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特表2022-535789細胞におけるLUX発現と使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】細胞におけるLUX発現と使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220803BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220803BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571416
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020035442
(87)【国際公開番号】W WO2020243660
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/854,758
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521521057
【氏名又は名称】490 バイオテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】クロース ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リップ スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】セイラー ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】コンウェイ マイケル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ01
4B063QR72
4B063QS38
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、自家生物発光表現型を有する幹細胞を含む細胞に関するものであり、この細胞によって、外因性の発光刺激因子がない場合に発光シグナルが放出される。発光シグナルは、構成的、誘導的、抑制的、または組織特異的であり得る。細胞は、合成的に操作された細菌ルシフェラーゼ(lux)カセット、すなわちluxCDABEfrp遺伝子カセットを発現する。細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを含み得る。細胞はそれぞれ、luxAとluxBとを組み合わせた発現レベルよりも10倍~40倍大きいluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを組み合わせた発現レベルを発現し得る。さらに、本明細書では、自家生物発光表現型を含む細胞を作製および使用する方法を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性発光刺激因子の非存在下での発光シグナルを含む自家生物発光表現型を有する幹細胞。
【請求項1】
請求項1の幹細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをさらに含む、幹細胞。
【請求項2】
請求項1~1のいずれか一項に記載の幹細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸をさらに含む、幹細胞。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載の幹細胞であって、前記発光シグナルが構成的に放出される、幹細胞。
【請求項4】
請求項3の幹細胞であって、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの構成的プロモータに連動する、幹細胞。
【請求項5】
請求項5の幹細胞であって、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸はそれぞれ、構成的プロモータに連動する、幹細胞。
【請求項6】
請求項4の幹細胞であって、前記luxA核酸および前記luxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動する、幹細胞。
【請求項7】
請求項7の幹細胞であって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸は、第2の構成的プロモータに連動する、幹細胞。
【請求項8】
自律発光表現型を有する幹細胞を生成するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つのベクターを含む、キット。
【請求項9】
自律的かつ構成的な発光を有する幹細胞を作製する方法であって、
幹細胞を提供すること、ならびに、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターにより幹細胞をトランスフェクトすることを含む、方法。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか一項に記載のキットまたは方法であって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む第6のベクターを含み、
前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が構成的プロモータに連動する、キットまたは方法。
【請求項11】
請求項8または9のいずれか一項に記載のキットまたは方法であって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、前記前記luxA核酸および前記luxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、前記核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターとを含む、キットまたは方法。
【請求項12】
請求項9~12のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのベクターによる前記幹細胞のトランスフェクションの後に、前記幹細胞がluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する、方法。
【請求項13】
少なくとも1つの幹細胞の細胞集団サイズをリアルタイムにモニタリングする方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために前記少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
前記少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、前記測定された構成的発光シグナルに基づいて、前記少なくとも1つの幹細胞の細胞集団サイズを評価することを含む、方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記細胞集団サイズを2つ以上の時点にわたってトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項15】
少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために前記少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、前記測定された構成的発光シグナルにもとづいて前記少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率を評価することを含む、方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、2つ以上の時点にわたって前記少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記構成的発光シグナルの測定が前記少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率と相関する、方法。
【請求項18】
少なくとも1つの幹細胞に対する薬剤の効果を測定する方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために前記少なくとも1つの幹細胞を操作すること、前記少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させること、
前記少なくとも1つの幹細胞と前記薬剤との接触の後に、前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
前記測定された構成的発光シグナルに基づいて前記薬剤の効果を決定することを含む、方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、2つ以上の時点にわたって前記薬剤の効果をトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項18または19のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞が構成的発光シグナルの生成を停止するとき、前記少なくとも1つの幹細胞にとって前記薬剤が致命的であると判断する、方法。
【請求項21】
請求項13~20のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
【請求項22】
請求項21の方法であって、前記対照集団から放出される前記構成的発光シグナルと比較した前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記測定された構成的発光シグナルの減少は、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の負の変化を示す、方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、前記薬剤の効果が細胞毒性であることを決定する、方法。
【請求項24】
請求項21の方法であって、前記対照集団から放出される前記構成的発光シグナルと比較した前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記測定された構成的発光シグナルの増加は、前記少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化を示す、方法。
【請求項25】
請求項24の方法であって、前記薬剤の効果が治療的であることを決定する、方法。
【請求項26】
請求項18~25のいずれか一項に記載の方法であって、前記薬剤が創薬に関して評価される、方法。
【請求項27】
請求項13~26のいずれか一項に記載の方法であって、該方法が高スループットで実行される、方法。
【請求項28】
少なくとも1つの幹細胞を薬剤フリー・インビボイメージングする方法であって、
外因的に添加された基質の非存在下で、構成的発光シグナルを生成するために前記少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
前記少なくとも1つの幹細胞を生物に注入すること、ならびに、
該生物の少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルをイメージングすることを含む、方法。
【請求項29】
請求項28の方法において、構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、前記測定された構成的発光シグナルに基づいてインビボで存在する前記少なくとも1つの幹細胞の総数を決定することをさらに含む、方法。
【請求項30】
請求項28または29のいずれか一項に記載の方法において、前記生物には動物が含まれ、前記少なくとも1つの幹細胞が前記生物に静脈内、皮内、または皮下注入される、方法。
【請求項31】
請求項30の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞が前記動物に注入された後、前記動物内の少なくとも1つの幹細胞の動きをトラッキングすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項28~31のいずれか一項に記載の方法であって、前記外因的に添加された基質がアルデヒド官能基を含む、方法。
【請求項33】
請求項13~32のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞は、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、前記前記luxA核酸および前記luxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、前記核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターとを含む、方法。
【請求項34】
請求項13~32のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞は、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含む第6のベクターを含み、
前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が構成的プロモータに連動する、方法。
【請求項35】
請求項1~2のいずれか一項に記載の幹細胞であって、前記発光シグナルが組織特異的である、幹細胞。
【請求項36】
請求項36の幹細胞であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターを含み、前記核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動する、幹細胞。
【請求項37】
組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む幹細胞を生成する方法であって、
幹細胞を提供すること、ならびに、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターにより幹細胞をトランスフェクトすることを含み、前記核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動する、方法。
【請求項38】
請求項36~37のいずれか一項に記載の幹細胞であって、前記組織特異的プロモータを発現する組織細胞へ前記幹細胞が分化する場合、前記組織特異的細胞はluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現し、かつ自律発光シグナルを放出する、幹細胞。
【請求項39】
組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を用いるリアルタイム分化報告の方法であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含む、前記少なくとも1つの幹細胞を提供することを含み、前記核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動しており、また、前記組織特異的プロモータが発現される少なくとも1つの組織細胞に前記少なくとも1つの幹細胞が分化する場合、少なくとも1つの組織細胞は発光シグナルを放出し、さらに、
前記発光シグナルが放出されるとき、前記組織細胞から放出される発光シグナルを測定して、前記少なくとも1つの組織細胞への前記少なくとも1つの幹細胞の分化をトラッキングする、方法。
【請求項40】
請求項39の方法であって、2つ以上の時点にわたって、前記少なくとも1つの組織細胞への前記少なくとも1つの幹細胞の前記分化をトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項41】
請求項39または40のいずれか一項に記載の方法であって、前記発光シグナルの放出は、前記少なくとも1つの組織細胞への前記少なくとも1つの幹細胞の前記分化の開始を報告する、方法。
【請求項42】
請求項39~41のいずれか一項に記載の方法であって、前記発光シグナルの前記測定に基づいて前記少なくとも1つの組織細胞の総数を評価することをさらに含む、方法。
【請求項43】
請求項39~42のいずれか一項に記載の方法であって、前記発光シグナルの前記測定に基づいて、少なくとも1つの組織細胞に分化した前記少なくとも1つの幹細胞を決定することをさらに含む、方法。
【請求項44】
組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む幹細胞を生成するキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含み、前記核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動する、キット。
【請求項45】
請求項36~44に記載の幹細胞またはキットであって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、前記luxA核酸および前記luxB核酸が組織特異的プロモータに連動する、第1のベクターと、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターとを含む、キットまたは方法。
【請求項46】
請求項36~44のいずれか一項に記載の幹細胞またはキットであって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含み、
前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が組織特異的プロモータに連動する、幹細胞またはキット。
【請求項47】
請求項36~47のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記組織特異的プロモータは、TNNプロモータを含む、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項48】
請求項38~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記組織細胞または前記少なくとも1つの組織細胞は、心筋細胞を含む、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項49】
請求項10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の10倍から40倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項50】
請求項10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の20倍から30倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項51】
請求項10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の10倍から40倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項52】
請求項10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の20倍から30倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項53】
請求項1~2のいずれか一項の幹細胞であって、前記発光シグナルが分析物に反応する、幹細胞。
【請求項54】
請求項53の幹細胞であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動する、幹細胞。
【請求項55】
請求項54の幹細胞であって、前記幹細胞は、分析物に曝されると、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子をさらに含み、
前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の前記少なくとも1つの転写を引き起こす、幹細胞。
【請求項56】
請求項54に記載の幹細胞であって、前記幹細胞は、分析物に曝されると前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子をさらに含み、
前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の前記少なくとも1つの非転写をもたらす、幹細胞。
【請求項57】
分析物の存在下で自律誘導性発光シグナルを放出するように構成された幹細胞を構築する方法であって、
幹細胞を提供すること、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターにより前記幹細胞をコトランスフェクトすること、
前記分析物に曝されると前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターにより前記幹細胞をコトランスフェクトすること、を含み、
前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの活性化は前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸のうちの前記少なくとも1つの転写を引き起こす、方法。
【請求項58】
分析物の存在下で、自律的かつ抑制的な発光シグナルを放出するように構成された幹細胞を構築する方法であって、
幹細胞を提供すること、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターにより前記幹細胞をコトランスフェクトすること、ならびに、
前記分析物に曝されると前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターにより前記幹細胞をコトランスフェクトすることを含み、
前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの活性化は前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸のうちの前記少なくとも1つの転写を引き起こす、方法。
【請求項59】
少なくとも1つの幹細胞での遺伝子発現をモニタリングする方法であって、
請求項53、54、55、または56のいずれか一項に記載の前記幹細胞の少なくとも1つを生成すること、前記少なくとも1つの幹細胞を前記分析物と接触させること、ならびに、
前記少なくとも1つの幹細胞を前記分析物と接触させた後に前記少なくとも1つの幹細胞から放出される発光シグナルを測定して、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の発現をモニターすることを含む、方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、2つ以上の時点にわたって前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記発光シグナルを測定することをさらに含む、方法。
【請求項61】
請求項59または60のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記発光シグナルの前記測定を、対照集団から放出される発光シグナルと比較することによって、遺伝子発現を評価することをさらに含む、方法。
【請求項62】
試料中の分析物の存在を決定する方法であって、
請求項53、54、55、または56のいずれか一項に記載の前記幹細胞の少なくとも1つを生成すること、前記少なくとも1つの幹細胞を前記試料に接触させること、前記少なくとも1つの幹細胞を前記分析物と接触させた後に前記少なくとも1つの幹細胞から放出される発光シグナルを測定して、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の発現をモニターすること、ならびに、
前記発光シグナルの前記測定に基づいて、前記試料中の分析物の存在を評価することを含む、方法。
【請求項63】
請求項62の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞から放出される前記発光シグナルの前記測定を、対照集団から放出される発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
【請求項64】
分析物によって誘導的な自律発光シグナルを放出する幹細胞を生成するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターと、ならびに、
前記分析物に曝されると前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターとを含む、キット。
【請求項65】
分析物によって抑制的な自律発光シグナルを放出する幹細胞を生成するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターと、ならびに、
前記分析物に曝されると前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターとを含む、キット。
【請求項66】
請求項54~65のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答エレメントを含み、好ましくは、前記分析物は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの類似体を含む、方法。
【請求項67】
請求項54~65のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、前記少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因または前記少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、構成的プロモータに連動し、好ましくは、前記構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである、幹細胞、方法、またはキット。
【請求項68】
請求項54~67のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動しない前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の前記少なくとも1つは、構成的プロモータに連動する。
【請求項69】
幹細胞に由来する自律発光細胞であって、
自律発光幹細胞から分化した自律発光真核細胞を含み、前記分化した自律発光真核細胞と前記自律発光幹細胞とはどちらも、外因性発光刺激因子の非存在下で構成的発光シグナルを発現する、幹細胞に由来する自律発光細胞。
【請求項70】
自律発光幹細胞から幹細胞に由来する自律発光細胞を生成する方法であって、
自律発光幹細胞を構築すること、ならびに、
前記自律発光幹細胞を前記幹細胞に由来する自律発光細胞に分化させることを含み、前記幹細胞に由来する自律発光細胞は、外因性発光刺激因子の非存在下で発光シグナルを放出する、方法。
【請求項71】
請求項70の方法であって、前記分化が小分子方法によって実行される、方法。
【請求項72】
少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞由来の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法であって、
少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を提供すること、
前記少なくとも1つの幹細胞由来自律発光細胞から放出される前記構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
前記測定された構成的発光シグナルにもとづいて、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率を評価することを含む、方法。
【請求項73】
請求項72に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率を2つ以上の時点にわたってトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項74】
請求項72または73のいずれか一項に記載の方法であって、構成的発光シグナルの測定は、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率と相関する、方法。
【請求項75】
少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞における薬剤の効果を決定する方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を操作すること、
前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を薬剤に接触させること、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を前記薬剤に曝した後に、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
前記測定された構成的発光シグナルにもとづいて前記薬剤の効果を決定すること、を含む方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法であって、2つ以上の時点にわたって前記薬剤の効果をトラッキングすることをさらに含む、方法。
【請求項77】
請求項76の方法であって、前記薬剤の効果が安定する時点を決定することをさらに含む、方法。
【請求項78】
請求項75~77のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞が構成的発光シグナルの生成を停止したとき、前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞にとって前記薬剤が致命的であると決定する、方法。
【請求項79】
請求項72~78のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの幹細胞由来自律発光細胞から放出される前記構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される前記構成的発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法であって、前記対照集団から放出される前記構成的発光シグナルと比較した前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される前記測定された構成的発光シグナルの減少は、前記薬剤に曝すことに起因する前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率の負の変化を示す、方法。
【請求項81】
参照元が見つからないエラー記載の方法であって、前記薬剤の効果が細胞毒性であることを決定する、方法。
【請求項82】
請求項79に記載の方法であって、前記対照集団から放出される前記構成的発光シグナルと比較した前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される前記測定された構成的発光シグナルの増加は、前記薬剤に曝すことに起因する前記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率の正の変化を示す、方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記薬剤の効果が治療的であることを決定する、方法。
【請求項84】
請求項69~82のいずれか一項に記載の自律発光細胞または方法であって、前記自律発光幹細胞は、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含み、
前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、前記核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸は、少なくとも1つの構成的プロモータに作動可能に連結され、さらに、前記自律発光幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する、方法。
【請求項85】
請求項84に記載の自律発光細胞または方法であって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、前記前記luxA核酸および前記luxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、前記核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターと、を含む方法。
【請求項86】
請求項84に記載の自律発光細胞または方法であって、前記少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含み、
前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数は、構成的プロモータに連動する、自律発光細胞または方法。
【請求項87】
請求項1~86のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記幹細胞に由来する自律発光細胞がluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターを発現することで、前記幹細胞に由来する自律発光細胞が外因性発光刺激因子の非存在下で発光する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項88】
請求項1~87のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の10倍から40倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項89】
請求項1~88のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の20倍から30倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項90】
請求項1~89のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEのそれぞれをコードする1つまたは複数の核酸は、フォトラブダス・ルミネッセンスの対応する核酸と80%を超える配列同一性を有する。
【請求項91】
請求項1~90のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEのそれぞれをコードする1つまたは複数の核酸は、フォトラブダス・ルミネッセンスの対応する核酸と100%の配列同一性を有する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項92】
請求項1~91のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記幹細胞は、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の転写を介して前記発光シグナルを放出する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項93】
請求項1~92のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の転写量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸の転写量の10倍から40倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項94】
請求項1~93のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の転写量は、前記luxA核酸および前記luxB核酸の転写量の20倍から30倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項95】
請求項1~94のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEのそれぞれをコードする核酸luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする前記核酸は、luxAおよびluxBをコードする核酸の総量の10倍から40倍の総量で存在する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項96】
請求項1~95のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする前記核酸は、luxAおよびluxBをコードする核酸の総量の20倍から30倍の総量で存在する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項97】
請求項1~96のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記幹細胞または前記少なくとも1つの幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをさらに含む、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項98】
請求項1~97のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記幹細胞または前記少なくとも1つの幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項99】
請求項1~98のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の10倍から40倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項100】
請求項1~99のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成レベルの10倍から40倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項101】
請求項1~100のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの少なくとも1つは、luxAおよびluxBの少なくとも1つのレベルよりも高いレベルで存在する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項102】
請求項1~101のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの合計レベルの10倍から40倍の合計レベルで存在する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項103】
請求項1~102のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの合計レベルの20倍から30倍の合計レベルで存在する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項104】
請求項1~103のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを含む前記幹細胞または前記少なくとも1つの幹細胞は、外因性発光刺激因子の非存在下で自律的に発光する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項105】
請求項1~104のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項106】
請求項1~105のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記第1の構成的プロモータおよび前記第2の構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである。
【請求項107】
請求項1~106のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記luxA核酸、前記luxB核酸、前記luxC核酸、前記luxD核酸、前記luxE核酸、および前記フラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つのリンカーに連動する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項108】
請求項1~107のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記少なくとも1つのリンカー領域がウイルス2Aペプチドを含む、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項109】
請求項1~108のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記薬剤は、化学療法剤、抗生物質、殺虫剤、駆除剤、除草剤、または肥料を含む、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項110】
請求項1~110のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記幹細胞または前記少なくとも1つの幹細胞は、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、または非胚性幹細胞である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項111】
請求項1~110のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、外因性発光刺激因子が蛍光刺激シグナルである、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【請求項112】
請求項1~110のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞であって、前記外因性発光刺激因子は化学発光因子であり、好ましくは前記化学発光因子は、アルデヒド官能基を含む、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
これは、テネシー州ノックスビルに居住する米国市民のダニエル・クローズ博士、テネシー州ノックスビルに居住する米国市民のスティーブン・リップ博士、マサチューセッツ州メドフォードに居住する米国市民のマイケル・コンウェイ博士、およびブレインに居住する米国市民のゲイリー・セイラー博士により、「細胞におけるlux発現と使用の方法」の開示に関して、発明のために出願された国際(PCT)特許出願である。
関連出願との相互参照
【0002】
この出願は、2020年5月30日に出願され現在係属中の米国特許出願第62/854,758号の優先権を主張するものである。米国特許出願第62/854,758号の全体を本明細書では援用する。
米連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
【0003】
本発明は、米国立衛生研究所から授与された助成金第NIH NIGMS2R42GM116622-02号および第NIH NIEHS1R43ES026269-01号の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0004】
この文脈において、「政府」とは、アメリカ合衆国政府を意味する。
開示分野
【0005】
本開示は、自律発光表現型を含む細胞に関する。より具体的には、本開示は、幹細胞および特殊細胞において合成的に操作された細菌ルシフェラーゼ(lux)カセット(すなわち、新たな比率のluxCDABEfrp遺伝子カセット)の発現と、該細胞を作製および使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0006】
再生医療は、従来の医学的治療および治療目標の転換を意味する。再生医療は、単に無数の症状を治療するのではなく、損傷した細胞の修復または再生を通じて病状の根本原因を修復することに焦点を当てる。再生医療の最前線には、幹細胞ベースの治療法がある。幹細胞は、自己複製の可能性と他の細胞型に分化する能力とを備えているため、再生医療に革命を起こすことが期待される。
【0007】
しかしながら、現在、臨床診療における幹細胞ベースの治療の実施に直面している多くの重大な障害が依然として存在する。具体的には、幹細胞の移動および運命は、臨床的に理解できない方法(例えば、死後分析)または高コストのために一般には利用できない方法(例えば、陽電子放射断層撮影法および単一光子放射型コンピュータ断層撮影法)も用いてしばしば研究される。さらに、現在のインビボイメージングアプローチは、これらのアプローチが一般に被験者を麻酔し、イメージングセッション間での対象の回復することを必要とするので、頻繁なイメージングセッションを実施することはできない。その結果、幹細胞の生存率、移動、および運命に関する情報の多くは、イメージングセッション間で失われる。従って、細胞注入の非侵襲的誘導および検証、細胞遊走の追跡、ならびに幹細胞の長期統合および生存のモニタリングのための、インビトロモダリティ下のもとでのおよびインビボモダリティ下のもとでの両方を含む新規技術が明らかに必要とされている。このような技術の開発は、幹細胞ベースの治療法の臨床的実施と利用とを改善する上で最も重要である。
【発明の概要】
【0008】
上記の問題および他の問題は、以下の実施形態によって対処されるが、本開示のすべての実施形態が上記の問題のそれぞれに対処するわけではないことを理解すべきである。実施形態のさらなる利点、特徴、および詳細は、特許請求の範囲、以下の好ましい実施形態の説明、ならびに図面から推測することができる。
【0009】
自律発光表現型とも呼ばれる、自家生物発光表現型を含む幹細胞が開示される。自家生物発光表現型は、外因性発光刺激因子の非存在下で、自家生物発光シグナルとも呼ばれる自律生物発光シグナルを放出することを含む。外因性発光刺激因子は、蛍光刺激シグナルまたは化学発光因子であり得る。化学発光因子は、例えば、アルデヒド官能基を含み得る。
【0010】
幹細胞によって放出される自家生物発光シグナルは、構成的(constitutive)、誘導的(inducible)、抑制的(repressible)、または組織特異的(tissue-specific)のいずれかであり得る。実施形態において、自家生物発光シグナルは構成的であり、幹細胞は継続的に自家生物発光シグナルを放出する。実施形態において、自家生物発光シグナルは誘導性であり、幹細胞は刺激(例えば、分析物)に曝されると自家生物発光シグナルを放出する。実施形態において、自家生物発光シグナルは抑制的であり、刺激に曝されると幹細胞は自家生物発光シグナルの放出を停止する。自家生物発光シグナルは、幹細胞が組織細胞に分化するときにのみ自家生物発光シグナルが放出されるように、組織特異的であり得る。
【0011】
幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼタンパク質をさらに含み得る。幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸をさらに含み得る。
【0012】
luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸のうちの少なくとも1つ含む幹細胞の実施形態において、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、少なくとも1つのリンカー領域に連動し得る。少なくとも1つのリンカー領域は、ウイルス2Aペプチドまたは内部リボソーム侵入部位エレメントを含み得る。
【0013】
幹細胞のいくつかの実施形態では、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの少なくとも1つは、luxAおよびluxBの少なくとも1つのレベルよりも高いレベルで存在するいくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの総計レベルよりも10倍から40倍高い総計レベルで存在する。いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの総計レベルよりもお20倍から30倍高い総計レベルで存在する。
【0014】
いくつかの実施形態において、自家生物発光シグナルは構成的であり、luxA、luxB、luxC、luxD、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、少なくとも1つの構成的プロモータに連動する。いくつかの実施形態において、前述の核酸のそれぞれは、別個の構成的プロモータに連動する。他の実施形態では、luxA核酸およびluxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動し、さらに、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、第2の構成的プロモータに連動する。第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータはそれぞれ、ニワトリベータアクチンプロモータを含み得る。
【0015】
実施形態において、自家生物発光シグナルは、分析物に応答して誘導的であり、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動し得る。分析物は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合して、それを活性化することが可能である任意の分析物であり得る。
【0016】
幹細胞は、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子をさらに含み得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、分析物の存在下で少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化し得る。
【0017】
実施形態において、自家生物発光シグナルは分析物に応答して抑制的であり、幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連動する少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを含み得る。幹細胞は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子を含み得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。分析物は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子に結合し得る任意の分析物であり得る。
【0018】
少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化することができる。しかしながら、分析物の存在下では、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントをもはや活性化しない。
【0019】
実施形態において、自家生物発光シグナルは組織特異的であり、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸の少なくとも1つは組織特異的プロモータに連動する。いくつかの実施形態において、luxA核酸およびluxB核酸は、組織特異的プロモータに連動し得るものであり、その結果、組織特異的プロモータが活性化されている組織細胞のタイプに幹細胞が分化する場合にのみ、luxAおよびluxBが発現される。luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、ニワトリベータアクチンプロモータといった第1の構成的プロモータに連動し得る。組織特異的自家生物発光シグナルを有する実施形態において、自家生物発光シグナルの放出は、組織特異的プロモータが発現される、すなわち自家生物発光シグナルが組織特異的であるタイプへの分化の開始と一致する。
【0020】
別の態様では、幹細胞由来自律的生物発光細胞が開示される。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、自律的に生物発光する幹細胞から分化した自律的生物発光真核細胞であり得る。自律的生物発光幹細胞は、本明細書に開示される自律的生物発光表現型を含む幹細胞の任意の実施形態を含み得る。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、幹細胞由来自律的生物発光細胞が由来する自律的生物発光表現型を含む幹細胞の任意の実施形態の特徴を継承し得る。
【0021】
幹細胞由来自律的生物発光細胞および自律的に発光する幹細胞は、アルデヒド基質等の外因性発光刺激因子の非存在下で、自家生物発光シグナルを発現し得る。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの発現を介して、自律型生物発光シグナルを放出する。
【0022】
別の態様では、自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示され、ここでは、幹細胞が構成的自家生物発光シグナルを放出する。本方法は、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含む。1つまたは複数の核酸は、1つまたは複数の構成的プロモータに連動し得る。発現を促進するべく、1つまたは複数の核酸がリンカー領域によって連結され得る。
【0023】
例えば、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。いくつかの実施形態では、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のそれぞれが、異なるベクター上に存在する(すなわち、合計6つのベクターに関してベクターごとに1つ)。前述の核酸のそれぞれは、構成的プロモータに連動し得る。そのような実施形態では、本方法は、幹細胞を6つのベクターでトランスフェクトすることを含み得る。
【0024】
他の実施形態では、luxオペロンは2つのベクトルに分割される。そのような実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。第1のベクターは、luxA核酸およびluxB核酸を含み得る。luxA核酸およびluxB核酸は、内部リボソーム侵入部位またはウイルス2Aペプチド等の少なくとも1つのリンカー領域によって連結され得る。luxA核酸およびluxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動し得る。
【0025】
第2のベクターは、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み得る。luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数は、内部リボソーム侵入部位またはウイルス2Aペプチド等の発現を促進するために、少なくとも1つのリンカー領域によって連結され得る。luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、第2の構成的プロモータに連動し得る。
【0026】
本方法は、第1のベクターの量よりも10倍から40倍多い、または第1のベクターの量よりも20から30倍多い量の第2のベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。
【0027】
自律発光表現型を含む幹細胞を作製するためのキットが開示される。幹細胞は構成的自家生物発光シグナルを放出する。キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法において上記に開示された任意のベクターを含み、幹細胞は構成的自家生物発光シグナルを放出する。キットは、lluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意の個数の構成を含む任意個数(例えば、1、2、3、4、5、または6)のベクターを含み得る。例として、2つのベクターシステムは、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含む第1のベクターと、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれを含む第2のベクターとを含み得る。
【0028】
自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示され、幹細胞が分析物に曝されると、誘導性の自家生物発光シグナルを放出する。本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含む。少なくとも1つの核酸のうちの1つまたは複数は、少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントに連動する。
【0029】
本方法は、幹細胞を任意の個数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの分析物に連動したluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞を少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントにトランスフェクトすることを含み得る。
【0030】
他の実施形態では、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクトルがあり得、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれる(すなわち、前述のそれぞれは一義のベクターから表現される)。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結され得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない核酸はどれでも、構成的プロモータに連結され得る。
【0031】
別の実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。第1のベクターは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得る。第1のベクターは、分析物応答性応答エレメントに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。実施形態のいずれかにおいて、発現を促進するために、核酸のうちの1つまたは複数がリンカー領域によって連結され得る。少なくとも1つのリンカー領域は、内部リボソーム侵入部位またはウイルス2Aペプチドであり得る。
【0032】
実施形態のいずれにおいても、分析物は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化することができる。活性化された少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、それが連動する核酸の転写において調節(例えば、アップレギュレーション)を引き起こす。調節がアップレギュレーションである実施形態では、これは、自家生物発光シグナルを生成する対応するタンパク質の産生をもたらす。
【0033】
本方法は、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含むベクターで幹細胞を形質転換することをさらに含み得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、構成的プロモータに連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、分析物の存在下で少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化し得る。
【0034】
誘導性自家生物発光を有する幹細胞を作製するためのキットが開示される。キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法において上記に開示された任意のベクターを含み、幹細胞は誘導性の自家生物発光シグナルを放出する。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意個数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する。
【0035】
キットは、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含むベクターをさらに含み得る。分析物に曝されると、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。
【0036】
キットは、ある量の分析物を含み得る。分析物は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合して、それを活性化することが可能である任意の分析物であり得、そのことにより、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合させて、誘導性自家生物発光シグナルをもたらす。
【0037】
自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示され、分析物への曝露によって抑制的自家生物発光シグナルを幹細胞が放出する。
【0038】
本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み、核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントに連動する。活性化されると、分析物応答性応答エレメントは、それが連動する核酸の翻訳を開始する。発現を促進するために、1つまたは複数の核酸をリンカー領域によって連結され得る。少なくとも1つのリンカー領域は、内部リボソーム侵入部位またはウイルス2Aペプチドであり得る。
【0039】
本方法は、幹細胞を任意個数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの分析物に連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞を少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントにトランスフェクトすることを含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクトルがあり得、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれる(すなわち、前述のそれぞれは一義のベクターから表現される)。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結され得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない核酸はどれでも、構成的プロモータに連結され得る。
【0041】
さらなる実施形態において、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。第1のベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連動する少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得る。例えば、そのような実施形態では、第1のベクターは、分析物応答性応答エレメントに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。
【0042】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子を含むベクターで幹細胞を形質転換することを含み得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、構成的プロモータに連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化することができる。そのような実施形態では、幹細胞が分析物に曝されると、分析物は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子に結合する。結果として、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない。従って、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、それが連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始することができず、それにより、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸の少なくとも1つを発現しない。その結果、自家生物発光シグナルが抑制され得る。
【0043】
抑制的自家生物発光を有する幹細胞を作製するためのキットが開示される。キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法において上記に開示された任意のベクターを含み、幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出する。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意の数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する。
【0044】
別の態様において、組織特異的自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示される。本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み、核酸の少なくとも1つは、組織特異的プロモータに連動する。発現を促進するために、1つまたは複数の核酸は、少なくとも1つのリンカー領域によって、同じベクター上の他のどの核酸に連結され得る。少なくとも1つのリンカー領域は、例えば、内部リボソーム侵入部位またはウイルス2Aペプチドであり得る。
【0045】
本方法は、幹細胞を任意個数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、組織特異的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。そのような実施形態において、単一のベクターでのトランスフェクション後、幹細胞が、組織特異的プロモータが活性であるタイプの組織細胞(例えば、心臓または神経)に分化するとき、幹細胞は、自家生物発光シグナルを生成し得る。
【0046】
さらなる実施形態において、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクトルがあり得、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれる(すなわち、前述のそれぞれは一義のベクターから表現される)。核酸の少なくとも1つは、組織特異的プロモータに連結され得る。組織特異的プロモータに連結されていない核酸はどれでも、構成的プロモータに連結され得る。
【0047】
さらに別の実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。第1のベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得、核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動する。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1のベクターは、心筋細胞に特異的である、TNNT2プロモータ等の組織特異的プロモータに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。上記実施形態では、luxAおよびluxBは、幹細胞が心筋細胞に分化するときにのみ発現される。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。従って、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の連続的な発現がある。その結果として、TNNT2プロモータの場合、幹細胞が心筋細胞に分化すると、組織特異的自家生物発光シグナルが放出され、それがイメージングされることで幹細胞の心筋細胞への分化が生物的に示され得る。このプロセスを利用することで、他の細胞型および他の組織特異的プロモータにおける組織特異的分化を検出することができる。
【0049】
本方法は、第1のベクターの量よりも10倍から40倍多い量の第2のベクターで幹細胞を形質転換することを含み得る。好ましくは、本方法は、第1のベクターの量よりも20倍から30倍多い量の第2のベクターで幹細胞を形質転換することを含み得る。
【0050】
組織特異的自律発光表現型を含む幹細胞を作製するキットが開示される。抑制的自家生物発光を有する幹細胞を作製するキットが開示される。キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法において上記に開示された任意のベクターを含み,幹細胞は組織特異的自家生物発光シグナルを放出する。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意個数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。核酸の少なくとも1つは、少なくとも組織特異的プロモータに連動する。
【0051】
別の態様では、自律発光幹細胞から幹細胞に由来する自律発光細胞を作製する方法が開示される。本方法は、本明細書に開示される自律発光幹細胞の任意の実施形態を作製することを含む。本方法は、自律発光幹細胞を幹細胞に由来する自律発光細胞に分化させることをさらに含む。幹細胞に由来する自律発光細胞は、任意の所望の機能的特殊化細胞であり得る。そのような実施形態において、幹細胞に由来する自律発光細胞は、外因性発光刺激因子の非存在下で、生物発光シグナルを放出する。
【0052】
幹細胞に由来する自律発光細胞は、luxAおよびluxBよりも高いレベルのluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し得る。幹細胞に由来する自律発光細胞は、luxAとluxBの組み合わせレベルよりも10倍から40倍高い範囲のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの組み合わせレベルを含み得る。好ましくは、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの範囲の組み合わせレベルは、luxAおよびluxBの組み合わせレベルよりも20倍から30倍大きい。
【0053】
別の態様では、自律的生物発光表現型を含む幹細胞を使用する方法、および幹細胞に由来する自律的発光細胞を使用する方法が開示される。本明細書に開示される方法は、非常にスケーラブルであり、従って、低スループットまたは高スループットのアプリケーションに対応する。さらに、本明細書に開示される方法は、リアルタイムでの幹細胞の代謝状態の直接的な証拠を提供する。さらにまた、開示された方法は、自律的生物発光表現型を含む幹細胞ならびに幹細胞由来自律的生物発光細胞の連続的かつ自動化された分析を可能にする。
【0054】
いくつかの態様において、構成的自家生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞を使用する方法が開示される。そのような方法のそれぞれについて、本方法は、構成的発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞を生成することを含み得る。少なくとも1つの幹細胞は、そのような幹細胞を生産するために、本明細書に開示される方法のいずれかに従って生産され得る。従って、少なくとも1つの幹細胞は、構成的にluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現し、その結果、少なくとも1つの幹細胞が構成的発光シグナルを自律的に放出する。
【0055】
少なくとも1つの幹細胞の集団の細胞集団サイズをリアルタイムモニタリングする方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを含む。本方法は、構成的発光シグナルの測定に基づいて細胞集団の大きさを評価することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞集団サイズを測定することを含む。測定は、任意数の時点で実施され得る。
【0056】
別の態様では、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法が提供される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを含む。本方法は、構成的発光シグナルの測定に基づいて、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率を評価することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞生存率を測定することを含む。測定は、任意数の時点で実施され得る。
【0057】
別の実施形態では、少なくとも1つの幹細胞における薬剤の効果(例えば、細胞毒性または治療的)を測定する方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させることを含む。薬剤は、少なくとも1つの幹細胞に対して細胞毒性および/または治療的効果を有し得る。
【0058】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞が薬剤に曝された後に少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較することを含み得る。そのような実施形態において、本方法は、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの減少が、薬剤との接触から生じる少なくとも1つの細胞生存率の負の変化を示すことを決定することを含み得る。さらに、そのような実施形態では、本方法は、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定することを含み得る。本方法は、少なくとも1つの幹細胞が構成的発光シグナルの生成を停止したときに、少なくとも1つの幹細胞にとって薬剤が致命的であると決定することを含み得る。
【0059】
他の実施形態では、本方法は、上記対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの増加は、薬剤との接触から生じる少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化を示すことを決定することを含み得る。そのような実施形態において、本方法は、薬剤の効果が治療的であることを決定することを含み得る。
【0060】
本方法は、ある範囲の濃度の薬剤に少なくとも1つの幹細胞を供することを含み得る。本方法は、2つ以上の時点にわたる薬剤の効果を評価することを含み得る。本方法は、薬剤の効果を、例えばそれが安定するときを、決定することを含み得る。
【0061】
本方法は、創薬のための薬剤を評価することを含み得る。すなわち、細胞毒性および/または治療結果は、創薬で検討する複数の薬剤のランク付けと、生物への投与後のそれらの運命および効果の予測とに寄与し得る。
【0062】
別の態様では、少なくとも1つの幹細胞の薬剤フリーインビボイメージングの方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞構成的発光シグナルを生物に注入することを含む。本方法は、少なくとも1つの幹細胞の注入後、生体内の少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルをイメージングすることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、測定された構成的発光シグナルに基づいてインビボで存在する少なくとも1つの幹細胞の総数を決定することをさらに含む。
【0063】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞が生物に注入された後、生物内の少なくとも1つの幹細胞の動きをトラッキングすることを含み得る。これは、自律発光シグナルの位置について生物をイメージングすることによって実行され得、それにより、注入部位に対する少なくとも1つの幹細胞の移動を決定する。あるいは、例えば、自律発光シグナルがインビボで深部組織から浸透するのに十分には強くない場合、生物を犠牲にして解剖することによって追跡することで、自律発光シグナルの位置をイメージングできるようにすることも可能である。
【0064】
他の態様では、分析物に曝されたときに誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する幹細胞を使用する方法もまた、本明細書に開示される。本方法は、自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を生成することを含み、幹細胞は、分析物に曝されると、誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する。
【0065】
誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞における遺伝子発現のリアルタイムモニタリングのための方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞を分析物と接触させることを含む。分析物は、幹細胞に自家生物発光シグナルを放出または抑制するように誘導する任意の適切な分析物であり得る。本方法は、少なくとも1つの幹細胞が分析物と接触された(例えば、曝露された)後に、少なくとも1つの幹細胞から放出される自家生物発光シグナルを測定することを含む。本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される自家生物発光シグナルの測定を、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較することを含み得る。
【0066】
実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は誘導性自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの増加は、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化を示す。従って、そのような実施形態において、方法は、対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも測定された自家生物発光シグナルが強い場合に、分析物に応答して、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の活性化を決定することを含み得る。
【0067】
実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの減少は、分析物への曝露を示す。従って、そのような実施形態において、方法は、対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも測定された自家生物発光シグナルが弱い場合に、分析物に応答して、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の抑制を決定することを含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞をある範囲の濃度の分析物に供することをさらに含む。
【0069】
本方法は、2つ以上の時点にわたる遺伝子発現に対する分析物の効果を評価することを含み得る。幹細胞は自律的に発光するので、分析物の影響を継続的に監視することができる。
【0070】
別の態様では、誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞を使用して、試料中の分析物の存在を決定する方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞を試料に接触させることを含む。本方法は、少なくとも1つの幹細胞と薬剤との接触の後に、少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルを測定することを含む。本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較すること含み得る。
【0071】
実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は誘導性自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの増加は、分析物との接触を示す。従って、そのような実施形態において、本方法は、測定された自家生物発光シグナルが対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも強い場合に、試料中の分析物の存在を決定することを含み得る。
【0072】
実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの減少は、分析物に曝すことの結果として示される。従って、そのような実施形態において、本方法は、対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも測定された自家生物発光シグナルが少ない場合に、試料中の分析物の存在を決定することを含み得る。
【0073】
別の態様において、組織特異的シグナルを含む少なくとも1つの幹細胞を用いるリアルタイム分化報告の方法が開示される。本方法は、組織特異的な自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を提供することを含む。少なくとも1つの幹細胞は、本明細書に開示される任意の実施形態を含み得るもので、自家生物発光シグナルは組織特異的である。
【0074】
本方法は、少なくとも1つの組織細胞から放出される生物発光シグナルを測定することを含む。本方法は、2つ以上の時点にわたって、上記少なくとも1つの組織細胞への上記少なくとも1つの幹細胞の上記分化をトラッキングすることを含み得る。生物発光シグナルの放出は、少なくとも1つの組織細胞への少なくとも1つの幹細胞の分化の開始を報告するを報告し得る。本方法は、生物発光シグナルの測定に基づいて、少なくとも1つの組織細胞の細胞集団サイズを評価することを含み得る。
【0075】
別の態様では、幹細胞由来自律的生物発光細胞を使用する方法が本明細書に開示される。上記方法のそれぞれは、構成的生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を作製することを含む。少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞は、そのような細胞を作製するための本明細書に開示される方法のいずれかにもとづいて、作製され得る。従って、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞は、構成的にluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現し得、その結果、上記細胞は、構成的生物発光シグナルを自律的に放出する。
【0076】
少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の集団の細胞集団サイズをリアルタイムモニタリングする方法が提供される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを含む。本方法は、構成的生物発光シグナルの測定にもとづいて細胞集団のサイズを評価することを含む。本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞集団サイズを測定することを含み得る。この測定は、任意数の時点で実施され得る。
【0077】
別の実施形態では、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法が提供される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを含む。本方法は、構成的発光シグナルの測定に基づいて、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率を評価することを含む。
【0078】
本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞生存率を測定することを含み得る。この測定は、任意の時点数で実施され得る。
【0079】
別の態様では、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を使用して薬剤の効果を測定する方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を薬剤と接触させることを含む。そのような実施形態においては、薬剤は、少なくとも1つの幹細胞に対して治療的および/または細胞毒性効果を有し得る。本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞を薬剤に曝した後に、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される構成的発光シグナルを測定することを、さらに含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞由来自律発光細胞から放出される構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較することを含み得る。そのような実施形態では、方法は、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した上記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの減少が、薬剤との接触から生じる少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化を示すことを決定することを含み得るそのような実施形態では、本方法は、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定することを含み得る。本方法は上記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞が構成的発光シグナルの生成を停止したときに、上記少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞にとって薬剤が致命的であると決定することを含み得る。
【0081】
他の実施形態では、本方法は、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細から放出される測定された構成的発光シグナルの増加は少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率の正の変化を示すことを決定することを、含み得る。そのような実施形態において、本方法は、薬剤の効果が治療的であることを決定することを含み得る。
【0082】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞をある範囲の濃度の薬剤に供することを含み得る。本方法は、2つ以上の時点にわたる薬剤の効果を評価することを含み得る。本方法は、創薬のための薬剤を評価することを含み得る。
【0083】
上記は、請求された主題のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された要約を提示する。この要約は、広範な概要ではない。主要なエレメントまたは重要なエレメントを特定したり、クレームされた主題の範囲を描写したりすることを意図したものではない。その唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、概念を簡略化された形式で提示することである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1図1は、luxカセットを介した発光シグナルの生成を示す概略図である。
図2A図2A~2Dは、luxABに対するxCDEFのモル比を変化させると、テストした細胞タイプで自家生物発光出力が得られることを示す図である。図2Aは、同量のluxABと増加量のluxCDEFとを発現する同一の細胞と比較して、スプリットルクスオペロン(nanog-neo-CBA-luxABおよびnanog-zeo-CBA-luxCDEF)を1:1のモル比で一時的に発現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を示す図である。各luxCDEF:luxAB比の上に示されるヒートマップ画像は、3つの複製物を表す。
図2B図2A~2Dは、luxABに対するxCDEFのモル比を変化させると、テストした細胞タイプで自家生物発光出力が得られることを示す図である。図2Bは、同量のluxABと増加量のluxCDEFとを発現する同一の細胞と比較して、スプリットルクスオペロン(nanog-neo-CBA-luxABおよびnanog-zeo-CBA-luxCDEF)を1:1のモル比で一時的に発現するヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hADMSC)を示す図である。各luxCDEF:luxAB比の上に示されるヒートマップ画像は、3つの複製物を表す。
図2C図2A~2Dは、luxABに対するxCDEFのモル比を変化させると、テストした細胞タイプで自家生物発光出力が得られることを示す図である。図2Cは、同量のluxAB(ルシフェラーゼ遺伝子)と増加量のluxCDEF(ルシフェリン遺伝子)とを発現する同一の細胞と比較して、スプリットルクスオペロン(nanog-neo-CBA-luxABおよびnanog-zeo-CBA-luxCDEF)を1:1のモル比で一時的に発現するLN229細胞を示す図である。
図2D図2A~2Dは、luxABに対するxCDEFのモル比を変化させると、テストした細胞タイプで自家生物発光出力が得られることを示す図である。図2Dは、同量のluxAB(ルシフェラーゼ遺伝子)を発現しているけれどもluxCDEF(ルシフェリン遺伝子)の量が増加している同一の細胞と比較して、スプリットルクスオペロン(nanog-neo-CBA-luxABおよびnanog-zeo-CBA-luxCDEF)を1:1のモル比で一時的に発現するU87細胞を示す図である。
図3図3A~3Cは、本開示の実施形態による、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)において自家生物発光を生成するために使用されるluxオペロン構成の概略図である。図3Aは、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモータによって駆動され、トランスポゾン媒介ゲノム統合(TE)を促進するために配列LENSが隣接するウイルス2Aセグメント化ポリシストロンルクスオペロンの概略図である。nanogプロモータ(nanog)は、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)を駆動して、G418選択インテグレーションを提供する。図3Bおよび図3Cは、2つの別々のベクター間で分割されたポリシストロンルクスオペロンを示す。図3Bは、単一の2Aエレメントによって分離され、かつニワトリベータアクチン(CBA)プロモータに連動するluxAおよびluxBを含むベクターの概略図である。ベクターは、nanogプロモータ駆動のネオマイシン耐性遺伝子を保持する。図3Cは、少なくとも1つの2Aエレメントリンカー領域によって分離され、かつニワトリベータアクチン(CBA)プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびluxFを含むベクターの概略図である。このベクターは、nanogプロモータ駆動ゼオシン耐性遺伝子(zeo)を利用する。両方のベクターは、ゲノム統合のための隣接TEをさらに含み得る。
図4図4は、qPCRにより、培養時間を延長した後のiPSC-ABGDEFゲノムDNAのルクスオペロン遺伝子比が確認されることを示す。スプリットルクスオペロン(nanog-ネオマイシン-CBA-luxABおよびnanog-ゼオシン-CBA-luxCDEF)およびポリシストロンテトラサイクリン抑制性ルクスオペロン(nanog-ネオマイシン-ieiO-luxCDABEFおよびnanog-ゼオシン-CBA-fTA)を有する継代11(培養で約3か月)のヒト人工多能性幹細胞(iPSC)系統由来のゲノムDNAを、luxAおよびluxDのqPCRによって探索することで、遺伝子が約1:1以上の比率で発生したか否かを判断した。
図5図5A~5Cは、本開示の一実施形態によれば、luxオペロンを発現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)株が、多能性に関連するタンパク質マーカーを保持することを示す図である。図5Aは、約3か月間培養された野生型iPSCを固定し、Nanog、Oct4、およびSsea-4について免疫組織化学的に標識したことを示す。100xの赤色の円は、400xで表示される領域を示す。図5Bは、スプリットルクスオペロン(pNANOG-ネオマイシン-pCBA-LUXABおよびpNANOG-ゼオシン-pCBA-LUXCDEF)のiPSC株へのトランスポゾンを介したゲノム統合、それに続くクローン作成および11継代(約3か月)培養することで、野生型と同様の多能性のマーカーが発現することを示す。図5Cは、テトラサイクリンリプレッシブルラックスオペロン(pNANOG-ネオマイシン-tetO-LUXCDABEFおよびpNANOG-ゼオシン-CBA-tTA)を含むiPSC株でも多能性マーカーの発現が観察されたことを示す。
図6図6A~6Bは、本開示の一実施形態によれば、培養期間が延長された後も、luxオペロンを発現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)株が正常な核型を保持することを示す。図6Aは、スプリットルクスオペロン(pNANOG-ネオマイシン-pCBA-LUXABおよびpNANOG-ゼオシン-pCBA-LUXCDEF)のiPSC株へのトランスポゾンを介したゲノム統合、それに続くクローン作成および11継代(約3か月)培養することで、正常な46、XX核型が保持されたことを示す。図6Bは、核型の安定性は、テトラサイクリン抑制性ルクスオペロン(pNANOG-ネオマイシン-tetO-LUXCDABEFおよびpNANOG-ゼオシン-CBA-tTA)のゲノム統合を除いて、図6Aのように処理されたiPSC系統についても観察されたことを示す。
図7図7A~7Bは、HEK293、HCT116、HeLa、MepG2、およびMCF7細胞に、2A結合細菌ルシフェラーゼ遺伝子を発現する単一のベクターまたは6つの細菌ルシフェラーゼ遺伝子の1つをそれぞれ発現する6つの個別のベクターをトランスフェクトしたことを示す。各細胞タイプからの光出力は、トランスフェクションの48時間後に測定された。図7Aは、単一ベクターアプローチから生成されたものと比較した、6ベクター発現アプローチから生成された自家生物発光の倍率変化が、すべての試験された細胞株についてプロットされている図である。図7Bは、各細胞株の倍率変化値が示されている図である。
図8図8は、(1)6つの2A結合細菌ルシフェラーゼ遺伝子すべてを発現する単一のベクター、(2)1つ目がluxABを発現し、2つ目がluxCDEfrpを発現する2つのベクター、(3)1つ目がluxABを発現し、2つ目がluxCDEを発現し、さらに3つ目がfrpを表現する3つのベクター、または(4)それぞれが6つの細菌ルシフェラーゼ遺伝子の1つを発現する6つの個別のベクターのいずれかを、HEK293細胞にトランスフェクトしたことを示す。37℃に保持された細胞でトランスフェクションの48時間後に、光出力を測定した。
図9図9A~9Cは、本開示の一実施形態によれば、統合されたCBA-luxABおよびCBA-luxCDEF分割オペロンを発現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から放出される構成的自家生物発光が、細胞個数およびMTTアッセイと強く相関したことを示す図である。図9Aは、ゲノムに統合されたCBA-luxABおよびCBA-luxCDEFを含むiPSCを、示された細胞密度で播種し、播種の24時間後にイメージングしたことを示す図である。画像は6つの複製の典型的な1つである。図9Bは、初期播種細胞密度(R2=0.93)に対してプロットされたバックグラウンドに対する放射自家生物発光の倍率変化を示す。図9Cは、バックグラウンド(R2=0.98)に対するMTT吸光度(570nm)の倍率変化に対してプロットされた、バックグラウンドに対する放射自家生物発光の倍率変化を示す。
図10図10は、さまざまなドキソルビシン濃度でiPSC-luxAB/CDEFラインを処理すると、細胞生存率に用量依存的な変化が生じたことを示す図である。細胞生存率の変化を示す自律発光シグナル出力を使用した生存率測定は、MTT吸光度(570nm)の変化を使用した同じ測定と強く相関した(R2=0.99)。
図11図11は、本開示の一実施形態によれば、CBA-luxCDEFおよびCBA-luxABのゲノム統合により、細胞数と強く相関する自律発光を発現する安定な間葉系幹細胞(MSC)クローン系統が生成されたことを示す。
図12図12A~12Bは、自家生物発光ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hADMSC)のインビボイメージングを示す。図12Aは、ゲノムに統合されたCBA-luxABおよびCBA-luxCDEFスプリットオペロンを含むhADMSCの数を増やして、FVB近交系マウスの赤色の円で示された位置(部位に注入された細胞個数は赤い円の下に示される)に腹腔内注射し、10分後にイメージングしたことを示す。図12Bは、得られた平均放射発光(p/s/cm/sr)の変化倍率を、注入された総細胞数に対してプロットした図である。hADMSCから放出される平均放射発光(p/s/cm/sr)は、注入された細胞個数と強く相関した(R2=0.99)。
図13図13A~13Cは、本開示の一実施形態にもとづいて、尾静脈注射後の自家生物発光ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hADMSC)を肺までトラッキングすることを示す。図13Aは、ゲノムに統合されたCBA-luxABおよびCBA-luxCDEFスプリットオペロンを備えた200万個のhADMSCを、FVB近交系マウスの尾静脈に注射し、注射の1時間後にイメージングしたことを示す。図13Bは、犠牲および解剖の後に自家生物発光が肺内で観察できることを示す。図13Cは、図13Cは、図1の解剖されたFVB近交系マウスを示す画像である。
図14図14は、本開示の実施形態にもとづく、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)における誘導性または抑制性の自家生物発光の生成に使用されるluxオペロン構成の概略図である。ウイルスの2Aセグメント化されたポリシストロンluxオペロンは、修飾されたテトラサイクリン応答エレメント(TET°)によって駆動され、かつ配列エレメントが隣接することで、トランスポゾンを介したゲノム統合(TE)を促進する。nanogプロモータ(nanog)は、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)を駆動して、G418選択インテグレーションを提供する。トランス活性化因子(tTA)または逆トランス活性化因子(rtTA)は、ニワトリのベータアクチンプロモータ(CBA)によって駆動される。CBA駆動型トランス活性化因子(tTA)は、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下でオフになる構成的lux発現をもたらす。対照的に、CBA駆動逆トランス活性化因子(rtTA)は、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で、luxを発現する。
図15図15A~15Bは、luxオペロンが遺伝子発現のレポーターとして機能することを示す。図15Aは、1テトラサイクリン応答性プロモータ(tet-luxCDABEF)および個別に統合されたニワトリベータアクチン(CBA)駆動逆トランスアクチベーター(rtTA)の制御下で、ゲノムに統合されたポリシストロンluxオペロン(luxCDABEF)を有するFluman人工多能性幹細胞(iPSC)が4時間および24時間にわたって、増量のドキシサイクリンに曝されることを示す図である。自家生物発光測定は、増加する量のドキシサイクリンへの曝露に応答した自家生物発光出力の増加を、概して示す。図15Bは、統合され、CBA駆動型トランス活性化因子(tTA)を発現するiPSCtet-luxCDABEF系統からの自家生物発光測定は、<0.1pg/mLドキシサイクリンと比較して、>0.1pg/mLドキシサイクリンの曝露に応答した自家生物発光出力の減少が示されることを示す。
図16図16は、テトラサイクリン応答性プロモータ(tet-luxCDABEF)および個別に統合されたCBA駆動型トランスアクチベーター(tTA)の制御下で、ゲノムに統合されたポリシストロンluxオペロン(luxCDABEF)を持つヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を心筋細胞(CM)に分化させたことを示す。約1.5週間成熟させた後、CMをドキソルビシンに曝した。イメージングの前に18時間、指定された濃度範囲のドキソルビシンにCMを曝した。推定EC50は0.41~0.74uMである。
図17図17は、本開示の一実施形態にもとづく、組織特異的自家生物発光を発現するiPSC由来心筋細胞を示す。野生型iPSCおよびiPSC由来心筋細胞に、CBA-luxCDEFおよびCBA-luxAB(構成的)またはTNNT2-/uxAS(心臓特異的)のいずれかを20:1で一過性にトランスフェクトし、24時間後に自家生物発光出力を測定した。自家生物発光は、野生型iPSCと、CBA-luxCDEfrpおよびCBA-luxAB(構成的)を共発現するiPSC由来心筋細胞との両方で、観察された。さらに、一過性にトランスフェクトされた野生型iPSC由来心筋細胞において心臓特異的TNNT2-/uxASをCBA-luxCDEfrpと共発現させた場合、自家生物発光発現が観察された。ただし、iPS細胞にトランスフェクトした場合、そのような自家生物発光の発現は観察されなかった。
図18図18は、脂肪組織特異的ヒトAP2プロモータの制御下にあるluxCDABEFオペロンを有するヒト間葉系幹細胞(MSC)を、分化前および脂肪細胞(脂肪生成)、軟骨細胞(軟骨形成)、または骨細胞(骨形成)への分化後のバックグラウンド光検出(S/B)と比較した自家生物発光生成についてアッセイした。組織特異的プロモータは、脂肪組織タイプへの分化時にのみ、外部刺激なしで自家生物発光の生成を開始した。非標的系統への分化後、有意な自家生物発光シグナルは検出されず、このことは分化報告が非常に特異的であることを示唆した。
図19図19A~19Cは、本開示の一実施形態にもとづいて、luxAB/CDEFオペロンを有するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)が心筋細胞に分化したときに自家生物発光表現型を維持することを示す。図19Aでは、代表的な画像が、luxABおよびluxCDEFがゲノムに統合されたiPS細胞からの自家生物発光シグナル(左)と、同じく自己生体発光シグナルを示す親iPSC-luxAB/CDEFライン(右)から分化した心筋細胞(CM)(右)とを示す。図19Bは、iPSC-luxAB/CDEFおよびCM-luxAB/CDEF細胞系統のプレート細胞あたりの正規化された平均自家生物発光輝度を示す。図19Cは、自家生物発光CM-luxAB/CDEF系統を、さまざまなドキソルビシン(uM)濃度で処理し、24時間の処理後に自家生物発光出力を測定したことを示す図である。
図20図20A~20Cは、自家生物発光心筋細胞が30時間にわたって継続的なドキソルビシン毒性モニタリングを可能にしたことを示す。図20Aは、CBA-luxABおよびCBA-luxCDEFスプリットオペロンを発現するヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来の心筋細胞から放出される自家生物発光を、30時間にわたって10分間隔で測定したことを示す。処置なしで5時間モニタリングした後、心臓毒性物質ドキソルビシン(uM)の用量を増やして追加し(白い矢印)、モニタリングを継続した。データは、少なくとも3回の繰り返しの平均値を表す。図20Bは、図20Aに示される時系列にわたる2.5時間間隔での自家生物発光シグナルの代表的なヒートマップを示す。図20Cは、実験の時間経過にわたって計算され、時間に対してプロットされたIC50値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照する。本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、および試薬等は、当業者によって変更され得るものであることから、本発明を限定するものではないと理解される。本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解される。図面に示されている特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の範囲から逸脱することなく、一実施形態の特徴は、当業者が認識するように、たとえ本明細書中に明示的に記載されていない場合であっても、他の実施形態とともに使用され得ることに留意されたい。例えば、一実施形態の一部として図示または説明された特徴は、別の実施形態と併用されて、さらなる実施形態をもたらすことができる。本開示の実施形態を不必要に曖昧にしないために、周知の構成エレメントおよび処理技術の説明は省略され得る。
【0086】
従って、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入るような修正および変形も含むことが意図される。本開示の他の目的、特徴、および態様は、以下の詳細な説明に開示されている、またはそれから自明である。本開示は例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことは、当業者によって理解されるべきである。
【0087】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、本明細書中で明示的にそのように定義される場合を除いて、明細書の文脈での意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想的または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解される。周知の機能または構造については簡潔または明確にする詳細な説明がなされない場合もある。
【0088】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の言及も含まれることに留意されたい。従って、例えば、「細胞」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の細胞およびその同等物への言及である。
【0089】
「生物発光(bioluminescent)」および「発光(luminescent)」という用語および類似の句は、交換使用され得る。さらに、「自家生物発光(自家生物発光)」、「自律的生物発光(autonomously bioluminescent)」、および「自律的発光(autonomously luminescent)」という用語、ならびに同様の句は、交換使用され得る。細胞は、例えばルシフェラーゼ(lux)カセットの発現を通じて、発光シグナルの生成に必要なすべての基質を自己合成する場合、自家生物発光性(autobioluminescent)であるか、または自家生物発光(autobioluminescence)を有する。つまり、発光シグナル(生物発光シグナルとも呼ばれる)を生成する機序は、自律的かつリアルタイムで動作し、生物発光シグナル出力に連動する細胞および分子機序を示す。自家生物発光を有する細胞および細胞を作製および使用する方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,300,792号に記載される。
【0090】
「コドン最適化(codon optimization)」という用語は、クローン化された遺伝子内のコドン(宿主細胞翻訳システムによって一般的に使用されないコドン)が、合成されたタンパク質のアミノ酸を変更せずに、突然変異誘発または他の適切な手段によって宿主生物の好ましいコドンに変更される戦略を包含する。
【0091】
「コードする(「encodes」および「encoding」)」という用語は、定義されたヌクレオチド配列(rRNA、tRNA、およびmRNA)または定義されたアミノ酸配列、およびそれらから生じる生物学的特性のいずれかを有し、生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび高分子を合成するためのテンプレートとして機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNAといった、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列に固有な特性のことをいう。従って従って、遺伝子によって生成されたmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系でタンパク質を生成する場合、その遺伝子がタンパク質をコードする。
【0092】
「発現(expression)」という用語は、核酸のタンパク質への翻訳のことをいう。タンパク質は、発現されて細胞内に留まる、細胞表面膜の成分になる、または細胞外マトリックスもしくは培地に分泌され得る。
【0093】
「luxカセット(lux cassette)」という用語は、5つの遺伝子、すなわちluxC遺伝子、luxD遺伝子、luxA遺伝子、luxB遺伝子、およびluxE遺伝子を含む細菌ルシフェラーゼ(lux)遺伝子カセットのことをいう。これらの5つの遺伝子は、相乗的に相互作用して、補助基質を追加せずに生物発光の光を生成するタンパク質産物をコードする。さらに、フラビンレダクターゼとして機能する追加の遺伝子であり、内因性フラビンモノヌクレオチドを前述の生物発光反応に必要なFMNH共基質に循環させるのを助けるフラビンレダクターゼ遺伝子(「frp」または「F」と呼ばれる)が存在する。これらの遺伝子は、省略表記で呼ばれることもある。例えば、luxカセットの5つの遺伝子すべてを称する場合、省略表記をluxCDABEとすることが可能である。上記遺伝子のサブセットのみのことに言及する場合、省略表記は、luxAB、luxCDE、または他の任意の組み合わせであってもよい。フラビンレダクターゼ遺伝子のことを言及する場合にも省略表記を用いても構わない。例えば、luxカセットでフラビンレダクターゼ遺伝子を参照する場合、省略表記はluxCDABEfrpまたはluxCDABEFのいずれかであり得る。luxC遺伝子、luxD遺伝子、luxA遺伝子、luxB遺伝子、luxE遺伝子、およびfrpはそれぞれ、別表1に記載されるように、野生型配列、コドン最適化配列、ならびにそれらの変異、誘導、および修飾を有し得る。特に明記しない限り、luxC遺伝子、luxD遺伝子、luxA遺伝子、luxB遺伝子、luxE遺伝子、およびfrpへの言及は、野生型配列およびコドン最適化配列(例えば、別表1に提供される野生型およびコドン最適化配列を包含する)、ならびにそれらの変異、誘導、および修飾を包含する。
【0094】
本明細書で一般的に使用されるように、「核酸(nucleicacid)」とは、少なくとも2つのヌクレオチドを含むポリマーのことをいう。核酸という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含み、DNAおよびRNAの既知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含する。核酸を、鎖状、環状、またはより高次のトポロジー(例えば、スーパーコイル状のプラスミドDNA)とすることができる。DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、および人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらのグループの派生物の形をとり得る。RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、(干渉)二本鎖および一本鎖RNA、リボザイム、キメラ配列、またはこれらのグループの誘導体の形をとり得る。核酸を、一本鎖(ssDNA)、二本鎖(dsDNA)、三本鎖(tsDNA)、または四本鎖(qsDNA)のDNAとすることができる。RNAを、一本鎖RNA(ssRNA)または二本鎖RNA(dsRNA)とすることができる。核酸という用語は、一本鎖分子だけでなく、二本鎖または三本鎖核酸を包含する。
【0095】
核酸という用語はまた、その化学修飾、例えばメチル化および/またはキャッピングによるものを、包含する。核酸修飾として、追加の電荷、分極率、水素結合、静電相互作用、および機能性を個々の核酸塩基または核酸全に取り込む化学基の追加を挙げることができる。そのような修飾には、塩基修飾、骨格修飾、異常な塩基対の組み合わせ等が含まれてもよい。
【0096】
核酸は、固相媒介化学合成等の完全な化学合成プロセスから、核酸を生成する任意の種からの単離等による生物学的供給源から、またはDNA複製、PCR増幅、逆転写等の分子生物学ツールによる核酸の操作を伴うプロセスから、またはこれらのプロセスの組み合わせから、得ることができる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「連動する(operatively linked)」という表現および類似の句は、核酸に関して使用される場合、互いに機能的関係に置かれた核酸配列の連動のことをいう。例えば、プロモータがコード配列の転写を開始するのを助ける場合、コード配列は、プロモータに連動する(またはその制御下にある)と見なすことができる。この機能的関係が維持されている限り、プロモータとコード領域との間に介在配列が存在してもよい。
【0098】
「プロモータ(promoter)」という用語は、適切な転写に必要であるRNAポリメラーゼおよび他の因子による認識を提供することによって、目的のヌクレオチド配列の発現を指示および/または制御する、通常は目的のヌクレオチド配列の上流(5プライム)のヌクレオチド配列のことをいう。本明細書で使用される場合、「プロモータ」という用語には、TATAボックスと転写開始の部位を特定するのに役立つ他の配列とから構成される短いDNA配列であるプロモータ(ただしこれに限定されない)が含まれ、調整または応答エレメントが発現の制御のために追加される。「プロモータ」という用語はまた、プロモータに加えて、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができる調節または応答エレメントを含むヌクレオチド配列のことをいう。このタイプのプロモータ配列は、近位およびより遠位の上流エレメントから成り、後者のエレメントはしばしばエンハンサーと呼ばれる。「エンハンサー(enhancer)」という用語は、プロモータ活性を刺激することができ、プロモータの生来のエレメント、またはプロモータのレベルまたは組織特異性を増強するために挿入される異種エレメントであり得るDNA配列のことをいう。エンハンサーは、両方の方向(通常または反転)で動作することができ、プロモータの上流または下流に移動した場合でも機能することができる。エンハンサーと他の上流プロモータエレメントとの両方が、それらの効果を媒介する配列特異的DNA結合タンパク質に結合する。
【0099】
プロモータは、その全体が天然遺伝子に由来するか、または自然界に見られる異なるプロモータに由来する異なるエレメントから構成されるか、または合成DNAセグメントからさえも構成されることができる。プロモータはまた、生理学的または発達的条件に応答して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含むことができる。本開示に従って使用される特定のプロモータには、例えば、これらに限定されないが、ニワトリベータアクチン(「CBA」)プロモータ、サイトメガロウイルス(「CMV」)プロモータ、ラウス肉腫ウイルス(「RSV」)プロモータ、および神経特異的エノラーゼ(「NSE」)プロモータが含まれる。
【0100】
「構成的(constitutive)」プロモータは、ほとんどの環境条件下および発生または細胞分化の状態の下で、継続的に発現を駆動する。構成的プロモータは、プロモータが連動する核酸の継続的な転写を可能にする任意の適切なプロモータであり得る。構成的プロモータは、細胞型特異的プロモータまたは細胞型とは無関係に発現されるプロモータを含み得る。例えば、構成的プロモータには、CBAプロモータ、CMVプロモータ、EF-1aプロモータ、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0101】
あるいは、プロモータを、「誘導性」プロモータ(例えば、化学的または物理的に調節されたプロモータ)とすることができる。化学的に調節されるプロモータは、例えば、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、または金属の存在によって調節され得る。物理的に調節されるプロモータは、例えば、温度や光等の環境要因によって調節され得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾、例えば、グリコシル化またはリン酸化に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「幹細胞(stem cell)」という用語は、活発に分裂および循環する成熟し、分化し、かつ機能的である細胞の系統に対して適切な刺激を与えることによって発現する比較的未分化の細胞のことをいう。幹細胞は、任意のタイプの幹細胞、例えば、成体幹細胞(例えば、組織特異的幹細胞)、胚性(または多能性)幹細胞、および人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。「幹細胞」という用語には、任意の子孫も含まれる。複製中に突然変異が起こる可能性があるため、すべての子孫が親細胞と同一ではない可能性があることが理解される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「選択可能なマーカー(selectable marker)」という表現は、細胞内に存在する場合、選択可能なマーカー形質を発現しない他の細胞からのそれらの細胞の選択または分離を可能にする属性または表現型をもたらすマーカーのことをいう。選択可能なマーカーとしてさまざまな遺伝子が使用され、例えば、薬剤耐性または栄養要求性レスキューをコードする遺伝子が広く知られている。例えば、カナマイシン(ネオマイシン)耐性は、細菌のカナマイシン耐性をコードする遺伝子(例えば、酵素ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII)を保有するプラスミドを取り込んだ細菌を選択するための形質として使用され得る。トランスフェクトされていない細胞は、培養物をネオマイシンまたは同様の抗生物質で処理すると、最終的には死滅する。
【0105】
ベクター等の外来核酸が導入された細胞、組織、または生物は、「形質転換された(transformed)」、「トランスフェクトされた(transfected)」、または「トランスジェニック(transgenic)」と見なされる。「トランスジェニック」または「形質転換された」細胞または生物(例えば、幹細胞)はまた、細胞または生物の子孫を含む。例えば、luxA、luxB、luxC、luxD、またはluxEのトランスジェニック幹細胞は、それぞれluxA、luxB、luxC、luxD、またはluxE核酸が導入された幹細胞である。
【0106】
さらに、本明細書で使用される場合、「形質転換(transforming)」、「トランスフェクション(transfecting)」等の用語は、ベクターまたは他の核酸を標的細胞に挿入する方法を定義するために広く使用される。これは、例えば、ベクターを標的細胞にトランスフェクトすることによって達成することができる。トランスフェクション法は日常的に行われるものであり、多くのトランスフェクション法が本発明で使用される。これらにはリン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、脂質ベースの方法、カチオン性ポリマートランスフェクション、直接核酸注入、微粒子銃粒子注入、および遺伝子操作されたウイルスキャリアとソノポレーションを使用したウイルス形質導入(例えば、操作された単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、シンドビスウイルスを使用した形質導入と呼ばれる)が含まれる。これらの方法のいずれも、本開示で使用される。
【0107】
トランスフェクションは、安定したトランスフェクションと一過性のトランスフェクションとの2つのカテゴリーに分けられる。安定したトランスフェクションは、ベクターが細胞内へのベクターの恒久的導入をもたらすものであり、抗生物質耐性等の選択可能なマーカーを使用して達成され得る。一過性のトランスフェクションにより、ベクターが一時的に細胞に導入される。あるいは、ベクターがウイルスベクターである場合、それを宿主細胞にトランスフェクトしてウイルスを産生し、ウイルスを採取して、ベクターを標的細胞に形質導入するために使用することができる。トランスフェクションおよび形質導入プロトコルは当技術分野で既知である。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ベクター(vector)」という用語は、増殖することができるとともに核酸セグメントを生物に移すために使用され得る任意の組換えポリヌクレオチド分子について、使用される。ベクターは、概して、ベクターの増殖および操作を媒介する部分(例えば、1つまたは複数の複製起点、薬物または抗生物質耐性を付与する遺伝子、複数のクローニング部位、クローニングされた遺伝子の発現を可能にする連動するプロモータ/エンハンサーエレメント等)を含む。ベクターは、細胞に選択可能な表現型、例えば抗生物質耐性を与えることができるマーカー遺伝子を含み得る。このマーカー産物は、遺伝子が細胞に送達され、送達された後は発現されているかどうかを判断するために使用される。適切な選択可能なマーカーの例として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、およびピューロマイシンが含まれるが、これらに限定されない。そのような選択可能なマーカーが幹細胞に成功裏に移されると、形質転換された幹細胞は、選択圧下に置かれるならば生き残ることができる。
【0109】
ベクターは、該ベクターのタイプまたは用途のタイプに応じて、線状分子または環状の形態であり得る。一部の環状核酸ベクターは、細胞内への送達に先だって意図的に線形化され得る。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、ファージ、または二本鎖または一本鎖の線状または環状の二本鎖ベクターを含み、自己伝達性または可動性である場合とそうでない場合があり、細胞ゲノムに組み込まれるか、または染色体外に存在することによって、真核生物の宿主細胞を形質転換し得るもの(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)と定義される。ベクターの1つのタイプはエピソーム、すなわち染色体外複製が可能な核酸である。別のタイプのベクターは、宿主細胞ゲノム内に組み込まれるものである。ベクターは、該ベクターが連結されている核酸を自律的複製および/または発現させることができるものであってもよい。そのようなベクターを入手して使用するためのプロトコルは、当業者に公知である。
【0110】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つのベクター」という用語は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれの態様に対応する1つまたは複数のベクター(例えば、前述の遺伝子のそれぞれが異なるベクターから発現される6つのベクター)あるいはluxカセットの態様に対応する1つまたは複数のベクター(例えば、5つのベクター)を含み得る。任意の特定のベクターは、他の任意の核酸に加えて、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのうちの1つまたは複数の核酸を含み得る。ベクターには、1つまたは複数のluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの核酸以外の核酸が含まれなくてもよい。
【0111】
本発明の開示された実施形態の任意の所与のエレメントは、単一の構造、単一のステップ、単一の物等で具体化され得ることが理解されるべきである。同様に、開示された実施形態の所与のエレメントは、複数の構造、ステップ、物質等で具体化され得る。
【0112】
II.自家生物発光表現型を含む幹細胞
例えば、幹細胞の生存能力、遊走、および運命を検査するための現在の限定された技術によって課せられる制限を横断する手段は、生物発光レポーター遺伝子を幹細胞に実装して、生物発光幹細胞の非侵襲的光学イメージングを可能にすることである。ただし、ほとんどの生物発光レポーターシステムでは、ホタル、ウミシイタケ(Renilla)、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ等の光生成を活性化するための基質を投与する必要がある。結果として、これらのシステムは、基質の品質、取り込み速度、または曝露時間の変動により、データ取得の可能性が大幅に制限される。さらに、そのようなシステムのインビボ分析において、活性化基質の必要な注射は、動物保護に悪影響を及ぼし、それは、不可能ではないにしても潜在的な治療法の探索を困難にする。
【0113】
従って、自律的生物発光表現型とも呼ばれる自家生物発光表現型を含む幹細胞を開示する。自家生物発光表現型は、外因性発光刺激因子の非存在下で、自家生物発光シグナルとも呼ばれる生物発光シグナルを放出することを含み、すなわち、このシグナルが「自律的に(autonomously)」生成される。外因性発光刺激因子は、蛍光刺激シグナルであってもよい。外因性発光刺激因子は、化学的発光活性剤であってもよい。いくつかの実施形態において、化学発光因子は、ルシフェリンまたはルシフェリン類似体を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、化学物質は、少なくとも、アルデヒド官能基を含み得る。他の実施形態では、化学発光因子は、例えば、D-ルシフェリン(2-(4-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-イル)-2-チアゾリン酸)、3-ヒドロキシ-ヒスピジン、セレンテラジン、または任意の他のルシフェリン基質を含み得る。
【0114】
幹細胞は、任意のタイプの幹細胞、例えば、成体幹細胞(例えば、組織特異的幹細胞)、胚性(または多能性)幹細胞、および人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。
【0115】
幹細胞は、細菌ルシフェラーゼ(lux)カセットシステム、すなわち、luxCDABE遺伝子カセットを含み得る。バクテリアルシフェラーゼ(lux)カセットシステムは、外因性インベスティゲータ相互作用(exogenous investigator interaction)なしに、そのルシフェラーゼと関連するルシフェリン生成タンパク質生成物の両方を自律的に生成することができる。幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼタンパク質を含み得る。さらに、これらのタンパク質の変異型またはこれらのタンパク質の変異型が使用され得る。変異体の例として、限定されるものではないが、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれのフラグメント、類似体、誘導体、および相同体が挙げられる。luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの組換え型も使用され得る。
【0116】
幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、任意の生物または株に由来し得る。例えば、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEは、P.ルミネセンス(P.luminescens)、ビブリオ・ハルベイ(Vibrioharveyi)、クセノラブズス・ルミネスケンス(Xenorhabdus luminescens)、フォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phosphoreum)、フォトバクテリウム・レイオグナチ(Photobacterium leiognathi)、および/またはシューワネラ・ハネダイ(Shewanella hanedai)に由来し得る。さらに、フラビンレダクターゼは、例えば、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、大腸菌(Escherichia coli)、および/またはヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylor)に由来し得る。核酸のいずれも、RNAの形態、またはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含むDNAの形態であり得る。DNAは二本鎖または一本鎖であり得る。核酸のいずれも、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、および/またはフラビンレダクターゼの変異型および/または変異体をコードし得る。例として、本明細書の核酸は、天然のluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、および/またはフラビンレダクターゼとは1つまたは複数の塩基が異なるヌクレオチド配列を含み得る。そのような実施形態において、上記ヌクレオチド配列は、天然のluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、および/またはフラビンレダクターゼと比較して、1つまたは複数のヌクレオチド塩基の欠失、付加、または置換を含み得る。
【0117】
luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、染色体に組み込まれた核酸であってもよい。染色体組込は、遺伝子発現の長期的な安定性をもたらす可能性がある。luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸を幹細胞染色体に組み込むために、いくつかの方法を採用することが可能である。luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を、任意の個数の発現ベクター(例えば、1、2、3、4、5、または6つのベクター)から発現させることが可能である。例えば、前述のそれぞれは、別個の発現ベクター上で発現され得るか、またはいくつかの核酸は、単一の発現ベクター上で提供され得る。核酸を幹細胞に挿入する方法は、当技術分野で公知である。
【0118】
例として、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含む幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを介して生物発光シグナルを自律的に生成する。内因性ミリスチン酸、内因性フラビンモノヌクレオチド、および分子状酸素と相乗的に作用して、生物発光シグナルを生成する(図1)。具体的には、luxAおよびluxBはヘテロ二量体ルシフェラーゼを形成するけれども、luxC、luxD、およびluxEはそれぞれ、細胞内化合物の変換を通じてアルデヒド基質を再生する脂肪酸レダクターゼ複合体を形成するレダクターゼ、トランスフェラーゼ、およびシンターゼである。フラビンレダクターゼは、必要なFMNhh共基質に内因性フラビンモノヌクレオチドを循環させるのに役立つ。これらの成分は、分子状酸素とともに、約490nmで生物発光シグナルを生成するために必要なすべての生成物を酵素に供給する。ルシフェラーゼ酵素は、FMNHおよび酸素の存在下で、アルデヒド基質の酸化を触媒し、それによって副産物として約490nmのピーク波長の光を生成する。全体的な反応を次のようにまとめることができる。すなわち、FMNH+RCHO+O→FMN+HO+RCOOH+hv490nmである。
【0119】
酸素およびFMNHは細胞内で天然に存在し、さらにluxC、luxD、およびluxEから生じる脂肪酸レダクターゼ複合体は、アルデヒド基質のインビボ生成をもたらす。従って、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの共発現により、幹細胞は完全に自律的な方法で(すなわち、外因性試薬を添加せずに)生物発光シグナルを生成することができる。結果として、いくつかの実施形態において、自律生物発光表現型を含む幹細胞は、490nmのピーク波長で生物発光シグナルを放出する。
【0120】
さらに、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、および/またはフラビンレダクターゼの存在量が増加することは、生物発光産生にとって有益であろう。従って、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の核酸は、幹細胞での発現のためにコドンが最適化され得る。例えば、1つまたは複数の核酸は、該1つまたは複数の核酸から合成されたタンパク質のアミノ酸を変更することなく、突然変異誘発によって幹細胞の好ましいコドンに変更され得る。そのようなコドン最適化は、それが、より多くのコドン最適化核酸の1つによってコードされるluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、および/またはフラビンレダクターゼの量の増加をもたらす可能性があるという点で有利である。
【0121】
さらに、いくつかの実施形態では、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする1つまたは複数の核酸は、転写を促進および/または促進するために1つまたは複数の調節エレメントに連動する。連動する核酸配列は、隣接することができ、必要に応じて、2つのタンパク質コード領域を結合するために、リーディングフレーム内にある。連動する核酸配列はまた、非隣接的であり得る。調節エレメントの例には、プロモータ、エンハンサー、開始部位、ポリアデニル化(polyA)テール、応答エレメント、および終結シグナルが含まれる。
【0122】
本明細書に開示されるすべての実施形態において、1つまたは複数のluxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、少なくとも1つのリンカー領域に連動し得る。少なくとも1つのリンカー領域の存在は、それが連動する少なくとも1つの核酸の発現を促進し得るという点で有利である。具体的には、少なくとも1つのリンカー領域は、複数のタンパク質が単一の転写物から翻訳されることを可能にし得るもので、このことが機能性を増加させると考えられる。少なくとも1つのリンカー領域は、偽ポリシストロン発現のために個々の遺伝子が一緒に連結し得る。
【0123】
少なくとも1つのリンカー領域は、内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントを含み得る。IRESエレメントは、リボソームがAUG開始コドンに直接結合できるという点で有利である。さらに、IRESは翻訳の内部開始をもたらす可能性があり、その結果、モノシストロン性mRNAは本質的にマルチシストロン性になり得る。従って、少なくとも1つのIRESエレメントをluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸に作動可能に結合させると、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのポリシストロン合成が促進され得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのリンカー領域は、ウイルス2Aペプチドを含む。適切なウイルス2Aペプチドの例として、TSA(Seq.GluGlyArgGlySerLeuLeuThrCysGlyAspValGluGluAsnProGlyPro)、P2A(AlaThrAsnPheSerLeuLeuLysGlnAlaGlyAspValGluGluAsnProGlyPro)、E2A(GlnCysThrAsnTyrAlaLeuLeuLysLeuAlaGlyAspValGluSerAsnProGlyPro)、および/またはF2A(ValLysGInThrLeuAsnPheAspLeuLeuLysLeuAlaGlyAspValGluSerAsnProGlyPro)が挙げられる。必要に応じて、GlySerGly配列がウイルス2AペプチドのN末端に付加されてもよい。IRESエレメントと同様に、ウイルス2Aペプチドにより、単一の転写産物から複数のタンパク質を翻訳することが可能である。しかし、IRESエレメントと比較して、ウイルス2Aペプチドにより転写効率が向上し得る。このことは、ウイルスの2Aペプチドが、ヒト化ポリシストロン発現に対してより適した作用機序を使用しているためであると考えられている。具体的には、2Aペプチド配列によってリボソームの出口トンネルに与えられた立体障害によって、2Aペプチド配列のC末端での最後のペプチド結合がスキップされる。ただし、リボソームは翻訳を継続できるため、二次の独立したタンパク質産物が生成される。さらに、ウイルスの2Aペプチドは二次構造の形成に依存しないため、IRESエレメントよりも短くなる。その結果、ウイルスの2Aペプチドは、転写および翻訳効率の低下に悩まされる可能性が低くなる。
【0125】
上記の実施形態のいずれかにおいて、幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み、幹細胞によって放出される自家生物発光シグナルは、以下でさらに開示されるように、構成的、誘導性、抑制性、または組織特異的のいずれかであってもよい。
【0126】
1.構成的自家生物発光シグナル
実施形態において、自家生物発光シグナルは構成的であり、幹細胞が継続的に自家生物発光シグナルを放出する。そのような実施形態では、luxA、luxB、luxC、luxD、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、少なくとも1つの構成的プロモータに連動する。本明細書に記載の任意の構成的プロモータ(以下に述べる第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータを含む)は、構成的発光シグナルの生成に十分なレベルでの継続的な転写を可能にする任意の適切なプロモータを含み得る。例えば、構成的プロモータとして、限定されるものではないが、ニワトリベータアクチン、サイトメガロウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ヒト伸長因子1a、シミアンウイルス40初期、ヒトb-アクチン、およびニューロン特異的エノラーゼプロモータを挙げることが可能である。
【0127】
いくつかの実施形態において、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のそれぞれは、構成的プロモータに連動し得る。すなわち、そのような実施形態において、前述の核酸は、6つの構成的プロモータに連動する。これら6つの構成的プロモータは、同じプロモータまたは異なるプロモータであってもよい。
【0128】
他の実施形態では、luxA核酸およびluxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動し得る。さらに、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、第2の構成的プロモータに連動し得る。2つの別個の構成的プロモータの作用下に核酸を有することの利点は、この構成が、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸に対するluxAおよびluxB核酸の様々な比率の容易な実施を可能にすることである。
【0129】
第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータは、同じプロモータまたは異なるプロモータであってもよい。例えば、第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータは、それぞれ、ニワトリベータアクチンプロモータを含み得る。ニワトリβ-アクチンプロモータが有利なのは、それがさまざまな幹細胞タイプにわたって機能を維持し、かつ強力な転写活性を付与するだけでなく、長い転写ユニットの発現を促進できるという点である(以下の実施例1の説明を参照)。
【0130】
例として、luxA、luxB、luxC、luxD、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸が少なくとも1つの構成的プロモータに連動される実施形態(第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータを有する実施形態を含む)において、各構成的プロモータが連動する核酸の連続発現があり得る。従って、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれが継続的に産生される。この継続的産生により、構成的な生物発光シグナルが放出される。さらに、この構成的発光シグナルは、幹細胞によって完全に自己生成され、かつ自己誘導されるので、外因的に添加された基質(例えば、アルデヒド官能基を有する基質)は発光シグナルの生成に必要ではない。
【0131】
2.誘導性自家生物発光シグナル
実施形態において、自家生物発光シグナルは誘導性であり、幹細胞は外部刺激に曝されると自家生物発光シグナルを放出する。外部刺激は、例えば、分析物、環境条件(例えば、温度および/または光)、あるいは転写活性化および/または1つまたは複数の核酸の非活性化を含み得る。
【0132】
実施形態において、外部刺激は分析物を含み、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つが少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、例えば、モジュラーエンハンサーユニットまたは応答エレメントを含み得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、分析物の存在によって調節することができる任意の応答エレメントであり得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの例として、限定されるものではにが、エストロゲン応答エレメント、アンドロゲン応答エレメント、金属応答エレメント、芳香族炭化水素応答エレメント、親電性応答エレメント、レチノイン酸およびレチノイドX応答エレメント、抗酸化応答エレメント、グルココルチコイド応答エレメント、カルシウム応答エレメント、甲状腺ホルモン応答エレメント、ならびに成長ホルモン応答エレメントが挙げられる。
【0133】
分析物は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化することができる任意の分析物であり得る。例として、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントがホルモン応答エレメント(例えば、エストロゲンまたはアンドロゲン応答性)を含む場合、分析物は、ホルモン応答エレメントを活性化し得る適切な環境または天然ホルモン、例えばエストロゲンまたはアンドロゲンを含み得る。同様に、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントが芳香族炭化水素応答エレメントを含む場合、分析物は、ダイオキシンまたはベンゾピレン等の内分泌撹乱物質を含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸に連動し得る。そのような実施形態では、幹細胞を分析物に曝すことで、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントが、それが連動する各核酸の転写をアップレギュレートする。言い換えれば、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの活性化によって、自家生物発光シグナルを生成するために必要な対応するタンパク質のそれぞれが生成される。
【0135】
他の実施形態では、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連動する。すなわち、自家生物発光シグナルの生成に必要な核酸の少なくとも1つのサブセットは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに作動可能に連結され得る。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、単一の核酸のみに作動可能に連結され得る。他の実施形態では、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸のみが、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動し得る。従って、上記実施形態では、幹細胞が分析物に曝されると、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントが活性化され、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸の転写を開始する。
【0136】
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない残りの少なくとも1つの核酸は、少なくとも1つの核酸が構成的に発現されるように、構成的プロモータに連動し得る。例えば、上記の例を続けると、luxAおよびluxBをコードする核酸は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントである残りの核酸(すなわち、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸)は、構成的プロモータに連動し得る。すなわち、そのような実施形態では、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼが連続的に生成され、luxAおよびluxBは、幹細胞の環境における分析物の存在に応答してのみ生成される。従って、幹細胞が分析物に曝されると、自家生物発光を生成するために必要な各タンパク質が生成され、その結果、幹細胞が自家生物発光シグナルを放出する。従って、上記の実施形態のそれぞれにおいて、自家生物発光シグナルの存在は、幹細胞の環境における分析物の存在を示す。
【0137】
さらに、幹細胞は、外因性エフェクター分子によるlux発現の制御を可能にする調節機序を含み得る。調節機序は、例えば、Tet-On等の発現を誘導することができるテトラサイクリン制御発現システムであってもよい。調節機序は、それが自家生物発光シグナルのより大きな遺伝的誘導を生成し得るという点で有利である。
【0138】
実施形態において、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動され、幹細胞は、少なくとも1つの分析物応答性逆トランスアクチベーターを含み得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、分析物の存在下で、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化し得る。活性化されると、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始する。
【0139】
例として、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答性エレメント(TRE)を含み得、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、逆テトラサイクリン制御されたトランス活性化因子を含み得る。そのような実施形態では、TREは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連結され得る。
【0140】
逆テトラサイクリン制御トランス活性化因子は、テトラサイクリン、またはドキシサイクリンのようなその類似体の1つの存在下でTREに結合し、それによってTREを活性化し得る。この活性化は、TREに連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始させる。例えば、実施形態において、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードするすべての核酸がTREに連動されており、対応する各タンパク質が生成される。その結果、幹細胞は自家生物発光シグナルを放出する。従って、そのような実施形態では、幹細胞は、幹細胞の環境におけるテトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在に応答して、自家生物発光シグナルを放出する。
【0141】
3.抑制的自家生物発光シグナル
実施形態において、自家生物発光シグナルは抑制的であり、幹細胞は外部刺激に曝されると自家生物発光シグナルの放出を停止する。外部刺激は、例えば、分析物、環境条件(例えば、温度、放射、および/または光)、あるいは1つまたは複数の核酸の転写活性化および/または非活性化を含み得る。
【0142】
実施形態において、外部刺激は分析物を含み、幹細胞は、外因性エフェクター分子によるlux発現の制御を可能にする調節機序を含み得る。調節機序は、例えば、Tet-Off等の発現を誘導することができるテトラサイクリン制御発現システムであり得る。調節機序は、抑制的自家生物発光シグナルを生成し得るという点で有利である。
【0143】
いくつかの実施形態において、幹細胞は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを含み得る。先に詳述したように、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連動し得る。例えば、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、上記核酸のすべてに連動し得る。他の実施形態では、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸(すなわち、前述の核酸の1つ、2つ、3つ等)に連動し得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない上記核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの核酸が構成的に発現されるように、構成的プロモータに連動し得る。例えば、luxAおよびluxB核酸が少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合している場合、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸は構成的プロモータに結合し得る。
【0144】
幹細胞は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによってそれを活性化することができる少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子を含み得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、構成的プロモータ、例えば、ニワトリベータアクチンプロモータに連動され得、その結果、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子が連続的に産生される。そのような実施形態において、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化し、次に、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始する。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動されていない任意の少なくとも1つの核酸は、構成的プロモータに連結され得る。従って、そのような実施形態では、幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の発現を介して自家生物発光シグナルを放出することができる。
【0145】
しかしながら、分析物の存在下では、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントにもはや結合せず、それによって活性化する。代わりに、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子が分析物に結合する。分析物は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子に結合し得、従って、この少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子が少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化するのを妨ぐことができる任意の適切な分析物であり得る。
【0146】
従って、分析物の存在下で、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化することができない。結果として、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始しない。その結果、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸の少なくとも1つは発現されない。それ故に、自家生物発光シグナルが抑制され得る。すなわち、幹細胞は、分析物の存在下で、より堅牢でないか、または自家生物発光シグナルを放出しない可能性がある。
【0147】
例として、上記の実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答性エレメント(TRE)を含み得、そして少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、テトラサイクリン制御トランス活性化因子を含む。そのような実施形態において、テトラサイクリン制御されたトランス活性化因子は、TREに結合し、それによって、TREを活性化する。いくつかの実施形態において、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸は、TREに連動し得る。従って、TREの活性化は、TREに連動する各核酸の転写を開始し、最終的に、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれの構成的産生をもたらす。その結果、幹細胞は自家生物発光シグナルを放出し得る。他の実施形態では、前述の核酸のサブセット(すなわち、1、2、3等)のみが作動可能にTREに連結され、そのような場合、TREの活性化は、TREが連動する核酸のみの転写を開始する。
【0148】
しかしながら、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で、テトラサイクリン制御トランス活性化因子は、TREではなく、テトラサイクリンまたはその類似体の1つに結合する。結果として、TREに連動する核酸の転写が減少し、それにより、自家生物発光シグナルが減少する。従って、そのような実施形態では、自家生物発光シグナルは、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で抑制され得る。
【0149】
4.組織特異的自家生物発光シグナル
実施形態において、自家生物発光シグナルは組織特異的であり、自家生物発光シグナルは幹細胞が組織細胞に分化したときにのみ放出される。組織細胞は、筋肉、神経、骨細胞等の特殊な機能を実行できるようにする組織固有の構造を持つ特殊な(すなわち、分化した)細胞である。組織細胞は、例えば、任意の筋細胞、ニューロン、神経膠細胞、破骨細胞、骨細胞、または破骨細胞を含み得る。
【0150】
上記実施形態において、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸の少なくとも1つは、組織特異的プロモータに連動する。組織特異的プロモータは、組織依存的に遺伝子発現を制御する任意のプロモータであり得る。すなわち、このプロモータは、特定の組織細胞型においてのみ活性化されている。例えば、組織特異的プロモータは、心筋細胞特異的プロモータTNNT2、ヒト脂肪組織特異的プロモータhAP2、または任意の他の組織特異的プロモータを構成し得る。
【0151】
上記実施形態において、組織特異的プロモータが連動する少なくとも1つの核酸は、幹細胞が、組織特異的プロモータが活性化されているタイプの組織細胞に分化する場合にのみ発現される。すなわち、少なくとも1つの核酸の組織特異的転写があり得る。組織特異的プロモータに連動されていない、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸のいずれかは、少なくとも1つの核酸が連動されかつ継続的に発現される構成的プロモータに、連動し得る。
【0152】
例えば、組織特異的自家生物発光シグナルを放出することができる幹細胞のいくつかの実施形態では、luxA核酸およびluxB核酸は、組織特異的プロモータに連動し得る。従って、luxAおよびluxBは、幹細胞が組織特異的プロモータが活性化されていることを示すタイプの組織細胞に分化した場合にのみ、発現される。そのような構成によって、自家生物発光に必要なルシフェラーゼ成分の組織特異的発現が存在するように、luxA核酸およびluxB核酸の組織特異的転写がもたらされ得る。
【0153】
組織特異的プロモータは、例えば、心筋細胞特異的プロモータであるTNNT2プロモータを含み得る。幹細胞の分化に先だって、TNNT2プロモータは不活性のままであり、luxAおよびluxBは発現されない。幹細胞が心筋細胞に分化すると、TNNT2プロモータが活性化し、luxA核酸およびluxB核酸の転写が開始される。その結果、luxAおよびluxBが発現される。
【0154】
上記実施形態において、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、構成的プロモータに連動し得る。従って、上記実施形態では、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の連続発現があり、それにより、自家生物発光をもたらす化学反応のためのルシフェリン成分およびFMNF共基質の連続生成がもたらされる。
【0155】
従って、そのような実施形態では、組織特異的プロモータが活性化されると、luxAおよびluxBの発現が存在する。その結果、自家生物発光シグナルを放出するために必要なすべてのタンパク質の発現がある。しかし、組織特異的プロモータの活性化なしで、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの発現のみが発生し、これは、自家生物発光シグナルを放出するには不十分である。結果として、自家生物発光シグナルの放出は、組織特異的プロモータが発現されるタイプの組織細胞への分化の開始と一致する。言い換えれば、自家生物発光シグナルが組織特異的であるということである。
【0156】
最終的に、luxシステムを介して構成的、誘導的、抑制的、または組織特異的自家生物発光シグナルを放出する幹細胞の上記の実施形態は、インビトロおよび/またはインビボモダリティ下での幹細胞の基質を含まない自家生物発光イメージングを可能にし得ものであり、例えば、ハイスループットな方法である。自家生物発光シグナルがリアルタイムで放出されることで、生物発光出力に連動する細胞および分子機序が生物指標(bioindicate)となる。さらに、自家生物発光表現型があるために、幹細胞は、生物発光の開始について研究者が協力し合うことなしに継続的に調査可能であることから、単一の試料からのシグナル持続時間および強度ダイナミクスの両方を評価することが可能となる。さらに、幹細胞の自家生物発光表現型は、限定されるものではないが、リアルタイム、非侵襲的、連続的、および基質フリーでの追跡、識別、ならびに/または幹細胞の生存率、遊走、運命、および/または系統特異的な分化の測定を可能にし得る。さらに、真核生物の細菌ルシフェラーゼシステムの新機能もまた有効になり得、例えば、動物モデルにおける、単一細胞イメージング(C.Gregorら、「細菌生物発光システムを用いた単一哺乳類細胞の自律生物発光イメージング(Autonomous bioluminescennce imaging of single mammalian cells with the bacterial bioluminescence system)」、Proc.Natl.Acad.Sci.、第116巻、52号、2019年)を参照)、オルガネラのタグ付け、フローサイトメトリーを使用して細胞を分類するための生物発光の使用、および少数の細胞の視覚化が可能になる。従って、開示された実施形態は、臨床診療における幹細胞ベースの治療の実施を妨げる重要な障害の多くを効果的に改善することが可能であり、再生医療分野にとって重要な資産となるであろう。
【0157】
III.自家生物発光表現型を含む特殊な細胞
幹細胞由来自律的生物発光細胞が開示される。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、自律的生物発光幹細胞から分化した自律的生物発光真核細胞を含む。
【0158】
幹細胞由来自律的生物発光細胞は、特定の機能に特化するようになった、または特殊化された任意の細胞を含み得る。例えば、特定の機能に特化した細胞には、初期の細胞型のものとは異なる1つまたは複数の形態学的特徴および/または機能を獲得した細胞が一例として挙げられる。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、構成的自家生物発光シグナルを放出する。
【0159】
自律的生物発光幹細胞は、本明細書に開示される自律的生物発光表現型を含む幹細胞の任意の実施形態を含み得る。さらに、幹細胞由来自律的生物発光細胞は、幹細胞由来自律的生物発光細胞が由来する自律的生物発光表現型を含む幹細胞の任意の実施形態の特徴を継承し得る。
【0160】
幹細胞由来自律的生物発光細胞およびそれが由来する自律的生物発光幹細胞の両方とも、アルデヒド基質等の外因性発光刺激因子の非存在下で、自家生物発光シグナルを発現する。幹細胞由来自律的生物発光細胞は、本明細書に開示される化学反応を介したluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの産生を介して自律的生物発光シグナルを放出する。
【0161】
幹細胞由来自律的生物発光細胞は、幹細胞由来自律的生物発光細胞が由来する自律的生物発光幹細胞から放出される自家生物発光シグナルのレベルとほぼ同レベルの自家生物発光シグナルを放出し得る。
【0162】
幹細胞由来自律的生物発光細胞は、例えば、インビトロおよび/またはインビボ条件下で、特殊化された、または分化中/分化後の細胞の基質を含まない自家生物発光イメージングをハイスループットで可能にし得るという点で、有利である。研究者が外因性基質を追加する必要なしに生物発光を生成する幹細胞由来自律的生物発光細胞の能力を考えると、該細胞の用途として、例えば、リアルタイム、非侵襲的、連続的、および基質フリーでの、追跡、細胞の生存率、移動、および/または運命の識別、および/または測定がある。
【0163】
IV.luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの過剰発現を含む細胞
自律表現型を含む幹細胞のいくつかの実施形態では、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの少なくとも1つが、luxAおよびluxBの少なくとも1つのレベルよりも高いレベルで存在し得る。いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの組み合わせレベルよりも10倍から40倍高い組み合わせレベルで存在し得る。いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの組み合わせレベルよりも20倍から30倍大きい組み合わせレベルで存在し得る。いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの組み合わせレベルよりも15倍から20倍高い組み合わせレベルで存在し得る。
【0164】
有利には、これらの実施形態のそれぞれは、luxAおよびluxBと比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの過剰産生をもたらす。実際、驚くべきことにかつ予想外に、自律表現型を含む幹細胞の生物発光シグナルを最大化するために、luxAおよびluxB(luxカセットのルシフェラーゼ産生部分)のそれぞれをコードする核酸と比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ(ルシフェリン産生部分)のそれぞれをコードする核酸を過剰発現させる必要があることを発見した(実施例1を参照)。
【0165】
さらに、予期せず発見されたことは、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸に対するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の過剰発現の公比が、一貫して最高レベルの自律発光を生成することである。すなわち、約20:1~30:1の比率で、人工多能性幹細胞とヒト脂肪由来間葉系幹細胞との自律発光出力が最大化される(それぞれ図2Aおよび図2B)。このような結果は、細胞タイプ間に生理機能および代謝活性の違いがあることからして、驚くべき予想外の結果である。基礎酸化状態およびルシフェリン生成に必要な代謝資源への利用可能性が各細胞型で異なることからして、この比率は細胞型ごとに必然的に大きく異なることが予想される。
【0166】
luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸と比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を過剰発現することの利点は、直観に反し、少なくとも2つの理由で予想外である。まず、システムによって生成されるルシフェリン化合物は、高レベルで細胞毒性を持つ長鎖アルデヒドである。luxカセットのルシフェリン産生部分の過剰発現は、長鎖アルデヒドの蓄積をもたらし、それによって細胞毒性効果のリスクを高める可能性がある。これらの効果は、幹細胞の健康に悪影響を及ぼし、自家生物発光の低下を引き起こし得る。
【0167】
第二に、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ遺伝子は、細胞内の代謝および酸化/還元プロセスの両方から、代謝産物を経路変更する。従って、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸と比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の過剰発現は、長鎖アルデヒドの蓄積および/または代謝活性の妨害から生じるいずれかの細胞毒性のために、細胞の健康、成長、および生理に悪影響を与えると予想される。細胞の健康が低下すると、自律発光出力が低下する。
【0168】
従って、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の過剰発現が最も強力な生物発光出力を生成すると予期する理由はない。しかし、驚くべきことに、luxAおよびluxBと比較してluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの過剰産生を示す自律表現型を含む幹細胞は、正常な生理学および代謝活性レベルを示し続けながら、予想外に増加した自律発光を放出した(実施例1を参照)。
【0169】
従って、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのluxAおよびluxBへの開示された過剰産生を含む幹細胞の実施形態は、ロバストな自家生物発光シグナルを生成することが可能であり、このことは、シグナルの検出、イメージング、測定、および/または定量化に有益であろう。そのような実施形態は、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍、および/または少なくとも1000倍の生物発光シグナルを放出し得る。luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼと比較して、luxAおよびluxBを過剰発現していない自家生物発光細胞から放出される生物発光シグナルよりも強い。
【0170】
V.別個のベクターから発現されたluxカセットを含む細胞
自律表現型を含む細胞のいくつかの実施形態では、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれは、6つの別個のプラスミド等の別個のベクターから独立して発現される。そのような実施形態では、ベクターのそれぞれは、誘導性であろうと構成的であろうと、ベクター上に存在する遺伝子の発現を駆動するプロモータを有し得る。上記実施形態において、幹細胞は、上記のように、luxAおよびluxBと比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを有益に過剰発現し得る。
【0171】
有利には、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれが6つのベクターから発現されることで、ロバストな自家生物発光表現型が得られる。実際、驚くべきことに、予想外に、前述の遺伝子のそれぞれを別々のプラスミドから独立して発現させると、本明細書に開示される自家生物発光細胞の生物発光シグナルが著しく増加することを発見した。実際、実施例1でさらに詳しく説明されているように、6つのベクターによるアプローチ(six vector approach)では、遺伝子のフルセットが複数のプラスミドで発現している場合、単一のプラスミドから複数の遺伝子を発現する場合または単一のプロモータから複数の遺伝子を発現する場合と比較して、光の生成が大幅に増加する。
【0172】
6つのベクターによるアプローチの成功は、直観に反し、予想外である。実際、文献は、少なくとも、別々のプラスミドまたは別々のプロモータからluxAおよびluxBを発現させることを直接教示する。具体的には、以前の研究では、(1)異なるプラスミド、(2)同じプラスミド上の異なるプロモータ、または(3)単一のプロモータの制御下で単一のタンパク質を形成する融合のいずれかに由来するluxAおよびluxB遺伝子の発現は、すべて、ヒト細胞における単一のプロモータに由来する融合されていない共発現と比較して、光生成が減少した(例えば、S. Patterson、「哺乳類細胞での発現のための細菌ルシフェラーゼの最適化(Optimization of Bacterial Luciferase for Expression in Mammalian Cells)」、博士論文、テネシー大学、2003を参照)。luxAおよびluxBポリペプチドは折り畳み中にモルテングロビュール形状に移行し、機能的なヘテロダイマーに正しく組み立てるために共同足場として互いに必要とするため、これらの前述の戦略は多くの光出力を生成できなかったと長い間説明されてきた(G.C Flynn、「細菌のルシフェラーゼの個々のサブユニットは溶融グロビュールおよび分子シャペロンとの相互作用(Individual subunits of bacterial luciferase are molten globules and interact with molecular chaperones)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、10826~10830頁、1993年11月を参照)。さらに、この文献によれば、luxAおよびluxBポリペプチドが同じプロモータから共発現されない場合、それらのポリペプチド配列は、細胞内で同時に折り畳みプロセスを開始しない(同文献)。ポリペプチド配列が独立して折りたたまれると、2つは機能的ルシフェラーゼを形成できず、正しい方向に沿って再度折りたたむことができない(同文献)。従って、6ベクターアプローチが非常にロバストな生物発光出力を生成することを期待する理由はなかった。
【0173】
それにもかかわらず、長年の文献とは対照的に、別々のプラスミドからのluxAおよびluxBの発現は、実際、同じプラスミドからの2つを発現するものを超えるロバストな光生成をもたらすことが見出された(実施例1を参照)。従って、本明細書では、別個のベクターから独立して発現されるluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれを含む幹細胞の実施形態が開示される。さらに、6ベクターアプローチは、luxAおよびluxB(luxカセットのルシフェラーゼ産生部分)のそれぞれをコードする核酸と比較して、luxC、luxD、luxE、およびflavinのそれぞれをコードするDNAの過剰発現の前述の有益な比率の実施を容易にする。最終的には、個々のプラスミドでの遺伝子発現が有利な比率で生じることによる光生成の増加により、真核生物の細菌ルシフェラーゼシステムの新しい機能、例えば、単一細胞イメージング(C.Gregor他、細菌生物発光システムを用いた単一哺乳類細胞の自律発光イメージング、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第116巻、52号、2019年を参照)、細胞小器官のタグ付け、フローサイトメトリーを使用して細胞を選別するための生物発光の利用、動物モデルでの少数の細胞を視覚化が可能になる。
【0174】
VI.自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法とキット
本明細書に開示されるのは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法およびキットである。幹細胞は、任意のタイプの幹細胞であり得る。例えば、幹細胞は、成体幹細胞(例えば、組織特異的幹細胞)、胚性(もしくは多能性)幹細胞、または人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。複製中に突然変異が起こる可能性があるため、すべての子孫が親細胞と同一ではない可能性があることが理解される。
【0175】
1.構成的自家生物発光シグナル
自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示される。幹細胞は、構成的自家生物発光シグナルを放出する。
【0176】
本方法は、幹細胞を、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸でトランスフェクトすることを含む。幹細胞が上記核酸でトランスフェクトされた後、幹細胞は構成的にluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し、その結果、幹細胞は構成的発光シグナルを放出する。
【0177】
いくつかの実施形態では、本方法は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含む。すなわち、本方法は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの構成を含む任意の数のベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。
【0178】
例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、幹細胞を6つのベクターでトランスフェクトすることを含み、ここで、各ベクターは、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの1つを含む(すなわち、ベクターごとに1つ)。各核酸は、構成的プロモータに連動され得る。そのような実施形態は、自家生物発光をもたらす化学反応に必要な成分の構成的発現が存在するように、前述の核酸のそれぞれの継続的な転写をもたらす可能性がある。
【0179】
代替の実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含む。そのような実施形態において、第1のベクターは、luxA核酸およびluxB核酸を含み得る。luxA核酸およびluxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動され得る。結果として、luxA核酸およびluxB核酸の継続的な転写があり、その結果、自家生物発光をもたらす化学反応に必要なルシフェラーゼ成分の構成的発現があり得る。
【0180】
上記実施形態において、第2のベクターは、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み得る。luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、第2の構成的プロモータに連動され得る。第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータは、同じプロモータまたは異なるプロモータを含み得る。このような構成は、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の連続的な転写をもたらす可能性があり、その結果、アルデヒド基質および自家生物発光に必要なFMNH共基質が連続的に発現する。
【0181】
トランスフェクション後、幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を構成的に発現し得るもので、このことにより、発光シグナル産生に必要なすべての基質の連続的な自己合成をもたらし得る。この産生は、自律的かつリアルタイムで動作し得る。結果として、幹細胞は、生物発光出力に結合された細胞および分子機序を生物指標とするべく、イメージングされ得る構成的自家生物発光シグナルを放出し得る。
【0182】
本明細書に開示される6ベクターシステムおよび2ベクターシステムは、ロバストな自家生物発光シグナルを生成するために非常に有利である。第一に、luxカセットに関して、転写活性は、プロモータの遠位に位置する核酸の方が低いと考えられている。従って、lux核酸を複数の独立したベクターに分離すると、すべての核酸を単一のベクターに配置する場合と比較して、一部の核酸とプロモータとの間の距離が必然的に短くなるため、問題が軽減される。
【0183】
第二に、6ベクターシステムおよび2ベクターシステムは、luxAおよびluxB核酸と、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸との比を変化させることを可能にし、その利点については本明細書中に先に開示されている。従って、いくつかの実施形態では、方法は、luxAおよびluxBをコードする核酸の量よりも10~40倍多い量のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸で幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。好ましくは、本方法は、luxAおよびluxBをコードする核酸の量よりも20~30倍である量のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸で幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。例えば、開示された2ベクターシステムにおいて、本方法は、好ましくは、第1のベクターの量の20~30倍である量の第2のベクターをトランスフェクトすることを含み得る。これらの量の核酸をトランスフェクトすると、luxAおよびluxB核酸とluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸との前述の有利な比率が達成され、それにより、ロバストな自律発光表現型が得られる。
【0184】
構成的自家生物発光シグナルを放出する細胞を作製するキットが開示される。このキットは、試料のプロセス、方法、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを参考にして使用される。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含む。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの構成をいくつでも含む任意個数のベクターを含み得る。
【0185】
例えば、いくつかの実施形態では、キットは、6つのベクターシステムによる6つのベクター、または2ベクターシステムによる2つのベクターを含み得る。いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸を有するベクターは、luxAおよびluxBをコードする核酸を有するベクターの量よりも10~40倍となる量でキット中に存在する。より好ましくは、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸を有するベクターは、luxAおよびluxBをコードする核酸を有するベクターの量よりも20~30倍となる量で存在し得る。本明細書に詳述されるように、そのような比率は、最大の発光シグナルを生成する上で有利である。従って、上記量を含むキットは、キットの使用者がロバストな自家生物発光シグナルを放出する幹細胞を開発することができるという点で、特に有利であろう。
【0186】
いくつかの実施形態では、キットは、方法に必要とされる化学試薬または酵素、プライマーおよびプローブ、ならびに任意の他の構成エレメントを含み得る。例えば、キットは、ユーザが自律発光表現型を含む幹細胞を産生することができるように、少なくとも1つのベクターで幹細胞を形質転換するために必要な試薬およびツールを含み得る。このような実施形態では、幹細胞は、少なくとも1つのベクターでトランスフェクトされると、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を発現し、アルデヒド等の外因的に添加された基質の非存在下で、幹細胞が自律的な構成的生物発光シグナルを生成する。
【0187】
キットはまた、該キットを使用する方法を説明する書面による指示を含み得る。例えば、指示書は、少なくとも1つのベクターで幹細胞を形質転換する方法を含む、キットの使用方法に関係し得る。そのような指示書は、該指示説明によりユーザがキットをより容易に使用することができるようになるという点で、有利である。
【0188】
2.誘導性自家生物発光シグナル
自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示される。幹細胞が分析物に曝されると、誘導性の自家生物発光シグナルを放出する。本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み、ここで、核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントに連動する。
【0189】
少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントは、分析物の存在によって調節することができる任意の応答エレメントであり得る。分析物応答性調節エレメントの例として、限定されるものではないが、エストロゲン応答エレメント、アンドロゲン応答エレメント、金属応答エレメント、芳香族炭化水素応答エレメント、求電子性応答エレメント、レチノイン酸およびレチノイドX応答エレメント、抗酸化応答エレメント、グルココルチコイド応答エレメント、カルシウム応答エレメント、甲状腺ホルモン応答エレメント、および成長ホルモン応答エレメントが挙げられる。分析物は、分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化することができる任意の分析物であり得る。
【0190】
本方法は、幹細胞を任意の数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの分析物に連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞を少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントにトランスフェクトすることを含み得る。そのような実施形態において、単一のベクターでトランスフェクトされると、幹細胞は、分析物の存在下で自家生物発光シグナルを生成し得る。すなわち、分析物は、分析物応答性応答エレメントに結合し、それによって活性化することが可能である。活性化された分析物応答性応答エレメントは、それが連動する核酸、すなわち、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の転写におけるアップレギュレーションを引き起こす。これは、最終的に自家生物発光シグナルを生成する対応するタンパク質の生成をもたらす。
【0191】
他の実施形態では、例えば、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクターがあり、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれ得る(すなわち、前述のそれぞれは固有のベクターから発現される)。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結され得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない任意の核酸は、構成的プロモータに連結され得る。
【0192】
他の実施形態では、本方法は、幹細胞に第1のベクターおよび第2のベクターをトランスフェクトすることを含み得る。例えば、そのような実施形態において、第1のベクターは、分析物応答性応答エレメントに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。幹細胞が第1のベクターと第2のベクターとによりトランスフェクトされると、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼが継続的に生成され、luxAおよびluxBは幹細胞の環境における分析物の存在に応答してのみ生成される。従って、幹細胞が分析物に曝されると、自家生物発光を生成するために必要なタンパク質が生成され、その結果、幹細胞が自家生物発光シグナルを放出する。
【0193】
さらに、本方法は、外因性エフェクター分子によるlux発現の制御を可能にする調節機序で幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。いくつかの実施形態において、調節機序は、発現を誘導することができるテトラサイクリン制御発現シ幹細胞、例えば、Tet-Onであってもよい。そのような調節機序は、それが自家生物発光シグナルのより大きな遺伝的誘導を生成し得るという点で有利である。
【0194】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、幹細胞を、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含むベクターでトランスフェクトすることを含み得る。少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、分析物の存在下で少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化することができるだろう。活性化されると、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始する。少なくとも1つの分析物応答性逆トランスアクチベーターは、少なくとも1つの分析物応答性逆トランスアクチベーターの連続生産を確実にするために、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。
【0195】
一例として、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答性エレメント(TRE)を含み得、さらに、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子は、テトラサイクリン制御逆トランス活性化因子を含み得る。いくつかの実施形態では、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、TREに連動する。そのような実施形態において、逆テトラサイクリン制御トランス活性化因子は、テトラサイクリン、またはドキシサイクリンのようなその類似体の1つの存在下で、TREに結合し、それによってTREを活性化する。この活性化は、TREに機能的に連結された核酸の転写を開始し、最終的には自家生物発光シグナルの生成をもたらす。従って、そのような実施形態において、幹細胞は、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で自家生物発光シグナルを放出する。
【0196】
誘導性自家生物発光を有する細胞を作製するキットも同様に開示される。このキットは、試料のプロセス、方法、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを参考にして使用される。
【0197】
キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法においてに開示された任意のベクターを含み、ここで、幹細胞は誘導性自家生物発光シグナルを放出する。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意個数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、キットは、ある量の分析物を含み得る。分析物は、分析物応答性応答エレメントに結合し、従って、それを活性化することができる任意の分析物であってもよい。分析物は、分析物応答性逆トランス活性化因子に結合し、それによって分析物応答性応答エレメントに結合させ、それによって誘導性自家生物発光シグナルをもたらすことができる任意の分析物であってもよい。
【0199】
いくつかの実施形態では、キットは、方法に必要とされる化学試薬または酵素、プライマーおよびプローブ、ならびに任意の他の構成エレメントを含み得る。例えば、キットは、幹細胞をベクターで形質転換するために必要な試薬およびツールを含み得、その結果、ユーザは、分析物の存在下で自家生物発光シグナル、すなわち誘導性シグナルを放出する幹細胞を生産することが可能である。キットはまた、該キットを使用する方法を説明する書面による指示を含み得る。例えば、指示書は、ベクターで幹細胞を形質転換する方法を含む、キットを使用する方法に関係し得る。そのような指示説明は、該インストラクションによりユーザがキットをより容易に使用することができるようになるという点で、有利である。
【0200】
3.抑制的自家生物発光シグナル
分析物に曝されることで抑制的自家生物発光シグナルを幹細胞が放出する、自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示される。本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み、核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントに連動する。活性化されると、分析物応答性応答エレメントは、それが連動する核酸の翻訳を開始する。上に開示したように、少なくとも1つの分析物応答性調節エレメントは、分析物の存在によって調節することができる任意の応答エレメントであり得る。
【0201】
本方法は、幹細胞を任意個数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの分析物に連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞を少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントにトランスフェクトすることを含み得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクターがあり得、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれる(すなわち、前述のそれぞれは一義のベクターから発現される)。核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結され得る。少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連結されていない任意の核酸は、構成的プロモータに連結され得る。
【0203】
複数のベクターを使用する実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、第1のベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つに連動する少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み得る。例えば、そのような実施形態において、第1のベクターは、分析物応答性応答エレメントに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。
【0204】
当該実施形態のいずれかにおいて、本方法は、外因性エフェクター分子によるlux発現の減少を可能にする調節機序で幹細胞をトランスフェクトすることを含む。調節機序は、例えば、Tet-Oft等の発現を抑制することができるテトラサイクリン制御発現システムであってもよい。
【0205】
そのような実施形態において、本方法は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子を含むベクターで幹細胞を形質転換することを含み得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに結合し、それによってそれを活性化することができ得る。少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子の連続生産を確実にするために、ニワトリベータアクチンプロモータ等の構成的プロモータに連動し得る。
【0206】
しかし、そのような実施形態において、分析物の存在は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子の少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントへの結合に影響を与える。すなわち、幹細胞が分析物に曝されると、分析物は少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子に結合し、それが少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化するのを防ぐ。従って、分析物の存在下で、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化することができない。結果として、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、それが連動する少なくとも1つの核酸の転写を開始しない。それにより、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸の少なくとも1つは発現されない。その結果、自家生物発光シグナルが抑制され得る。すなわち、幹細胞は、分析物の存在下で、よりロバストでないか、または自家生物発光シグナルを放出し得ない。
【0207】
一例として、の実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答性エレメント(TRE)を含み得、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子は、テトラサイクリン制御トランス活性化因子を含み得る。いくつかの実施形態では、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、TREに連動する。
【0208】
そのような実施形態において、テトラサイクリン制御されたトランス活性化因子は、TREに結合し、それにより、TREを活性化する。この活性化は、TREに機能的に連結された核酸の転写を開始し、最終的には自家生物発光シグナルの生成をもたらす。しかし、テトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で、テトラサイクリン制御トランス活性化因子は、TREではなくテトラサイクリンまたはその類似体の1つに結合する。結果として、そのような実施形態がテトラサイクリンまたはドキシサイクリンのようなその類似体の1つに曝されると、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の転写が減少し、自家生物発光シグナルが減少する。
【0209】
さらに、抑制的自家生物発光を有する細胞を作製するキットが同様に開示される。このキットは、試料のプロセス、方法、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを参考にして使用される。
【0210】
キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を産生する方法においてに開示された任意のベクターを含み、幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出する。キットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意個数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、キットは、ある量の分析物をさらに含み得る。分析物は、少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子に結合し、それによって活性化することができ、それによって抑制的自家生物発光シグナルをもたらすことができる任意の分析物であり得る。
【0212】
いくつかの実施形態では、キットは、方法に必要とされる化学試薬または酵素、プライマーおよびプローブ、ならびに任意の他の構成エレメントを含み得る。例えば、キットは、ベクターで幹細胞を形質転換するために必要な試薬およびツールを含み得、その結果、ユーザは、分析物の存在下で抑制的自家生物発光シグナルを放出する幹細胞を産生し得る。キットはまた、該キットを使用する方法を説明する書面による指示を含み得る。例えば、指示書は、ベクターを用いて幹細胞を形質転換する方法を含む、キット使用方法に関係し得る。そのような指示書は、該指示書によりユーザがキットをより容易に使用することができるようになるという点で、有益である。
【0213】
4.組織特異的自家生物発光シグナル
自家生物発光シグナルが組織特異的である、自律発光表現型を含む幹細胞を作製する方法が開示される。すなわち、自家生物発光シグナルは幹細胞が組織細胞に分化したときにのみ放出される。組織細胞は、筋肉、神経、骨細胞等の特殊な機能を実行できるようにする組織固有の構造を有する特殊な(すなわち、分化した)細胞である。組織細胞は、例えば、任意の筋細胞、ニューロン、神経膠細胞、破骨細胞、骨細胞、または破骨細胞を含み得る。
【0214】
本方法は、幹細胞を少なくとも1つのベクターでトランスフェクトすることを含む。少なくとも1つのベクターは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つを含み、該核酸の少なくとも1つは、組織特異的プロモータに連動する。組織特異的プロモータは、組織依存的に遺伝子発現を制御する任意のプロモータであり得、すなわち、それは、特定の組織細胞型においてのみ活性化される。従って、それが連動する少なくとも1つの核酸は、組織特異的プロモータが活性であるタイプの組織細胞に幹細胞が分化するときにのみ、発現される。すなわち、そのような実施形態において、少なくとも1つの核酸の組織特異的転写があり得る。
【0215】
本方法は、幹細胞を任意の数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、組織特異的プロモータに連動するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードするすべての核酸を含む単一のベクターで幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。そのような実施形態において、単一のベクターでトランスフェクトされると、幹細胞が、組織特異的プロモータが活性であるタイプの組織細胞に分化するときに、幹細胞は自家生物発光シグナルを生成し得る。
【0216】
他の実施形態では、本方法は、幹細胞を複数のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、6つのベクターがあり得、各ベクターには、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の1つが含まれる(すなわち、前述のそれぞれは一義のベクターから発現される)。核酸の少なくとも1つは、組織特異的プロモータに連結され得る。組織特異的プロモータに連結されていない任意の核酸は、構成的プロモータに連結され得る。
【0217】
さらに他の実施形態では、本方法は、幹細胞を第1のベクターおよび第2のベクターでトランスフェクトすることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、第1のベクターは、心筋細胞特異的プロモータであるTNNT2プロモータ等の組織特異的プロモータに連動するluxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸を含み得る。従って、luxAおよびluxBは、幹細胞が心筋細胞に分化したときにのみ発現する。そのような構成は、自家生物発光に必要なルシフェラーゼ成分の組織特異的発現が存在するように、luxA核酸およびluxB核酸の組織特異的転写をもたらし得る。
【0218】
上記の2ベクター実施形態において、第2のベクターは、構成的プロモータに連動するluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸を含み得る。従って、上記実施形態では、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の連続発現があり、それにより、自家生物発光をもたらす化学反応のためのルシフェリン成分およびFMNH共基質の連続生成をもたらす。
【0219】
一例として、トランスフェクション後、幹細胞は、組織特異的自家生物発光シグナルを放出し得る。幹細胞の分化前は、TNNT2プロモータは不活性のままであり、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸は発現されない。しかし、幹細胞が心筋細胞に分化すると、TNNT2プロモータが活性化され、それによってluxA核酸とluxB核酸の転写が開始される。その結果、luxAおよびluxBが生成される。
【0220】
例示的な例として2ベクターシステムを取り上げると、それらの発現は構成的プロモータによって駆動されるため、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの連続的な発現がある。従って、組織特異的プロモータがluxAおよびluxBが存在するように活性化されると、幹細胞は、本明細書に開示される化学反応を介して組織特異的自家生物発光シグナルを放出し得る。そのような実施形態において、組織特異的な生物発光シグナルは、自律的かつリアルタイムで生成される。
【0221】
しかし、組織特異的プロモータが不活性である場合、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのみが生成され、これは、自家生物発光シグナルを放出するには不十分である。結果として、自家生物発光シグナルの放出は、組織特異的プロモータが発現されるタイプの組織細胞への分化の開始を生物的に示すものであり、すなわち、自家生物発光シグナルは組織特異的である。
【0222】
本明細書に開示される2ベクターシステムは、6ベクターシステムほどロバストではないけれども、ロバストな自家生物発光シグナルを生成するのに有利である。第一に、luxカセットに関して、転写活性は、プロモータの遠位に位置する核酸の方が低いと考えられている。従って、lux核酸を2つの独立したベクター、すなわち第1のベクターと第2のベクターとに分離すると、すべての核酸を単一のベクターに配置する場合と比較して、一部の核酸とプロモータとの間の距離が必然的に短くなるため、問題が軽減される。第二に、2ベクターシステムにより、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸に対するluxAおよびluxB核酸の比率を変えることができる。この方策は、luxAおよびluxB核酸とluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼ核酸との比率が約20:1~30:1であることによってロバストな自律発光表現型がもたらされるということが、予期せず発見されたため、有利である(図2A~2D)。実験的試験は、試験されたすべての細胞型にわたって、この前述の比率がロバストな発光シグナルをもたらしたことを示した。本明細書に詳述するように、このような発見は、luxAおよびluxBのそれぞれをコードする核酸と比較して、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の過剰発現が、細胞の増殖および生理に損傷を負わせるとともに発光シグナルの低下をもたらすと予想されるため、驚くべきことである。それにもかかわらず、この比率は予想外にロバストな自家生物発光シグナルをもたらす。
【0223】
本明細書で先に論じたように、luxAおよびluxBと比較したluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの過剰発現は、ロバストな自家生物発光表現型の生成にとって望ましい。従って、いくつかの実施形態では、方法は、luxAおよびluxBをコードする核酸の量よりも10~40倍となる量のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸で幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。好ましくは、本方法は、luxAおよびluxBをコードする核酸の量よりも20~30倍である量のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをコードする核酸で幹細胞をトランスフェクトすることを含み得る。例えば、開示された2ベクターシステムにおいて、本方法は、好ましくは、第1のベクターの量の20~30倍である量の第2のベクターをトランスフェクトすることを含み得る。これらの量の核酸をトランスフェクトすると、前述の有利な比率が達成され、それによってロバストな光出力がもたらされる。
【0224】
組織特異的自律発光表現型を含む細胞を作製するキットが開示される。このキットは、試料のプロセス、方法、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを参考にして使用される。
【0225】
キットは、自律発光表現型を含む幹細胞を生産する方法においてに開示された任意のベクターを含むもので、幹細胞が組織特異的自家生物発光シグナルを放出する。このキットは、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の少なくとも1つの任意個数の構成を含む任意個数のベクター(例えば、1、2、3等)を含み得る。そのような実施形態において、ひとたびベクターによりトランスフェクトされると、幹細胞は、組織特異的自家生物発光シグナルを生成し得る。
【0226】
いくつかの実施形態において、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現するベクターは、luxAおよびluxBを発現するベクターの量よりも10~40倍となる量でキット中に存在し得る。より好ましくは、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現するベクターは、luxAおよびluxBを発現するベクターの量よりも20~30倍である量で存在し得る。本明細書に詳述されるように、そのような比率は、最大の発光シグナルを生成する上で有利である。従って、上記量のベクターを含むキットは、該キットのユーザが強力な自家生物発光シグナルを放出する幹細胞を開発することができるという点で、特に有利であろう。いくつかの実施形態では、方法に必要とされる化学試薬または酵素、プライマーおよびプローブ、ならびに任意の他の構成エレメントを含み得る。例えば、キットは、ユーザが組織特異的な自律発光表現型を含む幹細胞を生産できるように、ベクターで幹細胞を形質転換するために必要な試薬およびツールを含み得る。キットはまた、該キットを使用する方法を説明する書面による指示を含み得る。例えば、指示書は、ベクターを用いて幹細胞を形質転換する方法を含む、キット使用方法に関係し得る。そのような説明書は、該指示説明によりユーザがキットをより容易に使用することができるようになるという点で、有利である。
【0227】
VII.自律発光表現型を含む特殊な細胞を生産する方法
自律的生物発光幹細胞から幹細胞由来自律的生物発光細胞を作製する方法が開示される。
【0228】
本方法は、本明細書に開示される任意の方法によって、自家生物発光表現型を含む幹細胞を生産することを含み得る。本方法は、自家生物発光表現型を含む幹細胞を、任意の所望の機能的特殊化細胞であり得る幹細胞由来自律的生物発光細胞に分化させることを含み得る。すなわち、幹細胞由来自律的生物発光細胞は、例えば、神経、筋肉、または骨細胞を含み得る。
【0229】
分化は、細胞が特定の機能に特化するようになる発達過程を指し、例えば、細胞は、1つまたは複数の形態学的特徴および/または初期の細胞型のものとは異なる機能を獲得する。分化には、分化系列決定と最終分化プロセスとの両方が含まれる。未分化または分化の状態は、例えば、FACS分析、免疫組織化学、または当業者に公知の他の手順を使用して、系統マーカーの存在または不在をモニタリングすることによって評価することができる。さらに、分化は、例えば、小分子法、シグナル阻害、成長因子の添加、共培養環境、または当業者に知られている他の手順を含む、任意の適切なプロセスによって実施することができる。
【0230】
さらに、幹細胞由来自律的生物発光細胞は、幹細胞由来自律的生物発光細胞が由来する自律的生物発光表現型を含む幹細胞の任意の実施形態の特徴を継承し得る。すなわち、幹細胞に由来する自律発光細胞は、幹細胞に由来する自律発光細胞は、生物発光シグナルの生成のためにすべての基質を自己合成するために、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生する能力を継承する。
【0231】
幹細胞に由来する自律発光細胞が、自家生物発光表現型を含む幹細胞に由来する場合、幹細胞は、luxAおよびluxBの総生成量よりも大きい総生成量でluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し、幹細胞由来自律発光細胞は、同様に、luxC、luxD、luxE、およびluxAおよびluxBの総生成量よりも大きい総生成量でluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し得る。そのような実施形態において、幹細胞に由来する自律発光細胞は、例えば、luxAおよびluxBの総生成量よりも10~40倍となる範囲のluxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量を含み得る。好ましくは、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量の範囲は、luxAおよびluxBの総生成量よりも20~30倍である。このような比率により、ロバストな生物発光シグナルがもたらされるであろう。
【0232】
幹細胞由来自律的生物発光細胞は、例えば、インビトロおよび/またはインビボ条件下で、特殊化された、または分化中/分化後の細胞の基質フリー自家生物発光イメージングを高スループットで可能にし得るという点で、有利である。研究者が外因性基質を追加する必要なしに生物発光を生成する幹細胞由来自律的生物発光細胞の能力を考えると、該細胞の用途として、例えば、リアルタイム、非侵襲的、連続的、および基質フリーでの、追跡、細胞の生存率、移動、および/または運命の識別、および/または測定がある。
【0233】
VIII.自律生物発光表現型を含む幹細胞を使用する方法
本明細書に開示される実施形態のいずれかによる自律生物発光表現型を含む幹細胞を使用する方法が本明細書に開示される。本明細書に開示されるすべての使用方法について、生物発光シグナルの自律的性質のために、本方法は、破壊することなく、幹細胞を繰り返しまたは連続的なアッセイまたは分析評価を含み得る。有利なことに、これにより、各方法のために準備しなければならない細胞が減少し、試料間のばらつきが減少し得る。
【0234】
本明細書に開示される方法は、同様に非常に拡張性があり、すべてのプレートフォーマットで視覚化が可能である。本明細書に開示される自家生物発光表現型を含む幹細胞を使用するすべての方法について、該方法は、例えば、6ウェル~1536ウェルに及ぶマルチウェルプレート、すなわち6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート等の少なくとも1つのウェルに幹細胞を播種することを含み得る。このようなスケーラビリティは、研究者が各方法を低スループットまたは高スループットで適用できるという点で非常に有利である。
【0235】
1.構成的自家生物発光シグナル
本明細書に開示されるのは、自律発光表現型を含む幹細胞を使用する方法であり、幹細胞は構成的自家生物発光シグナルを放出する。上記方法の各々は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を生成することを含み得る。幹細胞は構成的発光シグナルを放出する。構成的生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞は、そのような幹細胞を生産するための本明細書に開示される方法のいずれかに従って生産され得る。従って、少なくとも1つの幹細胞は、構成的にxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し、その結果、少なくとも1つの幹細胞は、構成的生物発光シグナルを自律的に放出する。
【0236】
i.細胞集団サイズおよび生存率の測定
細胞集団サイズのリアルタイムモニタリングの方法が開示される。本方法は、フォトカウンタイメージング、本明細書に開示される任意の適切な、電荷結合、本明細書に開示される任意の適切なカメラベースの機器、シンチレーションカウンタ、ルミノメータ、プレートリーダ、または写真フィルムによって、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的自己生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化することを含み得る。このような装置として、CCDベースのMS Luminaイメージングシステム(PerkinElmer)またはPMTベースのSynergy2プレートリーダー(BioTek)が挙げられる。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0237】
本方法は、構成的生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて細胞集団サイズを評価することを含み得る。有利なことに、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞の集団によって放出される構成的発光シグナルの測定は、少なくとも1つの幹細胞の総数と強く相関する(R=0.93)(図9Bおよび実施例2の説明を参照)。従って、この相関関係により、細胞集団サイズの正確な評価が可能になり得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点で細胞集団サイズを測定することを含む。構成的生物発光シグナルは完全に自己生成され、少なくとも1つの幹細胞によって自己誘導されるため、2つ以上の時点で細胞集団サイズを測定すると、少なくとも1つの幹細胞の増殖または死を正確に縦軸方向に表すことが可能である。
【0239】
いくつかの実施形態では、本方法は、構成的生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングおよび/または評価することを含み得る。有利なことに、luxカセットは内因性細胞代謝に直接関連していると考えられている。従って、本方法は、少なくとも1つの幹細胞の生存能力の速度論的モニタリングを有益に可能にし得る。
【0240】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞生存率を測定することを含む。構成的発光シグナルは、少なくとも1つの幹細胞によってリアルタイムで完全に自己生成され、かつ自己誘導されるため、細胞の生存率を経時的に測定することで、少なくとも1つの幹細胞の増殖または死を正確に縦軸方向に表すことが可能である。
【0241】
有利なことに、細胞集団のサイズおよび生存率を測定するこれらの方法は、幹細胞における連続的な外因性基質に依存しない自己生成生物発光シグナルを使用して細胞集団のサイズと生存率とをレポートする最初の方法である。
【0242】
ii.薬剤効果の測定
少なくとも1つの幹細胞に対する薬剤の効果を測定する方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、既知の毒性を有する化合物であってもよい。例えば、実施形態において、薬剤は、化学療法剤、抗生物質、殺虫剤、害虫駆除剤、除草剤、肥料、または任意の他の化合物を含み得る。他の実施形態では、薬剤は、既知の治療効果を有する化合物であってもよい。任意の適切な手順によって、少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させることが可能である。例えば、ディッシュ、フラスコ、または培養プレート内の薬剤に、少なくとも1つの幹細胞を曝すことが可能である。
【0243】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞が薬剤と接触された後に少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルを、生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化するための本明細書に開示される任意の装置によって、検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0244】
いくつかの実施形態では、本方法は、構成的生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率を評価することを含み得る。有利なことに、自律的生物発光表現型を含む幹細胞はまた、細胞の健康状態が陰性または陽性に応答して自律的生物発光シグナルが変化するときに、薬剤との接触に起因する細胞生存率の変化をレポートすることができる。具体的には、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルは、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率と強く相関している(図10)。従って、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルの接触後測定を使用して、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率を正確に評価することが可能である。
【0245】
いくつかの実施形態では、本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの対照幹細胞を含む対照集団を生成することを含み得るもので、幹細胞は構成的発光シグナルを放出する。対照集団は、薬剤とは非接触であり、そうでなければ薬剤と接触される少なくとも1つの幹細胞と同様に処理、または実質的に同様に処理される。
【0246】
上記実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルの測定値を、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較することを含み得る。対照集団によって、細胞生存率の負または正の変化を決定することの容易さと正確さとを高めることが可能である。
【0247】
例えば、そのような実施形態において、この方法は、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的生物発光シグナルの減少が薬剤との接触に起因する少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の負の変化を示すことを、決定することを含み得る。上記実施形態では、この方法は、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定することを含み得る。この方法は、少なくとも1つの幹細胞が構成的生物発光シグナルの生成を停止したときに、薬剤が少なくとも1つの幹細胞にとって致命的であると決定することを含み得る。有利なことに、この方法は、薬剤の細胞毒性効果の有益な評価を可能にする。
【0248】
他の実施形態では、本方法は、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較して、薬剤との接触に起因する少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化が、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的生物発光シグナルの増加を示すこと、を決定することを含み得る。実施形態では、本方法は、薬剤の効果が治療的であることを決定することを含み得る。従って、本方法によって、少なくとも1つの幹細胞に対する薬剤の有益な効果の貴重な評価が得られる。
【0249】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞をある範囲の濃度の薬剤で処理することを含み得る。これは、ある範囲の濃度が、少なくとも1つの幹細胞における用量依存的変化の評価を可能にし得るという点で、有益である。用量依存性の変化のチャートは、薬剤曝露と細胞生存率との関係を理解するために必要な部分であるという点で、有益である。例えば、薬剤が細胞毒性である場合、用量依存的な変化によって、薬剤の毒性を解明することが可能である(例えば、EC50、IC50、LD50、LC50、および他の同様の細胞毒性の測定値を決定する)。
【0250】
いくつかの実施形態では、本方法は、薬剤の効果をリアルタイムで評価することを含み得る。
有利なことに、レポータータンパク質の合成、排泄、および細胞外収集に遅延がないため、薬剤の効果の直接的な証拠をリアルタイムで評価することが可能である。
【0251】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたる薬剤の効果を評価することを含み得る。有利なことに、少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させた直後にそれを調べ、数分間から数日間までの任意の時間スケールにわたる薬剤の効果を決定することが可能である。さらに、幹細胞は自律的に生物発光し、該生物発光が細胞の生存能力と相関するため、細胞生存率に基づいて継続的に薬剤の作用をモニタリングすることが可能であり、このことによって薬剤の効果の開始ならびに該効果の持続時間に関する貴重な情報が提供される。効果が安定するときといった、薬剤の効果についての知識が深まると、薬剤の毒性および/または治療能力をより確実に評価できる可能性がある。
【0252】
いくつかの実施形態では、本方法は、薬剤の効果を評価することに基づいて、創薬のための薬剤を評価することを含み得る。薬剤の細胞毒性および/または治療的効果を評価することは、創薬にとって特に価値がある。評価は、創薬において考慮するための薬剤のランク付け、および人体への投与後の該薬剤の運命を予測することに、有益に貢献し得る。
【0253】
自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞における薬剤の効果を測定するための本明細書に開示される方法は、薬剤の毒性および/または治療的効果を状況に合わせてより良く理解することにつながる。薬剤の効果を測定するこれらの方法は、例えば、リアルタイムの高スループット・アッセイにおいて、薬剤の細胞毒性および/または治療的効果を評価する手段を有益に提供し得る。
【0254】
iii.インビボイメージング
少なくとも1つの幹細胞の試薬を含まないインビボイメージングの方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞を生物に注入することを含む。生物として、これらに限定されるものではないが、ヒトまたはヒト以外の動物、例えば、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ネズミ、ネズミ、スナネズミ、カエル、ヒキガエル、昆虫、ミバエ(キイロショウジョウバエ(Drosophira melanogaster)等)、魚(ゼブラ・ダニオ(Danio rerio)等)、回虫(例えば、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、およびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。「生物(organism)」という用語は、生物の生命のすべての段階を網羅する(例えば、出生前発達から高度な成体期に到るまで、その間のすべての段階を含む)。例えば、この用語には、胚(接合子、胚盤胞等を含む)、胎仔、新生仔、乳仔、青年期、および成体が含まれるが、これらに限定されない。この用語は、雄または雌、あるいはその両方を指定する場合もあれば、または女性を除外する場合もある。
【0255】
少なくとも1つの幹細胞は、任意の方法で、例えば、腹腔内、静脈内、皮内、または皮下で、生物に注射され得る。少なくとも1つの幹細胞の注入後、本方法は、生体内の少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルをイメージングすることを含む。構成的生物発光シグナルは、生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化するために、本明細書に開示される任意の適切な装置によってイメージングされ得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0256】
いくつかの実施形態では、本方法は、構成的生物発光シグナルを測定し、インビボで存在する少なくとも1つの幹細胞の総数を決定することを含み得る。有利なことに、放出された構成的発光シグナルは、注入された細胞個数と強く相関する(図12B)。従って、この相関関係は、インビボで存在する少なくとも1つの幹細胞の総数を正確に決定する際に使用され得る。本方法は、インビボで少なくとも1つの幹細胞の増殖または死を有益に明らかにし得る。
【0257】
本方法は、生物内の少なくとも1つの幹細胞の動きを追跡することを含み得る。
そのような実施形態において、本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される自律生物発光シグナルの少なくとも1つの位置について生物を画像化することを含み得、それにより、注射部位に対する少なくとも1つの幹細胞の移動を決定する。少なくとも1つの幹細胞が生物内の複数の場所に定着する可能性があるため、少なくとも1つの幹細胞が移動したすべての場所を決定するべく、自律的な生物発光シグナルの複数の場所について生物を画像化することが有益と思われる。
【0258】
有利には、本方法は、生物における薬剤フリー・インビボイメージングを可能にする。このような方法は、繰り返し針を刺さずにデータを取得できるようにすることで、生物の福祉を改善し、ストレス反応および注射部位の炎症に関する懸念を取り除く。本方法は、非侵襲的光学イメージングが生物の生涯にわたって継続的に実施されることを可能にし得る。従って、本方法は、インビボ幹細胞活性の断続的なスナップショットしかキャプチャできない現在の生物発光イメージング技術に比べて、大きな利点を提供する。確かに、現在ある他の方法には、現在のところ、インビボで基質フリーの連続的なイメージングが可能なものはない。最終的に、本方法は、非侵襲的な誘導および細胞注入の検証、細胞移動の追跡、ならびに移植された幹細胞の長期的な統合および生存のモニタリング等の利点を提供し得る。
【0259】
2.誘導性または抑制性の自家生物発光シグナル
本明細書に開示されるのは、分析物に曝されると誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する幹細胞を使用する方法である。
【0260】
上記方法のそれぞれにおいて、本方法は、自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を生成することを含み得るもので、幹細胞は、分析物に曝されると、誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの幹細胞は、分析物に曝されると誘導性自家生物発光シグナルを放出する。分析物に曝されると誘導性自家生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞は、そのような幹細胞を生産するための本明細書に開示される方法のいずれかに従って生産され得る。実施形態において、分析物に曝されると、少なくとも1つの幹細胞は、少なくとも1つの幹細胞が自家生物発光シグナルを放出するように、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを産生し得る。従って、そのような実施形態において、分析物への曝露は、遺伝子発現を直接誘導し得る。
【0261】
他の実施形態では、幹細胞は、分析物に曝されると、抑制的自家生物発光シグナルを放出する。分析物に曝されると抑制的自家生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞は、そのような幹細胞を生産するための本明細書に開示される方法のいずれかに従って生産され得る。上記実施形態において、分析物に曝されると、少なくとも1つの幹細胞は、抑制的自家生物発光シグナルを少なくとも1つの幹細胞が放出するように、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の発現を低下させ得る。従って、そのような実施形態において、分析物に曝すことで、遺伝子発現が直接抑制され得る。
【0262】
i.遺伝子発現のモニタリング
具体的には、少なくとも1つの幹細胞における遺伝子発現のリアルタイムモニタリングのための方法が開示される。本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を生産することを含み、ここで、幹細胞は、分析物に曝されると、誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する。
【0263】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞を分析物と接触させることを含み得る。分析物は、幹細胞に自家生物発光シグナルを放出または抑制するように誘導する任意の適切な分析物であり得る。すなわち、少なくとも1つの幹細胞の組成によって分析物の選択が促される。例えば、少なくとも1つの幹細胞がテトラサイクリンまたはその類似体の1つの存在下で自家生物発光シグナルを放出する場合、分析物はテトラサイクリンまたはその類似体の1つであってもよい。
【0264】
少なくとも1つの幹細胞は、任意の適切な機序によって分析物と接触され得る。例えば、少なくとも1つの幹細胞は、ディッシュ、フラスコ、または培養プレートに存在し得る。ディッシュ、フラスコ、または培養プレート中に置かれている間、少なくとも1つの幹細胞が分析物と接触され得る。
【0265】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞が分析物と接触させられた後に少なくとも1つの幹細胞から放出される自己生物発光シグナルを、生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化するための本明細書に開示された任意の装置によって、検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0266】
いくつかの実施形態では、本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの対照幹細胞を含む対照集団を生成することを含み得るもので、幹細胞は、誘導性または抑制性の発光シグナルを放出する。対照集団は、薬剤と非接触であり、そうでなければ薬剤と接触される少なくとも1つの幹細胞と同様に処理、または実質的に同様に処理される。
【0267】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される自家生物発光シグナルの測定値を、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較することを含み得る。実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は誘導性自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの増加は、分析物への曝露を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、測定された自家生物発光シグナルが対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも大きい場合に、分析物に応答して、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸の転写の活性化を決定することをさらに含み得る。
【0268】
他の実施形態では、少なくとも1つの幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの減少は、分析物への曝露を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、測定された自家生物発光シグナルが対照集団から放出される自家生物発光シグナルよりも小さい場合に、分析物に応答するluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの抑制を決定することをさらに含み得る。対照集団は、分析物との接触の結果としての自家生物発光シグナルの変化を決定することの容易さおよび正確さを高めることができるという点で有利である。
【0269】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞をある範囲の濃度の分析物で処理することを含み得る。これは、ある範囲の濃度が、少なくとも1つの幹細胞における用量依存的変化の評価を可能にし得るという点で、有益である。用量依存性の変化のチャートは、分析物の曝露と遺伝子発現との関係を理解するために必要な部分であるという点で、有益である。
【0270】
本方法は、2つ以上の時点にわたる遺伝子発現に対する分析物の影響を評価することを含み得る。有利なことに、レポータータンパク質の合成、排泄、および細胞外収集の遅延がないか、ほとんどないため、本方法により、遺伝子発現に対する分析物の影響の直接的な証拠がリアルタイムで提供される。幹細胞を分析物と接触させ、すぐに調べることで、数分間から数日間までの任意の時間スケールにわたる分析物の効果を決定することが可能である。幹細胞は自律的に発光するため、分析物の影響を継続的にモニタリングすることが可能であり、これにより、遺伝子発現または抑制の開始、およびその影響の持続時間に関する貴重な情報が得られる。
【0271】
ii.分析物の存在の決定
試料中の分析物の存在を決定する方法が開示される。本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を生産することを含み、幹細胞は、分析物に曝されると、誘導性または抑制性の自家生物発光シグナルを放出する。
【0272】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞を試料と接触させることを含み得る。少なくとも1つの幹細胞は、任意の適切な機序によって試料と接触させることができる。例えば、少なくとも1つの幹細胞は、ディッシュ、フラスコ、または培養プレート等の容器内に存在し得る。容器内にある間、少なくとも1つの幹細胞を試料と接触させることが可能である。試料には、ある濃度の分析物が含まれる場合と含まれない場合がある。分析物は、誘導性または抑制性シグナルをそれぞれが放出する少なくとも1つの幹細胞の自家生物発光シグナルの誘導または抑制を引き起こす任意の化合物または官能基を含み得る。
【0273】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞が試料と接触した後に、該少なくとも1つの幹細胞から放出される自家生物発光シグナルを、本明細書に開示される任意の装置によって、検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0274】
いくつかの実施形態では、本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの対照幹細胞を含む対照集団を生成することを含み得るもので、幹細胞は、誘導性または抑制性の発光シグナルを放出する。対照集団は、試料とは接触されないが、そうでなければ、試料と接触される少なくとも1つの幹細胞と同様にまたは実質的に、同様に処理される。
【0275】
そのような実施形態において、本方法は、少なくとも1つの幹細胞から放出される自家生物発光シグナルの測定値を、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較することを含み得る。実施形態において、少なくとも1つの幹細胞は誘導性自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの増加は、分析物との接触を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、測定された自家生物発光シグナルが対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも大きい場合に、試料中の分析物の存在を決定することを含み得る。
【0276】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つの幹細胞は抑制的自家生物発光シグナルを放出し、対照集団から放出される自家生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された自家生物発光シグナルの減少は、分析物との接触を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、測定された自家生物発光シグナルが対照集団から放出された自家生物発光シグナルよりも少ない場合に、試料中の分析物の存在を決定することを含み得る。対照集団の存在は、分析物との接触または接触の欠如の結果としての自家生物発光シグナルの変化を決定することの容易さおよび正確さを高めることができるという点で有利である。
【0277】
本方法は、分析物の存在について多数の試料を迅速にスクリーニングする際の貴重なツールとなり得る。有利なことに、レポータータンパク質の合成、排泄、および細胞外収集が遅延することはないことから、従って、リアルタイムでの少なくとも1つの幹細胞に対する試料の影響について、直接的な証拠がある。少なくとも1つの幹細胞に対する試料の影響は、数分から数日までの任意の時間スケールで観察され得る。
【0278】
3.組織特異的自家生物発光シグナル
組織特異的自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を使用するリアルタイム分化レポートの方法が開示される。すなわち、lux発現は、自家生物発光シグナルの放出が組織特異的プロモータの発現と一致し得るように、組織特異的プロモータに結び付けられ得る(図18)。
【0279】
本方法は、組織特異的な自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を提供することを含む。少なくとも1つの幹細胞は、本明細書に開示される任意の実施形態を含み得る。自家生物発光シグナルは組織特異的であり、すなわち、自家生物発光シグナルは、少なくとも1つの幹細胞が少なくとも1つの組織細胞に分化したときにのみ放出される。少なくとも1つの幹細胞が、組織特異的プロモータが発現される少なくとも1つの組織細胞に分化する場合、少なくとも1つの組織特異的細胞は、自律生物発光シグナルを放出する。
【0280】
本方法は、少なくとも1つの幹細胞および/または少なくとも1つの組織細胞から放出される自家生物発光シグナルを、検出、測定、および/または定量化するための本明細書に開示される任意の、本明細書に開示される任意の適切なによって検出、測定、および/または定量化することを含み得る。生物発光シグナル、検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で発生する可能性がある。
【0281】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたって、少なくとも1つの幹細胞の少なくとも1つの組織細胞への分化を追跡することを含み得る。有利には、自家生物発光シグナルの放出は、少なくとも1つの組織細胞への少なくとも1つの幹細胞の分化の開始と一致し得る。従って、本方法は、少なくとも1つの幹細胞の分化状態に関する直接的な情報を提供する。
【0282】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点で少なくとも1つの幹細胞および/または少なくとも1つの組織細胞からの自家生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化することを含み得る。有利なことに、生物発光シグナルは、少なくとも1つの組織細胞によって完全に自己生成され、自己誘導されるので、2つ以上の時点での生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化は、少なくとも1つの幹細胞から少なくとも1つの組織細胞へ分化の正確な縦方向の表現を生成し得る。本方法は、少なくとも1つの幹細胞が少なくとも1つの組織細胞に分化する時点に関する直接的な情報を提供し得る。
【0283】
本方法は、自家生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて、少なくとも1つの組織細胞の細胞集団サイズを評価することを含み得る。有利には、少なくとも1つの組織細胞から放出される組織特異的生体発光シグナルの測定および/または定量化は、少なくとも1つの組織細胞の総数と相関する(図18および実施例7)。従って、この相関関係を使用して、少なくとも1つの組織細胞の細胞集団サイズを評価することが可能である。そのような評価は、少なくとも1つの組織特異的細胞に分化した少なくとも1つの幹細胞の集団の割合に関する情報を提供し得る。
【0284】
この方法は、幹細胞の分化をリアルタイムで追跡するために自家生物発光を使用する第1の方法であることを意味する。
【0285】
IX.自律生物発光表現型を含む特殊な細胞を使用する方法
幹細胞由来自律的生物発光細胞を使用する方法が本明細書に開示されている。上記方法のそれぞれは、構成的生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を生成することを含み得る。少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞は、そのような細胞を生産するための本明細書に開示される方法のいずれかに従って産生され得る。従って、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞は、構成的にluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現し得、その結果、細胞は、構成的生物発光シグナルを自律的に放出する。
【0286】
1.細胞集団のサイズと生存率の測定
少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の集団の細胞集団サイズをリアルタイムモニタリングする方法が提供される。本方法は、生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化するための本明細書に開示される任意の装置によって、少なくとも1つの少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される自己生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0287】
本方法は、自家生物発光シグナルの測定に基づいて細胞集団サイズを評価することを含み得る。有利には、自家生物発光表現型を含む幹細胞の集団によって放出される自家生物発光シグナルであって、自律発光表現型は、構成的発光シグナルを放出することを含み、図9Bに見られるように、集団のサイズ(R=0.93)と強く相関する。さらに、上記幹細胞が特殊化された細胞に分化するとき、特殊化された細胞は、自家生物発光表現型を保つ。実際、特殊化された細胞は、自律生物発光表現型を含む幹細胞とほぼ同様のレベルの自家生物発光を生成するものであり(図19B)、自家生物発光表現型が細胞型の変化によって根本的に変化しないことが示唆される。従って、幹細胞由来自律的生物発光細胞の集団によって放出される平均的な生物発光シグナルは、同様に、集団のサイズと強く相関すると考えられている。従って、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の細胞集団サイズは、相関関係を使用して迅速かつ容易に評価され得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたる細胞集団サイズを検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、2つ以上の時点でなされてもよい。有利なことに、自己生物発光シグナルは、少なくとも1つの幹細胞由来の自律的生物発光細胞によって完全に自己生成され、自己誘導されるので、細胞集団のサイズを経時的に測定することで、少なくとも1つの幹細胞の増殖または死を正確に縦軸方向に表すことが可能である。
【0289】
いくつかの実施形態では、本方法は、自家生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の細胞生存率のリアルタイムモニタリングを含む。有利なことに、luxカセットの発現は内因性細胞代謝に直接関連している。従って、構成的生物発光シグナルを放出する少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の能力は、細胞集団サイズに加えて、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞の生存率の速度論的モニタリングを可能にする。
【0290】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたって細胞生存率を測定することを含み得る。測定は、2つ以上の時点で行ってもよい。有利なことに、自家生物発光シグナルは、リアルタイムで少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞によって完全に自己生成され、自己誘導されるので、経時的な細胞生存率を測定することにより、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の増殖または死を正確に縦軸方向に表すことが可能である。
【0291】
細胞集団および生存率を測定する開示された方法は、幹細胞由来自律的生物発光細胞において連続的で外因性の基質に依存しない自己生成生物発光シグナルを使用して細胞集団のサイズおよび生存率をレポートするための最初の方法である。
【0292】
2.薬剤の効果を測定
少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を使用して薬剤の効果を測定する方法が開示される。本方法は、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を薬剤と接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、既知の毒性を有する化合物であってもよい。例えば、実施形態において、薬剤は、化学療法剤、抗生物質、殺虫剤、駆除剤、除草剤、肥料、または任意の他の化合物を含み得る。他の実施形態では、薬剤は、既知の治療効果を有する化合物であり得る。任意の適切な手順によって、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を薬剤と接触させることが可能である。例えば、ディッシュ、フラスコ、または培養プレート内の薬剤に、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を曝すことが可能である。
【0293】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞が薬剤と接触された後に少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルを、生物発光シグナルを検出、測定、および/または定量化するための本明細書に開示される任意の装置によって、検出、測定、および/または定量化することを含み得る。検出、測定、および/または定量化は、1つまたは複数の時点で実施可能である。
【0294】
いくつかの実施形態では、本方法は、自家生物発光シグナルの検出、測定、および/または定量化に基づいて、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率を評価することを含み得る。有利なことに、幹細胞由来自律的生物発光細胞は、正および/または負の細胞の健康に応答して自律的生物発光シグナルが変化するときに、薬剤との接触に起因する細胞生存率の変化をレポートすることができる。具体的には、少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的生物発光シグナルは、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率と強く相関している(図19C)。結果として、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される自家生物発光シグナルの接触後の測定を使用して、細胞の生存能力を正確に評価することができる。
【0295】
いくつかの実施形態では、本方法は、自律生物発光表現型を含む少なくとも1つの対幹細胞に由来する自律発光細胞を生成することを含み得るもので、対照集団は、薬剤とは非接触であり、そうでなければ薬剤と接触される少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞と同様に処理、または実質的に同様に処理される。
【0296】
上記実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される構成的生物発光シグナルの測定値を、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較することを含み得る。対照集団は、細胞生存率の負および/または正の変化を決定することの容易さと正確さとを高め得る。
【0297】
そのような実施形態において、この方法は、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較して、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される測定された構成的生物発光シグナルの減少が薬剤との接触に起因する少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率の負の変化を示すこと、を決定することを含み得る。実施形態では、この方法は、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定することを含み得る。この方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞が構成的生物発光シグナルの生成を停止したときに、薬剤が少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞にとって致命的であると決定することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞が構成的生物発光シグナルの生成を停止しない場合に、薬剤が少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞に致命的ではないことを決定することを含み得る。有利なことに、本方法は、薬剤の細胞毒性効果の貴重な評価を可能にする。
【0298】
本方法は、対本方法は、対照集団から放出される構成的生物発光シグナルと比較して、薬剤との接触に起因する少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞の細胞生存率の正の変化が、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞から放出される測定された構成的生物発光シグナルの増加を示すこと、を決定することを含み得る。実施形態では、本方法は、薬剤の効果が治療的であることを決定することを含み得る。従って、本方法によって、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞に対する薬剤の有益な効果の貴重な評価が得られる。
【0299】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞をある範囲の濃度の薬剤で処理することを含み得る。これは、ある範囲の濃度が、少なくとも1つの幹細胞に由来する自律発光細胞における用量依存的変化の評価を可能にし得るという点で、有益である。用量依存性の変化のチャートは、薬剤曝露と細胞生存率との関係を理解するために必要な部分であるという点で、有益である。例えば、薬剤が細胞毒性である場合、用量依存的な変化によって、薬剤の毒性を解明することが可能である(例えば、EC50、IC50、LD50、LC50、および他の同様の細胞毒性の測定値を決定する)。
【0300】
いくつかの実施形態では、本方法は、薬剤の効果をリアルタイムで評価することを含み得る。有利なことに、レポータータンパク質の合成、排泄、および細胞外収集に遅延がないため、薬剤の効果の直接的な証拠をリアルタイムで評価することが可能である。
【0301】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つ以上の時点にわたる薬剤の効果を評価することを含み得る。有利なことに、少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞を薬剤と接触させた直後にそれを調べ、数分間から数日間までの任意の時間スケールにわたる薬剤の効果を決定することが可能である。さらに、幹細胞由来の自律的生物発光細胞は自律的に生物発光し、上記生物発光は細胞の生存率と相関するため、薬剤の効果は、細胞生存率に基づいて継続的にモニタリングすることができ、これは、薬剤の効果の開始ならびに効果の持続時間に関する貴重な情報を提供する。効果が安定するとき等、薬剤の効果についての知識が深まると、薬剤の毒性および/または治療能力をより確実に評価できる可能性がある。
【0302】
いくつかの実施形態では、本方法は、薬剤の効果を評価することに基づいて、創薬のための薬剤を評価することを含み得る。薬剤の細胞毒性および/または治療的効果を評価することは、創薬にとって特に価値がある。評価は、創薬における考慮のための薬剤のランク付け、および人体への投与後のそれらの運命を予測することに有利に寄与する可能性がある。
【0303】
少なくとも1つの幹細胞由来自律的生物発光細胞における薬剤の効果を測定するための本明細書に開示される方法は、治療法開発および非治療的化学的リスク評価にとって非常に有利である。例えば、心毒性をテストする画面では、iPSC由来心筋細胞を、通常は細胞破壊性のエンドポイントスタイルのアッセイ(MTT、ATPベースのルシフェラーゼ-ルシフェリンアッセイ等)と組み合わせて使用することが増えているため、1つの時点での測定が1回で済む。細胞を継続的にモニタリングすることが可能である(例、インピーダンスプレート)。ただし、設備および消耗品のコストが高くなる。これらの様式では、動態毒性データをキャプチャするために複製を調整することには費用がかかり、規模がわずかに増加しても実験的変動が生ずる。
【0304】
これらの問題に対処するために、自家生物発光幹細胞に由来する自律的生物発光心筋細胞を使用して、心毒性をモニタリングすることが可能である。上記心筋細胞は、長期間にわたるリアルタイムの継続的な心毒性モニタリングを提供し得る。さらに、コストが低く、実験による変動のリスクが少なくなるであろう。従って、本明細書に開示される方法は、細胞毒性および/または治療的効果を状況に合わせてより良く理解することにつながる。
【0305】
実施例
実施例1-継続的に自家生物発光するヒトiPSC株の開発。
例えば、幹細胞の生存率、移動、位置、および運命を調べるための現在の技術によって課せられた制限を詳しく検討するべく、実験を実施して、自律的な生物発光レポーター遺伝子を幹細胞に実施して、インビトロおよび/またはインビボモダリティの下で、幹細胞の基質を含まない自己生物発光イメージングを可能にした。具体的には、幹細胞を操作して構成的自己生物発光を放出させるべく、luxC、luxD、luxA、luxB、luxE、およびfrp(luxCDABEfrp)遺伝子を幹細胞に実施することが求められた。
【0306】
上記細胞系統を開発することを試みる際に、細胞系統において単にluxCDABEfrp遺伝子を発現させること実際の目的には十分ではないことが見出された。実際には、日常的なトランスフェクション手順から予想されるように、遺伝子の直接的な発現は、大多数の細胞系統で十分な自律発光出力を生成せず、一部の細胞タイプ、例えば幹細胞で、自律発光出力を生成できないことが見出された。実際、人工多能性幹細胞(iPSC)でのこのカセットの発現は、luxCDABEfrp遺伝子のゲノム統合を確認するqPCRベースの分析にもかかわらず、測定可能な自律発光を示すクローン株を生成できなかった。従って、幹細胞でluxCDABEfrp遺伝子を発現させるだけでは、幹細胞で機能レベルの自律発光を生成するには不十分である。
【0307】
CBA-luxCDEFABの開発
従って、lux遺伝子の発現を同時に駆動することができるプロモータの同定が求められた。しかし、すべてのプロモータが複数のlux遺伝子の発現を同時に駆動できるわけではない。不死化細胞系統での作業において、公開されているさまざまなプロモータ配列を評価し、さらに、自律発光出力と、単一遺伝子レポーターシステム(ホタルルシフェラーゼまたはGFP)を駆動するためのプロモータの公表された活性との間に相関関係は存在しないと判断した。この問題は、合成luxオペロンを幹細胞に移行させようとしたときに特に明確になった。例えば、以下のプロモータ、すなわちCMV、EF1α、Ubc、PGK1、DNMT3、Nanog、Oct4、ActB、SV40は、経験的に決定された理想的な遺伝子発現比(以下で説明)を使用した場合でも、iPSCで自律発光出力をサポートできないことが驚くべことに発見された。さらに、予期せぬことに、Ellisラボ(PubMed:19404254に記述)によってiPSCでの強力な発現のために以前に開発された合成プロモータでは、iPSCでの自律発光出力のサポートができなかった。
【0308】
最終的に、試験されたプロモータの公表された活性とは反対に、この研究により、幹細胞で機能レベルの自律発光を得るためには、強力な転写活性を与えるだけでなく、長い転写ユニットの発現を促進できるプロモータと遺伝子とを注意深く組み合わせる必要が、予想外にも明らかになった。従って、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモータにより、機能レベルの自律発光がもたらされ、さまざまな細胞タイプにわたって機能し続けることが経験的に決定された。図3Aは、この新規なコンストラクトであるCBA-luxCDEFABを示すもので、転写効率を高めるべく各luxCDABEfrp遺伝子間のリンカー領域としてウイルス2Aエレメント(2A)が使用された。さらに、nanogプロモータはネオマイシン選択マーカーを駆動する(図3A)。現在、CBAプロモータは、新しい細胞型に移行する際のluxシステムのデフォルトプロモータとして採用されている。次に、代替プロモータ活性を系統ごとにスクリーニングする。
【0309】
2ベクターluxシステムの開発
CBA-luxCDEFABのトランスフェクションは弱かったけれども、測定可能な自律発光出力をもたらした(データ示さず)。それにもかかわらず、それは依然として効率的なクローン選択をサポートすることができず、24~72時間以上自律発光表現型を維持することができなかった。このようなデータは、iPS細胞におけるluxオペロンの発現が自律発光をサポートできることを示唆しているが、一部またはすべてのluxシステムコンポーネントは効率的な自律発光生成をサポートするために十分に発現されなかった。CBA-luxCDEFABコンストラクトのプロモータの遠位にある遺伝子の転写活性が低下している可能性がある。
【0310】
従って、すべてのシステム構成エレメントが十分に確実に発現されるために、図3Bおよび3Cに示されるように、luxオペロンを、その構成エレメントサブセクションであるルシフェラーゼ生成luxAB遺伝子およびluxCDEfrpルシフェリン生成遺伝子に、分割した。単一のプロモータの操作下でluxシステム全体を配置する場合と比較して特定の遺伝子とプロモータとの間の距離を短くするために、コンポーネントを2つのベクター上に分けた。
【0311】
次に、これらのコンポーネントを、iPS細胞において、luxCDEF:luxABを1:1とするモル比からluxCDEF:luxABを40:1とするモル比まで様々なモル比の範囲内で、2つの独立したベクター(図3B~3C)から一時的に共発現、すなわちルシフェラーゼ生成遺伝子と比較してルシフェリン生成遺伝子の膨大な過剰発現を生じさせた。図2Aに示されるように、スプリットルクスオペロン(nanog-neo-CBA-/uxASおよびnanog-zeo-CBA-luxCDEF)を1:1のモル比で一時的に発現するiPSCおよびhADMSCから放出される平均放射輝度(p/s/cm/sr)を、同量のluxABと増加量のluxCDEFとを発現する同一の細胞と比較して、グラフ化した。
【0312】
図2Aに示されるように、luxCDEF:luxABの1:1、5:1、10:1、20:1、30:1、および40:1のモル比を試験した。発光出力は、luxCDEF:luxABのモル比が20:1でピークに達した(6×10p/s/cm/sr)。20:1の比率を下回ると、発光出力はほとんどまたはまったく観察されなかった。具体的には、10:1の比率では20:1の比率の約半分の出力が得られ、1:1および5:1のモル比では、発光出力はほとんどまたはまったく観測されなかった。20:1の比率を超えると、発光出力は安定した状態を保った。30:1および40:1の両方で、それぞれ約4×10p/s/cm/srと5×10p/s/cm/srのかなりの発光出力が得られた。
【0313】
これらの結果が他の細胞系統にも当てはまるかどうかを判断するために、luxCDEF:luxABのモル比を変えて、2ベクタールクスシステムをヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hADMSC)、LN229細胞系統、およびU87細胞系統に対して実施した。hADMSCの場合、この傾向はほぼ当てはまっていた。この細胞系統では、luxCDEF:luxABのモル比1:1、10:1、20:1、30:1、および40:1で試験した。図2Bに示されるように、発光出力は、luxCDEF:luxABのモル比30:1でピークに達した(約9×10p/s/cm/sr)。20:1および40:1の比率では、それぞれ約8×10p/s/cm/srおよ6×10p/s/cm/srという同様にロバストな出力が生じた。1:1および10:1の比率に関連した出力は、ほとんどまたはまったく観測されなかった。
【0314】
LN229細胞系統およびU87細胞系統について同様の結果が得られた。さまざまな比率から生成された結果の光生成(p/s)を、両方の細胞系統で測定した。iPSCおよびhADMSCで得られた結果と同様に、luxCDEF:luxABが約16:1~30:1である過剰発現は、図2Cおよび2Dに示されるように、最もロバストな生物発光出力をもたらした。U87細胞系統では、予想外にも、48:1~96:1の比率で光の生成が増加することが判明した。しかし、16:1~24:1の比率で発生した光生成の増加とは異なり、これらのより高い比率は、光生成が細胞系統にとって持続可能ではないような細胞罹患率をもたらした。
【0315】
ルシフェラーゼ生成遺伝子と比較したルシフェリン生成遺伝子の過剰発現に関するこれらの予期しない発見に従い、luxCDEfrpおよびluxABベクターを20:1の比率でコトランスフェクトして、ロバストな自己生物発光表現型を生成することによって、安定した自己発光iPSC系統を生成した。抗生物質耐性クローン系統を選択し、次に、連続的な自律発光シグナルを最も多く生成する系統を選択した。この系統をiPSC-luxAB/CDEFと呼ぶこととした。
【0316】
ゲノムqPCRベースの分析は、図4に示されるように、luxCDEFおよびluxAB成分の20:1の標的比を確認した。この系統の長期培養(>3ヶ月)では、野生型親系統(図示せず)と比較して増殖速度に影響があったかが明らかにされず、また、この間中、細胞は野生型多能性マーカー(図5B)と核型(図6A)との両方を保持したことから、スプリットluxオペロンの統合が多能性を乱さなかったことが示唆された。
【0317】
従って、ヒトiPSCにおける連続的で外因性の基質非依存性の自己生成生物発光の光を、xCDABEfrp遺伝子をiPSCに実装することによって、生じさせた。細胞系統の自家生物発光は、リアルタイムで放出される。さらに、自家生物発光表現型により、幹細胞は、研究者が干渉することなく、継続的にインテロゲートされて生物発光を開始することが可能であり、従って、単一の試料からのシグナル持続時間および強度ダイナミクスの両方の評価を可能にする。さらに、幹細胞の自家生物発光表現型は、リアルタイム、非侵襲的、連続的、および基質フリーの追跡、識別、および/または幹細胞の生存率、遊走、運命、および/または系統特異的な分化を含むがこれらに限定されない、様々な用途における非侵襲的連続光学イメージングを可能にし得る。従って、iPSC-luxAB/CDEF系統は、臨床診療における幹細胞ベースの治療の実施を妨げる重大な障害の多くを効果的に改善する可能性があり、再生医療分野にとって重要な資産となり得る。
【0318】
ルシフェリン生成遺伝子の過剰発現に関する考察
最終的には、iPSC-luxAB/CDEF系統の分化において、非常に予想外であったことは、ルシフェラーゼ産生部分(luxAB遺伝子)と比較した細菌ルシフェラーゼ遺伝子カセットのルシフェリン産生部分(luxCDEfrp遺伝子)の過剰発現によって最もロバストなシグナルが生成されたことである。実際、この過剰発現は、以前のすべての自律発光細胞系統のモル比とは著しく異なるもので、これらはすべて、luxCDEfrpとluxABとの比率が1:1であった。
【0319】
実際、この結果は、少なくとも2つの理由で直感に反し、予想外である。第一に、システムによって生成されるルシフェリン化合物は、高レベルで細胞毒性を有する長鎖アルデヒドである。luxカセットのルシフェリン産生部分の過剰発現は、長鎖アルデヒドの蓄積をもたらし、それによって細胞毒性効果のリスクを高める可能性がある。これらの影響は、幹細胞の健康に悪影響を及ぼし、自家生物発光の低下を引き起こすと予想される。
【0320】
第二に、これらの遺伝子は、細胞内の代謝および酸化/還元プロセスの両方から代謝産物を別の経路に切り替える。従って、luxABと比較したluxCDEfrpの過剰発現は、長鎖アルデヒドの蓄積に起因する細胞毒性および/または代謝活性の妨害のいずれかにより、細胞の健康、増殖、および生理学に悪影響を与えると予想される。細胞の健康が低下すると、自律発光出力が低下する。従って、luxCDEfrp遺伝子の過剰発現が最も強力な生物発光出力を生成すると予想する理由はない。しかし、驚くべきことに、この研究の結果により、luxCDEfrpの過剰発現を示すiPSC細胞が、正常な生理学および代謝活性レベルを示し続けながら、増加した自律発光を放出することが、予想外にも明らかになった。
【0321】
これらの驚くべき結果は、追加の予想外の発見につながった。すなわち、ホストとして機能する細胞系統とは関係なく、luxCDEfrpとluxABとの公比があり、一貫して最大レベルの自律発光出力を生成する。試験したすべての細胞型について、約20:1~30:1の比率が最大の発現をもたらした(図2A~2D)。このような結果は、生理機能および代謝活性が細胞型間で違いがあることを考えると、驚くべき予想外の結果である。各細胞型が異なる基礎酸化状態およびルシフェリン生成に必要な代謝資源への利用可能性を有することを考えると、この比率は細胞型ごとに必然的に大きく異なることが予想される。
【0322】
従って、この研究は、少なくとも2つの非常に予想外の結論をもたらした。第一に、ルシフェリン生成遺伝子の過剰発現により、幹細胞を含む、試験したすべての細胞系統で予想外に大きな自家生物発光シグナルが生成されることである。第二に、20:1~30:1の比率で、試験したすべての細胞系統で最大の発現が得られたことである。
【0323】
6ベクターlux系の開発
iPSC-luxAB/CDEF系統の開発後、個々のプラスミドからのlux遺伝子の発現が高レベルの生物発光をもたらすかどうかを評価するべく、実験を実施した。この評価を行うために、各luxABCDEFを合成し、6つの異なる発現ベクターに別々にクローニングした。次に、6つの発現ベクターをHEK293細胞にコトランスフェクトした。生物発光出力を評価する際に、予期せず発見されたことは、lux遺伝子のフルセットが複数のプラスミドで発現している場合に、単一のプラスミドからの複数のルクス遺伝子または単一のプロモータからの複数のルクス遺伝子のいずれかを発現する場合と比較して、ユニークなプラスミドから独立して各ルクス遺伝子を発現させると、光生成が大幅に増加するということである。実際、このアプローチによって、広く使用されているホタルルシフェラーゼと同様の生物発光レベルが得られた。
【0324】
その後、複数の細胞型にわたって6ベクター発現アプローチを検証した。具体的には、HEK293、HCT116、HeLa、HepG2、およびMCF7細胞に、2A結合細菌ルシフェラーゼ遺伝子を発現する単一のベクターまたは6つの細菌ルシフェラーゼ遺伝子の1つをそれぞれ発現する6つの個別のベクターをトランスフェクトした。次に、前述の各細胞タイプからの光出力を、トランスフェクションの48時間後に測定した(3回実行)。図7Aおよび7Bに示されるように、6ベクター発現アプローチにより、HCT116細胞の光出力の78倍の変化から、HepG2細胞からの光出力の1838倍の変化まで、試験したすべての細胞タイプで光出力が増加した。
【0325】
さらに、この6ベクター発現アプローチはまた、生物発光シグナルの熱安定性を改善する。具体的には、HEK293細胞に対して、(1)6つすべての2A結合細菌ルシフェラーゼ遺伝子を発現する単一のベクター、(2)1つはluxABを表現し、もう1つはluxCDEfrpを表現する2つベクター、(3)1つはluxABを表現し、2つ目はluxCDEを表現し、3つ目はfrpを表現する3つのベクター、または(4)それぞれが6つの細菌ルシフェラーゼ遺伝子の1つを発現する6つの個別のベクターを、トランスフェクトした。光出力の測定は、37℃に保持された細胞でトランスフェクションの48時間後に実施した(3回実行)。図8に示されるように、6ベクター発現アプローチは、他のアプローチ(約15,000RLUから35,000RLUの範囲の光出力を生成する)と比較して、増加した光出力(約3.5×10RLU)をもたらした。従って、6ベクター発現アプローチは、より少ない個数のベクターを利用する他の発現アプローチと比較して、生物発光シグナルの熱安定性を有意に改善した。
【0326】
最後に、ルシフェラーゼ生成遺伝子と比較したルシフェリン生成遺伝子の前述の過剰発現が、6つのベクター系に対して最も強い自家生物発光表現型を生成することがさらに確認された。具体的には、トランスフェクトされたプラスミドの比率は、luxABと比較してIuxCDEfrpの量が増加するように変化させた。脂肪酸レダクターゼ成分が過剰になると、光出力が増加することが確認された。
【0327】
従って、前述の研究を通じて、驚くべきことに、特定の予期しない比率(luxABに比べてluxCDEfrpが過剰発現されるように)での個々のプラスミドからのlux遺伝子の発現が、複数の細胞型にわたって強力な熱安定性自家生物発光をもたらすことが発見された。有利なことに、個々のプラスミドでの遺伝子発現に起因する光産生の増加は、真核生物の細菌ルシフェラーゼ系の新たな能力、例えば、単一細胞イメージング(C.Gregor他、細菌生物発光システムを用いた単一哺乳類細胞の自律生物発光イメージング、PNAS、Vol.116、No.52、2019を参照)、細胞小器官のタグ付け、フローサイトメトリーを使用した細胞の選別のための生物発光の使用、および動物モデルでの少数の細胞の視覚化、を可能にする。
【0328】
実施例2-iPSC細胞集団のサイズおよび生存率の自家生物発光測定
iPSC-luxAB/CDEF系統の開発後、上記細胞系統が細胞集団サイズをレポートすることができるかどうかを評価するための実験を実施した。まず、iPSC-luxAB/CDEF細胞の集団から放出される発光シグナルが集団の総細胞数に比例するかどうかを評価するために、一定量の培地中のiPSC-luxAB/CDEF細胞をウェルプレートに所定の細胞密度で播種した。培地のプレーティングとともに、トランスフェクトされていない細胞の同一のプレーティングを実施して、ポジティブおよびネガティブ対照群とした。細胞を標準的な増殖条件下で24時間インキュベートした。この期間の後、図9Aに示されるように、発光出力についてプレートをイメージングした。生物発光の読み取り値は、MSルミナイメージングシステム(Perkin Elmer)を使用して取得した。このプロセスを6回繰り返して、6つの生物学的レプリケートを得た。すべての測定について、培地のみの対照群から得られたバックグラウンド値を差し引いて、バックグラウンド補正された平均を得た。発光出力を平均し、その平均値を使用して、各アッセイの平均の標準誤差を決定した。
【0329】
バックグラウンドに対する結果として生じる平均放射発光(p/s/cm/sr)の倍率変化を、初期播種細胞密度に対してプロットした。図9Bに示されるように、iPSC-luxAB/CDEF細胞から放出される平均放射発光(p/s/cm/sr)は、プレーティングされた細胞の個数(R=0.93)と強く相関すると判断した。この結果から、iPSC-luxAB/CDEF細胞の集団によって放出される平均発光シグナルが総細胞個数と比例かつ相関し、それによって平均放出シグナルに基づく細胞集団サイズの定量化を可能であると判断した。
【0330】
さらに、上記細胞系統が細胞生存率をレポートすることができるかどうかを評価するべく実験を実施した。まず、ある量の培地中のiPSCーluxAB/CDEF細胞をウェルプレートに所定の細胞密度で播種した。培地のプレーティングとともに、トランスフェクトされていない細胞の同一のプレーティングを実施して、ポジティブおよびネガティブ対照群とした。細胞を標準的な増殖条件下で24時間インキュベートした。この期間の後、発光出力についてプレートをイメージングした。生物発光の読み取り値は、MSルミナイメージングシステム(Perkin Elmer)を使用して取得した。
【0331】
この読み取りに続いて、製造業者のインストラクションに従って、プレートを、CellTiter96非放射性細胞増殖アッセイ(MTT)を用いた生存率分析にかけた。SynergyIIプレートリーダー(Biotek)を使用して570nmでの吸光度値としてMTTアッセイ値を取得し、未処理の対照細胞に対する吸光度のパーセント割合としレポートした。すべての測定について、培地のみの対照群から得られたバックグラウンド吸光度値を差し引いて、バックグラウンド補正平均を得た。このプロセスを6回繰り返して、6つの生物学的レプリケートを取得した。吸光度の値を平均し、その平均値を使用して、各アッセイの平均の標準誤差を決定した。
【0332】
バックグラウンドに対する結果として生じる平均放射発光(p/s/cm/sr)の倍率変化を、バックグラウンドに対するMTT吸光度(570nm)の倍率変化に対してプロットした。結果として高い相関(R=0.98)が得られ、luxオペロンがiPSC-luxAB/CDEF系統の細胞生存率を正確にレポートしていることが示唆される(図9C)。
【0333】
従って、この研究は、iPSC-luxAB/CDEF細胞から放出された平均自家生物発光出力が細胞の個数と強く相関し、細胞生存率を正確にレポートすることを検証した。相関関係は、内因性細胞代謝へのluxシステム連結から生ずる。組み合わせて、これらのデータは、ヒトiPSCにおいて、連続的で外因性の基質に依存しない、自己生成された生物発光光、すなわち、さらに、確立されたアッセイと同等の細胞集団サイズと生存率をレポートすることができるものを、明らかにしている。
【0334】
実施例3-自律発光出力による化合物毒性の追跡
上で詳述したように、iPSC-luxAB/CDEF細胞からの自律発光出力は、細胞集団のサイズと生存率の両方を忠実にレポートする。従って、iPSC-luxAB/CDEF系統が、既知の毒性の化合物での処理に応答して細胞生存率の変化をレポートできるかどうかを判断するための実験を実施した。
【0335】
最初に、iPSC-luxAB/CDEF細胞を2つの別々のマルチウェルプレート内の一定量の培地に播種した。培地のプレーティングとともに、トランスフェクトされていない細胞の同一のプレーティングを実施して、ポジティブおよびネガティブ対照群とした。第1のプレートには、細胞を細胞毒性化合物ドキソルビシンの濃度を上げながら処理した。第2のプレートには、細胞に細胞毒性化合物ロテノンの濃度を上げながら処理した。次に、細胞を標準的な増殖条件下で24時間インキュベートした。この期間の後、発光出力についてプレートをイメージングした。Synergyllプレートリーダー(BioTek)を使用して生物発光の読み取り値を取得した。
【0336】
この読み取りに続いて、プレートを、製造業者のインストラクションに従って、MTTアッセイによる生存率分析にかけた。Synergyllプレートリーダー(BioTek)を使用して570nmでの吸光度値として、MTTアッセイ値を取得し、未処理の対照群細胞に対する吸光度のパーセンテージとしてレポートした。すべての測定について、培地のみの対照群から得られたバックグラウンド吸光度値を差し引いて、バックグラウンド補正平均を得た。各処理レベルからの吸光度値を平均し、各プレートの平均値を使用して、各アッセイの平均の標準誤差を決定した。
【0337】
ある範囲のドキソルビシン濃度でのiPSC-luxAB/CDEF系統の処理は、細胞生存率の変化を示す自律発光シグナル出力への用量依存的変化をもたらし、これはまた、MTTによって実施された測定と強く相関した(R=0.99)(図10)。
【0338】
要約すると、これらのデータは、iPSC-luxAB/CDEF系統が化合物曝露に起因する細胞生存率の変化をレポートすることができ、自律発光シグナルが細胞ストレスおよび死に応答して変化することを示している。
実施例4-自律発光hADMSCのインビボイメージング。
【0339】
iPSC-luxAB/CDEF細胞系統を樹立した後、iPSC用に開発された同じluxオペロンベクター、すなわちCBA-luxCDEFおよびCBA-luxABを使用して発光シグナルを自律的に生成する多能性間葉系幹細胞を操作する実験を実施した。
【0340】
最初に、の実施例1で詳しく説明したように、luxCDEF:luxABのモル比を1:1、10:1、20:1、30:1、および40:1という様々なものとしてhADMSC細胞で試験した。図2Bに示されるように、発光出力は、iPSCで観察されたものとほぼ同じである20:1~30:1のモル比でピークに達した(比較のため図2Bを参照)。iPSC-luxAB/CDEF細胞系統と同様に、この比率でのCBA-luxCDEFとCBA-luxABとのゲノム統合により、自律発光を発現する安定したMSCクローン株が生成された。iPSC-luxAB/CDEF系統の自己生物発光出力と集団サイズとの相関を評価するべく実施例2で説明した方法と同様の方法を使用したところ、自己生物発光hADMSC細胞系統によって放出されるシグナルは、図11に示されるように、細胞個数と同様に強く相関する(R=0.98)ことが同様に見出された。従って、これらの結果は、細胞集団のサイズをレポートすることができる、hADMSCにおける連続的で外因性の基質に依存しない自己生成生物発光の光の発達を示す。
【0341】
次に、自律発光を発現するMSCがインビボでイメージングされ得るかどうかを決定するべく実験を実施した。最初に、3つの異なる総量の自律発光MSCを調製した。これらの調製物を、FIG.12A中に円で示される位置でFVB近交系マウスに腹腔内(IP)注射した。次に、麻酔下でマウスをイメージングした。得られた平均放射発光(p/s/cm/sr)の倍率変化を、注入された総細胞個数に対してプロットした(図12B)。(図12B)に見られるように、MSCから放出される平均放射発光(p/s/cm/sr)は、注入された細胞個数(R=0.99)と強く相関することが見出された。
【0342】
この結果は、重要な意味を持っている。第一に、MSCベースの自律発光をインビボ細胞イメージングに使用できることを示している。第二に、MSCベースの自律発光を使用してインビボで総細胞個数をモニタリングできることを示している。従って、マウスモデルでのこの試薬フリーのインビボイメージングは、繰り返しの針刺しなしでデータ取得を可能にすることにより、ストレス応答および注射部位の炎症に関する懸念を取り除く。さらに、この細胞系統は、非侵襲的な光学イメージングが動物の生涯にわたって継続的に発生することを可能にする。
【0343】
次に、自律的に生物発光するMSCのインビボ細胞移動を追跡することができるかどうかを評価するための実験を実施した。最初に、200万の自律発光MSCを、尾注射を介してFVBマウスに送達した。次に、注射後1時間で、自律発光出力について背側の側面をイメージングした。自律発光シグナルは観測されなかった(図13A)。
【0344】
それにもかかわらず、肺における自律発光MSCの細胞蓄積は、犠牲および解剖の後に容易に検出可能であった(図13B)。この結果は、インビボで深部組織(すなわち、肺)から浸透するのに十分に強いシグナルを生成しないにもかかわらず、自律発光MSCが循環系を通過して生き残り、肺への蓄積を明らかにしたことを示唆しており、これにより、自律発光MSCのインビボ細胞移動を追跡できることが示される。
【0345】
実施例5-luxオペロンを用いたiPS細胞および心筋細胞における遺伝子発現モニタリング
luxオペロンの発現は、その活性が全体的な自家生物発光出力に直接影響を与えるプロモータによって遺伝的に制御される。この特性は、以前はエストロゲン等のさまざまな化合物の存在を知らせるluxベースのバイオレポーターを生成するために活用されてきた。従って、luxオペロンがiPS細胞で構成的に発現できることを確認した後、細胞生存率とは対照的に遺伝子発現の変化をレポートできるレポーターベースの遺伝子構成を開発するための実験が実施された。
【0346】
それにもかかわらず、luxベースのバイオレポーターを開発するための従来方法は、幹細胞における遺伝子活性化イベントのレポーターとして機能するためのlux発現シ幹細胞の採用には不十分であることが証明された。すなわち、レポーターベースの遺伝子構成に一般的に使用される利用可能なプロモータオプションは、有意な自家生物発光出力をもたらさなかった。実際、利用可能なプロモータオプションを使用すると、誘導後の自家生物発光出力はほとんどまたはまったく生じなかった。
【0347】
この予想外の問題は、幹細胞における自家生物発光遺伝子発現を制御するための合成遺伝子増幅回路を開発することによって克服された。この予想外の問題を、幹細胞における自己生物発光遺伝子発現を制御するための合成遺伝子増幅回路を開発することによって、克服した。この合成遺伝子増幅回路を開発するには、テトラサイクリンプロモータ(ドキシサイクリン応答性)を、ポリシストロンluxCDABEFオペロン(tet-luxCDABEFと呼ばれる)の上流にクローニングし、CBA駆動型トランス活性化因子(tTA)を運ぶベクターまたはCBA駆動型逆トランス活性化因子(rtTA)を運ぶベクターのいずれかを使用して、iPSCにゲノム的に共統合した(図14)。
【0348】
ゲノムに組み込まれたrtTA(ドキシサイクリン誘導性)を有するTet-luxCDABEFIPSCを、量を増やしながらドキシサイクリンに4時間および20時間曝した。MSルミナイメージングシステムを使用して生物発光測定を実施した。バックグラウンドに対する結果として生じる平均放射発光(p/s/cm/sr)の倍率変化を、対応するドキシサイクリンの線量に対してプロットした。図15Aに示されるように、細胞系統は、ドキシサイクリンに応答して自家生物発光誘導の明確なパターンを示したことから、遺伝子発現をモニタリングすることができるluxベースの幹細胞バイオレポーターの開発が確認された。
【0349】
対照的に、ゲノムに組み込まれたtTA(ドキシサイクリン抑制性)を有するTet-luxCDABEFIPSCを、同様にして、増量しながらドキシサイクリンに曝した。MSルミナイメージングシステムを使用して生物発光測定を実施した。バックグラウンドに対する結果として生じる平均放射発光(p/s/cm/sr)の倍率変化を、対応するドキシサイクリンの線量に対してプロットした。得られたデータは、ドキシサイクリンへの曝露後に細胞系統の連続的な自家生物発光が遮断されたことを示した(図15B)。
【0350】
さらに、iPSC-luxAB/CDEF系統と同様に、ルシフェリン産生部分(luxCDEfrp)の増幅により、ロバストな自己生物発光出力が得られる。再び、上述のように、アルデヒドルシフェリン成分の過剰産生は細胞毒性効果を有するか、または細胞代謝に悪影響を与えると予想されることから、この結果は完全に予想外である。
【0351】
さらに、テトラサイクリン抑制性細胞系統の長期培養(>3ヶ月)は、野生型親系統と比較した成長率(非図示)への影響を明らかにせず、また、細胞は、この間、野生型多能性マーカー(図5C)と核型(図6B)の両方を保持していたことから、スプリットluxオペロンの統合が多能性を乱さなかったことが示唆される。
【0352】
これらのデータは、ポリシストロンルクスベースの自己生体発光がiPSCで可能であるが、強力な遺伝的誘導が必要とされることを示す。これらの結果はまた、luxオペロンを使用して遺伝子発現をモニターできることを示しており、ここで、自己生物発光は遺伝子活性化の代用として機能する。最後に、図16に示されているように、両方のtet応答性iPSC系統は、心毒性をレポートできる心筋細胞に分化したときに、自家生物発光の発現が可能であった。
【0353】
これらのバイオレポーターは、シグナル開始の開始を決定するために自動化された方法で継続的にモニタリングすることができるので、これは非常に有利な開発である。さらに、ルシフェリンの追加を必要とするレポーターシステムとは異なり、ここでのシグナル生成は完全に自己生成される。すなわち、バイオレポーターは相互作用を必要とせずに継続的にモニタリングされ得る。従って、シグナルの持続時間および強度は、ルシフェリン処理の影響を考慮することなく、単一の試料から決定され得る。
【0354】
実施例6-心臓特異的luxオペロン発現
luxオペロンが遺伝子活性化イベントをレポートできることを確認した後、発現系が組織特異的発現のレポーターとして役立つことができるかどうかを決定するために実験を実施した。具体的には、組織特異的自家生物発光を発現するように設計されたiPSC由来心筋細胞の開発が求められた。
【0355】
最初に、心臓組織特異的発現を可能にするべく、自家生物発光出力をTNNT2プロモータにリンクさせた。TNNT2プロモータは、さまざまな光学イメージングおよび耐性マーカーを駆動できる心筋細胞特異的プロモータとして確立されている。
【0356】
次に、野生型iPSCおよびiPSC由来心筋細胞に、CBA-luxCDEfrpおよびCBA-luxAB(構成的)またはTNNT2-/uxAS(心臓特異的)のいずれかを、20:1の比率で、一過性にトランスフェクトした。上で詳述したように、luxABとluxCDEfrpの予想外の最適な比率を固守するために、20:1の比率で観測した。24時間後、自家生物発光出力を測定した。
【0357】
最終的に、野生型iPSCおよびCBA-luxCDEfrpおよびCBA-luxAB(構成的)を共発現するiPSC由来心筋細胞の両方で、自家生物発光が観察された(図17)。さらに、TNNT2をluxABの上流にクローニングして一過性にトランスフェクトさせた野生型iPSC由来心筋細胞でCBA-luxCDEfrpと共発現させた場合、自家生物発光の発現が観測された。しかし、図17に示されるように、iPSCにトランスフェクトさせた場合、そのような自家生物発光発現は観測されなかった。TNNT2駆動の自己発光はCBA駆動の自己発光よりも約2.5(±0.5)倍少なく、TNNT2プロモータが心筋細胞のCBAと同程度に活性化されていないことを示唆する。それにもかかわらず、これらのデータは依然として組織特異的自家生物発光の発現を示している。
【0358】
実施例7-組織特異的自家生物発光コンストラクトを使用した分化レポート。
組織特異的自家生物発光構築物が、分化レポートが可能であるかどうかを決定するために、2モジュール合成増幅回路を使用して自家生物発光発現を制御するカセットのバージョンを構築した。第1のモジュールは、ヒト脂肪組織特異的プロモータであるhAP2を使用して、Gal4DNA結合ドメインと単純ヘルペスウイルスVP16転写因子の2つの転写モチーフとからなるGal4tf融合遺伝子の発現を制御する。第2のモジュールは、酵母上流活性化配列(UAS)の5つのタンデムリピートと最小プロモータの制御下にあるluxCDABEF遺伝子とを含む。この2モジュール回路は間葉系幹細胞(MSC)にトランスフェクトされ、安定的に選択された。このバージョンのカセットを発現する細胞は、脂肪組織への分化時にのみ自家生物発光生成を開始できるはずである。
【0359】
これを検証するために、親MSC系統を脂肪細胞、軟骨細胞、および骨細胞系統に分化させ、分化の前後の両方で自家生物発光出力を測定した。分化前の親MSC系統からの測定された自家生物発光シグナルは、バックグラウンド光検出と同様であった(図18)。分化後、標的脂肪細胞系統からの自家生物発光生成は、バックグラウンドより5.59倍大きく、自家生物発光表現型の開始を示している。軟骨細胞または骨細胞分化細胞系統からの自家生物発光シグナルは存在しなかった(バックグラウンドに対してそれぞれ1.31倍および1.35倍)(図18)。
【0360】
これらのデータにより、自家生物発光を使用して標的MSCから脂肪細胞への分化を追跡すること、および研究中の試料を混乱させる必要なしに分化追跡を示すためのその使用が実証される。
【0361】
実施例8-IPSC-luxAB/CDEF由来の心筋細胞は、自家生物発光表現型を維持する。
iPSC-luxAB/CDEF系統から分化した特殊な細胞が自家生物発光表現型を保存するかどうかを決定するために実験を実施した。iPSC-luxAB/CDEF系統の小分子標的心臓分化は、以前に記載されたように(pubmed ID22645348)、CHIR99021およびIWP-2/4を使用したWntシグナル伝達の時間的調節を介して実行された。これにより、自家生物発光性のCBA駆動のluxAB/CDEF心筋細胞が産生された(図19A)。この系統をCM-luxAB/CDEFとして示した。
【0362】
次に、プレーティングされた細胞あたりの正規化された平均自家生物発光放射輝度(p/s/cm/sr)を、PSC-luxAB/CDEFおよびCM-luxAB/CDEFの両方について決定した。図19Bに示されるように、iPSC-luxAB/CDEF系統とほぼ同様のレベルの自家生物発光を自家生物発光性iPSC-luxAB/CDEF由来の心筋細胞により生成されることが観測された。
【0363】
これらの結果は、iPSC-luxAB/CDEF系統が自家生物発光表現型を保つ心筋細胞に分化したことを示している。データは、自家生物発光表現型が細胞型の変化によって根本的に変化しないことを示している。このデータは、luxオペロンを使用してiPSC由来心筋細胞で試薬無しの生物発光を生成できることを示す。
【0364】
実施例9-自家生物発光iPSC由来心筋細胞を用いた継続的な心臓毒性モニタリング。
現在の心毒性スクリーニングの限界に対処するために(例えば、高コスト、破壊的なエンドポイントスタイルのアッセイの必要性等)、ドキソルビシンに応じた心毒性をレポートするためのCBA駆動のluxAB/CDEF心筋細胞の有用性を検証するべく実験を実施するとともに、それに関連して、上記細胞を使用することでドキソルビシン治療に応じたリアルタイムの継続的心毒性モニタリングを提供した。
【0365】
最初に、CM-luxAB/CDEF系統が、既知の心毒性化合物であるドキソルビシンに応答して心毒性をレポートできるかどうかを評価した。さまざまなドキソルビシン濃度でCM-luxAB/CDEF系統を処理し、24時間の処理後に自家生物発光出力を測定した。対照群と比較した平均放射輝度(p/s/cm/sr)の変化率を、対応するドキソルビシン(uM)処理に対してプロットした。結果は、心筋細胞からの自家生物発光が、線量と相関する強度の減少を示したことを示した(図19C)。これらのデータは、ドキソルビシンに曝露されたiPSC由来心筋細胞について以前にレポートされたものと同様の0.29uMドキソルビシンのIC50をもたらした(Pubmed ID28202772)。従って、CBA駆動のluxAB/CDEF心筋細胞は、ドキソルビシンに応答して心毒性を忠実にレポートした。
【0366】
第二に、CM-luxAB/CDEF系統が、長期間にわたるドキソルビシン治療に応答して、リアルタイムの継続的な心毒性モニタリングを提供できるかどうかを評価した。CM-luxAB/CDEF心筋細胞を30時間継続的にモニターし、自家生物発光を10分ごとに測定した。最初の5時間は、ベースラインシグナルを確立するために、治療なしで自家生物発光をモニターした。次に、5時間で、心筋細胞のサブセットに、心臓毒性物質のドキソルビシンの用量を増やしてチャレンジした(図20Aの白い矢印)。次の25時間にわたって継続的に自己発光出力を測定した。
【0367】
データは、ドキソルビシンの濃度の増加が自家生物発光出力の減少をもたらしたことを示し、このことがリアルタイムで明らかになった(図20A)。連続データが明確に示している傾向は、異なる濃度が30時間後にほぼ同じレベルの細胞の自家生物発光出力に分解されるにもかかわらず、高濃度のドキソルビシンが低用量よりも速く毒性効果を発揮するということである。この傾向は、同じ期間の2時間半の間隔を調べた場合でも明らかである(図20B)。
【0368】
実験の時間経過にわたってIC50値を計算し、時間に対してプロットした。IC50濃度の明らかな減少が時間経過にわたって観測された(図20C)。このような結果は、ドキソルビシンのような既知の心毒性化合物に期待される。ただし、動的IC50値によって提供されるのは任意の単一時点測定の前後関係である。従って、このデータにより、IC50で測定される化合物の効果がいつ安定するかを判断できるため、毒性をより確実に評価することができる。ドキソルビシンの場合、30時間近い曝露でこのことが発生した。このデータは、継続的に自家生物発光するiPSC由来心筋細胞が、リアルタイムで長期的な毒性追跡を提供できることを示す。
例示的実施形態の一覧
実施形態1:外因性発光刺激剤の非存在下での発光シグナルを含む自己生物発光表現型を有する幹細胞。
実施形態2:実施形態1に記載の幹細胞であって、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをさらに含む、幹細胞。
実施形態3:1.実施形態1~2のいずれか一項に記載の幹細胞であって、
luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸をさらに含む、幹細胞。
実施形態4:1.実施形態1~3のいずれに記載の幹細胞であって、
発光シグナルが構成的に放出される。
実施形態5:1.実施形態4に記載の幹細胞であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つの構成的プロモータに連動する、幹細胞。
実施形態6:実施形態5に記載の幹細胞であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸はそれぞれ、構成的プロモータに連動する、幹細胞。
実施形態7:実施形態5に記載の幹細胞であって、
luxA核酸およびluxB核酸は、第1の構成的プロモータに連動する幹細胞。
実施形態8:実施形態7に記載の幹細胞であって、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、第2の構成的プロモータに連動する幹細胞。
実施形態9:自律発光表現型を有する幹細胞を生産するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを備える、キット。
実施形態10:自律的かつ構成的な発光を有する幹細胞を作製するための方法であって、幹細胞を提供すること、ならびに、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを幹細胞にトランスフェクトすることを含む、方法。
実施形態11:実施形態8または9のいずれか一項に記載の方法であって、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が構成的プロモータに作動的に連結される、方法。
実施形態12:実施形態8または9のいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、luxA核酸およびluxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターと、を含む、方法。
実施形態13:実施形態9~12のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つのベクターによる幹細胞のトランスフェクションの後に、幹細胞がluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する、方法。
実施形態14:少なくとも1つの幹細胞の細胞集団サイズをリアルタイムにモニタリングする方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定すること、
ならびに、
測定された構成的発光シグナルに基づいて、少なくとも1つの幹細胞の細胞集団サイズを評価することを含む、方法。
実施形態15:実施形態13の方法であって、細胞集団サイズを2つ以上の時点にわたってトラッキングすることをさらに含む、方法。
実施形態16:少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、測定された構成的発酵シグナルにもとづいて少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率を評価することを含む、方法。
実施形態17:実施形態15の方法であって、2つ以上の時点にわたって少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をトラッキングすることをさらに含む、方法。
実施形態18:実施形態13~16のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルの測定が少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率と相関する、方法。
実施形態19:少なくとも1つの幹細胞に対する薬剤の効果を測定する方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
少なくとも1つの幹細胞を薬剤と接触させること、
少なくとも1つの幹細胞と薬剤との接触の後に、少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
測定された構成的発酵シグナルに基づいて薬剤の効果を決定することを含む、方法。
実施形態20:実施形態18の方法であって、2つ以上の時点にわたって薬剤の効果をトラッキングすることをさらに含む、方法。
実施形態21:実施形態18または19のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞が構成的発光シグナルの生成を停止するとき、薬剤が少なくとも1つの幹細胞にとって致命的であると判断する、方法。
実施形態22:実施形態13~20のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞から放出された構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
実施形態23:実施形態21の方法であって、
対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの減少は、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の負の変化を示す、方法。
実施形態24:実施形態22の方法であって、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定する、方法。
実施形態25:実施形態21の方法であって、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの増加は、少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率の正の変化を示す、方法。
実施形態26:実施形態24の方法であって、薬剤の効果が治療的であることを決定する、方法。
実施形態27:実施形態18~25のいずれか一項に記載の方法であって、薬剤が創薬に関して評価される、方法。
実施形態28:実施形態13~26のいずれか一項に記載の方法であって、該方法が高スループットで実行される、方法。
実施形態29:少なくとも1つの幹細胞を薬剤フリー・インビボイメージングするための方法であって、
外因的に添加された基質の非存在下で、構成的発光シグナルを生成するために少なくとも1つの幹細胞を操作すること、
少なくとも1つの幹細胞を生物に注入すること、ならびに、
該生物の少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルをイメージングすることを含む、方法。
実施形態30:実施形態28の方法において、
構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、測定された構成的発光シグナルに基づいてインビボで存在する少なくとも1つの幹細胞の総数を決定することをさらに含む、方法。
実施形態31:実施形態28または29のいずれか一項に記載の方法において、
生物には動物が含まれ、少なくとも1つの幹細胞が生物に静脈内、皮内、または皮下注入される、方法。
実施形態32:実施形態30の方法であって、少なくとも1つの幹細胞が動物に注入された後、動物内の少なくとも1つの幹細胞の動きをトラッキングすることをさらに含む、実施形態30に記載の方法。
実施形態33:実施形態28~31のいずれか一項に記載の方法であって、
外因的に添加された基質がアルデヒド官能基を含む、方法。
実施形態34:実施形態13~32のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞は、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、luxA核酸およびluxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターと、を含む、方法。
実施形態35:実施形態13~32のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞は、
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、luxE核酸を含む第5のベクター、
およびフラビンレダクターゼ核酸を含む第6のベクターを含み、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が構成的プロモータに作動的に連結される、方法。
実施形態36:実施形態1~2のいずれか一項に記載の幹細胞であって、
発光シグナルが組織特異的である、幹細胞。
実施形態37:実施形態36の幹細胞であって、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターを含み、核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに連動する、幹細胞。
実施形態38:組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む幹細胞を生成する方法であって、
幹細胞を提供すること、ならびに、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターにより幹細胞をトランスフェクトすることを含み、核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに対して連動する、方法。
実施形態39:実施形態36~37のいずれか一項に記載の幹細胞であって、組織特異的プロモータを発現する組織細胞へ幹細胞が分化する場合、組織特異的細胞はluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現し、かつ自律発光シグナルを放出する、幹細胞。
実施形態40:組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む少なくとも1つの幹細胞を用いるリアルタイム分化報告の方法であって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含む、
少なくとも1つの幹細胞を提供することを含み、
核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに対して連動しており、また、
組織特異的プロモータが発現される少なくとも1つの組織細胞に少なくとも1つの幹細胞が分化する場合、少なくとも1つの組織細胞は発光シグナルを放出し、さらに、
発光シグナルが放出されるとき、組織細胞から放出される発光シグナルを測定して、少なくとも1つの組織細胞への少なくとも1つの幹細胞の分化をトラッキングする、方法。
実施形態41:実施形態39の方法であって、2つ以上の時点にわたって、少なくとも1つの組織細胞への少なくとも1つの幹細胞の分化をトラッキングすることをさらに含む、方法。
実施形態42:実施形態39または40のいずれか一項に記載の方法であって、
発酵シグナルの放出は、少なくとも1つの組織細胞への少なくとも1つの幹細胞の分化の開始を報告する、方法。
実施形態43:実施形態39~41のいずれか一項に記載の方法であって、発光シグナルの測定に基づいて少なくとも1つの組織細胞の総数を評価することをさらに含む、方法。
実施形態44:実施形態39~42のいずれか一項に記載の方法であって、発光シグナルの測定に基づいて、少なくとも1つの組織細胞に分化した少なくとも1つの幹細胞を決定することをさらに含む、方法。
実施形態45:組織特異的シグナルを含む自律発光表現型を含む幹細胞を生成するキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含み、核酸の少なくとも1つが組織特異的プロモータに対して連動する、キット。
実施形態46:実施形態36~44に記載の幹細胞またはキットであって、
少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、
luxA核酸およびluxB核酸が組織特異的プロモータに連動する、第1のベクターと
uxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターと、を含む、幹細胞またはキット。
実施形態47:実施形態36~44のいずれか一項に記載の幹細胞またはキットであって、
少なくとも1つのベクターは、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数が組織特異的プロモータに連動する、幹細胞またはキット。
実施形態48:実施形態36~47のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、
組織特異的プロモータは、TNNプロモータを含む、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態49:実施形態36~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、
組織細胞または少なくとも1つの組織細胞は、心筋細胞を含む、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態50:実施形態10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、luxA核酸およびluxB核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量の10倍から40倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態51:実施形態10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、 luxA核酸 and luxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の20倍から30倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態52:実施形態10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、luxA核酸、およびluxB核酸含むトランスフェクトされたベクターの総量の10倍から40倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態53:実施形態10~48のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量は、luxA核酸およびluxB核酸を含むトランスフェクトされたベクターの総量の20倍から30倍の量で存在する、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態54:実施形態1~2のいずれか一項の幹細胞であって、発光シグナルが分析物に反応する、幹細胞。
実施形態55:実施形態53の幹細胞であって、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動する、幹細胞。
実施形態56:実施形態54の幹細胞であって、
幹細胞は、分析物に曝露されると、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子をさらに含み、
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つの転写を引き起こす、幹細胞。
実施形態57:実施形態54に記載の幹細胞であって、
幹細胞は、分析物に曝されると少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性トランス活性化因子をさらに含み、
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つの非転写をもたらす、幹細胞。
実施形態58:分析物の存在下で自律誘導性発光シグナルを放出するように構成された幹細胞を構築する方法であって、
幹細胞を提供すること、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターにより幹細胞をコトランスフェクトすること、
分析物に曝されると少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターにより幹細胞をコトランスフェクトすることを含み、
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの活性化は少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つの転写を引き起こす、方法。
実施形態59:分析物の存在下で、自律的かつ抑制的な発光シグナルを放出するように構成された幹細胞を構築する方法であって、
幹細胞を提供すること、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターにより幹細胞をコトランスフェクトすること、ならびに、
分析物に曝されると少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターにより幹細胞をコトランスフェクトすることを含み、
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントの活性化は少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動する、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つの転写を引き起こす、方法。
実施形態60:少なくとも1つの幹細胞での遺伝子発現をモニタリングする方法であって、
実施形態53、54、55、または56のいずれか一項に記載の幹細胞の少なくとも1つを生成すること、少なくとも1つの幹細胞を分析物と接触させること、ならびに、
少なくとも1つの幹細胞を分析物と接触させた後に少なくとも1つの幹細胞から放出される発光シグナルを測定して、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の発現をモニターすることを含む、方法。
実施形態61:実施形態59に記載の方法であって、2つ以上の時点にわたって少なくとも1つの幹細胞から放出される発光シグナルを測定することをさらに含む、方法。
実施形態62:実施形態59または60のいずれか一項に記載の方法であって、少なくとも1つの幹細胞から放出された発光シグナルの測定を、対照集団から放出される発光シグナルと比較することによって、遺伝子発現を評価することをさらに含む、方法。
実施形態63:試料中の分析物の存在を決定する方法であって、
実施形態53、54、55、または56のいずれか一項に記載の幹細胞の少なくとも1つを生成すること、
少なくとも1つの幹細胞を試料に接触させること、
少なくとも1つの幹細胞を分析物と接触させた後に少なくとも1つの幹細胞から放出される発光シグナルを測定して、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の発現をモニターすること、ならびに、
発光シグナルの測定に基づいて、試料中の分析物の存在を評価することを含む、方法。
実施形態64:実施形態62の方法であって、少なくとも1つの幹細胞から放出された発光シグナルの測定を、対照集団から放出される発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
実施形態65:分析物によって誘導的な自律発光シグナルを放出する幹細胞を生成するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターと、ならびに、
分析物に曝されると少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化する、少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターとを含む、キット。
実施形態66:分析物によって抑制的な自律発光シグナルを放出する幹細胞を生成するためのキットであって、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つが分析物応答性応答エレメントに連動するものであり、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含む少なくとも1つのベクターと、ならびに、
分析物に曝されると少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントを活性化しない少なくとも1つの分析物応答性逆トランス活性化因子を含む第2のベクターとを含む、キット。
実施形態67:実施形態54~65のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントは、テトラサイクリン応答エレメントを含み、好ましくは、分析物は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンの類似体を含む、方法。
実施形態68:実施形態54~65のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、少なくとも1の分析物応答性トランス活性化因または少なくとも1の分析物応答性逆トランス活性化因子は、構成的プロモータに連動し、好ましくは、構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである、幹細胞、方法、またはキット。
実施形態69:実施形態54~67のいずれか一項に記載の幹細胞、方法、またはキットであって、
少なくとも1つの分析物応答性応答エレメントに連動しないluxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つは、構成的プロモータに連動する。
実施形態70:幹細胞由来の自律発光細胞であって、
自律発光幹細胞から分化した自律発光真核細胞を含み、分化した自律発光真核細胞と自律発光幹細胞とはどちらも、外因性発光刺激因子の非存在下で構成的発光シグナルを発現する、幹細胞由来の自律発光細胞。
実施形態71:自律発光幹細胞から幹細胞由来の自律発光細胞を生成する方法であって、
自律発光幹細胞を構築すること、ならびに、
自律発光幹細胞を幹細胞由来の自律発光細胞に分化させることを含み、幹細胞由来の自律発光細胞は、外因性発光刺激因子の非存在下で発光シグナルを放出する、方法。
実施形態72:実施形態70の方法であって、分化が小分子方法によって実行される、方法。
実施形態73:自律発光細胞から誘導された少なくとも1つの幹細胞の細胞生存率をリアルタイムでモニタリングする方法であって、
少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞を提供すること、
少なくとも1つの幹細胞由来自律発光細胞から放出された構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
測定された構成的発光シグナルにもとづいて、少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞の細胞生存率を評価することを含む、方法。
実施形態74:実施形態72に記載の方法であって、少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞の細胞生存率を2つ以上の時点にわたって追跡することをさらに含む、方法。
実施形態75:実施形態72または73のいずれか一項に記載の方法であって、構成的発光シグナルの測定は、少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞の細胞生存率と相関する、方法。
実施形態76:少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞における薬剤の効果を決定する方法であって、
構成的発光シグナルを生成するために少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞を操作すること、
少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞を薬剤に接触させること、
少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞を薬剤に曝した後に少なくとも1つの幹細胞から放出される構成的発光シグナルを測定すること、ならびに、
測定された構成的発酵シグナルにもとづいて薬剤の効果を決定することを含む、方法。
実施形態77:実施形態75に記載の方法であって、2つ以上の時点にわたって薬剤の効果をトラッキングすることをさらに含む、方法。
実施形態78:実施形態76の方法であって、薬剤の効果が安定する時点を決定することをさらに含む、方法。
実施形態79:実施形態75~77のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞が構成的発光シグナルの生成を停止したとき、薬剤が少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞にとって致命的であると決定する、方法。
実施形態80:実施形態72~78のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも1つの幹細胞由来自律発光細胞から放出された構成的発光シグナルの測定を、対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較することをさらに含む、方法。
実施形態81:実施形態79に記載の方法であって、
対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの減少は、薬剤に曝すことに起因する少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞の細胞生存率の負の変化を示す、方法。
実施形態82:実施形態79に記載の方法であって、薬剤の効果が細胞毒性であることを決定する、方法。
実施形態83:実施形態79に記載の方法であって、
対照集団から放出される構成的発光シグナルと比較した少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞から放出される測定された構成的発光シグナルの増加は、薬剤に曝すことに起因する少なくとも1つの幹細胞由来の自律発光細胞の細胞生存率の正の変化を示す、方法。
実施形態84:実施形態82に記載の方法であって、
薬剤の効果が治療的であることを決定する、方法。
実施形態85:実施形態69~82のいずれか一項に記載の自律発光細胞または方法であって、
自律発光幹細胞は、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含み、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸は、少なくとも1つの構成的プロモータに連動し、さらに、自律発光幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する、方法。
実施形態86:実施形態84に記載の自律発光細胞または方法であって、
少なくとも1つのベクターは、
luxA核酸およびluxB核酸を含み、luxA核酸およびluxB核酸が第1の構成的プロモータに連動する、第1のベクターと
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸が第2の構成的プロモータに連動する、第2のベクターと、を含む、方法。
実施形態87:実施形態84に記載の自律発光細胞または方法であって、
少なくとも1つのベクター
luxA核酸を含む第1のベクター、
luxB核酸を含む第2のベクター、
luxC核酸を含む第3のベクター、
luxD核酸を含む第4のベクター、
luxE核酸を含む第5のベクター、および
フラビンレダクターゼ核酸を含み、
luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の1つまたは複数は、構成的プロモータに連動する、自律発光細胞または方法。
実施形態88:実施形態1~86のいずれか一項に記載の自律発光細胞であって、
幹細胞由来の自律発光細胞がluxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターを発現することで、幹細胞由来の自律発光細胞が外因性発光刺激因子の非存在下で発光する、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
実施形態89:実施形態1~87のいずれか一項に記載の自律発光細胞であって、
luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の10倍から40倍の範囲である、幹細胞、方法、キット、または自律発光細胞。
実施形態90:実施形態1~88のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の20倍から30倍の範囲である。
実施形態91:実施形態1~89のいずれか一項に記載の、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEのそれぞれをコードする1つまたは複数の核酸は、フォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens)の対応する核酸と80%を超える配列同一性を有する。
実施形態92:実施形態1~90のいずれか一項に記載の、luxA、luxB、luxC、luxD、およびluxEのそれぞれをコードする1つまたは複数の核酸は、フォトラブダス・ルミネッセンスの対応する核酸と100%の配列同一性を有する。
実施形態93:実施形態1~91のいずれか一項に記載の幹細胞は、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の転写を介して発光シグナルを放出する。
実施形態94:実施形態1~92のいずれか一項に記載の、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の転写量は、luxA核酸およびluxB核酸の転写量の10倍から40倍の範囲である。
実施形態95:実施形態1~93のいずれか一項に記載の、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の転写量は、luxA核酸およびluxB核酸の転写量の20倍から30倍の範囲である。
実施形態96:実施形態1~94のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、luxAおよびluxBをコードする核酸の総量の10倍から40倍の総量で存在する。
実施形態97:実施形態1~95のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼのそれぞれをコードする核酸は、luxAおよびluxBをコードする核酸の総量の20倍から30倍の総量で存在する。
実施形態98:実施形態1~96のいずれか一項に記載の幹細胞または少なくとも1つの幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼをさらに含む。
実施形態99:実施形態1~97のいずれか一項に記載の幹細胞または少なくとも1つの幹細胞は、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを発現する。
実施形態100:実施形態1~98のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成量の10倍から40倍の範囲である。
実施形態101:実施形態1~99のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの総生成量は、luxAおよびluxBの総生成レベルの10倍から40倍の範囲である。
実施形態102:実施形態1~100のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼの少なくとも1つは、luxAおよびluxBの少なくとも1つのレベルよりも高いレベルで存在する。
実施形態103:実施形態1~101のいずれか一項に記載、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの総レベルの10倍から40倍の総レベルで存在する。
実施形態104:実施形態1~102のいずれか一項に記載の、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼは、luxAおよびluxBの総レベルの20倍から30倍の総レベルで存在する。
実施形態105:実施形態1~103のいずれか一項に記載の、luxA、luxB、luxC、luxD、luxE、およびフラビンレダクターゼを含む幹細胞または少なくとも1つの幹細胞は、外因性発光刺激因子の非存在下で自律的に発光する。
実施形態106:実施形態1~104のいずれか一項に記載の構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである。
実施形態107:実施形態1~105のいずれか一項に記載の第1の構成的プロモータおよび第2の構成的プロモータはニワトリベータアクチンプロモータである。
実施形態108:実施形態1~106のいずれか一項に記載の、luxA核酸、luxB核酸、luxC核酸、luxD核酸、luxE核酸、およびフラビンレダクターゼ核酸の少なくとも1つは、少なくとも1つのリンカーに連動する。
実施形態109:実施形態1~107のいずれか一項に記載の少なくとも1つのリンカー領域はウイルス2Aペプチドを含む。
実施形態110:実施形態1~108のいずれか一項に記載の薬剤は、化学療法剤、抗生物質、殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または肥料を含む。
実施形態111:実施形態1~110のいずれか一項に記載の幹細胞または少なくとも1つの幹細胞は、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、または非胚性幹細胞である。
実施形態112:実施形態1~110のいずれか一項に記載の外因性発光刺激因子は蛍光刺激シグナルである。
実施形態113:実施形態1~110のいずれか一項に記載の外因性発光刺激因子は化学発光因子であり、好ましくは、化学発光因子は、アルデヒド官能基を含む。
【0369】
前述の説明は、本開示のプロセス、製造、物質の組成、および他の教示を例示および説明する。さらに、本開示は、開示されたプロセス、製造、物質の組成、および他の教示の特定の実施形態のみを示し説明しているが、本開示の教示は、他の様々な組み合わせ、修正、および環境で使用することができること、ならびに、関連技術において通常の技能を有する人の技能および/または知識に見合った、本明細書で発現される教示の範囲内での変更または修正が可能であることを、理解されたい。ここで記述された実施形態はさらに、本開示のプロセス、製造、物質の組成、および他の教示を実施することが知られている特定の最良のモードを説明すること、ならびに、当業者が、そのような、または他の実施形態において、特定の用途または使用によって必要とされる様々な修正を伴って、本開示の教示を利用できるようにすることを、意図している。従って、本開示のプロセス、製造、組成物、および他の教示は、本明細書に開示される正確な実施形態および例を限定することを意図するものではない。本明細書中の各セクションの見出しは、37C.F.R.§1.77の提案との一貫性を保つため、または組織的列(organizational queues)を提供するためにのみ提供され、そうでなければ、これらの見出しは、本明細書中に示される(複数の)発明を制限せず或いは特徴付けない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2022535789000001.app
【国際調査報告】