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2022-535862血栓症および血管プラークを検出および治療する組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】血栓症および血管プラークを検出および治療する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20220803BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20220803BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 49/22 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K47/66
A61K9/12
A61K51/04 100
A61K49/22
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572097
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020035580
(87)【国際公開番号】W WO2020247315
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/857,766
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520368585
【氏名又は名称】マイクロヴァスキュラー ゼラピューティクス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MICROVASCULAR THERAPEUTICS LLC
【住所又は居所原語表記】1635 E, 18th Street, Tucson, AZ 85719 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】アンガー, エヴァン, シー.
(72)【発明者】
【氏名】ミューイルレット, エマニュエッレ, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダルヤエイ, イマン
(72)【発明者】
【氏名】アコスタ, マリア, エフ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA95
4C076BB12
4C076CC11
4C076DD35
4C076EE41
4C076EE59
4C084MA13
4C084MA22
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA36
4C085HH09
4C085JJ03
4C085KA14
4C085KB39
4C085LL07
(57)【要約】
本発明は、血管血栓症(例えば、フィブリン塊)および血管プラーク、または関連する疾患および状態の検出および治療において有用な標的指向性リガンドで標識されたナノ液滴、ならびにそれらの調製方法および使用方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項2】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴のそれぞれは、複数の前記フィブリン結合リガンドと結合している、請求項1に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項3】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴の実質的にすべては、複数の前記フィブリン結合リガンドと結合している、請求項1に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項4】
前記1つまたは複数のフィブリン結合リガンドは、約11から約16個のアミノ酸を有するフィブリン結合ペプチドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項5】
前記フィブリン結合ペプチドは、表1から選択される、請求項4に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項6】
前記フィブリン結合リガンドは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴と結合している、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項7】
前記PEGリンカーは、約1,000から約10,000ダルトンの範囲の数平均分子量(MW)を有する、請求項6に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項8】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、ガス状材料で満たされている、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項9】
前記ガス状材料は、フッ素化ガスを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項10】
前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項9に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項11】
前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む、請求項9または10に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項12】
前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、安定剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項13】
前記安定剤は、トレハロースおよびD(+)トレハロース二水和物からなる群から選択される、請求項12に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項14】
1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項15】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴のそれぞれは、複数の前記VCAM‐1結合リガンドと結合している、請求項14に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項16】
前記1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドは、約8から約16個のアミノ酸を有するVCAM‐1結合ペプチドである、請求項14または15に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項17】
前記VCAM‐1結合ペプチドは、表2から選択される、請求項16に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項18】
前記フィブリン結合リガンドは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴と結合している、請求項14~17のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項19】
前記PEGリンカーは、約1,000から約10,000ダルトンの範囲の数平均分子量(MW)を有する、請求項18に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項20】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、ガス状材料で満たされている、請求項14~19のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項21】
前記ガス状材料は、フッ素化ガスを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項22】
前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項21に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項23】
前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む、請求項21または22に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項24】
前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、安定剤を含む、請求項14~23のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項25】
前記安定剤は、D(+)トレハロース二水和物からなる群から選択される、請求項24に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項26】
前記水性エマルジョンまたは懸濁液は、1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴、ならびに1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項27】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、フィルム形成材料によってコーティングされている、請求項1~26のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項28】
前記フィルム形成材料は、1つまたは複数の脂質を含む、請求項27に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項29】
前記脂質は、リン脂質またはリン脂質の混合物を含む、請求項28に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項30】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約0.5から約10ミクロンの範囲のマイクロスケールのサイズを有するマイクロ気泡を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項31】
前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項32】
前記水性エマルジョンまたは懸濁液は、均質化された形態である、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項33】
前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、薬学的に許容され得る賦形剤、担体、または希釈剤を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液。
【請求項34】
血管血栓または血管プラークを検出するための方法であって、前記方法を必要とする対象に、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して、血管血栓または血管プラークの存在を検出するステップを含む、方法。
【請求項35】
血栓症またはアテローム性動脈硬化症を診断または評価するための方法であって、前記方法を必要とする対象に、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して、前記対象における血栓症を診断または評価するステップを含む、方法。
【請求項36】
血管血栓症または血管プラークを崩壊させるかまたは破壊するための方法であって、前記方法を必要とする対象に、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および血管血栓症または血管プラークを有する前記対象の器官の標的領域に超音波を適用することにより、前記血管血栓症または血管プラークを破壊または低減するステップを含む、方法。
【請求項37】
血栓症、アテローム性動脈硬化症または動脈プラークを治療するための方法であって、前記方法を必要とする対象に、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む、方法。
【請求項38】
超音波血栓溶解を実施するための方法であって、前記方法を必要とする対象に、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む、方法。
【請求項39】
前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
マイクロスケールまたはナノスケールの前記気泡/前記液滴は、約0.5から約10ミクロンの範囲のマイクロスケールのサイズを有する、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
マイクロスケールまたはナノスケールの前記気泡/前記液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有する、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張および関連する特許出願
本出願は、2019年6月5日に出願された米国仮出願シリアル番号62/857,766からの優先権の利益を主張し、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の技術分野
本発明は、医薬組成物ならびにそれらの調製方法および診断的または治療的な使用方法に関する。より具体的には、本発明は、血管血栓症(例えば、フィブリン塊)および血管プラークの検出および破壊に有用な診断用および/または治療用のリガンドで標識された、標的化マイクロ気泡および/またはナノ液滴、およびそれらのエマルジョン、ならびにそれらの調製方法および使用方法に関する。
【0003】
発明の背景
心血管疾患(CVD)は、世界的に死亡および障害の主要原因である。血栓症は、静脈血栓塞栓症(VTE)、虚血性心疾患および虚血性脳梗塞を含む、多くの種類のCVDの根本原因である。血管形成術/ステント留置術、血栓塞栓術、機械的破砕、および/または生化学的溶解によって閉塞性血栓を除去する取り組みにより、様々な効果がもたらされている。通常、これらの技術には、実施に時間と費用がかかり、出血性合併症の実質的なリスクを伴うことが多い。
【0004】
マイクロ気泡は、急性心筋梗塞(MI)と非急性虚血性脳梗塞の治療において、冠状動脈性超音波血栓溶解を増強するために使用されてきた。MIと虚血性脳梗塞の両方において、血栓は動脈閉塞を引き起こし、下流の組織から血流を奪い、虚血と潜在的な細胞死を引き起こす。血栓は、可変的にフィブリンと血小板で構成されており、網内に捕らえられた赤血球を多く含む場合がある。
【0005】
フィブリンは、ファクターIaとも呼ばれ、血液の凝固に関与する繊維状の非球状タンパク質である。フィブリンは、静脈血栓症と動脈血栓症の両方において高濃度で存在し、フィブリン標的指向性療法に対して高い感度を示す。同時に、フィブリンは循環血液中に存在しないため、これらの療法に対して潜在的に高い特異性が可能となる。タンパク質に基づくアプローチに加えて、フィブリンに対する高い親和性とフィブリノーゲンに照らして高い選択性を示す小さな環状ペプチドについても説明する。抗体と比較した際の低分子ペプチドの潜在的な利点には、より速い血流クリアランスとフィブリン網への侵入能力が含まれ、それらの両方により、バックグラウンドに対する標的の比率が向上する。
【0006】
炎症と内皮機能不全は、アテローム性動脈硬化症の進行における重要な臨界発達である。内皮細胞接着分子、例えば、血管細胞接着分子-1(VCAM‐1)の発現は、白血球の動員に重要な役割を果たすことが示されており、病的炎症の部位で増加することが多い。機能不全の内皮細胞におけるVCAM‐1の持続的な発現は、単核白血球の接着、ローリング、およびテザリングを媒介し、進行中のアテローム性動脈硬化症プラークへのそれらの移動を促進する。したがって、VCAM‐1は、画像化による早期検出の標的のみならず、治療用ドラッグデリバリーの標的でもある。
【0007】
超音波は、血栓を崩壊させるために使用することができる、がしかし、時間/効率と健康な組織への損傷の間にはトレードオフが存在する。音を局所的に増幅できる試薬、例えばマイクロ気泡は、送達されるエネルギーを低く抑えながら、崩壊を加速させることができる。気泡の使用に関する注意点は、気泡のサイズ(1~5ミクロン)に起因するため、血栓内部へのアクセスが妨げられる可能性がある。血栓は多孔質マトリックスを示すが、一般的に、前記塊の隙間は、ミクロンサイズの構造の進入を排除する。
【0008】
したがって、血栓症ならびに関連する疾患および状態の検出および治療のための改善された治療剤および方法に対する継続的な必要性が依然として存在する。血栓除去の安全性、有効性、および効率を高める取り組みにより、潜在的に大きな臨床的影響がもたらされる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、部分的に、特定の疾患および状態、特に血栓症の診断および治療に有用な、バイオマーカーを選択するための標的指向性能力を有する新規なマイクロ気泡およびナノ液滴ならびにそれらのエマルジョンに基づく。これらの担体は、フィブリンおよびVCAM‐1などの様々なタンパク質標的をターゲットにして、心血管疾患で発生する血栓、血小板、血管プラークの検出または崩壊を改善することができる。本発明はさらに、医薬組成物ならびにそれらの調製方法および使用方法に関する。
【0010】
一態様では、本発明は、概して、1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、概して、1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、概して、本明細書に開示されるような1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴ならびに本明細書に開示されるような1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴を含む水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血管血栓または血管プラークを検出するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して、血管血栓または血管プラークの存在を検出するステップを含む。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血栓症を診断または評価するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して、前記対象の血栓症を診断または評価するステップを含む。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血管血栓症または血管プラークを崩壊させるかまたは破壊するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および血管血栓症または血管プラークを有する前記対象の器官の標的領域に超音波を適用することにより、前記血管血栓症または血管プラークを破壊または低減するステップを含む。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血栓症または動脈プラークを治療するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、概して、超音波血栓溶解を実施するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、アジド官能基を伴うフィブリン結合ペプチド(FBP)が、DSPE-PEG5000-DBCOと結合して、ジベンゾシクロオクタトリアゾールリンカーを伴う生成物を形成することを示す。
図2図2は、アミン官能基を伴うFBPが、DSPE-PEG5000-NHSエステルと結合して、アミドリンカーを伴う生成物を形成することを示す。
図3図3は、パーフルオロビフェニルスルフィドを酸化させてより活性なスルホン誘導体を生成し、次にこれをDSPE-PEG5000-アミンと反応させてDSPE-PEG5000-PFPhSOを製造したことを示す。最終的に、DSPE-PEG5000-PFPhSOを、アミン基を有するFBPと反応させて、結合型最終生成物を生成したことを示す。
図4図4は、FBPのDSPE-PEG5000-DBCO(A)、DSPE-PEG5000-NHSエステル(B)およびDSPE-PEG5000-PFPhSO(C)との結合をMSデータによって確認したことを示す。
図5図5は、5(6)-カルボキシテトラメチルローダミンN-スクシンイミジルエステルでタグ付けされたFBPにより、FBP-Rh(MW=2100.75Da)が製造されること(上)、および5(6)-カルボキシテトラメチルローダミンN-スクシンイミジルエステルでタグ付けされたDK-12により、DK-12-Rh(MW=2182.49Da)が製造されること(下)を示す。
図6図6は、対照ペプチド(DK12)の蛍光(ローダミンラベル)とフィブリン結合ペプチドの蛍光(ローダミンラベル)とを比較したインビトロの親和結合アッセイの結果を示す。
図7図7は、標的化MBの全体像を示す。MBでは、様々なリン脂質の組み合わせにより球殻が形成され、内部は、パーフルオロカーボンガス、優先的には、オクタフルオロプロパンで満たされた。VCAM‐1リガンドまたはFBP(緑色の星で示す)を含む標的結合リガンドは、PEGリンカーを介して前記気泡の表面殻に付けられた。
図8図8は、異なるFBP結合リン脂質とMPEG対照を伴う様々なタイプのMBのサイズ分布(A)およびすべての試料の数加重平均(B)を示す。
図9図9は、MBのガス含有量を示す。4種類すべての試料のガス含有量をGCで測定した。
図10図10は、(A)フィブリン結合ペプチド標的化マイクロ気泡、(B)フィブリン結合ペプチド標的化ナノ液滴のTEM顕微鏡写真を示す。
図11図11は、(A)フィブリン塊に浸透するフィブリン結合ペプチド標的化マイクロ気泡、(B)フィブリン塊に浸透するフィブリン結合ペプチド標的化ナノ液滴のTEM顕微鏡写真を示す。
図12図12は、VCAM‐1リガンドが、N末端アミン基を介してDSSリンカーと結合したことを示す。DSPE-PEG2K-アミンは、DSSリンカーのもう一方のヘッドと結合して、VCAM‐1-DSPE-PEG2K結合体を生成したことを示す。
図13図13は、フィブリン塊の崩壊に関する例示的な蛍光データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、バイオマーカーを選択するための標的指向性能力を備えた新規なマイクロ気泡およびナノ液滴、ならびにそれらのエマルジョンを提供し、これらは特定の疾患および状態、特に血栓症および動脈プラークの診断プローブおよび治療薬として有用である。これらのマイクロ気泡および/またはナノ液滴は、フィブリンおよびVCAM‐1などの様々なタンパク質標的をターゲットにして、多くの心血管疾患で発生する血液塊(例えば、血栓、血小板および血管プラーク)の検出および/または崩壊を改善することができる。標的指向性マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、その場で音響により活性化されて、血液塊の崩壊を引き起こし得る。本発明はさらに、それらの医薬組成物ならびに調製方法および使用方法を提供する。
【0020】
本発明の重要な特徴は、通常マイクロ気泡のサイズに比して小さい、例えば、約100nmから約300nmの範囲の、ナノスケールの音響的に活性なナノ液滴であることである。サイズが小さいほど、前記液滴が血栓により容易に侵入できるため、超音波血栓溶解効率および臨床効果を大幅に向上させることが可能となる。
【0021】
本発明の別の重要な特徴は、低温高圧を使用して、フルオロカーボンマイクロ気泡(例えば、オクタフルオロプロパンマイクロ気泡)をナノ液滴(例えば、オクタフルオロプロパンナノ液滴)に凝縮することである。オクタフルオロプロパンの沸点(-34℃)は体温よりも大幅に低いにもかかわらず、前記ナノ液滴は、静脈内(IV)投与後も凝縮したままであり、その後、音響場に入った後にマイクロ気泡を再形成する。
【0022】
本発明のさらに別の重要な特徴は、1つまたは複数の標的指向性リガンドを有するナノ液滴が、その場で音響により局所的に活性化され得ることである。循環血液中にフィブリンが存在しないため、高い特異性を実現できる。本明細書で標的指向性リガンドとして使用される低分子ペプチドは、フィブリンに対して高い親和性およびフィブリノーゲンに照らして高い選択性を示す。これらの低分子ペプチドは、より速い血流クリアランスという利点とフィブリン網に侵入する能力を提供するため、バックグラウンドに対する標的の比率の改善がもたらされる。
【0023】
本発明のさらに別の重要な特徴は、本明細書に開示された独自の製剤であることであり、これにより、調製、貯蔵および治療手順中の操作および取り扱いに必要な強化された十分な安定性がナノ液滴に提供される。
【0024】
2019年3月28日に出願された、米国特許第9,801,959号B2およびPCT/US19/24713は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0025】
一態様では、本発明は、概して、1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0026】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴のそれぞれは、複数の前記フィブリン結合リガンドと結合している。
【0027】
特定の実施形態において、前記1つまたは複数のフィブリン結合リガンドは、約11~約16個のアミノ酸を有するフィブリン結合ペプチドを含む。
【0028】
特定の実施形態において、前記フィブリン結合ペプチドは、Tn6、Tn7、またはTn10ファミリーから選択される(表1)。
【表1】
【0029】
特定の実施形態において、前記フィブリン結合リガンドは、二官能性スペーサー、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)基を介して前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴に結合され、好ましくは約1,000~約10,000ダルトン(例えば、約2,000~約10,000、約3,000~約10,000ダルトン、約4,000~約10,000ダルトン、約1,000~約8,000ダルトン、約1,000~約6,000ダルトン、約3,000~約7,000ダルトン、約4,000~約6,000ダルトン)の範囲の、およびより好ましくは約5,000ダルトンの数平均分子量(MW)を有する。前記PEG基は脂質アンカー、好ましくはリン脂質と共有結合している。
【0030】
特定の実施形態では、前記リン脂質の組成物は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)を含む。DPPCは双性イオン性化合物であり、実質的に中性のリン脂質である。特定の実施形態では、前記組成物は、PEG化脂質を含む。
【0031】
脂質の例には、ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](アンモニウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](アンモニウム塩)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](アンモニウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)、l,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)が含まれる。ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)は、好ましい脂質であり、好ましくは5から20モルパーセント、最も好ましくは10モルパーセントの濃度で他の脂質との製剤において存在する。
【0032】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、ガス状材料で満たされている。
【0033】
特定の実施形態では、前記ガス状材料は、フッ素化ガスを含む。本明細書で使用されるように、「フッ素化ガス」という用語は、水素、フッ素および炭素を含むヒドロフルオロカーボンを指すか、または炭素およびフッ素原子のみを含む化合物(別名パーフルオロカーボン)を指すか、硫黄とフッ素を含む化合物を指す。本発明の文脈において、この用語は、それらの分子構造が炭素とフッ素、または硫黄とフッ素で構成され、常温常圧でガスである材料を指す場合がある。
【0034】
特定の実施形態において、前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0035】
特定の実施形態において、前記フッ素化ガスは、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0036】
特定の実施形態では、前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む。
【0037】
特定の実施形態において、前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、安定剤を含む。
【0038】
特定の実施形態において、前記安定剤は、D(+)トレハロース二水和物、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、グルコースおよびスクロースからなる群から選択される。
【0039】
特定の実施形態では、前記ガス状材料はさらに、適切なパーセンテージの非フッ素化ガスまたはガス混合物、例えば、約2%から約20%の空気または窒素(例えば、約5%から約20%、約10%~約20%、約15%~約20%、約2%~約15%、約2%~約10%、約2%~約5%の空気または窒素)を含む。
【0040】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴内の前記フルオロカーボンは、凝縮した、すなわち液体の状態で存在する。
【0041】
別の局面において、本発明は、概して、1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴の水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0042】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴のそれぞれは、複数の前記VCAM‐1結合リガンドと結合している。
【0043】
特定の実施形態において、前記1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドは、約8から約16個のアミノ酸を有するVCAM‐1結合ペプチドである。
【0044】
特定の実施形態において、前記VCAM‐1結合ペプチドは、B2702pl~20ペプチドから選択される(表2)。
【表2】
【0045】
特定の実施形態において、前記VCAM‐1結合リガンドは、本明細書に開示されたPEGリンカーを介して前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴と結合している。
【0046】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、ガス状材料で満たされている。
【0047】
特定の実施形態では、前記ガス状材料は、フッ素化ガスを含む。
【0048】
特定の実施形態において、前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0049】
特定の実施形態において、前記フッ素化ガスは、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0050】
特定の実施形態では、前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む。
【0051】
特定の実施形態において、前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、安定剤を含む。
【0052】
特定の実施形態において、前記安定剤は、D(+)トレハロース二水和物、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、グルコースおよびスクロースからなる群から選択される。
【0053】
さらに別の態様では、本発明は、概して、本明細書に開示されるように1つまたは複数のフィブリン結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴、ならびに本明細書に開示されるように1つまたは複数のVCAM‐1結合リガンドが付いたマイクロ気泡および/またはナノ液滴を含む水性エマルジョンまたは懸濁液に関する。
【0054】
本明細書に開示された前記水性エマルジョンまたは懸濁液の特定の実施形態において、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、フィルム形成材料によってコーティングされる。
【0055】
特定の実施形態では、前記フィルム形成材料は、1つまたは複数の脂質を含む。
【0056】
特定の実施形態において、前記脂質は、リン脂質またはリン脂質の混合物を含む。
【0057】
任意の適切な脂質を利用することができる。前記脂質の脂質鎖は、約10から約24まで(例えば、約10から約20、約10から約18、約12から約20、約14から約20、約16から約20、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24)の炭素の長さで変化し得る。より好ましくは、その鎖長は約16から約18個の炭素の長さである。
【0058】
いくつかの実施形態では、マイクロスケールまたはナノスケールの気泡は、約10nmから約10μmの範囲(例えば、約10nmから約5μm、約10nmから約1μm、約10nmから約500nm、約10nmから約100nm、約50nmから約10μm、約100nmから約10μm、約1μmから約10μm)の直径を有する。いくつかの実施形態では、前記マイクロスケールまたはナノスケールの粒子または気泡は、約10nmから約100nmの直径を有する。いくつかの実施形態において、前記マイクロスケールまたはナノスケールの粒子または気泡は、約100nmから約1μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、前記マイクロスケールまたはナノスケールの粒子または気泡は、約1μmから約10μmの直径を有する。
【0059】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約0.5から約10ミクロン(例えば、約1μmから約10μm、約2μmから約10μm、約5μmから約10μm、約0.5μmから約5μm、約0.5μmから約2μm、約1μmから約5μm)の範囲のマイクロスケールのサイズを有するマイクロ気泡である。
【0060】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約100nmから約800nm(例えば、約100nmから約500nm、約100nmから約300nm、約120nmから約280nm)の範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴である。特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴である。
【0061】
特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nm~約280nmから外れたサイズを有するマイクロ気泡および/またはナノ液滴を含まない(すなわち、実質的にすべてのマイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴である)。
【0062】
特定の実施形態において、前記水性エマルジョンまたは懸濁液は、均質化された形態である。
【0063】
特定の実施形態において、前記水性エマルジョンまたは懸濁液はさらに、薬学的に許容され得る賦形剤、担体、または希釈剤を含む。
【0064】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血管血栓または血管プラークを検出するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して血管血栓または血管プラークの存在を検出するステップを含む。
【0065】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血栓症またはアテローム性動脈硬化症を診断または評価するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の一部を画像化して前記対象における血栓症を診断または評価するステップを含む。
【0066】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血管血栓症または血管プラークを崩壊または破壊するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および血管血栓症または血管プラークを有する前記対象の器官の標的領域に超音波を適用することにより、前記血管血栓症または血管プラークを破壊または低減するステップを含む。
【0067】
さらに別の態様では、本発明は、概して、血栓症、アテローム性動脈硬化症または動脈プラークを治療するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む。
【0068】
さらに別の態様では、本発明は、概して、超音波血栓溶解を実施するための方法に関する。前記方法は、前記方法を必要とする対象に、本明細書に開示された水性エマルジョンまたは懸濁液を投与するステップ、および前記対象の標的領域に超音波を適用するステップを含む。
【0069】
前記方法の特定の実施形態において、前記フッ素化ガスは、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン、およびそれらの2つ以上の混合物を含む。
【0070】
前記方法の特定の実施形態では、前記フッ素化ガスは、オクタフルオロプロパンを含む。
【0071】
前記方法の特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約0.5から約10ミクロンの範囲のマイクロスケールのサイズを有するマイクロ気泡である。
【0072】
前記方法の特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴である。
【0073】
前記方法の特定の実施形態では、前記マイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nm~約280nmから外れたサイズを有するマイクロ気泡および/またはナノ液滴を含まない(すなわち、実質的にすべてのマイクロ気泡および/またはナノ液滴は、約120nmから約280nmの範囲のナノスケールのサイズを有するナノ液滴である)。
【0074】
本明細書で使用される場合、「エマルジョン」は、ナノメートルからミクロンまでのサイズで変化し得る液滴の形態で別のものの中に分散された少なくとも1つの非混和性液体からなる不均一系を指す。エマルジョンの安定性は大きく異なり、エマルジョンが分離するまでの時間は数秒から数年になり得る。懸濁液は、バルク液相中の固体粒子または液滴からなる場合がある。一例として、ドデカフルオロペンタンのエマルジョンは、リン脂質またはフルオロ界面活性剤を用いて調製することができ、前記結合体は、前記エマルジョンを安定化する際に使用される界面活性剤に対して、約0.1モルパーセントから約1モルパーセント、さらには最高で5モルパーセントもの比率で前記エマルジョンに包含される。
【0075】
特定の実施形態では、前記エマルジョンまたは懸濁液はさらに、薬学的に許容され得る賦形剤、担体、または希釈剤を含む。賦形剤、担体、または希釈剤はそれぞれ、前記エマルジョンまたは懸濁液の他の成分と適合性があり、患者に害を及ぼさないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容され得る賦形剤、担体、または希釈剤として役立つことができる材料のいくつかの例には、通常の生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、プロピレングリコール、グリセロールおよびポリエチレングリコール、例えばPEG400またはPEG3350MWが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、生きている動物(ヒトまたは非ヒト)を指す。前記対象は哺乳動物であってもよい。「哺乳動物」または「哺乳動物の」という用語は、分類上の分類哺乳類内の任意の動物を指す。哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウスであってもよい。「対象」という用語は、疾患または状態に関して完全に正常であるか、またはすべての点で正常である個体を排除するものではない。
【0077】
本明細書で使用される場合、疾患または障害の「治療(treatment)」またはこれらを「治療する(treating)」という用語は、そのような状態、またはそのような疾患または状態の1つまたは複数の症状を、発生する前または発生した後に、低減、遅延、または改善する方法を指す。治療は、疾患および/または根底にある病状の1つまたは複数の影響または症状に向けられてもよい。前記治療は任意の低減であってもよく、そして前記疾患または前記疾患の症状の完全な切除であってもよいが、これらに限定されない。同等の未処理の対照と比較して、そのような低減または予防の程度は、標準的な手法によって測定されるように、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。
【実施例
【0078】
実施例1. フィブリン標的化バイオ結合体の調製
3つのコンジュゲーション戦略を用いて異なるリンカーを伴うペプチド-リン脂質結合型分子を製造した。(1)ミニPEGリンカーとアジド官能基を伴うフィブリン結合ペプチド(FBP)を直接、N-[ジベンゾシクロオクチル(ポリエチレングリコール-5000)]カルバミル-ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(アンモニウム塩)(DSPE-PEG5000-DBCO)と結合させて、ジベンゾシクロオクタトリアゾールリンカーを伴う生成物を製造した(スキーム1)。(2)ミニPEGリンカーとアミン官能基を伴うFBPを、[(スクシンイミジルオキシグルタリル)アミノプロピル,ポリエチレングリコール-5000]-カルバミルジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(ナトリウム塩)(DSPE-PEG5000-NHSエステル)と結合させて、アミドリンカーを伴う生成物を合成した(スキーム2)。(3)3番目の戦略は、N-[アミノプロピル(ポリエチレングリコール-5000)]-カルバミル-ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(ナトリウム塩)(DSPE-PEG5000-アミン)と6,6’-スルホニルビス(1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼン)(PFPhSO)の第1の反応で構成され、DSPE-PEG5000-PFPhSOを製造した。次いで、ミニPEGリンカーとアミンを伴う前記FBPを、DSPE-PEG5000-PFPhSOと結合させて、パーフルオロベンゼンリンカーを伴う生成物を作製した(スキーム3)。
【0079】
図1は、アジド官能基を伴うFBPを、DSPE-PEG5000-DBCOと結合させて、ジベンゾシクロオクタトリアゾールリンカーを伴う生成物が作製されることを示す。
【0080】
図2は、アミン官能基を伴うFBPを、DSPE-PEG5000-NHSエステルと結合させて、アミドリンカーを伴う生成物が製造されることを示す。
【0081】
図3は、パーフルオロビフェニルスルフィドを酸化させてより活性なスルホン誘導体を生成し、次いでこれをDSPE-PEG5000-アミンと反応させて、DSPE-PEG5000-PFPhSOが生成されたことを示す。最終的に、DSPE-PEG5000-PFPhSOを、アミン基を持つFBPと反応させて、結合型最終生成物が得られた。
【0082】
すべての生成物を高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、質量分析(MS)装置でそれらの特徴を明らかにした(図1)。
【0083】
図4は、DSPE-PEG5000-DBCO(A)、DSPE-PEG5000-NHSエステル(B)およびDSPE-PEG5000-PFPhSO(C)とのFBPの結合がMSデータによって確認されたことを示す。
【0084】
実施例2. フィブリン標的化および非標的化マイクロ気泡製剤
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルエタノールアミン(DPPE)、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール5000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩(DPPE-MPEG5000)、およびDSPE-PEG5000-FBP結合体の混合物を、標的化マイクロ気泡(MB)の製剤に使用した(図2)。非標的化マイクロ気泡の製剤では、DSPE-PEG5000-FBPを、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール5000)-カルバミルジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(ナトリウム塩)(DSPE-MPEG5000)に置き換えた。アミド、ジベンゾシクロオクタトリアゾール、およびパーフルオロベンゼンリンカーを伴う結合型リン脂質を含むバイアルを、それぞれエステル、DBCO、およびPFPhSOと名付けた。DSPE-MPEG5000を含む対照試料を、実験のためにMPEGと名付けた。
【0085】
図5は、様々なリン脂質の組み合わせにより、球殻が形成され、内部はパーフルオロカーボンガス、優先的には、オクタフルオロプロパンで満たされた、標的化MBの概略図を示す。FBP(緑色の星で表示)は、PEGリンカーを介して前記気泡の表面殻に付けられた。
【0086】
溶液中にリン脂質の混合物を含むすべてのバイアルを、オクタフルオロプロパンガス(OFP)で満たした。NiComp Acusazie 780機器によるサイズ測定のために、各シリーズのバイアルの2~4個の試料を試験した(図3)。本発明者らの結果は、エステル、DBCO、PFPhSO、およびMPEG試料のすべてがMBを形成することを示した。ただし、様々なFBP結合型生成物で構成されたMBに関して、サイズ分布は変化した。DBCOおよびPFPhSO試料を含むバイアルは、エステルおよびMPEGバイアルと比較して、直径が0.56~1.06μmの気泡の-10%の小さい集団を示した。対照的に、前記DBCOおよびPFPhSO試料は、エステルおよびMPEGバイアルと比較して、直径がそれぞれ1.06~2.03および2.03~5.99μmの気泡の7%および2%を超える大きい集団を示した(図3A)。異なる試料の数加重平均に有意差は観察されなかった(図3B)。
【0087】
図6は、様々なFBP結合型リン脂質とMPEG対照を含む様々なタイプのMBのサイズ分布(A)と、すべての試料の数加重平均(B)を示す。各シリーズのバイアルのガス含有量は、GC機器によって各群からの2~4個の試料を使用して分析された(図4)。
【0088】
図7は、4種類すべての試料のガス含有量がGCによって測定されたことを示す。この実験では、エステル試料がガス含有量の最大のパーセンテージを示したが、PFPhSOおよびMPEGバイアルは、OFPガスの最小量を示した。ただし、GCの結果から、ガス充填プロセスの結果、ガス含有量が80%を超えることが確認された。これは、MBの形成に非常に効率的である。
【0089】
実施例3. VCAM‐1標的化バイオ結合体の調製
前記バイオ結合体を、ジイソプロピルアミンおよびジメチルホルムアミドの存在下でVCAM‐1リガンドを活性化することによって調製した。次に、活性化した前記ペプチドをDSPE-PEG5000-NHと反応させて最終生成物を形成し、これをHPLCで精製した。
【0090】
図8は、DSPE-PEG2000-VCAMリガンドのバイオ結合体の調製を示す。
【0091】
実施例4. VCAM‐1標的化マイクロ気泡製剤
前記標的化マイクロ気泡製剤は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイル-sn-グリセロホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール-2000-OMe(DPPE-MPEG-2000)、およびスベロイルリンカー(Sub)を介して前記リガンドに連結されたDPPE-PEG2000-NH-またはアミド結合を介して連結されたDPPE-PEG2000-C(=O)-リガンドのいずれかで構成される脂質-リガンドバイオ結合体を含んだ。前記結合体は、総リン脂質の約1mol%で使用された。DPPC(90mol%)、DPPE-PEG2000(9mol%)および前記標的化リン脂質-PEG2000-リンカー-ペプチド結合体(1%)を、固形物が完全に溶解するまで50~65℃で撹拌したプロピレングリコールに添加することによって前記マイクロ気泡を調製した。次に、プロピレングリコール中のリン脂質の温かい溶液を、50~65℃で撹拌しながら、5vol%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水の溶液に数回に分けて添加した。この溶液を、5~10分間撹拌した。次に、前記溶液を血清バイアルに移し、直ちに栓をして、圧着キャッピングを行った。前記溶液を周囲温度にした後、4℃で保存した。25~50本の2mLの公称容量の血清バイアルの一部に、冷却したリン脂質溶液の1.5mLアリコートを充填した後、軽い真空を適用し、パーフルオロブタンガスでパージした後、迅速に前記バイアルに栓をして圧着キャッピングを行った。バイアルは使用するまで4℃で保存し、周囲温度まで温まると直ぐに、Bristol Myers Squibb製のバイアル混合装置上で75Hz(4500rpm)で45秒間撹拌して、前記マイクロ気泡を形成した。
【0092】
実施例5. ナノ液滴の調製
脂質懸濁液を、DPPC(82%)、DPPE(10%)、DPPE-MPEG5000(7%)およびDSPE-MPEG5000-FBPバイオ結合体(1%)の混合物から、プロピレングリコール(10.35mg/mL)中総脂質濃度0.75mg/mLで、75℃で1時間加熱することにより調製した。前記脂質懸濁液を塩化ナトリウム(4.78mg/mL)、リン酸水素一ナトリウム(2.34mg/mL)、リン酸水素二ナトリウム(2.16mg/mL)およびグリセロール(12.62mg/mL)の水溶液と混合して最終溶液を作製した。前記最終溶液を使用してバイアルに充填し(1.5mL/バイアル)、前記バイアルを密封して圧着する前に、これらにパーフルオロプロパンガスを添加した。バイアルを氷浴中-15~-18℃で3分間インキュベートした。前述の賦形剤に加えて、3w/v%グルコース、0.25w/v%、0.5w/v%および1.0w/v%D(+)トレハロース二水和物も賦形剤として添加した。前記バイアルをアマルガムシェーカー装置(Vialmix, BMS Medical Imaging Inc、4500rpm)を使用して45秒間撹拌し、乳白色の外観を形成させた。これは、マイクロ気泡(MB)の形成を示した。前記バイアルを氷浴中-15~-18℃で3分間インキュベートした。次に、前記バイアルをNで40~80psiに加圧して、ナノ液滴(ND)の形成を示すより透明な外観を形成させた。次に、前記バイアルを氷浴中-15~-18℃で10分間インキュベートした。前記バイアルを室温で1時間保持した後、様々な条件で保管した。
【0093】
MVT-100と呼ばれるマイクロ気泡を比較基準として使用した。すべての試料を、AccuSizer 780(PSS. NiComp Particle Sizing Systems)およびNanobrook 90 Plus(Brookhaven)サイズアナライザーを使用して粒子サイジングを行い、それぞれMBおよびNDサイズを測定した。MVT-100MBおよびフィブリン標的化MBの平均サイズは1~3ミクロンであった。結果を以下の表に示す。MVT-100由来のナノ液滴の平均サイズは急速に増加し、その後、前記パーフルオロプロパンガスが前記ナノ液滴から失われるにつれて減少した。3%グルコースは保護効果があったが、D(+)トレハロース二水和物ほどではなかった。24時間安定であったナノ液滴をもたらしたため、1%D(+)トレハロース二水和物が、好ましかった。
【0094】
実施例6. FTMBによるフィブリン塊の崩壊
24ウェルプレートのすべてのウェルを、フィブリノーゲンおよびトロンビンを添加し、前記プレートを一晩放置することにより、フィブリンでコーティングした。簡単に説明すると、160μLのフィブリノーゲン(PBS中1.75μM)を30μMチオフラビンの存在下で各ウェルに添加した。続いて、トロンビン(PBS中7.5単位/mLの40μL)を各ウェルに添加した。前記プレートを暗所中一晩室温でインキュベートした。フィブリン塊を、コントラスト位相差顕微鏡下で視覚化した。
【表3】
【表4】
【0095】
MBを活性化した(Vial Mix撹拌、45秒間)。各MB製剤の最終ストック溶液を、5.2mLPBS中500μLで作製した。フィブリンでコーティングされた前記ウェルを、MBを前記ウェルに添加する前にPBS(1.0mLx1)で洗浄する。フィブリンでコーティングされた前記ウェル中で、MBを3分間インキュベートした。
【0096】
超音波を各ウェルに30秒間供給した(パラメーター:2000mW、PRF 10、10msバースト長、周波数590Hz)。
【0097】
上清を回収し、室温で、10000rpmで15分間スピンダウンさせた。放出された蛍光を、暗い96ウェルプレート中で測定した。チオフラビンの蛍光を485nmで測定した(λ励起=450nm;λ放出=485nm)。
【0098】
一例では、増幅器の電力レベルの読み取り値は2,000mWであったが、トランスデューサーを備えたラインの電力計の電力読み取り値は約100mWであった。超音波の推定機械的指標は約0.28メガパスカルであった(図9)。
【0099】
別の例では、0.40メガパスカルを超える超音波のMIを、前記NDの超音波血栓溶解に使用する。
【0100】
実施例8.
急性STEMIの患者を、ナノ液滴で増強される超音波血栓溶解で治療する。前記ナノ液滴の製剤は、前記の独自の冷却/加圧プロセスを経てナノ液滴を形成するMVT-100+1%D(+)トレハロース二水和物を含む。前記患者は、ナノ液滴の静脈内投与を受けた(同時超音波治療中に30分間の注入期間にわたって4mLが投与された)。使用される超音波プロトコルは、Mathiasによって記載されたとおりである(Mathias, Wilson,ら 2016 J.Am. Coll. Cardiol. 67.21:2506-2515)。画像誘導診断高機械的インデックス超音波が適用され(1.8MHz;1.1~1.3機械的インデックス;3ミリ秒のパルス持続時間)、心筋のリスク領域を含む心尖部の四、二、および三腔像に衝撃が適用される。超音波血栓溶解に続いて、前記患者を、従来の血管形成術とステント留置術で治療する。治療後30日で心筋の流れが改善され、左心室駆出率が改善される。
【0101】
実施例9.
急性STEMの別の患者を、実施例1に記載したものと同様の超音波パラメーターを使用して、フィブリン標的化ナノ液滴で治療する。明らかに、冠状動脈血行再建術は、非標的化ナノ液滴よりも前記標的化ナノ液滴の方がより迅速に達成される。
【0102】
実施例10.
急性虚血性脳梗塞の患者は、t-PAのIV注入と同時に、60分間にわたってフィブリン標的化ナノ液滴の3つのバイアル(合計6mL)のIV注入を受ける。超音波は、t-PAとナノ液滴の同時注入と同じ期間、MU=1.0で1MHzプローブを使用して時間ウィンドウ全体に適用される。血流は中大脳動脈に迅速に回復される。
【0103】
実施例11.
患者は左前下行枝に広範なプラークを有し、LADの90%閉塞を引き起こしている。前記患者は、実施例1におけるように超音波が適用されている間に、6mLのVCAM‐1標的化ナノ液滴のIV注入を受ける。これにより、前記プラークが減少し、冠状動脈の血流が改善される。
【0104】
実施例12.
患者は下肢に急性末梢動脈閉塞を有する。凝血塊は大腿動脈に局在し、脚への血流が失われている。フィブリン標的化ナノ液滴のIV注入が開始される。超音波は、中心周波数=2MHzの3D超音波トランスデューサーを使用して、1.6メガパスカルで2秒オン2秒オフの適用電力で超音波をパルス状にして、動脈閉塞の領域に経皮的に適用され、同時に、前記ナノ液滴は、2.0cc/時の速度で2時間IV注入される。動脈の閉塞が取り除かれ、血流は下肢に回復される。
【0105】
本出願人の開示は、本明細書において、同様の番号が同じまたは類似の要素を表す図を参照して、好ましい実施形態で説明されている。本明細書全体にわたる「一実施形態」、「実施形態」、または同様の文言への言及は、前記実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる「1つの実施形態において」、「実施形態において」というフレーズ、および同様の文言の出現は、必ずしもそうではないが、すべてが同じ実施形態を指す場合がある。
【0106】
本出願人の開示において記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書の説明では、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすために、多数の特定の詳細が列挙されている。しかしながら、関連技術の当業者は、本出願人の組成物および/または方法が、1つまたは複数の特定の詳細なしに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを認識するであろう。他の例では、本開示の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、または操作は詳細に示されていないか、または説明されていない。
【0107】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形の参照を含む。
【0108】
本明細書で使用されるように、具体的に述べられていないかまたは文脈から明らかでない限り、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差内であると理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解され得る。文脈から明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語で修飾され得る。
【0109】
本明細書で使用されるように、具体的に述べられているかまたは文脈から明らかでない限り、「または」という用語は包括的であると理解される。
【0110】
組成物および方法を定義するために使用される場合、「含む」という用語は、前記組成物および方法が列挙された要素を包含するが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。組成物および方法を定義するために使用される場合、「本質的にからなる」という用語は、前記組成物および方法が列挙された要素を包含し、かつ前記組成物および方法にとって任意の本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。例えば、「本質的にからなる」とは、明示的に記載された薬理学的に活性な薬剤の投与を指し、かつ明示的に記載されていない薬理学的に活性な薬剤を除外する。本質的にからなるという用語は、薬理学的に不活性なまたは薬理作用を示さない薬剤、例えば、薬学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤を除外しない。組成物および方法を定義するために使用される場合、「からなる」という用語は、他の成分の微量要素および実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行語(transition term)のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0111】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または均等の任意の方法および材料もまた、本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載される。本明細書に記載の方法は、開示された特定の順序に加えて、論理的に可能な任意の順序で実行することができる。
【0112】
参照による援用
この開示では、特許、特許出願、特許刊行物、ジャーナル、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書への参照と引用がなされている。そのようなすべての文書は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。参照により本明細書に援用されるといわれているが、本明細書に明示的に記載されている既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、その援用される資料と本開示資料の間で不一致が生じない範囲で援用される。不一致の事象においては、優先開示として本開示を優先して前記不一致が解決される必要がある。
【0113】
均等物
代表的な例は、本発明を説明するのを補助することを意図しており、本発明の範囲を制限することを意図しておらず、またそれらを制限するように解釈されるべきではない。実際、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な修正およびそれらの多くのさらなる実施形態は、本明細書に含まれる例および科学的および特許文献への参照を含む、本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。前記例は、その様々な実施形態およびその均等物における本発明の実施に適合させることができる重要な追加情報、例示およびガイダンスを含む。
図1
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【国際調査報告】