウス肝臓でのゲノム編集および血清ANGPTL3タンパク質レベルの低下が観察されたが、これらの群間で有意差は認められなかった(
図18Aおよび
図18B)。1:1.2のCas9 mRNA/sgAngptl3比を以下の実験に用いた。Cas9 mRNA/sgAngptl3を封入した306-O12B LNPは、平均サイズが110nmであり、fLuc mRNA LNPと同様の特性を有していた(
図24)。
【0174】
有意なレベルの編集が見られたため、より詳細なin vivo編集実験を計画し、実施した。ゴールドスタンダードとして、我々のRNA成分を封入した306-O12B LNPを、全く同じRNA成分を封入したFDA承認の肝送達用脂質MC-3から構成されるLNP(MC3-LNP)と比較した。306-O12B LNPおよびMC3-LNPの両方で同じ比率の賦形剤脂質が使用されたこと、およびこの特定の賦形剤の処方がMC3-LNPでの使用について既に公開されていることに留意されたい。306-O12B LNPまたはMC-3-LNPを総RNA用量3.0mg/kgでマウスに投与した。投与後7日目に、T7E1アッセイを用いて肝臓の所望部位での編集が観察された(
図25)。さらに、肝臓サンプルにおけるANGPTL3標的部位の次世代シーケンシング(NGS)は、306-O12B-LNPs媒介送達が、MC-3媒介送達(14.6%)よりも有意に高い、38.5%の中央編集率をもたらしたことを実証した(
図19A)。より重要なことに、血清分析は、306-O12B LNP処置群における血清ANGPTL3タンパク質、LDL-C、およびTGレベル(それぞれ65.2%、56.8%、29.4%の減少)が、MC-3 LNP処置マウスのレベル(それぞれ25%、15.7%、16.3%の減少)よりも有意に低いことを明らかにした(
図19A)。NGSシーケンシング結果の詳細な解析は、最も頻繁な編集事象が、正確に予測Cas9切断部位での1ntの欠失であり、続いて同じ位置での1ntの挿入であることを明らかにした(
図19B)。予想通り、MC3 LNP処置肝臓および306-012B LNP処置肝臓の両方において同じ編集事象が観察され、主な違いはこれらの事象の頻度であった。これは、観察された血清成分の減少が実際にCas9媒介ゲノム編集の結果であったことを表し、2つの脂質間の観察された結果の違いが、Cas9 mRNAの生来の活性の変化ではなく、単に送達効率の結果であったことを示唆する。
【0175】
いずれのCRISPR送達システムでも、オフターゲット編集事象や送達誘導毒性を回避するように注意しなければならない。最も可能性の高い上位9つのオフターゲットゲノム変異誘発部位をコンピュータで予測し、これら遺伝子座を、肝臓から抽出したDNAのNGSシーケンシングにより調べた。上位9つの予測オフターゲット変異誘発部位のいずれにも編集の証拠は観察されなかった(
図19C)。in vivo毒性および潜在的な免疫炎症反応を評価するために、肝機能マーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ならびに炎症誘発性サイトカインである腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の血清レベルを測定した(
図26)。CRISPR/Cas9 LNPでの処置後にこれらパラメータにおける有意な変化は検出されず、全身毒性が無視できることをさらに実証した。
【参考文献】
【0176】
1. P. D. Hsu, E. S. Lander, F. Zhang, Cell 2014, 157, 1262.
2. M. Jinek, K. Chylinski, I. Fonfara, M. Hauer, J. A. Doudna, E. Charpentier, Science 2012, 337, 816.
3. L. Cong, F. A. Ran, D. Cox, S. Lin, R. Barretto, N. Habib, P. D. Hsu, X. Wu, W. Jiang, L. A. Marraffini, F. Zhang, Science 2013, 339, 819.
4. G. J. Knott, J. A. Doudna, Science 2018, 361, 866.
5. H. X. Wang, M. Li, C. M. Lee, S. Chakraborty, H. W. Kim, G. Bao, K. W. Leong, Chem. Rev. 2017,117, 9874.
6. H. Yin, K. J. Kauffman, D. G. Anderson, Nat. Rev. Drug Discov. 2017, 16, 387.
7. Z. Glass, M. Lee, Y. Li, Q. Xu, Trends in Biotechnol. 2018, 36, 173.
8. H. Yin, C. Q. Song, J. R. Dorkin, L. J. Zhu, Y. Li, Q. Wu, A. Park, J. Yang, S. Suresh, A. Bizhanova, A. Gupta, M. F. Bolukbasi, S. Walsh, R. L. Bogorad, G. Gao, Z. Weng, Y. Dong, V. Koteliansky, S. A. Wolfe, R. Langer, W. Xue, D. G. Anderson, Nat. Biotechnol. 2016, 34, 328.
9. M. Wang, J. A. Zuris, F. Meng, H. Rees, S. Sun, P. Deng, Y. Han, X. Gao, D. Pouli, Q. Wu, I. Georgakoudi, D. R. Liu, Q. Xu, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2016, 113, 2868.
10. L. Li, L. Song, X. Liu, X. Yang, X. Li, T. He, N. Wang, S. Yang, C. Yu, T. Yin, Y. Wen, Z. He, X. Wei, W. Su, Q. Wu, S. Yao, C. Gong, Y. Wei, ACS Nano 2017, 11, 95.
11. W. Sun, W. Ji, J. M. Hall, Q. Hu, C. Wang, C. L. Beisel, Z. Gu, Angew. Chem., Int. Ed. 2015, 54, 12029.
12. Q. Liu, K. Zhao, C. Wang, Z. Zhang, C. Zheng, Y. Zhao, Y. Zheng, C. Liu, Y. An, L. Shi, C. Kang, Y. Liu, Adv. Sci. 2019, 6, 1801423.
13. W. Zhou, H. Cui, L. Ying, X. F. Yu, Angew. Chem., Int. Ed. 2018, 57, 10268.
14. P. Wang, L. Zhang, W. Zheng, L. Cong, Z. Guo, Y. Xie, L. Wang, R. Tang, Q. Feng, Y. Hamada, K. Gonda, Z. Hu, X. Wu, X. Jiang, Angew. Chem., Int. Ed. 2018, 57, 1491.
15. K. Lee, M. Conboy, H. M. Park, F. Jiang, H. J. Kim, M. A. Dewitt, V. A. Mackley, K. Chang, A. Rao, C. Skinner, T. Shobha, M. Mehdipour, H. Liu, W. Huang, F. Lan, N. L. Bray, S. Li, J. E. Corn, K. Kataoka, J. A. Doudna, I. Conboy, N. Murthy, Nat. Biomed. Eng. 2017, 1, 889.
16. C. D. Sago, M. P. Lokugamage, K. Paunovska, D. A. Vanover, C. M. Monaco, N. N. Shah, M. G. Castro, S. E. Anderson, T. G. Rudoltz, G. N. Lando, P. M. Tiwari, J. L. Kirschman, N. Willett, Y. C. Jang, P. J. Santangelo, A. V. Bryksin, J. E. Dahlman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2018, 115, E9944.
17. C. Xu, Z. Lu, Y. Luo, Y. Liu, Z. Cao, S. Shen, H. Li, J. Liu, K. Chen, Z. Chen, X. Yang, Z. Gu, J. Wang, Nat. Commun. 2018, 9, 1.
18. U. Sahin, K. Kariko, O. Tureci, Nat. Rev. Drug Discov. 2014, 13, 759.
19. X. Liang, J. Potter, S. Kumar, Y. Zou, R. Quintanilla, M. Sridharan, J. Carte, W. Chen, N. Roark, S. Ranganathan, N. Ravinder, J. D. Chesnut, J. Biotechnol. 2015, 208, 44.
20. C. J. McKinlay, J. R. Vargas, T. R. Blake, J. W. Hardy, M. Kanada, C. H. Contag, P. A. Wender, R. M. Waymouth, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2017, 114, E448.
21. C. J. McKinlay, N. L. Benner, O. A. Haabeth, R. M. Waymouth, P. A. Wender, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2018, 115, E5859.
22. Y. Li, J. Bolinger, Y. Yu, Z. Glass, N. Shi, L. Yang, M. Wang, Q. Xu, Biomater. Sci. 2019, 7, 596.
22. X. Yang, Q. Tang, Y. Jiang, M. Zhang, M. Wang, L. Mao, J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 3782.
23. M. Wang, K. Alberti, S. Sun, C. L. Arellano, Q. Xu, Angew. Chem., Int. Ed. 2014, 53, 2893.
24. M. Wang, S. Sun, C. I. Neufeld, B. Perez-Ramirez, Q. Xu, Angew. Chem., Int. Ed. 2014, 53, 13444.
25. M. Wang, J. A. Zuris, F. Meng, H. Rees, S. Sun, P. Deng, Y. Han, X. Gao, D. Pouli, Q. Wu, I. Georgakoudi, D. R. Liu, Q. Xu, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2016, 113, 2868.
26. J. Chang, X. Chen, Z. Glass, F. Gao, L. Mao, M. Wang, Q. Xu, Acc. Chem. Res. 2019, 52, 665.
27. J. B. Miller, S. Zhang, P. Kos, H. Xiong, K. Zhou, S. S. Perelman, H. Zhu, D. J. Siegwart, Angew. Chem., Int. Ed. 2017, 56, 1059.
28. E. M. Kennedy, A. V. Kornepati, M. Goldstein, H. P. Bogerd, B. C. Poling, A. W. Whisnant, M. B. Kastan, B. R. Cullen, J. Virol. 2014, 88, 11965.
29. C. Jiang, M. Mei, B. Li, X. Zhu, W. Zu, Y. Tian, Q. Wang, Y. Guo, Y. Dong, X. Tan, Cell Res. 2017, 27, 440.
30. M. Abifadel, M. Varret, J. Rabes, D. Allard, K. Ouguerram, M. Devillers, C. Cruaud, S. Benjannet, L. Wickham, D. Erilich, A. Derre, L. Villeger, M. Farnier, I. Beucler, E. Bruckert, J. Chambaz, B. Chanu, J. M. Lecerf, G. Luc, P. Moulin, J. Weissenbach, A. Part, M. Krempf, C. Junien, N. G. Seidah, C. Boileau, Nat. Genet. 2003, 34, 154.
31. F. A. Ran, L. Cong, W. X. Yan, D. A. Scott, J. S. Gootenberg, A. J. Kriz, B. Zetsche, O. Shalem, X. W u, K. S. Makarova, E. V. Koonin, P. A. Sharp, F. Zhang, Nature 2015, 520, 186.
32. Raal, F. J. et al. Inclisiran for the Treatment of Heterozygous Familial Hypercholesterolemia. N. Engl. J. Med. 382, 1520-1530, (2020).
33. Ray, K. K. et al. Two Phase 3 Trials of Inclisiran in Patients with Elevated LDL Cholesterol. N. Engl. J. Med. 382, 1507-1519, (2020).
34. Koishi, R. et al. Angptl3 regulates lipid metabolism in mice. Nature Genet. 30, 151-157, (2002).
35. Romeo, S. et al. Rare loss-of-function mutations in ANGPTL family members contribute to plasma triglyceride levels in humans. J. Clin. Invest. 119, 70-79, (2009).
36. Tarugi, P., Bertolini, S. & Calandra, S. Angiopoietin-like protein 3 (ANGPTL3) deficiency and familial combined hypolipidemia. J. Biomed. Res. 33, 73-81, (2019).
37. Stitziel, N. O. et al. ANGPTL3 Deficiency and Protection Against Coronary Artery Disease. J. Am. Coll. Cardiol. 69, 2054-2063, (2017).
38. Musunuru, K. & Kathiresan, S. CARDIOVASCULAR ENDOCRINOLOGY Is ANGPTL3 the next PCSK9? Nat. Rev. Endocrinol. 13, 502-503, (2017).
39. Dewey, F. E. et al. Genetic and Pharmacologic Inactivation of ANGPTL3 and Cardiovascular Disease. N. Engl. J. Med. 377, 211-221, (2017).
40. Ahmad, Z. et al. Inhibition of Angiopoietin-Like Protein 3 With a Monoclonal Antibody Reduces Triglycerides in Hypertriglyceridemia. Circulation 140, 470-486, (2019).
41. Graham, M. J. et al. Cardiovascular and Metabolic Effects of ANGPTL3 Antisense Oligonucleotides. N. Engl. J. Med. 377, 222-232, (2017).
42. Hsu, P. D., Lander, E. S. & Zhang, F. Development and Applications of CRISPR-Cas9 for Genome Engineering. Cell 157, 1262-1278, (2014).
43. Doudna, J. A. & Charpentier, E. The new frontier of genome engineering with CRISPR-Cas9. Science 346, 1077-+, (2014).
44. Chen, X. & Goncalves, M. Engineered Viruses as Genome Editing Devices. Mol. Ther. 24, 447-457, (2016).
45. Yin, H., Kauffman, K. J. & Anderson, D. G. Delivery technologies for genome editing. Nat. Rev. Drug Discov. 16, 387-399, (2017).
46. Glass, Z., Lee, M., Li, Y. M. & Xu, Q. B. Engineering the Delivery System for CRISPR-Based Genome Editing. Trends Biotechnol. 36, 173-185, (2018).
47. Yin, H. et al. Non-viral vectors for gene-based therapy. Nat. Rev. Genet. 15, 541-555, (2014).
48. Wang, M., Glass, Z. A. & Xu, Q. Non-viral delivery of genome-editing nucleases for gene therapy. Gene Ther. 24, 144-150, (2017).
49. Qiu, M., Glass, Z. & Xu, Q. B. Nonviral Nanoparticles for CRISPR-Based Genome Editing: Is It Just a Simple Adaption of What Have Been Developed for Nucleic Acid Delivery? Biomacromolecules 20, 3333-3339, (2019).
50. Wang, M. et al. Efficient delivery of genome-editing proteins using bioreducible lipid nanoparticles. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 113, 2868-2873, (2016).
51. Finn, J. D. et al. A Single Administration of CRISPR/Cas9 Lipid Nanoparticles Achieves Robust and Persistent In Vivo Genome Editing. Cell Reports 22, 2227-2235, (2018).
52. Miller, J. B. et al. Non-Viral CRISPR/Cas Gene Editing In Vitro and In Vivo Enabled by Synthetic Nanoparticle Co-Delivery of Cas9 mRNA and sgRNA. Angew. Chem.-Int. Edit. 56, 1059-1063, (2017).
53. Jiang, C. et al. A non-viral CRISPR/Cas9 delivery system for therapeutically targeting HBV DNA and pcsk9 in vivo. Cell Res. 27, 440-443, (2017).
54. Liu, J. et al. Fast and Efficient CRISPR/Cas9 Genome Editing In Vivo Enabled by Bioreducible Lipid and Messenger RNA Nanoparticles. Adv. Mater. 31, 7, (2019).
55. Chadwick, A. C., Evitt, N. H., Lv, W. J. & Musunuru, K. Reduced Blood Lipid Levels With In Vivo CRISPR-Cas9 Base Editing of ANGPTL3. Circulation 137, 975-977, (2018).
56. Akinc, A. et al. The Onpattro story and the clinical translation of nanomedicines containing nucleic acid-based drugs. Nat. Nanotechnol. 14, 1084-1087, (2019).
57. Wang, M. et al. Enhanced Intracellular siRNA Delivery using Bioreducible Lipid-Like Nanoparticles. Adv. Healthc. Mater. 3, 1398-1403, (2014).
58. Zhi, D. F. et al. Transfection Efficiency of Cationic Lipids with Different Hydrophobic Domains in Gene Delivery. Bioconjugate Chem. 21, 563-577, (2010).
59. Wang, M., Sun, S., Alberti, K. A. & Xu, Q. B. A Combinatorial Library of Unsaturated Lipidoids for Efficient Intracellular Gene Delivery. ACS Synth. Biol. 1, 403-407, (2012).
60. Kauffman, K. J. et al. Optimization of Lipid Nanoparticle Formulations for mRNA Delivery in Vivo with Fractional Factorial and Definitive Screening Designs. Nano Lett. 15, 7300-7306, (2015).
61. Sedic, M. et al. Safety Evaluation of Lipid Nanoparticle-Formulated Modified mRNA in the Sprague-Dawley Rat and Cynomolgus Monkey. Vet. Pathol. 55, 341-354, (2018).
62. Madisen, L. et al. A robust and high-throughput Cre reporting and characterization system for the whole mouse brain. Nat. Neurosci. 13, 133-U311, (2010).
63. Tabebordbar, M. et al. In vivo gene editing in dystrophic mouse muscle and muscle stem cells. Science 351, 407-411, (2016).
64. Platt, R. J. et al. CRISPR-Cas9 Knockin Mice for Genome Editing and Cancer Modeling. Cell 159, 440-455, (2014).
65. Mout, R., Ray, M., Lee, Y. W., Scaletti, F. & Rotello, V. M. In Vivo Delivery of CRISPR/Cas9 for Therapeutic Gene Editing: Progress and Challenges. Bioconjugate Chem. 28, 880-884, (2017).
66. Tong, S., Moyo, B., Lee, C. M., Leong, K. & Bao, G. Engineered materials for in vivo delivery of genome-editing machinery. Nat. Rev. Mater. 4, 726-737, (2019).
67. Komor, A. C., Badran, A. H. & Liu, D. R. CRISPR-Based Technologies for the Manipulation of Eukaryotic Genomes. Cell 168, 20-36, (2017).
68. Liang, X. Q. et al. Rapid and highly efficient mammalian cell engineering via Cas9 protein transfection. J. Biotechnol. 208, 44-53, (2015).
69. Ramaswamy, S. et al. Systemic delivery of factor IX messenger RNA for protein replacement therapy. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 114, E1941-E1950, (2017).
70. Sabnis, S. et al. A Novel Amino Lipid Series for mRNA Delivery: Improved Endosomal Escape and Sustained Pharmacology and Safety in Non-human Primates. Mol. Ther. 26, 1509-1519, (2018).
71. Hou, X. C. et al. Vitamin lipid nanoparticles enable adoptive macrophage transfer for the treatment of multidrug-resistant bacterial sepsis. Nat. Nanotechnol. 15, 41-+, (2020).
72. Fenton, O. S. et al. Bioinspired Alkenyl Amino Alcohol Ionizable Lipid Materials for Highly Potent In Vivo mRNA Delivery. Adv. Mater. 28, 2939-2943, (2016).
73. Bae, S., Park, J. & Kim, J. S. Cas-OFFinder: a fast and versatile algorithm that searches for potential off-target sites of Cas9 RNA-guided endonucleases. Bioinformatics 30, 1473-1475, (2014).
74. Schmid-Burgk, J. L. et al. Out Knocker: a web tool for rapid and simple genotyping of designer nuclease edited cell lines. Genome Res. 24, 1719-1723, (2014).
【配列表】
【国際調査報告】