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特表2022-535748ピリミジニルアミノピラゾール化合物の調節放出製剤および処置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ピリミジニルアミノピラゾール化合物の調節放出製剤および処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220803BHJP
   A61K 9/56 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/56
A61P43/00 111
A61P25/16
A61P25/28
A61K47/38
A61K9/30
A61K9/52
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570372
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020035413
(87)【国際公開番号】W WO2020243635
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/855,740
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィヴァラプ, ハリシュ
(72)【発明者】
【氏名】リマーチャック, トラビス
(72)【発明者】
【氏名】スダカール, アナンサ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ブラッドリー ケー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076AA51
4C076AA53
4C076AA60
4C076AA67
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD38M
4C076EE09M
4C076EE10H
4C076EE12H
4C076EE13H
4C076EE23H
4C076EE32M
4C076EE48H
4C076FF04
4C076FF21
4C076FF31
4C076GG14
4C076GG16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA02
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルまたはその溶媒和物、互変異性体、および薬学的に許容される塩の調節放出製剤、ならびにその調節放出製剤を用いる処置方法に関する。本開示の態様は、治療有効量の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルおよび少なくとも1つの放出調節剤を含む、調節放出製剤を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルおよび少なくとも1つの放出調節剤を含む、調節放出製剤。
【請求項2】
2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含有し、少なくとも1つの放出調節剤でコーティングされたペレットを含む、請求項1に記載の調節放出製剤。
【請求項3】
2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの放出が、USPタイプII装置を50~75rpmで使用し、pH3のマッキルベイン緩衝液中37℃で試験した場合、2時間で60%未満であり、8時間で60%を超え、前記製剤が錠剤である、前記請求項のいずれかの請求項に記載の製剤。
【請求項4】
2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの放出が、USPタイプII装置を100rpmで使用し、pH3のマッキルベイン緩衝液中37℃で試験した場合、1時間で60%未満であり、前記製剤がペレットを含有するカプセル剤である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
前記2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、被験体に投与された後、即時放出製剤と比較して低下されたCmaxを有する、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記Cmaxが、少なくとも20%低下される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記調節放出製剤が、10重量%~50重量%の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、結晶性である、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
結晶性2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、ミリングまたは微粉化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記放出調節剤が、前記製剤の3重量%~60重量%を構成する、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記放出調節剤が、MCC(微結晶性セルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PEG(ポリエチレングリコールグリセリド)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、CAP(酢酸フタル酸セルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、HPMCAS(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート)、HPMCP(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、CA(酢酸セルロース)、CAB(酢酸酪酸セルロース)、EC(エチルセルロース)、ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド)、PVAc(ポリビニルアセテート)、およびHPMC/CMCからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記放出調節剤が、Aquacoat(登録商標)、Walocel(登録商標)、HP50/HP55、Aqoat(登録商標)、EUDRAGIT(登録商標)FS30D、EUDRAGIT(登録商標)L30D-55/L100-55、EUDRAGIT(登録商標)L12,5/EUDRAGIT(登録商標)L100、EUDRAGIT(登録商標)S12,5/EUDRAGIT(登録商標)S100、Carbopol(登録商標)ポリマー、Eastman CA、Eastman CAB、Eastman CAB、Ethocel(商標)、Aquacoat(登録商標)ECD、またはSurelease(登録商標)、またはGlyceride GatteCoat(商標)、EUDRAGIT(登録商標)NE30D、EUDRAGIT(登録商標)NM30D、EUDRAGIT(登録商標)RL30D、EUDRAGIT(登録商標)RL100/RL PO、EUDRAGIT(登録商標)RS30D、EUDRAGIT(登録商標)RS100/RS、Kollicoat(登録商標)SR30D、Walocel(登録商標)HM-PPA、Kollicoat(登録商標)MAE30DP/100P、およびEastacryl 30Dからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記放出調節剤が、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、およびAQUACOAT(登録商標)からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、精製タルク、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種または複数の賦形剤、およびコーティングを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
錠剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記錠剤が、10~500mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記錠剤が、40~120mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項18】
前記錠剤が、30~80mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項19】
前記放出調節剤が、HPMCである、請求項15に記載の製剤。
【請求項20】
前記放出調節剤が、PARTECK(登録商標)ポリマーである、請求項15に記載の製剤。
【請求項21】
前記放出調節剤が、前記製剤の20~30%w/wを構成する、請求項19または20に記載の製剤。
【請求項22】
ペレットを含有するカプセル剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
前記カプセルが、前記カプセルに含有された即時放出ペレットおよび調節放出ペレットの複数単位の粒子の組み合わせである、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
前記ペレットが、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、およびAQUACOAT(登録商標)から選択される放出調節剤を含む、請求項22~23に記載の製剤。
【請求項25】
カプセルに含有された即時放出ペレットおよび遅延放出ペレットの複数単位の粒子の組み合わせである、請求項22~24に記載の製剤。
【請求項26】
前記調節放出製剤が、遅延放出ペレット製剤、制御放出ペレット製剤、持続放出ペレット製剤、およびパルス放出ペレット製剤から選択される、請求項22~25に記載の製剤。
【請求項27】
EUDRAGIT(登録商標)であるコーティング剤を含む、請求項22~26に記載の製剤。
【請求項28】
前記コーティング剤が、前記製剤の3重量%~60重量%のEUDRAGIT(登録商標)を含む、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
前記コーティング剤が、20%w/wまでのEUDRAGIT(登録商標)RS30Dを含む、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
前記コーティング剤が、60%w/wまでのEUDRAGIT(登録商標)NM30Dを含む、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
KOLLICOAT(登録商標)SR30Dであるコーティング剤を含む、請求項22~26に記載の製剤。
【請求項32】
前記KOLLICOAT(登録商標)SR30Dが、約5%の重量増加をもたらす、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
前記KOLLICOAT(登録商標)SR30Dが、約7%の重量増加をもたらす、請求項31に記載の製剤。
【請求項34】
前記KOLLICOAT(登録商標)SR30Dが、約8%の重量増加をもたらす、請求項31に記載の製剤。
【請求項35】
前記KOLLICOAT(登録商標)SR30Dが、5~9%の重量増加をもたらす、請求項31に記載の製剤。
【請求項36】
調節放出製剤を調製する方法であって、
(a)糖、MCCおよび酒石酸からなる群より選択される不活性コアを、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルでコーティングして、APIコアペレットを形成するステップと、
(b)前記APIコアペレットを、化粧的な非機能性シールコーティングでコーティングして、シールコーティングペレットを形成するステップと、
(c)前記シールコーティングペレットを、放出調節剤でコーティングして、前記調節放出製剤を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項37】
前記不活性コアが、糖、微結晶性セルロース(MCC)、酒石酸、ポリオール、カルナウバろう、二酸化ケイ素、およびそれらの組合せから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化粧的な非機能性シールコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびにヒプロメロースおよびエチルセルロースの混合物から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記放出調節剤が、KOLLICOAT(登録商標)、EUDRAGIT(登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびにヒプロメロースおよびエチルセルロースの混合物からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
調節放出製剤を調製する方法であって、
(a)2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリル、ならびに微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、精製タルク、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種または複数の賦形剤をローラー圧縮し、それによってペレットを形成するステップと、
(b)前記ペレットを、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、AQUACOAT(登録商標)、およびOPADRY(登録商標)Whiteから選択されるコーティング剤の分散物でポリマーコーティングするステップと
を含む、方法。
【請求項41】
押出し、球形化、および圧縮から選択される1つまたは複数のステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
軟または硬カプセルシェルに、前記コーティングされたペレットを充填するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
調節放出製剤錠剤を調製する方法であって、
(a)2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリル、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、タルク、微結晶性セルロース、およびステアリン酸マグネシウムの乾燥混合物をブレンドするステップと、
(b)前記乾燥混合物の乾燥造粒物をローラー圧縮することによって、顆粒として調製するステップと、
(c)前記顆粒をミリングするステップと、
(d)ミリングされた前記顆粒に、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、タルク、およびステアリン酸マグネシウムを添加して、粒外混合物を形成するステップと、
(e)前記粒外混合物を錠剤に圧縮するステップと、
(f)前記錠剤を、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、AQUACOAT(登録商標)、およびEUDRAGIT(登録商標)から選択されるコーティング剤でコーティングするステップと
を含む、方法。
【請求項44】
LRRK2媒介性疾患を処置する方法であって、それを必要とする被験体に、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項45】
前記製剤の1つまたは複数が、前記被験体に1日1回、1日2回、または1日3回投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記製剤が、前記被験体に1日2回投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記LRRK2媒介性疾患が、神経変性疾患である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記LRRK2媒介性疾患が、パーキンソン病である、請求項47に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月31日出願の米国仮特許出願第62/855,740号の優先権を主張し、その開示は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、パーキンソン病を含めた末梢性および神経変性疾患の処置において使用するための2-メチル-2-(3-メチル-4-((4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの製剤に関する。本開示はまた、調節放出製剤を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パーキンソニズムは、パーキンソン病(PD)、ならびに緩慢動作、硬直(こわばり)および歩行に伴う問題などの、まとめてパーキンソニズムとして公知の類似の症状を伴う他の状態を含めた、いくつかの状態を包含する用語である。パーキンソニズムを有するほとんどの人々は、パーキンソン(Parkinson’s)としても公知の特発性パーキンソン病を有する。特発性とは、原因不明であることを意味する。特発性パーキンソンの最も一般的な症状は、振戦、硬直および動作の緩慢である。パーキンソン病の正確な原因は未知であるが、遺伝因子および環境因子の組合せが、疾患の病因に寄与すると考えられる。パーキンソン病を処置するために承認されている薬物には、ドーパミン補充療法(レボドパ/カルビドパ)、ドーパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、アポモルヒネ)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(エンタカポン、レボドパ/カルビドパ/エンタカポン、トルカポン、オピカポン)、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリン、サフィナミド)、アマンタジン、抗コリン作用医薬品(トリヘキシフェニジル、ベンズトロピンメシル酸塩)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(リバスチグミン)、セロトニン5-HT2A受容体アゴニスト(ピマバンセリン)、およびイメージングのためのドーパミン輸送体(イオフルパンI-123)が含まれる。しかし、これらの医薬品は、パーキンソン病患者に対して症候的な利益を提供するものであり、疾患の進行を低減しない。
【0004】
遺伝的証拠および生化学的証拠の組合せは、神経変性障害の病因におけるある特定のキナーゼ機能を暗示している(Christensen, K.V. (2017) Progress in medicinal chemistry 56:37-80、Fuji, R.N et al (2015) Science Translational Medicine 7(273):273ra15、Taymans, J.M et al (2016) Current Neuropharmacology 14(3):214-225)。パーキンソン病に関与するとされた遺伝子には、Park8が含まれ、これは、特にパーキンソン病(PD)において非常に重要な治療標的である複雑なシグナル伝達タンパク質であるロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)をコードする。Park8の変異は、パーキンソン病の家族性および非家族性(孤発性)形態の両方において見出され、LRRK2のキナーゼ活性の増大は、パーキンソン病の病因に関与している。LRRK2遺伝子の変異は、家族性パーキンソン病の最も頻度の高い遺伝的原因であり、レビー小体タンパク質凝集体の形成および神経変性に寄与するリソソーム機能不全の大きな要因である。LRRK2は、パーキンソン病において損なわれ、LRRK2阻害によって修復され得るリソソームの発生および機能を制御し、それによって、遺伝的LRRK2変異を有する患者におけるおよび孤発性または特発性パーキンソン病を有する患者における疾患の進行を低減する潜在的な可能性がある。
【0005】
LRRK2キナーゼ阻害剤は、パーキンソン病、ALSおよび他の神経変性疾患の根本的生物学に対処する潜在可能性を有する、新しいクラスの治療薬となる(Estrada, A.A et al (2015) Jour. Med. Chem. 58(17):6733-6746、Estrada, A.A et al (2013) Jour. Med. Chem. 57:921-936、Chen, H. et al (2012) Jour. Med. Chem. 55:5536-5545; Estrada, A.A. et al (2015) Jour. Med. Chem. 58:6733-6746、Chan, B.K. et al (2013) ACS Med. Chem. Lett. 4:85-90、米国特許第8354420号、米国特許第8569281号、米国特許第8791130号、米国特許第8796296号、米国特許第8802674号、米国特許第8809331号、米国特許第8815882号、米国特許第9145402号、米国特許第9212173号、米国特許第9212186号、米国特許第9932325号、国際公開第2011/151360号、国際公開第2012/062783号、国際公開第2013/079493号)。LRRK2活性は、リソソーム機能におけるその役割によって、パーキンソン病病理の中心的な機序に関連する。遺伝的に妥当性を検証された標的であるLRRK2キナーゼの阻害剤は、LRRK2-PDにおける、および潜在的に特発性パーキンソン病におけるリソソーム機能を改善することができる。したがって、LRRK2阻害は、パーキンソン病の重要な疾患経路に介在し、パーキンソン病の進行を定義付ける運動性および非運動性能力障害の蓄積を防止し、または抑制することができる。
神経変性障害について後期運動性合併症の疾患進行を軽減もしくは遅延し、その合併症が生じるのを先延ばしにすることを目的とする、新しい療法が必要である。さらに、最大耐性用量と最小有効用量の間の最適な血中濃度を達成するのに有効な、医薬組成物の固体経口剤形が必要である。最適化された固体経口剤形は、放出および薬物動態プロファイルをモジュレートし、投薬頻度を最小限に抑え、嚥下能力および他のコンプライアンス因子が制限された患者における丸剤の負担を最小限にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8354420号明細書
【特許文献2】米国特許第8569281号明細書
【特許文献3】米国特許第8791130号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ピリミジニルアミノピラゾールキナーゼ阻害剤の調節放出製剤に関し、この阻害剤は、本明細書で式Iの化合物と呼ばれ、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの名称を有し、構造
【化1】
またはその互変異性体、多形もしくは薬学的に許容される塩を有する。
【0008】
本開示の態様は、治療有効量の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルおよび少なくとも1つの放出調節剤を含む、調節放出製剤を含む。
【0009】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含有し、少なくとも1つの放出調節剤でコーティングされたペレットを含む。別の例示的な実施形態では、ペレットは、そのコアに、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含有する。別の例示的な実施形態では、ペレットは、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルでコーティングされた不活性コアを含有する。
【0010】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの放出が、USPタイプII装置を50~75rpmで使用し、pH3のマッキルベイン(Mcllvaine)緩衝液中37℃で試験した場合、2時間で60%未満であり、8時間で60%を超え、製剤が錠剤である、実施形態である。
【0011】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの放出が、USPタイプII装置を100rpmで使用し、pH3のマッキルベイン緩衝液中37℃で試験した場合、1時間で60%未満であり、8時間で70%を超え、製剤が、ペレットを含有するカプセル剤である、実施形態である。
【0012】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの放出が、1時間で60%未満であり、製剤が、ペレットを含有するカプセル剤である、実施形態である。一部の実施形態では、2時間で式Iの化合物の60%未満(例えば、5~40%および5~15%)が放出される。一部の実施形態では、4時間で式Iの化合物の60%未満(例えば、15~60%および15~25%)が放出される。一部の実施形態では、12時間で式Iの化合物の60%未満(例えば、35~55%および40~60%)が放出される。
【0013】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、被験体(例えば、ヒト被験体)に投与された後、即時放出製剤と比較して低下されたCmaxを有する、実施形態である。
【0014】
製剤の例示的な実施形態は、Cmaxが、少なくとも20%(例えば、20~80%、40~80%、60~80%、および65~75%)低下される、実施形態である。
【0015】
製剤の例示的な実施形態は、血中の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの定常状態のCmax/Cmin比が、被験体への投与後の最初の12時間の間に約1.5~約4.5の範囲である、実施形態である。
【0016】
製剤の例示的な実施形態は、調節放出製剤が、10重量%~50重量%の2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、実施形態である。
【0017】
製剤の例示的な実施形態は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、結晶性である、実施形態である。
【0018】
製剤の例示的な実施形態は、結晶性2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルが、ミリングまたは微粉化される、実施形態である。
【0019】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤が、製剤の3重量%~60重量%(例えば、3~10重量%、約5重量%、約7重量%、または約9重量%)を構成する、実施形態である。
【0020】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤が、MCC(微結晶性セルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PEG(ポリエチレングリコールグリセリド)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、CAP(酢酸フタル酸セルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、HPMCAS(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート)、HPMCP(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、CA(酢酸セルロース)、CAB(酢酸酪酸セルロース)、EC(エチルセルロース)、ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド)、PVAc(ポリビニルアセテート)、およびHPMC/CMCからなる群より選択される、実施形態である。
【0021】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤が、Aquacoat(登録商標)、Walocel(登録商標)、HP50/HP55、Aqoat(登録商標)、EUDRAGIT(登録商標)FS30D、EUDRAGIT(登録商標)L30D-55/L100-55、EUDRAGIT(登録商標)L12,5/EUDRAGIT(登録商標)L100、EUDRAGIT(登録商標)S12,5/EUDRAGIT(登録商標)S100、Carbopol(登録商標)ポリマー、Eastman CA、Eastman CAB、Eastman CAB、Ethocel(商標)、Aquacoat(登録商標)ECD、またはSurelease(登録商標)、またはGlyceride GatteCoat(商標)、EUDRAGIT(登録商標)NE30D、EUDRAGIT(登録商標)NM30D、EUDRAGIT(登録商標)RL30D、EUDRAGIT(登録商標)RL100/RL PO、EUDRAGIT(登録商標)RS30D、EUDRAGIT(登録商標)RS100/RS、Kollicoat(登録商標)SR30D、Kollidon(登録商標)、Walocel(登録商標)HM-PPA、Kollicoat(登録商標)MAE30DP/100P、およびEastacryl 30Dからなる群より選択される、実施形態である。
【0022】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤が、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、およびAQUACOATからなる群より選択される、実施形態である。
【0023】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤がポリビニルアセテートである、実施形態である。
【0024】
例示的な実施形態では、放出調節剤は、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、およびラウリル硫酸ナトリウムの混合物である。一部の実施形態では、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、およびラウリル硫酸ナトリウムの混合物は、約90:9:1の比で存在する。一部の実施形態では、混合物は、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含有するペレットに、約5~9%のコーティング重量増加を提供する。一部の実施形態では、混合物は、ペレットに約5%のコーティング重量増加を提供する。一部の実施形態では、混合物は、ペレットに約6%のコーティング重量増加を提供する。一部の実施形態では、混合物は、ペレットに約7%のコーティング重量増加を提供する。一部の実施形態では、混合物は、ペレットに約8%のコーティング重量増加を提供する。一部の実施形態では、混合物は、ペレットに約9%のコーティング重量増加を提供する。
【0025】
製剤の例示的な実施形態では、放出調節剤は、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dである。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約5~9%のコーティング重量増加を提供する。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約5%のコーティング重量増加を提供する。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約6%のコーティング重量増加を提供する。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約7%のコーティング重量増加を提供する。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約8%のコーティング重量増加を提供する。製剤の例示的な実施形態では、KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、ペレットに約9%のコーティング重量増加を提供する。
【0026】
製剤の例示的な実施形態は、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、精製タルク、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種または複数の賦形剤、およびコーティングを含む。
【0027】
製剤の例示的な実施形態は、製剤が錠剤である、実施形態である。
【0028】
製剤の例示的な実施形態は、錠剤が、10~500mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、実施形態である。
【0029】
製剤の例示的な実施形態は、錠剤が、40~120mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、実施形態である。
【0030】
製剤の例示的な実施形態は、錠剤が、30~80mgの2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルを含む、実施形態である。
【0031】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤がHPMCである、実施形態である。
【0032】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤がPARTECK(登録商標)ポリマーである、実施形態である。
【0033】
製剤の例示的な実施形態は、放出調節剤が、製剤の20~30%w/wを構成する、実施形態である。
【0034】
製剤の例示的な実施形態は、製剤がペレットを含有するカプセル剤である、実施形態である。
【0035】
製剤の例示的な実施形態は、カプセル剤が、カプセルに含有された即時放出ペレットおよび調節放出ペレットの複数単位の粒子の組み合わせ(multi-unit particulate combination)である、実施形態である。
【0036】
製剤の例示的な実施形態は、ペレットが、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、およびAQUACOAT(登録商標)から選択される放出調節剤を含む、実施形態である。
【0037】
製剤の例示的な実施形態は、製剤が、カプセルに含有された即時放出ペレットおよび遅延放出ペレットの複数単位の粒子の組み合わせである、実施形態である。
【0038】
製剤の例示的な実施形態は、調節放出製剤が、遅延放出ペレット製剤、制御放出ペレット製剤、持続放出ペレット製剤、およびパルス放出ペレット製剤から選択される、実施形態である。
【0039】
製剤の例示的な実施形態は、製剤が、EUDRAGIT(登録商標)であるコーティング剤を含む、実施形態である。
【0040】
製剤の例示的な実施形態は、コーティング剤が、製剤の3重量%~60重量%のEUDRAGIT(登録商標)を含む、実施形態である。
【0041】
製剤の例示的な実施形態は、コーティング剤が、20%w/wまでのEUDRAGIT(登録商標)RS30Dを含む、実施形態である。
【0042】
製剤の例示的な実施形態は、コーティング剤が、60%w/wまでのEUDRAGIT(登録商標)NM30Dを含む、実施形態である。
【0043】
本開示の態様は、調節放出製剤を調製する方法であって、
(a)糖、MCCおよび酒石酸からなる群より選択される不活性コアを、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルでコーティングして、APIコアペレットを形成するステップと、
(b)APIコアペレットを、化粧的な非機能性シールコーティングでコーティングして、シールコーティングペレットを形成するステップと、
(c)シールコーティングペレットを、放出調節剤でコーティングして、調節放出製剤を形成するステップと
を含む、方法を含む。
【0044】
調節放出製剤を調製する方法の例示的な実施形態は、不活性コアが、糖、微結晶性セルロース(MCC)、酒石酸、ポリオール、カルナウバろう、二酸化ケイ素、およびそれらの組合せから選択される、実施形態である。
【0045】
調節放出製剤を調製する方法の例示的な実施形態は、化粧的な非機能性シールコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびにヒプロメロースおよびエチルセルロースの混合物から選択される、実施形態である。
【0046】
調節放出製剤を調製する方法の例示的な実施形態は、放出調節剤が、KOLLICOAT(登録商標)、EUDRAGIT(登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびにヒプロメロースおよびエチルセルロースの混合物からなる群より選択される、実施形態である。
【0047】
本開示の態様は、調節放出製剤を調製する方法であって、
(a)2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリル、ならびに微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、精製タルク、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種または複数の賦形剤をローラー圧縮し、それによってペレットを形成するステップと、
(b)ペレットを、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、AQUACOAT(登録商標)、およびOPADRY(登録商標)Whiteから選択されるコーティング剤の分散物でポリマーコーティングするステップと
を含む、方法を含む。
【0048】
調節放出製剤を調製する方法の例示的な実施形態は、押出し、球形化(spheronization)、および圧縮から選択される1つまたは複数のステップをさらに含む。
【0049】
調節放出製剤を調製する方法の例示的な実施形態は、軟または硬カプセルシェルに、コーティングされたペレットを充填するステップをさらに含む。
【0050】
本開示の態様は、調節放出製剤錠剤を調製する方法であって、
(a)2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリル、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、タルク、微結晶性セルロース、およびステアリン酸マグネシウムの乾燥混合物をブレンドするステップと、
(b)乾燥混合物の乾燥造粒物をローラー圧縮することによって、顆粒として調製するステップと、
(c)顆粒をミリングするステップと、
(d)ミリングされた顆粒に、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、タルク、およびステアリン酸マグネシウムを添加して、粒外混合物(extra-granular mixture)を形成するステップと、
(e)粒外混合物を錠剤に圧縮するステップと、
(f)錠剤を、KOLLICOAT(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、AQUACOAT(登録商標)、およびEUDRAGIT(登録商標)から選択されるコーティング剤でコーティングするステップと
を含む、方法を含む。
【0051】
本開示の態様は、LRRK2媒介性疾患を処置する方法であって、それを必要とする被験体に、本開示の製剤を投与するステップを含む、方法を含む。
【0052】
LRRK2媒介性疾患を処置する方法の例示的な実施形態は、製剤の1つまたは複数が、被験体に1日1回、1日2回、または1日3回投与される、実施形態である。
【0053】
LRRK2媒介性疾患を処置する方法の例示的な実施形態は、製剤が、被験体に1日2回投与される、実施形態である。
【0054】
LRRK2媒介性疾患を処置する方法の例示的な実施形態は、LRRK2媒介性疾患が神経変性疾患である、実施形態である。
【0055】
LRRK2媒介性疾患を処置する方法の例示的な実施形態は、LRRK2媒介性疾患がパーキンソン病である、実施形態である。
【0056】
本発明の態様に従って、少なくとも12時間の期間にわたって、約0.2μM~約1.2μMの治療範囲内の式Iの化合物の調節放出製剤の一貫した定常血中レベルが提供される。血中濃度は、複数の被験体または研究からの平均血漿または血清濃度として測定することができる。血中濃度は、式Iの化合物の調節放出製剤の投与後の被験体の血中濃度の経時的なプロファイルを確立するために、投与時および様々な時点で測定することができる。
【0057】
本発明の送達の調節放出方法は、等濃度のまたは様々な濃度の式Iの化合物の複数の単一単位剤形を投与することによって達成することができる。このような各単位は、式Iの化合物の血中レベルを、既に記載されている治療範囲内に維持するように、少なくとも12時間の期間にわたって様々な時点でその内容物を放出するように指定することができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態は、処置される患者が、少なくとも12時間の期間にわたって約0.2μM~約1.2μMの患者の血中濃度を維持することができる式Iの化合物を含有する剤形を、単一時点で摂取することを提供する。このような剤形は、式Iの化合物の血中濃度レベルを、既に記載されている期間にわたって治療範囲内に維持するように様々な時間でその内容物を放出するように設計された、同じ濃度または様々な濃度の式Iの化合物を有する1つまたは複数の単位からなることができる。
【0059】
一実施形態は、その中に複数の単位を含有し、様々な時点でそれらの内容物を放出することができる、1つの単一剤形を含むことができる(米国特許第5326570号)。単一剤形の別の実施形態は、ある濃度の式Iの化合物をすぐに放出し、次に血中レベルを治療範囲内に維持するのに必要に応じて他の時点で式Iの化合物を調節放出することができる、1つの単位からなることもできる。別の実施形態では、剤形は、式Iの化合物を様々な時点で放出することができる複数の別個の単位で存在してもよく、前述の別個の複数単位は、処置される患者によってすべて同じ時点で摂取され得る。マルチ粒子(multiparticulate)は、治療用量の柔軟な調節を可能にする。カプセルは、任意のさらなる処理または製剤化を用いることなく、様々な量の微粒子またはペレットで充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、最小有効用量の即時放出(IR)製剤、調節放出(MR-I)製剤および低減された用量の調節放出製剤(MR-II)を投薬した後の、式Iの化合物の理想的な血中濃度を示す。
【0061】
図2図2は、式Iの化合物の即時放出カプセル製剤の、様々な1日2回(BID)用量のレジメンの10日目の、健康な(非PD)若年患者および健康な高齢患者における式Iの化合物の脳脊髄液(CSF):血漿濃度の比を示す。平均CSF:非結合血漿の比は、約1.0であった。示されるデータは、25mg、80mg、および100mg BIDの複数の用量コホートから得たものである。
【0062】
図3図3は、式Iの化合物および他の賦形剤が、ポビドンK30およびポリビニルアセテートを含むコーティングを有するコアを含む、細孔形成剤を含む調節放出錠剤を示す。
【0063】
図4図4は、式Iの化合物および他の賦形剤が、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアセテートと共にマトリックスに製剤化される、調節放出マトリックス錠剤を示す。
【0064】
図5図5は、ペレットの内側コアが、シールコーティングされる薬物の層で被覆された不活性材料、例えば糖、微結晶性セルロース(MCC)、または酒石酸である、複数単位ペレットシステム(MUPS)製剤のためのペレットの表示を示す。外層は、ポリマーコーティング、例えば調節放出のためのKOLLICOAT(登録商標)(コーティングされる材料の質量と比較して約5~12%の重量増加)またはEUDRAGIT(登録商標)である。
【0065】
図6図6は、30%w/w、40%w/w、および50%w/wのPARTECK(登録商標)ポリマーを使用する、マトリックス調節放出(MR)の80mg錠剤のバッチ番号1~3の比較処方の表を示す。
【0066】
図7図7は、図6の式Iの化合物のMR錠剤の比較溶解データを示す。バッチ番号1~3のそれぞれについて、12時間の期間にわたって調節放出効果が観察される。それぞれバッチ1および2の放出プロファイルを通して、より高いRSD%(相対的標準偏差)が観察される。すべての3つのバッチの放出プロファイルは、使用されるPARTECK(登録商標)SRP80の量に関係なく類似している。50%w/wのPARTECK(登録商標)SRP80を含有するバッチ番号3は、それぞれ30%および40%のPARTECK(登録商標)SRP80を含有するバッチ番号1および2と比較して、低いRSD%を示す。
【0067】
図8図8は、10%w/w、15%w/w、および20%w/wのHPMC K-15Mを有するMRマトリックス錠剤を示す(直接圧縮による粒内)。
【0068】
図9図9は、図8のMR錠剤の比較溶解データを示す。
【0069】
図10図10は、PARTECK(登録商標)SRP80を有するMRマトリックス錠剤を示す(直接圧縮による粒外)。
【0070】
図11図11は、図10のMRマトリックス錠剤の比較溶解データを示す。
【0071】
図12図12は、MR(MUPS)ペレット、80mgの組成を示す。
【0072】
図13図13は、様々な細孔形成剤(ポビドン)レベルを有するバッチの比較薬物放出データを示す。
【0073】
図14図14は、pH3のマッキルベイン緩衝液900mL(37℃)における、様々なMRペレットおよびIR+MRペレットを有する複数単位のペレットシステム(MUPS)カプセルの、シンカーを用いるパドル速度50rpmにおける比較溶解プロファイルを示す。試料:12.02%w/w MRペレット、5.2%w/w MRペレット、8.2%w/w MRペレット、および40mgのIRペレット+40mgの12.02%w/w MRペレット。
【0074】
図15図15は、ミニブタにおける製剤1~5の用量正規化された平均濃度時間プロファイルを示す。調節放出(MR)製剤は、より低い用量正規化Cmaxを示し、一般に、カプセル(API、医薬活性成分)またはIR錠剤における式Iの化合物よりも緩慢な吸収を示す。試料:ゼラチンカプセルにおけるAPI(1mg/kg)、(4mg/kg)、PARTECK(登録商標)40%MR錠剤(80mg、4mg/kg)、PARTECK(登録商標)30%MR錠剤(80mg、4mg/kg)、およびEUDRAGIT(登録商標)RS/RL MUPSカプセル(1mg/kg)。
【0075】
図16図16は、ミニブタにおける図15に示される製剤1~5についての用量正規化データの概要を示す。
【0076】
図17A図17Aは、ミニブタにおけるペレット製剤1~5の平均経口濃度時間プロットを示す。KOLLICOAT(登録商標)ペレットは、より緩慢な吸収速度を示す。腸溶コーティングペレットは、IRペレットに類似の曝露を達成した。試料:1.カプセルにおける非コーティングペレット(即時放出)、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、および5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット。
【0077】
図17B図17Bは、カプセルにおける非コーティングペレット(即時放出)およびMUPS製剤としての式Iの化合物(1mg/kg)の単回経口投与後の、ミニブタ(N=3)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。
【0078】
図18図18は、1mg/kgの調節放出製剤のミニブタのPKを示す。KOLLICOAT(登録商標)ペレットは、IRペレットに対して、より緩慢な吸収速度および低下されたCmaxを示す。IRと比較したKOLLICOAT(登録商標)8%のバイオアベイラビリティは、73%であった。IRと比較したKOLLICOAT(登録商標)5%のバイオアベイラビリティは、86%であった。腸溶コーティングペレットは、IRペレットに類似のCmaxおよびAUC(曲線下面積)を達成した。
【0079】
図19図19は、2mg/kgの調節放出(MR)製剤のカニクイザルのPKを示す。
【0080】
図20A図20Aは、カニクイザルにおける製剤についてのPK研究を示す。試料:1.カプセルにおける非コーティングペレット(即時放出)、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、3.カプセルにおけるAPI(式Iの化合物)、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット、6.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)3%ペレット。
【0081】
図20B図20Bは、カプセルにおける非コーティングペレットとしての式Iの化合物(2mg/kg)およびカプセルにおけるAPI(共に、ポリマーコーティングなしの即時放出)ならびにMUPS製剤の単回経口投与後の、サル(N=4)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。
【0082】
図21図21は、コーティング段階で適用されたEUDRAGIT(登録商標)L30D55およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0083】
図22図22は、コーティング段階で適用されたAQUACOAT(登録商標)およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0084】
図23図23は、コーティング段階で適用されたKOLLICOAT(登録商標)およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0085】
図24図24は、40mg、80mg、100mg、106.68mgおよび160mgの式Iの化合物の錠剤の組成を示す。
【0086】
図25図25は、40mg、80mg、100mg、106.68mgおよび160mgの式Iの化合物の錠剤を調製するための製造プロセスのステップを示す。
【0087】
図26図26は、薬物放出パーセント対時間として表される、HMPCポリマー製剤を用いる4種の調節放出錠剤の平均溶解プロファイルを示す。
【0088】
図27図27は、薬物放出パーセント(mg)対時間として表される、HMPCポリマー製剤を用いる4種の調節放出錠剤の平均溶解プロファイルを示す。
【0089】
図28図28は、薬物放出パーセント対時間として表される、PARTECK(登録商標)ポリマー製剤を用いる40mg低用量(1A)および120mg高用量(2A)錠剤の平均溶解プロファイルを示す。
【0090】
図29図29は、累積薬物放出対時間として表される、PARTECK(登録商標)ポリマー製剤を用いる40mg低用量(1A)および120mg高用量(2A)錠剤の平均溶解プロファイルを示す。
【0091】
図30図30は、pH3のマッキルベイン緩衝液中、薬物放出対時間として表される、様々なポリマーコーティングを有するMRペレットからの平均溶解プロファイルを示す(900mL、USPタイプII装置、100rpm、37℃、シンカーを用いる)。
【0092】
図31図31は、実施例4のEUDRAGIT(登録商標)でコーティングされたMUPSについての平均溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、以下と一致する。
【0094】
「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」および「含む(includes)」という用語は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、記述される特色、整数、構成成分、またはステップの存在を特定することを企図するが、他の1つまたは複数の特色、整数、構成成分、ステップ、またはそれらの群の存在または追加を排除しない。
【0095】
定義されたパラメーター、例えば、製剤における成分の量、含水量、Cmax、tmax、AUC、固有溶解速度、温度、および時間に言及する「約」または「およそ」という用語は、例えば、パラメーターの測定またはパラメーターの達成における固有の変動性を示す。本開示の利益を有する当業者には、「約」または「およそ」という用語の使用によって含意されるパラメーターの変動性が理解され得る。「約」または「およそ」という用語は、数値と共に使用される場合、その数値の+/-(プラスまたはマイナス)10%の範囲を含む。
【0096】
「多形」は、本明細書で使用される場合、充填または立体構造/立体配置が異なるが、同じ化学組成を有する、様々な結晶形の化合物の発生を指す。結晶形は、結晶格子内に様々な配置および/または立体構造の分子を有する。したがって単一化合物は、各形態が、様々な別個の物理的性質、例えば溶解度プロファイル、融点温度、吸湿性、粒子形状、形態、密度、流動性、緻密性(compactibility)および/またはX線回折ピークを有する、様々な多形体を生じてもよい。各多形の溶解度は変わる場合があり、したがって、予測可能な溶解度プロファイルを有する医薬品を提供するためには、薬学的多形の存在を特定することが必須である。あらゆる多形体を含めた薬物のすべての固体状態を特徴付け、調査し、各多形体の安定性、溶解および流動性質を決定することが望ましい。化合物の多形体は、X線回折法、および他の方法、例えば赤外またはラマンまたは固体NMR分光法によって、実験室で区別することができる。多形の一般的概説および多形の薬学的適用については、すべてが参照により本明細書に組み込まれる、G. M. Wall, Pharm Manuf. 3:33 (1986)、J. K. Haleblian and W. McCrone, J. Pharm. Sci., (1969) 58:911、"Polymorphism in Pharmaceutical Solids, Second Edition (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)", Harry G. Brittain, Ed. (2011) CRC Press (2009)、およびJ. K. Haleblian, J. Pharm. Sci., 64, 1269 (1975)を参照されたい。
【0097】
「溶媒和物」は、化学量論または非化学量論量の溶媒のいずれかを含有する結晶形である。組み込まれる溶媒が水である場合、溶媒和物は、一般に水和物として公知である。水和物/溶媒和物は、溶媒含量が同じであるが、格子充填または立体構造が異なる化合物について、多形として存在することができる。
【0098】
「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0099】
「薬学的に許容される塩」という句は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物の薬学的に許容される有機または無機塩を指す。例示的な塩として、それに限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩である「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が挙げられる。他の塩には、前述の配座異性体(coformer)などの酸塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子の包含を伴っていてもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定にする任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容される塩は、2つ以上の荷電原子をその構造内に有していてもよい。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合は、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の荷電原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。
【0100】
所望の薬学的に許容される塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸もしくはガラクツロン酸、アルファヒドロキシ酸、例えばクエン酸もしくは酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸もしくはケイ皮酸、スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などを用いる遊離塩基の処理。基本的な医薬化合物からの薬学的に有用なまたは許容される塩の形成に適していると一般にみなされる酸は、例えば、Stahl PH, Wermuth CG, editors. Handbook of Pharmaceutical Salts; Properties, Selection and Use, 2nd Revision (International Union of Pure and Applied Chemistry). 2012, New York: Wiley-VCH、S. Berge et al, Journal of Pharmaceutical Sciences (1977) 66(1) 1 19、P. Gould, International J. of Pharmaceutics (1986) 33 201 217、Anderson et al, The Practice of Medicinal Chemistry (1996), Academic Press, New York、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., (1995) Mack Publishing Co., Easton PA、およびThe Orange Book (Food & Drug Administration, Washington, D.C.、ウェブサイト上)に論じられている。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
「薬学的に許容される」という句は、物質または組成物が、製剤を構成するその他の成分および/またはそれで処置される哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合性でなければならないことを示す。
【0102】
「治療有効量」という用語は、非毒性であるのに十分少ないが、状態またはその症状を除外し、低減し、かつ/またはその進行を緩徐することを含めた治療結果を達成するには十分な、薬物の量である。治療有効量は、生物学的因子に応じて変わり得る。治療結果の達成は、医師もしくは他の有資格医療者によって、当技術分野で公知の客観的評価を使用して測定することができ、または個々の患者による主観的な評価によって測定することができる。
【0103】
「被験体」という用語は、医薬組成物が投与される哺乳動物を指す。例示的な被験体として、ヒト、ならびに獣医学的動物および実験動物、例えばサル、ウマ、ブタ、ミニブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、および水生哺乳動物が挙げられる。
【0104】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーの重ね合わせることができない性質を有する分子を指し、一方、「アキラル」という用語は、それらの鏡像パートナーと重ね合わせることができる分子を指す。
【0105】
「立体異性体」という用語は、同一の化学構成を有するが、空間内の原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0106】
「ジアステレオマー」は、2つまたはそれよりも多いキラリティーの中心を有し、それらの分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、様々な物理的性質、例えば融点、沸点、スペクトル性質、および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、高分解能分析手順、例えば電気泳動法およびクロマトグラフィーの下で分離することができる。
【0107】
「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
【0108】
本明細書で使用される立体化学的な定義および慣習は、一般にS. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York、およびEliel, E. and Wilen, S., "Stereochemistry of Organic Compounds", John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994に従う。本発明の化合物は、不斉中心またはキラル中心を含有してもよく、したがって様々な立体異性体で存在する。それに限定されるものではないが、ジアステレオマー、エナンチオマーおよびアトロプ異性体、ならびにそれらの混合物、例えばラセミ混合物を含めた、本発明の化合物のすべての立体異性体は、本発明の一部を形成することが企図される。多くの有機化合物が、光学的に活性な形態で存在し、すなわち、平面偏光面を回転させる能力を有する。光学的に活性な化合物の説明において、接頭辞DおよびL、またはRおよびSは、そのキラル中心の周りの分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は、化合物による平面偏光面の回転の徴候を指定するために用いられ、(-)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を有する化合物は、右旋性である。所与の化学的構造について、これらの立体異性体は、互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーと呼ぶこともでき、このような異性体の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と呼ばれ、それらは、化学反応またはプロセス中に立体選択または立体特異性が全く存在しなかった場合に生じ得る。「ラセミ混合物」および「ラセミ体」という用語は、光学活性がない2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0109】
「互変異性体」または「互変異性形態」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能である、様々なエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても公知である)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えばケト-エノールおよびイミン-エナミン異性化を含む。原子価互変異性体は、結合電子の一部の再編成による相互変換を含む。
【0110】
「固体経口剤形」は、経口経路を介して被験体に投与する準備が整っている製剤を指す。例示的な経口剤形として、それに限定されるものではないが、錠剤、小型錠剤、カプセル剤、カプレット剤、散剤、ペレット剤、ビーズ剤、顆粒剤、およびポリマー-コーティングされたペレットを含有するペレット化錠剤が挙げられる。剤形は、1回の投与ごとに1つの治療用量を送達することを企図された「単位剤形」であってもよい。
【0111】
「賦形剤」という用語は、少量の強力な活性成分を含有する固体製剤の長期間安定化、増量(bulking up)を目的とするか、または最終的な剤形における活性成分に治療的増強を付与するため、例えば薬物吸収を促進し、粘度を低減し、もしくは溶解度を増強するために含まれる、治療薬の医薬活性成分(API)と共に製剤化される物質を指す。賦形剤はまた、期待される保存期間にわたって変性または凝集を防止するなどのin vitro安定性の助けにすることに加えて、粉末流動性または非粘着性質を促進するなどによって該当する活性物質の取扱いの助けにするのに、製造プロセスにおいて有用となり得る。適切な賦形剤の選択はまた、投与経路および剤形、ならびに活性成分および他の因子に応じて決まる。いくつかの製剤では、賦形剤は、薬力学および薬物動態に対して効果を有する、剤形の性能の非常に重要な決定因子となり得る。経口投薬製剤のための賦形剤のタイプには、抗接着剤(antiadherent)、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、吸着剤、甘味剤、およびビヒクルが含まれる。
【0112】
「ペレット」という用語は、ビーズ、顆粒、不規則形状の粒子および/または球形粒子を含めた、任意の形状の粒子を包含する。顆粒は、任意の適切なサイズ、例えば約0.1mm~約1.0mmであってもよい。一実施形態では、ペレットサイズは、当技術分野で周知の方法によって測定される通り、約100μM(ミクロン)~約1200μM(ミクロン)、約100μM~約1100μM、約150μM~約600μM、または約100μM~約400μMである。
【0113】
「球形化」は、医薬生成物を小球に作成する、急速かつ柔軟なプロセスであり、通常、API、充填剤、球形化剤(spheronization agent)、結合剤、超崩壊剤(superdisintegrant)、または他の賦形剤、例えば造粒用流体(例えば、必要に応じてアルコールと混合される水)を含む乾燥混合物を湿潤化すること、湿潤混合物を造粒すること、得られた造粒塊を押し出すこと、押出物を球形化してビーズを提供すること、そのビーズを乾燥させることを含む。小球の流動特徴により、その小球は輸送および移動に適したものになる。小球は、最も小さい表面積:体積比を提供し、したがって医薬化合物は、最小限のコーティング材料でコーティングすることができる。
【0114】
「調節放出」という用語は、薬物放出が即時放出とは異なっていること、すなわち約2時間以内に薬物の約60%またはそれよりも多くをin vivoで放出する剤形を意味する。あるいは薬物放出は、当技術分野で公知の方法に従って、薬物を溶解媒体に溶解させることによってin vitroで測定され得る。調節放出プロファイルの例として、それに限定されるものではないが、調節放出、緩徐放出、遅延放出、およびパルス放出が挙げられる。
【0115】
「放出調節剤」は、製剤内の薬物の放出速度を調節する性質を有する、様々なポリマー骨格、鎖長、および枝分かれの混合物であってもよいポリマー材料を含む組成物である。放出調節剤は、剤形からの薬物の放出速度を変え、したがって放出調節剤を含めた剤形の放出速度は、放出調節剤を含まない以外は同一の剤形の、同一条件下での放出速度とは異なる。放出調節剤の例として、MCC(微結晶性セルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PEG(ポリエチレングリコールグリセリド)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、Carbopol、(a)CAP(酢酸フタル酸セルロース)、例えばAQUACOAT(登録商標);CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、例えばWALOCEL(登録商標);HPMCAS(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート)、例えばAQOAT(登録商標);HPMCP(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、例えばHP50/HP55;ポリ(メチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-メタクリル酸)、例えばEUDRAGIT(登録商標)FS30D;ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、例えばEUDRAGIT(登録商標)L30D-55/L100-55、またはKOLLICOAT(登録商標)MAE30DP/100P、またはEastacryl 30D;ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、例えばEUDRAGIT(登録商標)L12,5/EUDRAGIT(登録商標)L100、またはEUDRAGIT(登録商標)S12,5/EUDRAGIT(登録商標)S100などを含めた、腸溶コーティングのためのポリマー、(b)時間制御放出性のためのポリマー、例えば、CA(酢酸セルロース)、例えばEastman CAおよびEastman CAB;(酢酸酪酸セルロース)、例えばEastman CAB;EC(エチルセルロース)ETHOCEL(商標)、またはAQUACOAT(登録商標)ECD、またはSURELEASE(登録商標)(すぐに使用できる)、またはGlyceride GATTECOAT(商標);ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート)、例えばEUDRAGIT(登録商標)NE30D、またはEUDRAGIT(登録商標)NM30D;ポリ(エチルアクリレート-co-メチルメタクリレート-co-トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド)、例えばEUDRAGIT(登録商標)RL30D、EUDRAGIT(登録商標)RL100/RLPO、EUDRAGIT(登録商標)RS30D、またはEUDRAGIT(登録商標)RS100/RS;PVAc(ポリビニルアセテート)、例えばKOLLICOAT(登録商標)SR30D;HPMC/CMC、例えばWALOCEL(登録商標)HM-PPAなどが挙げられる。
【0116】
式Iの化合物および医薬組成物
本開示は、構造
【化2】
を有し、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリルの名称を有する(それぞれ参照によって組み込まれる国際公開第2012/062783号、米国特許第8815882号、米国特許出願第2012/0157427号)、式Iの化合物の多形および非晶質形(CAS登録番号1374828-69-9)を含む。本明細書で使用される場合、式Iの化合物は、その互変異性体または薬学的に許容される塩を含む。式Iの化合物は、パーキンソン病およびパーキンソニズムの処置において使用するための、本明細書に記載される製剤におけるAPI(医薬活性成分)である。
【0117】
薬物動態
剤形の構成成分および構成は、溶解速度および血中濃度に対して大きな効果を有することができる。
【0118】
図1は、最小有効用量の即時放出(IR)製剤、調節放出(MR)製剤および低減された用量のMR製剤を投薬した後の、式Iの化合物の理想的な血中濃度を示す。
【0119】
図2は、式Iの化合物の即時放出カプセル製剤の、様々な1日2回(BID)用量のレジメンの10日目の、健康な(非PD)若年患者および健康な高齢患者における式Iの化合物の脳脊髄液(CSF):血漿濃度の比を示す。平均CSF:非結合血漿の比は、約1.0であった。示されるデータは、25mg、80mg、および100mgBIDの複数の用量コホートから得たものである。
【0120】
式Iの化合物を、用量25mg、40mg、80mgおよび100mgBIDのカプセル内API製剤として健康な若年ヒト被験体に投与し、80mgBIDで健康な高齢被験体に投与した。式Iの化合物の濃度を、1日目および10日目、ならびに10日間の投与の間の選択された日のトラフにおいて決定した。10日目の投薬後に得られた血漿濃度の薬物動態分析は、14~26時間の血漿中の終末相半減期を示した。トラフ(最小)濃度のプラトーは、10日目までに定常状態が達成されたことを実証した。血漿CmaxおよびAUCは、25~100mgBIDの用量範囲にわたって用量比例方式で増大した。この終末相半減期、ならびにトラフ(最小)における血漿濃度およびpS935阻害は、有効レジメンとしての1日2回の投与と一致する。
【0121】
25mg、40mg、80mgおよび100mgBIDの用量で与えられるカプセル製剤におけるAPIでは、定常状態の式Iの化合物のCmax/Cmin(Cmax/Ctrough)比は、2.6~12(平均5.3)であった。研究設計の平行(非クロスオーバー)性質により、その比の被験体内変動性が見られた。一般に十分に認容性であったが、より高い用量では、脈拍数および血圧の穏やかな変化が認められた。生理学ベースのPKモデリングを使用して、様々な量のKOLLICOAT(登録商標)ポリマーを含有するMUPS製剤についてのCmax/Cmin比を予測した。3%、5%および8%ポリマーのKOLLICOAT(登録商標)を含有するMUPS製剤について、BID下で予測されたCmax/Cmin比は、1.5~2.6の範囲であった。
【0122】
固体経口剤形
本発明は、驚くべきことに、望ましい調節放出プロファイルを達成する、発見された式Iの化合物の新しい調節放出製剤、およびそれらを調製するための新しい方法を提供する。
【0123】
式Iの化合物の固体経口剤形には、単一の単位剤形(カプセル剤または錠剤)および複数の単位剤形またはペレット化剤形(カプセル剤または錠剤における1つまたは複数のペレット)に広範に分類される送達系が含まれる。ペレットは、胃腸管中に均一に広がるので、ある特定の治療上の利点を付与する。ペレットはまた、胃から徐々に排出され得るので個体内および個体間変動が少なく、したがって投与用量のより良好な予測可能性をもたらす。ペレットを使用すると、局所的に制限された錠剤の摂取と関連する高い局所的薬物濃度および毒性のリスクが、回避され得る。薬物分解または胃粘膜刺激を潜在的にもたらす可能性がある、胃内での腸溶コーティング錠剤からの早計の薬物放出も、それらの急速な通過時間のおかげで、コーティングペレットを用いて低減することができる。胃腸管内でのペレットのより良好な分布はまた、ペレットが含有する薬物のバイオアベイラビリティを改善し、薬物用量および有害効果の低減をもたらす可能性がある(Kushare, S et al (2011) Asian J Pharm, 5:203-8)。
【0124】
即時放出(IR)剤形は、投与後の患者の血中への薬物の急速なまたは非制御放出を達成するように製剤化される。
【0125】
調節放出(MR)は、従来の即時放出剤形よりも緩慢な薬物放出を達成する。放出調節剤形の利点には、投薬頻度の低減、患者のより良好な許容性およびコンプライアンス、胃腸管(GI)副作用の低減、血漿薬物レベルの変動の減少(Cmax/Cmin比によって測定される通り)、有効性/安全性パラメーターの改善、ならびに十分に特徴付けられた再現できる剤形が含まれる。最適化された調節放出プロファイルにより、患者は、投与後より長期間にわたって、薬物の最小有効濃度を超えるが最大耐性用量未満の治療域(therapeutic window)に置かれ得る。調節放出(MR)製剤は、血中において一定濃度の薬物を維持するために、投与後、患者の血液への薬物放出の遅延を達成することができる。
【0126】
複数単位ペレットシステム(MUPS)は、従来の錠剤またはカプセル剤の代替として使用される、多相またはプログラムされた放出剤形である。複数単位ペレットシステム(MUPS)錠剤またはカプセル剤は、経口投与のための即時または調節薬物放出のための重要な、成果を上げる剤形となってきた種類のマルチ粒子システムである。これらの複数単位は、調節薬物放出を可能にする、非コーティングまたはコーティングペレットを含有する錠剤またはカプセル剤から構成される。これらのシステムの利点には、単純な錠剤またはカプセル剤と比較して、単純な単位の薬物分解による胃粘膜への刺激を低減すること、および用量調整を改善することが含まれる。そのシステムは、マルチ粒子システムにより、適合性がない薬物を投与できる可能性も付与する。MUPS錠剤またはカプセル剤におけるペレットは、コーティングされていなくてもコーティングされていてもよい。薬物は、コアに含まれてもよく、またはペレットの不活性コアに適用された層として含まれ得る。不活性コアは、糖、微結晶性セルロース(MCC)、ポリオール、カルナウバろう、または二酸化ケイ素から構成された中性の出発ペレットであってもよい。さらに、ペレットは、調節放出に適した賦形剤、例えば腸溶コーティングのためのポリマーまたは調節放出のためのポリマーを含み得る1つまたは複数の層を有することができる。非コーティングペレットは、適切な薬学的賦形剤、例えばとりわけラクトースおよび微結晶性セルロース(MCC)から作成される。ペレットは、経口投与のために、カプセルに充填するか、または錠剤に圧縮することができる。
【0127】
コーティングされたペレットは、コーティングフィルムを形成するのに適したポリマーおよび量を用いて生成される。ポリマーの強度、延性および厚さの性質は、打錠されるときのペレットの破壊および変形しやすい能力に影響を及ぼす。さらに、ペレットのコーティングフィルムの安定性は、適用される圧縮力に応じて変わる。
【0128】
ペレットのコーティングフィルムを作り出すために使用されるポリマーには、セルロース系およびアクリル系ポリマーが含まれる。アクリル系ポリマーの利点は、柔軟性、およびペレットのコーティングフィルムを破壊することなく打錠プロセスを可能にする特色である。2種のポリマーを組み合わせることにより、コーティングされたペレットの精密化にとって望ましいコーティングフィルムの柔軟性、およびある特定の割合の可塑剤の添加を改善することができる。
【0129】
ペレットコアは、MUPSからの薬物放出に影響を及ぼし得る。非コーティングおよびコーティングペレットの両方のペレット多孔性は、調節薬物放出プロファイルに影響を及ぼす。
【0130】
ペレットコアを生成するために使用される賦形剤および結合剤液は、圧縮中のペレットの変形および粘弾性性質に影響を及ぼすことがあり、したがって薬物放出プロファイルの変化を引き起こすことがある。ペレットの生成/製造におけるカラゲニン多糖体などの他の構成成分の使用により、ペレットは急速に崩壊し、したがって急速に薬物を放出することができる(Kranz H. et al.: Eur. J. Pharm. Biopharm. 73: 302-309 (2009)、Ghanam D. and Kleinebudde. P.: Int. J. Pharm. 409: 9-18 (2011)。
【0131】
コーティングペレットの製造プロセスは、ペレットの製造およびペレット含有錠剤の製造の2つのステップに分けることができる。最初に、薬物ペレット製造プロセスは、ペレット構成成分、例えば薬物、この種の製剤において広く使用されている微結晶性セルロース、モノステアリン酸グリセリル(GMS)およびラクトース一水和物(LM)などの緩衝用賦形剤(cushioning excipient)をブレンドすることにより始まる。結合剤液、例えば水またはグリセロールは、湿潤混合のために使用することができる。得られた塊は、押出し-球状化プロセスに進み、近年形成されているペレットの乾燥は、流動床乾燥機内で実施することができる。次のステップであるペレットのコーティングは、所望の薬物放出を得るためのコーティングフィルムを形成する(Bashaiwoldu A.B et al.: Advan. Powder Technol. (2011) 22:340-353)。
【0132】
打錠プロセスは、回転錠剤圧縮機によって、制御されたパラメーター、例えば主な圧縮力および速度を用いて実施され得る。ペレットおよび緩衝用賦形剤は、打錠のために、高い圧縮力に耐える能力を含めたある特定の性質を最適化するために、添加され得る。
【0133】
次に、形状、重量、厚さ、および硬度の特定の特色を有するペレット含有錠剤は、錠剤フィルムコーティングプロセスに進む。錠剤フィルムコーティングは、医薬組成物の安定性および外観を改善するために適用される。
【0134】
フィルムコーティングは、固体経口剤形の薬学的薬物送達において頻繁に適用される。剤形をコーティングする動機は、化粧上の検討事項(色、光沢)から、安定性の改善(光からの保護、湿気およびガスに対するバリア)および錠剤を嚥下しやすくすることまで、様々である。さらに、機能的コーティングは、剤形からの薬物放出挙動を調節するために使用することができる。使用されるポリマーに応じて、薬物放出の遅延(腸溶コーティングにおけるものなど)、または剤形からの薬物の放出を長期間にわたって持続させるためのコーティングの使用が可能である。
【0135】
フィルムコーティングは、固体剤形、例えば錠剤に適用される薄いポリマーベースのコーティングである。このようなコーティングの厚さは、通常、20~100μmの間である。非破壊分析法を使用することによって、錠剤コーティング構造に対する動的硬化の効果を追跡することが可能である。
【0136】
複数単位ペレットシステム(MUPS)は、薬物の調節放出プロファイルを得るために設計される。この調節放出は、遅延放出または調節放出とみなされ得る。遅延放出は、例えば腸溶コーティングペレットによって達成することができる。腸溶コーティングは、胃媒体内で不安定であり、または胃刺激を引き起こし得る活性な薬学的成分を、腸溶コーティングによって保護することを可能にする。メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートは、この機能のために頻繁に使用される腸溶コーティングポリマーである。
【0137】
調節放出ペレットを含有するMUPS錠剤は、持続作用を達成し、薬理学的効果を延長し、投薬間隔を増大し、副作用を低減することができる。様々なポリマーおよび様々なフィルムの厚さでコーティングされたペレットは、ペレットからの放出速度の調節を可能にする。使用されるポリマーは、とりわけ、セルロース誘導体、例えばエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であってもよい。非コーティングペレットは、薬物の調節放出のためのマトリックスポリマーシステムとして使用され得る。この群の中でも、とりわけ、セルロースポリマー、カルボマーまたはキサンタンガムの使用に基づく親水性マトリックスシステムが頻繁に使用される。
【0138】
図3は、式Iの化合物および他の賦形剤が、KOLLICOAT(登録商標)IR、ポビドンK30およびポリビニルアセテートを含むコーティングを有するコアを含む、細孔形成剤を含む調節放出(MR)錠剤を示す。
【0139】
図4は、式Iの化合物および他の賦形剤が、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアセテートと共にマトリックスに製剤化される、調節放出マトリックス錠剤を示す。
【0140】
図5は、ペレットの内側コアが、シールコーティングされる薬物の層で被覆された不活性材料、例えば糖、微結晶性セルロース(MCC)、または酒石酸である、複数単位ペレットシステム(MUPS)製剤のためのペレットの表示を示す。外層は、ポリマーコーティング、例えば調節放出のためのKOLLICOAT(登録商標)または持続放出のためのEUDRAGIT(登録商標)である。
【0141】
賦形剤
適切な賦形剤は、当業者に公知であり、炭水化物、ろう、水溶性および/または膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などの材料を含む。賦形剤は、様々な複数の効果および有用な性質を有することができる。
【0142】
PARTECK(登録商標)SRP80(EMD Millipore)は、親水性ポリマーであるポリビニルアルコール(PVA)に基づく機能的賦形剤である。これは、膨潤性かつ浸食性のマトリックスを形成し、調節API放出を示す薬学的経口投薬錠剤形態の製剤において使用される。PARTECK(登録商標)SRP80は、単一成分としてPVA40-88を含有し、さらなる添加剤を含まず、20℃の4%水溶液の粘度(mPa)を有し、加水分解(けん化)度は88(mol%)である。PARTECK(登録商標)SRP80は、特別な粒径を有する、ミリングされたポリビニルアルコール(PVA40-88)である。CAS登録番号9002-89-5
【0143】
KOLLICOAT(登録商標)SR30D(BASF)は、ポビドンおよびSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)で安定にされたポリビニルアセテートの水性分散物である。KOLLICOAT(登録商標)SR30Dは、約27%ポリビニルアセテート、約2.7%ポビドンK30、約0.3%ラウリル硫酸ナトリウム、および約70%水を含有する(CAS登録番号9003-20-7)。ポリビニルアセテート、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、およびラウリル硫酸ナトリウムは、約90:9:1の比で存在する。PVAは、不溶性マトリックスを形成し、薬物放出を低減する。水性分散物に添加されるポビドンは、可溶性が高い性質であり、錠剤が溶解媒体と接触させられると溶解し、細孔形成剤として作用する。薬物は、制御された速度で溶解し、細孔を介して拡散して、空のポリマーシェルを残す。ポビドン(PVP K30対PVP K90)の粘度およびその濃度は、共に薬物放出に影響を及ぼす。PVPの粘度および濃度が増大すると、薬物放出が増大する。
【0144】
ポビドン(ポリビニルピロリドン、PVP)は、薬物を分散させ、懸濁させるために使用される合成ポリマービヒクルである。ポビドンは、崩壊剤および錠剤結合剤としても作用する。ポビドンは、その純粋形態では白色からオフホワイト色の吸湿性粉末に見え、水に容易に溶解する。
【0145】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびHPMCとしても公知のヒプロメロースは、経口医薬における賦形剤および制御送達構成成分として使用され、様々な市販製品に見出される、半合成の不活性な粘弾性水溶性ポリマーである。HPMCは、例えば滑らかな表面を作り出すために、そのシールコーティング効果のために使用される。他の使用では、HPMCは、外側錠剤スキン上で急速に水和して、ゼラチン質層を形成することができる。ゼラチン質層の急速な形成により、錠剤コアの内部の濡れおよび崩壊が防止される。元の保護ゲル層が形成されると、その層は、錠剤へのさらなる水の浸透を制御する。外側ゲル層が完全に水和し、溶解すると、新しい内層がそれを置き換えるが、その内層は、水の流入を遅延させ、薬物拡散を制御するのに十分に粘着性かつ連続的である。マトリックスの周りに保護ゼラチン質層を形成するための律速ポリマーには、急速な水和の後、急速なゲル化およびポリマー化(polymer)/ポリマー癒合が必要である。これは、早すぎる薬物放出をもたらす錠剤の即座の崩壊を防止する。マトリックスシステムにおける最適化された量のポリマー内容物、例えばHPMCは、溶解媒体にすぐに放出しないように薬物を保護するための均一なバリアを形成する。ポリマーレベルが低すぎると、完全なゲル層が形成されない場合がある。製剤におけるポリマーレベルが増大すると、薬物放出速度が低下する。HPMCを含有する親水性マトリックス錠剤は、水を吸収し、膨潤するので、最外側の水和層におけるポリマーレベルは、時間と共に低下する。マトリックスの最外層は、最終的に、個々の鎖がマトリックスから脱離し、バルク溶液に拡散する時点まで希釈される。ポリマー鎖は、表面濃度が巨大分子の解きほぐし(disentanglement)または表面浸食のポリマー臨界濃度を超えると、マトリックスから崩壊して離れる。マトリックス表面におけるポリマー濃度は、ポリマー解きほぐし濃度として定義され得る。
【0146】
METHOCEL(登録商標)(The Dow Chemical Co.)は、E、F、Kなどと指定されるHPMC生成物の商業ラインであり、制御放出薬物製剤のために頻繁に使用される。Methocel製品は、水中のある特定の濃度における粘度によって異なる。K15Mは、約19~24%メトキシル、約7~12%ヒドロキシプロポキシル、および10,000~18,000cP(センチポアズ)の粘度(20℃の水中2%)を有する高分子量HPMCを指す。K100LVは、約19~24%メトキシル、約7~12%ヒドロキシプロポキシル、および80~120cP(センチポアズ)の粘度(20℃の水中2%)を有する低分子量HPMCを指す。
【0147】
EUDRAGIT(登録商標)(Evonik)は、専売の標的化薬物放出コーティングであるポリメタクリレートポリマーのファミリーである。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、酸性、中性または塩基性であり得、したがって時間制御放出またはpH依存性のいずれかであり、したがって同様に、遅延放出または持続放出のいずれかであり得る。これらのポリマーは、胃腸(GI)管内の適切なpHを有する領域に達するまで薬物の崩壊を防止するために、腸溶、保護または持続放出製剤に薬物を製剤化することを可能にする。薬物は、胃腸管のその標的領域(すなわち、十二指腸、胃)に到達すると、ポリマーマトリックスから放出され、吸収され得る。
【0148】
CARBOPOL(登録商標)(Lubrizol)は、コーティング剤として使用される高分子量の架橋ポリアクリル酸ポリマーのファミリーである。Carbopolは、カルボキシル基の水和に起因して、水またはアルカリ溶液中でヒドロゲルを形成し、錠剤またはペレット製剤における放出調節剤として使用され得る。
【0149】
ナトリウムクロスカルメロース、またはクロスカルメロースナトリウムは、医薬製剤における崩壊剤として使用するための内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムであり、薬物の溶解および崩壊特徴を提供する。
【0150】
AQUACOAT ECD(登録商標)(FMC Biopolymer)は、エチルセルロース(EC)ポリマーの30%(w/w)水性分散物である。エチルセルロースは、持続放出、矯味および湿気バリア/シーラントを達成するために様々なコーティング適用で使用される、疎水性コーティング材料である。AQUACOAT(登録商標)ECDは、エチルセルロースポリマーの30重量%水性分散物である。
【0151】
緩衝剤、例えばポリエチレングリコールは、圧縮中にペレットの変形を防止するために使用され得る。
【0152】
非機能的「コーティング剤」、例えばOPADRY(登録商標)は、製剤内の薬物の放出速度を調節することなく、化粧的効果、例えば色を提供する。
【0153】
調節放出製剤
式Iの化合物は、ヒトを含めた哺乳動物の治療的処置(予防的処置を含む)において使用するために、標準薬務に従って、実施例2の手順により製剤化される。本開示は、式Iの化合物を1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む様々な製剤を提供する。調節放出薬物製剤は、血中、一定濃度の薬物を維持するために、数時間にわたって活性成分を放出する。
【0154】
製剤は、従来の溶解、ブレンドおよび混合手順を使用して調製され得る。本開示の化合物は、典型的に、容易に制御可能な薬物投薬量を提供し、処方されたレジメンへの患者のコンプライアンスを可能にするために、医薬剤形に製剤化される。
【0155】
適用のための医薬組成物(または製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に応じて、様々な方式でパッケージされ得る。一般に、流通のための物品は、医薬製剤が適切な形態でその中に置かれている容器を含む。適切な容器は、当業者に周知であり、それには、ボトル(プラスチックおよびガラス)、サシェ、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダーなどの材料が含まれる。容器はまた、パッケージ内容物に軽率に接近しないように、不正開封を防止する構築体を含み得る。さらに容器は、その上に置かれた、容器の内容物を説明するラベルを有する。ラベルは、適切な警告も含み得る。
【0156】
サルおよびミニブタにおけるMR製剤の薬物動態
図15は、ミニブタにおける製剤1~5の用量正規化された平均濃度時間プロファイルを示す。調節放出(MR)製剤は、より低い用量正規化Cmaxを示し、一般に、カプセル(API)またはIR錠剤における式Iの化合物よりも緩慢な吸収を示す。試料:ゼラチンカプセルにおけるAPI(1mg/kg)、PARTECK(登録商標)40%MR錠剤(80mg、4mg/kg)、PARTECK(登録商標)30%MR錠剤(80mg、4mg/kg)、およびEUDRAGIT(登録商標)RS/RL MUPSカプセル(1mg/kg、実施例4)。
【0157】
図16は、ミニブタにおける図15に示される製剤1~5についての用量正規化データの概要を示す。
【0158】
図17Aは、ミニブタにおける製剤1~5の平均経口濃度時間プロットを示す。カプセルにおける非コーティング薬物ペレット(IR)、ならびにKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤を、絶食させたゲッティンゲンミニブタ(N=3)のクロスオーバー設計を使用して評価した。KOLLICOAT(登録商標)ペレットは、より緩慢な吸収速度を示す。腸溶コーティングペレットは、IRペレットに類似の曝露を達成した。1.カプセルにおけるIRペレット、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、3.IV(0.5mg/kg)、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、および5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット。1mg/kgにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤は、式Iの化合物のより緩慢な吸収を示した。Tmax中央値は、非コーティングペレット、ならびにKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤について、それぞれ2.0時間、2.5時間および4.0時間であり、一方、対応するCmax値は、それぞれ0.197μM、0.0940μMおよび0.0469μMであった。
【0159】
図17Bは、即時放出およびMUPS製剤としての式Iの化合物(1mg/kg)の単回経口投与後の、ミニブタ(N=3)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。サルの場合とは対照的に、KOLLICOAT(登録商標)製剤のバイオアベイラビリティは、非コーティングペレット製剤に類似しているか、またはそれよりも低く、KOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤の相対的バイオアベイラビリティは、それぞれ86%および73%であった。全体的に、MUPS製剤は、即時放出製剤よりも緩慢な吸収速度および低いCmaxを示した。
【0160】
図18は、1mg/kgの調節放出製剤のミニブタのPKを示す。KOLLICOAT(登録商標)ペレットは、IRペレットに対して、より緩慢な吸収速度および低下されたCmaxを示す。IRと比較したKOLLICOAT(登録商標)8%のバイオアベイラビリティは、73%であった。IRと比較したKOLLICOAT(登録商標)5%のバイオアベイラビリティは、86%であった。腸溶コーティングペレットは、IRペレットに類似のCmaxおよびAUCを達成した。
【0161】
図19は、2mg/kgの調節放出(MR)製剤のカニクイザルのPKを示す。KOLLICOAT(登録商標)ペレット製剤は、より緩慢な吸収速度を示した。バイオアベイラビリティは、即時放出カプセル製剤と比較して低下した。その低下度は、ペレットコーティング%に依存して決まり、コーティング率が高いほど、低いFをもたらした。腸溶コーティングペレット製剤は、即時放出製剤(IR)と比較して改善をもたらさなかった。
【0162】
図20Aは、カニクイザル(体重およそ5kg)における製剤についてのPK研究を示す。1.カプセルにおけるIRペレット、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、3.カプセルにおけるAPI(式Iの化合物)、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット、6.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)3%ペレット。MUPS製剤は、異なる薬物放出速度を提供するように設計された、様々なレベル(3%w/w、5%w/wおよび8%w/w)のKOLLICOAT(登録商標)SR30Dポリマーでコーティングされた薬物層状化ペレットとして製剤化された式Iの化合物を含有していた。in vitro溶解結果は、in vivoでのPK研究によるさらなる特徴付けを裏付けた。MUPS製剤を、カニクイザルにおいて、クロスオーバー設計を使用して最短1週間のウォッシュアウト期間を設けて評価した。カプセル製剤における非コーティングペレット(IR)およびAPIは、即時放出速度を有する比較物として働いた。単一用量(2mg/kgの式Iの化合物)の各製剤を、絶食させた動物(n=4)に投与し、投薬後24時間にわたって時限血液試料を得た。
【0163】
絶食させたサルへの経口投与後、カプセル製剤における非コーティングペレットおよびAPIは、類似のTmax、CmaxおよびAUC0-infを達成した。KOLLICOAT(登録商標)SR30Dコーティングペレットを含有する製剤は、より長いTmaxおよび低下されたCmaxによって示される通り、2種の即時放出製剤と比較して式Iの化合物のより緩慢な吸収を示した。図20Bは、即時放出およびMUPS製剤としての式Iの化合物(2mg/kg)の単回経口投与後の、サル(N=4)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。カプセル製剤におけるAPIについてのTmax中央値は、それぞれKOLLICOAT(登録商標)3%、5%および8%製剤について2.0時間、1.75時間および7.5時間と比較して1.25時間であり、一方、対応する平均Cmax値は、それぞれ1.14μM、0.585μM、0.190μMおよび0.0660μMであった。カプセルにおけるAPIと比較した、KOLLICOAT(登録商標)3%、5%および8%製剤のAUC比に基づく相対的バイオアベイラビリティは、それぞれ84%、40%および20%であり、これにより、より緩慢な吸収速度および吸収程度の低下の組合せに起因して、より高いポリマー含量を含む2つの製剤についてCmaxが低くなったことが示された。
【0164】
図21は、コーティング段階で適用されたEUDRAGIT(登録商標)L30D55およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0165】
図22は、コーティング段階で適用されたAQUACOAT(登録商標)およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0166】
図23は、コーティング段階で適用されたKOLLICOAT(登録商標)およびCARBOPOL(登録商標)を有するカプセルにおける調節放出(MR)ペレット製剤を示す。
【0167】
図24は、40mg、80mg、100mg、106.68mgおよび160mgの式IのMR錠剤の組成を示す。
【0168】
図25は、40mg、80mg、100mg、106.68mgおよび160mgの式Iの化合物の錠剤を調製するための製造プロセスのステップを示す。
【0169】
パーキンソン病およびパーキンソニズムを処置する方法
別の態様では、本開示は、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)によって少なくとも部分的に媒介される疾患または状態を、治療有効量の式Iの化合物および本明細書に記載される賦形剤の1つまたは複数を含む調節放出製剤で処置する方法に関する。特に、本開示は、哺乳動物におけるLRRK2に関連する障害を防止または処置するための方法であって、前記哺乳動物に治療有効量の式Iの化合物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、LRRK2によって少なくとも部分的に媒介される疾患または状態は、神経変性疾患、例えば、中枢神経系(CNS)障害、例えばパーキンソン病(PD)、パーキンソニズム、アルツハイマー病(AD)、認知症(レビー小体認知症および血管性認知症を含む)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、加齢関連記憶障害、軽度認知障害(例えば、軽度認知障害からアルツハイマー病への遷移を含む)、嗜銀顆粒性疾患(argyrophilic grain disease)、リソソーム障害(例えば、ニーマン-ピックC型疾患、ゴーシェ病) 大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、第17染色体に連鎖する遺伝性前頭側頭認知症およびパーキンソニズム(FTDP-17)、薬物嗜癖と関連する離脱症状/再発、Lドーパ誘導性ジスキネジア、ハンチントン病(HD)、およびHIV関連認知症(HAD)である。他の実施形態では、障害は、それに限定されるものではないが、脳、心臓、腎臓、および肝臓を含めた臓器の虚血性疾患である。一部の実施形態では、疾患は、クローン病である。
【実施例
【0170】
(実施例1 式Iの化合物の単離および物理化学的特徴付け)
それぞれ参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第8815882号の実施例394およびEstrada, A.A et al (2013) J. Med. Chem. 57:921-936の化合物12に従って調製した式Iの化合物、2-メチル-2-(3-メチル-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンニトリル(CAS登録番号1374828-69-9)を、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、10体積、200ml)に溶解させて、褐色の溶液を得た。この溶液を3M Zeta Plus活性炭ディスク(R55SP、直径5cm)を介して3ml/分で濾過した。フィルタを、MTBE(5体積、100ml)で洗浄した。無色透明溶液(300ml)を8体積(160ml)まで濃縮し、500mlの反応器に充填した。n-ヘプタン(8体積、160ml)を20℃で添加した。最初、溶液は透明なままであったが、2分後には結晶化し始めた。温度を徐々に上昇させた(2℃/分の速度)。69℃で初めて完全な溶解が達成された。さらにヘプタン(4体積、80ml)を70℃で添加し、透明溶液を、70℃で視覚的に観察した。温度を65℃に設定した(1.0℃/分)。65℃で溶液は透明になり、式Iの化合物の種結晶(200mg、同じバッチ)を添加したが、それらは溶解しなかった。次に、温度を8時間にわたって20℃に下げた。それを20℃で一晩撹拌した。固体を濾過し、母液で2回洗浄した。それを、真空下で40℃において2時間乾燥させて、結晶性の式Iの化合物15.91g(収率79.6%)を得た。母液を蒸発乾固させて、さらなる3.47gを得た(回収率17.4%)。
【0171】
式Iの化合物の形態C多形を、n-酢酸ブチル/シクロヘキサン溶媒混合物系(n-酢酸ブチルは溶媒であり、一方シクロヘキサンは逆溶媒であった)中、液体蒸気拡散によりRTでブロック様単結晶から得た。
【0172】
式Iの化合物の形態D多形を、アセトン/n-ヘプタン(1:10、v/v)溶媒混合物系中、緩慢蒸発によりRTでブロック様単結晶から得た。
【0173】
単結晶構造の決定を、形態C単結晶または形態D単結晶から選択される無色のブロック様単結晶から行い、Paratone-N(油ベースの凍結防止剤)で包んだ。結晶を、ランダム配向でmylarループに載せ、窒素ストリームに150Kで浸漬させた。予備検査およびデータ収集を、Agilent SuperNova(登録商標)(Cu/Kαλ=1.54178Å)回折計で実施し、CrysAlisPro(登録商標)(Agilent、バージョン1.171.38.41)ソフトウェアパッケージで分析した。
【0174】
形態C単結晶のデータ収集詳細は、以下の通りである。データ収集のためのセルパラメーターおよび方向マトリックスを、CrysAlisPro(登録商標)ソフトウェアによって、4.0790°<θ<70.0660°の範囲で6568の反射の設定角を使用して読み出し、精密化した。データを150.2(2)Kで70.266°の最大回折角度(θ)まで収集した。データセットは、99.9%完全であり、19.4の平均I/σおよび0.82ÅのD min(Cu)を有していた。
【0175】
形態C単結晶のデータ削減の詳細は、以下の通りである。フレームを、CrysAlisPro(登録商標)、バージョン1.171.38.41ソフトウェアで積分した。合計12836の反射を収集し、そのうち6205が固有であった。Lorentzおよび偏光補正をデータに適用した。経験的な吸収補正を、SCALE3 ABSPACKスケーリングアルゴリズムに実装した球面調和関数を使用して実施した。この材料の吸収係数μは、この波長(λ=1.54178Å)で0.964mm-1であり、最小および最大透過は、0.80956および1.00000である。等価な反射の強度を平均化した。平均化のための一致因子(agreement factor)は、強度に基づいて2.08%であった。
【0176】
形態Cの構造は、直接法によってShelXS(商標)構造解法プログラムを使用して空間群C2/cであることが解明され(Sheldrick, G.M. (2008). Acta Cryst. A64:112-122)、ShelXS(商標)、Version 2014/7精密化パッケージを用いて、OLEX2に含有されているFに対する完全行列最小二乗法を使用して精密化した(Dolomanov, O.V., et al, (2009) J. Appl. Cryst. 42:339-341)。すべての非水素原子を、非等方的に精密化した。炭素原子上に存在する水素原子の位置を、幾何的に計算し、騎乗モデル(riding model)を使用して精密化したが、窒素原子上に存在する水素原子は、フーリエマップに従って自由に精密化した。
【0177】
形態D単結晶のデータ収集詳細は、以下の通りである。データ収集のためのセルパラメーターおよび方向マトリックスを、CrysAlisPro(登録商標)ソフトウェアによって、4.0180°<θ<70.5190°の範囲で30349の反射の設定角を使用して読み出し、精密化した。データを150Kで70.562°の最大回折角度(θ)まで収集した。データセットは、89.9%完全であり、29.3の平均I/σおよび0.82ÅのD min(Cu)を有していた。
【0178】
形態D単結晶のデータ削減の詳細は、以下の通りである。フレームを、CrysAlisPro(登録商標)、バージョン1.171.38.41ソフトウェアで積分した。合計47670の反射を収集し、そのうち11179が固有であった。Lorentzおよび偏光補正をデータに適用した。経験的な吸収補正を、SCALE3 ABSPACKスケーリングアルゴリズムに実装した球面調和関数を使用して実施した。この材料の吸収係数μは、この波長(λ=1.54178Å)で0.980mm-1であり、最小および最大透過は、0.83622および1.00000である。等価な反射の強度を平均化した。平均化のための一致因子は、強度に基づいて2.69%であった。
【0179】
形態Dの構造は、直接法によってShelXS構造解法プログラムを使用して空間群Pca2であることが解明され、ShelXS(商標)、Version 2014/7精密化パッケージを用いて、OLEX2に含有されているFに対する完全行列最小二乗法を使用して精密化した。すべての非水素原子を、非等方的に精密化した。水素原子の位置を、幾何的に計算し、騎乗モデルを使用して精密化した。
【表1】
【0180】
式Iの化合物の多形体を、ShelXT(Sheldrick, G.M. (2015). Acta Cryst. A71, 3-8)構造解法プログラム(固有位相法)を使用して解明し、OLEX2に含有されているSHELXL-2015精密化パッケージ(Sheldrick, G.M. (2015). Acta Cryst. A71, 3-8)(Fに対する完全行列最小二乗法)を使用して精密化した(Dolomanov, O. V. et al, "OLEX2:a complete structure solution, refinement and analysis program". J. Appl. Cryst. 2009, 42, 339-341)。計算されたXRPDパターンは、Mercuryから得(Macrae, C. F., et al, Appl. Cryst. (2006) 39:453-457)、結晶構造表示をDiamondによって作製した。単結晶X線回折データを、Bruker D8 VENTURE回折計(Mo/Kα放射線、λ=0.71073Å)を使用して296Kで収集した。表2は、形態CおよびDの結晶学的データおよび構造精密化を示す。
【表2】
【0181】
形態Cおよび形態Dの単結晶を調製し、単結晶X線回折(SCXRD)によって分析した。形態Cおよび形態Dの単結晶構造を決定することに成功した。
【0182】
SCXRD特徴付けにより、形態Cが、単斜晶系およびC2/c空間群で結晶化し、単位セルパラメーター{a=13.7032(3)Å、b=17.5697(4)Å、c=27.4196(6)Å;α=90°、β=91.982(2)°、γ=90°}を有することが確認された。セル体積Vを計算すると、6597.6(3)Åであった。非対称単位は、2個の分子から構成され、このことは、形態Cが無水物であることを示している。計算された形態Cの密度は、1.367g/cmである。単結晶の単位セルは、16個の分子から構成される。
【0183】
SCXRD特徴付けにより、形態Dが、斜方晶系およびPca2空間群で結晶化し、単位セルパラメーター{a=17.63410(10)Å、b=14.03430(10)Å、c=26.2102(2)Å;α=90°、β=90°、γ=90°}を有することが確認された。セル体積Vを計算すると、6486.56(8)Åであった。非対称単位は、4個の分子から構成され、このことは、形態Dが無水物であることを示している。計算された形態Dの密度は、1.390g/cmである。単結晶の単位セルは、16個の分子から構成される。
【0184】
式Iの化合物の形態C多形は、およそ6.4、15.1、21.2、25.7、および27.8の2シータ度で表される特徴的ピークを有するX線粉末回折パターンを示す。式Iの化合物の形態C多形のX線粉末回折パターンは、16.5および22.1±0.05 2シータ度におけるピークをさらに含む。
【0185】
式Iの化合物の形態C多形は、およそ6.4、8.1、8.6、8.8、9.9、10.2、12.9、13.8、15.1、15.4、16.5、19.8、21.2、22.1、23.7、25.7、および27.8の2シータ度で表される特徴的ピークを有するX線粉末回折パターンを示す。
【0186】
式Iの化合物の形態C多形は、13.6および14.8±0.05 2シータ度におけるピークを実質的に含まないX線粉末回折パターンを示す。
【0187】
式Iの化合物の形態D多形は、およそ9.2、14.0、14.8、19.7、および20.0の2シータ度で表される特徴的ピークを有するX線粉末回折パターンを示す。
【0188】
式Iの化合物の形態D多形は、およそ8.0、8.7、9.2、9.8、10.4、12.9、13.4、14.0、14.8、16.4、18.5、19.7、20.0、20.8、23.1、23.3、23.9、25.5、および25.7の2シータ度で表される特徴的ピークを有するX線粉末回折パターンを示す。
【0189】
式Iの化合物の形態D多形は、13.6±0.05 2シータ度におけるピークを実質的に含まないX線粉末回折パターンを示す。
【0190】
(実施例2 製剤化プロセス)
パート1:API薬物IR(即時放出)ペレットの製造
初期ポリマー溶液を、精製水、ヒプロメロースおよびポリビニルピロリドンを混合することによって作成する。式Iの化合物(API薬物物質)をポリマー溶液に添加し、混合する。次に、混合物をふるい分けして、薬物分散物を生成する。微結晶性セルロースの球形種コアを、流動床プロセッサーボウルに充填し、薬物分散物を、微結晶性セルロース上に噴霧する。乾燥減量(LOD)およびアッセイプロセス内対照に従って、得られた粒子をサイズ分類して、API薬物コアペレットを生成する。
【0191】
IRコーティング溶液を、精製水、ヒプロメロースおよびポリエチレングリコールを混合することによって調製する。API薬物コアペレットを、流動床プロセッサーボウルに充填し、所望の重量増加(1.5~3.0%)が達成されるまで、IRコーティング溶液を、ペレットに噴霧する。LODプロセス内対照に従って、得られた粒子をサイズ分類して、API薬物IRペレットを生成し、それをパッケージし、試験する。
【0192】
パート2:API薬物調節放出ペレット(MUPS)の製造
初期調節放出ポリマー溶液を、精製水、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンを混合することによって調製する。塊のない分散物を生成するために、タルクを溶液に添加する。その分散物に、ポリ(酢酸ビニル)分散物30%を添加し、混合する。得られた分散物を濾過して、MRコーティング分散物を生成する。API薬物IRペレットを、流動床に充填し、必要な重量増加(3~60%)が達成されるまで、MRコーティング分散物を、ペレットに噴霧する。次に、コーティングペレットを、約40℃~60℃の生成温度で約30分間~約2時間、硬化させる。乾燥減量プロセス内対照に従って、得られた粒子をサイズ分類して、API薬物MRペレットを生成し、それをパッケージし、試験する。
【0193】
パート3:API薬物MUPS(複数単位ペレットシステム)カプセルの製造
必要量のAPI薬物IRペレット(必要に応じて)に続いて、必要量のAPI薬物MRペレット(必要に応じて)を、個々に手作業で秤量して、各ゼラチンカプセルに入れた。カプセルを封止し、視覚的に評価し、秤量し、パッケージした。
【0194】
(実施例3 調節放出錠剤への式Iの化合物の製剤化)
3.1.HPMCポリマーを含む調節放出錠剤
API放出を制御するために、HPMCを含む4種の錠剤製剤を調製し、それらの錠剤は、以下の表3の構成成分を含有していた。放出速度は、HPMCポリマーの添加により調整することができる。HPMC K100LVは、HPMC(Methocel K-15MCR)単独よりも急速な放出をもたらした。
【表3】
【0195】
過剰量の親水性フュームドシリカAerosil 200を秤量し、清潔な乾燥850μMふるいに通過させ、次に1Lの粉末用ボトルに移し、重量を記録した。ボトルを、32rpmで1分間、Turbulaミキサーに入れた。過剰量のMCC、APIおよびマンニトールを秤量し、次に、清潔な乾燥600μMふるいに通過させた。必要量のMCC、APIおよびマンニトールを、粉末用ボトルに移し、重量を記録した。粉末用ボトルの内容物を、ヘラを使用して手作業により30秒間混合し、ボトルを、32rpmで5分間、Turbulaミキサーに入れた。ボトルの内容物を、清潔な乾燥600μMふるいでふるい分けした。過剰量のHPMCおよびポビドンを秤量し、次に清潔な乾燥600μMふるいに通過させた。必要量のHPMCおよびポビドンを、粉末用ボトルに移し、重量を記録した。粉末用ボトルの内容物を、ヘラを使用して手作業により30秒間混合し、ボトルを、32rpmで5分間、Turbulaミキサーに入れた。ブレンドを視覚的に検査すると塊が見られなかったので、ブレンドはふるい分けしなかった。次に、過剰量のステアリン酸マグネシウムを、清潔な乾燥600μmふるいに通過させた。ふるい分けした必要量のステアリン酸マグネシウムを、粉末用ボトルに移し、重量を記録した。ボトルを、32rpmで3分間、Turbulaミキサーに入れ、次に打錠のためのブレンドの準備ができた。打錠は、Natoli錠剤圧縮機で、4種すべての製剤について適切な深さの充填を達成するために楕円形ツール(oval tooling)を使用して達成した。
【0196】
表4の方法を使用して決定された錠剤の溶解プロファイルを、図26および27に示す。
【表4】
【0197】
3.2.PARTECK(登録商標)ポリマーを含む調節放出錠剤
2つのバッチ(SR PVAマトリックス錠剤、40mgおよびSR PVAマトリックス錠剤、120mg)を、表5に従ってSR PVAマトリックス錠剤のために製造した。
【0198】
【表5】
【0199】
API、タルクおよびAerosil 200に加えて、全微結晶性セルロースPH102の50パーセントを、同じ600μmのふるいに通過させ、1Lのボトルに収集した。ボトルをTurbulaミキサーに入れ、23rpmで5分間混合した。ポビドンK30に加えて、微結晶性セルロースPH102の残りの50%を、同じ600μmのふるいに通過させ、1Lのボトルに収集した。ボトルをTurbulaミキサーに入れ、23rpmで5分間混合した。過剰量のステアリン酸マグネシウムを、清潔な乾燥600μmのふるいに別個に通過させた。必要量のステアリン酸マグネシウムを、1Lのボトルに添加した。ボトルをTurbulaミキサーに入れ、23rpmで5分間混合した。必要量のブレンドを、スラグに圧縮するためのスラグツール(22.00mmの円形平坦ツール)のダイに溢れるように充填した。以下の等式(重量/((厚さ×380.13))/1.4)を使用して、許容される固体画分(0.60~0.70)を達成するように、必要な圧縮力を適用した。固体画分を、すべてのスラグについて計算した。標的とされた重量範囲は、2000mg±5%であった。最初の2つのスラグについて硬度を記録し、ブレンド全体をスラグに形成した。スラグを乳鉢に入れ、すりこぎを使用して、微粒子を生じないように注意しながら穏やかに粉砕して顆粒にした。粉砕したスラグを、1.18mmのふるいに通過させ、続いて850μMのふるいに通過させて、受け皿に入れた。大き過ぎる材料は、必要に応じてさらなるサイズの低減のために乳鉢およびすりこぎに戻した。このステップを、最初は1.18μMのふるいで実施し、続いて850μMのふるいで実施した。スクリーン上に保持された画分を、すべての顆粒が850μMスクリーンを通過するまで、前述の通り粉砕した。ミリングされた顆粒を秤量し、適切なサイズの琥珀色ガラス瓶に収集し、収率は、40mgの低用量製剤については85.98%であり、高用量製剤については69.07%であることが見出された。PVA(Parteck SRP80)、コロイド状無水シリカ200(Aerosil)およびタルクを、同じ600μmのふるいに通過させ、ボトルに収集した。ボトルをTurbulaミキサーに入れ、23rpmで5分間混合した。およそ110%のステアリン酸マグネシウムを、250μmのふるいに通過させ、収集して重量を記録した。過剰量のステアリン酸マグネシウムを、清潔な乾燥600μmのふるいに別個に通過させた。必要量のステアリン酸マグネシウムを、1Lのボトルに添加した。ボトルをTurbulaミキサーに入れ、23rpmで5分間混合した。必要量の錠剤ブレンドを、最初の錠剤に圧縮するために、打錠ツールのダイ(15×7mmの楕円形)に溢れるように充填した。所望の充填重量(400mg±5%)を達成するために、充填の深さを調整した。所望の硬度(12kP±2kP)を達成するために、圧縮力を調整した。錠剤の重量および厚さをチェックし、記録した(重量範囲:400mg±5%)。最初の2つの錠剤についての硬度を記録した。ブレンドを打錠して、およそ30個の錠剤を得、生成の最後にさらなる2つの錠剤から硬度を収集した。許容される錠剤を、60mLのDuma容器にパッケージした。
【0200】
表6に従って決定された錠剤の溶解プロファイルを、図28および29に示す。
【0201】
【表6】
【0202】
(実施例4 調節放出コーティングMUPSにおける式Iの化合物の製剤化)
EUDRAGIT(登録商標)RS30DおよびEUDRAGIT(登録商標)RL30Dを、9対1の比で調節放出ポリマーとして使用した。薬物層の懸濁物を、最初にAPI(250g)および水(2.1L)の均一分散物を調製し、次にそれにPEG6000(8.33g)、HPMC E5(83.33g)および水(約1L)の透明溶液を添加することによって調製した。微結晶性ビーズ(CP102、500g)の薬物層状化を、10時間30分間噴霧した後に達成した。薬物層状化生成物を、HPMC E5によるシールコーティングプロセス中、42℃で維持した。シールコーティング溶液を、ポリマーが完全に溶解するまでかき混ぜながら、HPMC E5(22.5g)粉末を水(258.8g)にゆっくり添加することによって調製した。ペレットを10分間乾燥させ、次に選別して300~425μMの間のビーズを保持し、シールコーティングされた762.3gの薬物層状化生成物を得た。
【0203】
粘着防止剤、タルク(35.0g、乾燥ポリマーに基づいて50%)、および可塑剤であるクエン酸トリエチル(TEC)(24.0g、乾燥ポリマーに基づいて50%)を、水(312.7g)に添加し、次にホモジナイザーを使用して10分間ホモジナイズした。EUDRAGIT(登録商標)RS30D(210.0g)およびEUDRAGIT(登録商標)RL30D(23.3g)を、低せん断速度で10分間かき混ぜた。賦形剤の懸濁物を、従来の撹拌装置で30分間穏やかに撹拌しながらEUDRAGIT(登録商標)分散物にゆっくり注いだ。最終懸濁物を、0.25mmのふるいメッシュサイズを使用して濾過した。懸濁物を、コーティングプロセス全体を通して緩慢な速度で混合下に維持した。このプロセスを使用して、5%w/w、10%w/w、および15%w/wコーティングを有するペレットを調製した。15%w/wコーティングを有する製剤を、ミニブタに投与した。
【0204】
次に、経時的な薬物放出を測定した。式Iの化合物の製剤を、pH3のクエン酸-リン酸緩衝液としても公知の、クエン酸およびリン酸水素二ナトリウムから構成されたマッキルベイン緩衝液に溶解させた。API(80mg)、シールコーティングされた薬物層状化ペレット、5%w/w、10%w/w、および15%w/wコーティングペレットの溶解速度の比較を、図31に示す。
【0205】
(実施例5 カニクイザルPK研究)
外科的に移植したCSF収集ポートを有するカニクイザルを飼育し、試験施設IACUC指針およびSOPに従ってケアを施した。
【0206】
全血収集および血漿処理(薬物動態):血液試料を、直接針穿刺により適切な時点で末梢静脈から収集した(以下参照)。全血を、試験施設SOPに従って血漿を処理するまで湿潤氷上に置いた。血漿を、分析実験室に運搬するまで、研究完了時にドライアイス上で-80℃で保存した。
【0207】
薬力学のための全血収集:血液試料を、直接針穿刺により適切な時点で末梢静脈から収集した。全血100μL(マイクロリットル)を、1.5mLのスナップキャップ管にピペットで入れ、液体窒素で急速凍結させ、出資者に運搬するまで、研究完了時にドライアイス上で-80℃で保存した。
【0208】
CSF収集:CSF試料を、皮下ポートを介してアクセスされる留置髄腔内カテーテルから、無菌技術を使用して収集した。ポートにアクセスし、約180μLの流体を、CSF収集の前にラインから除去した。CSFを、赤血球の存在について速やかに評価し、微量遠心機で、2000gで室温において10分間スピンし、上清をアリコートに分け、LN2で急速凍結し、出資者に運搬するまで、研究の終了時にドライアイス上で-80℃で保存した。CSF収集後、ポート/カテーテルを、約140μLの滅菌0.9%塩化ナトリウム溶液でロックした。
【0209】
CSFにポートしたカニクイザルの薬物動態研究:投薬の初日前に、すべての動物(n=16)に、ビヒクル(逆浸透水中0.5w/v%メチルセルロース、0.1w/v%Tween(登録商標)80)を1日1回、5日間経口投薬した。投薬初日に開始して、動物10匹は、1日1回の経口用量の式Iの化合物の製剤を3日間または7日間受け、一方、残りの動物は、ビヒクルを毎日、3日間または7日間投薬され続けた。投薬前に一晩および投薬後少なくとも1時間(3時間は超えない)、動物には食餌を控えさせた。
【0210】
3種のMUPSカプセル製剤を、カニクイザル(体重およそ5kg)で評価した。MUPS製剤は、異なる薬物放出速度を提供するように設計された様々なレベル(3%w/w、5%w/wおよび8%w/w)のKOLLICOAT(登録商標)SR30Dポリマーでコーティングされた薬物層状化ペレットとして製剤化された式Iの化合物を含有していた。in vitro溶解は、in vivoでのPK研究によるさらなる特徴付けを裏付けた。MUPS製剤を、カニクイザルにおいて、クロスオーバー設計を使用して最短1週間のウォッシュアウト期間を設けて評価した。カプセル製剤における非コーティングペレットおよびAPIは、即時放出速度を有する比較物として働いた。単一用量(2mg/kgの式Iの化合物)の各製剤を、絶食させた動物(n=4)に投与し、投薬後24時間にわたって時限血液試料を得た。図20Aは、カニクイザルにおける製剤についてのPK研究を示す。1.カプセルにおけるIRペレット、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、3.カプセルにおけるそのままのAPI(式Iの化合物)、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット、6.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)3%ペレット。
【0211】
絶食させたサルに経口投与した後、非コーティングペレットおよびPIC製剤は、類似のTmax、CmaxおよびAUC0-infを達成した。KOLLICOAT(登録商標)SR30Dコーティングペレットを含有する製剤は、より長いTmaxおよび低下されたCmaxによって示される通り、2種の即時放出製剤と比較して、より緩慢な式Iの化合物の吸収を示した。図20Bは、即時放出およびMUPS製剤としての式Iの化合物(2mg/kg)の単回経口投与後の、サル(N=4)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。カプセル製剤におけるAPIのTmax中央値は、それぞれKOLLICOAT(登録商標)3%、5%および8%製剤の2.0時間、1.75時間および7.5時間と比較して1.25時間であり、一方、対応する平均Cmax値は、それぞれ1.14、0.585、0.190および0.0660μMであった。カプセルにおけるAPIと比較した、KOLLICOAT(登録商標)3%、5%および8%製剤のAUC比に基づく相対的バイオアベイラビリティは、それぞれ84%、40%および20%であり、これによって、より高いポリマー含量を有する2種の製剤についてより低いCmaxが、より緩慢な吸収速度および吸収度の低下の組合せに起因することが示された。
【0212】
(実施例6 ミニブタPK研究)
ミニブタ被験体からの採血は、実施例5のカニクイザル被験体と同様であった。
【0213】
カプセルにおける非コーティング薬物ペレット、ならびにKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤を、絶食させたゲッティンゲンミニブタ(N=3)においてクロスオーバー設計を使用して評価した。図17Aは、ミニブタにおける製剤1~5の平均経口濃度時間プロットを示す。KOLLICOAT(登録商標)ペレットは、より緩慢な吸収速度を示す。腸溶コーティングペレットは、IRペレットに類似の曝露を達成した。1.カプセルにおけるIRペレット、2.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)8%ペレット、3.IV(0.5mg/kg)、4.カプセルにおける腸溶コーティングペレット、および5.カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%ペレット。1mg/kgにおけるKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤は、式Iの化合物のより緩慢な吸収を示した。Tmax中央値は、非コーティングペレット、ならびにKOLLICOAT(登録商標)5%および8%製剤について、それぞれ2.0時間、2.5時間および4.0時間であり、一方、対応するCmax値は、それぞれ0.197μM、0.0940μMおよび0.0469μMであった。図17Bは、即時放出およびMUPS製剤としての式Iの化合物(1mg/kg)の単回経口投与後の、ミニブタ(N=3)における式Iの化合物の平均濃度時間プロットを示す。
【0214】
(実施例7 MUPSペレット)
80mgの式Iの化合物を含有するMUPSペレットを、先の実施例に従って調製した。非コーティングペレットと比較して5%、7%、および9%の重量増加のKOLLICOAT(登録商標)SR30Dコーティングを有するペレットは、表7に示される溶解プロファイルを有することが見出された。調節放出ポリマーでコーティングされていないMUPSペレットの溶解プロファイルを、表8に示す。5%および7%KOLLICOAT(登録商標)SR30Dコーティングの構成成分および薬物層状化ステップを、表9および10に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0215】
(実施例8 調節放出錠剤)
80mgの式1の化合物(API)を含有する錠剤を、表11および12に示される通りPVAまたはHPMC放出調節剤を用いて調製した。それらの溶解プロファイルを、表13に示す。比較として、カプセル製剤におけるAPI(賦形剤を全く添加していないゼラチンカプセルにおける、80mgの式Iの化合物)の溶解プロファイルを、表14に示す。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0216】
(実施例9 ヒトにおいて調節放出製剤を調査するための薬物動態(PK)およびバイオアベイラビリティ研究)
上記の実施例に記載される調節放出(MR)製剤の特定のもののin vivoヒトバイオアベイラビリティを、健康なボランティアのバイオアベイラビリティおよび薬物動態研究において、クロスオーバー設計を使用して最短1週間のウォッシュアウト期間を設けて評価した。カプセル内API製剤としての式Iの化合物の即時放出(IR)製剤を、比較物および参照として使用した。単一の80mg用量の式Iの化合物を、カプセルにおけるAPI、カプセルにおけるKOLLICOAT(登録商標)SR30D 5%ペレット、またはカプセル製剤におけるKOLLICOAT(登録商標)SR30D 7%ペレットとして、絶食させたヒト被験体に与えた。時限血液試料を、投薬後72時間にわたって得た。上記の投薬期間を、所望に応じて上記の製剤のそれぞれについてPKおよびバイオアベイラビリティデータを獲得するために反復した。被験体から血液試料を一定間隔で採取した。PKパラメーターを、標準技術を使用して測定した。安全性臨床検査(血液学、臨床化学および尿検査)、生命徴候、ECG、身体検査および任意の有害事象(AE)の評価を含めた、投薬後の安全性に関する追加の測定を行った。試験した製剤のPK性質を、以下の表に示す。
【表15】
【0217】
カプセル製剤におけるMUPSのKOLLICOAT(登録商標)SR30D 5%および7%ペレットは、即時放出製剤と比較して低下されたCmaxおよびCmax/C12hrを示し、十分に認容性であり、生体利用可能であることが見出された。
【0218】
2種の錠剤製剤を、類似の研究設計で健康なヒトボランティアで評価した。HPMC(80mg)およびPVC(80mg)錠剤を、投薬後72時間にわたって得た時限血液試料を用いてクロスオーバー式で研究した。カプセル製剤におけるAPI(80mg)は、比較物として働いた。絶食した健康な被験体と比較してCmaxの低下を達成したHPMCおよびPVA錠剤の経口投与は、十分に認容性であり、生体利用可能であることが見出された。
【表16】
【0219】
全体的に、臨床研究により、調節放出カプセルおよび錠剤が十分に認容性であり、より低いCmaxおよび低下されたCmax/C12hrを達成する一方、経口バイオアベイラビリティ(カプセルにおけるAPIと比較して30%超の相対的経口バイオアベイラビリティ)を維持することが実証された。脈拍数または血圧に対する臨床的に著しい影響は、観察されなかった。Cmaxを低下すると同時に経口バイオアベイラビリティを維持する製剤は、より高度なおよび/または低減された投薬頻度を可能にし、より高い耐用性および安全性を提供することができる。
【0220】
先の本発明を、理解を明確にする目的で図解および例示によっていくらか詳細に説明してきたが、その説明および例示は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。したがって、すべての適切な修正形態および等価物が、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれるとみなされ得る。本明細書に引用されたすべての特許文献および科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に明確に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【国際調査報告】