(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】カカオベースの冷菓およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/42 20060101AFI20220803BHJP
A23G 1/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A23G9/42
A23G1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571891
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020065519
(87)【国際公開番号】W WO2020245292
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518006983
【氏名又は名称】オーデーツェー リツェンツ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】ヒューン,ティロ
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GB21
4B014GB22
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG08
4B014GG09
4B014GG10
4B014GG11
4B014GK07
4B014GK08
4B014GL06
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP10
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP26
4B014GY03
4B014GY04
(57)【要約】
カカオ香味の冷菓を製造する改善された方法であって、a)カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、b)該懸濁液を湿式粉砕する工程と、c)該懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、d)懸濁液を、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相に分離する工程であって、該脂肪相が、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含み、該固相が、カカオ粉末および水を含む、分離する工程と、e)天然または人工甘味料を含む混合物を、低温殺菌、均質化、および凍結に供して、カカオ香味の冷菓を得る工程と、を含み、工程d)で得られる非乾燥固相が、工程e)の前またはその間に混合物に加えられる、方法が記載されている。実施形態では、本発明は、例えば、アイスクリーム、シャーベット、ソルベ、およびフローズンヨーグルトの製品を含む、カカオ香味の冷菓を製造するための、カカオ豆またはカカオニブから調製された濡れた固相の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ香味の冷菓を製造する方法であって、
a) カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、
b) 前記懸濁液を湿式粉砕する工程と、
c) 前記懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、
d) 前記懸濁液を、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相に分離する工程であって、前記脂肪相が、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含み、前記固相が、カカオ粉末および水を含む、分離する工程と、
e) 天然または人工甘味料を含む混合物を、低温殺菌、均質化、および凍結に供して、前記カカオ香味の冷菓を得る工程と、
を含み、工程d)で得られる非乾燥固相が、工程e)の前またはその間に前記混合物に加えられる、方法。
【請求項2】
前記非乾燥固相が、前記固相の総重量に基づいて、50重量%以上の含水量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)で得られた前記水相が、別々に処理され、処理された水相の少なくとも一部が、工程e)の前またはその間に前記混合物に加えられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水相を別々に処理することが、前記カカオ豆またはカカオニブに由来する酸性成分の除去をもたらす精製工程および/または中和工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された水相の少なくとも一部が、前記混合物中の前記含水量を、前記混合物の総重量に基づいて、52~80重量%の範囲、好ましくは54~72重量%の範囲に調整するように前記混合物に加えられる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
天然または人工甘味料を含む前記混合物が、フルーツジュース、1つ以上の乳製品および/または卵製品をさらに含み、前記1つ以上の乳製品が、好ましくは、乳脂肪、無脂乳固形分(MSNF)、および/またはヨーグルトを含み、前記卵製品が、好ましくは卵黄である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、乳化剤および/または安定剤をさらに含み、前記乳化剤が、好ましくは、ローカストビーンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、およびゼラチンのうちの1つ以上から選択され、前記安定剤が、好ましくは、モノグリセリド、ジグリセリド、およびポリソルベート80のうちの1つ以上から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記天然または人工甘味料が、カカオパルプ、スクロース、フルクトース、グルコースシロップ、転化糖、果糖、コーンシロップ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、シクラメート、アセスルファムK、タウマチン、カルコン、シクラメート、ステビオシド、ステビア、ソルビトール、キシリトール、およびラクチトールのうちの1つ以上から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程e)が、凍結前に、均質化された混合物を2~24時間の期間にわたって1~4℃で熟成する工程をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程e)で、前記混合物を型内で凍結させ、前記型の表面を、好ましくは-75℃未満の極低温に冷却する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カカオ香味の冷菓が、ハードフローズンアイスクリーム製品、低脂肪アイスクリーム製品、ライトアイスクリーム製品、およびソフトフローズンアイスクリーム製品から選択され、工程d)で得られる前記非乾燥固相が加えられる前記混合物が、
0.5~50重量%の乳脂肪、
3~38重量%の無脂乳固形分(MSNF)、
60重量%未満の1つ以上の甘味料、
0.01~3重量%の安定剤、および
0.01~3重量%の乳化剤
を含み、各含有量範囲が、前記混合物の総固形物重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カカオ香味の冷菓が、シャーベットまたはソルベから選択され、工程d)で得られる前記非乾燥固相が加えられる前記混合物が、
8重量%未満の乳脂肪、
12重量%未満の無脂乳固形分(MSNF)、
65重量%未満の1つ以上の甘味料、
0.01~3重量%の安定剤、および
0.01~3重量%の乳化剤
を含み、各含有量範囲が、前記混合物の総固形物重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記カカオ香味の冷菓が、カカオ香味のフローズンヨーグルトであり、工程d)で得られる前記非乾燥固相が加えられる前記混合物が、
18重量%未満の乳脂肪、
5~45重量%の無脂乳固形分(MSNF)、
60重量%未満の1つ以上の甘味料、
0.01~3重量%の安定剤、および
0.01~3重量%の乳化剤
を含み、各含有量範囲が、前記混合物の総固形物重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって製造された、カカオ香味の冷菓。
【請求項15】
カカオ香味の冷菓を製造するための非乾燥固相の使用であって、前記非乾燥固相が、
a) カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、
b) 前記懸濁液を湿式粉砕する工程と、
c) 前記懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、
d) 前記懸濁液を、水相(重質相)、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含む脂肪相(軽質相)、ならびにカカオ粉末および水を含む前記非乾燥固相に分離する工程と
によって得ることが可能である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオ香味の冷菓を製造する改善された方法に関する。さらに、本発明は、例えば、アイスクリーム、シャーベット、ソルベ、およびフローズンヨーグルトの製品を含む、前述の方法によって得られたカカオ香味の冷菓に関する。特定の実施形態では、本発明は、カカオ香味の冷菓を製造するための、カカオ豆またはカカオニブから調製された濡れた固相の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間で、カカオ(Theobroma cacao L.)は、ミネラル、ビタミン、ポリフェノール(特に、カテキン、アントシアニジン、およびプロアントシアニジン)、およびフラボノイドなどの抗酸化物質を含む健康成分の価値ある供給源としてますます注目を集めており、カカオは、酸化ストレスの低減、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化の阻害、および血小板凝集の阻害において生理学的に活性であり、例えば、血管内の血管拡張物質として作用する(WO97/36497を参照)。
【0003】
したがって、カカオ豆中に存在する栄養的に有益な成分の含有量を理想的に維持しながら、カカオベースの食品、特にカカオ飲料およびチョコレート製品の多様性をさらに探求するために尽力がなされてきた。驚くべきことに、チョコレートアイスクリームは今日まで最も人気のあるアイスクリームの香味の1つであり続けているにもかかわらず、ミネラル、ビタミン、およびポリフェノールの含有量の保持が改善されたカカオ香味の冷菓の調製はそれほど注目されてこなかった。
【0004】
従来的に、アイスクリームの香味付けに使用されるカカオ製品は、天然のまたはアルカリ処理されたカカオ粉末、カカオリカー、チョコレートシロップ、またはそれらのブレンドから選択される。該構成要素は、典型的には、カカオ豆の収穫、発酵、および乾燥を含むカカオ豆の加工方法によって得られる。その後、豆は、通常、洗浄、焙煎、および任意選択的にニブに粉砕される。さらなる加工のために調製されたら、カカオ豆またはカカオニブは、より穏やかな味およびより暗い色を得るために任意選択的にアルカリ性溶液で処理され、次いで、通常は複数の工程での粉砕によってカカオマスになる。粉砕工程中に用いられる高い機械的負荷もしくは剪断応力および/または高熱によって、カカオ脂肪の液化およびチョコレートリカーの形成が促進される。次いで、チョコレートリカーは、カカオバターおよびカカオ粉末を製造するためのプレス工程(例えば、高圧の影響下での濾過)に供される。その後、甘味料および水を加え、続いて加熱することによってカカオ粉末をさらに加工して、チョコレートシロップにすることができる。そのようにして得られたカカオ粉末、カカオリカー、および/またはチョコレートシロップを、乳脂肪、無脂乳固形分(MSNF)、甘味料、安定剤、乳化剤、および水を含む組成物に加え、アイスクリーム混合物を形成し、この混合物を、低温殺菌、均質化、熟成、および凍結に供し、チョコレートアイスクリームを得ることができる。
【0005】
そのようなプレスされたカカオ粉末を使用するアイスクリーム製品の調製の例は、E.Prindivilleら、Journal of Dairy Science 1999、82(7)、1425~1432、E.Prindivilleら、Journal of Dairy Science 2000、83(10)、2216~2223、およびWO2013/092510A1に開示されている。US4497841Aには、アイスクリーム組成物におけるチョコレート香味の使用が開示されている。
【0006】
上記のアイスクリーム製造プロセスには、いくつかの欠点がある。具体的には、カカオ豆またはカカオニブの乾式粉砕中に用いられる高い機械的負荷、剪断応力、および/または高熱によって、熱に特に敏感なポリフェノールの分解が促進される(例えば、J.Aleanら、Journal of Food Engineering 2016、189、99~105を参照)。さらに、カカオ豆/カカオニブのアルカリ処理によって、同様にポリフェノールおよびフラバノールの含有量の減少が引き起こされる(K.B.Millerら、J.Agric.Food Chem.、2008、56、8527~8533を参照)。さらに、カカオ粉末は、チョコレートリカーまたはカカオバターよりも濃縮されたチョコレート香味の供給源であるため、通常はアイスクリームの香味付けに好まれるが、その一方で、得られるアイスクリームの口当たりおよび濃厚さの知覚を高めるために、主に脂肪含有量が調整される。したがって、油脂画分の効果的な分離を達成して、油脂相を介した脂肪含有量の微調整と、他の用途(例えば、化粧品、健康製品など)に使用可能な価値あるカカオバターの高い収率とを可能にすることが望ましいであろう。しかしながら、上記の従来のプロセスでは、カカオ豆中に存在する油脂画分は粉砕工程中に乳化されるため、乳化後では、油脂相の分離が、不所望な有機溶媒を使用せずには困難または不可能にさえなり、所望の香味および/またはカカオ生成物、例えば、芳香物質、抗酸化物質、および/またはビタミンを入手または保持することが、困難または非効率的になる。
【0007】
近年、従来の方法と比較してカカオマスにかかる熱負荷がより低く、したがって、より高い含有量のポリフェノール、抗酸化物質、および/またはビタミンを維持する代替的なカカオ豆加工方法が開発されてきた。例えば、WO2010/073117、EP3114940B1、EP3114941B1、EP3114942B1、およびEP3114939B1には、カカオ豆またはカカオニブおよび水を含む懸濁液を形成することと、懸濁されたカカオ豆またはカカオニブを湿式粉砕することと、懸濁液を加熱することと、これをデカントして、該懸濁液を水相、脂肪相、および固相に分離し、カカオ脂肪の液化を回避することと、機械加工中にチョコレートリカーを形成することとを含む、カカオ豆を加工する方法が開示されている。前述の方法は、アイスクリームのフィリングおよびコーティングの調製に使用可能な、コンチングされたチョコレート、チョコレート様製品、およびチョコレート構築キットの提供を対象とする。しかしながら、冷菓の香味ソースとして上記のチョコレート構築キットを使用する場合、最終的な製品中の維持される抗酸化物質および心地良い香り(例えば、フルーティー様、フラワー様、ココナッツ様)の収率は、まだ改善の余地がある。さらに、カカオバターの抽出を補完し、かつカカオ豆の価値ある成分を最適に使用する経済的に有利なプロセスとしての、カカオ香味の冷菓の製造プロセスを簡素化および促進することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、本明細書で定義される特許請求の範囲の主題によって、これらの課題を解決する。本発明の利点は、以下の段落でさらに詳細に説明され、さらなる利点は、本発明の開示を考慮して、当業者に明らかになるであろう。
【0009】
総じて、一態様では、本発明は、カカオ香味の冷菓を製造する方法であって、a)カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、b)該懸濁液を湿式粉砕する工程と、c)該懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、d)懸濁液を、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相に分離する工程であって、該脂肪相が、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含み、該固相が、カカオ粉末および水を含む、分離する工程と、e)天然または人工甘味料を含む混合物を、低温殺菌、均質化、および凍結に供して、カカオ香味の冷菓を得る工程と、を含み、工程d)で得られる非乾燥固相が、工程e)の前またはその間に混合物に加えられる、方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、カカオ香味の冷菓を製造するための非乾燥固相の使用であって、非乾燥固相が、a)カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、b)該懸濁液を湿式粉砕する工程と、c)該懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、d)懸濁液を、水相(重質相)、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含む脂肪相(軽質相)、ならびにカカオ粉末および水を含む非乾燥固相に分離する工程とによって得ることが可能である、使用に関する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、前述の方法によって得られたカカオ香味の冷菓である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるカカオ香味の冷菓を提供するまでのカカオ豆の加工の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、本発明をより完全に理解するために、その例示的な実施形態の以下の説明を参照する。
【0014】
カカオ香味の冷菓を製造する方法
本発明の第1の実施形態によるカカオ香味の冷菓を製造するための方法は、概して、a)カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、b)該懸濁液を湿式粉砕する工程と、c)該懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、d)懸濁液を、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相に分離する工程であって、該脂肪相が、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含み、前記固相が、カカオ粉末および水を含む、分離する工程と、e)天然または人工甘味料を含む混合物を、低温殺菌、均質化、および凍結に供して、カカオ香味の冷菓を得る工程とを特徴とし、工程d)で得られる非乾燥固相は、工程e)の前またはその間に混合物に加えられる。
【0015】
第1の実施形態による例示的なプロセスの概略図は、
図1に記載されており、この図では、破線は、任意選択的な添加剤(細い)および加工工程(太い)を示し、実線は、必須の特徴を示す。
【0016】
概して、本明細書で使用される場合の「カカオ香味の冷菓」という用語は、チョコレート香味のアイスクリームに限定されてはおらず、ハードフローズンアイスクリーム製品、低脂肪および無脂肪アイスクリーム製品、ライトおよび低減アイスクリーム製品、ソフトフローズンアイスクリーム製品、フローズンヨーグルト、シャーベット、およびソルベを含む、カカオ豆中に存在するまたは発生した香味を利用するすべての冷菓を包含すると理解される。冷菓は、固い固体製品である場合もあれば、ポンプ輸送可能な半固体製品(例えば、ソフトサーブタイプの製品の形態にある)である場合もある。
【0017】
上記の製造方法は、一般に、工程b)におけるカカオ豆/カカオニブの粉砕の前またはその間に水を加えることによってカカオ豆またはカカオニブの懸濁液を形成することから始まる。工程a)に使用されるカカオ豆またはカカオニブの前処理は、特に限定されてはいない。例えば、使用されるカカオ豆は、発酵または未発酵の豆(例えば、WO2014/130539A1またはEP3114939B1に従って、任意選択的にインキュベーションに供されたもの)および焙煎または未焙煎の豆であり得る。実施形態では、カカオ果実からの果肉および粘液を含むまたは含まない新鮮な生豆が使用され得る。また、ホールビーンを使用しても、またはホールビーンではないより小さな粒子(例えば、カカオニブ)に豆が砕かれる「破壊」工程に供された豆を使用してもよい。
【0018】
カカオ豆/カカオニブ懸濁液は、水を加えることによって形成される。形成される懸濁液中の水とカカオ豆/カカオニブとの重量比は、これに限定されることはないが、好ましくは1:1~6:1、より好ましくは2:1~4:1、特に好ましくは約3:1であり、これによって、さらなる工程における加工性に有利な影響が与えられ得る(例えば、容易なポンプ輸送、粉砕、およびより簡単な相分離)。
【0019】
追加の香味を導入するという観点から、および所望のデザート(例えば、アイスクリーム、フローズンヨーグルト、ソルベ、またはシャーベット)に応じて望まれる場合には、代替的な含水液体、好ましくは、例えば、コーヒーと、紅茶と、フルーツジュース、フルーツジュース濃縮物、またはミルクなどの含水量60~約95重量%の液体とのうちの1つ以上から選択される液体も、水の供給源として使用され得る。そのような場合、形成された懸濁液中の含水量は、上記で定義された比に収まることが好ましい。さらなる方法工程における熱負荷は比較的低いため、該液体に由来する温度に敏感な香味は保持され、カカオ豆の主要および副次的な香味と良好に相互作用し得る。
【0020】
冷菓にコーヒー香味を加えるために、水中で懸濁液を形成する際に、コーヒー豆(ホール状であるかまたは砕かれており、未焙煎または焙煎済である)をカカオ豆/カカオニブに混合してもよいが、ただし、コーヒー豆の含有量によって湿式粉砕および相分離の工程が妨げられたり悪影響を受けたりしないように、カカオ豆/カカオニブが豆混合物の大部分をなすことを前提とする。好ましくは、コーヒー豆の含有量は、豆混合物の20重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
【0021】
カカオ豆/カカオニブは、単回または複数回の湿式粉砕工程に供され、それによって、豆の粒子サイズは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらにより好ましくは20μm以下になる。豆の粒子をそのようなサイズ範囲に縮小すると、豆粒子材料の露出表面積が大幅に増加し、したがって、抽出結果の改善(脂肪または脂質、芳香物質、および/またはポリフェノールの抽出の改善など)のために、これを(例えば、化学溶媒ではなく水で)より効率的に濡らすことができる。豆の粒子サイズの縮小は、例えば、ディスクミル(例えば、有孔ディスクミル)、コロイドミル(例えば、歯付きコロイドミル)、またはコランダム石ミルを使用することによって達成することができる。少なくとも1回の粉砕工程において、カカオ豆の細胞がふやかされて、ふやかされたカカオ豆の利用可能な表面積の増加によって溶媒(水)がカカオ豆材料をより良好に濡らすことができるようになることが好ましい。湿式粉砕に使用される方法および装置は、著しい摩擦熱の生成または大きな機械的力による不所望な乳化が回避される限り、特に制限されることはない。例えば、複数回の粉砕工程を使用する場合、粗い湿式粉砕工程(例えば、任意選択的にさらなる水を用いる)は、有孔ディスクミルを使用して行われ得て、粗く粉砕された懸濁液は、微細粉砕工程のために歯付きコロイドミルにポンプ輸送され得る。
【0022】
湿式粉砕工程の後に、全体的な熱負荷を低減し、かつ乳化を防止するために、懸濁液を約70℃以下の温度で熱処理に供する。カカオバターの収率と、芳香物質、抗酸化物質、および/またはビタミンなどの所望の香味の維持との好ましいバランスの観点から、43~65℃の加熱温度が好ましい。カカオバターの液化および/または改善された機械的相分離の観点から、45~50℃の加熱温度範囲が特に好ましい。湿式粉砕された懸濁液の加熱は、掻き取り式またはチューブ式熱交換器によって行われ得るが、これに限定されることはない。
【0023】
工程d)において、相分離は、3つの相、すなわち、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相が得られるように行われ、該脂肪相は、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含み、該固相は、カカオ粉末および水を含む。好ましくは、デカンタまたはノズルセパレータなどの、遠心力を用いる装置を利用して、機械的粒子分離を達成することができる。例えば、懸濁液をデカントして、粗いまたは大きなまたは高質量の固形物を液体から分離してもよく、次いで、より小さなおよび/または微細な固体粒子を液体からさらに分離してもよい、および/または油生成物を非油生成物から分離してもよい。カカオ粉末および水に加えて、濡れた固相は、残留カカオバターを含み得る。3つの相への最初の分離時に、カカオバター含有量は、典型的には、固相の総乾燥重量に対して、30重量%以下、より好ましくは25重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満、特に好ましくは17重量%未満である。最終的な冷菓の所望の総脂肪含有量に応じて、1回以上の追加の精製または相分離の工程を用いて、生成物中の脂肪含有量を減らし、カカオバターの収率を改善することができる。
【0024】
また、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および固相の間の改善された分離を達成するために、複数回の相分離および再組み合わせ工程を用いることができる。例えば、最初のデカント工程によって得られた脂肪相を、さらに濾過または遠心分離して、残存する微粒子または水を脂肪相から分離してもよく、そのようにして得られた微粒子および水を、最初のデカント工程からのまたは該相の後の加工段階の水および固相と再び組み合わせてもよい。また、水相は、微粒子を除去して液体の曇りを低減するために、例えば真空回転フィルタを使用した濾過による、さらなる精製工程に供してもよい。
【0025】
任意選択的に、3つの相(すなわち、水相(重質相)、脂肪相(軽質相)、および濡れた固相)の分離の後に、
図1に示されるように、カカオバターを脂肪相から分離してもよく、カカオ香料および/またはポリフェノール濃縮物を水相から分離してもよい。脂肪相(軽質相)を、(例えば、振動スクリーンを用いることによって)濾過し、および/または3相分離器(例えば、遠心分離機)に運び、(任意選択的に濡れた固相に加えられ得る)微粒子および(香料回収の前に任意選択的に水相に加えられ得る)残留水を除去してもよい。精製された脂肪相を濾過することによって、カカオバターを得ることができる。
【0026】
本発明によると、工程d)で得られ、かつ工程e)の前またはその間に天然または人工甘味料を含む混合物に加えられる固相は、3相分離工程の後および混合物に加える前に能動乾燥されず、それによって、加工コストおよびエネルギー消費が大幅に削減され、特に、乾燥/焙煎工程を本質的に組み込んで、さらなる加工を可能にし、かつ苦味および/または渋い口当たりを弱める公知の方法と比較した場合に、またはチョコレートから不要な酢酸、プロピオン酸、および酪酸を除去し、水分を減らし、かつ生成物の香味をまろやかにしながら、乾燥したカカオからの物質を脂肪相に再分配するためのコンチング工程(ミルクチョコレートの場合の約49℃~ダークチョコレートの場合の最大82℃のコンチング温度を使用)を採用する方法と比較した場合に、高い含有量の抗酸化物質を保持する。好ましい実施形態では、濡れた固相は、天然または人工甘味料を含む混合物に加える前に、40℃以上、さらに好ましくは30℃以上、特に好ましくは27℃以上の温度に供されない。
【0027】
濡れた非乾燥固相は、固相の総重量に基づいて、50重量%以上の含水量を有し得るが、これに限定されることはない。
【0028】
工程d)で得られた濡れた固相を、甘味料を含む混合物に直接加えることが好ましいが、濡れた固相はまた、工程e)に供される前に、貯蔵および/または輸送(例えば、カカオ豆加工施設からアイスクリーム製造施設)のために包装されてもよい。ここでは、カカオ抽出材料の微生物腐敗がある場合は、真空脱気装置を用いて濡れた固相を脱臭することができ、または微生物汚染が発生した場合は、パスカリゼーションなどの高圧処理を用いることができる(例えば、これは、芳香族化合物を維持することができるため望ましい)。しかしながら、微生物の腐敗および汚染の両方が予想される場合は、熱処理および脱臭が用いられ得る。この点で、凍結したまたは少なくとも冷却された状態(例えば、4℃以下の温度)で濡れた固相を貯蔵および/または輸送することが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態では、工程d)で得られた水相は、別々に処理され、処理された水相の少なくとも一部は、工程e)の前またはその間に混合物に加えられる。
【0030】
より好ましくは、水相を別々に処理することは、カカオ豆またはカカオニブに由来する酸性成分(例えば、酢酸またはクエン酸など)の除去をもたらす精製工程および/または中和工程を含む。水相を介して酸性成分を除去する方法は、特に限定されることはなく、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって行うことができる。例えば、酸は、例えば、蒸留(例えば、抽出蒸留または反応蒸留)、抽出(例えば、液-液抽出)、エマルションタイプの液膜プロセス、塩析、またはそれらの組み合わせによって、水相から除去され得る。さらに、デカント工程で得られた水相は、親水性香料抽出物を得るための濃縮工程に水相を供することによって回収され得る所望の香味も含むことが見出された。さらに、カカオ香味の増強は、逆流蒸留を使用して達成され得る(すなわち、香味化合物および水を分離する)。そのようにして処理された水相と固相とを再び組み合わせることによって、最終的な製品中の親水性香料およびポリフェノールの回収が可能になり、酸性成分に由来する不快な香料(刺激、苦味、および過度な酸味のある香味)が減少する。
【0031】
好ましい実施形態では、処理された水相の少なくとも一部は、混合物中の総含水量を、混合物の総重量に基づいて、52~80重量%の範囲、好ましくは54~72重量%の範囲に調整するように混合物に加えられる。
【0032】
工程e)の混合物に含まれる天然または人工甘味料は、特に限定されることはないが、好ましくは、カカオパルプ、スクロース、フルクトース、グルコースシロップ、転化糖、果糖、コーンシロップ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、シクラメート、アセスルファムK、タウマチン、カルコン、シクラメート、ステビオシド、ステビア、ソルビトール、キシリトール、およびラクチトールのうちの1つ以上から選択される。従来の方法では、カカオの苦味を相殺するために甘味料の量を増加させる必要があり、典型的には、カカオ固形物100重量パーセントあたりスクロース(または同等物)80~120重量パーセントである。本発明の1つの利点は、最終的な製品において苦味を誘発する大量の成分(例えば、酸など)が水相を介して除去されるため、苦いカカオ香味のバランスをとるための甘味料の量が少なくて済むことである。
【0033】
カカオ香味の冷菓の種類および所望の官能特性に応じて、工程e)に供される混合物は、さらなる成分を含み得る。
【0034】
好ましい実施形態では、天然または人工甘味料を含む混合物は、フルーツジュース、1つ以上の乳製品(例えば、全乳、脱脂乳、または部分脱脂乳、ホエイ、バターミルク、コンデンスミルク、発酵乳製品(例えば、ケフィア、クミス)、または乳清など)、および/または卵製品をさらに含む。1つ以上の乳製品は、好ましくは、乳脂肪、無脂乳固形分(MSNF)、および/またはヨーグルトを含み、卵製品は、好ましくは卵黄であるが、これらに限定されることはない。無脂乳固形分(MSNF)は、典型的には、ラクトース、カゼイン、ホエイタンパク質、ミネラル、ビタミン、およびミルクまたは乳製品の他の成分(例えば、コンデンスミルク、スキムミルク粉末、ホエイタンパク質濃縮物成分)を含む。
【0035】
別の好ましい実施形態では、混合物は、冷菓の食感および形状保持を改善し、かつ空気を取り込むその能力を高めることができる乳化剤をさらに含む。乳化剤は、脂肪と水との混合を促進する限り、特に制限されることはない。好ましい乳化剤の例としては、ローカストビーンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ゼラチン、(新鮮な)卵黄、安定化された卵黄、酵素処理された卵黄、乾燥卵黄、塩漬け卵黄、卵黄由来の乳化剤(例えば、レシチン)、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0036】
別の好ましい実施形態では、混合物は、安定剤をさらに含み、この安定剤によって、本体および食感の滑らかさが改善され得て、貯蔵中および温度変動中の氷晶成長が低減され得る。安定剤は、混合物の粘度を上昇させることができる限り、特に制限されることはない。好ましい安定剤の例として、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0037】
任意選択的に、混合物は、ビタミン(例えば、ビタミンC、D、およびEを含むがこれらに限定されることはない)、香味剤(バニリン、クマリン、シナモン、クローブ、リキュール香味(例えば、ラム、ウイスキー、フルーツリキュールなど)を含むがこれらに限定されることはない)、および当技術分野で公知の着色剤を含む群から選択される1つ以上の追加の成分をさらに含み得る。
【0038】
所望のカカオ香味の冷菓が、ハードフローズンアイスクリーム製品、低脂肪アイスクリーム製品、ライトアイスクリーム製品、およびソフトフローズンアイスクリーム製品から選択される場合、工程d)で得られる非乾燥固相が加えられる混合物は、好ましくは、0.5~50重量%の乳脂肪、3~38重量%の無脂乳固形分(MSNF)、60重量%未満の1つ以上の甘味料、0.01~3重量%の安定剤、および0.01~3重量%の乳化剤を含み、各含有量範囲は、混合物中の総固形物重量に基づく。
【0039】
カカオ香味の冷菓がシャーベットまたはソルベから選択される場合、工程d)で得られる非乾燥固相が加えられる混合物は、好ましくは、8重量%未満の乳脂肪、12重量%未満の無脂乳固形分(MSNF)、65重量%未満の1つ以上の甘味料、0.01~3重量%の安定剤、および0.01~3重量%の乳化剤を含み、各含有量範囲は、混合物中の総固形物重量に基づく。
【0040】
カカオ香味のフローズンヨーグルトにおいて、工程d)で得られる非乾燥固相が加えられる混合物は、好ましくは、18重量%未満の乳脂肪、5~45重量%の無脂乳固形分(MSNF)、60重量%未満の1つ以上の甘味料、0.01~3重量%の安定剤、および0.01~3重量%の乳化剤を含み、各含有量範囲は、混合物中の総固形物重量に基づく。
【0041】
上記の添加剤は、濡れた固相を加える際に混合物中に存在する必要はないが、工程e)における低温殺菌および均質化の間またはその後の任意の時点で加えることもできると理解され、これについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0042】
工程e)は、一般に、工程d)で得られた濡れた固相を含む成分の混合物から始まる。液体成分は、ロードセル上のポンプまたはタンクを使用して手動または自動でブレンドすることができ、固体材料は、例えば、高速下でのポンプ輸送システムによって、または液化装置によって加えることができる。
【0043】
成分をブレンドしたら、病原性細菌が存在する場合にはこれを破壊するために、混合物を低温殺菌してもよい。この目的のために、混合物を、典型的には、(法的要件に応じて)30分~20秒の期間にわたって69~90°の温度に加熱し、好ましくはタンパク質の大幅な変性を回避しながら、総細菌負荷を十分に低減する。低温殺菌プロセスは、例えばHTST(高温短時間)熱交換器を使用することによって、バッチまたは連続操作で行われ得る。
【0044】
凍結前にアイスクリーム混合物を均質化すると、脂肪滴の寸法が減少し、それによって、脂肪の凝集速度が減少することで、クリーミーさの知覚および生成物の安定性が増加する。均質化は、当技術分野で公知の方法によってもたらすことができ、典型的には、加熱された低温殺菌された塊を、典型的には120~2100barの高圧下でオリフィスに強制的に通すことを含む。1400~2100barの圧力での超高圧(UHP)均質化は、非常に小さな脂肪滴(直径0.5μm未満)を多数有するエマルションの提供を可能にし、かつより低い圧力で均質化された生成物と比較して、官能特性および安定性の特性を達成するのにより低い脂肪含有量で済むため、好ましい。
【0045】
次いで、均質化された混合物は、約1時間~約24時間にわたって、約0℃~約15℃、好ましくは1~10℃の温度で、例えば、1~5時間の期間にわたって1~6℃で貯蔵することによって任意選択的に熟成され得る。好ましい実施形態では、均質化された混合物の熟成は、2~24時間の期間にわたって1~4℃で実施される。熟成工程によって、乳タンパク質および安定剤の水和、脂肪球の結晶化が促進され、最終的な製品のより滑らかな食感がもたらされ得る。
【0046】
均質化後に、任意選択的に熟成された混合物は、好ましくは凍結工程に供される。凍結プロセスは、特に限定されることはなく、当技術分野で公知の方法によってもたらすことができ、単回の工程または複数回の後続の工程からなり得る。例えば、混合物は、掃き取り式表面熱交換器(swept-surface heat exchanger:SSHE)として公知のバッチまたは連続凍結機を使用して凍結され得て、所望のオーバーラン、例えば少なくとも10%のオーバーランを与えるのに十分な空気を組み込むことによって曝気することができる。空気は、機械的プリエアレータなどの装置を使用して、SSHEの前に、熟成された混合物に組み込まれ得るか、またはSSHEに直接導入され得る。オーバーランの特定の量は、特に制限されることはなく、従来の冷菓製品に適した任意のレベルであり得る。例示的な凍結方法および装置は、例えば、EP1202638B1およびGB2447602Aに開示されているが、これらに限定されることはない。
【0047】
最終的な製品の改善された滑らかさおよびクリーミーさに関する好ましい実施形態では、低温押出(LTE)が凍結プロセスにおいて使用され、凍結製品は、好ましくは、例えば3~60rpmの単軸または二軸押出機の回転速度で、約-5℃~-25℃の低温範囲で剪断処理される。低温押出は、掃き取り式表面熱交換器(SSHE)を使用した凍結工程に置き換えられても、またはSSHEを使用した前凍結工程の後に使用されてもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、工程e)は、硬化工程をさらに含み、この硬化工程は、-20℃以下の温度で、型内で混合物を凍結する工程を含み得る。さらなる好ましい実施形態では、型の表面は、好ましくは-50℃未満、さらに好ましくは-75℃未満の極低温に冷却され、それによって、より高い冷却温度と比較した場合に、型表面への製品の接着性が低いことから、複雑な3D形状の提供が可能になる。極低温凍結の例示的な方法は、WO2010/003739A2、US2005/0106301A1、US5,948,456A、およびUS6,025,003Aに開示されているが、これらに限定されることはない。
【0049】
香味(および任意選択的に着色)物質は、当業者にとって適切であると考えられる任意の段階で混合物に加えることができる。典型的には、香味抽出物、エッセンス、および濃縮物(例えば、バニラ)は、均質化された低温殺菌された混合物が熟成された後に、ただし凍結前に加えられる。使用され得る例示的な香味濃縮物は、例えば、フルーツシロップ、コーヒー、リキュール由来の香味(ラム、ウイスキー、ピナコラーダ、アマレット、アイリッシュクリームなどを含む)、キャラメルシロップ、およびペパーミントシロップを含むが、これらに限定されることはない。さらに、粒子状成分をアイスクリームに加えて、最終的な製品の外観または味を高めることができる。そのような原料は、チョコレートチップまたはフレーク(例えば、EP0221757A2に準拠)、フルーツ(乾燥、凍結乾燥、および/または新鮮なフルーツを含む)、(料理用)ナッツ(例えば、ホール状、刻まれた状態、またはスライスされた状態であり得るヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ、マカデミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、アーモンド、およびピスタチオを含むが、これらに限定されることはない)、アカシアファイバーガム、キャンディー、クッキー、マシュマロ、ブラウニー、ペストリーなど、またはそれらの任意の混合物を含み得るが、これらに限定されることはない。均質化および低温殺菌された混合物が少なくとも部分的に凍結された後に、典型的には、ホール状のまたは細かくされた食品片の形態の香味物質が加えられる。食品粒子はまた、例えば、WO2005/031226A1に従って、凍結中に自動化された手法で組み込まれ得る。
【0050】
一実施形態では、冷菓は、粒子状添加剤に加えて、複数の成分、例えば、コーンウェハ、1つ以上のシートウェハ、フィリング、および/または表面コーティングを含み得る。それらの非限定的な例は、US6,379,724B1およびEP0710074A1に開示されている。
【0051】
当業者には容易に明らかとなるように、上記の方法は、カカオ香味の冷菓の安価かつ簡単な製造の道筋を提供し、当技術分野で公知の従来の方法と比較して、価値ある抗酸化物質および心地良い香料の改善された収率を呈する。
【0052】
カカオ香味の冷菓
第2の実施形態では、本発明は、上記の第1の実施形態による方法によって製造されたカカオ香味の冷菓を提供する。
【0053】
カカオ果実の栄養的に有益な成分を理想的に利用するために、工程e)で得られるカカオ香味の冷菓は、カカオ香味の冷菓の総固形物含有量に基づいて、濡れた固相によって導入されるカカオ粉末を、少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%、例えば、6~20重量%含むことが好ましい。
【0054】
好ましいデザート配合物の非限定的な例を以下の表1に示す。
【0055】
【0056】
脱脂カカオ固形物の総ポリフェノール含有量は、脱脂乾燥質量1グラムあたり少なくとも40mgのECE(エピカテキン当量)、好ましくは脱脂乾燥質量1gあたり50mg超のECE、さらに好ましくは脱脂乾燥質量1gあたり55mg超のECEである。総ポリフェノール含有量は、Folin-Ciocalteu index、Off.J.Eur.Communities 1990、41、178~179およびCooperら、J.Agric.Food Chem 2008、56、260~265に開示されている方法に従って、(-)エピカテキンを標準として用いたFolin-Ciocalteuアッセイを使用して決定することができる。
【0057】
第1の実施形態の好ましい特徴は、少なくともいくつかの特徴が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで第2の実施形態と自由に組み合わせることができると理解されるであろう。
【0058】
カカオ香味の冷菓の製造のための非乾燥固相の使用
第3の実施形態では、本発明は、カカオ香味の冷菓を製造するための非乾燥固相の使用であって、非乾燥固相が、a)カカオ豆またはカカオニブに水を加えて懸濁液を形成する工程と、b)該懸濁液を湿式粉砕する工程と、c)該懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に供する工程と、d)懸濁液を、水相(重質相)、主成分としてカカオバターを含み、かつ微量成分として固形物および/または水を含む脂肪相(軽質相)、ならびにカカオ粉末および水を含む非乾燥固相に分離する工程とによって得ることが可能である、使用に関する。
【0059】
第1および第2の実施形態の好ましい特徴は、少なくともいくつかの特徴が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで第3の実施形態と自由に組み合わせることができる。
【0060】
使用前に、非乾燥固相は、第1の実施形態に関連して先に言及されているように、凍結または冷却された状態で存在し得る。必要に応じて、冷却された非乾燥固相を解凍するか、または室温まで穏やかに加熱してから、冷菓製造プロセスに供することができる。
【0061】
上記の開示を考慮すると、他の多くの特徴、修正、および改善が当業者に明らかになるであろう。
【国際調査報告】