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2022-535722ロープウェイ設備のプーリの摩耗を把握する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ロープウェイ設備のプーリの摩耗を把握する方法
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/10 20060101AFI20220803BHJP
   B61B 12/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B61B12/10 Z
B61B12/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570135
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020063812
(87)【国際公開番号】W WO2020239497
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】A50487/2019
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500579431
【氏名又は名称】インノヴァ・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Konrad-Doppelmayr-Strasse 1 A-6922 Wolfurt Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】モーニ・アドリアン
(57)【要約】
ロープウェイ設備(1)のプーリ(4)の摩耗を確実に把握するために、ロープウェイ設備(1)の停止状態で、ロープセンサ(10)と運搬ロープ(3)との間の距離(A)を測定し、停止状態で測定された距離(A)から、少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗を推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープウェイ設備(1)の少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗を把握する方法であって、
ロープウェイ設備(1)は、少なくとも1つのプーリ(4)を介してガイドされる運搬ロープ(3)と、プーリ(4)に対して既知の位置に配置された少なくとも1つのロープセンサ(10)とを有し、ロープセンサ(10)によって、運搬ロープ(3)とロープセンサ(10)との間の距離(A)を把握する、方法において、
前記距離(A)を、ロープウェイ設備(1)の停止状態で測定し、停止状態で測定した距離(A)から、少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗を推定することを特徴とする、方法。
【請求項2】
プーリ(4)の温度を検出し、検出された温度におけるプーリ(4)の熱膨張を、前記距離(A)を把握するときに考慮することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのロープセンサ(10)によって、別の少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗を把握することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
別の少なくとも1つのロープセンサ(10)によって、少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗を把握し、少なくとも1つのプーリ(4)の摩耗についてそれぞれ異なるロープセンサ(10)によって把握された摩耗を平均化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記距離(A)を、複数の日にちに、好適には毎日、又はx>1でx日ごとに、又は所定の時間間隔を置いて測定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記距離(A)を、常に一日の同時刻に測定することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
摩耗の時間的な推移を把握することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
摩耗が所定の許容限界値(VG)より上回ると、ロープウェイ設備(1)のプーリ(4)を交換する、ロープウェイ設備(1)を運転するための請求項1から7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープウェイ設備の少なくとも1つのプーリの摩耗を把握する方法であって、ロープウェイ設備は、少なくとも1つのプーリを介してガイドされる運搬ロープと、プーリに対して既知の位置に配置された少なくとも1つのロープセンサとを有し、ロープセンサによって、運搬ロープとロープセンサとの間の距離を把握する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロープウェイ設備では、ロープウェイの運搬ロープは、延伸区間及びステーションにおいてプーリを介してガイドされる。運搬ロープは、プーリにおいて、走行面上に、通常はロープガイド溝を有するゴムリング上にガイドされる。プーリ、特にプーリのゴムリングは、ロープウェイの運転時に、例えば運搬ロープに設けられた乗り物の揺れ又は乗り物の非対称の荷重に基づいて摩耗し得るが、通常の運転中に、プーリの走行面に掛かる運搬ロープの圧力によっても摩耗し得る。しかも、運搬ロープは、プーリにおいてずれて走行し得(プーリのロープガイド溝からの運搬ロープの側方のずれ)、これは、最悪のケースでは、プーリから運搬ロープが飛び出してしまうおそれがある。したがって、ロープウェイ設備において、ロープウェイ支持体に設けられたローラバッテリの領域やステーションにおいても、運転中に、ロープ位置監視を行い、これにより、プーリにおける運搬ロープの許容されない走行のずれ、つまり側方のずれを把握することも既に知られている。ロープ位置監視は、非接触作動式のセンサ、例えば誘導型近接センサ(例えば独国特許出願公開第19752362号明細書等)、ホールセンサ(例えば米国特許第5581180号明細書等)又は渦電流センサ(例えば国際公開第2019/038397号等)を用いて行われる。運搬ロープの許容されない側方のずれが生じると、ロープウェイ設備が停止される又は運搬速度が低下される。もちろん、どちらもロープウェイ設備の運転時には所望されない。
【0003】
プーリの走行面、例えばゴムリングにおける摩耗は、通常、運転中に監視され、これにより、運転の制限又は運転の中断を予防するために、場合によっては過剰に摩耗したプーリを適時交換できる。これは、ある程度の点検期間を置いて保守人員が目視でチェックすることによって又は自動的に行ってもよい。例えば、独国特許出願公開第19752362号明細書において、非接触作動式のセンサを用いて、運転中に、ロープ位置とプーリの走行面の損耗との両方を把握することが知られている。米国特許第5581180号明細書及び国際公開第2019/038397号にも、ロープ位置センサを用いて、プーリの摩耗を確認できることも記載されている。摩耗を認識するために、ロープウェイの運行時に、位置固定に取り付けられたロープ位置センサと運搬ロープとの間の距離が特定される。
【0004】
ただし、ロープウェイ設備の運転条件は、極めて厳しい。運転時、一日を介して数十度の周囲温度変動が考えられ、これが、プーリの熱膨張(ある種の縮小又は膨張)を招いてしまうおそれがある。その際、運搬ロープとロープ位置センサとの距離が著しく変化し得、これが、距離測定の信頼性に不都合な影響を及ぼすことがある。運搬ロープとプーリ又はプーリの走行面との間の摩擦に基づいて、プーリは、運転時、周囲に対して、特にセンサに対して温度上昇し得、これもまた、把握された運搬ロープとロープ位置センサとの間の距離の変化を招いてしまうおそれがある。この場合、運転時、把握された距離が数ミリ単位で変化し得る。運搬ロープ自体は、運転時、例えば乗り物のロープクランプがプーリを乗り越えることに基づいて、又は風等のロープウェイ設備に対する外部の影響に基づいて、振動にさらされ、これにより、運転時、把握されたロープ位置センサと運搬ロープとの間の距離もまた常に変化し得る。これら全てによって、運転時、非接触式のセンサを用いた距離測定によるプーリの摩耗認識は、より不確実にそしてより困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19752362号明細書
【特許文献2】米国特許第5581180号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/038397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、ロープウェイ設備のプーリの摩耗認識を改善し、特に信頼性を高め、ひいてはロープウェイ設備の運転、特に保守を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、距離を、ロープウェイ設備の停止状態で測定し、停止状態で測定した距離から、少なくとも1つのプーリの摩耗を推定することによって解決される。ロープウェイ設備の停止状態でプーリの摩耗を把握することによって、簡単に、距離測定に及ぼされる、運転に起因する影響を低減どころか排除できる。とりわけ、運転中に距離を把握しなくてよいとの認識がなされた。というのも、距離から得られる摩耗はどのみちゆっくりとしか変化しないからである。したがって、停止状態で距離が把握されると有利である。というのも、これにより、より正確な結果も得られるからである。これにより、特に有利な形態では、既存のロープ位置センサを距離把握のためのロープセンサとして利用することも可能である。これにより、ハードウェアを追加する手間が要らない。これにより、摩耗が所定の許容境界値より上回ると、ロープウェイ設備のプーリを適時交換することも可能である。
【0008】
摩耗の把握精度を高めるために、プーリの温度を検出し、検出された温度でのプーリの熱膨張を、距離を把握するときに考慮することが想定され得る。これにより、起こり得る、プーリの温度に起因する熱膨張を考慮又は補整できる。その際、距離の把握、ひいては摩耗の把握も、特定の基準温度と関連付けてもよい。
【0009】
有利な実施形態では、距離は、複数の日にちに、好適には毎日、又はx>1でx日ごとに、又は所定の時間間隔を置いて、特に、常に一日の同時刻に測定される。これにより、摩耗の時間的な推移の把握も可能である。時間的な推移から、ロープウェイ設備に関する他の認識を得ることができる。例えば、特定の期間にわたるプーリの摩耗が早すぎるとき、ロープウェイ設備の他の問題を推定できる。
【0010】
以下、例示的に、概略的にかつ非限定的に本発明の有利な形態を示す図1図5を参照して、本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロープウェイ設備の一部を示す。
図2】ロープウェイ設備のローラバッテリの一部を示す。
図3】ロープウェイ設備のプーリの一部を示す。
図4】非接触式のロープセンサの測定マップを示す。
図5】把握されたプーリの摩耗の時間推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、2つのロープ支持体2と共に、広く知られたロープウェイ設備1の一部が示されている。少なくとも1本の運搬ロープ3が、2つのロープウェイステーション(図示されていない)の間で、プーリ4を介して、循環式に又は往復式にガイドされる。プーリ4は、例示的には、ロープ支持体2に配置されたローラバッテリ5に回動自在に軸支されている。ローラバッテリ5は、通常、運搬ロープ3の移動方向に相前後して配置された複数のプーリ4を有する。1つのプーリ4又は一群のプーリ4は、多くの場合、ローラバッテリ5に回動自在に軸支された揺動アーム6に配置されている。運搬ロープ3に、複数の乗り物7、例えばゴンドラ又はチェアが、公知の形で、例えばロープウェイステーションにおいて着脱可能なロープクランプや固定のクランプによって緊締されている。乗り物7は、このような形で、運搬ロープ3において、ロープウェイステーションの間を移動する。ロープウェイステーションにも、いくつかのプーリ4が配置されてよく、プーリ4を介して、運搬ロープ3がガイドされる。
【0013】
図2は、2つのプーリ4を有するローラバッテリ5の一部を示す。ロープウェイ設備1に、例えばローラバッテリ5に、少なくとも1つの非接触式のロープセンサ10が配置されている。非接触式のロープセンサ10は、好適には、プーリ4に対して既知の所定の位置に、特に運搬ロープ3に対して所定の距離Aを置いて配置されている。非接触式のロープセンサ10が、揺動アーム6に、図2のように配置されているとき、非接触式のロープセンサ10は、好適には、プーリ4に対して所定の位置で揺動アーム6に配置されている。プーリ4が、位置固定に、ローラバッテリ5に回動自在に軸支されている(つまり揺動アーム6に軸支されていない)とき、非接触式のロープセンサ10は、好適には、ローラバッテリ5のプーリ4に対して所定の位置に配置されている。しかも、ローラバッテリ5には、複数の非接触式のロープセンサ10が、例えばローラバッテリ5の、運搬ロープ3の送り方向Xに見て外側の端部の領域に設けられてもよい。プーリ4が、そして非接触式のロープセンサ10も、ロープウェイ設備1の別の定位置の部分に回動自在に軸支して、例えばロープウェイステーションに、又はロープウェイステーションへの進入領域に、又はロープウェイステーションからの退出領域に、又はロープウェイ支持体2の別の領域に配置されてもよいことに留意すべきである。ロープウェイ設備1には、一般的に、複数のロープセンサ10が分配して配置されている。
【0014】
非接触式のロープセンサ10は、誘導式又は静電容量式に作動するセンサ、例えば誘導式又は静電容量式の近接センサ、ホールセンサ又は渦電流センサであってよい。好適には、非接触式のロープセンサ10は、同時に、プーリ4における運搬ロープ3の横方向Y(送り方向Xに対して横向き)の側方のずれを把握するロープ位置センサとして用いられる。この場合、非接触式のロープセンサ10は、好適には、プーリ4に対する所定の側方の位置にも向けられている。しかも、図2に示唆されているように、別個の1つのロープ位置センサ13(又は複数のロープ位置センサ13)を設けることも考えられる。
【0015】
非接触式のロープセンサ10は、以下にさらに詳しく述べるように、評価ユニット11(ハードウェア及び/又はソフトウェア)に接続されていて、これにより、取得されたセンサ値が評価される。この場合、非接触式の各ロープセンサ10が、独自の評価ユニット11に接続されている、又は非接触式の複数のロープセンサ10、例えばロープウェイ支持体2の一方の(又は両方の)送り方向Xの複数のロープセンサ10が、それぞれ1つの評価ユニット11に接続されていることが想定され得る。少なくとも1つの評価ユニット11は、ロープウェイ制御部12(ハードウェア及びソフトウェア)に接続されていて、これは、無線及び有線のいずれで行ってもよい。ロープウェイ制御部12は、一般的に、ロープウェイステーションに配置されている。評価ユニット11は、ロープウェイ制御部12に組み込まれてもよい。独自のロープ位置センサ13が用いられるとき、評価ユニット11は、同時にロープ位置センサ13にも接続されてよく、これにより、横方向Yの運搬ロープ3のロープ位置が把握される。ロープ位置センサ13用の独自の評価ユニットが設けられてもよい。評価ユニット11は、ロープセンサ10又はロープ位置センサ13に組み込まれてもよい。
【0016】
図3は、1つのプーリ4を詳細に示す。プーリ4は、一般的に、主に中央のローラ本体(図3では見えない)からなり、ローラ本体は、転がり軸受又は他の軸受によって、中央の軸受ブッシュ(図3では見えない)に回動自在に軸支して配置されている。軸受ブッシュにおいて、プーリ4は、ロープウェイ設備1に配置されてよい。もちろん、軸受ブッシュを省略し、プーリを、直接、ロープウェイ設備1における軸受に回動自在に軸支して配置してもよい。ローラ本体において、ゴムディスク20が、側方に配置された2つのフランジの21の間に配置されてよい。ゴムディスク20は、プーリ4の走行面22を形成し、走行面22に、運搬ロープ3をガイドするための凹部の形態をしたロープ溝23を設けることができる。ゴムディスク20は、一般的に、交換可能に配置されている。しかも、当然のこととして、ローラ本体自体が、プーリ4の走行面22及び/又はフランジ21を形成してもよい。ロープウェイ設備1の運転時、図3に破線で示唆されるように、運搬ロープ3は、横方向Yにロープ溝23から側方にそれることが起こり得る。そのような横方向Yの変位Sは、ロープウェイ設備1の運転時にロープ位置センサ13によって認識できる。
【0017】
図3から、運搬ロープ3が、走行面22の摩耗が進行するにつれ、プーリ4の走行面22により深く食い込み、これにより、運搬ロープ3は、プーリ4の回転軸線14の方へ変位することも看取される。安全上の理由から、プーリ4のある程度の摩耗しか許容されない。摩耗が増加すると、ロープ溝23の深さVが増大する。摩耗が大きすぎると、プーリ4、又はゴムディスク20、又は総じてプーリ4の、走行面22を形成する部分を交換しなければならない。
【0018】
非接触式のロープセンサ10は、プーリ4に対して既知の位置に配置されているので、(送り方向X及び横方向Yに垂直の方向Zに見て)運搬ロープ3とロープセンサ10との間の距離Aが得られる。好適には、ロープセンサ10は、所定の基準位置を占めるために、摩耗していないプーリ4に対する所定の位置に配置されている。ただし、基準位置は、他の形で確定されてもよい。摩耗が増加し、これにより深さVが増大すると、距離Aが減少し、これにより、距離Aが非接触式のロープセンサ10により測定されると、プーリ4の走行面22の摩耗は、深さVの増加として認識できる。
【0019】
一般的に、ロープセンサ10により取得されたセンサ値Wは、評価ユニット11において、距離A(又は同等に深さV)へと変換される。典型的には、距離Aは、通常方向Zのロープセンサ10と運搬ロープとの間の最短区間である。
【0020】
ロープウェイ設備1の運転が距離測定に及ぼす影響を低減するために、又は好適には完全に排除するために、本発明によれば、ロープウェイ設備1の停止状態で測定される距離Aだけが摩耗認識に用いられることが想定されている。したがって、距離Aは、運搬ロープ3が停止しているときに測定される。運搬ロープ3が停止しているとき、運搬ロープ3がプーリ4のロープ溝23に位置し、運搬ロープ3が振動しない又はごく僅かしか振動しないことが推測され得る。
【0021】
さらに、ロープウェイ装置1の停止状態で距離Aを測定することによって、距離Aの測定に及ぼす温度の影響を低減でき、それどころか理想的には排除できる。停止状態では、運搬ロープ3とプーリ4との間に摩擦が生じ得ず、これにより、プーリ4が、摩擦熱に起因する付加的な熱膨張にさらされず、これは、距離Aの測定をより正確にする。したがって、ロープセンサ10が、構築された電子装置による過剰な自己加温にさらされない又は様々な太陽放射が発生しない(例えば遮光による)場合には、プーリ4とロープセンサ10とがほぼ同じ温度(ほぼ周囲温度)を有し、これによって、プーリ4の温度とロープセンサ10の温度との間の温度差による測定トラブルが生じない。
【0022】
距離Aの測定に作用する温度を、例えばロープセンサ10又はプーリ4の周辺の温度検出体を用いて測定し、測定した距離Aを所定の基準温度(例えば21℃)に合わせて修正することも可能である。これにより、例えば、起こり得る、太陽放射による熱膨張を補整できる。そのために、測定された温度によって、例えば格納されたテーブル、数学モデル又は数式を用いて、プーリ4の熱膨張を特定でき、距離Aを特定するときにプーリ4の温度に起因する膨張(これは距離Aを変化させる)を考慮できる。
【0023】
好適には、距離Aは、常に、一日の同時刻に、例えば朝、ロープウェイ設備1の運転開始前、好適には日の出前又は日の出から時間が経過しすぎないうち、又は夕方、ロープ設備1の運転終了後、好適には日の入り後又は日の入りから時間が経過しすぎないうちに測定される。運転終了後に測定されるとき、好適には、プーリ4を周囲温度に冷ますことができるように、設定されたある時間、例えば1時間、測定が待機される。ただし、太陽放射によりプーリ4が熱膨張することがあるので、好適には、夜(日の入りと日の出との間として)に測定される。距離Aの測定について、運転終了と運転開始との間の任意の時刻を、例えば常に午前0時の測定を確定してもよい。摩耗は、ゆっくりとしか深さVの増加に現れず、ロープセンサ10の測定分解能も制限されているので、距離A又はこれに関連する深さVは、一日ごとではなく、より大きな時間間隔で、例えば毎週又はx>1でx日ごとに測定しても十分でもあり得る。
【0024】
しかも、ロープウェイ装置1の停止状態での距離Aの測定は、特に有利には、ロープセンサ10として、今日のロープウェイ装置1にはいずれにせよ実装されている従来慣用の非接触式のロープ位置センサ13の使用も可能にする。とりわけ、ロープセンサ10として、特に簡単に構成された非接触式のロープ位置センサ13を使用できる。ロープ位置センサ13自体によって、測定原理に基づいて、運搬ロープ3が左に、右に(つまり横方向)に、又は摩耗によってプーリ4の回転軸線14に向けてZ方向に変位するのか認識できない。
【0025】
そのような非接触式のロープ位置センサ13の一例は、誘導型近接センサである。誘導型近接センサは、誘導電圧によって非接触式に測定対象までの距離を測定する。例えば、センサの、交流が供給されるセンサコイルは、センサコイルの周囲に電磁界を形成する。導電性の測定対象(ここでは運搬ロープ3)がこの界に至ると、測定対象に渦電流が誘導され、その電磁界は、センサコイルから発生する電磁界に対抗し、これにより、センサコイルのインピーダンスが変化する。この変化は、測定対象の距離に対する所定の関係にあり、例えば電子的に又は相応のソフトウェアによるデジタル変換に基づいて適宜評価される。もちろん、他の測定原理を用いてもよい。
【0026】
非接触式のロープセンサ10、例えば誘導型近接センサの例示的な測定マップが、図4に示されている。測定マップは、ロープセンサ10に対する(横方向Y及び方向Zの)測定対象の位置に関して一定のセンサ値Wの線を示している。ここでは、測定対象の位置が、ゼロ位置Y=0(例えばロープ溝23の位置)を起点として左(Yマイナス)及び右(Yプラス)に、そしてロープセンサ10と測定対象(運搬ロープ3)と間の方向Zの距離として記入されている。測定マップから、取得された各センサ値Wが、左、右、又は方向Zへのずれとして把握できることが看取されるが、これをもって、センサ値Wから、ロープセンサ10に対する測定対象の具体的な位置を推定することはできない。しかし、それにもかかわらず、そのようなロープセンサ10により、横方向Yと方向Zとの間の区別は可能である。というのも、横方向Yの運搬ロープ3の側方の変位が、ロープセンサ10に対する運搬ロープ3の距離を増大させ、他方、摩耗が、ロープセンサ10に対する運搬ロープの距離を減少させるからである。したがって、既知の基準位置を起点として、横方向Yの変位及び方向Zの摩耗を、取得されたセンサ値の増減によって認識できる。例えば、センサ値は、横方向Yに運搬ロープ3が変位すると減少し、方向Zに摩耗すると(つまり運搬ロープ3がロープセンサ10に近づくと)増加する。これにより、取得されたロープセンサ10のセンサ値Wを、横方向Yの運搬ロープ3の側方のずれ又は方向Zの距離Aの変化に一義的に対応付けることができる。
【0027】
他の測定原理を用いたときにも、同一の又は類似の関係が生じ得る。しかも、原則として、測定原理又はセンサ値Wの評価に基づいて、側方のずれと距離変化とを区別できるセンサの使用も可能である。しかし、そのようなセンサは、より複雑であり、ひいてはより高価であるので、ロープウェイ設備1では一般的に使用されない。というのも、特に、ロープウェイ設備1では、通常、多数のロープセンサ10が必要となるからである(典型的には、各ロープウェイ支持体に、運搬ロープ3の各方向で、少なくとも2つのそのようなロープセンサ10が必要であり、これにより、20個のロープウェイ支持体では既に80個のセンサとなる)。
【0028】
ロープセンサ10については、停止状態で測定すると、運搬ロープ3がプーリ4のロープ溝23内に位置すると推測できる。これにより、停止状態で測定されるセンサ値Wは、ロープセンサ10の種類に全く依存せずに、ロープセンサ10と運搬ロープ3との間の距離Aに少なくとも対応付けることができる。
【0029】
ロープセンサ10は、一般的に、プーリ4から送り方向Xに離れて配置されているので、精度を高めるために、プーリ4及びロープセンサ10の配置及びジオメトリが知られていると、取得されたセンサ値Wを距離A(又は同等に深さV)に又はこれに関連する摩耗値に換算できる。
【0030】
もちろん、1つのロープセンサ10によって、このロープセンサ10に対して十分に近くて既知の位置に配置されたプーリ4の摩耗だけを確実に把握できる。プーリ4がロープセンサ10から遠くに配置されているほど、摩耗の把握精度が低下する。しかし、ロープウェイ設備1の所定の領域における、例えばローラバッテリ5又は揺動アーム6におけるプーリ4の配置及びジオメトリが既知であることに基づいて、プーリ4が配置された領域で取得されたロープセンサ10のセンサ値Wを、その配置の複数のプーリ4の摩耗に換算することが十分に可能である。
【0031】
精度を高めるために、複数の異なるロープセンサ10のセンサ値Wを評価し、これにより、プーリ4の摩耗(例えば深さVの値)を特定してもよい。例えば、プーリ4の摩耗を、異なるロープセンサ10のセンサ値Wを用いて特定し、次いで平均化してもよい。その際、平均化するときにプーリ4からロープセンサ10までの距離を評価する重み付けを考慮してもよい。
【0032】
図5は、2つのプーリ4について、例えば3ヶ月間の期間をカバーする期間T1からTnにわたる深さVの増加量の時間的な推移K、Kが例示されている。時点T1での開始時の深さVから出発して、Tnでの期間の終了まで、深さVは、連続的に増加する。
【0033】
把握される深さVは、ロープウェイ設備1の停止状態での測定にもかかわらず変動にさらされ得、これは、外部影響や測定精度にも起因し得る、ということが看取される。これらの変動を補整するために、摩耗の傾向を回帰直線(図5では破線で表示)又は別の回帰によっても近似でき、これにより、あらゆる時点で、特に測定の間でも、摩耗値を特定できる。
【0034】
許容される摩耗についての限界値VGは、例えば最大許容深さVとして設けられてよい(パーセントで又は絶対値として)。プーリ4の摩耗が限界値Vに達すると、評価ユニット11又はロープウェイ制御部12から、通知を出力でき、これにより、プーリ4又はプーリ4のローラゴム20の交換の必要性が示される。通知は、適切な通信回線を介して、遠隔箇所、例えば保守センタへ送信され、そこから保守が調整されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】