(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】電池セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20220803BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220803BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220803BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M50/178
H01M50/105
H01M50/211
H01M50/262 Z
H01M50/202 501P
H01M50/264
H01M50/186
H01M50/184 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571020
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 GB2020051277
(87)【国際公開番号】W WO2020240175
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】クック,アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ロイド,ベン
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】スウィアテック,アガタ
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ナイト,アンソニー
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF03
5H011GG05
5H028AA07
5H028CC01
5H028CC02
5H029AJ12
5H029AL04
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM09
5H029BJ04
5H040AA31
5H040AS04
5H040AT04
5H040AY03
5H040AY09
5H040CC34
(57)【要約】
電池セルは、可撓性ハウジング、第1の電極および第2の電極、電解質、および少なくとも1つのシール領域を含む。可撓性ハウジングは、ハウジングがその外周をシールされる外周シールを含む。第1の電極および第2の電極はそれぞれ、第1の領域と、第1の領域から突出した第2の領域とを含み、第1の電極および第2の電極の第1の領域および第2の領域は、可撓性ハウジング内に位置する。電解質は、第1の電極の第1の領域と第2の電極の第1の領域との間に位置する。第1の電極および第2の電極の第1の領域と電解質は、可撓性ハウジング内に収容された電気化学ゾーンを規定するように配置されている。第1の電極および第2の電極の第2の領域は、電気化学ゾーンから突出している。少なくとも1つのシール領域は、可撓性ハウジングの内面が共にシールされる領域を構成する。少なくとも1つのシール領域は、第1の電極および第2の電極の第1の領域と周囲のシールとの間に配置され、電解液が電気化学ゾーンから離れるのを抑制するように配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングがその周囲でシールされる周囲シールを含む可撓性ハウジング、
第1の領域と、該第1の領域から突出した第2の領域とをそれぞれ含む第1の電極および第2の電極、
第1の電極の第1の領域と第2の電極の第1の領域との間に位置する電解質、並びに
該可撓性ハウジングの内面が互いにシールされる少なくとも1つのシール領域
を備え、
該第1の電極および第2の電極の第1の領域および第2の領域が、該可撓性ハウジング内に配置されており、
第1の電極および第2の電極の第1の領域と電解質とが、可撓性ハウジング内に収容された電気化学ゾーンを画定するように配置され、第1の電極および第2の電極の第2の領域が電気化学ゾーンから突出しており、
該少なくとも1つのシール領域は、該第1の電極および第2の電極の第1の領域と該周囲シールとの間に配置され、該電解液が該電気化学ゾーンから離れるのを抑制するように配置されている、電池セル。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記第1の電極および第2の電極の第1の領域と、前記周囲シールと、前記第1の電極および/または第2の電極の少なくとも1つの第2の領域との間に配置されたシール領域を含む、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記第1の電極の第2の領域と前記第2の電極の第2の領域との間に配置されたシール領域を含む、請求項1または2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記第1の電極の第2の領域と前記周囲シールとの間に配置されたシール領域を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項5】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記第2の電極の第2の領域と前記周囲のシールとの間に配置されたシール領域を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記周囲シール内、かつ前記第1の電極および前記第2の電極の外側範囲内に配置されたシール領域を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項7】
前記周囲シールは、シールされた境界を規定する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシール領域は、電極が設置されていない前記シールされた境界の一部内に配置されたシール領域を含む、請求項7に記載の電池セル。
【請求項9】
前記第1の電極の第2の領域は、前記第2の電極の第2の領域からオフセットされている、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記シール領域に配置され、前記可撓性ハウジングの対向する内面に付着させたシーラントを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項11】
前記第1の電極および前記第2の電極が実質的に平板状であり、前記第1の電極が前記第2の電極と実質的に平行になるように配置されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項12】
前記第1の電極の第2の領域に電気的に結合された第1の接触タブと、前記第2の電極に電気的に結合された第2の接触タブとを更に備え、前記第1の接触タブおよび第2の接触タブは、前記可撓性ハウジングの周囲シールを通って延びている、請求項1~11のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項13】
前記第1のタブおよび第2のタブの少なくとも一部が、可撓性ハウジングの外側に突出し、電池セルの電気端子を構成している、請求項12に記載の電池セル。
【請求項14】
前記第1の電極の第1の領域と前記第2の電極の第1の領域との間に配置された多孔質セパレータを更に含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項15】
前記電池セルは、クランプ力を受けるように配置された複数のクランプ面を備え、前記クランプ面にクランプ力を加えることによって、電気化学ゾーンにクランプ圧力が加えられる、請求項1~14のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項16】
少なくとも1つのシール領域が、クランプ面にクランプ力が加えられたときに電解液が電気化学ゾーンから離れるのを抑制するように配置されている、請求項15に記載の電池セル。
【請求項17】
前記少なくとも1つのシール領域は、前記クランプ面の少なくとも1つの一部を形成するように配置されている、請求項15または16に記載の電池セル。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電池セル、および
前記少なくとも1つの電池セルのクランプ面にクランプ力を加えるように配置されたクランプ
を含む、電池セル配置。
【請求項19】
前記クランプは、少なくとも1つの電池セルの対向する側面に配置された第1のクランプ要素および第2のクランプ要素と、第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を強制して少なくとも1つの電池セルにクランプ力を与えるように配置されたクランプ・デバイスとを備える、請求項18に記載の電池セル配置。
【請求項20】
前記クランプ・デバイスは、前記第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を互いに固定した関係で保持するように配置されている、請求項19に記載の電池セル配置。
【請求項21】
前記クランプ・デバイスは、前記第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を互いに押し付けるように配置されている、請求項19に記載の電池セル配置。
【請求項22】
前記クランプは、前記クランプ面に一軸性の圧力を加えるように配置されている、請求項18~21のいずれか1項に記載の電池セル配置。
【請求項23】
前記クランプは、前記電解質の気化を抑制するのに十分なクランプ力を加えるように配置されている、請求項18~22のいずれか1項に記載の電池セル配置。
【請求項24】
前記クランプは、前記電解質の蒸気圧と電池セルに加えられる大気圧との差に実質的に等しいかそれより大きいクランプ圧を加えるように配置される、請求項23に記載の電池セル配置。
【請求項25】
少なくとも1つの電池セルのクランプ面にクランプ力を加える工程を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電池セルをクランプする方法。
【請求項26】
前記クランプ力は、前記少なくとも1つの電池セルの対向する側面に加えられる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記クランプ力を加える工程は、前記クランプ面に一軸性の圧力を加えることを含む、請求項25~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記加えられたクランプ力は、前記電解質の気化を抑制するのに十分である、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記加えられるクランプ力は、電解質の蒸気圧と電池セルに加えられる大気圧との差に実質的に等しいか、またはそれよりも大きくなるようにする、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池セル、および電池セルとクランプとを含む電池セル配置に関する。本明細書中に開示された装置は、リチウム硫黄電池などのリチウム電池の分野において、排他的ではないが、特定の用途を見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
典型的な電気化学セルは、アノードおよびカソードの形態の電極と、アノードおよびカソードの間に配置された電解質とを備える。陽極、陰極および電解質は、ハウジング内に収容されてもよい。電気的接続部、例えば、接続タブは、セルの陽極および陰極との電気的接続を提供し、セルの端子として機能するように、ハウジングに結合されてもよい。
【0003】
電池セルのハウジングは、フレキシブルポーチなどの可撓性ハウジングの形態で提供されてもよい。可撓性ハウジングは、剛性ハウジングと比較して、一般的に軽量であってよい。したがって,可撓性ハウジングに収められた電池セルは,電池セルの重量が重要な分野で特に適用され得る。例えば、電池セルは、陸上車両、航空機および/または宇宙船などの乗り物の電源として使用される場合がある。このような用途(および/または他の用途)では、乗り物の総重量を減らすために、比較的軽量の電池セルを使用することが望ましく、したがって、可撓性ハウジングを有する電池セルが特に有用である場合がある。
【0004】
しかしながら、可撓性ハウジングを有する電池セルは、ハウジングの柔軟な性質のために、膨張しやすい場合がある。これは、電池が低圧条件および/または高温にさらされる可能性がある用途において、特に懸念される可能性がある。例えば、航空機や宇宙船に使用される電池セルは、高高度に発射される際に低圧状態にさらされる可能性がある。
【0005】
このような背景から、本願に含まれる主題が発明されたのである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、以下を含む電池セルが提供される。ハウジングがその周囲にシールされる周囲シールを含む可撓性ハウジングと、第1の領域および第1の領域から突出する第2の領域をそれぞれ含む第1の電極および第2の電極であって、第1の電極および第2の電極の第1の領域および第2の領域が、可撓性ハウジング内に位置する第1の電極および第2の電極と前記第1の電極の第1の領域と前記第2の電極の第1の領域との間に位置する電解質であって、前記第1の電極および前記第2の電極の第1の領域と前記電解質とが、前記可撓性ハウジング内に収容された電気化学ゾーンを画定するように配置され、前記第1の電極および前記第2の電極の第2の領域が前記電気化学ゾーンから突出している、電解質と、可撓性ハウジングの内面が互いにシールされる少なくとも1つのシール領域であって、少なくとも1つのシール領域は、第1の電極および第2の電極の第1の領域と周囲シールとの間に配置され、電解液が電気化学ゾーンから離れる(または抜けていく、または出ていく)のを抑制するように配置されている、シール領域とを備える。
【0007】
少なくとも1つのシール領域は、第1の電極および第2の電極の第1の領域と、周囲のシールと、第1の電極および/または第2の電極の少なくとも1つの第2の領域と、周囲のシールとの間に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0008】
少なくとも1つのシール領域は、第1の電極の第2の領域と第2の電極の第2の領域との間に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0009】
少なくとも1つのシール領域は、第1の電極の第2の領域と周囲のシールとの間に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0010】
少なくとも1つのシール領域は、第2の電極の第2の領域と周囲のシールとの間に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0011】
少なくとも1つのシール領域は、周囲のシール内で、第1の電極および第2の電極の外側範囲内に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0012】
周囲シールは、シールされた境界を規定してもよい。
【0013】
少なくとも1つのシール領域は、電極が設置されていないシールされた境界の一部内に配置されたシール領域を含んでもよい。
【0014】
第1の電極の第2の領域は、第2の電極の第2の領域からオフセットされて(または、ずれて)いてもよい。
【0015】
少なくとも1つのシール領域は、シール領域内に配置され、可撓性ハウジングの対向する内面に付着させたシーラントを含んでもよい。
【0016】
第1の電極および第2の電極は、実質的に平板状であってもよい。第1の電極は、第2の電極と実質的に平行になるように配置されてもよい。
【0017】
電池セルは、第1の電極の第2の領域に電気的に結合された第1の接触タブと、第2の電極に電気的に結合された第2の接触タブとを更に含んでもよい。第1の接触タブおよび第2の接触タブは、可撓性ハウジングの周囲シールを通って延びていてもよい。
【0018】
第1のタブおよび第2のタブの少なくとも一部は、可撓性ハウジングの外側に突出していてもよく、電池セルの電気端子を構成していてもよい。
【0019】
電池セルは、第1の電極の第1の領域と第2の電極の第1の領域との間に配置された多孔質セパレータを更に含んでいてもよい。
【0020】
電池セルは、クランプ面にクランプ力を加えると電気化学ゾーンにクランプ圧力が加えられるように、クランプ力を受けるように配置された複数のクランプ面を含んでいてもよい。
【0021】
少なくとも1つのシール領域は、クランプ面にクランプ力が加えられたときに、電解質が電気化学ゾーンから離れるのを抑制するように配置されていてもよい。
【0022】
少なくとも1つのシール領域は、クランプ面の少なくとも1つの一部を形成するように配置されてもよい。
【0023】
例えば、シール領域に配置されたシーラントは、シール領域におけるセルの厚さを十分に増加させて、シール領域におけるクランプ要素と可撓性ハウジングとの間の接触を引き起こす役割を果たしてもよい。したがって、クランプ面に加えられるクランプ力は、シール領域の少なくとも1つにクランプ力を加える役割を果たすことができる。少なくとも1つのシール領域に加えられたクランプ力は、電解質がそのシール領域に入るのを抑制する役割を果たし、および/または、そのシール領域に存在する電解質の気化を抑制する役割を果たしてもよい。
【0024】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様による少なくとも1つの電池セルと、少なくとも1つの電池セルのクランプ面にクランプ力を加えるように配置されたクランプと、を備える電池セル配置が提供される。
【0025】
クランプは、少なくとも1つの電池セルの対向する側面に配置された第1のクランプ要素および第2のクランプ要素と、第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を強制して少なくとも1つの電池セルにクランプ力を及ぼすように配置されたクランプ・デバイスとを含んでもよい。
【0026】
クランプ・デバイスは、第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を互いに押し付ける(urge)ように配置されていてもよい。
【0027】
クランプ・デバイスは、第1のクランプ要素および第2のクランプ要素を互いに向かって付勢するように配置されてもよい。
【0028】
クランプは、クランプ面に一軸性の圧力(uniaxial pressure)を加えるように配置されてもよい。
【0029】
クランプは、電解質の気化を抑制するのに十分なクランプ力を加えるように配置されてもよい。
【0030】
クランプは、電解質の蒸気圧と電池セルが曝される大気圧との差に実質的に等しいか、それ以上のクランプ圧を印加するように配置されてもよい。
【0031】
例えば、約30mbarという低い大気圧までの電解液の蒸気圧の差に実質的に等しいか、それ以上のクランプ圧を適用してもよい。例えば、電池セルが曝される大気圧は、海面における大気圧よりも低くてもよく、例えば、約500mbarよりも低くてもよい。
【0032】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と、約5mbarのように低い大気圧までの大気圧との差に実質的に等しいか、それ以上のクランプ圧力を加えられてもよい。例えば、電池セルは、いくつかのシナリオでは、30mbar未満の大気圧にさらされてもよい。
【0033】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と5mbar未満の大気圧との間の差に実質的に等しいかそれ以上のクランプ圧力が加えられてもよい。
【0034】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と真空圧条件までの大気圧との差に実質的に等しいか、またはそれ以上のクランプ圧力を加えてもよい。例えば、電池セルは、実質的に0mbarまでの真空圧条件(例えば、宇宙での使用)にさらされることがある。電池セルが真空圧力条件にさらされている場合でも、電解質の気化を抑制するのに十分なクランプ圧力を加えてもよい。そのような例では、クランプ圧力は、電解質の蒸気圧と実質的に等しいか、またはそれよりも大きくてもよい。
【0035】
電解質の蒸気圧への言及は、約20℃における電解質の蒸気圧であると考えてよい。例えば、20℃における電解質の蒸気圧と、電池セルが曝される大気圧(例えば、約500mbar未満、約30mbar未満、約5mbar未満、または実質的に完全な真空のように低くてもよい)との間の差に実質的に等しいか、またはそれ以上のクランプ圧力を加えてもよい。
【0036】
いくつかの例では、ゼロよりも大きく、約10GPaまでのクランプ圧力を加えることができる。
【0037】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様による少なくとも1つの電池セルをクランプする方法が提供され、この方法は、少なくとも1つの電池セルのクランプ面にクランプ力を加えることを含む。
【0038】
クランプ力は、少なくとも1つの電池セルの対向する側面に適用されてもよい。
【0039】
クランプ力を加えることは、クランプ面に一軸性の圧力を加えることを含んでもよい。
【0040】
加えられたクランプ力は、電解質の気化を抑制するのに十分であってもよい。
【0041】
適用されるクランプ力は、適用されるクランプ圧力が、電解質の蒸気圧と電池セルが曝される大気圧との間の差に実質的に等しいか、またはそれよりも大きくなるようなものであってもよい。
【0042】
例えば、約30mbarという低い大気圧までの電解液の蒸気圧の差に実質的に等しいか、それ以上のクランプ圧力を加えてもよい。例えば、電池セルが曝される大気圧は、海面における大気圧よりも低くてもよく、例えば、約500mbarよりも低くてもよい。
【0043】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と、約5mbarの低さの大気圧までの大気圧との差に実質的に等しいか、それ以上のクランプ圧力を加えてもよい。例えば、電池セルは、いくつかのシナリオでは、30mbar未満の大気圧にさらされてもよい。
【0044】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と5mbar未満の大気圧との間の差に実質的に等しいかそれ以上のクランプ圧力が加えられてもよい。
【0045】
いくつかの例では、電解質の蒸気圧と真空圧条件までの大気圧との差に実質的に等しいかそれ以上のクランプ圧力を加えてもよい。例えば、電池セルは、実質的に0mbarまでの真空圧条件(例えば、宇宙での使用)にさらされることがある。電池セルが真空圧力条件にさらされている場合でも、電解質の気化を抑制するのに十分なクランプ圧力を加えてもよい。そのような例では、クランプ圧力は、電解質の蒸気圧と実質的に等しいか、またはそれよりも大きくてもよい。
【0046】
電解質の蒸気圧への言及は、約20℃における電解質の蒸気圧であると考えてよい。例えば、20℃における電解質の蒸気圧と、電池セルが曝される大気圧(例えば、約500mbar未満、約30mbar未満、約5mbar未満、または実質的に完全な真空のように低くてもよい)との間の差に実質的に等しいか、またはそれ以上のクランプ圧力を加えてもよい。
【0047】
いくつかの例では、ゼロよりも大きく、約10GPaまでのクランプ圧力を加えることができる。
【0048】
本願の範囲内では、前の段落、特許請求の範囲、および/または以下の説明と図面に記載された様々な態様、実施形態、例、および代替案、特にその個々の特徴は、独立してまたは任意の組み合わせで取ることができることが明示的に意図されている。すなわち、すべての実施例および/または任意の実施例の特徴は、そのような特徴が相容れない場合を除き、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。本出願人は、当初提出した請求項を変更する権利、またはそれに応じて新しい請求項を提出する権利を留保する。これには、当初提出した請求項を、そのような方法で請求されていないにもかかわらず、他の請求項の任意の特徴に依存し、および/またはそれを組み込むように修正する権利が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施形態は、添付の図を参照して、例示としてのみ説明される。
【
図1A】可撓性ハウジングを有する電池セルの模式図である。
【
図1B】可撓性ハウジングを有する電池セルの模式図である。
【
図2A】
図1Aおよび
図1Bの電池セルの一部を構成する第1の電極および第2の電極の模式図である。
【
図2B】
図1Aおよび
図1Bの電池セルの一部を構成する第1の電極および第2の電極の模式図である。
【
図4A】電池セルとクランプを含む電池セル配置を示す模式図である。
【
図4B】電池セルとクランプを含む電池セル配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の特定の実施例を説明する前に、本開示は本明細書中に記載された特定の電池セル、バッテリー、または方法に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施例を説明するためにのみ使用され、特許請求の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0051】
本発明の電池セル、バッテリー、および方法を説明および請求する際には、以下の用語が使用される:単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「電池セル」への言及は、このような要素の1つ以上への言及を含む。
【0052】
図1Aは、可撓性ハウジング101を有する電池セル100の概略図である。
図1Bは、可撓性ハウジング101内に位置する電池セル100の構成要素を示す、電池セル100の断面の模式図である。電池セル100は、任意の好適な電気化学セルを含んでいてもよい。例えば、セルは、リチウムセルを含んでいてもよい。好適なリチウムセルには、リチウムイオンセル、リチウム空気セル、リチウムポリマーセル、およびリチウム硫黄セルが含まれる。
【0053】
図1Aおよび
図1Bに描かれている電池セルは、当該技術分野で一般的に知られているようなパウチタイプのものである。電池セル100は、可撓性ハウジング101(例えばパウチ)と、可撓性ハウジング101内に位置する第1の電極111および第2の電極114(そのうち
図1Bでは第2の領域114bのみが見えている)とを備えている。電池セル100は、可撓性ハウジング内および第1の電極および第2の電極111、114の間に位置する電解質(
図1Aおよび
図1Bには示されていない)を更に備える。可撓性ハウジング101は、その周囲を周囲シール105でシールされている。周囲シールは、電極111、114および電解質が可撓性ハウジング101内にシールされるように、ハウジング100がシールされることを保証する。
【0054】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ第1の電極111および第2の電極114の概略図である。
図2Aに示すように、第1の電極111は、第1の領域111aと第2の領域111bとで構成されている。同様に、
図2Bに示すように、第2の電極114は、第1の領域114aと第2の領域114bとからなる。電極111、114の第2の領域111b、114bは、電極の第1の領域111a、114aから突出している。
図2Aおよび
図2Bに示すように、電極111、114の第1の領域111a、114aは、一般に、第2の領域111b、114bよりも大きい。特に、電極111、114の第1の領域111a、114aの幅waは、電極の第2の領域111b、114bの幅w
bよりも大きい。すなわち、第2の領域111b、114bは、第1の領域111a、114aの幅w
aの全体にわたって第1の領域111、114aから突出していない。
【0055】
通常、電極111、114の第1の領域111a、114aは、電気化学反応が起こる領域を構成し、電極の第2の領域111b、114bは、電極との電気的接続を形成するために設けられている。すなわち、通常、電極111、114の第2の領域111b、114bとの間に形成された接続部を介して、電極との間で電流が流される。
【0056】
電極111、114の一方は陰極であり、電極111、114の他方は陽極である。例えば、第1の電極111が陰極であり、第2の電極114が陽極であってもよいし、その逆であってもよい。典型的には、電極111、114は、少なくとも導電性の基板(例えば、集電体)で構成される。いくつかの例では、導電性基板の全部または一部に電気活性物質が配置されてもよい。例えば、電極111、114の第1の111a、114aおよび第2の111b、114b領域の両方を形成するために、導電性基板を形成してもよい(例えば、基材から切り出してもよい)。いくつかの例では、導電性基板の少なくとも一部に電気活性物質を付着させてもよい。例えば、電極111、114の第1の領域111a、114aの全部または一部に電気活性物質を付着させてもよい。
【0057】
電極111、114は、電池セルの化学的性質に応じて、任意の好適な材料で形成されてもよい。例示的な例では、電池セル100は、リチウム硫黄セルを含んでいてもよい。このような例では、第1の電極111は、電気活性物質が配置された集電体からなるカソードの形で提供されてもよい。集電体は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔で構成されていてもよい。電気活性物質は、例えば、元素状硫黄、Li2S、硫黄系有機化合物、硫黄系無機化合物、および硫黄含有ポリマーからなる電気活性硫黄物質を含んでいてもよい。
【0058】
電気活性硫黄材料は、導電性材料と混合してもよい。得られた混合物は、例えば、電気活性マトリックスとして集電体にコーティングされてもよい。導電性材料は、炭素で形成された固体材料のような任意の好適な材料であってよい。例えば、導電性材料は、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブから構成されていてもよい。
【0059】
第2の電極114は、リチウムからなる導電性基板から形成された陽極の形で提供されてもよい。例えば、導電性基材は、リチウム金属またはリチウム金属合金のシートで形成されてもよい。
【0060】
以上、電池セル100がリチウム硫黄電池である例示的な例を説明したが、他の例では、電池セル100は異なる形態をとってもよく、他の材料から形成されてもよい。例えば、前述のように、電池セル100は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、リチウム空気および/またはリチウムポリマーセルのような(これらに限定されない)任意の形態のセルであってもよく、それに対応して、(当技術分野で知られているような)任意の好適な材料で形成されてもよい。
【0061】
前述のように、電極111、114の第2の領域111b、114bは、典型的には、電極111、114との電気的接続を確立するために使用される。
図1Aおよび
図1Bを再び参照すると、電池100は、第1の電極111および第2の電極114にそれぞれ電気的に接続された第1の接触タブおよび第2の接触タブ108a、108bを更に備える。特に、接触タブ108a、108bは、電極111、114の第2の領域111b、114bに電気的に結合されている。すなわち、第1の接触タブ108aは、第1の電極111の第2の領域111bに電気的に結合され、第2の接触タブ108bは、第2の電極114の第2の領域114bに電気的に結合される。接触タブ108a、108bは、例えば、導電性接着剤の使用、はんだ付け、リベット、圧着、クランプおよび/または溶接(例えば、超音波溶接またはレーザ溶接)などの任意の好適な結合を用いて、電極の第2の領域111b、114bに結合されてもよい。
【0062】
接触タブ108a、108bは、任意の好適な導電性材料で形成されてもよい。例えば、接触タブ108a、108bは、アルミニウム、ニッケルおよび/または銅などの金属で形成されてもよい。いくつかの例では、第1の接触タブおよび第2の接触タブ108a、108bは、異なる材料で構成されていてもよい。例えば、例示的な実施例では、第1の接触タブ108aはアルミニウムで構成され、第2の接触タブ108bはニッケルで構成されていてもよい。電池セル100がリチウム硫黄セルを構成する例(電極に使用される材料を参照して前述した例など)では、カソード111(アルミニウム箔で形成された集電体を構成してもよい)に結合された第1の接触タブ108aは、アルミニウムで構成されていてもよい。アノード114(これは、リチウム金属またはリチウム金属合金で構成されていてもよい)に結合された第2の接触タブ108bは、ニッケルで構成されていてもよい。
【0063】
図1Bに明確に示されているように、第1の電極および第2の電極111、114の第2の領域111b、114bは、互いにオフセットされている。例えば、
図1Bに示す透視図では、第1の電極および第2の電極111、114は、水平方向に互いにオフセットされて(または、ずらされて;are offset from)おり、水平方向に互いに離間している。このオフセットにより、接触タブ108a、108b間の電気的接触を危険にさらすことなく、接触タブ108a、108bを第1の電極および第2の電極111、114にそれぞれ結合することができる。したがって、接触タブ108a、108bは、互いに分離され、第1の電極111および第2の電極114に独立した電気的接続を確立することができる。例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、接触タブ108a、108bは、可撓性ハウジング101から突出しており、電池セル101との外部接続を確立することができる。したがって、接触タブ108a、108bは、電池セル101の端子として機能する。
【0064】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、
図1Aおよび
図1Bの電池セル100の断面を示す模式図である。
図3Aに示す断面は、
図1Aおよび
図1Bに示す線A-Aに沿って撮影されている。
図3Bに示される断面は、
図1Aおよび
図1Bに示される線B-Bに沿って取られる。
図3Cに示す断面は、
図1Aおよび
図1Bに示す線C-Cに沿って撮影されている。
図3A~
図3C(および他の図)に示されている構成要素は、縮尺通りに示されていないことが理解されよう。例えば、図に示された構成要素の1つまたは複数の寸法の少なくとも一部は、図示を容易にするために拡大または縮小されてもよい。
【0065】
図3A~
図3Cに示すように、第1の電極111と第2の電極114の間にセパレータ10が設けられている。特に、セパレータ119は、第1の電極111と第2の電極114との間の電気的接触を防止するように配置されている。前述したように、電池セル100は、可撓性ハウジング101内で、第1の電極111と第2の電極114との間に位置する電解質を更に備えている。セパレータ119は、多孔質基板で構成されていてもよく、第1の電極および第2の電極111、114の間をイオンが移動することができる。電解質は、したがって、セパレータ119内に位置していてもよく、
図3A~
図3Cにおいて121とラベル付けされた矢印で一般的に示されている。
【0066】
セパレータ119は、約30%を超える空隙率を有していてもよい。例えば、セパレータ119の空隙率は、約50%よりも大きく、更には約60%よりも大きくてもよい。好適なセパレータ119は、例えば、ポリマー材料で形成されたメッシュを含んでもよい。好適なポリマーは、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリエチレンを含む。
【0067】
任意の好適な電解質121を使用してもよい。電解質121は、有機溶媒とリチウム塩とを含んでいてもよい。好適な有機溶媒としては、エーテル、エステル、アミド、アミン、スルホキシド、スルファミド、オルガノホスフェート、イオン液体、カーボネート、スルホンなどが挙げられる。例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸メチル、1,2‐ジメトキシエタン、1,3‐ジオキソラン、ジグライム(2‐メトキシエチルエーテル)、トリグライム、テトラグライム、ブチロラクトン、1,4‐ジオキサン、1,3‐ジオキサン、ヘキサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、N,N,N,N‐テトラエチルスルファミド、スルホン類およびそれらの混合物などがある。
【0068】
好適な電解質塩には、リチウム塩が含まれる。好適なリチウム塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロアルセネートリチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホンイミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、リチウムビス(オキサレート)ボレートおよびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが含まれる。いくつかの例では、塩の組み合わせを採用してもよい。例えば、トリフラートリチウムを硝酸リチウムと組み合わせて使用してもよい。リチウム塩は、0.1~5M、好ましくは0.5~3Mの濃度で電解液中に存在してもよい。
【0069】
よく理解されるように、電池セルの動作中(例えば、セルの充電および/または放電)に、電解液中のイオンが電極間を移動し、電極111、114で電気化学反応が起こる。したがって、第1の電極および第2の電極111、114および電解液は、電池セル100の動作中に電気化学反応が起こる電気化学ゾーン103を規定する。前述したように、典型的には、電解質121は、電極111、114の第1の111a、114a領域の間に位置する。更に、少なくともいくつかの例では、第1の電極および/または第2の電極111、114の電気活性物質は、電極111、114の第1の領域111a、114aに限定され、第2の領域111b、114bには存在しなくてもよい。したがって、電極の第2の領域111b、114bは、電気化学ゾーン103の外側に位置していてもよい。すなわち、電極111、114の第2の領域111b、114bは、電気化学ゾーン103から突出している。
【0070】
前述のように、可撓性ハウジング101は、周縁シール105によってその周縁部をシールされている。したがって、可撓性ハウジング101は、電解質121および電極111、114を収容し、それらの構成要素を外部環境から保護する密閉型のハウジングである。なお、可撓性ハウジング101のシールは、シールされたポーチを形成すると考えてもよい。可撓性ハウジング101は、例えば、金属と高分子との複合材料で形成されていてもよい。例えば、可撓性ハウジング101は、ポリマー(例えば、可撓性ハウジングの内部に形成されたポリプロピレンと、可撓性ハウジングの外部に形成されたナイロン)でラミネートされたアルミニウムで構成されていてもよい。
【0071】
図に示す例から分かるように、電池セル100は、一般的に、平板形状であってもよい。例えば、電池セルは、概ね長方形の形状であってもよい。そのような例では、可撓性ハウジング101は、それらの周囲をシールされた可撓性材料の対向するシートから形成されてもよい。例えば、可撓性材料の2つの部分は、電極111、114の両側に配置されてもよく、電極111、114がシールされたハウジングを形成するように、電極111、114の周囲の周りで共にシールされてもよい。
【0072】
前述のように、周囲シール105は、ハウジング101を形成するように、可撓性材料の表面を共にシールすることによって形成されてもよい。周囲シール105は、可撓性ハウジング10の周囲の少なくとも一部の周りに形成されてもよい。周囲シール105は、例えば、熱処理、ヒートシールおよび/または接着剤/結合材を使用するなどの任意の好適な技術を用いて材料を共にシールすることによって形成されてもよい。
【0073】
前述のように、第1の電極および第2の電極111、114および電解質121は、電池セル100を取り巻く雰囲気から隔離されるように、周囲シール105によって可撓性ハウジング101内に完全に封入されてもよい。例えば、電極111、114の第2の領域111b、114bは、電気化学ゾーン103から突出していても、可撓性ハウジング101内に収められている(すなわち、そこから突出していない)。
【0074】
示された例では、周囲シール105は、電極111、114の外側範囲の周りに形成されている。例えば、周囲シール105は、第1の電極111および第2の電極114の第1の領域111a、114aおよび第2の領域111b、114bの両方を囲む最小の矩形の周囲(本明細書中では、電極の外側範囲(outer extent)と呼ぶ)に実質的に形成されてもよい。外周シール105は、可撓性ハウジング101の外周をシールするものと考えることができる。例えば、周囲シール105は、一般的に、電極111、114の外側範囲と可撓性ハウジング101の外縁との間の領域に位置することができる。
【0075】
示された例では、周囲シール105は、可撓性ハウジング101の全周にわたって材料を共にシールすることによって形成されている。しかし、いくつかの例では、ハウジングを形成する材料をその全周にわたってシールすることなく、シールされた可撓性ハウジング101を形成することが可能であり得る。例えば、可撓性ハウジング101は、電極111、114の一方の側に材料のシートの第1の部分を形成し、電極111、114の対向する側に材料のシートの第2の部分を形成するように、電極111、114の一方の縁の周りに曲げられた可撓性材料の1枚のシートで形成されてもよい。その後、可撓性材料の第1の部分および第2の部分は、電極111、114が位置するシールされたハウジングを形成するように、電極の残りの3つのエッジの周りで共にシールされてもよい。このような例では、ハウジング101は依然として、ハウジング101がその周囲をシールされる周囲シール105を含んでいると考えられ、ここで、周囲シール105の一部は、ハウジング材料自体の継続によって形成される(例えば、材料が電極111、114の周囲に折り畳まれる縁部において)。
【0076】
以上、電池セル100が第1の電極111および第2の電極114を含む例を説明したが、いくつかの例では、電池セル100は2つ以上の電極を含んでいてもよい。例えば、電池セル100は、カソードとして機能する複数の電極111と、アノードとして機能する複数の電極114とを含んでいてもよい。いくつかの例では、複数のカソードと複数のアノードとがスタックとして配置されてもよい。例えば、複数のカソードと複数のアノードとが交互に配置されてもよい。例えば、複数の陰極と複数の陽極が交互に配置されていてもよく、スタック内の各交互の電極が陰極であり、各陰極の間に陽極が位置していてもよい。また、2つ以上の電極を含む配列は、陽極として機能する2つの電極の間に位置する陰極として機能する電極と、陰極として機能する2つの電極の間に位置する陽極として機能する電極とを含んでいてもよい。以上のように、隣接する電極間を電気的に絶縁するために、隣接する電極の間にセパレータ121を配置してもよい。例えば、一対の隣接する電極の間にセパレータ121が設けられていてもよい。電解質121は、各対の電極の間に設けられてもよい。
【0077】
2つ以上の電極を含む配置では、同様のタイプの複数の電極が互いに電気的に接続されてもよい。例えば,陰極として機能する複数の電極が互いに電気的に接続されていてもよい。同様に、アノードとして機能する複数の電極が互いに電気的に接続されていてもよい。また、電極の第2の領域111b、114bを共に電気的に接続することで、電極を互いに電気的に接続してもよい。例えば、カソードとして機能する複数の電極の第2の領域111bを互いに接触させてもよい。同様に、アノード114bとして機能する複数の電極の第2の領域114bを互いに接触させてもよい。
【0078】
前述のように、第1の電極111の第2の領域111bは、第2の電極114の第2の領域114bからオフセットされていてもよい。いくつかの例では、前述の第1の電極111の形態の複数の電極が、カソードとして機能するように設けられてもよい。同様に、前述した第2の電極114の形態の複数の電極は、アノードとして機能するように設けられてもよい。すなわち、カソード111として機能する複数の電極111は、互いに実質的に整列した第2の領域111bを含んでいてもよい。また、アノード114として機能する複数の電極114は、互いに実質的に整列しているが、カソード111の第2の領域111bからオフセットして離間している第2の領域114bを含んでいてもよい。これにより、陰極111と陽極114との間の電気的絶縁を維持しつつ、陰極111の第2の領域111bを互いに接続し、陽極114の第2の領域114bを互いに接続することができる場合がある。第1の接触タブ108aは、電池セルの端子を提供するように、陰極111の第2の領域111bに電気的に接続されてもよく、第2の接触タブ108bは、陽極114の第2の領域114bに電気的に接続されてもよい。
【0079】
前述のように、前述したタイプの電池セル100は、第1の電極111および第2の電極114を含んでいてもよく、または、複数の第1の電極111および複数の第2の電極114を含んでいてもよい。本明細書中において、第1の電極111および第2の電極114を含む電池セル100を参照して提供される任意の説明および教示は、複数の第1の電極111および複数の第2の電極114を含む電池セルにも適用されてもよく、その逆もまた同様であることが理解されるであろう。
【0080】
以上説明したように、電極111、114および電解質121が収容されたハウジング100は、密閉されており、かつ、可撓性を有している。したがって、可撓性ハウジング101は、膨張しやすい可能性がある。ハウジングの大幅な膨張は、ハウジング101に負担をかけ、ハウジング101の損傷、漏出および/または破裂の危険性があるため、一般に望ましくない。更に、セルが他の構成要素に近接して位置する場合、可撓性ハウジングの膨張は望ましくない場合がある。例えば、いくつかのアプリケーションでは、複数のセルが互いに隣接して(例えば、セルのスタックで)位置する場合がある。このような配置では、1つまたは複数のセルの実質的な膨張により、隣接するセルが他のセルと接触し、互いに圧力を加えることがある。
【0081】
電池セル100の膨張は、1つまたは複数の電池セルが海面における大気圧よりも低い圧力条件にさらされる用途において、特に懸念される可能性がある。例えば、前述したタイプの電池セル100は、周囲の圧力が海面の大気圧よりも著しく低い高度で飛行される航空機および/または宇宙船に用途を見出すことができ、例えば、宇宙船の場合、周囲の圧力は、完全な真空に近いか、または完全な真空である可能性がある。低圧状態への曝露(例えば、高高度で航空機を飛行させる場合)は、可撓性ハウジング101のいくらかの膨張を引き起こす可能性がある。
【0082】
可撓性ハウジング101の膨張は、周囲の圧力が電解質121の気化圧に近いかそれよりも低い状況において、特に問題となり得る。筐体101の可撓性は、電池セル101が非拘束である場合、筐体101の内部の圧力は、筐体101をすぐに取り巻く大気の圧力とほぼ同じであってもよい。ハウジング101をすぐに囲む大気の圧力が、電解質121の気化圧力に近いか、それよりも小さい場合、電解質121は気化し、その結果、著しく膨張する可能性がある。電解質121の気化および膨張は、可撓性ハウジング101の著しい膨張を引き起こす可能性があることが理解されるであろう。
【0083】
低い周囲圧力で動作させたときの電解質121の気化のリスクは、電解質が比較的高い気化圧を有する電池セル100に特に関連する可能性がある。例えば、リチウム硫黄電池は、他の電池化学物質と比較して、比較的高い気化圧を有する電解質を利用することができる。例えば、リチウム硫黄電池で使用される典型的な電解質の気化圧は、リチウムイオン電池で使用される典型的な電解質の気化圧よりも高くてもよい。
【0084】
例えば、電池セルの典型的な動作温度は、約20℃であってもよい。純粋に例示的な例では、1,2‐ジメトキシエタンを含む電解質が、リチウム硫黄電池に使用されてもよい。1,2‐ジメトキシエタンからなる電解質は、約48mmHg(20℃)の気化圧を有していてもよい。別の例を挙げると、1,3‐ジオキソランを含む電解質は、リチウム硫黄電池に使用されてもよい。1,3‐ジオキソランからなる電解質は、約70mmHg(20℃において)の気化圧を有してもよい。
【0085】
リチウム硫黄電池に使用される電解質とは対照的に、リチウムイオン電池に使用される電解質の一例は、ジメチルカーボネートを含んでいてもよい。炭酸ジメチルは、(21.1℃で)約18mmHgの蒸気圧を有していてもよい。リチウムイオン電池に使用する電解質の他の例としては、約10mmHg(23.8℃)の気化圧を有するジエチルカーボネート、0.13mmHg(20℃)の気化圧を有するプロピレンカーボネート、または0.02mmHg(36.4℃)の気化圧を有するエチレンカーボネートが挙げられる。
【0086】
一般に、リチウム硫黄電池で一般的に使用されるタイプの電解質は、したがって、リチウムイオン電池で一般的に使用される電解質の気化圧よりも高い気化圧を有していてもよい。したがって、リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池よりも低圧で作動させたときに、電解質の気化の危険性が高い可能性がある。
【0087】
低い周囲圧力での動作に加えて、または代わりに、電池セル100は比較的高い温度で動作してもよい。電解質の気化圧は、典型的には温度の関数であり、一般的には温度の上昇とともに増加する。したがって、比較的高い温度での電池セル100の動作は、電解質121の気化圧が比較的高い間に電池セル100を動作させることを含む場合がある。したがって、比較的高い温度での動作は、大気圧であっても電解質121の気化のリスクを高める可能性がある。電池セルの低圧動作に関連して説明したように、高温も同様に、電解液の気化とそれに続く可撓性ハウジングの望ましくない膨張を引き起こす可能性がある。低圧での電池の動作に関連して本明細書中に示されたあらゆる教示は、高温での電池の動作にも同様に適用され得る。
【0088】
前述したように、前述したタイプの電池セル100であって、可撓性ハウジング101内に収容されているものは、可撓性ハウジング101の膨張が起こりやすい場合がある。これは、特に、電池が、電池セル100で使用される電解質の気化圧に近いかそれ以下の周囲の圧力条件に曝される場合であってもよい。更にまたは代わりに、これは、電池が比較的高い温度にさらされる場合であってもよい。
【0089】
本開示の例によれば、電池セルの可撓性ハウジング101の膨張は、電池セル100に圧力を加えることによって低減または緩和されてもよい。例えば、ハウジング101の内部の圧力を増加させるために、可撓性ハウジング101を有する電池セル100にクランプ圧力を加えてもよい。
図4Aは、電池セル100と、電池セル100にクランプ力を加えるように配置されたクランプ201とを備える本開示の一例による電池セル配置200を示す概略図である。電池セル100は、概して、前述し、
図1~3に描かれている形態である。
図4Aでは、
図1~3に関連して前述した構成要素と対応する構成要素を示すために、同じ参照数字が使用されている。したがって、
図4Aを参照して、電池セル100の構成要素の詳細な説明は行われない。
図4Aに示される描写は、
図3Bに示される断面B-Bに相当する、電池セル100の断面図を提供する。
【0090】
図4Aに描かれている例では、クランプ201は、第1のクランプ要素201a、第2のクランプ要素201b、およびクランプ・デバイス202の形態で提供される。第1のクランプ要素および第2のクランプ要素201a、201bは、一般的に剛性の高い構造であり、例えば、剛性の高いプレート201a、201bの形態で提供されてもよい。クランプ要素201a、201bは、例えば、炭素繊維のような任意の好適な材料から構成されてもよい。
【0091】
クランプ・デバイス202は、少なくともいくつかの条件下で、クランプ要素201a、201bが電池セル100にクランプ力を発揮するように、クランプ要素201a、201bを保持するように配置されている。クランプ・デバイス202は、例えば、第1のクランプ要素および第2のクランプ要素201a、201bの両方に接触する1つ以上の柔軟なストラップ、バネ、または剛性要素など、任意の好適な形態で提供されてもよい。
図4Aの描写では、クランプ・デバイス202は、第1の要素および第2の要素201a、201bを共にクランプするように配置された単一の要素の形態で提供される。いくつかの例では、クランプ・デバイス202は、複数のこのような要素を含んでいてもよい。
【0092】
本明細書中に記載のタイプの電池セル100は、クランプ力を受けるように配置された複数のクランプ面を備えていてもよい。例えば、電池セル100の形状は、クランプ面にクランプ力を加えると電気化学ゾーン103にクランプ圧力が加えられるように、クランプ力を加えることができる対向するクランプ面を含むような形状であってもよい。前述のように、本明細書中に記載されたタイプの電池セル100は、概して平板形状で提供されてもよい。そのような例では、概して平板形状を有する対向する面は、クランプ力が適用され得るクランプ面として機能してもよい。
【0093】
クランプ要素201a、201bは、電池セル100のクランプ面の同等の寸法と実質的に等しいか、それよりも大きい寸法を有していてもよい。例えば、クランプ要素201a、201bの幅および/または高さは、電池セル100のクランプ面の対応する幅および/または高さと実質的に等しいか、またはそれよりも大きくてもよい。これにより、電池セル101のクランプ面の大部分またはすべてにわたってクランプ力を加えることができ、電池セル101が膨張することが許される可能性のある領域を制限することができる。
【0094】
図4Aに示す例では、クランプ要素201a、201bは、電池セル100の両側に配置され、電池セル100のクランプ面に隣接している。クランプ要素201a、201bは、セル100の電気化学ゾーン103にクランプ圧力を加えるように、クランプ面にクランプ力を加えてもよい。クランプ力の一般的な方向は、
図4Aの参照数字210で示された矢印によって示され、一軸性のクランプ圧力を及ぼしてもよい。
【0095】
いくつかの例では、クランプ・デバイス202は、電池セル100が膨張しやすい状態ではない場合でも、クランプ要素201a、201bをクランプして、電池セル100にクランプ力を加えるように配置されてもよい。例えば、クランプ201は、海面上の大気の状態で電池セル100にクランプ力を加えてもよい。このような例では、クランプ・デバイス202は、予め歪みを持たせて配置されていてもよい。例えば、クランプ・デバイス202は、1つまたは複数の張力のあるストラップおよび/またはバネで構成されていてもよい。
【0096】
他の例では、クランプ・デバイス202は、電池セル100の膨張がない場合に、クランプ要素201a、201bが電池セル100に実質的なクランプ力を加えないように、事前ひずみなしで配置されてもよい。例えば、クランプ・デバイス202は、クランプ要素201a、201bを互いに実質的に固定された関係で保持するように配置されてもよい。そのような配置では、クランプ要素201a、201bは、電池セル100と接触して、または電池セル100に密接に隣接して配置されてもよい。電池セル100が膨張を受け始めると(例えば、周囲圧力の低下および/または温度の上昇に起因して)、電池セルのクランプ面がクランプ要素201a、201bに膨張力を及ぼしてもよい。クランプ要素201a、201bは互いに実質的に固定された関係で保持されているので、電池セル100の膨張力により、電池セル100にクランプ力が加わり、これにより電気化学ゾーン103にクランプ圧力が加わる。
【0097】
クランプ201は、電池セル100が動作するように構成されているすべての圧力条件において、電解質121の気化を防止する、または少なくとも抑制するのに十分なクランプ圧力を、電池セル100、特に電気化学ゾーン103に加えるように配置されてもよい。例えば、クランプ201は、Pc≧Pv-Pminによって与えられるクランプ圧力Pcを加えるように配置されてもよく、ここで、PVは電解質121の蒸気圧であり、Pminは、電池セル100が動作することになる最小大気圧である。例えば、電池セルは、大気圧から約30mbar以下の圧力まで動作可能であってもよい。いくつかの例では、電池セルは、約<5mbar以下のような更に低い圧力で動作してもよく、更には、全真空に近いまたは全真空の圧力で動作してもよい。
【0098】
電池セルに適用することができるクランプ圧力は、例えば、一定容積クランプの形で提供されてもよく、このクランプは、例えば、電池セルに積極的に圧力を加えず、単にセルの容積を制限することによってセルの膨張を抑制する。あるいは、非ゼロのクランプ圧を電池セルに適用してもよい。例えば、ゼロを超え、約10GPaまでのクランピング圧力を電池セルに加えてもよい。
【0099】
クランプ201が単一の電池セル100にクランプ力を適用するように配置されている例が前述され、
図4Aに示されている一方で、いくつかの例では、クランプ201が複数の電池セル100にクランプ力を適用するように配置されてもよい。
図4Bは、複数の電池セル100と、複数の電池セル100にクランプ力を加えるように配置されたクランプ201とを備える本開示の一実施例による電池セル配置200bを示す概略図である。
図4Bに示す例では、複数の電池セル101は、互いに近接して(例えば、電池セル101のスタック内で)および/または互いに接触して配置されている。クランプ201は、複数の電池セル101にクランプ力を加えるように配置されている。例えば、クランプ201は、電池セル101のスタックの周囲に配置される。クランプ201は、
図4Aを参照して前述したクランプ201と同様であってもよいし、同じであってもよい。例えば、単一の電池セルをクランプするように配置されたクランプ201を参照して前述した特徴のいずれかが、複数の電池セル101をクランプするように配置されたクランプ201に同様に適用されてもよい。
【0100】
単一の電池セル101のクランプを参照して本明細書中に提示された任意の説明および教示は、クランプ201が複数の電池セル101にクランプ力を適用するように配置される例にも適用されてもよく、その逆もまた同様である。
【0101】
前述のように、電池セル100へのクランプ力の適用は、電池セル100の可撓性ハウジング101の膨張を防止または少なくとも抑制することができる。これにより、例えば、電池セル100を低圧条件で動作させることができ、低気圧条件にさらされたときに電池セル100または周囲の部品が損傷するリスクを低減することができる。特に、前述では、電気化学ゾーン103にクランプ圧力が加えられる例を説明した。例えば、
図4Aに見られるように、クランプ要素201a、201bは、電極111、114の第1の領域111a、114aのサイズおよび形状にほぼ対応する電池セル101のクランプ面に接触して配置されている。そのため、電極111、114の第1の領域111a、114aに対応する領域にクランプ力が加わる。その結果、電気化学ゾーン103および電気化学ゾーン103内に位置する電解質121にクランプ圧力が加えられる。
【0102】
更に、電池セル100にクランプ力を加えることで、電池セル100を高温条件下で動作させたときに、電池セル100の可撓性ハウジング101の膨張を防止または抑制することができる。クランプ力は、高温条件にさらされたときに、電池セル100または周辺の部品が損傷するリスクを低減してもよい。上で説明されたように、一定の圧力において、高温条件は、電解質の気化圧を上昇させ、大気圧においても、蒸気圧が電池セルの大気圧に匹敵するようになる可能性がある。これにより、電池セル100の外部圧力を低下させることなく、電解質121の気化が行われる場合がある。
【0103】
電気化学ゾーン103(電極111、114の第1の領域111a、114aの間)に位置する電解質121にクランプ圧が印加される場合がある一方で、いくつかの配置では、クランプ圧がほとんどまたは全く印加されない電池セル100の領域が存在する場合がある。例えば、
図4Aに示された例では、ラベル付けされた第1の膨張領域151があり、この領域では、可撓性ハウジング101はクランプ要素201a、201bと接触していない。その結果、第1の膨張領域151には、ほとんどまたは全くクランプ圧力が加えられない可能性がある。
図1~
図4に示す電池セル101が低圧条件で動作する場合、第1の膨張領域151の圧力は、したがって、(この領域にクランプ圧力がない場合)電池セル100が曝される周囲の圧力条件とともに低下する可能性がある。例えば、クランプ力の適用により電気化学ゾーン103がより高い圧力に維持される一方で、第1の膨張領域151の圧力は、電気化学ゾーン103の圧力よりも低下してもよい。
【0104】
その結果、一部の電解質121は、電気化学ゾーン103からこぶしの膨張領域151に引き出されてもよく(または、すでに第1の領域151に存在していてもよい)、第1の膨張領域151の圧力が電解質121の気化圧力以下になると気化してもよい。前述のように、電解質121が気化すると一般的に膨張し、可撓性ハウジング101の膨張を引き起こす可能性がある。
【0105】
図4Aに示す例では、電池セル100が電解質121の気化圧に近いまたはそれ以下の圧力条件で動作する場合、したがって、可撓性ハウジング101は、電解質121が位置する可能性があり、クランプ圧力を受けていない任意の領域(例えば、第1の膨張領域151)において膨張を強いられる可能性がある。前述のように、可撓性ハウジング101の膨張は、可撓性ハウジング101に負担をかけ、可撓性ハウジング101に損傷を与える可能性があるため、一般的に望ましくない。例えば、可撓性ハウジング101の膨張は、可撓性ハウジング101の破裂の原因となり得る。
【0106】
電解質121の気化の不利な点を可撓性ハウジング101の膨張との関連で前述したが、電解質121の気化は、電池セル100の性能にも有害な影響を及ぼす可能性がある。例えば、気化した電解質121や、電気化学ゾーン103に位置しない電解質121は、一般に、電気化学セル内でその役割を果たすために利用できない。例えば、気化した電解質は、リチウム金属電池に含まれるリチウムアノードの表面における固体-電解質-界面(SEI)の形成に寄与するために利用できない。したがって、電解質121の気化は、一般に、電池セル100のサイクル性を劣化させる可能性がある。
【0107】
前述した例では、可撓性ハウジング101が、第1の電極111の第2の領域111bと第2の電極114の第2の領域114bとの間に位置する第1の膨張領域151において膨張しやすいことを説明した。一般に、可撓性ハウジング101は、電池セル100が保持される大気圧の低下に対応して、ハウジング101内の圧力の低下が許容される任意の領域において膨張しやすくなっていてもよい。例えば、可撓性ハウジング101の膨張は、クランプ圧力を受けていない領域で生じてもよい。
【0108】
前述し、
図4Aに描かれている(
図1および
図3Bにもラベル付けされている)第1の膨張領域151に加えて、電池セル100は、低気圧条件にさらされたときに可撓性ハウジング101が膨張し得る追加の膨張領域を含んでもよい。例えば、
図1Bにラベル付けされているように、クランプ圧力を受けない第2の膨張領域152および/または第3の膨張領域153があってもよい。第1の膨張領域151を参照して前述した理由に対応して、第2の膨張領域152および/または第3の膨張領域153は、電池セル101が低気圧条件にさらされた場合に膨張しやすい可能性がある。
【0109】
膨張領域151、152、153は、電池セル100の厚さが、電池セル100の最大厚さ(すなわち、電池セル100の他の領域における最大厚さ)よりも小さい電池セル100の領域に存在してもよい。例えば、第1の膨張領域151、第2の膨張領域152および第3の膨張領域153は、第1の111電極または第2の114電極の一部が存在しない領域に配置されている。例えば、第1の膨張領域151は、第1の電極111の第2の領域111bと、第2の電極114の第2の領域114bとの間の隙間に位置する。第2の膨張領域152は、第1の電極111の第2の部分111bと周縁部シール105との間の隙間に位置する。第3の膨張領域153は、第2の電極の第2の部分114bと周囲のシール105との間の隙間に位置する。
【0110】
膨張領域151、152、153には電極111、114が位置する部分がないので、膨張領域151、152、153における電池セル100の厚さは、一般に、電池セル100の他の領域における厚さよりも小さくなる。例えば、膨張領域151、152、153における電池セル100の厚さは、電気化学ゾーン103における電池セル100の厚さよりも一般的に小さい。更に、膨張領域151、152、153の厚さは、一般に、電極111、114の第2の領域111b、114bが占める領域における厚さよりも小さくてよい。
【0111】
図4Aに示されているように、電池セル100の厚さがセルの最大厚さよりも小さい第1の膨張領域151(および同様に第2の152および第3の153の膨張領域)などの領域では、可撓性ハウジング101がクランプ要素201a、201bと接触していない場合がある。その結果、膨張領域151、152、153ではクランプ圧力がほとんどまたは全く加えられず、したがって、これらの領域の可撓性ハウジング101は自由に膨張してもよい。
【0112】
膨張領域151、152、153は、周囲シール105の内側の領域でもあり、したがって、周囲シール105によって共に保持されていない。膨張領域151、152、153の各々は、電極111、114の第1の部分111a、114aと周縁シール105との間に位置する。例えば
図1、
図3A~
図3Cおよび
図4Aに見られるように、周囲シール105は、電極111、114の第2の領域111b、114bの範囲の外側にある。例えば、図に示す向きでは、周囲シール105は、電極111、114の第2の領域111b、114bの上部の範囲の上に位置している。これは、電極111、114の第2の領域111b、114bを、例えば、電極111、114が周囲の雰囲気と接触するのを防ぐために、ハウジング101内に密閉しておくことが一般的に望ましいからであると考えられる。
【0113】
更に、電極111、114の第2の領域111b、114bと直接シールを形成することができない場合もある。例えば、可撓性ハウジング101を電極111、114の第2の領域111b、114bに直接シールすることができない場合がある。例えば、リチウムで形成された電極111、114は、反応性が高く、このような電極と可撓性ハウジング101との間にシールを形成しようとすると、発火する可能性がある。
【0114】
以上説明したように、可撓性ハウジング101を有する電池セル100の構造には、低圧で動作させたときに膨張しやすい領域が含まれる場合がある。このような領域は、電池セル100にクランプ力が加わっている状態でも膨張しやすい場合がある。
【0115】
図5は、本開示の一実施例による電池セル1000の概略図である。
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、
図5の電池セル1000の断面図の模式図である。
図6Aに示す断面は、
図5に示す線D-Dに沿って撮影されている。
図6Bに示される断面は、
図5に示される線E‐Eに沿って取られている。
図6Cに示される断面は、
図5に示される線F-Fに沿って取られている。
【0116】
図5および
図6A~
図6Cに示す電池セル1000は、
図1~
図4を参照して前述した電池セル100と同一または対応する構成要素の多くを含む。
図5および
図6A~
図6Cでは、
図1~
図4を参照して前述した構成要素と対応する構成要素を示すために、同じ参照数字が使用されている。したがって、
図5および
図6A~
図6Cを参照して、同じまたは対応する構成要素の詳細な説明は本明細書中に記載されない。
【0117】
図5および
図6A~
図6Cに示す電池セル1000は、電池セル1000がシール領域161~163を更に含むという点で、
図1~
図4のセル100とは異なる。シール領域161~163は、概して、
図1~
図4を参照して前述した膨張領域151~153内に位置する。膨張領域151~153の位置を参照して本明細書中で提供される任意の説明または教示は、シール領域161~163の位置にも同様に適用可能であり、その逆もまた同様である。
【0118】
シール領域161~163は、可撓性ハウジング101の内面が共にシールされる領域を構成する。例えば、シール領域161~163は、可撓性ハウジング101の対向する内面を共にシールするように配置された接着剤および/またはテープなどのシール剤を含んでいてもよい。更にまたは代わりに、シール領域161~163は、可撓性ハウジング101の内面を共に結合するためにヒートシールを使用して形成されてもよい。
【0119】
シール領域161~163は、電解質121が電気化学ゾーン103から離れることを抑制するように配置されている。例えば、シール領域161~163は、電解質121が電気化学ゾーン103から出て、前述の膨張領域に入ることを抑制するように配置されてもよい。シール領域161~163で可撓性ハウジング101を共にシールすることにより、電解質121が低圧状態に移動して曝されるために利用可能な空間が減少する。更に、シール領域161~163で可撓性ハウジング101を共にシールすることで、これらの領域で可撓性ハウジング101が膨張することが抑制されてもよい。例えば、シール領域161~163は、これらの領域においてハウジング101の剛性を高め、ハウジング101の膨張を低減または防止するように作用してもよい。有利には、これらの効果により、ハウジング101にかかる歪みが軽減され、それにより、ハウジング101の損傷(ハウジング101の破裂など)のリスクが軽減される。更に、電解液が電気化学ゾーン103から離れることを抑制することにより、電池セル1000のあらゆる性能劣化を低減することができる。
【0120】
更に、シール領域161~163の存在は、可撓性ハウジング101と第1の電極および第2の電極111、114の第2の領域111b、114bとの間の任意の未シール空間への電解液の膨張を更に低減し得る(これらの未シール空間は、例えば、
図3Aおよび
図3Cに見ることができる)。例えば、シール領域161~163によって、可撓性ハウジング101が電極111、114の周りにしっかりと嵌められ、任意の未シール空間が減少し、それによって、可撓性ハウジング101と第1の電極および第2の電極111、114の第2の領域111b、114bとの間の領域への電解質の流れが抑制され得る。
【0121】
例えば
図6A~
図6Cに見られるように、シール領域161~163は、これらの領域における電池セル1000の厚さを増加させる役割を果たしてもよい(これらの領域にシールが設けられていない場合と比較して)。例えば、シール領域161~163は、可撓性ハウジング101の対向する内面の間に配置され、(そして、内面どうしを共にシールする)シーラントを含んでもよい。シール領域161~163に提供されるシーラントの体積は、これらの領域におけるセル1000の厚さを実質的に増加させるのに十分であってもよい。
【0122】
少なくともいくつかの例では、シール領域におけるセル1000の厚さの増加は、シール領域161~163におけるクランプ要素201a、201b(
図6A~
図6Cには示されていない)と可撓性ハウジング101との間の接触を引き起こすのに十分であってもよい。したがって、シール領域161~163の近傍にクランプ力が印加されてもよく、その結果、シール領域161~163にクランプ圧力が作用してもよい。すなわち、シール領域161、162、163のうちの少なくとも1つは、電気化学ゾーンおよび/またはシール領域161、162、163のうちの少なくとも1つにクランプ圧力を加えるように、クランプ力を受けるように配置されたクランプ面の一部を形成してもよい。このようなクランプ圧力は、シール領域161~163の近傍の可撓性ハウジング101の内部の圧力を増加させる役割を果たし得る。例えば、可撓性ハウジング101の内部の圧力は、電解質121の気化圧よりも大きい圧力に維持されてもよい。これにより、電解質121の気化を有利に抑制または防止することができる。
【0123】
いくつかの例では、シール領域161~163は、膨張領域151~153の実質的に全体を満たすように配置されてもよい。例えば、可撓性ハウジング101の内面は、電極111、114の第2の領域111b、114bの間に位置する第1の膨張領域151の実質的に全てにわたって共にシールされてもよい。いくつかの例では、可撓性ハウジング101の内面は、膨張領域151~153の一部のみで共にシールされてもよい。すなわち、可撓性ハウジングがシールされるシール領域161~163は、膨張領域151~153の一部のみを占めていてもよい。例えば、膨張領域151~153の全体を満たさない膨張領域151~153にシール剤のスポットを追加してもよい。このような配置は、膨張領域151~153の全体をシールしなくても、膨張領域151~153におけるハウジング101の膨張を抑制するのに十分であり得ることが分かっている。更に、電池セル1000の製造時には、膨張領域151~153の実質的に全てをシールするのとは対照的に、膨張領域151~153の一部のみをシールする方が、より単純で容易である場合がある。
【0124】
少なくともいくつかの例では、シール領域161、162、163のシーラントが、セル1000のクランプと連動して相乗効果をもたらすと解される。例えば、電池セル100に(例えばクランプ201で)クランプ圧力を加えることは、シール領域161、162、163が、電解質が電気化学ゾーン103から離れるのを抑制するように作用する一方で、電気化学ゾーン103における電解質121の気化を抑制することができる。例えば、電気化学ゾーン103へのクランプ圧力を加えることによって、電解質をシール領域161、162、163に向かって強制するように作用する可能性があり、シール領域161、162、163にシーラントが存在しない場合、電解質がシール領域161、162、163に入り、気化する可能性がある。シール領域161、162、163内のシーラントの存在は、電解液が電気化学ゾーン103から出て(例えば、クランプ圧力が加えられた状態で)シール領域161、162、163に入り、そこで気化してしまうことを抑制する働きをする。すなわち、シール領域内のシーラントと、クランプ力の印加とが協働して、電解質の気化と電池セルの膨張とを抑制することができる。
【0125】
更に、前述したように、少なくともいくつかの例では、シール領域161、162、163内のシーラントは、少なくとも1つのシール領域161、162、163が、クランプ圧力が加えられ得るクランプ表面の一部を形成するように、シール領域の厚さを増加させてもよい。そのようなクランプ圧力は、シール領域161~163の近傍における電解質121の気化を有利に抑制または防止するように、シール領域161~163の近傍における可撓性ハウジング101の内部の圧力を増加させる役割を果たすことができる。
【0126】
前述のように、少なくとも1つのシール領域161~163は、電解質121が電池セル1000の電気化学ゾーン103から離れるのを抑制するように配置されてもよい。一般に、シール領域161~163は、電極111、114の第1の領域111a、114aと周縁部シールとの間に配置されてもよい。また、シール領域161~163は、電極111、114の第1の領域111a、114a、周縁シール、および電極111、114の少なくとも1つの第2の領域111b、114bの間に配置されてもよい。例えば、シール領域161~163は、周囲シール105、電極の第1の領域111a、114a、および電極111、114の少なくとも1つの第2の領域111b、114bによって(例えば4つの側面で)概ね囲まれていてもよい。
【0127】
例えば、
図5および
図6A~
図6Cに示すシール領域161~163のそれぞれは、電極111、114の第1の領域111a、114aと、周囲シール105と、電極の少なくとも1つの第2の領域111b、114bとの間に配置されている。特に、第1のシール領域161は、電極111、114の第1の領域111a、114a、周囲シール105、第1の電極111の第2の領域111b、第2の電極114の第2の領域114bの間に配置されている。第2のシール領域162は、電極111、114の第1の領域111a、114aと、第1の電極111の第2の領域111bと、周縁シール105との間に配置されている。第3のシール領域163は、電極111、114の第1の領域111a、114a、第2の電極114の第2の領域114b、および周囲のシール105の間に配置される。
【0128】
少なくともいくつかの例では、少なくとも1つのシール領域161~163は、電極111、114の外側範囲内に配置されてもよい。例えば、電極111、114の外側範囲は、第1の電極111及び第2の電極114の全体を包含する最小の矩形とされてもよい。図に示す電極111、114の外周範囲は、概ね矩形状を有する周縁シール105の内周範囲とほぼ一致する。例えば、
図5に示すように、シール領域161~163は、周囲のシール105の内側の範囲と、電極111、114の外側範囲とに配置されている。なお、シール領域161~163は、電極111、114の外周部のうち、電極111、114が位置していない隙間に配置されていてもよい。別の言い方をすれば、外周シール105は、例えば、実質的に長方形であるシール境界を規定してもよい。シール領域161~163は、電極111、114が位置していないシールされた境界(例えば矩形)の部分に配置されてもよい。
【0129】
一般に、シール領域161~163は、電気化学ゾーン103の外側で、周囲シール105の境界内に配置されてもよい。また、シール領域161~163は、電解質121が電気化学ゾーン103から離れることを抑制するように、任意の好適な領域に配置されてもよい。
【0130】
本明細書中では、電池セルが第1の電極と第2の電極からなる具体例を説明してきた。しかし、本明細書中でも述べたように、電池セルは2つ以上の電極から構成されていてもよい。例えば、本明細書中で企図されているタイプの電池セルは、複数の陰極と複数の陽極とを含んでいてもよい。本明細書中で、2つの電極からなる電池セルに関連して提示された説明および教示は、2つ以上の電極からなる電池セルにも同様に適用することができるし、その逆もまた同様である。
【0131】
図は、本明細書中に開示された装置の単なる概略図として提供されており、図の少なくともいくつかは縮尺を示していないことが理解されよう。例えば、図に示されている構成要素の少なくとも一部は、図示を容易にするために他の構成要素に対して拡大または縮小された寸法を有することがあり、示されている構成要素の相対的な寸法は、限定的であると解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0132】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、または材料は、それらと互換性がない限り、本明細書中に記載された他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解されたい。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示されているすべての特徴、および/または、そのように開示されている任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の任意の実施例の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書中(任意の添付の請求項、要約書および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つ、または任意の新規の組み合わせ、あるいは、そのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つ、または任意の新規の組み合わせに及ぶものである。
【符号の説明】
【0133】
100、1000 … 電池セル
101 … 可撓性ハウジング
103 … 電気化学ゾーン
105 … 周囲シール
108a … 第2の接触タブ
108b … 第1の接触タブ
111 … 第1の電極
111a … 第1の電極の第1の領域
111b … 第1の電極の第2の領域
114 … 第2の電極
114a … 第2の電極の第1の領域
114b … 第2の電極の第2の領域
119 … セパレータ
121 … 電解質
151 … 第1の膨張領域
152 … 第2の膨張領域
153 … 第3の膨張領域
161 … 第1の膨張領域
162 … 第2の膨張領域
163 … 第3の膨張領域
200 … 電池セル
201 … クランプ
201a、201b … クランプ要素
202 … クランプ・デバイス
210 … クランプ圧力
【国際調査報告】