IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーサル シーケンシング テクノロジー コーポレイションの特許一覧

特表2022-535746核酸配列における構成要素を同定する方法
<>
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図1
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図2
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図3
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図4
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図5
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図6
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図7
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図8
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図9
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図10
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図11
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図12
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図13
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図14
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図15
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図16
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図17
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図18
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図19
  • 特表-核酸配列における構成要素を同定する方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】核酸配列における構成要素を同定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220803BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220803BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220803BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220803BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570366
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020034759
(87)【国際公開番号】W WO2020243207
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/853,119
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,675
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521391748
【氏名又は名称】ユニバーサル シーケンシング テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペイミン
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ミン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB09
4B029GB10
4B063QA13
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、ポリメラーゼ合成に基づいて単一分子レベルで電子的にDNA分子またはRNA分子を同定または配列決定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、上記ナノ構造体に結合され、上記ナノ構造体には、DNAプライマーおよび配列決定されるべき標的から構成される二重鎖、および続いて、ヌクレオシド三リン酸またはdNTPの混合物が供給される。金属イオンの存在下では、上記DNAポリメラーゼは、dNTPを、ワトソン-クリック塩基対合規則に従ってDNAプライマーへと組み込み、各組み込み工程は、センサーにおいて記録される電子スパイクを誘起する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体ポリマーの同定、特徴付けまたは配列決定のためのシステムであって、前記システムは、
(a)非伝導性基材;
(b)前記非伝導性基材上で互いに対して隣に配置される第1の電極および第2の電極によって形成されるナノギャップ;
(c)前記ナノギャップに匹敵する寸法を有し、かつ化学的結合を通じて、一方の端部を前記第1の電極へとおよびもう一方の端部を前記第2の電極へと結合させることによって前記ナノギャップを架橋するように構成されるナノ構造体;
(d)前記ナノ構造体に結合されかつ生体ポリマー合成反応を行うように構成されたDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ;
(e)前記生体ポリマー合成反応を促進する反応混合物;
(f)前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加されるバイアス電圧;
(g)前記ナノ構造体に結合された前記ポリメラーゼによって開始されるコンホメーション変化によって引きおこされる前記ナノ構造体内の歪みから生じる前記ナノ構造体を経る電流変動を記録するデバイス;ならびに
(h)前記生体ポリマーまたは前記生体ポリマーのサブユニットを同定するデータ分析のためのソフトウェア、
を含み;
ここで前記生体ポリマーは、DNA分子、RNA分子、もしくはオリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせのいずれかであり、かつ2本鎖もしくは1本鎖、直線状もしくは環状、天然の、改変されている、または合成されている、およびこれらの組み合わせのいずれかである、システム。
【請求項2】
前記非伝導性基材は、以下:ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス、二酸化ハフニウム、他の金属酸化物、任意の非伝導性ポリマーフィルム、酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素または他の非伝導性コーティングを有するケイ素、窒化ケイ素コーティングを有するガラス、他の非伝導性有機物質、および/あるいは任意の非伝導性無機物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ナノ構造体は、以下:
(a)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるデオキシリボ核酸から作製されるDNAナノ構造体;
(b)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるリボ核酸から作製されるRNAナノ構造体;
(c)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるアミノ酸から作製されるペプチドナノ構造体;および
(d)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかである任意の伝導性生体ポリマー(複数可)から作製される分子ワイヤ、
のうちの1つまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ナノ構造体は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、TiN、TiNx、TaN、TaNx、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、および他の金属、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される金属材料から作製される固体ナノワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ナノ構造体は、単層もしくは多層またはこれらの組み合わせのいずれかのカーボンナノチューブまたはグラフェンシートを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ナノ構造体は、前記ポリメラーゼであり、ここで前記ポリメラーゼは、2つの前記電極に直接付着され、前記ナノギャップを架橋し、前記電流を通過させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記DNAポリメラーゼは、天然の、変異されたか、発現されたか、または合成されたかのいずれか、およびこれらの組み合わせである、T7 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、Taq ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ Y、DNAポリメラーゼ Pol I、Pol II、Pol III、Pol IV、およびPol V、Pol α(アルファ)、Pol β(ベータ)、Pol σ(シグマ)、Pol λ(ラムダ)、Pol δ(デルタ)、Pol ε(エプシロン)、Pol μ(ミュー)、Pol Ι(イオタ)、Pol κ(カッパ)、pol η(エータ)、ならびに末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、テロメラーゼを含む、DNAポリメラーゼファミリーA、B、C、D、X、Y、およびRTからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記RNAポリメラーゼは、天然の、変異されたか、発現されたか、または合成されたかのいずれか、およびこれらの組み合わせである、T7 RNAポリメラーゼを含むウイルスRNAポリメラーゼ;ならびにRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、およびRNAポリメラーゼVを含む真核生物RNAポリメラーゼ;ならびに古細菌RNAポリメラーゼからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ゲート電極として機能するように構成された第3の電極をさらに含み、ここで前記第1の電極および前記第2の電極と一緒に、前記電極は、FETタイプナノギャップデバイスを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記反応混合物は、以下:
(a)少なくとも1種の天然に存在するヌクレオシド三リン酸;
(b)電子供与性基または電子求引性基のいずれかを含む少なくとも1種の天然に存在するヌクレオシドγ-置換三リン酸;
(c)前記天然に存在するヌクレオシド三リン酸のβ,γ-架橋Oの代わりになるX部分を有する、天然に存在するヌクレオシド三リン酸の少なくとも1種のβ,γ-Xアナログ;
(d)少なくとも1種のα-チオ-dNTPまたはα-チオ-NTP;
(e)少なくとも1種のα-ボラノ-dNTPまたはα-ボラノ-NTP;
(f)少なくとも1種のα-ボラノ-α-チオ-dNTPまたはα-ボラノ-α-チオ-NTP;
(g)少なくとも1種のα-セレノ-dNTPまたはα-セレノ-NTP;
(h)少なくとも1種のデオキシリボヌクレオシドα-R-ホスホニル-β,γ-ジホスフェート;
(i)少なくとも1種のβ,γ-X-α-Z-dNTP類似物またはβ,γ-X-α-Z-NTP類似物;および
(j)少なくとも1種のγ-R-α-Z-dNTP類似物またはγ-R-α-Z-NTP類似物、
のヌクレオシド三リン酸混合物のうちの少なくとも1つまたはこれらの組み合わせを含み、ここで前記dNTPは、DNA合成のために構成され、前記NTPは、RNA合成のために構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記反応混合物は、以下:
(a)改変された糖を含み、ここで糖環における酸素は、異なる電気陰性度を有する原子によって置き換えられているdNTPまたはNTP;
(b)人工遺伝子ポリマーゼノ核酸(XNA)を含むヌクレオシドユニットを含むdNTPまたはNTP;
(c)電子求引性基、電子供与性基、エチル基、エチレン基、およびアセチレン基、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される分子で改変され、前記分子に対して官能基が結合される5位を有するピリミジン塩基を含む、dNTPまたはNTP;ならびに
(d)電子求引性基、電子供与性基、エチル基、エチレン、およびアセチレン基、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される分子で改変され、前記分子に対して官能基が結合される7位を有するプリン塩基を含む、dNTPまたはNTP、
のうちの少なくとも1つまたはこれらの組み合わせを含み、ここで前記dNTPは、DNA合成のために構成され、前記NTPは、RNA合成のために構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
複数のナノギャップセンサーを含み、ここで各ナノギャップセンサーは、1対の電極、ナノ構造体、ポリメラーゼ、反応混合物、および単一ナノギャップと関連付けられた任意の特徴を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のナノギャップセンサーは、約10個~約10億個のナノギャップ、好ましくでは、約10,000~約100万個の間のナノギャップのアレイを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
生体ポリマーを同定する、特徴づける、または配列決定するための方法であって、前記方法は、
(a)非伝導性基材を提供する工程;
(b)第1の電極および第2の電極を提供し、前記電極を互いに対して隣に配置して、前記非伝導性基材上にナノギャップを形成する工程;
(c)前記ナノギャップに匹敵する寸法を有しかつ化学的結合を通じて、一方の端部を前記第1の電極へとおよびもう一方の端部を前記第2の電極へと結合させることによって、前記ナノギャップを架橋するように構成されたナノ構造体を提供する工程;
(d)前記ナノ構造体に結合されかつ生体ポリマー合成反応を行うように構成されたDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼを提供する工程;
(e)前記生体ポリマー合成反応を促進する反応混合物を提供する工程;
(f)前記第1の電極と前記第2の電極との間でバイアス電圧を印加する工程;
(g)前記ナノ構造体に結合された前記ポリメラーゼによって開始されるコンホメーション変化によって引きおこされる前記ナノ構造体内の歪みから生じる前記ナノ構造体を経る電流変動を記録する工程;ならびに
(h)前記生体ポリマーまたは前記生体ポリマーのサブユニットを同定するデータ分析のためのソフトウェアを提供する工程、
を包含し、ここで前記生体ポリマーは、DNA分子、RNA分子、もしくはオリゴヌクレオチド、またはこれらの組み合わせのいずれかであり、かつ2本鎖もしくは1本鎖、直線状もしくは環状、天然の、改変されている、または合成されている、およびこれらの組み合わせのいずれかである、方法。
【請求項15】
前記非伝導性基材は、以下:ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス、二酸化ハフニウム、他の金属酸化物、任意の非伝導性ポリマーフィルム、酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素または他の非伝導性コーティングを有するケイ素、窒化ケイ素コーティングを有するガラス、他の非伝導性有機物質、および/あるいは任意の非伝導性無機物質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ構造体は、以下:
(a)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるデオキシリボ核酸から作製されるDNAナノ構造体;
(b)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるリボ核酸から作製されるRNAナノ構造体;
(c)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかであるアミノ酸から作製されるペプチドナノ構造体;および
(d)天然の、改変された、または合成されたかのいずれかである任意の伝導性生体ポリマー(複数可)から作製される分子ワイヤ、
のうちの1つまたはこれらの組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ構造体は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、TiN、TiNx、TaN、TaNx、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、および他の金属、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される金属材料から作製される固体ナノワイヤを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ構造体は、単層もしくは多層またはこれらの組み合わせのいずれかのカーボンナノチューブまたはグラフェンシートを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ構造体は、前記ポリメラーゼであり、ここで前記ポリメラーゼは、2つの前記電極に直接付着され、前記ナノギャップを架橋し、前記電流を通過させる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記DNAポリメラーゼは、天然の、変異されたか、発現されたか、または合成されたかのいずれか、およびこれらの組み合わせである、T7 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、Tag ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ Y、DNAポリメラーゼ Pol I、Pol II、Pol III、Pol IV、ならびにPol V、Pol α(アルファ)、Pol β(ベータ)、Pol σ(シグマ)、Pol λ(ラムダ)、Pol δ(デルタ)、Pol ε(エプシロン)、Pol μ(ミュー)、Pol Ι(イオタ)、Pol κ(カッパ)、pol η(エータ)、ならびに末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、テロメラーゼを含む、DNAポリメラーゼファミリーA、B、C、D、X、Y、およびRTからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記RNAポリメラーゼは、天然の、変異されたか、発現されたか、または合成されたかのいずれか、およびこれらの組み合わせである、T7 RNAポリメラーゼを含むウイルスRNAポリメラーゼ;ならびにRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、およびRNAポリメラーゼVを含む真核生物RNAポリメラーゼ;ならびに古細菌RNAポリメラーゼからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
ゲート電極として機能するように構成された第3の電極を提供する工程であって、ここで前記第1の電極および前記第2の電極と一緒に、前記電極は、FETタイプナノギャップデバイスを形成する、工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記反応混合物は、以下:
(a)少なくとも1種の天然に存在するヌクレオシド三リン酸;
(b)電子供与性基または電子求引性基のいずれかを含む少なくとも1種の天然に存在するヌクレオシドγ-置換三リン酸;
(c)前記天然に存在するヌクレオシド三リン酸のβ,γ-架橋Oの代わりになるX部分を有する、天然に存在するヌクレオシド三リン酸の少なくとも1種のβ,γ-Xアナログ;
(d)少なくとも1種のα-チオ-dNTPまたはα-チオ-NTP;
(e)少なくとも1種のα-ボラノ-dNTPまたはα-ボラノ-NTP;
(f)少なくとも1種のα-ボラノ-α-チオ-dNTPまたはα-ボラノ-α-チオ-NTP;
(g)少なくとも1種のα-セレノ-dNTPまたはα-セレノ-NTP;
(h)少なくとも1種のデオキシリボヌクレオシドα-R-ホスホニル-β,γ-ジホスフェート;
(i)少なくとも1種のβ,γ-X-α-Z-dNTP類似物またはβ,γ-X-α-Z-NTP類似物;および
(j)少なくとも1種のγ-R-α-Z-dNTP類似物またはγ-R-α-Z-NTP類似物、
のヌクレオシド三リン酸混合物のうちの少なくとも1つまたはこれらの組み合わせを含み、ここで前記dNTPは、DNA合成のために構成され、前記NTPは、RNA合成のために構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記反応混合物は、以下:
(a)改変された糖を含み、ここで糖環における酸素は、異なる電気陰性度を有する原子によって置き換えられているdNTPまたはNTP;
(b)人工遺伝子ポリマーゼノ核酸(XNA)を含むヌクレオシドユニットを含むdNTPまたはNTP;
(c)電子求引性基、電子供与性基、エチル基、エチレン基、およびアセチレン基、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される分子で改変され、前記分子に対して官能基が結合される5位を有するピリミジン塩基を含む、dNTPまたはNTP;ならびに
(d)電子求引性基、電子供与性基、エチル基、エチレン基、およびアセチレン基からなる群より選択される分子で改変され、前記分子に対して官能基が結合される7位を有するプリン塩基を含む、dNTPまたはNTP、
のうちの少なくとも1つまたはこれらの組み合わせを含み、ここで前記dNTPは、DNA合成のために構成され、前記NTPは、RNA合成のために構成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月27日出願の米国仮特許出願第62/853,119号および2019年6月14日出願の米国仮特許出願第62/861,675号(これらの全体の開示は、本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
分野
本発明の実施形態は、酵素を使用して、核酸配列における個々のヌクレオチドを読み取るための電子的配列決定デバイスのための方法および生化学的材料に関する。
【背景技術】
【0003】
[0001]
先行技術および背景
本出願を通じて、本発明が関わる種々の刊行物、特許、および特許出願が、参照されている。これらの刊行物のそれら全体における開示は、技術水準として記載される。また、本出願において、本発明は、主に、DNAおよびDNAポリメラーゼ合成とともに例証される。同じ機序、原理、および特徴が、わずかな改変(例えば、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)をヌクレオシド三リン酸(NTP)で置き換える、デオキシリボースをリボースで置き換えるなど)だけで、RNAおよびRNAポリメラーゼ合成にも適用される。
[0002]
先行技術(米国特許第9,862,998号および同第10,233,493号)は、蛍光色素で標識されたDNAポリメラーゼのコンホメーション変化をモニターすることによって、DNAへのヌクレオチド組み込みを検出する方法を開示する。その酵素および色素に依存して、異なるヌクレオチドは(天然に存在するものおよび改変されたものを含む)、蛍光発光について異なる大きさおよび持続時間を生じた。上記方法は、核酸分子の集合からヌクレオチド配列を決定する。
[0003]
別の先行技術は、カーボンナノチューブ電荷センサー(図1)が、個々の天然に存在するヌクレオチドをDNAプライマーにリアルタイムで組み込む単一のDNAポリメラーゼのプロセスを電子的にモニターし得、その結果、このような電子的デバイスが、潜在的に、核酸ポリマーの配列決定において使用され得ることを示した。しかし、上記電子シグナル(スパイクとして現れる)は、個々に組み込まれるヌクレオチドを同定するために効果的に適用され得ない。以下の表(参考文献1から借用)に示されるように、天然に存在するヌクレオチドの中から相応に、DNAポリメラーゼ組み込みの重なり合いの電子シグナルに由来する特徴的パラメーター間の重なり合いが存在する。従って、τlo値も、τhi値も、H値も、いかなる程度の信頼性でも特定のdNTPの組み込みを同定するために十分でない。
【表1】
[0004]
先行技術出願(WO 2016/183218)は、天然のヌクレオチド三リン酸のうちの1またはこれより多くが、区別可能な方法においてシグナル極性を変化させる非天然部分を有するアナログで、上記アナログが配列決定の間のテンプレート鎖中のその同族ヌクレオチドと塩基対合する能力を害することなく置き換えられる混合物を特許請求している。例として、α-チオ-dATPは、シグナル極性において負の変化を生じ、2-チオ-dTTPは、シグナル極性において正の変化を生じるので、それらは、上記デバイスの電荷センサーによってテンプレートにおけるTとAとの間を区別するために使用され得る(それらの構造については図2を参照のこと)。しかし、Weissおよび共同研究者らは、2-チオピリミジン-5’-トリホスフェート(2-チオ-dNTP)アナログが、DNAポリメラーゼI Klenowフラグメント(KF)活性が1分間の間に負の偏倚運動を、およびもう1分間の間に正の偏倚運動を生じる、混合した挙動を生じることを報告した。それは、核酸塩基のワトソン-クリック塩基対合エッジに対する改変が、電子シグナルの不安定さを引きおこし、次には、核酸配列決定のためのヌクレオチド組み込みの決定に関して不安定さを生じることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,862,998号明細書
【特許文献2】米国特許第10,233,493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DNA鎖へのヌクレオシド三リン酸の酵素による組み込みは、図4に示されるように、ミスマッチのdNTPとマッチしたdNTPとの間で、同様に異なるDNAポリメラーゼの間で類似の動力学的経路を有する。概して、DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA重合は、動力学的に制御されたプロセスである。上記プロセスに関与するいくつかの主要工程が存在する:(1)コンホメーションの閉鎖、(2)DNAの3’末端へのトリホスフェートカップリング、ならびに(3)DNAトランスロケーションおよびコンホメーションの再開放(ここで上記カップリング反応は、律速工程である)。図4は、ミスマッチ塩基対が、DNAポリメラーゼの閉鎖および再開放にそれほど影響を及ぼさないが、酵素が触媒した遷移状態(TS)に影響を及ぼすことを示唆する。従って、天然に存在するヌクレオシドの非塩基対合セクションの改変は、それらの動力学的パラメーターを調整し、それらを電子的センサーによって区別可能にするはずである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1: 酵素活性をリアルタイムでモニターするために、2つの電極(ソースおよびドレイン)に結合され、DNAポリメラーゼで官能化されたカーボンナノチューブから構成される先行技術のデバイス。
【0007】
図2図2: 改変されたヌクレオチドであるα-チオ-dATPおよび2-チオ-dTTPの化学構造。
【0008】
図3図3: 2つの電極に結合されたナノ構造体、(a)DNAナノ構造体、(b)ペプチドナノ構造体上のポリメラーゼを有する単一分子DNA配列決定デバイスの模式的ダイアグラム。
【0009】
図4図4:(a)種々のDNAポリメラーゼ Pol β WT、R258A変異体、KF、およびPol Xによる単一ヌクレオチド組み込みの自由エネルギープロフィール;(b)I260Q変異体に対してPol βによるマッチしたおよびミスマッチのdNTP組み込みの定性的自由エネルギープロフィール。
【0010】
図5図5: DNA鎖へとヌクレオチド基質を組み込むことにおける反応。
【0011】
図6図6: 天然に存在するヌクレオシド三リン酸の化学構造。
【0012】
図7図7: 天然に存在するヌクレオシドγ-置換三リン酸の化学構造。
【0013】
図8図8: 天然に存在するヌクレオシド三リン酸のβ,γ-X類似物(analogy)の化学構造。
【0014】
図9図9: 天然に存在するヌクレオシドであるα-チオ-トリホスフェート(α-チオ-dNTP)の化学構造。
【0015】
図10図10: 天然に存在するヌクレオシドであるα-ボラノ-トリホスフェート(α-ボラノ-dNTP)の化学構造。
【0016】
図11図11: 天然に存在するヌクレオシドであるα-ボラノ-α-チオ-トリホスフェート(α-ボラノ-α-チオ-dNTP)の化学構造。
【0017】
図12図12: 天然に存在するヌクレオシドであるα-セレノ-トリホスフェート(α-セレノ-dNTP)の化学構造。
【0018】
図13図13: 天然に存在するデオキシリボヌクレオシドであるα-R-ホスホニル-β,γ-ジホスフェートの化学構造。
【0019】
図14図14: 両方の酸素架橋が改変された天然に存在するヌクレオシド三リン酸(β,γ-X-α-Z-dNTP)の化学構造。
【0020】
図15図15: γ-リンおよびα-リンの酸素のうちの一方が、他の原子または有機基によって置き換えられている天然に存在するヌクレオシド三リン酸の化学構造。
【0021】
図16図16: それらの糖環酸素が他の原子によって置き換えられるヌクレオチドの化学構造。
【0022】
図17図17: 代表的なゼノ核酸(XNA)ヌクレオシドの化学構造。
【0023】
図18図18: 本発明におけるワトソン-クリック塩基対および改変部位のダイアグラム。
【0024】
図19図19: 改変されたピリミジン核酸塩基の化学構造。
【0025】
図20図20: 改変されたプリン核酸塩基の化学構造。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、米国仮特許出願第62/794,096号、同第62/812,736号、同第62/833,870号、および同第62/803,100号(これらは、それらの全体において本明細書に含まれる)に開示されるように、核酸配列決定のための電子的センサーとしてDNAポリメラーゼとカップリングした生体ポリマーナノ構造体を含む(図3a、DNAナノ構造体、および図3b、ペプチドナノ構造体を参照のこと)。図3に図示されるDNAナノ構造体およびペプチドナノ構造体はともに、トンネリングおよびホッピングを介するある特定の条件下での電荷の導体である。DNAポリメラーゼは、各々、短い可撓性リンカーを通じて所定の位置においてナノ構造体に結合される。配列決定のために、上記DNAポリメラーゼは、先ず、「開放」コンホメーションで存在して標的-プライマー二重鎖と二成分複合体を形成し、それは次に、ワトソン-クリック塩基対合を介して正確なヌクレオシド三リン酸と三成分複合体を形成し得る。金属イオンの存在下では、その三成分複合体は、DNAポリメラーゼを「閉鎖」コンホメーションに変え、伸長反応を促進する。新たなホスホジエステル結合が形成されると、上記二重鎖の末端において新生塩基対が過剰に拡げられ、それは、最も近い隣りの塩基対とのスタッキング相互作用を誘発する。このようなプロセスは、DNAおよびDNAポリメラーゼを反対方向にシフトさせ、よって、次回の組み込みのための開放コンホメーションを生じる。コンホメーション変化およびDNAトランスロケーションを含むこれらの機械的な動きの全ては、下にあるナノ構造体に対して力を及ぼし、その塩基対合およびスタッキングを妨害し、ヌクレオチド組み込みのシグナチャーとして電荷輸送の変動を生じる。
【0027】
本発明は、生体ポリマー、特に、DNAおよびRNAを構成する個々の構成要素(またはユニットまたは塩基)を同定するための方法および化学物質を提供する。例えば、標的DNA分子を配列決定するために、本発明者らは、それを、上記ナノ構造体配列決定デバイス上でDNA合成のためのテンプレートとして使用する。その標的DNA分子とともに、ヌクレオシド三リン酸基質は、ワトソンクリック塩基対合規則に倣って成長中のDNA鎖へと組み込まれる。そのDNA配列は、そのヌクレオチド組み込みを読み取ることによって決定される。近年の研究は、第3の二価金属イオンがDNA合成中に存在し得るにも拘わらず、DNA合成が、2個のMg2+イオンが支援する段階的会合S2反応であることを示した。さらに、上記S2反応から放出されたピロホスフェート(PPi)基は、DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA合成の間に、ホスフェートへと加水分解される。DNA重合の一般的機序は、図5に図示される。成長中の鎖の末端の3’酸素は、求核試薬として作用して、入来dNTPのα-リン原子を攻撃し、ピロホスフェート(これは続いてホスフェートへと加水分解される)の放出を付随する、P-O共有結合を形成する。その反応機序に基づいて、本発明は、改変されたヌクレオチド基質であって、ポリメラーゼ酵素反応の動力学に、天然に存在するヌクレオチドとは異なる方法で影響を及ぼし、標的DNAが配列決定され得るように、標的DNAテンプレートにおける個々のヌクレオチドを区別するために使用され得るナノ構造体において区別可能な電子シグナルを生成する、改変されたヌクレオチド基質を提供する。
【0028】
本発明において使用されるDNAポリメラーゼとしては、構造的相同性によってA、B、C、D、X、Y、およびRTのファミリーへと分類されたものが挙げられる。例えば、ファミリーAにおけるものとしては、T7 DNAポリメラーゼおよびBacillus stearothermophilus Pol Iが挙げられる;ファミリーBにおけるものとしては、T4 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、およびRB69が挙げられる;ファミリーCにおけるものとしては、E.coli DNAポリメラーゼ IIIが挙げられる。DNAポリメラーゼのRT(逆転写酵素)ファミリーは、例えば、レトロウイルス逆転写酵素および真核生物テロメラーゼを含む。
【0029】
詳細な説明
いくつかの実施形態において、ポリメラーゼは、上記ナノ構造体に結合され、上記ナノ構造体には、DNAプライマーおよび配列決定されるべき標的から構成される二重鎖、および続いて、ヌクレオシド三リン酸またはdNTPの混合物が供給される。金属イオンの存在下では、上記DNAポリメラーゼは、dNTPを、ワトソン-クリック塩基対合規則に従ってDNAプライマーへと組み込み、各組み込み工程は、センサーにおいて記録される電子スパイクを誘起する。
【0030】
上記のヌクレオシド三リン酸混合物は、以下を含む:
・0~4種の天然に存在するヌクレオシド三リン酸(図6)。
・0~4種の天然に存在するヌクレオシドγ-置換三リン酸(図7)。その置換基は、DNAポリメラーゼの活性に影響を及ぼし、ピロホスフェートからホスフェートへの加水分解にも影響を及ぼし得、変化した反応速度、および次に、電子シグナルを生じる電子供与性基または電子吸引性基のいずれかである。
・0~4種の天然に存在するヌクレオシド三リン酸のβ,γ-X類似物(図8)。同様に、X部分は、天然に存在するヌクレオシド三リン酸のβ,γ-架橋Oの代わりになり、それは、塩基対合に影響を及ぼすことなく、ビスホスホスホネート(BP)脱離基の立体電子特性を変化させる。結果として、これらのトリホスフェート類似物は、DNAポリメラーゼの組み込み速度を調節し、その速度は、脱離基によって影響を及ぼされる9-11。組み込みは、動力学的に制御されるプロセスであることから、その対応する電子シグナルは、応じて調節され得る。
・0~4種のα-チオ-dNTP(図9)。これらの改変されたトリホスフェートは、DNAポリメラーゼによってDNAプライマーへと組み込まれる。デオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシド5’-O-(1-チオ-トリホスフェート)のS-ジアステレオマーは、天然に存在するヌクレオチドのアナログであり、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによって核酸へと容易に組み込まれる12, 13
・0~4種のα-ボラノ-dNTP(図10)。上記α-ボラノ-dNTPおよびα-ボラノ-NTPは、DNAおよびRNAの容易な酵素による合成を可能にする、DNAおよびRNAポリメラーゼの良好な乃至優れた基質である14, 15
・0~4種のα-ボラノ-α-チオ-dNTP(図1116
・0~4種のα-セレノ-dNTP(図12)。これらの改変されたdNTPは、DNAへと組み込まれ得る。しかし、α-セレノ-dNTPでのDNA重合は、天然のdNTPでのものより遅い。上記α-セレノ-dNTPは、DNAテンプレートの欠如下でのプライマー自己伸長を抑制する17
・0~4種のデオキシリボヌクレオシドα-R-ホスホニル-β,γ-ジホスフェート(図13)。これらの基質は、荷電されていない核酸骨格18を生成し、これは、異なる基質の組み込みから生じた電子シグナル間のさらなる区別を容易にする。
・0~4種のβ,γ-X-α-Z-dNTPアナログ(図14)。これは、異なる基質の組み込みから生じた電子シグナル間のさらなる区別を容易にする。
・0~4種のγ-R-α-Z-dNTP類似物(図15)。これは、異なる基質の組み込みから生じた電子シグナル間のさらなる区別を容易にする。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、改変された糖を含む。図16は、糖環における酸素が別の原子によって置き換えられる改変の1つの形態を示す。これらの原子は、異なる電気陰性度を有し、これは、隣りの3’-OHのpKに、次には、その求核性に影響を及ぼす。例えば、2’-デオキシ-4’-チオリボヌクレオシド5’-トリホスフェート(dSNTP)(ここでX=S、R=H、塩基=A、C、G、T(改変されていないトリホスフェートを有する)である)は、DNAポリメラーゼの基質として使用され得る19。dSNTPは、その対応する天然のdNTPとは異なる反応速度および効率を示した。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、リボース糖(図16、R=OH)を含む。RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)は、RNA配列決定のために上記DNAナノ構造体デバイスに結合される。上記酵素は、ポリオウイルスRdRPなどである。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、天然に見出されるものとは異なる骨格構造を有し、DNA核酸塩基と特異的に塩基対合し得る一連の核酸ポリマーである人工遺伝子ポリマー(artificial genetic polymer)ゼノ核酸(XNA)を含むヌクレオシドユニットを有する(図17)。XNAのうちのあるものは、可撓性のまたは剛性のコンホメーションの糖ユニットを有し、他のものは、それらの天然に存在する対応物とは異なる構成および構造を有する。これらは、酵素における標的へのそれらの結合をそれらの天然に存在する対応物とは異なるものにする。また、いくつかのXNAは、その天然に存在する対応物と比較して、その隣りのOHを多かれ少なかれ求核性にする電子供与性基または電子求引性基を有する。例えば、TNAは、古細菌の超好熱性種であるThermococcus kodakarensis(Kod)から単離された複製性Bファミリーポリメラーゼに由来する実験室で進化させたポリメラーゼによってDNAプライマーへと組み込まれ得る20, 21。これらのXNA基質は、特定のDNAヌクレオチドを、DNA標的におけるそれらの残りから区別するために有用である。
【0034】
いくつかの実施形態において、RNA配列決定のために上記生体ポリマーナノ構造体センサーに結合されるRNAポリメラーゼとしては、ウイルスRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ);真核生物RNAポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、およびRNAポリメラーゼV);および古細菌RNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。センサーに結合されるRNAポリメラーゼは、RNA配列を読み取るために、標準のリボヌクレオシド三リン酸の混合物とともに供給される。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記混合物は、以下を含む:
・0~4種の標準のリボヌクレオシド三リン酸。
・0~4種の、それらのトリホスフェートが改変されているリボヌクレオチド(図16、R=OH)。
・0~4種の、図16に示されるとおりの一般化された構造を有する改変されたリボヌクレオシド三リン酸(ここでR=OHである)。
・0~4種のXNAトリホスフェート(図17)。
【0036】
本発明は、改変された塩基をさらに提供して、それらの反応性のためにDNAおよびRNAポリメラーゼの両方をさらに調節する。ポリメラーゼの忠実度を維持するために、本発明者らは、図18に示されるように、WCエッジを、改変された塩基に関して変化されないままにする。これらの化合物は、ワトソン-クリック塩基対合規則に倣ってテンプレートと相互作用するために正確な入来ヌクレオチドを挿入するための保存されたワトソン-クリック水素結合エッジ、およびポリメラーゼが副溝からの塩基対と相互作用する水素結合アクセプター部位の共通する特徴を有する22, 23。従って、上記改変は、上記酵素の忠実度を乱さない。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、一連の電子求引性基、電子供与性基、ならびにエチル、エチレン、およびアセチレンで改変され、これらに対して種々の官能基が結合される5位を有するピリミジン塩基から構成される(図19)。これらの改変は、本発明者らが、酵素反応の遷移状態を調節することを可能にする。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、一連の電子求引性基、電子供与性基、ならびにエチル、エチレン、およびアセチレンで改変され、これらに対して種々の官能基が結合される7位を有するプリン塩基から構成される(図20)。これらの改変は、本発明者らが、酵素反応の遷移状態を調節することを可能にする。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記ヌクレオシド三リン酸は、上記改変された塩基、改変された糖または糖類似物、および改変されたトリホスフェートまたはトリホスフェート類似物から構成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、複数のナノ構造体センサーが、核酸配列を並行して読み取るために使用される。複数のナノ構造体センサーは、固体表面上にまたはウェルの中に、10~10の、好ましくは10~10の、またはより好ましくは10~10のナノ構造体センサー数を有するアレイフォーマットで製作され得る。
【0041】
上記アレイにおけるナノ構造体センサーの全ては、1つのタイプの核酸ポリメラーゼまたは異なるタイプの核酸ポリメラーゼで構成される。
【0042】
標的サンプルは、2本鎖もしくは1本鎖、直線状もしくは環状のDNAであり得る。標的サンプルはまた、2本鎖もしくは1本鎖、直線状もしくは環状のRNAであり得る。配列決定するためのプライマーは、DNA、RNA、DNAおよびRNAの結合体、または改変されたヌクレオシドを含むDNAであり得る。
【0043】
ポリメラーゼは、以前の仮特許出願(米国仮特許出願第62/794,096号、同第62/812,736号、同第62/833,870号、および同第62/803,100号を参照のこと)に提供される結合化学現象を使用して、所定の位置(複数可)において生体ポリマーナノ構造体センサーに結合され得る。多くの実施形態において、DNAナノ構造体は、所定のDNAヌクレオシドまたはヌクレオシドにおいて、有機官能基で官能化される。対して、DNAポリメラーゼは、クリック反応のためにDNAナノ構造体におけるものに対する機能を有する非天然のアミノ酸を含むように生体工学で操作される。
【0044】
いくつかの実施形態において、全ての上記の記載における生体ポリマーナノ構造体は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、TiN、TiNx、TaN、TaNx、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、および他の金属、好ましくはPt、Pd、Au、Ti、およびTiNの群から選択される材料から作製される固体ナノワイヤ(solid nanowire)によって置き換えられる。上記ナノワイヤは、長さが3nm~10μm、好ましくは20nm~1μm;幅が5nm~50nm、好ましくは5nm~20nm;および厚みが3nm~50nm、好ましくは4nm~10nmである。全てのヌクレオシド三リン酸およびリボヌクレオシド三リン酸の設計、改変、バリエーション、天然または非天然の、ポリメラーゼとのそれらの相互作用、それらの使用方法、および個々のヌクレオチドを区別する原理は、ポリメラーゼ-ナノワイヤにカップリングされたDNA/RNA配列決定システムに適用される。いくつかの他の実施形態において、上記ナノワイヤは、単層または多層の、ナノワイヤに類似の寸法を有するカーボンナノチューブまたはグラフェンシートである。
【0045】
いくつかの実施形態において、全ての上記の記載におけるナノ構造体は、分子ワイヤ(例えば、特許出願、WO2018208505、US20180305727A1、およびWO2018136148A1に開示されるもの)によって置き換えられる。全てのヌクレオシド三リン酸およびリボヌクレオシド三リン酸の設計、改変、バリエーション、天然または非天然の、ポリメラーゼとのそれらの相互作用、それらの使用方法、および個々のヌクレオチドを区別する原理は、ポリメラーゼ-分子ワイヤにカップリングされたDNA/RNA配列決定システムに適用される。
【0046】
いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼは、2つの電極に直接付着され、その2つの電極間のナノギャップを架橋し、電子または電流を通過させる(例えば、特許出願、WO2018208505、US20180305727A1およびWO2018136148A1に開示されるもの)。DNA/RNA配列決定の目的のために、上述のヌクレオシド三リン酸およびリボヌクレオシド三リン酸の設計、改変、バリエーション、天然または非天然の、ポリメラーゼとのそれらの相互作用、それらの使用方法、および個々のヌクレオチドを区別する原理は、ポリメラーゼのみのDNA/RNA配列決定システムに適用される。
【0047】
いくつかの実施形態において、上述の全てのナノギャップ架橋構成(例えば、生体ポリマーナノ構造体、分子ワイヤ、ナノワイヤおよび電極のナノギャップに直接接触するポリメラーゼ)は、FETタイプのポリメラーゼ配列決定システム(例えば、米国仮特許出願第62/833,870号に開示されるもの)を形成するために、ゲート電極と組み合わされ得る。上記ナノギャップを通過する電子シグナルに影響を及ぼすポリメラーゼのコンホメーション変化の機序は、幾分異なるが、上記ヌクレオシド三リン酸およびリボヌクレオシド三リン酸の設計、改変、バリエーション、天然または非天然の、ポリメラーゼとのそれらの相互作用、それらの使用方法、および個々のヌクレオチドを区別する原理は、FETタイプのポリメラーゼDNA/RNA配列決定システムにも適用される。
【0048】
総論:
特許または特許出願は、それらが本文中で言及される場所に参考として援用される。引用された雑誌刊行物は、引用文献中に列挙される。
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味をもつ。本発明は、種々の実施形態の記載によって例証され、これらの実施形態はかなり詳細に記載されているが、本出願の範囲を制限するかまたは何らかの方法で限定することは、出願人の意図ではない。さらなる利点および改変は、当業者に容易に明らかである。従って、本発明は、その広い局面において、示され、記載される特定の詳細、代表的なデバイス、装置および方法、ならびに例証的な例に限定されない。よって、出願人の包括的な発明の概念の趣旨から逸脱することなく、このような詳細からの発展がなされ得る。
引用文献:
【化1】
【化2】
【化3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】