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特表2022-535582スリープタイムが改善された過酸化水素に基づく火薬
<図1>
  • 特表-スリープタイムが改善された過酸化水素に基づく火薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】スリープタイムが改善された過酸化水素に基づく火薬
(51)【国際特許分類】
   C06B 43/00 20060101AFI20220802BHJP
   C06B 29/22 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C06B43/00
C06B29/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021572478
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 AU2020050573
(87)【国際公開番号】W WO2020243788
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】2019901993
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509351568
【氏名又は名称】シーエムティーイー ディベロップメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ケトル
(57)【要約】
本発明は、過酸化水素、燃料及び1種又は複数種の密度安定剤を含む火薬組成物を提供する。本発明は、この組成物を調製する方法及びこの組成物を使用する方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H2O2
燃料;及び
1種又は複数種の密度安定剤
を含む火薬組成物。
【請求項2】
H2O2が約2%~85質量%である、請求項1に記載の火薬組成物。
【請求項3】
約0.01質量%~約10質量%、好ましくは約1~約5質量%、より好ましくは約1~約3質量%の量で1種又は複数種の密度安定剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の火薬組成物。
【請求項4】
1種又は複数種の密度安定剤が、構造:
X-(PO3Y2)n
[式中、Xは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル;置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択され;Yは、H又は水溶性陽イオンであり;nは1~10である。]
を有するホスホナートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項5】
ホスホナートが、フィチン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、テトラメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ヒドロキシエチルアミノ-ジ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチル-ホスホン酸、ポリアミノポリエーテルメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、グリホセート、ホスカルネット、ペルジンホテル、セルホテル、N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸、2-カルボキシエチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、N,N-ビス(ホスホノメチル)グリシン、テトラメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、及びそれらの塩、溶媒和物、二量体、立体異性体からなる群から選択される、請求項4に記載の火薬組成物。
【請求項6】
ホスホナートがジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム塩である、請求項4に記載の火薬組成物。
【請求項7】
密度安定剤が、火薬組成物の密度をその初期の密度の+/-10%以内に保持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項8】
密度が10日以内の期間にわたって保持される、請求項7に記載の火薬組成物。
【請求項9】
密度安定剤が、VODをその初期のVODの+/-10%以内に維持する、請求項7又は請求項8に記載の火薬組成物。
【請求項10】
VODが14日以内の期間にわたって維持される、請求項9に記載の火薬組成物。
【請求項11】
水、好ましくは50質量%以下の水、より好ましくは25質量%以下の水を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項12】
1種又は複数種の他の酸化剤、増感剤、第2の燃料、増粘剤、架橋剤、乳化剤及びエネルギー希釈剤からなる群から選択される1種又は複数種の他の成分を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項13】
増感剤が、圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む、請求項12に記載の火薬組成物。
【請求項14】
ガスのバブルが、インサイチュー(in situ)で形成され、N2、O2、CO2、H2バブル又はその混合物からなる、請求項13に記載の火薬組成物。
【請求項15】
圧縮性材料が、2mm未満の粒度を有する、ガラスマイクロバルーン、セラミックマイクロバルーン、プラスチックマイクロバルーン又はEPSから選択される、ガスを閉じ込めた材料である、請求項13又は14に記載の火薬組成物。
【請求項16】
火薬組成物を爆轟に鋭敏にするのに十分な量の増感剤が添加されている、請求項13から15のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項17】
火薬組成物の密度が0.3~1.4g/cm3付近に制御される、請求項16に記載の火薬組成物。
【請求項18】
エネルギー希釈剤が、EPS、クラムラバータイヤ、ポップコーン及びプラスチックビードからなる群から選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項19】
約0.1~約75質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含む、請求項13から18のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項20】
前記1種又は複数種の他の酸化剤が、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、及び場合により硝酸からなる群から選択される、請求項19に記載の火薬組成物。
【請求項21】
酸化剤が、AN、CN、SN、CAN、NH4ClO4、NaClO4、Na2O2、K2O2又はその混合物から選択される、請求項20に記載の火薬組成物。
【請求項22】
過塩素酸塩が、過塩素酸アンモニウム及び過塩素酸ナトリウムから選択される、請求項21に記載の火薬組成物。
【請求項23】
増粘剤が、グアーゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項12から22のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項24】
架橋剤が、アンチモン塩、クロム塩、リン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12から23のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項25】
乳化剤が、PIBSA-アミン誘導体、SMO、レシチン又はその混合物からなる群から選択される、請求項12から24のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項26】
エマルション又は含水ゲルとして配合される、請求項12から25のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項27】
2~25質量%の燃料を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項28】
燃料が、ディーゼル燃料、油剤、植物油又はこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数種の水に不溶性の燃料を含む、請求項27に記載の火薬組成物。
【請求項29】
グリセリン、硝酸アミン、尿素又はこれらの混合物から選択される水溶性燃料を含む、請求項27又は請求項28に記載の火薬組成物。
【請求項30】
+10から-10の間の酸素バランスを有するように配合されている、請求項1から29のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項31】
5~50Pa*sの粘度を有するように配合されている、請求項1から30のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項32】
H2O2、燃料、及び1種又は複数種の密度安定剤、場合により1種又は複数種の他の酸化剤、及び増感剤を合わせる工程を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の火薬組成物を調製する方法。
【請求項33】
土地を掘り移動させるための、請求項1から31のいずれか一項に記載の火薬組成物の使用。
【請求項34】
スリープタイムを改善するための、反応性の又は金属を含む土地における火薬組成物の使用であって、前記火薬組成物が、H2O2、燃料及び1種又は複数種の密度安定剤を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された過酸化水素に基づく火薬に関する。本発明は、採掘用途で使用される過酸化水素/燃料系火薬組成物として主として使用するために開発され、本用途に関して以下に記載される。しかし、本発明が、この特定の分野での使用に限定されないことは認識されよう。
【背景技術】
【0002】
先行技術の以下の議論は、好適な技術的文脈に本発明を置き、その利点がより十分に理解されることを可能にするために提供される。しかし、本明細書を通じての先行技術のいかなる議論も、そのような先行技術が広く知られ、又は本分野の通常の一般知識の一部を形成するということの表明又は黙示的な承認と見なされるべきでないことは認識されるべきである。
【0003】
今日の世界において使用されるほとんどすべての商業的な採鉱用火薬は、硝酸アンモニウム(AN)に基づくか、又は、Anと、他のより小量のアルカリ及び/又はアルカリ土類硝酸塩(例えば硝酸ナトリウム(SN)又は硝酸カルシウム(CN))との組合せである。強力な酸化剤であるANは少なくとも最近50~60年間商業的火薬の基剤として使用されている。このタイプのほとんどの火薬は、必要な爆発力を提供するために火薬内に組み込んだ窒素化合物のエネルギー性反応に依存する。
【0004】
最初、採掘企業は、AN自体を火薬として使用した。しかし、彼らは、まもなく、ディーゼル燃料の添加が、コストを大きく増すことなくエネルギー出力を上げることを知った(硝酸アンモニウム-燃料油、現在は一般に「ANFO」と称される)。しかし、ANFOの水抵抗力は極めて不十分であり、含湿発破孔でのその使用は限定されてきた。この問題を改善するために、スラリー及び含水ゲルが開発された。スラリー火薬は典型的には、水中に溶解/分散したAN、他の塩(例えば、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸アミン、過塩素酸塩等)、並びに他の添加剤〔例えば、グアーゴム(増粘剤として)及び水に可溶性又は不溶性の燃料(グリセリン、MMAN、ディーゼル燃料等)〕を含む。それらは、爆破する土地の特徴に応じてANFOとブレンドすることもできる。スラリー火薬は、スラリーが爆轟し、不発が最小限化されることを可能にする固体増感剤(アルミニウム及びTNT、RDX等の爆薬)も典型的に含む。含水ゲルは、スラリーと同様の組成を有するが、しかし、製品の水抵抗力を増強するために架橋剤を添加することができる。
【0005】
含水ゲル及びスラリーの欠点の1つは、溶液に組み込むことができるANに限界があるということである。この欠点は油中水エマルションの開発によって克服された。エマルションが高温で製作されるので、これらのエマルションは高濃度でANを含むことができる(参照:米国特許第3,447,978号)。油中水エマルションは、有機燃料へ分散した高温の水性相(AN、他の硝酸塩、過塩素酸塩等で構成される)から製造される。水性-有機混合物は、乳化剤の使用によって安定化する。エマルションはまた、爆破する土地に適するように、異なる比でANFOとブレンドすることができる。
【0006】
しかし、ANエマルション、ANスラリー及び含水ゲルの開発にもかかわらず、既存の火薬組成物と比較してより費用効果的であり、かつ、産業界からの高度な要求を満たすために多量に製造することができる改善された火薬を開発する必要がなおある。配合物中にANをあまり多く使用せず他のタイプの硝酸塩をその代わりに使用して、ANの使用法の代替法を提供することは有利である。加えて、そのような代替品は、好ましくはより安全であり、比較的低いカーボンフットプリントを有し、使用場所近くで製作することが可能で公道での輸送を最小限にし、必要段階で製作することが可能で備蓄する必要を最小限にし、しかも安全性を上げ、既存の配送設備の使用を可能にし、及び/又は爆轟での有毒窒素酸化物の後ガス(NOx)をわずかしか(又は全く)生じない等であるべきである。また、そのような代替品にとって面倒な規制要件がなく、それによって管理費が下がると理想的である。火薬組成物が、インサイチュー(in situ:現場)で架橋可能であり、発破孔に降りて増粘することも好ましい。
【0007】
硝酸アンモニウムから製作することができるタイプの組成物での進歩にもかかわらず、不都合の1つは、爆轟の間に、NOx後ガスが、火薬組成物中の窒素化合物(硝酸塩からの)の存在によって発生し得るということである。これらのNOx後ガスは有毒であり、鉱山現場人員の健康に影響を与えることがある。したがって、爆破後のNOx後ガスの放出は安全性の問題であり、Australia等の国々では、そのような放出を管理するために現在適所に厳しい規制管理がある。参照:例えばQueensland、Australia、2011に規制当局によって発行された「Queensland手引き書:開放心抜発破での窒素酸化物の管理」。同様に、Australia内の火薬製造業者はまた、爆破後のNOx後ガスを管理するために作業標準を発行している。(AEISG Code of Practice, Prevention and Management of Blast Generated NOx Gases in Surface Blasting, 2011)。したがって、NOxの生成を実質的に減少させる火薬組成物を見つける必要がある。
【0008】
酸化剤でもあり、これらの必要性の少なくとも一部を満たす可能性がある1つの材料は、過酸化水素(H2O2)である。採掘作業用のH2O2/燃料系火薬は、一般にH2O2の、その質量の約5~約15パーセントのグリセリン、燃料油等の液体炭素系燃料との組合せからなる。しかし、幾つかの事例において、H2O2系火薬は、24時間を超えるスリープタイムが必要とされる場合に、爆轟速度(VOD)等のパラメーターに影響を与え得る密度の経時的変化が観察されたので理想に届かないことがわかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,447,978号
【特許文献2】米国特許第3,400,026号
【特許文献3】米国特許第3,582,411号
【特許文献4】米国特許第3,678,140号
【特許文献5】米国特許第4,326,900号
【特許文献6】米国特許第4,820,361号
【特許文献7】米国特許第4,547,234号
【特許文献8】米国特許第5,470,407号
【特許文献9】米国特許第5,271,779号
【特許文献10】米国特許第5,409,556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、先行技術の1つ又は複数の不都合を克服若しくは改善すること、又は少なくとも有用な代替法を提供することを目的とする。
【0011】
スリープタイムが改善されたH2O2/燃料系火薬を提供することは、本発明の好ましい形態の目的である。本発明の好ましい火薬組成物は、24~48時間の範囲、又は更にもっと長くなり得る延長されたスリープタイムにわたって、感度、密度及びVODを実質上維持している。本発明の改善された火薬組成物は、スリープタイムが延長されているため、鉱山において安全に用いることができ、幾つかの実施形態において、本発明の組成物によるようなスリープタイムが延長されていない、先行技術のH2O2系火薬組成物を用いては可能でない爆破の実施を可能にする。特に、本明細書に記載の本発明の火薬組成物が、実質上発破孔中で長期間にわたってVODを維持するので、はるかに大きい爆破の実施が本発明の組成物によって可能になる。
【0012】
本発明の実施形態の好ましい目的は、以下の目的の1つ又は複数を満たす火薬組成物を提供することである:好都合に調製され、経時的に密度安定性をインサイチューで改善し、大量の持続可能な(火薬のカーボンフットプリントを減らす)燃料を使用でき、幾つかの好ましい実施形態において、AN以外の大量の硝酸塩を使用する(ANの依存性を下げる)ことができ、そしてスリープタイムが延長されたことによりはるかに大きい爆破を可能にすること。
【0013】
更に好ましい本発明の目的は、発破孔に装填された場合に、火薬組成物の密度を実質上維持し、それによって数日間、可能性として数週間もスリープタイムを実質上維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、商業、建設、土木、農業、鉱業及び同様の分野で使用される火薬に関する。しかし、他の関連分野に本発明を利用することができることは認識されよう。
【0015】
驚いたことに、H2O2系火薬組成物は、密度安定剤(すなわち、ホスホナート)を用いて処理又は変性されると、先行技術のH2O2系火薬組成物を超える改善されたスリープタイムを示すことが発見された。更に驚いたことに、比較的小量のホスホナートのみで密度安定性及びスリープタイムが改善されることが見出された。いかなる理論によって束縛されることも望まないが、本発明者は、密度安定剤なしでは、既存の増感剤のバブル(bubble)は経時的に体積及び数が増加する傾向があるのに対し、本発明に用いられる密度安定剤は、組み入れた増感剤ガスがさらなるバブルを自発的に形成するのを防止するように作用すると考える。
【0016】
本発明の実施において、ホスホナートは、通常液体形態で、燃料の添加前にH2O2に添加される。増粘剤が、酸化剤/燃料混合物の組合せに添加されてもよい。
【0017】
一般に、1種又は複数種の密度安定剤は、火薬組成物の最大約15質量%、例えば約0.01質量%~約10質量%、例えば約1~約5質量%、例えば、約1~約3質量%の量で組み込まれる。その後、密度安定化H2O2系火薬は、他の火薬と同一の様式で取り扱い、装填し、点火することができる。
【0018】
第1の態様によると、本発明は、
a. H2O2
b. 燃料;及び
c. 1種又は複数種の密度安定剤
を含む火薬組成物を提供する。
【0019】
第2の態様によると、本発明は、第1の態様による火薬組成物を調製する方法であって、H2O2、燃料及び1種又は複数種の密度安定剤、並びに場合によって1種又は複数種の他の酸化剤及び/又は増感剤を合わせる工程を含む方法を提供する。
【0020】
第3の態様によると、本発明は、例えば、採掘作業をする際に土地を掘り移動させるための、第1の態様による火薬組成物の使用を提供する。
【0021】
第4の態様によると、本発明は、H2O2及び燃料を含む火薬組成物の、反応性の又は金属を含む土地におけるスリープタイムを改善するための、1種又は複数種の密度安定剤の使用を提供する。
【0022】
関連する態様において、本発明は、その長期間安定性(スリープタイム)を改善するために火薬組成物を処理する方法であって、H2O2及び燃料を含む火薬組成物の密度を安定させるために、密度安定剤を前記火薬組成物と合わせる工程を含む方法からなる。関連する態様において、本発明は、火薬組成物の長期間安定性を改善するための密度安定剤の使用を含む。密度安定剤は密度を安定させる濃度において使用される。
【0023】
本発明は、爆破する現場を取り巻く雰囲気への爆轟での望ましくないNOx後ガスの放出を実質上回避する火薬に関する。本発明の好ましい目的は、窒素含有原料を火薬組成物から減少させ、好ましくは取り除くことである。火薬中に窒素がほとんど又は全く存在しないので、事実上、NOxは雰囲気へ放出されないか、又は実質的に減少した量が放出されることが認識されよう。本発明は、商業、建設、農業、鉱業及び同様の分野で使用される火薬に関する。しかし、他の関連分野において本発明を利用することができることは認識されよう。
【0024】
密度は密度安定剤を含むことにより維持される。密度安定剤は、その初期の密度の+/- 0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40又は50%以内に火薬組成物の密度をを保持し、かつ/あるいは、発破孔に装填された後5、10、15、20、30若しくは60、90若しくは120分以内の間、火薬組成物の密度を保持する。密度は、好ましくは最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14日の期間にわたって維持される(又は安定化される)。密度安定剤は、好ましくは初期のVODの+/- 0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40若しくは50%以内にVODを維持し、あるいは発破孔に装填された後5、10、15、20、30、60、90若しくは120分以内の間、火薬組成物のVODを維持する。VODは、好ましくは最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14日の期間にわたって維持される。
【0025】
本発明の組成物は、密度及びVODの予測可能で制御可能な経時的変化を有する。例えば、密度安定剤のある濃度で、密度は、1日当たりおよそ5%から1日当たりおよそ10%下がり、VODにおいて1日当たりおよそ5%から10%の対応する降下が引き起こされる。このことによって、密度安定剤の量を、あるスリープタイムにわたる密度の変化を制御するために選択することができるので、掘削及び爆破する技術者には、所定のVODをそのスリープタイムの後に得ることが可能になる。幾つかの先行技術の組成物では、密度は、1日当たりおよそ10%から1日当たりおよそ30%下がり、VODにおける1日当たりおよそ10%から30%の対応する降下が引き起こされることが認識されよう。
【0026】
好ましくは、組成物は、更に以下に論じるように、更に他の添加剤、例えば、燃料、水、増粘剤、乳化剤、機械的増感、化学由来の増感、圧入ガス等を含む。好ましい一実施形態において、組成物は、爆破後の後ガス中のNOxの生成に結びつく成分を含まない。しかし、他の実施形態において、爆破後の後ガス中に最小限のNOxをもたらす成分が添加される。
【0027】
本発明の好ましい爆発性の酸化剤は過酸化水素であるが、本発明では、他の酸化剤塩又は過酸化物誘導体を、H2O2の部分的な代替品として使用することができることは理解されよう。非限定的な例には、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム/カリウム等が含まれる。
【0028】
定義
本発明を記載し特許請求するにあたり、下記の用語は、以下に述べる定義に従って使用される。また、本明細書において使用される用語は、本発明の特定の実施形態を記載するためのみにあり、限定するようには意図されていないことが理解されるべきである。他に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が関係する当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。
【0029】
文脈が他の方法で明白に必要としなければ、本記載及び特許請求の範囲の全体にわたって、「含む 'comprise'」、「含むこと 'comprising'」等の語は、排他的又は網羅的な意味と反対の包括的な意味;すなわち、「を含むがこれらに限定されない」という意味に解釈されるべきである。
【0030】
作業例以外で、又は他の指定がなければ、本明細書において使用される原料の量又は反応条件を表現するすべての数は、すべての事例において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。実施例は、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。以下に続く内容において、又はそのほかに示されなければ、「%」は「質量%」を意味し、「比」は「質量比」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0031】
文脈が明白に他の方法を指定していない場合、ある質量%で存在する成分に対するすべての言及は、全火薬組成物に対するものである。例えば、2-25質量%の過酸化水素を含む火薬組成物は、100gの火薬組成物当たり2-25gの過酸化水素を含む火薬組成物を指す。
【0032】
用語H2O2は過酸化水素の略号である。
【0033】
用語ANは硝酸アンモニウムを意味する。
【0034】
CNは硝酸カルシウム四水和物を意味する。
【0035】
CANは硝酸カルシウムアンモニウムを意味する。
【0036】
SNは硝酸ナトリウム用の略号である。
【0037】
ANFOは硝酸アンモニウム燃料油の略号である。
【0038】
硝酸アミンは、モノメチルアミン又はエチルアミン又はプロピルアミンの硝酸塩の略号である。
【0039】
増感剤は、組成物中に空隙を導入する添加剤を意味する。増感剤は、エネルギー性材料の爆轟に対する感度を可能にし増加させる。増感剤は、化学的に発生した空隙(ガスバブル)であってよいが、又はガスを包囲し、若しくは閉じ込めることができる(その例には、セラミック/ガラスマイクロバルーン、EPS及びポリウレタン発泡体が含まれる)。
【0040】
GMBはガラスマイクロバルーンの略号である。
【0041】
EPSは膨張ポリスチレンの略号である。
【0042】
TNTはトリニトロトルエンを意味する。
【0043】
HMXはオクタヒドロ-1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラゾシンを指す。
【0044】
RDXは1,3,5-トリニトロペルヒドロ-1,3,5-トリアジンを指す。
【0045】
VODは、m/secでの爆轟の速度を指す。
【0046】
OBは酸素バランスを意味する。
【0047】
用語g/cm3はg/mlと同一の意味を有する。
【0048】
ホスホナートは、C-P結合を有する有機化合物、例えばC-PO(OH)2又はC-PO(OR)2基等である。本明細書において使用される「ホスホナート」は、対陽イオン(例えばナトリウム塩)と共にホスホン酸陰イオンを含むホスホン酸塩も含む。「ホスホナート」には、モノホスホナート、並びにビスホスホナート及びより高次のホスホナートが含まれる。ホスホナートのR基は、アルキルに限定されず、例えばヘテロ原子(例えばN)を含んでいてよい。
【0049】
DTPMPA.Na.xはジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム塩(C9H28-xN3O15P5Nax、CAS番号22042-96-2)を意味する。
【0050】
ホスファートという用語は、リン酸の化学的誘導体を指す。リン酸イオン(PO4 3-)は、リン酸の共役塩基であり、多くの相異なる塩を形成することができる。オルガノホスホナートは一般構造O=P(OR)3を有し、R基は同一でも異なっていてもよい。Rはアルキル及びアリールを含む。ホスファートはCOP結合を含み、ホスホナート中に存在するC-P結合は含まない。
【0051】
用語「スタンナート」は、スズ(II)、(IV)又は(VI)及び酸素を含有する化合物を指す。
【0052】
スリープタイムは、火薬が発破孔に装填されてからその起爆までの間の時間として理解される。期間は典型的には数日である。
【0053】
用語「好ましい」、「好ましくは」及び「適切に」は、ある状況下である利点を得ることができる本発明の実施形態を指す。しかし、同一又は他の状況下で、他の実施形態が好ましいこともある。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用でないと暗示するのではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外するようには意図されない。
【0054】
'a'、'an'及び'the'という用語は、明白に他の方法で示さない限り、「1つ又は複数の」を意味する。「実施形態」、「一実施形態」、「幾つかの実施形態」、「例示の実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」「実施形態」「1つ又は複数の実施形態」('an embodiment', 'embodiment', 'embodiments', 'the embodiment', 'the embodiments', 'an embodiment', 'some embodiments', 'an example embodiment', 'at least one embodiment', 'one or more embodiments'及び'one embodiment')という用語は、明白に他の方法で示さない限り、「1つ又は複数(しかし、必ずしもすべてではない)の本発明の実施形態」を意味する。
【0055】
「地中」又は「表面下」という用語は、露出した地面より下の領域、及び淡水及び塩水等の水によって覆われた地面より下の領域を指す。
【0056】
本明細書の全体にわたって使用される、「置換されていてもよい」という用語は、基が1個又は複数の非水素置換基で更に置換又は縮合(その結果縮合多環式系を形成する)されてもされなくてもよいことを表す。ある実施形態において、置換基は、ハロゲン、=O、=S、-CN、-NO2、-CF3、-OCF3、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、シクロアルキルアルケニル、ヘテロシクロアルキルアルケニル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、シクロアルキルヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル、アリールヘテロアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシシクロアルキル、アルキルオキシヘテロシクロアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アミノスルフィニルアミノアルキル、-C(=O)OH、-C(=O)Re、-C(=O)ORe、C(=O)NReRf、C(=NOH)Re、C(=NRe)NRfRg、NReRf、NReC(=O)Rf、NReC(=O)ORf、NReC(=O)NRfRg、NReC(=NRf)NRgRh、NReSO2Rf、-SRe、SO2NReRf、-ORe、OC(=O)NReRf、OC(=O)Re及びアシルからなる群から独立して選択される1個又は複数の基であり、
ここで、Re、Rf、Rg及びRhは、それぞれ独立して、H,C1~C12アルキル、C1~C12ハロアルキル、C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル、C1~C10ヘテロアルキル、C3~C12シクロアルキル、C3~C12シクロアルケニル、C1~C12ヘテロシクロアルキル、C1~C12ヘテロシクロアルケニル、C6~C18アリール、C1~C18ヘテロアリール及びアシルからなる群から選択されるか、あるいはRa、Rb、Rc及びRdのうちのいずれか2つ以上は、それらが結合している原子と一緒になって、3~12の環原子を有する複素環式環を形成する。
【0057】
幾つかの実施形態において、各任意選択の置換基は、独立してハロゲン、=O、=S、-CN、-NO2、-CF3、-OCF3、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルオキシアリール、アルキルオキシヘテロアリール、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルケニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、アミノアルキル、-COOH、-SH及びアシルからなる群から選択される。
【0058】
特に適切な任意選択の置換基の例は、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3、OH、OCH3、CF3、OCF3、NO2、NH2及びCNを含む。
【0059】
以下の幾つかの置換基の定義において、「基は末端基又は橋架け基であってもよい」ことが明言される。これは、用語の使用は、基が分子の2つの他の部分間のリンカーであり、しかもそれは末端部分である状況を包含するように意図されることを意味するように意図される。例としてアルキルという用語を使用して、ある刊行物では、橋架け基として用語「アルキレン」を使用し、他の刊行物においては、用語「アルキル」(末端基)と「アルキレン」(橋架け基)間に区別がある。本出願においては、そのような区別はなく、ほとんどの基は橋架け基又は末端基のいずれでもよい。
【0060】
「アシル」は、R-C(=O)-基[式中、R基は、本明細書において定義されるアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール基であってもよい。]を意味する。アシルの例はアセチル及びベンゾイルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはカルボニル炭素を介して分子の残基に結合している。
【0061】
「アシルアミノ」はR-C(=O)-NH-基[式中、R基は、本明細書において定義されるアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール基であってもよい。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは窒素原子を介して分子の残基に結合している。
【0062】
基又は基の一部としての「アルケニル」は、直鎖中に好ましくは2~12の炭素原子、より好ましくは2~10の炭素原子、最も好ましくは2~6の炭素原子を有する、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素基を表し、直鎖状でも分岐でもよい。基は直鎖中に複数の二重結合を含んでいてもよく、それぞれについての配向は独立してE又はZである。アルケニル基は、好ましくは1-アルケニル基である。例示のアルケニル基は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル及びノネニルを含むが、これらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0063】
「アルケニルオキシ」は、アルケニル-O-基[式中、アルケニルは本明細書において定義される通りである。]を指す。好ましいアルケニルオキシ基は、C1~C6アルケニルオキシ基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0064】
基又は基の一部としての「アルキル」は、特に明記しない限り、直鎖状又は分岐脂肪族炭化水素基、好ましくはC1~C12アルキル、より好ましくはC1~C10アルキル、最も好ましくはC1~C6を指す。適切な直鎖状及び分岐C1~C6アルキル置換基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル等を含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0065】
「アルキルアミノ」は、明示されなければ、モノアルキルアミノ及びジアルキルアミノの両方を含む。「モノアルキルアミノ」はアルキルNH-基[式中、アルキルは本明細書において定義される通りである。]を意味する。「ジアルキルアミノ」は(アルキル)2N-基[式中、各アルキルは同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキルについて本明細書において定義される通りである。]を意味する。アルキル基は好ましくはC1~C6アルキル基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは窒素原子を介して分子の残基に結合している。
【0066】
「アルキルアミノカルボニル」は、式(アルキル)x(H)yNC(=O)-[式中、アルキルは本明細書において定義される通りであり、xは1又は2であり、X+Yの合計=2である。]の基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはカルボニル炭素を介して分子の残基に結合している。
【0067】
「アルキルオキシ」は、アルキル-O-基[式中、アルキルは本明細書において定義される通りである。]を指す。好ましくは、アルキルオキシはC1~C6アルキルオキシである。例としては、メトキシ及びエトキシを含むが、これらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0068】
「アルキルオキシアルキル」は、アルキルオキシ及びアルキル部分が本明細書において定義される通りであるアルキルオキシ-アルキル基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0069】
「アルキルオキシアリール」は、アルキルオキシ及びアリールの部分が本明細書において定義される通りであるアルキルオキシアリール-基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアリール基を介して分子の残基に結合している。
【0070】
「アルキルオキシカルボニル」は、アルキル-O-C(=O)-基[式中、アルキルは本明細書において定義される通りである。]を指す。アルキル基は好ましくはC1~C6アルキル基である。例としては、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルを含むがこれらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはカルボニル炭素を介して分子の残基に結合している。
【0071】
「アルキルオキシシクロアルキル」は、アルキルオキシ及びシクロアルキルの部分が本明細書において定義される通りであるアルキルオキシ-シクロアルキル基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはシクロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0072】
「アルキルオキシヘテロアリール」は、アルキルオキシ及びヘテロアリールの部分が本明細書において定義される通りであるアルキルオキシ-ヘテロアリール-基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロアリール基を介して分子の残基に結合している。
【0073】
「アルキルオキシヘテロシクロアルキル」は、アルキルオキシ及びヘテロシクロアルキルの部分が本明細書において定義される通りであるアルキルオキシ-ヘテロシクロアルキル基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロシクロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0074】
「アルキルスルフィニル」は、アルキル-S-(=O)-基[式中、アルキルは本明細書において定義される通りである。]を意味する。アルキル基は好ましくはC1~C6アルキル基である。例示のアルキルスルフィニル基は、メチルスルフィニル及びエチルスルフィニルを含むが、これらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0075】
「アルキルスルホニル」は、アルキル-S(=O)2-基[式中、アルキルは上に定義される通りである。]を指す。アルキル基は好ましくはC1~C6アルキル基である。例としては、メチルスルホニル及びエチルスルホニルを含むがこれらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0076】
基又は基の一部としての「アルキニル」は、好ましくは直鎖中に2~12の炭素原子、より好ましくは2~10の炭素原子、より好ましくは2~6の炭素原子を有する直鎖状又は分岐であってもよい、炭素-炭素三重結合を含有する脂肪族炭化水素基を意味する。例示の構造は、エチニル及びプロピニルを含むが、これらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0077】
「アルキニルオキシ」は、アルキニルが本明細書において定義される通りであるアルキニル-O-基を指す。好ましいアルキニルオキシ基はC1~C6アルキニルオキシ基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0078】
「アミノアルキル」はNH2-アルキル基[式中、アルキル基は本明細書において定義される通りである。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0079】
「アミノスルホニル」はNH2-S(=O)2-基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0080】
基又は基の一部としての「アリール」は、(i)好ましくは環当たり5~12の原子を有する、置換されていてもよい単環式、又は縮合多環式、芳香族炭素環(すべて炭素である環原子を有する環構造)を表す。アリール基の例としてはフェニル、ナフチル等を含む;(ii) 置換されていてもよい部分的に飽和している二環式芳香族の炭素環式部分(ここで、フェニル及びC5~7シクロアルキル又はC5~7シクロアルケニル基は、一緒に縮合して、テトラヒドロナフチル、インデニル又はインダニル等の環状構造を形成する。)。基は末端基又は橋架け基であってもよい。典型的には、アリール基はC6~C18アリール基である。
【0081】
「アリールアルケニル」は、アリール及びアルケニルが本明細書において定義される通りであるアリールアルケニル基を意味する。例示のアリールアルケニル基はフェニルアリルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルケニル基を介して分子の残基に結合している。
【0082】
「アリールアルキル」は、アリール及びアルキル部分が本明細書において定義される通りであるアリールアルキル基を意味する。好ましいアリールアルキル基はC1~5アルキル部分を含む。例示のアリールアルキル基は、ベンジル、フェネチル、1-ナフタレンメチル及び2-ナフタレンメチルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0083】
「アリールアルキルオキシ」アリールアルキル-O-基[式中、アルキル及びアリールは本明細書において定義される通りである。]を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0084】
「アリールアミノ」は、明示されなければモノアリールアミノ及びジアリールアミノの両方を含む。モノアリールアミノは、式アリールNH-基[式中、アリールは本明細書において定義される通りである。]を意味する。ジアリールアミノは、式(アリール)2N-基[式中、各アリールは同一でも異なっていてもよく、アリールについてそれぞれ本明細書において定義される通りである。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは窒素原子を介して分子の残基に結合している。
【0085】
「アリールヘテロアルキル」はアリールヘテロアルキル基[式中、アリール及びヘテロアルキルの部分は本明細書において定義される通りである。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0086】
「アリールオキシ」は、アリールが本明細書において定義される通りであるアリール-O-基を指す。好ましくは、アリールオキシはC6~C18アリールオキシ、より好ましくはC6~C10アリールオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0087】
「アリールスルホニル」は、アリール-S(=O)2-基[式中、アリール基は本明細書において定義される通りである。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0088】
「結合」は化合物又は分子中の原子間の連結である。結合は単結合でも、二重結合でも三重結合でもよい。
【0089】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有し、好ましくは環当たり5~10の炭素原子を有する非芳香族の単環式又は多環式の環系を意味する。例示の単環式シクロアルケニル環としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル又はシクロヘプテニルを含む。シクロアルケニル基は1個又は複数の置換基によって置換されてもよい。シクロアルケニル基は典型的にはC3~C12アルケニル基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0090】
「シクロアルキル」は、他で明示されない限り好ましくは環当たり3~9の炭素を含有する、飽和単環式又は縮合又はスピロ多環式、炭素環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を指す。それは、シクロプロピル及びシクロヘキシル等の単環系、デカリン等の二環系、及びアダマンタン等の多環系を含む。シクロアルキル基は典型的にはC3~C12アルキル基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0091】
「シクロアルキルアルキル」は、シクロアルキル及びアルキル部分が本明細書において定義される通りであるシクロアルキル-アルキル基を意味する。例示のモノシクロアルキルアルキル基は、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル及びシクロヘプチルメチルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0092】
「シクロアルキルアルケニル」は、シクロアルキル及びアルケニル部分が本明細書において定義される通りであるシクロアルキル-アルケニル基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルケニル基を介して分子の残基に結合している。
【0093】
「シクロアルキルヘテロアルキル」は、シクロアルキル及びヘテロアルキルの部分が本明細書において定義される通りであるシクロアルキル-ヘテロアルキル基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0094】
「シクロアルキルオキシ」は、シクロアルキルが本明細書において定義される通りであるシクロアルキル-O-基を指す。好ましくは、シクロアルキルオキシはC1~C6シクロアルキルオキシである。例としては、シクロプロパンオキシ及びシクロブタンオキシを含むが、これらに限定されない。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0095】
「シクロアルケニルオキシ」は、シクロアルケニルが本明細書において定義される通りであるシクロアルケニル-O-基を指す。好ましくは、シクロアルケニルオキシはC1~C6シクロアルケニルオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0096】
「ハロアルキル」は、1個又は複数の水素原子が、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子で置き換えられた本明細書において定義されるアルキル基を指す。ハロアルキル基は、典型的には式CnH(2n+1-m)Xm[式中、各Xは、独立してF、Cl、Br及びIからなる群から選択される。]を有する。このタイプの基においてnは典型的には1~10、より好ましくは1~6、最も好ましくは1~3である。mは典型的には1~6、より好ましくは1~3である。ハロアルキルの例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルを含む。
【0097】
「ハロアルケニル」は、1個又は複数の水素原子が、独立してF、Cl、Br及びIからなる群から選択されるハロゲン原子で置き換えられた、本明細書において定義されるアルケニル基を指す。
【0098】
「ハロアルキニル」は、1個又は複数の水素原子が、独立してF、Cl、Br及びIからなる群から選択されるハロゲン原子で置き換えられた、本明細書において定義されるアルキニル基を指す。
【0099】
「ハロゲン」は塩素、フッ素、臭素又はヨウ素を表す。
【0100】
「ヘテロアルキル」は、鎖中に、好ましくは2~24の炭素、2~18の炭素、2~14の炭素、2~12の炭素、2~6の炭素を有する直鎖状又は分岐鎖アルキル基を指し、ここで、1個又は複数の炭素原子(及び任意の会合水素原子)は、それぞれ独立してS、O、P及びNR'[式中、R'は、H、置換されていてもよいC1~C12アルキル、置換されていてもよいC3~C12シクロアルキル、置換されていてもよいC6~C18アリール、及び置換されていてもよいC1~C18ヘテロアリールからなる群から選択される。]から選択されるヘテロ原子基で置き換えられる。例示のヘテロアルキルは、アルキルエーテル、第二級及び第三級アルキルアミン、アミド、硫化アルキル等を含む。ヘテロアルキルの例はまた、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシC1~C6アルキル、アミノC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノC1~C6アルキル、及びジ(C1~C6アルキル)アミノC1~C6アルキルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0101】
「ヘテロアルキルオキシ」は、ヘテロアルキルが本明細書において定義される通りであるヘテロアルキル-O-基を指す。好ましくは、ヘテロアルキルオキシはC2~C6ヘテロアルキルオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0102】
単独又は基の一部のいずれかの「ヘテロアリール」は、芳香環中に環原子として1個又は複数のヘテロ原子を有する芳香環(好ましくは5又は6員芳香環)を含有する基を指し、環原子の残基は炭素原子である。適切なヘテロ原子は窒素、酸素及び硫黄を含む。基は単環式又は二環式のヘテロアリール基であってもよい。ヘテロアリールの例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ナフト[2,3-b]チオフェン、フラン、イソインドリジン、キサントレン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、テトラゾール、インドール、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、シンノリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジン、2-、3-又は4-ピリジル、2-,3-,4-,5-又は8-キノリル、1-,3-,4-又は5-イソキノリニル、1-,2-又は3-インドリル及び2-又は3-チエニルを含む。ヘテロアリール基は典型的にはC1~C18ヘテロアリール基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0103】
「ヘテロアリールアルキル」は、ヘテロアリール及びアルキル部分が本明細書において定義される通りであるヘテロアリールアルキル基を意味する。好ましいヘテロアリールアルキル基は低級アルキル部分を含む。例示のヘテロアリールアルキル基はピリジルメチルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0104】
「ヘテロアリールアルケニル」は、ヘテロアリール及びアルケニル部分が本明細書において定義される通りであるヘテロアリールアルケニル基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルケニル基を介して分子の残基に結合している。
【0105】
「ヘテロアリールヘテロアルキル」は、ヘテロアリール及びヘテロアルキルの部分が本明細書において定義される通りであるヘテロアリールヘテロアルキル基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0106】
「ヘテロアリールオキシ」は、ヘテロアリールが本明細書において定義される通りであるヘテロアリール-O-基を指す。好ましくは、ヘテロアリールオキシはC1~C18ヘテロアリールオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0107】
「ヘテロ環式」は、環原子として窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環式、二環式又は多環式の環系を指す。複素環式部分の例は、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル及びヘテロアリールを含む。
【0108】
「ヘテロシクロアルケニル」は、本明細書において定義されるヘテロシクロアルキル基を指すが、少なくとも1個の二重結合を含有する。ヘテロシクロアルケニル基は典型的にはC2~C12ヘテロシクロアルケニル基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0109】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個の環中に窒素、硫黄、酸素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~3のヘテロ原子を含有する、飽和単環式、二環式又は多環式の環を指す。各環は、好ましくは3~10員、より好ましくは4~7員である。適切なヘテロシクロアルキル置換基の例は、ピロリジル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルフィリノ、1,3-ジアザパン、1,4-ジアザパン、1,4-オキサゼパン及び1,4-オキサチアパンを含む。ヘテロシクロアルキル基は典型的にはC2~C12ヘテロシクロアルキル基である。基は末端基又は橋架け基であってもよい。
【0110】
「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、ヘテロシクロアルキル及びアルキル部分が本明細書において定義される通りであるヘテロシクロアルキル-アルキル基を指す。例示のヘテロシクロアルキルアルキル基は(2-テトラヒドロフラニル)メチル、(2-テトラヒドロチオフラニル)メチルを含む。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0111】
「ヘテロシクロアルキルアルケニル」は、ヘテロシクロアルキル及びアルケニル部分が本明細書において定義される通りであるヘテロシクロアルキル-アルケニル基を指す。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはアルケニル基を介して分子の残基に結合している。
【0112】
「ヘテロシクロアルキルヘテロアルキル」は、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアルキルの部分が本明細書において定義される通りであるヘテロシクロアルキル-ヘテロアルキル基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それはヘテロアルキル基を介して分子の残基に結合している。
【0113】
「ヘテロシクロアルキルオキシ」は、ヘテロシクロアルキルは本明細書において定義される通りであるヘテロシクロアルキル-O-基を指す。好ましくは、ヘテロシクロアルキルオキシはC1~C6ヘテロシクロアルキルオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0114】
「ヘテロシクロアルケニルオキシ」は、ヘテロシクロアルケニルが本明細書において定義される通りであるヘテロシクロアルケニル-O-基を指す。好ましくは、ヘテロシクロアルケニルオキシはC1~C6ヘテロシクロアルケニルオキシである。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは酸素原子を介して分子の残基に結合している。
【0115】
「ヒドロキシアルキル」は、1個又は複数の水素原子がOH基で置き換えられた本明細書において定義されるアルキル基を指す。典型的にはヒドロキシアルキル基は式CnH(2n+1-x)(OH)xを有する。このタイプの基において、nは、典型的には1~10、より好ましくは1~6、最も好ましくは1~3である。xは典型的には1~6、より好ましくは1~3である。
【0116】
「スルフィニル」はR-S(=O)-基[式中、R基は、本明細書において定義されるOH、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル;アリール又はヘテロアリール基であってもよい。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0117】
「スルフィニルアミノ」は、R-S(=O)-NH-基[式中、R基は、本明細書において定義されるOH、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル;アリール又はヘテロアリール基であってもよい。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは窒素原子を介して分子の残基に結合している。
【0118】
「スルホニル」は、R-S(=O)2-基[式中、R基は、本明細書において定義されるOH、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル; アリール又はヘテロアリール基であってもよい。]を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは硫黄原子を介して分子の残基に結合している。
【0119】
「スルホニルアミノ」はR-S(=O)2-NH-基を意味する。基は末端基又は橋架け基であってもよい。基が末端基である場合、それは窒素原子を介して分子の残基に結合している。
【0120】
本明細書において引用される先行技術は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0121】
本発明の好ましい実施形態は、以下の添付の図面を参照して、例としてのみ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】実施例1の結果を示すグラフであり、ホスホナート、DTMPMA.Na.X(質量%)を用いる密度安定化H2O2の範囲を含む、経時的(日)なゲル密度(g.cm-3)の変化を示す。
図2】実施例1の結果を示すグラフであり、ホスホナート、DTMPMA.Na.X(質量%)を用いる密度安定化H2O2の範囲を含む、初期の密度と比較した経時的(日)なゲル密度の損失(初期に対する%)を示す。
図3】実施例2の結果を示すグラフであり、3質量%のDTMPMAで増強したH2O2/グリセリン系火薬処方の密度を変化させて、開放式爆轟(n=3)で、47mm直径の配管中、3M(商標)K15 Glass Micro-Balloonsを用いて増感し、25gのPentex D Boosterを用いて開始した爆轟(VOD)の平均速度を示す。2つのVODモニター、VOD1(点線)及びVOD2(破線)を各発破につなぎ、VODデータの平均を実線として表示している。
図4】0~5質量%のPAの間の10日にわたるゲル密度(g.cm-3)の変化を示すグラフである。エラーバー(error bar)は標準偏差(n=4)である。3、4及び5質量%のPA配合物は5日で崩壊した。
図5】0~5質量%のPAの間の10日にわたる初期の密度と比較した、ゲル密度(%)の損失を示すグラフである。エラーバーは標準偏差(n=4)である。3、4及び5質量%のPA配合物は5日で崩壊した。
図6】0~2質量%のPAの間の13日にわたるゲル密度(g.cm-3)の変化を示すグラフである。エラーバーは標準偏差(n=4)である。
図7】0~2質量%のPAの間の13日にわたる初期の密度と比較した、ゲル密度(%)の損失を示すグラフである。エラーバーは標準偏差(n=4)である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
本発明は、
a. H2O2
b. 燃料;及び
c. 1種又は複数種の密度安定剤
を含む火薬組成物を提供する。
【0124】
一実施形態において、本発明の組成物は含水ゲルとして配合される。代替実施形態において、本発明の組成物はエマルションとして配合される。
【0125】
過酸化水素(H2O2)
本発明の組成物中のH2O2の好ましい濃度は、約2%~85質量%である。例のみとしては、濃縮H2O2溶液(70質量%)は調達することができ、組成物で使用される25質量%まで希釈することができる。他の可能性は当業者に明らかであろう。好ましくは、組成物中のH2O2濃度は、およそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80又は85%(w/w)である。好ましくは、組成物中のH2O2濃度は、およそ約2~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80又は80~85%(w/w)の間にある。
【0126】
組成物中に存在する過酸化水素の質量%は、純粋な過酸化水素の量を指すことは理解されよう。過酸化水素は、100%未満のH2O2濃度を有する、例えば50質量%、又は35質量%、又は30質量%のH2O2濃度を有する水溶液の形態で用意されるので、当業者は、それらが、本発明の火薬組成物が2~25質量%のH2O2を含むことを確実にするために必要とされる希釈H2O2溶液の量を調整することができる必要性及び手法を容易に理解している。疑問を避けるために例をとると、本発明の組成物がH2O250質量%溶液を20%含む場合、組成物は10質量%のH2O2を含むことになる。当業者は、また2~85質量%のH2O2の濃度が火薬組成物中の最終H2O2濃度であり、したがって、配合の間に組成物に添加される他の成分(例えば、燃料、酸化剤、増粘剤等)の希釈効果を考慮に入れなければならないことを認識している。
【0127】

本明細書において記載の火薬組成物は水を含んでいてもよい。一実施形態において、火薬組成物は、50質量%未満の水、又は40質量%以下の水、又は30質量%以下、例えば、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下の水を含んでいてもよい。一実施形態において、火薬組成物は、5質量%以上、例えば10質量%以上の水を含んでいてもよい。組成物は、したがって5~50質量%の水、又は5~20質量%の水、又は15~30質量%の水、又は10~40質量%の水、又は50、45、40、35、30、25、20、15、10、5又は1質量%の水を含んでいてもよい。
【0128】
増感剤
本発明による火薬組成物は、爆轟に対する感度を改善する空隙(void)を生成するために組成物中に分散された1種又は複数種の増感剤を含んでいてもよい。更に、H2O2は、それ自体増感剤及び酸化剤の両方として働くことができる。代替として、H2O2は、それ自体増感剤として働くことができ、他の増感剤は使用しなくてもよい。
【0129】
増感剤は、インサイチューで発生したガスバブル又は注入された空気、又は空気/ガスを閉じ込めた材料を含む。増感の別の例は、(化学的に発生し又は注入された)ガスバブルと、空気を閉じ込めた材料との両方の組合せである。
【0130】
本発明の火薬組成物は、組成物を増感するための不連続のガス状成分を含む。
【0131】
本発明は、火薬組成物をもたらし、主要因、例えば、爆轟の爆発感度、密度、速度(VOD)及びエネルギー送達を制御するためのH2O2系組成物の増感に依存する。
【0132】
好ましくは、本発明の火薬組成物は、実質上均質な分散体中に増感剤を、(例えば、それぞれ含水ゲル又はエマルションの場合の増粘剤又は乳化剤によって)保持するように適合される。更に以下に論じられるようなこの性質を達成するために様々な技法を利用することができることが理解されよう。
【0133】
好ましくは、最小濃度の増感剤が、爆発性にするために組成物に含まれる。好ましくは、増感剤は爆轟感度のよい濃度又は量で含まれる。増感剤はまた、好ましくは組成物の全体にわたって爆轟感度のよい分散体/分布状態に維持される。好ましくは、組成物の最終密度は初期の好ましい所定の爆発性範囲へ制御される。好ましくは、最終密度は約0.6~約1.15g/mlに増感剤を用いて制御される。好ましくは、組成物の密度は、およそ0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3又は1.4g/mlになるように配合される。好ましくは、組成物の密度は、最初におよそ0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4又は1.4~1.5g/mlの間になるように配合される。しかし、幾つかの用途のためには、他の高密度添加剤は、特異的に最大1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0g/mlまで密度を高めるように含まれることができることが理解されよう。好ましくは、密度は、長期間にわたって上に論じられるように維持又は安定され、それによって本明細書において論じられるような密度安定剤を含まない火薬組成物と比較して、スリープタイムが増加される。
【0134】
数学的変換が、一定の密度を得るためのセラミック/ガラス/プラスチックマイクロバルーン若しくは膨張ポリスチレン球体等の機械的増感剤の質量、又はバブルに分解される化学薬品の量を、 (空隙空間としての) 体積に変換するために必要とされることを当業者は理解する。しかし、増感のタイプに関係なく、最終密度を所定値に制御して火薬組成物を得、それによって上に論じられたパラメーターが制御されることは認識されよう。
【0135】
多くの利点が、本明細書において教示される発明の火薬組成物から派生する。例えば、本発明の組成物のある種の配合物は、既存の火薬組成物と比較して、より費用効果的であり、大量に製造して鉱業からの需要を満たすことができる。本発明の火薬組成物はH2O2を利用するが、H2O2は、当業界で使用される他のタイプの酸化剤と比較して、比較的低いカーボンフットプリントを有する持続可能に製造される材料である。本発明の火薬組成物は、スラリー、小球、ビーズ又はエマルションの形態へ配合することもできる。また、本発明の組成物は、NOxの量を減らし、本発明の好ましい形態中にNOxを全く含まないことが認識されよう。他の利点は、(本明細書において記載した密度安定剤を含まない火薬組成物と比較して)長期間にわたる密度の安定化を含み、それによって、密度安定剤を含まないH2O2系火薬組成物を用いては可能でなかったスリープタイムの改善及び爆破の遂行を可能にする。
【0136】
火薬が増感されたら、それは起爆薬/ブースターによって開始させることができ、当業者はわかっているように、火薬に高い爆轟圧が発生し、次いで、増感された火薬の爆轟が開始する。
【0137】
組成物への空隙の導入は、本発明に対してすべて適用可能である様々な技法(混合時にガスバブルを閉じ込めることによる技法、化学的にインサイチューで発生したガスバブルを使用することによる技法、ガスバブルを注入する技法、又は、組成物をガスを閉じ込めた材料と混合することによる技法)によってもたらされ得る。
【0138】
過酸化水素系火薬の増感のために、ガスバブルと組み合わせて使用することができる、空気を閉じ込めた材料の例は、ガラス又はプラスチックマイクロバルーン、膨張ポリスチレンビーズ、ポリウレタン発泡体等である。
【0139】
好ましくは、これらの空隙成分は、組成物の全体にわたって分散した細かいガスバブルとして本発明の組成物へ組み込まれる。中空のガス充填圧縮性粒子、例えば、マイクロバルーン、又は多孔性粒子、又はそれらの混合物を含むこともできる。
【0140】
細かいガスバブルの不連続相は、機械的揺動、組成物にガスを泡立たせることによる注入、又は化学的手段によるガスのインサイチュー発生によって、本発明の組成物へ組み込まれてもよい。
【0141】
ガスバブルのインサイチュー生成のために適切な化学薬品は、マンガン(Mn)塩、酵母、ヨウ化物塩等を用いて分解することができるH2O2それ自体;窒素系化合物、例えば亜硝酸ナトリウム等;ニトロソアミン、例えばN,N'ジニトロソペンタメチレンテトラミン等;ホウ素系化合物、例えば水素化ホウ素ナトリウム等;炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム等を含む。過マンガン酸塩(等)を用いる過酸化水素の一部のインサイチュー分解によって、酸素ガスバブルが形成される。インサイチューで酸を用いる炭酸塩の分解によって、二酸化炭素バブルが形成される。
【0142】
適切な中空粒子の例は、ガラス及び樹脂質材料、例えばフェノール-ホルムアルデヒド、ポリ(塩化ビニリデン)/ポリ(アクリロニトリル)コポリマー、及び尿素ホルムアルデヒドの小さな中空微小球体を含む。適切な中空の粒子の例は、Q-Cel、Cenospheres、Expancel、3M、Extendospheres等を含む。多孔質材料の例としては、膨張鉱物、例えば、パーライト、フライアッシュ又は石炭火力発電所の副生物である中空粒子を含む。
【0143】
典型的には、十分な空隙空間/ガスバブル(可能性として中空粒子及び/又は多孔性粒子も含む空隙空間/ガスバブル)を、本発明の組成物に使用して、0.1~1.4g/cm3の範囲の密度を有する火薬組成物を得る。好ましい実施形態において、中空のガス充填圧縮性粒子が全く存在しないことを条件として、増感は完全にガスバブルから与えられる。
【0144】
従来の混合技法を使用してエマルション火薬組成物中にバブルをもたらすると、しばしば広範なバブルサイズを有するバブルが生成する。例えば、バブルは、しばしば最大2000ミクロンの直径を有し、50ミクロン未満の平均バブル直径が一般的である。適切な界面活性剤の選択によって、より小さい又はより大きい直径のバブルを生成することができる。したがって、所望の濃度で好適な界面活性剤を選ぶことによって、不連続気相中の平均ガスバブル直径を制御することができ、50~200ミクロンのバブルを得ることが可能である。バブルのサイズが総合密度に影響を及ぼすことが理解され、低密度が必要な場合には、50~100ミクロンのガスバブルが好ましい。乳化された火薬について、密度範囲は、好ましくはおよそ0.60~1.20g/mlであり、含水ゲルについては、密度範囲は好ましくは0.2~1.2g/mlの間にある。乳化された系において、ガスバブルは、好ましくは分散相小滴より10~100倍大きい。油性の相は、ガスバブルと接触する傾向があるが、酸化剤(又は不連続相)はそうではない。
【0145】
上に論じられるように、ガスバブルの導入は、本発明にすべて適用可能である様々な技法によってもたらされ得る。
【0146】
一実施形態において、バブルは、火薬組成物の調製の間の化学反応によるそれらの形成の際に「トラップ」され得る。米国特許第3,400,026号には、バブルの形成及びそれらの安定化を容易にするために、溶液中のタンパク質(アルブミン、コラーゲン、大豆蛋白等)を使用する配合物が記載されている。米国特許第3,582,411号には、ヒドロキシ基によって変性したグアーゴム型の発泡剤を含む含水ゲル配合物が記載されている。米国特許第3,678,140号には、40~200psiの圧力で一連の開口部に組成物を通し、同時に空気をエダクターによって導入することによるタンパク質溶液を使用することによる、空気の組込みの方法が記載されている。
【0147】
また、化学反応の結果として発生するガスバブルの組込みは、先行技術において記載されている。ガスバブルのインサイチュー生成は、化学薬品化合物の分解によってもたらされ、分解により、適切には、O2、CO2、N2、H2又はその組合せが生成する。
【0148】
バブル形態の様々なガス、例えば窒素、二酸化炭素、酸素及び水素は、爆破剤を増感するために使用されてきた。また、爆発性混合物に直接に空気又はガスを注入することは公知である。注入に適しているガスは、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素及び貴ガス(アルゴン等)を含む。
【0149】
代替として、中空のガス充填圧縮性粒子、例えば、ガラス若しくはプラスチックマイクロバルーン、又は多孔性粒子、又は膨張ポリスチレン(EPS)、又はそれらの混合物が含まれる。関連する実施形態では、圧縮性材料は、比重が<1.0g/cm3である任意の低密度材料である。短くまとめると、ガラスバルーンの例が米国特許第4,326,900号及び米国特許第3,447,978号に、プラスチックマイクロバルーンの例が米国特許第4,820,361号及び米国特許第4,547,234号に見られる。これらのバルーンは典型的には直径0.05mmであり、100g/Lのかさ密度を有する。膨張ポリスチレンの使用は、例えば米国特許第5,470,407号及び米国特許第5,271,779号に見られる。
【0150】
一実施形態において、圧縮性材料は、ガス充填されており、セラミック、ガラス若しくは樹脂質材料又は多孔質材料及びその組合せの小さな中空の微小球体、例えばパーライト又はフライアッシュ等から選択される。
【0151】
好ましくは、微小球体/マイクロバルーンは、ガス、例えばペンタン等を含む。適切には、微小球体は、約20~2000ミクロンの寸法であり、1000g/L未満のかさ密度を有する。
【0152】
代替実施形態では、圧縮性材料は、泡状材料、例えば、膨張ポリスチレン(EPS)、ポリウレタン発泡体、綿実、膨張ポップコーン、殻、及びその組合せである。
【0153】
適切な中空粒子の例は、セラミック、ガラス及び樹脂質材料の小さな中空の微小球体、例えばフェノールホルムアルデヒド、ポリ(塩化ビニリデン)/ポリ(アクリロニトリル)コポリマー及び尿素ホルムアルデヒド等を含む。適切な中空粒子の例は、Q-Cel、Envirospheres(登録商標)、Cenospheres(登録商標)、Expancel(登録商標)、3M、Extendospheres(登録商標)等を含む。多孔質材料の例は、パーライト、フライアッシュ等の膨張鉱物を含む。多孔質材料のさらなる例は、石炭火力発電所の副生物である中空粒子である。
【0154】
典型的には、十分なバブル、及び/又は中空粒子、及び/又は多孔性粒子を、本発明の組成物に使用して、0.3~1.4g/cm3の範囲の密度を有する火薬組成物を得る。
【0155】
例えば、本発明の火薬組成物は、最大1.4g/cm3、最大1.3g/cm3、最大1.2g/cm3、最大1.1g/cm3、最大1.0g/cm3等の密度を有していてもよい。本発明の火薬組成物は、0.3g/cm3以上、0.4g/cm3以上、0.5g/cm3以上等の密度を有していてもよい。エマルション火薬組成物中にバブルを与えるために従来の混合技法を使用すると、しばしばバブルサイズの範囲を有するバブルが生成する。例えば、バブルはしばしば最大2000ミクロンの直径を有し、また300ミクロン未満の平均バブル直径も一般的である。適切な界面活性剤の選択によって、より小さい又はより大きい直径のバブルを生成することができる。したがって、所望の濃度で好適な界面活性剤を選ぶことによって、不連続気相中の平均ガスバブル直径を制御することができ、50~300ミクロンのバブルを得ることが可能である。乳化された火薬について、密度範囲は、適切にはおよそ0.60~1.30g/cm3であり、含水ゲルについては、密度範囲は適切には0.2~1.40g/cm3の間にある。乳化された系において、ガスバブルは、適切には分散相小滴より10~100倍大きい。油性の相は、ガスバブルと接触する傾向があるが、酸化剤(又は不連続相)はそうではない。
【0156】
他のタイプの増感材料、例えばTNT、HMX、RDX、アルミニウム粉及びシリコン粉並びにその組合せ(例えばTNT、HMX、RDX及びアルミニウム粉並びにその組合せ)を、本発明の組成物において使用することができる。
【0157】
密度安定剤
本発明の火薬組成物は少なくとも1個の密度安定剤を含む。
【0158】
一般に、1種又は複数種の密度安定剤は、火薬組成物の最大約15質量%、例えば約0.01質量%~約10質量%、例えば約1~約5質量%、例えば約1~約3質量%の量で組み込まれる。1種又は複数種の密度安定剤は、好ましくは約0.01、0.05、0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、7、7.25、7.5、7.75、8、8.25、8.5、8.75、9、9.25、9.5、9.75、10、11、12、13、14又は15質量%の濃度で存在する。1種又は複数種の密度安定剤は、好ましくはおよそ0.01~0.05、0.05~0.1、0.1~0.5、0.5~1、1~1.5、1.5~2、2~2.5、2.5~3、3~3.5、3.5~4、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、6.5~7、7~7.5、7.5~8、8~8.5、8.5~9、9~9.5、9.5~10、10~11、11~12、12~13、13~14又は14~15質量%の濃度で存在する。
【0159】
好ましくは、密度安定剤は、約0.01質量%~約10質量%、例えば約1~約5質量%、例えば約1~約3質量%で存在する。
【0160】
好ましい密度安定剤はホスホナートである。
【0161】
ホスホナート
好ましくは、ホスホナートは液体形態(例えば、溶液に溶解した液体形態)である。
【0162】
ホスホナートは、1、2、3、4、5若しくは6個のペンダントホスホナート基、又は6を超える基を有していてもよい。幾つかの実施形態において、ホスホナートは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のペンダントホスホナート基を有していてもよい。好ましくは、ホスホナートは、少なくとも3個のペンダントホスホナート基、より好ましくは5個のペンダントホスホナート基を有する。
【0163】
ある実施形態において、ホスホナートは、構造X-(PO3Y2)n[式中、Xは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択され;YはH又は水溶性の陽イオンであり;nは、1~10(すなわち、1、2、3、4、5、6、7 ,8、9、10)である。]を有する。適切な任意選択の置換基は、-OH、-COOH、ハロゲン、-NH2、-SHからなる群から選択することができる。好ましい実施形態において、ホスホナートは構造X-(PO3Y2)n[式中、Xは、少なくとも2個の窒素原子、好ましくは少なくとも3個の窒素原子、より好ましくは3個の窒素原子を有する、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル又は置換されていてもよいヘテロアリールであり;YはH又は水溶性の陽イオンであり;nは、1~10(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)である。]を有する。適切な任意選択の置換基は、-OH、-COOH、ハロゲン、-NH2、-SHからなる群から選択することができる。
【0164】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明において使用するのに適しているホスホナートは、アミンに基づき、より好ましくは第三級アミンに基づく。
【0165】
ホスホナート陰イオンに適している水に可溶性の陽イオンは、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換アンモニウム及びアルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウム)を含む。好ましい化合物はn=1~2を有し、好ましくは、Yは水素、アンモニウム、ナトリウム若しくはカリウム又はその混合物である。好ましい一実施形態において、密度安定剤は、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム塩(DTPMPA.Na.x, C9H28-xN3O15P5Nax)であるホスホナートである。下記式Iを参照されたい。
【0166】
【化1】
【0167】
他の適切なホスホナートの例は、式IIの範囲内にあるものを含む:
【0168】
【化2】
【0169】
様々なX基は、同一でも異なっていてもよい。
【0170】
他の適切なホスホナートの例は、以下のもの、及びその塩、溶媒和物、二量体、立体異性体を含む。
【0171】
【表1A】
【0172】
【表1B】
【0173】
【表1C】
【0174】
【表1D】
【0175】
【表1E】
【0176】
いかなる1つの理論によって束縛されることはないが、本発明者は、本発明で使用される適切なホスホナートが、本明細書において企図される火薬組成物内に生得的に存在する不純物をキレート化又は分離することによって密度を安定化する(すなわち「内部」安定性を与える)と考える。加えて、本発明で使用される適切なホスホナートは、火薬組成物が発破孔に装填され岩石に曝露される場合に生じる不純物をキレート化又は分離することによって密度を安定化する(すなわち「外部」安定性を与える) と考える。本発明の火薬は、広範囲の表面及び表面下の用途、及び様々な金属を含む鉱物を有する様々なタイプの岩石の範囲に使用し得ることが理解されよう。本明細書に記載の1種又は複数種のホスホナートは、爆破される岩石中に存在する不純物(金属イオン)のタイプに応じて、及び/又は、用途が金属イオンの溶解度及び/又はpHに影響を与え得る高温反応性の土地であるかどうかに応じて、選択して使用することができる。
【0177】
組成物安定剤
本発明では、他の組成物安定剤を使用することもできる。
【0178】
適切な組成物安定剤は、ホスファート、スタンナート及びスルファイトからなる群から選択され得る。
【0179】
適切な組成物安定剤は、EDTA及びニトラート(例えば硝酸ナトリウム又は硝酸カリウム)も含む。
【0180】
例えば、スタンナート、スルファイト及びニトラート、例えばホスホナートとニトラートの混合物等を、別個の成分として、あるいは密度安定系の成分としてのいずれかで使用することができる。
【0181】
典型的には、本発明の組成物の他の組成物安定剤成分は、最大約15質量%、例えば約0.01質量%~約10質量%、例えば約1~約5質量%、例えば、組成物全体の約1~約3質量%の量で組み込まれる。
【0182】
含水ゲル用の燃料
本発明の火薬組成物は1種又は複数種の燃料を含んでいてもよい。
【0183】
H2O2系含水ゲルは、水に混和性の燃料又は水に混和しない燃料のいずれかを用いて調製することができる。
【0184】
当業者は、燃料として使用するために利用可能な多くの選択肢があることを認識している。例えば、燃料は、その起源に応じて、糖、糖蜜、植物油又はアルコール等の植物起源の産物であってもよい。そのような燃料は持続可能な燃料と見なすことができる。他の燃料は、石油化学工業、例としてはディーゼル燃料、パラフィン油又は鉱油、有機酸、エーテル、エステル、硝酸アミン、尿素、ヘキサミン等から調達することができる。他の燃料はシリコーン油等であってもよい。本発明の組成物で使用される適切な燃料は、グリセリン、糖、シロップ、アルコール、炭素、微粉炭、ワックス、油剤、例えばコーン、綿実、オリーブ、ピーナッツ又は脂肪酸油である。本発明の組成物で使用される適切な持続可能な燃料は、糖蜜、植物油、アルコール、油剤、例えばコーン、綿実、オリーブ、ピーナッツ、脂肪酸油又はゴムを含んでいてもよい。他の燃料は、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、及び/又はホルムアミドから選択されてもよい。好ましくは持続可能な燃料は、グリセリンである。組成物は15から25質量%の間、例えば15から20%の間、又は20から25質量%の間の持続可能な燃料を含んでいてもよい。組成物は、代替として40質量%未満の持続可能な燃料、30%未満、25%未満又は20質量%未満の持続可能な燃料、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40質量%の持続可能な燃料を含んでいてもよい。代替として、上記の燃料を、水溶性燃料及び水不溶性燃料に分けることもできる。
【0185】
本発明で使用することができる水混和性燃料は、グリセリン、糖、硝酸アミン、ヘキサミン及び尿素からなる群から選択することができる。
【0186】
本発明で使用することができる水に混和しない燃料は、配合温度で液体状態である脂肪族、脂環式及び芳香族化合物並びにその混合物からなる群から選択することができる。適切な有機燃料は、燃料油、ディーゼル油、留出物、灯油、ナフサ、ワックス(例えば微晶質ワックス、パラフィンワックス及びスラックワックス)、パラフィン油、ベンゼン、トルエン、キシレン、アスファルト質材料、ポリマー状油剤(例えばオレフィンの低分子量ポリマー等)、植物油、動物油、魚油、及び他の鉱物油、炭化水素又は脂肪油、及びこれらの混合物から選ぶことができる。好ましい有機燃料は、ガソリン、灯油、燃料油、パラフィン油、植物油又はこれらの混合物等の、一般に石油留出物と称される液体炭化水素である。
【0187】
典型的には、本発明の含水ゲル組成物の水に混和する又は水と混和しない燃料は、組成物全体の5~30質量%、好ましくは10~25質量%を占める。好ましくは、燃料は、約5、7、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45又は50%(w/w)の濃度で含まれる。好ましくは、燃料は、約5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45又は45~50%(w/w)の間の濃度で含まれる。
【0188】
一実施形態において、水に混和しない燃料は、組成物全体の7~25質量%含まれる。
【0189】
一実施形態において、水混和性燃料は、組成物全体の8~25質量%含まれる。
【0190】
エマルション用の燃料
本発明の火薬組成物は1種又は複数種の燃料を含んでいてもよい。
【0191】
H2O2系エマルションは、水に混和しない燃料を用いて調製することができる。
【0192】
燃料は、ディーゼル燃料及び/又は油剤留出物等の任意の燃料であってよい。代替として、それらは、パラフィン、鉱物、オレフィン、ナフテン、動物、植物、魚及びシリコーンの油であってよい。他のタイプの燃料は、ベンゼン、トルエン、キシレン、アスファルト質材料等である。燃料は持続可能な燃料であってよい。エマルションで使用される適切な持続可能な燃料は、植物油、コーン、綿実、オリーブ、ピーナッツ又は脂肪酸油等の油を含んでいてもよい。組成物は、15から25質量%、例えば15から20%の間、又は20から25質量%の間の持続可能な燃料を含んでいてもよい。組成物は、代替として40質量%未満の持続可能な燃料、30%未満、25%未満、又は20質量%未満の持続可能な燃料、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40質量%の持続可能な燃料を含んでいてよい。
【0193】
本発明の組成物の水に混和しない有機相成分は、油中水エマルションの連続的な「油」相を含み、燃料である。適切な有機燃料は、配合温度で液体状態である、脂肪族、脂環式及び芳香族化合物及びその混合物を含む。適切な有機燃料は、再利用された潤滑剤留出物、再利用された油剤留出物、燃料油、ディーゼル油、留出物、ケロシン、ナフサ、ワックス(例えば微晶質ワックス、パラフィンワックス及びスラックワックス)、パラフィン油、ベンゼン、トルエン、キシレン、アスファルト質材料、オレフィンの低分子量ポリマー等のポリマー状油剤、植物油、動物油、魚油、及び他の鉱物、炭化水素又は脂肪油、並びにその混合物から選ぶことができる。好ましい有機燃料は、一般に石油留出物と称される液体炭化水素、例えば、ガソリン、ケロシン、燃料油、パラフィン油、植物油又はその混合物である。
【0194】
典型的には、本発明のH2O2系エマルション組成物の有機燃料又は連続相は、組成物全体の2~20質量%、好ましくは3%~20質量%を占める。好ましくは、有機燃料は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18又は20% (w/w)の濃度で含まれている。好ましくは、有機燃料は、約2~4、4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、14~16、16~18、又は18~20%(w/w)の間の濃度で含まれている。
【0195】
含水ゲル及びエマルション用の第2の燃料
所望の場合、他の任意選択の燃料材料(以降、第2の燃料と称される)を、本発明の組成物中へ組み込むことができる。
【0196】
第2の燃料の例は細かく分割された固体を含む。第2の燃料の例は水混和性の有機液体も含む。固体の第2の燃料の例は、硫黄;アルミニウム;及びギルソナイト、細分したコークス又はチャーコール、カーボンブラック等の炭素質材料、アビエチン酸等の樹脂酸、デンプン、ナット食品、穀物食品及び木材パルプ等の植物性産物並びにその組合せを含む。第2の燃料の例は、グルコース及びデキストロース等の糖を含む。第2の燃料の例は更に、再利用プラスチック廃物を含む。
【0197】
典型的には、本発明の組成物の任意選択の第2の燃料成分は、組成物全体の0~20質量%、例えば0.1~12質量%を占める。
【0198】
増粘剤
本発明の火薬組成物は1種又は複数種の増粘剤を含んでいてもよい。とりわけ、本発明の含水ゲル組成物は、1種又は複数種の増粘剤を含んでいてもよい。
【0199】
ガスのバブル及びガスを包囲する材料は比較的低密度であるので、H2O2系火薬組成物の粘度が均質に全体に分散した増感材料を維持することができない場合、増感材料は火薬のカラムの表面の方へ移行する傾向がある。表面への増感材料の移行によって、火薬が低感度になり過ぎ起爆しなくなり得るので望ましくなく、そのため、火薬組成物は、必要とされる岩石を掘り移動させるのに必要なエネルギー及びガスを届けることができず、又は更に最悪、火薬が不発となることを招きかねない。この問題を改善する1つの方法は火薬組成物を含水ゲルに配合することである。これらのタイプの組成物は増粘剤を使用することにより様々な水準の粘度で配合することができる。粘度は、一般に組成物の全体にわたって均質に分散した状態で増感材料を保持するように選択することができる。
【0200】
所望の場合、本発明の組成物の水性溶液は、場合によって架橋することができる増粘剤を含んでいてもよい。本発明では任意の従来の増粘剤を使用することができる。本発明の組成物において使用される場合、増粘剤は、適切には、ポリマー状材料、殊にガラクトマンナンゴムによって代表されるゴム材料、例えば、ローカストビーンガム若しくはキサンタンガム、又はアルギナートゴム若しくはアルギナートゴムの誘導体又はグアーゴム若しくはその誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルグアーゴムである。増粘剤は、天然ゴム、例えば、グアーゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等を含むゴムから選択されてもよい。他の有用だがそれほど好ましくはないゴムは、いわゆるバイオポリマーゴム、例えば、炭水化物材料の微生物転換、例えばクサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)によって代表されるクサントモナス属の植物病原体を用いるグルコースの処理によって調製されるヘテロ多糖等である。他の有用な増粘剤は、合成ポリマー状材料、特に少なくとも一部分モノマーアクリルアミドに由来する合成ポリマー状材料を含む。合成増粘剤の一例はポリアクリルアミドである。ヒュームドシリカ、クレー及びカルボシル等の無機増粘剤又はその組合せを使用することもできる。適切には、増粘剤は、ローカストビーンガム、グアーゴム、ヒドロキシプロピルグアーゴム、アルギン酸ナトリウム及びヘテロ多糖、並びにその組合せから選択される。
【0201】
典型的には、本発明の組成物の増粘剤成分は、組成物全体の0~5質量%、例えば、0.5~5質量%、例えば、組成物全体の0~2質量%、例えば組成物全体の0.1~2質量%を占める。
【0202】
架橋剤
本発明では、架橋剤を使用することもできる。
【0203】
増粘剤は、架橋剤と組み合わせて火薬の水抵抗力及び機械的強度を改善することができる。従来の架橋剤、例えば、別個の成分としてのクロム酸亜鉛又は重クロム酸塩、又はレドックス系の成分としての、例えば、重クロム酸カリウムと酒石酸アンチモンカリウムとの混合物等のいずれかを使用することはこの目的にとって都合がよい。Ca、Ti、Sbの塩を、架橋剤として使用することもできる。
【0204】
一実施形態において、架橋剤は、亜鉛、カルシウム、チタン、アンチモン、クロム、ホウ酸塩及び重クロム酸塩並びにその組合せを含有する塩から選択される。
【0205】
典型的には本発明の組成物の架橋剤成分は、0~3質量%、例えば組成物全体の0~0.1質量%、例えば組成物全体の0.1~1質量%、例えば組成物全体の1~2質量%、例えば組成物全体の2~3質量%を占める。
【0206】
乳化剤
本発明の火薬組成物は、エマルション形態として調製される場合、1種又は複数種の乳化剤を含んでいてもよい。
【0207】
H2O2系エマルション組成物は、1種又は複数種の乳化剤の存在下で有機燃料の連続相中に分散した酸化性材料の不連続相でできている。乳化剤は、相分離を維持するように適合されるか又は選ばれる。
【0208】
本発明の組成物の乳化剤成分は、油中水エマルション火薬組成物の調製のための、当業界で知られている広範囲の乳化剤から選ぶことができる。そのような乳化剤の例は、アミンと反応したポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)を含み;他の乳化剤の例は、アルコールアルコキシラート、フェノールアルコキシラート、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシアルキレン)脂肪酸エステル、アミンアルコキシラート、ソルビトール及びグリセリンの脂肪酸エステル、脂肪酸塩、ソルビタンエステル、ポリ(オキシアルキレン)ソルビタンエステル、脂肪族アミンアルコキシラート、ポリ(オキシアルキレン)グリコールエステル、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドアルコキシラート、脂肪族アミン、第四級アミン、アルキルオキサゾリン、アルケニルオキサゾリン、イミダゾリン、アルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルスルホスクシナート、アルキルホスファート、アルケニルホスファート、リン酸エステル、レシチン、ポリ(オキシアルキレン)グリコール及びポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)のコポリマー及びこれらの混合物である。
【0209】
好ましい乳化剤としては、2-アルキル-及び2-アルケニル-4,4'-ビス(ヒドロキシメチル)オキサゾリン、ソルビトールの脂肪酸エステル、レシチン、ポリ(オキシアルキレン)グリコール及びポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)のコポリマー、並びにその混合物、特にモノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、2-オレイル-4,4'-ビス(ヒドロキシメチル)オキサゾリン、セスキオレイン酸ソルビタンの混合物、レシチン、及びポリ(オキシアルキレン)グリコール及びポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)のコポリマー、並びにその混合物が挙げられる。
【0210】
典型的には、本発明の組成物の乳化剤成分は、組成物全体の最大5質量%を占める。より高い割合の乳化剤を使用してもよく、組成物用の補助の燃料として役立ち得るが、しかし、一般に、所望の効果を達成するために5質量%を超える乳化剤を添加することは必要ではない。本発明の組成物の利点の1つは比較的低水準の乳化剤を使用して安定なエマルションを形成することができることであり、経済的理由で、使用する乳化剤の量を、所望の効果を得るために必要な最小限にしておくことが好ましい。使用する乳化剤の好ましい水準は、組成物全体の0.1~2.0質量%の範囲にある。
【0211】
界面活性剤
本発明の火薬組成物は、含水ゲルとして配合される場合、1種又は複数種の界面活性剤を含んでいてもよい。特に、火薬組成物がディーゼル燃料等の燃料を含む場合、1種又は複数種の界面活性剤を用いてもよい。
【0212】
本発明の組成物の界面活性剤成分は、含水ゲル及び油中水エマルション火薬組成物の調製のために当業界で知られている界面活性剤の広い範囲から選ぶことができる。そのような界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、ベタインCAB30、ココヤシ硫酸ナトリウム(モノC12~C18アルキル硫酸ナトリウム)、アルファオレフィンスルファート46、ココナッツジエタノールアミド、APG0810(オクチルデシルグルコシド)、及びコカミドプロピルベタインを含む。
【0213】
典型的には、本発明の組成物の界面活性剤成分は、組成物全体の最高で約0.5質量%までを占め、コカミドプロピルベタイン、含水ゲル及びエマルションH2O2系火薬組成物用の他の酸化剤に使用される約0.25質量%と共に含まれる。
【0214】
爆発物としてそれ自体適切な1種又は複数種の他の物質又は物質の混合物を、上述したH2O2系含水ゲル/エマルション組成物へ組み込むことができることも、本発明の範囲内である。
【0215】
そのような変性組成物の典型例として、上述した含水ゲル/エマルション組成物に、最大90質量%の硝酸アンモニウム等の酸化性塩が添加され混合された組成物、又は硝酸アンモニウム等の酸化性塩と燃料油との混合物を含む火薬組成物が言及され、一般に、当業者によって「ANFO」と称される。「ANFO」の組成物はよく知られていて、火薬に関係のある文献に詳細に記載されている。
【0216】
特に、本発明の火薬組成物は、場合によって1種又は複数種の他の酸化剤(例えば、他の1種の酸化剤、例えば他の2種の酸化剤)を含む。任意の適切な酸化剤を使用することができる。例えば、1種又は複数種の他の酸化剤は、適切には、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム及び過酸化カリウム、並びに場合によって硝酸からなる群から選択される。
【0217】
硝酸塩は、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウムアンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム及び硝酸マグネシウムからなる群から選択されてもよい。
【0218】
過塩素酸塩は、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム及び過塩素酸カルシウムからなる群から選択されてもよい(例えば過塩素酸アンモニウム及び過塩素酸ナトリウム)。
【0219】
一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤は、硝酸塩及び過塩素酸塩からなる群から選択される。一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤は硝酸塩から選択される。一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤は、AN、CAN及びSNからなる群から選択される。一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤は、CAN、CN及びSNからなる群から選択される。一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤は、CAN及びSNからなる群から選択される。一実施形態において、他の酸化剤はCANである。一実施形態において、他の酸化剤はSNである。一実施形態において、他の酸化剤はCNである。一実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤はANを含んでいない。言いかえれば、一実施形態において、火薬組成物はANを含まない。
【0220】
本発明の組成物は、0を超え、最大約90質量%、例えば、約0.1%~約75質量%等の1種又は複数種の他の酸化剤を含む。例えば、本発明の組成物は、0を超え、0.1%を超え、1%を超え、10%を超え、20%を超え、30%を超え、40%を超え、50%を超え、又は60質量%から最大90質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含んでもよく、例えば、本発明の組成物は、1~20%、20~40%、15~35%、35~55%、30~70%、40~70%又は50~80質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含んでいてもよい。例えば、本発明の組成物は、最大90%、80%、75%、70%、65%、60%、50%、40%、30%、20質量%等の1種又は複数種の他の酸化剤を含んでもよく、又は、約90%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、30%又は20質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含んでいてもよい。本明細書の火薬組成物は、合計で前述の量又は範囲の1種又は複数種の酸化剤を含み、そういうものとして、複数の酸化剤が使用される場合、酸化剤の合計質量が所定の量又は範囲となるように各酸化剤は前述の量又は範囲内に任意の適切な量存在してもよいことは理解されよう。
【0221】
酸化剤は、固体と液体の混合物の形態であり得ることが認識されよう。その説明として、典型的には、酸化剤は、比較的低濃度で使用される場合、水に可溶化され、酸化剤の溶解度を超えるより高濃度で存在すれば、酸化剤は可溶化されかつ固体形態にある。幾つかの実施形態において、酸化剤は組成物中で完全に可溶化されている(又は実質上完全に可溶化されている)。そのような実施形態において、過剰の固体酸化剤を、例えば小球の形態で添加してもよい。他の実施形態において、酸化剤は、組成物中で部分的にのみ可溶化されており、その場合には固体酸化剤(例えば固体小球の形態の)は、小球が実質上可溶化するには十分な時間がないように爆轟直前に添加されてもよい。酸化剤は、100:0~20:80の間の液体:固体比、及び中間の任意の比であってよい。例えば、液体:固体比は、100:0から70:30の間、80:20から60:40の間、又は70:30から40:60の間、又は5:50から30:70の間、又は100:0、70:30、60:40、50:50、45:55、40:60;又は20:80にあってもよい。
【0222】
また、組成物のさらなる爆発性成分として、例えば、トリニトロトルエン、ニトログリセリン又は四硝酸ペンタエリスリトールの1つ又は複数を含む周知の爆発物を有することは本発明内に存在する。
【0223】
また、これらの他の酸化剤を、H2O2組成物中のH2O2を部分的に置き換えるために使用することができることは理解されよう。そのような酸化剤の例は、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム/カリウム等である。
【0224】
酸化剤:燃料の比
一実施形態において、火薬組成物は、100:1~30:70の間の範囲で、H2O2:1種又は複数種の他の酸化剤の比を含んでいてもよい。
【0225】
一実施形態において、火薬組成物は、87:13~64:36の間の範囲のH2O2(又はH2O2+1種又は複数種の酸化剤):燃料の比を含んでいてもよい。
【0226】
一実施形態において、火薬組成物は、60:20:20~72:24:4の間の範囲のH2O2(又はH2O2+1種又は複数種の酸化剤):燃料:水の比を含んでいてもよい。
【0227】
エネルギー遅延剤(deferments)
本発明の火薬組成物は、場合によって、1種又は複数種のエネルギー遅延剤を含んでいてもよい。エネルギー遅延剤は、酸化アルミニウム等の金属酸化物を含む。
【0228】
エネルギー希釈剤
本発明の火薬組成物は、場合によって、1種又は複数種のエネルギー希釈剤を含んでいてもよい。
【0229】
本発明の文脈においては、エネルギー希釈剤は、爆轟プロセスに対して最小限の寄与をする不活性材料であり、組成物中のエネルギー性材料の一部を置き換えて、それによってH2O2系火薬のエネルギー出力を減少させるのに使用することができる。
【0230】
ある事例には、これらのエネルギー希釈剤は、H2O2系組成物の密度を増加、又は低下させることができ、あるいは変化させない。幾つかの事例において、これらのエネルギー希釈試剤は、感度を増加させずに、H2O2系組成物の密度を減少させることができる。
【0231】
これらの希釈剤材料の例は、EPS(直径2mmより大きい粒度を有する)、造粒/細切れゴム(タイヤからの)、綿実、木屑、殻、膨張ポップコーン、プラスチックビード、ウール食品、搾りかす、ピーナッツ及びオート麦殻、ピーナッツ殻等である。米国特許第5,409,556号には、これらのエネルギー低減剤のある例が記載されている。一実施形態において、エネルギー希釈試剤は、造粒/細切れタイヤ、ゴム、膨張米粒、膨張ポップコーン、膨張コムギ及びその組合せから選択される。これらの材料は、H2O2系火薬の性能特性に注意が払われる限り、より可撓性を提供する増感剤と組み合わせて使用することもできる。(米国特許第5,470,407号に示されたように)。
【0232】
そのため、H2O2系火薬の別の利点は、爆破現場の特徴に適するように火薬の性能特性を変えることができるということである。
【0233】
このように一般的手順の変更が可能であることは、エマルション火薬組成物の調製の当業者には明らかであろう。
【0234】
本発明に従って製造された含水ゲル又はエマルションのH2O2系組成物は、0~800体積%の間の濃度のエネルギー希釈剤を含む(すなわち、体積を8倍増加させることができる)。その結果、添加剤(増感剤及びエネルギー希釈剤)を使用すると、より良好な密度の制御、VOD及び爆破される土地のエネルギー送達がもたらされる。
【0235】
したがって、H2O2系火薬の追加の利点は、それが約0.1g/ml~約1.4g/mlの間(例えば約0.3g/cm3~約1.4g/cm3の間)の密度範囲で使用することができることである。
【0236】
好ましい一実施形態において、本発明のH2O2系火薬組成物は、25%:5%:70%~73%:11%:16%の範囲の下記成分:H2O2:燃料:水を含む。
【0237】
火薬組成物の密度
適切には、最終密度は、増感剤を用いておよそ0.3~1.4g/cm3に制御される。適切には、組成物の密度はおよそ0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3又は1.4g/cm3となるように配合される。適切に、組成物の最終密度は、およそ0.3~0.4、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3又は1.3~1.4g/cm3の間となるように配合される。幾つかの実施形態において、密度は、組成物の成分の比の選択によって所定の目標値に制御される。例えば中空の微小球体等の密度を減少させる成分と、ニトラート小球等の比較的高密度を有する成分との濃度の平衡を保つことによって、密度が所定の目標値に制御される。
【0238】
火薬組成物のpH
本発明のエマルション火薬組成物のpHは、厳密な意味では重大でない。しかし、一般に、pHは0から8の間であり、適切には、pHは1から6の間であり、従来の添加剤、例えば無機又は有機の酸及び塩の適切な添加によって制御することができる。
【0239】
H2O2系組成物の粘度
H2O2系組成物(含水ゲル又はエマルション型)の粘度は、見掛け粘度の観点で論じられる。本明細書において使用される場合、用語「見掛け粘度」とは、Brookfield RVT粘度計を#7スピンドル毎分50回転で使用する粘度の尺度を指す。
【0240】
本発明の方法では、油中水エマルション火薬粒子の火薬組成物が、ガスバブルの巻き込み前に10Pa*s(パスカル*秒)を超える見掛け粘度を有することが好ましい。見掛け粘度は、より好ましくは10~50Pa*sの範囲にある。機械的な混合によるガスバブルの巻き込みのより好ましい粘度範囲は、10~35Pa*sである。10~25Pa*sの範囲は、機械的な混合による、ガスバブルの最も効率的な巻き込みを与える。
【0241】
好ましくは、本発明の火薬組成物は容易にポンプ注入することができる。
【0242】
火薬組成物の酸素バランス
「酸素バランス」(OB)は、火薬を酸化することができる程度を示すのに使用される当業界の用語である。爆轟プロセスの間に過剰の反応体がなく、したがって、予想される生成物が窒素、水及び二酸化炭素となるように採鉱用火薬を配合する場合の、零に近いOBが好ましい。酸素バランスが零から離れている場合には、反応体材料の一部分は反応せず、代わりに、未反応材料は爆轟反応からの熱を吸収/鎮静させ、結果的に火薬の作用が過小になる。例えば、幾つかの先行技術の組成物は、燃料が不足していて(したがって、OBは過剰に正である)、組成物は燃焼することができないので、燃焼に適していない。
【0243】
適切には、組成物が+10から-10の間、例えば+5から-5の間の最終酸素バランスを有するように、火薬組成物中の燃料材料の量を調整することができる。
【0244】
組成物の調製
第2の態様によると、本発明は、第1の態様による火薬組成物を調製する方法であって、H2O2、及び燃料、及び1種又は複数種の密度安定剤、及び場合によって1種又は複数種の他の酸化剤、及び/又は増感剤、及び1種又は複数種の密度安定剤を合わせる工程を含む方法を提供する。
【0245】
本発明のH2O2系組成物は幾つかの方法によって調製することができる。
【0246】
製作の好ましい1つの方法では、H2O2系含水ゲル型組成物は、増粘剤が前記組成物の粘度を増加させ始めるまで、H2O2を、密度安定剤、水混和性燃料、及び増粘剤と合わせることによって調製することができる。含水ゲルが形成されれば、固体原料(燃料、エネルギー希釈試剤等)は、場合によって前記含水ゲルと混合される。増感剤を、含水ゲルを増感することができる量で前記含水ゲルと混合することができる。最終的に、増感試剤は、前記含水ゲルとの混合の前に、酸化剤成分と混合することができる。
【0247】
製作の好ましい1つの方法において、H2O2系エマルション型組成物は、過酸化水素を、密度安定剤、水に混和しない有機相、油中水乳化剤と、高速混合して合わせて油中水エマルションを形成させ;次いでエマルションが一様となるまで混合することによって調製することもできる。エマルションが形成されれば、固体原料(燃料、エネルギー希釈試剤等)を、場合によって前記含水ゲルと混合する。増感剤を、前記含水ゲルを増感することができる量で前記エマルションと混合することができる。最終的に、増感試剤は、前記エマルションとの混合の前に、酸化剤成分と混合することができる。
【0248】
含水ゲルH2O2系火薬組成物の調製
本発明に従って製造される含水ゲル組成物は、好ましくは、H2O2を10~64質量%の間の濃度で含む。
【0249】
また、他の酸化剤を、上に論じたようにH2O2と合わせることができることは理解されよう。例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硝酸アミン、過酸化ナトリウム/カリウム等を、H2O2と組み合わせて組み込むことができる。
【0250】
当業者は、燃料として使用するために利用可能な多くの選択肢があることを理解している。例えば、燃料は、植物起源の産物、例えば、糖又は糖蜜、アルコール、有機酸、エーテル、エステル、尿素、ヘキサミン等であってもよい。代替として、燃料は、粗製の油剤、例えば、ディーゼル燃料、パラフィン油又は鉱油等に由来する産物であってもよい。他の燃料はシリコーン油等であってもよい。
【0251】
第2の燃料は、石炭及び再利用プラスチック廃棄物等の固体炭化水素であってもよい。また、第2の燃料は、金属燃料、例えばアルミニウム/シリコン等、又はギルソナイト、細分したコークス若しくはチャーコール、カーボンブラック、アビエチン酸等の樹脂酸、植物性産物、例えば、デンプン、ナット食品、穀物食品及び木材パルプ;又は例えば、アミド、アミン等の窒素化合物であってもよい。
【0252】
好ましくは、配合物中のこれらの燃料材料の量は、調整することができ、そのためH2O2系組成物は、3から-10の間の酸素バランスを有し、H2O2系組成物は容易にポンプ注入することができる。好ましい燃料は、油剤留出物、ディーゼル燃料のような炭化水素、グリセリン、糖、シロップ、アルコール、炭素、微粉炭、ワックス、コーン、綿実、オリーブ、ピーナッツ等の油、又は脂肪酸油である。
【0253】
本発明によるH2O2系組成物が機能的であるためには、ガスバブルが組成物の全体にわたって均質に分布されていることが重要であることは理解されよう。また、全体にわたって分布した後、ガスバブルは、組成物の全体にわたって均質な、すなわち偏析又は沈降がほとんどないか全くない、分布状態に維持されるべきであること、及び密度が維持又は安定されてスリープタイムが増加されるべきであることも重要である。本発明によると、これらは、安定な含水ゲルとして火薬を配合し密度安定剤を含ませることにより達成することができる。含水ゲル組成物の形成は当業界で従来通りであり、当業者は製造することができる様々な形態に精通している。典型的には、含水ゲル組成物の形成は、組成物の液体酸化剤成分に作用する増粘剤の使用を伴う。本明細書において、用語「増粘剤」は、ゲル化剤、架橋剤等をも含むことが意図されている。
【0254】
上で論じたように、本発明では任意の従来の増粘剤を使用することができる。増粘剤は、天然ゴム、例えば、グアーゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等から選択され得る。ポリアクリルアミド等の合成増粘剤も使用され得る。ヒュームドシリカ、クレー及びカルボシル等の無機増粘剤又はその組合せを使用することもできる
【0255】
本発明では架橋剤を使用することもできる。増粘剤と、架橋剤とを組み合わせてH2O2系火薬の水抵抗力及び機械的強度を改善することができる。架橋剤の例は、アンチモン、カルシウム、チタン、クロム、ホウ酸塩及び重クロム酸塩等からの架橋剤である。
【0256】
当業者によく知られている様々な追加の原料が、本発明の配合に用いられ得る。
【0257】
油中水H2O2系火薬組成物の調製
本発明に従って製造される油中水火薬組成物は、10~85質量%の間の濃度で過酸化水素を含む。また、上で論じたように、他の酸化剤をH2O2と合わせることができることは理解されよう。例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硝酸アミン、過酸化ナトリウム/カリウム等を、H2O2と組み合わせて組み込むこともできる。
【0258】
燃料は、任意の燃料、例えば、ディーゼル燃料、再利用される油剤留出物、及びディーゼル燃料等の留出物であってもよい。代替として、燃料はパラフィン、鉱物、オレフィン、ナフテン、動物、植物、魚及びシリコーンの油であってもよい。他のタイプの燃料は、ベンゼン、トルエン、キシレン、アスファルト質材料等である。
【0259】
第2の燃料は、石炭及び再利用プラスチック廃棄物等の固体炭化水素であってよい。また、第2の燃料は、金属燃料、例えばアルミニウム/シリコン等、又はギルソナイト、細分したコークス若しくはチャーコール、カーボンブラック、アビエチン酸等の樹脂酸、植物性産物、例えば、デンプン、ナット食品、穀物食品及び木材パルプ;又は例えば、アミド、アミン等の窒素化合物であってもよい。
【0260】
好ましくは、配合物中のこれらの燃料材料の量は調整することができ、そのためH2O2系組成物は、3から-10の間の酸素バランスを有し得、H2O2系組成物は容易にポンプ注入することができる。
【0261】
増感に関して、上る論じた含水ゲル組成物と同様の考慮すべき点は油中水火薬組成物に当てはまる。すなわち、好ましくは、ガスバブルを、均質に組成物の全体にわたって分布させる。本発明によると、これは、安定な油中水エマルションとして火薬を配合することによって達成される。乳化した火薬の形成は当業界で従来通りであり、当業者は、製造することができる様々な形態に精通している。典型的には、乳化した火薬の形成は、連続的な有機相(燃料)の全体にわたって分散された酸化剤を維持するのに適合した乳化剤の使用を伴う。
【0262】
エマルション火薬組成物において一般に使用される乳化剤は、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)及びそのアミノ誘導体、PIBラクトン及びそのアミノ誘導体、脂肪酸塩、レシチン等を含む。
【0263】
組成物の使用
第3の態様によると、本発明は、例えば、採掘作業をする際に土地を掘り移動させるための、第1の態様による火薬組成物の使用を提供する。
【0264】
第4の態様によると、本発明は、反応性の又は金属を含む土地において、H2O2及び燃料を含む火薬組成物のスリープタイムを改善するための、1種又は複数種の密度安定剤の使用を提供する。
【0265】
本発明のさらなる実施形態
本発明の実施形態によると、火薬組成物を調製する方法であって、過酸化水素を、密度安定剤、並びに圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む増感剤と合わせる工程を含む方法が提供される。また、本発明が、過酸化水素、及び増感剤を生成する1種又は複数種の化合物を合わせる工程を含む、火薬組成物を調製する方法に関することも理解されよう。
【0266】
本発明のさらなる実施形態によると、過酸化水素及び密度安定剤、並びに圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む増感剤を含む火薬組成物の使用が提供される。本発明の組成物は多くの目的で、しかし特に採掘作業の際に土地を掘り移動させるために使用することができることが認識されよう。
【0267】
なおさらなる実施形態によると、本発明は、H2O2、圧縮性材料及び/又はガスのバブル並びに密度安定剤を含む、自己増感が遅らされ、スリープタイムが増強され、増感された火薬組成物を提供する。
【0268】
幾つかの実施形態において、本発明は、本質的にH2O2、燃料、密度安定剤、並びに圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む増感剤からなる。他の実施形態において、本発明は、本質的にH2O2、密度安定剤、燃料、圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む増感剤、増粘剤並びに/又は架橋剤からなる。他の実施形態において、本発明は、H2O2、燃料、密度安定剤、圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む増感剤、燃料、界面活性剤/乳化剤、増粘剤、並びに/又は架橋剤から本質的になる。
【0269】
ある態様において、本発明は、約2~約25質量%のH2O2;0を超え最大約90質量%の1種又は複数種の他の酸化剤、及び密度安定剤を含む火薬組成物を提供する。
【0270】
一実施形態において、約2~約25質量%のH2O2;及び0を超え最大約90質量%の1種又は複数種の他の酸化剤;及び約15~約25質量%の燃料、好ましくは持続可能な燃料、及び密度安定剤を含む火薬組成物が提供される。
【0271】
好ましい実施形態によると、本発明は、約2~約25質量%のH2O2;0を超え及び最大約90質量%の1種又は複数種の他の酸化剤;燃料相;増粘剤、及び/又は、架橋剤;第2の燃料;増感剤、及び密度安定剤を含む火薬組成物を提供する。
【0272】
幾つかの実施形態において、組成物は約5~約25質量%のH2O2を含む。好ましくは、1種又は複数種の他の酸化剤は、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化物塩又は硝酸からなる群から選択される塩又は酸である。例えば、1種又は複数種の他の酸化剤が、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム及び場合によって硝酸からなる群から選択されてもよい。過塩素酸塩は過塩素酸アンモニウム及び過塩素酸ナトリウムから選択されてもよい。好ましくは、塩は、硝酸アンモニウム(AN)、硝酸カルシウム(CN)、硝酸カルシウムアンモニウム(CAN)、硝酸ナトリウム(SN)、NH4ClO4、NaClO4、Na2O2、K2O2又はその混合物から選択される。例えば、硝酸塩は、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム及び硝酸ナトリウムから選択されてもよい。さらなる例として、硝酸塩は、硝酸カルシウムアンモニウム、硝酸カルシウム及び硝酸ナトリウムから選択されてもよい。一実施形態において、火薬組成物はANを含まない。火薬組成物中の1種又は複数種の他の酸化剤は、硝酸カルシウム及び硝酸ナトリウムから選択されてもよい。好ましくは、火薬組成物は、0.1~75質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含む。一実施形態において、火薬組成物は、0.1~75質量%の溶解した塩を含む。好ましい実施形態において、1種又は複数種の他の酸化剤の少なくとも1つの少なくとも一部は、火薬組成物に完全には溶解していないが、しかし、固体酸化剤として、例えば粉末又は小球の形態で存在する。そのような実施形態において、固体として少なくとも部分的に存在する1種又は複数種の他の酸化剤は、AN、SN、CN、CAN又はその混合物からなる群から選択されてもよい。組成物は、固体硝酸酸化剤を含んでもよく、例えば、0.1~70質量%の量で含む。組成物は水を含んでいてもよい。固体硝酸塩酸化剤は、AN、SN、CAN又はその混合物の群から選択されてもよい。
【0273】
一実施形態において、
* 約2~約85質量%の過酸化水素;及び
* 約2~約25質量%の燃料、好ましくは持続可能な燃料;及び
* 約0.25~約5のDTPMPA.Na.x
を含む火薬組成物が提供される。
【0274】
好ましい実施形態によると、本発明は
* 約2~約25質量%の過酸化水素;及び0を超え最大約90質量%の1種又は複数種の他の酸化剤;又は約2~約85質量%の過酸化水素;
* 約0.25~約3質量%のDTPMPA.Na.x;
* 燃料相;
* 増粘剤、及び/又は架橋剤;
* 第2の燃料;及び
* 増感剤を
含む火薬組成物を提供する。
【0275】
好ましくは、組成物は、50質量%以下の水、又は30質量%以下の水、又は25質量%以下の水を含む。火薬組成物は、増感剤、燃料、第2の燃料、水、増粘剤、架橋剤、乳化剤、エネルギー希釈剤及び場合によって他の添加剤からなる群から選択される1種又は複数種の他の成分を更に含んでいてもよい。
【0276】
好ましくは、火薬組成物は増感剤を含む。好ましくは、増感剤は圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含み、又はガスを閉じ込めた材料を含む。ガスのバブルはインサイチューで形成され、N2、O2、CO2、NO又はH2のバブル又はその混合物からなっていてもよい。ガスを閉じ込めた材料は、2mm未満の粒度を有する、ガラスマイクロバルーン、セラミックマイクロバルーン、プラスチックマイクロバルーン又はEPSから選択されてもよい。火薬組成物は、好ましくは組成物が、爆轟感度がよくなるように十分な量の増感剤を添加することにより、密度を制御する。密度は、およそ0.3~1.4g/cm3に制御され得、又はおよそ0.3~1.4g/cm3に配合され得る。
【0277】
組成物は燃料を含んでもよく、又は燃料及び第2の燃料を含んでいてもよい。燃料は水溶性燃料であってもよい。水溶性燃料は硝酸アミン若しくは尿素又はその混合物から選択されてもよい。火薬組成物は、0.1~30質量%の水溶性燃料を含んでいてもよい。組成物は、13~25質量%の間の燃料相を含んでいてもよい。好ましくは、燃料相は、ゴム、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、糖蜜、ホルムアミド又はその混合物からなる群から選択される1種又は複数種の成分を含む。例えば、燃料相は、ゴム、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ホルムアミド又はその混合物からなる群から選択される1種又は複数種の成分を含んでいてもよい。組成物は持続可能な燃料を含んでいてもよい。持続可能な燃料は、15~25質量%の量で組成物中に存在してもよい。
【0278】
好ましくは、組成物は含水ゲル組成物であり、その場合には、組成物は増粘剤又は架橋剤を含んでいてもよい。組成物は増粘剤及び架橋剤を含む含水ゲル組成物であってもよい。増粘剤は燃料中に懸濁されていてもよい。増粘剤は、グアーゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリルアミド及びポリビニルアルコールからなる群から選択され得る。組成物は、アンチモン塩、クロム塩、リン酸又はその混合物からなる群から選択される架橋剤を含んでいてもよい。燃料相は、ディーゼル燃料、油剤、植物油又はその混合物からなる群から選択される、1種又は複数種の水不溶性燃料を含んでいてもよい。したがって、火薬組成物はエマルションとして配合されてもよく、その場合には、それは乳化剤を含んでいてもよい。乳化剤は燃料中に混合されていてよい。乳化剤は、PIBSA-アミン誘導体、SMO、レシチン又はその混合物からなる群から選択され得る。
【0279】
好ましくは、組成物は、+10から-10の間の酸素バランスを有するように配合され、例えば、組成物は、+5と-5の間の酸素バランスを有していてもよい。火薬組成物は、1~800%v/vのエネルギー低減剤(すなわち、希釈剤材料)を含んでいてもよい。エネルギー希釈剤材料は、EPS、クラムラバータイヤ、ポップコーン及びプラスチックビードからなる群から選択されてもよい。過酸化水素、1種又は複数種の他の酸化剤及び増粘剤含有燃料は、5~50Pa*sの間の粘度を有する高粘度材料が形成されるまで混合されてもよい。組成物は、5~50Pa*sの粘度を有していてもよい。
【0280】
多くの利点が、本明細書において教示された発明の火薬組成物から派生する。例えば、本発明の組成物のある種の配合物は、既存の火薬組成物と比較して調製するのにより都合がよく、より費用効果的であり、製造し保管することがより安全であり得て、及び/又は鉱業からの要求を満たすために大量に製造することができる。スリープタイムを延長する密度安定剤の使用によって安全性及びより幅の広い用途が付加される。したがって、本発明は当業界において著しい進歩である。本発明の火薬組成物は、当業界で使用される他のタイプの酸化剤と比較して比較的低いカーボンフットプリントを有する、持続可能に製造される材料であるH2O2を利用する。組成物はまた、鉱業において使用される現在の技術に対立するものとして持続可能な燃料を使用してもよい。その説明として、現在の火薬組成物は、典型的には石油化学工業から調達される低濃度の燃料を使用する。対照的に、本明細書において開示した発明の火薬組成物は、市販の又は先行技術の火薬組成物に相対的な量の再生燃料を組み込むことができる。したがって、石油化学工業からの再生燃料は、当業界において著しい進歩である。加えて、組成物中の再生燃料の使用は、配合物中の酸化剤材料の量が爆轟特性に影響を与えずに平衡を保つことができることを意味する。
【0281】
本発明は、当業界の常識として直観に反するものである。説明すると、比較的高濃度のH2O2を有する組成物の密度を安定させるのは不可能か、又は非常に難しいと現在のところ考えられている。しかし、驚いたことに、本発明は、42質量%以内のH2O2を含む組成物の密度安定性を増強する能力を提供する。本発明のこの態様は当業界において著しい進歩である。本発明は、既に水性相中にH2O2/硝酸塩を含み、小球の形態の固体硝酸塩相をさらに有する含水ゲル又はエマルションの製造により、比較的多量の硝酸塩を組み込む能力を提供する。固体形態の酸化剤の使用によって、組成全体の密度へのある程度の制御を可能にし、それによって、以下に論じるように、VODに対するある程度の制御がもたらされる。
【0282】
本発明の火薬組成物はまた、エマルション形態へ配合されてもよい。また、本発明の発明組成物は、少量のNOxを生成し得るが、本発明の幾つかの形態においては、NOxを全く生成しないことも認識されよう。
【0283】
本発明の組成物は、H2O2のより高い百分率を含む火薬組成物より経時的に良好な安定性等の、先行技術に対して幾つかの利点を提供するように企図される。これは、安全性、貯蔵及び用途のいずれの文脈においても有利である。より特異的には、「スリープタイム」(すなわち火薬が岩石に接したときインサイチューで劣化し、その結果、そのような火薬組成物の規定された有用限度以下に爆轟のその速度が減少する時間)は、H2O2のより高い百分率を含む火薬より長いと予想される。例として、本発明による密度安定化H2O2組成物が製造され、商業ベースにのった製品における適用に対して対抗できる/適合性のある、密度安定剤を含まない組成物より長いスリープタイム、例えば、24時間を超える又はそれ以上のスリープタイムを有することが見出された。したがって、第1の装填火薬がその孔中で不安定になる前に、多くの孔に火薬を装填することができるより長い時間(例えば数日)が存在するためより大きい爆破が可能であると考えられる。したがって、爆轟の前に、より多くの孔に装填することができる。
【0284】
別の利点は、密度安定剤が使用される場合、これらの組成物が爆轟するということである。これは、密度安定化組成物が爆轟しないことがあり得るという懸念のため、予想外のことである。また密度安定化組成物を使用する際に企図される安全性の利点がある。
【0285】
本発明は、好ましくは含水ゲル又は油中水エマルションとして調製され、増感された過酸化物系火薬組成物に関する。
【0286】
多数の実施形態がこの特許出願において記載され、説明の目的にのみ提示される。記載の実施形態は、いかなる意味においても限定するようには意図されない。本発明は、本明細書における開示から直ちに明白であるように多数の実施形態に広く適用可能である。
【0287】
下記Table 1(表2)は、本明細書において論じる爆薬系の成分を列挙し、それぞれについて典型的な範囲を提供する。
【0288】
【表2】
【0289】
下記Table 2(表3)に、各タイプの火薬技術のための典型的な成分を列挙する:
【表3】
【実施例
【0290】
本発明は、本明細書において記載の本発明の原理が当然のこととして遵守される限り、火薬の様々な形態のために使用することができる。本発明は更に以下の実施例を参照して例証される。
【0291】
(実施例1)
グリセリン燃料相を含む過酸化水素/燃料系ヒドロゲル配合物を、算定して0~3質量%のDTMPMA.Na.Xを含有する材料を手作りした(以下の表3参照)。
【0292】
まず酸化剤相中にDTMPMA.Na.Xを懸濁し、次いで、配合物の燃料相と混合した。プラスチックポット(約58 mL)を、室温(25~35℃)で実験室ベンチにゲル(n=4)を保管するのに使用した。配合物密度対DTMPMA.Na.X質量%を0~3質量%の範囲について求めた。7日にわたって密度を測定し、密度の変化を計算した。大きいガスバブルの生成によってゲルの構造が損なわれたとき、試験は終了とした。
【0293】
幾つかの試料を下記Table 3(表4)に従って調製した:
【表4】
【0294】
結果を図1及び図2に示す。2日以内に0質量%のDTMPMA.Na.X配合物は劣化したが、すべてのゲルの分解を観察するまでその試験を継続させた。
【0295】
下記Table 4(表5)に、様々な水準のホスホナートを有する火薬組成物についての密度対時間(g.cm-3)(日)を示す。
【表5】
【0296】
下記Table 5(表6)に、様々な水準のホスホナートを有する火薬組成物についての密度損失(初期に対する%)対時間を示す。
【表6】
【0297】
密度安定化した過酸化水素を含まない配合物は48時間以内に劣化したが、密度安定化した過酸化水素組成物は同じ期間に、初期の密度に対しておよそ7パーセントの密度損失を示した。これはかなりの驚くべき改善である。スリープタイムに関するこの改善は、より多くの爆破孔を、時間及び費用を節約して計画された爆破の期間で装填することができること、製品の爆轟性能が信頼度を高めること、及び、製品が密度損失の公算の減少により安全性を改善したことを意味する。
【0298】
(実施例2)
密度安定化過酸化水素組成物の爆発能力及び特性を評価するため、必要とされる密度のために様々な質量%のGMB(3M(商標)K15 Glass Bubbles)を組み込んで81.35質量%の過酸化水素(50質量%)、12.65質量%のグリセリン燃料、3質量%のキサンタンガム、及び3質量%のDTPMPA.Na.xの配合物について、野外開放式試験で爆轟性能解析を行った。(以下の表4参照)。
【0299】
下記Table 6(表7)に、本発明に従って調製した火薬組成物の爆轟試験の結果を示す。
【表7】
【0300】
火薬組成物の三通りの試料を調製した。
【0301】
結果を図3に示す。
【0302】
これらの実施例から見ることができるように、過酸化水素系火薬の密度損失及び不安定性はホスホナートの添加と共に減少し、配合物のスリープタイムを増加させた。ホスホナートの添加を用いて調製した過酸化水素/燃料系火薬の使用は、当業界で結果的に過酸化水素/燃料系火薬の実質的な改善をもたらす。重要なことには、本明細書において記載の密度安定剤の添加は、火薬組成物の爆轟性能に悪影響を与えない。
【0303】
爆轟試験
爆轟を測定するために選択した組成物を試験した。直径47mmの透明な高密度(150μm)ポリエチレンのレイフラットチューブを長さ1000mmずつ片末端で密封し、ゲルとして使用した。25gのPentex D Boosterを用いて爆轟を開始させた。
【0304】
Time Domain Reflectometry (TRD)に基づくVOD機器を使用して、VODを2回繰り返して測定し、90ピコ秒の公称分解能の下で4uS未満の試料の速度を特色として示した。VODデータは、採掘用途にとして受容できる爆轟性能を示す。
【0305】
(実施例3)
グリセリン燃料相を含む安定化過酸化水素/燃料系ヒドロゲル配合物を、算定して0~2質量%のフィチン酸(PA)を含有する材料を手作りした。まず酸化剤相中にPAを懸濁し、次いで、配合物の燃料相(3%のキサンタンガム)と混合した。プラスチックポット(約58mL)を、室温(20~25℃)で実験室ベンチにゲル(n=4)を保管するのに使用した。製品密度対PA質量%を0~5%PAの範囲について確立した。13日にわたって密度を測定し、密度の変化を計算した。大きいガスバブルの生成によってゲルの構造が損なわれたときに、試験を終了した。3~5質量%のPAは5日以内に劣化したが、すべてのゲルの分解が観察されるまで試験を継続させた。
【0306】
2つの試験それぞれの10日およ13日にわたって、すべてのゲルは密度が減少することが観察された。初期のゲル密度はすべておよそ1.22g.cm-3であった。質量%のPAが増加するにつれて、ゲル密度の関連する増加が観察された(図4及び図5)。3~5質量%のPAを含有するゲルは、5日以内に劣化した。およそ7日で、PA皆無の対照の劣化速度は変化が見え、これは結了に近づいているHP劣化の指標となり得る。0.25質量%のPAが時間的経過で最小の密度損失を示した(図6及び図7)が、PA皆無と0.25質量%のPAゲル(p値=0.19)との間で、13日にわたって統計的に有意な損失は測定されなかった。測定時間にわたって、繰り返しの個々のポット測定標準偏差は0.02mLを超えなかった。
【0307】
0.25~0.75質量%の濃度でPAを含有する配合物は、13日にわたってゲル安定性の増加を示した。しかし、約0.75%を超える濃度では、PAは分解が加速した。13日間の室温ベンチ上貯蔵の後に、PA含有混合物を含むすべてのゲルは、初期の密度と比較した場合、少なくとも18%のゲル密度を失った。
【0308】
熟練した読み手は、本発明が、本明細書において開示される実施形態及び特色、並びにすべての組合せ及び/又は開示される実施形態及び特色の入替を含むことを理解する。
【0309】
本発明は特定の実施例を参照して記載されているが、本発明が他の多くの形態で具現することができることは当業者によって理解されよう。特に、様々な記載の実施例のうちのいずれか1つの特色は、他の記載の実施例のうちのいずれの組合せで提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H2O2
燃料;及び
約0.01質量%~約10質量%の1種又は複数種の密度安定剤
を含む火薬組成物。
【請求項2】
H2O2が約2%~85質量%である、請求項1に記載の火薬組成物。
【請求項3】
1種又は複数種の密度安定剤が、約1~約5質量%、好ましくは約1~約3質量%の量である、請求項1又は請求項2に記載の火薬組成物。
【請求項4】
1種又は複数種の密度安定剤が、構造:
X-(PO3Y2)n
[式中、Xは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル;置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択され;Yは、H又は水溶性陽イオンであり;nは1~10である。]
を有するホスホナートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項5】
ホスホナートが、フィチン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、テトラメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ヒドロキシエチルアミノ-ジ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチル-ホスホン酸、ポリアミノポリエーテルメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、グリホセート、ホスカルネット、ペルジンホテル、セルホテル、N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸、2-カルボキシエチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、N,N-ビス(ホスホノメチル)グリシン、テトラメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、及びそれらの塩、溶媒和物、二量体、立体異性体からなる群から選択される、請求項4に記載の火薬組成物。
【請求項6】
ホスホナートがジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム塩である、請求項4に記載の火薬組成物。
【請求項7】
密度安定剤が、火薬組成物の密度をその初期の密度の+/-10%以内に保持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項8】
密度が10日以内の期間にわたって保持される、請求項7に記載の火薬組成物。
【請求項9】
密度安定剤が、VODをその初期のVODの+/-10%以内に維持する、請求項7又は請求項8に記載の火薬組成物。
【請求項10】
VODが14日以内の期間にわたって維持される、請求項9に記載の火薬組成物。
【請求項11】
水、好ましくは50質量%以下の水、より好ましくは25質量%以下の水を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項12】
1種又は複数種の他の酸化剤、増感剤、第2の燃料、増粘剤、架橋剤、乳化剤及びエネルギー希釈剤からなる群から選択される1種又は複数種の他の成分を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項13】
増感剤が、圧縮性材料及び/又はガスのバブルを含む、請求項12に記載の火薬組成物。
【請求項14】
ガスのバブルが、インサイチュー(in situ)で形成され、N2、O2、CO2、H2バブル又はその混合物からなる、請求項13に記載の火薬組成物。
【請求項15】
圧縮性材料が、2mm未満の粒度を有する、ガラスマイクロバルーン、セラミックマイクロバルーン、プラスチックマイクロバルーン又はEPSから選択される、ガスを閉じ込めた材料である、請求項13又は14に記載の火薬組成物。
【請求項16】
火薬組成物を爆轟に鋭敏にするのに十分な量の増感剤が添加されている、請求項13から15のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項17】
火薬組成物の密度が0.3~1.4g/cm3付近に制御される、請求項16に記載の火薬組成物。
【請求項18】
エネルギー希釈剤が、EPS、クラムラバータイヤ、ポップコーン及びプラスチックビードからなる群から選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項19】
約0.1~約75質量%の1種又は複数種の他の酸化剤を含む、請求項13から18のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項20】
前記1種又は複数種の他の酸化剤が、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、及び場合により硝酸からなる群から選択される、請求項19に記載の火薬組成物。
【請求項21】
酸化剤が、AN、CN、SN、CAN、NH4ClO4、NaClO4、Na2O2、K2O2又はその混合物から選択される、請求項20に記載の火薬組成物。
【請求項22】
過塩素酸塩が、過塩素酸アンモニウム及び過塩素酸ナトリウムから選択される、請求項21に記載の火薬組成物。
【請求項23】
増粘剤が、グアーゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項12から22のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項24】
架橋剤が、アンチモン塩、クロム塩、リン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12から23のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項25】
乳化剤が、PIBSAベースの誘導体、SMO、レシチン又はその混合物からなる群から選択される、請求項12から24のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項26】
エマルション又は含水ゲルとして配合される、請求項12から25のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項27】
2~25質量%の燃料を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項28】
燃料が、ディーゼル燃料、油剤、パラフィン油、ナフテン油、植物油又はこれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数種の水に不溶性の燃料を含む、請求項27に記載の火薬組成物。
【請求項29】
グリセリン、硝酸アミン、尿素又はこれらの混合物から選択される水溶性燃料を含む、請求項27又は請求項28に記載の火薬組成物。
【請求項30】
+10から-10の間の酸素バランスを有するように配合されている、請求項1から29のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項31】
5~50Pa*sの粘度を有するように配合されている、請求項1から30のいずれか一項に記載の火薬組成物。
【請求項32】
H2O2、燃料、及び約0.01質量%~約10質量%の1種又は複数種の密度安定剤、場合により1種又は複数種の他の酸化剤、及び増感剤を合わせる工程を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の火薬組成物を調製する方法。
【請求項33】
土地を掘り移動させるための、請求項1から31のいずれか一項に記載の火薬組成物の使用。
【請求項34】
スリープタイムを改善するための、反応性の又は金属を含む土地における火薬組成物の使用であって、前記火薬組成物が、H2O2、燃料及び約0.01質量%~約10質量%の1種又は複数種の密度安定剤を含む、使用。
【国際調査報告】