(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】エマルションを安定化するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20220803BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20220803BHJP
【FI】
B01J13/00 A
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571786
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2020070116
(87)【国際公開番号】W WO2020247976
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521525963
【氏名又は名称】ドロップワークス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダン,マシュー リャン
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン,アンドリュー カール
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス,クリストファー マイケル
【テーマコード(参考)】
4B063
4G065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA11
4B063QQ41
4B063QR08
4B063QR42
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4G065AB38Y
4G065BA03
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA02
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、エマルション中の分散相区画と連続相との間の境界面での界面活性剤分子間の架橋の形成に関連する方法および組成物、ならびにこのような架橋エマルションの使用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾部および頭部を含む複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物であって、前記第1の界面活性剤分子が界面活性剤分子当り平均2~10個の第1の結合部分を含み、前記第1の結合部分が、
(i)好適な条件下で相互に結合する、
(ii)好適な条件下で第2の結合部分と結合し、前記第2の結合部分が、尾部および頭部を含む第2の界面活性剤分子に結合され、前記第2の結合部分が前記第1の結合部分とは異なる、または
(iii)好適な条件下で中間結合部分と結合する、またはこれらの組み合わせとなるように構成される、
組成物。
【請求項2】
前記第1の結合部分が、前記第1の界面活性剤分子の尾部に結合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の結合部分が、前記第1の界面活性剤分子の頭部に結合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の結合部分が、前記第2の界面活性剤分子の頭部に結合される、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記第2の結合部分が、前記第2の界面活性剤分子の尾部に結合される、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記結合部分が、好適な条件下で1個または複数の共有結合を形成するように構成される、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記結合部分が、好適な条件下で1個または複数の非共有結合を形成するように構成される、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
複数の前記第2の界面活性剤分子をさらに含み、前記第2の界面活性剤分子が、界面活性剤分子当り平均2~10個の前記第2の結合部分を含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記第1および第2の結合部分が、逆帯電している、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の界面活性剤分子を含む連続相をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の界面活性剤分子を含む連続相をさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
分散相をさらに含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記分散相が前記第1の界面活性剤分子を含まない、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記分散相が前記第2の界面活性剤分子を含まない、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記分散相が前記中間結合部分を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1の界面活性剤分子を含む分散相をさらに含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記第2の界面活性剤分子を含む分散相をさらに含む、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
連続相をさらに含む、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記連続相が前記第1の界面活性剤分子を含まない、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記連続相が前記第2の界面活性剤分子を含まない、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記連続相が前記中間結合部分を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記界面活性剤部分が、ビオチンを含む前記第1の結合部分、および1個または複数のビオチン結合部分を含む前記中間結合部分を含む、請求項1~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記ビオチン結合部分が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記界面活性剤分子が前記連続相中でミセルを形成する、請求項6~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記連続相が油を含む、請求項6~24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記油が、炭化水素またはシリコーン油を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記油が、フッ化油を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
連続相中に分散相の区画を含むエマルションを含む組成物であって、前記分散相の区画が、前記連続相と前記区画との前記境界面に位置し、界面活性剤分子の層を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、前記複数の界面活性剤分子が、相互に架橋して、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する、組成物。
【請求項30】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークの架橋度が、20~100%である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記架橋が、前記界面活性剤の前記尾部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記界面活性剤分子が、前記界面活性剤分子の尾部で相互に架橋される、請求項29~31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
前記界面活性剤分子が、前記界面活性剤分子の頭部で相互に架橋される、請求項29~31のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
前記界面活性剤分子の第1の部分が、前記架橋の一部を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの前記第1の結合部分の平均数が2~10個である、請求項29~33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
前記界面活性剤分子の第2の部分が、前記第1の結合部分とは異なる、架橋の一部を形成する第2の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第2の結合部分の平均数が2~10個である、請求項29~34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
前記界面活性剤分子が、架橋を介して架橋結合し、前記架橋の平均長さが1~100nmである、請求項29~35のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
前記分散相が水相を含み、前記連続相が油を含む、請求項29~36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
前記油が、フッ化油を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤を含む、請求項29~38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
前記界面活性剤が非共有結合により架橋される、請求項29~39のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
前記界面活性剤が共有結合により架橋される、請求項29~39のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】
前記界面活性剤がビオチン部分を含み、ビオチン結合部分により架橋される、請求項29~40のいずれかに記載の組成物。
【請求項43】
前記ビオチン結合部分が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記界面活性剤分子が、界面活性剤分子当り平均2~10個のビオチン部分を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を高める、請求項29~44のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、PCR試験により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を少なくとも20%まで高める、請求項29~45のいずれかに記載の組成物。
【請求項47】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、合一アッセイにより測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を少なくとも20%まで高める、請求項29~46のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】
連続相中の分散相の区画のエマルションにおいて処理を行う方法であって、
(i)連続相中の分散相の区画のエマルションを用意することであって、前記分散相の区画が、前記連続相と前記区画の境界面に位置し、界面活性剤分子の層を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、前記複数の界面活性剤分子が、相互に架橋して、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成すること、
(ii)前記区画に対し前記処理を実施すること、を含む方法。
【請求項49】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークの架橋度が、20~100%である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記架橋が、前記界面活性剤の前記尾部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記界面活性剤分子が、前記界面活性剤分子の尾部で相互に架橋される、請求項48~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記界面活性剤分子が、前記界面活性剤分子の頭部で相互に架橋される、請求項48~50のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記界面活性剤分子の第1の部分が、前記架橋の一部を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第1の結合部分の平均数が2~10個である、請求項48~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記界面活性剤分子の第2の部分が、前記第1の結合部分とは異なる、前記架橋の一部を形成する第2の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第2の結合部分の平均数が2~10個である、請求項48~53のいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
前記界面活性剤分子が、架橋を介して架橋結合し、前記架橋の平均長さが1~100nmである、請求項48~54のいずれかに記載の組成物。
【請求項56】
前記分散相が水相であり、前記連続相が油である、請求項48~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記油がフッ化油である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤を含む、請求項48~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記界面活性剤が非共有結合により架橋される、請求項48~58のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
前記界面活性剤が共有結合により架橋される、請求項48~58のいずれかに記載の組成物。
【請求項61】
前記界面活性剤分子が、ビオチン-ビオチン結合部分相互作用により架橋される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記ビオチン結合部分が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記界面活性剤分子が、界面活性剤分子当り平均2~10個のビオチン部分を含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項64】
前記区画中の界面活性剤分子の架橋ネットワークの形成をさらに含む、請求項48~63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、前記分散相が前記連続相中で複数の区画を形成する条件下で、少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含む連続相と分散相とを接触させて、前記区画の形成中および/または形成後に、前記結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する条件を与え、前記結合部分が1つの界面活性剤分子から少なくとも1つの他の界面活性剤分子に架橋を形成し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成することにより、形成される、請求項48~64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
分散相が、前記結合部分と接触するときに、前記結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記区画が、前記結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する外部刺激に曝露される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記処理が、化学分析;タンパク質または株工学;核酸、タンパク質、または細胞ベースアッセイ;選別;分離;または化学的および/または生化学的合成;またはこれらの組み合わせを含む、請求項48~67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記処理が核酸アッセイを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記処理がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を高める、請求項48~70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、PCR試験により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を少なくとも20%まで高める、請求項48~71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
連続相中の分散相の区画のエマルションを生成する方法であって、前記分散相の区画が、前記連続相と前記区画の境界面に位置し、界面活性剤分子の層を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、前記分散相が、前記連続相中に複数の区画を形成する条件下で、
(i)連続相と分散相とを接触させることであって、
(a)前記連続相が、少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含む、
(b)前記分散相が、少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含む、または
(c)(a)および(b)の両方である、接触させること、
および
(ii)前記区画の形成の間および/または形成の後で、前記結合部分を含む界面活性剤分子間の架橋の形成を開始および/または促進し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する条件を与えること、
を含む方法。
【請求項74】
前記連続相が、結合部分を含む界面活性剤分子を含み、前記分散相がそれを含まない、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記結合部分、および前記架橋の他の成分が存在する場合には、その成分が、前記界面活性剤の尾部の長さの5~500%の長さである長さを有する架橋を形成する、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記界面活性剤分子が、界面活性剤分子当り平均2~10個の結合部分を含む、請求項73~75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
結合部分の状態および/または数は、界面活性剤分子の前記架橋ネットワークの完成度が20~100%であるようなものである、請求項73~76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
前記結合部分が前記界面活性剤分子の尾部に結合され、前記架橋が前記界面活性剤分子の尾部間で形成される、請求項73~77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記結合部分が前記界面活性剤分子の頭部に結合され、前記架橋が前記界面活性剤分子の頭部間で形成される、請求項73~77のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
分散相が、前記結合部分と接触するときに、前記結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む、請求項73~79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記1つまたは複数の成分が、前記界面活性剤結合部分と1個または複数の結合を形成する1個または複数の中間結合部分を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項82】
前記界面活性剤結合部分がビオチンを含み、前記中間結合部分がビオチン結合部分を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記ビオチン結合部分が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記区画が、前記結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する外部刺激に曝露される、請求項73~83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記外部刺激が光を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記連続相が油を含み、前記分散相が水相を含む、請求項73~85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記油がフッ化油を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤を含む、請求項73~87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を高める、請求項73~88のいずれかに記載の方法。
【請求項90】
界面活性剤分子の前記架橋ネットワークが、PCR試験により測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の前記区画の安定性を少なくとも20%まで高める、請求項73~89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
油連続相中に複数の分散水相の区画を含むエマルションの調製方法であって、前記区画が、前記区画の表面に界面活性剤分子の架橋ネットワークをさらに含み、分散される水相を調製すること;変性界面活性剤を含む油相を調製することであって、前記変性界面活性剤が尾部および頭部を含み、および結合部分をさらに含むこと;ならびに前記水相と前記油相を混合して、前記油中に前記水相の複数の区画のエマルションを形成することであって、前記変性界面活性剤分子が相互に架橋を形成し、前記区画と前記連続相との境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワーク形成することを含む、方法。
【請求項92】
前記混合が、ボルテックス、ピペット操作、シリンジ操作、震盪により、塊状で行われる、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記混合がマイクロ流体液滴形成装置による、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記混合が、マイクロ流体Tジャンクション、フローフォーカシングジャンクション、逆yジャンクション(reverse-y junction)、millipedeジャンクション(millipede junction)、またはこれらの組み合わせによる請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記エマルションの生成システムが、より大きな機器中に組み込まれる、請求項91~94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
前記機器が、試料送達モジュール、液滴生成モジュール、サーマルサイクラーモジュール、検出モジュール、廃棄物管理モジュール、またはこれらの組み合わせを含む機器である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記より大きな機器が、組み込まれたマイクロ流体デバイス、配管、容器または槽を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記機器が、前記機器全体としての、または前記マイクロ流体装置の非限定的性能を含む前記機器を制御する関連ソフトウェアを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
連続相中に分散相の区画を含むエマルション中の区画の合一を防止する方法であって、前記区画と前記連続相との間の境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成することを含む、方法。
【請求項100】
前記区画が、直径1、5、10、20、30、40、50、60、70、または80umより大きい、例えば、10umより大きい、平均直径を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記エマルションが、30、40、45、50、55、60、70、80、または90℃より高い、例えば、70℃より高い温度である、請求項98または99に記載の方法。
【請求項102】
マイクロ流体装置中で、連続相中に分散相の区画を含むエマルションを、輸送、熱サイクル、インキュベート、選別、または分析するための方法であって、前記液滴が、前記区画と前記連続相との間の境界面に架橋界面活性剤分子のネットワークを含む、方法。
【請求項103】
連続相中に水相の区画を含むエマルションの区画中でPCRを実施する方法であって、前記区画が、架橋剤、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、テンプレートDNA、プライマー、およびプローブ/またはDNA結合色素を含み、および連続相が、1個または複数の結合部分を含む界面活性剤分子を含む、方法。
【請求項104】
下記を含む方法:
(i)連続相中に分散相を含む複数の区画を含むエマルションを形成することであって、前記区画が、連続相との境界面に複数の界面活性剤分子を含む界面活性剤層を含むこと、
(ii)前記境界面で界面活性剤分子を架橋し、架橋界面活性剤ネットワークを形成すること、
(iii)前記区画に対し処理を実施すること、および
(iv)前記架橋界面活性剤ネットワークを処理して、架橋度を下げること。
【請求項105】
複数の前記区画をこじ開けて、前記区画中の分散相を放出させることをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤を含み、前記連続相がフッ化油を含む、請求項104または105に記載の方法。
【請求項107】
前記処理がポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項104~106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
連続相を含む組成物であって、前記連続相が、前記界面活性剤分子に結合される結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含み、前記部分が、好適な条件下で相互に架橋を形成する、組成物。
【請求項109】
前記連続相が、エマルションの調製に使用される、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
前記部分が、前記連続相中において架橋するような相互作用を実質的に行わない、請求項108または109に記載の組成物。
【請求項111】
前記部分が、好適な条件下で非共有結合架橋を形成する、請求項108~110のいずれかに記載の組成物。
【請求項112】
前記部分が、好適な条件下で共有結合架橋を形成する、請求項108~111のいずれかに記載の組成物。
【請求項113】
前記連続相が油を含む、請求項108~112のいずれかに記載の組成物。
【請求項114】
前記油がフッ化油である、請求項113に記載の組成物。
【請求項115】
前記フッ化油が、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン)、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノノフルオロブツルエーテル、(ペンタン,1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル-))、イソプロピルアルコール、(1,2-trans-ジコロレチレン)、(ブタン,1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-)、(1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン)、(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-)、5~18個の炭素原子を含むペルフルオロ化合物、ポリクロロトリフルオロエチレン、(2,2,2-トリフルオロエタノール)、Novec8200(商標)、Novec71DE(商標)、Novec7100(商標)、Novec7200DL(商標)、Novec7300DL(商標)、Novec71IPA(商標)、Novec72FL(商標)、Novec7500(商標)、Novec71DA(商標)、Novec7100DL(商標)、Novec7000(商標)、Novec7200(商標)、Novec7300(商標)、Novec72DA(商標)、Novec72DE(商標)、Novec649(商標)、Novec73DE(商標)、Novec7700(商標)、Novec612(商標)、FC-40(商標)、FC-43(商標)、FC-70(商標)、FC-72(商標)、FC-770(商標)、FC-3283(商標)、FC-3284(商標)、PF-5056(商標)、PF-5058(商標)、ハロカーボン0.8(商標)、ハロカーボン1.8(商標)、ハロカーボン4.2(商標)、ハロカーボン6.3(商標)、ハロカーボン27(商標)、ハロカーボン56(商標)、ハロカーボン95(商標)、ハロカーボン200(商標)、ハロカーボン400(商標)、ハロカーボン700(商標)、ハロカーボン1000N(商標)、Uniflor4622R(商標)、Uniflor8172(商標)、Uniflor8472CP(商標)、Uniflor8512S(商標)、Uniflor8731(商標)、Uniflor8917(商標)、Uniflor8951(商標)、TRIFLUNOX3005(商標)、TRIFLUNOX3007(商標)、TRIFLUNOX3015(商標)、TRIFLUNOX3032(商標)、TRIFLUNOX3068(商標)、TRIFLUNOX3150(商標)、TRIFLUNOX3220(商標)、またはTRIFLUNOX3460(商標)またはこれらの組み合わせである、請求項114に記載の組成物。
【請求項116】
前記フッ化油が、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン);(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-);5~18個の炭素原子を含むペルフルオロ-化合物;またはこれらの組み合わせである、請求項114に記載の組成物。
【請求項117】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤を含む、請求項108~116のいずれかに記載の組成物。
【請求項118】
前記フッ素系界面活性剤が、エーテル、アミド、またはカルバミド結合により結合された頭部および尾部を有するフッ素系界面活性剤;カルバミド、エーテル、またはアミド結合を介してフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を有するフッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせを含む、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
前記フッ素系界面活性剤が、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含む、請求項117に記載の組成物。
【請求項120】
好適な条件下で形成された前記架橋が、直接架橋を含む、請求項108~119のいずれかに記載の組成物。
【請求項121】
好適な条件下で形成された前記架橋が、間接架橋を含む、請求項108~119のいずれかに記載の組成物。
【請求項122】
前記結合部分がビオチンを含む、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
各界面活性剤分子が、少なくとも平均2個の結合部分を含む、請求項108~122のいずれかに記載の組成物。
【請求項124】
各界面活性剤分子が、少なくとも平均4個の結合部分を含む、請求項108~122のいずれかに記載の組成物。
【請求項125】
前記界面活性剤分子の結合部分が、それらが好適な条件下で反応する場合、界面活性剤分子間で前記得られる架橋が1~100nmであるようなものである、請求項108~124のいずれかに記載の組成物。
【請求項126】
好適な条件下で結合部分間で形成された前記架橋が、20~200kJ/moleの結合強度を有する、請求項108~125のいずれかに記載の組成物。
【請求項127】
前記連続相中の界面活性剤分子の濃度が、0.5%~2%重量/体積である、請求項108~126のいずれかに記載の組成物。
【請求項128】
連続相中で前記分散相の区画のエマルションの形成に使用するための分散相を含む組成物であって、前記エマルション中の前記連続相と前記区画の境界面が、架橋部分を含む複数の界面活性剤分子を含み、前記分散相が、好適な条件下で前記架橋部分間で架橋処理を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む、組成物。
【請求項129】
前記分散相が連続相と接触しない、請求項128に記載の組成物。
【請求項130】
前記連続相が水相を含む、請求項128または129に記載の方法。
【請求項131】
前記分散相が、好適な条件下で非架橋処理を開始および/または促進する1つまたは複数の追加の成分をさらに含む、請求項128~130のいずれかに記載の組成物。
【請求項132】
前記非架橋処理が化学反応を含む、請求項131に記載の組成物。
【請求項133】
前記成分が、ポリメラーゼ連鎖反応を行うための核酸および成分を含む、請求項132に記載の組成物。
【請求項134】
前記架橋処理が、共有結合相互作用を含む、請求項128~133のいずれかに記載の組成物。
【請求項135】
前記架橋処理が、非共有結合相互作用を含む、請求項128~134のいずれかに記載の組成物。
【請求項136】
前記架橋処理が、1個または複数の中間リンカー部分を介して前記界面活性剤分子の結合部分の結合を含み、前記分散相が、複数の前記中間リンカー部分をさらに含む、請求項128~135のいずれかに記載の組成物。
【請求項137】
前記中間リンカー部分が、ビオチン結合部分を含む、請求項136に記載の組成物。
【請求項138】
前記ビオチン結合部分が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン誘導体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項137に記載の組成物。
【請求項139】
前記1つまたは複数の成分の濃度が、各成分について、10ナノモル~10ミリモルである、請求項128~138のいずれかに記載の組成物。
【請求項140】
連続相中の分散相の複数の区画を含むエマルション組成物であって、
(i)前記分散相区画と前記連続相との境界面が、複数の界面活性剤分子を含み、
(ii)前記境界面の界面活性剤分子が、界面活性剤分子間の1個または複数の結合部分により架橋され、
(iii)前記区画の少なくとも一部が、好適な条件下で、第2の成分を生成するための処理を受ける第1の成分を含み、および
(iv)前記連続相が、前記第2の成分と相互作用し、前記第2の成分の存在および/または存在量を示すシグナルを生成するレポーター部分を含む、組成物。
【請求項141】
前記第1および第2の成分が、同じ、またはほぼ同じである、請求項140に記載の組成物。
【請求項142】
前記第1の成分が目的の核酸であり、前記第2の成分が前記核酸の増幅産物である、請求項140または141に記載の組成物。
【請求項143】
前記結合部分が、前記レポーター分子の前記区画中への進入を促進する1種または複数の特性を有する、請求項140~142のいずれかに記載の組成物。
【請求項144】
エマルションのフロープロセスを実施する方法であって、
(i)
(a)連続相、および
(b)結合部分を有する界面活性剤分子、を含む連続相を用意すること、
(ii)前記連続相とは別に、結合部分を有する界面活性剤分子を含まず、界面活性剤分子間の架橋の形成を開始および/または促進するする1つまたは複数の成分を含む分散相を用意することであって、前記架橋が前記結合部分を含むこと、
(iii)前記連続相および前記分散相を前記連続相中に前記分散相を含む複数の区画のエマルションを生成する区画発生装置に流すこと、および
(iv)区画の形成の間および/または形成の後で、前記結合部分を含む界面活性剤分子間の架橋を形成し、前記区画と連続相との境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成すること、
(iii)前記エマルションを、前記エマルションの前記区画に対して、1種または複数の操作を行う工程システムを通して流すこと、
を含む方法。
【請求項145】
尾部および頭部を含む複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物であって、前記第1の界面活性剤分子が、前記第1の界面活性剤分子に結合した第1の結合部分を含み、前記第1の結合部分が、好適な条件下で、前記第1の界面活性剤分子と、第2の結合部分を含む第2の界面活性剤との間の架橋の形成に関与するように構成される、組成物。
【請求項146】
前記第1および第2の結合部分が、同じ構造を有する、請求項145に記載の組成物。
【請求項147】
前記第1の界面活性剤分子が、複数の結合部分を含む、請求項145または146に記載の組成物。
【請求項148】
前記第1の界面活性剤分子が、平均2~10個の結合部分に結合される、請求項147に記載の組成物。
【請求項149】
前記第1の結合部分が、前記界面活性剤分子の尾部に結合される、請求項145~148のいずれかに記載の組成物。
【請求項150】
前記第1の結合部分が、前記界面活性剤分子の頭部に結合される、請求項145~148のいずれかに記載の組成物。
【請求項151】
前記第1の結合部分の長さが、前記界面活性剤分子の頭部の長さの5~500%である、請求項145~150のいずれかに記載の組成物。
【請求項152】
前記第1の界面活性剤分子が、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または双性イオン界面活性剤である、請求項145~151のいずれかに記載の組成物。
【請求項153】
前記第1の界面活性剤分子が、フッ素系界面活性剤である、請求項145~151のいずれかに記載の組成物。
【請求項154】
前記結合部分が、前記界面活性剤分子に共有結合される、請求項145~153のいずれかに記載の組成物。
【請求項155】
前記結合部分が、好適な条件下で、中間部分に結合し、別の結合部分には結合しないように構成される、請求項145~154のいずれかに記載の組成物。
【請求項156】
前記結合部分がビオチンを含む、請求項155に記載の組成物。
【請求項157】
前記中間部分が、ビオチン結合部分を含む、請求項155に記載の組成物。
【請求項158】
前記複数の第1の界面活性剤分子が、連続相中に含まれる、請求項145~157のいずれかに記載の組成物。
【請求項159】
尾部および頭部を含む第1の界面活性剤分子を変性する方法であって、複数の第1の結合部分を前記第1の界面活性剤分子に結合することを含み、前記第1の結合部分が、好適な条件下で、前記第1の界面活性剤分子と、第2の結合部分を含む第2の界面活性剤分子との間の架橋の形成に関与するように構成される、方法。
【請求項160】
平均2~10個の前記第1の結合部分を前記第1の界面活性剤分子に結合することを含む、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記複数の第1の結合部分を、前記界面活性剤分子の尾部に結合することを含む、請求項159または160に記載の方法。
【請求項162】
前記複数の第1の結合部分を、前記界面活性剤分子の頭部に結合することを含む、請求項159または160に記載の方法。
【請求項163】
前記第1の結合部分の長さが、前記界面活性剤分子の頭部の長さの5~500%である、請求項159~162のいずれかに記載の方法。
【請求項164】
前記第1の界面活性剤分子が、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または双性イオン界面活性剤である、請求項159~163のいずれかに記載の方法。
【請求項165】
前記第1の界面活性剤分子が、フッ素系界面活性剤である、請求項159~163のいずれかに記載の方法。
【請求項166】
前記結合部分を前記第1の界面活性剤分子に共有結合することを含む、請求項159~165のいずれかに記載の方法。
【請求項167】
前記結合部分が、好適な条件下で、中間部分に結合し、別の結合部分には結合しないように構成される、請求項159~166のいずれかに記載の方法。
【請求項168】
前記結合部分がビオチンを含む、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
前記中間部分が、ビオチン結合部分を含む、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
(i)エマルションの形成に使用するための複数の界面活性剤分子を含む容器であって、前記界面活性剤分子が他の界面活性剤分子に架橋するための複数の結合部分を含む容器、
(ii)前記(i)の容器を含む梱包物、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2019年6月3日に出願された米国仮出願第62/856,660号の優先日の利益を主張する。この仮出願の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
連続相中の分散相の区画から構成されるエマルション系は、多くの用途で有用である。エマルション系の起こり得る欠点には、1つの区画から別の区画への分子の移動、合一、などが含まれる。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本明細書で提供されるのは、組成物である。
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、尾部および頭部を含む複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物であり、第1の界面活性剤分子は、界面活性剤分子当り平均2~10個の第1の結合部分を含み、第1の結合部分は、(i)好適な条件下で相互に結合するように、または(ii)好適な条件下で第2の結合部分と結合し、第2の結合部分は、尾部および頭部を含む第2の界面活性剤分子に結合され、第2の結合部分は第1の結合部分とは異なるように、または(iii)好適な条件下で中間結合部分と結合するように、またはこれらの組み合わせとなるように構成される。第1の結合部分は、第1の界面活性剤分子の尾部に結合される。あるいは、第1の結合部分は、第1の界面活性剤分子の頭部に結合され得る。第2の結合部分は、第2の界面活性剤分子の頭部に結合され得る。あるいは、第2の結合部分は、第2の界面活性剤分子の尾部に結合され得る。特定の実施形態では、結合部分は、好適な条件下で1個または複数の共有結合を形成するように構成される。特定の実施形態では、結合部分は、好適な条件下で1個または複数の非共有結合を形成するように構成される。特定の実施形態では、組成物は、複数の第2の界面活性剤分子をさらに含み、第2の界面活性剤分子は、界面活性剤分子当り平均2~10個の第2の結合部分を含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合部分は、逆帯電している。特定の実施形態では、組成物は、第1の界面活性剤分子を含む連続相をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、第2の界面活性剤分子を含む連続相をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、分散相をさらに含む;いくつかのこれらの実施形態では、分散相は、第1の界面活性剤分子を含まない;いくつかのこれらの実施形態では、分散相は第2の界面活性剤分子を含まない。中間結合部分が使用される特定の実施形態では、分散相が中間結合部分を含む。特定の実施形態では、組成物は、第1の界面活性剤分子を含む分散相をさらに含む。特定のこれらの実施形態では、組成物は、連続相をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、第2の界面活性剤分子を含む分散相をさらに含む。特定のこれらの実施形態では、組成物は、連続相、例えば、第1の界面活性剤分子を含まない連続相および/または第2の界面活性剤分子を含まない連続相をさらに含む。特定の実施形態では、連続相は中間結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤部分は、ビオチンを含む第1の結合部分、および1個または複数のビオチン結合部分、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む中間結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、油を含む連続相などの、連続相中にミセルを形成する。特定の実施形態では、油は、炭化水素またはシリコーン油である。特定の実施形態では、油はフッ化油を含む。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤である。
【0004】
特定の実施形態では、連続相中に分散相の区画を含むエマルションを含む組成物が本明細書で提供され、分散相の区画は、連続相と区画の境界面に位置し、界面活性剤分子の層を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、複数の界面活性剤分子は、相互に架橋して、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークの架橋度は、20~100%である。特定の実施形態では、架橋は、界面活性剤の尾部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している。特定の実施形態では、架橋は、界面活性剤の頭部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子の尾部で相互に架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子の頭部で相互に架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第1の部分は、架橋の一部を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第1の結合部分の平均数は2~10個である。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第2の部分は、第1の結合部分とは異なる、架橋の一部を形成する第2の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第2の結合部分の平均数は2~10個である。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、架橋を介して架橋結合し、架橋の平均長さは1~100nmである。特定の実施形態では、分散相は水相を含み、連続相は油を含み、特定の場合には、油はフッ化油を含む。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、非共有結合で架橋されている。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、共有結合で架橋されている。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、ビオチン結合部分により架橋されるビオチン部分を含む。特定の実施形態では、ビオチン結合部分は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子当り平均2~10個のビオチン部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書で記載の色素拡散アッセイ、例えば、ローダミン(rodamine)CGの拡散、またはレゾルフィンの拡散、またはフルオレセインの拡散の1つにおけるような色素拡散試験で少なくとも20%の色素拡散の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、合一アッセイ、例えば、本明細書に記載の合一アッセイの1つで測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。
【0005】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相を含む組成物であり、連続相は、界面活性剤分子に結合される結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含み、部分は、好適な条件下で相互に架橋を形成する。特定の実施形態では、連続相はエマルションの調製に使用される。特定の実施形態では、部分は、連続相中においては架橋するような相互作用を実質的に行わない。特定の実施形態では、部分は、好適な条件下で非共有結合架橋を形成する。特定の実施形態では、部分は、好適な条件下で共有結合架橋を形成する。特定の実施形態では、連続相は油を含む。特定の実施形態では、油はフッ化油である。特定の実施形態では、フッ化油は、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン)、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノノフルオロブツルエーテル、(ペンタン,1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル-))、イソプロピルアルコール、(1,2-trans-ジコロレチレン)、(ブタン,1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-)、(1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン)、(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-)、5~18個の炭素原子を含むペルフルオロ化合物、ポリクロロトリフルオロエチレン、(2,2,2-トリフルオロエタノール)、Novec8200(商標)、Novec71DE(商標)、Novec7100(商標)、Novec7200DL(商標)、Novec7300DL(商標)、Novec71IPA(商標)、Novec72FL(商標)、Novec7500(商標)、Novec71DA(商標)、Novec7100DL(商標)、Novec7000(商標)、Novec7200(商標)、Novec7300(商標)、Novec72DA(商標)、Novec72DE(商標)、Novec649(商標)、Novec73DE(商標)、Novec7700(商標)、Novec612(商標)、FC-40(商標)、FC-43(商標)、FC-70(商標)、FC-72(商標)、FC-770(商標)、FC-3283(商標)、FC-3284(商標)、PF-5056(商標)、PF-5058(商標)、ハロカーボン0.8(商標)、ハロカーボン1.8(商標)、ハロカーボン4.2(商標)、ハロカーボン6.3(商標)、ハロカーボン27(商標)、ハロカーボン56(商標)、ハロカーボン95(商標)、ハロカーボン200(商標)、ハロカーボン400(商標)、ハロカーボン700(商標)、ハロカーボン1000N(商標)、Uniflor4622R(商標)、Uniflor8172(商標)、Uniflor8472CP(商標)、Uniflor8512S(商標)、Uniflor8731(商標)、Uniflor8917(商標)、Uniflor8951(商標)、TRIFLUNOX3005(商標)、TRIFLUNOX3007(商標)、TRIFLUNOX3015(商標)、TRIFLUNOX3032(商標)、TRIFLUNOX3068(商標)、TRIFLUNOX3150(商標)、TRIFLUNOX3220(商標)、またはTRIFLUNOX3460(商標)またはこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、フッ化油は、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン);(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-);5~18個の炭素原子を含むペルフルオロ-化合物;またはこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、エーテル、アミド、またはカルバミド結合により結合された頭部および尾部を有するフッ素系界面活性剤;カルバミド、エーテル、またはアミド結合を介してフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を有するフッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含む。特定の実施形態では、好適な条件下で形成された架橋は、直接架橋を含む。特定の実施形態では、好適な条件下で形成された架橋は、間接架橋を含む。特定の実施形態では、結合部分はビオチンを含む。特定の実施形態では、各界面活性剤分子は、少なくとも平均2個の結合部分を含む。特定の実施形態では、各界面活性剤分子は、少なくとも平均4個の結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の結合部分は、それらが好適な条件下で反応する場合、界面活性剤分子間で得られる架橋が1~100nmとなるようなものである。特定の実施形態では、好適な条件下で結合部分間で形成される架橋は、20~200kJ/moleの結合強度を有する。特定の実施形態では、界面活性剤分子の濃度は、0.5%~2%重量/体積である。
【0006】
特定の実施形態では、連続相中の分散相の区画のエマルションの形成に使用するための分散相を含む組成物が本明細書で提供され、エマルション中の連続相と区画の境界面は、架橋部分を含む複数の界面活性剤分子を含み、分散相は、好適な条件下で架橋部分間で架橋処理を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む。特定の実施形態では、分散相は連続相と接触しない。特定の実施形態では、分散相は水相を含む。特定の実施形態では、分散相は、好適な条件下で非架橋処理を開始および/または促進する1つまたは複数の追加の成分をさらに含む。特定の実施形態では、非架橋処理は化学反応を含む。特定の実施形態では、成分は、ポリメラーゼ連鎖反応を行うための核酸および成分を含む。特定の実施形態では、架橋処理は共有結合相互作用を含む。特定の実施形態では、架橋処理は非共有結合処理を含む。特定の実施形態では、架橋処理は、1個または複数の中間リンカー部分を介して界面活性剤分子の結合部分の結合を含み、分散相は、複数の中間リンカー部分をさらに含む。特定の実施形態では、中間リンカー部分はビオチン結合部分を含む。特定の実施形態では、ビオチン結合部分は、アビジン、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン誘導体、またはこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の成分の濃度は、10ナノモル~10ミリモルである。
【0007】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中で複数の分散相の区画を含むエマルション組成物であり、(i)分散相区画と連続相との間の境界面は、複数の界面活性剤分子を含み;(ii)境界面の界面活性剤分子は、界面活性剤分子間の1個または複数の結合部分により架橋され;(iii)少なくとも一部の区画は、好適な条件下で第2の成分を生成する処理を受ける第1の成分を含み;(iv)連続相は、第2の成分と相互作用して、第2の成分の存在および/または存在量を示すシグナルを生成するレポーター部分を含む。特定の実施形態では、第1および第2の成分は、同じ、またはほぼ同じである。特定の実施形態では、第1の成分は目的の核酸であり、第2の成分は核酸の増幅産物である。特定の実施形態では、結合部分は、レポーター分子の区画中への進入を促進する1種または複数の特性を有する。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、尾部および頭部を含む複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物であり、第1の界面活性剤分子は、第1の界面活性剤分子に結合した第1の結合部分を含み、第1の結合部分は、好適な条件下で、第1の界面活性剤分子と、第2の結合部分を含む第2の界面活性剤との間での架橋の形成に関与するように構成される。特定の実施形態では、第1および第2の結合部分は、同じ構造を有する。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、複数の結合部分を含む。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、平均2~10個の結合部分に結合される。特定の実施形態では、第1の結合部分は、界面活性剤分子の尾部に結合される。特定の実施形態では、第1の結合部分は、界面活性剤分子の頭部に結合される。特定の実施形態では、第1の結合部分の長さは、界面活性剤分子の頭部の長さの5~500%である。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または双性イオン界面活性剤である。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、フッ素系界面活性剤である。特定の実施形態では、結合部分は、界面活性剤分子に共有結合される。特定の実施形態では、結合部分は、好適な条件下で、中間部分に結合し、別の結合部分には結合しないように構成される。特定の実施形態では、結合部分はビオチンを含む。特定の実施形態では、中間部分はビオチン結合部分を含む。特定の実施形態では、複数の第1の界面活性剤分子は、連続相中に含まれる。
【0009】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)エマルションの形成に使用するための界面活性剤を含む容器;(ii)(i)の容器を含む梱包物を含むキットであり、界面活性剤分子は、他の界面活性剤分子に架橋するための複数の結合部分を含む。
【0010】
一態様では、本明細書で提供されるのは、方法である。
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中に分散相の区画を含むエマルションにおける処理を実施する方法であり、該方法は、(i)連続相中の分散相の区画のエマルションを用意することであって、分散相の区画が、区画と連続相との境界面に位置し、界面活性剤分子の相を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、複数の界面活性剤分子が相互に架橋して界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成すること;および(ii)区画に対し処理を実施すること、を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークの架橋度は、20~100%である。特定の実施形態では、架橋は、界面活性剤の尾部、または界面活性剤の頭部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している。特定の実施形態では、架橋は、界面活性剤の頭部、または界面活性剤の頭部の長さの5~500%の平均長さを有する架橋を介している。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子の尾部で相互に架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子の頭部で相互に架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第1の部分は、架橋の一部を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第1の結合部分の平均数は2~10個である。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第2の部分は、第1の結合部分とは異なる、架橋の一部を形成する第2の結合部分を含み、界面活性剤分子当りの第2の結合部分の平均数は2~10個である。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、架橋を介して架橋結合し、架橋の平均長さは1~100nmである。特定の実施形態では、分散相は水相は連続相であり、連続相は油である。特定の実施形態では、油はフッ化油である。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、非共有結合で架橋されている。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、共有結合で架橋されている。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、ビオチン-ビオチン結合部分相互作用で架橋されている。特定の実施形態では、ビオチン結合部分は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子当り平均15、1~10、2~10個のビオチン部分を含む。特定の実施形態では、方法は、区画中の界面活性剤分子の架橋ネットワークの形成をさらに含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、分散相が連続相中で複数の区画を形成する条件下で、少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含む連続相と分散相とを接触させて、区画の形成中および/またはその後に、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する条件を与え、結合部分が1つの界面活性剤分子から少なくとも1つの他の界面活性剤分子に架橋を形成し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成することにより、形成された。特定の実施形態では、分散相は、結合部分と接触時に、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む。特定の実施形態では、区画は、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する外部刺激に曝露される。特定の実施形態では、処理は、化学的分析;タンパク質または株工学;核酸、タンパク質、または細胞ベースアッセイ;選別;分離;または化学的および/または生化学的合成;またはこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、処理は核酸アッセイを含む。特定の実施形態では、処理はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書で記載の色素拡散試験、例えば、ローダミンCGの拡散、またはレゾルフィンの拡散、またはフルオレセインの拡散の内の1つなどの色素拡散試験で少なくとも20%の色素拡散の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中の分散相の区画のエマルションを生成する方法であり、分散相の区画は、区画と連続相の境界面に位置し、界面活性剤分子の相を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、該方法は、(i)連続相と分散相を接触させることであって、(a)連続相が少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含むか、または(b)分散相が少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含むか、または(c)分散相が連続相中で複数の区画を形成する条件下で、(a)と(b)の両方であること;および(ii)区画の形成中および/またはその後に、結合部分を含む界面活性剤分子間で架橋の形成を開始および/または促進し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する条件を与えること、を含む。特定の実施形態では、連続相は結合部分を含む界面活性剤分子を含み、分散相はそれを含まない。特定の実施形態では、結合部分、および架橋の他の成分は(存在する場合)、界面活性剤の尾部の長さの5~500%、または界面活性剤の頭部の長さの5~500%の長さを有する架橋を形成する。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、界面活性剤分子当り平均2~10個の結合部分を含む。特定の実施形態では、結合部分の状態および/または数は、界面活性剤分子の架橋ネットワークの完成度が20~100%であるようなものである。特定の実施形態では、結合部分は、界面活性剤分子の尾部に結合され、架橋は界面活性剤分子の尾部間で形成される。特定の実施形態では、結合部分は、界面活性剤分子の頭部に結合され、架橋は界面活性剤分子の頭部間で形成される。特定の実施形態では、分散相は、結合部分と接触時に、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の成分は、界面活性剤結合部分と1個または複数の結合を形成する1個または複数の中間結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤結合部分はビオチンを含み、中間結合部分はビオチン結合部分を含む。特定の実施形態では、ビオチン結合部分は、ストレプトアビジンおよび/またはストレプトアビジン誘導体を含む。特定の実施形態では、区画は、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する外部刺激に曝露される。特定の実施形態では、外部刺激は光を含む。特定の実施形態では、連続相は油を含み、分散相は水相を含む。特定の実施形態では、油はフッ化油を含む。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書で記載の色素拡散アッセイ、例えば、ローダミンCGの拡散、またはレゾルフィンの拡散、またはフルオレセインの拡散の1つにおけるような色素拡散試験で少なくとも20%の色素拡散の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。
【0012】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、油連続相中に分散水相の複数の区画を含むエマルションの調製方法であり、区画は、区画の表面に界面活性剤分子の架橋ネットワークをさらに含み、該方法は、分散される水相を調製すること、変性界面活性剤を含む油相を調製することであって、変性界面活性剤が尾部および頭部を含み、および結合部分をさらに含むこと;ならびに水相と油相を混合して、油中に水相の複数の区画のエマルションを形成することであって、変性界面活性剤分子が相互に架橋を形成し、区画と連続相との境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワーク形成することを含む。特定の実施形態では、混合は、ボルテックスにより、ピペット操作により、シリンジ操作により、震盪により、塊状で行われる。特定の実施形態では、混合はマイクロ流体液滴形成装置による。特定の実施形態では、混合は、マイクロ流体Tジャンクション、フローフォーカシングジャンクション、逆yジャンクション(reverse-y junction)、millipedeジャンクション(millipede junction)、またはこれらの組み合わせによる。特定の実施形態では、エマルションの生成システムは、より大きな機器中に組み込まれる。特定の実施形態では、機器は、試料送達モジュール、液滴発生装置モジュール、サーマルサイクラーモジュール、検出モジュール、廃棄物管理モジュール、またはこれらの組み合わせを含む機器である。特定の実施形態では、より大きな機器は、組み込まれたマイクロ流体デバイス、配管、容器または槽を有する。特定の実施形態では、機器は、限定されないが、機器全体としての、またはマイクロ流体装置の性能を含む機器を制御する関連ソフトウェアを含む。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中に分散相の区画を含むエマルション中の区画の合一を防止する方法であり、該方法は、区画と連続相との間の境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成することを含む。特定の実施形態では、区画は、1umの直径より大きい平均直径を有する。特定の実施形態では、エマルションは、60℃より高い温度である。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、マイクロ流体装置中で、連続相中に分散相の区画を含むエマルションを、輸送、熱サイクル、インキュベート、選別、または分析する方法であり、液滴は、区画と連続相との間の境界面に架橋界面活性剤分子のネットワークを含む。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中に水相の区画を含むエマルションの区画中でPCRを実施する方法であり、区画は、架橋剤、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、テンプレートDNA、プライマー、およびプローブ/またはDNA結合色素を含み、連続相は、1個または複数の結合部分を含む界面活性剤分子を含む。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)連続相中に、分散相を含む複数の区画を含むエマルションを形成することであって、区画が連続相との境界面に複数の界面活性剤分子を含む界面活性剤層を含むこと;(ii)境界面で界面活性剤分子を架橋し、架橋界面活性剤ネットワークを形成すること;(iii)区画に対し処理を実施すること;および(iv)架橋界面活性剤ネットワークを処理して、架橋度を低減すること、を含む方法である。特定の実施形態では、方法は、複数の区画をこじ開けて、区画中の分散相を放出させることをさらに含む。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含み、連続相はフッ化油を含む。特定の実施形態では、処理はポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)(a)連続相、および(b)結合部分を有する界面活性剤分子を含む連続相を用意すること;(ii)連続相とは別に、結合部分を有する界面活性剤分子を含まず、界面活性剤分子間の架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む、分散相を用意することであって、架橋が結合部分を含むこと;(iii)連続相および分散相を、連続相中に分散相を含む複数の区画のエマルションを生成する区画発生装置中に流すこと;および(iv)区画形成中および/またはその後で、結合部分を含む界面活性剤分子間で架橋を形成し、区画の連続相との境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成すること;および(v)エマルションの区画に対し1つまたは複数の操作を行う処理システムを通してエマルションを流すこと、を含むエマルションのフロープロセスを実施する方法である。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、尾部および頭部を含む第1の界面活性剤分子を変性する方法であり、該方法は、複数の第1の結合部分を第1の界面活性剤分子に結合することを含み、第1の結合部分は、好適な条件下で、第1の界面活性剤分子と、第2の結合部分を含む第2の界面活性剤分子との間の架橋の形成に関与するように構成される。特定の実施形態では、方法は、平均2~10個の第1の結合部分を第1の界面活性剤分子に結合することを含む。特定の実施形態では、方法は、複数の第1の結合部分を、界面活性剤分子の尾部に結合することを含む。特定の実施形態では、方法は、複数の第1の結合部分を、界面活性剤分子の頭部に結合することを含む。特定の実施形態では、第1の結合部分の長さは、界面活性剤分子の頭部の長さの5~500%であり;特定の実施形態では、第1の結合部分の長さは、界面活性剤分子の尾部の長さの5~500%である。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または双性イオン界面活性剤である。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、フッ素系界面活性剤である。特定の実施形態では、方法は、結合部分を第1の界面活性剤分子に共有結合することを含む。特定の実施形態では、結合部分は、好適な条件下で、中間部分に結合し、別の結合部分には結合しないように構成される。特定の実施形態では、結合部分はビオチンを含む。特定の実施形態では、中間部分はビオチン結合部分を含む。
【0019】
参照による組み込み
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれがあたかも具体的に、個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明の新規特性を、添付の特許請求の範囲に具体的に記載する。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的実施形態を記載する次記の発明を実施するための形態および添付図面を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】分散相が連続相中に区画を形成してエマルションを形成することを示す図である。
【
図3】区画境界面を横切る分子輸送の2つのモードの模式図を示す。
【
図4】エマルション中の別の区画間の分子輸送の模式図を示す。
【
図6】異なる架橋度を示す;左、完全架橋;右、部分架橋。
【
図7】区画境界面中に組み込まれた界面活性剤の物理的形態が変化し得ることを示す。
【
図8】区画境界面の化学的特性の変性による分子輸送の制御の実施形態を示す。
【
図9】逆ミセル形成の抑制による分子輸送の低下の実施形態を示す。
【
図10】界面活性剤ネットワーク気孔のサイズ基準制限により制御された分子輸送の実施形態を示す。
【
図13】界面活性剤部分の頭部-頭部間架橋および尾部-尾部間架橋を示す。
【
図14】2種の異なる界面活性剤分子上の結合部分間の直接架橋を示す。
【
図15】2個の界面活性剤部分のイオン結合による架橋を示す。
【
図16A】1個または複数の中間結合部分を介した2個の界面活性剤部分間の間接架橋を示す。
【
図16B】1個または複数の中間結合部分を介した2個の界面活性剤部分間の間接架橋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で開示されるのは、本明細書では架橋と呼ばれる区画境界面での界面活性剤-界面活性剤相互作用の促進によるエマルションの安定化に関連する組成物および方法である。界面活性剤架橋は、区画境界面での分子ネットワーク、すなわち、界面活性剤ネットワークの形成により、エマルションに増大した安定性を付与する。このようなネットワークは、結合された界面活性剤分子を保持および/または界面活性剤分子の運動を低減しやすいように相互作用する界面活性剤分子を含み;いくつかの事例では、結合は、界面活性剤分子に架橋するように直接にまたは中間部分を介して相互作用する界面活性剤分子に結合した結合部分の使用により促進され、相互作用は、いくつかの事例では、共有結合であり、他の事例では非共有結合であり、相互作用により結合された架橋界面活性剤分子が保持される。本明細書で使用される場合、「界面活性剤分子」および「界面活性剤部分」は同じ意味で用いられ、単一の界面活性物質を意味し、このような物質は、単一分子または2個以上の分子の多分子複合体への集合体であり得る。一般的に、界面活性剤は、親水性頭部および疎水性尾部を有し、界面活性剤分子間の架橋は、頭部基間、尾部基間、頭部-尾部間、またはこれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、連続相は、フッ化油などの油を含み、分散相は水相を含み、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。分子(界面活性剤)ネットワークは、液滴の境界特性を変えて、分子の液滴内外への分子の移動を促進または制限するのを助ける能力を有する。本明細書で開示されるのは、エマルション調製方法、界面活性剤調製方法、ならびに架橋界面活性剤、および他の得られた組成物を有するエマルションを得る方法である。さらに、本明細書で開示されるのは、記載された界面活性剤および架橋界面活性剤を有するエマルションを用いる方法およびそれらの使用である。さらに開示されるのは、区画ハンドリングシステムにおける界面活性剤および界面活性剤のエマルションの有用性である。
【0023】
本明細書で記載の組成物および方法は、界面活性剤を利用する任意の好適なエマルション系で使用できる。特定の実施形態では、エマルション系は、油中水型エマルション系であり、この場合、水性分散相は、油の連続相中で区画を形成し、界面活性剤は、区画境界面を安定化させるように使用され、界面活性剤分子は、本明細書に記載のように部分的にまたは完全に架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、本明細書でリンカー部分とも呼ばれる、例えば、1個の界面活性剤の結合部分と、別の界面活性剤の結合部分との間の共有結合または非共有結合で、界面活性剤分子間で一緒に直接連結できる1個または複数の結合部分、または1個または複数の結合分子を介して間接的に一緒に連結する1個または複数の結合部分、すなわち、中間結合部分を含み、中間連結部分は、例えば、分子は、1個の界面活性剤分子上の結合部分と、例えば、共有結合または非共有結合で連結し、および少なくとも1個の他の界面活性剤分子上の結合部分と、例えば、共有結合または非共有結合で連結する。好適な結合部分を界面活性剤分子に導入する任意の好適な方法を用い得、特定の事例では、界面活性剤分子は、変性することなく、このような部分を既に含み、および他の事例では、界面活性剤分子は、1個または複数の結合部分を含むように、例えば、結合部分を共有結合または非共有結合で結合することにより、変性される。方法は、水性の分散相で使用される界面活性剤分子を1個または複数の結合部分を含むように変性すること、および、例えば、界面活性剤が区画と連続相との間に境界面を形成中であるまたは形成している場合、架橋のための条件を提供することを含む。
【0024】
任意の好適な方法を用いて、界面活性剤分子を架橋し得る。エマルションの形成の前に、架橋するように構成された界面活性剤分子は、連続相中、分散相中、またはこれらの組み合わせ中に存在できる。特定の事例では、結合部分を含む界面活性剤分子は、連続相中に存在し、例えば、変性界面活性剤分子が連続相中に存在し、界面活性剤上のリンカー部分間の結合過程を推進するための1個または複数の活性化成分などの、またはリンカー分子、すなわち、中間リンカー部分などの、界面活性剤分子上の結合部分間の結合過程を活性化、推進、または促進する1つまたは複数の成分が、水相などの分散相中に存在し;例えば、区画発生装置中で、これらの相が一緒にされて、連続相中の分散相、例えば、水相の区画のエマルションを形成する。界面活性剤は、区画と連続相の境界面で層を形成し、界面活性剤分子は、例えば、界面活性剤結合部分間で直接に、または1個または複数の、界面活性剤分子上のリンカー部分と、リンカー分子、すなわち、中間リンカー部分との間で架橋を形成する中間リンカー部分を介して間接的に結合を形成することにより、架橋される。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、1個または複数の、例えば、平均1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分を含むように変性される。界面活性剤当りの結合部分の最適数は、架橋反応のタイプおよび、いくつかの事例では、リンカー分子、すなわち、中間リンカー部分の使用に依存し得る。界面活性剤と結合部分との間の結合は、任意の好適な結合タイプ、例えば、共有結合または非共有結合であり得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、2個の異なる結合部分を含むように変性され;一般的に、第1セットの変性界面活性剤分子は、第1の結合部分を結合させて調製され、第2セットの変性界面活性剤分子は、第2の結合部分を結合させて調製される。第1および第2のセットの界面活性剤分子は、混合されて、複数の第1および第2両方の変性界面活性剤を含む組成物を生成できる。このような変性界面活性剤分子は、例えば、第1の結合部分が第2の結合部分と反応して直接架橋を生成する、または中間結合部分と反応して間接架橋を生成する反応に使用され得る。
【0025】
特定の実施形態では、界面活性剤分子は、1個または複数の、例えば、平均1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個、例えば、平均約6個のビオチン部分を含むように変性され、ビオチン結合部分、例えば、ビオチン部分に結合するストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体の添加により架橋され、従って、中間結合部分として作用する。中間結合部分、例えば、ストレプトアビジンは、架橋の前に任意の好適な量で存在し得;例えば、平均区画の表面の全体をコートするのに必要な架橋剤の量は計算でき、その量の一定割合、例えば、1、5、10、20、50、70、100、120、150、200、300、400、もしくは500%、またはそれらの間の任意の範囲を、いくつかの事例では、区画の可能な数に対し調節して、使用し得る。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤である。特定の実施形態では、連続相は油、例えば、フッ化油を含む。
【0026】
本明細書で開示の組成物および方法は、任意の好適なエマルションベース設定で有益な用途が見出され得、これには、限定されないが、化学分析、タンパク質および株工学、核酸、タンパク質、細胞ベースアッセイ、選別、または分離、または化学的および/または生化学的合成、例えば、コンビナトリアル薬物合成における区画間の小分子移動の低減または排除、高スループット薬物スクリーニング、個別の細胞による分泌産物の分析、目的の酵素の定向進化、合成細胞の構築、またはエマルション系の任意の他の好適な使用、特に区画間の物質の移動が望ましくない場合の使用、が挙げられる。便宜上、組成物および方法は、ポリメラーゼ連鎖反応デジタルPCRに関連して記載される場合があるが、当業者は、同じまたは類似の組成物および方法が任意の好適なエマルション系で使用され得ることを理解するであろう。
【0027】
液滴が個別のコンパートメントとして作用する液滴マイクロ流体技術は、限定されないが、デジタルPCR、高スループットスクリーニング、株およびタンパク質工学、および細胞、タンパク質、および化学分析を含む広範囲の適用を可能にした。いくつかの例には、限定されないが、DNA/RNA増幅(Mazutis et al.,A.D.Lab Chip,2009,9,2665-2672;Mazutis et al.,Anal.Chem.,2009,81(12),4813-4821)、インビトロ転写/翻訳(Courtois et al.,Chembiochem.,2008,9(3),439-446)、酵素触媒作用(Baret et al.,Lab Chip,2009,9(13),1850-1858)、および細胞ベースアッセイ(Clausell-Tormos et al.,Chem.Biol.,2008,15(8),427-437;Brouzes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2009,106(34),14195-14200)が挙げられる。1ピコリットル~1ミリリットルの体積の範囲の小さいサイズの微小滴、および相対的直交性およびそれらそれぞれの集団での他の液滴からの分離は、極めて高スループット(>104個の試料/秒)および大きく低減した試薬消費で、スクリーニングおよびその他の処理を容易にする。
【0028】
エマルションは、第1の液相(「分散相」と呼ばれることもある)の、第1の液相と実質的に不混和性の第2の液相(「連続相」と呼ばれることもある)中の懸濁液である。いくつかの実施形態では、エマルションは、分散相を1個または複数の連続相中に区画形成することにより生成される。その相の他の分子に対するそれぞれの相の各分子の、その他の相中の分子に対するより高い親和性のために、安定化剤の非存在下での2個以上の分散相区画のより大きな合体区画への併合または合一は、通常、熱力学的に好ましい。界面活性剤は、2種の実質的に不混和性の流体間のエマルションの生成で、合一を防止するために、このような安定化剤としてよく使われ;いくつかの実施形態では、これらの2種の実質的に不混和性の流体は、水相と油である。マイクロ流体技術と組み合わせて、安定で均一なサイズの油中水型(WO)および水中油中水型(WOW)ならびに水中油型(OW)および油中水中油型(OWO)区画(「液滴」と呼ばれることもある)を生成、調節、変更、および輸送するために、エマルションベース用途の拡大または向上を目的として、極めて多くの用途が開発されてきた。多くの場合、本明細書で提供される方法および組成物は、WOエマルションの観点から記載されるが、同じ原理および技術は、必要に応じて、WOW、OW、およびWOエマルションに適用できることが理解されよう。
【0029】
連続または分散相が油を含むいくつかの実施形態では、炭化水素油、シリコーン油、などの任意の好適な油を使用し得る。特定の実施形態では、フッ化油が、例えば、連続相として、および/または本明細書で以降で記載のような他の流体成分として使用される。フッ化油としては、次記を含み得る:(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン)、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノノフルオロブツルエーテル、(ペンタン,1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル-))、イソプロピルアルコール、(1,2-trans-ジコロレチレン)、(ブタン,1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-)、(1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン)、(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-)、5~18個の炭素原子を含むペルフルオロ化合物、ポリクロロトリフルオロエチレン、(2,2,2-トリフルオロエタノール)、Novec8200(商標)、Novec71DE(商標)、Novec7100(商標)、Novec7200DL(商標)、Novec7300DL(商標)、Novec71IPA(商標)、Novec72FL(商標)、Novec7500(商標)、Novec71DA(商標)、Novec7100DL(商標)、Novec7000(商標)、Novec7200(商標)、Novec7300(商標)、Novec72DA(商標)、Novec72DE(商標)、Novec649(商標)、Novec73DE(商標)、Novec7700(商標)、Novec612(商標)、FC-40(商標)、FC-43(商標)、FC-70(商標)、FC-72(商標)、FC-770(商標)、FC-3283(商標)、FC-3284(商標)、PF-5056(商標)、PF-5058(商標)、ハロカーボン0.8(商標)、ハロカーボン1.8(商標)、ハロカーボン4.2(商標)、ハロカーボン6.3(商標)、ハロカーボン27(商標)、ハロカーボン56(商標)、ハロカーボン95(商標)、ハロカーボン200(商標)、ハロカーボン400(商標)、ハロカーボン700(商標)、ハロカーボン1000N(商標)、Uniflor4622R(商標)、Uniflor8172(商標)、Uniflor8472CP(商標)、Uniflor8512S(商標)、Uniflor8731(商標)、Uniflor8917(商標)、Uniflor8951(商標)、TRIFLUNOX3005(商標)、TRIFLUNOX3007(商標)、TRIFLUNOX3015(商標)、TRIFLUNOX3032(商標)、TRIFLUNOX3068(商標)、TRIFLUNOX3150(商標)、TRIFLUNOX3220(商標)、またはTRIFLUNOX3460(商標)。特定の実施形態では、フッ化油は、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン)、(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-)、および/または5~18この炭素原子を含むペルフルオロ化合物を含み、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含む。
【0030】
それらそれぞれの油に適切な界面活性剤は通常、安定なエマルション形成にとって必要である。従来の界面活性剤は、フッ化油中の界面活性剤の非極性末端の低溶解度のために、通常、フッ化油中の水相のエマルションの安定化には適切ではない。加えて、それらは、多くの場合、生体分子に対し毒性であり、細胞は、標準系に比べて、区画中で活性を失うか、または活性が変化する。
【0031】
エマルションの安定化に好適する、毒性の問題を低減するフッ素化界面活性剤が開発されている。しかし、フッ素系界面活性剤化学の進展により、区画安定性の劇的な増大が達成されたが、WOおよびWOWエマルションの安定性のさらなる改善により新規用途の開発が可能になる多くの用途が存在する。いくつかの例は、剪断力環境、高温で、電界、例えば、静電ポテンシャルまたは他の電位の存在下で、および/または通常は、区画境界面を不安定化するはずの特定の水性配合物で、より大きな区画(例えば、>5um、>10um、>20um、>30um、>40um、>50um、>60um、>80um、>70um、>100um、>200um、>500umの球相当径)を扱う能力を含む。さらに、2相間で、または境界面で、分子の拡散および/または吸着をさらに改良する必要性がある。
【0032】
従って、特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤である。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、オリゴエチレングリコール、トリス、またはポリエチレングリコール部分を含む。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボンおよび/またはクロロフルオロカーボン部分を含む。いくつかの実施形態では、フッ素系界面活性剤は、エーテル、アミド、またはカルバミド結合により結合された頭部および尾部を有する。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、エーテル、またはアミド結合を介してフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を有する。フッ素化界面活性剤としては、限定されないが、Picosurf-1、Ran FS-008、FC-4430、FC-4432、FC-4434が挙げられる。特定の事例では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含み得る。ビオチンが結合部分として使われる特定の実施形態では、ビオチンを含む代表的フッ素系界面活性剤は、Ran BiotechnologiesによるFS-ビオチンである。例えば、米国特許出願公開第20180112036号を参照されたい。フッ素系界面活性剤は、フッ化油中の0.01%重量/体積~5%重量/体積の濃度を有し得る。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤濃度は、0.5%~2.0%重量/体積、例えば、0.5%~1.5%重量/体積の範囲である。本明細書では一般に、界面活性剤濃度は、それが、連続相中の界面活性剤のパーセンテージ、例えば、それがパーティショナー(partitioner)中に流し込まれて、分散相の区画を生成する際の連続相中の界面活性剤のパーセンテージとして表される。
【0033】
フッ化油および/またはフッ素系界面活性剤が使用されるいくつかの実施形態では、例えば、処理中にエマルションと接触する表面の少なくとも80、90、95、または99%がフッ素化されている、エマルションを処理するために使用される系の表面を有するのは、例えば、表面での区画の起こり得る残留液を減らすために、有利である。従って、特定の実施形態では、系中の流路、例えば、導管の表面は、フルオロポリマーを含み、少なくとも1つの連続相は、フッ化油を含み、分散相は、フッ化油よりも、フルオロポリマー表面に対しより低い親和性を有する。ここで、および本明細書の他の場所で、フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロメチレン(PTFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、またはこれらの組み合わせなどのいずれかの好適なフルオロポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、導管の表面は、親水性材料を含み、少なくとも1つの連続相は親水性であり、分散相は疎水性である。さらなる実施形態では、分散相は油である。
【0034】
特定の実施形態では、フッ化油は、(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン)、(フラン,2,3,3,4,4-ペンタフルオロテトラヒドロ-5-メトキシ-2,5-ビス[1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル]-)、および/または5~18この炭素原子を含むペルフルオロ化合物を含み、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含む。
【0035】
一例では、デジタルアッセイは、一揃いの分散相の区画を検討することにより実施される。このようなアッセイでは、目的の分析物は、生成時に区画中に分散され、各区画の特性の測定は、その区画が最小量の目的の分析物を含むかどうかの判断を可能とする。いくつかの実施形態/実施例では、目的の分析物を含むおよび/または含まない、および/または目的の分析物の一定量を含むとして測定される区画の数を、区画中の分析物の根底にある統計的分布と相関付けることにより、元の分析物を確認し得る。ある実施形態では、特性は、例えば、モル濃度または体積濃度、または任意の他の好適な濃度の表現による濃度である。
【0036】
ポリメラーゼ連鎖反応)(PCR)は、目的の核酸をインビトロで増幅するために使用される方法である。増幅速度を注意深く測定することにより、核酸の初期濃度は、標準的基準を用いて定量化され得る。しかし、限定されないが、(1)不十分なPCR効率、(2)低濃度の出発テンプレート、(3)反応停止、および(4)副産物形成、を含む多くの因子が初期量の演繹を複雑化する。さらに、基準試料と標的核酸との間の増幅効率の差異が、実際の濃度の導出を歪める。
【0037】
例えば、マイクロ流体により生成した区画を用いて実施されるデジタルPCR(「dPCR」)は、試料を多くのより小さい反応に分割することにより、DNAテンプレートを定量するように現在のPCRの実施を改良する。分散相は、マイクロ流体装置を利用して区画に分割され、ミリリットル~フェムトリットルの体積の範囲の高度に均一なサイズの区画の集団をもたらす。少なくとも1つのテンプレートを欠く区画が存在するのに十分な区画に試料を分割し、区分化増幅を同時に実行し、その後、テンプレートを含んだおよび含まなかった区画の数を数えることにより、標的DNAの濃度を、ポアソン統計を用いて計算し得る。定量化のための基準の必要性がないので、dPCRは、核酸定量化における主要なエラー源がなくなる。dPCRは、さらに、所与の区画内のテンプレートの初期体積濃度を増大させることにより、希な標的検出のための精度を改善できる。例えば、溶液中の1つのテンプレートは、反応が20,000個の等サイズの区画に分割される場合、20,000倍の濃度の増大に遭遇することになる。テンプレート濃度のこのような増大は、これらの希なDNAの化学反応動力学および増幅効率の増大をもたらし得る。希な標的検出はまた、同じ理由による、希な標的の複雑なバックグラウンドに対する比率の変化から恩恵を受けることができる。テンプレート濃度が増大するに伴い、反応に影響し得る抑制分子の濃度が相対的に低下し、これらの抑制分子の影響に対する追加の耐性を提供する。
【0038】
デジタルアッセイの精度は、他の因子の中でも、系が生成できる区画の数、乳化試料のパーセンテージ、それらが取り扱われる、インキュベートされる、および分析される場合の得られた区画の安定性、および目的の区画中の水性成分およびレポーター分子の保持に依存する。いくつかの事例では、レポーター分子の流入は、有益である[Prodanovic et.al,2011,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening]。例えば、DNA検出分子(インターカレーション剤など)の油相から水性への選択的輸送が望ましい場合がある。このタイプの輸送は、水相中の限られた量の試薬を有することにより生ずる検出上限を無くする。従って、区画の安定性を高め、合一を減らし、ならびに相および/または区画の間の分子拡散を減らすかまたは選択的に制限するという新機軸は、本明細書で提供される特定の実施形態により包含される。
【0039】
一般に、本明細書で提供される組成物および方法は、1つの区画から連続相へ、および通常、別の区画へ成分の移動を減らすまたは無くすること、および/または選択成分の区画中へもしくは区画からの移動を調節すること、が望ましいエマルション系で使用できる。理論に束縛されるものではないが、区画内の成分の移動は合一を介して発生し得ると考えられており、この場合、2つ以上の、区画が一緒により大きな区画に合体され、従って、逆ミセル形成および移動により、および成分の区画から連続相への直接拡散により、および通常、他の区画中に戻ることにより、各区画の内容物が混ざり合う。代わりにまたは追加して、本明細書で提供される界面活性剤を架橋するための組成物および方法は、区画と連続相との間の界面活性剤境界面をより強固にすることができ、従って、区画は、例えば、過酷な反応条件に対し、または架橋の非存在下では区画を不安定化するはずの区画内の成分に対し、より高い耐性がある。
【0040】
合一に対してエマルションを安定化するために、界面活性剤を使用して、界面張力、従って、ギプスの自由エネルギーを低下させて、立体的反発力または静電反発力をもたらし、膜の流出時間を延長し、または表面弾性を高める。乳化剤は、多くの場合、2相のそれぞれに溶解可能な基を含む両親媒性分子である。水性または油性の単一溶媒中に存在する場合、それらはミセル状構造を形成する。区画形成および区画境界面の生成のしばらくの期間の後に、ミセルは消散し、油-水境界面に吸着する。
【0041】
特定の界面活性剤化学に応じて、界面活性剤は、水性相または油相中に可溶性がより高くなり得る。いくつかの事例では、界面活性剤は、いずれの相中でもミセルを形成し、区画境界面の形成時に、ミセルは分離し、界面活性剤分子は区画境界面中に組み込まれる。界面活性剤は両親媒性であり、少なくとも2個の逆の溶解度の基を有するので、尾部基および頭部基はそれらそれぞれの溶媒と結合する。境界面でのこの結合は、改善された区画安定性をもたらす。ミセル状態と境界状態との間で達成されたそれぞれの溶解度平衡は、区画安定性および境界面健全性において一定の役割を有する可能性がある。
【0042】
2相の内の1つの界面活性剤の溶解度を低下させることにより、合一が、化学的に悪化し得る。いくつかの例では、このような溶解度の低下は、pH調節、または界面活性剤、油、または水溶液と相互作用する、またはそれらの化学組成を変える化学薬品の添加による可能性がある。
【0043】
連続相から分散相への、または連続相中の区画間での化学薬品の輸送は、ミセルと境界面状態との間の界面活性剤の動的平衡により促進され得る。
【0044】
区画の不安定性を推進する多くの力は、ほとんどの区画用途で容易に変わるものではないので、区画安定性を改善するための新規方法は、例えば、高温、機械的な力、例えば、剪断力、電界、および/または多くの生物工学的配合物中に存在する化学試薬の存在下で流出時間を延長し、界面活性剤を安定化することになる。
【0045】
定義
本明細書で使用される場合、「エマルション」という用語は、2相の1つ(分散相)が、第2の(連続)相中に含まれる個別の区画を形成するような2種の不混和性流体の混合物を含む。一般的エマルションは、水または水相中に懸濁した油(OW)または油中に懸濁した水(WO)であり得る。他の一般的エマルションは、水中油中水型(WOW)または油中水中油型(OWO)などの多相エマルションであり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「クリーム分離(creaming)」という用語は、エマルションの2つのエマルションへの分離を含み、2つの内の1一方(クリーム)が、分散相中で、もう一方よりも豊富である。クリーム分離は、合一に対する前駆物質であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「沈殿」という用語は、2相間の密度の差異に起因するエマルションからの沈降を含む。沈殿は、合一に対する前駆物質であり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「綿状沈殿(flocculation)」という用語は、エマルション中の区画が、表面積の変化なしに、一緒に集合することを含む。この用語は、凝集(aggregation)と同義である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「オストヴァルト成長(Ostwald ripening)」という用語は、より小さい区画がより大きな区画と合体して、面積に対する表面の比が最小化される熱力学的により安定な状態に達する現象を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「合一(coalescence)」という用語は、2つ以上の区画が融合してより大きな区画を形成することを含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、液体中に溶解されて、その液体の表面張力を小さくし、それによりエマルションの安定化を支援する傾向を有する物質を含む。本明細書で使用される場合、「界面活性剤分子」および「界面活性剤部分」は通常、同義であり、2個以上の分子をその構造中に有する界面活性剤を含み得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ジェミニ界面活性剤」という用語は、2個の界面活性剤分子の間にスペーサー単位を含む二量体界面活性剤を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「フッ化」という用語は、1個または複数のフッ素原子を含む任意の基または物質を含む。一般に、基または物質は、複数のフッ素原子を含む。例えば、フッ化油は、フッ素原子を含む任意の油を意味し、限定されないが、部分フッ素化炭化水素、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテルおよびこれらの混合物を含む。
【0054】
本明細書で使用される場合、「フッ素系界面活性剤」という用語は、少なくとも1個のフルオロカーボン部分を有する任意の化学的界面活性剤を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、2個以上の界面活性剤分子に結合し、区画境界面で分子ネットワークを形成する能力を有する流体相の1つの成分を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、界面活性剤分子、例えば、連続相中の分散相の区画の境界面での界面活性剤分子の「架橋」は、界面活性剤分子間の結合の形成を意味する。結合は、共有結合のまたは非共有結合であってよく、通常、界面活性剤分子の変性なしに界面活性剤分子間で結合を形成しない、またはなんらかの実質的な程度に結合を形成しない。変性は、直接にまたは間接的に架橋される1個または複数の結合部分の界面活性剤分子への付加、および/または界面活性剤分子の界面活性剤分子間架橋の形成に好適な条件への曝露を含み得る。一般に、本明細書で使用される場合、「架橋」は、界面活性剤分子の頭部または尾部の修飾ではなく、フッ素系界面活性剤分子に結合した結合部分の使用を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「分散された水相」という用語は、1つまたは複数の目的の分析物を含み得る水系溶液を含む。いくつかの実施形態では、分散された水相は、少なくとも1種の化学試薬を含み、少なくとも1種の化学反応のための離散形反応容器として機能する。分散された水相を含む系は、少なくとも1個の離散形反応容器中の少なくとも1種の化学反応の特性を測定し得る検出器を追加で含み得る。いくつかの実施形態では、分散された水相は、目的の分析物を含み、少なくとも1種の化学反応の特性は、目的の分析物の特性と比較され得る。いくつかの実施形態では、測定の可能な結果は、離散形セットにより表され得るという意味で、測定値は、性質上デジタルである。さらなる実施形態では、少なくとも1つの閾値を超えるまたはその値未満の測定値は、少なくとも1個の離散形反応容器が目的の分析物を含むか否かを決定する。他の実施形態では、測定の可能な結果は、連続的範囲の値により表されるという意味で、測定値は、性質上アナログである。いくつかの実施形態では、水相は、後述のように、緩衝液、塩、分析物、安定剤、界面活性剤、色素、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「連続相」という用語は、分散相と実質的に不混和性の液体を含み、その中で、区画は、分散相の区画形成の前に、その間に、またはその後に存在する。連続相は、分散相を区画に分割するために使用される不混和性相または形成後に、区画が交換された新規不混和性相を意味し得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「安定剤」という用語は、保存剤、酵素の安定性または活性を維持または高めるのを助ける分子、特定のタイプの酵素、例えば、界面活性剤、金属イオン、ショ糖、密集剤、DNアーゼまたはRNアーゼ阻害剤を阻害または不活性化するのを助ける分子を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「安定性」という用語は、拡散が特定の分子および区画境界面の性質に応じて増大または減少するかどうかに関わらず、液滴破壊および/または合一の減少および/または逆ミセル形成の減少などの区画境界面を介した分子拡散の改善および境界面を横切る分子拡散の減少または増大をもたらす区画境界面の維持を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、一緒に使用するための物品の収集物を含む。キット中の物品は、相互に連動しても、しなくてもよい。キットは、例えば、目的のために特有の、試薬、緩衝液、酵素、抗体および他の組成物を含み得る。キットはまた、使用説明書およびデータ分析および解釈用のソフトウェアも含む。キットは、基準として機能する試料をさらに含む。通常、キット中の物品は、一次容器、例えば、バイアル、チューブ、ボトル、箱またはバッグに収容される。別の物品は、それら自体の別の容器、または同じ容器に収容できる。キット中の物品、またはキットの一次容器は、二次容器、例えば、箱またはバッグ中に、場合により、例えば、棚用に、または一般的運送業者に運ばせるために、郵便または配達サービスなどの商用販売に適合させて、組み合わせることができる。
【0062】
図1は、エマルションの形成を示す。分散相液体[101]は、連続相液体[102]内で区画に分割される。得られたエマルションは、連続相[102]のバルク液体中に可溶化された複数の分散相区画[103]を含む。各区画[103]は、元の分散相液体の分割体積を含み、分散相液体とバルク連続相液体との間に境界面[104]を含む。
【0063】
区画[103]は、1ピコリットル~1ミリリットル、例えば、1pL-1mL、1pL-100uL、1pL-10uL、1pL-5uL、1pL-1uL、1pL-100nL、1pL-10nL、1pL-1nL、1pL-100pL、1pL-10pL、10pL-1mL、10pL-100uL、10pL-10uL、10pL-5uL、10pL-1uL、10pL-100nL、10pL-10nL、10pL-1nL、10pL-100pL、100pL-1mL、100pL-100uL、100pL-10uL、100pL-5uL、100pL-1uL、100pL-100nL、100pL-10nL、100pL-1nL、1nL-1mL、1nL-100uL、1nL-10uL、1nL-5uL、1nL-1uL、1nL-100nL、1nL-10nLの範囲の球状体積に等化した断面直径の範囲であり得る。
【0064】
区画境界面[104]は、安定化剤、例えば、界面活性剤により安定化できる。安定化剤は、液滴境界面に物理的安定性を付与し、区画合一および/または破壊の発生を低減し得る。安定化剤はまた、境界面の健全性を付与し、制御されたまたは低減された境界面を横切る分子の輸送をもたらし得る。
【0065】
分散相液体[101]は、親水性液体、例えば、水性の液体、疎水性液体、または親フッ素性液体であり得る。分散相液体[101]の組成に応じて、連続相液体[102]はまた、親水性液体、例えば、水性の液体、疎水性液体、または親フッ素性液体であり得る。連続相液体[102]は、エマルションを形成するように、分散相液体と実質的に不混和性である。
【0066】
図2は、2つ以上の区画[201]の合一で単一区画[204]を生じ、合一後の体積は2つ以上の出発区画の合計体積に等しいことを示す模式図である。
【0067】
区画の合一では、2つ以上の出発区画[201]はそれぞれ、バルク連続相の外側により囲まれた分散相液体の内側を含む。区画境界面[202]は、分散相と連続相液体の交点に存在する。2つ以上の出発区画[201]は、安定化剤により安定化された境界面[202]を有しても、または有さなくてもよい。好適な安定化剤には、界面活性剤が含まれ得る。
【0068】
いくつかの事例では、2つ以上の出発区画[201]は、高近接度および高エネルギーの状態に入り、2つ以上の区画[201]を分離する連続相流体が完全に喪失し得る。連続相流体の喪失および表面エネルギーの存在は、区画境界面[202]の不安定化および2つ以上の区画境界面[203]の融合をもたらし、その際、2つ以上の区画が合一して、その結果として、2つ以上の元の区画[201]の合計体制に等しい体積の区画[204]を形成する。
【0069】
理論に束縛されるものではないが、種々の現象がエマルションの物理的不安定化:クリーム分離、沈殿、綿状沈殿、位相反転、オストヴァルト成長に繋がり、これらのいずれかまたは全てが合一をもたらす、または合一の可能性を高め得ると考えられている。不安定性の機序は、区画サイズ、粒度分布、乳化剤の量とタイプ、2相の相互溶解度、撹拌、温度、およびpHに依存する。例えば、合一は、エマルションの、エネルギー的には好ましくない、高い表面自由エネルギー(ΔG)から生じる。その結果、系は、総界面エネルギー(ΔA)の低下の方向に進行し、これは、区画が不安定化し、それらの未混合の状態に戻る傾向になることを意味する:ΔG=γΔA。式中、γは、界面張力を意味し、系のエネルギーは、ほぼ常にプラスである[McClements,2015,Food Emulsions:Principles,Practices,and Techniques,第3版]。
【0070】
図2に示すように、いくつかの事例では、区画間の界面膜が流出し、2つ以上の分散相区画を分離している連続相バリアーの完全除去を可能にするに伴い、区画が合一する。このモデルでは、合一は、少なくとも次の2つのパラメーター:接触時間および膜流出、に依存する。接触時間が膜流出時間を超えると、2つ以上の区画が、全ての油がそれらの間から流出するのに十分長く相互に接触し、区画が破裂して、合一し得る。膜流出は、分散相と連続相との間の圧力差に起因する毛細管圧力により誘導される。それは、膜表面間のファンデルワールス、立体的および静電相互作用から生ずる分離させる圧力により遅延または防止され得る。
【0071】
合一は、温度変化または剪断力により系のエネルギーを増大させるまたは区画をより近接接触させることにより、機械的に悪化し得る。
【0072】
図3は、区画境界面[302]を横切る分子輸送の2つのモードの模式図を示す。分子輸送は、区画内側[301]から連続相流体へ、または連続相流体から区画内側[301]へ発生し得る。いくつかの事例では、輸送は、両方向で起こり得、いくつかの事例では、輸送は、2つの輸送方向の1つが選ばれ得る。輸送は、無視できる程度の全体の濃度勾配が生成されるのに十分な時間後の、静的または動的平衡中に存在し得る。
【0073】
第1の実例では、分子輸送は、拡散により制御される。区画内側[301]中に可溶化された分子[303]は、区画境界面[302]を横切ってバルク連続相中に、またはバルク連続相から区画境界面[302]を横切って区画内側[301]中に拡散し得る。バルク連続相[304]中の結果として生じた分子は、その後、区画境界面を横切って液滴内側[301]に拡散により戻り得る。
【0074】
連続相[304]中の分子は、エマルション中の任意の区画の界面を通過し、エマルション中の区画間の分子の輸送の可能性をもたらし得る、すなわち、1つの区画中の分子は、第2の区画に移動できる。
【0075】
第2の実例では、分子輸送は、バルク連続相中の界面活性剤ミセル[305]の形成、区画境界面とのそれらの融合、および新しい界面活性剤ミセルの生成と放出による連続相中への戻りにより制御される。ミセルは、疎水性溶媒中のミセルのケースでは、頭部基がミセル内側で相互作用する界面活性剤分子の集合体である。
【0076】
区画境界面[302]中に組み込まれた界面活性剤およびバルク連続相液体中のミセル[305]中に組み込まれた界面活性剤は、動的平衡下で、常に交換されている。この動的平衡下では、界面活性剤ミセル[305]は、区画境界面と融合し、ミセル中の界面活性剤は区画境界面[302]中に組み込まれる。界面活性剤分子が存在するために一定の表面積があるので、ミセルの融合は、区画境界面[302]のどこかで界面活性剤分子の置換が起こる。この置換は、同じまたは異なる界面活性剤分子による新しい界面活性剤ミセル[306]の形成をもたし得る。この処理は、逆ミセル形成と呼ばれる。
【0077】
区画内側[301]に溶解した分子[303]は、ミセル形成時に、新しく形成されたミセルの内側に捕捉され得る。これらのミセル捕捉分子[307]は、すぐに、バルク連続相中に効率的に溶解する。分子を充填したミセル[306]はその後、エマルション中で、連続相中に永遠に残るか、または任意の好適な区画と結合し得る。
【0078】
この実例では、分子輸送は、拡散の原理により制御されないが、むしろ、サイズおよび逆ミセル形成の相対的動力学ならびにエマルション中の界面活性剤濃度に基づいている。
【0079】
いくつかの実施形態では、温度の低下、連続相粘度の増大、および区画-区画近接度の減少は、区画の内側から外側への、またはその逆の、分子輸送の効率を低減させ得る。
【0080】
図4は、エマルション、拡散およびミセル形成における別の区画間の分子輸送の2つのモードの別の模式図を示す。
【0081】
第1の実例では、第1の区画は、バルク連続相内に大量の分散相液体[401]を含む。区画境界面[402]は、分散相液体[401]とバルク連続相液体の交点に存在する。区画境界面[402]は、界面活性剤などの安定化剤により安定化される場合も、安定化されない場合もある。同じエマルション中で、1つまたは複数の追加の分散相区画も、バルク連続相中に存在する。追加の分散相区画は、分散相内側[405]および第2の区画境界面[404]も含む。第1の区画[403]中に存在する分子は、第1の区画境界面[402]を横切ってバルク連続相液体中に拡散移行により移行しても、しなくてもよい。バルク連続相中に輸送された分子は、その後、バルク連続相を自由に通過し得る。第2の区画に到着時、連続相分子[403]は、その後、第2の区画の境界面[404]に移行し、第2の区画の分散相内側[405]に入り得る。
【0082】
第2の実例では、分子輸送は、バルク連続相中の界面活性剤ミセル[406]の形成により制御される。ミセルは、分散相可溶性基がミセル内側で相互作用する界面活性剤分子の集合体である。
【0083】
区画境界面[402]中に組み込まれた界面活性剤およびバルク連続相液体中のミセル[406]中に組み込まれた界面活性剤は、動的平衡下で、常に交換されている。この動的平衡下では、界面活性剤ミセル[406]は、区画境界面と融合し、ミセル中の界面活性剤は区画境界面[402]中に組み込まれる。界面活性剤分子が存在するための一定の表面積があるので、ミセルの融合は、区画境界面[402]のどこかで界面活性剤分子の置換が起こり得る。この置換は、同じまたは異なる界面活性剤分子による新しい界面活性剤ミセル[407]の形成をもたらす。この処理は、逆ミセル形成と呼ばれる。
【0084】
区画内側[401]に溶解した分子[403]は、ミセル形成時に、新しく形成されたミセル[407]の内側に捕捉され得る。これらのミセル捕捉分子[403]は、すぐに、バルク連続相中に効率的に溶解する。分子充填ミセル[403]はその後、連続相中に永遠に残る、第1の区画と結合する、または第2の区画[404]の境界面中に組み込まれ、効率的に分子[403]を第1の区画から第2の区画の分散相内側[405]に放出する。
【0085】
長期間にわたる拡散または逆ミセル手段による液滴から液滴への分子輸送は、平衡状態に達する傾向がある。このタイプの分子輸送は、区画を単独の反応容器として使用する能力に対し望ましくない影響を有し得る。理由は、これらの手段を介して移行できる分子は、最早、それらの元の区画に束縛されず、例えば、1つの反応容器区画で生成された検出可能マーカーは、それを生成した区画と結合したままであるとは限らない。
【0086】
いくつかの事例では、温度の低下、連続相粘度の増大、および区画-区画近接度の減少は、区画の内側から外側への、またはその逆の、分子輸送の効率を低減させ得る。
【0087】
図5は、界面活性剤架橋の実施形態を示す。界面活性剤架橋は、1種または複数の物理的に結合した架橋剤の相互作用および/または化学反応を介して区画境界面中に組み込まれた界面活性剤間の結合[501および502]の形成を意味する
【0088】
界面活性剤は通常、連続相または分散相流体に可溶性の2個以上の結合部分を含む両親媒性分子である。上記図では、部分Aおよび部分Bは、相対する流体中に溶解する界面活性剤の基を意味する。例えば、部分Aが連続相に選択的に溶解する場合、部分Bは分散相に選択的に溶解する。例えば、部分Bが連続相に選択的に溶解する場合、部分Aは分散相に選択的に溶解する。
【0089】
架橋は、界面活性剤分子の頭部(すなわち、連続相に選択的に溶解し、連続相と接触している部分)間で、界面活性剤分子の尾部(すなわち、分散相に選択的に溶解し、区画の内側に向いている部分)間で、界面活性剤分子の他の部分間で、またはこれらの組み合わせで発生する。
【0090】
区画境界面中に組み込まれた界面活性剤分子の境界面での架橋は、表面で界面活性剤分子の保持を促進する界面活性剤ネットワークを形成し、界面活性剤粒子が架橋されていないものと比較して、区画安定性を効果的に高める。これは、界面活性剤粒子が架橋されていない区画を不安定化するはずの、長い接触時間、高温、およびpHの変動、または化学薬品の存在を伴う用途であっても、各区画の周りの連続相膜の保持を支援できる。架橋は、自然発生的であるかまたは誘導され、1つの成分系または多成分系を用いて形成され、および架橋度は部分的から全体まで変わり得る。特定の実施形態では、別の反応物質上の別の結合部分と相互作用する界面活性剤上の結合部分は、界面活性剤の両親媒性を与える部分AおよびBとは別の部分である、すなわち、それらは、界面活性剤の頭部または尾部への付加物であり、頭部または尾部の一部ではない。
【0091】
図6は、架橋度が部分的から全体まで変わり得ることを示す。
【0092】
数値6aでは、完全架橋が達成されている。この実施形態では、区画[601]は、界面活性剤分子[602]で飽和した区画境界面を含む。各界面活性剤分子は、架橋[603]を介して、少なくとも1個の他の界面活性剤分子に結合し、これらの界面活性剤分子間を連結している。区画境界面中の各界面活性剤分子は、他の隣接界面活性剤分子に連結され、区画境界面で、完全に相互接続した界面活性剤ネットワークを形成する。全体または完全架橋は、100%または実質的に100%の区画境界面の隣接界面活性剤分子が一緒に架橋される場合に起こる。
図6aの事例では、各界面活性剤分子は5個の隣接分子を有し、完全架橋は、全てまたは実質的に全ての界面活性剤分子がそれらの5個の隣接分子に結合する場合に達成される。追加でまたは代わりに、表面中のいくつかの比率の界面活性剤が蛍光性である場合、架橋されない界面活性剤は表面を自由に動き回ることができるので、架橋が達成されると、これらの蛍光界面活性剤は、所定位置で固定されるであろう。FRAPでは、試料上のスポットは、光脱色され、その後、色素がその光脱色された領域に戻るのが監視される。逆ミセルの場合では、全液滴が脱色でき、逆ミセルが発生していると、脱色界面活性剤は出て行き、その後、新しい蛍光界面活性剤が入ってくる。色素が光脱色したスポットに戻るタイミングおよび/または蛍光分子が完全に光脱色した液滴に移動するタイミングを、いくつかの事例では、架橋なしに調製された液滴に対するタイミング(他の場合では同じ)と比較して、使用できる。特定の実施形態では、界面活性剤ネットワークは、1~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、95~100、または99~100%架橋されている。
【0093】
別の実施形態では、部分的架橋が達成された。この実施形態の例(
図6b)では、区画[604]は、界面活性剤分子で飽和した区画境界面を含む。区画境界面中の界面活性剤間の結合の数は、0結合(0%完結)から、界面活性剤に隣接する界面活性剤分子の数に基づく結合の最大数(100%完結)までの範囲である。界面活性剤分子は、隣接界面活性剤[605]に対する結合を有さない場合がある。界面活性剤ネットワークは、隣接界面活性剤の架橋により実現され得る。しかし、いくつかの事例では、そのネットワークの範囲が全体の区画境界面を包含しない場合がある。これは、例えば、2つの界面活性剤[606]から、より大きな3個以上の界面活性剤「ラフト」[607]までのサイズの界面活性剤「ラフト」の範囲であり得る。
【0094】
図7は、区画境界面中に組み込まれた界面活性剤の物理的形態が変化し得ることを示す。これは、界面活性剤の形状の非限定的リストである。
【0095】
一例では、界面活性剤は、比較的直鎖状の分子であり、界面活性剤の一方の部分は、連続相または分散相流体中に可溶性であり、もう一方の界面活性剤の部分は相対する流体中に可溶性である[702、703、および705]。1つの界面活性剤形状は、分散相中に可溶性の大きな部分および連続相中に可溶性の小さい部分を有する界面活性剤[702]を含み得る。第2の界面活性剤形状は、分散相中に可溶性の小さい部分および連続相中に可溶性の大きい部分を有する界面活性剤[703]を含み得る。第3の界面活性剤形状は、それらそれぞれの相[705]中で可溶性の等しいサイズの部分を含み得る。これらの部分は、大きくても、または小さくてもよい。
【0096】
第2の例では、界面活性剤は、折り曲げた分子であり、2つ以上の外側領域は連続的相または分散相流体に可溶性であり、内側領域は相対する相に可溶性である[701および704]。これらの界面活性剤は、ジェミニ界面活性剤と呼ばれることもある1つの界面活性剤形状は、分散相中に可溶性の外側部分および連続相中に可溶性の内側部分を有する界面活性剤[701]を含み得る。第2の界面活性剤形状は、分散相中に可溶性の内側部分および連続相中に可溶性の外側部分を有する界面活性剤[705]を含み得る。
【0097】
いずれかの界面活性剤形状が界面活性剤架橋のために利用され得る。界面活性剤形状の組み合わせが界面活性剤架橋のために利用され得る。一般に、結合部分が、架橋成分または条件に利用可能な界面活性剤分子の一部に結合されるのが好ましい;例えば、結合部分、例えば、ビオチンを界面活性剤分子の親水性頭部に結合でき、結合部分の架橋を開始または促進する1つまたは複数の成分、例えば、ストレプトアビジンなどの中間結合部分が水性の分散相中に存在し得、区画が形成されると、その中に親水性頭部を置くのが好ましい。別の例では、結合部分は、例えば、疎水性連続相中で架橋成分に利用可能な界面活性剤分子の疎水性尾部に結合され、それにより、このような成分は連続相中に存在し、それに対し尾部基が露出される。例えば、親水性連続相および疎水性分散相のための、他の組み合わせは、容易に明らかになる。
【0098】
図8は、区画境界面の化学的特性の変性による分子輸送の制御の実施形態を示す。区画境界面での化学的性質の調節は、区画境界面を横切る非相補的化学的特性を有する分子の輸送を選択的に低減させる。
【0099】
一例では(
図8a)、区画は、分散相内側[801]、連続相外側および高度に帯電した架橋区画境界面[802]を含む。疎水性[804]および/または親水性[803]の性質の分子は、区画境界面を横切る特異的な輸送を示す。特に、疎水性分子は、帯電架橋区画が高度に親水性のために、区画境界面を横切るのは全くありそうにない。親水性分子は、その電荷、完全帯電(イオン性)または部分的帯電(構成原子の異なる電気陰性度による)に応じて、ほとんどが横切る可能性があり;いずれの場合でも、分子の電荷が架橋区画の電荷と同じ場合は、静電反発力のために横切る可能性は低く、一方、分子の電荷が、架橋区画の電荷の逆である場合は、静電引力のために、横切る可能性がより高い。
【0100】
第2の例では(
図8b)、区画は、分散相内側[805]、連続相外側および高度に疎水性の区画境界面[806]を含む。疎水性[804]および/または親水性[803]の性質の分子は、区画境界面を横切る特異的な輸送を示す。特に、疎水性分子は、親水性分子に比べて境界面を選択的に通過する。
【0101】
図9は、逆ミセル形成の抑制による分子輸送の低下の例を示す。この実例では、分子輸送は、バルク連続相中の界面活性剤ミセル[906]の形成により制御される。ミセルは、分散相可溶性基がミセル内側で相互作用する界面活性剤分子の集合体である。
【0102】
図9aは、架橋されていない界面活性剤境界面の例を示す。区画境界面[902]中に組み込まれた界面活性剤およびバルク連続相液体中のミセル[904]中に組み込まれた界面活性剤は、動的平衡下で、常に交換されている。この動的平衡下では、界面活性剤ミセル[904]は、区画境界面と融合し、ミセル中の界面活性剤は区画境界面[902]中に組み込まれる。界面活性剤分子が存在するために一定の表面積があるので、ミセルの融合は、区画境界面[902]のどこかで界面活性剤分子の置換が起こる。この置換は、同じまたは異なる界面活性剤分子による新しい界面活性剤ミセル[905]の形成をもたらす。この処理は、逆ミセル形成と呼ばれる。
【0103】
区画内側[901]に溶解した分子[903]は、ミセル形成時に、新しく形成されたミセル[905]の内側に捕捉され得る。これらのミセル捕捉分子[903]は、すぐに、バルク連続相中に効率的に溶解する。分子充填ミセル[905]はその後、連続相中に永遠に残る、第1の区画と結合する、または第2の区画の境界面中に組み込まれ、効率的に分子[903]を第1の区画から第2の区画の分散相内側に放出する。
【0104】
拡散または逆ミセルによる液滴から液滴への分子輸送は、長期間にわたり、分子が平衡状態に達する傾向があることを意味する。このタイプの分子輸送は、区画を単独の反応容器として使用する能力に対し負の効果を有し得る。理由は、これらの手段を介して移行できる分子は、最早、それらの元の区画に束縛されず、1つの反応容器区画で生成された検出可能マーカーは、それを生成した区画と結合したままであるとは限らないためである。加えて、分子、例えば、区画中の反応物質は、化学反応で消費されるに伴い、外部分子の区画中への拡散のための濃度勾配が大きくなり、区画中への分子のさらなる流入をもたらし得る。
【0105】
界面活性剤分子の物理的結合による逆ミセル形成の抑制は、この過程による分子輸送を効果的に減らす、またはなくし得る(
図9b)。この場合、区画は、分散相内側[907]、区画境界面[909]、境界面[908]および分散相内側[907]内に溶解した分子[903]の界面活性剤間の架橋を含む。界面活性剤が区画境界面で界面活性剤を形成したので、連続相溶解界面活性剤ミセル[904]は、空隙の制約により区画境界面内に取り込まれ得ず、区画境界面由来のミセルは、新しいミセルを形成し得ず、それらは、それらの隣接する連結界面活性剤により区画境界面に物理的に拘束されるので、連続相中に出て行く。
【0106】
図10は、界面活性剤ネットワーク気孔のサイズ基準制限により制御された分子輸送の例を示す。この例では、架橋界面活性剤ネットワークの特異的形状形成により、分子輸送の制御のためのモレキュラーシーブとして作用する所定の気孔のネットワークがもたらされる。
【0107】
区画[1001]は、分散相内側、連続相外側、区画境界面、境界面に組み込まれた面活性剤[1002]、隣接界面活性剤[1003]間の架橋、および界面活性剤架橋の化学的および物理学的性質に基づく所定のサイズの気孔[1004]を含む。この例では、これらの気孔[1004]を通過するのに好適する体積の分子[1005]は、拡散原理に基づいて区画に出入りし得る。気孔[1004]を通過するのに好適しない体積の分子[1006]は、区画に出入りし得ない。
【0108】
図11は、種々のリンカーサイズ、すなわち、架橋剤長さの効果を示す。
【0109】
架橋剤サイズ、すなわち、長さは、小さいものから大きいものまで、すなわち、短いものから長いものまでの範囲であり得る。その結果、架橋剤長さは、区画境界面での架橋の性質を変え得る。短すぎる長さの架橋剤[1101]は、隣接界面活性剤分子に到達し得ないので、架橋形成が抑制される。長すぎる長さの架橋剤[1103]は、より多くの界面活性剤分子に架橋するので、ルーズな界面活性剤ネットワークをもたらし得る。
【0110】
従って、架橋剤長さは、特定の架橋用途のために、好適なサイズ[1102]に合わせて調製できる。特定の実施形態では、架橋剤長さ、例えば、各分子上の結合部分を、いくつかの事例では、直接的に、またいくつかの事例では間接的に中間結合部分を介して、結合することにより形成される2つの界面活性剤分子間の最終結合長さは、界面活性剤の頭部基の最長寸法、または界面活性剤の尾部基の最長寸法の、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、または1~3Xとなるように選択される。一般に、本明細書では、「頭部基」は界面活性剤の親水性部分を意味し、「尾部基」は疎水性部分を意味する。用語を簡略化するために、この命名法は、親水性連続相中の疎水性分散相区画(親水性頭部基を区画から連続相に突き出し、疎水性尾部基を疎水性分散相中に向ける)および疎水性連続相中の親水性分散相区画(区画から親水性頭部基を区画内部の親水性分散相の内側に向け、疎水性尾部基を外側の疎水性連続相に向ける)の両方のために使用される。特定の実施形態では、架橋剤は、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。
【0111】
図12は、架橋度に対する架橋剤数、すなわち、界面活性剤分子当りの結合部分の数の効果を示す。架橋剤を含まない、すなわち、結合部分を含まない界面活性剤の場合には、界面活性剤結合は形成され得ない。
図12aを参照されたい。界面活性剤が単一架橋剤、すなわち、単一結合部分[1201]を有する場合には、最大2つの隣接界面活性剤が結合され得る。
図12bを参照されたい。界面活性剤が2つ以上の架橋剤[1202]を有する場合には、複数の隣接界面活性剤が区画境界面全体にわたり架橋され得る。
図12cを参照されたい。
【0112】
図13は、界面活性剤部分の頭部-頭部間架橋および尾部-尾部間架橋を示し;部分Aは界面活性剤の頭部基であり、部分Bは尾部基である。
図13aは、架橋剤(1301)による頭部-頭部間架橋を示し;
図13bは、架橋剤(1302)による尾部-尾部間架橋を示す。
【0113】
図14は、2種の異なる界面活性剤分子上の結合部分間の直接架橋を示す。
図14aは、各界面活性剤部分(1402および1403)上の同じ結合部分(1401)を示し、界面活性剤部分1402および1403は、同じであっても、または異なっていてもよい。
図14bは、第1界面活性剤部分1405上の第1の結合部分1404および第2の界面活性剤部分1407上の第2の結合部分1406を示し、第1および第2の結合部分は異なり、第1および第2の界面活性剤部分は、同じまたは異なっていてもよい。2個の結合部分の結合は、共有結合であっても、または非共有結合性であってもよい。
【0114】
図15は、2個の界面活性剤部分のイオン結合による架橋を示す。いくつかの事例では、界面活性剤部分1501および1502の頭部基(部分A)は、反対電荷を有する。いくつかの事例では、界面活性剤部分1503および1504の尾部基(部分B)は、反対電荷を有する。電荷は、その形態のままで界面活性剤部分中に存在してもよく、または1個または複数の荷電基の界面活性剤への結合により作成および/または強化してもよい。
【0115】
図16は、1個または複数の中間結合部分を介した2個の界面活性剤部分間の間接架橋を示す。
図16aは、第1および第2の界面活性剤部分1603および1604を示し、これらは、同じであっても、または異なっていてもよく、結合部分1601は、中間結合部分1602を介して間接的に架橋する。
図16bは、中間結合部分1607を介して第2の界面活性剤部分1609の第2の結合部分1606に結合した第1の結合部分1605を有する第1界面活性剤部分1608を示す。
図16cは、それぞれ結合部分1610を有する、第1および第2の界面活性剤部分1612および1613を示し、複数の中間部分1611は、結合部分1610を結合する。
図16dは、複数の界面活性剤結合部分に結合するように構成される中間結合部分1616を示し;この例では、第1の結合部分を有する第1の界面活性剤部分1614、第2の結合部分を有する第2の界面活性剤部分1615、第3の結合部分を有する第3の界面活性剤部分1616、第4の結合部分を有する第4界面活性剤部分1617が存在し、第1、第2、第3、および第4の界面活性剤部分は、それらのそれぞれの結合部分の中間結合部分1616への結合を介して架橋される。第1、第2、第3、および第4の界面活性剤部分は、同じであってもよく、またはそれらの1個または複数は、他と異なっていてもよく、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。第1、第2、第3、および第4の結合部分は、同じであってもよく、またはそれらの1個または複数は、他と異なっていてもよく、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0116】
区画がいくつかのタイプの容器中に貯蔵されているか、流体経路内で動き続けているかにかかわらず、一般的に、本明細書で開示の組成物のおよび方法の目標は、区画境界面を強化することによりエマルション中の区画の安定性を改善することである。この安定性の増加は、区画合一の減少をもたらすことができる。代わりにまたは追加して、高められた安定性は、分散相から連続相中への、および連続相から分散相中への、または1つの区画から別の区画への分子の流れ抑制する。連続相からまたは連続相への、区画から区画への分散成分の交換は望ましくない場合がある。理由は、それが各区画中の特定の分析物の測定に影響を与え得るまたは不明瞭にし得るためである。本明細書で開示の組成物および方法は、いくつかの事例では、特定のタイプの分子の区画間、連続相から分散相へ、および/または分散相から連続相への選択的輸送を可能にするのを支援し得る。状況次第では、連続相からまたは連続相への、区画から区画への分散成分の交換は望ましく、それが各液滴中の特定の分析物の測定を改善し得る。
【0117】
界面活性剤分子が区画の境界面で形成された後に、および/または境界面の形成中に、界面活性剤分子を架橋することにより、区画安定性を改善するための開示組成物および方法が本明細書で開示される。界面活性剤の架橋は各区画のまわりに界面活性剤ネットワークを形成し、表面で界面活性剤分子の保持を促進し、界面活性剤粒子が架橋されていないものと比較して、区画安定性を高める。これは、界面活性剤粒子が架橋されていない区画を不安定化するはずの、長い接触時間、高温、およびpHの変動、または化学薬品の存在を伴う用途であっても、各区画の周りの連続相膜の保持を支援する。架橋は、自然発生的であるかまたは誘導され、1つの成分系または多成分系を用いて形成され、および架橋度は部分的から全体まで変わり得る。
【0118】
一般に、界面活性剤分子間の架橋は、区画形成の間および/またはその後に、例えば、液滴発生装置で、形成される。結合した結合部分を有する、および/または架橋に適用できる部分を有する界面活性剤は、区画形成の前に、分散相中に、連続相中に、または両方に存在し得る。特定の実施形態では、結合した結合部分を有する界面活性剤は、区画形成前には、実質的に全てが、連続相中に存在し、便宜上、この過程は、この実施形態に対し記載されるが、本明細書で提供の方法および組成物により、全ての組み合わせが包含されることは理解されよう。分散相区画を安定化させるための界面活性剤、例えば、結合した結合部分を有する界面活性剤分子は、区画形成の前には連続相中に存在し得る。区画の形成以前には、分散相は、プログラムされたエマルションとして、すなわち、境界面に界面活性剤分子層を有する連続相の層により取り囲まれた比較的大きな丸い分散相として、存在し得る。例えば、米国特許出願公開第20200030794号を参照されたい。特定の実施形態では、プログラムされたエマルションの界面活性剤は架橋されない。従って、連続相中の分散相区画を安定化させるための界面活性剤は、連続相で形成された区画中の界面活性剤間で架橋を形成するための基盤を形成できる。架橋界面活性剤および分散相を有する連続相は、最初は別々に存在する。エマルションを生成するために連続相中で分散相の区画が形成されると、完全に、または実質的完全に、連続相由来の界面活性剤分子から構成される区画上に界面活性剤境界面が形成され、区画形成中の、および/または形成後の状態は、連続相により供給された界面活性剤分子上の結合部分が界面活性剤分子間で架橋を形成するようなものである。架橋の形成は、本明細書に記載のような、様々な方法で開始および/または促進され得る。
【0119】
特定の実施形態では、架橋界面活性剤ネットワークを形成するための結合部分を有する界面活性剤分子を含む連続相中の状態は、架橋が形成されない、または実質的に形成されず、一方、界面活性剤は、分散相とは別の連続相中に存在するようなものである。あるいは、状態は、架橋が形成されるが、架橋が壊れ、界面活性剤が分散相と接触している場合には再形成できるような構造であり得る。特定の実施形態、例えば、光架橋では、エマルションが形成されると、架橋の形成を促進するように状態が変化する。いくつかの事例では、異なる結合部分を有する異なる界面活性剤は、連続相中で分離され得、例えば、連続相に別々に添加され得る。連続相中の界面活性剤のミセル間である程度の移動が存在するが、添加のタイミングおよび/または区画形成前の連続相の状態は、このような移動が最小化されるようなものであり得る。
【0120】
区画の形成中および/またはその後の架橋形成は、任意の好適な方法で誘導および/または促進できる。特定の実施形態では、分散相は、直接または間接的に架橋形成を誘導および/または促進する1つまたは複数の成分を含み、および/または1種または複数の状態を確立し;特定の実施形態では、成分および/または状態は、連続相中に存在しないまたは実質的に存在しない、および/または区画形成の前には存在しない場合がある。例えば、特定の実施形態では、分散相は、別々の界面活性剤の結合部分間で反応を開始させ、直接架橋を形成する1つまたは複数の成分を含む。例えば、後述のように、いくつかの界面活性剤分子は、アジドである第1の結合部分を有し、他の界面活性剤分子は、アルキンである第2の結合部分を有し得る。界面活性剤分子は、連続相に存在するが、界面活性剤分子は、銅または銅不含アルキン-アジド環化付加を誘導および/または促進するのに必要な成分を含む分散相と遭遇するまで、架橋を形成しない。特定の実施形態では、分散相は、界面活性剤分子の結合部分との結合を形成して、界面活性剤間で間接的架橋を形成できる1個または複数の中間結合部分を含む。いくつかの事例では、中間結合部分と界面活性剤結合部分との間での結合形成を促進する1つまたは複数の成分は、分散相および/または連続相中に存在する。中間結合部分の例は、ストレプトアビジンなどのビオチン結合部分である。このような部分は、分散相中に存在し得るが、一方、連続相は、結合部分として結合したビオチンを有する界面活性剤分子を含む。区画の形成時には、ビオチン結合中間結合部分は、界面活性剤分子に結合したビオチンと相互作用し、界面活性剤結合部分と中間結合部分との間に架橋を生成し、界面活性剤架橋ネットワークを生成する。いくつかの事例では、状態は、結合部分と中間部分との間の結合形成を誘導および/または促進する外部の方法により変化する。例は、光活性化架橋の使用であり、この場合、架橋は、結合部分が適切な光に曝露されるまで起こらないまたは実質的に起こらない。いくつかの事例では、分散相中に存在する状態は、結合部分間での結合形成を開始および/または促進できる。例えば、分散相のpHは、結合部分結合部分でのイオン形成が選択され、結合部分間のイオン相互作用がその部分を結合する。
【0121】
特定の実施形態では、異なる界面活性剤分子が、同じ結合部分を結合している。特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、結合した第1の結合部分を有し、第2の界面活性剤分子は結合した第2の結合部分を有し、第1および第2の結合部分は異なる。特定の実施形態では、架橋は直接的に、すなわち、界面活性剤結合部分は相互間で結合を形成し;特定の実施形態では、架橋は間接的に、すなわち、界面活性剤結合部分は、1個または複数の中間部分と結合を形成する。後者の場合、特定の実施形態では、単一中間部分を使用し得、他の実施形態では、複数の中間部分を使用し得る。結合は、共有結合であっても、または非共有結合性であってもよい。
【0122】
結合部分は、界面活性剤分子の親水性または極性部分に結合し得、これは、本明細書では頭部または頭部基とも呼ばれ、または界面活性剤分子の疎水性または非極性部分に結合し得、これは、本明細書では尾部または尾部基とも呼ばれ、またはこれらの組み合わせに結合し得る。
【0123】
界面活性剤分子を架橋する多くの方法が存在し、限定されないが、これらには、メカニカルメッシング(mechanical meshing)、イオン相互作用、化学的架橋、光架橋、およびリガンド結合相互作用が挙げられる。
【0124】
イオン相互作用
特定の実施形態では、少なくとも2種の異なるイオン性質を有する界面活性剤分子を含む混合物が使用される。第1の界面活性剤は、正電荷の領域を含み、一方、第2の界面活性剤は負電荷の領域を含む。一般に、荷電領域は、頭部基上に存在する。界面活性剤分子が液滴境界面に結合する場合、逆帯電領域が液滴境界面で多価電解質ネットワークを形成する。液滴境界面での多価電解質ネットワーク中に含まれる界面活性剤分子の数は、一部は、荷電領域の長さおよびそれらの領域が相互作用する異なる界面活性剤分子の数に依存する。電荷は、頭部基への基の付加により付与され得るか、または変性なしの頭部基の性質から付与され得;いずれの場合でも、結合部分は、電荷および/または荷電基其れ自体と見なされ得る。
【0125】
特定の実施形態では、高度に正電荷または負電荷を帯びる水性の部分を有する単一界面活性剤が使用される。架橋は、区画境界面での界面活性剤分子間塩橋ネットワーク形成対イオンを介して水相中で起こる。
【0126】
化学的/光架橋
特定の実施形態では、複数の界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤間の架橋は、化学的または光活性化され、界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤に結合され得る架橋剤、または溶液中で遊離状態で、界面活性剤分子に結合した部分と主に反応する架橋剤を用いて化学的に達成される。
【0127】
例えば、界面活性剤結合部分間、または架橋剤と界面活性剤との間、例えば、中間結合部分と界面活性剤結合部分との間での2種以上の界面活性剤間での共有結合相互作用は、任意の好適な化学により生成され得る。本明細書で開示の組成物および方法は、1種または複数の利用可能な化学的戦略を用いて、改善された区画安定性が得られる界面活性剤ネットワークの形成をもたらし得る。化学戦略としては、限定されないが、次記の官能基を含む反応が挙げられる:NHSエステル、マレイミド、スクワラン(squarane)、アルキン-アジド、クリックケミストリーまたは類似の方法、およびバイオコンジュゲーション反応(リシン、システイン、チロシンなどのアミノ酸と、例えば、Koniev,O.,Wagner,A,Chem.Soc.Rev.,44,5495(2015)で詳述されている反応性基との間の反応を含む)。いくつかの実施形態では、これらの化学薬品は生物学的に適合性がある。
【0128】
特定の実施形態では、架橋は、2種以上の異なる界面活性剤分子間でアミン反応性化学の使用により実施される。1つの例は、プルロニック(ポリオキシ-炭化水素ブロックコポリマー)または、水で利用可能なアミン官能基を有するジェファミンファミリー(アミノポリエチレングリコールブロックコポリマー)ポリマーからなる水性部分を有する第1の界面活性剤およびPEGファミリーポリマーからなる水性部分を有する第2の界面活性剤を生成することによるものである。例えば、米国特許出願公開第20180112036号を参照されたい。第2の界面活性剤をNHSエステル官能基で変性し、第2の界面活性剤を第1の界面活性剤と水性環境中で混合することにより、NHSエステル官能基は、第1の界面活性剤中に存在するアミン基に対する共有結合を形成する。
【0129】
特定の実施形態では、界面活性剤間の架橋は、DNA架橋機序により実施され得る。短い相補性オリゴヌクレオチドを界面活性剤分子に結合することにより、鎖間架橋剤を用いて、2個以上のオリゴヌクレオチドをそれらの結合した界面活性剤と効率的に架橋させ得る。架橋剤は、液滴形成の前にオリゴヌクレオチドと結合させるか、または水相中に遊離させ、区画形成後に界面活性剤と反応させ得る。特定の実施形態では、一本鎖オリゴヌクレオチドインターカレーターが、第1の界面活性剤に結合される。短いオリゴヌクレオチドを第2の界面活性剤に結合させて、区画境界面中で2種の界面活性剤を一緒に混合することにより、2個の界面活性剤分子が結合され、区画境界面に分子ネットワークが形成される。特定の実施形態では、界面活性剤は、それに結合した一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドを用いて生成される。二または三官能架橋剤のような多官能性架橋剤を含めることにより、界面活性剤は、区画形成時に架橋される。任意の好適なオリゴヌクレオチド架橋剤をこれらおよび他の実施形態で使用可能である。オリゴヌクレオチド架橋剤の例としては、限定されないが、5F-203、4′-アミノメチルトリオキサレン、8-メトキシプソラレン、アンゲリシン、二官能性アルデヒド、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、クリプトレピン、シクロホスファミド、ホテムスチン、メルファラン、ミトシンC、ミトキサントロン、亜硝酸、プロカルバジン、プソラレン、S)-tert-ブチル 1-(クロロメチル)-5-ヒドロキシ-1H-ベンゾ[e]インドール-3(2H)-カルボキシレート、トレオスルファン、トリオキサレンが挙げられる。
【0130】
特定の実施形態では、界面活性剤間の架橋は、ペプチド界面活性剤架橋機序により実施され得る。ペプチドを第1の界面活性剤に結合し、ペプチド反応性基を第2の界面活性剤に結合することにより、反応時に、界面活性剤分子が共有結合架橋される。特定の実施形態では、ペプチドが界面活性剤に結合され、多官能性ペプチド間架橋剤を用いて、1個または複数のペプチドを架橋し得る。架橋剤は、区画形成の前にペプチドに結合させるか、または分散相中に遊離させ、区画形成後に界面活性剤結合ペプチドと反応させ得る。
【0131】
特定の実施形態では、界面活性剤の水性部分は、酸化性環境に入ると、ジスルフィド結合を介して界面活性剤間架橋を形成するスルフヒドリル基で変性し得る。
【0132】
特定の実施形態では、第1の界面活性剤は、1個または複数のアルキン官能基を有するように変性され、第2の界面活性剤は、1個または複数のアジド官能基を有するように変性され得る。液滴区画形成後に、水性環境に入ると、界面活性剤は、銅または銅不含アルキンアジド環化付加(「クリック」)ケミストリーを用いて架橋され得る。
【0133】
特定の実施形態では、多官能性アルキンまたはアジド架橋剤は、区画形成時に相補性化学組成を有する界面活性剤分子と反応する水相中に配置され得る。
【0134】
光架橋では、は、当該技術分野で知られているように、界面活性剤分子上の結合部分は、光反応性要素を含み、適切な光に曝露時に、別の要素、例えば、別の光反応性要素と結合を形成し、これは、別の界面活性剤結合部分上または中間結合部分上に存在し得る。特定の実施形態では、光反応性要素は、界面活性剤分子に結合されているペプチドリンカーに結合され;このようなリンカーの使用は、例えば、ペプチド中のアミノ酸残基の数を制御することにより架橋長さの制御を可能とし、および/または所望の効果のために適切なアミノ酸残基を選択することにより、電荷などの架橋の疎水性または親水性の制御を可能とする。これは一般に、ペプチドリンカーが使われる任意の実施形態において、言えることである。好適な光反応性要素は、当技術分野において既知であり、限定されないが、アリールアジド、アジドメチルクマリン、ベンゾフェノン、アントラキノン、特定のジアゾ化合物、ジアジリン、およびプソラレン誘導体が挙げられる。架橋を活性化する光は、可視光またはUV光などの任意の好適な光でよい。
【0135】
リガンド結合
いくつかの実施形態では、架橋は、1つまたは複数のリガンド-受容体相互作用により達成される。リガンドまたは受容体は、界面活性剤または多機能受容体に結合され、またはリガンドは分散相中に存在し得る、または両方であり得る。
【0136】
任意の好適なリガンドと受容体の組み合わせを使用し得る。リガンド結合例としては、限定されないが、ペプチド-ペプチド、ペプチド-タンパク質、ペプチド-小分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質-小分子、タンパク質-核酸、核酸-小分子、核酸-核酸相互作用が挙げられる。
【0137】
これらの例には、限定されないが、スプリットインテイン、スパイキャッチャー-スパイタグ、ストレプトアビジン-ストレプタグ、抗体-エピトープ(mycおよび抗myc、フラグおよび抗フラグなどのような)、核酸ヘアピンおよびライゲーション、ヒスチジンタグ-ニッケルまたはコバルト、ヘパリン-ヘパリン結合タンパク質、ポリN-アセチルグルコサミン-コムギ胚芽凝集素、MBP-マルトースまたはアミロースが挙げられる。
【0138】
いくつかの実施形態では、架橋は、1個または複数のビオチン部分の界面活性剤への結合およびそれに続く、ビオチン結合部分、例えば、水相中のストレプトアビジン-ビオチン相互作用による1つまたは複数の界面活性剤の架橋により達成される。ストレプトアビジンが使われる場合、その多価性は、最大4個の界面活性剤分子まで結合する能力をそれに与える。
【0139】
任意の好適なビオチン結合部分を使用し得る。特定の実施形態では、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体が使用される。ストレプトアビジンは、よく知られ、研究されているビオチン結合部分である。ストレプトアビジンは、ビオチンに対し大きな親和性を示すタンパク質であり、ビオチンは、複数の原核生物および真核生物の生物学的過程に関与する244ダルトンの補助因子である。ストレプトアビジンならびにアビジンおよびその誘導体を含む他のビオチン結合タンパク質は、4個までのビオチン分子に結合する能力を有する。ストレプトアビジンは、0、1、2、3、または4個のビオチン結合部位を有するように遺伝子改変できる。遺伝子改変された形態のストレプトアビジンが生成され、10倍遅い解離、2倍遅い結合速度、およびより高い熱的および機械的安定性を示す[Chivers,2010,Nature Methods]。
【0140】
ストレプトアビジンとビオチンの高度に特異的な相互作用(Ka=1015M-1)は、生物学的アッセイにおいて有用なツールである。タンパク質-リガンド複合体は、有機溶媒、変性剤、洗浄剤、タンパク分解性酵素に対する耐性、ならびに極端な温度(例えば、>100℃)およびpH(例えば、4~11)に対する耐性を含む極めて高い安定性を示す。
【0141】
159残基完全長タンパク質のNおよびC末端は、処理されて、より短い「コア」ストレプトアビジンを与え、これは、通常、残基13~139から構成される;高いビオチン結合親和性のためには、NおよびC末端の除去が必要である。ストレプトアビジンモノマーの二次構造は、8個の逆平行β鎖からなり、これは、折り畳まれて、逆平行βバレル三次構造を与える。ビオチン結合部位は、各βバレルの一端に位置している。4個の同じストレプトアビジンモノマー(すなわち、4個の同じβバレル)が結合して、ストレプトアビジンの四量体四次構造を与える。各バレル中のビオチン結合部位は、隣接サブユニットからの保存されたTrp120と一緒に、バレルの内側からの残基からなる。このように、各サブユニットは、隣接サブユニット上の結合部位に関与し、そのため、四量体も、官能性二量体の二量体と見なすことができる。
【0142】
ストレプトアビジン-ビオチン複合体の多数の結晶構造により、顕著な親和性の起源が明らかになった。第1に、結合ポケットとビオチンとの間に高い形状相補性が存在する。第2に、結合部位にあるときに、ビオチンに対して形成される広範囲にわたる水素結合のネットワークが存在する。結合部位(いわゆる水素結合の「第1シェル」)の残基に対し直接に形成された、残基Asn23、Tyr43、Ser27、Ser45、Asn49、Ser88、Thr90およびAsp128を含む8個の水素結合が存在する。第1シェル残基と相互作用する残基を含む水素結合の「第2シェル」も存在する。しかし、ストレプトアビジン-ビオチン親和性は、水素結合相互作用単独から予測され得る親和性を超え、高親和性に関与する別の機序の存在を示唆する。ビオチン結合ポケットは、疎水性であり、多数のファンデルワールス力媒介接触、およびポケット中にあるとき、ビオチンに対しなされる疎水性相互作用が存在し、これもまた、高親和性を説明すると考えられる。特に、ポケットは、保存されたトリプトファン残基で覆われている。最後に、ビオチン結合は、B鎖3および4(L3/4)を連結する可動性ループの安定化が同時に起こり、これは、結合ビオチンを覆って閉じて結合ポケット上の「蓋」のように機能し、極端に遅いビオチン解離速度に関与する。
【0143】
ストレプトアビジンと対照的に、アビジンは、ストレプトアビジンと約30%の配列同一性であるが、ほとんど同じ二次、三次および四次構造を共有する。ストレプトアビジンと対照的に、それは、グリコシル化され、正に帯電しており、疑似触媒活性を有し(それは、ビオチンとニトロフェニル基との間のエステル結合のアルカリ加水分解を強化する)、より高い凝集傾向を有する。また、ストレプトアビジンは、より良好なビオチン結合剤であり;アビジンは、ビオチンが別の分子に結合する場合、アビジンは遊離した非結合ビオチンに対してより高い親和性を有するにもかかわらず、ストレプトアビジンより低い結合親和性を有する。ストレプトアビジンは、任意の炭水化物変性を欠き、ほぼ中性のpIを有するために、それは、アビジンより遙かに低い非特異的結合の利点を有する。
【0144】
特定の実施形態では、それらの目的のリガンドの結合時に再編成する分割受容体が使用され得る。1例として、数個の分岐部が一緒になって金属イオンをキレート化するように、分岐部上に半分の金属キレート剤が含まれる。これは、限定されないが、ハイブリダイゼーションのために銅のような金属イオンを必要とする修飾塩基対を有する核酸を含む多くの方法により達成され得る。
【0145】
2つの部分の架橋
別の実施形態では、区画境界面で完全界面活性剤の形成時に区画を安定化する分割界面活性剤が利用される。この実施形態では、分割界面活性剤の1つの部分は連続相に可溶性であり、一方、分割界面活性剤の第2の部分は分散相、例えば、水相に可溶性である。第1の界面活性剤部分は、反応性部分を含み、第2の界面活性剤部分は相補性反応性部分を含む。区画形成時に、連続および分散相界面活性剤部分は、相互作用して化学的に反応し、完全界面活性剤を形成し得る。分割界面活性剤は、3個またはそれを超える部分を有することができ、それぞれの1個または複数は連続相に溶解性であり、一方、1個または複数はまた、分散相、例えば、水相に溶解性である。分割界面活性剤の各部分は、反応性部分を有し、それにより、部分の近接は完全界面活性剤の形成をもたらす。特定の実施形態では、完全界面活性剤の形成は、官能基、すなわち、上記架橋法のいずれかを用いた架橋のための結合部分も含む。完全界面活性剤の形成は、架橋を活性化するか、またはその架橋の活性化を可能とし、区画境界面で完全形成界面活性剤の相互結合ネットワークをもたらす。
【0146】
架橋特性
区画境界面での架橋ネットワークの健全性および強度は、界面活性剤に結合した架橋剤の物理的パラメーターに依存する。これらには、(1)1つまたは複数の架橋剤間の相互作用の強度、(2)相対的架橋度、すなわち、0%~100%の界面活性剤ネットワーキングの範囲であり得る界面活性剤-界面活性剤相互作用の数、(3)界面活性剤と架橋剤との間のスペーサーアームの長さ、例えば、架橋の長さ、および(4)各界面活性剤に結合した架橋剤、例えば、結合部分の数、各界面活性剤に結合した架橋剤、例えば、結合部分の数の多分散度、が挙げられる。
【0147】
相互作用強度:2つの架橋界面活性剤間の相互作用の相対的強度は、区画境界面でのネットワークの全体強度を決定する。イオン格子エネルギーは通常、600~4000kJ/mol(いくつかはさらに高い)の範囲に入り、共有結合解離エネルギーは通常、単結合では150~400kJ/molであり、水素結合解離エネルギーは通常、4~21kJ/molであり、ファンデルワールス解離エネルギーは1~4kJ/molの範囲である。イオン性ネットワークのより高い結合解離エネルギーは、イオン格子の形成に起因する。生物学的に関連する架橋剤の結合解離エネルギーには、下記が含まれる:H-H:436kJ/mol、H-C:415kJ/mol、H-N:390kJ/mol、H-O:464kJ/mol、H-F:569kJ/mol、H-Si:395kJ/mol、H-P:320kJ/mol、H-S:340kJ/mol、H-Cl:432kJ/mol、H-Br:370kJ/mol、H-I:295kJ/mol、C-C:345kJ/mol、C=C:611kJ/mol、C≡C:837kJ/mol、C-N:290kJ/mol、C=N:615kJ/mol、C≡N:891kJ/mol、C-O:350kJ/mol、C=O:741kJ/mol、C≡O:1080kJ/mol、C-F:439kJ/mol、C-Si:360kJ/mol、C-P:265kJ/mol、C-S:260kJ/mol、C-Cl:330kJ/mol、C-Br:275kJ/mol、C-I:240kJ/mol、N-N:160kJ/mol、N=N:418kJ/mol、N≡N:946kJ/mol、N-O:200kJ/mol、N-F:270kJ/mol、N-P:210kJ/mol、N-Cl:200kJ/mol、N-Br:245kJ/mol、O-O:140kJ/mol、O=O:498kJ/mol、O-F:160kJ/mol、O-Si:370kJ/mol、O-P:350kJ/mol、O-Cl:205kJ/mol、O-I:200kJ/mol、F-F:160kJ/mol、F-Si:540kJ/mol、F-P:489kJ/mol、F-S:285kJ/mol、F-Cl:255kJ/mol、F-Br:235kJ/mol、Si-Si:230kJ/mol、Si-P:215kJ/mol、Si-S:225kJ/mol、Si-Cl:359kJ/mol、Si-Br:290kJ/mol、Si-I:215kJ/mol、P-P:215kJ/mol、P-S:230kJ/mol、P-Cl:330kJ/mol、P-Br:270kJ/mol、P-I:215kJ/mol、S-S:215kJ/mol、S-Cl:250kJ/mol、S-Br:215kJ/mol、Cl-Cl:243kJ/mol、Cl-Br:220kJ/mol、Cl-I:210kJ/mol、Br-Br:190kJ/mol、Br-I:180kJ/mol、I-I:150kJ/mol、アビジン-ビオチン:9-100kJ/mol。従って、より高い解離エネルギーを有する結合を形成する架橋剤は、区画境界面で構造的により健全なネットワークをもたらす。特定の実施形態では、本明細書で提供される架橋界面活性剤ネットワークの架橋の強度は、1~4000、1~1000、1~500、20~4000、20~1000、20~500、50~4000、50~1000、50~500である。
【0148】
架橋度:架橋度は、区画境界面でのネットワーク強度の重要な因子である。架橋度は、0~100%の任意の値を取り得、ネットワーク強度は通常、架橋度の増大と共に大きくなる。架橋度は任意の好適な方式で表され得る。例えば、界面活性剤分子系では、可能な最大架橋数(例えば、界面活性剤分子がそれぞれ1個のみの架橋を形成できる平均4個の結合部分を有する場合、各界面活性剤分子は平均で、最大4個の架橋を作ることができる)および最小数(ゼロ)が存在し、架橋度は、最大数のパーセンテージとして表される(例えば、上記例では、各界面活性剤分子が平均で、可能な最大4個から3個の架橋を作る場合、架橋度は75%である)。しかし、一般的に、隣接する界面活性剤分子のパーセンテージは、本明細書の別の箇所に記載のように、より有用な比較であり、すなわち、隣接界面活性剤が架橋されない場合、架橋度は0%である。全ての界面活性剤の全ての隣接分子が架橋されている場合、架橋度は100%である。架橋度は、任意の好適な方法で、例えば、界面活性剤当り結合部分平均数を、部分の界面活性剤分子への結合に使用する試薬濃度および反応の完結度に基づき化学量論的計算により決定することにより、区画境界面での各界面活性剤の隣接分子の平均数を決定することにより、および該当する場合は、結合部分に対する中間結合部分の化学量論的比率、ならびに部分間の結合相互作用の効率を決定することにより、決定し得る。例えば、界面活性剤は、10倍過剰のビオチンを用いて界面活性剤に結合したビオチンおよび60%の反応効率で調製し得、それにより、界面活性剤当りのビオチンの平均数は6である。界面活性剤分子は、隣接分子平均数が5であるネットワークを形成し得、ストレプトアビジンは、区画中の界面活性剤の平均数に対し10x過剰で存在し得る。ストレプトアビジン-ビオチン相互作用は極めて効率的であるので、結合効率は100%であることが想定され、結合部分および中間結合部分の両方は、過剰に存在するので、この場合には、架橋度は100%と計算されるであろう。本明細書の別の箇所で記載の、FRAP測定も使用し得る。特定の実施形態では、架橋度は、1~100、2~100、5~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、95~100、98~100、または99~100%、または少なくとも5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%、またはそれらの間の任意の範囲である。
【0149】
架橋長さ:スペーシングアームは、界面活性剤分子とその架橋剤との間の物理的距離を、例えば、全体的な、結合部分の長さ、ならびに2つの架橋界面活性剤間の距離を規定するので、長さは、架橋効率および強度における重要な変数であり得る。短すぎるスペーシングアームは、架橋される界面活性剤上の架橋剤の反応性部分へのアクセスを立体的に減らし得る、各界面活性剤の架橋剤が反応を起こすために十分な近接度にさせないことにより、界面活性剤-界面活性剤相互作用の程度を減らし得る、または2つの界面活性剤の架橋を可能とするが、一方で、3つまたはそれを超える界面活性剤に架橋する能力を制限し、液滴境界面での界面活性剤ネットワーキングの程度を制限し得る。長すぎる架橋剤は、高度の界面活性剤ネットワーキングを可能とするが、区画境界面の安定性を改善しないルーズなおよび/または柔らかいネットワークを生じ得る。いくつかの実施形態では、スペーサーアームの長さは、特定用途のために安定化される液滴のサイズ範囲に調製される。一般に、平均架橋長さは、各界面活性剤分子上の結合部分の長さを加算し、オーバーラップする任意の長さ(例えば、相補性オリゴヌクレオチドの場合では、アニールする予定の相補配列の長さ)を減算し、任意の中間結合部分の長さを加算することにより計算できる。結合部分の長さは、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の頭部基の最長寸法、または0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の尾部基の最長寸法などの任意の好適な長さであり得る。特定の実施形態では、架橋剤は、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、0.1~1nm、0.1~0.5nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。
【0150】
界面活性剤当りの結合部分数:界面活性剤分子当りの架橋剤の数、例えば、界面活性剤当りの結合部分の数は、界面活性剤ネットワークで得られる架橋度を規定する1つの因子である。例えば、界面活性剤当り1つのみの架橋剤、例えば、結合部分を有する均質の界面活性剤は、別の界面活性剤分子と最大1つの相互作用を形成でき、一方、2つ以上の架橋剤、例えば、結合部分を有する界面活性剤は、1つまたは複数の追加の界面活性剤と架橋を形成し得る。例えば、単一ビオチン部分で変性された界面活性剤分子は、1個のストレプトアビジン分子に結合する能力を有し、ストレプトアビジンタンパク質の四量体の性質により、単一の界面活性剤は、最大3個の追加の界面活性剤分子に結合し得る。2つ以上ビオチン部分で変性された界面活性剤分子は、1個または複数のストレプトアビジンタンパク質と相互作用し得、これらのそれぞれは、最大3個の類似のまたは異なる界面活性剤分子と相互作用できる。高架橋度を達成するために、界面活性剤当りの結合部分の数は、区画境界面での界面活性剤の隣接分子の平均数に近い、それと同じ、またはそれを超える必要があることは理解されよう。例えば、隣接分子の平均数が5である場合、100%の架橋度を達成するために、各界面活性剤は、少なくとも5個の結合部分を有する必要がある。界面活性剤当りの結合部分の数は、結合部分が結合している間の界面活性剤分子に対する結合部分の化学量論比、および結合状態の効率から計算できる。例えば、界面活性剤分子に対し10倍過剰の結合部分が使われ、結合の効率が70%の場合、界面活性剤分子当りの結合部分の数は、7と見なし得る。界面活性剤分子当りの結合部分の平均数は、2~20、2~15、2~12、2~10、2~8、2~6、2~4、3~20、3~15、3~12、3~10、3~8、3~6、4~20、4~15、4~12、4~10、4~8、4~6、5~20、5~15、5~12、5~10、5~8、または5~7;または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、またはこれらの間の任意の範囲などの任意の好適な数であり得る。
【0151】
架橋界面活性剤ネットワークの安定性
全ての実施形態で、得られた架橋界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤は、液滴境界面の安定化をもたらす。
【0152】
液滴境界面安定化に利用される特定の化学的性質に応じて、生成されるシェル、例えば、架橋界面活性剤ネットワークは、分散相、例えば、水相と連続相、例えば、油相との間への小さいおよび/または大きい分子の拡散(例えば、直接拡散および/または逆ミセル形成により)を減らしても、または減らさなくてもよく、2相間のガス交換を促進してもまたはしなくてもよく、または境界面への分子吸着を促進してもまたはしなくてもよい。代わりにまたは追加して、区画の合一は、低減され得るか、または除去され得る。
【0153】
これは、限定されないが、逆ミセル形成の中断による区画境界面での界面活性剤保持の低減、高親水性、例えば、荷電区画境界面の生成、高疎水性液滴境界面の生成、これらのいくつかの組み合わせ、および/または所定の気孔を有する架橋界面活性剤ネットワークの生成、を含む様々な方法で明確にされ得る。区画境界面での架橋界面活性剤分子のネットワークの使用は、他の方法では、使用できない、または低濃度中でのみ使用できる、特に区画内側中の種々の部分の使用を可能とし得る。これらの部分には、組織由来の溶解物成分、血液、植物性物質、微生物細胞;医薬品およびそれらの前駆物質または誘導体;毒性学的薬剤;成長培地成分;生物生産基質、中間体、または製品;代謝中間体;脂質;誘発剤;抗生物質;洗浄剤;密集剤;酵素基質;生成物、または阻害剤、レポーター分子、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0154】
特定の界面活性剤の化学的性質に応じて、界面活性剤は多くの場合、ミセル状態における連続相または分散相中に可溶性である区画境界面の形成時に、ミセルは解離し、界面活性剤分子は、其れ自体、区画境界面中に組み込まれる。界面活性剤は両親媒性であり、少なくとも2つの逆の溶解度の基を有するので、尾部基および頭部基はそれらそれぞれの溶媒と結合する。ミセル状態と境界面との間で達成された溶解度平衡は、区画境界面中の界面活性剤分子とミセル状態中の溶媒溶解界面活性剤の絶えず続く交換中に存在する動的過程である。区画境界面とミセルの間のこの界面活性剤交換は、逆ミセル形成と呼ばれる。逆ミセル形成の間に、分散相可溶性分子は、連続相中でそれを効率的に可溶化するミセル中にカプセル化され得る。これらの「装填された」ミセルは、連続相中に永久に残り、生成されたのと同じ区画の区画境界面中で改質されるか、または別の区画中で改質され得る。分散相分子を含むミセルの区画から区画への輸送は、たとえそれらの分子が連続相中に全く可溶性でない場合であっても、区画間の分子の輸送を可能とする。この現象は、区画境界面での界面活性剤架橋により相殺される。界面活性剤分子は区画境界面で物理的に結合されるので、逆ミセル形成は効果的に低減あるいは除去、または実質的に除去され、この機序を用いた液滴間の分散相分子の輸送は低減または除去または実質的に除去される。低減の程度は、界面活性剤架橋の程度に依存する。
【0155】
あるいは、区画境界面での化学的性質の調節は、区画境界面を横切る非相補的化学的特性を有する分子の輸送を選択的に低減させる。例えば、高親水性、例えば、荷電区画境界面の生成は、境界面を横切る疎水性分子の輸送を制限し、一般的に、同じ電荷または部分的な電荷を有する部分の輸送も制限し、反対電荷または反対部分電荷を有する部分の輸送を増大させる可能性がある。あるいは、高疎水性境界面の生成は、境界面を横切る親水性分子の輸送を制限する。
【0156】
あるいは、液滴境界面に所定の気孔を有する架橋界面活性剤ネットワークの厳密な生成は、区画境界面を横切るサイズに基づいて分子の輸送を選択的に減らす。例えば、界面活性剤ネットワークの公称気孔1kDは、1kDを超える分子の分子通過を選択的に制限し、界面活性剤ネットワークの公称気孔10kDは、10kDを超える分子の分子通過を選択的に制限する。
【0157】
境界面に対し低減された小分子拡散、高ガス拡散、および軽減された分子吸着を示す界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤の架橋化学的特性は、限定されないが、細胞、タンパク質、および核酸アッセイを含む多くの用途で高い有用性を実証できる。
【0158】
低減された小分子拡散、低ガス拡散、および軽減された分子吸着を示す界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤の架橋化学的特性は、限定されないが、細胞、タンパク質、および核酸アッセイを含む多くの用途で高い有用性を実証する。架橋し易い任意の好適な界面活性剤は、本明細書で提供される方法および組成物で使用し得る。代表的界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および双性イオン界面活性剤が挙げられ、特定の実施形態では、界面活性剤は1種または複数のフッ素系界面活性剤を含む。非限定的アニオン性界面活性剤のクラスとしては、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、アルコールエーテルサルフェート(AES)、第二アルカンスルホネート(SAS)およびアルコールスルフェート(AS)が挙げられる。アニオン性界面活性剤基の例としては、スルホン酸塩、アルコールスルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、リン酸エステル、およびカルボン酸が挙げられる。特定の実施形態では、界面活性剤は、ペルフルオロナノエートまたは ペルフルオロオクトネートなどのアニオン性フッ素系界面活性剤、または任意の他の好適なアニオン性フッ素系界面活性剤である。代表的カチオン性界面活性剤としては、一級、二級、または三級アミンが挙げられ;特定の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、CTAB、CPC、BAC、BZT、またはDODABなどの四級アミンである。双性イオン界面活性剤では、カチオン性部分は、一級、二級、もしくは三級アミンまたは四級アンモニウムカチオンをベースにし得る。アニオン性部分としては、スルホネート、カルボキシレート、ホスフェート、などを挙げることができ;特定の実施形態では、双性イオン界面活性剤は、リン脂質などのアミンまたはアンモニウムを有するリン酸アニオン、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリンが含まれる。非イオン性界面活性剤は、例えば、それらの親水性頭部中に、疎水性尾部基に結合した共有結合非イオン性酸素基を有し得る。
【0159】
代表的フッ素系界面活性剤は、オリゴエチレングリコール、トリス、またはポリエチレングリコール部分を含む。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボンおよび/またはクロロフルオロカーボン部分を含む。いくつかの実施形態では、フッ素系界面活性剤は、エーテル、アミド、またはカルバミド結合により結合された頭部および尾部を有する。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、エーテル、またはアミド結合を介してフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を有する。フッ素化界面活性剤としては、限定されないが、Picosurf-1、Ran FS-008、FC-4430、FC-4432、FC-4434が挙げられる。特定の事例では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含み得る。ビオチンが結合部分として使われる特定の実施形態では、ビオチンを含む代表的フッ素系界面活性剤は、Ran BiotechnologiesによるFS-ビオチンである。例えば、米国特許出願公開第20180112036号を参照されたい。
【0160】
任意の好適な連続相を本明細書で提供される方法および組成物で使用し得る。特定の実施形態では、連続相は油を含み;特定の実施形態では、油はフッ化油である。代表的油には、本明細書の他の箇所で記載のものが含まれる。代表的フッ化油には、本明細書の他の箇所で記載のものが含まれる。
【0161】
代わりにまたは追加して、区画境界面での架橋界面活性剤ネットワークは、区画の合一を低減または除去し得る。
【0162】
架橋界面活性剤ネットワークの安定性の評価。一般に、改善された安定性は、1つの区画から別の区画への成分の拡散、逆ミセル形成、および/または合一による移動を減らし、および/またはエマルションで実施される過程の効率および/または正確さを改善できる。合一は、区画の総数を減らす。特定の実施形態では、本明細書で提供される架橋界面活性剤ネットワークの形成のための方法および組成物は、架橋のない同じエマルション、例えば、結合した結合部分のない、および/または必要な成分および/または結合処理を完結するための状態のない同じエマルションに比較して、安定性を高めることができる。
【0163】
安定性は、任意の好適な方法で評価できる。
特定の実施形態では、安定性は、所定の条件および時間下でのインキュベーション後に、その分子を含む区画からその分子を含まない区画への色素分子などの検出可能な化学種の移動により評価される。化学種は、特定のサイズ、親水性、例えば、電荷、疎水性、またはこれらの組み合わせを有するように選択され得る。例えば、小さい水溶性色素は、区画の集団中に供給され、それに続く2つの集団を混合後に色素を含まない区画の集団へのその移動の評価が用いられ得る。代表的色素には、ローダミンCG(これは通常、極めて速い分のオーダーの交換速度を有する)、レゾルフィン(これは時間のオーダーの中間的交換速度を有する)、フルオレセイン(これは、日のオーダーの遅い交換速度を有する)が含まれる。
【0164】
代表的条件は、同一の条件下での2つの区画集団、1つは、適切な濃度、例えば、2uMの適切な濃度の所望の色素を含む集団、およびもう一方は色素を含まない集団を同一の条件下で生成し、その後、2つの集団の等量の、例えば、エッペンドルフチューブ中での混合であり得る。Guner et al.,Controlling molecular transport in minimal emulsions,Nat Comm DOI 10.1038/natcomms10392,2016に記載の方法などの任意の好適な方法を用いて、2つの集団を生成し得る。特定の実施形態では、DropworksのPCRシステムが使用され、この場合、液滴発生装置は、システムの残りの部分から取り外され、適切な色素、界面活性剤、分散相、および連続相が液滴発生装置に、例えば、20uLの試料が、例えば、20,000、25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;または50,000個またはそれらの間の任意の範囲の液滴に分割して供給され、同じ条件で、別の量の空(色素なし)および色素含有液滴がPCRアッセイ用として形成され、その後、2つの集団が混合される。混合した集団は、その後、好適な条件下でインキュベートされる;その集団を高温、例えば、約50、60、70、80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99℃、またはそれらの間の任意の範囲の温度でインキュベートするのが望ましい場合がある。インキュベーションのための適切な時間は、使われる色素に応じて選択される。速い交換速度の色素、例えば、ローダミンCGの場合、数分のインキュベーション時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、15、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120分が適切であり得る。中間的交換速度の色素、例えば、レゾルフィンの場合、より長いインキュベーション時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、15、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120分、または2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、もしくは6時間が適切であり得る(温度に応じて)。遅い交換速度の色素、例えば、フルオレセインの場合、さらに長いインキュベーション時間、例えば、0.5、1、1.5、2.0、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、24、30、36、42、48、72、または96時間が適切であり得る(この場合も温度に応じて)。適切な時点で、集団を顕微鏡により撮像でき、色素不含液滴の蛍光強度が、例えば、ライカ(Leics)ソフトウェアのスペクトル線プロファイルツールを用いて評価できる。無色素集団のランダム選択部分、例えば、時間0集団の10、20、30、50、または100個のランダム選択区画の平均蛍光値は、バックグラウンドと考えることができ、1、2、または3日目の1日または複数の日の蛍光値と比較できる。試験は、架橋されている区画と架橋されていない区画とを対比して実施できる。所与の時間での非架橋区画の蛍光値を100%とすると、架橋区画の安定性は、非架橋に比較して、架橋試料の蛍光の減少を反映した拡散の減少として表すことができ、例えば、非架橋区画の蛍光が平均100単位であり、架橋区画の蛍光の平均が40単位である場合、拡散の減少は60%である。安定性の増大は、特定の色素分子に対する、この%拡散減少として表すことができる。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物は、本明細書に記載されるような色素拡散アッセイにより測定して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95、または99%の液滴の安定性の増加をもたらし得る。
【0165】
特定の実施形態では、区画の安定性は、合一の測定により評価され得る。Guner et al.,Controlling molecular transport in minimal emulsions,Nat Comm DOI 10.1038/natcomms10392,2016に記載の方法などの任意の好適な方法を用いて、このようなアッセイのための液滴を生成し得る。特定の実施形態では、DropworksのPCRシステムが使用され、この場合、液滴発生装置は、システムの残りの部分から取り外され、適切な界面活性剤、分散相、および連続相が液滴発生装置に供給され、大量の液滴が、例えば、20uLの試料から、例えば、20,000、25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;または50,000個またはそれらの間の任意の範囲の液滴に分割して得られる。区画の単分散の集団、例えば、ほとんどまたは実質的に全ての区画が比較的小さなサイズ範囲、例えば、液滴の直径範囲内である集団が生成される場合、比較的直接的な合一試験は、エマルションをいくつかの標準条件に供した後で、種々の時点でエマルションを可視化し、体積が区画の初期体積の少なくとも2Xに増大した区画の相対的割合を決定することにより、合一の相対量を決定することであるエマルションは、サイズ(直径)が測定できる、または相対直径が測定できるように、液滴が充分に目視可能なである限り、2つの集団の混合は必ずしも必要ではないことを除いて、色素測定で記載のようにして生成できる。従って、時間0で、融合区画のパーセンテージは、低く、例えば、0または0に近く、そのため、その後の時間では、それは、10%、20%、50%、または50%超に増大し得る。各融合区画は、少なくとも2つの非融合区画を表すが、簡略化を目的として、視野中で融合区画を計数し、区画の総数を計数し、前者を後者で除算し、100を乗ずることにより、パーセンテージを各時点で測定できることは理解されよう。他の試験と同様に、架橋区画の成績を、架橋のない同じ区画と比較できる。いくつかの場合では、これは、架橋剤(例えば、ストレプトアビジン)または架橋刺激(例えば、光)の存在を単に除去することにより達成でき;他の場合には、より広範囲の変性が必要となり得るが、一般的に、非架橋区画を、架橋区画に比べて、可能な限り少なく変性するのが望ましい。代表的合一試験は、架橋および非架橋区画を別々の集団中で、必ずしも必要ではないが、好ましくは、同時に形成し、時間0で区画を撮像して初期合一を測定し、その後、合一に好都合な条件下、例えば、40、50、60、70、80、または90℃などの高温下で区画を保持し、1つまたは複数の時点で目視で、例えば、顕微鏡による検査により、10、20、30、40、50および/または60分、および/または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、9、および/または10時間などの時点で合一を測定し、パーセンテージとして合一を表すことである。特定の事例では、2つの集団の間で同じ程度である限り、撹拌を加えてもよい。架橋区画の安定性は、非架橋に比較して、合一の減少として表すことができる。例えば、両方のセットのエマルションが0合一で始まり、1時間で、非架橋エマルションが、例えば、上記の定義で80%の合一を示し、架橋エマルションが20%の合一を示す場合、架橋エマルションの高められた安定性は、非架橋に比べて、75%として表すことができる(特定の条件下での合一の減少)。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物は、本パラグラフ中で記載されるような合一アッセイにより測定して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95、または99%の液滴の安定性の増加をもたらし得る。
【0166】
使用可能な合一の別のアッセイは、界面活性剤架橋を有する液滴集団および界面活性剤架橋のない別の集団を調製し、例えば、液滴がPCRアッセイに供され得る条件下で、目的の処理システム、例えば、Dropworks PCRシステムなどのPCRシステムにより試験することである。液滴体積を推定できる検出器が使用される場合、例えば、液滴発生装置で生成された液滴の初期数は、試料体積を平均液滴体積で除算することにより推定でき、例えば、平均体積0.57nLを有する液滴を生成した20uLの試料は、約35,000個の液滴を最初に生成したと想定できる。検出器を通過する液滴の数を計数でき、この数と初期数との間の差異は合一液滴を表し;代わりにまたは追加して、検出器で測定された液滴の体積を用いて、どの液滴が合一した液滴を表すかを決定でき、この場合、2X予測体積以上を有する液滴は合一していると見なされる。これらの数字から、非架橋との対比で架橋の合一のパーセンテージが決定でき、比較できる。このアッセイでは、パーセントで表された合一の減少は、安定性の増大に対応し得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物は、本パラグラフ中で記載されるような合一アッセイにより測定して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95、または99%の液滴の安定性の増加をもたらし得る。
【0167】
区画安定性の他の試験、特に、区画が使用され得る条件を模倣または再現する試験を用いてもよい。例えば、正常な操作下で、例えば、目的の核酸を含む試料から数万個の液滴を生成するデジタルPCRシステムでは、物質の濃度および液滴形成条件は、大部分の液滴、例えば、少なくとも90、95、99、または99.9%の液滴が、1つの目的の核酸を含むまたは核酸を含まないようなものであり、1つまたは複数の実験中の唯一の差異が界面活性剤ネットワーク架橋である、または1つまたは複数の別の実験中の非架橋である制御された実験が比較される。例えば、既知の量の第1の試験オリゴヌクレオチドおよび第2の試験オリゴヌクレオチドは試験試料中で混合され得る。2つの試験オリゴヌクレオチドのモル量は、同じまたは実質的同じであってもまたは異なってもよく;特定の実施形態では、それぞれの量は、同じまたは実質的に同じである。試料はまた、プライマー、緩衝液、酵素、および任意の他のPCRに必要な成分を含み;第1のオリゴヌクレオチドの増幅産物に特異的な第1の蛍光標識が存在し、第2のオリゴヌクレオチドの増幅産物に特異的な第2の蛍光標識が存在し;2つの標識は異なり、検出可能なように別の波長で蛍光を発する。
【0168】
試験試料は、色素輸送および合一試験のための液滴の生成で記載されたDropworksシステムなどの液滴生成システムに輸送されるが、この場合、このシステムは、PCR系の大部分、例えば、サーマルサイクラーおよび検出器に流体連結される。試験試料の第1の分取量のために、液滴発生装置の第1の入口に試験試料(水性分散相)を流し、および架橋界面活性剤ネットワークを生成するように処理されていない界面活性剤を含む連続相(例えば、フッ化油などの油)を液滴発生装置の第2の入口に流すことにより、液滴が生成され;液滴発生装置の内部で、第1および第2の入口が交差し、連続相中に試料の液滴が形成される。分散相が架橋を開始または促進して架橋界面活性剤ネットワークを生成する成分を含むいくつかの実施形態では、これらの成分は含まれず;同様に、架橋を開始または促進する1つまたは複数の条件に曝露される場合には、これらの条件は存在しないことは理解されよう。液滴は、例えば、20uL試料から、例えば、20,000、25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;または50,000個またはそれらの間の任意の範囲の液滴の単分散のエマルションに形成され、試料濃度、流速、および他の関連因子は、大部分の液滴、例えば、少なくとも90、95、99、99.5、99.9、99.95、または99.99%の液滴が1個のみの第1の試験オリゴヌクレオチド、1個のみの第2の試験オリゴヌクレオチドを含む、またはどちらも含まないようなものである。第1および第2の試験オリゴヌクレオチドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、57、60、62、65、67、70、75、80、85、90、95、100、110、120、150、170、200、または250ヌクレオチド、またはこれらの間の任意の範囲などの任意の好適な長さであり得、同じまたは異なる長さであってもよいが、一般に、長さは類似であるかまたは同じであるべきである。増幅および検出される場合、2つの配列が相互に区別できる限り、任意の好適な配列をオリゴヌクレオチドに用いてもよい。その後、液滴塊は、PCRシステム、例えば、サーマルサイクラー、次に検出器、を通して送られる。いくつかの事例では、サーマルサイクラーの位置で導管の直径が増大し、流速を遅らせる。検出器は、単一液滴を検出し、2つの異なる蛍光標識を区別できる任意の検出器であってよい。好ましくは、検出器はまた、液滴発生装置と検出器の間で何%の液滴が合一したかを判定するために、液滴の体積を測定できる。増幅されたオリゴヌクレオチドを含まない液滴、増幅された第1のオリゴヌクレオチドのみを含む液滴、増幅された第2のオリゴヌクレオチドのみを含む液滴、および増幅された第1および第2の両方のオリゴヌクレオチドを含む液滴の総数が決定される。液滴体積または体積に関連する量を検出できる検出器では、体積nXを有する合一液滴の数が検出でき、nは、合一した液滴の数であり、Xは非合一液滴の体積である。これらのオリゴヌクレオチドを含まない液滴または第1のみまたは第2のみのオリゴヌクレオチドの増幅産物を含む液滴の数は、増幅された第1および第2の両方のオリゴヌクレオチドを含む液滴の数に加算でき;両方を含む合一液滴の数は、前ステップで既に計数されており、再度加算されるべきではないことは理解されよう。総液滴数で除算され、100を乗じられた後者の数は、輸送される液滴のパーセンテージと見なされる、すなわち、それらの1つは、その元の液滴から検出された液滴へ輸送されているので、大多数のこのような液滴の場合、両方のオリゴヌクレオチドが存在するか、または増幅されている。今回は、連続相中の界面活性剤および/または分散相中の成分および/または液滴が形成中および/または形成後に曝露される条件が、試験されるべき架橋界面活性剤ネットワークを生成するようなものであること意外は、同じ試料に対し同一試験が実施される。同じ計算が実施されて、輸送される第2の液滴のパーセンテージが決定される。第1のパーセンテージ(架橋なし)は、第2の数(架橋)により除算され、架橋の有効性の定量的指標が得られる。例えば、ビオチンを界面活性剤分子に結合する結合部分として使用し、ストレプトアビジンをビオチンに架橋する中間部分として使用する系中で、オリゴ1およびオリゴ2を含む第1の実験が実施され、連続相中の界面活性剤は、結合したビオチン部分を有さず、分散相はストレプトアビジンを含まない。20,000個の液滴が液滴発生装置で生成され、サーマルサイクラーから検出器へ通す。検出器は、オリゴのない18,000個の液滴;オリゴ1のみを有する800個の液滴;オリゴ2のみを有する800個の液滴;およびオリゴ1と2の両方を有する400個の液滴を検出する。加えて、検出器は、150個の液滴は、正常の液滴の少なくとも2倍の体積であり、その内の50個はオリゴ1およびオリゴ2の両方を含むことを検出する。輸送「イベント」のパーセンテージは、(400+(150-50))/20,000x100、または500/20,000x100=2.5%である。その後、オリゴ1およびオリゴ2を含む第2の実験が実施され、連続相中の界面活性剤は、結合したビオチン部分を有し、分散相はストレプトアビジンを含まない。20,000個の液滴が生成され、検出器は、オリゴ不含の18,000個の液滴、オリゴ1のみを有する990個の液滴;オリゴ2のみを有する990個の液滴;およびオリゴ1と2の両方を有する20個の液滴を検出する。加えて、検出器は、15個の液滴は、正常の液滴の少なくとも2倍の体積であり、その内の5個はオリゴ1およびオリゴ2の両方を含むことを検出する。輸送「イベント」のパーセンテージは、(20+(15-5))/20,000x100、または25/20,000x100=0.125%である。この場合では、液滴間の輸送は、95%改善されたと見なすことができる。この数は、必ずしも全ての起こる輸送過程を反映していない(例えば、オリゴ1が空の液滴に移行する、またはオリゴ1が別のオリゴ1を有する液滴に移行する、など);しかし、それは、液滴含有物をPCRシステム中で分離したままの保持における改善の適切な指標として機能し得ることは理解されよう。特定の実施形態では、計算は、単一液滴中に2つの同じオリゴを生じるオリゴの輸送を説明するように精密化できるが、但し、検出器がこのような液滴間の蛍光強度の差異を検出する十分な能力を有することが前提である。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物は、本パラグラフ中で記載されるような合一アッセイにより測定して、少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95、または99%の液滴の安定性の増加をもたらし得る。
【0169】
従って、特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、エマルション中の区画安定性を高める方法であり、エマルションは、連続相中に複数の分散相区画を含み、区画は区画中の分散相と連続相との間の境界面に界面活性剤部分を含み、該方法は、境界面で界面活性剤部分の架橋界面活性剤ネットワークを生成することを含み、安定性の増大は、本明細書で記載のアッセイなどの色素拡散アッセイにより評価され、色素拡散の減少として反映される界面活性剤ネットワークの安定性は、少なくとも1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、または100%、またはそれらの間の値の任意の範囲、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも80%、いくつかの事例では、少なくとも90%増大される。本明細書で記載のものなどの架橋のための任意の好適な方法を使用し得る。
【0170】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、エマルション中の区画安定性を高める方法であり、エマルションは、連続相中に複数の分散相区画を含み、区画は区画中の分散相と連続相と間の境界面に界面活性剤部分を含み、該方法は、境界面で界面活性剤部分の架橋界面活性剤ネットワークを生成することを含み、安定性の増大は、本明細書で記載のアッセイなどの合一アッセイにより評価され、合一の減少として反映される界面活性剤ネットワークの安定性は、少なくとも1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、または100%、またはそれらの間の値の任意の範囲、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも80%、いくつかの事例では、少なくとも90%増大される。本明細書で記載のものなどの架橋のための任意の好適な方法を使用し得る。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、エマルション中の区画安定性を高める方法であり、エマルションは、連続相中に複数の分散相区画を含み、区画は区画中の分散相と連続相との間の境界面に界面活性剤部分を含み、該方法は、境界面で界面活性剤部分の架橋界面活性剤ネットワークを生成することを含み、安定性の増大は、本明細書で記載のアッセイなどのPCRアッセイにより評価され、区画間のクロストークを示すPCRイベントの減少として反映される界面活性剤ネットワークの安定性は、少なくとも1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、または100%、またはそれらの間の値の任意の範囲、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも80%、いくつかの事例では、少なくとも90%増大される。本明細書で記載のものなどの架橋のための任意の好適な方法を使用し得る。
【0172】
架橋界面活性剤ネットワークを不安定化する方法
界面活性剤を架橋するために使用される特定の化学的性質に応じて、使用後に、例えば、液滴含有物の回収が下流の分析のために必要な場合、いくつかの異なる方法を使って液滴(区画)を破壊し得る。これは、任意の好適な方法により、例えば、化学的にまたは機械的に実施し得る。
【0173】
一実施形態では、エマルションに破壊剤が加えられて、タンパク質架橋剤が破壊され、続けて、エマルションが解体される。いくつかの実施形態では、酸、塩基および/またはペルオキシドもネットワーク解体に使用され得る。好ましい実施形態では、ネットワーク解体にクロロホルムが使用される。
【0174】
別の実施形態では、切断可能リンカーを使用して、使用後に液滴が破壊され得る。切断可能リンカーは、例えば、Leriche,et al.Bioorg.Med.Chem.20,571(2012)に示されるような、酵素的切断可能リンカー、求核試薬/塩基感受性リンカー、還元感受性リンカー、光切断可能リンカー、求電子試薬/酸感受性リンカー、および酸化感受性リンカーからなる群から選択できる。切断可能リンカーの他の例は、West et al.Current Drug Discovery Technologies,2,123(2005)で見つけることができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、限定されないが、凍結、機械的破壊、超音波処理、加熱、および浸透圧ショックを含む機械的方法を用いて、区画境界面のネットワークを破壊し得る。
【0176】
特定の実施形態では、限定されないが、核酸-塩基架橋剤に対するヌクレアーゼおよび/またはタンパク質ベース架橋剤に対するプロテアーゼを含む特定の架橋剤分解分子を利用し得る。
【0177】
水性添加剤
区画境界面の堅牢さに応じて、界面活性剤安定化液滴は、1種または複数の添加剤の存在下で安定のままであり得る。架橋界面活性剤ネットワークにより生成された安定性の増加に起因して、架橋界面活性剤ネットワークを有する区画は、それらの非架橋代替物よりも、高レベルおよび/または異なる組み合わせの添加剤に耐え得る。特定の実施形態では、架橋界面活性剤ネットワークを含む区画は、架橋界面活性剤ネットワークのない同じ区画に比べて、少なくとも10、20、30、40、50、70、100、150、200、500、または1000%、またはそれらの間の任意の範囲の量、例えば、濃度の1種または複数の添加剤に耐え得る。追加の添加剤に「耐えること(Tolerating)」は、一般的に、架橋界面活性剤ネットワークを有する区画および/またはそれらが含まれるエマルションは、少なくとも同程度に、または少なくとも10、20、50、70、80、90、95、97、99、99.5、または99.9%同等に機能し、いくつかの事例では、架橋界面活性剤ネットワークがないこと以外は同じ組成の区画、および/またはそれらがそれらの目的の用途のために含まれるエマルションよりも良好に機能することを意味する。性能は、任意の好適な手段で評価でき、例えば、アッセイ、例えば、PCRの場合、1種または複数の既知の濃度の対照試料を使って、非架橋区画との対比で架橋の結果の正確度および/または精度を比較する。
【0178】
水相は、1種または複数の緩衝化合物を含み得る。生物学的緩衝液の一般的な例としては、限定されないが、トリス、ホスフェート、シトレート、などが挙げられる。
【0179】
水相は、1種または複数の塩を含み得る。
【0180】
水相には、限定されないが、次のリストに含まれる1種または複数の炭水化物が含まれ得る:寒天、アガロース、アロース、アミロース、アラビノース、アラビトール、カルボキシメチルセルロース、セルロース、キチン、キトサン、コンドロイチン、シクロデキストリン、デキストラン、デキストリン、デキストロース、エルロース、エリスリトール、エリトロース、フルクトフラノース、フルクトース、ガラクトマンナン(Galactomannin)、ガラクトース、グルカン、グルコピラノース、グルコサミン、グルコース、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グロース、ヘパリン、ヘキシトール、ヘキソピラノース、イジトール、イノシトール、イソマルチトール、ケストース、ラクチトール、ラクトース、レクチン、メレジトース、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マルツロース、マンニトール、マンノース、メレジトース、パノース、ペクチン、ポリスクロース、ケルシトール、ラフィノース、ラムノース、リビトール、リボフラノース、リボース、リブロース、ルチノース、ソルビトール、デンプン、スクラロース、スクロース、タガトース、タリトール、トレイトール、トレオース、トレハロース、ツラノース、キシラノース、キシリトール、キシロース。
【0181】
水相は、1種または複数の、アスパラギン酸、システイン、メタロセリン、トレオニン、およびトリプシンプロテアーゼを標的にし得るプロテアーゼ阻害剤を含み得る。
【0182】
水相は、1種または複数の抗菌薬を含み得る。
【0183】
水相には、限定されないが、次のリストに含まれる1種または複数の密集剤が含まれ得る:1,2-プロパンジオール、カルボキシメチルセルロース、エチレングリコール、グリセロール、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1300、PEG1600、PEG1450、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG2050、PEG3350、PEG4000、PEG4600、PEG6000、PEG8000、PEG10000、PEG12000、PEG20000、PEG35000、PEG40000、PEG108000、PEG218000、PEG510000、PEG90M、ポリスクロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyroolidone)、プロピレングリコール。
【0184】
水相は、1種または複数の洗浄剤を含み得る。洗浄剤は、イオン性または非イオン性であり得る。
【0185】
水相には、限定されないが、次のリストに含まれる1種または複数のヌクレオチドまたはヌクレオチドの誘導体が含まれ得る:5-フルオロオロチン酸(5-FOA)、アデニン、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、アデノシン三リン酸、シチジン、シチジン二リン酸、シチジン一リン酸、シチジン三リン酸、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシアデノシン二リン酸、デオキシアデノシン一リン酸、デオキシアデノシン三リン酸、デオキシシチジン、デオキシシチジン二リン酸、デオキシシチジン一リン酸、デオキシシチジン三リン酸、デオキシグアノシン、デオキシグアノシン二リン酸、デオキシグアノシン一リン酸、デオキシグアノシン三リン酸、グアニン、グアノシン、グアノシン二リン酸、グアノシン一リン酸、グアノシン三リン酸、ヒポキサンチン、イノシトール、チミジン、チミジン二リン酸、チミジン一リン酸、チミジン三リン酸、チミンウラシル、ウリジン、ウリジン二リン酸、ウリジン一リン酸、ウリジン三リン酸。
【0186】
水相は、1種または複数の合成ヌクレオチド誘導体を含み得る。
【0187】
水相は、1種または複数のアミノ酸、アミノ酸の誘導体、またはアミノ酸由来ペプチドを含み得る。
【0188】
水相は、1種または複数のビタミンを含み得る。
【0189】
水相は、1種または複数の成長、増殖、または誘導、死亡、または微生物生命体のための培地添加剤を含み得る。
【0190】
本明細書に記載される方法で有用なポリメラーゼは、核酸分子に対するオリゴヌクレオチド結合の3’ヒドロキシル末端を延長するためのヌクレオチドの組み込みを触媒できる。このようなポリメラーゼには、増幅および/または鎖置換ができるものが含まれる。ポリメラーゼは、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有し得る、またはこれを欠き得る。他の実施形態では、ポリメラーゼはまた、逆転写酵素活性を有する(例えば、Bst(大型フラグメント)、Therminator、Therminator II)。代表的ポリメラーゼとしては、限定されないが、BST(大型フラグメント)、DNAポリメラーゼI(大腸菌)、DNAポリメラーゼDNAポリメラーゼI、大型(クレノー)フラグメント、クレノーフラグメント(3’-5’エキソ-)、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Deep VentR(エキソ)DNAポリメラーゼ、Deep VentR DNAポリメラーゼ、DyNAzyme、High-Fidelity DNAポリメラーゼ、Therminator、Therminator II DNAポリメラーゼ、AmpliTherm DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Tfl DNAポリメラーゼ,Tgo DNAポリメラーゼ、SP6 DNAポリメラーゼ、Thr DNAポリメラーゼ。次記の逆転写酵素(RT)の非限定例は、RNA配列を検出するときに性能を改善するために本方法の反応で使用できる:OmniScript、SensiScript、MonsterScript、Transcriptor、HIV RT、SuperScript III、ThermoScript、Thermo-X、ImProm II。RNAポリメラーゼの非限定例としては、T3、T7、SP6、E.coli RNA pol、RNA pol II、およびmtRNA polが挙げられる。
【0191】
本明細書に記載の方法に有用なニッキング酵素としては、限定されないが、Nt.BspQI、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BstNBI、Nt.CviPII、Nb.Bpu10I、およびNt.Bpu10Iが挙げられる。
【0192】
他の化学的添加剤には、pHまたはイオン強度を変化させるものが含まれる。他の生物学的添加物には、生きているまたは死亡した生物またはそれらの溶解物が含まれ、限定されないが、ウィルス、細菌、真菌、古細菌、植物、および哺乳動物細胞が挙げられる。MgCl2およびKCl濃度は、PCRにとって重要であり、いくつかの実施形態では、調節できる。トリトン-x100などの洗浄剤は、高タンパク質濃度と同様に役立つ場合がある。
【0193】
組成物および方法
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、好適な条件下で第2の界面活性剤分子と架橋するように変性されている複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物である。界面活性剤分子は、尾部および頭部を有する。変性は、結合部分、例えば、第1および/または第2の界面活性剤分子に結合した複数の結合部分の形態を取ることができ、結合部分は、好適な条件下で、それら自体と(例えば、第1および第2の結合部分は同じである)、または別の結合部分と(例えば、第1および第2の結合部分箱となる)、または中間結合部分に(例えば、第1および第2の結合部分の片方または両方に結合する)架橋結合を形成するように構成される。特定の実施形態では、第1および第2の界面活性剤分子は、同じ界面活性剤タイプを含み、例えば、構造的に同じである。特定の実施形態では、第1および第2の界面活性剤分子は、異なる界面活性剤タイプを含み、例えば、構造的に異なる。組成物の第1および/または第2の界面活性剤分子は、任意の好適な平均数の結合部分、例えば、1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個の結合部分に結合され得る。結合部分は、界面活性剤分子の任意の好適な部分、例えば、頭部または尾部に任意の好適な結合方法により、例えば、共有結合または非共有結合により結合され得る。結合部分の長さは、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の頭部基の最長寸法、または0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の尾部基の最長寸法などの任意の好適な長さであり得る。特定の実施形態では、架橋剤は、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、0.1~1nm、0.1~0.5nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。界面活性剤は、非イオン性、カチオン性、アニオン性、または双性イオン界面活性剤などの任意の好適な界面活性剤であり得る。特定の実施形態では、界面活性剤はフッ素系界面活性剤を含む。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、エーテル、アミド、またはカルバミド結合により結合された頭部および尾部を有する;フッ素系界面活性剤は、カルバミド、エーテル、またはアミド結合を介してフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を有する;またはこれらの組み合わせである。特定の実施形態では、フッ素系界面活性剤は、カルバミド、アミド、またはエーテル結合でフルオロカーボン部分に結合したポリエチレン部分を含む。特定の実施形態では、結合部分は、ある中間部分に結合するが、別の結合部分には結合しないように構成される。特定の実施形態では、結合部分は共有結合を形成する結合部分である。特定の実施形態では、結合部分は非共有結合を形成する部分である。好適な結合部分は、本明細書に記載されるいずれかを含む。特定の実施形態では、結合部分はビオチンである。特定の実施形態では、中間部分は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体などのビオチン結合基である。複数の界面活性剤分子が、連続相中に含まれ得る。組成物は疎水性連続相などの連続相をさらに含み得る;特定の実施形態では、第1の界面活性剤分子は、第1の連続相中に、例えば、ミセルとして含まれる;特定の実施形態では、第2の界面活性剤分子は、第2の連続相中に、例えば、ミセルとして含まれ、第1および第2の連続相は同じまたは異なり得る。連続相は、フッ化油などの油であり得る。好適な油およびフッ化油は本明細書の別のところで記載されている通りである。組成物は、分散相をさらに含む;特定の実施形態では、分散相は、第1の界面活性剤分子を含まない;特定の実施形態では、分散相は第2の界面活性剤分子を含まない。特定の実施形態では、分散相は、中間部分を含む;結合部分がビオチンである場合には、中間部分は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体などのビオチン結合部分であり得る。
【0194】
また、本明細書で提供されるのは、尾部および頭部を含む複数の第1の界面活性剤分子を含む組成物であり、第1の界面活性剤分子は、連続相中に、少なくとも1個の結合した第1の結合部分を有する。いくつかの事例では、界面活性剤分子は、結合した複数の結合部分、例えば、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個の結合部分を有する。いくつかの事例では、結合は共有結合である。いくつかの事例では、結合は非共有結合である。いくつかの事例では、結合部分は、第1の界面活性剤分子の尾部に結合される。いくつかの事例では、結合部分は、界面活性剤分子の頭部に結合される。結合部分は、好適な条件下で、相互に結合するように、いくつかの事例では、共有結合で、他の事例では非共有結合で結合するように;第1の結合部分とは異なる第2の結合部分と結合するように、いくつかの事例では、共有結合で、他の事例では非共有結合で結合するように;中間結合部分と結合するように、いくつかの事例では、共有結合で、他の事例では非共有結合で結合するように;またはこれらの組み合わせで結合するように構成される。特定の実施形態では、組成物は、複数の第2の界面活性剤分子をさらに含み、第2の界面活性剤分子は平均で、例えば、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個の結合部分を含む。いくつかの事例では、結合は共有結合である。いくつかの事例では、結合は非共有結合である。いくつかの事例では、第1および第2の結合部分は、逆帯電している。組成物は、分散相をさらに含み得る。分散相は、いくつかの事例では、第1および/または第2の界面活性剤分子を含まない。いくつかの事例では、分散相は、第1および/または第2の界面活性剤分子を含む。いくつかの事例では、分散相は、第1の結合部分間、第1の結合部分と中間結合部分との間、第1の結合部分と第2の結合部分との間の結合、またはこれらの組み合わせの結合を開始または促進する1つまたは複数の成分を含む。第1の結合部分が、例えば、ビオチンであるいくつかの実施形態では、分散相は、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体などの本明細書で記載のビオチン結合部分などのビオチン結合部分を含み得る。
【0195】
特定の実施形態では、連続相中に分散相の区画を含むエマルションが本明細書で提供され、分散相の区画は、連続相と区画の境界面に位置し、界面活性剤分子の層を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、複数の界面活性剤分子は、相互に架橋して、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する。特定の実施形態では、架橋度は、1~100、2~100、5~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、95~100、98~100、または99~100%、または少なくとも5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%、またはそれらの間の任意の範囲、例えば、40~100%などの20~100%、いくつかの事例では、60~100%である。架橋は、任意の好適な長さ、例えば、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の頭部基の最長寸法の長さ、または0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の尾部基の最長寸法の長さの架橋を用いることができる。特定の実施形態では、架橋剤の長さは、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、0.1~1nm、0.1~0.5nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。界面活性剤分子は、頭部-頭部、尾部-尾部、または頭部-尾部間架橋であり得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、同じ、すなわち同じ構造を有する結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の特定の部分は、界面活性剤分子の他の部分の結合部分とは異なる、すなわち異なる構造を有する結合部分を含む。追加でまたは代わりに、全ての界面活性剤分子は同じ、すなわち、同じ構造を有するか、または界面活性剤分子は2、3、4、5、または5個を超える異なる構造を有する分子の部分を含み得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第1の部分は、架橋部分を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子の第2の部分は、架橋部分を形成する、第1の結合部分と同じ、または異なる第2の結合部分を含む。界面活性剤分子上の結合部分の平均数は、1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のフッ化油などの連続相は油を含む。特定の実施形態では、分散相は水相を含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、本明細書に記載のフッ素化界面活性剤を含む。架橋は、共有結合、非共有結合、またはこれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、1個または複数の結合したビオチン部分を含み、架橋は、ビオチン結合中間部分、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を介する。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書に記載の色素拡散試験などの色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を高める。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験で測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、合一アッセイ、例えば、本明細書に記載の合一アッセイで測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。
【0196】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、区画のエマルション中で処理を行う方法であり、区画はそれらの表面で、界面活性剤分子の架橋ネットワークを含む。従って、本明細書で提供されるのは、連続相中に分散相の区画を含むエマルションにおける処理を実施する方法であり、該方法は、(i)連続相中の分散相の区画のエマルションを用意することであって、分散相の区画が、区画と連続相との境界面に位置し、界面活性剤分子の相を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、複数の界面活性剤分子が相互に架橋して界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成すること;および(ii)区画に対し処理を実施すること、を含む。特定の実施形態では、架橋度は、1~100、2~100、5~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、95~100、98~100、または99~100%、または少なくとも5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%、またはそれらの間の任意の範囲、例えば、40~100%などの20~100%、いくつかの事例では、60~100%である。架橋は、任意の好適な長さ、例えば、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の頭部基の最長寸法の長さ、または0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の尾部基の最長寸法の長さの架橋を用いることができる。特定の実施形態では、架橋剤の長さは、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、0.1~1nm、0.1~0.5nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。界面活性剤分子は、頭部-頭部、尾部-尾部、または頭部-尾部間架橋であり得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、同じ、すなわち同じ構造を有する結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤分子の特定の部分は、界面活性剤分子の他の部分の結合部分とは異なる、すなわち異なる構造を有する結合部分を含む。追加でまたは代わりに、全ての界面活性剤分子は同じ、すなわち、同じ構造を有するか、または界面活性剤分子は2、3、4、5、または5個を超える異なる構造を有する分子の部分を含み得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子の第1の部分は、架橋部分を形成する第1の結合部分を含み、界面活性剤分子の第2の部分は、架橋部分を形成する、第1の結合部分と同じ、または異なる第2の結合部分を含む。界面活性剤分子上の結合部分の平均数は、1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のフッ化油などの連続相は油を含む。特定の実施形態では、分散相は水相を含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、本明細書に記載のフッ素化界面活性剤を含む。架橋は、共有結合、非共有結合、またはこれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、1個または複数の結合したビオチン部分を含み、架橋は、ビオチン結合中間部分、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を介する。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書に記載の色素拡散試験などの色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を高める。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験で測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、合一アッセイ、例えば、本明細書に記載の合一アッセイで測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。方法は、架橋界面活性剤ネットワークを、例えば、本明細書に記載の方法で形成することをさらに含み得る。特定の実施形態では、界面活性剤分子の架橋ネットワークは、分散相が連続相中で複数の区画を形成する条件下で、少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含む連続相と分散相とを接触させて、区画の形成中および/またはその後に、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する条件を与え、結合部分が1つの界面活性剤分子から少なくとも1つの他の界面活性剤分子に架橋を形成し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成することにより、形成される、または形成されている。特定の実施形態では、条件には、分散相中で、結合部分と、架橋反応を開始および/または促進する1つまたは複数の成分との接触が含まれる。特定の実施形態では、結合部分はビオチンであり、分散相はビオチン結合部分、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を含む。処理は、デジタルPCR、高スループットスクリーニング、株およびタンパク質工学、および細胞、タンパク質、および化学分析などの任意の好適な処理であり得る。特定の実施形態では、処理はデジタルPCRである。特定の実施形態では、処理は、複数の区画をこじ開けて、例えば、少なくとも5、10、20、50、70、80、90、95、または99%の区間またはこれらの間の任意の範囲の区画をこじ開けて区画中の分散相を放出させることをさらに含む。区画を破壊する方法は、本明細書に記載の通りであり得る。
【0197】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中の分散相の区画のエマルションの生成方法であり、区画は、連続相との境界面に界面活性剤分子の架橋ネットワークを含む。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、連続相中の分散相の区画のエマルションを生成する方法であり、分散相の区画は、区画と連続相の境界面に位置し、界面活性剤分子の相を形成する尾部および頭部を含む複数の界面活性剤分子を含み、該方法は、(i)連続相と分散相を接触させることであって、(a)連続相が少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含むか、または(b)分散相が少なくとも1個の結合部分を含む複数の界面活性剤分子を含むか、または(c)分散相が連続相中で複数の区画を形成する条件下で、(a)と(b)の両方であること;および(ii)区画の形成中および/またはその後に、結合部分を含む界面活性剤分子間で架橋の形成を開始および/または促進し、界面活性剤分子の架橋ネットワークを形成する条件を与えること、を含む。特定の実施形態では、連続相は、結合した結合部分を有する界面活性剤分子を含み、分散相はそれを含まない;特定の実施形態では、分散相は、結合した結合部分を有する界面活性剤分子を含み、連続相はそれを含まない;特定の実施形態では、連続相は第1の結合した結合部分を有する第1の界面活性剤を含み、分散相は第2の結合した結合部分を有する第2の界面活性剤を含み、第1および第2の界面活性剤は、同じまたは異なり得、および/または第1および第2の結合部分は、同じまたは異なり得る。特定の実施形態では、処理は、架橋度が、1~100、2~100、5~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、95~100、98~100、または99~100%、または少なくとも5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%、またはそれらの間の任意の範囲、例えば、40~100%などの20~100%、いくつかの事例では、60~100%になるまで、継続される。形成された架橋は、任意の好適な長さ、例えば、0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の頭部基の最長寸法の長さ、または0.1~100X、0.1~50X、0.1~30X、0.1~20X、0.1~10X、0.1~5X、0.1~3X、0.1~2X、0.1~1X、0.1~0.5X、0.1~0.3X、1~100X、1~50X、1~30X、1~20X、1~10X、1~5X、1~3X、または1~2X界面活性剤の尾部基の最長寸法の長さであり得る。特定の実施形態では、架橋剤の長さは、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~30nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、0.1~3nm、0.1~1nm、0.1~0.5nm、1~100nm、1~50nm、1~30nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、または1~3nmの長さである。界面活性剤分子は、頭部-頭部、尾部-尾部、または頭部-尾部間架橋であり得る。界面活性剤分子上の結合部分の平均数は、1~20、1~15、1~10、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、3~20、3~15、3~10、3~8、3~5、4~20、4~15、4~10、4~8、5~20、5~15、5~10、5~9、6~20、6~15、または6~10個の結合部分、例えば、2~10個などの2~20個、いくつかの事例では、3~10個であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のフッ化油などの連続相は油を含む。特定の実施形態では、分散相は水相を含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、本明細書に記載のフッ素化界面活性剤を含む。特定の実施形態では、分散相は、結合部分と接触時に、結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する1つまたは複数の成分を含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の成分は、結合部分がビオチンを含み、中間部分がストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体などのビオチン結合部分を含む場合のように、界面活性剤結合部分と1個または複数の結合を形成する1個または複数の中間結合部分を含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、本明細書に記載のフッ素化界面活性剤を含む。架橋は、共有結合、非共有結合、またはこれらの組み合わせであり得る。架橋は、頭部-頭部、尾部-尾部、または頭部-尾部間であり得、区画は、区画形成中および/またはその後に結合部分を含む架橋の形成を開始および/または促進する、光などの外部刺激に曝露される。特定の実施形態では、界面活性剤分子は、1個または複数の結合したビオチン部分を含み、架橋は、ビオチン結合中間部分、例えば、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン誘導体を介する。特定の実施形態では、本発明の方法により生成した界面活性剤分子の架橋ネットワークは、本明細書に記載の色素拡散試験などの色素拡散試験で、色素拡散の少なくとも20%の減少により判定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、エマルション中の区画の安定性を高める。特定の実施形態では、本発明の方法により生成された界面活性剤分子の架橋ネットワークは、PCR試験、例えば、本明細書に記載のPCR試験で測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。特定の実施形態では、本方法により生成された界面活性剤分子の架橋ネットワークは、合一アッセイ、例えば、本明細書に記載の合一アッセイで測定して、架橋界面活性剤ネットワークのない同じエマルションに比べて、少なくとも20%までエマルション中の区画の安定性を増大させる。
【0198】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、油連続相中に分散水相の複数の区画を含むエマルションの調製方法であり、区画は、区画の表面に界面活性剤分子の架橋ネットワークをさらに含み、該方法は、分散される水相を調製すること、変性界面活性剤を含む油相を調製することであって、変性界面活性剤が尾部および頭部を含み、および結合部分をさらに含むこと;ならびに水相と油相を混合して、油中に水相の複数の区画のエマルションを形成することであって、変性界面活性剤分子が相互に架橋を形成し、区画と連続相との境界面で界面活性剤分子の架橋ネットワーク形成することを含む。混合は、塊状で、ボルテックス、ピペット操作、シリンジ操作、震盪、などにより、または衝突形式装置であり得るTジャンクション液滴生成装置などのマイクロ流体液滴形成装置中で行われ;特定の実施形態では、混合は、マイクロ流体Tジャンクション、フローフォーカシングジャンクション、逆yジャンクション(reverse-y junction)、millipedeジャンクション(millipede junction)、またはこれらの組み合わせによる。特定の実施形態では、エマルション生成システムは、試料送達モジュール、液滴発生装置モジュール、サーマルサイクラーモジュール、検出モジュール、廃棄物管理モジュール、またはこれらの組み合わせを含む機器などのより大きな機器中に組み込まれる。より大きな機器は、組み込まれたマイクロ流体デバイス、配管、容器または槽を有し得、機器は、限定されないが、機器全体としての、またはマイクロ流体装置の性能を含む機器を制御する関連ソフトウェアを含む。
【0199】
また、本明細書で提供されるのは、キットである。キットには、エマルションの形成に使用するための複数の第1の界面活性剤分子を含む第1の容器、および第1の容器を含む梱包物を含めることができ、第1の界面活性剤分子は、他の界面活性剤分子に、直接にまたは間接的に架橋するための複数の第1の結合部分を含む。キットはまた、第1の容器の界面活性剤の結合部分間の架橋反応を開始または促進する1つまたは複数の成分を含む第2の容器、および第2の容器を含む梱包物を含めることができる。キットには、第2の結合部分を含む複数の第2の界面活性剤分子を含む第3の容器、およびその容器の梱包物を含めることができる。前記キットにはまた、使用説明書を含めることができる。
【0200】
以上、本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態は例示の目的のみで提供されたものであることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく多くの変形、変更、および置換をすぐに思いつくであろう。本発明の実施に際し本明細書で述べた実施形態には、様々な代替例を用い得ることは理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は発明の範囲を規定することを目的としたものであり、特許請求の範囲に含まれる方法および構造ならびにそれらの等価物をこれによって網羅することを目的としたものである。
【国際調査報告】