(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】タンパク質オレオゲルを生産する一工程法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20220803BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220803BHJP
A23J 3/28 20060101ALI20220803BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220803BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A23D7/005
A23L5/00 M
A23J3/28 502
A23L13/00 Z
A23G1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570880
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 NL2020050347
(87)【国際公開番号】W WO2020242313
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518792
【氏名又は名称】ヴァーヘニンゲン・ウニヴェルシテイト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルケ・スコルテン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG11
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4B042AK15
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP18
(57)【要約】
本発明は、タンパク質の油中分散系を用意し、水を分散系にゆっくりと添加及び混合して、固体オレオゲルを生産する工程を含む、オレオゲルを生産する方法に関する。本発明は更に、タンパク質、水及び油を含むオレオゲル、好ましくは本発明の方法によって生産されるオレオゲル、並びに本発明のオレオゲルを含む製品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレオゲルを生産する方法であって、
(i)0.5~40質量%のタンパク質の油中分散系を用意する工程と、
(ii)タンパク質1グラム当たり0.05から1グラムの間の水を分散系に添加する工程と、
(iii)成分を十分な時間混合して固体オレオゲルを生産する工程と
を含む方法。
【請求項2】
水の添加より前に、タンパク質の油中分散系が好ましくは超音波処理によって均質化される、請求項1に記載する方法。
【請求項3】
水の全量が、2工程以上で分散系に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水の全量が、水0.05~0.25グラム/タンパク質1グラムずつ添加される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水の添加より前に、0.1から5グラムの間の分散剤、好ましくはエタノールがタンパク質の油中分散系に添加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水の全量が、水0.05~0.25グラム/タンパク質1グラムずつ添加され、各工程で、1~24時間混合することができる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
生産された固体オレオゲルが、25℃から油の沸点の間の温度に加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
食用固体オレオゲルの生産のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質が球状タンパク質である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
油が植物油である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
オレオゲル、好ましくは食用オレオゲルであって、0.5~40質量%のタンパク質、好ましくは8~40質量%のタンパク質、0.1~40質量%の水、及び20~99.5質量%の油を含む、オレオゲル。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって生産される、請求項11に記載のオレオゲル。
【請求項13】
製品、好ましくは食品であって、請求項11に記載のオレオゲルを含む、製品。
【請求項14】
焼いた食品、チョコレート及び詰め物から選択される、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
肉製品である、請求項13に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質オレオゲルを生産する方法に関する。本発明は更に、そのような方法で得ることができるオレオゲル、及びそのようなオレオゲルを含む製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
飽和及びトランス脂肪に富む食事は、高密度リポタンパク質コレステロールを犠牲にして低密度リポタンパク質コレステロールの量の増加に関連し(Mensink及びKatan、1990年、New Engl J Med、323: 439~445頁)、冠動脈疾患を発症するリスクの上昇に関連していると久しく認識されてきた。一方、シス不飽和脂肪酸に富む食事は、これらのリスクを減少させる(Mensinkら、2003年、Am J Clin Nutrition、77:1146~1155頁;Hu及びWillett、2002年、J Am Med Association、288:2569~2578頁)。しかし、食品組成変更は、飽和及びトランス脂肪の使用により、食品への質感及び酸化安定性の付与等の科学技術的利益が得られるので単純ではない。興味深い一代替案は、最近大いに注目されているが、いわゆるオレオゲルの使用である(Patel及びDewettinck、2016年、Food Function、7:20~29頁;Rogers、2009年、Food Res Int、42:747~753頁;Rogersら、2009年、Soft Matter、5:1594~1596頁;Marangoni、2012年、J Am Oil Chemists' Society、89:749~780頁)。食用オレオゲルを設計する目的は、飽和及びトランス脂肪酸の通常の使用以外によって、室温で液体の油に固体様構造を与えることができることである。
【0003】
ポリマーは、油を構造化する能力を有する。しかし、多くのポリマーは本来は親水性であり、それによって油中の分散が困難になる。オレオゲル形成について最も広範囲にわたって研究されたポリマーは、セルロース誘導体のエチルセルロースである。例えば、米国特許出願公開第2015/0157038号には、食用トリアシルグリセロール油又はトリアシルグリセロール脂肪及びエチルセルロースを含む食用オレオゲルを調製する方法であって、不活性雰囲気中で300℃まで加熱して、オレオゲルを形成する方法が記載されている。国際公開第2017172594号には、エチルセルロースポリマー、食品油及び分散剤を含むオレオゲルが記載されている。同様に、国際公開第2014193667号には、エチルセルロースを少なくとも1種の油性供給材料と共に押し出すことによって生成されるオレオゲルが記載されている。更に、米国特許出願公開第2019/0075811号には、エチルセルロースポリマーと油の混合物を100℃から35℃に徐冷することによって、エチルセルロースオレオゲルを作製する方法が記載されている。
【0004】
食品に含める可能性の高い好適な油ゲル化剤である周知の成分は、タンパク質である。タンパク質は、良好な栄養的価値を有し、その使用に関して規制問題はなく、「クリーンラベリング」に寄与する。タンパク質は、親水性及び油不溶性であることを考えれば、オレオゲル調製のための最も明らかな選択肢ではない。標準状態で、タンパク質は油にあまりよく分散せず、油中におけるタンパク質のゲル形成能力は得られない。明らかに、タンパク質間の引力相互作用は十分ではなく、したがってタンパク質は時間を経て沈殿する。
【0005】
それにもかかわらず、タンパク質を油のゲル化剤として含むオレオゲルを生成させることを試みた。例えば、中国特許出願公開第109122920号には、タンパク質、グリース、水及び食用糊を含む水中油型乳濁液が記載されている。欧州特許出願公開第1836897号には、0.1~100ミクロンの範囲の直径を有する油小滴を含み、前記小滴の界面に架橋タンパク質を含む固体生成物が記載されている。前記タンパク質は、例えばグルタルアルデヒド及び/又はトランスグルタミナーゼの添加により架橋される。欧州特許出願公開第3011836号には、連続した工程で水が油と交換される溶媒交換法を使用する、油中におけるタンパク質の安定な分散剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0157038号
【特許文献2】国際公開第2017172594号
【特許文献3】国際公開第2014193667号
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0075811号
【特許文献5】中国特許出願公開第109122920号
【特許文献6】欧州特許出願公開第1836897号
【特許文献7】欧州特許出願公開第3011836号
【特許文献8】欧州特許出願公開第3387909号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mensink及びKatan、1990年、New Engl J Med、323: 439~445頁
【非特許文献2】Mensinkら、2003年、Am J Clin Nutrition、77:1146~1155頁
【非特許文献3】Hu及びWillett、2002年、J Am Med Association、288:2569~2578頁
【非特許文献4】Patel及びDewettinck、2016年、Food Function、7:20~29頁
【非特許文献5】Rogers、2009年、Food Res Int、42:747~753頁
【非特許文献6】Rogersら、2009年、Soft Matter、5:1594~1596頁
【非特許文献7】Marangoni、2012年、J Am Oil Chemists' Society、89:749~780頁
【非特許文献8】de Vriesら、2018年、Food Hydrocolloids、79:100~109頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、糊又は化学架橋剤等の別の成分を用意する必要がなく、主にタンパク質及び油を含むオレオゲルの簡単で好都合な生産法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明には、非食用溶媒の使用又は界面活性剤の存在なしにタンパク質をベースにするオレオゲルの生産が記載されている。タンパク質は、食品表示の「追加の」成分とみなされず、E-ナンバーを必要としないので、理想的である。更に、タンパク質は健康によいとみなされる。
【0010】
水は、タンパク質間の相互作用を増大させ、強力な網目形成を誘導するということが示された。これは、強力なキャピラリー相互作用が原因である可能性が最も高く、水0.5g/タンパク質1gで最大の網目形成が得られる(de Vriesら、2018年、Food Hydrocolloids、79:100~109頁)。当業者には公知のように、この最適な含水量は、さまざまなタイプのタンパク質に対して水約0.05から2gの間/タンパク質1gでさまざまである。追加の加熱工程は、ゲル強度を更に増大させるということが示された(de Vriesら、2018年、Food Hydrocolloids、79:100~109頁)。
【0011】
したがって、本発明は、オレオゲルを生産する方法であって、(i)0.5~40質量%のタンパク質の油中分散系を用意する工程と、(ii)タンパク質1グラム当たり0.05から1グラムの間の水を分散系に添加する工程と、(iii)成分を十分な時間混合して固体オレオゲルを生産する工程とを含む方法を提供する。
【0012】
必要に応じて、水の添加より前に、タンパク質の油中分散系を好ましくは超音波処理によって均質化することができる。
【0013】
必要に応じて、水の添加より前に、0.1から5グラムの間の分散剤、好ましくはエタノールがタンパク質の油中分散系に添加される。
【0014】
好ましい方法では、水の全量は、2工程以上で分散系に添加され、好ましくは水の全量が、水0.05~0.25グラム/タンパク質1グラムずつ添加される。好ましくは、これらの工程のそれぞれで、10分~48時間、好ましくは1~24時間混合することができる。
【0015】
水の添加後、生産した固体オレオゲルを25℃から油の沸点の間の温度に加熱することができる。
【0016】
本発明の好ましい方法によって、食用固体オレオゲルが生産される。
【0017】
本発明に従ってオレオゲルを生産する方法において使用されるタンパク質は、好ましくは球状タンパク質である。
【0018】
本発明に従ってオレオゲルを生産する方法において使用される油は、好ましくは植物油である。
【0019】
したがって、本発明によるオレオゲルは、パーム油、カカオバター、動物脂肪及び乳脂肪等の固体脂肪に代わるものとして使用することができる。本方法を用いて、食品、化粧品又は他のパーソナルケア製品に含めるために使用することができ、例えば薬物送達(例えば、医薬製品)にも使用することができるオレオゲルを得ることができる。したがって、得られたオレオゲルは、一般的に安全と認められている(GRAS)材料とすることができる。
【0020】
本発明は、0.5~40質量%のタンパク質、好ましくは8~40質量%のタンパク質、0.1~40質量%の水、及び20~99.5質量%の油を含むオレオゲル、好ましくは食用オレオゲルを更に提供する。前記オレオゲルは、好ましくは本発明の方法により生産される。
【0021】
本発明は、本発明のオレオゲルを含む製品、好ましくは食品を更に提供する。前記食品は、焼いた食品、チョコレート及び詰め物から選択することができ、又は肉製品である。非食品は、化粧品及び/又は医薬品用途に適していることがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の方法によって得られたゲル様材料を示す図である。水0.25g/タンパク質1g(A);水0.5g/タンパク質1g(B);又は水0.75g/タンパク質1g(C)を添加した後得られたゲル塊。水の添加後、すべての試料を85℃で20分間加熱した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書では用語「オレオゲル」及び「タンパク質オレオゲル」は、油を連続相として有するが、パーコレーション構造がタンパク質をベースにしているゲルを指す。前記オレオゲルは、好ましくはゲル化剤、界面活性剤、架橋剤及び/又は糊を含まない。オレオゲルは、好ましくは少量の水の存在下でタンパク質及び油からなる。
【0024】
本明細書では用語「油」は、周囲温度又は室温、すなわち25℃で流体であるトリグリセリド等のグリセリドを含む脂質ベースの材料を指す。
【0025】
本明細書では用語「タンパク質」は、アルブミン、免疫グロブリン、ヘモグロビン、オバルブミン、α-ラクトグロブリン、及びβ-ラクトグロブリン等のポリアミノ酸分子を指す。前記ポリアミノ酸分子は、少なくとも25アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも50アミノ酸残基を含む。タンパク質という用語は、乳清タンパク質、血液と乳清タンパク質との混合物等のタンパク質の混合物等の異なる複数のタンパク質、並びに/又はアセチル化、酸化、ヒドロキシル化、グルタミル化、アミド化、脱アミド化、メチル化及びトリメチル化タンパク質等の改変タンパク質への言及を包含する。改変体は、自然に又はタンパク質の単離及び酵素処理において化学反応の結果として形成した可能性がある。
【0026】
本明細書では用語「分散系」は、ある材料の粒子、本件ではタンパク質粒子が、別の材料、本件では油、好ましくは植物油の連続相に分散されている系を指す。
【0027】
本明細書では用語「食品」は、食用製品を指す。好ましい食用製品は、ハード/セミハード及びソフトチーズ、細切りチーズ、カッテージチーズ、サワークリーム、クリームチーズ、アイスクリーム、及びヨーグルトやフルーツヨーグルト等の乳製品デザート等の乳製品;ソーセージ、サラミソーセージ、燻製ハム及び燻製魚等の肉製品;パン、ケーキ、予め焼いたパン、トッピング及びベーカリーフィリング等のベーカリー製品;フルーツパルプ、マーマレード、フルーツサラダ及びジュース等のフルーツ由来製品;卵黄、冷却液状卵、濃縮冷凍及び急速冷凍卵等の液状卵製品;ブロイラー飼料やペットフード等の動物用飼料;並びにケチャップ、ペースト、オリーブ油、ダイズ油、及びスープ、例えばトマトスープ等の植物由来製品を含むが、これらに限定されない、加工食品及び飼料製品である。
【0028】
本明細書では用語「肉製品」は、屠殺された動物に由来する製品への言及を含む。それには、肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、筋肉、胃及び腸が挙げられるが、これらに限定されない。前記肉製品は、豚肉、牛肉、子羊肉、羊肉、鶏肉、七面鳥肉、シカ肉、及び/又はゴミムシダマシやガイマイゴミムシダマシ等のこれらの昆虫の幼生期に由来する肉を含めてカブトムシ、チョウ、ガ、ミツバチ、スズメバチ、アリ、バッタ、ワタリバッタ、コオロギ、セミ、ヨコバイ、ウンカに由来する肉等の昆虫肉とすることができる。用語「肉製品」は、豆腐、テンペ、セイタン、乳製品、マッシュルーム、レンズマメ等をベースにした肉製品等の代用肉製品への言及も含む。
【0029】
タンパク質
本発明によるオレオゲル中のタンパク質は、任意のタンパク質とすることができる。しかし、球状タンパク質で、特に良好な結果が得られた。
【0030】
前記タンパク質は粉末として提供され、油中の分散系が生じる。前記粉末は、好ましくは20nmから1mmの間、より好ましくは100nmから10ミクロンの間、より好ましくは200nmから1ミクロンの間の平均粒径を有する。好ましくは、前記平均粒径は、例えばレーザー回折により測定されるように体積に基づく平均粒径である。
【0031】
好適なタンパク質は、ダイズ、コムギ、エンドウマメ、コメ、ルピナス、ジャガイモ、アブラナ、カノーラ、ゼイン等の植物材料を含み、又はそれらに由来するものである。更に他の好適なタンパク質は、オバルブミンを含めて卵白、乳、乳清、血液並びに皮膚及び骨から得られうるゼラチン等の動物材料を含み、又はそれらに由来しうる。更に他の好適なタンパク質は、真菌、藻類及び/又は昆虫から得られうる又は由来しうる。したがって、タンパク質源として、例えばブタ血清アルブミン、ブタ血清免疫グロブリン、鶏卵オバルブミン、乳清タンパク質分離物、乳清タンパク質濃縮物、ダイズタンパク質分離物、ダイズタンパク質濃縮物等の1つ又は複数が適用されうる。
【0032】
好ましいタンパク質としては、ダイズタンパク質、ジャガイモタンパク質及び乳清タンパク質が挙げられる。
【0033】
油
本発明によるオレオゲルを生産するために使用される油は、好ましくは不飽和脂肪酸、好ましくは多価不飽和脂肪酸であり、又はそれらを含む。前記油は、好ましくはヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油(flax seed oil)、亜麻仁油(linseed oil)、オリーブ油、パーム油、落花生油、ベニバナ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ油、アルガン油、コメ油、コメヌカ(rice brain)油、藻類油、カノーラ油、トウモロコシ粒油、及びエキウム油等の植物油である。前記油は、ヤリイカ油、藻類油、例えばゴミムシダマシ、カブトムシ幼虫、コオロギ、ゴキブリ、バッタ及びミズアブからの油等の昆虫油、又はサケ油やオヒョウ油等の魚油でもありうる。油という用語は、ヒマワリ油とゴミムシダマシ油の混合物やオリーブ油と藻類油の混合物等のさまざまな油の混合物又は多数への言及を含む。
【0034】
オレオゲル及び前記オレオゲルを生産する方法
オレオゲルは、好ましくは、(i)0.5~40質量%のタンパク質の油中分散系を用意する工程と、(ii)タンパク質1グラム当たり0.05から1グラムの間の水を分散系に添加する工程と、(iii)成分を十分な時間混合して固体オレオゲルを生産する工程とを含む方法によって生産される。
【0035】
必要に応じて、分散剤及び/又は界面活性剤を、タンパク質の油中分散系に添加して、タンパク質粒子の軟凝集を防止することができる。
【0036】
前記分散剤は、タンパク質粒子の平均サイズが微細ではなく、例えば100又は200ミクロンを超える粗大であるとき、添加されうる。前記分散剤は、ポリビニルアルコール、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、アルコール、好ましくはエタノール、及びそれらの混合物等の高分子分散剤とすることができる。
【0037】
好ましい分散剤はエタノールである。添加されるとき、エタノールは、好ましくは、タンパク質1グラム当たり約0.1グラムから5グラムの間、例えば、エタノール約0.5グラム/タンパク質1グラム、エタノール1グラム/タンパク質1グラム又はエタノール2グラム/タンパク質1グラムで添加される。
【0038】
分散剤は、好ましくは、前記オレオゲルを含む製品を生成する前に除去される。オレオゲルを加熱することによって、エタノール等のアルコールの除去を行うことができる。
【0039】
前記界面活性剤は、好ましくは、レシチン、ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標) 20)、カゼイン、2-[2-[3,4-ビス(2-メトキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチルオクタデカノエート(ポリソルベート60)及びそれらの混合物から選択される。添加されるとき、前記界面活性剤は、好ましくは、約0から20質量%の間、例えば、2質量%、5質量%、10質量%、又は15質量%等で添加される。
【0040】
必要に応じて、フレーバーを、タンパク質の油中分散系に添加して、タンパク質粒子の軟凝集を防止することができる。前記フレーバーは、天然フレーバー又は合成フレーバーである。前記フレーバーは、好ましくは、天然フレーバー、例えばバジルやミント等の薬草ベース、カルダモン、丁子及びウコン等の香辛料ベース;アニシードやクミン等の芳香種子ベース;オレンジやレモン等のフルーツベース;エンドウマメ(pee)、タマネギ及びニンニク等の野菜ベース;カラメル化、ロースティング、発酵、トースティング及びベーキング等のプロセスベース、又は天然抽出フレーバー、精油、エッセンス及び抽出物等の付加フレーバーベースの天然フレーバーである。
【0041】
好ましい方法では、水の量は、2工程以上、好ましくは3工程以上、例えば、4工程又は5工程等で分散系に添加される。全工程数は、好ましくは10工程未満である。工程のそれぞれで添加される水の好ましい量は、水約0.05グラムから0.25グラムの間/タンパク質1グラムである。
【0042】
必要に応じて、タンパク質の油中分散系は、例えば混合、撹拌、及び/又は超音波処理によって均質化されうる。超音波処理は、周波数10~100kHz、振幅10~100%、出力100から1000Wの間の出力で適用されうる。混合は、例えばホモジナイザーを使用することによって行うことができ、例えばOmni Mixer Homogenizer、an Omni Macro Homogenizer、又はIKA T 65 digital ULTRA-TURRAX Batch Process Homogenizer等の、試料のせん断を試料溶液の回旋/かき混ぜによる抽出と組み合わせる一組のモーター付きブレードを装備したホモジナイザーを使用することによって行うことができる。
【0043】
均質化後、水を添加する前に試料を遠心することができる。必要に応じて、タンパク質の油中分散系を、例えば2回目の混合、撹拌、及び/又は超音波処理による2回目の均質化にかけることができ、場合により、2回目の遠心工程にかけることができる。
【0044】
水添加の各工程は、タンパク質間の相互作用を可能にし、沈降を防止し、及び網目形成を誘導するのに十分な時間行われる。水を各工程で添加して、凝集塊形成を防止する。少量の水が、油に部分的に「溶解」し、親水性タンパク質にゆっくり移動/拡散する。最初に、水が乾燥タンパク質粉末に入り、タンパク質を水和させる。ゆっくり添加される水が増加すると、タンパク質の水和が増大する。タンパク質が水で飽和されると、追加の水は、キャピラリーブリッジとして働き、形成される予定のオレオゲルを安定化する。
【0045】
水添加の各工程は、好ましくは、10分から2日の間の期間、例えば2時間、5時間、12時間、16時間、24時間の期間行われる。混合中に、試料は、好ましくは、例えば磁気撹拌子を使用して撹拌することによってかき混ぜられ、好ましくは連続的にかき混ぜられる。好ましくは、成分は、10から40℃の間、好ましくは15から35℃の間、例えば20から25℃の間の温度で混合される。
【0046】
混合工程後に、試料は、25℃から油の沸点又は好ましくは油煙点の間の温度に加熱されうる。当業者に公知のように、煙点とは、油の燃焼点であり、油が加水分解及び/又は酸化され、有害化合物を生成し始める温度であることを意味する。いくつかの好適な油の煙点を表1(Table 1)に示す。当業者は、必要なら他の油の煙点を決定することができる。
【0047】
好ましくは、試料は、25から95℃の間、好ましくは60から90℃の間、例えば75から85℃の間の温度に加熱される。前記加熱工程は、好ましくは試料を例えば撹拌すること、好ましくは連続的に撹拌することによってかき混ぜながら行われる。
【0048】
前記加熱は、試料中に存在する含水量の少なくとも一部分、好ましくはできる限り多くの水を除去するために行われうる。更に、60℃超等のより高い温度での前記加熱が、生成される固体のゲル状構造を安定化するために行われる。
【0049】
加熱後に、試料を冷却、好ましくは直ちに冷却することができる。前記冷却は、試料を氷浴中でインキュベートすること、又は当業者に公知の他のいずれかの方法によって行われうる。
【0050】
均質化後に、固体オレオゲルは、例えば遠心によって液体から分離されうる。
【0051】
本発明の方法によって生産されるオレオゲルは、損失弾性率G''より高い貯蔵弾性率G'を有する。貯蔵弾性率G'は、室温において100パスカルから10*10E6パスカルの間、好ましくは1000パスカルから10*10E4パスカルである。
【0052】
こうして得られたオレオゲルは、食品及び非食品において使用されうる。
【0053】
【0054】
本発明は、0.5~40質量%のタンパク質、好ましくは少なくとも1質量%のタンパク質、より好ましくは少なくとも5質量%のタンパク質、例えば8~40質量%のタンパク質等;0~40質量%の水、好ましくは0.1~30質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~10質量%の水;及び20~99.5質量%、好ましくは60~98.5質量%、より好ましくは80~92質量%の油を含むオレオゲルも提供する。好ましいオレオゲルは、8~40質量%のタンパク質、0.5~20質量%の水、好ましくは0.75から10質量%の間の水、及び40~92質量%の油を含む。更に好ましいオレオゲルは、8~20質量%のタンパク質、0.5~20質量%の水、好ましくは1.5から7.5質量%の間の水、及び60~92質量%の油を含む。
【0055】
本発明による前記オレオゲルは、好ましくは化学架橋剤、ゲル化剤、エチルセルロース、界面活性剤、及び/又はゴム等の糊を含まない。
【0056】
前記オレオゲルは、欧州特許出願公開第3011836号に記載されているオレオゲルと異なる。欧州特許出願公開第3011836号に記載されているように、オレオゲルは、0.5~30質量%のタンパク質、70~99.5質量%の油を含む脂質材料、及び0~10質量%の1つ又は複数の他の成分を含む。前記他の成分は、塩、糖、脂肪、脂肪酸、アミノ酸、生物活性化合物(ビタミン等)、ゲル化剤(多糖等)、及び界面活性剤の1つ又は複数として記載される。したがって、欧州特許出願公開第3011836号のオレオゲルは、具体的には本発明のオレオゲルにおいて少なくとも0.1質量%存在する水を除外するものである。
【0057】
同様に、欧州特許出願公開第3387909号に記載されているオレオゲルは、油又は油の混合物、構造化剤又は構造化剤の混合物、及び脂肪又は脂肪混合物を含み、したがってやはり水がないようである。更に、構造化剤は、脂肪酸のモノグリセリドから選択され、したがって前記オレオゲルには、本発明のオレオゲルにおいて少なくとも0.5質量%存在するタンパク質を欠くものである。
【0058】
前記オレオゲルは、好ましくは上記の方法で得られうる。
【0059】
安定剤は、本発明による安定なオレオゲルを生産するのに必要とされないが、オレオゲルの特性を改変するために添加されうる。前記安定剤は、オレオゲルの物理化学的状態を維持し、且つ/又はオレオゲルの既存の色を安定化、保持若しくは強化することができる。使用することができる好適な安定剤の例は、アルギン酸、寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、塩化カルシウム及びレシチン等の食用安定剤である。
【0060】
安定剤は、添加されている場合、好ましくはオレオゲルの全質量の5質量%未満、好ましくはオレオゲルの全質量の2質量%未満、好ましくはオレオゲルの全質量の1質量%未満の量をもたらす量で存在する。
【0061】
オレオゲルはそういうものとして使用することができ、又はより小さいゲル粒子に加工されうる。
【0062】
製品
本発明は、本明細書に定義するオレオゲルを含む食品を更に提供する。前記食品は、好ましくは、塩、糖、脂肪酸、アミノ酸、ビタミン、生物活性化合物、ゲル化剤(多糖等)、界面活性剤、及び/又はフレーバーを更に含む。
【0063】
本オレオゲルを使用することによって調製することができる食品の例としては、クッキーやケーキ等の焼いた食品;マーガリンやチョコレートスプレッド等のスプレッド;チョコレート及び詰め物;及びハンバーガー等のひき肉製品、又はボローニャ、モルタデッラ、フランクフルトソーセージ、若しくは他のソーセージ製品等の肉エマルジョン製品等の肉製品が挙げられる。本明細書に記載されるオレオゲルの別の適用は、低脂肪スプレッドにおいて、オレオゲルが、例えばエマルジョンの口当たり及び/又は安定化を改善することができ、肉及び魚製品において、質感及び/又はゲル化を改善し、デザート又は乳製品において、質感、増粘化、及び/又はゲル化を改善し、菓子製品において、ゲル化、質感、咀嚼性、安定化、及び/又は結合を改善することができる。
【0064】
前記オレオゲルは、例えばスプレッド等の場合に連続相を形成することができ、又は肉製品でそうでありうるように、長さ、幅、高さ、及び直径から選択される1つ又は複数の寸法が10mmまでの範囲であるオレオゲル領域を含む不連続相を形成することができる。
【0065】
食品は、好ましくは、プディング、ムース、バター、ピザ、グラノーラ、エネルギーバー、缶詰肉、塩漬肉、ハム、ソーセージ、ベーコン、チーズ、ヨーグルト、精製油、クッキングスプレー、マーガリン、サラダドレッシング、バーベキューソース、マヨネーズ、ピーナッツバター、コーンシロップやコメシロップ等のシロップ、蜂蜜、キャンディーバー、ソフトキャンディー、プディング、デザートミックス、アイスクリーム、冷凍デザート、ホイップクリーム、チョコレート、マシュマロ、細切りココナッツ、糖代用品等の加工食品又は飼料製品、並びに清涼飲料、フルーツ飲料及びインスタント朝食飲料等の飲料からなる群から選択される。
【0066】
本発明は、本発明によるオレオゲルを含む非食品を更に提供する。前記非食品は、動物用飼料製品、化粧品、及び医薬製品からなる群から選択されうる。
【0067】
前記動物用飼料製品としては、ブロイラー飼料及びペットフードが挙げられ、例えばエネルギーリッチ及びタンパク質リッチの穀粒、脂肪並びに糖蜜を含む濃縮物の形態、又は混合飼料製品の系チアをとることができる。
【0068】
本発明によるオレオゲルを含む製品は、化粧品及び/又は医薬品用途において興味の対象となりうる薬物送達システムとして使用されうる。前記薬物は、好ましくは疎水性分子であるか、又はそれを含む。
【0069】
本発明によるオレオゲルを含む化粧品又は医薬製品は、局所的又は全身的効果をもたらすために投与されうる。前記化粧品又は医薬製品は、皮膚上に若しくは皮膚を通して投与され、又は例えば錠剤若しくはカプセル剤として存在するときには経口投与されうる。前記錠剤又はカプセル剤は、好ましくは、胃における薬物のバイオアベイラビリティを妨げるために腸溶性コーティングを備える。
【0070】
前記化粧品は、本発明によるオレオゲル及び少なくとも1種の化粧品活性成分を含む。前記化粧品活性成分は、化粧品の効果を与える任意の成分、すなわち皮膚、体毛及び毛髪系、爪、唇及び外生殖器を含めて、更には歯及び口腔粘膜も含めて、人体のさまざまな外部部分と接触させるときの成分でありうる。前記化粧品は、人体の外部部分を清拭し、それらに芳香を与え、それらの外観を直し、且つ/又はにおいを矯正するために、人体の外部部分に排他的に又は主に適用されうる。更に、前記化粧品は、人体の外部部分を保護し、又は良好な状態に維持するために適用されうる。
【0071】
化粧品活性成分は、好ましくは、オレオゲル又は水性ゲル相に可溶である保湿剤、日焼け防止製品、抗フリーラジカル剤又は皮膚再生剤である。
【0072】
前記化粧品は、好ましくはボディケア用油であり、更に詳細にはゴマ油又はアルガン油等の浴用油である。使用される化粧品活性成分のタイプに応じて、当業者は、本発明によるオレオゲルを含む化粧品の全質量に対するその適切な質量割合を決定することができる。
【0073】
前記医薬製品は、少なくとも1種の活性医薬品成分を含む。前記医薬製品は、また油性相に第1の活性成分及び水性相に第2の別の活性成分を含むこともできる。前記第1及び第2の活性成分は非相容性であることがあり、これは活性成分が化学的又は治療的に望ましくない形で一緒に反応できることを意味する。
【0074】
医薬製品に含めることができる好適な活性成分は、アレルゲン及びワクチン、ステロイドやコルチコイド等のホルモン、皮膚科学的活性成分、抗微生物剤、がん化学療法剤、抗炎症剤及び創傷修復剤を含む。
【0075】
前記医薬製品は、いずれの薬学的に許容できる塩、エステル、又はそのようなエステルの塩を更に包含することができる。薬学的に許容できる塩基付加塩は、アルカリ金属やアルカリ土類金属又は有機アミン等の金属又はアミンと形成される。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等である。好適なアミンの例は、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインである。前記酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸の形を、通常の形で塩を生成するのに十分な量の所望の塩基と接触させることによって調製される。遊離酸の形は、塩の形を酸と接触させ、通常の形で遊離酸を単離することによって再生されうる。遊離酸の形とそれらのそれぞれの塩の形は、性溶媒に対する溶解度等のいくつかの物理的特性が若干異なるが、その他の点では、塩は、本発明ではそれらのそれぞれの遊離酸に等しい。本明細書では、「医薬付加塩」は、本発明の組成物の成分の1つの酸の形の薬学的に許容できる塩を含む。これらとしては、アミンの有機又は無機酸塩が挙げられる。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の好適な薬学的に許容できる塩は当業者に周知であり、例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸又はリン酸等;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ若しくはホスホ酸又はN置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸又はイソニコチン酸;及び天然α-アミノ酸、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸等のアミノ酸、更にはフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-又は3-ホスホグリセレート、グルコース-6-ホスフェート、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸塩の形成を伴う)、又はアスコルビン酸等の他の酸有機化合物等さまざまな無機酸及び有機酸の塩基性塩を含む。化合物の薬学的に許容できる塩は、薬学的に許容できるカチオンとも調製されうる。好適な薬学的に許容できるカチオンは当業者に周知であり、それらとしては、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム及び第四級アンモニウムカチオンが挙げられる。カーボネート又は水素カーボネートも利用可能である。
【0076】
前記ステロイドとしては、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン及び5α-ジヒドロテストステロンが挙げられる。
【0077】
コルチコステロイドとも呼ばれる前記コルチコイドとしては、コルチゾール、コルチコステロン、コルチゾン、アルドステロン、デキサメタゾン、プレドニゾン及びフルドロコルチゾンが挙げられる。
【0078】
前記抗微生物剤としては、当業者に周知のように、抗細菌剤、抗真菌剤及び抗ウイルス剤が挙げられる。抗細菌剤としては、例えば、天然及び合成ペニシリン及びセファロスポリン、スルホンアミド、エリスロマイシン、カナマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、ナタマイシン、ナイスタチン、アシクロビア、アジドチミジン、ビダラビン(9-β-D-アラビノフラノシルアデニン)並びに/又はそれらの混合物及び誘導体が挙げられる。
【0079】
前記がん化学療法剤としては、好ましくは、ナイトロジェンマスタード、例えばシクロホスファミド、メクロレタミン又はムスチン、ウラムスチン及び/又はウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド;カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン等のニトロソ尿素;ブスルファン等のスルホン酸アルキル、チオテパ等のエチレンイミン(ethylenime)及びその類似体、ダカルバジン、アルトレタミン、ミトゾロミド、テモゾロミド、アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジン及びテモゾロミド等のヒドラジン/トリアジン等のアルキル化剤;シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン及びサトラプラチンのような白金ベースの化合物等の挿入剤;ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン及びイダルビシン等のアントラサイクリン;マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、アドリアマイシン、並びにミトラマイシン等が挙げられる。
【0080】
本明細書では用語「実質的に」は、当業者によって理解される。用語「実質的に」は、「全体的に」、「完全に」、「全部」等を含む実施形態も含むことができる。したがって、実施形態において、形容詞である「実質的に」は除去されてもよい。適用可能な場合、用語「実質的に」は、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、更に特に100%を含む99.5%以上等にも関することができる。
【0081】
本明細書では用語「含む」は、用語「含む」が「からなる」を意味する実施形態も含むが、別の実施形態において、「少なくとも定義された種を含み、1つ又は複数の他の種を場合によって含む」ことも指すことができる。動詞「含むこと」及びその活用形の使用は、請求項に記載されている要素又は工程以外の要素又は工程の存在を除外しない。
【0082】
本明細書では用語「及び/又は」は、「及び/又は」の前後に記載されている項目の1つ又は複数に関する。例えば、語句「項目1及び/又は項目2」並びに類似の語句は、項目1及び項目2の1つ又は複数に関することができる。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲における用語「第1、第2、第3等」は、類似の要素を識別するのに使用されるが、必ずしも起こる順又は時間順を記載するのに使用されるわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換できること、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示される順序ではない順序で操作可能であることを理解すべきである。
【0084】
要素に先行する冠詞「a」又は「an」は、そのような要素が複数存在することを除外しない。
【0085】
本特許で論じられているさまざまな態様は、追加の利点を備えるために組み合わされうる。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
材料及び方法
200mlのフラスコにおいて、磁気撹拌子を使用して、4gの未変性乳清タンパク質を200mlの油に分散させ、2%のタンパク質分散系を得た。この分散系を3つの試料に分割した。
【0087】
試料1に、水0.25g/タンパク質1gを添加した(1mLの水)。磁気撹拌子を使用して、試料を終夜撹拌した。続いて、試料1を連続的に撹拌しながら、水浴中85℃で20分間加熱した。
【0088】
試料2に、水0.25g/タンパク質1g(1mLの水)を1日目に添加し、もう1回水0.25g/タンパク質1gを2日目に添加した。2日後、試料を加熱した。
【0089】
試料3には、水0.25g/タンパク質1gを3日間にわたって3回添加し、その後に加熱した。この実験の概要を表2(Table 2)に提示する。加熱後、氷浴を使用して、試料を直ちに冷却した。分散系を均質化及び遠心した。上澄みをデカンテーションにより除去し、残ったペレットがオレオゲルを形成した。
【0090】
【0091】
結果
キャピラリーブリッジ形成に対する最大期待含水量を下回る含水量(水1g当たり0.25g)の試料を1つ、最大期待含水量(水1g当たり0.5g)の試料を1つ、及び最大期待含水量を超える含水量(水1g当たり0.75g)の試料を1つ作製した。
【0092】
水0.25g/タンパク質1gを含む試料1を撹拌しながら加熱して、凝結を誘導し、水が油中に拡散するのに十分な時間をもたらした。稠度の明らかな変化は観察されなかった。次いで、試料を遠心して、ゲル形成を誘導し、ゲル様材料を得た(
図1A)。他の2つの試料に、追加の水0.25g/タンパク質1gを添加し、撹拌しながら再度終夜放置した。翌日、含水量0.5g/タンパク質1gの試料の1つは、加熱の間に大きい凝集塊の形成を示し、遠心後に大変弱い「スライム状」ゲルが形成された(
図1B)。より多くの水を最初に添加して、最大0.75g/タンパク質1gに到達すると、試料を加熱する前に既に、試料は強力な固体を形成した(
図1C)。この強力な固体は、変形可能なソフトゲルの巨視的特性を有さなかった。実際、試料は、強力なゴム/プラスチックと最もよく比較することができた(
図1C)。これらの結果は、実際、異なる量の水をゆっくり添加することによって、ゲル形成が得られうること、製品の稠度が液体から固体まで大いに変動できることを示す。
【0093】
(実施例2)
10グラムの乳清タンパク質分離物を、分散剤としてのエタノール40グラムに分散させた。このミックスを240グラムのヒマワリ油に添加し、200rpmで4時間撹拌した。タンパク質含有量は4%であった。次いで、混合物を磁気撹拌プレート(200rpm)上にて40℃で加熱することによって、エタノールを除去した。エタノールは3時間で除去された。次いで、混合物を、1.7mmのプローブ、20kHzの周波数、全出力400Wの50%の振幅で20分間音波処理した。0.1秒のパルスを使用した。
【0094】
次いで、混合物を8つの試料に分け、3900rpmで20分間遠心した。油を主に含む上澄みを除去し、タンパク質を主に含むペレットを回収した。ペレットは、おおよそ30%のタンパク質を含むものであった。
【0095】
ペレットに、異なる量の水を0.1グラムずつ添加した。水0.1グラム/タンパク質1gずつ添加した後、水を1日間拡散させた。その後、追加の水0.1グラムを添加した。このプロセスを4日間繰り返し、したがって合計0.4グラムの水を添加した。得られた材料はペースト様材料であり、その貯蔵弾性率は損失弾性率より高かった。水0.1グラム/タンパク質1gで得られた試料の貯蔵弾性率は、20000Paであることがわかった。
【0096】
同様に、エタノール4グラム/タンパク質1グラムを使用して、8%及び10%のタンパク質分散系を作製した。分散系を遠心して、タンパク質含有量を増加させた。残った油をデカンテーションにより除去した後、試料を再び音波処理して、凝集塊形成を防止した。このように、10から30%の間のタンパク質含有量を調製した。これらの分散系に、異なる量の水を水0.1グラム/タンパク質1グラムずつ添加して、網目形成を誘導した。
【国際調査報告】