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特表2022-535547建築材料製造のためのアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】建築材料製造のためのアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/06 20060101AFI20220802BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20220802BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220802BHJP
   C04B 7/02 20060101ALI20220802BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B22/06 Z
C04B22/14 B
C04B7/02
C04B14/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571879
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020066303
(87)【国際公開番号】W WO2020249729
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】1908383.1
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2003674.5
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527978
【氏名又は名称】アルデ グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス ステファン アラン
(72)【発明者】
【氏名】オーベルシュテ-パッドベルク リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ジークスマイヤー イェルク
(72)【発明者】
【氏名】モツェト フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ポムベルク ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB23
4G112PA15
4G112PD01
4G112PD03
(57)【要約】
本発明は、方法によって得られるアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの使用に関し、方法において、建築材料製造のために、b)カルシウムイオン含有バインダ成分及びc)水の添加後、a)酸化アルミニウム/又は水酸化アルミニウムに富む処理されたアモルファス残留物質は加熱される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法によって得られるアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの使用であって、
前記方法において、建築材料製造のために、(b)カルシウムイオン含有バインダ成分及び(c)水の添加後、(a)処理されたアモルファスアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質が加熱される、ことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記処理されたアモルファスアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質は、25%未満、好ましくは20%未満であり、特に15%未満の結晶化の度合いを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記処理されたアモルファスアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質は、飲料水処理残留物質の形態で形成される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、有機材料の残留割合を有し、前記残留割合は、前記水硬性バインダの総質量に基づいて、好ましくは0.5wt%より大きく、特に好ましくは1.5wt%より大きく、特に3wt%より大きい、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、実質的に無水である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、100μm未満、好ましくは50μm未満、特に40μm未満の粒径を有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、全乾燥質量に基づいて、前記建築材料中に、0.5~65wt%、好ましくは1~55wt%、特に2~45wt%の割合で存在する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記建築材料製造のために、エトリンガイト形成体、好ましくはカルシウム含有及び/又は硫酸塩含有エトリンガイト形成体が添加される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記建築材料製造のために、ポルトランドセメント及び/又は水和石灰及び/又は酸化カルシウム及び/又は硫酸カルシウムが添加される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、三元バインダの形態で形成され、前記三元バインダは、前記アルミン酸カルシウム含有成分に加えて、ポルトランドセメント及び硫酸キャリアを含む、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記三元バインダは、前記三元バインダの全質量に基づいて、前記アルミン酸カルシウム含有成分の20~70wt%、硫酸キャリアの10~40wt%、及び、ポルトランドセメントの0.2~20wt%の割合を有する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記硫酸塩キャリアは、アルファカルシウム硫酸塩半水化物、ベータカルシウム硫酸塩半水化物、無水石膏、硫酸カルシウム二水和物、又は、それらの混合物の形態で形成される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記建築材料製造のために充填剤が添加され、前記充填剤は、前記建築材料の全乾燥質量に基づいて、10~90wt%の割合、特に好ましくは20~80wt%の割合、特に30~70wt%の割合で添加される、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記充填剤は、石灰石粉末、ケイ砂、大理石、チョーク、粘土、泥灰土、タルク、ガラス、セラミック若しくはプラスチックの中空微粒子のような光充填剤、又は、膨張ガラス、膨張雲母、発泡パーライト、膨張スレート、膨張粘土、石炭フライアッシュ、れんがくず、天然軽石、凝灰岩、溶岩、スラグ軽石、ボイラ砂若しくはこれらの混合物のような光充填剤の形態で形成される、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記建築材料製造のために添加剤が加えられ、前記添加剤は、前記建築材料の全乾燥質量に基づいて、好ましくは0.001~10wt%の割合、特に好ましくは0.005~5wt%の割合、特に0.01~2.5wt%の割合で添加される、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記添加剤は、液化剤、遅延剤、加速剤、作動剤、安定剤、消泡剤、又は、密閉剤の形態である、ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記建築材料製造のためにエポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤が添加され、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ硬化剤は、前記建築材料の全乾燥質量に対して10~60wt%の総割合で添加される、ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記建築材料製造のために、プラスチック分散粉末が添加され、前記プラスチック分散粉体は、前記建築材料の全乾燥質量に基づいて、好ましくは0.1~20wt%の割合、特に好ましくは0.5~10wt%の割合、特に1~5wt%の割合で添加される、ことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記合成材料分散粉末は、ビニル又はアクリレートポリマに基づいて、特に、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルバーサティック、ポリスチレンアクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピオン酸塩、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸ブチル、又は、それらの混合物に基づいて、形成される、ことを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記建築材料製造のために、繊維状物質が添加され、前記繊維状物質は、前記建築材料の全乾燥質量に基づいて、好ましくは0.01~5wt%の割合、特に好ましくは0.1~3wt%の割合、特に1~2wt%の割合で添加される、ことを特徴とする請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記繊維状物質は、最長2mm、好ましくは最長3mm、特に最長5mmの長さを有する、ことを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項22】
前記建築材料は、スクリード、モルタル、充填剤状、又は、タイル接着剤の形態で形成される、ことを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料製造のためのアルミン酸カルシウム含有バインダの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設業界は、政府の投資によって、受注が着実に増加し、現在、製造業のかなりの部分を占めている。最近ますます注目されている気候政策目標の達成に関しては、建設業界も環境に優しく持続可能な概念を追求することがますます求められている。このため、以前から、持続可能な建築概念が確立されており、生態系や環境を保全しながら建設施策を行うための様々な取り組みが追求されている。
【0003】
考えられる出発点に関しては、気候変動を最も強く引き起こす要因が特に関心事である。建設業界における化石燃料の需要が必然的に高いことに加えて、気候変動を著しく促進する建築材料の需要が何よりも高いことである。化石燃料の需要を減らす方法とは対照的に、持続可能な建築材料の開発は依然として発展する必要がある。例えば、既知の水硬性バインダ又は建築材料の生産は、依然として天然資源の大量使用及び高いエネルギー投入と関連していることが多い。また、既知の水硬性バインダ又は既知の水硬性バインダから製造された建築材料の耐久性もしばしば最適化を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、建築材料製造に使用される既知の製品及びシステムの前述の欠点を少なくとも部分的に克服することである。本発明の目的は、特に、容易且つ安価に製造できる汎用性のある建築材料を製造する持続可能且つ環境に優しい方法を提供することである。
【0005】
上記の目的は、使用のための独立クレームの特徴を有する使用によって解決される。本発明の更なる特徴及び詳細は、それぞれの従属請求項及び記載に起因する。
【0006】
本発明は、建築材料製造のためのアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの使用を提供する。ここでは、アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダは、方法によって得られる。この方法において、b)カルシウムイオン含有バインダ成分及びc)水の添加後、a)酸化アルミニウム/又は水酸化アルミニウムに富む処理されたアモルファス残留物質は加熱される。
【0007】
本発明の文脈において、水硬性バインダは、水と混合された後、混合された水との化学反応の結果、独立して凝固、硬化し、硬化後も水の下で固体であり、次元的に安定した材料であると理解されることが好ましい。本発明によると、残留物質は、方法によって製造される残留物質と理解される。そのため、再利用が意図されず、従って、時には、時間及び費用のかかる方法によって廃棄される必要がある。本発明の文脈において、処理は、例えば、収集、濾過、乾燥、粉砕などを含む処理の形態として特に理解することができる。本発明の文脈において、アルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質は、特に、材料の乾燥含有量に対して、アルミナ含有量又はアルミナ‐水酸化物含有量(アルミナ又はアルミナ‐水酸化物の合計)が少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも30wt%、特に少なくとも50wt%の材料として理解される。ここでは、2つの成分のうちの1つだけの形態でも実質的に材料が形成される可能性があると理解される。
【0008】
混合物における成分の好ましい重量割合の表示に関しては、混合物の全成分の全割合が100wt%になるように範囲を組み合わせることが当業者であれば可能であることは、以下の説明の前にこの時点で留意すべきである。
【0009】
本発明の文脈において、特に、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに富む処理されたアモルファス残留物質を使用することにより、様々な方法で使用可能であり、同時に持続可能な建設に貢献することができる水硬性バインダを容易且つ安価な方法で製造することができると認識される。この場合における貢献は、複雑且つ費用のかかる方法で廃棄されるであろう水硬性バインダの製造のために残留物質又は廃棄物を使用することにより、特に、天然資源を保存することによって行われる。
【0010】
水硬性バインダの高い水分保持能力及び簡易な処理性に関して、客観的に有益な方法において、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに富む処理されたアモルファス残留物質は、25wt%未満、好ましくは20wt%未満、特に15wt%未満の結晶化の度合いを有する。結晶化の度合いは、ここでは、材料のアモルファス特性の方法として役立つように意図されており、その特性は互いに反比例している。結晶化の度合いは、ここでは、例えば、分光法、DSC測定、又は、X線回折実験によって測定することができる。
【0011】
処理されたアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質を使用する特に容易、効率的且つ安価な可能性に関しては、本発明によると、処理されたアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、飲料水処理残留物の形態で形成されることが有益である。この場合、飲料水処理残留物は、特に酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム含有量が高く、特に汚染物質による汚染が少ないため、例えば、廃水処理残留物などの他の残留物よりも精製費用が安価である。飲料水と廃水との含有量が異なるため、これら(飲料水/廃水)は、直接比較できるものではない。
【0012】
鉱物系建築材料製造に関しては、処理されたアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質が実質的に有機材料を含まない場合は更に有益である。本明細書中で用いられるように、有機材料は、炭素化合物を含み、以下の化合物タイプのいずれにも属さない材料を意味する。化合物タイプは、元素炭素、無水カルコゲン化物、炭酸、炭酸塩、炭化物、シアン酸、シアン化物、及び、チオシアン酸である。実質的に含まないとは、好ましくは2wt%未満、より好ましくは0.5wt%未満、更に好ましくは0.1wt%未満の残留物含有量を意味する。
【0013】
アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの迅速且つ容易な処理を可能にするために、処理されたアルミナに富む残留物質及び/又は水酸化アルミニウムに富む残留物質が実質的に無水であることが更に有益である。ここでの本質的に無水とは、好ましくは5wt%未満、より好ましくは2wt%未満、特に0.5wt%未満の含水量を意味する。
【0014】
アルミン酸カルシウム含有水硬性バインダの容易な処理性及び高い水分保持能力に関しても、処理されたアルミナに富む残留物質及び/又は水酸化アルミニウムに富む残留物質が100μm未満、好ましくは50μm未満、特に40μm未満の粒径を有することが有益である。
【0015】
最も高いコスト削減性及び持続性に関しては、本発明によると、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムに富む処理された残留物質が建築材料の全乾燥質量に基づいて、0.5~65wt%の割合、好ましくは1~55wt%の割合、特に2~45wt%の割合で使用されるか、又は、建築材料に含有されることが有益である。
【0016】
処理されたアルミナに富む残留物質及び/又はアルミナ‐水酸化物に富む残留物質の迅速な使用性を保証することに関しては、更に、例えば、700℃未満、好ましくは650℃未満、より好ましくは650℃~350℃の間の温度、特に400℃~500℃の間の温度で前処理されることによって、材料が温度前処理される。同様に、残留物質が空気流前処理又は前脱水されてもよい。
【0017】
最短処理時間による建築材料製造に関しては、特に、建築材料製造のために、エトリンガイト形成体、好ましくはカルシウム含有及び/又は硫酸塩含有エトリンガイト形成体を添加することができる。この場合、エトリンガイト形成体は、特に、建築材料の乾燥重量に対して、20~70wt%の割合で使用することができる。好ましくは、エトリンガイト形成体は、アルミン酸カルシウム、スルホアルミン酸カルシウムセメント、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸セメント、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は、それらの混合物の形態で形成することができる。
【0018】
建築材料の特性の高強度、迅速処理性及び可変調節性に関しては、本発明によると、建築材料製造のために、ポルトランドセメント及び/又は水和石灰及び/又は酸化カルシウム及び/又は硫酸カルシウムを添加することができる。同様に、ポゾラン、石灰、又は、類似物質を添加することもできる。
【0019】
できるだけ短い硬化時間、高早期強度と組み合わせた迅速硬化、及び、収縮補償による建築材料を達成するために、建築材料は、三元バインダを含むことが有益である。三元バインダは、アルミナセメント、ポルトランドセメント、及び、硫酸キャリアを含むことが好ましい。
【0020】
この場合、三元バインダの全質量に基づいて、三元バインダは、アルミナセメントの20~70wt%、硫酸キャリアの10~40wt%、及び、ポルトランドセメントの0.2~20wt%の割合を有することが有益である。
【0021】
建築材料の硬化時間を理想的に調整できるように、硫酸キャリアは、アルファ硫酸カルシウム半水和物、ベータ硫酸カルシウム半水和物、硬セッコウ、硫酸カルシウム二水和物、又は、それらの混合物の形態で形成されることが好ましい。建築材料の機械及び処理特性の調整性を改善するために、建築材料は、充填剤を含むことが有益である。ここでは、充填剤を、建築材料の全乾燥質量に対して、好ましくは10~90wt%の割合、特に好ましくは20~80wt%の割合、特に30~70wt%の割合で建築材料に添加することが好ましい。複数の成分の好ましい範囲の表示に関しては、全成分の全割合が100%になるように範囲を組み合わせることが当業者であれば可能であることに留意すべきである。
【0022】
ここでは、充填剤は、好ましくは2mm未満の粒径、より好ましくは1mm未満、特に10~500μmの粒径を有することもできる。更に、充填剤は、例えば、石灰石粉末、ケイ砂、大理石、チョーク、粘土、泥灰土、タルク、又は、ガラス、セラミック若しくはプラスチックからなる中空微粒子のような光充填剤、又は、膨張ガラス、膨張雲母、発砲パーライト、膨張スレート、膨張粘土、石炭フライアッシュ、れんがくず、天然軽石、擬灰岩、溶岩、スラグ軽石、ボイラ砂若しくはこれらの混合物のような光充填剤、などの異なる変異体の形態であってもよい。
【0023】
建築材料の特性の更に好ましいオーダメイドの調整性については、建築材料製造のために、添加剤を添加することができる。ここでは、建築材料の全乾燥質量に基づいて、添加剤を、0.001~10wt%の割合、特に好ましくは0.005~5wt%の割合、特に0.01~2.5wt%の割合で添加することができる。
【0024】
建築材料の特性の特に多様な調整性に関しては、添加剤を、例えば、液化剤、遅延剤、加速剤、作動剤、安定剤、消泡剤、又は、密閉剤の形態で形成することもできる。液化剤は、0.001~5wt%の量で建築材料に存在することが好ましく、建築材料の混合中に必要な水分量を減少させるため、並びに、高早期強度開発のために提供されることが好ましい。この場合、可塑剤又は超可塑剤又はレベリング剤を、特に、ポリカルボン酸エーテル、メラミンスルホン酸塩、カゼイン、飽和又は不飽和のモノ‐若しくはジカルボン酸誘導体、又は、オキシアルキレングリコールアルケニルエーテル及び/又はエステルに基づく改質可塑剤の形態で形成することもできる。遅延剤は、建築材料中に0.001~2wt%のレベルで存在することが更に好ましく、酒石酸、クエン酸、又は、その塩の1以上の形態で形成されることが有益である。加速剤は、硬化加速剤の形態で形成され、建築材料中に、例えば、0.001~2wt%の割合で存在することが更に好ましい。特に、加速剤は、LiCO等のアルカリ炭酸塩に基づくことができる。安定化剤は、建築材料中に0.001~2wt%の割合で存在することが更に有益である。安定化剤を、例えば、ヘテロ多糖(heteropolysacharides)、セルロース、ヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体の形態で形成することができる。消泡剤は、更に、建築材料中に、例えば、0.001~1wt%のレベルで存在してもよい。上記添加剤に加えて、増粘剤、着色顔料、還元剤、空気連行剤、加工助剤、疎水化剤、湿潤剤、殺生物剤、殺真菌剤、殺藻剤、又は、難燃剤などの他の添加剤も建築材料中に存在することができる。
【0025】
迅速硬化性、不透水性、引張曲げ性、及び、耐圧性を有する建築材料製造に関しては、建築材料製造のためにエポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を添加することができる。ここでは、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を、建築材料の全乾燥質量に対して、好ましくは10~60wt%の割合で添加することができる。
【0026】
特に、建築材料の接着性、柔軟性、及び、処理性を改善するために、建築材料は、プラスチック分散粉末を含むこともできる。プラスチック分散粉末は、建築材料の全乾燥質量に基づいて、好ましくは0.1~20wt%の割合、特に好ましくは0.5~10wt%の割合、特に1~5wt%の割合で建築材料中に存在する。
【0027】
この場合、プラスチック分散粉末は、例えば、ビニル又はアクリレートポリマ、特にポリ酢酸ビニル、ポリビニルバーサティック(polyvinyl versatate)、ポリスチレンアクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピオン酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブチルアクリレート、又は、それらの混合物に基づくことができる。
【0028】
変形、特に、屈曲及び引張応力に対する建築材料の抵抗性を向上させるべく、建築材料製造のために、繊維材料を更に添加することが考えられる。繊維材料は、建築材料の総乾燥質量に基づいて、好ましくは0.01~5wt%の割合、特に好ましくは0.1~3wt%の割合、特に1~2wt%の割合で添加される。
【0029】
変形に対する抵抗性を効果的に向上させることに関しては、繊維材料は、最長2mm、好ましくは最長3mm、特に最長5mmの長さの繊維からなることも考えられる。
【0030】
本発明によると、建築材料の容易な混和性及び処理性に関しては、建築材料がスクリード、モルタル、化合物、又は、タイル接着剤の形態で形成されることが有益である。この点に関しては、建築材料は、天然石、レンガ、タイル、スラブ、又は、マット、木材床材、パーケット、カーペット、積層などの他の被覆材料を製造するのに特に適していると考えられる。スクリードは、更に、セメントスクリード又は合成樹脂スクリードとして形成され、流動又は乾燥スクリードの形態で適用されこともできる。モルタルは、セメントベースのモルタル又は合成樹脂モルタルの形態で形成されることもでき、グラウト又は薄床モルタルの形態で形成されることもできる。化合物は、更に、例えば、床、壁、又は、天井充填剤の形態で形成されることができるが、タイル接着剤は、床又は壁タイル接着剤として形成されることもでき、セメントベース又は合成樹脂ベースであってもよい。
【0031】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、本発明の実施形態が詳細に記載されている以下の記載から明らかになる。請求項及び説明に記載されている特徴は、個々に、又は任意の組合せにおいて、本発明に必須であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の建築材料の例示的な配合(乾燥組成物)を記載する。これは、本発明のアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダ(水硬性バインダI)の使用から始まり、列挙した成分を更に加えて調製することができる。次に、水を加えることにより、これらの提案された乾燥組成物から対応する「すぐに使える」建築材料を製造することができる。この場合、水の割合は、建築材料の全乾燥質量に対して10~150wt%であることが好ましい。「水硬性バインダI」という名称は、特に本発明のアルミン酸カルシウム含有水硬性バインダをポルトランドセメント又はアルミナセメントのような他の水硬性バインダと区別することを意図している。
【0033】
タイル接着剤
水硬性バインダI:30wt%
ポルトランドセメント:15wt%
砂:51.6wt%
加速剤:1wt%
セルロースエーテル:0.5wt%
分散性粉末:1.8wt%
繊維物質:0.1wt%
【0034】
パテ
水硬性バインダI:16.5wt%
ポルトランドセメント:5.5wt%
アルミナセメント:5wt%
CaSO‐α‐半水和物:9wt%
砂:26wt%
石灰岩粉末:24wt%
軽量凝集体:10wt%
分散性粉末:3wt%
カゼイン:0.2wt%
コンデンサ:0.5wt%
安定剤:0.02wt%
抑制剤:0.07wt%
【0035】
スクリード
水硬性バインダI:11.6wt%
アルミナセメント:4wt%
ポルトランドセメント:10.4wt%
CaSO‐α‐半水和物:11wt%
砂:62wt%
超可塑剤:0.05wt%
凝結促進剤:0.15wt%
抑制剤:0.1wt%
【0036】
合成樹脂モルタル
水硬性バインダI:29.2wt%
合成樹脂:30wt%
硬化剤:3.3wt%
CaSO‐α‐半水和物:14.6wt%
アルミナセメント:17.3wt%
ポルトランドセメント:4.8wt%
凝結促進剤:0.4wt%
抑制剤:0.26wt%
【0037】
実施形態に挙げられた本発明の建築材料は、使用において汎用性があり、容易且つ安価に生産できるだけでなく、同時に、持続可能な建設へ貢献する。これは、特に、生産のために残留物又は廃棄物を使用することによって、建築材料製造のために資源が保存されているという事実によってもたらされ、そうでなければ精巧且つ費用のかかる方法で処分されなければならない。
【国際調査報告】