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特表2022-535584核酸増幅及び/又は検出用方法及び試薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】核酸増幅及び/又は検出用方法及び試薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20220802BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220802BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220802BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572506
(86)(22)【出願日】2020-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 IB2020055348
(87)【国際公開番号】W WO2020245808
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/858,874
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505116426
【氏名又は名称】サイモン フレイザー ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウンラウ ピーター ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アブドラーザデー アミール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ04
4B063QQ05
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QQ18
4B063QQ19
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、核酸分子の増幅及び/又は検出に関する。より具体的には、本発明は、核酸分子の高感度の増幅、検出、及び/又は定量化に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつアプタマーコード鋳型配列をさらに含む第1の核酸配列であって、アプタマーコード鋳型配列は第1の核酸配列の3’末端に配置される、第1の核酸配列;及び
ii)標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得る第2の核酸配列であって、第2の核酸配列の5’末端は、第1の核酸配列の3’末端に共有結合し、第2の核酸配列の3’末端は、第1の核酸配列に実質的にハイブリダイズしない、第2の核酸配列
を含む、核酸分子又はその類似体。
【請求項2】
第2の核酸配列の3’末端の少なくとも末端3ヌクレオチドは、第1の核酸配列にハイブリダイズしない、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
第1の核酸配列は、長さが約20~約100ヌクレオチドである、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
アプタマーコード鋳型配列は蛍光発生アプタマー配列をコードする、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項5】
蛍光発生アプタマー配列は、約0.01nM~約100nMの間のフルオロフォア結合解離定数(KD)を有する、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
核酸分子は末端ステム構造を含み、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端2ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端2ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成する、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端3ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端3ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成する、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項9】
核酸分子又はその類似体はDNA又はRNAである、請求項1~8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項10】
第2の核酸配列は縮重配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項11】
核酸分子はRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない、請求項1~10のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
標的核酸配列は、ウイルス、微生物、真菌、動物、若しくは植物由来であるか、又は合成構築物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項13】
標的核酸配列は、病原性ウイルス又は病原性細菌由来である、請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の第1の核酸分子を含む、組成物。
【請求項15】
標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子をさらに含み、第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子に又はそれ自体に実質的にハイブリダイズしない、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズする、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項19】
標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接している、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項20】
第3の核酸分子及び第4の核酸分子をさらに含み、
第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、
第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、
第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし、かつ第1の配列及び第2の配列を増幅し得る、請求項14~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含むか、又は
第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、請求項20又は21に記載の組成物。
【請求項23】
第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子に実質的にハイブリダイズしない、請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項20~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
第5の核酸分子及び第6の核酸分子をさらに含み、
第5及び第6の核酸分子は、標的核酸分子の第3の配列を増幅し得る第3のプライマーペアを形成し、
第5の核酸分子又は第6の核酸分子のいずれかは、第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、
第3のプライマーペアは、第1及び第2のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし、かつ第1、第2、及び第3の配列を増幅し得る、請求項14~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子と同じ方向に標的核酸分子の第3の配列を転写する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
第5の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含むか、又は
第4の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第5の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含む、請求項27又は28に記載の組成物。
【請求項30】
第5の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズしない、請求項27~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
第5及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項27~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
表3に示される配列を含む1又は複数の核酸分子を含む、請求項14~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
核酸分子は予混合されている、請求項14~34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
1又は複数の核酸分子は液体で提供されている、請求項14~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
1又は複数の核酸分子は凍結乾燥されている、請求項14~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
標的核酸配列の増幅のための取扱説明書とともに、請求項1~13のいずれか1項に記載の核酸分子又は請求項14~37のいずれか1項に記載の組成物を含む、キット。
【請求項39】
増幅は等温増幅である、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
等温増幅は、核酸配列ベース増幅、ローリングサークル増幅、ループ介在等温増幅、ヘリカーゼ依存増幅、又は鎖置換増幅である、請求項38又は39に記載のキット。
【請求項41】
標的核酸配列を増幅する方法であって、
i)標的核酸分子を含有することが疑われるサンプルを提供するステップ;
ii)請求項1~13のいずれか1項に記載の第1の核酸分子を提供するステップ;
iii)標的核酸配列の少なくとも一部分又はその相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子を提供するステップであって、
第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する前記ステップ;及び
iv)標的核酸分子及び第1のプライマーペアを含む第1の増幅反応を実施して、第1の増幅産物を得るステップであって、第1の増幅産物は標的核酸配列の第1の配列を含む、前記ステップ
を含む前記方法。
【請求項42】
第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズしない、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズする、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接している、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
v)第3の核酸分子及び第4の核酸分子を提供するステップであって、
第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、
第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、
第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし、かつ標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を増幅し得る、前記ステップ;及び
vi)第1の増幅産物及び第2のプライマーペアを含む第2の増幅反応を実施して、第2の増幅産物を得るステップであって、第2の増幅反応は第1の増幅反応の前に実施され、第2の増幅産物は標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を含む、前記ステップ
をさらに含む、請求項41~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含むか、又は
第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズしない、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズしない、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
標的核酸配列を検出するステップをさらに含む、請求項41~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
標的核酸配列を定量化するステップをさらに含む、請求項41~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
増幅は等温増幅である、請求項41~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
増幅はRNAベースであるか、又はDNAベースである、請求項41~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
等温増幅は、核酸配列ベース増幅、ローリングサークル増幅、ループ介在等温増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、鎖置換増幅、又はその組み合わせである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
増幅は多重化される、請求項41~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
増幅は少なくとも2色のカラー撮像を含む、請求項41~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
増幅は少なくとも3色のカラー撮像を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
サンプルは、ウイルス、微生物、真菌、動物、植物由来であるか、又は環境由来である、請求項41~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
サンプルは病原性ウイルス又は病原性細菌由来である、請求項41~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
病原性ウイルスはコロナウイルスである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
コロナウイルスは、SARS、MERS、又はSARS-CoV-2である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
サンプルは、水、土、唾液、糞便、尿、血液、気管吸引物、又は鼻腔吸引物から得られる、請求項41~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
動物はヒトである、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分子の増幅及び/又は検出に関する。より具体的には、本発明は、核酸分子の高感度の増幅、検出、及び/又は定量化に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌、ウイルス、及び真核生物寄生虫等の病原性微生物によって引き起こされる感染性疾患は、世界中で最も深刻な公衆衛生懸念事項の1つである。それゆえ、疾患の診断及び治療、食品安全管理、ならびに環境モニタリングのための方法の成功には、感染因子の迅速でかつ特異的な同定が要求される。簡便性及び低コストは等しく重要である。例えば、高性能の器具類及び熟練した人材に依存しない方法は、COVID19、HIV、TB、マラリア、ある特定のタイプのインフルエンザA及びエボラウイルスの突発が患者ケアに大きな危険をもたらす設定、経済的制約に起因して先進の診断技術が限定される又は実在しない設定において採用され得る1,2
病原体検出のための従来の方法は、寒天プレート上で微生物を培養するステップ、それに続く、標準的な生化学的同定を伴うが、これらは安価で簡便であるものの労力を要しかつ時間のかかる方法である3。それらは、2~3日間の予備的同定、及び病原体同定確認のための1週間を上回る期間を要することが多く、これは有効な診断を遅らせる4,5。この遅延は、罹患率及び死亡率に対して大きな影響を有する。誤診された療法は、深刻な感染症に対する生存を5倍低下させることが示されている6。さらに、これらの方法は、それらの低い感度によって限定され得る7,8。また、培養法は、培養下で成長し得る生物のみを同定し得、生存可能であるが培養陰性の病原体を検出し得ない6,4。しかしながら、これらは分子核酸検出法を使用して同定され得る。
【0003】
病原体検出を伴う多様な適用は、核酸をバイオマーカーとして広く使用している5,1,4。それらの多目的機能及び幅広い適用に起因して、複雑な生物学的サンプル中の極めて少量の核酸を検出する多くの方法が開発されている4。多くの生きた病原体は、増幅のためのより大きな最初の鋳型濃度を与え、ならびに一部の高プロファイルのウイルス病原体(いくつか挙げると、麻疹ウイルス、インフルエンザ、及びHIV)における遺伝情報の唯一の供給源である複数のコピーのRNA(リボソームRNAの場合には、数千)を運ぶことから、RNA及びDNAの間でRNA検出は特に関心が高い。核酸試験(NAT)は、従来の方法よりも迅速であり、本質的により特異的でかつ高感度である。加えて、それを使用して、培養することなく臨床標本における微生物を直接同定し得、検出時間をかなり短縮する。迅速な病原体検出は、より短い入院、患者治療の向上、地域突発及びグローバルな性質の伝染病の阻止をもたらす。
NATの目標は、臨床サンプルから特異的核酸配列を同定し、潜在的に定量化することである。この技術は、従来、核酸単離、増幅、及び検出の3つのステップを伴っている。しかしながら、増幅産物のリアルタイムの定量化を可能にする蛍光DNAプローブ及びインターカレート色素の到来とともに、増幅及び検出は現在では1つのステップに結び付けられ得、検出時間を大幅に短縮する。
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、低存在量の核酸を増幅しかつ検出するための最初の増幅技術であり、依然として最も人気がある増幅技術のままである。30年近く前に発明され9、それは、単一の細菌病原体に相当する特異的標的DNA配列を検出し得る10,11。PCR増副産物は、インターカレート蛍光色素で染色された電気泳動ゲルを用いて可視化され得る。PCRバリエーションは、マルチプレックスPCR(mPCR)及びリアルタイム又は定量PCR(qPCR)を含む。マルチプレックスPCRは、いくつかのセットのプライマーを用いて複数の標的を同時に増幅することから、単純なPCRと比較してより迅速な検出が可能となる。プライマー設計及び濃度は、プライマー二量体化を回避し及び信頼性のあるPCR産物を産生することにおいて特に重要である。比較すると、qPCRは、検出のためにゲル電気泳動を要しないが、インターカレート色素(SYBR Green等)、二重標識プローブ(Taqman)、又は分子ビーコンによって産生される蛍光を測定することによって産物形成を連続的にモニターする12。RNAゲノムを有する病原体では、RT-PCRが採用され、RT-PCRはcDNAの産生のためにRNAを鋳型として使用し、今度はcDNAがPCRによって増幅される13。非常に高感度でかつ特異的ではあるが、様々なPCR法は、核酸プレップに存在するPCR阻害剤によって影響を受け、熱サイクル機器及び蛍光プローブの必要性に起因してコストがかかり、時間がかかる4
【0005】
核酸の等温増幅(INA)はPCRに代わるものであり、増幅は、熱サイクルの必要なく一定の温度で達成され、それをより単純にもより安価にもする14,15。INA法は、ウォーターバス又は同等の固定温度加熱装置等、幅広い範囲の条件において実施され得、細胞の内部又は細胞表面で実施され得る、PCR14。INA反応は、それらの反応速度論に基づいて、指数関数的(例えば、核酸配列ベース増幅(Nucleic acid sequence based amplification、NASBA)16、ローリングサークル増幅(RCA)14、ループ介在等温増幅(LAMP)17、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)18、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)19、ニッキング酵素増幅(NEAR)35、鎖置換増幅(SDA)36、又は線形及びカスケード増幅法として分類され得る。qPCRと同様に、INA反応は、反応が進行していながら分析され得、これは計装という点でそれをより複雑にするが、反応時間を短縮し得る。
【0006】
NASBA16は、3種の酵素を利用して、41℃にて等温でRNA産物を増幅する。まず、T7プロモーターを含有するプライマーが標的RNAにハイブリダイズし、逆転写酵素(RT)によって伸長される。次いで、ハイブリダイズしたRNAをRNase Hが分解して、むき出しになったcDNAが残される。次に、第2のプライマーがcDNAにハイブリダイズし、最初にハイブリダイズしているプライマーの末端までRTによって伸長され、T7プロモーターを含有するdsDNAを産生する。次いで、もともとアニールしたプライマーが使用した領域間でコードされるRNAをT7 RNAポリメラーゼが転写する。複数のコピーのRNAが作製されるにつれて、遊離プライマーがハイブリダイズし、伸長され、より多くの鋳型を産生し続け得る。これは、DNA鋳型及びRNA産物の指数関数的増幅をもたらす。
【0007】
ローリングサークル増幅(RCA)14は、環状DNA鋳型を使用して長いRNA/DNA産物を生成するDNA又はRNAポリメラーゼを伴う。環状鋳型は、典型的に、ポリメラーゼプロモーター、ハイブリダイゼーション部位、及びレポーター(一般には、分子ビーコン等、ハイブリダイゼーションをベースにしたレポーターに対する標的部位)として作用し得る産物に対する鋳型を含有する。単一コピーの産物を産生する線形標的を用いた転写とは異なり、ポリメラーゼは、多くのコピーを産生する環状鋳型の一周を完了し得る。指数関数的増幅のための方法は、標的配列にハイブリダイズするハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、閉じた環状鋳型を形成するそれらのライゲーション、及びポリメラーゼによる複数のコピー産生を伴い、新たに生成された産物は複数のコピーの標的配列を含有し、それは線形鋳型ハイブリダイゼーションのための新たな鋳型として作用し得る。
【0008】
ループ介在等温増幅(LAMP)17は、鎖置換DNAポリメラーゼとともに2又は3セットのプライマーを利用して、60~65℃にて等温でDNA産物の複数の混合種を等温で産生する。この方法は、すでに伸長したDNA産物へのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にする一本鎖ループ領域を含有するDNA産物を産生することに依存する。逆転写酵素の添加により、RNAサンプルの検出が可能となる。
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)18は、3種の酵素に依存し、37℃にて等温でDNA産物を増幅し得、多くのDNAコピーを産生する。最初に、リコンビナーゼタンパク質は、プライマー鎖をDNA鋳型にハイブリダイズするように導く。一本鎖結合タンパク質(SSB)は、置換されているDNA二重鎖の鎖、及びさらには置換体(displacement)に結合する。次に、DNAポリメラーゼはプライマーを伸長させ、新たな二重鎖を形成する。同じ反応が逆の鎖で生じ、ゆえにDNA分子の完全な複製につながる。これらのステップは、指数関数的増幅のために循環的に続く。RPAは、複数の標的を同時に検出するためにLAMPと多重化されている20
【0009】
ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)19は、DNAヘリカーゼの使用を要する等温増幅法である。本質的に、このシステムは、それが、鎖の融解、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼによる伸長に依存しているという点においてPCRと同様に機能する。PCRは、増幅の過程を助けるために温度の変化を要するのに対して、HDAは酵素的プロセシングに依存する。第1に、DNAヘリカーゼは2本の鎖になったDNA複合体を融解する。第2に、プライマーを標的DNAにハイブリダイズさせる。第3に、鎖置換DNAポリメラーゼがプライマーを伸長して、新たなDNA二重鎖を完成させる。この過程は、37℃で指数関数的増幅を繰り返す。
ニッキング酵素増幅(NEAR)35及び鎖置換増幅(SDA)36は、鎖置換DNAポリメラーゼ(Bst DNAポリメラーゼ、ラージフラグメント又はKlenowフラグメント(3’-5’エキソ))及びニッキング酵素を使用して、一定の温度(55℃~59℃)でDNAを増幅する等温法である。プライマー内に含有される部位に、鎖限定的制限エンドヌクレアーゼによってニックが創出される。各ポリメラーゼ置換ステップとともにニックが生成され、指数関数的増幅をもたらす。
【0010】
ごく低濃度の核酸を増幅することは困難な課題であり、付随する増幅アーチファクトなしでRNA鋳型を等温で増幅することは難しいことがしばらくの間知られてきた15。この問題に対処する1つの試みは、RPAをベースにした増幅の産物を、蛍光でタグ付けされたレポーター構築物を特異的に切断するCRISPR媒介切断メカニズムを使用して、所望のアンプリコンについてスクリーニングするSHERLOCK手法を使用する21,22。感度を増加させ、SNPをベースにした特異性を可能にするものの、付加的な酵素的ステップ及び蛍光レポーターの要件は、RNAの検出にかなりの複雑性を加える。
SHERLOCK及びDETECTR23,21は、最初の等温増幅システム(RPA)を利用して、T7プロモーター及びガイドRNAカセット配列を含むプライマーセットを使用して標的を増幅する。RPAの産物は、T7 RNAポリメラーゼを使用して転写され、複数のコピーのガイドRNAの産生につながる。次いで、ガイドRNAはRNA種を検出するようにCas13aタンパク質をガイドし、RNA種の非特異的分解のためにCas13aの活性化をもたらし、この場合にはRNA分子ビーコンを分解し、蛍光シグナルを放出する(SHERLOCK)。あるいは、ガイドRNAは、RNA分子を標的にするようにCas12aをガイドし得、DNA分子ビーコンの非特異的切断のために酵素を活性化し、また蛍光をもたらす(DETECTR)。これらの技術は、最初のRPA反応における逆転写酵素の添加によって、RNA種を検出するように適合され得る。全体で、これらのシステムは、5種の酵素、及びDNAの検出のためのレポーター、及びRNA種の検出のための付加的な酵素を要する。
【0011】
蛍光発生RNAアプタマー等のRNAタグを使用して、目的とするRNAを標識し得る。結合すると蛍光を生成する蛍光発生化合物に対するRNAアプタマーは、蛍光発生アプタマーシステムの蛍光増強(FE)及びアプタマー-フルオロフォア相互作用のKDの両方を最適化するインビトロ選択を使用して選択され得る24,25。両パラメーターを最大限に高めることは、MS2蛍光タンパク質リクルート型システムよりも高い固有のコントラストを蛍光発生アプタマーに与える26,27,28。フルオロフォアリガンドは安価であるため、及びRNA蛍光発生アプタマーは転写によって作製され得ることから、蛍光発生アプタマーは、レポーターとしての多くの固有の利点を潜在的に有する。
RNAマンゴーアプタマーシリーズは、極めて高いコントラストを有し、それらを有用なインビトロ蛍光レポーターにする。これらのアプタマーは、RNAマンゴーアプタマーに結合すると最高4,000倍明るくなり得るチアゾールオレンジをベースにしたリガンド(TO1-ビオチン)に対するナノモルの結合アフィニティーを有する29,30,31。特に留意すべきは、第2世代のRNAマンゴーアプタマー(マンゴーII、III、及びIV)は、インビトロアッセイにおいて典型的に見出されるマグネシウムイオン濃度に対する抵抗性が高く、広範な一価金属イオン濃度においても働く30。マンゴーIIIはまた、さらに明るくなるように、構造ガイドによる操作によって最近改善されている32
【発明の概要】
【0012】
本発明は、核酸分子の増幅及び/又は検出に関する。
一態様において、本発明は、標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつアプタマーコード鋳型配列をさらに含む第1の核酸配列であって、アプタマーコード鋳型配列は第1の核酸配列の3’末端に配置される、第1の核酸配列;及び標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得る第2の核酸配列であって、第2の核酸配列の5’末端は、第1の核酸配列の3’末端に共有結合し、第2の核酸配列の3’末端は、第1の核酸配列に実質的にハイブリダイズしない、第2の核酸配列を含む、核酸分子又はその類似体を提供する。
一部の実施形態において、第2の核酸配列の3’末端の少なくとも末端3ヌクレオチドは、第1の核酸配列にハイブリダイズしない。
一部の実施形態において、第1の核酸配列は、長さが約20~約100ヌクレオチドであり得る。
【0013】
一部の実施形態において、アプタマーコード鋳型配列は蛍光発生アプタマー配列をコードし得る。
一部の実施形態において、蛍光発生アプタマー配列は、約0.01nM~約100nMのフルオロフォア結合解離定数(KD)を有し得る。
一部の実施形態において、核酸分子は末端ステム構造を含み得、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。
一部の実施形態において、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。
一部の実施形態において、核酸分子又はその類似体は、DNAベースであり得る又はRNAベースであり得る。
【0014】
一部の実施形態において、第2の核酸配列は縮重配列を含み得る。
一部の実施形態において、核酸分子はRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない。
一部の実施形態において、標的核酸配列は、ウイルス、微生物、真菌、動物、若しくは植物由来であり得る、又は合成構築物であり得る。
一部の実施形態において、標的核酸配列は、病原性ウイルス又は病原性細菌由来であり得る。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される第1の核酸分子を含む組成物を提供する。
一部の実施形態において、組成物は、標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子をさらに含み得、第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する。
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子に又はそれ自体に実質的にハイブリダイズし得ない。
【0015】
一部の実施形態において、第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズし得る。
一部の実施形態において、標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接し得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、第3の核酸分子及び第4の核酸分子をさらに含み得、第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み得、第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ第1の配列及び第2の配列を増幅し得る。
一部の実施形態において、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写し得る。
【0016】
一部の実施形態において、第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む。
一部の実施形態において、第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子に実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、第5の核酸分子及び第6の核酸分子をさらに含み得、第5及び第6の核酸分子は、標的核酸分子の第3の配列を増幅し得る第3のプライマーペアを形成し得、第5の核酸分子又は第6の核酸分子のいずれかは、第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み得、第3のプライマーペアは、第1及び第2のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ第1、第2、及び第3の配列を増幅し得る。
【0017】
一部の実施形態において、第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子と同じ方向に標的核酸分子の第3の配列を転写し得る。
一部の実施形態において、第5の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第5の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含む。
一部の実施形態において、第5の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第5及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、表3に示される配列を含む1又は複数の核酸分子を含み得る。
【0018】
一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は予混合され得る。
一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は液体で提供され得る。
一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は凍結乾燥され得る。
別の態様において、本発明は、標的核酸配列の増幅のための取扱説明書とともに、本明細書に記載される核酸分子又は組成物の1種又は複数を含むキットを提供する。
一部の実施形態において、増幅は、核酸配列ベース増幅、ローリングサークル増幅、ループ介在等温増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、又は鎖置換増幅等の等温増幅であり得る。
別の態様において、本発明は、標的核酸配列を増幅する方法であって、標的核酸分子を含有することが疑われるサンプルを提供するステップ;本明細書に記載される第1の核酸分子を提供するステップ;標的核酸配列の少なくとも一部分又はその相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子を提供するステップであって、第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する、ステップ;ならびに標的核酸分子及び第1のプライマーペアを含む第1の増幅反応を実施して、第1の増幅産物を得るステップであって、第1の増幅産物は標的核酸配列の第1の配列を含む、ステップを含む方法を提供する。
【0019】
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズし得る。
一部の実施形態において、標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接し得る。
一部の実施形態において、方法は、第3の核酸分子及び第4の核酸分子を提供するステップであって、第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を増幅し得る、ステップ;ならびに第1の増幅産物及び第2のプライマーペアを含む第2の増幅反応を実施して、第2の増幅産物を得るステップであって、第2の増幅反応は第1の増幅反応の前に実施され得、第2の増幅産物は標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を含み得る、ステップをさらに含み得る。
【0020】
一部の実施形態において、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写し得る。
一部の実施形態において、第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む。
一部の実施形態において、第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
【0021】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、標的核酸配列を検出するステップをさらに含む。
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、標的核酸配列を定量化するステップをさらに含む。
一部の実施形態において、増幅は、核酸配列ベース増幅、ローリングサークル増幅、ループ介在等温増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、鎖置換増幅、又はその組み合わせ等の等温増幅であり得る。
一部の実施形態において、増幅はRNAベースであり得る又はDNAベースであり得る。
一部の実施形態において、増幅は多重化され得る。
一部の実施形態において、増幅は少なくとも2色のカラー撮像を含み得る。
一部の実施形態において、増幅は少なくとも3色のカラー撮像を含み得る。
一部の実施形態において、サンプルは、ウイルス、微生物、真菌、動物、植物由来であり得る、又は環境由来であり得る。
一部の実施形態において、サンプルは、コロナウイルス(例えば、SARS、MERS、又はSARS-CoV-2)等の病原性ウイルス、又は病原性細菌由来であり得る。
一部の実施形態において、サンプルは、水、土、唾液、糞便、尿、血液、気管吸引物、又は鼻腔吸引物から得られる。
一部の実施形態において、動物はヒトであり得る。
【0022】
別の態様において、本発明は、核酸分子を含むサンプルを提供するステップ;及び等温核酸増幅(INA)によって核酸分子を増幅するステップであって、増幅するステップは、ネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアの使用を含むステップによって、標的核酸分子を検出する方法を提供する。
一部の実施形態において、ネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアは蛍光発生アプタマー配列を含み得る。一部の実施形態において、検出は非常に高感度であり得る。
代替的な態様において、本発明は、等温核酸増幅法における使用のための取扱説明書とともに、ネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを含むキットであって、ネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアは蛍光発生アプタマー配列を含み得る、キットを提供する。
本発明のこの概要は、必ずしも本発明のすべての特質を記載するものではない。
本発明のこれらの及び他の特質は、添付の図面に言及がなされる以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】RNA産生等温増幅システムへのRNA蛍光発生アプタマーの挿入を示す図である。A.従来のNASBAは、2種のプライマーを使用してRNA産物を産生する。アーチファクトも一般に産生される(黒色及び灰色の産物)。B.蛍光発生アプタマー-NASBAシステムは、T7転写後に蛍光性の蛍光発生アプタマータグを含有するRNA産物の産生をもたらす、上部鎖(PB)プライマーへの蛍光発生アプタマー鋳型配列の付加を特質とする。C.ネステッド蛍光発生アプタマー-NASBAは、次いでその産物が希釈されかつ内側の蛍光発生アプタマー-NASBA反応に入れられる外側のプライマーNASBA反応を特質とする(本明細書ではマンゴーアプタマーを使用することが示されるが、それに限定されるものではない)。
図2】ネステッド蛍光発生アプタマーNASBAは、標的RNA配列に高感度でかつ特異的であり、無関係の核酸バックグラウンドが付加された場合でさえ堅牢であることを示すグラフである。A.非ネステッド外側(大腸菌(E.coli)ClpB RNA)、及びB.内側の非ネステッド蛍光発生アプタマーNASBA(P.フルオレッセンス(P.Fluorescens)ClpB RNA)反応。C.ネステッドRNA蛍光発生アプタマーNASBAは、感度を劇的に向上させる。大腸菌標的との大腸菌プライマー(Ec/Ec、左のセットの灰色の棒)。同じ大腸菌プライマーを使用して、大腸菌標的の代わりにP.フルオレッセンス標的を添加した(Ec/Pf、真ん中のセットの暗灰色の棒)。P.フルオレッセンス標的とのP.フルオレッセンスプライマー(Pf/Pf、右のセットの最も薄い灰色の棒)。D.大腸菌プライマーを使用したネステッド蛍光発生アプタマーNASBAを、示される内側のNASBA時間経過とともに実施した。黒色-鋳型の添加なし、最上部の最も薄い灰色-150個の大腸菌標的分子/μL反応、より下の薄い灰色-5ng/μLのA549ヒト肺癌腫総核酸、灰色-5ng/μLのA549ヒト肺癌腫総核酸の存在下における150個の大腸菌標的分子/μL。エラーバーは、すべてのパネルに関して、3回反復の標準偏差を反映する。
図3】ネスティングNASBAプライマーがどのようにして特異性を増加させるかを示す概略である。A:ネステッドPCR(左)は、外側のプライマーの第1のペア内でハイブリダイズする内側のプライマーの第2のセットの要件に起因して、より高い特異性をもたらす。ネステッド等温反応(右)は、標的に対する特異性を向上させ得る。B:ネステッド蛍光発生アプタマーNASBAの過程の概略。
図4】非ネステッド外側の蛍光発生アプタマーNASBA蛍光出現は比較的非感受性であることを示す図及びグラフである。A.外側の蛍光発生アプタマーNASBAの概略;B.大腸菌標的との非ネステッド大腸菌外側の蛍光発生アプタマーNASBAプライマー(Ec O/Ec);Ec O/Ecに関する点線(40分の時点)での値を取り、図2Aのようにプロットした。
図5】P.フルオレッセンスを用いた非ネステッド内側の蛍光発生アプタマーNASBA蛍光出現も比較的非感受性であることを示す図及びグラフである。A.内側の蛍光発生アプタマーNASBAの概略。B.P.フルオレッセンス内側の標的とのP.フルオレッセンス内側の蛍光発生アプタマーNASBAプライマー(Pf/Pf/内側)。Ec O/Ecに関する点線(40分の時点)での値を取り、図2Bのようにプロットした。
図6】ネステッド蛍光発生アプタマーNASBA蛍光は高感度でかつ特異的であることを示すグラフである。大腸菌ClpB RNA標的との大腸菌プライマー(Ec/Ec表見出し)。同じ大腸菌プライマーを使用して、大腸菌標的の代わりにP.フルオレッセンス標的を添加した(Ec/Pf表見出し)。P.フルオレッセンス標的とのP.フルオレッセンスプライマー(Pf/Pf表見出し)。すべてのトレースは、関連する内側の蛍光発生アプタマーNASBA反応の時間依存性を示している。鋳型濃度は、関連する外側の反応のRNA分子/μLで指定されている。表示される点線(100分の時点)での値を取り、図2Cのようにプロットした。
図7】ネステッド蛍光発生アプタマーNASBAを使用した、MCF7ヒト組織培養培地における大腸菌RNA検出を示すグラフである。ヒト組織培養からの大腸菌細胞抽出物の希釈系列についてのネステッド蛍光発生アプタマーNASBA。枯渇培地からの核酸抽出(0ng)及び27nMの最終ClpB短い標的大腸菌(PC)を、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した。20μL反応液あたりナノグラム(Nanodropによって決定される)量の大腸菌細胞抽出物が示されている。20μL反応液における細菌細胞の推定総数が括弧内に示されている。
図8】蛍光発生アプタマー非ネステッドNASBAは、プライマー濃度とは無関係に、低濃度の鋳型で非特異的産物を産生することを示す画像及びグラフである。A.Ec外側の蛍光発生アプタマーNASBA反応を2時間実施し、サンプルを変性させ、8% PAGE中に泳動し、それに続いてバッファー中にてTO1-ビオチンで染色した。大腸菌ClpB標的濃度が示されており、250nMのプライマー。B.蛍光発生アプタマーNASBAにおけるEc外側のプライマーセットの連続希釈は、非特異的産物がプライマー濃度にそれほど依存的ではなく、幅広い範囲のプライマー濃度の下で生じることを明らかにしている。プライマー濃度:125nM、25nM、5nM、1nM、0M。25pMの大腸菌ClpB標的を添加し又は添加せず(Yes/No標的)、それぞれ薄い又は暗いトレースに相当する。
図9】予想されたRNAサイズの産物のみが、非ネステッドNASBAとは対照的に、ネステッド蛍光発生アプタマーNASBAにおいて蛍光性であることを示す画像である。A.ネステッド蛍光発生アプタマーNASBAにおける外側のNASBA反応の産物(40分での)を8%変性PAGEにロードし、それに続いてSYBR Safeで染色した;図S5に示される内側のNASBAサンプルをインキュベーションの240分後に回収し、変性させ、次いで2つの8% PAGEゲル中に泳動し、それに続いてバッファー中にてTO1-ビオチン(B)又はSYBR Safe(C)のいずれかで染色した。
図10】大腸菌(配列番号1)及びP.フルオレッセンス(配列番号2)由来のClpB短い標的のアラインメントを示す図である。大腸菌プライマーハイブリダイゼーション部位、P.フルオレッセンスハイブリダイゼーション部位。プライマー番号付けは、表1に見出されるものに対応する。
図11】蛍光発生アプタマー鋳型ローリングサークル増幅を使用した核酸検出のための概略である。A.2ステップのライゲーション-ローリングサークル増幅(RCA)法を使用して、RNA及びDNAは簡便にかつ等温で検出され得る。鋳型は標的にハイブリダイズし得、その後に環状鋳型へのそのライゲーションが続く。B.この鋳型は、ここで、転写によってRNA蛍光発生アプタマーを大量産生し得る。C.記載されるように産生されたRNAは、さらなるネステッドライゲーションに使用され得る付加的な標的部位を生じさせると考えられ、この反応を指数関数的増幅過程に効率的に変える。
図12】環状鋳型(左のレーン)及び線形(右のレーン)鋳型を使用した転写が、時間の関数として、それぞれ長いRNA産物及び短い産物をもたらすことを示す画像である。時点は、0、64分までの30秒倍加である。
図13】DNA又はRNA標的のいずれかとのライゲーション、それに続く転写(t=5分間)が、蛍光発生アプタマー蛍光の迅速な出現をもたらすことを示すグラフである。
図14】SARS-CoV-2配列を標的にした4/5組のプライマーセットが、ネステッドマンゴーNASBAにおいて1fMの標的RNAを検出し得るのに成功したことを示すグラフである。40分間の外側の反応。表2におけるそれぞれのセットのP1及びP2を外側の反応として使用し、表2におけるそれぞれのプライマーセットのP3及びP4を内側の反応として使用した。
図15】液体NASBAキットを使用したRNA検出の感度、及び総ヒトRNAのバックグラウンドにおけるSARS-CoV-2標的4 RNAの検出を示すグラフである。A.外側の反応を40分間実施した。ヒトRNA(HNA)を5ng/μL最終で添加した(灰色-陽性;黒色-陰性)。B.(A)に示されるデータセットの傾きは、堅牢に陽性のシグナルを送る。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図16】液体(ウェット)及び凍結乾燥(ドライ)NASBAキットを使用した、SARS-CoV-2標的4 RNA検出の感度を示すグラフである。外側の反応を40分間実施した。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図17】EDTA及び加熱は、低コピーのSARS-CoV-2標的4 RNA検出に要求されないことを示すグラフである。EDTAが除外された場合(T1)、ならびにサンプルが加熱されずかつEDTAが添加されない場合(T2)に、100aM RNAは等しく検出される。外側の反応を40分間実施した。図1からのウェットデータ。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図18】凍結乾燥NASBAキット及びSARS-CoV-2標的4 RNAを使用した、外側の反応時間最適化を示すグラフである。鋳型濃度は10aMであった。20分間の外側は、40分間の外側のインキュベーションと同じ堅牢なシグナルを産生する最短時間であることが判明した。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図19】凍結乾燥NASBAキットを使用してSARS-CoV-2標的4 RNAを検出する、単一ステップマンゴーNASBAの感度を示すグラフである。プライマーセット4(表2)のP5及びP6。
図20】液体LSキットを使用した、培養SARS-CoV-2 RNAの検出の成功を示すグラフである。液体LSキットを、ネステッド形式で表示される希釈を用いて使用した。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図21】LS凍結乾燥キットを使用した、培養SARS-CoV-2 RNAの検出の成功を示すグラフである。1fMの合成SARS-CoV-2標的4 RNAを陽性対照として使用した。培養ウイルスRNAの検出を種々の条件下で試験した。NOD-外側の反応から内側への1/20希釈(通常、1/100希釈が使用される);NOR-RNA鋳型のみを加熱し、プライマーなし;NH-加熱なし。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図22】凍結乾燥NASBAキットを使用した、患者サンプル由来のSARS-CoV-2 RNAの検出の成功を示すグラフである。A.低時間でいくらかの初期混濁を示した生データ。B.このデータの傾きをプロットすることにより、はっきりとした出現時間が提供される。合成は、標的4β RNAに相当する。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図23】鋳型単独又はプライマーとの加熱は、患者におけるSARS-CoV-2の検出に要求されないことを示すグラフである。鋳型との事前の加熱の有り及び無し(NH)で、凍結乾燥LSキットを使用したネステッドマンゴーNASBAに供した。POSは、COVID-19を有することが公知の患者サンプルを表す。プライマーセット4(表2)のP1及びP2(外側)、それに続くP3及びP4(上記の内側の反応)。
図24】内部対照反応を用いた、蛍光発生アプタマーNASBAの概略である。反応混合物を含有する液体容器は、内部対照RNA(ヒト18SリボソームRNA等)ならびに標的RNA(SARS-CoV-2 RNA等)を標的にするオリゴマーを有し得る。
図25】例示的なアプタマー融合プライマーの概略である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、一部には、核酸分子の増幅、検出、及び/又は定量化に関する。
一部の実施形態において、本開示は、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅(NEAR)35、鎖置換増幅(SDA)36、線形及びカスケード増幅法等の等温核酸増幅(INA)反応において、非ネステッド及び/又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用して標的核酸分子を増幅する方法を提供する。
【0025】
一部の実施形態において、本開示は、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅(NEAR)35、鎖置換増幅(SDA)36、線形及びカスケード増幅法等の等温核酸増幅(INA)反応において、非ネステッド及び/又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用して標的核酸分子を検出する方法をさらに提供する。
一部の実施形態において、本開示は、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅(NEAR)35、鎖置換増幅(SDA)36、線形及びカスケード増幅法等の等温核酸増幅(INA)反応において、非ネステッド及び/又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用して標的核酸分子を定量化する方法をさらに提供する。
【0026】
一態様において、本開示は、標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつアプタマーコード鋳型配列をさらに含む第1の核酸配列であって、アプタマーコード鋳型配列は第1の核酸配列の3’末端に配置される、第1の核酸配列;及び標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得る第2の核酸配列であって、第2の核酸配列の5’末端は、第1の核酸配列の3’末端に共有結合する、第2の核酸配列を含む、核酸分子又はその類似体を提供する。
一部の実施形態において、第2の核酸配列の3’末端は、第1の核酸配列に実質的にハイブリダイズしない。一部の実施形態において、第2の核酸配列の3’末端の少なくとも末端3ヌクレオチドは、第1の核酸配列にハイブリダイズしない。一部の実施形態において、核酸分子は末端ステム構造を含み得、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。一部の実施形態において、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。
【0027】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される第1の核酸分子を含む組成物を提供する。
一部の実施形態において、組成物は、標的核酸配列の少なくとも一部分又はその逆相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子をさらに含み得、第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する。
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子に又はそれ自体に実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズし得る。一部の実施形態において、標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接し得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、第3の核酸分子及び第4の核酸分子をさらに含み得、第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み得、第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ第1の配列及び第2の配列を増幅し得る。
【0028】
一部の実施形態において、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写し得る。一部の実施形態において、第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む。一部の実施形態において、第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子に実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
【0029】
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、第5の核酸分子及び第6の核酸分子をさらに含み得、第5及び第6の核酸分子は、標的核酸分子の第3の配列を増幅し得る第3のプライマーペアを形成し得、第5の核酸分子又は第6の核酸分子のいずれかは、第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み得、第3のプライマーペアは、第1及び第2のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ第1、第2、及び第3の配列を増幅し得る。一部の実施形態において、第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子と同じ方向に標的核酸分子の第3の配列を転写し得る。一部の実施形態において、第5の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第3のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第5の核酸分子は第3のアプタマーコード配列を含む。一部の実施形態において、第5の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第5及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。
【0030】
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、表3に示される配列を含む1又は複数の核酸分子を含み得る。一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は予混合され得る。一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は液体で提供され得る。一部の実施形態において、核酸分子の1種又は複数は凍結乾燥され得る。
別の態様において、本開示は、標的核酸配列を増幅する方法であって、標的核酸分子を含有することが疑われるサンプルを提供するステップ;本明細書に記載される第1の核酸分子を提供するステップ;標的核酸配列の少なくとも一部分又はその相補体にハイブリダイズし得、かつ第1のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む第2の核酸分子を提供するステップであって、第1及び第2の核酸分子は、標的核酸配列の第1の配列を増幅し得る第1のプライマーペアを形成する、ステップ;ならびに標的核酸分子及び第1のプライマーペアを含む第1の増幅反応を実施して、第1の増幅産物を得るステップであって、第1の増幅産物は標的核酸配列の第1の配列を含む、ステップを含む方法を提供する。
【0031】
一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1及び第2の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基は、第2の核酸分子の3’末端の末端の1、2、又は3つの塩基にハイブリダイズし得る。一部の実施形態において、標的核酸の配列とアラインした場合、第1の核酸分子の3’末端は、第2の核酸分子の3’末端と隣接し得る。
一部の実施形態において、方法は、第3の核酸分子及び第4の核酸分子を提供するステップであって、第3及び第4の核酸分子は、標的核酸分子の第2の配列を増幅し得る第2のプライマーペアを形成し、第3の核酸分子又は第4の核酸分子のいずれかは、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含み、第2のプライマーペアは、第1のプライマーペアのものの外部の位置で標的核酸分子にハイブリダイズし得、かつ標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を増幅し得る、ステップ;ならびに第1の増幅産物及び第2のプライマーペアを含む第2の増幅反応を実施して、第2の増幅産物を得るステップであって、第2の増幅反応は第1の増幅反応の前に実施され得、第2の増幅産物は標的核酸分子の第1の配列及び第2の配列を含み得る、ステップをさらに含み得る。一部の実施形態において、第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列は、第2の核酸分子のものとは反対の方向に標的核酸分子の第2の配列を転写し得る。一部の実施形態において、第3の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第4の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む、又は第4の核酸分子が第2のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む場合、第3の核酸分子は第2のアプタマーコード配列を含む。一部の実施形態において、第3の核酸分子の3’末端は、第4の核酸分子の3’末端に実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第3及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子の3’末端は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の核酸分子は互いに実質的にハイブリダイズし得ない。「核酸」又は「核酸分子」とは、そのそれぞれがペントース糖に付着した窒素含有芳香族塩基からなり、今度はリン酸基に付着し、一方の糖にある5’-ヒドロキシル基を該鎖における次の糖の3’-ヒドロキシル基にホスホジエステル結合を介して架橋することによって連続糖残基を接続する、ヌクレオチドの鎖である。したがって、核酸は、5’末端及び3’末端を有した方向性を有し、慣例により、新たなヌクレオチドは3’末端に付加される。慣例により、核酸「配列」は、5’から3’方向に書かれる。
【0032】
核酸は、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。核酸分子は、天然に存在する又は改変されたヌクレオチドを含む、2つ以上の共有結合したヌクレオチドの任意の鎖であり得る。「RNA」によって、2つ以上の共有結合した、天然に存在する又は改変されたリボヌクレオチドの配列を意味する。「DNA」によって、2つ以上の共有結合した、天然に存在する又は改変されたデオキシリボヌクレオチドの配列を意味する。「cDNA」によって、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によってRNA鋳型から産生される相補的又はコピーDNAを意味する。「核酸」又は「核酸分子」という用語は、cDNA、ゲノムDNA、及び合成(例えば、化学合成された)DNAを含めた、RNA(プラス及びマイナス鎖)及びDNAの両方を包含する。
【0033】
本明細書において使用される核酸「類似体」とは、ポリメラーゼ等の酵素によって増幅され得る、少なくとも1つの改変ヌクレオチドを含む核酸である。一部の実施形態において、核酸類似体は、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、及び細菌DNA依存性RNAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼによって増幅され得る。一部の実施形態において、核酸類似体は、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド(Latorra et al., Hum. Mutat. 22:79-85 2003)又はペプチド核酸を組み入れ得る。
「改変リボヌクレオチド」又は「改変RNA」は、限定されることなく、リボースの2’-OH基(2’-NH2、2’-フルロ、又は2’-O-メチル等)の改変、及び標準的なワトソン・クリックハイブリダイゼーションを妨げない核酸塩基の改変、を有するRNAを含む。
【0034】
「改変デオキシリボヌクレオチド」又は「改変DNA」は、限定されることなく、5-プロピニル-ウラシル、2-チオ-5-プロピニル-ウラシル、5-メチルシトシン、シュードイソシトシン、2-チオウラシル及び2-チオチミン、2-アミノプリン、N9-(2-アミノ-6-クロロプリン)、N9-(2,6-ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9-(7-デアザ-グアニン)、N9-(7-デアザ-8-アザ-グアニン)、及びN8-(7-デアザ-8-アザ-アデニン)を含む。
「相補的」又は「相補性」によって、2種の核酸、例えばDNA及び/又はRNAが、2種の核酸間で二本鎖性(double-strandedness)の領域を生み出すワトソン・クリック塩基対を形成し得る十分な数のヌクレオチドを含有することを意味する。ゆえに、DNA及び/又はRNAの一方の鎖におけるアデニンは、反対側の相補的DNA鎖におけるチミンと又は反対側の相補的RNA鎖におけるウラシルと対合する。二重鎖を形成するために、核酸分子におけるありとあらゆるヌクレオチドが、反対側の相補鎖におけるヌクレオチドとのマッチしたワトソン・クリック塩基対を形成する必要はないことが理解されるであろう。核酸はまた、それが他方の核酸とハイブリダイズする又は「ハイブリダイズし得る」場合、もう一方の核酸に「相補的」である。
【0035】
本明細書において使用される「逆相補体」又は「相補体」配列とは、5’から3’に提示される、核酸鎖の相補的配列である。
本明細書において使用される「ハイブリダイズし得る」によって、核酸が、実質的に相補的な配列を有する別の核酸と塩基対合し得ることを意味する。一部の実施形態において、「ハイブリダイズし得る」によって、核酸が、等温増幅等の増幅に適した条件下で、実質的に相補的な配列を有する別の核酸と塩基対合し得ることを意味する。「実質的に」相補的なによって、塩基対合が部分的であり得る、すなわち一方の核酸におけるすべてのヌクレオチドが、他方の核酸におけるすべてのヌクレオチドと適当に塩基対合する必要はなく、2種の核酸間に1つ又は複数の塩基対合ミスマッチがあり得ることを意味する。「の一部分」によって、ハイブリダイゼーションが核酸の全長にわたって生じる必要はないことを意味する。
【0036】
結果として生じる二重鎖分子の安定性は、生じる塩基対合の程度に依存し、2種の核酸間の相補性の程度及びハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度等のパラメーターによって影響を受けることが理解されるべきである。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、及びホルムアミド等の有機分子の濃度等のパラメーターによって影響を受け得、当業者に公知である方法によって決定され得る。
「実質的にハイブリダイズしない」によって、核酸が、等温増幅等の増幅に適した条件下で、別の核酸と実質的に塩基対合しないことを意味する。したがって、一部の実施形態において、「実質的にハイブリダイズしない」によって、第1、第2、第3、第4、第5、若しくは第6の核酸又は第1、第2、若しくは第3のプライマーペア等、本明細書に記載される核酸が互いに又は内部でハイブリダイズしないことを意味する。一部の実施形態において、「実質的にハイブリダイズしない」によって、核酸の3’末端、例えば末端1、2、3、4、5、6、7、8、又は9ヌクレオチド等、末端の9個の(9)ヌクレオチドが、システムの他の任意の核酸の配列内で塩基対合しないことを意味する。一部の実施形態において、「実質的にハイブリダイズしない」によって、核酸の3’末端、例えば末端1、2、3、4、5、6、7、8、又は9ヌクレオチド等、末端の9個の(9)ヌクレオチドが、別の核酸の末端1、2、3、4、5、6、7、8、又は9ヌクレオチド等、末端の9個の(9)ヌクレオチドと塩基対合しないことを意味する。
【0037】
「増幅」によって、核酸配列の付加的なコピーが産生される過程を意味する。核酸増幅過程は当技術分野において公知であり、限定されることなく、メチル化感受性PCR、ネステッドPCR、cold-PCR、デジタルPCR、ドロップレットデジタルPCR、ICE-cold-PCR、マルチプレックスPCR(mPCR)、リアルタイム若しくは定量PCR(qPCR)、逆転写酵素(RT)-PCR、又は定量逆転写酵素(RT)-PCR等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含み得る。
一部の実施形態において、「増幅」過程は等温であり得る、すなわち増幅は一定の温度で実施される。核酸の等温増幅(INA)は、限定されることなく、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅(NEAR)、鎖置換増幅(SDA)、又は線形及びカスケード増幅法を含み得る。
一部の実施形態において、RNA中間体を含む等温増幅法等の適切な等温増幅法は、本明細書に記載される又は当技術分野において公知のNASBA又はTMA法によって例示されるように使用され得る。したがって、一部の実施形態において、RNA産生等温増幅法は、T7、T3、又はSP6等のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含む逆方向プライマーを使用してアンチセンス配列を産生し得る。これは、インプット配列の逆相補体であるRNAアウトプットを産生し得る。したがって、一部の実施形態において、反応をネスティングする場合、内側のネステッド反応は、反対側のプライマーにRNAポリメラーゼプロモーター配列を要する。一部の実施形態において、RNA産生等温増幅法は、本明細書に記載されるように又は当技術分野において公知のように、蛍光発生アプタマー鋳型とともに使用され得る。
【0038】
一部の実施形態において、他の等温増幅法が容易に適合され得、本明細書に記載されるように使用され得る。例えば、RCAは、本明細書に記載されるように、DNA環から離れてRNAを転写することによって適合され得る。
代替的な実施形態において、LAMP、RPA、NEAR、HDA、又はSDA等、他のDNAベース等温法は、使用される対象となる等温増幅法に従った、DNAオリゴヌクレオチドへのRNAポリメラーゼプロモーターの付加によって同様に適合され得、それによって、RNA転写は、等温法によって産生されたDNA増副産物をレポートする働きをする。一部の実施形態において、HDA、RPA、又はNEARプライマーは、RNAポリメラーゼプロモーター及び酵素及び蛍光発生アプタマー鋳型を有するように改変され得、増幅の成功のレポーターとしてのRNAアプタマー産生を可能にする。一部の実施形態において、HDA、RPA、又はNEARプライマーは、DNA蛍光発生アプタマー鋳型を有するように改変され得、増幅の成功のレポーターとしてのDNAアプタマー産生を可能にする。
【0039】
一部の実施形態において、増幅に適した条件は、当技術分野において公知のような、PCRに適した条件であり得る。一部の実施形態において、等温増幅に適した条件は、本明細書に記載されるように又は当技術分野において公知のように、NASBA、RCA、LAMP、HAD、SDA等の選択される特定の等温増幅法に適した条件であり得る。
例えば、NASBAに関して、増幅に適した条件は、標的核酸、例えばRNAにハイブリダイズし、かつ逆転写酵素(RT)によって伸長される、本明細書に記載される又は当技術分野において公知のRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7プロモーター)を含有するプライマーをまず使用した、約41℃にて等温でのRNA産物の増幅を含み得る。次いで、ハイブリダイズしたRNAをRNase Hが分解して、むき出しになったcDNAが残される。次に、本明細書に記載される又は当技術分野において公知の第2のプライマーがcDNAにハイブリダイズし、最初にハイブリダイズしているプライマーの末端までRTによって伸長され、T7プロモーターを含有するdsDNAを産生する。次いで、もともとアニールしたプライマーが使用した領域間でコードされるRNAをRNAポリメラーゼが転写する。複数のコピーのRNAが作製されるにつれて、遊離プライマーがハイブリダイズし、伸長され、より多くの鋳型を産生し続け得、DNA鋳型及びRNA産物の指数関数的増幅をもたらす。
【0040】
一部の実施形態において、例えば、マンゴーアプタマーを使用したNASBAに対する増幅パラメーターは、以下のもの:
a.NASBA反応を実施する前のRNAサンプルの加熱なし;
b.EDTAなし;
c.より短い反応時間、例えば約20分間;
d.ネステッド反応の場合、外側から内側の反応へ約20倍希釈;及び/又は
e.試薬の凍結乾燥
のうちの1つ又は複数を含み得る。
一般的に、等温反応は、指数関数的増幅過程を完了するために要求される、セットとして指定される単一セットの等温増幅核酸からなる。対照的に、一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるように、多重化され得る等温増幅反応を提供する。例えば、nが1、2、若しくは3、又はそれより大きくあり得る「n」セットの等温増幅プライマー又は「プライマーペア」が生成され得る。プライマーセット又はペアは、増幅される対象となる各標的核酸に対して別個であり得る。このことは、「多重化する」ことによる「n」種の標的核酸の増幅、検出、及び/又は定量化、すなわち同じ反応内での複数の標的核酸の同時検出を可能にし、これは重要な内部対照及び検証を可能にし得る。この例では、適当な数のプライマーセットが、例えば反応混合物に提供される。例えば、2種の標的核酸配列を優先的に増幅するために2組のプライマーセットが提供され得、3種の標的核酸配列を優先的に増幅するために3組のプライマーセットが提供され得る等。一部の実施形態において、検出は、使用される各プライマーセットの一意的配列に基づき得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるように又は当技術分野において公知のように、蛍光発生検出が多重化増幅法において使用され得る。一部の実施形態において、例えば別個の発光スペクトルを有する種々のフルオロフォアが使用され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるように、直交する2色又は3色の蛍光発生アプタマー及びそれらの対応するリガンドが使用され得る。
【0041】
一部の実施形態において、等温増幅反応は、本明細書に記載されるように「ネステッド」であり得る。そのような実施形態において、例えばネステッドプライマーペアを用いて後続の増幅を実施する前の、増幅産物の希釈は、感度及び特異性を実質的に向上させ得、増幅アーチファクトを低下させ得る。一部の実施形態において、ネステッド増幅反応、例えばネステッド等温増幅反応は「多重化」され得る。一部の実施形態において、そのようなネステッド及び多重化増幅反応は、蛍光発生検出法と併せて使用され得る。
一般的に、増幅反応は反応混合物中で実施される。本明細書において使用される「反応混合物」によって、増幅反応を実施させる関連する構成要素を含む組成物を意味する。例示的な反応混合物は、限定されることなく、核酸サンプル、プライマーペア、及びポリメラーゼ等の適切な酵素を含み得る。当業者であれば、反応混合物は、バッファー、安定剤、鋳型、ヌクレオチド等の他の構成要素も含み得ること、及びこれらの構成要素は、実施されている増幅反応によって決定され得ることを理解するであろう。
【0042】
ヌクレオチド濃度、増幅に使用される核酸ポリメラーゼ、バッファー組成、増幅サイクルの数、サイクル中の温度等の増幅パラメーターは、本明細書に記載されるように又は当技術分野において公知のように最適化され得ることが理解されるべきである。
「標的核酸」、「標的核酸分子」、又は「標的核酸配列」とは、例えば本明細書に記載されるように増幅され得る任意の核酸を指す。一部の実施形態において、標的核酸は検出され得る。一部の実施形態において、標的核酸は定量化され得る。
標的核酸は、それが、例えばRNAポリメラーゼ等のポリメラーゼを使用して増幅され得る限りにおいて、任意のサイズのものであり得ることが理解されるべきである。一部の実施形態において、標的核酸は、約100~約10,000ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。別の例では、標的核酸は、約100~約5,000ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。別の例では、標的核酸は、約100~約3,000ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。別の例では、標的核酸は、約100~約2,000ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。別の例では、標的核酸は、約100~約1,000ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。別の例では、標的核酸は、約100~約500ヌクレオチド長、又はその間の任意の値であり得る。
【0043】
標的核酸分子は、限定されることなく、RNA又はDNA、例えば染色体DNA、ミトコンドリアDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、ウイルスRNA、及び毒性プラスミド等の染色体外DNAを含む。標的核酸分子は、生物学的サンプル、法医学的サンプル、合成サンプル、又は環境サンプル等のサンプルに存在し得る。
【0044】
本明細書において使用される「アプタマー」とは、ペプチド、小分子(例えば、抗生物質)、炭水化物等のリガンドに高い選択性及び特異性を有して結合し得る、すなわちリガンドに「特異的に結合する」核酸分子を指す。一部の実施形態において、アプタマーは、ポリメラーゼ等の酵素によって増幅され得る改変ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態において、アプタマーは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、又は細菌若しくは真核生物RNAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼによって増幅され得る改変ヌクレオチドを含み得る。RNAポリメラーゼは、ウイルス、バクテリオファージ、細菌、又は植物若しくは動物等の真核生物等、任意の適切な供給源から得られることが理解されるべきである。一部の実施形態において、アプタマーは一本鎖(ss)核酸(例えば、ssRNA又はssDNA)であり得る。一本鎖核酸アプタマーは、ヘリックス及び一本鎖ループを含めた多様な形状を取り得る。したがって、アプタマー-リガンド結合は、一次構造よりもむしろ三次構造によって決定され得る。一部の実施形態において、アプタマーは、末端ステム構造、すなわちアプタマーの3’及び5’末端を含む二重鎖構造を含む。一部の実施形態において、末端ステム構造は、2bpくらい短くあり得、任意に長くあり得る。一部の実施形態において、末端ステム構造は約6bp~約8bpであり得る。
【0045】
本明細書において使用される「アプタマーコード鋳型配列」とは、核酸アプタマー配列の逆相補体である核酸配列である。
一部の実施形態において、リガンドは、例えば蛍光シグナル(例えば、フルオロフォアからの)又は比色シグナルを生成するシグナル生成リガンドであり得る。蛍光発生RNAアプタマー配列は、蛍光発生アプタマーシステムの蛍光増強(FE)及びアプタマー-フルオロフォア相互作用のKDの両方を最適化するインビトロ選択を使用して選択され得る。フルオロフォア結合アプタマーの例は、限定されることなく、マンゴー、ペッパー、ブロッコリー、コーン、ホウレンソウ及びホウレンソウ2(Strack et al, Nature Methods 2013, 10: 1219-1224)、ニンジン及びダイコン(Paige et al, Science 2011, 333 :642-646)、RTアプタマー(Sato et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 54: 1855-1858)、ヘミン結合G四重鎖DNA及びRNAアプタマー、又はマラカイトグリーン結合アプタマー(Babendure et al, J. Am. Chem. Soc. 2003)を含む。フルオロフォアは、限定されることなく、赤外(IR)色素、Dyomics色素、フィコエリトリン(phycoerythrine)、カスケードブルー、オレゴングリーン488、パシフィックブルー、ローダミングリーン等のローダミン誘導体、5(6)-カルボキシフルオレセイン、シアニン色素(すなわち、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7)、(ジエチル-アミノ)クマリン、フルオレセイン(すなわち、FITC)、テトラメチルローダミン、リサミン、テキサスレッド、AMCA、TRITC、bodipy色素、又はAlexa色素を含む。
【0046】
「マンゴー」又は「マンゴーアプタマー」とはRNAアプタマーを指す。RNAマンゴーアプタマーシリーズは、極めて高いコントラストを有し、それらを有用なインビトロ蛍光レポーターにする。これらのアプタマーは、RNAマンゴーアプタマーに結合すると最高4,000倍明るくなり得るチアゾールオレンジをベースにしたリガンド(TO1-ビオチン)に対するナノモルの結合アフィニティーを有する。RNAマンゴーアプタマーであるマンゴーII、III、及びIVは、インビトロアッセイにおいて見出されるマグネシウムイオン濃度に対する抵抗性が高く、広範な一価金属イオン濃度においても働く。マンゴーIIIはまた、さらに明るくなるように、構造ガイドによる操作によって最近改善されている。
「ブロッコリー」又は「ブロッコリーアプタマー」とは、Song et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136: 1198によって記載される(Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-メチル-1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-イミダゾール-5(4H)-オン)(DFHBI-IT)等、結合しているDFHBIフルオロフォア又はDFHBI誘導フルオロフォアの活性化を介して、目的の標的分析物(例えば、標的RNA)に蛍光を付与する、49ntの蛍光RNAアプタマーを指す(例えば、Filonov et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136(46): 16299-16308を参照されたい)。
【0047】
アプタマーは、リガンド、例えばフルオロフォアを認識しかつ結合した場合にリガンドに「特異的に結合する」が、サンプルにおける他の分子を実質的に認識せずかつ結合しない。一部の実施形態において、アプタマーは、例えば、サンプルにおける別の参照分子に対するアプタマーのアフィニティーよりも少なくとも10、100、1000、又は10,000倍大きい、リガンドに対するアフィニティーを有し得る。一部の実施形態において、アプタマー配列は、約0.01nM~約100nMの間のリガンド結合解離定数(KD)、又は0.2nM等、その間の任意の値を有し得る。一部の実施形態において、蛍光発生アプタマー配列は、約0.01nM~約100nMの間のフルオロフォア結合解離定数(KD)、又は0.2nM等、その間の任意の値を有し得る。一部の実施形態において、蛍光発生アプタマーコード配列は、約0.01nM~約100nMの間のフルオロフォア結合解離定数(KD)、又は0.2nM等、その間の任意の値を有し得る。本明細書に記載される使用のための蛍光RNAアプタマー-フルオロフォア複合体等の適切なアプタマーの選択は、結合アフィニティー、明度、二次構造、配列改変の受けやすさ等、アプタマーの特徴に応じた多様なパラメーターに依存し得る。
【0048】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるように、直交する2色の蛍光発生アプタマー及びリガンドが使用され得る。第1のアプタマーがそのリガンドに特異的に結合し、第2のアプタマーがそのリガンドに特異的に結合する場合、2種の蛍光発生リガンド結合アプタマーは、結合に関して互いに直交である。結合においていくらかの重複が生じ得ることは理解されるべきである。一部の実施形態において、各蛍光発生リガンドは、他方とは別個である発光スペクトルを有して、各アプタマー濃度の堅牢な2色定量化を可能にする。一部の実施形態において、直交する3色の蛍光発生アプタマー及びリガンドが、同じ概念に基づいて使用され得る。当業者によって解されるであろうように、直交性についてのこの概念は、3色撮像又はそれよりも高次のものに容易に拡大される。
「プライマー」という用語は、標的核酸分子又は配列の少なくとも一部分に相補的である比較的短い核酸配列を指す。プライマーは、加えて、標的核酸分子又は配列の少なくとも一部分の逆相補体に相補的であり得ることが理解されるべきである。
【0049】
一部の実施形態において、プライマーは「縮重」配列を有し、すなわち核酸配列は、同じ場所に異なるヌクレオチドを有する配列の組成であり、それによりプライマーは、複数の異なる標的核酸にハイブリダイズし得る異なる配列の混合物である。言い換えれば、縮重配列は、複数の標的核酸配列に相補的であり得る。
一部の実施形態において、プライマーは、標的核酸配列の少なくとも一部分又はその相補体ならびにアプタマーコード鋳型配列にハイブリダイズし得る第1の核酸配列であって、アプタマーコード鋳型配列は第1の核酸配列の3’末端に配置される、第1の核酸配列;及び標的核酸配列の少なくとも一部分又はその相補体にハイブリダイズし得る第2の核酸配列であって、第2の核酸配列の5’末端は、第1の核酸配列の3’末端に共有結合し、第2の核酸配列の3’末端は、第1の核酸配列に実質的にハイブリダイズしない、第2の核酸配列を含み得る。そのようなプライマーは、本明細書において「アプタマー融合プライマー」と称され得る。一部の実施形態において、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。一部の実施形態において、第2の核酸配列の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドは、第1の核酸の5’末端の少なくとも末端2又は3ヌクレオチドに相補的であって、末端ステム構造の少なくとも一部分を形成し得る。例示的なアプタマー融合プライマーの概略図は、図25に示されている。
【0050】
一部の実施形態において、第1の核酸配列は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100等、長さが約20~約100ヌクレオチド、又はその間の任意の値であり得る。
一部の実施形態において、第1の核酸配列は、200nt長等、長さが約100ヌクレオチドよりも大きくあり得る。
【0051】
一部の実施形態において、第2の核酸配列は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100等、長さが約15~約100ヌクレオチド、又はその間の任意の値であり得る。
一部の実施形態において、アプタマー融合プライマーは、第1の核酸配列と第2の核酸配列との間にリンカー配列を含み得る。リンカー配列は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65等、長さが0~約65ntヌクレオチド、又はその間の任意の値であり得る。
【0052】
当業者によって理解されるであろうように又は本明細書に記載されるように、第3、第4、第5、若しくは第6の核酸、又は付加的な核酸に、それらが、アプタマー融合プライマーを形成するように又はポリメラーゼプロモーターを含むように設計されるかどうかに応じて、同様の考慮が当てはまることが理解されるべきである。
「プライマーペア」によって、等温増幅反応等の増幅反応をプライムする働きをし得る、本明細書に記載される2種の最適に設計された核酸配列を意味し、核酸配列は標的核酸配列上の相補的配列にアニールする。
【0053】
「サンプル」は、生物から単離された若しくは抽出された任意の臓器、組織、体液、細胞、若しくは細胞抽出物、又は生物由来の核酸を含有する、潜在的に含有する、若しくは含有することが疑われる任意の材料であり得る。例えば、哺乳類等の動物由来のサンプルは、限定されることなく、生物(例えば、ヒト又は動物)、試験対象、又は実験動物から得られた、骨、脳、乳房、結腸、筋肉、神経、卵巣、前立腺、網膜、皮膚、骨格筋、腸、精巣、心臓、肝臓、肺、腎臓、胃、膵臓、子宮、副腎、扁桃腺、脾臓、軟組織、末梢血、全血、赤血球濃縮液、血小板濃縮液、白血球濃縮液、血液細胞タンパク質、血漿、多血小板血漿(platelet-rich plasma)、血漿濃縮液、血漿の任意の分画からの沈殿物、血漿の任意の分画からの上清、血漿タンパク質画分、精製された若しくは部分的に精製された血液タンパク質若しくは他の構成要素、血清、精液、哺乳類初乳、粘膜細胞、母乳、尿、糞便、排泄物、涙液、唾液、胎盤抽出物、羊水、クリオプレシピテート、クリオ上清、細胞溶解物、哺乳類細胞培養物若しくは培養培地、発酵の産物、腹水、血液細胞に存在するタンパク質、気管吸引物、鼻腔吸引物、口腔咽頭スワブ、又は他の任意の標本、又はその任意の抽出物由来の細胞又は組織(例えば、生検又は剖検からの)を含み得る。サンプルは、限定されることなく、通常の又は形質転換された細胞(例えば、組み換えDNA又はモノクローナル抗体技術による)によって細胞培養において産生された産物も含み得る。サンプルは、限定されることなく、鳥類、魚類、昆虫、又は蠕虫等の非哺乳類動物から単離された任意の臓器、組織、細胞、又は細胞抽出物も含み得る。別の例では、サンプルは真菌サンプルであり得る。別の例では、サンプルは植物から得られる。
【0054】
「サンプル」は、生物から直接単離されない、実験条件下で創出された細胞又は細胞株でもあり得る。サンプルは、ブラシ、スワブ、スパチュラ、リンス/洗浄液、パンチ生検装置、針を用いた空洞の穿刺、又は外科用器具類等の標準的技法を使用したものであり得る。組織又は臓器サンプルは、例えば生検又は他の外科的処置によって、任意の組織又は臓器から得られる。分離された細胞は、濾過、遠心分離、又は細胞選別等の分離技法によって、体液又は組織又は臓器から得られる。
一部の実施形態において、「サンプル」は、限定されることなく、空気、水、又は土等からの環境から;肉、魚、乳製品、又は餌等、ヒト又は動物消費を意図した材料から;化粧品、農産物、プラスチック及びパッケージング材料、紙、衣料繊維、金属表面等から回収され得る又は抽出され得る。サンプルはまた、細胞不含であり得、人工的に誘導され得、又は合成され得、例えば合成核酸等の合成構築物であり得る。サンプルは、限定されることなく、液体の従来の定義を含めた液体形態、ならびにコロイド、懸濁液、スラリー、及び分散体であり得る。
【0055】
DNA又はRNA等の核酸を得る又は抽出する方法は、当技術分野において周知であり、限定されることなく、RNA抽出スピンカラム、フェニル/クロロホルムをベースにした抽出法等を含む。一部の実施形態において、核酸は、自動化された技法及び機器を使用して抽出され得るDNA又はRNA標的であり得る。
「対照」は、ベースラインの発現又は活性を決定することにおける使用のために得られたサンプルを含む。対照は、以前に確立された標準又は参照も含む。したがって、本発明に従って行われる任意の試験又はアッセイは、確立された標準又は参照と比較され得、比較のために対照サンプルを毎回得る必要はなくてもよい。
生物は、限定されることなく、ウイルス、微生物、マイコプラズマ、真菌、動物(例えば、哺乳類)、植物、細菌、藻類、寄生虫、真菌、又は原虫であり得る。一部の実施形態において、動物は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等であり得る。生物は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物、飼い慣らされた動物等であり得る。
【0056】
例示的な植物は、単子葉植物、双子葉植物、及び針葉樹を含む。例えば、植物は、穀物、ブドウ、ビート、ナシ状果、核果、及び柔らかい果実;マメ科植物、油脂植物、キュウリ植物、繊維植物、柑橘類果実、野菜、クスノキ科(lauraceae)、及びトウモロコシ、タバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビ、茶葉、つる植物、ホップ、芝生、バナナ、天然ゴム植物、又は観賞植物等の植物を含み得るが、それらに限定されるものではない。
真菌の例は、限定されることなく、酵母、アスペルギルス(Aspergillus)種;ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis);カンジダ(Candida);コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis);コクシジオイデス・ポサダシ(Coccidioides posadasii);クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum);ニューモシスチス(Pneumocystis)種を含む。
【0057】
トウモロコシさび病(Maize rust);イネいもち病(Rice blast);イネ褐点病(Rice brown spot disease);ライ麦葉枯病(Rye blast);スポロトリックス・シェンキィ(Sporothrix schenckii);小麦真菌等。
原虫及び蠕虫の例は、限定されることなく、アカントアメーバ(Acanthamoeba)及び他の自由生活性アメーバ;アニサキス(Anisakis)種及び他の関連する蠕虫;クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum);サイクロスポーラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis);ジフィロボスリウム(Diphyllobothrium)種;エンタメーバ・ヒストリティカ(Entamoeba histolytica);ユーストロンギリデス(Eustrongylides)種;ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia);ナノフィエタス(Nanophyetus)種;シストソーマ(Shistosoma)種;トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii);又はトリキネラ(Trichinella)等、寄生原虫及び蠕虫を含む。
【0058】
分析物の例は、限定されることなく、植物花粉及び小麦グルテン等のアレルゲンを含む。
一部の実施形態において、生物は、細菌病原体又はウイルス病原体等、病原性であり得る。
【0059】
細菌病原体の例は、限定されることなく、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila);バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis);バチルス・セレウス(Bacillus cereus);クロストリジウム(Clostridium)のボツリヌス神経毒産生種;ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus);ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis);ブルセラ・スイス(Brucella suis);バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)(正式には、シュードモナス・マレイ(Pseudomonas mallei));バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(正式には、シュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei));カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni);クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci);クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum);クロストリジウム・ボツリナム;クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens);コクシジオイデス・イミチス;コクシジオイデス・ポサダシ;コウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium);コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii);大腸菌(Escherichia coli)-腸管毒素原性(ETEC)、大腸菌-腸管病原性(EPEC)、大腸菌-O157:H7腸管出血性(EHEC)及び大腸菌-腸管侵入性(EIEC)等の腸管毒性(Enterovirulent)大腸菌群(EEC群);エーリキア・チャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)等のエーリキア種;フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis);レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia);リベロバクター・アフリカヌス(Liberobacter africanus);リベロバクター・アジアティクス(Liberobacter asiaticus);リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス(Proteus)、シトロバクター(Citrobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、プロビデンシア(Providencia)、及びセラチア(Serratia)等の種々雑多な腸内細菌;マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis);マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis);マイコプラズマ・カプリコルム(Mycoplasma capricolum);マイコプラズマ・ミコイデス亜種ミコイデス(Mycoplasma mycoides ssp mycoides);リケッチア・プロワゼキィ(Rickettsia prowazekii);リケッチア・リケッチィ(Rickettsia rickettsii);サルモネラ(Salmonella)種;スクレロフトラ・レイジア・バルゼア(Schlerophthora rayssiae varzeae);シゲラ(Shigella)種;スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);ストレプトコッカス(Streptococcus);シンキトリウム・エンドビオチクム(Synchytrium endobioticum);ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)非O1;ビブリオ・コレラ01;ビブリオ・パラヘモリティクス(Vibrio parahaemolyticus)、及び他のビブリオ(Vibrio);ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus);キサントモナス・オリゼ(Xanthomonas oryzae);キシレラ・ファスチジオサ(Xylella fastidiosa);エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)及びエルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis);又はエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)を含む。
【0060】
ウイルス病原体の例は、限定されることなく、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、又は二本鎖DNAウイルスを含む。一部の実施形態において、病原性ウイルスは、限定されることなく、アフリカ馬疫ウイルス;アフリカ豚熱ウイルス;アカバネウイルス;バンジャウイルス;カリシウイルス(例えば、ノロウイルス及びサポウイルス等のヒト腸内ウイルス)、セルコピテシンヘルペスウイルス1;チクングニアウイルス;古典的豚熱ウイルス;コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2));血清型1(DENV1)及び3(DENV3)等のデングウイルス、ならびにチクングニアウイルス(CHIKV)等の関連ウイルス;ジュグベウイルス;エボラウイルス;東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、マレーバレー脳炎、及びベネズエラウマ脳炎ウイルス等の脳炎ウイルス;馬モービリウイルス;フラウイルス(flavirus)、フレキサルウイルス;口蹄疫ウイルス;ジャーミストンウイルス;山羊痘ウイルス;ハンターン又は他のハンタウイルス;ヘンドラウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス(例えば、H1N1、H5N1、鳥インフルエンザウイルス);ラッサ熱ウイルス;跳躍病ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ポリオウイルス;ジャガイモウイルス;ポックスウイルス;南アメリカ出血熱ウイルス;大痘瘡ウイルス(天然痘ウイルス);水疱性口内炎ウイルス;ウエストナイルウイルス;黄熱病ウイルス;ジカウイルス等のヒト病原性フラビウイルス等を含む。
【0061】
一部の実施形態において、標的核酸は、増幅と同時に又はその後に検出され得る。本明細書において使用される「検出する」又は「検出」という用語は、サンプル又は反応混合物における標的核酸又はシグナルの実在、存在、又は事実の判定を表す。
一部の実施形態において、標的核酸は、増幅及び検出と同時に又はその後に定量化され得る。定量化は、限定されることなく、標的又はシグナルの分量又は量の測定(定量とも称される)を含み得、それは、標的又はシグナルの量又は割合を決定するように設計された任意の分析を含むが、それに限定されるものではない。検出は、それが、定量化されない、別の標的又はシグナルに対する相対存在量という観点からの標的又はシグナルの品質又は種類の同定を指す、それに関する、又はそれを伴う場合、「定性的」である。「光学的検出」とは、視覚的に検出可能なシグナル:目的の標的又は標的に付着したプローブからの蛍光、スペクトル、又は画像を通じて実施される検出を表す。
【0062】
一部の実施形態において、本開示の方法は、疾患、障害、又は病態を指し示す標的配列を増幅する、検出する、及び/又はそのレベルを定量化することによって、診断の方法に組み入れられ得る。
一部の実施形態において、本開示の方法は、犯罪又は汚染を指し示す標的配列を増幅する、検出する、及び/又はそのレベルを定量化することによって、法医学的又は環境的分析の方法に組み入れられ得る。
【0063】
様々な実施形態において、プライマーの設計は最適化され得る。一部の実施形態において、非ネステッド及び/又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアは、プライマーダイマー形成の機会の減少、ならびに標的核酸分子への非特異的ハイブリダイゼーションの機会の減少を有し得る。したがって、一部の実施形態において、非ネステッド及び/又はネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアは、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。
1.プライマーペアは、互いとの最も低い潜在的ハイブリダイゼーションを有するように設計され得る。例えば、一部の実施形態において、プライマーペアは、互いへのハイブリダイゼーションが可能である3個以下のヌクレオチドを有するように設計され得る。代替的な実施形態において、プライマーペアは互いにハイブリダイズすべきではない。
2.プライマーは、目的の核酸(例えば、RNA)配列に対するできる限り少ない代替的な標的部位を有し得る。一部の実施形態において、プライマーは、非所望の標的部位への又は設計の他のプライマー配列へのそれらの3’末端におけるハイブリダイゼーションを排除するように設計され得る。一部の実施形態において、3’末端は、プライマー自己伸長(例えば、折り返しハイブリダイゼーションによる)を可能にすべきではない。
【0064】
3.非ネステッドの状況に関して、利用の等温温度で、DNAプライマーの3’配列を使用することによって、目的のRNAの3’領域にハイブリダイズし得るDNAプライマー。一部の実施形態において、このプライマーの3’末端は、末端配列の少なくとも1~3ntによって目的のRNAに十分にハイブリダイズし得る。一部の実施形態において、目的のRNAに十分にハイブリダイズされてもされなくてもよい、このハイブリダイゼーション領域の5’末端で、RNAポリメラーゼプロモーター配列はプライマー配列に含まれ得る(例えば、T7、T3、又はSP6のもの)(PA、図1A及びB)。RNA標的へのPAプライマーのハイブリダイゼーションは、標準的技法を使用して、等温増幅システムに使用される塩及びバッファー条件において安定であると、熱力学計算によって推定され得る。一部の実施形態において、15~30bpのハイブリダイゼーションがあり得るが、そのようなものに限定されるものではない。
4.RNA標的配列の逆相補体にハイブリダイズし得、その他の点ではプライマーPAと同様に設計された第2のプライマー(PB、図1A及びB)は、PAプライマーのハイブリダイゼーションの位置に対して5’に見出されるRNAの逆相補体配列にハイブリダイズし得る。蛍光発生アプタマーレポーターが設計に含まれるべきであり、そのようなアプタマー配列の逆相補体は、PBプライマーの5’領域内に含まれ得る(PB、図1B)。一部の実施形態において、プライマーPA及びPBに対するハイブリダイゼーション部位は、最も効率的な等温増幅のために、可能な限りすぐ近くにあるように設計され得る。一部の実施形態において、プライマーの3’末端は重複しない。代替的な実施形態において、プライマーの3’末端は、内側のプライマーペアの有効なネスティングを可能にするように、互いの500nt以内にあり得る。
【0065】
5.ネステッドプライマー設計に関して、「外側の」プライマーペアは、以下の付加的な基準を有して、本明細書に記載される非ネステッドプライマーに関するように設計され得る。PA及びPB外側のプライマー間の距離は、内側のプライマーを、外側のPA及びPBプライマーの3’末端間でハイブリダイズさせるのに十分であり得る。そのような場合におけるプライマーPBは、蛍光発生アプタマー配列を含むように設計され得る、又は一部の利用において、アプタマー配列は含まれない(例えば、マンゴー 図1C)。内側のプライマーPC及びPD(図1C)は、それぞれPA及びPBと同じ基準によって、ハイブリダイズするように設計され得る。これらのプライマーは、元のRNA標的の逆相補体であるRNAを増幅していること、及びPCは、本明細書においてPAに関して述べられるようにプロモーター配列を含み得ること、及びプライマーPDは、蛍光発生アプタマー配列を含み得る又は含み得ないことに留意されたい。一部の実施形態において、このことは、伴われるRNAポリメラーゼの漏れのためには要求されない。一部の実施形態において、PC及びPDに対するハイブリダイゼーション領域は、PA及びPBハイブリダイゼーション領域と部分的に重複して、例えばアーチファクト(artefactual)の配列増幅の潜在性を最小限に抑え得る。
【0066】
一部の実施形態において、内側のプライマーPDが蛍光発生アプタマー(例えば、マンゴー、図1C)を含む場合、外側のプライマーPBは蛍光発生アプタマーを含まない。一部の実施形態において、蛍光発生アプタマーがPBに含まれる場合、別個の蛍光発生アプタマー配列が、内側のプライマーPDに含まれ得る。一部の実施形態において、別個のアプタマーは、外側のプライマーPBに見出される蛍光発生アプタマーに対してスペクトル的に別個の特性を有し得る(例えば、PB上のペッパー、ブロッコリー、又はコーンアプタマー、及びPD上のマンゴーアプタマー)。一部の実施形態において、蛍光発生アプタマーは、等温増幅システムの等温バッファー中で十分に機能的であり得る(例えば、塩及びpH及び化学的条件に幅広く耐性がある、RNAマンゴーアプタマー)。
一部の実施形態において、ネステッドオリゴヌクレオチドプライマーの使用は、INAの感度及び/又は特異性を増加させ得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアの使用は、少なくとも10-19M~約10-6M濃度の感度をもたらす。一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアの使用は、アトモル10-18M濃度の感度をもたらす。
【0067】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用したINA検出法は、限定されることなく、マンゴー等の蛍光発生アプタマー、分子ビーコン、非特異的NAインターカレーション蛍光染色法、及び/又はゲルをベースにした検出方法論において使用され得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用したINA検出法は、非特異的増幅アーチファクト(オフターゲット効果)に対して非感受性であるか、又は感度が低い。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアを使用したINA検出法は、迅速でかつ好都合であり、リアルタイムの蛍光読み出しを直接与えるように編成され得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるネステッドオリゴヌクレオチドプライマーペアは、RNAマンゴー等であるがそれに限定されない、蛍光発生アプタマー配列を含み得る。その対応するアプタマーに対する蛍光発生リガンドの導入は、リアルタイムの蛍光レポーターシステムの創出をもたらし得る。したがって、蛍光発生アプタマー配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを使用したINA検出法(INAF)は、リアルタイムの等温NA検出を可能にし得る。一部の実施形態において、INAF法は、マイクロM~ピコM濃度範囲における鋳型濃度等であるがそれに限定されない、比較的高い存在量の核酸標的配列の検出に使用され得る。
【0068】
一部の実施形態において、本開示に従ったプライマー及び/又は標的は、限定されることなく、表3等の本明細書に示される核酸配列、又は表3の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の類似性等、少なくとも90%~99.9%の類似性若しくはその間の任意の値を有する配列を含み得る。一部の実施形態において、本開示に従ったプライマー及び/又は標的は、限定されることなく、表3に示される核酸配列、又は表3の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性等、少なくとも90%~99.9%の同一性若しくはその間の任意の値を有する配列を含み得る。
【0069】
一部の実施形態において、INAF法は、マイクロリットルのサンプルあたりアトモル10-18M又は1NA分子等であるがそれらに限定されない、低濃度の又は低存在量の核酸標的配列の検出に使用され得る。等温ネステッド蛍光発生増幅及び検出(INFAD)と称されるそのような方法は、最初の外側のプライマー等温増幅ステップ、それに続く、蛍光発生アプタマータグ付けされたプライマーを含有するプライマーを使用した後続のネステッド内側のプライマー等温反応を含む。方法は、単回のネスティング事象に限定されず、例えば1つ又は複数のネスティング事象が生じ得ることが理解されるべきである。いかなる特定の仮説にも拘束されることなく、単回のネスティングは、多くの増幅アーチファクトを排除し得る。一部の実施形態において、第2の又は付加的なネスティングは、感度をなおさらに向上させ得る。
核酸蛍光発生アプタマーが、最も内側の指数関数的等温増幅サイクルの最後に作り出され、増幅過程におけるより早期のステップでは作り出されないようにプライマーが編成される方法論を含むがそれに限定されない、INFAD内側及び外側のプライマーペアは、感度を最大限に高めるように改変される。
【0070】
非ネステッドRCAに関して、DNA又はRNA標的配列が検出され得る。一部の実施形態において、線形DNAオリゴヌクレオチドは、蛍光発生アプタマー(例えば、マンゴー、図11)、アプタマー配列の産生を可能にするように配向されたDNAプロモーター配列(例えば、T7、T3、SP6)を含有すべきであり、ライゲートされる能力も含有すべきである。これは、例えばDNAオリゴに5’リン酸を付加し、実行においてT4 DNAリガーゼを使用することによって実施され得る。このオリゴヌクレオチドの5’及び3’領域(「線形RCA鋳型」が使用されるが限定されない、表1又は3)は、DNAオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にするために、目的のDNA又はRNA標的(「標的RCAスプリント」が使用されるが限定されない、表1又は3)へのハイブリダイゼーション領域を含有すべきであり、それにより、5’及び3’末端は、ライゲーション(例えば5’リン酸のイミダゾール活性化が実行された場合、酵素的又は化学的であり得る)を可能にするためにごく近位にある。ライゲーション後又は前の上部鎖プロモーター配列(「T7プロモーター相補体」が使用されるが限定されない、表1又は3)の添加は、次いで、例えばT7又はSP6ポリメラーゼ(T7、図11、12)による転写を可能にする。DNA又はRNA標的から結果として生じる増幅は、DNAオリゴヌクレオチド配列の逆相補体を有する長い反復RNA配列の創出によって実行され得る(図11~13)。RNAポリメラーゼによるサークルの各回転は、さらなるサークル産生を促進し得る新たなライゲーション標的部位を産生することから、システムは指数関数的増幅潜在性を保つ。
【0071】
RCAのネスティングは、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション部位の間にギャップ配列を含むことが、まさに記載される5’及び3’オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって簡単に想定され得る。このことは、オリゴヌクレオチドの長さがそのようなギャップを可能にするのに十分であることを暗示し、それはRNA標的配列の20~50ntであると想像され得る。非鎖置換RT酵素の添加によって、このギャップは埋められ得、まさに記載されるようにライゲーションを可能にする。結果として生じる反復配列は、2つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション部位の間に見出される標的RNA配列に相補的なRNA配列の領域を含有しないであろう。ゆえに、第2の増幅サイクルは、配列のこの内側の領域にハイブリダイズするようにここで設計されるDNAオリゴヌクレオチド配列を用いて設計され得る。一部の実施形態において、内側のプライマーオリゴヌクレオチドのみに蛍光発生アプタマーを含めることが効果的であるか、又は2つが、設計の「外側」及び「内側」のオリゴヌクレオチド上に別個の蛍光発生アプタマーを有する。
【0072】
一部の実施形態において、INFAD法は、2色のアプタマーフルオロフォアシステムを含み得、核酸アプタマー1はフルオロフォア1に特異的に結合し(A1:F1蛍光発生複合体)、アプタマー2はフルオロフォア2に特異的に結合し(A2:F2蛍光発生複合体)、A1:F1及びA2:F2からの蛍光発光は、蛍光光度計を使用して識別可能であり、高感度の2チャンネルINFADシステムを可能にする。そのようなシステムは、マンゴー及びペッパー、マンゴー及びブロッコリー及びペッパーアプタマー等を含むが、それらに限定されるものではない。
一部の実施形態において、2色のINFADシステムは、2種の核酸鋳型の検出を可能にし、そのうちの一方はINFAD法に対する内部対照であり得る。そのような2チャンネルINFADシステムは、1チャンネルと比較して信頼性の増強を有し得る。一部の実施形態において、2チャンネルINFADシステムにおける内部対照を使用して、真陰性と偽陰性とを識別し得る。これにより、ユーザーは、失敗した反応が、内側の反応及び/又は外側の反応の結果であるかを判定することが可能となり得る。したがって、INFADプライマーは、2色のアプタマー配列をコードするように改変され得る。さらには、2種のフルオロフォアの添加によって、2チャンネル撮像が可能である。同様の手法が、3色以上のアプタマー配列を使用して、3つ以上のチャンネル撮像に使用され得る。
【0073】
一部の実施形態において、内部対照をとった(internally controlled)2色アッセイの考え得る結果の概略を示す図24にあるように、2つの同時等温反応(例えば、NASBA反応)が、同じチューブにおいて実施され得る。一方の反応は、蛍光(図24における棒線によって表される緑色蛍光等)を有するアプタマーを産生する、目的のRNA(SARS-CoV-2等)を標的にするオリゴを有するであろう。第2の反応は、蛍光(図24における破線によって表される、赤色蛍光等であるが、第1のアプタマーと同じでない蛍光)を有するアプタマーを産生する、内部対照RNA(ヒト18SリボソームRNA等)を標的にするオリゴを有するであろう。反応からの考え得る結果は、A.SARS-CoV-2 RNAが検出され(棒線、図24A)、ヒトリボソームRNAが検出される(破線、図24A);B.SARS-CoV-2 RNAは検出されず(棒線の欠如、b)、ヒトリボソームRNAが検出される(破線、図24B);C.SARS-CoV-2 RNAは検出されるが、内部対照ヒトリボソームRNAは検出されず、偽陽性又は単に試験の失敗のいずれかを含意する(図24C);内部対照が失敗しているため、SARS-CoV-2 RNAが存在するかどうか判定できない、アッセイの失敗(図24D)、である。上で記載されるRNAは単なる例であり、上では任意のRNAを所望のRNAと置換し得る。この手法は、3つ以上の同時等温反応(例えば、NASBA反応)に拡大され得ることが理解されるべきである。
【0074】
一部の実施形態において、マンゴーアプタマーをNASBA DNAプライマーに挿入して、等温法におけるRNAレポーターの指数関数的合成をモニターし得る。NASBAは2種のプライマーを使用し、第1は最初の逆転写プライマーとして働き、T7プロモーターを含む。cDNAの産生後、新たに形成されたヘテロ二重鎖におけるRNAは、RNase Hによって分解され得、第2のDNAプライマーが結合しかつ逆転写酵素(RT)によって再度伸長されることを可能にする。これにより、T7 RNAポリメラーゼによって転写され得る二本鎖DNA鋳型が産生される。結果として生じるRNAはRTによって利用され得るため、指数関数的増幅が生じる(図1A)。蛍光発光マンゴーアプタマーをコードするように第2の又は下部鎖NASBAプライマーを改変することによって、指数関数的RNA成長は蛍光によって直接モニターされ得る(図1B)。DNAプライマーの変更は、NASBAの複雑性を劇的に低下させ得、リアルタイムのモニタリングを可能にする。ネスティング手法と結び付けた場合(図1C)、この方法は、反応μlあたりわずか1.5個のRNA分子を検出し得る。
【0075】
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法において使用され得る組成物を提供する。組成物は、本明細書に記載される等温増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、本明細書に記載される核酸分子又は組成物の1種又は複数)にコンジュゲートした蛍光発生アプタマー、及びそれらの対応するリガンド、例えば色素を含み得る。
一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法において使用され得るキットを提供する。一部の実施形態において、キットは、標的核酸配列の増幅のための取扱説明書とともに、本明細書に記載される核酸分子又は組成物の1種又は複数を含み得る。一部の実施形態において、増幅は、核酸配列ベース増幅、ローリングサークル増幅、ループ介在等温増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、又は鎖置換増幅等の等温増幅であり得る。
【0076】
一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載される等温増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、本明細書に記載される核酸分子又は組成物の1種又は複数)にコンジュゲートした蛍光発生アプタマー、及びそれらの対応するリガンド、例えば色素を含み得る。一部の実施形態において、キットを使用して、サンプルにおける標的配列の検出を可能にする程度まで核酸標的配列を増幅し得る。一部の実施形態において、キットは、使用のための、又は本明細書に記載される方法を実施するための取扱説明書を含み得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物、キット、及び方法は、特異的標的遺伝子検出及び定量化、組織培養物、血清、及び血漿等の臨床的に又は科学的に関連するサンプルにおける病原体検出、臨床サンプルにおける疾患マーカー検出、環境サンプル及び制御された組織培養サンプルであるインビトロサンプルにおける夾雑物検出、インビボ撮像、ならびに局在等を含むがそれらに限定されない分野における又は適用のための実験室における、例えば極めて低濃度の、ならびに高濃度のRNA及び/又はDNA鋳型の検出において使用され得る。
【0077】
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物、キット、及び方法は、生物学的及び/又は非生物学的サンプルにおける病原体の存在について、食品加工又はパッケージングにおいて使用される食料品及び材料をスクリーニングする等の食品安全及び食品バイオセキュリティ適用において使用され得る。他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、医薬品が本物であることを確認する、又は特異的核酸種を含有するように製造されている若しくは含有することが知られる高価品目の素性を確認する等の偽造防止適用に使用され得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物、キット、及び方法は、ポイント・オブ・ケア装置と併せて使用され得る。
本発明は、以下の実施例においてさらに解説されるであろう。
【実施例
【0078】
(実施例1)
材料及び方法
標的RNA生成
5pMプラスミド鋳型、Taq(NEB、10U)、0.2mMの各dNTP、10mM TRISバッファーpH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl2、及び0.01%ゼラチンを使用して、表1に示されるそれぞれのPCRプライマーを使用して、コロニーPCR反応を実施し、その後にpGEM-T Easyベクター(Promega)へのクローニングを行った。配列を、ユーロフィンチューブシーケンシングによって確認した。プラスミドを鋳型として使用して、PCR反応を行い、その後に300mM NaCl及び70%エタノール中でのエタノール沈殿を行った。ペレットを、10×ストックのために10分の1のPCR反応容量に懸濁した。8mM GTP、5mM CTP及びATP、2mM UTP、40mM TRISバッファーpH7.9、2.5mMスペルミジン、26mM MgCl2、ならびに0.01% Triton X-100中2×鋳型、T7 RNAポリメラーゼ(ABM)を使用して転写を行った。5% PAGE(19:1のアクリルアミド:ビス)、300mM NaCl中での一晩の回転、及びエタノール沈殿を介してRNAを精製した。SHIMADZUデュアルビーム分光光度計を使用して濃度を決定した。
【0079】
【表1】



【0080】
【表2】
【0081】
マンゴー-NASBA
大腸菌又はP.フルオレッセンスClpB mRNAの短いセグメントを検出鋳型として使用して(それぞれ、「ClpB短い標的大腸菌」及び「ClpB短い標的P.フルオレッセンス」として示される、表1)、RNA増幅のためにNASBAプライマーを選定した。NASBAバッファーミックス(Life Sciences、NECB-1-24)、ヌクレオチドミックス(Life Sciences、NECN-1-24)、250nMの各プライマー(IDT)、T7含有cDNAプライマーP1及びマンゴー鋳型含有逆方向プライマー「Heijnen及びMedema(2009)から適合されたP2A」、480nM TO1-ビオチン(ABM)、ならびにNASBA酵素ミックス(Life Sciences、NEC-1-24)を使用して反応を行った。NASBA反応液を酵素ミックスを除いて混合し、RNA標的を0、25aM、25fM、25pMのいずれかの最終まで添加した。MJ research PTC-100サーモサイクラーにおいて、RNAを65℃まで2分間加熱し、41℃まで5分間下げた。反応を始めるために、酵素ミックスを反応液に添加し、それらを、StepOne Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems)で光学キャップを有する8連チューブストリップ(Applied Biosystems、カタログ番号4358293、4323032)中にて41℃でインキュベートした。以下のプログラム:1.41℃まで傾斜させ、読み取る、2.41℃を30秒間保ち、読み取る、3.480サイクルが完了するまでステップ2を繰り返す、においてSYBR Green試薬を読み取るように設定した。A10U変異を持たないP2Aを用いて、補足図S6の実験を行った(WTマンゴーIIIを使用した)。
【0082】
ネステッドマンゴー-NASBA
外側の増幅反応を上で記載されるように行い、しかしながらP2Aを、マンゴー鋳型を欠如するP2Bと置換した。25μLの最終容量で10mMの最終濃度までの5μL EDTAの添加によって、反応を40分間で停止させ、液体窒素又はそれで冷却されたエタノール中に瞬間冷凍した。これらの反応液からのアリコートを、T7プロモーター含有cDNAプライマーP3及びマンゴー鋳型含有逆方向プライマーP4を使用することを除いて上記のように調製された内側のネステッドマンゴー-NASBA反応液(20μL)中に100倍希釈した。上記の計器を使用して、反応をTO1-ビオチンの蛍光について再度リアルタイムでモニターした。
【0083】
馴化哺乳類細胞培養培地の存在下における大腸菌の検出
LB培地に大腸菌を植菌し、600nmにおける吸光度によって濃度をモニターした(Agilentオンラインツールを使用して細胞数を算出した)。108個細胞のアリコートを41℃で10分間のヒートショックに処理して、細胞においてClpB RNAを誘導し、その後4000gで4分間ペレットにした。細胞を、50μLの枯渇細胞培養培地(MCF7、細胞の継代中に処分される培地)中に再懸濁し、41℃で3分間インキュベートした。サンプルを4000gで4分間ペレットにし、その後、DNaseステップを回避することを除いて推奨されるプロトコールを使用してNucleospin RNAキット(Macherey-Nagel)に供し、2mM EDTAを使用して溶出を実施した。総核酸サンプルを、上で記載されるネステッドマンゴー-NASBA反応に使用した。ネステッドマンゴーNASBAに対する陰性対照サンプルは、同じ抽出手順に処理された大腸菌細胞を含有しない枯渇培地からの核酸の抽出であった。
【0084】
PAGEマンゴー可視化
PAGEで可視化される対象となるサンプルを、20mM EDTAを添加された3容量のホルムアミドに添加し、90℃まで5分間加熱した。サンプルをロードし、8% PAGE(19:1のアクリルアミド:ビス)を介して泳動した。ゲルのポスト染色を、20nM TO1-ビオチンを含む100mLの1×WB(140mM KCl、1mM MgCl2、10mM NaH2PO4 pH7.2、0.05% Tween-20)中で実施し、マンゴー-NASBAバンドを、以前に記載されるように34GE AI600RGB撮像装置で撮像した。あるいは、ゲルを、同じ条件下で1×SYBR Safeで染色した。
配列アラインメント
配列を、Geneiousソフトウェア、及びClustal法を使用したアライニングを使用してアラインした。
【0085】
結果
蛍光発生アプタマー-NASBAの感度
市販のNASBA酵素ミックスを使用して、本発明者らは、マンゴーNASBAを使用して、RNA鋳型の完全な非存在下でさえ急速に増幅するバックグラウンドシグナルを上回る、わずか約25pM(15000000個のRNA/μL反応、図2A、4、5、プライマーP1/P2A)の大腸菌ClpB RNA鋳型を検出し得た(図4、8)。P.フルオレッセンスClpB RNA鋳型は、はるかにすぐ近くでハイブリダイズするプライマーを使用して同程度の感度で検出され得たことから、この固有のレベルの感度はプライマー又は鋳型特異的でなかった(図2B、プライマーP7/P8)。
【0086】
ネステッド蛍光発生アプタマー-NASBAの感度
外側のプライマーは、マンゴーNASBAにおいて使用されたものと配列が同一であったが、ここではP2AはマンゴーIIIタグを欠如した(P1/P2B、表1)。
外側のNASBA反応において使用されるプライマーの0.25μM濃度で、本発明者らは、100倍希釈が、NASBA活性を抑制するのに十分であることを見出した(図8B)。この外側のNASBA反応の40分間のインキュベーション後の新しい内側のNASBA反応への100倍希釈の後に及び内側のNASBAマンゴープライマー(P3/P4)を使用して、本発明者らは、15個のRNA/μLの大腸菌ClpB鋳型配列を容易に検出し得た(Ec/Ec反応、図2C、6)。同じ希釈ストラテジーを使用して、本発明者らは、P.フルオレッセンス鋳型に対してネステッドマンゴーNASBAを試験し、P.フルオレッセンス特異的ネステッドマンゴーNASBAプライマーを使用して1.5個のRNA分子/μLを検出し得た(外側:P5/P6、内側:P7/P8、図2C、6)。この手法は、同じ大腸菌標的RNAを使用した場合、6桁分感度を向上させた。
【0087】
ネステッド蛍光発生アプタマーNASBA特異性及び堅牢性
大腸菌及びP.フルオレッセンスClpB鋳型は、増幅される領域において78nt異なり、そのうち65ntは、プライマーハイブリダイゼーション領域にある(アラインメント図10)。大腸菌を標的にするように設計されたプライマーをP.フルオレッセンス標的とともに使用した場合、蛍光は、0個のRNA/μL反応対照と同じ誤差範囲内にとどまる(Ec/Pf、図2C、6)。ネステッドマンゴーNASBA反応が、ヒト核酸の大きなバックグラウンドにおいて実行可能なままであるかどうかを確かめるために、大腸菌ClpB標的を非常に大過剰のヒト総核酸の有り又は無しで混合し(150個のRNA分子/μLの最終ClpB短い標的大腸菌、5ng/μLのヒト総核酸)、Ecプライマーを使用してネステッドRNAマンゴーを実施した(外側:P1/P2B、内側:P3/P4、図2D)。時間依存的シグナルの出現はわずかに減少したものの、堅牢なシグナルはこれらの条件において依然として観察され、ネステッドマンゴーNASBAが、そのような大量のヒトRNA及びDNAの添加にもかかわらず、核酸増幅アーチファクトに大いに堅牢であることを示唆した。
【0088】
(実施例2)
RT-PCRプライマーを、培養SARS-CoV-2から1kbフラグメントを増幅するように設計した(COVID-19;表2)。
【表3】



【0089】
転写後、結果として生じたRNA(1fM)を、NASBA Life Sciences(LS)液体NASBAキットを使用してネステッドマンゴーNASBAに供した。これらの領域内に集中した100nt領域を増幅するように、5セットのプライマーを設計した。最も速い上昇時間及び最も高い蛍光シグナルを産生するセットを有して、5組のうちの4組のプライマーセット(表3を参照されたい)は、COVID-19 RNAを増幅し得るのに成功した(図14)。
【0090】
【表4】



【0091】
COVID-19 RNA(1fM~1aM)の希釈系列を実施し、それをネステッドNASBAに供することによって、1aMの感度を達成した(図15A)。20μlの外側の反応あたり100ngの外因性核酸の添加は、陽性(灰色)又は陰性(黒色)シグナルのどちらにも影響を及ぼさなかった(図15A)。LS凍結乾燥キットも単一ステップマンゴーNASBAにおいて試験し、10pMの感度を実証した(図19)。
LS凍結乾燥キットを液体キット結果と比較した。連続希釈されたSARS-CoV-2 RNA(1fM~1aM)を、図15AにあるようにネステッドNASBAに供した。図16は、凍結乾燥試薬を使用することが、10aM及びそれよりも高い濃度の感度をもたらしたことを示している。
【0092】
図17は、外側のネステッドNASBA反応を実施する前に、EDTAも、RNAサンプルを加熱することも要求されないことを示している。
全体のマンゴーNASBA反応時間を短縮するために、10aMのSARS-CoV-2 RNA標的4を使用して、外側の反応時間を試験した(図18)。20分間の外側の反応時間は、40分間の外側のインキュベーション時間の感度及び堅牢性を維持することが実証された。
【0093】
合成ウイルス配列の検出に成功した後、液体及び凍結乾燥LS試薬の両方を、真核細胞において培養されたSARS-CoV-2ウイルスから抽出された総RNAに対して、マンゴーNASBAにおいて試験した。図20(液体)及び図21(ドライ)は、培養サンプル(液体)の100倍希釈後の、培養ウイルスの検出の成功を実証した。図21は、予熱しないこと、及び外側から内側の反応への20倍希釈が十分に実現可能であったことも示している。
セントポールズ病院のICUユニットからのSARS-CoV-2感染患者由来の気管吸引物を、ネステッドマンゴーNASBAを使用して試験し(図22)、患者は、Roche RT-PCR試験を実施することによってもともと診断されている。SARS-CoV-2 RNAは、感染患者由来の20分間の外側及び12分間の内側のNASBA反応において検出されることに成功し(1A及び2A)、一方で非感染患者に対する曲線(5A)は、陰性対照水サンプルとおよそ同じ時間で上昇した。合成SARS-CoV-2と同様に、ネステッドマンゴーNASBAの前のウイルスRNAサンプルの加熱は要求されなかった(図23)。
【0094】
商業的凍結乾燥試薬は、インキュベーションの開始時にわずかに混濁していた。しかしながら、この混濁は分析に干渉せず、図15B及び図22Bにあるようにデータの傾きをプロットすることによって、各サンプルに関する出現時間をモニターし得た。
参考文献



【0095】
他の実施形態
本発明は、1つ又は複数の実施形態に関して記載されている。しかしながら、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形及び改変がなされ得ることは当業者に明らかであろう。それゆえ、本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されるものの、多くの適合及び改変が、当業者の共通の一般知識に従って本発明の範囲内でなされ得る。そのような改変は、実質的に同じやり方で同じ結果を達成する、本発明の任意の態様に代わる公知の等価物の置換を含む。数値範囲は、範囲を規定する数を含んでいる。「約」によって、5%又はそれ未満、例えば0.5%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%等の、値又は値範囲からの分散(プラス又はマイナス)を意味する。説明において、「含む(comprising)」という単語は、「含むがそれに限定されない」という語句と実質的に等価の、制約がない用語として使用され、「含む(comprises)」という単語は、対応する意味を有する。しかしながら、「含む(comprising)」若しくは「含む(comprises)」という単語、又は同じ語源を有する変形が本明細書において使用される場合、指定されない任意の要素、ステップ、若しくは成分を除外する「なる(consisting)」若しくは「なる(consists)」に対する、又は請求される発明の基本的及び新規の特徴に著しく影響を及ぼさないものとともに、指定された材料若しくは列挙されたステップに限定する「から本質的になる(consisting essentially of)」若しくは「から本質的になる(consists essentially of)」に対する変形又は改変も企図されることが理解されるべきである。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が、本発明の先行技術であるという承認として解釈されるものではない。すべての刊行物は、あたかもそれぞれ個々の刊行物が、本明細書における参照によって組み入れられることを具体的にかつ個々に表されたかのように及びあたかも本明細書に十分に示されたかのように、参照により本明細書に組み入れられる。本発明は、実質的に以上に記載されるならびに実施例及び図面を参照したすべての実施形態及び変形を含む。
図1
図2
図3
図4
図4B-1】
図4B-2】
図5
図5B-1】
図5B-2】
図5B-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
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図6-5】
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【配列表】
2022535584000001.app
【国際調査報告】