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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(54)【発明の名称】精製発酵飲料及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 12/00 20060101AFI20220802BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220802BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C12C12/00
A23L2/00 B
A23L2/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022506368
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 US2019046308
(87)【国際公開番号】W WO2020036932
(87)【国際公開日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】62/880,827
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522039924
【氏名又は名称】マーク アンソニー インターナショナル エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】MARK ANTHONY INTERNATIONAL SRL
【住所又は居所原語表記】1 Haggatt Hall, St. Michael, Barbados
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】フォックス、ディビッド、ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイラ、アンソニー、シー.
(72)【発明者】
【氏名】マットソン、ジェイコブ、エム.
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC08
4B117LC14
4B117LG16
4B117LK01
4B117LK07
4B117LK08
4B117LK25
4B117LK27
4B117LP20
4B128CP16
(57)【要約】
ブライトビール及び他の未処理化発酵飲料と比較して、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸、特に酢酸を有する、天然麦芽酒を含む精製発酵飲料の製造方法及び製造システム。精製発酵飲料は、苛性物質投入システムを用いて天然に存在する有機酸、典型的には未処理化発酵飲料を中和し、それらを塩としての共役塩基へと転換して生成される。中和化有機酸の塩をその後除去し、処理化発酵飲料から分離させ、精製発酵飲料を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸性同族体、好ましくは有機酸、より好ましくは酢酸を有する発酵飲料溶液を用意する工程;
b)アルカリ性処理剤を前記発酵飲料溶液に添加することにより前記発酵飲料溶液を処理して、前記酸性同族体の少なくとも一部を塩、好ましくは有機塩、より好ましくは酢酸塩に中和する工程;及び
c)前記中和された酸性同族体の少なくとも一部又は全部を前記処理された発酵飲料溶液から除去することにより、前記発酵飲料溶液と比べて低減された濃度又は無視できる濃度の前記酸性同族体、好ましくは酢酸を有する精製発酵飲料を生成する工程;
を有する精製発酵飲料の生成方法。
【請求項2】
前記中和された酸性同族体の少なくとも一部を除去する前記工程は、前記処理された発酵飲料から前記中和された酸性同族体を濾過する工程を有し、好ましくは前記濾過する工程のみからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ性処理剤を添加することにより、前記発酵飲料溶液のpHを少なくとも5.5、最大8.5まで上昇させる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ性処理剤は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを有するか、又は前記アルカリ性処理剤は、弱塩基、好ましくは酢酸ナトリウムを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵飲料溶液を処理する前記工程は、
(i)前記酸性同族体を有する前記発酵飲料溶液のバッチを用意する工程;
(ii)前記バッチから前記発酵飲料溶液のサンプルを抽出する工程;
(iii)前記サンプルをアルカリ性処理剤で滴定し、前記サンプル中の前記酸性同族体の少なくとも一部を中和し、塩を形成する工程;
(iv)前記サンプル中へのアルカリ性処理剤の前記滴定により形成される前記塩の量を計算する工程;
(v)前記サンプル中へのアルカリ性処理剤の前記滴定に基づいて前記バッチに添加するべきアルカリ性処理剤の量を決定する工程;及び
(vi)前記決定された量のアルカリ性処理剤を前記バッチに添加して前記バッチ中の前記酸性同族体の少なくとも一部を中和して塩を形成する工程;
を有し、前記発酵飲料溶液を処理するのに用いられる前記アルカリ性処理剤は、前記サンプルを滴定するのに用いられるのと同じアルカリ性処理剤であるか、又は化学量論等価量の異なるアルカリ性処理剤であるかのいずれかである請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
発酵飲料溶液中の前記酸性同族体は、2つ以上の酸、好ましくは2つ以上の有機酸を有し、
(i)前記発酵飲料溶液を前記アルカリ性処理剤で処理する前記工程は、前記発酵飲料溶液中の前記酸の少なくとも一部又は前記酸の全部を中和し、且つ
(ii)前記中和された酸性同族体を除去する前記工程は、前記中和された酸の少なくとも一部又は前記中和された酸の全部を前記処理された発酵飲料溶液から除去する請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
好ましくは酢酸を有する前記酸性同族体の少なくとも50%、最大で少なくとも99.9%が、前記アルカリ性処理剤を前記発酵飲料溶液に添加する際に中和される請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記精製発酵飲料は以下の特性を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の方法:
(i)pHが5.5~8.5、好ましくは5.8~6.5の範囲、
(ii)エチルアルコールを少なくとも10容量%、最大20容量%、
(iii)酢酸と酢酸塩との組合せ濃度が1000ppm未満、好ましくは300ppm~400ppmの範囲、
(iv)酢酸濃度が500ppm未満、好ましくは10ppm~100ppmの範囲、より好ましくは25ppm~75ppmの範囲。
【請求項9】
未処理の発酵飲料と比べて低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体、好ましくは酢酸を有する精製発酵飲料であって、以下の特性を有する、精製発酵飲料:
(i)pHが5.5~8.5、好ましくは5.8~6.5の範囲、
(ii)エチルアルコールを少なくとも10容量%、最大20容量%、
(iii)酢酸と酢酸塩との組合せ濃度が1000ppm未満。
【請求項10】
前記精製発酵飲料は、以下の特性を有する請求項9に記載の精製発酵飲料:
(i)酢酸に対する滴定可能な酸性度が前記精製発酵飲料の約0.5グラム/1リットル未満、好ましくは約0.25グラム/リットル未満、
(ii)プロトン化酢酸濃度が約100ppm未満、好ましくは約50ppm未満、より好ましくは25ppm未満。
【請求項11】
前記精製発酵飲料は、グルテンが0ppm~20ppmの範囲、好ましくは0ppmを有する、グルテンフリー、グルテン低減、又はグルテン除去発酵飲料である請求項9又は10に記載の精製発酵飲料。
【請求項12】
前記精製発酵飲料が中性麦芽飲料である請求項9~11のいずれか一項に記載の精製発酵飲料。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法にしたがって生成される、請求項9~12のいずれか一項に記載の精製発酵飲料。
【請求項14】
発酵飲料中の酸性同族体を減少除去して、精製発酵飲料を生成する中和システムであって、
a)アルカリ性処理剤を前記発酵飲料に滴定又は添加して有機酸同族体を中和することにより前記発酵飲料を処理するように構成されるインライン苛性物質投入システム;及び
b)前記中和された有機酸同族体を前記処理された発酵飲料から分離するように構成される少なくとも1つの分離装置;
を有し、これにより前記精製発酵飲料を生成する、上記中和システム。
【請求項15】
前記インライン苛性物質投入システムは、
a)前記発酵飲料、前記処理された発酵飲料、又はこれらの双方のpHを監視するように構成される1つ以上のpH計、好ましくは計量手段の上流側のpH計及び前記計量手段の下流側のpH計;
b)アルカリ性処理剤用容器;
c)前記アルカリ性処理剤のための計量手段;及び
d)前記1つ以上のpH計のpH出力を監視し、前記アルカリ性処理剤容器から分注される前記アルカリ性処理剤の量を前記計量手段により制御するように構成される中央プログラム可能なロジックコントローラ;
を有する請求項14に記載の中和システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの分離装置は、1つ以上の濾過膜、好ましくは逆浸透濾過膜を有する請求項14又は請求項15に記載の中和システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの分離装置は、1つ以上の蒸留システム、特にカラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、及び、蒸気圧縮蒸留システムからなる群から選ばれる蒸留システムを有する請求項14~16のいずれか一項に記載の中和システム。
【請求項18】
前記中和システムは、前記アルカリ性処理剤を前記発酵飲料流へと均質化するように構成される混合手段、好ましくは保持配管又はインラインミキサをさらに有する請求項14~17のいずれか一項に記載の中和システム。
【請求項19】
前記計量手段が圧力ポンプであり、前記中和システムは、前記圧力ポンプからの前記アルカリ性処理剤の加圧下での添加を調整するように構成される流量制御弁をさらに有する請求項14~18のいずれか一項に記載の中和システム。
【請求項20】
前記中和システムは、前記インライン苛性物質投入システムの上流側に方向転換手段をさらに有し、前記方向転換手段は、前記発酵飲料を前記インライン苛性物質投入システムへと選択的に方向付けるか又は前記発酵飲料を前記インライン苛性物質投入システムに進入させないように方向転換するように構成される請求項14~19のいずれか一項に記載の中和システム。
【請求項21】
前記中和システムは、前記計量手段の下流側に導電率計をさらに有し、前記中央プログラム可能なロジックコントローラは、前記導電率計によって測定される前記処理された発酵飲料の導電率を監視するように構成される請求項14~20のいずれか一項に記載の中和システム。
【請求項22】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するように、及び/又は請求項9~13のいずれか一項に記載の精製発酵飲料を生成するように構成される請求項14~21のいずれか一項に記載の中和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵飲料の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な発酵飲料(FB)製造プロセスは、大麦麦芽及び他の穀物を、発酵して飲用可能な生成物を作り出すことができる糖抽出物に変換するいくつかの処理工程を受ける。FBの一例は、様々な風味の麦芽飲料を配合するのにさらに処理することができる、ニュートラルモルトベース(NMB)、理想的には無色、無味及び無臭の溶液である。そのようなプロセスは、米国特許第4,440,795号、同第5,294,450号、同第5,618,572号、及び同第7,008,652号、並びに米国特許出願公開第2014/0127354号に詳細に記載されており、その開示内容は参照によりその全体が本願に組み入れられる。しかしながら、NMBはFBの一例にすぎず、FBの他の例としては、ビール、ワイン、スピリッツ、リキュール、ミード、リンゴ酒(cider)、日本酒、及び発酵茶が挙げられるがこれらに限定されない。
【0003】
大麦をベースとした飲料は歴史的には、大麦を大麦麦芽に変換する麦芽製造所、及び、麦芽を麦汁としても知られる麦芽抽出物に変換する醸造所で製造されてきた。麦芽製造は、大麦穀粒を浸漬し発芽を促進させ、続いて高温でキルン乾燥することを伴う。当業者に周知の醸造所中心のプロセスは、麦芽を処理して、麦芽内のデンプンを主に単糖類、二糖類、及び三糖類からなるより小さな糖に分解し、麦汁を形成する。その後、麦汁をさらに煮沸し、特定の割合で他の糖とブレンドし、ホップを添加して、酵母と組合せてエチルアルコールを生成することができる最終発酵基質を生成することができる。発酵が完了した後、発酵生成物を濾過し、処理し、脱色してNMBを生成することができる。
【0004】
ホップ添加麦汁を利用した中性風味のアルコール飲料の生成は、参照によりその全体が本願に組み入れられるカナダ特許第1,034,064号に記載されている。プロセスは、出発材料として、30~37重量%の可溶性タンパク質含量、5%~6%の水分量、及び150~240のジアスターゼ値を有する低キルン麦芽を用いる。その後、この低キルン麦芽を66℃~77℃で水と混合してマッシュを形成するとともにその温度範囲に維持して麦汁を生成する。その後、それによって生成した麦汁を10~40分間煮沸して炭水化物補助剤及び補助窒素源と混合しビール酵母で発酵させる。参照によりその全体が本願に組み入れられる米国特許第4,495,204号明細書は、2%~20%の量で発酵性炭水化物と混合するとともに80℃~90℃の温度の水と80%~98%の量で混合する、よく改質された標準的な醸造麦芽をすりつぶして発酵性溶液を取得した後、これを冷却し、ビール酵母でピッチングし、発酵させることにより調製する中性風味のアルコール飲料の生成も開示する。
【0005】
発酵後処理が完了した後、消耗性NMB生成物はしばしば酸性pHを有する。NMBの酸性度は、デンプンを発酵性糖に変換する麦芽のすりつぶし工程まで遡ることができる。一般的には、粉砕した穀物を糖化槽中で熱水と混合して、シリアルマッシュを作り出す。この工程で起こる高温で、不溶性カルシウム塩が形成することができ、これはマッシュ中のpHの低下に寄与する(その開示内容が全体的に参照により本願に組み入れられるSouth, J. B., “Variation in pH and Lactate Levels in Malts”(1996) J. Inst. Brew. 102: 155-159を参照のこと)。結果として得られた麦汁は、麦芽の種類及びカルシウム含有量に応じて、約5.4~約5.8の範囲のpHを含む。同様に、麦芽にも見られる有機酸、特に乳酸は、麦汁のpHをさらに低下させることができる。さらに、有機酸は、バッチ又は連続発酵プロセスでも形成することができる(その開示内容が全体的に参照により本願に組み入れられるWhiting, GC “Organic Acid Metabolism of Yeasts During Fermentation of Alcoholic Beverages-A Review”(1976) J. Inst. Brew. 82: 84-92を参照のこと)。
【0006】
NMBを含むFBを処理するのに用いられる従来の技術は一般に、発酵の際に自然生成する酢酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸又は酒石酸などの有機酸の除去に影響を及ぼさない。結果として、有機酸は、多くの場合、最終的に消費されるFB又はNMBに見出すことができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、発酵後に従来の手段によって処理されるFB又はNMBと比べて低減したレベル又は無視できるレベルの酸性同族体(acidic congener)を有する精製FBを製造する方法及びシステムを提供する。本明細書中で酸性同族体として定義される、NMB中を含む消耗性FB中に保持される有機酸は、発酵飲料、特にNMBの官能特性に影響を及ぼすことができる。
【0008】
本発明によれば、酸性同族体の1つ以上は、FBの香り及び/又は味に悪影響を与える有機酸同族体であってもよい。本発明によれば、有機酸同族体のうちの1つ以上を低減させるか又は除去することにより、結果として得られるFBの香り及び/又は味を改善することができる。
【0009】
本発明によれば、酸性同族体、好ましくは有機酸同族体を有する未処理発酵生成物又はFBは、穀物、果実、蜂蜜、シロップ又は樹液、デンプン質の野菜、糖、及びこれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択される任意の発酵性炭水化物源から生成することができる。
【0010】
本発明によれば、未処理FB又は未中和FBとは、アルカリ性処理剤の添加前のFBであって、FB中に含まれる酸性同族体の少なくとも一部を対応する塩に変換するのに十分な量のFBを指すことができる一方、処理済みFB又は中和済みFBとは、アルカリ性処理剤の添加後に生成するFBを指すことができる。
【0011】
本発明によれば、発酵性炭水化物源は、大麦、小麦、ライ麦、キビ、米、モロコシ、トウモロコシ、及びこれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択される穀物であってもよい。本発明によれば、穀物は、グルテンフリー穀物であってもよく、キビ、米、モロコシ、トウモロコシ、及びこれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択することができる。本発明によれば、発酵性炭水化物源は、0ppm~20ppmの範囲のグルテン濃度を天然に有することができる。本発明によれば、発酵性炭水化物源は、発酵性炭水化物源中のグルテンの濃度が0ppm~20ppmの範囲になるまでグルテンを減少又は除去するように改質することができる。本発明によれば、天然の発酵性炭水化物源中又は改質発酵性炭水化物源中のグルテン濃度は、約0ppm、又は、少なくとも約1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、10ppm、もしくは、15ppm、最大で少なくとも約20ppmとすることができる。
【0012】
本発明によれば、本発明の方法及びシステムにしたがって精製FBを生成するのに用いられる穀物は、麦芽を形成する麦芽製造プロセスによって発芽させることができる。本発明によれば、麦芽をさらにすりつぶして麦汁を形成することができる。本発明によれば、麦汁を濃縮して抽出物を形成することができる。しかしながら、本発明によれば、発酵性炭水化物源として用いられる穀物は、麦芽製造プロセスを経る必要がない。したがって、本発明によれば、任意の形態の穀物を発酵性炭水化物源として利用して、未処理FBを生成することができる。
【0013】
本発明によれば、発酵性炭水化物源は、L-及び/又はD-グルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、転化糖、ベルギー砂糖、ブラウンシュガー、ゴールデンシロップ、メープルシュガー、生シュガー、及びそれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択される、完全に発酵することができる糖であってもよい。本発明によれば、発酵性炭水化物源は、タービナド糖、糖蜜、米シロップ固体、及び任意の混合物又はそれらの組合せからなる群から選択される、混合物内の糖の全てを発酵できるとは限らない糖混合物であってもよい。本発明によれば、糖は、前述の完全に発酵可能な糖と部分的に発酵可能な糖との任意の組合せを有することができる。
【0014】
本発明によれば、任意の未処理発酵生成物又はFBを後述する本発明の方法及びシステムのうちの1つ以上に従って利用することができる。FBの非限定的な例として、NMB、ビール、ワイン、ハチミツ酒、リンゴ酒、日本酒、発酵茶が挙げられるがこれらに限らないが、当業者であれば分かるように、このリストは網羅的ではない。本発明によれば、未処理の発酵生成物又はFBは、「定義」の節で以下に定義するFBのいずれかであってもよい。本発明によれば、FBは、ホップ、スパイス、ハーブ、チョコレート、コーヒー、甘味料などを含む1つ以上の風味剤及び/又は安定剤を含むことができる。本発明によれば、FBは、ホップを有しても、ホップを実質的に有さなくてもよい。
【0015】
本発明によれば、下記の方法及びシステムによって生成する精製FB、特に精製NMBを用いて、従来の方法によって生成する未処理FBに一般的且つ天然に存在する有機酸同族体と他の方法で衝突する可能性がある(may clash with)風味プロファイルを伴う風味麦芽飲料(FMB)を生成することができる。本発明によれば、有機酸同族体として乳酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、及び/又は酢酸を挙げることができる。
【0016】
本発明のある面において、(a)アルカリ性処理剤をFBに添加することによりFBを処理して、FB中に存在する酸性同族体を中和する工程;及び(b)処理済みFBから中和された酸性同族体の少なくとも一部を除去して精製FBを生成する工程;を有する、低減したレベル又は無視できるレベルの酸性同族体を有する精製FBを生成する方法を提供する。
【0017】
本発明の他の面において、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製FBを生成する方法であって、(a)アルカリ性処理剤をFBに添加することにより1つ以上の有機酸同族体を有するFBを処理して、FB中に存在する1つ以上の有機酸同族体の少なくとも一部を中和する工程;及び(b)中和された有機酸同族体の少なくとも一部を処理済みFBから分離して精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、FB中の実質的に全ての有機酸同族体を中和することができる。本発明によれば、中和された有機酸同族体の実質的に全てを処理済みFBから分離することができる。本発明によれば、FB中の全ての有機酸同族体を中和することができるか、及び/又は中和された全ての有機酸同族体を処理済みFBから分離することができる。
【0018】
本発明の他の面において、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製FBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの有機酸同族体を有するFBを用意する工程;(b)少なくとも1つの酸性同族体を有機塩に変換するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFBに滴定又は添加することにより少なくとも1つの有機酸同族体の少なくとも一部を中和して、中和済みFBを形成する工程;及び(c)有機塩の少なくとも一部を濾別することにより精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、実質的に全ての有機酸同族体を有機塩に中和することができる。本発明によれば、実質的に全ての有機塩を中和済みFBから濾過することができる。本発明によれば、FB中の全ての有機酸同族体を有機塩に中和することができるか、及び/又は全ての有機塩を処理済みFBから分離することができる。
【0019】
本発明の他の面において、有機酸同族体の全て又は実質的に全てが中和されてFB溶液から除去される、精製FBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの有機酸同族体を有するFB溶液を用意する工程;(b)少なくとも1つの有機酸同族体の一部、全部又は実質的に全部を有機酸同族体の塩に変換するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFB溶液に添加することによって、少なくとも1つの有機酸同族体を中和することにより、FB溶液を処理する工程;及び(c)有機酸同族体の塩の一部、全部又は実質的に全部を処理済みFB溶液から分離することによって精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、十分な量のアルカリ性処理剤は、pHが少なくとも約5.5、又は少なくとも約5.5の範囲内にFB溶液を中和することができ、このようなpHは、約5.7、5.9又は6.1の少なくともいずれか1つ及び最大で約6.5のpHであってもよく、これは約最大6.7、6.5、6.3又は6.1のいずれか1つまでのpHであってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤は、アルカリ(第I族)又はアルカリ土類(第II族)金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを有してもよい。上記の面又は態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤は、最大約50容量%の食品グレードの重炭酸ナトリウムを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体が1つ以上の有機酸を有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、FB溶液がブライトビールであってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、FB溶液を処理する工程は、(i)少なくとも1つの有機酸同族体を有する所定含有量のFB溶液を用意する工程;(ii)所定含有量のFB溶液のサンプルを、サンプル中の少なくとも1つの有機酸同族体を塩形態に中和するのに十分なアルカリ性処理剤で滴定する工程;及び(iii)所定量のアルカリ性処理剤を所定含有量のFB溶液に添加し、所定含有量で少なくとも1つの有機酸同族体を塩形態に中和することによってFB溶液を処理する工程であって、添加されたアルカリ性処理剤の量がサンプルの滴定に基づいて決定される工程;を有してもよい。本発明によれば、所定含有量のFB溶液を処理するのに用いられるアルカリ性処理剤は、サンプルを滴定するのに用いられるのと同じアルカリ性処理剤であっても、化学量論的等価量の異なるアルカリ性処理剤であってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体を中和する工程は、インライン苛性物質投入システムを用いて行ってもよく、苛性物質投入システムは、(a)FBを苛性物質投入システムに供給する手段;(b)FBのpHを検出する少なくとも1つのpH計;(c)アルカリ性処理剤用容器;(d)アルカリ処理容器と供給されたFBとの間にアルカリ性処理剤の液体連通をもたらす送達手段;及び(e)少なくとも1つのpH計及びアルカリ性処理剤送達手段と通信する中央プログラム可能なロジックコントローラ(central programmable logic controller);を有する。本発明によれば、インライン苛性物質投入システムを使用して、FB溶液中の少なくとも1つの有機酸同族体は、以下の工程、(i)FB流をインライン苛性物質投入システムに導入する工程;(ii)少なくとも1つのpH計を用iてFB流のpHを検出する工程;(iii)中央プログラム可能なロジックコントローラを用いて、FB流中の1つ以上の有機酸同族体を中和するのに必要なアルカリ性処理剤の化学量論的な量を決定する工程;及び(iv)化学量論量のアルカリ性処理剤をアルカリ性処理剤容器からFB流中へ送達手段を用いて分注する工程;にしたがって中和することができる。本発明によれば、インライン苛性物質投入システムは、FB流へのアルカリ性処理剤の送達の上流側のpH計;及びFB流へのアルカリ性処理剤の送達の下流側のpH計;を有してもよい。
【0020】
本発明の他の面において、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製FBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの有機酸同族体を有するFB溶液を用意する工程;(b)少なくとも1つの有機酸同族体の全部又は実質的に全部を有機酸同族体の塩に変換するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFB溶液に添加することによって、少なくとも1つの有機酸同族体を中和することにより、FB溶液を処理する工程;及び(c)処理済みFB溶液から有機酸同族体の塩を分離することによって精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、十分な量のアルカリ性処理剤は、少なくとも約5.7、5.9又は6.1及び最大約6.5のpHを含む、少なくとも約5.5のpH又は少なくとも約5.5の範囲内のpHにFB溶液を中和することができる。上記の面又は態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤は、I族又はII族金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムを有してもよい。上記の態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤は、最大約50容量%の食品グレードの重炭酸ナトリウムを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体が1つ以上の有機酸を有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、FB溶液がブライトビールであってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、分離する工程は、処理済みFBから有機酸同族体の塩を濾過することを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、分離する工程は、中和済みFBから有機酸同族体の塩を濾過することのみからなってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、FBは、少なくとも約10容量%、最大で約20容量%のエチルアルコールを有してもよく、少なくとも1つの有機酸同族体が酢酸を有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、FB溶液を処理する工程は、(i)少なくとも1つの有機酸同族体を有する所定含有量のFB溶液を用意する工程;(ii)所定含有量のFB溶液のサンプルを、サンプル中の少なくとも1つの有機酸同族体を塩形態に中和するのに十分なアルカリ性処理剤で滴定する工程;及び(iii)所定量のアルカリ性処理剤を所定含有量のFB溶液に添加し、所定含有量で少なくとも1つの有機酸同族体を塩形態に中和することによってFB溶液を処理する工程であって、添加するアルカリ性処理剤の量がサンプルの滴定に基づいて決定する工程;を有してもよい。本発明によれば、所定含有量のFB溶液を処理するのに用いられるアルカリ性処理剤は、サンプルを滴定するのに用いられるのと同じアルカリ性処理剤であっても、化学量論的等価量の異なるアルカリ性処理剤であってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体を中和する工程は、インライン苛性物質投入システムを使用して実行されてもよく、苛性物質投入システムは、(a)FBを苛性物質投入システムに供給する手段;(b)FBのpHを検出する少なくとも1つのpH計;(c)アルカリ性処理剤用容器;(d)アルカリ処理容器と供給されたFBとの間にアルカリ性処理剤の液体連通をもたらすための送達手段;及び(e)少なくとも1つのpH計及びアルカリ性処理剤送達手段と通信する中央プログラム可能なロジックコントローラ;を有する。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、インライン苛性物質投入システムを使用して、FB溶液中の少なくとも1つの有機酸同族体は、以下の工程、(i)FB流をインライン苛性物質投入システムに導入する工程;(ii)少なくとも1つのpH計を使用してFB流のpHを検出する工程;(iii)中央プログラム可能なロジックコントローラを使用して、FB流中の1つ以上の有機酸同族体を中和するのに必要なアルカリ性処理剤の化学量論的な量を決定する工程;及び(iv)化学量論量のアルカリ性処理剤をアルカリ性処理剤容器からFB流中へ送達手段を用いて分注する工程;にしたがって中和することができる。本発明によれば、インライン苛性物質投入システムは、FB流へのアルカリ性処理剤の送達の上流側のpH計;及びFB流へのアルカリ性処理剤の送達の下流側のpH計;を有してもよい。本発明に係る、インライン苛性物質投入システムを有する、有機酸同族体を中和してFBから除去するシステムを以下にさらに詳述する。
【0021】
本発明の他の面において、低減したレベル又は無視できるレベルの酸性同族体を有する精製FBを生成する方法であって、(a)酸性同族体を有するFB溶液を用意する工程;(b)発酵飲料溶液にアルカリ性処理剤を添加して酸性同族体の少なくとも一部を中和することによってFB溶液を処理する工程;及び(c)処理済みFB溶液から中和された酸性同族体を除去することによって精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、精製FBは、FB溶液と比べて低減した濃度又は無視できる濃度の酸性同族体、好ましくは酢酸を有する。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、中和された酸性同族体は塩であってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、酸性同族体が有機酸であってもよい。本発明によれば、酸性同族体が酢酸であってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、中和された酸性同族体を除去する工程は、処理された発酵飲料から中和された酸性同族体を濾過することを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、中和された酸性同族体を除去する工程は、処理された発酵飲料から中和された酸性同族体を濾過することのみからなってもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤の添加は、発酵飲料溶液のpHを少なくとも約5.5、最大約8.5まで上昇させることができる。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、アルカリ性処理剤は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムのいずれかを有してもよいか、又はアルカリ性処理剤は、弱塩基、好ましくは酢酸ナトリウムを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、精製FBは、約5.8~約6.5の範囲のpHを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、精製FBは、少なくとも約10容量%、最大約20容量%のエチルアルコールを有してもよい。上記の面及び態様のいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、精製FBは風味がなくてもよい。
【0022】
本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、未処理FBからの酸性同族体の一部を保持してもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、未処理FBからの酸性同族体を全く保持しないか、又は本質的に全く保持しなくてもよい。
【0023】
本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、ビールであってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBはワインであってもよい。本発明によれば、上記のいずれかの方法によって生成する精製FBは、スピリッツ酒であってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、リキュールであってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する製FBは、ハチミツ酒であってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、リンゴ酒であってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、日本酒であってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは発酵茶であってもよい。本発明によれば、発酵茶は、非限定的な例として、コンブチャであってもよい。本発明によれば、コンブチャはアルコールを有してもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、NMBであってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、グルテンの濃度がグルテン約0ppm~約20ppmの範囲、好ましくはグルテン0ppmになるように、天然にグルテンフリー、グルテン減少又はグルテン除去であってもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、ホップを実質的に有さなくてもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、ホップを有さなくてもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、大麦麦芽を実質的に有さなくてもよい。本発明によれば、上記の方法のいずれかによって生成する精製FBは、大麦麦芽を有さなくてもよい。
【0024】
一例として精製NMBを使用して、本発明のある面において、低減したレベル又は無視できるレベルの酸性同族体を有する精製NMBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの酸性同族体を有するブライトビールを用意する工程;(b)アルカリ性処理剤をブライトビールに滴定又は添加して少なくとも1つの酸性同族体の少なくとも一部を塩に変換して中和されたブライトビールを形成する工程;及び(c)中和されたブライトビールから塩の一部又は全部を分離することによって精製されたNMBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、少なくとも1つの酸性同族体の全てを中和することができる。本発明によれば、全ての塩を中和されたブライトビールから分離することができる。本発明によれば、酸性同族体が有機酸同族体であってもよい。本発明によれば、中和されたブライトビールからの塩の分離は、濾過を有することができる。本発明によれば、中和されたブライトビールからの塩の分離は、濾過のみからなってもよい。本発明によれば、上記の又は以下の「定義」の節に記載される他の精製FBのいずれかは、単に、上記工程(a)において所望の未処理FBをブライトビールに置換するとともに、少なくとも1つの酸性同族体の少なくとも一部を中和して塩を形成する同じ工程を実行して塩の一部又は全部を分離するだけで、生成することができる。
【0025】
本発明によれば、精製FBは、FB中の1つ以上の酸性同族体の一部又は全部がアルカリ性処理剤によって中和されて塩を形成し、その後、塩の一部又は全部を中和済みFBから除去して精製FBを生成する、FBである。本願は、米国非仮出願第16/101,797号及び米国仮出願第62/880,827号に関連してそれらの優先権を主張し、これらの出願はいずれも、FB中の酸性化合物の一部又は全部を中和して塩を形成し、その後、形成した塩の一部又は全部を除去して浄化FBを形成する同じプロセスを記載及び主張している。しかしながら、「浄化(clarified)」は、一般に、麦汁、ビール、又は他のFBから固体が除去される任意のプロセスによって生成されるFBを説明するための醸造業界内の一般用語である。したがって、本発明によれば、精製FBは、固体微粒子も除去する分離技術又は装置を使用して塩が除去される場合又は固体材料に関して最初に浄化されるFBがその後に中和及び精製される場合など、浄化FBとして説明することもできる。さらに、本発明によれば、精製FBは、存在する他の固体のいずれか又は全てを必ずしも除去することなく、処理済みFB又は中和済みFBから塩を除去し、それにより浄化FBではない精製FBを生成することによって形成されてもよい。本発明によれば、精製されてしまっているが浄化されていないFBを、その後浄化し、浄化(及び精製)FBを形成することができる。精製FB及び浄化FBを形成するのに用いられる分離装置及び技術を、以下でさらに詳述する。
【0026】
本発明によれば、代替的に、中和済み酸性同族体、有機酸同族体、及び/又は、それらの塩は、その後にそれらを中和済みFBから分離、濾過、或いはさもなければ除去することなく、随意的に保持することができる。本発明のある面によれば、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する中和済みFBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの有機酸同族体を有するFBを用意する工程;及び(b)FB中に存在する1つ以上の有機酸同族体の少なくとも一部を中和して中和済みFBを形成するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFB中に滴定又は添加する工程;を有する方法を提供する。特定の理論に限定されることなく、有機酸同族体は、有機酸同族体がそれらの酸性形態である場合にのみ味によって検出することができるが、中和されてしまった有機酸同族体は、中和された有機酸同族体及び/又はそれらの塩が依然としてFB中に存在する場合であっても、味に対する影響が減少されるか又は無視できると考えられる。酸性同族体がFBの味及び匂いに及ぼす影響については、以下でより詳細に説明する。
【0027】
本発明によれば、上記の方法は、低減したレベル又は無視できるレベルの酢酸を有する精製FBを生成することができ、酢酸は、存在する場合には、FMBにおいてしばしば望ましくないビネガー様風味及び匂い兆候を付与する場合がある。本発明によれば、精製FBは、無色であってもよく、未処理のブライトビール又はFBと比べて減少したビネガー様風味兆候及び臭気を有してもよい。本発明によれば、精製FB中のビネガー様風味兆候及び/又は臭気は、飲料を飲むか又は匂いを嗅ぐ人には実質的に知覚できない場合がある。本発明によれば、精製FBは、ビネガー様風味兆候及び/又は臭気を有さなくてもよい。本発明によれば、精製FBはNMBであってもよい。
【0028】
アルカリ性処理剤は、強塩基及び弱塩基の両方を含む、有機酸同族体と反応することができる任意の塩基性化合物を有することができる。本発明によれば、アルカリ性処理剤は、水を伴う溶液中の水酸化物イオンの濃度を増加させる少なくとも1つのアレニウス塩基を有する苛性物質であってもよい。非限定的な例として、アルカリ(グループI)及びアルカリ土類(グループII)金属水酸化物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム及び水酸化ルビジウムが挙げられる。本発明によれば、アルカリ性処理剤は、最大約50重量%の水酸化ナトリウムを有してもよい。本発明によれば、アルカリ性処理剤は、最大50重量%の水酸化カリウムを有してもよい。
【0029】
本発明によれば、アルカリ性処理剤は弱塩基を有することができ、この場合、塩基及びその共役酸は、互いに平衡状態で存在する。本発明によれば、アルカリ性処理剤は、最大50重量%の重炭酸ナトリウムを有してもよい。
【0030】
本発明によれば、アルカリ性処理剤は、1つ以上の苛性物質、1つ以上の弱塩基、及び/又は1つ以上の苛性物質と1つ以上の弱塩基との組合せを有することができる。
【0031】
本発明のある面において、ブライトビール溶液を含むことができるFB溶液中の少なくとも1つの有機酸同族体を中和する方法であって、(1)少なくとも1つの有機酸同族体を含む所定量のFB流を用意する工程;(2)中和量のアルカリ性処理剤をFB流中に導入して、FB流のpHを、FB流中の有機酸同族体の少なくとも一部を中和するのに十分な目標pH範囲内に調整する工程;(3)処理済みFB流のpHを検出する工程;及び(4)処理済みFB流の検出されたpHに基づいてアルカリ性処理剤の中和量を調整して、処理済みFBのpHを目標pH範囲内に維持する工程;を有する方法を提供する。
【0032】
本発明によれば、FB流の量は質量流量又は体積流量であってもよく、アルカリ性処理剤の中和量は質量流量又は体積流量であってもよい。本発明によれば、FB流の質量流量又は体積流量は実質的に一定であってもよい。本発明によれば、FB流の質量流量又は体積流量を検出することができ、アルカリ性処理剤の中和量の調整は、処理済みFBの検出されたpH及びブライトFBの質量流量又は体積流量に基づくことができる。
【0033】
本発明によれば、FBを処理してFB中に存在する酸性同族体を中和する工程は、(i)酸性同族体を有する発酵飲料溶液のバッチを用意する工程;(ii)バッチから発酵飲料溶液のサンプルを抽出する工程;(iii)サンプルをアルカリ性処理剤で滴定しサンプル中の酸性同族体の少なくとも一部を中和し塩を形成する工程;(iv)サンプルにアルカリ性処理剤を滴定することにより形成した塩の量を計算する工程;(v)サンプルへのアルカリ性処理剤の滴定に基づいてバッチに添加すべきアルカリ性処理剤の量を決定する工程;及び(vi)決定した量のアルカリ性処理剤をバッチに添加しバッチ中の酸性同族体の少なくとも一部を中和して塩を形成する工程;を有してもよい。本発明によれば、所定含有量のFBを処理するのに用いられるアルカリ性処理剤は、サンプルを滴定するのに用いられるのと同じアルカリ性処理剤であってもよく、化学量論的等価量の異なるアルカリ性処理剤であってもよい。
【0034】
本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体を中和する工程は、バッチ(又は連続バッチ)システムで実行されてもよく、該システムは、(a)酸性同族体を有する所定量のFB用の容器;(b)所定含有量のFBのpHを検出するpH計;(c)制御された量のアルカリ性処理剤を所定含有量のFBに導入する計量手段;及び(d)pH計及び計量手段と通信するコントローラ、例えば中央プログラム可能なロジックコントローラ;を有する。計量手段は、計量ポンプ又は液体流量コントローラとすることができる。
【0035】
本発明によれば、少なくとも1つの有機酸同族体を中和する工程は、インライン苛性物質投入システムで実行されてもよく、このシステムは、(a)FB流のための配管システム;(b)FB流のpHを検出する1つ以上のpH計又は処理済みFB流のpHを検出する1つ以上のpH計又はこれらの両方;(c)アルカリ性処理剤用のアルカリ容器;(d)制御された量のアルカリ性処理剤をFB流に導入する計量手段;及び(e)1つ以上のpH計及び計量手段と通信するコントローラ、例えば中央プログラム可能なロジックコントローラ;を有する。計量手段は、計量ポンプ又は液体流量コントローラとすることができる。いくつかの態様において、インライン苛性物質投入システムは、アルカリ性処理剤をFB流へと均質化する混合手段をさらに有する。混合手段は、インラインミキサ、保持配管、及びインライン混合容器、又は再循環システムを有してもよい。
【0036】
本発明によれば、インライン苛性物質投入システムは、FB流又は処理済みFB流又はこれらの両方の導電率を検出する導電率計をさらに有してもよい。
【0037】
本発明によれば、FB中の少なくとも1つの有機酸同族体は、インライン苛性物質投入システム内で、(1)有機酸を有するFB流をインライン苛性物質投入システムに導入する工程;(2)pH計を用いてFB流のpHを検出する工程;(3)コントローラを用いてFB流中の有機酸同族体を中和するのに十分なアルカリ性処理剤の中和量を決定する工程;及び(4)中和量のアルカリ性処理剤を、アルカリ容器から、pH計による検出の下流側のFB流中へと、計量手段によって分注して、処理済みFB流を形成する工程;にしたがって中和することができる。本発明によれば、インライン苛性物質投入システムは、アルカリ性処理剤がFB流に導入されて混合される下流側の位置でFB流のpHを検出するか又は処理済みFB流のpHを検出するか又はこれらの双方のためのpH計を有することができる。処理済みFB流の検出されたpHは、アルカリ性処理剤の十分な中和量を決定するためにコントローラによって使用されてもよい。
【0038】
本発明によれば、インライン苛性物質投入システムを用いてFBを中和する上記方法のいずれかは、導電率計を用いてFB流の導電率を検出する工程をさらに有することができる。本発明によれば、処理済みFB流の検出された導電率は、アルカリ性処理剤の十分な中和量を決定するためにコントローラによって使用されてもよい。本発明によれば、処理済みFB流の検出された導電率及びpHの両方をコントローラによって使用して、アルカリ性処理剤の十分な中和量を決定することができる。
【0039】
本発明によれば、上記の中和方法のいずれかは、中和中に生成する有機酸同族体の塩形態を除去するために、FB中の有機酸同族体を中和した後に行うことができる1つ以上の塩除去又は塩分離工程をさらに有することができる。本発明によれば、除去工程は、濾過工程、及び処理済みFBをフィルタに通して有機酸同族体の塩形態を分離及び除去する工程を有してもよい。適切なフィルタは典型的には、海水の脱塩に十分なフィルタ又は分離デバイスを含むことができる。中和済みFBから塩を分離して精製FBを形成する本発明の濾過システムの非限定的な例として、限外濾過、逆浸透濾過、及びナノ濾過を挙げることができる。本発明によれば、方法は、FB中の有機酸同族体を中和する前にFBを濾過して、他の微粒子又は濾過可能な同族体を除去することを含むこともできる。本発明によれば、分離は、濾過に加えて又は濾過に代えて、カラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、蒸気圧縮蒸留、イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー、重力、遠心分離、デカンテーション、凍結解凍システム、太陽蒸発システム、及び電気透析反転を挙げられるがこれに限定されない分離工程を有してもよい。本発明によれば、有機酸同族体の塩形態の少なくとも一部を除去することにより、精製FBを形成することができる。
【0040】
本発明によれば、蒸留を使用することなく、有機酸同族体の塩形態を処理済みFB流から分離し、精製FBを形成してもよい。本発明によれば、有機酸同族体の塩形態は、濾過のみを用いて処理済みFB流から除去してもよい。
【0041】
また、本発明は、精製スピリッツ酒及びその製造方法を含むこともでき、この場合、エタノール及び酸性同族体を有する発酵飲料は、酸性同族体の少なくとも一部を塩形態に変換するために中和され、その後、中和された発酵飲料は、エタノールを塩形態から分離するべく蒸留され、それにより、飲用可能な精製スピリッツ酒が形成される。精製スピリッツ酒は、低減したレベル又は無視できるレベルの酸性同族体を留出物中に有し、それにより、官能特性が改善される。本発明によれば、精製FBは、共沸混合物の形態の水と共に、エタノールを、濾過後に残存する任意の微量有機酸同族体又は有機酸同族体の中和された塩形態又は他の水混和性同族体から分離するために、酸性同族体の少なくとも一部の塩形態を濾別した後に蒸留することができる。
【0042】
本発明によれば、別の理論によって限定されることなく、濾過の有無にかかわらず、中和後の蒸留は、ビネガー様の風味及び芳香をFBから除去し、ブライトビールを直接蒸留することによって製造した蒸留スピリッツ酒と比較して、全体的に改善した精製ピリッツ酒の味プロファイルを達成すると考えられる。本発明によれば、精製スピリッツ酒の滴定可能な酸性度は、中和されていない蒸留スピリッツ酒の滴定可能な酸性度よりも低くてもよい。本発明によれば、酢酸に関連する精製スピリッツ酒の滴定可能な酸性度は、中和されていない蒸留スピリッツ酒の滴定可能な酸性度よりも低くてもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒の滴定可能な酸性度は、約0.2、0.1、又は、0.05g/L未満を含む約0.3グラム/リットル(g/L)未満から約0.01g/L未満までであってもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒の滴定可能な酸性度は、本質的に0又は検出不能であってもよい。
【0043】
よって、本発明のある面によれば、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製スピリッツ酒を生成する方法は、(a)エタノール及び少なくとも1つの有機酸同族体を有するFBを用意する工程;(b)アルカリ性処理剤をFBに滴定又は添加し少なくとも1つの酸性同族体の少なくとも一部を有機塩に変換して中和済みFBを形成する工程;及び(c)酸性同族体の有機塩を含む中和済みFBからエタノールを蒸留することによって精製スピリッツ酒を生成する工程;を有することができる。本発明によれば、精製スピリッツ酒を生成する方法は、蒸留工程の前に、中和済みFBから有機塩の少なくとも一部を濾過する工程をさらに有してもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒を生成するのに用いることができるエタノールを有するFBは、ビールであってもよい。
【0044】
本発明によれば、従来のプロセスによって調製及び蒸留したスピリッツ酒は、蒸留前にFB中に存在していた1つ以上の酸性又は有機酸同族体の残留量を含むことができる。本発明の他の面において、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製スピリッツ酒を生成する方法であって、(a)エタノール及び少なくとも1つの有機酸同族体を有する蒸留飲料を用意する工程;(b)アルカリ性処理剤を蒸留飲料に滴定又は添加し少なくとも1つの酸性同族体の少なくとも一部を有機塩に変換して中和済み蒸留飲料を形成する工程;及び(c)有機塩の少なくとも一部が中和された蒸留飲料から分離して、精製スピリッツ酒を生成する工程;を有する方法を提供する。本発明によれば、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離は、濾過を有してもよい。本発明によれば、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離は、濾過からなってもよい。本発明によれば、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離は、第2の蒸留を有してもよい。本発明によれば、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離は、濾過及び第2の蒸留を有してもよい。本発明によれば、全ての有機酸同族体を中和蒸留飲料から分離して、精製スピリッツ酒を形成することができる。
【0045】
本発明の他の面において、本発明は、FB中の酸性同族体を中和除去して、精製FBを生成する中和システムであって、(a)アルカリ性処理剤をFBに滴定又は添加して有機酸同族体を中和することによってFBを処理するように構成されるインライン苛性物質投入システム;及び(b)中和された有機酸同族体を処理済みFBから分離することによって精製FBを生成するように構成される少なくとも1つの分離装置;を有する中和システムを提供する。
【0046】
本発明の他の面において、中和システムは、(a)ブライトビール流中の有機酸同族体を中和するインライン苛性物質投入システム;及び(b)処理済みFB流から有機酸同族体の塩形態を分離するフィルタ又は他のデバイス;を有することができる。
【0047】
上記中和システムのいずれか1つ以上と組合せて有用である本発明によれば、インライン苛性物質投入システムは、FB流、処理済みFB流、又は、その両方のpHを監視するように構成される1つ以上のpH計;アルカリ性処理剤用の容器;アルカリ性処理剤のための計量手段;及び1つ以上のpH計によって検出されたFB流、処理済みFB流、又は、その両方のpHを監視するとともに、計量手段によって容器から分注されるアルカリ性処理剤の量を制御するように構成される中央プログラム可能なロジックコントローラ;を有することができる。
【0048】
本発明によれば、前述の方法又はシステムのいずれかでFBに滴定することができるアルカリ性処理剤の量は、FB中に存在していた有機酸同族体の少なくとも約10%、最大でFB中に存在していた有機酸同族体の少なくとも約99.9%までを中和するのに十分な量とすることができる。本発明によれば、FB中に存在していた有機酸同族体の全て又は実質的に全てが中和されるように、十分なアルカリ性処理剤をFB中に滴定することができる。本発明によれば、FB中に存在していた有機酸同族体の約99.9%未満、少なくともFB中に存在していた有機酸同族体の約25%未満までが中和されるように、十分なアルカリ性処理剤をFB中に滴定することができる。本発明によれば、FB中に存在していた酸性同族体の約90%から最大で約99%までを中和することができる。
【0049】
同様に、中和される有機酸同族体の量は、中和済み又は処理済みFB中に維持される目標pHを達成するのにFBに添加するアルカリ性処理剤、特に水酸化ナトリウムの量によって制御することができる。本発明によれば、処理済み又は中和済みFBの目標pHは、少なくとも約5.0、最大で少なくとも約8.7であってもよい。本発明によれば、処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約8.7未満、約5.0未満までであってもよい。本発明によれば、処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約5.5~約7.0であってもよい。本発明によれば、処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約5.8~約6.5であってもよい。本発明によれば、本発明の思想から逸脱することなく、FBの中和のための目標pH範囲を成すように、5.0以上8.5以下の先に列挙された任意の2つのpH値を選択することができる。
【0050】
本発明によれば、精製スピリッツ酒の生成中の除去又は分離工程中に単独で又は1つ以上のフィルタと組合せて蒸留を用いる場合、精製スピリッツ酒を生成するときの処理済み又は中和済みFBの目標pHは、少なくとも約5.0、最大で少なくとも約8.7であってもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒を製造するときの処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約8.7未満、約5.0未満までであってもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒を製造するときの処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約5.5から最大で約7.0までの範囲であってもよい。本発明によれば、精製スピリッツ酒を製造するときの処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約5.8から最大で約6.5までの範囲であってもよい。本発明によれば、本発明の思想から逸脱することなく、FBを中和して精製スピリッツ酒を形成するための目標pH範囲を成すように、5.0以上8.5以下の先に列挙された任意の2つのpH値を選択することができる。
【0051】
本発明によれば、未処理FB、浄化FB、処理済みFB、又は中和済みFBが蒸留されたかどうかにかかわらず、精製FBは、pHが少なくとも約5.0から最大で少なくとも約8.7までであるのがよい。本発明によれば、精製FBのpHは、約8.7未満、約5.0未満までであってもよい。本発明によれば、精製FBのpHは、約5.5から最大で約7.0までの範囲であってもよい。本発明によれば、精製FBのpHは、約5.5から最大で約6.5までの範囲であってもよい。本発明によれば、精製FBのpHは、約5.8から最大で約6.5までの範囲であってもよい。本発明によれば、精製FBは、本発明の趣旨から逸脱することなく、5.0以上8.5以下の上記の任意の2つのpH値の間の範囲のpHを有するのがよい。
【0052】
本発明によれば、FB中に存在する有機酸のpKに基づき、FB中に滴定されるアルカリ性処理剤の量は、有機酸の少なくとも約10%を引き起こすのに十分なpHを上昇させるのに十分な量であってもよく、この量は、それらの中和時に処理済みFB中にそれらの共役塩基形態で存在するべき有機酸の少なくとも約25%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%とすることができる。本発明によれば、FB中に滴定されるアルカリ性処理剤の量は、有機酸の約99.9%未満を引き起こすのに十分なpHを上昇させるのに十分な量であってもよく、この量は、それらの中和時に処理済みFB中にそれらの共役塩基形態で存在するべき有機酸の約99.5%未満、又は約99%未満、又は約98%未満、又は約97%未満、又は約96%未満、又は約95%未満、又は約90%未満、又は約85%未満、又は約80%未満、又は約75%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約25%未満、又は約10%未満とすることができる。本発明によれば、処理済みFB中の有機酸の約80%から最大で約99.9%までがそれらの共役塩基形態であってもよい。本発明によれば、処理済みFB中の有機酸同族体の約90%から最大で約99%までが、それらの共役塩基形態であってもよい。本発明によれば、処理済みFB中の有機酸同族体の約92%から約97%までが、それらの共役塩基形態であってもよい。本発明によれば、処理済みFB中の有機酸同族体の約95%がそれらの共役塩基形態であってもよい。同様に、本発明によれば、中和時に塩としてそれらの共役塩基形態で存在する有機酸の少なくとも約10%(少なくとも約25%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%とすることができる)は、上記の濾過、蒸留、及び/又は、分離装置のいずれかを用いて、精製FBを形成するときに処理済みFBから分離及び除去することができる。本発明によれば、中和時に塩としてそれらの共役塩基形態で存在する有機酸の約99.9%未満(約99.5%未満、又は約99%未満、又は約98%未満、又は約97%未満、又は約96%未満、又は約95%未満、又は約90%未満、又は約85%未満、又は約80%未満、又は約75%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約25%未満、又は約10%未満とすることができる)は、上記の濾過、蒸留及び/又は分離装置のいずれかを用いて、精製FBを形成するときに処理済みFBから分離及び除去することができる。本発明によれば、約80%から最大で約99.9%までの塩を中和後に処理済みFBから除去することができる。本発明によれば、約90%から最大で約99%までの塩を中和後に処理済みFBから除去することができる。本発明によれば、約92%から最大で約97%までの塩を中和後に処理済みFBから除去することができる。本発明によれば、塩の約95%が中和後に処理済みFBから除去することができる。
【0053】
本発明によれば、上記の方法又はシステムのいずれかは、1つ以上の選択された有機酸同族体の中和を目的とすることができる。本発明によれば、方法又はプロセスを利用して酸性同族体として酢酸を中和及び/又は除去することができる。アルカリ性処理剤を添加すると、酢酸がその後にその共役塩基を伴う塩である酢酸塩に中和される。処理済みFBのpHを酢酸のpKと比較することによって、処理済みFB中の酢酸と比較した酢酸塩の相対存在量を計算することができる。本発明によれば、処理済みFB中の酢酸と比較した酢酸塩の相対存在量は、少なくとも約50:50、最大で少なくとも約99.9:0.1であってもよい。本発明によれば、処理済みFB中の酢酸に対する酢酸塩の相対存在量は、約90:10から最大で約99:1までであってもよい。本発明によれば、FB中の酢酸の全部又は実質的に全部を酢酸塩に中和することができる。本発明によれば、FBのpHが少なくとも8.7に上昇すると、酢酸の全部又は実質的に全部を中和することができる。
【0054】
本発明によれば、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、FB中の酢酸の存在に起因するビネガー様風味及び/又は臭気を減少させるのに十分な量とすることができる。本発明において、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、酢酸によるビネガー様風味を実質的に感じさせない十分な量とすることができる。本発明によれば、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、酢酸によるビネガー様臭気を実質的に知覚不能にするのに十分な量とすることができる。本発明によれば、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、結果として得られる処理済み又は中和済みFBを官能的に純粋にするのに十分な量とすることができる。
【0055】
本発明によれば、蒸留を使用しない上記の中和方法又は中和システムのいずれかによって生成する精製FBのアルコール含有量(ABV)は、少なくとも約0.05容量%、最大でも少なくとも約65容量%である。本発明によれば、精製FBのABVは、約65容量%以下から少なくとも約0.1容量%以下までである。本発明によれば、0.05容量%未満のABVを有する精製FB中に微量のアルコールを保持することができる。本発明によれば、精製FBのABVは、約4容量%から最大でも約20容量%までである。本発明によれば、精製FBのABVは、約10容量%から最大でも約20容量%までである。本発明によれば、精製FBのABVは、本発明の趣旨から逸脱することなく、0.05容量%~65容量%の先に列挙したABV値のうちのいずれか2つを含む範囲内とすることができる。
【0056】
本発明によれば、上記中和方法又は中和システムのいずれかによって生成する精製スピリッツ酒のABVは、少なくとも約5容量%、最大でも少なくとも約95容量%である。本発明によれば、精製スピリッツ酒のABVは、約95容量%以下、約8容量%以下までである。本発明によれば、5容量%未満のABVを有する精製スピリッツ酒中に少量のアルコールを保持することができる。本発明によれば、精製スピリッツ酒のABVは、本発明の思想から逸脱することなく、5容量%~95容量%の先に列挙したABV値のいずれか2つを含む範囲内とすることができる。
【0057】
本発明の他の面において、以下の特性、(a)pHが5.5~8.5、好ましくは5.8~6.5の範囲、及び/又は(b)エチルアルコールを少なくとも10容量%、最大20容量%、及び/又は(c)酢酸と酢酸塩との組合せ濃度が1000ppm未満、を有する精製FBを提供する。本発明によれば、精製FBは、酢酸に対して、精製FBの約0.5グラム/リットル未満、好ましくは約0.25グラム/リットル未満の滴定可能な酸性度、及び約100ppm未満、好ましくは約50ppm未満、より好ましくは25ppm未満のプロトン化酢酸濃度を有してもよい。本発明によれば、精製FBは、測定可能なプロトン化酢酸及び/又は酢酸に対して滴定可能な酸性度を有さなくてもよい。本発明によれば、精製FBは、0ppm~20ppmの範囲のグルテン、好ましくは0ppmのグルテンを有する天然グルテンフリー、グルテン低減、又はグルテン除去FBであってもよい。本発明によれば、精製FBにおけるグルテン濃度は、約0ppm、又は少なくとも約1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、10ppm、もしくは15ppm、最大少なくとも約20ppmであってもよい。本発明によれば、精製FBがビールであってもよい。本発明によれば、精製FBがワインであってもよい。本発明によれば、精製FBがスピリッツ酒であってもよい。本発明によれば、精製FBがリキュールであってもよい。本発明によれば、精製FBがハチミツ酒であってもよい。本発明によれば、精製FBがリンゴ酒であってもよい。本発明によれば、精製FBが日本酒であってもよい。本発明によれば、精製FBが発酵茶であってもよい。本発明によれば、発酵茶は、非限定的な例として、コンブチャであってもよい。本発明によれば、コンブチャはアルコールを有してもよい。本発明によれば、精製FBはNMBであってもよい。本発明によれば、精製FBは、さらに、以下の「定義」の節に列挙されるFBのいずれかであってもよい。本発明によれば、精製FBは、さらに、以下の「定義」の節に列挙されるFBのいずれかの明確なバージョンであってもよい。本発明によれば、上記精製FBのいずれかは、前述の方法及び/又はシステムのいずれかにしたがって生成されてもよい。本発明によれば、上記の精製FBのいずれかは、前述の方法及び/又はシステムのいずれかにしたがって生成される精製FBのいずれかの特性のいずれかを有してもよい。
【0058】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明から当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、バッチ中和システムを用いてFB溶液中の有機酸を中和する苛性物質投入システム及びプロセスの概略図を示す。
図2図2は、連続バッチ中和システムを用いてFB溶液中の有機酸を中和する苛性物質投入システム及びプロセスの概略図を示す。
図3図3は、苛性溶液計量ポンプを用いるインライン連続中和システムを用いて、FB溶液中の有機酸を中和する苛性物質投入システム及びプロセスの概略図を示す。
図4図4は、苛性流制御バルブポンプを使用する、図3と同様の苛性物質投入システム及びプロセスを示す。
図5図5は、ブライトビール流をpH監視・投入システムに迂回させる手段を有する、FB溶液中の有機酸を中和する苛性物質投入システム及びプロセスの別の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義
本明細書において、「及び/又は」という用語は、実体のリストの文脈で用いる場合、実体が単独で又は組合せて存在することを意味する。したがって、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という句は、A、B、C、及びDを個別に含むが、A、B、C、及びDのありとあらゆる組合せ及び部分的な組合せも含む。
【0061】
本明細書において、「ブライトビール(bright beer)」又は「ブライトビール(brite beer)」という用語は、酵母をデカント、濾過、又は他の方法で除去した後の、粗の飲料グレードのエチルアルコール含有発酵液体製品を意味し、「処理されたブライトビール」という用語は、中和又はアルカリ性処理剤で処理した後のブライトビールの溶液を指す。
【0062】
本明細書において、「苛性物質」という用語は、水と相互作用して強塩基性pHを有する溶液を形成すると、完全に解離して水酸化物イオンを生じる化合物を意味する。そのような化合物として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム及び水酸化ルビジウムなどの第I族及び第II族水酸化物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書において、「浄化された発酵飲料」に関して「浄化された」という用語は、麦汁、ビール、又は他の発酵飲料から固体が除去される任意のプロセスを説明する醸造業界内の一般的な用語を指すことができる。本発明によれば、発酵飲料又は精製発酵飲料の浄化は、任意の機械的、化学的、又は物理的分離技術を用いて達成することができる。非限定的な例として、限外濾過、逆浸透濾過、ナノ濾過、粒状活性炭分離、カラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、蒸気圧縮蒸留、イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー、重力、遠心分離、デカンテーション、凍結解凍システム、太陽蒸発システム、及び電気透析反転を挙げることができる。
【0064】
本明細書において、「同族体(congener)」という用語は、発酵中に生成する所望のタイプのアルコール、エタノール以外の物質であり、発酵飲料内に少量存在することができる。従来の同族体の例として、メタノール、アセトン、アセトアルデヒド、エステル、タンニン、アルデヒド及び他の有機化合物などの化学物質がある。
【0065】
本明細書において、「酸性同族体(acidic congener)」という語句は、発酵飲料の味又は匂いに影響を及ぼすことができる有機酸を意味し、その例として、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸、及び酪酸を挙げることができる。「酸性同族体」という語句は、発酵飲料中に存在する全ての酸又は有機酸を指すことができ、又は単一の酸又は有機酸まで存在する酸又は有機酸のサブセットを指すことができる。
【0066】
本明細書において、「発酵飲料」(FB)という用語は、エチルアルコールを含むか含まないかにかかわらず、一般的には酵母が除去された後の、任意の発酵性糖源からの発酵の生成物である液体飲料溶液を意味する。FBとして、アシドフィリン、アグド(agkud)、アレベリー、アマシ(amasi)、アレベリー(aleberry)、アマザケ(amazake)、アポ(apo)、アラ(ara)、バハリナ(bahalina)、ベイス(bais)、バシ(basi)、ビール、ビグネイワイン、ビックル(bikkle)、バイオネード(bionade)、ブランド(blaand)、ボージ(boj)、ボーザ(boza)、ブロットトランク(brottrunk)、カルピス(Calpis)、カウイム(cauim)、チャン(chhaang)、チバークシェーク(Chibuku Shake)、チカ(chicha)、シードル(cider)、コイオールワイン(coyol wine)、ドゥーグ(doogh)、デュハットワイン(duhat wine)、ファスブラース(fassbrause)、ジンジャービール(ginger beer)、枸杞酒(gouqi jiu)、ハンディア(handia)、ハルダリエ(hardaliye)、黄酒(huangjiu)、イブワツ(ibwatu)、インタス(intus)、ジャボル(jabol)、ジュン(jun)、カバルワラン(kabarwaran)、カシリ(kasiri)、ケフィア(kefir)、キルジュ(kilju)、キヌティル(kinutil)、紅茶キノコ(kombucha)、馬乳酒(kumis)、クバス(kvass)、クウェテ(kwete)、ランバノグ(lambanog)、ラッシー(lassi)、マゲウ(mageu)、麦芽飲料、麦芽飲料、マツン(matzoon)、マウビー(mauby)、ムベージ(mbege)、メリッサ(merisa)、ネラ(neera)、ニハマンチ(nihamanchi)、オシクンドゥ(oshikundu)、ペレック(palek)、パームワイン(palm wine)、パンガシー(pangasii)、パラカリア(parakaria)、ペリー(perry)、ポドピウェーク(podpiwek)、プルノ(pruno)、プルケ(pulque)、プル(purl)、レジュベラック(rejvelac)、日本酒、リャジェンカ(ryazhenka)、シャルガム(salgam)、シッケ(sikye)、タプイ(tapuy)、テフイノ(tejuino)、テパチェ(tepache)、テスギノ(tesguino)、スフォン(thwon)ティビコス(tibicos)、ティスウィン(tiswin)、トンバ(tongba)、トノ(tono)、チューバ(tuba)、ウムクォンボティ(umqombothi)、ワイン、及びゼチカ(zincica)が挙げられるが、これらに限定されない。また、「発酵飲料」という用語は、蒸留してスピリッツ酒を形成したFBも含む。
【0067】
本明細書において、「風味付き麦芽飲料」(FMB)という用語は、消費可能な飲料製品を製造するために中性麦芽ベースが濾過され、処理され、処理されると形成される最終的な麦芽飲料製品を意味する。
【0068】
本明細書において、「グルテンフリー」という用語は、FB又は精製FBがグルテンを実質的に含まないことを意味する。グルテンフリー発酵飲料(GFB)は、グルテンを含まない穀類を含む任意の発酵性糖源からの糖を発酵させることによって調製することができる。そのようなグルテンフリー穀物には、それだけに限らないが、キビ、イネ、モロコシ、ソバ及び/又はトウモロコシが含まれる。本発明によれば、GFBは、麦芽、特に大麦麦芽、又はホップが存在しない状態で調製される。
【0069】
本明細書において、「グルテン低減」又は「グルテン除去」という用語は、FB又は精製FBが20ppm未満のグルテンを含むことを意味する。一般に、グルテン低減及びグルテン除去FBは、大麦、ライ麦、及びグルテンを含むが発酵が完了した後に飲料からグルテンを除去する他の発酵性糖源から調製される。しかしながら、グルテン低減及びグルテン除去飲料は、合計で20ppm未満の最小限のグルテンを含む発酵性糖源から調製することができる。
【0070】
本明細書において、「マッシュ(mash)」又は「すりつぶす(mashing)」という用語は、麦芽に通常存在するデンプンを、エチルアルコールを生成するための酵母による発酵に適した単糖類、二糖類、及び三糖類を含む低次糖分子に変換するプロセスを意味する。
【0071】
本明細書において、「中和する(neutralize)」又は「中和する(neutralizing)」という用語は、発酵飲料中の有機酸を含む酸の少なくとも一部をアルカリ性処理剤で中和してそこから有機塩を形成することを意味する。
【0072】
本明細書において、「中性麦芽ベース」(NMB)又は「麦芽飲料ベース」という用語は、ブライトビール又は他の発酵飲料を濾過、処理及び/又は脱色した結果として形成されるエチルアルコール含有液体を意味する。本発明によれば、本発明の方法及びシステムによって産生するNMBは、無色、無味及び/又は無臭である。
【0073】
本明細書において、「官能的に純粋」という用語は、中和及び/又は分離後に有機酸同族体の一部がそれらの酸性形態で依然として存在する場合であっても、中和される前にFB中に元々存在していた有機酸同族体からの知覚可能な味又は匂いが実質的にない中和又は精製FBを指す。
【0074】
本明細書において、「精製発酵飲料」に関して「精製」という用語は、発酵飲料内の1つ以上の酸性同族体の一部又は全部がアルカリ性処理剤によって中和されて塩を形成し、その後、塩の一部又は全部が中和発酵飲料から除去されて精製発酵飲料が製造される、本発明の方法及びシステムによって製造される発酵飲料を指すことができる。本発明によれば、麦汁、ビール、又は他の発酵飲料内の固形物に関して浄化されているが、発酵中に自然に生成する酸性同族体の一部又は全てが除去されていない浄化発酵飲料から、精製発酵飲料を調製することができる。本発明において、精製発酵飲料は、固形分のみが除去される発酵飲料から調製されてもよく、以前に浄化されていない発酵製品から調製されてもよい。本発明によれば、分離技術又は装置が、塩に加えて、浄化中に通常除去されるであろう固体を除去する限り、発酵飲料は同時に浄化及び精製することができる。本発明によれば、浄化FBを形成することなく、中和発酵飲料を精製して精製FBを形成することができ、後に精製FBを浄化して浄化FBを形成することができる。
【0075】
本明細書において、「滴定可能な酸性度」という用語は、一般的にはグラム/リットルとして表される、溶液中の滴定可能な酸の総質量の測定値である。滴定可能な酸の総質量には、ヒドロニウムイオン及び酢酸(CHCOOH)などの依然としてプロトン化される弱酸の両方が含まれる。醸造業界では、飲料内の知覚可能な酸性度を評価するために、滴定可能な酸性度を用いて、所定のFB、GFB、グルテン減少又はグルテン除去FB、NMB、FMB、飲料スピリッツ酒、又は他の中和製品に存在する有機酸を定量化することが多い。
【0076】
本明細書において、「麦汁」又は「麦芽抽出物」という用語は、エチルアルコールを生成するための酵母による発酵に適したすりつぶし工程及び/又は調理工程から生じる糖に富む溶液又は混合物を意味する。
【0077】
中性麦芽ベースの作製
本発明は、未加工又は未処理FB及び測定可能なレベルの酸性同族体、特に有機酸同族体を含む他の発酵生成物から中和済み又は精製FBを調製する方法及びシステムを提供する。本明細書に提示する方法は一般に、アルカリ性処理剤を発酵生成物、FB又はブライトビールに添加して、発酵生成物、FB又はブライトビール中の酸性同族体の少なくとも一部と反応又は中和して塩を形成する工程を含む。次いで、処理したブライトビール又はFBから塩の少なくとも一部を分離して、精製FBを生成することができる。
【0078】
FBのための本発明のシステム及びプロセスを一般的に説明するために、ブライトビール溶液又はブライトビール流から精製NMBを製造するシステム又はプロセスの例を以下に説明する。いくつかの態様では、精製されたNMBは、無色、無味及び/又は無臭であり、未処理の発酵生成物及びFB中の有機酸同族体のレベル又は量と比較して、低減したレベル又は量もしくは無視できるレベル又は量の有機酸同族体を含む。特定の理論によって制限されるものではないが、精製したNMBから製造したFMBは、醸造及び発酵プロセス後に天然に存在する有機酸を除去する結果として、より心地よい味プロファイルを有することができる。同様に、NMBから有機酸を除去することにより、様々な風味剤、特に従来のNMBに天然に存在する有機酸と組合せて不快な味付きFMBを生成するものを添加することができるより汎用的なNMBが生成される。さらに、最終的に同じであるか又は同等の感覚刺激品質のFMBを生成するために、アルカリ性処理剤の添加によって中和されていないNMBと比較して、本発明の方法によって生成するNMBと組合せるのに必要な風味剤、特に糖はより少ないと考えられる。
【0079】
NMBを醸造する従来の方法は当技術分野で広く知られており、特に米国特許第4,440,795号、第5,294,450号、第5,618,572号、及び第7,008,652号、並びに米国特許出願公開第2014/0127354号に詳細に記載されており、その開示内容はその全体が参照により本願に組み入れられる。一般に、従来のNMBを製造するには、まず麦芽の供給品を入手しなければならない。麦芽は、ビール及び他の醸造飲料の製造に適した当技術分野で公知の任意の従来のタイプのものであってよい。適切な麦芽の1つの非限定的な例として、Briess Malt & Ingredients Co.から入手可能な「ブリュワーズ・モルト(Brewers Malt)」がある。次いで、麦芽を脱イオン水と合わせ、高温で加熱してマッシュを生成する。この段階で、マッシュは、酵母によってエチルアルコールに発酵可能な様々な麦芽由来の発酵性糖(例えば、マルトース及びマルトトリオースが挙げられるが、これらに限定されない。)、並びに酵母によってエチルアルコールに分解することができないいくつかの麦芽由来の非発酵性糖(例えば、マルトテトラオース及びマルトペンタオースが挙げられるがこれらに限定されない)を含む。
【0080】
しかしながら、すりつぶし工程中に、麦芽からのリン酸塩及びタンパク質の沈殿は、不溶性カルシウム塩の形成をもたらす可能性があり、これは、マッシュ生成物のpHの低下と強く相関している。さらに、いくつかの麦芽品種は、最終的にマッシュに移行する高レベルの乳酸塩(その開示内容が参照により全体的に本願に組み入れられるSouth, J. B. “Variation in pH and Lactate Levels in Malts” (1996) J. Inst. Brew. 102: 155-159を参照のこと)、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩を含む。例えば、Southは、いくつかの種類の麦芽における乳酸塩の濃度が麦芽100グラム当たり17.6~126.3ミリグラムの範囲であると決定した(乾燥重量)。乳酸塩濃度は麦汁のpHに反比例し、最高乳酸塩濃度の5.59から最低乳酸塩濃度の6.02までの範囲である。
【0081】
マッシュ生成物を生成した後、当技術分野で公知のいくつかの方法を利用して発酵に適した糖に富む麦汁を生成することができる。そのような方法として、デンプンを分解することができる酵素を添加すること、及び/又はマッシュを順次加熱してデンプンの糖への化学変換を触媒することができる酵素を添加することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
次に、マッシュを濾過する醸造技術において公知の任意の装置を用いて、マッシュを物理的に処理し、そこから固形物を除去する。次いで、麦汁又は麦芽抽出物として口語的に知られている液体濾液を収集し、追加の発酵性糖(例えば、デキストロース、スクロース及び/又はコーンシロップ)及び場合により「ホップ材料」の存在下で淹出ケトルに移すことができ、ホップ材料は、ホップコーン、予備異性化ペレット化ホップ、及び/又は溶媒抽出濃縮ホップ抽出物を含むがこれらに限定されない多種多様な異なる製品を包含することができる。次いで、酵母を麦汁に添加して発酵を開始させることができ、発酵性糖が残存しなくなるまで発酵を継続させる。一般的に、発酵プロセスは7~11日間続くことができるが、発酵時間は、温度を含むがこれに限定されない多くの要因に最終的に依存する。温度が上昇すると、一般的には発酵は速くなるが、過剰な熱はいくつかの問題を引き起こす可能性があり、しばしば回避される。
【0083】
発酵が完了した後、生成物からアルコール含有発酵生成物からの酵母を沈降させ、従来のデカンテーション又は濾過技術によって除去し、ブライトビールを形成する。ブライトビールは一般的に、存在する有機酸の同一性及び総濃度に基づいて、pHが約4.0+/-0.25であり、通常は着色しており、芳香があり、FMBの作製に使用するのに適していない。しかしながら、マッシュ生成物中の有機酸を含む酸は、醸造プロセス全体を通して保持され、濾過技術又は精製技術のいずれについても、FMBを形成するのに特定の風味添加剤と混合したときに有機酸同族体が望ましくない味又は臭気に寄与する役割には向いていない。対照的に、後述の本発明の方法のいずれかによって生成するNMBは、無色、無味及び/又は無臭とすることができる。より一般的には、後述の方法及びシステムのいずれかを用いて任意のタイプのFBから酸性同族体を除去し精製FBを生成することは、飲料を消費する人にとってより心地よい感覚刺激体験を作り出すことができる。
【0084】
本発明の態様
ある態様において、本発明は、1つ以上の有機酸同族体を有するFB溶液から精製FBを生成する方法であって、(a)1つ以上の有機酸同族体の少なくとも一部をその共役塩基に変換して有機塩を形成するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFBに滴定又は添加することによって、FB溶液に含まれる1つ以上の有機酸同族体を中和する工程;及び(b)有機塩を除去することにより精製FBを生成する工程;を有する方法を提供する。本発明のある態様において、十分な量のアルカリ処理剤は、FB溶液のpHを少なくとも約5.0、少なくとも約5.5、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.5、6.8、7.0、7.5、7.8、8.0、8.2、又は8.5を含んで、少なくとも約8.7を含んで上昇させるのに十分である。いくつかの態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB溶液のpHを約8.7未満、約8.5、8.2、8.0、7.8、7.5、7.0、6.8、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、6.0、5.9、5.8、又は5.5未満を含んで、約5.0未満にまで上昇させるのに十分である。いくつかの態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB溶液のpHを約5.5から最大で約5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分である。いくつかの態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB溶液のpHを約5.8から最大で約5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分である。いくつかの態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB溶液のpHを約6.0から最大で約6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分である。いくつかの態様において、処理済み又は中和済みFBの目標pHは、約6.5から最大で約6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までである。いくつかの態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、本発明の趣旨から逸脱することなく、FB溶液のpHを、5.0以上8.5以下で先に列挙した任意の2つのpH値を含むpH範囲まで上昇させるのに十分である。有機酸同族体として、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸及び酪酸などの有機カルボン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0085】
pH処理済みFB溶液から有機酸同族体の塩形態を除去又は分離した後、得られた精製FBのpHは、精製FB中に残っている任意の有機酸のpKに応じて、未濾過及び中和されたブライトビールのpHと僅かに異なり、部分的に低いpH、又は部分的に高いpHを有することができる。いくつかのある態様において、精製FBは、有機酸同族体が中和されているが除去されていないpH処理FBよりも低いpHを有する。いくつかの態様において、中和された有機酸同族体は、その後の除去工程を経ることなく、pH処理済みFB中に保持することができる。
【0086】
アルカリ性処理剤は、有機酸と反応して中和することができる強塩基及び弱塩基の両方を含む1つ以上の塩基性化合物を含むことができる。適切な強塩基として、アルカリ(グループI)及びアルカリ土類(グループII)金属水酸化物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び水酸化ルビジウムなどの、水を含む溶液中の水酸化物イオンの濃度を増加させる少なくとも1つのアレニウス塩基を有する苛性溶液を挙げることができるがこれらに限定されない。苛性溶液のストック溶液は任意の濃度とすることができるが、いくつかの態様において、濃度は十分に高く、最少量の苛性溶液を安全に添加して、その体積に実質的に影響を与えることなく、ブライトビール内の酸性同族体を中和する。いくつかの態様において、苛性溶液は、水酸化ナトリウムの最大50%(v/v)の溶液を有する。いくつかの態様において、苛性物質は、水酸化カリウムの50%(v/v)までの溶液を有する。
【0087】
先に列挙した金属水酸化物のいずれか1つと反応すると、少なくとも1つの有機酸同族体は、以下の式1の正味イオン方程式に従って塩及び水に変換される。
【0088】
【化1】
【0089】
非限定的な例では、有機酸同族体が酢酸である場合、中和反応は以下に示す式2に従って進行する。
【0090】
【化2】
【0091】
他の態様において、アルカリ性処理剤は弱塩基を有することができる。一般に、弱塩基は水中で完全に解離せず、その共役酸と平衡状態で存在することができる。強塩基と同様に、十分な弱塩基を添加して、FB中の酸性同族体の一部を中和することができる。いくつかの態様において、存在する全ての酸性同族体を完全に中和するのに十分な弱塩基を添加する。適切な弱塩基として、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムを挙げられることができるがこれらに限定されない。いくつかの態様において、アルカリ性処理剤は水酸化アンモニウムを有する。非限定的な例として、酢酸と水酸化アンモニウムとの間の中和反応の式を以下の式3に示す。
【0092】
【化3】
【0093】
しかしながら、弱酸と弱塩基との間の任意の反応において、得られた正味のイオン方程式は、以下の式4に従って水の生成をもたらす。
【0094】
【化4】
【0095】
他の態様において、少なくとも1つの酸性同族体の中和は、FB中の有機酸同族体の少なくとも一部を有機塩又はその濾過可能な形態に変換するのに十分な量のアルカリ性処理剤をブライトビールに滴定することによって達成することができる。いくつかの態様において、FB中の有機酸同族体の全て又は実質的に全てが有機塩又はその濾過可能な形態に中和され、これは、FB中の有機酸同族体のそれぞれの当量点に達するか又はそれを超えて有機酸同族体をそれらのそれぞれの共役塩基に変換するのに十分なpHを上昇させることによって達成することができる。弱酸をNaOHなどの強塩基で滴定すると、pH7を超えて当量点が生じる。非限定的な例として、酢酸のpKは4.75であり、酢酸の全部又は実質的に全部が酢酸塩に変換された当量点でのpHは、一般的には約8.7~8.8である。FBのpHを強塩基により当量点を超えて上昇させると、酢酸の濃度に測定可能な影響を及ぼすことなく、単にさらなる水酸化物イオンが溶液に追加される。
【0096】
いくつかの態様において、測定可能な有機酸を実質的に含まない精製NMBは、例えば完全に風味がなく、無臭で、無色の飲料が望まれる場合に製造することができる。そのように精製したNMBは、風味付き飲料の製造に導入された風味のいずれとも衝突することなく、最も幅広い種類の風味付き飲料のベースとして汎用的に使用することができる。しかしながら、いくつかの態様において、中和後に有機酸の一部が保持されている精製FB又はNMBが望ましい場合がある。いくつかの態様において、いくつかの有機酸によって提供される風味は、風味付き飲料を製造するのに風味プロセス中に添加される化合物の臭気及び/又は味を補完又は増強することができ、これらの酸の完全な中和は、人の感覚刺激体験に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0097】
したがって、いくつかの態様において、少なくとも1つの酸性同族体の中和は、FB又はブライトビール中の有機酸の少なくとも一部を有機塩又はその濾過可能な形態に変換するのに十分な量のアルカリ性処理剤をFB又はブライトビールに滴定することによって達成することができる。いくつかの態様において、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、FB中の有機酸同族体の少なくとも約10重量%を中和するのに十分な量であり、この量は、FB中の有機酸同族体を少なくとも約25重量パーセント(%)、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%、又は少なくとも約99.9重量%とすることができる。いくつかの態様において、約99.5重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、60重量%、50重量%、又は25重量%未満から10重量%未満までを含む、FB中の有機酸同族体の約99.9重量%未満が中和される。
【0098】
FB中の有機酸の中和の程度を決定する1つの方法は、処理済み又は精製FBを有する未処理FBの滴定可能な酸性度(多くの場合グラム/リットル又は百万分率として表される、溶液の体積中のヒドロニウムイオン(H)及びプロトン化弱酸の総質量の計算)を比較することである。pHは溶液中のHイオンの量のみを表すので、滴定可能な酸性度は醸造及びワイン製造産業で一般的に使用される。対照的に、ヒトは、Hイオンとプロトン化弱酸の両方から酸性を知覚することができる。滴定可能な酸性度は、一般的には滴定の当量点付近である所定の値まで飲料のpHを上昇させるために、飲料にどれだけの量の塩基、通常はNaOHを添加しなければならないかを計算することによって決定される。醸造業界では、所定のpH値は、存在する有機酸の同一性及び相対量に基づいて、一般的には約8.0~8.5である。
【0099】
さらに、FB自体の知覚される酸性度は、滴定可能な酸性度を用いて評価することができる。滴定可能な酸性度が減少するにつれて、知覚される酸性度も減少し、最終的に、人がFB中の酸の味及び/又は匂いを知覚することができない点に達することができる。いくつかの態様において、精製FBの滴定可能な酸性度は、約0.75、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、又は0.05g/L未満を含む約1グラム/リットル(g/L)未満から約0.01g/L未満までである。
【0100】
いくつかの態様において、先に列挙した酢酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸及び酪酸性同族体を含む単一の有機酸同族体の中和を定量することができる。いくつかの態様において、定量される単一の有機酸同族体は酢酸である。アルカリ性処理剤をFBに添加すると、続いて酢酸が酢酸塩に変換される。約4.75である酢酸のpKでは、溶液中の酢酸に対する酢酸の比は50:50である。溶液のpHが増加するにつれて、酢酸と比較した酢酸塩の相対存在量も増加するため、pKよりも1pH単位上の5.75では、酢酸塩対酢酸の比が90:10、pKよりも2pH単位上では酢酸塩対酢酸の比が99:1などである。したがって、いくつかの態様において、FBに添加するアルカリ性処理剤の量は、酢酸と比較して酢酸塩の相対存在量を少なくとも約50:50に上昇させる、少なくとも約60:40、70:30、75:25、80:10、85:15、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、又は99.5:0.5を含んで、最大で少なくとも約99.9:0.1に上昇させるのに十分な量であってもよい。いくつかの態様において、処理済みFB中の酢酸に対する酢酸塩の相対存在量は、約90:10~約99:1、又は約92:8~約98:2、又は約95:5である。いくつかの態様において、FB中の酢酸の全部又は実質的に全部が酢酸塩に中和される。いくつかの態様において、FBのpHが少なくとも8.7に上昇すると、酢酸の全部又は実質的に全部が中和される。
【0101】
同様に、FB中の酢酸の濃度を分析的に決定することができる。FB中の酢酸濃度を決定する分析方法の非限定的な例には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び酵素アッセイが含まれる。酢酸の濃度を決定するそのような酵素アッセイキットの1つは、Megazyme(登録商標)から入手可能なK-ACETRM酢酸試験キットである。アッセイ条件下では、FBサンプル中に存在する酢酸の全部又は実質的に全部が酢酸塩に変換される。しかしながら、FBサンプルのpHが既知である場合、上述のように、pKに基づいて酢酸がどの程度存在するかを決定することができる。例えば、FBのpHが6.35であり、サンプル中の酢酸塩の濃度が300ppmであると決定した場合、処理済みFB中の酢酸の約4%、すなわち約12ppmがプロトン化形態で存在する。
【0102】
したがって、いくつかの態様において、中和中に形成する有機酸同族体の塩を分離及び除去した後の精製FB中の酢酸と酢酸塩の組合せ濃度は、重量で約1000ppm未満とすることができ、これは、約900ppm未満、又は約800ppm未満、又は約700ppm未満、又は約600ppm未満、又は約500ppm未満、又は約400ppm未満、又は約300ppm未満、又は約200ppm未満、約100ppm未満、又は約50ppm未満とすることができる。いくつかの態様において、精製FB中の酢酸と酢酸塩の組合せ濃度は、約200ppm~約500ppmの範囲である。いくつかの態様において、精製FB中の酢酸と酢酸塩の組合せ濃度は、約300ppm~約400ppmの範囲である。
【0103】
別の態様において、精製FB中のプロトン化形態の酢酸の濃度は、そのpHに基づき、約400、300、200、100、75、50、25、10、又は5未満、約1ppm未満までを含め、約500ppm未満である。いくつかの態様において、精製FB中のプロトン化酢酸の濃度は、約10ppm~約100ppm、又は約25ppm~約75ppmの範囲である。いくつかの態様において、精製FB中にプロトン化酢酸は実質的に存在しない。
【0104】
工業的な醸造プロセス内で、ブライトビール及び他の未処理FBは、次のステーション/処理工程に圧送される前に、又はFBがある場所から別の場所に絶えず圧送される連続プロセスの過程にわたって特定のpHを達成しなければならない単一バッチで中和することができる。液体のpHを監視及び調整するいくつかの機器及び電極システムが当技術分野で知られている。そのような非限定的な例には、バッチ処理、インライン処理、及び連続撹拌槽pH監視及び投入システム、例えばコネチカット州スタンフォード所在のOmega(登録商標)Engineeringから入手可能なものが含まれる。
【0105】
本発明のある態様において、図1に示すように、苛性物質投入システム及び方法は、決定した量の有機酸同族体を含むFBを保持する混合容器を含むことができる。FBの決定した量は、容器33の内容物のための計量器35、容器33内の体積インジケータ、又は容器33内へのFB又はブライトビールの体積量の送達などによって、質量に基づくことができる。決定した量のFBを処理して有機酸を中和した後、処理済みFB又は決定した量のFBを容器33から濾過後装置又は分離装置4へと排出して、有機酸の塩形態を除去することができる。
【0106】
FB中の有機酸同族体を中和するのに混合容器に添加するアルカリ性処理剤の量を決定するために、既知の濃度のアルカリ性処理剤を、目標pHに達するまで、別個の容器に分注した既知量のFBに滴定することができる。目標pHは、先に列挙したpH値のいずれかを含むことができる。目標pHに達したら、周知の計算を用いて、FBに滴定されたアルカリ性処理剤の既知の濃度及び体積を用い、FB中の有機酸同族体に対するアルカリ性処理剤のモル比を決定することができる。アルカリ性処理剤と有機酸同族体との間のモル比が既知になると、同じpHに達するために、混合容器内の既知の体積のFBに、どの程度の量のアルカリ性処理剤を混合しながら添加するかを決定することができる。所定含有量のFBを処理するのに用いられるアルカリ性処理剤は、サンプルを滴定するのに用いられるのと同じアルカリ性処理剤であっても、化学量論的等価量の異なるアルカリ性処理剤であってもよい。次いで、処理した所定含有量のFBを容器から濾過後装置又は分離装置へと排出して、有機酸の塩形態を除去することができる。
【0107】
別の態様において、濾過後装置又は分離装置4は、中和された有機酸塩、未処理のFBに元々存在する他の同族体、及び小分子及び金属キレートを含むがこれらに限定されない固体、タンパク質及び核酸などの高分子、細菌及び/又はウイルスなどの微生物、並びに微粒子を除去する1つ以上のフィルタを有することができる。フィルタの孔径は、精製FBの所望の特性に基づいて選択することができ、0.1ミクロン未満を含めて、1000ミクロン未満から1ミクロン未満までの範囲とすることができる。さらに、1つ以上の濾過機構を利用することができ、濾過機構として、粗濾過膜、マイクロ濾過膜、ナノ濾過膜、及び限外濾過膜、逆浸透濾過、珪藻土濾過、並びに木炭濾過が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、濾過後装置又は分離装置4は、逆浸透濾過装置を有することができる。他の分離装置は、イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー、重力、遠心分離、及び/又は、デカンテーションを含むことができる。
【0108】
別の態様において、濾過後装置又は分離装置4は、精製したスピリッツ酒を製造するプロセスで利用することができる1つ以上の蒸留装置を有することができ、この場合、エタノールを含有する画分は、中和した有機酸塩、並びにすりつぶし工程中に生成又は存在した他の微量化学成分を含有する水性画分から分離される。蒸留装置は、カラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、及び蒸気圧縮蒸留装置を含むことができるが、これらに限定されない。
【0109】
別の態様において、濾過・蒸留装置は、組合せて又は互いに完全に分離して利用することができる。例えば、ある態様において、蒸留を用いずに有機酸同族体を濾別することによって精製FBを製造することができる。いくつかの態様において、濾過を用いずに、塩形態の有機酸同族体を含む中和済みFB溶液からアルコールを留去することによって、精製スピリッツ酒を製造することができる。いくつかの態様において、精製スピリッツ酒は、最初に処理済みFBから有機酸同族体の塩形態を濾別し、次に濾液を蒸留して精製スピリッツ酒を生成することにより生成することができる。
【0110】
いくつかの態様において、本発明は、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸同族体を有する精製FBを生成する方法であって、(a)少なくとも1つの酸性同族体を有するFBを用意する工程;(b)十分な量のアルカリ性処理剤をFBに滴定してFBを中和し、少なくとも1つの酸性同族体の全て又は実質的に全てをFBから有機塩に変換することにより、処理済みFBを生成する工程;及び(c)有機酸の塩形態を中性FBから分離してFBを生成する工程;を有する方法を提供する。
【0111】
いくつかの態様において、本発明は、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸性同族体を有する精製スピリットを生成する方法を提供し、この方法は、(a)エタノール及び少なくとも1つの有機酸性同族体を有するFBを用意する工程;(b)十分な量のアルカリ処理剤をFBに滴定又は添加することにより少なくとも1つの有機酸性同族体の少なくとも一部を中和して、少なくとも1つの酸性同族体を有機塩に変換し、中和FBを形成する工程;及び(c)酸性同族体の有機塩を含む中和済みFBからエタノールを蒸留することにより精製スピリッツ酒を生成する工程;を有することができる。いくつかの態様において、精製スピリッツ酒を生成する方法は、蒸留工程の前に、中和済みFBから有機塩の少なくとも一部を濾過する工程をさらに有する。
【0112】
いくつかの態様において、精製スピリッツ酒は、測定可能なレベルの酸性同族体、特に有機酸を依然として含むが、既に蒸留した飲料から生成することができる。いくつかの態様において、低減したレベル又は無視できるレベルの有機酸性同族体を有する精製スピリッツ酒を生成する方法は、(a)エタノール及び少なくとも1つの有機酸性同族体を有する蒸留飲料を用意する工程;(b)十分な量のアルカリ処理剤を蒸留飲料に滴定又は添加することにより少なくとも1つの有機酸性同族体の少なくとも一部を中和して、少なくとも1つの酸性同族体を有機塩に変換し、中和された蒸留飲料を形成する工程;及び(c)有機塩を中和した蒸留飲料から分離して、精製スピリッツ酒を生成する工程;を有することができる。いくつかの態様において、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離が濾過を有する。いくつかの態様において、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離が濾過のみからなる。いくつかの態様において、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離が第2の蒸留を有する。いくつかの態様において、中和した蒸留飲料からの有機塩の分離が濾過及び第2の蒸留を有する。いくつかの態様において、有機酸同族体の全て又は実質的に全てを中和した蒸留飲料から分離して、精製スピリッツ酒を形成する。
【0113】
別の態様において、図2に示すように、苛性物質投入システム10は、溶液を均質化する混合デバイス34を伴って、所定量の処理済みFB溶液を保持する連続バッチ又はバッチ混合容器33;容器33内に保持された処理済みFB溶液のpHを検出するpH計;を有する混合手段を有することができる。コントローラ26と通信するpH計32は、タンク内に保持された処理済みFB溶液のpHを検出し、コントローラ26は、FB流20の速度又は量と、pH計32により又はFB流20のpHにより又はその双方により測定される処理済みFB溶液のpHとに基づいて、容器33内に計量供給される十分な量の苛性溶液が調整される。この態様において、処理済みFB溶液24の流出は、実質的に連続的とすることができる。
【0114】
容器33がバッチ混合タンクである態様において、所定量のFB溶液1がタンク33に装填され、目標pH範囲内のpHが達成されるまで、制御された量の苛性溶液がバッチ量のFB溶液に通されるか又は計量供給される。次いで、バッチのpH処理済みFBは、タンク33から後濾過4に排出される。
【0115】
別の態様において、図3に示すように、pH監視及び投入システムはインライン苛性物質投入システムである。インライン苛性物質投入システム110は、FB流1を精製FB又はNMB6の流出に処理する。FB流1はインライン苛性物質投入システム110に進み、インライン苛性物質投入システム110でのFB流1のpH処理後、得られた中和済みFB24は後濾過4によって処理され、有機酸の塩形態を除去又は濾過して、精製FB6を生成する。
【0116】
インライン苛性物質投入システム110は、容器14から2つのpH計の間に配置される配管システム16の接合部へ向かう苛性溶液の量を計量する計量ポンプ12として示す計量手段を含み、2つのpH計は、インライン苛性物質投入システム110に入るFB流20のpHを検出する第1のpH計18、及び苛性溶液の添加後の処理済みFB流24のpHを検出する第2のpH計22を含む。2つのpH計18及び22並びに計量ポンプ12は、プログラム可能なロジックコントローラ(PLC)26とデータ信号転送及び制御通信状態にあり、通信・制御ループ28が形成され、通信・制御ループ28は、FB流のpHを検出し、FB中の有機酸同族体を中和するのに十分な苛性溶液の量を決定し、FB流をFB流20内の有機酸同族体を中和するのに十分な目標pH範囲まで中和するのに十分なFB流に添加される苛性溶液の量及び/又は速度を制御する。いくつかの態様において、濃縮苛性ストック組成物は、50%(w/v)水酸化ナトリウム溶液とすることができる。
【0117】
FB流20の流量は、FB1を作成する上流の処理条件によって決定される。体積流量は通常一定であるが、ある程度の変動が予想され得る。本発明のある態様において、FB1の上流の流れを、保持容器内に捕捉し、より一定の体積速度で容器からインライン苛性物質投入システム110に圧送することができる。保持容器は、インライン苛性物質投入システム110へのFB流20の流量を維持又は調節しながら流入するFBの変動を可能にするのに十分な容積を有する。
【0118】
一般的には、苛性物質投入システムに入るFBのpHは約6.0未満である。いくつかの態様において、FBのpHは、約5.0未満、又は約4.0未満、又は約3.0未満である。しかしながら、pHは、FB中の酸性同族体の同一性及び濃度に従って変動させることができる。例えば、酢酸、乳酸、プロピオン酸及び酪酸のpK値は、それぞれ4.75、3.86、4.87及び4.82である。Smithによって報告されるように(上記の“Variation in pH and Lactate Levels in Malts,”を参照のこと)、様々な麦芽品種における乳酸塩の濃度は、麦芽100グラム当たり17.6~126.3ミリグラムの範囲であった。pH計18で決定した、苛性物質投入システムに入るFBのpHに基づいて、PLC26は、計量ポンプ12によってFB流に添加する苛性溶液の量を決定し、pHを目標pH範囲内に上昇させて有機酸同族体を中和する。
【0119】
後述する混合手段の流出側に位置する第2のpH計22は、苛性溶液を注入又は添加した後のpH処理済みFB流のpHをPLC26に伝達することによりフィードバック制御を行う。本発明のある態様において、FB流がインライン苛性物質投入システム110を通過した後、中和済み又は処理済みFBは、有機酸同族体を中和するのに十分なpHを有する。PLC26は、中和済み(処理済み)FBのpHが目標pH範囲内になるまで、インライン苛性物質投入システム110によって注入される苛性溶液の量又は速度を増減するように構成することができる。
【0120】
また、インライン苛性物質投入システム110は、FB流及び苛性溶液を、目標pH範囲に調整したpHを有する均質なpH処理溶液に混合する混合手段を含むこともできる。混合手段は、pH処理溶液の均一性を確保し、中和制御及び結果を改善する。混合手段のある態様は、図3に示すように、スタティックインラインミキサなどのインラインミキサ30である。図5に示す別の態様において、混合手段は、苛性溶液がFBの流れと接触する時間を増加させるための保持配管を有することができる。保持配管は、配管内に一又は複数のエルボ又はターンを含むことができる、ある長さの流通配管31を有することができ、流通配管及び/又は一又は複数のエルボの長さは、pH処理溶液を均質化するのに十分である。
【0121】
インライン苛性物質投入システム110の代替態様において、図4に示すように、圧力ポンプ36からの圧力下で溶液を調整する流量制御弁(FCV)38を用いて十分な量の苛性溶液が制御される。
【0122】
別の代替態様において、図5に示すように、インライン苛性物質投入システム210は、FB1の流れを、本明細書で上述した後濾過システム4として示す濾過システムから、インライン苛性物質投入システムとして示すpH監視及び投入システムに迂回させる手段を有することができる。方向転換手段は、FB1の流れのための入口と、濾過システムと流体連通する第1の出口41と、インライン苛性物質投入システムと流体連通する第2の出口42とを有する三方選択弁40を有する。三方選択弁40は、手動又は機械的に作動させることができ、機械的作動は、制御システムによって制御することができる。また、三方選択弁40は、その位置を検出するセンサ又はスイッチも含み、該スイッチは、FB1を濾過システムに迂回させるときに第1の位置を検出するスイッチ、FB1をインライン苛性物質投入システムに迂回させるときに第2の位置を検出するスイッチを含むことができる。選択弁40を通る流れを遮断する遮断位置を含むことができる随意的な他の位置も検出することができる。
【0123】
FB流20が始動して従来の動作状態にある間、三方選択弁40は、FB1を濾過システムに迂回させるためにその第1の位置に配置される。インライン苛性物質投入システムの動作準備が整うと、三方選択弁40によって具現化する方向転換手段は、FB1をインライン苛性物質投入システムに方向転換するためにその第2の位置に作動し、FB流20がインライン苛性物質投入システムに方向転換したことをPLC26に知らせるスイッチが作動する。安定した流れが達成すると、PLC26は、計量ポンプ12の始動及びpH計118(及び122)による検出を開始して、処理された溶液のpHを目標pH範囲にする。
【0124】
計量ポンプ12は、図3に図示及び記載するように、一対の隣接するpH計118及び122として示すpH計の上流の接合部16でFB1内に苛性溶液を分注する。苛性溶液は、保持配管31内でFB流に十分に混合される。前述のように、PLC26は、計量ポンプ12の動作及び苛性流量を制御して、pH処理された溶液の結果として生じるpHをその目標pH範囲内に維持する。
【0125】
保持配管31は、配管内に1つ以上のエルボ又はターンを含むことができる、ある長さの流通配管31を有し、流通配管及び/又は1つ以上のエルボの長さは、pH処理された溶液を均質化し、流動流のpHの反復可能で一貫したな測定を確保するのに十分である。図示の態様において、保持配管は、複数の長さの配管及び複数の90度のエルボを含み、pH処理溶液の均一な混合のために流れに所定量の乱流をもたらす。
【0126】
2つのpH計を使用するいくつかの態様において、第1のpH計118、及び第1のpH計118に隣接して第1のpH計の下流にある第2のpH計122がある。PLC26は、pH処理済みFBの均一性を評価するのに、2つのpH計118及び122からpH読み取り値を受信して比較することができる。pH計18及び22におけるpH処理済みFBのpHが同一又はほぼ同一である場合、pH処理済みFBは均質であると推定される一方、pH計18及び22におけるpH読み取り値が異なる場合、pH処理済みFBは均質ではないと推定され、保持チューブ40内でより多くの混合が必要であることを示す。そのような態様において、保持配管は、追加の混合のために混合流を導くことができる補助配管を有することができる。
【0127】
また、図5に示すように、インライン苛性物質投入システム210は、pH処理済みFB又はビール流内の有機酸同族体が中和しているかどうかを決定するのに利用することができる導電率計42をさらに有することができる。一般に、導電率計は、溶液内のイオン化種の量を測定することによって溶液内の導電率を測定する。導電率を測定することは、導電率を迅速に測定することができ、導電率が製造ランごとに同等であることが多いため、一定温度でのインライン酸塩基滴定に有用であることが多い。
【0128】
例えば、1つ以上の弱酸の溶液中に強塩基を滴定する酸塩基滴定では、強塩基の添加が弱酸溶液の導電率を変化させる。最初に、NaOHの添加は、溶液内のH濃度がゆっくりとしか減少せず、導電率が僅かに低下する緩衝溶液を作り出す。導電率の低下は、より多くの塩基が溶液に導入され、より多くのNaが弱酸の共役塩基と共に生成され、溶液の導電率を増加させるにつれて打ち消される。全ての酸が中和され、当量点に達した後、さらなるNaOHを添加すると、一般的には、OHイオンが蓄積し始め、溶液内のイオン種を支配し始めるので、系の導電率が急激に増加する。
【0129】
計量ポンプ12及び導電率計42は、PLC26とのデータ信号転送及び制御通信を行い、通信及び制御ループ28内にある。PLC26は、処理済みFBの導電率が目標導電率範囲内になるまでインライン苛性物質投入システム110によって注入される苛性溶液の量又は速度を増減するように構成することができる。別の態様において、1回の製造ランから未処理FB流に計量供給される苛性溶液の流量及び/又は体積を利用して、連続する製造ランで未処理FB流に計量供給される苛性溶液の初期流量及び/又は体積を設定することができる。
【0130】
当業者に明らかで自明であるように、十分な量及び/又は速度の苛性溶液を制御するのに用いることができる他の装置、デバイス、及びシステムがある。同様に、上記図1図5はアルカリ性処理剤として苛性溶液を利用しているが、当業者であれば分かるように、FB中の有機酸同族体を中和するのに、上記のシステムのいずれかにおいて苛性溶液の代わりに弱塩基を有するアルカリ性処理剤で一部又は全てを置き換えることができる。
【0131】
別の態様において、上記のシステムにより生成される精製FBは精製NMBである。いくつかの態様において、精製NMBのアルコール含有量(ABV)は、NMBの少なくとも約0.1容量%、少なくとも約0.5容量%、少なくとも約1容量%、少なくとも約2容量%、少なくとも約3容量%、少なくとも約4容量%、少なくとも約5容量%、少なくとも約6容量%、少なくとも約7容量%、少なくとも約8容量%、少なくとも約9容量%、少なくとも約10容量%、少なくとも約12容量%、少なくとも約15容量%、少なくとも約17容量%、少なくとも約20容量%、少なくとも約25容量%、少なくとも約30容量%、少なくとも約35容量%、少なくとも約40容量%、少なくとも約45容量%、少なくとも約50容量%、少なくとも約55容量%、少なくとも約60容量%、及び、少なくとも約65容量%を含めて、少なくとも約0.05容量%である。他の態様において、精製NMBのABVは、NMBの約60容量%以下、約55容量%以下、約50容量%以下、約45容量%以下、約40容量%以下、約35容量%以下、約30容量%以下、約25容量%以下、約20容量%以下、約15容量%以下、約10容量%以下、約9容量%以下、約8容量%以下、約7容量%以下、約6容量%以下、約5容量%以下、約4容量%以下、約3容量%以下、約2容量%以下、約1容量%以下、約0.5容量%以下、約0.1容量%以下、及び、約0.05容量%以下を含めて、約65容量%以下である。有用な範囲は、約5%~約20容量%、約10%~20容量%、約12%~20容量%、約15%~約20容量%、約17容量%~約20容量%、約10容量%~約17容量%、又は、約12容量%~約15容量%を含めて、NMBの約0.05容量%以上約65容量%以下の上記ABV値のいずれかから選択することができる。いくつかの態様において、精製NMBがホップをさらに有する。いくつかの態様において、NMBが実質的にホップを含まない。いくつかの態様において、NMBがグルテンフリー塩基(GFB)である。いくつかの態様において、NMBがグルテン低減又はグルテン除去塩基である。
【0132】
いくつかの態様において、上記中和方法又はシステムのいずれかによって生成する精製スピリッツ酒のABVは、精製スピリッツ酒の少なくとも約8容量%、少なくとも約10容量%、少なくとも約15容量%、少なくとも約20容量%、少なくとも約25容量%、少なくとも約30容量%、少なくとも約35容量%、少なくとも約40容量%、少なくとも約45容量%、少なくとも約50容量%、少なくとも約55容量%、少なくとも約60容量%、少なくとも約65容量%、少なくとも約70容量%、少なくとも約75容量%、少なくとも約80容量%、少なくとも約85容量%、少なくとも約90容量%、及び、少なくとも約95容量%を含めて、少なくとも約5容量%である。いくつかの態様において、上記中和方法又はシステムのいずれかによって生成する精製スピリッツ酒のABVは、NMBの約60容量%以下、約55容量%以下、約50容量%以下、約45容量%以下、約40容量%以下、約35容量%以下、約30容量%以下、約25容量%以下、約20容量%以下、約15容量%以下、約10容量%以下、約8容量%以下、及び、約5容量%以下を含めて、約95容量%以下、約90容量%以下、約85容量%以下、約80容量%以下、約75容量%以下、約70容量%以下、約65容量%以下である。有用な範囲は、約1容量%以上95容量%以下、20容量%以上30容量%以下、20容量%以上40容量%以下、20容量%以上50容量%以下、20容量%以上60容量%以下、20容量%以上70容量%以下、20容量%以上80容量%以下、20容量%以上90容量%以下、40容量%以上45容量%以下、40容量%以上50容量%以下、40容量%以上60容量%以下、40容量%以上70容量%以下、又は40容量%以上80容量%以下の上記ABV値のいずれかから選択することができる。
【0133】
いくつかの態様において、本発明は、ブライトビールを中和して、実質的に中性のpHの有機酸形態を有する精製NMBを生成する中和システムを提供し、該システムは、ビール流、インライン苛性物質投入システム、及びビール流から酸性同族体の塩形態を濾過するように構成される少なくとも1つの濾過又は分離装置を有する。インライン苛性物質投入システムは、ビール流のpHを監視する少なくとも1つのpH計、アルカリ性処理剤用の容器、計量ポンプ、及び少なくとも1つのpH計によって収集されたビール流のpHを監視し且つ計量ポンプによって容器から分注されるアルカリ性処理剤の量を制御するように構成される中央プログラム可能なロジックコントローラ(PLC)を有することができる。
【0134】
本発明の特定の態様を説明してきたが、本発明は、この開示の思想及び範囲内でさらに修正することができる。当業者は、本明細書中に記載される特定の手順、態様、特許請求の範囲、及び実施例に対する多数の均等物を認識し又は通常の実験のみを使用して確認することができる。したがって、そのような同等物は本発明の範囲内にあると見なされ、そのため、本願は、その一般的な原理を使用する本発明の任意の変形、使用、又は適合をカバーするように意図される。さらに、本発明は、本発明が関与するとともに添付の特許請求の範囲に入る当該技術分野での既知の又は習慣的なやり方に含まれる本開示からのそのような逸脱をカバーすることを意図している。
【0135】
明確にするため別個の態様の文脈で説明される本発明の特定の特徴が単一の態様に組合せて提供されてもよいことが分かる。逆に、簡潔にするために単一の態様の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の適切なサブコンビネーションで又は本発明の他の説明された態様で適切に提供することもできる。様々な態様の文脈で説明される特定の特徴は、態様がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの態様の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0136】
本明細書で言及した全ての引用文献、特許、及び特許出願の内容は、参照により本願に組み入れられるが、そのような引用文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈すべきではない。この明細書中に組み入れられた全ての出版物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものであり、個々の出版物又は特許出願が具体的に示されて引用文献により個別に示される場合と同じ程度に組み込まれる。
【実施例
【0137】
以下の実施例は、現在最もよく知られている本発明の態様を例示する。しかしながら、以下は、本発明の原理の適用の単なる典型例又は例示であることを理解すべきである。本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び代替の組成物、方法、及びシステムが当業者によって考え出すことができる。したがって、本発明を詳述してきたが、以下の実施例は、本発明の最も実用的で好ましい態様であると現在考えられるものに関連してさらに詳細を提供する。
【0138】
実施例1:苛性物質投入システムを用いたNMBの生成
前述の苛性物質投入システムのいずれかを用いて、本開示の態様にしたがってNMBを生成する。酸性同族体を含むブライトビールを苛性物質投入システムに導入し、ある量の水酸化ナトリウムを、処理済みFBの所定の目標pHが約6.0に達するまで、混合を伴って、ブライトビールに添加する。その後、処理済みFBを逆浸透膜を通じて濾過して、処理済みFBから中和した有機酸を除去し、NMBを形成する。目標pHがそれぞれ7.0及び8.0であることを除いて、同じ手順を用いてさらなるNMBを生成する。
【0139】
実施例2:NMBの酸性度の物理化学的分析
実施例1の苛性物質投入システムによって生成するNMBの酸性度、及び有機酸、特に酢酸の中和及び除去の程度を決定するために、本開示の態様にしたがって研究を行う。実施例1で生成した3つのNMBのそれぞれ、及び未処理のブライトビールのサンプルを、pH、滴定可能な酸性度、及び酢酸含有量に関して評価する。各FBサンプルのpHを、スタンドアロン機器としての又は苛性物質投入システム内に配置されるpH計を用いて決定する。各FBサンプルの滴定可能な酸性度は、FBサンプルの元のpHに基づいて、例えば8.2、8.5又は8.7などの所定のpHに達するように既知の濃度の水酸化ナトリウムを滴定することによって近似される。プロトン化(酢酸)又は脱プロトン化(酢酸ナトリウム)形態のいずれかの各FBサンプル中の酢酸の濃度を、キットと共に含まれる説明書に従って、少量のFBサンプルをMegazyme(登録商標) K-ACETRM酢酸試験キットと共に含まれる試薬と反応させることにより決定する。
【0140】
ブライトビールのpHが約4.0であり、NMBサンプルのpHが各pH目標(それぞれ6.0、7.0及び8.0)の0.25pH単位以内であると予想される。さらに、ブライトビールの滴定可能な酸性度が1.00g/Lを超え、特に2.00g/Lを超えると予想されるが、各NMBサンプルの滴定可能な活性は、ブライトビールの滴定可能な活性と比較して少なくとも80%の減少を示す。各NMBサンプルの滴定可能な酸性度によって示す中和の程度は、サンプルのpHに応じて増加すると予想され、この場合、pH8.0に中和したNMBは他のサンプルと比べて最小の滴定可能な活性を有する。最後に、プロトン化及び脱プロトン化形態の酢酸の総濃度は、ブライトビールサンプルと比べて、各NMB FBサンプルで少なくとも75%減少すると予想され、この場合、pH8.0のFBサンプルで最大の効果が再び見られる。しかしながら、NMBサンプルの実際のpHに基づいて、各NMBサンプル中のプロトン化酢酸の濃度は、ブライトビールサンプルと比べて少なくとも95%低下すると予想される。
【0141】
実施例3:NMBの味プロファイルの決定
ブライトビールからの酢酸の中和及び除去によって引き起こされる官能効果を決定するために、本開示の態様に従って研究を行う。プロトン化酢酸の存在に起因するビネガー兆候の味を区別するように訓練された感覚パネルの参加者は、実施例1で生成したNMBのそれぞれをサンプリングし、それらをリッカートタイプスケールに従ってスコア付けするように求められる。味及び匂いの評価に用いられるリッカート様尺度は、0~5のスコアを割り当てるように参加者に求めることができ、この場合、各スコアは特に定義され、多くの場合、ハーフスコアは許容されない。特にビネガー兆候に関して、リッカートタイプのスケールは以下の定義を有することができる:0=知覚可能なビネガー兆候なし;1=ビネガー兆候の気配が知覚できる;2=ビネガー兆候が僅かに知覚可能;3=ビネガー兆候がやや中程度に知覚可能;4=ビネガー兆候が適度に知覚可能;及び5=ビネガー兆候は適度に強く知覚可能。
【0142】
プロトン化酢酸の濃度が比較的高い未処理のブライトビールは、ビネガー兆候の僅かに中程度から中程度の知覚を示す平均味覚スコアを示すと予想される。水酸化ナトリウムで処理すると、処理された各サンプルの平均味スコアは、ブライトビールと比較して減少し、pHに関して実施例2で決定した滴定可能な酸性度及び酢酸濃度と同じ関係を示すと予想され、pH8.0のNMBは、他のNMBサンプルと比較してビネガー兆候の知覚の最大の減少を有する。また、処理されたNMBの少なくとも1つ、特にpH8.0に処理したNMBは、知覚可能なビネガー兆候を有さないことも予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】