(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】薬剤送達装置で使用するための容器を充填するための方法、そのような装置のための容器、および患者を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/12 20060101AFI20220803BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220803BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220803BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220803BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220803BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/465 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K9/12
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/06
A61K45/00
A61K31/573
A61K31/137
A61P43/00 111
A61P11/06
A61P11/00
A61K31/4704
A61K31/538
A61K31/46
A61K31/439
A61K31/40
A61K31/05
A61K31/352
A61K31/135
A61K31/465
A61K31/58
A61K31/56
A61K31/167
A61K31/485
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571474
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2020051386
(87)【国際公開番号】W WO2020249934
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・コール
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ガードナー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA51
4C076AA93
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC27
4C076DD35
4C076FF70
4C076GG50
4C084AA17
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA20
4C084ZA59
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC07
4C086BC20
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC74
4C086CB09
4C086CB15
4C086CB22
4C086DA08
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA20
4C086ZA59
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206FA10
4C206FA11
4C206FA14
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA77
4C206MA79
4C206NA20
4C206ZA59
(57)【要約】
薬剤送達装置で使用するための容器を充填する方法であって、使用される噴射剤が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む、方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置で使用するための容器を充填するための方法であって、
(a)(ハイドロ)ハロカーボンを含む流体成分で前記容器をパージすることと、
(b)医薬品有効成分を含む薬学的組成物を前記容器に導入することと、
(c)前記容器を密封することと、
(d)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分を前記容器に導入することと、を含み、
ステップが、(a)、(b)、(c)、次いで(d)の順序で実行されるか、または
前記ステップが、(b)、(a)、(c)、次いで(d)の順序で実行される、方法。
【請求項2】
前記ステップが、(a)、(b)、(c)、次いで(d)の順序で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップが、(b)、(a)、(c)、次いで(d)の順序で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体成分が蒸気である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流体成分が液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)が、周囲雰囲気による前記容器からの前記流体成分の実質的にいくらかの変位が発生する前に実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
薬剤送達装置で使用するための容器を充填するための方法であって、
(i)医薬品有効成分を含む薬学的組成物を前記容器に導入することと、
(ii)前記容器を密封することと、
(iii)必要に応じて、少なくとも部分的に前記容器を排気することと、
(iv)必要に応じて、ハイドロフルオロカーボンを含む流体成分を前記容器に導入することと、
(v)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分を前記容器に導入することと、を含み、
ステップ(i)~(v)が、記載された順序で実行され、
ステップ(iii)および(iv)のうちの少なくとも1つが必須である、方法。
【請求項8】
前記流体成分の総重量に基づいて、前記流体成分の少なくとも約95重量%が(ハイドロ)ハロカーボンであり、
好ましくは、前記流体成分の少なくとも99重量%が(ハイドロ)ハロカーボンであり、
より好ましくは、前記流体成分の少なくとも99.9重量%が(ハイドロ)ハロカーボンであり、
さらにより好ましくは、前記流体成分が完全に(ハイドロ)ハロカーボンである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記(ハイドロ)ハロカーボンが、ハイドロフルオロアルカンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハイドロフルオロアルカンが、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイドロフルオロアルカンが、1,1,1,2-テトラフルオレタン(tetrafluorethane)(R-134a)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハイドロフルオロアルカンが、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ハイドロフルオロアルカンが、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)の混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ハイドロフルオロカーボンが、ハイドロフルオロオレフィンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ハイドロフルオロレフィン(hydrofluorolefin)が、テトラフルオロプロペンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テトラフルオロプロペンが、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)、好ましくはトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze(E))である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記薬学的組成物が、固体、溶液または懸濁液の形態にある、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的組成物が、ペレット化された固体などの固体の形態にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記容器を密封する前記ステップが、前記容器の開口部上にバルブを含むキャップを取り付けることを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記噴射剤成分の総重量に基づいて、前記噴射剤成分の少なくとも約95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)であり、
好ましくは、前記噴射剤成分の少なくとも約99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)であり、
より好ましくは、前記噴射剤成分の少なくとも約99.9重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)であり、
さらにより好ましくは、前記流体成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分を前記容器に導入する前記ステップの後の前記容器内の293Kでの絶対圧力が、約500kPa~約600kPa、好ましくは約500kPa~約550kPa、さらにより好ましくは約500kPa~約520kPaである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記容器を、約50~約60℃の温度で約2~約4分間、例えば、約55℃の温度で約3分間、液体に浸漬するステップをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬品有効成分が、コルチコステロイド(ICS)、短時間作用型ベータ-2アゴニスト(SABA)、長時間作用型ベータ-2アゴニスト(LABA)、短時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、カンナビノイド、オピオイド、クロモグリケート(cromoglicate)、ニコチン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬品有効成分が、コルチコステロイド(ICS)、短時間作用型ベータ-2アゴニスト(SABA)、長時間作用型ベータ-2アゴニスト(LABA)、短時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、好ましくは、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記短時間作用型ベータ-2アゴニストが、レボサルブタモール、サルブタモール、テルブタリン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、好ましくは、サルブタモールおよびサルブタモールスルフェートからなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
前記長時間作用型ベータ-2アゴニストが、ホルモテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、サルメテロール、インダカテロール、オロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、好ましくは、フマル酸ホルモテロール、フマル酸ホルモテロール二水和物、キシナホ酸サルメテロールおよびオラダテロール(oladaterol)からなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項28】
前記長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)が、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、それらの薬学的に許容される塩およびエステル、ならびにグリコピロレートの薬学的に許容される塩、好ましくは臭化グリコピロニウムからなる群から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項29】
前記カンナビノイドが、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノールまたはカンナビジオール(CBD)などのテトラヒドロカンナビノール(THC)である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記オピオイドが、モルヒネまたはメタドンからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記容器が、定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法によって製造される薬剤送達装置のための、容器。
【請求項33】
好ましくは、前記薬剤送達装置が定量吸入器(MDI)であり、前記容器が定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターである、請求項32に記載の容器を備えた、薬剤送達装置。
【請求項34】
呼吸器障害を患っているまたは患う可能性が高い患者を治療するための方法であって、前記患者に、請求項32に記載の容器から治療有効量または予防有効量の前記医薬品有効成分を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達装置で使用するための容器、特に定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターを充填する方法であって、使用される噴射剤が1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MDIは、最も重要な種類の吸入薬物送達系であり、当業者に周知である。それらは、薬物が溶解、懸濁、または分散される液化噴射剤を使用して、別個で正確な量の薬物を患者の気道に要求に応じて送達するように設計される。MDIの設計および操作は、多くの標準的教科書および特許文献に記載されている。しかしながら、それらのすべては、薬物製剤を収容する加圧容器、ノズル、および作動したときに制御された量の薬物をノズルを通して分注することができるバルブアセンブリを備える。これらの構成要素のすべては典型的に、マウスピースを備えたハウジング内に配置されている。薬物製剤は、薬物が溶解、懸濁、または分散される噴射剤を含み、共溶媒、界面活性剤および防腐剤などの他の物質を含有してもよい。
【0003】
噴射剤をMDIで十分に機能させるためには、噴射剤がいくつかの特性を有する必要がある。これらには、適切な沸点および蒸気圧が含まれ、これにより噴射剤は室温で密閉容器中において液化することができるが、低い周囲温度でも薬物を霧状の製剤として送達するためにMDIを作動させた際に十分に高い圧力を生じることができる。さらに、噴射剤は、急性および慢性毒性が低く、心臓感作に対する許容限界が高くなければならない。噴射剤は、薬物、容器、ならびにMDIデバイスの金属および非金属構成要素との接触においてある程度の化学的安定性を有し、MDIデバイスにおける任意のエラストマーおよび他のポリマー材料から低分子量の物質を抽出する傾向が低くなければならない。噴射剤はまた、均質な溶液、安定な懸濁液、または安定な分散液中に十分な時間、薬物を維持することが可能でなければならない。薬物が噴射剤の懸濁液中にある場合、液体中の薬物粒子の急激な沈降または浮揚を避けるために、液体噴射剤の密度は固体薬物の密度と同様であることが望ましい。最後に、噴射剤は、使用時に患者に重大な燃焼の危険性を与えてはならない。特に、気道中で空気と混ざったときに、不燃性であるかまたは可燃性の低い混合物が形成されなければならない。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(R-12)は、特性の好適な組み合わせを有し、しばしばトリクロロフルオロメタン(R-11)と混合されて、長年にわたって最も広く使用されたMDI噴射剤であった。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンなどの完全および部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン(CFC)が地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的な懸念により、それらの製造および使用を厳しく制限し、最終的には完全に廃止すべきであると規定したモントリオール議定書の協定を多くの国が締結した。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンは、冷却用途については1990年代に段階的に廃止されたが、モントリオール議定書におけるエッセンシャルユースの例外の結果として、MDIの分野ではある程度、まだ使用されている。
【0005】
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)が、R-12の代わりの冷媒およびMDI噴射剤として導入された。1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)も、防火(例えば、コンピューター機器一式)およびMDIの分野においてR-12の代わりとして導入され、これらの用途のためにR-134aと混合されることもある。
【0006】
R-134aおよびR-227eaは低いオゾン層破壊係数(ODP)を有するが、それらはそれぞれ1430および3220の地球温暖化係数(GWP)を有し、これは、現在、特に、それらが大気中に放出される場合の分散的な使用に関して、一部の規制機関によって高すぎるとみなされている。
【0007】
1,1-ジフルオロエタン(R-152a)は、オゾン層破壊係数(ODP)がゼロであることに加えて、124のその低い地球温暖化係数のため、R-134aおよびR-227eaの代替のMDI噴射剤として提案されている。毒性学的評価により、R-152aは、急性および慢性の吸入毒性の程度が非常に低く、その化合物は、変異原性物質、催奇形物質または発がん物質のいずれでもないことが示されている。化学的安定性の研究により、R-152aはエアロゾル製剤で一般的に使用される溶媒と反応せず、加水分解に対して非常に安定であり、典型的に、溶媒および噴射剤により腐食を受ける傾向がある、いくつかのプラスチックと適合性があることが明らかになった。さらに、EP2706987において、発明者らは、噴射剤としてのR-152aの使用が、R-134aが噴射剤として使用される場合に必要とされる量と比較して、薬物を薬学的組成物に溶解するのに必要とされるエタノールの量を低減させることを見出した。したがって、R-152aは、それを噴射剤として使用することを望ましくする多くの有利な特性を有する。
【0008】
しかしながら、R-134aもR-227eaも大気条件下で可燃性または爆発性でもないが、R-152aは可燃性および爆発性の両方であり、3.9vol%の爆発下限界(LEL)および16.9%の爆発上限界を有する。R-152aの可燃性および爆発性の性質は、加圧エアロゾル容器を充填するために使用される従来のプロセス、特にMDIで使用されるプロセスが、以下で説明するように不適切であることを意味する。したがって、通常、既存のプロセスおよび設備を大幅に変更することなく噴射剤としてR-152aを使用するように変換することはできない。
【0009】
MDIで使用するための加圧エアロゾル容器を充填するために使用される3つの従来のプロセス:冷却充填、一段式圧力充填、および二段式圧力充填が存在する。
【0010】
冷却充填は、薬物製剤を液相に変換するために低温が使用される製造方法である。冷却充填プロセスは、室温で液体である溶媒または担体を用いて医薬品有効成分(API)の均質な懸濁液または溶液を作製することから開始する。並行して、製剤の残りを形成するバルク噴射剤が、事前に冷却されたバルク製造/混合容器に入れられ、そこで低温により、噴射剤が液体形態であることが確実にされる。次いで、濃縮物を同じ容器に移し、続いて製剤全体(噴射剤、溶媒/担体、およびAPIを含む)を混合する。
【0011】
冷却充填プロセスの次のステップは、適切なサイズのキャニスター/容器に製剤を分注することである。これは、製剤を混合容器から充填ヘッドにポンプで送り、冷却された液体製剤の所定の部分を開口キャニスターに供給することによって達成される。続いて、バルブアセンブリを各キャニスターの上部に配置し、次いで所定の位置に圧着する。各キャニスターの上部とバルブアセンブリのエラストマー成分との間に密封が形成される。
【0012】
次いで、完成した各キャニスターの重量をチェックして、正確な量の製剤が存在することを確実にする。次いで、製品をウォーターバス中でストレス試験にかけて、適切な密封が形成されていること、および噴射剤が漏れる可能性のある隙間がないことを確実にし得る。冷却充填プロセスでは、ウォーターバスはエアロゾルを室温まで温める目的も果たす。それでも、キャニスター内の製剤は、圧力がかかっているため液体のままである。
【0013】
冷却充填とは対照的に、一段式および二段式の両方の圧力充填プロセスは、噴射剤を液相に維持するために低温の代わりに圧力を使用する。これらのプロセスでは、噴射剤は液体形態で加圧混合容器に保持され、薬物濃縮物は、APIが室温で液体である溶媒または担体と混合される、冷却充填の場合と同じ方法で作製され得る。
【0014】
一段式圧力充填プロセスでは、APIおよび噴射剤が混合され、バルク製造/混合容器内で圧力下で保持される。次いで、空のキャニスターが充填テーブルに供給され、バルブアセンブリが上部に配置され、所定の位置に圧着される。次いで、完全な製剤が圧力下でバルブアセンブリを介してキャニスターに送り込まれる。冷却充填プロセスと同様に、ユニットはチェックされ、計量され、水浴され、さらなる処理に供される。
【0015】
二段式圧力充填プロセスでは、APIまたは薬物濃縮物が開口キャニスターに配置される。次いで、バルブアセンブリがキャニスターの上部に配置され、所定の位置に圧着されて密封が形成される。次いで、噴射剤が、圧力下でバルブアセンブリを介して後方へ、そしてキャニスターに送り込まれる。この方法を使用すると、濃縮物の混合は、バルク製造容器ではなくキャニスターで行われる。このステップ後、ユニットはチェックされ、計量され、水浴され、さらなる処理に供される。
【0016】
MDIで使用するための加圧エアロゾル容器を充填するために使用される3つの従来の方法のそれぞれは、その可燃性および爆発性の特性ために、R-152aを使用する場合には不適切である。
【0017】
既存の冷却充填および一段式圧力充填設備では、急速に移動する充填ヘッドを備えたラインの近くの大型のバルク製造/混合容器の存在は、R-134aおよびR-227eaの不燃性および非爆発性のために、主要な爆発安全性の問題ではない。したがって、充填ラインは、多くの場合、建造物または設備の中心部に位置する。
【0018】
しかしながら、R-152aが既存の設備で使用される場合、R-152aの可燃性および爆発性の特性のため、リスクプロファイルが許容されない。その結果、R-152aを用いた既存の冷却充填または一段式圧力充填設備を大幅に変更することなく使用することは困難である。
【0019】
対照的に、従来の二段式圧力充填プロセスでは、噴射剤およびAPI(または薬物濃縮物)がキャニスターに別々に加えられるため、バルク製造容器でこれらの成分を大量に混合する必要はない。したがって、既存の二段式圧力充填設備は、ほとんどまたは全く変更せずにR-152aで使用するのに適している可能性がある。
【0020】
しかしながら、従来の二段式圧力充填プロセスにおいて、バルブアセンブリをキャニスターに圧着する前に、APIまたは薬物濃縮物をキャニスターに加える必要があることは、エアロゾル化もしくは発泡によりAPIが損失するか、または蒸発により溶媒もしくは担体が損失する危険性なしに、密封されたキャニスターを排気することが困難であり得ることを意味する。
【0021】
したがって、典型的なプロセスでは、噴射剤がバルブを介して加えられる前に、キャニスターの排気が実行されない。これにより、分圧が約1バールの空気を含有する完全に充填されたキャニスターが生じる。米国などの一部の地域では、充填されたキャニスターを高温のウォーターバスでストレス試験にかけることが義務付けられている。キャニスター内に存在する空気から生じるさらなる圧力により、ストレス試験が失敗する可能性がある。空気の存在はまた、キャニスター内のAPIおよび/または噴射剤の安定性を損なう場合がある。
【0022】
定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターを充填するためのプロセスに対する必要性が存在し、使用される噴射剤は、既存の設備および機器と広く適合性のある、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む。
【発明の開示】
【0023】
本発明者らは、驚くべきことに、エアロゾルキャニスターを(ハイドロ)ハロカーボンを含む流体でパージすることによって、および/または噴射剤を充填する前にキャニスターを排気することによって、必要なストレス性能を有し、既存の設備および機器にわずかな変更を加えるだけで調製することができる、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)噴射剤を含むキャニスターを提供することが可能であることを見出した。
【0024】
したがって、本発明の第1の態様では、薬剤送達装置で使用するための容器を充填するための方法であって、
(a)(ハイドロ)ハロカーボンを含む流体成分で容器をパージすることと、
(b)医薬品有効成分を含む薬学的組成物を容器に導入することと、
(c)容器を密封することと、
(d)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分を容器に導入することと、を含み、
ステップが、(a)、(b)、(c)、次いで(d)の順序で実行されるか、または
ステップが、(b)、(a)、(c)、次いで(d)の順序で実行される、方法が提供される。
【0025】
他に示されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書で言及される本発明のすべての実施形態および特定の特徴は、本発明の開示から逸脱することなく、単離して、または本明細書で言及される任意の他の実施形態および/または特定の特徴と組み合わせて採用され得る(したがって、本明細書に開示される、より具体的な実施形態および具体的な特徴を記載する)。
【0027】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、当技術分野でその通常の意味を取り、すなわち、構成要素が関連する特徴を含むがこれに限定されない(すなわち、とりわけ含む)ことを示す。したがって、「含む」という用語は、関連する特徴から本質的になる構成要素への言及を含む。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、関連する尺度(例えば、その重量)に従って、関連する特徴の少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、例えば、少なくとも99%)から形成される関連する構成要素を指す。
【0028】
本発明の第1の態様のプロセスでは、ステップ(a)および(b)は、いずれの順序で実行されてもよい。つまり、ステップ(a)はステップ(b)の前に実行されてもよく、またはステップ(b)はステップ(a)の前に実行されてもよい。ステップ(b)がステップ(a)の前に実行される場合、流体成分で容器をパージしている間、薬学的組成物が容器から移動しないように注意しなければならない。
【0029】
ステップ(a)および(b)が実行される順序に関係なく、両方のステップはステップ(c)および(d)の前に実行され、ステップ(c)はステップ(d)の前に実行される。したがって、4つのステップの順序は、(a)、(b)、(c)、次いで(d)、または(b)、(a)、(c)、次いで(d)のいずれかである。
【0030】
ステップ(a)において、容器、特に定量吸入器(MDI)で使用するためのキャニスターは、ハイドロフルオロカーボンを含む流体成分でパージされる。誤解を避けるために、流体という用語は、蒸気および液体を含む。典型的に、例えば、空気または窒素の元の雰囲気を含む容器が、パージが行われるパージステーションに供給される。
【0031】
一部のプロセスでは、流体成分は蒸気の形態にあり、例えば、方向付けられたノズルによってほぼ周囲圧力で容器の本体に送達され得る。送達された蒸気は、元の雰囲気の容器をパージする。
【0032】
一部のプロセスでは、流体成分は液体の形態にある。容器内の液体が蒸発すると、元の雰囲気の容器がパージされる。
【0033】
「パージする」という用語は、適切な体積のガスまたは蒸気が、直接または液体の蒸発を介して容器に送達されて、元の雰囲気の実質的にすべてを置換することを意味する。したがって、ステップ(a)の後、容器は、例えば、空気または窒素の元の雰囲気を実質的に含まない。
【0034】
本明細書で使用される場合、成分の「実質的に」への言及は、関連する尺度(例えば、その重量)に従って、成分の少なくとも50%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または特に、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、またはより具体的には少なくとも99%)を指す。
【0035】
本発明のプロセスで使用されるパージ流体成分は、ハイドロフルオロカーボンを含む。いくつかの流体成分は、少なくとも約95重量%のハイドロフルオロカーボン、例えば、少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、または少なくとも約99.9重量%のハイドロフルオロカーボンを含み得る。いくつかのパージ流体成分は、完全にハイドロフルオロカーボンからなっていてもよい。
【0036】
特定の値(量など)に関して本明細書で使用する場合、「約」との用語(または「およそ」などの同様の用語)は、そのような値が定義された値の最大10%(特に、最大5%、例えば、最大1%)変動し得ることを示すと理解される。各場合において、そのような用語は、表記「±10%」などと(または関連する値に基づいて計算された特定量の変動を示すことによって)置き換えてもよいことが企図される。各場合において、そのような用語は削除してもよいこともまた企図される。
【0037】
「(ハイドロ)ハロカーボン」という用語は、本発明者らは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子および必要に応じて炭素原子に加えて水素原子を含む直鎖または分岐化合物を指す。したがって、この用語は、ハロゲンおよび炭素に加えて水素原子を含むパーハロカーボンおよびハイドロハロカーボンを含む。
【0038】
言及され得るいくつかの(ハイドロ)ハロカーボンには、(ハイドロ)フルオロカーボン、好ましくは、C2-10ハイドロフルオロカーボン、例えばC2-C5ハイドロフルオロカーボンなどのハイドロフルオロカーボンが含まれる。
【0039】
言及され得るいくつかのハイドロフルオロカーボンには、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、およびそれらの混合物などのハイドロフルオロアルカンが含まれる。一部のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)である。一部のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)である。一部のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である。
【0040】
言及され得る一部のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物である。混合物中の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)の量の増加を、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)単独と比較して混合物の可燃性を低減させるために使用することができる。例えば、パージするステップが、可燃性の格付けが低い既存の設備、例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および/または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)などの不燃性噴射剤で使用するように設計された定量吸入器(MDI)キャニスター充填設備で実行される場合、可燃性が低減した混合物が有用であり得る。
【0041】
便宜上、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物は、混合物中の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の総量に対して、最大約90重量%、例えば、最大約80重量%、最大約70重量%、最大約60重量%、最大約50重量%、最大約40重量%、最大約30重量%、最大約20重量%、または最大約10重量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)を含有し得る。
【0042】
言及され得る他のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物である。混合物中の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)の量の増加を、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)単独と比較して混合物の可燃性を低減させるために使用することができる。例えば、パージするステップが、可燃性の格付けが低い既存の設備、例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および/または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)などの不燃性噴射剤で使用するように設計された定量吸入器(MDI)キャニスター充填設備で実行される場合、可燃性が低減した混合物が有用であり得る。
【0043】
便宜上、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の混合物は、混合物中の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の総量に対して、最大約90重量%、例えば、最大約80重量%、最大約70重量%、最大約60重量%、最大約50重量%、最大約40重量%、最大約30重量%、最大約20重量%、または最大約10重量%の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)を含有し得る。
【0044】
言及され得る他のプロセスでは、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)の混合物である。便宜上、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)の混合物は、混合物中の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)の総量に対して、最大約90重量%、例えば、最大約80重量%、最大約70重量%、最大約60重量%、最大約50重量%、最大約40重量%、最大約30重量%、最大約20重量%、または最大約10重量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)を含有し得る。
【0045】
言及され得るいくつかの他のハイドロフルオロカーボンには、ハイドロフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィンが含まれる。言及され得るいくつかのハイドロフルオロプロペンには、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)、好ましくは1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)などのテトラフルオロプロペンが含まれる。1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)は、2つの幾何異性体、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze(E))およびシス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze(Z))として利用可能であり、そのうち、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロルプロペン(tetrafluororpropene)(R-1234ze(E))が好ましい。
【0046】
ステップ(a)で使用されるパージ流体成分が可燃性である場合、パージステーションおよび隣接する機器は、使用される比較的少容量の可燃性流体成分に関連するリスクを軽減するように適切に設計される。
【0047】
ステップ(b)において、医薬品有効成分を含む薬学的組成物が容器に導入される。定量吸入器(MDI)キャニスター設備では、キャニスターは、医薬製剤がキャニスターに計量される充填ステーションに供給される。
【0048】
薬学的組成物中の医薬品有効成分は、経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適した1つ以上の医薬物質を含み得る。関連する医薬物質には、コルチコステロイド(ICS)、短時間作用型ベータ-2アゴニスト(SABA)、長時間作用型ベータ-2アゴニスト(LABA)、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、短時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、クロモグリケート(cromoglicate)(例えば、クロモグリク酸ナトリウム)、合成、半合成もしくは天然のカンナビノイド、合成、半合成もしくは天然のオピオイド、またはそれらの組み合わせが含まれる。他の関連する医薬物質には、ニコチンが含まれる。医薬品有効成分は、上記のクラスの医薬物質からの物質の組み合わせを含み得る。
【0049】
医薬品有効成分はまた、溶媒、共溶媒、共懸濁剤および界面活性剤を含む1つ以上の賦形剤と組み合わせて使用することができる。
【0050】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、コルチコステロイドを含むか、またはそれからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適したコルチコステロイド、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用されており、MDIを使用して送達することができるコルチコステロイドのいずれも、本発明の方法において使用することができる。好適なコルチコステロイドには、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾンおよびフルチカゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、例えば、それらの薬学的に許容される塩およびエステルが含まれる。好ましい化合物には、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンが挙げられる。最も好ましいコルチコステロイドは、ブデソニド、モメタゾン、フルチカゾン、およびベクロメタゾン、特にブデソニドおよびモメタゾン、とりわけブデソニドである。
【0051】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、短時間作用型ベータ-2アゴニスト(SABA)を含むか、またはそれからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適した短時間作用型β2アゴニスト、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用されており、MDIを使用して送達することができる短時間作用型β2アゴニストのいずれも、本発明の方法において使用することができる。好適な短時間作用型ベータ-2アゴニストには、レボサルブタモール、サルブタモールおよびテルブタリン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、例えば、それらの薬学的に許容される塩およびエステルが含まれる。好ましい化合物には、サルブタモールおよびサルブタモールスルフェートが含まれる。
【0052】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、長時間作用型ベータ-2アゴニスト(LABA)を含むか、またはそれからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適した長時間作用型β2アゴニスト、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用されており、MDIを使用して送達することができる長時間作用型β2アゴニストのいずれも、本発明の方法において使用することができる。好適な長時間作用型ベータ-2アゴニストには、ホルモテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、サルメテロール、インダカテロールおよびオロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、例えば、それらの薬学的に許容される塩およびエステルが含まれる。好ましい化合物には、ホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。特に好ましい化合物には、フマル酸ホルモテロール、フマル酸ホルモテロール二水和物、キシナホ酸サルメテロール、およびオラダテロール(oladaterol)が含まれる。
【0053】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)を含むか、またはそれからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適した長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用されており、MDIを使用して送達することができる長時間作用型ムスカリンアンタゴニストのいずれも、本発明の方法において使用することができる。好適な長時間作用型ムスカリンアンタゴニストには、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、およびそれらの薬学的に許容される誘導体、特にそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。好ましい化合物には、グリコピロレート(グリコピロニウムとしても知られる)の薬学的に許容される塩が含まれる。グリコピロレートは四級アンモニウム塩である。好適な薬学的に許容される対イオンには、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、p-クロロ安息香酸塩、ジフェニル酢酸塩またはトリフェニル酢酸塩、o-ヒドロキシ安息香酸塩、p-ヒドロキシ安息香酸塩、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸塩、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、およびベンゼンスルホン酸塩が含まれる。好ましい化合物は、臭化グリコピロニウムとしても知られるグリコピロレートの臭化物塩である。
【0054】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、合成または天然のカンナビノイドを含むか、またはそれらからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適したカンナビノイド、例えば、疼痛、発作、関節炎、悪心、神経変性疾患、例えば、多発性硬化症、がんおよびHIVを治療するため、または喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用されており、MDIを使用して送達することができるカンナビノイドのいずれも、本発明の方法において使用することができる。適切なカンナビノイドには、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノールおよびカンナビジオール(CBD)などのテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれる。
【0055】
言及され得るいくつかの方法では、医薬品有効成分は、合成、半合成、もしくは天然のオピオイドを含むか、またはそれらからなる。経口または経鼻エアロゾル送達経路を介した送達に適したオピオイドのいずれも、本発明の方法において使用することができる。適切なオピオイドには、モルヒネまたはメタドンが含まれる。言及され得る他の方法では、医薬品有効成分は、カンナビノイドおよびオピオイドの組み合わせを含む。
【0056】
薬学的組成物は、固体、溶液または懸濁液の形態であり得る。いくつかの薬学的組成物は、ペレット化された固体の形態であり得る。薬学的組成物が固体の形態にある場合、固体はペレット化されることが特に好ましい。医薬品のペレット形成のための機器は、当技術分野では一般的である。ペレット化された固体の粒子サイズおよび凝集強度は、密封容器が排気される場合(ステップ(iii)において)、薬学的組成物のエアロゾル化に抵抗するのに十分大きいが、それでも噴射剤中の組成物の良好な分散を可能にするのに十分小さいはずである。医薬ペレットは、ペレットの機械的または分散特性を最適化するための賦形剤を含んでもよい。
【0057】
医薬品有効成分に加えて、薬学的組成物は、いくつかの追加の成分を含んでもよい。これらの成分は、薬学的組成物が容器に加えられる前にその薬学的組成物中に存在していてもよい。あるいは、成分は、薬学的組成物が容器に加えられる前または後など、薬学的組成物とは別に容器に加えられてもよい。
【0058】
このような追加の成分には、医薬品有効成分が可溶性である担体溶媒、例えばエタノールが含まれ得る。
【0059】
このような追加の成分には、より安定した懸濁液を生じる界面活性剤が含まれ得る。一般的に使用される界面活性剤には、オレイン酸、レシチン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0060】
薬学的組成物はまた、バルブ潤滑剤などの、定量吸入器(MDI)のための薬物製剤に従来から使用されている種類の1つ以上の他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤が薬学的組成物中に含まれる場合、それらは通常、当技術分野で慣用されている量で使用される。
【0061】
容器には、複数の用量を提供するのに十分な薬学的組成物が充填され得る。MDIで使用される加圧エアロゾルキャニスターは、典型的には、50~200回の個別用量を含有する。
【0062】
ステップ(c)において、容器は密封される。密封するとは、流体成分の実質的な損失または周囲雰囲気の侵入を防ぐために、容器の開口部が閉じられるか、覆われるか、または塞がれることを意味する。
【0063】
周囲雰囲気(空気または窒素など)による流体成分(ステップ(a)において容器から導入される)の実質的ないずれかの変位が起こる前に、ステップ(c)が実行されることが好ましい。そうでなければ、ステップ(a)によって達成される利益が低減される。したがって、ステップ(a)から(c)が実行されるステーションは、理想的には、充填生産ライン上で互いに隣接して配置され、それによって、パージ、薬学的組成物の導入、および容器の密封の間の時間が最小限に抑えられる。代替的または追加的に、ステップ(b)および(c)の間に、またはステップ(a)の実行と、ステップ(b)もしくは(c)のいずれかの実行との間に大幅な遅延が存在する事象において、容器への空気または窒素の侵入がないように、ステップ(a)から(c)は、流体成分の雰囲気中で実行され得る。
【0064】
言及され得る一部のプロセスでは、定量吸入器(MDI)で使用するための密封されていないキャニスターなどの密封されていない容器は、バルブを含まない。そのような容器は、容器の開口部上にバルブを含むキャップを取り付けることによって(例えば、圧着することによって)密封することができる。密封されたキャニスターにおけるバルブの存在により、ステップ(d)における噴射剤組成物の導入を可能にし、最終的に、最終使用者による計量された用量の薬学的組成物の分注を可能にする。キャップはまた、薬剤送達装置における容器の機能に必要な他の要素を含んでもよい。
【0065】
言及され得る一部のプロセスでは、密封されていない容器は、ステップ(d)における噴射剤組成物の導入に必要なバルブおよび任意の他の要素を既に含んでいてもよく、最終的に、容器が薬剤送達装置に取り付けられている場合、最終使用者による計量された用量の薬学的組成物の分注を可能にする。これらのプロセスでは、容器は、その容器の開口部上に、キャップ、例えばモノリシックキャップを取り付けることによって密封することができる。あるいは、いくつかの容器は、例えば、容器の開口部が圧着して閉じられ得る場合、追加の要素を使用せずに密封することができる。
【0066】
ステップ(d)において、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤組成物が容器に導入される。典型的には、大気圧で薬学的組成物および流体成分を含む密封された容器は、噴射剤充填ステーションに供給され、そこで、加圧下で液化した噴射剤組成物が、バルブを介して容器内に計量される。一部のプロセスでは、噴射剤充填ステーションは、ステップ(a)、(b)および(c)のステーションから離れた場所に配置され、その場所では、可燃性液体噴射剤の取り扱いに関連する可燃性および爆発の危険性が適切に軽減されている。
【0067】
言及され得るいくつかの噴射剤組成物は、少なくとも約95重量%の1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、例えば、少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、または少なくとも約99.9重量%の1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む。いくつかの噴射剤組成物は、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)から完全になる。
【0068】
言及され得る一部のプロセスでは、293Kでの密封および充填された容器(すなわち、ステップ(d)が完了した後)における絶対圧力は、約400kPa~約600kPa、好ましくは約450kPa~約600kPa、より好ましくは約500kPa~約600kPa、さらにより好ましくは約500kPa~約550kPa、最も好ましくは約500kPa~約520kPaの範囲内である。本発明の好ましい実施形態では、これらの圧力範囲は、容器の体積の約50%~約75%が噴射剤組成物の液体成分によって占められている場合、例えば、容器の体積の約55%~70%が噴射剤組成物の液体成分によって占められている場合、例えば、容器の体積の約60%~65%が噴射剤組成物の液体成分によって占められている場合に適用される。本発明の好ましい実施形態では、これらの圧力範囲は、噴射剤組成物が、少なくとも約95重量%の1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、例えば少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、または少なくとも約99.9重量%の1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む場合、例えば、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)から本質的になる場合に適用される。
【0069】
ステップ(d)に続いて、充填された容器は、アクチュエーターおよび用量カウンターなどの追加のデバイス構成要素が装備され、ラベル付けされ、パッケージ化され、保管されるように、他のステーションに運ばれ得る。容器はまた、噴射剤中の薬学的組成物の溶解または均一な分散を確実にするために、超音波処理され得るか、またはそうでなければ機械的撹拌に供され得る。
【0070】
言及され得る一部のプロセスでは、充填された容器は、約1~約5分間、例えば、約2~約4分間、例えば、約3分間、約30~約80℃、例えば、約40~約70℃、例えば、約50~約60℃、または約55℃の温度で容器を液体に浸漬するステップを含む、完全性/ストレスおよび/または漏れ試験にかけられる。完全性および/または漏れ試験はウォーターバスで実行され得る。
【0071】
本発明の一部のプロセスでは、容器は、定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターである。
【0072】
理論に拘束されることを望まないが、流体成分で容器をパージすると、密閉された容器内に存在する周囲雰囲気の量が減少し、これにより、高温での完全性/ストレス試験中の容器内の圧力が減少すると考えられる。減圧は、主に窒素を含む周囲雰囲気と比較して、流体成分のより低い飽和蒸気圧に起因すると考えられる。
【0073】
本発明の第2の態様によれば、薬剤送達装置で使用するための容器を充填するための方法であって、
(i)医薬品有効成分を含む薬学的組成物を容器に導入することと、
(ii)容器を密封することと、
(iii)必要に応じて、少なくとも部分的に容器を排気することと、
(iv)必要に応じて、(ハイドロ)ハロカーボンを含む流体成分を容器に導入することと、
(v)1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分を容器に導入することと、を含み、
ステップ(i)~(v)が、記載された順序で実行され、
ステップ(iii)および(iv)のうちの少なくとも1つが必須である、方法が提供される。
【0074】
ステップ(i)において、医薬品有効成分を含む薬学的組成物は、本発明の第1の態様のステップ(b)に関して記載されているものと同じ方法で容器に導入される。特に、本発明の第1の態様のステップ(b)に関連するすべての実施形態およびそこに記載されているすべての特徴は、本発明の第2の態様のステップ(i)にも適用される。
【0075】
薬学的組成物が固体の形態にある場合、固体はペレット化されることが特に好ましい。医薬品のペレット形成のための機器は、当技術分野では一般的である。ペレット化された固体の粒子サイズおよび凝集強度は、密封容器が排気される場合(ステップ(iii)において)、薬学的組成物のエアロゾル化に抵抗するのに十分大きいが、それでも噴射剤中の組成物の良好な分散を可能にするのに十分小さいはずである。医薬ペレットは、ペレットの機械的または分散特性を最適化するための賦形剤を含んでもよい。
【0076】
ステップ(ii)において、容器は、本発明の第1の態様のステップ(c)に関して記載されているものと同じ方法で密封される。特に、本発明の第1の態様のステップ(c)に関連するすべての実施形態およびそこに記載されているすべての特徴は、本発明の第2の態様のステップ(ii)にも適用される。
【0077】
ステップ(iii)は任意選択のステップである。ステップ(iii)において、密封された容器は少なくとも部分的に排気される。本明細書で使用される場合、「排気される」という用語は、容器内の実質的にすべての雰囲気が、典型的にはバルブを介して除去されることを意味する。容器の排気は、例えば、真空ポンプを使用して、当技術分野で知られている任意の手段によって実行され得る。
【0078】
ステップ(iv)は任意選択のステップである。ステップ(iii)および(iv)の両方が実行される場合、ステップ(iv)において、流体成分が、少なくとも部分的に排気された容器に導入される。流体成分は、周囲圧力でバルブを介して容器に導入することができる。定量吸入器(MDI)で使用されるキャニスター用のバルブアセンブリの多くは、噴射剤の存在により高い内圧で密封機能を提供することを目的としているため、排気された容器に流体成分を導入すると、噴射剤を充填する(すなわち、ステップ(v))前に密封された容器への空気などの周囲雰囲気のその後の侵入の可能性が減少する。
【0079】
ステップ(iii)が実行されない場合、ステップ(iv)において、流体成分が容器に導入されて、元の雰囲気の容器をパージする。流体成分が導入され得ると、元の雰囲気は同じバルブ、または異なるバルブを介して移動し得る。
【0080】
本発明の第1の態様のステップ(a)に関連するすべての実施形態およびそこに記載されているすべての特徴は、本発明の第2の態様のステップ(iv)に適用される。
【0081】
ステップ(iii)および(iv)のうちの少なくとも1つは必須である。一部の実施形態では、ステップ(iii)が実行され、ステップ(iv)は実行されない。他の実施形態では、ステップ(iii)は実行されず、ステップ(iv)が実行される。さらに別の実施形態では、ステップ(iii)および(iv)の両方が実行される。
【0082】
ステップ(v)において、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴射剤成分は、本発明の第1の態様のステップ(d)に関して記載されているものと同じ方法で容器内に導入される。特に、本発明の第1の態様のステップ(d)に関連するすべての実施形態およびそこに記載されているすべての特徴は、本発明の第2の態様のステップ(v)にも適用される。
【0083】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1または第2の態様(そこに言及されているすべての実施形態および/または特定の特徴を含む)の方法によって製造される薬剤送達装置のための容器が提供される。
【0084】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様(そこに言及されているすべての実施形態および/または特定の特徴を含む)の容器を備えた薬剤送達装置が提供される。好ましくは、薬剤送達装置は定量吸入器(MDI)であり、容器は、定量吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾルキャニスターである。
【0085】
本発明の方法によって製造される容器内に存在する薬学的組成物は、呼吸器障害、特に喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患を患っているまたは患う可能性が高い患者を治療するための薬剤に使用するためのものである。
【0086】
したがって、本発明の第5の態様では、呼吸器障害を患っているまたは患う可能性が高い患者を治療するための方法であって、本発明の第3の態様(そこに言及されているすべての実施形態および/または特定の特徴を含む)の容器から治療有効量または予防有効量の薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法が提供される。薬学的組成物は、好ましくは、本発明の第4の態様(そこに言及されているすべての実施形態および/または特定の特徴を含む)のMDIを使用して患者に送達される。
【0087】
理論に拘束されることを望まないが、噴射剤成分を導入する前に容器を排気すると、高温での完全性/ストレス試験中の容器の内圧が減少すると考えられる。さらに、容器を排気した後に流体成分を導入すると、高温での完全性/ストレス試験中に容器内の圧力を減少させながら、噴射剤を充填する前に密封された容器への空気などの周囲雰囲気のその後の侵入の可能性が減少する。減圧は、主に窒素を含む周囲雰囲気と比較して、流体成分のより低い飽和蒸気圧に起因すると考えられる。
【国際調査報告】