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特表2022-535630置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/14 20060101AFI20220803BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C07D471/14 101
C07D471/14 CSP
C07D519/00 311
A61K31/4985
A61P1/00
A61P43/00 111
A61P25/06
A61P25/04
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P15/08
A61P3/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021500830
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(85)【翻訳文提出日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 US2019036593
(87)【国際公開番号】W WO2019241278
(87)【国際公開日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】62/683,411
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,742
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・チアン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065AA19
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ02
4C065QQ04
4C065QQ07
4C072MM02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類を製造する改善された方法、それらの製造に有用な中間体およびこのような中間体を製造する方法およびこのようなヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の式1I
【化1】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である。〕
の化合物を製造する方法であり、
(a)遊離形態または塩形態の式1E
【化2】
〔式中、(i)AはBr、ClおよびIから選択され、(ii)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(iii)Bは保護基である。〕
の化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1F
【化3】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(ii)Bは保護基である。〕
の中間体を得て、
(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1H
【化4】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(ii)Bは保護基である。〕
の中間体を得て、そして
(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1I
【化5】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択される。〕
の化合物を得る
工程を含む、方法。
【請求項2】
遊離形態または塩形態の式1J
【化6】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり、そして
Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される。〕
の化合物を製造する方法であって、
(a)遊離形態または塩形態の式1E
【化7】
〔式中、(i)AはBr、ClおよびIから選択され、(ii)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(iii)Bは保護基である。〕
の化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1F
【化8】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(ii)Bは保護基である。〕
の中間体を得て、
(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1H
【化9】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして(ii)Bは保護基である。〕
の中間体を得て、そして
(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1I
【化10】
〔式中、(i)RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択される。〕
の化合物を得て、
(d)式1Iの化合物のピペリジン窒素を適当なアルキル化剤でアルキル化して、遊離形態または塩形態の式1Jの化合物を得て、そして所望により
(e)遊離形態の式1Jの化合物を塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)などの薬学的に許容される塩形態の式1Jの化合物に変換する
工程を含む、方法。
【請求項3】
AがBrである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式1E、1F、1Hおよび1Iの化合物の置換基RがC1-4アルキル(例えば、メチル)である、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
式1E、1Fおよび1Hの化合物の保護基Bが式P-Zの基であり、ここで、PがCH、C(O)、C(O)OおよびS(O)から選択され、Zが場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR’であり、R’がアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
保護基Bがアシル基(例えば、アルカノイルまたはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルまたは場合により置換されているベンジルオキシカルボニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
保護基Bがエトキシカルボニルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の遷移金属触媒が銅触媒である、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の遷移金属触媒がCuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)、CuCl、CuBr、CuSO、CuSOおよびCuOから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遷移金属触媒はCuIである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の塩基が、例えば、アミン塩基、アルコキシド、炭酸塩およびリン酸塩およびそれらの混合物から選択されるブレンステッド塩基である、請求項1~10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよびヨウ化リチウムから選択されるアルカリ金属ヨウ化物を含む、請求項1~11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
工程(a)が単座配位子または二座配位子、例えば、フェノール配位子またはアミン配位子から選択される配位子を含む、請求項1~12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
配位子が場合により置換されている1,2-ジアミン、場合により置換されている1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配位子がDBUである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)の還元が金属水素化物、ボラン類および有機ボラン類から選択される還元剤を使用して達成される、請求項1~15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
還元剤がボラン-THF錯体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脱保護工程(c)が水性加水分解、例えば、酸性または塩基性加水分解である、請求項1~17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
水性加水分解が塩酸水溶液を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式1Iの化合物が固体、例えば、非晶質または結晶固体として得られる、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
式1Iの化合物が塩酸塩、例えば、固体塩酸塩または結晶固体塩酸塩として得られる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
方法が式1Fおよび1Hの中間体の単離をせずにまたは精製をせずに実施される、請求項1~21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
工程(a)、(b)および(c)がひとつの反応槽でまたは連結された一組の複数反応槽で連続的に実施される、請求項1~22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
式1Iの化合物が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得られる、請求項1~23の何れかに記載の方法。
【請求項25】
工程(d)の適当なアルキル化剤が一般式Q-Xの化合物(式中、Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択され、Xは何らかの適当な脱離基(例えば、求核性置換反応を受けやすいことが当分野で知られる官能基)である)である、請求項2~24の何れかに記載の方法。
【請求項26】
式1Jの化合物の基Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルであり、式1Jの化合物の基Rがメチルである、請求項2~24の何れかに記載の方法。
【請求項27】
式1Jの化合物が工程(d)から遊離塩基形態で得られる、請求項2~26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
式1Jの化合物が工程(d)から遊離塩基形態で得られ、方法が遊離塩基形態の該式1Jの化合物を塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態))の式1Jの化合物に変換する工程(e)をさらに含む、請求項2~27の何れかに記載の方法。
【請求項29】
酸付加塩形態がトシル酸塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態またはそれらの混合物)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
方法が式1Jの化合物を実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.または少なくとも98%e.e.または少なくとも99%e.e.で提供する、請求項2~29の何れかに記載の方法。
【請求項31】
方法が式1Jの化合物を実質的に純粋な形態、例えば、HPLCにより測定して、例えば95%を超える純粋な形態または97%を超える、98%を超える、98.5%を超える、99%を超える、99.5%を超えるまたは99.9%を超える純粋な形態で提供する、請求項2~30の何れかに記載の方法。
【請求項32】
方法が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、請求項2~31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
薬学的に許容される塩形態の式1J
【化11】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり、そして
Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される。〕
の化合物を製造する方法であって、
(a)遊離形態または塩形態の式1Jの化合物(式中、RおよびQは上に定義したとおりである)を、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)などの薬学的に許容される塩形態の式1Jの化合物に変換することを含む、方法。
【請求項34】
方法が遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法が該遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物の薬学的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態)への変換の工程(a)を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
方法が塩形態、例えば、酸付加塩形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法が該塩形態の式1Jまたは2Jの化合物から異なる塩形態、例えば、異なる酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態)である薬学的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物への変換の工程(a)を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
遊離形態または塩形態、例えば、酸付加塩形態の式1I
【化12】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である。〕
の化合物であって、固体形態である化合物。
【請求項37】
化合物が酸付加塩形態である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
酸付加塩形態がハロゲン化水素酸塩形態(塩基対酸モル比1:1~3:1の、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはフッ化水素酸塩)である、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
薬学的に許容される塩形態の式1J
【化13】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり、そして
Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される。〕
の化合物を含む活性医薬組成物(活性医薬成分)であって、少なくとも97重量%の該化合物(塩形態として測定)を含む、組成物。
【請求項40】
遊離形態または塩形態の式1J
【化14】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり、そして
Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される。〕
の化合物を、トルエンスルホン酸および少なくとも1種の添加物、希釈剤または溶媒と混合して含む、医薬組成物。
【請求項41】
Rがメチルであり、Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルであり、式1Jの化合物がトシル酸塩形態である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
次のものからなる群から選択される、化合物。
【化15】
【化16】
【化17】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2018年6月11日出願の米国仮出願62/683,411および2018年12月17日出願の米国仮出願62/780,742に基づく優先権および利益を主張する国際出願であり、これらの各々を引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
発明の分野
本発明は、置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類を製造する方法、それらの製造に有用な中間体およびこのような中間体を製造する方法ならびにこれらの方法により製造したこのような化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類は、肥満、不安、うつ病、精神疾患、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛と関連する諸症状、社会恐怖症および消化管運動機能不全などの消化器障害を含む中枢神経系障害の処置において5-HT2受容体、特に5-HT2Aおよび5-HT2C受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エナンチオマー的に純粋な置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類の製造のための従来法は、四環系インドール化合物(例えば、1,3,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン)を得るためのアリールヒドラジン(例えば、ジヒドロキノキサリン-1-(2H)-アミン、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-4(3H)-アミンまたは2H-ベンゾ[b][1,4]チアジン-4(3H)-アミン)と適切に置換された環状ケトン類(例えば、ピペリジン-4-オン)のフィッシャー・インドール環化を含む。次いで、このインドールコアが還元されて、cisまたはtrans四環系ジヒドロインドール(すなわち、cisまたはtrans四環系インドリン)生成物が得られ、これは、エナンチオマー的に純粋な生成物を得るためにキラルカラムクロマトグラフィーなどの徹底した精製方法を必要とする。この方法は、全体として、過剰の反応材および反応中間体としてラセミ中間体を経由する必要があるため非効率的であり、このような生成物を最終工程で精製して、漸く25~50%収率に到達し得る。そのため、エナンチオマー的に純粋な置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類を製造するためのより効率的な方法が必要とされている。
【0005】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類、それらの製造に使用する中間体、例えばエナンチオマー的に純粋な2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールタイプ中間体および該中間体の製造方法および該置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類は、米国特許7,183,282、8,309,722、8,779,139、9,315,504および9,751,883に開示されており、これら各々の内容全体を引用により本明細書に包含させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類を製造する方法、それらの製造に使用する中間体、例えばエナンチオマー的に純粋な2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールタイプ中間体および該中間体を製造する方法および該置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類が本発明において開示される。本発明により製造される置換ヘテロ環縮合ガンマ-カルボリン類およびそれらの薬学的に許容される塩は、式1Jおよび2J
【化1】
〔式中、RはHおよびC1-4アルキルから選択され、Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される。〕
に示すコア構造により表される。式1Jの化合物(および類似する本明細書における式1類)において、示される立体化学は、例えば、式1Iの化合物の4aS、9bR配置および式1Jの化合物の6bR、10aS配置に対応する、絶対立体化学であることが理解される。対照的に、式2Jの化合物(および類似する本明細書における式2類)において、立体化学は、二つの隣接する立体中心の相対立体化学であることが理解される。それゆえに、例えば、上記式2Jの化合物において、該式は、6bR、4aS配置を有する化合物および6bS、4aR配置を有する化合物両者またはこれらの組み合わせを表す。
【0007】
本発明の化合物または関連化合物の他の例示的代表例は、米国特許6,552,017;6,548,493;6,713、471;および6,849,619、7,071,186、7,081,455および米国再発行特許39,680および38,679に記載されており、この各々の内容を、引用によりそれらの全体として本明細書に包含させる。これらの化合物は、5-HT2受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、セロトニントランスポーターアンタゴニストならびにドーパミンD1および/またはD2受容体機能のモジュレーターとして有用であることが判明している。これらの化合物は、肥満、不安、うつ病、精神疾患、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛と関連する諸症状、社会恐怖症および消化管運動の機能不全などの消化器障害を含む、中枢神経系障害の処置に使用され得る。
【0008】
これらの化合物は、最近、D1受容体経路を経るAMPAおよびNMDAシグナル伝達の間接的増強およびmTORシグナル伝達の増強に関連する特有の薬理学的性質を有することも示されている。このような性質は、米国仮出願62/644,355、62/682,582および62/780,004および国際出願PCT/US2019/022480に詳細に記載されており、この各々の内容を、引用によりそれらの全体として本明細書に包含させる。
【0009】
ある実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態の、下記式1Iの化合物を提供し、これは、例えば、式1Jの化合物の製造のための中間体として有用であり得る:
遊離形態または塩形態、例えば、酸付加塩形態、所望により固体形態の、式1I
【化2】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である。〕
の化合物。
【0010】
本発明は、次の式の化合物をさらに提供する:
1.1 RがC-Cアルキルである、式1I。
1.2 Rがメチルである、式1I。
1.3 化合物が遊離塩基形態である、式1I、1.1または1.2。
1.4 化合物が酸付加塩形態である、式1I、1.1または1.2。
1.5 酸付加塩形態がハロゲン化水素酸塩形態(塩基対酸モル比1:1~3:1の、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはフッ化水素酸塩)である、式1.4。
1.6 酸付加塩形態が塩酸塩である、式1.5。
1.7 該化合物が固体形態、例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態である、先の式の何れか。
1.8 該化合物が、全ての他の立体異性体に対するcis立体異性体が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%乃至100%であるおよび/または該化合物は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超えまたは97%を超えまたは99%を超えまたは99.5%を超えまたは99.9%~100% (すなわち、上記4aS、9bRエナンチオマーについて)のエナンチオマー過剰率(e.e.)を有する、先の式の何れか。
【0011】
ある実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態の、下記式2Iの化合物を提供し、これは、例えば、式2Jの化合物の製造のための中間体として有用であり得る:
遊離形態または塩形態、例えば、酸付加塩形態、所望により固体形態の式2I
【化3】
〔式中、
RはHまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)である。〕
の化合物。
【0012】
本発明は、次の式の化合物をさらに提供する:
2.1 RがC-Cアルキルである、式2I。
2.2 Rがメチルである、式2I。
2.3 化合物が遊離塩基形態である、式2I、2.1または2.2。
2.4 化合物が酸付加塩形態である、式2I、2.1または2.2。
2.5 酸付加塩形態がハロゲン化水素酸塩形態(塩基対酸モル比1:1~3:1の、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはフッ化水素酸塩)である、式2.4。
2.6 酸付加塩形態が塩酸塩である、式2.5。
2.7 該化合物が固体形態、例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態である、先の式の何れか。
2.8 該化合物が、全ての他の立体異性体に対するcis立体異性体が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%~100%である、先の式の何れか。
【0013】
本発明は、さらに式1Jの化合物の製造方法における不純物として形成され得る、次の化合物を提供する
【化4】
【化5】
【化6】
〔式中、該化合物1K、1L、1M、1N、1O、1P、1Qの何れかにおいて、基RはHおよびC1-4アルキル(例えば、メチル)から選択され、基Qは-O-および-(C=O)-から選択される。〕。
【0014】
本発明は、さらに式2Jの化合物の製造方法における不純物として形成され得る、次の化合物を提供する
【化7】
【化8】
【化9】
〔式中、該化合物2K、2L、2M、2N、2Pおよび2Qの何れかにおいて、基RはHおよびC1-4アルキル(例えば、メチル)から選択され、基Qは-O-および-(C=O)-から選択される。〕。
【0015】
方法
ある実施態様において、本発明は、次のスキームに示す、式1Jの化合物の製造方法に関する
【化10】
ここで、化合物1A~1Jの各々について、独立して:
(i) AはBr、ClおよびIから選択され、
(ii) RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、
(iii) Bはここに定義する保護基であり、そして
(iv) Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択され、
ここで、化合物1A、1B、1C、1D、1E、1F、1H、1Iおよび1Jの各々は、独立して、遊離塩基形態または塩形態(例えば、酸付加塩形態)である。化合物1Bは、実質的に、本質的なまたは完全なラセミcis異性体、すなわち、あらゆるtrans異性体が実質的または完全に排除された、2つのcisエナンチオマーをほぼ等量で含むことが理解される。化合物1Cは、逆のcisエナンチオマーまたはあらゆるtrans立体異性体が実質的または完全に排除された、実質的に、本質的にまたは完全に単一化合物1Cであることはさらが理解される。
【0016】
ある実施態様において、本発明は、次のスキームに示す、式2Jの化合物の製造方法に関する
【化11】
ここで、化合物2A~2Jの各々について、独立して:
(i) AはBr、ClおよびIから選択され、
(ii) RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、
(iii) Bはここに定義する保護基であり、そして
(iv) Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択される、
ここで、化合物化合物1A、1B、2C、2D、2E、2F、2H、2Iおよび2JJの各々は、独立して、遊離塩基形態または塩形態(例えば、酸付加塩形態)である。化合物1Bは、実質的な、本質的なまたは完全なラセミcis異性体、すなわち、あらゆるtrans異性体が実質的または完全に排除された、2つのcisエナンチオマーをほぼ等量で含むことが理解される。化合物2Cは、逆のcisエナンチオマーまたはあらゆるtrans立体異性体が実質的または完全に排除された、実質的に、本質的にまたは完全に単一化合物2Cであることがさらに理解される。
【0017】
ある実施態様において、本発明は、下記のとおりの、遊離形態または塩形態である、上記式1Jの化合物の製造方法に関する:
3.1 RがHである、式1J。
3.2 RがC1-4アルキルである、式1J。
3.3 Rがメチルである、式1J。
3.4 Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式1Jまたは3.1~3.3の何れか。
3.5 Qが3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式1Jまたは3.1~3.3の何れか。
3.6 RがメチルであるおよびQが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式1Jまたは3.1~3.4の何れか。
3.7 式1Jの化合物が遊離塩基形態である、式1Jまたは3.1~3.6の何れか。
3.8 式1Jの化合物が塩形態である、式1Jまたは3.1~3.6の何れか。
3.9 式1Jの化合物が酸付加塩形態である、式1Jまたは3.1~3.6の何れか。
3.10 式1Jの化合物が、例えば、遊離塩基対酸1:1~1:3比の、トシル酸塩または塩酸塩形態である、式1Jまたは3.1~3.6の何れか。
3.11 式1Jの化合物が固体形態(例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態)である、式1Jまたは3.1~3.10の何れか。
3.12 式1Jの化合物が固体結晶形態、例えば、固体結晶遊離塩基形態または固体結晶塩形態である、式1Jまたは3.1~3.10の何れか。
3.13 式1Jの化合物が、例えば、米国8,648,077、米国9,199,995および米国9,586,960(またはその継続再公開出願、16/294,607)の何れかに記載(これら各々の内容を引用により全体として本明細書に包含させる)の、固体結晶トシル酸塩形態(一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩またはこれらの何れかの組み合わせ)である、式3.12。
3.14 式1Jの化合物が、全ての他の立体異性体に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超え、100%までのcis立体異性体である、式1Jまたは3.1~3.13の何れか。
3.15 式1Jの化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.または少なくとも97%e.e.または少なくとも99%e.e.または少なくとも99.5%e.e.または少なくとも99.9%e.e.~100%e.e.である、式1Jまたは3.1~3.14の何れか。
【0018】
ある実施態様において、本発明は、下記のとおりの、遊離形態または塩形態である、上記式2Jの化合物の製造方法に関する。
4.1 RがHである、式2J。
4.2 RがC1-4アルキルである、式2J。
4.3 Rがメチルである、式2J。
4.4 Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式2Jまたは4.1~4.3の何れか。
4.5 Qが3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式2Jまたは4.1~4.3の何れか。
4.6 RがメチルであるおよびQが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式2Jまたは4.1~4.4の何れか。
4.7 式2Jの化合物が遊離塩基形態である、式2Jまたは4.1~4.6の何れか。
4.8 式2Jの化合物が塩形態である、式2Jまたは4.1~4.6の何れか。
4.9 式2Jの化合物が酸付加塩形態である、式2Jまたは4.1~4.6の何れか。
4.10 式2Jの化合物が、例えば、遊離塩基対酸1:1~1:3比の、トシル酸塩または塩酸塩形態である、式2Jまたは4.1~4.6の何れか。
4.11 式2Jの化合物が固体形態(例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態)である、式2Jまたは4.1~4.10の何れか。
4.12 式2Jの化合物が固体結晶形態、例えば、固体結晶遊離塩基形態または固体結晶塩形態である、式2Jまたは4.1~4.10の何れか。
4.13 式2Jの化合物が、例えば、米国8,648,077、米国9,199,995および米国9,586,960(またはその継続再公開出願、16/294,607)の何れかに記載(これら各々の内容を引用により全体として本明細書に包含させる)の、固体結晶トシル酸塩形態(一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩またはこれらの組み合わせ)である、式4.12。
4.14 式2Jの化合物が、全ての他の立体異性体に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超え、100%までのcis立体異性体である、式2Jまたは4.1~4.13の何れか。
4.15 式2Jの化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.または少なくとも97%e.e.または少なくとも99%e.e.または少なくとも99.5%または少なくとも99.9%e.e.~100%e.e.である、式2Jまたは4.1~4.14の何れか。
【0019】
第一の態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式1Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1Fの中間体を形成させ、(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1Hの中間体を得て、そして(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物(または1.1~1.8の何れか)を得る工程を含む、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物または1.1~1.8の何れかを製造する方法を提供する。
【0020】
第一態様の他の実施態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式2Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式2Fの中間体を形成させ、(b)式2Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式2Hの中間体を得て、そして(c)式2Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物(または2.1~2.8の何れか)を得る工程を含む、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物または2.1~2.8の何れかを製造する方法を提供する。
【0021】
第二の態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式1Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1Fの中間体を形成させ、(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1Hの中間体を得て、そして(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物(または1.1~1.8の何れか)を得て、そして(d)式1Iの化合物のピペリジン窒素を適当なアルキル化剤でアルキル化して、遊離形態または塩形態の式1Jの化合物(または3.1~3.15の何れか)を得て、そして所望により(e)遊離形態の式1Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)の式1Jの化合物(または3.1~3.15の何れか)に変換する工程を含む、遊離形態または塩形態の式1Jの化合物または3.1~3.15の何れかを製造する方法を提供する。
【0022】
第二の態様の他の実施態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式2Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式2Fの中間体を形成させ、(b)式2Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式2Hの中間体を得て、そして(c)式2Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物(または2.1~2.8の何れか)を得て;そして(d)式1Iの化合物のピペリジン窒素を適当なアルキル化剤でアルキル化して、遊離形態または塩形態の式2Jの化合物(または4.1~4.15の何れか)を得て、そして所望により(e)遊離形態の式2Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)の式2Jの化合物(または4.1~4.15の何れか)に変換する工程を含む、遊離形態または塩形態の式2Jの化合物または4.1~4.15の何れかを製造する方法を提供する。
【0023】
他の態様において、本発明は、式1Jの化合物または3.1~3.15の何れかの製造方法における、式1Iの化合物または1.1以降の何れかの使用を提供する。
【0024】
他の態様において、本発明は、式2Jの化合物または4.1~4.15の何れかの製造方法における、式2Iの化合物または2.1以降の何れかの使用を提供する。
【0025】
他の態様において、本発明は、実質的に純粋な形態で式1Jまたは2Jの化合物または3.1~3.15または4.1~4.15の何れかを含む、活性医薬組成物を提供する。
【0026】
発明の詳細な記載
第一の態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式1Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1Fの中間体を形成させ、(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1Hの中間体を得て、そして(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物(または1.1~1.8の何れか)を得る工程を含む、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物または1.1~1.8の何れかを製造する方法を提供する。
【0027】
好ましくは、工程(a)、(b)および(c)は、式1Fおよび1Hの中間体の単離をせずにまたは精製をせずに実施する。ある実施態様において、工程(a)、(b)および(c)は、ひとつの反応容器でまたは連結された一組の複数反応容器で連続的に実施する。
【0028】
第一態様の他の実施態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式2Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式2Fの中間体を形成させ、(b)式2Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式2Hの中間体を得て、そして(c)式2Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物(または2.1~2.8の何れか)を得る工程を含む、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物または2.1~2.8の何れかを製造する方法を提供する。
【0029】
好ましくは、工程(a)、(b)および(c)は、式2Fおよび2Hの中間体の単離をせずにまたは精製をせずに実施する。ある実施態様において、工程(a)、(b)および(c)は、ひとつの反応容器でまたは連結された一組の複数反応容器で連続的に実施する。
【0030】
方法1Iまたは2Iの工程(a)に有用な遷移金属触媒は、原子、イオン、塩または周期表の第8~11族から選択される遷移金属(例えば、パラジウム、銅、ニッケル、白金、ルテニウムまたはロジウム)の錯体であり得る。このような遷移金属触媒の例は、米国特許6,759,554B2、6,395,916B1および6,307,087B1(これら各々を、引用によりその全体として本明細書に包含させる)に記載の、CuI、CuCl、CuBr、CuBr、酢酸Cu(II)、CuCl、CuO、Cu、CuSO、CuSOなどの銅触媒またはPd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd(dba)]、Ni(アセチルアセトナート)、NiCl[P(C)]およびNi(1,5-シクロオクタジエン)などのパラジウムもしくはニッケル触媒を含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、遷移金属触媒は銅触媒である。特に好ましい実施態様において、該触媒はCuIである。
【0031】
方法1Iまたは2Iの工程(a)に有用な塩基は、単なる例として、アミン塩基(例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))、水素化物(例えばナトリウム、リチウムまたはカリウム水素化物)、アルコキシド(例えば、ナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシド)、炭酸塩(例えば、炭酸または重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたはセシウム)またはリン酸塩(例えば、リン酸カリウム)を含む、ブレンステッド塩基またはルイス塩基であり得る。好ましい実施態様において、塩基は、アルカリまたはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、セシウム、バリウムなど)の炭酸塩である。特に好ましい実施態様において、該塩基は炭酸カリウムである。
【0032】
ある実施態様において、工程(a)の塩基は、下記のとおり、アミン配位子(例えばDBU、DBNまたは1,2-ジアミン)などの、それ自体塩基性である、工程(a)での配位子の使用により省き得る。このような実施態様において、工程(a)は、塩基(ii)を含まず、配位子(iv)を含み得る。
【0033】
方法1Iまたは2Iの工程(a)において有用な所望による単座配位子または二座配位子は、遷移金属触媒と結合することが知られる配位子である。このような配位子の例は、フェノール配位子またはアミン配位子、例えば、場合により置換されているアリールアルコール、1,2-ジアミン、1,2-アミノアルコール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、イミダゾリウムカルベン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリンおよび5-ニトロ-1,10-フェナントロリンを含むが、これらに限定されない。フェノール配位子またはアミン配位子の例は、米国特許6,759,554B2;6,395,916B1;6,307,087B1、Klapars, A. et al., J. Am. Chem. Soc. (2002) 124, 7421-7428; Kang, S., et al., Synlett, 3, 427-430 (2002); Sugahara, M. およびUkita, T., Chem. Pharm. Bull. (1997) 45, 719-721(これらの各々を引用によりその全体として本明細書に包含させる)に記載の、2-フェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、8-ヒドロキシキノリン、8-アミノキノリン、DBU、DBN、DABCO、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N,N-ジエチルサリチルアミド、2-(ジメチルアミノ)グリシン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリン、5-ニトロ-1,10-フェナントロリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、(メチルイミド)二酢酸、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、cis-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、cis-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、エタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシベンズアミド、N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、フルオロ-N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、クロロ-N,N’-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、(2-ヒドロキシフェニル)(ピロリジン-1-イル)メタノン、ビフェニル-2-オール、2-ピリジルフェノール、1,2-ベンゼンジアミン、アンモニア、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよび1-メチル-2-ピロリジノンを含むが、これらに限定されない。特に好ましい実施態様において、該配位子はDBU、DBN、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、trans-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンまたはN-ブチルエチレンジアミンである。あらゆる理論に拘束されることなく、配位子は、金属触媒の安定化および可溶化により反応を促進すると考えられる。
【0034】
方法1Iまたは2Iの工程(a)において有用な他の単座配位子または二座配位子は、一般にバックワルド配位子と呼ばれるもののような、ホスフィン配位子(ホスフィンオキシド配位子を含む)を含む。このような配位子は、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリ-2-フリルホスフィン、APhos(ジ-t-ブチル-4’(N,N-ジメチルフェニル)-ホスフィン)、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl)、クロロジフェニルホスフィン(PhPCl)、クロロジ-エチルホスフィン、ジ-t-ブチルホスフィン、クロロジ-t-ブチルホスフィン、クロロジ-シクロヘキシルホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエトキシホスフィン、トリフェノキシホスフィン、2-クロロ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサホスホラン、ジ-t-ブチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト、ビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン、HMPT(ヘキサメチルホスフィントリアミン)、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、TriPhos、BippyPhos、QPhos、PTA、ビス-(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物二カリウム塩、6-DPPon、Xantphos、Xanphos、DPEPhos、BINAP(ラセミ、(+)または(-))、SEGPHOS(ラセミ、(S)または(R))、DPPベンズ、DPPF、DMPE、DPPM、DPPE、DPPP、DPPB、1,2-ビス(ジクロロホスフィノ)エタン、DCPE、D-t-BPF、DNPF、シクロヘキシルJohnPhos、DavePhos、XPhos、SPhos、MePhos、RuPhos、BrettPhos、s-SPhos、PhDavePhos、tBuXPhos、JohnPhos、テトラメチルジ-t-Bu-XPhos、t-BuMePhos、t-BuBrettPhos、t-BuDavePhos、JackiePhos、cataCXium配位子(例えば、ジ-アダマンチルアルキルホスフィンおよびこれらのアナログ)、MeDalPhos、Mor-DalPhos、ジ(1-アダマンチル)-1-ピペリジニル-フェニルホスフィンおよび前記の任意のP-オキシド、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、TOPO(トリ-n-オクチル-ホスフィンオキシド)、ジフェニルホスフィンオキシド、クロロジフェニルホスフィンオキシド、ジクロロフェニルホスフィンオキシドなどおよびあらゆる他のこれらのアナログを含むが、これらに限定されない。このような配位子は当業者に知られ、例えば、Sigma Aldrich Phosphine Ligand Application Guide(Sigma Aldrich, 2013)に例示される。特定の実施態様において、配位子は、二座ビ-アリールホスフィン配位子ファミリー、例えば、XantPhos、Xanphos、BINAP、SEGPHOS、シクロヘキシルJohnPhos、DavePhos、XPhos、SPhos、MePhos、RuPhos、BrettPhos、s-SPhos、PhDavePhos、tBuXPhos、JohnPhos、テトラメチルジ-t-Bu-XPhos、t-BuMePhos、t-BuBrettPhos、t-BuDavePhos、JackiePhos、例えば、XantPhos、XanPhos、BINAP、XPhos、SPhos、RuPhosまたはBrettPhosから選択され得る。
【0035】
方法1Iまたは2Iの工程(a)は、何らかの適当な有機溶媒、例えば、ジオキサン、ジメトキシエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどで行い得る。
【0036】
方法1Iまたは2Iの工程(b)の還元は、何らかの適当な還元剤、例えば、金属水素化物(例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL)、ナトリウムビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムハイドライド(Red-Al)またはナトリウムシアノボロハイドライド)、ボラン類(例えば、ボラン-THF、ボラン-ジメチルスルフィド、ジボラン、ボラン-アンモニア)、または有機ボラン類(例えばビス(ベンジルオキシ)ボラン、BBN、トリアルキルボラン類)から選択される還元剤の使用を介して他性され得る。あるいは、このような変換は、触媒、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムまたはルテニウム触媒などの貴遷移金属触媒(例えばパラジウム/炭素、酸化白金、ラネイニッケルなど)存在下、水素の使用による接触水素化、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基存在下のケトンとヒドラジン水和物の加熱によるウォルフ・キシュナー還元(Todd, Org. React. 4, 378-422 (1948)参照)、またはケトンと亜鉛アマルガムおよび塩酸などの水性鉱酸の加熱によるクレメンゼン還元(Vedejs, Org. React. 22, 401-422 (1975)参照)から選択される還元剤の使用を介して達成され得る。このような還元をまた達成し得る他の反応材は、リン酸トリイソプロピル、硫酸存在下の銅および塩酸存在下のスズを含む。
【0037】
好ましい実施態様において、該還元は、ボラン-THF錯体、ボラン-ジメチルスルフィド錯体、ジボラン、ボラン-アンモニア錯体、トリアルキルボラン類(例えばトリメチルボラン、トリエチルボランまたはトリ-イソプロピルボラン)、ビス(ベンジルオキシ)ボランまたは9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)などのボラン類または有機ボラン還元剤を使用して実施する。適当な溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテルなどのエーテル性溶媒を含む。
【0038】
方法1Iまたは2Iの脱保護工程(c)の条件は、保護基Bの選択により必然的に変わり、例えば、酸または塩基触媒作用または接触水素化を含み得る。それゆえに、例えば、保護剤がアルカノイル基またはアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル)などのアシル基またはアロイル基であるならば、脱保護は、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの塩基での加水分解により達成され得る。あるいは、t-ブトキシカルボニル基などのアシル保護剤は、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸などの適当な酸またはトリフルオロ酢酸での処理により除去され得る。ベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル保護剤は、例えば、白金またはパラジウム/炭素などの触媒上の水素化またはホウ素トリス(トリフルオロアセテート)などのルイス酸での処理により達成され得る。該脱保護工程に有用な反応材のさらなる例について、“Protective Groups in Organic Synthesis” by Theodora Green(出版社: John Wiley & Sons)参照。
【0039】
好ましい実施態様において、保護基Bは、カルバメート保護基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルまたはt-ブトキシカルボニルである。該実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(c)は、好ましくは塩酸水溶液などの酸性水溶液を使用してまたは有機溶媒(例えば、メタノール、THF、ジオキサン、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物)中の塩化水素などの非水性酸性媒体を使用してまたは強有機酸(例えば、無溶媒トリフルオロ酢酸(TFA)または適当な有機溶媒、例えばジオキサン中のTFA)を使用して、実施され得る。
【0040】
別の実施態様において、該カルバメート保護基(例えば、エトキシカルボニル)は、塩基性条件下で除去でき、例えば、方法1Iまたは2Iの工程(c)は、アルコール性溶媒(例えば、所望により、さらに水を含む、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノールまたはそれらの混合物)中、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を使用して実施され得る。
【0041】
他の好ましい実施態様において、保護基Bはベンジルオキシカルボニル保護基であり、方法1Iまたは2Iの工程(c)を、例えば、アルコール性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)中、パラジウムまたは白金触媒上の水素(例えば、Pd/Cまたは酸化白金)を使用して、実施する。
【0042】
ある実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(c)を酸性条件下で実施し、式1Iまたは2Iの化合物を酸付加塩の形態で得る。例えば、反応を塩酸を使用して実施し、塩酸塩としての式1Iまたは2Iの化合物を得ることができる。他の実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(c)を酸性条件下で実施し、反応混合物を、遊離塩基形態の式1Iまたは2Iの化合物を得るために、適当な塩基での中和または塩基性化に付す。該中和または塩基性化の実施に適当な塩基は、無機塩基、例えば、水酸化物、酸化物、炭酸塩および重炭酸塩(例えば、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、CaO、MgO、NaCO、KCO、LiCO、NaHCO、KHCO、LiHCO、CaCO、MgCOなどを含む、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基)を含む。
【0043】
ある実施態様において、方法1Iまたは2Iは、それぞれ、式1Iまたは2Iの化合物を、結晶遊離塩基または結晶酸付加塩、例えば、塩酸塩として提供する。本発明者らは、方法1Iまたは2Iまたは方法5.1~5.52の1以上の使用が、これらの化合物の製造の先行技術方法と比較して、遷移金属不純物(例えば、銅)による汚染が遥かに低レベルで、式1Iまたは2Iの化合物の産生をもたらすことを予想外に発見した。例えば、本発明方法の使用は、約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を含む、式1Iまたは2Iの化合物の製造をもたらし得る。
【0044】
第一の態様の特定の実施態様において、本発明は次のものを提供する。
5.1 式1Iまたは2Iの化合物が、それぞれ式1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物である、方法1Iまたは2I。
5.2 式1Eまたは2Eの化合物の置換基AがBr、ClおよびIから選択される、方法1Iまたは2I。
5.3 AがBrである、方法5.2。
5.4 式1E、1F、1Hおよび1Iまたは2E、2F、2Hおよび2Iの化合物の置換基RがC1-4アルキル(例えば、メチル)である、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.5 式1Eおよび1Fまたは2Eおよび2Fの化合物の置換基RがHである、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.6 式1E、1Fおよび1Hまたは2E、2Fおよび2Hの化合物の保護基Bが式P-Zであり、ここで、PがCH、C(O)、C(O)OおよびS(O)から選択され、Zが場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR’であり、R’がアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.7 保護基Bがアシル基(例えば、アルカノイルまたはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルまたは場合により置換されているベンジルオキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル)である、方法5.6。
5.8 保護基Bがエトキシカルボニルである、方法5.7。
5.9 保護基が場合により置換されているベンジル基、例えば、ベンジル、4-メトキシベンジルまたは2,4-ジメトキシベンジルである、方法5.6。
5.10 工程(a)の遷移金属触媒が銅触媒である、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.11 工程(a)の遷移金属触媒がCuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)、CuCl、CuBr、CuSO、CuSOおよびCuOから選択される、方法5.10。
5.12 工程(a)の遷移金属触媒がCuI、CuBrおよびCuClから選択される、方法5.11。
5.13 遷移金属触媒がCuIである、方法5.12。
5.14 工程(a)の遷移金属触媒が0.01~0.50当量、例えば、0.05~0.40当量または0.10~0.30当量または0.15~0.25当量または約0.20当量の量で存在する、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.15 工程(a)の塩基が、例えば、アミン類、アルコキシド塩基、炭酸塩基およびリン酸塩基およびそれらの混合物から選択されるブレンステッド塩基である、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.16 工程(a)の塩基が炭酸塩塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩または重炭酸塩またはそれらの混合物である、方法5.15。
5.17 工程(a)の塩基が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムまたはそれらの混合物から選択される、方法5.16。
5.18 工程(a)の塩基が、所望により1.5~3当量、例えば、2~2.5当量または約2.2当量の量で、炭酸カリウムを含む、方法5.17。
5.19 工程(a)が塩基(ii)を含まない、例えば、アルコキシド、炭酸基、リン酸塩または他の無機塩基を含まない、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.20 工程(a)が、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよびヨウ化リチウムから選択されるアルカリ金属ヨウ化物を含む、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.21 工程(a)がヨウ化カリウムを含む、方法5.20。
5.22 工程(a)が単座配位子または二座配位子、例えば、フェノール配位子またはアミン配位子またはホスフィン配位子から選択される配位子を含む、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.23 配位子が場合により置換されている1,2-ジアミン、場合により置換されている1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOから選択される、方法5.22。
5.24 配位子がDBUである、方法5.23。
5.25 工程(a)の配位子が0.01~0.50当量、例えば、0.05~0.45当量または0.10~0.40当量または0.20~0.30当量または約0.25当量の量で存在する、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.26 工程(a)の溶媒がトルエンまたはジオキサンである、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.27 工程(b)の還元が金属水素化物、ボラン類および有機ボラン類から選択される還元剤を使用して達成される、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.28 還元剤がボラン類、例えば、ボラン(BH)およびボラン錯体(例えば、BH-THF、BH-MeSおよびBH-NH)から選択される、方法5.27。
5.29 還元剤がボラン-THF錯体である、方法5.28。
5.30 工程(b)の溶媒がトルエンとTHFの混合物である、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.31 工程(b)の還元剤が1.5~5当量、例えば、2~4当量または2.5~3.5当量または約3当量の量で存在する、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.32 脱保護工程(c)が酸または塩基介在開裂反応、加水分解反応(例えば、酸または塩基触媒)または水素化反応である、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.33 脱保護工程(c)が水性加水分解、例えば、酸性または塩基性加水分解である、方法5.32。
5.34 水性加水分解が、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸から選択される酸性触媒を含む、方法5.33。
5.35 水性加水分解が塩酸水溶液を含む、方法5.33。
5.36 水性加水分解が、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される塩基性触媒を含む、方法5.33。
5.37 脱保護工程(c)が、例えば、所望により無溶媒でまたは有機溶媒と共に強酸(例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸またはメタンスルホン酸)を含む、酸介在開裂である、方法5.32。
5.38 脱保護工程(c)が、例えば、有機溶媒中の有機塩基(例えばピペリジン)を含む塩基介在開裂である、方法5.32。
5.39 脱保護工程(c)が水素化反応、例えば、遷移金属触媒(例えば、白金またはパラジウム)および水素を含む接触水素化である、方法5.32。
5.40 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が固体、例えば、非晶質または結晶固体として得られる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.41 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が実質的に純粋な形態、例えば、90wt%を超える純度、または、例えば、95wt%~100wt%の純度で得られる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.42 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が、所望により、結晶固体として、遊離形態(すなわち、遊離塩基形態)で得られる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.43 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が塩形態、例えば、酸付加塩形態で得られる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.44 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が、例えば、塩基対酸モル比1:1~3:1の塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはメタンスルホン酸塩から選択される付加塩として得られる、方法5.43。
5.45 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が塩酸塩、例えば、固体塩酸塩または結晶固体塩酸塩(例えば、一塩酸塩、二塩酸塩および/または三塩酸塩)として得られる、方法5.44。
5.46 方法が式1Fおよび1Hまたは2Fおよび2Hの中間体の単離なしにまたは精製なしに行われる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.47 工程(a)、(b)および(c)がひとつの反応容器または連結された一組の複数反応容器で連続的に実施される、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.48 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得られる、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.49 方法が、ここに記載するとおり、適当なアルキル化剤で式1Iまたは2Iの化合物のピペリジン窒素をアルキル化して、遊離形態または塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を得る工程(d)をさらに含む、方法1Iまたは2Iまたは5.1以降の何れか。
5.50 式1Jまたは2Jの化合物が工程(d)から遊離塩基形態で得られ、方法がさらに遊離塩基形態の該式1Jまたは2Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)の式1Jまたは2Jの化合物に変換する工程(e)をさらに含む、方法5.49。
5.51 方法が、それぞれ式3.1~3.15または4.1~4.15により記載の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法5.49または5.50。
5.52 以下の工程をとおして、ここでの実施態様の何れかに記載された次の工程の何れかまたは全てをさらに含む、方法1Iまたは2Iまたは5.1~5.51の何れか:
a. 所望により酢酸溶媒中で、遊離形態または塩形態の2-ブロモフェニルヒドラジンと、所望により水和物形態の、遊離形態または塩形態の4-ピペリジノンを反応させることによる、式1Aの化合物の製造、
b. (a)式1Aの化合物の式1Bの化合物への還元であって、所望により還元が式1Aの化合物とトリエチルシランおよびメタンスルホン酸の反応を含むものおよび(b)キラル塩分割またはキラルクロマトグラフィーにより式1Bの立体異性体を分離して、式1Cまたは2Cの化合物を得て、所望によりキラル塩分割がS-マンデル酸を使用する一分割工程で実施されるものによる、遊離形態または塩形態の式1Cまたは2Cの化合物の製造、
c. 塩基存在下保護剤での式1Cまたは2Cの化合物のピペリジンアミンの保護による、遊離形態または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物の製造、
d. 式1Dまたは2Dの化合物を(a)求核性アルキルハライドおよび(b)塩基でN-アルキル化することによる、遊離形態または塩形態での式1Eまたは2Eの化合物の製造。
【0045】
第二の態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式1Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式1Fの中間体を形成させ、(b)式1Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式1Hの中間体を得て、(c)式1Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式1Iの化合物(または1.1~1.8の何れか)を得て、そして(d)式1Iの化合物のピペリジン窒素を適当なアルキル化剤でアルキル化して、遊離形態または塩形態の式1Jの化合物(または3.1~3.15の何れか)を得て、そして所望により(e)遊離形態の式1Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)などの薬学的に許容される塩形態の式1Jの化合物(または3.1~3.15の何れか)に変換する工程を含む、遊離形態または塩形態の式1Jの化合物または3.1~3.15の何れかを製造する方法を提供する。
【0046】
第二の態様の他の実施態様において、本発明は、(a)遊離形態または塩形態の式2Eの化合物と、(i)周期表の第8~11族からなる群から選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属ヨウ化物(例えばヨウ化カリウム)および(iv)所望により単座配位子または二座配位子を反応させて、遊離形態または塩形態の式2Fの中間体を形成させ、(b)式2Fの化合物のアミドカルボニルを還元して、遊離形態または塩形態の式2Hの中間体を得て、(c)式2Hの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離形態または塩形態の式2Iの化合物(または2.1~2.8の何れか)を得て、そして(d)式1Iの化合物のピペリジン窒素を適当なアルキル化剤でアルキル化して、遊離形態または塩形態の式2Jの化合物(または4.1~4.15の何れか)を得て、そして所望により(e)遊離形態の式2Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)などの薬学的に許容される塩形態の式2Jの化合物(または4.1~4.15の何れか)に変換する工程を含む、遊離形態または塩形態の式2Jの化合物または4.1~4.15の何れかを製造する方法を提供する。
【0047】
全てに関して、方法1Jおよび2Jの工程(a)、(b)および(c)は、方法5.1~5.52の何れかを含む、それぞれ上記方法1Iおよび2Iにより実施され得る。
【0048】
方法1Jまたは2Jの工程(d)(または工程(d)をさらに含む方法1Iまたは2I)に適するアルキル化剤は、一般式Q-Xの化合物(式中、Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択され、Xは何らかの適当な脱離基である)を含む。脱離基は、求核性置換反応を受けやすいことが当分野で知られる反応基である。ある実施態様において、Xはクロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)および場合により置換されているアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、4-ハロスルホニルオキシなど)から選択される。
【0049】
ある実施態様において、方法1Jまたは2Jの工程(d)は、適当な塩基をさらに含み得る。適当な塩基は、有機塩基、例えばアミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N’-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-5-エン(DBU))、または無機塩基、例えば水素化物(例えばナトリウム、リチウムまたはカリウム水素化物)、アルコキシド(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシド)、アリールオキシド(例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムフェノキシド)またはアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物(例えばナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)を含むが、これらに限定されない。所望により、工程(d)は、無機ヨウ化物塩、例えばヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム、好ましくはヨウ化カリウムをさらに含み得る。適当な溶媒は、極性プロトン性および/または極性非プロトン性溶媒、例えば、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびそれらの混合物を含む。好ましい実施態様において、工程(d)は、式1Iまたは2Iの化合物とアルキル化剤4-クロロ-4’-フルオロ-ブチロフェノンならびにトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される塩基の反応を含む。塩基が使用されるとき、塩基の量は、触媒量(例えば、0.01当量)から過剰量(例えば、10当量以上)の任意の量であり得る。ある実施態様において、反応は、1.0~5.0当量の塩基、例えば、1.0~3.0または1.0~2.0当量の塩基と実施される。
【0050】
方法1Jまたは2Jの工程(d)由来の式1Jまたは2Jの化合物は、遊離塩基または塩として得られ得る。適当な塩形態は、酸付加塩、例えばリン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩)および炭酸塩(例えば、酢酸塩またはギ酸塩)を含む。遊離塩基形態または塩形態いずれかの式1Jまたは2Jの化合物が、例えば、結晶化などの何らかの適当な方法による単離または精製により得られ得る。ある実施態様において、工程(d)の反応 を、過剰の塩基存在下で実施し、これは、反応混合物からの式1Jまたは2Jの化合物の遊離塩基の単離(例えば、水/有機溶媒抽出および/またはクロマトグラフィーおよび/または適当な溶媒からの結晶化および/または反応溶媒の蒸発による)を可能とし得る。ある実施態様において、工程(d)の反応を塩基非存在下または1当量未満の塩基(例えば、0.5当量以下または触媒量)存在下で実施する。特に塩基非存在下で実施するとき、工程(d)は式1Jまたは2Jの化合物の酸付加塩をもたらし得て、ここで、塩の酸成分はアルキル化剤由来である。例えば、上記の通りかつ塩基を加えることなく、式1Iまたは2Iの化合物をアルキル化剤Q-Xで処理したとき、得られた式1Jまたは2Jの化合物は、基Xに対応する酸付加塩として得られ得る(例えば、Xがクロロであるならば、式1Jまたは2Jの化合物は塩酸付加塩の形態で得られ得る)。ある実施態様において、等モル量または僅かにのみ過剰の塩基を工程(d)の反応中使用するが、精製前またはその途中、過剰の酸(例えば、塩酸)を加え、式1Jまたは2Jの化合物の酸付加塩(例えば塩酸塩)での取得をもたらす。
【0051】
ある実施態様において、方法1Jまたは2Jの工程(d)は、遊離形態(すなわち、遊離塩基形態)の式1Jまたは2Jの化合物をもたらし、この形態を単離および/または精製し、次いで、所望により、工程(e)を実施して、遊離塩基形態の該式1Jまたは2Jの化合物を塩形態の該式1Jまたは2Jの化合物、例えば、薬学的に許容される塩形態(例えば、酸付加塩)に変換する。ある実施態様において、この酸付加塩形態である該式1Jまたは2Jの化合物を単離および/または精製する。理論に拘束されないが、遊離形態の式1Jまたは2Jの化合物の初期単離、その後のこの化合物の塩形態(例えば、酸付加塩形態)への続く変換は、高い純度および/または加工性の最終生成物(式1Jまたは2Jの化合物)をもたらすと考えられる。
【0052】
方法1Jまたは2Jの工程(e)は、遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物と適切な酸を、水または有機溶媒または両者の混合物中で反応させて、例えば、本発明の薬学的に許容される酸付加塩の式1Jまたは2Jをもたらし得る。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、酢酸イソプロピルまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン、シュウ酸、イセチオン酸などであり得る。一価酸(例えば、塩酸またはトルエンスルホン酸)を使用するとき、工程(e)は、使用する酸対遊離塩基のモル当量(例えば、1:1遊離塩基対酸~1:3遊離塩基対酸)により、一付加塩、二付加塩または三付加塩またはそれらの混合物をもたらし得る。それゆえに、式1Jまたは2Jの塩は、一トシル酸塩、二トシル酸塩、三トシル酸塩またはこれらのいくつかの組み合わせであり得る。
【0053】
第二態様のさらなる実施態様において、工程(e)は特定の塩をもたらし得て、その塩を単離および精製し、さらなる工程(f)において、それを異なる塩に変換する。例えば、ある実施態様において、工程(e)は式1Jまたは2Jの化合物の一トシル酸塩をもたらし得て、その塩を単離および/または精製し、所望により、例えば、マススペクトロメトリー、核磁気共鳴スペクトロスコピー、赤外線スペクトロスコピーおよび/またはX線粉末回折により特徴づけする。該一トシル酸塩を、例えば、次いで、二トシル酸塩を得るために、さらなる量(例えば、1当量または僅かに1当量を超える)のさらなるトルエンスルホン酸と合わせ得る。このようなさらなる酸は、式1Jまたは2Jの化合物の医薬組成物に製剤への一部として付加でき、それゆえにこのような工程(f)は溶媒非存在下(例えば、乾燥混合)または溶媒存在下(例えば、湿式混合)で行い得る。
【0054】
第二態様の具体的実施態様において、本発明は次のものを提供する。
6.1 式1Iまたは2Iの化合物が、それぞれ式1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物である、方法1Jまたは2J。
6.2 式1Eまたは2Eの化合物の置換基AがBr、ClおよびIから選択される、方法1Jまたは2J。
6.3 AがBrである、方法6.2。
6.4 式1E、1F、1Hおよび1Iまたは2E、2F、2Hおよび2Iの化合物の置換基RがC1-4アルキル(例えば、メチル)である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.5 式1Eおよび1Fまたは2Eおよび2Fの化合物の置換基RがHである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.6 式1E、1Fおよび1Hまたは2E、2Fおよび2Hの化合物の保護基Bが式P-Zであり、ここで、PがCH、C(O)、C(O)OおよびS(O)から選択され、Zが場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR’であり、R’がアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.7 保護基Bがアシル基(例えば、アルカノイルまたはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルまたは場合により置換されているベンジルオキシカルボニルである、方法6.6。
6.8 保護基Bがエトキシカルボニルである、方法6.7。
6.9 保護基が場合により置換されているベンジル基、例えば、ベンジル、4-メトキシベンジルまたは2,4-ジメトキシベンジルである、方法6.6。
6.10 工程(a)の遷移金属触媒が銅触媒である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.11 工程(a)の遷移金属触媒がCuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)、CuCl、CuBr、CuSO、CuSOおよびCuOから選択される、方法6.10。
6.12 工程(a)の遷移金属触媒がCuI、CuBrおよびCuClから選択され、所望により、触媒がCuIである、方法6.11。
6.13 遷移金属触媒がCuIである、方法6.12。
6.14 工程(a)の遷移金属触媒が0.01~0.50当量、例えば、0.05~0.40当量または0.10~0.30当量または0.15~0.25当量または約0.20当量の量で存在する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.15 工程(a)の塩基が、例えば、アミン塩基、アルコキシド、炭酸塩およびリン酸塩およびそれらの混合物から選択されるブレンステッド塩基である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.16 工程(a)の塩基が炭酸塩塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩または重炭酸塩またはそれらの混合物である、方法6.15。
6.17 工程(a)の塩基が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムまたはそれらの混合物から選択される、方法6.16。
6.18 工程(a)の塩基が、所望により1.5~3当量、例えば、2~2.5当量または約2.2当量の量で、炭酸カリウムを含む、方法6.17。
6.19 工程(a)が塩基(ii)を含まない、例えば、アルコキシド、炭酸塩、リン酸塩または他の無機塩基を含まない、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.20 工程(a)が、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよびヨウ化リチウムから選択されるアルカリ金属ヨウ化物を含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.21 工程(a)がヨウ化カリウムを含む、方法6.20。
6.22 工程(a)が単座配位子または二座配位子、例えば、フェノール配位子またはアミン配位子から選択される配位子を含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.23 配位子が場合により置換されている1,2-ジアミン、場合により置換されている1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOから選択される、方法6.22。
6.24 配位子がDBUである、方法6.23。
6.25 工程(a)の配位子が0.01~0.50当量、例えば、0.05~0.45当量または0.10~0.40当量または0.20~0.30当量または約0.25当量の量で存在する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.26 工程(a)の溶媒がトルエンまたはジオキサンである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.27 工程(b)の還元が金属水素化物、ボラン類および有機ボラン類から選択される還元剤を使用して達成される、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.28 還元剤がボラン類、例えば、ボラン(BH)およびボラン錯体(例えば、BH-THF、BH-MeSおよびBH-NH)から選択される、方法6.27。
6.29 還元剤がボラン-THF錯体である、方法6.28。
6.30 工程(b)の溶媒がトルエンとTHFの混合物である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.31 工程(b)の還元剤が1.5~5当量、例えば、2~4当量または2.5~3.5当量または約3当量の量で存在する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.32 脱保護工程(c)が酸または塩基介在開裂反応、加水分解反応(例えば、酸または塩基触媒)または水素化反応である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.33 脱保護工程(c)が水性加水分解、例えば、酸性または塩基性加水分解である、方法6.32。
6.34 水性加水分解が、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸から選択される酸性触媒を含む、方法6.33。
6.35 水性加水分解が塩酸水溶液を含む、方法6.33。
6.36 水性加水分解が、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される塩基性触媒を含む、方法6.33。
6.37 脱保護工程(c)が、例えば、所望により無溶媒でまたは有機溶媒と共に強酸(例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸またはメタンスルホン酸)を含む酸介在開裂である、方法6.32。
6.38 脱保護工程(c)が、例えば、有機溶媒中の有機塩基(例えばピペリジン)を含む塩基介在開裂である、方法6.32。
6.39 脱保護工程(c)が水素化反応、例えば、遷移金属触媒(例えば、白金またはパラジウム)および水素を含む接触水素化である、方法6.32。
6.40 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が固体、例えば、非晶質または結晶固体として得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.41 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が実質的に純粋な形態、例えば、90wt%を超える純度、または、例えば、95wt%を超える純度、98.5%~100wt%の純度で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.42 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が、所望により、結晶固体として、遊離形態(すなわち、遊離塩基形態)で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.43 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が塩形態、例えば、酸付加塩形態で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.44 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が、例えば、塩基対酸モル比1:1~3:1の塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはメタンスルホン酸塩から選択される付加塩として得られる、方法6.43。
6.45 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が塩酸塩、例えば、固体塩酸塩または結晶固体塩酸塩(例えば、一塩酸塩、二塩酸塩および/または三塩酸塩)として得られる、方法6.44。
6.46 方法が式1Fおよび1Hまたは2Fおよび2Hの中間体の単離なしにまたは精製なしに行われる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.47 工程(a)、(b)および(c)がひとつの反応容器または連結された一組の複数反応容器で連続的に実施される、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.48 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、1.1~1.8または2.1~2.8の何れかの化合物)が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.49 式1Jまたは2Jの化合物が、それぞれ、式3.1~3.15または4.1~4.15の化合物である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.50 工程(d)の適当なアルキル化剤が一般式Q-Xの化合物(式中、Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルから選択され、Xは何らかの適当な脱離基(例えば、求核性置換反応を受けやすいことが当分野で知られる官能基)である)である、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.51 基Xがクロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)および場合により置換されているアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、4-ハロスルホニルオキシなど)から選択される、方法6.50。
6.52 式1Jまたは2Jの化合物の基Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.53 式1Jまたは2Jの化合物の基Qが3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.54 アルキル化剤が4-クロロ-4’-フルオロブチロフェノンまたは1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパンである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.55 工程(d)がアルキル化剤(例えば、4-クロロ-4’-フルオロブチロフェノン)を1~3当量、例えば、1~2当量または1.25~1.75当量または約1.5当量の量で含む、例えば、1.35~1.65当量、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.56 工程(d)が適当な塩基、例えば、有機塩基(例えばアミン塩基)または無機塩基(例えば、水素化物、アルコキシド、アリールオキシド、炭酸、重炭酸、リン酸または水酸化物塩基)をさらに含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.57 工程(d)の塩基がトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選択される、方法6.56。
6.58 工程(d)の塩基が炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである、方法6.57。
6.59 炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが1~5当量、例えば、2~4当量または2.5~3.5当量または約3当量、例えば、2.7~3.3当量の量で存在する、方法6.58。
6.60 工程(d)が、所望により、0.75~1.5当量または1~1.25当量または約1当量、例えば、0.9~1.1当量の量で無機ヨウ化物塩(例えば、ヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム)をさらに含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.61 工程(d)の溶媒が3-ペンタノンである、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.62 式1Jまたは2Jの化合物が工程(d)から遊離塩基形態で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.63 式1Jまたは2Jの化合物が工程(d)から塩形態、例えば、酸付加塩(例えば、塩酸塩)で得られる、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.64 式1Jまたは2Jの化合物が工程(d)から遊離塩基形態で得られ、方法がさらに遊離塩基形態の該式1Jまたは2Jの化合物を、塩形態、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態)の式1Jまたは2Jの化合物に変換する工程(e)をさらに含む、方法6.62。
6.65 工程(e)を、工程(d)からの遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物と適切な酸を、1以上の有機溶媒または水またはそれらの混合物で反応させることにより行う、方法6.64。
6.66 工程(e)の酸がトルエンスルホン酸である、方法6.64または6.65。
6.67 トルエンスルホン酸の量が0.9~3.2当量、0.9~2.2当量、0.9~1.2当量、例えば、0.95~1.10当量または0.95~1.05当量または約1.0当量、例えば、0.89~1.1当量である、方法6.66。
6.68 工程(e)の溶媒がエタノール、イソプロパノール、水、メチルtert-ブチルエーテルまたはそれらの混合物を含む、方法6.66または6.67。
6.69 工程(e)の溶媒が実質的にイソプロパノール、例えば、少なくとも70体積%イソプロパノールまたは少なくとも80体積%イソプロパノールまたは少なくとも90体積%イソプロパノールを含む、方法6.68。
6.70 工程(e)の溶媒が本質的にイソプロパノールおよびメチルtert-ブチルエーテル、例えば、少なくとも70体積%、80体積%または90体積%イソプロパノールと残りは本質的にメチルtert-ブチルエーテルからなる、方法6.69。
6.71 方法が遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.72 方法が酸付加塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.73 酸付加塩形態がトシル酸塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態またはそれらの混合物)である、方法6.72。
6.74 方法がさらに、工程(e)の後または工程(e)がなければ工程(d)の後、塩形態での最初に形成した式1Jまたは2Jの化合物の適当な溶媒からの結晶化および/または再結晶を含み、同じ塩形態の結晶化したまたは再結晶した式1Jまたは2Jの化合物を得る(例えば、1または2ラウンドまたはそれ以上の結晶化を使用して、高純度を達成し得る)、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.75 1以上の結晶化の何れかのための適当な結晶化溶媒がエタノール、イソプロパノール、水、メチルtert-ブチルエーテルまたはそれらの混合物を含む、例えば、最初にイソプロパノールから結晶化および2回目にイソプロパノール/水から再結晶を含む、方法6.74。
6.76 1以上の結晶化の何れかのための適当な結晶化溶媒が、所望により体積比で90:10~99:1、例えば、95:5~99:1または97:3~99:1または約98:2でイソプロパノールおよび水を含む、方法6.75。
6.77 再結晶が種晶(例えば、本方法の生成物の種晶)の添加を含む、6.74~6.76の何れかの方法。
6.78 方法が、工程(e)から得た式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態を式1Jまたは2Jの化合物の異なる塩形態に変換する工程(f)をさらに含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.79 新規塩形態および最初の塩形態がいずれも酸付加塩である、方法6.78。
6.80 新規塩形態が二酸付加塩または三酸付加塩であり、最初の塩形態が同塩の一酸付加塩である、方法6.79。
6.81 新規塩形態が二トシル酸塩または三トシル酸塩形態であり、最初の塩形態が一トシル酸塩形態である、方法6.80。
6.82 工程(f)が適当な溶媒への最初の塩形態の溶解または懸濁、続く0.9~1.5当量、例えば、0.95~1.25当量または1.0~1.15当量の適切な酸(例えば、トルエンスルホン酸)の付加を含む、方法6.79~6.81の何れか。
6.83 適当な溶媒がエタノール、イソプロパノール、水、メチルtert-ブチルエーテルまたはそれらの混合物から選択される、方法6.82。
6.84 工程(e)で最初に形成された塩が工程(f)の前に単離および/または精製および/または特徴づけされる、6.78~6.83の何れかの方法。
6.85 方法が固体形態、例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.86 方法が安定な、結晶塩形態、例えば、安定な結晶トシル酸塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態)で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.87 方法が、全ての他の立体異性体に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%~100%のcis立体異性体を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.88 方法が実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.または少なくとも97%e.e.または少なくとも99%e.e.または少なくとも99.5%e.e.または少なくとも99.9%e.e.~100%e.e.の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.89 方法が実質的に純粋な形態、例えば、HPLCにより測定して、例えば95%を超える純粋な形態または97%を超える、98%を超える、98.5%を超える、99%を超える、99.5%を超えるまたは99.9%~100%の純粋な形態で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.90 方法が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1以降の何れか。
6.91 方法が式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物との混合物で提供する、方法1Jまたは2Jまたは6.1~6.90の何れか。
6.92 方法が式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.01重量%であって、0.5重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物との混合物で提供する、方法6.91。
6.93 方法が式1Jまたは2Jの化合物を式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも0.01重量%であって、0.5重量%未満の少なくとも2つまたは少なくとも3つまたは少なくとも4つの化合物との混合物で提供する、方法6.91。
6.94 方法が式1Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1K、1L、1M、1N、1O、1Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.01%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々との混合物で提供する、方法6.91。
6.95 方法が式2Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式2K、2L、2M、2N、2O、2Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.0005%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々との混合物で提供する、方法6.91。
6.96 方法が式1Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式1Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式1Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式1Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式1Pの化合物および/または約0.0005~0.30重量%の式1Qの化合物との混合物で提供する、方法6.91。
6.97 方法が式2Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式2Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式2Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式2Pの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Qの化合物との混合物で提供する、方法6.91。
6.98 式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物において、基Rがメチルであり、基Qが-(C=O)-である、方法6.91~6.97の何れか。
6.99 方法が一トシル酸塩形態、例えば、固体結晶一トシル酸塩形態での式1Jまたは2Jの化合物の単離および/または精製を含み、方法がさらに式1Jまたは2Jの化合物と少なくとも1モル当量のトルエンスルホン酸を合わせることを含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1~6.98の何れか。
6.100 溶媒が水および/またはアルコール性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)および/またはケトン溶媒(例えば、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)および/またはエーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル)および/または炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン)またはこれらの何れかの組み合わせである、方法6.99。
6.101 式1Jまたは2Jの化合物の一トシル酸塩が、全体としてまたは一部、二トシル酸塩式1Jまたは2Jの塩の化合物に変換される、方法6.99または6.100。
6.102 以下の工程をとおして、ここでの実施態様の何れかに記載された次の工程の何れかまたは全てをさらに含む、方法1Jまたは2Jまたは6.1~6.94の何れか:
a. 所望により酢酸溶媒中で、遊離形態または塩形態の2-ブロモフェニルヒドラジンと、所望により水和物形態の、遊離形態または塩形態の4-ピペリジノンを反応させることによる、式1Aの化合物の製造;
b. (a)式1Aの化合物の式1Bの化合物への還元であって、所望により還元が式1Aの化合物とトリエチルシランおよびメタンスルホン酸の反応を含むもの、および(b)キラル塩分割またはキラルクロマトグラフィーにより式1Bの立体異性体を分離して、式1Cまたは2Cの化合物を得て、所望によりキラル塩分割がS-マンデル酸を使用する一分割工程で実施されるものによる、遊離形態または塩形態の式1Cまたは2Cの化合物の製造;
c. 塩基存在下保護剤での式1Cまたは2Cの化合物のピペリジンアミンの保護による、遊離形態または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物の製造;
d. 式1Dまたは2Dの化合物を(a)求核性アルキルハライドおよび(b)塩基でN-アルキル化することによる、遊離形態または塩形態での式1Eまたは2Eの化合物の製造。
【0055】
ある実施態様において、方法1I、2I、1J、2Jまたは5.1~5.52または6.1~6.102の何れかは、遊離形態または塩形態の式1Cまたは2C
【化12】
の化合物を製造する工程をさらに含んでよく、
a) 式1A
【化13】
の化合物を式1B
【化14】
の化合物に還元し;ここで、式1A、1B、1Cおよび/または2Cの化合物の置換基AはBr、ClおよびIから選択され;そして
b) 式1Bの化合物の立体異性体(例えば、エナンチオマー)をキラル酸分割またはキラルクロマトグラフィーにより分離して式1Cまたは2Cの化合物を得て;所望により式1Cまたは2Cの化合物は全ての他の立体異性体に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超え、100%までcis立体異性体であり;および/または式1Cまたは2Cの化合物は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超えるまたは97%を超えるまたは99%を超えるまたは99.9%~100%のエナンチオマー過剰率(e.e.)(例えば、4aS、9bRエナンチオマーまたはaR、9bSエナンチオマー)を有する
サブステップを含む。
【0056】
式1Aの化合物の式1Bの化合物への還元は、酸(例えば、酢酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸)存在下のシラン類;金属(例えば、亜鉛)および鉱酸(例えば塩酸);ナトリウムおよび液体アンモニア;エタノール中ナトリウム;またはボラン-アミン錯体(例えばテトラヒドロフラン中のボラン-トリエチルアミン)の使用を介して;ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド;またはナトリウムシアノボロハイドライドを含むが、これらに限定されない還元剤の使用により達成され得る。式1Aの化合物の式1Bの化合物への変換は、式1Aの化合物を、酸化パラジウム、パラジウム/炭素または酸化白金などの触媒存在下、水素で処理する接触水素化を介しても達成され得る(Hudlicky, M., “Reductions in Organic Chemistry”, Ellis Horwood, Ltd., Chichester, UK, 1984参照)。式2Aの化合物の式2Bの化合物への還元は、式1Aの化合物から式1Bの化合物への還元について記載したのに類似する薬剤、例えば酸(例えば、酢酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸)存在下のシラン類(例えば、トリエチルシラン);金属(例えば、亜鉛)および鉱酸(例えば塩酸);ナトリウムおよび液体アンモニア;エタノール中ナトリウム;またはボラン-アミン錯体(例えばテトラヒドロフラン中のボラン-トリエチルアミン)の使用を介して;ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド;またはナトリウムシアノボロハイドライドの使用により達成され得る。式2Aの化合物の式2Bの化合物への変換は、式2Aの化合物が酸化パラジウム、パラジウム/炭素または酸化白金などの触媒の存在下水素で処理される接触水素化によっても達成され得る。式1Aまたは2Aの化合物の還元の特に好ましい実施態様において、還元は、トリフルオロ酢酸の存在下トリエチルシランまたはメタンスルホン酸の存在下トリエチルシランの使用により達成される。特に、メタンスルホン酸のトリフルオロ酢酸への置き換えが、収率、反応時間および費用効率を顕著に改善させることが予想外に判明した。例えば、10体積のトリフルオロ酢酸の代わりに4体積のメタンスルホン酸を使用すると、高価なトリエチルシラン反応材(7体積から1.3体積)の必要性を顕著に減少させて、反応時間を45時間から2~5時間に短縮し、同時にこの工程での収率を増加させることを可能とする。
【0057】
ある実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物を製造するための式1Bの化合物の異性体のエナンチオマー富化(または分離)は、キラルスルホン酸類またはモノもしくはジカルボン酸類またはそれらの誘導体などのキラル酸が使用される、キラル塩分割により達成され得る。このような酸の例は、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸を含むが、これらに限定されない。同様に、式2Bの化合物のエナンチオマー分離は、キラルスルホン酸類またはモノもしくはジカルボン酸類またはそれらの誘導体などのキラル酸が使用されるキラル塩分割により達成され得る。このような酸の例は、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸を含むが、これらに限定されない。好ましくは、式1Bまたは2Bの化合物の分割は、マンデル酸を使用して達成される。特に好ましい実施態様において、該酸は(S)-(+)-マンデル酸である。分割は、望まないエナンチオマーがまず除去されるように最適化され得る。それゆえに、他の好ましい実施態様において、望まないエナンチオマーをまず除去するために(R)-(-)-マンデル酸が加えられ、次いで所望の生成物を得るために(S)-(+)-マンデル酸を加えることにより、分割が達成される。ある実施態様において、(S)-(+)-マンデル酸のみを使用して、1回分割のみが実施される。分割のための好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)およびこれらの組み合わせを含む。
【0058】
他の実施態様において、式1Bの化合物の立体異性体のエナンチオマー富化(または分離)は、キラルクロマトグラフィーを使用して、例えば商品名「Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)」として販売されているアミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)カラムを使用して、達成され得る。式1Bの異性体は、100~450mL/分の流速でエタノールなどの移動相を用いて分離および溶出され得る。さらに他の実施態様において、式1Bの異性体をメタノールまたはイソプロピルアルコールなどの移動相を用いて分離および溶出し得る。所望の化合物、好ましくは、式1Cまたは2Cの化合物のフラクションを集め、単離し得る。ある実施態様において、キラルクロマトグラフィーは、Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)、20μm、5cm内径×50cm長カラムおよび150mL/分の流速で100%エタノール移動相の使用を含む。他の実施態様において、キラルクロマトグラフィーは、Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)、20μm、11cm内径×25cm長カラムおよび400mL/分の流速で100%エタノール移動相の使用を含む。
【0059】
式1Cまたは2Cの化合物を得るために式1Bの化合物の異性体を分離することにより、化合物のジアステレオマーまたはエナンチオマー組成が固定されるかまたは実質的に固定され、式1Jまたは2Jの化合物に至る連続する全てのさらなる反応が化合物のジアステレオマーまたはエナンチオマー組成を実質的に変化させないことは理解される。それゆえに、本発明の全ての態様および実施態様において、式1D、1E、1F、1Hおよび1Iの中間体の各々は、各々、実質的に、本質的にまたは完全に単一cisエナンチオマーであり、逆のcis異性体またはあらゆるtrans異性体を除去し得る。同様に、本発明の全ての態様および実施態様において、式2D、2E、2F、2Hおよび2Iの中間体の各々は、各々、実質的に、本質的にまたは完全に単一cisエナンチオマー、特に4aS、9bRエナンチオマーであり、逆のcis異性体またはあらゆるtrans異性体を除去し得る。それゆえに、ここで使用する、式1D、2D、1E、2E、1F、2F、1H、2H、1Iおよび2Iの中間体の各々は、全ての他の立体異性体に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%~100%のcis立体異性体であり得る;および/または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超えるまたは97%を超えるまたは98.5%を超えるまたは99%を超えるまたは99.9%~100%のエナンチオマー過剰率(e.e.)を有し得る。
【0060】
ある実施態様において、方法1I、2I、1J、2Jまたは5.1~5.52または6.1~6.102の何れかは、2-ブロモフェニルヒドラジンと4-ピペリジノンを酸性溶媒で反応させることによる(フィッシャー・インドール反応)、遊離形態または塩形態の式1Aの化合物の製造工程をさらに含み得る。ある実施態様において、2-ブロモフェニルヒドラジンおよび/または4-ピペリジノンは、酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩として提供される。ある実施態様において、4-ピペリジノンは水和物、例えば、一水和物として存在する。ある実施態様において、生成物は酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩または酢酸塩として得られる。溶解された酸(例えば、HCl、HBr、HSO、酢酸)を含む何らかの適当な溶媒、例えば、水性またはアルコール性溶媒中(例えば、水、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールまたはそれらの何らかの混合物)または無溶媒酸性溶媒中(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)で反応を実施し得る。ある実施態様において、生成物が難溶性である溶媒の使用により、収率が改善され得る。ある実施態様において、溶媒として無溶媒酢酸を使用することにより収率が改善される。
【0061】
ある実施態様において、方法1I、2I、1J、2Jまたは5.1~5.52または6.1~6.102の何れかは、遊離形態または塩形態の式1Dまたは2D
【化15】
〔式中、
(i) AはBr、ClおよびIから選択され、そして
(ii) Bはここに定義する保護基である。〕
の化合物を製造する工程であって、式1Cまたは2Cの化合物のピペリジンアミンを、塩基存在下保護剤で保護する工程を含み、
ここで、該保護剤が一般式
【化16】
〔式中、
(i) Yはハロゲン、イミダゾリル、ベンゾトリアゾール、N-(オキシ)スクシンイミド、アルコキシ、-O-アルキルアリールまたは-O-アリールであり、
(ii) Zは場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-ORであり、ここで、Rがアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、
(iii) Pは-CH-、-C(O)-、-C(O)O-またはS(O)である。〕
を有するものである、工程を含む工程をさらに含み得る。
【0062】
式1Cまたは2Cの化合物との反応のための適当な保護剤の例は、ベンジルオキシカルボニルクロライド(Cbz-Cl)、トリフェニルメチルクロライド、クロロギ酸エチル、t-ブトキシカルボニル無水物(BocO)、炭酸ベンジル N-スクシンイミジルまたはハロゲン化ベンゾイル(例えば塩化または臭化ベンゾイル)、(ベンジルオキシカルボニル)-ベンゾトリアゾール、ハロゲン化ベンジル(例えば塩化または臭化ベンジル)、1-アレーンスルホニルクロライドまたはトルエンスルホニルクロライドを含むが、これらに限定されない。式1Cまたは2Cの化合物の保護基の他の例は、p-メトキシベンジルクロライド、p-メトキシ臭化ベンジルまたはp-メトキシベンズアルデヒドを使用して製造され得るp-メトキシベンジルである。ここに開示する保護剤は包括的であることを意図しない。アミン保護剤のさらなる例については、これに関する多くの一般的参考書の一つ、例えば、引用によりその開示を本明細書に包含させる“Protective Groups in Organic Synthesis” by Theodora Green (出版社: John Wiley & Sons)を参照のこと。式1Cまたは2Cの化合物への保護剤の添加により、得られた化合物1Dまたは2Dの置換基Bは、それゆえに一般式
【化17】
〔式中、
(i) Zは場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-ORであり、ここで、Rがアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、
(ii) Pは-CH-、-C(O)-、-C(O)O-またはS(O)である。〕
を有する。
【0063】
この実施態様の保護工程は、一般にブチルリチウムまたは水素化金属(例えば、水素化カリウム)、アルカリまたはアルカリ土類金属の重炭酸塩、炭酸塩または水酸化物(例えば、カリウムまたは炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウム)または有機アミン類(例えば、トリエチルアミン)などの塩基の付加を必要とする。好ましくは、式1Dまたは2Dの化合物の保護剤はクロロギ酸エチルまたはBOC無水物である。特に好ましい実施態様において、該保護剤はクロロギ酸エチルであり、該塩基はトリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムである。
【0064】
ある実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物の式1Dまたは2Dの化合物への変換は、水とTHFの混合物中のクロロギ酸エチルおよび水酸化ナトリウムでの処理を含む。
【0065】
ある実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物のピペリジン窒素を保護する方法は、まず式1Cまたは2Cの化合物の塩、例えばマンデル酸塩を適当な塩基で中和し、続いて式1Cまたは2Cの化合物の遊離塩基を単離、分離または精製することを含む。次いで、式1Cまたは2Cの化合物のピペリジン窒素の保護のための適切な反応材を適当な塩基と共に加え、式1Dまたは2Dの化合物を得る。中和に使用する塩基は、保護反応に使用する塩基であってもなくてもよい。他の実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物の塩(例えば、マンデル酸塩)を、一工程で式1Dまたは2Dの化合物に到達するために、過剰の塩基の存在下、適切な保護剤と反応させる。それゆえに、これらの実施態様では、遊離塩基形成とアシル化反応が同時に実施される。好ましくは、塩基は水酸化ナトリウムである。
【0066】
ある実施態様において、方法1I、2I、1J、2Jまたは5.1~5.52または6.1~6.102の何れかは、遊離形態または塩形態の式1Eまたは2E
【化18】
〔式中、
(i) AはBr、ClおよびIから選択され、
(ii) RはHおよびC1-4アルキル(例えばメチル)から選択され、そして
(iii) Bはここに定義する保護基である。〕
の化合物を製造する工程であって、上記式1Dまたは2Dの化合物を、(a)一般式
【化19】
〔式中、
(i) A=Cl、F、BrまたはIであり、そして
(ii) RはHまたはC1-4アルキルである。〕
の求核性アルキルハライドおよび(b)塩基でN-アルキル化する工程を含む、工程を含み得る。
【0067】
式1Dおよび2Dの化合物のアルキル化に適当な求核性アルキルハライドの例は、2-クロロアセトアミド、2-ブロモアセトアミド、N-C1-4アルキル2-クロロアセトアミド類(例えば、N-メチル2-クロロアセトアミド)およびN-C1-4アルキル2-ブロモアセトアミド類(例えば、N-メチル2-ブロモアセトアミド)を含むが、これらに限定されない。該アルキル化に有用な塩基の例は、アミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N’-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-5-エン(DBU))などの有機塩基;または水素化物(例えばナトリウム、リチウムまたはカリウム水素化物)、アルコキシド塩基(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシドおよびK(OAr)、Na(OAr))またはアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物(例えばナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)などの無機塩基を含むが、これらに限定されない。所望により、このようなN-アルキル化反応は、ヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム、好ましくはヨウ化カリウムなどのヨウ化物源の存在下で達成され得る。特定の実施態様において、アルキル化を、ジメチルアセトアミド溶媒中、N,N’-ジイソプロピルエチルアミンおよびヨウ化カリウム存在下、2-クロロアセトアミドまたはN-メチル2-クロロアセトアミドを使用して実施し得る。適当な溶媒はアセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドも含む。
【0068】
他の態様において、本発明は、実質的に純粋な形態で式1Jまたは2Jの化合物を含む、活性医薬組成物(活性医薬成分、すなわち、API)を提供する。この態様のさらなる実施態様において、本発明は次のものを提供する。
7.1 薬学的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を含む活性医薬組成物(活性医薬成分)であって、組成物が少なくとも97重量%の該化合物(塩形態として測定)を含む、組成物。
7.2 化合物が、Rがメチルであり、Qが3-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである式1Jの化合物である、組成物7.1。
7.3 該化合物が実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも97%e.e.または少なくとも98%e.e.または少なくとも98.5%e.e.または少なくとも99%e.e.~100%e.e.である、組成物7.2。
7.4 組成物が化合物を少なくとも98%、少なくとも98.5%または少なくとも99.0重量%(塩形態として測定)含む、組成物7.2または7.3。
7.5 化合物がトシル酸塩または塩酸塩形態(例えば、一、二または三トシル酸塩形態または一、二または三塩酸塩形態)である、組成物7.2~7.4の何れか。
7.6 化合物が一トシル酸塩形態である(すなわち、組成物が少なくとも97重量%の一トシル酸塩形態の化合物を含む)、組成物7.5。
7.7 化合物が一トシル酸塩形であり、組成物が化合物を少なくとも98%、少なくとも98.5%または少なくとも99.0重量%(一トシル酸塩として測定)含む、組成物7.6。
7.8 化合物が結晶塩形態である、組成物7.1~7.7の何れか。
7.9 組成物が0.50重量%を超えない式1A、1B、1C、1D、2D、1E、2E、1F、2F、1H、2H、1Iまたは2Iの化合物の何れかの各々を含む、例えば、各0.40重量%を超えないまたは各0.30重量%を超えない、組成物7.1~7.7の何れか。
7.10 組成物が0.25重量%を超えない式1Iまたは2Iの化合物(例えば、式中Rがメチルである)を含む、組成物7.1~7.8の何れか。
7.11 組成物が50ppmを超えない銅、例えば、40ppmを超えないまたは25ppmを超えないまたは10ppmを超えない銅を含む、組成物7.1~7.10の何れか。
7.12 組成物が少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物を含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.13 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.005重量%であって、0.5重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.14 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.005重量%であって、0.5重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも2つまたは少なくとも3つまたは少なくとも4つの化合物と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.15 組成物が、式1Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1K、1L、1M、1N、1O、1Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.01%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.16 組成物が、式2Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式2K、2L、2M、2N、2O、2Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.01%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.17 組成物が、式1Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式1Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式1Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式1Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式1Pの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式1Qの化合物と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.18 組成物が、式2Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式2Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式2Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式2Pの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Qの化合物と混合して含む、組成物7.1~7.11の何れか。
7.19 式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物において、基Rがメチルであり、基Qが-(C=O)-である、組成物7.12~7.19の何れか。
7.20 式1Jまたは2Jの化合物が方法1J、2Jまたは6.1~6.102または方法1K、2Kまたは8.1~8.49の何れか、組成物7.1~7.19の何れかの何れかにより製造された化合物である。
【0069】
他の態様において、本発明は、組成物7.1~7.20の何れかの活性医薬組成物(活性医薬成分)を1以上の薬学的に許容される添加物、希釈剤または溶媒と混合して含む、医薬組成物を提供する。ある実施態様において、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、散剤、ウェーハ剤、ゲル剤または無菌注射用液剤から選択される。ある実施態様において、医薬組成物は、口腔内崩壊錠剤である。ある実施態様において、医薬組成物は、例えば、筋肉内または皮下投与のための、長時間作用型注射用組成物である。ある実施態様において、医薬組成物は、当量遊離塩基の重量で測定して、1~60mgの式1Jまたは2Jの化合物(例えば、経口摂取剤形について20~60mgまたは20~40mgまたは40~60mg;例えば、口腔内即溶性剤形について1~30mgまたは5~20mgまたは5~15mgまたは1~10mg)を含む。
【0070】
特定の実施態様において、医薬組成物は、当量遊離塩基の重量で測定して、40~42mgの式1Jまたは2Jの化合物を含む、例えば、医薬組成物は60mgの式1Jまたは2Jの化合物を含み、ここで、Rがメチルであり、Qは4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチであり、化合物は一トシル酸付加塩形態である。
【0071】
他の実施態様において、本発明は、式1Jまたは2Jの化合物または3.1~3.15または4.1~4.15の何れかを含む医薬組成物を提供し、ここで、該化合物はトルエンスルホン酸および少なくとも1種の添加物、希釈剤または溶媒と混合されている。例えば、ある実施態様において、医薬組成物は、トルエンスルホン酸と混合されたトルエンスルホン酸付加塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を含む。ある実施態様において、トルエンスルホン酸は、組成物に存在する式1Jまたは2Jの化合物の量に対して少なくとも1モル当量、例えば、約1モル当量または1~1.15モル当量、1~1.5モル当量または1~2モル当量の量で存在する。組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤または口腔内崩壊錠剤などの固形経口剤形であり得る。式1Jまたは2Jの化合物は、好ましくはRがメチルであり、Qが4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである化合物である。
【0072】
医薬組成物のための適当な添加物、希釈剤および溶媒の例は、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸/アクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル酢酸セルローススクシネート(HPMC-AS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMC-P)、酢酸ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール/酢酸ポリビニル/ポリビニルカプロラクタムコポリマー、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(OPG)、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、カロテノイド、グルタチオン、メタ重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムエチレンジアミン四酢酸、システイン、メチオニン、セサモール、クエン酸および界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性、双性イオン性または中性界面活性剤)を含むが、これらに限定されない。一般に、適当な添加物は、次のカテゴリー:(a)希釈剤/増量剤(例えば、セルロースまたは微結晶セルロース(例えば、ケイ化微結晶セルロース)、マンニトール、ラクトース一水和物、二リン酸カルシウムまたはイソマルト)、(b)結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン)、(c)崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンまたはクロスカルメロースナトリウム)、(d)滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはモノステアリン酸グリセリル)、(e)流動促進剤(例えば、二酸化ケイ素またはタルク)、(f)発泡剤、(g)ポリマー、(h)可塑剤、(i)乾燥剤または吸湿剤、(j)保湿剤(例えば、ポリオール)、(k)湿潤剤、(l)抗酸化剤(例えば、BHT、クエン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸またはメタ重亜硫酸ナトリウム)、(m)濃化剤(例えば、ゲル化剤)、(n)界面活性剤、(o)緩衝液、(p)甘未剤または風味剤および(q)色素または着色剤から選択され得る。
【0073】
ここで使用する、「活性医薬組成物」は、ヒトまたは動物対象の体への投与のための医薬組成物に取り込まれることが意図される活性医薬成分(API)をいう。すなわち、APIは活性医薬化合物(例えば、式1Jまたは2Jの化合物)およびその合成に起因する何らかの偶発的不純物のみからなる。対照的に、「医薬組成物」は、少なくとも1種の添加物、希釈剤または溶媒と混合されたAPIを含む。適当な添加物、希釈剤および溶媒は当分野で知られ、結合剤、崩壊剤、ポリマー、糖、充填剤、甘味剤、接着剤、緩衝液、放出調節剤、保護コーティング(例えば、胃コーティング)、着色剤、香味剤および液体担体(水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコールなどを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0074】
他の態様において、本発明は、式1Jの化合物または3.1~3.15の何れか(適切であるならば)を製造する方法(方法1K)であって、式1Jの化合物が薬学的に許容される塩形態であり、(a)遊離形態または塩形態の式1Jの化合物を薬学的に許容される塩形態(例えば、異なる塩形態)、例えば酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)の式1Jの化合物(または3.1~3.15の何れか)に変換する工程を含む、方法を提供する。それゆえに、例えば、工程(a)は、薬学的に許容されない塩形態の式1Jの化合物の薬学的に許容される塩形態の式1Jの化合物への変換を含み得る。あるいは、工程(a)は、あまり好ましくない薬学的に許容される塩形態(例えば、塩酸塩)の式1Jの化合物の、より好ましい薬学的に許容される塩形態(例えば、トシル酸塩)への変換を含み得る。ある実施態様において、工程(a)は、一トシル酸塩形態の式1Jの化合物の二トシル酸塩形態の式1Jの化合物への変換を含み得る。
【0075】
他の態様において、本発明は、式2Jの化合物または4.1~4.15の何れか(適切であるならば)を製造する方法(方法2K)であって、式2Jの化合物が薬学的に許容される塩形態、(a)遊離形態または塩形態の式2Jの化合物を薬学的に許容される塩形態(例えば、異なる塩形態)、例えば酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態)の式2Jの化合物(または4.1~4.15の何れか)に変換する工程を含む、方法を提供する。それゆえに、例えば、工程(a)は、薬学的に許容されない塩形態の式2Jの化合物の薬学的に許容される塩形態の式2Jの化合物への変換を含み得る。あるいは、工程(a)は、あまり好ましくない薬学的に許容される塩形態(例えば、塩酸塩)の式2Jの化合物のより好ましい薬学的に許容される塩形態(例えば、トシル酸塩)への変換を含み得る。ある実施態様において、工程(a)は、一トシル酸塩形態の式2Jの化合物の二トシル酸塩形態の式2Jの化合物への変換を含み得る。
【0076】
全てに関して、方法1Kおよび2Kの工程(a)は、それぞれ、方法1Jおよび2Jの工程(e)または工程(f)に関する上の記載に従い実施され得る。例えば、方法1Kまたは2Kの工程(a)が遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物から塩形態の式1Jまたは2Jの化合物への変換を含むとき、方法は、それぞれ方法1Jまたは2Jの工程(e)に関する上の記載に従い実施され得る。方法1Kまたは2Kの工程(a)が塩形態の式1Jまたは2Jの化合物から異なる塩形態の式1Jまたは2Jの化合物への変換を含むとき、方法は、それぞれ、方法1Jまたは2Jの工程(f)に関する上の記載に従い実施され得る。
【0077】
方法1Kおよび2Kのさらなる実施態様において、本発明は次のものを提供する。
8.1 方法が遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法が該遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物の薬学的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物、例えば、酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態)への変換の工程(a)を含む、方法1Kまたは2K。
8.2 工程(a)が、式1Jまたは2Jの化合物の最初の遊離塩基形態と適切な酸の1以上の有機溶媒または水またはそれらの混合物中での反応により実施される、方法8.1。
8.3 方法が塩形態、例えば、酸付加塩形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法が該塩形態の式1Jまたは2Jの化合物から異なる塩形態、例えば、異なる酸付加塩形態(例えば、トシル酸塩形態、例えば、一トシル酸塩および/または二トシル酸塩形態)である薬学的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物への変換の工程(a)を含む、方法1Kまたは2K。
8.4 工程(a)が式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態と適切な酸の1以上の有機溶媒または水またはそれらの混合物中での反応により実施される、方法8.3。
8.5 工程(a)の適切な酸がトルエンスルホン酸である、方法8.2または8.4。
8.6 トルエンスルホン酸の量が0.9~3.2当量、0.9~2.2当量、0.9~1.2当量、例えば、0.95~1.10当量または0.95~1.05当量または約1.0当量、例えば、0.89~1.1当量である、方法8.5。
8.7 工程(a)の溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、t-ブタノール、水、メチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはそれらの混合物を含む、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.8 工程(a)の溶媒が実質的にイソプロパノール、例えば、少なくとも70体積%イソプロパノールまたは少なくとも80体積%イソプロパノールまたは少なくとも90体積%イソプロパノールを含む、方法8.7。
8.9 工程(a)の溶媒が本質的にイソプロパノールおよびメチルtert-ブチルエーテル、例えば、少なくとも70体積%、80体積%または90体積%イソプロパノールと残りは本質的にメチルtert-ブチルエーテルからなる、方法8.8。
8.10 方法が薬学的に許容される酸付加塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.11 酸付加塩形態がトシル酸塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態またはそれらの混合物)である、方法8.10。
8.12 式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態がトルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、一トシル酸塩)であり、工程(a)後の式1Jまたは2Jの化合物の塩形態が異なるトルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、二トシル酸塩)である、8.3~8.12の何れかの方法。
8.13 式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態が塩酸付加塩形態(例えば、モノ-HClまたはジ-HCl)であり、工程(a)後の式1Jまたは2Jの化合物の塩形態がトルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、一トシル酸塩または二トシル酸塩)である、8.3~8.12の何れかの方法。
8.14 方法が、さらに、同じ塩形態の結晶化したまたは再結晶した式1Jまたは2Jの化合物(例えば、1または2ラウンドまたはそれ以上の結晶化を使用して、高純度を達成し得る)を得るために、工程(a)後、塩形態での最初に形成した式1Jまたは2Jの化合物の適当な溶媒からの結晶化および/または再結晶(工程(a)から)の工程(b)を含む、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.15 1以上の結晶化の何れかのための適当な結晶化溶媒がエタノール、イソプロパノール、水、メチルtert-ブチルエーテルまたはそれらの混合物を含む、例えば、最初にイソプロパノールから結晶化および2回目にイソプロパノール/水から再結晶、方法8.14。
8.16 1以上の結晶化の何れかのための適当な結晶化溶媒が、所望により体積比で90:10~99:1、例えば、95:5~99:1または97:3~99:1または約98:2でイソプロパノールおよび水を含む、方法8.15。
8.17 再結晶が種晶(例えば、本方法の生成物の種晶)の添加を含む、8.14~8.16の何れかの方法。
8.18 方法が塩形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法がさらに上記のとおりの工程(a)の前に式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態を遊離塩基形態に変換し、その後、上記のとおり工程(a)により該遊離塩基形態を塩形態に変換する工程を含む、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.19 先の工程が式1Jまたは2Jの化合物の最初の塩形態を適当な塩基で適当な溶媒中処理することを含む、方法8.18。
8.20 適当な塩基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩または重炭酸塩などの無機塩基である、方法8.19。
8.21 塩基がNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、CaO、MgO、NaCO、KCO、LiCO、NaHCO、KHCO、LiHCO、CaCOおよびMgCOから選択される、方法8.20。
8.22 適当な溶媒が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、t-ブタノール、THF、ジオキサン、メチルt-ブチルエーテルまたはこれらの何れかの組み合わせから選択される、方法8.19、8.20または8.21。
8.23 最初の塩形態が酸付加塩形態、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩またはトルエンスルホン酸塩(例えば、一トシル酸塩または二トシル酸塩)である、8.18~8.22の何れかの方法。
8.24 工程(a)後の式1Jまたは2Jの化合物の塩形態がトルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、一トシル酸塩または二トシル酸塩)である、8.18~8.22の何れかの方法。
8.25 方法が遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始され、方法がさらに上記のとおりの工程(a)の前に遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を中間塩形態に変換し、その後、上記のとおり工程(a)により該中間塩形態を最終塩形態に変換する工程を含む、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.26 最初の塩形態が酸付加塩形態、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩またはトルエンスルホン酸塩(例えば、一トシル酸塩)である)、方法8.25。
8.27 先の工程を、中間塩形態を得るために式1Jまたは2Jの化合物の最初の遊離塩基形態と適切な酸を1以上の有機溶媒または水またはそれらの混合物中で反応させることにより実施する、方法8.25または8.26。
8.28 先の工程の溶媒が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、t-ブタノール、THF、ジオキサン、メチルt-ブチルエーテルまたはこれらの何れかの組み合わせを含む、方法8.22、8.23または8.24。
8.29 適切な酸がトルエンスルホン酸である、方法8.27または8.28。
8.30 工程(a)後の式1Jまたは2Jの化合物の塩形態がトルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、一トシル酸塩または二トシル酸塩)である、8.25~8.29の何れかの方法。
8.31 方法が固体形態、例えば、固体非晶質形態または固体結晶形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.32 方法が安定な、結晶塩形態、例えば、安定な結晶トシル酸塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態)で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.33 方法が安定な、結晶塩形態の式1Jまたは2Jの化合物で開始される、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.34方法が安定な、結晶トルエンスルホン酸付加塩形態(例えば、一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩形態)の式1Jまたは2Jの化合物で開始される、方法8.33。
8.35 方法が、全ての他の立体異性体に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%を超えて100%までのcis立体異性体を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.36 方法が実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.または少なくとも97%e.e.または少なくとも99%e.e.または少なくとも99.5%e.e.または少なくとも99.9%e.e.から100%e.e.までの式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.37 方法が実質的に純粋な形態、例えば、HPLCにより測定して、例えば95%を超える純粋な形態または97%を超える、98%を超える、98.5%を超える、99%を超える、99.5%を超えるまたは99.9%を超える純粋な形態、100%までの純粋な形態で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.38 方法が約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.39 方法が式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物との混合物で提供する、方法1Kまたは2Kまたは8.1~8.38の何れか。
8.40 方法が式1Jまたは2Jの化合物を少なくとも0.01重量%であって、0.5重量%未満の式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも一つの化合物との混合物で提供する、方法8.39。
8.41 方法が式1Jまたは2Jの化合物を式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物から選択される少なくとも0.01重量%であって、0.5重量%未満の少なくとも2つまたは少なくとも3つまたは少なくとも4つの化合物との混合物で提供する、方法8.39。
8.42 方法が式1Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式1K、1L、1M、1N、1O、1Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.01%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々との混合物で提供する、方法8.39。
8.43 方法が式2Jの化合物を少なくとも0.001重量%であって、1重量%未満の式2K、2L、2M、2N、2O、2Pおよび2Qの化合物の各々、例えば、少なくとも0.0005%であって、0.5重量%未満の該化合物の各々との混合物で提供する、方法8.39。
8.44 方法が式1Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式1Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式1Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式1Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式1Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式1Pの化合物および/または約0.0005~0.30重量%の式1Qの化合物との混合物で提供する、方法8.39。
8.45 方法が式2Jの化合物を約0.01~0.80重量%の式2Kの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Lの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Mの化合物および/または約0.01~0.60重量%の式2Nの化合物および/または約0.005~0.40重量%の式2Oの化合物および/または約0.005~0.45重量%の式2Pの化合物および/または約0.005~0.30重量%の式2Qの化合物との混合物で提供する、方法8.39。
8.46 式1Kまたは2K、1Lまたは2L、1Mまたは2M、1Nまたは2N、1Oまたは2O、1Pまたは2Pおよび1Qまたは2Qの化合物において、基Rがメチルであり、基Qが-(C=O)-である、方法8.39~8.45の何れか。
8.47 方法が一トシル酸塩形態、例えば、固体結晶一トシル酸塩形態での式1Jまたは2Jの化合物の単離および/または精製を含み、方法がさらに式1Jまたは2Jの化合物と少なくとも1モル当量のトルエンスルホン酸を合わせることを含む、方法1Kまたは2Kまたは8.1以降の何れか。
8.48 溶媒が水および/またはアルコール性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)および/またはケトン溶媒(例えば、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)および/またはエーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル)および/または炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン)またはこれらの何れかの組み合わせである、方法8.47。
8.49 式1Jまたは2Jの化合物の一トシル酸塩が、全体としてまたは一部、二トシル酸塩式1Jまたは2Jの塩の化合物に変換される、方法8.47または8.48。
【0078】
ここに記載する化合物およびその薬学的に許容される塩は、ここに記載され、例示される方法を使用してならびにそれに類する方法および化学分野で知られる方法により製造され得る。ここに記載する合成方法の説明において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験時間および後処理方法を含む、全ての提案する反応条件は、当業者には容易に認識される、その反応について標準的である条件であるよう選択されることは理解される。それゆえに、場合により、何れかの反応は、ここに記載するより高い温度でまたは長いもしくは短い時間で実施する必要があり得る。分子の種々の部分に存在する官能基は、意図する反応材および反応と適合性でなければならないことは、有機合成分野の当業者が理解している。市販されていないならば、これらの方法のための出発物質は、既知化合物の合成と同様のまたは類似する技術から選択される方法により製造され得る。ここでの全ての引用文献は、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0079】
ある実施態様について用語が具体的に定義されない限り、ここで使用する用語は、一般に下記のとおり定義される。
【0080】
用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸または塩基付加塩の形成により修飾された、ここに開示する化合物の誘導体をいう。薬学的に許容される塩の例は、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などを含むが、これらに限定あれない。薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性無機または有機酸から、形成される親化合物の慣用の非毒性塩または4級アンモニウム塩をいう。例えば、このような慣用の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸など由来のもの、および酢酸、プロピオン酸、コハク、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩などを含む。
【0081】
本発明の薬学的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、遊離酸または塩基形態のこれらの化合物と、化学量論量の適切な塩基または酸を水または有機溶媒または両者の混合物中で反応させることにより製造でき;一般に、エーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適当な塩の一覧は、開示を引用により本明細書に包含させるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418にみられる。本発明の化合物は1を超える塩基性窒素原子を有する。例えば、式1Jの化合物および2Jは、各3個の塩基性窒素原子(2個はN-アリールピペラジン窒素および1個は脂肪族ピペリジン窒素)を有する。ピペリジン窒素が2個のピペラジン窒素より塩基性であるのは知られている。これら窒素原子の任意の1個、2個または全てが、反応で提供される遊離塩基対酸モル比により、モノプロトン性、ジプロロトン性またはトリプロロトン性ブレンステッド酸の酸性水素と酸付加塩を形成できることも理解される。その結果、「酸付加塩」などの用語が本明細書で使用されるとき、このような用語は可能な何れかのこのような塩およびこれらの組み合わせをいう。例えば、式1Jまたは2Jの化合物の「トシル酸塩形態」なる用語は、該化合物の一トシル酸塩、二トシル酸塩または三トシル酸塩またはそれらの何らかの混合物をいい得る。同様に、式1Iまたは2Iの化合物の「塩酸塩形態」なる用語は、該化合物の一塩酸塩、二塩酸塩または三塩酸塩またはそれらの何れかの混合物をいい得る。ここに開示する全ての他の酸付加塩形態にこれに該当する。
【0082】
用語「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する分岐および直鎖両者の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図する;例えば、「C-Cアルキル」は、1~4個の炭素原子を有するアルキルをいう。アルキルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを含むが、これらに限定されない。
【0083】
ここで使用する「ハロ」、「ハロゲン」または「ハライド」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。それゆえに、「アルキルハライド」は、メチルアイオダイドまたはヨードブタンなどの上に定義したアルキル基に結合したハロゲン基をいう。
【0084】
「シクロアルキル」は、少なくとも1つの脂肪族環を含む単環式または多環式環系を含むことを意図する。それゆえに、「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどを含む。シクロアルキルが多環系であるとき、このような系は、芳香族、非芳香族、ヘテロ芳香族またはヘテロ非芳香環に縮合した脂肪族環を含み得る。これらの例は、オクタヒドロ-1H-インデン、2,3-ジヒドロ-1H-インデンおよび5,6,7,8-テトラヒドロキノリンを含む。
【0085】
ここでの用語「ヘテロシクロアルキル」は、O、NおよびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの脂肪族環を含む、単環式または多環系をいう。それゆえに、ヘテロシクロアルキルは、ピペリジニル、ピペラジニル、2-ピロリドニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、2H-ピロリルまたは1,2,3,4-テトラヒドロ-1,8-ナフチリジンをいい得る。
【0086】
ここで使用する用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香環(すなわち、4n+2パイ電子(ここで、nは整数である)を含む平面環)を含む安定な5~7員単環式または多環式または7~14員多環式環系をいう。それゆえに、用語「アリール」はフェニル、ナフチルおよびそれらの誘導体を含む。用語「アリール」はまた1以上の芳香族または非芳香族またはヘテロ芳香環に縮合した少なくとも1つの芳香環を含む多環式環系(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)を含むことも意図する。
【0087】
ここで使用する、用語「ヘテロ環」、「ヘテロ環式環」または「ヘテロアリール」は、N、OおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香環を含む、安定な5~7員単環式または多環式または7~14員多環式環を意味することを意図する。それゆえに、「ヘテロ環」または「ヘテロ環式環」または「ヘテロアリール」は、他のヘテロ芳香環または非ヘテロ芳香族または非芳香環に縮合した、単ヘテロ芳香環またはヘテロ芳香環を含み得る。ヘテロ環式環は、安定な構造をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子で側鎖に結合し得る。ここに記載するヘテロ環式環は、得られた化合物が安定であるならば、炭素または窒素原子を置換され得る。ヘテロ環またはヘテロアリール基の例は、1H-インダゾール、チアゾリル、フリル、ピリジル、キノリニル、ピロリル、インドールまたは5,6,7,8-テトラヒドロキノリンを含むが、これらに限定されない。
【0088】
ここで使用する用語「置換」は、指定した原子上の任意の1以上の水素が、指定した原子の通常の原子価を超えず、置換が安定な化合物をもたらす限り、指定された基からの選択基で置き換えられることを意味する。それゆえに、場合により置換されているアルキルは、1以上の水素が、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル(例えばCHCl、CF、CHCHBrなど)、アミド、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シリル、アルキルアミノ、アルキルアミド、ニトロ、シアノ、ハロ、-S(O)-アルキル、-S(O)-アルキル、R-シクロアルキル、R-ヘテロシクロアルキル、R-C(O)-、R-C(O)-OR’、R-O-、-N(R)(R’)(式中、RおよびR’は独立してH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロシクロアルキルである)を含むが、これらに限定されない指定された基からの選択基で置き換えられた、上に定義したアルキル基をいう。
【0089】
用語「分割」は、専門用語であり、ジアステレオマー塩を形成させるためのキラル有機酸または塩基とラセミ混合物の成分の反応および該塩の、例えば、結晶化技術による分離を含む、何らかの手段によるラセミ混合物のそのエナンチオマーへの分離をいう。用語「キラル塩分割」は、キラル酸の使用を介するラセミ混合物のそのエナンチオマーへの分離をいう。
【0090】
用語「クロマトグラフィー」は当分野で周知であり、混合物の成分を、固定相と相互作用させ、該成分の混合物を、エタノール、メタノール、アセトニトリル、水またはそれらの混合物などの移動相で溶出することにより分離する技術をいう。用語「キラルクロマトグラフィー」は、固定相がキラルであるクロマトグラフィーをいう。
【0091】
用語「キラル酸」は、式1Bまたは2Bの化合物とジアステレオマー塩を形成できるあらゆる光学活性酸をいう。ここでの用語「モノまたはジ-カルボン酸」または「スルホン酸」は、それぞれ1個または2個のカルボキシル官能基およびスルホン酸基を含むあらゆる化合物をいう。このような酸の例は、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸を含むが、これらに限定されない。
【0092】
用語「保護剤」は、官能基を遮断または封鎖するために保護が望まれる原子と反応する、あらゆる化合物をいう。望まない化学変換から保護するために、反応性の可能性のある官能基を一過性に修飾するために一般に使用される。望ましい保護剤は、反応条件に適合するまたは安定であり、保護がもはや望まれなくなった後に容易に開裂される。
【0093】
用語「保護基」および「保護的基」は、合成変換中、反応性官能性部分を保護または遮断するために使用される除去可能な化学基をいう。用語「保護剤」は、保護すべき官能性部分に保護基を結合するのに使用する反応材をいう。例えば、保護剤クロロギ酸エチルは、保護基エトキシカルボニルの結合に使用され、保護剤BOC-無水物は保護基t-ブトキシカルボニルの結合に使用される。ここで定義する保護基は、一般式-P-Z(式中、Zは場合により置換されているアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシカルボニルまたは-ORであり、ここで、Rはアルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、Pは-CH-、-C(O)-、-C(O)O-またはS(O)である)を含む。保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、トリフェニルメチル、アルキルオキシおよびアリールオキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、ベンジルN-スクシンイミジルカルボニル、ベンゾイル、置換ベンゾイル、置換ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、置換ベンジルおよびアルキルおよびアリールスルホニル(例えば、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)を含む。さらに適当な保護剤および保護基は、例えば、その開示を引用により全体として本明細書に包含させる“Protective Groups in Organic Synthesis” by Theodora Green (出版社: John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2007)に見られ得る。
【0094】
用語「脱保護」または「脱保護する」または「脱保護をする」は、保護基の除去または開裂の行為をいう。上記保護基の脱保護条件は必然的に保護基の選択により異なり、酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸またはトリフルオロ酢酸またはルイス酸、例えばホウ素トリス(トリフルオロアセテート))または塩基(アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム)触媒作用または接触水素化条件(例えば、水素およびパラジウム/炭素)を含み得る。
【0095】
ここでの用語「触媒」は、化合物の反応性または反応に、それ自体消費されることなく、影響を与える、誘発する、増加させる、影響するまたは促進する何らかの物質または薬剤をいう。用語「遷移金属触媒」は、d軌道に価電子を有するあらゆる金属、例えば周期表の第3~12族の一つから選択される金属をいう。本発明の方法で有用な触媒は、周期表の第8~11族の遷移金属の原子、イオン、塩または錯体を含む。「周期表の第3~12族」は、IUPACシステムにより番号付けされた周期表の属をいう。それゆえに、第8~11族の遷移金属は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀および金を含む。このような触媒の例は、CuI、CuCl、CuBr、CuBr、酢酸Cu(II)、CuCl、CuO、CuSO、CuSO、Cu、Pd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd(dba)]、Ni(アセチルアセトナート)、NiCl[P(C)]およびNi(1,5-シクロオクタジエン)を含むが、これらに限定されない。触媒は、一般に、しかし、必然的にではなく、反応物に対して準化学量論量で使用される。好ましくは、反応物に対して、0.5~20mol%、最も好ましくは、10mol%の遷移金属触媒が使用される。
【0096】
ここでの用語「塩基」は、アミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N’-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP); 1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-5-エン(DBU));水素化物(例えばナトリウム、リチウムまたはカリウム水素化物);アルコキシド(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシドおよびK(OAr)、Na(OAr));またはアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩基、重炭酸塩基、リン酸塩または水酸化物(例えばナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)などの有機または無機塩基をいう。
【0097】
用語「ブレンステッド塩基」は、当分野で認識されている用語であり、プロトンアクセプターである非荷電または荷電原子または分子、例えば、オキシド、アミン、アルコキシドまたはカーボネートをいう。ブレンステッド塩基の例は、KPO、KCO、NaCO、TlCO、CsCO、K(OtBu)、Li(OtBu)、Na(OtBu)、K(OPh)およびNa(OPh)またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0098】
用語「ルイス塩基」は当分野で認識されており、一定反応条件下で電子対を贈与できる化学部分をいう。ルイス塩基の例は、アルコール類、チオール類、オレフィン類およびアミン類(例えば、アンモニア、トリエチルアミン)などの非荷電化合物ならびにアルコキシド類、チオラート類、カルバニオン類および多様な他の有機アニオンなどの荷電部分を含むが、これらに限定されない。
【0099】
ここでの用語「酸」は、ルイス酸またはブレンステッド酸をいう。ルイス酸は技術用語であり、電子対を受容できる化学部分をいう(例えば、三フッ化ホウ素)。ブレンステッド酸は、プロトンを贈与できるあらゆる化学部分をいう(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸ならびに当分野で知られる他の有機酸)。
【0100】
用語「配位子」は、他の中央原子、一般に金属と配位および/または共有結合により1以上の電子を贈与または共有できるあらゆる原子、分子またはイオンをいう。「単座配位子」は、中央原子と1個の結合部位を有する配位子をいう(例えば、ピリジンまたはアンモニア)。「二座配位子」は、2個の結合部位を有する配位子をいう(例えば、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンまたは1,10-フェナントロリン)。第8~11族遷移金属に対する有用な配位子の例は、2-フェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、8-ヒドロキシキノリン、8-アミノキノリン、DBU、DBN、DABCO、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N,N-ジエチルサリチルアミド、2-(ジメチルアミノ)グリシン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリン、5-ニトロ-1,10-フェナントロリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、(メチルイミド)二酢酸、cis-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、cis-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、cis-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、trans-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、cis-およびtrans-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、エタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシベンズアミド、N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、フルオロ-N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、クロロ-N,N’-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、(2-ヒドロキシフェニル)(ピロリジン-1-イル)メタノン、ビフェニル-2-オール、2-ピリジルフェノール、1,2-ベンゼンジアミン、アンモニア、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノンまたはそれらの混合物ならびに前記のビフェニルおよびビナフチル配位子を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、使用する配位子の量は化学量論量でも過剰の量でもよい。他の実施態様において、配位子は、反応溶媒として使用され得る。それゆえに、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノンまたは他の液体アミン類などの反応材は、反応のための溶媒かつ配位子として役立ち得る。
【0101】
用語「N,N’-ジメチルエチレンジアミン」は、「N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン」と相互交換可能に使用される。
【0102】
用語「求核性アルキルハライド」は、アルキルハライド官能基(求電子)および求核性官能基両者を有するあらゆる化合物をいう。用語「求核性」または「求核試薬」は当分野で十分に認識されており、反応性電子対を有する化学部分をいう。
【0103】
用語「還元」または「還元する」は、分子における官能基の高い酸化状態から低い酸化状態への変換をいう。用語「還元するための薬剤」または「還元剤」は、分子における官能基の高い酸化状態から低い酸化状態への変換の効果が当分野で知られるあらゆる化合物または錯体をいう。還元の例は、炭素-炭素二重結合の炭素-炭素単結合への還元およびカルボニル基(C=O)からメチレン(CH)への還元の両者をいう。還元は、直接的な電子、ハイドライドまたは水素-原子移動により達成され得る。方法1Cおよび2Cに有用な典型的還元剤は、触媒(例えば、ラネイニッケル、パラジウム/炭、ホウ化ニッケル、白金金属またはその酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、ペンタシアノコバルト(II)Co(CN) 3-)存在下の金属水素化物(例えば、リチウムアルミニウムハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムシアノボロハイドライド)および水素を含む。接触水素化は、一般に室温で大気圧下実施されるが、高温および/または高圧がより抵抗性の二重結合には必要となり得る。二重結合から単結合への変換に有用な他の還元剤は、シランおよび酸、ナトリウムシアノボロハイドライドおよび酸、亜鉛および酸;ナトリウムおよび液体アンモニア、エタノール中ナトリウム、およびボラン-トリエチルアミンを含む。方法1Hおよび2Hにおけるようなカルボニルからメチレンへの還元に有用な典型的還元剤は、金属水素化物(例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL)、ナトリウムビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムハイドライド(Red-Al)またはナトリウムシアノボロハイドライド)、ボラン類(例えば、BH-THF)、または有機ボラン類(例えばビス(ベンジルオキシ)ボラン)を含むが、これらに限定されない。あるいは、このような変換は、触媒(例えばニッケル、パラジウム/炭、ホウ化ニッケル、白金金属、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウムまたは酸化亜鉛)存在下に水素を使用する接触水素化、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基存在下のケトンとヒドラジン水和物の加熱によるウォルフ・キシュナー還元(Todd, Org. React. 4, 378-422 (1948)参照)、またはケトンと亜鉛アマルガムおよび塩酸などの水性鉱酸の加熱によるクレメンゼン還元(Vedejs, Org. React. 22, 401-422 (1975)参照)によっても達成され得る。このような還元をまた達成し得る他の反応材は、リン酸トリイソプロピル、硫酸存在下の銅および塩酸存在下のスズを含む。還元剤のさらなる例については、“Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure” by Jerry March, p. 771-790, John Wiley & Sons, Inc.(Fourth Edition)を参照のこと。
【0104】
用語「アルキル化」は、ある有機化合物への置換または付加によるアルキル基の導入をいう。それゆえに、用語「N-アルキル化」は、有機化合物の窒素原子へのアルキル基の導入をいう。
【0105】
ここに記載する化合物の製造およびここに記載する方法の一部工程の実施のための方法は当業者に知られ、例えば、米国特許8,309,722;8,779,139;9,315,504;9,751,883;8,648,077;9,199,995;および9,586,960に見ることができ;この各々の内容を、引用によりそれらの全体として本明細書に包含させる。
【実施例
【0106】
実施例1:6-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩。
【化20】
1-(2-ブロモフェニル)ヒドラジン塩酸塩および4-ピペリジノン一水和物塩酸塩を、酢酸中、約1:1.1モル比で合わせ、得られたスラリーを、HPLC分析によりヒドラジン出発物質の残量が1%未満になるまで加熱還流する(例えば、6時間)。次いで、反応混合物を室温に冷却し、濾過し、ケーキをアセトンで洗浄し、固体にまで乾燥させて、それを次工程で使用する。
【0107】
実施例2:[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール
【化21】
還元(選択肢1):[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを、6-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩とトリフルオロ酢酸(630ml、8.48mmol、10体積)およびトリエチルシラン(172ml)の混合により調製し得る。混合物を、室温で窒素下、19時間撹拌する。過剰のトリフルオロ酢酸およびトリエチルシランを減圧下除去する。ヘキサン(550ml)を残存油状物に加え、室温で1時間撹拌し、ヘキサンを傾捨する。さらに250mlのヘキサンを加え、1時間撹拌し、傾捨する。2N 水酸化ナトリウム水溶液をpHが10になるまで残存油状物に加え、次いで溶液をジクロロメタンで抽出する。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)する。
【0108】
還元(選択肢2):別の方法として、マグネチックスターラー、N注入口および乾燥管を備えた3L 3首RBFにメタンスルホン酸(400mL)を仕込む。6-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(100g)を少しずつ入れる。反応混合物を40℃~45℃に加熱し、次いでトリエチルシラン(TES)(55.5mL、1当量)を、発熱を制御するために1時間かけて滴加する。温度を40℃~45℃に維持する。添加が完了したら、混合物を40℃~45℃で1.5時間撹拌する。さらにTES(13.9mL、0.25当量)を約10分間かけて加えてよく、その後、混合物を40℃~45℃で30分間撹拌する。さらにTES(13.9mL、0.25当量)を約10分間かけて加えてよく、その後、混合物を室温で一夜撹拌する。さらにTES(5.5mL、0.1当量)を加えてよく、混合物を室温で90分間撹拌する。<10℃に冷却後、水(600mL)で、<40℃(強い発熱が観察される)に維持する速度で水を滴加することにより、反応を停止させる。ジクロロメタン(1000mL)を加え、混合物を50%w/v NaOH水溶液で約pH=12に調節する。混合物をセライト層で濾過する。層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出する(100mL)。合わせた有機層を水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(120g)で乾燥し、濾過し、減圧下濃縮する。残留物をヘプタンで処理する。濾過後、得られた固体を減圧下、30℃で乾燥させて、73.1gの生成物を得る(収率:83%、HPLC純度:97.1%)。
【0109】
分離(選択肢1):[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールのエナンチオマー分離は、ラセミcis-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(8g、31.6mmol)を、50℃(油浴)でメタノール(160mL)に溶解し、(R)-(-)-マンデル酸(4.8g、31.6mmolを少しずつ加えることにより達成され得る。得られた透明溶液を50℃で数分間撹拌し、次いでエーテル(80mL)を滴加する。得られた溶液を室温に冷却し、白色沈殿(R-マンデル酸塩、3.7g)を濾別する。HPLC分析は>99%e.e.を示す。濾液を濃縮し、1N 水酸化ナトリウム(100mL)で処理し、ジクロロメタン(2×50mL)で2回抽出する。ジクロロメタン層を合わせ、塩水(2×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。ジクロロメタン溶液を油状になるまで(5.59g)濃縮し、メタノール(90mL)に50℃で再溶解する。(S)-(+)-マンデル酸(3.53g、23.2mmol)を少しずつ加える。得られた透明溶液を50℃で数分間撹拌し、エーテル(45mL)を滴加する。得られた溶液を室温に冷却し、白色沈殿(S-マンデル酸塩、4.19g)を濾別する。HPLC分析は>99%e.e.を示す。R-マンデラート:[α] 25=-98.1、S-マンデラート:[α] 25=+102、溶媒:DMSO。あるいは、分割をメタノールとt-ブチルメチルエーテル(MTBE)の混合物中または別にエタノール中で実施し得る。
【0110】
分離(選択肢2):別法として、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを、ラセミcis-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(9.61g、38.0mmol)を50℃でメタノール(190mL)に溶解し、(S)-(+)-マンデル酸(5.78g、38.0mmol)を少しずつ加えることにより達成し得る。得られた透明溶液を50℃で数分間撹拌し、エーテル(95mL)を滴加する。得られた溶液を室温に冷却する。白色沈殿(S-マンデル酸塩、4.1g)を濾別する。HPLC分析は>99%e.e.を示す。
【0111】
前記方法の変法として、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを、ラセミcis-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを2wt%水のエタノール溶液に45℃で溶解し、次いでこの混合物を還流し、透明溶液を得ることにより分離し得る。(S)-(+)-マンデル酸(0.5~0.58当量)の2wt%水/エタノール溶液を出発物質溶液に65~80℃の温度を維持する速度でゆっくり加える。さらに1時間還流後、混合物を70℃に冷却し、所望により精製[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを種晶添加して、結晶化を刺激する。反応は、2~3時間かけてさらに約20℃まで冷やすに連れて、スラリー状になる。生成物ケーキを最後に濾過により単離して、エタノールで洗浄し、続いて35~50℃で減圧下乾燥する。
【0112】
分離(選択肢3):[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールのエナンチオマー分離は、メタノール(24l)にラセミcis-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(1710g「そのまま」、理論上1570g、6.21mol)を40~50℃(窒素下)に温めながら溶解することにより達成し得る。この混合物に、(R)-(-)-マンデル酸(944g、6.2mol)を一度に加える。加熱マントルの電源を切り、MTBE(13L)を混合物に加える。得られた溶液を撹拌しながら室温に冷却させ、30~40時間、15~25℃で撹拌しながら熟成させる。生成物を、白色乃至灰白色の沈殿として濾過により単離し、環境温度で一夜空気乾燥する。これにより、580gm(23%)のR-マンデル酸塩を得る。キラルHPLC分析は>99%e.e.を示す。
【0113】
濾液を濃縮し、水(25L)で希釈し、撹拌し、pH試験紙で測定してpH約14まで50%NaOH(800ml)で処理する。遊離塩基をジクロロメタン(2×17Lおよび1×6L)で抽出する。DCM層を合わせ、乾燥(NaSO)し、濃縮して、固体遊離塩基(約1150g)を得る。遊離塩基を、N下40~50℃に温めながらメタノール(17L)に溶解し、(S)-(+)-マンデル酸(692g、4.55mol)を加える。加熱マントルをオフにし、溶液にMTBE(8.5L)を一度に加える。得られた溶液を撹拌しながら室温に冷却させ、30~40時間熟成させる。生成物を、白色乃至灰白色の沈殿として濾過により単離し、環境温度で一夜空気乾燥する。これにより、828gm(33%)のS-マンデル酸塩を得る。キラルHPLC分析は速く動くエナンチオマーが存在し(>99%ee)、2つの他の不純物が各約1%で存在することを示す(これは望まないエナンチオマーの直前に溶出する)。R-マンデラート:[α] 25=-98.1、S-マンデラート:[α] 25=+102、溶媒:DMSO(3ml DMSO中約10mg)。キラルHPLC条件: Chiralpak AD-H、250×4.6mm、0.1%ジエチルアミン含有ヘキサン中30%IPA、流速0.8ml/分、UV検出254nm。サンプルを、IPA中で塩を音波処理することにより調製する。
【0114】
分離(選択肢4):キラル分割の代わりに、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールのエナンチオマー分離を、Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)カラム、20μm、5cm内径×50cm長を使用する分取クロマトグラフィーによっても達成し得る。26.4g、23.0gおよび14.8gのラセミ6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを、別々に100%エタノールに撹拌しながら(所望により少し加熱しながら)溶解し、次いで0.4μmフィルターで濾過する。供給物を25mL体積で別々に注入し、100%エタノールで150mL/分の流速で25℃で溶出する。あるいは、420gのラセミ6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールを同様に溶解し、濾過し、55mL体積でChiralpak(登録商標)AD(登録商標)カラム、20μm、11cm内径×25cm長に400mL/分の流速で注入する。生成物を、330nmの紫外線波長で検出する。生成物を集め、溶媒を40℃および50~70mbarの減圧下、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。生成物を、AD-H 4.6mm ID×250mmカラムを30℃カラム温度、0.7mL/分の流速の100%エタノール移動相で、200nm、230nm、250nm、280nmまたは325nmでの検出を使用するキラルHPLC分析で分析する。生成物を、Eclipse、5μm XDB-C8、4.6mm ID×250mmカラムで、30℃カラム温度、1mL/分の流速で75:25 メタノール/0.1%ジエチルアミン水溶液および250nm、200nm、230nm、280nmまたは325nmの検出を使用するアキラルHPLC分析でも分析する。単離生成物は>98%e.e.である。
【0115】
実施例3:(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート
【化22】
(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートを、まず、50%水酸化ナトリウム水溶液を使用し、生成物をMTBEで抽出することにより、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(36.0g、0.142mol))を遊離塩基として得ることにより製造し得る。次いで、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートへの変換を、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(36.0g、0.142mol))のTHF(300ml)およびトリエチルアミン(24ml)中の懸濁液を氷-水浴に冷却することにより実施し得る。クロロギ酸エチル(13.5ml、0.142mol)をシリンジポンプから1時間かけて滴加する。氷-水浴を外し、反応混合物を室温でさらに1時間撹拌する。反応混合物をセライトパッドを通し、溶媒を除去して、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート)を得る。1H NMR (CDCl3, 300 MHz):1.20-1.35 (m,3H), 1.73-1.85 (m, 1H), 1.85-1.99 (m, 1H), 3.22-3.52 (m, 3H), 3.52-3.66 (m, 1H), 3.66-3.95 (Br, 1H), 3.95-4.21 (m, 4H), 6.60 (t, J=7.7 Hz, 1H), 7.04 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.20 (d, J=8.1 Hz, 1H)
【0116】
[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(式1Cの化合物)遊離塩基を使用する代わりに、[4aS、9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールの(S)-マンデル酸塩で開始しても反応を実施し得る。100mL丸底フラスコに、磁気撹拌子、均圧滴下ロートおよび滴下ロートの上端にN導入口を設置する。フラスコにS-マンデラート出発物質(5g、12.35mmol)、NaCO(2.88g、27.17mmol)および25mLのTHFを仕込む。黄色反応混合物に、25℃(ヒーティングブロック温度)、クロロギ酸エチル(1.64g、15.11mmol)の5mLのTHF溶液を、約70分間かけて滴加する。反応物(batch)を25℃でさらに10分間撹拌し、次いでHPLCにより確認する。HPLCで観察される出発物質は2%未満であり、所望の生成物は約98%で示される。反応物に、12.5mLのEtOHを加え、反応物を減圧下濃縮して、約30mLの溶媒(大部分THF)を除去する。次いで、反応物に37.5mLのHOを加え、得られた混合物は、pH試験紙によりpH>9を示す。次いで、黄色混合物を室温で約1時間撹拌し、次いで濾過する。固体を25mLのHOで濯ぐ。58℃で約16時間、真空オーブンで乾燥させた後、3.9442gの黄色固体が得られる(98%収率)。固体のH NMRを確認し、(s)-マンデル酸は示されない。生成物のHPLC分析は、所望の生成物を>99%純度で示す。LC-MSは、M/e=326(M+1)のピークを示す。
【0117】
実施例4:[4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート
【化23】
(4aS,9bR)-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートを、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(5.648g、17.4mmol)、2-クロロアセトアミド(7.32g、78.2mmol)、ヨウ化カリウム(19.2g、77.7mol)およびジイソプロピルエチルアミン(19mL、115mmol)のアセトニトリル(80mL)懸濁液を27時間加熱還流することにより製造し得る。溶媒を減圧で除去し、水(200mL)を残留物に加え、1時間撹拌する。得られた白色固体を濾別し、エタノールで洗浄し、乾燥する。
【0118】
実施例5:(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-5-(2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル)-1,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b]インドール-2-カルボキシレート
【化24】
1.000当量のエチル(4aS,9bR)-6-ブロモ-1,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b]インドール-2-カルボキシレートを、0.50体積のジメチルアセトアミド溶媒と共に20℃でリアクターに仕込む。1.500当量のN-メチルクロロアセトアミドの0.30体積のジメチルアセトアミド溶液、続いて1.000当量のヨウ化カリウムおよび1.700当量のジイソプロピルエチルアミンを加える。得られた懸濁液を102℃で15~18時間加熱する。45℃に冷却後、5.00体積の水を加える。さらに冷却および撹拌後、生成物を固体フィルターケーキとして単離し、さらに水で洗浄し、減圧下乾燥する。
【0119】
実施例6:(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート
【化25】
[4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(254mg、1.34mmol)、ヨウ化第一銅(254mg、1.34mol)、炭酸カリウム(3.96g、28.7mmol)およびN,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.31mL、2.87mmol)のジオキサン(20mL)懸濁液を、4.5時間加熱還流する。さらにヨウ化第一銅(250mg、1.32mmol)およびN,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.33mL、3.05mmol)を加える。得られた混合物をさらに3時間加熱還流し、次いで73℃で約66時間加熱する。反応混合物を濃縮し、100:3:3 ジクロロメタン:トリエチルアミン:メタノールを使用する短アルミナカラムを通す。得られたカラムからの溶媒を固体になるまで蒸発させ、ジクロロメタンに再溶解する。ジクロロメタン溶液を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、固体まで濃縮する(3.7g、95%、HPLCで83%純度)。
【0120】
実施例7:(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-2-オキソ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート
【化26】
(6bR,10aS)-エチル3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-2-オキソ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレートは、式1Dの化合物から出発して、ワンポット方法でも製造し得る。2リットル4首丸底フラスコにメカニカルスターラー、還流凝縮器、N注入口、コントローラー付きのテフロン被覆K型温度プローブおよび加熱マントルを設置する。フラスコに、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(250g、769mmol)、N-メチルクロロアセトアミド(124g、1153mmol、1.5当量)、ヨウ化カリウム(191.5g、1160mmol、1.5当量)、ジイソプロピルエチルアミン(266mL、1531mmol、2.0当量)およびジオキサン(625mL)を仕込む。HPLCにより観察される出発基質が3%未満になるまで、反応物を約103℃の還流温度に加熱する(約48時間)。さらにN-メチルクロロアセトアミドおよびジイソプロピルエチルアミンの添加が必要となるかもしれない。次いで、反応物を約80℃に冷却し、この温度で、ヨウ化銅(29.2g、153.8mmol、0.2当量)、炭酸カリウム(232.5g、1682mmol、2.2当量)、ジメチルエチレンジアミン(49.6mL、461mmol、0.6当量)およびさらにジオキサン(375mL)を加える。次いで、反応物を還流温度まで再加熱し、HPLCでモニターする。還流が約103℃で起こる。HPLCで反応をモニターする。
【0121】
完了したとき、反応物を約40℃に冷却し、フラッシュグレードシリカゲルプラグ(625g、2.5g/g)に注加する。それを、6.25Lの酢酸エチルで溶出する(減圧下)。溶離剤を濃縮して、固形残留物(320gm)を得て、次いで熱エタノール(800ml)に溶解する。この混合物を環境温度に冷却し、一夜撹拌する。翌日、0~5℃に冷却し、1時間熟成し、濾過する。ケーキを冷エタノール(150ml)で洗浄し、空気乾燥して、170グラム(70%)の生成物を白色固体として得て、これは、HPLCによると>99A%純度である。HPLC 10:90~90:10 CHCN:HOを15分間。90:10に2分間維持、0.025%TFA緩衝液、1.5mL/分、220nmのUV、Phenomenex Jupiter C18カラム4.6mm×250mm。生成物は、全イオンクロマトグラムでLC/MSにより75A%純度である。1H-NMR (300MHz, CDCl3) 1.28(t, J=6.9Hz, 3H), 1.86-1.96(m, 2H), 2.72(br, 1H), 3.09-3.48(m, 7H), 3.86-4.21(m, 5H), 6.75(dd, J=1.2, 7.8Hz, 1H), 6.82(t, J=7.8Hz, 1H), 6.90(dd, J=1.2, 7.2Hz, 1H)
【0122】
実施例8:(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート
【化27】
(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレートを、(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-2-オキソ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート(18.0g、約57mmol)の50mlのTHF懸濁液に、BH・THF(THF中1M、143mL、143mmol)を室温で15分間滴加することにより得ることができる。得られた混合物を3時間加熱還流する。反応混合物を氷-水浴で冷却し、150mlの6N HClを滴加する。減圧下THFを除去後、2N NaOHをpH=9まで加え、続いて500mlのDCMで抽出する。DCM層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥する。溶媒の蒸発により、粗製(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]-キノキサリン-8-カルボキシレートを得る。
【0123】
あるいは、(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンを次のとおり製造し得る。オーバーヘッドスターラー、N注入口およびK型テフロン被覆温度プローブを備えた5L、3首丸底フラスコに、(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-3-メチル-2-オキソ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート(218g、691.3mmol)をTHF(約50mL)を使用して、仕込む。反応容器を3回真空/Nパージし、次いでTHF中BH-THF錯体の1M溶液(1962mL、1962mmol、2.8当量)を滴下ロートからゆっくり加える。次いで、得られた透明溶液を60℃で加熱する。次いで、得られたバッチを60℃で約17時間撹拌し、HPLCにより89.0%の所望の生成物と約3.0%の未反応基質が示される。バッチを60℃でさらに3時間撹拌し、次いで氷浴で約10℃に冷却する。バッチに、MeOH(327mL、8073mmol、11.7当量)を、内部温度を25℃未満に維持しながら滴下ロートからゆっくり加える。得られたバッチを、氷浴で約30分間撹拌し、次いで減圧下濃縮して、黄色ペーストを得る。次いで、粗ペーストをEtOAc(2180mL)およびHO(2180mL)に分配する。分離した有機層を乾燥(NaSO)し、濾過し、減圧下濃縮して、227.6gの黄色液体を得る。液体のHPLC分析は、89%の所望の生成物とRRt 0.62での2.6%の不純物および2.5%の出発物質を示す。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 1.28 (t, J=7.0Hz, 3H), 1.79-1.95 (m, 2H), 2.74-2.92 (m, 5H), 3.02-3.22 (m, 2H), 3.22-3.38 (m, 3H), 3.54-3.64 (m, 1H), 3.78-4.24 (m, 4H), 6.41(d, J=7.8Hz, 1H), 6.54 (d, J=7.2Hz, 1H), 6.66 (t, J=7.7Hz, 1H); 13C- NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 14.9, 24.7, 37.7, 39.9, 41.4, 44.4, 45.8, 50.7, 61.4, 65.0, 109.3, 113.3, 120.6, 128.8, 135.1, 138.2, 155.6
【0124】
実施例9:(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン
【化28】
エチル(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート(約18.5g、57mmol)、KOH(12.7g、226mmol)およびn-ブタノールを300ml加圧びんに入れ、油浴で120℃で3時間加熱する。n-ブタノールを減圧下除去し、300mlの水を加え、次いでDCMで抽出する。DCM層を合わせ、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)する。溶媒の蒸発により、(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンを得る。
【0125】
実施例10:(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン塩酸塩
【化29】
この実施例は、式1Fの化合物を得るための式1Eの化合物の環化、式1Hの化合物を得るための式1Fの化合物のアミドの還元および式1Iの化合物を得るための式1Hの化合物の脱保護(各式中、Rはメチルであり、Bはエトキシカルボニルである)を含むワンポット3工程変換を表す。
【0126】
1.00当量のエチル(4aS,9bR)-6-ブロモ-5-(2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル)-1,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[4,3-b]インドール-2-カルボキシレートを1.90体積のトルエンと共にリアクターに仕込み、続いて2.20当量の炭酸カリウムを加える。反応物を110℃で、共沸分留器で蒸留物が透明になるまで蒸留する。温度を50℃に調節し、次いで0.20当量のヨウ化銅(I)および0.25当量のDBUを加える。反応物を加熱し、3~4時間、95℃で撹拌する。HPLCにより判断してアルキル化反応が完了したら、温度を35℃に調節し、3.00当量の1.0M ボラン-THF錯体のTHF溶液を加える。反応物を、3~4時間、10℃~40℃で撹拌する。HPLCにより判断して還元反応が完了したら、反応物を5℃に冷却し、次いで過剰の反応材を1.0体積のメタノールをゆっくり加えて、不活化させる。反応物をさらに1時間撹拌し、次いでセライトで濾過し、THFで洗浄する。溶媒を蒸留により除去し、中間体生成物であるエチル(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-カルボキシレートを、5%水酸化ナトリウム溶液と酢酸エチルの間の水性抽出により単離する。有機相を合わせ、塩水で洗浄し、次いでFlorisilで濾過する。20~33%塩酸水溶液を加えてpHを1以下まで下げ、二相混合物を15分間激しく撹拌する。層を分離し、有機層を廃棄し、水層を減圧下蒸留して、溶媒を除去する。33%塩酸水溶液を残留物に加え、反応物を15~17時間還流する。HPLCにより脱カルボキシル化反応の完了が示されたら、反応物を5℃に冷却し、5体積のMTBEで希釈し、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH12まで塩基性化する。30分間撹拌後、水層をさらにMTBEで抽出し、有機相を合わせ、次いでセライトで濾過する。溶媒を減圧下除去し、残留物質を3体積のイソプロパノールに溶解する。33%塩酸水溶液加えて、pHを4.5~6.5に調節する。少なくとも1時間撹拌後、生成物を、2℃での濾過、続いて真空乾燥により単離する。収率は、数回にわたり、65%~85%である。
【0127】
一連の実施を、許容される収率および純度で実施例10の生成物を産生する実施条件の範囲を評価するために行う。反応が1.0当量の出発物質のトルエン溶液と2.20当量の炭酸カリウムから出発し、0.18~0.22当量のヨウ化銅、0.23~0.27当量のDBUおよび2.7~3.3当量のボラン-THF錯体を使用して成功裏に実施され得ることが判明する。
【0128】
実施例11:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン遊離塩基
【化30】
(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(約11.8g、約50mmol)、4-クロロ-4’-フルオロブチロフェノン(15.0g、74.8mmol)、トリエチルアミン(30mL、214mmol)およびヨウ化カリウム(12.6g、76mmol)のジオキサン(65ml)およびトルエン(65ml)中の懸濁液を7時間加熱還流する。濾過および溶媒の蒸発後、200mlのDCMを加える。DCM溶液を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、約55mlまで濃縮する。濃縮した溶液を600mlの0.5N HClのエーテル溶液に滴加する。固体を濾別し、エーテルで洗浄し、次いで水に溶解する。得られた水溶液を2N NaOHで塩基性化し、DCMで抽出する。DCM層を合わせ、塩水(2×200mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)する。溶媒の蒸発およびシリカゲルでの残留物のクロマトグラフィーにより、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンを得る。
【0129】
ジオキサンを使用する代わりに、3-ペンタノン中で反応を実施し得る。メカニカルスターラー、N注入口、還流凝縮器および温度プローブを備えた5L、3首、丸底フラスコに、230gの(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(1mol)、249.78gのKI(1.5mol、1.5当量)、194.12gのPrNEt(1.5mol、1.5当量)、301.76gの4-クロロ-4’-フルオロブチロフェノン(1.5mol、1.5当量)および2300mLの3-ペンタノンを仕込む。次いで、得られた混合物を95℃(内部温度)で17時間加熱し、次いでHPLCにより反応完了を確認する。次いで、バッチを氷浴で約10℃に冷却し、次いで、5%NaOH溶液(2300mL)を加える。次いで、分離した水層をEtOAc(2300mL)で抽出する。合わせた有機層を、EtOAcを用いて前充填したシリカゲルパッド(115g)で濾過する。次いで、シリカゲルにEtOAc(2300mL)を流す。合わせた濾液を減圧下濃縮して、暗褐色液体を得る。次いで、液体にEtOAc(2300mL)および1.5N HCl溶液(2300mL)を加える。バッチをRTで約20分間撹拌し、層を分離する。分けた有機層を1.5N HCl溶液(1150mL)で抽出し、層を分離する。合わせた水層を氷浴で約10℃に冷却し、EtOAc(2300mL)を加える。次いで、撹拌している混合物に、25%NaOH溶液(1000mL)を、内部温度を25℃未満に維持しながら滴下ロートで加える。得られた混合物を氷浴で約20分間撹拌し、層を分離する。水層は、pH試験紙で11~12のpHを示す。水層をEtOAc(1150mL)で逆抽出し、層を分離する。合わせた有機層を塩水(1150mL)で洗浄し、NaSO(230g)で乾燥し、濾過し、減圧下濃縮して、368.8gの暗褐色液体を得る。粗製遊離塩基を、冷暗室でN下、保存する。
【0130】
実施例12:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン塩酸塩
メカニカルスターラー、窒素注入口および熱電対を備えた250mL 3首丸底フラスコに、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン(10g)の酢酸イソプロピル(100mL)溶液を加える。18wt%HCl/酢酸イソプロピル溶液(1.8mL)を加えて、pHを約pH1に調節する。反応物を、1.5時間、窒素下で0~5℃で撹拌する。懸濁液を濾過し、固体を酢酸イソプロピル(25mL)で洗浄して、固体の4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノン塩酸塩および透明濾液を得る。固体を、真空オーブンで45℃で乾燥させて、10.77g(HPLCで95%純度)を得る。
【0131】
実施例13:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン遊離塩基
【化31】
この実施例は、生成物の単離が塩酸塩ではなく、遊離塩基である以外、実施例10で実施される、式1Fの化合物を得るための式1Eの化合物の環化、式1Hの化合物を得るための式1Fの化合物のアミドの還元および式1Iの化合物を得るための式1Hの化合物の脱保護(各式中、Rはメチルであり、Bはエトキシカルボニルである)を含むワンポット3工程変換の変法である。
【0132】
メカニカルスターラー、窒素注入口、熱電対、ディーン・スターク・トラップおよび凝縮器を備えた22L 3首丸底フラスコに、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-5-(2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル)-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(1.45kg)、炭酸カリウム末325メッシュ(1.11kg)およびトルエン(2.9L)を加える。得られた懸濁液を還流(110~112℃)するまで加熱し、30~60分間撹拌する。反応物を45℃~55℃に冷却し、次いでヨウ化銅(I)(139.4g)およびDBU(139.3g)を加え、反応物を、1時間、同温度で撹拌する。次いで、反応物を還流温度まで再び加熱し、反応進行をHPLCでモニターしながら、2.5~5時間維持する。HPLCで出発物質が3.5%以下となるまで反応を続ける。
【0133】
15~25℃の温度を維持するために冷却しながら、ボラン-THF錯体溶液(THF中1M、11L)を滴下ロートで加える。反応物を、反応進行をHPLCでモニターしながら、同温度で12~24時間撹拌する。HPLCでアミド中間体が1%以下となるまで反応を続ける。次いで、反応混合物をメカニカルスターラー、窒素注入口および熱電対を備えた50L 3首丸底フラスコに移す。反応物を0~10℃に冷却し、泡立ちを制御し、所望の温度を維持するような速度でメタノール(1.45L)を加えることにより、ゆっくり反応停止させる。添加完了後、反応物を、1時間、0~20℃で撹拌し、次いで0.5インチ厚層のセライトで濾過し、続いてTHF(3×2.2L)で濯ぐ。
【0134】
合わせた濾液を減圧下濃縮(30~50℃および60~80mm Hg)して、琥珀色油状物と微細褐色固体を得る。残留物を酢酸エチル(4.35L)に再懸濁し、0.5インチ厚層のセライトで濾過し、続いて酢酸エチル(2×1.45L)で濯ぐ。濾液を合わせ、5wt%水酸化ナトリウム水溶液(2.18L)で洗浄し、続いて塩水(1.45L)で洗浄する。
【0135】
22L 3首丸底フラスコにFlorisil(0.435kg)および酢酸エチル(1L)を仕込み、30分間撹拌し、次いで洗浄した濾液を加える。得られた懸濁液を14~24時間、15~25℃で撹拌する。水(2.2L)を加え、混合物をさらに2~4時間撹拌する。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを酢酸エチル(2×1.45L)で洗浄する。
【0136】
メカニカルスターラー、窒素注入口および熱電対を備えた22L 3首丸底フラスコに、水(2.9L)および濃塩酸水溶液(1.45L)を仕込む。溶液を0~10℃に冷却し、次いで酢酸エチル濾液を20℃未満の温度を維持する速度で加える。15分間撹拌後、層を分離し、有機層を濃縮して溶媒を除去する。濃縮物をメカニカルスターラー、窒素注入口および熱電対を備えた22L 3首丸底フラスコに加え、濃塩酸水溶液(1.45L)を加える。溶液を15分間、環境温度で撹拌し、次いで還流(99~104℃)で24~40時間加熱する。反応進行をHPLCによりモニターする。
【0137】
完了したら、反応混合物を環境温度に冷却する。水(2.9L)および酢酸イソプロピル(2.9L)を加える。層を分離し、有機層を廃棄し、酢酸イソプロピル(4.35L)を水層に加える。水層を0~15℃に冷却し、50wt%水酸化ナトリウム水溶液を20℃未満の温度を維持する速度で加える。添加完了後、反応物を10~20分間、0~20℃で撹拌し、次いで層を分離する。水層を酢酸イソプロピル(1.5L)で抽出し、2つの有機層を合わせ、塩水(1.45L)で1回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥する。次いで濾液を2~4時間、Florisil(363g)と撹拌し、濾過し、フィルターケーキを酢酸イソプロピル(2×2.9L)で洗浄する。有機溶液を減圧下濃縮し、生成物をn-ヘプタンから再結晶する。HPLCにより99%純度の642g(76%)の明褐色結晶固体を得る。
【0138】
実施例14:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン塩酸塩
メカニカルスターラー、熱電対、窒素注入口を備えた2L 3首丸底フラスコに、(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(80g)(遊離塩基)および2-プロパノール(360mL、4.5体積)を仕込む。混合物を10~30分間撹拌して、暗琥珀色溶液を得る。水(80mL、0.3488mol)を加える。混合物を室温で5~15分間撹拌する。混合物を、濃HClを滴下ロートから滴下することにより、pH6~8(pH試験紙を使用)に調節する。濃い懸濁液が添加中形成される。所望のpHに達したら、混合物を室温でさらに30~60分間撹拌し、次いで0~5℃に冷却する。懸濁液を撹拌ができるように2-プロパノール(40mL、0.5体積)で希釈する。濾過後、フィルターケーキを水(4mL、0.05体積)および2-プロパノール(76mL、0.95体積)の冷混合物(0~5℃)で2回、冷2-プロパノール(0~5℃)(80mL、1体積)、冷(0~5℃)MTBE(80mL、1体積)およびMTBE(80mL、1体積)で連続的に洗浄する。固体を減圧下40~45℃で乾燥させて、68.9g生成物を結晶一塩酸塩として得る(HPLC純度:99.18%)。
【0139】
得られた4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン塩酸塩の一塩酸塩をX線粉末回折(XRPD)により分析する。
【0140】
XRPDパターン、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン一塩酸塩:
【表1】
【0141】
XRPDパターン、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン遊離塩基:
【表2】
【0142】
実施例15:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3’,4’:4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノントシル酸塩
水、(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3’,4’:4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン塩酸塩(1.0当量)および酢酸イソプロピルを混合し、0℃~30℃に冷却する。希NaOH溶液を温度を0℃~30℃未満に維持しながら加え、混合物をpHを12以上に維持しながら少なくとも30分間撹拌する。次いで、相を分離し、下部水相を酢酸イソプロピルで1回逆抽出する。層を再び分離し、有機抽出物を合わせ、10%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。有機層を減圧下蒸留して、酢酸イソプロピルを除去する。
【0143】
次いで、3-ペンタノンを加え、残存する酢酸イソプロピルを除去するため、減圧蒸留を実施する。3-ペンタノンを再び加え、次いで温度を20℃±10℃に維持する。4-クロロ-4’-フルオロブチロフェノン(1.35~1.65当量)を加える。炭酸ナトリウム(2.7~3.3当量)およびヨウ化カリウム(0.9~1.1当量)を加える。反応物を窒素でパージし、次いで約73℃までゆっくり加熱し、その温度に少なくとも16時間、HPLCにより反応が完了するまで維持する。反応が完了したら、反応物を30℃に冷却する。次いで、水を加え、混合物を少なくとも30分間撹拌する。次いで、層を分離し、下部水相を廃棄する。有機層を5℃に冷却し、10%HCl溶液で洗浄する(温度を20℃未満に維持かつ1未満のpHで)。次いで層を分離し、水層を清潔な容器に移し、有機層を廃棄する。酢酸エチルを加え、混合物を15分間撹拌し、次いで層を分離し、有機層を廃棄する。
【0144】
酢酸エチルを水層に加え、混合物を3℃に冷却する。次いで、30%NaOH溶液を20℃未満の温度を維持しながらゆっくり加える。混合物のpHを少なくとも10に調節する。混合後、相を分離し、下部水相を清潔な容器に移す。酢酸エチルを水層に加え、混合後、層を分離し、水層を廃棄する。残存有機層を合わせ、20%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。次いで水層を廃棄する。有機層を減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をMTBEに溶解する。有機層を、酢酸エチル中活性炭で少なくとも60分間、20℃で処理する。活性炭を濾過により除去し、混合物を減圧下蒸留して、MTBEを除去する。イソプロピルアルコールを加え、混合物を減圧下蒸留して、あらゆる残存MTBEを除去する。イソプロピルアルコールを再びリアクターに加え、p-トルエンスルホン酸(0.89~1.11当量)のイソプロピルアルコール溶液を、温度を33℃に維持しながら加える。所望により、所望のトシル酸塩生成物の種晶を結晶化を刺激するため加え得る。生成物を遠心分離により単離する。ケーキをイソプロパノール、続いてMTBEで洗浄する。粗生成物を45℃で減圧下乾燥する。粗生成物をイソプロパノールおよび水と共にリアクターに加える。混合物を還流まで加熱し、還流で少なくとも10分間撹拌し、全固体の溶解を確実にする。次いで溶液を濾過し、65℃に冷却し、溶液に所望により生成物の種晶を添加しおよび/またはさらに55℃に冷却し、次いで0~10℃に冷却し、この温度で少なくとも60分間造粒する。最終生成物を単離し、イソプロパノールおよびMTBEで洗浄し、次いでケーキを45℃で減圧下乾燥する。次いで物質を粉砕して、所望の粒子径を達成する。種々のバッチで、収率は複数工程を通して65%~85%であったことが判明する。
【国際調査報告】