(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】パッシブ曲げモードを備えたアクティブ制御の操縦可能医用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20220803BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20220803BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20220803BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20220803BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B34/20
A61M25/092 500
A61B1/005 523
B25J17/00 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570737
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020034898
(87)【国際公開番号】W WO2020243285
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド マシュー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
【テーマコード(参考)】
3C707
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS17
3C707HS26
3C707HS27
3C707JT02
3C707KS33
3C707KV06
3C707KW03
4C161HH47
4C267AA05
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB07
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC21
4C267HH08
(57)【要約】
内視鏡やカメラ、切除ツール、カテーテル等、ロボット制御医療手順下で誘導型ツール及びデバイスと併用されるように構成された、操縦可能医用器具用の装置、方法及びシステム。一実施形態では、操縦可能器具は、細長体(100)と、細長体のチャネル(104)内に配置されるとともに、細長体を曲げるようにチャネルに沿って変位可能である制御ワイヤ(110)と、アクティブ制御モード下とパッシブ制御モード下で制御ワイヤ(110)に加えられた駆動力を選択的に制御するコントローラ(320)とを含む。アクティブ制御モードでは、コントローラは、細長体の少なくとも一部を能動的に曲げる。パッシブ制御モードでは、コントローラ(320)は、制御ワイヤが外力に適合するように、制御ワイヤのひずみの量又は変位の量を低減する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非湾曲可能セクション及び少なくとも1つの湾曲可能セクションを有する細長体であって、長手方向軸に沿って前記細長体の近位端から遠位端まで延びる複数のチャネルを含む、細長体と、
前記細長体の第1のチャネル内に配置された制御ワイヤであって、前記非湾曲可能セクション及び前記少なくとも1つの湾曲可能セクションを通って延び、前記少なくとも1つの湾曲可能セクションに取り付けられる、制御ワイヤと、
前記制御ワイヤのひずみの量又は変位の量を測定するように構成されたセンサと、
前記制御ワイヤに機械的に結合されたアクチュエータであって、前記制御ワイヤに駆動力を加えることにより、前記細長体の前記少なくとも1つの湾曲可能セクションを作動させるように構成された、アクチュエータと、
前記アクチュエータによって加えられた前記駆動力以外の前記制御ワイヤに加えられる外力に基づいて、又は、ユーザ入力に基づいて、アクティブ制御モード下とパッシブ制御モード下で交互に前記操縦可能器具の作動を制御するように構成されたコントローラと、
を備える、操縦可能医用器具。
【請求項2】
前記パッシブ制御モードでは、前記制御ワイヤが前記アクチュエータから切り離されているかのように前記制御ワイヤが完全にパッシブであるように、前記コントローラは、前記アクチュエータ自体を、前記制御ワイヤに加えられた前記駆動力とは反対の方向に動くように制御する、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項3】
前記アクティブ制御モードでは、前記コントローラは、前記制御ワイヤを第1の方向に変位させることによって前記細長体を能動的に曲げるために、前記制御ワイヤに前記駆動力を加えるように前記アクチュエータを制御し、前記センサは、前記制御ワイヤに加えられた前記ひずみの量か、又は前記駆動力によって及ぼされた前記制御ワイヤの前記変位の量を示す第1の信号を出力する、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項4】
前記パッシブ制御モードでは、前記制御ワイヤが完全にパッシブであるとともに、前記制御ワイヤが前記アクチュエータから切り離されているかのように前記外力によって動かされることが可能であるように、前記コントローラは、前記制御ワイヤに対する前記駆動力の付加を停止するように前記アクチュエータを制御する、
請求項3に記載の操縦可能医用器具。
【請求項5】
前記パッシブ制御モードにおいて、前記センサは、前記制御ワイヤにかかる前記外力を示す第2の信号を出力するように構成され、
前記コントローラは、前記センサから出力された前記第2の信号を用いて、前記アクチュエータに、前記制御ワイヤに加えられた前記ひずみの量を低減させるか、又は前記制御ワイヤの前記変位の量を低減させる、
請求項3に記載の操縦可能医用器具。
【請求項6】
前記パッシブ制御モードにおいて、前記コントローラは、制御ワイヤに加えられた前記ひずみの量が無視できる程度になるまで、又は、前記制御ワイヤの前記変位の量が実質的にゼロになるまで、前記アクチュエータに、前記制御ワイヤに加えられた前記駆動力を低減させる、
請求項5に記載の操縦可能医用器具。
【請求項7】
前記パッシブ制御モードでは、前記制御ワイヤが前記アクチュエータから切り離されているかのように前記制御ワイヤが完全にパッシブであるように、前記コントローラは、前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記制御ワイヤを動かすように前記アクチュエータを制御する、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項8】
前記センサは、前記制御ワイヤに対する前記ひずみの量を測定するひずみゲージと、前記アクティブ制御モード及び前記パッシブ制御モードには関係なく前記制御ワイヤの前記変位の量を測定するエンコーダとを含む、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項9】
前記アクティブ制御モードにおいて、前記センサは、前記駆動力によって前記制御ワイヤに加えられた前記ひずみの量と、前記外力によって加えられたひずみの量とを測定するように構成され、
前記コントローラは、前記外力によって加えられた前記ひずみの量に基づいて、前記アクティブ制御モードを停止し、前記パッシブ制御モードに入る、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項10】
前記アクティブ制御モードにおいて、前記コントローラは、前記ユーザから、前記操縦可能器具の異常を示す入力信号を受け取るように構成され、
前記コントローラは、ユーザによって入力された前記信号に基づいて、前記アクティブ制御モードを停止し、前記パッシブ制御モードに入る、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記制御ワイヤに直接結合された直接駆動モータを含む、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項12】
前記直接駆動モータは、前記制御ワイヤに直接接続されたリニアモータであり、
前記コントローラは、前記外力に基づくコマンド信号を用いて、前記制御ワイヤに対して実質的に無視できる力をかけるように前記リニアモータを制御し、
実質的に無視できる力を有するように前記リニアモータが命令されたとき、前記制御ワイヤに加えられた前記外力が、前記リニアモータの移動台車を変位させ、それにより、前記制御ワイヤに加えられたひずみ力を除去する、
請求項11に記載の操縦可能医用器具。
【請求項13】
前記アクチュエータは、可動台車及び固定子を有するリニア超音波モータを含み、
前記コントローラは、前記センサから出力された前記信号か、又は前記ユーザによって入力された前記信号を用いて、前記可動台車と前記固定子の間の接触を最小化するように前記超音波モータを制御し、それにより、前記制御ワイヤからの力によって前記可動台車を変位させ、前記制御ワイヤに加えられたひずみ力を除去する、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項14】
前記パッシブ制御モードでは、前記センサが、前記制御ワイヤの測定された前記ひずみの量又は変位の量に基づく位置フィードバック信号及び/又は力フィードバック信号を出力し続けている間、前記コントローラは、前記アクチュエータに前記制御ワイヤを駆動させて、前記制御ワイヤが完全にパッシブであるとともに、前記制御ワイヤが前記アクチュエータから切り離されているかのように前記外力によって動かされるようにする、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項15】
前記アクティブ制御モードでは、前記少なくとも1つの湾曲可能セクションは、管腔内の蛇行進路を通って挿入方向及び引抜き方向に駆動されるように構成され、
前記パッシブ制御モードでは、前記コントローラは、前記アクチュエータに、前記挿入方向及び/又は引抜き方向に実質的に無視できるひずみをもつように前記制御ワイヤを駆動させる、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項16】
前記パッシブ制御モードでは、前記コントローラは、前記アクチュエータに、前記制御ワイヤが前記アクチュエータに接続されたままである一方で前記細長体を作動させることなく、前記第1のチャネルに沿って前記制御ワイヤを自由に並進させる、
請求項1に記載の操縦可能医用器具。
【請求項17】
アクティブ制御モード下とパッシブ制御モード下で交互に操縦可能医用器具を制御するための方法であって、前記医用器具は、非湾曲可能セクション及び少なくとも1つの湾曲可能セクションを有する細長体であって、長手方向軸に沿って前記細長体の近位端から遠位端まで延びる複数のチャネルを含む、細長体と、前記細長体のチャネル内に配置された制御ワイヤであって、前記非湾曲可能セクション及び前記少なくとも1つの湾曲可能セクションを通って延び、前記少なくとも1つの湾曲可能セクションに取り付けられる、制御ワイヤと、を備え、前記方法は、
アクチュエータにより、前記細長体の前記少なくとも1つの湾曲可能セクションを曲げるように前記制御ワイヤを駆動するステップと、
センサによって前記制御ワイヤを検知し、前記制御ワイヤに加えられたひずみの量か、又は前記制御ワイヤの変位の量を示す信号を出力するステップと、
前記制御ワイヤに加えられた前記駆動力以外の外力に基づいて、又は、ユーザ入力に基づいて、アクティブ制御モード及びパッシブ制御モードに従って前記アクチュエータの動作を制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記アクティブ制御モード下では、前記制御するステップは、前記細長体を能動的に曲げるために前記制御ワイヤに駆動力を加えるためのコマンド信号を用い、
前記パッシブ制御モード下では、前記制御ワイヤが完全にパッシブであり、前記制御ワイヤが前記アクチュエータから切り離されているかのように前記外力によって動かすことが可能であるように、前記制御するステップは、前記センサから出力された前記信号を用いて、前記制御ワイヤに加えられた前記ひずみの量か、又は、前記制御ワイヤの前記変位の量を実質的にゼロまで低減するように前記制御ワイヤを駆動する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アクティブ制御モードにおいて、前記制御するステップは、
前記ユーザから、前記操縦可能器具の異常を示す入力信号を受け取るステップと、
ユーザによって入力された前記信号に基づいて、前記アクティブ制御モードを停止し、前記パッシブ制御モードに移行するステップと、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
コンピュータ実行可能命令を格納している非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、コンピュータに、請求項17に記載の方法に従って操縦可能医用器具を制御させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2019年5月31日に提出された米国仮特許出願第62/855354号に対する優先権を主張し、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概してロボット医用デバイスに関する。より詳細には、本開示は、管腔内の蛇行進路を通るインターベンション用のツール及び器具(ロボット内視鏡やカテーテル等)の誘導に適用可能である制御可能な剛性をもつ多関節の操縦可能医用デバイスの様々な実施形態を例示する。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医用器具がよく知られており、受け入れられ続けている。このような湾曲可能医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる細長い軟性の管を含み、これは、近位端から遠位端まで延びる開口を有する。シースに沿って(典型的は、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、シースの遠位端に位置するエンドエフェクタへのアクセスを可能にする。内視鏡は、軟性シャフトの遠位端にイメージング、照明及び操縦の機能を備えることができ、人体内の直線的でない管腔や蛇行経路のナビゲーションを可能にしている。このタイプの医用器具は、医師が器具の近位端を操作することによって、遠位端に位置するエンドエフェクタを制御できるように、ねじり剛性と長手方向の剛性を維持しながら対象の病変領域にアクセスするために、少なくとも1つ又は複数のカーブを備えた柔軟なアクセスを提供することになっている。
【0004】
到達困難な対象の病変領域にアクセスするために操縦可能な医用内視鏡ツールを主に使用する低侵襲手術(MIS)や経管腔的内視鏡手術(NOTES)において、医用器具設計のいくつかの要件は、(1)湾曲可能医用器具の外寸(外径)を最小化し、(2)ツールチャネルの開口のサイズ(内径)を最大化し、(3)患者に痛みや不快感を与えることなく蛇行経路を進むために、適切な柔軟性(又は剛性)を提供することである。したがって、サイズを最適化するには、湾曲可能医用器具は、好ましくは壁厚が最小であるシースを含む必要があり、また、患者の不快感を最小限に抑えるには、湾曲可能医用器具は、好ましくは、全体外径が最小である必要がある。同時に、このような細く繊細な湾曲可能医用器具は、その長手方向軸の方向での挿入及び引戻しや、長手方向軸を中心とした回転(軸方向回転)、複数方向及び/又は器具の複数セクションでの径方向の曲げ等、複数方向の動きについて操縦可能であるように、十分な剛性と柔軟性を提供する必要がある。最近では、管腔内の蛇行進路に沿った操縦可能医用器具の操縦性を向上させるために、剛性とナビゲーションを制御できるロボット化器具が登場している。既知のロボット化器具では、操縦可能器具の遠位部分で局所的に曲がってカーブを作り出すために、特許文献と非特許文献において異なる技術が開示されている。
【0005】
例として、米国付与前特許出願公開第20160067450号には、入れ子状のコンジットを備えた軟性器具が記載されており、これは、駆動腱が湾曲可能医用器具の遠位部を曲げている間に近位部の形状を保持するために、複数のコンジットを提供する。複数のコンジットは、コンジットの近位端が拘束されている状態と拘束されていない状態で2元的に制御されることになる。拘束されたコンジットを選択することにより、湾曲可能医用デバイスは、コンジットが展開された面積に基づいて湾曲可能医用デバイスの硬さを変えることによって、遠位セグメントを曲げる長さを変えることができる。
【0006】
米国付与前特許出願公開第20100280449号には、医用デバイスの挿入中に制御セクションを経路のカーブに合わせるために、操縦可能セクションの部分から作動力を分離することが可能な、複数の独立したセクションを備えた操縦可能器具が開示されている。米国第20100280449号には、操縦可能カテーテルである「第1の部分」と、操縦可能シースである「第2の部分」を備えた操縦可能器具が開示されている。各部分は独立して制御され、また、各部分を経路に合わせるために、関節運動又は操縦の力から分離することができる。次に、第1の部分を再び作動し、第2の部分のカーブの周りで第2の部分を通して挿入することができる。この文献は、肺気道を通して操縦可能器具を挿入する際の、選択された部分における関節運動又は操縦の力の分離に着目している。
【0007】
米国付与前特許出願公開第20140276594号には、操縦可能器具が制御ワイヤによって制御されるロボット手術システムが開示されている。制御ワイヤはプーリによって作動され、プーリに対するトルクは、トルクセンサによって測定される。プーリに対するトルクは、制御ワイヤの引張に変換される。この文献では、制御ワイヤはプーリに対してのみ引っ張ることができるので、引張のみを検知することができる(すなわち、制御ワイヤをプーリに押し付けることにより、制御ワイヤがプーリからほどけることになる)。米国特許第8644988号には、遠位関節の位置決めと近位アクチュエータの間に無視できない適合性のある(すなわち、たるみのない)カテーテル等の医用器具の操縦に、力とフィードバック制御を用いる操縦可能医用器具が開示されている。
【0008】
Blancらによる非特許文献“Flexible Medical Devices:Review of Controllable Stiffness Solutions”(Actuators 2017,6,23;doi:10.3390/act6030023)と、Loeveらによる非特許文献“Scopes Too Flexible…and Too Stiff”(IEEE Pulseに公開された記事、2011年1月、DOI:10.1109/MPUL.2010.939176)には、両方とも、数多くの設計上の課題と、制御可能な柔軟性及び/又は剛性を備えた操縦可能医用デバイスを提供するための解決策の案が記載されている。
【0009】
しかしながら、一般的な最先端技術(特に上記の例示的な文献)は、必要に応じて操縦可能器具の特定のレベルの柔軟性が望まれる典型的なワークフロー又は手順における特定の状況に対処していない。より具体的には、既知の以前の文献には、制御ワイヤに対する引張がゼロになるアクティブ制御のパッシブ曲げモード(特定の状況において望ましい)を備えた操縦可能器具が開示されていない。
【発明の概要】
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、アクティブ制御のパッシブ曲げモードを備えた操縦可能医用器具が提供される。本開示の一態様によれば、操縦可能医用器具は、以下を備える:細長体であって、長手方向軸と、近位端と、遠位端と、細長体に沿って配置された複数のチャネルとを有し、非湾曲可能セクション及び少なくとも1つの湾曲可能セクションを有する、細長体;細長体のチャネル内に配置されるとともに、非湾曲可能セクション及び少なくとも1つの湾曲可能セクションを通って延びる制御ワイヤであって、少なくとも1つの湾曲可能セクションの遠位端に固定され、長手方向軸に関してある角度で細長体を曲げるようにチャネルに沿って摺動可能であるように構成された、制御ワイヤ;その近位端で制御ワイヤに動作可能に接続された駆動ユニット;制御ワイヤに加えられたひずみの量か、又は制御ワイヤの距離変位の量を示す信号を出力するように構成されたセンサ;及び、アクティブ制御モードとパッシブ制御モードの一方において、駆動ユニットに、制御ワイヤに駆動力を選択的に加えさせるように構成されたコントローラ。アクティブ制御モードでは、コントローラは、コマンド信号を用いて、蛇行進路を進むように細長体を曲げるために、駆動ユニットに駆動力を加えさせる。パッシブ制御モードでは、コントローラは、センサから出力された信号を用いて、駆動ユニットに、制御ワイヤに加えられたひずみの量を低減させるか、又は、制御ワイヤの距離変位の量を低減させる。
【0011】
本開示の別の態様によれば、操縦可能医用器具は、以下を備える:非湾曲可能セクション(102)及び少なくとも1つの湾曲可能セクション(103)を有する細長体(100)であって、長手方向軸(Ax)に沿って細長体(100)の近位端から遠位端まで延びる複数のチャネル(104、105)を含む、細長体;細長体(102)の第1のチャネル(104)内に配置された制御ワイヤ(110)であって、非湾曲可能セクション及び少なくとも1つの湾曲可能セクションを通って延び、少なくとも1つの湾曲可能セクションに取り付けられる、制御ワイヤ(110);制御ワイヤ(110)のひずみの量又は変位の量を測定するように構成されたセンサ(221、231);制御ワイヤ(110)に機械的に結合されたアクチュエータ(310)であって、制御ワイヤに駆動力を加えることにより、細長体(100)の少なくとも1つの湾曲可能セクション(103)を作動させるように構成された、アクチュエータ(310);及び、制御ワイヤに加えられた駆動力以外の外力に基づいて、アクティブ制御モード及びパッシブ制御モードに従ってアクチュエータ(310)の動作を制御するように構成されたコントローラ(320)。
【0012】
本開示の様々な態様によれば、操縦可能医用デバイスは、アクティブ制御のパッシブ曲げモードを提供することによって著しく改善され、それにより、(1)操縦可能器具に最大の柔軟性が必要であるときに、制御ワイヤでの力がゼロになり、(2)採用される制御モードに関わらず、制御ワイヤ110の力及び変位が連続的にモニタリングされ、(3)蛇行進路を通って進むときであっても、操縦可能器具での摩擦が最低限に抑えられ、(4)制御ワイヤの近位端が、その対応するアクチュエータにアクティブに接続されたままで自由に並進できるようになる。
【0013】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
【
図1】
図1Aは、アクティブ制御のパッシブ曲げモードを用いるカテーテル支援又は内視鏡支援の低侵襲手術(MIS)に適用可能な連続体ロボットシステム1000の例示の実施形態を示す図である。
図1Bは、細長い軟性シャフト(細長体)と、その近位端から遠位端まで延びる複数のチャネル又は開口とを有する操縦可能器具100を、より詳細に示す図である。
【
図2】
図2Aは、2つの湾曲セクションをもつ例示の操縦可能器具100の斜視図である。
図2Bは、制御ワイヤを誘導するためのスルーホール(ガイド穴)を備えた代表的なガイド部材の斜視図である。
図2Cは、操縦可能器具100の単一の湾曲セクション106の曲げ又は操縦の例を示す図である。
【
図3】
図3は、本明細書では「力制御ループ」の実装と呼ぶ、アクティブ制御のパッシブ曲げモードの例示の実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、本明細書では「無摩擦直接駆動」の実装と呼ぶ、操縦可能器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードの例示の実施形態を示す図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、無摩擦軸受を備えた誘導モータによって実装される無摩擦直接駆動構成の例示の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6A、
図6B及び
図6Cは、超音波モータによって実装される無摩擦直接駆動構成の別の例示の実装を示す図である。
【
図7】
図7Aは、本開示に係る操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するように構成された制御システム1500の例示のブロック図である。
図7Bは、制御システム1500のモータコントローラ1504を動作させるか、又はモータコントローラ1504の一部であり得るコンピュータ1600の機能ブロックを示す図である。
【
図8】
図8は、フィードバック力制御ループを備えた操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するための例示のフローチャートである。
【
図9】
図9は、無摩擦直接駆動を備えた操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するための例示のフローチャートである。
【
図10】
図10Aは、操縦可能器具に最大の柔軟性が必要な場合に、制御ワイヤでの力をゼロまで低減することによって制御ワイヤが外力に適合するように、駆動ユニットに、制御ワイヤに加えられたひずみ又は圧縮の量を低減させるか、又は、制御ワイヤの距離変位の量を低減させるためのアルゴリズムを実装する例示のフローチャートである。
図10Bは、アクティブ制御モード及びパッシブ制御モードの下で操縦可能器具100を動作させるためのユーザ起動制御のシナリオの例示プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、本明細書に開示される実施形態を詳細に説明する。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0017】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【0018】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0019】
本開示は、概して医用デバイスに関し、管腔内の蛇行進路を通る誘導型のインターベンション用のツール及び器具(内視鏡やカテーテル等)に適用可能である制御可能な剛性をもつ多関節の操縦可能医用デバイスの様々な実施形態を例示する。本開示の実施形態は、ロボットシステムの一部として構成することができるが、当業者には当然のことながら、本明細書に開示される操縦可能器具は、ロボットシステムを必要としない類似の用途に利用されてもよい。
【0020】
操縦可能医用器具及びその部分の実施形態を、3次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0021】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のうちユーザに近い部分を指し、「遠位」という用語は、器具のうち、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い部分を指す。
【0022】
<操縦可能医用デバイスの構成>
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、コンピュータシステム400(例えばコンソール)と、ロボット制御システム300と、ハンドルインタフェース200を介して制御システム300に接続された操縦可能器具100とを含む、連続体ロボットシステム1000の全体構造を示す。操縦可能器具100は、近位の非操縦可能セクション102と、カテーテル又は内視鏡を用いた低侵襲医療措置に適用可能な複数の湾曲セクションから成る操縦可能セクション103とを有する。具体的には、
図1Aはロボット制御操縦可能器具100を示し、該操縦可能器具100は、長手方向軸Axに沿って配置された複数の湾曲セグメント又はセクション(1、2、3、…N)に分割される操縦可能セクション103を有し、操縦可能セクションの少なくとも1つを長手方向軸Axに関して角度βに曲げるように構成される。
【0023】
操縦可能器具100は、ハンドルインタフェース200及び制御システム300から成る作動システムによって制御される。制御システム300は、概して、コントローラを含むか、又は、プロセッサ又は中央処理装置(CPU)410によって動作させられる適切なソフトウェア、ファームウェア及び周辺ハードウェア(後述する)とともに、コンピュータシステム400に接続される。数ある機能の中でも、制御システム300及びコンピュータシステム400は、外科医その他の操作者に、操縦可能器具100と相互作用し操作するための画像ディスプレイ420及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)422を提供することができる。ハンドルインタフェース200は、操縦可能器具100と制御システム300の間の電気機械的相互接続を提供する。例えば、ハンドルインタフェース200は、機械接続、電気接続及び/又は光学接続と、操縦可能器具100を制御システム300とインタフェース接続するためのデータ/デジタル取得(DAQ)システムとを提供することができる。また、ハンドルインタフェース200は、医用ツールを挿入するためのアクセスポート250と、操作者がエンドエフェクタの動作及び/又は器具の操縦を手動制御する際に使用できる1つ以上の機械的ダイヤル又はノブ252と、1つ以上の制御ボタン及びステータスインジケータを有するユーザインタフェース254とを提供することができる。
【0024】
ユーザインタフェース254の一部として、ハンドル200は、ロボット操縦可能器具100の動作ステータスをユーザに提供するために、LEDを含んでよい。一実施形態では、LEDは、例えば、それぞれ正常動作(緑色の光)と異常動作(赤色の光)を示すための異なる光の色を含んでよい。或いは、LEDは、例えばある種の異常動作を示すために、点滅するコードを含んでよい。更に、ユーザインタフェース254は、緊急時に手動で操縦可能器具の作動を停止するために、緊急オン/オフスイッチを含んでよい。
【0025】
図1Bは、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる細長い軟性シャフト(細長体)を有する操縦可能器具100をより詳細に示す。シートは、非操縦可能セクション102と、複数の湾曲セグメントから成る操縦可能セクション103とから形成されている。操縦可能器具100の長手方向軸Axに沿って、1つ又は複数のチャネル又は開口が近位端から遠位端へ延びている。開口又はチャネルのうち、シースは、シースの壁に沿って(典型的には、内側に)延びる1つ以上のツールチャネル105と、シースの壁に沿って(典型的には、壁内に)延びる複数のワイヤコンジット104とを含んでよい。1つ以上のツールチャネル105により、操縦可能セクション103の遠位端に送達され位置付けられるエンドエフェクタへのアクセスが可能となる。また、1つ以上のチャネル105は、液体又は気体の物質(例えば空気や水)を標的エリアに送り又は回収するために、或いは、光ファイバ及び/又は電線を通すために、用いることができる。更に、1つ以上のチャネル105は、医用イメージングデバイス180(内視鏡カメラやファイバベースのイメージングプローブ等)を挿入するために用いることができる。内視鏡カメラの例としては、イメージングデバイスの先端に配置されたミニチュアCMOSセンサを備えたカメラ等の、チップ・オン・ティップ(COT)カメラが挙げられるが、これに限定されない。ファイバベースのイメージングプローブの例としては、近赤外自家蛍光(NIRAF)イメージングプローブ、スペクトル符号化内視鏡(SEE)プローブ、血管内超音波検査(IVUS)プローブ、又は光干渉断層撮影(OCT)イメージングプローブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
ワイヤコンジット104は、シースの少なくとも1つのセクションの操縦(又は曲げ)に用いられる制御ワイヤ110の固定及び/又は通過を可能にする。そのために、シースの遠位端において、操縦可能セクション103は、複数の湾曲可能セグメントから成る。シースの近位端では、非操縦可能セクション102が取っ手又はハンドルインタフェース200に接続され、取っ手又はハンドルは、操縦可能セクションを1つ以上の方向に曲げるために用いられる1つ以上の制御ホイール又はノブ252を有する。取っ手又はハンドルには、ツールをツールチャネル105内に入れるためのアクセスポート250も具現化される。アクセスポート250は、小さな鉗子や針、電気焼灼器具等の小さな器具の挿入に用いることができる。一部の実施形態では、ワイヤコンジット104を用いて電線111を通して、例えば、インタフェースハンドル200に位置する電気端子212に電磁(EM)センサ115を接続することができる。
【0027】
操縦可能器具100は、ねじり剛性及び長手方向の剛性を維持しながら、器具の遠位端近くの目的の標的エリアに到達するために、1つ又は複数の湾曲カーブを伴う管腔内標的エリアへの柔軟なアクセスを提供するように構成されるので、医師は、制御システムを操縦することにより、シースの遠位端に位置するエンドエフェクタ又はイメージングデバイスを制御することができる。そのような操縦可能機能を提供するために、操縦可能器具100は、シースの壁に沿う(典型的には、中の)ワイヤコンジット104の内側に配置された複数の制御ワイヤ110によって制御される。制御ワイヤ110の一部は、ワイヤアンカー112を用いてシースの遠位端に固定され、他の制御ワイヤ110は、ワイヤアンカー113を用いて、遠位端から特定の距離に固定することができる。例示の一実施形態では、6本の制御ワイヤを備えた操縦可能器具100において、2組の制御ワイヤ110(すなわち4本の制御ワイヤ)が、ワイヤアンカー113によってシースの中央部に(例えば1つ以上の変曲点107に)固定されてよく、別の1組の制御ワイヤ110(2本の制御ワイヤ)は、ワイヤアンカー112によってシースの遠位端に固定することができる。このように、操縦可能器具100は、3組の拮抗する制御ワイヤ110によって制御される少なくとも2つの(すなわち、2つより多い)操縦可能セクションを有することができ、各ワイヤは、別個のワイヤコンジット104を通る。
【0028】
器具100の近位端では、ハンドルインタフェース200は、操縦可能器具100と制御システム300の間の機械的リンク及び電気機械的インタフェースを提供するように構成される。一実施形態では、ハンドルインタフェース200は、複数の電気機械接続部210(制御ワイヤ110の各々に対して1つの接続部)を提供するので、アクチュエータシステム310は、各制御ワイヤ110を機械的に動作させることができる。コントローラ320は、本開示の後半で更に詳しく説明するように、各制御ワイヤの引張又はねじり状態に基づいて、各制御ワイヤ110の動作を電子的に制御するために用いられる。
【0029】
図1Bに示されるように、制御システム300は、アクチュエータシステム310の一部として、複数の作動モータ(又はアクチュエータ)1~M(Mは、ゼロよりも大きく制御ワイヤ110の数に等しい整数である)を含んでよい。このように、フィードバック制御ループ325によって各制御ワイヤ110をアクティブ制御して、患者の生体構造を通って進むための適切なシャフト誘導を実施することができる。
【0030】
図2Aは、例示の操縦可能器具100の斜視図である。一実施形態によれば、操縦可能器具100はワイヤ駆動連続体ロボットであってよく、これは、近位の非操縦可能セクション102と、少なくとも1つの変曲点107により複数の湾曲セグメント又はセクション106a及び106bに分けられる操縦可能セクション103とを含む。操縦可能器具100では、複数の制御ワイヤ110が、シースの非操縦可能セクション102の壁に沿うコンジット104を通って、かつ、シースの操縦可能セクション103の複数のガイド部材108a、108b及びアンカー部材103a、103bを通って、近位端から遠位端へ延びる。制御ワイヤ110は、Z軸に平行な方向に配置される。一部の制御ワイヤ110は、変曲点107で第1のアンカー部材103aに結合され、制御ワイヤ110の一部は、遠位端で第2のアンカー部材103bに結合される。全ての駆動ワイヤ110は、その近位端で、個々のモータ又はアクチュエータ(
図1Bに示されるようなアクチュエータシステム310)に結合される。制御ワイヤ110は、金属ワイヤ、例えば、ピアノタイプワイヤ、ステンレス鋼ワイヤ又はニッケル-チタン合金ワイヤであってよい。アンカー部材103a及び103bは、その中心軸がZ軸方向に沿って延びる円環形状を有する。複数の制御ワイヤ110のうち、一部の制御ワイヤは、アンカー部材103aに固定して取り付けられ、一部の制御ワイヤは、例えば接着、ピン止め、超音波溶接若しくは熱溶接、圧入、又はねじ止めにより、アンカー部材103bに取り付けられる。
【0031】
シースの支持セクション又は非操縦可能セクション102は、その長手方向軸がZ軸方向に沿って延びる円筒形状を有し、円筒形状の壁内に複数のコンジット又はスルーホールが延びている。支持セクションは、非操縦可能セクションであり、また、シースのスルーホールを通っている制御ワイヤがZ軸方向に駆動されたときに、制御ワイヤの座屈又はたるみを生じずにアクチュエータからの作動力を伝達する機能をもつ。
【0032】
図2Bは、代表的なガイド部材108bと代表的なガイド部材108aの斜視図を示す。各ガイド部材は、中心軸又は長手方向軸AxがZ軸方向に沿って延びる円環形状を有する。ガイド部材108bは、ガイド部材の円環形状の壁に沿って延びるワイヤコンジット又はガイド穴104a、104b、104cを有する。ガイド穴104a、104b、104cは、それぞれの制御ワイヤ110を通し、操縦可能器具100のナビゲーション(操縦)動作中にガイド穴を通って摺動することを可能にするように構成される。制御ワイヤ110のうち、1本の制御ワイヤを、そのガイド穴の内表面において所与のアンカー部材に固定して取り付けることができ、他の2本の制御ワイヤは、その所与のアンカー部材のガイド穴に対して摺動可能とすることができる。各ガイド部材108bは、ガイド穴104を介して制御ワイヤ110に接触するので、ガイド部材は、摩擦係数の低い潤滑性材料を含んでよい。ガイド部材108aは、湾曲セクション106a及び湾曲セクション106bに制御ワイヤ110を通すためのガイド穴104a、104b、104c、104d、104e、104fを有する。湾曲セクション106bについての設計と同様に、湾曲セクション106aは複数のガイド部材108aを有し、各ガイド部材はガイド穴104a~104fを有する。ガイド穴104a~104fは、アンカー部材103bに結合された制御ワイヤ110と、アンカー部材103aに結合された制御ワイヤとがガイド穴を通ることを可能にするように、配置される。
【0033】
次に、制御ワイヤ110が能動的に駆動されて蛇行進路を進むときの、操縦可能器具100の曲げ運動(操縦)を説明する。分かりやすくするために、単一の湾曲セグメント又はセクションの曲げについて説明する。
図2Cに示されるように、操縦可能器具100の単一の湾曲部106は、その遠位端から、アンカー部材109と、複数のガイド部材108と、複数のガイド穴を備えた非操縦可能な支持セクション102とを含む。制御ワイヤ110a、110b、110cは、それぞれガイド穴104a、104b、104cに沿って、操縦可能器具の近位端から遠位端へ延びる。制御ワイヤ110のうちの1つ又は全部は、その遠位端でアンカー部材109に固定して結合される。その遠位でアンカー部材109に結合された制御ワイヤ110は、各制御ワイヤの近位端に接続されたアクチュエータ又はモータ(
図1A~
図1B参照)の作動により、ガイド部材108に対して摺動可能である。3本の制御ワイヤ110のうち1本(例えば
図2Cの制御ワイヤ110b)は、全てのガイド部材108に対して固定(又は機械的に接地)され、残りの2本の制御ワイヤ110(例えば
図2Cの制御ワイヤ110a及び110c)は、ガイド部材108のガイド穴に対して摺動可能である。
【0034】
操縦可能器具100を曲げる際、各制御ワイヤ110は、それぞれのアクチュエータ又はモータによって個々に制御される。例えば、
図2Cでは、制御ワイヤ110bはアンカー部材109に固定又は係留される一方、制御ワイヤ110aは第1の制御力F1で引っ張られ、制御ワイヤ110cは、力F1とは異なる第2の制御力F2で引っ張られる(この例では、制御力F2は制御力F1よりも低い)。このように、制御ワイヤ110a及び110cの線形変位の駆動量の組合わせに従って、湾曲部106を所望の方向に曲げることができる。操縦可能器具100の遠位端の姿勢を制御するには、3本の制御ワイヤのうち2本を(或いは、1本でも)駆動すれば十分である。力F1、F2がそれぞれ制御ワイヤ110a、110cに加えられると、後でより詳細に説明するように、対応するセンサが、加えられた引張力を検出する。ここで、力F1及びF2は、制御ワイヤを引っ張ることによってかかる引張力に限定されないことに留意されたい。力F1及びF2は、所望の量の圧縮力によって制御ワイヤを機械的に押すことによって制御ワイヤ110に加えられる圧縮力であってもよい。
【0035】
図2Cを参照して、単一の湾曲セクション106の遠位端に係留された制御ワイヤを駆動する場合を説明したが、
図2Aの全ての湾曲セクションの制御ワイヤが駆動される場合、各湾曲セクション(1、2、3、…N)の姿勢は、アクチュエータシステム310(駆動ユニット)のアクチュエータによって駆動された個々の制御ワイヤの駆動量に応じて、ヘビのような動きで曲がるように独立して選択的に制御することができる。更に、ワイヤ駆動操縦可能器具100をその長手方向軸を中心にねじるか又は回転させる機構が、追加で設けられてよい。特定量の回転又はねじりの作用を操縦可能器具100に与えるために、まず、制御ワイヤ110を1本だけ駆動することによって、湾曲セクションを所望の方向に曲げてから、異なる湾曲セクションの第2の制御ワイヤ110を作動させることにより、シース全体を回転させることができる。このような操縦可能器具100の操作は、例えば米国特許第9144370号(あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、周知の機械的原理及び運動学的原理に基づいて実施することができる。
【0036】
一実施形態によれば、
図2A~
図2Cに示される操縦可能器具100は、約0.14インチの外径を有してよく、遠位の操縦可能セクション103は長さがおよそ2.0インチであり、器具100の全長は約24インチである。アンカー部材は、コンジット104と、ガイドリングに似たツールチャネル105とを有し、典型的には、医療グレードのプラスチック又は類似の合成物で構成される。このような材料により、寸法が縮小されたカテーテルや内視鏡等の、柔軟でありながらねじり弾性のある操縦可能器具の製造が可能となる。例えば、操縦可能器具100の他のプロトタイプ寸法は、外径(OD)約3.3mm、内径(ツールチャネル)2.4mm、長さ約550mmである。
【0037】
一般に、操縦可能器具の挿入中又は引戻し中のいずれかにおいて、管腔(例えば気道)の中心線は、湾曲セクションのアクティブ制御中に従うべき所望の軌道である。そのため、ロボット誘導型のカテーテルや内視鏡等の既知の操縦可能器具は、軟性シャフトを強制的に所望の軌道に保つことを目的として、シャフト誘導の様々な概念を実現しようと試みてきた。一例では、シャフト誘導システムを使用する場合、操縦可能器具は管腔を通って前進し、センサは、シャフトガイドの挿入深さと、ユーザ制御の操縦可能先端部の角形成とを測定して、軌道情報を取得する。軌道情報は、システムのメモリに記憶され、連続的に更新される。挿入深さを少し前進させた後、新しい形状が所望の軌道に厳密に一致するように器具のセグメントを調整する(回転させる、又は曲げる)ことにより、操縦可能シャフトガイドの形状が修正される。このプロセスは、標的エリアに到達するまで繰り返される。操縦可能器具が患者から引き抜かれるときも、同じプロセスが適用される。例えば、米国第2007/0135803号(あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0038】
ただし、ほとんどの操縦可能医用器具は依然として、挿入時と引戻し時のいずれでも、所望の軌道をたどるために周囲の生体構造からの支持に依存している。特に、操縦可能器具に外乱(例えば、患者の無意識の動きによる外力)が加えられたときは、操縦可能器具の先端(又は他の部分)が患者の生体構造に引っ掛かり、適切なナビゲーションを妨げるおそれがあるので(例えば、器具の予期しない湾曲やねじれによって)、操縦可能器具を所望の挿入(又は引抜き)軌道上に維持することは困難である。特に、操縦可能器具の引戻し中は、誘導システムは典型的には非アクティブに維持され、これにより、操縦可能器具は制御されていない(パッシブ)状態に置かれる。しかしながら、依然として、操縦可能器具が患者の生体構造に接触し、予期せず引っかかってしまうおそれがある。これにより、患者に対して不快感及び/又は痛みを生じるおそれがある。この状況を避けるために、先に参照した刊行物である米国第2007/0135803号は、器具が患者内で動かされるときに連続的に維持されるセンサベースのマッピング技術を用いて、操縦可能器具の形状をアクティブ制御することを提案している。
【0039】
しかしながら、患者の生体構造の経路から操縦可能器具を取り除くとき、いつでもその剛性をアクティブ制御する能力を維持しながら、器具を非常に柔軟なままにしておく(例えば、ゼロ引張で)ことが有益である場合がある。例えば、除去中に器具を非常に柔軟(コンプライアント)なままにしておくことにより、患者の生体構造(例えば気道や結腸壁等)に対する外傷が少なくなり、器具を除去するのに必要な力が小さくなり、患者の不快感が軽減される。しかしながら、部分的又は完全な除去の後に器具を挿入し直したり方向付けし直したりする必要がある場合(例えば患者の呼吸又は動きが原因で)、器具の位置及び引張力をすぐに制御する必要がある。したがって、(1)外寸(外径)が最小であり、(2)ツールチャネルの開口サイズ(内径)が最大であり、(3)患者に痛みや不快感を与えることなく蛇行経路を効率的に進むために柔軟性(又は剛性)がアクティブ制御される、改善された操縦可能医用器具が求められている。特に、部分的又は完全な除去の後に器具を挿入し直したり方向付けし直したりする必要がある場合(例えば患者の呼吸又は動きが原因で)、アクティブ制御のパッシブ曲げモードでその剛性を制御する能力を維持しながら、器具を非常に柔軟なままにしておく(例えば、ほぼゼロの引張)ことが望ましい。
【0040】
本開示では、(1)操縦可能器具に最大の柔軟性が必要であるときに、制御ワイヤ110での力がゼロになり、(2)採用される制御モードに関わらず、制御ワイヤ110の力及び変位が連続的にモニタリングされ、(3)挿入中又は引戻し中に蛇行進路を通って進むときであっても、操縦可能器具での摩擦が最低限に抑えられ、(4)制御ワイヤ110の近位端が、対応するアクチュエータにアクティブに接続されたままで自由に並進できるように、誘導システムは、操縦可能器具100をパッシブ制御状態(アクティブ制御のパッシブ曲げモード)に置くように制御される。
【0041】
より具体的には、本開示は、制御ワイヤの位置や制御ワイヤの引張力又は圧縮力等の重要なフィードバック情報を失うことなく、アクティブ形状制御に容易に移行できるパッシブ曲げモードを提案する(逆も同様)。このパッシブからアクティブのモード変換の主な原理は、駆動ワイヤ(制御ワイヤ110)がアクティブ制御されることにより、加えられる力を無視できるようにし、その結果として、操縦可能器具100の非常に柔らかい曲げ挙動を作り出すことである。この効果又はモードは、本明細書では、操縦可能医用デバイスのアクティブ制御のパッシブ曲げモードと呼ばれる。操縦可能医用デバイスのアクティブ制御のパッシブ曲げモードは様々な構成で達成することができるが、摩擦を加えたり過度のたるみを与えたりしないように、駆動ワイヤがハードウェアによって直接駆動されることが重要である。そのために、作動される要素の位置が正確に制御されるように、コントローラとエンドエフェクタの間の安定した正確な関係を維持できるハードウェアによって、制御ワイヤ110を駆動することが好ましい。アクティブ制御のパッシブ曲げモードは、患者の生体構造の蛇行進路を通した挿入中及び引戻し中に操縦可能医用器具の滑らかで正確な曲げを制御する際に、特に有利である。
【0042】
実施形態のいずれかでは、制御ワイヤを作動しているモータ又はアクチュエータが存在する。制御ワイヤごとに個別のモータ又はアクチュエータがあってもよいし、様々な制御ワイヤを個別に制御できる単一のモータ又はアクチュエータがあってもよい。制御ワイヤは、他の制御ワイヤと連動して器具の長さ方向に沿って長手方向に動いて、器具の遠位位置に曲げモーメントを生成する。器具の構造により、このような湾曲セクションの1つ以上を個別に作動させることができる。本開示において、ひとつの重要なポイントは、使用するアクチュエータのタイプ(DCモータ、リニア誘導モータ、超音波モータ等)に関係なく、アクティブ曲げモードで制御ワイヤを個別に動かすための線形力が生成され、また、駆動ワイヤのエンコーダ位置フィードバック及び力フィードバックを維持しながら、各制御ワイヤを完全にパッシブ(コンプライアントであり、ワイヤが駆動アクチュエータから切り離されているかのように外力によって動かすことができる)に維持するために、制御ループが用いられることである。一実施形態では、各制御ワイヤを完全にパッシブに維持するために、コントローラは、ひずみ力を実質的にゼロまで低減することによって力の平衡を実施する。別の実施形態では、コントローラは、制御ワイヤに接続されたアクチュエータのアクティブ動作を実施する。これは、この例では制御ワイヤによってアクチュエータをパッシブに動かすことが可能であるので、力平衡フィードバックとは異なる。
【0043】
直流(DC)モータの場合、回転運動から線形運動への変換が必要である。このために、典型的には、親ねじ又はボールねじ機構が用いられる。しかし、超音波や直接駆動アクチュエータ等の他の代替手段の方が有利な場合がある。超音波モータとリニア誘導モータの利点は、これらが両方ともリニアアクチュエータであり、機械的な変換を必要としないことである。超音波モータ又はリニア誘導モータは、機械式ギアや中間機構なしで、制御ワイヤを直接駆動することができる。このようなリニアアクチュエータで制御ワイヤを直接駆動する利点のひとつは、摩擦その他の非線形性(例えば、親ねじ機構での機械的なスロップ)が低減されることである。
【0044】
アクティブ制御モードでは、所与の湾曲セクションの各制御ワイヤには、特定の位置が割り当てられる。位置の誤差が測定され、この誤差を減らすために修正措置が取られる。これは1秒間に何度も発生し、位置エラーを無視できる量まで迅速に低減する。その結果、器具の指令形状は、制御ワイヤ位置に基づく閉ループ制御下にある。
【0045】
しかしながら、時には、蛇行進路の壁からの力や、例えば患者の呼吸動作に起因するナビゲーション進路の予期せぬ変化等の、外部から器具に加えられる外力に、器具の形状を合わせる必要がある。力フィードバックを適用するために、本開示は、制御ワイヤの各々に力センサを含む。制御ワイヤ上で引張又は圧縮が感知された場合、コントローラは、センサからの信号に基づいて、引張又は圧縮、或いは制御ワイヤの変位を測定することができる。次に、測定された力をゼロに向けて低減するための修正措置を講じるためのアルゴリズムが提供される。これにより、蛇行進路の壁と器具との間に作用する全体的な力が減少することになる。このプロセスは、1秒間に何度も発生することができ、力を無視できる量まで迅速に低減することができる。
【0046】
本開示では、器具と蛇行進路の間の接触に起因する器具に対する外力を低減する別の態様は、独自の制御ワイヤ構成と作動方法によって実現される。ほとんどの既知の操縦可能器では、その制御ワイヤに引張力モードのみが使用され、作動位置の各セットに対して拮抗的な構成の少なくとも2本の制御ワイヤがある。これは、引張のみを使用する場合、1つの平面で曲がり得る1つの湾曲セクションに2本の制御ワイヤが必要になることを意味する。また、この従来の方法では、引張下で器具が長手方向に変形するのを防ぐ堅いバックボーンが器具に存在することが必要となる。しかしながら、本開示では、制御ワイヤに引張と圧縮の両方を使用することが可能であり、操縦可能器具にはバックボーンがない。代わりに、本開示では、偶力を用いた対称構成の複数の制御ワイヤを用いて、湾曲セクションに純粋な曲げモーメントを生成する。純粋な曲げモーメントにより、器具に沿ってゼロの長手方向力が生じる。これにより、引張及び圧縮の力を正確に制御することができるだけでなく、バックボーンを組み込まないことで器具のサイズを縮小することができる。典型的には、引張のみの制御ワイヤでは、機構を事前装着し、制御システムを妨害し得るたるみや非線形性を回避するために、少量ではあるがゼロではない量の引張が常に制御ワイヤに対して維持される。本開示の操縦可能器具には、そのような問題はない。制御ワイヤには、機械的スロップやたるみがなく(特に、アクチュエータに直接接続される場合)、アクチュエータはリニアアクチュエータである。これにより、制御力を連続的にモニタリング及び調整しながら、制御ワイヤの全ての軸力をゼロまで低減することが可能となる。この作用により、堅いバックボーンがないことと相まって、要求に応じた非常にコンプライアントな器具が得られる。更に、プログラムされたアルゴリズムは、アクティブ制御の曲げモードからパッシブ制御の曲げモードに(逆も同様)シームレスに変化する。
【0047】
<第1の実装:力制御ループ>
図3は、アクティブ制御のパッシブ曲げモード(本明細書では「力制御ループ」の実装と呼ばれる)の例示の実施形態を示す。
図3に示されるように、操縦可能器具100の各制御ワイヤ110は、その近位端で、対応するモータ及びモータ制御システムに接続される。図示を簡潔にするために、
図3は、第1のモータ制御システム321(モータコントローラ)によって制御される第1のリニアモータ311に接続された第1の制御ワイヤ110aを示す。同様に、第2の制御ワイヤ110bは、第2のモータ制御システム322によって制御される第2のリニアモータ312に接続される。正確な位置決め(たるみを回避するための)を保証するために、リニアモータ311は構造的基礎311aに固定され、リニアモータ312は同様の基礎312aに固定される。基礎311a/312aは、例えば、インタフェース200と制御システム300の少なくとも一部とを囲む患者インタフェースユニット(PIU)のハウジング又はシャシであってよい。操縦可能器具100がi~M番の制御ワイヤ110を有する場合、対応するi~M番の制御モータ又はアクチュエータが予想される。ただし、対応する同数のモータコントローラを提供することは期待されておらず、その必要もない。各モータMが対応する制御ワイヤ110を作動させるように個別に制御されさえすれば、単一のコントローラを、本明細書に記載の全てのモータ又はアクチュエータのそれぞれを個別に駆動するようにプログラムすることができる。
【0048】
図3の実施形態では、パッシブとアクティブのモード変換の原理を実装するために、各制御ワイヤ110は、ひずみセンサ及び位置センサにも接続される。
図3では、第1の制御ワイヤ110aは、ひずみセンサ221及び位置センサ231(変位センサ)に接続されている。同様に、第2の制御ワイヤ110bは、ひずみセンサ222及び位置センサ232に接続される。ひずみセンサは、ひずみゲージベース、光学ベース、又はエンコーダベースのセンサであってよく、位置センサは、エンコーダベース、電磁ベース、又はホール効果ベースのセンサであってよい。エンコーダベースのセンサとしては、光学エンコーダ、磁気エンコーダ、ポテンショメータ等が挙げられる。
【0049】
ひずみセンサは、駆動された制御ワイヤ110にかかる圧縮力又は引張力Fを検出及び/又は測定し、所与の時点で制御ワイヤに加えられている圧縮力又は引張力の量(ひずみの量)に対応する(を示す)信号(Fi)を出力する。同様に、位置センサは、制御ワイヤ110の長手方向位置(又は動いた距離)を検出し、制御ワイヤの現在位置に対応する(を示す)信号(Xi)を出力する。各制御ワイヤ110のひずみセンサ及び位置センサからの信号は、モータ制御システムに送られる。モータ制御システムによって制御信号(Ci)が生成され、この信号は、対応する制御ワイヤ110をより力の小さい方向に動かすように、モータ又はアクチュエータに送り返される。すなわち、モータ制御システムによって生成される制御信号(Ci)は、制御ワイヤに加えられているひずみの量を低減するように、対応する制御ワイヤ110を力Fの方向とは反対の方向に動かす対応するアクチュエータ又はモータのフィードバックループにおいて用いられる。これにより、
図7A~
図10に関して後に詳述されるように、短時間tの後、制御ワイヤに残っている力は無視できるようになる。このように、アクティブ制御で制御ワイヤ110を駆動することにより、操縦可能器具100に加えられる力を実質的に無視できることが可能となり、結果として、器具の遠位端の非常に柔らかい曲げ挙動が作り出される。
【0050】
<第2の実装:無摩擦直接駆動>
図4は、操縦可能器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードの別の例示の実施形態を示し、この実施形態は、本明細書では「無摩擦直接駆動」の実装と呼ばれる。
図4では、操縦可能器具100の第1の制御ワイヤ110aは、その近位端で、対応する第1のモータ311に移動台車341を介して直接接続されており、第2の制御ワイヤ110bは、その近位端で、第2のモータ312に移動台車342を介して直接接続されている。移動台車341、342は、例えば進路L1、L2に沿って直線的に制御ワイヤ110を変位させるように構成されたねじ式のリニアシャフトによって、対応するモータ311、312に機械的に接続される。このようなねじ式リニアアクチュエータは、周知の親ねじ、ボールねじ、又はローラーねじの原理に基づいてよい。第1及び第2の制御モータ311、312は、両方ともモータコントローラ320に動作可能に接続される。更に、第1の支持ワイヤ121aは、その近位端で第1のひずみセンサ211に接続され、第2の支持ワイヤ121bは、その近位端で第2のひずみセンサ222に接続される。各ひずみセンサは、その最も近い制御ワイヤ110に加えられているひずみの量に対応する信号を出力する(又は、少なくとも2つの最も近い制御ワイヤ110に加えられているひずみ力の平均に対応する信号)。第1のひずみセンサ221は第1のひずみ信号(F
i)を出力し、第2のひずみセンサ222は第2のひずみ信号(F
i+1)を出力する。全てのひずみセンサによって検出されたひずみの量に対応する出力信号は、フィードバックループ325としてコントローラ320にフィードバックされる。一部の実施形態では、コントローラ320は、比例積分微分制御(PID)のような標準的なスキームを用いて実装することができる。
【0051】
前の
図3の実施形態では、リニアモータは、ひずみセンサが間に配置された状態で制御ワイヤ110に接続される。対称的に、
図4の実施形態によれば、リニアモータ311/312は、移動台車341/342から対応する制御ワイヤ110a/110bに直接接続される。制御ワイヤに加えられているひずみをモニタリングするために、第1の支持ワイヤ121aの遠位端に第1のひずみセンサが設けられ、第2の支持ワイヤ121bの近位端には第2のひずみセンサ222が設けられる。このような直接接続構成により、移動台車341/342とアクチュエータ又はモータ311/312の基礎(又はハウジング)との間の摩擦が最小限に抑えられる。このように、リニアモータのモードがゼロの力をもつように指示された場合、駆動ワイヤからの力により、対応するモータの移動台車341/341が変位することになり、よって、制御ワイヤの残留力又は引張が排除される。
【0052】
誘導リニアモータ及び空気軸受ステージによる無摩擦直接駆動
無摩擦直接駆動構成の別の実装は、移動台車とアクチュエータ又はモータの基礎との間の摩擦が非常に低いリニア誘導アクチュエータを使用することであり得る。この実装の一例は、空気軸受を備えた高精度リニアモータの使用である。空気軸受を備えた高精度リニアモータ(PLM)は、ウェハの光リソグラフィ製造において広く使用されており、ほぼゼロの摩擦を実現し、ステージの動きに関してはサブミクロンの位置精度を達成する。PLMの可動子は、法線方向の3つの空気軸受と、横方向の2つの空気軸受(各側に1つ)によって、固定子上に浮かぶ。空気軸受を備えたPLMは、直線に沿って移動することが期待されており、動作中にサブミクロンの位置決め精度に達することができる。空気軸受の利点は、摩擦がほぼゼロであり、発熱が少なく、騒音が少ないことである。空気軸受を備えたPLMは、バックラッシュや摩擦によって引き起こされる非線形性や外乱も大幅に低減する。これらの利点により、空気軸受を備えたPLMは、半導体製造等の高度な製造分野に適用することができるが、制御ワイヤを動作させるために微小電気機械システムを用いた新規の操縦可能医用器具100の制御ワイヤ110の無摩擦直接駆動構成において実装することもできる。
【0053】
図5A及び
図5Bは、無摩擦軸受を備えた誘導モータによって実装される無摩擦直接駆動構成の例示の実施形態を示す。
図5Aにおいて、操縦可能医用器具100は、
図1A、
図1B、
図3及び/又は
図4を参照して前述した構造に類似している。
図5Aでは、アクチュエータ又はモータは、可動子又はモータ台車1330及び固定子から成る駆動ユニット1300として実装され、固定子は、磁気ベースプレート1360と、トッププレート又はガイド1310とから成る。駆動ユニット1300は、
図1Aのモータ1を代表してM1と標示されている。当然のことながら、
図5Aには、複数の駆動ユニット1300(例えば制御ワイヤごとに1つ)が存在する。
図5Bは、空気軸受ステージと組み合わさった誘導リニアモータ(駆動ユニット1300)の図をより詳細に示す。
図5Bにおいて、トッププレート又はガイド1310は、複数の圧力ゾーン(P)1312と複数の真空ゾーン(V)1314を含む。これらのゾーンは、ガイド1310をモータ台車1330から所定の距離に維持するために、互いにバランスを取る。圧力ゾーンと真空ゾーンは、製造者によって事前に負荷がかけられており、本明細書では、空気軸受セクション1320の「フローティング」効果を説明するためにばねとして表されている。可動子又はモータ台車1330は、モータ台車1330に加えられる誘導力1340がゼロである(誘導力なし)ときに、直線方向1302に自由に動くことができる。位置センサ1331は、モータ台車1330の線形運動をモニタリングし、モータ台車1330(移動台車)の変位の量を示す信号Xiを出力する。ここで、信号Xiは、制御ワイヤ110のモータ1300の作動を制御するためのフィードバック信号1325として用いられる。誘導力1340は、モータ台車1330のモータ巻線1332に加えられる。モータ巻線1332と、磁気ベースプレート1360(永久磁石である)の永久磁石(N、S)との間には、空隙1350が設けられる。
【0054】
この配置では、空隙1350により、モータ台車1330は、空気軸受上で自由に浮いている。空隙のおかげで、長手方向の摩擦がない。そして、電流がリニア誘導モータを通過しないとき、モータ台車1330に力は加えられない。したがって、制御ワイヤ110によってモータ台車1330に加えられる動きと力によって、モータ台車が直線方向1302に自由に動くことになる。台車の運動は、位置センサ1331によって連続的に測定することができる。制御ワイヤ110とモータ台車1330の位置をアクティブ制御することが望ましいときは、制御システムは、単に、前の実施形態のように、リニア誘導モータに電流を流し、制御ループにおいてフィードバックとして位置データを使用する必要がある。
【0055】
図5Bは、無摩擦空気軸受と組み合わさった誘導リニアモータ1300の簡略図を示す。この実施形態の実装には、軸受と誘導駆動力の両方の要素が必要である。ここで、モータ台車1330(駆動制御ワイヤ110に取り付けられている)が自由に動けるモードを有することが必要である。そして、必要に応じて、モータ巻線1332に電流を印可し、それによって、台車1330を所望の方向(好ましくは、力の小さくなる方向)に動かすための力1340を生成することができる。本明細書におけるこの実装の別の構成要素は、位置センサフィードバックを維持しながら、モータ台車1330が自由に動くことを可能にすることができるということである。そして、位置センサデータが常に取得されているので、いつでもモードを自由移動モードからアクティブ制御モードに戻すことができる。
【0056】
空気軸受についてもう1つ詳しく説明する。
図5A及び
図5Bの図において、発明者は、モータ台車1330とトッププレート1310の上部ガイド表面との間に位置する空気塊を表すために、ばねを示した。この特定の図は、いわゆる真空前負荷空気軸受の圧力(P)ゾーンと真空(V)ゾーンを示す。圧力ゾーンと真空ゾーンは、互いに“戦う”。圧力がモータ台車を押しのけ、真空がモータ台車を近付ける。モータ台車は、上部ガイド表面からある距離を置いて、これら2つの反対の力が釣り合っている場所に落ち着く。モータ台車1330からトッププレート1310の上部ガイド表面までの距離が変化すると、真空力と圧力力のバランスが崩れ、正味の修正力が自然に発生し、モータ台車1330が元の飛行高さ(力が釣り合っている場所)に戻る。これにより、制御ワイヤ110は、外力が加えられない限り、実質的にゼロの力を連続的に維持する。
【0057】
超音波モータによる無摩擦直接駆動
無摩擦直接駆動構成の別の実装は、リニア超音波モータの使用であってよく、これは、制御信号が適用されることによって台車と固定子の間の接触が非常に低い摩擦であるモードで機能することができる。
図6A、
図6B及び
図6Cは、制御ワイヤ110上で作動する超音波モータの例示の実施形態を示す。
図6Aにおいて、操縦可能医用器具100は、
図1A、
図1B、
図3及び/又は
図4を参照して前述した構造に類似し、曲げ制御は、
図2A~
図2Cに関して記述したものに類似する。
【0058】
図6Aでは、モータ又はアクチュエータは、スライダ又は可動体1430及び固定子から成る超音波圧電駆動ユニット1400として実装され、固定子は、結合プレート1420及び振動圧電素子1410から成る。駆動ユニット1400は、
図1Aのモータ1を代表してM1と標示されている。当然のことながら、
図6Aには、複数の駆動ユニット1400(例えば制御ワイヤごとに1つ)が存在する。圧電アクチュエータは、圧電効果に基づいて電気エネルギーを機械的変位に変換するトランスデューサである。このようなアクチュエータは、比較的大きな力を発生させながら、小さな機械的変位を高速で制御できるので、高精度の位置決め機構として有利に使用することができる。一例として、PILine(登録商標)超音波ピエゾモータは、最大15Nの保持力と最大0.3Nmのトルクで、2nmの分解能で500mm/秒の速度を達成することができる。
【0059】
図6B及び
図6Cは、操縦可能医用デバイス100に対する超音波駆動ユニット1400の適用をより詳細に示す。リニア超音波圧電モータでは、コントローラシステム300からのプログラムされた制御の下で、圧電素子1410に高周波振動電圧波形が印加される。波形信号により、結合プレート1420にモード振動が生じ、接触点1421、1422(‘足’)は、高速で可動体1430と交互に接触する。可動体1430と足点1421、1422の間には予荷重の垂直抗力が存在し、これにより、接触中、一度に一方の足と可動体1430(可動プレート)との間に瞬間的な静摩擦が生じる。この振動性の振動の間に接触点がたどる経路には、垂直方向と平面方向又は水平方向の成分がある。垂直方向の動きにより、一度に一方の足がプレートに接触し、水平方向の動きにより、可動体1430が一方向(好ましくは制御ワイヤの長手方向)に押される。前の実施形態と同様に、ひずみ及び/又は位置センサ1431は、可動体1430によって作動されたか又は制御ワイヤ110に伝達されたひずみの量又は変位の量(距離)を示す信号Xiを出力する。フィードバック信号1425は、操縦可能器具100の作動を制御するために用いられる。
【0060】
例えば、
図6Bは、第1の足1421が可動体1430に接触し、可動体1430を右方向にスライド又は移動させる初期位置を示す。
図6Cは、第2の足1422が可動体1430に接触し、可動体1430を右方向にスライド又は移動させ続ける第2又は最終の位置を示す。結果として生じる効果は、可動体1430が距離1450の線形運動を受ける一方で、ひずみセンサ1431が可動体1430の位置を連続的にモニタリングすることである。このように、操縦可能器具100の操縦可能セクション103の少なくとも1つのセグメントが曲がると、可動体1430は、第1の位置Z
0から第2の位置Z
1まで直線的に並進(移動)することができる(例えばカテーテル又は内視鏡の曲げにより)。
【0061】
超音波モータに印加される電圧波形に応じて、様々な動作と挙動を実現することができる。可動体1430は、制御ワイヤ110に取り付けられているので、制御可能な速度で直線運動1402のいずれかの方向に駆動することができる。また、位置フィードバックもひずみセンサ1431によって常にモニタリングされるので、いつでも、制御システムは、ひずみセンサ1431からの情報を位置決めの目的で使用することができる。また、圧電アクチュエータには、圧電アクチュエータ1410に電力が印加されていないときに、足と可動体の間に静摩擦があるという特性がある。これは、駆動制御ワイヤのパッシブなブレーキ力として機能し、臨床現場においてエンドエフェクタの不随意運動を回避する際にも有用である。超音波駆動ユニット1400の別の挙動は、低摩擦モードを有することである。特定の振動電圧信号を圧電素子1410に印加することで、足(接触点1421、1422)が可動体1430にほとんど水平力を生じず、可動体1430の表面との接触にほとんど時間を費やさないようにすることができる。結果として生じる効果は、超音波アクチュエータが摩擦駆動アクチュエータよりも低摩擦軸受のように挙動することである。
【0062】
誘導アクチュエータ設計と同様に、リニア超音波モータの可動体1430は、カテーテルの曲げに起因する制御ワイヤの位置変化に応答して自由に動くことができる。可動体1430の位置は、ひずみセンサ1431によって連続的にモニタリングされ、制御システムはいつでもアクティブモードに戻り、可動体に力を加えることができる。
【0063】
どちらの場合でも、リニアモータは、制御ワイヤ110に直接接続され、また、制御ワイヤからの小さな力によって動かすことができる。制御ワイヤに対する力と制御ワイヤの変位は、互いに独立して、モータの制御モードに関係なく測定することができ、また、ひずみセンサ及び位置センサは駆動力が無視できるときであっても連続的にアクティブであるので、これらの力がモード変更によって妨げられることがない。
【0064】
駆動制御ワイヤ110に力が存在しないとき、制御ワイヤは自由に並進することができるので、器具100の形状を容易に変化させることができる。例えば、何らかの障害物(患者の気道壁等)による操縦可能器具100の遠位端への外部接触により、操縦可能器具の曲げが生じ、それによって制御ワイヤの変位が生じるおそれがある。制御ワイヤの動きがあるとすぐに、ひずみセンサ1431は、コントローラに出力信号を提供し、これが、反対方向(より小さな力の方向)に制御ワイヤに駆動力を加えるようにアクチュエータをトリガする。
【0065】
全ての実施形態における“ひずみセンサ”の検知原理は、ひずみゲージベースであってよい。既知のひずみゲージは、物体に加えられた圧縮力又は引張力(ひずみ)の測定に用いられる力検知レジスタを用いる回路である。物体が弾性の限度内で変形すると、物体は細く長くなるか、或いは短く広くなる。その結果として、抵抗に変化がある。力検知レジスタは、表面に力が加えられたときに予測可能な方法で抵抗が変化する導電性高分子フィルムを含む。抵抗値に生じた変化の量により、加えられた力の量を測定することができる。ひずみゲージは、リニアひずみゲージやせん断ひずみゲージ等、様々な形状で利用可能である。また、ピエゾ抵抗素子と呼ばれる半導体ひずみゲージ、金又は炭素ベースのレジスタで作られたナノ粒子ひずみゲージ、微小電気機械システム(MEMS)で広く使用されているマイクロスケールひずみゲージもある。他の実装では、ファイバブラッググレーティングやファブリ・ペロー干渉計等の光ファイバセンサを使用することができる。例えば、刊行物US2018/0193100(あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0066】
実装の2つのモードのうち、超音波モータを用いる実施形態がより有利であり得る。具体的には、超音波モータ技術の継続的な進歩により、軽量の超音波モータを備えた操縦可能器具100を実装することが可能であり、ミクロンサイズの動きで、速度を落とすことなく大きな力に対応でき、力や位置の検出とは独立して機能することができる。更に、超音波モータは非常に小さいので、非常にコンパクトな空間に組み立てることができる。力の伝達量に影響を与えることなく、より大きな速度を達成することが可能である。
【0067】
<制御システム及びフィードバック制御の実装>
図7Aは、本開示に係る操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するように構成された制御システム1500の例示のブロック図を示す。アクティブ制御のパッシブ曲げモードでは、(1)操縦可能器具に最大の柔軟性が必要であるときに、制御ワイヤ110での力がゼロになり、(2)採用される制御モードに関わらず、制御ワイヤ110の力及び変位が連続的にモニタリングされ、(3)蛇行進路を通る挿入中又は引戻し中に該進路を通って進むときであっても、操縦可能器具での摩擦が最低限に抑えられ、(4)制御ワイヤ110の近位端が、その対応するアクチュエータに接続されたままで自由に並進できるように、制御システム1500が操縦可能器具100を制御する。
【0068】
図7Aにおいて、制御システム1500は、「所望のワイヤ位置」ブロック1502と、「モータコントローラ」ブロック1504と、モータ又はアクチュエータブロック1506と、「実際のワイヤ位置」ブロック1508と、ひずみ及び/又は位置センサブロック1510と、コンパレータブロック1512とを含む。この制御システム1500は、所望の位置と実際の位置の差(力/位置センサブロック1510によって提供される)から(コンパレータブロック1512で)エラー信号を生成するフィードバック制御ループの、高度に簡略化したバージョンである。エラー信号はまた、制御ワイヤにかかる所望の力又は以前に測定された力と、ひずみセンサによって検出された力(例えば外力)の突然の変化との比較から、生成されてもよい。エラー信号は、モータコントローラ1504によって制御入力信号に変換され、次いでモータ又はアクチュエータに送られる。これは、制御ワイヤのうちの1本の閉ループ制御である。各制御ワイヤ110は、自身のフィードバックループをもつことになる(これは端入力端出力“SISO”と呼ばれる)。この場合、単一のフィードバックループによって複数のモータを制御することが望ましい場合は、複数の入出力システムも可能であるが、その実装は本特許出願には記載されない。
【0069】
当業者には当然のことながら、制御システム1500は、完全にハードウェアの実施形態と、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)の形態を取ることができ、或いは、ソフトウェアとハードウェアの態様を組み合せた実施形態の形態を取ることができ、それらは全て、本明細書では「回路」、「モジュール」又は「システム」と呼ばれることがある。更に、制御システム1500の一部の態様は、コンピュータで使用可能なプログラムコードが格納された任意の有形の表現媒体に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。例えば、方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して後述する制御システム1500の一部の態様は、コンピュータプログラム命令によって実装することができる。コンピュータプログラム命令は、コンピュータその他のプログラマブルデータ処理装置に特定の方式で機能するように指示できるコンピュータ可読媒体に格納されてよく、それにより、コンピュータ可読媒体に格納された命令は、フローチャート及び/又はブロック図において指定された機能/動作/ステップを実装する命令及びおプロセスを含む製造品を構成する。
【0070】
図7Bは、モータコントローラ1504又はコンピュータシステム400を動作させるか、又はその一部であり得るコンピュータ1600の機能ブロックを示す。
図7Bに示されるように、コンピュータ1600は、とりわけ、中央処理装置(CPU)1601と、揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)及び不揮発性リードオンリーメモリ(ROM)を含む記憶メモリ1602と、ユーザ入出力(I/O)インタフェース1603と、システムインタフェース1604とを含んでよく、これらは、データバス1605を介して動作可能に相互接続される。コンピュータ1600は、例えばユーザインタフェース1603を介してユーザ入力を受信したときに制御システム1600の様々な部分に送信できるコマンドを発行するように、プログラムすることができる。ユーザインタフェース1603の一部として、タッチパネルスクリーン、キーボード、マウス、ジョイスティック、ボールコントローラ及び/又はフットペダルを含めることができる。ユーザインタフェース1603を用いて、ユーザは、制御システム1500に操縦可能器具100をアクティブ操作させるコマンドを発行することができる。例えば、ユーザがユーザインタフェース1603を介してコマンドを入力すると、コマンドは、所与のプログラムルーチンの実行のために中央処理装置CPU1601に送信され、それにより、CPU1601は、システムインタフェース1604を介してコマンドを制御ワイヤ110の1つ以上に送信し、或いは、1つ以上のひずみセンサ221又は222からの出力信号を準備する。
【0071】
CPU1601は、記憶メモリ1602に格納されたコンピュータ実行可能命令を読み出して実行するように構成された1つ以上のマイクロプロセッサ(プロセッサ)を含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、本明細書に開示される新規のプロセス、方法及び/又は計算の実行のためのプログラムコードを含んでよい。特に、コンピュータ実行可能命令は、操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するために、
図8、
図9、
図10A及び
図10Bに示されるプロセスの実行のためのプログラムコードを含んでよい。
【0072】
記憶メモリ1602は、1つ以上のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータ書込み可能媒体を含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスク)、光ディスク(例えばDVD、Blu-ray)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶メモリ1602は、コンピュータ可読データ及び/又はコンピュータ実行可能命令を格納することができる。
【0073】
システムインタフェース1604は、入力デバイス及び出力デバイスに対して電子通信インタフェースを提供する。特に、システムインタフェース1604は、制御ワイヤ110を動作させるモータ又はアクチュエータにコンピュータ1600をインタフェース接続するための1つ以上の回路(フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等)を含んでよい。システムインタフェース1604はまた、キーボード、ディスプレイ、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、光記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線のいずれか)を含んでもよい。
【0074】
図8は、フィードバック力制御ループを備えた操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するための例示のフローチャートを示す。
図8のプロセスは、すなわち以下のステップを含む:(a)カテーテルが外力によって曲げられたかどうかを決定するステップ;(b)カテーテルの近位端のひずみ又は位置センサによって検知された引張/圧縮の力を読み取るステップ;(c)制御アルゴリズムを実行して、曲げ力を低減するためにどのように駆動ワイヤアクチュエータを動かすかを決定するステップ;及び、(d)駆動ワイヤに対する残留曲げ力が存在し続けているかどうかを決定するステップ。
【0075】
より具体的には、
図8のフローは、操縦可能器具100がアクティブシャフト誘導モードにあると仮定しており、ステップ1702では、制御システム1500が、進行中の操縦可能器具誘導を実行している。すなわち、ステップ1702では、システムが、カテーテル挿入中又は除去(引抜き)中のいずれかに、操縦器具のナビゲーションをモニタリングする。ステップ1704では、システム1500が、センサからの信号を読み取る。すなわち、システムは、デバイスの近位端に位置するひずみセンサ221/222、位置センサ231/232、或いは1つ以上のひずみセンサと1つ以上の位置センサのいずれかからの信号を読み取る。一部の実施形態では、操縦可能器具100の遠位端に、ひずみ、位置及び/又は向きのセンサ(例えばEMセンサ115)が設けられてもよい。ステップ1706では、システム1500が、操縦可能器具がアクティブ駆動力以外の外力によって作動したか(曲がったか)どうかを決定するまで、センサからの信号を継続的にモニタリングする。器具が外力によって曲げられた場合(ステップ1706でYES)、フローはステップ1708へ進む。ステップ1708では、システム1500が、操縦可能器具100のナビゲーションを一時的に停止する。ステップ1710では、システム1500が、操縦可能デバイスに加えられている力のひずみを低減するために、モータ又はアクチュエータをどのように動かすかを決定するためのアルゴリズムを開始する。ステップ1712では、システム1500が、曲げ力が無視できるかどうかを決定する。外部曲げ力によってかかる力が無視できる程度でない場合(ステップ1712のNO)、システム1500は、外力が無視できる程度になるまで、制御ワイヤ110に加えられた力を継続的に調節する。曲げ力が無視できる程度(ほぼゼロに等しい)である場合、フローはステップ1714に進み、制御システムは、操縦可能器具100の通常のナビゲーションを続ける。
【0076】
一実施形態によれば、
図8のプロセスにおいて、ステップ1706では、システムが、制御ワイヤの位置や制御ワイヤの力(引張又は圧縮)等の重要なフィードバック情報を失うことなく、アクティブ形状制御(アクティブ制御モード:ステップ1702~1704)からパッシブ曲げモード(パッシブ制御モード:1708~1712)に移行する。そのために、システムは、センサベースのマッピング技術を採用してよく、該技術では、US2007/0135803に記載されたのと同様な方式で、システムのメモリに軌道情報が格納され、器具が患者の生体構造内を動くときに連続的に更新される。しかしながら、本開示において、ステップ1706では、器具が外力によって曲げられたとシステムが決定すると、システムは、パッシブ曲げモードに入り、制御ワイヤの位置や制御ワイヤの力(引張又は圧縮)等の重要なフィードバック情報を失うことなく、アクティブ形状制御に容易に移行することができる(逆も同様)。ステップ1706での決定は、所望の又は記録されたワイヤ位置(或いは、制御ワイヤに対する所望の又は記録された駆動力)と、センサによって測定された実際の力又は位置との間の、システムコントローラによってなされた比較に基づくことができる。ステップ1706での決定は、閾値を含んでよい。具体的には、操縦可能器具のねじれを防ぎ、患者の快適さと安全性を確保するために、ユーザは、線形変位、ねじれ、回転の量(又はひずみ力の量)の閾値をソフトウェアで設定することができる。例えば、ユーザが所望値と測定値の閾値の差として5%又は10%又は15%を設定した場合、システムコントローラソフトウェアは、エラーが閾値を超えた場合にのみ、アクティブ制御モードとパッシブ制御モードの間の変更をトリガする。操縦ワイヤの“アクティブ”制御から“パッシブ”制御へのアクティブな移行により、制御ワイヤの位置や制御ワイヤの力等の重要なフィードバック情報を失うことなく、システム応答時間が短縮される。
【0077】
図9は、無摩擦直接駆動を備えた操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装するための例示のフローチャートを示す。
図9のプロセスは、すなわち以下のステップを含む:(a)カテーテルが外力によって曲げられたかどうかを決定するステップ;(b)カテーテルの近位端のひずみ又は位置センサによって検知された引張/圧縮の力を読み取るステップ;(c)ワイヤにかかる力に応じてアクチュエータ自体が動くように、アクチュエータをパッシブモードにするための制御アルゴリズムを実行するステップ;(d)駆動制御ワイヤに対する曲げ力が無視できる程度かどうかを決定するステップ;及び、(e)アクチュエータをそのアクティブモード(制御ワイヤと係合している)に戻すステップ。
【0078】
より具体的には、
図9のフローは、操縦可能器具100がアクティブシャフト誘導モードにあると仮定している点で
図8に類似しており、ステップ1802では、制御システム1500が、進行中の操縦可能器具誘導を実行している。すなわち、
図9において、ステップ1802、1804、1806、1808は、それぞれステップ1702、1704、1706、1708に類似する。特に、ステップ1806では、システムコントローラが、アクチュエータによって加えられた通常のナビゲーション力以外の外力によって操縦可能器具が曲げられたかどうかを決定する。ステップ1810では、システム1500が、モータ又はアクチュエータをパッシブモード(アクチュエータが制御ワイヤに任意の力をかけるのを停止する)にするためのアルゴリズムを開始する。この状態において、制御ワイヤに外力が作用すると、制御ワイヤ110にかかっている外力が無視できる程度(例えば、実質的にゼロ)になるまで、アクチュエータは、最小限の摩擦で直線的に変位(移動)する。ステップ1812では、システム1500が、曲げ力が無視できるかどうかを決定する。曲げ力が無視できる程度(ほぞゼロに等しい)である場合、フローはステップ1814へ進み、制御システム1500は、アクチュエータをアクティブモード(モータが制御ワイヤと係合している)にし、操縦可能器具100の通常のナビゲーションを再開する。
【0079】
別のシナリオでは、制御ワイヤを解放(切離し)するアルゴリズムは、ユーザの入力に基づくことができる。具体的には、ステップ1806において、ユーザは、器具ナビゲーションにおける特定の異常事象を決定し、手動で信号を入力して、アクティブ制御モードからパッシブ制御モードに切り替えることができる。例えば、ナビゲーション中に、カテーテルが蛇行進路を通って駆動されるときに、プッシュの問題及び/又は追跡の問題が発生する場合がある。そのような問題が発生した場合、システムは、ユーザに、アクティブナビゲーションを手動で停止してパッシブ制御に入るように促すことができる。プッシュの問題は、カテーテルの近位部分が管腔アクセスポイントに押し込まれたときに発生するが、カテーテルの遠位端が対応する距離だけ動くことはない。追跡の問題は、近位部分にトルクがかかり、遠位端が期待どおりに比例して回転しない場合に発生する。押込みと追跡の制御は、患者の生体構造の困難なカーブ及び/又は障害物を取って進む際の、カテーテルの非常に重要な側面である。このような問題に対処するために、システムは、器具が動かなくなった場合に押込み及び/又は追跡の問題をユーザに促すために、例えばハンドル200に、触覚フィードバック等の警告システムや、音又は視覚のインジケータを装備することができる。
【0080】
操縦可能医用器具100のアクティブ制御のパッシブ曲げモードにおいて制御ワイヤの引張を低減するための例示のアルゴリズムは、
図8及び
図9に関して前述したのと同様のプロセスを含んでよい。
図10Aは、
図8のステップ1710において引張力(又は変位)を低減し、
図9のステップ1810において制御ワイヤを解放する際に等しく役立ち得る例示のアルゴリズムを示す。
【0081】
図10Aにおいて、フローは、1つ以上の制御ワイヤ110に引張力を及ぼしている外力の検出に起因して操縦可能器具100の通常のナビゲーションが一時的に停止(中断)されたときに、開始される。すなわち、
図8のステップ1710又は
図9のステップ1810では、制御システム1500が、ひずみ又は位置センサ(
図10Aのステップ1902)から信号を受け取る。
図10Aのアルゴリズムにおいて、ステップ1904では、システムコントローラが、アクチュエータ又はモータの駆動方向を反転することにより(
図8の場合:ステップ1710)、又は、制御ワイヤを解放することにより(
図9の場合:ステップ1810)、ステップ1902で測定されたひずみ力を低減する。次に、
図10Aのステップ1906では、システム1500が、引張信号がほぼゼロの(又は無視できる)値のひずみ力を表すかどうかを決定する。センサからの信号がほぼゼロ以外の値を示す場合(1906においてNO)、システムは、操縦可能器具が力制御ループ下で制御されるのか、又は無摩擦直接駆動下で制御されるのかに応じて、
図8又は
図9のフロープロセスのいずれかに従って、ひずみ力の低減を続行する。外力の引張がほぼゼロまで低減されると(1906においてYES)、引張力のアクティブ制御は終了する。
【0082】
図10Bは、ユーザの入力に基づいて、
図8のステップ1710又は
図9のステップ1810において1つ以上の制御ワイヤ110の作動を解放する(又は、変位を調節する)ことによって引張力を同様に下げることのできる、例示のアルゴリズムを示す。より具体的には、前の記載によれば、アクティブ制御モードからパッシブ制御モードへの自動変更(逆も同様)は、ひずみ及び/又は位置のセンサによってモニタリングされる外力(例えば患者の動き)とその特定の閾値に基づいて発生する。しかしながら、代替の実施形態では、パッシブ/アクティブのモード間の切替えは、操縦可能器具100の操作者によって実装することもできる。特に、パッシブ制御モードは、患者の曲がりくねった生体構造(例えば気道)を通るナビゲーション中に、カテーテルが「ブロックされた」状況から抜け出すのに役立つ場合がある。この場合、カテーテルが引っ掛かっていると医師の操作者が判断した場合、ユーザは、例えばコントローラのボタンを押してアクティブ制御モードを停止してパッシブ制御モードに入ることにより、アクティブモードをパッシブモードに切り替えることができる。パッシブモードでは、システムコントローラが、カテーテルの姿勢を“緩め”、カテーテルが“引っ掛かり”状態から抜け出すことを可能にする。その後、操作者は、モードをアクティブモードに戻し、引き続きロボット制御を使用することができる。
【0083】
図10Bは、アクティブ制御モード及びパッシブ制御モードの下で操縦可能器具100を動作させるためのユーザ起動制御のシナリオの例示プロセスを示す。
図10Bでは、例えば、操縦可能器具100が管腔内経路で阻まれているか或いは引っ掛かっているとユーザが判断し、ハンドル200のユーザインタフェース254の制御ボタンを押すか、或いは、コンピュータシステム400のGUI422を介して手動でコマンドを入力したときに、ステップ1912において、コントローラ320が、ユーザから入力信号を受け取る。ユーザがそのような入力信号を入力するとすぐに、ステップ1914では、システムコントローラ320が、アクチュエータ310を制御ワイヤ110から切り離し、解放させる。ステップ1915では、ひずみセンサが、制御ワイヤに残っている引張力を測定する。次に、ステップ1916では、システムコントローラが、制御ワイヤの引張信号がほぼゼロである(又は無視できる)かどうかを決定する。センサからの信号がほぼゼロ以外の値を示す場合(1916でNO)、システムは、操縦可能器具が引っ掛かっていると決定し、ステップ1918へ進む。ステップ1918では、システムが、より小さい力の方向に制御ワイヤ110を作動させることにより、ひずみ力を能動的に低減する。このステップ1915、1916及び1918のプロセスは、カテーテルが緩められる(パッシブモードで)まで続く。制御ワイヤでの引張がほぼゼロまで低減されると(1906においてYES)、パッシブ制御モードが終了し、ユーザは、システムをアクティブ制御モードに戻すことができる。
【0084】
アクティブ制御のパッシブ曲げモードでは、制御ワイヤ110に加えられる能動力が存在しない。制御ワイヤ110に力が存在しないとき、制御ワイヤは自由に並進することができるので、操縦可能器具100の形状を容易に変化させることができる。例えば、操縦可能デバイス100の遠位端に対する外部接触が気道壁等の何かによって発生した場合、この外乱によって、シースの予期しない曲げが生じる可能性があり、これにより、制御ワイヤの変位が生じ、患者に起こり得る不快感又は痛みが軽減される。対照的に、制御ワイヤ110がそれに加えられた引張力で能動的に曲げられる場合、外部接触は検出されない場合があり、したがって、修正することができないおそれがある。
【0085】
操縦可能器具が患者の生体構造内で誤って阻まれたり引っ掛かったりしている可能性がある場合、ユーザは、手動で作動力を停止して、操縦可能器具をパッシブ関連状態にすることができる。更に、手動操作下では、カテーテルがパッシブであるが依然として引っ掛かっている場合、システム又はユーザは、カテーテルが引っ掛からなくなるまで、より小さい力の方向に制御ワイヤを駆動するようにアクチュエータを制御することができる。その後、操作者は、モードをアクティブモードに戻し、引き続きロボット制御を使用する。ユーザの手動操作によるパッシブモードは、システムが実行する非常に簡単な判定である(操作者がモードを切り替える判断を行うので)。
【0086】
アクティブ制御のパッシブ曲げモードは、既知のシャフト誘導制御システムに比べて様々な有利な効果をもたらす。まず、両方の実施形態について、利点のひとつは、エンコーダ位置フィードバック及び力フィードバックを維持しながら、制御ワイヤを完全にパッシブ(制御ワイヤが駆動アクチュエータから切り離されているかのように、外力によって動かすことができる)にできることである。更に、制御ワイヤ110は、ギア、ベルト又はプーリなしで、リニアアクチュエータによって直接駆動され、これにより、摩擦の追加を回避することができ、また、制御ワイヤに過度のたるみを与えることを防止することができる。制御ワイヤ110は、プルモード及びプッシュモード(引張及び圧縮)でアクティブ制御することができる。したがって、アクティブ制御のパッシブ曲げモードは、操縦可能器具100の挿入中及び除去(引抜き)中に実施することができる。
【0087】
第2の実施形態の特有の利点は、この場合、アクチュエータは駆動ワイヤによって受動的に動かせるので、フィードバックを用いて均衡を保つ力とは異なることであり、これは、センサノイズや速度の問題の影響を受けない。更に、摩擦が最小化されて(超音波モータ駆動システムの場合は固有の周波数及び波形を用いて、リニア誘導モータの場合は空気軸受ステージ等の低摩擦表面によって)、モータ可動体が受動的に動くことを可能にする。
【0088】
本明細書に記載の全ての実施形態は、アクティブ曲げモードの従来の技術に勝る重要な利点を提供すると考えられるが、第2の実施形態は、特に超音波モータを使用する場合、更に有利であると考えられる。すなわち、超音波モータを用いてアクティブ制御のパッシブ曲げモードを実装することにより、移動重みが小さく、速度を落とすことなく大きな力を測定可能な操縦可能器具が可能となる。更に、操縦可能器具は、力と位置の検知とは無関係に、アクティブ制御モード又はパッシブ制御モードのいずれかで動作することが可能となる。超音波モータ技術により、小型のアクチュエータによる高精度の制御が可能になるので、操縦可能器具は非常にコンパクトにすることができる。更に、機械的スロップがなく、アクティブ形状制御とパッシブ曲げ制御の間をシームレスに移行できるので、力の伝達量に影響を与えることなく、より高速での制御を実現することができる。
【0089】
<変更、定義、他の実施形態>
本発明の実施形態は、記憶媒体(より完全には「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」と呼ぶこともできる)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)を読み出し実行して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行し、かつ/又は、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))を含むシステム又は装置のコンピュータによって実現することもできるし、また、システム又は装置のコンピュータが、記憶媒体からコンピュータ実行可能命令を読み出し実行して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行すること、及び/又は1つ以上の回路を制御して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行することによって実行される方法によって実現することもできる。コンピュータは、1つ以上のプロセッサ(例えば中央処理装置(CPU)、マイクロ処理ユニット(MPU))を含んでよく、コンピュータ実行可能命令を読み出して実行するための別個のコンピュータ又は別個のプロセッサのネットワークを含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばネットワークク又は記憶媒体から、コンピュータに提供することができる。記憶媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散コンピューティングシステムのストレージ、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)又はBlu-rayDisc(BD)(商標)等)、フラッシュメモリデバイス、メモリカード等のうち1つ以上を含んでよい。I/Oインタフェースは、入出力デバイスに対して通信インタフェースを提供するために用いることができ、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、タッチスクリーン、タッチレスインタフェース(例えばジェスチャー認識デバイス)、印刷デバイス、ライトペン、光学式ストレージデバイス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線)が挙げられる。
【0090】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0091】
当然のことながら、要素又は部品が他の要素又は部品に関して「~上に」、「~に対して」、「~に接続される」、或いは「~に結合される」と言及される場合、それは、当該他の要素又は部品に対して直接的に上にあってよく、対してよく、接続されてよく、或いは結合されてよく、又は、介在する要素又は部品が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は部品に関して「直上にある」、「直接接続される」又は「直接結合される」と言及されるとき、介在する要素又は部品は存在しない。使用される場合、「及び/又は」という語句は、「/」と省略される場合があり、それは、そのように提供される場合、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合わせを含む。
【0092】
様々な図に示されるようなある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を簡易にするために、本明細書では、「下」、「真下」、「下方」、「低い」、「上方」、「上」、「近位」、「遠位」等の空間的な相対語が使用される場合がある。ただし、当然のことながら、空間的な相対語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの様々な向きを包含することが意図される。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると記述されている要素は、図中のデバイスが裏返されると、当該他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。デバイスは、他の方法で方向付けられてもよく(90度回転又は他の方向に)、本明細書で使用される空間的な相対的記述子は、それに応じて解釈されるべきである。同様に、相対的な空間用語「近位」と「遠位」も、該当する場合、交換可能である場合がある。
【0093】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。任意の数値範囲は、本明細書に記載される場合、そこに包含される全ての部分範囲を含むことが意図される。
【0094】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションは、本明細書の開示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションと呼ぶことができる。
【0095】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」という用語は、本明細書において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、留意すべきこととして、一部のクレームは、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0096】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示は、そのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0097】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】