(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ショックアブソーバに作用する傾斜ブロックシステムを備えたローリング式車両
(51)【国際特許分類】
B60G 17/005 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B60G17/005
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571729
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2020055116
(87)【国際公開番号】W WO2020245712
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019000007881
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】ロッセリーニ,ワルテル
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AA69
3D301BA11
3D301BA17
3D301DA08
3D301DA33
3D301DB22
3D301EB40
(57)【要約】
車両1は、ローリング四節リンクのロック装置に作用するローリングブロックシステム(11)を備えている。前記システムは、さらに、サスペンションロック装置を有する。サスペンションロック装置(33)は、内部でショックアブソーバ(51)のピストン(59)がスライドするショックアブソーバ(51)のシリンダ(54)の第一室(55)と、タンク(65)とを連結するダクト(71)を少なくとも部分的に閉鎖し、第一室(55)とタンク(65)との間の粘性流体の流れを防止するよう適合された弁(73)を、各サスペンションに対して有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリング式車両(1)であって、
フレーム(3)と、
少なくとも一つの後側駆動輪(5)と、
左右方向(L-R)に並べて配置された左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')と
ローリング四節リンク(11)と
サスペンションロック装置と
を備え、
前記ローリング四節リンク(11)が、
車両(1)の中央面に対して横方向に左右に延びる上側クロス部材(13)、
車両(1)の中央面に対して横方向に左右に延びる下側クロス部材(15)、
上側クロス部材(13)及び下側クロス部材(15)を相互に接続する左直立部(16')、
上側クロス部材(13)及び下側クロス部材(15)を相互に接続する右直立部(16'')、
各操舵軸線を中心に左直立部(16')に対して回転するよう左直立部(16')に拘束され、弾性部材(53)及びショックアブソーバ(51)を備えた左サスペンション(33)を介在して左前側操舵輪(7')が接続された左支持アーム(21')、
各操舵軸線を中心に右直立部(16'')に対して回転するよう右直立部(16'')に拘束され、弾性部材(53)及びショックアブソーバ(51)を備えた右サスペンション(33)を介在して右前側操舵輪(7'')が接続された右支持アーム(21'')
を有し、
各ショックアブソーバが、その内部にピストン(59)をスライド可能に収容したシリンダ(54)を有し、前記シリンダ(54)の内部が、前記ピストン(59)によって第一室(55)及び第二室(57)に分割され、前記第一室(55)及び第二室(57)が、少なくとも一つの流体通路(59A)を介して相互に流体連結され、
前記サスペンションロック装置が、前記サスペンション(33)の各々に対して、第一室(55)をタンク(65)に流体接続する連絡ダクト(71)を少なくとも部分的に閉鎖して、第一室(55)とタンク(65)との間の粘性流体の流れを防止するよう適合された弁(73)を備えている
ことを特徴とするローリング式車両。
【請求項2】
前記弁(73)が、電気制御作動装置によって動作させられる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
四節リンクロック装置、好ましくは、フレーム(3)に対する四節リンク(11)の動作をブロックするよう適合されたブレーキ(40)を、さらに備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記ブレーキが、電気的に制御される電気機械式作動装置を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
電気的に制御される電気機械式作動装置が、不可逆的作動システムを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記ブレーキが、グリッパ(41)を備え、該グリッパ(41)が、グリッパのジョ―(41.3,41.4)を作動するための電気モータ(41.1)及び減速ギヤ(41.2)が内部に収容されたハウジングと一体に形成されている
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両。
【請求項7】
ショックアブソーバ(51)のシリンダ(54)の第一室(55)と、タンク(65)とが並べて配置され、かつ、ダクト(71)によって接続されている
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の車両。
【請求項8】
タンク(65)は、可変容積を有する
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の車両。
【請求項9】
タンク(65)が、変形可能なダイアフラム(69)によって少なくとも部分的に区画され、前記ダイアフラム(69)が、粘性流体で完全に満たされた容積(65)を、圧縮性流体を含む容積(67)から分離し、ショックアブソーバ(51)のシリンダ(54)の第一室(55)からタンク(65)への粘性流体の流れ、及びその逆の流れが、変形可能なダイアフラム(69)の変形を引き起こし、結果として、粘性流体を含むタンク(65)の寸法と、圧縮性流体を含む容積(67)の寸法を変化させる
ことを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記弁が、双安定式弁である
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも一つの流体通路(59A)が、第一室(55)を第二室(57)に接続する流体オリフィス(59A)を備えている
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記ピストン(59)がロッド(61)に接続され、前記ロッド(61)が、第二室(57)を貫通して延び、シリンダ(54)の一方の側のみから突出する
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の車両。
【請求項13】
前記弁(73)が、第一室(55)とタンク(65)とを相互に連結するダクト(71)に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリング式車両、即ち、車両に沿って長手方向に延びる中央面を中心とした傾斜運動を有する車両に関する。本明細書に記載された実施形態は、三輪又はそれ以上の車輪を有する鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、二輪鞍乗型車両(例えば、オートバイやスクータ)の操作性の特徴と、四輪車両の安定性とを組み合わせた車両の要求が増加している。これらの車両は、典型的にはクワットバイクと呼ばれる、二つの前側操舵輪と、一つの後側駆動輪とが設けられた三輪型車両及び四輪型車両を含む。
【0003】
より詳細には、前記三輪型車両には、二つの前側操舵輪、即ち、ハンドルバーを用いてライダーによって車両の操舵ができるようにされた車輪が設けられ、ローリング、即ち、横方向に傾斜可能なローリング運動ができるようにされている。ローリングン運動は、実質的に移動方向に向けられた軸線を中心とした傾斜運動である。三輪型車両は、さらに、後側駆動輪を備え、後側駆動輪は、モータに機械的に接続され、トルクを提供する目的、引いては牽引を可能にする目的を有し、一対の前輪は、車両に方向性を与えることを目的とするものである。
【0004】
一対の前輪は、操舵動作に加えて、ローリング動作を提供するものであり、バネ運動を可能にするショックアブソーバサスペンションによって車両のフレームに連結されている。一対の前輪を使用する結果、ローリング式車両は、二輪だけの車両に比べて、自動車によって提供される安定性と同様に、地面への車輪の二重接触によって保証されるより高い安定性を有する。
【0005】
前輪は、車輪が実質的に同期してローリングし、かつ、操舵することを可能にする機構、例えば、前輪を前輪部に連結する一つ又は二つの四節リンクを介して、相互に連結されている。また、これらの車両には、各前側操舵輪用の二つの独立したショックアブソーバサスペンションが設けられていることが多い。各サスペンションは、弾性要素(ばね)及び粘性要素(ショックアブソーバ)を有する。
【0006】
三輪又は四輪ローリング式車両は高い安定性を有するが、ある条件下では、制御できないローリング運動によって転倒することがある。これは、特に、低速で前進している時、又は車両が静止、即ち、停車している時に発生し得る。この問題を防止するために、三輪又は四輪傾斜式車両には、しばしば、ローリングブロック、即ち、ローリング制御システムが設けられ、車両が、静止している時、又は、低速で前進している時に、誤って転倒することを防止している。ローリングブロック、即ち、ローリング制御システムを備えた三輪車両は、例えば、欧州特許1561612号及び欧州特許1571016号に開示されている。
【0007】
特に、欧州特許1561612号に開示されている三輪傾斜式車両は、左右方向に延び、かつ、車両のフレームに中心的にヒンジ結合された二つの重ねられたクロス部材を有する四節リンクを備えた前輪部を有する。前記二つのクロス部材の両端は、左側直立部及び右側直立部によって相互に接合されている。各直立部は、各前側操舵輪の支持アームに接続されている。サスペンションは、各支持アームと各前輪との間に介在されている。
【0008】
前記ローリングブロックシステムは、車両フレームに対して四節リンクをブロックし、そのピボット動作を防止するグリッパを備えている。さらに、前記ローリングブロックシステムは、各サスペンションに対して、サスペンションロック部材を備えている。二つのサスペンションロック部材及び四節リンクブロック用グリッパは、油圧アクチュエータによって制御される。
【0009】
上述したローリングブロックシステムは、安全で効率的なシステムである。しかしながら、特に、コンパクトでなく、また、安価でもない。
【0010】
欧州特許3321158号には、二つの前側操舵輪及びローリング四節リンクを有する傾斜式車両が開示されている。各前側操舵輪は、各サスペンションを有する。ローリングブロックシステムは、欧州特許1571016号に開示されたものと同様のものである。
【0011】
国際公開2018/207066号には、ローリング動作をブロックするために使用される双方向選択式ブロック部材を有するショックアブソーバが開示されている。ショックアブソーバは、メインシリンダを有し、メインシリンダは、その内部で摺動するピストンを有する。ピストンは、メインシリンダの内部を第一室及び第二室に分割する。第一室は、第一ダクトを介して、メインシリンダと平行な第二シリンダと流体連結されている。第二シリンダは、第二ダクトを介して、第二シリンダに流体連結されている。第二シリンダ内には、減衰弁が配置されており、前記減衰弁は静止開口板を備え、メインシリンダにおけるピストンの変位の結果として第一ダクト及び第二ダクトを通る第一室から第二室への非圧縮性粘性流体の流れ、又は、その逆方向の流れを制御する。ショックアブソーバをブロックするために、二重弁が設けられ、これは、第一ダクト及び第二ダクトの両方を同時に閉じ、静止開口板を通して流体が循環することを防止する。
【0012】
この公知のシステムは効率的であるが、幾つかの欠点、特に全体サイズに関する欠点を有する。さらに、現行技術のシステムは、同じ長さを有する二つのシリンダを横に並べて配置することを必要とするため、装置コストが上がり、特に、ばねの位置に関して、サスペンションの設計に幾つかの制限をもたらたす。
【0013】
同じように効率的でありながら、従来技術の装置の問題点を解決するローリングブロックシステムがあれば有用である。特に、アクチュエータの数が少なく、従って、簡単な構造で、コストが安く、かつ、小型化されたローリングブロックシステムが有用である。
【発明の概要】
【0014】
従来技術のローリング式車両の問題点の一つ又は複数を解決又は制限するために、請求項1に係るローリング式車両が提供される。従属項は、本発明による車両のさらなる特徴及び実施形態に関するものである。
【0015】
車両は、車両の中央面に対して左右方向に延びるクロス部材と、各々サスペンションが関連付けられた二つの前側操舵輪の支持アームとを有する四節リンクを有する。車両の傾斜運動(ローリング運動)は、四節リンクの変形を生じさせる。車両は、ローリング運動のローリングブロックシステムを有し、前記ローリングブロックシステムは、四節リンクロック装置及び二つの前側操舵輪のサスペンションのロック装置を有する。
【0016】
有利には、サスペンションロック装置は、内部でショックアブソーバのピストンがスライドするショックアブソーバのシリンダの室をタンクに接続するダクトを少なくとも部分的に閉じ、前記室とタンクとの間の粘性流体の流れを防止するように適合された弁を、前記サスペンションの各々に対して有する。
【0017】
本明細書において、用語「ブロック/ロック」は、四節リンクの動き又はサスペンションの動きを制限する制御作用をも含んでいるという意味で理解されなければならない。例えば、サスペンションの動きは、ショックアブソーバのシリンダからタンクへの粘性流体の通路を塞ぐ弁を用いてブロックされるが、前記ブロックは、この通路の完全な閉鎖と、前記通路の実質的な減少との両方の意味を有する。後者の場合、サスペンションの動きの制限された能力により、例えば、高い応力を受けた時には前側操舵輪のばね運動は可能なままである。
【0018】
有利には、本明細書に開示された実施形態では、弁は、電気制御作動装置によって操作される。これにより、電磁弁のように構成することができ、弁の制御が容易になる。
【0019】
有利な実施形態では、ローリングブロックシステムは、サスペンションロック装置に加えて、四節リンクロック装置を有する。この四節リンクロック装置は、有利には、フレームに対する四節リンクの動きをブロックするように適合されたブレーキを有する。有利な実施例では、前記ブレーキは、電気的に制御される電気機械式作動装置を有し、好ましくは、非可逆的ギアモータを備え、即ち、ギアモータの電気モータのスイッチが切られた時に、ブレーキをブロックしたままの作動位置に維持するものである。従って、四節リンクロック装置は、モータのスイッチが切られた時でも、電力を消費することなく、作動状態のままである。
【0020】
有利な実施形態では、小型で安価な構造を得るために、四節リンクロック装置のブレーキは、単一のハウジングに組み込まれたグリッパ、電気モータ及び減速ギヤを有し得る。
【0021】
本発明の車両のさらに有利な特徴は、添付図面及び幾つかの非限定的な実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、発明の非限定的な実施例を示す添付図面及び以下の説明によってより良く理解される。
【
図1】本発明によるローリングブロックシステムを備えた、三つの傾斜式車輪を有する車両の斜視図である。
【
図2】関連するサスペンション運動ロック装置を備えたサスペンションの長手方向断面図である。
【
図3】別の実施例によるサスペンションの断面図である。
【
図4】四節リンクロック装置のブレーキの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明によるローリングブロックシステムを備えた車両1の斜視図である。
図1の車両は、表現をより簡単にするために、幾つかの部品を取り除いて示されている。特に、ケーシング、サドル、モータ及びハンドルバーは省略されている。一般的に、ローリングブロックシステムは、サスペンションロック装置と、四節リンクロック装置とを有する。
【0024】
簡単に説明すると、車両1は、フレーム3、モータ(図示せず)に機械的に接続された、トルクを供給する後側駆動輪5、及び一対の前側操舵輪を有する。より詳細には、車両1は、第一前側操舵輪7'、即ち、左前側操舵輪7'と、第二前側操舵輪7''、即ち、右前側操舵輪7''を有する。以下の説明では、車両1の中央面に対して対称である構成要素、組立体又は要素は、中央面Mの左側の要素にはカンマ「'」を、中央面Mの右側の要素にはダブルカンマ「''」を同じ符号の後に付けて示す。
【0025】
図1に示した実施形態では、車両1の前側部分(以下、「前輪部」ともいう)には、全体を符号9で示す操舵機構が設けられており、この操舵機構9によって、前側操舵輪7'及び7''が、同期して操舵運動及びローリング運動を行うことを可能にしている。本明細書において、操舵運動は、各操舵軸線を中心とした前輪7'及び7''の運動を意味する。操舵運動によって、前進方向の直線軌道に対する軌道の変動が車両1に与えられる。本明細書において、ローリング運動は、例えば、車両がカーブを走行する時に、垂直面に対して車両1を傾けることを可能にする動きを意味する。
【0026】
図示実施形態では、操舵機構9は、四節リンク11、より具体的には、平行四辺形四節リンク(以下、ローリング四節リンク11として示す)を備えている。ローリング四節リンク11は、実質的に相互に平行な第一上側クロス部材13及び第二下側クロス部材15を有する。上側クロス部材13及び下側クロス部材15は、中央平面に対して横方向、即ち、左右方向に延びている。
【0027】
二つのクロス部材13及び15は、各々、ヒンジ13A及び15Aを用いて二つの中間点でフレーム3にヒンジ結合されている。これにより、二つのクロス部材13及び15は、相互に平行、かつ、車両1のフレーム3の中央面Mにある各回転軸線を中心に回転でき、例えば、車両1が高速でカーブを走行する時にローリング運動を行うことができるようにされている。
【0028】
ローリング四節リンク11は、さらに、二つの直立部、即ち、左直立部16'及び右直立部16''を備えている。二つの直立部16'及び16''は、上側クロス部材13及び下側クロス部材15にヒンジ結合され、それにより、ローリング四節リンクを形成している。符号17'、19'及び17''、19''は、それらによって直立部16'及び16''を、クロス部材13及び15にヒンジ結合する車両1の二つの側面におけるヒンジを示している。より詳細には、上側クロス部材13は、その第一(左)端部で、ヒンジ17'を用いて左直立部16'にヒンジ結合され、第二(右)端部で、ヒンジ17''を用いて右直立部16''にヒンジ結合されている。同様に、下側クロス部材15は、その第一(左)端部で、ヒンジ19'を用いて左直立部16'にヒンジ結合され、第二(右)端部で、ヒンジ19''を用いて、右直立部16''にヒンジ結合されている。ヒンジ17'、17''及び19'、19''は、クロス部材13及び15並びに直立部16'及び16''の相互回転軸線を画定している。ヒンジ17'、17''及び19'、19''によって画定された回転軸線は、フレーム3に対するクロス部材13及び15の回転軸線と平行である。
【0029】
操舵機構9は、ローリング四節リンク11に加えて、一対の支持アームを有し、前記支持アームに前側操舵輪7'及び7''が接続されている。より詳細には、左支持アーム21'は、左前側操舵輪7'を支持し、右支持アーム21''は右前側操舵輪7''を支持する。
【0030】
図示実施形態では、二つの支持アーム21'及び21''は、ハーフフォークとして構成されているが、他の構成でもよいことは理解されなければならない。各支持アーム21'及び21''は、各操舵軸線を中心に回転できるようにするように、ローリング四節リンク11に接続されている。
【0031】
図示実施例では、各支持アーム21'、21''は、その頂部が、ローリング四節リンク11の各直立部16'及び16''の内部に収容されている。この目的のために、二つの直立部16'及び16''は、中空円筒体で形成され得、その内部に、車輪7'及び7''の支持アーム21'及び21''のベアリング(図示せず)が設けられる。
【0032】
操舵軸線を中心とした二つの支持アーム21'及び21''の操舵運動を制御するために、左右方向に延びる横方向部材23が設けられている。本明細書に記載の実施形態では、横方向部材23は、ステアリングバー、即ち、操舵柱から二つの支持アーム21'及び21''に、従って、二つの前側操舵輪7'及び7''に操舵運動を伝達するバーを形成し、従って、以下の説明では、横方向部材23は、ステアリングバー23として参照される。
【0033】
ステアリングバー23は、車両1のハンドルバー(図示せず)を用いて操作される操舵柱27によって動作可能に制御される。操舵柱27は、トランスミッション31を用いて、ステアリングバー23に中心点で接続されている。操舵柱27の軸線を中心としたハンドルバー29の回転によって、ステアリングバー23の移動が行われる。ステアリングバー23は、端部連結部材によって、前側操舵輪7'及び7''の二つの支持アーム21'、21''に接続され、ハンドルバー及び操舵柱27による制御の結果、ステアリングバー23が移動する時に、前記支持アームは、操舵軸線を中心として同時に回転する。逆に、傾斜運動、即ち、車両のローリング運動は、
図1に両矢印Rによって概略的に示されており、傾斜運動によって、ステアリングバー23は、各ローリング軸線を中心に、支持アーム21'及び21''に対して回転する。
【0034】
一般的に、ローリング運動及び操舵運動は、走行中に同時に発生する。車両1が静止している時は、以下で明らかにされるように、操舵運動を自由にしたまま、ローリング運動をブロックすること望ましく、この目的のために、以下に詳細に説明するローリングブロックシステムが設けられる。
【0035】
各前側操舵輪7'及び7''は、サスペンションによって各支持アーム21'及び21''に接続されている。
図1では、左側のサスペンションが符号33で示されている。(
図1では車輪7''で隠れている)右側のサスペンションは、左側のサスペンションに対して対称的な構造である。各サスペンションは、各前側操舵輪7'及び7''を支持アーム21'及び21''に接続し、前輪がばね運動を実行することを可能にしている。
図1では、ばね運動は、矢印f33で示されており、サスペンション33の伸縮運動を含む。前側操舵輪7'及び7''は、
図1に左前側操舵輪7'用のものを符号35で示すロッカーアームによって各支持アーム21'及び21''に接続されている。ロッカーアーム35は、回動軸線35Aを中心に回動するよう支持アーム21'にヒンジ結合されている。ロッカーアーム35の遠位端部には、左前側操舵輪7'のハブ37が支持されている。右前側操舵輪7''は、
図1では車輪7''で隠れて見えないが、対称的なサスペンション構造を有している。
【0036】
車両1のローリング運動をブロックするためには、ローリング四節リンク11の運動と、サスペンション33のばね運動の両方をブロックする必要がある。
【0037】
ローリング四節リンク11の動きをブロックするために、四節リンクロック装置が設けられている。幾つかの好ましい実施形態では、四節リンクロック装置は、車両1のフレーム3によって支持されたブレーキ40を有する。幾つかの実施形態では、ブレーキ40は、例えば、符号42によって概略的に示された電気機械式、電磁式又は油圧式の作動装置を備えたグリッパ41を有する。グリッパ41は、ローリング四節リンク11の構成要素の一つに堅固に接続されたディスクセクタ43に作用する。図示実施形態では、ディスクセクタ43は、ローリング四節リンク11の下側クロス部材17に堅固に接続されている。
【0038】
ブレーキ40が作動すると、グリッパ41は、ディスクセクタ43をブロックし、従って、車両1のフレーム3に対するローリング四節リンク11のローリング運動がブロックされる。
【0039】
図4は、グリッパ41を備えたブレーキ40の側面図を示している。図示実施形態では、グリッパ41は、電気モータ41.1によって作動される。電気モータ41.1は、ブレーキジョ―41.4と協働するブレーキジョ―41.3に、電気モータ41.1の回転運動を伝達する減速ギヤ41.2に関連付けされている。二つのブレーキジョ―41.3及び41.4は、ディスクセクタ43の対向する両面に作用して、それを制動する。グリッパ41は、電気モータ41.1を用いてブレーキジョ―41.3をディスクセクタ43から動かすことによって、反対側のブレーキジョ―41.1の圧力を得るように、フローティングすることができる。減速ギヤ41.2は、有利には、非可逆的であり、一度、ブレーキのグリッパ41がモータ41.1を用いて閉じられると、モータのスイッチが切られてもグリッパがブロックされたままになるようにされている。グリッパ41を開くためには、モータ41.1を逆方向に作動させる必要がある。
【0040】
有利には、
図4に示すように、作動装置を備えたグリッパ41は、電気モータ41.1及び減速ギヤ41.2を備え、一体の構成部品として形成され、電気モータ41.1、減速ギヤ41.2並びにジョ―41.3及び41.4が同じハウジングに収容されるようにされる。
【0041】
図4に示す構造は、非常に小型化され、かつ低コストである四節リンクロック装置を生み出すので特に有利である。
【0042】
サスペンションのばね運動をブロックするために、サスペンションロック装置が設けられる。本明細書に記載された実施形態では、サスペンションロック装置は、前記サスペンションの各々の油圧ショックアブソーバの特定の構成を使用する。
図2は、ばね運動をブロックするために使用され得るサスペンション33の例示的な実施形態の長手方向断面図を示している。
【0043】
サスペンション33は、ショックアブソーバ51及び、例えば、コイルばねのような弾性要素53を有する。図示実施形態では、ショックアブソーバ53はシリンダ54を備え、シリンダ54は、その内部に収容されたスライドピストン59によって第一室55及び第二室57に分割されている。前記ピストン59は、第二室57を貫通して延びるロッド61に連結されている。第一及び第二室55及び57は、典型的には、オイルのような粘性流体で満たされている。ショックアブソーバ51のシリンダ54及びピストン59は、ばね運動に追従するように相互に移動しなければならない二つ要素に接続されている。図示実施形態では、ピストン59のロッド61は、接続ブロック63に固定されており、前記接続ブロック63によって、サスペンション33がロッカーアーム35又は、各前側操舵輪7'又は7''のばね運動に追従する他の要素に拘束される。シリンダ54のヘッド54Aは、各前側操舵輪7'又は7''の支持アーム21'又は21''に固定されている。
【0044】
ショックアブソーバ51のピストン59は、ピストン59によってシリンダ54の内部で分割される第一及び第二室55及び57に連結されるフローオリフィス、即ち、通路59Aを有する。図示実施形態では、ピストン59を貫通するフローオリフィスが設けられているが、他の実施形態では、ピストンの側面に沿った窪み、又は、シリンダ54の内径よりも小さい直径を有するピストン59を設けることによって形成される通路のような、他の形態の一つ又は複数のフロー通路が設けられ得る。
【0045】
サスペンション33の伸縮運動により、ばね53が伸縮し、ロッド61の伸縮に伴い、両矢印f59に従ってピストン59がスライドする。ショックアブソーバ51によって与えられるばね運動の減衰効果は、第一及び第二室55及び57の一方から他方へのオイルの流れに、フローオリフィス59Aによって抵抗を与えることで得られる。
【0046】
ピストン59が、シリンダ54内をスライドすると、可変長のロッド61が第二室57の容積を部分的に占め、シリンダ54の内部のオイルが利用できる総容積、即ち、第一及び第二室55及び57の総容積が増減する。従って、ピストン59がシリンダのヘッド54Aから離れる方向に動いて、第一室55の容積を増大させ、第二室57の容積を減少させると、フローオリフィス59Aを介してオイルが第二室57から第一室55へ流れる。しかしながら、第二室57の容積の一部はロッド61によって占められているため、第二室57から第一室55へ流れるオイルの量は、第二室57の容積が減少している結果、第一室55におけるオイルが利用可能な容積の増大分よりも少なくなる。ピストン59を、シリンダ54内でシリンダのヘッド54Aに向けてスライドさせ、第一室55の容積を減少させ、第二室57の容積を増加させた場合には、逆の現象が生じる。この場合、第一室55の容積の減少は、第二室57において受けることができる量よりも多い容積のオイルを第一室55から排出させる傾向にある。
【0047】
この一方の室におけるオイルのために利用可能な容積と、他方から排出されるオイルの容積との差を相殺するために、第一室55は、ショックアブソーバ33の粘性流体用の補助タンクを形成する第三室、即ち、タンク65に流体連通している。タンク65の一部は、例えば、気体を含む圧縮可能な容積67によって占められている。圧縮可能な容積67は、可動又は変形可能な構成要素によってタンク65に含まれるオイルから分離され得る。図示実施形態では、オイル(又は他の非圧縮性粘性流体)と気体(圧縮可能な流体)との間の分離は、例えば、ゴム等の変形可能なダイヤフラム69によって提供される。別の実施形態では、タンク65は、ピストン又は剛性の移動式ダイヤフラムによって二つの容積に分割され得る。
【0048】
タンク65及び第一室55は、内部に弁73が設けられたダクト71によって相互に連結されており、前記弁73がダクトを二つの部分71A及び71Bに分割する。幾つかの実施形態では、二つ以上のダクトが並列に設けられ得、その場合、一つ又は複数の弁が、第一室55をタンク65に連結する全てのダクトを選択的に開閉するために設けられる。弁は、例えば、電気式又は電磁式の作動装置75によって制御され得る。
【0049】
車両1の通常の動作中、ローリング運動及びばね運動を自由にしておかなければならない時は、弁73は、作動装置75によって開弁位置に保持される。これにより、オイル又は他の非圧縮性粘性流体は、第一室55からタンク65へ、又は、その逆方向に流れることができ、シリンダ54に含まれるオイルの総量の変動を相殺することができる。より詳細には、サスペンション33が収縮してロッド61がシリンダ54を貫通している時、オイルの一部は第一室55からタンク65に流れ出る。これにより圧縮可能な容積67は減少する。逆に、ロッド61がシリンダ54から出て、オイルが占めるべきシリンダ54内の容積が増えると、ある量のオイルが、ダクト71を介して、タンク65から第一室55に流出する。
【0050】
サスペンションロック装置を作動させる必要がある時、作動装置75は、弁73を作動してダクト71を閉じ、オイルが第一室からタンク65へ、また、その逆に流れ出ることができないようにする。オイルがシリンダ54から排出することができなくなり、シリンダ54を貫通するロッド61によって占められるべき追加の容積を作り出すことができなくなるため、サスペンション33は収縮できなくなる。ロッド61がシリンダ54から出ることによって利用可能になる容積を、第一室65から来るオイルで占めることができなくなるので、サスペンション33の伸長運動(拡大)もできなくなる。
【0051】
その結果、シリンダ54におけるピストン59の動きがブロックされ、従って、実質的にサスペンション33のばね運動が抑制される。
【0052】
作動装置75は、例えば、ソレノイドのような電磁式作動装置であり得る。
【0053】
幾つかの実施形態では、作動装置75は、双安定式作動装置、即ち、各々開位置及び閉位置の二つの安定位置が設けられた作動装置であり得る。
【0054】
別の実施形態では、安全上の理由から、作動装置75は、通常開状態にあり、それを閉じるために電気制御を必要とするように構成され得る。これにより、故障時に、弁を開いたままの状態にすることができ、サスペンションのばね運動のブロックを偶発的に、又は、望ましくない状態で作動させることを防止することが保証される。
【0055】
単一の電子制御ユニットで、ローリングブロックシステム全体、即ち、二つのサスペンション33の弁73を作動する二つの作動装置75及び作動装置42を制御することができる。これにより、ローリングブロックシステム全体の構成を非常に簡単化することができ、コストを下げ、より小型化でき、かつ、信頼性を高くすることができる。車両1が静止している時、非常に低速で動いている時、又は、停車している時に、ローリングブロックシステムが作動され得、それにより、車両は直立位置を維持でき、即ち、車両1の転倒の原因となり得るローリング運動、即ち、車両が傾くことを防止することができる。車両が動いている時は、ローリングブロックシステムは非活性化され、車両1は、例えば、カーブで通常のローリング運動を実行することができるようにされる。電気制御ユニットは、車両の多数のセンサ、例えば、前輪の速度センサ及びモータ制御ユニットからの信号を受信し得る。特に、モータ制御ユニットは、スロットル弁の開度又はモータの回転数に関する支持を、ローリングブロックシステムの電気制御ユニットに提供し得る。電気制御ユニットは、センサからの信号と、ドライバによって操作されるローリングのブロック又は解放のためのハンドルバー制御からの信号とを処理し、前記ローリングブロックシステムを動作させる出力信号を処理するように構成され得る。特に、有利な実施形態では、ローイング解放信号は、二重の開放信号から成り、第一の信号は、各サスペンションロック装置に向けられ、第二の信号は四節リンクロック装置に向けられる。ブロック信号についても同様である。安全性の理由から、電気制御ユニットは、車両が所定の条件に達すると解放信号を生成し得る。例えば、ローリングブロックシステムは、モータの回転数が所定の閾値を超えた時、又は、二つの前輪の少なくとも一方の速度が所定の安全速度を超えた時、又は、ドライバがハンドルバーのアクセルを介してスロットル弁を操作した時に、解放され得る。
【0056】
上述した実施形態では、ばね運動のブロックを制御するために、外側タンク65と、(シリンダ54)の内部チューブとの間にバルブと備えた単筒型ショックアブソーバが使用されている。この解決手段は、このようにして得られるショックアブソーバが非常に効率的であるため、特に有利である。しかしながら、本明細書で開示するサスペンションロック装置が基づいている概念は、
図3に概念的に示されている構成を有する二筒型、又は三筒型ショックアブソーバでも実施することができる。
図3における同一の符号は、
図2を参照して説明した構成要素と、同一又は機能的に同等の構成要素を示している。
【0057】
二筒構造では、圧縮可能な流体67を含むタンク65は、シリンダ54を囲む外側スリーブ66によって区画された環状容積の形態である。外側スリーブ66とシリンダ54との間の環状容積は、その下側部分が、符号65で示すオイル(非圧縮性流体)で部分的に満たされており、その上側部分が、符号67で示す気体(圧縮性流体)で部分的に満たされている。底部には、弁73を備えたダクト71が設けられ、これにより、第一室55を、スリーブ66とシリンダ54とで区画されたタンクに流体連結する。流体連結は、重力によってオイルが集められたシリンダ54とスリーブ66との間の容積の下側領域に提供され、オイルが、ダクト71を介して、第一室55から、又は第一室55へ通過できるようにされている。また、この実施形態では、サスペンション33のばね運動は、例えば、電磁作動装置75によって、弁71を閉じることでブロックされる。
【0058】
幾つかの実施形態では、弁73は、ダクト71を完全に閉鎖し、第一室55から卓65へのオイルの通過、及びその逆方向のオイルの通過を完全に防止するよう適合され得る。他の実施形態では、弁は、第一室55をタンク65に接続するダクトを完全には閉鎖せず、弁の誤動作や、車両の通常走行中の開弁ミスが生じた場合に、最小とはいえ、ばね運動を依然として実行できるようすることができる。このようにして、弁が閉じている時には、第一室55からタンク65へのオイルの流れ及びその逆方向の流れを、何れの場合でも、弁が開いている状態に対して実質的に制限し、特に、車両が静止している時に、ばね運動を実質的に妨害するようにしている。
【0059】
上述した実施形態に示すように、各サスペンションのサスペンションロック装置は、ショックアブソーバのシリンダ54の内部を、スライドするピストン59によって分割して成る二つの室の一方(第一室55)をタンク65に流体的に結合するように構成されている。逆に、第二室57は、ピストンを貫通して延びる一つ又は複数の通路、オリフィス又は孔59Aを介して第一室55に流体的に結合される。第二室57は、タンク65には直接流体結合されていない。従って、サスペンションのロックに必要なものは、第一室55をタンク65に連結するダクトに沿って設けられた一つの弁だけである。タンクは、シリンダ54の周囲の任意の適切な位置に配置することができ、それにより、サスペンションが小型化でき、そのコストも低減できる。ばね53は、シリンダ54と同軸に配置され得、これによっても、構造が簡単で小型化することができる。
【0060】
以上、本発明を様々な具体的実施形態に基づいて説明した。しかしながら、添付した特許請求の範囲によって画定される本発明の概念及び範囲を逸脱することなく、様々な改良、変更及び省略が可能であることは当業者には明らかである。
【国際調査報告】