(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】車両用のレーダーアンテナ装置、車両、及びレーダーアンテナ装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20220803BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20220803BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S13/931
B60J1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571855
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020064903
(87)【国際公開番号】W WO2020245033
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019114883.9
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】521527565
【氏名又は名称】ジコヤ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】521527576
【氏名又は名称】フジクラ・テクノロジー・ヨーロッパ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クルツ・ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】リー・ハンジョ
(72)【発明者】
【氏名】クレーマース・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュトラトマン・ペーター
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】
本発明は、1つの複合窓ガラス2と、レーダービーム6を送信し及び/又は受信するように構成された少なくとも1つのレーダー機構13とを有する車両20用のレーダーアンテナ装置1に関する。当該少なくとも1つのレーダー機構13はそれぞれ、1つのアンテナユニット5と1つの増幅ユニット12とを有する。当該増幅ユニット12は、当該アンテナユニット5用の電気ドライブ信号8を提供するように、及び/又は電気エコー信号9を当該アンテナユニット5から受信するように構成されている。本発明では、当該アンテナユニット5が当該複合窓ガラス2中に配置されていて、当該増幅ユニット12が、当該複合窓ガラス2の表面に配置されていて、当該アンテナユニット5と当該増幅ユニット12とが、互いに空間的に分離されていて、当該複合窓ガラス中に配置された1つの接続要素11を介して互いに導電接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-1つの複合窓ガラス(2)と、
-レーダービーム(6)を送信し及び/又は受信するように構成された少なくとも1つのレーダー機構(13)と、
を有する車両(20)用のレーダーアンテナ装置(1)であって、
-前記少なくとも1つのレーダー機構(13)はそれぞれ、1つのアンテナユニット(5)と1つの増幅ユニット(12)とを有し、
-前記増幅ユニット(12)は、前記アンテナユニット(5)用の電気ドライブ信号(8)を提供するように、及び/又は電気エコー信号(9)を前記アンテナユニット(5)から受信するように構成されている当該レーダーアンテナ装置(1)において、
-前記アンテナユニット(5)が、前記複合窓ガラス(2)中に配置されていて、
-前記増幅ユニット(12)が、前記複合窓ガラス(2)の表面に配置されていて、
-前記アンテナユニット(5)と前記増幅ユニット(12)とが、互いに空間的に分離されていて、前記複合窓ガラス中に配置された1つの接続要素(11)を介して互いに導電接続されていることを特徴とするレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項2】
前記複合窓ガラス(2)は、少なくとも2つのガラス層(3,4)を有し、
前記アンテナユニット(5)は、これらのガラス層(3,4)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項3】
前記接続要素(11)は、前記複合窓ガラス(2)中のボア内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項4】
前記接続要素(11)は、前記アンテナユニット(5)に対して直角に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項5】
前記複合窓ガラス(2)は、少なくとも1つのフィルム層(19)を有し、
前記アンテナユニット(5)は、前記フィルム層(19)上に印刷されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項6】
複数のガラス層(3,4)のうちの少なくとも1つのガラス層が、前記アンテナユニット(5)で被覆されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項7】
前記複合窓ガラス(2)は、少なくとも1つの光学ライトガイド(17)を有し、
前記少なくとも1つの光学ライトガイド(17)は、光学結合素子(16)によって前記増幅ユニット(12)に接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項8】
複数のガラス層(3,4)のうちの少なくとも1つのガラス層が、前記増幅ユニット(12)に電気接触している金属製の導電路(18)を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のレーダーアンテナ装置(1)を有する車両(20)。
【請求項10】
車両(20)用のレーダーアンテナ装置(1)を製造するための方法であって、
前記レーダーアンテナ装置(1)は、
-1つの複合窓ガラス(2)と、
-レーダービーム(6)を送信し及び/又は受信するように構成された少なくとも1つのレーダー機構(13)と、
を有し、
-前記少なくとも1つのレーダー機構(13)はそれぞれ、1つのアンテナユニット(5)と1つの増幅ユニット(12)とを有し、
-前記増幅ユニット(12)は、前記アンテナユニット(5)用の電気ドライブ信号(8)を提供するように、及び/又は電気エコー信号(9)を前記アンテナユニット(5)から受信するように構成されている当該方法において、
-前記アンテナユニット(5)が、前記複合窓ガラス(2)中に配置され、
-前記接続要素(11)が、前記複合窓ガラス(2)中に配置され、
-前記増幅ユニット(12)が、前記複合窓ガラス(2)の表面に配置され、
-前記アンテナユニット(5)と前記増幅ユニット(12)とが、前記複合窓ガラス(2)中に配置された前記接続要素(11)を介して互いに導電接続されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のレーダーアンテナ装置と、車両と、レーダーアンテナ装置を製造するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺を捕捉するため、様々な技術が使用されている。これらのセンサは、例えばカメラによる周辺の光学捕捉、LIDARシステムによる捕捉又はレーダーセンサによる捕捉を含む。当該レーダーセンサの利点は、LIDARシステム又はカメラシステムとは違って、当該レーダーセンサは、悪い視界状況に左右されないことである。したがって、夕闇又は霧の場合でも、周辺の正確な捕捉が、レーダーセンサによって可能である。
【0003】
しかしながら、高い分解能を達成するためには、多数のレーダーユニットを有する複数のレーダーアンテナ装置を設置することが必要である。さらに、必要な角精度を達成するためには、所定の広い面積を当該レーダーアンテナ装置のために確保することが必要である。複数のレーダーアンテナ装置が、それぞれのレーダーアンテナ装置によって受信される信号のフェージング(Phasenlage)を評価することによって周辺を捕捉することを可能にする。この場合、主に2つの問題がある。第1の問題は、個々のレーダーアンテナ装置を同期することにある。信号の入射角の評価が、当該フェージングによって評価されるので、信号を受信する時点が、必要な精度で計測されることが必要である。もう1つの問題は、個々のレーダーアンテナ装置の相互の配置から発生する。したがって、当該個々のレーダーアンテナ装置の相互の正確な位置を計測することが必要である。車両の窓ガラスの面積が、レーダーアンテナ装置用に適している。何故なら、当該窓ガラスは、必要な面積を提供し、当該個々のレーダーアンテナ装置の高剛性の配置を可能にするからである。
【0004】
例えば、独国特許第10246607号明細書が、エレクトロクロミック・レーダーセンサを開示する。当該エレクトロクロミック・レーダーセンサは、エレクトロクロミック層の配列から構成されている。この場合、レーダーセンサ装置が、観測物体から発生する電磁波の進行方向に設けられている。
【0005】
仏国特許出願公開第2235502号明細書は、ラジオ放送若しくはテレビ放送で使用されるか又はレーダー用に使用される異なる電磁波を捕捉又は放射するための装置を開示する。導電性材料から成るストリップ又は粉末を、表面上に被覆又は接着されるバルク(Masse)中に付加することが提唱されている。
【0006】
米国特許第5682168号明細書は、隠された車両アンテナを開示する。この場合、1つ又は複数のアンテナ素子を、車両のルーフラックの上の上張りされたカバーの下側に設置するか、又は車両のフロントグリルの後ろに設置することが提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第10246607号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2235502号明細書
【特許文献3】米国特許第5682168号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、レーダーアンテナ装置を車両の窓ガラス中に設置することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、車両用のレーダーアンテナ装置が設置される。当該レーダーアンテナ装置は、1つの複合窓ガラスと、レーダービームを送信及び/又は受信するように構成されている少なくとも1つのレーダー機構とを有する。当該少なくとも1つのレーダー機構はそれぞれ、1つのアンテナユニットと1つの増幅ユニットとを有する。当該増幅ユニットは、当該アンテナユニット用の電気ドライブ信号を提供するように、及び/又は電気エコー信号を当該アンテナユニットから受信するように構成されている。当該アンテナ装置の当該アンテナユニットは、当該車両の当該複合窓ガラス中に配置されている。当該増幅ユニットは、当該複合窓ガラスの表面に配置されている。当該アンテナユニットと当該増幅ユニットとが、互いに空間的に分離されていて、当該複合窓ガラス中に配置された1つの接続要素を介して互いに導電接続されている。
【0010】
換言すれば、レーダーアンテナ装置は、複合窓ガラスを有する。この場合、当該複合窓ガラスは、例えば車両の窓ガラスでもよい。当該複合窓ガラスは、互いに密着固定されている複数の層を有し得る。この場合、レーダー機構のアンテナユニットは、当該複合窓ガラス中に配置されている。したがって、当該アンテナユニットは、例えば、当該複合窓ガラスの2つの層間に配置されているか、又は1つの層中に組み込まれている。当該レーダー機構の増幅ユニットが、当該複合窓ガラスの外側に配置されている。当該増幅ユニットと当該アンテナユニットとは、空間的に互いに分離されている。その結果、当該増幅ユニットと当該アンテナユニットとは接触していない。当該増幅ユニットは、当該アンテナユニットによって送信されなければならない電気ドライブ信号を供給するように構成されている。このため、当該増幅ユニットは、接続要素を介して当該アンテナユニットに互いに導電接続されている。当該接続要素は、当該アンテナユニットによって受信される電気エコー信号を当該増幅ユニットに伝送するようにも構成されている。
【0011】
本発明によれば、レーダーアンテナ装置を複合窓ガラス中に配置することが可能になるという利点が奏される。
【0012】
本発明は、さらなる利点を奏する別の構成も含む。
【0013】
本発明の別の構成は、複合窓ガラスが少なくとも2つのガラス層を有することを提唱する。この場合、アンテナユニットが、これらのガラス層間に配置されている。換言すれば、当該複合窓ガラスは、少なくとも2つのガラス層を有する多層配列である。これらのガラス層は、密接して配置されている。この場合、少なくとも1つのアンテナユニットが、これらのガラス層間に存在する。例えば、少なくとも2つのガラス層が、合成樹脂によって互いに接合されていることが提唱され得る。この場合、当該アンテナユニットは、2つのガラス層間に配置されている合成樹脂中に封入されている。
【0014】
本発明の別の構成は、接続要素が複合窓ガラス中のボア内に配置されていることを提唱する。換言すれば、当該複合窓ガラスは、この複合窓ガラスの少なくとも1つの層を貫通しているボアを有する。増幅ユニットをアンテナユニットに電気接触するため、当該接続要素は、このボア内に配置されている。例えば、当該ボアが、当該複合窓ガラスの表面から当該アンテナユニットまで延在し、導電性材料で充填されていることが提唱され得る。
【0015】
本発明の別の構成は、接続要素がアンテナユニットに対して直角に配置されていることを提唱する。換言すれば、当該接続要素は、当該アンテナユニットの法線に対して平行に延在する。これにより、当該アンテナユニットによって供給されたビームに悪影響を及ぼすビームが、当該接続要素を透過して放射されないという利点が奏される。例えば、当該アンテナユニットが、複合窓ガラスの平面中に配置されているロッドアンテナ又はパッチアンテナを有することが提唱され得る。当該接続要素は、このアンテナユニットに対して直角に配置され得る。
【0016】
本発明の別の構成は、複合窓ガラスが少なくとも1つのフィルム層を有することを提唱する。この場合、アンテナユニットが、当該フィルム層上に印刷されている。換言すれば、アンテナユニットが、複合窓ガラスのフィルム層上に設置されている。当該アンテナユニットは、印刷法を用いて導電性材料を当該フィルム層上に被覆することによって成形され得る。これにより、当該アンテナユニットの複雑なパターンが、周知で且つ簡単な方法によって形成され得るという利点が奏される。例えば、当該フィルム層が、重合体から成ることが提唱され得る。この場合、アンテナユニットは、インクジェット印刷法又はシルクスクリーン印刷法によって被覆される。
【0017】
本発明の別の構成は、アンテナユニットが複数のガラス層のうちの1つのガラス層に被覆されていることを提唱する。換言すれば、アンテナユニットが、1つのガラス層上に直接に被覆されている。これにより、追加の層が形成されないで済むという利点が奏される。例えば、アンテナ素子が、アトマイゼーション法又は蒸着法によってガラス層上に被覆されることが提唱され得る。当該アンテナユニットの既定のパターンを形成するため、マスクが、被覆処理中に複合窓ガラス上に形成され得るか、又は、その後のエッチングが、被覆されている層を除去するために実行され得る。
【0018】
本発明の別の構成は、複合窓ガラスが少なくとも1つのライトガイドを有することを提唱する。この場合、当該少なくとも1つのライトガイドは、光学結合素子によって増幅ユニットに接続されている。換言すれば、複合窓ガラスは、光信号を光伝送するように構成されている部分を含む。当該光学結合素子は、当該増幅ユニットに密接している。当該光学結合素子は、当該ライトガイドによって伝えられる光信号の光の少なくとも一部を増幅ユニット中に送る。当該別の構成によれば、ライトガイドを複合窓ガラスの外部でさらに固定することが不要であるという利点が奏される。例えば、ガラス層の材料とは違う所定の材料が、複合窓ガラスの方向に沿って埋設されていることが提唱され得る。当該異なる屈折率に起因して、光が、当該ライトガイドに沿って伝えられ得る。当該送られた光の一部が、当該増幅ユニットに転送され得るように、当該光の一部を当該増幅ユニットに送る光学結合素子が、当該ライトガイドに配置され得る。
【0019】
本発明の別の構成は、複数のガラス層のうちの1つのガラス層が、増幅ユニットに電気接触する導電路を有することを提唱する。換言すれば、このガラス層は、導電性材料から成る導電路を有する。電流を当該増幅ユニットに供給するため、当該導電路は、当該増幅ユニットに導電接続されている。当該別の構成によれば、複合窓ガラスを介した増幅ユニットの接触が可能になるという利点が奏される。
【0020】
レーダーアンテナ装置を有する車両も、本発明に含まれる。当該車両は、例えば自動車又は貨物自動車でもよい。
【0021】
また、本発明は、車両用のレーダーアンテナ装置を製造するための方法に関する。当該製造されたレーダーアンテナ装置は、1つの複合窓ガラスと、レーダービームを送信及び/又は受信するように構成された少なくとも1つのレーダー機構とを有する。この場合、当該少なくとも1つのレーダー機構はそれぞれ、1つのアンテナユニットと1つの増幅ユニットとを有する。当該増幅ユニットは、当該アンテナユニット用の電気ドライブ信号を提供するように、及び/又は電気エコー信号を当該アンテナユニットから受信するように構成されている。当該方法では、当該アンテナユニットと1つの接続要素とが、当該複合窓ガラス中に配置されることが提唱されている。当該増幅ユニットは、当該複合窓ガラスの表面に配置される。当該方法では、当該アンテナユニットと当該増幅ユニットとが、当該複合窓ガラス中に配置された当該結合要素を介して互いに導電接続される。
【0022】
換言すれば、レーダーアンテナ装置は、少なくとも1つのレーダー機構を含む。この場合、当該レーダー機構のアンテナユニットが、複合窓ガラス中に存在するように、当該アンテナユニットが、当該方法の実行中に配置される。例えば、当該アンテナユニットが、第2ガラス層で覆われる第1ガラス層上に配置されることによって、当該方法は実行され得る。これにより、当該アンテナユニットが、当該2つのガラス層間に存在し得る。その結果、このアンテナユニットは、当該複合窓ガラス中に配置されている。当該アンテナユニットが、当該増幅ユニットに電気接続され得るように、接続要素を当該方法の実行中に当該複合窓ガラス中に配置することが提唱されている。当該配置は、例えば、これらのガラス層のうちの1つのガラス層中に孔を形成し、引き続き当該接続要素を当該孔に配置することによって実行され得る。最後のステップでは、当該増幅ユニットが、当該複合窓ガラス上に配置され得て、当該接続要素を介して当該アンテナユニットに接続され得る。このため、例えば、当該増幅ユニットは、当該接続要素にはんだ付けされ得る。
【0023】
また、本発明のレーダーアンテナ装置の別の構成に関連して既に説明されたような特徴を有する本発明の車両の別の構成と本発明の方法の別の構成とが、本発明に含まれる。この理由から、ここでは、本発明の車両の対応する別の構成及び本発明の方法の対応する別の構成をさらにもう一度説明しない。
【0024】
本発明は、説明されている複数の実施の形態の複数の特徴の組み合わせも含む。
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】複合窓ガラス中のレーダーアンテナ装置を示す。
【
図3】複合窓ガラス中の別のレーダーアンテナ装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下で説明する実施の形態は、本発明の好適な実施の形態である。この実施の形態の場合、この実施の形態に記載されている複数の構成要素はそれぞれ、互いに独立しているとみなせる個々の本発明の特徴を呈する。これらの特徴はそれぞれ、互いに独立して本発明を改良すると同時に、個別でも又は図示された組み合わせとは違う組み合わせでも、本発明の構成要素とみなせ得る。さらに、当該記載されている実施の形態は、上記の本発明の複数の特徴のうちの別の特徴によっても補充可能である。
【0028】
図中では、機能的に同じ構成要素はそれぞれ、同じ符号で示されている。
【0029】
図1は、車両用のレーダーアンテナ装置を示す。レーダーアンテナ装置1は、複合窓ガラス2から構成される。複合窓ガラス2は、例えば第1ガラス層3及び第2ガラス層4を有し得る。レーダービーム6を送信及び/又は受信するように構成され得るアンテナユニット5が、第1ガラス層3と第2ガラス層4との間に配置され得る。アンテナユニット5は、例えば金、銀、銅、アルミニウム又はその他の導電性材料からなり得る。アンテナユニット5は、例えば蒸着法又はスパッタ法によって第1ガラス層3上に形成され得る。アンテナユニット5は、既定の幾何構造を有し得て、例えばパッチアンテナ又はロッドアンテナとして構成され得る。当該幾何構造を提供するため、アンテナユニット5が、マスクを用いて形成され得る。第1ガラス層3が、材料で完全に覆われ、そしてアンテナユニット5を確保するため、余分な領域が、エッチング法又はスパッタ法によって除去されることも提唱され得る。
【0030】
第2ガラス層4が、合成樹脂7を用いて第1ガラス層3上に配置され得る。電気ドライブ信号8をアンテナユニット5に供給できるようにするため、又は、アンテナユニット5によって受信される電気エコー信号9を転送できるようにするため、ドリル又はレーザーによって加工形成されたボア10が、当該第2ガラス層中に形成されていることが提唱され得る。接続要素11が、ボア10内に配置され得る。接続要素11は、導電性材料をボア10内に充填することによって製作され得る。アンテナユニット5が、接続要素11を介して増幅ユニット12に導電接続され得て、一緒にレーダー機構13を構成する。増幅ユニット12は、第2ガラス層4の表面上に配置され得る。増幅ユニット12は、光学ドライブ信号14を受信し、この光学ドライブ信号14を電気ドライブ信号8に変換し、接続要素11を介してアンテナユニット5に供給するように構成され得る。さらに、増幅ユニット12は、接続要素11を介して電気エコー信号9を受信し、光学エコー信号15に変換するように構成されてもよい。
【0031】
増幅ユニット12が、光学結合素子16を介して光学ライトガイド17に接続され得る。光学結合素子16は、光学ライトガイド17からの光学ドライブ信号14を増幅ユニット12にカップリングすることを可能にするように、又は増幅ユニット12からの光学エコー信号15を光学ライトガイド17にカップリングすることを可能にするように構成され得る。光学ライトガイド17は、例えばガラスファイバーから成り得て、第2ガラス層4に配置され得る。光学結合素子16は、例えば回折格子結合器(Gitterkoppler)、積層結合器(Stosskoppler)又は断熱結合器(adiabatische Koppler)でもよい。電流を増幅ユニット12に供給するため、又は熱を増幅ユニット12から放熱するため、金属製の導電路18が、第2ガラス層4中に配置され得る。
【0032】
図2は、複合窓ガラス中のレーダーアンテナ装置を示す。レーダーアンテナ装置1は、複数のレーダー機構13を有する。これらのレーダー機構13はそれぞれ、1つのアンテナユニット5と1つの増幅ユニット12とを有する。このアンテナユニット5とこの増幅ユニット12とは、互いに離間して配置されていて、それぞれの接続要素11によって互いに接続されている。複数のアンテナユニット5が、印刷法によってフィルム上に形成されることが提唱され得る。フィルム19は、第1ガラス層3上に接着され得る。第2ガラス層4が、フィルム19自体に配置され得る。それぞれの増幅ユニット12が、第2ガラス層4の表面上に配置され得る。
【0033】
図3は、複合窓ガラス中のレーダーアンテナ装置を示す。複数のアンテナユニット5が、例えば複数のロッドアンテナとして構成され得る。複数の接続ユニット11が、これらのアンテナユニット5をそれぞれの増幅ユニット12に導電接続する。この場合、これらの接続ユニット11は、複合窓ガラス2に対して直角に配置され得る。これにより、これらの接続ユニット11の放射された電磁場の成分が、これらのアンテナユニット5の電磁場に悪影響を及ぼすことが回避される。これらの増幅ユニット12が、複数の光学ライトガイド17を介して光結合され得る。アンテナ装置1は、例えば車両20内に配置され得る。この場合、車両20は、例えば自動車又は貨物自動車でもよい。複合窓ガラス2は、例えば車両20の前窓又は後窓でもよい。
【0034】
大きいレーダーアレイを設置するため、新規のレーダーアンテナ装置1は、フォトニック集積型の増幅ユニット12(いわゆるレーダーチップ)使用する。当該増幅ユニット12は、窓ガラスの内側に配置され得る。この場合、複数の増幅ユニット12と複数のアンテナユニット5とが分離されている。その結果、これらのアンテナユニット5だけが、前窓中に組み込まれている。この場合、増幅ユニット12とそれぞれのアンテナユニット5との間の高周波接続部分(接続要素11)が、穿孔加工によって(機械式に又はレーザーによって)製作される。当該穿孔は、導電材料で充填される。
【0035】
これらのアンテナユニット5を複合窓ガラス2中に直接に組み込むことによって、高精度に配置されたアンテナアレイが製造され得る。当該アンテナアレイは、1メートルを超える空間寸法を可能にし、したがって0.1°以下の角分解能を可能にする。
【0036】
この場合、これらのアンテナユニット5の当該組み込みは、例えば以下の方法によって実行される。
【0037】
1つの実施の形態では、複数のアンテナユニット5が、予め製作され得て、複合窓ガラス2の複数のガラス層3,4から成る積層成形品(サンドイッチ構造)中に挿入され得る。引き続き、当該複合窓ガラス2の個々のガラス層3,4が一体化され得る。これにより、同時に、これらのアンテナユニット5が、それらの位置で固定される。したがって、これらのアンテナユニット5は、予め製作され得て、複合窓ガラス2のガラス層3とガラス層4との間に挿入され得る。
【0038】
別の実施の形態では、第1ガラス層3の上面が金属被覆され得て、引き続き、既定のアンテナ幾何構造を有するアンテナユニット5を得るため、材料が、(レーザー、スパッタリング、エッチング等によって)除去され得る。増幅ユニット12に電気接触させるため、金属製の導電路18が、複合窓ガラス2中に組み込まれ得る。代わりに、増幅ユニット12が、フリップチップによって、パターン化された金属面に接合されるように、一番上のガラス層4の、増幅ユニット12に当接する箇所がエッチング除去されてもよい。導電路18は、増幅ユニット12を冷却するためにも使用され得る。
【0039】
1つの構成では、アンテナユニット5が、フィルム上に印刷され、複合窓ガラス2中に組み込まれる。この場合、個々の増幅ユニット12が、ライトガイドによって同期される。このライトガイドは、送信すべきレーダー信号(Tx)と受信されるレーダー信号(Rx)とを光周波数で信号伝送するためにも使用される。個々のライトガイドケーブルの代わりに、上記の構成では、複数の導波管が、(PLC)ガラスに直接に取り付けられてもよい。これらの導波管は、光周波数帯域に変換されたTxレーダー信号とRzレーダー信号とを当該個々の増幅ユニット12に伝送する。これらの増幅ユニット12とこれらの導波管との当該光接触は、回折格子結合器、積層結合器又は断熱結合器によって実行され得る。これにより、レーダーチップの全ての信号を制御する個々の光結合箇所が、前窓中に存在し得る。
【0040】
自動運転のためには、可能な限り確実な高精度位置認識が不可欠である。この場合、周辺が、レーダー、ライダー及びカメラのようなセンサによって捕捉され得る。周辺の360°の完全な3次元捕捉が非常に重要である。その結果、全ての静止している物体及び運動している物体が捕捉される。特にライダーが、冗長でロバストな周辺捕捉に寄与する。何故なら、このセンサ様式は、距離を正確に測定し、クラスター分析のためにも使用され得るからである。しかしながら、これらのセンサは、高価であり、当該構成が複雑である。特に、360°の3次元周辺捕捉が問題となる。何故なら、一般に多数の小型の個別の光源及び検出素子と協働することを保証するため、多数のより小型の個別センサが必要であるか、又は、大型のセンサが使用されるからである。しかしながら、当該より小型のセンサ様式の空間寸法も、依然として10×10×10cm3の範囲内にあり、設置位置が依然として目視可能である。
【0041】
さらに、それぞれのセンサによって個別に収集されたデータが、個別に処理及び/又は融合されなければならない。この場合、特に、エコー時間を処理するための正確なタイムスタンプが重要である。その結果、データ収集及びクラスター分析がさらに面倒になる。
【0042】
受動的な安全運転支援システムの分野では、及び、レベル4及び5における自動運転にとっては、道路利用者の識別性が、乗員と道路利用者との双方を保護するために非常に重要である。このため、確実な高精度位置認識が不可欠である。この確実な高精度位置認識を保証するため、あらゆる周辺が、可能な限り高い3次元分解能で感知されなければならない。最近のカメラシステム及びLIDARシステムは、この高精度位置認識を保証できるものの、霧、雪のような悪い視界状況時又は夕闇中では、その性能が低下するか又は完全に損なわれる。これに対して、レーダーセンサは、当該制約に支配されないものの、高い分解能で3次元撮像するためには、多数の異なるセンサによるアレイ配置で配置されなければならない。さらに、これらのセンサの送受信時間が同期されなければならない。当該同期は、技術的に極めて煩わしい。それ故に、個々のレーダーセンサが、可能な限り小さく、簡素で、フレキシブルで、エラー耐性を有し、ロバストであり且つ安価であるならば有益である。このため、可能な限り小規模の電子回路システムが、当該レーダーセンサ自体に組み込まれなければならず、デジタルデータ処理が、中央の制御装置内で分散して実行されなければならない。
【0043】
大量生産における従来のレーダーシステムは、10°~4°の方位角分解能を有する。しかも、一般に、仰角方向の角分解能はさらに低い。その結果、レーダーデータ向けの結像法は使用され得ない。実際のLiDARシステムの角分解能は、0.1°の範囲内にある。当該範囲は、実際のレーダーシステムでは達成され得ない。
【0044】
自動車内に設置される実際のレーダーセンサは、大抵は10×10cmの寸法を有する。これによって得られる最大角分解能は、約2°であり、2次元の高精度位置認識だけを可能にする。非常に低い解像度を呈する小さいアパーチャの場合、当該実際のレーダーセンサは、車両用に非常に大きい空間寸法を有する。これは、自動運転のための十分な高精度位置認識を不可能にする。複数のセンサの設置は、これらのセンサの時間同期を必要とする。当該時間同期は、技術的に煩わしく且つコストがかかる。ナノレーダーは、5×5cmの範囲内の寸法を有し、そのコンパクトな構造に起因して車両内に容易に組み込まれ得る。ナノレーダーには、同じ欠点がある。さらに、当該ナノレーダーの有効範囲は、現時点では約45mに制限されている。当該有効範囲は、特に都会の状況にとっては非常に小さい。当該解像度は、合成開口法(英語では、「Synthetic Aperture Radar」、SAR(合成開口レーダー))によってcmの範囲まで高くされ得る。当該SAR法は、走行方向に対して直角方向にだけ可能である。走行方向の予測又はその反対方向の予測は、この方法によっては不可能である。さらに、測定後に必要なデータ処理が、CPUに多大な負担をかける。
【0045】
当該センサ内での多数の電子構成要素の設置は、これらの電子構成要素の空間寸法とコストとを増大させる。その結果、複数のセンサの使用は現実的でない。さらに、これらのセンサの時間同期は、技術的に煩わしい。それにもかかわらず、アパーチャが、複数のアンテナを分散させることによって形成され、引き続き、デジタルデータ処理が、中央の制御装置内で分散して実行されなければならない場合、送信信号及び受信信号の電気式の伝送が問題である。何故なら、伝送損失が、数dBに達するからである。
【0046】
さらに、複数の個別センサを使用することが必要である。これらのセンサの大きい空間寸法は、車両への視野を遮らない設置を不可能にする。その結果、これらのセンサは、目視可能のままである。複数の個別センサを使用することで、比較的高いコストが、これらの個別センサを同期させるために必要である。さらに、データ融合は、面倒であり且つ誤りが起きやすい。何故なら、データを中央で捕捉するのではなくて、それぞれの個別センサがデータを独自に捕捉し転送するからである。その結果、コストが高くなる。
【0047】
これに対して、本発明のアンテナ装置には、従来の技術に比べて多数の利点がある。総じて、従来の解決手段よりも低コストである。レーダー装置を複合窓ガラス中に配置することは、製造における高い精度を可能にする。何故なら、当該複合窓ガラスの剛性は、プレート(Blech)に比べて比較的高いからである。当該アンテナ装置の簡単な組み込みが可能になる。当該製造は、大量生産で導入可能であり、さらに改良されている新規の技術を使用して実行される。簡単な設置が可能になる。個別センサの数が削減され得る。これにより、校正が簡略化され得る。視野を遮らない設置が可能になる。当該アンテナ装置の広い面積が、0.1°以下の極めて高い角分解能を可能にする。
【0048】
総括すると、上記の実施例は、どのようにして複数のレーダーアンテナ装置を車両の窓ガラス中に設置することが本発明によって可能になるかを示す。
【符号の説明】
【0049】
1 レーダーアンテナ装置
2 複合窓ガラス
3 第1ガラス層
4 第2ガラス層
5 アンテナユニット
6 レーダービーム
7 合成樹脂
8 電気ドライブ信号
9 電気エコー信号
10 ボア
11 接続ユニット、接続要素
12 増幅ユニット
13 レーダー機構
14 光学ドライブ信号
15 光学エコー信号
16 結合素子
17 ライトガイド
18 導電路
19 フィルム
20 車両
【国際調査報告】