(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ドキサジアジン化合物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5395 20060101AFI20220803BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220803BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220803BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220803BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220803BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220803BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20220803BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220803BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220803BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220803BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220803BHJP
A23L 3/3544 20060101ALI20220803BHJP
C07D 273/04 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K31/5395
A61P29/00
A61P39/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P17/10
A61P17/14
A61P17/18
A61P9/00
A61P25/00
A61P1/04
A61P11/00
A61P19/00
A61P21/00
A61P37/02
A61P27/02
A61P27/16
A61P39/02
A61K8/49
A61Q19/08
A61Q19/00
A23L33/10
A23L3/3544 502
C07D273/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571473
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2020065116
(87)【国際公開番号】W WO2020240037
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521521507
【氏名又は名称】ホリツォンツ、テクノロギークス、ハンガリー、コーラトルト、フェレロッセグー、タールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】HORITZONTS TECNOLOGICS HUNGARY KORLATOLT FELELOSSEGU TARSASAG
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】アルフレード、エルナンデス、カバニージャ
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ、マデルエロ、コラル
(72)【発明者】
【氏名】モンセラート、オルテガ、ドメネク
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ、フェルナンド、ロゼロ、バレンシア
(72)【発明者】
【氏名】アンヘル、ルンベーロ、サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル、テナ、ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ネストル、アパサ、ティコナ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B021
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD18
4B018ME06
4B018ME13
4B018ME14
4B021LW06
4B021MC07
4B021MK27
4C083AC851
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC72
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC37
4C086ZC52
4C086ZC54
(57)【要約】
本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症の予防および/または治療における使用のための式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物に関する。さらに、本発明はまた、皮膚加齢、照射皮膚を予防および/もしくは予防するため、または皮膚美白のための美容方法であって、式(I)の化合物またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を投与することを含んでなる方法にも関する。さらに、本発明は、食品または飲料における酵素的褐変の阻害の方法であって、前記食品または飲料を式(I)の化合物またはその塩、立体異性体もしくは溶媒和物と、前記食品または飲料の酵素的褐変を阻害するために十分な条件下で接触させることを含んでなる方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症の予防および/または治療における使用のための、式(I)
【化1】
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
前記Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)O-CH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
-c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環(前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい)、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)。
【請求項2】
式:
【化2】
を示す、請求項1に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項3】
R
1およびR
2が同じ基である、請求項1または2に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項4】
R
1およびR
2が-(CH
2)
4-CH
3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項5】
式:
【化3】
の請求項4に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項6】
Rがメチル基または-(CH
2)
2-COOHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物。
【請求項7】
炎症誘発状態に関連する疾患が、皮膚病、好ましくは、乾癬、湿疹、白斑、膿痂疹、座瘡、黒色腫、酒さ、蕁麻疹、肝斑または脱毛症である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患が、脳血管疾患、心血管疾患、呼吸器系疾患、筋骨格系疾患、胃腸疾患、加齢性免疫不全および早期老化症、耳疾患、眼疾患、薬物性毒性からなる群から選択され、皮膚色素沈着症が、肝斑、薬物性色素沈着症、黒色表皮症、黒子、アジソン病およびヘモクロマトーシスからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
皮膚加齢を予防および/または治療するための美容方法であって、式(II)
【化4】
の化合物またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
前記Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)O-CH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環(前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい)、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、美容方法。
【請求項10】
前記式(I)の化合物が、式:
【化5】
の化合物である、請求項9に記載の美容方法。
【請求項11】
式(I)の化合物のR
1およびR
2が、同じ基、好ましくは-(CH
2)
4-CH
3である、請求項9または10に記載の美容方法。
【請求項12】
前記化合物(I)が式:
【化6】
を示す、請求項12に記載の美容方法。
【請求項13】
式(I)の化合物のRがメチル基または-(CH
2)
2-COOHであり、またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である、請求項9~13のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項14】
食品または飲料における酵素的褐変の阻害の方法であって、前記食品または飲料を式(I)
【化7】
の化合物またはその塩、立体異性体もしくは溶媒和物
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
前記Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)O-CH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環(前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい)、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
と接触させることを含んでなる、方法。
【請求項15】
前記化合物が
【化8】
である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症を予防および/または治療するための式(I)の化合物の使用に関する。本発明はまた、美容方法および食品または飲料における酵素的褐変の阻害のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、生物が有害な刺激を取り除き、組織に対する治癒プロセスを開始する助け得る、病原体、細胞損傷、および生物学的刺激物に対する複雑な生物学的応答である。抗炎症薬にはステロイド系と非ステロイド系の2つの主要なカテゴリーがある。ステロイド系抗炎症薬は、コルチゾンなどのホルモン物質に基づく。ステロイド系薬剤は、非ステロイド系薬剤よりも強い抗炎症応答を有する。非ステロイド系抗炎症薬には3つの主要な作用があり、その全てがプロスタノイドの形成の低下をもたらすシクロオキシゲナーゼの阻害に関連するものである。これらの両群には、胃のむかつき、胃出血、または潰瘍、腎障害、聴覚障害および踝腫脹を含む副作用がある。
【0003】
したがって、いくつかの方法がこのような炎症性疾患および酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患の治療に利用可能であるが、有効性の欠如およびそれらに付随する薬物関連副作用によって明らかなように、それらの結果は一般に満足のいくものではない。
【0004】
よって、当技術分野では、炎症誘発性障害を治療するための新たな化合物の必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、式(I)の化合物が、TNF-α活性、NF-κB、STAT3、HIF-1αおよびチロシナーゼ活性を阻害することによって抗炎症化合物および抗酸化化合物として働くことを見出した。
【0006】
第1の側面において、本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症の予防および/または治療における使用のための、式(I):
【化1】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物に関する。
【0007】
第2の側面において、本発明は、皮膚加齢、照射皮膚を予防および/もしくは治療するため、または皮膚美白のための美容方法であって、式(I):
【化2】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる美容方法に関する。
【0008】
第3の側面において、本発明は、食品または飲料における酵素的褐変の阻害の方法であって、前記食品または飲料を式(I):
【化3】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-、ここで、R
3はC
1-6アルキルである、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその塩、立体異性体もしくは溶媒和物と、前記食品または飲料の酵素的褐変を阻害するために十分な条件下で接触させることを含んでなる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1 THP-1細胞における化合物の細胞傷害活性。これらの細胞は示された濃度の試験物質で48時間処理した。
【
図2】
図2 化合物の抗酸化活性。各抽出物の抗酸化活性のパーセンテージをDPPHフリーラジカルアッセイにより評価し、標品トロロックス(抗酸化活性92.08%)と比較した。
【
図3】
図3 THP-1細胞およびNIH-3T3細胞におけるTBHPにより誘導されるROS生成の阻害。ROS生成は、蛍光プローブDCFH-DAアッセイにより評価した。
【
図4】
図4 THP-1細胞およびNIH/3T3細胞におけるTNF-α生成の阻害。
【
図5】
図5 THP-1細胞およびNIH/3T3細胞におけるNF-κB生成の阻害。
【
図6】
図6 DOXA-1およびDOXA-2は、IFNγにより誘導されるSTAT3の活性化を阻害する。HeLa-STAT3-Luc細胞(15×10
3細胞/mL)は、漸増濃度の化合物とともにプレインキュベートし、IFNγ(25U/mL)で6時間処理した。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、USA)およびGloMax 96マイクロプレート照度計を用い、細胞溶解液にて測定した。
【
図7】
図7 HIF-1α経路の阻害。NIH/3T3-EPO-Luc細胞(10×10
4細胞/mL)を漸増濃度の化合物または低酸素模倣剤(デフェロキサミン)DFXとともに6時間プレインキュベートした。ルシフェラーゼ活性は、細胞溶解液にて測定し、結果を、DFXにより誘導されたHIF-1α経路の活性化の値を100%とし、阻害パーセンテージとして表す。
【
図8】
図8 B16-F10黒色腫細胞におけるチロシナーゼ活性に対するDOXA-1およびDOXA-2の効果。チロシナーゼ活性評価は、方法に記載されているように行った。簡単に述べれば、細胞を示された用量の試験物質または陽性対照としてのコウジ酸で72時間処理した。チロシナーゼ活性を決定するために、細胞を溶解させ、タンパク質抽出液を37℃で2時間、L-DOPA(メラニン前駆体)とともにインキュベーションを行い、活性を485nmで測定した。結果を非処理細胞(対照)に対するパーセンテージとして表す。
【発明の具体的説明】
【0010】
医学的使用
本発明者らは、式(I)の化合物がTNF-α活性、NF-kB、STAT3、HIF-1αおよびチロシナーゼ活性を阻害することによって炎症誘発状態を軽減することを見出した。よって、式(I)の化合物は、炎症誘発状態に、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する病態を治療するため、または皮膚色素沈着症を治療するために好適である。
【0011】
よって、第1の側面において、本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症の予防および/または治療における使用のための、式(I):
【化4】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物に関する。
【0012】
あるいは、本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患、または皮膚色素沈着症を予防および/または治療するための方法であって、式(I):
【化5】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法に関する。
【0013】
あるいは、本発明は、炎症誘発状態に関連する病態、酸化ストレスもしくは反応性酸素種の生成に関連する疾患または皮膚色素沈着症の予防および/または治療のための薬剤の製造のための、式(I):
【化6】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH(前記R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、前記R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される)、
からなる群から選択される)
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物の使用に関する。
【0014】
「アルキル」は、炭素原子および水素原子からなり、不飽和を含まず、分子の残りの部分と一重結合によって結合されている直鎖または分岐鎖炭化水素鎖ラジカルを指す。好ましい実施形態では、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピルおよびブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチルおよびイソ-ブチルを含む)は、特に好ましいアルキル基である。本明細書において使用する場合、用語アルキルは、特段の断りがない限り、環式基および非環式基の両方を指すが、環式基はシクロプロピルまたはシクロヘキシルなどの少なくとも3個の炭素環員を含んでなるであろう。アルキルラジカルは、ベンジルまたはフェネチルの場合のように、アリール基などの1以上の置換基で場合により置換されていてもよい。より好ましい実施形態において、アルキルは、C1-C6アルキルである。より好ましい実施形態において、C1-C6アルキルは、-CH3、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3および-(CH2)5CH3からなる群から選択される。
【0015】
「アルケニル」は、親アルケンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する、不飽和分岐鎖、直鎖、または環状炭化水素基を指す。本発明に関して、アルケニル基は、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。この基は、二重結合に関してZ型またはE型(シスまたはトランス)のいずれであってもよい。典型的なアルケニル基としては、限定するものではないが、エテニル;プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イルなどのプロペニル;シクロプロパ-2-エン-1-イル;ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イルなどのブテニルなどが挙げられる。2~8個の炭素原子を有するアルケニル基は、-(C2-C8)アルケニル基と呼ばれる。
【0016】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0017】
用語「ハロアルキル」は、上記で定義されるようなアルキル基を指し、例えば、CF3、CHF2、CH2F、CF2CF3など、これらの水素原子のうち少なくとも1つがハロゲン原子で置換されている。
【0018】
「アルコキシ」は、ラジカル-ORを指し、Rは、本明細書で定義されるようなアルキル基を表す。特に、用語「C1-6アルコキシ」は、ラジカル-ORを指し、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。代表例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0019】
「シクロアルキル」は、飽和または不飽和、ただし非芳香族の環状アルキル基を指す。本発明に関して、シクロアルキル基は、シクロペンタンまたはシクロヘキサンなどのC5-6シクロアルキルであり得る。
【0020】
用語「二環式環」は、縮合して二環式基を形成した2つの環式基を指し、これらの環式基の一方はフェニル基であり、他方の環式基は、N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC5-6芳香族複素環式基である。この二環式環のフェニル基は、C1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C2-8アルケニル、C5-6シクロアルキル、フェニル(C1-8アルキル、C2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C1-6アルコキシ、独立に選択されるC1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R3-、-C(O)NH-R3、-OC(O)R3、および-C(O)OR3-(前記R3はC1-6アルキルである)、5~6員芳香環基、ハロゲン、(C1-6アルキル)OCH2-、C1-6アルコキシ、C1-6アルキル基で二置換されたアミノ、NHC(O)R3-、-C(O)NH-R3、-OC(O)R3、および-C(O)OR3-(前記R3はC1-6アルキルである)から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい)で場合により置換されていてもよい。
【0021】
「アリール」は、本明細書において使用する場合、単環および多環化合物(分離したおよび/または縮合したアリール基を含む多環化合物を含む)に関する。典型的なアリール基は、1~3個の分離したおよび/または縮合した環および6~約18個の炭素環原子を含む。好ましくは、アリール基は、6~約10個の炭素環原子を含む。特に好ましいアリール基としては、置換または非置換フェニル、置換または非置換ナフチル、置換または非置換ビフェニル、置換または非置換フェナントリルおよび置換または非置換アントリルが挙げられる。この用語には、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが含まれる。好ましい実施形態では、アリールはフェニルである。
【0022】
「複素環式」、「ヘテロシクロ」または「ヘテロシクリル」は、1以上の炭素原子(および結合した水素原子のいずれか)がN、O、およびSから選択される同じまたは異なるヘテロ原子で独立に置換されている環式炭化水素基を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、その1、2、または3環員がN、O、またはSから独立に選択される3~10環員を含む。他の実施形態において、ヘテロシクリル基は、その1、2、または3個がN、O、またはSから独立に選択されるヘテロ原子である5~7環員を含む。
【0023】
用語「場合により置換されていてもよい」とは、非置換であるか、または1以上の位置において1以上の異なる官能基を有する1以上の置換基で置換されていることを意味する。この技術分野において理解されているように、従前に定義されたラジカルには、ある特定の置換度が存在し得る。用語「置換されている」は、「場合により」という用語が前についていてもいなくても、および本発明の式に含まれる置換基は、所与の構造中の水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルでの置換を指す。所与の構造中の2箇所以上が特定の基から選択される2個以上の置換基で置換されていてもよい場合、その置換基は全ての位置で同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
一実施形態において、本発明による使用のための化合物は、式:
【化7】
の化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である。
【0025】
特定の実施形態において、本発明は、R
1とR
2が同じ基である本発明による使用のための化合物またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を指す。好ましくは、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明による使用のための化合物は、
【化8】
またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物から選択される。より好ましい実施形態において、本発明による使用のための化合物は化合物(IV)である。別の好ましい実施形態では、本発明による使用のための化合物は化合物(V)である。
【0026】
ある特定の実施形態において、本発明は、Rがメチル基または-(CH
2)
2-COOHである本発明による使用のための化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を指す。よって、本発明による使用のための化合物は、
【化9】
から選択される。
【0027】
より好ましい実施形態において、Rは、メチル基であり、かつ、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明による使用のための化合物は、
【化10】
から選択される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、Rは-(CH
2)
2-COOHであり、かつ、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明による使用のための化合物は、
【化11】
である。
【0029】
別の好ましい実施形態において、本発明における使用のための化合物は、
【化12】
である。
【0030】
化合物IXおよびVIは、本発明に関してそれぞれDOXA-1およびDOXA-2と呼ばれる。
【0031】
より好ましい実施形態において、本発明による使用のための化合物は、
【化13】
である。
【0032】
別の好ましい実施形態において、本発明による使用のための化合物は、
【化14】
である。
【0033】
本発明はまた、本発明による使用のための化合物の薬学上許容される塩、立体異性体または溶媒和物にも関する。
【0034】
用語「塩」は、本発明による有効化合物のいずれの形態も意味すると理解されるべきであり、これはイオン形態を仮定し、または電荷を有し、対イオン(陽イオンもしくは陰イオン)と結合し、または溶液中にある。これにより、有効化合物と他の分子およびイオンの複合体、特に、イオン相互作用を介して複合体となる複合体も理解されるべきである。この定義には、特に、生理学上許容される塩を含み、この用語は「薬理学上許容される塩」または「薬学上許容される塩」に等しいと理解されるべきである。
【0035】
用語「生理学上許容される塩」または「薬学上許容される塩」は、特に、本発明に関して、生理学上忍容される酸とともに形成される塩(上記で定義される通り)、すなわち、特定の有効化合物と、特にヒトおよび/もしくは哺乳動物に使用される場合には、生理学上忍容される無機酸もしくは有機酸との、または特にヒトおよび/もしくは哺乳動物に使用される場合には、少なくとも1つの、好ましくは無機の、陽イオンとの塩と理解される。
【0036】
例えば、本明細書で提供される化合物の薬学上許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学法によって合成される。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または塩基形態と化学量論量の適当な塩基または酸を水または有機溶媒または両方の混合物中で反応させることによって作製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、2-プロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、および例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウム塩などの無機塩、および例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリが挙げられる。ヒドロキシチロソールは3個のヒドロキシル基を有するため、Na+およびNX4
+(前記Xは独立に、HまたはC1-C4アルキル基から選択される)などのアルカリ付加塩が特に好ましい。
【0037】
当業者には、本発明の範囲には、本発明の使用のための薬学上許容される塩を得るための可能性のある手段としての、薬学上許容されない塩も含まれることが明らかであろう。
【0038】
本明細書に言及されるいずれの化合物も、そのような具体的化合物ならびにある特定の変種または形態を表すことが意図される。本発明に記載の使用のための上記式(I)で表される化合物には、立体異性体が含まれる。用語「立体異性体」は、本明細書において使用する場合、このような化合物のいずれの鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体(E/Z)も含む。特に、本明細書に言及される化合物は不斉中心を有し得るため、種々の鏡像異性体形態またはジアステレオマー形態で存在する。よって、本明細書に言及される所与の化合物はいずれもラセミ化合物のいずれか一方、1以上の鏡像異性体形態、1以上のジアステレオマー形態、およびそれらの混合物を表すことが意図される。同様に、二重結合に関する立体異性または幾何異性も存在し得るため、いくつかの場合では、分子は(E)-異性体または(Z)-異性体(トランスおよびシス異性体)として存在すし得る。分子が数個の二重結合を有する場合には、各二重結合は、その分子の他の二重結合の立体異性と同じであっても異なっていてもよいその固有の立体異性を有する。本明細書に言及される化合物の鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体を含むあらゆる立体異性体、ならびにそれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
本発明による使用のための化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物、アルコラート、特にメタノラート)として結晶形であり得、両形態とも本発明の範囲内にあることが意図される。溶媒和物は水または非水性溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン、およびEtOAcを含み得る。結晶格子に組み込まれる水が溶媒分子である溶媒和物は一般に、「水和物」と呼ばれる。水和物としては、化学量論的水和物ならびに様々な量の水を含有する組成物が含まれる。溶媒和の方法は一般に当技術分野で公知である。
【0040】
開示される化合物がその構造によって命名または描写される場合、その溶媒和物を含む化合物は、結晶形、非結晶形またはそれらの混合物で存在し得る。これらの化合物または溶媒和物はまた、多型(すなわち、種々の結晶形で存在する能力)を呈する場合がある。これらの種々の結晶形は一般に「多型体」として知られる。構造によって命名または描写される場合、開示される化合物および溶媒和物(例えば、水和物)もまたそれらのあらゆる多型体を含むと理解されるべきである。多型体は、同じ化学組成を有するが、充填、幾何学的配置、および結晶固体状態の他の記述的特性が異なる。したがって、多型体は、形状、密度、硬度、変形性、安定性、および溶解特性などの、異なる物理特性を持ち得る。多型体は一般に、異なる融点、IRスペクトル、およびX線粉末回折パターンを示し、同定に使用することができる。当業者ならば、例えば、その化合物の固化に使用される条件を変更または調整することによって、異なる多型体が作製できることを認識するであろう。例えば、温度、圧力、または溶媒を変化させると異なる多型体を得ることができる。加えて、ある多型体は特定の条件下で別の多型体に自発的に変換し得る。
【0041】
さらに、本明細書に言及されるいずれの化合物も互変異性体として存在し得る。具体的には、互変異性体という用語は、平衡状態で存在し、一方の異性形態から他方の異性形態へ容易に変換される、化合物の2つ以上の構造異性体を指す。一般的な互変異性体対は、エナミン-イミン、アミド-イミド酸、ケト-エノール、ラクタム-ラクチムなどである。
【0042】
特段の断りがない限り、本発明による使用のための化合物は、同位体で標識された形態、すなわち、同位体が濃縮された1以上の原子が存在することだけが異なる化合物も含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの水素原子が重水素もしくはトリチウムで置換されているか、または少なくとも1つの炭素が、13Cもしくは14Cが濃縮された炭素で置換されているか、または少なくとも1つの窒素が、15Nが濃縮された窒素で置換されていること以外は原構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0043】
本発明による使用のための式(I)の化合物またはそれらの塩もしくは溶媒和物は、好ましくは、薬学上許容される、または実質的に純粋な形態である。薬学上許容される形態とは、とりわけ、希釈剤および担体などの通常の製薬添加剤を除いて、通常の投与レベルで毒性があると考えられる材料を含まない、薬学上許容されるレベルの純度を有することを意味する。原体の純度レベルは、好ましくは50%より高く、より好ましくは70%より高く、最も好ましくは90%より高い。好ましい実施形態では、それは95%より高い式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である。
【0044】
本発明はまた、本明細書に記載される化合物の代謝産物の、本発明による使用にも関する。本明細書に開示される化合物の「代謝産物」は化合物が代謝された際に形成されるその化合物の誘導体である。用語「活性代謝物」は化合物が代謝された際に形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。用語「代謝される」は、本明細書において使用する場合、特定の物質が生物体により変化されるプロセス(限定するものではないが、加水分解反応および酵素により触媒される反応を含む)の総体を指す。よって、酵素は、化合物に特定の構造的変化を生じさせ得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化還元反応を触媒し、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、活性化されたグルクロン酸分子の、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンおよび遊離スルヒドリル基への変換を触媒する。
【0045】
本発明はまた、本発明による使用のための化合物のプロドラッグに関する。用語「プロドラッグ」は、本明細書において使用する場合、プロドラッグが哺乳動物対象に投与された際に有効成分として式(I)の化合物を放出し得る共有結合された担体を表すものとする。有効成分の放出はイン・ビボ(in vivo)で起こる。プロドラッグは、当業者に公知の技術によって作製することができる。これらの技術は一般に、所与の化合物において適当な官能基を修飾する。しかしながら、これらの修飾された官能基は、慣例の操作またはイン・ビボにおいて元の官能基に再生する。本発明の化合物のプロドラッグには、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸、または類似の基が修飾されている化合物が含まれる。プロドラッグの例としては、限定するものではないが、エステル(例えば、酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体)、カルバメート(例えば、式(I)の化合物中のヒドロキシまたはアミノ官能基のN,N-ジメチルアミノカルボニル)、アミド(例えば、トリフルオロアセチルアミノ、アセチルアミノなど)などが挙げられる。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、上式の種々の基および置換基に関して上記された選択肢が組み合わせられる。本発明はまた、このような組合せの使用も対象とする。
【0047】
本発明における使用のための化合物は、本発明による使用のための化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物と薬学上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物であり得る。
【0048】
「医薬組成物」は、本明細書において使用する場合、生理学的に忍容され、ヒトまたは動物に投与された際にアレルギー反応または胃腸障害、めまいなどの類似の不都合な反応を一般に生じない組成物および分子実体に関する。好ましくは、用語「薬学上許容される」は、それが州もしくは連邦政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは動物、より詳しくはヒトにおける使用に関する他の一般的に認識されている薬局方に含まれていることを意味する。
【0049】
用語「賦形剤」は、有効成分とともに投与されるビヒクル、希釈剤またはアジュバントを指す。このような医薬賦形剤は、水および油(石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油および類似のものを含む)などの無菌液体であり得る。水または生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液、特に注射溶液用のものがビヒクルとして好ましく使用される。好適な医薬ビヒクルは、E.W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences", 第21版, 2005;または“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, Rowe C. R.; Paul J. S.; Marian E. Q., 第6版に記載されている。
【0050】
発明の医学的使用における使用のための医薬組成物を得るために、適当な量の上記で定義されるような式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物は、薬学上許容される賦形剤および/または担体とともに調剤することができる。
【0051】
好適な薬学上許容されるビヒクルとしては、例えば、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘稠パラフィン、香油、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸エステルペトロエトラール、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよび類似のものが挙げられる。
【0052】
本発明による使用のための、上記で定義されるような式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を含有する医薬組成物は、例えば、全身投与(例えば、静脈注射、皮下注射、筋肉注射)、経口投与、非経口投与または局所投与(そのためにそれは所望の投与方法の処方に必要な薬学上許容される賦形剤を含む)によるなど、選択される投与経路に適当であると考えられるいずれの医薬剤形で存在してもよい。加えて、本発明による使用のための上記で定義されるような式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を含んでなる組成物を非侵襲的投与様式による全身投与を可能とする鼻腔内または舌下投与を行うことも可能である。また、脳室内投与も適当であり得る。好ましい送達経路は経口である。
【0053】
当業者は、広く論じられている原理および手法を知っている。
【0054】
必要であれば、本発明による使用のための上記で定義されるような式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物は、組成物に可溶化剤および注射部位の疼痛を改善するための局所麻酔薬を含めて構成される。一般に、成分は別個に、または単位剤形で一緒に混合されて、例えば、有効薬剤の量を示したアンプルまたはサシェなどの密封容器中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。組成物が点滴により投与される場合、無菌製薬等級水または生理食塩水を含有する点滴ボトルで分配することができる。組成物が注射により投与される場合、投与前に成分が混合され得るように無菌注射水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0055】
静脈投与以外の場合、本組成物は、微量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することができる。本組成物は、液剤、懸濁剤、エマルション、ゲル、ポリマー、または徐放性製剤であり得る。本組成物は、当技術分野で公知であるように、従来の結合剤および担体とともに調剤することができる。製剤は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカライド、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を含むことができ、不活性担体は薬剤の製造において十分に確立された機能を有する。様々な送達系が知られ、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどの中への封入を含め、本発明の化合物を投与するために使用することができる。
【0056】
経口投与のための固体剤形としては、従来のカプセル剤、徐放性カプセル剤、従来の錠剤、徐放性錠剤、チュアブル錠、舌下錠、発泡錠、丸剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤およびゲルを含み得る。これらの固体剤形において、有効化合物はスクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性賦形剤と混合することができる。このような剤形はまた、通常の慣行の場合と同様に、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も含んでなり得る。カプセル剤、錠剤、発泡錠および丸剤の場合、剤形はまた緩衝剤も含んでなり得る。錠剤および丸剤は、腸溶コーティングを伴って作製することができる。
【0057】
経口投与のための液体剤形としては、水などの、当技術において慣用される不活性希釈剤を含有する薬学上許容されるエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含み得る。これらの組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、沈殿防止剤、および甘味剤、香味剤および芳香剤などの補助剤も含んでなる。
【0058】
注射用製剤、例えば、水性または油性懸濁液、無菌注射剤は、好適な分散剤、湿潤剤および/または沈殿防止剤を用いて、既知の技術に従って調剤され得る。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。無菌油も溶媒または懸濁媒として慣例的に使用される。
【0059】
局所投与に関して、本発明の化合物は、例えば、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤およびそれらの2種類以上の組合せなどの好適な賦形剤を使用する従来の方法に従って調剤され得るクリーム、ゲル、ローション、リキッド、ポマード、スプレー溶液、分散液、固形バー、エマルション、マイクロエマルションおよび類似のものとして調剤され得る。
【0060】
加えて、本発明による使用のための上記で定義されるような式(I)の化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物は、経皮パッチまたはイオン泳動デバイスの形態で投与されてもよい。一実施形態において、本発明による使用のための化合物は、経皮パッチとして、例えば、徐放性経皮パッチの形態で投与される。好適な経皮パッチは当技術分野で公知である。
【0061】
例えば、リポソームへの封入、マイクロバブル、エマルション、微粒子、マイクロカプセルおよび類似のものを含むいくつかの薬物送達システムが公知であり、本発明による使用のための薬剤または組成物を投与するために投与され得る。必要とされる用量は、単一の単位としてまたは徐放性形態で投与され得る。
【0062】
徐放性形態およびそれらの作製のために適当な材料および方法は、例えば、"Modified-Release Drug Delivery Technology", Rathbone, M. J. Hadgraft, J. and Roberts, M. S. (編), Marcel Dekker, Inc., New York (2002), "Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology", Wise, D. L. (編), Marcel Dekker, Inc. New York, (2000)に記載されている。本発明の一実施形態において、本発明による使用のための化合物の経口投与可能な形態は徐放性形態であり、少なくとも1種類のコーティングまたは基剤をさらに含んでなる。コーティングまたは徐放性基剤としては、限定するものではないが、天然ポリマー、半合成または合成水不溶性、修飾、ワックス、脂肪、脂肪アルコール、脂肪酸、天然半合成もしくは合成可塑剤、またはそれらの2種類以上の組合せが挙げられる。腸溶コーティングは、例えば、Johnson, J. L., "Pharmaceutical tablet coating", Coatings Technology Handbook (第2版), Satas, D. and Tracton, A. A. (編), Marcel Dekker, Inc. New York, (2001), Carstensen, T., "Coating Tablets in Advanced Pharmaceutical Solids", Swarbrick, J. (編), Marcel Dekker, Inc. New York (2001), 455-468に記載されているような、当業者に公知の従来法を用いて施すことができる。
【0063】
用語「予防」は、本明細書において使用する場合、本発明による化合物または前記化合物を含んでなる薬剤の、疾患を有する可能性があるとは診断されていないが、前記疾患を発症すると通常予想される、または前記疾患の高いリスクがある対象への投与に関する。予防は前記疾患の出現を回避することを意図する。予防は完全であり得る(例えば、疾患の全面的な不在)。予防はまた、例えば、対象における疾患の存在が本発明の化合物を投与しない場合に見られたであろうものよりも少なくなるように部分的であってもよい。予防はまた、病態に対する感受性の減退も指す。
【0064】
用語「治療」は、本明細書において使用する場合、本明細書に記載されるような病態を終結させる、回避する、改善する、またはそれに対する感受性を減退させることを目的とするいずれのタイプの療法も指す。好ましい実施形態では、治療という用語は、本明細書で定義されるような障害または病態の予防的処置(すなわち、病態に対する感受性を減退させるための療法)を指す。よって、「治療」およびその等価用語は、所望の薬理学的または生理学的効果を得ること、ヒトを含む哺乳動物において病状または障害のいずれの治療も包含することを指す。この効果は障害もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であり得、かつ/または障害および/もしくは障害に寄与する有害効果に関する部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であり得る。すなわち、「治療」は、(1)対象において障害が発生または再発しないように予防すること、(2)その発生を停止するなど、障害を阻害すること、(3)障害または少なくともそれに関連する症状を、宿主がもはや前記障害またはその症状に苦しまないように停止または終結させること、例えば、失われた、欠如したもしくは欠陥のある機能を復元もしくは修復する、または不十分なプロセスを刺激することによるなど、前記障害またはその症状の退縮を生じさせること、あるいは(4)障害またはそれに関連する症状を軽減、緩和、または改善すること(ここで、改善は少なくともパラメーターの大きさの低減を指して広義で使用される)を含む。
【0065】
用語「対象」は、本明細書において使用する場合、療法が望まれる任意の対象、特に、哺乳動物対象に関する。哺乳動物対象には、ヒト、飼育動物、農用動物、および動物園、競技、またはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、蓄牛、乳牛などが含まれる。本発明の好ましい実施形態において、対象は哺乳動物である。本発明のより好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0066】
本発明者らは、式(I)の化合物が抗炎症活性を示すことを見出した。加えて、式(I)の化合物は、いくつかの炎症性疾患に関与することが知られているTNF-α活性およびNF-κBを阻害することができる。よって、好ましい実施形態において、本発明は、炎症誘発状態に関連する病態の予防およびまたは治療における使用のための式(I)の化合物に関する。
【0067】
「炎症誘発状態に関連する病態」は、本明細書において使用する場合、炎症により引き起こされる疾患に関する。炎症誘発性病態は通常、IL-1α、β、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-17、IL-18、TNF-α、LT、LIF、オンコスタチン、およびIFNc1α、β、γなどの過剰なレベルの血中炎症性マーカーに関連する。炎症誘発状態という用語には、急性および慢性炎症疾患の両方が含まれる。用語「急性炎症性障害」は、炎症性応答に関連する症状の急速な発症および症状の比較的短い期間を特徴とする障害、および障害のエピソードを含むことを意図するが、「慢性炎症疾症」は、炎症性応答に関連する症状の持続的呈示および症状の継続期間を特徴とする障害を含むことを意図する。
【0068】
炎症誘発状態に関連する疾患の例は、急性および慢性血清反応陽性または血清反応陰性、神経変性疾患、加齢黄斑変性、全身性紅斑性狼瘡などの全身性自己免疫疾患、TNF-α依存性細胞変性、悪液質および自己分泌およびパラ分泌病的細胞増殖、重症筋無力症などの臓器特異的自己免疫疾患、多発性硬化症、脱髄疾患、髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、炎症性神経根障害、末梢神経障害、炎症性血管炎(例えば、結節性多発性動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎、およびリンパ腫様肉芽腫症)、血管炎、動脈閉塞、心不全、虚血性疾患、心筋炎、心膜炎、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、代謝症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、歯周病、慢性肝炎、肝炎、硬変、セリアック病、糖尿病、炎症性腸疾患、尿細管間質性腎炎、糸球体腎炎、腎不全、炎症性膀胱炎、前立腺炎、良性前立腺肥大、関節リウマチ、変形性関節症、少関節炎、多発性関節炎、脊椎関節炎、炎症性骨溶解、未分化脊椎関節症、未分化関節症、アミロイドーシスまたは類肉腫症、皮膚筋炎、アテローム性動脈硬化症、コラーゲン異常症、アトピー性皮膚炎、敗血症、甲状腺炎またはインスリン炎、臓器移植、多臓器不全、移植片対宿主病、外傷後血管形成術(例えば、血管形成術後再狭窄)、炎症性骨溶解、アレルギー障害、敗血性ショック、アポトーシス、壊死である。
【0069】
好ましい実施形態では、炎症誘発状態は、乾癬、湿疹、白斑、膿痂疹、座瘡、黒色腫、酒さ、蕁麻疹、肝斑および脱毛症などの皮膚病からなる群から選択される。
【0070】
別の好ましい実施形態では、炎症誘発状態は、関節リウマチ、動脈閉塞、糖尿病、神経変性疾患、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、喘息、乾癬、歯周病および加齢黄斑変性からなる群から選択される。
【0071】
チロシナーゼは、ドーパミンの酸化がドーパキノンを生成する神経メラニン生成プロセスを触媒する酵素である。しかしながら、ドーパキノンの過剰生産はニューロン損傷および細胞死をもたらす。このことは、ヒト脳における神経メラニン形成に重要な役割を果たし、パーキンソン病およびハンチントン病に関連する神経変性の一因となっている可能性があることを示唆する。
【0072】
本発明者らは、式(I)の化合物がチロシナーゼ阻害剤であることを見出した。よって、好ましい実施形態において、本発明の医学的使用によって処置される神経変性疾患は、パーキンソン病またはハンチントン病である。
【0073】
低酸素誘導因子-1(HIF-1)は、酸素分圧への細胞および組織の適応を担う転写因子である。構成的に発現されるβサブユニットおよび酸素により調節されるαサブユニットからなるヘテロ二量体であるHIF-1は、血管新生、鉄代謝、グルコース代謝、および細胞増殖/生存に関与する一連の遺伝子を調節する。HIF-1は神経変性疾患の医学的標的であることが知られている。本発明者らは、式(I)の化合物がHIF-1阻害剤であることを見出した。よって、好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病または筋萎縮性側索硬化症の予防および/または治療における使用のためのものである。
【0074】
さらに、STAT3は、最近、乾癬および乾癬様炎症性病態の発症および病因における重要な役者として浮上した。本発明者らは、式(I)の化合物がSTAT3を阻害し得ることを見出した。よって、別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、乾癬または乾癬様炎症性病態の治療における使用のためのものである。
【0075】
本発明者らはまた、式(I)の化合物が抗酸化活性を有することも示した。よって、別の態様において、式(I)の化合物は、上記のように、酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患の予防および/または治療における使用のためのものである。
【0076】
「酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患」は、本明細書において使用する場合、酸化ストレスを特徴とする対象の病態に関し、前記対象において、酸化ストレスのいずれの有害な作用または症状も示し、評価し、測定し、または診断することができる。
【0077】
「酸化ストレス」は、本明細書において使用する場合、反応性酸素種(ROS)と対象の抗酸化防御能の間のアンバランスを特徴とする対象の状態、すなわち、ROS、特に、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2
-)、過酸化水素(H2O2)およびヒドロキシルフリーラジカル(・OH)のレベルの上昇に関する。反応性酸素種の生成は、酸化ストレスの特に破壊的な側面である。このような種としては、フリーラジカル、アルデヒドおよび過酸化物が挙げられる。これらの種の低反応性のいくつか(例えば、スーパーオキシド)は、遷移金属または他の酸化還元循環化合物(キノンを含む)との酸化還元反応によって、広範囲の細胞損傷を引き起こし得るより侵襲的なラジカル種へと変換され得る。酸化ストレスによる高分子の損傷は、種々の臓器の最適な機能の喪失および加齢に関連する。酸化ストレスはまた早期老化にも直接関連する。
【0078】
好ましい実施形態において、酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患は、虚血再潅流傷害、肝疾患、加齢性免疫不全および早期老化症、加齢黄斑変性、網膜剥離、高血圧性網膜疾患、ブドウ膜炎、変性網膜損傷、白内障発生、網膜症、メニエール病、薬物性毒性、特発性耳炎、胃腸疾患、筋骨格系疾患、心血管疾患、神経変性疾患および脳血管疾患からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患は、神経変性疾患、より好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病または遅発性ジスキネジアIである。
【0079】
別の好ましい実施形態において、酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患は、脳血管疾患、心血管疾患、呼吸器系疾患、筋骨格系疾患、胃腸疾患、加齢性免疫不全および早期老化症、耳疾患、眼疾患、薬物性毒性からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、酸化ストレスまたは反応性酸素種の生成に関連する疾患は、神経変性疾患、より好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病または遅発性ジスキネジアである。
【0080】
本発明者らは、式(I)の化合物がチロシナーゼ阻害剤であることも示した。チロシナーゼは、メラニンの生成を制御するための律速酵素であるオキシダーゼである。皮膚の過剰色素沈着に関連する病態の治療のためにチロシナーゼ活性の低減が標的化されてきた。よって、好ましい実施形態では、本発明による式(I)の化合物は、皮膚色素沈着症の予防および/または治療における使用のためのものである。
【0081】
用語「皮膚色素沈着症」は、本明細書において使用する場合、メラニンの生産における障害、好ましくは、過剰色素沈着による障害に関し、より好ましくは、この障害は肝斑、薬物性色素沈着症、黒色表皮症、黒子、アジソン病またはヘモクロマトーシスである。
【0082】
本発明による予防および/または治療における使用のために、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくは異性体または本発明の医薬組成物は有効量で存在する。
【0083】
薬物または薬理学的に有効な薬剤の「有効」量または「治療上有効な量」という用語は、無毒であるが所望の効果を提供するために十分な薬物または薬剤の量を意味する。
【0084】
個々の必要は様々であっても、本発明の薬剤の有効量に関する最適範囲の決定は当業者の一般的な経験に属す。一般に、このような化合物の有効量を提供するために必要な用量は、当業者により調整可能であり、年齢、健康、適応度、性別、食事、体重、処置頻度および機能障害または疾病の性質および程度、患者の医学的状態、投与経路、使用する特定の化合物の薬理学的考慮事項、例えば、活性、有効性、薬物動態および毒性学プロファイル、全身薬物送達を使用するかどうか、およびその化合物が薬物の組合せの一部として投与されるかどうかによって異なる。
【0085】
本発明による使用のための化合物の有効量は広範囲で異なってよく、一般に、適用の特定の状況、曝露期間およびその他の考慮事項によって異なる。特定の実施形態において、用量は0.05mg/kg~50mg/kg、より好ましくは1mg/kg~20mg/kgの範囲である。
【0086】
好ましい実施形態において、有効量は、約0.005%~約0.04重量%、約0.0075重量%~約0.0375重量%、約0.001重量%~約0.035重量%、約0.00125重量%~約0.0325重量%、約0.0015重量%~約0.0325重量%、約0.00175重量%~約0.03重量%、より好ましくは約0.0018重量%~約0.032重量%である。特定の実施形態では、有効量は、約0.005%~約0.02重量%、好ましくは約0.005重量%~約0.015重量%、より好ましくは約0.005重量%~約0.01重量%である。いくつかの実施形態において、有効量は、約0.001重量%、約0.002重量%、約0.003重量%または約0.004重量%である。パーセンテージ(%w/w)は、化合物を含んでなる組成物の総重量に対するまたは食品、食品包装物、医療装置もしくは表面に対する式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくは異性体の重量として表される。
【0087】
別の実施形態において、有効量は、μg/mLまたはμg/g(化合物を含んでなる組成物のmLまたはgに対する式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、溶媒和物もしくは異性体のμg)で表され、よって、有効量は、約75~約375μg/mL(またはμg/g)、約100~約350μg/mL(またはμg/g)、約125~約325μg/mL(またはμg/g)、約150~約325μg/mL(またはμg/g)、約175~約300μg/mL(またはμg/g)、より好ましくは約180~約320μg/mL(またはμg/g)である。特定の実施形態では、有効量は、約50~約200μg/mL(またはμg/g)、好ましくは50~約150μg/mL(またはμg/g)、より好ましくは約50および約100μg/mL(もしくはμg/g)である。いくつかの実施形態において、有効量は、約100μg/mL(もしくはμg/g)、約200μg/mL(もしくはμg/g)、約300μg/mL(もしくはμg/g)または約400μg/mL(もしくはμg/g)である。
【0088】
本発明による使用のための本明細書で定義されるような式(I)の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは異性体が表面に存在する場合、それは好ましくは、約1~約200μg/cm2、好ましくは約1~約100μg/cm2、好ましくは約1~約50μg/cm2、より好ましくは約5~約300μg/cm2の有効量である。
【0089】
さらなる好ましい実施形態において、上式において種々の基および置換基に関して上記された選択肢が組み合わせられる。本発明はまた、このような組合せも対象とする。本発明は、化合物と疾患のいずれの組合せも包含する。
【0090】
美容方法
チロシナーゼは、メラニン合成の律速段階を触媒する重要な酵素である。メラニンの過剰生産は、そばかす、日光黒子(しみ)および肝斑などの皮膚障害を引き起こす。TNF-αの上方調節は、ケラチノサイトによるUVBに対する重要な初期応答であり、皮膚の炎症カスケードの重要な成分といえる。加えて、NF-κBはUV照射時に活性化され、IL-1、TNF-αおよびマトリックスメタロプロテアーゼ-1を誘導することが知られている。本発明者らは、式(I)の化合物がチロシナーゼ阻害剤、ならびにTNF-αおよびNF-κB阻害剤であり、抗酸化化合物として働くことを実証した。よって、式(I)の化合物は、美容方法において、皮膚加齢、照射皮膚を予防および/または治療するため、または皮膚美白のために好適である。
【0091】
よって、別の態様において、本発明は、皮膚加齢、照射皮膚を予防および/もしくは治療するため、または皮膚美白のための美容方法であって、式(I):
【化15】
(式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8 アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH、ここで、R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される、
からなる群から選択される)
の化合物またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる美容方法に関する。
【0092】
一実施形態において、本発明による方法における使用のための化合物は、式:
【化16】
の化合物またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である。
【0093】
特定の実施形態において、本発明は、R
1およびR
2が同じ基である本発明の方法における使用のための化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物に関する。好ましくは、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明による方法における使用のための化合物は、
【化17】
またはその美容上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物から選択される。より好ましい実施形態において、本発明による方法における使用のための化合物は、化合物(IV)である。
【0094】
特定の一実施形態において、本発明は、Rがメチル基または-(CH
2)
2-COOHである、本発明による方法における使用のための化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である。よって、本発明の方法のための化合物は、
【化18】
から選択される。
【0095】
より好ましい実施形態において、Rはメチル基であり、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明の方法における化合物は、
【化19】
から選択される。
【0096】
別の好ましい実施形態において、Rは-(CH
2)
2-COOHであり、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明の方法における化合物は、
【化20】
である。
【0097】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法における化合物は、
【化21】
である。
【0098】
化合物IXおよびVIは、本発明に関して、それぞれDOXA-1およびDOXA-2と表される。
【0099】
より好ましい実施形態において、化合物は、
【化22】
である。
【0100】
別の好ましい実施形態では、化合物は、
【化23】
である。
【0101】
本明細書において使用する場合、用語「美容方法」は、対象において皮膚の外観を向上させるために使用される方法に関する。本発明の美容方法において使用される化粧用組成物としては、スキンケアクリーム、ローション、パウダー、リップスティック、アイおよびフェイシャルメイクアップ、ウェットペーパータオル、ゲル、デオドラント、手指消毒剤、ベビー用品、バスオイル、バブルバス、バスソルト、バターおよび多くの他のタイプの製品が挙げられる。
【0102】
「皮膚加齢」は、本明細書において使用する場合、その生物学および機能のほぼ全ての側面に影響を及ぼす皮膚の多因子プロセスに関し、内因的因子(例えば、時間、遺伝因子、ホルモン)および外因的因子(例えば、UV曝露、汚染、煙草の煙)の両方によって駆動される。皮膚加齢は老化によってももたらされる。加齢の美容的有害効果は、内因的加齢または暦年的加齢の特徴に関し、限定されない具体例として、薄く、乾燥した皮膚、小じわ、弾力性の低下、異常な色素沈着、白髪および脱毛などの目に見える徴候が挙げられる。
【0103】
好ましい実施形態において、皮膚加齢は、光老化である。用語「光老化」は、皮膚の早期老化をもたらす紫外線またはHEV(高エネルギー可視光、またはブルーライトとしても知られる)への皮膚の長期曝露によるプロセスに関し、限定するものではないが、弛緩、たるみ、色素沈着における色の変化または不規則性、異常なおよび/または過剰な角質化などの、加齢と同じ身体的特徴を呈する。
【0104】
「照射皮膚」は、本明細書において使用する場合、DNAを直接破壊することにより、またはフリーラジカル生成を介して細胞を傷害し得る一般的放射線により引き起こされる皮膚上の損傷に関する。皮膚反応としては、乾燥、脱毛、色素沈着変化および紅斑が挙げられる。
【0105】
「皮膚の美白」は、ライトニング、ブライトニング、脱色素沈着、およびブリーチングとしても知られ、通常は皮膚のメラニン含量を低減することによる皮膚の色を薄くするための処置である。
【0106】
本発明の美容方法に記載の使用のための化合物は、化粧品、機能性食品または化粧用組成物の形態であり得る。
【0107】
本明細書において使用する場合、用語「化粧品」は、1以上の化粧品(機能的化粧品、ダーマシューティカルまたはアクティブコスメティック)を含んでなる身体または動物身体における使用に好適な製品、すなわち、より高いおよびより有効な濃度では使用者の皮膚、毛髪および/または爪に効果を有する有効成分を含有する化粧品と医薬品の特徴を有する局所用ハイブリッド製品を指し、したがって、それらは化粧品と薬物の中間レベルに位置する。化粧品の具体例としては、精油、セラミド、酵素、ミネラル、ペプチド、ビタミンなどが挙げられる。
【0108】
本明細書において使用する場合、用語「機能性食品」は、健康利益をもたらす、または疾患予防または軽減に関連付けられている治療的作用を有する1以上の天然物を含んでなる、ヒトまたは動物における使用に好適な製品を指し、それは、食品中に通常存在する(または存在しない)濃縮天然生活性製品の非食品基材(例えば、カプセル、パウダーなど)中に提供され、それらの食品中に存在するよりも高い用量で摂取されると、通常の食品が持ち得る効果よりも高い有利な健康効果を発揮する栄養補助食品を含む。よって、用語「機能性食品」には、単離または精製された食品、ならびに通常、経口使用される剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、飲用バイアルなどで一般に提供される添加物または栄養補助食品が含まれ、このような製品は、生理学的利益または疾患、一般には慢性疾患に対する保護を提供する。所望により、本発明により提供される機能性食品は、式(I)の化合物に加えて、1以上の機能性食品(疾患の予防もしくは軽減に関連する製品または物質)、例えば、フラボノイド、オメガ-3脂肪酸など、および/または1以上のプレバイオティクス(プロバイオティクスの活性および/または成長を刺激する非消化性食品成分)、例えば、オリゴフルクトース、ペクチン、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、ラクツロース、ヒト乳汁オリゴ糖、食物繊維などを含有することができる。
【0109】
用語「化粧用組成物」または「パーソナルケア組成物」は、本明細書において使用する場合、ヒトもしくは動物の個人衛生における使用のために、または自然な美しさを増強する、もしくはヒトまたは動物身体の構造または機能に影響を及ぼさずに身体の外観を変化させるために好適であり、このような効果を提供する1以上の製品を含んでなる組成物を指す。所望により、本発明により提供される化粧用組成物は、本発明の式(I)の化合物に加えて、1以上の化粧品または化粧品製品、すなわち、ヒトまたは動物身体の外側部分(例えば、表皮、体毛系、爪、口唇など)または歯および口腔粘膜と、それらを洗浄する、それらを着香する、それらの外観を変化させる、それらを保護する、それらを良好な状態で維持する、または体臭を矯正するという限定的なまたは主要な目的のために接触させておくことを意図する物質または混合物を含有することができる。美容上許容されるビヒクルの具体例としては、INCI(化粧品原料の国際命名法)リストに含まれる製品が挙げられる。化粧用またはパーソナルケア組成物には、バーム、パッド、ポマード、クリームなどの製品、オイル、界面活性剤、保湿剤、植物抽出物、ビタミン、抗酸化剤、サンスクリーン剤、香料、保存剤などが含まれる。
【0110】
以上に記載されるような成分は好ましくは、クリーム、ゲル、ローション、オイル、軟膏、パウダー、スティック、ケーキ、または局所適用可能なその他の形態に製剤され得る化粧用組成物中に提供される。得られる化粧用組成物は液体、固体、半固体、分散液、懸濁液、溶液または乳剤の形態であってよく、水性または無水のいずれであってもよい。本発明の化粧用組成物はまた、ファンデーションメックアップ、マスカラ、リップカラー、ブラシ、アイシャドウなどのカラー化粧用組成物の形態であってもよい。
【0111】
本発明の特定の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、局所経路によって投与される。本発明の組成物の局所投与に十分な製剤は、本発明の医学的使用に関して詳細に説明され、本発明の美容方法にも同様に当てはまる。
【0112】
所望により、本発明の美容方法のための式(I)の化合物は、布、不織布または医療装置に組み込まれる。布、不織布または医療装置の具体例としては、限定するものではないが、包帯、ガーゼ、Tシャツ、パンティーストッキング、靴下、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、帯具、ベッドカバー、ウェットペーパータオル、接着パッチ、非接着パッチ、閉鎖パッチ、マイクロエレクトロニクスパッチおよびフェイスマスクが挙げられる。
【0113】
本発明の方法に記載の使用のための化合物は、化粧的有効量で投与され得る。
【0114】
用語「化粧的有効量」は、本明細書において使用する場合、所望の効果を提供するために十分な本発明の化合物の量に関し、一般に、他の理由の中でも、化合物自体の特徴および達成されるべき化粧的効果によって決定される。化粧的有効量を得るための用量は、例えば、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの年齢、体重、性別または忍容性などの、ある範囲の因子によって決まる。
【0115】
本発明の美容方法の特定の好ましい実施形態において、本発明の化粧用組成物は局所経路によって投与される。本発明による使用のための化合物の局所投与のために十分な製剤は、本発明の医学的使用に関して詳細に説明され、本発明の美容方法にも同様に当てはまる。
【0116】
従前に記載される用語および実施形態は全て、本発明のこの態様にも同様に当てはまる。
【0117】
酵素的褐変を阻害するための方法
果物および野菜の褐変は、製品の官能的性質を損なうことから、栽培者および食品産業にとっての大きな問題である。酵素的褐変速度は、活性チロシナーゼおよびフェノール化合物の濃度、酸素利用度、組織のpHおよび温度条件によって決まる。本発明者らは、式(I)の化合物がチロシナーゼ阻害剤であることを実証した。よって、本発明の化合物は、酵素的褐変を阻害するための方法において使用することができる。
【0118】
よって、一態様において、本発明は、食品または飲料における酵素的褐変の阻害の方法であって、前記食品または飲料を式(I):
【化24】
[式中、一方のZはNであり、他方は-C-R
2であり;かつ、R
2およびR
1は独立に、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
ここで、Rは、
a)直鎖または分岐鎖C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、ジ-ハロメチル、トリ-ハロメチル、C
5-6シクロアルキル、(C
1-6アルキル)OCH
2-、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、
b)C
1-8アルキル、C
2-8アルケニル、ハロゲン、フェニル、C
1-6アルコキシ、独立に選択されるC
1-6アルキル基で二置換されたアミン、-NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよいフェニル(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
c)N、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有し、かつ、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8 アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい5~6員芳香環、
d)少なくとも1つのフェニル基ならびにN、S、およびOから選択される1以上のヘテロ原子を有するC
5-6芳香族複素環式基を含有する二環式環、ここで、前記二環式環のフェニル基は、
-C
1-8アルキル、直鎖または分岐鎖C
2-8アルケニル、C
5-6シクロアルキル、
-b)で定義されるフェニル、
-5~6員芳香環基、
-ハロゲン、
-(C
1-6アルキル)OCH
2-、C
1-6アルコキシ、
-C
1-6アルキル基で二置換されたアミノ、
NHC(O)R
3-、-C(O)NH-R
3、-OC(O)R
3、および-C(O)OR
3-(前記R
3はC
1-6アルキルである)、
から独立に選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい、ならびに
e)-CH(R
4)-CH(R
5)COOH、ここで、R
4は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択され、かつ、R
5は、H、NH
2、OHおよびCH
2COOHから選択される、
からなる群から選択される)
の化合物またはその塩、立体異性体もしくは溶媒和物と、前記食品または飲料の酵素的褐変を阻害するために十分な条件下で接触させることを含んでなる方法に関する。
【0119】
一実施形態において、本発明による化合物は、式:
【化25】
の化合物、またはその塩、立体異性体または溶媒和物である。
【0120】
特定の実施形態において、本発明の方法における化合物は、R
1およびR
2が同じ基である化合物、またはその薬学上許容される塩、立体異性体もしくは溶媒和物である。好ましくは、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明の方法における使用のための化合物は、
【化26】
またはその塩、立体異性体または溶媒和物から選択される。より好ましい実施形態において、本発明の化合物は、化合物(IV)である。
【0121】
特定の一実施形態において、本発明は、Rがメチル基もしくは-(CH
2)
2-COOHである本発明による化合物、またはその塩、立体異性体または溶媒和物である。よって、本発明の化合物は、
【化27】
から選択される。
【0122】
より好ましい実施形態において、Rはメチル基であり、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明の化合物は、
【化28】
から選択される。
【0123】
別の好ましい実施形態において、Rは-(CH
2)
2-COOHであり、R
1およびR
2は-(CH
2)
4-CH
3である。よって、本発明の化合物は、
【化29】
である。
【0124】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法における使用のための化合物は、
【化30】
である。
【0125】
化合物IXおよびVIは、本発明においてそれぞれDOXA-1およびDOXA-2と呼ばれる。
【0126】
より好ましい実施形態において、化合物は、
【化31】
である。
【0127】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法における使用のための化合物は、
【化32】
である。
【0128】
用語「食品」は、好ましくは、果物および野菜に関する。
【0129】
「酵素的褐変」は、PPOにより触媒されるモノフェノールおよびジフェノールの、o-キノンへの酸化の結果であり、o-キノンは自発的に重合して、特徴的な褐変または黒点の形成をもたらす暗色の高分子量ポリマーを形成する。酵素は、化学反応を触媒するタンパク質を意味する。本発明の方法の好ましい実施形態において、褐変はチロシナーゼにより引き起こされる。
【0130】
チロシナーゼ(EC1.14.18.1)は、銅が6または7つのヒスチジン残基および1つのシステイン残基によって結合される多機能性銅含有酵素である。この酵素は、モノフェノラーゼ活性およびジフェノラーゼ活性の両方を有する。それはメラニンの生合成に関与し、チロシン(モノフェノール)の3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンまたはDOPA(o-ジフェノール)へのオルト水酸化、およびDOPAのドーパキノン(o-キノン)への酸化を触媒する。
【0131】
「酵素的褐変の阻害」は、本明細書において使用する場合、褐変速度の有意な緩徐化から褐変の抑制までを意味する。この阻害は、式(I)の化合物を適用しない場合の褐変に比べて少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または少なくとも60%であり得る。
【0132】
酵素的褐変の阻害は、限定するものではないが、食品または飲料の目視検査、分光光度的定量化、味、匂いなどを含む方法により決定され得る。加えて、阻害は、実施例で使用される方法などの当技術分野で公知の任意の方法によりチロシナーゼ活性の低下を検出することによって測定され得る。
【0133】
処理の形態は、処理される食品または飲料および求められる結果によって決まり、例えば、ディッピング、噴霧、粉衣、散布、浸漬、混合および/またはソーキングが含まれる。これらの化合物は、水性希釈剤、例えば、水、塩水またはバッファーに加えて食品に適用するか、または例えば果汁にそのまま加えることができる。必要な量は、食品または飲料の褐変しやすさ、食品の状態、および貯蔵条件によって決まる。褐変を抑制または阻害するために十分な量は、食品分野の熟練者によって経験的に決定することができる。
【0134】
阻害化合物と食品または飲料との接触は部分的であっても完全であってもよく、非酵素的褐変を阻害するために十分な時間であり得る。
【0135】
従前に記載される用語および実施形態は全て、本発明のこの態様にも同様に当てはまる。
【0136】
以下、本発明を実施例により説明するが、これらの実施例は単に例示であって、本発明の範囲を限定するものではないと考えられる。
【実施例】
【0137】
材料および方法
化合物
DOXA-1 DMSO 100nM~0,195nM中ドキサジアジン-1
DOXA-2 DMSO 100nM~0,195nM中ドキサジアジン-2
【化33】
【0138】
化合物DOXA-1およびDOXA-2は、WO2018/197523に開示されているような方法によって得ることができる。
【0139】
細胞培養
細胞株THP-1(FiHM-IMDEA-USPCEU)、NIH/3T3(線維芽細胞)、B16-F10(黒色腫)は、37℃、5%CO2の加湿雰囲気下、10%FBSおよび1%抗生物質ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する添加DMEM培地(DMEM完全培地)で維持した。
【0140】
細胞傷害活性アッセイ THP-1細胞を96ウェルプレートに5×104細胞/ウェルの密度で播種し、NIH/3T3細胞を96ウェルプレートに5×103細胞/ウェルの密度で播種し、両方を37℃、5%CO2の加湿雰囲気下で一晩インキュベートした。次に、細胞を示された濃度の試験化合物および対照としてのDMSOで24時間処理した。試験化合物はDMSO(保存溶液)に溶解させ、培地でDMSOの終濃度が0.2%となるように希釈した。MTT溶液(50μL、PBS中7mg/mL)を各ウェルに加え、プレートをさらに2時間インキュベートした。次に、培地を除去し、形成したホルマザン結晶を溶解させるために100μLのDMSOを各ウェルに加えた。分光光度ELISAプレートリーダー(SpectraMax(登録商標)i3、Molecular Devices、CA、USA)を用い、590nmで吸光度を測定した。サンプルは、細胞生存率が≧90%となった際にTHP-1およびNIH/3T3細胞株に対して無毒であると見なした。
【0141】
総抗酸化活性アッセイ DPPHアッセイは水素原子(または1個の電子)を供与する活性を測定し、したがって、フリーラジカルを消去する抗酸化活性の測定を提供する。DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジン)は紫色の安定なフリーラジカルであり、これは還元されて黄色のジフェニルピクリルヒドラジンとなる。1mL容量のメタノール中で、試験サンプルをDPPH 0.125mMと混合する。トロロックス(200μM)を陽性対照として含める。室温、暗所で30分のインキュベーション後に、Thermo Scientific Genesys 10uv走査分光光度計を用い、517nmで吸光度測定値を読み取る。低い吸光度の反応混合物ほど高いフリーラジカル消去活性を示した。DPPHラジカル消去活性は、下式:
%抗酸化活性=[(AC-AS)/AC]×100
に従って計算する。式中、Ac(対照)は対照反応(DPPH)の吸光度であり、As(サンプル)はDPPHおよびサンプルの吸光度である。
【0142】
細胞の抗酸化活性アッセイ ROSの細胞内蓄積は、二酢酸2’,7’-ジヒドロフルオレセイン(DCFH-DA)を用いて蛍光計により検出する。THP-1細胞(1×105細胞/ウェル)を96ウェル黒色プレートにて10%FBSを添加したDMEM中で培養し、細胞が80%の集密度に達した際に培養培地を更新する。阻害については、細胞を試験物質とともに30分間プレインキュベートし、0.4mM Terc-ブチル-ヒドロペルオキシド(TBHP)で処理する。3時間後、37℃で30分間、培養培地中、10μM DCFH-DAとともに細胞をインキュベートする。
【0143】
DCFH-DA上の酢酸基は細胞内エステラーゼによって除去され、THP-1細胞内のプローブを捕捉する。次に、細胞を37℃にてPBSで洗浄し、ROSの生成を、DCFHの酸化によって生じるDCFの細胞内蓄積による蛍光の変化によって測定する。DCF蛍光により示される細胞内ROSはFLRソフトウエアを用いて検出され、それらのデータは、イメージングシステムIncuCyte HD(Essen BioScience)のtotal green object integrated intensity(GCU×μm2×ウェル)により分析する。
【0144】
TNF-α活性アッセイ TNF-αのタンパク質発現レベルは、製造者の説明書(Diaclone)に従って酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用することにより測定した。吸光度を分光光度ELISAプレートリーダー(Anthos 2020、バージョン2.0.5、Biochrom Ltd.,UK)にて450nmで読み取った。TNF-α阻害のパーセンテージを、処理細胞により分泌された観測TNF-α量(nM)とTNF-αのベースライン分泌(nM)の比から計算した。デキサメタゾン(Sigma-Aldrich;50-02-2)を陽性対照として使用した(0.01μM)。結果を溶媒対照DMSO(0.1%)に対して正規化した。
【0145】
NF-κB活性アッセイ NIH/3T3-KBF-Luc細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子を駆動する最小シミアンウイルス40プロモーターに融合された3コピーのNF-κB結合部位(主要組織適合性複合体プロモーター由来)を含むプラスミドKBF-Lucプラスミドで安定にトランスフェクトされていた。細胞(NIH/3T3-KBF-Lucでは1×104)をアッセイ前日に96ウェルプレートに播種する。次に、これらの細胞を試験物質で15分間処理した後、30ng/mLのTNF-αで刺激する。6時間後、これらの細胞をPBSで2回洗浄し、25mM トリスリン酸(pH7.8)、8mM MgCl2、1mM DTT、1%トリトンX-100、および7%グリセロールを含有する50μLの溶解バッファーに、水平振盪機にて室温で15分間溶解させる。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、マディソン、WI、USA)の説明書に従ってGloMax 96マイクロプレート照度計(Promega)を用いて測定する。RLUを計算し、結果をTNF-αにより誘導されるNF-κB活性(100%活性化)に対する阻害のパーセンテージとして表す。各濃度の試験品に関する実験は三連のウェルで行う。
【0146】
STAT3活性アッセイ HeLa-STAT3-luc細胞は、プラスミド4xM67 pTATA TK-Lucで安定にトランスフェクトされていた。細胞(15×103細胞/mL)をアッセイ前日に96ウェルプレートに播種した。次に、細胞を化合物で15分間処理した後、IFN-γ 25IU/mLで刺激する。6時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、25mM トリスリン酸(pH7.8)、8mM MgCl2、1mM DTT、1%トリトンX-100、および7%グリセロールを含有する50μLの溶解バッファーを、水平振盪機にて室温で15分間溶解させる。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、マディソン、WI、USA)の説明書に従ってGloMax 96マイクロプレート照度計(Promega)を用いて測定した。RLUを計算し、結果をIFN-γにより誘導されるSTAT3活性(100%活性化)に対する阻害のパーセンテージとして表す。各濃度の試験品に関する実験は三連のウェルで行う。
【0147】
HIF-1α活性アッセイ NIH/3T3-EPO-luc細胞は、プラスミドEpo-Lucプラスミドで安定にトランスフェクトされていた。EPO低酸素応答エレメント(HRE)-ルシフェラーゼリポータープラスミドは、pGL3ベクター中のエリスロポエチン遺伝子のプロモーターに由来する3コピーのHREコンセンサス配列を含有する。細胞(NIH/3T3-EPO-lucでは1×104)をアッセイ前日に播種する。翌日、細胞を化合物または陽性対照としてのデフェロキサミン(DFX)150μMのいずれかで刺激する。6時間の刺激の後、これらの細胞を25mM トリスリン酸pH7.8、8mM MgCl2、1mM DTT、1%トリトンX-100、および7%グリセロールに、水平振盪機にて室温で15分間溶解させる。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、マディソン、WI、USA)の説明書に従ってGloMax 96マイクロプレート照度計(Promega)を用いて測定する。RLUを計算し、結果をEPO-luc活性に対する阻害誘導/阻害のパーセンテージとして表す。各濃度の試験品に関する実験は三連のウェルで行う。
【0148】
チロシナーゼ活性アッセイ 細胞のチロシナーゼ活性を測定するために、B16-F10細胞を数種類の用量の化合物で3日間処理し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する溶解バッファー(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8、1%トリトンX-100、1mM PMSF、1mM EDTA)中、4℃で30分間のインキュベーションにより溶解させる。この溶解液を15,000×gで10分間遠心分離して、チロシナーゼの供給源としての上清を得る。この反応混合物は、20mMリン酸バッファー、pH6.8、1.25mM L-DOPA(Sigma-Aldrich)を含有した。37℃で2時間のインキュベーション後、ドーパクロム形成を、マイクロプレートリーダー(TECAN)にて475nmの波長で吸光度を測定することによりモニタリングする。コウジ酸2mMを陽性対照として使用する。
【0149】
結果
実施例1-細胞傷害活性アッセイ
試験化合物の細胞傷害活性を分析するために、THP-1細胞をDOXA-1およびDOXA-2とともに48時間インキュベートし、細胞傷害性を、Incucyte顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡法により測定した。全てのサンプルは、供試濃度ではTHP-1細胞に対して細胞傷害性を示さなかった(
図1)。
【0150】
実施例2-総抗酸化活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、無細胞アッセイ(DPPH)においてそれぞれ4.608nMおよび3.364nMのIC
50で抗酸化活性を示した(
図2)。
【0151】
実施例3-細胞の抗酸化活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、THP-1細胞において8.151nMおよび3.441nMのIC
50で抗酸化活性を示した。また、NIH/3T3細胞において、3,329nM、2.228nMおよび1.12nMのIC
50で抗酸化活性を示した。どちらの場合にも、TBHPにより誘導されるROSの細胞内レベルは低減される(
図3)。
【0152】
実施例4-TNF-α活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、THP-1細胞において、32.53nMおよび3.469nMのIC
50でTNF-α生成の阻害を示した。また、NIH/3T3細胞において、それぞれ17.39nMおよび1.58nMのIC
50でTNF-α生成の阻害を示した(
図4)。
【0153】
実施例5-NF-κB活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、THP-1細胞において63.62nMおよび5.182nMのIC
50でNF-κB生成の阻害を示した。また、NIH/3T3細胞において、67.67nMおよび2.414nMのIC
50でNF-κB生成の阻害を示した(
図5)。
【0154】
実施例6-STAT3活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、それぞれ3.088nMおよび0.1396nMのIC
50でIFNγにより誘導されるSTAT3の活性化を阻害した(
図6)。
【0155】
実施例7-HIF-1α活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、NIH/3T3-EPO-Lucにおいて、それぞれ12.42nMおよび5.07nMのIC
50で、HIF-1α安定化の代替マーカーとしての、DFXにより誘導されるEPO-Lucの活性化を阻害することが見出された(
図7)。
【0156】
実施例8-チロシナーゼ活性アッセイ
DOXA-1およびDOXA-2は、B16-F10細胞において、それぞれ18.00nMおよび8.64nMのIC
50でメラニン合成を阻害した(
図8)。
【国際調査報告】