(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】密閉部材の密閉性をモニタリングするための装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20220803BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20220803BHJP
F17C 13/12 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
G01M3/26 P
B63B25/16 B
F17C13/12 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560953
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2020060554
(87)【国際公開番号】W WO2020212400
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョリヴェ ピエール
(72)【発明者】
【氏名】アスレ ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】グローリ ジュリアン
【テーマコード(参考)】
2G067
3E172
【Fターム(参考)】
2G067AA02
2G067CC04
2G067DD02
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD02
3E172BD05
3E172DA47
3E172KA03
3E172KA21
(57)【要約】
本発明は、流体貯蔵タンク用の密閉要素の密閉性を検査するための検査装置(4)に関し、検査装置(4)は箱部(5)を有し、箱部(5)は、周囲仕切部(7)と、透明材料から成るカバー(6)と、を備えており、カバー(6)は、当該カバー(6)と周囲仕切部(7)とが密閉要素と共に内部チャンバ(13)を画定できるように周囲仕切部(7)に接続されており、周囲仕切部(7)は、内部チャンバ(13)を一周して取り囲み密閉要素に当接して配置される内部周囲シール部(11)を底端部に備えた内部周壁(9)と、内部周壁(9)との間に、内部チャンバ(13)を一周して取り囲み周囲仕切部(7)内にのみ延在する中間チャンバ(14)を画定するように、内部周壁(9)の外側に配置された外部周壁(10)であって、内部周囲シール部(11)を一周して取り囲む前記密閉要素に当接して配置される外部周囲シール部(12)を底端部に備えた外部周壁(10)と、内部チャンバ(13)と中間チャンバ(14)とに接続され、内部チャンバ(13)及び中間チャンバ(14)の減圧を行うように構成された減圧装置(17)と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵タンク用の例えばメンブレン(1)又はマルチレイヤ等の密閉要素の密閉性を検査するための検査装置(4)であって、
前記検査装置(4)は箱部(5)を有し、
前記箱部(5)は、
周囲仕切部(7)と、
透明材料から成るカバー(6)と、
を備えており、
前記カバー(6)は、当該カバー(6)と前記周囲仕切部(7)とが前記密閉要素(1)と共に内部チャンバ(13)を画定できるように前記周囲仕切部(7)に接続されており、
前記周囲仕切部(7)は、
前記内部チャンバ(13)を一周して取り囲み前記密閉要素(1)に当接して配置される内部周囲シール部(11)を底端部に備えた内部周壁(9)と、
前記内部周壁(9)との間に、前記内部チャンバ(13)を一周して取り囲み前記周囲仕切部(7)内にのみ延在する中間チャンバ(14)を画定するように、前記内部周壁(9)の外側に配置された外部周壁(10)であって、前記内部周囲シール部(11)を一周して取り囲む前記密閉要素(1)に当接して配置される外部周囲シール部(12)を底端部に備えた外部周壁(10)と、
前記内部チャンバ(13)と前記中間チャンバ(14)とに接続され、前記内部チャンバ(13)及び前記中間チャンバ(14)の減圧を行うように構成された減圧装置(17)と、
を備えており、
前記検査装置(4)は排気パイプ(15)を備えており、
前記排気パイプ(15)は、一端が前記減圧装置(17)の減圧部材(18)に接続されると共に、他端が前記中間チャンバ(14)に接続されていることにより、前記中間チャンバ(14)が大気圧より低い圧力P1に設定され、
前記内部周壁(9)は、前記内部チャンバ(13)と前記中間チャンバ(14)とを流体的に接続する連通路(20)を備えている
ことを特徴とする検査装置(4)。
【請求項2】
前記周囲仕切部(7)は、前記外部周壁(10)及び前記内部周壁(9)を前記カバー(6)に接続して前記中間チャンバ(14)を密閉カバーする上部分(8)を有する、
請求項1記載の検査装置(4)。
【請求項3】
前記内部周壁(9)の高さと前記周囲仕切部(7)の高さとの比は5~70%、好適には15%~50%である、
請求項2記載の検査装置(4)。
【請求項4】
前記検査装置(4)は、前記連通路(20)に配置された圧力調整器(21)を備えており、
前記圧力調整器(21)は、前記減圧装置(17)が始動されたときに前記内部チャンバ(13)を大気圧より低くかつ前記圧力P1より高い圧力P2に設定するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項5】
前記検査装置(4)は、
前記箱部(5)に固定された取っ手(23)と、
制御信号(25)を生成するように手動で作動されることができる制御部材(24)と、
を備えており、
前記制御部材(24)は、前記取っ手(23)を保持するユーザの手によって作動されることができるように、前記取っ手(23)に又は前記取っ手(23)の直近に配置されており、
前記減圧装置(17)は制御バルブ(27)を備えており、
前記制御バルブ(27)は、前記内部チャンバ(13)及び前記中間チャンバ(14)を前記減圧部材(18)に接続する開弁状態と、前記内部チャンバ(13)及び前記中間チャンバ(14)を前記減圧部材(18)から切り離す閉弁状態と、に切り替え可能であり、
前記検査装置(4)は、前記制御信号(26)に応じて前記制御バルブ(27)を切り替えるように構成された制御ユニット(28)を備えている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項6】
前記制御ユニット(28)は、前記制御信号に応じて前記制御バルブ(27)を前記開弁状態と前記閉弁状態とに選択的に切り替えるように構成されている、
請求項5記載の検査装置(4)。
【請求項7】
前記制御部材は、第1の制御信号を生成するように手動で作動されることができる第1の制御部材(24)であり、
前記検査装置は、第2の制御信号を生成するように手動で作動されることができる第2の制御部材(25)をさらに備えており、
前記制御ユニット(28)は、前記第1の制御信号に応じて前記制御バルブ(27)を前記開弁状態に切り替え、前記第2の制御信号に応じて前記制御バルブ(27)を前記閉弁状態に切り替えるように構成されている、
請求項5記載の検査装置(4)。
【請求項8】
前記取っ手(23)は第1の取っ手(23)であり、
前記検査装置(4)はさらに第2の取っ手(23)を備えており、
前記第1の取っ手及び前記第2の取っ手(23)は、前記箱部(5)の周囲部の互いに反対側に配置されている、
請求項7記載の検査装置(4)。
【請求項9】
前記内部周囲シール部(11)及び/又は前記外部周囲シール部(12)はシール端部(30)を有し、
前記シール端部(30)は、前記内部チャンバ(13)を一周して取り囲む輪を形成し、前記密閉要素(1)に当接して配置されるものであり、
前記内部チャンバを一周して取り囲む前記シール端部(30)は平面内に配置されており、
前記カバーは、平坦ゾーンに対応する密閉性検査装置(4)を構成するように前記平面に対して平行に形成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項10】
前記内部周囲シール部(11)及び/又は前記外部周囲シール部(12)はシール端部(30)を有し、
前記シール端部(30)は、前記内部チャンバを一周して取り囲む輪を形成し、前記密閉要素(1)に当接して配置されるものであり、
前記シール端部の第1部分(31)は第1の平面P1内に配置されると共に、前記シール端部の第2部分(32)は、前記第1の平面に対して斜めである第2の平面P2内に配置されており、
前記カバーは、コーナゾーンに対応する密閉性検査装置(4)を構成するように、前記第1の平面と前記第2の平面とに対して斜めである平面内に形成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項11】
前記検査装置の長手寸法は290~432mm、好適には320mm又は430mmであり、ただし、前記長手寸法は、使用中にタンク縁部に対して平行となる寸法である、
請求項10記載の検査装置(4)。
【請求項12】
前記検査装置(4)は、前記周囲仕切部(7)に固定され前記内部チャンバ(13)を照明する少なくとも1つの照明装置(22)を備えている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項13】
前記検査装置(4)は、前記中間チャンバ(14)に接続された安全バルブ(29)を備えており、
前記安全バルブ(29)は、前記中間チャンバ(14)内の圧力が圧力Pmin以上である場合に閉弁状態に切り替わり、前記中間チャンバ(14)内の圧力が前記圧力Pmin未満である場合に開弁状態に切り替わって前記中間チャンバ(14)を外部に接続することができる、
請求項1から11までのいずれか1項記載の検査装置(4)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の密閉性検査装置(4)を用いて、流体貯蔵タンクの密閉要素(1)に対して実施される検査方法であって、
界面活性剤を含有する水を前記密閉要素(1)の試験対象の部位(2)に塗布し、又は着色ガスを前記試験対象の部位(2)下に注入するステップと、
前記外部周囲シール部(12)及び前記内部周囲シール部(11)を前記試験対象の部位(2)に接触させるように前記密閉性検査装置(4)を前記試験対象の部位(2)に配置するステップと、
前記減圧装置(17)を用いて前記内部チャンバ(13)及び前記中間チャンバ(14)の減圧を行うステップと、
透明な前記カバー(6)を通して、前記試験対象の部位(2)の表面における気泡の出現又は前記内部チャンバ(13)内における着色ガスの出現を観察するステップと、
を有することを特徴とする検査方法
。
【請求項15】
前記減圧を行うステップにおいて、前記中間チャンバ(14)を大気圧より低い圧力P1に設定する、
請求項14記載の検査方法。
【請求項16】
前記減圧を行うステップにおいて、前記内部チャンバ(13)を、大気圧より低くかつ前記圧力P1より高い圧力P2に設定する、
請求項15記載の検査方法。
【請求項17】
前記密閉性検査装置(4)は、請求項5に記載の検査装置(4)であり、
前記減圧を行うステップは、前記制御部材(24)を作動することにより行われる、
請求項14から16までのいずれか1項記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液化ガス等の流体貯蔵タンク用の例えば単層又はマルチレイヤメンブレン(例えば三種複合材料)等の密閉要素の密閉性を検査するための検査装置の分野に関するものである。特にかかるタンクは、液化ガスを低温で貯蔵及び/又は輸送するためのメンブレンを備えた密閉断熱タンクとすることができ、例えば-50℃~0℃の温度の液化石油ガス(「LPG」とも称される)輸送用のタンク又は大気圧で約-162℃の温度の液化天然ガス(LNG)輸送用のタンク等とすることができる。かかるタンクは沿岸、GBS(Gravity-Based Structure)型の海中、又は浮体構造物上に設置することができる。浮体構造物の場合、タンクは当該浮体構造物の推進用燃料としての液化ガスの輸送用又は受取用とすることができる。
【背景技術】
【0002】
流体貯蔵タンクの密閉メンブレンについて密閉性試験を行うためには、従来技術から、内部チャンバを備えたいわゆる真空箱部を有する密閉性検査装置を使用することが実用上知られており、この内部チャンバ内には、局所的に密閉性を検査するために低圧が生成される。かかる真空箱部は、透明なカバーと、周囲シール部を有する周囲仕切部と、を備えており、この周囲シール部は、内部チャンバを密閉閉鎖するために試験対象の密閉メンブレンに押し付けられる。
【0003】
かかる検査装置を用いて密閉試験を行うためには、石鹸等の界面活性剤を含有する水が、メンブレンの試験対象の部位に塗布される。その後、試験対象の部位に検査装置を配置して内部チャンバを減圧することにより、試験対象の部位のサイズを内部チャンバのサイズに一致させる。このようにして、メンブレンに漏れがある場合には、透明なカバーを通して漏れの領域に気泡の形成を観察することができる。
【0004】
従って、メンブレン全体について密閉性検査を行うためには、タンクの平坦ゾーンとコーナゾーン、特に密閉メンブレンの2つのストリップが互いに接着された連結部において、上記作業を多数回繰り返さなければならない。例えば従来の寸法のLNGタンクやLPGタンクの場合、タンクの複数の面を少なくとも部分的にカバーするメンブレンの密閉性を検査する場合には、検査対象の全てのゾーンを網羅するためには数千回の密閉性試験、一般に3000~5000回のオーダの密閉性試験を行うこととなる。この作業を多数回連続して実施することは困難であり、密閉性検査の全部を行うためには、複数人の作業員を要すると共に長時間を要する。
【0005】
さらに従来技術のシステムは、周囲シール部における密閉性が不十分であるという欠点を有し、これにより密閉性試験が判定不能となる。実際には、シール部の周全体において散乱気泡が形成される傾向がある。これにより、気泡の出現がメンブレンにおける漏れ問題に起因するものなのか、又は真空箱部のシール不足に起因するものなのか、検出が困難となる。
【0006】
韓国公開特許第101644126号公報に、内部チャンバを形成する内部箱部と、当該内部箱部全体を覆う外部箱部とを備えた密閉性検査装置が開示されており、外部箱部は、内部箱部を一周して取り囲む中間チャンバを形成する。この装置では、内部箱部及び外部箱部はそれぞれ周囲シール部を備えている。さらに、中間チャンバの減圧が内部チャンバより小さくなるように、装置の各チャンバはそれぞれ独立した減圧部材に接続されている。
【0007】
この種のシステムは、箱部を1つのみ備えた検査装置と比較して検査装置の密閉性を改善することができるが、密閉性試験の結果が読み取りにくくなる。実際には、2つの箱部が重なることにより、カバーを形成する壁が二重になり、これによりメンブレンの試験対象の部位の可視性が阻害される。さらに、観察を行う二重カバーを形成する壁間に延在する中間チャンバは汚れ又はスラッジの堆積を伴うことがあり、これも密閉性試験の可視性を低減させることとなる。
【0008】
その上、上記の韓国公開特許第101644126号公報に開示されている2つの重なった箱部の嵩張りにより、内部又は外部のいずれにおいても、コーナ部付近のゾーンにおける作業員による読取りが阻害されてしまう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の基礎となる1つの思想は、例えばメンブレン等の密閉要素において密閉性試験を行うために真空箱部の密閉性を向上することである。
【0010】
本発明の基礎となる他の1つの思想は、密閉性試験における試験対象の部位の可視性を良好にし、箱部の周囲における嵩張りを小さくして、箱部を閉鎖空間内に収めて機能的に実装することである。
【0011】
本発明の基礎となる他の1つの思想は、試験対象のタンクの密閉メンブレンの密閉性を最小限の時間で行えるように、迅速に使用できる密閉性検査装置を提供することである。
【0012】
一実施形態では本発明は、流体貯蔵タンク用の例えば単層のメンブレン、例えば金属メンブレン、又は多層メンブレン、例えば複合メンブレン等の密閉要素の密閉性を検査するための検査装置を提供するものであり、検査装置は箱部を有し、箱部は、
周囲仕切部と、
透明材料から成るカバーと、
を備えており、
カバーは、当該カバーと前記周囲仕切部とが密閉要素と共に内部チャンバを画定できるように前記周囲仕切部に接続されており、
前記周囲仕切部は、
前記内部チャンバを一周して取り囲み前記密閉要素に当接して配置される内部周囲シール部を底端部に備えた内部周壁と、
前記内部周壁との間に、前記内部チャンバを一周して取り囲み前記周囲仕切部内にのみ延在する中間チャンバを画定するように、前記内部周壁の外側に配置された外部周壁であって、前記内部周囲シール部を一周して取り囲み前記密閉要素に当接して配置される外部周囲シール部を底端部に備えた外部周壁と、
前記内部チャンバと前記中間チャンバとに例えば直接的又は間接的に接続され、前記内部チャンバ及び前記中間チャンバの減圧を行うように構成された減圧装置と、
を備えている。
【0013】
かかる構成により、特に、中間チャンバによって互いに切り離された内部及び外部の2つの周囲シール部が存在し、試験中にこの中間チャンバの減圧も行われることにより、真空箱部はメンブレンの密閉性試験を行うために十分な密閉性を有することとなる。実際、内部シール部及び外部シール部は、シール部を1つのみ有する伝統的な箱部と比較して真空箱部の密閉性を向上するために貢献する。さらに、中間チャンバにおいて減圧を行うので、内部チャンバの周囲部を構成する内部シール部の周囲において、密閉性試験時に試験対象となる部位に散乱気泡が現れることもない。外部と中間チャンバとの間の圧力差により、散乱気泡が形成され得るのは外部シール部のみ、すなわち中間チャンバ内のみとなる。
【0014】
最後に、中間チャンバは、韓国公開特許第101644126号公報のように透明なカバー内に延在しないので、密閉性試験の透明なカバーを通しての観察に際して可視性が劣化することが無くなる。実際、中間チャンバは汚れやスラッジの原因となり得るものであり、これにより透明なカバーを通しての観察が阻害され得る。試験対象の密閉要素における孔又は開口を識別するために界面活性剤を用いる場合について本発明を検討した場合、中間チャンバ内に気泡が生じることがあり、この気泡は最初に中間チャンバの側方の仕切部の表面に現れて透明なカバーに伝播し、これにより必然的に作業員の可視性が阻害されることとなる。
【0015】
複数の実施形態では、上述のような検査装置は以下の構成のうち1つ又は複数を具備することができる。
【0016】
一実施形態では、密閉要素は密閉メンブレンを備えている。
【0017】
一実施形態では、前記周囲仕切部は、前記外部周壁及び前記内部周壁を前記カバーに接続して前記中間チャンバを密閉カバーする上部分を有する。
【0018】
これにより、上部分によって中間チャンバの容積を区切って中間チャンバの減圧を容易にすることができる。さらに、種々の圧力差により生じた荷重は主に1つの壁に伝達され、これにより周囲部全体の嵩張りを(箱部内にもう1つの箱部が入った場合における2つの壁の場合と比較して)低減することができる。
【0019】
一実施形態では、前記内部周壁の高さと前記周囲仕切部の高さとの比は5~70%、好適には15~50%である。
【0020】
この高さ方向は、密閉メンブレンからカバーに延在する方向に相当する。
【0021】
一実施形態では、前記外部周壁の高さと前記周囲仕切部の高さとの比は5~70%、好適には15~50%である。
【0022】
一実施形態では、内部周壁の高さは外部周壁の高さに等しい。
【0023】
一実施形態では、カバーはガラス製又はポリメチルメタクリレート(PMMA)製である。
【0024】
一実施形態では、前記検査装置は排気パイプを備えており、前記排気パイプは、一端が前記減圧装置の減圧部材に接続されると共に、他端が前記中間チャンバに接続されていることにより、前記中間チャンバが大気圧より低い圧力P1に設定される。
【0025】
一実施形態では、前記内部周壁は、前記内部チャンバと前記中間チャンバとを流体的に接続する連通路を備えている。
【0026】
一実施形態では、前記検査装置は、前記連通路に配置された例えばバルブ等の1つ又は複数の圧力調整器を備えており、前記1つ又は複数の圧力調整器は、前記減圧装置が始動されたときに前記内部チャンバを大気圧より低くかつ前記圧力P1より高い圧力P2に設定するように構成されている。
【0027】
これにより、圧力調整器によって、内部チャンバと中間チャンバとの間に圧力差を生じさせることができる。実際には、内部チャンバの圧力は中間チャンバの圧力より高い。これにより、中間チャンバから気体が例えば内部シール部下を通過して内部チャンバに達することが無くなり、これにより散乱気泡を生じるおそれが無くなる。その結果、圧力調整器によって、検査装置を用いた密閉性試験の信頼性を向上させることができる。
【0028】
一実施形態では、前記減圧部材は第1の減圧部材であり、前記排気パイプは第1の排気パイプであり、前記検査装置は第2の排気パイプを備えており、前記第2の排気パイプは、一端が前記減圧装置の第2の減圧部材に接続されると共に、他端が前記内部チャンバに接続されていることにより、前記内部チャンバが大気圧より低くかつ圧力P1より高い圧力P2に設定される。
【0029】
これにより、第1の減圧部材及び第2の減圧部材によって、内部チャンバと中間チャンバとの間に圧力差を生じさせることができる。よって、圧力調整器と同様に、第1の減圧部材及び第2の減圧部材によって、検査装置を用いた密閉性試験の信頼性を向上させることができる。
【0030】
一実施形態では、減圧部材、第1の減圧部材及び/又は第2の減圧部材は、ベンチュリ効果を利用するシステム又はポンプを備えている。
【0031】
一実施形態では、圧力P2と圧力P1との差は100~5000Paであり、好適には1000Paに実質的に等しい。例えば、圧力P1は-200mbarg(約8.325×104Pa)とし、圧力P2は-190mbarg(約8.425×104Pa)とすることができる。
【0032】
一実施形態では、前記検査装置は、
-前記箱部に固定された取っ手と、
-制御信号を生成するように手動で作動されることができる制御部材と、
を備えており、
前記制御部材は、前記取っ手を保持するユーザの手によって作動されることができるように、前記取っ手に又は前記取っ手の直近に配置されており、
前記減圧装置は制御バルブを備えており、
前記制御バルブは、前記内部チャンバ及び前記中間チャンバを前記減圧部材に接続する開弁状態と、前記内部チャンバ及び前記中間チャンバを前記減圧部材から切り離す閉弁状態と、に切り替え可能であり、
前記検査装置は、前記制御信号に応じて前記制御バルブを切り替えるように構成された制御ユニットを備えている。
【0033】
かかる構成により、取っ手に又はその直近に配置された制御部材によって、1人のユーザが取っ手を用いて検査装置を配置できることにより高信頼性かつ簡単な使用が可能になると共に、取っ手を離す必要なく又は他のユーザの存在を要することなく、排気を作動することができる。また、かかる装置によってより迅速な使用が可能となり、これにより、タンクの密閉メンブレンの密閉性を最小限の時間で試験することができる。
【0034】
一実施形態では、前記制御ユニットは、前記制御信号に応じて前記制御バルブを前記開弁状態と前記閉弁状態とに選択的に切り替えるように構成されている。
【0035】
一実施形態では、前記制御部材は、第1の制御信号を生成するように手動で作動されることができる第1の制御部材であり、前記検査装置は、第2の制御信号を生成するように手動で作動されることができる第2の制御部材をさらに備えており、前記制御ユニットは、前記第1の制御信号に応じて前記制御バルブを前記開弁状態に切り替え、前記第2の制御信号に応じて前記制御バルブを前記閉弁状態に切り替えるように構成されている。
【0036】
一実施形態では、前記取っ手は第1の取っ手であり、前記検査装置はさらに第2の取っ手を備えており、前記第1の取っ手及び前記第2の取っ手は、前記箱部の周囲部の互いに反対側に配置されている。
【0037】
一実施形態では、前記周囲シール部又は前記内部周囲シール部及び/又は前記外部周囲シール部はシール端部を有し、前記シール端部は、前記内部チャンバを一周して取り囲む輪を形成し、前記密閉要素に当接して配置されるものであり、前記シール端部は平面内に配置されており、前記カバーは、平坦ゾーンに対応する密閉性検査装置を構成するように前記平面に対して平行に形成されている。
【0038】
かかる実施形態により、検査装置はタンクの平坦ゾーンにおいて密閉性の検査を行うために適したものとなる。
【0039】
一実施形態では、前記内部周囲シール部及び/又は前記外部周囲シール部はシール端部を有し、前記シール端部は、前記内部チャンバを一周して取り囲む輪を形成し、前記密閉要素に当接して配置されるものであり、前記シール端部の第1部分は第1の平面内に配置されると共に、前記シール端部の第2部分は、前記第1の平面に対して斜めである第2の平面内に配置されており、前記カバーは、コーナゾーンに対応する密閉性検査装置(4)を構成するように、前記第1の平面と前記第2の平面とに対して斜めである平面によって形成されている。
【0040】
かかる実施形態により、検査装置はタンクのコーナゾーンにおいて密閉性の検査を行うために適したものとなる。実際には、周囲シール部の形態により、コーナゾーンにおけるタンク壁の傾斜に追従することができ、これにより内部チャンバと密閉状態の中間チャンバとを保存することができる。
【0041】
また、下記にて説明するように、本発明の箱部の寸法は、過度に大きくなることなく、試験対象のゾーンに完全に適合できるように選択される。実際、ここで留意すべき点は、特にコーナゾーン又は角度のついたゾーンでは試験表面は不規則であることが非常に多く、実際の角度は理論的な設計角度とは異なり、密閉性試験のために必要な真空を維持する箱部の寸法が過度に大きくなって、大きな問題となることである。
【0042】
一実施形態では、第1の平面と第2の平面とは互いに60°~170°の角度で、好適には90°、135°又は108.4°又は161.6°の角度で斜めになっている。本発明の分野において比較的慣用されており、ひいてはLNGタンク又はLPGガスについて比較的慣用されている2つの隣り合う面の傾きの角度は、典型的には90°~135°であると言うことができる。
【0043】
一実施形態では、前記検査装置の長手寸法は290~432mm、好適には320mm又は430mmであり、ただし、前記長手寸法は、使用中にタンク縁部に対して平行となる寸法である。これにより、標準ゾーン、すなわち例えばタンクの頂部又は底部の平坦ゾーンでは、従来の長手寸法は320mm(ミリメートル)であるのに対し、タンクの2面間のコーナゾーンでは、長手寸法は従来は430mmである。
【0044】
よって、検査装置は、密閉メンブレンの幅全体にわたって密閉性検査を行うために最適な長手寸法を有すると同時に、事前組立された2つの一次断熱ブロック間を通過することができる。
【0045】
一実施形態では、前記検査装置は、前記周囲仕切部に固定され前記内部チャンバを照明する少なくとも1つの照明装置を備えている。
【0046】
かかる実施形態により、照明装置によって、いかなる漏れもより識別しやすくなって、視覚的に行われる密閉性検査の品質を向上させることができる。
【0047】
一実施形態では、検査装置は、内部チャンバの周囲に配置された複数の照明装置を備えている。例えば、照明は複数のLEDのストリップを用いて提供される。
【0048】
一実施形態では、前記検査装置は、前記中間チャンバに接続された安全バルブを備えており、前記安全バルブは、前記中間チャンバ内の圧力が圧力Pmin以上である場合に閉弁状態に切り替わり、前記中間チャンバ内の圧力が前記圧力Pmin未満である場合に開弁状態に切り替わって前記中間チャンバを外部に接続することができる。
【0049】
一実施形態では、Pminの値は200~1000mbar、好適には800mbarである。
【0050】
一実施形態では本発明は、上記の密閉性検査装置を用いて、流体貯蔵タンクの密閉要素に対して実施される検査方法も提供するものであり、本検査方法は、
-界面活性剤を含有する水、例えば石鹸水等を、前記密閉要素の試験対象の部位に例えば噴霧等により塗布するステップと、
-前記外部周囲シール部及び前記内部周囲シール部を前記試験対象の部位に接触させるように前記密閉性検査装置を前記試験対象の部位に配置するステップと、
-前記減圧装置を用いて前記内部チャンバ及び前記中間チャンバの減圧を行うステップと、
-透明な前記カバーを通して、前記試験対象の部位の表面における気泡の出現を観察するステップと、
を有する。
【0051】
かかる方法により、試験対象の部位に漏れがある場合、内部チャンバにおいて減圧を行うことにより、この漏れ部分において気泡が形成される。実際、内部チャンバに侵入して外部と内部チャンバとの間で圧力を均衡化しようとする気体は、水に含まれる界面活性剤に捕捉され、これにより漏れ部分において気泡が形成される。
【0052】
一実施形態では本発明は、上記の密閉性検査装置を用いて、流体貯蔵タンクの密閉要素に対して実施される以下の検査方法も提供するものであり、本検査方法は、
-前記密閉要素の試験対象の部位下に着色ガスを注入するステップと、
-前記外部周囲シール部及び前記内部周囲シール部を前記試験対象の部位に接触させるように前記密閉性検査装置を前記試験対象の部位に配置するステップと、
-前記減圧装置を用いて前記内部チャンバ及び前記中間チャンバの減圧を行うステップと、
-透明な前記カバーを通して前記内部チャンバ内における着色ガスの出現を観察するステップと、
を有する。
【0053】
以下、一実施形態において本発明の方法を分説する。この具体例では「着色ガス」を使用し、これは以降は図示されず、上記にて説明した従来技術の技術的課題に直接関係するものでもないが、この実施形態は本発明において極めて適した一選択肢の態様である。
【0054】
「着色ガス」との文言は、ヒトの作業員にとって毒性を有しないガスであって、ヒトの作業員によって視認可能な特定の形態を有するガスをいうことに留意すべきである。非限定的な一例として、例えば(主として)カーボンブラックベースの煙、又は好適には、グリコール若しくはグリセリンを含有する水蒸気が考えられる。
【0055】
一実施形態では、前記減圧を行うステップ中、前記中間チャンバを大気圧より低い圧力P1に設定する。
【0056】
一実施形態では、前記減圧を行うステップ中、前記内部チャンバを、例えば前記圧力調整器を用いて又は連通路のサイズを利用して、大気圧より低くかつ前記圧力P1より高い圧力P2に設定する。
【0057】
一実施形態では、前記減圧を行うステップは、前記制御部材を作動することにより行われる。
【0058】
添付の図面を参照して以下の本発明の複数の特定の実施形態の説明を読めば、本発明をより良好に理解することができ、また、本発明の他の目的、詳細、構成及び利点がより明らかとなる。これら複数の特定の実施形態はあくまで例示であって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】密閉メンブレンに配置された第1の実施形態の密閉性検査装置の概略的な上面図である。
【
図2】第1の実施形態の密閉性検査装置の
図1の線 II-II に沿った断面の概略図である。
【
図3】第2の実施形態の密閉性検査装置の断面の概略図である。
【
図4】第3の実施形態の密閉性検査装置の断面の概略図である。
【
図5】第4の実施形態の密閉性検査装置の断面の概略図である。
【
図6】第5の実施形態の密閉性検査装置の断面の概略図である。
【
図7】平坦ゾーンに対応した第5の実施形態の密閉性検査装置の斜視図である。
【
図8】コーナゾーンに対応した第6の実施形態の密閉性検査装置の斜視図である。
【
図9】第7の実施形態の密閉性検査装置の部分図であり、取っ手のうち1つを示す。
【
図10】第6の実施形態の密閉性検査装置の配置を概略的に示す、タンクコーナ構造の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、密閉性検査装置4について説明する。これは、流体貯蔵タンク用の例えば密閉メンブレン1等の密閉要素における漏れを検出するために使用可能なものである。
【0061】
下記の事例では、流体貯蔵タンクは液化ガスの貯蔵及び/又は輸送用の密閉断熱タンクである。密閉メンブレン1は、ガラス繊維及び樹脂の2層間にアルミニウムシートを挟んだラミネート複合材料製の密閉メンブレンである。密閉メンブレン1は、重なりゾーン3を形成するように複合材料製の複数の要素を互いに重ねて接着したものを含む。
【0062】
しかし本発明は、他の種類のタンクや他の種類の密閉メンブレンにおいて使用することも可能である。例えば、密閉メンブレンは、複数の要素を互いに溶接したものを含む金属メンブレンとすることができる。
【0063】
メンブレン1の密閉性を検査するために用いられる密閉性試験ステップ中、密閉性検査装置4はメンブレン1の試験対象の部位2に配置される。この試験対象の部位2は、
図1~5、特に
図1に示されているように、重なりゾーン3の場所に位置することができ、又は密閉メンブレン1の他の任意のゾーンに位置することができる。
【0064】
密閉性検査装置4は箱部5を備えており、箱部5は周囲仕切部7とカバー6とを備えており、カバー6は、ユーザが当該カバー6を通して試験対象の部位2の観察を行えるように可視域において透明となっている。カバー6は周囲仕切部7の各縁部に接続されることにより、周囲仕切部7と共に、密閉された内部チャンバ13を形成する。
【0065】
図1及び
図2は、第1の実施形態の密閉性検査装置4を示す。
図1では検査装置4の箱部5のみがメンブレン1と共に示されており、同図に示されているようにカバー6は矩形となっており、同様に矩形である周囲仕切部7はカバー6の4辺の各縁部に固定されることにより、矩形の平行六面体の箱部5を形成する。しかし、不図示の複数の実施形態では、箱部5はメンブレンの試験対象の部位2に適した任意の他の形態を有することができ、例えば細長形、多角形又は円柱形等とすることができ、周囲仕切部7はカバー6の形態に合わせられる。
【0066】
図2も、第1の実施形態の検査装置4を示す。本実施形態では、周囲仕切部7は上部分8と、内部周壁9と、外部周壁10と、を有する。内部周壁9の底端部には、内部チャンバ13を一周して取り囲みメンブレン1に当接して配置される内部周囲シール部11が設けられている。また、内部周壁9の上端部は、上部分8の底端部に密閉接続されている。上部分8は上端部でカバー6に密閉接続されている。
【0067】
かかる構成により、試験対象の部位2と内部シール部11と内壁9と上部分8とカバー6とにより構成された組立体が、内部チャンバ13の全ての壁を構成し、これにより、内部チャンバ13は密閉性試験中は、メンブレン1の試験対象の部位2に漏れがある場合にはその部分と、減圧装置17との接続部と、を除いて、実質的に密閉状態となる。
【0068】
周囲仕切部7はさらに、内部周壁9の外側に配置された外部周壁10を備えており、これは内部周壁9から離隔している。外部周壁10の底端部には、内部周囲シール部11を一周して取り囲みメンブレン1に当接して配置される外部周囲シール部12が設けられている。また、外部周壁10の上端部は、上部分8の底端部に密閉接続されている。
【0069】
かかる構成により、メンブレン1と外部シール部12と外部周壁10と上部分8と内部周壁9と内部シール部11とにより構成された組立体が、中間チャンバ14の全ての壁を構成し、これにより、中間チャンバ14は密閉性試験中は、メンブレン1からの漏れがある場合にはその部分と、減圧装置17又は内部チャンバ13との接続部と、を除いて密閉される。
【0070】
図2に示されている第1の実施形態では、内部チャンバ13は、内部周壁9内に形成された少なくとも1つの連通路20によって中間チャンバ14と流体的に接続されている。
【0071】
検査装置4は減圧装置17も備えており、この減圧装置17は第1の減圧部材18を備えており、本実施形態ではこの第1の減圧部材18が唯一の減圧部材であり、第1の減圧部材18は第1のパイプ15によって中間チャンバ14に接続されている。これにより、第1のパイプ15は外部周壁10を貫通して、第1の減圧部材18による中間チャンバ14の減圧を可能にする。本実施形態では、内部チャンバ13と中間チャンバ14との間の連通路20と第1の減圧部材18とを用いて、内部チャンバ13の減圧も行われる。
【0072】
さらに本実施形態では、内部チャンバ13の容積と中間チャンバ14の容積とに対する連通路20の寸法は、減圧装置17が作動されたときに内部チャンバ13と中間チャンバ14との間の圧力の均衡化を減速するように選択される。このような連通路の寸法により、密閉性試験の際に所定の時間にわたって内部チャンバより中間チャンバ14の減圧を大きくすることができ、これにより試験の信頼性を向上させることができる。有利には、連通路の寸法は、漏れ流量以上の圧力損失が生じるようにされる。かかる構成によって、例えば、試験対象の密閉要素において妥当に予測可能な漏れ部分のサイズに応じて、この連通路の寸法を0.1ミリメートルから数ミリメートルとすることができる。
【0073】
図3は、第2の実施形態の検査装置4を示す。この第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、周囲仕切部7が上部分8を有しないことである。実際には、
図3を見ると分かるように、本実施形態では周囲仕切部7は、内部周囲シール部11を底端部に有する内部周壁9を有し、この内部周壁9の上端部はカバー6に直接固定されている。また、周囲仕切部7は内部周壁9の外側に配置された外部周壁10を備えており、これは内部周壁9から離隔している。外部周壁の底端部には外部周囲シール部12が設けられていると共に、外部周壁の上端部は本実施形態では、カバー6に直接固定されている。
【0074】
よって、本実施形態では内部チャンバ13は、試験対象の部位2と内部周壁9とカバー6とによって区切られる。また、中間チャンバ14はメンブレン1と外部シール部12と外壁10とカバー6と内壁と内部シール部11とによって区切られる。
【0075】
図4は、第3の実施形態の検査装置4を示す。この第3の実施形態は、
図2の第1の実施形態と非常に類似する。本実施形態が第1の実施形態と相違する点は、連通路20に圧力調整器21が配置されていることのみである。
【0076】
この圧力調整器21は本実施形態では、内部チャンバ13と中間チャンバ14との間において圧力差を保証するように構成されたバルブである。実際には例えば、内部チャンバ13内を中間チャンバ14内の圧力P1より高い圧力P2にしたい場合、内部チャンバ13の圧力が圧力P1に達しない限りにおいて圧力調整器21は内部チャンバ13と中間チャンバ14との間の流体連通部を開通状態に維持し、値P1に達すると直ちに流体連通部を閉鎖するように構成することができる。実際には、中間チャンバ14に減圧部材18を接続することにより、中間チャンバ14を圧力P1より低い圧力まで減圧させ続けることができる。
【0077】
図5は、第4の実施形態の検査装置4を示す。本実施形態は、第1の実施形態と非常に類似する。しかし、第4の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、内部チャンバ13が連通路20によって中間チャンバに連結されていないことである。本実施形態では実際には、内部チャンバ13と中間チャンバ14とは互いに独立しており、これにより各チャンバをそれぞれ独立して減圧装置17に接続することができる。
【0078】
図5に示されているように、本実施形態の減圧装置17は、第1の減圧部材18と第2の減圧部材19とを備えている。第1の減圧部材18は上記の実施形態と同様に、外壁10を貫通する第1のパイプ15によって中間チャンバ14に接続されている。第2の減圧部材19は、上部分8を貫通する第2のパイプ16によって内部チャンバ13に接続されている。
【0079】
よって本実施形態では、第1の減圧部材18を用いて中間チャンバ14を圧力P1に設定できると共に、第2の減圧部材19を用いて内部チャンバ13を圧力P1とは異なる圧力P2に設定することができる。
【0080】
図6及び
図7は、第5の実施形態の検査装置4を示す。本実施形態では、箱部5は2つの取っ手23を備えており、これらの取っ手23は周囲仕切部7におけるカバー6付近の部分に固定されている。これら2つの取っ手23は、ユーザが手で検査装置4を把持して検査装置を試験対象の部位2に容易に位置決めできるように、互いに反対側に配置されている。例えば
図3では、取っ手23はブラケットを用いて外部周壁10に固定される。取っ手23は、周囲シール部11,12から離れる方向に回動される。
【0081】
図6及び
図7に示されている実施形態では、取っ手23のうち一方に、当該取っ手23を保持するユーザの手によって作動されることができる制御部材24が備え付けられており、この作動によって制御信号26が生成される。この制御部材24は同図では押しボタンである。本実施形態では、制御部材24は取っ手23に直接配置されている。その制御信号26は制御ユニット28へ送信される。制御ユニット28はこの制御信号26に応じて、減圧装置に配置された制御バルブ27を切り替えて、開弁状態から閉弁状態に切り替えたりその逆に切り替えたりするよう構成されている。
【0082】
開弁状態では、制御バルブ27は内部チャンバ13及び中間チャンバ14を減圧部材18に流体連通できるようにする。閉弁状態では、制御バルブ27は内部チャンバ13及び中間チャンバ14を減圧部材18から切り離す。
【0083】
代替的に、押しボタン以外の形態の制御部材を用いることも可能であり、例えば容量式タッチボタン、ロッカーレバー、又は手動で作動可能な任意の部材等を用いることができる。
【0084】
図9に示されている第7の実施形態では、検査装置4は、手動で作動されることにより第1の制御信号26を生成できる第1の制御部材24を備えると共に、手動で作動されることにより第2の制御信号26を生成できる第2の制御部材25を備えている。よって、制御ユニット28は本実施形態では、第1の制御部材24から送信された第1の制御信号26に応じて制御バルブ27を開弁状態に切り替え、第2の制御部材25から送信された第2の制御信号26に応じて制御バルブ27を閉弁状態に切り替える構成となっている。さらに本実施形態では、制御部材24,25は取っ手23に配置されず、当該取っ手23を保持するユーザの手によって作動できるように取っ手23の直近に配置されている。
【0085】
第5の実施形態に戻って、検査装置4は、
図6に示されている複数の照明装置22も備えており、これらの照明装置22は、内部チャンバ13を照明するように内部周壁9に配置されている。
【0086】
検査装置4は、
図6及び
図7に示されている安全バルブ29も備えており、これは中間チャンバ14に接続されており、安全バルブ29は、中間チャンバ14内の圧力が圧力Pmin以上である場合に閉弁状態に切り替わり、中間チャンバ14内の圧力が圧力Pmin未満である場合に開弁状態に切り替わって中間チャンバ14を外部に接続することができる。このようにして、安全バルブ29は中間チャンバ14の検査ひいては内部チャンバ13の検査に不要である過剰な真空の形成を阻止し、これにより、検査装置4にいかなる損傷が生じることも回避することができ、又はメンブレン1の分離を回避することができる。
【0087】
図6及び
図7に示されている第5の実施形態では、検査装置4は平坦な試験ゾーンに対応するものである。実際には、内部周囲シール部11及び外部周囲シール部12はシール端部30を有し、シール端部30は、内部チャンバ13を取り囲む輪を形成し、平面P内に配置されるように試験対象の部位2に当接して配置されるものである。カバーは平面Pに対して平行に形成されている。よって、検査装置の箱部5は底壁を有しない矩形の平行六面体の形態となっており、試験対象の部位2がその底壁となる。これにより、検査装置4はタンクの平坦ゾーンにおいて密閉性の検査を行うために適している。
【0088】
図8に示されている第6の実施形態は、コーナ試験ゾーンに対応した検査装置を有する。
【0089】
本実施形態では、内部周囲シール部11及び外部周囲シール部12はシール端部30を有し、シール端部30は、内部チャンバを一周して取り囲む輪を形成し、密閉要素に当接して配置されるものである。このシール端部30の第1部分31は第1の平面P1内に配置されると共に、シール端部の第2部分32は第1部分31に接続され、第1の平面P1に対して、追従すべきタンクの角度に相当する角度Aで斜めである第2の平面P2内に配置されている。さらに、カバー6は本実施形態では、第1の平面P1と第2の平面P2とに対して斜めである平面内に形成されている。これにより、本実施形態の検査装置4の箱部5は、底面が四角形である角柱形であって、その角のうち1つはタンクの角に相当し、2つの側壁が無い角柱形となっており、コーナ形状の試験対象の部位2がその2つの側壁となる。さらに、タンクのコーナ部における検査装置4の配置を容易にするため、取っ手23のうち一方はU字を逆さにした形状に形成されると共に、他方の取っ手23はT字形に形成されている。
【0090】
密閉断熱タンクは、それぞれ少なくとも1つの断熱バリアと少なくとも1つの密閉メンブレンとによって構成された複数の壁33,34を備えている。密閉断熱タンクにおける2つの壁33,34の連結部のコーナ部には、当該2つの壁33,34の断熱バリア及び密閉メンブレンの連続性を保証するためのコーナ構造が配されている。
図10に、かかるコーナ構造が示されている。本発明では、タンク壁33,34は二次断熱バリア35と、試験対象のメンブレンに相当し二次断熱バリア35により支持される二次密閉メンブレン1と、二次密閉メンブレン1に固定された一次断熱バリア36と、一次断熱バリア36により支持される一次密閉メンブレン(不図示)とを有する。
【0091】
よってコーナ構造は、二次断熱バリア35の一部となる要素と、二次密閉メンブレン1の一部となる要素と、一次断熱バリア36の一部となる要素と、を有する。このようにして、コーナ構造により、第1のタンク壁33と、例えば90°等の決まった角度で第1のタンク壁33に対して斜めである第2のタンク壁34と、の連結部において、複数の断熱バリア及び密閉メンブレンの連続性を保証することができる。
【0092】
従って、
図10に示されているコーナ構造は、
-支持構造(不図示)に固定された第1の壁33の二次断熱パネル37の列及び第2の壁34の二次断熱パネル37の列と、
-二次断熱パネル37に接着された剛性の密閉シート41と、
-
図5に示されているように同一の又は異なる壁の二次断熱パネルの2つの隣り合う剛性の密閉シート41の接続部を成す可撓性の密閉シート42と、
-剛性の密閉シート41に固定されたコーナ一次断熱パネル38であって、鉄製アングル40により互いに固定された第1のタンク壁33の一次断熱ブロック39及び第2のタンク壁34の一次断熱ブロック39により構成されたコーナ一次断熱パネル38と、
により構成される。
【0093】
漏れのリスクが最大であるのは可撓性の密閉シート42であり、特に、第1のタンク壁33と第2のタンク壁34との間の傾きに追従するように形成された折れ部である。これが、検査装置4をコーナ構造の角に可能な限り近付けて配置できることが有利である理由である。検査装置4は、
図6に概略的に、かつ実際の場所に示されている。
【0094】
同一のタンク壁の2つの隣り合う二次断熱パネル37間の間隙では、その2つのコーナ一次断熱ブロック38は、当該2つのタンク壁33,34の交差により形成されたタンク縁部の方向に距離Dだけ互いに離隔している。よって有利には、検査装置4のタンク縁部の方向における長手寸法は、この距離Dより小さい。一例の実施形態では、上記距離Dは322mmである。
【0095】
さらに、同一のタンク壁の2つの隣り合う二次断熱パネル37間に配置された可撓性の密閉シート42は、縁部の方向に幅Lを有する。検査の実施回数を最小限に抑えるために有利なのは、
図10に示されているように、検査装置4のタンク縁部の方向における長手寸法が上記の幅Lより大きいことである。
【0096】
複数の具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの具体的な実施形態に決して限定されるものではなく、本発明の範囲に属する限りにおいて、本願明細書に記載の手段の全ての均等態様及び当該手段の組み合わせを含むことが極めて明らかである。
【0097】
動詞「有する」又は「備える」及びその活用形を用いた場合、これは、請求項に記載の要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0098】
請求項に記載の括弧書きの符号は全て、当該請求項を限定するものと解してはならない。
【国際調査報告】