IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スフィリーン アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-535688付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/38 20210101AFI20220803BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220803BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220803BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220803BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20220803BHJP
   B22F 10/80 20210101ALI20220803BHJP
   B22F 10/47 20210101ALI20220803BHJP
【FI】
B22F10/38
B33Y10/00
B33Y50/00
B33Y80/00
B22F10/28
B22F10/80
B22F10/47
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568686
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2019054076
(87)【国際公開番号】W WO2020229883
(87)【国際公開日】2020-11-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500524
【氏名又は名称】スフィリーン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】spherene AG
【住所又は居所原語表記】Elias-Canetti-Strasse 7, 8050 Zuerich,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトフォーゲル, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベアーチ, ラルフ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018EA60
4K018HA01
4K018HA10
(57)【要約】
本発明は、付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法に関する。本発明は更に、本発明の方法を実行するように適合されたコンピュータ・プログラム製品、並びに、本発明による方法によって取得可能な付加製造された物品に関し、これら全ては、独立請求項の前提部に従っている。方法は、準結晶構造を有する前記1つ以上の一体物品部分の各々を充填及び/又は構築するステップを含む。方法を実行することによって取得可能な付加製造された物品は、準結晶構造、及び/又は、準周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面インフィル、及び/又は、非周期的な最小表面デザイン構造を含む。本発明は更に、付加製造プロセスにおける前処理のためのスケルトングラフの使用に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法であって、前記物品は、それぞれが構造を有する1つ以上の一体物品部分、特に内部構造を有する1つ以上の一体物品部分のそれぞれまたはいくつかを含み、
前記方法は、以下のステップを含む:
準結晶構造を有する前記1つ以上の一体物品部分の各々を充填及び/又は構築するステップ。
【請求項2】
前記準結晶構造は、2つ以上のタイプの偏菱形のセルから成る3次元的な準結晶である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の一体物品部分の各々の充填及び/又は構築は、準周期的な若しくは非周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小の若しくは非周期的な表面設計構造を用いた充填及び/又は構築であり、特に、前記方法は、準周期的な若しくは非周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な若しくは非周期的な最小表面デザイン構造を生成するためのフレームワークとして前記準結晶構造を使用する更なるステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、特に以下のステップを実行することによって、準結晶の形状を生成するステップを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法:
a.少なくとも4つの1次ベクトルを入力するステップ;
b.ステップaで入力された1次ベクトルの数に等しい多数の平行平面の群を生成するステップであって、平行平面の各群は少なくとも3つの平行平面を含むステップ。
【請求項5】
平行平面の1つの特定の群の前記平面、特に前記1つの特定の群の全ての前記平面は、均等に間隔を空けられている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
平行平面の1つの特定の群の前記平面、特に前記1つの特定の群の全ての前記平面は、ランダムに間隔を空けられている、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
平行平面の1つの特定の群の前記平面、特に前記1つの特定の群の全ての前記平面は、所定のパターンに従って間隔を空けられている、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
平行平面の1つの特定の群の前記平面のうちの少なくともいくつかは均等に間隔を空けられている、及び/又は、前記平面のうちのいくつかはランダムに間隔を空けられている、及び/又は、前記平面のうちのいくつかは所定のパターンに従って間隔を空けられている、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下のステップを更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法:
結果として生じる面が六角形の形状を有し、それにより各セルから2つの等しいモノトリア切頂四面体が生成されるよう、前記偏菱形のセルを二等分するステップ。
【請求項10】
2つのラビリンスA, Bが形成されるように、各モノトリア切頂四面体を2つの群A又はBの一方に割り当てるステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
いかなる点においても相互接続することなく前記準結晶の全体に及ぶ2つの交互に配置されたスケルトングラフA', B'が生成されるよう、各タイプの前記偏菱形のセルにスケルトングラフを挿入する、特に各モノトリア切頂四面体に1つのスケルトングラフA', B'を挿入するステップを更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記スケルトングラフA', B'は、それぞれ、前記2つのラビリンスA, Bの一方を通って延び、特に各スケルトングラフA', B'は、モノトリア切頂四面体の1つの群を通って延びる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
平面の各群の平面の数を、所望の内部構造の解像度の尺度として選択するステップを更に含む、請求項4~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記選択は、内部構造を有する前記1つ以上の一体物品部分の任意の部分に対して個別に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
高密度化されたスケルトングラフA", B"を生成するために、特に局所的に高密度化されたスケルトングラフA", B"を生成するために、各々が内部構造を有する前記1つ以上の一体物品部分の外側のスケルトングラフA', B'をスケールダウンするステップを更に含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記準結晶構造は、準周期的な最小表面を定義するために使用され、特にスケルトングラフA', B'; A", B"は、前記最小表面を特定するために使用される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記準結晶構造は、非周期的な最小表面を定義するために使用され、特にスケルトングラフA"', B"は、荷重ケース解析及び/又は物品外形解析に従ってセグメントが除去された後に、適合された最小表面を特定するために使用される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法であって、前記物品は、それぞれが構造を有する1つ以上の一体物品部分、特に内部構造を有する1つ以上の一体物品部分のそれぞれまたはいくつかを含み、特に請求項1~17のいずれか1項に記載の方法は、以下のステップを含む:
いかなる点においても相互接続することなく前記準結晶の全体に及ぶ2つの交互に配置されたスケルトングラフA', B'が生成されるよう、2つのスケルトングラフA', B'、特にモノトリア切頂四面体の1つの群を取って延びる2つのスケルトングラフA', B'を提供するステップ;
局所的な応力/歪解析に応じて、スケルトングラフA', B'からユニット及び/又はセグメントを除去するステップ。
【請求項19】
各々が構造、特に内部構造を有する1つ以上の物品部分を含む付加製造された物品の前処理のためのコンピュータ・プログラム製品であって、コンピュータ上で実行されるときに請求項1~18のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合されているコンピュータ・プログラム製品。
【請求項20】
準結晶構造、及び/又は、準周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面インフィル、及び/又は、非周期的な最小表面デザイン構造を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法を実行することによって取得可能な付加製造された物品。
【請求項21】
外側スキン及びインフィルを含み、本質的にゼロ平均曲率表面、好ましくは最小表面、インフィルが、本質的に垂直な角度で前記外側スキンに接触する、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
低密度領域O, O"' 及び/又は高密度領域P"'を含む、請求項20又は21に記載の物品。
【請求項23】
付加製造作業の前処理ステップのための、1対のスケルトングラフ(A', B')、特に請求項1~18のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な1対のスケルトングラフA', B'の使用であって、1対のスケルトングラフA', B'は物品のモデルと重ね合わされ、前記スケルトングラフA', B'は、最小かつ2対のスケルトングラフA', B'の間で等距離にある表面に基づいて、前記物品の最小表面インフィルのテンプレートが生成されるよう、双曲線スケーリングされている、1対のスケルトングラフの使用。
【請求項24】
付加製造作業の前処理ステップのための、1対のスケルトングラフ(A', B')、特に請求項1~18のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な1対のスケルトングラフA', B'の使用であって、1対のスケルトングラフA', B'は、物品のモデルと重ね合わされ、前記スケルトングラフA', B'のセグメントは、適合されたスケルトングラフA"', B"'をもたらす物品外形解析及び/又は荷重ケース解析に応じて除去される、1対のスケルトングラフの使用。
【請求項25】
前記一対のスケルトングラフA', B'は、前記物品の任意の領域及び/又は形状によって必要とされる最高密度に対応する高密度P"'を備える、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法に関する。本発明は更に、本発明の方法を実行するように適合されたコンピュータ・プログラム製品、並びに、本発明による方法によって取得可能な付加製造された物品に関し、これら全ては、独立請求項の前提部に従っている。
【背景技術】
【0002】
空間充填、周期格子が体系化され得る方法は、空間群と呼ばれる213の一般的な対称構造に限定され、平行移動、回転及び鏡映のような一連の複写操作を用いて空間内で点を繰り返す問題に対する組み合わせ解の全体を記述する。しかしながら、この規則には例外がある:準結晶と呼ばれる無限の非周期的な構造である。周期的な空間群の1つによって表される格子のように、準結晶は、1つ又は無限ではないが複数の、多くのタイプの基本セルから形成される。これらのセルの繰り返しは、大きなスケールでは決して繰り返さない類似の(又は同一ですらある)配置を、小さなスケールで生成し続けるので、準結晶は、(非周期性というよりもむしろ)「準周期性」と呼ばれる特徴を示す。準結晶は、一度も繰り返すことなく、空間を充填(「タイル」)することができる。2次元の準結晶タイリング(周知のペンローズ・タイリングのような)は2つ以上のタイプの菱形から成るが、3次元の準結晶は2つ以上の偏菱形のセルでできている。
【0003】
準結晶を作り出す2つの方法、すなわち、6以上の次元のパターンが3次元空間に投影される投影法と、空間内の3つ以上のベクトルが一連の平面ファミリーを作り出し、それらが次いで準結晶の仕様をもたらすド・ブラウン(de Bruijn)のグリッド法とが、一般に使用されている。
【0004】
最小表面は、湾曲した、2次元の、空間を占有する数学的構成であり、それは、全ての点において、垂直に測定された2つの曲率の平均の和がゼロになるという要件を満たす。したがって、全ての点は、表面がある方向にある量だけ湾曲している場合、その方向に対して垂直に測定される曲率が第1の曲率の負の値になるように定義される。最小表面はある一連の点を接続する最も湾曲の小さい表面であるという事実の故に、それらは、球及び懸垂線(後者は、それ自体で最小表面である)を除いて、最も効率的に力を導くこと(force conduit)を可能にする理想的な形状を構成する。これにより、最小表面は、例えば3D印刷された部品のような構造及び実質的に全ての荷重支持構造の内部で、荷重及び力を分配するのに理想的となる。その基本セルが全ての方向で繰り返されることができ、したがって無限の空間をタイリングするように構造化された最小表面は、「三重周期最小表面」(TMPS)と呼ばれる。
【0005】
付加製造(「AM」、「3D印刷」、「ラピッドプロトタイピング」)は、様々な材料から作られる物品の物理的な形成を可能にする、広範囲のコンピュータ制御製造プロセスを包含する包括的な用語である。本発明の範囲に対して、付加製造は、部分的なロボットによる組み立ても含むと解釈することにする。
【0006】
3D印刷され得る前に、物体は仮想コンピュータ・モデル(「CADモデル」、「3Dモデル」)の形で定義されなければならず、ここで、その形状は、3Dモデルによって包囲された空間を記述する頂点、辺、面及びそれらの相互関係の座標を介して数学関数(「CAD表面」)として、あるいは、3次元ボクセル行列(「ボクセル」は「ボリューム」と「ピクセル」を組み合わせた混成語)として、表される。標準化された3Dモデル交換フォーマットのほとんどにおいて、物体形状は、三角形及び/又は四角形の面(体積を形成する頂点、辺及び面の座標及び相互関係)から成るポリゴンメッシュとして表される。ポリゴンメッシュ表現は非常に柔軟であり、(CADサーフェス表現を使用する場合に必要とされる)その形状の数学的解析を必要とすることなく、ほとんど全ての外形を(近似的に)記述するために使用され得るが、周知のようにエラーを起こしやすく、大きなデータ量、したがって高いネットワークトラフィック及び高い計算負荷をもたらす傾向がある。
【0007】
ほとんどのタイプのAMプロセスでは、1つ以上の物質の連続的な層状の適用、又は結合、又は硬化、又は重合によって、物品が形成される。結合、硬化又は重合プロセスは、塗布直後に、又は各層が完成した後に、又は構築プロセスの終わりに、又は実際のプリンターマシンの外部での完全に別個のプロセスで、連続的に誘導されてもよい。したがって、3Dモデルの3D印刷準備は、3Dモデルに含まれる空間情報を、各層(「スライス」)の「材料/材料なし」情報パケットに変換すること(「前処理」)を必要とする。ほとんどの場合、スライスは所望の印刷層の高さに関連する単純なビットマップ画像であり、黒は「材料」を表し、白はそれがないことを表す。スライス内の各ピクセルは、一方ではレイヤ内の1つの最小印刷ユニット(プリンターマシンの特性に応じて;例えば、レーザーポイントの最小直径、レーザーパス等)に対応し、他方では印刷された物品内の1つのボクセルを表す。場合によっては、スライスは、レーザーエネルギー又はレーザー移動速度のようなプリンター又は物品に固有のパラメータに関する付加的な制御情報を含み、それらは各層ごとに又は層内で異なっている可能性がある。
【0008】
前処理における他のアクションは、プリンターマシンの特性及び/又は印刷プロセス及び/又はそれらのシミュレーションに基づくグローバルなパラメータ調整、並びに、重量低減(「軽量化」)のような最適化を含む。
【0009】
AMは、古典的な製造方法で構築することは不可能ではないにしても非常に困難であると考えられる非常に複雑な物品の形成を可能にする。物品の形状、使用される印刷方法及び材料に応じて、物品の正確かつエラーのない製造を確実にするために、外部構築支持構造(「ビルドサポート」)が必要とされる。いくつかの方法及び/又は材料は、形成されている間に媒体自体によって安定化されるので、ビルドサポートを必要としない。しかしながら、スチール、アルミニウム、チタン等の金属から物品を形成するために使用されるほとんどの方法は、エラーのない形成及びプリントアウトの正確な形状を確実にするためだけではなく、余剰な熱を放散するために、ビルドサポートを必要とする。後処理中のビルドサポートの取り外しは、多くの時間と労力を必要とすることが多く、ビルドサポートが物品の外形に起因して内側にあるか又はほとんどアクセスできない場合は、ほとんど不可能であるか又は物体を損傷することなく行うことは絶対にできない。
【0010】
したがって、物品が自立しているほど、成功裏の構築プロセスのために必要とされるビルドサポートは少なくて済み、好ましい。重量を最小限に抑えながら強度を最大限にするために、またAMでは複雑な「バイオニック」の又はアモルファスの形状が付加的なコスト又は労力なしに製造され得るため、物品の外形はしばしば、材料の使用を最小限に抑え、物品の構造的及び幾何学的な要件を満たす最適な外形へと、パラメータを用いて最適化される。場合によっては「古典的な」モノリシックである物品の初期のデザインと比較すると、そのような最適化された外形は、しばしば、孔、枝、隆起及び腱を有し、したがって、この外形に至るプロセスは、「トポロジー最適化」と呼ばれる。なぜなら、物品のトポロジー、すなわちそれが有する孔の数(その「種数」)が変更されるからである。
【0011】
そのような最適化は、しばしばCAE(「コンピュータ援用工学」)プロセスの一部であり、そこでは、幾何学的な拘束、力、応力及び運動が、しばしばFEM(「有限要素モデリング」)と呼ばれるコンピュータ手法を用いてシミュレートされる。いくつかの物品はFEMシミュレーションを必要とすることなく又はFEMシミュレーションの助けを借りることなく設計及び製造され、これらはほとんどの場合、最適に最適化される必要のない物品である。一方、強度重量比が極めて重要である物品(航空宇宙又は工業の用途など)は、常にFEM又は類似の方法を使用して設計される。力は、物体の内部を通じてというよりはむしろ物体の表面に沿って流れる傾向があるので、物体は、原理上、薄いスキンに還元され得る。当然ながら、力を導き、幾何学的な完全性を確実にし、材料特性及び物品に作用する応力を考慮するために、ある程度の材料断面が保持される必要がある。
【0012】
場合によっては、スキンの面を接続する内部構造の追加は、応力下の及び構築プロセス中の物品の幾何学的な完全性を確実にしないとしても、全体的な安定性を大いに向上させる。しかしながら、「古典的に」成形された又はトポロジー最適化された物品の両方のこの空洞化が、製造時間及びコストの低減、大幅な重量ゲイン及び時には安定性の向上さえもたらす一方、ほとんどの物品は依然としてソリッドの形態で製造される。これは、部分的には、大きなポリゴンメッシュ(これは周知のようにエラーを起こしやすい)を取り扱うことの複雑さに起因し、また、コヒーレントで、適切に設計され、技術的に優れた内部構造が存在しない場合、構築プロセス及び使用の両方の間、及び/又は、荷重下において、歪みを受けやすい可能性がある物品の外形及び形状の完全性を確実にする必要性に起因する。
【0013】
一般に使用されている中空化技術は、「インフィル」の適用であり、それは、物品の「内部」に詰め込まれる単純な幾何学的格子構造(「空間格子」)である。しかしながら、この技術には3つの主な欠点がある:(1)インフィルの有効な構造的衝撃及び効率は、FEMを用いて検討されない場合は当て推量に依存する。(2)インフィルの形状自体は、(当然ながら、常に更なるビルドサポートを必要とすることなく構築され得る)ビルドサポート構造に類似している必要があるため、極めて単純である必要がある、及び、(3)インフィル構造は、3Dモデル自体と比較して非常に小さなスケールであるものの、それでもなお正確に定義される必要があるため、3Dモデルのポリゴン数を大幅に増加させる(したがって、計算負荷及び応答時間も増加させる)。複雑な及び/又は精緻なインフィルは、3Dモデルのポリゴン数を1桁又は数桁増加させる可能性があるので、インフィルは、通常、ビルドサポートと類似している:構造的効率性よりもむしろ印刷適性のために最適化され、粗く成形され、粗くて薄い。
【0014】
したがって、少なくとも1つの既知の限界を克服する、付加製造された物品を前処理する方法及び手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服する方法、コンピュータ・プログラム製品及び付加製造された物品を提供することである。本発明の特定の目的は、従来の方法で設計及び/又は軽量化された同一の物品を有する場合と比較して、少なくともその幾何学的な完全性及び/又は荷重支持構造に関して優れた特性を有する物品を軽量化及び/又は設計することを可能にする、そのような方法、コンピュータ・プログラム製品又は物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、付加製造された物品の製造及びその前処理に関し、それによって、物品は、それぞれが安定性の向上、重量の低減、並びに、製造補助及び/又は構築支援を提供する内部構造(「インフィル」)を有する1つ以上の一体物品部分を含むことができる。
【0017】
本発明の目的は、独立請求項の特徴部分による方法、コンピュータ・プログラム製品及び付加製造された物品によって解決される。
【0018】
本発明の一態様は、付加製造された物品の軽量化及び/又は設計のための方法である。物品は、各々が構造を有する1つ以上の一体物品部分を含む。方法は、少なくとも、準結晶構造を有する1つ以上の一体物品部分の各々を充填及び/又は構築するステップを含む。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、1つ以上の一体物品部分のそれぞれ又はいくつかが内部構造を含み、軽量化は、安定性、重量及び製造補助、それぞれのビルドサポートが、付加製造プロセス中に、本明細書に記載された方法のステップによって影響を受けるように、内部構造の設計に関係する。
【0020】
特定の実施形態において、物品及び/又は物品の1つの一体部分が、本質的に構造から成る。
【0021】
本発明の文脈において、上記ステップによる充填は本発明による軽量化のステップとして理解することができ、一方、上記構築ステップは、本発明による付加製造された物品の設計のステップと見なすことができる。本発明の文脈において、充填は、完成した本発明による物品において、少なくとも部分的に、好ましくは本質的に、物品の外側スキンによって隠されている内部構造を提供することとして理解することができる。対照的に、設計は、構造が「開いている」、すなわち物品が外側スキンによって覆われていない場合に、関連する方法である。両方の方法ステップの組み合わせは、例えば複数の一体物品部分を有する1つの特定の物品に適用することができ、本発明による方法から得られる完成した物品は、インフィルを覆うスキンを有する部分と、構造が外側からアクセス可能な物品部分とから構成されることができ、その間の程度は様々であることは、当業者にとって明らかである。
【0022】
本発明の文脈において、準結晶は、当業者によって一般に理解されるように、規則的であるが周期的ではない構造として理解され得る。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、準結晶構造は、2つ以上のタイプの偏菱形のセルから成る3次元的な準結晶である。
【0024】
代替的な実施形態において、準結晶構造は、3次元結晶、すなわち、空間群のうちの1つに従って、つまり219の非キラルな又は11のキラルな空間群のうちの1つに従って形成された、規則的に繰り返すユニットである。
【0025】
本発明の文脈において、この偏菱形のセルは、平行四辺形形状の6つの面を有する3次元体として理解することができる。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、準結晶構造は、6以上の次元のパターンが3次元空間に投影される投影法によって作り出すことができる。代替的に又は付加的に、準結晶構造は、空間内の4つ以上のベクトルが一連の平面ファミリーを作り出し、それらが次いで準結晶の仕様をもたらす格子法を適用することによって、作り出すことができる。準結晶構造を作り出すための様々な方法が、1つの物品の製造のために、例えば異なる物品部分のために、又はそれに続いて検証ステップとしても、適用され得る。
【0027】
特に好ましい実施形態において、グリッド法は、ド・ブラウンによる対角化(N. de Bruijn, Ned. Akad. Weten. Proc. Ser. A 43, 39 (1981); 43, 53 (1981))に基づく。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、1つ以上の一体物品部分のそれぞれの充填及び/又は構築は、準周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面インフィルでの充填及び/又は構築である。
【0029】
特に好ましい実施形態において、結果として得られるインフィル及び/又はデザインは、最小表面、すなわち、例えば、表面のあらゆる点において、2つの垂直に測定された曲率の平均の和がゼロ又は本質的にゼロになる表面を含む。
【0030】
本発明の文脈において、本質的にゼロは、物品のデザイン及び/又はそのインフィルのスケール及び形態において最小表面の特性を実際に示すのに十分な曲率として、より具体的には、表面上の2つの垂直に測定された曲率の平均について、±0.0005までのゼロからの偏差を有する曲率として、理解することができる。
【0031】
特に好ましい実施形態において、結果として得られるインフィル及び/又はデザインは、例えば3次元結晶表面のような周期的な表面を含む。
【0032】
本発明による最小表面の利点の1つは、構造の内部で又は構造を通じて荷重及び力を分配するのに理想的であることであり得る。更に、これらの最小表面は、大きな表面及び/又は表面対体積比が有益である物品、例えば、建築、触媒作用、熱交換、電池などの分野における用途を有する物品部分、又は、表面対体積比が重要である任意の他の範囲を作り出すために理想的であり得る。理論に拘束されることなく、実現される構造上の利点は、最小表面が、ある一連の点を接続する最も湾曲の小さい表面であり、したがって、これらの点の間で非常に効率的に力を導くことが可能になるという事実に起因し得る。
【0033】
特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、物品を通じて効率的に力が導かれることが可能になるよう、準周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面インフィルでの充填及び/又は構築で実行される。
【0034】
本発明の特定の実施形態において、方法は、準周期的な最小表面インフィル及び/又は準周期的な最小表面デザイン構造を作り出すためのフレームワークとして、準結晶構造を使用する更なるステップを含む。本発明の文脈において、フレームワークは、例えば、達成されるべき準周期的な最小表面の種数を定義するためのスケルトンの生成であり得る。本発明の代替的な又は付加的な実施形態において、方法は、非周期的な最小表面インフィル及び/又は非周期的な最小表面デザイン構造を作り出すためのフレームワークとして、準結晶構造を使用する更なるステップを含む。
【0035】
本発明の特定の実施形態において、方法は、準結晶の形状を作り出すステップを更に含む。準結晶の形状のこの生成は、特に、少なくとも3つの1次ベクトルを入力する第1のステップによって実行され得る。更なる特定の実施形態において、ステップは、3~12のベクトルの入力である。本発明の文脈において、入力は、コンピュータ・プログラム製品内のそれぞれの特定のパラメータを選択及び/又は生成することとして理解され得る。そのような入力は、例えば、デジタル前処理、及び/又は、付加製造ソフトウェア及びデバイスに関連する前処理の設定と共に実行され得る。
【0036】
この特定の実施形態において、準結晶の形状を作り出すことは、特に、入力された1次ベクトルの各々に対して平行平面の多数の群を作り出す更なるステップを含み得る。平行平面の各群は、少なくとも3つの平面を含む。
【0037】
この特定の実施形態において、平行平面の群の数は、使用されるコンピュータ・システムの処理能力及びメモリによってのみ制限される。しかしながら、3~1000の範囲の平行平面の群の数が特に好ましく、3~50の範囲の数がより好ましいことが見出された。平行平面の群の数は、各群の平面の数と共に、ユーザによって選択されることができ、準結晶の「解像度」を定義する。本発明の文脈において、解像度は、物品の特定の所定の体積中のセルの数として理解され得る。理論に拘束されることなく、ユーザによって選択される平面の数は、ユーザの裁量下にあるが、ある目標又は用途のためのある閾値によって影響を受けるか又はその範囲内にあることが要求される可能性がある。例えば、所望の安定性を達成するために、又は、物品のサイズの制約に起因する要件のために、必要に応じて、特定の数の平面が設定され得る。上述したように、選択される平面の上限数に理論的には制限はないが、事実上、それらは本方法に使用されるコンピュータの計算能力によって制限される可能性がある。しかしながら、十分に強力なコンピュータによって、100,000までの平面を扱うことができると考えられる。
【0038】
特定の実施形態において、平行平面の群の数は、入力されたベクトルの数に対応する。特に好ましい実施形態において、平面の方向は、ベクトルによって定義される。更により好ましくは、平面の方向は、選択されたベクトルに対して垂直である。換言すれば、各ベクトルは、ベクトルに対して90°の角度にわたる平行平面の群に関連付けられ得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、平行平面の1つの特定の群内の平面は、均等に間隔を空けられている。この文脈において、均等に間隔を空けられているとは、1つの特定の群内の平面、すなわち、例えば、少なくとも3つの平面の群内の互いに対する距離を指すものとする。特に好ましい実施形態において、この1つの特定の群の全ての平面は、均等に間隔を空けられている。これは、この特定の群内の全ての平面が、先行する隣接平面及び後続する隣接平面に対して、平面に対する法線方向に同じ距離を有することとして理解され得る。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、平行平面の1つの特定の群内の平面は、ランダムに間隔を空けられている。より具体的には、この1つの特定の群の全ての平面は、ランダムに間隔を空けられている。ランダムな間隔は、ベクトルの生成の時点で定義され得る。ベクトルを入力することにより、そのベクトルに対して垂直にランダムに配置された、例えばそれぞれが同じ群内の他の平面に対してランダムな距離を有する、多数の平面を作り出すことができる。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、平行平面の1つの特定の群内の平面は、所定のパターンに従って間隔を空けられている。特に好ましくは、1つの特定の群内の全ての平面は、この所定のパターンで配置される。特定の実施形態において、間隔は、特定のFEM、すなわち、所望の特性に関して物品を設計及び/又は充填するために適用される有限要素法の結果によって決定され得る。
【0042】
本発明の特定の実施形態において、平行平面の1つの特定の群内の平面のうちの少なくともいくつかは均等に間隔を空けられている、及び/又は、前記平面のうちのいくつかはランダムに間隔を空けられている、及び/又は、前記平面のうちのいくつかは所定のパターンに従って間隔を空けられている。前述したように、平面の数は、結果として生じる準結晶の形状に対する解像度の尺度として選択され得る。更なる特定の実施形態において、平面の1つの群は、ある所定の規則を用いて生成され得る。この実施例の文脈において、所定の規則は、例えば、1つの特定の群内に10の平面が生成される場合、例えば、1つの入力ベクトルが当該ベクトルに対して垂直な10の平行平面を有さなければならない、換言すれば、平面とベクトルとの間に90°の角度を囲む場合、これら10の平面のうち、3つの平面は、ベクトルの延長に沿ってランダムに間隔を空けられるように定義され、4つの平面は、互いに等距離配置にあるように配置され、すなわち、各平面の後にある一定の距離を空けてこれら4つの連続する平面が続き、この平面の群内の残りの3つの平面は、例えば1:3であることができるパターンに従って配置される、すなわち、第2の平面が第1の距離で第1の平面に追従し、第3の平面が第1の距離の3倍の長さの第2の距離で第2の平面に追従することを定義することができる。これらの変数は、例えば、ある所定のパターンが、ランダム、所定及び等間隔の3つの要求の全てが、本発明による1つの特定の準結晶の形状の生成に組み込まれ得るように、等間隔に配置された平面と組み合わされる、相互依存の決定にさらされる可能性があることは、当業者にとって明らかである。
【0043】
本発明の特定の実施形態において、方法は、二等分の結果として生じる面が六角形の形態を有するように、偏菱形のセルを二等分するステップを更に含む。したがって、本発明の文脈において、二等分は、形状が六角形である交差部をもたらす。
【0044】
特定の実施形態において、偏菱形のセルを二等分すると、当該セルから2つの等しいモノトリア切頂四面体(monotriatruncated tetrahedra)が生じる。
【0045】
切頂四面体は、四隅が切り取られた正四面体である。本発明の文脈では、モノトリア切頂四面体は、本発明を説明する目的で定義された新規な用語であり、4つのコーナーのうちの3つのみが切り取られた四面体として理解され得る。切頂四面体と比較して、モノトリア切頂四面体は、8つではなく7つの面を有する(ギリシャ語;モノ=1、トリア=3)。
【0046】
本発明の特定の実施形態において、偏菱形のセルの重心は、当該偏菱形のセルの二等分によって生じる交差平面内にある。この面は、上述したように、六角形である。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、二等分は、問題の偏菱形のセルの6つの辺を通って、好ましくは問題の6つの線分の中央で、実行される。
【0048】
本発明の特定の実施形態において、方法は、モノトリア切頂四面体の2つの群から2つのラビリンスが形成されるように、各モノトリア切頂四面体を2つの群のうちの1つに割り当てるステップを更に含む。特定の実施形態において、偏菱形のセルの二等分によって生じるモノトリア切頂四面体の各々は、2つの群のいずれか一方に、すなわちモノトリア切頂四面体の第1の群又はモノトリア切頂四面体の第2の群のいずれかに、割り当てられる。第1の群は第1のラビリンスを形成し、第2の群は第2のラビリンスを形成する。好ましくは、第1及び第2のラビリンスは、物品及び/又は一体物品部分の内部構造全体を通って延びる。
【0049】
特定の実施形態において、本発明の方法は、いかなる点においても相互接続することなく準結晶の全体に及ぶ2つの交互に配置されたスケルトングラフが生成されるよう、各タイプの偏菱形のセルにスケルトングラフを挿入する、特に各モノトリア切頂四面体に1つのスケルトングラフを挿入するステップを更に含む。これらのスケルトングラフは、それぞれ、上述したように各モノトリア切頂四面体を2つの群のうちの1つに割り当てることによって形成される、2つのラビリンスのうちの1つを通って延びる。スケルトングラフは、特定の群のモノトリア切頂四面体内の全てのスケルトングラフが互いに接続されるよう、四面体の面を通って同じ群の隣接する四面体内へ延びるような態様で、モノトリア切頂四面体の内部に配置され得る。換言すれば、第1のスケルトングラフは第1の群のモノトリア切頂四面体を通って延び、第2のスケルトングラフは、第2の群のモノトリア切頂四面体を通って延びる。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、各々が構造を有する2つ以上の一体物品部分を備える物品については、平面の数を選択するステップは個別に実行される。そのようにすることの利点の1つは、「解像度」が増大した領域を作り出すことが可能になることである。
【0051】
内部構造を有する一体物品部分に関する特定の実施形態において、スケルトングラフは、局所的に高密度化されたスケルトングラフ及び/又は低密度のスケルトングラフを作り出すために、スケールアップ及び/又はスケールダウンされ得る。スケールアップ及び/又はスケールダウンは、物品の3次元形状、プリンターパラメータ、有限要素シミュレーション等から成る群から選択されるパラメータのような、一連のパラメータに依存して行われ得る。
【0052】
本発明の文脈において、スケルトングラフは、例えば複数のツリーによって形成されることができ、各ツリーは1つのモノトリア切頂四面体を満たし、複数のセグメントから成る小さなスケールのグラフを表している。特に、各ツリーには、それぞれのモノトリア切頂四面体の偏菱形のセルの対角線の軸に沿って60度回転された鏡映パートナーが付随している。
【0053】
特定の実施形態において、スケールアップ及び/又はスケールダウンは、内部構造を有する一体物品部分に空領域をもたらす可能性がある。したがって、方法は、スケルトングラフのスケールアップ及び/又はスケールダウンによって生じる内部構造で一体物品部分の空領域を充填するステップを更に含むことができる。これは、例えば、スケルトングラフの自由端を更なるツリーで延長することによって達成され得る。
【0054】
スケルトングラフの形状、密度及びスケールを動的かつ局所的に適合させることができることにより、カスタマイズ可能かつ適合可能なインフィル及び/又はデザインを作り出すことが可能となる。印刷パラメータも考慮に入れると、以前に必要であったプロセスのための印刷支持構造を必要とすることなく、及び/又は、高耐力(high force resistant)物品を印刷することなく、物品を印刷可能にすることが更に可能となる。これらのアイテムは、所与の空間内の最大インターフェース面と、そうするために最小量の材料を利用することによって、更に特徴付けられる。考えられる用途は、ビルディングブロックとして、又は、熱交換、空調、バッテリー、透析装置、他の医療装置、フィルター、インプラント、ナノスケール材料メタマテリアル、マイクロスケール材料及びメタマテリアル等のための構造体として、であり得る。ラビリンスは2つの交互に配置されるが分離された連続的な内部体積を作り出すので、それらは、2つの成分が(使用時に一緒に混合される前に)別々に貯蔵されるべき用途において、特に有利に、粉末、粒子、液体及び/又はガス状物質のための耐衝突性タンクとして使用することができる。更に有利には、結果として得られる物品は、燃料、接着剤又は建築材料のように2つの成分が別々に貯蔵され後に共に使用されるシステムのための容器として、有用である。これは、結果として得られる物品の考えられる用途の例示的な数に過ぎない。
【0055】
上述したスケルトングラフのスケーリングに代え又はこれに加えられ得る本発明の特定の実施形態において、内部構造が応力に基づいて最適化され自動的に生成される、ボクセルベースの3D前処理が実行される。この実施形態では、前述のように、スケーリングされていない密度、好ましくは応力/歪及び物品外形に依存する特定の作業に必要な最高密度に対応するスケーリングされていない密度で、1対のスケルトングラフが生成され得る。更なる特定の実施形態において、ボクセルベースの3D前処理は、FEMシミュレーションを含む。更に別の特定の実施形態において、物品外形は、均一な密度を有する前記スケルトングラフに適合される。物品外形及び/又は構築パラメータ及び/又は応力/歪解析のいずれかに基づいて、グラフの個々のセグメント及び/又は幹を除去することによってスケルトングラフが薄化され、これにより局所的により高密度の及び低密度の領域が作成される。
【0056】
本発明の文脈において、スケーリングされていない密度のスケルトングラフは、偏菱形のセルから出発し、セルをモノトリア切頂四面体に二等分し、両方の群のモノトリア切頂四面体を通って延びるようにスケルトングラフを作成するという、上述した本発明の方法によって提供することができ、これらは全て、上記で説明したものであり、上述した異なる変形例及び代替例を包含する。代替的に、この実施形態の方法によって提供されるスケルトングラフは、既存のスケルトングラフによって、例えば、当該技術分野で公知の三重周期最小表面から提供され得る。
【0057】
本発明の更なる利点は、本発明による方法を実行することにより、自動化可能なインフィルシステムを提供することである。これは全て、FEMシミュレーション、所望の抵抗、形状、サイズ、重量、材料、及び、それぞれのプリントジョブの任意のデバイスパラメータを考慮に入れている。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、スケルトングラフは、両方のグラフから等距離の表面を構築し、スケルトングラフによって定義される2つのラビリンスを全体的に分離するために使用される。
【0059】
更なる特定の実施形態において、両方のグラフから等距離の表面の第1近似を生成するために、ボクセルベースのボロノイ解析が使用される。
【0060】
更に別の実施形態において、この表面の二乗平均曲率を最小化することによって、上記で詳述したように最小表面が生成され得る。代替的に及び/又は付加的に、表面の平滑化は、ラプラス演算子を使用することによる平滑化、LS3ループ細分割及び曲率フローアルゴリズムなど又はそれらの組み合わせから成る群から選択される方法によって実行され得る。代替的な又は付加的な実施形態において、この表面の二乗平均曲率を最小化することによって、上記で詳述したように非周期的な最小表面が生成され得る。
【0061】
更に別の実施形態において、ボクセルベースのボロノイ解析によって得られた両方のグラフから等距離の表面の平滑化は、以下の操作を繰り返し適用することにより実行され得る:(1)規則性を高めるために重み付けされたLS3ループ細分割の1回の反復、(2)コタンジェント重み付けを使用するラプラス演算子による平滑化の1~10回の反復、好ましくは3回の反復、及び、(3)quadric edge collapse simplificationアルゴリズムを使用してメッシュ解像度を50%まで低減する、又は、メッシュ解像度を50%まで、又は25%まで、又は12.5%まで、又は6.25%まで、又は3.125%まで低減する。好ましくは、これらの操作は、表面の境界にある任意の三角形が放置されるように実行される。
【0062】
反復回数を増やすことにより、より高い精度で最小表面を近似することが可能である。これにより、より滑らかな表面が得られる。繰り返しの回数は、コンピュータ性能、所望の精度及び利用可能な計算時間に依存する可能性があり、好ましくは2回から3回の繰り返しが実行される。
【0063】
本発明の特定の実施形態において、等距離表面の曲率を最小化及び/又は平滑化する際のスケルトングラフは、以下から成る群から選択される三重周期最小表面を生成する:Brakke's Disphenoid Surfaces of Genus 31, 35, 43, 51, 55 and 67, Brakke's Hexplane Surfaces of Genus 6, 12, 18, 24 and 30, Brakke's Starfish Surfaces of Genus 31, 43, 47, 55, 59, 63, 67, 71, 75, 79, 83, 87, 91, 99, 103, 115, Brakke's Triplane Surfaces of Genus 3, 9, 15, 21, 27, 33, the S, C(S), Y and C(Y) Surfaces by Fisher-Koch, Lord-Mackay's P3a Surface, Neovius' Surface and Schoen's Complementary P Surfaces of Genus 15, 21, 27, 33, 39 and 45, Schoen’s Batwing Surfaces of Genus 25, 41 and 57 and Brakke's Pseudo-Batwing Surface, Schoen’s F-RD, F-RD(r), P, F-RD, S'-S"|P and S-S'' Surfaces, Schoen’s GW, I-WP, I-WP(r) and O, C-TO Surfaces, Schoen’s Gyroid Surface, Schoen’s H'-T, H''-R, T'-R', H'-T|H"-R, T'-R'|H'-T and H"-R|T'-R' Surfaces, Schoen’s Hybrid Surfaces S-S", S'-S"|P, H'-T, H"-R, T'-R', H'-T|H"-R, T'-R'|H'-T and H"-R|T'-R', Schoen’s Manta Surfaces of Genus 19, 35 and 51, Schoen’s RII, RIII, I-6, I-8 and I-9 Surfaces, Schoen/Brakke’s N14, N26 and N38 Surfaces, Schwarz’ P, D, H, CLP Surfaces, Schoen’s Complementary D Surface、及びそれらの全ての派生物。
【0064】
特に好ましくは、等距離表面の二乗平均湾曲を最小化する際の、又は、上述したような他の手段により平滑化する際のスケルトングラフは、以下から成る群から選択される三重周期最小表面を生成する:Schwarz P surface type, Schwarz D surface type, Schoen G surface type, Fischer-Koch S surface type, Fischer-Koch CY surface type, Schoen’s GW surface type and/or Lord-Mackay’s P3a surface type。
【0065】
当業者は、本発明の教示から、本明細書に記載される方法の適用が、上記群のいずれか1つに示されるように、以前に特徴付けられていない、準周期的な及び/又は非周期的な最小表面を有するデザイン及び/又はインフィルをもたらし得ることを理解する。
【0066】
本発明の特定の実施形態において、上述したような、すなわちスケールアップ及び/又はスケールダウン及び/又はセグメントを除去することによるスケルトングラフの局所的な適合は、特定の物品に対して最適化された固有の最小表面をもたらす。
【0067】
本発明の一態様は、印刷される物品の軽量化及び/又は設計のための付加製造設計及び前処理ステップにおける記載された方法の適用である。次いで、スケルトングラフの局所的な適合及び双曲線スケーリングのためのパラメータが、特定の印刷ジョブのために当業者によって要求される物品形状、荷重ケース有限要素シミュレーション、印刷方法パラメータ等に基づいて、決定される。
【0068】
本発明の更なる一態様は、付加製造された物品を前処理するためのコンピュータ・プログラム製品であり、物品はそれぞれが構造を有する1つ以上の物品部分を含み、特に、これらの構造のうちの1つが内部構造である。コンピュータ・プログラム製品は、コンピュータ上で実行されたときに本発明による方法を実行するように適合されている。
【0069】
本発明の1つの更なる態様は、本発明の方法を実行することにより取得可能な付加製造された物品である。物品は、準結晶及び/又は準周期的な最小表面インフィル、及び/又は、準周期的な最小表面デザイン構造、及び/又は、非周期的な最小表面インフィル、及び/又は、非周期的な最小表面デザイン構造を含む。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、上述した方法によって取得可能な付加製造された物品は、物品外形を定義する外側スキンと、インフィルとを含む。インフィルは、本質的に準周期的な最小表面を含む。本発明の文脈において、本質的に準周期的な最小表面は、上記の方法の実施形態で説明したような平滑化を実行することによる最小表面の近似であり得る。
【0071】
更なる特定の実施形態において、付加製造された物品は、本質的に垂直方向に外側スキンと接触する最小表面インフィルを有する。本文脈において、本質的に垂直は、90度の角度からの0.1~5度の潜在的な偏差を許容し、物品スキンからインフィルへ理想的に荷重を導くものとして理解することができる。特定の実施形態において、最小表面は非周期的である。
【0072】
本発明の特定の実施形態において、付加製造された物品は金属から成り、より好ましくは選択的レーザー溶融に使用される金属から成る。
【0073】
本発明によれば、当業者が定義する特定の物品の形状、構造的な及びプリンターに固有の要件に合わせられたオーダーメードの構造を有する物品を構築し充填することを可能とする、付加製造された物品のための適合され最適化された構造の作成、規定及び寸法決定のための汎用的な方法が提供される。
【0074】
以下において、本発明が、図面及び特定の実施例を用いて、これらに限定することなく説明される。更に、当業者は、それぞれの実施例を検討することによって、本発明の更なる有利な実施形態及び実施を導き出すことができるであろう。
上述した実施形態の全てが、相互に排他的でない限り、任意の組み合わせで、本発明による方法、コンピュータ・プログラム製品及び/又は物品に組み込まれ得ることは、当業者にとって完全に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1a】本発明による構造又は内部構造がどのように構築され得るかを概略的に示す。
図1b】本発明による構造又は内部構造がどのように構築され得るかを概略的に示す。
図1c】本発明による構造又は内部構造がどのように構築され得るかを概略的に示す。
図1d】本発明による構造又は内部構造がどのように構築され得るかを概略的に示す。
図1e】本発明による構造又は内部構造がどのように構築され得るかを概略的に示す。
図2a】本発明の方法によって取得可能なサンプル構造を示す。
図2b】本発明の方法によって取得可能なサンプル構造を示す。
図3a】本発明によるスケールダウンが例示的な形状に対してどのように実行され得るかを概略的に示す。
図3b】本発明によるスケールダウンが例示的な形状に対してどのように実行され得るかを概略的に示す。
図4a】サンプルオブジェクトが本発明によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図4b】サンプルオブジェクトが本発明によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図4c】サンプルオブジェクトが本発明によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図4d】サンプルオブジェクトが本発明によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5a】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5b(s)】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5b(q)】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5c(s)】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5c(q)】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5d】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図5e】サンプルオブジェクトが本発明の別の実施形態によって適応的にスケーリングされた構造でどのようにして満たされ得るかを概略的に示す。
図6a】本発明の実施例を示す。
図6b】本発明の実施例を示す。
図7a】本発明によるサンプル内部構造及び/又は構造を示す。
図7b】本発明によるサンプル内部構造及び/又は構造を示す。
図8図5a~5eによる方法に基づく本発明の実施形態を示す。
図9】本発明の教示によって構築された外側スキンのない物品の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1a~1eは、段階的なアプローチを説明し、簡略化された実施例において本発明による構造をもたらし得る様々なプロセスステップを説明することによって、付加製造された物品を軽量化及び/又は設計するための、本発明の方法ステップのいくつかを説明するのに役立つ。
【0077】
図1aは、本発明の方法を実行するための基本的な開始ビルディングブロックとして使用され得る偏菱形のセル1を示す。第1のステップで、6つの面を有する偏菱形のセル1が提供されるが、本実施例では、セルは総数12の辺11...22によって接続された6つの偏菱形面から構成される。本実施例における偏菱形のセル1は、2つの隣接する辺11...22間のいずれの角度も直角ではない菱面体を形成する。本発明の文脈において、偏菱形は、常に3次元の形態に関連するものとして言及されるものとする。
【0078】
図1aに示されるような偏菱形のセル1は、そのようなセルのサンプル表現である。この実施例では、4つのベクトルを1次入力としてインプットし、多数の平面ファミリー(それぞれが多数の平行平面で構成されている)を生成することにより、ド・ブラウンのグリッド法が使用された。本実施例では、平面ファミリーの数はベクトルの数、すなわち4に一致する。
【0079】
更に、本実施例では、各平面ファミリーは3つの平面を有する。一般的な説明で既に詳述されているように、平面の数は、結果として生じる準結晶構造の意図された形状に対する所望の解像度に応じて変更することができ、物品を設計するために使用されるコンピュータ・システムの処理能力によってのみ実質的に制限される。
【0080】
本実施例では、3つの平面が各平面ファミリーに使用され、平面間の間隔は均一であるように選択された。すなわち、各平面は、先行する平面に関してそれぞれの次に続く平面に対して等距離に配置されている。これらの平面の全ては、ベクトルに対して垂直である。既に上で詳述したように、平面の配置は、ランダムであるように又はある所定の距離に従って、変更され得る。
【0081】
第1のステップでは、偏菱形のセル1が二等分される。偏菱形のセル1の二等分は、それぞれの四面体30.1, 30.2の最小の体積のみが偏菱形のセル1の外側に残り、偏菱形のセル1の体積がそれぞれの四面体30.1, 30.2によって覆われないよう、偏菱形のセル1の内部に同じ体積を有する2つの四面体30.1, 30.2を配置することによって行われる。図1aの描写において、四面体30.1, 30.2は点線で示されている。四面体30.1, 30.2は、当該四面体30.1, 30.2の辺からピラミッド状の四面体がそれぞれ切断されるように、偏菱形のセル1内に配置される。2つの四面体30.1, 30.2の間の接触面は、交差面Fを形成するであろう(図1b参照)。本実施例では、2つの四面体30.1, 30.2の間の接触面は、側辺13, 14, 15, 17, 19, 20を、それぞれの辺長の中央で切断する。四面体30.1, 30.2の角度は、偏菱形のセル1の角度に一致するように選択される。
【0082】
更に、2つのうちの第1の四面体30.1は第1の群Aに割り当てられ、第2の四面体30.2は第2の群Bに割り当てられる。
【0083】
図1bに示されているように、偏菱形のセル1の二等分は交差面Fをもたらし、当該交差面は、各コーナーが偏菱形のセル1のそれぞれの側縁上にある六角形であり、本実施例では、正確に前記辺の中央にある。偏菱形のセル1は、等しい体積の2つの物体に二等分される。本発明のために、これらの2つの物体は、モノトリア切頂(monotriatruncated)四面体2, 2'と名付けられた。既に上で概説したように、本発明の文脈では、切頂四面体は、四隅が切り取られた正四面体として理解され得る。それに対して、モノトリア切頂四面体は、4つのコーナーのうち3つのみが切り取られた四面体である。切頂四面体と比較して、モノトリア切頂四面体は、8つではなく7つの面を有する。
【0084】
したがって、二等分の結果として2つのモノトリア切頂四面体2, 2'が生じ、それらは、二等分に使用される四面体に対応すると共に、偏菱形のセル1のそれぞれの半体に適合する。これらのモノトリア切頂四面体2, 2'の各々は、群A又はBのいずれかに属する。図1bの図示において、左側のモノトリア切頂四面体2は群Aに属し、右側のモノトリア切頂四面体2'は群Bに属する。この分割が純粋に任意であることは、当業者にとって完全に自明であり、本発明の教示を説明する目的のために、任意の1つの偏菱形のセルに基づいて、当該セルを、それぞれが実質的に多数の偏菱形のセルを有する構造の内側にある2つの等しい体積の四面体に二等分することにより、それぞれが後に更に概説されるようにラビリンスを形成する2つの群A, Bが生成されることが重要である。
【0085】
この実施例では、モノトリア切頂四面体2, 2'の群A又はBのいずれかへの初期の割り当ての後、1つの構造内の全ての偏菱形のセルが原則的に同一の論理に従うべきである。換言すれば、「左」側の半体が群Aに属するように選択された場合、構造全体に亘って、論理的に「左」の半体である全ての半体は、A群に属するモノトリア切頂四面体2を形成するであろう。
【0086】
モノトリア切頂四面体2, 2'の1つの群へのこの割り当ては、既に、構造の内部に2つの織り合わされた連続的かつ準周期的な無限多面体を生成する。
【0087】
図1cは、更なる方法ステップを示す。結果として得られるモノトリア切頂四面体2, 2'の各々には、スケルトングラフA', B'が挿入されている。図1cに示されたスケルトングラフA', B'は、そのようなスケルトングラフがそれぞれのモノトリア切頂四面体2, 2'内にどのように挿入され得るかの具体的な例である。それぞれの構造の各偏菱形のセルに対してそうすることにより、スケルトングラフA', B'は、構造の全体積に及ぶように広がる。各スケルトングラフA', B'は、同じ群の隣接するモノトリア切頂四面体のスケルトングラフA', B'に接続されている。本実施例における群所属を説明するために、スケルトングラフは、それらが属する群と同じ文字で参照される。すなわち、図1cのスケルトングラフA'は、群Aに属する全てのモノトリア切頂四面体2によって生成される体積内に延びる。
【0088】
図1dに示された本実施例では、スケルトングラフA'は2つの内部ノードN1, N2から分岐する。内部ノードN1, N2は、群Aに属するモノトリア切頂四面体2の体積内の特定の領域N内に配置され得る。この結果、モノトリア切頂四面体2内のスケルトングラフについて、ツリー状の構造の「幹(trunk)」が生じ得る。この「幹」は、第1の内部ノードN1と第2の内部ノードN2が同一である、すなわち同じスポット上にあり「幹」長がゼロである特定の実施形態まで、様々なサイズである。
【0089】
本実施例では、第1の内部ノードN1と第2の内部ノードN2は相隔たっており、それぞれ3つの肢に分岐している。図を明確にするために、分岐は、例示的に群Bに属するモノトリア切頂四面体2'内に示されている。ここで、第1及び第2の内部ノードは相隔てられ、幹b1によって接続されている。各内部ノードは3つの肢に分岐し、これらの肢は特定の領域においてモノトリア切頂四面体2'の表面を切断する。群Bに属するスケルトングラフB’を構築するために、各モノトリア切頂四面体2'は隣接するモノトリア切頂四面体に接続し、特定のノード面G...Lにおけるそれぞれの隣接するモノトリア切頂四面体の接続ノードに接触する接続ノードbi...blを有する。例えば、図1dのスケルトングラフB'の第1のノードの分岐は、ノード面Gを通って延び、接続ノードbgにおいて当該面を切断する。この接続ノードbgは、隣接するスケルトングラフのそれぞれの肢が図1dのモノトリア切頂四面体2'のスケルトングラフと接続する点である。
【0090】
結果として得られるスケルトングラフA',B'は、いかなる点においても相互接続することなく、準結晶全体に及び、これを網羅する。図1eは、両方のスケルトングラフから等距離の面を構築することにより、最小表面インフィル構造を生成するステップを示す。これは、インフィルで充填されるか又は本発明による構造から構築されるように設計された構造全体の体積を、2つの別個の体積A、Bに分離する。当該構造は、物品の様々な形状に適応するよう動的に適合されることができ、本発明の偏菱形のセル1は、図1a~1eにおいて故意に単純であるように選択されているため、構造の内部に、圧縮された、拡張された又は歪んだ多数の偏菱形のセルが存在し得ることは、当業者にとって明らかである。両方のスケルトングラフから等距離の面を構築することは、両方のスケルトングラフから等距離の面を近似することを含み得る。
【0091】
本実施例では、構造10は、2つのそれぞれのスケルトングラフA', B'と、それによってスケルトングラフA', B'が拡張するそれぞれの内部体積A, Bが、1つの特定の群A又はBに属するものとして示されている。
【0092】
この特定の実施例では、FEMベースのコンピュータ・プロセスによって、両グラフから等距離にある面の二乗平均曲率の最小化が適用された。物品に与えられる空間的、幾何学的及び機械的な拘束並びに荷重ケースに応じて、本方法では、構造は一意的であり、特に物品に適合されている。本発明のこの最も基本的な原理によって、上述したような構造から成るか、あるいは、荷重支持又は他の構造上の理由のためのインフィル及び内部構造として上述したような構造を含むように無数の物品が構築され得る方法が提供される。更に、本発明の方法は所与の体積を2つの等しいラビリンスに実質的に完全に分離するので、体積の2つの区画へのそのような分割が望ましい用途では、本発明の教示から大きな利益が得られる。
【0093】
図2aは、複数の偏菱形のセル1, 1', 1"を有することによって、どのように物品50が構築され得るかを示す。図2aの本実施例では、説明のため合計4つの偏菱形のセル1, 1', 1"が示されており、これらの偏菱形のセルのうちの2つ1", 1"は互いに同一であり、2つの更なるセル1, 1'は互いに及び前述したタイプの偏菱形のセル1", 1"とは異なっている。図2aから分かるように、構造10によって体積Bから分離された体積Aを通って延びるスケルトングラフA'は、偏菱形のセル1, 1', 1"の各々を通って広がっている。構造は、製造されるべき物品の特定のニーズに基づいて更なるセルによって拡張されることができ、図2bには、どれくらいの大きさに物品が形成されるか及びいくつのセルが追加されるかにかかわらず、基本的なビルディングブロックは偏菱形のセル1と同じ原理に従い、それぞれのモノトリア切頂四面体2, 2'は依然として基本的なビルディングブロックを形成し、内部体積A, Bを通って延び物品の全体積に及ぶそれぞれのスケルトングラフA', B'の配置を可能にすることが示されている。
【0094】
本発明の1つの有利な概念が、図3a及び3bに示されている。本発明の方法は、物品の様々な形状に適応するよう容易に適合させることができ、物品の形状に従って構造をスケーリングすることにより、多数の物品に対する構造的な完全性及び荷重ケースの最適化をもたらすことができる。
【0095】
図3aは、物品外形を定義する外側スキン23を備える物品の前端のためのインフィルが、スケルトングラフA'に双曲線スケーリングを適用することによって適合される例を示す。同じスケーリングが、当然ながら、スケルトングラフB'(明確にするため、この図には示されていない)に適用される。
【0096】
物品の前端のテーパリングを発端として、内部構造は、スケルトングラフA'をより密なスケルトングラフA"へと高密度化することによってスケーリングされる。これは、物品の前端の先細りの形状が有する内部構造が、任意の点でスキン23の表面下に弱点を有することを防止する。スケルトングラフA'をスケールダウンすることにより、結果として得られる物品の内部構造を提供する最小表面構造は、最適な安定性及び充填が全ての形状において提供されるよう、形状に適合する。これは、形状がそれを必要とするより小さなスケールのインフィル又はそれが好ましいより大きなスケールのインフィル(図3aには示されていない)を使用することにより、最適化された内部構造及びインフィルを有する物品の付加製造を可能とする。スケーリングは、物品の3次元的形状によって影響を受けるだけでなく、それぞれの物品のプリンターパラメータ又は荷重ケースに依存することになり得る。
【0097】
代替的な実施例が図3bに示されており、局所的な高密度化が、本質的にバーベル形の物品の中央部に適用されている。スケルトングラフA'は、高密度化されたスケルトングラフA"へと双曲線スケーリングされている。この高密度化された構造は、物品外形をスケルトングラフに重ね合わせることにより、物品の外部にあったであろう。スケーリングによって、より高密度化された領域が生成され、その下では、スキン23が、より密な、すなわち物品により高い安定性を提供する内部構造によって支持されている。
【0098】
図4a~4dは本発明の一態様を示し、本発明による方法で生成された2つの絡み合ったスケルトングラフA', B'の基本セットが、物品外形25を有する物品のインフィルとして適合している。物品外形25は本質的にL字形の物品であり、前記2つのスケルトングラフA', B'のこの使用の第1のステップにおいて、物品外形25は、2つのスケルトングラフA', B'によって形成される格子内に重ね合わされる。
【0099】
図4aは、そのような物品外形25がどのように配置されるかを平面図で示す。
【0100】
図4bでは、物品外形25は依然として平面図で示されているが、対比すると、スケルトングラフA'は、双曲線スケーリングにより、高密度化されたスケルトングラフA"へと高密度化されている。表現を容易とするために、スケルトングラフB'、及び、そのそれぞれの高密度化されたスケルトングラフB"へのスケーリングは、省略されている。左から右に向かって、物品外形25の突出部が左よりも「比較的多くの」スケルトングラフで満たされていることが見て取れる。これにより、より良好な構造的完全性及び潜在的なスキン支持を提供するより密な領域がもたらされる。しかしながら、スケルトングラフは、物品外形25の内部体積を、スケルトングラフA', A"にそれぞれ適合する2つのラビリンスA, Bに分離する準周期的な最小表面のためのテンプレート又は青写真として機能することに留意されたい。したがって、スケルトングラフのスケーリングは、本サンプル物品のためのインフィルとして得られる物品において付加製造された準周期的な最小表面のスケーリングをもたらす。
【0101】
図4cは、高密度化されたA群のスケルトングラフを有する同一の物品を正面図で示しており、突出部は見る者の方向に延びている。
【0102】
同様に、図4dは、物品外形25を側面図で示しており、図4bと同様に、スケルトングラフA'の高密度化されたスケルトングラフA''への高密度化は、左から右へ増大している。
【0103】
上記の全ての図において、スケーリングされていない元のスケルトングラフA'は、参照用に及び概念を説明するために、点線のスケルトングラフとして表示されている。
【0104】
図5a~5eは、上記の方法に加えて使用することもできる、物品の特定の形状及び荷重支持の必要性にインフィルを適合させる代替的な方法を示す。図は、方法を説明することを意図したものであり、現実の実施例であることを意図したものではない。この理由から、図では幾つかの単純化が為されている。そのような単純化の1つは、ただ1つのスケルトングラフA'の描写である。実際の実施においては、当然ながら、スケルトングラフの薄化の以下の説明が、(上記の図1に示された方法によって生成される)1対のグラフの両方に適用されるであろう。
【0105】
図5aは、物品外形25を有する物品が、本質的に均一な密度のスケーリングされていないスケルトングラフA'上にどのように重ね合わされるかを示す。密度は、本実施例のために必要とされる限り高く、すなわち、物品において必要とされる最も高い最終密度と同じ高さに選択された。当該密度は、通常、荷重支持及び形状に関する物品外形の予想されるニーズによって決定される。
【0106】
図5b(s)では、物品構造25は第1の解析を受け、物品外形25及び形状が、どの領域がより密に充填される必要があり、どの領域がより密に充填される必要がないかを、決定する。このために、物品は、各々がスケルトングラフの少なくとも幾つかの幹を含むような、好ましくは3つより多い幹を、より好ましくは5~8つの幹を、更により好ましくは100未満の幹を含むようなサイズの立方体に分割される。ここでは、2つのタイプの立方体、すなわち、構築プロセスを支持する立方体45と、物品境界における立方体46とが、区別されている。立方体のタイプの決定に応じて、スケルトングラフのユニットを除去するための操作を、特定の立方体において実行することができる。本発明の文脈において、スケルトングラフのユニットは、1つの特定のモノトリア切頂四面体の内部の枝として理解されるべきである。当然ながら、それは、スケルトングラフの2つの枝、すなわち、元々は同一の偏菱形のセルに属していた2つのモノトリア切頂四面体の内部の対を除去することを意味する。なぜなら、それらは常に対になっているからである。
【0107】
図5b(q)は、物品構造25に対して実行される第2の解析を示し、ここで、ボクセルベースの荷重ケース解析が再び立方体の助けを借りて実行され、各立方体は多数のボクセルに亘り、好ましくは各立方体は同一の数のボクセルに亘る。これは、応力/歪の要件及び特性に基づいて立方体を分類することにより、実行することができる。本実施例では、5つのタイプが区別される:すなわち、ゼロ応力の立方体40、正の低応力(圧縮)の立方体41、負の低応力(引張)の立方体42、正の高応力(圧縮)の立方体43、及び、負の高応力(引張)の立方体。特性に応じて、特定の操作を予め決定することができる:例えば、荷重ケース解析のパラメータに応じて、ゼロ応力の立方体40内では基本的に全ての又は大部分のユニットを、正の低応力(圧縮)の立方体41内では半分のユニットを、それぞれ除去することができる等。実際のケースでは、当然ながら、多くのより漸進的なステップ及びそれぞれの適合が行われ、立方体はかなり小さくなる。
【0108】
結果として得られる適合されたスケルトングラフA"'(B"'は、図を明確にするために省略されている)は、物品外形25解析のために個別に生成され、当該解析は、図5c(s)に示されるような形状にならう部分的に薄化されたA群スケルトングラフA"'(s)と、図5c(q)に示されるような荷重にならう部分的に薄化されたA群スケルトングラフA"'(q)とをもたらす。
【0109】
A"'(s)及びA"'(q)の統合によって達成される、結果として得られる結合されたスケーリングされたスケルトングラフA"'が、物品外形25の全体について図5dに示されており、当該スケルトングラフA"'は、低密度領域(薄化された高解像度スケルトングラフ)O"'と高密度領域(高解像度スケルトングラフ)P"'とを有する。
【0110】
図5eは最終調整ステップを示し、開放端セグメントA"'(x)、すなわち更なるセグメントに接続せず空隙に終端するセグメントが除去されている。更に、最も外側のセグメント、すなわち物品のスキンを横切るセグメントから、スキンの外側の部分A"'(o)が除去され、物品の内側A"'(i)のセグメント部分の鏡像A"'(m)と置換されている。これにより、鏡像は、セグメントが横切る場所で、内部がスキンに関して鏡像化された部分の鏡像である。この調整ステップの後、前述のボロノイ解析が実行され、スケルトングラフ間のゼロ平均曲率表面が計算される。これは、結果として生じる最小表面M(先の例の構造10に類似)が本質的に垂直な方向に物品表面50と接触することを確実にし、したがって、表面からインフィルへ理想的に荷重が導かれるようになる。本文脈において、本質的に垂直とは、90度の角度から1~5度の偏差を含むものと理解されるべきである。
【0111】
図6aは、通常は複数のビルドサポートを必要とする物品の付加製造を伴う製造プロセスのために、本発明の特定の実施例がどのように実行され得るかを示す。物品50は、本発明の方法によって取得可能な最小表面に基づく構造10のインフィルを含む。当該構造は、物品の外形25に適合されており、印刷層54を付加することによりビルドプラットフォームからの進行62において構築される。
【0112】
本発明により、最小数のビルドサポートでの製造が可能となる。これは、図6bに例示的に示されている。
【0113】
現在使用されている付加製造のための方法は、最初はビルドプラットフォーム51上に配置された連続する層から物品を構築することを含む。付加材料として金属を使用する先行技術の方法は、層から層への最大45°の角度に対処しなければならず、その後、熱を放散させ、製造中の物品の変形を防止するために、構築のプロセスの間、層を所定の位置に保持するためにビルドサポートが必要とされる。本実施例の目的のために、選択的レーザー溶融ラピッドプロトタイピング法が、ビルドサポート53に対して45°未満である傾斜を1つの部分に有する物品外形25を有する物品を付加製造するために、実行される。選択的レーザー溶融の製造方法は、一度に1つの平面内で、一般的にイッテルビウム・ファイバーレーザーであるレーザーを使用することにより、所望の外形が選択的に溶融される粉体層内で行われ、レーザー操作に同期して粉体の連続する層が、その外形上に塗布される。
【0114】
図6bの本実施例では、例示を目的として、先行技術による必要な支持構造52が、特定の物品外形25を有する物品50の付加製造を実行するのに十分な、ただ1つの必要なビルドサポート53との比較のために示されている。この実施例のために、物品外形25は、物品の外側スキンに対応する。ビルドサポート53から開始して、多数の印刷層54が、進行62方向に付加される。印刷は、物品50の接触領域55の第1の層で始まり、当該接触領域は、ビルドサポート53と接触する静止領域である。層54の堆積は、構築の進行62方向に実行される。構造10の構築が進行するにつれて、物品の重心58, 59, 57は、接触領域55の中央から左へ、すなわち左側の張り出し部分の方向に移動する。層が付加される際の重心58, 59, 57, 60の移動を示すために、重心軌跡57が図6bに示されている。例えば、重心58は、左側の張り出し部分の幾つかの層が形成された後に、接触領域55の中心からオフセットされる。重心58, 59, 57, 60は、明確にオフセットされたある時点の重心59まで、更に左へ移動し、ある時点Xで、重心60は、接触領域の垂直限界56に到達する。この限界56を越えて進行すると、重心は接触領域55を越えて移動し、その後、物品50は、この所与の角度でサポートが使用されないとき、型を傾けたり傷つけたりする危険性がある。支持構造を必要としない先行技術の印刷の最大角度は、支持されていない構築61について最大の先行技術の角度で表示されている。これは、本質的に45°の角度である。
【0115】
時点Xにおいて、物品上方境界60.1が印刷され、重心は垂直デリミタ56を通過しようとしている。
【0116】
図示されたように物品を印刷するために、複数のビルドサポート52を有する代わりに、物品の重心が接触領域の垂直限界を越えて移動するか又はちょうど接触領域の垂直限界にある時点Xにおける、ほぼ上部境界の1つのビルドサポート53のみが、物品を支持するために十分であり、左側の張り出し部分を連続させるのに十分な安定性を提供する。参照のために、支持されていない構築61に対する最大の先行技術の角度が示されている。本発明の教示によれば、十分な支持を提供するインフィル構造10によって、以前に必要とされたよりも少ない支持で、より急な角度での印刷が可能となる。
【0117】
より急な角度を有する物品の構築を可能とすることに加えて、本発明及び本明細書に開示される方法は、また、構築構造の内部での最適な熱放散を提供することにより、選択的レーザー溶融において利点を提供する。本発明の最小表面は常に最適な経路で熱を放散するので、物品はビルドプラットフォーム上へより効率的に放散し、これにより、印刷速度の増大、及び/又は、溶融表面の安定性及び/又は平滑性の増大を可能とすることができる。
【0118】
本実施例では、400Wのイッテルビウム・ファイバーレーザーを備えたEOS GmbH、タイプM290プリンターが使用された。合金として、EOSから入手可能なNEOSマルエイジング鋼MS1/1,2709が、20~65μmの粒径で使用された。結果として得られる物品は、図7a及び7bに示されるような外形をとり得る。図7aでは、外側スキン(物品外形25に対応する)が、物品50のインフィル及び内部構造を示すために省略されている。物品の内部体積は、2つのラビリンスA、Bに細分されている。構造10は最小表面構造であり、スケールアップされた領域O及びスケールダウンされた領域Pを含み、上述したような双曲線スケーリングが、所与の領域において特定の構造特性を達成するために実行された。
【0119】
図7aとは対照的に、図7bの物品50は外側スキンを有さず、物品表面は構造10自体に対応する。本質的にバーベル形状の物品50も、その体積を2つのラビリンスA, Bに分離する。構造10の密度が低いスケールアップ領域O、及び、より安定した表面をもたらすよう構造10が高密度化されたスケールダウン領域Pも、図示されている。
【0120】
図8は、図5a~5eに示された方法で取得可能な物品を示しており、局所的に密度がより高い及び密度がより低い領域を生成するために、グラフの個々のセグメント及び/又は幹を取り除くことにより、物品外形及び/又は構築パラメータ及び/又は応力/歪解析に基づいて、スケルトングラフのセグメントの薄化が行われている。物品外形25は外側スキンなしで示されており、当該外側スキンは、内側の視界をより良好に提供するために除去されている。物品外形25が存在する場合、物品外形25は本質的に立方体である。
【0121】
物品は、外形及び/又は荷重ケース解析に応じて、低密度インフィルで印刷可能であることが見出されているか、又は、高密度インフィルを必要とすることが見出されている、幾つかの領域を有する。物品の内部では、非周期的な最小表面が、体積を、インフィルを形成する構造10によって分離された2つのラビリンスA及びBに細分する。構造10は最小表面Mである。高解像度スケルトングラフから薄化された低密度領域O"'が、物品の右上に見える。そして、高解像度スケルトングラフの元々の密度が維持されている高密度領域P"'が、物品の左上隅付近のO"'の左に見える。
【0122】
図9は、本発明の方法に従って印刷された物品50を示す写真である。
【0123】
本発明の方法によって得られる物品は、多数の用途に使用することができる。最も基本的な用途の1つは、物品を、図9に示されているように、安定性及び重量が重要なファクターである軽量建築物のビルディングブロックとして使用することである。本発明の方法は、金属構造の印刷が可能であることを示すと共に、体積を2つの異なる別個のラビリンスに分離しながら、軽量で最適な熱放散を有する非常に大きな安定性を有する物品を提供する。
【0124】
本発明の更なる実施例では、本発明の方法及び教示が、本発明を実行する際に適合された実行可能ファイルを統合するコンピュータ・ソフトウェアを使用することにより、付加製造を意図した物品の前処理として使用される。一般的な付加製造設計及び前処理ワークフローは、3次元モデルを生成する第1のステップを含む。最も一般的には、これはそれぞれのモデルをCAD設計し、適合させ又は照会することによって行われる。
【0125】
第2のステップでは、力がシミュレートされる。これは、有限要素シミュレーション(FEM)によって行うことができ、力シミュレーションによって要求されるように、設計を適合させるか又はトポロジーを変更するための寸法決定及び最適化ステップを更に含むことができる。印刷の準備には、軽量化と、シミュレーションでポリゴン数を増やす単純なインフィルの適用が含まれる。次に、印刷レシピが真正に印刷され得るかどうかをチェックするために、印刷シミュレーションが実行される。必要に応じて、外部及び内部サポートも、この方法ステップに統合される。印刷を実行するために、ほとんどがハードウェアによって決定される構築プロセスパラメータ及びプリンター設定に依存するスライシングが実行される。構築ステップは、次いで、スライシングの前のステップに応じた、スライス毎に大まかに対応する層毎の、物品の付加製造である。
【0126】
本発明は、軽量化を実行し、上記の前処理のプロセスステップで概説したようなインフィルを提供するための、代替的な又は付加的なツールを含む。
【0127】
代替的に又は付加的に、本発明の方法は、原材料から構造を生成するためにも使用され得る。これは、上記で詳述したように生成されたインフィルがそれ自体で構造である構造を生成するために使用され得ることを意味する。
【0128】
したがって、本発明の更なる態様は、前述したような特徴を有する上述した方法によって取得可能な物品にも関する。更に別の態様は、本発明の教示に基づいて物品に前処理を適用するために必要な動作命令及び/又はスケルトングラフを含むコンピュータ・プログラム製品にも関する。
【0129】
本明細書の実施例は選択的レーザー溶融を用いて記載されているが、本発明の方法が、バット重合、材料噴射、バインダー噴射、材料押出、指向性エネルギー堆積又はシート積層のような、それぞれのプリンターによって必要とされる任意の他のタイプの付加製造技術、及び、問題となっている物品の目的のために等しく適用可能であることを、当業者は容易に認識することができる。
【0130】
本発明の教示により、構造材料のための、並びに、効率的に且つバリ及び/又は支持構造の除去のような必要となる後処理がはるかに少なくなるよう形状を印刷するための新しい応用分野を開く、優れた特性及び属性を有する方法及び物品が提供される。また、本発明の方法から得られる物品は、表面が物品の体積を2つの完全なラビリンスに分離するので、材料をより容易に排出することができる。基本的に、物品の正しいスポットに配置された2つの小さな穴が、材料を排出又は噴出させることによって除去するのに十分であり得る。
【符号の説明】
【0131】
1 偏菱形のセル
1' 第2の偏菱形のセル
1" 第3の偏菱形のセル
2 モノトリア切頂四面体A群
2’ モノトリア切頂四面体B群
10 構造
11 第1の辺
12 第2の辺
13 第3の辺
14 第4の辺
15 第5の辺
16 第6の辺
17 第7の辺
18 第8の辺
19 第9の辺
20 第10の辺
21 第11の辺
22 第12の辺
23 スキン
24 双曲線スケーリング
25 物品外形
30.1 四面体A群
30.2 四面体B群

40 ゼロ応力のボクセル
41 正の低応力(圧縮)のボクセル
42 負の低応力(引張)のボクセル
43 正の高応力(圧縮)のボクセル
44 負の高応力(引張)のボクセル
45 構築プロセスを支持するボクセル
46 物品境界のボクセル

50 物品
51 ビルドプラットフォーム
52 先行技術のビルドサポート
53 ビルドサポート
54 印刷層
55 接触領域
56 接触領域垂直限界
57 重心(「COG」)軌跡
58 時点#1での物品COG
58.1 時点#1での物品上部境界
59 時点#4での物品COG
59.1 時点#4での物品上部境界
60 時点Xでの物品COG
60.1 時点Xでの物品上部境界(COGは接触領域の外部に移動)
61 支持されていない構築に対する最大の先行技術の角度
62 進行

A 第1群のラビリンス
A' A群のスケルトングラフ
A" A高密度化されたA群のスケルトングラフ
A"'(s) 形状にならう部分的に薄化されたA群のスケルトングラフ
A"'(q) 荷重にならう部分的に薄化されたA群のスケルトングラフ
A"' 部分的に薄化されたA群のスケルトングラフ:A"'(s)及びA"'(q)の統合
A(i) 部分的に薄化されたA群のスケルトングラフの最も外側のセグメントの内部
A"'(o) 部分的に薄化されたA群のスケルトングラフの最も外側のセグメントの外部
A"'(m) 部分的に薄化されたA群のスケルトングラフの最も外側のセグメントの内部の鏡像コピー
A"'(x) 部分的に薄化されたA群のスケルトングラフの開口端セグメント
B 第2群のラビリンス
B' B群のスケルトングラフ
B" 高密度化されたB群のスケルトングラフ
F 交差面
G 第1のノード面
H 第2のノード面
I 第3のノード面
J 第4のノード面
K 第5のノード面
L 第6のノード面
M 最小表面
N 内部ノードの可変領域
N1 第1の内部ノード(スケルトンA群)
N2 第2の内部ノード(スケルトンA群)
O 低密度領域(スケールアップされたスケルトングラフ)
O"' 低密度領域(薄化された高解像度スケルトングラフ)
P 高密度領域(スケールダウンされたスケルトングラフ)
P"' 高密度領域(高解像度スケルトングラフ)
S 物品外形解析
Q 荷重ケース解析(FEMシミュレーション)

b1 「幹」
bg 接続ノード第1のノード面
bh 接続ノード第2のノード面
bi 接続ノード第3のノード面
bj 接続ノード第4のノード面
bk 接続ノード第5のノード面
bl 接続ノード第6のノード面
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b(q)】
図5b(s)】
図5c(q)】
図5c(s)】
図5d
図5e
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
【国際調査報告】